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1947/06/22 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 厚生委員会 第14号
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1947/06/22 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 厚生委員会 第14号

#1
第002回国会 厚生委員会 第14号
昭和二十三年六月二十二日(火曜日)
   午前十時四十四分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○社会保險制度に対する方策決定の件
 に關する小委員長報告
○優生保護法案(谷口弥三郎君外三名
 発議)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(塚本重藏君) これより委員会を開会いたします。先ず最初に医療制度調査に關する小委員会の社会保險制度に關しまする事項が大体一應の方策を決定いたしましたので、小委員長から報告があります。
#3
○藤森眞治君 医療制度調査に關する小委員会におきましては、先に審議要領を決定いたしまして、本委員会に報告いたしましたが、その後、鋭意各方面の研究調査をして參りました。この第二國会におきましては、目下医療關係の諸法案が提出されておりまするし、又提出されんとしております。こここに本小委員会は各方面の事項を勘案いたしまして、社会保險制度に対する方策というものを決定いたしましたので、医療關係諸法案の御審議に先だつて、一應御報告申上げたいと存じます次第でございます。お手許へ印刷物を差上げてありまするので、一應これと対照いたしまして、私が読上げて申上げる次第でございます。
   社会保險制度に対する方策
 新憲法の実施に伴なつて、國民の健康と文化的最低限度の生活保障が認められておる以上、社会生活の保障制度が確立されなければならないことは当然である。併しその実現に關しては、現在我が國諸般の事情によつて制約せられてはおるが、この困難な事情を克服して、社会保障制度の確立を図るべきことは絶対要件であるから、先ずその現在の保險医療体系に新らしい意義と性格が賦與されねばならないのは当然である。
  現在医療制度の基調をなす社会保險制度は、最近の経済界の変動及で逼迫して世相を反映して、運営上大支障を來たしている実情に鑑みても、これに対する新方策の樹立は極めて急を要するものがある。
  現行の社会保險制度には、その機構の上にも又運営の面にも幾多の欠陷がある。その主たる良二、三を舉ぐれば左のごときものがある。
 一、保險行政の不統一
  現行社会保險は、健康保險、國民健康保險、労働者災害補償保險、船員保險、各種共済組合等、保險行政は複雜多岐に流れており、これによつて診療方針、請求様式も複雜になり、医療事務複雜化の大きな禍因となつておる。從つて事業の運営も不円滑となり、種々の障害を生むこととなる。
 二、社会経済の不安に伴う事業の不振
  経済界の急激な変動と急迫した世相を反映して國民健康保險組合の運営は極めて不振の状態に陷つておる。
 三、組合組織と運営に不備がある。
  國民健康保險組合の理事長は主として公選によつた市町村長がなつており、民主化されたとは云うものの、実際の運営にはまだ十分民主化されてない向も見受けられるので、これが機構を檢討する必要がある。
 四、危險分散の不徹底
  國民健康保險組合の区域が余りに小に過ぎるため、医療費の支拂が僅か上昇しても直ちに組合経済に大きな影響を與える。
 五、診療の不円滑
  保險組合の医療費の未拂が続出しており、國民健康保險組合のごときはすでに一億以上になつておる。適正診療費に対する算定方式が確立されておらないために、診療費は低廉に過ぎ、診療上支障を來すことが多い。
 六、行政機構の不備
  社会保險殊に國民健康保險について行政機構は誠に貧弱である。殊に地方機構においてこれを強化する必要がある。
以上社会保險に対する諸般の実情に照らして、本制度は次のごとき方策を採るべきものであると信ずる。
 即ち社会保障制度実施の前提として、各種の社会保險の統一を急速に実現しなければならない。而してこれがためには次の方針を採るべきである。
 イ、被保險者が自由に而も容易に適正医療が享けられなければならない。これがために社会保險の財的基礎の確立を図ること。
 ロ、社会保險運営の民主化を断行すること。
 ハ、社会保險制度の医療組織は給付の充実を期するため被保險者、医師及び保險者の立場を調和した組織でなければならない
   実施上の要領
 一、社会保險の財的基礎強化の一つとして、保險料の合理的徴集基準を決定すること。
 二、廣地域危險分散主義の急速な実現。
 三、社会保障制度一環として保險医療を高度に取扱うこと。
 四、被保險者利益の増進のため給付内容を統一すること。
 五、診療諸手統の簡素化を断行すること。
 六、適正な診療報酬を決定すること。その決定にあたりては課税關係を考慮すること。
 七、診療費支拂方法の迅速と合理化を図ること(支拂金庫の設定のごとき。)
 八、保健施設の有機的活用を図ること。
 九、社会保險の運営民主化を徹底するため中央地方に運営委員会を設置すること。
 十、公的医療機關の新設においては、既設診療機關分布との調整を図ること。
 十一、趣旨の普及徹底と組合の民主化とによつて自主的な相互扶助精神の高揚を図ること。
以上を社会保險制度に対する方策として小委員会は決定いたしました次第でございます。ここに御報告いたします。
#4
○委員長(塚本重藏君) 只今の小委員長の報告に対しまする質問等ありましようか……質問等ありませんでしたら、只今藤森小委員長より報告のありました社会保險制度に対しまする方策は、これは医療制度に關する調査事項中の社会保險制度に關しては、一應の方策が決定したものとして報告することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。
 尚この要領を政府に送付いたしまして、その実現方に努力して貰うようにお願いすることにいたします。
 次に優生保護法案についての審議を続けます。前回に引続き質疑をお願いいたします。
#6
○姫井伊介君 質問が重複いたしましたらば御答弁は要しません。第十二條に「社團法人たる医師会の指定する医師」とありますが、この社團法人の医師会が各都道府縣に画一的に組織されて運営の適正が期せられるかどうか。從いましてこの指定はむしろ都道府縣の優生保護委員会の指定というふうにした方がいいのじやないかと思われますが、この点につきましての発議者の御意見を伺います。
#7
○谷口弥三郎君 都道府縣には現在におきまして一個の社團法人である医師会がどこにもできておりまして、これは公的なものでございまして、この方におきましては無論会員は任意加入でありまするから、会員になつておる者とおらん者がございますけれども、その医師会におきまして、その統轄管下におけるところの医師の技術或いは施設などについてはよく分つておりますので、そういうところに指定をして貰う方が特に必要であると考えております。お尋ねの都道府縣における優生保護委員会と申しますのは、これは優生施設の方の審査をいたすのでございまして、ここで申しますのは人工妊娠中絶をする医者を指定する方に用いますから、どうしても医師会でないと実際の運用はできんと思いますので、さようにいたしております。
#8
○姫井伊介君 社團法人の医師会の中には、公的医療機關に從事しておる医者の人が入るかどうか。若しそれが入らないとすると、指定について若干の偏頗が起りはしないかと思いますが、この点はどういうものでしようか。
#9
○谷口弥三郎君 この医師会におきましては、全員でありましようと、全員でなくても、或ひは公設の診療機關でありませうと、とにかく技術と設備さへあれば全部を入れる、指定するということになつておりますから、その心配はないと思います。現在におきましても、その医師会の役員などは、或いは官公署、私立全部の者から医師会の役員を採つておるような次第であります。全部の医師会員を統轄することができるから、それが十分であろうと思います。
#10
○姫井伊介君 第二十五條、「優生手術又は人工妊娠中絶を行つた場合は、その日から三日以内に、その旨を、」とのみ規定してありますが、ただ手術を行なつたということだけでよろしいのか、或いはそれに対してはその結果も併せて報告をしなければならないのではないか、この点をお伺いいたします。
#11
○谷口弥三郎君 この場合におきましては、手術をやつたということのみの報告に止まるのです。手術後の結果というようなところまでは及んでおらんのです。又そこまではでき難うございますから、こういう患者に対して、こういう手術をしたというようなことを三日以内に届けるということになつております。尚序でに申上げて置きますが、この昭和二十一年度から、死産の場合などには、それに対する死産屆を出しておるので、それには、死産屆の屆出樣式に從つて全部を書いて届けておりますので、その死産屆を出す場合には、これは屆出をせんでもいいということに先の方になつておりますから、序でに申上げます。
#12
○姫井伊介君 この手術が責任を以て行なわれなければならないとするならば、ただ行なつた屆出のみならず、その後における結果が判明しなければ、國民の信頼を受けることにも支障がありはしないか。從つてこの三日以内の場合には屆出るとしても、その後における結果につきましては、手術者としてその責任上結果を報告せしむるの義務を負わせる規定が外に考えられておりますか、それはどのようなのでありましようか。
#13
○谷口弥三郎君 現在医者に対しましては、以前は旬報でございましたが、只今は月報といたしまして、新患者の入院、外來なども全部屆出でることになつておりますし、尚その後の治癒をいたしました時、或いは死亡いたしましたとかという点までも月報において屆出て、全部の患者を届けることになつて現在やつておるのであります。從つてこの手術のみに対して結果を届出でるというようなことをする必要はなかろうと思いまして、それはそれのみを届けることは、後で結果を報告することはせんで、全体を取纏めするということになつております。
#14
○姫井伊介君 第二十七條の秘密保持は、医師についてのことがありませんが、これは別に何か医師については秘密を守るという規定があるのでしようか、どうでしようか。
#15
○谷口弥三郎君 実際に対しましては、医師或いは歯科医師とか、産婆とか、弁護士というものに対しまして、その業務上知り得た秘密はこれを漏らしてはならん。それに対する義務は黙秘義務が刑法に出ております。それでこういうものは出していないのであります。
#16
○三木治朗君 母性保護の妊娠中絶の問題ですが、第三條の一号から四号までに該当する者は、医師の認定で中絶することができるが、第五の、子供が非常に多くて著しく母体を損する虞れのある場合、これを審査員会に掛けなければならないということは、非常にこの法の目的を幾らかでも阻害しやしないかという不便があるように思うのです。やはり成るべくこういうことは少しでも他人に知らせることを好まないのでありますから、これをやはり医師の認定でできるようにすることはできないものかどうかと、いうことともう一つ十三條にありまする四の項目、暴行若しくは脅迫によつて、いわゆる妊娠した場合のものは、これは民生委員の手を通さなければならないように、これは法律ではなつておるのですが、そういう手術もこれも前の何と同樣に、そういうことは尚更他人には少しでも知らしたくないというのが、やはり民生委員を通さなければならないという理由がどこにあるのか伺いたいと思います。
#17
○委員長(塚本重藏君) ちよつと、谷口委員の答弁がありますが、ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#18
○委員長(塚本重藏君) 速記を始めて下さい。
#19
○谷口弥三郎君 只今の分娩によりまして、母体の健康度を著しく低下するというのは、これは医師のみでやるようにする方が、運用上非常にいいと思いますのでございますけれども、余り医師一人にそこまでやらせるようにするというと、人工流産というものを余り廣範囲にやり過ぎるようなふうの虞れがあるというのを懸念いたしまして、この程度ぐらいは、やはり外の医師の同意を経た後にやるということぐらいの制限を加えて置いた方がよくはないかというのが趣旨であるのであります。それから第二の暴行若しくは脅迫によつて姦淫されて妊娠したといいます場合は、これは無論医者が一人でやつた方が本人に対しては非常に都合がいいと思いますけれども、実際に仮に姦淫されたかどうかということを、医者がそれまでもずつと調べるとか、或いは実際にそれを承認するとかいうようなことは、なかなかできにくいと思いますので、まあ民生委員が、とにかくそういう場合にも携わつて貰つた方が、安心して手術ができやせんかというふうな關係で、それで民生委員の意見を添えて、支部の民生委員会にまで掛ける。要は余りにひどく堕胎手術というのをやり過ぎてはならんというふうの点から、全程ここは狹めて、余り激しくやらさぬという点からこの案は書いてあります。
#20
○委員長(塚本重藏君) ちよつと速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
#21
○委員長(塚本重藏君) では速記を始めて、質疑を続行いたします。
#22
○三木治朗君 大体討論で。
#23
○中平常太郎君 ちよつと、第十二條の姫井委員のお話になりました点について、社團法人たる医師会、これは任意加入でありますから、任意加入である社團法人というものは、九分九厘入つておるのでありましようが、何かの感情その他の關係で、或いは又運営がうまく行かないというようなことで、社團法人を隨分脱退するような者があるようでありますが、社團法人たる医師会だけが指定する医師は、社團法人に加入しておろうがおるまいが差支ないと思いますが、指定する者は医師会となつておりますから、そうすると、社團法人に加入しておらん者は指定する權利が医師としてはないわけでありますが、この点もう一遍御説明願います。
#24
○谷口弥三郎君 医師会は社團法人で、これは先刻申しましたように、各府縣に一個しか作ることができないということに法律できちんと定められておるものでございまして、而もその役員は官公吏或いは学界などから、全面的に出ておりますので、たとえその指定しようと思います医師が、会員であろうとなかろうと、或いは又官公署におろうと、全部の中から必ずやれると思います。尚これは医師会の方も十分そういうような方面に努力して貰うようにさせたいと思つております。
#25
○小杉イ子君 第十三條の四号と、それから三項のところでございますが、強姦によつて妊娠した場合とございます。これは公にできないことで、本当に強姦されたものかどうかということは知ることができませんし、嘘も言えます。又第三の所には「第一項の同意は、配偶者が知れないとき」、これも私生兒を意味するものと思いますがこういう者に対して易々と手術をするということになると、大変な風紀問題を起すということになりますが、この辺はどんなものでございましようか。
#26
○谷口弥三郎君 暴行脅迫ということは、実際、余程それを調べることが可なり困難であろうと思いますが、従つて成るべくその附近に、いろいろとそこの事情を知つた民生委員がこれに対して証明をすれば、先ずそれが可なり確かなものになる。尚その上にこれに対しましては申請をして、そうして地区の優生保護委員会には、そこには委員に或いは檢察官、或いは裁判官というのがいるのでありますから、そういう人も加わつて、その審議に携わるというと、可なりはつきりしたものができはせんかというふうに考えております。
#27
○委員長(塚本重藏君) 他に御質疑はございませんか。別に御質省もないようでありますから、これより法律案につきまして討論に移ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお願いいたします……。別に御意見もないようでありますから、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼び者あり〕
#28
○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。
 これより採決いたします。優生保護法案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
   〔総員挙手〕
#29
○委員長(塚本重藏君) 全員であります。全会一致でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。(拍手)尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて、予め多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において報告文の内容、当委員会における質疑の應答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして、御承認を願うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。尚本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書について多数意見者の署名を附することになつておりますから、本法案を可決された方は順次御署名を願います。
   〔多数意見者署名〕
#31
○委員長(塚本重藏君) 御署名漏れはございませんか。署名漏れないもと認めます。速記を止めて。
   午前十一時十六分速記中止
   ―――――・―――――
   午後零時二十九分速記開始
#32
○委員長(塚本重藏君) 速記を始めて、それでは今日はこれで散会いたします。
   午後零時三十分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事
           今泉 政喜君
           谷口弥三郎君
   委員
           河崎 ナツ君
           中平常太郎君
           三木 治朗君
           草葉 隆圓君
           中山 壽彦君
           木内キヤウ君
           小林 勝馬君
           藤森 眞治君
           井上なつゑ君
           小杉 イ子君
           姫井 伊介君
           山下 義信君
           千田  正君
  政府委員
   厚生事務官
   (保險局長)  宮崎 太一君
  説明員
   厚生事務官
   (保險局國民健
   康保險課長)  藤本  潔君
ソース: 国立国会図書館
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