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1947/05/25 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 労働委員会 第7号
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1947/05/25 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 労働委員会 第7号

#1
第002回国会 労働委員会 第7号
昭和二十三年五月二十五日(火曜日)
   午前十時五十七分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○最高賃金制及び紛爭處理機關の問題
 に關する件
  ―――――――――――――
#2
○理事(小川久義君) 只今より委員會を開會いたします。本日は委員長が御缺席ですから、私が代つて委員長を勤めることにいたします。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○理事(小川久義君) ちよつと速記を止めて。
   午前十時五十九分速記中止
   ―――――・―――――
   午前十一時二十五分速記開始
#4
○知事(小川久義君) 速記を始めて。
#5
○栗山良夫君 紛爭處理機關の今政府側が考えておられますところの性格、構成その他、運用についての報告がございましたが、私は加藤勞働大臣と合せまして、この問題についてもう少し説明をお願いしたいと思います。
 先ず第一に紛爭處理機關が、紛爭の平和解決を是非とも目途として欲しいと、こういうことをおつしやつたのですが、私はここで二つの例を擧げてお尋ねしたいのでありますが、一つはこれは勞働者が反對するというのは勞働者的でない。いわゆる資本家側に味方するものであるというような結論から出て來て、そういうことが言われておるのでありますが、その一つの例は、二、三日前に民主自由黨が發表せられました勞働對策の六項に、紛爭處理機關を急速に設け、勞働委員會の機構竝びに權限の改正と勞働裁判に關する制度の確立を期すること、こういうことがあります。それは今のいわゆる資本家側の最も徹底した考え方を表明したものであると思いますが、こういうような線に沿つて、その紛爭處理機關が今運用されようとしておるということが一つであります。もう一つは極東委員會の日本勞働組合に對する十六原則の第四項の中には、勞働組合が雇傭條件について、組合員のため雇主と協約を交渉することを奬勵する、そうしてその後段には、日本政府は勞資の仲介及び調停機關を設置して、勞働者代表と雇主との間の直接且つ任意の交渉によつて解決できない産業爭議を處理する必要がある、こういうことを書いてあります。併しこれは勞働組合法によるところの正規の勞働委員會の構想を以て現在日本には實施をされておる、そうして而もそういうような勞働機關は、勞働者の利益を保護するというような條件で活動すべきであるという、勞働者の利益を保護するというような條件で、こういうような勞資の仲介及び調停機關を設置する場合には、そういうような條件で活動しなければならんということが十六原則にも書かれております。そういうような考え方からしますならば、この紛爭處理機關の設置というものが、現在非常に勞働者階級の反對を受けておりまする根本的な理由も明らかになると思うのでありますが、そういうような問題をどういう工合にお考えになつておるかどうか。今憲法の基本的な勞働者の人權に觸れるものではないとおつしやいましたけれども、更に具體的に入りまするならば、そういつたような問題が出て來るわけであります。それからもう一つ、その後發生いたしました問題で、五月の十日であつたと思いますが、加藤勞働大臣が記者團と會見せられまして、紛爭處理機關を各組合の團體協約中に設ける、勿論決定ではないと、こういうようなことをはつきりと言われております。それから又芦田首相は五月の十五日、地方事情視察のために仙臺へお出でになりました時に、やはり記者團との會見において、勞資の紛爭解決に紛爭處理委員會を設けるなどというこのは政府は取上げたことがないし、考えて見たこともない。こういうようなことを聲明せられております。勿論これは新聞の記事でありますが、こういう工合に、政府のいわゆる總理或いは勞働大臣というような勞働對策に對する責任を持つておられる方が、こういう工合に言明せられておるにも拘わらず、實質的には今の石炭の場合、金屬、化學のような場合に、更には政府の全官公の場合でも、苦情處理委員會というものが現在置かれております。そういう工合に實質的にはどんどん進められつつあるということは、一體どういうような見解に基くものであるか。いわゆる水谷商工大臣がおつしやられた紛爭處理機關というものと、加藤勞働大臣或いは芦田總理が言われた紛爭處理委員會というものとは、どういうような違いがあるのかというような點を、一つ伺いたいと思うのであります。
#6
○國務大臣(加藤勘十君) 御承知のように、日本の勞働協約の條項の中には、そういう紛爭なり、苦情なりというようなものを處理する方法についての條項は、現在までのところない。そういう協約が結ばれていないことは御承知の通りであります。その代りに民間においては經營協議會であるとか、或いは官廳方面においては運營委員會であるとかいうような機關の條項が設けられておることも御承知の通りであります。いずれにしましても正規の法律的根據に基く調停機關としましては、勞働組合法に基く勞働委員會というものがあることは言うまでもありませんが、この勞働委員會と雖も、法律的に最終的に拘束力を持つものでないということは、御承知の通りであります。
 今考えられておる紛爭處理機關の問題でありますが、これを恰かも勞働組合法に規定されておる勞働委員會と同樣な、獨立的な性格を持つて機關を別個に構成しようと、そういう考えの下にこれは論議されておるのではなくして、苟くも勞資双方の間に協約が締結され、その協約の期間は大體半年若しくは一年であります。半年若しくは一年の間に協約が結ばれて、その條項について何かしら勞資の間に紛議若しくは苦情等が起る、すると直ちに日本の今までの例で行きますと、直ぐそれを取上げて團體交渉に移す。團體交渉が成立たんと、直ちに爭議行爲に出る。こういうことでは日本經濟再建途上にある今日の段階におきましては、結局言葉ではどういう言葉が用いられておつても、結果としては日本經濟の再建を阻害することは言うまでもないのであります。これは賢明な栗山君の十分御承知のところであります。從つて團體協約を締結した場合に、團體協約の條項の中に一項として、そういう團體協約締結中に紛議若しくは紛爭、若しくは苦情が何かの問題を契機として起つたような場合には、勞資双方直接の話合いによつて、それをできれば話合いによつて解決をしたい。どうしてもその話合いで解決ができないときに、更に調停機關というものを設ける條項があれば、その調停機關によつて、初めてそこで勞資兩方の納得する第三者が加わつて調停する。これも又纒まらないときには、勞働委員會の正規の手續きによつて勞働委員會に提訴すると、こういうことになる段取りでありまして、紛爭處理の機關なり、或いはそうした調停機關の設置なりというものが、常設的に置かれる性格のものでなくして、協約條項の中にそういう條項を規定しておいて、問題が起つたときにそういう臨時の機關を作る、こういうことが一番望ましいことと私は考えておるのであります。これならば少しも勞働者の基本的權利を侵害することもなし、又勞働者の一切の行動の自由を拘束するわけでもないのでありまして、勿論兩者が納得ずくでそういう代表者を出して話合いをした、若しくは納得ずくで、第三者を越えた調停機關を作つて、それによつて處理して貰う、こういう場合に道義上その決定に服するということは、これは兩者の當然の義務であります。併しながら法律的にそれに從わなければならん義務があるわけでは勿論ないわけでありまして、從つてそこで從うことができなければ、勞働委員會に訴えることもできますし、若し勞働委員會の決定に服することができなければ、一定の方式において、當然現在行われでおると同様に、爭議權も發動できるわけでありまして、從つてこれによつて爭議權を拘束する、そういう性格のものではない。いずれにしましても、まだ今日紛爭處理若しくは苦情處理の問題については、政府として正式にこれを檢討しておる段階にはない。これは芦田総理が、今お示しになつたように、言われた通り、又私も言つておる通りであります。併しそういうような、日本經濟の復興再建ということを當面の目標とする限りにおいて、できるだけそういう爭議行爲が少くして濟むならば少くして濟むことが何より望ましてことであります。これは勞働者に取つても、經營者に取つても、同様の願望でなければならんと思うのであります。
 先程炭鑛の問題についてお示そになりましたが、炭鑛の問題につきましても、大體紛爭處理、苦情處理の問題については、たまたま賃金協定が行われるという、一番先に出て來たのがこの炭鑛爭議の問題でありまするから、その一番先に出て來た賃金協定が結ばれるならば、賃金若しくは、その他の、これに關連する事項について協約期間中紛議が起つたときに、この紛議を適当に話合いで話を纒めて行きたい。こういうことが兩者をしてこの問題を提起せしめたわけでありまして、御承知のように炭勞は先にその紛爭處理機關を設けるということを承認し、更に昨日は全石炭におきましても、それを置くということを承認して話がついたことを、私組合の代表者から報告を聽きました。そういうわけでありますから、何か特別に、これが現在の法律によつて規定されておる勞働者の基本的權利に侵すものであるような誤解を受けておるようでありまするけれども、實際においては何ら實質的に、ただ直接勞働委員會に持つて行く段階として、紛爭當事者の直接の手によつて、できれば處理をする、更に勞働委員會に達するまでの一段階として調停機關にもう一遍掛けて、その間に相互の理解が深められるならば、それによつて問題が處理されるならば、これに越したことはない。こういう意味のことでありまして、從つてこれが最終的、法律的意味における拘束力を持つというような性格のものではないのであります。
 尚これらの点については、勞働組合側においても十分檢討されて、今おつしやる極東委員會の十六原則の中に示されておるように、いずれにしても勞働者の勞働條件が保護されるということは、一番大きな前提でありますから、そういう建前に立つて、權利が侵されることなく、そうして定められた條項が蹂躙されることなくやれるようにするという建前であります。又勿論その協約が、假に紛爭處理なら紛爭處理、調停なら調停の處理が、若し經營者側によつて蹂躙された場合においては、そのときたとえ協約中と雖も爭議を行うことは當然の權利でありまして、それでも尚且つ爭議を行なつて悪いという性質のものではありません。この點も一つ誤解のないように御了承頂きたいと思います。
#7
○國務大臣(水谷長三郎君) 私に對する栗山君の御質問の第三點でありますが、この度私が所管大臣といたしまして、石炭或いは全金属において、この紛爭處理機關を設けることを慫慂いたしましたことに關して、最近發表になりました民主自由黨の紛爭處理機關、それがいわゆる勞働法規の改悪にまで發展する、その構想と如何にも同じであるような御發言がありましたが、これは民主自由黨の勞働對策と私の考えとが一つであるというようにされましたことは、私といたしまして極めて迷惑でございます。私自身の考えから申上げますならば、こういう基本産業におきまして紛爭處理機關を設置するということは、日本の一部におきまして、勞働組合法を改悪するとか、或いは法的措置をするとかいうような流れに對する一つの有力なる防波堤として考えたのでありまして、これを以て勞働法規の改悪に發展さして行くところの一つのステップとして考えたことは全然ないのでありまして、それは民主自由黨の勞働對策とは正に正反對であるという工合に是非御了承願いたい、これは私は深く確信して憚らないところであります。
 第二の點は、この紛爭處理機關は、極東委員會の言葉を藉りまして、勞働者の利益のためということに反するというお考えでございましたがゐ私は本當の勞働者の利益というのは、ストライキに訴えずしてその目的を達することが、これが勞働者の利益であろうと、このように考えております。最近日本の基本産業に起りました勞働爭議なんかの經緯をお考え願いますならば、ストライキを強行することが果して勞働者の利益であるか、或いはストライキをやらずに、平和的に處理して目的を達して行くことが本當の勞働者の利益であるかどうかということは、十分にお考えが願えると思うのでありまして、我々がこの紛爭處理機關を設けたのは、一にストライキによらずして勞働者の目的が達せられるように考えたのでありまして、その點もよろしく御了承を頂きたいと思う次第であります。
 それから第三の點は、芦田總理大臣竝びに加藤勞働大臣なんかの御辯明を引用されて、商工大臣がこういうようなことを石炭或いは全金属に對してやつたことが行過ぎであるというような御發言があつたのでございます。勿論これは閣議に正式に決定された問題ではございません。或いは芦田総理が東北でどういうことを言われたか知りませんが、荀くも現在の悪性インフレの激流の下において、日本の基本産業の生産増強をやつて行く責任者といたしまして、こういう処理機關を設けることが正しいのだという、私の生産相當者の責任において、又その信念におきまして、こういうことをやつた次第であります。
#8
○栗山良夫君 加藤大臣にもう少し確認をして置きたいと思いますのは、加藤大臣のお話を承わつておりますと、紛爭處理機關というのは勞資の間で取結ぶ團體協約の中に平和條項を入れて置きたい、こういつたお考えのように伺つたのでありますが、そうしますと、そういつた性格の紛爭處理機關というものの拘束力、勞資双方を拘束する限界というものはどの程度のものであるか、或いはどういうような幅を持たせるものか、そういつたような點を先ず政府側が今どうお考えになつておるか。これは勞働階級がこの紛爭處理機關に對して今絶對反對を唱えておりますが、その意見とは別に、政府が今どういう工合にお考えになつておるかということを、もう少し具體的に伺ひたいと思います。
#9
○國務大臣(加藤勘十君) 政府として、別に正式に閣議に掛けてそういう點を檢討し、一つの具體的意見を決定しておるわけではありません。又できればこういうことは、今水谷商工大臣は、基礎産業の生産の責任者として、又多くの金額を國民の責任において融資しておる建前から勸奨をしたと言われましたが、できればこういうことは政府から勸奨若しくは強要すべき性質のものではないのでありまして、勞資双方の納得ずくで協約の中に挿入されるべき性質のものでありまして、これが拘束力は、従つてその勞資双方のこれに對する協約を遵守するという道義上の問題にかかつて來るのでありまして、法律的に別にこれは拘束力を持つという性格のものでは勿論ありません。飽くまで勞資が自主的にそういう條項を設けて貰いたい、こういうのが現在私共の考えておる紛爭若しくは苦情處理に關する考え方であります。それ以上に今具體的にどうこうということは、今政府として考えておりません。
#10
○栗山良夫君 ちよつともう一點。そうしますと、紛爭處理機關の加藤大臣が考えておられる構想としては、團體協約に豫め勞資の話合いによつて入れて置く、そうして平和解決をいたしたい、こういう工合にお考えになる。ところが今實際に現實に起つておる問題は、團體協約の下にそういつたような平和條項がなくて、そうして爭議を解決する瞬間において、その解決條件としてこの紛爭處理機關の設置が強要されておるということは、今加藤大臣が、勞資間の問題は勞資が自主的にすべてのことをやるのだ、こういう工合におつしやつておるお考えと相當食い違いがあるように私は考えるので、その邊のことについてのお考えを伺いたいと思います。
#11
○國務大臣(加藤勘十君) 別にそれは食い違いではないのです。炭鑛の問題のときに、賃金協定が、何と言つても雇傭條項に關する一番主なるものは賃金協定でありまして、そうしてその賃金協定が今新らしく結ばれようとするのですから、而もこれは何年という期限が初めから附けられておりまして、先程水谷商工大臣も答辯されたように、賃金協定の期間中のことだけに關してのみ商工大臣としては考えておられるのであつて、團體協約そのものについては、當然炭鑛勞働組合においても、改めて團體協約を締結されるときには、その團體協約の條項の中に、そういうことが話合いで挿入されると思いますが、その前提として、今言うように一番大きな賃金の協定が結ばれるから、そうして又これは水谷商工大臣がどうお考えになつておるか知りませんが、私の考えとしては、六ケ月間という期限を切つて賃金を協定したが、併しながらいろいろな事情によつて、どういう事態が起るとも保證できないのであります。賃金問題にしても、そういう場合に、もう協定してあるから、この間は身動きならんというようなことでは、却つて勞働者側の不利にもなるし、そういう場合にも、直ちにそれが團體交渉、直ぐ爭議と、こういうことでは、重要な石炭増産について非常な支障が生ずるのでありますから、どうしてもそういう場合のことを考慮して、そういう場合においても、できれば勞資兩方の同じ數の苦情處理委員によつて、そういうことが審議されて話合いが付けばそれが一番よい。こういう意味のことが私は含まれていると思いますし、もう一つは賃金支拂のために莫大な皆さん御承知のように赤字融資が行われております。これは國庫の責任でありますが、結局下手すれば、これが最後は國民の責任になることは言うまでもないのであります。それを預かる所管大臣としては當然そういうことのために、要するに石炭を増産するということが、日本經濟にとつて最も前提的な條件であるというところの觀點に立つて、勿論これをやつたがよいといつて商工省から強制されたものではなくして、ある方がよいという勸奬をされた程度のものである、こう考えておりますので、私の考え方も水谷君の考え方も、この間に食い違いがあるとは思えない。本質的には私の言うたようなことが本質的な建前であります。
#12
○山田節男君 只今の栗山委員の御質問と多少重複するかも知れませんが、加藤勞働大臣に伺います。紛爭處理機關の問題について、昨今これは、殊に炭鑛、金屬その他重要産業において、そういうことが大きく起つて來るということは、私は日本の團體協約の一進歩である、こういうふうに私は解釋しております。只今商工大臣、それから加藤勞働大臣の御説明の通りに、政府がその態度を取りますならば、これは私は非常に慶賀すべきだと思います。殊に日本としましては、經濟の再建復興ということと、それから近來問題になつております外資導入、こういう方面から考えて見ますと、日本の勞働状態が安定しないということが、何よりも一つの不利な條件を來たすのであります。この苦情處理委員會が、日本の一般産業にも次第に普及して來るということ、これは望ましいのでありますが、これと同時に我々はここに國家の基幹産業とする、例えば石炭、その他の重要産業におきましては、苦情處理委員會を團體協約中に挿入することと同時に、只今栗山委員が一言されましたが、平和條項でありますが、ピース・アーテイクルズ、これは團體協約として、民主的な國家におきましては、當然これは入れるべき一つの常識的なものである。ところが平和條項ということにつきましては、私は日本の全部とは申しませんけれども、勞資双方の會議におきましては、平和條項というものについて可なり缺點危惧を持たれているのであります。先程申上げましたように、外資導入につきましては、何をおいても日本の勞働が不安であるということが一つの何と言いますか、隘路又彼らの信用を得ないということは疑う餘地がないのであります。そういつた意味から、私は日本の基幹的産業におきましては、團體協約の一部に平和條項を入れる。即ち協約によります或る一定の期間内は生産を中斷しない。即ち紛議がありましようとも、爭議を成るべくやらない。こういうのが私は當然起るべき問題であろうと思いますし、又政府としましても、この點につきましては特に留意さるべきであると思いますが、只今の商工大臣のお話によりますと、炭鑛方面或いは金屬の一部におきましては、そういつたような苦情處理委員會というようなものが實行されているということでありますが、更に進んで、本當に今日國管となつております石炭業におきまして、平和條項というものに對して、どういうお考えを持つか、この點を少しお伺いしたいということと、それから先程の加藤勞働大臣の苦情處理委員會に對する御意見は、これは我々よく了承いたしましたが、更に平和條項というものに對する中藤勞働大臣の、勞働行政の立場からどういう見解を持つておられるか、これをお伺いしたいのであります。
#13
○國務大臣(加藤勘十君) 平和條項がありましても、特に爭議をどうするか、こうするかというようなことを規定するということは、それこそ文字に囚われて、その本質である基本的な勞働者の權利を抑制するというようなことが、結果として起つて來ることは、私は極めて好まんところでありまして、そういう方法は採るべきでない。今の苦情處理の條項が、これこそ實際において平和處理の内容をなすものでありまして、平和條項という言葉、即ちストライキをやらないということと同意義に解釋されると、勞働者の何と申すか、憲法において保障された基本的權利が侵されるといふことになりますので、そういう平和協定というような、そういう言葉を用いることなく、實質的に紛議が平和裡に解決されて、紛議の處理の進行中は平然として普通のままで仕事が繼續される、こういうのがこの紛爭處理の機關の特徴でありますから、從つてそのこと自體が一個の平和處理に關することになるわけでありまして、殊更に平和條項というものを締結するという言葉に囚われて締結する必要は私はないと考えております。併しいずれにしても、そういう條項は政府として、經營者若しくは勞働組合に向つて強く要請するものでなくして、一般の理解によつて、そういうことが實體的にいずれの權利をも阻害することなく、經營者は經營者として、勞働者は勞働者としての、それぞれの立場を尊重され、確保されて行きつつ、尚且つ不必要に理解の乏しい點から起る爭議行爲等が避けられるならば、それが最もよろしいことであると考えるのでありまして、そういうことのために側面から勞働者の教育が推進せられるとかというようなことは、勞働行政の主なる任務として扱わなければなりませんが、勞働行政として、直ちに組合なり、經營者なりに向つて平和條約を結べというようなことを通達若しくは強要するがごときことは避けるべきである、こう考え考えております。又日本のは、その點について御考慮を願いたいと思いますることは、大體他の國々の、長いこと勞働組合の運動が繼續して發展しておる國においては、大體主要なる國におきましては、この團體協約中に紛爭處理若しくは調停等に關する、いわゆる平和條項が含まれておりますけれども、日本のはそうではなくして、戰爭前にあつた、たまたま一、二の少い例でありまするけれども、工場委員會、更に戰爭中にそれが言葉が變つて來て經營協議會、こういうような名前、工場委員會若しくは經營協議會というような名前で來たわけでありますけれども、これは一面から行けば、これが適當に運用されるならば、これ又一つの紛爭處理の機關の性格を持つたものであるし、平和條項の一つの機關を持つものであるのでありますけれども、從來の工場委員會にしても、經營協議會にしましても、その實體は團體なり、經營者の勞働組合側に對する一個の諮問機關の性質から一歩も出ていなかつたのであります。從つてここで協議されましても、結局はそれは一個の諮問に過ぎませんから、從つてこれを採入れようと、採入れなかろうと經營者側の自由である。こういうことではこの工場委員會なり、經營協議會なりというものに對する信頼感というものは、組合側にどうしても起りようがないのでありまして、それが終戰後の新らしい觀念に基く勞働組合が生れましても、そこで當然本來ならば團體協約が結ばれる場合に、そういう紛爭處理等に關する條項が規定されるべきでありましたけれども、それが經營協議會、若しくは工場委員會というような性質がずつと無意識の間に繼承されまして、それがそのままの形で現われて來た。從つて折角名前は經營協議會でありますけれども、その實體は依然として戰爭中、若しくは戰爭前とは變らない單なる諮問機關の性格を持つておつたに過ぎない。こういう點で、今からでも中には紛爭處理というようなことを殊更に規定しなくても、經營協議會で以て十分やつて行けるのではないか、こういう意見も組合側から聞いたこともありますけれども、經營協議會と紛爭處理委員會とはおのずから若干性格が違つております。勿論經營協議會において紛爭處理を行おうとすれば行えないことはありませんけれども、併しそれではその名前が違うごとくに、若干内容も違つて參りまするから、やはり經營協議會を以て直ちに平和に關する條項と見るわけにはいかんと思います。從つて私は紛爭處理條項が團體協約の中に設けられることによつて、今お説のような平和條項もそれによつて兼ねられることでありまするから、殊更に平和條項という言葉だけを取上げる必要はないのじやないか。こう考えております。
#14
○國務大臣(水谷長三郎君) 山田委員の御質問は、商工大臣として石炭、或いは全金屬にこういうような機關を設けさしたのを、又他の基本産業にも擴大する考えはないかという御質問でしたが、その平和條項の問題に關しての問題でありますれば、只今勞働大臣がお述べになつた通りであります。
#15
○山田節男君 今の加藤大臣の御答辯中、平和條項という意味は私ちよつと誤解なすつたのではないかと思いますが、私申上げたのは、これは少し講義らしくなりますが、今日のいわゆる民主主義國家の最も進歩的なる勞働協約というものは、これは原則として四つのものを入れておるのであります。四つ原則があります。その第一には全部と申しますか、少くとも一行から三行までは勞働と經營の權利、いわゆる職場なり、工場におきまする權利を明らかにし、第二が、賃金、勞働時間、その他の勞働條件に關する規定、第三に、いわゆる苦情處理委員會、先程言われたグリヴアンス・マンナリー、そうした第四番目にピース・クローズ、これは紛爭處理委員會、或いは苦情處理委員會とは別個の、いわゆる外交條約と同じでありまして、或る一定の期間だけは生産を阻害する行爲をしないということを保障する。こういう條項をいわゆる平和條項ピース・クローズというのでありますが、併し日本ではこの平和條項というものを少し誤解しておるのじやないかと思う。そういうふうなことで平和條項ということを御質問申上げたのです。從つて先程申上げましたように、日本の經濟の復舊ということと、それから外資導入というような意味から日本の勞働不安をなくする。こういう意味で私は勞働大臣として平和條項というものに對する、今後どういう御態度をお持ちになるかということと、殊にこの石炭のごとき國家の産業復舊の最も基礎的な産業に對して、こういう或る一定期間は生産を阻害するようなことをしないという保障を、これは勞資との協約によつてこれを規定するという、そういう平和條項を求める御意思があるかどうかということを商工大臣にはつきりお伺いしておきます。
#16
○國務大臣(水谷長三郎君) 只今山田委員の御質問でございますが、我々といたしましては、その賃金協定書が六ケ月なら六ケ月、できるだけ平和裡に實施されるという意味においてグリヴアンス・マシナリーというものを考えたのであります。ところがそれよりも、むしろ積極的に先手を打つて平和條項というとこまで行きますると、これはややともすればストライキ權、或いは基本權というものと衝突するように私は考えておりますので、只今そういう工合に考えておりますので、商工大臣といたしましては、苦情處理委員會がありますならば、それで十分でありまして、その上更にその平和條項に關する規定を慫慂するという考えは只今のところ持つておりませんです。
#17
○千葉信君 紛爭處理機關に關する兩大臣の大體の御意見の全般は判明したようでございますが、實はこのことに關しまして、傍聽しておられる勞働組合の諸君の中から發言を求めておられる方がございますので、できますことなら、このままの状態で、或いは又できなければ形式を移行さして、懇談會の形でも結構でございますから、勞働大臣に對する質疑もお濟みのようでございますから、お許し願いたいと思います。
#18
○理事(小川久義君) 只今千葉委員の發言でありますが、全金屬の代表者の方がお見えになつておりますし、この委員會を一旦閉じまして、後懇談會として御意見を拜聽したいと、そうしたらいいと思いますが……。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○理事(小川久義君) ではそういうことに決定いたします。
#20
○栗山良夫君 今日は更に最高賃金制の問題がありますし、時間も十二時過ぎましたから、何とか議事進行をお願いしたいと思います。
#21
○理事(小川久義君) 最高賃金制の問題について栗山委員から御發言がありましたが……。
#22
○栗山良夫君 この最高賃金制の問題は、さつきの紛爭處理機關の問題とも非常に關係がありますので、或いは話が混同するかも知れませんが、然るべく解明して頂きたいと兩大臣にお願いして置きます。特に安本の方もさようにお願いいたしたいと思います。
 最高賃金統制方式、即ち賃金安定方式に對しましては、今非常に私共として不可解に思つておりますことは、五月の二十三日の夜のラジオでは、芦田内閣は初めて閣内において意見の對立が出た。芦田民主黨と社會黨との間に、この問題を通じて對立が起きた、こういうようなことを報じておりました。又昨日の衆議院の豫算委員會においては、芦田首相と加藤勞働大臣との間には意見の食い違いが起きておる、こういうことが報ぜられております。そこで私はこれは加藤勞働大臣は、この前勞組法の改悪が起きましたときに、するのかしないのか分らないような問題を、いつまでも煙にしておいて、勞働不安を起す前提を作つてはならん。だから勞組法の改悪はしないとはつきり言明して、勞働者に安心を與えるということを言明しておりましたが、そういうような線まで早く政府部内の統一された方針というものが決定されなければ、勞働階級の不安は一掃されないと、こういうように考えるが故に、次の質問を申上げたいと思います。
 ちよつと前段を申上げますが、昨年の七月に物價改訂がありまして、物價六十五倍、賃金二十七倍、この比率に對しては當時勞働階級は非常な不滿を表明いたしました。事實千六百圓を、撥ねつ返りを入れまして、千八百圓にふくらましても、尚且つ實質的には數百圓の赤字が出るということが安定本部で發表されておつたのであります。果せるかなその通りでありまして、物價改訂の直後から、勞働階級は賃上の運動を展開いたしまして、やつと今日まで何とか生命を繋いで來た、こういう状態であります。そうして恐らく今におきましては六十五倍、二十七倍の差は實質的にずつと縮まつていると思うのでありますが、然るに今度政府は又物價の改訂を計畫せられまして、そうしてその基本的な構想は、昨年の七月の状態にもう一遍還元をして、賃金と物價の比率の差を還元する、こういう構想に端的にとれると思うのであります。そうして而も社會黨の政調會の調査によりますと、三千七百圓ペースではすでに六百十圓の赤字が出る。こういうことが言われておるのであります。そういう状態におきまして、若し賃金の安定をやろうというようなことがありますならば、ここに二つの問題がありまして、物資その他の完全配給ができるかどうかということの問題、これが一つの問題になるわけであります。もう去年の七月分からの私共の體驗から言えば、現在の政治力を以てしてはなかなかそれは不可能に近いことである。結局七月以降においても同じような状態が再現し、六百十圓の赤字に對しては、勞働階級は生活の切下げを克服するために、やはり賃上げ運動を依然として強硬に行なつて行かなければならないのではないか、こういうように考えられているのであります。そのときにこういうような賃金の安定を、強權を以てやられるということが起きますならば、それは決して賃金の安定ではなくて、ただ名目的な賃金の安定をするというだけでありまして、勞働の生産性を高めることは何一つできないと私は思うのであります。ただ逆に申しますならば、勞働の搾取でありまして、ますます勞働不安を激發するだけである、こういう工合に考えるのであります。戰爭中にあの徴用工に對して賃金の釘付で、低賃金を強要した當時の東條内閣の場合、如何にあの賃金の釘付が勞働の生産性を低下せしめておつたかということは、もう戰爭中のあの強權下においても、はつきり私共はあのように體驗しているわけであります。そこで今申上げましたような事情から申しまして、賃金の安定策というものは今俄かに機械的に講すべきではない。こういうようなことに私共は考えるのでありますが、そのときに幸いに現在の政府の中で食い違いがある。こういう工合にまあ二度も事實が報道されておりますが、その中で新聞紙上の報ずるところによりますと、五月の二十三日の毎日新聞におきましては、加藤勞働大臣と西尾國務大臣とは、二十二日の閣議後の懇談會において意見の一致を見た。そうして賃金の安定は、合理的な基礎の上に立つて行わなければ一利もないというようなことから、俄かに最高賃金を設定すべきではないというような、意見の一致を見たというようなことがいろいろ書かれておりました。併しここで私共關心を持つておりますことは、これは社会黨の出身の閣僚としてのお考え方を聽きたいと思うのでありますが、これは東京民報にも載つておつたのでありますが、五月の二十三日であります。安本筋の最高賃金統制方式に對しては、社會黨の出身閣僚は、賃金安定は賃上げ要求の爭議行爲防止が先決であつて、實質賃金の裏付けのないこの賃金統制はやるべきでないと、そういう工合に考えておる、又西尾大臣も輕々にこの問題を出すべきでなくつて、今國會中には結論は得られないだろうというようなことを申されたということが述べられておりました。併しその場合に重大なことは、こういう工合に言われておりながら、そこに社會黨閣僚の意見として、間接的に賃金安定策を講じなければならんということが述べられておつたんであります。で、その項目を見ますと、五つありますが、五つとも實にひどい内容であります。一つはこれは企業に對する赤字融資を極力制限し、赤字融資の賃金引上げを抑制する、二番目は合理的な企業整備によつて、水膨れ勞働者の取得賃金を振り向ける、三番目は粉爭處理機關を全企業に設置せしめ、粉爭議の發生を防止する、四番目は粉爭處理機關と別個に勞資竝びに中立委員による調停機關を設け、粉爭が發生した場合、當事者間で自主的に解決する、五番は勞働協約にピース・クローズを入れると、こういうことなんでありますが、これを考えて見ますと、端的に申しますと、社會黨としては、今表から最高賃金統制方式は取れないと、これは實質賃金の裏付けがなければできないとこういう工合にしておいて、内容的には、間接的には、勞働階級が食えないために、働けないために爭議を起して行くことに對して、爭議を起し得ないような状態、例えば企業に對して融資を拒否して、そうしていくら企業が賃金を改善しようと思つても、融資を得られないために、賃金の改善ができないと、こういうようなこと、或いは粉爭處理機關を全企業に設置せしめて、これはせしめてと書いてありましたが、これは政府の意圖で、社會黨の閣僚の意見として、こういうような考えを持つておいでになるのかどうか分りませんが……せしめて、粉爭議の發生を防止するということは、勞働階級が不滿があつても、この粉爭處理機關で以て我慢させてしまおうと、こういうような考えに受取れるのであります。それで、私はそういうような、今の、なぜ閣内で意見が對立しておるのかということが一つであります。そうして二つ目は、社會黨の閣内の意見というものが、私が今東京民報で承知したような内容と間違いないのかどうかということが一つ、それから社會黨が若しこの最高賃金統制をおやりになるとするならば、完全に物資の裏付ができてからおやりになるつもりなのか、或いはできないままにでもおやりになる豫定なのか、それからもう一つは、西尾國務大臣は、今國會には結論は出ないと、こういう工合に言われておりますが、それは事實であるかどうか、こういうような點について伺いたいと思います。
#23
○國務大臣(加藤勘十君) この問題につきましては、いろいろ御意見のあるところだと存じます。閣内における意見の對立ということを第一にお取上げになりましたが、まだ私は正式に一度も閣議にこういう問題が協議されたことを聞いておりません。先般私の旅行中に二囘程閣議が開かれておりまするが、そこでもこういう問題が正式に議題として取上げられたことはないのであります。勿論ある方面から話があり、それが報告され、そうしてさまざまな話が出たことはありますけれども、議題として取上げられたことはありません。從つて閣内における意見の不統一ということも、まだ何もない筈であります。昨日の豫算總會における芦田總理と私の意見の違いという點をお取上げになりましたが、芦田總理もそのとき言つておりました。自分として研究しておるのであつて、政府のそれぞれの方面では研究しておるかも分らんが、閣議に掛けたことはまだ一遍もない。從つて政府の方針としてこれを研究しておるというのではない。こういうことをはつきり言つておりました。ただこれに對して、私は今日のような段階において、今栗山君が言われたような意味において、その時期ではないと言うた點が、言葉の上の食い違いは……勿論同じ言葉は使われておりませんから、言葉だけを掴んで言えば食い違いと言われますが、その趣旨においては今申します通り、閣議において正式の議題となつていないのでありますから、その議題になつておらんものは、意見の食い違いが外部に出て來るわけはないと思います。ただ問題は、個々の間のこういうことがある方面から提起されまして、相當關心を以て行う、行わん、いつやるか、やらんかということに拘わらず、とにかくそういう相當關心を以てこの問題が檢討されておるということはこれは事實です。そういう點でありまするから、又私と西尾君との意見の一致ということについても、新聞はそのように報道しておりましたが、ただ私は私の不在中の話を聞き、そうして私の見解を述べて、そうして西尾君のそれに對して成る程そうだとこういう意見を聞いたのでありますから、從つて私と西尾君との意見も、その點について、内容をまだ細かいことについては話合つてはいないのであります。その點については意見が一致しております。それから社會黨の意見というものを幾つか今お揃えになりましたが、私東京民報を見ておりませんで、どういうことが報道されておつたかよく知りませんが、恐らく社會黨閣僚としても、そういうことを、まだ何も決まつておらんものを、研究する進められておらんときに、かれこれ内容について、そういう具體的な案が出て來るとは思われないのですが、これは分りません、分りませんが少くとも私の關する限りにおいてはそういうことはよく分りません。
#24
○栗山良夫君 それからこの國會中の……。
#25
○國務大臣(加藤勘十君) それも西尾君がどういう意圖を以て、そういうことを言つたかよく分りませんが、少くとも本國會中と言えば、定められたる期間と言えば、六月の二十日であります。そうこの問題が早急に、實際問題として處理されるものではないと私もそう思います。從つて西尾君が日にちを切つたことの意義は分りません。少くともそこに輕々しくこの問題が取扱われるものではない。序でありますが、この問題について私個人としての意見としては、他の諸君がどうあろうとも、本當に實質給與が確立するということは、それには物質の裏付けがなければ、それは一片の文字に過ぎんことになつてしまいますから、現實に物資の裏付けが保證せられるということになつて、尚日本の經済全般の情勢が正確に分析され、綜合された料學的檢討の上に、初めて具體的の問題として研究するに値するのではないか、こう考えております。
#26
○政府委員(藤井丙午君) この問題は非常に重要な問題でありますので、栗栖安本長官から御答辯申上げるのが當然でありまするが、止むを得ん事情のために、私の承知しておる限りにつきましてお答え申上げます。御指摘のように經済安定の基本的の要件として、物價の安定と賃金の安定ということが取上げられるということはこれは當然のことでございますが、只今加藤勞働大臣からお話のございましたような經緯で、政府としましても、今安本側といたしましても、この問題の取扱いについて研究はいたしております。併しながら先程勞働大臣のお話もありましたようにこの問題は一片の法令等によつて解決される問題でなくして、むしろ如何にして經済、賃金の安定ということが、物質的の裏付けによつて、つまり經済的に安定し得るかどうか、從つてその條件が現在成立しておるかどうか、非常にむずかしい問題でございまして、今のところ安本側としていろいろの研究はいたしておりますけれども、まだこれをどういうふうな形でやるとかいうことについては、何ら結論に達しておりません。從つてまだ閣議等に正式に安本側として御報告申上げる段階に達していないのであります。
#27
○國務大臣(水谷長三郎君) 栗山さんの只今の最高賃金制の問題でありますが、これは生産を擔當しております商工省といたしまして、この問題が如何ように取扱われるかという、實際の一番大きな影響を被むるのが商工省でありますので、この最高賃金制の問題に對しては、商工省としては斷じて無關心たり得ないと思うのであります。勿論只今藤井君が申されましたように、經済の安定の前提といたしまして、物價の安定と共に、賃金の安定が一つのフアクターであるということは言うまでもありません。從つて我々といたしましては、この賃金の安定というものが、勞働者の理解と協力を得る方法でやれれば、これは非常にプラスになるのでありますが、そうでないと逆にマイナスになることを恐れておるものであります。ただその商工省の試案といたしまして、これもこういう問題が私の東北旅行中に出まして、商工省といたしましてもいろいろ研究をさせております。併し只今はつきりした結論は出ておりませんが、大體の構想として一應こういうことを考えておるのです。即ち賃金安定の必要ということはですね。賃金が他の生産條件に比べて不合理に昂騰し、これが物價全般に影響を及ぼすことを避けることにあるのでありまして、賃金そのものの固定を目的とするものでは絶對にないと考えております。特に現在のようなインフレーシヨンの進行が甚だしい速度を持つておる場合には、賃金安定の方式といたしまして、最高賃金制を取ることは、實際上勞働者の、負擔を増大することになるのでありまして、その前提としての生活物資の充實、食糧の増配、殊に安定勢力の確定がない場合には、徒らに勞働者を過激な行動に出でしめる結果となる虞れがあろうと考えております。從つて賃金安定の仕方は、飽くまでも生産能率を上昇せしむるという目標に合致するよう、企業の能率を中心に、これを判定して行く行き方が正しいと思われるのであります。即ち最低賃金制ではなく、業種部門ごとに、又は企業の規模ごとに、標準賃金を策定いたしまして、企業が一定の條件を充しておる場合にのみ標準賃金以上の支拂いを認め、それ以上の賃金支出に對しましては、一定の方式をとるのが妥当であると、このような一應の考え方を持つておりますが、その具體的な方式に對しましては、まだここではつきりとお答えをすることはできないと思います。即ちその賃金そのものを固定するという目的であつてはならないこと、又生産擔當省である商工省の立場といたしましては、その賃金安定の仕方は、飽くまでもその生産能率をレベル・アツプする目標に合致するようにやりたい。このようにまあ今のところは抽象的でありますが、考えておる次第です。
#28
○理事(小川久義君) 最高賃金制に關して御質問ありましたら御發言願います。
#29
○栗山良夫君 今賃金が他の生産條件に比して不合理に上昇して來るのを避けると、こういう工合に言われましたが、勞働階級の實質賃金が非常に低下しておるということは、まあ私共今申上げるまでもないことなんで、私最近讀みました或る書物によりますと、戰爭前に比較いたしまして、國民の平均一人當りの所得が大體二分の一程度の實質になつている。然るに拘わらず動勞階級の所得は三分の一に下つている。こんな工合になつている。總平均がそんなことでありますから、如何に勤勞階級の所得が低位にあるかということが分つて來る。そういう意味で非常に實質的な低賃金に甘んじながら、現在生産のために戰つているわけでありまして、そういうような條件にあり、而も目前に大幅な物價の改訂を控え、やつと一年掛かつて散々な苦勞を嘗めまして、名目賃金の引上げ、それに若干裏付けされる實質賃金の獲得を今日までやつて來たのが、昨年の七月に又還元されてしまうというようなことで、勞働階級は非常に不安を持つている。それに又再び最高賃金制の問題が出て來るというようなことになりますれば、もう勤勞階級は、片方では何だかもやもやとして爭議權の問題、或いは基本賃金の問題が枠を嵌められ、そうして實際の生活權の問題に對しては、こういうような手が打たれるというようなことで、踏んだり蹴つたりに會うのじやないかというような、非常な不滿と不安を持つております。從つて社會黨出身閣僚に特にお願い申上げて置きたいことは、勞働法の改悪、或いはその運用における悪運用と申しますか、そういうことは絶對にしないというようなことを述べて、一應勞働階級の不安を一掃せられましたが、にも拘わらず、現在同じような側面的な法律、例えば輕犯罪法のようなものも通つて、完全に不安を一掃されてはいないのであります。そういう状況にありますから、そこに更にこの不安が昂まつて來るということになれば、勞働階級の生産權の獲得のために好ましくないと思いますので、はつきりと加藤大臣に、この前勞調法の改悪が若しなされるならば、自分は大臣を投げ出すとおつしやられましたが、そのくらいの固い決意を以て、この問題に臨むことを早く勞働階級に關明されて、勞働不安の一掃を一つやつて頂きたい。こういうことを私はお願いいたします。
#30
○理事(小川久義君) いろいろ御質問もありましようけれども、時間の…。
#31
○千葉信君 最後に一つ。實は新聞その他の傳えるところによりまして、全官公廳と政府との間に、新給與整備委員會が調停委員會の内容の問題に關連して發足をし得ないような状態に陥つておるようでございますが、その理由といたしましては全官公廳の諸君の方から、その調停委員會の内容について、例えばこれを決議權を持たれるものじやないというふうに結論を持つて行きたいという申入れ、それから又その決定が全官公廳の諸君を拘束しないという申入れ、その外その期限というもの、調停委員會に一定の期限を附して、その一定の期限が來た場合にはこれを解消するという、こういう以上の三つの條件など、政府の間と話合いが付かない。政府の容認するところとならないというために、新給與委員會が發足できないという状態に陥つているようでございますが、以上の條件から考えましても、大體官勞或いは全官の諸君が、最近締結をそれたところの紛爭處理機關の性格と著しく相似點を持いている。更により一層進んでいるのは、これをいつまでも設けて置こうとして期間を切ろうとしない。この考え方が、從來のいわゆる紛爭機關の考え方より一歩進んでいるというような状態がもたらされております。先程御説明を承わりました粉爭處理機關と、今度のこの調停委員會の關連をどういうふうにお考えになつておりますか、このことについて加藤勞働大臣から御説明を承りたいと思います。
#32
○國務大臣(加藤勘十君) 實は私は今の給與委員會の審議の模樣を知らないのです。よく事務當局から聽いて見まして、今おつしやるような點に食違いがあるならば、これは調停機關というものに拘束力を持たせるということと、持たせ得ないということの爭いでありますから、先程私が申上げましたように、今日の法律においてこれに拘束力を持たせるという法律的根據は何にもなのです。從つて双方の合意した點においてできた委員會であるとすれば、その決定について、道義的にはお互いに拘束されるというようりも、お互いが拘束をする。こういうところに道義的な責任はあるけれども、法律的にこれを拘束する最終決定權を持つという權限はないわけです。尚よく事情を聽いて見まして、そんなことに行惱みがあるならば、何か打開の方策が講じられるように、私の方から勞働省の事務當局の方へ注意して、今はどこが中心になつているか、多分勞働省の方々も加わつていると思います。確かに大藏省の給與局と官房次長が中心であると思いますが、いずれにしましても、勞働省の事務當局からそういうようなことをよく事情を聽きまして、それの行惱みを打開するように努めたいと思います。
#33
○千葉信君 先程動議として提出いたしましたが、今日傍聽されている勞働組合の諸君から、本日發言を求めておりますので、その發言を一つ許して頂きたいといいます。
#34
○理事(小川久義君) 先程申上げましたように、委員会を一旦閉じまして、懇談会を開きまして御意見を承わつたらどうかと思います。
 閉會の前に一つお諮りいたします。職業安定法の第二十一條第一項の規定に基いて、職業安定委員會委員旅費支給額に關しての議決を求める件につきまして、衆議院の勞働委員会の方から兩院の合同審査會を六月一日午後一時から開きたい。こういう申出がありましたのであります。これを應諾しても差支えないですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○理事(小川久義君) 御異議ないと認めまして、この通り手續をいたします。それでは長時間に亙りまして有難うございました。これで勞働委員會を閉會いたします。
   午後零時四十分散會
 出席者は左の通り。
   理事
           小川 久義君
           堀  末治君
           栗山 良夫君
   委員
           千葉  信君
           山田 節男君
           川村 松助君
           平岡 市三君
           紅露 みつ君
           深川タマヱ君
           竹下 豐次君
           早川 愼一君
           姫井 伊介君
           中野 重治君
  國務大臣
   商 工 大 臣 水谷長三郎君
   勞 働 大 臣 加藤 勘十君
  政府委員
   經濟安定政務次
   官       藤井 丙午君
ソース: 国立国会図書館
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