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1954/12/06 第20回国会 参議院 参議院会議録情報 第020回国会 予算委員会 第4号
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1954/12/06 第20回国会 参議院

参議院会議録情報 第020回国会 予算委員会 第4号

#1
第020回国会 予算委員会 第4号
昭和二十九年十二月六日(月曜日)
   午後二時四分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員松澤兼人君及び伊能芳雄君辞
任につき、その補欠として東隆君及び
大谷贇雄君を議長において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     小林 英三君
   理事
          池田宇右衞門君
           加藤 武徳君
           河野 謙三君
           早川 愼一君
           佐多 忠隆君
           吉田 法晴君
           武藤 常介君
           木村禧八郎君
   委員
           雨森 常夫君
           泉山 三六君
           植竹 春彦君
           大谷 贇雄君
           小野 義夫君
           大矢半次郎君
           木村 守江君
           古池 信三君
           左藤 義詮君
           佐藤清一郎君
           白井  勇君
           西岡 ハル君
           安井  謙君
           吉田 萬次君
           梶原 茂嘉君
           竹下 豐次君
           館  哲二君
           田村 文吉君
           西田 隆男君
           前田  穰君
           秋山 長造君
          小笠原二三男君
           永岡 光治君
           成瀬 幡治君
           三輪 貞治君
           森崎  隆君
           東   隆君
           曾祢  益君
           相馬 助治君
           堂森 芳夫君
           松永 義雄君
           笹森 順造君
           鶴見 祐輔君
           深川タマヱ君
           千田  正君
  国務大臣
   法 務 大 臣 小原  直君
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
   文 部 大 臣 大達 茂雄君
   厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
   農 林 大 臣 保利  茂君
   通商産業大臣  愛知 揆一君
   建 設 大 臣 小澤佐重喜君
   国 務 大 臣 緒方 竹虎君
   国 務 大 臣 福永 健司君
  政府委員
   大蔵省主計局長 森永貞一郎君
   農林大臣官房長 渡部 伍良君
   通商産業大臣官
   房長      岩武 照彦君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       野津高次郎君
   常任委員会専門
   員       長谷川喜作君
   常任委員会専門
   員       正木 千冬君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十九年度一般会計予算補正
 (第1号)(内閣提出、衆議院送
 付)
○昭和二十九年度特別会計予算補正
 (特第2号)(内閣提出、衆議院送
 付)
○昭和二十九年度政府関係機関予算補
 正(機第1号)(内閣提出、衆議院
 送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小林英三君) これより委員会を開きます。
 本日は総理大臣に対する総括質問を行うことになつておつたのでありましたが、今朝吉田総理は病気のため本委員会に出席できない旨の診断書を添えて申出がございました。先ほど委員長及び理事打合会を開きまして協議いたしました結果、当委員会におきましては緒方副総理及び福永官房長官の出席を求めまして、吉田総理の欠席問題について質疑を行うことになりました。この質疑の時間は各派の申合せによりまして十分以内といたします。
#3
○小笠原二三男君 どういう御事情で本日総理大臣がこの重要な予算委員会に御出席にならない、こういう異例な措置に出られたか、お伺いします。このことは本日そういう状態になつたのか、前日来そういう状態が続いて来たのか、お伺いします。
#4
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。私が最近に総理大臣にお会いしたのは土曜日の午前中でありますが、それはその日衆議院の決算委員会が開かれる予定になつており、それから予算委員会も開かれる予定になつており、その前の日の金曜日の予算委員会におきまして、総理大臣が土曜日の午前中には出席できる。そういう想定の下に金曜日の午後の質問者が順位を変えまして、土曜日の午前にいたしておる。それが急に登院ができないということを聞きましたので、見舞かたがたいろいろな打合せに参つたのでありますが、そのときは私は寝室でお会いいたしました。それ以後会つておりませんが、今日この予算委員会に御出席できないということは、今日私が登院したあとに聞いたのでありまして、診断書に書いてある以上のことは承知しておりませんわけであります。
#5
○小笠原二三男君 それで総理が出席できないままあなたはこの予算委員会にどういうことをどういう立場で御希望なさるおつもりですか。
#6
○国務大臣(緒方竹虎君) 総理大臣が病気で止むを得ず欠席をいたしまするが、今重要な補正予算の審議中でありまして、殊に会期も迫り、今日はその総括質問がある際になつておりまするので、甚だ政府といたしましても遺憾に存じまするが、若し総理事故ありとして私がそれに代ることが認められまするならば、私が代りまして答弁の衝に当ろうかと考えております。
#7
○小笠原二三男君 最近の当委員会に対する政府の態度を考えますと、昨日も各関係大臣の出席問題で相当手厳しく緒方副総理は追求されたはずであります。然るにこの総理の出席しない、総理はかねがね出たとこ勝負ということを言つておりますが、そういう考え方で出て来ないのかどうか、これはわかりませんが、私たちが総括質問を本日まで引延して誠意ある答弁を求めようとしたことが一切水泡に帰した。このことは今日に始まつたことでなくて、吉田総理が今春来の汚職、疑獄問題が起つて以来、国会出席が常ならない。或いは六月三日の混乱国会以後における衆議院決算委員会における出席要求なり証人喚問なりを拒否し続けたその延長が、情性が今日汚職神経痛なり、国会恐怖症なりになつて、都合のよいとき病気になるという状態であることは国民今日周知の事実なんです。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて私はあえてこの際吉田総理に代つて緒方副総理にこれ以上の答弁を求めようとはいたしませんが、少くとも昨日緒方副総理はどなたかの御質問に答えて、今日の日本民族が終戦以来自立の自信を、いわゆる自信を失つておるということを言つておりましたが、誠に傾聴するにやぶさかでないけれども、自信を失う、或いは国民、世相というものが非常に険悪になり、社会道義なり社会正義なりというものが失墜し、貫かれないということは、これは吉田総理が言葉自身で言つておる民主主義政治政党政治のルール、国会運営に対するルールを乱しておるという点も大いなるこれは原因であります。こういう点について実は私はお尋ねしたかつたところなんです。自信を失つている国民にせしめたものは、終戦以来長年に亙る吉田内閣のどこかの国を頼つておる一辺倒の、長いものに巻かれろの、自立なき、出たとこ勝負の外交政策なり、或いは出たとこ勝負の自由放任経済なり、そういうところから生活不安、国際的な不安の中に国民は自信を失つておる。吉田内閣の責任であります。その点で吉田総理は政党政治が民主的に確立されることを期待しておると言うのですから、私はその点についてもはやこの吉田内閣が明日に迫つた運命でありますが故に、将来いつの日にかは総裁ともなり、総理とも或いは多数を得られる場合にはなられるであろう先輩の緒方副総理にも聞いておいて頂きたいと存ずる点を申上げます。
 先ず過去の指揮権、汚職の問題でございまするが、この指揮権発動については本院としてもそれを不可としてこれを決定し、政府の責任を追及しておるところですから、あえて申上げませんが、未だ事態の明らかになつておらない諸点は、八月十日における吉田総理の自由党支部長会議における暴言の問題であります。この点は資料を以て言うまでもなく、新聞協会或いは検察庁に対してはそれぞれ公文書、或いは小原法相を通ずる私文を以て弁解しておりますが、その弁解は、単に用語が不適切になり誤解を招いたということであつて、その趣旨については何ら取消しておらないのであります。副総理である緒方氏にちよつとこの点を聞いて頂きたいのですが、この政治資金の寄附者を明らかにし、届出をするようなことになるならば幹事長になる者もなくなり、政党政治が破壊する。信念を以て指揮権を発動したのは、この政党を守るためにあえてやつたのだということがここに書いてあります。政党としてはこれと断固闘うのは当然で、政府の指揮権発動のゆえんであるとあります。誠にこの点は言語道断であつて、緒方副総理が将来総裁になる場合にも、一党の、政党の指導者としてこういう考え方であつていいかという点は問題であります、佐藤前幹事長が政治資金規正法で起訴をせられております内容で見ますと、俣野海運社長から一千万円、或いは高木、石炭協会のかたから二千万円等々、その他たくさん出ていますが、これが政調会の参与費として隠匿せられたということがありますが、これは当時佐藤榮作氏も届出を忘れたのだと新聞発表をしておりますが、いわゆる榮作氏の橋本の自供に基く起訴状であります。従つてこういうことを幹事長にせしめて、これは如何ほど物価の値上がり、インフレ時代とは言え、一千万円、二千万円の献金のあつたことを総裁が知つているかということを追及したかつたのでありますが、仮に知らないとしましても、こういう暴言を、こういう信念を持つておる吉田総裁の下における幹事長がこういうことをしたのは、これは吉田総裁自身が教唆扇動し、共謀し、或いは総裁の意を受けてこういうことを平然とやり得ると考えるのだと我々は思惟せざるを得ないのであります。
 こういうことで社会正義が、或いは政党政治が、国民に対してこれが責任を持ち、道義の高揚になり得るかどうかという点については、常識を持つて、実は現内閣にお尋ねしたかつたところであります。而も今度の不信任案上程にからむ前後のこの吉田内閣の動き方というものについては言語道断であります。即ち自党の紛争で自党内に、内面的にはどうであろうとも、指揮権の発動その他の暴政に堪えかねて鳩山氏以下が脱党し、そうして自由党自身が政権担当の能力のないことを暴露しておるにもかかわらず、ものになるならば、緒方総理大臣になるならば辞職するとかも或いはそうでない場合には断固解散するということは、どこを押せば吉田総理が言える言葉か。と申しますのは、吉田総理は政党政治の確立を言い、今回引退するかどうかはわからんが、二度の書簡を以てこれを明らかにしている。然るに政権亡者連には政権は渡せぬ、そうして自分は自己政権を温存させようとしてあらゆる工作をしている。これ自身が、吉田氏自身も政権亡者、或いは政権のためにそれぞれの陰謀をたくましくするものであると言われても一言の弁解もあるかどうか。出たとこ勝負などということで国民の今の世論、或いは国民の政治の立場を離れて、そうして一部の吉田氏なり特権的な考え方のかたによつて日本の民主政治が自由勝手にずたずたにされることは許されない。吉田内閣は今日自党の勢力が瓦解したのでありますから政権担当の能力はないし、又引退せんとする吉田内閣によつて解散を断行するということは無謀であります。その後に、緒方副総理にすり替えて、国民の前に政権を争うということは民主政治を破壊するものであります。従つて私はもうこれ以上の、質問はこの際申上げませんが、少くとも最後を清くするためには、日本国民の全部のと申してもいい、この輿論の前に民主政治を確立するということは、一切の過去の多数の上にあぐらをかいて、そうして一方的な国会運営をし、或いは政治道義なり社会正義なりを失墜せしめたそれらを一切反省せられて、吉田内閣は速かに、明日不信任を受けられるならば退陣せられ、そして清新なる日本の民主政治を確立して、速かに日本国内の自立態勢を確立するために国民の総極力を願う、そういう謙虚な態度で進むべきことを強く要望いたしまして、私はこれ以上の質問をいたしません。
#8
○相馬助治君 私は先ず福永官房長官に対して、事実について二、三の点を承わりたいと存じます。
 吉田内閣総理大臣は神経痛、当分静養を要するという診断書を出されたのでありまするが、イソップ物語の例を引くまでもなく、たびたび嘘をついた子供が本物の狼に出会つたときに、呼べど叫べど助け人が来ずに、狼に食われたという話を思い出しますが、どうも我々からいたしますると、仮病ではないか、こういう、ふうに失礼だが考えざるを得ないのでございます。そこで私は念のために承わつておきたいのですが、診断書は作成されましたが、馬場主治医の最終的な診断はいつどこで行われたか、なおこの診断書はどこに提出されておるか、御存じならばお答えを先ず願いたいと存じます。
#9
○国務大臣(福永健司君) 馬場医師はたしか今朝九時頃に目黒の公邸に参りまして、本人を診断いたしましたる結果診断書を書き、これを秘書官が当委員会の委員長及び衆議院の議長にお届けしたと私は承知をいたしております。
#10
○相馬助治君 今朝診断して、而もその診断書が書かれたということになるならば、これは当然信ぜざるを得ません。なお今の長官の話ですが、小林委員長に出したのでなくて、参議院の議長に出してありますから、そういう筋はちやんと調査しておきなさい。
 それから一昨日の理事会におきまして、小林委員長の取計いによりまして、私どもは、二日間の診断書が出ておるが故に、四日と五日と静養されれば六日には当然出て来られる。そこで私は念を入れて質問をいたしました。併し引続いて六日もだめだということにはならないか、こう申しましたら、六日は先ず出れると思う、出るべく努力すると、こういうお話であつたのでありまするが、とうとう今日はおいでにならない。そこで私どもは異例の措置として、ここに副総理と官房長官とをお呼びしてこのようなことをお尋ねしなければならないということになつたのでございまするが、これは病気の首相を、而も老齢の首相を出て来ないという理由の下に咎め立てすることは私どもの好むところではありません。併しながらこの参議院は二日間の審議を以てあつたがたが出された予算を上げようと努力をしておるのでございます。然るに内閣総理大臣は一度もこれに出て来ない。而もこのことを考えてみるというと、吉田内閣は全く汚職と疑獄に手が汚れておる。このみずからの手を清めることもなく、今日政権の座にあるのでありまするけれども、曾つて道義の高揚を説いた内閣といたしましては、先ず例の疑獄、汚職のことにつきましても総理大臣みずから堂々と衆議院の決算委員会に出席して身の潔白を証明してこそ、初めて国民に向つて道義の高揚を説き得る資格ありと私は考えるのであります。
 このことを私が申上げる理由は、濱口雄幸氏は刺客に刺され、重態であつたにもかかわりませず、曾つて衆議院の予算審議に際して身を挺して出席され、これが原因となつて死期を早められたととうことを私どもは承知いたしております。かかる先人を持つ日本の国としても、この吉田内閣総理大臣の誠に便宜的な神経痛なるもの、そうして今日何人も信じ得られないようなたびたびの診断書の提出ということは、これは誠に国会軽視だけでなくて、これは日本の民衆を欺瞞し、これに向つて道義の高揚を説き得ない状態であると感ぜざるを得ない。そこで私はこのような事態に際して緒方総裁は、この予算審議に当つて特に出席を内閣総理大臣に求められたかどうか、そうして又たびたびの衆議院の決算委員会の不出席等に対して重要なる進言をなされたかどうか、このことを先ず承わつておきたいと思います。
#11
○国務大臣(緒方竹虎君) 今国会の初めに当りまして総理大臣は神経痛が全快したとは申せませんが、割合に元気で本会議における所信に関する演説の際も、又質問を受けて答弁に当りましたときも、それから衆議院の予算委員会の最初の部分においても、今までの、この前の国会よりは元気でよく努められたと思つておるのであります。然るところ先ほど申上げましたように、四日の日以後神経痛も悪くなり、又扁桃腺、その他咽喉部の病気が出まして、予算委員会に中途から出席ができないようになり、更にそのあとを受けました参議院の予算委員会に最初から出席ができなかつたことは、誠に私どもも参議院の各位と同じように残念に思つております。これは併し病気でありまするので、老齢でもありまするし、これに強いて出席をしてしてくれということは申しておりません。
#12
○相馬助治君 緒方さんは自由党の中では良識と聞かせられております。又私もさよう信じております。昨日からの我々の質問に対してあなたは心中の苦悶を隠すことできずに顔が第一ゆがんでおります。これは誠に御同情に堪えない。併しながら私は緒方さんはその経験からしても民衆の声を聞くことの必要を何人にもまさつて痛感していると思います。今朝ほど六時四十五分からのNHKの「私たちの言葉」というものも聞かれたかどうか知りませんが、この民衆の一人として私たちの言葉に現われたことは、肝腎要のときになると診断書を出して内閣総理大臣が国会を休んでしまう、これは到底信ぜられない、こういうことです。何にも増して恐しいことは、政治が国民より信を失うということだと思うのです。而もあなたは閣議で決定したところの副総理です。そうして伝え聞くところによりますれば、保守党のホープであり、次期総裁であり、或いは次期首相の位置につかれるかたでもございます。このかたが吉田内閣の積年の税政を一身に背負つて、そういう位置につくというようなことが予想されることに対しては御同情に堪えない。そこで私は緒方さんといたしましては、はつきりとこの吉田内閣の、特に吉田内閣総理大臣の従前の国会軽視、並びにその内容をなしまするところの決算委員会に出席をがえんじないというこれらのことを、すべてをひつくるめて副総理個人の立場からもどのようにお考えになつているか、民主主義の危機が今日迫つておると言われております。野党も反省しなくちやならない幾つかの点を持つておるでありましよう。併し特に内閣を担当しておりまするところの吉田総理としては、今日のこの政局の混乱に対しては重大な責任を持たなければならんと思います。
 外遊に際して吉田さんは何と言つているか。列国が我が国の将来に期待し得るや否やは、一にかかつて政局の安定にある、こういうふうに申されました。そうして、実は政局の不安定の種をまいて羽田を飛び立つた。留守居役のあなたも又適当な手を打つことできずして留守宅はまるで混乱に日を次いだのでございます。こういうふうに眺めて参りますると、吉田内閣の国会軽視の事実というものは、今日鋭く国民からも責められておると思います。従いまして、今般の吉田首相が当委員会に出席できないということに対して、あなた個人はどのような御見解を持つているか、率直に承わりたいと存じます。
#13
○国務大臣(緒方竹虎君) 重要なる補正予算の審議に当り、総理が出席できんことは誠に残念であると存じております。
#14
○相馬助治君 残念だけでは、どうも私どもとしてはさよう聞きおくわけには参らんのです。誠にしつこいようですけれども、あなたは閣議できまつた副、これは首相であります。そうして又、党からいたしましても次期の総裁を以て目されておるかたなのでございます。どうですか、まだ時間がありまするから、神経痛をおしても、議会に倒れるの意思を以て、今からでも遅くない、参議院に登院なさいと、あなた自身が、小林委員長に休憩を要請して、吉田さんを呼び出す御意思はございませんか。
#15
○国務大臣(緒方竹虎君) ほかのことと違いまして病気でありまするし、すでに経験のある老練な医師の診断書が出ておりまするので、私、それをおして出席しろということを申すつもりはございません。
#16
○相馬助治君 吉田首相の不出席に関しては、根本的に物の見方が、緒方さんと私とは変つていると思うので、これ以上さようなるこんにやく問答は私も好むところではございません。要するにこの神経痛なるものは、確かに痛んでいるかも知れません。併しどうしてもここに出られないという病気であるとは我々は考えられない。又天下の民衆は、例の便宜的な仮病が始つたと許しております。神経痛というのは、仮病の病名としてはこれ以上ない立派な病気だそうでありまするが、何といたしましても、私どもはここに内閣総理大臣の御出席になられない事情を今お尋ねし、その事態をとにかく確認いにしました。
 要するに内閣総理大臣が出席しましたならば、私は今日のデフレ政策というものが明らかに中小企業者にしわ寄せになり、小商人は軒並み倒産の運命に瀕し、失業者が巷に盗れており、少年や青年に対する社会悪というものはいよいよ増大をしおり、議会政治或いは政党政治に対する国民の信頼の度合というものはここ二、三年急激に降下の一途を辿つている。こういうような責任は吉田首相、あなたの責任でないか。このことを私は国民に代つて質したいと考えたのでございまするけれども、緒方さんにこれ以上このことをお尋ねすることは、もはやすでに意味がない。命旦夕に迫つた、たそがれ内閣に何をか言わんということで、私か党はこれを以て質問を打切ります。
#17
○鶴見祐輔君 私は今日総理大臣が御出席にならないという点に関しましては、病気であると副総理及び官房長官がおつしやるのでありますから、この島についてこれ以上お尋ねいたしまししも無益でありますからお尋ねをいたしません。ただ残る問題が一つある。それは只今相馬君も例を引かれましたように、濱口雄幸氏は瀕死の重体を以て議会に出られました。大正の初めに大隈重信侯は炎熱焼くがごとき日に、あの隻脚を引きずつて病をおして連日議会に出ておられました。それが国民に与えた影響は、議会政治を非常に尊重する真剣な政治家の態度であるといことでありました。今御病気のことを技術的に私は伺うのではござりませんけれども、たびたび総理大臣が国家最高機関たる議会に、而も一番大切な予算委員会に御出席でないという事実が国民に与えます影響は、総理大臣が議会をお怠けになつた、こういうことであります。これはどのように弁解をいたしても拭うことはできません。それは私は実に日本の議会政治のために遺憾なことだと存じますが、緒方副総理は、私は個人として永い間その人となりを尊敬を申上げておるかたであります。従つて公人としては、診断書が出ているから出られない、こうおつしやるほかはないでありましよう。伺いません。ただこの印象を国民に与えたことは非常に遺憾であるとはお考えになりませんか、伺つておきます。
#18
○国務大臣(緒方竹虎君) 総理大臣の不出席が病気のためでありますることは、如何にも遺憾でありまするが、病気のためとはいえ、丁度重要な補正予算の審議の際に当りまして、そのために国会を怠けておるというような印象を若し与えたといたしますならば、鶴見委員と共に誠に遺憾に存ずる次第でございます。
#19
○鶴見祐輔君 そこで私は副総理としては、又内閣としては、そういう印象を払拭するように最善の力を尽して頂きたいと思うのであります。
 その次に、私は緒方副総理にお伺いいたしたいのでありますが、そのような印象を国民に与えたままで、残念ながら予算委員会が終了をいたし、参議院の本会議が予算に関しては終了するということになりますと、第二にこういう問題が起つて来ると思うのであります。それは何であるかというと、憲法の規定するところによれば、予算に関しては政府は、露骨に申せば痛痒をお感じにならないのである。昔の貴族院のように上院を通過しなければ予算が成立しないというものではない。従つて政治の便宜からいえば参議院には出なくもよろしいということが想像される。そういたしますと、私は政治の非常に大事なことは、政治は目的を達成すればよろしいということではない。日本の国が立つて参りました長い間の武士道が続いたのは、武士に作法があつたからであります。後からは斬らなかつた、向うから斬る、その作法があつたから武士道が続いたので、立憲政治の続いておる国の共通の特色は、手続即ち作法が尊重されておるということであります。即ちたとえ予算は総理大臣が出席しなくも成立をいたしましても、目的を達しただけでは本当の政治にはなりません。殊に今日のように国内の情勢は急迫し、日本の世界的な位置が低下しておるときに、国民全体が心を合せて政治に協力するというような態勢にならなければ、技術的に予算が上下両院を通過しただけでは、本当に予算に魂が入つたものとは申せません。従つて只今申上げたように、国民が総理大臣が予算委員会を怠けたのは、出なくも予算は成立するんだと、目的は手段を浄化するというような気持であつたというような印象を受ければ、政治的道徳の根本は覆ります。緒方さんは良心的な政治家である。少くとも私はそう思つておる。だからこの一事は日本の戦後の立憲史のために遺憾なことだと思います。殊に私は緒方さんに伺いたいのは、なぜ二院制がありますか、若し目的を達するためにならば一院制だけで結構である。二院制の存在する理由は、日本のような八千八百万人もある大国におきましては、人心が激動をして一時の感情のために国家のためにならないような法案及び予算が通過することは危険である。であるから政争渦外に立つような客観的な立場に立つ人々が冷静にもう一遍これを検討する、即ち世界における労働争議における冷却期間のようなものを置かなければ危ないという立場から、権限は少いが参議院というものはできておると私は思う。言い換えれば、衆議院は闘争の場でありますが、参議院はその理想からいえば、国民の知性を代表して冷静に、客観的に、科学的にこれを調査し、検討し、批判すべき場所である。でありますから、たとえ参議院に予算の最終的決定権がなくても、国民の面前において検討すべきものは十分に検討して、国民の納得の行つた法律と予算が通過したのでなければ、国民信念としての政治は行われません。その意味において私は今日こういう重大なときに御病気ではありましようけれども、国民に総理大臣が参議院を軽視したという印象を与えただけでも、日本に対する不詳事である。それは言葉を強くして申せば、一院制と異るところはない。その点を私は非常に遺憾に存じますが、緒方副総理は如何ともなされないのか、又これに対する国民の感じを払拭するための適当なる手段を取るだけの御決心はないか、これを伺つておきたいと存じます。現に私は衆議院においても、日本の新聞でも、雑誌でも見逃している二つの点について総理大臣にお伺をしたいと思つて質問をいたすつもりでありました。けれど、これは総理大臣個人にお伺いしなけれなんにもならんことであるから、今日は御質問いたしません。これが誰にも公の席上において国政の上で論議されずに終るということは、私個人としては非常に遺憾であります。その意味において私はこの議会において二院制の危険のあるような印象を与えたということについては、政府の総理大臣に次ぐところの緒方さんが具体にどういう方法でこれを取扱おうとしているか、日本の二院制を守るつもりか、どうやつて日本の政治の良心を支える方法をお取りになるか、お伺いしておきたい。
#20
○国務大臣(緒方竹虎君) 初めに御了解を得ておきたいと思いますのは、総理大臣はつね日頃いろいろな場合に、私、話をする機会がありまするが、参議院を軽視するというような考えは毛頭持つておりません。これは私鶴見さんの前にはつきりと申上げ得るのであります。私は終戦後、今の日本国憲法が制定される当時おりませなかつたので、直接事情をよく知りませんけれども、最初この憲法の草案が示されたとき、これは今は公然の秘密になつておりますから、国会の中で申上げてもいいと思いますが、占領軍によつて示されたときに、その草案は一院制になつておつた。それをこれはやはり二院制でなくてはならないという発意をされた少なくとも有力な一人は吉田総理大臣と承知をいたしております。そういう意味で今お述べになりました参議院が二院制の、各国の二院制におきまするチエツク・アンド・バランスの作用をする、又経験と知識をこのうちに持つて、その経験と知識を二院を通して国民に訴える、政府の政治の方向を誤らないようにして行く一つの貴重なる機能を持つているところであるということは、総理大臣において十分に承知しているところであると考えます。従いまして吉田総理大臣が参議院を軽視して怠けるというようなことは少くとも私の想像いたしまする限りあり得ないことなのでございます。今回も予算委員会に出席しないのは参議院だけではないのでありまして、衆議院の予算委員会の重要なる質疑応答、総括質問の際には、やはり病気のために出席ができなかつた。これは誠に遺憾千万なことであつた。その遺憾に思います点においては、私は鶴見さんと少しも変らないのでございまするけれども、老齢であり病気のためであるために、これは止むを得なかつたのではなかろうかと考えております。この事態、国民に少しでも参議院を、第二院を軽視したかのような印象を与えたではないかと言われるこの事態を、如何に国民の印象から払拭するかということにつきましては、私今申しておることも国民に向つての説明のつもりでありますし、更に将来に向つて政府といたしまして、又今後衝に当る政治家としては十分にこの二院制のよつて来たるゆえんを認識いたしまして、民主政治、国会政治の完成に向つてできるだけの努力をして行くこと、それ以外にないと考えます。
#21
○鶴見祐輔君 時間がございませんから、これで打切ります。
#22
○木村禧八郎君 緒方副総理に御質問したいのですが、只今吉田首相は参議院を軽視するという考えは毛頭ないのであるという御答弁がございましたが、勿論総理はそういうお考えはないと我々も思いますし、ないことを我々は希望するわけであります。併しながら、副総理も御承知のように、今日まで参議院では何回となく総理の参議院軽視の問題が話題になつたわけであります。そこでこれは総理は主観的にはそういう軽視の考えはないかも知れませんが、客観的にはそういう事実としてそれが現われて来ているわけなんです。従つて、この点については十分何がそういうふうにさせるのかということを検討される必要があると思うのです。意識無意識のうちに、やはり只今鶴見氏が御指摘になりましたように、この予算については参議院は絶対の権限がないわけです。これは私は憲法にやはり問題があると思うのです。衆議院が通つて三十日たてば、これは発効するというこういう制度ですね。基本にそういうものがあつて、これが意識、無意識のうちに一応予算が衆議院を通つてしまえば、ほつとする。そのためにいつでも参議院の予算審議に当りましては、総理ばかりではありません、各閣僚の御出席が非常に悪いのです。この点は党派とかそういうものの立場からではなく、どうしても私は財政の民主化という、そういう観点から、ここに一つの制度的にも確かに欠陥があると思うのです。そういう点からも主観的には軽視したくないとは私えても、結果としてそういうようになる。こういう点やはり副総理は制度的には欠陥があるようにお考えではないかどうか。これについてやはり将来検討される必要があるのじやないかと思うのですが……。
#23
○国務大臣(緒方竹虎君) 二院制の国会におきまして予算に対する権限に多少の差がある。これは国会の長い歴史の間にだんだんこういう形をとるように至つた理由があつたのであると考えます。一院と二院との間に予算問題に関して相譲ることのできないような衝突が起つた場合を考慮いたしまして、或る種の制約を第二院のほうに加えておるのは、大体今日列国の憲法、同様であるのじやないかと存じております。私は第二院の性格はそういうところにあるのではなくて、むしろ現実の活動には或いは堪えないが、又はすでに社会的の活動を終つた、而もそれだけにその知識と経験において極めて豊富な人が、その知識と経験による発言を活溌に二院においてして、そうして政府或いはその政府の基盤をなしておりまする衆議院の或る場合に反省を促す。又国会を通して国民の輿論に訴え、それによつて全体の政府の行動、施策を誤まらしめないようにして行くというところにあるのじやないかと考えます。そういう意味から、予算審議の権限に多少の違いがあるのは、これはむしろ第二院というものの性格から来る当然のところではないか、かように私は考えております。
#24
○木村禧八郎君 それから次にお伺いしたいのは、主観的に参議院を軽視する考えはなくても、もう一つその客観的に軽視する結果になるということは、今の予算に関する制度的な問題が確かにあつて、意識無意識のうちに私は出て来ると思うのですが、もう一つの点と二つあるのじやないかと思うのです。それは、もう一つは今日本は独立しているけれども、アメリカからいろいろな政策を押しつけられる。我々の言葉で言えば押しつけられる。そうしてその政策を国内で実行する場合に、あたかも独立した日本の政府がこの政策をやるのであるということを、国民に納得させる場合に、嘘を言わなきやならない。例えば再軍備の場合には戦力なき軍隊であるとか、これは憲法に違反しないとか、いろいろ嘘を言わなきやならない。そういう非常に嘘を言わなきやならない立場にあるので、国会に出て批判に堪えない。批判の苦痛に堪えないから、成るべく国会に出ていろいろな問題に答弁したくない。そういう点が私はやはり意識無意識のうちにあるのではないか。第二には汚職の問題です。国会に出て来れば、決算委員会なんかに出てこの点について追求される。それが苦痛である。そういうようなところから国会に何となく出たくない。やはり批判に堪えない。私は批判に堪えないというような政治は、これは私は決して健全な政治じやないと思うのです。私はそういうところにあると思います。この点如何ですか。
#25
○国務大臣(緒方竹虎君) ちよつとお伺いしますが、それは吉田総理がそう考えておるのじやないかということですか。
#26
○木村禧八郎君 そうなんです。
#27
○国務大臣(緒方竹虎君) それは私聞いてみたこともありませんが、そうじやないと思います。
#28
○木村禧八郎君 総理が出席しないで、この重要な予算審議を終り、討論採決に入らなきやならないのですが、こういうことは前例がないと思うのです。一回も総理に質問をしないで、そうしてこの予算の討論採決に入る。先ほど緒方副総理は、まあ総理が不出席であるから、特に病気のために不出席であるから、自分が総理に代つて答弁する、了解を得られれば緒方副総理が答弁に当つて済ませたいというお話でございました。副総理に御質問して、それで満足し得る場合が勿論あると思うのですが、併し、総理は今度の予算を提出するに当りまして、本会議において政府の所信を述べておられる。それで本会議では質問し、答弁しつ放しであつて、総理の外遊を中心とするあの所信に対する質問を深めるのは、この予算委員会よりほかないわけなんです。又本日よりほかないわけなんです。そこで、総理の外遊に関する所信のうちで、私は一番特に重要な点があると思うのです。それは総理自身にお伺いしなければ、副総班にお尋ねしても、只今の質問のように副総理にはお答えできないことだと思います。而もその総理に質さなければならん一番重大な点は、今後の日本の財政経済に関する非常に基本的な問題を含んでおると思います。即ち総理の外遊によつて得られたいろんなお考え、それから国会に報告されたことは、又国会ばかりでなく自由党が民主党に申入れました書簡、その他を見ましても、これを要約すれば、総理はいわゆる共産主義に対抗する反共産政策に関して信念を深めて来たということが私は結論だと思うのです。機会あるごとにこれを述べておられます。そうして又ワシントンにおいても自分はこの共産主義に対抗するために経済的にアジア開発をする必要があるのだということをワシントンで力説したと、それでアメリカから非常に好感を持たれた、又そういうことがだんだん具体化しているや見えて喜ばしいということを述べておられるのです。この点が非常に重要で、今後の日本の財政経済政策が総理のこの外遊によつて深められた反共政策、共産主義に対するこの反対態度を政治的に経済的にこれを強化して行くという、そういう形で今後の財政経済政策が進められて行くことになると、世界の情勢は平和的な方向にどんどん進んでおり、私は今後の日本の財政経済政策の一番の基本は国際情勢の変化を日本の財政経済政策に如何にこれを反映するかということこそが一番重要だと思う、この国際的要素が一番重要だ、而もそのうち今までのアメリカの要請する再軍備のために、日本は負担が絶えない、MSA、デフレ政策もそのためです、これをここで平和政策、平和経済に転換しなければならない、そういう重大な時期に来ているのに、総理は逆に、外遊してその結果として反共的な信念を深めて来た、こういうことになると、これは重大な問題でありまするので、どうしてもこの点については総理にじかにその信念を伺い、そうして我々はこれに反対であつたならば討論し、そしてこの批判をし、そうして十分この事態を明らかにしなければならん。反対なら反対、賛成なら賛成のその立場をもつと国会でこれを明らかにして国民の批判が十分にできるような形でそれをしなければならんと思うのですが、そういう機会を得ない、そうして得ないまま総理のそういう考え、一番重要な点に対する質問もできないまま討論採決に入る、如何に御病気であるとはいえ、そういう事態になつたことについて副総理はどういうふうにお考えになりますか。我々は一番重要な問題について総理に質問できないまま討論採決に入る、こういう事態をどうお考えになりますか、この点をお伺いしておきたいと思います。
#29
○国務大臣(緒方竹虎君) 私も総理が五十三日の間外遊をして参つて、今お述べになりました各国を通しての共産党の問題に対する考え方、その他日本の将来、日本の経済自立の将来について一つのはつきりした考えを持つて帰つたと思います。そのことについて国会に自分の印象なり考えを披瀝しまして、それに十分の批判を求め、又意見を交換するということは、日本の将来のため、経済自立の今後のやり方につきまして、意見の違いは別といたしまして、とにかく非常な利益があると考えます。そういう点から総理が予算委員会を通して参議院の審議に参加することができなかつたということは、先ほど来申しましたように甚だ残念でございまするが、ただ理由が病気でありまするので如何ともいたし方ない、そういう点で先刻来御了解を求めておるような次第であります。折角外国に旅行をして来ながらその意見を質すことができないのは甚だ残念だということについては全く同感であります。
#30
○木村禧八郎君 時間がありませんから終りますが、総理が外国から帰つて来られて、国民に愛国心を説かれておるのです。而もこのお病気は客観的に見て誰が見てもこれは止むを得ない病気とは診断できないのです。その総理の主治医のかたは診断されましよう。併し国会議員の診断、国民の診断はこれは大多数が仮病と診断しておると思うのです。これはまあ客観的に見ますれば確かにそうだと思うのです。ですから愛国心なんかを説く資格は全くないと思うのです。これ以上ここで副総理に質疑するわけに参りません。総理が不出席のため遂にこの参議院の予算委員会はこれまで曾て見ない、前例のない変則な、非常に変則な予算の審議の形になつて終ることに対して、非常に遺憾に私は考えます。これを以て私の質問を終ります。
#31
○委員長(小林英三君) 以上を以ちまして総理の出席問題に関しまする質疑を終ります。
 次に大谷贇雄君から質疑の通告が出ておりますから発言を許します。
#32
○大谷贇雄君 只今鶴見祐輔議員から武士道の御講義を頂きまして、日本の武士道の華は礼儀を守ることだ、作法を重んずることであるというお言葉で、私は非常に感銘をいたしました。吉田総理が友好七カ国と親善、提携の旅行をしたいということで出発される前後から、国民の一部には吉田総理に対する非難攻撃を加え、帰つて来られてもおみやげをもらつて来たかなどと誠に乞食根性のような発言があり、又老躯を提げて五十数日各国と親善の旅を続けられたその労苦に一言のねぎらいの言葉すら、感謝の言葉すら出さず、罵詈讒謗を加えるというような様子を見まして、私は先ほどの鶴見さんのお話の武士道の華はどこへ行つたかと遺憾に堪えないのでございます。今日心ある国民は老首相が五十数日旅行をしてそうして親善の握手をして来られたということに関しましては、良識のある人々は感謝をし、心からねぎろうておる心持ちで一ぱいであると私は存ずるのであります。今日はこの予算委員会に病気のために御出席を頂けなかつたことは誠に遺憾でございますが、私どもは過日の吉田書簡に対してもこれを素直に受取らずして、邪推をして、何か策謀があるというようなことを申す人もあつて、私どもは人間がかくのごとき邪推の心を持つたり猜疑心を持つたりすることは誠に遺憾千万なことだと思つておつたのでございますが、今日は私も吉田総理に外遊の御成果、又そのいろいろな御見聞を承わりたいと思い、又今回の補正予算につきましても御質疑を申上げたいと存じておりましたが、その点甚だ遺憾でありますが、御病気である以上はこれは止むを得んことでございます。
 そこで私は副総理初め各省の責任者に三、四の点をお尋ねを申上げたいと存ずるのでございます。
 その第一は我が国経済自立の問題でございます。過般吉田首相の御演説の中にも、又大蔵大臣の御演説の中にも、昨年来非常に心配をいたしておりました国際収支の帳尻が、一億ドルも二億ドルも赤字を出しておつた、今年は何とかして一億ドルに食いとめたい、こういうことでございましたのが、本年三、四月頃から非常な好調子を示して参りまして、過日のお話を承わりまするというと、赤字どころかだんだん黒字が出て来ておる。今年の終りには一億七、八千万ドルの黒字が出るというように承わりまして、日本経済の前途が非常に明るい見通しに立つておることを私どもは心から喜ぶと共に、このデフレ政策が物価を引下げることに大いに役立つておることを喜んでおる一人でございます。併しながらこうした成果をだんだん上げておりますることは、この貿易の市場がだんだん拡大を今年初頭からいたされて参り、殊に日英協定の結果が非常にそのことに有利なる展開をいたしたということ、更に又特殊貿易制度がこれにあずかつて非常に力あるということを見逃すことができんのでございます。その上に金融引締の結果が物価の値下りを見たというこの三点が、こうした結果を生み出したことと存するのでございます。併しながら大蔵大臣が最後に日本の今日の経済の状況についての感想を述べられて、前途なかなか容易ならざるものがある、こういうお話でございました。私どももこの特殊貿易の制度というような現在の行き方、出血補償リンクのやり方というものは、必ずこれは行詰る時がある、現にこれは国際通貨基金のほうにおきましても、これに対しては非常な忠告をしておるような状態であります。更に又この非常な安く品物を売出して、殆んどその企業が成立たんというような状態でやつておるというようなことでありますれば、結局これは外貨を日本へ入れるということも、非常な困難な状態になつて来ると思うのでございますが、これらの点について恐らく大蔵大臣は前途極めて楽観を許さんという御言葉であつたと思うのですが、それらの点についての御見解、又今後のどういう対策、処置をなさるかということをこの際承わつておきいたと思うのであります。
#33
○国務大臣(小笠原三九郎君) 大谷議員のお話のごとくに、昨秋以来の政府の一連の政策は、漸次効果を見ております。国際収支等の改善を見ておることは誠に御同慶に堪えません。併し丁度御指摘になつたような各種の事情も含まれておりまするので、従つて今後の対策といたしましては、これは現在のような価格で行けば輸入は一面で阻止される。輸入を大体見ますると、昨年の同期に比べれば、八分も輸入は減つております。これは価格の関係でそうなります。一方輸出のほうは大体二割八分程度同期に比べれば殖えておるのでありまするが、そういうような状況にありますることは、一に価格のやはり低落ということに大きな原因を持つておるのであります。併しこの価格が安くて品物がこの値段ならば、国際競争力を持つて、十分出て参るということがよくわかるのでありますが、併しこの値段のうちに、仰せになつたような、或いはリンク制に則る分がありましたり、特殊貿易の分がありましたり、いわゆる出血輸出があつたり、金融引締による分がありまする等、これはそういう点があることも事実でございまするので、又丁度お話になつたようなIMF等からもどうもリンク制によるものはこれは一種の二重価格ではないかというようなところから、これは今後いたさないということをアメリカのほうでも申しておるような事情等もありますので、そこで私どもはこれならば、この状況であるならば、日本の輸出貿易というものが長くよく伸びて行くということがわかりましたから、この出血価格をどうして維持することができるであろうか、言い換えますと、どうして日本のコストを切下げることができるか、而して日本の生産性を向上させて、これが海外と競争することができるようになるか、こういう点を主たる題目といたしまして、この三十年度を地固めの年として是非さように持つて行きたい。即ち言葉を換えて言いますると、財政金融引締め等の一連の政策につきましては、今までと同様にこれを行いまするほか、丁度今年の貿易状況から見ますると、スターリング・工ーリアに対する貿易関係は非常によくなつておりますので、これらについてはガット加入その他の問題もいろいろやつて行つて、こういう方面への貿易額を、何と申しますか、経済外交を強力に推進すると申しますか、そういうことでやつて参りたい。又多少アメリカ側のことについては、昨今御承知のごとくに、これは私ども本年行つた節もいろいろ頼んだのでありますが、関税の引下げ等につきましても、向うで相当考慮してくれておりますので、こういつたいわゆる経済外交を一つ強力に展開して参りたい。国内では生産性の向上を図ること、これによりまして例えば外資の導入、それに伴う円資金の供給等で、例えば機械を近代化する或いは経営を合理化する、こういうことをやりたい。こういうふうな各種の施策を進めて行くことによつて、一つだけでもいけませんので、諸般の政策を総合的に行なうことによつて、今の日本の貿易をこのままの状況でずつと続けて行つて、いわゆる正常貿易だけで国際収支の均衡を図るように持つて参りたいというのが私どもの念願しておるところでございます。
#34
○大谷贇雄君 そこで先般吉田首相の御演説の中にもイギリスに対しても又他の国々に対しても通商航海条約の成立を図ることについて強く要望して来た、こういうお話で、ございましたが、これは戦前全部の国が我が国と通商航海条約を結んでおつたにもかかわりませず、今日これが復活をいたしておりますのは僅かに十一カ国と聞き及んでおります。新しく結ばれたものが二国と聞いておりますが、これらの点に関しまして、どういうような交渉がいたされており、どういうような御折衝をしておられるかを外務大臣から承わりたいと思います。
#35
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今通商航海条約の適用がある国は御指摘のように十一カ国であります。併し今交渉中のものはチリー、ペルー、ドミニカ、スペイン、オーストラリア、ノールウエー、セイロン、イタリア、ユーゴスロビアなど各国があるわけでございます。かなり早い速度でこの交渉は進行中でございますので、更に相当の国と通商航海条約が成立になると考えております。
 それからガット加入の問題に関連いたしまして、通商条約がまだできておりません国に対しましても、ガット加入で関税交渉等が行われまする機会に、更に通商航海条約締結にまで話を進めて行こうということで、今ジユネーヴでやつておりますが、これは大体関税交渉が始まるのは二月でありますが、四月頃までには大体終了する見込であります。その際は更に多くの国との間に通商航海条約の話がつくものと期待いたしております。
#36
○大谷贇雄君 先ほど大蔵大臣は輸入が八%であるというお話でありましたが、この黒字がだんだん出て参りまして、誠に喜ばしい状態になつて来ますると、大変実業界方面では気が早くて、来年はデフレ政策をやめたらよかろう、或いは又変えるのではなかろうか、或いは又もつと、もう外貨の割当などやめて輸入をどんどんやつたらよかろうというような声も一部にあるようでありますが、それについての御所信を承わりたい。
#37
○国務大臣(小笠原三九郎君) まだ日本の貿易というものも無条件に楽観できないことはよく御承知の通りでございます。従いまして私どももこの三十年はいわゆる地固めの年で、この状況が続いて行くということにはつきりと目途が立きまして、そうして経済外交等が強力に展開されて、この途がつきますれば、三十一年度からは、これは私はいわゆる拡大均衡に持つて参りたいと存じます。三十一年、そのときに拡大均衡に持つて参りましても、輸入をいたすということは原材料の輸入をして、国内で製造しても、そのときは国際競争力を持つた品物ができますので、今度は正常貿易額は十分伸長を図り得ます。それまではどうも私は安易な考え方につきたくない、折角今までやつたものを水泡に帰すことはやりたくない、かように考えております。従つて一時磨擦が出たり相剋することは、これは成るべく避けたいと思いますので、中小企業者等に対する分につきましての例えば金融措置、税制措置等というものも、やはり大きなことではなくして、やり得るものは十分考えて行きたいと思つております。できるだけ磨擦相剋を少くしたいことは当然でありますけれども全体の基調としては飽くまでも今までやつておる線を崩してはならない、これを堅持して参る所存でありまして、そうしてこれを一つ十分通常貿易でやつて参れるようなところに持つて参りたいと考えておる次第であります。
#38
○大谷贇雄君 大蔵大臣の御答弁は全く同感でございます。そこで只今後段にお話がございました磨擦を避けて行かなければならん、今日のデフレ政策のためにその犠性となつておりまする人々が中小企業の方面には不渡手形等の問題で非常に深刻な状況でございますが、それについてはそれを避けるようにしなければならない、このことも同感でありますが、どういうような手をそれにお打ちになりつつあるか、又お打ちになろうとしておるか、この際承わつておきたい。
#39
○国務大臣(小笠原三九郎君) 中小企業につきましては、主としてこれを見ますると、二つの面だと思うのであります。一つの面は金融の面でありまして、一つの面は租税の面であると存じます。ところが税のほうにつきましてはいろいろもう少額所得者に対する分とか或いは各種の減免措置をとつており、昨今では手形の不渡分を持つているとかいうようなものに対する特別の措置をいたしましたり、それから納税の実情等に応じては今は利息を取らないで支払時期を延期することを税務署で承諾する等、実際上相当の取扱をいたしているのでありますが、ただ遺憾ながら只今の国の状況では、減税するというところはに参りかねている実情であります。
 金融の面につきましては、年末金融については過日申上げました通り、この政府のほうの預託いたしておりまする十一月分十二月分と期限がそれぞれ到来する分が十六億数千万円ありますが、これを延期することはもとより、更に中小企業金融公庫とか或いは国民金融公庫、これらに対しては第四四半期分の繰上使用をしてもいいとか、或いは商工中金に対しては日本銀行のほうから特別な枠で資金を供給する、まあいろいろやつておりますが、これも十分とは申されません。ただ大谷さんも御承知のごとくに、昨年出発いたしました中小企業金融公庫でありますが、これは従来なかつたものでありますが、これも今度は百数十億というような工合に相当働いております。併しこれでも不十分でありますので、各中小企業に対する資金源については、今後とも十分考えたいとは思つております。ただ一番中小企業金融に直接の大きい部分はどこにあるかというと、何と言つても市中銀行でありますが、市中銀行と申しまするのは都市における分ばかりではありません、これは地方における銀行もそうであります。この貸出額が一番大きいので、これについてはかねてより私どものほうでいろいろ話をいたしておりまして、それで十一月十三日附だとたしか記憶いたしておりますが、銀行業者と一度申合せいたしまして、中小企業金融の貸出に大いに努めようという申合せもいたしておりますし、今後ともこの点については今までよりよく行けるのじやないかと思います。
 それと大谷さんも御記憶だと思いますが、中小企業金融公庫の貸出については千分の五、千分の五だけは税金を取らない、実はまあ蓄え……、何と言いますかリザーヴを置くことができるように銀行でなつているのであります。従いまして千分の五は一つの保険料の作用をいたすのでありまして、これは相当金を貸出すのには大きな働きをするであろう。併し法律は先回漸く御協賛を願つたばかりでありますから、この頃になつてだんだんこれが効果が出て来るのじやないかと思います。なお併し、中小企業には私はこうやるといいのだという今速効薬を持合せておりません。できるだけのものについては皆聞いておりますが、併しなおこれらにつきましてはいろいろな御意見等があれば実行できるものは実行いたしたいと、かように考えている次第であります。
#40
○大谷贇雄君 そこで三十年度の状況によつて将来これを拡大均衡に持つて行きたい、こういうことでありまして、全くその点私も非常に賛意を表する次第であります。
 ところで、この東京の状況を見まするというと、もう全く外車の氾濫でございまして、昨日も新聞を見ますると、もうアメリカの国民の持つている自動車数に匹敵するくらい東京には自動車があるのだということでありますが、それが殆んど外車であります。これらにつきましては従来外貨の割当がだんだん削減をされておると思うのでありまするが、あの氾濫状況は一体どういうことであるかという疑いを持つておりますが、それについてお聞かせ願いたいことと、同時にフオルクス・ワーゲンにいたしましても或いはルノーにいたしましても、優秀な外車がどんどん輸入をされておりますが、我が日本の国産車は、無論これは占領軍がとめておつて製造開始以来僅かに三年ということでありますから、そんなに早く立派なものができる道理はございませんが、併し輸出を以て日本の貿易を振興して、その経済の自立に大なる寄与をしなければならん現状におきましては、これはもう自動車ばかりではございません、ミシンにいたしましてもそのほかの雑貨にいたしましても同様でございますが、これらの国産品に対しまする通産当局の御態度、奨励指導の御態度はどんなものであるかということをお聞かせ頂きたいと思います。
#41
○国務大臣(愛知揆一君) 自動車につきましては、先ず第一に外貨の割当の問題がございますが、これは特に二十九年度の外貨予算の編成に際しましては非常に意を用いた点でございまして、結論から申しますと、上半期におきましては殆んど外国車の完成車は入れずに推移いたしております。で、下半期を通じて見ましても、極く僅かの特殊の用途に向けるものだけが許可の対象になるはずでございます。
 それから国内産の問題でございますが、経過的には純粋の国産車の奨励は勿論でありますが、外国会社と提携いたしまして、常識的に申しますと、只今、例えば、ルノーその他のものがございますが、大体外国会社と提携して三割程度のところまでは日本の製品等でできるようになつておりますが、この程度をできるだけ早く高めること、終局においては一〇〇%国内産の原料、素材等によつて造ることを理想とするということで、奨励策を講じておるようなわけでございますが、これらの点について運輸省との関係もいろいろあるわけでございますが、国内産の、例えば小型の自動車の製造等については、適正な規模において所要の、例えば資金計画等について、応援、援助を与える、或いは場合によりましては、税の面等におきましてもいろいろの考慮がめぐらされると思うのでありますが、これらの点について今後関係各省との間で、できるだけ協力いたしまして成るべく早い時期に国産車が割安でいいものができるような方向に向つて参りたいと思つております。
#42
○大谷贇雄君 只今国産自動車のお話が主でございましたが、自動車のみならず貿易振興の立場におきまして、この国際収支の黒字になつているこの際、私は勝つて兜の緒を締めなければならんと存じますので、徹底的に国産品の技術を高める、研究力を増して行く。従つてよき製品を安く造るということに、これは日本全体として最善の努力を私はいたさんければならんと思いますので、是非ともそのことをお願いをいたしたいと思います。西ドイツのごときは、世界第一の品物を、世界第一に安く造つて、世界のあらゆる市場に出すのだという非常な意気込を持つておりますることは大臣も御承知の通りでありまして、どうかそのような御指導をお願いをいたしたいと存じます。
 次に日本の商社がヨーロツパ、アメリカを初め各地に参つておりまして、それらが共食いをいたしておる。片方が普通の値段でやればこちらはすぐ値を落して行くとか、もう秘術を尽してその商いの戦術を展開をいたしておるということで、結局これは支那事変当時、満洲へ一旗組がたくさん行つて、結局日本人の声価を落し、日本の商品の声価を落したと同じ結果になりまして、私はその意味からも、商社の統制ということをどうしてもしなければならん。又それに従う貿易人の私は素質を高めて行かなければ、折角この途が開けておりますのに、日本人同志の争いやら或いはそういうやり方によつて、日本の品物が出て行かないで、非常な障害になりつつあるということを現実に承わつておるのでありますが、それらに対しまして、どういう御処置をしておいでになりますか承わりたい。
#43
○国務大臣(愛知揆一君) 全く御尤もな御意見でございまして、先ほど来いわゆる良質、廉価という御趣旨を承わりまして非常に御尤もと思いまして、かねがね私どももその方向に力を用いているつもりでございますが、半面において又只今御指摘の通り、不必要な争いが非常な弊害をなしていることも事実でございます。例えば輸出価格にいたしましても、物によりましては現在価格の輸出で十分販路が拡張できるような商品が相当ございます。その一例として例えば最近ミシンの関係でチエツク・プライスを設ける、且つ、その価格の何と申しますか、相場以下の濫売をやつておるというような事実も見受けられるので、これらに対しましては通産省といたしましても或いは指導により或いは法規上の方法によつて、さようなことのないように努めておるわけでございますが、今後におきましてもやはり指導上、行政上の問題とし、或いはその他の方法によりまして、商社の、一口に言つて強化、適正な競争ということに、やはり大いに意を用いなければならないと考えております。
#44
○大谷贇雄君 私はまだ時間が五十分と思つておつたが、先ほどの理事会で二十分にきまつたそうでございますので、時間が十分ございませんから、一つ端折つてお尋ねを申上げたいと存じます。
 東南アジアの問題でございますが、吉田総理がおいでになつて東南アジアの経済協力機構のお話をなすつた、当時新聞紙上で拝見をいたしたのでありますが、過日の御演説ではだんだん自分の交渉の経過がよい結果をもたらしつつあることは非常な喜びであるということがございました。その問題についてアメリカ政府におきましては、東南アジアに対しまして、吉田首相の言われたような四十億ドルに近くだんだん持つて行くような今相談をされておるということでありますが、それについて承わりたいと存じます。
#45
○国務大臣(愛知揆一君) 東南アジアの経済協力或いは開発の問題につきましては、大よそ二つの具体的な考え方があると思うのであります。
 一つは何と申しましても資本の蓄積の非常に乏しい所でありまして、投資を相当思い切つてやらなければならないという問題が一つと、それから第二の問題といたしましては、東南アジア或いは南アジア等を含めまして、相互の決済等について、いま少し円滑な機構を考えたらどうかという点があろうかと思うのでありますが、差当りのところは第一の問題が何と申しましても一番大切な問題だと思うのであります。それで吉田総理大臣が例えば少くとも四十億ドルと申されたようなこの数字については、相当具体的な研究の積み上げがあるわけでございまするが、幸いにいたしまして、その後アメリカのFOAの長官等の口から、それに近い数字が具体的な計画として取上げられて参つておるかに見えますることは、非常に御同慶の点と考えるのでありますが、我が国といたしましても、一方においてコロンボ・プラン或いはその他いろいろ政治的その他慎重に検討しなければならない要素が多いとは思いまするが、これらを総合的に考えまして、是非こういう線を伸ばして行きたい、又その線の上に乗つて日本の経済力或いは技術力が十分活用されるように期待して参りたいと考えております。
#46
○大谷贇雄君 今お言葉の中に技術の問題がありましたが、技術提携の問題は今年度二十九年度の予算においては非常に少いと思いますが、これはもう徹底的に力を入れなければ私はならんと思いますが、それらについての御所見を承わりたい。
#47
○国務大臣(愛知揆一君) 誠にこれも御尤もでございまして、大体その予算上の措置等につきましては、今後三十年度等の予算において十分考えて行きたいと思うのでありますが、お話が出ましたので御参考に申上げますると、東南アジアの経済協力について、現在までのところ、技術提携等として行われました件数を申上げますると、インドが八件、香港四件、フィリピン四件、ビルマ一件等々といつたような件数に相成つておりましてそれに関連する合弁事業等の事業提携についてはまだ十分の成果を挙げておらないわけでございますので、これらの点については先般のビルマとの平和条約、賠償条約等の成立も今後非常にこれらの点をエンカレッジすることと思いますが、一層の力を用いて参りたいと考えております。
#48
○大谷贇雄君 なお、東南アジアの文化交流が、学術、宗教等極めて大事だと思いますが、それについてこれは外務大臣から。
#49
○国務大臣(岡崎勝男君) お話の通りでありまして、文化交流につきましては、インド、セイロン、パキスタン、ビルマ、タイその他インドネシヤ等とも話合をいたしております。これは学者の交換、学生の交換、それから双方の特殊な文化の紹介、殊に最近では日本の映画が非常にインド或いは香港、シンガポール、ビルマ等でも行われる傾向になつておりますので、映画を通じての日本の紹介も考えております。これに対して先方でも先方の映画を日本に輸入するようにという要請がございますが、これはちよつと日本の映画館で果して引受けるかどうかという問題がありますので、まだ決定いたしておりませんが、併しいろいろな方面で現実にやつておりまするし、又今後かなり大きくやれる見込があると考えております。
#50
○大谷贇雄君 日本と西ドイツの貿易協定の進行状況をお聞かせ願いたいと思います。
 それと、例の一億六千万ドルのこげつきの問題はどういう処置をなさるか。
#51
○国務大臣(愛知揆一君) ドイツとの通商協定につきましては、昨年の七月から本年の六月三十日までの間におきましては、輸出入それぞれ四千五百万ドルを計画いたしておつたのでありまするが、同期における我が国の実績は我がほうからの輸出が千九百万ドル、輸入が四千七百万ドルで、著しい不均衡でありましたので、改訂交渉に当りましては、この輸出を増進する方向につきましていろいろと検討をいたしました。又一方輸入におきましては我がほうの必需物資を輸出に見合う範囲で如何にして輸入するかに重点を置いたのでございますが、新しい貿易計画の期間といたしましては、本年の十月一日から明年九月三十日までの一カ年間におきまして、片道それぞれ五千二百万ドルということでこの協定を結んだ次第でございます。
 それからインドネシアとの通商協定は、一昨年の八月に締結を見まして、以来再度に亘りまして自動的に延長して参つたのでありますが、我がほうからの出超は一億六千万ドルに及んでおりまして、この回収については非常に難渋を極めておるのであります。この支払協定によりますれば分割払となつておるのではありますが、現在すでにインドネシア側は我がほうに千六百七十一万ドル現金で支払う期限が来ておるのであります。それにもかかわりませず、この支払を賠償問題に関連せしめて保留する態度に出ておるのでありまして、この債務の履行については累次かなり強い申入れを行いまして、交渉を継続中でございます。それからなお我がほうの債権の累積がこれ以上増加することは堪えがたいので、本年の七月十二日から今後のインドネシア向けの年間輸出につきましては同期間の同国よりの輸入見込に適合するように調整を実施いたしておる次第でございます。
#52
○大谷贇雄君 全国百万町歩に及んでおりまする未開墾地を農業開発青年隊、建設省の所管の青年隊、これらの青年諸君をしてその開発度量をしてもらうというようなことにつきまして、両者においてはこれに積極的な援助をしておられると思いますが、それらの点について御所見を承つておきたいと思います。
#53
○国務大臣(小澤佐重喜君) お話の開発青年隊につきましては、現在やつておるのは小規模でございますが、実地に見て参りますと非常に青年諸君の指導上よろしいと、こういうような考えを持ちましたので、来年度はかなり大規模に、大体一万人程度私のほうの所管だけでこの組織を拡大したいと考えております。
#54
○国務大臣(保利茂君) 農林省の関係におきましても農業開発青年隊の活動を促しております。今年度予算一千万円を以て助成をいたしておりますが、千葉県、静岡県、三重県以下十二県に亘つて一組五十人編成で或いは土地改良或いは開拓或いは北海道への移植予定の希望青年等によりましてこの実施をいたしておるわけでございます。要するに青年諸君の盛り上るこの国土愛を更に盛り上げて行くという面と、国土の開発という両面からもう少し拡大して行くことがいいのじやないかということで、大体私のほうでもそういう計画を来年度更に拡大実施をいたして参りたいと考えております。
#55
○大谷贇雄君 青年の問題に関連しまして文部大臣に二、三お尋ねいたしたいと思います。
 第一は、昨年政府から金を出しました青年学級の費用の問題でありますが、青年は国の中堅である以上、この青年学級というものに文部省として重点を置いて頂きたい。従つて是非とも来年度におきましてはこれの増額を願いたい。この御所見は如何。
 更に学制のアメリカの占領政策の是正をしなければならん点が非常に多いのであります。
#56
○委員長(小林英三君) 大谷君、時間がありません。簡単に願います。
#57
○大谷贇雄君 殊に高等学校等を総合制にしましたために、その内容が昔の工業学校、商業学校、農業学校の質と比べて非常に落ちております。従つて
 これはどうしてももつと重点的な産業教育の必要を感じましたが、是非とも産業教育の面に向けて頂きたい。又駅弁大学と称せられるように、全国駅弁を売つている所には全部大学がある。こういう駅弁大学を一律平等のやり方では私はいかんと思うので、それぞれ特色を持つた行き方をしなければ私は日本の青年のためにならんと思う。その点についての御所見を頂きたい。
 又全国一万に上る公民館、これは地域のセンターであります。この公民館活動を促進するということはもう日本の文教政策の非常に大きな問題であります。ところが文部省はあまり力を入れておいでにならんのであります。これについて今後これの積極的な援助をなさり又御助成なさる御意思があるかどうか承わつておきたいと思います。
#58
○国務大臣(大達茂雄君) 青年学級についてでありますが、これは昨年の国会におきまして青年学級振興法というものが成立をいたしました。予算としては実は六千万円であつたのでありますが、併しこれはもともとが地域青年の自然発生的にできたものが基礎になつておりますので、これはまあ金高は少いのでありますが、相当な効果を収めて参つたのであります。従つて来年度におきましてはこれを先ず、二十九年度の予算は六千万円程度になつておりますが、できることならば倍額ぐらいにはしたいとこういうふうに考えております。
 それから公民館も同様であります。これは御指摘になりましたように非常にこれも補助の金額としては極めて微々たるものであります。これはまあ一般に現在の日本の社会教育の面における施策というものは、いろいろ種類は非常にたくさん上つておりますが、殆んどまだ何といいますか苗を作つているようなもので、本当に軌道に乗つたものにはなつておりません。併しこれは現在の世相或いは青少年等の問題と関連いたしまして、是非とも今後これを振興して参りたい、こう存じておりますので、これも現在は二千万円程度の僅かな経費でありますが、できることならば一つ四倍か五倍くらいに持つて参りたい、こう考えております。
 それから高等学校、これは御指摘の通りにいわゆる総合性ということが主になつておりましたために、折角戦前の農業学校であるとか商業学校であるとか工業学校であるというような伝統が幾分阻害されて来たというふうに私は思つております。又実際この社会の需要という点もありまして、これは逐次産業教育的なほうに事実推移しつつあると考えております。今文部省におきまして、教育課程審議会の答申がありましたので、高等学校の教育課程については相当な改訂を加えたいと存じております。この場合に、やはりその点については十分に留意をして、職業教育、或いは産業教育に重点を置いたそれぞれ特色のあるものを加味した制度を実施して参りたい、こういうふうに考えております。
 それから大学の問題でありますが、これは戦後国立大学というものが非常に殖えて参りました。新制大学というものができたわけであります。併し大体においては戦前の専門学校、大学は無論でありますが、専門学校というようなものが新制大学として再出発をした形でありまして、実際においてはそう非常に殖えておるというわけではありません。ただこれは高等学校の場合と同じように、やはり総合的なものになつておりまして、ややもするというと各大学の特色が十分に発揮せられないという点は確かにあると思つております。これについては中央産業教育審議会のほうでも大学制度については検討してもらつておるのでありますが、併し当面短期大学等につきましても、この点を十分に考慮いたしまして、これは実際社会の需要というものが、殊に最近の財界の不況によつて非常に気の毒なことでありますが、この次卒業する学生諸君は非常な就職難であります。そういう点は今後もやはり容易に解消するものでないと考えますので、やはり実際の社会の需要と即応して、そうしてそれぞれの大学の特色のあるように持つて行きたい。従来はむしろ今まで特色を持つたそれぞれの大学の伝統というものがやはりいくらか阻害されている、こういう私は感想を持つております。そういう点は只今の御意見と同じような意味で、今後検討し、改善するようにして参りたい、かように考えております。
#59
○委員長(小林英三君) 時間がありませんから。
#60
○大谷贇雄君 最後に……。
#61
○委員長(小林英三君) もう時間がありませんから……。
#62
○大谷贇雄君 法務大臣、厚生大臣にお越し願いましたが、時間がございませんからこれで失礼いたします。
#63
○委員長(小林英三君) これを以て質疑は全部終了いたしました。これから討論に入るわけでありますが、都合によりまして二十分休憩し、四時十五分から再開いたします。
 暫時休憩いたします。
   午後三時五十七分休憩
   ―――――・―――――
   午後四時三十三分開会
#64
○委員長(小林英三君) 休憩前に引続きまして、会議を開きます。
 これより昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)、同じく特別会計予算補正(特第2号)、同じく政府関係機関予算補正(機第1号)の討論に入りたいと存じます。討論の時間は、各派の申合せによりまして、十分間に制限いたします。御発言の諸君は、賛否を明らかにして、お述べを願います。通告によりまして、順次発言を許します。小笠原二三男君。
#65
○小笠原二三男君 議事進行についてですが、先ほど総理不出席の件につきまして質疑をすることとして、各会派において十分に時間を縮め、予定の質問を割愛した私の精神は、今日の政局に鑑みて、参議院として本予算案を急速に仕上げることに異議がないという態度を以てやつたことであります。而も只今討論を前例にない十分という時間制限をせんとせられましたが、これも理事会においてその点を配慮せられた結果こういう時間が出たものと私は考えておりますが、委員長においてはそういう趣旨においてこう時間が縮められているということに同意見でございますかどうか、この際伺つておきたいと思います。
#66
○委員長(小林英三君) お答えいたします。先ほどの理事会におきまして、討論の時間を十分間にしたいという各派の申合せがあつたのであります。
#67
○小笠原二三男君 そういうことにした趣旨は、本予算案を速かに仕上げて行きたいという各会派の意思がまとまつて、そういう時間になつたのかどうか、重ねてこの点をお伺いいたします。
#68
○委員長(小林英三君) まあその点はいろいろないきさつもございましたが、討論の時間を十分間にいたしたいという皆さんの御主張がございましたから、委員長はその通りに決定いたした次第でございます。
#69
○小笠原二三男君 昨日来の予定によつて私が討論をすることになつておりまするが、本日のこういう状況になつた関係から、我が会派では三輪君に討論をして頂くことにきまりましたので、指名の差し替えをお願いいたします。
#70
○委員長(小林英三君) それでは、只今委員長は小笠原君を指名いたしましたが、三輪貞治君を指名いたします。
#71
○三輪貞治君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今上程されておりまする予算案全部に対しまして、反対の意見を申述べたいと存じます。
 討論に先立ちまして、予算案並びに予算審議に対する政府の態度が極めて遺憾であつたことについて、一言申したいと思います。我が党は第十九通常国会の終りましたあとにおきまして、友党同士諸君と計らいまして、早期の臨時国会の開会を要求して参りましたが、政府は徒らにこれを遷延いたして参りまして全く申訳的に、この押し迫つた時期において第二十臨時国会を開会いたしまして、誠にその内容も、形式に似て、お座なりのものであるということでございます。なお第二十臨時国会が始まりまするや、政府におきましては、総理大臣並びに各大臣の予算委員会に対する態度は、極めて怠慢の一語に尽きるのでございまして、総理大臣は、本日もそれぞれ各委員から問責の質問がありましたように、一度もこの委員会に出席をしないという、誠に最近例を見られないところの不祥なる状態を惹起いたしたのであります。更に昨日の予算委員会におきましても、当然出席を要求されておる大臣が、党の仕事等と混同いたしまして、時間を遅らせ、非常な審議上の支障を来たしたことは、各委員がすでに御承知のところであります。もう私たちはすでに吉田内閣は、昨今の政局の状態から見まして、政権を担当する熱意をすでに失つておるものと断言せざるを得ないのであります。
 次に、予算の内容について、順次その反対の意見を申し述べたいと思います。
 先ず第一番に、食糧増産対策に対する施策が当を得ていないということでございます。これは我々が今までたびたびこの委員会並びに本会議で検討して参りましたように、MSA協定に基きまする再軍備は必然的に、これはアメリカの過剰農産物の買付けの義務を負わされるという結果に相成つて参つたのでございまして、政府はそれに依存いたしまして、食糧増産に対する積極的な意欲を漸次減退をして参つたことを指摘したいのであります。現在のアメリカにおける農産物過剰は極めて深刻なるものがあるのでありまして、先般行われましたアメリカの中間選挙におきましてアイゼンハワーの政府は敗北を喫しましたが、この問題の大きな原因が、農産物の過剰生産が景気後退に拍車をかけ、或いは恐慌招来の原因ともなりかねないことが、その一因であつたように思われるのであります。従つてアメリカが武器援助を餌にいたしまして過剰農産物を売りつけんとしておることは、明々白々たる事実でございまして、この自明な理を、なぜ吉田内閣はアメリカ政府のとつている自国の農民保護政策に追随いたしまして国内の自給方針から食糧輸入主義、アメリカ小麦依存主義に変更したか、我々は了解に苦しむところでございます。さような根本的な原因によりまして、本予算におきましても、更に臨時予算におきましても、積極的な食糧増産への熱意が少しも見られないのでありまして、最も我々の遺憾とするところでございます。
 次に、災害復旧費について申述べて見たいと思うのでございます。今度の臨時国会の主なる目的は、この災害対策が根幹になつておるようにも存じておるのでございます。戦後九年間、農業は毎年のように自然の猛威に傷めつけられて参りまして、その被害は年を逐うて漸増いたして参つておることは、御承知の通りでございます。特に本年は、五月から九月にかけまして、台風、冷害、その他多くの災害を伴つて参つておりまするが、これらの災害は必ずしも不可抗力のもののみとは言えないものがあると思うのでございます。天候不順も、多量の降雨も、台風も、技術的観点からすれば、その被害を最小限度に食いとめることも不可能ではないのでございまするが、その技術的に可能な問題を、政府の施策よろしきを得ないために、その被害が予想以上に甚大になつたということは、すでに本会議における質問等でも指摘をされておるところでございます。これは東隆君がたしか指摘をいたしておりましたが、科学的な機関を無視した行政が行われておるところに一因が存することは、明らかになつて来ておるのであります。又本年度当初予算における公共事業費の削減は、こういう意味におきましても、全く根本的な施策を誤つておると申さねばならんのであります。特に又河川行政をめぐりまする建設或いは農林両省の繩張り争い等も、覆うべからざる事実でございまして、災害復旧工事に、或いは防災事業に、それをめぐる官庁のセクシヨナリズム、高級官吏と大土建資本、政治権力との結託は、無視できない、利益を独占をしておる事実があるように見受けられます。又地方権力の地方土建資本との結託による厖大な国費の濫費は、すでに全国的な常識となつておるほどのものであります。併しこのために、実際に災害を受け、早急に復旧をしなければならないまじめな地方公共団体、或いは農民、中小企業者等の多くの諸君が、必要以上の予算の削減を受けておる現状におきましては、我々は、断じて黙視することができないのであります。今回の予算は、本年度二割五分となつておるのでありまするが、これは当然三割に引き上げなければならないのでありまして、昨年の水害の例を見ても明らかであるのであります。
 次に、地方自治体の財政の窮乏に対して十分なる考慮が払われておらないということでございます。地方財政の危機はすでに数年前から叫ばれて参りましたが、二十八年に至りまして財政的事情は急激に悪化をいたして参りまして、MSAデフレ政策の影響は今年に入つて、地方自治体そのものを崩潰させるほどの深刻さを現わして来ておるのであります。従来は赤字と申しましても、単独事業の打切りとか翌年度予算の繰上げ充当とかで、何とかやりくりいたして参りましたが、今年はもう職員の給与にまで手をつけざるを得ない事情に追い込まれておるのでありまして、法律で決めた定期昇給の期間を延長したり、又全くこれをストップの止むなきに至り、遂には職員の給料遅配が始まつておるというのが、地方自治団体の実情でございます。昭和二十六年度の赤字は百一億、二十七年度は三百億、二十八年度は、四百六十億の巨額に達しておりまするが、この赤字は従来共に政府の施策の欠陥によるものでありまして、とりわけ二十九年度は、市町村自治体警察の廃止に伴う都道府県警察費の増大が、非常に大きなそのフアクターになつております。今回政府が地方交付税交付金について四十億の追加をいたして、都道府県警察費の増額に当つておりまするが、これでは全く地方財政の現状から見て過小に過ぎると思われるのであります。
 次に、公務員の年末手当についてでありまするが、政府は昨年八月人事院よりの給与改訂につきまして勧告を受けましたけれども、八月実施を本年一月に延期し、昨年の十二月末に地域給をそれぞれ五%ずつ減じまして一月一日より実施をして来たのであります。従つてそれのみを考えてみましても、実質賃金は五%の減額である、年間を通じて大幅な削減となつたことは明らかであります。このマイナス分を補填する、すなわち生活補給の意味におきましても、十分なる年末手当の支給が必要であるにもかかわらず、相も変らず冷淡な態度で以て対処されておるということでございます。
 更に、中小企業につきましての考慮が払われていることが非常に薄いという点を、指摘いたしたいと存ずるのであります。再軍備予算の平和産業、とりわけて中小企業へのしわ寄せは、労働省調査による不完全な統計の一つ、企業整備状況によつて見ましても、本年一月から八月まで全国の六十余の事業所から、十八万余の労働者が解雇されておる事情でございます。これは昨年の同期に比べまして、二倍近い増加と相成つておるのでありまして、その中には製造業者が六四%を占めておるのであります。又政府統計によりますと、完全失業者は一月以来増加を続けまして、八月には十七万、失業保険受給者も昨年より三割以上殖え、六月には四十六万という記録であります。而も見逃すことのできないのは、完全失業の増大と並びまして、潜在失業の増大も又最近の目立つた現象であります。多くの産業、企業に一般化しつつある生産縮小、操短態勢、或いは休日増加、就業規則などによる実質収入の大幅な減少、更に賃金不払の驚くべき激化によりまして、ますます多くの業種に労働者が潜在失業の状態に置かれておるのであります。
 かように、我々が当初予算の審議において指摘いたしましたように、政府の強行いたさんとする一兆億デフレ財政、金融引締め等は必ず、社会の弱い部面である中小企業、労働者、農民、これらにしわ寄せをされることが必然であり、従つてかような政策を強行する場合には、それと並行して社会保障政策の完備が必要であることをば絶叫して参りましたが、今日の補正予算におきましても、何らデフレ政策の犠性に対する社会保障の万全なる措置を見ることができないことを、誠に遺憾とするものであります。
 かような不完全なる予算に対しまして、我々第二控室と共同いたしまして、歳入、歳出につきまして補正の組替えの要求をする準備を整えておりましたが、いろいろな事情によりましてこれができなくなつたのであります。この内容について申上げたいと思つておりましたが、時間がございませんので、これを割愛いたします。
 以上を以ちまして、非常に少い時間で誠に舌足らずの状態でございますけれども、我々のこの予算に対しまする見解の一端を申述べまして、反対の討論といたす次第でございます。(拍手)
#72
○池田宇右衞門君 私は只今議題となつております予算補正三案に対しまして、自由党を代表いたしまして、賛成の意を表するものでございます。
 我が国経済の現状を見まするに、昨年の秋以来、政府のとつております経済健全化政策は、漸次その効果を現わしまして、物価の低落又は横這い等を見、国際収支の好転等を来たし、おおむね所期の成果を挙げられ、日本経済は全体としてかなりの改善をみつつあることは、疑いのない事実であります。併しながらこれらの施策の進展に伴い、今後幾多の必要なる措置を要すべき種々の問題も、共に生じております。
 今回提案を見ました補正予算案は、財政健全化政策の基調を崩すことなく、而もこれら諸般の要請に対処せんとして編成されておるのでございます。即ち一般会計の歳出の変更追加は三百八億円に上るのでございますが、その財源の大部分は既定予算の節減等により賄い、予算総額を当初予算に比し僅かに三億円増加せしめた九千九百九十八億円にとどめて、一兆円の枠を固く守つておることであります。
 次に、歳出の主なるものを見まするに、災害復旧費として今年度災害の復旧のため、予備費充当額を含めて、今年度においておおむね二割五分の復旧を見込み、六十九億円を計上し、更に救農土木事業にも別に二十二億円を支出することになつております。これらを合計いたしますときは、累計百十一億円に上るのでございます。これを事業量から見ますれば、昨年の災害予算に比較いたしまして、デフレ経済下の物価値下り等を考慮いたしますときは、昨年度を上回る実質価値を有するものと信じます。
 又社会保障関係費につきましては、生活保護費に七十億円、失業対策費に三十七億円、緊急就労対策事業費に九億円、合計百十六億円を計上いたしておりますが、なかんずく失業対策事業費の補助には、当初予算の際の就労人員一日平均十六万三千人を、今回の補正において一日平均十七万人に増加を見込んでおるのでございます。これを第四四半期だけにとつて見ますれば、実に一日十八万六千人の吸収ができる見込みでございます。漸増する失業者の救済に対処できるのみならず、炭価の値下りによつて失業者を出しておる地方へも、救済の方途ができると信じます。
 次に、地方財政関係の経費でございます。交付税交付金として四十億円、譲与税譲与金として三十五億円、都道府県警察費補助として二億円、合計七十七億円を計上しておるのでございますが、警察費の不足に対しましては交付税の定率の変更及び補助金の追加等を行い、又入場税の不足分に対しましては譲与金の追加を行なつておるのでございまして、当面する地方財政の危機については切り抜けることができるものと信じます。
 常に教職員の給与が地方財政に及ぼす重大なる問題を生ずる折柄、二十八年度の不足とは申しながら八億円を計上したことは、これ又当を得たことと思います。二十八年の異常災害に、農家の生産物に対する災害に、十二億を計上して農業共済保険金の赤字を補填せしことは、農民の生産意欲を高めることとなり、今後もこの方針をとり十分に徹底するよう望む次第であります。
 最後に、財源の調達でございますが、今回の歳出の追加三百八億円を大部分既定予算の節減等により賄い、当初予算より増加すること僅かに三億円にとどめたことは、再建自立途上にあります日本経済のため、実に称讃に値いすることと存じます。
 更に特別会計、政府関係機関においても若干の補正が行われておりますが、いずれも一般会計の補正に関するもので、当を得た処置と存じます。
 以上の理由を以ちまして、私は補正三案に賛成するものでございます。
 最後に、政府においては、これら予算の成立の上は、経済自立化、健全化政策予算の趣旨を体し、速かに配分を行なつてその実効を挙げるよう、強く要望いたしまして、三案に対する賛成の討論といたす次第であります。
#73
○相馬助治君 私は日本社会党第二控室を代表して、只今議題となりました補正予算三案に対して反対の意を表するものでございます。
 先ず冒頭に申上げねばなりませんことは、本案が審議される過程における政府の態度でございます。病気を理由に、首相は欠席をいたしました。昨日自治庁長官は、所労の故を以て欠席したのであります。各閣僚の答弁におきましても、一部のかたを除いては、全く熱意を失つておると見られる節がないでもないと思うのでありまして、このことは誠に参議院軽視であり、国会軽視以外の何ものでもありません。先ほど鶴見祐輔委員が烈々としてこの点を、国民に与える影響の面より力説されたのでありまするが、不肖私も誠に見解をひとしくするものでございます。
 今回の政府のデフレ政策なるものは、金融の引締めと財政の緊縮によつて、一兆円の枠内において昭和二十九年度の予算を編成せんとして、先の当初予算が決定されました。この基本的な考え方につきましては、我々としても徒らにこれを非難するものではございません。ただ結果的に見まするというと、金融引締めによる被害は農民或いは中小企業者にしわ寄せされ、その倒産の積出を見ておるということ、又失業者が今日巷に溢れ社会悪の根源となつている事態を、我々は見逃し得ないのであります。要するに一兆の枠を堅持するという名の下に、健全財政の名の下に、ただ大蔵官僚諸君の巧みな予算編成技術で体裁をカムフラージするにとどまるところの本予算は、金融面においては血も涙もない引締めのものであり、中小企業者の倒産を意味し、財政の面においては産業投融資の大幅削減と相成つて、石炭、鉄鋼、造船等を初めとし、各種生産部面におけるところの莫大な失業者となつておるのであります。
 かかる点を考慮して本補正予算が組まれるといたしまするならば、我々は心よりこれに賛成するものでありまするが、本予算はそれらの精神の片鱗だも見ることができないと申すことができるかと思うのであります。その総額の三百八億の問題に対しましては、既成予算の節約を以てこれに充てるという態度は称讃されてよろしいでありましよう。池田委員は称讃に値いするとこのことを申されましたが、併しよくよく本予算案を眺めて参りまするというと、防衛関係費を中心とする本年度の過年度繰越金額は千二百七億に達し、実際の財政規模は実に一兆一千二百億円となつて、一兆円を遙かに超えておるのであります。従つて政府が今日なお一兆億円予算編成に成功したとするは、誠に国民を欺瞞するものであると言わなければなりません。更に政府は当初予算の審議過程において、絶対に補正予算は行わないと申して参つたけれども、一部災害復旧その他の費用を除きまするならば、この補正予算を提出したこと自身がすでに吉田内閣の政策の行詰りと政府の失政を物語るものであると、断ぜざるを得ません。
 内容の面に至りましても、実に幾つかの問題を含んでおるのであります。特に政府与党独自の一方的資料のみを以て説明しておりまするけれども、所得税、或いは酒税、砂糖消費税、揮発油税等の増収については、何ら歳出入の実情を国民の前に明らかにしておりません。この歳出規模が一兆円の枠を破るのを虞れ、歳出規模から通算してその辻棲を合せるための小手先細工が、あらゆる点に散見されるのでありますると共に、千二百七億に上る過年度繰越金をどうするかということは、実にインフレ或いはデフレの要因として、重要な問題であると存じます。かかる重要な財源の措置を明確にしないで、而もデフレ政策の場合、一兆円予算の堅持と言つてみたところで、誠にこれはナンセンスであると言わざるを得ないのであります。歳出の面におきましては、災害復旧費、或いは社会保障関係諸費、地方財政交付金、その他の問題について、それぞれ我々は意見を持ちます。同時に、左派社会党の諸君と共同してこれが組替案を予定したのでありまするが、諸般の事情上これが提案を我々は見合せ、むしろ近く迎える解散、近く生まれる新国会において我が社会党のかねての主張を通さんとするものであります。特に最後に私は一言附加えたいことは、今般の政府案には官公庁労務者のベース・アップ、年末資金等が一切計上されていない事実であります。現在の国家予算は、汚職或いは収賄等によりまして、且つ又一部恒久官僚の官紀弦緩によりまして、誠に杜撰な支出が行われておりますることは、不幸にして何人もこれを認めるところでございます。そのような政府施策の欠陥より来たつたところの日本経済の崩壊を救うためにも、政府は国民に耐乏を要求して参つたのであります。併し最低生活の限度を下回る今日、国民の現状はもはや耐乏の余地を残していないのでありまして、この際当然政府はこれらについて、これら予算を計上すべきはずであつたと思うのであります。第二は、中小企業者に対する緊急融資の点が何ら考慮されていないということであります。
 これらも我々としては鋭く衝かなければならないのでありまして、要するに我々は、政府が単に一兆円予算という名目の下に、労働者、農民、中小企業者、これら勤労階級の生活を犠牲にした予算を計上し、政府の今般の目標が、補正予算を提出した目的が奈辺にあるかを疑わざるを得ない状態であることは、我々の深く遺憾とするところであります。インフレをやめるためのデフレ政策ということは勿論結構でありまするけれども、残念ながら我が国の経済の基調は、財政、金融の性格が軍事的であり、非生産的であり、過年度からの歳出繰越額は巨額に上り、而も実質的財政規模は、先ほど来申上げましたように、一兆一千二百億円に上つておりますると共に、今後アメリカの余剰農産物の見返円資金は軍事産業等の不生産的方面に使われる可能性極めて大であります。これらのことはデフレ経済の基調をなしているということを物語るものでなくて、インフレ的であると我々は見なければならないと思うのであります。我々はかかる政府の欺瞞的デフレ政策の名目により、一方的に勤労階級に犠牲を強いるがごときところの今回の補正予算に対しましては、国民の名において、断固反対の意思を表明する次第であります。(拍手)
#74
○早川愼一君 私は緑風会を代表いたしまして、本補正予算案に賛成をいたすものであります。
 この補正予算案の内容は、前国会における予算案の三党共同の修正及び予算関係諸法案の不成立又は修正によるところの必然的な補正と、本年度に発生いたしました災害の復旧及び政府のデフレ政策推進に伴いまする社会保障関係の費用の充実等でありまして、極く事務的なものと考えられ、又おおむね妥当なものと認められるのであります。ただ歳入の見積りにつきまして、或いは又既定予算の節約による実行予算の取扱いの問題、或いは現在の情勢の下におきまして失業対策費が、或いはその他の社会保障費が、十分であるかどうかというようなことにつきましては、なお更に検討を要するのであります。併しながら今日の客観的な政治情勢から考えまして、本補正予算の急速な成立を要望しておるものと認められますので、我が縁風会におきましてもかかる見解の下に、本補正予算案に対しまして賛成し、その速かなる成立を希望いたすものであります。
#75
○木村禧八郎君 私は本補正予算に対して反対するものであります。
 言うまでもなく、現在の我が国の経済を打開し、今後の自立経済を達成して行く場合、最も重要な要素なるものは最近の国際情勢の大きく変化していることであると思います。即ちジュネーブ会談以後、戦争から平和に大きく国際情勢は変化しつつあります。我が国の財政経済政策は、この国際情勢に即応して、大胆に切り替えなければならないと思います。又そういう、大胆に我が国の経済政策を国際情勢の変化に応じてこの際切り替えなければならない段階に来ていると思います。これまでの我が国の財政経済政策は、アメリカに隷属して、そうして国際緊張を背景として立てられた防衛費増加、或いは防衛産業の育成、そういうものに重点を置いた軍事的性格を持つところの経済政策、或いは財政政策、金融政策であつたわけであります。我が国経済の危機或いは行詰りは、こういう国際緊張を背景とする軍事的経済政策にあつたことは言うまでもないのでありまして、いわゆるMSAデフレ政策、それに伴う日本経済の縮小均衡政策、それによる国民生活の破綻、これは国際緊張を前提とする軍事経済政策によつたものであります。ところが、ジュネーブ会談以後、国際情勢は非常に大きく変化しているわけであります。この際日本は、大胆に軍事経済政策をここで切り替えて、そうして平和経済政策に転換すべき絶好の機会であると思うのであります。そうしてそういう支出を生産的な財政金融政策にここで切り替えるべきである。生産的な財政支出、金融、そういうものを輸出増進、国内の自給度向上、生活の安定向上のほうに振り向けて、ここで拡大均衡政策へ転換すべき重要な時期にあると思うのであります。今度の補正予算はここに着目しなければならないわけである。こういう重大な国際情勢の変化に即応した点が、今度の補正にはもう秋毫も認められない。全然これが認められていないわけです。それどころか、吉田総理は外遊から帰つて来まして、そうして反共一点張りの考え方を強調しておるのです。これがアメリカから吉田総理がもらつて来たお土産であるとすれば、これは最近の国際情勢の非常な急激な平和的な方向への変化と、全くこれは逆の考え方であつて、そういう考え方の下に今後の財政経済政策を行うというのであつては、これはもう世界の大勢に逆行するものである。もうその時代感覚が如何にずれているかは、驚くべきことであると我々は思うのであります。
 又今度の補正予算は、そういう外国からお土産として頂いて来た反共的政策、そういうものの上に立つばかりでなく、日本の経済が健全化しつつあるという前提において、この補正予算が組まれている。吉田総理の所信に関する演説、及び小笠原大蔵大臣の補正予算に関する財政演説においても、至るところに日本経済の健全化、健全化ということが言われており、そうして国際収支の黒字というものは健全化を象徴するものである、一兆円以内に補正をとどめたことは、これは健全化であると、こう言つておられるわけです。併しながら、これは全く経済の健全化というものについて無知を表明するものである。若し一兆円予算の枠内に財政規模をとどめたことが健全化であり、国際収支が黒字になつたことを以て健全化と言うならば、これほど私は間違つたことはないと思います。財政規模自体だつて、大蔵大臣に対する質疑において明らかになりましたが、例えば国際収支の黒字から、我々に配付された資料によつても、来年三月末までには外為会計では六百四十四億円支払超過になる。一兆円予算を堅持すると言つても、外為会計で六百四十四億も支払超過になるのでは、一兆円予算を形式的に堅持しても、何ら意味がない。ここに大きなインフレ要因が出て来て、政府のデフレ政策は六月以来ここから破綻している。それにもかかわらず、一兆円予算を堅持して健全なりということは、私は全く愚かな考えであると思います。そればかりでなく、国際収支の黒字をもたらしたその背後には、非常に出血輸出でありまして、大蔵大臣も十分御承知のように、一時船舶の輸出などはトン当り二百四十ドルであつたのが、最近では出血のために百四ドル、こういうような非常に安い値段で出血輸出しているのです。そのために労働者の賃金が非常に切り下げられて、特に中小下請企業のほうの賃金は、すごく切り下げられております。それで失業者が殖え、労働強化になり、国民はこの国際収支の黒字のために塗炭の苦しみを味つている。私は二カ月間各地の国内のいろいろな情勢を視察する機会を得ましたが、炭鉱に行つてみれば、全く我々の想像のつかないような惨澹たる、栄養失調のような人が出て来ている。失業者だつて七十一万を超えているということは、ドツジ・デフレ経済の下におけるよりも、遙かに完全失業者の数は多いわけであります。こういうような非常な国民生活の破綻、そういう上に築かれた国際収支の黒字であつて、これを以て経済健全化の一つの証拠であるということは、全く国民生活を知らないのです。今働く人たちの生活はどうなつているか巷にあふれる失業者、これをどう政府は見ているか。又最近のヒロポン禍というのは、これはそういう生活の苦しみからどこかへ逃れようとする、そういうところから来ているのです。そういうような実情を政府は考えないで、それを経済は健全化しつつある、こういう前提において今度の補正予算は組まれている。
 更にもう現在は、経済の自立と再軍備とは全く相容れない段階に来ている。経済審議庁でも最近、経済自立政策を昭和三十二年度を目標にして立てたと言われておりますが、そのために国内自給度を高めるために、昭和三十二年度までには、食糧千五百万石、合成繊維一億五千万ポンド、それから外航船舶建造等々で三億一千万ドル、昭和三十二年度までに国内自給度向上によつて節約し得るという案を作つたところが、そのために輸入がむしろ三億八千万ドルになつて、輸入は七千万ドル殖えてしまう。そういう結果になつたにもかかわらず、国内自給度向上のためには、食糧千五百万石を増産するために、千二百億円金が要る。合成繊維、外航船舶の建造には莫大な金が要る。ところが、これを再軍備のほうに金を回すから、こつちに回つて来ない。そこで仕方なく、政府はアメリカから一億ドルの余剰小麦を輸入して、その見返円で資金を賄おうとしたところが、そのあてが外れてしまつて、政府は四百九十四億円の援助を予定したところが、僅か百億程度であつた。これでは全く自給政策はできません。そこで今後の問題としては、窮余の一策として強制徴兵制度によつて防衛費を賄おうとする、そういう方向に行かざるを得ない状態になつて来ている。即ち政治がだんだんそのためにフアツシヨ化して行く、そういう方向になつて来つつあると思うのです。これは世界の国際情勢が平和の方向に大きく転換しつつあるのに全く矛盾した、相反する政策だと思うのです。補正予算はこの点に全然触れておりません。
 而も当面の緊急対策として、公務員の生活安定のためのベース・アップ、或いは年末手当、失業対策、生活保護、或いは災害復旧、中小企業対策、地方財政の赤字対策等々、非常に緊急を要する対策があつて、補正はこの点について若干予算を計上していますが、この程度の補正でこの事態を収拾することは全く不可能です。雀の涙に過ぎない。どうしてもこの際大きな、この国際情勢が平和の方向に転換しているときに、日本の財政経済政策を、軍事的な財政政策を平和的政策に大きく転換するのでなければ、この危機が乗り切れないと思うのです。この補正予算は何らそういうことが考慮されていないという意味で、この予算に反対するものであります。(拍手)
#76
○武藤常介君 私は日本民主党を代表いたしまして只今議題となつておりまするところの補正三案につきまして賛成の意を表する次第であります。これにつきまして、二、三の意見を申述べて、賛成いたします。
 本補正予算は、本年度発生の災害復旧を先ず第一と考えねばならんのでありまするが、災害復旧の最も効果的なるものは可及的速かに復旧するということでございます。然るに通常国会までぎりぎりのところまで遷延いたしましたことは、災害復旧という緊急条件をないがしろにしたことであると、これは誠に遺憾な次第でございます。
 次に大蔵大臣の説明によれば、財政の健全化の推進ということでありまするが、既定経費よりも三百億も節減ができるということは、当初予算の内容が極めてルーズであつたのではないかと考えるのであります。従つて必らずこれが実施に当りましては、既定予算の部分又は本補正予算の両方において必らず無理ができて来る、こういうことは明らかであろうと私は思うのであります。又財政法の見地から見ましても、決して穏当なことではないと私は考えるのであります。
 次に大蔵大臣が国際収支の好転ということにつきまして勇敢なるところの言明がありましたが、これは私この内容を検討いたしまするというと、或いは出血、或いはダンピング等によりまして、決して真の国際収支の好転ではないと思うのであります。詳しいことは省略いたします。
 なお災害復旧の公約といたしまして三・五・二の原則を前々国会で申合せたのでありまするが、それも又計上されないということは、これはやはり健全財政ではないのであります。
 次に、公共事業費の節減は国土保全の根本的建設を危くするものでありまして、各方面におきまして、会計検査の関係から、種々なる問題が起つておるようでありますが、これはそこに無理があることも事実であると私は思うのであります。政府の言明はその真相を把握したものでもないと、こういうふうに私は考えるのであります。又緊急就労対策事業費と公共事業費とは、趣旨、その内容において、異なつておるところがあるのであります。でありますから、これは別途に財源を捻出すべきであろうと私は思います。この財源の捻出は決して不可能ではないと私は思うのであります。
 次に、失業対策等社会保障につきましては、根本的に計画を樹立すべきであつて、デフレ政策を断行するに当りましてその場、その場の対応策でその対策を練るということは、これは極めて不用意な話であると私は考えるのであります。そうしてどうしてもこれは国民生活の安定の上から、国民に不安をかけないように、十分なる計画を確立すべきものであろうと思うのであります。
 なお義務教育費の国庫負担金にきつまして、都道府県の財政状況によりまして斟酌すべきであるということは、大蔵省の根本的の答えでありましたが、これにつきまして最近はその熱意を失つておるのではないかと、こういうふうに見られるのでありますが、これがこの財政計画の上に重大なる影響をもたらしまして、これが農村方面にしわ寄せされておるということは、私は甚だ遺憾に存ずるのであります。デフレに突入しております今日、税の増収を見込むということはこれは又無理を生ずるのではないかと、こういうふうに考えるのであります。十分なるところの注意と検討を要する次第でございます。
 なお本予算につきましては、中小企業者の経済難のことも更に考えられておりませんし、又地方財政のことも相当考えてはおりますようですが、現在の状態で地方財政は到底復興するような状態になりません。これらの点につきましても十分考えなければならんことではないかと、こういうふうに考えるのであります。
 終りに、当初予算におきましても、又本補正予算を通じても、都市に厚く地方に薄いというような傾向が強く、将来これは根本的に考えを新たにして計画を立てねばならんのではないかと考えるのであります。
 これらの点につきまして強く私主張するものであります。これが実施と将来の計画に当りましては、前述の諸点を勘案しまして、遺憾のないように十分なる施策を講ぜられんことを強く要望いたしまして、本案に賛成する次第であります。(「賛成」と呼ぶ者あり)
#77
○委員長(小林英三君) 以上を以ちまして、討論は終結いたしました。
 この際直ちに採決することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#78
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
 よつて、昭和二十九年度一般会計予算補正(第1号)ほか二案を一括して採決いたします。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#79
○委員長(小林英三君) 起立多数であります。よつて、三案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお本会議における委員長の口頭報告の内容等につきましては、先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと思います。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
 なお賛成の諸君の御署名をお願いいたします。
  多数意見者署名
   池田宇右衞門  加藤 武徳
    早川 愼一  武藤 常介
    雨森 常夫  泉山 三六
    大谷 贇雄  植竹 春彦
    小野 義夫  大矢半次郎
    木村 守江  古池 信三
    左藤 義詮  佐藤清一郎
    白井  勇  西岡 ハル
    安井  謙  吉田 萬次
    梶原 茂嘉  河野 謙三
    竹下 豐次  館  哲二
    田村 文吉  西田 隆男
    前田  穰  笹森 順造
    鶴見 祐輔  深川タマヱ
#80
○委員長(小林英三君) 署名洩れはございませんか……。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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