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1953/03/04 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 労働委員会 第9号
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1953/03/04 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 労働委員会 第9号

#1
第019回国会 労働委員会 第9号
昭和二十九年三月四日(木曜日)
   午後二時十九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     栗山 良夫君
   理事
           井上 清一君
           田畑 金光君
   委員
           榊原  亨君
           吉野 信次君
           阿具根 登君
           吉田 法晴君
           寺本 広作君
           市川 房枝君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       磯部  巌君
   常任委員会専門
   員       高戸義太郎君
  参考人
   古河鉱業株式会
   社足尾銅山労働
   組合副執行委員
   長       石原 弘之君
   三菱金属鉱業株
   式会社保安部次
   長       進藤 勝郎君
   三菱金属鉱業株
   式会社尾去沢労
   働組合執行委員
   長       頓所 佐一君
   日本鉱業協総務
   部長      北里 忠雄君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○本委員会の運営に関する件
○けい肺法案(吉田法晴君外十二名発
 議)(第十八回国会継続)
○労働基準法の一部を改正する法律案
 (吉田法晴君外十二名発議)(第十
 八回国会継続)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。
#3
○吉田法晴君 委員会の進行に関連してであります。
 昨年の暮の期末手当その他の問題に関連しまして、国鉄においては十数名の馘首が行われ今日に至つておりますが、この問題を委員会において取上げ、政府、それから使用者側、労働者側を呼んで当委員会においてその実態、その後の経過等を調査いたすべきであるということを信じます。委員会でお取上げを願うことを提議いたします。その詳細は委員長及びその他において御協議を願つて結構でありますが、
 委員会で取扱うことを提案いたします。
#4
○委員長(栗山良夫君) 只今吉田君から動議が出されておりますが……。
#5
○田畑金光君 まあ今初めてお聞きいたしましたが、動議の趣旨が、国鉄の昨年末における解雇の問題のようでありますので、我々としても殊に労働委員会における一員として深くこれは関心を持つておる者であります。吉田君の提議の通りに当局と国鉄労働組合の関係の両者を呼んでその実情を調査し並びに経過を聴取しようということでありますならば、私もその動議に賛成いたします。
#6
○寺本広作君 吉田君から動議が出て、田畑君が賛成されておるわけでありますが、今日は出席者も少いし、この扱いは正規の委員会でなく、理事会なり懇談会の席に移して審議せられるようにお願いしたいと思います。
#7
○委員長(栗山良夫君) ちよつと速記をやめて下さい。
  [速記中止〕
#8
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて。只今吉田君が提出せられました動議につきましては、御懇談の結果に従いまして、次回の委員会において決定することにいたしたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(栗山良夫君) さよう決定をいたします。
  ―――――――――――――
#10
○吉田法晴君 次にもう一つ動議を提出いたしますが、これは今のような国鉄の首切り問題のように或いは次の機会というわけに参りませんので、ここで御決定を頂きたいと思うのですが、問題は二月十六日、当労働委員会で小坂労働大臣が炭労部分ストに関する発言中、部分スト職場以外の労働者も出炭量を基準としてノーワーク・ノーペイの原則によつて賃金を差引くことが当然であるという発言があつたのでございますが、この発言がその後労使の対立を激化し、或いは現に賃金問題について交渉、或いは小委員会を設けて折衝をなされておりますが、その障害になつておりますので、前言明をこの委員会で撤回をせられるように当委員会として御決定を頂きたいと思うのであります。決定を頂く要旨をここに一応用意して参りましたので、御審議を頂きたいと思うのであります。
 二月十六日当労働委員会における小坂労働大臣の炭労部分ストに関する発言中、部分スト職場以外の労働者も、出炭量を基準としてノーワーク・ノーペイの原則により賃金を差引くことが当然である旨の言明があつた。
 争議は両当事者の自主的解決を待つことが妥当である。然るに右言明の根拠たるべき法解釈は、未だ司法権による決定を見たものでもなく、且つ、労働法学者の中でも有力なる反対論があり、今これを発表することは穏当を欠くのみならず、一方の主張をそのまま取上げ、争議中の労働者の立場を著しく不利とし、争議を一層深刻にし、且つその解決を困難ならしめる結果となるので、政府は争議介入の意図なきことを明瞭にするため、賃金カットに関する同言明を早急に取消すべきである。
 こういう御決定をして頂きたいと思つて提案した決第であります。
#11
○井上清一君 只今吉田委員から、先般の労働大臣の発言に関して本委員会において取消しをやつたらいいじやないかというようなまあ意味の御発言があつた。ところがこの間の労働大臣の発言は、たまたま委員会においての委員の質問に答えて、法律的な限界を明らかにしたものだと私は思うのであります。それでこれについてはその法律的な解釈は、それでは然らば一体どうだろうかということで、先日学者を委員会においで願つて、いろいろ学者の見解を聞いたわけです。それでこの間のときも、それでは一つ速記録ができてからよくいろいろ学者の御意見をもよく一つ拝聴しようじやないか、研究をしようじやないかという段階になつたわけなんでして、ここで今吉田委員のような御発言誠に私はどうもおかしいと思うのだし、今後そういう問題について我々が研究して行くことはいいと思うのですが、法律的な見解についてここで争議に対して非常に重大な影響を与えたからというようなことは、私は与えたとは思いませんが、与えたというような理由で労働大臣のそういう言明を変えろということはちよつとおかしいのじやないかと、こう思うのです。それで労働大臣の解釈について若し何か御疑問の点なり何なりあるのならば、労働大臣に対して御質問なさればいいので、委員会で以てそういうことを決議するのは私はおかしいと思う。
#12
○田畑金光君 私は先ほどの吉田君の決議案を採択してくれという動議に対しては賛成の意思を表明します。今井上委員から発言がありましたが、労働大臣の発言の当、不当、或いは合法か違法かというような問題については、我々自身としても研究すべきである、こういうような御発言がありましたが、正に研究の段階にある重要な問題につきまして、労働大臣が一方的な見解を披瀝したということは、これは重大な私は政治的責任を考えねばならん問題だと考えております。大体二月十六日の労働大臣の発言というものが、争議の最中に行われておる、而も賃金カットというのが連盟の一つの争議戦術として使われておる。これは我我として理解しなければならんものと思つております。労使関係に対しまして中立でなければならない労働行政機関、而もその労働行政機関の最高責任者である労働大臣がこういうようなことを発言するということは、私は重要な責任問題だと第一に考えておるわけであります。
 又私昨日夕刊で、石炭鉱業連盟の炭労に対する回答案というものを見ましたが、これによりますると、第一項にこういうことを連盟は回答しております。部分ストに対する賃金カットは実施する、これに異議ある場合は公正な機関の判定に従う、併し双方の主張を固執しなければ話合いの余地はある。当の争議の当事者である鉱業連盟自身が、賃金カットそのものについては、双方の主張を固執しなければ話合いの余地があるぞということは、争議戦術としてこれが行使されておるということは明らかであるわけであります。又これに異議ある場合には公正な機関の判定に従うというようなことも明確に連盟自身が表明しておる。従つてこの賃金カットが適法か否か、妥当かどうかということは、最終的には裁判所の判決に待たねばならんと、こう考えるわけであります。このことは、当の鉱業連盟自身がこれを認めておる。こういう最中に労働大臣が一方的な発言をしたということはなお一層問題が残るのじやなかろうかと、こう思うわけであります。我々の推測するところでは、労働大臣のあの発言というものが、ストというものはすべて犯罪である或いは不法行為であるという、こういう潜在意識というか或いは目的意識を持つて発言しておる。丁度昨年のスト規制法というものが、労働者の全責任であるという前提の上に立つてあの法律が作られたという、そういう共通な精神、心理の上に立つて労働大臣の発言はなされておる。私はこれは大きな問題だと思う。これは労働大臣みずからこの委員会において自己の不明を詑びて取消すのが至当であるけれども、どうもあの労働大臣、それだけの良心を持つていないようだから、この際本委員会においてあえて決議をして、撤回の意思を明らかにすることが私は妥当なことじやなかろうか、こういうような考えを私持つておりますので、先ほどの吉田君の動議には良心の命ずるところに従つて賛成する、こう申上げておきます。
#13
○井上清一君 ここでいろいろ議論するのはあれなんですが、とにかくこういうことを決議でやることはどうかと思います。又、たまたま質問に対して労働大臣が答弁をしたわけなんで、それでこれについていろいろ御意見の点もあるならば、労働大臣に来てもらつていろいろ質問されたならば私はいいんじやないかと思います。それで先般も、これは当然賃金カットをやつてよろしいという説を述べられた方も、学者も、有力な方ですね、意見を述べられておる方もあるし、政府はそういう解釈をとつているということについて、それについて質問をされることは私は一向かまわんと思いますけれども、こういう決議をするのは行き過ぎであり不穏当じやないか、かように思います。
#14
○阿具根登君 井上委員のお説も一応わかるんですけれども、我々はそれでは労働大臣の意見を聞き放しにしておいて、その影響がどういうふうになつておつても、それに対する訂正ができない。或いはそれに対して学者の意見を聞いて、それは賛成の方もあつた。併し賛成の方も労働大臣の言つておる言葉と違う意味を多分に持つておられる。反対の方は、これはいわゆる働かして金を払わない泥棒だと、こういうところまではつきり言つておられる。こういうときに……、これが当事者双方が争つておらないときならば、私は又考え方もあるだろうと思う。ところが非常な微妙な段階にあつて争つておる。今、田畑委員が言つたように、当の相手すらもこれははつきりとここで現わすことができないので、これは公正妥当なる機関にお任せしようじやありませんか、こういうことを言つておるときに、責任者たる労働大臣が一方的に賃金カットは妥当であるということを言い放しであるということは、私は重大な責任だと思う。とするならば、かかる労働問題の一環を持つておる当労働委員会としては、労働大臣の意見も聞いたのであるし、質問もしたのであるし、学者の意見も聞いておる。当然ここで結論を出すべきだ。結論が出ないという結論になつたならば、そういう一方的な旗を一応降してしまつて、そうして我々があとで討論する、それが一番私は妥当な途である、かように思うので、吉田委員の動議に賛成いたします。
#15
○吉田法晴君 井上さんから、質疑を続けたらいいじやないか、こういうお話でございますが、一応質疑はあの日やつたわけです。それからその後学者の意見等を聞いたわけですが、ここで議論をしようとは思つておりません。で、まあこの間の学者の意見等を聞いても、労働大臣の言明を全部これは肯定をされない、全部肯定するわけには行かんという議論が多かつたと思うが、その内容については私はここでとやかく申上げようと思つておるわけではない。ただ法の解釈の問題、それも労働法規についての法の解釈ならとにかくでありますが、そうでない問題について解釈を下された。而もそれが労使争つております一方の解釈だけをここで述べられた、そういう結果になつて、それが現に交渉をしております連盟、炭労の交渉の大きな障害になつておる。そこで労働大臣としてあの言明は妥当でなかつた、或いはあの言明を一応ここで御撤回を願う、こういうことは、これは労働委員会として法解釈に関連してとるべき態度ではなかろうか。よく寺本さん等も言われるのでありますけれども、微妙な段階にございます際に、中正ならざる態度を表明されて而もそれが残つておるということは、これは一応この段階において除いてもらおうじやないか。こういうことを委員会として議論の内容にこれはいたしておりますと、いろいろあるかと思うのでありますが、労働委員会として或いは参議院としてやるべき一応の最小限度の行政措置をとられるように、今回は要望をするということは、これはまあ妥当であろうかと思いまして、先ほどの提案をしたわけでありますが、一つ委員会で御決定を頂きたい。
#16
○寺本広作君 これは提案ですが、これも委員長、延ばして頂けませんか。実は吉田さんからの緊急動議ですが、今日の公報にも載つていないし、今日の議題とは思つておらんし、こういう決議を行われるということになれば、出たいという人もほかにもあると思いますし、出席者も少いし、こういう突然委員会が決議をするということはどうだろうかと、こう思います。ここに決議をした場合に、取消すべきであると、こういう決議ですが、この間は内容はともかくとして、形は質問が行われて、自分の所管する労働法規について行政解釈を下さざるを得ない立場にある労働大臣が行政解釈を下したと、こういうことなんですね。あの行政解釈はその後我々も読んでみました。いろいろ意見もある。それからそれについての学者の意見もこの間聞いてみた。なお学者の意見も詳細速記でもう一遍読んでみたい。労働大臣もこの場で聞いておられて、自由党から推薦のあつた学者、社会党から推薦のあつた学者、いろいろ双方の立場から労働大臣に批判を下されたところもあつたので、労働大臣の心境も或いは変つておるかも知れんと思われる。それで取消しを要求するというよりも、やはり学者の意見を聞き、それから我々が労働大臣の説明をその後速記でも読んでみた結果、質問を続けるということが適当であつて、労働大臣は、行政法規を扱つておつて、その行政法規についての解釈を国会で質問された場合には黙つておくわけにいかんだろう、それを取消せということは国会の決議としてどうだろうか、こう私は思いますので、今日のところは決定を一つ延ばして頂きたい。殊に出席者も非常に少いし、委員会の運営のやり方としても、こういう出席者の少いとき、公報にも出ていない問題で委員会の意思を決定するというのはどうだろうか、こう思いますので延ばして頂きたい。
#17
○吉田法晴君 延ばしてもらいたいという理由に、決議をするということが公報に載つておらんということがございますが、これは行政事務の調査といいますか、継続して審議をして参つておるわけですから、それは決議をするという公報を出すようなことはない。そこで……(「一般調査が出てないから」と呼ぶ者あり)それは調査は出ておるかどうかは知りませんが、継続しておる問題であるから取上げても何ら違法でないと思う。
 もう一つ、実際に今交渉しておつて、そうしてこの間発言された、而も新聞にも載つて、そうしてその後の質疑とか何とかいうものは、或いは学者の意見等はちよつと載りましたが、一応交渉に支障になつておる。そこでそれを一応公正な位置に戻してもらいたい、或いは戻す必要がある。そこで時期的にも、これは委員会として次の委員会で問題にして、そうしてじやその次の機会に発言を願うと、こういうわけには参りませんので、是非今日一つ御決定を頂きたい、かように考えるのであります。
 それからなお方法について多少御議論もございましたが、方法は私どもはここでどういう方法をとるべきであると、こういうことを言つておるわけではないわけであります。それは質疑の形であろうと、大臣がみずからこの間の意見等も開いて、なおこういう工合に考えると、こういう形式でも結構でありますが、こういう問題について労使対立して争つている際に、ああいう一方的な発言をすることは妥当でなかつた。或いは我々は妥当でないと考えるので、妥当でなかつたという御発言を願つても結構です。その方法等をここで、差し詰め私の言うところも、一応この間からの実態を中正に返すためには、本委員会としてかような御決定を願いたい、最小限度願いたい。こういうことで提出したわけでありますが、違法であるとも思いませんし、ここで一つ御採決を願いたい。
#18
○井上清一君 只今吉田委員からお話がありましたが、とにかく唐突な話です。今日出て参りましたところが、こういうことが突然出て来たわけです。こういうものの取扱いについては従来理事会等で一応下相談をしてやるということが従来の慣例であるわけです。私はこういうあれは、当委員会における質問に対する労働大臣の法律的なそうして又見解を表明されたものであつて、それについて若しいろいろ御意見があるならば、質問その他ではつきりさせて行けばいいわけなんで、ここでその言明を撤回しろというような決議をするということは私は誠におかしいと思うし、こういうことを唐突に出して、ここですぐきめろというようなことは、当委員会の従来のしきたり、又やり方とは相当違つたやり方なんで、私どもはそういう突然これを出して決定しようじやないかというような意見には私は到底賛同できない。十分本問題については、若しこれを問題とするならば、理事会等でも練り、委員会等でも十分検討しなければならぬ問題ではないか、こう思います。
#19
○阿具根登君 本委員会に突然出された問題だから云々ということを言われますけれども、この問題が最初出されたときは、皆さん御承知のように、これはけい肺の問題だけをやるようになつていた。それを唐突として、それこそ唐突として出された。今日の問題は唐突としてではない、それから流れておる。そのときこそ唐突として出て来たやつを唐突として大臣が答えられた。その問題が非常に波瀾を生んで来ておる。それを労働大臣が取消さなければ、委員会としてはそれは行き過ぎである……、こういうことをここできめるのがきめられんような委員は何のために来ておるのか、労働大臣の言うことは何でも聞くのか、委員は委員としての権限があるはずです。私は進んでこの動議をきめるのに何ら躊躇するところはないと思う。唐突というのは、この前の二月の十六日に出されたのが唐突であつて、今のは全然唐突でもなくて、当然我々が今日までに片付けなければいかない問題であつて、委員としての職責を全うする意味においても今日私は決定してもらいたい、こう思います。
#20
○井上清一君 先日、二月十六日の労働大臣の言明というものは、労働委員の当日の質問に対して答えたわけです。何も労働大臣が唐突にみずから進んで言つたわけではない。それから又先ほど吉田委員の言われたように、今争議の最中にあるので、それに間に合うように決議をして撤回を求めなければならんというような御意見があつたが、私はそれだけ争議の介入になつて来るものだと思うのです。だからそういう点からいつても、これはよほどこの決議なり何なりについては、これは慎重に一つお取扱いを願わんことにはこれはいかん問題なので、これこそ私は争議に介入すると言われても、これは一言も私はないと思うのです。これは若し吉田委員の言のごとくならばですよ。
#21
○委員長(栗山良夫君) これは只今私も議事の扱いに困つているのですが、井上君のおつしやつた唐突論ですね。これは緊急動議ですからね。緊急動議を唐突に出していけないという規則はないし、緊急のときに唐突に出すのが緊急動議で、それはちよつと当らないと思うのですね。これは不賛成を唱える理由は私はないと思うのです。ただ問題は、この決議案が、今見たばかりで、内容がよくわからんから、もう少し研究をしたいという意味の保留の態度であれば、私はそれは又別だと思いますけれども、そこのところはちよつと反対論が混同されているので、私も先ほどから伺つておりましたが、御了解を願つておいて、特に委員会で緊急動議が出されたやつを理事会で結論を付けるべきであるとおつしやいましたけれども、それは議事を円満に運ぶための方便と思うのです。委員長及び理事打合会にもう一遍戻して相談をしたいという意味ならばわかりますけどもね。今の御発言のようですと、ちよつとここの運営上の工合の悪い点もあろうかと思いますので、その点御了承願つておきたいと思います。
#22
○井上清一君 いや、まあ唐突という意味は、別に今日急に、にわかに出て来まして、私どももこの内容についてもいろいろと検討しなければならん点もあることをその意味の中に私は含めてあるつもりなのです。もう一つは委員会議事の問題は、この決議の取扱いについてこの委員会でいろいろ議論をしているよりも、まあ議事を円満にやるために下相談をしたらいいという意味合を私は言つているわけです。その点は一つ御了承を願つておきたいと思います。
#23
○田畑金光君 先ほどからの井上委員の御意見を承わつておりますと、我々の発言が賃金カットを妥当と認めるか、或いは妥当でないか、或いは合法か非合法かという本質論について論議を交わしているように誤解されているようですが、私たちはそういう問題はまだ司法機関も最終的な結論を出していない。それはまあそういう権威ある機関において最後的な決定をされなくちやならんだろう、こういうことは私自身も了承しておるわけなんです。私の問題としておるところの問題はその前の段階の問題で、こういう大きな労働争議に対して政府はどうなければならんか、どうあるべきかという私は問題だと思うのです。そういう観点に立つと、とにかく少くとも労働行政の最高責任者である労働大臣は常に中立の立場で労使関係に対処しなくちやならんと思つているのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて中立であるということが最も基本的な立場であるとするならば、たとえ唐突という形において質問がなされたにしろ、その労働大臣の発言というものは社会的な影響、社会的な反響というものを十分に顧考してなさるべきだし、その程度の理性のない労働大臣とは私たちも見ていないわけなんです。従つてそういう我々の常識から判断した場合に、この間田村委員に叱られたけれども、とにかく何らかの意図によつてあの答弁がなされたとしか……、或いは潜在意識としてそういう気持が強くあつて、たまたま出たということになるかも知れません。若しそうであつたとしても、私はこれは当然労働大臣の職責からいつて取消すべき問題だと、こう考えたわけなんです。私は問題をその前の段階で、本質論の前の段階の問題を論じているのであつて、飽くまでも中立的な立場に労働大臣、労働省がなければならん、こういう観点から見たときは、白紙に戻すことが、まあ覆水盆に返らずだけれども、併し今からでも遅くはないから、白紙に返すことがせめてもの発言に対する労働大臣の私は責任ではなかろうか、こう考えるわけなんです。そういうふうな点において、これは緊急動議という形で出されておる以上、当然にこれはこの委員会において取上げて審議する以上は、結論を出すことも決してこれは委員会の運営上問題になることではないと私は考えるわけなんです。一方的に常に物事を判断して行こうとするからこそ、そのような見方も出て来るのであつて、これを我々この参議院の労働委員会が白紙に戻すということは、参議院労働委員会の中立性を保障する途でもあろうと、こう私は考えるので、そういう意味合におきましてはまあこの点については全部一致し得るだろうからして、どうか一つ井上さんも御理解を願つて、御協力を願つて、この動議の通りに決定されることを一つ願いたい、こう考えるわけです。
#24
○吉田法晴君 議事進行ですが、私ども参考人その他を待たして大変あれしますから、一つ決定の採決をしたいと思います。
#25
○井上清一君 採決は反対。これは採決を今ここで急にやるのは私はどうかと思うのです。これは私どもまああれは緊急な動議だから或いは採決をすべしということであれば主張できるとは思いますがね。併し今後の議事の運営その他従来からの取扱いでも、今ここで急にこういう問題を取上げて採決をしなくちやならんという私は問題じやないと思うのです。それでこの間も学者の意見も聞きましたし、これについてつまり速記録を見た上で又大いに検討もしようじやないか、こういうようなこともまあ言つているわけなんで、そうした上で我々はまだまだこの問題については検討しなきやならん問題もあると思うのです。でまあ労働大臣のたまたまこの行政解釈についていろいろ意見があるということならば、労働大臣について今後も質問なり或いは又意見を求めるということも私はいいと思いますが、この動議をここで急に取上げて決議するということについては、私はどうもこれまでの当委員会の慣例、そして又今後の取扱いにいろいろな運営の点から私は不穏当じやないか、こう思うのです。
#26
○阿具根登君 参考人を長い間待たして、私非常にお気の毒だと思いますので、吉田議員が言われたように、早く本問題を片付けたいと思うのです。それで井上議員は一方に旗を揚げておいて、そうして降すことを嫌つておるのは非常に私には解せない。例えば労働大臣は賃金カットは妥当だというようなことを言つておられるのを、それは賃金カットは不当であると言えと言うならば、これはまだ私は井上委員が言うのは自由党の立場としてそれはわかる。ところがその一旦それを元の姿に返すということをどうしてきめられんのか。而もこれは今から議事録まで調べてそうして審議するのだとおつしやるけれども、そのときにはこの争議は、この争いは、この労働大臣の発言によつて重大な段階を通り越して行く。いわゆる一方的な解決になつて行く。こういう重大な段階においてこれをこの次まで、或いはその次まで引延ばすというようなことはあり得ないので、緊急動議として現われておるのであつて、私は緊急動議のその意味も十分に含めて、今日只今私はもう採決に入つてもらつて、そうして白紙に返してもらいたい、かように思います。
#27
○田畑金光君 もう採決とつたらいいじやないですか、こんなことをいつまでも論議したつて……。
#28
○委員長(栗山良夫君) ちよつと発議者に申上げますがね、只今採決するとしましても定足数がないのです。それだからこれは御相談ですがね。それでは速記をちよつとやめて下さい。
   〔速記中止〕
#29
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて。只今吉田君から、炭鉱の賃金カットの問題につきまして、小坂労働大臣の過日当委員会において行いました言明について取消の動議が提出せられ、且つそれが成立いたしまして、その取扱いについて御懇談を、頂いたわけでありますが、議事進行の都合によりまして、先ず本日の公報でお知らせをいたしましたけい肺法案の審議を議題といたしまして、かねて御承認を得ております参考人の御意見を伺うことにいたしたいと存じます。そうしてその後において動議の取扱いについて御協議申上げることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○委員長(栗山良夫君) それではさようにいたします。
 本日おいでを願いました参考人は、古河鉱業株式会社足尾銅山労働組合副執行委員長石原弘之君、三菱金属鉱業株式会社保安部次長進藤勝郎君、同社尾去沢労働組合執行委員長頓所佐一君、日本鉱業協会総務部長北里忠雄君の四君でございます。
 只今申上げました順序で順次約二十分間程度において御発言を頂きましてそのあとで各委員諸君から御質疑があろうかと思いまするから、これにお答えを頂きたいと存じます。それでは石原弘之君にお願いをいたします。
#31
○参考人(石原弘之君) 足尾のけい肺の実態につきまして申上げます。
 現在足尾におきましてけい肺の予防につきましては、この予防の主なものとしては、使用さく岩機の湿式化の問題、それから防塵マスクの問題、こういつた点について終戦以来逐次改善しつつあるわけでありますが、実際においては使用さく岩機は湿式さく岩機であつたといたしましても、水量の不足或いはパイプ・ラインの不足、こういつた点からいたしまして、なお且つ乾式さく岩機として使用しなければならない現状が多々あるわけでございます。マスクの問題につきましては現在のところ殆んど完備しております。
 打切補償について簡単に申上げますと、現在まで足尾におきますところの打切補償を受けました患者数は二十名でございます。そのうちすでに死亡しております患者数は四名でございます。なお、この打切補償の適用を受けた患者は殆んどが足尾に居住しておるというような状態で、ほかに出た患者数は五名ということでございます。現在休業療養をしております患者の休業補償の実態について申上げますと、労災法によつて支給されております六〇%の金額というものは、けい肺患者の実態からいたしまして非常に少い金額であるというふうに考えております。その一つの実例といたしまして、現在高徳にありますけい肺病院に入院しております患者を以て例として挙げたいと思います。この患者は進さく夫としてさく岩作業に勤続十一年従事しております。この人が発病当時の平均賃金は四百十五円という金額でございます。この四百十五円の金額は、月額にいたしまして六〇%にいたしますると七千七百三十四円という金額になるわけであります。この七千七百三十四円という非常に少い金額を以て扶養家族を抱えてなお且つ療養を行わなければならないというような実情にあるわけでございます。この原因といたしましては、非常に長くさく岩作業に従事いたしますると非常に体力が低下いたします。なお且つそれに加えまして、就業日数が非常に低下をするというようなことがあるわけでございます。この患者の金額と、それから最近におきます足尾の同職種におけるところの収入というものについて比較いたしますならば、百十四名のうちにおきまして、最高が二万六千円、最低が一万四千円、こういう金額でございまして、この最低から見ましても、二千円ほど低いところの平均賃金であるということが言えるわけでございます。このように六〇%の補償というものは非常に少く、現在足尾におきましては会社と組合との協定におきましてこの六〇%に加算をしておるということでございます。この金額は個々人によつて相違するわけでございますが、現在の患者に、一人平均に六千円程度のものがけい肺患者に対する見舞金といたしまして支給されておるという実情でございます。その総額は二十五万六千六百五十五円という金額が一カ月間に患者の見舞金として支給されておる金額でございます。こういつたことで患者の生活を支え、且つ療養を支えておるというような実態でございます。それに加えまして、現在休業補償を受けて休んでおります患者のこの保険金の支払について申上げますと、現在の労災保険の保険金の支払は非常に遅れておるというのが実情でございます。現在では十一月分まで支給されておりますが、十二月、一月の二カ月分については現在未払状態であるということでございます。そのためにこの未払分については会社の代替払を以てこの生活並びに療養を支えておるということでございます。
 休業補償の問題と関連いたしまして、平均賃金の問題が出て来るわけでございますが、この平均賃金の算定につきましては、非常にけい肺については問題点があると考えております。その一例として申上げますならば、けい肺におきましては平均賃金の算定の基礎である発病とそれから療養開始の時期というものが一定しておらないということでございます。例えば二十五年の労働省の巡回検診の結果が判明いたしますのは一年ほど遅れて判明いたします。そうしますると、その結果によつて療養を行なつたといたしましても、平均賃金の算定基礎になる発病と実際の療養開始との時期は一年から更に多く違つて来る実情にあるわけでございます。そのようなことで、二十五年の巡回検診の結果判明いたしました患者におきましても、現在なお且つ非常に低いところの平均資金の算定が行われておるというような実情があるわけであります。それからこの平均賃金が低いために、打切補償の関係について申上げますと、打切補償を現在まで受けた患者数は二十名でありますが、このうち最低については十九万六百八十円というのが最低でございます。それから最高について申上げますると、七十三万八千円というのが最高でありまして、平均いたしますならば約五十万程度というのが打切補償の金額であるということでございます。この結果打切補償によつて今後の本人の生活或いは家族の生活というものを、現在足尾に居住しております十五世帯について考えてみますると、非常に生活が苦しくて療養ができ得ないというような実態にある患者もあるわけであります。こういつた点から考え合せましても、打切補償の算定基礎になる平均賃金等におきましては十分に考慮されなければならないであろうというふうに思つております。これと関係いたしまして、必然的に療養期間の延長ということが考えられなければならないと思つております。
 次に、けい肺患者のうちで労災法が適期されない患者について申上げますと、この方々は非常に苦しい生活の中から療養を行なつておるということでございます。何ら補償されておらないということであります。現在足尾において療養を行なつておりますところの患者は四名いるわけでありますが、この四名とも非常に苦しい中から療養を行なつておるということであります。実例といたしまして、現在足尾の病院に入院しております患者におきましては、STでありますが、健康保険が打切られて全然収入がないという状態にあるわけでありますが、本人の健康状態からいたしまして、退院を許さないというような状態であります。勿論家庭におきましては患者の奥さんが土方仕事等によつて辛うじて本人の療養を続けさして行つておるというような状態であります。
 次に退職者の問題について申上げます。現在本人がやめて退職した場合に、けい肺が二度以下で以て、法の適用がないものに対する取扱いでありまするが、これはけい肺が三度程度になりますならば、労働能力というものは著しく低下しておるという実情であります。併しながらこれらの患者と言いますか、これらの方々に対しては何らの法の適用がないわけであります。それでこういつた方々に対してその体内にあるところのけい肺の実情に応じて何らか法の適用があつて然るべきではなかろうかというように考えられます。又配置転換等につきましても同様のことが言えるわけでありまするが、この配置転換につきましても、実際には非常に転換者が少いというのが実例であります。その原因といたしましては、やはり配置転換に対するところの補償という面が何ら現在考えられておらないというところから来る矛盾であると思つております。
 それからけい肺患者が療養をいたしておりましても、死亡した場合における取扱いのうちの問題でありまするが、けい肺以外の病気によつて死亡した場合においては、このようなけい肺に対するところの恩典というものがないというのが現在の取扱いの実態でございます。これにつきましては十分に考慮されなければならない点であろうと思つております。
 次に診断の問題について申上げます。現在栃木県におきましては、中央から地方へけい肺の診断が移管されたわけでありまするが、地方に移管されましても非常に診断の決定というものが遅れておるというような実情にあるわけであります。なおそれに加えまして、診断決定に際してレントゲン写真の提出、それからけい肺結核に対するレントゲンの断層写真、こういつた無理な申請内容を事業所に押し付けて来ておるというような実情があるわけであります。これはレントゲン写真は患者の撮した写真全部、けい肺結核患者については断層写真五枚を申請のときに提出するように申出でられておるという実情であります。こういつたことは、断層写真をとる装置がなかつたならば到底でき得ない実情だと思つておりますが、こういつた矛盾が現在地方の診断決定の問題と同時に出て来た問題といたしましてこれらの点は十分に改善されなければならないというように思つております。
 それから診断決定に対するところの異議申立等につきましても何ら審査機関の活用がされておらず、この異議申立が非常に遅れておるというようなのが状態でございます。
 次に実際のけい肺患者の治療について非常に矛盾点があるので申上げますと、けい肺患者がいろいろな治療を行います際に、殆んどがけい肺結核に侵されておるというのが実情でございます。そうしまするとこのけい肺結核患者の科学的療法においては、地方の保健所にこの薬の申請を行わなければならないということであります。その結果保健所の審査員はけい肺結核については殆んど無智な方が多いということからいたしまして、その決定に対して非常な矛盾が生じております。それからなお決定に時間がかかつて治療の時期を失つたり、或いは又申請をしても予算その他の関係でこれが拒否された場合等があるわけでございますが、こういつた場合の取扱いについても非常に問題があるわけであります。基準局といたしましては、拒否された場合は労災による負担を行うということを言つておりますが、併しながら保健所に申請をしなければ負担できないというような態度でございます。こういつた点は非常にけい肺患者の治療という面からいたしますならば無理な規定ではなかろうかと考えております。
 次に足尾のけい肺患者の実態について申上げたいと思います。昨年の秋行いました事業所におきます健康診断の結果でございます。足尾におきますけい肺一度患者は百五十七名、けい肺一度で結核を合併しております患者は三十八名、けい肺一度とけい肺一度で結核合併症との比率は一九・五%であります。けい肺二度五十名、けい肺二度で結核合併症は三十二名、この比率は三九%、けい肺三度は六名、けい肺三度で結核の合併症は十二名、比率は六六%、合計二百九十五名でございますが、これは足尾に働いております坑内夫並びに坑内より坑外に配置転換した者を含めて行なつたものでございまして、その総数は千十二名についての決定でございます。なおこの千十二名のほかに病気或いはその他の理由によつて健康診断を受けておらない方がございますが、それらの人が坑内関係に従事した人で以て約二百名程度あるというように考えております。なお千十二名の中には現在けい肺によつて休養療養を行なつております患者五十名が含まれております。それから足尾において基準法が施行されてから現在までけい肺として基準局から認定された患者の総数は百十一名でございます。それで現在療養を行なつております患者の総数は六十名、そのほか現在申請中の患者並びに申請をしようという患者が約十名程度おるわけでございます。それからそれと関連いたしまして打切補償を受けた方が二十名で、うち五名は死亡しておりますが、百十一名のうち六十名とそれから十五名を加えた以外の方は全部療養期間中に死んでおるというのが実情でございまして、今申上げましたように百十一名の患者のうち大半が死亡しておるというのがけい肺患者の実態でございます。
 次に、足尾におきます状態は以上のような状態でございますが、組合といたしましては、これらけい肺患者の取扱いについては、非常に悲惨な状態にあるというような点からいたしまして、けい肺についての特別な保護を必要とするという考え方の下に、会社との間におきましてけい肺の協定書が作られております。このけい肺の協定書と申しますのは、法によつて特別に保護されるまでの暫定的な処置として協定書が作られておるということであります。その内容といたしましては、予防の問題或いは補償の問題、その他いろいろ細かい点にまで規定されておるわけでありますが、そういつたいろいろの規定が現在の労災法の不備等から来るところの矛盾を幾らかでもカバーして悲惨なるけい肺患者を救わなければならないという考え方の下に会社と組合との間に結ばれた協定であるわけであります。その協定によつて現在休養、療養を行なつております患者に対しましても若干の見舞金等が支給されておるというのが現在の実情であるわけであります。
 以上簡単に足尾の実情について申上げた次第であります。
#32
○委員長(栗山良夫君) 有難うございました。続きまして……。
#33
○参考人(進藤勝郎君) 鉱山の粉塵防止の実態について述べさして頂きます。補償その他の問題につきましては協会の北里さんにお願いいたしたいと思います。
 鉱山の粉塵防止の実態をお話する前に、これに密接な関係があり、又指導的な立場にありますところの日本鉱業協会の粉塵防止研究委員会の問題を一言お話したいと思います。
 昭和二十七年九月保安法でさく岩機の湿式化が規定される以前において、業界はこのけい肺に対する予防措置を講じなければいかんと、こういうような問題が起きまして、昭和二十四年の十一月、当時の大手筋九社から一名の委員を選出いたしまして、現在は十一社になつております。粉塵防止研究委員会というものを組織したわけであります。毎月二回以上会合いたしまして、内外の法規文献の研究、又その方面の権威者の意見を聞く、各鉱山からはいろいろなデータを集める、その他研究団体、それから保安用具、そういう方画のメーカーと意見の交換をやる、そうしまして現場における試験研究を行うため、各現場に防止の面について指導すると、こういうような目的のために組織されたわけであります。なお今日まで継続しておりますのですが、今日設けられておりますところの労働省のけい肺審議会には予防、恕限度、両委員会に委員を出して研究いたしております。今日までこの研究会がやりましたところの問題としましては、先ず第一に粉塵の調査をする測定方法の基準化等、いろいろ比較研究しなければいかん問題がありますので、どういうような基準でこれを測定するか、測定方法の基準の決定、それから従来の測定器具は労研式のコニメーター、足尾式のコニメ一夕ー、ドイツのツアイス、こういうような吸着式のコニメーターがありましたのですが、なかなか現場で手軽に測定が不可能である、こういうふうな面もありましたので、この測定器具の改良、改善、実際問題としましては、二十六年の九月に粉研式コニメーターとしまして完成いたしたわけであります。現在この測定器具を以て我々は測定を実施いたしております。それから各種切羽における各種のさく岩機の水量に対する粉塵の抑制の研究、それから湿潤剤、ウエツテイング・リージエントの問題でありますが、或る薬品を使うことによつて粉塵が如何に抑制されているか、それからいろいろ講習会、又我々委員が現地に出張いたしまして、鉱山における粉塵の抑制に関して指導して参つたわけであります。最後に、昨年九月には水を使わずして収塵効果を上げられるダスト・コレクター、収塵機、足尾式ダスト・コレクターを完成いたしまして、資源技術試験所の認定を受けたわけであります。この間におきましては、労働省の衛生研究補助金としまして二十七年度九万円、二十八年度には五万円の交付を受けております。通産省の試験研究補助金としましては、昨年度において新技術社と共同で八十万円の交付金を受けております。この研究の対象は、粉塵の測定器具及びダスト・コレクター、主としてこの面の研究をいたしております。昨年は通産省の中央優良鉱山表彰式には、委員会としまして、団体として表彰されたようなこともあります。今後の研究会としての研究を続けて行く問題としましては、先ほど申しましたのですが、さく岩機の使用水量と発塵との関係、これは後ほど説明申しますが、水量が多ければ発塵量が少くなる、決してそういうふうな結果が起きて参りませんです。或る切羽によつては水量が多ければそれによつて生ずる粉塵量は少くなつて来る、こういうふうな切羽もありますし、又同じ鉱山におきましても、或る水量以上の水量を使いますと逆に発塵量が多くなる。こういうふうな逆の結果も生じて参りますし、この点ももつと究明いたしたい。それから発破後の発塵の状況、発破時におけるウオーター・スプレー及びウオーター・カーテンの効果、ウオーター・スプレーと申しますと、水を霧のように噴出させまして、発破後の粉塵の鎮静を図る、鎮静を効果あらしめる。ウオーター・カーテン、これも同じ理窟ではありますが、一つの飛散箇所とその他の箇所をこの霧によつて遮断するウオーター・カーテンの問題、この問題をやつて行きたい。先ほど申しましたウエツテイング・リーゼントの問題、湿潤剤の使用による防塵の効果、これももつと研究して行きたい。それからさく岩のさく孔速度と発塵との関係、それからウエット化による水を使うことによつて、又ウエツテイング・リーゼント、湿潤剤を使うことによつて人体に如何なる影響を及ぼすか、さく岩機ののみの形状、材質、そういうものと発塵はどういうような関係があるか、現在使用しておりますところの粉塵の測定器具、我々のほうとしましては主として粉研コニメーターを使つおりますが、まだまだぱらつきがある。これをもう少し改善して行きたい。併せてその他の測定器具インピージヤーとか、そういうふうなほかの測定器具との関連、それが今のところはつきりいたしておりません。おのおのが別個の数字が出て参ります。これとの関連を究明したい。通気の問題、こういうものも我々委員会としては研究して行きたいと考えております。
 然らば現在各鉱山において如何なる防塵の実態であるか、これを申上げげてみたいと思います。保安法規に即しまして鉱山保安局の有効適切な行政処置と、又我々粉塵防止研究会の研究調査の結果による指導に基きまして、鉱山は自発的な立場から予防対策を講じているのであります。一つは粉塵発生の抑制であります。粉塵の発生するのを防ぐ従来給水、さく岩機に水をやること、この給水はウオーター・タンクを使用しておつたのであります。併しながら粉塵を防ぐという意味合から水が非常に効果的である。さく岩作業のみならず、その切羽の周囲の岩盤に撒水することによつて相当効果がある。こういうふうなことから従来のウオーター・タンクでは非常に働く方々もその煩に堪えない、しよつちゆう水を汲んで来なければいかん、こういうふうなこともありますので、近来はウオーター・パイプを敷設して参つたのであります。パイプによつて水を切羽まで給水する。保安局の調査によりますと、二十八年の三月末現在です。金属、非金属鉱山においてパイプの総延長三百二十三キロメーターと記憶しております。なお今後全鉱山の末端までこのウオーター・パイプを敷設すると仮定したならば、なお数百キロメーターのパイプが必要である。併しこのパイプの敷設は相当経費が嵩みますので、恐らく中小鉱山におきましては採算的に困難を来たすんじやないか、そういうふうに考えております。又保安局の調査によりますと、二十七年の一月に全鉱山のさく岩機の湿式化されている率は五九・の七%になつております。それが二十八年の九月末現在におきましては八四・五%まで湿式化されている。で今年の九月までには全さく岩機が湿式化されるのじやなかろうか。併しこの問題につきましては、先ほど足尾さんのおつしやるように、機械のみが、湿式化の機械が使われているという数字も入つているだろうと私は考えております。それに対する対策は我々委員会として後ほど申述べたいと思います。私の会社の三菱金属鉱業におきましては約七百台のさく岩機が湿式化されております。又場所により鉱山により、いろいろな事情におきましてなおドライのところがありますのですが、うちの会社では九〇%以上のものが実際湿式化されていると私は確信しております。
 先ほど申上げましたウオーター・パイプの問題でありますが、経済的に非常に困難を来たすんじやなかろうかということは、我々の会社では現在この水を給水するというためのウォーター・パイプは百四キロメーターであります。これだけのパイプを敷設しまして、これは水を供給するためにはいろいろな施設を講じなければいかん。山の天辺に貯水タンク、又は場所によつてはポンプで揚水しなければならん、こういうような場所もありますので、平均しますと一メートル当り二千四百円くらいの金額が計上されております。そこで中小企業体におきましてはなかなか困難があるのではなかろうかと私は想像いたすのであります。先ほど申しました湿式化と使用する水量と粉塵抑制率は必ずしも比例はしておらん。鉱山の岩質、鉱床の成因、又使用しておるところのさく岩機の種類、ビツトの種類によつてそれぞれ異ります。この点については現地では研究されております。
 それから抑制の二といたしましては湿潤剤の使用であります。先ほど申しましたウエツテイング・リーゼントの問題であります。これは水の中に約〇・二%程度の或る薬品を混入いたしまして、さく岩機に給水いたすのであります。これは水の表面張力を減少して物を濡らしやすくする。そうして瞬間的に粉塵を抑え、沈降せしめる、こういうふうな効果があるのであります。水のみを使用しまして、そうして粉塵を抑えるという効果の正確な数字は未だつかんではおりませんですが、二〇%くらいの効果があるんじやなかろうか、これも研究中であります。
 併しながらこのウエツテイング・リーゼントの使用につきましては、岩質の種類と、使用する水の性質、酸性とかアルカリとか、こういう水の性質と、さく岩機に対する影響、即ちさく岩機に使つておるところの機械油を洗つてしまう虞れがあるわけであります。洗滌のコントロール、それから滲透力の増大、坑内でそういうふうな薬品を使う関係上、坑外に出て来ましたところの鉱石を処理する選鉱所のいわゆる実収率の問題、こういう点になお幾多の問題が残されておるわけであります。現地におきましても研究はいたしておりますですが、我々としましてはあらゆる面において最も有効であり、而もコストの安いものが必要とされるのであります。この点についていろいろメーカーと共々に研究いたしておるのであります。現在市販されておりますところのこのウエツテイング・リーゼントは、三井化学のネオ・ソープ、三池合成のミケ・ソープ、日本油脂のニユーレツクス、日産化学のニッサン・ウエツト、ライオン油脂のライポン、日新化学のソープレツクス、こういうものが市販されておりますが、現在はキロ百五、六十円程度であります。一切羽に使用いたしますと二十円前後の金がかかるのであります。この点でなお研究する余地があるだろうと思います。
 それから二番目には、発生粉塵を如何にして捕捉するか、発生粉塵の捕捉の問題であります。先ほど申しましたウオーター・スプレヤー、ウオーター・カーテンであります。で、ウオーター・スプレヤーは岩盤に付着しておるところの粉塵を再び飛散させないということにも効果があるのであります。又運搬中に鉱石から発散するところの粉塵、これを防止する、こういうふうな効果があるのであります。その次は足尾式のダスト・コレクターであります。これは先ほど申しましたように、技術試験所の認定を受けましたものですが、湿式用のさく岩機ののみは、御承知のように太いのであります。中が中空でありまして、これから水を送る。併し小型のさく岩機はのみ自体も細いのであります。そこで細いために穴をあけるだけの余裕がない。従来はさく岩の孔口にスプレヤーを用意いたしまして、水を用意いたしまして、これから孔口に水を吸収さしたわけでありますが、なかなか防塵の効果がなかつたのであります。それからいろいろ研究いたしました結果、足尾式のコレクターというものが製作されたわけであります。で、そういうさく岩機、それから又鉱山によりましては非常に粘土質な鉱床があるのでありまして、さく岩機に水を使うことによつてその鉱石が粘土化する、なお更粘土化する、又一方坑道その他がふくれ上つてしまう。鉱石が粘着する。こういうことは保安上、又作業に重大な支障を来たすのであります。又鉱山は必ずしも水があるとは限りませんで、使用する水の運搬に非常な不便な所があるのであります。又先ほど申上げましたように、経済的な面からパイプを敷くことができん。併しながら粉塵は防止しなければいかんというふうな企業体がなおたくさんあるわけであります。こういうところにこの足尾式のダスト・コレクターを使用することによつて非常な効果を挙げておるのであります。それで、技術試験所の成績によりますと、全然水を使わんところのさく岩機から出る粉塵数、これを一〇〇とした場合には、これはたしか足尾さんがどこかで実験された、ちよつと記憶がありませんですが、一〇〇としますと、水を使つた場合には二一・一%までになる。それからこのダスト・コレクターを使用した場合も二一・一%の数字が出て参つたのであります。勿論これは使用しましてから長い年月たつておりませんで、ばらつきはあるかと思いますが、技術試験所のお方が直接山に行きまして試験された結果でありまして、これによつて使用許可されております。
 防塵の最も効果的な方法としましては、今申上げました水が最も効果的でありますが、これと並行しまして、通気の問題が解決されなければいかんと思います。石炭山におきましては、ガス爆発防止の観点から通気が或る程度非常にコントロールされておるのでありますが、現在我々が働くところの金属鉱山におきましては自然通気が主であります。これをすぐ通気を改善せよ、扇風機を付けろ、こう申されましても、鉱床の複雑な、いろいろの種類が複雑と申しますか、これによりまして操業をやめてやりましても、恐らく相当な年月がかかるのじやなかろうか。又企業家としましても、通気方面に全力を傾倒するということはなかなか困難なことでありますし、又不可能なことだと思つております。こういうような関係で通気の問題は、よいということがわかりつつもやり得ない現況じやないだろうか。併しながら大企業におきましては、逐次この面に計画を進めて参りまして、局部的な扇風機を逐次運転して通気の改善を図つております。ただ問題は、これを運転しまして空気を攪拌する。攪拌するというふうなことがありますれば、その粉塵の集まつたところの空気が逆に粉塵のない所に進んで行くというふうな慮れがなきにしもあらずでありまして非常に綿密な計画の下にこの通気の改善をしなきやいかんだろう。こういうふうに考えておりまして、大きな鉱山におきましては、着々その面に向つて計画を進めております。又現場におきましては、働く者の暴露時間、いわゆる粉塵にさらされる時間の短縮を図つております。又一方労働力の軽減を計画し、又実施されておる山もあります。
 粉塵防止の積極的な方法と申しますと、先ほども申しました水を使う、通気、こういうことになつておりますのですが、作業方法の改善によりまして、働く者が粉塵が飛散する場所にとどまる時間を短縮する、これも非常に効果がある問題と思います。けい肺の予防に有効と考えるのであります。それで現場におきましてはジヤンボーその他の機械化によりまして、操業時間を短縮して行きたい。又この機械化によりまして労働時間の短縮、私は現場の人間でありまして、医学的なことはわかりませんですが、けい肺とかそういうふうなものも、やはり重労働をやられる時間が長ければけい肺に悪い、こういうことも聞いておりますので、とにかく楽に仕事ができる態勢に持つて行こう、それから先ほどのみの問題を申しましたですが、イゲタロイとかそういうふうな超硬金、特別に硬い金で作られたのみを使用することによつて穿孔速度の上昇を図る、孔を早くもんでしまう。それから神岡その他でやられておりますですが、長い孔をもむ、長孔発破法の採用をしたい、ミリセコンド電気発破法、こういうものを使いまして、破砕鉱量を殖やす、破砕鉱量を殖やすことによつてさく岩の回数を減少して行く、それから現場では上り発破と申しますか、働く人が帰るときに、坑外に出るときに発破をかける、又は電気発破、そういう発破方法を採用しまして、朝晩にさく岩をやり、二番方に発破をかけ、三番方に粉塵を沈降さして、そうして又朝晩に人間が降りる、ほかに働く人がおらん所へ発破をかけて、おらんうちに煙を下げてしまう。こういうような方法、もう一つ問題になりますことは、いわゆる作業のSOPと申しますか、この頃労働方面で研究されておりますが、今我々のほうでも研究しておりますが、作業の標準化、これを図りましてれ不熟練な働く人たちにも簡単に作業方法を覚えさせる、従来はさく岩と申しますと、十年、二十年きまつて作業をやつておりました関係上、粉塵にさらされる時間が非常に長かつたのであります。この人は特業を持つておつたためにほかの人と代えられなかつた。今度は作業の標準化を図りまして、どなた様にも短い時間でその作業を一人前にやり得るというように標準化を図りまして、その職種の固定化を避けようじやないか、こういうことを現在考え、又一部は実行しております。そのほかに、マスクの使用は、さく岩夫は勿論、運搬、支柱の面までマスクは使用されておると確信しております。
 以上簡単ですが、現状を申上げました。
#34
○委員長(栗山良夫君) 有難うございました。次に頓所君にお願いいたします。
#35
○参考人(頓所佐一君) 尾去沢鉱山の頓所でございます。申上げる前に、二十七年の十月の労働省の巡回検診の結果、本日参考人として呼ばれました私自身もけい肺の第一度であるということを先にお含みおき願いたいと思います。当然現場関係でございますので、医学的なことはよくわかりません。先ず順序としまして、足尾の石原君のほうから言つたことと若干タブルかも知れませんが、その点は御了承願いたいと思います。
 第一点の予防措置の問題でございますが、尾去沢鉱業所の実態としましては、現在けい肺予防には、ほかに手が打たれない、これ以外に手がないというところまで全部実施をいたしております。即ちウオーター・パイプラインの設置、これは延べにしまして三万八千四百メーター、この分につきましてなお仙台の監督局のほうから過日指摘があつたそうでございますが、なお二千メーターほど不足しているから、それを早く敷設せよというような命令があつたようですが、この点につきましては、私ども現場に働くさく岩鉱員その他としましても若干異論が、ございまして、鉱量のない遠距離の切羽までこういう長いパイプを引いてもいいのかというような点も若干あると思いますが、結局そういうような所にはウオーター・タンクを現在やつておりますので、その点については問題はないと思つております。即ち給水関係が全部完成したことによりまして機械は一〇〇%湿式化しております。
 なお防塵関係の問題でございますが、マスクといたしましては重松のTSのナンバー一〇、あれを使用しておりす。さく岩鉱員は一〇〇%使用しております。支柱はおおむね六〇%、運搬はその粉塵の発生の度合のひどい切羽のときに貸し与えておるわけであります。それから先ほど進藤さんから説明のありましたウオーター・スプレヤー、ウオーター・カーテンの問題でございますが、尾去沢の実態といたしましては非常に坑口が余計あいておりまして、通気は、私尾去沢に参りまして十一年ほどでございますが、ほかの鉱山と比較して見ますと著しく通気はよろしいということが言えるのじやないかと思つております。ウオーター・スプレヤー、ウオーター・カーテンの問題につきましては、試験上若干やりましたが、尾去沢の実態からしまして、果してこういうようなことが効果があるのかないのかというような問題よりも、むしろ今早急にこういうことをやる必要はないのじやないかというようなことで、効果面からいつて考慮中であります。
 次に吸塵関係の、先ほど進藤さんからも説明がありましたが、扇風機の問題でございますが、これは現在尾去沢におきましては、一番厚い切羽の、而も湿度の高い赤坂の上三坑道というところに五馬力を一台据付けております。なお最近の例によりまして、選鉱のほうに相当のけい肺患者が出ておりますので、今年度一応予算を本店から許可になりまして、この選鉱のほうにも今年の九月頃には全部こういつたフアンの設置、そういつたことは終ることになつております。機械の台数その他は省略さして頂きます。
 さて、尾去沢におけるところのけい肺の罹患者数というような問題に入るわけでありますが、その前に、私どもの鉱山は労働組合と職員組合と分れておりまして、職員組合の概数はほぼ三百というふうに記憶しておりますが、それにこれから申上げる数字を加えて頂けば尾去沢の鉱山の従業員の数というものが出て参ります。即ち男が二千三百十七名、女が二百五十九名、合計二千五百七十六名、こういう数字になつております。それから二十七年の十月現在に労働省が行いました巡回検診の結果でございますが、X線所見による分類でございますが、けい肺一度の者五百七十八名、二度の者二十七名、三度の者三名、このうち肺結核を併発しておる者が三十六名、肺結核併発の疑のある者が十六名、けい肺措置要領の三によつて現在休業しておる者が、当時の数字より殖えておりますが、当時現在で四十三名、要領二の者が十四名、一の者が五百五十一名という数字を示しております。当然鉱業所要員の医師の方の診断その他によつて、労働省のこういつた巡回検診の基礎に基いていろいろと常時こういつた人たちに対して措置要領に基いて管理を行つておるわけでございますが、問題となりますのは、場所の医師、それから我々が見ましても、随分弱つて来た、あの人はよろけではないかということを医師に具申いたしまして、そうして中央へ認定申請を出すわけでございますが、この場所の医師によるところの認定申請を行い、且つ労働省から最終決定がなされるわけでございますが、その間の日時が非常に長いことでございまして、この問題につきましては、私ども現場におります者といたしまして、けい肺に侵されて而も決定になるまでには当然健康保険の六〇%、いわゆる標準報酬日額の六〇%というもので生活をして行くのでありますが、尾去沢の実態としましては、全鉱所属関係では一番早い決定をなされておるように聞いておりますが、それでもなお平均三カ月、約九十日という日数が消費されております。
 一つの例を申上げるならば、これは私死骸解剖したときに立会つたのでございますが、昨年九月十八日に死亡いたしました高橋永助という人間でございますが、十九日解剖いたしまして、組織標本をこしらえたわけでございますが、この組織標本をこしらえる期間を若干必要としますので、昨年の十月の九日に所轄大館の労働基準監督署へ申請いたしたわけでございます。ところが二月二十八日現在未だに決定の通知が来ておりません。即ち百四十二日たつても未だ決定がないということでございます。これは昨日全鉱に参りまして、労働省をプツシュいたしましたところが、大体十日頃で何とかできるじやないかというお返事があつたそうでございますが、このうち家族に子供が一人ございまして、そうしてお嫁さんを持つているのですが、ちよつと素行上の問題がありまして、鉱業所のほうに稼働することができ得なくして、現在組夫として各地を転々として歩いております。なお奥さんは子供二人を抱えて御主人からの仕送りがあるかないかということを日々心配しながら暮しておる。小屋に住んでおる気の毒な方でございます。こういうふうな問題につきましても、地方の民生委員或いは地方事務所その他と連絡して、一応最低生活というものをどうにかこうにか親戚の援助その他によつて賄出さしておりますが、こういう問題もあるので、もう少し早く私たちとしてはこれは認定をして頂きたいということでございます。
 なお、認定に際して私たち若干の疑問があるのでございますが、衛生課においては一応認定は終つても、今度労災課に行きまして、労災課のほうで補償の問題がひつかかりまして、当然金の問題になつて来ると思うのでありますが、私たちは中間報告を受けます際に、労災課との関係において未だ決定せずというような連絡がしよつちゆうあるわけであります。こういうような衛生課が一応けい肺の、而も肺結核を合併したものという認定を加えながら、何が好き好んで労災課によつてこれを保留しておかなければならないか。保留することによつて現地の家族が著しく生活の困窮を来たしておる。こういうようなことについては私たちは著しく疑問を持つておる次第であります。
 それから問題の一つでございますが、現在、先ほど石原君も御説明申上げておりましたが、けい肺協定というものが私どものほうでも、組合と会社の間にその必要性を両者ともに認め合つております。けい肺協定の中に、けい肺その他の家族で当然稼働でき得る人については優先採用をするというような条項がございます。それに従いまして私どものほうでは優先採用を会社に対してしてもらつているわけでありますが、こういう優先採用をしておりましても、三年を経過して打切られておる現状でございまして家族を採用をさしてもらつて、一応生活の問題については見通しをつけさせるということも必要でございますが、新らしく採用された人が賃金が高かろうはずはないのでありまして、こういつた問題から、当然家族の生活の問題から来まして、本人がなお病院へ通うか若しくは入院して治療しなければならないのにかかわらず、三年を経過したことによつて打切られておる。こういうことからいたしまして、打切り後に死亡する患者も著しい数があることでございます。こういうことは一にかかつて療養期間の延長、即ち現行法の三年を以てしてはどうにもならない。即ち薬費その他全部家族が負担するということになりますと、子供を稼がしたとしても、子供だけのあれでは賄い切れないという現状でございます。現在打切りになつた人は三十三名と記憶しておりますが、これは労災法適用者だけでございます。
 そのうちひどい例でございますが、或る一人の人の亡くなられましたときに、私解剖に立会つたのでございますが、これは高堂清之助という人でございますが、二十六年の五月四日に死亡しておりまして、二期の肺結核合併症でございますが、この人の解剖のときの肺の状況でございますが、さすが解剖に立会うような強気な私でございましたが、この肺の状況を見たときたは、実は私も近い将来こういうことになるのかと思つたときには慄然としたのでございます。即ち肺を取出して肺の形をしておるのが約三分の二程度でございまして、その上三分の一程度は全部腐つておつて、いわゆる空洞になつておつて、それを押したところが、じゆつと音を立てて青いうみのようなものが飛び出して来たというのがございます。勿論二度、三度けい肺だけという人で、打切り後もかなり元気で過しておる人もあつたのでありますが、どうしても肺結核を合併しやすいというところから、肺結核合併症の人が圧倒的に多いわけであります。こういつた問題については一応の薬その他はできておりますけれども、この問題は三年やそこらではどうしても現在は治らないというところから、私たちはこの療養期間の延長ということについて極力お願いしなければならないと考えております。これは会社側からの発表で、一応私たちはそのくらいの費用はかかるのではないかというように考えておりますが、メリツト制の問題、その他から行きまして、けい肺患者が一人出ることによつて一カ年ですかに大体百万円の金が会社が要るそうでございます。これは会社側の説明でございますので数字は私よくわかりませんが、この内訳は、一応六割は労災法補償によるところの六割であります。あと四割が貸金ベースからスライドして行くと、その補償の四割もスライドして行くわけでありますから、だんだん多くなつて行くわけであります。その他社宅の問題、その他全部を会社が負担するわけでありますから、当然そのくらいの金額になるのではないかと考えております。現在のところでは力関係によつて一応私たちは会社に要求いたしましてやつてもらつておりますけれども、こういつた問題についても十分国として考えて頂かなければいけないのではないかというように考えております。
 次に配置転換の問題でございますが、先ほど申上げました要領一、二、三の場合については問題はございませんが、一、二の問題、特に二の問題が一番問題になるのですが、これは粉塵のないところの現場に配置転換をさせなければならないという問題がありますが、尾去沢の実態におきましては、甚だ残念ではございますが、未だ曾つて労災法施行後配置転換を一人も行なつておりません。あえて申上げるならば、故意に行なつていないわけであります。ということは、配置転換をすることによつて、現在会社との間にけい肺協定がございまして、本人のいたときの平均賃金の三カ月分を一応一時金として転換補償として出すわけでございますが、この程度の金額では問題にならないというわけでございます。一応坑外の現場に出されるというと、はつきり申せば衛生夫と申しましても雑夫程度しかできません。そうすると家族は何人あつても、家族手当というものは僅少でございますので、収入が六、七千円に落ちてしまうということによつて全然問題にならなくなるわけでございます。一番いい例を申上げますが、過去に起つた問題でございますが、尾去沢で四人ばかり問題になつた人がございました。というのは、当時の基準監督署において、果してこういうことを申上げてよいかどうかわかりませんが、実情だから申上げますが、一応業務上の傷病であるというので、監督署で六〇%の補償をしておつたわけでございます。従つて会社も四〇%の補償をしておつた。ところが労働省から審査に参りまして、それは過渡期であつたのでああいう問題があつたと思いますが、四名ほどがこれは業務上の傷病でないというような工合に直されました。七名のうち私たち努力しまして三名だけは元のようにしたのですが、四名がひつかかつた。その問題をいわゆる措置要領二として坑外に配置転換をさせたいという会社の申出があつたわけでございます。併しながら坑外に配置転換をすることになつて、先ほど申上げましたように著しく収入が半分以下になつてしまうわけです。六、七千円になつてしまうということなんでございますから到底でき得ない。それよりもむしろ現場に戻して、そうして本人の賃金を補償させながら、現場の或る程度楽なほかの仕事をさしてもらうことを採鉱課長その他に話しまして、会社側もこのけい肺の問題については非常に理解があるので、仲間が文句を言わなかつたらそういう措置をとろうというので、一応さく岩なら、さく岩の作業でございますが、一応さく岩作業には一つのさく岩機械の修理の仕事があるので、このさく岩の修理、たまたま手掘り工夫ならダイナマイト運搬という仕事をさせております。そういうふうにして約一カ年乃至二カ年を経過するうちに、現在一人を残して、全部又再び要領の三になつて休業しております。そういうような実態からしまして、若しあのとき軽はずみに措置要領の二であるということによつて配置転換をさしてしまつたら、当然再びこういつた問題になつたときには平均賃金が七千円か八千円であるというわけでございます。現在はこの人たちの平均賃金は一人は六百三十四円七十三銭ということになつております。それからもう一人は四百二十八円六十五銭でございますが、そういうようなときに坑外からということになりますと、大体坑内から出た人でけい肺になつている、昔戦時中或いは戦後いち早く坑外の雑夫程度に落ちた人の平均賃金は大体三百円から三百五十円でございます。こういう問題が起りますので、当然配置転換の問題については、私たちは少くも一生というふうなことを申上げたいのですが、そういうことも許されないとするならば、当然或る程度の期間というものはその収入によつて生計が営まれるような、なじむまでの期間というものは配置転換補償というものはやはり必要じやないかというふうに考えております。こういう制度がないことによつて、勢い現在ではむしろ会社側にお願いするという立場で、仲間の者がみんな応援し合つて、本人たちの作業を分担するとか或いは軽い仕事につけてもらつて、そのまま仲間の賃金を分けてやつておるという状態でございます。こういう問題も十分御考慮願わなければならんのじやないかというふうに考えております。
 以上時間の関係もございますので、簡単でございますがこの程度にいたしまして、あと御質問がございましたならばお答えいたしたいと思います。
#36
○委員長(栗山良夫君) 有難うございました。次に北里忠雄君にお願いいたします。
#37
○参考人(北里忠雄君) 本日は実情を御聴取になる会合でございますので、意見は差控えまして、従来までにけい肺問題に対して金属鉱山界の経営者がとつて参りました処置、或いは政府のけい肺対策について協力して来ました事実を御報告を申上げて、現在とりつつある措置について申述べたいと思います。
 御承知と思いますが、金属鉱山界でこのけい肺問題が労使間の重要な問題として取上げられましたのは昭和二十三年の七月に、当時鉱山経営者連盟という団体がございましたが、それと御承知の全鉱との間に全国金属鉱山復興会議というのを組織いたしましたのでありますが、その最初の会合でこのけい肺問題が大きく労使の間に取上げられたのであります。それから労使間に賃金交渉その他御承知のような取極が行われておりますのに並行いたしまして、この金属鉱山のけい肺患者を積極的に、自発的に保護して行くという考え方の下に、双方の交渉の結果、けい肺協定というのが生まれました。これは全国のけい肺についての補償なり予防の基準を示したものでございます。それに基いて傘下の各社がそれぞれ実情に応じたけい肺協定を結んで参つたのであります。その協定は漸次只今拡大されつつございますが、内容においても又それぞれの事情に応じて改善をされて今日に至つております。
 それで先ほどもお話がございましたように、このけい肺協定の内容について極く概略をお話申上げたいと思うのでありますが、現在大体けい肺協定を持つております会社が、当業界におきましては十四社でございます。その対象の人員は七万五百でございます。概数でございますが、これだけの者がけい肺協定に適用を受けておる数でございます。で、鉱山全体の数から申しますと、約七〇%ぐらいの比率を占めております。まあ大勢としては大多数の者がこの協定の下にあるということが言えると思うのであります。そこでけい肺協定の内容は各社多少違つておりますけれども、大体の大勢をここでかいつまんで申上げますというと、補償関係におきましては休業補償、それから転換手当、栄養補給、それから療養見舞金、それから停年延期、打切補償の附加、退職手当の附加、主な項目は以上のような、補償の問題以外の問題もございますけれども、それらを合せまして七項目くらいを挙げられると思うのであります。
 休業補償のほうは基準法で定められております六〇%から更に、只今もお話がありましたように上廻つて一〇〇%渡しておる箇所があります。又会社によつては八〇%の補償をいたしておる実情であります。それから転換手当につきましては、大体三カ月分を支給いたしております。これは坑内における収入が大体において坑外よりも高いのが普通でございますので、その差額を半年間補償するという考え方に立つて、平均賃金の三カ月分といつたようなものが算定せられておるとお考え頂いていいのではないかと思うのです。
 それから栄養補給は、会社によつてまちまちでございます。場合によつては現物を支給する、又それに代えて一日幾らという金額を支給しておるところもございます。見舞金もあるところとないところとございますけれども、これもそれぞれ患者の事情によつて一年に何回か見舞金を支給しておる、こういうようなわけでございます。それから停年のほうは、大体延期をいたしまして或る程度症状が安定すると申しますか、その頃まで会社のほうで面倒を見る、こういうふうなことになつております。これは基準法の建前でもありますので、それに従つて処置いたしております。打切補償の附加につきましては、これも会社によつて金額が相当相違がございますけれども、九十日から、或いは多いところは八百日といつたような附加をいたしておる実情であります。退職手当につきましてもやはり区々でございますけれども、若干の附加金を出しておる会社がございます。
 以上申上げましたように、補償につきましては相当程度けい肺患者に対しては特別の措置を講じておるという現況でございますので、申述べた次第でございます。
 次に政府の対策につきまして、只今過去におきまして、又現在においてどういうふうに経営者側が協力をしておりますか、それについて申上げたいと思うのであります。労働省のほうでもけい肺対策の推進については、御存じの通り非常に積極的な御努力をして頂いておるのでありますが、経営者側といたしましても、労働省の中にありますけい肺審議会或いはその下部機構であります補償部会、或いは診断部会といつたところにそれぞれ委員を置き、その対策の審議に当つております。
 それからなお労働省が二十三年から御実施になりました巡回検診につきましても、先ず手始めに金属鉱山を巡回をしてけい肺患者の診断をするということでありましたので、それについて経済的に精神的に御協力を申上げて、全体ではございませんが、大多数の鉱山の検診を終了されまして、只今他産業のほうに検診が移つておる、こういう事情でございます。それで、全鉱山でございませんので、その数字は的確ではございませんけれども、それらの発見された患者の数から大体推定をいたしますと、約五千人という数字が只今出ております。これは私のほうで推定をいたしました数でございますが、やはり労働省でも御推定になつておられます数字がこれとほぼ一致した数字かと記憶いたしております。この中には、先ほどお話にもありましたように、けい肺一度、二度、三度、それからけい肺結核と、この四種類のものを合計したものでありますが、その中で最も多数を占めておりますのはけい肺一度の三千八百人という数字でございます。けい肺二度は五百八十、けい肺三度は百七十、それからけい肺結核は六百三十という数字になつております。
 それで鉱山では、只今申上げましたような事情はもとより、更にずつと従前からけい肺については非常な関心を持つておりまして、その医師の養成にも努めておつたのでありますが、更に労働省ではそれらを推進するために、鉱山医に対するけい肺の講習会を二回ほど開催されまして、これについては労働組合も協力し、医者の養成を相当多数いたしたのであります。それから更に罹患者につきましては、今日御出席になつておられます寺本先生が曾つて基準局長の時代に、非常な熱意を持つてこの病院の建設を決意いたされまして、経営者側もこれに対して万全の協力をしたのでございます。只今御承知のように鬼怒川に病院が立派に建つておるわけでありまして、ここに全国各鉱山の重軽症の罹患者を収容いたしております。すでに諸先生がたには病院を御視察になられ、その実情については十分御承知のことでございますから、省略さして頂きます。
 それからなお日本産業衛生協会というのが御存じのようにございますが、その中に昨年鉱山医学研究会というものができまして、鉱山の医者が集つてここでけい肺のみならずいろいろな問題を研究いたしております。で聞き及ぶところによりますと、昨年労働省からけい肺結核についてまだ医薬的に研究がされていないというので、この研究会にこれが付託されまして、目下調査中であるようであります。今二万数千の従業員を対象にして基礎的な調査の段階であるように伺つておるのでありますが、将来この研究会でそれらの点が明らかにされるのではないかというふうに期待いたしておる次第であります。
 話が前後いたしますけれども、更に経営者側といたしましては、先ほど申しましたけい肺療養所に対しまして一年四回慰問の行事をいたしております。病院に入つておる方々に慰安を与え、又見舞金を持参して、各入院患者の会社がそれぞれ手厚く慰労をいたしておりまして、本年も三月その行事を行うことに予定をいたしておるような事情でございます。
 甚だ大ざつぱな話をいたしまして、今日の御趣旨に副わないかと思うのでございますが、時間の関係もございますので、あと御質問に答えることといたしまして、これだけで終りたいと思います。
#38
○委員長(栗山良夫君) 一通り各参考人の皆様がたから御意見と申しますか、御説明を承わつたわけでありますが、各委員から御質疑があれば順次御発言願いたいと思います。
#39
○吉田法晴君 進藤さんにちよつとお尋ねをいたしますが、先ほどウオーター・パイプの全延長、金属山で三百二十三キロメートルということでございましたが、まあ全坑道の長さと申しますか、先ほど尾去沢の例もございましたから一概には言えないかと思いますけれども、一応そのパーセンテージという点から、全坑道の長さといつたようなものをお示し頂けましたらお願いいたします。
#40
○参考人(進藤勝郎君) 全坑道の長さと申しましても、廃坑になりましたものもあるでしようし、ちよつと……。
#41
○吉田法晴君 大体のパーセンテージでもかまいませんから……。大まかに半分だとか七割だとか、そういうところでもよろしいのですが……。
#42
○参考人(進藤勝郎君) 休坑とか廃坑とかになりましたものがありますが恐らく現在作業いたしておりますところの切羽まで行ける坑道は、現在使用しております坑道でありますが、恐らく三割か四割程度じやなかろうかと思つております。
#43
○吉田法晴君 湿式化については、例えば一〇〇パーセント、或いは殆んど全部行われておるという山の実情等も伺いましたし、それから或いは全体として九〇パーセント以上だろうと、こういうようなお話でしたが、ハイプ・ラインは只今のお話でございますと四
○パーセント張られておると、こういうことの御説明のようでありますが、結局私ども多少拝見をいたしました実情から見ましても、金属山の場合に、大きいところは殆んど湿式化されておる、或いはパイプ・ラインが張られておる、こういうような実情に伺つておるのであります。残つておるのは、中小のところではないかと思います。これは他の産業の場合にも問題になると思うのですが、パイプ・ラインの単価等にも先ほどお触れになりましたが、今まで大企業で、二十三年以来ですか、湿式化或いは防塵設備がなされて来たのは……、或いはこれだけについて融資がありましたのか、或いはなかつたとしても、その当時の補助金政策といいますか、そういうような何かで実際に行われて来たと、こういうことであろうかと思うのでありますが、その湿式化なり防塵設備をやつて来られました資金源と申しますか、そういうものについて、概括でよろしうございますが……。
#44
○参考人(進藤勝郎君) 私どものほうの会社といたしましては、いわゆる日常の経営費から割愛しましてやつて参つたようなわけであります。
#45
○吉田法晴君 まあ一遍にパイプを張ると申しましても大変でしようが、それは経常費なんですか、それとも起業費といいますか、財産になら財産に入れて償却するという方法をとられるのでありますか。
#46
○参考人(進藤勝郎君) 山によりましては、起業費として計上された山もありますし、社内としてもいろいろまちまちになつておるわけであります。又毎月々々の幾らかずつ経常費でやられたような山もあります。
#47
○吉田法晴君 若し全体について北国さん御存じでしたら……。今まで湿式化なり或いは防塵設備をして来ております。これは全鉱山について言えば非常な金額になると思うのですが、それが実際に財政的、財源的にどういう工合にやられて来ておるか、実態を簡単に一つ御説明頂きたいと思います。
#48
○参考人(北里忠雄君) 財政的、財源的というのは、企業がそれを負担してやつたか、政府がそういうような補助金を出したかということですか。
#49
○吉田法晴君 まあそういうことです。
#50
○参考人(北里忠雄君) これについては、私のほうのその担当の課長が来ておりますが、その発言をお許し預けませんか。
#51
○委員長(栗山良夫君) 速記をとめて。
  [速記中止]
#52
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて。
#53
○吉田法晴君 先ほど進藤さんから通気のお話がございましたが、鉱山全体の通気というものも問題になるだろうと思うのですが、例えば局扇等によりましても、ただの局扇では粉塵の移動だけだろうと思うのです。吸塵の機能を持ちます吸塵機と申しますか、そういうものを含めた通気の施設というものは考えられておらんのでございましようか
#54
○参考人(進藤勝郎君) 現在は局部的に非常に悪い場所から逐次局部扇風機を設置いしておるわけであります、大企業におきましてはですね。それと併せて全体的な通気を何とか付けて行かれないかとこういうことで、今後掘られる坑道はそういうことを考えた上でいろいろ場所の選定をやることになつておるわけであります。
#55
○吉田法晴君 診断等については、組合の委員長さんたちから簡単ですが公述を頂いたわけですが、これについて例えば地方の基準局にも或いは診断官とでも申しますか、診断をし得る基準監督官を置くようなことも、だんだん少しずつでありますけれども殖えておるのですが、それでもなお半年或いは七、八カ月かかるということになるのでしようか。今までの実績を先ほどお述べ頂いたわけですが、実情と、それからそれについての改善の具体的な方法について御意見がございましたら一つお述べ頂きたい。
#56
○参考人(石原弘之君) 私から申上げます。現在栃木県におきましては、診断が地方に移管されております。この診断を担当しております方は衛生課長、それから宇都宮にあります済生会病院の院長、それから高徳のけい肺労災病院の院長、この三名が診断を決定しております。ところがこの診断の決定に当つて非常に遅れる点は、労災保険金との関係が非常にあるように私たちは聞いておるわけです。ということは、先ほど申上げましたように、十二月以降労災保険金が支払われておらないということは、栃木県にその金がないというのが現状であろうというように考えております。そうしますると栃木県に割当られておりますところの金額というものと患者の数というものに非常に限定をしつつあるのではなかろうかというように考えられるわけです。そういつたような関係から、一月に何名程度の患者の発生があつては困るというような考え方を基準局において持つておるというようにも思われるわけです。そういつた場合に、一月に十名或いは十五名というような患者が出た場合においては、それが逐次非常に遅れて行くというような状況にあるわけなんです。そういつたような点からいたしまして、実際に地方に診断が移管されたということは、診断の決定を迅速化するというのが目的であつたのではなかろうかと考えられますが、そういつたような点で非常に診断の迅速化という点からしても矛盾が来つつあるわけです。ですからこの労災保険金の問題については、更に全体的に十分に考えられなければならない点であろうというように思つております。
 それから診断を行う際に衛生課長が中心になるわけでありますが、やはり遺憾ながら、衛生課長と申しましてもけい肺については十分にこれを承知しておらないという点があるわけでございます。そういつたような意味合いからいたしまして、診断書の作成或いは送付するところのレントゲン写真というようなものについて、非常に事業者として見るならば無理な要求をして来ておるというようなこともあるわけでございます。
 それから又けい肺結核患者について一例を申上げますと、実際に結核菌が出ておる場合に、レントゲン写真においてはなかなかその影像がはつきりしにくいというような場合には、それに対して認定をしないというような例があるわけであります。ところが、現地におきましては結核菌が常に発見されておるというようなことからして、当然これは進行性の結核患者であると、而もけい肺があるというようなことからして、当然法の適用があるべきであるということで申請いたしまするが、そういつた点について現地の医者というものについて非常に信用がないというのですか、なかなかそういつた点を十分考慮してくれない。ただ単にレントゲン写真或いは診断書等によつて決定をするために、非常に数多くのレントゲン写真を要求するというようなことも、更に診断を遅らせる一つの原因ではなかろうかというふうに考えておる次第であります。
 その他細かい点になりますといろいろ問題があるのではないかと思われますが、大きい問題といたしましては、それらのことが栃木県において考えられるわけであります。
#57
○参考人(頓所佐一君) その点におきまして、尾去沢においても、現在までに、今年に入りまして打切られた人は五名と記憶しております。なお今年中に打切られる人が六名でしたか七名でしたかおるわけであります。数をはつきりつかんでおらないで甚だ相済みませんけれども、それに対して基準局で千二百日分の打切補償を支払わなければならないわけでありますが、お金がないそうであります。従つて会社に対して来年度分ですかの金を前納してくれというような要請がなされておるそうであります。診断を地方へ委譲する問題について、私全鉱の方針その他から申しましても、当然地方へ委譲されるならば、長くても一カ月というような程度でなさるべきではないかと考えて、今まで賛成して来ておつたのですが、足尾の例を聞き及ぶに及んで、まあ三カ月程度ならば組合で金を貸してやつてもこれは何とかなるだろうという点も、地方へ委譲するということによつて若干疑問が持たれて来たのであります。地方へ委譲するということによつて今の足尾のような例が生れて来るとするならば、やはり総体的な枠の中において操作するところの中央のほうがいいのではなかろうかというような今一つ疑問を持つておるわけでありますが、この点については、金の面との関係についてどうもシビヤーな点があるのではないかというように考えます。
#58
○吉田法晴君 最後に一つ伺いたいのですが、鬼怒川の病院は、先ほどお話のように、私ども見学に参るというか、調査に参つて、鬼怒川の病院の実態或いは一般にやつておられる実態等も拝見をしたのですが、ああいうけい肺等の病院についてどういう工合に考えておられますか、この点一つ具体的に伺います。
#59
○参考人(石原弘之君) 現在私たちが考えておりますことは特にけい肺結核患者なんですが、自宅療養はできるだけ避けて、入院療養を行なつてもらいたいというのが私たちの考え方であるわけであります。そういつた意味合いにおきまして、できるだけ現在ある施設を利用しようという考え方を持つております。そういつたような関係で、足尾にありますところの入院設備その他に約二十五名の患者が現在療養を行なつております。そのほか高徳のけい肺労災病院には現在六名の患者が入所しております。そういつたようなことで現在の患者の半数が入院療養を行なつておる現状でございます。で高徳に六名しか入所しておらないという理由について、いろいろな不備な点が高徳の病院にあるわけでございます。例えて申上げますならば、家族が見舞に行つた際の宿泊設備というものがない。現在では近くにありますところの鬼怒川温泉或いは職員の合宿所を利用させて頂いておるというのが現状でございますが、こういつた家族が気軽に泊つて、患者の方と十分に面会ができるような設備というものをあの高徳の病院に並行して設置しなければならないというように考えておるわけでございます。たまたまこの間お伺いいたしましたところでは、作られるという予定を聞いておりますが、こういつた設備は早急に作つて頂かなかつたならば、家族が気軽に患者の慰安に行くことができないということも大きな原因であろうというように考えております。
 それからあと一つには二重生活の経済上からする負担の問題であります。やはり現在の休業補償の枠内において、生活と療養とを両立さして行かなければならないわけでございます。そういつたような関係から、患者が一人高徳へ行つておるということであつても、やはり現地におきましては家族が生活をし、なお且つ高徳の入院者に対しても或る程度の生活費というものを送金しなければならないという二重生活が非常に経済的に圧迫をしておるということでございます。
 それから三番目といたしましては、高徳に入所しております患者の慰安設備の問題或いは食事の問題、こういつた内部の問題等がもう少し改善されなかつたならば、患者が安心して入院できないのではなかろうかというようにも考えられるわけでございます。大別いたしますると、足尾の考え方からいたしますならば、以上三つの点を大きく考えて頂くならば、高徳に入院するところの患者数というものも激増して行くのではなかろうかというように考えられるわけであります。
#60
○田畑金光君 私もちよつと北里さんにお尋ねしたいのですが、先ほどの御説明によりますと、けい肺協定を持つている今日の状態は十四社で七万五百人、七〇%を占める、こういうような御説明がありましたが、そうしますと殆んど全般的に協定ができたような情勢にあるわけですが、残りの三〇%はまだ協定を持つていない事業所、鉱山ですか、これはやはり中小鉱山で、会社の経営能力等からして、財政的な点からして、協定を持つまでに至らないのか、それともその他の理由等によつてこうなつておるものか、その点を一つ。
#61
○参考人(北里忠雄君) それは今お話の前者のほうでございまして、鉱山は非常に規模の較差が甚しいものでございますから、それで大体大、中のところは……中といいましても又いろいろ段階がございますけれども、今申上げたようなところは鉱山と言えるようなところでございまして、その他は殆んど零細に属するような小規模のものでございます。でやはり経済的にも基準法以上を上廻つた補償ができないといつたような実情にあるところが多いのでございます。そういうような事情であります。
#62
○田畑金光君 それから鉱業協会としましては、今このけい肺病対策の立法化についていろいろ輿論が取上げて参る段階になつたわけですが、この立法化につきまして鉱業協会等が機関として何らかの意思決定をなされたようなことがあるかどうか、その点ちよつと伺つておきたいと思います。
#63
○参考人(北里忠雄君) 機関としてと申しますのは、協会の機関としてという意味でございますね。
#64
○田畑金光君 そうでございます。
#65
○参考人(北里忠雄君) 協会は各社が構成メンバーで、いろいろ重要問題についてはそれぞれ意思決定はいたしております。それでけい肺法の問題につきましても、金属鉱山会の代表機関として意思決定をしております。
#66
○田畑金光君 それは意思決定をしておるというわけですが、その意思決定の内容ですね、簡単にお聞かせ願えれば幸いだと思います。
#67
○参考人(北里忠雄君) 委員長に御質問申上げてよろしうございましようか。
#68
○委員長(栗山良夫君) どうぞ。
#69
○参考人(北里忠雄君) 実は今日実情報告の会合だということで私ども罷り出たのでございますが、何だか聞き及びますと、将来そういつたようなことについて又経営者側の意見を述べる機会を与えて頂くといつたようなことで実は承知をいたしておりましたのでございますが、今日述べても差支えございませんけれども、そういう会合が若し持たれるといたしますれば、その機会に述べさして頂いたほうが、時間の関係もございますのでよろしいのではないかと思います。
#70
○田畑金光君 じや私はその質問を後日の機会に譲ります。
#71
○委員長(栗山良夫君) お答えいたします。いずれ今御質問のような機会を是非とも作りたいとは考えております。
#72
○参考人(北里忠雄君) ではその機会に申上げます。
#73
○阿具根登君 北里さんにお尋ねいたしますが、只今御説明願いました皆さんの中で、足尾、尾去沢の組合の方のおつしやられることを聞きますと、大体三割近くの人がけい肺になつておる、こういうことになつておるわけですね。ここにおいでの方の職場は、殆んどけい肺の予防措置というのは日本でも優秀なところだと思つております。それが三割近くのけい肺患者が出ておる。今北里さんの説明では七万五百人、約七〇%近くのけい肺患者がおる。そうすると一番設備のいいところでは三割近くの患者が出ておる。ところが全般的に見れば七〇%くらいにしかならない、こういう結果になるわけですが、そういうことなんですか。
#74
○参考人(北里忠雄君) 七〇%と申しますのは、全従業員に対してけい肺協定を適用いたしておりますのが七〇%と申上げたのでございます。今のけい肺罹患者の数ではございません。七万五百人と申しますから、そういうふうに逆にお取りになつたのかも知れません。
#75
○阿具根登君 時間がなくてお急ぎのようですからすぐ打切りますが、七万五百人の中で、数字をおつしやいました、一度から三度確定までの数字を私は計算して七〇%と、こういつたわけなんです。
 それからもつと設備の悪いところは非常に患者が少くて、いいところは非常に多い、これはけい酸粉塵の多少にもよることでしようが、現在検診等の不備があつて、実際は病人はまだおるのじやないか、こういうような感覚を持つたからお聞きしたわけです。
#76
○参考人(北里忠雄君) その中には大体推定が大分入つておりまして、全鉱山を調べないものですからはつきりしたことは申上げかねますけれども、パーセンテージも実際調べてみれば大分動くのじやないかと思います。
#77
○阿具根登君 合併症その他けい肺を合わせて死亡者は大体何年くらいのところが一番多いでしようか。
#78
○参考人(北里忠雄君) 勤続年数でございますか。
#79
○阿具根登君 罹患してから、発病してから何年くらいで死亡されておるのが一番多いのですか、いわゆる三年前であるとか三年後であるとかいうことをお尋ねしておるわけです。
#80
○参考人(北里忠雄君) 私も医者ではございませんから……。
#81
○阿具根登君 データがあるでしよう。
#82
○参考人(北里忠雄君) 死亡データはございません。平均パーセンテージは、全国のやつは。これはこういうことでありますね。けい肺患者というのは、今もお話がありましたけれども、山の岩質によつて同じけい肺患者でも平均余命がいろいろ違つおる。それでA鉱山ではけい肺に罹患いたしましても普通の生命と同じように寿命に達して死んだというのもありますし、それから今御懸念のような、或る山によつては非常に早期に死亡するというような例の多いところもあるのですね。だからこのけい肺の問題というものは、一概に何年で大体大勢として死亡するというようなことは私は言えないのじやないかと思います。その辺の正確なデータがないものですから統計的にはつきり申上げるわけに行かないのでございますけれども、大体今まで扱つて来た感じから申しますと、そういう大勢がつかめないのでございます。死亡の年数なんというものは。
#83
○委員長(栗山良夫君) 御質疑もまだあろうかと思いますが、いずれ又他日に譲りまして、本日の質疑はこれにて終りたいと思います。
 それから参考人の方々に一言委員会を代表して御挨拶申上げます。本日はお聞き及びのような緊急な議事がございましたために、大変予定の時刻より遅れまして、お待たせをいたしました点をお詫びを申上げます。又非常に重要であつて、而も非常に地味な法律案を当委員会は審議をいたしておりますが、これにつきまして御熱心な御所信を寄せて頂きまして厚く御礼を申上げる次第であります。有難うございました。
  ―――――――――――――
#84
○委員長(栗山良夫君) それから先ほど吉田君から出されました緊急動議の問題について続行いたしたいと思います。ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#85
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて下さい。石炭工業の争議に関する賃金カツトの問題について出されました吉田君の緊急動議は次回の委員会において決定するようにして、本日は保留をいたします。それではこれで散会いたします。
   午後五時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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