くにさくロゴ
1947/06/16 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 運輸及び交通委員会 第5号
姉妹サイト
 
1947/06/16 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 運輸及び交通委員会 第5号

#1
第002回国会 運輸及び交通委員会 第5号
  公聽会
  ―――――――――――――
昭和二十三年六月十六日(水曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○國有鉄道運賃法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
   午前十時三十二分開会
#2
○委員長(板谷順助君) これより國鉄運賃改正法案に対しまして公聽会を開きます。
 開議に先立ちまして、一言御挨拶を申上げます。本日公聽会を開くに当りまして、公述人各位には、御多忙のこの中、殊に雨天にも拘わりませず、御出席を辱のういたしまして誠に有難く存じます。御承知の通り、新聞或いはラジオの放送によりまして、又お手許に差上げましたる資料によりまして、今回政府が現行運賃を旅客貨物とも三倍半に値上げすることに提案をされたのであります。ところで、この問題につきましては、目下衆参両院の運輸交通委員会におきましても審議中であり、又各政党間におきましても調査研究をしておるのでありまするが、一面國会法の規定に基きまして、廣く民間の意見を聽取することになつておるのであります。この趣旨に基きまして、去る十二日衆議院におきまして公聽会を開いたのでありまするが、我が参議院の交通委員会におきましても、二院制度の本義に基いて、更に新らしい公述人各位の御参集を願つて意見を聽取いたしたいと考えておるのであります。政府の提案によりますれば、國鉄は創設以來殆んど黒字によつて終始をしたのでありまするが、この近年御承知の通り物價の暴騰、賃銀の引上げ等によりまして、赤字が相当に出ておるのであります。例えば今回旅客、貨物共三倍半の値上げをするといたしましても、まだ一般会計において百億円を補填せねばならんという情勢にあるのであります。そこで公述人各位におかれましては、現在の我が國の國民生活に重大の関係のある問題でありますることと、又現在の我が國家財政の状態につきましても御考慮を願いまして、自由に忌憚なく各自の御意見を発表されんことを希望いたします。從つて我が運輸交通委員会におきましても、各位のお述べになりましたる御意見を参考といたしまして、今後の審議に当りたいと存じておる次第であります。
 そこで各公述者の時間は、別に制限するわけではありませんが、多数の方であります関係からいたしまして、二十分以内の程度ということに御承知置きを願つて置きたいと思います。又各委員から公述人各位に対して質疑がありましたならば、どうか御答弁あらんことを希望いたして置きます。で、本日御出席を願うことになつております公述人各位は、学識経驗者が東大の教授の今野源八郎君、食糧配給公團総裁の梶原茂嘉君、Y・W・C・A總監事の渡辺松子君、全官公廰労働組合の佐藤誠君、船主協会の理事の浜田喜佐雄君、日本鉄道会議所監事の鈴木清秀君、日本新聞協会会長の伊藤正徳君であります。又一般公述者といたしまして、元会社重役の鳥本千代藏君、それから夜間学生連盟中央委員長の松田武君、國鉄技術研究所員の村木啓介君、労働問題研究所理事の小田島禎治郎君、日本漁民組合の船井倉市君、日本出版協会の近藤吉雄君が御出席になることになつておりましたが、その代理として副会長の川崎文治君が御出席になつておりますが、これは委員諸君にお諮りいたしますが、この代理でお差支ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(板谷順助君) ではお差支ないといたしまして、この方に公述して頂きたいと存じます。
 これより順次公述を願いたいと思います。それから今日御出席になりまして順序によつて順次公述を願いたいと思いますが、その計らいでよろしうございますか、委員諸君に御相談いたします。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(板谷順助君) それでは第一においでになりました日本鉄道会議所監事の鈴木清秀君、どうぞこの席においで下さい。
#5
○公述人(鈴木清秀君) 最初に私から時間の都合上さして頂きましたこと誠に恐入ります。鉄道の独立採算制が叫ばれて、この運賃値上げの問題が非常に論議せられるようになつたのでありまするが、独公採算制というのは、單にその支出をその收入を以て賄うということだけを意味しておるものではないと思うのであります。独立採算制の思想というのは、その事業の独立制と責任制とが基底となつておるものであつて、その事業の遂行の合理的計画が樹立せられ、その不経済性が回避せられねばならないのであります。そういうことを行うためには、政府がその資金と資材と労力とを保証するということが、私は独立採算制の思想であり、他の國に叫ばれておる独立採算制の思想の根柢をなすものだと思うのであります。
 「國有鉄道の赤字の原因と運賃値上の必要性」というパンフレットを拜見しましたが、その中に書いてありますところの経営合理化の方策というものが可なり列記せられております。私は今ここにその方策の如何を論評する暇もありませんが、ただ私はこの方策を実施するに当つて、政府というものが、その資金と資材と又労力の適正化に対して保証の責任を取つておるのであるかどうかということを非常に考えさせられるのであります。若しこれらの保証がないとするならば、これらの方策は一片のペーパープランであつて、独立採算制を叫びながら、その本体をなしておるものじやないと思うのであります。私は今の時代におきまして、ただこの合理化方策が、鉄道当局の單純なる力だけで以て、責任だけでなし遂げられるものとは考えられません。政治の強弱が唱えられ、社会の混迷が叫ばれておる今日において、こういう方策が單純なる鉄道当局官僚によつて行われるものだとは思えないのであります。
 ここにおいて私はこの公廰会が議会に催された際におきまして、議会の方方が強力なる指示をこれに向つて行なわなければならんと思うのであります。殊に独立採算制におきましては、会計制度をも改廃しなければその意味をなさない。その他の施設も、改善に対する資材を供給しなければならない、資金も支給しなければならない、適正な労力に対しましても可なりの強力な政治力が要ると思うのでありますが、こういう点に対しまして、この運賃値上げを審議せられる議会の方々は、この態勢を強力に作つて頂きたいということを、これは民間人としてお願いする次第であります。
 併しながら國有鉄道の赤字という現実の問題を解決するに当つては、どうしてもこれを一般会計から繰入れるか、運賃の値上げをする外ないのであります。一般会計から繰入れられることが、私は物價騰貴を抑える上において或いは却つてよい方策ではないかと、かねて思つておつたのでありまするが、併しながら現在におきまする一般会計における財源を見まするときに、これ以上租税負担を民間に掛けるということは殆んどできないことであると思われますし、又こういう企業であればその利用者に負担させることも合理的だと考えますので、自分としては運賃値上げは止むを得ないものだと考えるのであります。
 ただ運賃値上げをするといたしますると、旅客運賃と貨物運賃とを、如何なる倍率において値上げすることが適当であるかという問題が残されるのであります。旅客、貨物の運賃をその原價計算によつて倍率を決めるということは、運賃構成上以前から唱えられておることではありまするが、今日のよえなアブノーマルの経済状態のときに、こういう原理に基くことは妥当ではないと思います。この運賃値上げが物價の騰貴にどちらがより多く影響するか、物價の値上げは止むを得ないといたしましても、物價の値上げをより少くし得るかということを考えまして、この運賃値上げの旅客及び貨物の倍率を決めなければならんと考えるのであります。
 從來旅客運賃の値上げは、物價には間接的であつて微々たるものである、曾ては浮動講買力の吸收によいから、却つて物價騰貴を抑えるという意味で唱えられておつたのでありまするが、今日の場合におきましてはかかる理論は成り立たないと思うのであります。旅客運賃の旅客の大宗は定期客であります。而してこの定期の運賃を上げるということは生計費を膨大を來すことは必然であります。今日各人の生計費中食糧の占める部分は、エンゲル法則によつても多いのでありますからして、これ以上交通費の値上げをすることは、生計費の非常なる膨脹を來すものだと思いますので、從つて労銀が上り、物價を上げること必然だと思うのであります。併しながらこの定期券の運賃は、旅客運賃を上げるとすれば、これは上げざるを得ないのであります。今日も定期運賃を普通旅客運賃とを見ますると、定期運賃の割引というものは非常に大であります。而も定期旅客の数は非常に多いのでありますから、定期運賃をそのままにするということは、徒らに運賃構成を乱し、收支のバランスを失い、而して普通客の定期轉化を予想するのでありまして、これは普通運賃を上げると同時に定期運賃を上げることを覚悟して旅客運賃の値上げを考えなければならないと思うのであります。
 又貨物運賃は、從來いろいろな政策上からして貨物運賃の値上げが抑えられておりましたので、貨物運賃の物價に占める割合というものは非常に少いのであります。故に、貨物輸送中貨物收入に影響するところのものは石炭、米及び木材と思うのでありまするが、昭和十一年度におきまするところのこれらの價格の中に占めまする運賃の割合は、今たとい三倍半の運賃を値上げいたしましても、この昭和十一年の割合から見れば半分に過ぎないようであります。そういたしますれば、貨物運賃の値上げをば三倍半以上に下げても私は物價にさしたる影響はないと考えるのであります。ただ貨物運賃について大きな問題は、小運送賃の方が大きい問題であります。現在小運送において一番困つているものはいわゆる自動車の経費だと思います。從つて政府は自動車に対する燃料及び部品におけるところの政策を強硬に実行して、その経費の節減を図られる方法を、貨物運賃の値上げと同時に考慮せらるべき問題と考えるのであります。
 そういうわけで、私はできるだけ貨物運賃も値上げに行きたいと思うのでありますが、何しろ國有鉄道の收入の大宗は旅客運賃である。旅客と貨物が三と一の割合であれば、旅客運賃を三倍以下にするためには、貨物運賃をどうしても現在より六倍以上に上げなければ、所期するところの收入は得られないと思うのであります。かかる六倍以上の貨物運賃の値上げはやはり新物價制定に影響すること多く、物價の騰貴を來すこと甚しいと思いますので、貨物運賃の値上げを五倍程度に止めて、あと旅客にカバーしなければならないと思うのであります。
 殊に考えられるのは、ここにおいて私設鉄道であります。私設鉄道は現在七五%の暫定運賃の値上げをしておりますが、その運賃の値上げだけでは、收入を以て人件費を賄い得られないところの会社が可なりあります。御存知のごとく、鉄道はこの頃においては人件費、物件費を五〇%、蒸氣列車は別でありますが、それを目途としておりますが、それなのに人件費が收入を超えております。超えざる場合も八〇%乃至九〇%を占めている。而して私設鉄道の運賃は旅客運賃によつて制約せられるのであります。然るが故に勿論運賃の値上げせざるとき、或いは倍率を余りに少くいたしまするときは、私設鉄道が公企業であるためには、そうしてその事業を継続させるためには、私設鉄道に対する補給金という問題を併せて考慮しなければならん問題と思うのであります。
 更にここにおいて皆樣に御参考に供したいと思いますのは、先般七五%の値上げを私設鉄道がやりましたが、実收におきましては三〇%の値上げの実收を得たに過ぎないのであります。甚だしきになりますると現收入より減つたのもある。それは何かといえば、購買力の減じたことだと思うのでありますので、たとえこの國有鉄道の旅客運賃を三倍半値上げして……國有鉄道は五%の運輸收入の減を見られておるようでありますが、もつと甚だしいところの運輸数量を減を來し、從つて收入のマイナスを來すものだということを考えなければならんと思います。從つて旅客運賃の値上げについても、この輸送人員の減というものを可なり考慮に入れて、その計算をせられないと甚だしき誤算を來すものだと私は考えるのであります。
 以上の諸種の点を勘案いたしまして、私は運賃の値上げは止むを得ないものだ、而して旅客運賃は三倍、貨物運賃は五倍というものが妥当だと私は考えるのであります。
 ただもう一つ附加して申したいのは、旅客運賃に対しまするところの遠距離逓減法に対する再考慮であります。現在においては旅客運賃の賃率を決めるに当つて、遠距離逓減を二階率にしまして、これは運賃理論からして、運賃逓洞法の理由なきを以て段々階段を減らして二階率にしたのでありますが、日本のごとく細長い島國におきましては、遠距離逓減は或る程度止むを得ないものでありまする故に、又この場合のごとく高額は倍率をいたしまするときには、日本の交通をなだらかにするためには、又各都市におけるところの経済地位の不権衡を來さないためにも遠距離逓減法をもう一度修正して、もう少し階段の多いものとして、東京、大阪より遠いところの都市に対するところの運賃の高さを低めるということを再考慮すべきものではないかと思うのであります。
 以上を以ちまして大体私の運賃値上げに対する考えを申上げました。
#6
○委員長(板谷順助君) 委員諸君に御相談いたしますが、公述人に対する質疑は各公述ごとにやつた方がいいかと思いますが、如何ですか。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(板谷順助君) それでは公述人に対する御質疑がありましたならば……。ありませんか。
#8
○丹羽五郎君 今鈴木氏のお話の中に、今回の運賃値上げによつて收入減というお話がありましたが、鈴木氏は收入減は現在政府は五%の收入減と見ておりますが、鈴木氏はこれに対してどれ程の收入減を見ておられますか。
#9
○公述人(鈴木清秀君) 收入減という言葉でございますが、私は明確に申しますと、輸送人員の減による收入減でありますが、私は三割以上は收入減をするのではないかと思つております。
#10
○委員長(板谷順助君) 次は船主協会理事の濱田喜佐雄君にお願いいたします。
#11
○公述人(浜田喜佐雄君) 私は今般の鉄道運賃の値上げは、すでに現段階におきましては一應止むを得ざるものと考えるものであります。それが理由といたしましては、すでに國会並びに各國民の間におきましても十分御檢討に相成つておりますので、今更喋々の要もないわけでありまするが、先ず第一に、如何なる事業におきましてもコストをセーヴすることが絶対條件であります。國鉄が如何に公共事業でありましても、原價や採算を無視したものであつてはならないのであります。第二には、現行運賃は一般物價に比しまして著しく低率であります。從つて今回値上げをいたしましても現物價体制の線に到達する程度のものであるのであります。第三には、一部にはこれが値上げによりましてインフレーシヨンを助長いたしまして、これによつて國民生活を圧迫すると言われておりますが、私はこのインフレーシヨンの助長の懸念よりも、賃金、物價のアンバランスの方が却つて産業の発達を阻害し、延いては國民生活の安定上障害を來すものと考えるのであります。第四には、各産業を通じまして赤字は一切國家補償で辻褄を合わすというこの観念は、全國民の能率減退を來します重大なる素因となります。眞劍な努力と強い責任観によらなければ、能率の増進と企業の発展は望まれんと考えるのであります。
 私は海運におります関係上、これを海運の面から考えて見ましても、現在の國家海運はすべて船舶運営会で運営しておるのでありますが、船主附船舶の使用料のみを支拂われておりまして、一切のすべては運営会において運営しておりますために、船主自体の費用に対する意欲と熱意というものが減退いたしまして、現在由々しき場面に直面しておるのであります。すでに船舶運営会によるところの運営の非能率なるところは、遺憾ながら一般周知の事実であり、定評あるところでありまして、これによつて起るところお巨額なる赤字は國家によつて補償されておるのであります。すべての企業におきまして自己の責任を自己のアッカウントによらず、このリスクとアッカウントがすべて國家において補償されるということがこの能率減退の大きな基因をなしておるものと、考えるのであります。そこで我々は海運におきましては民営に還元することによりまして、これしかもうすでに方法がない、この還元によつて我々はこの能率の低下を防ぎ、同時に厖大なる國費の負担を軽減して行きたいと、各方面に対して努力いたしておる次第でありまして、鉄道にあれ、海運にありましても、この独立採算制の線を堅持し、自己の危險と費用において努力しなければならんと信ずる者であります。
 以上申上げましたごとく今回の國鉄運賃の値上げは一應止むを得ざるものと考えるのでありますが、これが値上げをするにつきましては、旅客を三倍半、それから負担力のある貨物運賃の面におきまして五倍程度の値上げをすることが適当なものと信ずる者であります。併し同時に先程もお話がありましたように遠距離逓減率に対しましては更に御檢討を願いまして、この遠距離におけるところの貨物輸送をでき得る限り運海に轉換いたしまして、この逓減率の点を檢討される必要があると考えます。これと同時に政府におきましては單にこの値上げということに止まらず、同時に早速合理的運営によるところの能率の向上と諸経費の節減につきまして、眞劍な施策を講ぜられることが大切な問題であると存ずるのであります。
 簡單でありますが、私はかく感じまして、鉄道運賃の値上げを賛成する者であります。(拍手)
#12
○委員長(板谷順助君) 公述人に関し別に御質疑はありませんか。なければ、全官公労働組合の佐藤誠君にお願いいたします。
#13
○公述人(佐藤誠君) 私全恩公の佐藤誠であります。所属は全國財務労働組合、現在企画部長をしております。私は全官公廳を代表いたしまして、今回政府の採らんとしておる運賃の値上げに対しまして全面的に反対であります。つまり今回の政府の採らんとする運賃の値上げは、今まで歴代内閣の採つた来たいわゆる悪い政治をすべて勤労大衆の負担に帰せんとするからであります。
 で、どういうところが運賃値上げの必然性になつて來るか、そういう問題について、私はその根本原因を突いてみたいと思うのであります。先ず第一に、現在の日本の財政の仕組の問題でありますけれども、これが非常に名前とは違つた樣相を呈しているのであります。つまり健全財政、いわゆるインフレ防止のための健全財政と言つておりますけれども、本質はそうではないと私は考えるのであります。この問題が今回の國家財政から見た運賃値上げという問題に絡んで参りますので、その問題から最初に私の意見を申上げたいと存じます。
 先ず昭和二十二年度の当初予算を組むときにおきまして、一般会計、特別会計合せまして、政府の財政資金は約二千三百億要ることになつたわけであります。そのときに昭和二十一年度の全部の國民所得が幾らかというと二千九百億しかない、二千九百億の中から二千三百億の財政資金というものを賄うことができないから、政府はそこで四千億という國務所得を、数字を発表したわけであります。そういうような方式が次から次へと雪だるまのようにふくれ上つて参りまして、昭和二十二年度の追加予算を組む際総計で四千三百億でありましたけれども、そのときの國民所得は九千億というふうに発表し、更に本年の一月に入りますと一兆一千億というふうに発表したのであります。生産力の減退しておる現在におきまして、実質的な國民所得というものはそう増加するわけはないのでありまして、こういうように一兆何千億という國民所得の増加は、すべて政府の人爲的なインフレ政策の結果であると私は考えるのであります。つまりこのような人爲的なインフレの増加の結果、物價が上り、物價に追いついて兎と亀の競爭のように賃金が後からのこのこついて行き、それが原因になつて運賃が値上りしなければならないという、そういう現在のやつておる財政の仕組が根本的に私は間違つておると、こういうふうに考える者であります。今回の予算におきましても、総計九千億の厖大な財政資金を賄わなければならないのでありますが、それにいたしましても、又しても國民所得を一兆九千億というふうに厖大な額を見込んでおるのであります。丁度手品のトランプのように、次から次へとトランプをポケットから出して來て、國民所得を増大しておるのであります。これが現在の政府の財政の仕組ではないか。こういうところから運賃の値上げを合理化しようという政府のやり方につきましては、私は全面的に反対する者であります。
 次に第二番目には、我々の勤労階級の生活に及ぼす影響といたしまして、私はやはり反対する者であります。つまり現在政府は官公吏及び一般労働者の賃金を三千七百円ベースというふうに抑えてありますけれども、そのうち闇値の生計費の占める割合は七五・四%というふうに政府は言つているわけであります。政府は今回運賃を値上げした結果、定期代或いは旅客運賃等で上る分は生計費の極く僅かである。こういうふうに言つております。併しながら実際はそうではないのでありまして、三千七百円ベースのうち七五%も闇で賄うといたしますれば、旅客運賃の闇物價の高騰に及ぼす影響は非常にこれは甚大なものがあると私は考えるのであります。
 その次の問題は、今回通行税が非常に増額されております。昨年度の通行税は僅か二億九千万円でありましたけれども、本年度の通行税は総計三十五億、昨年度の十二倍に通行税が上つております。このように十二倍も昨年に比して殖えている税金は外にないのでありまして、この通行税の負担は全部運賃の負担と同じに、すべて大衆の負担になるものであります。その外運賃の増額によりまして、いわゆる取引高の増額が起つて参ります。これに対して掛かるところの取引高税の大衆に対する負担も極めて大きなものとなつて來るというふうに私は考えるものであります。
 以上のように、財政の問題から行き、更に現在の我々勤労大衆に及ぼす生計費に対する影響から見まして、私は運賃の値上げには反対する者でありますが、そこで直ぐ疑問になりますことは、それでは一体、現在の鉄道の赤字をどうやつて埋めたら宜いのだ、こういう疑問が直ぐ起つて來ると思うのであります。これにつきましては、現在政府は鉄道の赤字を非常に厖大に見込んでおりまして、そのうち一般会計において負担するもの、それから交付公債を発行するもの、それから運賃の値上げ、そういうふうにその救済策を考えておりますけれども、私は運賃を値上げしないで、而も現在の國鉄労働者の賃金を五千二百円の引上げても、尚且つ運賃を値上げしないで、現在の財政で賄つて行けると信ずる者であります。何故ならば、現在の歳出歳入の両面を見ますときに、非常にそこに不合理な点が多々あるのでありまして、例えば歳出の面におきましては終戰処理費の問題、價格調整費の問題、公共事業費の問題、これだけですべてですでに約二千億近くになるのでありますが、終戰処理費等は実は私共の職場の方で査定をやつているのでありますが、これは非常に遅く、而もルーズであります。而も今までの終戰処理費の件数の僅か四十分の一くらいしかまだ檢査を終つていない、こういうような現状でありまして、これをもつと急速にびしびしと査定をやれば、現在の終戰処理費の水膨れというものは相当削減できる、こういうふうに考えております。大体私共の方のそういうものを主として研究している者の話によりますと、四割から六割くらいの削減が可能であるというふうに言つているわけであります。これだけですでに四百億乃至六百億の財源が浮くというふうに私は考えております。
 その次に價格調整費の、或いは公共事業費の問題を言いたいのでありますが、時間の関係もありますので、主として歳入の点に移りたいと思います。確かに現在の租税負担の現況から行きまして、これ以上の國民に対する租税負担は無理である、こういうような見解に立つのは至極尤もだと思うのでありますが、この租税負担の問題が非常に不均衡なのが現在の状態であります。例えば昨年昭和二十二年度におきまして、安本の発表いたしました國民所得は八千億であつたにも拘わらず、主税局の発表した國民所得は四千七百億であります。その差額というものがすべて闇所得になつて、税金の掛からない所得になつて現われて來るわけであります。これを今年度に引直しますと、約九千億というものが闇所得になつて現在潜在しているわけであります。この所得に眼を着けるならば、ここから相当額の財源が見込まれることは当然でありまして、こういうところから私は幾らでも國鉄の現在の赤字を賄つて行くことはできる、こういうふうに考えるものであります。勿論私といたしましては、國鉄がいつまでも赤字を出していてもよいとは決して申上げないのでありまして、飽くまでも赤字を克服することがやはり、大きな國家事業である以上、当然であると思うのでありますが、なぜ國鉄が赤字を生じたかという根本的な原因に遡つてこれを解決しないならば、到底この解決は不可能であるというふうに考えるのであります。つまり低い運賃、低い農産物價格、低い賃銀、これで以て今までの日本の政治なり日本の経済というものが運営されて來たことは、今までの歴史的な事実でありまして、これを根本的に解決しない限り、この現在の日本の政治なり財政というものを根本的に変えない限り、いつまで経つても國鉄の赤字というものは続くであろうというふうに考えるのであります。そういうような見地からいたしまして、私は鉄道運賃の値上げには、以上の三つの点から、私は今回の政府の採ります運賃値上げには、全面的に反対の意を表する者であります。(拍手)
#14
○委員長(板谷順助君) 御質疑ありませんか。
#15
○仲子隆君 今のお方にお伺いいたしますが、運賃を値上げしないで、外の財源からこれを賄うとすれば、特別会計を一般会計の方からすべて賄つて行くという御案でありますか。もう一つは、今の鉄道の費用は、これから見積られるものは賃銀その他に対しての増額が沢山あるのであるが、それらは國鉄の方から赤字を出さないでやつて行くという主張に対しては、どういうふうにしてこれを賄つて行くのか。運賃を上げないで賄える方法といえば、行政整理で人員を整理するより外ないのでありますが、如何なる意味のお考えであるか。この二点をお伺いいたします。
#16
○公述人(佐藤誠君) 第一番目の点につきましては、國鉄の赤字を、交付公債とか運賃の値上げで賄うのではなくて、一般会計の方からこれを賄うという考え方であります。その財源につきましては、歳出の削減と歳入、特に九千億に上ると予想される闇所得の捕捉によつて賄うことができると考えております。第二の國鉄の経営の合理化の点につきましては、これを現在の人件費に求めることは、すでに当を外れておるのではないかと思います。現在の人件費の割合は、政府のパンフレツトにもございますように、人件費が四五%、物件費が五五%ということになつておりますけれども、これを現在の五千二百円ベースに直しましても六〇%くらいにしかならないのであります。これをアメリカやその他の人件費に比べますと、アメリカ等では大体六五%というように私共了承しておりますので、人件費の方からする削減は、やはり現在の状態といたしまして当を得ていないのではないか。むしろ私は物件費特に石炭の問題、それから收入の点については、現在國有鉄道が保有しておるいわゆる帳簿外財産の拂下げの問題、これが終戰当時非常に不当な低價額を以て拂下げられたという話を聞いておりますが、こういう問題も嚴密に査定すれば、收入の方も相当増額できるのではないか。石炭等についても相当の経費減ができるのではないかと考えておりますし、更に現在の國鉄の会計の中に、一般会計の分を負担しておるものがかなりあることを私は聞いておるわけでありますが、こういうものをすべて整理いたしますときには、國鉄の現在の経理というものは相当合理化できる、こういうふうに考えておる次第であります。
#17
○委員長(板谷順助君) 尚私より佐藤君に希望いたしますが、あなたが全面的に反対であるという御意見はよく分りました。そこで、つまり全財労を代表しておいでになつたので、勿論この財政について、只今のお言葉の中に、何か研究をなすつておるということでありまするが、運賃を上げないで済むならば誠に結構、然らばこれに対する現実に問題として、どういう点を整理し、或いは又一般会計の中からどういう点を削除してこれを補うとか、或いは又今のお話のように、石炭の問題も出ましたが、こういう問題について腹案がありましたならば、今この席でなくてもよろしうございますが、この委員会の参考のために成るべく至急に一つお出しを願うことができるならば、大いに参考になると考えるのでありますが、如何でございましようか。
#18
○公述人(佐藤誠君) 承知いたしました。
#19
○委員長(板谷順助君) 次はY・W・C・Aの総監事の渡邊松子君にお願いいたします。
#20
○公述人(渡辺松子君) 消費の面を担当しておる女の立場から、この運賃の値上げがどんなに皆に感じられるか、どうありたいと願つておるかという生活の切実な立場から、私の意見を述べさせて頂きたいと思います。
 それでなくとも毎月の不足な生活の中から、ただ汽車賃が三倍半になるということが新聞に一度報じられただけで、いろいろな毎日のそれぞれの品物の値段がどんどん上つて行く、五月よりも六月に入つての生活費のかかり方がずつと変つて來たということを一番身近に思うのは、家庭の消費面を與つておる女の生活でございます。そういう意味からいつて、三倍半に値上げをしなければならない状態であることを非常に残念に思います。そうして私共の願いは、何とかして三倍半上げないで済むように考えたいということでございます。それではどの点が妥当かということについては、私共資料も持ちませんし、具体的な数字を申上げる準備もございませんけれども、それぞれの立場から、例えば鉄道の運賃を上げなければならないという立案をなさつた立場のお話を伺うと、それも御尤もだ、三倍半でもまだ足りないのだということも、その一点からだけは十分了承できますけれども、それでは、そういうふうに上げて行くことから起る大きな結果から見れば、結局國民の生活、殊にそれを扱つている女の生活が非常に無理が行くということを考えなければならないと思います。そうしてそれが長い目で見て、日本の將來のために暗い影を投げるものだという立場から、三倍半でなくて、できるだけ少い、或いは二倍なり二倍半なりで止めて頂くように考えて頂けないものかということをお願いしたのであります。勿論それは旅客の運賃も貨物も両方共、生活には同じように掛かつて來る重圧でございます。そういう意味で、私は三倍半の値上げを反対し、できるだけ少い、三倍半は反対しますけれども、上げなくては済まない実情ならば、できるだけ少い上げ方でできるような工夫がされて欲しいということをお願いしたいと思います。
 そうして二つの点について、これは恐らく皆が持つておる疑問として、疑問のままに皆樣に申上げたいと思いますことは、國鉄の六十万といわれておる從業員に人達が、通勤費として、或いはその家族が特別な旅行のためにバスを受取つておるということ、金額において全体どれだけになりますか、それが相当の額になるならば、勿論それを考慮することによつて一つの対策が出て來ると思いますけれども、数字の上ばかりでなくて、一つの道徳的な見方といいましようか、負担を皆が分ち合うという意味で、國鉄のそういう特権がこの際考慮されることができれば非常によいと思います。
 もう一つは、これは私共がそれについての正しい知識がないために、こういう疑問が出て來るのかも知れませんけれども、この國鉄の費用の中に、進駐軍のために費やされている、或いは進駐軍の仕事に廻つている從業員、或いはそのための費用というようなものがこの中に入つているのかどうか、若しもそうだつたならば、この負担は別な面から、日本が負けたという面から別に國民が皆で負担するはずで、鉄道の中にそれが入つているのはおかしいと思います。なぜそういう疑問を持つかと言えば、私共がすし詰めの汽車に乘つているときに、随分沢山の進駐軍の方に列車が廻されたり、勢力が廻されたりしていることを見ますときに、それがどうなつているだろうかという疑問が自然に湧いて來るわけであります。(拍手)
#21
○委員長(板谷順助君) 渡邊さんに何か御質疑はございませんか……。私から渡邊さんにちよつとお伺いしたいのですが、あなたが只今消費者の立場から全面的に反対であるという御意思は分りましたが、若し上げるとするならば、創意工夫をして成るべく少い率において上げるようにというお言葉があつたようですが、その率については何か御腹案はないのでございますか。
#22
○公述人(渡辺松子君) ございません。
#23
○委員長(板谷順助君) ただそれだけですか。
#24
○公述人(渡辺松子君) はい。
#25
○委員長(板谷順助君) 分りました。それでは一般公述人の村木啓介君にお願いいたします。
#26
○公述人(村木啓介君) 私は運賃値上げ絶対反対を叫びます者でありますが、今までにいろいろ新聞の輿論調査や或いは皆さんの声として傳えられました点は、一應物價の騰りますことを前提にいたしまして論議されたように私は考えるのであります。私が今から申上げたいのは、物價の値上げをしないで以て、運賃の値上げも勿論しない、こういう線で私の主張をする者であります。その点先ず申上げたいと思います。なぜそのようなことを申上げますかといいますと、この物價を上げますことによりまして、というより、むしろ運賃を上げることによりまして、次々と物價が大幅に値上げされるであろうことは当然、それからインフレも次々と高騰するだろうということが、これは常識的にも考えられる点でございまするし、そのように現在いろいろ申されているわけであります。そういう立場から先ず絶対反対をする者であります。
 國鉄当局或いは政府の運賃値上げの理由を伺いますと、その運賃値上げの理由によつて行われるであろうところの合理化、そういうものが私には逆効果にきりならないというようにしか考えられないのでございます。運賃値上げの理由につきまして一々反駁申上げて見たいと思います。これはお手許に「鉄道運賃値上反対とその対策」というプリントを差上げて置きましたので、詳細は、詳細でもございませんが、大体の要点はそれを見て頂きまして、時間も余りございませんので、要点だけ申上げたいと思います。
 先ず運賃値上げの問題を当局がいろいろ御説明なさいますときにお使になつた数字の件でございますが、これが非常にまちまちであるということ、強いて申しますならば、詭弁的にこの数字が使われたのではないかという点、例えば昨日頂戴いたしました「運賃値上の必要な理由」というパンフレットを見ますと、生計費が六十五倍になつておつて、賃金が六十六倍になつておるというような数字が使つておるわけであります。昭和十一年に対して……。その数字がすでに疑問であるということははつきりしておるわけである、それから物價の中に占めるところの運賃の割合というような数字が挙げられておりますが、その数字も國鉄で御発行になりました白書の中の数字と、その後「二十二年を顧みて」という中で使つていらつしやる数字と丸つきり違つておるのであります。つまり今までいろいろ数字が使われておりますのは、その政策をお示しになるときに、その理由を御説明になるときに都合のよいような数字を常に使つていらつしやるという点であります。こういう点につきましては、これはしばしばG・H・Qその他から出ておることでございますので、これは統計上いろいろな困難な理由もあるかと思われるのでありますが、私はむしろそのことよりも、可なり政策的にそういつた間違つた数字を使つていらしやる、そのことを先ずよく十分御了解になるように申上げて置きたいと思います。それから運賃値上げの理由といたしまして、財政の收支の均衡を図るために行うのだということが第一の條件になつておる、それからその次に経済の安定を図るために行うのだということが第二の点になつておる。それからその次は私鉄の運賃を上げてやらなければならないから國鉄の運賃を上げなければならんという、非常に馬鹿げた理由である。その第三点が大体政府当局のお考えになつていらつしやる運賃値上げの理由かのように私は承知いたしておりますし、プラントにもそのごとく書いておるわけであります。その点が如何に運賃値上げすることになつて逆効果になるかということは、第三点の私鉄の問題につきましてはこれは若干議論がございますので後刻申上げることといたしまして、初めの二点につきまして反対の説明を申上げたいと思います。
 その前にちよつと申上げて置きたいのは、今回の三・五倍の運賃値上げというものは、利用者の立場から納得できるかどうかという点でございます。これは今回程度の三・五倍ぐらいは最少限度の値上げというふうに説明されておりますが、これは私共が考えますると、最少限度どころか、これは最大限度の旅行を禁止するであろうところの運賃であるというような先ず申上げたいと思います。例えば、その実費の内容を調べて見ますと、東京下関間の三等往復急行で以て旅行いたしますと二千六百円でございますが、この実費が千五百五十円になつております。つまり千五十円だけは儲けでございます。つまり千五十円だけは不当に運賃を取られておる。実費という点から考えますならば、不当に運賃を取られるということになる。この数字は、これは原價計算ということが非常に問題がありますので、可なり問題があるとは思いますが、大体目安的にこの数字は信じてよいと思う。そういう点で先ず非常な問題がある。つまりこれは両方で三・五倍の運賃を値上げすることによりまして起るところの四百八十六億の貨物の穴埋めを三等旅客がやるのだということなのであります。この点を先ず大衆が納得するかどうかという点である、強いて私がこのようなことを申上げますのは、今までの運賃政策というものに非常に階級性がはつきりしておつたという点である。これは皆さんが十分御了解かと思いますが、過去の統計から調べて見ますと、貨物運賃と旅客運賃を比べますと、旅客運賃は概ね五〇%儲かつておつたのであります。そうして貨物運賃は殆んでいつでも欠損をしておつたのであります。つまり旅客の犠牲において貨物は運ばれておつたのであります。原價という立場から考え億ますと……。それから今度は旅客自身について考えますと、一二等旅客は三等旅客の犠牲において運ばれておつたと、こういうことでございます。それはこの一二等客車の挙げる收益というものと三等客車の挙げる收益というものを考えて見ました場合に、三等の客車が挙げる收益を一〇〇といたしまするならば、今までの統計が示しておりまするように、大体八〇%前後が一二等客車の收益率でございます。つまり一二等旅客は、別に高い運賃を拂つて旅行しているんじやなしに、三等旅客の犠牲においてふんぞり返つて運ばれていたということなのであります。
 それから貨物運賃の階級性について申上げますならば、これは直接消費されるところの米、味噌、醤油とか薪炭であるとかいうようなもの、大衆が直ちに負担するところのそういう運賃、それと、それからもう一つは、生産資材でございまする石炭とか、鉄鋼とかいうような、一應資本家が負担して、それから製品となつて大衆が負担うる運賃、こういうふうに二つに分けてこれを分析して見ますると、はつきりその中にいわゆる大衆收奪的な性格が見られるのであります。このことは貨物の今までの実費統計というようなものを見ますればはつきりいたしておるわけなのであります。但しこの場合には逆にいろいろ宣傳されておりまする点は、從來ややもしますと、実費ということを考えないで、ただ價格の中に含まれているところの運賃云々ということが言われるのでありまするが、そのようなことは内容を全然無視したところの詭弁に過ぎぬのであります。いわゆる運賃制度の中にははつきりした階級性が織込まれているということ、非常に鉄道輸賃というものは今まで大衆收奪的なものであつたということ、このことを私は先ずはつきり申上げたいと思います。
 その点に立つて、先ずこの現在の運賃法案というものの中に含まれておるところの矛盾、そういうようなものについても指摘をして行きたいと思います。これはこんなことを私言つておりますと時間がなくなつてしまいますが、その次に本論に入りまして、運賃を値上げいたしまして、果して目的が達せられるであろうかどうかという点でございます。第一の狙いでございまするところの赤字を消す方法、これは運賃を値上げしましても、赤字は消えないのでございます。これは現在御承知のように、國鉄の経済費千三十九億の予算が議会で十分まだ審議されておらないのに、その千三十九億の予算が足許から先ず崩れておるということであります。まだ通過しない前から、赤字がすでに予定されている百億以外に出ているということであります。今五ケ年計画の第一年次でありまするところの二十三年度、本年度におきまするところの一億三千万円、三十六億人の輸送に対しまして、当然この復興計画が行われる筈であるところの二百六十一億、その七〇%になつておる百八十一億に、現在それはもう削減されておるのであります。從つて予定されるところのこの運賃收入というものはむずかしいであろうという点が先ず考えられるのであります。それから人件費につきましても、すでに三千七百円ベースの矛盾、この面から起つて來まするところの、若し私共が要求いたしておりまするところの五千二百円べースというものが支給されるといたしまするならば、これによつて百三十三億の赤字が出て來るというような問題、それから七月一日から若し仮に運賃が両方共三・五倍に値上げされるといたしまするならば、そのときには現在一日一億七千九百万円赤字、運賃値上げの差額があるのでございますから、これの十五日分、二十七億すでに赤字になつておるのであります。その他沢山いろいろ問題がございまするが、ともあれ現在ですでに國鉄の赤字というものは、ペーパー・プランの上でも崩れておるということであります。その上物價を上げること、物價自身が現在予定されている物價で果して止まるかどうか、現在のような物價政策におきまして……。このような点から考えましても相当矛盾がございますので、千三十九億円の経営費ではとても止まる筈もないし、又收入も当然減つて來るだろうという点から、運賃値上げをしても赤字は絶対に解消しない。その赤金の解消しない程度のものは、恐らく第一次、第二次、第三次の追加予算でいろいろいじられるであろうが、こういうようなものは恐らく非常に大きな数字になるだろうというように私は考えるものであります。
 それから一番問題になりますのは、國鉄の財政の收支の均衡という問題を國鉄の枠内でやろうとしておられるということなんであります。現在國鉄のような非常に荒廃し切つた企業というものが、ただ國鉄の枠内でこれをいじり廻したことによつて、これが解消できるかどうか。これは國家の全産業組織の上でこれがいろいろに考慮され、いろいろに計画されなければ、これは解決しない。小さい國鉄だけの枠内で経営をいろいろ合理化したり、いじつたりするようなことをやつても、本質的には問題は解決しないというように私は考えるのであります。
 それからその次に、物價と運賃の均衡ということがいろいろ言われておるのでありますが、例えば物價が百十倍になつた場合に、旅客、貨物共に三・五倍にした場合には、八十倍前後というように言われておりますが、まだそれにしても安過ぎるというような議論が行われるのでありますが、現在の國鉄の持つております能力は、大体戰前の輸送キロその他から考えまして、三〇%ぐらいに低下しておる、つまりサービスは三〇%くらいに落ちております。これは貨物輸送の場合には若干数字が違つて参りますが、ともあれ質が下つておるのであります。從つて私共が、價格が高いとか安いとかいう場合は、当然質を考えて、そのことは言わなければ意味がないのであります。從つて三・五倍になれば八十倍だから云云というような議論程馬鹿げた議論はないということであります。以上政府の言われますところの、いわゆる運賃値上げに掛けられておる期待、こういうようなものは全然意味のないものだ。おやりになつても逆効果になるものだということを私は強く申上げたいのであります。
 その次に、國有鉄道運賃法案の問題でございますが、これには運賃料金の決定原則といたしまして公正妥当なものであるとか、或いは原價を償うものであるとか、或いは産業の発達に寄與するものであるとか、或いは賃銀、物價の安定に資するものとかいうような四つの條件が挙げられておるのでありますが、このことと、先程申上げました運賃の矛盾、運賃が実費を償うものであるかどうかという点につきまして、例えば三・五倍に両方いたしました場合に、当局のお出しになつていらつしやる数字を見ましても、旅客運賃は四〇%儲かりますし、貨物運賃はそれでも尚一六〇%の欠損ができておるのであります。このことを何と説明されますか。同じ運賃法案の、一つの法案の中でさえもこのようにお互いに矛盾し合つたことを決めていらつしやるわけであります。それから尚この運賃法案について申しますれば、貨物等級の問題とか、賃率の問題とか、いろいろ問題があるのでありますが、これは長くなりますから、その点で省略さして頂きます。
 それから、然らば君は、物價を改訂しないで、運賃値上げをしないで、賃銀を大幅に五千二百円に上げたいというが、それで一体國鉄の経営をどうするつもりなのかという御意見があるだろうと思います。それは差上げましたパンフレットの終りに、資金の計画表と、それから大体の、これは非常に杜撰でございますが、一應の試案といたしまして、このように予算を組めばいいのであるという一つのテーマを與えておるわけであります。そういう点を一つ御了解願いたいと思います。尚このことを実行いたしますためには、これは全官の佐藤さんがおつしやつたように、本予算の方を全面的に組替えて頂かなければ意味がないのであります。本予算自身は物價改訂を前提にしておいでになりますし、本予算自身の三千九百九十四億という厖大な予算の中には極めて半人民的なおかしな経費があるのであります。例えばドレーパー報告書におきましても指摘しておいでになるように、終戰処理費の問題にも大幅な問題があるわけであります。そういうような問題を含めまして、根本的にこの本予算の方を作り直して頂きたい。そのためには当然これは現在の政策を変えて頂かなくちやならないわけであります。現在の政策を変えることなしに、國鉄の運賃を三・五倍にする問題は本質的には解決しないということを私は申上げたいのであります。
 それから國鉄の経営の合理化がいろいろ言われておるのでありますが、これはただ狹い國鉄の枠内でこの合理化の問題を取上げても駄目なんであります。これは強力なる外部の圧力によつてのみ私は國鉄の経営の合理化ができる、それでなければできないのだ、こういうことを申上げたいのであります。例えば石炭などがいろいろ問題になるのでございますが、この石炭なども例えば質を良くするような問題とか、或いは御承知の方もあると思いまするが、現在貨車で運ばれておりまする石炭は、この檢收に当つては別に数量を正確に計つておるわけじやないのでありまして、五%ぐらい欠斤があるのであります。十トン貨車に積まれておる石炭は、十トンと評價されておるのでありますが、実際は八・五トンぐらいしかないという欠斤の問題があります。又質と量の問題があるのでありますが、この問題は國鉄がこれを單独に取上げてがちやがちや申しましても石炭業者の方が納得しないのであります。つまりそういうものは闇の部分に考えられておるわけであります。そういう点を、全体の産業面からそういう問題を取上げて、適性運轉用炭を配炭するとかその他のことが言わけなければ、ことは言うべくして行われない。例えば、おれのところは石炭は少し少いというと、國鉄には石炭を納めない、納めたがらないのが今までの実情なんであります。それからその他外廓團体の問題とか、國鉄内部の腐敗の問題であるとか、臭い物に蓋をするような方法は、そういう問題はもう少し積極的にやらなければならん。そういうことを前提にしてのみ今私の出しました私案というものは成立するものであります。
 それから次に、運賃値上げをしてサービスの改善を図れという御意見がいろいろ行われておるのでありますが、これは私は焦点が違うと思うのであります。なぜならば、運賃値上げはサービスをよくするために行われるのじやないのであります。國鉄の財政の收支の均衡を図るためとか、先程言いましたインフレの問題とかということを、後を追い駆けて行くために運賃の値上げは行われるであつて、決して三・五倍の運賃を値上げすることによつて、車を余計造つたり或いはその他の施設をよくしたりすることによつて、輸送力やサービスがよくなつたりするのじやないのであります。ただ從事員に対する問題は若干問題があると思いますので、このことは運賃値上げの問題と別個にお考えを願いたいと思うのであります。
 それから最後に申上げたいのは私鉄の運賃の問題でございます。國鉄の運賃のみが國会においていろいろ論議されておるのでありまするが、全体の輸送量から見まして、三〇%は私鉄によつて運ばれておるのであります。收入面においても大体三〇%が私鉄の收入になつておるわけであります。そういう面も考えまして、私は今までのようなやり方で、陸運監理局とか或いは物價廳の二三の官僚の方が、いろいろ経営者の方と論議なすつて簡單にお決めになる方法は、私は非民主的だと思うのであります。而も私鉄は全輸送貨物の二%きり貨物の輸送を受持つていないのであります。それから経営について申しますると、旅客收入が九五%で五%が貨物收入に過ぎないのであります。國鉄の現在の赤字は旅客によつて起つておるのではなしに、現在二〇%程度儲かつておるのでありますが、貨物によつて赤字は起つているのであります。而も走行キロについて申しますと、石炭を焚いて走つております私鉄は走行サロにおきまして九%、大体電氣が八七%という数字でございまして、補給金の問題もございまして、電氣料金は非常に安いのでございます。そういう点で、私鉄の性格と國鉄の性格と非常に内容的に違うのであります。私鉄の運賃値上げの問題については、この席で問題になることではないかも知れませんが、十分お考え願いたいと思うのであります。尚、当局の言われまする輸送調整をやるために運賃政策を採るのだというお説ほど馬鹿げたお説はないと思うのであります。それは別途に行われる問題だと思うのであります。
 以上申上げましたように、國鉄の運賃を上げることによつて何がプラスになるか、プラスになる面は恐らくないのでございます。私共は私共の労働の再生産を行うこともありまするし、或いは全産業を活發に復興して行く使命も持つておりますし、こういう点をすべて考えまして、物價を上げないで、運賃を上げないで、その政策の下においてのみ國鉄の收支の均衡の問題も起るだろうし、インフレの問題も起るだろうし、そういうことを私共は主張したいのでございます。非常に長く時間を取りまして恐縮でございました。
#27
○北條秀一君 只今村木さんから新らしい問題が提起されたのでありますが、それは鉄道の外廓團体即ち交通公社とか弘済会、現に設立されんとしておる停車場株式会社、こういうような外廓團体が鉄道に大きなマイナスを與えておるということを言われたのでありますが、あなたの研究ではマイナスは一体どのくらいなウエイトを占めているか。これについてあなたの、研究をされたのならば、それについての御意見を聞かして頂きたいと思うのであります。
#28
○公述人(村木啓介君) 十分御納得の行くように説明いたしますためには相当時間が長く掛かると思いますので、これは他の機会に私は御説明申上げたいと思うのであります。これは私は数字的に現在どれだけマイナスになるかという結論は簡單には出しかねる次第でありますが、ある程度の調査は、非常に末熟ではございますが、やつておるのであります。その点で一つ御了解願いたいと思うのであります。
#29
○北條秀一君 それでは今村木さんが、後で資料をというお話だつたのですが、あるだけの資料を我々に提供して頂きたい。そういうことができるかどうか。
#30
○委員長(板谷順助君) できましたら一つ……。
#31
○公述人(村木啓介君) そういたします。
#32
○村上義一君 いろいろ私もお話になりました数字について疑問を持つのであります。一二の点だけについて質問して置きたいと思うのであります。あとはプリントをよく拜見いたしたいと思うのであります。この運賃改正は大衆收奪的な運賃改正である、一、二、三等の普通運賃の関係をお話になつて、そうして輸送コストから見て三等運賃は、三等旅客に非常に收奪的な運賃を課しているというお話でありました。そういうように伺つたのでありますが、定期運賃なんかのコストについてはどういうお考えをお持ちでしようか。伺いたい一点であります。
#33
○委員長(板谷順助君) 村上さん、あなたに御相談いたしますが、実は一般公述人の方は午後にやりまして、それでゆつくり一つお話を聞きたい、こういうことでありまして、今帝大教授の今野君が時間の都合で……前以て約束されておつたのでありますが、午後にゆつくりお話を伺つたら如何ですか。
#34
○村上義一君 結構です。
#35
○委員長(板谷順助君) 梶原さん、先にあなたおいでになつたけれども、今野君が何か公務の都合で、前以て時間の約束があるそうでありますから、御迷惑でも次にお讓りを願いたいと思うのであります。それでは東大教授の今野源八郎君にお願いいたします。
#36
○公述人(今野源八郎君) 簡單に申上げます。運賃の値上げの問題は、極めて重大な影響を國民の生活、経済全体に及ぼしますので、成るべく止むを得ない限度に止めなければならないということは当然でございますが、併し今日のように國鉄が厖大が赤字を出しておりますとき、これを利用者が或る程度まで負担するということは止むを得ないことじやないかと思うのであります。理想的な運賃が如何に決めらるべきかという原則論にいつも還るのでありますが、私は運賃はやはり運賃を構成する原價に從つて決めらるべきものだと思います。併し又原價のみでなく、利用者の負担力ということも考えるべきでありまして、昔から運賃の負担力説、或いは原價税という問題があるのでありますが、今日厖大な國鉄の赤字をカバーする案といたしまして、或る程度まで鉄道の利用者が負担するということが原則として考えるべきじやないかと思うのであります。
 考えて見ますと、我が國の鉄道の運賃政策が明治初年以來の傳統的なマーカンティリズムの政策をフォローして來たのじやないかという考えが強いのであります。と申しますのは、資本主義の初期におきまして新らしい資本を形成させるためには、どうしても國家の補助によりまして鉄道を建設し、運賃も又或る程度まで一般会計において見るというようなことは各國においてあつたのでありまして、廣く申しますならば、そういうた近世國家の成立当時に見られるような重商主義的な政策というものか、今日の高度資本主義の國におきましても日本のような國におきましても尚見られるのでありまして、併しそれは非常に考えなければならぬ問題であろうと思うのであります。こういう迂遠なことを申上げますのは、何倍に上げるかという問題につきましても、貨物、旅客共三倍半に上げるというようなことは私は間違いじやないか、やはり原價を中心にして考えるならば、旅客におきましては原價をカバーする程度、先程大衆を搾取するとかしないとかいう話があつたようでありますが、私はやはり原價を賄つて多少の適正利潤を見る程度にすべきであり、又貨物におきましては、原價を遥かに切つて運んでおるというならば、それを一般会計において保護するということになりますならば、これは重商主義的な、荷主を國家の補助によつて保護するというような極めて古い考え方じやないか、而も旅客で儲けて、若し仮に貨物の方の値上げを少ししてそつちをカバーするというようなことであつたならば、これも問題であろうと思いまして、原價を基準にしましてやはり値上率は決めらるべきものじやないか。甚だ原則論を申上げますが、そう思うのでありまして、日本の運賃の体系そのものにおけるやはり理論的な構成、重商主義的な構成じやなしに、近代資本主義的な構成というものが、社会性を持たして採入れらるべきじやないかと思うのであります。運賃の値上げが止むを得ないということにつきましては、只今申しましたように鉄道内部の事情によるということも多少はあると思いますが、何と申しましても大きな理由はインフレーシヨンであり、更に鉄道の受けた甚大な戰災でありますから、インフレの影響を調整するというような意味におきまして、他の價格との均衡の取れる点まで運賃を上げるということも亦インフレの一つの対策ともなるわけでありまして、特に運賃だけが安く決められるという必要があるかどうかという問題でありまして、勿論原價が安いために運賃が安く決められるということは、國民経済的に見て誠に理想でございますけれども、運賃が原價を切つてまで安く決められなければならないか、原價そのものが高いんだということになれば、これは國有鉄道全体の合理化の問題になりますので、これは又別問題として、國鉄の合理化は如何にすべきかということは別問題であります。只今與えられた原價を以て、今眼の前に迫つて運賃問題を解決しようとするならば、やはり運賃の決定は原價によつて考えるべきだと思います。戰災の影響まで利用者に負担させるということも、或る程度までは負担しなければならないのでありますが、全部を負担させるということも無理だと思います。從つてそういう方法につきましては何年かの時間を見まして、國庫から補助するということになると思うのであります。
 結論的には、私は旅客は二倍乃至二倍半、貨物は五倍程度に上げなければならないのじやないかと思う者であります。貨物を何故こういうように上げるかということは、やはり貨物の原價が高いのに運賃を今まで安く抑えて來た。戰單以來或いは戰單前から、貨物の運賃を全國的に上げることは日本の物價の騰貴を來すという傳統的な考えがありますけれども、それは確かにそうであります。併しながら貨物運賃を不当に安く抑えて、そうしてつまり國家の機関をどちらかと申しますと安く使つて、正当な値段をそれに対して拂わずに使つて、そうしてそのことによつて日本の物價を安くしようという考え方が一つ問題なんじやないか、私自身それが只今考えておる問題なんであります。どうもアメリカにおける運賃が、價格構成において占める割合が、割合に高いのもありますが、日本の場合は割合に低いのであります。物價はその割合に安くならない。これを逆に申しますならば、日本におきましては運賃の犠牲において價格を安くしようとする考え方が強いのではないか。やはり正当な交通機関に対しては公正な運賃を拂つて、而も價格を安くするというような國民経済全体に亘る合理化が必要でありまして、運賃だけを特に原價以下に決めるという積極的な理由はなく、却つて原價を切つて運賃を決めるということに問題がありはしないか、そういつたような社会政策、慈善事業的な考え方というものと純粹な経済理論というものとを混同しない方が正しいのではないか。國鉄の独公採算制が問題になり、その他日本の鉄道、最も大事な國有財産の健全財政化が問題になります場合に、やはり冷酷ではありますけれども、経済の合理主義を以て貫き、これを必要な限度において國家の負担力において、それに社会性を與えて行くということが理想でありまして、余りに政治的な價格を決めるということは却つて國鉄をスポイルし、又我々國民が國家のものだからただでよいのだというような何か感情的な甘えた氣持を持たしめるようになるのではないか。極端に申しますならば、我々は自分の靴を自分のポケットの金で買うと同じように、自分が物を運ぶときは、一般会計の世話にならず自分で運ぶということが世界共通のことであり、自分の荷物を國家の負担において運ばなければならんというようなことこそ不完全なのではないか。そういう時代はすでに過ぎ去つておると思います。
 そういうふうにしましてインフレーシヨン、これは恐らく皆さんからもお話があつたと思いますので、私は省略いたしますが、インフレの影響ということはこれは物價の値上りに比べますと、運賃の値上りの率が非常に低いこと、実質的な運賃が昭和十一年に比べましても却つて低いくらいになつておるという当局の計算がございますけれども、あの数字によつて大体説明が盡きると思います。又戰災の影響がありますので、厖大な眼前の赤字を前にして値上げということは止むを得ない、併しその値上げの率は、繰返して申上げますが、原價に基準を置くべきであつて、ただ政治的な、同じように悪平等に三倍半というようなことを決めるべきじやないと思います。尚アメリカに比較しまして、石炭におきましても亦その他の蔬菜類、穀類におきましても、日本の價格構成における運賃の占める割合が低いという例を申上げますと、アメリカにおきましては、石炭の價格構成において運賃が五割程度占めておりますが、日本では、当局の計算によりますならば、五%程度であります。砂利におきましても、日本では一八%余でありますが、アメリカにおいてはやはり五〇%以上になつております。又小麦について見ますならば、我が国の小麦の價格構成において運賃の占める割合は〇・三八%でありますが、アメリカにおきましては一二%であります。馬鈴薯について見ますと、日本が一%、アメリカが二〇%であります。又一番運賃の高いと言われます生鮮食料品、野菜等につきましても、日本が二・五%に対して、アメリカの鉄道運賃が價格構成において占めておる割合が三〇%を超えております。酒、ビール、生糸、材木等考えて見ましても、比較的日本の場合には、運賃の占める割合が價格構成において非常に低いのでありまして、これら十一級の貨物の等級がございますけれども、あの体系をもう一遍科学的に研究する必要が、細かい問題になりますが、あると思いまして、負担力のある貨物に対してはもう少し、五倍乃至十倍上げてもよいと思いますし、何遍も價格賢構成の中に入つて來るような鉄とか石炭につきましては、それほど上げないのが理想的だと思います。
 尚距離につきましても、遠距離の逓減率を成るべく少くするということは当然採らるべきであり、旅客運賃につきましては、逆に遠距離の割引をもう少し多くするということが望ましいのじやないかと思います。
 御清聽を頂きまして有難うございました。(拍手)
#37
○北條秀一君 今野さんにお伺いいたしますが、旅客を二倍乃至二倍半に上げて貨物を五倍にする程度がよいというお話でありますが、先程お話の消費者の負担力という点からいいまして、旅客運賃を二倍乃至二倍半ということは、それに対して御檢討された結果、そういうふうな結論を出されたのでありますか。もう一つは、貨物は五倍ということでありますが、今までそれぞれ專門家の研究によりますと、貨物は現在のところ少くとも六倍以上に上げなければならんということでありますが、先程あなたの御説明によりますと、アメリカと日本との比較から見ると、貨物は当然の負担力を持つておりますので、最少限度六倍に上げるべきであるというように私は考えるのですが、この点についてあなたは五倍といわれたが、見解をもう一度聽きたいと思います。
#38
○公述人(今野源八郎君) 私は赤字全部を利用者が負担するということは少し無理なのじやないか、つまり戰災の影響を受けておりますから、全國民がそれに対して復旧の分け前を負担するというような部分もありますので、そういう意味から六倍以上にしても負担力があるかも知れませんけれども、余り急激に上げるということもどうかと思いますので、五倍程度と考えたのであります。それから旅客につきましては、これも非常に深刻な影響、殊に私、学生と接触しておりますので、非常に深刻な影響があると思いますけれども、やはり止むを得ないと思いますけれども、成るべく定期につきましては値上げを少くして、そうして負担力のあるとみなされます一般の旅客運賃の方に負担して頂きたいと思ます。
#39
○委員長(板君順助君) よろしうございますか。梶原君に御相談しますが、あなたは午後お差支ありますか。午後は一時半からやりますが……。
#40
○丹羽五郎君 時間も経ちますから、午前中はこれで打切りといたしまして、午後は一時から再開するようにお願いいたします。
#41
○委員長(板谷順助君) それでは休憩をいたしまして、午後一時から再開をいたします。
   午後零時六分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時十七分開会
#42
○委員長(板谷順助君) 午前に引続いて公聽会を開きます。夜間学生連盟中央委員長の松田武君にお願いいたします。
#43
○公述人(松田武君) 私は晝間働きながら、夜、学校に行つておる者であります。一口に言いますと、いわゆる夜間学生に相当するわけであります。この夜間学生の一人としまして、今度の運賃値上げの問題について二三申上げたいと思うわけであります。
 日本が民主化されまして、教育の機会均等というようなことから、夜間学生というものの立場も、晝間の学生と同じように社会的に高められて來たのでありますけれども、まだまだ社会一般の認識というものが、夜間学生にとつては十分ではないのです。一体夜間学生というのは、どういうものが夜間学生なのかということ自体、全然分つていないのです。先ず本論に入る前に、夜間学生の実態がどんなものであるかという点を少し申述べたいのです。夜間学生というのは、晝間一定の職を持ちながら、夜、学校え行つて勉強しておるものということの一言に盡きるわけでありますが、我々が今年の二月に東京都下の夜間の大学高專の学生について調査したところによりますと、九五・五%というものが定職を持つておるのです。而もその定職については、平均勤続年数が三年二ケ月、平均年齢が二十四歳、そういう数字が出ております。これは平均勤続年数が三年二ケ月というのは少いと感じられるかも知れないのですが、平均年齢が二十四歳ということを考えるならば、中学を卒業してから勤めているのだということで納得がつくのです。こういうことから見て我々が晝間職を持つているということは、晝間の学生が現在この生活難の中でアルバイトをしているということとは異るものがあるんだということは明かだと思うのです。更にこの晝間の学生との対照を考えました場合に、昨年四月に東大に入学しました新入生と、昨年の四月に夜間大学の学部、これは今專修大学と私の行つております中央大学と二校しかありませんが、その学部の新入生の平均年齢を比較して見ますと、東大の新入生では二十二歳という平均年齢が出て來た、ところが、我々夜間の学部の一年生の平均年齢は二十六歳なのです。その間に四歳の開きがあるということは、我我夜間部の学生というものは、單に学生としてそのういう範疇の中に入れて行くと、先え行つて間違つた結果が出て來るんじやないかということを示しているんじやないかと思います。言い換えますならば、我々は晝間は社会人なのです。そうして夜は学生なのです。晝間は直接間儀職場においてペンを握り、或る者はハンマーを振つて経済の復興に努力をしつつ、夜は夜で疲れた体に鞭打つて眠い眼をこすりながら勉強し、少くとも日本の國を文化國家にしたいと念願しているわけでありまして、そういう我々が二つの使命を担つているということは、我々が仮に軽労働に從事したとして一日平均二六五八カロリー消費している。これも今年の二月の調査なのです。ところが、最近出ました「現代学生の実態」という本の百二十三ページを見ますと、晝間の学生は二四一七カロリーだ、その間に約二百カロリーの差がある。それだけ我々が肉体的な苦痛をしているのです。併しこの肉体的な苦痛を我々は何もすき好んでやつているのじやないのです。なぜやらなければならないかというと、大体において経済的に惠まれなかつたという理由のために、晝間は学校え行くことができずに夜行つておる。そういうハンディキャップがあるにも拘わらず、我々は別に大した不平も言わず、何だ夜間学生かと社会の人が軽蔑をし、果は侮蔑さえしていても、我々は笑つて國家のために努力して来たのです。我々に言わせれば、我我こそが國を與すことができるのだし、文化國家として立派に國際社会の間に立つて行くことができるのであつて、現在のように、親の脛を噛りながら晝間はダンスに享樂しているような一部の学生には將來の日本を背負う責任なんか毛頭持てないのだ。我々夜間学生こそが將來の日本を担うことができるのだと我々は確信するのです。
 そういう夜学生の立場から今回の運賃値上げの問題について二三御参考になり点を申上げるということは、我々にとつてばかりでなく、大きな目から見て國家のためにもなるのじやないか、そういうふうに考えまして、ここに参つた次第であります。以下私は今年の二月我々の連盟で調査いたしました資料を本として、鉄道の利用者であるという立場から、夜間学生と鉄道との関係について若干申上げたいのであります。
 先ず我々東京の夜間学生の出身地というものを調べて見ますと、地方から來ている者が全体の四九%に達しております。約半数というものは地方から遥方と勉学に上京している。遠く北海道からも二%、九州からも三%もある。かかる地方出身者が年に一度か二度郷里え帰る、これも定職を持つている関係上、現在はなかなかできないのです。一度や二度郷里え帰ることすらできないのですが、それをするとしても、今度の運賃値上りによつてそれは不可能になつて來るのじやないでしようか。故里にいる老いた父や母に、晝間働きながら夜勉強しているという元氣な姿を、年に一度見せることすら困難になつて來るのじやないか。或いは故郷の土に眠つておる父や母や先祖の墓参りすら不可能になつてしまうのじやないでしようか。ここに我々として納得できない点が一つあるわけであります。
 併しながらこれは約四九%の学生について言えることでありまして、それは一歩讓るとして、もう少し一般的な立場から考えて見ますと、我々の日常生活の上で、夜間学生は鉄道をどれだけ利用しているかということを考えて見たいのです。私達は朝起きて食事をすると、先ず勤め先え行かなければならないのです。そうして夕方まで勤め先で仕事をして、夕方から学校え出掛ける。そうして三時間なり四時間なり勉強して、夜遅く十一時、十二時頃になつて家え帰つて來る。いわば自宅、勤め先、学校と三角コースを取るわけなのです。これはたまたま勤め先や学校や自宅が或る一ところに在る人ならば、その三角コースというものが非常に平べつたい三角形になつて來るのですが、多くの場合にはそれが正三角形であつたり、非常に底辺の長い三角形であつたりするわけなのです。こういう点から見ますと、我々が鉄道を利用する時間というものが、一日二十四時間の中で占めるウエートというものが非常に大きいのです。これを数字的に申上げますと、夜間学生は一日平均三時間十九分電車に乘つています。ところが、勤め人は平均二時間二分しか乘つていないのです。晝間の学生は、「現代学生の実態」百十七頁によりますと、二時間十二分なのです。從いまして夜間学生が電車に乘つている時間を仮に一とするならば勤め人はその六分一分、晝間学生は六割六分にしか当つていません。これを以てしても今回の運賃値上げというものの夜間学生に與える影響が如何に甚大であるかということは分るのじやないかと思いす。而も尚この三角コースはおのおの一辺を一日に一回しか通らない三角コースでありまして、その全部が全部学生割引定期で乘るわけには行かないのです。その一部分しか学生割引定期というものは使えない。從つて我々の友達の中にも定期を買わずに、その三角コースを一度々々切符を買つて乘つている人すらあるわけでありまして、こういうことを考えるならば、学生に與える影響というものは、晝間の学生或いは勤め人よりも更に大きいのだということは分るのじやないかと思うのです。
 ところが、その大きな影響というものがあるわけですが、それを一應讓歩をしまして、更に何らかの形で、今度の運賃値上げを我々が補うことができるかというふうに考えますと、その場合に問題になるのは、やはり我々の收入です。先程も申上げましたように、平均二十四歳で三年二ケ月の勤続年数を持つていますが、それで一週間に四十五時間三十七分働きまして、平均賃金は税込みで一ケ月千八百九十二円六銭なのです。これは今年の二月の調査です。これは決して大きな数字だとは言えないと思います。むしろ晝間の学生が街でピーナッツを賣つたり、ノートを賣つたりするアルバイトの方が時間的にいつたら遥かに大きな收入なのです。夜間学生は晝間一定の時間に縛られながら、而も尚一ケ月に千八百円ぐらいしか取れないのです。これは今までの社会的な認識というものが低かつたために、雇主の方で夜間学生というものは晝間の学生と同じようにアルバイトの一種としてしまつたり、或いは夜の学校に行く人は晝間仕事を怠けるというようなことで、雇うのを嫌つたり、そういうような結果から、殊更安く働かざるを得ない、そういう現象、結果が、一ケ月平均千八百円何がししか收入が挙らないのです。その中で我々は自分の家計の補いをし、又みずから食べる人もあります。そして又自分の勉学費というものをその中から支出している。勿論交通費も入つております。そうなりますと、今度運賃の値上げによつて我々が勉強したくても、学用品或いは教科書、参考書、そういつた物すら十分に買えなくなつて來るのじやないか。経済的にどれだけの負担になるかということは今更申上げる必要はないと思います。併しながらたとえ收入は少いといつても、晝間の学生のように家から補助を受ける、乃至は仕送りを受けるということができるならば、それも又いいでしよう。ところが、我々が調査したところによりますと、夜間学生の家庭の職業の中で実に三五%というものは無職です。全然職を持つておりません。約三分の一に当る三五%が無職であり、而も全体の二六%というものが俸給生活者なのです。それでこういつた無職であるとか俸給生活者であるとかいうものが、この現在のインフレの波にもまれている階級である。その階級が六割以上占めているということを考えるならば、家から補助乃至は仕送りというものが十分運賃の値上げをカバーするだけ得られるかどうか、望めないのじやないかということは明らかだと思うのです、今大体インフレによつて困つている階級が六割だと申上げましたが、これを今年の五月六日に出ました東大新聞によりまして、今年の四月に入つた東大の新入生と比較してみますと、東大では俸給生活者と無職を加えてもその全体の四五%しかならないのです。我々はその六一%というものは困つている。東大の場合には四五%なのだ。そういうことからいつても運賃値上げが我々夜学生に與える影響が相当大きいのじやないかというわけであります。
 こういつた点から、私は夜間学生の立場から、今度の運賃値上げの問題に対して反対をするわけであります。といつても、我々と雖も運賃の値上げをせざるを得ない環境に日本があるのだ、日本の経済がそういう立場にあるということを否定する者ではありません。勿論そういう立場も認めたい。併しながら我々は衆議院の公聽会では東大の学生が意見を述べましたけれども、そういう晝間の学生や或いは一般の勤労大衆諸君よりも、夜学生というものはそれ以上の影響があるのだということを、どうか議員の御先生方に知つて頂きたいと思うのです。そうして我々は今、現在、経済再建と文化國家建設という二つの大きな國家的な使命を担つて日夜努力しておるのです。そういう立場を十分今後も活かすように、又十分我々も今後も勉学し、且つ働くという態勢をよりよくすることができるように、そういう立場も十分考えて御審議をお願いしたいと申上げるのであります。以上で終ります。
#44
○委員長(板谷順助君) どうですか、丹羽君。
#45
○丹羽五郎君 今松田君の実に切実なるお話を承りまして、私共胸を打たれる感が深いのであります。同時に松田君は、今回の値上げの件に関しましては、はつきり絶対反対だというようにも受取れないのでありますが、仮に絶対反対でありますか、又或いはこれに幾分止むを得ないというお言葉もありましたが、止むを得なければ、どの程度のものが、学生として負担できるかということをちよつと私聞き漏したように考えますが……。
#46
○公述人(松田武君) 私は現在東京都下の約十校の大学、高專の夜間部の学生全体で夜間学生連盟というものを作つておりまして、私その責任者ではありますが、我々の連盟はどちらかといえば、そういつた政治的な、こういう問題に絶対反対であるとか、それを何倍にしろとかいう政治的な意図を持つた團体ではありません。まだまだそこまで行つておりません。もう少し社会の人公体に、夜間学生というものを認識して貰いたいという立場から連盟を作つたのでありまして、今回の運賃値上げにつきましても、やはり利用者としては上らない方がいいのでありまして、万止むを得ず上るとなるならば、我々の立場も十分考慮して欲しいのです。殊に先程申上げましたように、一日の中で自宅と学校と勤め先と、こういう三角コースを我々が取らなければならないということに対して、運輸省あたりでそういう夜間学生には特別な定期を発行して呉れるとか、そういうような措置を取つて呉れるならば、我我としても今後勉強なり勤めなりがやりいいと、そういうふうに思うわけであります。
#47
○委員長(板谷順助君) 君どうだね、勿論利用者の立場から言つたらば、成るべく据置とか或いは安くして貰いたいという希望は尤もであるが、併しどれくらいの程度にどうというような希望は別にないのですね。
#48
○公述人(松田武君) 今調べておりませんから、まだそこまで……。
#49
○北條秀一君 松田君にお伺いいたしますが、上げる方ばかり考えずに、現在の運賃が相当諸君の生計費にはこたえておるのじやないかというふうに僕は考えるのですが、その点はどうですか。
#50
○公述人(松田武君) それについては、我々は今年の二月に、実は連盟ができたのは去年の十二月で、今年の二月にやつと第一回の実態調査をしたのですが、その中では家計費の問題の調査はしておりませんので、何%占めておるかということについてははつきりしたことが言えないのです。ただ利用の時間というのを我々考えて見ましたので、その点からそういう結論を出したわけであります。
#51
○委員長(板谷順助君) ではよろしうございます。次は鉄鋼関係の鳥本千代藏君にお願いいたします。
#52
○公述人(鳥本千代藏君) 國鉄運賃の値上りについては、学識経驗者諸氏及び一般公述者諸氏から詳細なる御意見がありましたから、私からは簡單に申上げたいと思います。國鉄運賃に対しては、世論としては反対論が大きいように相成つております。併し私としては石炭、資材、労務、その他人件費も現在のままにては國鉄の経営上至難のことでありますから、政府は旅客運賃三倍半、貨物三倍半と値上げをすることを、私は当局の値上案を修正なすことを必要と思います。然らば何ほどに修正するか。運賃においては二倍半、貨物においては三倍半ということを私は主張いたします。更に通勤定期券の運賃を一定半にする。それは勤労階級の生活上に非常な影響がありますから、篤と当局において考慮して貰いたい。それから学生定期券は現状のままということを私は主張します。定期券については近頃新興会社、いわゆる闇ブローカーですね、あの名前を使つて担ぎ屋というのが大体あるのです。それで定期券を購入する際、國鉄の当局者は嚴重に調査をして、定期券の購入者に交付するということが私は必要じやないかと思います。それを利用して結局物資もえらい高くなり、或いはいろいろな問題も起るのですから、特にそれを一つ強調するわけでございます。
 甚だ簡單でございますけれども、公述を終ります。(拍手)
#53
○委員長(板谷順助君) 鳥本さんに伺いますが、あなたは鉄道にも関係されたという先程のお話でありますが、今旅客運賃二倍半、貨物三倍半というような御主張でありますが、鉄道当局の側におきましては旅客貨物共三倍半にしてもまだ百億一般会計から補填しなければならんということでありますが、あなたは貨物はそのままであつても、旅客を二倍半とすると、その一倍の財源をどうするかというところまでお考えになつておりますか。
#54
○公述人(鳥本千代藏君) 書類を昨日拜見しまして、深く実は見ようと思つたのですけれども、なかなか見ることができなかつたのです。それで詳細なる数字を現わすことができないのであります。それを御了承願いたいと思います。
#55
○委員長(板谷順助君) 分りました。
#56
○北條秀一君 鳥本さんのお話ですと、貨物は三倍半ですが、貨物はもつと負担できるのじやないのですか。貨物は三倍半以上に負担すべきであるというのが私は可なり廣い意見だろうと思うのですが、あなたの御意見では、三倍半でなしに、もつと六倍なり六倍以上にやつても、貨物の方では十分にこれを負担し得るというふうにお考えになるかどうか。
#57
○公述人(鳥本千代藏君) それは檢討しませんから、書類を檢討した上で、実際に貨車の扱いがどれくらい入るかというような予想ですね、それを檢討した上で申上げようとつ思たのですが、時間がないもんですから、大体のところで三倍半というのを申上げたのです。御了承願いたいと思います。
#58
○委員長(板谷順助君) 他に御質問ありませんか……。次は日本漁民組合の船井倉市君にお願いします。
#59
○公述人(船井倉市君) 私は全國沿岸漁民の意見を代表いたしまして、本日のこの立聽会に若干の意見を述べさして頂きます。先ず最初に結論から申し上げまするというと、現在の日本の沿岸漁業の経営の実体、及び現在見通し得る將來に亘つての、これら経営の推移と申しますか、そういう角度から、今度の鉄道の貨客両面の運賃引上げには絶対反対いたします。
 そもそも國鉄運賃が物價の形成に重要なる要素であるということは皆さんの十分御承知のことと思いますが、昨年度の鉄道特別会計は約百六十億赤字であつた。これは鉄道当局の方面から言わすならば、鉄道がインフレの犠牲になつたのだ、つまり鉄道の赤字経営はインフレ犠牲だというふうに申されておるのでありまして、この言葉に関する限りは全くその通りであります。ところが、終戰以來今日まで、刻々にうなが上りに上つて來たところの物價の運動、その運動のさ中に常に鉄道運賃が低運賃政策を堅持したということは、この鉄道運賃そのものが國民経済における物價形成上に占めるところの重大なる一つの要因をなしておるという観点に立つものでありまして、これは言葉を換えて言えば、進行するインフレを抑制するというような建前から認識されておる。又事実さようにこの政策は取られて來ておつたものであります。それならば、國鉄当局ばかりが理論的にそういうような國鉄の会計方針を採るのか、國民は何も知らないのかということになりますと、國民も決してそれに無関心ではなかつた。現に國民はそういう國鉄の運賃の低運賃政策なるものが、如何に國民の生活に直接に影響するものであるかということを身を以て知つておりますが故に、昨年度の百六十億になんなんとする赤字会計に対しても、或いは國庫の一般会計からの繰入金の形とか、或いは日本銀行の借入の形を以て國民はこれを補填して來たではありませんか。若しこれが、この鉄道の低運賃政策なるものが國民生活に何ら影響を與えない、つまりインフレを阻止する上においてこれは役割を果さないということであれば、こういう赤字補填を國民は默つて見ておるわけはなかつたでしよう。ところが、一方において、それなれば國民は、鉄道の特別会計はそういう厖大な赤字を見つつあるのに、それはもういかんとも仕方ない、絶対にどうにもできない問題として、これを不可能の問題として諦めておつかてと申しますと、決して國民はそうではなかつた。この赤字財政をどうして克服するか、どうしたら改善できるかということについては、相当國民の側から爲政者に対して意見もあり、その意見の中には、政府当局として容易に手の付けられ得るような具体的な問題まで、國民の側から政府当局に向つて述べて來たところであります。決して無関心であつたわけではない。ところが、國民の側からもう一度それを見直すならば、一体そういう赤字財政に対して國民が非常な関心を持ち、非常に憂いを持つて叫び或いは示した。そういう國民の要請要望に対して、政府は果して十分な努力を以て應えたかどうかという問題が一つここに残つてるのであります。
 先ずその問題は後廻しにいたしまして、とにかく今回政府といたしましては、この赤字の克服という当面の対策のために大幅の運賃値上げに着手しておるのでありますが、一体それならばこの鉄道運賃が物價形式に與えるところの、この重要な関係というものはなくなつたかといえば、そうではありません。一昨年よりも昨年、昨年よりも本年、昨日よりも今日というように、こういう政府が取るところの低物價政策、殊に最も國民の生活に直接的に影響を持つところの鉄道運賃というものに対しては、鉄道運賃は一層その價格形成に與えるところの影響は大きく深くなつておると見なければならない現在であります。今そういう國鉄の運賃の一つの作用が、國民経済における一般物價にそういう大きな影響を與える、延いてはこれが現在のインフレをますます高進させ悪性化さすということが前提とされるならば、或いはこれは確かに前提と皆樣しておられるだろうと思いますが、そういうインフレが今後ますます物價高を刺戟して高進して來るということは、これは最早論議の余地がないところだと思います。最近新聞の傳えるところを見ますというと、いろいろ議会でもこの問題を討議されておりますが、大藏大臣でありましたか、國家の健全財政は不健全な國民経済の上には成り立たんということをおつしやつておるように見受けましたが、政府は今度の運賃引上げを通して少くとも健全財政ということを大きな目標にしておられるのでありますが、その國家の出し入れの辻褄という点からこれを切離して見れば、これでよいかも知れません。併しながら、先程申しましたように、國鉄運賃の引上げ如何が物價の上に大きな影響をもたらし、そうして現在危機的樣相を示しておるところのインフレに向つてこれが殺到するかということを考えますならば、一方では数字的に辻褄を合せたとは申しましても、それが國民経済に一層大きな違つた形で、インフレの形で一層大きな作用を及ぼすものではないかと思うのであります。ここに私は大きな問題が一つ残つておると思うのであります。つまり健全な國民経済の上にでなければ國家の健全財政というものは成り立たんと言われるけれども、今このままで進むならば、國民経済の健全性ではなくつて、國民経済は片つ端からこのインフレの刺戟によつて崩れるという一つの現象が必然的に起つて來ると思います。
 私はその一般的な話より轉じまして、今漁業の分野から、この運賃の引上げの及ぼす影響について若干述べます。御承知のように漁業は戰時中におきましてその漁船といい漁具その他の一切の生産資材は、大体において六割から七割、八割に近いものは破壊され或いは喪失して來たのであります。そうして戰後どうであるかと申しますというと、從來の漁区は三分の一に狹められ、終戰以來三年の現在、曾ての漁業が復興しておるその数字を、漁獲の高からこれを見ますならば、戰前の三割六、七分という哀れな惨澹たる状態に漁業は置かれておるのであります。そうして終戰以來段々深刻化して來た現在までのこのインフレに押されまして、漁業の生産の基礎となる資材というものは、他の産業の過少生産も勿論大きな影響がありますが、とにかくインフレの高進に伴つて生産資材、基礎資材というものは殆んど闇経済に依存しておる状態であります。これもなかなか容易に手に入らないというような苦しい状態にある一面に、一方では漁獲の全量を強制供出しなければならん、出荷しなければならないという漁價の面と、それから輸送の面と、こういう面から非常に強い統制を被つて來ております。漁業においては、もうこれだけで生産原價を割り、生産能力を破壞されつつあるというような職種もあるのであります。おまけに、この頃新聞でも盛んにやかましく言われておることでありますが、漁業に対するいわゆる地方の独立税と申しますか、漁民に対する課税問題、これは國民一般に課せられておるところの一般税以外に、特に地方独立税という名前の下に課税されておりますところの漁業権税、特別漁業権税、船舶税、舟税、取得税、これらの縣税に対する市町村附加税というように、実に重複的な、或る意味においては收奪的な課税の下に漁業は置かれておる。そうしてこういう一般生産資材の非常な高騰による闇手当の困難と、それから他の産業とは違つて、金融機関を利用する若しくはそれに抵当にすべきところの、いわゆる物質的の根拠を持たないところの漁業は、資金的にもすでに行詰り、一方では次から次えと收奪的の課税に追立てられ、現在私達の方に会に向つて入つております情報では、これは勿論数字的のものではありませんが、漁業に対する所得税というものが特に高率課税となつておるようでありますが、これがために相当に漁民経済というものは傷め付けられて、普通生やさしい努力では、つまり漁ではもうやつて行けないというために、相当地方に亘つて正しい正規の鑑札営業というのを止めて、つまり廃業してしまつて、闇漁業に移りつつあるという情報が今相当に入つておるのであります。これは何も好んで彼らはそういう世間狹い思いをして、そういう手段に訴えるのではなくして、あらゆる点からやつて行けないという一つの差迫つた背に腹は変えられないという立場から、こういう態度に出ておるように今情報が入つておるのであります。そうして先程から申しますように、資金の面でも資材の面でも漁業の受けておるところの現在の苦しみというものは実に大きいため、それに又税金の重荷によつて、それを漁民はどうしても拔切らなければならん、脱出しなければならん、その脱出の漁民にとつての唯一の手段は何であつたでしようか。これは他の営業と違いまして、彼らは陸に上つて他の仕事をするということはできない。結局一般日本の沿岸漁民はこのインフレに喘ぎながら、このインフレを切拔けるためにとつておる最後の手段は、本当に明日の再生産なんかも考えていない、とにかく彼らはこの危機を拔け出するためにとつておる最後のものは漁業の濫獲であります。これは恐しい問題であります。つまり彼らはもう昔ならば人が見向きもしなかつたような豆粒大、豆粒にも及ばない大豆粒のような蛤の子を漁り取つて、これを町に賣出す、或いは一秋置けば形をなすところの小さな身のない鯛を取つて來て闇に流す。つまり現在の日本の沿岸漁業は、この無差別な、もうまるで全然論理もへちまもないところの無茶苦茶な濫獲手段によつて、つまり漁場を荒し廻つて現在のインフレに対應しておるのであります。この事実を我々國民が靜かに今見なければならないのでありますが、その結果は、一体三百万漁民と申しますが、これはその家族から全部を引括めたらすごい大きな数字を示す。この國民の経済の一角にこういうような恐しい状態が今行われておる、現れておるということを我々は冷靜に考えなければなりません。漁村には金がある、漁村インフレだという言葉が盛んに一時はやりました。これは勿論私は否定しません。或る意味においては、例えば特殊な復金の援助を受けたとか、或いは特に担保物件を持つておる一部の有力な資本漁業とか、こういうものは戰後惠まれて早く復興の緒についておりますが、併しこれはこの席では一々檢討しません。これすら現在は経済難に陷つておるのであります。とにかく非常に漁業に金が集つたということは……。
#60
○委員長(板谷順助君) 別に弁論は制限しませんけれども、目的に逸脱しないようにお願いいたします。
#61
○公述人(船井倉市君) はい。そういうふうに漁場は荒され、そうして漁民は生産手段を奪われ、今どうすることもできないという状態でありますときに、この鉄道運賃の関係が漁民の生活に直接間接に響くことは勿論のこと、これが廻り廻つて一般物價の高騰、インフレを刺戟することによつて、漁民はますますその資材を手に入れることが困難となり、又辛うじて現在まで残されておるところの明日の再生産の最後の一滴までも、このインフレのために費してしまわなければならんというような状態に向うならば、これは誠に嘆わしい恐るべきことでありますが故に、私は漁民のために、漁民の立場から今度の問題には反対するのが一つと、もう一つ反対するという理由の中には、政府がこういう問題を、こういう処置を採られるに先立つて、もう少し手を打つ方法といいますか、手を打つたかどうか。例えば鉄道の会計の問題でありますが、これらの問題にしても鉄道経営自体の徹底的な合理化が果して行われたのかどうか、その上で徹底的な合理化を行なつた上で、正しい輸送原價というものが導き出されて、それによつて今度の値上げの率が決められたかどうか。或いは先程も話がありました経費の節減という点から、消費石炭の問題でありますが、これでも操業技術員、操業職員の技術の向上とか、或いは又設備の改善とか、もう一つ大きくは鉄道の炭質えの問題とか、更にもう一歩進めて言えば、現在の炭價というものは果してもうこれ以上切下げることはできないのか、上げることばかりではなくて、現在の國情からこれを切下げられるということはできないのか。こういうふうな問題についても政府はどの程度に手を打たれ、又國民にそれを納得させたか。又その合理化の問題につきましては、合理化の内部の問題につきましては、人員の適正な轉換配置の問題、更に一歩進んでは整理の問題ですが、これもできるのかできないのか。そういうことも國民は更にいずれの側からも知らされておらないようであります。又一方既設の設備を轉換することによつて、或いは操業の機械化によつて、資金とか資材とか人員を節約するということはもうこれ以上できないのかどうか、やつてるならどれくらいやつてるか。本年度それがどのくらいやれるかということも國民はもう少し知りたい。又今朝程もお話がありました、鉄道が持つておりますところの土地とか、その他建物資材等、非常なる財産の評價によつてどのくらい穴埋めの金ができるのかどうか。又これも今朝程のこの席上でお話がございましたところの、鉄道の職員を含めて無料パスの問題等なんかも、今朝の新聞でありましたが、どの政党であつたか、その話も出しておるようでありますが、こういうことの整理によつて、どのくらいの國鉄は節約できるのかどうか。或いはこれも同じく今朝話がありましたような、終戰処理費の整理の問題とか、こういうように数え立てれば、経営の合理化その他の財政面から見たいろいろな操作、整理、そういうものを通じて相当まだ國鉄の赤字克服には余裕があるのではないか、彈力性があるのではないかというようなことを、國民はまだまだ考えておるのが実情ではないかと思います。そういうことを十分やつて頂き、そうしてぎりぎり結着のところ、これは絶体絶命、どうしても國民の負担に廻すとか、或いは料金を上げなければやれないというような点を、もう少し國民の前によく知らしめる、或いはそれを納得の行くようにして、この問題を解決されることを希望するのでありまして、そういうことを一切、一切という言葉は語弊があるかも知れませんが、とにかく國民が最も大きな眼を以て見ておるところの、重要な個所々々に対しては、極めて冷淡な、或いはそれに関せず焉というような態度でありながら、ただ今の赤字の数字を運賃の値上げによつて果そうということは、これは困る。
 とにかく漁業者の立場から申しますと、この上のインフレの悪性化では、進行では、沿岸漁民の生活は成り立たない。再生産の手段はもうすでに盡きる一歩手前にある。その意味においてこの今回の鉄道運賃の値上げに対しては、漁民の立場から反対するものであります。(拍手)
#62
○委員長(板谷順助君) どうですか。どなたか御質疑はありませんか。
#63
○早川愼一君 ちよつとお伺いしたいのですが、いろいろ御議論になつたようでありますけれども、今回政府が企図しておる貨物運賃が、魚類の價格に影響する点について、どういうお見通しでありますか。
#64
○公述人(船井倉市君) これは一つの例を申上げますというと、例えば今度の運賃の値上げによつて、炭一俵について三円とか五円とか僅かしか上らないというのが机上の数字であります。ところが、運賃値上げという問題が起つてから、すでに横浜あたりでは三百五十円ぐらいまで下つておつた闇炭が、又四百円にはね上つております。すべての点にこれが影響するために、結局漁業の方は漁業の経営に必要とすべき資材、生活物資、すべてにそれが影響する。從つて魚價の改訂もして貰わなければならん。魚價の改訂もしなければならんというならば又別な問題が起つて参りますが、とにかく漁民といたしましては、魚價の改訂をやるということは、これは非常に困難な問題である。何とかして今のままでこの生産の困難を打開するとしたらいいではないかと、こういうふうに考えております。
#65
○早川愼一君 政府の我々に與えられた資料によりますというと、十一年の鮮魚の平均價格、これが一トン三百五十四円、現在は一万九千四百円ばかりになる。当時の運賃と比べますと、当時の運賃は平均輸送距離によりますと、一トン当り六円七十八銭になる。ところが、現行はそれが一万九千円に対して九十三円ばかりになつておる。そうすると、パーセンテージを見ますと、十一年は一・八%、それが現在は〇・五%、こういうような数字が挙げられておるのですが、こういうようなものが、先程漁民の生活そのものが物價の値上りで自然に儲けが少くなり、鮮魚の値段そのものに対しては、運賃の比率が低いようには見えますけれども、その点の御見解は、つまり運賃そのものに響かなくても、漁民の生活或いは生産資材、そういうものに影響するところが大きいから、結局運賃が影響する、こういう御感想でありますか。
#66
○公述人(船井倉市君) そうでございます。
#67
○委員長(板谷順助君) よろしうございますか。
#68
○早川愼一君 はい、結構です。
#69
○委員長(板谷順助君) 次に食糧配給公團の梶原君にお願いいたします。
#70
○公述人(梶原茂嘉君) 今日の運賃の問題につきましては、私といたしましては十分の檢討を遂げておりませんし、又最も重要な國鉄の財政の実態をよく承知いたしておりませんので、申上げますることが或いは御参考にならないかと存じますけれども、二三所見を申上げまして御参考に資したいと存じます。
 昭和二十一年の春の運賃の大幅の改訂までは、長年に亘りまして、我々の國鉄当局は、日本に國民経済の実態に即應しながら、経営の面においても亦特に運賃の取扱いにつきましても極めて愼重な態度で処理されて來られ、長年に亘りまする日本の物價政策の上に非常なる貢献をされて來られましたことを、私は今日想起しまして実は深く敬意を拂うのであります。ところが、二十一年の春の改訂は、敗戰後の日本が、正にインフレの激化に向わんとする当初でありまして、あのときに二倍半でしたかの大幅の改訂を行われましたことは、その当時私をして、これは罰せられない國の犯罪であるとさえ感ぜしめたのでありまして、私といたしましては、遺憾至極であつたのであります。恐らくは日本の物價の上において、二倍とか三倍とかいう感覚が普通の感覚になつて参りました当初のきつかけであつたかと思つております。そのうちインフレの激化の過程を経まして今日に至つたのであります。
 今日運賃の問題を檢討いたします上におきましても、依然やはり運賃の問題が、物價の問題の上に最も大きな事項であるということについては変りはないと思うのであります。それが單に個々の物資の價格の形式の上において影響のあるだけでなしに、むしろ全部の物資の價格に影響がある。言い換えれば、物價全体の水準に運賃の問題が最も大きな関係にあるという点が、他の要素と違つて重点な点であろうと思うのであります。成る程現在の國鉄の運賃が、他の物價なり他の要素に比べまして、比較的低位の序列にありますことは、これは事実であるのであります。併しながら現在及び今後の物價の状況から見まして、運賃のあり場所が低きにあるからとか、或いは独立採算制の建前からとか、原價主義の建前からとか、いわゆる通常時における通例の理念を以てこの問題を処理することは、決して適当ではないと私は考えるのであります。鉄道財政の現状が赤字であるから、健全財政の観点から、これを一挙に辻褄を合すということそれ自体は非常に無理であつて、敗戰後の日本の実体と掛け離れた考え方だと思うのであります。單に生じたところの赤字の帳尻を合すという行き方は、やがてより大きな破綻を招來する危險を、その考え方自体に藏しておるというふうにも考えられると思うのでありまして、現在におきましては、やはりこれは政治的の感覚から、國鉄のごとき國家企業として最大のものが耐え忍ぶところがなければならんと思うのであります。
 鉄道運賃が個々の物資の價格に勿論影響があるわけでありますけれども、その間おのずから軽重がありますこと、これまた申上げるまでもないのでありまして、中には、十分大幅の運賃引上げがあつても、それをこなる得る物資も少くないと考えます。併しながら比較的その量が大きくて、而もその價格ができ得る限り安くなければならん、安いことが必要である物資、言い換えますれば、農産物とか或いは主要食糧、食料品といいますような國民生活の必需物資につきましては、運賃の負担が相当大きな影響を持つておるわけであります。御承知のごとく從前におきましては、農産物と運賃は、割合から申しますと極めてパーセンテージは少いのでありますけれども、價格それ自体が安い、又その運賃は多くの場合において、一般消費者に轉嫁されるに非ずして、生産者である農民の方に実際上轉嫁されておつたのであります。都市において生産されるいわゆる工場生産的のものにして農家の必需品は、その運賃は農民が負担し、自分の生産したところのもので市場に出すものの運賃は農民が負担するというのが実態であつたのであります。從いまして運賃の問題は、國鉄においても亦政府当局においても、そういう観点から常に見て來られたと思うのであります。現在におきましては、勿論運賃は消費者に転嫁されておるわけであります。消費者の負担に相成るわけでありまして、従いまして米なり或いは甘藷、馬鈴藷等の食糧の運賃は、その値上げされた分は直ちに消費者家庭の直接の負担と相成る。これらの國民全体が消費いたしますものの運賃は、たとえそのものの價格の中で占める割合が少いといたしましても、これは直接消費者全部の負担となるわけであります。他の工業場産品等におきましては、或いは工業原料におきましても、その運賃は生産の過程において或いは他の面において適当に吸收されてしまい得る場合も少くないのであります。生活必需品でありまする農産物につきましてはさように参らないというのが現在における状況かと考えます。而も國民の生計費の面におきましても食糧の占めておりますウエイトは極めて大きくなつて参りまして、そこに附加えて運賃の負担を食糧費の面で負担するわけであります。相当愼重に御檢討を頂きたいと思うのであります。
 頂きました資料を拜見いたしますると、例えば現在の價格で米にして申しますると、三百余キロを運びまするのに六十四円の運賃が掛かつております。これを人絹糸でありますと、二百二十キロ程運ぶのに八十四円四十銭掛かつております。人絹糸を運ぶのとそれから米を運ぶのと大差がないようであります。綿織物一反七百円のものを百五十キロ運びますと、現行の運賃が三銭であります。ところが甘藷一貫を運びますと織物一反の三倍以上の十銭掛かつておるのであります。かような点は値上率の二倍、三倍の問題から考えますれば些々たる問題のようでありまするけれども、運賃改訂の内容において十分の檢討が遂げられることを必要とする一つの事例かと考えるわけであります。
 尚遠距離の逓減率の問題等につきましても、農村と消費地帶を結び付けまする距離等を考えて、この又簡單に理論通りには参らないのが日本の実態かと考えるのであります。例えば食糧上重要な立場にありまする馬鈴薯のごとき、御承知のごとく北海道から持つて参るのであります。特に種馬鈴薯等は北海道から九州まで持つて参りまして、そうして、中間端境期におきまする重要なる主要食糧として取扱つておるわけであります。これらの占めまする運賃の割合及び影響も決して少くはないのであります。殊に序でに申上げますれば、種馬鈴薯を北海道より九州なり内地に持つて参りますのには、こちらから古俵を北海道に持つて参るのであります。古俵の價格は現在一枚四円二十銭程度と承知いたしておるのであります。これを北海道に持つて参ります運賃は六円を超しておるのであります。俵の價格よりも運賃の價格の方が上廻つておるのであります。これを又北海道から逆送して参るということに相成るわけであります、かようにその物自体が安くて、而してそれが直接國民生活に響いて來る物につきましては、三倍半の運賃の引上げといいますものは、直接國民の家庭に響いて來るものでありまして、將來は別といたしまして、現在のごとき窮迫した食糧事情及び生活事情の下におきましては、余程檢討を加えられて善処せられなければならん問題と考えるのであります。
 それから旅客運賃の点でありますが、申上げるまでもなく、物價の問題と國民感情の問題は密接不可分の点がありまして、國民感情は飽くまでこれを尊重しなければならんことは勿論であります。又旅客運賃の増高が現在の一般國民の家計から見まして、子供の通学費、通勤費等の増加から見まして、これ以上負担を増すということは容易ならざることだと考えられます。併しながら通勤たり或いは学生の定期等に対して特別の考慮が拂われますならば、私は貨物運賃と旅客運賃と比較しまして、勿論現在までの歴史及び現状において貨物運賃の方が低きにあること、これも承知いたしておるわけでありますけれども、冷静に考えますならば、やはり國鉄全体を通じて運賃の改訂は、旅客運賃の方に重きを置いて然るべきであると思うのであります。尚これが相当高くなりますれば、恐らく客車に乘る者は無賃の人か、或いは公の費用によつて乘るか、或いはいかがわしい事業による乘客等が多くを占めて、本当に必要によつて乘る國民の利用が殆んど不可能に近くなることと想像されるのでありまして、そのこと自体は極めて嘆わしいことではありますが、而も尚全体の物價の今後の進み方等と考え合せまして、むしろ貨物運賃の方の上げ方を少くして、旅客運賃の方の上げ方をより多くするという考え方が好ましいと思うのであります。こういう現在の三倍半以上に上げてよいというわけではありませんけれども、両方比較した場合に、或いは両方を下げると考えましても、やはり貨物運賃の方に重きを置くのが筋であると私は考えておる一人であります。
 尚どの程度にして然るべきかという問題でありますと、これは初めに申上げましたように、國鉄の財政の状況をよく知つておりませんので、軽々に幾らがよいであろうということは申上げかねるわけであります。
 併しながら二三私の疑問とするところであり、御檢討をお願いして然るべきかと思われることを申上げますると、第一は建設改良費の問題であります。戰災で非常な打撃を受けて、國鉄の建設改良の事業は容易ならざることと考えます。これらの建設改良の費用が、國鉄收支のバランス上、直ちにその年々の運賃收入によつてカバーをして行くという立て方であるといたしますると、これは檢討されて然るべきと思うのであります。かかるやや固定的の費用というものは、むしろ別個の観点で処理されて然るべきと考えるのであります。それから償却費等もどれ程償却されておりますか知りませんけれども、單にブック・ヴアリューの点のみならず、やはり改良の意味合いで金も出ておるかと思うのでありますが、そういう点につきましても、ここ一両年こういう事態の下でありますから、これらをすべて引括めて、赤字だとこれをすぐに運賃でカバーするという行き方は少し虫がよ過ぎると申しますか、余りに平常的な観念であるというふうにも考えられるのであります。もう一つは、私ときどき旅行をいたしまして感ずるのでありますが、至るところに進駐軍関係の車が動いておる。進駐軍関係の事業が國鉄の関係においてあるようであります。恐らくはあの面の支出は、一般会計なり或いは適当の方法において國鉄に入つておるとは考えますけれども、半面あのために本來國鉄自体がよりよく收入を増すといいますか、働き得る面が少くとも消極的に相当抑えられておると申しますか、影響を受けておると思うのであります。これは金に見積ればどれほどになるか知りませんけれども、必ずや相当の額になり得ると思うのであります。こういうものも相当一緒に赤字の方に入つて、これも一般國民のこの際における運賃負担によつてカバーしてしもうということであれば、これもやはり檢討されるべき問題であると考えるのであります。
 それからもう一つは貨物の滞貨が御承知のごとく至るところにあるのであります。國鉄の運営上、輸送の回轉率の向上と申しますか、こういうことを熱意を以て眞劍にやられますならば、現在の赤字の業務面におきまする解消という面にも相当のことが期待し得るのではないかと思います。單に人員整理とかいう面でなくて、積極的の業務の改善の面がありはしないかと思う。こういうことは政府御当局でもすでに御檢討済みのことであろうと思います。
 これらを考え合せますと、貨物運賃及び旅客客運賃の値上げにつきましては、現在の範囲よりは或る程度低いところで決めたらいいのじやないかと思います。又初めに申しましたように、一年や一年半で現状におきまする赤字をカバーするような考え方ではなしに考えるといたしまするならば、自ら又別の途があると思います。
 それから最後に、これは私全然関知しないところでありますけれども、外資導入のことでありますが、外資が如何なる形において、又如何なる方法において、いつ実現されるか、そのことは全然知りませんけれども、例えば國鉄の建設改良事業の、これは日本の経済の基盤をなす重要なことであり、又必ず或る時期が來れば國鉄は收支優に賄い得る性質のものであります。これらに、政府御当局なり國会において、外資の問題と関連して御檢討をされてを如何であろうかという感じもするのでありまして、かれこれ御檢討願えれば、貨物運賃の三倍半、旅客運賃の三倍半を増すというふうな、過激と申しますか、急激なる行き方はこの際避けて、漸くまあ何とか一般物價もこの程度で一つインフレも收めるようにしなくちやならんという一般の國民の氣持にも即應するかと思うのであります。
 簡單でありますが、私の所見だけを申述べまして終ります。(拍手)
#71
○委員長(板谷順助君) ちよつと梶原さん、あなたに私お尋ねしたいことがある。あなたは只今、なんですね、帳尻を合せることはいかんと、こういうお言葉があつたが、それはどういう意味であるか分りませんけれども、先程來公述人諸君の意見を拜聽してみまするに、大体旅客と貨物は原價計算を基準としてやるべきものだという説も現われておるのであります。從つて現在の貨物と旅客を三倍半ずつ上げるとすれば、旅客においては非常に儲かつておるが、貨物が三倍半上つても原價を非常に割つておる、割つておるのであるから貨物を或る程度上げてもよろしい。中には三倍、四倍、五倍というような説も出ておるのであります。そう大した影響はないということでありますが、その点について、今申上げるように、帳尻をカバーしてはいかんというのであるが、現在の運輸省の鉄道のやり方においては、旅客の儲かるやつを、つまり貨物の方が食つておる、こういう結果になつておるように思うのですが、それに対するあなたの御見解と、それから只今お説の中に、旅客運賃は場合によつては或る程度上げてもよいが、貨物運賃は成るべき低くしろ、併し現状においては止むを得んというお説があつたのでありますが、旅客運賃を上げても消費者に別に影響しないというような御見解でおつしやつておるのか。その二つの点について御答弁を願いたいと思います。
#72
○公述人(梶原茂嘉君) 帳尻を合せることが適当でないと申上げました意味合いは、勿論國鉄だけではなしに、國全体のあらゆる面におきまして、帳尻を合して行くということは理論上正しいことであり、又実際上もそうあるべきことは当然であると考えます。併しながら現在の日本の状況において、又國鉄の現状において、どういう計算か、計算は別としまして、あの大きな打撃を受けた現状において、僅か一年でこれがバランスがとれて、先々それで進んで行くということはどうしても私は腑に落ちないのであります。いろいろな会社にいたしましても、どこでも赤字で悩んでおるところは御承知のように多いのであります。それらが十分な償却をし、復旧をして行く、而も相当経営面におきましても不合理な点が多々ある、それらをそのままにして帳尻を合して、物價の改訂によつて帳尻を合せて行くという行き方は、理論的には取れるかも知らんけれども、現実には決してそれは合理的ではないと思うのであります。勿論そういう方向に努力して持つて行くことは、これは結構なことでありますけれども、そういうことは言うべくして実際可能なりや否やというのが私の疑問なんであります。
#73
○委員長(板谷順助君) あなたの御説は分つておりますけれども、私のお尋ねしておるのは、御承知のように旅客運賃が三倍半上げれば非常に儲かる、一方貨物が非常に三倍半上げても損が行くというこの場合において、いわゆる帳尻を合せておる形になつておるわけである。今の運賃のやり方は……。その点を伺つておるのです。
#74
○公述人(梶原茂嘉君) 旅客と貨物の関係でありますが、貨物の計算と旅客の計算と、どういう基礎においてそれぞれ分けられて、そうして貨物は大きな赤字、旅客は黒字である、その内容は私よく知りませんけれども、そういう実態であるということはかねがね聞いておるのであります。又その原因も或る程度これまでの國鉄当局及ば政府とされても意識されて、そういう政策を取つて來られたかとも思うのであります。併し國鉄としては旅客貨物を通じて経営されるのであつて、それを切離して、必ずしも、それぞれがバランスがとれるというふうにこの際にされる必要もないように思うのであります。
 それから旅客運賃を上げればいいというのではないのでありまして、どちらかにウエイトを置くとすれば、やはり貨物運賃よりは旅客の方にウエイトを置く方がいいのではないか。これはそれによつて一般國民が困らないという趣旨では毛頭ないのでありまして、從いまして、私の申上げたのは、通勤とか学生の定期というようなものについては特別の考慮がそれ自体に拂われるということを前提に申上げたわれであります。
#75
○小野哲君 梶原さんの御意見の中で、ちよつと二三お聞きしたいことがあるのでありますが、先ず第一は、建設改良費の問題でありまして、梶原さんは運賃によつてこれを賄わないで、別個の観点から処理した方がいいであろう、こういうふうに抽象的に言つておられますが、これを具体的に承わりたいと思います。
 次は進駐軍関係の國有鉄道の負担の問題でありますが、これ又適当な方法で切離して考えるべきではないか、こういうふうなお話と承わつたのでありますが、これは具体的にはどういうふうな方法がよいか、何か御意見を持つておいでになられるか。それを伺いたいと思います。
 第三に伺いたいことは、委員長からも御質問があつたのでありますが、旅客運賃と貨物運賃との問題でありまして、現在の運送原價から申しますと、貨物運賃の方が、旅客運賃に比較いたしまして、極めて原價を割つておるような状態になつておるのであります。從つて運送原價の計算から申しますと、むしろ重点を貨物運賃に置くべきではないか、こういう一つの理論上の考え方ができると思います。で、梶原さんの御意見は、運送原價というものをどういうふうにお考えになつておらるるか。運賃構成理論の関係から申しまして、原價計算と運賃との関係をどんなふうにお考えになつておらるるか。又御意見としての旅客運賃に重点を置かるるということが、運賃の運送原價から考えました場合においては、矛盾があるのではないか。
 第四点は、貨物運賃は成るべく上げないで、低い方がいい、こういうお説でありますが、これは理論上或いは妥当かと思いますけれども、只今申しましたような運送原價の観点から見ますというと、これを引下げることが相当困難な事情にあるのではなかろうか。若し仮に引下げるとした場合におきまして、原價を割つたような状態になつた場合に、如何なる具体的な方法によつてこの赤字を補填されるお考えを持つておらるるか。この四点を伺つて置きたいと思います。
#76
○公述人(梶原茂嘉君) 第一点は、建設改良関係は別個に考えて然るべきじやないかということに対する御質問だと思いますが、これは國鉄の受けております大きな戰災の影響その他の関係を、これを何としても國の再建上直して行かなければならない。これは大きな仕事であつて、そのために要る金を、そのときの運賃收入によつて賄つて行くような考え方でなしに、國はいろいろの面において、一般的な基本的な事業には金を出しておるのであるから、これを一般会計なり或いは特別の長期の借入れ金で処理されて然るべきじやないか。そういう点で、或いは外資の問題とはこういうのは結び付かないものであろうかということをちよつと申上げたわけであります。
 それから第二点の進駐軍の関係でありますが、これも私実態を審らかにしないのでありますが、相当やはりあれのために國鉄が動いている面には、一般会計なり、或いはどういう関係か知りませんけれども、收入はあると思うのであります。併しそれに関連して相当の僕は犠牲がありはしないかと思うのです。國鉄自体に……。これはそういうことがあり得ると思うのです。旅行しますと、あれの占めておりまする割合が相当大きいのですから、そういう感じがうるのであります。從いまして、そういう面で、これも煎じ詰めて行けば、一般國民の負般にはなりますけれども、その方の増額なり、そういう点をこの國鉄赤字問題に関連して檢討されて然るべきである。言い換えれば、これはやはり別個の一般会計の負担になりますかどうか知りませんけれども、その方面の負担になるわけであります。
 それから旅客運賃と貨物運賃の関係でありますが、これはひとり國鉄に限らず、他の事業の面におきましても、或るものによつては赤字があり、或るものによつては黒字があり、それによつて総合して運用して参るということは決して少くないのであります。國鉄は一つの企業体であつていろいろなものを扱つておる。又そうであるとすれば、同じ貨物運賃の上では、例えば私の申しました米、麦、甘藷、馬鈴薯等ではマイナスかも分りません。同じ貨物のものでも、更に内容に入つて原價計算をすれば、そういう結果があろうと思います。これは國鉄全体として総合されてお考えになればいいのであつて、必ずそれだけ檢討されることは必要であります。できれば、それぞれやはりてんでんになるということは、これは理論的に正しいと思いますけれども、現在の状見からいえば、これを急激に直さずに、國鉄総合の原價計算をお取りになつていいのではなかろうかと、こう思うのであります。
 それから旅客運賃をより高くしていいという氣持はありません。
#77
○小野哲君 そういう意味でなく、最後に貨物運賃の引上げを少くする、こういうお話であつたと思います。その場合に、私が言つておるのは現在の状態を言うておる。理論的に考えればそれは或いは妥当であると思いますけれども、現行の運賃から考えて、運賃原價を割つておるというような貨物運賃を引下げる。或いは引上げを非常に少くするという場合においては、何としては赤字になることは当然である。從つてその場合においては赤字の補填に補給金とか何とかそういう具体的のお考えを持つておられるか、こういう点を伺いたいのであります。
#78
○公述人(梶原茂嘉君) 現在の物價全体の序列の上において、私は決して運賃というものが安ければ安い程いいという考えは持つておりません。相当の値上げをされて、そうして貨物運賃から來る赤字というものをでき得る限り少く持つて行くという方法も私結構だと思います。おのずからそこは程度があつて、それを一挙に黒字に持つて行くか、とんとんに持つて行くかということは、現状からいつて短兵急過ぎはしないか、從つて三倍半になれば、それでもマイナスになるけれども、そこに持つて行く行き方をもう暫く辛抱されて、例えばこれを三ケ年に黒字に持つて行く、その間の赤字は暫く一つ見送つて、三年経てばインフレの状況も收まり、外資の問題も收まるでしよう。生産の復興も緒に付くだろう。國鉄が動き出せば、現在の一億何トンですか、あれを持つて動かして行けば、現在の料金でも收入が増し得る。そういう点も考えて行けばおのずから妥当に解決される。この困窮の土壇場で、而も漸く目鼻が付かんとしておるとき、貨物運賃を三倍半とか、旅客を三倍半とか、こういうやり方をとることは賢明じやなかろうと思う。その間必要があれば一般会計でやるか、或いはその部だけは特別に他の赤字と違つて、これは今後何ケ年計画かをお立てになれば、必す解消し得る性質のものである。そうすれば、こういう問題を一つ國鉄としても國会としても御檢討の上で、御努力になつて然るべきものじやないかというのが私の氣持であります。
#79
○委員長(板谷順助君) 次は日本出版協会の副会長の川崎文治君。
#80
○公述人(川崎文治君) 私は日本出版協会の副会長川崎文治であります。國会の國鉄運賃引上げの問題に関しまして率直に結論を申上げますれば、私甚だ遺憾ながら反対の意を表せざるを得ないのであります。そもそも物價体系の根幹におきまして、運賃というものが重要な位置を占めている。而もこれが他の心理的に及ぼすところの影響力も実に甚大なるものがあるというの点につきましては、敢て私ここに説明の要はないと存ずるのであります。今日國民がインフレの波に溺れまして、朝に夕に生活難を訴えつつおります折からに際しまして、只今直ちにこの運賃を値上げいたしまして、物價の騰貴に拍車を掛くるというようなことは、これは國民を塗炭の苦しみのどん底に陷らしめるものである。恰かも首つりの足を引くがごとき感なくんばあらずと申上げるより外ないのであります。
 先般來運賃は極めて他の物價に比較いたしまして低い故に、これを高き物價の列と同様な線においてこの凸凹を是正することがインフレの一つの安定策であるというようなお説も拜聽いたしたのであります。併しながら私は國民の立場といたしまして、何故政府はこの高い線において物價の凸凹を調節するということでなく、低いものの値の線にまで高きを引摺り下して、ここに安定の線を発見するというお努力を敢てなすつて頂けないのでありますか。今の政府が今日のこのインフレを防止するということの上において、國民の誓い、而もそのことに関しましての重大なる使命を担つているに拘わらず、さような挙措を出でないということは、そしてやれないということは、これは政治力のいわゆる貧困さに基くものであり、この貧困さをカバーせんがために、國民のこの犠牲、この負担とによつて直さんとするその意図に対しましては、私さように受取れた場合、甚だ現政府のために吝しまざるを得ないと、かく感ずるのであります。
 御参考までに私共の手に成りますところの出版物にこれを例をとりますと、今出版物の價格というもの、この卸問屋の位置にあります日配の調査によりまするように、戰前の三十九倍の値上りにしか過ぎないのであります。他物價の騰貴率に比較いたしますと、極めて低い。從つてなかなか販賣業者は算盤が採れない、止むなく東京以外の土地におきましては、只今ですら現在のこの運賃によつて薄い利潤の大部分は蚕食されてしまつて、どうしても定價賣が励行できない、止むなくそれぞれ打合せの結果、地方は今定價に対しましては一割増の價格によつて漸く販賣業者は露命を繋ぐというような窮状にあるのであります。而して現在出版物の賣行きというものは極めて悪い、これは俗に申しまする夏枯れと申しまして、一年を通じまして七月、八月は出版物の賣行きが毎年低下することが例でありました。然るに今年に限りましては、この異常なるところの状況がすでに二ケ月も早く、五月の初旬から賣行きというものががた落ちに落ちてしまつたのであります。これは一体何を物語つておるものでありましようか。一般國民としては本は読みたい、本は買いたいけれども、情ないかな、その日その日の生活に追われて、この文化財に対して手を出すことができないという、この苦しい國民の姿が血みどろになつて現われた。それがこの出版物の賣れないところの現況であると私は思うのであります。我が國は今や永遠に戰爭を放棄して將た民主的な文化國家をこれから再建しなければならないというこのときにおいて、この文化の普及発達の上の出版物というものは如何に重き役割を果しつつあるものでありましようか。これが賣れないということは、この日本の文化國家としての將來のために甚だ私は寒心に堪えないと思うのであります。こういう状況に置かれておる矢先に、更に又ここに運賃が値上りを見まするというような結果どうなることでありましようか。最も皆樣方の御注目をここに集めて頂きたいと思いますことは、今日出版物は用紙が極めて不足いたしておりまする結果としまして、極めて発行が至難であります。從つて全國に向いまして、この出版物を配給いたします上において、いろいろな障害が相次いで起つておるのであります。そこへ持つて來て運賃が引上げになるというような結果として、必ずやこの文化財であるところの出版物というようなものは、これは大都市にのみ偏在してしまつて、地方の山間僻地には流れない結果を釀し出すことになりましよう。こうなつたならば、やがて文化國家として立ち上らなければならない日本といたしまして、この文化が全國津々浦々に普及発達を遂げられない、文化の機会均等も果せないというこの一事に鑑みまして、甚だこれは重大なところの問題でないかと思うのであります。かく申しますれば、皆樣の中には、文化の普及においてあのエロ、グロの出版物というものはそれは大変に大きな役割を演ずるかどうかという御疑問をお持ちになるお方もあろうかと存じます。御尤もなことであります。併しながらこのエロ、グロの雜誌、書籍というようなものは、これは別問題でございます。これは日本がこの封建時代から民主時代に急テンポに移り変りまするところの過程に生じたいわばカビのごとき発生物であろうと思うのであります。こういうふうな反動的なものは永遠性は決してございません、日本出版協会におきましても、関係各種團体に呼び掛けまして、強力に緊密な連絡を取つて、これらの撃滅ということにつきましては、專門委員会を組織しております。そうしてこれら低級下劣なるところの不健全なるところの出版物は、これに対しまして割当用紙の停止、或いは又販賣網からも全面的なるところの閉め出し、その他の方策によつてこれを防ごう、これを撃滅しよう、こう企てておるのでありまして、こういうふうなものもその存在というものは決して長いことではないと私は考えるものでありまするが故に、一部にエロ、グロの出版物があつたからといつて、他の多くの良き出版物、これをも否定するというようなことであるならば、これは恰かも羮に懲りて膾を吹くか如き類いのものであると思われるのであります。かかる見地に基きまして、文化國家として日本が將に雄々しく立ち上るということによつてものを見ましても、是非出版物の運賃のごときはこれは引上ぐべきものではない、かく考えるのであります。
 併しながら今國家の財政が危急存亡のときに際しまして、親の心子知らずの我がままのみを申上げまして、ただ安くして呉れろ、ただ高くしないで欲しいと、こう要求を申上げることは、我々身勝手であると存じますので、これによつて生じまするところの歳入減のこの赤字は如何にして克服するか、如何にして補填するかというとうなことにつきまして、我々業者は鳩首協議を遂げまして、その結果としまして、御承知のごとく今日は新聞紙のスペースも少い、そこで宣傳廣告をいたしますにつきましても、いろいろ不便な場合が生ずるのであります。のみならず宣傳いたします際の資材にも乏しい。そういう面から考えまして、あの國鉄の列車の中に宣傳ポスターのようなものを貼りまして、これによつて廣告料を徴收するというようなこと、又鉄道の專有電柱に廣告を掲出するというようなこと、それから又軌道敷の空間地を拂下げるとか又は賃貸するとかいうようなことによりますれば、ここに相当額の黒字を見ることもできようかと存ずるのであります。とにもかくにも政治の要締というものは無い袖を振つてやつて行つて呉れてこそ、我々國民は実に有難いところの信頼感を持つことができる。無いからやれない、無いから國民共に苦しめというようなことで、いつまで國民が果してついて行けるでありましようか。どうぞ皆樣方氣息奄々の間に彷徨していますこの國民の姿をよく御覽下さいまして、相当御善処の方途に出でて頂きたいと存ずるのであります。場所柄をも弁まえませずに、野人礼に嫺わざる非礼の言も多多あつたかと存じまするが、どうぞ私の意のあるところを十分御賢察を賜りまして、我々の要望をかなえさして頂きたいと存ずる次第であります、(拍手)
#81
○委員長(板谷順助君) 川崎さん、あなたにちよつてお尋ねするが、今の廣告とかいうようなものも一つの方案だと思うが、それは凡そどのくらい取れる見込がついておりますか。
#82
○公述人(川崎文治君) それにつきまして後刻先生方に差上げましようと思いますデーターを持つて参りました。それはお手許に後程差上げますから、どうぞ御覽下さいまして、よろしく御檢討を願いたいと思います。
#83
○丹羽五郎君 川崎さんの出版業界から述べられたいろいろのお話、非常に参考に相成りましたが、結局川崎さんはこの値上げには御反対でなく御賛成であるのでありますか。
#84
○公述人(川崎文治君) 賛成ではない……。
#85
○丹羽五郎君 反対でございますね。私何かいろいろ聞いて見ますると、結論は、廣告やらそういうものでカバーして行くから現在の引上げは止むを得ないというようなお話があつた……。
#86
○公述人(川崎文治君) 私共の望みといたしましては、飽くまでも引上げに対しましては反対、そしてその財源は別に補填の途を我々としても考えて見たいと、こういうな考えであります。
#87
○小林勝馬君 そうしますと、川崎さんの反対としまして、旅客運賃はどれくらい貨物運賃はどれくらいというような御希望はございましようか。
#88
○公述人(川崎文治君) それを引上げないで欲しいという一点張であります。
#89
○小林勝馬君 現状維持ですね。
#90
○公述人(川崎文治君) 我々は現状維持という望みなんです。この点甚だどうも我がままな要求かも知れませんが、どうも我々の今日の姿としては、それを飽くまでも主張せざるを得ないような窮状にあります。
#91
○委員長(板谷順助君) 有難うございました。そうすると、公述人諸君の中に日本新聞協会会長の伊藤正徳君は御欠席であります。それから労働問題研究所の理事の小田島禎治郎君はまだおいでになりません。これにて大体公述人各位の御意見の発表は終りましたが、総括的に公述人各位に対する御質問がありましたら、この際発言して頂きたいと思います。如何ですか、何かありますか。
#92
○丹羽五郎君 総括的質問でありますが、この中には公述人の方でお帰りになつたお方もあるから、本公聽会はこれを以て閉会をいたしまして、尚議員中にいろいろの不明な点なりお尋ねする点があるならば懇談会というような形式で以て、これでお話を承るということにしたら如何かも思います。かように考えますが……。
#93
○委員長(板谷順助君) 如何ですか、丹羽君の御提議に対して……。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#94
○委員長(板谷順助君) よろしうございますが。この際公述人各位に一言御挨拶を申上げます。午前、午後に亘つて長時間有益なる御意見の御発表がありましたので、我々運輸交通委員会といたしましては、今後の審議の上に非常に参考になりましたので、或いは諸君の中にもいろいろ賛成、反対或いは率の問題についても御意見があつたのでありますが、尚現在の國家の財政或いは國鉄の現状を十分に調査をいたしまして、できるだけ努力をしてこの問題の解決に当りたいと存じます。長い間御臨席に対しまして誠に有難うございました。厚く御礼を申上げます。
 それでは一先ずこれで公聽会は閉じまして、尚お残りになつて一ついろいろ御懇談をしたいと思いますから、どうぞ御希望の方はお残りを願つて、又議員諸君との間に十分意見の御交換を願いたいと思います。どうも有難うございました。(拍手)
   午後三時十四分散会
 出席者は左の通り
   委員長     板谷 順助君
   理事
           丹羽 五郎君
          橋本萬右衞門君
           小野  哲君
   委員
           内村 清次君
           カニエ邦彦君
           小泉 秀吉君
           鈴木 清一君
           中村 正彦君
           加藤常太郎君
           水久保甚作君
           仲子  隆君
           小林 勝馬君
           高橋  啓君
           飯田精太郎君
           尾崎 行輝君
           新谷寅三郎君
           早川 愼一君
           北條 秀一君
           村上 義一君
  公述人
   東京帝大教授  今野源八郎君
   食糧配給公團総
   裁       梶原 茂嘉君
   Y・W・C・A
   総監事     渡辺 松子君
   全官公廳労働組
   合員      佐藤  誠君
   船主協会理事  浜田喜佐雄君
   日本鉄道会議所
   監事      鈴木 清秀君
   元会社重役   鳥本千代藏君
   学     生
   (夜間学生連盟
   中央委員長)  松田  武君
   國鉄技術研究所
   員       村木 啓介君
   日本漁民組合本
   部庶務部長   船井 倉市君
   日本出版協会副
   会長      川崎 文治君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト