くにさくロゴ
1947/03/26 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 治安及び地方制度委員会 第5号
姉妹サイト
 
1947/03/26 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 治安及び地方制度委員会 第5号

#1
第002回国会 治安及び地方制度委員会 第5号
昭和二十三年三月二十六日(金曜日)
   午後二時一分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○地方自治法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○機構改革後の警視廳の運營に關する
 件
○最近の都内治安状況に關する件
○小委員選定の件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(吉川末次郎君) これより委員會を開會いたします。豫備審査のための議案であります。地方自治法の一部を改正する法律案を議題に供します。政府委員より提案理由の説明を聽くことにいたしたいと存じます。
#3
○政府委員(有田喜一君) 只今提案されました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、その理由を御説明いたしたいと存じます。
 先に國家公務員の身分に關する基準法として國家公務員法が制定されたのでありまするが、これと竝んで地方公共團體の職員に關する制度を確立いたしますことは、新憲法の明示する全體の奉仕者たる理念を具現し、利方自治行政の民主的運營を圖る上から申しまして、誠に喫緊の要務であると存ずるのであります。
 昨年十二月地方自治法の一部改正が行われました際、同法附則第一條に一項が加えられまして「別に普通地方公共團體の職員に關して規定する法律は昭和二十三年四月一日までに、これを制定しなければならない」ということにされたのでありますのも、この趣旨に外ならないのでございます。
 政府といたしましては、爾來地方公務員法につきまして、鋭意調査研究を進めまして、その立案を急いで參つたのでございまするが、この法案は何分にも地方公務員制度の基本をなす極めて重要なものでありまするので、更に愼重考慮を要するものが少くないばかりでなく、議會において十分な御審議をお願いいたとなければならい關係もありますし、當初豫定いたしました本年四月一日までにこれを制定いたしますことは、到底不可能であると考えられましたので、現在までの準備の状況とも睨み合せまして、法案は本年の五月一日までに國會に提出しなければならないと思うことといたしまして、法案授出期限に若干の餘裕を残すことといたしまして、國會の審議期間を拘束するようなことのないようにいたしたいと存ずるのであります。
 これが提案理由の概略でございますが、何卒よろしく御審議の程をお願いいたします。
#4
○委員長(吉川末次郎君) 只今の政府委員の説明に對しまして、御質疑がありましたら御開陳を願いたいと存じます。
#5
○中井光次君 具體的にはどの程度にお進みになつておるのですか、お差支えなければ……。
#6
○説明員(鈴木俊一君) 地方公務員法につきましては、我々事務當局の方では、いろいろと内部的の案を作つて研究をいたしておるのでございますが、まだ關係方面との間に相當折衝を要するものが澤山ございまして、到底今法律に規定されておりまするような時期までに、目鼻をつけることが困難な状況にございます。又内容につきまして、今ここで具體的に申上げるような確定いたしたものは持つておらないような状況でございます。
#7
○委員長(吉川末次郎君) 他に御質問ありませんか。他に御質問がなければ、本日本法案に對する豫備審査はこれで打切りといたしまして、次會に本審査をいたすように取運びたいと存じます。
 それではその次には、昨日お話合いを願いました、警視總監から警察制度の改正に伴うところの機関改革後の警視廳の運營に關する説明を聽きました後で、更に最近の治案の状況、なかんずく世間で非常に問題になつております帝銀事件の、當局の右事件に關するところの、今日まで取られたいろんな捜査究明の經緯というようなものについての説明を聽取することにいたしたいと存じます。警視總監。
#8
○説明員(田中榮一君) 私只今御紹介に預りました警視總監の田中であります。よろしくお願いたします。機構改革後におきまする警視廳の運營状況について若干御説明申上げます。
 元の制度の警視廳におきましては、警察法施行に先立ちまして、昭和二十二年十二月二十六日及び昭和二十三年二月十日の二囘に亙りまして機構改革を實施いたしました。三多摩三市十八町一ヶ村に自治體警察二十二署を、三多摩四十二村及び島嶼管轄として國家地方警察十一署、一支所を設置分配いたしまして、東京都特別區警沖を警視廳本部と六十七署とにいたしまして、新警察法による全面的運営訓練を開始いたしました。去め三月七日警察法の施行によりまして、各實共に自治體警察の現警視廳に移行したのでございます。從いまして東京都下におきまして、元の二十三區の自治體警察と、三市十八ヶ町村の自治體警察、それからその間を縫いまして、三多摩及び島嶼のいわゆる國家地方警察の四十二村を含めた國家地方警察、この三つのものがここにできたのであります。
 そこで公安委員は、機構改革と同時に、二月十日に小畑惟精、島田孝一、櫻田武の御三方が東京都知事から選任されまして、昭和二十三年三月七日に開いて六囘の公安委員會におきまして、警視廳設置等に関する條例案を初めとして、條例規則案等計四件の審議を可決をしたしまして、警察法施行後におきましては、毎週一囘の定例公安委員會を開催いたしまして、又必要に應じましては、その都度公安委員會を開催いたしまして、警視廳における警察運營の根本方針、條例規則案、告示、公安委員會規定、豫算その他警察管理上の重要事案につきまして、議決又は指示を受けておるような次第であります。
 警察運營につきましては、民衆警察の樹立をその根本方針といたしておりまして、管下の部下の陶冶、指導につとめると共に、啓蒙宣傳を行なつて、都民の支持、協力を求めておりますが、新制度發足早々のためでありまして、未だ顯著な具體的に成果は認められておりません。他面今次の警察制度改革に伴つて憂慮されました警察の弱體化、ボス化という現象も目下のところは認められないのであります。ただ世上自治體警察又は國家地方警察と機構が分離いたしますために、いろいろ警察事務の執行の上において非常に複雜化し、竝びに支障があるのではないかというような懸念も、實施前には相當あつたのでありますが、只今のところでは、本廳におきまして國家地方警察、警視廳というものが緊密なる連絡を遂げまして、今のところ何ら支障は來しておらん状況であります。
 警察官の緊急増員につきましては、募集割當分が約一萬三百名、一萬二百九十名でございまして、すでに採用試驗合格者が一萬一千名になんなんとしております。教習中の減耗を見込み、引續き現在募集中であります。尚試驗合格者中、現在までに警察學校に入校せしめた者が五千七百七十名、すでに今月二囘に亙りまして卒業をいたしまして、すでに卒業配置を完了した者が二千八百八十名であります。今次緊急増員は極めて大量、而も充足期間が限定されておるので、採用者の素質低下傾向と、短期大量訓練に伴う教養の不足が極めて憂慮されますので、卒業配置後において、現地における教養を十分に努力いたしまして素質の向上に努めたいと考えております。
 次は警察官の住宅問題でございます。この點は只今非常に惱んでおります。現在生活不安定の者が約三千六百五十名を算しておるような次第であります。又今次の緊急増員に遭遇しましたので、本部の幹部を初め現地中署長擧げて新任者の收容施設の獲得に奔走中でございますが、目下のところ全く成算がございません。すでに卒業した一部の新任者につきましては、警視廳建物内に居住せしめる等、幸うじて急場を凌いでおるような状態であります。一署に五六十名の者を大量配置します關係上、その宿舎というものが極めて獲得に困難な實情であります。從いまして折角燃えるような希望を持つて、九州、四國を初めてしまして、全國から募集に應じましたら新らしい警察官が轉々としてその居所を轉ずる、生活の不安定があるというような關係からしまして、いわわる幻滅の悲哀を感じておるというような状況でございます。その點につきましては私共も極めて憂慮いたしておりまして、いろいろと工夫をいたしておる次第であります。
 今年六月末緊急増員完了後におきまする、いわゆる自治體警察としての警視廳の警察吏員の總數は、警視長一名、副警視長五名、警視百三十一名、警部百九十七名、警部補千五百四名、巡査部長二千六百三十名、巡査二萬七十名、合計二萬四千六百三十八名、相當大部隊がこの道都の治安に當ることになるのであります。自治體警察發足當時の人員が一萬六千七百五十四名でございますから、約四七%の増員ということになるのであります。よつてこれの大半を第一線各警察署への要員配置と、終戰後の人口移動等に伴つて發生した警備繁劇地の警察署新設という要員に當てまして、その一部を首都治安確保の裏付けとしまして、集團警備力を保有する首都防備隊の構想を以て目下配置策定上でございます。
 次に最近の都内の治安状況につきまして、若干御説明申上げたいと思います。終戰後急激に増加いたしました兇悪犯罪は、昭和二十一年上半期を頂點といたしまして、一時減少の傾向を示して參りましたが、昨年末より本年初頭に掛けまして再び増加しつつあります。本年一月以降三月二日までに發生した重要事件は、殺人事件十件、強盗二百八十七件、昨年の同期に比較しますと、殺人で二件、強盗で百三十三件の増加となつております。檢擧率は目下のところ七割前後に相成つております。
 特に捜査中の重要案件を捨い上げて若干申上げますと、淀橋署管内において巡査の殺人事件がございます。これは昨年十二月二日午後十一時五十五分頃、淀橋の西大久保三丁目の巡査派出所において、同派出所勤務の巡査佐藤三雄(二十歳)、若い巡査でありますが、何者かに左側面から拳銃で狙撃を受けまして即死いたしております。只今同署に捜査本部を設置して、目下鋭意容疑者を取調中であります。
 次に大森署管内に發生した事件であります。今年一月八日午前十一時、大田區新井宿地先におきまして、燒跡空土藏内におきまして、品川區平塚六丁目千百六十九、煙草屋さんの青木半次郎という五十七のお爺さんが、何者かに鈍器のようなもので後頭部を毆打されまして、殺害の上、所持金十五萬圓、小切手竝びに現金を強奪された事件がございまして、これは目下大森署に捜査本部を設置いたしまして、鋭意捜査中でございます。
 それから愛宕署管内の喫茶内の主人が締殺された事件で、本年二月十八日午前八時四十分頃發生いたしました。これは港區新橋二の二、木村屋ベーカリーの店舗内におきまして、店主榊原三郎(三十三歳)が、何者かに手拭で締殺されておつたのを發見いたしました。目下愛宕署におきまして捜査本部を設置して鋭意捜査中であります。
 次に王子署管内に起つた事件で、これは最近新聞で御承知の通りと思います。本年三月十一日午後十一時過ぎ頃、北區王子千九番地、鮮人三好松吉(三十歳)が、同町の路上で何者かに鋭利な刃物で額部、顔面を切られて死亡しておるのを發見いたしました。これも王子署に捜査本部を設けて捜査中でございます。
 次に最後に大きな問題としまして、都民に非常に大きな話題を揚げております、目白署管内に發生いたしました帝銀行事件につきまして少し御説明申上げたいと思います。帝銀毒殺人事件につきましては、すでに報道機關を通じまして皆樣御承知と思います。この事件が白晝銀行の閉店時を狙いまして、殘務整理中の銀行員に對しまして、進駐軍の命令による防疫であると僞りまして、豫防樂と稱する青酸性の溶液を極めて巧妙な方法によりまして、行員十六人に飲ませまして、十二名はその場に毒殺し、殘りの四名を人事不省に陷れ、現金十四萬六千餘圓と小切手一枚を強奪した事件であります。犯罪史上稀に見る兇悪犯罪でありまして、誠に天人共に許さざる極悪犯人でございまして、警視廳といたしましては、面目に掛けても犯人を擧げなければならんという決意を全廳員が持ちまして、只今全力を盡して捜査中でございます。捜査の現段階を簡單に申上げますると。目下捜査は、基礎的の材料集めや、その取捨撰擇の段階を一應終りまして、これからいよいよ實際に料理に掛かろうというところでありまして、氣短かな世間がいろいろと噂されておりますように、決して捜査が行詰つておる、或いは迷宮に入つておるというわけでは全然ないのであります。この點につきましては、一兩日前に鈴木法務廳總裁から、極めて確信あることを御發表になつておるのであります。
 正にその通りでございまして、御了解を頂くためにこの概要を掻摘まんで申上げますると、この事件は先ず材料に非常に惠まれておる點が、これが非常に我々としましては有利な點であります。と申しますわけは、帝銀には御承知の通り四人の生存者がございます。而も他にもこの犯人がやつたと斷定する二つの銀行の未遂事件を發見いたしまして、これらの關係者四十名餘りの人が、當時の犯人の言動や人相、服装、携帯品等につきまして、非常に豐富なる材料を提供して呉れております。又犯人が使用した名刺を、犯人の眞筆と思われる筆蹟等さへ完全に入手いたしておるのであります。併しながらこれらの材料は、名刺を筆蹟のように、係員を直接觀察し得るものもありますが、多くは關係者の記憶を辿つての觀察、言い換えて申しますれば、ガラス越しの觀察をしておるのでありますので、そこに關係者各個人、觀察力、記憶力等の問題が問題になるわけであります。事實の眞相を掴むのに、可なりの時と努力を必要としたのであります。事件發生以來、係員はあらゆる角度からこれらの材料を檢討いたしまして、その結果を事實について試し、或いはこれに基いて他の隱れた材料を探し出し、同樣檢討を加える等、苦心に苦心を重ねて今日に及んでおります。いささか事實の眞相を掴み得たかのごとき確信を得ておるのでございます。か第二にこの事件は、當初犯人の人相や手口が、報道機關により盛んに傳えられましたので、大衆の關心を著しく高め、犯人に對する情報を、捜査上の意見が夥しい數に上つておるのであります。現に私の机上にも毎日數通の、各府縣から、遠くは青森縣、或いはこの都内の方々から、犯人と覺しき者が附近の立廻つた、直ちに逮捕して貰いたいというような情報が盛んに參つております。又非常に御熱心な方は、わざわざ私の方に來まして、只今そこに共犯らしい者がおるから直ぐ逮捕して貰いたいというようなことも言つて來る方もございまするが、さて實際これを本人について調べて見ますると、それが極めてボケてしまいまして、果してこれが犯人であるかどうか分らんというような状況でございます。これら大衆の協力につきましては深甚の感謝を表し、その熱意に副うべく、徹底した捜査を行なつたのでありますが、半面それがため多くの時と力を割かなければならないというようなことが起つて來るのであります。併しながら捜査の材料が潤澤であるということは、手掛りが澤山あるということでありまして、大衆の協力が盛んであることは、同様捜査上極めて望ましいことでありますので、目下これら材料を檢討の上、抽出した或る筋に對して、可なりの幅と深さを持つた捜査を強行しておるのであります。その二、三を申上げれば次の通りであります。
 犯人は昨年十月十四日、荏原の安田銀行支店に行き、帝銀同様のことを言つて、行員二十名餘りにいかがわしい藥液を飲ました事實があります。幸いこの藥は效かず、二名の犠牲者も出さなかつたのでありますが、そのとき犯人は支店長に、自分はこういう者だと言つて、厚生技官、醫學博士、松井蔚という名刺を交付したのであります。松井という博士は、調べて見ますと、これは現實に實在されておるお醫者さんであります。而も犯人が使用した名刺も、松井博士の眞正の名刺であります。松井博士が實際使つてあつた名刺であることが、科學試験の結果立證されたのであります。そこでこの名刺につき徹低的に穿撃が行われた結果、百枚印刷しまして、大部分を使つた點、及びその使用先等が分り、苦心を重ねて現在これを六十六枚發見しております。從つて犯人は殘りの三十四枚中の一枚を、何らかの機會にこれを同博士から入手いたしまして、これを使用したことになるのであります。この線の堀下げは極めて重要視されておるのであります。この問題につきましては、すでに新聞紙上にいろいろと報道されておりますので、皆様御承知と思います。
 犯人は右の安田銀行の外に、本年一月十九日、新宿區の下落合の三菱銀行中井支店に參りまして、前同様のことを言つたが、たまたま來客があり、又その支店長がなかなかしつかりしておつた支店長であつたので、藥を飲まないうちに適當にこれを退散させてしまつたのであります。この三菱銀行及び安田銀行、帝銀の三ヶ所で申しました犯人の言葉というものは、これが重要なヒントを與えるのでありますが、その言葉の中に、自分は水害地の防疫に活躍した來た者である。この銀行の附近の内外に集團疫痢が發生し、GHQのマーカー、又はホーネツト中尉の命令で消毒に來たから、現送するものがあつても暫く待つように、こういうことを言つたのであります。それでこの銀行の附近の内外と言つたのは、これは現に私の友人の相田という方で、これは始終私のところに參りますが、相田君が現實に發疹チブスになりまして、現實に相田小太郎君が、これは新聞にも名前が出ておりますが、この相田君が發疹チブスになつて入院したことは、これは事實であります。これを犯人が先ず第一に使つたわけであります。それから、只今申しましたGHQのマーカー又はホーネツト中尉の命令であるということによつて消毒に來たから、現送するものがあつても暫く待つように、こう言つたのでありますが、調べて見ると、進駐軍の防疫擔當官の中に似寄りのパーカー及びコーネツトという中尉の防疫官がいた事實がありまして、偶然の符合とは斷じ切れないのであります。又先程申しました現送ということは、銀行で現金を本店に送る、これは銀行員の熟語でありまして、これは一般人にはちよつと分らない言葉であります。それ故に一應犯人は曾て銀行、又は進駐軍の防疫關係の前歴者ではないかとの見込で、徹底的な捜査をやつておるような次第であります。又犯人は、銀行員に藥を飲ませる際に、自分が先ず先に飲んでその要領を教え、相手に安心感を與えております。その際の藥や器具の扱い方、或いは説明振りや所持の器具、容器等が、如何にも物なれた調子でありまして、その前歴を物語るものがかようなことをなし得るかにつき、深い掘り下げを行い、突つ込んだ捜査を實施中なのでございます。
 現在までに取調べた容疑者の数は二千百六十八名に達しております。併し拘禁、これは餘罪がありますので合せて拘禁したのでありますが、それが一名でございます。大衆から寄せられました容疑者に對する投書密告は、今まで千三十八件、激勵や意見開陳は約五百数件であります。これは毎日相當数に上つて、ますます増加する傾向にございます。昨今はやや下火になつた感はありますが、それでも大衆の協力は毎日五十件を下りません。
 捜査當初は目白警察署に捜査本部を置きまして、刑事部長直接指揮の下に課長、係長、主任等、約百六十名を動員勤務いたさせました。只今は基磯捜査班、捜査資料蒐集班、容疑者取調班、遊撃別動班等の編成をいたしまして、各班が緊密なる連絡の下に、人の和を第一といたしまして、水も洩らさぬ捜査陣營を形成したのであります。又係員の士氣昂揚と能率向上のために、自動車十五臺の使用と、幹部の現地激勵を實施いたしました。更に捜査を大きく且つ洩れなくするために、各府縣間、廳内各部課及び各省竝びに一般大衆に對する呼び掛けを極めて積極的に行なつたのであります。そのため連絡上の必要から、二月十二日に捜査本部を警視廳に移しまして、目白署はこれを支部といたしたのであります。二月二十六日、捜査三十一日目、捜査線もやや落ちつきを見たので、本件以外の一般治安の面も考慮いたしまして、應援に從事して參りました一部の係員を切離して、出動員を前申しました百六十名から七十名に引下げまして、現在まで捜査を繼續いたしておるような次第であります。係員の士氣は、事件發生當初と異るところなく頗る軒昂でありまして、氣が張つております故か、病氣に罹つた者もありませんし、又一人もその間缺勤した者もございませんで、毎日出勤いたしまして、或いは夜遅くまで、或いは徹夜しまして捜査に從事いたしております。初めは報道機關の活動が極めて猛烈であつたために、ときに思わぬ障害を起り、精神的勞苦があつたのでありますが、今はそれもなくなりまして、極めて地道な捜査を進めております。
 最後に結論を申上げますると、帝銀事件は漸く峠を登り詰めて、これから先ず下り坂に掛かろうとしておるところであります。これは修飾ではなく、合理的判断から生れた結論なのであります。從つて係員は空虚な世評には耳を籍さず、ひたすら犯人に一歩々々近付きつつあるとの希望と確信を以て、捜査を強行いたしておるような次第であります。
 以上は帝銀事件に關することを申上げたのでございますが、私共といたしましては、たとえ草の根を分けても、石を堀返してもこの犯人だけは絶對に捕えなくてはならんという固い信念を持ちまして、若干多少の犠牲は拂いましても又如何なる巨額な經費が掛かりましても、これだけは一つ絶對に逮捕せねばならんという決意を固めて、今進めておる次第であります。
 そこでこれにつきまして、先般GHQからも非常に深い關心を持つて頂きまして、又GHQ側からもできるだけの應援はしてやろうというようなお話がございまして、いろいろ相談をいたしました結果、この帝銀事件に關する新聞の報道でございまするが、これにつきましては只今非常に微妙な點もございまするし、今後の犯罪の捜査上につきまして、ややもすれば或いは又捜査上に支障を來す虞れのある場合もございますので、この點につきましては、GHQ側からも各社の方にいろいろと御注意がございまして、現在警視廳の刑事部長と各社の社會部長の間に覺書を交換いたしまして、今日まで以上の記事の發表は差控え或いは又若し事件が進展した場合におきましては、或いは犯人檢擧のような曉におきましては、一齊に同様な立場においてこれを發表する、それまではお互いに帝銀事件に關する新らしい記事につきましては十分に自粛しようというような、各社と刑事部長との覺書が交換されました。今日では皆様御承知のように、帝銀事件に關する限りは、相當新聞記事の報道につきましては、各社非常に愼重なる態度を以て書いて頂きまして、現在犯人捜査上の別の意味においての御協力を願つておるような次第でございます。
 以上甚だ簡單でございまするが、機構改革後の状況、それから現在の治安状況の大要につきまして御説明申上げました。
#9
○委員長(吉川末次郎君) 只今の田中警察總監の説明に對しまして、御質疑のある方はお述べを願いたいと思います。ありませんか……。別に御質疑もないようでございますから、それでは次の議事に入りたいと思います。
 次は、先般來本委員會において審議、調査を進めておりまする、いわゆる出先機關の廃止、整理の問題に關しまして、行政調査部の前田總務部長から、以前局部長から説明がありました本問題に關するその以後の、その筋との交渉の状況であるとか、或いは衆議院が新聞紙上に發表しました衆議院委員會の案等の問題につきましての説明を聽取したいと思います。行政調査部前田總分部長。
#10
○政府委員(前田克巳君) 只今お尋ねのありました出先機關の整理の問題につきましては、新内閣が成立いたしましてからも、同樣の方針によりまして、地方自治の本旨に副うような調整をいたしたいということで苦慮いたしておるのであります。遺憾ながら昨秋以來關係當局間の打合せが十分な進捗を見せておりません。未だ具體的の解決を見るに至つておらんことは甚だ遺憾に存ずる次第でございます。尚衆議院側におきましては、本年のたしか一月と思いまするが、小委員を設けて案をお作りになり、これを關係方面に御提示になるということで、やはりその當時從來の經過等を御説明し、必要なる資料を差出しました。その後小委員會には政府側からも参加をいたしておりませんし、又お作りになりました案につきましても御連絡を受けておりません。私からは御報告申上げる用意がありません次第でございます。
#11
○委員長(吉川末次郎君) 只今の前田部長の説明に對しまして御質疑がありましたら御開陳を願いたいと思います。御質問ありませんか。
#12
○中井光次君 まだ衆議院の方も、あなたの方も、この前一遍お話を伺いました以後、具體的にGHQならGHQに打合しておられるその點で、どれがどうなつているかということを具體的に伺われないですか。その後の變化ですね。
#13
○政府委員(前田克巳君) 司令部に案を提出することにいたしましてから、その内容につきましていろいろ質問がありました。私の方だけでなく、出先機關を持つておりまする省の人なんかも、たびたび司令部側に赴きまして説明をいたしたのであります。併しながらこれらにつきましての、具體的にどれをどうしたらよかろう、そういうことにつきましての意見の開陳には未だ接しておりません。
#14
○委員長(吉川末次郎君) よろしうございますか。この問題につきましてはGHQに對して、我々の方からも答申をしなくちやならんことになつております。どのような形でこの審議を進めて行くかということにつきまして、何か御意見があつたら承りたいと思うのでありますが、大体におきまして我々の方では小委員會のようなものを設けまして、特にこの問題について地方へ御出張を願つて御調査を願いましたような方々、又東京都内における出先機関の調査等も全員で、先にもいたしましたようなこともあるのでありますが、そういうことも睨み合せまして、尚特に進んで小委員會に参加して、この問題の審議に當りたいというような御希望の方がありましたら、一つ申出を願いまして、それらの方々を以て小委員會を設置して、急速に本委員會としての成案を得るような方向へ進めて行つたらどうかと思つておるのでありますが、尚上原專門調査員の手許等におきましても、この問題につきましてはいろいろ調査を進めておるような次第でありますから、相協力してそういうような形で一つやつたらどうかと思つておりますが、如何でございますか。
   〔「贊成」と呼ぶ者あり〕
#15
○委員長(吉川末次郎君) それでは御異議がなければ、小委員會を設置いたしまして、審議を進めることにいたしたいと存じますが、小委員の方々を、どうして選ぶことにいたしましようか。
#16
○羽生三七君 委員長と理事とで御選任願います。
#17
○委員長(吉川末次郎君) 委員長及び理事で選任して呉れという羽生委員からの御申出がありましたが、そのように取運びましてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○委員長(吉川末次郎君) 御異議がないものと認めます。ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#19
○委員委(吉川末次郎君) 速記を始めて。それでは前に御提案がありました通り小委員會を設置することにつきましては、昨日來實は、多少他の方々とも御相談申上げまして、手許にできておる案がございますので、小委員の方を指名いたしたいと思います。
    中井 光次君 鈴木 直人君
    岡本 愛祐君 小野  哲君
    羽生 三七君 岡田喜久治君
    青山 正一君 村尾 重雄君
    柏木 庫治君 黒川 武雄君
    大隅 憲二君 阿竹齋次郎君
 以上十二名でございます。適當に委員長、副委員長等を選んでやつて頂くことになつております。
#20
○阿竹齋次郎君 吉川さんが入つて頂いた方がいいと思います。この委員會の委員長ですから……。
#21
○委員長(吉川末次郎君) それでは私も入れて頂くことにいたしまして、十三名を以て小委員會を組織して、早々審議を進めて頂くということに定めましてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○委員長(吉川末次郎君) それでは、御異議がなければさよう取計らうことにいたします。尚專門調査員の方から、委員會の開會の豫定表というのをお手許へ配付いたしましたが、本日委員長會議等における話の樣子からいたしますると、ともかくも本月中で來月早々から休會したいような話でありましたが、多少遲れるかも知れないというような話で豫定は成るべく本月中に仕上げてしまう、一定の現在提出されておるところの法案の審議は今月中に仕上げてしまう。そうして來月早々から三週間ばかり休會に入ることができるように審議を進めて呉れというような話でありましたのですが、二三日ぐらい遲れるかも知れないというような豫想でございましたので、この上原專門調査員の方で作成いたしました豫定表は五日になつておりますが、これを繰上げて、できるだけ早く休会に入る前に、これだけのことを議するように取運ぶ必要があると思いますが、大體の案件等はここにありますようなものです。尚本日審議いたしました地方自治法の一部改正案は、この表の中に揚げておりませんが、これは大體來週の月曜日ぐらいに衆議院から囘付されるでありましようから、これを議了する必要があるだろうと思つております。尚輕犯罪法の法案の説明の聽取を昨日の委員會においてすることになつておりますが、これは明日するように取運びたいと思つております。尚この表を中心といたしまして御意見がありましたら、この機會にお漏し置きを願いたいと思います。
#23
○中井光次君 明日は午前中お願いできますか。
#24
○委員長(吉川末次郎君) 午前中開會いたすようにいたします。別に御意見がなければ、本日はこれを以て散會することにいたします。
   午後二時五十四分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     吉川末次郎君
   理事
           中井 光次君
           鈴木 直人君
   委員
           羽生 三七君
           岡田喜久治君
           鬼丸 義齊君
           青山 正一君
           岡本 愛祐君
           小野  哲君
           阿竹齋次郎君
  政府委員
   内閣官房次長  有田 喜一君
   總理廳事務官
   (行政調査部總
   務部長)    前田 克巳君
  説明員
   總理廳事務官
   (自治課長)  鈴木 俊一君
   警 視 總 監 田中 榮一君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト