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1953/05/06 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 厚生委員会 第35号
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1953/05/06 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 厚生委員会 第35号

#1
第019回国会 厚生委員会 第35号
昭和二十九年五月六日(木曜日)
   午前十時五十五分開会
  ―――――――――――――
五月四日委員堂森芳夫君辞任につき、
その補欠として松澤兼人君を議長にお
いて指名した。
本日委員松澤兼人君辞任につき、その
補欠として堂森芳夫君を議長において
指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     上條 愛一君
   理事
           大谷 瑩潤君
           常岡 一郎君
           竹中 勝男君
   委員
           榊原  亨君
           高野 一夫君
           谷口弥三郎君
           西岡 ハル君
           横山 フク君
           安部キミ子君
           藤原 道子君
           堂森 芳夫君
           有馬 英二君
  政府委員
   厚生省保険局長 久下 勝次君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       草間 弘司君
   常任委員会専門
   員       多田 仁己君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○厚生年金保険法案(内閣提出、衆議
 院送付)
○船員保険法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○厚生年金保険及び船員保険交渉法案
 (内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(上條愛一君) 只今から厚生委員会を開会いたします。
 厚生年金保険法案、船員保険法の一部を改正する法律案、厚生年金保険及び船員保険交渉法案、右三案を一括議題に供します。質疑をお願いいたします。
#3
○谷口弥三郎君 私から一つお伺いしたいと思います。今回の厚生年金保険法案、これにつきまして衆議院のほうにおいて一部修正が行われました結果、例えば年金の基本額が一万八千円が二万四千円になつたようでありますが、なお一方から申しますと二万四千円ではどうしても少いから、三万六千円というように是非してもらいたいというような希望もかなり出ておるようでありますが、三万六千円ずつ出すということにいたしますというとどのくらいの増額になるのでしようか。又とにかくこの年金保険は長期の関係もありますので、三万六千円ということにすれば、到底今後の運用がいかんとかいうようなことであるために、それに出しにくいのでありましようか、そういう点について先ず一応お伺いいたしたいと思います。
#4
○政府委員(久下勝次君) 定額部分を三万六千円にいたしまして、報酬比例を加味するという考え方をとりまするときには、差当り来年度の予算について計算をしてみました数字を御参考に申上げますと、成立予算は保険給付費が五十七億四千万円でございますが、三万六千円に定額部分を引上げることにいたしますと、七十億六千七百万円、こういうことに相成るわけであります。十三億ほどの支出増になるわけでございます。これに対しまして成立予算におきましては、予備費を八億六千百万円組んでおるのでございますが、これを全部充当いたしましても四億七千万円ほどの増額になりまして、予算の執行も差当り困難であるという結果になるわけでございます。なお長期保険の関係がございますので、御参考に申上げておきたいと思うのでございますが、将来の保険料の引上げが相当大幅に行われなければならない結果になるわけでございます。実は二万四千円に引上げることによりましても、当初私どもが計画いたしましたり数字によりますると、最終の保険料率が、細部の点は省略させて頂きまして、一般男子の保険料率についてだけ申上げます。これは二つの場合に分けて計算をいたしております。それは積立金の利廻りがどうなるかということによりまして非常に大きな開きがございますが、一応当初十年間は平均五%、五歩に廻り、その後四分五厘に廻るものといたしました場合について申上げますると、政府原案のままにしておきますと、最終の保険料率が千分の四十六で済みまするのが、衆議院の修正によりますると、最終料率が千分の六十一ということになりまして大体一・五%、千分の十五ほどの引上げになるわけでございます。これを更に定額分を三万六千円にいたしますると、最終の料率が千分の八十八に、約政府原案の最終料率の倍の保険料率になるわけでございます。五分五厘に廻る場合につきまして申上げますると、政府原案によりますると、五分五厘にずつと長く廻ることとして計算いたしますと、最終の料率が千分三十七という計算の見込でございます。衆議院の修正によりますると千分の四十五に引上げなければなりません。それから三万六千円にいたしますると、最終料率が千分の七十という大幅な引上げを必要とする結果になるわけでございます。そういうふうに将来の年金保険の財政上に大きな影響を来たすわけでございます。
#5
○谷口弥三郎君 生活保護法の適用者におきまして例えば一級地の甲地区に生活をしておる者は二万九千三百四十円ですかの支給を受けるというようなことになつておりますが、殊に生活保護法の適用者は、或いは医療にしましても医療扶助がありますし、又最近ではラジオなども聴取料までも免除されるというようなふうで、かなりいろいろの恩典があるのでございますが、この年金受給者におきましては、例えば二万四千円になりましても、その他の関係は特別な関係がない限りはそのままであろうと思いますので、そうすれば生活保護法にかかつた一級地の甲地区に住んでおる者よりか少いというような関係になりはせんか。それでは誠にお気の毒でもありますので、少くとも一級地の甲地区に居住するような年金受給者だけにでも少し増額する、言い換えれば三万六千円とかいうところに持つて行くということにするようなことができんものか。但し年金受給者をどこの地区にということを将来見当を付するということは、これは非常に困難なことでなかなかできにくいことてあろうと思うのですが、それらの点につきまして厚生当局でどういうようなふうにお考えになつておるのか、その点もお伺いしておきたいと思います。
#6
○政府委員(久下勝次君) お答え申上げますが、厚生年金の支給につきまして、各地域ごとの生活費というものを見て支給するということは、保険の建前でやつております関係上無理があるのではないかと思うのでございます。そういう人たちにそれだけ高い保険料を取ればいいというような建前をとれば別でございますけれども、これも被保険者がしよつちゆう移動します関係もありまして、なかなか被保険者の居住によつて保険料を変えるということは実際問題としても不可能に近い問題ではないかと思います。何分この制度が七百五十万という被保険者全体をがらがら計算をいたしまして、そうして将来の見通しを立てまして一律の保険料率で保険料を取つております関係もありまするので、居住の地域によつて区別するということも困難ではないかと思うのでございます。多数の被保険者でございまするから、居住の地域は確かにお話のように一級地の甲地区に住む者もあり、或いは五級地に住む者もあるわけでございます。私どもといたしましては、大体そういう意味から生活保護法に基く生活扶助の金額と比較いたしまする場合には、大体中間的な二級地、即ち中小都市に居住しておるところの人と比較して考えていいんじやないかというふうに思つておるのでございます。もともとこの生活保護の制度から申しますれば、何にも生活の資力のない者に対して支給する額でございます。又一方年金のほうは、そういう生活の資力をほかに持つておるか持つてないかということは別問題といたしまして、平均的に支給をするものでございます。さような考え方も考え併せて頂きますると、やはり制度的に比較いたします場合には、二級地程度の比較をして頂けばいいんじやないか。そういたしますると政府原案でも世帯を構えてない六十歳の男子に対する支給額は大体同じ程度になるのでございますが、今度の衆議院の修正によりまして、これがこれよりも大分上廻つて、世帯を構えておる六十歳の男子に対する生活扶助を若干上廻る程度になるわけでございまして、まあまあこの程度でございますれば説明もつくのではないかと思つておる次第でございます。
 なお細かいことを申上げますると、扶養家族の数によりましては、勿論生活扶助のほうが余計に参る場合が出て参りまするけれども、扶養家族一人程度の場合を比較いたしますると、むしろ今度の修正によりまして二級地の世帯を構えた男子よりも給付額が多くなります。この程度で年金制度としてはよいのではないかと思いまするし、又先ほど申上げました将来の保険料の引上げというようなことも考え併せますると、余り大幅の給付をやることも無理があるのではないかと考える次第でございます。
#7
○谷口弥三郎君 私は一応これで終ります。
#8
○高野一夫君 一つだけ私、総括的なことですが、保険局長に伺つておきたいのですが、先年、二十五年、二十六年の二回に亘つて私当時委員をしておつたのですが、社会保障制度審議会から社会保険関係のことについて政府に強い勧告を出しておるわけです。そのポイントは、私が御説明するまでもなく御承知のはずですが、いろいろな社会保障関係の法律もたくさんあるし、又糸口もたくさんあるんで、それを例えば医療とか公衆衛生、公的扶助というふうに大体調整統一して行くべきだという案を出してあるんですが、今度なんかでも例えば厚生年金、船員一保険、それもいいのですが、それから今度交渉法というような曾つて類例もないような法案まで作らなければ、お互いにこういうようなものの連絡といいますか、条文の調整といいますか、適用の調整というか、そういうものがうまく行かない、こういうような事態にだんだんだんだんなつて来る。それを厚生省のほうではこういうようなものについてこの法案の整理、これを統合整理して行くということについて調査、研究を進められているかどうか、これを一応伺つておきたいと思います。
#9
○政府委員(久下勝次君) 社会保険の統合の問題につきまして、お話のように社会保障制度審議会の勧告もありまするし、又各方面から非常に御熱心な又強い御意見も拝聴いたしておるわけであります。私どもといたしましても、その必要は十分感じておる次第でございまして、今回の厚生年金保険、船員保険の改正に際しましても、この点の問題は併行して検討をいたして見たつもりでございます。結局、要約して申上げますると、この統合は必要であるにかかわらず、実際問題として簡単に行われません理由のその大きなものは、御案内のように、各種制度がそれぞれその内容を異にしておる点でございます。具体的に申上げまするならば、保険給付の額におきまして、或いは保険料率におきまして、それぞれの内容を異にしておるわけでございます。それでその違つておりまする内容のものを一本にするということをいたしますのに、最もいいのは、一番高いものにレベルを合せればいいのでありますけれども、そうなりますれば、当然低い制度につきましては、関係者の負担の急激な、大幅な増額が必要になつて参ります。低いほうに合せようといたしますれば、その点は解消いたしますけれども、今度は高いレベルの給付をもらつておる制度の適用者につきましては、いわゆるレベル・タウンの結果を生ずるのでありまして、この点は実際問題として非常に悩みになる点でございます。
 第二の点は、これは思い切つた政治力を発揮すればいいのでありますけれども、とにかく各種の制度が、それぞれ所管を異にしておる点でございます。この点は単なる官庁の繩張りというのみでなくして、いろいろ越えがたい難関もあるわけでございます。大体こういうような事情から検討はいたしてみましたものの、結果におきましてまだその段階まで至りませんことを甚だ申訳なく、又遺憾に思つておる次第でございます。ただあえて申上げまするならば、今日私どもとしては、そういう線に沿いまして、一歩を進めるという意味で、少くとも私どもの所管に属しております厚生年金保険と船員保険につきましては、これは私ども統合の実を挙げたいという考え方で案を進めて参つたのでございますが、これも先ほど申し上げました船員保険と壁上の労働者の厚生年金とでは、給付のレベルが非常に違つておりまして、これを障害保険を、それを船員保険並みに引上げるということは、主として負担の激増ということから関係者の同意を得るに至らなかつたのでございます。かような関係上、只今の御審議をお願いしております船員保険と厚生年金保険につきましては、特に障害年金及び遺族年金の面におきましては、全然違つた制度のような、内容の違う案の御審議を頂くの止むを得ざる事態に至つた次第でございます。ただ併しながら、老齢年金につきましては、幸いにして関係者の御同意も得ましたので、両制度の内容を同じ歩調の揃つたものにいたしまして、そうして今御指摘のございました交渉法というものも出しましたのも、両方は一応別建となつておりますけれども、老齢年金に関する限りは完全に一つの制度に、同じような運用になりまするように、両者の被保険者期間を通算し、保険給付をやるというような必要のために、実は交渉法という制度を作つたわけでございます。従いまして交渉法そのものは別の制度のようでございまするが、これは一応建て方が別建になつております厚生年金保険と、船員保険の老齢年金適用に関する限り、これを通算をし、又それに関連して、両方の保険給付の調整を行うという意味で御提案を申上げている次第でございます。まあそういう意味でございまして、私どもとしては、統合に関しては少くともこういう考え方もあり、又これで一歩が進められるというような気持から、御審議をお願いいたしている次第でございまして、くだくだ申上げましたけれども、そうした事情と努力だけはしておりますことを申上げます。
#10
○高野一夫君 もう一つ、まあ深く突つ込みませんが、当時審議会にあなたも委員としておいでになつたのでありますが、ですから約三年間に亘つて具体的な数字をはじいて勧告したのでありますが、あの勧告内容には、附属書類その他相当具体的な案が出ているわけであります。そこでできるかできないかということについても、三年間に亘つていろいろ吟味した結果、この船員保険についても、厚生年金みたいなものについても、相当専門家が集まつて研究をされた結論が出ているはずなんです。それで窓口の問題がいろいろあるけれども、先般は、去年は文部省にも何かそういうものができた。それで窓口のことを心配していたんでは、いつまでたつても調査研究は進まないと思うのですが、だからこの社会保険に関する一番中核は厚生省なんだから、ほかの窓口、他省の関係は、よその省の関係は一切顧慮しないで、一応一つ案を作つてみると、そうしてできたらば又適当な方法も考えられるだろうと思うので、是非私はできるだけ早目にこの統合できないものはできないように、できるものはできるようにして、一応の厚生省としての結論といいますか、案を作るべく、そういう方法でお進みになつて、今後の法案をお出し願いたい、こういうことを私は希望しておきます。
#11
○竹中勝男君 老齢年金の開始の年齢ですが、或いは今度の法律では男子が六十歳、女子が五十五歳、まあ坑内夫は別ですが、これを我々は男子が五十五歳、女子五十歳というふうに希望しているわけなんですが、この間の公聴会の公述人の意見の中にもあつたように私記憶しているのですが、日本のように労働人口が非常に多い、過剰な場合、即ち潜在的な過剰人口を非常に持つている国では、やはり一定の年齢に達した者は、成るたけ早くこの老齢年金があれば、それだけ労働退役者が多くなり、新らしい労働力がそれだけ常時雇用される可能性が出て来るという理由からも、又他の恩給も五十五歳というのが、まあ恩給を受領できる年齢になつているのですが、その間にまあ五年の開きがあるということにもなりますので、まあ男子五十五歳、女子五十歳というところが、日本の現状に合せて、私は必要な受領開始の年齢であろうと思うのですが、若しこれを五年ずつ引下げるという場合に、保険経済のほうで非常に困難が起るものですか。どういうふうなこの保険経済のほうでは結果が出て参るのですか。
#12
○政府委員(久下勝次君) 私どものほうで計算をいたしましたのでは、五歳の引上げをしない場合とする場合におきましては、最終保険料率におきまして、約一割四分程度の料率の引上げをそれだけで必要とする結果になるのでございます。
#13
○竹中勝男君 そうしますと、現在の保険経済の上では、それが成り立ちますか、成り立ちませんか。
#14
○政府委員(久下勝次君) 私どもの計画は、差当りここ四、五年間は現行の保険料率のままで出発をいたしたいと思つております。五年後、十年後というふうに、大体五年間を区切りまして最終料率まで引上げて行くような措置をとりたいと思つているわけでございます。で、先ほども谷口委員の御質問にお答え申上げましたように、将来は大体三回くらいに分けまして保険料を引上げる措置をとりたいと思つているわけであります。従いまして、最終の料率を大幅に引上げさえすれば、財政的には賄えるわけであります。先ほど申しましたように、衆議院の修正の結果、利廻りによりますが、千分の六十一の料率に最終料率がなるわけでありますが、それを更に五歳引上げを取りやめることになりますると、一割四分だけ料率に影響がございまするから、大体それが六十一となりますと、千分の八・五くらいになりまして、結局千分の六十一を更に千分の七十にしなければならないという結果になるわけでございます。
#15
○竹中勝男君 そうすると、この委員会としては、どこまでもやはり衆議院から来た六十歳、五十五歳という線で行くことを大体承認して行かなくちやならないわけですね。そういう点について、我々はできれば五十五歳、五十歳というものに引上げるということを希望しているわけなんですが……。
#16
○政府委員(久下勝次君) 只今のお話は私からお答えを申上げる筋ではございませんけれども、ただこの点だけは是非御考慮を頂きたいと思うのでございます。お手許に資料としてお配りを申上げております生命表なり、或いは平均余命の数字なりから御覧を頂きますと御了解頂けますように、非常にこの老齢人口というものが将来ますます殖えて行く傾向にございます。この老齢人口を結局その時期に働いている人たちが養う、というと語弊がございますけれども、相互扶助の建前でございます以上、働いている人が保険料を納めることによつて老齢人口を養つて行かなければならないということになるわけでございます。それが今日、最近十年間の推移というものは、非常に大幅に生命表なり、平均余命が高まつているわけでございます。この傾向はまだ恐らく一般保健衛生の向上等と相待ちまして、今後進んで行く傾向にあるのではないかと思うのでございます。只今の傾向を以て将来をトしましても、前に申上げましたように、老齢年金受給者を二百八十万なり、三百万程度に見なければならんというようなことに相成るわけでございます。これに扶養家族などを入れますると、相当日本全体の人口の中で年金受給者の占める比率が高くなつております。そういう点を考え併せます場合には、私どもとしてはこの際老齢年金受給開始の年齢というものは引上げておくのが、引上げる方針をとつておくのが適当じやないかと思つているわけでございます。併しながら実際の影響も考慮いたしまして、急激な引上げは行わずに、二十年間に漸進的な引上げを行うということで、実際の矛盾と調節をとつて行けるのじやないかと、こう考えましてこの傾向はひとり我が国の場合のみでなくて、毎度申上げておりますように、諸外国で年金制度をとつておりまするのが、一般男子五十五歳開始というものは決して例がございません。全部六十歳、六十五歳、甚だしいのは七十歳開始という例があるわけでございまして、これも今申上げましたような全体的の傾向から出て来る結果であろうと存じますので、御考慮頂きます場合には、その辺の点も十分お考えを頂けましたら幸いだと考えます。
#17
○竹中勝男君 今の御説明で、平均寿命が日本で高くなつて来たということは事実だと思いますが、併し老人の人口が総人口に占める比率というものは、六十五歳以上の人口というものは、私の記憶では、英国やドイツ、ニユージランド、オーストラリア、アメリカなどは、やはり比率からすれば日本の倍になりますね、この六十五歳以上の人口というものは……。そうするとまだ日本は半分なんです。結局その平均寿命が高いということの内容が老人の人口の総人口に対する比率からするとですね。だからそれは理由にならないと思うのです。だからヨーロツパ並みに年金保険開始の時期を六十歳以上にするということは、六十五歳にするということは、理由にならないと私は思うのですが、それともう一つは、日本人の労働可能の稼動力といいますか、年齢の稼動力というものは、その国民の健康の上からいつて非常に劣るのです。ヨーロツパの労働者というものと栄養の関係やら体質の関係、体力の関係で劣つている。これは労働科学をやつている人ならばおわかりになつていると思いますが、のみならず、日本はやはり相当重労働といいますか、重工業労働というものが相当比率を多く占めておりますために、この六十五歳まではいわゆる産業労働者としての肉体的な条件を備えていないと私は考えているのです。即ち六十歳以上の労働者は、五十五歳以上の労働者は緊張度の激しい、そして体力を非常に消耗する近代産業には、日本人としては不適当だと思う。私は労働科学の上からも考えられると思うのです。それから先ほど申しました労働人口の過剰という点で、早くその労働退役者を作らなくちやいかん。そうして新らしい労働力を補給して、雇用できるような条件を作つて行かなければ、日本産業というものは成立しない。こういうところから、そのヨーロツパ並みに六十五歳が適当だという判断は、私は判断の根拠にならないと、こういうように思うのですが、どうですか。
#18
○政府委員(久下勝次君) 外国の事例は私は御参考のつもりで附加えて申上げたのでございますが、資料でも御覧頂きますとわかるように、殆んど大部分が六十五歳開始になつております。そういう意味合いにおきまして、私どもも急激に日本の実情から見まして六十五歳にしていいとは考えておらないのであります。六十歳にするにいたしましても、確かにまだ今急速にやるべきじやないと考えておるのでございます。併しながら全体の傾向から申上げまして、先ほど申上げたような事情から、将来六十五歳にするという方針をとることは決して間違つた行き方ではないのじやないかというふうに考えまして、御審議を頂いておるわけでございます。
 もう一つの問題は、確かに重労働につきましては、六十歳まで続けて重労働ができるとも私どもも考えておりません。そうした高熱作業だとか、或いはいわゆる重労働に従事する人は、割合にそういう労働に従事し得る期間というものは短いのであろうと思いまするが、併しその人は、又そういう労働に従事しなくなりましたならば、又ほかの職場に転換をいたしまして、まあこういうような生命表の示すような状況でございますならば、六十歳までは何かの方法で働いて頂きたい。そうするのが日本の実情から見ても、将来の姿から考えましても適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。そういう問題は、先日御指摘のございましたように、適用範囲の問題にからんでおるわけで、これは現在でも私どもは相当ひどいとは思いますけれども、まだまだ国民の多くの層がこの年金制度の適用を知つておらないのでありますが、そういう面に逐次適用を拡張して行くということは、私どもも必要だと思つております。そうしてどういう職場に転換いたしましても、労働者として雇用されるような人は六十まで働いて頂く。又働けば年金が適用になるという姿というものを私ども希望しておるわけでございます。で、私ども、この間も御指摘のように、五十五未満の労働者には適用はございませんが、これとても否定的に考えておるわけじやございません。むしろ積極的にそういうような方面にも適用する考えでおりまするが、それにはもう少し的確な資料が必要だと考えまして、もう少しそういう方面に手を伸ばして行くと申しますか、ということで、適用を拡張して行く措置をとることが必要と考えまして、二十年たつて全部が六十歳開始の適用を受ける。恐らく先々にはそれはそうした適用の範囲の問題も恐らくその前に解決されておつて、両々相待つて、年金制度の姿としては調子のとれた姿になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#19
○藤原道子君 関連でございますが、二十年後に三回くらいに段階をつけて改正する……、その頃になると六十歳まで、今は五十五歳が停年制です。六十になつても働く職場が与えられるという見通しでございますか。寿命が延びたということと労働する場所が与えられるということとは一致しないのです。
#20
○政府委員(久下勝次君) 確かにお話のように、そうした確たる見通しを持つておるわけではございません。又年金制度で、又社会経済の状況を変化させるほどの力のある制度でもないとは思います。問題は将来の見通しをどう立てるかということに過ぎないと私も考えております。先ほどからくどくど申上げるようで恐縮でありますけれども、先ほど申上げたようないろいろな事情から考えまして、日本としてこういうふうな状況で、老齢人口の多数を、もう五十五歳になつたならば仕事をやめて、そうして年金をもらつて暮して行くというような姿を将来長く続けることが、果して日本の将来のためにいいかどうかということを考えました結果、やはり六十歳までは、こういうふうな資料から考えましても、働いて頂けるであろうし、又働けるだろう、こういうふうに考えまして、こういう制度を作つたわけであります。二十年たつたときに、それじや六十歳までの人間は全部どこかの職場で抱えられるようにできるかというお尋ねでございますが、それは私どもとしては申上げられませんけれども、日本のこうしたいろいろな資料から考えました姿として考えました場合には、何とか日本の経済としてはそういう建て方にならざるを得ないのじやないかというふうに考えまして、この制度としてはこの建て方をとりましたわけでございます。
#21
○藤原道子君 それは保険経済の上から考えておいでになるとそうかもわかりませんが、実質に受ける人は人間でございますから、働く場所もないのにここで五年間の空白がある。何によつて食つて行くか。結局食えなければ生活保護法というようなことになるとなれば、僅かな給料の中から営々として掛金しておきながら、その五年間の生活に不安を来たすというようなことは、私は非常に精神からいつても間違いだと、こう思うのです。外国へ行つてみますと、外国では相当の高年齢の人でも働く場所があるのです。働いておるのです。けれども日本は働きたくても働けないということが一つある。それから労働年齢というものが非常に短い。重労働しておるという面と、二つから考えなければならない。だからその点をどういうふうにお考えになるかということを、くどいようですが、それが一つ。
 それから恩給の場合は五十五なんですね。すると肉体労働、重労働をしている人が六十になり、そうして一方の人が、比較的肉体的な労働でない人は五十五歳から恩給が受けられる。これはどういうふうにお考えでございますか。それから恩給の場合に、政府はどれだけの負担をしておいでになるか。
#22
○政府委員(久下勝次君) 先ず前段の問題でございまするが、私どもの考え方は、働く場所がないではないか、だからというふうに問題を考えておるのじやございませんで、少しこの辺は考え方が甘いと言えば甘いのかも知れませんけれども、こういうような日本の人口構成の将来の姿と考え併せてみました場合にも、我が国としては必然的に老齢人口が殖えて参りまするので、働けるうちはやはり働いてもらうようなやり方をしなければ、老齢になつた人が年金をもらつて遊んで暮して行くというような姿をとることは適当でないのじやないかというふうに考えまして、その程度におきましてやつたわけでございます。働く場所がないじやないかと言われると、或いは将来そうでないと私も言い切るわけにも参りません。併しながら日本の姿としてはそういうような、私が申上げたような恰好に将来持つて行かざるを得ないのじやないかという考え方から出発しているものでございます。
 それから恩給との比較でございますが、先ほど竹中先生のお話がございましたが、私どもはかように考えておるのでございます。恩給というのは、国家公務員という一つの狭い枠だけの問題でありまするので、厚生年金のように非常に広い職場に適用をされます制度と一緒に考えるのは適当じやないのじやないかと思つておるのであります。(「おかしいよそれは」と呼ぶ者あり)広い職場に適用されます関係上、そこでやめました者にはできるだけ早くその金を支給してやるという考え方なんです。この制度の厚生年金といたしましては、非常にたくさんの老人を適用筋囲にしておりまするので、一つの職場をやめましても、又他の職場で働いて同じく被保険者として続いて行ぐ、その年限は全部適用のある限りは通算されるわけでございます。それで開始年齢の問題と恩給と、ただ結果の数字だけで比較するのは如何かと思います。
#23
○藤原道子君 国家負担はどの程度でございますか。
#24
○政府委員(久下勝次君) 国庫の負担は、実は恩給のほうは御案内のように千分の二十の国庫納付金を各公務員からとつておるわけでございます。それで制度に定められました給付が起りました場合には、あとの費用は全部国が負担して恩給を支給する、こういう建前になつておりますが、私が記憶しておりまするところによりますると、恩給局の説明では、昭和二十八年度だと思いましたが、恩給の総支出が百二十億ぐらいと言つておりました。そのうち二十八年度は国庫納金が四十九億、それから恩給給付額が百十四億、記憶しておるものではこういう数字でございます。従いましてその差額の六十八億が国の負担であり、四十九億が公務員の負担である、こういう結果になつております。
#25
○藤原道子君 極く僅か定められた枠内のものだから厚く許されて、一般は数が多いから仕方がない。こういう考えには私は納得行かない。一般、絶対多数の人であればこそ、安んじて生活ができる、安んじて働けるというふうに頭を持つて行くべきが私は正しい考え方ではなかろうか、こう思うのです。で、まあほかの職場へ転換しても、それは継続して生きて行くんだからと言われることはまさにその通りなのです。現実の日本において果してそれが可能かどうか、現実の日本におきましては、五十五歳停年制がすでに危くなつて来ている。そういう場合には、どうして食つて行くかということを一つ担当局長としてどうお考えになるか、もう一遍くどいようですが、伺いたい。要は飯の問題ですから……。
#26
○政府委員(久下勝次君) 先ほども申上げましたように、厚生年金保険法の附則第九条によりまして経過的な措置がとられておる。この法律施行の時に五十二歳以上になつておりまする人は、現行法通り五十五歳で開始をする制度をとつております。それからこの法律施行の時に五十一歳乃至四十九歳の者につきましては、五十六歳で開始をする。この法律施行の時に四十八歳乃至四十六歳の人は、五十七歳で開始をする、というようなふうに漸進的な方法をとるわけでございます。差当りの三年間ほどは現行の制度がそのまま行くというような考え方になつておりまするし、更にその後の三年間におきましても、一年延びるだけというような行き方をとりたいと思つております。このことがこの制度を以て一般の雇用関係等を左右する力は私はないと思いますけれども、併しながら又日本の人口構成等の関連等もございまするので、実際の雇用関係等の実情はそういうような必然的なり数字から又変つて行くのではないか、そういう一つのきつかけにもこの制度はなり得る可能性はあると思つております。そうした状況をここ数年私どもとしては見守つて行きたいと思つておるのでございます。全体の傾向としては、今現行法通りの開始年齢をとるか、将来の姿としても、六十歳をとるがというこの二者択一をどうするかということになろうかと思いますが、私どもの考え方としては、先ほど申上げましたように、いろいろな実情から申上げまして、この際は六十歳という方針を示し、ただ実際の雇用関係に無理の来ないような、只今御心配の点等にも十分な考慮の余地がその間において入り得るようにいたすことによつて、実際問題は漸次解決して行くのではないか。どうしてもこれが数年間やつてみまして、絶対に無理であるということになりますれば、又そのときの状況を考えてもよろしいのではないかと思いますが、私どもの考え方としては、将来の姿としては、我が国におきましても、こういう方針をとるのが適当であるという結論で御審議を頂いておるわけでございます。
#27
○藤原道子君 今一般労働者の考え方は、非常に労働強化が押付けられて来ている、労働者に対して、非常に圧迫が加えられておるという考え方を持つておりますし、私たちもそうだと思う。そこへもつて来て現実においては、五十五歳の停年制である、経過規定はあると言われますが、確かに経過規定はあるのでございますが、一般の受けまする感じは、明らかに六十歳に年齢が上るということに間違いない。将来これはどうしても駄目だつたら改めると言いますが、将来そうした見通しがついたときに改めたつていいんではないか、この際全然五十五歳停年制がどうなるという見通しもなく、その間の生活の保障の見通しもなく、殊に失業者が殖えて来ているとき、五十五歳になつて他の職業へつくことが可能かどうか、ということは、我々、馬鹿が考えたつてわかることだ。従いまして将来今あなたが言われましたように、どうしても無理だというときに改めるとおつしやるならば、将来やれる見通しがついたときに、改めるというように、むしろ改正するというふうなお考え方はできませんでしようか。私は不安を与えることは非常にいやなんです。
#28
○政府委員(久下勝次君) その点は考え方の相違かも知れないと思いますが、先ほど来くどくど申上げておりますような考え方から、私どもとしてはこの際六十歳開始という線を方針として打出しておいたほうが適当であるという結論でございます。又世の中の実情も或いは人口構成などを考えても、そう変らざるを得ない必然性があるのではないかというふうに考えて、実際、実情と申しますると語弊がありますが、将来の方針をも加味いたしました結論が先ほど来申上げておるようなことであります。問題は今私どもとしては将来の姿をいろいろ資料から考え併せまして、やはり六十歳にするのが将来の姿としても無理であるという実は結論には到達しておらないのであります。この辺は見解の相違かも存じませんが、私どもとしてはこの際六十歳という線を打出しておきまして、実際無理のないような経過措置を講ずるということが最も合理的だという結論を出した次第でございます。
#29
○藤原道子君 それはあとに残しましよう、考え方の相違ですから……。そこで積立金の問題でございますが、過日来資料を求めておりますが、まだ出て来ないのでございますが、その資料を至急に御提出願いたいということと、それから大蔵大臣も民主的運営については考えておるというようなことを言われましたが、保険局としては今のようなやり方が妥当であると思つておいでになるか、将来別個の機関において、この厖大な積立金の運用を別途機関で行うというような考えが正しいという考えであるのかどうか。若しそういうお考えであるとすれば、どういう構想を持つておいでになるか、その点をお伺いしたい。
#30
○政府委員(久下勝次君) 積立金の運用の問題につきましては、厚生省としてはまだ正式な結論が出ていないというのが打明けました実情でございます。ということは、結局現在の段階におきましては、現在の制度でいいのではないかという結論にもなるわけでございます。なぜかと申しますつと、いろいろ私どもも労使の負担にかかる大事な積立金をお預りする立場におるわけであります。従つて私どものところへ運用権をとりまして、最も合理的に確実に運用できるかどうか、その形がまだ私どもとしては自信を持つ案が出ないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、現在の段階におきましては、資金運用部に預けて、国家全体の立場からこの資金が運用されるという姿で止むを得ないのでないかというふうに考えておる次第でございます。
#31
○藤原道子君 いずれ資料を頂いてから、この質問は又続行したいと思います。
#32
○竹中勝男君 先刻の御質問に関連することなんですけれども、保険局長のお考えは、まあ現在六十歳、将来においても六十歳ということが大体適正な養老年金の受給開始の年齢であるとお考えのようですが、私は将来においては六十歳というのは妥当であると思いますが、現在は妥当でないという考え方なんです。と言いますのは、先ほどのお返事の中にもありましたように、老人が余り遊んでおる姿、仕事がなくて、ぶらぶらして年金を受けて遊んでいる姿はよくないというふうに私は受取りましたが、日本では、若い者がぶらぶらして遊んでいるのです、仕事がなくて……。老人がぶらぶらするのはいいというのが私の考え方なんです。国民の正しい私は考え方であろうと思うのです。いつまでも、死ぬまで働いておるのが理想的だとは思いません。まあ或る時期になつたら少しゆつくり人間はしなくちや、するという希望がなくちや若い者もなかなか働けないと思うのですが、御存じの通りに労働関係の調査によりますと、一週三十四時間以下の労働しかない者が今、日本中で八百万ほどいるわけです。最近のいわゆる潜在失業者を入れると一千二百万くらい私はいると思うのですが、こういう厖大な失業人口を持つておる国で、日本人ぐらい年寄りになつて働いておる国民はまあ珍らしいのです。これはお調べになつたらわかると思いますが、六十五歳以上の有業人口は、総有業人口の六%になつています。これは世界で一番高いのです。こんなに年寄りが死ぬまで働いておる国はない。それで日本では願わくば老人が少しぶらぶらして遊べるということが、これは世界の理想であり、又日本の理想だと私は考えておりますが、それで老人が働いて、若い者が働き場がなくて遊んでなくちやならないという現状が日本の社会問題なんです。これを解決するのは、やはり老人に早く仕事をやめてもらつて、若い者に、しつかりした労働力を持つ者が本格的に産業労働に従事するということが日本経済の要請なんだという考えを一応持つているのですが、それを満たすのはやはり老齢年金制度の開始年齢を将来においては引下げて行く。将来においては六十歳、現在においては五十五歳というのが妥当であるというのが私の考え方ですが、これは意見になるかも知れませんが、局長さんの言葉の中に、老人が余り遊んでいるのはよくない、日本は老人が働いておるということです。
#33
○政府委員(久下勝次君) 私どもといたしましても、只今先生のおつしやつたことは、少しほかの理由も附加えて考えておるわけですが、現在の段階におきまして、直ちに引上げをするということは適当でないと考えておるわけであります。将来の形としては引上げて行くほうがいいのじやないか。問題はそこでいわゆる将来引上げるという方針を打ち出すか、打ち出さないかということであります。打ち出さないということは、結局将来とも現在のままであるということを示すことになろうと思いますので、将来の姿として、そういうことで引上げてよいと私ども考えまして、一応その方針を原則的には打ち出す。併しながら実際の社会に及ぼす影響を考えまして、経過的な措置を講じたのが私どもの考えであります。老人が、老人と申しますが、むしろ若いうちから遊んでおる、五十五歳でも十分働けるにもかかわらず遊んでおるのは望ましくないということは先生のおつしやつたことと合つていると思いますが、私どもは今、日本に失業者がどういうような階層にどういうようにおるかということは、この制度としては余り実は考えない。これを考えないのは適当でないと言えばそれまででございますけれども、そうじやなくて、やはり制度全体の建前から申しますと、労働可能の人たちの醵出する保険料によりまして、そうして労働力を喪失した人たちに年金を支給するというのが、何と申しましてもこの制度の本来の姿でございますので、そういう意味合いから申しまして、年齢を余り若いところにしておくのは、現在の状態から申しましても、将来を見ましても、少し無理ではないかという考えで、こういう結論になつたわけであります。
#34
○堂森芳夫君 さつき藤原委員からの質問に対しまして、保険局長は、これは言葉尻を捉えるのじやないのですが、公務員の恩給については一部の人云々という言葉がございました。これはけしからんと思う。なぜならば、例えば従来の恩給制度は、非常に旧態依然であるから、人事院は公務員の退職年金制度の勧告を出しておる。そしてもつと近代的なものに持つて行くという、こういう私は勧告だと思う。そうして従来の民間企業内における労働者の厚生年金制度と、それから公務員の退職年金制度というものを、今後、例えば職場の移動による計算制とか、通算制とか、いろいろなことをやつて行けるような含みが私はなかつたら、将来の国民年金制度というものの進歩はないと思う。あなたの考えだと全く公務員は……、今の御意見は不見識だと思う。これは一つ私は重大な警告をしておきます。
 それから質問に移ります。この前いろいろ質問申上げましたが、この第五十九条の遺族年金の妻についてです。妻は四十歳以上であつて初めて遺族年金がもらえる、まあこういうことになつております。ところが五十五歳にならないと実際は年金は下りない。勿論いろいろな例外があつて、そういう場合にはもらえるということになつておりますが、私、日本の婦人の健康だとか、或いは結婚年齢などから言いまして四十歳以上であるということがどうも妥当でないように思うのです。又五十五歳にならないと資格ができないということも非常におかしいのじやないか、こう思うのですが、久下局長はこの法律を作られるときにどういうふうにお考えになり、どういうふうに研究されたか、一つ御答弁願いたいと思います。
#35
○政府委員(久下勝次君) 前段の問題は御意見でございますから承わつておけばよろしいのでございますが、ただ私の申上げ方が或いは誤解があるといけませんので、一応申上げておきたいと思います。私が申上げましたのは、開始年齢をどう取るかということにつきまして、恩給とこの年金制度とは違う点があるからということで申上げたのであります。これは退職年金制度を勧告いたしました人事院の責任者の説明を聞きましても、現在の恩給なり、或いは勧告されている退職年金制度につきましては、この厚生年金と現に各企業ごとにあります退職金制度、こういう両々加味したものであるということを明白に説明をいたしているわけでございます。そういうような一つの事業にずつと勤続した者に対して出すものであるのと、各種の事業所を転々といたしましてもその間が通算せられるものとは少し考え方が変つてよろしいのではないかという意味で申上げたつもりでございます。
 それから御質問の妻の年齢制限の問題でございます。この点は実は現行法でもこういうふうになつているのでございまして、これは何故こうしたかと申しますと、結婚をしないで職場にある婦人につきましては、原則通り五十五歳にならなければ年金の支給はいたさないわけでございます。従つてそれまでは、言葉を換えれば、露骨に申しますと働いて頂くという考えなのでございます。たまたま結婚をいたしまして被扶養者である子供を持つていないような婦人につきつましては、やはり同様の考え方を取るのが公平の原則から言つて適当ではないかという考えでありました。子供を持つて、これは衆議院の修正で十八歳未満の子供があり、それを扶養しなければならない妻につきましては、当然年金が出るわけでございます。そういうような関係で足手まといもないような婦人又結婚していない婦人につきましては、同様に職場に立つて頂きたいというのがこの制度の考え方であろうと思うのであります。そういう他の婦人との権衡上の関係も考えまして、現行の制度もこうなつているということを考慮に入れましてこうしたわけでございます。
#36
○堂森芳夫君 そうしますると、三十五歳で御主人が死んで未亡人になり、十八未満の子供がある、これは遺族年金をもらえるのですか。
#37
○政府委員(久下勝次君) 十八歳未満の子供がありますれば遺族年金は出ます。
#38
○堂森芳夫君 年齢に区別なくね。
#39
○政府委員(久下勝次君) はあ。
#40
○堂森芳夫君 それでは時間がありませんから次の問題に移ります。
 この脱退手当金の問題ですが、非常にこれは女子労働者からはいろいろと大きな声が挙つているのですが、私よく数字がわからんのですが、大体繊維関係ですね、婦人の労働者が主に働いている繊維工場あたりでは、一年間以内に退職する人はどのくらいございますか、就職して……。
#41
○政府委員(久下勝次君) これはお手許にも資料として差上げてあるのでございますが、日本製糸協会が昭和二十七年三月末現在で調査した資料がございますが、二十六年四月から二十七年三月までの退職者の勤続年数を調べた数字がございます。それによりますと男子は六・三二年、それから女子は三・八一年ということになつております。それから在職者の勤続年数を同じく調べてみますと、それによりますと同じ昭和二十七年三月末現在で調査してございまするが、男子は七・三九年でありますが、女子は四・〇五年でございます。なお、その他の資料もございまするけれども、一応この辺を参考にして頂きたいと思います。
#42
○堂森芳夫君 私が聞いておるのでは、一年以内でやめる人が一三%から一五%くらいあるのじやございませんか。それから二年以内にやめる人が約三〇%くらいある、こういうのじやございませんか。
#43
○政府委員(久下勝次君) 同じ資料で在職者の勤続年数調べで申上げますると、六カ月未満でやめます女子は一・六八%、六カ月以上一年未満でやめます人が一六・三四%、それから一年以上二年未満でやめます者が八・四三%、一年未満でやめますのが従つて約一八%、それから二年未満でやめる者は更にこれに八を加えますから二六%、こういうふうになつております。
#44
○堂森芳夫君 そうしますると全婦人労働者の約三割近くが二年以内に退職する、恐らく結婚が非常に大きな理由になるのだと思うのですが、この脱退手当金を、今度現行法は改正になりましたが、一つここでちよつと厚生年金と少し理窟は違いますが、嫁入りの何か足しになるというようなことにいろいろお考えになつたということはございませんですか、如何ですか。そういう希望が非常に強いのですが……。
#45
○政府委員(久下勝次君) 脱退手当金を設けております趣旨は、そういう結婚の仕度金というような気持だけでやつておるものではないのでありまして、むしろ本質的には強制加入をさしており、而も特に女子について申上げますると、長期間被保険者であつて、将来年とつた場合に年金がもらえるほど勤める人が少いという日本の実情から考えまして、特に脱退手当金の必要が考えられておるのであります。そこで本制度を設置いたしたのでありますが、そこで問題は給付額をどうするかということであります。結婚ということを保険事故として取上げるということになれば話は別でございますけれども、少くとも理由の如何を問わず脱退した人に出すという制度をとります以上は、この金額を幾らにするかということにつきましては、おのずから保険料と諸給付との見通しとの関係できまつておるわけでございます。御質問を少し外れるようでございますけれども、この問題につきましては、私どもも成案を得ますまでには十分いろいろと検討をいたしてみたつもりでありますが、労使双方からお話のありましたのは、一つは日本の女子労働者の実情からみまして、女子につきましては、男子と保険料率を別にして少し安くしてもらいたいという一連の要望がございます。それからもう一方、現在の脱退手当金が相当多額に出ておりまして、これを若干引下げるのは止むを得ないとしても、余り大幅に引下げないで欲しいというような二つの相反する御要望が一緒に出ておつたわけでございます。私どもといたしましては、女子だけ別計算をいたしまして、別にお手許に差上げてありますような資料に基きまして、やはり業種によりましては女子も長く勤める。殊に教育の事業に従事いたしております人は、年金をもらう人が非常に多いと思います。それを一緒にいたしまして計算をする関係上、女子も老齢年金なり、或いは障害年金、遺族年金を支給される被保険者が相当あることも考えねばなりません。併しその比率は男子よりも非常に低いのでありまして、そこで男子よりも将来の姿としては低い保険料を取りながら、それを主な財源として、保険の給付をいたします場合に予定いたします老齢年金、障害年金、遺族年金等に必要な財源を取りまして、残りましたものは全部脱退手当金で戻すというようなやり方をしたのであります。それが本法の附則別表第三に出ております数字でありまして、これは結果的に申上げますと、一般男子の脱退手当金は平均標準報酬の千分の十五、即ち本人の掛けた保険料相当額に年四分五厘程度の利子を付けたものしか返せません。女子につきましては以上申しましたような計算をいたしました結果、本人の掛けた保険料を少し上廻りまして、大体保険料率に直しまして千分の二十に相当しますものに銀行預金利子を加えた程度のものを返せるというのが、別表第三に挙げております数字でございます。言葉を換えて申しますれば、千分の三十が一応の保険料率でございますが、千分の三十の保険料を取りまして、そのうちの千分の十は老齢年金、障害年金、遺族年金支給のための財源であり、千分の二十は脱退手当金として本人に戻される、こういう建前を取つているのであります。
#46
○高野一夫君 私は質問は先ほどので打切るつもりであつたのですが、先ほどの藤原委員と竹中委員の御質問に関連して伺うのですが、それとこの前の委員会で私が聞いた五年後、十年後各年金受給者の人口、予算額にも関係して来るのですが、先ほどの両君の御質問に対する保険局長の御答弁が何か抽象的でしつかりしないところがあるんだけれども、こういう数字がわかりませんか。五十五歳から六十歳までのそれぞれ男女別に現在と五年後、十年後の人口推定、それとその間の男女が、それぞれ各種産業別でなくて結構ですが、総括したものでいいが、どの程度何パーセントの就業率、仕事にあり付けるものかどうかという、こういうことの一応の推定数字は出ませんか。今日できなかつたらこの次までに一応計算しておいてもらいたい。
#47
○政府委員(久下勝次君) 高野委員のお話の数字、精細なものは非常に困難でございますが、ここに人口問題研究所におきまして推計をいたしました資料がございますので、要点だけ申上げて、あとから資料で申上げます。昭和二十五年から五年ごとの人口構成の推計をいたしております。昭和七十年までの推計がございますが、それによりますると、一応昭和五十年くらいのところをとつて申上げますと、人口は一億を突破いたしまして、二百五十五万八千人ほど一億を突破するわけでございます。そこで零歳から十四歳までの年齢は……。
#48
○高野一夫君 五十五から六十歳くらいの間でいいです。
#49
○政府委員(久下勝次君) 五十五というのはないのでございますが、六十歳以上が一二%、それから十五歳から五十九歳までが六八%という数字がございます。この数次はだんだん殖えて参りまして、昭和六十年になりますと六十歳以上の人口総数は、そのときの人口の一三%それから昭和七十年になりますると、更に比率が殖えまして六十歳以上の占める比率が一八%……。
#50
○藤原道子君 一一%は何年。
#51
○政府委員(久下勝次君) 要点だけ申上げますが、昭和三十年におきましては六十歳出以上は八%、三十五年が九%、四十年が一〇%、それから四十五年が一一%、五十年が一二%、五十五年が同じく一二%、六十年が一三%、六十五年が一五%、七十年が一八%、こういうふうに漸次六十歳以上の老齢人口が殖えて行くという推計がございます。只今の御質問に対しては半分しかお答えになつておりませんが、これ以上の数字は只今のところとしてはございませんが、若し調べまして手に入りましたならばお答え申上げます。
#52
○高野一夫君 大体の就業比率の数字を概算ができますれば、今日でなくて結構ですからお示しを願いたい。
#53
○委員長(上條愛一君) それでは本日の本案に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#54
○委員長(上條愛一君) 御異議ないものと認めます。
  ―――――――――――――
#55
○委員長(上條愛一君) なお、覚醒剤取締に関する小委員の堂森芳夫君の補欠として堂森芳夫君を指名いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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