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1953/02/26 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 予算委員会 第4号
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1953/02/26 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 予算委員会 第4号

#1
第019回国会 予算委員会 第4号
  公聴会
――――――――――――――――
昭和二十九年二月二十六日(金曜日)
   午前十時二十八分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     青木 一男君
   理事
           高橋進太郎君
           小林 亦治君
           森 八三一君
           中田 吉雄君
           松澤 兼人君
           堀木 鎌三君
           三浦 義男君
   委員
           石坂 豊一君
           泉山 三六君
           伊能 芳雄君
           鹿島守之助君
           小林 英三君
           佐藤清一郎君
           白波瀬米吉君
           高橋  衛君
           瀧井治三郎君
           高野 一夫君
           宮本 邦彦君
           吉田 萬次君
           岸  良一君
           田村 文吉君
           中山 福藏君
           村上 義一君
           小林 孝平君
           佐多 忠隆君
           三橋八次郎君
           湯山  勇君
           相馬 助治君
           曾祢  益君
           松永 義雄君
           苫米地義三君
           武藤 常介君
           千田  正君
  政府委員
   大蔵省主計局次
   長       正示啓次郎君
   大蔵省主計局次
   長       原  純夫君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       野津高次郎君
   常任委員会専門
   員       長谷川喜作君
   常任委員会専門
   員       正木 千冬君
  公述人
   京都大学名誉教
   授       汐見 三郎君
   東京大学助教授 大内  力君
   日本化薬株式会
   社社長     原 安三郎君
   東京銀行常務取
   締役      堀江 薫雄君
   名古屋商工会議
  所中小企業委員  佐藤 忠雄君
   日本労働組合総
   同盟調査部長  山口 謙三君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十九年度一般会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十九年度特別会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十九年度政府関係機関予算
 (内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(青木一男君) これより委員会を開きます。
 昨日に引続いて公聴会を開きます。
 公述の方にはお忙しいところおいで頂いて有難うございます。先ず汐見博士に御意見を伺います。
#3
○公述人(汐見三郎君) 本日の公聴会におきましては、地方財政、地方税を主として申上げるようにということでありまして、私、実は地方制度調査会、税制調査会の委員をいたしております。そういう関係もありますので、主として地方財政、地方税で中心に述べて行きたいと思つております。ただ地方財政、地方税を述べるに当りましても、立場が二つありまして、一つは、地方村政を運催して行く人、地方税を徴収する地方公共団体の側の立場と、それから納税者の立場、地方税を負担する人の立場と、両方があるわけでありまして、私は両方の立場が重要だとは思つておりまするが、地方税を納める納税者の立場というものを相当強調する必要があるというふうに考えております。
 地方村政の規模の問題でありまするが、地方財政の規模の問題は、地方制度調査会でもいろいろ研究されたわけでありまするが、地方公共団体の要求を合計いたしますると、七百億円ぐらい金が足らない、七百億円ぐらい地方財政の規模を拡大しなければならないということの要求があつたのであります。地方行政をあずかる人の立場としては、多々ますます弁ず、金を余計使えばますます弁ずということはよく私理解はできまするが、これ又国民の租税負担になつて来るわけでありまするから、その点を考えまして、その七百億円の要求を三百億円程度に抑えて答申したわけであります。その後国際情勢が、国際貸借のいろいろ数字が出て参りまして、いろいろ調べて見ますると、国家予算を一兆円にとどめなければならないという情勢になつておりますし、その財政インフレーシヨンというものは、これはどうしても阻止しなければならないということになつて参りましたが、税制調査会におきましては、その線が一層強く出て参りましてれむしろ財政の常道と逆に行くべき只今事態にあるんじやないか、出ずるを計つて入るを定めるというやり方でなくして、入るを計つて出ずるを制するという状態になつておるのではないか。そういうところからいたしまして、税制調査会におきましては千二百三十七億円減税する。それから五百三十七億円増税する。差引七百億円減税する。七百億円減税するのが、これが国税、地方税を通じての日本国民の負担の限界である。歳出もその線に沿つて国家歳出も地方歳出もその線に沿つて考えて行くべきではないかということを税制調査会で結論したようなわけでございます。それによりますると、事業税二百三十七億円、地方税で減税するということになつておるのでございますが、その後発表せられました地方財政計画によりますると、地方公共団体の立場から見ますると、相川不満なところがあるわけであります。七百億円膨脹したいというのに、二百億円くらいの膨脹に過ぎないと随分不満な点があるだろうと思つておるのであります。国家財政におきまして、とにかくいろいろ議論もありましようが、分析いたしますと、一兆円でないとかいろいろお話がありましようが、とにかく一兆円は抑えるということに国家財政のほうで努力しておつたのでありまして、その努力を、地方財政も歩調を合わせて、とにかく地方財政計画が立てられるということが、大体におきまして私はその行き方であると田うのでございます。十分ではないとうことは、地方制度調査会、税制調査会で考えたものと比べて見ると、不満な点もあるけれども、その行き方、膨脹予算じやなしに緊縮予算の方向に努力をするという、努力の点は私は正しい方向に進んでおるというふうに考えておるのであります。ただ努力の仕方がどうも足らないように思うのでございます。減税のことを、随分政界、財界、あらゆる方面から減税が取上げられておつたのでありますが、結果から眺めて見ます。ると、この国税は一・五%二十九年度は二十八年度より増収になつております。それから地方税が一二%、二十九年度が二十八年度より増収になつております。このインフレ予算のおもむくところを放任しておけば、もつとひどいところになつただろう、思つておりますが、それは一・五%に抑え、又地方税で一二%に抑えた努力は多といたしまするが、減税の方向でなしに増収の方向になつておるということは、一つの食い足らない点がありますが、この点につきまして一段の努力を必要とするのじやないかというように考えております。それから国民所得に対するこの租税負担の割合を眺めて見ますると、二十八年度におきましては二〇・五%でありまして、二十九年度が二一・二%というふうに殖えておるわけであります。殊にその殖える程度のひどいのは地方税であります。二十八年度は国民所得に対して五・二%であつたのが、二十九年度には五・八%というふうに増しておるのであります。
 それで財政規模について申しますると、この予算編成につきまして、又地方財政計画を辛るために、いろいろ努力された努力は多としますが、どうもその努力の仕方が十分じやない。納税者の立場から申しますると、もつと日本が今置かれている国際経済の情勢から考えて、自立経済を達成する意味から申しまして、この二十九年度においてもつと努力すべきだ。二十九年度で努力がされてなければ、三十年度、三十一年度というふうに、ますくその経済自立達成の方向に向つて努力する必要があるというふうに、財政規模について特に地方財政の規模につきまして考えているのであります。それから地方財政は国の財政と違つているのはよく認めております。国家行政と地方行政と違つているところは認めるのでありますが、併し地方財政、地方行政も日本の国の外にあるのじやなしに、日本の国の重要な部分を占めている。従つて国策を或る程度まで取入れなければならんというふうに、私考えているわけであります。税金を納める納税者の立場から見れば、国税というので納めるのも、地方税というので納めるのも、結局負担は同じことになるという、そこに応益主義とか、応能主義とか、いろいろ理窟の分れるところがあるのだと存じますけれども、そういうふうに私考えているのであります。
 次に、地方税について申上げたいと思つております。地方税の総論、地方税全体を引つくるめたことを先ず申上げたいと思つております。その次に地方税の各論、個々の地方税について申上げたいと思つております。
 地方制度調査会、税制調査会で、地方税につきましていろいろ答申いたしました。この租税というものは、これは行政と財政と全体として見なければならず、又財政につきましても、財政全体と租税とを全体として見なければならず、又租税も個々の租税だけじやなしに、租税全体を流れる基調というものが、これが私大事じやないかというふうに考えております。それで実はえり食いをされては困るのでありまして、税制調査会の答申、地方制度調査会は、全体として一つになつているものであります。どうもいささか食い荒しの気味がある点は遺憾だと私思つております。併し税制調査会、地方制度調査会を開いたときの情勢と、現在の日本の経済情勢とはよほど悪化、その時よりは悪化というのはどうかと思いますが、とにかくそう順調じやなくなつておりますから、税制調査会の答申、地方制度調査会の答申をば、そのまま実施せよとは申しませんが、変更するにいたしましても、全体の調和を失わないように一つやつてもらいたいというふうに考えている。それで地方制度調査会の答申の地方税のきめ方は、これに三段階に考えている。地方制度調査会の答申の地方税のきめ方は、これは三段階に分れているわけでございます。一つは、シヤウプ税制がやかましく申しましたように、独立財源、これを大いに涵養するということにしたのであります。ところが独立財源でありますが、昔の考え方から申しますると、地方税としては直接税以外のものはいかない、間接税は地方税としては不適当であるという考え方があつたわけでございますけれども、昔の地方団体と趣きがだんだん変つて参りましたので、只今では世界各国とも地方税に間接税を相当加味することになつております。たばこ消費税を設けまして、専売公社から国に益金を繰入れると共に、府県に百十五分の五、それから市町村に百十五分の十というものを小売価格に応じて分けることになつたということは、これは私は地方制度調査会の答申の、金額の少いことは遺憾でありまするけれども、併しこの第一歩を踏み出した、間接税にも財源を求めて、その地方の独立財源を賦与することになつたということは、これは私一つの進歩だと思つております。
 その次に交付税の問題でありまするが、地方財政平衡交付金で陳情又陳情で、毎年陳情戦を繰返しておるというような有様であります。これに対して適当な機会にピリオドを打たないと、政治の簡素化を図るべきときに面白くないというふうに考えております。今度地方交付税という形になりまして、この点も一つの進歩だと思つております。独立財源で地方財政を賄つて行くのがこれが本体だと思つておりますが、或る県のごときは、歳入の、又歳出の十分の一が独立財源だというふうになつております。このほかは補助金とか交付金で調整するという形になつております。まあたばこによりまして独立財源をいささかなりとも殖やすように努力したわけであります。
 更に譲与税を設けまして、この遊興飲食税、入場税をば国税で徴収いたしまして、その九割をば人口に按分して地方に譲与するということを答申したわけであります。大ざつばな数字でありますが、東京都はその遊興飲食税、入場税が全国の三割取れることになつております。ところが人口は一割であります。それで一つ東京都は三分の一で辛抱して頂こう、それから三割と一割との差額、即ち二割をば人口割で日本全国に配賦しようじやないかというような努力をしたわけであります。入場税につきましては、その目的を達することができたのであります。遊興飲食税はいろいろな事情によりまして、その目的を達することができなかつた。この点につきましては将来の問題といたしましていろいろ研究を残す余地がありやしないかというふうに思つております。
 それからその次に大都市税制の問題でありますが、大都市の特殊事情につきまして、地方制度調査会におきましても、税制調査会におきましても、いろいろ考えたわけでありまするが、これは警察をどうするか、教育をどうするかと、自治庁はその権限を持つておりませんし、自治庁以外の所でこれが解決つく問題であります。警察、教育の問題と関連するところがあります。従つて自治庁の出されました地方税の改正要綱の中には現われておらないのであります。国の中で五大府県と五大都市が鎬を削つて争うということ、これは一つ手打ちを早くしてもらつて、どうぞ手を携えて祖国再建に乗出す時でありまするから、血で血を洗うような争いをば一つ適当のところで手を打ち、これはどちらが譲るのかこれは別といたしまして両方一つ胸襟を開いてやつてもらう。陳情戦、陳情戦で千人ばかりが東京に詰めかけていろいろなことをやるというのは、これは何とかできぬものかしらんというふうに私思つております。それから大都市税制につきましても、大都市の言い分もあるし、五大府県の言い分もあるし、そこを一つ調整するようなことができやしないかというふうに考えております。これは警察問題と最も深く関連いたしますので、警察問題、義務教育費の問題が解決つかざる限りは十分の解決がつかぬわけであります。今年解決しなければ来年でもいいから一つ国の中で喧嘩し合うことはやめたらいいじやないかというふうにこの問題については私は考えております。
 それから地方税法改正要綱につきまして自治庁で発表せられたのを見ますると、大体におきまして地方制度調さ会の答申を尊重しておられまして非常に結構だと思うのであります。
  (1) 地方団体の自立態勢の強化に資するため独立財源の充実を図ること。
 これは目的を達しております。
  (2) 地方団体相互間の税源配分の合理化を期すること。これも目的を達しております。
  (3) 地方税の税種相互間の負担の均衡化を図ること。これも目的を達しております。
  (4) 道府県に住民がひろく負担を分任する税種を設けること。これも目的を達しております。
 ところが最後の五番でございますが、これは相当重要だと思います。
  税務行政の簡素合理化を図るとともに、国、道府県及び市町村三者間の協力体制を確立すること。
 というのがあります。このうちの国、道府県及び市町村三者間の協力体制を確立すること、税金を取るほうが協力一致して三者一体で努力されるという、この点は目的は達しられるようでございます。税務行政の簡素合理化で納税者が税に余り煩わされずに済むというところが甚だ稀薄なようでありまして、この点につきまして一段の努力を今国会で行われてもよろしうございますし、又次の国会でもよろしうございますから、この点を一つやつて頂きたい。これは全体についてでございます。
 次に、地方税の各論につきまして極く簡単に申上げたいと思つております。
 第一番に附加価値税の問題でありますが、附加価値税をやらないということにきまりました。附加価値税につきましては、いろいろ私長所もあることと思つておりますが国民挙つて反対しておるときに、強いて押し付けるということも、民主主義の現在においてどうかと思いますので、それで事業税と特別所得税を事業税一本に統一されたことは、これは穏当じやないかというふうに考えております。ところが事業税の減税でありまするが、個人事業税につきましては減税される。法人事業税につきましては、極く僅かの減税でありまして、商工業者は法人税、所得税よりも、その事業税の負担に随分困つておるようなわけであります。税制調査会では二百三十七億円の減税を事業税に考えておつたわけであります。それが行われない。まあ個人事業税につきまして、いささかまあ行われておるのでございますが、財政事情の苦しいときでございますから、その方向でも出たということは私はいいことだと思つております。これにつきまして問題として研究する必要がありやしないかというふうに思つております。
 それから簡素化の点でありまして、税務署で所得税、法人税の調べをやつて行く、そこへ又事業税で府県庁で調べて行く、それを一本化したらどうかという要求が非常に強くあります。それから又外形標準課税をいたしておりますが、純益課税に統一したらどうかという二つの要求が現われておつたのでございます。外形標準課税を純益課税に改める要求は、一部分小運送だけが目的を達しただけで、これは行われておりません。それから国の調査をそのまま府県の調査にするということは、これは原則として承認されることになりまして結構なことと思いますが、ところが逆に府県が調べて過少と認めたときには、国の調査を訂正してかかるというか、非常に行届いた国と府県の協力体制というようなものが確立したわけであります。大体民間側の要求は、国の調査を府県がそのまま承認するという、そういう要求だつたと思つております。過少のときには改める。過大と認めたときはどうかというと、過大のときは黙つておるという、ちよつとその辺のところが事業税につきましていろいろ問題が残つておりやしないかというふうに思つております。これは協力体制、徴税者側を主に置くか、納税者側を主に置くかという重点の置き方で両方の態度が変つて来るわけであります。これにつきまして、私は研究問題として申し上げておく次第であります。
 それから道府県民税ができたということは、これはいいことだと思つております。これは後に申しますが、道府県というものは一体何ものなりや。アメリカのステートと道府県を同じ目で見ていいものかどうか。一体自治体が三つあつていいのか、私は京都市民であり、京都府民であり、日本国民である、三つの人格を私は持たねばならんものかどうか。どういうふうに府県というものの性格を考えていいのか、これが大きな問題だと思つております。併し現状におきましては、私道府県民税は置くべきだと思つております。商工業者だけが道府県の費用を負担して農民及び勤労者は道府県と税金の繋りがないということは如何にも変だと思いますので、今の形の自治体で道府県を置くのであれば、道府県民税を置くのがいいんじやないかというふうに思つております。ただ道府県民税は成るべく簡素な形で納税者を煩わさないようにという形で申しておつたのでございまするが、個人の点につきましては、市町村民税と道府県民税をリンクしているわけであります。法人の事業税につきましては、道府組民税が新たに加わつたわけでございます。法人の道府県民税につきまして一つ研究して見る必要がありはしないかと思つております。
 それから固定資産税で大規模償却資産の半額を道府県で以て徴収して行く、それは税制調査会でいたしたのでありますけれども、要綱に現われているところによりますと、四億円以上とか金額できまつておりましてこれの調査につきまして、市町村が調査する、道府県が調査する、調査が両方になつている。これもやはり同じことで、協力体制の強化ということにつきましては、道府県も訪れ、市町村も訪れ、いろいろあますところなく調べるというのは、これは大変結構だと思いますけれども、納める側、調べられる側になつて見ますと、応接にいとまなしということになる。この点一つ考えてみる必要がありはしないかと思います。
 それからこれは資産再評価に関連する問題でありますが、資産再評価のときに帳簿価額を修正すれば、すぐに償却資産の価額が再評価価額になつて行くということが相当障害になつております。これは国税の再評価税の問題と関連して考えて見るべきだと思つております。国税はこれは国策のものである、地方税は国策以外のものだ、応益主義という思想で行けばそういうことも成立つわけでございます。地方税も或る程度までは国策を入れたらどうか、資産再評価の強制論というようなことが今行われております。それと国策と、それから地方行政をどういうふうに調和して行くかという問題も、私は研究して見るべきものじやないかと思つております。
 それから不動産取得税というものができたわけでございます。不動産取得税を府県税として置くべきか、市町村税としく置くべきか、これは私問題かと思つております。これ又警察に関連いたしまして、警察費をどこが負担するかという問題と関連いたします。不動産取得税は以前は府県と市町村が半分ずつ分けておつたものであります。家屋の建築、移転というような、これは都市に多く行われるものであります。住宅政策の問題なども都市にある問題でございますが、これを警察費の行方と関連して研究すべきものじやないかと思つております。不動産取得税という新税をどうするかという問題になつて来ます。そこで又問題になりますのは、新築家屋につきましては、知事がその家屋の評価をする、古い従来建つている家屋の移転のときには、その市町村の市町村長のきめたのでやつて行くというような工合になりまして協力体制で府県、市町村、これ又最初私が申しましたように府県、市町村が努力していろいろなさる協力体制は大いに強化いたしますが、納税者にいたしますと、府県から来られ、市町村から来られ応接にいとまなし。自分のほうの不動産というものは一体どちらに行くのだということになつて参りまして、この点につきまして、やはり税務行政の簡素化ということが、これは必要ではないかというふうに思つております。
 只今申しました以外におきまして、この大体の方向としては、私は地方税制の改正は、地方制度調査会の答申を尊重してありまして、大体の方向としてはいいと思つておりますが、個々の点につきまして、只今申しましたように注文があります。それから又どうも物足りないところがある、もう一歩進めて頂きたいというふうに考えております。
 それから最後に結論でありまするが、地方財政と申しまするのは、やはり地方行政の女房役になつておるわけでありますから、地方行政がどうなるかということが、これが相当大事な問題であります、只今でも……。警察費の問題と義務教育費の問題、教育委員会をどうするかというふうの問題と関連いたします。それで又府県をどう見るか、完全自治体というものを市町村と府県と両方、例えば私が京都市民で、京都府民で、日本国民という三重人格で行くべきものかどうか。その辺のところに相当問題が残されておるものだと考えておるのでございます。それで、そういうふうで行政と関連はありますけれども、行政機構の問題はどちらかというと自治体、地方公共団体とか、国のほうの立場から見ることでございますが、併し行政機構も国民のための行政機構であります。国民の租税負抑と密接に関係するものでありますから、国民の租税負担と、即ち地方税、地方財政の立場からその理想的な至れり尽せりの協力体制の行政機構も結構でありますけれども、何分にも貧乏な日本でありますから、日本の我々の国情に合つた程度の行政機構を作つて行くのがいいんじやないか。とにかく地方税、地方財政の問題は、地方行政機構と密接なる関係がありまして、鶏が卵を生むか、卵が鶏を生むか、その両方とも、卵と鶏と協力してやるべき問題じやないかというふうに考えております。
 お約束の時間も尽きましたので、全体として申しますと、今度の地方財政、地方税制の改革は、大体として都合よく行つている。併し、どうももう一つ食い足らん点がある。もつと尊重して頂いたらどうかと、いささか食い荒しの気味があるという点と、それから地方公共団体の行政を担当される人の立場は十分これで組入れられておりますが、これを負担する国民の立場、それから例えば再評価の問題とか、それからいろいろ今日本の経済の置かれている国際収支の問題とか、いろいろの問題と関連して扱うべき点が食い足らんという国策、それから納税者というところと、地方自治をどういうふうに調和するかというところに一段の工夫があつて然るべきでないかというふうに考えております。
#4
○委員長(青木一男君) 汐見公述人に対して質問のおありのかたはお述べを願います。
 別に質問ないようでありますから、どうも有難うございました。
  ―――――――――――――
#5
○委員長(青木一男君) 次は大内助教授お願いいたします。
#6
○公述人(大内力君) 私大内です。今日は主として今度の予算が農村にどういう影響を及ぼすかということを中心にして少し申上げてみたいと思うのであります。その問題に入ります前に、予算全体が持つております問題につきまして、二、三の疑問な点があるのじやないか、こう考えられますので、先ずその点を申上げまして、それから農村との関係というような問題に移つて行きたいと思います。
 で、予算全体の問題点と申しますと、御承知のように、政府は今度の予算は非常な緊縮予算である、いわゆるデフレ予算であるとこういうふうに言つているわけであります。併しこの点に実は疑問があると思うのであります。本当に考えますと、この予算は昨年度に比べますと、或いは二十八年度に比べますと、かなりの膨脹予算になつているのじやないか、こういうふうに考えられるので、あります。で、それは又幾つかの点が問題になるわけでありますが、先ず第一に考えられますことは、成るほど今度の予算は一般会計だけで申しますと、九千九百九十五億ということでありまして、二十八年度の一兆二百七十二億円よりも若干少くなつている。こう言つていいわけでありまして、一般会計だけで言えで、一応緊縮予算のように見えるのでありますが、併し特別会計まで含めまして、いわゆる予算の純計というものを見ますと、二十八年度の歳出純計は二兆四十億であつたのでありまして、二十九年度の歳出純計は二兆五百三十億になるわけでありますから、約五百億円膨脹している、こういうことになるわけであります。
 それから第二の点でありますが、仮に一般会計だけに問題を限りましても、さつき申しました二十八年度の一兆二百七十二億円、こういうのは実は追加予算まで含めまして、昨年度は二回追加予算があつたのでありますが、その二回の追加予算を含めました最終予算の抜字であります。そこで二十八年度の当初予算をとりますとそれは九千六百、五十五億円だつたわけでありますが、二十九年度の当初予算よりは三百四十億円少なかつたと、こういうわけであります。そこで二十九年度の予算が果して緊縮財政であるかどうかということは、今後追加予算が細まれないかどうか、こういうことにかかつておるわけでありまして、若し追加予算が組まれるということになれば、二十八年度よりも相当の膨脹予算になる、こう考えなければならないと思うのであります。
 そこで問題は、追加予算が組まれないかどうかと、こういうことでありますが、この点につきましては、私はむしろ見通しは悲観的ではないかというふうに思うのであります。というのは、第一には、終戦以来今日まで、日本の財政は追加予算を組まないでやれたことが一度もないのでありまして、いつでも追加予算を組んで来ているわけでありますので、それが今年だけ追加予算を組まないでやれると、こういうことはどう考えても楽観に過ぎやしないか、こういう気がするわけであります。御承知の通り今の日本の経済は、全体として非常に安定性を欠いているわけでありまして、例えば一度台風でも来れば、すぐにその救済のための支出が必要になつて来ます。或いはこの不況が多少でも深刻になれば、それを救済するための手を打たなければならない、こういうことになります。或いは国際政局が働くというようなことによつても、非常に日本の経済は影響を受けるわけでありまして、例えば世界的に平和の傾向が強くなりまして、そして各国の軍備拡張というものがとまるというようなことになりますと、恐らくは相当な不況が日本に来る。そこで今でさえ困難な日本の輸出が一層困難になる。こういうような問題も考えられるのでありますが、そうなりますと、例えば輸出奨励費とか、或いは二重価格制度のようなものが要求されるわけでありまして、そういう点からも又予算が膨脹する、こういうことも考えておかなければならないと思います。そういういろいろな条件を考えますと、追加予算を組まないでこれからやつて行けるという見通しはかなり困難ではないか、こういう気がするわけであります。
 それからもう一つの点は、この追加予算を組まないというようなふうに政府が言う場合には、御承知の通り今後において物価が一割乃至二割下るであろう、こういうことを一応の前提として追加予算を組まない、こういうことを言つていると思うのであります。ところがこの点に関しましても相当問題が残つているわけでありまして、御承知の通りこの四月から予定通り行けば、運賃や電気料金が上ると言われております。それから例えば輸入規制が強められるということによつて砂糖とか或いは木綿とか、或いは羊毛のような輸入品が相当値上りをするということも予想されるのであります。或いは又昨年の不作の影響を受けまして、少くとも闇米は今後相当上るであろうという予想も持たれるわけでありまして、一般的に言えば値上りの傾向というものがかなり強いというふうに考えられるわけであります。それに対して政府は財政の緊縮、それから金融の引締めによつて物価の引下げを図ろうというわけでありますが、財政の点についても問題が残つているということはあとで申上げますが、金融の引締めのほうで物価を下げるということは、私は実際問題として非常に困難であろうと思います。金融を引締めて参りまして、そのために多くの企業が破綻を来たす、こういうようなところまで行けば、どうしても金融を緩めざるを得なくなります。こう考えられますし、逆にいろいろな救済貸出というような形で金融が膨脹するということが考えられる。従つて金融の引締めによつて物価を下げるということは相当困難であろうと、こう思われるのであります。そういうことで、いろいろな条件を考え併せますと、今後の物価の見通しとしては、せいぞれ横這いと考えていいのじやないか、悪くいたしますと、多少値上り傾向が出て来る、こういうふうにも考えられるのであります。いずれにせよ、物価が一、二割下るということを前提とすることは、予算の組み方としては私は相当問題を残すのではないか、こう思うのであります。
 それから第三の問題といたしましては、御承知のように今度の予算におきましては、従来平衡交付金で処理されておりました地方財政への交付金というものが特別会計に追出されているわけであります。この特別会計の地方財政への交付金は全体として千四百八十七億円でありますが、そのうちで千二百九十五億円だけは一般会計からの繰入れでありますから、これは一応別といたしまして、残りの百九十二億円というものは本来は一般会計に計上さるべきものが特別会計として外に出されている、こういうものに過ぎないのであります。そこでこれを一般会計に合せて考えますと、一般会計の総額は一兆百八十七億円、こういうことになるのでありまして、二十八年度の最終予算に比べましても僅かに八十五億円下廻つておるに過ぎないと、こういうことになるわけでありまして、決して政府の言うほどの緊縮予算ではないということがわかつて来ると思うのであります。そこでむしろこの予算は膨脹予算だと言つたほうがいいのでありまして、それを例えば国民所得との対比という点から考えましても、二十八年度の一般会計予算というものは、国民所得に対しまして一七・三%でありますが、政府の予算通りで計算いたしますと、二十九年度は一応一六・七%に下る、こういうことになつております。で、併し実際は今申しました地方財政交付金の分まで合せて考えますと、実際の国民所得に対する比率というものは一七%になるわけでありまして、昨年度より下つているとは言えないのであります。更にこれを純計のほうで計算いたしますと、二十八年度が国民所得の三三・七%であつたのが二十九年度は三四・三%というふうに膨脹をしている。こういうことがわかつて来るのでありまして、やはり全体としては予算の規模が相当大きくなつていると、こう考えていいと思うのであります。ところでこういうふうに全体としてこの予算の規模が大きくなつているということはどういう結果を生むかと申しますと、先ず直接的な結果といたしましては租税負担がそれによつて増大するということが考えられるのであります。で、それは特に今度の予算は御承知の通り昨年と違いまして、二十八年度と違いまして公債の発行を殆んど行なつておりません。又資金運用部やその他の所有公債の売却ということも見込んでいないわけでありますから、従つて財政の膨脹はすぐに租税負担のほうにはね返つて来る、こういう形になつている、こう言つていいと思うのであります。この租税負担という点になれば、国税だけでなくて地方税も問題になるわけであります。先ず国税だけを見ますと、二十九年度の国税は九千二百十五億円、これは専売益金とそれから入場税を含めてでありますが、それを含めまして九千二百十五億円であります。で、二十八年度の九千七士五億円に比べますと甘四十億円の膨脹だということになるのであります。又、これを二十八年度の当初予算と比べますと、当初予算では八千五百七十億円だつたのでありますから、実に六百四十五億円の租税の膨脹になつていると、こういうわけであります。
 そこで国民所得との比率から申しましても、二十八年度の当初予算は一四・四%、それから最終予算が一五・三%でありますが、二十九年度の予算は一五・四%になります。当初予算に比べれば無論のことでありますが、最終予算に比べても国税負担が更に膨脹しておる、こういうことになるわけであります。更にこれに地方税を加えますと、地方税は二十八年度におきましては三千百二億円だつたのでありますが、二十九年度は三千四百七十四億円、三百七十二億円増加をする、こういうことになつております。そこで国税と合せて考えますと、租税負担の総額は五百十二億円殖える、こういうことになるわけでありまして、全体の租税の負担率は二〇・五%という二十八年度の牧字から二一・二%というふうに一%くらい増加する、こういうことになるわけであります。これを更に二十八年度の当初予算と比べてみますと、二十八年度の当初予算の地方税は三千四十八億円であるわけでありますから、二十八年度とこれを比べますとというと二十九年度は一千七十一億円の租税負担の増大だということになります。負担率のほうから申しますと一九・六%から二一・二%に殖える、約二%くらい増大する、こういうことになるわけであります。こういうわけで全体としてこの財政が膨脹し、そうして国民の租税負担が増大する、こういう問題を今度の予算が孕んでおる。こういうことに先ず予算全体の問題として御注意されなければならないのではないか、こう思うわけであります。
 さて、次に経費のほうに我々の目を移しまして考えてみますと、この経費の面で御承知の通り今度の予算におきましては、いわゆる国防費関係の経費というものが相当な膨脹を遂げておる、こう申していいわけであります。国防費関係の経費と申しますのは、普通は防衛支出金、それから保安庁経費、それから軍人恩給というものを合せるわけでありますが、それを合せてみますと二千十一億円になるわけであります。二十八年度に比べまして三百二十八億円の脹膨、こういうことになります。そうしてこれを一般会計歳出全体との比率をとりましても、二十八年度は一六・四%でありましたが、今度は二〇・一%というふうに約四%くらい国防費が膨脹する、こういうことになります。更にこの狭義の意味の国防費に平和回復善後処理費、それから連合国財産補償費、こういうものを加えまして、それを一般会計歳出全体から差引きまして、いわゆる固有の意味における内政費というものを計算してみますと、二十八年度の内政費が八千五百五十五億円でありましたのが、二十九年度は七千八百九億円、こういうふうに、内政費は逆に縮小しておる、こういうことがわかつて来るわけであります。この七千八百九億円という数字は、二十八年度当初予算と比べましても、その内政費は七千八百六十七億円でありますから、二十八年度の当初予算よりもなお内政費が貧弱になつておる、こう言つていいわけであります。而もこの二十八年度一ぱいで、卸売物価指数を見ますると、卸売物価指数が約四%騰貴しております。従つて二十九年度の七千八百九億円、この内政費は物価指数で修正をいたしますと、二十八年度に画してみれば約七千五百億円、こういうことになるわけでありますから、全体として政府の国民に対するサービスというものは、やがて一割くらいは本年度は小さくなる、こういうふうに考えておかなければならないと思うのであります。そこで、そういうふうに内政費が全体として小さくなつておるわけでありますが、その内政費の小さくなつたしわがどこに寄つておるか、こういうことを検討してみますと、先ず口に付くのは公共事業費、それから食糧増産対策費というものが百四十一億円減つておる。それから出資及び投資金というものが二百三十九億円、それから輸入食糧価格調整補給金が二百十億円減つております。この三つが非常に目立つ減少でありますが、更にそれに続きまして、食糧管理費というものが五十六億円減つております。それから文教施設費というのが十三億円減つております。こういうような経費が非常に減つておる。こういうことに我々は非常に注意しておく必要があると思うのであります。
 それからもう一つ、地方財政との関係でありますが、地方財政に対する平衡交付金は、今度の入場税の分まで入れますと、一応九十二億円殖えておる、こういう形になつております。併し他方におきましては、地方債の起債の枠というものが二十八年度に比べますと百四十三億円削られております。従つて地方財政に国から入る金というものは差引きいたしますと五十億円ぐらい減少する。こういう計算になつて来るわけでありまして、この点も一つ注意しておく必要があるわけであります。ところで、以上申しましたような縮小している経費というものは、いずれも農村にとりましては相当重大な関係を持つておる経費だと、こう言つていいと思うわけであります。そこでその点を多少立入つて考えてみますと、先ず公共事業費がかなり大幅に削られておりますが、公共事業費の中で特に削られておるのは、災害復旧費が百四十三億円削られております。それから冷害救農土木事業関係というのが約四十億円、これは総額削られておるわけであります。それからそれに対しまして、治山治水と呼ばれるものが三十三億円殖えておる、道路港湾が三億円殖えている、こういう形になつております。それから食糧増産対策費のほうは全体として六億円の増加になつている、こういう形になつております。ところでこの災害復旧が今申しましたように百四十三億円も削られているというわけでありますが、この削られている理由は、この予算の説明を見ますと、昨年は御承知の通り異常な災害の年であつた、そのために災害復旧費が特に嵩んだのだから、そこで今年はもつと削ろうと、こういうことらしいのであります。併しこれはかなり疑問でありまして、先ず昭和二十一年以来昭和二十七年までの七年間というものの災害がどのくらいになつているかということを計算いたしますと、その復旧所要額というものは総額で約六千三百億円ぐらいになつている。一年平均にいたしまして約九百十億円というのが災害復旧所要額として出て来るわけであります。これは二十七年の物価水準で計算しておりますから、これを現在の物価水準に直しますと、大体一千億円と大まかには考えていいと思います。そこでこの一千億円の災害復旧所要額のうちの約七割を国が負担する、こういうふうに考えますと、国の予算の立て方といたしましては、年々七百億円は災害復旧費として恒常的に見込んで行く、こういうことが必要なわけであります。これが過去七年間の実績に照らし合せまして動かすことのできない数字であると、こう言つていいと思うのであります。ところがこれまでも災害復旧費が十分に出されていなかつたのですから、そこでだんだんとこの工事が繰延べされて来ている、こういうふうになつておりまして、この繰延額が二十七年度で千七百八十億円に達しております。で、この千七百八十億円の中で国が負担しなければならない分は千二百九十二億円、こういうわけであります。これに更に二十八年度の災害のまだ工事が片付いていない分というものを合せますと、恐らくは二千億を大分超えるのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。そこでこの二千億円の工事繰延べの部分というものを仮に今後五カ年間で片付けるということにいたしますと、どうしても年々四百億円乃至五百億円ぐらいの経費が必要だと、こういうふうになる。そこで災害復旧費が全体としては千二百億円ぐらいの枠を取つて置かなければならない、こういうことになるのではないか、こう考えるのであります。それに対しまして今度の予算に計上されておりますのは五百二十三億円ですから、大体必要額の半分にも達していない、こういうわけでありまして、これでは如何に公共事業費を効果的に使う、冗費の節約をする、こういうことを考えましても、むしろ国土の荒廃の進むほうが早くて、回復するほうが遥かに遅いのではないか、こういうことが恐れられるわけであります。他方でこの治山治水がさつき申しましたように三十三億円ばかり殖えておりますが、その殖えたごときものは殆んど問題にならないのではないか、こう考えられるわけであります。ところでこういうふうにして公共事業費が減少して、国土の荒廃が進むということは、言うまでもなく農業生産にとつては非常に重大な悪影響を及ぼすと、こう言つていいわけですが、更にこの問題は農村にとつて考えますと、そういう国土が荒廃するという問題だけでなくて、それ以外に更に二つの重要な点があると思います。その第一は、こういうこの国が負担する公共事業費というものが削減されますと、どうしてもそれだけ、しわが地方財政のほうに寄つてくる、こういう問題でありまして、事業をやるために地方財政がそれだけ膨脹をせざるを得ない。そのことが今度は地方税の負担増加、こういう形で撥ね返つてくるのではないか、こういう問題が一つ考えられます。それからもう一つはこの公共事業費の中の約半分は労務費でありますが、この労務費の又七〇%乃至八〇%は農村の労務者を雇用するために使われていた。こういつていいわけであります。そこでこの公共事業費というものは、農村にとりましては相当大きな兼業収入の源泉になつていたのでありますが、これが削られるということになりますと、農村の兼業収入は相当な打撃を受けるであろう、こういうことが考えられるわけであります。而も最近の農家経済を御覧になりますと、御承知の通り農業からの収入或いは農業からの所得というものでは、到底家計を維持できないのでありまして大体二町五段くらいまでの農家は農業だけの収入では家計を維持できない。こういう形になつているわけであります。そうしてその足りない部分を殆んど労賃収入により兼業収入によつて補つておりますから、この兼業収入が減るということは農家経済にとつては相当大きな打撃であろう、こう考えられます。これに併せて考えなければならないことは、先ほどちよつと申しました冷害救農土木事業費というものの四十億が全額削られていると、こういうことであります。この冷害救農土木費は昨年の冷害のためでありますから、これを削つたということは一応わからないではないのでありますが、併しよく考えてみますと、殊に冷害をひどく受けました単作地帯におきましては、実際農家として金が入つて参りますのは今年の十二月頃、供米が終つたときに初めて金が入つて来るわけでありまして、それまでの間はどうしてもほかの現金収入で繋がなければならない。こう言つていいわけであります。それをこの冷害救農土木費を削りまして三月で支出を終つてしまう、こういうことになりますと四月以降農家にとりましては現金収入源が絶たれるのでありましてこれが又農家の経済にとつては相当大きな影響を及ぼすのではないかと、こう考えられます。それから次の問題は増産対策費でありますが、これは先ほど申しましたように一応六億円殖えた、こういう形になつております。併し他方では出資及び投資というものが先ほど申しましたように大幅に削られておりましてその中でも農林漁業公庫というものに対する出資及び投資が百十一億円も削減されている、こういうことになるのであります。そこでこの農林漁業公庫の貸出は、二十八年度の二百六十六億円に対しまして二十九年度は二百二十五億円というふうに、四十一億円も減少をする、こういうことになるわけであります。その中の土地改良に対する貸出だけをとりましても、大体七億円減少する、こういう形になつております。そこでこの出資、投資まで併せました増産対策費というものを考えますと、これは二十八年度よりも減ることはあつても殖えることはない、こう言つていいわけなんであります。ところでこの増産対策費というのは、昨年のこの公聴会でも申上げたと思いますが、大体農林省の五カ年計画にこれを突合わして見ますと、昨年度の予算におきましても大体必要額の半分ぐらいしか予算の裏付ができていない、こういう形になつていたのであります。今年はそれが更に減るわけでありますから、実は予算の裏付は必要額の半分以下になつていると、こう言わなければならないわけであります。こういうこの貧弱な経費では、到底増産効果というものを十分見込むわけには行かないのでありまして、この程度の費用でありますと、大体は一年間に百万石ぐらいの増産しか見込めないだろう、こう言われております。ところが百万石と申しますのは、他方におきましては耕地が全然潰廃され或いは施設が老朽化する、こういうことによつて収穫の減少が見込まれるわけでありましてこの収穫の減少が大体年々百万石だと、こういうふうに言われておりますから、結局はその減少分を埋め合わせる程度の増産が行われるということに止まるわけであります。ところが他方におきましては人口の増加によりまして消費量は当然殖えると、こういうことになるわけでありますから、この程度の増産経費というものでは、日本の食糧事情はむしろますます輸入に依存する部分が殖えると、こういうことになるわけでありまして決して食糧自給態勢が強化されるということにはならない、こう考えられるわけであります。なおこの増産対策費につきましては、先ほどの公共事業と同じように、これは一方におきましては農家の現金収入の源泉にもなつておるのでありますから、その点からいつても、これが削られるということは相当大きな問題ではないか、こう思うのであります。
 それからその次の出資及び投資金の削減でありますが、この中で農林漁業公庫のことは先ほど申上げましたから、それを除いて考えますと、問題になりますものは石炭とか鉄鋼とか機械とか肥料とか、こういうようないわゆるこの基礎産業に対します開発銀行からの融資というものが、これの削減によつて大体百二十五億円ぐらい減少するという形になつておるということであります。こういうことは何と申しましても基礎産業の合理化というものを停滞させる、こういう虞れを持つておるわけであります。更にこの開発銀行からの融資が減少するだけのものが、普通の銀行からの融資に振替えられる、こういうことも考えられるわけであります。若しそういう方向に進んで行くということになりますと、当然一方ではこの銀行融資が膨れ上るわけでありまして、それが又日銀の貸出を膨脹させてインフレを促進する、こういう効果を生むことも恐れられるわけであります。他方では普通銀行の貸出は、どうしてもそれだけ利子が高くなるわけでありますから、従つて例えば日本の商品の輸出力の増大というような点から言えば、却つて悪影響を及ぼすであろう、こう考えられるのであります。又将来の物価の動向から申しましても、物価の引下げをそれだけ困難にする、こういう条件をもたらすのではないか、こう考えられるのであります。更にこういう融資によりまして、普通銀行の金融が困難になつて参りますと、そのしわは当然中小企業のほうに寄つて来る、こういうことになるわけでありますから、仮に今度の予算で中小企業金融公庫の貸出は六十億円ぐらい殖えておりますが、それだけでは到底及ばなくて、中小企業が非常な金詰りに襲われる、こういうことになるのではないか、こう考えられるわけであります。
 それから次の問題は食糧輸入補給金の削減、こういうことでありますが、これはさつき申しましたように約二百十億円減少しております。これを減少させた理由というものは、予算の説明によりますと、先ず第一には米の輸入量を二十八年度には百四十六万トンでありましたものを百十五万トンに減らそう、こういうことを前提としているようであります。ところが御承知の通り昨年の産米というものは非常な凶作であつたわけでありまして、全体としての生産額は一昨年の産米に比べますと約一千百二十万石減少しております。又供出量のほうから申しましても、現在の供出量は千九百四十万石でありますから、昨年度に比べます。と八戸万石余り減少しておる、こういうことになるわけであります。こういうふうに生産量もそれから供出量も減つておるにもかかわらず、この食糧の輸入を今申しましたように約三十一万トン減らす、石に直しますと大体二百万石減らす、こういうことになるわけでありますから、全体として米の需給関係から申しますと約一千万石の穴があく、こういうことになるわけであります。一千万石という大きな穴があけば、これはどうしても米食率を切下げるという以外には方法がない、こういうことになるわけであります。この米食率を切下げるということは、当然米の闇価格を引上げる、こういうことを意味するわけでありまして、これは消費者一般、或いは更に農村におきましても、零細な農家は御承知の通り米を買つておるわけであります。今年は米を買う農家が非常に殖えておりますが、こういう農家に対しましても非常に大きな打撃になるだろう、こう考えられるわけであります。それからもう一つこの食糧輸入補給金の削減の理由は、小麦を八十四ドルで輸入する、こういうことを前提としております。そうして八十四ドルで輸入いたしました小麦を九十七ドルで消費者に販売いたしましてそうしてそれによつて総額二十七億円の利益を政府が得る。この利益を見込んだために食糧輸入補給金をそれだけ削減することができる、こういう形になつておるわけであります。併しこの点も私は問題だと思うのでありまして、若し仮に八十四ドルで小麦を輸入することができるならば、消費者に対しては八十四ドルでそれを配給したらいいのじやないか、こう思うのであります。というのは何故かと申しますと、御承知の通り闇米が上つたのに引ずられまして、うどんにいたしましてもパンにいたしましても相当の値上りを最近示しているわけであります。このままで参りますと、国民の食生活というものは非常に脅かされるということになつているわけであります。これを防ぎますためのはいろいろな方法が考えられますが、先ず何よりも原麦を安く政府が卸すということが必要なのでありまして、そういう意味で安く輸入したものを高く国民に売つて政府が儲けるという計算の仕方は、私はどうしても辻棲が合わないのではないか、こういう感じを持つものであります。
 それからこの食糧輸入補給金を関連いたしましてもう一つ問題になりますのは、先ほど申しました食管経費が五十六億円削減されている、こういう問題であります。この五十六億円は御承知の通り食管経費に穴があきまして、その食管会計の赤字を補填するために支出したものであります。政府の計算によりますと、一応二十九年度におきましては食管会計は赤字が出ない。従つて一般会計からの繰入は必要ない、こういうふうに計算がされておるわけであります。併しこの食管会計に赤字が出ない、こういう政府の計算は、私の見るところではどうしても不合理だと思うのであります。と申しますのは、この食管経費の計算の基礎になつております二十九年産米の予算米価というものを見ますと、それは一石八千七百九十五円、こういう計算をしております。これはちなみに超過供出奨励金とそれから供出完遂奨励金を含んでおりまして、早場米奨励金だけを含まない牧字でありますが、それが八千七百九十五円になつているわけであります。ところが昨年の、二十八年の産米で計算いたしますと、平均米価は大体一万二百二十八円ということになります。この一万二百二十八円から早場米の奨励金六百四円というものを差引きまして、それからもう一つ昨年度の特殊事情だつた減収加算額五百円というものを差引きますと、全体として残りますのは九千百二十四円、こういうことになるわけでありまして二十九年度の予算米価の八千七百九十五円よりも高い水準というものが出て来るわけであります。そうなりますと、この政府の計算の仕方は、結局今年の秋の産米に対しては、生産者価格を切下げるということを前提として予算が組まれている、こういうふうに考えられるわけであります。
 ところでほかの物価が一般に下るならば生産者米価が下る、こういうことを前提とすることは差支えないのでありますが、先ほど申上げましたように、ほかの物価が下るという見通しがないのに生産者米価だけを切下げて、而も食管会計は赤字が出ない、こういう計算をするのはどうしても私は不合理じやないか、こう思うのであります。
 それからもう一つ問題になりますのは、御承知の通りこれまで食管会計というものは、年々相当の赤字を出して来ております。それが大体今までは含み資産の食い潰し、こういう形で埋合せられて来たわけであります。この食管会計の含み資産は二十七年度の初めにおきましては約四百五十五億円あつた、こういうふうに言われております。それが二十八年度の末には大体十億円前後になつているわけでありまして、この間二年間で大体四百五十億円近くのものを食い潰した、こういう形になつているわけであります。而もこの二十八年度の十億円の含み資産というものは、今後二十八年産米に対しまして、減収加算額の追加払いをいたしますと、全部なくなつて、なお赤字が出る。こういうふうに言われておるわけでありまして、この点を考慮に入れますと、いよいよ食管会計がバランスがとれる、こういう議論は私には疑問ではないか、こう思われるわけであります。そうしてこういうふうに、この食管会計の予算が詰つて参りますと、ここにはいろいろな問題が出て参りますが、一つは今申しましたように、生産者価格を切下げるということを考えざるを得なくなつて来る。こういうことにもなりますし、若しそれをやらないとすれば、逆に消費者米価を引上げる、こういうことを考えなければならない。こういうことになるのじやないか、こう思いますが、なおそのほかにこの食管経費におきましては、御承知の通り農産物価格安定法というものによりまして、澱粉、それから切り干甘薯、菜種、こういうものを買入れをして、価格の維持をする、こういうことをやつております。これが今でさえ予算がないために実は有名無実に終つておるのでありまして、十分に機能を果していない。食管会計で詰つて参りますと、いよいよその楽ひどくなつて来るのではないか、こういうことが心配されるわけであります。
 それから最後に文教施設費が削減されているということを先ほど申したのでありますが、これは直接農業には関係ないようでありますが、御承知の通り農村の財政におきましては、教育費が占むる比率というものは、非常に大きいのであります。そこでこういう文教施設費のようなものが削減されますと、どうしてもそのしわは地方財政に強く寄る、こういう形になりまして、地方税の膨脹を惹起すという、こういう危険性がかなり大きいのであります。殊にさつき申しましたように、国の地方財政に対する交付金というものは、地方債の部分まで含めて考えますとかなり減つているわけであります。それが減つたにもかかわらず、地方財政のほうは膨脹する勢いが非常に強いわけでありますから、ここに相当大きな矛盾が出て来るのではないか、こう考えられるのであります。ここにも一つの問題点があるのではないか、こう考えられるのであります。
 さて、この経費の問題は、一応農村関係としてはそういう点に問題があるのではないかと思いますが、最後に収入の面のほうを簡単に申上げておきたいと思います。収入の面で問題になりますのは言うまでもなく租税でありますが、その租税全体は先ほど申しましたように、かなり膨脹すると」うことを申したのでありますが、今度はその膨脹する租税が各税種に対してどういうふうに割振りされているか、こういうことを見ますと、この租税負担が増大するという問題は一層重大であるということがわかつて来るのではないか、こう思うのであります。今度の予算では、政府は税法改正をするということを前提としておりますが、その税法改正によつて減る税はどういうものであるかと申しますと、所得税が二百七十五億円、法人税が十九億円、再評価税が二十四億円減るわけであります。それに対しまして殖える税はどういう税かと申しますと繊維消費税が八十五億円、それから砂糖消費税が五十七億円、印紙が五十五億円、酒税が三十七億円、揮発油税が三十一億円、物品税が十億円、こういうのであります。そのほかに専売益金でありますが、専売益金は国の収入としては一応二百四億円減るわけでありますが、御承知の通り地方税としてたばこ消費税ができますので、その分まで併せて考えますと八十八億円増加すると、こういう計算になるわけであります。そこで全体の締折りをいたしますと、直接税は三百二十一億円減るわけでありまして、これに対しまして間接税と流通税が三百六十五億円殖える、こういう計算になるわけであります。ところでこの直接税、殊にその中の所得税でありますが、所得税は御承知の通り今日では最も合理的な税であると言われております。その理由は、一つは累進課税であるということと、もう一つは扶養家族とか、或いはその他のいろいろな個人的な事情を考慮して課税をすることができる、こういう意味で所得税が最も合理的な税であるということは一般に広く認められている事実だと思うのでありますが、それが相当減ります。それに対しまして間接税が殖えるわけでありますが、この間接税になりますと、この負担がいわゆる逆進的になり、小所得者に重課される傾向を持つている、こういうことは申上げるまでもなくアダム・スミス以来言いふるされている事実なのであります。従つてこういう税法の改正というものは、結局におきまして小所得者にかなりの租税の負担を背負わせる、こういう形になるのではないかと思いますが、この点も相当大きな問題がありはしないか、こう思うのであります。併しもう一つそれに附加えまして、さつき申しましたように地方税がかなり殖える、こういう問題が加つて来るわけであります。而もこの地方税は政府の計画でもかなり殖えるわけでありますが、さつき申しましたようないろいろな理由から実際は政府の計画以上に地方税が殖える、こういうことが考えられるのではないか、こう思うのであります。ところでそういうふうに地方税が殖えるという場合には御承知の通り概して財政が貧弱な農業県、或いは農村というとこるにおきまして地方税の増税がより著しく現われる、そうして租税負担の不均衡を拡大する、こういう形になることは御承知の通りであります。而も今度の地方税の体系というものを考えますと、特に農村にとりましてはかなりの問題があるというのは、今まで農村のかなり有力な財源でありました村民締が一部分県民税に移されるということになつて、この収入が減るわけであります。そこでその穴があいた部分は結局固定資産税の引上げと、それからそれ以外に法定外独立税の設置ということによつて埋め合わされる以外には方法がないのではないか、こう考えられます。固定資産税は法律の上では一応御率は引下げられる、こういうことにたつておりますが、実際はこの評価が畑当問題でありまして、これがすでに今でさえかなりアンバランスになつている。財政が窮乏して来れば、農村では評価額を高めまして、それによつて税収入を上げよう、こういうような方法がかなりとられておりますが、こういう傾向いよいよ強められるのではないか、こう考えられるわけであります。そうなりますと、こういう固定資産税とか或いはそのほかのこまごまといたしました法定外独立税というようなものは中農乃至はそれ以下の農家にとりまして、は相当大きな負担になるわけであります。その点から育つてよ租税負担のしわがそういう属にかなり強く寄るのではないか、こう考えられるのであります。そこに一つ問題点があるのではないか、こう思うわけであります。
 以上いろいろ今度の予算を拝見いたしまして考えられる諸点、殊に農村経済にどういう影響を及ぼすか、こういうようなことを幾つか申上げたのであります。これからの御審議の上に何ほどか御参考になれば、大変幸いだと思うのであります。(拍手)
#7
○委員長(青木一男君) 只今の公述に対して質問のあるかたはお述べを願います。それでは有難うございました。
 暫時休憩いたしまして、午後一時再開いたします。
   午前十一時四十八分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時三十二分開会
#8
○委員長(青木一男君) 休憩前に引続き公聴会を開きます。
 公述人の方はお忙しいところ有難うございます。
 原安三郎君どうぞお願いします。
#9
○公述人(原安三郎君) 予算の説明書というプリントをお届け願いましたけれども、非常に広汎なもので、これを一々やりますと、与えられた時間三十分では少しむずかしいと思いますので、私の関係を持つておりまする経済上の観点を基礎としてこの予算についての考えを申上げたいと思います。
 これの総説、いわゆる総論というようなものを拝見しますと、これに一々我々の申上げたい点が一般論としてたくさんございますけれども、それは時間があれば申上げることにいたしまして、取りあえずこの財政投融資の面から申上げたいと思います。
 これについては総説のところで、財政投融資は従来のものが非常に不急のもの、又は不要のもの、過剰投資などがあつたから今度はこれは締めたい、私はこれはけしからんことで、不急不要のものがはつきりしておれば、恐らく金融業者も又政府の金融機関も、政府資金を使つておる金融機関までかくのごときことがあつてはならんと私思うのですが、そういうことが総説として出されておりますから、そういう方面から減らされているということになつております。
 そこでこの一般会計のほうでは例の九千九百九十五億、その他二千六百五億を加えまして一兆二千六百億になつておりますが、丁度五百九十億、その点が財政投融資関係は予算面からはつきり減つておりますわけなんです。この問題について私たち事業をやつております者の立場から是非意見を述べてみたい、こう思うわけであります。
 即ちこの一般予算のほうにはつきり盛られておりますものは、財政投融資関係で、昨年の三千三百八十九億に対して五百八十四億減少して二千八百五億、こうなつておりますが、そのうちで政府資金を使つて民間の企業を創設し、又は継続せしめることになつておりまする一審大きな融資関係では開銀の資金がすぐ問題になつて参りますが、この開銀のほうへ使われております金額は追つて意見を申上げますが、先ず資金運用部のほうの金融債の引受けも二十八年度の三百億に対し二百億、この点でも又百億減つております。又総括的に申しました内訳を申上げると、財政投融資のうちの削減では一般会計で昨年度四百二十九億ございましたのが二百二十九億削減されて本年二百億になつております。その他政府関係の機関及びあらゆる面の財政投融資が減つております。
 そこで今申上げた開銀の融資関係に入つて行きたいと思いますが、開銀のほうは昨年は八百六十億という枠の中でそれぞれの重点産業を中心とした事業の経営に国家資金を頂いたわけなのでありますが、これが本年は三百五十億、即ち一応はつきりしておる政府から頂くほうは三百五十億、そのうち資金運用部から二百七十五億、産業投資会計から七十五億、ところが開銀が今後その上に使える金は、いつ頃一体開銀が予算を出したものかわかりませんが、開銀自身が元金の返済を受けるものが二百四十億、利息の収入が六十億で三百億、この三百億と今の三百五十億を加えまして六百五十億が、二十九年度の開銀の政府資金として民間の事業に融資される、こういうことになつておるわけであります。これは今の八百六十億と比べますと二割四分減少しておるわけであります。大変これは大きな問題なんであります。
 これをもう少し分析して見ますと、そう細かいことはまだ決定しておりませんが、電力で三百五十億、海運で百八十五億、残りは約百十五億が一般の石炭、鉄鋼、合成繊維又は硫安、その他百般の事業に融資されるということになつております。これを少し詳しく見ますと、電力のほうでは二十八年度に比べまして二十九年度は約一二%減、又海運のほうは一六%、これは四%ほど電力よりも融資金額が減る予定になつております。さてその残りの百十五億は昨年度では二百三十億あつたのです。ですからその他産業に対しては半分になるわけです。電力のほうは一二%減、海運のほうは一六%減、これは日本産業を重点的に育成しておりますから、電力のほうも中絶ではいけませんから止むを得ないといたしましても、その他産業が石炭、鉄鋼、合成繊維、硫安その他、数にすると何百何千になるか知りませんが、これが二百三十億が百十五億、半減する。これは大変大きな問題でございまして、昨年度から継続をして本年も融資しなければならないというようなものもございますし、新らしく仕事を始めるというものは殆んどその点では国家資金の融資は得られないではないか、こういうふうに考えられます。これを簡単にただ一兆円予算を作つたために新規事業は駄目なんだ、七つくらいの言葉であつさり片付けられておる傾向を持つております。尤も不急不要、過剰投資などという観点からやれば、これは昨年度でも全部やつておつてもらわなければならんのですが、その点で相当業界は、事業界は、而も日本の経済そのものは、或いは日本と言わず、世界的に経済が中心になつて政治も外交もすべてのものが運行されておりますが、一審大切な面を切るということは如何かと思われます。その上に開銀以外に、これは長期金融機関としてほかにもありますが、二つの大きな興銀と長銀、興業銀行、これを見ますと、これは二十八年度では一応の枠は社債の募集が百三十億でありますが、二十九年度は七十五億で、これは五十五億減る、この減るほうは四二%、長銀のほうは百十五億であつたのが七十五億、これは開銀のほうでは決定しておりますが、これは三十五億減ります。これは三一%減ります。合計で昨年度二百四十億に対して本年度は百五十億で九十億これも又減る。これは民間から資金を吸収する方法もございますけれども、こういうふうな情勢になりましたら、どうしても市中銀行に資金のしわ寄せが起つて参りますので、さてこの長期信用銀行の社債が十分に資金を獲得し得られるかどうか、ここに疑いを持たざるを得ないわけであります。
 そこでこれをもう少し分析して見ますと、水力電気のほうは一応の枠は取られておりますけれども、恐らくここで二十九年度着手という四十万キロのものはさて着手ができますかどうか、昨年度から継続しておるものと、その前々から継続しておるもの、この継続のために政府資金が使われる、そうして恐らく新規事業は相当又ずれるのではないか、電力の五カ年計画は或いは六年計画になるのじやないか、こんなふうにも思われます。次に、海運のほうは三十万トン計画をいたしておりましたが、今年度百八十五億が百五十億で、恐らく二十万トンか二十三万トンということになつて、運輸四カ年計画を立てておりますが、このほうも一年ずれて五年計画になる。恐らく船台の、即ち船をこしらえます造船台の空くものもできましようし、殊に中小企業ともいわれるべき造船台が相当ある、この方面は困るじやないか、こういうふうに今から杞憂でなく心配をしておるわけであります。次に石炭の問題、これは多少問題があるのです。七十九本のシヤフトを作つて、昨年から五年間ですか、その最終の年に二割五分石炭の代金を安くしようという問題であります。これは批判を要しますが、さてこの問題も今度は資金が半分に減るほうの分に入つております。これはとてもシヤフトほど、若返るといつて、従来の坑道の補修又は維持程度しか行けないのじやないか、継続事業のごときは一体どうするか、こういう心配があるわけでございます。
 今度は機械工業、機械工業は実は大問題で、皆さん御存じだと思いますが、日本の工作機械、即ち旋盤だとか或いは研磨盤というものは、戦争中に大急ぎで作つたもので古いのです。十年も十二年も古いと言つていいのですが、その後鍛造、圧延というものは新らしくなつて、これと比べてマッチしていない。これはどうしても更新しなければならんという考え方を、これは本当に必要、不急ではない、至急を要する、このために通産省では製造設備近代化事業団というものを作ろうというので、一応計画がありましたが、これが予算などが取れないので消えてしまいました。こういう方面のことも出ていたのであります。勿論自己資金でと言いますが、現在のような状態ではとても悪い品物ができるということを知りながら、やはり古い機械を使わざるを得ない、こういうことに相成つております。その次は鉄鋼です。これは五年計画で千八百億円の資金を使つて鉄鋼の増産を図られる。第二次計画は二千二百億くらい決定して、二十九年度から始めることになりましたが、このほうはちよつと手が著かん。これは少し私も批判的のところがありますから余り触れませんが、さて従来の計画の一部にこれこそ不急のものがあるのじやないかと思われますが、これはこの席で批評する限りではありませんが、半分では余り窮屈になり過ぎはしないか、こういうふうに考えております。その他農業で一番大切な化学肥料、即ち硫安の合理化或いは長期計画その他が中止ということになつてしまう。それから一番輸出の大宗をなしていると言われております各種の合成繊維の問題、これは資金の計画がうまく参りましたら、二十九年度は百六十七トンくらいの月産に持つて行こうというつもりであります。ところが今の調子では恐らく二十八年度の六十五、六万トン以上には伸びないのじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。こういうふうに産業界においてはなかなかむずかしい問題が点在しております。
 一番大きな資金を動かしております開銀の場合をいまもう少しく申上げます。開銀の自己資本の三百億のうちの二百四十億の回収、六十億の利息が入らなければ三百億になりません。それに政府から得られる三百五十億、これが八百六十億の昨年、二十八年度に対してれ二十九年度は二百十億減る。その三百億が私は不安だと思うのです。これはいろいろ金融の面が窮屈に相成りますので、この二百四十億の元金の百返金が今まで通りの予算で行くか、利息の六十億は取れるかも知れない。ところがこれも窮屈になるとも限りません。ここで若し三百億が五十億減りますと、すでに六百五十億国家資金なり開銀資金を使おうというものが、六十億減れば一割その上に又減る。こういう状態に相成りますことを恐れております。大体金融の窮屈さ、財政投融資の窮屈さが業界に及ぼす影響のうちで著しいものだけに関して申上げました。これが一体中小企業にどういう影響を及ぼすかということは、それぞれの業種によつて分析をしてみる必要がございますが、この方面に悪い影響のあるものは、この申上げました業種の下請関係、或いは一つの業種別系統をなしておる中小企業に相当の苦しみを与えるのではないか。今後の市中金融のやり方がうまく行かなければ非常に不安ではないか、こういうふうに思われます。
 次に一番大切な、政府が一枚看板にしておられまする、本年度は資本の蓄積を誘導して、そうしてそれによつて将来更にやつて行こう、こう言われるのですが、これは全体の理論として申上げますと、税制調査会の上申では七百億円の減税が見込まれておる。私たちもあの程度はできるのじやないかと、こう考えましたのですが、業界のほうも財界のほうも全部が、七百億円に対しての減税がなかつたことについて余りに声は挙げませんでした。これは一兆予算というものの性格から止むを得ないのじやないかという一つの同情であつたかも知れませんが、結局において増減税プラスマイナス四十五億ほど足りなかつた税収を、ピースを五円上げることによつて減税をなした、こういうことになりましたが、さて細かく分析をして見ますと、先ず所得税はあらゆる角度から減税されて、おります。百二十万人くらい所得税の納税者が減る、この点結構です。ただこれに代るに消費規正又は奢侈抑制というために物品税が殖やされたということが、創設されておりますが、あの創設されたのを見ましてれ中身を見ますと私は非常に遺憾に思われたのです。これはシヤウプが日本の税制改革を二十五年の八月二十五日でしたか勧告されて、それで大体その線のものが修正されて、それでまあ附加価値税のごときは廃止になりましたが、大体あの線がまだ修正されていない。修正と言うと前のが悪かつたことになるのですが、中身は日本の状態に合わないものがありますから、当然変えなければならんのですが、そのうちではどうでも即ち所得税や直接法人税主義はどうしても間接税、消費税、又は交通税、流通税主義に改めなければならんのではないかと思つております。それは所得税又は法人税は課税徴収に比較的楽です。尤もそのうちに課税に非常に不便を感ずる中小企業体のごときものもございますが、大体所得税も法人税も楽なんです。課税が楽で徴税も先ず比較的楽だという税でありますから、これ一本で行くことは税徴収上は大変結構なことでありますが、一方又ここに物を消費すること、これを消費することによつてその人の生活を上げ、文化生活或いは文化生活以上贅沢に入るかも知れませんが、そういうことを各自のディスフレーシヨンでやるという場合には、その人が余分の税金を払う。これはその意味から、直接税主義はやはり間接税主義とうまく調整して行く必要があるのではないかと、かように考えます。
 私は法人関係の点について特にいろいろな意見を述べておりますが、所得税は勿論少数の所得税負担者に蓄積の気持を持たしめなければ、貯蓄増進の考え方を持たしめなければならんということは持論でありまするが、これは止むを得ませんが、ここに物品を余計消費する、自分がその生活を向上せしめることによつて、他人よりも余分の物資を使つて、そうしてそれはりクリエーシヨンでもありませんが、先ず余計使う方面の方が安易な生活をするということになれば、当然物品税を殖やしてよろしいと思われます。物品税主義に変りつつあることも結構でありますが、本年度もその種目は大部殖えておりますが、一応反対がありましたけれども、枠を作つて繊維税なども考えておられるようです。ただ併しこの点から私考えまして、いろいろかけられるぽうの側から、課税をされる物品の製造業者、消費者からすれば一応問題はありますけれども、御自身の自制自粛でその品物を買わないでも、即ち消費規正ができるというものの物品税はもう少し殖やす。二百三十三億の物品税が本年度は僅か十億殖えておる、たつた四%であります。これは厳格に見て日本はその点では少な過ぎる。又間接税主義がぼつぼつ移行しつつあるわけです。又新らしく消費物に税金をかけようといたしますと、相当民間の御理解がなければ反対が多いわけですから、その点から実行上困ります。困りますが、これはやはり政治家として決心と断が必要であり、又国民もこういうものについての理解を持つて判断して行かなければならん。常に或る制度を変えようとする場合にはどこかに問題が起るし不便も生ずるのであります。改良進歩というものには或る場合にラッキー、アン・ラツキー、簡単な見方のラッキー、アン・ラッキーが混つて来る。こういうふうに考えられますので、恐らく物品税主義、即ち間接税主義に変えよう、物品税だけではございません、間接税というのは交通税もございましようし、流通税、物の移転に税金をかける場合もありましよう、いろいろな場合もございましようけれども、間接税主義に対する場合に人の行動によつて、余計その行為が物品の消費、又は行動に現われた場合に税をかける、こういうことで国費を負担するということに相成るわけであります。その意味から言つて、私は長々申上げましたが、是非所得税、法人税主義を、即ち直接税主義を間接税主義に変える。多少の実行当初にはディストレスがあるかも知れませんが、これは国民の理解を得てさように進めることが妥当なやり方ではないかと、こう考えます。わけです。
 今一般的なことを申上げましたわけなんですが、ここに法人税の関係を少しばかり申上げますと、法人税の関係ではいろいろな種類の、価格変動に関する問題とかいろいろな種類の改正がございまして、それによつて法人の蓄積を増やす、こういうお考えで指示されたものがございます。即ち資本の構成の是正をするとか或いは企業経営の合理化をするとか、非常に法人税に対する指示第一項のごときは、言葉は結構でございまするが、さてこの中に現われておりますことは、大した制度の変革でございませんから、蓄積などに対する刺激を非常に与えるとか或いは法人の当然或る程度の金が蓄積されて行くという、数字については一々当つて見なければわかりませんが、大きな変化はない。この際法人税という大きな千八百億以上の収入を図つておるものを減すということから、税収の減らないようにするという点から、角度から見られたものであるとか、尤もこの細かい問題の中には輸出所得に対する一部に対する税金、或いは輸出業者に対する控除限度の問題、或いは利子に対する問題とかいろいろ盛られておりますけれども、額が少いという感じがいたしますわけなんです。
 ただ最近に問題になつておりますのは第三次再評価の問題です。これは先月の予算決定した後もこの面だけ税制の確定がなくて未だにもんでおられるようでありますから、結論は得ておりませんけれども、第三次再評価は私は無税論者でございます。これは無税論者ということは、一体法人、一般人もそうですが、価格変動ということは、ただその時分の貨幣下落に対する価格をその帳面の上において合したというだけである。実際上においては何ら経済活動はないわけです。経済効果は現われていない。これに灯して百億の課税をするということは甚だ、妥当でない。単に国家が税金の必要があるからとつたという、こういう議論であればこれは別問題ですが、これは絶えず反対のできる議論であつて、私はそれを第一次再評価時代から絶えず唱えておりましたわけなんです。第一次、第二次両方ともこれは有税で百六億でありましたか、第三次は昨年から実施されておりますが、本年度に至つてこの第三次だけは税を五年も十年も延ばすといつたような極く簡単な対策であつたと思うが、最近に至つて百分の二、即ち三分の一を課税する、いろいろな条件を付けております。この条件は多少検討することを要しますが、方法は無税論に帰りました。ここで問題になりますことは、無税で付けておる条件の如何によつては強制にならんかということを心配するものであります。単純無税であれば結構ですけれども、配当金にも制限を付ける、償却に制限を付ける、資本繰入れに制限を付ける、一定の期間内に、これなどはその結果において強制したいという政府の希望の目的が達成されるや否や、こう思つております。私の第三次再評価を無税にしろと言つておりますことは、日米通商航海条約にございますように、米国の投資が日本において蓄積されて、投資されないで、本国へも持ち帰れないのがございます。これを現在の日本の旧会社に直接投下するのは妥当でないから、甚だ日本として損をする、こういうふうな広い意味から、一応一定の期間この投資を遠慮してもらいたいということになつております。そのときも業界がこれは妥当な評価を持つた回転をする、即ち資産の再評価をする、第三次再評価をするという含みがあるわけであります。これは国内問題ですから条約に載つておりませんが、これを実行する場合にこれは普遍的でなければならない。相変らず第一次、第一次と同じように、即ち企業家の自己意思のみでやつているのでは、これは再評価ということはよくできないのであります。もう一つ強制再評価を全面的にやるということの必要は、我々業種が、例えば硫安の製造業君が二十五社、砂糖の製造業者が二十二社ありました場合に、これは各社別々に財産を見なければならない。皆自分の勝手に評価している。よくあれで株式投資ができておると思われる。これは百般の会社が全部その経営者の自由意思、任意で評価されておる。限度以上になつておりませんけれども、限度以内ですが、これを揃えるということが必要なんです。これを揃えるということが、投資家がよくこういうことを問題にしないかと私は考えておつた。ここで一応全部がそういうふうにそのときの貨幣価値に揃うことができますれば、そういう面においての深い掘り下げをしないでも、各業種別のもの、又は業種の違つたものでも財産から来る評価の判断が簡明にできますわけです。もう一つはこの評価を十分にいたしますと、即ち現在の貨幣価値における価格と資本金とが大体見合うような形の会社に作る。即ち自己資金が固定資産に或いは働いておる固定資産に見合い、同時に固定的運転資金まで含むということを理想とするわけであります。さような工合になりますと資本金が殖えますから、私はここでこれを前提といたしまして、法人税を自己資金に対する三制まで二五%、その三制を超す場合は一割ごとを刻みまして、四割になればそれを五%殖やす、五割になればもう五%殖やすという、そういう累進をするわけであります。儲かつておる会社の一部にはこれに対して反対があります。その反対を中出ている会社は皆儲かり過ぎている会社であることは、これははつきりわかつております。これをなぜそうするかというと、新らしく企業が起つた場合に、その企業に対しまして四二%、これに事業税その他を加えますと五九%、併しこれは少し多きに失します。これは資本の蓄積ではない。十年、五十年と経営しておる事業と同じような程度の税金を初めて出た利益から持つて行かれるということは堪えられない。私たちが企業目論見書を作る場合、元は大体税金のごときは計上いたしません。今は企業目論見書を作るたびに、利益に応じて幾らの税金を取られるかという、現行税率によつてこれを書き込まなければ企業目論見書はできない、こういう事態に相成つております。そういう意味で、経済の基礎は株式組織による大きな企業組織の善良なる運営にあるとすれば、こういう点で配慮が必要ではないか。その意味から第三次再評価強制、同時に又一定の期間内にこれを資本に繰入れる、こういう条件でやつたら、うかということを考えておりますのがその前提なんです。
 で、丁度それに似た考え方をもう一つ申上げますと、今度の第三次再評価と連関件を持たしめているのが、これは少し無理ではありますけれども、増資に対して、増資資本分に対する配当に対しては一割までは資本損失勘定に証人してよろしいと、資本繰込の場合は五%という一定の基準条件はございますけれども、言われております。これは一つの進歩であります。これはかねてから私も考えていることです。ただ併しこれは旧会社が、すでにある会社が増資した場合だけで、私は新らしい会社が持つた場合に同じように優遇措置が必要じやないか、これは三年になつておりますが、新らしい会社の場合はできれば五年ぐらいそういう措置を減免、免でもよろしいのですが、印じて、長いのはいけないとすれば、とにかく累進的に殖やす、そうして或る程度保護して行く、これが企業を起ち上らすゆえんです。実は終戦後日本は殆んど新しい企業はないのです。古い企業を動かし廻つている。ひどいです、こんなことは。日本開闢以来ないと思います。ただ事業の拡張、こういうことばかりやつている。新しいのは何ができたかというと民間放送或いは日本航空、殆んど社会的の、そうして半独占的の事業だけができている。こういうことなんです。新事業のないということは、ここにそういうことの原因が存しているのじやないかということを憂えるものでございます。
 こういう問題を述べて参りますと、時間がもうすでに一ぱいになつておりますが、ただ一般論としてちよつと私はここにあとでちよつと付加えたいと思いましたのは、若しお許し頂ければお請いたしたいと思いますのは、実は予算説明の総則のところにございますうちで、これはまあ一番初めに必ずお読みになるわけですが、この予算を作る原因の一つでもあると思いますが、日本の物価が朝鮮動乱以後最近まで非常に上昇して、そうしてこのままでは日本の通貨の安定を得並びに国際収支の関係を整調することが、日本の国家の今、現在の大切な事案でありますが、こういうことが途絶えている。これは実は朝鮮動乱以後今日まで、動乱は一九五〇年ですから、本年は五四年ですから、四年間の間順次に日本だけが極端な話、上り放しなんです。国際物価より高い、こういうことであります。これは二年前ぐらいに調節が必要であつた。国民自身の理解も必要でしようが、政府自身も一兆円予算をやる前にこういう問題を考えて欲しかつた。今からでも遅くはない。今はすでに遅しと言いたいくらいです。すでに御存じかと思いますが、最近見えました数字で申しげたいのですが、日本は一九五三年の十二月、大体変りませんが、これが一九五〇年、即ち動乱の年の六月一日、その一日を置いて、日米英仏と比べて見ているのですが、そのときを一〇〇といたしまして、日本は最近一五六・七なんです。これは日本のピークなんです。それでは列国の動乱後のピークを見てみますと、英国のピークは日本より二年前なんです。一九五二年の一月、これがピークです。そうしてこれが一三〇・四、日本よりそのときすでに二六・三低かつた。而も五二年の一月、この数字は出ているのですから、これを見て日本は考えなければならん。米国はどうかというと、米国は一番高い絶頂が五一年、米国はまだそれより一年前です、朝鮮動乱の翌年の三月、日本より相当高かつたが、人絹なども五倍だつたのです。動乱の翌年の三月がピークで、これは一割六分しか上つていない、一一六・二です。それがすでに英国が三年前で、アメリカは三年前。フランスも出ておりますから申上げます。フランスはこれはやはり英国と同じ一九五二年、即ち動乱の翌々年の一月、これが一四七、一〇〇に対して一四七、四割七分になつております。ドイツはこのときこれがやはりちよつと半年遅れまして、一九五二年九月。フランスは一九五三年一月ですから、八カ月遅れて、それにしても日本より二年前、これが一三四・四。一体どこも――フランスの、ピークも日本より早い。早いのは三年前、幾ら遅いのでも一年半前、大体二年前、こういうことになつておる。現在それがどういうふうになつているかという問題、これは仮に数字が最近のものがございませんので見ますと、日本は先ほど申上げました一五六、これが英国は一二七なんです。これが最近の数字は一二〇になつておる。アメリカは一九五三年、昨年の十一月、これが一〇九・五です。フランスは一三二・八、これは一四七に対してですから、一四%下つております。五二年の一月から五十三年の十一月までですから、一年十カ月の間にこれだけ下つております。ドイツは一三四・四が五三年九月の最高でありますが、現在一一九であります。同じ敗戦国のドイツを見ましても、この物価政策に対する日本の措置が、国民も政府も各国の例を見ながら、前車が覆えるとか、前轍を踏むという言葉がありますが、実例を見ながら、どうも少し緩きに失しているのじやないか、こういうふうに考えております。併し今においてやはりこの点で私は一番いい施策を施さなければならんと、こう思つております。
 そこでもう一つこの中にあります予算膨脹に終止符を打つた――それが本予算で終止符を打つたならば、或いは来年度も再来年度でもやつてもらわなければなりません。長期予算というものはございませんが、国民の腹積りはそうだと思います。これは皆さんに申上げるものではございませんが、国民全体の気持を申上げておるのでありますが、この予算は又補正予算を作つてこの一兆円という枠は壊れるのじやないか、どこかで又腰折れになりはしないかという空気が一部にあるのじやないかという声を聞いて、私は怪しからんと思いますが、そういう考え方があるのです。終止符を打つたならば、完全な終止符であつて、補正予算もなく、又来年度予算も若しこの政府が、或いはこの政府と違つた変つた政府が来られても、現在の国会において皆さんがまあこの予算の審議をなさるわけですから、その考え方はやはり継続的にやる、或いは一兆円はまだ多きに過ぎるのではないかという検討も必要ではなかろうか。いろいろ政府の言つていますように、今年一割下りますと、来年度の予算は同じようにやりましても一割下らなければならない。だから私は経済方面に対する認識においても、又予算を有効適切に使うということについての施策が必要だということをここに申上げたわけであります。だから私は終止符なるものはどうか完全な終止符であつて欲しいと思います。
 もう一つここに語われておりますのは行政整理の問題、行政整理が二カ年かかつて七万名を減そうということでありますが、私はいつも日本の行政整理は、私は四年ほど政府の行政整理の委員会の委員を仰せつかりましてやりましたが、私の考えた案と何とまるで違つた案が実行に入つている。どうも政府が行政整理をやるということならば、この調査会というものの形を変えなければならんと思います。変えなければならんというのは、行政整理の調査の場合に、多く各省の方々を使うのです。各省の方々の意見を聞くのです。その人たちが利害関係人のような顔をして、いろいろこの点は必要だということで大体話をする。そうして他省の批評を聞くと、お互いに言わないのです。そういう意味で我々は一応そういう問題を離れて、眼光紙背に徹して、仮に案をきめて作りましても、約五十万人くらい減すような案を立てたこともありますが、実行の面においてはその半分も実行に移つていない。私は余り人の問題には触れたくないが、私は行政整理は法律の廃止が必要だと思います。終戦後法律が非常に殖えております。そうしてちつちやな一つのものにまで法律が付いております。一例を挙げますれば、例えば計量法というものがあります。計量法というものがあるとこの計量法に対して計量士というものの試験が要ります。計量士の試験に又人が従事しております。又熱管理法というものがありますが、熱管理法になりますと、熱管理というものが又できます。一応こういうふうなものが新法律にできておりました。新法律が一つできると、各省のどつかに課があり、又それを監督するものがある。そういうものを私は一時行政整理の問題のときに拾い上げて見ましたが、私の観点では、法律を各省を通じて六十七廃止してもいいのじやないか。六十七、一つも廃止されませんでした。私の答申したものは一つも廃止されません。そのまま通りました。そのまま通つたというのは現状維持であります。ただそのうち二十二、これは当然廃止しなければならない。と言いますのは占領政策の実行、まあ占領の終つた結果、それが廃止しなけれげならないというものが二十二あります。そのうち十二実際廃止されて、あとは修正で残りました。例えば独禁法のごときものはその一つであります。そういうふうなことになつております。でありますから、どうか皆さんがいろいろな面において、日本の文化の進歩に或いは必要なものもございますが、これを細かな各省所属の問題を、法律の廃止から来るように根本的に御研究を願つて、そうしてこの廃止を荒進めになつて、でないと人員の減少という問題は解決できない。結論はどんな理論を盛上げておいても、終いは天引になる。閣僚懇談会を数回やられたり或いは行政改革本部などを作られて何年やられても、それは結局根本に入らんといかん。又現在の行政を直接司つている方々がやるよりも、むしろ政党を離れた一つの機関を以て、それは各省の人たちを調査員にしたり、又は事務局にしません。いろいろの関係でこれを調べてやる。これは皆さんの協賛を得た立派な法律として、その勧告をすれば法律になるというところまでの決心を持つて頂かなければ、百年河清を待つということじやないか。行政整理の問題はいつもお題目で終るのじやないか、こう思われるのであります。
 現にここで最近取上げて来た問題は社会保険です。これが労働省と厚生省とに分れております。そうして厚生省には厚生年金と健康保険と分れている。これはいろいろそれぞれの関係を別々に持つております。そうして労働省には例の労災保険がございます。失業保険がございます。これが全部窓口が違うばかりでなく、各地方々々に別に官庁を持ちまして、同じような種類のものを各企業者は別に通じてやらなければならない。これを若し、簡単に結論を付けて見ますと、これをやつておられる人は、確かこの仕事をやつておられる人は一万一千人も全国にいるのであります。これを若し一つのものにすれば、むしろ五千人或いは三千人ぐらいになるから、法律の廃止というものは、こういうところから生まれる。予算も確か三十二億ぐらいある。これはできないかというとできます。この点はそれぞれ調整すればいい。現に昨年の簡易保険は労災保険を除いた三保一緒、今申上げました労災保険を除いた三つの保険を一緒にして一つのもので実施されております。こういう点から私は行政整理の問題は、簡単にできることから実行して頂く必要があるのじやないか。殊にこの四つの保険が別々に積立を持つている。これを見ましたところが、七百七十九億の厚生年金は積立金を持つている。これは資金運用部に入つている。その他の三保険積立金を加え、これは五年据置き五分五厘です。これが十七、八億、十七億五千と言つております――に近い利息のさやを政府がかせいでやつている。これはまあ結構ですが、併しこれは労働者の関係において多い、勤労者の関係のものです。そこで政府が頭をはねる必要はないと思う。国費を使うのならば、ほかのもので使つても、資金運用部を使うのはおかしい。こういうこともすでに行政整理の問題の一つの形じやないかと考えられます。これは行政整理に対しての政府の実行がにぶい。殊に皆さんが御一緒にやつて頂かなければならん仕事で、同時に国民全体もこれを支持しなければならん大きな問題でありますけれども、今言つたような考え方でやつて頂く必要があるのじやないかと、こういうふうに考えますわけです。
 いろいろ申上げたいことがありますけれども、一応私の話はこれで終ります。
#10
○委員長(青木一男君) 只今の公述に対して御質問がございましたら……、有難うございました。
  ―――――――――――――
#11
○委員長(青木一男君) 次に堀江薫雄君にお願いいたします。
#12
○公述人(堀江薫雄君) 昭和二十九年度予算の内容に入るに先立ちまして、先ず予算の背景となつておりまする我が国の国際収支という問題について若干申述べてみたいのであります。
 昨年の日本経済にとりまして最大の問題であつたところの国際収支という問題、その国際収支の逆調転化、即ち赤字化が昨年の大問題であつたと思うのでありますが、本年の最大の課題はこの国際収支の均衡の回復にあると申すことができると思うのであります。このようにひとり財政のみならず、日本経済の運営全般について、国際収支というものが極めて重要な意義を持つておりまするのは、一般的には日本経済の対外依存度が高いことによりまするが、特殊的には現在の国際収支が、日本経済の内包する矛盾、或いはインフレ傾向の集中的な表現であるからであります。これをもう少し具体的に申しますると、昨年の日本経済は生産の上昇、国民所得及び生活水準、消費水準、こういつたものの向上等、一見しますると拡大的な発展を遂げておるのでありまするが、その国内経済のしわが実はすべて国際収支に寄せられておる。つまり対外均衡の犠牲、具体的に申しますと、外貨の喪失の犠牲において国内経済が安定した、或いは発展をしておつたということになるのであります。それ故にこそ、国際収支の逆調転化、即ち赤字化ということが日本経済に対する大きな警鐘として、戒めとして重大な意義を持つたのであり、国際収支の動向を離れては、現在の経済政策は立ち得ないとするゆえんも又ここにあると思うのであります。
 ところで、このように重要な指標であるところの我が国の国際収支が、御承知の通り一昨年三億ドルの黒字であつた。それが今度は逆に二億ドルの赤字に逆転した、赤字化したというわけであります。そうしてこうした著しい悪化を急激に辿つたことは、果して事前に予測し得ないことであつたであろうかという問題があるのであります。先ほど原さんも同様の問題に触れられたわけであります。このことは勿論昨年中、風水害或いは冷害とかいつたものに起因する食糧の緊急輸入という予期しない事態が、それに拍車をかけたことは事実でございまするが、一般的には世界経済の景気の後退、我が国物価の突出的な割高、英連邦諸国の輸入制限、加うるに異常に高い日本の国内経済活動水準といつた諸点から見まして、国際収支が早晩逆調になる、赤字に転ずるということは少くとも一昨年あたりから、遅くとも昨年初願におきましてかなりな程度に予測し得たはずであるのであります。特に先ほどお話もありました通り、朝鮮休戦成立の気構え、これは大部長うございましたが、気構え当初から又現実に休戦が成立いたしました以後は、世界各国ともその経済態勢やその判断を切換えておるのであります。このことは先ほど原さんの挙げた物価水準の比較によつても結論付けられることができますが、明らかに朝鮮休戦気構えから各国は国際収支面、それを前提とした態勢を切換えておるのであります。この点に関しての政府の判断乃至見通しは完全に誤つていたと申さざるを得ないと私は思うのであります。即ち昨年七月成立いたしました二十八年度予算編成当時におきましては、国際収支の逆調の予想は全く織込まれておりません。そうして二十八年度は、年度を通ずる国際収支はとんとんという見通しの上に立つて予算が組まれ、そこから依然としていわゆる積極財政の線が打出されておりましたことは、私どもの、又皆さんの気憶に新なところであります。この点につきましては、実は私自身も昨年の夏二十八年度の通常予算の際に衆議院の予算委員会に公述人として喚ばれまして、政府のこの点に対する、即ち国際収支に対する見通しが甚だしく甘いことを指摘した事実があるのであります。まあそういうことでありまするが、そういつた見通しのあとで、昨年秋、二十九年度の予算編成の前提として立てられました見通しにおきましては、年度を通じて実質的には二億四千万ドル、これはI・M・Fからの買入れ、その他も調整いたしまして全体として二億四千万ドルの赤字、大きく修正が加えられました。又最近の政府方面の発表を見ますると、赤字予想は総額三億ドル以上に上るというふうに再三訂正されておるのであります。かくのごとく極く短期間にかくも大きな見通し乃至は予測の狂いが生ずるということは、国際収支といつたものの重要性に鑑みまして看過し得ないところではないか、そう思うのであります。
 然らばこのような狂いは一体何に原因したものでありましようか。一つには前に申述べましたような食糧の緊急輸入というような予想し得ない事態によるものであることは勿論でありまするが、より本質的な要因といたしまして戦後の日本経済が、世界経済の景気の上昇或いは下降に応じまして極めて大幅な動揺を示すという、いわゆる経済の底が浅い、経済の底の浅さというものが国際収支の予測を困難ならしめておることは当然認めなければならないと思います。併しながらそれらと共に国際収支の予測や外貨予算の編成につきまして、副次的な原因といたしまして指摘ができるのは、次の諸点ではなかろうか、私見として考えるのであります。即ち経済諸官庁のセクシヨナリズム、それも国際的なビジネス・センスの禿げたセンスのセクシヨナリズム、そういつた問題から、例えば通産省、農林省、外務省、経済審議庁、大蔵省、日本銀行、これだけの当局者が机上のデータを基礎といたしまして、寄つてたかつて予測乃至予想をでつち上げるところに過まちの一つの源があるのではないか。そんなふうに想像するのであります。言つてみれば船を操る勘のない船頭たちが徒らに多過ぎて、そのために船が山に登るといつたたぐいではなかろうかと思うのであります。その点戦前はどうであつたかと申しますると、成るほど自由経済体制の時代であります。そういつたことから自由経済の関係上データは乏しかつたのでありますが、その代りやり方としましては、世界的な支店網、情報網と国際的なビジネス・センスとを持つておつた正金銀行がありまして、諸方面のデータを活用して一応生きた見通しを立てまして、それをもとにして大蔵省、日銀がより広い観点からチエツクする、検討するといつた方法で貿易収支のほうも、それから貿易外収支のほう、その他の予測がなされまして、それで一応大過なく処理し得たのであります。勿論戦争前と今日とでは、前にも申しましたように、世界経済及び日本経済の置かれておる諸条件がかなり異なつており、両者を単純に平面的に比較することはできません。又国際収支の予測は、国際収支も外貨予算も同様でありますが、国際収支の予測或いは外貨予算の編成は単に国際的な視野からばかりでなくて、国内経済の諸条件をも十分取入れて行われるべきものであることも言うまでもないところであります。それにいたしましても、現在曾つての正金の果したような役割を担うものがないことは、国際収支を二層困難にし、日本経済のマイナスになつておると申しましても差支えないように私は思うのであります。この意味において、いささか余談でありまするが、現在の日本のごとき経済劣勢国と詳つていい国におきましては、為替専門銀行の有用性、ひいては存在意義が痛感される次第であります。
 さて、やや余淡になりましたが、話を本筋に戻しまして、以上のごとく昨年来国際収支の現状認識乃至は予測という経済運営の重要な前提条件におきまして、重大な狂いがあつたことは、明らかに政府当局としての不手際であり、過誤であると言わなければなりませんが、まあ併し今度の予算案におきましては、過去の反省から出発いたしまして、少くとも予算編成の基本方針として、大蔵大臣の言葉を借りますると、国際収支の均衡回復のため財政規模の圧縮、均衡財政の確保、即ち一言にして言いますると、デフレ予算のラインが立てられております。この点につきましては遅きに失した憾みがあるとは申しましても、私は原則的に賛意を表するにやぶさかではありません。先ほど原さんは、遅きに失したと申されましたが、いささかその感もないではありませんが、併しまあ今度こういつたことになつたのは賛成であります。併しながら基本方針としてデフレ予算と銘打つたからといつてれ実際に組まれた予算がデフレ予算であり、それによつて政府の企図する物価引下と国民所得削減を通じて輸出の増進、輸入の抑制がもたらされ、国際収支の改善の効果が発揮されるというわけではありません。この点は予算の内容乃至実体について十分検討しなければならないところであります。それで今度の予算でありまするが、デフレ予算なりや否やの検討は予算の規模、それから歳入、歳出予算の内訳、財政収支等それぞれの観点からこれを行う必要があります。
 先ず第一に予算の規模の点でありまするが、数字的には一般会計予算につきまして、一兆円の枠が守られておりまするが、これは率直に申しますると、単に名目的なものに過ぎず、実質的には一兆円をかなり超えておるのであります。たくさんありまするが、例えば二十七年度の連合国財産補償費の百繰越し七十億円二の他がそういつたものの一例であります。又右の点に関連いたしまして、一般予算と特別会計を加えた予算純計額におきましては、むしろ二十八年度の予算の規模を上廻つておることも見逃し得ない事実であります。
 次に予算の規模といういわば量的な問題から、更に一歩進んで、その内容、即ち質的な面を検討いたしますると、ここにも必ずしも緊縮予算乃至はデフレ予算とは称しがたい要因が少からず発見されるのであります。以下この点を念頭に置きながら、予算の内容を眺めてみたいと思います。
 その第一は消費性支出の増大であります。旧軍人恩給の平年度化に伴いまする増額百八十八億円、公務員給与ベースの引上げまあいろいろなものを入れまして百六十四億円、保安庁費の増額百七十五億円等がこれであります。
 それから第二は歳入面の見積りの過少なことであります。伝えられるところでは、歳入面には数百億乃至一千億円近い余裕があるとのことでありますが、そのことは一方において、あとで申述べますように、自然増収による財政収支の黒字、即ち超均衡的な性格を示すものと見られるのでありまするが、他方隠れた財源といたしましてれ補正による予算規模の膨脹乃至不健全化の可能性を内在しておると言わざるを得ないのであります。真に緊縮財政の趣旨を貫徹させるのでありますれば、むしろドツジ予算の例にならいまして、債務償還を行うか若しくは減税を行うか、いずれかの途をとるのがより筋が通つておるというふうに考えられるわけであります。減税の途を選んた場合に、それに伴う消費購買力が増大するといつた可能性もありまするが、これは別個に検討すべき問題と言えると私は思う。
 第三に、政府が緊縮予算の重要な支柱と考えていた行政改革、地方制度改革及び税制改革の三者が、結果から見ますると、当初の意図とはかなりかけ離れた影の薄いものに相成つたために歳出面における支出の節減、財政のロスの排除、資金の重点的効率的な使用という筋があいまいと相成りまして、質的に見まして緊縮予算の看板にふさわしからんものになつておる面の少くないことが注意されるのであります。
 次に第四に、重要なことは、デフレ予算の使命は、単にデフレ効果を狙うという消極的なものではなくて、進んでその究極の目的でありまするところの国際収支の改善、なかんずく輸出脅易の振興への積極的な方策を打出す)ころにあるという点にあろうと考えます。にもかかわらず今次の予算におきましては、このような輸出振興という方向に副つて重点的に予算が組まれておるという面は見受けられないのであります。僅かに貿易振興費といたしまして三億二千万円余が計上されておるに過ぎず、これでは積極的な意義を持つたデフレ予算とは遺憾ながら申されないと存ずる次第であります。
 第五といたしまして、財政投融資を見ますると、二十八年度の予算に比べまして五百八十五億円の削減が見込まれておりまして、それによつて誘発されるべき民間投資の削減を考慮に入れますときに、それの持つデフレ的効果は少くないと言えると思うのです。この点即ち財政投融資に関する限り今流予算の性格をデフレ的というのは妥当であろうと考えます。
 第六といたしまして、財政収支という観点から見ると、二十八年度予算とは異なり、公債発行並びに過去の財政蓄積資金の放出を停止した結果、財政の払超要因が除かれ、収支均衡が図られているのみならず、歳入見積りの過少なことは潜在的には超均衡的性格を示すものとも申せましよう。尤もこの点は裏から見ますると、前に申しましたように、財政規模膨脹の可能性を示唆するものでもあります。
 いずれにせよ、今次予算は二十八年度予算に比べまして、予算の均衡という点には勝つておることは率直に認めてよいし、賛成を表したいと考えるのであります。
 最後に一言申述べたいのは、デフレ予算乃至デフレ政策の持続性についてであります。先ほど傍聴いたしておりますると、原氏もこの点を強調しておりました。即ち今次予算は非常に検討をいたしましたごとくデフレ予算、緊縮予算であることは断定できないものではありまするが、財政投融資の削減等の点で確かにデフレ的な効果をもたらす可能性を持つことだけはたしかであります。その限りにおいてはデフレ的な予算であることを認めるといたしまして、それがどこまで続くか、どこまで徹底できるか、継続できるかという点を問題といたしたいのであります。申すまでもなく、単に二十九年度一年を限つて緊縮予算で臨んだくらいで、真にデフレ政策の効果を発揮し得るものでないのは申すまでもない事実であります。而も世界経済の動向及び我が国国際収支の見通しは、誠に容易ならざるものがあるのでありまして、この面からも国際収支改善のためには、かなりの長期間に亘つてデフレ政策を推進することが要請されるのであります。
 ところでデフレ政策の持続性という問題は、少くとも二つの面を持つておると考えます。その一つは政府の決意如何であります。即ち政府としては蠻勇を奮つて一定期間デフレ政策乃至デフレ予算の方針を堅持するだけの決意がなければならない。この点政府当局も十分認識されておるとは思うのでありまするが、デフレ政策の腰砕けとインフレ再燃を見越した思惑と又それに起因する物価高、又その前提に立つ輸入増加、そういつたもろくの現象が依然としてあとを絶たない現状に鑑みまして、私は特にこの点を強調しておきたいのであります。
 他のもう一つは、デフレに対する日本経済の抵抗度の問題であります。詳細を申上げる時間もございませんので省略いたしますが、いわゆる底の浅い日本経済は景気の変動に対する耐久力が弱く、従つてデフレ政策をとり得る余地はかなり狭いものと見なければなりません。そこで継続的、持続的にデフレ政策を推進するためには、どうしてもそれに伴う摩擦乃至は社会的な影響を吸収し或いは緩和する諸施策が、総合政策の見地から同時併行的に進めなければならないわけであります。然るに今次の予算ではこの面の配慮、特に中小企業対策或いは社会保障関係の対策が周到且つ十分になされておるとは認めがたいのであります。これではデフレ財政、デフレ政策の強行はいろいろな抵抗に会いまして、底の浅い諸部面からの抵抗に会いまして早晩破綻を来たさざるを得ないのではないか、そういつた懸念があるのであります。この点は今後の政策において、政府当局も十分考慮さるべき問題であると言わなければなりません。
 以上私は主として国際収支の面から入りまして緊縮予算乃至デフレ予算と称せられる今次予算の性格及び実体について若干の検討を加え、併せて私見の一端を申述べた次第でありまするが、最後に私の発言の結びといたしまして、次の二点を特に強調し、以て私の責を果たしたいと思うのであります。
 その第一は、デフレ政策は単に財政面、金融面のみならず、経済の実体面をも含む総合的な経済政策として推進されて、初めて成果の全きを期し得るものであるという点であります。
 それから私の結びの第二としましては、デフレ政策の目的はデフレを招来すること自体にあるのではなくて、不景気、不況或いはデフレそのものが目的であるのではなくて、それを通じて国際競争力の強化、即ち輸出の振興を図り、以て自立経済の基盤を確立するという建設的な方向、コンストラクティブな方向にあるのでありまして財政政策を初め、もろもろの施策は常にこの点を念頭において総合的な運用をされなければならないことを申述べたいのであります。
#13
○委員長(青木一男君) 只今の公述に対して御質問がありましたらお願いいたします。
#14
○千田正君 今堀江さんから国際収支のバランスが、国際経済の動向殊に日本経済の自主性を決定するところの大きな基礎であると申されましたが、これは御尤もであると思いますが、そこでいろいろ今次の予算について述べられておりますが、国内の輸出経済、国内の産業経済に対して、今次の予算面において要請さるべき点が多々あると思う。これが各官庁のセクシヨナリズムの関係上、重点的に輸出を助長すべきところまで行つていない。或いは近代歴業或いは輸出産業、原始産業の上において相当のギヤツプがある。いろいろな難点があると思います。特に今後の国際収支の回復のために、日本国内の経済に対してどこに重点的な改善をしようとするか、今度の予算面において特に著しい匡正の方向に持つて行くべきところの点はどの点かという点につきまして一つ簡単にお話願いたいと思います。
#15
○公述人(堀江薫雄君) 御質問の趣旨は国際収支が重要であるから現在の段階の日本経済を、輸出可能な従つて国際収支改善の線に国内の経済をどう持つて行くかというのがおつしやる点だと思うのですが、御承知の通り国際収支と申しますると、貿易収支と貿易外収支があつて、貿易外収支はいわゆる特需、船舶その他でありますが、特需、新特需が御承知のように明らかに朝鮮休戦後先細りという状態になつて参りますと、本来の線でありまするところの貿易収支を改善する以外にないということになる。それには輸入をカットするというのも一つの行き方でありまするが、同時に輸出を増加することによつて国際収支のバランスをよくして行くといつた努力が必要なことは申すまでもない。ところがその輸出増進の隘路はいろいろあると思うのでありますが、日本の国内経済の運営のされ方、特に物価の突出的な割高にあると思うのであります。先ほど原さんのお話にもありました通り、国際物価に比べて甚だしく割高な物価では、幾ら輸出増強政策を取りましても限界があるわけです。それを無理して輸出しようといたしますれば、つい無理の結果割高な、従つて儲かる輸入とのリンクにおいて輸出をしなければならない。或いはいろいろなスイッチとかその他の方法で輸出をしたりしておるのでは採算を割るような政策を強行しないとこれができないということでありまするので根本的、一般的な基本的な問題としては、飽くまで物価を引下げて行く。物価を引下げる方策としましては、同時に国内の無駄或いは不合理、これを合理化して行くといつたことが第一であろうと考えておるのであります。
 ドイツの輸出が御承知の通り人口六千万前後でありながら四十億以上、輸入が三十八億といつた形になつたゆえんのものは、ドイツの幣制改革以後の経済政策と、それからドイツの経済政策施行主体である政府と、それから家体である国民と労働者とのこの関係が最も円滑に行つておるといつた点、その他の点が今日のドイツの輸出競争力を大にしておるゆえんの一つであると思うのであります。
 日本といたしましては、基本的には飽くまで今度のデフレ政策を通じて物価の引下げを推進して行く。併しながらそれにはどうしても限度があるというわけでありまするが、先決問題としてやるべきことを先ずやらないで、ほかのラフな方法を選ぶことは勿論避けなければなりませんので、それを基本的に推進しながら同時に輸出に役立つようないろいろな政策、これ併行して総合的に行なつていくということが必要だと思う。例えばオープン勘定の貿易を盛にする。貿易協定を多角的に作る。まあそれぞれの行き方があるわけでありまして、これまで国際競争力が落ちておる日本の現状としては、この方法一つで万能の効果があるという方法は考えられないのであります。基本政策としては物価引下げを強行しながら、考え得る実行可能な貿易促進の諸施策を併行的に行うといつたことであろうと思うのであります。それを通じて日本経済の国際競争力、いわば経済地盤を固めるといつたことが問題だろうと思います。お答えになりましたかどうか知りませんが……。
#16
○田村文吉君 堀江さんに一つお尋ねいたしたいのでございますが、為替相場を変えることがいいとか悪いとかいう問題はまず別問題としまして、普通は余りこの問題には触れないようにしておりますが、一体為替相場というものを或る時期にきめた、例えば現在の一ドル三百六十円、こういうような釘付けにしておくことがどつかに無理を来していることはないのか。例えばその結果輸入の管理を完全に行なつておればまだいいんですが、なかなか輸入管理とか輸出管理というのは、貿易の管理が完全に行つていないというような場合において、結局為替が悪ければ悪くなつたと同じような結果になつてしまいはせんか、こういうような懸念を持つのであります。それで果してこういうような一本為替できめて、永久というわけじやございますまいが、或る程度そのままで行つて経済というものは自然立ち直る道があるとお考えになりますかどうか。これは東京銀行においでになるから特にその意味において一つ堀江先生の御見解を承りたいと思います。
#17
○公述人(堀江薫雄君) お答え申上げます。私は東京銀行の人間としてでなしに個人としてお答えいたしたいと思います。為替相場の問題は国内乃至世界経済が自由経済であつた時代と、それが多少とも計画経済或いは統制的な要素を持つた経済であつた場合とは全然考え方を変えなければならないと思うのであります。それで御質問の釘付け為替を相当長期間強行いたしますと、若し国内経済と世界経済の、両者の間にアンバランスができない限りは原則として無理は起きないのでありまするが、御承知の通り為替相場というものは国内サイドと海外サイドとを橋をかけるようなものでありまして、両サイドのどちらかに変化があつて高くなつた、低くなつたという要素が起きますと、そのブリッジでありますところの相場自体が自然狂うのが当然であります。それが曾つての自由経済時代における為替でありまして、それを背景とする自由経済の中に資本主義の持つ自動調整作用というものが不自然になりました。為替相場はむしろ固定すべきでなくて常に動くものであるという性質のものであつたわけであります。それを強いて無理にとどめ固定しておく、その固定のためには何らか当局が操作してそれを守つて行くようなオパレーシヨンをするか、又は国内に何らか無理を背負わせなければそれが可能でないのであります。それがいわば自由経済時代と為替の作用が変つたわけであります。世界経済及び日本国内経済も明らかに原則が変つて参りました。資本主義の持つておつた自動的に調整されるといつたような作用がなくなりまして、国内でのこれは例で申上げますと、金本位制度なら金の在高によつて国内の金融量が自然に調整されるといつたのが金融界の自由経済における実情であつたわけであります。世界経済における建前も、そういつた需要供給だけに基く自然自由に調整されるといつた作用がなくなりました結果、為替相場におきましてもそういつた為替理論乃至は為替実勢論よりはどうしたほうが賢明であり、且つ有利であるかという為替政策論のほうに重点が移つて来た。むしろ理論よりかその国の経済に即した政策のほうに重点が加わつて来たということが言えるのであります。そういたしまして現在は御承知の通り、日本経済も明らかに完全な自由経済じやございません。又世界各国ともいわゆる自由主義世界といいながら、或る程度の輸入制限があり、貿易制限があり、為替管理があるわけであります。その意味で或る程度の計画性、統制的な要素が入つて来る、その限りにおいては為替実勢理論よりか為替政策をどうやつたほうが有利だ、賢明だといつた点に重点があるわけでございまして、従つて日本の場合も三百六十円をそのまま堅持するほうが有利か、賢明かそういつた観点のほうが三百六十円が国内物価と国際物価との比率において実勢に即しておるかどうかという実勢論よりも先んじて優先的に考えられなければならないということになるわけであります。そういたしますると現在の三百六十円果して有利か不利か、まあ有利なプラスの面と不利なマイナスの面といずれもあるわけであります。そうしてその政策論にも或る程度限界があるわけであります。或る程度以上それを固定しておりますと必ず先ほど申しました無理の筋が大きくなつて来る。併しながら政策論でありまするから多少の無理はやむを得ない、或る程度の無理は有利だという前提からやむを得ないということになりますと、無理の程度をどの程度でしんぼうするか、容認するか、又容認しながらその無理を国内的にどう調整して行くかといつた観点になつて来るかと思います。で三百六十円が原則的に言つて堪え得られる無理であるか、その無理の結果を財政収支を均衡化してその他国内経済政策によつてどの程度調整できるか、物価の割高をどの程度引下げられるか、そういつたところに考えられて行く重要な点があるかと思います。私見を以てしまするとおつしやるような無理はもう限度に来ておるというふうに考えられるわけでありまするが、ただ同時にそういつた無理が起つた原因も人為的な或いは政策面、或いは経済の運営自体で或る程度調整できる部面の要素が、相当多いのじやないか。例えば物価を政府当局が言われるように五%乃至一割下げるということになればその範囲では無理が減少するわけであります。又その他輸出入リンクの問題にいたしましても、これが甚だしく無理がひどくなりますと二重価格の問題も同じでありますが、世界各国が日本の為替政策は二重物価だから従つてダンピングだといつた議論が出て来るわけであります。そこに無理の限界があるわけでありまして現在は無理の限界に近付きつつあるように私は考えるのであります。併しながら同時にその無理を国内的手段、国内経済要素から調整する、又そういつた体制をきずいて行くという努力がなされたのちでないと為替相場を云々する、変更するといつた問題は軽々には考え得られないのであつてれ先決問題としてインフレを抑制するとかその他の経済諸体制を先ず整備するということが必要であろうと、そんなふうに私は思います。甚だ抽象的でありますけれどもこのくらいで……。
#18
○田村文吉君 為替管理の問題はできるだけ触れたくないのですが、今のお話のありましたような世界のどの国も或る程度まで純然たる自由経済でないという点はわかるのです。それは貿易管理の点においては正しく仰せの通りそうであると思うのであります。併し一般に日本は殊にそうですが、国内の経済はすべて自由経済の下に運営されておるのであります。ただ貿易だけが今日は管理されているのだが、この管理というものが御見解から行くと果してこれは一体完全に管理されているのかどうか、又こういうことで果していわゆる自由経済がもつていた妙味を発揮するような貿易管理がそこまで徹底してやれるのか、これについての一つ御所見を承わりたい。
#19
○公述人(堀江薫雄君) おつしやるように今の貿易為替管理はいまだ不徹底だとは思います。併しこれを徹底させることは同時に国内の経済政策も或ろ程度それにマッチさせないと、おつしやるような貿易面だけを強力に徹底ぎせるという点では又更に無理ができて来るかと思います。
 それからもう一つ申上げたいことは第二次戦争後の欧州大陸各国におきまする経済政策の一応基本となつておりまするものは、英国本国は別としまして大陸諸国では、大体国民経済の大わくを特に国際収支の面から計画化する、或いは貿易計画を立てる、そうしてその計画のわく内ではできるだけ極力自由要素或いは自由競争を取入れるといつたのが大陸諸国の共通したやり方であります。若しそれアメリカやスイスのように非常に強力な資本があり、強力な通貨でありましたならば自由放任、国内も自由或いはそういつた大きなわくも不必要といつたことになるのでありますが、国内貧乏経済のやりくりでございます以上、どこかに着物でいえば大きな帯を締めなければならんというような意味で、それを国際収支の計画化というわくで結んで、その中を併しながら極力自由要素を活用するといつた行き方にやつているようであります。日本といたしましては、さつき公聴の発言のときに申しましたように、国際収支の面で貿易管理も為替管理もこの程度でやつていながら、而も各経済官庁がたくさんの人を寄せてやつた外貨予算とか国際収支のバランス見通しが、僅かの期間にあんなに狂うというのは統制や管理をその面でやつていると言いながら、実際はやつておらんのじやないか、又逆なことになつているのじやないか。これを或る程度本筋に戻しますれば必ずしも無理はそれほどひどく出て来ないのじやないか、そんなふうに思うわけであります。
 そのことの現われは多少予言的になりますが、貿易管理だけでなしに為替のほうでも大分ございました。三百六十円といつた為替が通貨そのものの交換を通じてもやはり相当ございました。又物資を通じてやる一種の為替差益のさや取り、輸入すればとにかく儲かる、特に賛沢品、禁制品というものは儲かる。例えばAPOといつたようなそういつた小包郵便あたりでとり寄せまして輸入の大きな儲けを収入とし、輸出のほうは多少出血でもいい、そういつたやり方で物を通ずる、そういうこともございます。又為替管理の裏をくぐるのではドルの現札売買があり、又優先外貨の売買があり、又同時にアメリカは御承知の通り為替管理をやつておりませんから、アメリカのドルを持つている人の小切手を国内で売買したり送受したりという闇がございまして、こういうことでだんだん規模が大きくなるような気がいたします。そういう点から申しましても御質問の点は全きを期しておらんということと、それから程度は別として趣旨を徹底する、外貨予算或いは国際収支見通しに例をとつて申しましたような点でもう少し徹底いたしますならば、だんだん無理は或る程度克服できるのじやないか、かように考えるのであります。或いは顧みて他を申上げたかも知れませんが、どうぞ御勘弁を……。
#20
○佐多忠隆君 国際収支の見通しの問題ですが、政府が出した予算の説明によりますと、二十八年度は支払超過一億九千万ドル、二十九年度が九千万ドルという数字で一応見通しているのですが、二十八年度の見通し一億九千万ドルももう相当違つて来るのじやないか。更に二十九年度もそういう見通しで行けるのかどうかという疑問をもつのですが、その点はどうお考えになりますか。
#21
○公述人(堀江薫雄君) 御質問の内容を私こういうふうに了解しているのでありますが、二十八年度収支見通一億九千万ドルの赤字というのはやはり表面上の赤字でございまして、そのほかに政府がポンド資金調達その他のためにIMFを相手としてドルを売つたもの、或いはオープン勘定その他の資金調達、そういつたものを全部含めますと、あの一億九千万ドルと発表された当時も実質は一億四千万ドルくらいあつたのじやなかろうか、そんなふうに想像しているわけであります。それが最近の数字では三億ドルを超すとか、そういつたことになつておるわけであります。二十九年度の予想はどうかという御質問でありまするが、それは一つは今度の予算が徹底実施されて、補正予算のごときものがなくて済むものかとかその他の前提があると思います。なおほかに昨年度の大きな赤字の要因になりました食糧輸入、それに対して次の年度で果して食糧が豊作であるか不作であるか。まあこういつた不確定要因もございますので、しかとはなかなか申しがたいのでありまするが、まあ極く素朴な私の端的な結論から申しますと、依然として国際収支動向は甚だ悪い。特に正常輸出入において日本が非常に悪いというようなことから申しますると、又輸入は不可避的な食糧輸入その他重要原材料がどうしても入つて来るというようなことになる。又第三に物価がこの情勢ならやはり三百六十円為替では、放つておいてもそうだし、同時に又相当干捗しても輸入はいろんな形でたくさん入つて来る。輸出は大いに努力すると言いながら実質はそれほどに行かんというような緒原因を総合いたしますと、やつぱり国際収支の赤字傾向はなかなか克服されないで、次年度において一億ドル以上の赤字がやつぱり蓄積される。いわば外貨がそれだけひつこむということになるのじやないか。そんな懸念を私は持つております。
#22
○佐多忠隆君 もう一つそれに関連して。そうしますと今のお話では政府の見通では二十八年度には輸出十二億ドル、二十九年度には十三億七千五百万ドルに増加するという見通し。更に輸入は去年の二十一億と同じ二十一億にとめられるという見通しになつておるのですが、輸出入のこういう見通はどういうふうに思いますか。
#23
○公述人(堀江薫雄君) 趣く端的に申しますと、輸出についても輸入についても大きな疑問を私は持たざるを得ないと思います。輸出のほうはあの見通しの基礎になつておりますものが、主としてまあ御承知の通り輸出は米ドル地域向けとスターリング地域向けといわゆるオープン勘定地域向けとそういつたことであの推定ができておるようであります。第一の米ドル向けにつきましては日本の物価が依然として下らないのに、アメリカの景気は御承知の通り依然としてむしろ下向きであります。この問題については景気の後退か不況か恐慌かといつたような議論もありまするが、恐慌といつたようなことは、アメリカに起るはずはございませんが、併しながら単なる後退程度で済むかどうか。多少は不況に入るのではないか。そうすると物価はやつぱり下がつて来る。従つて米国を中心とした国際経済世界経済の動向から言いますと或いはやつぱり貿易としては縮小貿易という方向に行くのじやないか。従つて日本の対ドル貿易も、これは比較的自由貿易でありまするがなかなか伸しがたいのであつてせいぜいか今年程度ではないか。
 それからポンドのほうでございますが、今度日英協定の結果非常に輸入のわくが拡がりましたが、あれは目標約束なんでありまして、現実に英国側が輸入制限を解きましても商売が引合わなければ物が入つて行かないというようなこと。それからポンドのほうもアメリカの景気後退が響くのでありまして、一九四八年の例を以ていたしますとアメリカの生産指数が四%下つただけで、ポンド地域から米国に輸入する数量が三八%というようになつて、従つて英国側は先般の蔵相会議でも対ドル輸出について非常に懸念をしておるような次第であります。ドル輸出が進まなければ、日本からの円の商品の輸入、こつちからいえば輸出もなかなか進まないのではないか。この点において日英協定、今度できたあの目標約束額をそのまま取入れるのは無理ではないかと考えます。
 それからオープン勘定地域につきましても、これは非常に大きく今度も通産省の見込が入つておるのでありますが、まあせいぜい今年度程度ではないか。そういたしますと、率直に事情を申しますると、今年度のごとく十二億ドルくらいを見ておくのが安全じやなかろうか、こんなふうに思うわけであります。
 なおそのくらいにいたしまして輸入のほうでございますが、これは御承知の通り輸入為替の割当を極端にやれば、カツトできるようなものでございまするが、それには国内経済体制が或る程度整備され、国内物価も安定する、又望むらくは下向きになつて来た態勢になるということが必要であります。それが現在できておりませんといたしますと、例えば不要不急品から切つて行くということにいたしましても、輸入割当をカットいたしますと怱ちに輸入品の値段が上つて来る。不要不急品ではございませんが、先般砂糖の為替の割当を年間百万を八十万ドルが七十万ドルにすると、ちよつとこの発表のようなものがございましたら、たちまち砂糖市価が暴騰したというようなことがありまして、或る程度輸入カットも可能ではございますが、国内経済体制の整備が伴わない限りなかなか無理ではなかろうか。そういつたことで輸入については疑問を持つわけであります。
 それから貿易外収支の特需、新特需と申しますかアメリカのスペンデイングを中心にしたそういう日本の収入につきましても、世界の経済が多少不景気ぎみということになりますし、共和党の政府が予算を引締めるということになりますと、自乗軍人給与も増額は恐らくありませんでしようし、又平和になつて来ますと、場所が近いからとか或いはその他の多少経済外的な原因から日本に対してよこした註文が、どうしてもノーマルのほかのほうに行く。又アメリカ第一主義に行くということがあるという懸念がありますと、貿易外収入の先般スタツセンの申しましたようなラインも又大いに望ましい点でありますがなかなかむずかしいのではないか。そういたしましてさつきの御質問にお答えしましたように国際収支のバランスはなかなかむずかしくアンバランスが相当あるのではないか。特に本年の農産物の収穫に余ほど依存しているのではないか。又今後の日本の物価の動向それが横ばい乃至下向きになつて来ると、いわゆる採算取引からする不要不急輸入というものは抑制されて来ますからこれの効果がありまするけれども、依然として物価を確保しないということになれば先ず一億ドル見当が結果として出て来るのではないか。併し目標としては政府の御発表になつておるようにああいつた少いとろで収めたい、そういう気がいたします。
#24
○委員長(青木一男君) ありがとうございました。
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#25
○委員長(青木一男君) 次に佐橋忠雄君にお願いいたします。
#26
○公述人(佐藤忠雄君) 只今御指名を受けました名古屋商工会議所の中小企業委員の佐橋でございます。私は現在名古屋で自転車工場を経営いたしております、いわば地方の一中小企業者でございます。勿論国家の財政とか或いは予算というようなことにつきましてとやかく議論のできますような知識は毛頭持合わしておりません。従いまして私の申上げますことは、公述人といたしまして或いは見当外れのことだとも存じますが、この点はあらかじめ御了承をお願いいたしたいと思います。かように存じます。
 只今申上げましたように、私は経済の知識というようなものは皆無の鍛冶屋の親父でございますが、併し来年度の超均衡予算でございますか、緊縮デフレ政策というものが私ども中小企業者にとりまして誠に容易ならんことということと、又一面日本の経済自立達成というものはこれなくして成らないということだけは理解できるわけでございます。従いまして、私も小さい自分の職能を通じまして国家の経済復興のために最大の努力を尽したい、まあかように心中決意をいたしておる者であります。
 私丁度今月の十六日まで東北地方へ参つておりまして、約四百人ばかりの地方の小売屋さん或いは問屋さんと親しくひざを交えて懇談をいたして参つたのでございますが、この地方におきまして、何と申しますか、緊縮政策の心理的影響というようなことになりますか、まあ非常にそういつたことに敏感でございまして、いつもですともうすでに入学期を間近に控え、或いは雪解けを、間近かに控えまして相当購買力が出るのでございますが、今年はもうさつぱりそういつたものが出ておりません。小売屋さんに承わつてみますと、もう物価は今年は一割から二割下るということを政府が言つているのだから買うのはまあ先に延ばしたがいい、こういう意見が非常に多い。従つて、問屋も滞貨の山を抱えて金繰りに苦しんでおる。こういつた状況でございまして、併しまあいずれも今年は景気が非常に深刻化するから、とにかく自分自身でこれを越える決意がなければいかんという真剣な気持が十分見えたのであります。又、私昨日まで関西のほうへ行つておつたのでございますが、この地方でお百にかかつた方々の意見を総合してみますと、物価の引下げなんかもうできるわけなんかない、もう現在輸入削減の見越しでいろいろなものに思惑相場が出ているのじやないか。結局そういうことはできないのであつて、今の政府はいずれ補正予算というようなものを組む時期が来るのだ、今の政府で国民に耐乏生活を強いるというようなことはもつてのほかだ、結局インフレになるのだ、又ならなければ我々死んじまう、最後には為替レートを改訂しなければいかん、そうしなければ輸出はできんのだ、円のレートというと大体五百五十円から六百円ぐらいに切下げよということを言つております。かように、国民の何と言いますか政策の受入れの態度というものが非常に複雑でございまして、私ども素人にはわかりませんが、どうか一つ緊縮政策なら緊縮政策、我々も覚悟をきめていますから、一つそれを堅持して、国民を大いに指導して頂きたい、かようにお願いする次第でございます。
 私の工場のことを申上げて恐縮でございますが、昨年の六月までは大体三百六十名工員がおりましたが、現在は三百三十名に減つております。毎月七、八名の転職者があるわけでございます。この転職して参ります職工はいわば中堅層の非常に優秀な工員ばかりでございます。従いまして、あとに残りますのは高年者ばかりでございましてれこれが非常に生産の合理化を妨げておりまして私は実にこの対策に困つておるわけでございます。これは申上げるまでもなく大企業と中小企業との貸金差が非常に最近多くなつて来ておる結果でございます。一例を上げますと私の工場では現在賃金ベース一万五百円でございます。ところが私の近くに大企業の分工場があるわけですがここは一万九千五百円ずつ払う。約倍でありますから近くにこういう工場があれば職工がそちらに転職しないのが不思議なくらいです。この大企業がいわゆる高賃金、高能率の健全経営ならばこれはいたし方ないのですが、若し政府の助成策だとか或いは救済資金によつてよたよた経営しておるとしましたならば、誠にこれは納得のいかない話だと私思つております。私どもの工場では越冬資金はおろか正月の餅代も満足に支払ができないのが現状でございます。然るにその企業が国家的独占事業と申しますか、相当高額な給与を支給して、且つ少しストをやれば越冬資金何カ月ぶりというような非常にうらやましいことのできまする一つの企業が、こういつた人件費の支出を基準にいたしまして収支が償わないから値上げするというようなことでけどうも我々腹に落ちない、かように存じております。政府におきましても、この賃金問題につきましてはいろいろ御対策願つておるように承わつておりますが、かような中小企業と大企業の資金の不均衡、これは是非是正して頂かなければならない。而も政府が公務員のベースアップなどを行いまして、我々の賃金問題を更に苦悩に陥しいれる、打撃を与えるというようなことは是非慎んで頂きたい、かように存ずる次第でございます。
 中小企業で苦悶いたしておりまする実情といたしまして、商取引の実情を極く簡単に御説明申上げます。私どもの売掛金の回収は、大体一昨年までは手形が半分、現金が半分というようなまあ大体良好な成績でございましたが、昨年の暮から現在に至りましては、現金一割、約手九割というようなふうに売掛回収は悪化しております。而も、手形の期日が非常に長くなつて参りまして、大体平均いたしますと百十日ぐらいの、長期なものになつております。不渡もやはり殖えて来ております。私ども銀行へ参りまして、不渡の場合は勿論でございますが、若し手形が期日に落ちないと直ぐに買戻しの請求を受けます。不渡の場合は期日の前のものまで買戻しの要求を受ける。かような状況でありましては、常に共倒れの危機にさらされておる。いろいろ企業の合理化とか申されておりますがこれはお題目でして、とにかく毎日々々手形の期日と睨めつこをして経営しておるというのが我々中小企業の実情でございます、大企業などでございますと、こういつたときには市中銀行の協調融資或いはそうでなくても増資によつて自己資本を賄うということができるわけでございますが、我々中小企業にはそんなことは夢にも考えられない。過日通産大臣が日商の議員総会の席上で中小企業は救済せずということをおつしやつておるように新聞紙上で私拝見いたしました。勿論全部の中小企業を救済するというようなことはまあ不可能でございますが、如何に人力を尽してもなお且つ及ばないという企業に対しましては、できるだけ滞貨融資であるとか或いは救済融資の途をつけて頂きたい、かように考えておるわけでございます。不況がだんだん深刻化して参りますと、売掛代金の焦げつきが出て来るわけでございます。いわゆる不良売掛金でございますが、例えば百万円焦げつきができた。相手方と話合いまして毎月五千円ずつ返済してもらうというような契約ができた場合、もうこの百万円というものは殆んど売掛金の性質を失つておるのでありまして貸倒金なんてありまして、五千円ずつ毎月頂いておつたんじや十六ヵ年間かかるわけであります。こういうものは毎月入る金は雑収入にして百万円は貸倒れで処分したいというのが我々の気持でございますが、現実には税務署は債権の放棄の確認がなければ損金算入は認めない、こういうことを言われて、泣く泣くこれを資産に計上しておるわけでありますが、まあ中小企業に対する税の問題もいろいろありますが、こういつたことは私非常に残酷な税法である。どうかこれも実情に即した税法に一つ是非改めて頂きたい、かように存ずる次第でございます。
 まあ一口に中小企業と申しましても、主人或いは家族、こういつたもので経営しておりまするところの零細企業、或いは小規模ではありまするが、一応企業の形態を備えておるいわゆる中小企業、それからこういつた階層と大企業との中間にある、何と申しますか中堅中小企業と申しましようか、こういつたものに大別できると思つておりまするが、私どもは従業員が今中しました通り三百二十名、資本金が二千万円でございまして、いわゆる中堅中小企業に属しておるわけでございまするが、これは市中銀行で強力な資金の援助を受けますには小さ過ぎる。さりとて政府で中小企業救済のために設立されましたいろいろな金融機関の対象には適格しない。帯に短したすきに長しと申しますか、まあ宙ぶらりんの階層に属しておるわけでございますが、この中堅中小企業が戦後日本の経済復興に尽しました努力と功績というものは私非常に大きいものがあると自分で確信いたしております。にもかかわらずこういつた階層のものには何ら助成策が講ぜられておらないのが現状でございます。どうかこの階層にも適当な助成策をお考え願いたい、かように存じております。
 輸出についてちよつと申上げます。日本の経済自立達成が輸出の振興にあるということは私どもよく存じております。お蔭で日本の自転車の輸出は戦前は日本の機械輸出の第一位を占めておりましたが、現在は世界の市場は英国に譲つているわけでございます。併し自転車の振興費を活用いたしまして、ここ二三年は東南アジアを中心にいたしまして非常に輸出高は活況を呈して参つております。今後暫く努力をいたしましたならば英国と十分大刀打ができるのではないか、かように存じております。併し東南アジア市場はともかくといたしまして、私どもの一番嘱望しておりますのは中共でございます。私どもは中共こそ我々に残された世界で一番大きい市場である。勿論中共貿易につきましては国際上或いは思想上、政治上、まあいろいろな問題のあることもよく承知いたしておりますが、ともかく私どもは中共貿易の達成か然らずんば餓死かというような悲壮な決心で現在この問題に取組んでおりますが、余りにもこれは政治的に解決して頂かなければならない問題がたくさんあります。どうかそういう方面につきましても一段と御協力をお願いいたしたい、かように准じております。
 正直に申上げまして昨年来中小企業の育成ということは相当私前進しておると考えております。併しまだまだ大企業のそれに比べますと決して満足とは申されないのでございます。今後いろいろ不況が深刻化いたしておりますと、あらゆるしわは中小企業の顧にのしかかつて来るのでございます。勿論我々の危機は我々自身でこれを除く努力をいたしますことは当然でございますが、今後来年度の予算を御審議願います上におきまして、中小企業に対しましては一段の助成策をお願いいたしまして、私の公述を終る次第でございます。
#27
○委員長(青木一男君) 只今の公述に対して御質問がありましたら……。
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#28
○委員長(青木一男君) 次に山口謙三君にお願いいたします。
#29
○公述人(山口謙三君) 只今御紹介にあずかりました総同盟の調査部長をいたしております山口でございます。本日は二十九年度予算につきまして、私たちの意見を述べさして頂く機会を与えられましたことを大変感謝いたしております。先ず最初に今度の予算の性格について私たちの意見を述べたいと思います。
 政府は御存じのように一兆均衡予算によつてデフレを遂行し、国内物価を引下げ、国際収支の均衡、そうして自立経済へ持つて行きたい、そういう意向を、たびたび表明されおります。我我も勿論そうした政府の意向は、現在の日本の経済の実体に触れて見ますならば、無理からんところであり、どうしても我々もそれに協力して、ぜひこの経済の危機をなんとか切抜けて行きたい、そういう感じを持つております。現に昨年の幕も我々は物価引下げを率先して提唱したような次第であります。併し政府の現在やつているやり方についてこれを見まするならば、多少ならずとも失望を禁じ得ないのであります。と申しますのは今度の一兆均衡予算が恐らく堅持されるならば、今も名古風のかたがおつしやいましたように、中小企業への大量のしわ寄せばもう当然のことですし、大企業の場合にもかなりしわ寄せされるものも出て来る。とにかく企業の整備縮小ということは不可避であろうと思います。当然そのうらはらの関係にありますところの失業、半失業というようなものの意味でのいわゆる失業者が、現在生活困窮者が一千万以上と言われております上に、更にこの予算によつて新らしく失業者が加えられて行く、こういうようなことが考えられるわけであります。而も政府はそういうように国民に大出血を要求しながら、一方ではこの予算を見ましても軍事費が直接間接を入れまして約二千二百億本年度に比べまして五百億の増額という形で大幅に軍事費の計上をいたしております。そうしますと、我々としてはその点に多大の疑問を抱かざるを得ないのですが、更に政府は我々に対して自立経済のために多少我慢をしろというような耐乏生活を説かれているのですが、一方では自立経済のためにどれだけの努力をされているのか。例えば財政投融資の一律の削減を見ましても、基本産業に対して我々といたしましては最も重点的な、効率的な設備の近代化のための資本投入をやつてもらいたい。併しそういう意味でのコスト切下げに対する政府の熱意に対して我々はやや疑問を持たざるを得ないのであります。そして政府といたしましてはただMSA援助というような形で何とかこの名機を切抜けようとするように我々は歳ずるのでありますが、御拝じのようにMSAはもはや軍事的な援助でありまして、これによつて今日の日本経済の危機が救われるというような、なまやさしいものではないと考えます。で、そういう意味から言いましても、大体我々に耐乏生活を要求せられておるのは一体何のための耐乏生活か、この点甚だ我々としては釈然といたしかねるのであります。
 御存じのように今日の世界情勢においては米ソの対立というものが多少変つて来ております。それはひと頃言われた冷い戦争の段階から、冷いながらも平和の段階べと進みつつあるのではないかということを我々は感ずるわけであります。と申しますのは最近のベルリン会談、それが来たる四月のジュネーヴ会談へのアメリカの動きと、アイゼンハワー氏が一昨年大統領に就任されたときのあの共産圏への巻返し戦術、その当時のアメリカの行き方と比較しましても大分変つて来ております。又現にそれはもはや原爆、水爆というようなものが一方的な独占でなくなつたということ。或いは又世界中の勤労者ももう戦争はやめてもらいたい、何とか平和でやつてもらいたい、そういうような強い現実的な要求が盛り上つて来ております。そういうような点からいつても米ソ二大陣営としてはいろいろの利害の対立もございましようが、併しこれを何とか平和のうちに解決して行かざるを得ないという現実的基盤ができつつある、こういうふうに考えられるのであります。このことは別の観点から申しますならば、現にアメリカ自身がいわゆるソ連の原爆所有という点からしても戦略計画の長期化、機動化ということが問題になつて来ておるようでございますが、西欧諸国にしても従来のような再軍備による経済の危機回避というような考えでなしに、これを対共産圏との貿易によつて何とか打開しようというような動きにもなつて来ております。従来アメリカに追随しがちなカナダでさえも、今般軍事費を六%削つてこれを社会保障費に廻しておる。又ユーゴスラビアというような極めて東西両陣営のデリケートな立場に立つておる国ですら、予算の総額が殖えても軍事費は減らしております。こういうように世界全体が平和によつて何とかやつて行こうじやないかという空気が出ておりますときに、現在の吉田政府はあえて再軍備という形で日本の経済の再建を図ろうとしておる。ここに我々は大きな時代的なズレがある、少くとも感覚的なズレがあるのではないか。こんなことで我々に耐乏生活を要求されてもそれは少し無理じやないか、そういう感じを持つわけでございます。
 これが我々の今度の予算に対する一般的な意見でございますが、然らばこの一兆予算が具体的に堅持されるとするならばどういう事態が起るかという点について若干触れてみたいと思います。
 これは勿論中小企業への政策的なしわ寄せとなることは当然ですが、大企業におきましても例えば造船を例にとりますと、造船は財政投融資の縮減によつて非常な苦境に陥つております。恐らくこのままで行くならば、六月には全日本の九十九の船台のうち二つぐらいしか仕事を持たなくなるだろうということを言われております。このことは勿論今度の造船疑獄ということと計画造船ということとは別個の問題でありまして我々としては計画造船をぜひ進めてもらいたい。若しこれがうまく行くとして約二十万トン、そのほか輸出船が十万トン、それから保安庁の艦艇建造の注文が商船換算にして約七万トン、大体四十万トンの仕事量が得られるといたしましても、併し現在の造船界全体の稼働能力は七十万トンでございますのでそれは六割に過ぎません。そうしますと四割はどうしても休止せざるを得ない。この点から造船業界においてもかなりアイドルが出るということはもう既定の事実になつております。更に例えば輸出船とか或いは艦艇建造のための発注を受けたとしても、これはおおむね大体その設備関係とかいろいろな関係から超一流大企業に大体受注されるようになります。又今度の造船疑獄によつて弱小の船主から大きな大手筋の船主に発注が集中されるということになりますと、その面からも大きな造船所だけに大体注文が集まる、こういうような形が出て来ております。そうしますと造船疑獄のような大体大きな所でも、より大きな所はますます販路を拡張して行くが、それから外れた企業といえどもかなり縮小整理に追込まれる、こういう点からもかなり造船所においても整理縮小が起る。それから先ほど申上げました中小企業の弱小は勿論であります。こういうような状態になりまして、当然半失業乃至失業の増大が考えられるわけであります。先ほども申上げましたように、大体現在一千万の失業者が生活保護を要する少くとも困窮階層が一千万いると言われております。その内訳をちよつと申上げますと、大体農家で貧困階層に属すると思われるものは耕作面積五反未満の専業農、同様耕作面積三反未満の第一種兼業農、これが合計八十四万世帯四百三十一万人。第二、常雇労働者世帯のうち総理府統計のFIES家計費実態調査によりますと、その一割の労働者世帯が貧困階級に属すると見られておるのですが、これによりますと約四十五万世帯百八十八万人。第三に日雇労働者世帯は全体として貧困階層に属すると考えられますので、これが約三十七万世帯百五十四万人。第四に家内労働者世帯のうち母子世帯が約二十八万世帯九十万人が貧困状態にあると考えられます。第五に失業者世帯は約五十万人でありますが、完全失業者は一人当り扶養家族を約一・七に推定いたしまして約百三十五万人。第六に老齢傷病その他世帯主の労働力を喪失した世帯が現在約三十万世帯、七十四万。まあ以上六つの点を合計しますと一千七十万というのが大体生活困窮層として官庁統計によつても出されるのでございます。で、この上更にこの一兆予算が堅持せられました場合には、更に官公労働者の七万、電源開発関係、公共事業関係の縮小による二十万、造船その他関連産業の十二万、鉄鋼その他が五、六万、合計四十万。更に景気変動の一番波をこうむりますところの流通部面における卸商、小売商の失業と、それを加えますと全体として大体百万近くなるのじやないか、こういうふうに大体推定されるのでございます。
 このような事態に対して政府としては一体どのような対策を立てられているのか、差当つて我々としては、その社会保障関係費を見ますと約八百億足らずの計上しかされておりません。その主たるものは生活保護費の二百八十億で、この二百八十億は大体要保護者が一千万と言われておる現在に対して、大体七十万世帯、二百万人の生活救済を対象としているに過ぎません。又失業対策費として二百五億を計上いたしておりますが、それはいわゆるニコヨン、日雇労働者の現在の三十七万世帯、百五十四万に対してそれの吸収人員は一日当り十六万三千となつております。で、その収入も月二十一日間まるまる働いたとして六千円足らずに過ぎません。更に失業保険の対象となつているのは四十七万でありますから、今度新らしくできる失業者は殆んど対象になつておりません。こういうように失業対策を見ても殆んど新らしい失業者に対しては何ら考慮が払われておらないのですが、最後に社会保険の一環として厚生年金の保険の問題にちよつと触れてみたいと思います。
 これは我々としましては、勤労者が老後唯一の生活を保障される糧となるものでありますが、現在厚生年金勘定は大体この年度末には八百億と推定されております。この利息が大体事務費を差引いても昨年度二億四、五千万円、こういうふうになつております。これに対して政府の大体国庫負担金はこれと同額でありますので、政府としては別に厚生年金のために負担しているとは言えないのでございます。ただもう一つ問題としましては、厚生年金は戦前からこれを積立られ、いわゆる強制加入をせられまして、平均収入の一割という高額の保険料が徴収せられておりました。この金がかなり積立られておるのでありますが、これに対して御存じのように終戦後のインフレによる貨幣価値の下落、この一面からの保障が全然されておりません。こういうような点を考えますと、今度の予算によつて大体政府は一般に対して、一割五分、坑内夫に対して二割の国庫負担をするように計上しておりますが、併しこの程度のものではなしに、我々といたしましては一律少くとも三分の一程度の国庫負担をして頂きたい、こういうふうに考えております。以上によりましても社会保障費が極めて貧弱なものであるということは言えると思います。
 これに対して軍事費が、先ほど申上げましたように大体二千二百億であり、而も本年度のいわゆる未使用金の繰越が相当あるんじやないかと思います。恐らく一千億とも言い或いは八百億とも言われておりますが、こういう金を加えますと大体軍事費のための計上が三千億円近くになるんではないか。結局我々といたしましては、こういうふうに厖大な軍事費が一方において出され、而も一方においては自立経済のための国民の大出血を強要せられておるとするならば、その点について我々としてはどうしてもこのままでは困ると、こういう感じを持つわけでありますが、現に政府は一兆予算々々々々と言いながら、物価においては消費者物価のごときは上る一方でございます。又思惑輸入の様子を見ても儲ける人はしたい放題やつておるように思います。この際我々としては、このような調子で行くならばこの秋頃にはえらいことになるんではないか。外貨の減少から思惑輸入をあおつて恐らく政府のデフレ政策は破れ、インフレ政策への一再転換が起るんじやないか。そういうような考え方が大分強まつておりますが、現にニュース・ウイーク、ビジネス・ウイーク等外国の雑誌をちよつとのぞいてみましても、日本経済に対しては極めて悲観的になつております。恐らく日本経済最悪の事態になるというようなことを言われておりますが、こういうようなときに当つて我々が一番遺憾に思いますのは、現在の政府は、この強力な指導を期待されているときに当つて疑獄事件に引かかり、或いは保全経済会というような問題ですつたもんだしているということであります。我々としてはこのような弱体な政府の下では耐乏生活を強要せられてもそれは困る、それではついて行けない、こういう感じを強く持つわけでございます。
 どうか諸先生方におかれましても、何とぞ勤労者大衆の生活ということの根本的な立場に立たれて、日本の自立経済のための予算の再検討をお願いしたい次第でございます。御清聴を感謝いたします。(拍手)
#30
○委員長(青木一男君) 只今の公述に対して御質問のおありのかたはお述べを願います。……ないようでございますから、ありがとうございました。これにて公聴会を閉じます。会議を散会いたします。
   午後三時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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