くにさくロゴ
1955/12/14 第23回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第023回国会 本会議 第9号
姉妹サイト
 
1955/12/14 第23回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第023回国会 本会議 第9号

#1
第023回国会 本会議 第9号
昭和三十年十二月十四日(水曜日)
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第九号
  昭和三十年十二月十四日
    午後一時開議
 第一 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 原子力委員会設置法案(内閣提出)
 第三 原子力基本法案(中曽根康弘君外四百二十一名提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
●本日の会議に付した案件
 文化財保護委員会委員任命につき同意を求めるの件
 日韓問題に関する決議案(岸信介君外六十八名提出)
 日程第一 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 原子力委員会設置法案(内閣提出)
 日程第三 原子力基本法案(中曽根康弘君外四百二十一名提出)
 原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
    午後二時二十九分開議
#2
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、文化財保護委員会委員に川北禎一君及び細川護立君を任命するため、文化財保護法第九条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日韓問題に関する決議案(岸信介君外六十八名提出)
     (委員会審査省略要求案件)
#5
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、岸信介君外六十八名提出、日韓問題に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#6
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 日韓問題に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。周東英雄君。
    〔周東英雄君登壇〕
#8
○周東英雄君 私は、自由民主党及び日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました日韓問題に関する決議案の趣旨弁明を行わんとするものであります。
 まず、決議案を朗読いたします。
  日韓問題に関する決議案
  政府は、日韓関係の現況にかんがみ、両民族永遠の融和を期するため、この際新たなる決意をもつて、韓国政府の深甚なる理解と反省を促し、あらゆる方途を講じて、速かにこれを根本的解決を図るべきである。
  特に当面する漁業問題については、公海自由の原則に基き、公海における漁船の安全操業を確保する措置を講ずべきである。
 右決議する。
  〔拍手〕
 本決議案が自由民主党及び日本社会党の共同提案として上程せられましたことは、党派を越えて同様にこの問題の重要性を認識し、国会全体の意思を強く内外に表明せんとする現われにほかならないものであります。(拍手)
 申すまでもなく、日本と韓国とは、一衣帯水の隣国であり、ともに自由主義国家群の一員として最も善隣友好の関係にあるべき間柄であります。しかるに、昭和二十七年一月、韓国は、突如として、国際慣例を無視し、韓国の海岸を遠く離れた公海にいわゆる李承晩ラインなるものを設定いたし、同海域内における日本漁船の操業を禁止し、漁船の拿捕、乗組員の抑留を始めたのでありまして、今日まで拿捕された漁船及び乗組員の総数は約二百九隻、二千七百二十三人に及んでおるのであります。十二月一日現在におきまして、なお抑留されたままいまだ帰還せないものが、右のうち漁船百九隻、乗組員六百五十一人の多数に上っておるのであります。御承知のごとく、李承晩ライン内の海域で漁業をいたしておりますわが国漁船の数は大よそ二千五百隻、これに従事する漁業者は約四万人であります。その家族を合すれば大よそ二十万人に及ぶ漁業者が、この海域で漁業を営み、その生計を立てておるのであります。さらに、これら漁業者を相手に取引し生計を立てておるものの数を加えますれば、約四十万人にも上る大衆の生活がこの李承晩ラインの問題につながっておるのであります。もし日韓関係が現状のまま推移いたしますならば、わが国漁業者は、ついに働く場所を失い、生活はいよいよ窮迫の極に追い込まれるのみならず、年間の水揚高約二十三万トン、百三十億円に上る莫大なる国の利益を失うこととなるのでありまして、われわれの断じて容認することのできないことであります。(拍手)同時に、かくのごとき状態は、日韓両国の民族感情をますます悪化いたしまして、将来極東平和のためにも取り返しのつかぬ禍根を残すおそれがあるのであります。
 政府においても、前内閣以来、真に隠忍自重、この不合理なる李承晩ラインの撤廃と、その他日韓問題解決のために懸命の努力をなされたことは認めますけれども、不幸にしていまだ何ら解決の曙光さえも見出すに至っておらないことは、まことに遺憾千万といわなければならぬのであります。
 しかるに、韓国は、最近重ねて暴虐なる漁船撃沈の声明を出したのであります。西日本漁業者を初め、国民の憤激がその極に達したことは当然のことであります。彼ら漁業者は、国の方針に従って平和裏におとなしく漁業に従事しているにかかわらず、拿捕され、抑留され、ついには撃沈されねばならないのであります。これに対して保護の道さえないのかというのが、漁業者と国民一般の声であります。
 事ここに至って、日韓関係を、このまま、じんぜん日をむなしくしていくことは許されないのであります。政府は、すみやかに抑留漁船及び乗組員の帰還と留守遺家族に対する措置を講ずるとともに、この際、決意を新たにして、日韓問題解決に対する基本的態度を決定し、一面大いに国際世論を喚起するとともに、韓国に対しても深甚なる理解と反省を求めつつ、急速に日韓会談を再開して、これが解決を積極的に推進せられたいのであります。同時に、これと並行して、漁業問題につきましては、盛漁期を控えた今日、安全操業を確保し得るように、これが保護につき万全を期する措置を講ぜられんことを希望いたす次第であります。
 以上、本決議案提出の趣旨を述べたのでありますが、何とぞ満場一致御賛成あらんことをお願いいたす次第であります。(拍手)
#9
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。田口長治郎君。
    〔田口長治郎君登壇〕
#10
○田口長治郎君 私は、ただいま議題となりました日韓問題に関する決議案に対し、自由民主党を代表いたしまして賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)
 わが国と韓国とは、地理的にきわめて接近をしております。長崎県の北端である対馬に参りますと、晴天の日には肉眼で韓国の山々がはっきり見える。さような隣接国であるのであります。人類の歴史は、近接する両国民族が利害と感情を調整いたしまして、互いに協力して善隣友好である場合には、ともに栄えておりますが、これに相反する場合におきましては、相ともに衰亡を来たしておることを教えておるのであります。かかる見地からいたしまして、私は、日韓両国は、いかなる事情がありましても、万難を排して両民族の永遠の融和をはからなければならない、かように考えておるものであります。(拍手)しかるに、私どもが遺憾にたえないことは、戦後十年にして、両国間にいまだ正常なる国交が結ばれす、いろいろの問題が未解決のまま放置されておる事実であります。漁業問題は、その最高最大なるものと考えるのでございます。
 そもそも、日韓漁業紛争の問題は、昭和二十七年一月十九日、突如として李承晩大統領が海洋主権宣言なるものを発しまして、朝鮮半島周辺の公海を、日本の領土竹島まで含む広大なる海域に一線を画しまして、国家の主権を行使させるという、いわゆる李承晩ラインなるものを設定いたしました。しかして、日本漁船の操業を禁止したことに事が始まっておるのであります。日本政府は、直ちに、この不当なる措置に抗議をし、反省を求め、その撤回を叫んだのでありますが、韓国政府は、ごうもその態度を改めようとせず、多くの漁船の拿捕、抑留を繰り返しまして、ついに、本年十一月十七日に至りまして、韓国の砲撃声明によりまして、最悪の事態さえ憂慮せられるに至りましたことは、両国のために、まことに遺憾とする次第でございます。
 私がここに立っておる間におきましても、わが漁業者は、あの朝鮮海域の荒波の上で、韓国艦艇に迫撃をされ、機関銃で掃射を受け、われ怪船との距離五十メートルという最後の無電を発しまして、そのままついに音信を断って帰らないような状態を繰り返しておるような次第でありまして、出航の際、無事に帰ることを念願して波止場に送りました家族が、その拿捕された情報を聞いて狂乱する姿を見ましては、全く涙なきを得ないのであります。かくのごとくして、今日まで韓国に拿捕されました漁船が二百八隻、抑留された船員が二千七百二十三名に達しておるのでありまして、いまだ帰らない船員が六百五十一名、未帰還漁船が百九隻を算しておるのであります。
 この状態からいたしまして、国民の一部には、火事の中に進んで飛び込んでいかなくてもいいじゃないか、漁業者のやることがどうもわからない、かような議論をする人もあります。しかし、漁業を実際に知らない人でございますから、はなはだもっともな議論のように聞えるのでありますけれども、日本といたしましては、いかなることがありましても、その漁場を放棄することはできないのであります。
 その理由の第一としまして、この漁場は、西日本一体の各府県から二千五百そうも出て仕事をしております。この乗組員の数は四万人を数えるのでございまして、この点から、家族ともに約二十万人のものがこの漁場で生活をしておるのでございます。さらに、この漁場に関連をしておりますところのいわゆる製氷事業であるとか、あるいは冷凍事業であるとか、加工業であるとか、製カン業であるとか、漁網工場だとか、かようなものを考えてみますと、この漁場を放棄した場合におきましては壊滅的の打撃をこうむりまして、さらに、これら漁船の根拠地である西日本各地の現地経済にも強く響くのでございまして、その依存度の高い都市では極度の逼迫を招来いたしますことは、あの二十八年の大量拿捕のときにおきまして、下関その他の西日本の都市がほとんど火が消えたような状態になりまして、経済は麻痺してしまった。この事実によりまして、はっきりとわれわれは知ることができると思うのであります。従って、私は、多数国民の生活の根源であり、また関係都市の立場からいたしまして、この漁場はどうしても放棄のできない漁場と考えるのであります。
 第二に、私は、国民食糧の観点から、この漁場は一日でも放棄してはいけないと思っておるものでございます。わが国は、最近畜産業が相当発達いたしましたけれども、地理的関係からいたしまして、われわれの保健食糧である蛋白質は、どうしても魚からとらなければなりません。これを数字的に申しますと、今日は八〇%の蛋白質を魚からわれわれはとっておる。われわれはこの保健食糧を確保いたしますために、北は北氷洋から南は南氷洋、東はハワイ近方、西はインド洋まで日本の漁船は活躍しておるのでございますが、これらの広範囲におきまして漁獲いたします総量の約一割程度がこの漁場で確保されておるのでございます。さなきだに蛋白、脂肪の摂取の少い日本人にこの漁場を放棄せよということは、日本国民全体を栄養不良に陥らしめることでございまして、これは、そろばんの問題でなしに、ほんとうに人道上の問題であると私は考える次第でございます。ことに、西日本の主要都市は、季節によりまして多少違いますけれども、大よそ五〇%の魚をこの漁場に求めておるのでございます。かかる観点からいたしまして、私は、国民食糧、この点から、この漁場を放棄してはいけない、かように考えておるものでございます。(拍手)
 第三に、私は、正義を貫くためにも、この漁場はどうしても守らなければならぬと考えるものであります。すなわち、われわれは、国際法上の原則とその慣例による公海自由の原則は、いかなることがありましても厳守しなければならぬと考えるものであります。国もまた、個人と同じく、正義に対しては強くなければならぬと思う次第であります。両国間の漁業紛争の問題は、特に韓国の一方的横車にすぎないことは、世界各国の良識の認むるところでありまして、正義を貫くためにも、かかることは断じて許されないことでございます。万一、日本が、韓国のこの圧迫に屈し、一時的にも漁場を放棄することがありますれば、韓国は、既定事実といたしまして、これを自分の海にし、このことは、ひいて、中共も、豪州も、フィリピンも、その他の国も、その例にならいまして、海に生きなければならぬ日本は世界の各海域から締め出しを食う結果を招来すると考えるのでございます。私は、以上の理由によりまして、この漁場は、いかなる事態が起りましても、日本としては放棄のできないものであり、また放棄するものでないということを、国会を通じて国内及び国外にはっきりとしておく次第でございます。(拍手)
 さらに、一そう重要なことは、抑留船員の六百五十一名の処遇の問題であります。これらの抑留船員は、昨年七月以降拿捕抑留されたものでありまするが、それ以前の抑留者は、最高三カ月程度で、特赦によってほとんど帰っておりまして、その後の部分だけが、一年半にもなりますけれども、まだいつ帰れるか全く見当がつかない不安な状態に置かれておるのであります。しかも、このうちには、未成年者及び刑を終えて釈放されておる者が二百六十人もおるのであります。この罪のない者がいつまでも抑留せられるに至りましては、このことは全く言語道断でございまして、天人ともに許すことのできないことと考えるのであります。(拍手)
 しかも、今日まで帰還した者の話を聞きますと、日本人収容所は、バラック建、無電灯、板の間八畳に二十人ないし二十一人を収容しておる。主食は、丸麦に大豆、それに形ばかりの米、副食物は塩汁に梅ぼし一個、かような実情でございまして、収容されておる者は極度の栄養失調に陥っておるのでございます。病人が出ましても医療の手続は講ぜられず、お前たちは死んでも仕方がないのだと放言されておるような状態でございまして、厳寒に向うこの冬を考えますときに、まことに暗たんたるものがある次第でございます。この冬生命の保持ができない者が出るようになりますれば、われわれは国民に対して相済まぬと思うのでございます。
 これに反しまして、韓国密入国者を収容しておりますところのわが大村収容所はいかがでございましょうか。建物はコンクリート二階建、採光、通風に留意された十畳敷に十人ずつを収容しており、各部屋には洗面所、水洗便所がおのおのついており、共同洗たく場、浴場、病棟はもちろん、娯楽室にはピンポン、碁、将棋、図書、野球、バレーボール等の用具が完備いたしまして、子供用といたしましてはブランコ、すべり台、砂場があります。食事は、特に韓国人の嗜好を勘案いたしまして、一日一人原料代だけで七十五円ないし八十円、これでは日本人の中流以上の生活ではありませんか。
 これに対しまして、正当に仕事をしておる日本の船員が不法に拿捕抑留され、父や兄をとられた留守家族は一家の支柱を失って、家には女と年寄りと子供と、それだけを残して路頭に迷うておる。漁船乗組員給与保険の制度はありますが、四年にわたる職場を失った漁業者には、その制度のあることは知っておりますけれども、保険料を持っていないため、また保険料が高いために加入していない者が、六百五十一名のうちで百七十七人もあります。加入しておる者も、ごくわずかの金額の加入でございまして、家の支柱を失ってはとうてい生活をささえることができない者が多数にあるのであります。先日の農林水産委員会に参考人として呼びました留守家族の一婦人は、ちり紙を買う金もなくなりました、どうか助けて下さい、かように訴えておるのでございます。全く悲惨そのものであります。
 一方においては、在日韓国人七十万人のために、われわれは国民の血税を多額に支出しております。生活保護費に十九億七千万円、失業対策費に三億六千万円、小中学校教育費に八億三千万円、救らい費に五千万円、刑務所費に二億一千万円、計三十四億二千万円を支払っておるのであります。
    〔「簡単々々」と呼び、その他発言する者あり〕
#11
○議長(益谷秀次君) 静粛に願います。
#12
○田口長治郎君(続) 私は、韓国における抑留者の処遇につきましては、われわれの手が届かなかった点もありますけれども、密入国した韓国人が中流以上の生活を楽しみ、また在日韓国人のため三十四億二千万円も支出いたしまして、日本人が、食糧増産のため、あるいは国策のために、しかも不法に拿捕せられましたその留守家族の日本人が、日本において路頭に迷わなければならぬことに対しましては、どうしても理屈もわかりませんし、気持も割り切れない、むしろ義憤に燃えておる一人でございます。
 私は、あれを思い、これを思い――大よそ、日韓間の懸案といたしましては、基本問題である財産請求権、朝鮮人の処遇、船舶等の諸問題がありますが、これらはいずれも戦争処理の問題であるばかりでなく、現在日韓間には正常なる国交関係はありませんが、政治的にも経済的にも相当交流が行われておる。従って、このまま放置されて困るのはひとり日本の漁業者のみで、……
    〔発言する者多し〕
#13
○議長(益谷秀次君) 田口君、簡単に願います。
#14
○田口長治郎君(続) 日韓双方とも、特に韓国側ほとんど痛痒を感じないありさまで、わが国民一般の関心もきわめて低いのではないかと思うのであります。日韓問題は、あげて日本の漁業者にしわ寄せされておる現状であり、ここに問題の根本的解決をはばむ最大の原因があると思うのであります。しかしながら、この人道問題と日本の存亡に関する問題を漁場の片すみのできごととして黙視することは断じて許されないのでありまして、これこそ何といたしましても解決をしなければならぬ緊急要務でなければならぬと考えるのであります。政府は、あらためて再認識し、急速に抑留船員、漁船の即時返還を実現するとともに、被災漁業者及び留守家族に対する援護に万全を期するとともに、新たなる決意をもって国際世論に訴え、あらゆる外交上の措置を講じて日韓問題の根本的解決をはかるべきであります。特に、当面する漁業問題につきましては、必要に応じ海上自衛行動をもあわせ考慮し、もって公海における漁船の安全操業を確保すべきであります。
 私は、以上の観点からいたしまして、ただいま上程されておる決議案に賛成の意を表する次第でございます。(拍手)
#15
○議長(益谷秀次君) 赤路友藏君。
    〔赤路友藏君登壇〕
#16
○赤路友藏君 私は、日本社会党を代表いたしましてただいま上程に相なりました日韓問題に関する決議案に賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)
 李承晩政権の国際慣行を無視したる李ラインの設定は、わが国はもちろん、世界いずれの国々においても、これを認めらるべきではないということは当然でございましょう。その当然過ぎるほど自明のことであるこれらのことをあえておおい隠し、平和ラインと称し、あまつさえ、これを侵すものは砲撃、撃沈上るとの声明を発し、その無謀をはばからないことはどこに起因するか、このことが一応分明になされなければならないと存じます。
 昭和二十四年八月十五日、当時連合国側によってマッカーサー・ラインが設定され、昭和二十七年一月十九日、李承晩ラインの宣言がなされました。同年四月二十八日、御承知の通り、マ・ラインは廃止されたのであります。ところが、越えて同年九月二十七日、再び、アメリカ政府によって、防衛線と称してクラーク・ラインなるものが設定されたことは、御承知の通りであります。このクラーク・ラインの設定が、李承晩をして、季ラインは韓国の防衛線である、あるいは平和線であるとの意思を固持せしめる一大支柱となったことは、いなめない事実でございましょう。これらの経緯より本問題を考えて参りました場合、アメリカ政府の本問題に対してとるべき態度はおのずから生まれてこなければならないはずでございます。(拍手)日本政府の要望のいかんにかかわらず、当然のこととして、アメリカ政府の責任においてでも解決さるべき問題であると私は考えるのであります。従って、アメリカ政府の今日までの態度は当然批判に値するものであると思う。このことは、ひとり私だけでなく、日本国民すべての共感を得るところであると私は確信をする。
 なぜかなれば、私がただいま申し上げたことだけではない。今次国会において鳩山首相も言われた通り、日本政府は日米安全保障条約並びに日米行政協定なるものの義務の履行にまことに忠実である。全国七百数十カ所の軍事基地、演習場の設営を認め、これに協力をし、数十万の農漁民の生活の根源を失わしめ、最近、砂川基地拡大に当っては、国民を守るべきはずの警察隊を出動せしめ、ついに日本人同士が血を流すの惨事を引き起しておる。これが日米安全保障条約並びに日米行政協定の義務履行に忠実たるための、現実に現われた日本のむざんなる姿ではないでしょうか。日本が真に独立しているなれば、アメリカに一片の道義心があるなれば、すでに本問題は解決を見ていなければならないはずである。過去三年有余、吉田内閣より鳩山第三次内閣に至る間、本問題処理の態度を見てみますと、自主性がないだけではない。事務的折衝以外に一歩も出ていないのであります。国民がどれほど訴えても、いかなる事態が起っても、出先機関との折衝以外には出ておりません。なぜ李承晩と直接話をするということをしないのか。閣僚の中から一人ぐらいはそんな熱意のある人がありそうなものだと私は思う。
 皆さん、本日国会をあげて決議をしようとするこの重大な問題に対して閣僚の出席はりょうりょうたるものでございましょう。政府の熱意のいかんが疑われる。武力行使では絶対に解決はつきません。それは混乱を助長するにしかすぎないのであります。アメリカもまた頼むに足らずとするならば、直接交渉以外に一体何が残されておるか。国会があえて本問題に対して決議をなさんとすることは、政府のための国民への言いわけではございません。おざなりのものでないことは、閣僚の諸君は知っていただきたいと思う。今度こそは、腰を据えて政府は本問題と取っ組んでほしい。国会もまた、全力をあげて政府に協力を申し上げるでございましょう。日本社会党は、もちろん、平和解決のための協力を惜しみなくするつもりでございます。政府の決意を促して、私の賛成の討論を終る次第でございます。(拍手)
#17
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。
 この際外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣重光葵君。
    〔国務大臣重光葵君登壇〕
#19
○国務大臣(重光葵君) わが国と韓国との間の諸懸案を解決して、もって両国永遠の和親関係を樹立することは、政府の熱望するところでありまして、極力これに努力いたしてきたのでありますが、いまだにその実現を見ないことは、まことに遺憾とするところでございます。最近、いわゆる李ライン問題をめぐって事態悪化の感がありますが、わが方としては、あくまでも話し合いによりましてこの問題の解決をはかる決意でございます。このためには、日韓双方に緊密な利害関係を有する米国政府の協力をも要請しておる次第でございます。
 なお、韓国に不法抑留されておる日本人漁業者の救出については、重大なる人道上の問題として、他の問題に先だって、ただいまの御決議の趣旨をも休し、至急解決方努力する決意であることを申し述べます。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 総理府設置法の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 原子力委員会設置法案
  (内閣提出)
 日程第三 原子力基本法案(中曽
  根康弘君外四百二十一名提出)
#20
○議長(益谷秀次君) 日程第一、総理府設置法の一部を改正する法律案、日程第二、原子力委員会設置法案、日程第三、原子力基本法案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。科学技術振興対策特別委員長有田喜一君。
    〔有田喜一君登壇〕
#21
○有田喜一君 ただいま議題となりました原子力基本法案、原子力委員会設置法案及び総理府設置法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、以上三案の目的並びに要旨について申し上げます。わが国民は、人類史上最初の原子爆弾の犠牲をこうむったものでありますがゆえに、原子力という言葉から恐怖と疑惑を感ずるのでありますが、今後の世界は原子力時代であり、人類の英知が生み出したこの原子力をいかに平和的に利用し、産業、文化の発展と人類の福祉に貢献するかということが大きな課題であります。特に、わが国のごとくエネルギー資源の乏しい国にとっては、原子力の平和利用を必要とすることがきわめて緊切なるものがあるにもかかわらず、わが国は、原子力の研究において遺憾ながら各国に立ちおくれておるのであります。この現状にかんがみ、原子力をいかに平和的に開発、利用するかの方式を国民の安心する形で示すとともに、わが国に存する有能なる学者の心からなる協力を得られるような体制を作ることがきわめて必要なのであります。ここにおいて、自由民主党及び日本社会党は、超党派的共同提案として原子力基本法案を提出し、もって原子力の平和利用に関する国の基本構想を明らかにし、原子力の開発に関する一貫した体系と機構を整えんとするものであります。また、これに関連して、政府より原子力委員会設置法案及び総理府設置法の一部を改正する法律案が提出された次第であります。
 原子力基本法案は、原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とをはかり、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することをその目的とし、また、学術会議の三原則を尊重して、原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限り、民主的運営のもとに自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとしておるのであります。しこうして、原子力行政の民主的運営機関として原子力委員会を、開発機関としては原子力研究所及び原子燃料公社の設置を規定するのほか、原子力に関する鉱物の開発取得、核燃料物質の管理、原子炉の管理、特許発明等に関する措置、放射線による障害の防止等、基本的事項を規定いたしておるのであります。
 原子力委員会設置法案は、原子力に関する行政を所掌する強力な民主的合議制機関として原子力委員会を総理府に設置せんとするものであり、その所掌事務、組織等を規定しておるのでありますが、委員会は、委員長及び委員四人をもって組織し、委員長は国務大臣をもって充てることにいたしておるのであります。また、委員は、両院の同意を得て内閣総理大臣が任命し、その任期は三年といたしております。
 また、総理府設置法の一部を改正する法律案は、原子力委員会の決定を尊重して原子力利用に関する行政を総合的に推進する担当部局として、総理府に原子力局を置くことを規定しておるのであります。
 原子力委員会設置法案及び総理府設置法の一部を改正する法律案は、十二月十日本委員会に付託され、直ちに政府より提案理由の説明を聴取して質疑に入り、十二日内閣委員会と連合審査会を開会いたした後、さらに質疑を続行し、また原子力基本法案は、昨十三日本委員会に付託され、提出者中曽根康弘君より提案理由の説明を聴取して質疑に入りました。委員会においては、日本における原子力行政の構想いかん、大学における研究の自由が侵されないか、明年度における原子力関係予算はいかん、原子力の平和利用が軍事的目的に利用ざれる懸念はないかなどに関して勢心活発なる質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は速記録に譲ることにいたします。
 かくて、三案を一括して討論に付しましたところ、自由民主党を代表して前田正男君より、この原子力基本法が超党派的立場より共同提案として国会に提出できたことはまことに喜ばしい限りであり、この基本法により、原子力を平和的利用に限ること、及び民主、自主、公開の三基本方針を確立することは、今後の開発発展のために、また研究のためにも非常に得るところが大きいと同時に、国民の理解と協力を得るためにも大いに寄与するところがあると考えられ、また原子力委員会及び原子力局が設置されたことは、研究開発の一歩前進になる点において大いに賛成である、しこうして、原子力局は暫定機関であるから、一日も早く科学技術行政が一本となって力強く出発できることを希望して賛成する旨の意見が述べられました。次いで、日本社会党を代表して岡良一君より、原子力の平和的利用ということについては、執行の衝に当る政府はあくまで徹底してもらいたい、原子力の管理はあくまでも国家の公共的管理にゆだぬべきである、原子力の障害の防止に関する法規を周到にするはもとより、障害を受けた場合の保障についても国家的な責任を十分に考慮すべきである等の希望を付して賛成の意見が述べられました。最後に、労働者農民党の岡田春夫君より、この三法案は、日本とアメリカとの原子力協定が結ばれるに当っての日本の受け入れ態勢としてはきわめて不十分であるのみならず、逆にアメリカの原子力政策に従属する結果になって、われわれの意図するところに反する結果を招くおそれがあるから反対である旨の意見が述べられたのであります。
 以上の討論の後、採決の結果、三案は多数をもって原案の通り可決すべきものと決しました。
 なお、自由民主党の小笠公韶君より、原子力委員会設置法案につき、大学における研究の自由を尊重する趣旨を明らかにするため、原子力委員会で審議決定する関係行政機関の原子力利用に関する経費のうちには大学学部における研究経費を含まないものとする旨の附帯決議案が提案されたのでありますが、採決の結果、全会一致をもって可決いたしました。
 以上、本特別委員会の審議の経過並びに結果について御報告申し上げる次第であります。(拍手)
#22
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。西村直己君。
    〔西村直己君登壇〕
#23
○西村直己君 ただいま上程されました原子力基本法案外二法案に関しまして、私は、自由民主党を代表して賛成の討論を申し上げ、各位の御賛同を得たいと存じます。
 最近、世界各国におきまする原子力の平和的利用は、きわめて注目に値する速度をもって発展いたしております。特に電力源としての原子力の利用につきましては、英米仏等におきましては目ざましい進歩をいたしておることは、すでに各位の御存じの通りであります。一例を申しましても、イギリスにおきましては、十カ年計画によりまする百五十万キロ発電、さらには二十カ年計画で四十万トンの石炭を原子動力に置きかえんとする雄大な動力源確保の計画も進めておると聞いております。さらに、これらの国々におきまして、単に動力用の原子炉利用ばかりでなく、アイソトープを利用いたします各般の研究が行われております。医学、医療はもちろんでありますが、また農業、工業の分野におきましても、革命的な用途が研究され、あるいは利用されつつあるのでありまして、今や各国におきまするこの種原子力の利用活用は、新しい動力源の発見利用から発足いたしまして、第二の産業革命時代へ発展していくのではないかと推測されるのでございます。
 先進各国におきまして、かく目ざましく進歩発展しつつありまする理由は、一に原子力利用の基本国策が確立されておる点にあります。さらに、同時に、広く国民に対しましても、これが啓蒙、啓発に異常な努力を払っておる点にあります。特に、各国共通の特色は、この原子力を全国民的規模において超党派的な性格のものにいたし、政争の圏外に置きまするとともに、計画的かつ持続的に研究、利用を進めておる点であります。すなわち、原子力国策を決定する機関は、各国とも原子力委員会なる超党派的管理機構を置き、これが国策の策定、調整、推進をはかっております。さらに、これが裏づけとして、巨額の国費を投入しております。たとえば、年間、フランス約二百億円、イギリス五百億円等々であります。
 翻って、わが国におきましては、原子力の問題は、残念ながら、いわゆる世紀の悲惨事であります広島、長崎、ひいては、近くビキニ水爆被災事件という悲劇から出発させられておるのであります。従って、国民のうちには、いたずらに原子力に対する脅怖が生まれておりまして、原子力の平和的利用や、これに関連いたしまする諸外国からの援助申し入れ等に対しまして、誤解、疑惑が生ずるのも当然な点と考えております。しかしながら、すでに申し上げました通り、近代国家におきまする原子力の平和的利用の予想外なる発展を見るとき、私ども日本国民が、この際、災いを化して福となすという積極進取の精神のもと、広く科学技術陣を動員し、強力なる世論を起し、党派を越えて原子力平和利用のための確固たる基本国策を樹立し、これが研究、活用に立ち上ることは、国家、民族の将来のため焦眉の必要であろうと痛感するのであります。(拍手)
 この趣旨に基きまして、今般、自由民主党、社会党共同提案のもとに本基本法が提案されておりますることは、まことに時宜を得たものと思います。特に、おくれましたるわが国原子力国策の重点といたしましては、第一に、原子力に関する基本国策を確立して、内外に向ってこれが平和利用に関する国の大方針を明らかにすることが必要と思います。第二番目に、全国民協力のもとにこの国策を推進して、この挙国的課題は政争の圏外に置いて、すみやかに先進諸国に追いつく態勢を整える必要があると思います。第三番目に、日本の自主性をあくまでも確保して、日本の国情に適した個性のある研究が必要と思います。第四番目に、この政策は長期的かつ持続性のある計画で、たゆみなく努力が続けられなければならぬと考えます。第五番目に、有能なる学者、技術者の起用、養成、特に若き世代の学者、技術者に十分能力を発揮せしめる必要があろうと考えられます。第六番目に、豊かな国際性を盛り上げまして、この政策を推進しながら、いかなる国とも平和利用促進の協力態勢を整え、世界平和と世界の文明の発展に貢献するということが必要と感ぜられます。これら諸点は特に強調さるべきものと存ずる次第であります。特に、広島、長崎等の悲劇を持ちますわが国といたしましては、平和利用につきましては国際的にも有力なる発言を行い得るよう、その国際的地位を確保することがきわめて必要なのであります。(拍手)日本は、この点に関しまする国論の統一をはかって、国外に向って国民世論の分裂を示さぬことが絶対必要だと考えるのであります。(拍手)今回、自由民主党、社会党の共同提案は、この国民の期待するところを如実に実現したものでありまして、その内容におきましても、わが国原子力政策の全般的見通しを国民に与えながら、不安と疑惑を除き、強力にわが国原子力開発を促進せんとする内容を畫っておるのでありまして、心から同感を申し上げる次第であります。
 最後に、私は、広島、長崎等におきまする原爆犠牲者の人たちに対しましては深甚なる哀悼の意を表しまするとともに、本基本法等が成立いたしまして、わが国原子力の平和的利用が画期的に発展することを心から期待申し上げ、賛成の討論を終了する次第であります。(拍手)
#24
○議長(益谷秀次君) 岡良一君。
    〔岡良一君登壇〕
#25
○岡良一君 私は、ただいま上程されましたる原子力基本法並びに関係二法案に関しまして、日本社会党を代表いたしまして、若干の希望を添えて賛意を表したいと存ずるのであります。
 こうして、今日、衆議院が、原子力に関するその幕を切って落そうという画期的な法律案を成立せしめるということは、実に国会史上にも長くとどまる画期的な記録であろうと思うのであります。(拍手)しかしながら、考えてみまするに、原子力の秘密を解いて人間がこれを作り、またこれを利用する、これは五十年、七十年にわたる世界のすぐれた科学者の長き夢であった。これが達成されたのでありまするが、このことは、単なる物質文明の発展のみにはとどまらないと思うのであります。精神の世界においても、実に驚くべき革命的な影響を与えております。かつて、物質は不変なものである、変化しないものである、このように概念されておった。その物質が変化するものである。生けるものである、発展するエネルギーそのものであることが実証された。この人間の深き知恵というものは、素朴な物質観に立つところの唯物的な観念や、その上に根ざす政治秩序や社会秩序、あるいは物と物の利害によって結ばれる資本主義秩序というものに対して、大きな自己反省を要求いたすものであろうと思うのであります。(拍手)原子力の発展は、このような形で、物質や精神の対立を越えた新しい世界観を形づくろうとしております。ここからは、当然資本主義や共産主義を越えた、われわれの抱懐する民主主義と平和主義と社会主義の政治理念が、この理念の上に立つところの新しい世界観が生まれようとしておるのである。この立場から、われわれは、このたび提出の三法案に対し、根本の問題に触れて若干の希望を申し述べたいと思うのであります。
 すなわち、その第一点は、政府が原子力基本法においてその平和利用を根本の精神として取り上げました以上は、政府は内外の施策を通じてあくまでも平和利用に徹していただきたいのである。この点の保障をあくまでも要求いたすのであります。われわれの同胞は、十年前、広島や長崎、あるいは昨年ビキニにおいて大きな犠牲を払い、ビキニの犠牲のあとには、引き続きまして、国民は、飲料水を飲むにも、米を食べるにも、お茶を飲むにも、放射能の懸念に脅かされました。これらの体験を通じて、今や、心ある日本人は、単に放射能に対して、素朴な、原始的な恐怖というよりも、このような人間の高い知恵の力というものは、人間の生命を脅かしてはならない、文明を破壊してはならない、人類の福祉と文明の発展のために貢献せよという固い信念が、民族の悲願として盛り上っておるのであります。(拍手)このような民族の悲願というものは、言ってみれば、われわれ日本民族に許された貞操帯とも申さねばなりません。従って、われわれが、今日原子力時代のこの朝明けに立って、基本法を通じ、原子力の平和利用を国民に誓いましたる以上は、いかなる理由があろうとも、原子力の軍事的利用に協力することは許されないのであります。(拍手)それにもかかわらず、あるいは原爆塔載機のために滑走路を拡張しようとする、あるいは原子弾頭を使用できるオネスト・ジョンの持ち込みを認めようとする、そのようなことは、明らかに国会が基本法を通じて国民に約束をした原子力の平和利用というこの大精神を踏みにじるものであり、みずから日本民族の貞操を冒涜するものと申さねばなりません。(拍手)この点に関とまして、私は政府並びに与党の諸君に対し深甚なる注意を喚起いたしたいのであります。
 第二に、将来の原子力に関する管理と運営は、どこまでも国民の意思を十分に反映し、民主的に、かつ公共的に管理をするという原則を絶対にくずしてもらいたくないのであります。(「法律にはそうなっているのだよ」と呼ぶ者あり)法律にはそのようにうたわれても、しばしば政府は法律を裏切っておる事実を、われわれはあまりにも知っておる。特に、石炭をたくところの蒸気機関の発明が、御存じのように、あの第一次の産業革命を招来いたしました。これが資本主義の発展となり、人間の人間による搾取、国家の国家による支配を許すに至ったのであります。ところが、この原子力の発展というものは、一トンのウランから実に一万トンの石炭にひとしいエネルギーを出すことが証明されておる。あるいは、トリウムまたはウランを増殖すると、一トンのウランから三百万トンの石炭にひとしいエネルギーを発生することができるといわれておる。このようなエネルギー源が、あるいは特定の民間人によって占有をされるということに相なりまするならば、彼は日本の産業に対する大きな支配権を独占することとなって、現在における資本主義の矛盾と撞着は、さらにとめどもなく助長される危険があるのである。原子力によって生み出された一切の富は、すべての国民に分ち与えられねばならない。この点に関する昨日の提案者の御説明、あるいは正力国務大臣の御答弁は、必ずしもこの点に関してわれわれを納得せしめ得なかったのである。われわれは、原子エネルギーの動力化というこの事態こそ、世界の科学者が、事実をもって資本主義から社会主義へという一大転換を人類に教えておるものと信じておるのである。(拍手)原子力の管理に関し、その運営に関しては、あくまでも、国民の意思を反映した、公共的、民主的な運営と管理の原則を貫くべきことを、ここに重ねて強調いたしたい。(拍手)
 さらに、私は、国際協力に関しても希望を申し添えたいと存じます。本法にも国際協力がうたわれてはおります。ところが、申し上げるまでもなく、わが国は、この地球上において最初にしてかつ唯一の原子力の犠牲者であります。原子力の平和利用を国際的に発展せしめるためには、われわれはこの平和利用という大文字を、民族の権利として、崇高な義務として叫び続けることが当然であろうと思います。わが国がやがて国連に加入し得れば、また、それとも、やがて国連に設置されようという原子力の平和利用機構に参加し得る暁においては、われわれは、単に、そのプログラムにおいて述べられておるように、二年や三年に一回世界の科学者が原子力の研究に関する情報を交換するという、このようなことでは済むまいと思うのである。世界の科学者の情報交換はもとより、原子力の平和利用のためには、その原料なり、あるいはまた施設なり、国際民主主義の原則に従って、大国といわず、小国といわず、これが全世界に普及し、全世界の人々が平和利用の恩典にあずかり得るように、わが国としては、当然な権利として、崇高な義務として、国際連合の中において働き続けねばなるまいと思うのである。また、このことによってのみ、全世界の人類がかねてより悲願としている、大国による原子力の軍事利用もこれを抑制し、これを廃絶し得ると信ずるのである。このことは決して夢ではありません。八月八日に原子力平和利用会議がジュネーヴで開かれ、国境を越えた科学者の良心は、相互における研究の情報を交換する決議、その最終日には、国際連合に向って堂々と平和利用機構の設立を決定した。国際連合はこれを取り上げて、いち早く来春にもこの機構が生まれようとしておる。われわれは、このような事態にかんがみ、日本国政府は当然に国際平和利用機構の中において積極的な発言権を確保し、われわれの念願する全世界に対する原子力の平和的利用についての格段の努力を、この機会に重ねて要求するものである。
 最後に、おそまきながらわが国にも原子力平和利用の道が開かれたこの際、わが国における、進歩的な、良心的な科学者の諸君と、向学の志に燃える多くの青年学徒が、国会の意思にこたえ、原子力平和利用の道に格段の精進をされることを心から念願いたしまして、私の賛成の討論を終りたいと思うのであります。(拍手)
#26
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
 三案を一括して採決いたします。三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#27
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって三案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 原子力の非軍事的利用に関する協
  力のための日本国政府とアメリ
  カ合衆国政府との間の協定の締
  結について承認を求めるの件
#28
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#29
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長前尾繁三郎君。
    〔前尾繁三郎君登壇〕
#31
○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました、原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を簡単に御報告申し上げます。
 まず、本協定成立の経緯及び内容については、政府の説明によりますと、本年初頭、米国政府から、日本政府に対し、濃縮ウランの提供と、これに伴う技術等の援助を行う用意があると申し入れがありました。政府としては、わが国における今後の原子力の平和利用の研究及び開発の重要性にかんがみ、慎重に検討しました結果、適当な条件のもとにこれを受け入れることが有利であるとの結論に達しましたので、今春以来米国政府との間に双務協定締結に関する交渉が行われ、去る六月ワシントンにおいて仮調印が行われました。その後、米国政府が、この協定の署名のため必要とする国内法の手続を完了いたしましたので、十一月十四庁、ワシントンにおいて、両国代表者の間に正式調印が行われたのであります。
 この協定は、米国が、一九五三年十二月の米国大統領の原子力平和的利用計画に基き、トルコその他二十数が国との間に締結した協定とほぼ同様のものであります。そうして、わが国は、米国から、研究用原子炉の燃料として、濃度二〇%以下の濃縮ウランを、U二三五計算で、最大限六キログラムまで賃借することができることとなり、また、市場で入手することのできない原子炉用資材を入手し、両国間で原子力の平和的利用に関する情報を交換することができることとなるのであります。また、本協定の有効期間は五年間でありますが、この協定が発効いたしますれば、わが国は、現在喫緊の重要課題である原子力の平和利用の研究及び開発に向って大きな一歩を踏み出すこととなるのであります。
 本件は、十二月五日国会に提出、翌大日本会議に上程の後、外務委員会に付託せられましたので、七日より今十四日まで六回にわたり会議を開き、政府の提案理由の説明を聞き、質疑応答が行われたのであります。これらの質疑において、委員から、本協定の実施のためには、わが国において、国内法、特に原子力に関する基本法の制定を必要とすると思われるがゆえに、その提案を待って審議すべきものとの強い意見がありましたが、その後、これらの法案は本院に提出せられ、本日一括可決せられる運びとなったのであります。また、委員から、本協定では研究用原子炉のみの建設、操作等に関する協力を定めておるが、動力用原子炉については、米土間の協定と違って、協定からはずしているのはいかなる理由によるのかとの質疑があったのに対して、政府においては、動力用の原子炉については、日本政府がもし希望するならば、将来その協力の可能性について米国政府と協議をすることができるという趣旨であるから、本協定に入れることは必要かつ妥当でないと考えられたので、本協定からはずして、単に両国間の交換公文において両国間の了解が確認せられているわけであるとの答弁がありました。その他活発な質疑応答が行われましたが、詳細については会議録により御了承を願います。
 次に、討論に入り、自由民主党の北澤直吉君並びに日本社会党の松本七郎君から、それぞれの党を代表して賛成の意を表明せられ、小会派の労農党岡田春夫君から反対の意を表明され、続いて採決の結果、本件は多数をもってこれを承認すべきものと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#32
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#33
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本件は委員長報告の通り承認するに決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト