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1955/12/02 第23回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第023回国会 本会議 第2号
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1955/12/02 第23回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第023回国会 本会議 第2号

#1
第023回国会 本会議 第2号
昭和三十年十二月二日(金曜日)
    開 会 式
午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。
午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に出御され、玉座に着かれた。
衆議院議長は、左の式辞を述べた。
    ―――――――――――――
  本日天皇陛下の御臨席を仰ぎ第二十三回国会の開会式を挙げるにあたり、衆議院及び参議院を代表して式辞を申し述べます。
  今次臨時国会は、地方財政再建促進に関する案件其の他の審議に関して召集されたものであります。終戦後十年わが国政界の各分野に画期的な政治力の結集をみるに至った今日、国会を開会して諸般の重要問題を解決し、国民と共に全力を挙げて国家の興隆に努力し、国運の前途に光明をもたらさんとすることは、その意義洵に深いものがあります。
  ここに開会式を行うにあたり、われわれに負荷せられた重大な使命に鑑み、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託に応えようとするものであります。
    ―――――――――――――
次いで、天皇陛下から左の御言葉を賜わった。
  本日、第二十三回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君とともに、親しく一堂に会することは、わたくしの深く喜びとするところであります。
  わが国が、独立国家として友邦諸国と国交を回復してここに三年有余、国民の努力により、ますます世界の信頼と友好とを得つつあることは、諸君とともに喜びに堪えません。
  しかしながら、わが国が、民主的文化国家として、更に経済の発展、民生の安定にその成果をおさめ、国運を隆盛に導き、かつ、信を世界に深めてゆくためには、今後いっそうの努力を要することと思います。
  このときに当り、わたくしは、国会が国権の最高機関としての使命を遺憾なく果し、また全国民が憲法の諸原則をよく守り、互に協力して各自の最善を尽すことを切に望みます。
    ―――――――――――――
衆議院議長は、御前に参進して、御言葉書を拝受した。
午前十一時五分 天皇陛下は、参議院議長の前行で入御された。
次いで、諸員は式場を出た。
    午前十一時六分式を終る
     ――――◇―――――
昭和三十年十二月二日(金曜日)
  議事日程 第二号
  昭和三十年十二月二日
    午後一時開議
  一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
 ●本日の会議に付した案件
  鳩山内閣総理大臣の所信についての演説
  重光外務大臣の外交に関する報告
  国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時七分開議
#2
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 一 国務大臣の演説
#3
○議長(益谷秀次君) 内閣総理大臣から所信について発言を求められております。また、外務大臣から外交に関する報告のため発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣鳩山一郎君。
    〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#4
○国務大臣(鳩山一郎君) 私は、今回、国会の指名によって、三たび内閣総理大臣の重責をにないまして、第三次鳩山内閣を組織いたしました。
 御承知の通り、この内閣は新たに発足した自由民主党を基礎として成立したものでありますが、それだけに、われわれは、今までより一そう強くその責任の重大なることを自覚するとともに、国民の信頼と期待とにこたえるため、全力を振りしぼって国政に当ることを決意しております。(拍手)新内閣の施政方針につきましては、引き続き開かれる第二十四国会において申し述べることになっておりますので、ここにおいては、ただ私の抱く所信の一端を披瀝したいと思います。(拍手)
 元来、二大政党の対立は、私の古くから抱いていた政治の理想形態でありましたが、今回、保守陣営は、自由民主党の誕生によりまして、ついにその大合同を達成いたし、一方社会党もその統一を実現することによって、ここに二大政党対立の形をとるに至ったことは、国家のためまことに喜びにたえないところであります。(拍手)これによって、わが国の議会政治は、従来しばしば分立した幾つかの政党の間に見られた不明朗な政治的かけ引きの余地を完全に遮断いたし、政策の審議にその精魂を傾けられるという正常なる道を歩むことができるからであります。民主政治は断じて力による政治であってはなりません。私は、この機会に、二つの政党はあくまでも言論によって争い、多数決によって決するという原則の上に立つよき先例を積み重ねまして、それによって動かしがたい議会政治のルールを作り、国会の品位を高めて、正しい民主政治の姿を確立しなければならないと考えております。(拍手)
 さて、第一次、第二次鳩山内閣は、平和外交の推進と国民生活の安定に努力をして参りましたが、新内閣もこの方針を強く推し進めることは申すまでもございません。
 まず日ソ交渉においては、わが方の主張の実現をはかりつつ、できる限り早期に妥結の方向に導くという従来の方針通り折衝を継続するつもりであります。同時に、日比賠償等につきましても積極的に解決をはかりまして、アジア諸国との国交調整に力を注ぐ所存でございます。
 一方、国民生活の安定については、よ与やく緒についた住宅建設に一段と意を用いまして、また社会保障の拡充や中小企業対策等にも一そうの努力を払いたいと考えております。
 さらに、われわれは、この機会に、保守党による絶対多数党内閣の仕事として、新たに次の三つの目標を掲げ、強力にその実現をはかりたいと存じます。
 その第一は、憲法の改正であります。わが国を真の独立国家に立ち返らせるためには、何よりもまず、国の大本を定める憲法を国民の総意によって自主独立の態勢に合致するよう作りかえることが大切であることは、言うまでもございません。(拍手)このために、内閣に憲法調査会を設置する手続をとりまして、慎重にその準備を進めなければならないと考えております。
 その第二は、行政機構の改革であります。わが国の行政機構には、占領中に作られた制度がそのまま存続しているものが数多くあるのであります。政府は、そのため、早急に行政審議会を拡充強化して検討を加え、国民の便宜をはかることを最重点に置いて、その組織と機構とを国情に適合するよう全面的に改革するつもりであります。(拍手)
 その第三は、税制の改革であります。税制は国民生活に最も深い関係を持っているのでありますが、従来の税制が、その仕組みも複雑である上に、国民負担の面からも不均衡りのがあることは事実でございます。そこで、新内閣は、この際、衆知を集めまして、税制全般に根本的なメスを入れまして、国民に喜んで協力を願える新税制体系を作り上げたいと念願しております。(拍手)
 さらに、このほか、今急速に解決を迫られております地方財政の行き詰まりにつきましては、いずれ通常国会において中央、地方を通ずる抜本的な打開策を講ずる考えで、目下その具体策を検討中でありますが、とりあえずの措置につきましては今臨時国会に提案いたしたいと思っております。
 以上、私は所信の一端を申し述べましたが、新内閣は絶対多数の上に立ちながらも、少数党の意見を十分聞いて民主政治を守り、(拍手)どこまでも謙虚な態度で国民の声に耳を傾けまして、国民とともに歩む明朗な政治を行う決意にあふれております。
 ここに国会を通じて国民諸君の御理解と御協力を心からお願いする次第でございます。(拍手)
#5
○議長(益谷秀次君) 外務大臣重光葵君。
    〔国務大臣重光葵君登壇〕
#6
○国務大臣(重光葵君) 私は、わが対外関係についてその概要を申し述べんとするものでございます。
 これがためには、まず最近の国際情勢の動向についても言及するの要がございます。世界が共産陣営と自由民主陣営とに分れて激しく冷戦が続けられましたが、この形勢は本年七月ゼネバに開かれた米英仏ソの首脳者会談によって緩和せられ、原子爆弾による戦争は回避せられたかの観を呈し、全世界は一応安心をいたしたのでありますが、この会談においては、両陣営和解の基礎となる諸問題の処理はすべて次に来たるべき外相会議にゆだねられたのでありました。
 十月ゼネパに開かれた四国の外相会議におきまして取り上げられた問題は、第一にドイツの統一、欧州の安全保障、第二に軍備縮小、第三に東西の交流等の問題であったのでありますが、ソ連側と米英仏の三国側との間に、これについて何一つ意見の一致を見ることができませんでした。のみならず、根本的の対立が一そう明瞭となってきたので、その調和は少くとも当分はできないことであるとの結論に達したようでございます。
 現にヨーロッパにおける情勢は勢力の均衡によって大なる動揺はないようでございますが、中近東においては、イギリス側を主として、バグダッド会議において反共防衛態勢を固めんとしているのに対して、共産陣営は、エジプト等のアラビア諸国に働きかけて、さらにアジア諸地域にもその手を伸ばさんとする形勢があるのでございます。かようなソ連側の積極政策は、最近の原水爆の実験の報道と相待って、いたく自由民主陣営の神経を刺激しておるありさまであります。
 かくして、国際情勢は再び緊張を増してきたということは争われぬ形勢でございまして、この形勢がいつまで続くかということについては、今にわかに予断は許しません。しかし、各国ともこれに対処せざるを得ないような情勢と判断ざれるのであります。
 かかる情勢のもとに日本の政策及び進路がいかなるものであるかということについては、各国とも異常の注意を払っております。日本は、戦後十年にしてようやく再建の途上にあり、サンフランシスコ条約実施以来、自由民主陣営の一員として独立を完成し、新しき国家の建設を急がなければならぬ状態にあることは言うを待ちません。自由民主の国家としての日本を再建するためには、どうしても、自由民主主義諸国との協力関係を国策の基調として、その上に平和外交を推進することが必要でありまして、第三次鳩山内閣り方針もまたここに存するのでございます。
 この根本政策を進めるためには、わが国の立っておる立場、政府の政策について、諸外国、特に友好国に対して、誤解の余地のないように、明確にこれを了解せしめるの必要がございます。かようにしてこそ、初めてこれら諸国との協力関係が推進され得るのでございます。私が、過般鳩山総理の意向をもたらして渡米し、米国当局と忌嘩なき意見の交換をなし、双方の理解を進め、さらに両国の協力関係を増進することに努めたのは、全く以上の趣旨に基くものでございます。その後引き続き、米国とり間においては、常に密接なる連絡を保って、諸般の問題について協力をいたしておる次第でございます。
 わが平和外交を推進して世界の平和に貢献せんがためには、いやしくもいまだ国交の回復せられていない国との間の関係を正常化することに努むべきは、これまた当然のことで、ロンドンにおける日ソ間の交渉もこの見地において進められておることは、御承知の通りであります。交渉は去る六月一日から開始せられて、正式会談は回を重ねること十五回に及びましたが、ソ連の全権が九月国連総会に出席のためロンドンを離れましたために、わが全権も一時帰朝し、現在に至っております次第でございます。ソ連全権がロンドンに帰って交渉再開の準備ができるに至りますならば、ききに発表せられた日ソ共同声明の趣旨に従って、わが全権もロンドンに再任する用意があるのでございます。これまでの交渉の経過はすでに説明してきた通りでありますが、最も重要な問題は、抑留者引き揚げの問題、領土に関連をする諸問題がございます。引き揚げ問題については、わが方は当初から在ソ抑留邦人全部について即時送還方を熱心に要求して参ってきておる次第でございます。また、領土問題につきましては、歴史上常に日本の領土であった諸島の返還は当然これを主張しなければならぬという立場に立ってきております。しかし、これらの問題については、現在までのところ、まだ十分妥結を見るに至っておらぬ状況でございます。しかし、日ソ両国とも、本交渉においては現に第三国との間に有する関係を認め合って、また内政に干渉しないという基礎の上に平和条約を締結して国交の正常化をはからんとするという、これらの点に至っては意見の合致を見ておるのでございます。ゆえに、政府といたしましては、今後の交渉においては、国論の帰趨に従い、既定方針に基き、主張すべきはあくまで主張して、所期の目的達成に努めたいと思っている次第でございます。(拍手)
 日本がアジアにおける民主国家として新興アジア諸国との間に正常国交の樹立をはかるということは、ひとり平和外交推進の見地より重要であるのみならず、日本の置かれだ地理的条件よりして喫緊の事柄であると信じます。
 最も緊密な関係にあるべき日韓両国が依然として正式国交を樹立し得ない状況にあるのは、政府の最も遺憾とするところであります。わが国としては、すみやかに韓国との間の諸懸案を解決して、両国永遠の和親関係を樹立したい所序でありまして、韓国側においてもわが方の態度に同調せられんことを希望してやまぬものでございます。(拍手)しかるに、最近、韓国軍事当局は、いわゆる李ラインを越える日本漁船はこれを砲撃撃沈することがあるべき旨の発表を行いました。政府は、この事実を重要視いたしまして、その真意の那辺にあるかということについて、目下韓国政府に照会中でございます。さらに、韓国側に不法抑留せられておる邦人漁夫の救出については、再国側に対して終始厳重交渉中でございます。
 ビルマとの賠償問題はすでに解決をせられました。幸いに国交がそれで開かれましたが、今や賠償実施の問題が重要になって参りました。政府において極力努力の結果、賠償実施取りきめが本年十月に至って成立をいたしまして、直ちにその運用を見ておる次第でございます。さらに、国交を回復しなければならぬアジア諸国との間には、まず賠償問題の解決をはからなければならぬものがあります。
 フィリピンとの賠償問題につきましては、久しく内交渉の段階にありましたが、その結果、先方からあらためて提案がありましたので、わが方においても、この提案について慎重に検討いたしておる次第でございますが、日比両国が本問題未解決のために長く国交を回復することのできぬままに推移することは、アジア地域の平和確立のためまことに遺憾とするところでございます。政府といたしましては、すみやかにこれが妥結に努めて、その解決をはかりたいと考えておる次第でございます。このほか、インドネシア及びヴェトナムにつきましても、賠償問題の解決を必要とする次第でございます。
 昨年末にカンボジア国が賠償請求権を放棄してわが国に対する友情を示したことは、すでに御承知の通りでありますが、最近、同国は、さらに中立国におけるわが財産に対して権利を放棄する旨を表明いたしました。同国の示された再度の好意に対し、ここに深く謝意を表明いたす次第でございます。(拍手)同国総理大臣ノロドム・シアヌーク殿下が近くわが国との親善協関係を増進するために来朝することに相なっております。殿下を国賓として歓迎することに決定をいたしておる次第でございます。(拍手)
 近時わが国の対外経済は著しい発展を遂げている次第でありまして、経済外交は政府の特に重きを置いているところでございます。貿易の拡大をもたらした要因の一つである世界経済の拡大傾向は、米国経済の繁栄を映じて、今後も持続するものと見られますが、他面、各市場における通商競争はますます激化の傾向にあると判断されるのであります。この間にあって、関係国と個別的に必要なる交渉を行うのほか、わが国が一般国際社会における公平平等な地位を回復するために、政府はこれまで最善の努力を尽して参ったのでございます。幸い、去る九月のガット加盟実現によって、今や、国際経済諸機関のすべてにおいて、日本は主要加盟国として活躍することができることと相なったのは、大なる進歩であると信じております。(拍手)
 わが国の希出が今後着実に伸びていくためには、相手国市場においてでき得る限り摩擦を生じないように一段の工夫が必要であって、そのため、わが商品と貿易のやり方について、国際的評価を高めるように各方面の努力がなお必要であると思うのであります。政府としては、ガット、国際通貨基金等の精神にのっとって、公正なる施策を進め、もってこれら諸国の危慎と疑惑とを除き、わが国に対する差別的待遇の留保を撤回せしめるよう鋭意交渉を進めておる次第でございます。
 なお、貿易自由化の動きにも対応し七、各国との通商交渉において積極的に貿易を拡大することに努力しておるのでありますが、特にわが国の主要市場であるスターリング地域との関係におきましては、過般の日英貿易取りきめにより、今後貿易は大いに増加せられることになりました。そのほか、対ドル地域貿易につきましても、最近わが国の輸出は著しい伸張を示しておるのであります。他方、東南アジア、中近東、中南米等、わが国にとり特に重要な関係にある諸国との間におきましても貿易は伸展を示しておりますが、さらに、これらの地域に対しては、経済開発に協力する方針のもとに、相互の親善関係を一そう増進すべく努力をいたしておる次第でございます。
 以上をもって私の国会に対する報告を終ることといたします。(拍手)
#7
○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
    午後一時三十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時二十七分開議
#8
○議長(益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑
#9
○議長(益谷秀次君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鈴木茂三郎君。
    〔鈴木茂三郎君登壇〕
#10
○鈴木茂三郎君 鳩山総理の所信に対しまして、日本社会党を代表して若干の質疑を行います。(拍手)
 この臨時国会は、革新と保守の二大政党の形態、形だけではありますが、形ができて、国民の民主政治に対する期待が大きくなっております今日、私どもの責任はきわめて重いと考えまして、私は、第二次から第三次への鳩山内閣の政権の授受と関連して、鳩山総理の議会政治と民主政治に対する信念をただし、次に、日本の自主独立を達成するための立場から、日ソ、日中の国交回復に関する総理の外交方針をたださんとするものであります。(拍手)
 第一の、議会政治と民主政治に関する総理の信念について、私は五つの問題をお尋ねしたい。
 第一点は、第二次鳩山内閣の総辞職の理由であります。わが党は、去る八月二十三日に、憲法第五十三条に基き、成規の手続によって、第二次鳩山内閣に臨時国会の早期開会を要求し、その後九月と十月に再び三たび政府に開会を督促しております。わが党の臨時国会開会の目的とするところは、国民の切実に要望しておる地方財政の窮乏とか、災害の復旧とか、当面の緊急な事態に対処するに必要な財政措置を織り込んだ補正予算や、行き詰まった日ソ交渉、中共関係や、日比賠償等の外交問題を妥結して推進するために、国会の審議を緊要と考えたからであります。しかるに、鳩山総理は、ここにようやく臨時国会を召集したにかかわらず、卒然として総辞職と首班の指名を行い、臨時国会の目的たる当面の緊急措置に関する方針、政策は何も示さないで、所信とはいえ、憲法改正とか、行政整理とか、税制の問題とか、国民がパンを求めておるときに、政府は砂をかませるようなお題目を与えておるのであります。(拍手)申すまでもなく、第二次鳩山内閣は、鳩山氏の私的な内閣ではないはずであります。二月の総選挙による国民の総意に基き、比較多数の少数党ながら、政権授受の民主的ルールに従って堂々と成立した第二次鳩山内閣でありますのに、どういう理由で総辞職したのか、国民にも国会にも何ら理由を示しておらない。つまり、第二次鳩山内閣は暗やみの中で消え去ったわけであります。責任内閣の民主政治の今日、内閣がやみからやみへ国民の前から消えてなくなったというようなことは、私は民主政治においてあるまじき奇怪なできごとであると思う。(拍手)鳩山総理の所見をただしたい。
 第二点は、総辞職の理由を鳩山総理がいかように理由づけられようとも、前回の第二十二回の特別国会において、第二次鳩山内閣は少数党内閣として国会を乗り切る能力がなかった。しかも、進んで国会を解散する気力もかかった。言いかえると、第二次鳩山内閣は、総選挙に当って国民に公約した政策の実行はできなかったのであります。総理は、本日、憲法の改正その他の、できそうにない三つの政策を御提案になっておる。これも例によって政策の空手形となることは明らかでございましょう。平和憲法を改正して軍国主義を復活せんとするような憲法改悪は、社会党が二大政党の対立物としてここに厳存する今日、断じてできないはずであります。(拍手)国民が期待しているのは、そういう雲かかすみか呉か越かといった、ぼうばくとした遠い将来の政策でなく、第二次鳩山内閣の古い公約を実行し、歳末を控えたきょうあすの緊急な措置に対する具体的な対策を国民は政府に要求しておるのであります。(拍手)従って、第二次鳩山内閣が総辞職した理由は、かように国会の運営と政策の実行の行き詰まりにあったことが、現実に照らして明々白々であるのであります。かかる場合、鳩山総理のとるべき当然の道は、総辞職をして野に下り、新たな総選挙を通じて、国民の審判を待って次の首班をきめるという政権授受の民主的ルールの道を選び、国民にその政治的責任を明らかにすべきであった。総理はこの点に関してどう考えられるか。
 第三点は、鳩山総理は、自由民主党ができて与党の基盤の変ったことを総辞職の理由としているようにも推測できる。確かに、総選挙によらないで、国会内における人為的な議員の集合によって与党の基盤に変更があったことは、その通りであります。しかしながら、自由党と民主党は、前回の選挙で、その方針も政策も全く対立した二つの政党として国民の審判を受けてきておる。(拍手)選挙後は引き続き与党と野党という対立の関係にありました。従って、よしんば合同したとしても、私は国会を解散して国民の審判を受けるのが当然であると思う。総理の所信をただしたい。(拍手)
 第四点のお尋ねは、政権授受の民主的ルールに関する問題でございます。ききに、第一次鳩山内閣の成立の当時、日本社会党から鳩山民主党総裁に、政権授受の民主的ルールは、国会を解散し、選挙による国民の審判の結果に基いて行うべきであると、かように提案したのに対して、鳩山総裁は、自分もその通りであると思う、社会党の提案はまさしく天の声として実行すると確約されておる。(拍手)こうして、初めて政権授受の民主的ルールができて成立したのが第二次鳩山内閣であったはずであります。鳩山総理は、さきには、こうした政権授受の民主的ルールを天の声として聞き、今回は、こうした天の声を聞こうともしないで、さきに作った民主的ルールを踏みにじったのはどういうわけであるか、承わりたいのであります。(拍手)
 第五点は、革新と保守の二大政党の形態の民主政治のあり方に関してであります。総理は、今回の形式的な二大政党の形を見て、あたかも英国型の民主政治ができたかのような印象をしいて国民に与えようとしているようである。しかし、私の信ずるところによれば、革新と保守の二大政党の対立を通じて民主主義の確立と建設的政策の行われる二大政党の本質的な意義は、政権が、保守から革新へ、あるいは革新から保守へ、与党から野党へ、あるいは野党から与党へと、人為的な作為なしに、政権がなめらかに受け渡されること、ここに二大政党の本質的な意義があると思うのであります。(拍手)英国において、野党たる反対党を予備的な政府といい、また陰の内閣というのはこれがためであって、かくてこそ二大政党の民主政治と言うことができるのであります。総理は、政権授受の二大政党の民主的なルールをじゅうりんして、そうして、みずから不明朗な政治的かけ引きによる保守合同を行い、保守派の陣営に政権を永久に独占しようとはかって、政権たらい回しを行った。(拍手)
 二大政党の本質に関しまして、以上総理の所見をただし、私は次に外交問題についてお尋ねをいたします。
 日ソ交渉の開催に先だって、重光外務大臣は、五月二十六日の議場の演説において、今回の交渉の目的は、日ソ両国の国交の正常化、すなわち、戦争状態を終結し、平和条約を締結し、もって国交を回復して外交使節を交換すること、これが目的であるとして、次いで平和条約の骨子となる諸条件を明らかにし、さらに、北海道所属の島々、千島、南樺太の領土問題その他の愚案についても、極力その解決に努力する所存なる趣旨を述べられております。これを要約すれば、政府の日ソ交渉の目的は、まず国交を正常化して外交使節を交換することが先決だということが明らかにされておるのであります。これは外相の演説がさように解釈できるだけではありません。総理が国民に今日まで与えてきた印象もそらくみ取られ、また、私もそう信ずべき根拠を持っている。総理の方針はこれと今日変りないと了解してよろしいか。
 次に、かかる方針によってロンドンで進められた日ソ交渉の経過を見ると、新しく取り上げられた南千島の問題が交渉の障害となっているようであります。この南千島の問題に関連して、さきに政府はアメリカ政府に何らかただされた。その回答が到着いたしました際に、鳩山総理は、南千島の返還はむずかしい、保守合同の実現する前に両党で話し合わなければならないとの、いわゆる鳩山発言なるものを、国民はきわめて重要な総理の発言として今日受け取っております。総理は今日なお当時と同一の意見と了解してよろしいか。私がここでかような総理にだめ押しのようなお尋ねをいたしますのは、今日まで鳩山総理と電光外相の間に外交の方針上重大な意見の相違のあるこどを私はよく知っているからであります。私は、日本の国際的地位を高め、外交交渉を有利に、また円満に解決するために、総理と外相の間の意見の相違を遺憾とし、憂慮いたして参ったものでございます。
 さらに日ソ交渉について一点お尋ねいたしたいことは、総理は、今日まで、日ソ交渉を保守合同の犠牲としないということ、並びに早期解決をはかるということを、国民に対してもしばしば表明されてきております。総理の言う早期解決とは、領土は一応歯舞、巴丹の線にとめ、本格的な領土問題とは直接に関連のない平和条約をまず早期に締結したいとの趣旨であると私は了解をいたしております。ところが、南千島の問題について、保守合同の実刑する前に話し合いたいと語り、話し回った上で保守合同をやったことは、明らかに日ソ交渉を保守合同の犠牲とし、さらに早期解決をおくらせた結果ともなり、国民を欺瞞したことになるのではないか。(拍手)総理の良識はこれをどう考えておるか。
 外交問題について次にお尋ねいたしたいことは、中国との国交を正常な状態に回復して貿易の伸張その他の諸懸案を解決したいとのさきの総選挙における鳩山総理の公約が今日いかようになっておるかという点であります。(拍手)私は、今日、外務大臣の報告を受け取りました。日本の隣の国の巨大な中国の問題に一言も触れておらない外交方針が何の役に立ちますか。日中両国の領事による会談は今日頓挫しておる。日中の関係は今日めんどうになっておる。総理も、また外相も、日中関係がめんどうになり、頓挫しておることは確認されておるところであります。私は、これは政府の重大な日中外交上の明らかな失態であると思う。こうした失態を、米ソの関係が悪化した、国際情勢が変化したという外的な条件だけで弁護しようということは許されない問題であります。しかも、重光外務大臣は、さきに、アメリカに出立されるに際して、アメリカより帰国後は中国に対して何らかの手を打ちたいということを、ある機会に明らかにされております。しかるに、外相は、アメリカから九月八日に帰国して以後、何ら外交の手を打っておらない。ただ手をこまぬいて、日中間の関係が次第にめんどうになることをながめているだけじゃありませんか。(拍手)これは鳩山総理も同じことである。最近日本を訪れたアメリカの国務次官フーヴァー氏に、総理は、日中間は、アメリカと違って、友好関係が日本のために必要であるとの日本の特殊な立場を説明されたやに私は承知いたしております。しかるに、総理もまた、中国に対して適切な措置をとるべく何ら努力されていないではないか。そういうことで、総理は日中の関係を今後どうしようというのか、明確な、しかも具体的な方針を承わりたいのであります。
 最後にお尋ねいたしたいことは、こう見てくると、総理も外相も日ソ、日中の外交その他日本のために必要と考えられる外交を何もやっておらないのでありますが、一体これはどうしたことか。何者かが総理や外相の外交の自由を制約しているのではないか。これは国民のだれでもが今日持ち続けてきた深い疑いであります。いや、今日では、もう疑いではない、外国の何者かが日本のための日本の外交を制約していると国民は信じて疑わない状態が現実となっているのであります。(拍手)私は、日本のための外交――中ソとの国交の正常な回復、東南アジア諸国とのアジアのための真の友好関係を樹立するためには、それを妨げるための日本の外交に対する他のあらゆる制約を排除しつつ、日ソ、日中その他日本を有利にする外交を強力に推進して、国際的日本の地位を高め、平和と安全の道を切り開いていくこと、私は、このことは、同時に日本の自主独立を達成し、完成する道と同じ一筋の道であると思うが、総理の所見はいかがでありましょうか。(拍手)
 また、これと関連して起っている、まことに慨嘆にたえない問題は、外国のために土地を取り上げられようとして、同じ日本民族が血で血を洗うような軍事基地拡張の問題のあることでございます。(拍手)政府は、防衛費の総額は前年度のワク内にとどめ、駐留軍の撤退を期するという国民への公約に反して、砂川だけではなく、原水爆基地や、オネスト・ジョンの発射のような重大な問題が今や全国的な問題となっております。総理は政府の首班として権力を持っている。警察力を握っている。従って、祖先伝来の土地を外国のために無慈悲に取り上げられようとしている国民に対して、総理の政府は強権をもって弾圧を加えることができましょう。しかし、強権や弾圧は民主政治ではありません。友愛政治ではありません。そういうことをしてだれが喜ぶと思いますか。総理。(拍手、発言する者あり)私は、総理は、外国を喜ばせるかわりに、土地を無慈悲に取り上げられる国民のために、外国に考え直してもらうこと、私は、これが政治である、これが外交であると思いますが、どうでありますか。自主独立の達成や完成は、言葉では言いやすく、行うことはむずかしいことであるに相違ないが、政府が国民のためにそれをやらないで、だれがやりますか。それを国民にやらせるような外国のための強権と弾圧の政治が引き続き行われる結果は、民主主義に反する重大な事態を引き起すことを私は総理が静かにお考えになることをお勧めして、私の質疑を終ります。(拍手)
    〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#11
○国務大臣(鳩山一郎君) 鈴木君の御質疑に対して答弁をいたします。
 総辞職をいたしました理由は、与党の基盤が変ったからであります。総辞職をいたすのを妥当と考えました。鈴木君の、政権の移動は総選挙によるべしとする民主的ルールについても、鈴木君の御意見には、私は原則としては賛成であります。むろん、チャーチルがイーデンに譲りましたような場合は、この原則の例外をしておりますが、原則としては鈴大君の意見に養成です。しかしながら、このたびのは政権の移動ではないのであります。この民主的ルールの適用は受けないと考えます。(拍手)このたびの第二次内閣が第三次内閣になったのが政権の移動でない限りは、政権たらい回しというあなたの御議論は適用はないのです。これは間違っております。(拍手)
 日ソの交渉につきましては、日ソの国交の正常化、すなわち、戦争状態終結確定の自体を作るということが日ソ交渉の目的であることは当然であります。日ソ交渉の目的が変更したということはございません。戦争のない状態にするのには、抑留者の帰還とか、あるいは領土の問題とか、占領されておる土地の返還とかいう問題は、この正常にするという問題の中に当然含まれているのでありまして、決して目的を変更したというわけではございません。(拍手)
 第三に、基地の拡張についての御意見がありましたが、これは安保条約の義務の履行をやるのでありまして、しこうしてまた日本防衛の必要上やるのでありまして、実施について国民を圧迫しないように、できるだけの骨折りをするということは当然なことであります。(拍手)
    〔国務大臣重光葵君登壇〕
#12
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。私に対する御質疑は、外交問題、日ソ交渉及び中共の問題であったと思います。
 日ソ交渉については、今鳩山総理からお答えした通りに初めからやっております。(拍手)私は、今言われたように、問題を解決せずして国交の回復だけをやるというようなことは、全く言ったことはございません。そして、それは初めから御存じの通りであります。それから、中共の問題について、しきりに中共に対して手を打てと言われる。何の手を打て……。(発言する者多く、議場騒然)おそらく中共を承認しろということであろうと思いますが、私は中共を承認することは日本の地位の上からできないということを申し上げておきます。
    〔発言する者多し〕
#13
○議長(益谷秀次君) 須磨彌吉郎君。
    〔須磨彌吉郎君登壇〕
#14
○須磨彌吉郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、鳩山総理大臣並びに重光外務大臣の御演説について若干のお尋ねをいたそうとするものであります。(拍手)
 まず第一に、二大政党制についてであります。二大政党制が確立され、この二大政党が政策を中心として国民の前に互いに相切瑳し、政権の円満な授受をなし得る道が開かれましたことは、国家のためまことに慶賀にたえないところでございます。(拍手)従いまして、この二大政党制の確立されましたことに対しては、世界各国が一種の尊敬の念を持って注視していることは、外電等の伝えるところでも明らかでございます。この時、この際、多数党の行うところを少数党がすなおに受け入れ、また多数決の決定には快く承服するという政治慣習が打ち立てられることによって初めて民主主義の円滑なる運用が実現されるといわなければなりません。このためには、多数党の政府も少数野党に対しましてでき得る限り寛容の精神をもって臨み、少数党の立場を十二分に尊重するの風を起さなければなりません。ここに、私は、このような寛容と理解の精神と、それぞれ責任を分つという覚悟とが二大政党の双方に盛り上ることこそが、暴力によるとか、集団威力によるような忌まわしき現象を国会から追放するゆえんであると信ずるのであります。(拍手)総理大臣におかれましても、この趣旨実現のためすでに確固たる御信念を有せられるものと信じますが、その所懐を承わりたいのでございます。
 第二は、憲法の問題でございます。わが国憲法は、占領初期のこんとんたる間に制定されましたため、憲法本来の目的たる民福と国運に資するためには万全を期しがたい点のありますことはもちろんでありますが、日本国及び国民の本来の要求にもそぐわない点が多々ありますことはまた当然でございます。また、この憲法は、国民の自由意思によったものでないから、わが国民の愛国心を抑圧し、また国権を過度に弱化分裂させる結果となっている点も少くない実情でございます。すなわち、自主的に憲法の改正に当られ、わが国を真の独立国家に立ち返らせる旨の総理大臣の御決意はもとより当然でありまして、これに対しては満腔の賛意と敬意を惜しまないものでありますが、他面、時局は、国際情勢の間断ない変化と相待ちまして、刻々に容易ならぬ様相を呈しているのが実情でありますから、この憲法の改正に当られるためには、綿密周到なる御計画を要することはもとよりでございます。ついては、総理におかれましては、いかなる順序と日程をお持ちになるものでございまするか、いかなる方向に改正を実現せられるおつもりでございますか、大体の御見当を承わりたいのでございます。(拍手)
 第三には、国民の思想問題についてでございます。静かに祖国の現状を思いまするのに、特にその民心の帰趨を考えますとき、まことに憂慮にたえぬものがございます。思うに、このことは、敗戦と初期占領政策の誤まりにもよりまして、民生が不安をきわめておりまする間に、国民の信頼と希望をつなぎ得る道義的目標が失われましたために、知らぬ間に、年少有為の国民に至るまで、ねらわれる子供たちという表現がちまたにあふれるほどにまで共産主義的方向に進むようになったことに起因することは、否定ができないのでございます。このことは、顧みれば、新憲法と同時に治安関係の法律などが取り除かれまして、実のところ、共産活動を有効に制止することが困難な実情にあるのでございます。自由民主党は、民主主義、自由、人権並びに国会政治の擁護を根本の理念といたしまして、独裁を企図する共産主義勢力はもちろん、階級的社会主義勢力とは徹底的に対決することを使命として生まれたのでございます。闘争と破壊の政治理念を排撃いたしまして、秩序と伝統の中に常に進歩を求めんとすることをもってわが立党の精神とすることは、今さら申し上げるまでもないことでございまするが、もし、従来のごとく、防共というお念仏のみにたよっておりまして、空手傍観をいたしますならば、ついにわが国民を救うべからざる不安の渕に陥れることも必然でございます。私は、ここにこの問題と真剣に取り組むことが政局安定の第一の題目であることを強調いたしまして、この点に関する政府の御決意のほどを概略なりとも承わりたいのでございます。(拍手)また、重光外務大臣におかれましても、国際関係の処理上、何らかこの点に関連いたしまする御意見もありまするならば、あわせて承わりたいのでございます。
 第四は、日本の外交政策についてでございます。そもそも、わが自由民主党は、その立党に当りまして、国際連合憲章の精神にのっとりまして、世界の平和と正義の確保並びに人類の進歩発展に最善の努力をささげることを決意いたしたのでございまするが、元来、わが外交の基調は、これを自由民主主義諸国との協力提携に置かれますことは、すでに総理大臣並びに外務大臣の御演説によっても明らかなところでございます。しかるに、さきに申し述べました共産主義的傾向の著しい伝播と相待ちまして、最近実に思わしからざる風潮がわが国内に蔓延しつつあることは、まことに憂慮にたえないところでございます。たとえば、日米安全保障条約並びに日米行政協定等の存在によって、アメリカ軍がわが国に駐留をいたし、また防衛に当りつつあることは周知のところでございます。しかるに、最近、あるいは基地の問題、あるいは飛行場拡張の問題等に関連して、小児病的な行動がようやく普遍的傾向になりつつあることは、まことに独立国家として憂慮にたえないものがあるのでございます。(拍手)民族感情はわれわれの最も崇高なるとりででありまして、これに立てこもりますことは、われわれといえども人後に落ちるものではございません。けれども、さりとて、理不尽な小児病的行動に付和雷同して、いたずらに不安の空気を醸成するがごときは、もちろん好ましからざるものであると思うのであります。思うに、この形勢を馴致いたしましたゆえんのものは、わが国の真の独立が、遺憾ながらいまだ完成をされておらないからでございます。日本の独立完成には駐留米国軍隊が逐次撤退されることでありまするが、このためには、防衛年次計画を樹立実行することが第一必要でございます。要するに、最近のかくのごとき風潮こそは、自由民主諸国との協力態勢を強化するために、一そう平和外交の積極的展開が必要であることをわれわれに悟らしめるものでございます。この意味におきまして、総理並びに外務大臣に対し、わが国内にいたずらなる不安をかももさせないためにも、この際進んで自由民主諸国との協力態勢を一そう強化するの挙に出られることが必要ではないかとお尋ねをいたしたいのでございまするが、これに対する御覚悟を承わりたいものでございます。(拍手)
 第五は、日ソ交渉についてでございます。六月一日以来ロンドンにおいて進展中の交渉は、総理大臣並びに外務大臣の熱心なる御推進によりまして、漸次進展を見つつあることは、御同慶にたえないところでございます。従いまして、自由民主党が新たに決定をいたしました緊急対策などに基いて、国交回復の実を見るまでにはなお幾多の上曲折はあろうけれども、隠忍自重、あくまでその所期の目的を達成せられんことは、われわれの切望してやまないところでございます。(拍手)ただ、ここに、これに関連いたしまして御信念を承わりおきたいことが二つございます。一つは、すでに外務大臣もお述べになっておられるところでございまするが、この交渉にまつわる国民世論の趨勢についてでございます。問題が重大なだけに、国論のおもむくところまた重土役すべきものがありまして、この点については、今後とも政府において特に御留意願いたいことがその一つでございます。いま一つは、日ソ交渉に関連して、ひとりソ連邦のみならず、世界全般に対しましてわが日本が訴えたいことがあるのでございます。それは、日本の平和を提唱いたしまするゆえんというものは、単に未締約国であるソ連邦と国交を結ぶというだけではございません。二十世紀になって二度までも世界大戦を体験した世界人類の真剣な願いにも通ずるものでありまして、また、この平和を提唱しますることが、日本に課せられました崇高なる使命であるという趣旨を、交渉に当って世界に宣明していただきたいのでございます。(拍手)特に、私は、人類の平等、領土の不拡大、民族自決の原則こそは、大西洋憲章、国連憲章等を貫く大精神でありまして、この根本原則が貫かれてこそ初めて世界の恒久平和が保障せらるるものでございますることを徹底せしめまするならば、自然と、ソ連邦に対しましても、領土問題等についてわが方の主張を認めるようにしむけることは決して至難ではないと思うのであります。(拍手)
 第六に私の申し上げたいのは、原子力科学のもたらしました産業革命についてでございます。今や、科学技術の発達は、原子力の応用によりまして、いわゆる第二次産業革命という新時代を画しまして、これにのっとらなければ経済自立の達成も万全を期し得ない実情にあることは御承知の通りでございます。この点にかんがみまして、原子力の平和利用を中軸といたしまする産業構造の変革に備え、科学技術の振興に格別の措置を講ずることは、わが自由民主党の政綱の明示するところでございます。政府はすでにアメリカとの間に濃縮ウラン借り入れに関する協定の調印を下せられた趣きでございまするが、さらに一歩を進めて、その批准を急がれるのみならず、これを機会といたしまして、原子力平和利用に基くわが国の外交を強力に推進せられるもくろみはないでございましょうか。ことに、原子力平和利用の責任の地位にありまする重光外務大臣はもとより、高碕経済企画庁長官からも、この点に関する御所見を承わりたいのでございます。
 第七には、国連加入の問題についてでございます。先ほど外務大臣の御報告の中にはございませんでしたが、わが国の外交が平和外交を積極的に展開することにあることは、今さら申し上げるまでもないことでございます。その中心的原則は国際連合憲章にのっとらんとするものでございまして、さきにバンドンの会議にわが国が臨むに当りましても、わが政府がすべて国連憲章の精神によることを示されたことは、つとに世界の注目するところであったのでございます。すなわち、このことは、わが国がサンフランシスコ平和条約発効直後、国会全会一致の承認を得まして国際連合に加入の申請をしているのでございます。自来、政府におかれましては、この加入実現のために、あるいはニューヨークにおいて、あるいはジュネーヴにおいて、百方意を用いられましたことは大いに多とするところでございまするが、最近伝うるところによりますると、その実現のまぎわになって何らかの障害に逢会しているやに承知するのでございます。その真相についてお示しを願いたいのでございます。
 最後に、極東におきまするわが国の地位についてでございます。七月十九日、世界周遊の旅から帰りましたインドのネール首相が、ニューデリーで記者団に対しまして、極東の情勢は爆発的な危機にあると言ったことは、まことに注目すべきものがございます。というのは、台湾をめぐる情勢におきましても、朝鮮における事態につきましても、またヴェトナムにおける実情によりましても、極東の物情が決して安定をしているものとは言われません。世界は、七月十八日の巨頭会談以来、平和の方向に一歩を踏み出しかけたことは事実でございましょうけれども、ただいま述べました極東における三地点はもとより、中東、近東における最近の形勢、さらにはまた東西両ドイツの実情等に見ましても、いずれも今もなお冷厳なる事実として残っておりまする東西両陣営の相剋点といたしまして、われわれはこれに無関心であることはできないのでございます。(拍手)しかも、これらの相剋点は、いわば氷山の一角とも言うことができましょう。アメリカといたしましても、資本主義の存続と発展を企図して、ゆるぎない歩みを続けるでありましょうし、他方また共産主義国家群は、共産主義世界的伝播の歩みをゆるめようともしないことは事実でございましょう。それどころか、米ソ両国のアジア政策の相剋点が今のままで進みまするならば、われわれは、日本の平和外交政策を、それこそこの際積極的に推進するために、いま一段の確固たる決意を固めなければならぬことに気づくものでございます。ここに、私は、わが日本が東南アジアとの通商、東南アジアとの交通等をさらに一段と進展せしめまするためにも、一日もすみやかに極東における平和的進出について組織的な計画をなすべきだと思うのでございます。このことは、過般のジュネーヴ会議より、一そうあれよりも大規模でございました十億以上の人口を背景とする二十九カ国のアジア、アラブのバンドン会議が、あの御承知のごとき国連の原則にのっとった平和十原則を採用している新事実にも呼応いたしまして、アジアの平和のためにわが国の努力ナベき具体策を決定する時期がまさに今来ておることを思わしめるものでございます。結局、これを換言いたしまするならば、東亜の安定勢力たるの実をあぐるため、日本はこの際いかなる具体的な平和政策の樹立が至当であるかということにつきまして、政府においては意を尽しておられると思いまするから、概略なりともその具体的方策を承わりたいのでございます。
 以上の諸点の多くは、敗戦、それに焼いた占領政策、内外にはびこりつつありました共産党の行なっている革命的工作などのかもしている容易ならない事態に関連するものでございまするから、もちろん解決は至難ではあろうけれども、新しい二大政党の体制のもと、人心の機微をつかんで政治の信頼を博するには、このときほどいいときはないと思うのでございます。(拍手)われわれは、二大政党ともに相目ざめ、相携えて、わが国の発展のために尽すべきときが来たと思うのでございまするから、総理大臣並びに諸大臣の隔意なき御答弁を以上の諸点に対して伺いたいことを申し上げまして、私の質問を終らんとするものでございます。(拍手)
    〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
#15
○国務大臣(鳩山一郎君) 須磨君の御質疑に対してお答えをいたします。
 須磨君には、二大政党ができたが、しかしながら、もしもその間に寛容の精神を持っていなかったならば、二大政党だけで民主政治がうまくいくものとは思えないというような御質疑であったと思います。須磨君の御意見は私も最も同感するところでございます。(拍手)元来、民主政治というものは、自分の人格の尊厳と自由とを尊重すると同時に、他人の人格と他人の自由を尊重しなければ成立するものではないのでありますから、お互いに人格と自由とを尊重し合うということは、すなわち寛容の精神を持つこと、あるいはこれを友愛の精神と言うかもしれませんが、そういう精神がなくして民主政治をよくできると考えるのは、これは木によって魚を求むるがごときものであります。全くあなたの御意見に賛成であります。(拍手)
 それから、憲法の改正については、憲法調査会を近く設定いたしまして、各界の意見を聞きまして、慎重に憲法改正の道を進めていきたいと考えております。
 第三に、共産主義に対して非常に御心配になっておるお話でございました。私も、共産主義に対しては、どうかしてこの共産主義がびまんすることを防ぐには、よほど慎重の態度と勇気とを持っていかなくてはならないと確信しております。共産主義というものは、元来、自由主義に全然反対で、これは奴隷が好きなんです。自由がきらいで、奴隷が好きなんです。(拍手)そうして、民主政治はきらいで、専制政治が好きなんでありますから、奴隷主義を絶滅しなければ民主政治というものがよくいかないことは当然であります。これに対して留意をしなくてはならないという須磨君の御意見に大賛成でございます。(拍手)
 外交の政策については、重光君その他から答弁をしてもらいます。(拍手)
    〔国務大臣重光葵君登壇〕
#16
○国務大臣(重光葵君) 御質問の点で私の外交報告になかった点からお答えをいたします。それは国際連合加入の問題でございます。国際連合加入の問題は、サンフランシスコ平和条約発効直後、この国会の全会一致の承認を得て、昭和二十七年六月、国際連合に申請をいたしております。同時に、友邦諸国に対し、これを支持するよう要請してきたのでございます。「しかるに、わが国の加盟申請は、国際連合加盟国間の意見の対立のために、実を結ぶに至りませんでした。行き詰まりの状態にあったことは御承知の通りでございますが、今回、この問題が、カナダ政府の提唱する十八カ国一括加入という形の提案が出ました。これを契機といたしまして、国際連合で取り上げられることになりました。これに対しては、日本の加入は、関係各国のひとしく支持するところであって、世界のこれが世論となっておるといってもさしつかえのないことは、われわれの喜びとするところでございます。そして、特にわが国の友邦諸国は、日本の加入を実現するために非常に援助をいたしてくれております。ところが、この加入問題が、外蒙古の加入の問題と一括されております。十八カ国一括の提案というものは、外蒙古も入っております。それで、外蒙古加入に反対を表示する国の態度によって、日本の加入があるいは阻止されるかもしれぬというような状況に立ち至っております。目下その障害となっておる外蒙古の加入に対して非常に反対の態度をとっておるのは、御承知の通りに国民政府の態度でございますが、国民政府といえども、東アの大国にかんがみて、わが国をこの国連に加入せしめることを阻止するような結果となることは、必ずや手控えをするであろうと想像されるのでございます。もしそういう故障がなくなりますれば、わが国の連盟加入の問題は、ここ一、二週間の間に決定されるような状況でございます。
 以上、私は御報告申します。この加入に対しては、国会の御趣旨によって申請をしたことであるのであります。外交機関は全力をあげてその実現に努力いたしておる次第でございます。
 さて、その次の日ソ交渉の問題について、よく世論の趨勢を見てやらなければいかぬということが第一点でございました。私もそう思います。国論の帰趨をよく見定めつつ交渉に従事しなければならぬ、こう考えておるのであります。なお、交渉に当っては、国際連合憲章の精神、それのよってきたる大西洋憲章の精神等を十分に主張して、領土問題についてもわが立場を明らかにすることがよかろうという御趣旨に至っては、これまた私も当然御賛成を申し上げる次第でございます。いずれにいたしましても、わが主張はきわめて公正であり妥当なものであるという確信のもとに、この主張を続け、かつまた交渉を進めていく考えでございます。(拍手)
 なお、原子力の問題についてお話がございました。原子力協定が今回議会の承認を得るために提出されることになっております。原子力の国際的協力は非常に重要でございます。特に国際連合を中心としておる原子力の平和利用の問題については、国際的に各国とも非常に熱心に努力をいたしておるわけであります。日本もむろんこれにおくれないように参加をいたしまして進んでいきたいと考えておる次第でございます。
 さらに、自由民主主義国との協力を強化しなければならぬというお考えが弟一点にございました。これはその通りに考えております。そうして、基地問題その他は、みなこれは条約上の義務に関係を持っておるのであります。むろん、その利害関係を持っておる各個人の気持及び利害問題は、十分にこれは考慮しなければならぬと私は思います。そうして、十分に納得を得るような努力をしなければならぬと思いますが、しかし、国際問題から申しますれば、条約の尊重ということは、これまた国の信用をかけた問題でありますから、最も重要な問題と考えておる次第でございます。
 極東の情勢について御意見の御発表がございました。私も、外交報告において、ヨーロッパは勢力の均衡のために相当動揺を免れておるけれども、その他のところはどらも不安であると申しておきましたが、東アの方面の情勢は決して安定と申すわけには参りません。これは流動的と申してもいいかと思います。それに対して外交手段を講じなければならぬことは当然のことであります。日本は、有力なる東アの一国でありますから、従来の平和外交を推進して東アの安定に資するように、あらゆる努力をしなければならぬということは当然でございます。そのために施策を一々講じつつあるわけでございます。
 以上をもって御質問にお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣清瀬一郎君登壇〕
#17
○国務大臣(清瀬一郎君) 須磨君は、国民の道義、わけても青少年の教養につき御質問されたのでございます。
 国民道義の確立は、申すまでもなく、国家再建の第一の条件でございます。わけても、青少年は国家再建の原動力でございます。それゆえに、その教養については、国の将来を決するものとして非常なる注意を払っております。このために、今後、青少年の教育は、学校教育及び社会教育を通じて、健全なる国民として道義心の涵養と自主的判断の養成に留意をするつもりでございます。
 学校教育につきましては、現に、社会科において、道徳的判断の養成と郷土及び国家の一員としての自覚を涵養せしめるようにいたしております。また、高等学校には新たに社会科を設けまして、そのうちに倫理についての考察力を養うことといたしております。他面、いやしくも学校が一党一派の主義主張の場とならないように、教育の中立性を保ちたいと思っております。(拍手)
 これをもってお答えといたします。
    〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
#18
○国務大臣(高碕達之助君) 原子力の平和利用につきましてお答え申し上げます。
 原子力平和利用は、近年急速の進歩をいたしまして、ここ十年を出ずしてこれが経済的に利用されるというふうな見込みがついておるのであります。エネルギー資源に恵まれないわが国と、いたしましては、これを一日も早く取り入れるということは国民生活上最も必要と存じます、つきましては、政治といたしましては、まず第一に、これらに対する人材の養成、第二に、基本的な研究を充実する、第三に、研究の自由を束縛されない範囲において外国の技術を一日も早く取り入れる。こり三つの原則のもとに、財政の許します範囲において、なるべく急速にこの行政機構等も拡充いたしたいと考えておる次第でございます。以上でお答えといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#19
○長谷川四郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#20
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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