くにさくロゴ
1954/12/01 第20回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第020回国会 本会議 第2号
姉妹サイト
 
1954/12/01 第20回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第020回国会 本会議 第2号

#1
第020回国会 本会議 第2号
昭和二十九年十二月一日(水曜日)
 議事日程 第二号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 中央更生保護審査会委員任命につき事後承認の件
 検査官任命につき事後承認の件
 公安審査委員会委員任命につき事後承認の件
 社会保険審査会委員任命につき事後承認の件
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意の件
 文化財保護委員会委員任命につき同意の件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後二時十八分開議
#2
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。内閣から、中央更生保護審査会委員に土田豊君を任命したので、その事後の承認を得たいとの申出がありました。右申出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#5
○議長(堤康次郎君) 次に、内閣から、検査官に山田義見君を任命したので、その事後の承認を得たいとの申出がありました。右申出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#7
○議長(堤康次郎君) 次に、内閣から、公安審査委員会委員に阿部真之助君、挾間茂君及び山崎佐君を任命したので、その事後の承認を得たいとの申出がありました。右申出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#9
○議長(堤康次郎君) 次に、内閣から、社会保険審査会委員に簗誠君を任命したので、その事後の承認を得たいとの申出がありました。右申出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#11
○議長(堤康次郎君) 次に、内閣から、日本銀行政策委員会委員に荷見安君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#13
○議長(堤康次郎君) 次に、内閣から、文化財保護委員会委員に内田祥三君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 一 国務大臣の演説に対する質疑
#15
○議長(堤康次郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。松村謙三君。
    〔松村謙三君登壇〕
#16
○松村謙三君 私は、日本民主党を代表いたしまして、吉田内閣総理大臣にお伺いいたしたいと存じます。
 吉田氏はすでに自由党に対し引退の予約をいたされております。昨日のこの場における演説のごときも、施政方針の演説ではございませんで、政府の所信を述べられた演説でございます。すでに堂々施政方針の演説もなさらない今日の状態に向つて、私どもは施政方針に対する具体的の質問をいたすことは、これは無意味であると考えるものでございます。(拍手)従いまして、私は、ただ一、二、現内閣のやられた措置及びその進退につきまして、きわめて簡単明瞭にお伺いいたざんと欲するものでございます。(拍手)
 総理大臣御承知のごとく、去る第十九回国会終了後、王党の約束によりまして、ただちに臨時国会を開き自粛の実をあぐるということは一前議会の汚職、乱闘の不祥なる分裂状態を収拾するために、各党共同の全国民に対する厳粛なる公約でございました。(拍手)すなわち、汚職、乱闘のあの不祥なる事件に対し、国民に陳謝し、国会自粛の実をあぐるために、六月十四日の王党会談において、国会は全員協議会を開いて全国民に遺憾の意を表明するとともに、一日もすみやかに臨時国会を開き、自粛の実を明らかにすべき具体的措置を講ずる旨を五党の間において妥結いたし、ただちに全員協議会を開いてこれを国民に公約し、辛うじて当時の紛糾せる事態を収拾いたしましたことは、世間周知の通りでございます。(拍手)吉田氏は、総裁として、また時の総理大臣として、十分これを承知し、責任を有せらるることはもちろんでございます。しかるに、一旦前国会が終りますとともに、政府は、全然この公約を忘れたがごとく、幾たびか各党から公約の履行を迫り、臨時国会の開会を要求いたしたにかかわりませず、これを履行する誠意がなく、遂に今日に及んだのでございます。これまつたく、政府及びその与党が、政界を粛正し、国会の品位を高め、その信用を回復する誠意がなく、国民に対する公約を無視し、各政党の協調によつて国政の円満なる運営をはかることをみずから破棄いたして不信の行為をあえてし、議会政治の根底をみずからくつがえさんとするものでございます。(拍手)その罪断じて許しがたいのでございます。(拍手)吉田氏は、総裁として、総理として、何ゆえに、天下に対する公党としての公約を破り、政界の粛正、議会信用回復の努力を蹂躙せられたか、その理由を承らんと欲するものでございます。(拍手)
 さらに私がここに吉田総理に聞かんと欲しますところは、責任政治の本質に関することでございます。私は、従来とも、吉田総理が総理大臣として当然とるべき責任観念がきわめて欠けておることをかねがねはなはだ遺憾に感じていたものでございます。(拍手)ことに、昨日の吉田総理の御演説を承りましても、ますますその感を深くせざるを得ないものでございます。われわれはアメリカを初め自由国家群の友好的な相互の協力を念願してやまないものでありますが、昨日総理から外遊の実績が述べられておりますけれども、われわれはこれに対して大なる失望を感ぜざるを得ません。(拍手)すべてが抽象的であつて、何ら具体的の結果を得ておりません。十一月十日の日米合同声明の内容ぐらいはせめて具体的の説明があることを期待いたしておりましたが、遂に何ものをも述べられておりません。一言これを評したならば、国民の支援のない外交というものがいかに効果の薄いものであるかを総理みずから痛切に体験せられたことと思うのでございます。(拍手)
 その御演説の所感として、訪問した各外国が戦後の復興目ざましいものがあり、政府、国会を問わず真剣な努力が払われておることを述べられ、わが国内の政治、経済体制の確立を強調しておられますが、一体だれが、日本の政治体制、経済体制、社会情勢を、このように軌道をはずれ、このように収拾に困難なる状態に陥れたか。その責任の所在は長きにわたる吉田内閣の粃政の累積によることはきわめて明らかであるにもかかわりませず、何らみずから反省するところがございません。(拍手)また、反共政策を強調しておられますけれども、一体共産思想の温床をつくつたものはだれであるか。多年にわたる吉田内閣の悪政の結果であることは申すまでもないところでございます。(拍手)この責任をいかにするか。吉田総理は、国民に奮起を促す前に、まずみずからその責任を明確にすべきであると存ずるものでございます。(拍手)
 今や、国民の輿論は、波濤のごとく吉田内閣の打倒を叫んでおります。さすがに吉田総理もこの大勢に抗しかねたと見えまして、去る十一月二十二日に、書面をもつて自己の進退を自由党の総務会に諮問をいたしております。みずから去就に迷つたと見えるのでございます。すでにこれによりまして政局担当の自信を失いましたことだけねきわめて明瞭でございます。(拍手)しかも、自由党の総務会は、多年推戴した総裁を別に引きとむることもしないで、ただちに引退を進言し、吉田氏はこれを了承いたし、総裁の後任に緒方氏を推したのでございます。緒方氏はすでに就任のあいさつまで述べておられる様子でございます。
 そこでお伺いいたしたいのは、すでに総裁をやめて緒方氏に譲ることを予約したのでありますが、吉田氏が首班に推薦せられましたのは自由党総裁の地位にあつたからでございます。総裁を辞したそのときは、当然総理も辞して、新たに首班の決定を国会に求むべきは当然でございます。(拍手)また総理辞任の原因は、何と申しても反吉田内閣の輿論によつてでございます。従いまして、後任の総裁に緒方氏が選ばれましたが、これもまた現内閣の副総理としての連帯の責任を持つておらるるものであります。従いまして、政権のたらいまわしは憲政の常道から言つて断じて許されざるところと信ずるものでございます。総理は自己の進退についてどのように考えておらるるか、それを端的に伺いたいものでございます。(拍手)
 さらにまたお伺いいたしたいことは、総理はすでに総裁の辞任を予約いたされております。大体それをいつ実行せられるのであるか伺いたい。大体、歴代の内閣総理大臣であつて、すでに引退を約束しながら、そのままその位置にとどまつて、一日の苟安をむさぼりおるがごときことは、かつて前例を見ざるところでございます。(拍手)世界の混迷これよりはなはだしいものはございません。(拍手)政務は停頓し、人心はうみて、日に険悪を加えております。総理はこの現実をいかに見ておいででありますか。総理が真に国家を憂えられるならば、一日も安閑としてこのままその地位におられないはずでございます。(拍手)政府及び与党は、しきりに、やがて提出せらるべき不信任案に対し国会の解散を流布いたしております。しかしながら、解散は、その政府及び与党が時局担当について国民の支援を得る強い自信を有するときに限つて解散の理由が立つわけであるが、議会政治の原則に従つて、すでに政局担当の自信を失い、引退を約束して、施政方針さえもやり得ない内閣が議会解散をやる資格のないことは、これは当然のことでございます。(拍手)与党の自由党さえ引退を勧告しております。総理もまたこれを了承しておる。いわんや、国会が不信任を決定するならば、これに聽従して総辞職するのは当然でございます。(拍手)もし、それにかかわらず、二年間に三度の解散を強行するならば、これはフアッシヨの暴挙であります。国民への挑戦であります。断じて許されないところであります。時局はきわめて険悪である。吉田内閣の前途には、ただ一日もすみやかに辞職する道だけが残されておると思うのであります。総理大臣の所信はいかがか、承りたいのでございます。
 しかしながら、解散は決してわれらの回避するところではございません。(拍手)近来きわめて奇怪なことは、保守合同の名をかりて解散を回避ぜんとする運動であります。かくのごときことは、断じてこの重大な時局を救うゆえんの道ではございません。(拍手)国民の間に沸き立つほうはいたる動きを見るならば、われらは断じて一日も安きを盗むべきではありません。真に国民の支援を得て政界を浄化し、議会政治の信用を回復し、政治家みずからが生活を規律しも政治道義と社会正義の政策をまず行うことが最も必要であるのでございます。(拍手)今や政局は混迷し、人心はきわめて険悪化いたしております。吉田内閣がその責任をみずから明らかにすることこそ社会を明朗化するゆえんであると、かたく信ずるものであります。吉田総理の善処を要望してやまぬものでございます。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#17
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 臨時国会を開いて、もつて国会の自粛を要望せられるということについて、私も同感であります。しかしながら、国会の自粛、民主政治、政党政治の完璧を期するためには、まず国民の理性ということが大事であります。臨時議会のみが唯一の方法ではないのであります。まず国会の態度いかん、政党の態度いかん、あるいは政党員の態度いかん、国民がまずこの点について十分なる知識を得、真相を得、これによつて国民の判断がまず大事で、これを基調として国会の自粛がなされるのであります。(拍手)ゆえに、政府としては、国民が議会の真相をよく了解する時間を与えることが必要と考えまして、国会の即時召集については政府はこれに賛成いたしておりません。すなわち、今日臨時国会を召集して深く国民の民意を間うことが最も適当な処置なりと考えておるのであります。(拍手)
 次に、私の進退でありますが、私の進退は過日自由党の幹部に出した書面に明らかであるのであります。いたずらに政権争奪を目的として右往左往するがごときことは、政党政治の最もきらうべきところであります。(拍手)しかるに、この前の議会以後の政界を見ますと、政界、政治の状態は、はなはだ松村君の言われるように混迷しております。この混迷の状態はだれがいたしたのか、(拍手)松村君自身がよくおわかりになるであろうと考えるのであります。私としては、あくまでも、政党政治の確立、民主政治の確立のために、いたずらに政権に恋々するがごとき態度をなすということはよくない。すなわち、政党の――私としては、自由党の意思により、自由党の党員の向うところ、総意によつて進退をいたすということを明らかにいたしたのであります。それがどこが悪いかと私は書わざるを得ないのであります。いたずらに政権争奪のために政党の籍を二、三にするのと考えが違うのであります。今後といえども、いかなる時期において私の進退を決するかということは、一に自由党の党情により、党員の、総意によつて決定するつもりであります。(拍手)
 次に、外遊に関して私の声明、演説が空虚なりと言われるが、空虚であるかな、かということは、今後の実績、事態の進展によつて明らかになると思いますが、すでに私の申した演説の中の二、三のものが実行されつつあるのであります。今後ますます私の申した演説の内容が明瞭にせられると考えるのであります。私は、いたらずに大言壮語して、あたかも私の外遊が非常な大成績であるかのごとき報告はいたきないつもりであります。実績において、私の外遊がいかに効果があつたかということは、今後自然に諸君のお考えに入るであろうと考えます。(拍手)
#18
○議長(堤康次郎君) 井出一太郎君。
    〔井出一太郎君登壇〕
#19
○井出一太郎君 私は、ただいま松村議員の質疑のあとを受けまして、日本民主党の立場から、吉田総理大臣並びに関係閣僚に質疑を行わんとするものでございます。(拍手)
 吉田総理が長い間の宿願でありました外遊のことも無事に果たされまして、昨日はその御報告をもあわせ拝聽いたしました。今や内外に吹きすさぶ木枯しは吉田首相の身辺にことさらに寒く、総理の胸中を去来する一抹の寂蓼感はまさにおおいがたいものがあろうと思うのであります。(拍手)総理の帰朝を迎えた祖国の政界は、あなたの意図に反して、雲行きすこぶる穏やかならざる様でございます。
 総理が今回の旅行において特に強調せられた点は反共の点でございます。イタリアでも西独でもアメリカでもこの点を力説せられたことが外電によつて打返されて来ております。なるほど、一方においては、中ソの間に日本を対象とした宣言もあり、いわゆる平和攻勢ともいうべきものが展開されておることは事実でございましよう。しかし、今日戦争の危機は遠のいたと見るのが常識である。進んで二つの世界が共存する可能性も強く提唱せられておる時代でございます。日本がソ連、中共の二大国に一衣帯水をもつて境を接しておる今日、総理がことさらに刺激的な言葉を用いて共産主義の脅威を説かれるゆえんのものは一体何でありましよう。人あるいはこれこそ米国に対する媚態であると言い、ダレス氏に対する迎合であるとも評しております。(拍手)自由主義世界のリーダーであるアメリカの外交はすこぶる弾力性に欠けており、マツカーシー旋風の跳梁するにまかせておる感が深いのであります。ジュネーヴ会議の敗北もこの辺に基因するのであつて、若きマンデス・フランスをして名をなさしめたのを思うにつけまして、日本の立場はもう少し柔軟性を持つべきかと思うのであります。二つの世界の共存の可能性について総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 総理のアメリカ滞在中、くしくも十一月二日の中間選挙に遭遇されました。しこうして、この結果は、予想にたがおず、上下両院、州知事ともに民主党の勝利に帰したわけであります。これこそ、ダレスや、ノーランドや、しこうしてマッカーシーに不安を感じ出したアメリカ輿論の反映と思うのであります。民主党のカラーである健全なる進歩主義に凱歌が上つたのであります。このことは、アメリカの対共産圏外交が融和政策からコンテインメント、ロール・バツクと転じたことく、何らかの変化があるものと予想せられたのであります。現地を見て来られた総理の御見解を承りたいのであります。
 昨日の外遊報告において、東南アジア開発問題を初めとして、もろもろのおみやげらしきものが発表せられました。これらは必ずしも総理の旅行カバンをふくらますに足るほどのものではございませんでした。私の伺いたいのは、二十億ドル以上に上るであろう対日援助資金についてであります。かつて、われわれは、これらが、ガリオア、イロア等の資金についてはアメリカの好意による贈与であると考え、本議場においても幾たびか感謝決議をいたしたのであります。政府はその後これを債務と心得るという答弁のもとに今日に至つておりまするが、しからば、イタリアの例に見るごとく、思い切つて切り下げてもらうという交渉をなされたかどうか、またその見通りについて承りたいのであります。
 国民は、今回のおみやげの必ずしも多いことを望んではおらない。むしろ、それよりも、舌切りすずめの物語にある重いつづらを背負つて帰るといことを極力警戒しておつたと思うのであります。すなわち、日本再軍備の強化を要請せられ、あるいは保安隊の倍増を約束せられるというような線が出ることをおそれたのであります。よもや秘密協定のごときものはなかろうと思うのでありますが、少くとも今日以上その増強はあり得ない、こういう点をこの席で御確言願われますかどうか、これを承りたいのであります。
 アジア外交の重要性について、きのうも触れられましたが、私は現政府が従来きわめてこの問題に不熱心であつたことを遺憾とするものであります。総理が滞米中なされた演説の中で、中共貿易に関する認識のきわめて貧困であつたことを指摘いたしたい。首相は戦前の対支貿易が全貿易の中で占める割合をわずか六%であるという言明をアメリカにおいてなされた。さような数字は全然誤りであつて、政府の発表しておる貿易白書を見ましても、旧支那本土に対して二割、満州、朝鮮その他に対して二割ということに相なつておつて、中共圏がマーケットとしてのウエートのきおめて重大であるということを政府発表の文書が示しております。このような程度の認識の上に立つてアジア経済外交をやられたのでは、たまつたものではございません。(拍手)しかも、国際の舞台において、この御発言は、まつたくひどいものである。愛知通産大臣は、そのときかたわらにおられたと思いますが、なぜもつとあなたは手ほどきをしてあげなかつたか。それとも、例によつて、総理は、これを新聞の記事として、その責任を負わないと言われまするかどうか。この機会に御訂正を願いたいのであります。
 首相の留守中に対ビルマ賠償交渉が成立いたしました。この点は私も御同慶に存じます。ただ、しかし、その内容でありまするが、資本財でもつて二億ドル、投融資で五千万ドルを十年間に皆済いたすわけでありますが、ここで注意しなければならないのは、サンフランシスコ平和条約第十四条によるところの役務賠償という原則を放棄しているという点でございます。この原則をなぜ貫くことができなかつたか。しこうして、これがひな型となつて、今後フィリピンに対し、あるいはインドネシアに臨むことに相なると思うのでございますが、この点、岡崎外務大臣はどのように御説明なさるか。ざらにまた、本条約の承認はこの国会において求めようとされるのでありましようかどうか。その御用意なしとするならば、政変気構えの今日、責任ある行政主体たる吉田内閣がなくなつたとき、しかもそれはきわめて近いと思われるのでございますが、その責任ははたしてだれが負うのであるかを明らかにせられたい。
 フィリピンの問題が出たついでにお尋ねをいたしますが、去る四月フィリピンとの交渉が遂に決裂いたしましたことはまことに遺憾であり、大野・ガルシア会談でほぼ協定ができました上に、日本側の正式り全権団まで現地に送つて、しかもこの不始末と相なつたことは、まつたく醜態であります。本来ならば、この一事件だけでも内閣はすでに総辞職に値するものでございます。大野公使一人を辞職せしめただけであつて、それではたして責任が果せるか、総理並びに岡崎外務大臣の見解を問わんとするものでございます。(拍手)
 ついでに伺つておきたいことは、インドネシアに対して焦げつき債権が一億二千五百万ドルに上つている点でございます。国際収支の改善、外貨保有の必要が今日ほど喫緊なときはないにかかわらず、これらのことを放置しておくことは一体何たることでございましようか。この金額は一体回収されるものであるかどうか、先方側との賠償の際に差引かれると考えるべきかどうか、この点を明らかにせられたい。
 昨日の大蔵大臣の演説後半は、政府の施策よろしきを得て、物価は低落し、輸出は増大し、経済の拡大均衡はまさに実現するかのごとき、きわめて楽観的な口吻に終始いたしたのであります。私は、この自画自讃はむしろ解散近しと見ての選挙対策ではなかろうかと思つた次第であります。物価ははたして下つておるでありましようか。私の手元にある資料からいたしますならば、本年一月と九月とを比べて、総理府卸売物価は五彩だけこれは下つておる。しかし、日銀小売物価は逆に二形騰貴をしておるのでございます。一時的な投売りによるところの問屋の段階における物価低落はあるいはあるでしようが、これをもつて気休めとされてはたまらないのでございます。労働省の発表しております八月現在での失業者数は七十二万と出ておる。有沢東大教授のごときは、潜在失業はこれの六倍に上るということを申しておる。輸出の増大を誇つてはおられますけれども、その多くは出血輸出であつて、下請中小企業のごときは、それがために歳末を前にしてさんたんたる不況のうちにあえいでおります。これらもろもろの経済現象は、決して蔵相の言うがごとき楽観論は許されません。MSA体制のもとにおける日本の経済は、七、八億ドルに上るところの特需ないしは駐留軍の消費によつてささえられていることは申すまでもございません。この厖大な消費は、日本経済の再生産過程の中には入つて行けない旺盛な需要として、経済外的に消耗せられておるのでございます。かかる経済構造のもとに、日本の生産過程におけるコストの切下げというものは、これはなかなか容易ならないものであつて、従つて物価の低落は望めないとするのが、むしろ今日の大方の識者の意見であります。大蔵大臣並びに審議庁長官はこの点に関していかなる所見を持つて嘉られるかをただしたいと存じます。
 大蔵省は、二十九年度予算において、一〇%の節約を予算執行途上に発表いたした。そうして、各省の上に君臨して、その独善的施策を強制いたしたのでございます。物価が低落した、または低落するであろうと称して、一方的に強行をいたしたのでございますが、「体このような権能がだれによつて許されておるのでございましようか。物価は、前述いたしましたように、必ずしも低落はいたしておりません。従つて、各省は事業量の縮小をするのほかなく、当初計画を変更してこれに対応するの余儀なきに至りました。これが財政法の違反でなくて何でありましようか。しかも、今回の補正予算においては、その財源の中で百五十億を節約もどしによつて充当いたしておるのでございます。かかるほし」ままが許されるとするならば国会はいりません。大蔵省は国権の最高機関であるところの国会の予算審議権を干犯したものであると私は断じてはばからない。(拍手)小笠原大蔵大臣の責任ある答弁を求めんとするものであります。
 今次補正予算の特徴を災害予算と称することによつて被災地の民衆を籠絡しておりますが、これほど羊頭狗肉の予算はございません。予備金支出のほかにわずかに六十九億円というのでは、おそらく政府与党の諸君といえども何をもつて罹災地の選挙民にまみえることができましようか。昨年の救農国会においては、同じ吉田政府のもとにおいて、なおかつ総額五百億円に上る災害予算が計上せられました。幸いにして本年の被災総額は昨年に比しては少いとはいうものの、局地的には深刻の度合いはきわめて強い地帯がございます。私も北は北海道から南は九州のはてに至るまで見てまわりましたが、惨状まさに眼をおおわしめるものがございます。去年の北九州に比して、ことしの南九州が同じ程度の被害でありながら、国の配慮において厚薄があるということは、政治の不均衡でございます。みぞれが降つておる北海道において、二年続いた冷害のためにこの冬をいかに生き抜くかという嘆き、これを大蔵大臣あるいは加藤災害連絡本部長はよく認識せられて、責任のある答弁をお願いしたいのでございます。(拍手)
 昨日の総理の演説の最後には、「生産と貿易の拡大を総合的、計画的に進め」云々というくさりを承るに至りました。この草稿は下僚に準備せしめたものであるとはいえ、総理としての責任のある御発言でございます。本年一月、この議場において、わが党三木代議士の質問に答えて、計画的な経済は共産主義国家のやることであると放言して失笑を買つたことは、われわれの記憶に新たなるところでございます。(拍手)一年を経た今日、首相の発言はまつたく百八十度の変化である。首相退陣近くしてその言やよしとでも申し上げるべきでございましよう。(拍手、笑声)この際首相のお考えをもう少し詳しく承りたいのであります。
 この点に関連をいたして、私は通産大臣に承りたい。目下外貨割当をめぐつて日本経済が撹乱をされておる状態でございます。たとえば、砂糖のごとき生活必需物資が、あるいは輸出リンク等の関係もあつて、暴落、暴騰常ならないのはいかなる次第でございましよう。現在量とにらみ合せつつ円滑な原糖輸入をはかつたならば、市価のフラクチユエーシヨンをもつと調整できるはずである。糖業界における過剰投資、過剰設備をもつと規正できたはずでございます。あるいはまた、石油の輸入を野放しにいたしたまま国内企業の動力施設をオイル・バーナーに切りかえる指導をしておきながら、最近ではこれを引締めて、また再び石炭をたかしめるというようなことは、無定見もまたはなはだしきものでございます。(拍手)国内貯炭が山積するということはすでに予想せられておつた。従つて、エネルギー資源の総合的な施策勘案に欠けておつたことがこの結果を来したものであつて、まことに遺憾千万でございます。あなたはこの点をいかにお考えになるか。
 われわれの知るところでは、経済審議庁において総合開発の構想というものがございます。昭和四十年における日本経済の姿をかなり克明に描写しておるところの資料がある。しかしながら、審議庁の役人諸氏は、明哲保身の術を心得ておりますか、Y項パージなどという前例もございますので、これが発表を躊躇しておる状況でございます。経済審議庁長官は、この際その輪郭をお示し願いたい。それによると、昭和四十年における労働人口の推定――今日から約七百万増加をするということに相なつております。この七百万が新たに雇用の機会を求めて登場するのでございます。これと関連せしめて、日本の経済構造というものは、昭和二十七年よりも五六%向上しなければこの労働人口をささえきるわけには参りません。そういたしますと、現在のような無軌道な自由経済ではとうてい購え得るところでない。しかも、資本主義のわく内でこれを解決する道あわとするならば、経済審議庁長官の御見解を承りたい。
 また労働大臣にあわせお尋ねをしたいのでありますが、これと対応するところの方策をあなたはお持ちになつているかどうか。これはこの間の次官通達などをはるかに越えた大問題でございます。
 ついでに小坂労相にもう一点お尋ねをしておきたいのは、本年における新規雇用の問題でございます。そのうちでも大学出身者の身の振り方をどらすべきか、これに対する対策をお示し願いたい。われわれはこれら知識階級の失業こそ真に恐るべきものだと考えるからでございます。
 私は、この際、農林大臣に御登場を願いまして、一、二お尋ねをいたしたいと存じます。一億ドルの余剰農産物買付交渉の妥結いたしましたことは、日本農業にとつていかなる影響をうえるでありましようか。ドル貿易に片寄つている日本の輸入がその跛行性をますます深めることと相なり、ポンド圏ないしはオープン勘定地域への輸出を妨げる点は第一に指摘されなければなりますまい。日本国内で使用できる円資金は約二百十四億であるといわれておりますが、これが大部分国内の農業増産に投資されるならば、まだわれわれはがまんをいたしましよう。この際農業方面への投資が幾ばくに相なるかを明らかにせられたい。もしその大部分が農業以外に流れるといたしまするならば、生産農民は容易に承服しないでございましよう。余剰農産物の内容は、綿花であり、大小麦であり、ないしは米をも含むと聞いておりますが、この中に乳製品等を含んでおらないか。酪農危機の叫ばれる今日、この点を軽々にわれわれは見過すわけには参りません。問題は日本の麦作に対する圧迫であり、今日といえども外麦値段は内地小麦をはるかに下まわつております。それゆえに、輸入食糧から食管会計の黒字が出て参つて、今回の補正予算には百五十億円に上る財源をこれに求めておるのであります。日本の気候風土は必ずしも麦の生産には適しておらない。従つて、戦前以来麦に対して特殊な保護政策がとられて参つて来ております。ところが、本年の麦価決定に際してとられたところの方策は一体何であつたか。昨年、一昨年と、大麦を対小麦比価において有利に決定をいたし、もつて大麦増産政策をとつて参つたのでございますが、去る六月、小麦だけはパリティ通り引上げ、大・裸麦を逆に引下げるとい矛盾をあえて犯したのでございます。パリティを貫くにもあらず、前年度価格をすえ置くにもあらず、まつたく無原則な麦価決定をいたしたことは、自由党農政の無定見を暴露いたしたものでございます。(拍手)保利農林大臣が述懐したことく、自由党は農民をだまして大麦の作付をふやせた、こういうことに相なつておる。アメリカ余剰農産物の氾濫は、やがて日本の麦作を危機に陥れるに違いございません。(拍手)政府は今後いかなる価格政策をとらんとするのであるか、輸入大・小麦との関連においてお答えを願いたいと思うのであります。
 今年度平均米価もまた石当り九千七百二十円というところにおちついて、昨年の一万四百六十円に比べまするならば七百円の値下りである。米価体系は今やまつたく崩壊し去つたともいうべく、パリティ計算方式はプラス・アルフアがついた瞬間に自己否定をしたと同様であります。早場米奨励金であるとか、完遂奨励金であるとか、超過供出奨励金であるとか、豊凶係数加算であるとかいうような、このややつこしい米価の維持はもはやできない段階に来ておる。政府は米価算定にあたつていかなる対策を持つておられるか、この際食糧管理法の規定するがごとき、再生産を保障するに足るところの生産費を基礎としたところの米価を採用するお考えはないものであろうか。この点、農林大臣のみならず、大蔵大臣の御見解を伺つておきたいのであります。
 農産物価格は行き詰まつておるのみでなく、予算面から来るところの食糧増産対策費は大幅に削減されておる。今や農政自体はまつたく行き詰まつたと言おなければなりません。それにもかかわらず、農家が購入するところの生産資材、たとえば肥料に例をとつて申すならば、ついこの間電力料金の値上げを理由といたしまして硫安一かます三円六十銭の値上げが決定したのは、諸君御承知の通りであります。この農政の行き詰まりに対して、農林大臣は微力にしてと陳弁をせられておりますが、この際、保守合同の幕合いなどに出没されることはやめて、農政府開に勇猛心を振われんことを希望するのであります。(拍手)
 次に、食糧管理制度に関して一言いたしておきたい。今日主食としての米のみが唯一の残された統制品でございます。本年は大体平年作と予定せられておるにもかかわらず、義務供出量は千八百三十万石、超過供出を合せて二千二百四十九万石という集荷量しか確保されない状態でございます。昨年の大凶作においてさえも二千万石は確保できたのであります。それよりも八百万石もよけいとれておる現状下に、右のごとき数字でもつて知事会議を押し切られてしまつたということは、今日の政府の無力を物語る有力な証左である。これでは国民食糧はたつた八日分しか配給ができないのであります。国民の半数であるところの非農家に対して月わずか八日分の内地米を確保するために、あの厖大な機構と経費を要する食糧庁の存在がはたして必要であるかという世論の痛烈な批判も出て参つております。しからば、米の統制は撤廃すべきか。これまた、米の絶対量の不足と、日本人の米に対する特殊な執着からいたしまするときに、米はたちまち投機の対象となり、国民食生活の上から危険であるという有力な議論もございます。少くとも政府が本年の供米確保に無力であり、失敗をいたしたことは、まずとがめらるべきであつて、食糧管理制度をどこへ持つて行かんとするか、これを承つておきたいのでございます。
 最後に私は一言吉田総理に申し上げたい。それは、ただいまの松村さんに対する総理の御答弁を伺つておつて、私どもははなはだ遺憾にたえません。今や政治に対する絶望感が都郡を問わずみなぎつており、何かしらやりきれないという感情に満たされておる。水が滞ると腐るのたとえの通り、同一政権があまりにも長く権力の座にいすわるときには、必然的にかような現象が起つて来るのでございましよう。占領政治を切りかえることなくして、その惰性のままに今日に及んで来ておるところに病根の原因があろうかと思う。私どもは、吉田総理は折目、筋目を正しく通す方だということを従来聞いて参つた。ところが、最近の実情はまつたくこれと相反しまして、政治倫理は今や地を払つておる。昨日の演説においては、目前の政局については何ら触れるところがございませんでしたが、国民の聞かんとするところは、日米共同声明のむし返しでなくして、当直総理が進退をいかにされるかというところに集中しておつたと思うのであります。(拍手)日本民主党は、去る十一月二十四日結党、生誕いたしました。これは首相にとつてはあるいは好ましからぬことであつたかもしれない。しかし、これはあくまで冷厳なる事実であります。しこらして、事ここに至りましたのは、やはり長きにわたる吉田政治の反動であります。新党は吉田的なるもののアンチ・テーゼとして生れるべき必然性を持つておつた。(拍手)首相は、新党を目して悪者の集まりである、政権争奪の徒党であるかのごとく語つておられまするが、自己に都合の悪い立場を認めようとしないのは、これはまさに独裁政治にほかならない。われわれが吉田政治と称するものは一体何であるか。これは吉田的な側近権力政治であり、岡崎的な退嬰独善外交であり、池田的な自由放任経済でございます。これらのものを総括して、われわれは吉田政治と呼ぶのである。新党はこれと対決するところに使命があるのであつて、この際吉田総理は新党に対する誹謗の言辞を取消そうとされないのか。あなたの政局に対する心構えを最後に伺いまして、私の質問を終ることといたします。(拍手)
  [国務大臣吉田茂君登壇〕
#20
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 最近の国際情勢を見ますると、ジユネーヴ会議以後の情勢は、地下工作といいますか、あるいはその浸潤政策といいますか、第三次戦争を起すだけのカがないために、共産国としては一に浸潤政策によつてその目的を達せんといたしておるということは、最も顕著なる今日の情勢であります。これは個人も認めざるを得ないのであります。ゆえに、共産国から申すと、この日本国を奪取するということが第一の目的であり、またヨーロツパにおいてはドイツを当面の目標といたしておるのであります。かかる危険な状態に置かれておる日本としては、自由国家とともに、共産散策の危険なることを国民が自覚して、これに対して真剣に対処する決心がなければならぬはずであります。(拍手)しかるに、モスクワあるいは北京の放送に信頼を置いて云々と言われることは、私においてまことに心外に存ずるのであります。かくのごとくして、よく共産国の浸潤政策に対して日本が対抗し得るか、この国を守り得るかどうかということについて、非常に関心を持たざるを得ないのであります。(拍手)私は、この点からして、日本政府あるいは日本国の反共政策は最も明瞭にこれを世界に公示し、自由国家とともに共産国に対してあくまでも対抗する決心をなすべきときであると確信いたすのであります。(拍手)もしこれをもつて一に向米一辺倒と言われるならば、世界をあげて向米一辺倒であります。(拍手)日本はこの国際的潮流とともに国家の独立を守らんといたすのであります。(拍手)これに反する見解は、私は国家のためにはなはだ危険千万な見解であると考えるのであります。(拍手)今日北京の放送を見ますると、日本に対しては正常なる国交関係に入りたい、日本から物を買いたい、こう言うかと思いますと、東南アジアに対しては、日本は再軍備をいたして、しこうして再び侵略主義をとらんといたしておるのである、これは米国の帝国主義の教唆によるものであると宣伝いたしておるのであります。日本に対して反抗的態度を――空気を東南アジアに対しては教唆する一画においては、日本国民に対しては最も甘い言葉をもつて臨んでおる。(拍手)その甘い言葉に乗つている政党があるとすれば、まことに遺憾千万であります。私は、日本国の行くべき道は、あくまでも自由国家とともに共産主義国の政策に反抗して、国家の自由、国家の独立を守るべきものであると確信いたすのであります。(拍手)
 また、中共貿易とか、ソビエト・ロシヤからの貿易等についていろいろ言われますが、まず国交が回復しない、平和条約ができない、通商条約がない国との問に、どうして通商の円満なる発達を擬するのでありますか。また、二面から考えますと、支那は輸出のない国であります。ただソビエトの輸出があるのみであつて、世界の多くの国とは通商いたしておらないのであります。輸出によつて輸入の支払いをなすということが常道であります。これを知らぬという人があるならば、わからない、最も無知識なものと言わざるを得ないのであります。(拍手)しかして、もし中共との間に大きな貿易ができたとして、これが支払いをどうしてするか。輸出のない国がどうして輸入の支払いをなすか。いわんや、条約のない国においてもしクレームが生じた場合においては、いかにしてこの債権を保護するか。保護する道もない国と通商いたすということは、私は常識をもつて判断ができないのであります。(拍手)
 次に、民主党が総選挙において勝つた、アメリカの共産主義に対する外交はどうするかというような御質問でありますが、今日アメリカの国会においては、両党とも超党派外交を主張いたしておるのであります。ことに、アイゼンハウアー大統領に対する人望は両党を通じて最も絶大なるものがありまするから、共産主義外交が二、三になるということは断じてないと私は確信いたします。
 次に、日本の再軍備を約束し、もしくは秘密協定をなしたのであろうというお疑いでありますが、そういうことは断じていたしておりません。
 総合的、計画的云々ということについて反駁がありましたが、私が総合計画について賛成いたさざるゆえんは、五年間の総合計画とか、あるいは十年間の総合計画、この計画を発表して国民をいたずらに迷わして、二、三年にして計画を変更するということが、従来社会党内閣その他においてなざれたことであります。私はこれはいかぬと思うのであります。(拍手)いやしくも予算を立てる以上、その年の総合計画があるのは当然であります。その総合計画のもとに予算が立つのであります。総合計画がいけないと言うのではない。だが、長期にわたる総合計画はいたずらに国民をあやまつものであるから、私はこれに賛成しないのであります。(拍手)
 その他の問題は関係大臣からお答えいたします。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#21
○国務大臣(岡崎勝男君) 賠償問題についてのお尋ねでありますが、桑港条約の役務賠償の解釈についてはもちろん問題がありまするけれども、われわれは、東南アジア諸国との友好関係の樹立のために、できるだけこれをゆとりを持つて解釈いたして今回の協定に到達したのであります。また、今度の臨時国会は、その性質及び会期の点から申しまして、平和条約及び賠償協定等を御審議願うのは困難かと考えておりまして、各党の御了解を得て、通常国会の冒頭にこれを提出したいと思つております。
 フイリピンとの賠償協定につきまして、大野・ガルシア覚書が成立しなかつたのはまことに遺憾でありまするが、これは、われわれの方の罪ではなくして、もつぱら先方の国内事情によるもの。あります。なお、大野公使は辞職などはいたしておりませんで、引続き働いております。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
#22
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。
 政府が昨日申し上げたのは、日本経済の現状及び将来について事実を申し述べたのでありて、その間幾多の問題があることについては、きのうも申し上げた通りであります。昨年の今ごろ著しいインフレ気構えによりまして物価が騰貴し国際収支が極端に悪化していた事態と、今日インフレはほとんどまつたく終結し、物価が次第に下りぎみとなわ、また国際収支において毎月巨額の黒字を続けるように相なりました事態と比較いたしますれば、政府の経済健全化政策はこの一年間に相当の効果をあげましたことは何人も認められるところと思います。数字は厳格でありまして、何ら自画自讃ではありません。経済の拡大発展の基盤を育成し、日本経済を立て直すためには、政府はもとより単なる財政金融の引締めだけで足れりとするものではありません。これは、国民各位協力のもとに、今後とも資本の蓄積、生産性の向上、コストの引下げ等について一層くふう努力を凝らすつもりであります。しかし、注意しなければならぬことは、こういう対策はややともすれば安易な方潜で行われやすいということであります。今日日本の経済の置かれておる国際環境のきびしさを考えますとき、幸いにしてここまで好転して参つた事態をむだにすることなく、真の意味の経済立て直しに邁進することが私の念願であります。(拍手)
 二十九年度予算の節約云々についてのことでありましたが、御承知のごとくに、歳出予算は内閣に対して支出の権限を付うするものでありまして、従つて内閣はその金額を全部支出しなければならぬものではございません。歳出予算の金額の範囲内で予算を最も効率的に使用し、支出を最小限度にとどめることは、内閣として当然なすべきことでございます。さきのいわゆる実行予算というものは、前国会における三党共同修正等に対処し、物価の下落等を勘案し、これを最も効率的に使用するため節約をなすべきことを閣議で申し合せたものでありまして、前に述べた趣旨に沿うものであり、予算に変更を加えたものとは言えないのであります。今回経費の増額を必要とずる事態が生じましたので、さきの行政部内の節約をも加えて、国会の議決を必要とするものにつき補正予算として御審議を願うことといたした次第でございます。これでよく御了承が願えたことと存じます。
 災害対策予算についてのお尋ねでありまするが、政府としては、今回の予算補正後においても、歳入の状況とにらみ合せまして、財政健全化の方針を貫くために、いわゆる一兆円以内に納めたのでありますが、本年発生災害につきましては、このきゆうくつな補正のわく内において極力重点的にその復旧の促進をはかつておる次第でありまして、予備費充当の二十三億円のほかに新たに六十六億円を計上し、年度内二割五分の復旧を目途としておるのであります。この復旧率は、最近数年の発生災害の復旧率に比べまして、ほとんど最高に近いものであります。二十八年発生災害については、二十八年度補正予算において、年度内復旧率おおむね二割を目途として所要額を計上しましたが、その後復旧事業費について再査定を行つた結果、事業費総額が縮小したために、二十八年度内の復旧率は結果として若干増額することと相なつたことは御了承の通りであります。従つて、本年発生災害の復旧については、財政の許す限り最も手厚く措置いたりた次第であります。(拍手)
 米価及び食糧管理劇度についてのお尋ねがありましたが、米価決定のいきさつは御承知の通りでありまして、おおむね妥当であると存じております。食糧管理の問題についてはお話のごとくに、現在米が唯一の残された統制物資でありまするが、国際的な需給状況が緩和せられ、国際価格が大体国内価格となつたこと、またわが国経済がインフレから脱却して逐次安定に向いつつあること、現行食糧管理制度の運営がうまく国民の期待に沿つていないこと等の事情から見ますると、再検討をなすべき時期に来ておると考えます。しかしながら、米は国民生活の基本物資でありまするし、また農林経済に及ぼす至大な影響等からいたしまして、その検討は十分これを慎重にする必要があると考えております。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#23
○国務大臣(愛知揆一君) 私に対しまするお尋ねは非常に広汎でございまするが、できるだけ簡潔にお答えいたします。
 第一に物価の問題でありまするが、本年当初私どもの予想いたしました通り、年度間を通じますれば六ないし七彩生産財の価格の下落は完全に達成し得るものと信じております。消費財につきましては、消費者物価につきましては、年度当初から横ばいで、その後天候の関係で野菜等の値上りがございましたので、若干上昇をいたしたことはありまするが、九月は八月に比して一・三%の下落であり、十月におきましてもさらに下落して、前年に対比いたしまして相当の下落を示しております。
 次に、計画性云々という問題につきましては、ただいま総理からお答えがございましたことく、私どもの基本的な態度は、企業の創意とくふうとを発揚いたしまして、生産性を恥上いたしたいということを念願にいたしておるわけでございまするが、同時に、たとえば先般発表いたしましたるごとく、昭和三十二年度におきましては十七億四千万ドル程度の輸出はできるだけ達成いたしたいというような目標を掲げまして、それに向つてあらゆる施策を凝集いたして曲るわけでございます。
 昭和四十年の見通しというような事話がございましたが、私どもは、政府部内におきましても、いろいろの資料に基きましての研究や勉強を怠るべきものではないと思います。従つて、昭和四十年度においては人口がどのくらいになるか、生産がどのくらいになるか、あるいは産業の計画がどういう程度になるかというようなことについては、鋭意各般の資料に基いて研究はいたしておりますが、ただいま総理からお話のございましたことく、これを公に政府の施策として発表すべきような筋合いのものとは存じません。また、いたずらに誤解、曲解を招きますから、公に発表するということはいたしません。
 次に砂糖の問題でございまするが、本年度の砂糖の輸入の数量は八十万トンと計画をいたしております。これに対しまして、在庫の持越し、あるいは国産糖あるいは黒糖というようなものを合せますと、大体百万トン以上の砂糖の消費がこの年間に可能であります。従つて、年間を通じますれば需給上何ら不安はないと信じております。しかしながら、穂価をさらに下落させますることは国民生活上きわめて望ましいことでありまするから、最近の一時的な高騰に対しましても、さらに需給の状況や価格の動向等について十分検討をいたしつつ、すみやかに善処いたしたいと考えております。
 最後に石油でございまするが、この石油につきましては、石炭等と合せまして、現状の日本の経済のもとにおいて、特に外貨事情等を十分に勘考いたしまして、最も実情に即するような総合燃料対策を鋭意続けておりますることは御承知の通りでございます。さらに所要の法律案等も用意いたしておるわけでございまするが、その法案の提出に従いまして十分に御説明申し上げたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇〕
#24
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 井出君は、政府が今回の災害に対し、ことに北海道に対して軽視しているがごとき御質問がありましたが、政府は決して今回の災害に対して冷淡ではないのでございます。すなわち、昨年と同様に、災害の発生とともにすみやかに災害の連絡本部を設けまして、連絡調整をはかるとともに、各省庁の担当大臣及び当局者はそれぞれ現地を視察いたしました。また私自身も災害発生の各地方を視察いたした次第でございます。
 財政上におきましては、きようまでに政府は予備費を支出すること三十四億余万円、つなぎ資金といたしまして三十七億余万円を支出いたしているのでございます。財政困難なるこの場合、政府としては相当努力いたしたつもりでございます。また、各公庫等よりいたしましても特別融資のわく等を設定いたしまして、今回提出せられました法案などによりまして、この融資総額は百三十億円をあつせん措置することになつているのでございます。もとより災害地といたしましては満足ではないかもしれませんが、政府としてはできるだけの努力をいたしたつもりでございます。
 なお、災害補正予算のことに関しまして僅少であるかのごとき御口吻でございましたが、補正予算のことにつきましてはただいま大蔵大臣より述べられたことでございまするが、今回の災害の公共事業等の復旧につきましては、実行見込額は約五百十億円でありまして、これを本年度二割五分控除をいたすといたしますれば、国庫の負担は八十余億円に相なると思うのでございまするがゆえに、今回の補正予算の割合が昨年に比して劣つておるとは思つておらないのでございます。ことに、今回の災害地におきましては、不公平な措置はいたさないつもりでございまして、本部としては調整均衡をはかるつもりであるのでございます。(拍手)
    〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#25
○国務大臣(小坂善太郎君) 最初に申し上げておきますが、計画経済という言葉は、社会主義的な全体主義的な経済の意味でありまして、総合的な計画を立てる、こういう意味ではございませんから、念のためお断りしておきます。
 なお、労働力人口の問題でございまするが、御承知のように、毎年八十万ないし最近は百万ふえて来て、これが雇用、使用の圧迫になつておることは事実でございまするが、御指摘のごとく、四十年、すなわち今後十年後に七百万人ふえるということでございます。まあそのようになると思いまするけれども、かりに振り返つて過去を見ますると、二十五年から本年二十九年までの間に、すなわち二十五年には三千六百万人でありましたものが、本年は四千五十万人になつております。従つて、この間に四百万人ふえておるのであります。その間に完全失業者の人口がどう動いておるかと申しますと、二十八年度末四十四万人でございます。これが二十九年の上半期に五十一万人でございまして、さしたる増加を見ておらないということは、これは日本の産業構造の特殊な点に基因しておると思うのであります。念のためILOの五十四年のイヤー・ブックによりまして申上げますと、第一次産業におきまして日本は四五彩、第二次産業二二%、第三次産業三三%となつております。それが、イギリス等でございますと、第一次産業が四、九%、第二次産業が四七%、第三次産業が四七%、アメリカなどは第一次産業が一二%、第二次産業が三四%、第三次産業が五三%となつておりまして、第一次産業において相当に人を受入れる余裕があること、この日本経済の特殊な構造に基因しておると思うのであります。この構造を持つている間におきまして、われわれは、あくまで国内の経済自立態勢を推進いたしまして、そうして輸出の振興態勢を確立いたしまして、わが国の拡大均衡経済のよりどころを求める、こういうことを考えておるので、私どもの現下の緊縮政策の目標もここにあるということを御了解願いたいと思うのであります。
 次に大学卒業生の話があつたのでございますが、これは本年度はやはりふえて参りまして、十三万余人と心得ております。これにつきまして、一般の雇用、使用において十分なる雇用が期待できるかどうかという情勢につきましては、情勢は非常に楽観を許しませんので、特に職業安定機構の全機能をあげまして、この就職の確保に万全を期したいと考えております。文部省、大学当局とも緊密なる連絡を保ちまして、都道府県を中心といたしまして、経済団体協力のもとにその就職あつせんをはかることといたしまして、学生就職対策本部を中央及び主要都道府県に設置いたしまして、都道府県、市、経営者団体、大学等を打つて一丸といたしましたところの雇用勧奨政策を推進いたすということにいたしております。特に官公庁におきましては、統計調査等の事務につきまして新規大学卒業生を臨時職員として採用するというようなことを考えようということで、実は節約解除額におきましてもその点の予算を計上して、鋭意この対策に万全を期しておる次第でございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
  [国務大臣保利茂君登壇〕
#26
○国務大臣(保利茂君) アメリカの余剰農産物を買いつけることによつて、日本の農業、特に麦作を圧迫する結果に陥ることはないかという御質問でありますが、さような疑いがかなり広汎に伝えられておることは、私の非常に遺憾に存じておる次第であります。井出さん御承知のように、大体昨年の凶作、最近の作況からいたしまして、小麦の――主としては小麦の問題でございますから、小麦の需給計画からいたしまして、不足する量が二百万トン内外に達するのであります。そのうち、MSA協定の場合にもそうでありますし、今回の余剰農産物の処理におきましてもそうでございますが、各国際間の正常の取引を圧迫しないように、すなわち正常取引は、たとえば濠州にしましても、アルゼンチンにしましても、カナダにしましても、そういう国国との取引を圧迫しないような形において日本が買いつけ得る余地があるならば買うという趣意であります。その量は、平常カナダから五十五万トン、アルゼンチンから二十万トン、アメリカから七十五万トンというのが、今日国際的に了解を得ておる日本の正常輸入量であります。しかるに、現実は二百万トン内外の小麦を入れざるを得ないわけであります。その小麦を大事なドルを用いずして円資金をもつて買いつけるということになり、その円資金の一部が特に農業開発、食糧増産のために用いられるということになる原則の了解を得ておりますから、断じて日本の農村を圧迫するということにはならないことが実相でございます。その点は特に御了解を願いたいと思います。(拍手)
 今日何と申しましても食糧自給度を改善して経済自立の道へ邁進して行くということが非常に大きな課題であることは御承知の通りであります。私どももさように考えます。従いまして、食糧増産には、もとより国家の財政投融資による生産条件の改善に全力をあげて行かなければなりませんけれども、同時に、全国の農民諸君が安んじて生産にいそしまれるという安定感を持たれることが最も必要である。きような意味におきまして、農産物の価格の安定、時に米麦の価格の安定ということが最も大切であるわけであります。いろいろの御批評はございますけれども、自由党といたしましても、政府といたしましても、この農産物価格安定に今日最善の方式としてとられておるところのパリテイ方式に自由党の政府の政策を加味して、この価格を決定いたしておるわけでございます。今日都市農村を通じて経済を達観いたしまする場合に、私は農村のかような重要農産物の価格が不当に安くきめられておるということは断じて承服いたしがたい。私は大体においてこれは適正に保たれておるということを確信いたしております。従つて、かような考えを今後も踏襲いたして参るつもりでおります。
 なお、食管制度につきましては大蔵大臣からもお話がございましたが、私直接の責任者として担当いたします現行の食管制度につきましては、私自身どうしても根本的な改革を要すべき段階に達しておると考えております。しかしながら、お話もありましたが、月八日の内地米、外米を加えて十五日というこの現状も、大衆の消費生活には大きな安定感をうえておるというこの現実も見のがしてはならないものと存ずるのであります。従いまして、この食管制度の今日の現状は、統制を可とする人、統制を否とする人、いずれの面からも今日の食管制度に満足せられておらないということは私も同様であります。しかしながら、案は立ちましても、これを実行するためには、私は強大な政治力が必要であるということを痛感いたしております。(拍手)
#27
○議長(堤康次郎君) 猪俣浩三君。
    〔猪俣浩三君登壇〕
#28
○猪俣浩三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、吉田総理大臣に対し質問をいたします。
 きのう、吉田総理は、政府の所信に関する演説をなさいました。私は吉田総理の所信に関する二、三の質問をいたします。それは、吉田総理の言動に関しましては、国民の間に相当の批判がある。総理は本国会の答弁が最後ではないかと私は考えますので、この国民の疑惑について弁明する機会をうえることは、武士の情だと存ずるのであります。(拍手)鳥の死なんとするやその戸悲し、人の死なんとするやその言やよしという言葉がございまするが、その意味で、何とぞ虚心坦懐、例のおざなりでない御答弁をお願いしたいと存するのでありましす。(拍手)
 第一点は、吉田総理が自由党の総裁をおやめになられましたるその動機、理由を御説明していただきたい。吉田総理の第一あるいは第二の書簡を見ましても、自由党の総裁をやめるべき決意をなされた動機、理由が明らかではございません。それを明らかにしていただきたい。なお、その自由党総裁をやめる動機、理由が、内閣総理大臣をやめる動機、理由にならぬのかどうか、その意味についても御説明願いたいと思います。これが第一点でございます。
 第二点といたしましては、十一月二十七日付吉田総理が自由党幹部に示されましたる書簡なりとして新聞に発表せられましたるものによりますれば、その一節に、「わが政局はこの国際現状を無視し、史上かつて見ざる政権争奪の混迷に陥り、政党者流は主義主張を捨て、ただ政権に近づかんとして右往左往の醜状みるに忍びず」という文句がございまするが、これは一体どの政党のどういう人物がどのような活動をしたことを言うのであるか、(笑声、拍手)具体的に御説明を願いたい。なぜならば、吉田総理は詣揮権発動までして政権維持に汲々たるものであり、政権亡者であり、国会を軽視して、およそ民主政治家とはほど遠い人物であるとの相当きびしい批判が国民の中にあるのであるが、その吉田総理が、史上かつて見ざるほどの政権亡者があると言うのでありまするから、どらも上には上があるもので、(笑声、拍手)国民はただおそれあきれるほかはないのであります。わが議会政治の発展のためにも、総理の書簡に示されましたる意味について詳細な御説明が願いたい。その説明によりますれば、ああそうか、あの政党のあの人のことか、それでは大したことはない、あるいはあの政党のあの人のことなら用心しなければならない――いずれにいたしてみましても、国民は心の基準が定まるのでありまして、ただ上には上があるようなおそれだけを抱かしておきましては、わが議会政治の発展にならぬと存じますから、史上かつて見ざるような政権亡者は何人なりや、これをひとつ明らかにしてもらいたい。(拍手)
 第三点といたしましては、造船汚職事件に関しまする指揮権発動の責任について、以下五つの点を質問いたします。
  一、昭和二十九年八月四日読売新聞の第一面に、ほとんど半ページを埋め尽し、大々的に報道せられましたる、吉田総理と近藤日出造氏との対談が載つております。この対談の中に指揮権発動に関する問答があります。近藤氏が「指揮権発動も堂々としていますかねえ。」と言うと、総理は「あれは当然のことをしたまでですよ。当然のことだから堂々たるもんです。あれはね、新聞が疑獄事件をつくり上げちやつて、検事がこれに乗つちやつたんですよ。」こういう説明をしておる。これが大新聞に堂々と載せられましたけれども、吉田総理が取消しの申込みをしたことを聞いておりません。越えて八月十日には、いわゆる自由党の支部長会議なるものを開催し、そこで途方もない演説をやつた。これは全文を読むといいのでありますが、そのただ一部分だけを読んでみます。「他から資金をもらつた、その名前を出してもらいたくない、その結果逮捕ということになるなら、だれも幹事長になる者がなく、党に金を出す者もなくなり、また受取る者もなくなる。これは政党政治の破壊である。新聞その他でおもしろ半分にいろいろなことを言つているが、こういう流言飛語にかかわらず、政府は断固たる信念で指揮権の発動をやつたのである。」という言明をされておるのでありまするが、この「断固たる信念」とはいかなるものでございましようか。この近藤日出造氏との座談と支部長会議におきまする演説とを総合して判断いたしまするならば、造船疑獄のごときは流言飛語だから、そんなことのために人を逮捕するがごときは人権蹂躪だから指揮権を発動したのである、そのこと自体が指揮権発動の信念だというふうに見られるのでありますが、総理の信念の説明を具体的にお願いいたしたい。
 二、本年四月二十四日、衆議院法務委員会におきまして、私が指揮権の発動が検察の捜査の妨害になつたのではないかという質問をいたしました。これに対しまして、緒方副総理は「妨害にならぬと信じますが、検事総長が妨害になると言い、また事実妨害になることがあります場合は、その責任は法務大臣の指揮権の発動でありますから、政府は一体でありますから、政府が全責任に任ずるのであります。」、かような答弁をなされております。なお私が引続きまして「そうすると、検事総長を頂点といたします捜査陣が、この逮捕の不許可が妨害になると認定したら、内閣は責任を負うのでありますか。」という質問をいたしましたに対しまして、緒方副総理は「政治的にはすべて貴任を負います。」と明白に答弁しておられるのであります。ところが、本年の九月六日、衆議院決算委員会におきまして、委員の質問に対しまして、検察の最高責任者でありまするところの佐藤検事総長はかように言つている。「先ほども申し上げましたように、ああいう指揮権の発動を見まして、捜査に支障を来し、また一時は全国の検察の志気にも影響を及ぼしましたので、私はあの指揮権の発動はまことに遺憾なことと存じております。」(拍手)こう答弁をいたしております。しからば、指揮権の発動が検察権の行使に非常なる妨害を加えたことは明白でありまするがゆえに、政府はこれに対していかなる責任をとられるものであるか、吉田総理並びに緒方副総理の答弁をお願いいたします。(拍手)
 三、この指揮権発動に関しましては、国会においては、いまだ吉田総理は明白なる釈明をなされておらぬようでありますが、八月二十八日、全国検事長会同に際しまして、吉田総理は指揮権発動に関する弁明を書簡をもつてなされたそうであります。その弁明の趣旨はいかなる内容でありますか、御説明願いたい。
 四、吉田総理は政治資金規正法なる法律の存在を知つておられたのであるかどうか。知つておられたものなりとすれば、総理の談話にあるように、政党献金する人が名前を出すことを好まないのは人情で、これを一々届けるならば献金する人がなくなる、政党政治の破壊になると言われたことは、この政治資金規正法などは守らぬでいいという意味でございますかどうか。なおまた、もし政治資金規正法の存在を知らなかつたとするならば、いやしくま一党の総裁が、政党をして公明なる存在たらしめるためにつくられましたこの法律を知らなかつたということは、いかに政党の浄化ということに不熱心であつたか、怠慢であつたかということの証明になると存じます。(拍手)この政治資金規正法第一条をごらんになるならば、これこそは政党の公明を庶幾し、選挙の公正を庶幾し、もつて政党政治を粛正するということが第一条の目的に明白に書いてあります。かかる重要な法律、ことに自粛三法の一つに相なつておりますこの重要なる法律を、内閣総理大臣が知らぬというに至つては、さたの限りである。知つておつたならば不都合千万である。知らぬにしても実に不都合千万であります。かような総理大臣の態度が今日見られるごとき大疑獄を引起した原因でないかと私は疑うものであります。(拍手)
 五、吉田総理は検察庁法第十四条がいかなる目的のために存在しているものであるか御存じでありましようか。しかして、今回指揮権発動が国政運営の上にいかに重大な影響をうえたかということを認識せられておりましようか。法務大臣の指揮権は、検察庁法成立の沿革から見ましても、その法意は明らかであります。これは責任内閣制から出ているのでありまして、検事の行動といえども内閣の責任に相なる。そこで、検察権の発動が、内閣として責任を負えないような乱暴なやり方であつた場合におきまして、責任内閣制度の立場から指揮権というものが予定せられたものである。今回のごとく、いわゆる国政審議、法案の審議のためにというようなことで指揮権の発動をして、検察権の活動を停止するがごときことは、まさにこの検察庁法十四条の濫用でありまして、断じて許すことができない。(拍手)わが司法権、検察権の破壊であります。かようなことがもし続々と行われましたらどういうことになるか。民主政治は根底から破壊せられるのである。わが国の検察権の抑制機能といたしましては、現在刑事訴訟漢におきまして、真に逮捕の必要があるか、勾留の必要があるか、すなわち逃亡、証拠隠滅のおそれがあるかないかは、裁判所の判事の認定である。かかる抑制機能を持たせて検察権は存在しているのであつて、ただ責任内閣の意味で、あまりに重大な乱暴なやり方をやつた場合の最後の押えとして法律的には規定されているものである。ですから、過去においてこの指揮権の発動などは一回もやつたためしがない。空前にしておそらく絶後でございましよう。一体、かような意味の指揮権の発動をなされたことに対して、今でも吉田総理大臣は妥当な処置であつたという確信を持たれるかどうか、その御答弁をお願いいたします。(拍手)
 その次には、綱紀粛正に関します総理の意気込みが前より地緩なされたのではないか。綱紀を粛正し、汚職を根絶せんとする日本の行政の首脳著たる吉田総理大臣の精神が弛緩したので、見らるるような造船汚職、いろいろの汚職問題が天下に彌漫した。くしくも、きのうあたりから佐藤元幹事長の裁判が始まつている。これは私は吉田総理大臣にお尋ねしたいのですが、芦田内閣が倒れて第二次吉田内閣が成立しましたその直後に、吉田総理大臣は漢務総裁を兼ねておられました。その際に、湛務庁においでになつて、その職員あるいは検察庁の職員、そういう者に対しまして、あなたは激励の演説をなさつている。私はこれをあなたに思い出していただきたい。昭和二十三年十月二十日、事務引継ぎのために、あなたは法務庁をたずねて、その職員を集め、かようなことを言つている。よくあなたは思い出して、今回の場合とお考え合せになつていただきたい。疑獄の糾弾は何の遠慮もなくやつてもらいたい。確固たる態度で、権威におそれず十分活動してもらいたい。最高検察庁の検事団に対しまして、内閣総理大臣といえども、疑惑があればどしどし検察権を発動してもらいたい、かような大みえをお切りになつた。なおまた、引続いて翌日内閣記者団との会見におきまして、最近の疑獄は日本国民の名誉を汚損すること絶大なもので、その真相を十分糾明し、その実情を日本のみならず全世界に向つて明らかにした後、日本の名誉を救うことに全力を払わなければならない。今、疑獄事件が起つたときは、遠慮会釈なく糾明するよう法務庁に対しても話をして来たところである。あなたはかような言明をされておる。これが新聞に三段抜きで報道された。まあ古いことでございますが、思い出していただきたい。この時分の意気込みは、あなたはいつごろからなくなつてしまつたのであるか。ほかの党のときは大いに粛正をやるが、自分の番になつたらごめんだというのであるか、どちらであるか、明らかにしていただきたい。(拍手)
 昨日、吉田総理は、外遊なされましたるその報告をなさいました。老齢をもつて世界を渡つて来られたその労苦は私ども大いに感謝いたしますが、しかし、総理が言われたような効果が一体あつたのであろうかどうか。あつたとしますならば、まことに私どもはありがたい、うれしいことだと思いまするが、どうもさような状態ではないよりなのであります。これははなはだ総理にはお気の毒ではございまするけれども、総理は自分に不利なところはお読みにならぬと言いますので、こういう機会にやはり聞いた方がおためになるかと存ずるのであります。(拍手)
 朝日新聞の、十月三十一日、森特派員のロンドンから発した特電にも、吉田首相の英国訪問は親善使節という目的を果したかどうか、英議会及び言論界の反応から判断する限り、吉田首相の使命は失敗と断ずるよりほかない。吉田首相の時代感覚に大きなずれがあつたことが、吉田首相が英国のことは自分が一番よく知つておると考えていただけに悲劇的である。(拍手)吉田首相の感覚は、海軍カを背景にした大日本帝国、あるいはそれ以前の日英同盟鷹代のものからまだ完全に抜け切つていない。イギリス国会議員有志との会合の席上でも、日英同盟を礼讃しているし、共産主義は日英共同の敵だと言つている。しからば、反共のため吉田首相はいかなる政策を持つているかというと、英国が考えるような社会生活中定のための基本的な政策ではない。(拍手)この意味で、吉田首相の英国国会議員団に演説した、日本産業は高賃金と労働基準法によつて苦しんでいるという言葉が重大である。一辺倒の政策は、その相手にかわいがつてもらえるが、決して尊敬されはしない。まして他の国からばかにざれるだけである。自分の個性を明らかにし、自分の足で立ち、みずからの政策を持つこと。現地の日本人が吉田訪英失敗から痛感した教訓はこういうことである。(拍手)
 朝日新聞だけだと思つておりましたら、読売新聞の安藤特派員の十月二十七日発特電には、吉田首相の二十六日の記者会見や、午後の英議会国際議員同盟での演説の反響はあまりかんばしくない。そういうふな海外の報告が参つておりますので、私どもが心配した通り、吉田総理大臣がいわゆる反共演説を諸方に行つてぶつて歩きなさる、これは日本の将来のために、日本の国交のために実に私は憂慮すべきことだと思う。今アジアにおきまして、反共三人男というのがある。これは韓国の李承晩、台湾の蒋介石、わが吉田総理大臣だと言う、(笑声)一体、かような反共の三人男なんて言われておつて、アジアの協調ができますか。
 昨日の吉田総理大臣の演説によりますれば、これからの日本は、まず自立経済を樹立すること、それから諸外国との協調を進めること、さようなことを申されておりますが、日本の自立経済が今日までたどたどしくなつて居ること、日本の世界協調が円満に行かないこと、一体その原因はどこにあるか。また吉田総理大臣は、各国の復興ぶりを讃嘆せられて、日本の復興のおそいことを嘆かれたような口調でございますが、一体その根源はどこにあるか。いわゆる日本のアメリカ一辺倒の貿易、これがために日本の貿易が片面貿易に相なり、この貿易の不振がすべて経済の根底に響いておることは明らかであります。心ある人は中国貿易、東南アジア貿易を叫んでおります。自由党諸君の中でも、頭のいい諸君は、ちやんとそれをさとつておる。うすぼんやりしたのだけがばかなことを言つておる。(笑声)中国貿易を考えずして日本の自立経済は達成できません。アメリカのごきげんをとるためだか、ひもつきのアメリカのMSA資金などばかり当てにしまして、自立経済がどうしてできる。このアジア貿易なんかをはばんでおりますのは、吉田総理大臣のあまりに反共的な態度のためである。世界におきましても、アメリカのマツカーシー、日本の古田、これは双壁だ。かような態度をとつておつてアジアの協調ができますか。アジアとは何であるか、アジアの中心は中国である、インドである。この中国とインドとの協調ができずしてアジアの親善はできない。なおまた世界においても、ソ連との協調をせずして世界の協調はない。私どもは、かような意味において、アメリカともソ連とも大いに親善関係を厚うして、世界の平和を樹立しなければならぬ、かように考えておるものであります。ことに、何といつてもアジアの友好関係を結ぶことは、日本の経済復興についても、自立経済樹立につきましても、これは最も根本的な問題である。
 中国の周恩来とインドのネールとが、平和三原則によづて意見の合致を見ました。また、ビルマのウー・ヌー首相も五原則に同調しております。いわく領土主権の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和的共存、この五つの大理想、アジアの大国であるところの中国、インド、ビルマ、ことごとぐこれに同調いたしておるのであります。わが党の鈴木委員長も中国に参られ、親しく周恩来あるいはネールと会見して、この平和五原則に協力することを約束して来られたのであるが、かくしてこそ初めてアジアの平和が樹立せられ、世界の平和がここに確立せられるのであります。(拍手)吉田総理大臣は、このインドのネールが主唱いたしましたる平和五原則に対して、これに同調せられる意思ありやいなや、これをお尋ねいたします。(拍手)
 なお、いま一つお尋ねいたしますることは、総理はイギリスからアメリカに船でお渡りになる際に、船の中で、日本は中国についてはイギリスとアメリカの中間を行くのであるという言明をざれたそうでありますが、一体これはどういうことでありますか。対支外交はわが国につきましても重大な問題でありますがゆえに、このイギリスとアメリカの中間を行くというのはど弔いうことであるか、具体的に承りたいと存じます。(拍手)
 以上で私の質問を終りますが、ただ願わくは、外交問題においても内政問題においても、吉田内閣は国民からあきられております。行き詰まつております。これを打開いたしまして、清新はつらつたる政権を樹立いたしまして、わが民主政治を守ることこそ吉田さんの最後を飾る最も重大なる意義あることじやないかと存じまして、切に吉田さんに内閣総理大臣をおやめなさらんことを勧告いたしたいと思いますが、その決意がおありであるかどうか、これをお尋ねいたしまして私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇]
#29
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 私の書簡において十分私の考え、信念は述べたつもりであります。この書簡をお読みになつたならば私の趣意はわかることと思いますが、わかることのできない方は、まことにこれは私は常識を疑わざるを得ない。この常識のない人に説明をしてもますます混乱いたすばかりでありますから、書簡以上には説明いたしません。ただ一言申すことは、私は写本における民主政治、政党政治の確立を念願いたして、この原則のもとに終始いたす考えであります。(拍手)
 次に指揮権発動でありますが、指揮権発動は、これは法の規定するところであつて、法の規定する指揮権を発動いたしたにすぎないのであります。何となれば、政治資金規正法というものは、これは私も存在することを承知いたしております。それゆえに、逮捕しなければその調べができないということは、私は行き過ぎであろうと思うのであります。ゆえに指揮権を発動いたしたのであり、この指揮権は、法の明記しておるところの、政府の持つておる法的権力であります。この法的権力を法的に発動してどこが悪いかといわざるを得ないのであります。(拍手)
 次に、検事総長が私のあいさつについて誤解を生じた、それは誤解があつたかもしれませんが、ゆえに私は書簡をもりて弁明いたしたのであります。忠実に職務を執行した検察官たちを非難ずる考えは毛頭ないということを書面をもつて明らかにいたしたのであります。この趣意は、全国検事長の会合においで伝えられたということであります。またその趣意は徹底いたしたそうであります。また、新聞報道についていろいろお話がありましたが私、は新聞の記事に対しては全然責任を負いません。
 自立経済云々というお話でありますが、自立経済をなすためには、中共貿易が唯一の手段ではないかと思うのであります。世界に対して日本の貿易が進展いたすように考えることが大事であり、またそのためには隣国との間の経済回復もいたしたいと考えますが、何分中共その他の共産主義国における管理貿易のもとにおいては貿易は進展ができない。また貿易が進展しない理由は、先ほど詳しく申し述べたのであります。
 インドのネール総理の五原則云々、これは私の承知いたさないところであります。またもう一つ申したいことは、その三原則の適用がどうなるか、その五原則の意味合いがどうであるかということは、私は全然よく承知いたしませんから、いずれ承知いたした上でもつてお答えをいたします。(拍手)
 また綱紀粛正については、いまなお私はその信念を持つております。汚職問題があれば、どしどし検挙せられて一向さしつかえないのであります。私が法務大臣としていたした演説の趣意は、いまなお堅持いたしております。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#30
○国務大臣(緒方竹虎君) 私の法務委員会における発言につきまして御質問でありましたから、その点をお答えいたします。指揮権の発動は、当時、犬養法務大臣が、その信念と判断によつて行つたものでありまするが、政府といたしましては、その結果より生ずるいかなる批判をも避けようとするものではありません。当時の指揮権の発動は、重要法案の通過をはかるために真にやむを得ない措置であつたのでありまするけれども、しかしながら、これは、いやしくも政府の施策でありまする以上、いかなる施策につきましても当然のことで、政府の一貫した態度であります。(拍手)
    〔猪俣浩三君登壇〕
#31
○議長(堤康次郎君) 猪俣君に申し上げます。残りの時間は八分ありますから、そのつもりでお願いいたします。
#32
○猪俣浩三君 承知いたしました。
 ただいま吉田総理大臣の御答弁がありました。実はらしろの方でありますので、はつきり聞えなかつた部分もあります。聞えた部分だけお尋ねいたします。
 平和五原則なんというものは知らないとおつしやつた。もうまつたく外交官としては落第であります。いやしくもアジアに位いたしまする外交の専門家をもつて任ずる人が、あの世界的に有名なるネールと周恩来の平和五原則を知らずして政権を握つておるなんということは、時代錯誤もはなはだしい。それだけでやめる資格は十分だ。そんなべらぼうなことで政治ができますか。アジアの大勢がわかりますか。私はまつたくあきれ返らざるを得ない。
 それから次に、この指揮権の発動でありますが、一体、ある被疑者を逮捕して調べなければならぬかどうかということは、検察官が判断すべきものである。いわんや、東京の検察庁の重要なる人たちが二日間も慎重審議して、どうしても佐藤榮作氏を逮捕して調べなければ事の真相がわからぬという結論に達した。それを、検事などやつたこともない、政治資金規正法もよくわからないあなた方が、逮捕して調べることがいいか悪いか、そんな判断がどうしてできますか。ですから、これは検事の判断にまかせるべきものであるが、それがまつたく常識的に見ても、内閣が責任を負われないような、乱暴な検察権の発動ありと認めたときにだけ、調整のためにあの十四条があることは明らかである。なお、これは逮捕していいかどうかというようなこと、勾留していいかどうかというようなことは、さき申しましたように、日本の刑事訴訟法では裁判官がやつておる。吉田内閣がやらしておるわけではない、こういうあなた方が、一体法律の法の字も知らぬ人が、これは逮捕していいかどうかなんという判断がどうしてできるか。あなたが、もし、この人間を逮捕していいかどうか、逮捕しなければ捜査ができるかできぬかというような経験をどこかでお持ちになつたことがあるなら、それを明らかにしていただきたい。
    〔国務大臣吉田茂君登壇]
#33
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 ネール首相の五原則なるものについては、大切でありますから十分研究してお答えをすると申したのであります。
 また指揮権発動については、先ほど申した通り、これは法の規定いたしておるところのものであります。また平生においては、法務大臣と検事総長とは常にその意見を交換しておるのであります。ゆえに、法務大臣としての意見によつて指揮権発動をして一向にさしつかえないものであります。これが法律の命ずるところであると私は考える。(拍手)
#34
○議長(堤康次郎君) 三輪壽壯君。
    〔三輪壽壯君登壇〕
#35
○三輪壽壯君 私は、日本社会党を代表しまして、吉田内閣総理大臣に対し、現下重要なる諸問題につき、その所信をたださんとするものであります。
 まず第一、私は吉田内閣の汚職、疑獄に関する政治的責任をお尋ねしたいと思うのであります。吉田内閣は、政権の座にあること六年、この間金力と権力とを聖断して正邪の区別を誤り、政治腐敗を助長いたしましたために、政界、官界、財界にわたつて、買収、汚職等の醜悪事実が続出いたしましたことは、いまさら私が喋々を要しないところであります。たとえば国有財産払下げ事件、黄変米及び麻袋事件、輸入外貨割当事件、印旛沼、手賀沼干拓事件、霊友会事件、保全経済会政治献金事件、日殖事件、陸運疑獄事件等々、枚挙にいとまがないのでありますが、造船疑獄はその尤なるものといわねばなりません。
 造船疑獄は計画造船融資と利子補給法にからむ政治献金がその中心問題でありますが、この根底をなしておるものは、国家資金を食い物にしようとする保守政治家と資本家との結合であります。(拍手)すなわち、融資額は、第一次造船から第九次造船までの間、国家資金約一千億円と、これに見合う市中銀行その他の融資が約一千億でありますが、その融資にからみ保守政界に流れた金について、田中決算委員長は三十六億円だと公開の席上で言明い逃しておるのであります。しかも、検察庁が三十数名の検事を動員し、捜査日数二百余日、取調べ人員七千八百名、所要経費約一億円であつたにもかかわらず、あの無法なる指揮権発動によつて、底深き造船疑獄事件もやみからやみに葬り去られたのであります。われわれの政治道徳観から言えば、ある政府のもとに発生した汚職事件が国民批判の的となつた場合には、政府はその責任を明らかにするために総辞職して政治を明朗化することこそが民主政治の健全性確保の道であると信ずるのであります。(拍手)しかるに、吉田総理は、与党幹部に追究の手が延びるや、指揮権を発動してこれをもみ消し、あまつさえ、自由党支部長会議の席上、造船疑獄は単なる流言飛語であると暴言をしてはばからぬのであります。しかし、指揮権の発動は、単なる疑獄のもみ消しにとどまるものではありません。国民の遵法精神の根を刈り、法に対する信頼を失わしめる暴挙といわねばなりません。極度の悪政といわねばなりません。(拍手)
 近時国民道義の高揚がようやく問題になつて参りましたが、われわれは国民道義の高揚をはかることの急務であることを痛感いたしますが、しかしそのもとは何であるかといえば、政治する者の政治道義の高揚であり、ひいては政治責任の明確化であると信ずるのであります。(拍手)われわれは、わが国に正しい民主政治を打立てねばならぬとする立場から、かかる無責任なる内閣の存続を認めるわけには参らないのであります。(拍手)吉田内閣は、造船疑獄の一事をもつてしても、主権者たる国民にその罪を謝し、ただいま即刻退陣してしかるべきものと思うが、これに対する吉田総理の責任ある答弁を求める次第であります。(拍手)
 次に、私は、昨日の吉田総理の演説中、外遊に関する報告を伺いまして、次の諸点について総理大臣に質問いたしたいと思うのであります。
 まず第一に、吉田総理は何ゆえ外遊に先だち外遊の目的を国会を通じて国民の前に明らかにせられなかつたかということであります。総理は、外遊の経過や感想の報告は、簡単ではありましたが、昨日あのようになされました。しかし、出発前は、国会であれほどやかましく説明の要求をいたしましたのにかかわらず、頑固にこれを拒否し続けられたのであります。これがため国会はしばく紛糾を重ね、外務委員会では、委員全員の過半数が参加して、外遊中止勧告の決議をしたのであります。これというのも、元をただせば、結局総理が国会を軽視するところから来ておるといわねばなりません。さらにまた、秘密外交を事とし、国民外交を排斥することに由来しておるといわなければならないのであります。(拍手)外遊の目的を国会において説明されなかつたことは、国会にとりましてはきわめて重大な問題であると考えまするがゆえに、やや時期遅れの感はありますが、この際明確なる総理の御答弁をお願いいたしたいのであります。(拍手)
 第二は、外遊の成果についてであります。総理の外遊は、見る人によつて異なると思いますが、われわれは失敗であつたと見ておるのであります。先ほど、猪俣議員から、外国特派員の通信についてお話がありましたが、私は外電についてこの問題を取上げたいと思うのであります。親善のために訪れたヨーロツパ諸国はまつたく無関心だつたといわれるのでありまして、当時の外電が報じていわく、吉田総理大臣がパリに来り、ローマを訪ねて、今ロンドンにあるが、しかし、各国はこれに対して儀礼的な態度はとつているが、政治的、精神的にはきわめて冷淡であつたというのであります。(拍手)また、あるイギリスの有力議員は、イギリス政界の吉田総理招待後にこれを評して、自分の国の総理大臣が外国へ旅行してああいう待遇を受けるということであれば、政党政派を越えてまことに屈辱を感ずると述べているのであります。(拍手)私も、日本国民の一人といたしまして、外電の報道に党派を越えて屈辱を感じた次第であるのであります。(拍手)
 外遊の成果として政府が宣伝しているのは、日米共同声明であり、その具体的なものは余剰農産物の処理の問題であります。しかし、それは、日本の希望する約半分にとどまつたというのであります。政府の交渉は失敗に終り、政府の企図した計画は全面的に変更のやむなきに至つたのであります。その上、金額の半減のみならず、苛酷な条件が押しつけられ、防衛力の増強を一方的にのんでしまつた結果となつたのであります。日米共同声明は抽象的で、余剰農産物のほか、具体的なものはほとんどありません。総理が大西洋の船上で話された中共問題などは全然没却されておるのでありますが、これにつき、総理は、アイゼンハウアー大統領と具体的に話合いをなされたのでありますか、あるいはそれとも、これを持ち出し得なかつたというのでありまするか、この場合伺つておきたいと思うのであります。(拍手)
 なお、わが国の防衛力の増強問題が声明の中にうたわれていないのは、少くともその限りにおきましてけつこうであると思いますが、これもアメリカの選挙の結果の反省もあり、また反共軍事同盟に対する反省もあろうかと存じまするが、それはそれといたしまして、われわれが主張していますところの、再軍備よりは国民生活の安定というのが、わが国内外の諸情勢に最も適した行き方ではないかと思うのであります。私は、この際、吉田内閣総理大臣に、帰朝されました後、外遊されまた後におきましてのこの防衛問題に対するお考えを伺つておきたいと思うのでございます。(拍手)
 次に、私は、政府の外交方針について重大な反省を求めるために、次の諸点について質問いたします。
 第一に、吉田首相はその施政演説の中において、東南アジアの開発について触れておられるのであります。東南アジアとの経済提携は日本死活の問題につながると思いまするが、総理はこの問題を反共の点から提起されておるのであります。総理の考えは、反共を呼号すれば万事解決するというように見られるが、東西対立の利用や反共のみでわが国の運命を打開しようとするのははなはだ危険であると思うのであります。アメリカの対外活動本部長官のスタツセン氏ですら、反共政策よりは共産主義の起る余地のないアジアの経済的開発の必要を説いておるときに、反共のためのアジアの開発を説いておるということでは、マツカーシーは喜ぶかもしれませんけれども、アメリカ国民はそれでは納得いたさないと思うのであります。(拍手)
 一体、政府は、東南アジア諸国に流れておる思想がいかなるものであるかということを御承知なさつておるでありましようか。それは根強い反植民地主義であり、特にアメリカの経済的支配に対する反抗意識が強いのであります。この民族意識の潮流を離れて東南アジア諸国との経済的提携はあり得ないのであります。従来わが国が東南アジア諸国から満腔の信頼を得ることができなかつたということは、アメリカ政府の手先であると考えられていたからであります。(拍手)従つて、向米一辺倒の吉田内閣がいかに手を差延べましても、東南アジア諸国との経済提携は不可能だと断ぜざるを得ないのであります。東南アジアとの経済提携のためには、賠償問題の未解決のものをすみやかに解決することの必要なことは言うまでもございませんが、さらにわが国の科学技術によつて開発に寄うすべきであると思うのであります。吉田首相はこの点をいかに考えておられまするか、お伺いいたしたいのであります。(拍手)
 第二に、私は、さらに進んでわが日本の平和政策について総理の所信をただしたいと思ふのであります。そもそも世界が二つの陣営にわかれ、互いに猜疑と警戒心を持つて相対立する現状を何らかの形で打開しなければ、真の平和は望み得ないと存じます。されば、チャーチル英国首相ですら、両陣営の首脳者会談を提唱して、話合いによる国際関係の調整は今や世界の潮流となつておるのでございます。しかるに、吉田首相は、せつかく欧米各国を歴訪されておりながら、かかる世界の風潮に対して何も持つて帰つておられないように考えられるのであります。偏狭なるマッカーシズムの日本版を打出すために外遊したとするならば、国民こそ迷惑千万だといわねばなりません。(拍手)日本としては、両陣営の対立抗争に一役買うということでなくして、その緩和と融和に乗り出すのでなければなりません。しかも、わが国は東西両陣営の接触点にあり、話合いによる両陣営の調整に最も好適なる位置を占めておるのであります。最近の中共の平和の呼びかけの底にどういう意図がひそんでおりましようとも、遠い将来はともかくとしまして、中共が経済建設のために平和を必要として、わが国との平和な交易を望んでおることは疑う余地がないと思うのでございます。(拍手)吉田総理は、中ソ共同宣言を、ただ平和攻勢だ、日米離間策だと片づけておるのでありますが、今、日本としては、進んで中共といかなる形式で国交の調整をするか、またいかにして貿易を促進するかという具体的な手を打つことがなければならぬと思うのであります。すなわち、向米一辺倒でもなく、いわんや向ソ一辺倒でもなく、自主独立の外交をもつて両陣営の調整のために乗り出すべきものではないかと思うのでありますが、これについての総理の御所見を承りたいと思うのであります。(拍手)
 さらに第三に、両陣営の調整の第一に取上ぐべき問題は台湾の問題であります。台湾問題は今やアジアの平和にとりまして最も重大な問題となつて来ておるのでありますが、政府はこの台湾問題を平和的に解決するために何らかの手を打つべきではないかと思うのでありますが、その用意があるかどうかということをお伺いいたしたいと思うのであります。
 最後にお尋ねいたしたいのは、吉田総理の現下の政局に対する御心境であります。この点については、各党代表からすでに御質問があつたのでありまするから、私は簡単に結論だけを申し上げましてお伺いいたしたいと思うのであります。総理の海外からの国内政局に対するところのお考えというものは、きわめて強硬なものがありましたが、帰つてみて重大な情勢の変化というものを認めまして、羽田におきましても慎重な発言をされ、さらにいわゆる吉田書簡を通じまして、自己の進退を党議にゆだねるとともに、退陣の意のあることを表明されたのであります。さらに、この総裁引退と後任総裁の推薦のことを申し合せましたところの党議にも同意をされたのであります。すなわち、これによつて、総理大臣吉田茂君はすでにその基礎的地位たる自由党総裁の地位を実質的には去られたのであると私は考えるのであります。(拍手)われわれは、自由党総裁と自由党内閣の総理大臣とを一体不可分なりと確信しますがゆえに、総裁を辞する以上は総理も辞職することが当然であると考えるのであります。従つて、総理大臣の地位に今なおとどまつているということは一つの矛盾でなければならぬと思うのであります。(拍手)しかも、吉田総理とその一党がいかに政権に恋々といたしましても、時はすでに張り、人心はすでに離れて、国民の憎悪と反感の中に立つておるということは、総理もすでに御自覚になつておるところであると思うのであります。事態はここにまで来ておるのであります。こいねがわくば、一切の妄念を去つて、この際この時、時を移さず内閣総辞職を行つて、罪を万人に謝すべきだと思うのであります。総理はいかなる御心境であるのかお伺いしたいと思うのであります。
 以上をもつて終ります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇]
#36
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 疑獄事件について指揮権発動の問題は、先ほど説明いたした通りであります。また政府としては、疑獄をあくまでも検察庁あるいは裁判所が追究することについては、こうも阻止いたしておらないのであります。裁判の決定を待つて、政府が政治的責任を負うべきものがあれば、喜んで断じてこれを負う覚悟であります。しかしながら、一体、裁判の決定も待たずに、だれが金をとつたとか、だれがどろぼうをしたとかということを言うのは、これは私は流言飛語として取締らなければならないところであろうと思います。いやしくも刑事問題が起り、もしくは個人の名誉に関係することは、裁判所の慎重なる調査の後にその決定を見て初めて云々いたすべきものであります。しかるに、一片のうおきを聞いて論ずるということは、私は、日本の政治においても、また輿論においても、よろしくないことと考えるのであります。ゆえに、政府は、裁判の決定を待つて進退いたすべき、責任を負うべきものがあれば責任を負うことについて決して躊躇いたさないのであります。
 外遊の目的についてなぜ議会に報告しなかつたか。外遊いたそうと思つて外遊の志を立てましたときに、諸君がこれを――諸君とは申さない、一部の諸君がこの外遊を妨げんとして非常な努力をせられたことは御承知の通りであります。(笑声、拍手)その努力のために外遊を阻止せられたのであります。私がいよいよ外遊するということに決定いたしましたときは、すなわち私が立つた数日前のことであります。何となれば、外遊いたすためには、相手国政府の都合も聞かなければならなかつたのであります。初め九月の二十日前後でありますが、その前後が都合がよいというワシントン政府の話でありましたが、その後、九月の二十日前後は都合が悪い、そして十月の半ばでありますが、その期日についてはしばらく何しますが、ともかく決定をいたしますためには、訪問する国の都合も聞かなければならず、その都合を聞いて確かめ得たのが私の外遊を決定した数日前のことであります。あるいは一時はやめようとまで考えて、その話を中止いたすことを申し出たのでありますが、中止はせずにぜひとも来いという希望があつて、遂に数日前において外遊を決定いたしたのであり議会に報告し得るならばしたいのでありますが、することが事実できなかつたのであります。
 また、このたびの外遊の成果についていろいろお話がありましたが、これは、外電その他の報道については、私は責任を負いません。しかして、はたしてその成果があつたかどうか、外遊の目的を達したかどうかということは、これは客観的事実において証明する以外に、私が成功した、外遊の目的は達したと主観的に申したところが、これは達しないというのと同じような話であつて、私はこれに対して一言の弁明もいたさないつもりでおりす。静かに成果についてごらんを願いたいと思います。また、外遊の結果は、再軍備もしくは防衛について秘密協約でもいたしたようにお話がありましたが、断じてそういうことはございません。従つて、国防についての観念は、外遊以前も今日も、こうもかわりたところはないのであります。(拍手)
 アイゼンハウアーとの対談の内容を発表せよ、これは国際の――何ど申すか、道義ではないかもしれないが、国際の慣例に違うのであります。外国の首脳者と話したその対談の概要はすでに声明にいたしておるのであります。それ以外に話せとおつしやることは、これは国際の慣例に違うのでありますからいたしません。(拍手)
 東南アジアとの提携はできないとおつしやいますが、必ずできます。(相手)これは将来のことに属しますから、必ずできると申してもはなはだおこがましいが、私は断じて東南アジアとの提携はできると考えるのであります。確信いたします。(拍手)
 共産主義とは、つまりコエグジステンスのことをおつしやるのでありますが、チャーチル首相の演説を引用せられましたが、そのチャーチル首相は、昨年の保守党の大会においては、マレンコフと会合するとまで言われたが、本年の保守党の会合においては、コエグジステンスという趣意はかわつておりませんが、いつマレンコフと会合するかということは言つておられないのであり手。だんだん今日の現状から考えてみて、チャーチル首相も演説の文言を改められたと思います。これが現状であります。この現状にあるにもかかわらず、コエグジステンスということが文字通りできると考えておられるのは、少々考え方が甘くはないかと私は考えるのであります。(拍手)
 中共との国交はあくまでもせよとおつしやるが、これはけつこうな話でありますが、相手国は日本を仮想敵国となしておる国であります。この中共政府と話を続けることは私にはできないのであります。これは三輪君自身がやつていただきたいと考えます。(拍手)この調子ではなかなかむずかしい問題であつて、議論だけではできるものではありません。いかにするかということは、これは私において、ただいまのところ方策がないのであります。
 次に台湾問題でありますが、台湾問題については、現在日本としては、問題として他国のことについて干渉する考えはございません。
 総裁の地位についてのお話でありますが、これは先ほども申した通り、自由党の党議に従つて、党員の総意によつて進退いたします。また、国民の中には断じてやれという声もあるのであります。この国民の声は……(笑声、拍手、議場騒然、聴取不能)国民がすべて私に退陣しろとは言つておらないのであります。社会党の諸君が私に退陣を迫つておりますが、国民の一部には、ぜひとももつとやらないかという声さえあるのであります。(拍手)十分考慮して進退いたします。(拍手)
#37
○議長(堤康次郎君) 春口二幸君。
    〔春口二幸君登壇〕
#38
○春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府の財政政策並びに補正予算案を中心といたしまして、以降の諸点について政府の所見をたださんとするものであります。
 まず第一は、補正予算案の性格とその意義についてであります。そもそも吉田内閣の政策の基本は、外にはアメリカ一辺倒、内には独占資本の奉仕に骨がらみとなつて、国際的にはいつしかアジアのみなし子となり、内政は長きにわたつて野放図、放漫に流れて、かくてわが国の経済を未曽有の危局に転落せしめたことは、さきに天下の輿論口をそろえてこれを糾弾したところであります。(拍手)しこうして、昨年の十月ごろを契機とし、このインフレ内閣が、それこそ突如として、あたかももののけにつかれたことく、にわかにデフレ政策への高熱を発して、すなわち財政の緊縮、金融の引締めへと急転、直角の方向転換を行つたのであります。およそ、高速度で走つておるハスぶ突然急角度にそのハンドルを切るならば、バスは転覆し、乗客はたちまち殺傷を受けることは自明のことでありましよう。はたせるかな、政府のこの無準備、無計画なデフレ政策への突入によつて、今や国民経済は恐るべき動顛を来しつつあるのであります。ここに補正歳出に計上された生活保護費、失対費、緊急就労対策事業費等、社会保障関係費百十八億円こそは、まさに乱暴な政策転換のために遭難した多数国民の屍々累々の惨状を示すものであるが、政府はこれに対しいかなる責任を感じておるのでありましようか。昨日、大蔵大臣は、その財政演説において、これら社会保障関係費は健全なる経済の推移に応じての計上であると御説明でありましたが、多数国民が職場を失い、さらに生活の保護を受けざるを得ないような状態が健全なる経済の推移とは、まさにさぎをからすと言いくるめるものであつて、認識の狂いもはなはだしきものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)まず第一点について吉田総理大臣はいかなる政治的責任を感じておられるか、御所見を承りたいのであります。
 次は、予算補正の財源操作についてお伺いをいたします。すなわち、政府は、この予算補正において、繊維消費税八十五億を抹消し、専売公社納付金五十二億の削減を事もなげに計上しておるのであります。およそ民主政治の真髄は、政府が常にその施策の結果に責任を負うことにあると思うのであります。法案を国会に提出して、これをしりぞけられたとき、あるいはまたその計画が相反するの結果を招いたとき、民主政治の責任はいかに処決されるべきものでありましようか。実に、この繊維消費税法案のためには、当時全国数十万の業者は激動し、これが成立阻止のために、乏しき膏血をさいて、数億の金品が無益に散ぜられたことについて、政府はどのように責任を感じておるのであるか。また、ピース五円の値上げをすれば専売益金の増収八十八億といろあのずさんな政府の空想の犠牲となつて、国民大衆はいたずらに高価なタバコを吸わされておるのであるが、これに対して政府は何ら呵責するところがないのであるか。さらにまた、地方交付税の交付金、地方譲与税の配分に関する財源操作も、ことごとくその政策のほころびを縫う継ぎはぎ作業以外の何ものでもないと思うのであります。地方財政の主軸をなす入場税を国管に移せば、地方の行財政が窮乏することは当然であるが、さらに政府の与党が政府原案にみずから斧鉞を加えたことが、かかる予算補正の必要を生じたゆえんであります。かくて、補正予算は、正常なる予算の補正にはあらずして、もつぱらその施策の失敗に対する懺悔文であり、また、その口込み違い、計算違いについての始末出以外の何ものでもないと思うが、吉田総理大臣にはたしてその自覚ありやなしや、この際総理の御心境を伺つておきたいと思うのであります。
 次に 最も遺憾にたえないことは、この補正予算は、生活の窮乏にあえぐ政府関係職員並びに失業対策労働者の越年給うについて政府が何ら特別な措置を講じていないことであります。政府は物価が下つて実質賃金は向上したと言うが、今日下つたものはデフレ政策によつてひしがれた犠牲者たちの投売り、出血による特殊のものであつて米、砂糖、タバコの値上りを初めとして、一般小売相場は何ら下つてはい山いのであります。迫り来る冬の脅威に身をさらし、何らの蓄積を持たぬこの定額所得者たちが、老いたる親や幼き者へのいたわりのために、この要求を行うことは、むしろ当然の事柄であるでありましよう。どぶの中にぼうふらのわくごとく、極貧の中には共産主義が育つという。今防衛関係費未使用分六百数十億円の帰趨を考えますとき、かかる死の予算を希望のための予算に活用することは、けだし吉田内閣の防衛の方針にもそんなに隔たるものではないと思うのであります。ここに、失業登録労働者のための越年給うをも含めて、せめて政府関係の従業員がこの年の瀬を越えるために、この際必要なる予算補正を行う意思はないかどうか、この点、大蔵大臣並びに労働大臣、加藤国務大臣よりあわせて御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)
 次に、中小企業の窮乏を救済するために、この補正予算の中に何らの財政措置が講ぜられていないというこ、は、まことに残酷きわまる処遇と申さねばなりません。(拍手)今日中小企業の窮迫は次第に内証激化して、この歳末から明年二、三月にまたがつて、同時かつ連鎖的恐慌の襲来が警戒されておるのであります。すなわち、今日国税の滞納は、その件数八百九十二万件、その金額は千百二十五億に至り、これが行き詰まつた中小企業者の実働であります。また手形の不渡り件靴は、東京手形交換所について見れば、この十一月は一日当り千五百五十通という、これまたわが国手形交換制度始まつて以来の絶望的な記録を示すに至りました。かかる中小企業の危機を目前に見て、政府がこの歳末に何らの救済措置を講じないということは、一体いかなる見解によるものでありましようか。本院は、過ぐる十九国会において、満場一致をもつて中小企業の危機打開に関する決議を行い、かつは、これが対策として具体的案件九項目提示して、厳に政府に対しその実施方を要求いたして参つたところであります。たとえば、政府指定預金の引揚げの猶予と、さらにその新規預託をなすべしとの決定、あるいは財政資金による金融債引受の増大等、これらの決議に対し、政府は信然として今日までこれを実施ぜず、しかのみならず、大企業の下請への不当支払いの取締りをゆるがせにして企業の独占を助長し、かつ二重価格、カルテル価格の横行を見のがす等、かくのごときはまさに院の議決に対する反逆であり、議会政治の尊厳を冒涜するのはなはだしきものであると思うのであります。(拍手)政府は、すべからく、過ぐる五月三十一日に本院が決議せるところに従い、この際少くとも百億程度の政府資金を中小企業金融機関に緊急に預託すべきであると思うが、大蔵大臣にその意思ありやなしや。また通産大臣は、この決議に対し、今日までにいかなる施策を講じて参つたのであるか。この点、両大臣より明確なる御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)
 次は、外資関係の問題について二、三お伺いをいたしたい。
 政府は、さきに、外資導入を経済自立の一枚看板として、みずからを救国政党のごとくに扮装し、過去三回の総選挙をこれによつて闘つて参られたと思うのであります。そこでお伺いをいたしたいことは、この外資導入の御公約はその後いかなる成果を収められたものであるか。たとえば、昨年の電力料金値上げの強要を含むあの四千万ドルの火力借款以外に、わが国に導入された外貨に一体どんなものがあるか、過去三箇年間におけるその実績についてこの際大蔵大臣より正確なる御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)
 さらにお伺いをいたしたいことは、本年度MSA援助のらち、なかんずく一千万ドル分は明らかに贈うされたものである。従つてこの三十六億円は日本政府の独自の方針に基いて運用されてしかるべきものと理解をしているのであるが、ここに第三・四半期もまさに終らんとして、なおかつその三十六億円の使途配分がいまだ決定し得ざる理由は何でありましようか。アメリカ側の干与によるものならばその経緯、政府独自の都合によるものならばその事情、これは大蔵大臣よりその実情について明らかにいたされたいと思うのであります。(拍手)
 最後にお伺いをいたしたいことは、昨今シンガーミシン、ジヨンス・マンビルを初めといたしまして、幾多の外国大企業がその巨大資本をひつさげて日本国内に進出せんとして、現に続々外資法に基き許可申請を政府に迫つているのでありますが、大蔵大臣はこれをいかに決裁する御所存であるか。たび外国巨大資本の進出を許すことあるならば、国内弱小企業はたちまち席巻されてつぶれ去ることは必定であります。ここにシンガー資本の進出を曲した英国においては、もはやミシン工業に関する限り、ネジ一本の町工場すらその姿を消してしまつたといわれております。思うに、独立の完成は経済の自立を前提とする。もしそれ外国資本にして将来日本経済に根幹を張るに至りまするならば、わが国の経済がその国の植民地経済に転落することは避けがたいのであります。国内産業の将来を案じ、さらにはよつてもたらされる失業の増大をおもんばかりまするとき、事態まことに重大なるものがあるのであります。大蔵大臣はこれら一連の外国資本の国内進出を一体許可する方針であるのかどうか、はたまた、民族産業擁護のためには、この外資法に必要なる法律の改正を行うの意思はないかどうか、この際責任ある答弁を願つておきたいと思うのであります。(拍手)
 最後に一言申し述べたいことは、善政のもとには産業は栄え、悪政のもとではその産業は沈滞破綻を来すという。週刊サンケイ十一月十四日号は、デフレ日本の天気図と題して、不況に打ちのめされた荒れすさむ炭鉱地帯のルポルタージュを行つてお力ます。これは昨日の大蔵大臣の財政演説とはまさに正反対の光景であります。休廃坑せるもの百五十二を数え、現地失業者の数五万数千人、賃金未払額は五億数千万円に及ぶという。しかして、その生活は、家財を質屋へ、子供ははだしで、はなはだしきは妻を特飲街に売つて、その生活苦にたえぬものは次々と自殺して行く。かかる事故が筑豊九警察署管内には二日に一件の割合であると報じている。これは吉田内閣六箇年の政治がもたらした国民生活の現実の断面図であるのであります。今日、日本経済の行詰まりは、ただに中小企業の弱小資本にとどまらずして、かくのごとく石炭産業へ、さらに鉄鋼、造船の各産業の広域にまたがつて、前途まつたく暗澹として深憂にたえません。吉田内閣の政策の破れ口から、かくのごとくにして国民の鮮血はいよいよしたたるばかりであります。政府の失政ここにきわまれりと言うべく、その罪まさに万死に値する。政府にして深く顧みて自責するところありますならば、以上本員の質問に対しまして誠実を傾けて御答弁を願いますると同時に、さらに深甚なる御決意あるべきことを期待いたしまして、以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
#39
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。春氏の質問中いろいろ補正予算の関係がございますから、私よりお答え申し上げます。
 第一に、この補正予算の事柄について、これは八十八億も支出して無準備にやつたことは非常にけしからぬ云々というお話がございましたが、この経済健全化政策の推進に伴いまして、失業者の発生等多少の社会的摩擦を生ずることは、ある程度やむを得ないところでありますが、政府は、今回の補正予算によりまして、社会保障関係経費の増額を行い、もつてこの社会的摩擦に対する措置の万全を期し、民生の安定を通じて健全な経済の再建をさらに推進せんとするものであります。
 なお、繊維消費税につきましては、同法案が国会で不成立となりましたためにその歳入に不足を生じましたことは、これはやむを得ないと存じます。専売納付金の減少は、ピースの値上げの結果というよりは、むしろデフレ的経済情勢等の推移に伴う高級品の売れ行き減退によるものでありまして、ある意味では財政健全化政策のやむを得ざる影響でもあり、ピースをただちに値下げするようなことは考えておりません。
 地方交付税交付金の増加につきましては、本年度における都道府県警察費の算定がえに伴う追加額に充当するために、本年度に限り特に特例を設けた次第であります。
 さらに、物価のことについて、失対、労働者の関係等についてお話がございましたが、卸売物価については、これは、たびたび申し上げる通り、経済審議庁の調査にありまする通り、本年二月ピーク時に比べれば、十月においては約七%も下落しておるし、小売物価及び消費物価も、卸売物価に比して、時期的に多少ずれてはおりますけれども、年初来横ばいないし下押しの傾向にあるのでありまして、財政健全化政策の効果は次第に現われておるものと思います。物価がこのような傾向にあるし、民間賃金も年初来おおむね横ばいであるし、また二十八年度の民間における支給状況から考えましても、本年度において政府職員の特別手当を増額することは考えておりません。なお、日雇い労働者については、現下の失業情勢にかんがみまして、その就労のための所要の予算措置を講じてございます。
 中小企業の年末金融についてのお尋ねでございましたが、政府は、五月三十一日衆議院本会議、六月一日参議院本会議等でなされた決議を尊重いたしまして、六月以降、十月の五億の引揚げを除いて、十一月末日まで指定預金の引揚げ延期を実施し、中小企業金融の緩和をはかつて参つたのでありまして、さらに、年末金融の逼迫を考慮して、十二月分の引揚げを延期する所存であります。しかし、御質問の新規預託のことにつきましては、決議に対する答弁でも申し上げておきましたが、現在政府がとつておる金融対策の基本方針と背馳することから、当分これを行うことは適当でないと当時お答えしたのでございますが、その後さらに検討いたしましたところ、法制的見地からも疑問がありますし、また金融調節上二元的にやるという点からもこれを行うのは適当でないと考えておりますので、ただいまのところ新規預託をする考えは持つておりません。しかしながら、中小全業の年末金融につきましては、政府としてもとより必要な措置を講じて参るのでありまして、ただいま申し上げました通り、十二月に引揚期の到来する指定預金の引揚げを延期するほかに、商工中金についても日銀よりの手当によつてそのわくを若干広げることを考慮しており、また国民金融公庫、中小企業金融公庫につきましても、情勢いかんによつては第四、四半期の資金わくを若干十二月に繰上げ使用することを考えております。以上のほかに、一般銀行の中小企業者に対する年末貸出しの緩和についてそれぞれ協議をいたしておりますし、また年末代金の中小下請業者への支払い促進につきましては、先般特に関係金融機関の積極的な配慮方を要請する等の措置をとつて、年末中小企業金融の円滑な推移を期しておる次第であります。
 外資導入についてのお尋ねがありましたが、これは、御承知のごとく、従来とも国際収支の改善または日本経済の発展に寄うするものについて重点的に期待しておるのでありまして、従つて、御指摘の火力借款のほかに、電源開発会社のダム建設、タンカーの建造等についても借款が行われており、これらを含む社債貸付債権の取得は本年十月末までに約三百六十四億円に上つております。また、わが国の法人に対する株式の取得は約百三十五億円でありまするが、このほか従来までに四百十六件に上る技術援助契約が締結されております。これらはいずれもわが国産業の近代化、合理化に寄うするものと考えます。なおこのほかに、ワシントンの輸出入銀行から四回にわたつて合計二億ドルの綿花借款の実現を見たことは、御承知の通りであります。今後また世界銀行からの借款についても、すでに調査団の来日、実地調査等を見まして、近き将来その具体化が期待されまするし、また電源会社借款等についても、米国民間銀行の信頼が相当進んでおり、遠からずまとまる見込みであります。
 MSA援助の三十六億円のことについてお話がございましたが、これは、お説の通りに、この運用は日本側の権限でありますけれども、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定、昭和二十九年条約第八号によりますると、当該三十六億円はアメリカ合衆国政府は相互間で合意する条件に従つて贈うする、こういうことになつておりまして、その贈与には相互間の合意が必要であるようになつております。わが国といたしましては、贈与が実現した場合に備えまして、国内的には受入れ、運用等について方針を定めるとともに、必要な法制的措置を講じますが、また一方、アメリカ側に対しましても早く贈うが実現するよら交渉を重ねておりまして、目下米国でも種々検討中であります。若干遅れておりますことは遺憾でありまするが、以上のような事情であり、せつかく努力中でありますので、近くその成果を期待できると思います。
 シンガーミシン、ジヨンス・マンビル等についての裏話がございましたが、わが国際収支の寄うの見通し等に関連して申請の内容を目下外資委員会で慎重に検討中であり、その結論に基いて処理をいたしたいと考えております。
 右お答え申し上げます。
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#40
○国務大臣(愛知揆一君) 中小企業関係の年末の金融対策につきましては、両院の御決議の御趣旨に従いまして、次のごとき具体的な措置を講じました。
 第一は、ただいま大蔵大臣から御記明のありました政府指定預金の引揚げ延期であります。
 第二は、中小企業専門の政府金融機関の資金源の強化であります。まず中小企業金融公庫におきましては、当初この四半期に融資する予定額が六十億円でありましたが、これをおおむね七十五億ないし八十億円に増加することにいたしました。国民金融公庫におきましては、第三、四半期百二十九億円の融資を予定することにいたしましたが、これは昨年の約一割の増加でございます。商工中金におきましては第三・四半期中に四百九十四億円の貸出しを行う予定でありまするが、これは昨年に比較いたしまして六十二億円の増加と相なります。かくのごとく、資金源の調達に対しましては、あえて一般会計の歳出を増加することなく、でき得る限りのくふうによつてこれを調達せんとするものであります。
 第三は下請代金の支払い促進でございまするが、去る十一月十七日、政府支払いに関連する下請中小企業に対する支払いを一層強力に推進するよう関係各省間のさらに決定を行いまして、かつ地方公共団体においてもこの趣旨に沿い努力いたしまするよう、自治出を通じて指導を行つておるような次第であります。
 第四は零細金融の円滑化でありまして、たとえば商工中金から傘下の信用組合に対する貸出しを現在のほぼ二倍程度増加せしめる。これら信用組合を通じまして円滑な融資を行わしめる措置をとつておるような次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣加藤鐐五郎君登壇〕
#41
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 官公労の年末手当の割増しに関する御質疑でありますが、私から給う担当者として簡単にお答えいたします。政府といたしましては、一般公務員の待遇が必ずしも満足すべきものであるとは申しませんが、現下の情勢下におきまし工は、この場合ごしんぼう願うほかいたし方がないと考えます。すなわち、一般産業界におきましては、賃金の遅払い、未払い、失業者などが出ておるその実情は、春日君御承知の通りであります。まして台風等の災害等の経費で容易左らざる財政の現状でありまして、この際御要求に応ずることは、まことにお気の毒ではありまするが、困難であると率直に申し上げなければなりません。政府といたしましては、緊縮政策の結果、一般物価が幸いに低下しつつある傾向を見るのでございまするが、これがやがては浸透いたしまして、間接的に実質的に幾分でも賃金の値上げになることを信じ、かつこれを祈つておる次第でございます。(拍手)
#42
○議長(堤康次郎君) 岡田春夫君。
    〔岡田春夫君登壇〕
#43
○岡田春夫君 小会派の立場から、吉田政府に対して、以下数点にわたつて質問をいたしたいと思います。
 昨日吉田総理の演説によりますと、過般行われました外遊の成果は、これはきわめて有意義なものであると自画自讃いたしておりまするけれども、先刻来の多数の議員諸君によつても朗らかな通りに、だれの目から見てもこの外遊は明らかに失敗であつたことを暴露しているものであります。総理の出発にあたつて数多くの対米交渉の資料が集められて、その中においては、過剰小麦の買入れ問題を初めとして、防衛支出、防衛分担金の削減、あるいはMSA法による防衛援助の要請、子の他多くの点について資料が集められたけれども、交渉の結果具体的に話のまとまつているものは、わずかに余剰農産物の買入れ以外にわれわれは見出すことができないのであります。しかも、この余剰農産物の買入れにつきすしても、先ほどから多くの議員が質問をいたしておりまする通りに、当初日本側の要求に反して、わずかにその半額にしか達しない額がうえられておる。しかも、この余剰農産物の売却の場合における円資金の財政投資については、これは日本の自主的な運用が認められないという結果になつているのであります。
 しかも、問題はそれだけではない。十一月十六日のジヤパン・ニユースによりますと、この余剰農産物のうちで、たとえばバターの場合は――バターは、かつて駐留軍に対して配給した際に、かびのはえた古ものとして駐留軍から苦情の出たものを日本に輸出するということが伝えられておる。このように、まさに余剰という名の通りに、余り物を日本の国民が金を払つて使わなければならないというのが余剰農産物の買入れ問題であります。このことは、明らかにアメリカの恐慌を甘本に押しつけることである、またそれによつて日本の経済をますく属国化せんとするものであると言わなければなりません。
 それでは外遊の成果は一体何であるか。先ほど民主党の松村議員の質問に答えて、吉田総理大臣は、その成果については今後だんだんと皆さんにおいてもわかつて来るだろという意味のことを答弁されました。このことは、国民の前にいまだ発表されない秘密事項があるという意味なのであるかどうか。あるいは、総理が外遊中に、ここにおられる木村保安庁長官が正直にも答弁をいたしている安上りの再軍備すなわち徴兵制度の実施について、アメリカ側から何らかの指示を受けて具体的な協議が行われたものでないかどうか。また、出発前において対米交渉の最大課題の一つといわれた防衛分担金の削減については、交渉の結果について何ら報告がないのであるが、この点については総理は折衝を行われたのであるかどうか。行つたとして、その結果はどうであつたのか。この点について伺いたいと思います。
 そこで、それではなぜこのように外遊が失敗の結果に終つたか。その原因は、サンフランシスコ条約を出発点とする安保条約、行政協定、MSAという一連のアメリカの対日政策が、日本の国土を奪い、日本の国民を雇い兵にし、日本の産業を壊滅させるための手かせ、足かせ、おりであるというにもかかわらず、この手かせ、足かせ、おりに対して、これを吉田総理が積極的にぶち破ろうとはせずに、そのおりの中で、ねこなで声でもつて哀願しても、飼主は決してうまいパンを投げうえてはくれなかつたという吉田総理の悲劇であつたのであります。しかも、国際情勢から見るならば、先ほど吉田総理も言われておりました通りに、ジユネーヴ会議以来国際情勢は大きな変化を告げて、両陣営の平和的な共存は今や具体的な問題になつております。周・ネール、周・ウーヌーの会談による平和五原則の問題にしても、ヴエトナムの休戦にからむマンデス・フランス総理大臣の行動にしても、そしてまた、モロトフ、周総理、チャーチルの行動、中ソ共同宣言はその具体的な現われである。しかも、最近では、アメリカの国内においてさえ平和共存に対する国民の要求は強く高まつて、来年においては四箇国の巨頭会談の可能性すら現われようとしておるのであります。それにもかかわらず、先ほど来の吉田総理の答弁を伺つておると、平和共存の問題、あるいはソ同盟、中国の問題を話す場合において、何か顔色をかえて話をされている。このことは一体どういう意味であるか。
 皆さん、特に吉田さんにとつては聞き捨てならないことが、自由党である吉田さんの足元から起つているのです。そのことは、吉田さんがかつて国務大臣に任命をした山口喜久一郎君が、この間あなたの自由党の代表として、あなたの最もきらいな中華人民共和国を訪れて、そしてあなたの最もきらいな周総理大臣に対して、このように自由党を代表して言うております。すなわち、日中両国は仲よく手をつながなければなりませんが、今まで両国の友好をじやまして参りましたものは中国側ではなく日本側でありますと言つている。皆さん、このような同じ自由党の中で、吉田総理大臣が顔色をかえているのに、一方その自由党の中において平和共存を具体的に主張している者がある。
 ニューヨークにおける吉田総理の記者団会見の模様を見ても、中ソとの国交回復は両国がサンフランシスコ条約を認めることが前提であるということを吉田総理は言つておる。だが、一体、サンフランシスコ条約が中ソ両国を仮想敵国として、それを前提に立ててサンフランシスコ条約がつくられておることは、日米安全保障条約を見ても明らかであります。それにもかかわらず、侵略するすると言つておるこの中ソ両国に対して、みずからが仮想敵国であるという前提に立つている条約を認めろなどということを言う吉田さんのいわゆる頭の調子というものは、およそ悲劇を越えてお笑い草の茶番劇と言わなければならぬと思います。私たちは、この意味においても、吉田さんがどのようなことを今言われでおつても、吉田ざんの時代はすでに過ぎている、吉田さんはずれている、吉田さんは国民から見捨てられているということを、はつきり見なければならないのです。
 あなたの仮想敵国であると言われている中国の周恩来総理が、日本の議員団に対していかなる演説をしているか。私はここで読んでみましよう。周総理は、このような演説を日本の国会議員にしている。「御存じのように、サンフランシスコ条約は中国を認めません。台湾を認めました。このことについては、中国人民は承服できません。われわれは日本人の日本を認めております。日本人民は吉田政府に投票している。従つて吉田政府が日本を代表していると認めます。ところが日本政府はこれと反対の態度であります。」ここからよく聞いてください、自由党の諸君。「日本政府はこれと反対の態度であります。中国人民の代表がだれであるかを、日本政府がかつてにきめています。中国人民に蒋介石なんかいらないのです。しかし、日本政府は蒋介石を中国の代表としているのです。」このように言つている。また十月十二日に発表された中ソ対日共同宣言においては、日中ソ三国の国交回復のために、吉田政府がやる気であるならば、中ソ両国は正常化するための具体的な措置をとる用意があると明言しておる。しかも、日本の国内においては、大半の国民が中ソ両国とも国交回復を望んでおることは、かねて結成された超党派の国交回復同盟の運動を見ても明らかである。そうしてまた、中ソ貿易に対する根強い要求をもつてしてもこれは明らかである。
 そこで吉田総理大臣に伺いたいことは、まず第一に、吉田総理大臣は、台湾は明らかに中国の領土であることを認めるかどうか。中国の人民は彼らの中華人民共和国政権を認めているのであるから、蒋介石の日台条約を破棄する意思があるかどうか。第二、中ソ共同宣言に答だて国交回復の話合いを進めることについて、いかに考えているか。この点について伺いたいと思います。第三の問題として、現在の経済危機の根本原因は、独立を失つた日本がMSA体制のもとに戦争準備をやつているからである。この危機を救うものは中ソ貿易を拡大する以外にはない。この点については、小笠原大蔵大臣でさえ、昨日の演説において、中ソ貿易の拡大を述べざるを得なくなつている。ところが、今までの中ソ貿易を阻害して参つたものは、これは明らかに政府である。政府は、貿易の促進という君板のもとに、本質においてはココムによつて中ソ貿易の全面的な再開を阻止する、あるいは旅券の問題を通じて中ソ貿易の再開を阻止する形を行つている。そこで大蔵大臣及び関係大臣に私の尋ねたいことは、ほんとうに中ソ貿易を促進するというのならば、今までに政府としてどれだけの努力をやつたことがあるか、具体的な御答弁を願いたいと思う。
 第二に、明年度の日中貿易協定改訂にあたつて、中国の貿易使節団の来朝がある予定になつている。これについて、今まで吉田政府は中国の代表団の来朝を阻止して来ているが、これを積極的に進める決意があるかどうか、また相互に通商代表部を設ける意思があるかどうかについて伺いたいと思います。
 最後に、最近政府が国民の民主主義的な権利を抑制しつつあることはまことに目に余るものがあります。特に労働者階級に対する弾圧は、小坂労政の次官通達を前後として気違いのさたであり――しかし時間の関係があるので、この点については詳細に申し上げませんけれども、最近の気違いじみた状態はまつたく目に余るものがあります。しかも、行政措置の形で設けられた反民主主義活動対策協議会は、ダレスに教えられたのか、だれに教えられたのかは知らないけれども、労働者階級を中心とする国民に対して弾圧の総司令部の役割を果しつつあるのは事実であります。
 大体、この反民協を設立するにあたつて、昨年国会で問題になつた戦時情報局の再建という緒方構想がたくみに織り込まれております。その実例を一つだけここに述べますが、反民協の下部機関として現在中央調査社のあることは周知の通りでありますけれども、もう一つ隠ざれたる下部機関がある。この下部機関は愛宕山機関というのであります。この愛宕山機関というのは、別な名前は国際情勢研究会と言つているが、愛宕山の旧NHKの放送設備をそのまま使つて、本年三月中旬より発足して、反共謀略の情報を専門的に集める緒方構想によるところの機関だといわれている。その証拠に、内閣より月額八十万円の予算が毎月この愛宕山機関に出されているのであります。そこで緒方副総理に伺いたいのでありますが、愛宕山機関というのは一体いかなるものであるか。副総理は、反民協、中央調査社、愛宕山機関を統合して戦時情報局を再建する準備を進めているのではないか。第二に、反民協で反米思想の調査を今や本格的に行いつつありますが、将来大量検挙の準備を進めているのではないか。第三、吉田内閣は近く退陣せざるを得ないのでありますが、この憲法違反の機関である反民協を解消する意思はないかどうかということを伺いたいのであります。
 以上の点について明快な答弁を要求いたしますが、すでに吉田総理は、新聞の報道を通じても、引退の決意を表明したと伝えられております。過去六年の吉田政治もいよいよこれで終末を告げるわけでありますが、きよらわれわれがここにおいて質問をすることは、吉田内閣の告別式の弔辞を述べるがごときものであります。しかし、本来、日本の礼儀によりますと、弔辞というものは常に儀礼的であつても故人の徳をたたえることにならなければならないのであるけれども、遺憾ながら吉田内閣に対しては、国民はかりそめにも徳をたたえることはできない。それどころか、黄を打つてすみやかなる吉田内閣の退陣を要求している。先ほど、吉田さんは、まだ残つてくれという人もあると言つておるけれども、それは吉田さんを取巻いている……
#44
○議長(堤康次郎君) 岡田君、持合せ時間が過ぎておりますから簡単に願います。
#45
○岡田春夫君(縦) 池田幹事長、麻生太賀吉氏その他二、三の諸君以外にはない。これは事実であります。
 吉田総理は以上の質問に対して誠意ある答弁を行うことは、今まで悪政を重ねて参りました吉田内閣が国民に対して謝罪する道であると思う。それこそが吉田総理に対してうえられた今たつた一つの道であると思うのであります。吉田総理のすみやかなる退陣を要求して、われわれは質問を終る次第であります。(拍手)
  [国務大臣吉田茂君登壇〕
#46
○国務大臣(吉田茂君) 台湾の領土問題、帰属問題について、政府はこれに対してとやこう申す考えはございません。
 中共の声明に対しては、これは日本政府になされたものではございませんから、あえて答えません。通商代表を置く考えはございません。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#47
○国務大臣(緒方竹虎君) 反民主主義活動対策協議会と申しますのは、これは御心配のようなものでは全然ございません。昨今共産主義の平和攻勢が非常に深刻に行われておりますし、またそれ以外に反民主主義的活動が深刻になつておりますので、それに関しまして、関係各省の間に相互に情報の交換、連絡を行いまして、施策の上に誤りなきを期しておるのでありまして、従いまして、きわめて無事なもので、基本人権を弾圧するような考えは毛頭持つておりません。従つて、これを廃止する意思も政府にはございません。
 なお愛宕山云々ということでありますが、共産情報を特に集めていることはございません。また、中央調査社というものは政府と何ら関係はございません。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#48
○国務大臣(愛知揆一君) まず第一に、余剰農産物買入れの中にバターが入つているということを前提にお尋ねでありますが、バターは入つておりません。いわゆる余剰農産物の買入れは、需要供給上はわが国の現在の立場上必要ではありますが、しかし外貨の事情等から考えて、通常貿易ではなかなか買入れがむずかしいというところの食糧なり綿花などを米国から買い入れようとするものであります。しかもこれはドルを使わず円貨で買い入れるのでありますし、これによつて生ずる積立金の七割をわが国の産業の振興その他に活用しようとするものでありますから、いかなる点から見ましても、これは日本経済のプラスになるものであることを確信いたします。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
#49
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えします。中ソ貿易につきましては、バトル法、ココム等の線を守りつつ、自由諸国と相携えて、前にも出ず、うしろにも遅れない所存であります。(拍手)
#50
○議長(堤康次郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト