くにさくロゴ
1953/02/26 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 水産委員会 第9号
姉妹サイト
 
1953/02/26 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 水産委員会 第9号

#1
第019回国会 水産委員会 第9号
昭和二十九年二月二十六日(金曜日)
   午前十時二十八分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     森崎  隆君
   理事
           秋山俊一郎君
           千田  正君
   委員
           青山 正一君
           野田 俊作君
           森 八三一君
           木下 源吾君
           菊田 七平君
  衆議院議員
   水産委員長   田口長治郎君
  政府委員
   水産庁長官   清井  正君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       岡  尊信君
   常任委員会専門
   員       林  達磨君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○特定海域における漁船の被害に伴う
 資金の融通に関する特別措置法案
 (内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(森崎隆君) それでは只今から委員会を開会いたします。
 本日は特定海域における漁船の被害に伴う資金の融通に関する特別措置法案、本法案を議題に供します。
 前回に一応の説明を政府委員から頂きましたが、御苦労ですが、もう一度改めて本法律案の御説明を政府委員から頂きたいと思います。
#3
○政府委員(清井正君) 特定海域における漁船の被害に伴う資金の融通に関する特別措置法案でございまするが、この趣旨についてはすでに御説明申上げたのでございますが、これはいわゆる李承晩ラインと称する韓国側の不当措置によりまして拿捕されました漁船に対するところの代船の建造、取得、或いは拿捕されたことによりましてその所有している他の漁船を転換し又はそれを改造するのに要する資金、及び漁具を取得するのに要する資金を特に農林漁業金融公庫から低利で以て融資をしたいという趣旨の規定でございます。御承知の通り、外国による拿捕という問題は、韓国にとどまらずすでに中共方面或いは北方方面におきましても、時々あるのでございまするけれども、この間の事情が韓国と違つた点もございますし、又その他いろいろ国際関係においても差があるというような関係もございますし、その他公庫の金融上の枠の問題等をも勘案いたしまして、とにかく本措置といたしましては、今までいわゆる李承晩ラインの宣言はありましたけれども、それによつて拿捕された船というのは極く僅かだつたのでありまするが、昨年の九月に、今後同ラインに入つた漁船は拿捕するという不当なる声明によりまして、その後一、二カ月の間に続々と多数の日本漁船が拿捕されたという特別の事態に即応いたしまするための臨時のこれは措置というふうに考えまして、いわゆる李承晩ラインの声明によつて拿捕された船の所有者に限る特別対策であるという点をはつきりいたしておるのであります。而も又その期間が、いわゆる声明がありましてから極く二、三カ月の間に拿捕された、極く僅かな期間に限つておるのでありまして、その後の措置といたしましては漁業者にも無論十分の趣旨徹底はいたしております。一方拿捕漁船に対する特殊保険の方途を講ずる等の措置をいたしまして、我々といたしましても漁業者側といたしましてもいろいろこれに対する態勢も整備しつつあるのでありまして、その以前のいわゆる緊急措置に対する措置ということが本法律の立法の趣旨なのでございます。従いまして初め原案におきましては、いわゆる講和が発効いたしましてから五十隻が拿捕された昨年の十二月三十一日までというふうに期間を限つたわけでございます。と言いまするのは、拿捕された該当隻数がはつきりと固定と申しますか特定をいたしておるのでありまして、而もそれが九月、十月に殆んど大部分が拿捕され、十一月に至りましては、十一月の初旬に二隻拿捕されたということです。その後ずつと拿捕がございませんので、その間を一つのピリオツドにいたしまして、昭和二十八年の十二月三十一日までということに原案を考えたのであります。従いましていわゆる四月二十八日から昭和二十八年の十二月三十一日に至るまでの間に拿捕されたところの船の所有者に対する資金融資、こういう考え方でできておるのであります。但しこの点は衆議院において御議論がありまして、二十八年十二月三十一日というのは本法施行の目の前日までというような御趣旨で御修正に相成つたのであります。その意味はいわゆる李承晩ラインの処置によりまして、拿捕されたものは当時五十隻という計算をしておつたのでありますが、その後一月の中旬と二月の初めに一隻ずつ拿捕されまして、合計二隻拿捕があるのであります。従いまして本法施行までに拿捕されたものと同じ趣旨ではないかと判断するのでありますが、この趣旨によつて二隻を追加するというような結果に相成りまして、本法施行の目の前日までということに御修正に相成つた次第であります。それが本法の根幹でございまして、あと第二条以下第六条まではそれに附随する規定であるのであります。
 第二条は、農林漁業金融公庫がその代船建造等の目的を達成するために公庫法によりまして作成するところの事業計画と資金計画の一部として代船建造等の資金の融通に関する計画を定めなければならないというふうにいたしておるのであります。
 第三条は、漁具であります。これは現在の法律によりますと、漁具は農林漁業金融公庫から融通ができない立場になつておりますので、特にこの際は漁具を附加えるということにいたしまして、漁具をこの際公庫から貸し得る対象であるということをはつきり明示したのが第三条であります。
 第四条は利率でありますが、普通の金融の利率は七分五厘でありますが、特にこれは五分五厘というふうにはつきりいたしておりまして、七分五厘から二分下げまして、五分五厘ということにいたしておるのであります。この点が本法の特色でございます。併しこれは一旦拿捕されたところの船が帰つて来た場合には特殊の事情で、ござ六ますので、「帰還した日以後における当該融資残高に対する利率に限り、仲七分五厘とすることができる。」拿捕された船の代船を造るわけでございますから、その船が帰つて来たような場合においては七分五厘とすることがで吏るということを考えまして、但書として挿入いたしてあるのであります。
 第五条はこれは貸付の申請期限であります。これは二十九年の四月三十日までということにいたしておるのであります。併しこれは書類の整理、事務の整理等の関係からこういうことになつたのでありまして、該当者に対して或る程度の枠をはめるという意味ではないのであります。従つて但書で以て若しどうしても四月三十日までに天災その他の止むを得ない事由で以て間に合わないといつたようなことがあつた場合には大体現在は六月三十日頃までに考えております。六月三十日頃までにその申請期限を延期することができるという趣旨を入れておるのであります。これは事務整理という意味でありまして、大体は四月三十日までにとれは申請さえすればいいのでありますから、申請することはできるのではないかと私は考えておるのであります。若し万が一止むを得ないような事情がある場合には若干延ばすということを考えているのであります。
 それから第六条は、これはまあ公庫からは五分五厘貸すのでありますが、県がその場合に資金の利子の一部を補給するということが考えられるのであります。と申しますのは、県が利子の一部を補給したことを考えまして、ここに法律上明文を規定して置きたいということで、特に「当該資金の利子の一部を補給することができる。」という明文を置きまして、その法的な裏付けをしておる、そういうようなことになつておるのであります。
 それからちよつと申し落しましたが、第一条で、「政令で定める海域」ということになつておりまして、その海域を政令で定めることになつているのであります。これは御承知の通り、すでに本改正によりますと、五十二隻というものがはつきり特定をいたしておるのでありまして、従つてどこの船がどこで捕まつたということが大体はつきりいたしておりますから、捕まつた地点を囲みまして海域というものを指定いたしたいというふうに考えておるのでありまして、これはすでに実績等がございますが、将来の規定の問題は一応入つておりませんので、こういうふうに制限規定をいたしたいということでありまして、従つていわゆるこれは李承晩海域とは同一の海域ではないのでありまして、いわゆる海域外においても捕まつた船がございますから、それらを含めて、対象になる漁船の捕まつた地域、海域を全部包含いたしまして、海域の規定をいたしておる、こういうことに考えておるのであります。
 それから「政令で定める漁具」と書いてありますが、政令の定める漁具というものはどの程度のものを考えているかというのでございますが、これは拿捕された漁船が従事していた漁場又は漁業の転換によつて従事する漁業に必要なものであつて、比較的多額の資金を必要とするものというふうに考えております。但し一操業単位に必要な範囲内のものに限るということになつておるので、大体漁具は含まれるという考え方になつておるのであります。
 それから一言申添えますが、この法率の資金的な裏打ちでございますが、これはすでに一部は農林漁業金融公庫の本年度の資金枠といたしまして特定をいたしてあるのであります。併し無論これは本年度と来年度に跨がるものでありますので、本年度で足らない分は二十九年度の農林漁業の資金の中からこれを支出するということになつておるのでありまして、ただ申上げたいことは、これは農林漁業金融公庫からの貸付ということに考えておりますので、たまたま拿捕された船のうちに、いわゆる農林漁業金融公庫で貸付をしない、いわゆる比較的大経営の経営者の部分、即ち総トン数一千トン、使用者が三百人というものに該当するものの資金は用意しておりません。この分は別途の行政措置で措置をいたすということになつておりますので、資金の措置といたしましては、これはいわゆる開発銀行から貸付するに相当する部分を除いた部分が農林漁業金融公庫からの貸付の資金ということに計算をいたしておるので、念のため申上げたいと思うのであります。簡単でありますが説明を終ります。
#4
○委員長(森崎隆君) なお本法案は昨二十五日衆議院で修正議決されまして本院のほうに付託されておる次第でございますので、修正の点につきまして衆議院側からの御説明を併せて頂きたいと思います。衆議院水産委員長の田口さんに御説明願います。
#5
○衆議院議員(田口長治郎君) 衆議院の修正部分につきまして、私から簡単に御説明申上げたいと思います。
 本法は、いろいろな年末金融の関係からいたしまして、昨年末までに何とか制定をしたい、こういうことで非常に急いだのでございますが、議員提案にするか、或いは政府提案にするかというようなことから、年末までに制定することができなかつたような事情がございまして、大体講和条約発効の日から十二月三十一日までに法律を制定するという考え方から、十二月三十一日までに拿捕、抑留された船、こういうようなことで五十艘というものを計算されてあつたのでございまするが、その後法案審議中に福岡県の二艘曳及び鳥取県の一艘曳漁船が拿捕されまして、結局十二月三十一日以降に、法案審議中に二艘同じケースで拿捕された、こういうような問題が起つておるのでございます。この十二月三十一日が、そもそもこの日までに本法を制定してしまう、こういうようなことで期限を切つております関係もありますし、ケースがたまたま同じでございますから、法案審議中に起つた同じケースのものを省いてしまつて、十二月三十一日に切つてしまうということは理論上どうしても通らない、こういうようなことが衆議院の水産委員会委員全員の考え方でございまして、少くともやはり法律施行の目までこの間に起つた同じケースは全部本法を適用しなければ理論が通らないだろう、こういうことで修正をしたような次第でございます。この点理論的にどうしても筋を立てなければならんということで修正した次第でございますから御了承を願いたいと思います。
#6
○委員長(森崎隆君) ちよと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#7
○委員長(森崎隆君) 速記を始めて下さい。
 それでは暫うく休憩いたします。
   午前十時四十六分休憩
   ―――――・―――――
   午前十一時一分開会
#8
○委員長(森崎隆君) それでは只今から再開いたします。
 これより本法律案並びに衆議院の修正案を含めまして質疑をいたしたいと思います。
 質疑のあられるかたは順次御発言を願います。
#9
○木下源吾君 簡単に質問をしますが、これは、船についている保険はどうなるのですかな。向うに拿捕されたということに対して保険はどうなるのですかな。まあそれを一つ聞かして下さい。
#10
○政府委員(清井正君) この拿捕された船につきましては、保険に入つておりました船と、なかつた船と両方あるわけなんでありますが、ここの法律にも第一条の中に書いてあるのでありますが、融資をする場合におきましては「特殊保険に係る保険金の支払を受けることができる場合における当該保険金の金額に相当する資金を除き、」ということになつておりまして、特殊保険に入つて拿捕されて、そうしてそれによつて保険金をもらつたという金額につきましては、いわゆる本法律の対象となる必要な資金という資金の額からこの保険金の額に相当する部分を引いて計算をする、こういうことになつております。
#11
○木下源吾君 それは建前はそうだが、実際はどうか。保険に入つておる船が保険金をもらつておるかどうか、そういうことはお調べになつておらんか。
#12
○政府委員(清井正君) 保険に入つておりましたものが全部で十五隻ございまして、そのうち本法の対象になる部分につきましては七隻保険に入つておりました。で、その七隻の船が入つておりました特殊保険で、その七隻に対して支払いました保険金額が四千二百三万円になつております。すでに支払を済んでおります。
#13
○木下源吾君 保険は何ですか、沈没した場合でも拿捕した場合でも同じように取扱われておるかどうか。
#14
○政府委員(清井正君) これは特殊保険でございますから、こういうようなことによつて拿捕、抑留された場合の保険でございます。撃沈、沈没、又はこれに準ずるような場合において、拿捕、抑留、撃沈等によつて生じた損害に対して支払うことになつております。
#15
○木下源吾君 そういう特殊の保険があれば、船体ばかりではなく、乗組員に対しても何らかの損害保険というものがあるのですか。
#16
○政府委員(清井正君) この特殊保険の制度と並行いたしまして、乗組員の給与保険という制度がございますので、これはたまたま代船建造ございましたから、いわゆる特殊保険の金額を掲げてございます。大概特殊保険に入つております場合には、同時に乗組員の給与保険に入つておる場合が多いのでございます。殆んどがそうでございますから、特殊保険に保険料を払つておる場合には、同時に乗組員の給与保険の保険料を支払つておるわけでございますから、別途の金が四千二百万のほかに乗組員の給与保険として支払われておると思います。
#17
○木下源吾君 そうすると、乗組員は全部損害保険か何かをもらつておりますか、今度の場合。
#18
○政府委員(清井正君) 保険に入つておりました船につきましては、所定の取扱によりまして、その拿捕された船に対しまして特殊保険金を支払い、同時にそれに乗つておりました乗組員に対しまして乗組員給与保険に入つております場合には乗組員の給与保険金が支払つてあるわけであります。そのほかの措置といたしまして、御承知の通り、昨年の暮に抑留されたかたがた全部に対しましていわゆる見舞金を国家から支出いたしたことは御承知の通りであります。そのときには留守家族のかたにお見舞金、いわゆる何と申しますか、差入れと申しますか、そういう意味の見舞金と、それから抑留期間に応じまして、これは保険に入つていないかたでありますが、保険に入つていないかたに抑留期間に応じまして或る程度の見舞金を支出いたしておるのであります。
#19
○木下源吾君 本件に関する対象からこういうようにしてもらいたいという請願か何かが出ておりますか。
#20
○政府委員(清井正君) 請願と申しますか、本件の拿捕されたかたよりは無論代船建造の融資をしてもらいたいという非常に熱心な御要望もございますし、その他、これは代船建造ばかりでなしに、拿捕されないかたがたからもいろいろ李承晩ラインの措置よつて不当な損失を受けたのであるから、それに対して何らかの措置を講ずべきであるという趣旨のいろいろのお話合いが関係の業者のかたがたからは頻りにあるのでございますが、私どもといたしましては、一般の措置につきまして行政上の措置をとりますることは十分いたしまするけれども、法律によつてこの措置をとるということは限度ではないかというふうに考えまして、拿捕されたものについて低利で国家から貸付けるというような措置を法律でいたしたような次第であります。
#21
○木下源吾君 国会にはどれほど出ております、請願陳情というのは、本件に関して。
#22
○委員長(森崎隆君) お答えいたしますが、私のほうで受取つたものでは、成規の形で請願として出て来ておるものがたくさんございます。それからその他陳情の形で来られたのは随分ございます。これは昨年十一月頃から頻りに陳情があつたわけであります。ちよつと数は今覚えておりません。
#23
○木下源吾君 勿論こういうことだから請願陳情は来ておると思うのですが、同時にこういうような代船に対してだけではなく、拿捕された間の非常な損害がある、漁業の。これについては何らの要請も、請願も陳情もなかつたのか。
#24
○委員長(森崎隆君) この問題はやはり陳情はございました。やはりそういう損害全体を国家が補償せよという強い要請がございました。だが今のところ制度としてはございませんので、やはりそういう不慮の場合ですね。この際は特別な不慮の場合になりますが、そういう際にはやはり保険制度というものを確立しなければならんと思つて本委員会は現在研究を進めておるわけでありますが、政府に対しても、そういう損害も一つ同時に含めてやれということは強く要請はしておりまするが、今のところその段階には至つておりません。
#25
○木下源吾君 こういうことを政府がいろいろ面倒を見なければならん意義は、社会的な面からと、直接又政府の責任ということとあると思う。そこで船の返還の努力というものに対して政府は十分の措置をとられたかどうか。
#26
○政府委員(清井正君) この点は又別途お答え申上げる機会もあるかと思いますが、私どもは事務当局といたしまして、関係省、主として外務省でございますが、と時々連絡を密にして本件の解決については、できるだけ速かに日韓会談を再開いたしまして、正当な話合いによつてこの問題を解決するということに努めておる最中でございます。そこで、かかる事態が起りましたことにつきましては、その都度、外務省から正式の系統を辿りまして、当該漁船の即時返還と乗組員の帰還、並びにこれに伴つて起つた損害賠償の請求権の留保等の、あらゆる措置をとつて来ておるのであります。今までも、ちよつと数は覚えておりませんが、相当回数に亘つて、その都度、或いは事態の新たなる都度に、一々外務省から所定の手続をとり、やつておるのでございますが、未だそれに対して殆んど正規の回答が得られていないような状況であります。又日韓会談のほうも御承知の通りの状況で、まだちよつといつどうなるということがはつきり申上げられないような今状況になつておるのであります。ところが、御承知の通り、船はまだ返つて参りませんけれども、乗組員のほうのかたは、昨年船と共に抑留されたかたは、殆んど帰つて参りました。重かに六人残つておつたのでありますが、その後最近二隻拿捕された船の乗組員のかたは帰つて参りませんけれども、昨年拿捕された船の乗組員は六人を残して全部帰つて来ておるような状態であります。
#27
○木下源吾君 損害賠償等、政府が考えておられるということならば、これはもう政府自身の責任でやろうということは明らかです。そこで、若しもこれらが、まあどういうように没収されてなくなるのかなんかわからんが、やはり相手方は日本の向うにあつた財産処分、即ちまあ賠償と相殺すると、いろいろなそういうようなことの建前になつた場合、やはり相当な額をこれは被害者というか、そういう者に対しては義務を生ずるのじやないか。そういうように考えるのですが、その点はどうですか。
#28
○政府委員(清井正君) その点については何とも申上げられませんが、まあいわゆる漁業問題が他の請求権の問題と密接な関連を持つてお互い考慮されておるということは事実のようであります。又韓国側の主張もいわゆる請求権の問題が双方に非常な意見の違いがあるということによつて、漁業問題もそれと関連してなかなか解決を見ないのではなかろうかと、私ども実は想像いたしておるのであります。まあその問題の解決如何によつて、又おのずから違つて参ると思いまするけれども、私どもの考えとしましては、只今お話のような拿捕された漁船については、臨時措置といたしまして、この法律によつて低利で以て代船建造もなし得るようにという措置をいたすれば足りるものと私は考えておるのであります。
#29
○木下源吾君 この低利で貸すというのは、飽くまでも貸すだけなんですね。私の言うのはそうでない。やはり財産権の問題を今聞いておるのですが、今ではこの法律で、余りそういうことまでは必要ないかも知らんから、これでまあよろしいが、同一の所有者で一人で何隻も持つておるという場合があるのですか。これは今度の対象で……。
#30
○政府委員(清井正君) 少しはあるようであります。そういう余計はございませんけれども、一つの会社で二隻ぐらい拿捕されたものはありますけれども、これは極く僅かな例でございまして、大部分は一隻だけのものであります。
#31
○木下源吾君 それは私は、零細漁民というか、零細漁船というのか、そういうものを先ず助けるというのが主眼のように考えておるのですが、今のように二隻も或いはその他三隻もというような会社ですね、そういうようなものに対してはやはり同一の考慮の下におやりになつておるのですか。
#32
○政府委員(清井正君) これは実際問題といたしましては、先ほどちよつと御説明申上げました通り、五十隻拿捕されたうち、そのうち九隻は御承知の通り農林漁業金融公庫で貸付ける範囲外に実は相当している経営者の船なんであります。そこで五十隻のうち比較的大経営のかたが経営しておられる船の九隻分については、これは本法の措置によらずに、別途の措置によつて開発銀行から所要の措置をとるようにということで交渉いたしておるのでありまして、大経営の分の九隻を除きました四十一隻について本法の措置をとるということになつておるのであります。四十一隻の分の中にも一つの経営者で二、三隻捕まつたものもございます。そういうのは御承知の通り底曳船が捕まつたりいたしますと、底曳は大体二隻で一単位になつておりますので、当然一つ捕まると二隻が捕まる場合が多いのであります。旋網にいたしましても、二隻なり三隻大抵一組になつている場合が多うございますから、まあ一隻だけで捕まる場合もありますけれども、一隻捕まれば二隻捕まつてしまうというような場合が多いのでございますから、そういう意味において、二、三隻一経営者において捕まつているという場合もあるように思います。
#33
○木下源吾君 この貸付に当つて、一切貸付ける権限というのは漁業公庫、公庫にあるのですか。例えば一トンに対して幾ら、現物によつて、当り前なら質屋のように見て貸すというのが当然ですが、そうでなく、最初はやはり船のトン数で、一トンなら何ぼ、こういうふうに貸すのか、そういう点はわかりませんか。従つて総額がどのくらいになるか、自分でもやはり金を出さなければ代りの船を造られない、そういう点を聞きたいのですね。
#34
○政府委員(清井正君) これは農林漁業金融公庫が、公庫の責任において貸付することになつておるわけであります。併し私どもといたしましては、これは特殊の事態によつて拿捕された事態でもありますし、又拿捕された船が個別にはつきりわかつておるわけであります、隻数も、こういう船が捕まつたということも全部わかつておるわけであります。従つて、この船を造るのには、このくらいの金が要るということも、一定の単価で以て計算いたしておりますから、私どもの考えておりますところでも、この捕まつた船の代船を建造するに必要な資金枠というものは、公庫に留保されておるものと考えておるのであります。従つて公庫はこの法律に基き、又この法律に基いて計画を立てることになつておりますから、即ちそれぞれの個々の申請がありました場合に、その個々の代船の融資計画に対しまして、貸付し得るだけの枠は本年度と来年度に跨がりまして十分留保されておるというふうに考えておるわけであります。貸付するのは、大体木船ならば八割程度を限度として貸付ける、鋼船でありましたならば六割を限度として貸付するということになつておりますので、その限度を見合つて適切に貸付が行われるものと私は考えておる次第であります。
#35
○木下源吾君 まあ、八割と言つても、見方によつては八割貸せばできる場合もあるだろうと思う。まあ、鋼船なんというのは、併し六割と言えば大部分は自己資金を出さなければできないと思うのです。一方において公庫に、漁具までも今度貸してやろうという親心だね。併し他面において、そういうことができないというようなことが起きませんか、こう考えるのです。その点はどういうように考えておられるのか。
#36
○政府委員(清井正君) まあ八割、六割の問題でございますし、確かにその貸付限度外の部分は自己負担をしなければならんのでありますが、御承知の通り八割と申しますと、殆んど貸付をする場合の最高限度でありますから、これ以上限度を上げるということはできないと思いますが、鋼船の場合の六割ということを考えて見ますると、大体鋼船の場合は、具体的例をとりましても、全部保険に入つておるのであります。保険に入つておりまするから、保険の六割の分の自己負担部分に保険の金額が該当する。ぴつたりと該当しなくても、自己負担の部分に保険金は入つておるのであります。従いまして四割全部を自己負担ということでなくて、保険制度と見合つてこれに貸付し得るということになろうかと思います。而も又鋼船のほうは、木船と比較いたしますと、耐久年限も長うございますから、従つて木船と鋼船とでは八割、六割の比率をつけることはどうだろうと私は考えるのでありますが、要するに自己負担の部分は、保険に入つておるかたは……。それ以外の部分は自己負担をして頂くということになるのでありますが、私といたしましては、この限度が最も最高限度として妥当ではないかと考えておるのであります。
#37
○木下源吾君 今のことをいろいろお尋ねしたことは、余り金融機関の独自の見解そういうものに任せる部分が多ければ、又今のような請願運動などが個々の業者ではなく、団体等によつて行われるというような、今やかましいリベートの問題、又金融機関の不当な権利を振り廻して、そして折角のつまり救済するというか、援助するというものを、苦しめる結果になつてはいかんと、こう思うのですよ。ですから私はもう少し明確に規定して、これをやつたらいいんじやないかと、まあこう考えるのですが、この程度の法律で、業者が実際に救われて心配ないと、こういう考えがあるのかどうか。勿論提案された以上は、そういう責任は持つという建前であろうけれども、なにせ水産庁の役人の諸君は、永久にその地位についておるわけでもないので、代られたときにあとで又かれこれみんなが困つてはいかんと、こう思うので、そういう点を今のうちに明らかにして、保険金を取つたものにはこうだ、原則としては八割なら八割を貸すのだというようなことを、もつと明らかにしたほうがいいんではないかと、こう考えるわけなんです。そういう点について、責任を持つて大丈夫だと言い得るかどうか。そういうことを一つ最後にお伺いしておきたいと思うのですね。
#38
○政府委員(清井正君) 木下委員御心配の点御尤もな点もありますが、この点は先ほど御説明申上げた通り、資金枠というものをはつきり特定をいたして、現在の公庫の枠の中にはつきり入つておるのであります。この金額も拿捕されたところの船等を勘案いたしまして、はつきり金額を持定いたしまして、なおそれに漁具の費用等の金額等も勘案いたしまして、はつきり枠を特定いたしてあります。従いまして公庫といたしましては、この法律が出ました場合におきましては、それによつて資金計画なり、事業計画をしまして、私どものほうでこれを承認いたしまして、これに基いて公庫は貸付を行うということになるわけであります。現に実はもう貸付し得る態勢の準備はできておりまして、今でも貸付すればし得る態勢ができておるのでありまして、早くこの法律が出ることを望んでおるような事態に実はなつておるのであります。この代船建造の融資は間違いなく行われるものと私は確信を持つております。
#39
○木下源吾君 最後にもう一点だけ何しておきたいと思いますが、提案理由の説明を見ますと、何もかも相手の韓国が悪い、そうしてこつちには何らの欠点がない。勿論欠点はないでありましようが、併し相手がやるにはやるだけの言い分があるだろう。こういうことは全然今こういうふうに書いておられる通りだとしても、問題を解決するのには、こういう態度では問題は解決せんと思う。実際は現実に見た現像は、或いはこういうことを言われるようなものかも知れないけれども、やはりここに至る経過というものについても、多少の考察が必要なことばかりでなく、批判ということも必要だと私は思う。こういうような態度では今解決しようと思つたつて私はできんと思う。何もかも韓国が悪いのだね、無謀なんだ、若しもこういうように、本当に主張しなければならん根拠があるならば、これは全部代船をくれてやつたらいい、私はそう思うくらいなんです。こういう態度は政府としては止むを得ないだろうけれども、実際の交渉に当つては、こういう態度はもう少し改める必要があるのではないかというふうに考えますので、ちよつとこの際所見を伺つておきたいと思うのであります。
#40
○政府委員(清井正君) 日韓問題につきましては、先ほどもちよつと御説明申上げました通り、これを正規の会談によつて解決をいたすべく、すでに二回に亘つて正規の会談をいたしたのでございますが、その後不幸にして決裂を見て、そのままになつておるのであります。私どもといたしましては、このいわゆる李承晩ラインの問題につきましては、日韓双方の理解協力によりまして、公正なる判断の下に会談を進めて参りまして、会談によつてこの方面の問題を解決して参りたいということで努力いたしておるような次第でございます。
#41
○秋山俊一郎君 三、四点伺いたいのでありますが、先ほどの提案理由の説明で、この代船建造融資の対象となるものは、昨年の九月以降大量に韓国に拿捕されたというものを主として対象にしている。大体それに関連して本年も一、二艘あります。そういうものを含めるということでありますが、この韓国の拿捕というものは当時において若しこの線に入れば拿捕するぞという警告というか、そういう一方的な宣言をしてやつたのであります。ところが中共とかソ連とか、台湾とかいうものは、何らそういつたような別に予告があるわけでなし、随時随所で以て拿捕してその数も相当たくさんになつておるのでありますが、かような問題が続出するということは、要するに両国の国交の調整がうまく行つていないということは勿論でありますが、そこに日本政府として大きな責任を感ずべきであろうと思う。そうすると、ひとり日韓問題に関してのみかような措置をとり、その他のものは何らの処置をとらないということはどうも我々にははつきりしないのでありますが、その点は先ほどの御説明によりますと、問題が違うということであります、私はあえて違うと思わない。ただ財政措置等から予算がどうのこうのということであればこれは又別でありますけれども、それにしましても、これを全然除外して朝鮮問題だけにかような処置をするという理由をもう一度説明願いたい。
#42
○政府委員(清井正君) その点は先ほどもちよつと触れたのでありますが、確かに拿捕という事態は韓国にとどまらず中共にも、むしろ中共のほうが最近は多いのであります。国府は最近はございませんが、講和条約発効前は相当あつたというような事実であることは御承知の通りであります。ただ私ども考えますのに、いわゆる李承晩の問題はこれは昨年の九月に声明がありまして、その間に突如として短い期間に多量のものが拿捕されたというような事態にあるのであります。その声明の以前も無論李承晩ラインというものはあつたのでありますが、これは拿捕されたものは極く僅かで、ままであつたのでありますが、九月の声明以来大量に拿捕したというようなことでありまして、いわゆる突発的な事故であつたというふうに考えられるのであります。そういうような突発的な一時的な事態に対しまする措置といたしまして今回この措置を行うというふうに考えておるのでありまして、中共或いは国府等につきましても、無論拿捕されて、而もそれがいつ、どこで捕まるかわからんような状況であることはお話の通りでありますが、その点が実態において若干韓国と韓国以外のところは違うというふうに私どもは認識をいたしておるのであります。又国際上の関係も、これ又やや異にするような点もありますし、大きく申しますと、その二つの点がやはり今回の韓国の問題とは異にする考え方を持つているのであります。なお且つこれに附随する問題でありまするが、財政的な見地から申しましても、中共方面に拿捕されておりまする船は相当大型の船でもございますし、仮にそれに対しまして同じような措置をとるといたしまするというと、相当厖大なる金額を要するというような財政的な観点もこれに附随した一つの考え方であるのでありますが、要するに私どもはいろいろな事情を勘案した結果、韓国の李承晩ラインの措置に対する応急臨時のこれは方法であるというふうに、その点において他と区別し得るもの、こういうふうに考えております。
#43
○秋山俊一郎君 どうも違うという点が私には納得が行きません。然らば今回の修正案でも、今年に実際に捕まつたやつも含めている。そうすると今後まだ捕まるかも知れない。この法律が施行された後に韓国に捕まる。仮にこれが数日間後に交付されて、その間に捕まる、今日あたり捕まるかも知れないし、又それが過ぎて一週間ぐらいたつて捕まるかも知れない、そういつたようなものには全然措置はとらないのであるかどうか。従来成るほど韓国と中共とは、国の構成の内容も違うかも知れませんが、台湾は又違うといつたようなことで、そういう意味合いにおいての論拠とすると甚だ薄弱である。従つて私は、この中共或いは台湾……、ソ連の分は北のほうの小さい船だと思いますけれども、これらの船は比較的大きい船で、多くは保険に入つていると思う。特殊保険に入つていると思うのであります。若し入つているとすれば、仮に今度の法律の措置によると、その保険金を受取つたあとの分に対する措置であるとすれば、金額はそう大した問題ではないと思うのですが、これは二つの事態が違うということについては見解の相違もありましようし、ここで突詰めてもしようがないことでありますけれども、若しこれを中共、ソ連、台湾というものに、かように拿捕された船に対して金融の措置を講ずるとすれば、どれくらいかかるか、幾らくらいの資金が必要であるかということをお伺いしたいと思います。
#44
○政府委員(清井正君) 中共と国府とに捕まつております船は、私どもの持つておりまする統計によりますというと、講和発効後二月十五日現在でございますが、四十隻ということになつておるのであります。国府のほうは講和発効後はございません。乗組員は三百十一人ということになつているのでありまして、お話の通りこの四十隻も相当大型の、恐らく大部分が鋼船であると思いますが、船でありまして、これを再建するのに要する金額はちよつと計算いたしておりませんが、特殊保険の金額を差引くにいたしましても相当厖大な金額になるのではないかというふうに実は考えておるような次第であります。
#45
○秋山俊一郎君 私は、四十隻に対するどれくらい……、半額入つたのもありましようし、又七割入つたのもあると思うのですが、そういうものを差引くとそう厖大な金にはならんと思いますので、今後この問題は、私はどうしても日本の国に責任があるという考えからかようなことを質問をするわけでありますが、かねてから特殊保険に対する再保険の問題が、国家が九〇%の再保険をしている。ところがかような関係にあるものは、単なる普通保険と違いまして、国家の責任を感ずるが故にペイしないところの特殊保険も九〇%の再保険をしていると思うのです。そうするともう一歩進めてこれに一〇〇%の再保険をするという意思があるかどうか。私はさように持つて行くべきだと考えて、かねがねさようなことも主張しているものでありますが、これは本来から言うと、全額国庫が負担すべき性格のものというふうに私どもは思う。併しながらそれは今直ちに、他方面との関係もあつて行けないとするならば、せめて害を受けた、いわゆる被害者と申しますか、拿捕された人たちも或る程度の負担をし、そうしてそのあとを国家が負担をするというようなことで一〇〇%の再保険をするという必要があると思いますが、これは今初めて私が申す問題でありませず、前々から申しているわけでありますが、さような意味合いにおいて、若しこれに今回の特定海域における漁船の被害に伴う資金等の裏付けとせんとするならば、保険によつてもカバーするという御意思はないか。その点を一点伺いたいと思います。
#46
○政府委員(清井正君) 保険の問題でございまするが、この点はお話の基本趣旨としては私も同様に考えているのであります。と申しますのは、やはりこれは特殊保険なり、乗組員給与保険という制度があります以上、この制度を最高限に利用することによりまして、この方面の出漁についての一つの問題を解決するということは、やつぱりやるべきものである。是非そういうことでなければならんというふうに考えているので、従つて私どもも同方面に出漁する漁船につきましては、李承晩ラインの問題発生後におきましても、なお且つ十分にこの制度を利用して、同方面に出漁するようにということを関係の業界等にも十分連絡を密にしているようなわけなのであります。従つて一つの問題として、保険制度を拡充強化するという方策は、私は結構な方策であると考えてはいるのでありまするが、併し直ちにこれをお話のように、或いは一〇〇%保険といいますか、一種の国営保険的な性格になるのでありますが、そういう制度にすべきものであるかどうかということにつきましては、若干研究をすべき余地があるというふうに私どもは率直に考えているのであります。尤もこの問題につきましては、御承知の通り、本来の保険制度と違いまして、一般会計から損失分は補給を受けるのでありまするから、保険というよりも損害補償的性格が非常に強いこれは保険であります。而も保険料についても本来ならば、収入、支出を合せまするならば、当然保険料が引上るべき性格のものでありまするけれども、これは今言つたような損害補償という建前があるということ、それから李承晩ラインの問題等もあるという建前から二十九年度は、二十八年度保険料に据置くという形になつて、これは積極的でございますけれども、一つの解決の一歩に向つていると私どもは考えているのであります。九〇%再保、一〇〇%再保という問題は、確かに一つの研究問題であるのであつて、私どもといたしましても同方面のみならず、この保険制度という全般、殊に又特殊保険という制度の今後の持つて行き方といたしまして、確かに考えて行かなければならん問題であるということは十分わかるのでありますが、今直ちにこういう方向に持つて行くということまでお答え申上げることはできないのでありまして、十分この問題は研究させて頂きたいというふうに考えているのであります。
#47
○秋山俊一郎君 さつきちよつと質問したのですが、これは法律が施行の日の前日までということになつておりますが、その後において又朝鮮で起つた場合にはどうなるのですか。
#48
○政府委員(清井正君) ちよつと落しまして失礼いたしました。私どもの原案は実は昭和二十八年の十二月末日までということでいたしたのであります。と申しますのは、これは先ほども御説明申上げたのでありますが、九月の中ばに声明がありましてから九月中に二十八隻、十月に十三隻、十一月の極く初めに二隻、こういうものがいわゆる李承晩ラインの声明後拿捕されているのでありますが、それが四十三隻、そのほかに前に拿捕されたものが七隻ありますので、合せて五十隻ということで、とにかくあの声明が発してからの一遍にざつと多くの船が拿捕された、それに対する応急措置としてこの法律を出す、その後の問題といたしましては、先ほども申上げました通り拿捕されるかも知れん危険の海域につきましてはいわゆる特殊保険を最高度に利用してもらう、その他のいろいろな方法によつて業界においてもそれぞれの心がまえをし、我々としてもそれだけの手筈を整えているのだから、とにかくそれまでの間の極く暫定的な一定期間に拿捕されたもの、こういう意味合いにおいて十二月末ということで一応線を引いたのであります。ところが、その後二隻新たに拿捕されたという事態が起りましたので、衆議院におきましても先ほど委員長から御説明があつたのでありますが、同じような条件であるから入れたほうがよかろうということで御修正になつて、とにかくこの法律の施行までに同じような事態の起つたものは入れる、こういう御趣旨で御改正になつたようであります。こういたしますればこの法律が施行されるということが一つの線になつて、施行されるまでの間に同じような事態であれはこれは入りますけれども、その後に起つた問題につきましては、これは別途の措置としまして金融を斡旋するとか、又いろいろなことを具体的な個々の問題として考えるということによつて措置いたすのでありまして、本法の対象となりますのは、衆議院の御修正通り通るといたしますれば本法施行の前日までということで線を引くことに相成るのではないかと思つております。
#49
○秋山俊一郎君 そうしますと、今後又起らないということは保証できませんので必ず起るということも覚悟せにやならんのでありますが、元来保険というものは特殊保険、漁民給与保険といつたようなものもございますので、さようなものに是非この特殊海域において操業する場合には入れというようなことを宣伝もし、勧誘もするという意思があるようでありますが、それにいたしましても今の保険制度というものをもう少し緩和して、いわゆる特殊保険は一〇〇%再保険、こういうことでなければなかなかむずかしいと思いますが、今後特殊海域以外において拿捕されることも又あり得ると思うのです。そういう場合はもう全然考慮しないのかどうか。
#50
○政府委員(清井正君) この点は只今御説明申上げたことと同じことになるのでありますが、要するに政令で特殊海域というものを指定するのでありますが、それは本法施行までに事件が起りましたものは現在までに五十二隻でありますが、この法律施行までに仮に又あるとすればそれに加わるのでありますが、その具体的に拿捕された海域を囲む一つの線を引きまして、それを特定海域ということにいたすのでありまして、過去に拿捕された実績に対する一つの措置ということになりますので、将来の問題とは別途の問題になるというふうに考えております。
#51
○秋山俊一郎君 今の問題はちよつと誤解があると思うのですが、この法律でなしに今後捕まつたものは只今のお話では資金等の融資を斡旋するというお話がありましたが、この場合にこの海域外の場合でもそういう資金の斡旋をなさるかどうかという点であります。
#52
○政府委員(清井正君) 無論私どもといたしましては拿捕された船舶につきましては中共の分も含めての話でありますが、いろいろ措置をしなければならんと思うのであります。無論これを同じような条件で公庫から貸付するということにつきましては、これは実際問題として非常にむずかしいと思うのであります。資金その他の枠から申しましても非常にむずかしいと思うのでありますが、まあ開発銀行から貸付し得る資格のあるものにつきましては開発銀行とも十分話合いを進めて参らなければならんと思うのであります。その他我々といたしましてはできるだけの措置を、金融等の問題を含めて考慮していろいろ御斡旋申上げるということにいたしたいと思うのでありますが、なかなかむずかしい問題でありますから簡単にこれが金融の措置が完全に行われるかどうかということにつきましては申上げることはできませんけれども、十分我々としては努力して参りたいと考えております。
#53
○秋山俊一郎君 第一条のここに保険に入つているものは保険金を差引いたものに対して融資するとありますが、この特殊保険というものは、先ほどから申しましたように、九〇%しか再保険がないわけです。そうするとあとの一〇%は組合から支払うのでありますが、実体といたしまして組合から一〇%出ていない。これはそうした場合にこの保険金は保険金額全部を受けるものとしてその残額を融資するものであるか、或いは実際保険を受取つた額の残額を融資するのであるか、その点はどういう御見解ですか。
#54
○政府委員(清井正君) これは御趣旨のような点もあるかも知れませんが、私どもの考えといたしましては、これは支払われた保険の金額ということになるのでございますが、御参考に申上げておきますが、これはその計算の基礎といたしましては一定の金額を出しまして、それから支払われた保険金を差引いて、残つた金額に対して先ほど申上げましたように八〇%か六〇%とかいう率をかけているような計算をいたしておるのではない。私どものほうは先ずその金額に八〇%、六〇%かけまして、その自己負担分の中に保険金が入りますならばそのままにしておく、保険が六〇%、八〇%の額を超した場合には超した額を引くというような計算方法をいたしている。実際問題として心配した点はそう起らないのではないかと考えております。
#55
○秋山俊一郎君 もう一つは、九隻に対する金融公庫外のいわゆる開銀関係の融資でありますが、これはどういうふうになつておりますか。開銀のほうに対して九隻に対して申請があれば金を出すということになつているのでありますか。又今後そういうものについて一般と同じように斡旋をする意思であるか、その点をお伺いいたします。そうしてその額はどれぐらいか。
#56
○政府委員(清井正君) 開発銀行は五割の大体融資を最高限度といたしておりますけれども、それを計算いたしますというと、まあ業務費も含めて大体二億七千万程度の金額になると考えているのであります。そこでこの九隻分でありますが、これは具体的に船の名前もはつきりしておりますし、経営者もそれぞれわかつております。そこでこれはいわゆる公庫に相当する部分につきましてはこの法律で措置する、公庫以外の分についてはこれは同じような事態であるのでありまして、経営者が大きいということに差があるのでありまして、私どもはこれは行政措置によつてできるだけ職務を達成するようにという建前の下に、昨年以来すでに開発銀行と非常に密接に連絡をとり、関係官庁とも連絡をとつて参つて来ているのであります。開発銀行といたしましてはそれぞれの会社なり、それぞれの船につきまして十分承知をいたしております。そこで若しもこういうような問題につきまして融資等の話がありますれば必ずこの問題は取上げて十分一つ考究をするというふうな話をいたしているような状況であります。まだ途中の段階でありますので何とも申上げられませんけれども、私どもとしては今後も積極的に開銀と密接な連絡をとりまして、これは特殊の事態によるこれは代船建造という趣旨を十分強調いたしましてやつて参りたいと考えております。
#57
○千田正君 時間も委員長が要望しているのは十二時までというお話ですが、私から言えば法律を出す以上は或る程度相当この不足な問題がないような方法で法律を出してもらいたい。只今秋山委員の質問に対する、特定地域における漁船の被害に伴う資金措置法というのは根底から法理論から言えば長官のおつしやつた考え方、秋山委員の言われる李承晩ラインだけこういうものをやるのはどうかという質問に対して、只今の長官の考え方はほかのほうの、或いは北海方面、或いは台湾とか、或いは中共とか、或いは将来起るであろうアラフラ海等の問題については触れておらん。それは問題が違うというのならば、いわば法理論的にはこの法律は不完全であると思う。私はこの法律はむしろいわゆる不法に拿捕された、国際法上当然日本の独立権が尊重されて良識の範囲内において善良なるところの操業が行われている立場において不法に拿捕された船舶の被害に伴う資金の融資であるということは考えられるが、李承晩ラインは特別なんだという考え方は私はとるべきでないと思う。ただ私はここで長官が私の考え方と同じであるかどうかということを一応質したいと思うのは、これは取りあえず便宜上、便法上その李承晩ラインに一応特定地域を設定して考えたのだ、将来そういう問題が起つたならば、いわゆる不法に拿捕された、いわゆる国際法上からどういうふうな観点から見ても間違いである、不法的に拿捕されたというものに対しましては、十分それに対する資金の融通等について考える、将来も日を限らずに、将来そういう問題が起きた場合に考える、取りあえずのことの便宜措置法であるということならば私は賛成するけれども、根本的に法理論に違うというのならば賛成できない、その点はつきりして頂きたい。国際法上或いは日本の独立権の尊重の立場から考えた場合に軽々にはこういう法律を簡単に通すべきではないと私は考える。便宜上の問題ならば私は賛成します。その点をもう一度はつきり長官から念を押して、あなたの意のあるところを伺つておいてこの法案に対しての賛否を私は決したいと思う。
#58
○政府委員(清井正君) この問題の根本的な考え方につきましてですが、それは先ほど来御質問に触れてあつたのでありますが、この点は非常にむずかしいところでありまして、私どもは現在のところでは韓国側の先般のいわゆる声明に基く拿捕措置に対する応急臨時の措置であるというふうに考えておるのであります。そのほかの中共なり、ソ連なり、国府なり、同じようないわゆる拿捕という問題があるのでありまして、その点は先ほど申上げたようにいろいろの観点で韓国の問題とは事情を異にしておるというようなこともありますので、これは一応切離して韓国についての特別措置ということでこの問題を取扱つて行きたい、こういうふうに考えておりますので御了承願いたいと思います。
#59
○千田正君 そこでもう一点考えて頂きたいのですが、然らば韓国以外にこういう問額が起きた場合、同様或いはより以上のこうした法案を将来政府としては提出するという考えをお持ちでありますかどうか、その点伺つておきたいと思います。
#60
○政府委員(清井正君) この問題は今御説明申した通り、韓国の措置に対する応急臨時の措置ということでございますので、将来他方面に問題が起きました場合におきましては、そのときの事態に即応して適切な方策を立てて行きだいというふうに考えておる次第であります。
#61
○千田正君 衆議院で修正された原案と、修正した部分はいわゆるこの法の施行されるところの線が非常に弾力性を帯びて参つたのですが、その以後の問題における、只今秋山委員に対する政府の答弁は保険等によつて考えて行く、こういうのでありますが、そういう方面に対する準備も十分やつておられるかどうか、この点につきましてはどういうふうに政府としては準備しておられますか、法律は法律で救うのだが、法律で救えない、そういう問題が当然起きるものと我々は予想される。予想された場合においてこの法以外に救う方法は何を手を打つているかということ、只今御答弁にあつたけれども現実においてそういう予算の割振りから、或いは金庫等に対して十分なる用意をするような方法をとつておられるかどうか、この点はどうでありますか。
#62
○政府委員(清井正君) 先ず問題といたしましては、保険なり損害補償の問題でありますが、この点は先ほども秋山委員からもお話があつたのでありますが、私どもといたしましては何らかこの方面の制度の拡充をして参らなければならんというふうに思つているのであります。併しながら現実として実現いたしておりますのは、先ほどもちよつと申上げました通り、本年度の特殊保険の保険料負担が昨年度の同金額にとどまつたという極めて消極的ではございますが、その部分が実現されたのみであるのであります。その点は甚だ不十分であるとは思いますけれども、今後の問題といたしましては損害補償制度というものをどういうふうに持つて行くかということを十分一つ検討をしなければならんと思うのであります。九〇%保険を一〇〇%保険にするという問題も一つの方法かもわかりません。これらの問題も含めて特殊保険制度、或いは乗組員保険制度、更に進んでは一般の保険制度、損害補償制度と併せまして、今後この問題を慎重に考えを進めて参つて行かなければならんというふうに考えている次第であります。
 それから融資等の問題につきましても、只今のところでは明年の漁船の融資額が公庫からは十五億ということが一応内定いたしているのでありまして、その枠内において措置をいたすということになるのでありますが、その他一般的に中金、或いは開銀等のほうの問題もございますし、この事態の起りましたときに十分一つそれらの融資機関の余裕金等のことも考えまして所要の措置を十分進めて参らなければならん、こういうふうに考えます。
#63
○千田正君 もう一点伺いますが、先ほど何回も繰返して申上げているのですが、この法律は李承晩ラインですが、李承晩ライン以外のいわゆる同様な拿捕の憂目に会つたものに対しては従来どういう措置をとつておられますか、或いは又将来どういうふうな措置をとるつもりでありますか。法律によつて保証されておらない、こういう特別の利益を受け得られないところの、そういう損害を受けた漁民なり、船主に対してどういう一体方法をとるつもりでおりますか。
#64
○政府委員(清井正君) その問題につきましては、従来におきましても各方面に拿捕されているものがあるのであります。特殊保険等を利用されておられたかたはそれぞれその制度の利益を享受しているのでありますが、その他の問題につきましては、政府が積極的に特に措置を講じているのは残念ながらないのであります。併し私どもといたしましては、関係のかたに対しましては誠にお気の毒な事情もある場合もありますので、その点につきましては今後法律措置によらずとも、いろいろの措置によりましてできるだけ当該漁業者に対して総合的な措置によつて解決策を講じて参らなければならん、こういうふうに実は考えているのであります。
#65
○千田正君 私は討論に移りますけれども、法律は少くとも万民等しく同じような利益を受ける、保護を受けるところの法律でなければ完全な法律でないと私は考えます。而も同じような条件、同じような状態においてほうぼうにおいて起きているものにはこの法律は適用されずに、一定の区域内においてのみ損害をこうむつたものに対して特定の国の保護を受けるということは、私はいわゆる完全な法律じやないと考えておりますが、いずれ又この点について更に改めて後日論ずる機会もあると思いますが、討論の際に又改めて申上げます。
#66
○委員長(森崎隆君) ほかに御質疑ございませんか。別に御発言もなければ質疑はこれを以て終局したものと認めたいと思いまするが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#67
○委員長(森崎隆君) 御異議ないと認めまして、これより本法律案の討論を行いたいと思います。討論をなさる際には必ず賛否を明らかにされまして御発言を願いたいと思います。
#68
○秋山俊一郎君 私はこの法案に賛成するものでありますが、ただ先ほど来質問を重ねましたように、単に韓国の問題に限らずソ連、中共、或いは国府関係においてもしばしばそういう事態が起つておるのでありますから、今後これらに対しても国家として、今回の臨時措置に準ずべき制度を何らかの方法によつて講じて行く、その途はいろいろ質問応答の中に現われておりますが、さような面を今後できるだけ速かに解決して行くということの要望を付しまして、希望を付しまして本案に賛成いたします。
#69
○青山正一君 この法案は、提案者である政府自身が認めておるようにいろいろな不備な点があります。
 第一に、この措置は単なる臨時的な措置であつて、恒久的な制度ではない。それから第二には、拿捕による損害のみが対象となつて、いわゆる操業不能の場合などが相当あるわけでありますが、そういつた損害については考えていない。それから第三には、先ほどから秋山委員なり、或いは千軍委員が非常に指摘しておるように、朝鮮海域だけで他の海域には全然及んでいない。それから第四には、同じ拿捕船でも農林漁業金融公庫の貸付対象にもならないようなものは殆んど除外せられておる。勿論行政措置によつて開銀との関係の途は開いておるのでありますが、そういう点がはつきりしていない。第五に、貸付利子五分五厘、外航船の利子三分五厘などに比して非常に高率である。勿論利子補給も府県の任意ではあるが、そういうふうな制度がありますが、それは飽くまでも任意であつて、これは強制的なものではないというような、いろいろな不備な点がありますが、この法律がないよりはあるほうがよいというような観点、而もこれは衆議院の修正案が原案よりも非常にましであるというような点からして、この衆議院の修正案に賛成いたします。で、今後は、こういうような臨時的な措置でこれで終りというようなことではなく、先ほどから千田委員が再三に亘つて申入れのあるように、恒久的な制度、又恒久的な制度ができなければ簡単な行政的な措置によつて、こういつたあらゆる部面が解決でき得るように一つ工作して頂きたい、こういう条件付きで、この衆議院の修正案に賛成いたします。
#70
○千田正君 もう先に質疑の際十分申述べておりましたが、法律は少くとも等しからざるを憂うるような法律であつては万民に対して賛意を表する法律とは思えない。特にこういう特定地域を限定したことによつて、逆に李承晩ラインを認めるがごとき結果に陥らしめるようなことは十分避けなければならない。併しながら現実の問題としましては、一日も早く、生きなくてはならないところの漁民のこの地域における損害を受けた人たちのことを考えれば、質疑応答に日を暮しては、苦しんでこの法の一日も早からんことを待望しておられる人たちに対する期待をそこねる点がありますし、先ほど青山委員が言つた、ないよりはましだ、とにかくこれによつて何百人かの零細漁民が救われるんだという立場におきまして私は一応賛成しておきます。併しながら要望することは、やはり法の全きを期すために、同じような条件において不当拿捕された……、少くとも日本の今日の政局において十分なる国交が回復できない地域における独立権の侵害という意味から、不法拿捕された船舶及び損害を受けたところの漁民に対しては根本的な法律を作つて救うべできである。その点を飽くまで推し進めることを将来期待して、不本意ではありますけれども賛意を表します。
#71
○森八三一君 私も衆議院で修正されました案に賛成をいたします。ただ賛成をいたしますにつきまして、先刻から青山委員、千田委員から御発言のございましたような点については全く同感でありますので、今後そういうような点が抜本的に完備されますような方向に向つて措置されることを十分希望をいたします。同時に不満足ながらこの法案に賛成いたすのでありますが、折角この法案ができましても、対象となりまする諸君はいずれも経済的に極めて困難な零細な立場におる諸君でありますので、制度はできても実際資金が貸出になるというような手続等に移りますると、非常にそれが煩瑣であるために、実際の問題として効果を示して来ないというようなことがしばしば過去において、同様の施策に見られるのであります。なお信用力の問題などに関連して、この法律が有名無実に終るというような危険がないとも言われないのでありまして、そういうような貸出の具体的な進行についても、手続上の問題、或いはそれぞれの人々の信用の問題から、得てして起る金融機関の非常な窮屈な考え方というものに対して、政府当局は十分指導されまして、この不満足ながら賛成をする法律が眠つてしまわないように、具体的に効果を現わすように、資金上の問題等についても十分誠意を持つて善処をして頂きたいということを希望いたすのであります。
#72
○委員長(森崎隆君) それではこれを以て討論は終局いたしました。
 これより本法律案の採決を行いたいと思います。
 特定海域における漁船の被害に伴う資金の融通に関する特別措置法案(内閣提出、衆議院修正送付案)全部を問題といたします。本法律案を衆議院修正送付案通り可決することに御賛成のかたの御挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#73
○委員長(森崎隆君) 全会一致と認めます。よつて右法律案は衆議院修正送付案通り可決すべきものと決定されました。
 右法案に賛成されたおかたは順次御署名を願いたいと思います。
  多数意見者署名
    秋山俊一郎  千田  正
    青山 正一  野田 俊作
    森 八三一  木下 源吾
    菊田 七平
#74
○委員長(森崎隆君) なお右法律案に関する事後の手続並びに本会議における口頭報告等につきましては、慣例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#75
○委員長(森崎隆君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。
 それでは本日はこれを以て散会いたします。
   午後零時九分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト