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1954/12/03 第20回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第020回国会 厚生委員会 第3号
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1954/12/03 第20回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第020回国会 厚生委員会 第3号

#1
第020回国会 厚生委員会 第3号
昭和二十九年十二月三日(金曜日)
   午前十時四十分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 越智  茂君 理事 中川源一郎君
   理事 松永 佛骨君 理事 長谷川 保君
   理事 岡  良一君
      青柳 一郎君    有田 二郎君
      助川 良平君    高橋  等君
      降旗 徳弥君    山口六郎次君
      佐藤 芳男君    滝井 義高君
      福田 昌子君    柳田 秀一君
      杉山元治郎君    山口シヅエ君
      山下 春江君    只野直三郎君
 委員外の出席者
        参議院議員   有馬 英二君
        厚生事務官
        (事務次官)  木村忠二郎君
        厚 生 技 官
        (医務局長)  曾田 長宗君
        厚生事務官
        (業務局長)  高田 正巳君
        厚生事務官
        (保険局長)  久下 勝次君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 山本 正世君
    ―――――――――――――
十二月三日
 委員亘四郎君辞任につき、その補欠として山口
 六郎次君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十二月二日
 医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正す
 る法律の一部を改正する法律案(参議院提出、
 参法第一号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正す
 る法律の一部を改正する法律案(参議院提出、
 参法第一号)
    ―――――――――――――
#2
○小島委員長 これより会議を開きます。
 まず医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
 最初に提案者より趣旨の説明を聴取したいと存じます。提案者有馬参議院議員。
#3
○有馬参議院議員 提案者として、ただいま議題となりました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
 御承知の通り、去る昭和二十六年六月二十日に制定公布されました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律は、明年一月一日から施行されることになつておりますが、はたしてわが国の現状において医薬分業制度が支障なく実施できるかいなかは、この際再検討を要する問題であります。
 すなわちその実施上の問題点としては、第一に、この法律を実施するには、その制定当時実施の前提条件としてあげられた諸条件がはたして現在整えられているかどうかという点であります。第二には、この法律の実施がわが国の現状において国民生活にいかなる影響を及ぼすかということであります。医薬分業の実施に伴う適正にして合理的な新しい医療費体系の確立及びそれが国民の医療費負担、なかんずく社会保険経済に及ぼす影響等の諸問題は、国会において十分に検討されなければならない基本問題でありますが、これらの点につきましても、国民各界の意見、特に医師、薬剤師両者の意見は必ずしも一致しておりません。
 去る第十九国会におきましては、参議院議員苫米地義三君外三十七名の発議によりまして、今日の実情においては、分業実施の期日たる「昭和三十年一月一日」という期日については、いまだ十分なる見通しと確信とを得られないので、一応これを「別に法律で定める日と」改正し、この法律の実施については、その前提となるべき諸条件を十分検討し、国民の保健と福祉の向上のために適正なる結論を得たる上、法律をもつて実施の期日を定めんとする「医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」が議員提案として提出されたのであります、本法律案は継続審査事件として審議を重ねられたものでありますが、いわゆる分業三法の立法精神と現在における諸般の準備状態にかんがみ、さらに円満適正なる運営により医療内容の向上を期し国民の利益をはかる意味において、より完璧なる準備と国民の啓蒙に努力するため、このたび法律実施の期日たる「昭和三十年一月一日」を「昭和三十一年四月一日」に改めんとする次第であります。以上が本法律案を掲出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
#4
○小島委員長 以上で説明は終りました。
 次に質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。松永佛骨君。
#5
○松永(佛)委員 ただいま医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の提案理由の説明がございましたが、大体これを要約いたしますと、来年の一月一日から実施をされることに昭和二十六年の六月の国会におきまして議決されました本法案が、来年一月一日からの実施ではいろいろの意味において支障があるだろうから、これをさらに一年三箇月延期をしたい、こういうような内容であると存じますが、この法案は承るところによれば、前国会から引続き継続審議として参議院において慎重審議をされまして、それが昨日本会議を通過いたしたということでありまして、議論の余地なく参議院におきましては十分に御検討の末、この法案の延期のやむなきことを必要とされて議決されたものだと存じますから、あえて私がここに反復し、あるいは蛇足を加えるということはいたしませんが、この法案立法の精神、さらに立法府の権威、そして法治国家においては国民が遵法精神を十分に発揮して、でき上つた法律を守つて行くというこの法治国家の国民の観念、考え方をば、本法の延期によつていささかでも左右動揺せしめることがあるならば、日本の民主主義の破壊ともなるということを考えまして、一言提案者並びに政府当局にそれぞれ御質問を申し上げて、本法案の意の盛られてあるところをただして行きたい、かように存じておるのであります。
 まずこの法案の延期の理由とされて、第一に、この法律を実施するのには、その制定当時実施の前提条件としてあげられた諸要件がはたして現在整えられておるかどうかという点が第一の点であるのでございますが、これは私どもも同感であります。これは私どもは一に厚生省の政府当局の怠慢もある程度まで数え上げなければならぬことははなはだ遺憾とすることでございますが、昭和二十六年の六月に通過せる本法案が、薬事審議会あるいはそういつたものによつてもつともつと早く検討しなければならぬものを、ようやく最近になつてこれに手がつけられたというような実情から見て、私は本法関係の三局がそれぞれの立場において手をつけることが遅かつた。簡単に言えば怠慢であつたということはいなみがたい事実である。はなはだ遺憾の意を表する次第でございます。
 その第二の理由として、この法律の実施がわが国の現状において国民生活にいかなる影響を及ぼすかということが第二の理由として掲げられております。わが国の現状、もちろん占領前と占領後におきましては国内事情、対外事情等も相当かわつておると思いますが、昭和二十六年本法制定の際には、本法案は七十幾年医師、薬剤師等の間において闘争の歴史を繰返して来たものが一つの段階として解決を見出したことはまことにめでたいことである。ことに本法採決前の討論等にあたりましては、今日社会党左派におられる委員であり、医学博士である福田先生のごときは、多年にわたりまする、いわゆる医薬分業法案に対して、今日一つの結論を得ましたことは、まことに同慶にたえないところでございます、私は日本社会党を代表いたしまして参議院回付になります本法の修正面においても全面的賛意を表するものであります、こういつた言葉で述べられ、また自由党の青柳二郎氏、あるいは各派の方々がそれぞれ賛成討論をなさつて、丸山委員を除く全員が満場一致をもつてこれを可決確定をいたしたのであります。
 ところが占領中とは言いながら、占領から解放近い、独立近い昭和二十六年の六月四日のその当時の現状に比し、今日の国民生活にいかなる影響を及ぼすかということが、この法案延期の大きなる理由であるとするならば、この延期をしなければならない国民生活に及ぼす影響というものが、当時と今日と、段階にどれだけの開きがあるということを考えて立案なさつたのか。提案者にまず第一にお伺いいたします。
#6
○有馬参議院議員 ただいまの御質問の第一は、この提案が、本案は二十六年の六月二十日に、すでに三十年の一月一日から実施されるということを確認しておる、それにかかわらず、まだその実施の状態がはなはだ不適当であるというようなことから延期されたのではないかというような御趣意と承ったのでありますが、質問者も言われましたように、今日のわが国の状態は、まだはなはだ社会状態も不整備であり、また医師会並びに薬剤師側においても、まだ整備されておらない点が多々あるように私どもは思うのであります。この点は医師会におきましても、また薬剤師会におきましても、それぞれ指摘されるところがあり、また国民の状態においても、これを今日完全なる受入れ態勢と言うことができない状態であることは、一般に承認されておるように私どもは思うのであります。ですからどうしてももうしばらく時日をかして、こういうような各般の事情を整備することが必要である。それにはやはり相当な時日が必要である。特に一年三箇月とこれに切つてありますのは、いろいろの議論が各党にあつたのでありますが、大体協定いたしまして一年三箇月が適当であろうというようなところにおちついたのでありまして、これが必ずしも一年三箇月ですつかり整備ができるかどうかということは、私どもは考えられない、これはそのときの情勢でございまするから整備が不十分であるというように認められるときには、どうもしかたがないかもしれませんが、われわれはそこまで各般の事情の整備をいたしまして、一年三箇月後にはこれを実施したい、かように考えておるわけであります。
 それから第三の問題は、そのときと情勢がかわつておるかどうかというような御質問であつたと思うのでありますが、要するに三箇年以上の日時がたつておるにかかわらず、御存じのように政府が提出いたしました新医療費体系が、まだわれわれの疑問とする点が非常に多い、かくのごときものをもつて来年一月一日から実施に移したならば、各界において混迷が起るきらいが必ずある。またこの社会保険に対するところの影響はすこぶる大きい。また患者側あるいは国民一般の経済に及ぼす影響はどうであるかということについては、まだはつきりした見通しがついていないようであります。この点はなはだ私どもは遺憾にたえない。この点は政府側において十分に研究をしてわれわれの質問に答えるべきであつたのでありますが、遺憾ながら十分の答弁を得ておらないのでありまして、そういうときにこれを実施に移すことはとうてい不可能であるというように私どもは考えておるわけであります。
#7
○松永(佛)委員 ただいまの御答弁の中で大体医師、薬剤師間の意思の疏通とか、協調とかいう点について欠けておるということは、私もこれは認めております。もちろん両者が対立、抗争しておる現段階において、一月一日からこれを実施するということは、火のついた花火を群衆の中にほうり込むような危険があるということすら考えて、かねて先般の休会中における委員会において、私は、少くともこれは三箇月ないし六箇月間の延長をしなければならないのと違うか。せずともやれるかということも政府当局にただしたことがございまするが、私どもはさような考えを持つておる点においては参議院の方々ときわめて同感でございます。しかしこれを一年三箇月という年数を切つてこの期限のうちにできるであろう。できなければやむを得ないということは、またできなかつたら再延長する、そのうちには廃案になつてしまうだろうというような含みもあるにあらざるやという危惧を持つのであります。そういう含みは絶対ないということですか。あるいはそういう含みもあるんだというのか、わかり切つたことですが、一応速記録に残しておきたいと思いますから御答弁を願います。
#8
○有馬参議院議員 この年限につきましては、御承知のように各党それぞれ違つた意見を持つておつたのであります。社会党の右派の方では六箇月というような線が出されております。それから自由党の方では、何でも二箇年というような御意見があつたように承つておりますが、要するに各派がいろいろ協調を保つた結果、一年三箇月が適当であろうというようなところにおちついたので、これはどうも各党の一致ということでありますので、かような処置をとつたのであります。
#9
○松永(佛)委員 ただいま社会党の右派では六箇月という御意見であつたというのでありますが、私の聞くところでは、六箇月ないし一年延長をしてはどうかというので、党議はまだきまつておらない、自由党が二年という意見があつたとおつしやるが、それはどなたの意見であつたか知りませんが、少くとも自由党内におきましては、党議いまだ決定を見ずということで、延期に年数、月数を付したことはいまだかつて一度もございませんから、これは提案者の方で思い違いであろうと思いますから、よろしく御訂正を願いたいのであります。ただ一年三箇月という日を切られたということに関しては、おそらくたとえば新医療費体系の整備に何箇月、またこれが国民に普及徹底せしめるのに何箇月、それからさらに受入態勢の確立等、あるいは書類の整備等に何箇月というような段階があつて、一年三箇月という日割りがここに生じたものと思いますが、その辺の消息の詳細の月割り等がございましたら御提示を願いたい。ただ参議院では漫然とまあまあ一年三箇月延ばしておけば何とかなるだろうという程度の御提案であつて、その程度の御審議であつたかどうか。衆議院ではそう怪々には扱えませんから、一応これもお伺いいたします。
#10
○有馬参議院議員 この一年三箇月の間をどういうぐあいに区画をして、その間にどうするというような確かなことは各会の意見が一致したものではありません。ただ社会党の左派の方の御意見としては、三箇月の間にこういうような準備をしたいというようなことは申出があつたようでありますが、それは全会一致というところまで行つておりません。私どもはこの一年三箇月をどういうぐあいにして使わなければならぬかということに非常に苦慮をしておるのでありますが、何分にもいろいろの準備に相当の手間をとるのではなかろうかと私は思うのであります。実際のところ過去三箇年の間に政府が新医療費体系をつくるのにも相当の時間を要しておる。そういうようなことから考えましても、提出された新医療費体系これからいろいろさらに新しく検討するのにも相当の時間がかかるのではなかろうか。そうしてこの一年三箇月をできるだけ有利に使用いたしまして、三十一年の四月一日からぜひとも実施に移したい、かように考えておる次第であります。
#11
○松永(佛)委員 一年三箇月の延期については、大体それくらいあれば実施ができるだろうというおおよそのお見通しの上で延期をされたものと解釈をいたしますが、政府が今回提示されました新医療費体系というものが不備であることは、私たちも認めます。そこに矛盾があり撞着があり、いろいろな点があることは認めますが、ただおおよそ人間が人間から集めた資料と統計によつて、そうして机の上で、紙の上で、ペーパー・プラン、デスク・プランとしてつくり上げたもので、そう完璧を期するということは、およそ神のつくつたもの以外はあり得ない。そこで一年三箇月の日数の間に、医師と薬剤師間の意見の疏通をはかり、国民に医薬分業の必要なることを普及徹底するということは、それは十分でございましようが、私は医務局なり薬務局なりに、今から百億円の予算と千人の人を与えて、新医療費体系の完璧を期せよと言つてみたところで、おおよそ人知のきわむるところは限度がありますから、大体今の程度のものしか出て来ない。枝葉末節において幾分か訂正されたものは出て来ても、これ以上のものは出て来ない。それが出て来なかつたら、実施は困難であつて、一年三箇月後にはまた延期のやむなきに至るだろうということを前提としてのこの延期であれば、この延期法案は実に許しがたいものである。ただ、そうではない、まあまあというところでおちついて行こうというならば、また考える余地もあるわけですが、その点は一年三箇月あれば、政府の新医療費体系は完全なものができると提案者の方ではお考えになつていらつしやるかどうか、これまた一応伺つておきます。
#12
○有馬参議院議員 ただいま松永氏からお話もありましたように、人知のいたすところこれははなはだ不完全でありますからして、私どもは決して完璧を期しておるというわけではございませんけれども、ともかくもう少しはつきりした、これを実施に移して少しもさしつかえがないというところくらいなものは得たいと考えております。政府から提出された新医療費体系、またその後料金表も提出されたのでありますが、これらもまことに時期が遅れて、私ども十分の検討をすることができなかつた。でありまするから、この一年三箇月の間にそういうことをもつとよく検討し、そうして実施に移すにさしつかえがないと認めて初めて実施したい、かような考え方でおるわけであります。
#13
○松永(佛)委員 新医療費体系が完璧でないということは、当衆議院の委員会におきましても、先月は一日から十五日まで、今月に入りましてからもしばしば審査をし、エキスパートである当委員会の柳田委員、岡委員、滝井委員、福田委員等から完膚なきまでに縦横十文字に解剖された質問によつて、私どもは教えられ、かつ、与えられるところが多かつたのでございますが、その点はそうであるとしても、この一年三箇月間において、今参議院の提案者がおつしやる程度にも近いような新医療費体系というものが、さらに検討しさらに修正したものでできるというお見通しがあるのかないのか、政府当局に一応お伺いを申し上げたい。
#14
○曾田説明員 私どももこまかい点につきましてはさらにいろいろ検討の余地はあると思いますが、基本的な面におきましてはいろいろ問題のあることは承知の上で一応あの結論を出したものでございます。各方面からの御意見によりましてさらに検討いたすといたしましても、基本的な線において大きい働きはないものと考えます。
#15
○松永(佛)委員 一年三箇月の余裕を与えてみても、政府当局では幾分か修正ができても基本的には大きな相違のあるものはできないと思うという御答弁でございますが、そうなりますと、この一年三箇月はきようまでの三箇年と同じように、ただ荏苒として日を送るということにすぎなくて、延期のための延期に終ることになりはしないかという懸念がここに生じて来るわけであります。私は、国会において一つの法律が制定される、ところがこの法律が次の国会議員の意向によつて自由に改廃されるということならば、立法に熱意を持つ者も、法の審議に熱意を持つ者も、熱意が失われて行くにあらずやということを案ずるものであります。さらに一つの法律が制定されて、この法律に従つて一つのものを準備する――あらゆる業態に政府はこういう失敗を繰返しておる、たとえば低温消毒でなければならないといつて、何百万の資本金をかけて牛乳の低温消毒をやりかけると、今度はまた高温でも使わしたらどうというような説が出て来る。あらゆる場面においてこういう点が非常に多いのであります。おふろ屋さんが、石炭が足らないから電気がまを設備しろといわれて電気がまの設備を完了した時分には、今度は電気が足らないからまた石炭を使えと政府は言い出す。これでは国民は朝令暮改に悩み、この法律が出てもいつまた法律がかわるかもわからない、まあずるくした方が得だろうということになると、遵法の精神というもりは根幹から破壊され、これが法治国家の国民として民主主義の破壊になるということを、私どもはこのときに直面した国会議員として大いに考えなければならないのである。私どもは現下の事情において延期やむなしということには異議はないのですが、この点を明らかにしておかなければならない。提案者は、法の権威をみずから傷つけ、自分たちがつくつた法律を自分たちが自由に延ばしたりすることは軽々にやるべきじやないということを承知でやるのでありますから、これはやむを得ない事情がそこに生じて来たものという考えのもとにおやりになると存じまして、私どももこれに考えをいたしておるのでありますが、政府当局としては、この法律が延期された結果、今後法律を施行して行く行政府として支障ありやなしやということについて、さしあたり薬務局のごときは、こういう法律が一月一日から実施されるから準備をしなければならないと全国の開局に命令して、中には数十万円の金を投じて調剤室の整備を借金を背負つてやつた楽局もある。一軒少くとも二、三十万円平均として何千軒かの薬局があると、この金額は数十億円という巨額に達するのでありましようが、一片の法律によつて数十億円の準備をしたり、また一片の法律の改廃によつてこれがむなしくなつたというようなことでは、今後国民の遵法の精神は失われると私は案ずるのでありますが、業務局長とされましては、今度の法律が延期されて、今後全国の薬局を取締り、薬事法を厳守して行く上において何らの支障も認めないだけの御自信がありますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
#16
○高田説明員 行政当局といたしましては、法律に従つて行政を運用して行くことはもちろんのことであります。従いまして本日まで、二十六年の法律が明年一月一日から実施されるものとして、あらゆる準備を進めて参つたわけでございます。しかしながら、ただいま御提案のような法律案が法律としてかりに成立いたしますならば、この法律に従つて将来の準備をいたして行くのみでございます。その際に、十分に薬務行政上さしつかえないだけの自信があるか、こういうただいまの御質問でございますが、私は、一年三箇月の先においてまた延期されるだろうという危惧の念がかりに薬局側にあるといたしますれば、業務行政上若干の心配をいたしておるものでございます。率直に申し上げまして、さような心配をいたしておるものでございます。しかしながら、法律が一旦一年三箇月延期してそれから実施するのだということにきまりますれば、私ども行政府の常識といたしまして、必ず実施されるものというふうに私どもは心得ます。従いまして、さような危惧の念を持つて若干の支障を来すようなことがかりに薬局側にあるといたしますれば、私どもはこの点を厳に監督をいたしまして、将来のこの一年三箇月の間における業務行政の万全を期したい、かように心得ておるものでございます。
#17
○松永(佛)委員 ただいまの薬務局長の御答弁で一応私の一つの危惧は薄らいだように存じますが、ただ、私どもが昭和二十六年六月四日に、本法制定に至るまでの間には、衆参両院におきまして、少くとも今日論議されておるような問題は、相当繰返し巻き返し十分に検討され、あるいは小委員会をつくつて忌憚なき意見の交換をし、あるいは医師、薬剤師両者の意見を聴取し、参考人を呼び、当時におきましては、医師会の方々もぜひともこれで通していただきたいという御希望であり、薬剤師会の方々もこれで十分ですから通していただきたいということで、三位一体となつて三師会が推進をされて、私どもはこれを通過させ、本法の制定を見るに至つたのであります。たまたまいろいろな点で一月一日施行が困難なる状態におかれたということによつて、さらにこれが一年三箇月延長されるということになるのでありますが、今の提案者の説明理由によると、一年三箇月後にも完璧の医療体系はできないと考える。しかし、一年三箇月後において、現状と大差がない場合においては断固これを施行するという信念のもとにこれをおつくりになつたのか、まあ延ばしておいて、そのときはそのときのことだという軽いお考えであつたのかどうか、これは全国一般の関係する人々の意思を決定せしめる上における重大なる本法案の内容の持つ要素でありますから、さらに念を押してお尋ねをいたしておきます。
#18
○有馬参議院議員 重ねての御質問でありまして、先ほども私は申し上げたのでありますが、この一年三箇月の間に政府当局を鞭撻し、また各界において十分慎重に研究すべきものは研究する、また国民一般に対しても十分受入態勢ができるようなぐあいに、宣伝その他に努めなければならぬ、そういうような準備が整うようにこれから努力をいたしまして、一年三箇月の後にこれを実施に移したいと考えておる次第であります。決して漫然とそういうことを考えてはおりません。このことだけを申し上げておきます。
#19
○松永(佛)委員 ただいまの提案者の御説明によつて一応納得をいたした次第でございますが、一年三箇月後において同じ問題でまた発生するとすれば、これは重大なことでございます。ただ、一年三箇月の延期で十分行い得ると立法府の方も信念を持ち、また医師会の方々も、一年三箇月の間に医師会として立ち行く道、考えている道が行えるならばそれで行えるだろうという考えのもとにこれを承服され、薬剤師会の方も、一年三箇月あれば十分さらによりよき分離ができるというふうに考えられ、そういつた国民の輿論というものも十分参酌されて、本法を御制定になつたのだろうと思います。私は今の医務局長のお話のように、一年三箇月の余裕があつても大体基本的にはかわりのない線しか出ないだろうという想定のもとに、幾分かよくなるという程度のもので、実施のやむなきに至ると存じますが、立法府の権威として、これ以上延期するということは万あり得べからざることであるということを確認をして、本委員会において本問題に対する審議をしたい、こういうつもりでおります。一応これで質問を打切つておきます。
#20
○小島委員長 有田二郎君。
#21
○有田(二)委員 提案者の有馬博士にお尋ね申し上げます。原案は、昭和二十六年六月に通りました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案が参議院先議で昭和二十六年に御決定になりました。当時、参戦院の谷口弥三郎議員と石原議員とが衆議院の本委員会にお越しになりまして、改正の提案理由を御説明になり、そうしていろいろ本案の通過を衆議院の厚生委員会に御要請なさつたのであります。しかもそのときに政府原案は、たしか本年の七月一月からということになつておつたのを、半年延期をいたしまして、昭和三十年一月一日になつたことも御記憶であろうと思うのであります。実に三年有半その間時間がたちまして、そうしてその当時各派とも医薬分業の医師、薬剤師の七十年の争いにこれで終止符を打ちたいというような話合いから、薬剤師側にも譲歩していただき、医師側にも譲歩していただいて、この原案ができたものでありまするが、この点について提案者としての有馬博士の御所見を伺いたいと思います。
#22
○有馬参議院議員 御趣旨がどうもはつきりしなかつたのですが、前の提案のことをお話になつたようですが、ただいま出しておるこの原案の説明ですか。
#23
○有田(二)委員 いやそうではなくて、参議院で先議されて、法案が衆議院にまわつて来ました昭和二十六年のときに、政府原案をさらに半年参議院でお延ばしになつたのです。そうして三年半ということにして、今日また一年三箇月というものを参議院で延期なさるように御決定になつたのであります。しかもその当時七十年の医師、薬剤師の争いに終止符を打つという意味合いにおいて、衆議院においても参議院においても、各派非常に協力一致して、そうしてこの原案が当時できたものでありまするが、それをまた一年三箇月今日お延ばしになることについて、遺憾であるかどうか、その点を承りたいと思います。
#24
○有馬参議院議員 三年前の延期したときの事情をただいまお話することは、私の記憶がぼんやりしておりますから、記録を見ないとはつきり申し上げられません。もし間違いを申し上げるとはなはだ困つたことになりますが、おそらくそれは推測でありますが、準備が整わないからというようなことではなかつたかと思うのであります。今回の延期が一年三箇月になつたということは、これは漫然としたことではない。御承知のように、政府が三年の間にも準備をいたしまして、また九月の終りに政府から提出されました新医療体系というものを、われわれも検討をいたしたのであります。またその後にも政府からその新医療費体系による新料金表というものも、私ども検討をして来たのであります。その点におきまして、三年前の状態と今日とは大なる相違があろうかと私は思うのでありますが、惜しいかな時日が十分になかつたということと、政府の準備状態がどうもわれわれの一般に承認するところとならなかつたということが、今回の延期の原因になつておるかと私は思うのであります。
#25
○有田(二)委員 今有馬博士は松永委員の質問に対しまして、新医療費体系はもう少しはつきりしたものであればというお話ですが、もう少しはつきりとはいかなることをおさしになつておられるか、お答え願いたいと思います。
#26
○有馬参議院議員 おそらく有田議員も十分に御検討になつたことと思うのであります。一々ここでこまかい点を申し上げるわけに行きませんけれども、とにかく今回改正になりました点数表を見ましても、どうもただ物と医療とをわけるというのが、一定のわくにはまつてわけられたにすぎないというような点が、われわれのもつと検討をしなければならぬ点であろうかと考えられる。また一つ一つの点数表につきましても、もつと検討を要する点ではなかろうかと思つておるのであります。
#27
○有田(二)委員 そういう漠たることでは、また一年三箇月後にあなたが同じ言葉を繰返さないとも限らない。政府がつくりました原案のどことどこがいかぬか。これは御存じのように、国民の医療費をこれ以上上げてはいかぬという国会の決議があつて、頭が押えられておる。従つてその中で操作をするのでありますから、完全なものができないことはわれわれも了承せざるを得ない。従つてあなたが新医療体系がもう少しはつきりしなければならぬというのはどの点をはつきりしなければならぬのか、参議院ではどういうような点を論議されたか、どの点をいけないというのか、こういう点を具体的にひとつお示しを願いたい。
#28
○有馬参議院議員 こまかい点は議事録をお読みくださるとわかると思います。一々ここでだれがどう言つた、どの点が足りないとか多いとか、あるいは政府の答弁がどういうことであつたというようなことを申し上げても、はなはだ煩わしいことでもございますから、その点はなおあとから十分御検討を願つておきたいと思うのでありますが、とにかく私ばかりではない、委員全体において、どうも不満であるという点があつたと私は思います。
#29
○有田(二)委員 ほかの委員は別でありますが、有馬博士は医学博士でありますから、斯界の権威者であります。われわれのようはしろうとではない。従いまして新医療費体系について、一年三箇月今度参議院はお延ばしになつたということについては、国民が納得するものでなければならぬ。ただはつきりしないというようなことだけで、国民がはたして納得するかどうか。私たちしろうとはそれでもいい。しかしいやしくも医学博士であるあなたが、もう少しはつきりというようなことではいかぬのであつて、政府がつくりましたところの新医療費体系についてはどの点がいかぬ。しかも頭打ちでちやんと押えられておるわけですから、私は新医療費体系を完全と一は申しません。これは私も衆議院の厚生委員会で質問のときに、悪いところがあつたら改める意思があるかどうかという意味合いのことを厚生大臣に質疑いたしたこともありますが、完全だとは考えません。しかしながら頭が抑えられておるわけですから、この政府のつくりました新医療費体系について全部説明しろとは申しませんが、具体的に四点でも五点でも、こういう点がいかぬ、これを一年三箇月のうちにこういうように改めたらどうかという、専門家であるあなたの御所見を私は承りたいと思います。
#30
○有馬参議院議員 どうも新医療費体系だけにこだわつておるように受取られたかもしれませんが、決して新医療費体系だけが原因であるとは私は申し上げないのであります。特にたとえば今回の新医療費体系にしましても、それが実施のあかつきにおいて、国民の経済にどういうぐあいに影響するかということがはつきりしておらない。この点は政府にも附帯事項として、その当時これを明らかにしなければならぬということが指摘されておるのであります。今日まだそれがはつきりしておらないというような点も十分考慮しなければならぬかと私は思います。
#31
○有田(二)委員 それだけでありますか。そのほかに新医療費体系について御所見はございませんか。
#32
○有馬参議院議員 新医療費体系のことは先ほど申し上げたのでありますが、これは全般にわたりもう少しはつきりとするように検討を加えなければならぬということを申し上げたのであります。これは全体にわたつておることでありますから、一々ここで数字をあげて指摘するには、どうもあまりに複雑でありますから、その点は十分御考慮を願いたいと存じます。
#33
○有田(二)委員 全体にわたつてということは、私たちは了承するのであります。しかしながら少くとも専門家であるあなたがあの新医療費体系をごらんになつて、特にたとえば処方箋料を無料にするというようなことは妥当でないと私は今も考えております。処方箋料はやはり何とか出すようにすべきだと、しろうとの私ですら考えておるのですが、あなたは専門家として御勉強になつて、しかも参議院の厚生委員会で十分御審議になつたことだろうと思いますが、あなたのお考えの中で、しろうとの私でも処方箋料を無料にするということはどうも妥当を欠く、やはり処方箋を書いた以上は何らかの報酬をつけるべきが妥当であると思います。しかも博士であるあなたにすれば、もつともつと御意見が――この点こういうようにかえたらどうか、この点はこういうようにしたらどうかというような点を、詳細にわたつてここで御説明願いたいと言つておるのではないのです。ひとつわれわれしろうとにわかりやすいように五、六点だけおあげ願いたいと思うのです。
#34
○有馬参議院議員 さようなことをあまりくだくだしくここで申し上げることは、はなはだ時間を要することであると思いましたので控えておりましたが、処方箋のことが出ましたから申し上げます。処方箋料につきましては、私は委員会で、特に曽田医務局長にもただしたのであります。これを無料にするということはとうてい承服しがたい。こういうことはとうてい考えられない。但しそれを技術料、この場合は診察料でありまするが、診察料の中に含めておる考えであるというような答弁があつたのでありますが、それにしてはどうも診察料の中に処方箋料が含まれておるような形跡がないというようなことも私ははなはだ遺憾に思つたわけであります。そのほか診察料にいたしましても、あるいはほかの技術料にいたしましても、たとえば二点以下を考えない、切り捨てるというような点もはなはだ不満足である。申し上げることはたくさんあるのでありますけれども、そういつた点を特にただいまお話になりましたから、私はそれだけ申し上げておきます。
#35
○有田(二)委員 有馬博士の専門家としての御所見として特にその点はそれ以上は――あとは、こまかく言えばいろいろあるでしようが、大きな点はその点くらいだと考えて間違いありませんか。
#36
○松永(佛)委員 関連質問。ただいまの有馬参議院議員のお答えの中で今回の一年三箇月の延期の問題でありますが、これは前会のときにおきまして、昭和二十六年に提出されました政府の本法案に対する原案は、本法は昭和二十八年一月一日よりこれを実施す、これが原案であつたのです。それを参議院におきまして数箇月間慎重審議をされた。当時医学博士の称号をお持ちになる有馬先生なり、谷口先生、あるいは中山先生等の斯界のエキスパートがお集まりになつていろいろ研鑽をされました結果、昭和二十八年一月一日ではとうてい実施に間に合わない、準備ができないから、これを二箇年延長して、昭和三十年の一月一日から実施をすることに参議院の方では改めたいというお話合いがございました。当時参議院の厚生委員長としての山下義信氏、衆議院の厚生委員長をたまたま承つておりました不肖松永佛骨、いずれも真宗の寺の住職で、そこはまるく治めよう、二年あつたら行けるのか、医者さんたちは二年あつたら大丈夫だと言うておるから、まあこれをのんでくれというお話があつて、私どもは昭和二十八年一月一日実施をば昭和三十年一月一日実施ということで、衆議院の厚生委員会はこれをのんで、そうしてこの修正案に同意をして本法の成立を見たわけであります。それが今日に至つてさらに一年三箇月延びる。もちろん私どもも今言われた新医療費体系の中に、医者にとつて非常に不利な点、また薬剤師にとつてもばかげた不利な点もある。お医者さんから処方箋料をとる、あるいは夜間診療の追加点数が削除されておる。これらは、かつて滝井委員でありましたか、柳田委員から、労働基準法を無視するのかという御追究があつて、きわめてもつともであると私どもも共感をいたしたわけでありますが、そういつた矛盾は、一つのものを割振りをしたという基本的なところから出発しておるのでございましようが、同じようなことが薬剤師側にもいわれ、既成薬品を医師の処方箋によつて投与する場合は、一個何千円のものでも一点当り四円の既成薬品料しかとれない。一千円の栄養剤、二千円のパスあるいはストマイ、そういつたものを投与した場合におきましても、一個当り四円であつて、それは原価で渡さなければならない。ビタミンB1三百錠入りをば三百円で一般の人には売るが、医師の処方箋に栄養剤を必要とする、そうして投薬処方として書いてある場合には、これが原価二百円であれば、二百円に既成薬品料四円をつけて二百四円で患者に渡さなければならない。患者はそれだけ安いものが手に入つて大衆の利益はそこから生れるということにはなりますが、反面薬局としての経済的基礎がどうなるかというような点を私どもは考える。われわれは断じて医師の味方にあらず、薬剤師の味方にあらず、よりよき医療向上のために国会議員としての立場を堅持して、遵法の精神を今後も十分に維持し、そして立法府の権威を保ち、なおかつ医師、薬剤師双方が唇歯輔車の間に立つて本法案を円満に遂行し、それが国民大衆のためであるという立場から考えると、ここに数箇月間の延期はこれは当然であるという考え方は、私どもひとしく抱いているところでありますが、一年三箇月という日程については、この割振りがどうなつているか。漠然とお延ばしになつたのであるか。ただ問題は、昭和二十六年に二十八年一月一日実施をば二箇年延長された参議院の御意向、当時と同じメンバーである中山、谷口あるいは有馬諸先生をメンバーとする厚生委員会が、二年延長をわれわれに押しつけられ、われわれがこれを了としたにもかかわらず、今また一年三箇月間延期をされる。一度あつたことは二度ある。二の太刀あれば三の太刀あるという憂いなきにしもあらずであります。そういう憂いは絶対にないという確言が得られまするや。それはあり得るとぼかされるのでしようか。もう一度ひとつ念を押していただきたい。
#37
○有馬参議院議員 ただいまの松永委員の御質問でありますが、先ほども私は答弁申し上げた通りであります。とにかくこの一年三箇月の間にわれわれはできるだけ政府を鞭撻いたしまして、また同時に医師会あるいは薬剤師会その他に対しましても十分の措置をとつて、そうしてこの一年三箇月にでき得る措置をとらなければならぬと考えております。われわれは人間ですからどうしてもできないというようなときにはこれはどうもやむを得ませんが、しかしできる限りの努力をいたしまして、そうして一年三箇月たつたならば実施に移したい、かように決意をしているのであります。
#38
○有田(二)委員 今私が御質問申し上げましたのは、有馬博士からお話になりました新医療費体系に対するこういう点が特別にということでお話願つたのでありますが、その他小さい点は多多おありになると思いますが、大きな点は今申された点だと解釈してよろしいのでありますかどうか、御答弁をちようだいしたい。
#39
○有馬参議院議員 まだたくさん出ておりますけれども、一々私今覚えておりませんが、なお調べてみまして、私だけの意見ではございませんで、他の委員からもいろいろな質問が出ております。そういう点を十分勘考しなければならぬと思つております。誤解のないようにあらためてまた書面になりでも御答弁をさせていただいてもよろしうございます。
#40
○有田(二)委員 そういうことですと、また委員会が延びるので、なるべく早く参議院の御決定に対して衆議院も御協力申し上げたい、こういうように考えているわけであります。そこで博学多識の有馬博士としては十分御検討を願つて、特に提案者として、代表者として、参議院代表でお越しになつた以上は、新医療費体系に対する政府のこういう点がいけない、ああいう点がいけないというくらいなことは――私はこまかく全部申し上げろとは申し上げてないのであります、常識的に考えて新医療費体系のこういう点とこういう点がまず一番大きな問題点だという点をひとつ御説明願つて、政府をして将来勉強させたい、こういう考えを持つているのです。もしも本法律案をこの衆議院でかりに賛成するといたしましても、賛成するのについて、われわれは政府がまたぼんやりしておつたということで、一年三箇月先にまたぞろ同じことをやられてはこつちは非常に迷惑千万な話であります。しかも本案は、原案もそれから延期案もともに参議院からまわつて参つている法律案であります。参議院がいわば親元なんです。法案の親元の方ぐらぐらかわられると子供の方の衆議院はもううろうろせざるを得ないわけです。そこで普通のしろうとの方なら私はこういう質問を申し上げないのですが、斯界の権威者である有馬博士として、新医療費体系はこの点とこの点とこの点ぐらいが一番大きな問題だ、ほかにもたくさんあるけれども、この点が大きな問題だ、これは政府が十分検討して改めるべきである、しかもさつき申し上げました通りに、国民の医療費をこれ以上上げてはいけないという大原則を国会で衆議院参議院ともになしているのであります。その線のもとにおけるものとして新医療費体系の具体的なそういつた御意見を、大きなところだけでけつこうであります、御所見を承りたいと思います。
#41
○有馬参議院議員 先ほど申し上げたのでありますが、おもなる点は、技術と物との分離ということを政府が言つているのでありますが、この点が明確を欠いている。また点数におきましても四点以下のものを切り捨てているというような点も承服しがたい。それからまた先ほど申し上げましたように処方等を無料にしているというようなことも、これはまつたく私どもから考えるというと、ことに内科あるいは小児科方面の技術を無視したというようにもとられる、というようなことでこれは承服できがたい。こういう点を先ほどもおもなる点として申し上げたのであります。そのほか先ほど申し上げましたように、この新医療費体系が国民の経済にどういうぐあいに影響するかという点も明らかでない。それからまた特に保険に対する問題でありますが、これもどうも明らかになつておらない。こういうような点が十分にもつと鮮明され、その鮮明されたあかつきにおいて実施をするのでなければ承服できがたい。こういう点であります。
#42
○有田(二)委員 大体大きな問題についての有馬博士の御所見は承つたのでありますが、これについて医務局長にひとつお尋ねいたしたい。参議院で一年三箇月延期法が出たのでありますから、厚生省としてはもしもこれが衆参両院を通つて立法化されますと、それに基いてついて行かなければならぬことはもちろんでありますが、今有馬博士は新医療費体系に対する具体的な御意見をおあげになつたのでありますが、今までの厚生省の立場を離れて、ひとつこの有馬博士のお考えについて、国民の医療費をこれ以上あげてはならないという大原則のもとで御苦心なさつておられるのでありますが、これについてどういう御意見をお持ちになつておられるか承りたい。
#43
○曾田説明員 新医療費体系が国民の医療費負担にどういう影響を与えるかということにつきましては、休会中の当委員会におきましても一応のところは申し上げておいたのでありますが、私どもとしましては、あくまでも新医療費体系として今回取上げました基本的な立場は、医療報酬の支払い方をかえるというだけによつて報酬の増減を来さないということが当然の考え方であろうというふうに考えているのであります。このことによつて今までの診療所、病院の経営がより楽になる、あるいはより苦しくなるということの問題は、全然別個の問題であるというふうに私どもは考えております。そのような意味において私どもはいろいろと考究いたしました結果、できるだけただいまのように、医療報酬の増減を来さないということを目途としてあみ出したものでございます。私どもは国民経済に対してさしたる増減はないというふうに考えておるのであります。私どもがこの検討に用いました確たる資料は二十七年の資料でございまして、その限りにおいては、その影響というものはすでに御報告申し上げた通りでありまして、きわめて僅少なものであります。それをさらに社会保険においてこれを具体的な点数といたします場合に、その僅少なる差をさらに小さくするように努力をいたす方針でおるわけであります。
 なお、さような方針で立てたものでありますけれども、いろいろ委員会で御追究がございまして、その後時期のずれ等もあるのであるが、これに対してはどういうふうに考えるかというような御質問もあつたと思うのでありますが、私どもとしては遺憾ながらこれを確定的に決定する資料を持ち合せておりません。ただ保険等の関係の若干の資料等から検討いたしますと、私どもとしてはこれをただいまさらに変更する必要を認めなかつたということを申し上げたのであります。しかしながらさらに具体的に、御承知のように新宿の例等がございますが、かような方法をやつてみたらどうかというような御指示に基いた調査の結果もお示しいたしたのであります。しかしあれにつきましては、私どもとしてはあれだけの資料にそれほど大きな信頼を置くわけには行かない。全国的な見地あるいは全医療費というようなものについて考えます場合には、あれだけではこの結論を出すわけには行かない。またその後他の見地から同じ目的で検討いたしました資料は、こちらでしたか参議院の厚生委員会でございましたか、そちらにもお示しいたしましたが、大きい変動があるとは考えられないということを申し上げた次第であります。さらにいろいろな資料がございますれば、私どもはその検討を続けたいとは考えておりますけれども、私どもとしては今日得られる限りの資料としては一応の目途をつけ得るのではないか。またそのほかにこれが変化がある、大きい影響がある証拠というものを私どもは見つけ得ないでおるような状況でございます。
 なおつけ加えて、申し上げてはあるいは恐縮かもしれませんけれども、私どもの資料の問題でございますが、二十七年の資料はいわゆる厳密な統計的な意味においていろいろ欠陥があることは私どもも認めておりますけれども、あの種の調査といたしましてあるいはあの種の資料といたしましては、なかなか十分なものが得られないのでありまして、非常に手数も時間もかかつたのであります。今後あの種類の調査をいたすというようなことは一年三箇月というような期間においては、私どもとしては正直に申し上げまして十分できるということは申し上げかねるということをつけ加えさせていただきます。
#44
○高橋(等)委員 関連して次官にお伺いいたします。なるべく簡単に結論だけお答えください。ただいまのお話ですと、よしんばこの法案が参議院の修正通り通過をいたしましても、あなたの方では国会でいろいろ指摘された問題についてなお研究なさる意思がないかどうか。ただいまの御答弁を聞きましてもこれ以上やらないのだというような印象を私は受けるが、そうであるかどうか。それと一年三箇月ではとうていできないのだ、こういうふうに今承りましたが、そうであるのかどうか、これはこの新医療費体系に対してはいろいろな角度から見方があるのであります。ところがこれをオールマイテイだということですべてそのままやられるということになれば、いつまでたつても物はまとまらぬのじやないかとも考える。この二点を簡単でよろしゆうございますから、次官から承りたいと思います。
#45
○木村説明員 ただいま御指摘の点についてお答えいたします。これがオールマイテイであるというふうに考えているわけではないのでありまして、先ほど申し上げましたようないろいろな補正をいたしておる点もあるのでございまして、これでもつて完璧とは申しておりません。従いましてただいま持つております資料といたしましては、私たちといたしましては事務的にこれでさしつかえないのじやないかというふうに考えておりますけれども、
 一年三箇月延期されましたならば、それに応じまして、議院において行われましたところの御意見に従いまして、持ち得まするだけの資料を持つて十分検討いたしたいと思います。
#46
○有田(二)委員 有馬博士にお伺いしたいのですが、今の厚生省のお話を承つてみますと、一年三箇月たつてもほじくり返せばなかなか完全なものができないというような御所見のように承るのです。大体本原案が昭和二十六年通過後厚生省は調査会をつくつて新体系にかかつたのでありますが、これに対して全国医師会の御協力がなかつたのであります。さらに二十七年から二十八年にかけて、厚生省が病院の調査にかかつたのでありますが、これまた全国医師会の協力がなかつたのであります。それで今日有馬博士は先刻参議院において本延期法案が通過するに際しまして、政府はもちろんのこと、医師会、薬剤師会にも十分協力さして、一年三箇月後にはこれが実現されるような考えで原案を通したのだという御趣旨でありますが、これに対して薬剤師会なり政府が協力することはもちろんであります。有馬博士はお医者さんでありますが、医師会の方がこういうような法案が二十六年にできても新医療費体系に協力しない、二十八年の病院の調査にも協力しないというようなことでは、より完全なものは私はできないと思う。政治は妥協でありますから、これは医師会と厚生省と双方で協力し合つて妥協の線を出さぬ限り、完全なものは未来永劫私はできるものではないと思います。それで医師会の方はこの法案が一年三箇月延期されましたら御協力願えるものであるかどうか。協力しないというならば、この延期の法案ついてもわれわれは重大な決意を持たなければならぬ。少くとも昭和二十六年には衆参両院各党一致してこうすることが国民のために最もいい方法だ、七十年の医師、薬剤師の争いに終止符を打つたという気持でわれわれは法案を通したのでありますから、医師会の方でも御協力を願う。お医者さまも商売であります。また薬剤師も商売であります。しかし何と申しましても一番大切なのは国民大衆であります。従いまして今までのお医者さんの非協力であつた点については、私はとやかく申しませんが、この以後一年三箇月において――有馬博士は医師会側とも御折衝があつたことと思いますが、政府と協力してよりよい新医療費体系をおつくりになるようなお気持があるかどうか、これを承りたいと思います。
#47
○有馬参議院議員 御趣旨ごもつともと思います。厚生省が新医療費体系をつくるにあたつて医師会が協力をしなかつたということを私どもあとから聞きまして、まことに遺憾なことだと思つておりましたが、今回はいよいよ新医療費体系が政府から提出されたのでありますが、医師会においても、やはり自分たちが協力をしなかつたせいでこういうようなことになつたのではないかというようなおそらく反省しているだろうと思うのであります。私は特別に医師会の役員ではございませんが、その当時の医師会の役員と今日の日本医師会の役員とは更迭をしておりますし、私どももまた医師会のメンバーの一人ではありますが、国会の議員として十分責任を感じておるのであります。医師会を鞭撻いたしまして、できる限り努力をさせなければならぬと考えております。
#48
○有田(二)委員 有馬博士のお話はまことにけつこうなお話だと私は思うのであります。またわれわれもそういうことを念願するものでありまして、医師会も良識を持たれたりつぱな方が多数おられるわけでありますから、どうかひとつこれが衆議院、参議院で、昭和二十六年に一致して通つた法案でありますることを原則としてお考え願いまして、やはり医師会の諸君に協力していただきたい。われわれは過去においても医師会から御要求があつたから事業税の撤廃もやり、また税金についても一点単価は不合理であるから医師の税金については非常に努力をし、また金融の面についても中小企業金融公庫なり国民金融公庫なりあるいは商工中金なり、それそれの面でわれわれは医師会に全面的な応援をして参つて来ておるのであります。従いまして医師会の諸君もそうわがままなことをおつしやらないで、厚生省によく御協力願つて、少くとも参議院の御意図である一年三箇月後にはこれが実行に移らなければならぬと考えるのでありますが、もしも医師会が今まで通り今後も協力しないということになりますると、一年三箇月たちました段階においても今日と大差ない結果を生むのじやないか。そのときにおいても医師会が協力しないというので一年三箇月後にそれが実現に努力なさらない、そのときにはこれだけ努力したけれども医師会が協力しない、万やむを得ず厚生省の案は万全ではないけれども、厚生省の案によらざるを得ない、こういうような判断をわれわれが下さざるを得ないような事態が来るかもしれませんが、医師会が今まで通りに厚生省と協力しない、新医療費体系に対して二言目に保険医を返上するとかいうような脅迫的な言葉でこれを一蹴してしまうということでなくして、医師の重大なる使命をお考え願つて、もしも将来そういうような御協力がなかつた場合に、今日の新医療費体系と大差ない結果が来ても、それでも一年三箇月後にはこれを実施するのに有馬博士としてはどういうお考えをお持ちになるか、御所見を今のうちに承つておきたいのであります。
#49
○有馬参議院議員 私はそういうぐあいには考えておりません。必ず医師会も協力をし、われわれの希望するようなより完全なことができるだろうと私は考えております。どうぞ有田委員におかれましてもひとつ十分医師会を鞭撻され、また政府を鞭撻されまして、われわれの希望に近いようなものをつくるように御努力を私からもお願いをいたしておきます。
#50
○有田(二)委員 有馬博士の言葉を聞いて私は非常に安堵をいたしたのであります。しかしながら私の申し上げておるのは万に一つであります。九千九百九十九までは有馬博士のおつしやる通りの結果になると私は確信いたすものであります。万に一つ医師会が今日と同じように協力しないという場合においての有馬博士の御所見を承りたいと思います。
#51
○有馬参議院議員 万に一つのときができますかどうですか、今から推測いたしかねますから、どうぞその点は私ども先ほど申し上げましたことを御信用くださるようにお願いいたします。
#52
○有田(二)委員 有馬博士に万に一つもない、かようにお考えになつておられますが、私も賛成であります。そうあるべきが妥当だと私は思うのであります。本法の原案は国民の利益のためにつくられたものであります。しかしながらその原案につきましても、やはりお医者さんの立場としてもう少しこうありたいというようなお考えもおありになると私は思うのであります。そういつたことは本委員会でも十分承りまして、衆参両院一致いたしまして医師の御希望も聞きまして、そうして御期待に沿うようにわれわれも努力いたすことにやぶさかでありません。しかしながらもう医師、薬剤師の七十年の争いはこの辺で終止符を打つてもらわないと、昔から代議士、参議院議員はみな困つておる。これには医師の議員であられる有馬博士もひとつ御協力願つて、私は薬剤師でありません、文学士でありますけれども、薬剤師の諸君には多多譲歩していただくように私はできるだけ努力したい。しかし医師の代表の方もやはり医師会側にできるだけ話合いをしていただいて、政治は妥協であります、妥協の点で円満にひとつ終止符を打つていただいて、医薬分業で毎国会々々々荒れないようにしていただきたいと私は思うのでありますが、有馬博士の御所見を承りたい。
#53
○有馬参議院議員 まことに御同感の至りであります。私も決してこういうことが毎国会、あるいは医薬分業について厚生委員会で相争うというようなことがあつてはならぬと考えておる一人であります。一日も早くこういうことも解決いたしまして、国民の医療の向上また福祉の改善に進まなければならぬと考えております。
#54
○有田(二)委員 参議院の社会党両派が厚生委員会でお述べになつた中に、一年三箇月の六箇月は新医療費体系の整備、あと三箇月を新医療費体系の実施、あと六箇月は医薬分業のテスト・ケースたとえば大都市においてまず試験的にやつてみたらどうかというような意味合いの御意見があつたやに私は承つておるのであります。これは一年三箇月を最も有効に使う参議院の御意思に沿うた一つの方向ではないかと思う。もしもこれが衆議院を通り、この参議院の議員立法が法制化されました場合に、この一年三箇月の使い方について医務局長の御所見と薬務局長の御所見と保険局長の御所見を承りたいと思います。この一年三箇月をどうすれば一番いいか。
#55
○久下説明員 この昭和二十六年の法律の実施が延期されるということにもし御決定に相なりますれば、私どもその一年三箇月を最も有効に利用するということを考えていかねばならぬと思つておるのであります。ただいまのお話も一つの案として考えられます。また順序といたしましても私どもはそれがおおむね正しい順序ではないか、また便宜な順序ではないかというふうに考えておりますが、それを何箇月と切るかというようなことにつきましては、さらに私ども事務的に十分検討させていただきたいと思つております。
#56
○有田(二)委員 もう一点医務局長にお尋ねしたいのですが、どうか医師会も厚生省も腹を割つてお話願えるかどうか。そうしてもしもお話願つた結果、どうも医師会側が積極的でない場合には、有馬博士とか中山博士とか谷口博士とか、また本委員会にも多士済済、博士はずいぶんおられるわけです。やはりこういう方々の御協力を得てやらなければ、所期の目的は一年三箇月ではとうていむずかしいのじやないか。これについてひとつ厚生省当局としての御決意を承りたいと思います。
#57
○久下説明員 これももしも時間を与えられましたならば、この時間の間に私どもとしてはいろいろ御相談すべき点、あるいは御意見を拝聴すべき点、またこの委員会及び参議院の委員会において拝聴いたしました御意見というようなものを十分尊重し、できるだけ完璧を期したいというふうに考えております。
#58
○有田(二)委員 大体私まだほかに質問しようと思えば幾らでもあるのですが、有馬博士の御意見を聞くと、私は非常にけつこうだと思うのであります。いろいろお話になつていた御意見に私も賛成であります。しかしこの問題は党派を超越した問題であります。政党政派を超越した問題であります。この本委員会において一応傍聴者並びに速記をのけて、委員だけで、本委員会が超党派的に参議院から回付になりましたこの法案に対しての、お互いの委員同士の忌憚ない意見を述べ合つて、協調して行く必要があろうと思います。杉山さんからも御質問があるそうでありますので、その後に私は動議を提出いたしたいと思いますから、杉山さんに質問を譲ることにいたします。
#59
○杉山委員 私のお尋ねいたしたいと思つておりましたことが、同僚松永委員の質問で大体尽きておりますので、私は繰り返して申し上げまいと存じますが、私どもも、医薬分業の前提条件になりまする新医療費体系というものは非常にずさんであり、不備であつた、こういうことからいたしまして、これをどうせ一月一日からやることはむずかしい延期をせなければならぬ、こういうことについては考えておりまして、お聞き及びのように、私どもが以前に第十九国会で新医療費体系を出せと言うて三箇月間にあの医療費体系を出して参りましたから、約六箇月間の余裕を持つならば、正しい、また改善されたものが出て来るだろう。こういうような意味合いで六箇月延期を考えておつたのであります。ところが参議院の方で今提案になりましたように、一年三箇月、こういうように御決定になりましたそのわけは、先ほどお話もございましたけれども、これは各派が妥協してそういうように一年三箇月ということにきまつたのか、それとも今有田委員のお話になりましたように、医療体系のためにこれこれ、あるいは実施のテストのためにはこれこれというような科学的な根拠のもとに、一年三箇月というものが出て来たのか、こういう点について一応お伺いいたしたいと思うのでありまして、その伺います理由は、さきに松永委員へのお答えの中に、一年三箇月たつてもやれるかやれないかわからないという一つのお答えがあつた。あとではぜひやつてみたい、ぜひやりたい、こういうようなお答えでその間非常に不明瞭な点がございますが、おそらく一年三箇月に御決定になつた根拠というものは、はつきりしたものでなしに、ただ妥協の点にあつたのではないか、こういう点を思いますので、一年三箇月の決定の根拠というものが一体どこにあつたのか、この点がわかりますると、さき有田委員の言われた点ももつと明瞭になつて来るかと存じまするので、その点をもう一応はつきり伺わしていただきたい。それからおそらく今日いろいろ問題になつておりまする点は、松永委員もお話になりましたように、一年三箇月延ばしてはたして実施できるのかどうか、こういう問題にかかつて来ておると思うのでありまして、さきに医務局長の言葉で、一年三箇月たちましても、前のようないわゆる新医療費体系のような調査もできない、従つて完璧なものはできない、おそらく不完全なものしかできない、こういうことであろうと存じまするので、そこで一年三箇月たつた後に政府から出しましたいろいろな調査、そういうような資料というものが、いわゆる完璧なものはもちろんこれは望んで得られないと思いますけれども、やや進歩したという点を認めたならばおやりになるという御意思なのか、あるいはそれでもまだ不完全だつたら相かわらずやらない、こういう意思なのか、つまり一年三箇月という問題に非常にかかつておりまする点、心配している点、これは多くの医師、薬剤師両方にかかつた問題だと思いますので、これははつきりした見通しはあるいは困難かもわかりませんけれども、しかし提案する以上は、それくらいの信念を持つて私はお答えをいただきたいと思うのでありまして、もう私は多く求めませんが、今申した二つの点について明瞭にひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
#60
○有馬参議院議員 御心配ごもつともであると存じます。またその点につきましては、先ほど来松永委員からも十分念を押されて申し上げたつもりでありまして、重ねて申し上げるのでありますが、一年三箇月ということにきまりましたのは、各派の意見がまちまちであつたのをお互いに協調をとりまして、一年三箇月というところにおちついたのでありまして、それは一年三箇月の間に十分準備を整えまして、一年三箇月たつたら実施に移したいという意思はもちろんのことであります。そういうことを顧慮しないで私どもは考えておるようなわけではないのでありまして、十分顧慮いたしておるのでありますが、しかし一年三箇月たつたら必ずりつぱなものができるかということをお確めになりましても、それは政府の準備の都合もありましようし、またわれわれも政府並びに医師会を督励いたしましてその準備を整えるようにしなければそれは完璧を期しがたい、あるいは実施に移しがたいかもしれませんから、その点ははなはだ時間が足りないと存じますけれども、われわれは最善の努力をするつもりでございますから、どうぞさように御承知おきを願いたいと思います。
#61
○杉山委員 今のお話では、やはり新医療費体系というものがもつとよりりつぱなものになつておらなければ実施しない――実施したい意思は持つておるけれども実施しない、こういうような御意思のように伺つたのでありますが、一方医務局長は一年三箇月ではそういうようなものはできないと明瞭に申されておるので、この間に食違いがあるように感じるのでありますが、医務局長の言葉の通りならば、今日と同じことだから、やはりもうやれぬという考えを持つておるかどうか、その点についてもう一応ひとつはつきりお伺いいたしたいと思うのであります。
#62
○有馬参議院議員 私は新医療費体系をもつと完璧なものにし得ると確信しております。政府当局はどういうふうに答弁いたしましようとも、私はまだ医師会側と、あるいはその他の審査会もありまするし、協議会もありまするが、いろいろの人と、たとえば政府当局が交渉をして、そうしてもつといいものをつくるという努力をしたということを私は開いておりませんし、また認めておりません。この点は、政府当局もここにおられるのでありますが、一年三箇月の間にもつとわれわれの希望に沿うように、お互いに努力をしてみなければならぬ、努力をしないで完璧なものができないということは私は言い得ないと思うのであります。これは十分努力して完璧なものにするようにお互いにやつてみなければならぬと私は思うのでございます。さようひとつ御承知願いたいと思います。
#63
○有田(二)委員 今の有馬博士のお答えでは非常に心細いのです。というのは、これはこの前昭和二十六年のとき、参議院側からの御要請によつて政府原案を六箇月延ばした。さらにまた今度一年三箇月延ばす。さらに一年三箇月後にまた延ばす。われわれは参議院の先議法案でありますし、参議院の御趣旨に対してはできるだけ御協力申し上げることにやぶさかではないのでありますが、国会としては、決定となると国会の決定となる。国会が朝改暮変、そう何回も何回も延期するということは、日本国会の権威に関すると思う。参議院が一年三箇月と御決定になるまでは別でありますが、御決定になつた以上は参議院全員の御意思であるとわれわれは解釈しております。従いましてもうこれ以上延期することは国会としても重大に考えなければならぬ問題だと思います。もちろんその間において医師側の御希望も十分承り、御協力も賜わつてよりよいものにすることは当然でありますけれども、参議院が一年三箇月後にまたぞろ延期立法を出して来るということになると、衆議院としてはよほど考えなければならぬと私は思うのであります。有馬博士が先刻私にお答えになつた言葉の中には、非常に安堵する点があつたのでありますが、今杉山委員の質問に対してのお答えではまことに私は心細い感じがするのであります。国会の権威というものもよくお考え願いまして院議で一年三箇月延期と御決定になりました以上――すでに、参議院において再度延期をなしておられるのであるが、三たびこれを延期することのないように。われわれも協力いたします。また政府も当然協力しなければならぬ。医師会も薬剤師会もともに協力しなければならぬことはもちろんであります。われわれまた国民の啓蒙運動を起してこれに協力を申し上げることはもちろんでありますけれども、参議院の権威にかけて将来三たびこれの延期のないように最善の御努力を願いたい、かように思うのであります。私は最善の御努力を願えるというような意味合いに解釈をいたしておつたのでありますが、もう一ぺん重ねて御決意を伺いたいと思います。
#64
○有馬参議院議員 重ねて申し上げますけれども、私が今杉山委員にお答えしたことが有田委員に先ほどお答えしたことと反しているとは思いません。同じことを繰返して申し上げたのであります。われわれは努力をして、そうして政府を鞭撻して、また医師会を鞭撻いたしまして、今日提出されているようなものでなく、もつとよいもので、われわれが信頼できて、それでもつて初めて実行できるようなものをつくりたいということを申し上げているのでありまして、これは先ほどから申し上げたことと何もかわらぬと私は思います。もちろん院議でもつてきめたことでありますからして、私どもそれをまた延期するというようなことを予想してこういうことをしているのでないことを申し上げておきます。
#65
○有田(二)委員 それでは参議院側の御意思もよくわかつたのでありますが、先刻申しましたように、延期法につきましては、またこの原案につきましても各党一致して賛成したものでありますし、参議院として一年三箇月延期と御決定になりましたことについて、また新医療費体系その他の点について医師側の立場もわからないのではないのであります。従いまして、われわれとしてはこれは党派を超越して真剣に考え、医師会、薬剤師会両方の七十年の争いにわれわれの手によつて終止符を打たなければだれの手によつても打つことができない問題だと考えますので、傍聴者、速記全部を除いて、委員だけで党派を超越してこの問題の対策について協議いたすべきだと思うのであります。それで暫時休憩あらんことの動議を提出いたします。
#66
○小島委員長 ただいまの有田委員の動議は、本案の取扱いについて各党委員懇談打合せをしたいということでありますが、しばらく休憩することの動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#67
○小島委員長 御異議もないようでございますから、この際暫時休憩をいたします。
   午後零時三十分休憩
     ――――◇―――――
   午後零時二十六分開議
#68
○小島委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。
 医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。再開前の質疑をもつて質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#69
○小島委員長 御異議ないようでありますから、本案の質疑は終了したものと認めます。
 次に本案の討論に入ります。松永佛骨君。
#70
○松永(佛)委員 本案は参議院におきまして前国会から継続審議が続けられまして、今国会に入つて参議院を満場一致で通過して当院に送られたものでございまするが、七十幾年にわたりまして多年問題になつておりましたいわゆる医薬分業法案が昭和二十六年の六月五日に通過をいたしまして、来る三十年一月一日から実施をされるという瞬間、今回一年三箇月の延期となつたのでございます。いわゆる日の目を見ずして本法案延期のやむなきに至つた理由といたしましては、新医療費体系の不十分とか、あるいは当事者である医師、薬剤師間の意思の疎通とか、あるいは誤解その他に基く国民大衆に普及徹底させる点が不十分であるとか、諸般の事情はございますが、私どもはこれを客観的に見て延期またやむを得ないという考えを持つに至つておるのでございます。もともと本法案が原案として提示されました際は昭和二十八年の一月一日実施であつたのが、参議院において検討されました結果、二箇年の猶予をほしいとのことで延期されて、昭和三十年一月一日実施ということにきまつたのでございます。本法案は初めての延期法案でありますが、実質上は二回目の延期法案であるということを勘案いたしまするならば、立法府の精神、あるいは立法府の権威、そして国民の遵法精神の軽視、こういつた点並びに行政の円満なる遂行上、一つの法律ができてこれが施行前に延期される、後者の手によつて法律が自由に改廃されるというようなことがもし当然なりという考えのもとに行われるならば、これは民主主義、議会政治の破壊であつて、ゆゆしき大問題でございますが、今回の場合におきましては、情勢やむなきものがあるということで、この延期はまたやむを得ざるものありという当委員会の議論に到達したわけであります。私は、一年三箇月後において三たび延期を見るようなことなく、この間の時間を荏苒として時をかせぐというようにのみ過されることなく、医務局においては将来医師会方面とも緊密な協力をせられて、よりよき医療体系をつくられ、また薬務局におきましては、今日受入態勢ができてないじやないかという指摘を受けるような状態から、これが十分なる受入れ態勢を整えられ、また国民大衆になぜこれを行わなければならないか、これを行うことによつてどういう利益が国民の上にあるかということを十分徹底され、国民大衆も医師も薬剤師も政府もすべてのものが医療向上のために、治療報国のために一丸となつて有終の美をかち得るために努力をする。その期間としての一年三箇月であればまた意義深きものがある、かように考えます。
 私は自由党を代表いたしまして、本法案がさらに延期をされることなきを期して賛成をいたすのであります。
#71
○小島委員長 佐藤芳男君。
#72
○佐藤(芳)委員 私は、日本民主党を代表いたしまして、ただいまの御提案について賛意を表するものでございます。
 本問題は昭和二十六年六月の制定にかかる問題でありまして、今日までに三年有半の歳月をけみしておるのであります。その間政府におかれましては、新医療費体系の準備、また医薬関係審議会を設けられ、努力を傾けられたのでございます。しかしながら、私をして率直に言うことをお許しくださいますならば、その努力は遅ればせの努力でございまして、おおむね時間を空費されたことを指摘せざるを得ないのでございます。これはきわめて好意的に解釈をいたしまして空費と申し上げるのであります。もしも空費しないとおつしやるならば、まさに無能の暴露であるといわなければならぬと考えておるのでございます。私どもは先刻提案者よりの延期を必要とするその理由に共鳴するものでありまして、従つて一年三箇月の延期に対しましては全幅の賛意を表するものでございます。なお政府におかれましては、従来と違つた熱意を傾けられて善処あらんことを希望いたして、あえて賛成討論とするところであります。
#73
○小島委員長 長谷川保君。
#74
○長谷川(保)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程せられました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対しまして賛成するものであります。
 ただここで一言いたしておきたいことは、この医薬分業の問題が昭和二十六年に国会において決定せられまして以来三年をけみするのでありますが、その間に政府はこれに関係いたします日本医師会及び日本薬剤師会に対しまして、十分な協力態勢をつくるべきであつた、この点が私は最も遺憾な点であります。それをつくるべきであつたのに、その三年の間ほとんどなすことがなかつた。国民の運命に大きな影響を及ぼします医療制度の革命というようなことをいたしますときに、日本医師会、日本薬剤師会及び歯科医師会の諸君の協力なくしては絶対にこれはできるものではないのであります。この両者の争いの中にかえつて政府が巻き込まれた形でありまして、政府が率先いたしまして調停をいたしまして、この三者協力態勢のもとにこの分業の実施をすべきであつたにかかわらず、政府がこれをしなかつたということに対しましては、私はこれは重大な政府の責任であると思います。協力態勢なくしては、今後といえどもこの分業というものは絶対にできるものではないということを私はこの際はつきりとここに申し上げなければならぬ。残る一年三箇月の間にすみやかに政府はその態勢をつくるように最善の努力をせられんことをまず第一にここに強く望んでおきます。
 さらにこの問題をめぐりまして、これほど熾烈な争いが医師会及び日本薬剤師会の間に行われたということにつきましては、これはいろいろりくつはつけられますけれども、何と申しましても現実問題としましての生活の問題であります。この問題をめぐりましてかくも熾烈な闘争になつたと思うのであります。これにつきましてはわれわれは十分同情もし、またそれらの点につきまして合理的な線を打出すように、次の実施に至りますまでに政府に十分御努力を願わなければならないと思うのでございます。
 この争いの直接の原因になりましたものはただいま申し上げましたものだと思いますけれども、これだけ深刻な闘争になりましたのには、なお幾多の原因をはらんでいると思うのであります。たとえば本委員会において指摘いたしました薬事法二十二条にありまする医師の調剤権の剥奪、これは剥奪ではないという説もありますけれども、確かにある場合におきましては剥奪であります。調剤能力がありますにかかわらず剥奪をするというがごときは、これは不条理きわまることでありまして、こういうところに医師側が非常な捨身になつて闘いました原因があると思います。これも次の実施までの間におきましてすみやかに当局がお考えにならなければならない点であろうと思うのであります。われわれ国会といたしましてもこれにつきましては十分考えなければならないと思います。
 さらにまた、こういう大きな争いになりました間接の原因といたしましては、あの点数単価の問題、この問題の処置が十分になされておらぬ。これは医師にも薬剤師にも相当に大きく影響する問題でございますが、この問題につきましてもやはり十分考えなければならぬ。こういう原因を処置することなくいたしましては、この問題は解決しない。
 さらに本委員会において指摘いたしましたように、医師、薬剤師の技術料につきましては、新医療費体系においてきわめてきびしい査定をいたしておりますけれども、薬品の生産原価あるいはその販売価格等に至りますまでのその合理化が何ら考えられておらぬということはこれは非常に大きな問題でございます。この点につきましても十分な御配慮がなされなければ問題の解決にはならないということをこの際申添えしておきたいのであります。
 いずれにいたしましてもこの重大なる問題は、これは一挙に進もうとはしないで、やはり無理をしないで漸次前進して行くという態勢をとることがきわめて大事なのではなかろうかと思うのであります。向う六箇月以内にまず新しい態勢をつくるということを、参議院の方でわれわれの党の代表が要請しているようでありますけれども、私もすみやかに六箇月以内くらいにそれをやる必要がある。その新しい態勢を当局でおつくりになるときに、もう一つここでひとつ十分お考えをいただかなければならぬことは、今度のこの新医療費体系をつくるにつきましては、ただいま申しましたような非常な医師会及び薬剤師会の争いがありましたために、当局といたしましては、こまかい点まできわめて合理化しようとした努力が見られる。その御努力に対しましては私ども深く敬意を表し、また少くとも数箇月にわたりましての厚生事務当局の必死の非常な努力に対しましては深い敬意と感謝を表する次第でありますけれども、しかしあまりに合理化をねらい過ぎて現実におきましては私は医師も薬剤師もおそらく新医療費体系をこのまま行われるのでは、薬品の原価主義というようなところに立ちます場合に、あの案では絶対にできないと思います。だから根本問題としまして、医師会薬剤師会の協力態勢をつくつていただいて、少くとも厚生省と三者一体となりまして協力態勢をつくつていただきたい。もつと大ざつぱにやはり一日一剤幾ら、その原価は結局幾らである、それにプラス技術料、こういうきわめて簡単な方式をつくらなければ、今日でも社会保険あるいは医療扶助あるいは結核予防等々の問題でもう事務的に医師は参つてしまつている。大事な技術者が事務屋になつてしまつている。これにさらにあの原価主義でやられてはたまつたものではない。こんなことは現実にできるものではありません。あまりに合理的なものを追究なさるために、遂に私はこれが率直に申して机の上の計画になつたと思う。だからこういう点を十分当局におかれてもお考えいただいて、もつと協力態勢をまずつくつて、その上に簡単な方式をつくられなければならない。あの厚生当局の数箇月にわたります御努力は決して無になつたのではありません。無になつたのでは決してないのであります。あの二十七年三月及び十月の調査を基礎といたしました御努力は決して無になつたのではない。あれが大きな参考になつて、おそらく基礎とまでは行かなくても参考になりまして、新しい体系がつくられることは当然だと思います。従いましてこの大きな数箇月にわたります不眠不休の御努力になつたその結果が、今日ここにまた一年三箇月延ばされるということで、ことに事務を直接なさいました当局の係官の諸君は非常な失望落胆なさるであろうと思う。どうか当局におかれてはこの諸君の士気を鼓舞激励して、すみやかに六箇月くらいの間に態勢を整えて、そして一年三箇月後には必ず実施できるような御準備を願いたいと思うのであります。
 以上この審議をめぐりましてわれわれに強く感ぜられました点を申し添えましてこの案に賛成し、そうして一年三箇月後の実施を深く期待する次第であります。
#75
○小島委員長 岡良一君。
#76
○岡(良)委員 私は日本社会党の立場からただいま参議院から御送付になつた医薬関係三法の改正については賛意を表するものであります。
 事実上の問題といたしましても、厚生省当局では来年の一月一日からはやれると言い切つておられます。立場はわかりますけれども、しかし準備の作業は決して十分整つてないようでありますから、これがただちに強制実施に突入するということになれば、これは現行の健康保険制度そのものにも非常な混乱を及ぼすことは当然であつて、これは実施できるものではない。実施をすれば非常に大きな不安が伴うということは当然のところであります。たまたましかしながら参議院の御提案によれば、一年三箇月という多分の日時が与えられているのでありますから、この日時を厚生省としても十分慎重に周到に御活用を願いたいのであります。私どもが委員会において新医療費体系についてはおよそ二十日間ばかりも審議を尽したことは、十分政府も御存じの通りでありますが、特に私どもはこの一箇年有余の間において新医療費体系を築き上げられるについての不可欠の二、三の希望を、この体系を作成する資料として重要な参考に供せられたいと思い、重ねて希望いたしたいと思うのであります。
 審議の過程で十分御存じのように、国民総医療費のわくは越えないということが、この新らしい医療費体系の一つの大きな前提条件に相なつておりましたが、しかしながらそのわくは昭和二十七年の千五百余億というわくに抑えられている。ところが医療費は昭和二十六年には千百億、二十七年が約千六百億、二十八年には二千百億、本年度は二千五百億を越えるであろうということは、政府当局の御言明でも明らかである。このように非常にはげしく激動して行くところの国民総医療費のそのひとこまだけを不用意に取上げて、その総額で医療費を抑えなければならないという理由を私は見出すことに苦しむのであります。むしろ国民総医療費というものの正しい設定を意図されるならば、やはりわが国の国民所得と医療費との関連性とかあるいは諸国における国民の総所得とその国民総医療費との関連性という、そういう幾多の資料を十分に御精査せられて、わが国の国民総医療費は大体の基準がここにあるべきだ、そういうものを求めようといういわば普遍妥当的なものを求めようとする御努力がない。ただ二十七年の奔馬的に向上の一途をたどつているひとこまの千六百億を持つて来てこれで抑えようという。これではとうてい将来に保障し得るような新医療費体系の原則も出て来なければ実際の数字も出て来ないのではなかろうかという点を十分にお考えおきを願いたいと思うのであります。あるいはまたこの医療費体系を拝見いたしましても、その資料は幾度も私どもが指摘したように、昭和二十七年三月の医療実施面調査、これが政府の方のただ一つの金科玉条に相なつております。しかしこの実施面調査はただ昭和二十七年三月現在のあるがままの病院や診療所の収支の決算状態というものを示しているにすぎない。従つて将来医療技術費はいかに評価するかなどという新らしい革命的な医療費体系を組み立てるための重要な参考手がかりにはなるけれども、ただちにこの数字を一つのわくの中で操作することから新らしい創造された医療費体系を求めようということは、これまた非常に不用意な冒険だと私どもは見ているのであります。そういう点特に現在の技術評価の実際の基礎となつている一点単価にいたしましても、医師にしても薬剤師にしてもその技術料、手数料というものは非常に安い。一点単価は、これも政府の説明によれば、昭和二十五年の秋の当時の医師四人世帯の一箇月の生計費一万九千円程度、これが十一円八十三銭というあの現在の一点単価の基礎になつておる。しかしその後は米価も改訂され、給与ベースも改訂され等々、物価の変動はやはり非常に著しいものがあるのであります。これが何ら顧慮されておらない。顧慮されておらないということは、現に政府が御提出になつたあの新医療費体系の付属資料でも明らかなんです。もうすでに昭和二十七年三月現在においてでも、一点単価においては当時の物価事情においても、病院や診療所は一点について五十五銭ばかりの損をしておるという数字が出ておる。こういうような点は全然ほおかむりにしてしまつて、そうして与えられたわく内でただ右に左にと机の上で数字を動かそうというような、どうもそう点に新医療費体系というものの迫力が乏しいということを私どもは感じたわけなんです。先ほど来の御議論を聞いておりますると、国民総医療費をふやさないということは、ただちに国民の医療費負担をふやさないことを意味するというようなお考えがいわば根本にあつたように私は思う。しかし国民の総医療費を動かさないということと国民の直接の医療費負担をふやさないということとは、同じようであつて全然別なんであります。かりにたとえば社会保険の医療給付費をそのときの政府が大幅に国庫負担をするならば、国民の医療費負担というものは直接にふえないわけであります。そのときの政府の性格によつて、人為的にいわゆる可動的なものをとらえてそれを一定のものとして動かさないというような考え方、あるいは国民の医療費をふやさないという考え方の裏には、何か国民が病気になつて医者に支払い、薬剤師に支払う命というものは無用な消耗費的な印象を与えておりますが、そうではない。こんな底の浅い日本経済を抱えて経済の自立をやるためには、われわれが働ける健康というものが唯一のもとだ。これを病気から守つて一日も早く働かせる立場に置かしめるということは、国の生産力を培養する当然の前提である。こういう考え方から、国民の医療費は動かさない、国民の医療費そのものの概念において、われわれは政府の意図されるところには納得できない。こういうような形で取上げられた資料も手薄であり、その積立て方も不用意である。結局新医療費体系と銘打たれたけれども、出て来たものは決して新しい皮袋から出て来た新しい酒ではない。きわめて味の悪い古い漕が古い皮袋から流れ出て来たというようなかつこうになつておる。長谷川君も指摘されたように、この間の当事者の御努力にはわれわれは十分これに敬意を表し多とするものがありまするけれども、しかしながら根本の立場あるいはまたその取扱いの原則的な立場、こういう点においては、今後の新しい医療費体系を組み立てるときには、われわれ委員会の意のあるところを十分に参考に供していただきたいと思う。同時にまたこの一年三箇月の間に何とかわれわれの納得の行く新医療費体系というものをぜひともつくつてもらわなければならぬ。実際どこの国を見たつて、私は寡聞にしてよく知りませんけれども、医薬分業という問題が薬剤師とお医者さんのいがみ合いの根本になつて、七十年もこのことに労力を費して来ておるということは国としてもはずかしい次第ではないかと私は思う。
 こういうような点について私どもははつきり申し上げたいことは、もつともつと新医療費体系をつくるときに、近代科学技術というものの評価、近代の科学を尊重するという精神をやはり盛り込んでもらわなければ、無造作にデスクの上でただ機械的に操作されるということでは、なかなかこの問題の本質的な解決はできないのじやないかと思う。諸外国の医師、薬剤師等に対する社会的処遇の数字は煩を避けるために略しますけれども、日本の現在のようなものではない。こういう点は十分やはりごしんしやくをいただいて、そうして新医療費体系があくまでも近代の科学技術を尊重する、日進月歩の近代技術の進歩に伴い得るものであるという科学、そういう含みと幅を持たしめるという思いやり、それがなくてはほんとうに医師や薬剤師を納得せしめるところの医療費体系というものはできないということを十分ひとつ御考慮願いたいと思う。
 そういう点で、私具体的に希望を申し上げたいことは、まずこの新医療費体系をつくられる場合には、一年三箇月全部使われてもいいから、とにもかくにも新医療費体系のりつぱなものをつくつていただかなければ、医薬分業も何もできつこないという立場から、ぜひとも納得のできる新医療費体系をつくつていただく。そのためには、現在の政府の新医療費体系をつくられたところの資料なり、また方法なりについては、二、三根本的な私どもの批判を加えておいたのでありますが、とりあえずやはり外国の制度というものを十分に調査して、何も外国の制度をそのまま一本に持つて来ていただきたいと申し上げるのではありませんが、やはり科学技術を尊重している先進国の事例というものは、今新しく医療費体系を組み立てようとするときの重要な参考になることはいなめないのでありますから、この点はぜひとも考慮していただきたい。
 次には私も委員会で申し上げたように、やはり適正な診療を与えておる、内科、小児科の適正規模の診療所が適正な診療を与えておる、こういう経営の収支の実態というものを厚生省はもつと積極的に把握する必要がある。できなかつたら特定なものを指定して、それができないというならば、そういうものをあなたの方で御経営になつてもいい、やはりそういうデーターをじつくりと集めていただくことも重要な問題であります。営利的な病院、診療所の経営実態だけを見ないで、こういうものがいずれに利益するかは別として、適正な結論を出すためには、ぜひともそういう試みをお考え願いたいと思う。
 それから現在の点数計算制とか一点単価というものも十分再検討されなければならぬ。どちらかというと、現在新医療費体系というものが現在の点数計算制の制度、あるいは一点単価というものにこだわり過ぎて、これにとらわれ過ぎたところからいろいろと不満な点もでき、矛盾の点もでき、不合理な点もできるのだから、新医療費体系と銘打たれる以上は、はつきりと現在の点数計算制なり一点単価なりについても、やはり部内においては十分再検討を加えられて、そこで昔からのいわば陋習を捨てて、大きなヴアージン・ソイルの上で新医療費体系というものを組み立てていただくようにお考え願いたい。
 第四点には、このようにして生れて来る新医療費体系は、先般お示しのようなあまりにも複雑多岐のものであつては、第一これに携わる事務量にしてもたいへんなものになります。もつとすつきりと簡素なものにならないかということを感じておるものであつて、この点も十分お考え願いたいと思う。
 以上申し上げたような点を政府の方でも十分御考慮に相なつて、その上でさらにこの際できたらひとつ新医療費体系のための機関でもつくつていただきたい。なるほどできてはおるようでありますけれども、設置法でもつくつてもつと権威あるものをつくつて、そこには医者の意見も、薬剤師の意見も、保険者の意見も、被保険者の意見も、もちろん政府の意見も聞いて、これは譲るべきは譲り、主張すべきは主張し、そこに一つの調和点を見出そうという、権威ある姿で運営される民主的な機関をつくつていただく。何と申しましても新医療費体系は日本の革命的な問題でありますから、そこまで責任のとり得る権威ある機関をつくつて十分に検討していただきたい。
 以上のような希望を申し添えまして、私は一年三箇月の間において、今度のようなこうした不始末に終らないように政府は十分御戒心あつて、十分御活用願つて、そうしてわれわれの待望する新医療費体系を確立せられることを心から希望いたしまして、私の賛成の討論を終ります。
#77
○小島委員長 山下春江君。
#78
○山下(春)委員 私は新党同志会を代表いたしまして、議題となつております医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に賛成を表するものであります。
 今回参議院におかれましてこの一年三箇月の延期法案を御決定になりましたことは、非常に時宜を得たはからいであると思います。非常に遺憾なことながら、医師と薬剤師との非常な摩擦相こく裡にもしこの法案が発足いたしたとするならば、国民医療上非常に憂うべき事態が起つたと思うのでありますが、一年三箇月の延期を御決定されたことは私は時宜に即したことだと思います。しかしながら日本の医療が今日のまま放任し置かれていいという議論は成り立たないと思います。どうしても新医療費体系が打ち立てられなければならないということは申すまでもないことであります。それには、この一年三箇月という限られた時間でございますから、今日までのようなことなく、医師会におかれましても十分この案の完璧を期するために最善を尽して協力を賜りたいし、薬剤師の方におかれましても同様でございます。政府もまた医師会等で納得の行く――同僚岡委員は私ども非常に参考になる御意見をお述べになりましたが、そのような点を非常に深く御勘案になりまして、最善のものをおつくりになりまして、一年三箇月が終了の後には非常に円満裡に、しかも日本の非常に長い間のがんであつたこの問題に対して世界のどの国の医療にもはずかしくないようなりつぱな新医療費体系のもと、日本の医療が遂行されるような発足をしてもらうことを心から念願いたしまして討論を終ります。
#79
○小島委員長 只野直三郎君。
#80
○只野委員 私はただいま議題となりました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、実は遺憾ながら反対の意を表するものでございます。
 私は厚生委員会に関しましては、一昨日厚生委員にかえられましたので、皆さんの審議の状況等に関しましてはこれを十分承知しておるものではございません。ただ国会議員の一人としてこの医薬分業の問題については若干の研究もいたし、関心を持つておつたのでありますが、本日私が反対する理由は二つの点からでございます。
 一つは国会の権威を保たねばならぬということであります。もう一つはこういう重大問題ではあつても、やるときめてやるということになれば、国民の方の受入れ態勢はやはりそれに従つて来る。もしこれがやるときめておつても政府、国会その他の関係方面の腰がふらつけば、やはりそこに不安動揺が起つて、いたずらなる摩擦相こくも発生するものである。そういう点から若干私の意見を申し述べたいと思います。
 まず第一に国会の権威の問題でありますが、国会は申し上げるまでもなく国家の最高の機関であつて、その最南の機関で一応決定したことは、いわゆるりん言汗のごとし、そこに権威があると思います。従いましてその権威をわれわれが保つためには、どこまでも実行すべきは実行する。そうでなければ国民が迷うと思うのです。そういう意味においてまず第一に国会の権威を失墜することをしてはならぬという点から反対するのです。
 第二点としては、占領政策の行き過ぎの是正という点も巻間いわれておるようであります。また委員会等においてもしばしば問題になつておるようでありますが、私はこの占領政策の問題と医薬分業とは関係はないと実は考えております。というのは、医薬分業のような問題はすでに世界の先進国が実際にやつており、そして実績を上げておる。日本が遅れておる。遅れておるのをアメリカがやつて来て忠告をした。それを日本の国会が取上げて、満場一致でとりきめて、その通りだということになつた場合に、その医薬分業そのものが、占領政策のために日本の国民の自由意思が阻害されておつたきらいがあるから、ここにその行き過ぎを是正するということも考えられ、また延期もせねばならぬということも考えられるとするならば、それは大きな誤りである、そういうふうに思います。
 それからさらに、これはよけいなことになるかもしれませんが、国会が一度決定したことが、いろいろな外からの力そういつたものが入つて、そのことのために国会が左右されたという印象をかりに国民に与えたとするならば、これは国会そのものが信用されなくなつて来る。そういう点から私はやはり国会議員は白紙委任を受けておるのだから、白紙委任を受けている国会議員の意思で決定したことは、やはりそのときにおける最上のものであるという信念で行かなければ、国民に対して国会を信頼させることはできないだろうと思う。こういうことが反対の理由として大きく取上げらるべきものだろうと思います。
 最後に、この医薬分業を実施するのは非常に困難であるだろう、ことに薬剤師側と医師会側とが相こく摩擦をやつておるから、こういうさ中にこれを実施することは危険だろうというふうにお考えになるだろうけれども、国民は薬剤師にもあるいは医師会側に対しても両方を信頼しているはずだと思う。しかも政治の対象は国民なんだ。そうすれば、その国民の利益のために、医薬分業がよろしいという国会の方針が定まれば、当然医師も薬剤師もそれに協力して来るはずだ。これは私は聞くところによれば、すでに聡明なる医師の人々の中にはもう自分が医師をやりながら同時に薬局も併置して、そうして完備したものをやろうというふうに積極的に動いておる。国会がぐらつけばそういうものはだんだん減つて来る。そうすれば、国会が動揺するたびに医師会と薬剤師との対立が深刻になつて来る。国会が断固としてこれを実行するなら、薬剤師側も国会がそうきめた、医師会側も国会の意思は動かせない、こうなつたならば薬剤師と医師会は協力するものなんだ。医者と薬とは離せない。薬剤師と医師がけんかするということそれ自体がおのれとおのれがけんかすることなんだ。こういうことを考えましても、国会が躊躇逡巡するということは、これはいたずらに国民の間に不安動揺を起すことになるわけでありまして、私はどうしてもこれはすぐやつた方がよろしい、やりながら欠点を直して行く、これが厚生委員としては日の浅い私が先輩諸兄のお話を承つておつて、一応私先輩諸君の御苦心のほどは十分わかつておりますけれども、私は私の立場から私の意見を申し上げたのでございます。ただ大勢はすでにきまつたようでありますから、これは先ほど来政府の方々やあるいは参議院の方の提案の御説明を承つて、やむを得ないものだろうと実はひそかには思つております。ひそかには思つておるが、少くともこういう重大問題に関して━━━━━━━━━ということを繰返すようなことがさらにあつたら、たいへん危険なことだと思います。そういう意味におきまして私はこれは来年の一月一日からただちに実施すべきものと考えますので、反対をいたすのであります。
#81
○小島委員長 只野直三郎君に申し上げます。当委員会に関する限り部外の圧力を受けて行動したり、ものの考え方をした人は一人もないと存じます。その点御了解を願います。
#82
○只野委員 ただ巷間いろいろなことがありますから、そういうことがあつてはならぬということを申し上げたのであります。そういうことがあるということなどは絶対に申し上げません。
#83
○長谷川(保)委員 今只野委員から、━━━━━━━━━━━━かのごとき発言がありましたが、重大なる侮辱であります。われわれは━━━━━━━━━━━われわれは道理に立つて、国家のために問題とまつ正面からとつ組んでやつておる。このような発言は取消されんことを望みます。
#84
○小島委員長 委員長において只野君の発言中不適当なところがあれば修正することにいたします。
 以上をもつて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#85
○小島委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたされました。
 なお本案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#86
○小島委員長 異議なしと認め、そのように決します。
 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつて追つて御通知申し上げます。
   午後一時二十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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