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1954/12/02 第20回国会 参議院 参議院会議録情報 第020回国会 本会議 第3号
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1954/12/02 第20回国会 参議院

参議院会議録情報 第020回国会 本会議 第3号

#1
第020回国会 本会議 第3号
昭和二十九年十二月二日(木曜日)
   午前十時四十九分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第三号
  昭和二十九年十二月二日
   午前十時開議
 第一 医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第十九回国会苫米地義三君外三十七名発議)(委員長報告)
 第二 昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第十九回国会衆議院提出)(委員長報告)
    ―――――――――――――
#3
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。人事委員長松浦清一君、厚生委員長上條愛一君、決算委員長小林亦治君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたい旨の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつていずれも許可することに決しました。
    ―――――――――――――
#6
○議長(河井彌八君) つきましては、この際、日程に追加して、常任委員長の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
#8
○伊能繁次郎君 常任委員長の選挙は、成規の手続を省略いたしまして、いずれも議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
#9
○大和与一君 私は、只今の伊能君の動議に賛成をいたします。
#10
○議長(河井彌八君) 伊能君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて議長は、人事委員長に平林太一君、厚生委員長に加藤シヅエ君、決算委員長に山田節男君を指名いたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#12
○吉田法晴君 私は、この際、労働行政に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#13
○戸叶武君 私は、吉田君の動議に養成いたします。
#14
○議長(河井彌八君) 吉田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。吉田法晴君。
   〔吉田法晴君登壇、拍手〕
#16
○吉田法晴君 私は、日本社会党を代表いたしまして、労働行政に関する緊急質問をいたさんとするものであります。
 昨年まで補正予算を審議する年末臨時国会の重要な議題の一つは、翌年の給与水準をどうするかということでありました。今回政府は物価は横這いであるとして、給与の問題を全く考慮いたしておりません。民間給与は上つたにかかわらず、人事院をして給与改訂の検討さえさせなかつたのであります。併し公務員の争議権を奪つて、その代替的の役割を果さすべき人事院をして、その機能も果さしめず、地域給についてすら何の財政的考慮も払わなかつた吉田内閣の態度は、その労働者弾圧政策と相待つて、労働者の敵となつたと解すべきでありましよう。インフレ傾向は全く終熄したのではなく、再軍備、軍需産業育成というインフレ要素を持つております。この眼前の経済危機、国民経済の破壊ではなく、経済規模と国内市場を拡大する意味において農民と共に労働者の収入の増加、実質生活向上の政策を政府はとるべきではないか。かつて故ルーズベルトはアメリカの不況打開の方策として、ニユーディール政策を採用したことは、吾人の記憶にまだ新たなところであります。自由党政府にこのニユーディール政策のごときものを期待することは、木によつて魚を求むるの類かも知れませんが、こういう観点から、労働者の給与を引上げる意図はないか。日本の真の経済自立のために勤労者の生活の安定の上に経済自立を図る政策をとる以外にないではないか、緒方副総理にお尋ねをするのであります。
 三公社五現業の給与について、政府の圧力に押された調停委員会は、次々にいわゆるゼロ調停を出しております。この給与と年末手当調停に対して、各関係労働組合は、これを不満として、いわゆる闘争態勢に入つております。数日前労働大臣はこれらの関係労働組合代表と会見をされましたが、あれはただ単にその闘争を抑えんがためにのみ会見ざれたものでありましようか。衆議院労働委員会は、その全会一致の決議を以て調停委員会の積極的再斡旋を要望いたしました。実際の解決方法として再斡旋以外にないことは、衆目の見るところでありましようが、政府はこの衆議院労働委員会の決議の精神に従つて、給与、年末手当につき考慮すべきであるが、どうか。労働大臣にお尋ねをいたします。
 吉田内閣が従来自由放任政策によつて、計画経済などとらぬと言い、昨日の吉田首相の答弁でも、計画経済は国を誤るとまで極言をいたしました。従つて中小企業の中から四人や五人自殺する者が出ても仕方がないと言つて、中小企業、平和産業の事業場の閉鎖、企業整備、首切り、失業者の増加、そうして広汎な国民生活の破壊が、平然と見送られて参りました。そこには失業と餓死の自由があるだけであります。昭和二十九年度予算の審議に当つて、デフレ政策、金融引締めをやつて行くならば、雇用量が減少するばかりでなく、失業者は増大するではないか、こう我々が幾ら声を大にして警告をし、その対策の樹立を求めても、政府の諸公は大したことはないと楽観を続け、今年の半ば、第十九国会の終り頃まで、なお口を揃えて当初の方針を固執して参つたのであります。重油の輸入増加に伴う石炭産業への圧迫に、デフレ政策の重圧が加わり、中小炭鉱の休廃山、大企業の一部坑口閉鎖、集約化に伴つて、炭鉱地帯における労働問題が社会問題となり、治安問題化し、人道問題化して参り、造船疑獄による第十次造船の遅延によつて造船労働者が窮迫して参り、鉄鋼関係工場の閉鎖、縮小等々によつて、失業保険の給付が増大し、職業安定所の窓口に失業者が殺到するや、八月に入つて、初めて労働対策連絡協議会なるものを作つたり、公共事業等による失業者吸収措置を考えた力、失業対策だけを極めて不十分ではありますけれども考え始め、今回の補正予算の中にも、その一部が計上せられました。併しこれを以て失業者が救われると思つたら大間違いであります。昨日の労働大臣の答弁を以ていたしましても、職業安定所の窓口に現われた失業者だけで六十万を越しておるというし、補正予算によつて就労し得る人員は五%を増加して、一日平均十七万人というのでありますから、依然として一世帯から一名以上は働かせないとか、輪番制をとらせたり、毎日アブレが出るというようなことは、この数字からも当然出て参ります。憲法第二十七条にはすベての国民に勤労の権利を認め、仕事につき得ない者に対しては国家が補償するという建前をとつておりますが、政府は現在のような生かさず殺さずの不十分な失業対策で政府の責を果していると考えておるのでありましようか。政府職員の失業者退職手当については若干の追加補正をしておりますが、いわゆるインテリの失業対策については見るべきものもございません。懸案の駐留軍労働者の退職金の問題すら解決し得ないではありませんか。緊急就労対策事業費として道路事業等を行うとか、特に炭鉱地域の事業を施行すると言つておりますが、労働、自治、経書、大蔵等、関係十一省庁の事務次官連名による通牒によりますと、手持労働者という制度を設けて、失業労働者を選別、制限をして使用しようといたしております。福岡県等の経験によりますと、労働者の自主的組織の協力なくしては休廃山しておる炭鉱の労働者なり、その家族は救われ得ないということが明らかになつて参りましたが、如何なる方策を以て、そのすベてに仕事を与えようとするのか、労働大臣に承わりたいのであります。
 又、税金も十分に入つて来ないで全く財政が窮乏化しておる地方自治体は、幾ら事業を付与しようとしても、或いは僅かなトラツクや燃料の補給くらいでは、失対事業も公共事業そのものも、やる財政能力がないというのが現状でありますが、こういう実情の下において、この窮状をどう打開するのか。私ども労働委員も、炭鉱、造船、鉄鋼等、産業によつて或いは地域によつて特に著しい窮迫状態に追い込まれている労働者の生活をどうしてくれるのか、総合燃料対策はどうするのか、縮小の一途を辿りつつある国民経済規模を維持し拡大する方策を樹立せよ、その中で雇用を保障する労働政策はどうなるのかと関係大臣を追及し、愛知通産経審長官は、これを提示することを約束したのでありますが、その後自由党の新経済政策が報ぜられましたけれども、それは紙に画いた餅でしがなくて、実現性の保証されたものではございません。従つて休廃山せる炭鉱労働者とその家族は、未だ何ら政府の施策の恩恵に浴せず、今日国民の同情によつて辛うじて餓死を免れている実情であります。救恤品を持ち寄つた全国の母親たちは、政府は何をしておるのかと憤激して参つております。
 吉田内閣はこうした労働者や国民の窮状に対して、中小企業の生死の境地に対して何らなし得ないのならば、速かに退陣すべきでありますが、緒方副総理の所見を承わりたいと思います。
 吉田内閣の労働政策は、最近の小坂労相の言明に見られるごとく、生活破壊政策に対して、みずからその地位と生活を守ろうとし、向上を図ろうとする民主的な組合運動に対して、あらゆる弾圧政策を以て臨もうとしておるのではありませんか。解雇反対闘争を禁止、制限せんとする解雇制限法、労働法、労調法、公労法等の改正による争議制限等、皆そうであります。尤も小坂労相は吉田首相の放言に倣つて、末期の内閣でどうせ実現せざるのだからだと、選挙資金集めにアドバルーンを上げておられるかも知れませんが、東証争議の最中に発表した労相談話や、これを敷衍した次官通牒のごときは、小原法相の新聞発表によると、労働省を中心に法務、検察、警察等、関係者当局が研究の上取締方針を取りまとめたものに関連するがごとくであります。この前後から警察官の争議介入、警察官によるピケの突破、ピケ隊員の検挙というような事態が常態となろうとしております。白銅室蘭、山梨中央銀行、東証、或いは佐賀県会事件等、労組弾圧の最近の具体的事例を述べる暇はありませんが、政府は団結権、団体行動権、その一つとしてピケの権利を認めておるのかどうか。団体行動権としてのピケの権利を認めるとするならば、三友炭鉱以下、数多い判決の中に現われておる判旨、特に四月七日最高裁大法廷が最終的に認めましたピケ権の正当防衛或いは緊急避難等、自救行為を認めるのかどうか、労働大臣及び法務大臣に伺いたいのであります。
 最近の事例によれば、必ず争議やピケに警察官が出勤し、或いは実力行使をしておる、或いは検挙しておる。現場にいない指導者をも共同謀議の刑事上の責任を追及しようとしておりますが、法務、警察、労働の各省庁はとそういう方針に転換したのかどうか。この根底には争議を罪悪視し、ピケ・ラインによる説得の結果として就労が阻止せられるというような事態が生ずれば、これが業務妨害罪が成立するという不当な考えがあるようだが、労相、法相の所見を承わりたい。
 特に最近の国鉄問題に当つては、警察庁から、民間産業では警察宛に出動要請があつておるが、国鉄その他現業官庁は何をぼやぼやしておる、こう言つて警察の出動要請を強要したりしておりますが、警察はそういう方針なのか。国鉄当局は鉄道公安官を出動せしめてピケを破つたりしておりますが、これは鉄道公安職員の職務に関する法律違反ではないか。
 最後に、労使の関係に警察権、検察官等が介入して労働者と対峙するというような姿をとるならば、それは国家権力が争議に介入し、労働者と直接対峙するというようなことになりますが、こういう国家権力による争議介入の態度を速かに撤回すべきでありますが、緒方副総理は政府を代表してどのように考えておるか、労働政策について承わりたいのであります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(緒方竹虎君) 勤労者の給与の問題でありますが、勤労者に対しまして適正な給与を保障いたしますることは、国民生活の向上、更に国民経済の再建のためにも極めて重要なことであると考えております。今日の給与、特に公務員の給与につきましては、必ずしも十分であるとは考えておりません。併しながら、御承知のような国民経済全般の状況よりいたしまして、今のところ御辛抱をお願いする以外にないと考えております。それから官公労その他、給与のべース・アツプの問題でありまするが、昨年度以来、政府のとつて参りました緊縮方針が漸く成果を収めつつありまする現段階におきましては、ベース・アツプ、期末手当の増額等も、政府では好ましくない、というふうに考えております。
 それから失業対策或いは労働争議に対しまする国家権力の介入云々という御批判に対しましては、所管の大臣からお答えをいたすことにいたします。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えをいたします。
 最初に補正予算と給与関係の問題にお触れになりましたが、御承知のように昨年は人事院が給与改訂の勧告をいたしまして、又、公労法関係の職員につきましては公共企業体の調停委員会乃至仲裁委員会がそれぞれ裁定をいたしたものがありましたので、それらを政府は法に従つて扱つたわけであります。本年は御承知のように人事院より給与改訂の勧告もございませんし、又調停委員会におきましても調停案を出しておるのでありまするが、その内容は御承知のようにベース・アツプはしない、こういうことになつておるのであります。御承知のように調停委員会は、最近のCPIがおおむね横這いの状況にある点と、又民間の同種産業の賃金が同様の傾向をおおむね辿つておるということから、先般の調停案を提示したものと思うのでありますが、私といたしましてもこれらの調停案は公正な線であると考えております。このようにベース・アツプにつきましては、調停委員会の調停案がすでに提示されました以上、今後それによつて、その線に沿うて解決を図ることが公労法の線に沿うゆえんである、かように考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又、基本給のベース・アツプ以外の点につきましては、調停案は今後労使が団体交渉によつて事態の平和的解決を図られたいということを述べてあるのでありますから、私といたしましても、この間において適当な解決に協力できる面があればでき得る限り協力をして参りたいと思いますし、調停委員会も又斡旋の労を惜しまないものであると考えます。
 次に失業の問題でありますが、これにつきましてはニユーデイールというお話がございましたが、これは御承知のように、ルーズベルト大統領がニユーデイール政策をとりましたのは、当時のアメリカの経済状況が、いわゆる消費寡少、アンダー・コンサンプシヨンの状況にありて、ここに大規模の政府の財政投資をいたすことによつてこれらの景気の上昇が見込まれ、それが続いて景気が上つて来るということが見込まれたあの政策は、あの当時とじてはよろしいのでありますが、我が国の経済状況は御承知のような状況でございまして、この際、大規模な政府の裏付けのない金を出しますことによりまして却つて経済状況が混乱し、このことが勤労者諸君の生計の安定を害するのでございますから、政府といたしましては、できる限り予算を節約してその中から失業対策費を捻り出す、或いは先般来本院の宮澤議員も行かれましたし、政府としても、総理、愛知通産相が行かれまして、円資金の独自の調達方法をアメリカとの間にお話しておるようなことでありまして、差当り補正予算の中に御覧頂きますように八億五千万円の失業対策事業費の追加計上をいたしておるのでありますが、年度当初の金額と合せますと百十九億五千万円となりまして、これを第四四半期におきましては一日就労十八万六千人というふうに見込んでおる次第でございます。又第四四半期はデフレの進行によりまして失業者が一段と増加するという傾向に見られますが、政府といたしましては、御承知のように公共事業と失業対策事業とのかみ合せ、或いは鉱害復旧事業の繰上げ施行等の措置をとつておりますほか、更に今日の補正予算におきましては新たに緊急就労対策事業費九億二千万円を計上いたしまして、一万五千人の失業者を吸収する予定にいたしております。そのほか節約解除分の二億二千万円を以ちまして、遠賀川地域或いは常磐地域の河川工事を実施いたしまして、この方面に四千人以上の失業者を日に吸収するように考慮いたしているのであります。従いまして、今後もこれらの施策を総合的にかみ合せて参りたい、かように考えております。
 更に、次官通達の問題にお触れになりましたのでございしまするが、これはのちほど法務大臣からもお答えがあると思いまするが、私どもこの次官通達の内容は、今まで判例或いは判決例の中において明瞭に示されたものを整理をいたした、こういうことでございまして、ピケというのは平和的な説得の限界を越えてはならないということは、これは民主国の世界的に認められた通念であると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)労使紛争に警察官が介入するということは厳に慎しむべきことであると考えますが、さりとて、暴力行為等の違法な行為が現実にあつた場合には、警察官が法の定むるところによつて正当な権限の行使をすることは止むを得ないと考えます。従つて労働組合が法の限界を逸脱する行為に出ない以上は、労働争議に警察官が介入することはないものであると、かように考えている次第であります。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(愛知揆一君) 石炭の対策につきましては、政府におきましても非常に頭を悩ましている問題でございますが、これを要約いたしますと、二つに分けまして、緊急の対策と恒久の対策を樹立いたしているわけであります。
 緊急対策といたしましては、おおむね四つに分けて実施をいたしておりまするが、一つは過剰貯炭の処理の問題、これに関連いたしまして十月末四百二十万トンに達する貯炭を擁しているわけでありますが、これらの貯炭に対しまして、大口需要者等の協力によりまして、又金融関係の協力を求めまして、これが処理についてでき得る限りの方策を講じております。次に適当な生産の制限も併せ行わなければならないと考えまして、業界の協力を求めておりまするが、この点につきましては第三に挙げたいと存じまするが失業の疑念対策が非常に大きな意味を持つて参ると思います。この点につきましては只今労働大臣から御説明がありました通りでありますが、先に予算の節約額を解除いたしましたるほか、或いは予備費を充当する等の措置を講じたほか、今回の補正予算におきましても、建設省所管或いは農林省所管等の予算の実施につきまして、十分に石炭の窮境の打開ということを主といたしました予算の使用方法を講じてもらう考えでございます。第四に、先般来実施いたしておりますが、重油の消費の規制につきましては、今後とも一層これが強化を図りたいと思うのでありまするが、他面、石炭の需要を喚起することが必要でありまするが、特に外国からの鉄鋼用原料炭の輸入等につきましても、国内炭をなるべく多く使うように、この配分度の調整ということにつきましても手を打つているような次第であります。
 次に恒久対策につきましては、おおむねこれを炭鉱の合理化対策、これは総合燃料対策から導き出す合理化対策でなければならんと思うのでありまするが、特に竪坑開さくを中心といたしまする炭鉱設備の合理化ということに重点を置きたいと思うのであります。更に次の問題といたしましては、生産体制を集約化することが必要である。この際相当思い切つた措置を講ずる必要があると考えまするので、これらの点につきましては、立法を要するものが相当あると考えます。これら立法措置を要すべきものにつきましては、私といたしましては通常国会にその法案を提出いたしまして、十分に御審議を願いたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣小原直君登壇拍手〕
#20
○国務大臣(小原直君) 吉田議員の御質問にお答えをいたします。
 労働争議についての検察庁及び警察職員の行動についての御質問であります。第一に検察庁におきましては、労働争議に対しては、それが違法或いは犯罪にならない限りは、これに介入することは絶対にありません。併しながら争議行為が、或いは公務執行妨害、業務妨害その他の犯罪等に変つて参りました場合においては、これに対して捜査をすることは当然であります。又警察といたしましては、元来労働争議自体を取締るものではないのであります。(「現にやつているじやないか」と呼ぶ者あり)労働争議が合法の範囲を逸脱しない限りは、何ら警察取締の対象とならないのであります。併し労働争議に随伴いたしまして発生する不法行為は、これを取締ることが警察の責任であります。労働争議の際に、その状況によりまして、不法行為発生の虞れがある場合は、警察官を派遣して事件発生の防止に努め、犯罪がまさに行われようとするのを認めましたときには、その予防のため、関係者に必要な警告を発し、又その行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又財産に重大な損害を与える虞れがありました場合には、その行為を制止し、又は若し不法行為がすでに行われている場合には、これを鎮圧して排除する、こういう責任を持つているのであります。これは警察法及び警察官職務執行法に定められた警察官の責務でありまして、警察官としては労働争議を弾圧する等の政治的意図は全く持つておらないのであります。(「すでに弾圧しておる」と呼ぶ者あり)
 次に鉄道公安官の問題についてお答え申上げます。
 申上げるまでもなく、鉄道公安官は鉄道公安職員の職務に関する法律によりまして、官本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設内における犯罪並びに日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪について捜査をすることができるという規定があるのであります。この規定に基いて鉄道公安職員は労働争議行為が若しこれらの違法行為を犯す場合には、これに対して捜査をすることができるのでありまするが、その以外において、特に労働争議に干渉をするというようなことをやつてはならんのでありまするから、この範囲を逸脱せぬように努めておるものと考えております。
 以上申上げましたように、労働争議につきましては、それが違法にならざる限りにおいては、警察、検察或いは鉄道公安官等が特にこれに介入することはいたしてならんことになつており、又現にそうやつておるのであります。(「やつてないじやないか、現に」と呼ぶ者あり、拍手)
     ―――――・―――――
#21
○田畑金光君 私はこの際、石炭緊急対策に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#22
○松岡平市君 私は、只今の田畑君の動議に賛成いたします。
#23
○議長(河井彌八君) 田畑君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。田畑金光君。
   〔田畑金光君登壇、拍手〕
#25
○田畑金光君 私は日本社会党を代表し、石炭緊急対策について政府の所信をお尋ねいたします。過日行われました小笠原大蔵大臣の財政演説は自画自讃に終始し、選挙演説に過ぎません。インフレは終熄し、物価は下落し、国際収支も好転したと、至極楽観的な御意見であります。併し表面的な輸出増加にもかかわらず、その実態は繊維品にしましても、鉄鋼、船舶、大型機械等一いずれも原料リンク制や出血補償リンク制度によつて支えられた安値輸出か、出血輸出によつて賄われております。成るほど卸売物価は四月以降五%程度下つておりますが、これは生産コスト引下げによる下落ではなく、中間経費の切下げ、倒産によるダンピング、出血販売による引下げでありまして、勢い人員整理、賃下げ、労働強化を招いておるのであります。政府は補正予算編成に当り、一兆円堅持を誇称いたしておりますが、防衛関係費を中心とする過年度繰越一千二百億に上り、民間に対する財政収支は第四四半期の大幅揚超を考えましても、年度末には大幅の散超に終ることは明らかであります。政府の金融引締策、デフレ財政の実施は経済の各面にでこぼこを激しくもたらしておりますが、都市と農村の不均衡、工業間の格差、大企業と中小企業との傾斜、失業者の増大を中心とする社会不安等がこれであります。今日諸種の鉱工業のうち殊に深刻な不況の打撃に曝されておりますものが石炭であります。本年度当初石炭の生産目標は四千八百万トンに置かれましたが、需要減退によりまして四千三百万トンに減じ、今日の事態では四千万トンの消費がせいぜいであります。五月末生産業者の手持貯炭は四百二十万トンに及び、需要期に入りましても貯炭はますます増加し、年度末には五百三十万トンの異常貯炭が予想されます。流通面におきましては資金繰りのために換金ダンピングが行われております。昨二十八年度四月以降本年三月に至る中小炭鉱の休、閉山いたしましたものが百人十九、本年四月以降九月末までの間に百七十二鉱が休、廃、閉山となり、失業者の数が実に八万四千名を超えております。これだけの犠牲を払いましてもなお、今日の不況を切抜けることができません。先月の十二日に大手筋炭鉱、中小炭鉱代表は年度末までに百五十万トンの出炭抑制を自主的に申合せいたしております。約一割の出炭制限でありまするが、勢いコスト高を招きまして、更に休山閉山、人員整理、失業者の発生を余儀なくされるのでありますが、この段階に及びましても、政府は無為、無策、これを放任しようとするのでありまするか、この際政府当局の方針を伺つておきたいのであります。(拍手)
 石炭企業今日の不況の最大原因は、格安の無関税の重油輸入、外国炭の急増が石炭の需給均衡を崩した結果であります。重油、外国炭の輸入は年々増加いたしまして、昨二十八年度には重油によりまして国内炭六百九十三万トンの市場が食い荒され、外国炭の輸入は四百五十万トンになつております。我が国の年消費の状況は、二十六年度四千八百万トン、二十七年度四千八百九十万トン、二十八年度五千四百三十万トンと逐次伸びておりまするが、国内炭の消費は、逆に二十六年度四千六百五十万トン、二十七年度四千三百七十万トン、二十八年度四千三百五十万トンと却つて減少しております。政府の総合的燃料政策の欠如と自由放任経済の破綻が、基幹産業としての石炭企業の今日の悪化をもたらしておると申さねばなりません。(拍手)この故に、石炭安定の根本方針は、現状のような自由放任の民営生産方式の下では、企業の合理化、炭価の引下は不可能であるばかりか、健全な中小炭鉱すら一切破壊から免かれることができません。生産並びに需給を国家的見地から見まして調整する計画的生産方式に移行せなければ、日本の将来の石炭企業の存続は不可能であると考えるのでありまするが、この点に関しまして、愛知通産大臣の所見を承わつておきたいと思います。
 右の基本的な方針を確立するまでの暫定的な問題といたしまして、吉田君の質問に御答弁もありましたが、重油、輸入炭の計画的な削減を即刻断行することが当面の問題と思うのでありまするが、如何ように削減する御意思が、御準備があるか、具体的にこの際承わつておきたいと思います。重油の輸入制限と共に問題とせなければなりません点は、重油、原油の関税復活の問題であります。我が国の輸入関税率は、原油と重油は一〇%でありますが、暫定的に免税されており、揮発油、灯油、軽油は二〇%と定められておりまするが、これ又暫定的に一〇%しか課税されておりません。欧米諸国の石油に対する輸入関税率は、例を英国にとりますと、原油が約一四%、揮発が二三一先、灯油二四四%、軽油二五五%と、加工度の高い石油類に対しましては高率の輸入関税がかけられております。無関税で輸入しながら、国内の石油類の小売価格は輸入価格よりも不当に高額に上つております。輸入価格と小売価格との間には実に三千円乃至五千五百円の中間利潤がとられております。而も石油精製も石油販売も米英資本系統の会社によつて独占支配されております。政府は、これらの石油資本に屈伏し、政治献金と引替えにかかる矛盾を今日まで見逃して参つたと申さなければなりません。この際、政府は現行の暫定免税を明年度より廃止いたしまして、関税定率法に定める輸入関税を復活する御意図があるかどうか。同時に輸入関税に基く税収入はこれを特別会計として、石炭企業等の竪坑の開発、採炭機械化と合理化資金として運用する御意思があるかどうか、この際大蔵大臣並びに通産大臣の御所見を承わつておきたいと思います。
 更に、当面緊急の問題といたしまして、異常貯炭の処理の問題でありまするが、国鉄、電力、ガス、鉄鋼、セメント等、大口需要者をして繰上購入の途を講ずることは必要不可欠の行政措置と思います。目下通産当局においては、電力会社をして明年四月以降買付予定の火力発電用石炭を繰上購入せしめるため、十三億の融資を日銀、市中銀行等に斡旋中と承わつておりまするが、少くとも五十億前後の資金措置が必要であろうかと存じます。この点に関しまして大蔵大臣の所見を承わつておきたいと考えます。
 同時に、この際経審長官に対しまして、先ほどの吉田君に対する御答弁にもありましたが、通常国会、通常国会まで現内閣の生命があるとは考えませんが、一体、立法措置を準備しておられるというお話でありまするが、如何ような構想を以て準備をなされておられるか、同時に、昭和三十年度の石炭生産べースは如何なる線におかれようとするのであるか、経審長官にお尋ねしておきたいと思います。
 次に、労働大臣にお尋ねいたしますことは、最近の小坂労働政策は、過般公表されました小坂構想と労働大臣談話を見ましても、次官通牒を見ましても、いずれも権力行政であり、労働組合運動の弾圧と団結権の解体を意図するものであります。労働行政は、労働省設置法にも明確に示されておりまするがごとく、労働者の福祉と職業の確保を図ることであり、従いまして、福祉行政、納得行政でなければならないと思いまするが、たそがれ内閣の最後の関頭に立たれまして、(「いいぞ」と呼ぶ者あり)小坂労働大臣の所信をお尋ねしておきたいと思います。(拍手)政府の無準備、無計画な財政政策の結果、雇用状況は逐月悪化し、重大な社会不安の段階に突入いたしております。吉田君の只今の質問に対する御答弁によりますると、第四四半期には十八万六千名の失業対策事業を考慮しているというお話でありまするが、今日の失業者の実態は、潜在失業者を入れますると四百万、五百万に上るであろうと思つておるのであります。日本には家族制度の美風があるからと、こういうことで済まされる段階は過ぎていると思うのでありまするが、小坂労働大臣は、補正予算に組まれた枠内の処理によつて、今後更に激化するところの失業対策問題に対処し得る御自信があるかどうか、重ねて承わつておきたいと思います。デフレの影響は労働者の賃金遅欠配を招いております。殊に中小企業におきましては、深刻な事態に突入いたしております。八月末現在、政府の調査によりますると、賃金の遅欠配十七億二千万に上つておりまするが、石炭部門に見ますならば、不払状況は八月約六億八千万、九月六億八千五百万で逐月殖えております。この際、年末対策といたしまして、資金運用部資金等を全国の労働金庫等を通じ融資する途を講じて然るべきであると考えまするが、労働大臣にその御意見があるかどうか、この際承わつておきたいと思います。
 最後に、厚生大臣にお尋ねいたしまするが、社会保障の強化を忘れました無慈悲極まるデフレ財政は、失業者を殖やし、生活困窮者をますます厖大にならしめておるのであります。殊に炭鉱地帯における生活の窮乏、不就学児童、欠食児童の増加は甚だしく、社会的犯罪は頻発し、放任し得ぬ事態に立至つております。これがためキリスト教団の救済や、一握りのカンパ運動等が山においては展開されております。このような事態に対処いたしまして、既定予算、補正予算の範囲内におきまして、どのような対策を講じようとなされるのか。或いは講じて来られたのであるか、生活保護、児童福祉、社会保険の運用等に関し、草葉厚生大臣の所信を承わつておきたいと思います。
 以上の諸点に関しまして政府の答弁を求め、私の質問を終ることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(愛知揆一君) 只今お尋ねのございました石炭の先ず恒久的な基本対策について、特に立法措置をどういう点について考えておるかというお尋ねからお答えいたしたいと思います。基本的な考え方といたしましては、現在の割高な炭価水準を重油及び輸入炭の価格水準にまで引下げることが、どうしても必要であると考えておるのでありますが、それには相当の年月を要すると思うのであります。私の考えといたしましては、昭和三十三年度におきまして平均生産原価を二割乃至三割に及ぶ引下げを実現することにいたしたい、そのために長期の合理化計画を確立いたしたいと考えております。内容といたしましては、先ず炭鉱設備の合理化であり、先ほども申上げましたごとく、炭鉱開さく工事を中心とし、これに一般的な合理化の工事を並行して行わんとするものであります。それから第二は、生産体制の集約化でありまして、これがためには非能率炭鉱の処理についても考えなければなるまいと思いまするし、或いは鉱業権の整理とこいうよいなことについても、考究いたさなければならんかと考えておるわけであります
 次に、重油の消費規制の問題でございまするが、二十九年度下期におきましては、先に上期の外貨予算の編成の際には二百八十万五千キロリツターの重油の消費見込を持つておつたのでありまするが、これを更に十万トン圧縮をいたしましたが、更にその範囲内におき懐して引続き強力な行政指導を行いまして、石炭に転換及び重油の節減を図つておるわけでございます。なお特に今年度の下期におきましては、電力、ガス、煖厨房等の部門におきまして相当の需要量の増加が見込まれるのでありまするが、半面この種の用途に対しましては、特に大幅な節減を期待しなければならない事情にありまするので、需給調整の重点を特にこの点に置いて参りたいと考えております。
 次に 石油の関税のお尋ねがございましたが、この点につきましては、原油及び重油につきまして、国内資源の開発と有効利用を促進したいということも併せ考えまして、総合対策の一環といたしまして、これが復活につきましてはとくと研究をいたしたいと考えております。
 最後に、当面の緊急対策でございますが、先ほど吉田議員のお尋ねにお答えいたしましたごとく、先ず過剰貯炭の対策につきましては、只今お触れになりました通り、取りあえず十三億円の貯炭金融とでもいうべきものにつきまして、その早期実現を図つておるわけでございます。
 それから次に生産制限の問題でございますが、この点につきましては、最近におきまして業界との意見の一致を見まして、十二月以降或る程度の生産制限の実現の見通しを得るに至つたわけでございます。
 失業対策につきましては、先ほど労働大臣からもお話がございましたが、数字を挙げて申しますと、十月五日の閣議決定によりまして、予備費から三億一千四百万円、節約分からの解除九千四百万円、合計約四億円の緊急支出をいたしまして、鉱害復旧事業の繰上げ施行によつて、約一万人の炭鉱失業者を吸収する見込でありまするが、更に今次の補正予算案におきまして、先ほど申しましたごとく、炭鉱失業者を中心といたしまして、おおむね二万七千人に及ぶ失業者の救済を計画いたしておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えをいたしますが、労働運動が健全にして民主的な道を歩むということにつきましては、政府としては積極的に協力して参りたいと考えております。併しながら、最近の労働争議の実情を見ますると、数年前に見られましたような暴力的な事犯が再び増加しておることは、御承知の通りであります。このようなことが法治国において絶対に許さもべきものでないということは申上げるまでもないのでありまして、健全な労働運動のために深く惜しむところであります。政府といたしましては、労働運動が暴力その他不法な実力行使を伴うにおきましては、これを正常な軌道に乗せるように努力をすることが当然の責務であると存ずるのでありまして、健全な労働運動を弾圧するような意図は毛頭持つておりません。
 又、失業対策につきましては、先ほども申上げたのでありまするが、緊急的な就労対策を考え、或いは鉱害復旧等の方法等に動員するのでありますが、今回の補正予算におきましても、次のようなことを予定いたしておるのであります。即ち、失業保険特別会計におきまして八十四億六千七百万円の増額、そのうち国庫負担分が二十八億二千二百万円であります。これが対象となる人員を年度間三〇%増の四十九万四千人といたしまして、保険金の給付に遺憾なきを期しております。
 失業対策事業費につきましては、先ほど申上げましたように、八億五千万円を予定し、第四四半期におきまして十八万六千人を吸収するのでありまするが、更に情勢の比較的悪い大都市、或いは事業的に不況である地帯というようなものにつきましては、事業効果の高い建設的な失業対策事業を実施したいと考えております。
 緊急就労対策費その他については、先ほども吉田議員にお答えいたした通りでありまするが、どういう事態でございまするから、ベース・アツプというような一律の終戦以来の惰性というものは、この際はつきりと考え方を切り換えて頂いて、相携えて実質的な賃金の拡充に向うように御努力願いたいと思うのであります。
 更に、労金のことにお触れになりましたのですが、労金も非常に健全な経営をやつて頂いておりまして、相当支払準備金もできております。そこで只今お話のような年末対策といたしまして、預金部の資金を考えることも一法でありますし、又支払準備金を崩して、一時これに充てるということも一法であります。いずれにいたしましても年末の労働者各位の金融には支障なきよう、できる限りの配慮を払いたいと、かように思つております。(拍手)
   〔国務大臣草葉隆圓君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(草葉隆圓君) 最近の困窮世帯の状態が、だんだん急激に殖えておるというお話に対しまする、これの対策でございまするが、私どもの調査によりますると、二十七年度が、生活保護の関係で申上げますると、大体百九十万乃至百八十万台であります。二十八年度が百七十万台になりまして、二十八年の終り頃になりますると百八十万台をちよつと割るようになりまして、本年になりましてからは大体百六十万台になつて参り、本年の一月は百六十九万四千、この七月の実数は百六十四万五千、こういう状態になつております。従つて、全体から申しますると、この七月までの趨勢では、今申上げましたようにずつと減つて参つておる。ただ、最近のいろいろな情勢から考えまして、七月以降は大体五%程度殖えるのではないかと見ております。従つて、お話の児童保護なり、或いは医療なり、生活保護等に対しまするために補正予算として七十億をお願い申上げておる次第であります。そこで、そういう状態でございまするが、殊に炭鉱地におきましては、最近お話のような状態になつておりまするので、この保護政策に対しましては十分徹底をするように、先般、八月に主管課長の会議にこの点を具体的に指示をいたして参つております。
 なお児童の問題につきましては、いろいろ、殊に最近この炭鉱地におきまする欠食児童なり、長期欠席児童等が見受けられる状態に鑑みまして、殊にこの点を強力に処置をいたしたいと存じまして、九月、社会局長名の通牒を出しまして、どうかと申しますと従来の枠を少し拡げるような意味の通牒を出してやつて参つております。現在教育扶助におきまして、全国で五十七万人くらいの教育扶助をいたしておりまするが、この多数は生活保護とのいわゆる併給でありまするけれども、約十万程度は教育扶助だけの単給扶助、従つて炭鉱地等におきまする或いは欠食児童等に対しましては、必要がありますると教育扶助の単給扶助をいたして参り得るということを強く指示いたしておるのであります。なお近く、主として福岡、佐賀、長崎等におきまするこれらの地域に対しまして、ケアの物資が今月の中頃到着する予定でございまするから、米なり、バターなり、チーズなり、ラードなり、それから綿の実の油、いんげん豆、牛肉罐詰、こういうものを大体十四ポンド程度各戸に、その困窮世帯に配給をいたす予定であります。成るべく年内にいたしたいと考えております。(拍手)
   〔政府委員山本米治君登壇、拍手〕
#29
○政府委員(山本米治君) 大蔵大臣が予算委員会に出ておりますので、私が代つてお答えを申し上げます。
 その第一点は重油、原油関税を復活して、その収入を炭鉱合理化に充てる意思はないかどうかという点でございますが、この関税を復活いたしますと六、七十億の収入があると承知いたしておりまして、その一部を竪坑開発等に使つたらどうかという御意見があるようでございますが第一に、この関税を復活するかどうかということは、重油を消費しておる産業等に対しまして相当広汎な影響がございますので、目下慎重に考慮中でございます。仮にこれを復活いたしましても、これを只今の意見のように紐付きにするということは、大蔵省の立場としては好ましくないと存じておるのであります。もとより炭鉱に対しまして合理化資金等を出すということに対しましては、大いにやらなければならんと、こういうように考えておじますが、成る財源をこういう方面に紐付きにするという考えは面白くないので、これは別途に考えるべき問題じやないかと考えております。
 御質問の第二点は、貯炭融資若しくは滞貨融資の問題でございます。これに対しましては、すでに日銀、通産当局等においてもいろいろなお考えがございまして、或いは電力会社等に相当の石炭を持たせる、その電力会社に融資をしたらどうか、数字等につきましても或いは三十五万トン程度、十三、四億野金を電力会社に融資したらどうかという案があるようでございますが、これは石炭に対する滞貨融資というように銘を打ちましてやることは、やはり余り好ましくない、今日の金融情勢におきましていやはりその問題ごと、或いはその事件ごとに、いわゆるケース・バイ・ケースで考えられるべきじやないか、こういうように考えておる次第でございます。
 第三に、これは労働大臣からもお答えがございましたが、大蔵省だおいて昨日今日、大体の考えをまとめたところがございますので、労働金庫に対する資金運用部資金の融資問題について一言申上げておきます。この年末を控えまして地方団体の財政状態が非常に困窮しておる、所によりましては年末資金、年末の給与の支払等にも困るということができておることは周知のことでございまして、そこでこの年末を越す用意のために、各財務局へ一カ月程度の趣く短期の融資を四十億程度、各財務局を通じて配分することにしたいと考えておるのでございます。このほかにいろいろな資金運用部に対して起債の御要望がございますが、まだいろいろな事情でなかなか決定に至りませんので、差当り将来の起債を見返りとして資金運用部から或いは六、七十億程度、或いは簡保から百億程度起債前貸しという意味においてこれを出したい、こういうふうに考えておる次第でございまして、そこで先ほど申しましたが、四十億程度の一カ月ぐらいの短期融資、これにつきましては、只今労働金庫へこれを廻すという金額はこの中に入つていないのでございますが、労働金庫に対してこの資金運用部の金を何らかの方法で融通してもらいたいという要望も熾烈でございます。労働金庫のほうからは十億程度という金額も承わつておるのでございますが、なかな心資金運用部の資金繰り困難の折柄でございますので、昨年やりました程度、昨年は二億七千万円程度と思いますが、これをやはり一種の紐付きで地方団体に出すということを考えておる次第でございます。(拍手)
     ―――――・―――――
#30
○小酒井義男君 私はこの際、遺家族援護に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#31
○上林忠次君 私は、只今の小酒井義男君の動議に養成いたします。
#32
○議長(河井彌八君) 小酒井君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小酒井義男君。
   〔小酒井義男君登壇、拍手〕
#34
○小酒井義男君 日本社会党を代表して、戦争犠牲者である戦没者の遺家族の問題について、緒方副総理並びに厚生、大蔵両大臣に若干の質問を行います。但し、いつまで続くかわからない吉田内閣に対して、将来のことをお尋ねをいたすのもどうかと思いますし、お答えになる方もお答えがしにくいと思いますので、(拍手)主として過去における長期の吉田政権の下に行われて来ておりますところの、戦争のために被害を受けた国民の中でも最も大きな犠牲者というべき戦没者遺族が受けて来た諸対策について、政府の所見を質したいと思います。
 先ず、厚生大臣に対する質問をいたしますが、私は最近十日ほどの間に約五百通の封書と一万通に近い葉書を受取つております。これは全国の遺族が、従来政府のとつて来たつたところの戦没者遺族の取扱に不満を抱いているからにほかなりません。(拍手)国家の公務によつて戦没した者の遺族に対する補償、弔慰が余りにも薄かつたこと、又極めて不均衡であつたことがその原因であります。現在毎日片々我々は数回に亘る陳情を受けておるのは、その第一点として、戦没者遺族の公務扶助料を文官同様に取扱われたいということと、第二点としては、法の不備、不合理のために戦没者の中で公務死と認定されない者、又戸籍等の関係で法の適用を受けることのできない者に、法律の改正をして公務扶助料又は遺族年金の支給が受けられるように措置されたいとの趣旨であります。(拍手)厚生大臣はこの二点について如何なる所見であるか、承わりたいのであります。若し仮に諸般の国内事情が現状以上の対策を不可能たらしめたものであつて、これがやむを得ない最大のものと信じておいでになるのでしたら、吉田内閣の政治感覚を測定する尺度と相成りまするから、それが承わつておきたいのであります。(拍手)或いは今日までとり来たつた戦没者遺族対策にはこれだけの欠点があつたということをお認めになるならば、この際是正すべき諸点を明らかにしておかれることを要望いたします。更に何故それを行うことができなかつたかというその理由についても、御説明を承わつておきたいのであります。
 次に大蔵大臣に質問いたしますことは、本日は出席をされておりませんが、私は本議場において過日、得意の演説を拝聴いたしました。本気で言つておられるとしたら、誠に都合のいい面ばかりを御覧になつて、都合の悪い面は、故意か偶然か、見落しておられるように思つたのであります。大蔵大臣は都会の表通りばかりを見ておられますから、過日のような演説をされると思うのですが、中小企業の今日の実情、労働者の生活状態、これは決して堅実に回復はしておりません。そこで大蔵大臣から明快にお答え願いたいことは、あなたは自衛隊の増強と戦争犠牲者の生活保障とを並べた場合、どちらが優先する問題として予算の編成に当られて来たかという点であります。(拍手)憲法を無視して作られる再軍備には、年々巨額の予算が支出されております、防衛庁では年度末になると予算の使途に困つて、貯蔵に耐えないような物品も必要以上購入して、国費を濫費しておるというのに、憲法で保障されている国民の最低生活の保障ばかりか、当然国の責任で補償しなければならない公務によつて生命を失つた戦争犠牲者さえ、放置されているのが実情であります。陸、海、空の三軍はでき上りましたが、戦争犠牲者は取残されておる現実であります。この責任についてへ国の財政を担当せられる大蔵大臣にもその一半の貴があると信ずるのでありますが、如何ようにお考えになつておるのか。再軍備にのみ熱を上げ過ぎて遺家族の保障を犠牲にしたことの誤りを、お認めになりませんかどうか、お尋ねをいたします。(拍手)
 緒方副総理に質問いたしたいことは、以上厚生、大蔵両大臣に質問をいたしましたことについての、緒方副総理の責任ある立場からの所見が承わりたいことと、その次は、今日まで吉田内閣のとり来たつたところの戦没者遺族対策について、これが吉田内閣として行い得た最上級のものであつたと確信しておられるか、或いは失敗であつたと考えておられるかという点であります。
 次に、昨年軍人恩給の復活が政府提案によつて本院に付託されたときに、我々は次の諸点について意見の相違があるために反対をいたしました。それは極めて階級差が甚だしかつたこと、同時に軍人軍属にのみこれが限定されていることが、重要な反対点であつたのであります。我々は公務のために戦没した者、これがたとえ軍人であつても、或いは学徒であつても、すべて公平にその保障をするべきであつて、一部の者にこれを限るという不公平を避けなければならないと考えたからであります(拍手)又第十九国会におきまして恩給法一部改正が出された際に、衆議院における一部自由党議員諸君の修正によつて、曾つて戦争指導者としてその責任を追求されたところの戦争犯罪者であつた人たちが、これが高額の恩給を受けることとなつたのであります。緒方副総理は、これは政府の関知せざるところであると言われるかもわかりませんが、政府と与党の関係は不可分なものであります。数百万の生命と、その遺族を不幸に陥れた責任者の遺族と、葉書一枚で戦争に駆り出された戦没者の遺族がおかれておる現状について、如何ような所見をお持ちになつておるか、承わりたいのであります。
 全国津々浦々に取残されておる不幸な戦没者遺族の人心に対して、納得のでき得る、責任のある答弁を要望いたしまして、質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(緒方竹虎君) 戦没者の遺族に対しましては、従来とも可能な範囲で援護の強化の徹底を期して参つたのでありまするが、今日の財政の事情もありまするし、政府はこれを以て十分であるとは考えておりません。この援護の拡充につきましては、遺族の実情等に即し、財政の許す範囲内におきまして、今後とも十分努力を重ねて参りたい考えであります。それから軍人以外の戦争犠牲者、公務のために戦争に行つて犠牲になつた、軍人以外のこの援護を要する者に対しましては、この上とも財政の許す範囲におきまして、社会保障施策の拡充適用にまつて、できるだけのことをやつて参りたいと考えております。以上お答えします。(拍手)
   〔国務大臣草葉隆圓君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(草葉隆圓君) 戦没者の遺族に対しまする援護或いは扶助という点につきましては、従来十分な方法を考えながらこれを実施して参つておりまするが、そんならそれが完全かというと、私は必ずしも完全とは申しません。併し戦時中等も考慮いたしまして、決してさように見劣つたものではないと存じます。ただ内容につきましては、これは検討すべき余地があると思います。例えば戦傷病者戦没者遺族等援護法というものは、従来は戦時中といえどもなかつた法律であります。むしろ現在は戦傷病者戦没者遺族等援護法と恩給法と、恩給法に或いは洩れるものは、援護法によつて処置されるという方法が講じられただけは、私は進歩ではないかと考えております、従つて援護法におきましては、お示しの通りに階級を設けておりません。恩給法におきましては、普通の恩給同様階級を設けておりますることは、恩給法の建前上これは当然であると存じます。ただ問題は、仮定俸給或いは倍率をどこに置くかが問題の中心であります。従つて仮定俸給並びに倍率は国家の力に応じて認定を変えていいものであると私は考えております。
 次に公務死の認定、従来公務死の認定以上に、実は実情に即した公務死の認定をいたしておるつもりでございます。恐らく戦時中等におきまする公務死の認定と、現在私ども政府がとつておりまする公務死の認定とは相当進歩をいたしておる点は具体的に御了解頂けると思います。又戸籍法上の問題は、援護法におきましては、戸籍法上の問題を相当緩やかにいたしまして、従つて内緑の妻等もこれを実施いたしております。恩給法におきましては、これは戸籍法が中心でありまする以上やむを得ないことと存じます。
 以上申述べまして、私どもは今後国力の許す限りその内容並びに範囲を拡大し、一層これらの戦没者の方々に対しまして、その弔慰並びに感謝を表わして参りたいと存じております。(拍手)
   〔政府委員山本米治君登壇、拍手〕
#37
○政府委員(山本米治君) 自衛力増強の努力と、社会保障関係の努力とどちらが大事だ、どちらを優先さすべきかという極めて広汎な御質問でございます。(「それが基本的なことだ」と呼ぶ者あり)私は両方とも大事だと思つております。(「そんな手品みたいなことできるか」と呼ぶ者あり)自衛力増強問題につきましては、一部の政党の方は、これは世界観を異にするのでありまして、全然不要とお考えになる向きもあるようでございますが、我々はそう考えておりません。そうかといいまして、経済力が弱いにもかかわらずそのほうへ莫大な支出をするということになりましては、これ又、むしろ内部から社会が崩壊するわけでございまして、そういうことは許されないのでございます。従つて我々は現在の問題といたしましては、今、自衛力増強のために来年度等におきまして、従来以上にずつと金を出すということは考えておりません。又、財政の許す範囲内において軍人遺家族等をも含むところの社会保障関係の経費は十分にやつて行きたいと考えておる次第でございます。(拍手、「できないことばかり言つている」と呼ぶ者あり)
#38
○小酒井義男君 再質問いたします。
#39
○議長(河井彌八君) 登壇を請います。
   〔小酒井義男君登壇、拍手〕
#40
○小酒井義男君 簡単に再質問をいたします。
 緒方副総理にお尋ねをしました具体的な例として、戦犯として刑死、獄死をした人の遺族の恩給と、そうでない一般の戦没者の遺族に対する処遇について、あなたはこれでいいとお考えになつておるか、不合理をお感じになつておらないかという点をお尋ねをしたのでありますが、それに対する御答弁がなかつたようでありますので、この点を一つ重ねてお尋ねをいたしたいと思います。
 又大蔵大臣の質問に対する答弁として、国力の実情に副つて両方とも重要に考えてやつて来たという答弁でありました。緒方副総理もやはり今、答弁があつたように、従来行われて来ましたところの遺家族援護対策というものが、これが妥当な対策を政府としては行なつて来たんだということを御確認になりますかどうか。この二点についてお尋ねをいたします。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 戦争中のいわゆる戦争指導者の遺家族に対する援護、それと軍人にあらざる公務員としての戦争の犠牲者に、公務についておつて戦争の犠牲になつた者の遺族に対する援護の間に均衡がとれておるかどうかという御質問に対しましては、必ずしも均衡がとれていないと考えます。でありますが、あの法律は必ずしも自由党が提案したものではなくて、これは院議として法律になりましたので、政府はそれを実施いたしているのでありまして、その点につきまして、政府といたしましては、今御質問の趣旨については、十分考えておるところであります。(拍手、「もう一つ」「二点聞いている」と呼ぶ者あり)
#42
○議長(河井彌八君) 緒方国務大臣。
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(緒方竹虎君) 失礼いたしました。
 今大蔵大臣に再質問があつたかと存じたのでありますが、先ほど山本政務次官から申上げましたところは、政府の意向として私も同意見であります。(拍手)
     ―――――・―――――
#44
○田中一君 私はこの際、災害復旧仕越工事費の支払遅延に関する緊急質問の動議を提出いたします。(拍手)
#45
○阿具根登君 私は、只今の田中君の動議に養成いたします。
#46
○議長(河井彌八君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。田中一君。
   〔田中一君登壇、拍手〕
#48
○田中一君 私は、日本社会党を代表しまして、ここに昭和二十八年度大災害の事後処理並びに仕越工事費の支払遅延と失業対策について、政府の所信を質さんとするものであります。この仕越工事と申しますのは、その年度の予算の枠外における工事を申しますから、念のため御了承おき願います。
 第一に、災害について申述べますと、御承知の通り、二十八年度災害は九州各県を初めといたしまして、南近畿、更に三重、愛知の海岸一帯に及ぶ広大な範囲に生じたものでありまして、その被害総額も又莫大であります。建設省関係の公共土木関係費のみをとりましても千二百四十二億円と称せられるのであります。復旧に対する措置としては、各種の特別法が制定され、且つ昨年十月三十一日自由党及び当時の日本自由党、改進党のこの三党間におきまして、いわゆる三党協定が結ばれたのであります。即ちこれによりますると、一、今次災害の国庫負担分は千五百六十五億円を基準とする。二、年度割は三・五・二を基準とする。三、初年度三百億を計上する。四、残余は復旧事業の進行に伴い、その必要に応じ、実情調査の上資金運用部資金等より融資する。但し本件に限り、例外的に年度末までに利子補給或いは免除の措置を講ずる等でありまして、なお三党間の了解事項としては、初年度の三百億に対する不足額は百四十四億三千万円とし、これに引当てる財源は資金運用部資金によつて確保するということであるのでございます。
 さて右の協定及び了解事項は、甚だ明確を欠いておるのでありまして、実は三・五・二の比率を以て復旧を施行するためには四百四十四億三千万円を要するのでございます。そのうち三百億円を補正に計上し、百四十四億三千万円は資金運用部資金を以て確保するという意味なんでございます。然るにこの百四十四億三千万円につきましては、何らの措置も講ぜられておりません。二十九年度予算におけるところの災害復旧費は約五百三十三億円であります。これは三党協定の千五百六十五億に対しまする約三〇%でありまして、且つ了解事項たる百四十四億円の措置が講ぜられて ない実情と共に協定は根柢から覆えされているのでございます。この事情が地方に対しましてどのような影響をもたらしているかということを申上げますると、例を和歌山県にとりまするに、土木災害総額百四十億のうち県工事百二十一億、従つて三・五・二の比率が守られるといたしますならば、二十八年度及び二十九年度両年度において、九十六億を消化しなければなりません。県としてはこれに対しまして五十五億の工事を開始しているのであります。これに対する予算は二十八年度二十一億、二十九年度十四億五千万円、計三十五億五千万円の予算であります。即ち現在において既に十五億円の仕越工事を生じておるのであります。更に三重県、愛知県の海岸堤防につきましては、総事業費三百二十七億のうち第一期計画として百四十九億円の事業を施行中でございますが、この二十九年度末出来高は約百十億円に達する予定であります。これに対して資金状態を申しますと、二十八年度予算二十四億、二十九年度予算五十二億七千万円余、既に融資をいたしましたものが十四億六千七百万円、計九十一億四千三百万円でございまして、差引不足額十八億五千万円を生ずる結果となります。同様の事情は佐賀県、熊本県、鹿児島県等にもありまして、二十八年災害を中心とする公共土木の仕越工事の総額は約百二十億に達するものと言われております。この状況の地元への悪影響は、再び和歌山県の例をとりますと、或る建設会社のごときは、実に三千万円の不払を生じております。又愛知県、三重県の地元業者においては、いわゆる大手筋を以ていわれる業者は別といたしまして、中小業者は倒産一歩手前にございます。このしわ寄せは賃金労働者その他の労働者の肩にかかつて来ることは申すまでもございません。これらの仕越工事は、或いは政府当局は地方自治体の責任なりとうそぶくかも存じません。倒えば和歌山県において二十八年度発生災害についで認証外復旧費として十四億三千万円を計上いたし、三重県において資金不足額を十億八千七百万円を計上する等の、措置の妥当性については論議はありましようが、ここでは先ず第一に大蔵大臣、建設大臣並びに自治庁長官に質問いたしますことは、昨年の三党協定の政治的責任はどうお考えになつておるか。
 第二には、約百二十億の仕越工事は公共土木災害工事についてのみでありまして、農業土木或いは港湾その他の工事を加えますときには、莫大なる全額に上ります。大蔵大臣は一昨日の予算演説におきましても、一兆円予算の枠内で予算が持たれておると申しておりますが、このように公共土木費にいたしましても、百二十億の未払金がございます。それからその他の港湾、農業土木を見ましても、数百億に上るところの金が現に政府の負担として国民に転嫁されておる現状を考えますときには、全く欺瞞に満ち、国民をだまし抜いておる予算であると言わざるを得ません。そして一切のしわ寄せというものを国民大衆に課しておる実情をどのように考えておるか、伺いたいと存じます。
 第三に、仄聞するところによりますと、最善の事態、最悪ではございません。一番善い状態において、この本年度の年末までに約二十億、年度末までに三十億、計五十億の融資を以てこれを切抜けようといたしておるように聞いておりますが、この事実があるかどうか、又これを以て足るとするかどうか。この点を伺います。
 第四には、仮に百億の仕越工事と想定しても、これに昭和二十四年法律二百五十六号の政府契約の支払遅延防止等に関する法律を適用する意思があるかどうか。これは余り専門の法律でございまして、国民大衆は知りません。政府が一定の期限までに金を支払わぬ場合には、大蔵大臣がきめますところの市中銀行並みの金利をその債権者に対して支払うという法律でございます。若し仮に百億の借金があるといたしますならば、日歩四銭といたしましても、一日四百万円の金利を国民が負担しておる。従つて政府並びに地方公共団体は四百万円の金利を稼いでおるということでございます。この処置に対しては如何なる考えを持つていらしやるか。
 第五には、この法律が今日まで、建設省に聞きますと、一遍も適用されたことがない、このように国民の権利を守る法律ができておりながら、一遍もこれが適用されない、だから政府の支払いが円滑に行つておるとお考えになりますと、これはとんでもございません。このように百二十億もの金が未だに支払いになつておらない現状でございます。そこで建設大臣に伺います、或いは大蔵大臣に伺います。本法を国民に周知徹底せしめて、当然国民の権利であるところの金利を国民に支払うという措置を徹底する意思があるかどうか。同時に又、この金利というものを予算面において適当な措置をする意思があるかどうか。この点を伺います。殊に窮乏を告げつつあるところの地方公共団体の財政、この場合に自治庁長官に伺いますが、補給金その他によつてこの点の財政の裏付けをする意思があるかどうか。
 第六に、かかる現実から見まして、この年末金融というものを政府の不当なる行為によつて圧迫しておる、そして社会不安を醸成しつつある現実に対しまして、大蔵大臣は如何なる責任をとるか。
 第七に、小坂労働大臣に伺いますが、この政府のもろもろの悪政と申しますか、不当なる行為というものは、結局数百万に及ぶところの建設労働者にしわ寄せさせる、従つて低賃金、中小企業の倒産を招く結果となりますが、労働大臣はこれに対して如何なる責任を感じておるか。殊に一方自衛隊法に基くところの自衛隊は、今日公共土木工事に参画しております。そして一般中小企業がするような事業を自衛隊そのものが請負つてやつております。こういうことは中小企業を当然圧迫し、且つ労働者に低賃金を強いる、並びに失業者の増加を招くことは当然でございまして、これに対する労働大臣の御答弁を願いたい。
 以上、これで私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣小澤佐重喜君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(小澤佐重喜君) 田中君にお答えいたします。
 お話のように昨年の災害、即ち二十八年度の災害の経過が、大体お話のような三党協定が出まして、そうしてこの三党協定が理想通りに実行されていないという点はお話の通りでございまして、誠に遺憾と存じております。
 それから仕越工事の点ですが、これは百億とおつしやつておりますが、勿論建設省でもまだ詳細な集計は得ておりません。併しこれよりはずつと下廻つて七、八十億じやないかと考えております。(「違う違う」と呼ぶ者あり)それからなお、この仕越工事があるために地方で非常に困つておる、殊に御指摘の和歌山県等におきましては非常に困難を来たしておることは私ども承知しております。従つて政府としては速かに融資等の方法によりまして、これを何とか善処したいという意味で、御承知の通りいろいろ政府部内でやりくりをやつて参つたのであります。併しその結論がまだつきませんが、少くとも先般の閣議でもこの問題は大いに論議せられまして、大体今年の末までには是非適当な措置を講じたいということの大蔵大臣の了承も得ましたし、又閣議全般もそういう方向に進んでおりますから、御了承願いたいと思います。
 それから遅延に関する法律ですが、これは若し請負業者からこの法律に基いた条件が整いますれば、当然御指摘の法律によつて利息を支払います。それからその利息の、この法律の趣旨徹底の問題でありますが、これは官報にも告示してありまするし、なお、この建設業者に対しても、こうしたことが徹底するような措置は十分講じないと存じております。(拍手)
   〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(塚田十一郎君) 御指摘のようにこの仕越工事の立替が非常にあつて、業者の方々にも御迷惑をかけ、又自治団体としても非常に困つておることはよく承知をいたしておるのでありまして、自治庁長官として私も非常に憂慮をいたしておるところであります。ただ問題は御承知のように直接の所管が私どもの立場ではありませんので、私どもとしましては、どうしてもやらなければならない仕事は、建設省及び大蔵省側において正規の軌道に乗せて早く処置をしてもらいたいということを強く要望をいたしておるわけであります。この現実に生じでおる事態をそのまま放つておくわけには参りません。地方団体は今御承知のように、これらの問題、そのほかいろいろな原因からして非常に金融は困難をいたしておりますので、それらの面につきましては、それぞれ逼迫度に応じて金融面で、できるだけ自治庁長官としては措置はいたしております。
 それからしてなお、これによつて生じた地方団体の負担の増加というものを財政計画の上で裏付けをする意思があるかというお尋ねでありますが、これはよく検討いたしてみまして、地方団体が当然負担をしなければならないものは、これは財政計画の上で計上いたしまして、当該地方団体に面倒を見てあげなければならない、こういうように考えております。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(小坂善太郎君) お答え申上げます。
 賃金の遅欠配の問題は従来金融引締等の影響を受けて漸増の傾向を示しておりまするが、只今御指摘の建設関係の分におきましても、本年九月末現在で九千万円弱の未払い、遅欠配を生じておるわけであります。私どもの立場からいたしましても、こうした賃金の不払いというものが労働者諸君の生活に及ぼしまする影響の大なることに鑑みまして、公共事業等について不払い賃金の支払を促進いたしまするために、常時関係各省とも連絡をとつておりまするが、只今建設大臣からもお話がございましたように、この点につきましては、政府としては強力なる解決策を講ずる考えであります。
 なお、自衛隊の問題は、これは如何なる動機で、如何なる場所で、そういうことが行われておりますかということにつきまして、まだ知悉いたしておりませんから、なお連絡をとつてみたいと考えております。(拍手)
   〔政府委員山本米治君登壇、拍手〕
#52
○政府委員(山本米治君) すでに各大臣から御答弁がございましたですが、三党協定により非常にまずい状態になりましたことは遺憾に存じております。年末までに三十億円程度で切抜けるという話があるが、これは真実かどうかというお話がございますが、御承知のごとく今日資金運用部の資金繰りは非常に苦しいのでございまして、原資は余り殖えないのにかかわらず、要望が実に多大でございますので、これをどう調整するか、今日苦慮中でございます。従つて只今のような噂があるかも知れませんが、まだこの金額はきまつておりません。
 それから政府支払の遅延に対する問題に関しましては、建設大臣からお話があつた通りでございます。地方団体がこの問題により非常に困つておることは十分了承しておりますので、一生懸命善処したいと考えております。(拍手)
#53
○田中一君 再質問の時間ありませんか。(「あるよ、あるよ」、と呼ぶ者あり)
#54
○議長(河井彌八君) 田中一君。
   〔田中一君登壇、拍手〕
#55
○田中一君 今甚だ不誠意な御答弁なんで、甚だ遺憾と存じますが、少くとも中小企業その他に対しては国の責任でない形においても融資をしよう、年末金融を円滑にしようという考えがあるならば、当然国並びに地方公共団体が国民に借金をしておるその金を支払うべき義務がある、国民は権利があるというものに対して、そのようなあやふやな答弁では国民は納得いたしません。若しもそのようなことがあるならば、和歌山県、三重県、愛知県等々で恐らく社会不安が起き、何百人、何千人かの人間が県庁なり或いは建設省なりに対しまして、デモ行進をいたすような事態がないとは限りません。当然労働者は賃金をもらう権利がございます。それを今のようなあやふやな答弁では、今日の建設労働者数百万の労働者は我慢ができません。当然国が支払う義務がある。又自治庁長官にいたしましても或いは建設大臣にいたしましても、お前のほうでこの工事をやれ、国が完全に金は心配してやるからと、こう言つてさしておる海岸堤防なり災害復旧工事なんでございます。これを仕事をさしておいて、あとお前たち勝手にせいということでは、これは納得しません。あなた方が希望するならば、国民の持つているところの権利を行使いたしまして、適当なる措置が行われるであろうということを警告いたしまして、もう一遍、誠意のある御答弁を願います。
   〔国務大臣小澤佐重喜君登壇、拍手〕
#56
○国務大臣(小澤佐重喜君) 田中君にお答えしますが、大体、田中君と同じ気持で、それ以上の気持を以て政府部内で活躍いたしておりますから、御安心願います。(拍手)
   〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕
#57
○国務大臣(塚田十一郎君) 十分誠意のあるお答えを申上げたつもりでおるのでありますが、どういう点に私が、私の立場で更に努力すべきであるのか、私といたしましては、関係各省に、とにかく地方団体側としては災害が起きたというのを放つておくわけには行かないだろう。又国の側では金の枠には限りがあるだろうから、その辺を十分話合つて、少くとも現実にやつた仕事は、金の措置をしてもらうようにということを正規の軌道に乗せてもらうようにということは、これは関係各省に私としては努力をいたしております。併し、そうかといつて現実に起つておる窮乏の事態は、決して捨ててはおりませんので、これは自治庁長官としてできる範囲において、さつきも申上げましたように金融措置は面倒を見てやつておる。こういうことを申上げておるわけであります。なお又それに応じて金利負担その他で負担の増が出ておれば、これは特別交付税その他でできるだけの面倒は見なければならない、こう考えておるというように申上げたのでありまして、十分誠意を持つて考えておりますし、処置をいたすつもりであります。(拍手)
     ―――――・―――――
#58
○森崎隆君 私はこの際、日本漁船撃沈事件に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#59
○鈴木一君 私は、只今の森崎君の動議に養成いたします。
#60
○議長(河井彌八君) 森崎君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#61
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。森崎隆君。
   〔森崎隆君登壇、拍手〕
#62
○森崎隆君 先ず事件の概要を申上げます。
 撃沈されました第三十一山田丸、六十六トン弱でございます。及び第三十二山田丸、六十五トン強でございますは、いずれも長崎市山田吉太郎氏所有の漁船でありまして、この二隻の漁船は去る十一月二十二日他の僚船と共に支那東海農林漁区五百五十四、これは東経百二十二度より百二十二度三十分、北緯二十八度より二十八度三十分の海面を申しまするが、この附近で操業中、午前五時五十分頃突如といたしまして、国籍不明の軍艦より約百メートル乃至百五十メートルの近距離から攻撃を受けたのでございます。艦艇は五百トン程度の駆潜艇又はフリゲート艦のごとく、午前五時五十三分より約三十分間、前後三回に亘り猛烈なる銃砲撃を加え来たり、突然のこととて周章狼狽のうちに乗組員は各人各様の行動をとつたのでありまするが、武器は砲又は機関砲及び機関銃らしく、同艦艇はまさに沈没寸前の第三十二山田丸の乗組員が全員海中に飛び込まんとするのを見ながらも、これを救助もいたしませず退去をしたのでございます。このため、第三十二山田丸は午前六時三十分頃、第三十一山田丸は午前七時過ぎ、それぞれ沈没をいたしましたが、附近にありました第五十五山田丸に救助せられたのであります。乗組員の損害は死亡二名、負傷者五名との報告でございます。
 なお船主山田吉太郎氏による事件記録の中には、一つ、政府において許可された区域内で、而も公海において明らかに国民政府に所属すると推定される艦艇から全く理由なき銃砲撃を受けて沈没し、貴重なる生命に死傷を受けたことは、天人、ともに許されぬ暴挙である云々と書かれておりますし、二つには、私はこの記録に基きまして、国会に対し、政府に対して国民の立場から、遺族の立場から、罹災船員の立場から、又水産業者の立場から、抑えることのできぬ憤激を、諦め切れぬ悲しみを、死の戦慄と窮状を、又こみ上げる怒りを訴える云々等の悲痛な心情が吐露されております。
 そこで、外務大臣に先ずお尋ねいたしますが、第一に、攻撃いたしました艦艇が国民政府の艦艇らしく、特に同じ日の十一月二十二日の国民政府側の発表によりますると、同日の明け方、国民政府の軍艦が中共の船舶十数隻を捕捉攻撃いたしまして、二隻を撃沈したという戦果の発表があつたという事実ににらみ合わして、事の真相をいち早く国民政府へ問合せられていることと存じまするが、今日までの折衝の経過をお知らせ頂きたいと思います。かかる問題は幾多の不慮の不法災害に悩まされ続けて来ました日本の全漁民の神経には、一人残らずピリツと響いて、更に大きな不安を与えているものでございまするから、私たちの要求を待たずとも、いち早く折衝の上、すでに旬日を経ました今日では、せめて中間報告でも当然あつて然るべきものと存ずる次第でございます。又問合せにつきましては、期限付で回答を求められておりまするか否かも併せて伺いたい。
 第二に、本事件と関連してお尋ねいたしまするが、国民政府側では中国本土との間に広範囲な防衛水域を設定いたしまして、日本漁船の立入りを拒んでいるようでございまするが、公海の自由の原則が破れましては、我々としましては迷惑千万に存ずる次第でございます。これに対しまして、如何なる態度を以て臨んでおられるか、外務大臣にお尋ねを申上げたい。
 第三に、曾つての水爆実験におきまして、日本水産業界はあらゆる意味において莫大な被害を受けた際、あなたはやはり実験には協力すると言い放ちまして、国民の驚きと怒りを買つた実事がございまするが、今回の事件で若し万一にも国民政府側があなたの言う自由諸国の一環として海上演習をしていたのであるという回答でも来るといたしますれば、あなたは今後もかかる演習には協力をなさるおつもりかどうか。仮定に立つた上で失礼でございまするが、お心構えをあらかじめ伺つておきたいと思います。
 第四に、本事件に関連して拿捕漁船の問題でありまするが、戦争状態にあるソ連、中共の拿捕については、しばらくおくといたしまして、国民政府関係では、講和発効前の拿捕漁船数は四十七隻でございまして、その乗組員は五百七十五名になつております。講和発効後国民政府に拿捕されましたものは三隻、両方合せますと五十隻になります。乗組員は四十五名、合計で六百二十名となつております。このうち現在もまだ帰還をしないものは船舶三十隻、乗組員十一名となつております。この未帰還の船舶の三十隻の内訳は、昭和二十三年に四隻拿捕されたものがまだ帰つておりません。二十四年に二十五隻拿捕されておりまするものも帰つておりません。二十六年に一隻、これも帰つていない。合計三十隻であります。いずれも講和条約発効以前のものばかりでございます。そもそも戦敗国が平和条約に忍んで調印をするのは、一つには領土の最終的範囲、二つには賠償額のめど、三つには外国軍隊の撤退による完全独立を達成せんとするにありますことは、今更言うまでもないところでございまするが、先般の平和条約はこの三つの重大な項目のどれ一つも解決をしていないのでございます。むしろそれどころか、日本国がますますこれによつて植民地的な窮状に陥つて行く道しるべにしかならないような性質を持つているものであることを我々は疑うものでございまするが、せめてこういう隣国との間の拿捕銃撃等の問題でも、講和条約と同時に解決できたかと思えば、それすら上述のごとくでございます。これら国民政府との講和条約発効前の漁船拿捕の問題解決に外務省はこれまで如何なる努力を払つて来られたか、出先機関の活動はどうであつたか、又在日国民政府公館の態度はどういう態度で以てこれに回答しておられますか、そういうことにつきまして詳細なる御説明をお願いいたしたいと思う次第でございます。
 次に、農林大臣は本事件処理の当面の責任者でございます。今日まで事件に関しまして十分の調査をすると共に、外務省と緊密に連絡をとつて事件の処理をなされていることでございましようが、水産委員会にも殆んど出席をなさらない農林大臣の誠意の程度をも知りたいとこの際思いまするので、今日までとられた処置を詳細に御報告願いたい。
 二つには、隣国の動乱は政治的にはともかく、国民個人としましては何らの関係もないことでございまして、特に今日のごとき事件に際しましては、国民の生命財産を保護する責任が政府にある以上、早急に対外折衝と並行いたしまして被災漁業者の損害の補償を代替実施しなければなりませんことは、ビキニ水爆実験の場合と何ら異なるところはございません。沈没漁船の早急なる代船建造並びに漁具、漁網の整備資金、死亡並びに負傷者の遺族に関する件、或いは又漁獲物の損補等に関して如何なる措置をすでにとられ、又今後とられようとなさつておられるか。目下研究中では、罹災者がたまりません。詳しく御報告、実施状況をお聞かせ頂きたいと存じます。
 最後に、総理大臣にと思いましたが、総理大臣は、先般すでに最後の施政方針演説をなされておりましたようでございますので御遠慮申上げまして緒方副総理にお伺い申上げます。遠い外洋に出て漁業に従事しておる漁業者の苦労は、誠に言語に絶するものがございまするが、幾多の困難に苦しんでおる日水水産業界のために、今日まで対外折衝においても又、一般水産業助成、特に災害並びに漁港漁業施設等の予算におきましても、或いは又軍事基地等の犠牲になつたものをも含めての漁業補償においても、政府が我が国水産業の保護育成に示す誠意は寒心に堪えぬものがございます。あなたはあなたが所属する党内紛争の渦中で、さぞかし現在は御心痛、御疲労のことではございましようが、それは党人としてのことでございまして、為政者としては、かかる問題は一刻もおろそかにできない重大なる責任が政府にあることと十分御自覚なされていることと存じまして、政府の最高指導者としましてのこの問題に対する御所見をお伺いいたす次第でございます。
 以上で私の質問は終ります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#63
○国務大臣(緒方竹虎君) 第三十一、三十二山田丸の撃沈事件につきましては、何よりも今後同じような事件が繰返されないように、特にあの方面は事件を誘発しがちの所でありまするだけに、政府としてもこの事件の処理を契機に万全を期したいと思つております。政府としては、そのために飽くまで真相を究明いたしまして、要すれば相手国政府に折衝する所存でありまするが、いずれにしましても、多くの犠牲者を出しましたことにつきましては甚だ遺憾に存じております。仮に砲撃いたしました軍艦が中華民国の軍艦でありました場合、中国側が当該海域の危険性について、かねて警告を発していたといたしましても、その海域に入つた漁船に対しまして何らの警告を与えず、直ちに砲撃を加えることは明らかに不法行為と考えられまするので、事実の真相が明確になりますことを待つて、適当な措置をとりたいと考えております。将来の保護、保障につきましては、これは現在でも漁業者が非常な苦労をなめつつあるということは、政府といたしましても十分に承知いたしておりまするので、今回のような不幸事が繰返されないように、今回の措置を通して十分の努力をいたしますると同時に、同方面に出漁する漁船に対しましては、現在でも危険防止の意味から注意はして参つておるのでありまするが、今後の保護政策につきましては、更に関係者におきまして十分検討いたしまして、あの苦労の多い漁業者が今後も安心して行けるようにできるだけの措置をやつて参りたいと、政府といたしましても検討いたすつもりでおります。(拍手)
   〔国務大臣保利茂君登壇、拍手〕
#64
○国務大臣(保利茂君) お答えいたします。
 山田丸の撃沈事件につきましては、只今森崎さんからお話の通りの状況で、大体私どももその通りに承知をいたしておりますが、国籍不明の軍艦がいずれの軍艦であつたかということは、これはやはり公式に突きとめられる必要が無論あるわけであります。この点は外務大臣から御報告があると思います。その上で当然これは損害賠償と申しますか、補償要求をいたすべきものと私は考えております。と申しますのは、一昨年の十一月からあの水域は中華民国政府と中共政府との作戦区域になつておる。従つてこの地域に入つて来ることは危険であるからという警告を受けておるわけであります。昨年におきましては、十六隻の漁船が臨検、退去命令を受けておる。今年十月までに十三隻の漁船が同様に臨検、退去命令を受けておるわけであります。従いましてこの山田丸事件までの間におきましては、そういうことで最悪の不祥事件を惹き起すところに来たつていなかつたわけでございます。今回の事件は全く不法にも、そういう措置がとられずしていきなり砲撃を加えられ撃沈を引き起したというような事情に相成つております。今後につきましては、無論これは最善を期して行かなければなりませんから、監視船等を重点的にあの危険周辺に廻しまして、政府としましても十分の措置をとつて参りますと共に、この間、遠洋底曳協会を通じまして、業者側に対しても十分この水域の危険を徹底するようにはいたして来ております。併しながらお話のように公海漁業の自由という原則の上に立つてやつておりますこの漁業をこの地域でやめるということは、私どもとしてはとるべき措置ではない、飽くまで危険防止についての措置を講じつつ漁業を確保して参りたいという点の上に立つて、今後善処して参りたいと存じております。
 なお撃沈せられました両漁船は、御承知であろうと存じますが、九百万円と一千万円の特殊漁船保険に加入いたしておりまして、支払の準備をいたしております。近日中に支払をいたす所存でございます。
 なお、その他の関係のお話の補償等の問題につきましては、やはり国籍不明の軍艦が真にいずれの軍艦であつたかということを究明いたしまして、当然措置しなければならん。誤りないようにいたしたいと思います。
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#65
○国務大臣(岡崎勝男君) 先ほどからお話がありましたように、この攻撃を加えた軍艦がどこのものであるかということの確認が先ず必要でありまして、折柄、森崎君も言われましたように中国側の報道では、これは新聞報道でありますが、大体同時刻に、多少距離は違つておりまするが、大体、同海域で海戦があつて、国府の海軍が中共船二隻を撃沈したということが出ておるのでありますので、外務省におきましては事件の起りました二十二日に、直ちに台北の日本大使館に訓令を出しまして、中国政府に対しこの点を指摘して申入れを行なつております。なお東京にある中国大使館に対しても同様に申入れをいたしておりますが、先方からはまだはつきりした回答には接しておりませんので、引続き督促中であります。
 なお一部の新聞通信でありますが、それによりますと、国府側が撃沈の事実を認めたという旨の報道があつたのでありますが、その後同通信はこれを訂正して、右は誤報であると、こういうふうにまあ言つておりますが、どうも大体の時刻が合致しておりますので、引続きこの点をはつきりいたしたいと思つております。
 それから砲撃した軍艦の確認ができますれば、先ほど副総理から答弁がありましたように、たとえあらかじめ危険だというこの海域に対する警告があつたとしても、その場合に何ら、あらかじめ措置をせずに砲撃するということは、勿論不法の行為でありますので、適当に従来の国際慣例等に基きまして処理する必要は当然あると考えております。そこで農林大臣から申上げましたように、国府側は従来非常に広い水域を、危険区域とか警戒区域とかいつて、日本漁船の立入りをやめるように主張して参つたのでありますが、我が方としては、公海においてこのような水域を認めることはできませんし、又漁業者としても、魚の一番穫れる方面に出て行つて出漁する必要はあるのでありますので、国府側の申入れに対しては軽々にこれを容認することはできない。こういう立場で従来来ておるんであります。ただ実際に戦闘行為が行われているという事実は、これは認めざるを得ないのでありますから、こういう実際戦闘行為の行われている海域だけは、これはどうも臨機の措置として出漁船がこれを避けるという必要は、これはやむを得ないことだと、こう考えておりますが、我々の基本的な考え方は飽くまでも徹底させるつもりでおります。(拍手)
#66
○議長(河井彌八君) これにて、暫時休憩いたします。
   午後一時四分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時四十六分開議
#67
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 日程第一、医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第十九回国会苫米地義三君外三十七名発議)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長加藤シヅエ君。
   〔加藤シヅエ君登壇、拍手〕
#68
○加藤シヅエ君 只今議題となりました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 御承知の通り、去る昭和二十六年の第十国会におきまして、医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律が制定せられたのでございますが、本法は実施の猶予期間を設け、昭和三十年一月一日から施行することが定められております。これがいわゆる医薬分業制度の実施でございます。いよいよ医薬分業制度の実施を明年に控えました去る第十九国会におきましては、苫米地義三君ほか三十七名の発議によりまして、果して我が国の現状において医薬分業制度が支障なく実施できるか否かはこの際再検討を要する問題であるとして、医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案が、議員提案として提出せられたのであります。
 本法律案の提案理由の概要について申上げますれば、第一に、第十国会においていわゆる分業三法が制定せられた当時、この法律を実施するための前提条件として挙げられた諸条件が果して現在整備せられているかどうかの問題、第二に、これをこのまま実施することによつて、国民の経済的、労力的負担及び医療内容の向上改善等、即ち国民生活に及ぼす影響如何という問題、これらの点につきまして、今日の実情におきましては、我が国に医薬分業制度を実施する期日たる昭和三十年一月一日という期日については、未だ十分なる見通しと確信とを得ることができないので、一応これを「別に法律に定める日」と改正し、医薬分業制度の実施についてその前提となるべき諸条件を十分検討し、国民の保健と福祉の向上のために適正なる結論を得たる上、法律を以て実施の期日を定めんとするものであります。
 当時第十九国会におきましては、分業実施の省令の制定及び改正について調査、審議させるため、その組織及び運営を定めた医薬関係審議会設置法案が政府より提出されておりましたので、厚生委員会におきましては慎重なる審議を重ねたのでありますが、その結果、医薬関係審議会設置法は附帯決議を以て成立し、この延期法案は継続審査事件として決定せられたことはすでに御承知の通りであります。
 閉会中におきましては、厚生委員会は附帯決議に基いて政府より報告された、いわゆる新医療費体系について鋭意検討を加え、継続審査となつております本法律案の審議につきましては、特に小委員会を設置して、慎重に意見の調整に努め、一年三カ月延期することが適当であるという大多数の意見がまとまつたのであります。ところが十一月二十九日の厚生委員会におきましては、山下小員委長の報告を承認いたし、本法律案に関する質疑を打切り、討論に入りましたところ、高良委員より、「別に法律で定める日」を「昭和三十一年四月一日」に修正する動議が提出され、成立したのであります。これに対しまして高野委員は、「延期された期日の実施を果して保証することができるか、国会は国民の信頼に応え、医薬両者の協力によつて医療制度を改革すべきである」と反対討論を行なつて退席せられたのでございます。山下委員は、社会党第二控室を代表し、「延期の性格は、分業の前進と改革を期する意味において円満適正に実施するために、最小限度にとどめる若干の準備日時を認めるとして、一年三カ月を準備のため十分活用することを要望」せられて賛意を表せられたのであります。河野委員は、緑風会を代表し、「分業の実施は輿論の帰趨に従うべきであるから、この際占領中の法律による分業実施は再検討の上、多少延期の必要がある」として賛意を表せられました。湯山委員は、国民の期待と希望を持たせるため、更に政府の努力を要望し、やむを得ざるものとして賛意を表せられたのでありますが、「適正診療費を速かにまとめること、薬事法の分業関係罰則を削除すること、分業の前進として延期した昭和三十一年四月一日に必ずこの実現すること」等を強く要望されました。有馬委員は、日本民主党を代表し、「一年三カ月の延期では諸般の準備が完了するとは認められないが、少しでも前進するという意味で、医薬の協力と医療の向上を期して」賛意を表せられました。中山委員は、自由党を代表して、「占領政策の一環として制定せられた分業実施の延期としては一年三カ月は短期間と思われるが、今日の情勢からやむを得ないので、新医療費体系等、諸般の準備を完了すべきこと」を強調して賛意を表せられました。
 かくして討論を終結し、採決の結果、全会一致を以て高良委員の修正案通り、修正可決すべきものと決定いたした次第であります。
 以上、御報告申上げます。(拍手)
#69
○議長(河井彌八君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。湯山勇君。
   〔湯山勇君登壇、拍手〕
#70
○湯山勇君 私は日本社会党を代表いたしまして、やむを得ず本案に賛成をいたすものでございます。
 医薬分業関係三法が制定されましたのは昭和二十六年六月、第十国会でありまして、そのときには両院とも全会一致を以て議決したのでございます。そうしてこれが実施は昭和三十年一月一日、その間三年有半の準備期間が設けられておつたのでございます。更に去る第十九国会におきましては審議会設置法も成立いたしまして、法的諸準備は一切完了しているにもかかわらず、実施を目前に控えた今日只今において、なお実施する地区も決定いたしておりませんし、又分業に伴う新医療費の体系も決定していない実情でございます。このような状態にあるために、昭和三十年一月一日よりの実施は到底不可能の状態となつておりますので、ここに延期のやむなきに至つたことは誠に遺憾なことと言わなければなりません。
 我が国医療向上のためとられたこの画期的改革に当りまして、而も三年有半という長期の準備期間があつたにもかかわらず、(「政府はそのとき何していた」と呼ぶ者あり)国民に真実を知らせる努力を怠り、徒らに一部関係者の偏つた宣伝渦中に国民を放置し、そのため国民はこのことに対する明確な判断の資料を得ることができなかつたのでございます。
 医薬分業自体につきましては、我が党は勿論でございますが、只今委員長の報告にもありました通りに、誰一人異存を唱える者はないのでございますが、このような国民生活に重大な影響を持つ施策を実施するに当りましては、その新たに実施される施策について国民に新たな希望と期待を持たせることは何といつても先決条件でなければならないと思います。政府はこの原則を忘れまして、一部関係者の紛争、牽制に捲き込まれて事態をここに至らしめたことは、単に政府の怠慢、そういうことだけで済まされるものではないと思うのでございます。即ち国会が全会一致議決したことが、三年半も準備して、なお且つ実施し得ない状態に置いたということは、国会の権威を傷つけ、法の威信を落し、更に国民の政治に対する信頼を失わしめるものであつて、その責任は極めて重大であると言わなければなりません。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)この政府の責任に対する追及もさることながら、只今我々がなさなければならない最も緊急なことは、只今委員長の報告にあり、又委員会として全会一致議決した、あの昭和三十一年四月一日から間違いなくこれを実施する、そういうことであると思うのでございます。これに参加したお互いは、政府をして議決通り必ず実施せしむるため全力を尽すべきであると信ずるものでございます。
 なお又一方、政府は憲法第七十三条の第一項にあります通り、内閣は「法律を誠実に執行し、」と、こうあるのでございますから、全力を挙げてこの実行に当らなければなりません。そのためには一切のこれを阻害した行きがかりを清算して、国民への広報活動は勿論、関係団体の積極的な協力態勢を速かに確立し、周到綿密な計画に従つてこれを着実に実行することであります。政府は今こそ禍を転じて福となすため、更に又前車の覆えるを後車の戒めといたしまして、全力を挙げてこれに当り、再びかかる事態を惹起することのないよう全力を尽すべきであることを強調する次第でございます。
 以上、党の立場を明確にいたしまして討論を終ります。(拍手)
    ―――――――――――――
#71
○議長(河井彌八君) 山下義信君。
   〔山下義信君登壇、拍手〕
#72
○山下義信君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、委員長の修正報告に養成の意を表するものであります。
 医薬分業につきましての我が党の方針は、我が国医療制度の改善、改革を志す進歩政策であるといたしまして、原則的にこれに養成して参つたものであります。併しながら、これを実施いたす具体的方策につきましては、医薬のいずれかが利益し、或いは損失を来たすというのではなくして、飽くまで国民の利益が確実に保障されるということを不可欠の要件とするものであることは申すまでもないことであります。これ我が党の基本方針とするところであります。
 然るに、第一、この法律の実施当局たる政府は如何なる態度をとつたかと申しますと、分業法制定以来三カ年有半、全くこれを等閑に附し去つたのであります。実施の前提条件たる重要事項を決定する審議会は、本年七月、漸くこれが設置を見たのでありまして、これに付議すべき新医療費体系等の発表は九月三十日であつたのであります。新医療費体系を具体化した、いわゆる分業に伴う新らしい料金表とでも言うべき点数表改正案なるものは、実に十一月下旬に発表せられたのであります。新医療費体系と点数表とは不可分のものでありまするのに、その間厚生当局の作業が四十九日間遅延したということは如何なる意図に基くものか、我々の了解に苦しむところであります。実施地域を如何に定むべきかにつきましては、今日なお全然見通しがつかないという状態であります。かくのごときは、実は医薬分業を忌避し、それとなく敬遠し、進んでこれを推進しようとの熱意のない当局が、久しくサボタージユしたことに基因するものでありまして、分業への前進を阻み、遂に延期の止むなきに至らしめましたものは実に政府自身であると言わねばなりません。(拍手)
 第二に、政府提案の内容につきましては、休会中これに検討を加えまして、詳細は委員会の速記にありますからここに省略いたしますが、例えば新医療費体系の眼目とする物と技術の分離におきまして、依然として診察と処置とを混同しております。医師は技術一本の建前にするということにしながら、技術の評価に適正を欠いております。処方箋発行の義務が分業の鍵であり、刑罰を以てこれを強制するほどの重要性を認めながら、現在の有料から却つて無料とするなどの矛盾と問題を孕んでおります。又政府の示す医師と薬局との距離一キロ案によつて実施するといたしますならば、実施地域は全国に及びまして、必ずしも都市市街地に限らなくて僻遠な町村までが該当するという不合理が生まれ、施行地域と未施行地域とが行政区画的にも地理的にも不規則に混淆するということになりますなど、到底政府案の粗筆と審議会の難航の状況を以てしましては、予定の期日には実施しがたいものと判断せざるを得ないのであります。殊に驚くべきは、政府案を実施した暁、国民の医療費が高くなるか、安くなるかということについて全く当局が無見当であるということであります。我々は分業論者であります。国会はその意思を決定いたしたのであります。従つて分業への国の方向を軽々に変更し得ざることは言を待たざるところであります。ただ政府案がかくのごとくであります以上、我々は分業実施の方向におきましても、而も国民の利益のために最善の努力を傾注すべき義務のあることを痛感するものであります。
 第三に、この意味におきまして、我が党は最短六カ月の延期を止むなきものとしたものでありますが、無期延期の原案支持者の譲歩を求め、或いは五年説、三年説、更に有力なる二年説の主張者に大幅な譲歩を求め、単に期間の問題でなくいたしまして、厚生委員会が協力をいたし、各派が一致いたし、分業実施の準備を完全にするためという延期理由の一致が、将来本問題の解決のために非常に有益であると確信いたしまして、我が党も又若干の譲歩をいたし、本修正案に賛成の意を表したものでございます。採択の時期及び附帯決議をなし得なかつたことにつきましては、誠に遺憾に堪えない次第であります。我々は医薬両関係者が、反目抗争のままにて新制度に突入することは国民と共に憂慮に堪えないものであります。医薬相協力してこそ、医療の全きを期し得るのでありまして、この延期期間において改めて両者が相協力し、関係審議会の運営を改善すると共に、国民の立場に立ち、国民の利益のために必要事項の再検討を促進されんことを要望して止まざるものであります。(拍手)
 最後に、分業はそれ自体のみの問題ではありません。健康保険の強化拡充、保険医制度の確立、医療制度の改善、薬品原料の低下政策等の関連政策の樹立なくしては、分業の利益を十分に発揮し得ないものであることを指摘いたさねばなりません。これら社会保障政策についての現政府の無為無能は世間周知のことでありまして、国民福祉のために誠に遺憾に堪えないところであります。併し、もはや明日を以て店じまいしようとするこの内閣に、何を申しましても徒労でありまして、(笑声)真に国民医療の問題を解決して全国民に応え得るものは我が社会党をおいて他にないことを申上げまして、(拍手)我が党の立場を明白にいたすものでございます。
#73
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#74
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
#75
○議長(河井彌八君) 日程第二、昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第十九回国会衆議院提出)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。農林委員長森八三一君。
   〔森八三一君登壇、拍手〕
#76
○森八三一君 只今議題となりました昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案について農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
 本年四月及び五月における凍霜害並びに五月における風雪害及び雹害による被災農家に対して、営農に必要な資金の融通を円滑にし、以てこれが農業経営の安定に資する目的を以て、先の第十九回国会において、過ぐる五月三十一日、昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の成立をみたのであります。然るにその後六月四日、茨城県その他群馬県及び埼玉県等の一部が降雹の厄に会い、相当な被害をこうむりましたので、かかる事態に対処して、これらの地域における被害農家に対しても、四月及び五月における凍霜害等による被害農家に対してとられました措置にならつて、低利な営農資金の融通を図ることにしようとするのが本法律案が提出せられたそもそもの趣旨であり、且つ内容であるのであります。ところがこれが今日にいたるまでには、いろいろな曲折を経ておりまするので、ここで本法律案の提出及びその後の経過について一応説明しておきたいと存じます。
 本改正法律案は、先の第十九回国会において過ぐる六月十日衆議院議員佐藤洋之助君ほか二十二名によつて衆議院に提出せられ、翌六月十一日予備審査のため当院に送付、即日農林委員会に予備審査のため付託せられ、農林委員会は直ちに提案理由の説明を聞いて審査に着手いたしましたところ、その日に衆議院において本会議を通過して、当院に送付、直ちに農林委員会に本付託となり、本格的審査が始められたのであります。然るにその後において二回に亘つて法律案印刷物中の正誤が行われ、その一は単純な字句の整理でありましたが、他の一つは本改正法律案提出の理由に、当初のものにおいては昭和二十九年六月における雹害の被害農家に対し低利な営農資金を融通するため云々とあつて、対象被害を雹害のみに限つてあつたのでありますがこれに対して凍霜害をも加えて「凍霜害及び雹害と訂正しようとすることになつていたのであります。而してかかる正誤の狙いとするところは、この正誤によつて、本法の適用を茨城県等における雹害ばかりでなく、その当時伝えられておりました北海道等における凍霜害の被害に対しても及ぼすことにしようと意図されたものと言われていたのであります。
 委員会におきましては茨城県等の雹害及び北海道における凍霜害の被害農家に対して低利な営農資金の円滑な融通を図ることについては何らの異議がないばかりでなく、むしろこれが速かな実施が期待されていたところでありますが、本改正法律案はその親の法律であるすでに成立を見ておる特別措置法が、その適用対象を昭和二十九年四月及び五月の凍霜害並びに同年五月の風雪害及び雹害による被害農家としておりまするのに対して、これを六月の同様な災害による被害農家にまで拡張せんとするだけの改正でありまして、特別措置法がその第四条において、本法適用の対象となる営農資金の総額を四億五千万円と限定しておるのでありますが、かかる本法の要とも言うべき資金の総額については何等の考慮が払われていなかつたのであります。かくのごとく営農資金の総額をそのままにしておいて、単に適用対象区域及び対象被害農家だけを拡大せんとするがごときことは不合理であり、法の運用を不可能ならしめ、且つはすでに成立した特別措置法の適用区域及び適用農家に累を及ぼすことにもなる慮れがあり、更に提案理由の説明を逸脱してこれを北海道等の凍霜害に対してまで及ぼすこととなさんとすることは、この影響を一層大きくするばかりでなく、これを正誤を以て行わんとするがごときことは手続としても問題があるので、新たに拡大適用しようとする区域の被害が明らかになつた後において、これに即応して資金の総額をも改正すべきであるというのが委員会の意向であつたのであります。時たまたま、いわゆる変則国会のあと始末を講ずるため、日ならずして臨時国会が開会せられる情勢にもありましたので、その際に法律案の内容を整備修正して成立を図ることとしようという話合いによつて、継続審議に付することに取りきめられたのであります。ところが臨時国会の開会が延び延びとなり、従つて本法律案の処理も遅延して今日に及んだのであります。
 この間におきまして委員会は事態を憂慮して、去る六月二十八日政府当局に対して昭和二十九年六月における雹害及び凍霜害等の被害農家の救済に対して遺憾なく措置するよう申入れを行い、この申入れに対して政府からは申入れの趣旨に従うよう善処しておる旨の回答を得ておるのであります。かかる事情の間に、数次に及ぶ台風によつて全国に且つて激甚な災厄をこうむり、又北海道においては深刻な冷害に見舞われ、これらの災害に当面して、これらの新らしい事態に対応して本改正法律案の取扱を如何にすべきかとの問題も論議せられたのでありますが、これらの災害はその規模において隔絶しておりますので、これらの新事態については政府において別途に適応緊急の措置がとられることが期待せられ、且つ当然のことと認められて、本改正法律案は当初の趣旨に副つて、六月までの雹害その他の災害に限定することとし、かくして本臨時国会の開会と共に、委員会においては直ちに本改正法律案の仕上げに着手し、全会一致を以て衆議院送付案に対して、本改正法律案の処理が右に述べましたような事情によつて遅れたことによつて、営農資金の貸付期限を昭和三十年一月三十一日まで延期すること、適用対象の拡大によつて営農資金の総額を六億五千万円に増額すること、その他一、二、字句を改める等のため修正を加えて可決すべきものと決定いたしたのであります。この間の詳細については会議録に譲ることを御了承願いたいのであります。
 以上を以て報告を終ります。(拍手)
#77
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#78
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。明日は午前十時より本会議を開会いたします。議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十一分散会
     ─────・─────
○本日の会議に付した事件
 一、常任委員長の辞任
 一、常任委員長の選挙
 一、労働行政に関する緊急質問
 一、石炭緊急対策に関する緊急質問
 一、遺家族援護に関する緊急質問
 一、災害復旧仕越工事費の支払遅延に関する緊急質問
 一、日本漁船撃沈事件に関する緊急質問
 一、日程第一 医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案法律案
 一、日程第二 昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案
ソース: 国立国会図書館
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