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1947/06/25 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 労働委員会 第13号
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1947/06/25 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 労働委員会 第13号

#1
第002回国会 労働委員会 第13号
昭和二十三年六月二十五日(金曜日)
   午後零時十四分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○職業安定法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(原虎一君) それでは只今から労働委員会を開催いたします。先程から職業安定法の一部を改正する法律案についての御懇談を願つておりましたのですが、政府委員も出席いたしましたので、これから質問を願いたいと存じます。通告がございますので、堀委員の発言を許可いたします。
#3
○堀末治君 この機会に労働大臣に、改めてお尋ね申上げたいと存じます。実は先般來たびたび当委員会におきまして、大臣の御意見を承わつたのであります。その節は遺憾ながら速記がありませんので、今日の質問は重復いたしますけれども、いわゆる事苟くも人権に最も関係する懲罰に関係する問題でございますから、この機会に改めて大臣から明確なる御答弁を頂いて、これを後日のために速記に明瞭に残して置きたい。実はかように思いますので甚だ重復いたしますが、改めてもう一遍伺うことにいたします。
 それはこのたびの改正案の第四十四條でございますが、これは第四十五條に規定する場合を除く外、労働者供給事業を行なつてはならないという規定になつておりますのを、このたびは「又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を使用してはならない。」かようなことになつておるのであります。これの改正の御趣旨につきましては、私共もよく了解いたしておりますが、ただこの四十四に條は、六十四條に大分嚴しい罰が決められておりますので、六十四條には「左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。」ということになつておりまして、その第四項に、「第四十四條の規定に違反した者」、こういうことになつておりますので、今までは許可なくして労働者供給事業を行なつた者が、この刑罰を受ける、こういうことになつておつたのでありますが、今回はそれを使つた者までもその刑罰を受ける。かようなことになりますので、恐らく今の日本の諸情勢から考えて見ると、この使用する人の中にも悪質な者もありましようけれども、又誠に止むを得ず、いささかも悪意のない使用者もおるのではなかろうか。実はまあかように思うのです。実はこれは両方共同じ刑罰に罰することは如何かと実はかように思い、その見解について反対の意見を持つて、その間からお尋ね申上げておりましたのでございますが、この機会にこの点についてもう一遍大臣からはつきりした御答弁をお願いいたします。
#4
○國務大臣(加藤勘十君) 只今堀さんからお尋ねでございましたが、この点につきましては提案理由の説明の中にも、又御質問にお答えいたしまする場合にも、しばしばはつきりと申上げます通り、本來職業紹介事業というものは、飽くまでもその沿革的に見ましても、廣く言えば産業界への労働者の奉仕ということが基本的な観念でありまして、こういう点から長い封建的な習慣としまして、中間搾取の機関があつた、その中間搾取の機関を除くということのために、職業安定法の精神を一層強く普及滲透せしめたいという念願においては、微塵も変りないのでありまして、ただ今度こういう改正案を出すに至りましたのは、先般來申しまする通り、この安定法の制定以來相当の成績を挙げて來ておりまするが、尚長い封建的な習性と申しまするか、中間搾取の行使というものが、いつまでも忘れ去れないのか、とにかくボスというものが存在しておる事実が到る所に見えておりまして、そういう点からこれには是非共事業家の側においても御協力を願わなければならないということを強く考えておるものでありまして、成程罰側規定において両罰主義を取るということになつたのでありますけれども、この法律の建前から申しまして、決して処罰するということが本旨ではないのであります。飽くまでもこれは事業家の諸君の、そういう善意ではあろうけれども、封建的な習性を一日も早く脱却して貰いたいという、警告の意味が多分に含まれておるわけでありまして、そういう意味で私共は一人と雖も処罰されるような事犯のないことを望んでおるのでありまして、決して法律によつて処罰するということが対象ではないということは、安定法の精神から申しましても、又職業紹介法そのものの本質から見ましても、特に御了承を願いたいと思うのであります。そういう意味で申したのでありまするし、又この職業安定所の職員諸君が、たとえ現場に臨みましても、強い意味の監督というような考え方で行くのではなくして、飽くまでも疑わしいものに対する実状を調査する、実状を調査して、そういう事犯を未然に防止するという建前で行くのでありまして、尚それもどうしても悪質な警告、その他によつて反省の実が上らないという場合、止む得ずして、主としてはこれは監督官と連繋を取つて行うことでありまするが、法の手続に從う、こういうのでありまして、安定所の職員が直ちに司法権を持つた監督官のように、直ぐそれを発動せしむるという意味ではないのでありまするから、こういうもろもろの点を御考慮下さいますれば、安定所の職員が仮に現場に参つて事実を調査いたしまするについてもその権限を挿し、法の精神をみずから冒涜するというようなことはない。飽くまでもサービスとしての観念に基いて行動するものであるという点を御了承願えれば、私はこの両罰主義を取るということは、重大なる警告を意味するものであるということを重ねて申上げまして、この点に対する一つの御了承を得たいと思います。
#5
○委員長(原虎一君) それでは続いて山田委員の発言をお許しいたします。
#6
○山田節男君 職業安定法の一部改正の名として出ておりまする重要なポイントの第二でありますが、四十九條の改正、それから附則、これはもう最初からこの予備審査におきまして、大臣にも再三御質問申上げて意見を述べたのでありますが、この職業安定法を第一國会において審議するに当りまして、当時の米窪労働大臣からも、職業安定法は飽くまでこれはサービス法である。即ち職業安定法の第一條にあるように、いわゆる産業に労働力を充足することを建前とし、そして又適当な能力のある者に対しては適当な職に就かしめ、いわゆる職業の安定を期するのだ、これが職業安定法の根本である、眼目であるというように謳われてもおりまするし、又米窪大臣からもそのことを重々言われたのであります。然るに今回この改正案の中での第四十九條の第二項に出ている問題は、法案の提案の理由にありまするごとく、労働ボスの排除にある。こういうことなんでありまするが、これは前にも質疑で申上げましたように、今日は労働基準法というものである。いわゆる日本の労働に関しまする封建制を排除しまして、日本の労働を國際並に保護する、又國際的なレベルに上げるための保護を與えるという目的で、そういう立派な、いわゆる労働の憲章ができているのであります。その中には御存じのように第六條に中間搾取の排除というのがありまして、この労働基準監督機関は大臣の下にこれを実行しているのであります。すでに実施されまして、いわゆる予備的期間を過ぎて本実施期間に入りまして以來、九州の一炭鉱におきましては、第六條違反が摘発されているというな工合に、労働基準法によりまする違反が、教育啓蒙の時代を過ぎて、今や摘発主義、檢察主義という段階に入つていることは、我々地方の出先労働行政機関を見まして、これを事実見たのであります。そういつたように大体の建前から言えば、中間搾取を排除したという建前、而も労働基準法によつて監督権を持つている労働基準監督官が、これをやる建前になる。又現在やつているのであります。然るに今回職業安定法が、サービス法である本質を歪曲するがごとき修正案をここに出されましたことは、私は最初からこれをどうも了解できないのであります。而もこの職業安定法によりますこの労働ボスに関する條項によりましては、ただ單に調査するに過ぎないということでありまして、安定所の労働事務官は起訴権もなければ、監督権もない、そういうものを何を以て労働基準法と職業安定法の二重の部面において、この労働ボスの排除に対してやらなければならんか、先日の労働大臣の御答弁では、この職業安定法の第四十九條の第二項によつて、これは飽くまで調査である、こう言われるのでありますが、併しすでに今日におきましては、労働基準法の実施によつて、可なり労働ボスはなくなつておると思いますが、尚今日二百万に近いものがこの労働ボスによつて支配されておる。現在残つております労働ボス制度というものは極めて質の悪いものか、或いは今日の職業安定法によります労力の充足の場合に欠陷があるためか、どちらかの理由によつてこれは存在するものと思います。若し前者の原因によつて、今尚二百万に余る労働力が支配されておるとしますと、その問題を達成するためには、むしろ労働基準法第六條による中間搾取の行政機関を強化し、又徹底することによつて、その目的を達するのではないか、又労働省としましては、そう言つたこの労働ボスの二重監督、この点においては徒らに末端行政におきまして能率をそぎ、又責任を轉嫁せしめることによりまして、初期の目的を達することは非常に不効果的であると私は想像するのであります。そういう点におきまして、私はこの法律案第四十九條の修正方につきましては、そこに実際の行政上におきまして、この法の目的とします労働ボスの排除ということに対して、幾許の効果をもたらすかということについて多大の疑問を持つておるのでありますが、この点につきまして、今や質疑の最後の段階でありますので、私は労働大臣の明快なり一つ御答弁と、又労働基準法と職業安定法第四十九條第二項の問題は、どういう関連性を以てこれを行わんとされるのか、この点についての御所見を併せて伺いたいと思います。
#7
○國務大臣(加藤勘十君) 只今山田さんからの御質問でありましたが、四十九條第二項の点と、労働基準法による監督権の問題との関連性のことでありまするが、成る程基準法に基く監督官の活動は、十分な監督権を持ち、場合によれば司法権を持つておるわけであります。御承知のように全國の各監督署の所在関係並びに監督官の数等から見まして、而も工場監督の基準法による監督範囲というものは非常に広いのでありまして、独りこの中間搾取の問題ばかりでなく非常に広いのであります。現在でも或る地方によりましては一年に監督官が足を棒のように摺り減らして廻りましても、全部に手が届かない、足が及ばない、こういう実情にあることは御承知の通りだと思いますが、こういう場合に中間搾取、成る程中間搾取の問題は基準法に関することであり、その監督官の監督権限に属することでありまするが、この点に対して、中間搾取の労働ボスの存在とは密接不可分の関係にありますから、その面から調査を進めればいいではないか、又監督をすればいいではないか、若し力が足らなければ拡充すればいいではないかと、こういう御意見でありまするが、この点に対しまして、安定所の職員は、成る程監督官の持つておるような監督権を持つておるものではありませんことは、お言葉の通り、安定法そのものは飽くまでサービスの本質を持つておるものであります。從つてこの安定所の職員の活動は、四十九條二項が定められましても、当然調査の範囲を一歩も出るものではないのでありまして、これはしばしば繰返して申しておる通りであります。調査するということは、これによつて今堀さんの御質問にもお答えしました通り、一面においては嚴肅は警告ともなり、他の一面においては、そのことによつてボスの存在をなくすることのために業者にも協力して貰う、こういう建前でおつて、若しそれでも悪質な場合には監督官と連繋を取りまして、適法の処置を講じたい、こういうのでありまして、これが設けられることによつて、安定法のサービスとしての本質を失うものでないということは、これ又今日までしばしば私がお答えした点であります。又私共も強く米窪前大臣の所懐と同じ考え方を持つております。現実の問題として、それではボスを排除するのに効果がないのではないかという御意見でありましたが、これは主として今後の問題で、御意見は御意見として尊重いたしまして、労働省としてはこれに対して最善の効果を期するように努力をいたしたいと、このように考えております。この点についての御心配を頂くことは非常に有難く、御礼を申しまするが、安定所の職員がそういう、今までは現場について調査するという権限がなかつたために、みすみすここにこういう問題があると思つても、調査に手を著けることができなかつた、そういう場合には、成る程監督官に通じてやればいいが、監督官も今申します通り、非常に手不足で、直ぐその方へ飛んで行く、こういうことが事実上できなかつたわけであります。そういう点から今度この新らしい規定によりまして、安定所の職員が現場について調査をすることができますれば、そのことは私は一面においては事態そのものに対する若し不正な、違法な行爲がある場合には、その者に対する直接の重大な警告となり、他の一面においては、そのことが監督官を活動せしめる上においても非常に便宜である。今までは監督官が行つて調べなければ分らなかつたのでありますが、そういう惡質な者に場合には、安定所の職員が調査をして行けば、直ちに監督官は監督権を発動することができるわけであります。両者相俟つて、もとより労働省の所管の事柄でありまするし、出先機関においても緊密な連繋を取つて、いずれにしましても労働者の最低の保護と、労働民主化の完成のために努力をして行きたい。このように考えております。
#8
○山田節男君 只今の大臣の御答弁によりまして、若干はこれは諒とするのでありますが、併しこの四十九條の第二項に期待しますところは、現行法の四十九條によりましても、これはすでに臨檢、檢査というのがありまして、今大臣の仰せられたような、ただ労働ボスの調査ということになりますれば、これは現行法で以て事足りるのでありまして、殊更ここに更に第二項に「前項に規定する檢査」を「前二項に規定する職権」と、こういつたような、如何にも監督権を附與するごとき字句を用い、尚且つ新らしく加えられる四十九條二項に対して、その使用者若しくは労働者に質問させることができる。ここに私は非常に現在の地方におきまする労働行政の実際を見て、安定所等の所員の実際の執務振り、それから彼らが他の労働機関、特に労働基準監督署と建物を同じくし、或いは附近にありまする場合には、常に我々聞きますのには、我々には権限がない、いわゆる監督権がないという訴えを聞いておるのであります。それがために職業紹介所には優秀な者が集らなくなる。殊に若い優秀な者は、監督権のある監督署の方へ皆吸收されてしまう。これが実情でありまして、恐らくこれは全國における職業安定所員と基準監督署員のおります所では、殊んど同一な意見を持つておるものだと、私は自信を持つて申上げることができると思うのであります。そういつたような状態でありまして、若し大臣がおつしやるように、これは單なる調査に過ぎない。又労働基準監督官に対して調査の資料を與えてやるのだ。それでこれは一つのサービスであるというふうにおつしやりますが、若し現行法でもできるこの監督、調査というものに対しまして、第二項を加えますならば、使用者側におきまして、基準監督署と職業安定所と二方面からいろいろな調査を受けるということになりまして、この煩に堪えざること、いわゆる官僚の何と申しますか、繁文辱礼と申しますか、何と申しますか、そういうものを徒らに繁くせしめる、こういうことにおいて、むしろ労働行政の重点をぼかすということにつきましては、今日の実際の状況から見て、私は必ずそういう結果になると信ずるのであります。若し大臣にして、甚だ失礼でありますが、労働者の友としての大臣が、この日本の労働の封建制の残滓を、これを木つ葉微塵に打破ろう、こういう御決意があるならば、こういつたような末端の行政機関を徒らに複雜にし、而も又それを監督を受くべき人に取つては、徒らに煩雜な官僚の事務の惱まされることをするようなことがなくて、むしろ労働基準法によりまして、この際一つの労働ボスの排撃とか何とかいうような、或いは特別な機関を設けて、労働基準監督局内におきましてでも、或る一つの特別な機関を設けて、極めて短期間に、今日二百万の労働者を支配しておるという、この労働ボスの排撃のために、何かもつと有効的なことをやられる必要があるのではないか、こういうように私は考えるのでありまして、そういう意味から只今の大臣の御説明に対しましては、余りにこれは事務的である。又実際の労働行政に対しての認識が足りないために、そういうふうにおつしやると思うのでありますが、只今その点に関しましての、二項の追加に関しまする大臣の御説明に対して、今どうしても私は納得が行かない。即ちこの修正案の價値というものにつきまして、私は多大な疑問を持つのであります。
 尚又附加えて御質問申上げますが、労働大臣としては、この憎むべき中間搾取の存生に対して、この職業安定法の新らしい規定、これと労働基準法の現行法だけを以て、この労働ボスの排撃ができると確信されるかどうか、その点を一つ明確にして頂きたいのであります。
#9
○國務大臣(加藤勘十君) 折角の山田さんの御質問でありまするが、山田さんは大きな錯覚を抱いておいでになる。それは四十九條の現在の調査、臨檢、のできるということは、四十五條によつて許可されて職業紹介事業を営んでおる者に附する臨檢、調査、査閲でありまして、そうでなく、今度新らしく設けられるような労働ボスの排除のためには、今まで何らの権限がなかつたのであります。その点は一つ山田さんの錯覚だと思いますから御訂正を願いたいと思います。それから先般來頻りに、安定所の職員は基準局監督署の職員よりも劣つておるというような御認識をお持ちのようでありまするが、これは私昨日も申しましたる通り基準局の監督署の職員が優れて、職業安定所の職員が劣つておる、こういうようなことについては私は断じて承服することはできません。基準局も監督署も安定所の職員も等しく國家の公に奉仕する公務員として、私は完全に同じ観念の下に働いておるのでありまして、各々その中には監督行政をおのずから好む人もありましようし、又中にはサービス行政を好む人もありましようし、人柄によつて多少の相違はありますが、その本質においては等しく公に奉仕するという考え方において、いずれに上下、甲乙があるという性質のものではないのでありまして、安定所の職員の中から、監督権がないから監督署の方に変るんだと、こういうような人が頻々として出て來るという、今の御意見のようでありましたけれども、これは今申しまする通り、人柄によつて、自分はどうも性格上監督行政の方が適当しておるとか、或いは自分はサービス行政に適当しておるとかということで、ずつとこの職業紹介事業の沿革を見ますれば、私は山田さんはどうか知りませんが、私は初めて東京府に社会事業協会として職業紹介事業が設けられたそもそもの最初から、この問題には関與しておりまして、日本の職業紹介事業の大先輩である豊原又男氏のごときは、職業紹介事業については諸外國の例もよく調査しておられるし、私はその豊原氏に親しく就いて職業紹介の事柄も檢討しておつたのであります。決して職業紹介については無関心ではない。この点ははつきり申上げておきます。今の点でありまするが、重ねて幾度同じ御質問を受けましても、私といたしましては、飽くまでも職業紹介事業は、その沿革から見ましても当然労働者のサービス省である。サービスの仕事である。從つて安定法はそのサービスを一層法的に根拠ずける性質のものでありまして、決してこれにこの二項が加わるということによつて、このサービス行政から監督行政に変るというような性格のものではないということを一つ御承知を願いたいと思うのであります。それから更に監督官をどうこうというお話でありましたが、現在のところにおいて、それぞれ監督署は監督署としての、今申しますように、廣汎なる監督範囲をお持つておるために、中間搾取ということも重大なる監督範囲の一つではありまするが、そこに主力を注ぐという人的な余裕を持つていないのであります。だからそういう場合には、安定所の職員が疑わしいと思う場合に実地に調査して、そしてどうしても惡質なもので、法的措置を講じなければならんという場合には、これを監督署の監督官の手によつて、それぞれの適法の措置を講ぜしめるという考えについては、現在のところ労働省にして変らない方針であります。それから更に現行の法律若しくは末端行政のやり方だけでこの惡質な、封建的な遺制である中間搾取制度が急になくなると思うかどうかとこういう御質問でありましたが、これは私は形式的の上から行けばともかくとしまして、実質的にはそうこれが急になくなつてしまうとは思えません。從つて法律は法律として一定の、同じサービスの仕事をする上におきましても、法的な仕事に根拠を與えると同時に、できるだけそういう惡習を一掃するように、実際仕事をするのは末端行政機関でありまするから、末端の機関によつて実際の仕事をやつて貰わなければなりませんし、又そうしたボスの排除のことにつきましては、もうあらゆる機会を通して、あらゆる可能な方法によつて、これを主として業者の方に滲透理解をして貰うということが重大なことになるのでありまするから、如何に供給しようとしている者があつても、その供給を受ける方においてこれは間違つておる。一日も早くなくしなければいかんという積極的な協力がなされるならば、私はこの中間搾取の内容となるボスの存在を排除することができると思いますから、この点につきましても、できるだけ業者の側にこの精神が滲透しまするように努力を拂いたいとこう思つております。
#10
○委員長(原虎一君) 労働大臣に、ちよつと議事進行についてですが、山田委員の質問は、サービス官廳たる安定所が、この改正によつて監督官廳たる性格を持ち易い。それから同時に官僚の性癖といいますか、そういう点から、そういう監督性を持つことを好むのであるから、この点について、大臣はそういうふうになることについて、どういうお考えであるかという点が聽きたいんじやないかと思いますから、もう一度ちよつと簡單に……。
#11
○國務大臣(加藤勘十君) その点につきましては、過日もお答えいたしたと思いまするが、そういう職業紹介の事業に、監督権が伴わないからどうこうというようなことのないように、労働大臣としては努力をいたしまするし、職業紹介事業の沿革に鑑みましても、私は今申しまするように、そういう仕事を好む人が何というても主として参加すると思うのであります。これは沿革を見れば明瞭たと思います。併しながら大勢の人の間でありまするから、どういう考え方を持つ人がないとも限りませんが、その点については労働省としましても、最善の注意を拂いまして、そういうことのないように努める考えであります。それから二項の加わつたことによつて、サービス行政が監督行政に変るんじやないかと、こういう御懸念でありまするが、これは今申しまする通り、直ちにこれが司法権というものを以て、そうして監督官と同樣の監督権限を持つということになれば、或いはそういう危險もないでもありませんけれども、今申しまする通り、司法警察官としての権限は何も持つていないのであります。ただ現状について調査をする、それは労働者に尋ねる、事業主にも尋ねる、更にそういう供給をしていると思われる疑わしい人についても尋ねるというだけのことでありまして、それ以上には出ない方針でありまするから、その点の疑義は多分なかろうと思いますが、尚十分に注意するつもりであります。
#12
○堀末治君 最後の点は別に質問ではございませんが、一言申上げたいと存じます。先日來の本委員会の質疑に、又それに対する大臣並びに政府御当局の御答弁で、それぞれよく御趣旨のあるところは了解いたしました。ただ私共として、いわゆる労働ボスの排撃、これは今日の日本の民主化の上から言えば最も大切なことだと思うのでございますが、併し私共は御承知の通り経営者の立場におりまして、まだ労働者が本当に目覚めない。從つて今日の労働組合もまだ発達途上、非常にまあ行き過ぎの点もあるということに対して遺憾にも感ずるのでありまするが、併し又私達経営者の側にも、相変らず在來の因習に捉われて、本当に封建的な考えということも、これ又認められないのであります。さようなことでございまするが、これは両者どこまでも相協力して日本の民主化を図り、尚又産業の興隆を図らなければならない。これはもう独り私ばかりでなく、全経営者としては念願しておるところでございまするが、ただこの労働法規は悉く新らしくできた法律でございまして、まだ一般に徹底いたしておりません。殊にこの職業安定法案のごときは、まだ施行されて六ケ月も経たない、かような状況でございまするなら、なかなかこの徹底が困難なことであろう、実はかように存ずるのであります。從いまして多少なりともこのサービス官廰に監督行政のような色彩の入ることに対しては、山田委員と同樣に、私共も同じく多少その監督を受けるというような立場におる者としては、非常に在來のいわゆる官吏の在り方に対して疑念を持つものであります。尤も新憲法ができ、公務員法が制定されて、いわゆる官吏なるものは公務員として、國民大衆の奉仕者であるということははつきり定義されておりまするが、なかなかいわゆる今の官吏諸君は、公務員として全國民に対する奉仕者であるという根本的観念に対して非常に欠けるところが多い、どうしても昔ながらの官尊民卑の風で、上から臨むという気風が今以てなかなか改まらん、恐らく民主化の最も遅れるのは、この階級ではなかろうかと、私共はこういうふうに心配いたしておるものでございます。從いましてこの四十九條の制定につきましても、どうぞ大臣が仰せられましたような、いわゆるいささかも監督行政にならない、どこどこまでもサービス官廰の一歩前進だという、こういう御方針においてあなたの御監督にある公務員諸君には、十分にその趣旨を御徹底して頂くことを特にお願い申上げたいと存じます。私らは私らで、又経営者は経営者としていろいろな連繋を以て、できるだけ早くこういうような法を適用されることのないように盡したい、かように存ずる次第でございます。この法案も最後になりましたからただ一言希望を申上げて、これで私の質疑を打切りたいと存じます。
#13
○委員長(原虎一君) 他に御質問ございませんですか、別にありませんようでございますから、質問を打切ることにいたしまして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○委員長(原虎一君) つきましては討論に入ることにいたします。御意見のある方は賛否を明かにしてお述べを願います。
#15
○姫井伊介君 討論を省略して、直ちに採決されることの動議を提出いたします。
#16
○委員長(原虎一君) 姫井委員の御動議に御賛成でございますか。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
#17
○委員長(原虎一君) それではこれより採決に入ります。職業安定法の一部を改正する法律案を、原案通り可決することに御賛成の方の御起立をお願いたします。
   〔総員起立〕
#18
○委員長(原虎一君) 全員起立、本案はこれを以て可決と決定いたしました。尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて、予め多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において本法案の内容、委員会における質疑應答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして、御承認を願うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長(原虎一君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書に、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とする方は順次御署名を願います。
   〔多数意見者署名〕
#20
○委員長(原虎一君) 御署名洩れはないと認めます。どうも有難うございました。それでは散会いたします。
   午後零時五十五分散会
 出席者は左の通り
   委員長     原  虎一君
   理事
           堀  末治君
           栗山 良夫君
   委員
           千葉  信君
           山田 節男君
           荒井 八郎君
           平岡 市三君
           植竹 春彦君
           紅露 みつ君
           奥 むめお君
           竹下 豐次君
           早川 愼一君
           姫井 伊介君
           岩間 正男君
  國務大臣
   労 働 大 臣 加藤 勘十君
  政府委員
   労働事務官
   (職業安定局
   長)      齋藤 邦吉君
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ソース: 国立国会図書館
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