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1947/06/18 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 財政及び金融委員会 第38号
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1947/06/18 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 財政及び金融委員会 第38号

#1
第002回国会 財政及び金融委員会 第38号
  公聽会
―――――――――――――――― 
昭和二十三年六月十八日(金曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○所得税法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○取引高税法案(内閣送付)
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   午前十一時十七分開会
#2
○委員長(黒田英雄君) これより所得税法の一部を改正する等の法律案、並びに取引高税法案につきまして、公聽会を開会いたします。一言簡單に公述人の方々に御挨拶を申上げたいと思います。御承知の通り今回内閣から所得税法の一部を改正する等の法律案、並びに取引高税法案が國会に提出になりまして、本委員会に予備審査のために付託されておるのであります。目下本委員会において審議いたしておるものであります。御承知の通り國会法におきまして、第五十一條に、重要なる歳入の法案については公聽会を開かなければならないということになつておるのでありまして、我々國会議員として、又財政金融の委員といたしましても、愼重に審議はいたすものでありまするが、何分これらの法案は、國民全般の利害に重大なる関係を持つておるものでありまするからして、学識経驗のおありの方々、又一般に公募いたしました中から選定されました方々の十分なる御意見を伺いまして、審議に際して愼重を期したいと思つておる次第であるのであります。これらの税法の内容につきましては、既に皆様御承知のことと存ずるのでありますが、本年度の租税及び印紙收入の予定額は二千六百三十二億円と相成つておるのであります。前年度予算に比べまして実に一千二百七十八億円の増加になつておるのであります。而して一般会計の歳入の中の六六%を占めておるというふうな状況であるのであります。これらの増加の内容につきましては御承知の通りと思いまするが、今回新設されました取引高税によります二百七十億円を始めといたしまして、所得税が五百九十三億円、酒税で三百十九億円、物品税九十六億円というふうな状況になつておるのであります。所得税等におきまして、酒税、法人税等におきまして、減收にはなつておりまするが、これらの対策といたしまして、取引高税が新設されておるのでありまするが、この取引高税は各方面に及ぼす影響も特に重大であると思われるのであります。又それにつきましても國民生活に及ぼします影響が大でありますることは申すまでもないのでありまするが、特に昨年度以來から國民の関心の的ともなつておるのであります。
 本年度租税の予定額は何分にも今申上げましたような空前の金額にもなつておるのであります。特に所得に対しまする比重も非常に増大しておるような状況であるのでありますから、何卒これらにつきまして皆様の十分の御意見をお述べ下さいまして、我々の審議に資するようにお願いいたしたいと存ずるのであります。
 誠に本日はお忙しいところをお繰合せ下さいまして御出席下さいましたことを感謝いたしますると同時に、十分御意見を御開陳下さいますことをお願い申上げる次第であります。
 尚大体お述べになりまする時間は、公述人の方々も多数にいらつしやることでありまするから、大体二十五分ということを目標で御開陳を願いたいと思います。
 いろいろな都合で開会が遅れまして大変にお待たせいたしましたことをお詫び申上げます。
 それでは先ず最初に藤田武雄君にお願いいたします。
#3
○公述人(藤田武雄君) 私はこれから今回政府が國会に提案いたしました所得税等の税制改正の基本的な考え方、それから税制改正の内容について簡單に申述ベて見ます。今回政府が提案しております税制改正の狙いが大体二つあると思います。
 それは一つはインフレーシヨンの高進に即應して國民の間に租税負担の凸凹ができておる、それを調整合理化すること、これが第一である。
 第二には、物價、賃金等の急激なる膨脹騰貴に伴いまして、財政の需要が飛躍的に増加したことであります。これに対應するために租税收入を確保するということが税制改正の狙いであるように考えます。
 そこで先ず第一に、財政需要と租税政策との関係はどうなつておるかということを考えて見まするのに、今日の我が國の経済の最も大きな問題は、如何にして経済を安定させるか、安定した経済を実現するかということが財政経済政策の基本的な問題であろうと考えます。それがためには先ず不安定の基礎となつておる各種の條件を一切排除する、駆逐するということであろうと考えます。その一つの最も大きな條件は財政的なインフレーシヨンを防止するということであることは申すまでもありませんが、この意味において今度の税制改正が果して財政需要に即應しておるものであるかどうかということを考えて見ますと、昭和二十二年度の歳入総額に対する租税及び印紙收入並びに專賣益金の占める割合というものは、大体八七%でありました。ところが二十三年度におきましては約九〇%近い率に増加しております。このことは、表面から見ますと、政府が財政の需要に対應するために、普通收入財源を獲得のため懸命の努力を拂つておる跡は明らかに我々も認めるのであります。併しこのことは歳出面における政策が、もうこれ以上の節約の余地は困難であるというような建前、條件の下に言い得ることで、歳出面に両節約の余地ありとすれば、この税制の行き方というものは、ただ歳出の辻褄を合せるために財源を掻き集めたというような結果になることは勿論であります。それはそれといたしまして、かように歳入の九〇%近い部分を租税收入及び專賣益金で調達するという結果になりましたために、この予定した歳入財源を如何にして確保するかということが今後に残された大きな問題であろうと考えます。それは昭和二十二年度の徴税成績から考えましても、如何に困難なる問題であるかということは明らかであります。昨年度の徴税成績を見ますと、年度末においては漸く收支は合つておりまするけれども、十二月末においては僅か予算の四十%に過ぎない徴税成績というような、極めて憂うべき徴税危機を現出したのであります。それが本年度においてはますますそういうような危機がこの租税收入の中に胚胎しておると、かように考えるのであります。特に本年度の國民所得の構成の割合を見ますと最も捕捉の困難な事業所得の部分が昨年度に優るとも劣らない部分を占めておる。給與所得のような比較的源泉課税がされて、容易に所得の捕捉し得るものは少くて、事業所得が非常に大きな部分を占めておるということは、やはり本年度においても徴税危機が依然として潜んでおるというように考えるのであります。併しながらこれだけの歳入をどうしても上げなければならないということになりますと、從來のような徴税の行き方ではなかなか困難であると考えますが、政府は今回そういう徴税の効果を上げるために、或いは取締法規を改正し、收税官吏の調査権限を拡充する、その他納税運動に反対するような者に対する処罰の規定を設ける法案を出しておりますが、これまでも或いは脱税等に対しては非常に嚴重な処罰法規がありますが、それが事実においては殆んど適用されていない。そういうところに問題があるのであります。税法を嚴重に適用するということ、嚴罰主義で臨むということは、非常に不幸なことでありますが、社会の道義心は地を拂い、納税観念は案に未曾有の低下をしておる今日においては、甚だ不本意ではありますが、私はこの徴税上、罰則規定を嚴重に適用する、甚だ遺憾な措置ではありますが、それ以外にこの乱れた納税観念を回復する途はないと思います。幾ら罰則規定を設けて威嚇してみても、もはや今日の現状は規定を設けて威嚇しただけでは、殆んどこの徴税の秩序を維持することが困難な情勢にあります。今度の改正にも、例えば延滯日歩二十銭に引上げておりますが、すでに闇金利が五十銭になつておるときに、二十銭に上げてみたところで、滯納者はむしろ利鞘ぐらいは十分に出るというような行き方では到底この歳入の九〇%に及ぶ財政收入を確保することは困難であろうと思います。私はその意味において、甚だ不幸な考え方でありますが、違反者に対しては嚴重なる懲罰を科す。而も嚴罰主義で臨むというようなことが、今日の社会情勢から見て、止むを得ないことだ、その点において政府の特に考慮を要求したいと思います。
 第二に申上げたいことは、編制改正の狙いでありますところの國民の租税負担が、今度の改正で果して調整合理化の目的を達しておるかどうかという点であります。政府は今度の所得税の改正によつて、七百三十六億円の減税を行なつたというように説明しております。併しながら昨年度のインフレーシヨンの進行の速度を見ましても、物價、賃金、家計費は、大体において一ケ年間に三倍に騰貴しておるにも拘らず、生産は依然として一割八分程度の増加しかしておらないというような、極めて惡性なインフレーシヨンの進行過程において、若し税法をそのままに放任いたしますならば、これは貨幣價値の下落しただけの増税になるのであります。從つて今回のような所得税法の措置を講ずることは、これは減税措置というよりも、むしろ当然な措置であつて、減税という意味には私は解したくないのであります。のみならず今度の改正案によりますと、負担の調整によりまして、その調整部分を、物價改訂により撥ね返りを吸收しようと、そういうような魂胆を政府は持つているのであります。要するにインフレーシヨンによる所得税の欠陷を調整する上に、更にその物價騰貴による家計費の影響を、これによつてカヴァーしようという、非常に我が儘な考えを持つておるように考えます。而も物價騰貴による撥ね返りの吸收の基礎となつておりますところの賃金ベースは、本年五月の賃金の実質價値を維持しようというような考え方からいたしまして、三千七百円のべースを想定しておるのであります。この場合、公定價格は約七割、闇價格は僅か三・六%の騰貴というものを見込んで、そうしてそれによつて家計費の増加するのを、この所得税法の改正で吸收しようというような考え方であります。併しながら今日において、闇價格が三・六%の騰貴を見込むということは、これは誠に樂観に過ぎることであつて、果してかような考え方が十日持つか二十日持つか、恐らくこれから発表されるところの闇價格支出というものは、この政府の考え方というものを、根本から崩壊せしむるような結果になることは明かであります。從つて今度の租税、とくに所得税の改正の狙いというものは、すでにその出発点において非常な欠陥を持つておるものと考えます。その意味において私は今度の所得税法の改正は、あまりに税法によつて、かように物價政策の撥ね返りを吸收するということは、負担が重過ぎる、かように考えるのであります。税法といたしましては、闇價格は仮りに三割上るといたしましても、それを非常に大きく見込むということは、実際問題として、却つてインフレーシヨンを、その当座において助長するという結果になるので、税法だけでかような大きな負担を担うということは、元々困難なことであります。それを敢て政府は税法によつてその吸收をしようとするところに、根本的な間違いがあると思います。その意味において、私はこの税法を実施いたしました場合、税法のみで物價改訂の影響を吸收するような考え方のみに依存しないで、思い切つた我々勤労階級、特に消費生活、配給生活階級に対して、物資の配給を増配するというような方法が採られない限り、この税法は恐らくあと一月乃至二月の間に根底から覆される、かように考えるのであります。
 それから第三に取引高税について申上げます。政府はこれによつて所得税法の改正による收入減を、取引高税によつてその一部をカヴァーするという考えのようであります。問題はその歳出面の問題を一應私は棚上げして話を進めておりますが、歳出の面において仮りにこれ以上の節減が困難であるという仮定からいたしますれば、取引高税も私は或いはこの際止むを得ないのじやないか、かように考えます。勿論これは取引高税を実施いたします結果、或る商品については生産から消費者に渡るまでに十回以上の段階がある、そういうことを考えますと、可なり物價騰貴には影響があることは、これは認めるのでありますが、併しながら所得税が今日如何に不公平な課税が行われておるかということは、闇所得の捕捉が困難であるというような場合に、歳出が只今以上節約ができないとすればこれを所得税で負担さすということは、ますます課税の負担を不公平にするという結果になりますので、それよりも間接税である取引高税によつてカヴァーした方がむしろ負担が公平であろうかというように考えるのであります。但し提案されておる取引高税には我々勤労生活者に直接関係のあります免税物資というものは主食だけであります。この点において、もう少し我々の生活必需物資については思い切つた免税の範囲を拡大するということは絶対に必要であろうと考えます。
 それから第四に、今回入場税が改正されます案が出ております。それには招待券の課税が行われております。私はこの関係から見まして、今日國鉄などが発行いたしております無賃乗車券、これに対して徹底的な課税をするということが必要じやないかと思います。勿論今の國鉄の発行いたしております無賃乗車券は、ああいう形式では課税が困難であります。あの発行形式を改めることによつて、これに対して相当高率の課税をするということはこの際当然じやないかと思います。恐らく今日若し三倍半の旅客運賃の引上が行われますれば、無賃乗車金額は十数億乃至二十億を突破するという巨額な数字に上ると思います。これに対して当然税金を課すべきである、それには今の発行方法を改める必要がありますが、この点も招待券に課税する以上、そういう観念が妥当である以上、当然実行して貰いたいと思います。
 最後に申上げたいことは、現在の徴税機構であります。これは誠に虐待されておるといいますか、現在の大藏省でも、地方に廻る税官吏は最も屑が廻つておるというような長い間の慣例から、税務署の役人は極めて待遇も悪いし、学識経驗も少いし、そういうような関係から能率が非常に低下しております。最近税務職員の平均年齢が二十五、六歳というようなことが言われておりますが、これを以て見ても如何に徴税が能率的に行かないということがわかるのであります。從つて優秀なる官吏を税務署に配属しまして、徴税機構を根本的に改めて貰いたい、中等学校を出たような若い青年を訓練するのも一つの方法でありますが、優秀な官吏を地方の税務署に配置して、そうして、それに対しては優遇の措置を講ずるというようなことを政府に要求したいのであります。
 それからもう一つ申述べたいことは、この問題と関連するのでありますが、如何に租税の負担の公平を期するために税法が改正されましても、課税の対象から逃れるいわゆる闇所得、こういうものの捕捉が若しできないならば、如何に税法が公平な、理想的なものができても、依然として負担の公平を期することができないのであります。又今日の所得税法では、分類所得税が廃止されましたために、所得間の調整というものができないのであります。食糧も安定し、住居も安定しておる、そういつた例えば農民階級の所得も、毎日の生活に追われておる都市の勤労階級の所得も、同じように一本で課税されておるのであります。こういう点について、私はただ形式論でなくして、本当の担税力というものをもう少しはつきり税法の上に現わして貰いたい。最近一部の農民は非常な金詰りで生活に困つておる、或いは農業の再生産も困難だというようなことが言われますが、それは農業の資材だけのことを考えますと或いはそういう面もあるかと思いますが、國民経済全体からいたしますと、やはりそれ以上に困窮しておるのは都市の勤労階級であります。從つて所得階級間の調整ということをもう少し税法の上に考慮して貰いたい。それは或いは勤労所得の控除をもう少し拡大するとか、そういうようなことによつて所得間の担税力のアンバランスを調整して貰いたい、かように考えるのであります。
 大体私は以上、歳出面のことは一應棚上げして話を進めましたが、歳出面に尚節減の余地ありといたしますならば、無論税法の改正も根本的に考え直す必要があろうかと思いますが、歳入面だけ、特に税法だけの角度から申述べたわけであります。
#4
○委員長(黒田英雄君) 次に岸喜二雄君にお願いいたします。
#5
○公述人(岸喜二雄君) 私は興業銀行総裁の岸であります。今回の税法改正につきまして第一に感じますことは、我が國の長期復興計画というものに対應して果して税法が十分に考えてあるかどうかという一点であります。立案当局におきましては、恐らく鹿を逐う猟師山を見ずというふうなことがどうしてもあるのでございますが、立法府におかれまして、かような点について果して十分に御審議が願えるかどうかということを、我々は心配するのであります。先ず私の商賣に関係のない一例で申上げますと、山林の所得税、或いは相続税の一つ分りやすい例を挙げて見ます。今山林が濫伐によつて水害を起すということはもう皆さん御承知の通りであります。併しながらその水害の防止ということ以外に、更に大きく日本の長期復興計画におきましては、電源の開発・涵養ということが、非常に大切なことであります。この場合に今般の税制改正におきまして、山林の所得税、或いは山林に関連いたします相続税につきまして、何らかの考慮が拂つてあるだろうか、私は不幸にして原案には何もないのではなかろうかと感ずるのであります。もう少し端的に申上げますと、私は実は昔若い時分に税務署長をしたことがあります。その時分に先祖代々大きな山林を持つた千葉縣の方が見えまして、自分は大きな相続税を掛けられたために木を伐らなければならん。この木は先祖代々伐つてはいけないということが申し傳えられておる木である。これにその山の麓の人々のために、農民のために、伐つてはいけないのだということになつております。然るに相続税を多く取られたために伐らざるを得なくなつた。実に税法というものを恨むということを、さんざんに言われて、大いに感じたことがあつたのでありまするが、今日におきましても、この税のために山林を伐採するというようなことがあるのではなかろうかということを疑うのであります。山林を持つておる人に税金を掛けない、或いは山林の伐採收入に税金を掛けないということは、公平でありません。併しながらその税の掛け方が、或いはこれを物納にするというふうなことも考えていいのじやなかろうか。できるだけ山林は、伐らないということを何か配慮すべきではなかろうかと思うのであります。伐つて後に植林を奬励すればいいじやないか、補助金も出せばいいじやないかという議論もありましようが、それでは遅いのであります。一朝一夕にできない山林を伐らないということに配慮すべきではなかろうかと思うのであります。同様の問題は法人課税におきましても考えられるのであります。幸いに今回の案におきましては外資導入という見地から、外國法人についても内地法人と同じ取扱いになつております。且つ超過所得につきまして非常に適当に近い改正があつたのでありますが、できることならば超過所得税を廃したいという議論も可なりあります。併しまあ税源の税收の関係上この程度止むを得ずとするも、更に一歩進めて普通所得税もこれは三十五%を三十%程度に低下して頂くべきではなかろうかと考えるのであります。これは必ずしも五%の軽減が減收になるということは、私は意味しないと思うのであります。と言いますのは、法人におきます浪費傾向というものがどうしてもあるのであります。税金が高いために、とかく浪費傾向が否定できない。これは多少税率を下げましても、必ずしも減收にならないということを感ずるのであります。昨日見ました外電にも、ニューヨークで、先般來朝しました、バルーツ氏が、日本に対する米國側の対外投資或いは商賣についての八つの障碍を列挙しておりましたが、その中の一つに高率課税ということが掲げられておりました。私はもう一歩この法人税の普通所得についても五%程度の軽減をして然るべきではないかと考えるのであります。
 次に償却につきまして、これは法律の條文そのものでありませんが、償却につきまして更に考えて頂きたい。長くなりますから、項目だけにいたします。
 それから特に銀行といたしましては、金融機関が再建整備をやつておりまするが、減資をやりました銀行は、大抵の銀行は九割減資をいたしまして、一割しか残つておりません。その減資をやりました銀行が、一割の資本金に対して大きな所得税を取られ、超過所得税を取られるという苦しみがあるのであります。この点につきましても何らかの処置を採つて頂きたいと思うのであります。或いは種々償却について考慮されたら宜しい。例えば國債の償却であります。現在五万しか認められていないのを、更に償却程度を高くするというのも、一つの方法であります。別途問題になつておりまする軍事公債の利拂延期というようなことで、更に國債の相場も低下しておることを考えますならば、償却を大きく認める余地はあると思うのでありますが、併しながら償却だけではまずいのでありまして、積立金ができるようにならないと、他の金融上の、或いは金融制度上の方針からいたしまして、積立金が公然とできるというふうにならないと、まずい面があるのであります。
 次に納税につきまして、納税者が納税をし易くするというふうな面におきまして、今般の税法がまだまだ十分でないということを感ずるのであります。殊にこの点は勤労所得者、九百万に上りますところの勤労所得者を相手としまして立てられた税法としましては、もつと徹底的に分り易く、納税し易く、又後で厄介のないようにして頂きたいということを感ずるのであります。
 大部分の給料生活者というものは、毎月の月給取は毎月の所得であります。その月暮しであります。それが今般の税制におきましては、前と同じに年末調整というふうな面倒なことがありまして、年末にボーナスを貰えば殆ど全部税金に取られてしまうというようなことの起る危険がございます。そこで先般経済團体連合会におきまして、産業、金融、総ての團体の代表者が集まりましていろいろ研究しました結果、月間所得税を取るべきだという結論に達したのであります。この結論につきましては、先般参議院及び衆議院の委員会の皆様には、原案をお届けしてあると思いまするが、今回の税制におきましてこの点が御配慮が頂けなかつたということは、大いに残念なのであります。月給取はその月勝負でありますから、分り易く月間所得税制を採つて頂きたいのであります。これには、やはり多少の欠点もないことはないのでありまするが、この欠点を補つて余りある方法だと思つております。この点につきまして、更に勤労所得税につきまして、勤労者の合算課税を廃止せられたいということは、今の月間所得税の趣旨からいたしまして、更にこれを主張したいのであります。多少他の所得を併せて有する者との不均衡はありまするが、勤労者におきましては、かような不均衡は大した問題じやない、均衡を取るべきは一兆九千億の國民所得の中の一兆を占めておりまする闇所得との均衡であります。勤労者相互におきまして多少の不公平ができることは止むを得ないと思います。
 次に同居家族との合算も、これも同時に廃止したいのであります。これも今言つたような理由は基きまして主張するのでありまするが、一つの実例を申上げますと私の知つておりまする或る税務官吏は非常に有能な税務官吏でありまするが、東京の税務署に遠くから通つております。それは家がないからであります。東京に家がないから、東京の税務署に遠くから通つておる。それが農家でありまするので、弟の農業所得と合算せられまして、課税されますると、殆んど自分は只働き同様であるということを歎いております。税務官吏自体と雖もそういうような感じを持つております。これは或いは今回の一應の勤労所得税の軽減で或る程度救えるのでありまするが、更に今後のインフレの進行を考えますると、やはり又同じ問題が起ると思います。いつそのことこれは勤労所得税につきましては、同居親族の合算税も同時に廃止せらるべきものであると考えるのであります。
 それから勤労所得税につきまして、勤労控除を現行の二五%から百分の三十に改められたいのであります。そして最高限度もこれは除いて欲しい、三万七千五百円という最高限になつておりますが、只今の状況から見まして、これはむしろ廃しい頂いた方がいいのであります。勤労所得につきまして、非常に大きな勤労所得があるということは、もはや余り考えられないのであります。非常に稀な例であります。端的に申しますと、重役も平社員も殆んど同じような大して差のない現況であります。これは最高限度の撤廃はさまで不公平ということは考えられないと思うのであります。
 それから退職手当でありますが、退職手当がやはり現在におきましは、本法案におきましては、半分にして一般の所得と合算するようになつておりますが、これは今後、現在の状況におきまして、企業整備、或いは行政整理というようなことは止むを得ざる情勢にありまするので、この点につきましては、退職手当は昔の現法に帰りまして、一般の所得と分離いたしまして、独立課税をして頂きたい、退職手当のために会社は非常に大きな負担を結局することになります。結局退職する人に税金を実際は負担させられないので、大きく会社の負担になります。この点につきましては、退職者の退職後の方途を立てさせる十分の期間を與えるために、退職手当は分離して軽い課税にして頂きたいのであります。
 次に取引高税について申上げます。取引高税につきましては、先程藤田公述人からお述べになりましたように、私もこれは今回は他に税源が十分に見付かり得なかつたのでありまするから、或る程度はこれは止むを得ないのかと思うのであります。
 併しながら四、五の段階、或は数十の段階にも場合によつては及ぶような課税をされるということは、どうも初めて課税する場合としまして、特にこれは問題だと思います。できることならば、カナダのように最終段階における一回の課税にされたいのであります。特に銀行につきましては、インター・バンクの貸借につきまして、銀行相互の貸借につきまして税金をとることになつておりまするが、これは実際上甚だ問題なのであります。金融の円滑なる運行から行きまとて、インター・バンクの取引は免税にして頂きたいというのが銀行協会としての意見でございます。それから非常に手数がかかります。銀行の取引といたしまして、一々今度は傳票が殖えまして、非常な手数になりまするので、この点につきましては、実際上の取扱いに十分理解ある取扱をして頂きたいと考えておる次第であります。
 それから最後に國税犯則者処分法について申上げます今回の改正によりまして、間接國税から直接國税をも含めて犯則者処分法を適用されるようになつておるのでありまするが、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して質問することができるということになつております。この点につきまして、これは大臣官邸におきまする税制懇談会でも申上げましたのでありまするが、金融機関に対するこの権限の行使につきましては、深甚の御考慮を願いたいのであります。そうしますと、犯則者に対する参考人として調べるだけだから、いいじやないかと言われまするが、今は平生の時と違います。できるだけ銀行金融機関に金を頂けさせたいのであります。そういう時期なのであります。日本経済といたしまして……これは銀行の利益というだけではありません。大きく見まして、銀行券が金融機関を通ぜずして運轉しておるということに、今の日本経済の悩み、日本財政の悩みも今そこから出ておるのであります。この銀行券の金融機関を通せざる回轉をできるだけなくしたいということから考えまして、金融機関に対する参考人としての取調べ、これにつきましては深甚の配慮をされたいのであります。金融機関に盛んにそれが参りますると、もはや銀行には預けない。或いは農業会にも預けない。今度は協同組合でありまするが、そういう所に預けないというような問題が起つて來はしないかということを恐れるのであります。これは何も脱税者を保護するというのではありません。先程申上げましたような、大きな点から考えておるのであります。先程申上げましたように、勤労所得税、或いは取引高税等につきまして、或いは法人税につきまして減税の意見を申上げましたが減税必ずしも減收にあらずということは、昔、私共経験いたしましたダイヤモンド税につきまして、もうはつきりしております。ダイヤモンドに十割の課税をすれば、税金を恐れて輸入するものがなかつた。併しこれを軽減したら却つて税金が上つた。税金がゼロから却つて殖えたという事実があるのであります。こういつたような関係は、あらゆる税法にやはりあるのであります。余り高率税になりますと却つて脱税があるということは、如何に取締を嚴重にしましても防ぎ切れるものではないのであります。減税が減收になるとは必ずしも私共は考えておりません。併しながら先程申上げましたような注文が、十分取り得ないという心配は確かにあります。これにつきましては、私は歳出面のことは暫く別にいたしまして、歳入面といたしましては合成酒の大量生産であります。これを大いにやらしたいと思うのであります。原料としましで主食の穀物を使うということは困難であります。從つて実際問題といたしまして、私ども考えまするのは、糖蜜を大きく輸入さして貰つて、そうして、これによつて合成酒を大きく造るということであります。或いは密造は今日百万石、場合によつては二百万石に達するかも知れないと言われておる次第であります。この百万石が税金を拂うことになれば、これは非常な大きな歳入になります。場合によつては、これによつて取引高税の如き主税当局みずから惡税と言つておられる税金をさえ止めることができるのではないかと考えられるのであります。併しながら原料は兎に角輸入でありますから、これは一つ政府も國会も一致されまして、輸入を懇請されまして、糖蜜を以て合成酒を造るという方向に行つて頂きたいと思うのであります。キユーバの如きは砂糖の非常な大増産をしております。恐らく糖蜜が余つておるのではないかと考えられます。これは情報はございませんが、ジャバ方面においては、相当に余つておるということを聞いておるのであります。この点につきまして、更に御配慮を煩わしたいのであります。
 それから全般といたしまして、税制が非常な高率になつて苦しいということは、或いは半面には國民所得の関係上、それ程でないという議論をされる方もあります。或いは國民所得に対して二三・四%に過ぎないという考え方もあるのでありますが、併しながら英國は四〇%だからまだ安いと考えられる人もあるようでありますが、現在の生計費中、食糧費が六〇%を占めるというふうな実情にある日本と、英國とは非常にその点は違うと考えられるのであります。できるだけ所得税の如きは更に更に軽減され、今言つたような新らしい財源で以て補填されたいのであります。
 私の公述をこれを以て終ります。
#6
○委員長(黒田英雄君) この程度で休憩をいたしたいと思います。午後は一時十五分から開会いたします。
   午後零時五十分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時二十二分開会
#7
○委員長(黒田英雄君) 休憩前に引続きまして公聽会を開会いたします。
 それでは武田隆夫君にお願いいたします。
#8
○公述人(武田隆夫君) 只今委員長に御指名を頂きました東京大学助教授武田であります。目下当委員会において御審議に相成つておりまする所得税法の一部を改正する等の法律案並びに取引高税法案につきまして、財政学を勉強しておりまする者の立場から若干の私見を申上げまして、議員各位の御審議の御参考に資したいと存じます。
 時間の都合上、又すでに前回において述べられました公述人の方々の述べられた点と重複を避けます意味におきまして、所得税法の改正、それから法人税法の改正、並びに取引高税法、この三つの法案に問題を限りまして、各各の法案につきまして二つの点について、合計六つの点につきまして私の考えておりますことを簡單に申述べたいと思います。
 先ず所得税法の一部改正について申上げます。この法案の改正の要点は、基礎控除、それから家族控除、勤労控除を引上げるということと、それから高額の所得の累進の刻み方を大きくいたしまして、且つその累進の率を低くするという点に要約できると思うのであります。そこで、これにつきまして第一に私が問題といたしたいと思う点は、物價であるとか、賃金でありますとかいうものの現在の状態並びに近き將來におきますところのその動向に照しまして、これらの控除の引上げは果してこの程度で十分であるかどうかという点であります。言い換えますならば、これらの控除の引上げによつて、果して政府当局がこの提案の説明にもべておりますが、勤労所得者の負担が実質的に軽減されるというふうになつているかどうかという点であります。この点を考えて見ますのに、一例を挙げてみたいと思います。例えば月收五千円、扶養家族三名の勤労者があるといたします。で、その勤労者が納めますところの税額は、現行法によりますと、私の計算が或いは間違つておるかも知れませんが一千一円となつております。で、この五千円の勤労者が、法案が改正されますと、九十一円の税を納めればいいというふうになつておるのであります。一見いたしますと、租税の負担は誠に大幅に軽減されたように思われるのであります。併しながらこの予算案と同時に改訂されますところの物價のことを考えて見ますると、この勤労者が現在と同じ程度の生活をし得るためには、少くとも一・七倍、或いは二倍、若しくはそれ以上の月給が必要であろうと思われるのであります。そういたしますると、その場合のこの勤労者の收入は八千五百円乃至一万円にならなければならないわけであります。そこで、この八千五百円乃至一万円という月收の勤労所得税がどのくらいであるかということを見て見ますと、同じく扶養家族三名といたしまして、八千五百円の場合は八百三十七円、若干少くなつておりますが、若し一万円といたしますと千百九十五円となりまして、現在よりも多くなつておるのであります。これに同じ一連の法案によつて改正を目論まれておりますところの消費秘の増徴、それから後に述べますところの取引高税というもの、これらの税を加算いたしますと、勤労者の生活、それから引かれるところの所得税というものは一向軽減されておらないというふうに私は考えるのであります。更に現在におけるところの月收五千円、家族四名、將來におけるところの月收八千五百円乃至一万円の人の生活というものを考えて見ますると、それは一人一ケ月千二百五十円、一日にいたしまして四十円とちよつと、煙草一箱の値段にも及ばないところの生活ということになつておるのであります。こういう人からも尚且つ税を取るという建前にして置きまして、果して勤労所得、或いは少額所得の軽減ということができるであろうかという点が、私の申上げたい第一の点であります。これに対しましては次のような意見があるというふうにも考えます。成るほどその通りではあるけれども、日本は戰爭に敗けて、そうしてその経済が破綻しておる。そうして敗戰によつて課せられたるところのいろいろな義務を履行し、そうして経済の復興を図つて行くためには、多額の経費が要るのだ、而も日本においては比較的少額の所得者が多いから、そういう人たちにも、やはり一本の煙草を半分にいたしましても、尚、應分の租税を負担して貰わなければならないという意見があると思います。この意見も一應尤もであると思いますが、それを認めるといたしますと、問題はおのずから第二の点に移るのであります。
 第二の点と申しますのは、改正案におきまして累進の幅を大きくする、そうしてその率を低めたというのは何故であるかという点であります。現行法におきましては最高税率は御承知のように百万円を超える部分について八五%というふうになつておりますが、改正法案におきましては、最高税率は五百万円を超える部分に対しまして百分の八十というふうに低められておるのであります。若しも日本の経済の現状から、先に述べましたように、勤労者に対しまして租税を負担しろというふうに納税の倫理を説く人々は、この場合にはどういうふうな道徳を説こうとするのであろうかという点であります。尤もこの軽減の理由といたしましては、資本の蓄積、或いは企業家の企業意欲というものを阻害しないというようにするという点が挙げられ得ると思うのでありますが、併しながらこういうふうに税率を低めましても、現在のような情勢におきまして、果して資本家が、或いは大所得者が非常に切り詰めた生活をいたしまして、その余りを挙げて資本の蓄積という部分に向けるかどうかという点には甚だ疑問があるのであります。御承知のように、この大所得者の所得は生活の必要な部分に当て得る部分と、それから蓄積をする部分と、他に奢侈的に使用される部分が非常に多いわけであります。この部分を捉える方法として奢侈税その他のいろいろな税制というものが考え得ると思いますが、やはりこの部分を最も合理的に、そうして完全に捉える方法は、累進率を高めるという方法が一番良いということは、いろいろな学者が言つておる通りであると思うのであります。又資本の蓄積を妨げておるところの最大の要因は、決して税が重いということばかりではないのでありまして、むしろ現在において最も大きな要因というものは、インフレーシヨンがますます激化して、そうして前途の見込がなかなか立たないという点にこそ求めらるべきであろうと思うのであります。そうして見ますると、税制について累進率を多少低めましても、その結果インフレーシヨンが激化し、或いは健全財政の確立ということが多少でも妨げられますならば、資本の蓄積に資するという観点も、十分にその税率を低めるという理由にはならないのではないかと思うのであります。所得税法案について私が述べたい点は以上の二点であります。尚聊か意地の惡い見方をいたしますと、この法案は表に勤労所得の軽減、小所得の軽課ということを謳つて、実はこの累進率を、所得税全体としての累進率を低めるという点に本当の目的があるのではないか、そうして又動労所得税の軽減ということそれ自体も、又物價体系の改訂ということを機といたしまして、近い將來においてますます激しくなると思われますところの賃上げの爭議におきまして賃金に含めて要求される。そうして結局資本に轉嫁されますところの所得税の部分を、あらかじめ國家の減收、即ち動労所得税の軽減ということにおいて資本のために配慮をしてやつておる。そうしてそれを改めて別の方法によつて、即ち消費税の増徴、取引高税の新設というようなことによつて、小額所得者、動労消費大衆からこれを徴收しようというふうに考えられておるのではないかというふうにも考えられ得るのであります。
 次に法人税法の一部を改正するという法案についての私見を同じく二つ申上げたいと思います。法人税法の改正の要点は、まず法人の普通所得につきましては、現行税率によりますと、内國法人が百分の三十五、外國法人が百分の四十五となつておりますのを、その差別を撤廃しまして一律に百分の三十五とする。次に法人の超過所得につきましては、現在資本金額の一割を超える場合が百分の十、二割を超える場合五百分の二十、三割を超える場合には百分の三十という三段階になつておりますのを改めて、三割を超える部分に対して百分の十、五割を超える部分に対して百分の十五、十割を超えたところの部分につきまして百分の二十という三段階にする。そうして更に、現在法人の資本金額に対しまして千分の五という率でかけられておりますところの資本課税を廃止するという点が改正の要点であろうと考えます。そこで問題となりますところの第一の点は、法人の超過所得に対するところの課税率の引下げと、それから法人の資本金額に対するところの課税の廃止との関係であります。即ち超過所得に対するところの課税率が引下げられたにつきましては、現在事業会社の資本金は、多くは戰前のままである。その名目が從つて比較的小額であるのに対しまして、利益金の方はインフレーシヨンのために大きな名目で現われておる。從つて利益率が非常に高くなつておるという理由によるものと思うのであります。若しそうだといたしますならば、この比較的小額の資本金に課せられますところの、いわゆる法人の資本に対するところの課税の方は、現在の率よりも更に引上げられてもよいというふうに考えられるのであります。更に立入つて申しますれば、先程も公述人の方が申述べられましたように、編制改革というような姑息なる手段でこの問題を解決するよりも、むしろ企業の経理、或いは企業に対する税のかけ方そのものを整備して再出発するというような方法が講ぜらるべきではなかろうかと思うのであります。
 更に法人税法の一部改正について、私が問題といたしたいところの第二の点は、法人税法をこのように改正するところの理由の一つとして、外資導入に資する、或いは外資導入の受入態勢を作るという点が挙げられて、それが格別に怪しまれておらないという点であろうと思います。日本の経済の再建復興のために、外資の援助が必要である。そうして外資に依存するところが非常に大きいという点につきましては、私もこれを認めるに決してやぶさかではございません。併しながらその外資によつて日本の経済を復興するためには、日本の経済を全体として見まして、最も必要な部分に最も有効な方法によつて導入することが必要であろうと思います。
 そうして、そのためには、そういう会社なり企業なり事業に対しましては、もつと思い切つた優遇の措置が講ぜられてもよいのではないかというふうに考えられるのであります。併しながらそうした場合に、その導入の対象となりますところの企業、事業は、日本の経済全体としましてもせいぜい百か二百か、或いは多くて三百ぐらいのものではないかと思うのであります。それらの企業を優遇しなければいけない、好條件を與えてやらなければいけないということに籍口いたしまして、口実といたしまして、法人全体が、即ち日本全部を採りますと、何百か或いは何万とあるところの会社が一律に法人税の軽減ということを要求するということは、これは或る意味では便乘であり、或る意味では外資導入がどういうふうな形で行われなければならないかということをぼやかし、曖昧にするということになりはしないかと思うのであります。法人税法の改正の案につきまして私の考えている点を二つ申上げた次第であります。
 最後にこの度新設されますところの取引高税法について、私の考えをこれ又二つ申上げたいと思います。取引高税法案というのは、所得税、法人税等におけるところのいろいろな措置によりまして、租税が減收になる。それをカバーするために、主食その他極く少数の特定の物品を除きまして、殆んどすべての貨物、或いは商品と労務のサービスの取引に対しまして、その各段階毎に一%の税をかけるというのが、この法案の趣旨であろうかと思うのであります。取引高税の特質を考えて見ますると、この租税は、外の租税、即ち所得税であるとか、法人税であるとか、或いはいろいろな消費税と違いまして、その租税の負担の分配の範囲が國家によつて予め強制的に決定されておらなくて、その分配のすべてを資本主義的な市場價格に委ねているという点であろうかと思います。言い換えますならば、所得税ならば一定の金額を超ゆるところの所得であるとか、或いは消費税であるならば或る物品の生産者販賣者、消費者のそのいずれかであるというようなふうに、その負担の分配の範囲が予め税法によつて強制的に決定されているのでありますが、取引高税におきましてはこの負担分配の範囲というものが全くマーケットにおきまするところの取引の間に間に、何処へ落付くかということが全然放任されておるという税であるというふうに了解することができると思います。このような特質を取引高税が持つておりますために、それは所得税であるとか、法人税、消費税のように、いろいろな負担分配の範囲が多かれ少なかれ國家によつて予め決定されておりますところの各種の租税を、現在以上に増徴いたしますことが困難になつて参りました時代、若しくはその増徴ということが資本主義的な支配勢力に取りまして好ましくないという場合に、創設、採用されて参つたのであります。御承知のように、これは一九一八年ドイツにおいて初めて創設されまして、その後殆んど世界の各國において採用されたのでありますが、その裏面においてはそういう事情があるのであるというふうに私は了解しております。言い換えますならば、取引高税の採用、創設ということは、例えば高度の臨時所得税によつて示されておりますような租税負担の平等というようなデモクラティックな要求を、大胆率直に表明することができなくなつたところの現代資本主義國家の財政政策を、最もよく端的に現わしておるものであるというべきであろうかと考えるのであります。國会には社会主義或いは修正資本主義というようなものを標榜する政党もおありというふうに聞いておりますから、このような財政政策につきましていろいろと御意見もあると思うのでありますが、私は取引高税の右に述べましたような特質から直接由來すると思われますところの社会的、経済的な影響を、二つの点について述べて見たいと思うのであります。
 即ち取引高税について私が問題にしたいところの第一の点は、この取引高税が消費者、特に小消費者に及ぼすところの影響の問題であります。すべての取引高税は、その課せられましたところの貨物或いは商品乃至サーヴィスというものの價格の騰貴という形で消費者に轉嫁をされ得るところのチャンスを持つておると考えることができます。併しながらそれが実現されるか、どうかということは、その商品なりサーヴィスの需要の彈力性、それが値段が高くなつたために消費が節約され得るかどうか、値段が高くなるにも拘わらずどうしても買わなければならない商品であるかというと、その商品乃至労務に対しますところの需要の彈力性の対象によるというふうに考えることができます。ところが先程申しましたように、現在の勤労者は殆んどその月收の全部を日用の生活の必需品に対して支出しておる。そうしてそれでも尚且つ足りないというような状態であります。そこでこの勤労者、小消費者が買いますところの商品には、すべてこれは取引高税が含まれて彼に轉嫁されるものと考えなければならないと思うのであります。これに反しまして大所得者、高額消費者は、その消費物件の中にはいろいろな奢侈的な商品もある。不必要なサーヴィスもある。そこでそれらのものについては轉嫁の余地はないというふうに考えることができます。先程他の公述人の方から取引高税について、この税のかからない物資の範囲を拡大すべきだという御意見がありましたけれども、その部分を拡大すれば、税收を上げるという点から見れば、殆んど取引高税を課する意味がなくなる。又そういう免税の範囲を今のように殆んど主食というものに限つて置きますと、これは小消費者については極めて轉嫁されやすい税であるというふうにならざるを得ないのであります。而も取引高税につきましては、その取引の各段階に課せられるようでありまするから、これらの税が累積、積重なつて参ります。そうしてその勤労者乃至小消費者に轉嫁される税額というものは一%ではなくして三%或いは五%というような額が轉嫁されざるを得ないというふうになつておるのであります。ドイツ、或いはフランス、アメリカの統計によりますと、最高は六・六%というような課税率になつておると承知いたしておる次第であります。以上述べましたのは、取引高税が少額の消費者に対してどういう影響を及ぼすかという点、それについての私の疑問でありますが、第二の点は、この取引高税が小営業者、即ち中小の商業者に及ぼすところの影響であります。これにつきましては、取引高税と、それから利潤との乖離と言われておるところの現象を考えてみる必要があると思うのであります。この取引高税は御承知のように販賣の総額、販賣高に対して課税されるものでありますけれども、その営業の純益が異なるに從いまして、納税後の純益に対しますところの課税の割合は著しく異なつて参らざるを得ないのであります。これを例えて申しますならば、販賣総額がいずれも百万円の二つの営業があるといたします。取引高税は一%でありますから、一万円であります。ところがAの方の純益は五万円、Bの方の純益は三万円といたしますならば、純益に対しますところの取引高税の割合は異なると申さなければならないのであります。ところが御承知のように一般に少額の営業、小営業者ほど資本におきましても、その他の市場に対するところの知識等におきましても、劣つている。そうして競争力が弱い。殊に我が國におきますように、小営業者の数が非常に多いと、そのためにその間の競争が非常に烈しい。又金融上その他、小営業は問屋であるとか製造者であるとかいうようなふろに非常に依存するところが多いというところにおきましては、どうしてもこれらの小営業者の純益というものは少くならざるを得ないのであります。そこで、こういうふうに同じ額の同じ率の取引高税が課せられましても、その純益に対する割合というものは、負担は非常に重くなつて参るわけであります。そういう方面から取引高税は小営業者を圧迫するという傾向が強いと思うのであります。又前に述べましたように、取引高税が各段階に課せられる、そうしてそれが累積する、積み重なつて來るということを申しましたが、これを回避し、そうして商品の價格の中に含まれますところの租税の部分を一%でも減らして、そうして競争上有利な地位を得ようという運動が、この税が課せられますとどうしても起つて参ります。そうして、そのためには合法的に企業が縦に合同をするということが盛んになる。或いはフランスにおいて盛んに行われておりますように、半非合法的に商品を取引しても、それを賣買という形式をとらずに、商品を預かるというような形式をとる。或いは賣買の段階を少くするために、ごまかすというようなことが非常に盛んになつて來る。乃至は生産者、製造者の直賣というような制度が行われて來る。サーヴィス・ステーションを設けて生産者が直接物を賣るというような点が多くなる。これらの点からも小営業者は競爭場裡より敗退せざるを得ないわけであります。取引高税法案につきまして、私の考えておる点をやはり二つ申述べたわけであります。以上私は三つの税につきまして、各々二つの点、合計六つの点を申述ベましたわけであります。これを要約いたして見ますれば、資本に比して労働の負担が大きい。大所得者、大営業者に比較して小所得者、小営業者の負担が今より多くなりはしないだろうか。併しながらこの小額所得者或いは小営業者、勤労者の負担が多くなるという点から、私はこの二つの法案が惡いというわけではないのであります。そういう勤労者であるとか或いは小営業者の利益を代表してその立場から公述される方は、おのずから外にあろうかと思うからであります。
 私が申上げたい点は、このような税制を改革する、このような影響があるところの新税を創設すること、それ自体の中に、健全財政の確立を妨げる要素がある、インフレーションを今よりも激化させ、そうして日本の経済の回復を遅らすところの要素がある。そうしてそれらの間に非民主的な或いは反民主的な勢力が擡頭し、それが伸長するのを助長する要素を含んでいるのじやないかという点であります。即ち以上六つ述べました点をもう一度要約いたして見ますと、租税制度の重点が、こういうような改革によりまして、直接税から間接税中心に移つて來つつある。而も所得税の累進率が低められつつある。そこで税制全体として見ますならば、非常に逆進的な租税制度になるのではなかろうかということであります。そのことは、どういうことか申しますと、國民の一人々々が負担するところの租税の額が、国民の租税負担を國民の総数で割つた、即ち女も、男も、赤ん坊も、年寄も、全部含めて國民の租税負担額を割つた平均税率に段段近くなつて來るということになる。この國民の租税負担額を、女も男も赤ん坊も年寄も含めた國民全体で割つた國民一人当りの租税額というものを求めて、これを生計費によつて補正いたしまして、実質的な國民平均租税率というものを出して見ましたところによりますと、昭和二十二年におきましては三九・六%という非常に高い率になつております。國民はその所得の四割を租税として取られているという勘定になるわけであります。そうして税制全体が逆進的になり、惡平等的な租税負担が國民に課せられるというようになつて参りますと、所得百万円の人も、所得十万円の人も、所得五万円の人も、同じく四割の税金を段々拂わなければならないというようになつて参る。そういたしますと、所得百万円の人が四十万円の税を納めるというのは非常に容易になりますけれども、所得五万円、十万円の人が二万、四万の租税を拂うと、その後では到底食つて行けないという状態が起つて來る。小額所得者、中額所得者というものは没落せざるを得ないのであります。この小額所得者或いは中額所得者の没落ということは、勤労意欲の向上ということが、日本にとりまして残された唯一の経済復興の原動力であるという、現在の生産の復興ということを、それだけ遅らすということになる。或いは又社会的に考えますと、それらの中小所得層の没落という間隙を縫いまして、非民主的な勢力、反民主的な勢力が擡頭する危險があるということに外ならないと思うのであります。又税制の中心が間接税中心に移行いたしますと、その收入の金額と時期とを正確に予測することは極めて困難になる。そうして又それを完全に捕捉し、徴收することも又容易でなくなるということになつて参りますことは、例えば「たばこ」新生の例を見てもよく分る。或いは又遊興飲食税であるとか、物品税というものについて極めて脱税が多いということからもよく分ると思います。このように税の收入額についての予測が困難になり、その徴收が不確実になる。何時入つて來るか時期が分らんということになつて参りますと、たとえ予算の面において、收支が均衡するように組まれておりましても、その間におのずから「ずれ」が生じまして、その間隙からインフレーシヨンが再び激化して参るというようなことが考えられ得るわけであります。要するにこの税制改革案を以てしましては、日本のインフレーシヨンは、益々激化する。そうして経済の回復は遅くなり、而も日本がこれから平和な民主國家として再建して行こうとするようなことを妨げるような勢力なりが、漸次大きくなつて参る危険が、中にあるということであるのであります。
 以上非常に簡單に申述べましたような理由によりまして、私はこの両法律案をこのまま実施することにつきましては、大いに疑懼の念を持つておるのであります。委員各位が更に更に愼重なる審議を加えられんことを切に希望する所以であります。私の公述はこれで終ります。
#9
○委員長(黒田英雄君) 次に永野順三君。
#10
○公述人(永野順三君) 私は産業復興会の永野であります。私は專ら取引高税のことについてお話します。そうして取引高税が、税金が物資騰貴の支柱だという意味で、物價改訂の問題について話したいと思います。ちよつと身体の調子が悪いから腰掛けさせて頂きます。
 一割五分前後の動労所得税は、決して苛斂誅求ではないという意見があります、このような見解に立つ人々にとつては、今度の一%の取引高税も亦取るに足らん間接税であつて、問題とする程のものではないと言うに違いありません。正にその通りであります。若しも一ケ月の賃金收入で自動車一台が購入できるような高い賃金と、安い生活必需品價格との下においては、一割五分前後の勤労所得税は決して苛斂誅求ではないのであります。一%の取引高税は取るに足らない間接税なのであります。又裏口営業の御常連や、闇成金、とりわけ毎月毎月の生活費に数百万円を投じ得るような人々にとつては、勤労所得税も取引高税も問題にならないのは当然であります。だが、ただ露命をつなぐだけの、食うための費用が全生活費の七割乃至八割に達しておるという人々の生活においては、而もこの生活費の二割乃至三割が「たけのこ」生活によつて補足されざるを得ない人々の生活においては、そうは行かないのであります。
 このような人々にとつては、一割五分前後の動労所得税は「たけのこ」生活をやるかやらないかの岐れ路なのであります。若しも動労所得税がなかつたならば、これらの人々は「たけのこ」生活なしでも何とか生活することができるかも知れません。このような人々にとつては、僅か一割五分前後の動労所得税が血の出るような苛斂誅求となるのであります。このような人々にとつては、たつた一%の取引高税が死の恐怖を覚える苛斂誅求となるのであります。元來我が國の間接税は、勿論專賣益金その他の間接税的なものを含めまして、税收入の全体に占める割合が特に大きいばかりでなくて、この間接税の負担の割合が、從つてその重圧が生活水準の低下、收入の減少に連れて益々増大し、愈々強化するように仕組まれて來たことは、内閣統計局が大正十五年、昭和二年の家計調査報告を基礎としてはつきりと立証しておるところであります。然るに、このような特質を持つ我が國の間接税は、戰争を通じて終戰後は更により甚しく動労國民の生活を圧迫しておるのであります。取引高税は正にこのような間接税の上に積み重ねられようとしておるのであります。追加されようとしておるのであります。取引高現は断わるまでもなく、源泉課税による動労所得税と共に、第一次世界大戰の産物であつたのであります。この両者は最も露骨な封建的な租税形態であり、動労國民大衆に対する極端な重税であり、苛斂誅求であり、民主主義を冒涜する租税制度であるとして、決定的な非難を浴せられて來たものであることは、今更説明するまでもないところであります。だからこそ戰争中のあの軍閥ファツシヨ内閣さえも動労所得税は採上げたが、この取引高税は余りに國民生活を圧迫し過ぎる苛斂誅求であるというので、幾度か問題にしながら遂に採上げ得られなかつたことは、國民の記憶に尚新たなところであります。なぜ取引高税は戰爭中においてさえも遂にその課税を差控えざるを得なかつたところの最悪の租税であるのでしようか。動労所得税が勤労收入の天引きであり、人頭税であり、國家による搾取の追加であるのに対して、取引高税は消費生活の全面に亘る間接税であり、一切の有りとあらゆる生活必需品に対する課税であり、逆の方向よりする勤労國民の追加搾取に外ならないからであります。取引高税は形を変えた逆の方向からの勤労所得税であり、取引高税によつて勤労所得税が二倍にされようとしておるのであります。こうした取引高税の本質は現在には次のように具体化されておるのであります。
 第一に皆さんも仰しやつたように、取引高税の一切の負担者は最終の取引者としての消費者であります。勤労國民であります。だから、たつた一%の取引高税が、最終の取引者としての消費者勤労國民にとつては決して一%の問題ではないのであります。有りとあらゆる生活必需品に対する、それ故に全生活に対する一割五分前後乃至二割にも達するとえらい間接税なのであります。武田さんはドイツでは六・五%が最高だと言われましたが、私は恐らく日本では一割五分乃至二割に達するだろうと思います。というのは、取引高税は製造業者から、問屋から、卸賣商人、地方卸賣商人から小賣商人、消費者というこの各取引段階において、それぞれ一%の間接税になるのでありますが、この製造業の前にまだ取引があるのであります。製造業者の原材料の取引がその上に繋がるのであります。而もこの原材料の製造業者の前にも、又その取引原材料の取引が繋がるのであります。我が國のような流通過程の複雑な迂回的な、而も特に問屋制的な、下請的な中小工業と、家内工業の支配的な経済機構の下においては、最終の取引、即ち消費者としての勤労國民が購入する生活必需品の價格の中には、恐らく二十回、三十回の取引高税が含まれていると考えなければならないと思います。だから取引高税は我が國においては二割、三割に及ぶだろうと思います。勿論大資本の一貫作業や、デパートというような組織的な販賣網を備える大経営にとつては、最終の取引者たる消費者、即ち勤労國民の手に渡るまでの取引回数は、著しく縮小されていることは勿論であります。從つて取引高税の課税はそれだけ少くなるわけであります。そこで取引高税は更に次のような注目すべき特徴的な間接税となるのであります。即ち第二に、取引高税は独占利潤を拡大し、独占價格を強化する。大資本の独占的機能に基いて、迂回的取引の排除による取引高税の節約は、決して大資本の生産品價格をそれだけ安價にするものでもなければ、又デパートやチエーン・ストアの販賣價格をそれだけ安くするものでもありません。むしろ節約された取引高税は独占資本の独占的超利潤に追加されるのであります。独占價格に奉仕するのであります。かかる取引高税は、それ故に、逆に非独占的な産業資本家や、中小商工業者を圧迫するのであります。独占資本は、取引高税によつて、中小商工業者や産業資本家に対する生殺與奪の権を與えられることになるのであります。まさに産業資本家や中小商工業者の生産と販路を奪うことによつてのみ、独占價格を維持し、独占價格を確保し得るような、丁度そのときにおいてであります。
 第三に、取引高税は、闇とインフレを助長し、促進する。何故ならば、闇取引には取引高税はかからないからであります。而も取引高税は物價を全面的に大幅に吊り上げる機能を持つていることは、すでに説明したところであります。
 最後に、取引高税は租税收入として実現するよりも遙かに大きな生活圧迫を、特に勤労國民の生活に加重することを忘れてはなりません。ここに取引高税の非國民的な、非民主的な最大の惡税たる所以があるのであります。從來の個々の商品に対する間接税は、それだけ國民生活を圧迫しておりますけれども、併し課税額だけは國庫收入となつたのであります。だが取引高税は極端に廣汎な脱税行爲が行なわれるばかりでなく、又恰も関税の如き役割を演ずるのであります。取引高税によつて保護されるのは、外ならん独占資本の独占價格のみであると言うことができるのであります。從つて勤労國民は取引高税が國庫收入となる金額の幾倍、幾十倍の金額を、取引高税によつて負担せざるを得ないのであります。それは闇資本家と、闇屋と、独占資本家の懐の中に入つて行くのであります。以上は取引高税の我が國における一般的な解釈に過ぎません。当面の取引高税の重要な意義は、本來こうした性質の取引高税が、具体的には前代未聞の厖大予算の財政的支柱として取上げられようとしておるところにあり、而もこの厖大予算が外ならん物價改訂を前提條件として、その基礎に立つて編成されんとしておるところにあるのであります。だから当面の取引高税は物價改訂の上に展開され、厖大予算の実施の過程においてその機能を発揮して行くのであります。取引高税の前述の四つの影響と結果とは、極度に尖鋭化せられることになるのでありますことは、更に改めて指摘されねばならないのであります。今國会に提出されておる前代未聞の厖大予算がの國民生活を聊も豊かにするものではない。國民生活の何等の改善をも企図するものではなく、むしろ國民生活を不安と恐怖のどん底に突き落そうとしておることについては説明を差控えます。だが予算が膨脹すればする程、物價はそれだけ騰貴するものであります。物價騰貴の傾向はそれだけ促進されるのであります。だからこそ過去においても膨脹予算の実施のためには、何時でも低物價政策が採られ、物價騰貴を抑えるための手段が採られざるを得なかつたのであります。然るに現在の國会に提出されておる前代未聞の厖大予算は、驚くべきことには前代未聞の物價の大幅吊上げの基礎の下に編成されておるのであります。前代未聞の物價の大幅吊上げとは何か、物價改訂が即ちこれであります。
 何故物價改訂が前代未聞の大幅吊上げなのか、物價改訂は現在尚、具体的な内容を明示されていないのに、どうして前代未聞の物價の大幅吊上げであると断定し得るのか。それは鉄道運賃の値上率の大幅さによつて推定することができる。特に三・一物價体系と新物價体系とを理解することによつてこの三・一物價体系と新物價体系との思想的な、本質的な繋がりを延長することによつて、取り分け芦田内閣の外資導入の基本方針を通じてはつきりと断定することができるのであります。三・一物價体系は戰前に比較して物價を十倍に、賃金を五倍にということを根幹とする公定價格の改訂であつたのであります。三・一物價体系は終戰以來崩壊し、混乱し続けた物價体系に対して、第一に物價と賃金の開きを定着化し、この両者の拡大化の方向、即ち実質賃金の低下傾向を確立したのであります。第二にインフレによる物價騰貴の主導性を農産物價格から剥奪しようとしたのであります。というのは、食糧危機に基く農産物價格の上昇によつてリードされていた物價騰貴だつたからであります。三・一物價体系までの、物價騰貴までの本質です。
 このような三・一物價体系が預金封鎖と五百円の枠によつて國民に強制されたのであります。だから労働者の賃金は物價騰貴に追付くことができなくなつてしまつたし、農民はこのとき以來供出價格では生活することができなくなつて、公然と農産物の闇販賣をしなければならなくなつたし、中小工業者の経営難が始まつたのであります。言葉を換えて言えば、三・一物價体系は、独占資本の超過利潤獲得のための、特に独占價格の再確立を用意するものではありましたが、決して過小生産から拡大生産へ轉換し、インフレを喰止め、危機を乗切るための物價体系ではなかつたことは、その後の経済事情が完全にこれを裏書しております。
 轉じて新物價体系は千八百円ベースを基礎として、戦前に比較して「物價を六十五倍に、実は百倍に、賃金を二十七倍に」を根本原則とする物價体系だつたのであります。從つて農工價格の鋏状價格差の完全な復活と、独占價格の完全な確立とを実現する物價体系であつたのであります。かくて新物價体系は労働者の飢餓状態を一層促進し、正に緩慢な餓死状態に陷れました。農民は農産物を闇賣りしても、肥料代と農機具價格と税金とによつて吸上げられ、農業経営は極度に困難なものになつて行つたのであります。中小工業は急速に破産し始めたのであります。だが生産は一向に拡大化の方向は採らなかつた。而も停滯しかけた物價騰貴は急角度を以て上昇し、インフレは新たな方向ヘ再出発的なコースを取つて躍進し続けたのであります。新物價体系が発表された明けの月の物價の騰貴は、実にそれまでの物價騰貴の二倍乃至三倍に達していたのであります。統計は四割の債務騰貴を一ケ月のうちに示しております。
 これが三・一物價体系から新物價体系を通じて、今日に至るまでの物價変動と、かかる物價変動の國民生活に與えた影響の実相であります。而して当面する物價改訂は、かかる物價変動、かかる國民生活の惡化を極端に拡大し、強化することを至上命令とする物價体系の再編成であると言わねばなりません。何故ならば、当面の物價改訂は独占利潤の二重化、二倍化を実現する物價体系の樹立を根本目標としておるからであります。というのは、当面の物價改訂は外ならん外資導入の止めの物價体系であるからであります。
 計画されておる外資導入とは、單なる資本輸入一般ではなく、独占資本を通じての資本輸入であります。かくて我が國の独占資本は、自己にとつて独占的超利潤が必要であるばかりでなく、導入外資に対しても独占的超利潤が更にその上に必要となつて来たのであります。何故ならば、我が國の独占資本は導入外資に対しては独占的超利潤を支拂わなければならないからであります。
 かくて二重の独占的超利潤、二倍の独占的超利潤を打出す超独占價格が、外資導入のためにはどうしても必要となるのであります。だが、このような超独占價格を可能にするためには、物價の全面的な吊上げ、特に極めて大幅に物價の全面的な吊上げが不可欠の條件であります。このことなしには、二重の独占的超利潤を含む超独占價格の存在を可能にするような物價体系の再編成、即ち総價値の分配替えは、絶対に不可能だからであります。
 それ故に厖大予算の前提條件たる当面の物價改訂は、三・一物價体系や、新物價体系とは比較にならんほどの極度に大幅な物價引上であることが断定されざるを得ないのであります。厖大予算の前提條件としての物價改訂とは、將にかかる性格を初めから予定されているのであります。かくて厖大予算の実施の前に、既に國民が想像することができないほどの前代未聞の物價の大暴騰が準備されているのであります。國民の死命を制するような物價改訂が、厖大予算の蔭に隱れて國会をこつそりと通過しようとしているのであります。私はこのことを特に強調しなければならない。特に國民生活の破局は迫り來りつつあるのであります。
 このような前代未開の物價の大暴騰の上に、前代未聞の厖大予算が展開されたならば、國庫收入はもはや紙幣印刷機のみに頼るほかはないのであります。國民の租税負担力は完全に減殺されてしまうでありましよう。
 將にかかる状態の下に取引高税は、前述の一般的な特徴と性格とを強化しようとしているのであります。極端に欠乏した勤労國民の生活の二割前後を吸上げるのであります。二倍の独占的超利潤を保障する超独占價格を更に一層吊上げるのであります。闇とインフレを更に一層助長するのであります。而も取引高税は、國庫收入を増大するよりも更に幾十倍かを、國民の台所から闇屋と独占資本の金庫の中に運び込むのであります。だが、このために七千万の同胞は生活苦にのたうち廻らざるを得ないでありましよう。恐らく一千万の同胞は餓死にさらされるでありましょう。このような結果を招く取引高税に対して私は反対します。特にこのような取引高秘の破壊的作用の根抵をなすところの、厖大予算の蔭に隠れているところの物價改訂に対して、私は絶対に反対であります。
 これで私の公述を終ります。若し許されるならば御質問に應じたいと思います。
#11
○委員(黒田英雄君) 次は加川義一君にお願いします。
#12
○公述人(加川義一君) 今回政府において立案されました税法改正並びに取引高税の規定につきまして、私達税務行政の第一線に携わる者の立場から、一言意見を述べさして頂きたいと思います。
 まず今回の改正を三つの点から考えてみます。第一は現在の租税制度の中における今回の改正、即ちこの改正案が現行の租税体系の中に採入れられた場合、收入と財源とはどういう工合になるかという点であります。第二には税務行政の面から見た改正の問題、即ち徴税機構の現状から見て、この改正案はどういう影響を持つているかということなんであります。第三には前の二つの点を考えました後、國家財政、國民経済の全体の面から見た場合、この改正がどんな意味を持つているかという点であります。
 まず第一の点について申しますならば、現在の租税制度が非常に複雑であり、且つ大衆課税的な要素を多分に持ちつつあるということが言えると思うのであります。複雑な状態と申しますのは、明治末期以來、度々の税制改革によつて整理されたとは言いながら、尚現在の租税体系、殊にこれは地方税の分野においてでありますが、多くの税種がまだ存在し、これが一定の基準に則つた税体系に整備され、確立されていないという点であります。又大衆課税的と申しますのは、御承知のごとく最近の税制が、直接税より間接税の分野にその收入の中心を移しつつあるということを指すのでありまして、このような消費部門に財源を求める、そういう結果が大衆の税負担を増大するということは、前の公述人の方々も御指摘になつたように、皆樣もすでに御存じの通りであります。税制がこういう現状にあるとき、今回の改正案の内容を見ますと、大体所得税、法人税等、直接税部門におきましては軽減の傾向があり、物品税、酒税等間接税部門においては大幅に増徴されるというような傾向にあります。このことは前に述べましたように、間接税を中心とした大衆課税的傾向が益々強化されるということになりまして、果して大衆の中にこの改正に上り増收を見込まれるだけの余裕財源があるかどうか、そういうことを考えねばならないと思います。政府が今回発表する数字によりますと、所得税の改正による減收の主なものは、給與所得で約四百億、営業所得で百六十五億、農業所得で百四十億等であります。合計七百六十三億円の減收という見込みであります。併しこれは負担の軽減率を見ますると、源泉徴收分では所得の増加に比例しておる、即ち收入の多い者ほど軽減率が有利になつておる。又申告納税の分即ち事業所得、農業所得等の分におきましては、大体年收五十万円から百万円の程度の階層が一番軽減率が大でありまして、それ以上の部分はやや逓減の傾向があるように見受けられます。この結果から見ますると、何れにいたしましても、小額所得者、動労大衆或いは中小企業者、貧農、そういうふうな人人においては負担軽減の割が悪いということが言えると思うのであります。更に先程武田助教授から御指摘になりましたように、こういつた勤労所得秘の軽減と政府が稱しておりますことが、名目的にも実質的にも決して負担の軽減にはなつていないという点も併せて指摘できると思うのであります。
 次に増收分総額約二千四十億円の内容を考えて見ますと、國民一人平均約二千五百円の負担増加となります。而もこの増收の大部分が消費税、流通税部門から賄われる。即ち大衆課税的な税法改正によつて充されるということでありますから、大衆の負担増加は著しいものがあると考えられるのであります。更にこの内容に立至つて行きますと、物品税の改正の中において奢侈品の税率を引上げ、生活必需品の税率を引上げるというふうな点が見受けられます。この改正が大衆課税の強化であるということをはつきりと申上げることができるのでありまして、政府がこの改正のときに発表しておりますように、かかる贅沢品に対する奢侈税の税率は百分の百を百分の八十に、それ以下百分の八十を百分の六十というふうに軽減している。これに対してもその課税が適正でないと稱しておるのでありますが、それならば入場税に対して百分の百五十、十五割の課税をしておる、この税率が果して適正であるかどうか、非常に疑わしいと思わざるを得ないのであります。又物品税等の流通税の上に更に取引高税を設けて二重課税をするということが、租税原則の上から見まして果して公平であるかどうか、幾多の疑問の余地があると存ずるのであります。さような問題は詳しく論じておりますとまだ沢山ありますが、一應このような改正をして増收を図る財源はどうなつているかを檢討して見たいと思うのであります。
 政府の発表による二十三年度國民所得の推計は一兆九千億となつておりますが、この所得分布の方から見ますと、勤労所得が三六%、事業所得が六一%というふうに見込まれており、課税見込所得は勤労所得で二千六百四十億、事業所得においては四千七百二十億というふうに発表されておるのであります。これを二十二年度における所得分布に見ますると、勤労所得は二十二年度では三二%、事業所得は六四%という数字になつて現れております。インフレの進行過程中にありましては、勤労所得と事業所得の國民所得の分布の中にある比率は、インフレの進行に比例して段々差が開くということが常識的に考えられるのであります。然るに政府が二十二年度よりも二十三年度において勤労所得の所得分布が増大し、事業所得の分布が軽減しておるというふうに発表しておる、そういつた計算根拠において非常に疑問の感を持つのでありまして、ここにおいて政府の國民所得の推計に大きな誤まりがあるのではないかと考えられるのであります。このような誤まつた國民所得の推計の上から出されているところの税收というものが如何に大きな意味を國民の生活内容に持つて來るかということは、申上げるまでもない点であります。
 次に事業所得、即ち申告納税分の勤労所得源泉徴收分の徴收実績の面から申しますならば、昭和二十二年度においては申告納税分は大体納税の期限年度末には大量に納入されるのでありまして、その間の物價騰貴の状況を考えますと、大体において申告納税分においては実質利益が二百三十二億程事業所得者において有利になつているということが指摘されるのであります。こういつた点と、更に二十二年度の徴收実績が、收納決算見込において、源泉徴收分においては四一%当初の予定額よりも増徴となり、申告納税分においては僅かに二%しか増徴されていないという点を考え合せて、更に國民所得の計算が誤まつているのではないか、そういつた徴收実績の面を考えての計算をいたしますと、事業所得の財源の中に、この改正法を適用した場合、尚五百億程度の増收が期待されなければならないような氣がいたすのであります。それは政府がこの事業所得における課税見込所得を過小に評價したのか、或いはその間における脱税を見込んだのか、或いは税收の時期的な「ずれ」を見込んだのか、いずれにしても増收実績或いは生産指数、或いは物價騰貴の場合ということを考えましても、この改正案で以てこういつたような数字を出しておるということは、非常に我々といたしましては不可解な点でありまして、この改正案がこのまま実施されるならば、財源の点で勤労者、中小企業者、農民には、その担税能力の限界点以上のものを要求しているものではないかと疑われるのであります。
 次に第二の点について申して見ますと、現在の税務行政の面においては非常に官僚的な色彩が濃厚であるということが、徴税事務や收支の面で言い得るのであります。例えば昨年度の事業所得に対する割当課税の場合の如き、一方的な課税目標の数字を押しつける、そうしてこれを徴税目標額であるとしたこと、或いは何ら合理的な調査機構が確立されていないままに所得額を決定する、そういつた面、それからいろいろの不合理な事実が上げ得るのであります。このことは先日G・H・Qの農業課長が、日本においては農業所得に対する現在の課税は不適当であると指摘されている通りでありまして、その点大いに改正さるべき余地が存在するのであります。
 このような機構的な欠陷の上に、更に税務関係人員の不足、待遇の劣悪という條件が加わつておるのであります。この点につきましては先程公述人の方から指摘されたとも思いますが、尚詳しく申しますならば、人員の不足ということは、二十二年度においては、大体定員の半数をやや越している程度のものしか税務業務の方においては從事していないのであります。こういつた人員の不足が、労働の強化、調査の不完全、それから事務の澁滯ということを招來し、待遇の劣悪というものは税務官吏の質の低下となり、又人員補充の障碍となつておるのであります。現在の税務機構がこのような状態にありますとき、政府が立案されました今回の改正案をそのまま呑込んで、果して所期の歳入を確保することができるかどうか、甚だ疑わしいということが言えるのありますして、我々実際税務事務に携つておる者の立場といたしましては、絶対に不可能だと申上げたいのであります。何故ならば徴税技術の面から考えましても、以上のような惡條件の下にあつては、收入の増加を図ろうとすると、どうしても財源の捕捉が簡單にできる大衆課税的な税種による増徴の結果となるのでありまして、このことは二十二年度の徴收実績、先程申しましたように、收納決算見込の数字に照しても明らかなのであります。即ち租税総額においては、予算額の三八%の増收となつておるのでありますが、この内容を見ますると物價騰貴等による自然増收を考慮いたしましても、尚所得税收入の源泉徴收分、織物消費税、酒税等、税の大衆負担の部分の増收が著しく目立つておるのでありまして、何よりもこういつたような、右の事実を雄弁に物語つておるのであります。
 こういうことを深く考えますと、この改正案が施行された結果は、納税問題について昨年度以上の大きな融合問題が起り、いろいろの騒ぎが各地に頻発して、その結果は予測し得ないものがあるのではないかと、実際上の経驗から申上げることができるのであります。こういつたとき、税務の第一線事務に從事する者が、身体的な危險が増大し、又過労の結果による犠牲者が増加するというようなことも予想されるのでありまして、我々といたしましては、昨年のような強権の発動によるところの徴收というようなことでは、良心的にも実務的にも、この税制を完全に実施できないという結論に達するのであります。政府はこれに対して國税犯則取締法を設置して、強引に徴收実績を確保しようとしておりますが、今日大口所得、闇所得というものの脱税が巷間やかましく論議されておる時、これに対する具体的な措置を講じないでおいて、ただ表面的な税法の改正を以て收入増加を図ろうとする、この政府の態度は、現状においては何の益もなく、却つて害があるばかりだと申上げるのであります。
 あの封建的な徳川幕府の專制政治の下におきましても、苛斂誅求に対する百姓一揆が頻発したということを考えるならば、結論はこういう國税犯則取締法の設置よりも、現行税制の根本的な立直し、改正というものにあるのではないかと考えられるのでありまして、この意味におきましてもこのような圧迫的な取締法の制定に対して反対せざるを得ないのであります。更に脱税の問題を考えますと、今回の税制改正の中で、法人税の軽減ということが出ておるのでありますが、この法人税の軽減というものは、結局個人事業、個人営業より法人組織への所得の逃避という結果になつて來るのであります。現在の法人組織が非常に脱税的な可能性の多い組織になつており、又それに対する調査機構というものが、非常に不十分であるという事実を考えるならば、個人企業が法人組織になつて、それによつて脱税の機会を増大しようとすることは、容易に考えられるのであります。又新たに設置される取引高税の問題を考えてみますると、取引高税については先程武田助教授の方から非常に分析的な批判がなされておるので、詳しい点は申上げませんが、取引高税は政府が予定しておるように、その納税において正確なものが出て來るというならば、結局この取引高税の納入によつてその所得の調査の基礎になるということが考えられるのでありまして、現在のように納税思想が惡化しておる時、業者はこういつたような、自分の所得の基礎になるというような資料を、みずから提供するということは考えられないのであります。どうしてもそこに脱税行爲が生れて來るのではないかと考えられるのであります。而もこの取引高税が四十の業種目に亘る、非常に廣汎なものであるということは、徴税事務、徴税手続或いは調査手続の上において、非常に事務量の増大を來すのであります。これに対して、政府は入場税の地方税移管による経費を以てこれに当てることができると稱しておるのでありますが、七ケ月間の税收二百七十億、年平均にすれば五百億に垂んとするこの取引高税の調査に対して、僅かに入場税の調査に要した人員及び経費を以て、これを完全に捕捉するということは、絶対にできないことは明らかな事実であります。又取引高税が非常に大衆課税的なものであるということは、先程皆さんから指摘されました通りでありまして、この点については私の論は省略さして頂きます。
 更にこういつたような状態を考えまして、そうして第三の点即ち國家の経済組織或いは國家財政、國民の総所得そういつたものとの関係を考えて見ますると、昭和五年―九年の平均の國民所得に対しまして、二十二年度の國民所得は大体百倍になつております。一方又國税の負担額を見まするならば、昭和五年―九年の平均に対しまして、國税負担額は二百倍になつておる、即ち國民所得の倍以上の國税負担がなされておるのでありまして、今度の予算案について考えますならば、二十三年度においては、國民所得は百七十倍程度、これに対して國税負担額は実に三百倍以上になるということが言えるのであります。そうしてこの國民所得の中において、勤労所得の分は、どういうふうになつておるかと言いますと、勤労所得は二十二年度においては、僅か四十倍程度のものであるのであります。こういつたような國税負担の増加というものが、勤労者の生活を圧迫し、最低生活費に喰込んでいるということは、家計調査におけるところの公租公課負担――その生計費における公租公課負担の部門の、勤労收入或は飲食物費に対する支出の割合について考えて見ても言えるのであります。即ち昭和十二年頃の公租公課負担の割合は、全勤労收入の約七%に当つておるのであります。それが、昨年度におきましては約十一%になつておるのであります。而もこれをその飲食物費の支出について見まするならば、公租公課負担の割合が、実に一三%になつておる、全勤労收入に対して一一%であり、飲食物費について一三%というこの比率の近似しているということは、何を物語つているかと言いますると、この勤労收入の殆ど大部分が自分の最低生活を支えるための飮食物費に費されるという事実を物語るのでありまして、更にこれに対する公租公課の負担の増大によつて、生活費の中に喰込んで来ている、即ち租税負担によつて、勤労大衆は、自分の生活費を切り削いでこの租税を負担しているということを物語るのであります。而も一方生産増強を見まするならば、生産の指数がここ数年以來何等の増加を示さないということは、常に皆さんも御存じの通りでありまして、かくては、このような間接税中心の、即ち大衆課税的な税制により、國民大衆から多く收入される歳入というものは、徒らに放漫な財政支出となつてインフレを昂進している、そうして國民大衆の生活を脅かしているという結論に達せざるを得ないのであります。即ちすでにもう國税をこの上増加させるということは、國民一般大衆の担税能力の限界点を超えているということが言えるのでありまして、このことが、労働力の再生産を不可能ならしめんとしているのであります。こういつたような状態ありますときに、我々は、然らばどうしたらいいかという点について、更に財政政策というものに対して、再檢討の必要があるのではないかと考えざるを得ないのであります。更に政府が発表しているように、経済復興五ケ年計画というものがありますが、この予算案及び予算案に盛られましたところのこの税法改正というものが、この経済復興五ケ年計画との関連においてどういうふうな意味を持つておるか、そういう点を考えれば、こういつたような大衆課税による毎年毎年の勤労大衆の労働力の再生産を妨げ、その生活費の中に食い込んで行つて、そのために最低生活を切詰めて行くというような結果が、果して経済復興にどの程度役立つものであろうかということが当然考えられるのであります。
 以上のような三つの点から考えまして、我々税務行政に携わる者といたしましては、今回の改正案に対しては、どこまでも反対せざるを得ないのであります。そうしてこの反対と共に、それによつて補われる、この改正案の反対によつて予想される減收と申しましようか、他の余裕財源というものにつきましては、財政の中、歳出に対するところの再檢討、それから更には國民所得に対するところの資料の再檢討、そういつたような部面からいたしまして、そうして当然それを補うだけの財源が見出せるのではないかと考えておるのであります。政府がこういつた、先に申しました所得税、法人税の財源を補うために、この取引高税の設置ということを考えておりますが、現今税制はすでに行詰りの段階に來ておるということは、すでに皆さん御存じの通りであります。この行詰りの段階において、こういつたような巨大な税收を見込むということができるという税は、取引高税とか、或いは財産税、経常的な財産税、二つの中一つしかないと思われるのであります。それ故に政府がこういつたような取引高税の政策を採つたということは、すでに政府の財政政策全般において、勤労大衆からの犠牲によつて資本主義的な國家の再建ということを考えている、即ち國民大衆から搾り取つたものによつて國家の財政を賄おうとする、而もその財政の内容においては放漫支出が大半を占めておるということになるのであります。こういつたようなことを考えますと、我々は税務行政に携わる者といたしまして、又勤労大衆の一員といたしまして、今回の改正案並びに取引高税の設置に対しては絶対に反対する者であります。終ります。
#13
○委員長(黒田英雄君) 近藤銕次君にお願いします。
#14
○公述人(近藤銕次君) 今朝程から大分皆さんいろいろ御意見がありまして、私が言わんとするところは殆んど言い盡しておりますので、簡單に中小工業者の立場から見ました今度の税制改正につきまして、かねて研究いたしましたものについて申上げたいと思います。
 今度の税制改正につきまして、随分政府が御苦心であろうと考えますが、併し只今公述人の方からもお話がございましたように、日本としては税の負胆力がもう極点ではないかと思います。これ以上に税を取るということが果してどうかということが一番大きな問題じやないかと考える。それでも金が要るのだからどうしても政府は金を取らなければならん。こういうことから、こういう無理ないろいろなことを考えられると思いますが、今しばしば皆さんからお話がございますように、一つは政府の支出をよく再檢討する必要があり、闇取引からして税が取れない、併しながら取れないといつてからにこれを放棄して置くというような形にあることは甚だ國民として満足ができないわけでありまして、こうやつて見たがどうしてもできない、ああやつて見たがどうしても方法がない、こういうことでありますれば、時としは國民としても納得が行くかも知れませんが、今政府のやつております徴税の何を見ますと、正直な我々みたいな勤労の者からは免れないように取られまして、そうしていわゆる闇の方は取る方法がないのだ、こう簡單に片付けられておることは遺憾だと思います。どうかこの点について或いは具体的に御苦心があるだろうと思いますから、政府としましてはどういう方法を以てやつておるかにつきまして、もう少し國民のこれならば仕方ないと思う程度までの御説明を願いたいと考えます。今度の所得税につきましては、名目所得の増加に対して高率の課税を適用します結果、生産の方面から行きまして規模を縮小します虞れが非常にあります。殊に中小工業につきましては、この点について甚だ面白くない結果を望むのじやないかと考えます。尚地方税の負担を考えますときに、誠にこの点について心配の点が多いと思います。具体的には只今いろいろお話がございましたから、ここに抽象論のようでありますが、大体を申上げます。
 最も今問題になつております取引高税は、これはどう考えましても不公正な課税でありまして、つまりインフレーション或いは闇取引を誘発する大きなむしろ基礎をなすものであります。而して先程もいろいろお話がございました通りでございまして、勤労所得の税金を減らす、こういつて政府は大変勉強されたところを見せておられますが、一方に物價の改訂と相俟つて、結局取られる税金は、先程お話がありましたように、時に今拂つておる税金より多くなりはしないかという疑いさえ相当強く感ぜられるのであります。併し差当りどうしても政府としてそれだけの金が要るんだということになつて、これを若し何かの形においてやるとするならば、ここにありますように四、五回ということを新聞にも出しておりますが、実際は庫出税金みたいになりまして、十回以上も税金のかかるものが少くないのであります。そこで課税される対象物の税の課せられる回数をよく考えて、そうしてまあ希望としましては一回にお願いしたいのでありますが、この回数を一向構わずに、ただ課して、こうということは非常に乱暴じやないか、もう少し、少くとも何階級かに分ける必要があるのじやないかと考えます。
 そこで今度少し話が違いますけれども、例えば独占禁止法というふうなものができまして、そのために今持つている資産、株式等をすべて新らしくできた法律によつて本人の自由意思に從わない処分をしなければならん、そうすると、昔、金で買つたやつが今鉛にも付かない値段で賣られる、そうしてそれが超過利得になる、これは物が違つておりますのですから、今紙幣で以て処分されたものは超過利得とは考えられないのでありまするが、まあ、それはそれとしても、この点につきましては政府もいろいろ考えて超過利得を課税しないことになつたようでありまして、大変正当だと思いまするが、尚これと同じように、独占禁止法と同じような法律によつて本人の自由意思によらずして、法律の命令によつて強制処分されるというふうなものに対して、今言つた超過利得をやはり免除されるべきだと思いまするから、少し今の取引高税とは違いますが、併せてそういう意見を申上げます。非常に簡單でありまするが以上を以ちまして大体補足とも行きませんが、皆さんが述べられました点について重複した点もございまするけれども、私の意見を申上げたのであります。尚併しながら我々としましては、一面政府の支出について十分檢討する必要があると思いまするが、先ず今の支出を基礎としますると、どうしても税金を相当取らなければならん、税金よりも收入を得なければならん。そこで、その財源としまするところを実際行政上いきまするかどうですか。我々が考えましたところは、先ずよく人が申されております。即ち行政整理、官業拂下、そうして輸入の砂糖であるとか、或いはその外のいわゆる放出物資に対して、特にその中に政府が何かこれによつて、輸入食糧品について、或いは輸入物資について、政府が一時これを官業にしてでも取る方法があるのじやないかと考えられます。同時に近頃非常にやかましく言つております退藏物資、これは政府に対して可なり沢山の放出を許可された物が相当量あると考えられます。これなども処分をする方法如何によつては相当の收入が得られるのじやないかと考えられます。まあ今の通り一方に現在の税については甚だ賛成いたしがたい点が沢山ございますが、尚收入につきましては今言つたような方法で何かその中にありはしないかということを我我考えまするから、ちよつと御参考に申上げました。以上私の意見を申上げておきます。
#15
○委員長(黒田英雄君) 次に金子佐一郎君にお願いいたします。
#16
○公述人(金子佐一郎君) 王子製紙会社経理部長金子であります。取引高税を中心にいたしまして所見を述べてみたいと思います。
 本來、政府が現在のインフレ対策につきましてあらゆる努力を拂うべきであつて、ここに新税の創設をいたしまするに当つて、低物價政策か、インフレ抑制政策を加味した税制を採用すべきであると思うのであります。然るに今回立案されました取引高税のことについて考えて見ますのに、これが実施せられますならば、直ちに取引價格に織り込まれまして、物價騰貴に敏感に影響することになつて、インフレを抑制するための均衡財政ということはここに達成できないのではないか、特にその結果が大衆課税となりまして大衆の最低生活を圧迫する結果を招來する一方、徴税上の技術的面から見ましても脱税が非常に行われやしないかという虞れが多分にあるのでございます。併し本税はこの徴税の面から見ると、以下述べますような特色があると思われるのでございます。まず徴税が比較的容易でありまして、從つて徴税のための行政費というものが節約できやしないかと思われる点、それから物價水準と歩調を合せましてインフレの進行と共に税收入を確保することができるという点、税率が簡單で彈力性があり、税率を改訂することによつて容易に税收入の増減を図ることができるという点、割合に低い税率で短期間に多額の收入を挙げることができる点と、徴税が一年を通じまして平均化して行われるというような諸点であります。
 以上は本税を徴收するという方の側から見たいろいろの特色でありますが、あとで私が述べますような半面に多くの欠点がありますので、このような税金は惡税の一種といたしまして、曾ては我が國において昭和十一年馬場財政のときでありましたか、取引税という案が作られましたが、これが國民の反対に会いまして実現しなかつたというような過去の実例がございます。それから諸外國においてこれが実施された例を見ましても、財政の危機を救う緊急手段として採用されたに過ぎないのでございます。それ故、政府としても、かくのごとき新税を好んで選んだものとも考えられませんが、他に代り財源がない今日、恐らく窮余の策として採り上げられたものと考えられるのでございます。
 然らばこの取引高税案についてはどういうような欠点があるか。その主なる点を指摘いたして見ますれば、この取引高税中の物品取引に対する課税が消費者に轉嫁せられまする場合には、前に述べましたように必然的に物價の高騰を招きまして、國民の生活を圧迫する。特に一商品が原料より製造、加工というような工程を経まして、最終消費者の手に至るまでには、賣上毎に課税が行われますので、それが同一商品に対しまして少くとも四、五回、多きは先程もお話がありましたが一割にもなると申しますから、十回轉するようなものもあるかも知れませんが、まあ平均して四、五回も課税される結果になりまして、税率は一見して一%の小額のようでも、これが大衆の負担となるものは四%、五%となると考える。結果は比較的高率の大衆課税となるのでございます。かくのごとき税を、今後物を買います毎に我々が負担するといたしますならば、勤労所得税の軽減、或いは所得税の軽減ということによりまして我々が得ましたところのこの余裕というものは、これによつて全く相殺せられまして、その結果は再び労働攻勢の形となつてこれは現われてくるというようなことが予期されるのでございます。從つてこれを少しでも緩和する対策といたしましては、免税品の範囲をできるだけ拡大する。即ち日常必需品についての課税はいたさないようにする。それから石炭とか、鉄鋼とか、電力というような基礎的物資も免税といたしまして、物價政策並びに生産の復興促進を考慮すべきものであろうと考える。一方これが補填策といたしましては、成るべく奢侈品的なものを選びまして、これに多少の増率を課しまして、そういたしますれば社会政策的な見地から見ましても妥当でありますし、又担税力もあるものと考えられるのでございます。尚只今申しましたいわゆる販賣各段階毎に累積課税するの可否については、大いに考慮すべき問題があると考えるのでございます。即ち同一物品でも、直接製造業者が消費者に販賣する場合と、卸、小賣等の中間業者が介入いたしまして消費者の手に渡るという場合の最終價格が、どうしても異なるのであります。少くともこの間において取引高税だけのものが食い違いが來ると思うのであります。
 この場合、若しも消費者價格が、この小賣業者、いわゆる後者の場合で決まりますならば、その取引高税だけ前者、即ち製造業者が直接賣る場合には、製造業者が不当の利得をすることになりますし、反対のときはその小賣業者がそれだけ負担をいたさなければならないという結果になりまして、いわゆる自由競争を妨げる結果となる惧れがあります。又総ての生産過程を含みます大企業、即ち一大企業はいろいろの加工その他を自分の手で一手にやることが多いのであります。然るに單一生産過程を踏んで造つて行きます中小企業というものによつて生産された製品は、大企業に比べまして中間に掛けらるべきところの取引高税が加えられておりますから、少くともこの製品の價格がそれだけ違つて参ります。從つてこれ又中小企業の方が大企業で造つた製品より割高になつて、そしてこれが圧迫を受けるという結果になりはしないかということを惧れるのであります。これが対策といたしましては、多少税率は高くいたしましても、完成製造品に対しましてその製造課税というものをただ一回限りこれを行なう、そういうふうにいたしますれば、比較的公平を期せられ、複雑な累積課税の結果より生ずる混乱を免れることができるのではないかと考える。それからインフレ高進による物價高によりまして購買力が減退いたしました場合とか、その他の理由によりまして、この取引高税が営業者の負担となるような場合には、業者は所得税と営業税に加えて、これが負担をいたしますれば、著しく重複課税となるのであります。且つこの税金が外形標準の課税でありますために、如何に取引高が多くても利潤の少い物品の取引業者もございましようし、これと反対の立場にありまして、取引高が少くても非常に利潤の多いという業者もありますので、この負担の均衡を失する結果となるのであります。それから、これはやや小さい問題ではありますが、我々は多少この点を懸念しておるのでございます。それは取引高税を、印紙を購入いたしましてこれを納めるというような規定のように聞いておりますが、この印紙を一々買いに行くわけには行かない。從つてこの手紙を省略いたしますために、予め相当量の印紙を準備購入しておかなければならない。相当大きな会社でございますと、これがために資金が取引業者の手許で相当寝まして、これが全國的に考えられます場合には、金融上に及ぼす影響も相当あるものと考えるのでございます。それからこの取引高税と物品税の関係を無視するわけにも行かないと思います。物品税は昭和十二年に創設されまして、初めは極く奢侈的な品目だけがこの課税対象となつておりまして、その種類も少なかつたのでありますが、次第にその範囲が拡大されまして、現今では重要な財源となつておるのでございます。その物品税と今回の取引高税との関係を見ますのに、その性質において余り変りはない。そのためにいわゆる商品という点だけについて見ますれば、重複課税の感がないでもないのであります。從つてこの部分の取引高税を創設するよりも、むしろこれが税率を改正いたしまして、そうして特に奢侈品的な物に重税を課する方針を取りまして、この現在行われておる物品税を拡大するのも一方法と考えられるのであります。勿論この品物以外に掛けられます取引税も随分ございますが、これはこの問題の論外でございます。尚この物品税は庫出税でございますので、これが若しもこれに加えて行われます場合には、実際庫出ししたときに税金を拂うという建前でありますと、その代金が收入されますまでのいわゆる金融上の圧迫が業者に加わりますので、この点は更に考える必要があろうと考えるのであります。それから特に本税の欠点といたしますものは、これは先程申しました累積課税の複雑性と、取引行爲の完全なる捕捉が技術的に困難であるために、脱税し易いということでございます。いわゆる正直者が馬鹿を見る結果となる慮れがありはしないか、即ち大会社とか、或いは銀行、保險会社、デパートというような経理組織の明確なところでは完全に納税せしめることができましようが、現在大幅に行われておる闇取引というものについては、全く徴收を期しがい、且つ経理内容が不明瞭な極く小さいような取引業者、又五十円未満の取引に対して、三ケ月ごとに申告納税をいたしますことによるこの点から、脱税が相当に生ずるものと考えられるのでございます。特に今回の法案を見ますのに、この脱税を助長するのではないかと思われるような原因がございます。それは取引高税の徴收と、取引金額を同時に把握して所得税徴收の資料たらしめんとするため、印紙購入に際しまして、通帳による登録制を採用したことであります。これは政府としては一石二鳥の名案のごとく見えまして、賢明過ぎてこれが愚に落ちると言い得るであろう。一般業者の心理といたしますれば、買手が負担いたします一%ぐらいの取引税を脱税する氣持はなくても、自己の取引高を、この取引高税を取るそのために完全に押えられて、これによつて所得税を徴收されては堪らないというような見地から、一應買手と話合いでこの脱税をはかるようなことがないとは言えません。又買手も一考ではあるけれども、安く買えるのだから、これに應ずる虞れが多分にあるのであります。で、私はこういうような一々取引高税を押えるために印紙を買いに行く、その印紙を一々登録されて、その集計がその人の取引高となつて、それによつて税金を完全に掛けようという狙いは、今申上げた通り大変に賢明なようでありますが、これによつて生ずるところの脱税も相当我々は予期されるのであります。それで私が考えますには、この取引高税の増徴というものだけを一本槍に考えるならば、このような印紙購入の登録制はむしろ廃止すべきであります。そうして所得調査では現行の制度を拡充いたしましても、別途にやるべきでありまして、これに便乗することは却つて今のような脱税の結果を誘致することになりはしないかと思います。若し実施するとしても、その出た結果が果して眞の取引高を示すのでありましようか、そこに印紙を購入する、通帳に書かれたその取引高が、その人の本当の取引高を示すものであれば、この方法もいいと思いますが、やはりそこに登録された金額を絶対に信じて、税務署がそれを見て所得税を計算するということは非常に危険であります。やはりこれは改めて他の面からやつて、所得調査をしなければ、そこに何らかの脱税があつた場合には、それを信用することができないという結果を考えました場合に、十分この点考慮すべきものではないかと考えるのでございます。それからその税金の金額を締切ります時に、予め買つて置いた印紙が相当ございます場合には、この印紙は取引をいたす前に通帳になつておるのでございますから、これを考慮して、この取引高というものの登録の金額を見て貰わなければこれは必ずしも所得税を掛けます基準にならないということ、これは徴税上の問題でありますが、附言いたしたいと思います。それから更にこの案によりますれば、買手側において、印紙を蒐集せしめる手段といたしまして、早く言えばこの印紙をみんなして直ぐ紙屑に棄てないように、これを集めて置きたいという氣持が出れば、一應まあ受取を貰う時にその印紙が貼つてなかつたり、付いてなかつたならば、要求するという氣分が出るようにという政府の考えでありましよう。学校又は社会事業等の職員学生生徒の團体に、印紙交換に一定の交付金を交付することを考えておりますが、これはこの目的が社会事業その他の高尚なものでございまして、一應了解はいたしますが、いかにも迫力がない、むしろこれは一般人に対して百万円の当籤する所の宝籤の如く、これを何枚か持つて來る場合には、こういうような一つの賞品をやるといつたようなふうに、考案される方が、遥かにその目的を達することができるのではないかというようにも考えたのでございます。
 結論といたしまして、取引高税は一概にこれを惡税と言い切ることはできないかも分りません。併し決してこれが適切なものとは言い難いことは、これは事実でございます。併しながら今日の如く予算の審議を急速に結了することに追られておりますので、且つこの理想的代り財源も簡單に見出せないからには、誠に止むを得ざるものと考えられますが、これが審議に当られては、以上述べたような欠点も十分考慮されまして、特に徴税技術的対策について深甚なる考慮を拂う必要がありますと共に、特にこの徴税が比較的容易でありまして且つ彈力性があります。徴税のため行政費の嵩まらないに乗じまして將來これが税率の増加をはかることが絶対にないように切望するのでございます。又本税の特質上財政危機を救ういわゆる緊急手段として採用せられたものであります以上、適切なる所の代り財源を研究せられまして、これが決定の上は速かに廃止すべきであつて、これを永続的徴税手段としてはならないと私は信ずるものでございます。
 最後に税制改革に際しまして、何時も私共は考えておりますのですが、考慮さるべき点を二つ挙げたいと思います。政府は屡々言われるように、何故行政整理を断行しないか、これは言うべくしてなかなか行い難いように考えられますけれども、やはり、かくの如く政府の財政の苦しい時には、断乎としてこれを行なつて頂きたい。という考えが一つでございます。それからこの税金を取る、増税をすると申しましても、実際この徴税の簡易なところだけを考える、即ち取引税にしても、徴税をするのに非常に簡單であるから、こういう税を取上げる、所得税にしても、取り易い所から余計取る、実際はこうであつてはならない。即ちむづかしいことではありますが、実際闇取引によつて不当の利得を得ておる業者、いわゆる新円階級の所得を捕捉するようなことに何故もつと努力しないか、何とかこれは税務署の拡充をはかり、そうしてこういうような実際担税力があり、社会政策面からしても取り得ることであつて、ただ取ることが非常に困難であるという所に、もつと熱意を持たれて、この收入をはかるという点に重点を置かれんことを切望するのであります。特に税本來の体系から申しますれば、これは間接税よりも直接税に漸次移行すべきことが本質でございますので、こういう取引高税につきましても、でき得る限りこれを間接税を止めまして、そして直接税に移行するように考えなければならないと思うのでございます。それから收入を論ずるばかりではありません。この歳出面の再檢討によりまして、縮少を計れるだけ計りまして、インフレの抑制をすることに対しては、十分望ましいことでございます。そして特にこれが補給金等のごときものにつきましては、十分考慮せられまして、この支出面について、これも收入面と同様に十分な考慮を拂われて、收入支出と共にこれを均衡財政とせられんことを願うのでございます。以上甚だ簡單ではありますが、特に取引高税だけに限りまして、時間がございませんので、卑見を述べた次第でございます。
#17
○委員長(黒田英雄君) 次に近藤吉雄君にお願いいたします。
#18
○公述人(近藤吉雄君) 私は日本出版協会の理事をいたしております近藤と申します。日本出版協会外六團体を代表いたしまして、ここに公述をいたすわけでありますが、大分長い時間に亘つておりますので、さぞお疲れのことと拜察いたします。從つて要領だけを簡單に申上げて私の意見を御参考に供したいとかように思いますので、甚だ恐縮でありますけれども、暫く御清聽をお願いします。取引高税の問題について、私は卑見を述べるわけでありますが、この取引高税については、原則的に私どもは反対の意を表明するものであります。それは今までの公述人の方々が縷々その事由を挙げられましたので、ここに繰返して申上げることの煩を避ける次第でありますが、生産工程から本数段階のものがあつて最終に至つては一割五分か、或いは二割とかいうような徴税が大衆負担課税になるというような問題とか、或いは徴税の形式が凹凸高低などが区々として非常に不公正な徴税の結果になるという点、それから先程もお話がありましたように、これが正直者が馬鹿を見るということになる虞れがある。それからブラツク・マーケットにおける徴税、税の捕捉ということはむずかしいことであろうというような点、それから損失した場合におけるやはり取引高税の課税ということは甚だ当を得ていないといつたような点、それから先に行われました特別行爲税、これにおける脱税とか、惑いはいろいろな弊害が、今度の又取引高税においても繰り返されるというような点が虞れられる、この点、それから取引者間において、談合によつて脱税されるということが行われるであろうという点を挙げますと、この取引高税は皆様におかれまして相当な御考慮を頂いて、若し現下の財政状態から、どうしてもこういうような徴税方法を採らなければならんということでありますれば、その根本にメスを入れて十分に御修正を願つて、公正妥当な税にこれをして頂くということを私共は切願する次第であります。殊に私は出版の関係の立場におりまする者といたしまして、その特殊性から一言皆様にお聽き願いたい点があるのであります。それは先程も引例されましたが、書物は生産工程が正に十三段階にも及ぶのであります。これは何か一部門に偏したことを申上げるようでありますけれども、この出版物、書籍、雜誌というものは文化國家を造成する上に、社会教育の一環として極めて根本的な重要な役割を果しまする関係上、我田引水の如き説でありますけれども、その点、特に御配慮を煩わしたいのであります。これは一段階毎に百分の一が累積されると、読者の手に渡るまでには一割乃至一割五分の課税がなされるという結果になりまして、文化の昂揚という建前から非常に憂うべき結果をもたらす次第であります。特に文化財という建前において、この取引高税の中の出版物については特段の御配慮を煩わしたい。私共常に考えておりますが、民主政治というのは結局納得政治である。納得の行く政治でなければいかんということを私共常に考えておりますが、一面只今聞くところによりますると、一兆九千億というような國民所得の中で、九千億乃至一兆に垂々とする不課税所得即ち闇所得というものが捕捉されないで、比較的安易な徴税方法による取引高税とか、鉄道運賃値上げ或いは郵税の引上げ等の安易な徴税方法のみ採用する傾向のあることを、私共甚だ遺憾に思う次第であります。これ亦先程申上げますように現下の國家財政上どうしても必要であり、眞に止むを得ないことでありますならば、私共としては出版事業その他の関係の特殊的な立場から、特に代案を持つておるものであります。
 その代案について一應お聽き取りを願い、幸いに御修正までして頂ければ仕合せだと思います。その要点は、仮りに出版物発行税と申しております。出版物発行税というものを設けまして、定價五十円以下のものに対して三十銭、平均定價に対して約一%であります。定價五十円を増す毎に三十銭を加算する。こういうことを採用せられたい。その徴税は收入印紙或いは特別税票を発行して、これを全書籍、雜誌の奥附に貼布することによつて課税の完璧を期す。この案によりますと徴税の不正行爲も防止できると同時に、税收入年額一億六千万円を見込むことができる。かような意味において私共はこの取引高税の中に特別な取扱をお願いしたい。この修正の理由は、出版物が読者の手に渡る場合に、出版事業体から直接に参ります場合と、出版事業体から卸賣或いは仲介者、そういつたものを経て三段階或いは四段階を経て読者の手に渡る。從つてこれを読者に販賣いたします場合に、直接の場合は一段階しかないが、一は三段階も四段階も経て渡る。こういつた場合に、書籍は御承知の通り定價が付いております。その定價に対して一段階の場合は一%、三段階の場合は三%、或は四%というような、こういうようなつまり不当な徴税がされるということになる。さような場合には、小賣店といたしましては、恐らくその三段階なり四段階なりを経た、つまり三%なり四%なり経たものを定價に附して賣るということになるであろうと思うのであります。而もそれが納税される場合はどうであるかと言えば、恐らくその一段階というような建前で納税されるというような虞れがある。ここに非常な不合理があり読者を害することがあり、それから脱税されるという点があるのであります。從いまして私共はその源泉課税、今申上げるような書物に対して、最初にでき上つたときに奥附に証票を貼つて、証票があるものでなくては小賣店で賣れないというような制度をお敷き下さいますれば、税收というものが確保される。それは不正が防止される。読者がそれによつて不当の税を課せられるというようなことがなくなる。かような趣旨におきまして、是非この源泉課税、出版物発行税というものを特設して頂きたいということをお願いするわけであります。それから今一つの理由といたしましては、返品というものがございます。これは地方に委託いたしました場合に約三〇%ぐらいの戻りがある。その戻つて來るものに対して、始めて一段階、或いは二段階において徴税されたものが、返品された場合にこれをいかに精算するか。この規則の中で還付の請求ができると、こうなつておりますけれども、一段階ごとに徴收されたものが返品された場合に、これをいかにして精算するか。これは技術上非常に煩瑣なことだと思うのであります。從いまして今申上げた公明的確なる課税方法である源泉課税、出版物発行税ということにして、これの税源を確保して頂きたい、こういうことを申上げる次第であります。これによつて一は徴税事務が簡易化される、凸凹高低がなくなり、公正妥当なる税負担となる、脱税等の不正が防止される、税源を確保されるというような種々の利点が挙げられます。そこで発行税とした場合に五十円に対して三十銭、これではパーセントが低いじやないかというような御意見があるかも知れませんけれども、私は今申上げるように、さような取扱になつた場合でも、やはり返品ということが考えられます。そういう点から、文化財である。つまり一國の文化を高揚するための社会教育の基盤である、かような意味において特段の御配慮を頂く趣旨において一%ということにお願いいたしたい。こういう考えを持つております。
 以上の理由に基きまして具体的に申上げると、取引高税法第二條の第二十二号の、課税さるべき営業と規定しておる第二十二号にあります「出版業」というのを削除して、そうして取引高税法第七條第一項第四号に「小学校又は中学校の教科用図書の発行、販賣又は取次」とありますが、これを「出版物の発行、販賣又は取次」と、こういうふうに御修正を願いたい。私共ただこの取引高税に反対するというのでなくて、眞に止むを得なければこういう代案を以て極めて公正な徴税方法を採り上げて頂きたい。これは一出版、一通信教育というようなことでなく、日本の文化を昂揚するという建前において特徴の扱いをして頂くことが、眞に文化政策を実施して頂く所以であろうと、かように考える次第であります。
 最後に、皆様、巷間エロ・グロ雜誌、或いは書物などが氾濫いたしておりまして、我々出版物を取扱つておる者に対して相当な御非難があろうと思うのであります。併しこれはいわゆる闇の紙で以て不当に刊行されるものでありまして、私ども甚だ遺憾に思つておる次第であります。これについては出版綱領実践委員会とかというようなものを作りまして、そうして強力にこれの粛正、抑圧に乗り出して、しかも又相当強烈な示唆もありまして、檢察当局とも協力して、ここ半歳を出でずしてエロ・グロに関する雜誌とか、或いは書籍というものを一掃したい、こういう氣持で私共はやつております。願くはそういうエロ・グロ雜誌というようなもの、そういつた書物があるがために、出版文化昂揚のために申出る出版物に対しても、いわゆる角をためて牛を殺すというような考えを持つて頂かないように、是非文化政策を御徹底願う意味において、私の申出ました趣旨を委員会において御採擇願い、取引高税を御修正頂くように重ねてお願い申上げる次第であります。聊か部分的な申出に相成りまして恐縮でありまするけれども、以上申上げましたような趣旨において特段の御配慮を煩わす次第であります。長時間に亘りまして御清聽誠にありがとうございました。
#19
○委員長(黒田英雄君) 何か公述人にお尋ねがありますか……。それでは、ちよつと公述人にお礼申上げます。本日は御多忙のところお繰合せ下さいましてわざわざおいで下さいまして、御意見を発表して頂きまして、審議に資することを得ましたことは誠に感謝に堪えない次第であります。厚くお礼を申上げます。
 本日はこれを以て出席された全部の公述を終了いたしましたので、これを以て公聽会を閉会いたします。
   午後三時四十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     黒田 英雄君
   理事
           伊藤 保平君
   委員
           木村禧八郎君
           天田 勝正君
           玉屋 喜章君
           西川甚五郎君
           松嶋 喜作君
          尾形六郎兵衞君
           木内 四郎君
           深川タマヱ君
           星   一君
           小林米三郎君
           高橋龍太郎君
           中西  功君
           栗山 良夫君
  公述人
   朝日新聞論説委
   員       藤田 武雄君
   東京大学助教授 武田 隆夫君
   全國財務労働組
  合中央執行委員  加川 義一君
   興業銀行総裁銀
   行協会理事   岸 喜二雄君
   東京商工会議所
   会頭電氣化学工
   業社長     近藤 銕次君
   王子製紙経理部
   長       金子佐一郎君
   産業復興会議理
   事       永野 順三君
   日本出版協会常
   務理事     近藤 吉雄君
ソース: 国立国会図書館
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