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1954/12/01 第20回国会 参議院 参議院会議録情報 第020回国会 本会議 第2号
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1954/12/01 第20回国会 参議院

参議院会議録情報 第020回国会 本会議 第2号

#1
第020回国会 本会議 第2号
昭和二十九年十二月一日(水曜日)
   午前十時二十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二号
  昭和二十九年十二月一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 第二 昭和二十七年度一般会計歳入歳出決算、昭和二十七年度特別会計歳入歳出決算、昭和二十七年度政府関係機関決算報告(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。赤松常子君から、海外旅行のため会期中請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(河井彌八君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。江田三郎君。
   〔江田三郎君登壇、拍手〕
#6
○江田三郎君 私は日本社会党を代表し、総理大臣吉田茂君に、いつ総理の職をおやめになる御意思なのか、端的にお尋ねいたすものであります。すでに吉田総理は自由党総裁の地位を去られることを明らかにしておられます。総理大臣が国会議員の中から指名される現行憲法の下にあつては、党の総裁或いは委員長と総理大臣とが不可分の関係にあることは多言を要さないところであります。国民各階層、全国津々浦々に憎しみさえこめて盛り上る反対の声に固く耳を塞がれることは別といたしましても、自分の党の内部の反対勢力を調整することができないで、表面の理由はどうでありましようとも、実質的には総裁の地位を叩き落された者が、なお恋々と総理の席にとどまられるがごときは、およそ政治常識の外であり、軌道外れと思うのでありますが、この点如何なる御心境なのか、先ず承わりたいのであります。(拍手)或いはお年寄りとお疲れによるところの心身の異常に基く過ちとして御同情いたすべき筋合いかとも考えられますが、もとより政治は公けのものであり、私の情を以て当るべきものではございません。今日内外共に多事多難のとき、このような異常な状態によつて政治を混迷に落し、停滞や空白を惹き起しますことは、我が国の再建に取返しのつかん損失となるのであります。(拍手)私どもは吉田総理に対し、この異常な政治態勢の清算のために即刻おやめなさることをおすすめいたすものでございます。(拍手)曾つて吉田総理がサンフランシスコにおいて講和、安保両条約を結ばれましたとき、私どもはこの二つの条約が、政治的にも経済的にも日本をアメリカの隷属国として縛りつけるものなりと信じ、その日以来、責任者である吉田総理の不信任を表明して参りました。この私どもの見解に誤りなく、日を経るに従つて日本の隷属的地位が実証され、縛られた紐を一日も早く断ち切ることが国民の大きな関心事となつて参りました。勿論多くの国民の中には、両条約の本質につきましては、私どもと見解を異にする向きもございます。この点についての見解は異なりても、最近の吉田総理のなされることが、ことごとく失政、悪政、暴政の連続なりということは、圧倒的な輿論と断定できるに立至つて参りました。(拍手)
 この失政、悪政、暴政に対する国民の批判は、単に吉田内閣とその与党とに向けられるばかりでなく、議会政治そのものに対する失望となつて参りました。政治の根幹であり、国民のよりどころである憲法さえも、暴政によつて次々と空文化され、今や議会政治が、国会が選んだ総理大臣によつて日ごとに墓穴を掘られつつありますことは、もはや一日も忍び得ないところでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田総理に退陣を求める声はあまねく全国に満ちわたり、吉田総理に残された唯一最大の善政は、この国民の声を率直に受けられること以外にないのであります。民の声はやがては天の声になり、議会政治においては民の声は必ず貫かれるということをみずから身を以て実証されて、国民に政治への希望を与えられることが、とられるべきただ一つのことと信じ、これについて総理の見解を承わりたいのであります。(拍手)
 総理大臣の進退は個人の問題でなく、その一挙手一投足からさえも、国民全部が大きな影響を受けるのであり、深い考慮を必要といたします。私どもは我が国の近代政治家の中に、およそ吉田総理ぐらい出所進退を誤られた人もなかろうと考えるものであります。(拍手)遠い過去を別にいたしましても、去る十九国会だけを顧みましても、おやめになることが一番善い政治になる機会は数回ならずあつたものを、惜しむべし、そのたびごとに機会を逃がしてしまわれたのであります。重要法案が何一つとして会期一ぱいに決定されなかつたことでさえ、惜しい機会と申すべきであります、吉田総理はこのことを野党の妨害によるもの、一切の責任は野党にありとしておられるようでありますが、若し本気にさようにお考えとすれば、お年の加減で救いがたいほどに視力を失われたものと言わなければなりません。(拍手)議会政治における決定は数であります。与党は野党よりも多くの数を持つております。多数の与党が少数の野党に押されたとしますれば、野党の背後に限りなく大きな輿論の力の支持があつたことにほかならないのであります。(拍手)試みに、当時の新聞論調を顧みますならば、教育二法案、防衛関係法案、警察関係法案、ことごとく、反動立法と指摘され、集中攻撃を受けていたのであります。吉田総理が日本の新聞を読まれないという伝説は、輿論を正しく見つめる視力を失われたものにほかならないのでありますが、
   〔議長退席、副議長着席〕
政治が国民の名の下に行われます限り、まさにこのとき進退を決せられるべきであつたと思いますが、この点どのようにお考えになつたのか、お伺いしたいのであります。造船汚職に当つての指揮権の発動も、又借しむべき機会に方向を誤られたのであります。昭和二十三年十月芦田内閣のあとを受け、第二次吉田内閣が成立しましたとき、総理が御自身でなさつた談話を、今日なお憶えておられるかどうかをお聞きしたいのであります。念のため私がここに読み上げます。よくお聞き取りを願いたいのであります。「第一に民主政治の要は、専ら国民の総意に基き、私心を去り、一切の権謀を排」、公明に行動して自己の政治的責任を明らかにすることである。政界、財界、官界を通ずる綱紀の粛正と、社会道義の確立である。現下の大疑獄は徹底的に、且つ公明適切に処理されなければならない。政、官、財界を通じて根を張つた綱紀の乱れと道義の頽廃とは、この際これを抜本的に一掃し、終戦以来失われかけた官紀を粛正し、緩みかけた社会道義を立直して、正しい者の報いられる道義の国日本の姿を取戻すことが祖国日本再建の根本であると信ずる。」というのであります。誠に立派でございます。これは私の演説ではなく、吉田総理御自身の談話なのであります。吉田総理が如何に年を取られたとしましても、ダレス長官の顔をお忘れにならない記憶力が残つておるのでございますなら、この談話の一言一句は別にいたしましても、内容をまでお忘れになることはございますまい。大疑獄は徹底的に、且つ公明適切に処理すべしと述べられた吉田総理、あなたが、指揮権を発動されて大疑獄に厚い蔽いをかけてしまわれたのであります。これが果して同じ人の言葉と行動と受け取れるでありましようか。(拍手)まさにジキル氏とハイド氏の二重人格とでも申すほかはございますまい。
 而も吉田総理は、その後の自由党代表者会議において、汚職は新聞のデマであり、政治資金規正法のごときは、政党の資金運営を不可能にする悪法であり、かかる悪法を以て幹事長を逮捕することば不可解だと述べられたのであります。我々日本の国民は驚くべき二重人格者を総理大臣としていただく不幸に突き落されているのであります。(拍手)而もこの二重人格者は見かけの傲慢に似ないで、肚の据わらない、気の弱いお方のようでございます。現にこの演説に関して攻撃を受けるや、言葉足らずの誤解だと謝つてみたり、これに関連して決算委員会に喚問されると、出席して堂々と所信を述べるのではなくて、ひたすらに逃げ廻つて挙句の果、一国の現職総理大臣が国会から告訴されるという前代未聞の取扱いを受けても、何らの対抗措置もとり得ない人であります。(拍手)かようにいたしまして、日本一の政治は真剣な論議の対象から外され、この内外多事の際に、専ら漫画や冗談音楽などの揶揄と嘲笑の的とされ、公けの政治が俺の手から貴様の手に渡されるおもちやとされようとしておるのであります。(拍手)
 吉田総理は、国会から告訴されたという珍無類の姿で外遊をされましたが、一体何のための外遊であつたのか、何ゆえ幾たび質されても、その目的を国民の前に明らかにすることができなかつたのか。政、官、財界に亘る大疑獄と、相次ぐ失政によつて吉田内閣ががたがたに揺れていることは、すでに世界中に知れわたつていたことでございます。自分の外遊の留守の間に、与党内部に反対勢力が強大となり、そういうニュースが外遊先の国々に送られることも予期しておられたと思います。このような条件の中での外交折衝がどういう成果を挙げ得るものか、外交の玄人と自負される総理におわかりにならぬはずはございますまい。親善関係の増進と述べておられすすが、こんな外遊では、親善ではなくて、日本の国の恥を撒き散らすだけの効果しか考えられないのであります。(拍手)
 吉田総理がこの状態であえて外遊を強行されましたのは、敵は本館寺ではございましよう。悪政につずみを鳴らして攻めたてる国民の怒りからの逃避にすぎなかつたのでございましよう。親善外遊ではなく、夜逃げ外遊なのでございましよう。あわよくば夜逃げ先で土産にありつけるかも知れないと、まるで宝くじ特賞を当てて、破産から逃れるがような、はかない夜逃げ外交が実態ではなかつたかと受け取れるのでございますが、果してどうであつたかをお伺いじたいのでございす。(拍手)
 もとより国際関係に甘い宝くじの実現される道理がなく、甘い夢は冷やかな現実によつてみごと外れてしまつたのであります。ただ一つの土産は、アメリカの余剰農産物でございますが、これも予期した内容に遙かにに遠かつことは、政府自身認められたことでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
而もこの余剰農産物が、たとえ小さくとも土産という名をつけてよいものか或いは舌切雀の欲張り婆さんが汗を流して背負つて来たつづらなのか、今後の細目交渉を待たねばならんのでございますが、つづらの中から飛出すのは、傭兵、再軍備のお化けとなる公算強しと見受けられるのでございます。(拍手)
 鳴物入りで宣伝されたMSA援助の実態が、日本経済に。プラスの御利益にならなかつたことは、すでに政府自身が認められたところでございます。先方が処分の方法がなく、持て余している農産物を引き取つて、又しても太い紐をつけられるのが落ちだと思われるのであります。或いは吉田総理はアメリカ政府に対し、防衛力増強の紐を約束されたのではないかという説も流布されておりますが、果してどうであるか、お伺いしたいのでございます。
 このような約束を別にいたしましてもうすでに吉田総理は外遊中に、みずから進んで、日本を縛る紐の一本を手渡して来ておられます。ローマに滞在中に、中ソ両国の発表した対日友好宣言に対し、この呼びかけは、泥棒が巡査に邪魔になるからどけというごときものなりと、悪態の限りを尽した言明をなさつております。
 今日世界の最大の案件は、東西両陣営の話合いによる共存でございます。我が国としましても、中ソ両国との外交、経済、文化等の諸関係を軌道に乗せることが急務とされ、先頃も国会各党代表、文化人代表が中国を訪れ、吉田総理の自由党の代表も一緒になつて、国交調整に積極的な態度を示されたのであります。相手の差し延べる手をそのまま握ることがよいかどうかは、慎重考慮を要するといたしましても、手を差し延べるものの顔に唾を吐きかけて、そつぽを向くがごときは、断じてとるべき態度でないということは、申上げて間違いないと思うのであります。(拍手)中ソ両国の呼び掛けをすげなく蹴つた吉田総理の態度は、アメリカからの土産欲しさの媚態と断ぜざるを得ないのであり、而も得たものはお化けのつづらに過ぎず、あきれ果てたものと申さざるを得ません。
 一体、吉田総理は反共ということを万能薬と心得ておられるようでございますが、若しそうでございますならば、吉田総理のなさつておられることが実は共産勢力の育成にほかならんと、御注意申上げたいのでございます。(拍手)造船疑獄によつて政治に信を失わせ、一辺倒外交によつて国の独立を失わせ、無軌道経済によつて国民を塗炭の苦しみに突き落すやり方こそ、共産勢力の拡大のために最大の基盤を造つているのであり、吉田総理の政治感覚は、街頭の反共屋どもと何ら選ぶところないと、断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 吉田総理のなさることは、ことごとく日本の再建の妨害であります。人間落ち目になれば、やることなすこといすかの嘴の食い違いでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)ただこういうことが、一国の総理大臣の場合には、その災厄が一身にとどまるのではなくて国民が迷惑をするのであります。重ねて申しますが、落ち目の総理に残された唯一最大の善政は、即刻にも辞任されることと確信し、敢えて所信をお尋ねいたすものであります。すでに不信任決議の上程は必至とされておりますが、不信任が決定されるまで、この上意地汚なく頑頑張り続けられるのか、不信任に先んじて、再び抜き打ち解散の暴挙を敢えてなさろうとせられるのか、御所存のほどを承わりたいのでございます。(拍手)
 私が吉田総理にお聞きいたすのは以上でございましに、今更、事ここに至つて将来の施政の内容などをお聞きする意思は毛頭ございません。(拍手)本国会に提出されております補正予算につきましては、総理にではなく、大蔵大臣にお尋ねいたします。
 大蔵大臣は、本年度予算総額を一兆億円の枠にとどめられたことを御自慢のようでございますが、私どもはこの御自慢を、そのままに受取ることはできないのであります。小笠原一兆億円は見せかけのインチキでありまして、一般会計を特別会計に移してごまかしておるに過ぎないのであります。一般会計特別会計、地方財政の三つを合計いたしますと、昨年度二兆五千六億円のものが、本年度は二兆五千九百三十二億円となり、実に九百二十六億円の膨脹であることは、否定できないことでございましよう。大蔵大臣は相当に詭弁をお用いになります。もう一つの御自慢の国際收支の改善にいたしましても、一体その実態は何なのか。コストの低下によるものではなぐ、実態は出血輸出であり、必要な原材料の輸入を抑えての食い潰しに過ぎないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 こうしたことを別にいたしましても、今回の予算の中身を検討いたしますと、誠にお粗末且つ不健全と申さざるを得ないのであります。例えばその中心になつております災害復旧にいたしましても、政府は常に三・五・二の比率を口にして来られましたが、本年度の復旧は三割を割る二割五分でございまして次年度への負担を重く残しておるのであります。然らば来年に至つて、日本経済が急に好転するという見通しはないことでございまして、こういうやり方は、破産前のぼろ会社が、未払金を隠してバランスシートの辻棲を合わせておるのと同じインチキ経理だと言わざるを得ないのであります。(拍手)そもそも小笠原大蔵大臣は、災害復旧ということについてどのような基本計画を持つておるのか、お尋ねいたしたい。過年度災害を見ますと、例えば農林災害の復旧は、二十六年度分が四年経つた今日六五%、二十七年度分が三年かかつて五八%、昨年度災害は、保守三党の三・五・二比率の申合わせにもかかわらず、昨年、今年の二カ年で、僅かに三二%に過ぎないのでございます。而もこの率は、大蔵当局が関係当局の災害査定額を勝手に、一方的に天引きした数字をもとにしてのことであり、国民を愚弄するも甚だしいと言わざるを得ません。災害復旧だけではございません。失業対策にしても、中小企業の年末金融にしても、公務員の給与にしても、地方財政の赤字の補填にいたしましても、いずれも真に必要な予算を計上しないで、国民経済に大きな穴を残しておるのであります。要するに大蔵大臣の一兆億円の太鼓は、インチキ且つ不健全な予算の実態を蔽い隠す隠れ蓑に過ぎないのであります。
 但し、このぼろ会社のインチキ経理予算には、一つだけ含み資産が隠されております。それは防衛関係の数百億に上るところの未使用分でございます。この未使用分を表に出して、当然支出すべき災害その他の未払金に当ててバランスシートを健全なものにすることを私どもは要求いたすものでございます。国土が破壊し、国民が飢に泣いて、一体何の防衛かと言わざるを得ないのであります。防衛関係費だけは使いきれん分まで残しておいて、これを憲法改正、本格的再軍備まで温存しようとするのでありますならば、私どもは小笠原大蔵大臣に対しましても、吉田総理に対してと同様に、即刻おやめになることが唯一最大の善政なりと申さざるを得ないのであります。(拍手)
     ―――――・―――――
#7
○議長(河井彌八君) 諸君に一言申上げます。
 議長は衆議院議長と共に英国議会の上院及び下院の議員八名を御招待いたしましたところ、十一月二十三日空路羽田に到着されました。
 その後一行は両院の議長及び議員としばしば歓談の機会を持ちまして、日英両国の親善友好に努め、且つ又我が国の産業及び社会問題につき各地を視察せられ、我が国状をよく知ることに努められましたことは、我々の深く喜びとするところであります。
 只今議員団の一行が傍聴のために当議場に見えられましたので御紹介を申上げます。
 団長のミスター・ゴッドフレー・ニコルソン。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#8
○議長(河井彌八君) ミスター・ジヨン・エドワーヅ。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#9
○議長(河井彌八君) バーデン・パウエル卿。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#10
○議長(河井彌八君) ノーエル・バクストン卿。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#11
○議長(河井彌八君) ミスター・ロバート・ジエンキンズ。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#12
○議長(河井彌八君) ミスター・フレツド。ブラツクバーン。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#13
○議長(河井彌八君) ミスター・イアン・ホロビン。
   〔拍手〕
    ―――――――――――――
#14
○議長(河井彌八君) ミスター・フランク・トムニー。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#15
○議長(河井彌八君) 只今の江田君の質疑に対しまして、吉田総理大臣の発言を許します。吉田内閣総理大臣。
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(吉田茂君) 答弁に先だちまして、英国議員団一行を政府を代表いたしまして歓迎いたす言葉を述べ、歓迎の意を表します。(拍手)
 お答えをいたします。
 第一問は、私の辞職の時期如何ということであります。私の方針といいますか、気持は、過日自由党にあてた私の書簡において明瞭であるがごとくに、第一、この政局において政権を目標として政党が離合集散いたすということは誠になげかわしいことであると、同時に、政権に恋々するがごとき疑いを国民に抱かしめることもよろしくないから、(「恋々しているじやないか」と呼ぶ者あり)ゆえに党において如何に善処するかということをきめてもらいたいと考えて書簡を出したわけであります。その趣旨は、私の書簡に明瞭であると考えるのであります。(拍手)又私の辞職の時期は従つて党議により、党の意思と相表裏して決定いたすつもりであります。反対党の諸君としては即刻辞職せよということを御希望でありますが、その御希望は私においていれることができないことを御承知願いたい。(拍手)
 次に、平和条約及び日米安全保障条約は隷属的地位なりと言われたのでありますが、この隷属的地位と言われるこの条約は、国会において正式に承認せられたものであります。その当時は隷属的地位なりというお話は承わらなかつたのでありますが、併しながら今日においては、これが厳然たる条約であり、この条約を尊重することが日本の名誉であると心得るのであります。(拍手)
 その次に指揮権発動の問題でありますが、これは政府は法の手続によつて、法規によつていたしたのであります。又私の決算委員会の召喚に応じないこともまた法規の手続によつていたしているのであります。これが裁判になつている以上は、裁判の決定を静かに待つべきものであると考えるのであります。又芦田内閣直後の私の声明については、今なおこの信念は変つておりません。(拍手)即ち綱紀の粛正、道義の高揚については、政府として又私として、あくまでもその線に向つて邁進いたすつもりであります。
 外遊の目的については、昨日ことごとく詳しく申述べたのであります。これは私の演説を御覧になつたならば、いやしくも普通の常識のあるかたにおいてはわかるであろうと思います。私はお土産ということを申したことは一遍もないのであります。外遊はこれは親善の目的であります。お土産を目的といたしていないのであります。お土産は諸君の言う言葉であつて、私は曾つて申上げたことはないのであります。併しながら親善関係が増進することによつて、これが国家のためになり、お土産になることはあり得るのでありましようが、これは今後に待つべきである、直ちに手を出してお土産が欲しいというような顔つきをいたしたことは一度もないのであります。又米国において再軍備の紐のついた約束をしたということでありますが、何を証拠としてこういうことを言われるかわからないのであります。いたずらに暴言を吐き、いたずらに誹謗するということは、議会政治でないことを御承知願いたいと思うのであります。
 又中ソ宣言については、これは世界的にその宣言なるものが空虚であり、そうして又これは、外国においての一般の批評でありますが、この宣言なるものは、共産主義国のタクチツク、戦術は始終違うが、併しながらその目標は同じであるということを言い、又次に四カ国会議という提言は、これまた列国が拒否することになつていることは諸君御承知の通りであろうと思います。かくのごとく共産党の宣言を頭から信ずるということは愚の骨頂であります。決して表面通り受取らるべきものではないということを諸君御承知になつて、外交或いは国際関係を深くお考えになつて善処されることを切望いたします。(拍手)
   〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(小笠原三九郎君) 一兆円予算に対して、一般会計、特別会計及び地方財政を加えると昨年度より殖えているのではないかということでございましたが、申すまでもなく一般会計、特別会計及び地方財政を加えた歳出で、過年度との比較を行うことは適当でございません。例えば郵政事業特別会計の予算のごとくに業務量の増加に伴つて当然その規模を拡大するものの歳出を含んでいるのでありますから、これはよくおわかりのことと思うのであります。国民経済との関連に七いて財政規模を考える場合には、一般会計と財政投融資との純計を目安とすればよいのであります。一般会計、財政投融資の純計においては、今回の補正を加えましてもなお、前年度よりおおむね六百億円を下廻つており、最近における物価の着実なる下落、国際收支の顕著なる改善等は、一兆円予算所期の目的が漸次達成されつつあることを物語るものであります。(拍手)
 第二に歳出面で災害復旧のことについてのお話がございましたが、政府としては財政の健全化方針を貫くために、補正予算の編成におきましても財政規模の膨脹は極力避けたのでありまするが、災害復旧、社会保障等の経費については、数字に見られます通り、極力重点的に増額を図つたものでありまして、決して後年度に負担を残すような不健全なものではありません。なお災害復旧については申すまでもなく、でき得る限り促進したいのは勿論だが、但し財政全般の見地から、重点的に国費を適宜按排するものであることはこれ又御了承願わなければなりません。
 防衛関係につきましては、節約によつて修正減額を行なつた四十五億円のほかには、いずれも使途が今後明瞭に使われるものでありまして、目下のところ不用と見込まれるものがないので、これを財源とすることは困難であつたことをお答え申上げたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(河井彌八君) 東降君。
   〔東隆君登壇、拍手〕
#19
○東隆君 私は、日本社会党第三控室を代表して首相と大蔵大臣の演説に関連して質問をいたします。
 すでに首相は引退を決意されていますので、首相の引退が飛ぶ鳥あとを濁さずということであつて欲しいのであります。即ち首相の政治的良心に訴えて過去にあつた暴政、不明朗なこと、過誤等に対し、この際釈明すべき責任があり、まさにこの臨時国会こそ最もよい機会と存ずるからであります。
 第一に明らかにしたいことは、政府は如何なる理由によつて臨時国会の開催を遅らせたかということでございます。衆議院は今年六月、臨時国会の開催を憲法第五十三条に基いて要求しておりますし、我が参議院も過半数の一意を以て臨時国会の要求をしております。五ヵ月を経過した今日、申訳的に開会をしたことは、法の不備に隠れて憲法の精神をふみにじり、世論を無視して民主主義の原則に反した横暴の措置であると断ぜざるを得ません。(拍手)第十九国会直後の自由党も参加した全体会議の国会自粛の決議を如何ように政府は考えられているのか、改めて伺いたいのであります。一昨年も昨年も、本年も、補正予算の臨時国会を通常国会と接近して開催し、議会の審議を困難ならしめた責任は重大であります。勇退を決意された首相はこの問題について申開きをしてピリオツドを打つ責任があると思うからであります。(拍手)
 第二に、総理は臨時国会開催の要請を知りつつ決算委員会の喚問を逃れ、無理な外遊をされました。五十余日に亘り自由主義諸国を歴訪され、各種の問題に隔意なき意見の交換をされ、相互の理解を進めるために、老躰に鞭打つて旅行せられたことに敬意を表します。併し若し総理の出発に際し羽田に至る沿道が、あのものものしい警備の代りに花しぐれの歓送であつたならば、又出発に際して外遊反対の怒号の代りに、英国の老宰相チヤーチルの渡米に当り、シヤドウ内閣の首班アトレーがねぎらつたようなシーンがあつたとするならば、私は首相の外遊について敬意のみで、質問をする必要はないのであります。首相は自由主義諸国との親善について説かれております。併し総理のアメリカ一辺倒の外交は、アメリカ以外の国々においては余り好意を示されていないのであります。十一月十一日発表された首相のお土産ともいうべき日米共同声明は、日本の経済自立とはおよそ反対のアメリカ依存の経済を進めるものであります。アメリカの余剰農産物を国内に輸入するのは紐付き資本の導入以外の何ものでもありません。アジアの平和に寄与するとありますが、戦争の方向に日本を追いやる虞れが多分にあります。東南アジアの諸独立国は、日本の吉田首相によつて演じられた外交に好意はなかなか持てないようであります。日本が今後国交を回復し、友好をあたためる国は、先ず東南アジアの諸国であり、進んで中共と手を握り、更にソ連とも国交を回復すべきでありましよう。(拍手)
 吉田首相の親友、日本民主党の総裁鳩山一郎氏は、過日の民主党創立大会に挨拶をしていますが、吉田首相の考えとは大分違つているのであります。「吉田君の秘密独善外交は危険千万である」と申しております。又「ソ連、中共との戦争状態終結の方向に何らかの外交手段をとつていたならば、すでに戦争状態は終結しているはずである。ソ連、中共と交通、貿易を好まぬ現政府のやり方と私ははつきり正反対の意見を表明する」とも言つております。反共に老いの一徹を示している首相はこれを如何ようにお考えになりますか、伺います。
 旧小笠原諸島住民の帰還問題に関する首相の努力を多といたしますが、水爆の補償や実験の禁止については如何ようになつたでありましようか。(「そこだそこだ」と呼ぶ者あり、拍手)この国民関心事について報告がございません。まさか首相は、岡崎外務大臣のように実験に協力をなさる意思はありますまい。その辺の事情を明らかに伺いたいのであります。(拍手、「その通りだ」と呼ぶ者あり)更に、なぜ首相は今後重大な関係のある東南アジア方面の旅行を中止されましたか。嫌いな社会主義国家があるからでありますか、その理由を明らかに願います。(拍手)更に昨日の演説の中に、平素計画嫌いの首相が、「生産と貿易の拡大を総合的、計画的に進め」とありました。この点は外遊後の大きな変化だと感心をいたしたのであります。総合的、計画的ということについて如何ような心境の変化を起されたのか、そのことについて御説明を願いたいのであります。(拍手)
 第三は、勇退される総理の明らかにすべきことであります。それは検察庁法第十四条による指揮権の発動で、佐藤榮作自由党幹事長が逮捕を免かれました。そのために犬養、加藤、小原の三法務大臣が迭つたことであります。一国の総理として政権にかじり付くためにあのような行動をとつたものと断じます。甚だ以て厚顔無恥、威信を国民の前に失い、又対外的にも甚だ面白からざることでありますが、今日退陣を決意された首相は、このことにつき如何なる所懐を持たれているか、その心境を伺いたいのであります。国民に向つてあつさり陳謝されるならば一層よいと思います。理由はあのような手を使われたことは、憲政の常道から外れ、国民道義の高揚を念とせられる総理としても遺憾なことであるのみならず、政治上の大きな悪例になるからであります。
 第四の質問は、あの無効国会、変則国会についてであります。議会は法律を制定し、予算を議決し、みずからを律するためにも法律を作ります。その際、法律にないことは先例によります。一見不思議な現象であつても、かくかくの先例があるとなり手と、議会人はその先例に従うことを以て難問を解決しているのであります。さて、このような常識的な立場から、先般の第十九国会の末期の衆議院における会期延長に関する議事の進め方のごとき先例が我が帝国議会時代より今日の国会までにあつたでありましようか。若しないとするならば将来恐るべき先例を作つたこととなり、何らかの方法によつて是正をする必要があると思います。我々は無効国会で合計十七の法律が取扱われているのを知つております。如何に成規の手続がとられたといたしましても、条件を備えない議会できめられたことは、ゼロを幾倍しても結局ゼロというよりほかに考えようはございません。行政府にあるものが立法府に立入り堤議長の会期延長はできなかつたということが報道された後、如何なるものの圧力か存じませんが、多数を以て議決されたごとき書面を作り、参議院の召集を行い、参議院をして大いなる過誤に踏み込ましたことは言語道断であります。事は議会のことで内閣の関知するところでないと申されるならば、改めて私は自由党総裁であつた吉田首相にただ一言、あのことはよくなかつたと答えて欲しいのであります。如何でありますか。人の最後にはよい言葉を言うものであります。(笑声)
 第五は、政府の財政政策の不手際から、中小企業者、勤労階級が非常に苦しめられているということであります。大蔵大臣は演説で、社会保障関係経費を増額されたことを申されているが、要生活保護者並びに失業者は政府の財政施策の影響を受けて、本年第四四半期には激増せざるを得ない現実になつております。このことに目を蔽い、既往の経費増に対する措置しか講じていないのであつて、まさに焼石に水のごときものであります。(拍手)而もその財源たるや、公共事業費その他の繰延べ、節約したものを組替えたに過ぎないのであります。辻褄合せの補正予算である以上、我々は大蔵大臣の腹の中の冷酷無断なことを難ぜざるを得ません。(拍手)大蔵大臣はこれに対し、如何に弁解せられるか、伺いたいのであります。中小企業家並びに勤労者は、年末を控え重大な生活の不安に襲われています。中小企業者の年末金融、勤労者の年末手当等、政府は如何ように考えているか、この際関係閣僚に併せて質問をするものであります。
 第六は、洞爺丸事件に関連した質問であります。この事件は、吉田首相が外遊反対の国民の声をあとにして出発されたあの九月二十六日の夜の出来事であります。丁度その夜、私どもは東南アジヤの旅から羽田に着きました。私は郷里が北海道であり、衆議院の冨吉、菊川両代議士のこともあつたので、二十七日午後五時羽田を飛び立ち、札幌経由で二十八日朝六時函館に着き、それから十月八日まで彼の地にあつて相努めました。この間にあつて私の感じたことは、あのような惨事は、少し注意をすると起さずに済むということであります。洞爺丸の出航には相当な無理がありました。安全のための手段は講じられていなかつたのであります。この責任の追及は海難審判等にゆだねるといたしまして科学技術の振興に現政府がもつと力を入れておるならば、あの第十五号台風は避け得られないといたしましても、洞爺丸の被害はみなかつたでありましよう。ここに残念なことがあります。それは朝鮮事変の終末と共に、アメリカの援助の下にやつていた南北両地点の定点観測の仕事が三億数千万円の予算を節約するために廃止されたことであります。上層気流の定点における観測ができ、日本の気象観測上面期的な仕事が継続されていたならば、あの惨事は未然に防げたでありましよう。この定点観測の予算は、我々の百方の努力にかかわらず、大蔵省も運輸省も極めて冷淡で中止になつたのであります。これは昨年の今頃のことであります。運輸大臣はよく事情を御承知のはずであります。洞爺丸の惨事はあの定点観測が続けられておれば、的確に予知され、避け得られたと考えます。現政府が科学技術の振興に熱意がなく、目先のことに迷わされて、加えて大蔵省というそろばんずくの役所の発言が如何にも強過ぎるために、日本の科学技術振興は阻まれています。行政整理というような場合にも、とかく犠牲になるのがこの科学技術の面で、ここに諸々の禍根があると思います。科学技術の振興に関して総理は最近頻々として起きる災害を通して如何に考えておるか、お伺いをいたします。大蔵大臣、運輸大臣に対しては、定点観測の重要性を如何に認識せられているか、承わると共に、この予算化について考えているところを併せて伺うものであります。
 第七は、一兆円予算についてであります。政府、特に大蔵大臣は北海道の災害について極めて冷淡な発言を第十九回国会以来されておるのであります。まさに取付く島のない返答でありまして、徹底的な災害を受けた北海道に対して、つい最近まで大蔵大臣の冷酷無慚な声明が新聞に現われておりました。何が大蔵大臣をあのように冷酷にするのか、大きな疑問を持ちました。そうしてそれが政府の一兆円予算の堅持にあることを感得をいたしま、た。大蔵大臣が冷酷無価な理由は、この一兆円の枠を堅持するという迷信から出発していることがわかりました。防衛関係費を中心とする本年度への過年度繰越額は一千二百七億円に達しています。従つて本年度の実際の財政規模は一兆一千二百億円を超えているのであつて、このことは政府の一兆億円の迷信を打破るものであると言わなければなりません。一兆円の枠は破られているではありませんか。九千九百九十八億というような五条の橋の弁慶の刀の数のような数字で国民を欺きながら、大蔵大臣は誰のために、何のためにこの擬装一兆円の枠を振り廻すのであるか、その理由を明らかにして頂きたいのであります。
 第八は、災害に対する基本的な法律を制定する意思があるかどうかをお尋ねいたします。御案内のごとく毎年災害の都度たくさんの法律を作り、而も盗人を見て縄をなうような災害対策では、予算の効率的な利用もできません。そこで災害に対する基本的な法律を速かに制定し、臨機応変の態勢を作るべきだと思うので、このことについて第十五号台風等災害対策連絡本部長をされている加藤国務大臣にお尋ねをいたします。基本的な法律を必要と思うか否か。若し必要とするならばその構想を伺いたいのであります。
 第九は、台風の影響は単に農漁業のみでなく、中小企業者、労働者にも大きく影響しているにかかわらず、これらの面に対して施策が講ぜられていないのは残念であります。その理由は一体いずこにあるか。彼等を潤す施策があるならばこの際通産、労働の各大臣より明らかに承わりたいのであります。吉田首相は国民世論の反撃にあつて、今その地位を去らうとされております。この際私は老首相に、不明朗な政治的工作をし、政権たらい廻しの策を弄するようなことをせず、首相の引退が我が国民主政治を確立し、我が憲法の精神を活かすように行動されることを期待をいたします。それは速かに責を負い、退陣をすることであると存じますが、これには、首相の行動を以てお答えを願うよりほかに方法はないのであります。最後に、私はたくさんの質問をいたしました。これに対する首相の答えは善言を似てお答えを願いたいのであります。あえて私は古い言葉を申します。鳥の将に死せんとするやその声哀し、人の将に死せんとするやその言や善し。
 以上で私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 何故に臨時国会を早く開かなかつたか。この御質問に対しては、明らかに申しますが、諸般の事情から考えて見て、今日開くことが最もいいからと考えて開いたのであります。
 それから決算委員会の喚問というここについてはすでにお答えをいたしました。静かに私は裁判の決定を待とうと思うのであります。
 又私の外交が独善、秘密外交なりという(「その通り」と呼ぶ者あり)お言葉でありましたが、私は秘密外交でもなければ、独善外交でもない、民意に従い、又国の利益に従つて外交をいたし、又必要な、公開すべき外交に関する書類その他については、随時発表をいたしております。
 水爆の問題についてお答えをいたしますが、すでに共産主義国家と自由主義国家との間に熾烈な競争がある以上、自由主義国家として最も有効なる兵器弾薬その他を考えるということは当然であります。これを如何に利用するか、これは現に国連の総会において問題となり、ユネスコにおいて問題とされ、その平和的利用ということについて列国が極力その学問的及びその他の知識を集めて善処いたしておるのであります。静かにその決定を待とうと思うし、又、日本政府の代表といたして、ユネスコその他において或いは国連等において、その平和的利用については極力これを主張いたしております。又、水爆による漁業者その他の被害につきましては、実情を似て米国政府の深甚なる注意を促しております。又米国政府もこれに対して最も同情的に問題の研究をいたしております。いずれそのうち米国側から満足な回答を得うると私は考えるのであります。
 又予算その他の処置について総合的、計画的にやることについて御質問がありましたが、これは予算案に盛り込まれた予算計画等について御承知を願いたいと思います。
 又、私の進退については先ほど明確に申した通り、(「何が明確だ」と呼ぶ者あり)政党政治、民主主義の原則に従つて行動いたす考えであります。(拍手)
   〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答え申上げます。
 中小企業者並びに勤労者に対しましては、御承知のごとく再度に亘つて少額所得者に減税を行う等、いろいろ措置は講じて参つたのではございますが、併し年末金融等につきましては、中小企業者に対しては、それが円滑化のために必要な措置を講じて参る考えであります。先ず指定預金について申上げますと、十一月の引揚予定分の延期を決定いたしましたほか、十二月に引揚期の到来する分につきましても、中小金融機関の資金繰り等を見まして、引揚を延期する所存であります。それからなお商工中金につきましては、日本銀行よりの資金手当についてその枠を若干拡げる所存でございます。更に国民金融公庫、中小企業金融公庫につきましては、資金情勢によりまして第四四半期の枠の繰上使用ということを考慮いたしております。更に中小下請企業への支払促進につきましては、政府においても先般関係金融機関の積極的な配慮方を要望いたし、年末中小企業金融の円滑な推移を期している次第であります。又中小企業に対する金融を容易にするために、銀行等につきましては、中小企業に対する貸出が増加した場合に、貸倒準備金の積立限度を控えることといたしました。このほか課税上の取扱いについて、不良売掛代金の損失計上、租税の徴收猶予等に対しましては、経済健全化政策の進展に伴う中小企業者の金融状況に顧みましてでき得る限り特別の措置を講ずるようにいたしております。
 なお勤労者の年末手当に対する課税については、いろいろ御意見がありますが、事業所得者との負担の均衡の関係もあり、又現在の財政收入に及ぼす影響等をも考慮いたしますと、これが減免措置を講ずることは適当でないと、かように考えております。
 その次に一兆円予算の枠に隠れて云々ということでございましたが、本年度の一般会計予算は財政健全化の建前から、一兆円の枠を堅持することといたしたのでありますが、今回の補正予算の編成におきましても、この方針を貫くために、極力財政規模の膨脹を避けたのでありまして、数字にのみこだわつたわけではございません。二十九年発生災害の復旧につきましては、現在まで相当予備費支出等を以て措置して参つたことは御承知の通りでありますが、今回年度内二割五分の復旧を目途といたしまして、予備費充当額のほかに六十九億円を新たに計上いたしました。なお年度内復旧率の二割五分は、最近数年の発生災害復旧率に比べまして、ほぼ最高に近いものであり、現在の財政需要の下においては可能な限りの措置を講じたものでございます。
 なお防衛費は、予算に繰越があるではないかということで、一兆円についてお話でございましたが、これは経費の性質によりまして毎年度若干ともあるものでありまして、各年度の財政規模を比較する場合においては、これを除、外して考えるのが通例でありますることは、東議員もよく御了承のことと存じます。(「ごまかすのが上手になつた」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(愛知揆一君) 一般的な中小金融問題につきましては、只今大蔵大臣から詳細に答弁がございましたから省略いたしますが、なお、ほかに、例えば商工中金の手形の割引、手形担保貸付の期間を約一カ月延長するというような措置を併せ講じております。
 次に、風水害によりまする被害小企業者に対する措置でございますが、これは前例等も篤と勘考いたしまして、今国会に昭和二十九年八月及び九月の風水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法というものを提案いたしまして、十分に御審議を願いたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(小坂善太郎君) 中小企業の年末金融対策につきましては、通産、大蔵当局から答えられましたのでございまするが、なお年末金融の原資といたしまして、労働金庫の活用に着目いたしまして、この点によつての資金調達を考えたいと思つております。又風水害、冷害等に伴い発生いたしまする失業者に対しましては、すでに北海道或いは九州に対しまして失業対策事業の拡大を行なつておりまするが、又今般補正予算において組まれておりまする緊急就労対策事業等につきましても、お認め頂けますと思いますが、時期的、場所的に十分な考慮を払つて参りたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇、拍手]
#24
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 政府は、今回の災害に対しまして、殊に北海道の災害に対して冷酷無断であるというような御質疑があつたのでありますが、政府は決して今回の災害に対して冷淡でもなく、又軽視もいたしておりません。即ち昨年と同様に、災害が発生すると共に速かに災害の連絡本部を設けまして、各省庁の連絡調整、均衡を図ると共に、各省庁の担当大臣及び当局者はそれぞれ実地を視察いたしたのでございまして私といたしましても災害発生の各地方を視察いたした次第でございます。(「視察しただけでは復旧しない」と呼ぶ者あり)今日まで政府は予備費を支出すること三十四億以上、繋ぎ融資といたしまして二十七億何千万円を支出しておるのでございます。財政困難な場合にこれをいたしましたことは、相当努力いたしたことであろうと思うのでございます。又各公庫等よりいたしまして特別融資の伜等の設定をいたしましたので、今回提案しました農林中金その他の関係機関を通じましてこれを合計いたしますと、実に百三十億円以上も斡旋、措置いたしたのでございまして、もとより災害地といたしましては満足でないかも知れませんが、政府としてはできるだけの努力を払つたつもりであるのでございます。
 次に、東君は、災害対策基本法の制定についてどう考えておるかという御質問でありましたが、お説の通り、災害が発生するその度ごとに一々特別措置法等を制定いたしますることは望ましくないのであります。私は本年度の臨時の災害対策連絡本部長でありますから、私からこういう基本法についてお答えをすることはどうかとも存じますけれども、私といたしましては、御承知の通り現在におきましても、公共土木施設災害復旧、又は農林水産施設災害復旧につきましては、それぞれ基本法がありますけれども、御意見がありますので、今後法律の細部を検討する必要はあると存ずるのでございます。
 災害対策立法と申しましても、殆んど各省に亘り、いろいろな立場について災害対策が行われなければならんので、関係の法律も多数に上りますから、基本的構想と申しましても一概にお答えすることは困難でございまするが、ただ公共土木とか、農林水産業施設の災害復旧につきましては、現行法の国庫負担率を引上げるような改正は適当でないと、かように考えておる次第でございます。
 右答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。
 洞爺丸の事件が痛恨極まりないことであつたことは今更申すまでもないのでございますが、これの原因を科学的に探究し、そうして再びこういう問題の起らないようにするのが私どもの責任だと思つておるのでございまするが、只今海難審判所、函館におきまして、理事のほうよりの申立てで最近に審理を始めることになつておりますので、これによりましていろいろなことが明らかになり、その危険を除去することに努力をすることになると思うのであります。同時に私どもといたしましては、運輸省内に造船技術審議会を設けまして、この審判所の審理の結果を待つておりますると相当時がかかる虞れがありますので、これらの只今申しました運輸省内の技術研究の造船技術の審議会におきまして、新らしい今度連絡船はどういうふうにしたらいいかという問題を早急に結論を出すように、只今審議の途中でございます。又お話のありました北方定点観測がこの際ちやんとやられておつたならば、洞爺丸事件は起らなかつたであろうというお話でございましたが、これは北方定点観測の必要なことは私どもも深く信じておるのでございまするが、今回の洞爺丸事件に直接関係あつたとは技術的の方面からの報告によりましても考えられないのでございますが、いずれにいたしましても、北方定点観測はできる限り早く復活させて頂きたいという心持を以ちまして只今来年度の予算におきまして政府部内において折衝中でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(河井彌八君) 杉原荒太君。
   〔杉原荒太君登壇、拍手〕
#27
○杉原荒太君 外遊からお帰りになりました吉田総理に対し、日本民主党を代表して質問いたします。質問の主題は、主として外交問題に関するものでありまするが、これを五つの項目に分けてお尋ねいたします。
 第一の項目は、我が国の独立完成に関することであります。我が国は平和条約の結果、一応独立回復の形を得たのでありまするが、実質的に見まするならば、日本の独立は今なお未完成の状態にあるものと申さなければなりません。而して独立完成の実を挙げるためには、国政の全般に亘つて一大刷新を要するものがあることは勿論でありまするが、外政の方面から見ましても、独立完成の実を挙げることは、今日の日本外交の一つの大きな目標でなければなりません。独立完成を目標とする外交の上から見まして、未解決の問題が少くないのでありますが、ここには問題の範囲を限定いたしまして、総理の外遊に関連し、二つの点についてお尋ねいたしたい。その第一点は、我が国の本来の領土の回復問題の一部をなすところの琉球及び小笠原諸島の地位、即ちこれらの地域の施政権の回復に関する問題であります。この問題は国民のひとしく注目しているところであります。昨日の総理の御演説の中では、この点にはお触れにならなかつたのであります。併し先に発表されました日米共同宣言によりますというと、これらの問題について「検討が行われた」と述べてある。そのいわゆる検討の結果をお示しを願いたい。第二点は、日米安全保障条約の改訂に関する問題であります。日本の独立完成を目標とする外交からいたしますれば、日米安全保障条約及びこれを前提とする行政協定は、いずれ解決を要する問題として考えられるのでありまするが、総理は今度の米国政府当局との会談においてこの条約の改訂のおおよその時期の問題について話合われたかどうか。このおおよその時期の問題ということは、我が国内における諸計画を立てて行く上から申しましても、極めて重要な関係を持つ事柄であるから、特にお尋ねするのであります。又これに関連する我が国の防衛態勢の問題について、何らかのお話合いがなされたかどうか。なされたとすれば、その結果をお示し願いたいのであります。
 第二の質問の項目は、日本経済再建の見地から見た外交問題についてであります。自立経済の達成は、今日我が国の最大の課題であることは言うまでもありません。而して自立経済の達成のためには、国内施策と相待つて、対外関係の積極的打開こそ不可欠の要件であります。従つて経済再建の実を挙げることは、日本外交の一大目標でなければなりません。然るに今日までの我が国の外交は、この点において遺憾ながら国民の期待するような実績を挙げておりません。経済再建を目標とする外交の上から見ましても、問題とすべき事項は多岐に亘つておりまするけれども、ここには二つの点についてお尋ねいたしたい。第一点は、今回の日米会談によつて、余剰農産物の件以外に、日本の経済再建に役立つような成果が挙げられたとすれば、その具体的項目をお示し願いたい。我がほうの要請事項の実現については、愛知通産相らが非常にお骨折りになつた。この点については、私は深く敬意を表しておる。併しその御努力にもかかわらず、全体的に見て思わしい成果がなかつたとすれば、総理はどういう点にその原因があると見ておられるか。その点についての総理の御見解を示してもらいたいのであります。第二点は、日英関係においてであります。日本と英連邦諸国との通商関係の改善のためには、いわゆる不正競争の防止の問題、ガツトの正式加入の実現、通商航海条約の締結など、具体的の外交措置を要する問題があるのでありますが、総理はこれらの問題について英国政府当局と話合われた際、先方は如何なる意思を表示したか、又結局この問題はどう解決されるのであるか。昨日の総理の演説の中には、その点触れておられないので、これを明らかにして頂きたい。更に今日の国際関係の実際より見ますれば、経済関係と政治関係とが不可分に結びついている場合が少くない。従つて国際間の経済関係をよくするためには、単なるいわゆる経済外交だけでは不十分である。政治的外交の裏付けを要する場合がむしろ多いといつて差支えないのである。そういつた観点から、対英関係についてもう一つお尋ねいたしたいことは、例えば東亜の平和維持についての日英協調というような政治的問題についても、特にお話合いになつたかどうか。あつたとすれば、その結果と共にお示し願いたいのであります。
 第三の質問の項目は、戦争の防止、平和の維持に関することであります。戦争の防止、平和の維持ということは、日本外交の大きな目標でなければならない。これがためには我々は自由諸国との協調はもとより必要であり、殊に日米協力の基本線は崩してはならないとする立場に立つものでありまするが、同時に共産圏諸国との対立、緊張をできるだけ緩和して行くための外交努力は、怠つてはならないと信ずるものであります。(拍手)総理は昨日の演説でも、共産主義の脅威を力説されました。同感の部分もあるのでありまするが、併し我々は国内施策としての共産主義対策と、外交政策としての共産諸国に対する国交問題とは、これを混同してはならないとする立場に立つものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)そこで総理にお尋ねいたしたいことの第一点は、総理の外遊中に中ソ両国の発表した対日共同声明に対し、総理は如何なる見解の下にこれに対処しておられるかということであります。先ほどもちよつと触れられたのでありまするけれども、議員に対して何か切望するということを申されましたが、私は総理に対し、この点をはつきりとそのお考えお聞きしたいのであります。又この点に関連して米英等の首脳者と話合われたとすれば、それについてお示し願いたい。第二点は、日米の共同声明を見ますと、自由諸国の団結のことについては語つてありますが、共産諸国、殊にソ連、中共との関係の調整や、貿易促進の問題については話合わなかつたのかどうか。その点についてお尋ねいたします。第三点は、吉田総理は一昨々年の十二月二十四日付ダレス宛書簡において、こういうことを言つておられる。「わたくしは日本政府が中国の共産政府と、二国間条約を締結する意図を有しないことを確言することができます。」こう言つておられますが、総理は、今日でもこの書簡はなお生きているという御見解であるか。又今日でもこの通りの方針で対中共問題を考えておられるかどうか、お尋ねいたします。
 第四の質問の項目は、アジア外交についてであります。アジアの平和と繁栄に貢献することは、日本外交の一つの目標であるべきものと信じます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)今日までの吉田内閣の外交の実績から見ますと、アジア外交は特に振つておりません。即ち朝鮮や支那大陸との関係は勿論、東南アジアの新興国との関係の調整もはかばかしく行つておりません。ただ遅ればせながら、僅かにビルマとの関係が打開されて参りましたことは御同慶に堪えません。併しアジア諸国全体を通じてその間において我が国の現におかれている地位を顧みまするというと誠に寒心に堪えないものがあります。一方、今日では中共のアジア諸国に対するインフルエンスの増大と、中共に対するコロンボ諸国などの態度をもとにしてみますならば、中共問題は、単に対中共だけの問題として切り離して単独に考えるわけに行かない。他のアジア諸国に対する政策も、対中共問題との関連を全然度外視しては考えにくい情勢に進みつつあると思われるのであるが、政府はこの点について如何なる見解の下に、対アジア政策を進めんとしておられるか。先ずこの点をお尋ねいたします。
  次に、総理は外遊中、ワシントンのナシヨナル・プレス・クラブの演説において東南アジア経済協力機構の必要性を力説され、又米国政府当局との会談においても、この点に触れられたようでありますが、総理の東南アジア経済協力機構に対する構想の内容竹どういうものであるか。又それに対する米国政府当局の反応はどういうことであつたか。このことを、その実現性について総理の率直な感想と共にお示し願いたいのであります。
 最後に、第五の質問の項目は、外交運営の基本原則に関することであります。近代外交の運営は、昔の宮廷外交や官僚外交の場合と違つて、国民的基礎に行われることが大原則であります。新憲法においては、旧憲法の場合と違つてこの大原則を宣明しておるのであります。およそ一国の外交如何は、産業、経済等各般に亘つて密接な関係があると共に、同盟条約などの例によつても明らかな通り、国家の存亡、民族の運命を左右する重大な事柄であります。国家国民にとつて、かくのごとく重大なる意義を持つ外交が、独裁的に行われ、国民の知らない間に対外関係において既成事実ができ上つてしまつておつたというようなことであつては、国民はたまつたものではありません。(拍手)又我々は外交上の重要問題については、政党政派を超越して真に国家的、国民的立場から十分の意思疏通を図つて行く二とが是非とも必要な行き方と信ずるのであります。(拍手)又、国民的支持のない外交は内から崩れて行くことは、幾多の事例がこれを証明しております。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)或いは、秘密独善の外交の排撃といい、或いは国民外交といい、外交の民主化といい、超党派的外交など、表現の用語は違いますけれども、これらは要するに近代外交の運営の大原則の実際政治における実現を要求する当然の叫びであります。貴重な成果を得て外遊から帰られた吉田首相は、外交運営に関しまして従来とつて来られたやり方についての問題はともかくとして、今後の日本の外交運営は如何にあるべしと考えておられるか。この点についての総理の所信をお尋ねいたします。
 以上の諸点は、吉田総理の政治上の進退如何にかかわらず、今後の我が国外交の進め方に重大な関係を持つ事柄であると思われますので、特に懇切なる御答弁をお願いいたしまして私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 第一、小笠原、琉球の問題についてのお尋ねでありますが、この問題は今日に始まつたことではなくして、終戦後日米の間には絶えずこの問題について話合つておつたのであります。当時アメリカ側の主張は、共産国との間の関係から言つてみて防禦の関係からいつてみて、この島は国防の要地であるのであつてこれを一時、共産国家の関係が、或いは共産国の脅威が、なくなるまではそれを保有していたいというのがアメリカ側の主張でありました。これに対して日本としては、成るべく、できるだけ早くこの両島は返してもらいたい。日本に還付してもらいたい。これは切実に言つておつたことであります。殊に小笠原島については、その住民は過去において九千でありますか住民がおつて、これは平和な産業を営んで、すでにここに相当の年を経ておるのであるから、その生活の基本としても小笠原復帰ということを希望するということを申し来たつたのであります。又、ワシントンにおいても当局に向つて、殊に軍部方面に向つて小笠原島の島民の帰還ということについては切実に述べたのであります。従つて、米国側においても十分好意を以て考慮するという約束は得ておるのであります。ただ共産国家との間の関係から言つてみて、太平洋の、或いは極東の防備の上から言つてみて必要の事態はなお存続することも、極力軍部側の意見として話されたのであります。
 安全保障条約、防衛態勢等についての御質問でありますが、これは今日、日本が経済力の充実しない今日においては、不幸にして米国軍等の援助によらなければならん状態にあるので、この安全保障条約の目的は、日本の独立、国防を援助する、この点においてはすでに十分な効力を発生しておると考えますが、併し、このままにしておけるか。これは民族の自尊心から言つてみても、日本の独立、日本の国防を外国の軍隊の手によつてなされることは、これは忍ぶべからざることでありますから、日本の経済、力が回復をして日本の独立をみずから守り得る時期に到達すると共に、成るべく早く米国軍の引揚、又日本国みずからの手によつて国防の衝に当る、これは当然なすべきことであり、又その点については十分了解をされ、又米国としても成るべく早く引揚げたいという希望を持つておるのであります。その点については相互の間に何ら意思の齟齬はないのであります。日本の、自立経済及び経済再建についてはお説の通りであります。日本の経済が自立せざる限り、政治上の独立も遂げ得られないのでありますから、そこで自立経済ということが日本の独立の上から言つてみても重大な問題となり、この点については米国側においても十分認識しておることである。併しながら、敗戦後において日本の国土の四分の三を失つた今日において日本の資力、日本の資源、その他において十分でないことは当然であります。(笑声)この資源の欠乏から日本の経済の独立を図るについては相当の努力を要するのであります。即ち外国貿易の拡張とか、或いは資源の確保とか、いろいろな経済問題がここに発生するのであります。これについては米国側も十分な理解を持ち、日本の経済、日本の貿易の進展のためには相当の援助をしたいという気持があり、又その線で以て話合つて来たのであります。その結果はどうなるかということは、これは今後自然に現われて来ると私は考えるのであります。ともかく日米の経済関係においては、米国側としてはできるだけの援助を与えたい、日本の経済を自立せしめたいという考えを以て好意的に考えておるということを、ここに私ははつきり申上げることができるのであります。
 日英関係においては、これは過失において御承知の通り日英同盟その他の最も親善な関係があり、これによつて東洋の平和も維持された、これは事実であります。又イギリス側も今なお、これは念頭に置いておるところであります。併しながら、経済問題については、従来日本に対して相当の誤解があつたことを私は発見いたすのであります。これは私のみならず、日本の紡績その他の当業者としても十分承知いたしておることで、これは私は一面から申せば、イギリス側の誤解もある。例えば日本においては今なお財閥があつて、その財閥の勢力が、三井、三菱等の財閥の勢力が、今なお依然として存在しておるかのように考えておる向きが相当あるように考えられます。又安い労働のダンピング、ソシアル・ダンピングという問題も今なおあると考えておるのであります。併しながら、現在労働法規その他の他国に例を見ないような厳格な法律の下に、日本の安い労働を再びダンピングをすることはあり得べからざることで、できないことである、できないことであるということを私は強調いたしまして、イギリス側の了解を得たと考えます。又当業者においても、イギリスの当業者との間に誤解があるということは、将来のためにならん。そこで当業者としても、紡績業者としてもみずから進んで代表者を送り、そうして日英の当業者の間に話合いを進めるということにして、すでに話合いは私のおる以前でありますが、すでに話合いがついたのであります。この話合いは将来ますます緊密な関係を以て相互の誤解を解くということが大事なことであると考えるのであります。
 又政治関係については、元来日英同盟条約は、帝政ロシアの太平洋進出を阻止する考えから、又進出を阻止したいという両国の希望からでき上つたのであります。今日は再び共産ソヴイエトなるものが東洋に進出いたしで、そうして共産勢力の浸潤ということに対して重大な事態を引き起しておるのであります。私はこの関係を指摘して日英の間に十分な協力、政治的協力とは申さないのでありますが、外交上その他において十分な連絡を立てたいという希望を述べ、又イギリス政府も同感であるということを述べておるのであります。これは将来の問題として残され得ることと思います。
 又戦争防止、平和増進のため極力話をしたかと、これは話をいたしました。何とかして戦争は防止したい。平和を増進せしめたい。共産国との関係は、従つて共産国の対策については慎重に日本政府も考慮をするが、同時に列国の間においても考慮してもらいたいということを切実に述べたのであります。これが将来どういう実を結びますかは、これは将来のことでありますが、希望としては十分述べたつもりであります。
 そこで共産国との関係、殊に支那との関係をどうするか。これはしばしば申す通り、中ソ同盟条約がある以上、日本を仮想敵国としておる以上、我々のほうからしてむやみに手は出せないのであります。然らば共産側はどうであるか。いろいろな何があります。声明とか演説とか、いろいろなことがありますが、これは列国から申せば、自由諸国から申せば、一つのジエスチュアであつて、いわゆる平和攻勢であつて、直ちにその額面通りに受取れないというのが自由国家側の批評であります。考え方であります。故にソヴイエト側からドイツ問題について四国会議を開きたいという希望、提案があつたにもかかわらず、これ又、自由国家側の了承するところになつておらないということも、ソヴイエトその他の共産主義国の声明が果して額面通りに取入れられ得るかどうか。国際の関係は言葉ではないのであつて、行為である。又共産国の戦術はときどき変るが、併しながらその目標は少しも変つておらないということが、これが真相であると私は考えるのであります。故に北京の放送或いはモスコーの放送等を額面通りとるということは、甚だ私は軽卒な話であり、よくその実体を究め、その主張について検討を加えて、受入れるべきもめは受入れるがいいが、これを丸呑みにするということは慎しむべきことである。又注意いたさなければならんと考えるのであります。従つて、あえて隣国との関係を悪くする、或いは貿易をしないということではありませんが、よくよく相手の出方を見て、然る後に措置を講じなければ、百年の禍いを残すことになると私は憂うるのであります。
 又東南アジア諸国に対しては、ビルマとの間の賠償協定を作りまして、そうして更に東南アジア各国に及びたいと考えておるのであります。又ビル、との間の賠償協定ができたためにフイリピンその他の国の政策も、政府の意向も大分違つて来たように考えられるのであります。私はこのビルマとの賠償協定をきつかけとしてフィリピンその他の間に賠償協定ができ、又国交が回復されて、東南アジアとの貿易その他が一層改善せられることを切に希望いたします。
 日本の外交の基本政策は何かというお尋ねでありますが、これは申すまでもなく親善外交をいたし、政治的にも経済的にも国際の関係を善くして参るということが当然でありますが、併しながらその実体においてどうするかと申せば、日本としては日本の今日の立場から申して、又日本の内外の情勢から申して、自由国家と共同してそして世界の平和を維持する、共産主義に対する進出に対しては飽くまでも対抗するという政策で行くべきものであり、これによつて日本の経済の自立ができ、又従つて日本の進運がこれによつて開かれるものと私は確信いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○議長(河井彌八君) 須藤五郎君。
   〔須藤五郎君登壇、拍手〕
#30
○須藤五郎君 私は吉田総理に対し基本的な数点について質問をいたします。
 第一、総理は昨日、今回の外遊に関し、お題目を並べたが、その内容は全く空虚であり、単にアメリカに対する媚態を露呈したに過ぎないものである。一体総理は何をしに出かけたのであるか。日米共同声明によれば、アイゼンハワー大統領は、ビキニ水爆問題に関し日本国民に対して初めて遺憾の意を表明したが、併し実験の中止、被害者に対する補償など、我が国民が最も関心を寄せている諸点に関しては何ら具体的措置に触れず、完全に黙殺しているではないか。単に口先だけで謝つても、国民はもはや満足をしないのであります。大統領と如何なる話合いをしたのか、明確なる答弁を要求いたします。更に領土問題に関して日米共同声明は、小笠原、琉球についてなお検討するということでお茶を濁している。総理はこれら日本の主権回復に関する重要な諸点につき、交渉の経過を国民の前に公表すべきである。特に本年初頭以来、沖繩におけるアメリカ軍による全島的なる農地の收奪がなされ、人民党書記長であり、立法院議員である瀬長氏及びその他の諸氏に逮捕令状を発し、又豊見城村においては又吉氏が村長に当選するや不当逮捕をしたのであります。かかる人権の剥奪がなされているが、これに抵抗する島民へは直接軍裁によつて弾圧しております。我我同胞としてかかることは見逃すことができません。総理は小笠原、琉球の同胞を見殺しにするのであるか、明快なる答弁を要求するものであります。第二、総理は原子力に関する厖大な資料をアメリカ原子力委員会からもらつて来たと言われているが、国民はこの点についても大きな危惧の念を抱いておるものであります。事実、現在すでに自衛隊と結び付いている防衛技術研究所にいち早く原子力班が作られているのではないか。さればこそ総理に対してアメリカが厖大な関係資料を贈与したのであります。これによつても日本を原爆戦、水爆戦の基地にするための意図に基いていることは明々白々であります。これは明らかに先の第十九国会における本院の決議に反するものであります。若し政府が、断じてそんなことはないと言うのならば、政府は、原子力及び原子核研究に関し一切を国民の前に公表する義務ありと主張するものであります。
 第三、総理はアメリカでの演説において憲法改悪、再軍備の促進はアメリカの援助次第であると表明しておじます。これは憲法改悪、再軍備をアメリカとの取引の最大の道具にして、国民の最大の権利に関する問題を一種の政治取引の具に供しているものと断ぜざるを得ないのであります。総理は国民の前に憲法改正の問題に対する責任ある態度を明確にすべきであります。
 第四、政府の考えと国民の世論との間に今日ほど距離のできた時代は曾つてなかつたと思います。独善的なる吉田総理はイギリスにおいて「十八世紀の政治家」という名をもらつて来たが、今や全国民は吉田総理に対して嫌悪の情を示しているのであります。サンフランシスコ両条約締結の当時、吉田総理はこれを和解と信頼の条約であると誇称し、これによつて日本の独立と世界の平和が確立され、日本の産業と貿易は復活すると高言しました。然るに事実はどうか。日本は両条約締結後、行政協定、通商航海条約、MSA協定、等々を結ぶに連れ、ますます独立を失い、ますますアメリカに対する従属を深め、国際緊張緩和の世界の大勢に反し、戦争政策の方向に進んでいる。一体このアメリカ一辺倒の吉田内閣の政策によつて日本の独立と平和がどれほど保障されたか。我々がこのことを特に問題にする理由は、吉田総理の外遊と時を同じうして、日本の各政党代表を網羅する訪華議員団が、中国訪問によつて大きな成果を挙げたことをこの際強調せねばならないからであります。訪華議員団の諸君は周恩来総理を初め、中国各界の代表と会談し、戦犯の問題、居留民の問題、交通の問題、漁業と貿易の問題等大きな成果を挙げたことは、総理の外遊と比較して雲泥の差のあることを全国民が認めているのであります。殊に自由党の山口代議士を初め全員が、中国は日本を断じて侵略しないと一致して認めたのであります。又中国は何よりも日本との国交の回復を希望しているという点においても超党派的に見解を一にしているのであります。これらの点は、今後の日本政府の政策が如何にあるべきかを示唆しているものであると信じます。周総理は議員団との会見の席上において、日本との平和的共存に関しアジアの安全保障に関する五つの原則に基き「中国は日本人の自由と自主を認め、それに基く日本の正式政府を認めるのである。日本の正式政府をどのような政府とするかということは、日本人民の自由に属するものであつて、中国の干渉することではないのである。然るに日本の政府は中国人民が要らないと言つておる蒋介石政府を承認し、全く中国の政府を中国の人民に任せるのではなく、日本の政府がこれをきめるような態度である。これは中国人民にとつて誠に遺憾である」と語つております。而もこれと時を同じうして、ソ同盟、中国の両国政府は、対日関係につき重要な共同宣言を発表しました。この共同宣言の中においても、中ソ両国政府は、お互いに内政に干渉せず、主権を尊重し、たとい社会制度の異なる国家でも平和的に共存できるという原則に基いて対日関係を進めるということを言つておるのであります。更に両国政府は、日本との国交回復について、経済、文化の交流について又漁業問題の解決について、いつでも話合いに応ずることをきめております。この呼びかけに応えることこそ、アジアの平和、延いては世界の平和を維持し、日本の独立を達成することではないか。日本国民の大多数はそのように考えているのであります。このことは先の中国紅十字会代表李徳全女史訪日に際して示された各階層の熱狂的な歓迎ぶりにも表明されておるのであります。ところが吉田総理は、この中ソのMSA再軍備に反対する平和の呼びかけに対して、まるで盗人が巡査にどいてくれと言つているような言い分だと、非礼極まる放言をしている。一体この対日共同宣言を受入れずして国民の希望する中ソとの国交をどうして回復するつもりであるか。今日国民の生活の苦難はどうであるか。吉田内閣は成立以来六カ年に亘り、一体何をして来たのか。万人が認めるごとく、今日の不景気、平和産業の破壊、残酷極まる賃金と首切り、一千万人に及ぶ失業、国民を挙げて全く生きながらの地獄の状態に陥れているでは、ないか。これは積年に亘る売国政策の結果である。今日、日本国民の生活を定安させ、日本の自主と独立を打ち立てる途は、中ソ両国との国交の調整と友好関係の樹立以外、一体如何なる方法があるのか。総理は昨日の演説で、日本の政治経済態勢の確立こそ、国際的な友好協調の根本条件であると述べたが、そもそも日本の政治経済を破壊した元兇は吉田内閣そのものではないか。総理の頭は逆立ちしている。我々は世界の民主的平和愛好諸国との友好親善、国交の調整こそ、日本の政治経済を真に確立する根本であると主張するものであります。これこそ国民が熱望する平和的共存の途である。これを外にして、祖国の自由と独立、国民の生活安定の途は断じてあり得ない。この点に関し総理は頭を冷やして真剣な態度で答弁をされたい。
 最後に一言質問する。外務省は本年度報償費なるもの三億円を機密費として流用費消し、その使途に関し会計検査院から追及を受けている事実があるだろう。而もこの報償費なるものを五億円に拡大しようとしている。私はこの国民に秘匿している無法なる内容をつまびらかに承知しているが、今日それを追及する時間はありません。私は総理がこの問題に関し、その内容を進んで明らかにすることを要求して私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 先ほどの答弁の中で一つ漏らしたことがありますから追加いたします。
 この水爆実験によつて漁業者等が被害を受けた、これに対しては米国政府は十分考慮する、その損害に対しては十分の考慮をするということを言うたのであります。これは申し残しましたからここで附け加えます。
 原子力については主管大臣からお答えをいたします。
 沖縄の問題について私に存じませんから、取調べた上でお答えをいたします。(「もつと勉強々々」と呼ぶ者あり)
 軍備云々については、お話のような紐も何もついておりません。日本の軍備については、日本の防衛については、みづから守りたいという話はいたしましたが、それ以上何らの紐はついておりません。米国一辺倒と言われますが、若し強いて一辺倒と言われるならば、自由国家一辺倒であります。平和のみに頼るような考えはいたしておらない。
 又国会議員の北京訪問のことについては承知いたしておりますが、周恩来首相等との話の内容について私は存じておりません。又中共との国交については先ほど申した通りであります。
 日本の経済財政の回復のために緊縮予算をとり、緊縮財政の方針を堅持いたすことは当然でありますが、その結果、失業者その他の増加、これはやむを得ざることであります。これに対して失業対策費その他において十分善処いたす考えであります。「相変らず答弁は不真面目だな」と呼ぶ者あり、(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(岡崎勝男君) 外務省の報償費を機密費として流用したようなことはありません。報償費は報償費として厳重に用いております。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(小坂善太郎君) 私に対する質問は特にありませんでしたが、それは強いて言えば、失業者一千万ということを言われたことと思いますが、御承知のように完全失業者は九月に六十五万人となつております。併し転職希望者をまぜまして、その数がどのくらいかということを統計局でいろいろいたしておりまするのは、これは二百万前後です。かようなことになつておりまして、御承知のごとく労働力人口が四千万でございまするから、一千万の失業者なんということは到底考えられません。(「潜在失業者だ)と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(愛知揆一君) 原子力の問題についてお答えいたします。
 原子力の研究、利用に関しましては、政府といたしましては、一貫してこれが平和的利用ということを主義といたしておるわけでございます。これがために先般内閣に設置いたしました原子力利用準備調査会におきましても、その内規において明瞭に平和的利用に関するということを規定いたしております。又従いまして公開主義を原則といたしておるわけであります。
 次に、今回米国政府から寄贈せられました原子力関係の資料についてでありますが、この内容は次のようなものでございます。第一は、アメリカの原子力委員会で発行いたしておりまする基礎及び応用研究の報告書、約一万部でございます。第二は、アメリカの原子力政策に関する資料、約二十八巻でございます。第三は、米国内外技術文献約五万件の抄録でございまして約五巻から成つております。これらの厖大なる資料の受入れにつきましては、目下スタツクを中心にいたしまして、各省間で受入れ整備の準備について相談中でございます。これらはすべて公開いたしまして、平和的利用に資せしめたいと考えておる次第でございます。(拍手)
#35
○議長(河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時五十一分開議
#36
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 日程第二、昭和二十七年度一般会計歳入歳出決算、昭和二十七年度特別会計歳入歳出決算、昭和二十七年度政府関係機関決算報告書を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。決算委員長小林亦治君。
   〔小林亦治君登壇、拍手〕
#37
○小林亦治君 只今議題となりました昭和二十七年度の一般会計及び特別会計並びに政府関係機関決算報告書につきまして、決算委員会における審議の経過及び結果の概要を御報告いたします。
 本決算は本年二月十一日第十九国会に提出され、今回審査を終えたものであります。
 先ず一般会計についてでありますが、歳入歳出決算額は一兆七百八十八億余万円で、歳入予算額に比較しますると千四百六十二億余万円を増加しております。歳出は予算額が九千三百二十五億余万円で、これに前年度からの繰越額七百三十一億余万円を加えますと一兆五十七億余万円となり、このうち支出済額が八千七百三十九億余万円、翌年度への繰越額が千百八十九億余万円で、これらを差引きますと百二十七億余万円の不用額を生じております。次に、特別会計の数は三十五でありますが、各特別会計の決算額の合計は、歳入一兆三千四百九十九億余万円、歳出一兆二千百三十六億余万円であります。
 又、政府関係機関の数は九つでありまして、各機関の決算額の合計は、收入五千六百九十四億余万円、支出四千百五十一億余万円であります。
 以上が決算の概要でありますが、これらに関する詳細は決算書類について御覧を願います。
 次に本決算審査の結果といたしましては、会計検査院の指摘しておる不当事項につきましては、検査院の意見はすべて当委員会とその見解を同じうしておるものと認めます。これらの不当事項を除くその他の決算事項につきましては特に申上げることはございません。審査の結果、内閣に対して警告又は要望する事項につきましては、ここに提出いたしました審査報告書に要点を記載いたしました。
 我々が決算の審査をいたしまするのは、過去の事績を取上げてその不当を追及するばかりでなく、それによつて、過誤を改め、法令、制度及び機構の改善すべきものは速かに改善させ、将来に向つて再び過誤を起させない、更に一歩を進んで、財政收入の大半は国民の血税であることに鑑みまして、これを有効に使用することの措置を見守り、以て国民の信託に応うるのが主要な使命であります。然るに、従来、年々の決算審査の結果、当委員会が内閣に対して警告を発しましても、例えば責任者に対するところの処分の励行の問題のように、それに対応する措置をとらないものもあり、又例えば補助金の問題、外国食糧輸入の問題などのように、ごうごうたる世論を巻き起した今日に至つて、ようやく改善の第一歩を踏み出すような緩慢振りでございまして、その間に巨額の国損がみすみす重ねられて行くことは遺憾至極でございます。これらの事態に鑑みまして当委員会といたしましても決算の審査を早期に行い、古い事案としてばかりではなく、直ちに今日の事態にも即応する事柄を審査し、その改善を早急に行わせる方向に進んで参つておる次第であります。
 二十七年度決算を審査いたしまして特に痛感いたしましたことは、やはり国費の無駄、即ち、調査の不徹底、無思慮、無計画、杓子定規的な処理などによる冗慢な支出の例が跡を絶たないことであります。災害復旧事業などに対する補助金の問題については、前回の報告において詳細に申述べた通りでありますが、この補助金に関する数々の不正不当が起るのは、地方財政の窮乏によるものもありますが、地方団体は補助金の争奪に狂奔し、国にはこれが使用の水膨れを摘発するの機構が充実せられていない上に、肝心の責任感と能力が欠けているためと思うのであります。一方、財政の現状を見ますれば、租税の賦課はもはや飽和点に達しており、これ以上の増徴は望み得ないのであります。すでに、たばこの専売益金においても、高級品の売行不振のために予算を下廻る状況であります。従いまして財政收支の均衡を期するには、これを国費の節約に求むべきは勿論であるが、何よりも有効な使用の面にこれを求めなければならないのは当然の理であると考えるのであります。然るに現実はどうであるかと申しますれば、例えば運輸省所管の計画造船に対する財政投資におきましては必要以上の金額が融資されそれがいわゆるリベート問題として世上を騒がして、又農林省所管におきましては、主食にならないような粗悪な米や麦を多量に輸入し、数十億円の損害を来たしており、その一部がかの黄変米問題として、これ又世論の的となつております。そのほか建設省所管において、無計画に土木建設用の高価な機械を購入して、使用しないまま空しく雨ざらしにし、遂に廃棄するに至つたものとか、保安庁において部内の連絡が悪いために不急の備品を多量に調達したような、不用不急、過大な物品購入の事例は、各官庁の部内から企業会計、公共企業体にまで及んでおるのであります。
 右に述べましたように、国費の無駄については、少くとも会計検査院がこれを指摘した場合には、政府当局においては、改めて国会が警告を発するまでもなく、速かに改善の方途を講ずべきであるのに、これが対策の樹立に真剣味を欠いておるのは、諸外国のごとく、ここには大臣はおりませんが、(「一人いる」と呼ぶ者あり、笑声)失礼。大臣及び長官に民事上の賠償責任がないためもありましようが、官僚の国民に対する責任感の腐敗にあらずんば、その薄弱さを暴露しておるものと私は考えます。内閣は、財政の現状と睨み合せ、一層敬虔な態度を以て事態の改善に努力されんことを要望してやまないのであります。
 殊に、農林省所管における外国食糧輸入の件につきましては、ビルマ、イラク、パキスタンなどから輸入した米及び麦が、主食として配給できないような品質粗悪なものであつたため、原材料用として非常に安い価格で売渡し、その結果、巨額の損害をこうむつたものがありますので、その実情を聞いてみますると、ビルマ米については六十一億円、イラク大麦については三十四億円、パキスタン米については四十二億円といつた巨額なものを購入するのに、驚くべきことには、農林省としては現地に全く人を派遣しておらない、輸入事務の一切を日本の貿易商社に委託しておるのでありますが、この貿易商社は、これ又単に事務を取扱うだけで何らの責任を負担しておりません。農林省としては、極端に申せば輸出国のなすがままにこれを受入れているという、全く唖然たるものがあります。その結果生じた莫大な損害はすべて国民の財政負担となることに鑑みますれば、これを単なる粗漏であるとか、見込み違いであるとかで了解さるべきものではないのであります。なおその上に、これらの事態はすでに二十六年度にも発生しており、やはり相当巨額の損害を受けておるのに、更に二十七年度において漫然これを繰返しておる事実は、我々の最も重視するところでありまして、農林省が会計検査院の指摘なり、国会の警告なりを軽視し、世論の騒がしくなつた今日、漸く乗り出していろいろ措置を講ずるというような傾向に見えることは誠に遺憾であり、強くその責任を追及せざるを得ないのであります。
 次に、責任者に対する行政処分についてでありますが、これについては、本年四月、特にその励行を要請する決議を以てしましたのでありまするが、これに対しては、内閣においてもその励行を確約せられましたので、我々としては必ずその成果が挙るものと期待しておるのであります。この決議の趣旨は申すまでもなく、どこまでも折目は正しくしたい、いやしくも処分を要する場合は、厳重注意などということでお茶をにごすことなく、正式な行政処分を励行されたいというのでありますが、もとより苛酷な処分を要求するものではありません。(「苛酷でいいよ」と呼ぶ者あり)ただ、甚だしいのは、再度に互つて同じような事件を起しているのに成規の処分をしていない。又或る者は不当事件のあつた後に、その不当事件を惹起したところの当の御本人があべこべに昇進をしたり、甚だしきは栄転さえしておる。こういう事例がたくさんあるのです。かくのごときは綱紀の頽廃の甚だしきものと指弾せられなければなりません。このようなことは官庁内部では軽く看過されているかも知れませんが、これを国民の立場からするならば、誠に納得の行かない、独善的な、而も不都合なやり方と言わざるを得ないのであります。内閣はこの点に深く思いをいたし、従来の陋習を破つて、どこまでも国民の納得の行く行政処分を行われんことをこの際特に強く要望しておきます。
 更に、これと同時に我々は会計検査院の機構の拡大強化を叫んで久しい。御承知の通り、会計検査院は政府に独立した存在であつて、国家財政の監督、会計検査の最高機関であります。財政総額二兆円にも及ぶ広汎な收入支出を審査しなければならんであります。併しながら、その広汎なる事務を独立に担当しておるところの会計検査院は、院長である検査官以下と全職員の総数が驚くなかれ僅かに千百名台、その予算額は四億円に充たないところの三億九千万円、これでは如何に格段の努力を払い、如何に会計検査院が敢闘努力しようにも、国全体に対する機関が、監督せられる側であるところの政府部内の監察機構にも遥かに劣る及ばない貧弱さであつては、如何に努力を求めましても無理な相談、あたかもナイフを持たして大木を切れと言うに等しい無理な相談でありまして、実際に検査するものは全体の僅か七%、或いは八%、ほんの氷山の一角しかつかむことができないのであります。而も不当経理として摘発せらるる件数は、昭和二十五年度が千百十三件、二十六年度は千百九十八件、それが何と二十七年度に相成つては千八百十三件、かように年々累増の一途を辿つておる。将来は一体どれだけ増加するか、国損も又巨額に上るのではないかと我々は憂慮しておるのであります。
 行政機構の縮小は健全財政の見地からも当然これが企てられることではありましようが、会計検査院を拡充強化することは、これによつて未然に防止せらるるところの国費の無駄、浮び上るところの国費の節約が相当巨大な数額に上るであろうことに思いをいたせば、検査院の拡張に要する経費のごときは全く微々たるものであり、その半面に健全財政に寄与することはけだし莫大なるものがあろうと信ずるのであります。
 自由党、民主党、緑風会、左右の社会党、無所属クラブから成るところの三十名の決算委員諸君は、その抱懐するところの政治感覚は、皆それぞれに異なつており、従つて主張しておるところの政策も各派各様、それぞれこれ又相異なつておりますが、にもかかわらず、会計検査院を拡充強化することについてのみは、皆異口同音にいづれも真剣なる叫びを以てこれを主張しておること、国民の輿論、ジヤーナリズムの所論、どこを見ても、いずこを見ても、これが要望巷に満てる今日、政府は今こそ昭和三十年度の予算編成に当り、会計検査院と機構の拡充強化、その予算額を増加するために必要なる措置をとると共に、これが実施に格別の配慮を寄せらるるよう要望するものであります。
 更に、最後に政府部内の責任感につきまして毎年の例となつてしまいましたが、ここに再度繰返し強調する次第であります。
 決算委員会は慎重審議の結果、全く超党派的に全会一致を以て、以上の通り議決いたしました。なお討論に当つて各委員から、それぞれ次のような御意見が述べられましたので、この機会にその大要を御紹介申上げておきます。
 先ず日本社会党第四控室の岡三郎委員から、「二十六年度決算の際には、我我は不承認の態度をとつたのであるが、今回も予算の使用は依然として乱脈を極めており、懲戒処分も十分に励行せられていない、併し政府においてはこれを改善する誠意のほどが僅かながらも見られるので、今後熱意を持つて改善に努力することを条件としてこの審査報告に養成する、なお会計検査院は機構を拡充して国民の期待に則りの気魄を以て努力せられたい。」との発言がありました。次に自由党を代表する青柳秀夫委員からは、「養成に当つて次の点を要望したい、即ち政府各当局は予算の獲得については狂奔するが、その適正な執行については熱意が足らない。検査報告によれば無駄な面が多数見受けられる。今後十分にその効率的使用に意を用いられたい。上級当路者はたとえみずから引起さないところの事項でも、不当処理全般について責任を感じ、又処罰は上下一体として厳重に励行されたい」との発言がございました。次に緑風会を代表せられた島村軍次委員は、「次の希望を付して養成する、予算の効率的使用を図るために、事前検査の適正な励行及び検査機構の整備についてなお一層の努力を望む。又懲戒処分を厳正ならしめるために制度の改正が必要と思うが、現行制度の下においてもこれを十分に励行し、その実績を挙げられることを望む」との発言がございました。次に日本社会党第二控室を代表せられる山田節男委員から、「次の意見を付して賛成する、即ち予算の使用が乱脈を極めておる。その原因は官僚主義による繁文褥礼、責任の所在の不明確にあると見られるが、特に補助金関係、食管特別会計、国鉄等にその顕著なる例がたくさんある。この対策としては検査院の機能の発揮、処罰の法的規制が必要である」との発言がなされました。
 次に無所属クラブを代表せらるる平林太一委員から、「この審査報告を決定する委員会の席に、委員長から要求があつたにもかかわらず、政府の最高責任者が出席しておらないのは甚だ遺憾であり、且つけしからん。これも政府そのものがすでに決算を等閑にしておるところの証左であり、現在綱紀の紊乱、官紀の廃頽は目に余るものがある官僚、国を亡ぼすの憂い、今日にしてこれを矯めなければならない」という、政府当局に対し、深い自粛自戒を求めたいという声涙下る発言がなされ、更に八木幸吉委員からは、「次の警告を付して賛成する。この席に国務大臣の出席がないのは、政府の決算に対する考えを、そのことによつて如実に示すもの、甚だ遺憾に堪えない。内閣上層部の専横な態度が、政府部内の官紀弛緩の原因であるが、政府当局者は常に責任感を持つて事に当られたい。農林省において病変米検査のための会社を新設するとの風評を聞くが、外郭団体ではすでにこりておる。国鉄関係においても問題が起つておる際に十分なる自戒を望む。なお検査院の機構拡充、機能発揮は緊急の要務と認れる」との発言があつたことを御報告いたします。
 なお黄病変米に関する件、国鉄のいわゆる民衆駅に関する諸問題は、調査案件といたしまして、厳重なる審査を今後に加えることに相成つておりますので、これも加えて御報告申上げます。
 以上、御報告申上げます(拍手)
#38
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。本件を委員長報告の通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#39
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本件は、全会一致を以て委員長報告の通り決せられました。
 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十二分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、議員の請暇
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 一、日程第二 昭和二十七年度一般会計歳入歳出決算、昭和二十七年度特別会計歳入歳出決算及び昭和二十七年度政府関係機関決算報告書














ソース: 国立国会図書館
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