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1953/04/30 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 農林委員会 第30号
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1953/04/30 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 農林委員会 第30号

#1
第019回国会 農林委員会 第30号
昭和二十九年四月三十日(金曜日)
   午後一時五十五分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
四月二十八日委員横川信夫君及び宮本
邦彦君辞任につき、その補欠として、
吉田萬次君及び小野義夫君を議長にお
いて指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     片柳 眞吉君
   理事
           戸叶  武君
   委員
           川口爲之助君
           重政 庸徳君
           関根 久藏君
           上林 忠次君
           北 勝太郎君
           河野 謙三君
           河合 義一君
           松永 義雄君
           鈴木 強平君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       安楽城敏男君
   常任委員会専門
   員       中田 吉雄君
  説明員
   農林省畜産局経
   済課長     昌谷  孝君
   農林省畜産局畜
   政課長     鵜川 益男君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○酪農振興法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(片柳眞吉君) それでは只今から委員会を開会いたします。
 最初に酪農振興法案を今日は議題にいたします。本法律案につきましては、去る四月十九日提案理由の説明を聞いたのでありますが、更に法案の内容及び参考資料等について政府から補足的説明があれば説明を願いたいと思います。その上で質疑に入りたいと思います。なお本日は政府委員は出席がありませんで、畜産課長、経済課長が見えております。
#3
○説明員(昌谷孝君) お配りいたしました酪農振興法の内容につきまして補足的に御説明を申上げます。提案の理由で申しましたように、この法律の内容といたしましては、第一に集約酪農地域の建設、それから第二に牛乳取引の公正化、その二つをこの法律の内容といたしております。
 で、最近酪農の振興と申しますか、酪農が非常なテンポで発展をいたしておりまして、年々二割乃至三割の乳牛なり、牛乳の増産を見ておるわけでありますが、それでもなお且つ消費に追い付かないと申しますか、一向に需給関係が緩和いたしませず、その関係上価格等についても昨年の秋以来むしろ増産したにかかわらず、値が上つておるといつたような結果を見ております。その関係をこの際よく分析をいたしまして、今後の酪農の振興のあり方というものをきめて参りたいというのが、この酪農振興法の狙いでございます。従いまして酪農を振興いたします場合に、従来の日本の酪農の一番弱い点とされておりました個々の農家の飼料基盤が脆弱であるということ、又そういつた日本の農業のあり方から、必然的かとも思うのでありますけれども、乳牛の使用密度と申しますか、乳牛の使用頭数が非常に散在いたしておりまして、酪農業が成立するための条件として非常に悪い条件になつているわけであります。幸いと申しますか、従来の日本の酪農のあり方が、市乳、牛乳については消費地を中心にいたしまして自然発生的に伸びて参つたので、その限りにおいては都市との関係、立地条件は当然に備わつておつたわけなんでございますが、乳製品を中心にして発達したり、又乳製品の原料乳としてだけしか酪農がなかなか成立し得ないような地帯、そういつた地帯の酪農につきましては、従来のような単なる経済的な自然発生的な興り方だけでは、日本の酪農は一遍に合理的にならない。その合理的にならない点を、こう言つた制度的な力によりまして一層推進することによつて、飲用乳牛については販売との結び付きをもつと今よりも強くする。又原料乳地帯につきましても、販売乳が有利に安定して売れるような環境を作る。そういう意味におきまして、集約酪農地域ということを考えました。行政措置といたしましては、二十八年度から試験的に実施をいたしておるわけでございます。二十八年度につきましては、御承知の輸入ジヤージーによりまして移畜を試験的にやつて見たわけなのでございますが、この行き方をひとり輸入ジヤージーだけでなしに、在来のホルスタイン種につきましても、この同じ考え方で日本の酪農の現在の成立基盤の弱いところを固め、強化し、そうして日本の酪農の将来の合理化の方向付けにいたしたい、そういう着眼でございました。従いまして、この法律で考えておりますのは、ジヤージーを入れて作ります集約酪農地帯だけでなしに、在来有畜農家創設特別措置法等によりまして導入をいたしておりますものにつきましても、今後一層その考え方を強くいたしまして、と申しますのは、有畜農家創設特別措置法につきましても、無畜農家解消という基本の狙いと同時に、乳牛の導入標準というようなもので、農林大臣が定めております基準の中にそういつた思想があつたわけなのでございますが、それを更に鮮明にいたしまして、集約酪農地域ということで将来の酪農合理化の当盤たらしめよう、そういう趣旨でございます。集約酪農地域の法律内容といたしましては、指定の手続、それからその指定の手続が先ず最初に出て参るわけでございますが、指定の手続といたしましては、知事の申請に基いて農林大臣が指定をいたすというやり方になつております。で、知事の申請は、この地域の農業の発達を図るために酪農業が非常に必要である。つまりその地域の総合的な農業生産力を高める上から、酪農の必要性のあるところ、そういつたところにつきまして政令で定めます基準と申しますか、つまり集約酪農地域として発展し得る可能性を備えたところを選んで頂きまして、そういつた地域につきまして酪農振興計画というものを作る。この酪農振興計画は、この法律では省令の定める手続というふうになつておりますが、別にお配りいたしました資料に書いておきましたように、これが結局この地域の指定された後の一つの酪農振興の基本的な基準になるわけでございますので、この酪農振興計画にその地域の乳牛の頭数増加に関する、つまり新たに導入を要する、又或いはその地域内で増産を図るその牛の頭数をどうするかということと、それから第二に、自給飼料、これは飼料作物と草資源と両方含めまして、飼料自給ということをどこまで上げるかという具体的の計画、第三には、集配乳牛の合理化に関すること。この三つを最も主要な内容といたしますが、その間に、例えば衛生施設の完備の問題でありますとか、或いは営農指導組織の確立の問題でございますとか、その他酪農振興計画を総合的に実施いたして参りますために、その地域について、地域の特殊性に応じて必要とされるようなあらゆる事柄についての計画を定めてもらうわけであります。この計画は、県が関係の市町村なり、或いは農業協同組合なり、その他その地域で酪農に関係を有するかたがたの御意見を伺つて作つて参るわけでありますが、この計画を作るわけであります。で、農林大臣といたしましては、地域の酪農の必要性と基準に適しているということと、それから今申しましたこの計画が、地域の酪農振興の方法として最も適当且つ効率的であり、又実現の見込みが確実にあると、そういつたことを確めました上で、その地域を集約酪農地域として指定して参る。そういう段取りになるわけでございます。それから計画の変更なり、或いは地域の変更は、特に申すほどの内容はございません。
 指定解除でございますが、一旦指定いたしました地域は、それを大体五年くらいの間に一つの第一次目標を達成するようなことを私どもは考えているわけでございますが、つまり市乳供給地帯としての集約酪農地域では五カ年後ぐらいの間に六十石分ぐらいの牛乳が生産される。それが最も近代的な集乳送乳施設によりまして大都市に送り込まれる。そういつた状態を一応の第一次目標といたしております。それから原料乳地帯につきましては、百五十石程度の牛乳が最もこれが近代的な工場設備によりまして乳製品に作り得る。そういう地帯を早く作りたい。そういうことでございます。そうすることが消費者のためにもなり、又その地域の酪農民の将来永遠の安定のために一番いいんじやないか。そういう意味で、そういつた目標に五年間程度の間に持つて行くということの狙いを持つているわけでございます。そこでその過程におきまして、先ほど申しましたその地域が集約酪農地域として成り立つための最小必要限度の客観的条件を失つて参つたようなもの、そういつたような場合には指定を解除せざるを得ないことに相成るかと思います。それから指定の解除の第二の要因といたしましては、酪農振興計画を作りましても、なかなかその酪農振興計画通りに事が運ばないような事態が出て参つたわけでございますが、そういつた場合は、建前といたしては、その計画を変更するなり、或いは計画の裏付けについての指導助長措置を強化することによりまして、成るべくは解除いたしたくないわけでございますが、知事の意見等によつて、どうしてもやつて行けないというようなときには集約酪農地域の指定を解除してもよいと言いますか、することができる、前段の客観的条件を欠いた場合には解除しなければならないわけですが、第二段の達成の可能性がない場合には、当然には解除いたしませんで、先ず解除しなくてもいいような努力をいたすわけでございますが、終局的には解除することもあり得る。そういつたふうな規定にいたしております。
 それから酪農振興計画は、今申しました通りに、その地域の酪農振興のための総合的な措置を欠いているわけでございまして、この中には本法の以下の第二節、第三節によつて、裏打ちと申しますと、つかえ棒をいたす、制度的なつかえ棒をいたす問題もございますので、それから有畜農家創設というような他の法律による措置もございますし、又土地改良、衛生関係の諸法規とか、そういつた他の法律関係もあります。又単なる予算措置だけの問題もございますが、要するに振興計画というところに地域指導の総合性を求めておりますので、八条でそういつた振興計画達成上の必要な予算措置なり、或いは融資措置については、国ができるだけの集中重点的な援助をいたす。そういう規定を置いたわけでございます。
 それから第二節は、集約酪農地域内にあります草地の利用について、従来やつておりました草地改良事業の実績等から考えまして、草地改良をやる場合に、これを一団地として公共事業的にやつて参ることが、その効率を高める上からいつて必要なんではないかという御意見を各方面から伺いますし、又二十九年度の予算におきましても、そういつた思想で、従来の牧野改良事業に併せまして、牧野改良センターといつたような、機械力を導入して行う牧野改良のやり方を考えているわけでございますが、それを集約酪農地域について、具体的に実施を容易にいたすための手段といたしまして、都道府県なり、或いは市町村なり、従来のそういつた公共団体が自分で管理いたしております牧野以外の牧野につきましても、そういつた公共団体が所有者なり、或いは使用収益権者の同意を得まして、まとめて強力に草地改良事業をやつて行けるような途を開いたわけでございます。
 それから十一条は、その草地につきましての形質変更の場合の届出規定でございますが、これは集約酪農地域内にあります草地と申しますのは、指定の基準の所でも相当重要視すべき項目でございますし、又地方長官といたしましても、草地の現状なり、或いはその草地が他用途に転用されることについての認識と申しますか、その草地を利用、確保するために、そういつた車地の形質変更について十分事前に承知をいたす必要もございますので、その関係を届出事項といたしたわけでございます。これは農地法によります採草放牧地の観念とほぼ同じ観念でございますので、権限の移動を伴います形質変更は、農地法のほうで都道府県知事の許可制度なり、何なりにすでになつているわけでございまして、これは草地の所有者或いは権利関係が移動なしに、形質だけが草地から変る場合の届出でございます。なお、ここにあります届出を要する事柄として「政令で定める開こん、造林」というふうに言つておりますのは、別の資料で御説明いたしましたように、国の計画に基きます開墾或いは国の森林法に基きます県知事の承知いたしております造林、そういつた知事がすでに承知いたしてすでに計画としてやつております開墾、造林等を除きましたそれ以外の開墾、造林、それからまあ例が如何かと思われますが、例えばゴルフ場になるとか、或いは工場敷地になるとか、そういつたようなもので権利関係の移動を伴わずに形質の変るものの届出でございます。
 それから第三節は、その地域内にあります施設についての新設又は変更の場合の承認、それから既存施設の届出を規定いたしたわけでございます。これは今申しましたように、集約酪農地域というようなことで、一つのモデル的と申しますか、酪農として一番こういう条件があれば酪農が非常に合理的に営めるといつたような地域を、地元、県、国それぞれが力を合せまして作つて参ろうというわけでございますので、その過程におきまして集乳事業なり、或いは乳業なりというものが、その地域の酪農振興計画と齟齬するような形で出て参つたのでは、折角の努力も実現が非常に困難になる、そういつたような見地から置いた規定でございます。で、現在の終局の目的としてのその百五十石なり、或いは六十石なりという規模というものが確立されるまでの過程の問題が特に多いわけでございますので、だんだん頭数が殖えて参り、乳量も殖えて参り、又それに連れて工場も合理的に営めるわけなんでございますが、その過程において殖えて来た中途の段階で、合理的でないと申しますか、非能率的な工場が幾つか濫立をいたして、折角現在の日本の酪農の一番の弱点といたされておりまする一工場当りの集乳量と申しますか、一工場当りの乳量が少いという関係、これは別途お配りいたしました資料の数字によつても御承知願えるかと思うのでありますが、現在の日本では日量百石以上の乳製品工場というものは、お配りいたしました資料では僅か四工場しかないような状況でございます。で、極く最近の数字としてはもう一、二工場殖えているかと思いますが、調べましたときの実情では、百石以上の工場は四工場しかないようになつております。で、大部分と申しますのが、十石以下の工場、これが五二・六%といつたような数字になつておりまして、如何にもこういつた工場施設なり、工場では、国際的に見ても、勿論これ以上の価格の低下と申しますか、合理化を期待するほうが無理なような実情でございます。にもかかわらずと申しますか、一方でそういつた状況でありますために、私どもとしては外国品が無制限に流れ込むことを防がざるを得ない立場にあるわけでございますが、防いでおりますればおりますほど、こういつた合理的でない工場に存立の基盤を与えるような結果にもなつておりまして、その関係の矛盾を何とかして解きほぐさなくては、日本の酪農がこの段階からもう一段階飛躍するために、どうしても今申しました矛盾を何とか解決いたしたい。その解決方法としての集約酪農地域を考えます場合に、極端に合理的なものでなければ成り立たないような市場条件を先に作つて、それからやればとにかくといたしまして、一方で従来のような工場の存在したものも、それを徐々にその一工場当りの取扱量を殖やして行く、又そういつた工場が現在ない所には新らしく建てて行くという、そういつた方向をとつて参ります場合には、どうしても今申しましたような非能率工場の濫立或いは本当の意味の合理化の役に立たない、合理化とむしろ逆行するような競争というようなものをむしろ或る程度なくして行く必要があるんじやないか、そういう意味で酪農振興計画の線に沿つた仕事をこの地域では確保いたしたい、そういう意味で施設の承認制をとつたわけでございます。従いまして、その目的からして承認を求めます施設の種類は政令で書くことにいたしておりますが、別途お配りいたしました資料にございますように、集乳施設につきましては、普通の集乳所は特に問題にする必要はなかろうと思つております。で、この集乳所の中でも、クリーム分離機を持つておりますものとか、或いは特殊の冷却装置を持つておりますものとか、或いは濃縮装置を持つておりますものとか、そういつた或る程度遠くのほうから手を延して持つて行けるようなと申しますか、撹乱できるよう     なそういつた虞れのある集乳所だけをここにいう政令で定める集乳施設として定めたいと思つております。それから乳業施設につきましては、かねて牛乳の地元消費促進ということで、例の高温殺菌を簡易に施設できるようにというようなことを、私どもかねて厚生省のほうへもお願いしておつたような関係もございますしいたしますので、乳業施設の中でも、日量一石未満のミルク・プラントは特別に承認を求める必要はない。むしろこういつたものは地元消費を促進するという意味でどんどん今後もできる必要があるという意味で、そういつたものは除きまして、それ以外の集乳施設、それから乳製品施設、そういつたものについてだけ承認制度をとることにいたしたわけでございます。それからこの承認も、まあ集約酪農地域の振興計画達成上の必要から出た止むを得ざる措置という意味で、知事が承認をいたします場合も、十二条二項の各号に挙げましたような、合理的であるという酪農振興計画の達成のために、その計画に適合しているということが最後の抑えになるわけでございます。そういつたことについては、むしろ知事としては承認を拒んではいけないという意味で、ここのところは承認を拒否できない場合を挙げたわけでございます。従いまして、こういつた線に沿つて来ている施設につきましては、施設のできることを妨げない制度的な保障をいたして、止むを得ざる措置としての承認制度を必要最小限度に限ろう、そういうことを思つておるわけでございます。それからその地域が指定されます前に、すでにありました施設につきましては、これは何と申しましても、それを酪農振興計画に織込んでやつて参る、それを将来の中心工場にするか、或いは現状程度でとどめて、別途に中心工場の構想を作るか、それはいろいろ現地々々によつて事情があろうかと思いますが、取りあえず、すでにある施設については、それを中心工場にするしない等のことにかかわらず、一応従来の一つの存在という事実を尊重する意味で、それは承認を要することなく、届出で足りるというふうにいたしております。で、こういつた届出施設が幾つかあるということは、その地域の酪農振興計画を作ります場合のむしろ一つの前提というふうに考えてやつて行く必要がある、さように考えておるわけであります。それから十四条の変更は、新たに作ります場合の承認と施設を合したものでありまして、先ほど申しましたように、現在あります施設は殆んどがまあ非能率と申しますか、弱小と申してよろしいような現状でございますので、いわゆる酪農の全くの処女地は新設の承認になる場合が多かろうかと思いますが、全くの処女地という所も、実際問題としてはそうあるものではございませんので、そういつた所につきましては、既存施設は届出て、一応既成事実として認められましても、それが更に集約酪農地域の計画の進行と睨み合せまして、その施設のどこについてどういつた拡充をやつて行つて需要に応じて行くかという問題が酪農振興計画の線で出て参るわけでございまして、その意味でここに新設ということと並びまして施設の変更ということが出て参つておるわけであります。従いまして既存の施設につきましても、将来の何年後かの酪農振興計画に見合いますためには、十三条の届出だけで足りる施設は殆んどなく、大部分がそういつたものになるためには、次の条の施設の変更というところで、振興計画の線に沿つて施設を変更して行くということになるわけであります。
 それから士五条は、前段までが施設の新設変更を中心にして書いておつたわけでございますが、十五条が、その施設を使いまして事業を営みます場合の事業の休止、廃止といつたようなことを届出制にしております。これは施設の設置者と申しますか、施設を作る人と、それからそのできた施設を使つて仕事をする人とが必ずしも人格的に一致しておらない場合がありますので、その施設について仕事を始め、又休み、廃止する場合を把握するという意味で別途に条文を設けたのであります。
 以上がこの法律での集約酪農地域についての措置でございます。冒頭に申しましたように、集約酪農地域は酪農振興計画によつて総合的に酪農施策が行われて行くわけでございますしいたしますので、この法律では、既存の法律等、そういつた酪農振興計画を総合的にやつて行きます場合に、現状において制度的に非常に不安のある点、又新たに途を開くほうがより効率的であると思われます点を挙げまして、草地と施設の承認、その二つだけを法律内容にいたしております。そういつたことで、計画そのものと、あとの二節、三節の法律効果との間に一つの断層が形式的にあるという感じを持つわけでございますが、その点は先ほど来申上げましたように、酪農振興計画というものを関係者が一体になつて進めて参るということが、この法律以前の一つの骨子的な考え方としてあることを御了承願いたいと思います。
 それから次が、この法律の第二点になります乳の取引関係の規定でございます。牛乳は御承知のように毎日搾られますし、又それを毎日金に換えて売つて行かなければ成り立たない部門でございます。ところがほかの農産物等と違いまして、牛乳につきましては、それを商品化する過程におきまして、自家用とか、或いは極く狭い範囲はとにかくといたしまして、大量に専門的にやつて参りますためには、これが商品化する前に一段階必要とする、処理加工という段階を必要といたして参ります。これは従来の酪農の発展の経過におきましては、農業協同組合でない、農業協同組合以外のものがやつております場合が相当あつたわけでありますし、又農協といたしましても、これを完全に把握いたしまして共同販売に乗せておるというような実情でもございませんし、そういつた関係をそのままにおきますというと、折角苦労をして乳牛を飼い、酪農振興の線に参りましても、その搾りました乳の価格決定なり、取引条件について、非常に買手市場的なと申しますか、牛乳という商品の特質上、宿命的に売手側が不利益な立場にあるというふうにも考えられるわけでございまして、その関係を生産者側に多少とも安心の行くような措置が必要じやないか、そういうような意味から申しまして、この牛乳というものは、毎日々々の個々ばらばらの契約でなしに、一つの供給契約と申しますか、長期供給契約のような形をとらなければ農家の側も安心して増産ができませんし、又半面その乳を買います処理加工工場の側におきましても、自分の原料基盤としての牛乳が或る程度の長期的見通しを持つて確保できなければ仕事の合理化もなかなか進みませんし、そういつたことを考えまして、取引契約の文書化を謳つたわけでございます。こういつたやり方は、牛乳の場合には、むしろ牛乳という商品の特質から見て私どもとしては不可欠な方法である、止むを得ざる方法であるというふうに考えるわけでございますが、御承知のように、昭和十三年にできました酪農業調整法という法律のときに、すでにそういつた考え方があつたわけでございます。あのときは、その後昭和十六年が戦前の日本の牛乳の生産のピークをなしておりまして、そういつた上昇傾向にあつて、これ以上の増産というものは、下手をすると農家側に不利益を来たしはせんかといつたような時代的な空気を反映して、昭和十三年にあの法律ができたわけでございますが、その後戦争となり、乳牛の激減となり、戦後乳が足りなくて、むしろ売手市場的な形が今日までずつと続いたわけなんでございますが、将来と言いますか、今後私どもがこれ以上の増産に馬力をかけて参りますということになりますと、必ずしも今までのような売手市場的な関係は確保できないんじやないか、もうぼつぼつこの辺でそういつた虞れのある点を制度的に整備をいたしまして、これ以上増産をすることは、勿論これだけで十分とは存じませんが、農家側に多少とも増産の不安を少なからしめよう、そういつたようなことで文書契約ということを考えたわけでございます。この文書契約をして牛乳の継続契約につきまして文書化をして頂き、その契約の写しを知事に届出る、そういつたことを内容といたしております。で、知事は届出がありました場合に、必要な内容の改善についての勧告をすることができるというふうにいたしております。この内容の改善の勧告は、事の性質上、契約の実質的内容自体に立入るというよりも、むしろ契約がそのままでは非常に不明確でありましたり、又は何か事故が起りました場合に十分な解釈ができなかつたり、そういつた契約内容の不備或いは不明確な点を改善させるということに重点をおいて運用するものというふうに考えております。それから都道府県知事のこの斡旋の規定でございますが、そういつたことで契約の長期継続化を図るということをやります場合に、それによつて長期契約としての一つの安定性は得られる半面、その契約と申しますか、牛乳の取引自体が非常に季節的なものでございまして、年に少くとも二回或いは四回くらいは当然季節的な価格の変動が予定されるわけでございまして、契約の形式としても、その点は基本契約と附随契約というふうな形で、むしろ季節季節の価格のことは基本契約に織込むのでなしに、基本契約から出て参る附随契約的なものとして、その季節的な変動に応じ得るような機動性を持たすように、私どもとしては契約を指導いたすつもりにしておるのでございますが、そういつた場合の取引条件の変更をやります場合に、買手側と売手側との間に意見の不一致等が起り得ることが予定されるわけでございます。そこでそういつた場合に、これは当事者の契約は合意を中心にいたすものでございますから、当然には、別に府県知事に斡旋を依頼するということが直接当然には出て来ないわけでございまして、当事者の合意によりまする適当なる紛争解決の方法を工夫するための余地を勿論残しておるわけでございますが、一般にこれもやはり酪農業調整法以来の沿革もございますが、その斡旋を公平な第三者によつて裁いてもらうという気持、或いは少くとも最終段階ではそういつた公平な第三者がおつて、そこで聞いてもらつて、そこで見通しを立ててもらうという余地を残しておきますことが、今後生産者への安心感を与え、又乳業の合理化を計画的にやる場合にこういつた措置が必要であろうかということで、都道府県知事に斡旋の依頼をすることができる途を開いたわけでございます。都道府県知事といたしましては、これを本来の業務として斡旋することは妨げませんが、本法で狙いましたのは、本法による都道府県知事の斡旋は単なる行政的な斡旋でなしに、十八条以下で規定いたしましたような斡旋委員という中立的な第三者を置いて斡旋をするというところに本法の主眼を置いたわけでございます。従いまして、他の斡旋手段を用いて安心のできない場合に、一応本法十八条以下を援用すれば、制度的に保障された第三者による公平な斡旋が受けられる、そういう途を開いて安心感を与えるということを狙いといたしたわけでございます。従いまして、斡旋委員は他の立法令等によりますと、当事者の推薦したものは、というよりも、むしろ斡旋は第三者の中立委員だけでやるようなことが多いように承知いたしておりますが、牛乳取引の場合にはそういつた事情に、第三者だけでなしに、両当事者の事情に精通したものを加えまして、そういつた両当事者のそれぞれ推薦したものと、知事があらかじめ作りました名簿の中から当事者の意見を聞いて選定いたします中立委員というものと、その三者で以て斡旋委員というものを構成いたすというふうにして、牛乳取引の実情に応じた斡旋妥協が促進されるようにということを期した次第でございます。その際に斡旋申請いたします場合に、所定の手数料を納めますとか、或いは各当事者の推薦したものの費用負担はそれぞれの当事者が行うとかというふうな規定になつておりますが、この点は公共性のある斡旋ではございますが、やはり売手、買手の間の、有利に売り有利に買うための一つの保護手段でもありますので、一〇〇%の公共性だけというような主張もなかなか困難でございますし、又制度を濫用する虞れもなきにしもあらずといつたようなことで、申請者は所定の手数料を納める、一種の訴訟費用的な思想が出て来ておるわけでございます。それから当事者推薦委員につきましては、先ほども申しましたように、斡旋委員でありますと同時に、立場を弁護し或いは実情をつまびらかにするということを狙いにいたしておりますので、そういつた各当事者の推薦したものについては政令で定める方法で当事者が負担をする、で、この政令で定めるというのは申請者が双方からの申請の場合には、それぞれ両当事者の推薦したものについて両当時者が負担を、することになりましようし、又一方から申請をいたしました場合には両当事者が協議をして、その当事者推薦委員の費用負担をきめる、そういつたことをこの政令では規定いたす予定でございます。
 それから十九条で斡旋案が成立いたしまして、それを両当事者が受諾いたしました場合は、この協定書が即両当事者の契約を結んだことというふうになるわけでございます。それから不成立に終りました場合には、斡旋でございますから、事の性質上強制力もございません。面当事者に拒否権があると申しますか、強制力のない紛争の解決方法なんでございますが、その場合には斡旋委員が行いました斡旋のやり方なり、内容なりが果して公正なものとして納得されるかどうか、又当事者の拒否したことが、条理上当然のこととして受入れられるかどうかといつたようなことにつきまして、輿論と申しましようか、第三者の批判を仰ぐという意味におきまして、その交渉の斡旋の経過と斡旋委員が作りました協定案というものを公表することができるようにいたしたわけであります。それによりまして、今申しましたような斡旋の公平、中立性を確保いたしますると同時に、拒否することの社会的な反響と申しますか、そういつたことを問うという機会を作りまして、強制力のない斡旋に多少のそういつた輿論の批判といつたようなものを期待いたしたわけでございます。
 大体以上が牛乳取引についての規定の内容でございます。以下は雑則で型通りの報告規定でございます。
 それから罰則は司法罰は殆んどこういつた行政助長法規であります関係上、司法罰を規定されるような趣旨のものではございませんので、もつぱら過料という行政罰で行つております。集約地域内の施設の承認、新設又は変更の場合の承認を得ずして設置し、変更した者についての過料が十万円以下、これが最高でございまして、あと報告に対する罰則、それから届出を怠つた場合の罰則、そういつたものを掲げております。なお届出の中の牛乳取引の文書契約の届出のときは、今日の段階で文書、このことの届出義務違反を過料に処することは行き過ぎかと存じまして、これについては法律上の義務を課しただけで過料等の罰則は予定いたしておりません。このことは農地法におきまして、小作契約が文書において義務付けられ、提出を義務付けられておりますけれども、それに対する義務離反の罰則が設けられていないというようなこととの権衡上も、まだ今日の段階ではこれを罰則を以て指導する段階ではない、かように考えておる次第でございます。
 大体以上が法律案の私どもとして考えておりました内容の概略でございます。
#4
○河野謙三君 私はこの酪農の振興ということの大前提は、今の有畜農家の地位を保護し、向上さしてやるということだと思うのです。その点が私は大前提だと思うのです。ところがその点について多少考慮を払つておられますけれども、今の取引の斡旋等につきましても、どうも急所に触れていないと思うのです。御承知のように、今有畜農家は、今お話にもありましたように、これだけ酪農製品の需要が旺盛になつて、むしろ品不足であるにもかかわらず、依然として不思議にも買手市場なんですね、買手市場で常にあるところに問題があるわけなんです。そこで私はこれはむしろ経済局の問題かと思うのですけれども、酪農家が組織しておる現在の組合というものは、大体実質的には処理機関なり、加工業者の従属機関であつて、真の意味の農民が組織するところの協同組合じやないのです。こういうものを認めておいて、単なる形式的に、協同組合法にこれは形式的じやはまつておるけれども、実態は協同組合でなくて、森永の組合であり、明治の組合であり、雪印の組合である、こういうものを放つておいて、そうして取引の公正化を期そうとか、農民の地位の向上を図ろうと言つたつてこれは無理なんです。こういうことについて何かお考えになつておることはありませんか。私は何も畜産組合法を制定しろとか、そういうようなことを考えているのじやない。如何なる方法でもいいのです。いいのですが、今現実に全国どこの府県へ行きましても加工業者に従属するところの、名前は協同組合であつても、加工業者の従属機関であるところの組合、これを何とか解消さして、自主的に農民が組織するところの本当の意味の協同組合というものを指導し、これを作らせるということについて何かお考えになつておりませんか。
#5
○説明員(鵜川益男君) 農業協同組合と申しまするか、酪農に関しまする生産農民が如何ように組織化、協同化して行くか。この問題は畜産振興、特に問題を酪農の振興に限局いたしましても御指摘の通り非常に問題があると思つておるわけであります。それで又御指摘にもありました通り、有畜農家創設事業につきましては、当初発足いたします際に国会でもいろいろ御指摘を受け、我々も非常に慎重に検討いたしました。結果といたしましては、すでに御承知の通り、末端の中核体といたしましては特に信用の関係もございまして、末端の町村の総合農家というようなことが中核になりまして進んでおるわけでございます。乳牛の導入等につきましても、やはりこの形が出て来るということは一つの線ではございますが、だんだんにさような農村の実態に合いました自主的の協同体が力を持つて参る。又この畜産、特に酪農のようなものにそういつたものが主体性を持つて伸びて参るということが望ましいかと存じておるわけであります。只今御指摘の通り、処理加工の面におきましては、やはりそれとの繋がりにおきまする農協と申しますか、協同体もあるのも御指摘の通りでございまして、我々といたしましても、先ほど来御指摘のようなだんだんに農協、特に今申上げましたような線による行き方というものが一つの線ではないかと、かように考えておりまするが、これをまだ一般的、原則的にまではつきり言い切るわけにも参らない。やはり当該の地域々々の特殊事情なり、又当該の地域におきまする生産者団体自体の意識によつてこれは決定さるべき問題ではなかろうかと、かように考えまするので、一律に強い指導を行いますことが却つて実情にも合わんかと思いまするが、信用の面なり、だんだんにこういつた導入を中核とし、又餌というようなものも入つて参りますし、そのほか畜舎等の融資の面も出て参りますので、一つこういつた点につきましては、だんだんに協同体としてあるべき形に持つて参りたい。又半価この酪農事業の製品の販売の面から申しましても、先ほど御指摘の通り非常にコネクシヨンがいいというだけでは、手放しにそれがいいとは言い切れませんので、この面につきましても農家の自主的な目覚めに待ちまして、正しい行き方における共販体制の育成に我々といたしましても協力して推進して参りたい、かように考えておるわけであります。
#6
○河野謙三君 いや、何も取引の公正化ということが、これが謳つてなきやいいのですよ。これについては将来いろいろやるということならいいけれども、おこがましくも取引の公正化ということを謳つているのだ。これに取引の公正化が期せられるように書いてあるから私は言わざるを得ない。こんなことでは取引の公正化は期せられませんよ。売手、買手のアンバランスがあつた場合、これを法律の力によつて抑えて行くならばこれは一つの方法です。そうでなければ売手、買手の両方の力の問題なんですよ。買手に対して売手が同等の力を持つように、その団体なり、農民の組織を育成しなきや公正化は期せられないのです。それをそういうものはやらないでおいて、そうして斡旋委員を置くとか、やれ知事にどうするとか、文書契約をやるとか、そんな程度のことで私は目的は達成できるものじやないと、こう思うのです。これは私は委員長に、この次のこの法案の審議に当つて経済局長に私は是非出席して頂いて、これは有畜農家だけの問題でなくして、現在の農村における特に農業協同組合のあり方ですね、これにつきましては、農業協同組合と言いながら、何でもかんでも私は形式的に農業協同組合の手続を踏んでいればいいということはこれはいかんと思うのです。今大体農業協同組合というのは大部分が金融機関である、金貸し業である、こういう形になつている。そういうものについては或る程度私は農業協同組合について厳格な条件を附して、これから真の意味の協同組合を育成するということでなきやいかんと思うのです。いろいろこれについては私は意見があるのですが、後ほど又いろいろ伺いますけれども、特にこの機会にちよつと伺つておきたいのは、やはりこれは取引の公正についての問題なんですが、検査などは一体誰がやるのですか、取引に当つての検査は一体誰がやるのですか、これを一つ御説明して頂きたい。
#7
○説明員(昌谷孝君) 検査の問題は、この法律で考えておりますのは、契約の内容としてそういつた引取りの格付、銘柄問題を契約の内容として規定して行きたい、そういうふうに考えております。それで現在第三者機関の検査という実態は十一、二件でございますが、県営検査という形式をとつておる実態もございます。この法律を書きます場合にも、そういつた第三者機関による取引銘柄の格付方法をとるか、とらないかということで私ども研究をいたした次第でございますけれども、現状におきまして県の検査といつたことを規定いたしましても、予算の問題もございましようし、県の事業の規模から申しましても、なかなか真の意味の第三者検査の実質が挙げにくい。却つてこれはここ当分はむしろそういつたことも結構でございますが、制度の本質としては、当事者間で誰にやらせるかということを契約としてきめさせて行く、そういつたことのほうが適当じやないか、そういうふうに考えまして、先ほどのことに関連してちよつと私どものことを申上げますと、お説のように、そういつた農家側の態勢を整えずして取引の公正というようなことを申しましても、なかなか期せられないわけでありますが、私どもがこの法律の効果に期待いたしました点は、現状がまさに御指摘のような点が非常にあるわけでありまして、そういつた点が組合という名前でありながら、なかなか一般の生産農民の利益を保護し得ていない。むしろこういつた文書契約なり、斡旋の機会というものがあるということで、そういつた生産者の味方としての組合が積極的に動き出してしまつたわけです。いやでも応でも文書契約の機会なり、或いは斡旋の途が開かれているのに、それを援用しないというようなことが困難になつて、御指摘のような問題の実態がむしろ行政面に多少とも積極的に反映する機会を作りたいと、そういつたことで、本来的には農民の意識の問題であり、組合の整備の問題であろうかと思いまするが、そういつた問題を真つ正面から制度的に取組むことはなかなかできない問題でございますから、こういつた側面だけからこういう途を開いておくことによつて、そういつた組合の自主的活動を促進いたしたいというのが私どもの狙いでございます。
#8
○河野謙三君 今のこの検査の問題ね、これは手にとつて誰でもわかるような米や麦でも、これは国営検査なんです。あなたのほうの関係のこの商品がですよ、これよりも検査は複雑なんです。結局いろいろ相互契約の中できめるとおつしやいますけれども、これは結局買手検査ですよ、実態は……。こういうことをこの法律を出す段階になつて私は認めているのはおかしいと思う。これはやはり中正な、公正な第三者の検査ということをはつきりここは私は謳うべきだと思う。そうでなくとも、今私が申上げましたように、買手市場であつて、農民は全く今買手の自由自在ですよ。これだけ品不足のときにそれぞれの会社の従属機関たる組合ができ、中央においても私は嘘か本当か知らん、信用したくないのだが、全酪連というのがある、あれは何か明治さんの機関だということをもつぱら言う、農林省の食糧庁がいい気になつてあれへ餌の払下をしておるけれども、あれは明治さんに払下をしておるようなものだと、向うで言う、森永さんにおいても同様なものがある、こういうのです。このような実態の下に私はこの法案を出す以上は、酪農振興というのは農家の地位を高めることが大前提だということに徹するならば、もう少し検査に当つての問題は私は深く入つて行かなければいけないのじやないか、こういうふうに私は固く信じておるのですよ。今地方へ行つて御覧なさい、農林省のほうで有畜農家振興の家畜導入の資金が多いとか、少ないとか言つておる間に、加工業者がどんどんと家畜導入の資金を大量に貸付けて、そうして農家が飼つておる牛は農家のものだか、加工業者のものだかわからんようになつておる。完全にがんじがらめに酪農家というのは縛られているのですよ。そうしてどうにもこうにも動きがとれなくなつてしまつた形なんだ、これがもつと広くなつておる、この機会においてこういう政府の考え方、非常にいいと思う、いいけれども、それならばそれのようにもう少しもつと急所に触れて有畜農家の地位を保護し、高揚させるというところに入つて行かなければならんのだが、私はどうも根性が曲つているのかも知れんけれども、この法案は初めと大分ピンボケをして来たのは、森永や、明治その他に大分圧力を加えられて、そうしてあなたのほうは止むを得ず一歩後退し、二歩後退し、殆んど骨抜きになつたように思います。なおそれでいろいろこの法案については私は一々意見がありますけれども、根本問題について私は先ず一つ意見を申上げて、そうしてあなたのほうにもこの法案について私は出直す、一つ考えてもらいたいと、こう思うのです。
#9
○関根久藏君 この酪農のほうの何は、今お話の協同組合の問題ですが、これは形式的の協同組合のほうでやつているのがどのくらいか、それから名実ともに申合団体みたいなので、この乳業者に連絡しているのがどのくらいか、本格的に名実共にこの協同組合でやつているのがどのくらいか、そういうようなものはなかつたのですか、若しなければ又あとで資料として御提出願いたいのですが。
#10
○説明員(昌谷孝君) お話のような網羅的な調査が私どもの手許にございませんので、御満足の行くようなお答えができないのでありますけれども、一応農協部のほうで調べております酪農特殊農協の数とか、それから畜産農協の数とか、そういつたものの調べだけは手許にございますので後ほど……。
#11
○関根久藏君 詳細にそれを一応お願いします。
#12
○説明員(昌谷孝君) 全般的に現在酪農のうちの何パーセントぐらいがどういう状況で扱われておるかというような、的にはまつた資料は或いは困難かと存じまするが、できるだけまとめたものを用意いたしたいと思います。
#13
○関根久藏君 どのぐらいが隷属しておるか、何パーセントの部類ぐらいが真の協同組合としてやつておるか、さようなことを私は伺いたいのです。まあ大体河野さんからもお話があつたのですが、何だかどうもこの法律は、ほかの農民といわゆる商工業との間の問題を律する法律にすれば考え方が少し飛躍しているというのか、或いは後退していると言うのか、まあちよつと別のような感じがするのですが、何だか少し生産者、消費者、中立斡旋委員を設けてやるとか、まあそうすると米価審議会のような、あんなものか、或いは蚕糸業審議会のような、あんなようなものの考え方なのかとも見えるし、又そうでなくて、まあ少しいやな考え方だけれども、大資本の利益を擁護するような工合のもののような感じもするのですが、どうもちよつとその辺が大分変だと思うのですが、斡旋機関の斡旋委員なんていうのが、こういうものがありますかね、これで……。
#14
○委員長(片柳眞吉君) 今日は如何でしようか、大分法案の構想それ自体について相当御意見、大分御質問があつたのですが、今日は政府委員もおられませんので、本日はこの程度で如何でしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○委員長(片柳眞吉君) 今の関根委員の資料要求は次回に一つ整備をして出してもらいたいと思います。
#16
○北勝太郎君 酪農振興法が何しましたけれども、私はこれはなかなか政府の考えているように酪農家は振興しないというふうに考えるのですが、まあ北海道のほうが一番の酪農適地と言われておるのでありますけれども、それでも今まで遅々としてなかなか牛は殖えなかつた。私も実は四十何年ずつとやつておるほうですが、そういう農家はなかなか少いのですよ。それでその原因はどこにあるかという工合に考えてみると、結局その乳価が今まで経営費と言うか、その生産費を償わなかつた、非常にひどいところに置かれておつたということが大きな原因であつたと思うのでありますが、併し最近いわゆる争奪戦が起りまして、北海道でも原料乳に苦しんで随分猛烈な争奪戦をしておる。昨日は一工場が一円高くしたかと思うと、又一つの工場はそれよりももう五十銭高くするというようなことで猛烈な何をやつておりますから、漸く生産費は償うようになつて来たけれども、果してこれは維持できるのかどうか、市乳地帯では私は心配ないと思う、外国から市乳がたくさん入つて来るとは思えませんが、これで乾燥牛乳等が入つて来て水をまぜて売られれば、日本の牛乳はとても一たまりもなくなるのでありますが、特にその原料乳地帯においては乳製品が外国から入つて来ることになりますと、これは折角力んでやつたけれども又後退してしまうのじやないか。農家に随分資本をかけさせてやつているけれども、これはそれだけ農家に又借金をやらすことになつてしまつて、農家は何も潤わなかつたというようなことになるのではなかろうか。そこでこの乳価の維持に対してどういう考え方を持つておられるか。現在の乳価ならば、これは酪農は振興すると思います。ところが一朝にしてこの値段が下つて来たとなると、これはもうばたばた皆倒れてしまうというようなことになろうと思うのですが、乳価の維持に対する政府は責任を持つのかどうか。殊にMSAの関係などで乳製品が入つて来るかも知らんというようなことを言われるというと、農家は大分心配して、大丈夫でしようか、酪農に移つてもいいでしようかということを言つて来る人がたまたまあるのです。これは当然のことだと思う。そこで政府が食生活の改善上酪農振興をやらすという決心をした以上は、決して乳価は現在以下に下げさせないのだ。皆現在を以て基礎計算をして、経営をやろうというのでありますから、そこで政府はそれだけの責任を持てるのかどうかという点、その点一つ承わつてみたいと思うのであります。
#17
○説明員(昌谷孝君) 乳価の問題についての私どもの考え方を率直にお聞きを願いたいのでありますが、私どもとしては、現在の農家の売つております価格が生産費を償つておらんと申しますか、非常に特殊の条件なり、特殊の努力を伴つて初めて存立をいたしておつて、なかなかそういつたような条件に恵まれる農家の数が少いというところに、酪農というものが日本で普遍化して行かない一つの原因があろうと考えております。その意味におきまして、農家の売ります牛乳の価格が、今日の段階で、今日の現状がすべてぎりぎりかどうかということは、これは局地的には問題はあろうと思いますが、原則的に申しますれば、まだまだ生産費を償うような乳価は構成されておらん。もつともつと農家の協力が望ましい、農家のほうが報われて然るべき場所が相当あると思つております。併しながら一面製品の価格と申しますか、消費者価格という面から考えて参りますと、今後の酪農と申しますか、酪農が一般化し、大衆食品化して食生活の改善のお役に立つというような大それた口を聞くためには、現状においてはもつと安くしなければいけない。そういつた非常に矛盾した二つの価格関係の状況にあると思つております。その意味で、先ず価格合理化の主眼は、何と申しましても、処理、販売過程の中間過程の合理化に置かなくちやいかんと同時に、又増産することによつて、又集約的酪農地域というような中間過程の合理化の可能になるような措置を、今まで私どもが十分いたしておらなかつたところにも原因があると思います。そういう意味で、単にただ中間処理段階がけしからんとか、暴利を貪つているとかというようにきめつけることも、現状においては無理だと思つております。そこで集約酪農地域というようなことで、原料基盤を確保し、合理化ができなければならん、安くならなければ嘘だと思われるような状態を早急に作り上げて参りたいという狙いを根本といたしているわけであります。と同時に、そういつたことで最終製品が安くなつて参ります際に、今でさえなかなか生産費の償つておらん農家に、その合理化の努力が農家だけに要求されることは穏当でないという意味で、農家側にそういつたしわが寄ることをむしろ多少とも防ぎたいというのが取引段階の経緯でございます。農家の生産費につきましても、現状のような営農構成でございますと、なかなかこれ以上の乳価の低落ということは、再生産を保障しないことにもなろうと思つておりますが草、資源の活用をもつと積極的にやり、自給度の向上を図つて、殊に自給度を現在の……、現在ではまあ非常にいいところで五、六割くらいのところが止まりじやなかろうかというふうに思つておりますが、それをできることなら、こういつた集約酪農地域等については、環境の恵まれたところでもありますので、草を中心にし、自給飼料を増産することによつて自給度を更に更に上げて参る。そういうことで農家側の生産費についても引下げることは努力いたしたいと思います。そういつた生産費の引下と見合つて乳価そのものは将来下げ得れば下げて参りたいと、さような考えで以ております。
#18
○北勝太郎君 幾らこれは文章化いたしましても、外国から安いバター等が入つて来たときに、文章化されたから会社が幾ら赤字になつてもかまわん。その間はよく買うというわけに行かないのです。恐らくそこで、少くともそういう工合になつて来れば、乳価委員会を招集して、そうしてそれに引合うように増してもらいたいというところが必ず出て来るに違いない。これはだからそういうことに対して、政府が酪農を振興する以上は、外国から乳は入れないのだ。農家は安心してやつてくれということにやらなければ、私はこれは農家に安心して牛を買わすわけに行かないと思うのですね。まあ政府のその腹をあなた方に聞くのは少し無理かも知らんが……。そこでこの内容で、では伺いますが、勿論その濃厚飼料でなしに、草資源、草で主にやらなきやならんというのは当然なんですけれども、北海道はその意味においてはそのような場所なんですね。現在までそういう工合にやつて来ておるのですけれども、それでも引き合わない、まあ堆肥を作るのがせいぜい関の山だというくらいに思つておる人が、今までずつと長くやつて来たような程度ですね。そこでこれはまあ乳価を安くする、させると言われても、そういうような北海道でさえなかなか安くできんだから、これから先内地の高原地帯等でそういう乳価が安くなるのに抵抗力は僕はなかろうという工合に考える、その点ですね。もう我々だつて経験済みなんです。草ばかり刈つて経験済みのところで、引合わないからな……。それから今一つは、一体幾らこれは集約酪農地帯というものに指定させるつもりなんですか。全国的にどれだけさせれば、今の食生活改善に要するだけの牛乳が出て来るのだという工合にお考えでありますか、その点一つ伺つておきたい。
#19
○説明員(鵜川益男君) 前段の点につきましては、或いは政府委員からも施策の一つとして申上げるかと思います。ただ私は事務的に御説明申上げたいと思いまするのは、この牧野、草地の問題にいたしましても、御承知の通りかような有畜、特に酪農と結び付けまして、国が相当に投融資をいたすということにつきましては、従来非常に閑却されておられるのじやないか、かようにも考えられるわけであります。この一、二年、いろいろ御推進を願いまして、一億なり、本年度につきましても、一億三千万というふうに、草地、牧野の改良事業費補助金を組んで参つたような次第でございます。又北海道等につきましても、本年度から特に永年牧草地なり、牧野の問題につきまして、道庁と相談いたしまして、新たに略奪的な農法でやつて参りましたものを、相当にこの際力強く推進して参りたい。これも何年かの計画で考えております。従来閑却されておりました点は、これは一つの事実かとも思いますので、今後この酪農振興法にも助成というような条文が出し参りますので、現地におきますこの諸般の酪農振興計画の具体化に伴いまして、我々又こういつた点につきましては、個々具体的に御相談に応じて計画を推進して参りたいと、かように考えますので、この面は今後に待つ点もあろうかと、かように考えておるわけでございます。
#20
○北勝太郎君 いや、どれくらいの箇所を指定するか伺いたい。
#21
○説明員(鵜川益男君) 箇所指定の点につきましては、実は只今も配付いたしまして、すでに衆議院のほうからも資料の一つとして御要求になつておつたのでございますが、実は基準等につきましても、政令、条例事項の次に出ておりますような考え方でおります。この点につきましては、国会の審議を通じまして、我々の考え方が認められますれば、その線できまつて参るということでございまして、十分この点につきましては、きまりましてから、又各県の主任者を呼びまして、具体的な計画を申請して来るだろう、かように考えますので、現在各県からすでにこういう土地が、こういう地域が指定を受けて然るべきでないかというふうな申入がございますのが百二十幾つございます。で、この点につきましては、我々なおこの基準のきめ方、特に最近におきましてホルスタインの種牛の関係等、具体化をみておりますので、この点を徹底をいたしますれば、更に又各県の要望も違つて参る、更に数も殖えて来るのではないか。今年中にも恐らく申出は百五十以上にもなろうかと、かように考えておるわけであります。衆議院におきまする政府委員の答弁等も、幾つというふうにまだきめられませんし、できるだけ全国各県の適地につきまして、我々指定をいたしたいというふうに政府委員も答弁いたしております。具体的の関係につきましては、各県のそういつた申出につきまして、我々できるだけ勉強いたしまして指定をして参りたい、かように考えております。ただまあこれも指定いたしまして、すぐ現在の乳牛の資源の関係、特に導入等をいたしますといたしますれば、御承知のように数字的には生れまする頭教、そのうち有畜農家創設の計画に乗つて参りまするいわゆる計画農家の頭数、これはもう殆んどきまつておりますので、漸を追うてやはり何年かの計画によらなくちやならんと思います。この点につきましては、そういつた具体的の資源の問題と絡み合い、又予算の点につきましても、本年度の予算では一応きまつております範囲内という制約はあろうかと思います。
#22
○北勝太郎君 北海道では、今十六カ所出願したということを聞いておるのですが、まだこれで漏れておるところはたくさんあるらしいのです。そこでどういう方針でこれを何カ年ぐらいで認めてもらわれるものかということを、これを一つ伺つておきたいのです。
#23
○説明員(鵜川益男君) お話の通り、北海道庁から申請がございますのが、ジヤージーの日高地区、そのほかに十六カ所というのが公文で頂いております。そのほかに申出のありました我々のほうに参つております数は、天北ほか三十二カ所、計三十五カ所というふうに一応計画の申入があつたようでございます。北海道全道というふうにおつしやるかたもございますが、やはり一応の基準がきまりますれば、それによりまして道庁なり、関係のかたと相談いたし、又現地におきましても、ここにございます通り、今回の審議によりまして基準の点に具体性が出て参りますれば、よく御相談して参りたいと思います。現在何カ所が急速に指定になるかという点につきましては、まだ考えておりません。で、何年かという点につきましては、これは来年度以降の予算の点等もございます。成るべくこれは早く一応の適地につきましては指定をいたしたい、かように考えております。
#24
○北勝太郎君 この乳牛資源の関係がありまして、なかなかそう殖えないのですけれども、いわゆるジヤージーの輸入、これは北海道にはたつた一つ指定されたようですが、あとはもう北海道じやジヤージーは要らんというようなつもりですか、それともどんなお考えでおられるでしようか。
#25
○説明員(鵜川益男君) ジヤージーにつきましては、すでに御承知の通り二八年度二カ所、これは八ケ岳と、岩手山麓に試みに導入いたしたわけであります。大体成績は、現在まで聞いております範囲では、入れました一、二カ月は非常に長途の旅路を経ておりますので如何かという評判もございました。最近冷静に聞きましても非常に喜ばれておるということでございまして、本年度につきましては、前年度同様の規模、即ち二カ年計画で六百頭、一カ年三百頭ずつ入れて参るということで、予算的に二億数千万円のものを以ちまして四カ所、前年度の残りの二カ所を合せまして六カ所ということで、現在六カ所が進行中でございます。非常に適地等につきましても、予算の関係並びに特に昨年六百頭入れるにつきましても、政府が責任を持つて農民が喜ぶようなものを入れたいということで、船腹の問題、現地におきます購買の関係、そのほか非常な努力をいたしまして、一応本年の千八百頭というのは容易ならん数字だと、我々は真剣に取組んでおるわけであります。併し今年一応千八百頭程度入りますると、今後その実績が又予算の一つの交渉の材料になろうかと思つております。当該地域の事情、原料乳地帯の関係、こういつたところの要望の点を勘案いたしまして、来年度等も引続き殖やして参りたい、かように考えておりまするが、現在まあ非常に技術的と申しまするか、事務的には適地といたしましては十何カ所、二十カ所程度全国にあるのではなかろうか、かようなことを我々聞いておるわけでございまして、大体その線までは年次別に殖やして参つては如何か、かように考えております。
#26
○北勝太郎君 ジヤージーを北海道にどれくらい入れるというお見込なんですか、その点を伺つてみたいのだがな。
#27
○説明員(鵜川益男君) このジヤージーにつきましては、北委員すでに御承知の通り、北海道におかれましては、条例できめられました審議会等で非常に御熱心に慎重に御検討があつたように伺つております。本年日高に決定されましたものにつきましても、非常に慎重、且つ真剣な御討議の結果と承わつております。なお適地があるようにも伺つておりまするが、本年の日高の模様等も道庁においても非常に注視しておりますし、我々も慎重な討議の結果も拝聴いたしておりますし、日高へ入つて参る状況も考え合せまして、今後道庁ともよく御相談して参りたい。日高だけが適地であると思つておりませんが、現在の段階におきまして何カ所ということはまだ申上げにくい事情でございますが、今後よく御相談いたしまして、適地には導入して参りたいと考えております。
#28
○北勝太郎君 ジヤージーは北海道では大分古くから北大で飼つておる。そこであそこの成績で果して北海道には適するか、適しないかということが大体おわかりになつておると思うのですが、そういう点について何かお調べになつたものがあつたら伺いたい。若し何なら後刻でよろしうございます。それじや今日は……。
#29
○委員長(片柳眞吉君) それでは、本日は政府委員の出席もありませんので、本日はこれで散会いたします。
   午後三時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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