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1953/03/26 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 本会議 第23号
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1953/03/26 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 本会議 第23号

#1
第019回国会 本会議 第23号
昭和二十九年三月二十六日(金曜日)
   午前十時三十七分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二十三号
  昭和二十九年三月二十六日
   午前十時開議
 第一 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(趣旨説明)
 第二 統計法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第三 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第四 商品取引所法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
    ―――――――――――――
#3
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
#4
○森崎隆君 私はこの際、原爆被害緊急処理に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#5
○天田勝正君 私は、只今の森崎君の動議に賛成いたします。
#6
○議長(河井彌八君) 森崎君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。森崎隆君。
   〔森崎隆君登壇、拍手〕
#8
○森崎隆君 去る三月一日早暁、アメリカ合衆国の原子爆弾実験場ビキニ環礁附近立入禁止区域東線より約十九カイリ外、即ち北緯十一度五十三分四分の一、東経百六十六度三十五分四分の一の海上におきまして、まぐろ漁業操業中、原子力爆発の非戦時におけるこれ又最初の被害を受けて帰りました日本漁船第五福龍丸、約百トンでございます、乗組員二十三名でございます。この事件に関しまして、政府関係大臣に御質問申上げたいと思います。
 事件後一カ月近く、又同船帰国後すでに二週間も経過いたしておる今日、国民が、この問題は周知し尽している事件でございますが、その件につきまして今更お尋ねをしなければならないということは、誠に私としましても遺憾に存ずる次第でございます。この事件は、全国民の重大な関心事でございまして、政党政派を離れて、速かなる政府の善処に大きな期待を持つていたのでございますが、この十数日間各委員会における政府の答弁その他の発表は、ますます大いなる不安を我々に与えつつあるからでございます。
 先ず外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。
 政府の今日まで続けられた対米か渉、この問題についての対米交渉の中間報告を詳しく頂きたいと思います。十六日、米大使館より口頭を以て真相調査の申入れがあり、十八日には米国務省より、日本と協力調査の発表がありましたが、関係閣僚会議でアメリカと共同解決をするとのことでありまするが、共同解決とは具体的にはどういうことであるか、その御説明を先ず願いたいと思います。私は政府といたしましては、何よりも先ず第一に、自主的に第五福龍丸が遭難当時の位置をみずから早く確認するということ。第二には、当日当時の爆発実験について公海上の船舶に注意が十分に徹底せられていたかどうかを明確にすること。第三には、立入禁止海域の設定に誤差がありとすれば、重大なる責任がアメリカ側にあるのでありますから、このことにつきましてアメリカにはつきりと確認をせしめること。同立入禁止団域は、米国と国際連合との間に結ばれておりまするところの太平洋信託統治協定第十三条のセーフティ・ゾーンの項によりまして設定せられたものとして、外相はその正当性をアメリカに代つて非常に強調されておるようでございまするが、大砲の射撃とか、飛行機の爆撃演習等と違いまして、水爆か、或いはリチウム爆弾か私は存じませんが、その大いなる原子力の爆発実験という、製作者自身のプランもふつ飛んでしまつたような、こういう大きな実験が果してどういう名目で公海において許され得ると考えられましようか。これは明らかに公海の自由と抵触することは勿論であるし、その海水、魚類に及ぼす影響の重大性に鑑みましても、日本国政府としては当然かかる演習地に公海が用いられることには反対の態度で、毅然たる態度で交渉すべきであつたと私は信ずるのでございますが、外相のこの点に関する御意見をお尋ねしたいと思います。
 更に、この危険区域をエニウエトク並びにビキニを中心とする約六倍、即ち半経四百五十マイルに拡大されたことを米国は通告しておられますが、これは一体どういうことでございましよう。国際法規というものは、外相がしばしば各委員会で肯定しておるように、一方的利用のための宣言でよろしいのでしようか。少くとも原子力の実験については、我が国こそ確固たる信念を以ちまして、これを拒否しなければならない立場にあるはずであると私は考えております。若しこのクローズド・エアリアの拡大の宣言が許されるとするならば、日本の漁船の漁業の自由はどうなることでございましよう。又更に強力なる爆弾ができまして、又更にこれに数倍する半径の地域の拡大が図られたならば、そのときは我々は自己の生命の危険を冒してもこれを承認しなければならないと大臣はやはりお認めになるのでございましようか。この点をはつきりと一つ伺いたいと思います。
 ここに金持の子供があるといたします。広場でボール投げをやつておる。家のガラスがしばしば壊れますが、子供がそのガラス破片で怪我をいたしまして抗議を申込むと、相手のほうでは、まり投げのクローズド・エアリアを一方的に六倍に拡大宣言をしまして、当方のほうの立退きを要求せられた場合に、あなた方は一体これをどう考えるか。公海とはまさに原則的にはこれとちつとも変らない。広場の例と同様のものであろうと思います。而もこの南方のまぐろ漁場というものは、日本漁民の長い間の苦心で以て開拓したものであります。政府は米国のこの通告前に、公海の漁業操業の権利を主張して、海洋の一切のものを危険にさらすビキニ環礁における爆発実験を即時中止して、米国本土内において自由に実験されたい旨の忠告をこそ発すべきであつたと私は思います。(拍手)今からでも遅くはございません。この措置をとられるような意思が今もあるかどうか、はつきりとお伺いいたしたい。
 今日の制限海域拡大の通告は、我が国まぐろ漁業には重大な影響を与えております。漁場の致命的縮小ということにもなりまするし、又南方漁場へ参りますためにも、このためには往復約十日間ほどの迂回航路をとらなければならない。これによつてとつたまぐろの鮮度が非常に低くなり、漁獲量の減少というものがあります。又航行に要する油の消費量も増大して参りまして、その受ける被害は、当該漁場に出漁する漁船にとりまして重大なるものがございます。
 次に、第五福龍丸を消毒のために横須賀海軍基地へ回航するよう米国の要望があつたと土谷局長は或る委員会で申されております。又同船は政府で買上げた上、米国へ贈与するとの噂もあるようでございますが、その真実はどういうものでございましようか。若しそういう意向が少しでもあるとすれば、これは実に重大なことであると私は考えております。偶然にも死の灰を浴びて帰つた第五福龍丸は、乗組員等の生命を賭した非常に貴重な資料であるはずでございます。東大調査団の報告によりますと、ストロンチウム九〇、バリウム、ランタン、アンチモン一二七、リチウム一〇六、セリウム一四辱のいろいろな諸元素が含まれておるということでございます。ストロンチウム九〇は、昨日の報道では不確実のように言われておりまするが、若しこれありとすれば、二十五年経ちましても、なおその放射能は四分の一にしかならないといつた恐ろしい放射能でございます。この被災船の持つ意義は実に重大なものでございます。これを永久保管いたしまして、原子力の平和的利用の研究に資する考えはおありかどうか。外相の立場に立つてお答を願いたいと思います。
 如何なる理由を以ていたしましても、本事件について我々の主張に対する反対を許すべき理由は何もございません。又政府が無節操なためらいをして不決断な返答をするがごときは、国民を愚弄するものであると、我々は考えております。(拍手)外相はその所見をはつきりと発表されまして、政府の態度を明確にせられたいと思います。世間では、これは私の言葉ではございませんが、国民的良心と節操の皆無省とまで悪口に言われているときであります。対外交渉には毅然とした信念の上に立つて堂々と主張してもらいたい。今までの発表を見ますると、かかる重大な事件にもかかわりませず、何かアメリカの指示を受けてその指示を国民に伝えている機関に過ぎないような印象が非常に濃厚でございます。(拍手)飽くまでも日本政府の外相は、独自の発表をして堂々と国民の要望に副つた立場で、あらゆる発表を積極的にいたしてもらいたい。以て国民の不安を除いてもらいたいと思います。
 次に、厚生大臣にお尋ねいたしまするが、時間も来たようでございまするから、私は省略して、(「まだまだ」と呼ぶ者あり)第一は、まぐろを初め魚類の食料としての安全性の確保でございます。厚生省では、いろいろとこの問題について各委員会で答弁なさつておりまするが、その答弁にもかかわりませず、国民の恐怖心が未だ去らないのは何故でございますか。それは宣伝啓蒙が足りないという簡単な問題ではなく、大衆即叡智でございます。大衆は智慧でございます。即ちこの問題の深刻性を国民は早くキヤツチしておる。政府の一方的な発表では、簡単には信頼できない。それほど重大に考えているのであります。この問題を何か国民の目から、できれば隠したいといつたような、姑息な考えの上に立つた行動が、どうも私たちには窺われてならないのであります。今国民は、経済的には疑獄と汚職に脅かされて、毎日の食膳では放射能に脅かされているのが実態なのであります。こうした恐怖心を、さるアメリカの無謀なお方のごとく、日本人は大げさに物事を宣伝し騒ぎ過ぎるといつたような、こういう実に不届き極まる考えでは、民生安定は期し得られないのであります。特にお尋ねいたしたいのは、第五福龍丸、以後帰港されましたところの漁船の積んでおりましたまぐろには、果して本当に反能がないのか。食膳に供しても本当に安全であるのか。この点は十分一つ責任を持つた御答弁を頂きたい。これを特にお願い申上げたいと思います。
 第二に被害者の治療の問題でありますが、東大で増田三次郎君を初め、被害者の放射能症と闘い、治療と研究に全力を挙げていられる清水健太郎博士等に対しては心より敬意を表するものでありますが、これらの治療費について厚生省はどういう措置をされておりますか。米国よりの賠償が来るまで患者並びに医師等の自費に任せきりでおられるつもりでございましようか。或いは具体的にどういう計算に立つて暫定的な処置をなさろうとしておりますが、特にカルシウムとかいろいろな諸元素の体内潜入については、早急に診断をして処置しなければならない重大な段階であることを御認識の上に立つて、早くこの予算措置についてお願いいたしたいと考える次第であります。農林大臣に一言お尋ねいたします。今回の事件は甚大な損害と恐慌を日本水産業界に与えたことは御存じの通りであります。第一は、南方のまぐろ漁場はまさに危殆に直面しています。大臣が曾つて水産政策の基本として発表されたように、日本漁業の遠洋化という重大な基本に立つておるのでございますし、今後の漁場確保について如何なる考えを本当に農林大臣は持つておられるか。農林大臣の立場からこの問題に対して御説明を頂きたい。第二には、目下漁業者は、太平洋漁業対策本部を設置して被災並びに被害救援対策に努力していますが、政府は特にこの損害補償を如何に考えておられるかお尋ねいたしたい。
 去る三月十五日朝は、普通まぐろも最高は二千五百円程度の値は維持されておりますが、十八日には暴落を示して十九日にはせり市も止つてしまいました。きはだ、びんちよう、さめ又同様であります。試みにまぐろ一日の国内消費は二十五万貫といたしましても、最初三日間はその三分の二の値段が切下げられておりますが、その損害だけでも約一億五千万に達しております。これに売行不振や魚の抱え込みの損害は計り知れません。その後値段は五割程度の値下げになつておりますが、まぐろを頂点といたしましてその他の一般魚貝につきましても、二〇%乃至二〇%の値下りがございます。これはすでに十日間続いております。月の魚貝類の消費を日本全国で一億万貫といたしましても、その損害は巨大なものでございます。これらはみな直接被害に該当いたすものであると私は考えております。まぐろの不振、一般魚類の暴露、魚市場の休業、ひいては魚屋の休店、これに続いては飲食店の被害又甚大であります。これらの損害に対して調査の結果並びにこれが補償対策をお伺いいたします。
 第三に、まぐろを主とする魚貝類の輸出は、冷凍物罐詰をも含めて実に年間十数億円に上り、重要な輸出品目であります。伝えられるアメリカ商社の輸入停止の通告は、若し真実とするならば、重大問題であります。当然その責任は、アメリカ政府にあると考えておりますが、御意見を承わりたいと思います。
 以上三大臣に対する質問で十分おわかりの通り、日本国は、先には戦時中とは申しながら広島、長崎に、二発の原爆を受け幾十万の非戦闘員を焼き尽し、人道上の問題として長く青史にも記されるであろう近代戦の戦禍の凄惨さを経験しています。我々は今又平和時において、これに幾十倍する原爆実験の被害を受けました。チャーチル英首相は去る二十三日、原子兵器の使用についての米英の協議に関する発言の際は、水素兵器の恐怖に言及して、感情で声はかすれ眼に涙さえ浮べたと報ぜられています。今度のビキニ被災を以て全世界の識者は初めて目がさめたごとく、人類が何をなしつつあるかに思いをいたして愕然としているのであります。真に平和を愛する政治家であるならば、原子力戦争が如何なるものであるかは自明の理でありましよう。今や人間は己れの智慧で作り上げたこのフランケンシュタインに己れを亡ぼす危険を警告しなければならない段階に立ち至つているのであります。総理は、今こそ一大反省をされて、民生を圧迫して原爆戦争でも起れば原爆の下をはい廻らねばならないような傭兵的再軍備を即時中止して、日本国憲法の精神に立ち戻り、一つ、アメリカに対し公海における原子力実験の停止を強く要求し、二つには、原子力の国際管理と共に、全世界にこれが秘密の公開を米・ソ両国に要求し、三つ、全世界の平和愛好国民の代表を以て原子力委員会を組織して、平和的利用の研究を提唱する意思はございませんか。又その前提としての日本国独自の総合研究委員会設置の意思はございませんか。これこそ日本国でなければなし得ない要求であり、崇高な権利であり、又誇るべき義務でもあります。
 次に補償についてお尋ねいたします。従来基地、演習場等に対する損害補償の方法は、実に遺憾に存ずるものがあります。例えば米軍以外の国際連合の軍隊による損害補償は、二十七年度分以来全然なされておりません。補償額が決定するまでは全く被害者の負担のままであります。全国では多数の基地等でこの補償を待つていては食えない憐れな人は、自己の権利を放棄しまして、どこかに移住してしまつたという例もたくさんあるのであります。ビキニ被災事件後政府が直ちにとらなければならなかつた措置の一つは、実にこの具体的な補償を暫定的に決定してこれを即時実行することであつたのであります。一体アメリカからの補償費が出るまで無為無策で待つておられましようか。私は直ちに生活に窮しつつある被害者並びにその家族に対して取りあえず補償の一部を支払いすべきことを要求します。このたびの治療には、普通の場合と異なりまして研究しつつ治療しなければならないという特殊の苦心がございます。この御苦労されているところの医療陣、科学陣の研究費並びに治療費を早急に予算化する意思はないか。第五福龍丸は実に貴重な資料でございます。早急にこれを国家管理いたしまして我が国の研究に資する意思はないかどうか。第四に、直ちに明日の漁撈のために代船建造、漁具の整備等、第五福龍丸の再生のための早急予算措置をする意思はないか。三月十八日の朝日新聞掲載の「不幸な漁夫たち」というこの記事を総理はお読みになつたのでございましようか。私はこの記事を読みまして涙がたらたらと流れて参りました。四面海に囲まれました日本の漁民がその怒濤と戦いながら、国民の蛋白給源のために闘つていられるこの姿を、あなたは一度でも偲ばれたことがあるでございましようか。汚職と疑獄のもみ消しに狂奔している間に、民生を圧迫して、おもちやのような再軍備に熱を上げている間に、日本漁民には李ラインの問題、アラフラ海の締め出し等、公海における自由が踏みにじられつつあるのであります。すでに幾百カ所の演習場では、漁場は取上げられております。生活の基礎は根抵から覆えされております。而も国家補償は当てにはならず、今又南方の漁場を求めて血みどろの操業中に、この惨事でございます。この不幸な漁夫たちは、即ち一握りの大資本の人々を除いた国民大衆の明日の姿でないと誰が言い切れましよう。
#9
○議長(河井彌八君) 森崎君。森崎君に申上げます。制限時間が参りました。
#10
○森崎隆君(続) 時間が参つたと議長から御注意がありましたので、あとニ枚でございまするが、これで割愛いたしたいと思います。どうぞ私たちの意図するところを十二分にお汲み頂きまして、政党政派を超越いたしまして、全国民の将来の生活安定、精神的な安定をもお考え頂きまして、良心的な御答弁を御親切に頂ければと存ずる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 今回のビキニの出来事によりまして原子力というものの威力というものが如何に大であり、又将来考えなければならないものであるかということをまざまざと見せられた感じがいたします。これにつきましては、政府はあらゆる角度からこの問題の将来を研究すべく目下その措置を急いでおります。なお、今回の第五福龍丸に関する善後措置につきましては、第五福龍丸は政府において買い取りまして、その代船建造にも資する所存であります。なお被害漁民に対しましては、被服等の損害補償、それから医療、生活等の費用の補償も政府において十分いたすつりでございます。
 以上、御答え申上げます。(拍手)
   〔国務大臣草葉隆圓君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(草葉隆圓君) 食料の安全性確保はどうだという御質問の御要旨と承知いたしますが、食料の問題、殊にまぐろ等の問題につきましては、現在の科学の力を以てなし得る最大の方法を以て検査をし、処置をいたし、殊に南方から参りまする漁船につきましては、五つの漁港を指定してそこで全部検査の結果市場に出しておりまするので、全国民御安心を頂いて食膳に供して頂きたいと存じます。何ら不等はないと確信いたしております。その後のまぐろにつきましても同様でございます。
 なお、治療につきましては、現在二十三名のうちで二名が東大附属病院に入り、他は焼津の北病院に入つておりまするが、治療の万全を期しまするために、近く焼津におる人たちも東京へ移して、あらゆる科学の力を総合した治療の万全を期する考えで、現在準備を進めておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣保利茂君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(保利茂君) 私ども水産当局者として、お話のように東支那海、或いは李承晩ライン、或いはアラフラ海というような、我が国漁業の発展の上の大きな障害を如何にして打開して参るかという点に苦心をいたしておりまするときに、今回のビキニの事件は、さなきだに困難を極めております我が国漁業にとりましては、重大な関心を払わざるを得ないことは申すまでもないことでございます。そこで私どもとしましては、三月一日の被災事件によつて、漁業当局者としてアメリカ側に補償を要求すベき損害の調査、査定及び今後この種のことが行われるとして、その影響如何という基本的な調査をいたすことが最も大事である。それで補償を要求すべきものは当然要求しなければならん。そういうことで損害の調査を急いでおります。
 第二は、その後拡大せられたという危険区域の拡大によつて今後のまぐろ漁業にどういう影響を与えるか。お話のように、この危険区域以南の南太平洋にまぐろ出漁をいたしておりまする漁船は、百五十トン以上の漁船は約百五十隻ほどに達するのでございますが、この区域が拡大せられることによつて往復三百カイリの航海を余計しなければならん。こういうことが何らか緩和の方法がないかどうかということにつきましても検討をいたしまして、アメリカ側に要請すべき点は、私どもは国際問題とは別にして、日本の漁業当局者として、当然いたさなければならんということで検討をいたしております。
 なお、このビキニ事件によりまして、我が国の鮮魚に対する消費者の不安が、お話のように非常に大きい深刻なものがありましたが、同様なことがアメリカの消費者にありまするということは、お話のように相当大きなまぐろ輸出をいたしておるわけでありますから、従つて日本から輸出する冷凍或いは罐詰のまぐろに、何らそういう心配がないという措置をアメリカ側が講ずると同時に、アメリカの消費者に、徒らなる不安の念の起らざるよう措置をしてくれることを強く要請いたしておる次第でございましてこの点は、日本から輸出しておりますものがアメリカの港に到着しました場合に、アメリカにおきましても一々検定をいたして輸入をいたして、その処置をとつてくれておるわけであります。そういうことは、我々漁業当局者としては、当然やらなければならないことは、これはもうどうしてもお願いをする考えで当つておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(岡崎勝男君) 第一には、日米共同解決ということを言つておるがどうだというお話でありますが、そういうことはありません。我々のほうでは、日本側が当然主体となつて医療その他に尽すのでありますが、その間若し必要があれば、米国側の援助を求めることにいたしております。(「援助とは何だ」と呼ぶ者あり)
 福龍丸の地位確認につきましては、只今急いでおりますが、これは米国側に対する関係においては、その地位が仮に外であろうと内であろうと、必要な補償は当然なさるべきものと考えております。危険区域の設定につきましては、国際法上の先例はたくさんあるのでありますが、それと同時に、各国もお互いに協力する建前をとつております。併しながらこの新らしい爆発に対する先例がないことは、これは当然であります。そこで原子力の国際管理ということにつきましては、只今副総理からも申上げました通り、これは是非なさるべきものと考えておりまするけれども、なお我々も、これに効力すべきことは当然と思つておりまするが、それができまするまでは、この両陣営お互いに研究を進めておるのでありましてその際自由主義諸国側の実験のみを妨げるということは、我々のとらざるところであります。ただ、その間におきまして我が国の漁業が如何に損害を受けるか。この点につきましては、只今農林大臣が申されました通り、この漁業の損害等につきましては、米国側と交渉して必要の措置をとることは当然と考えております。只今それを進めております。なお、福龍丸の問題につきましては、これを今後使用できるかどうかということは、甚だ危ぶまれておるのでありますので、先ほど副総理が申されました通り、船主の困難も考えて、政府で買上げる方針をとつておりまするが、これを如何に処分するかということは、まだ決定はいたしておりません。要するに決定はいたしておりませんが、その方針は、第一には、爆発に対する機密を得んとする努力が各方面で行われておりまして、自由主義諸国の一員としては、この機密保持にできるだけ協力いたして、第三国等にこれが渡らないように努めなければならないと考えております。第二には、この放射性能がこの船にある場合に、これを如何に除去するかということについての研究を進めるべきものと思いまして、この機密保持と放射能除去の研究と、二つの目的に一番適するような方法でこの船の処分を、或いは処置を決定いたしたいと考えております。
    ―――――――――――――
 なお、この際、戸叶武君からの御質問のお答えを留保しておりますので簡単に申上げます。
 第一は、絹織物等に対するアメリカの輸入制限に対して、外務省はどういう措置をとつておるか、怠慢ではなかつたかという御質問のようでありますが、これは先般から可燃性織物の危険防止ということについては、アメリカ側で問題となつておりまして、当初は一九四五年にこの問題が提起されましたが、議会を通らなかつたのであります。その後最近においては、セーターとか、子供用のカウボーイのパンツとかの危険性が非常に説かれまして、各州で立法措置を考えておりまするために、昨年六月に連邦の法律ができたわけであります。当時は我が国から輸出される絹スカーフ等の米国関税引上げ阻止の努力をしておりまして大統領がこの引上げ要請を却下いたしたのでありますが、これらの交渉を通じまして米国側の輸入業者を初め、米国当局も可燃性織物法のことには全く触れておらず、又本法の議会通過後にも、これは実際に絹織物には適用されないのではないかという考えもありまして又その発端が特に化繊織物でありましたために、日米両国間の業者も本法の影響を余り憂慮しなかつたのでありまして、又昨年九月ミラノで開かれました世界絹業大会においても、これは米国初め、各国の絹織物業者が参集したのでありますが、このときも別に問題にならなかつたので、実は余り大したことにはならんという観測も一部にあつたのでありますが、極く最近に至りまして、これが厳格に適用されるという動きがあり、絹織物に少からず影響を受けるのじやないかという懸念が急に増して来たので、対策を講じておりますが、こういう事情で対策が遅くなつたことについては、誠に残念に思つております。(「残念では済みませんぞ」と呼ぶ者あり)これはMSAの交渉等に気をとられて忘れておつたのだということは全然ないのであります。又外務省としましては、通商関係の事項については、あらゆる費用、あらゆる人をこの方面に向けておりまして、まだ十分なる費用或いは人員を得ているとは申されませんが、通商条約とか、貿易支払協定とか、或いはその他の国際機関との協力、市場開拓、通商使節団、或いは在外公館の充実等に十分努力をいたしておるつもりでありまして、又そのために在外公館には、通産省を初め関係各省の人も公館員の一部として派遣いたしておるようなわけであります。
 それから第二のお問いは、この法律が厳格に実施された場合の日本の打撃はどのくらいかというようなことのようでありますが、これにつきましても、どの程度実施されるかということに勿論よるのでありますが、若しも従来対米輸出のあつた絹織物及び絹製日中、五匁以下のものが高度の可燃性の範囲に入ると想定されますと、その結果、絹織物等の対米輸出は半減する慮れがあるのであります。なお、ビニールとか、プラスチック等の化繊につきましては、対米輸出の実績が殆んどありませんし、綿製品については、その影響が考えられておりません。絹製品につきましてのみ約九七%が、日本品は絹スカーフと絹ハンカチーフでありますので、この二品目を本法の適用から除外するように、只今あらゆる努力をいたしております。
 第三に、こういう法律については大統領が拒否権を使うということはどうか。これについて努力する意思はないかというお問いでありますが、御承知のように、関税引上げ等につきましては、大統領が拒否権を行使することは互恵通商協定法に規定されておりますので、先般の絹スカーフの関税引上げ運動についても、この点に着目して交渉したのでありますが、今回のは関税引上というようなことではないのでありまして、法律でありますから、これについて大統領の拒否権ということは考えられないと思つております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
   〔戸叶武君発言の許可を求む〕
#15
○議長(河井彌八君) 戸叶君。なんですか。
#16
○戸叶武君 この間、外務大臣の御答弁を得られなかつたのですが、今日の御答弁では不満足ですが、時間も残つているはずですから、再質問したいのですが……。
#17
○議長(河井彌八君) 今日は、再質問は許しません。
     ―――――・―――――
#18
○議長(河井彌八君) 日程第一、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(趣旨説明)
 本案について国会法の第五十六条の二の規定により、内閣から、その趣旨説明を求めます。木村国務大臣。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(木村篤太郎君) 今回提出いたしました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案につきまして提案の理由並びにその内容の概略を御説明申上げます。
 御承知のごことく、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定は、本年三月八日調印を完了いたしまして目下、国会の審議をお願いいたしている次第でありますが、同協定の第三条第一項及び附属書Bの規定に基き、アメリカ合衆国政府から供与される秘密の装備品又は情報等について、その秘密の漏せつ又は漏せつの危険を防止するため必要な措置を講ずる必要があり、且つ又、過般締結いたしました日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定第七条により、アメリカ合衆国から貸与される船舶についても同様その秘密を保護する必要がありますので、これを併せて規定し、この法律案を提出することといたしたものであります。
 申すまでもなく、アメリカ合衆国は、他の諸外国との間におきましても、右両協定とおおむね同様な性格、内容を有する協定を締結しているわけでありまして、これら諸外国においても又、これらの協定に掲げられている秘密保護のための所要の措置を講ずる必要があるわけでありますが、諸外国におきましては、それぞれ、この種の秘密保護に関する既存の取締法令によつて十分にこれを賄うことができますので、これらの協定の締結に当り、新たに立法措置を講ずる必要はないのでありますが、わが国の場合においては、在日米軍の機密を保護するための所謂「刑事特別法」の外には、この種の秘密を保護するための一般的な取締法令は存在しないのでありますから、現状におきましては、これらの協定に基いて供与される秘密の装備品又は情報等についてその秘密を十分に保護することはできない状況にあります。このため、政府といたしましては、この際、その秘密を保護するために若干の規定を設ける必要がありますので、この法律案を提出いたした次第であります。
 併しながら、この種の法律は、国民の権利に重大な影響を及ぼす虞れがあることに鑑み、以下において申述べますように、必要最小限度の事項を規定するに止めた次第であります。
 次に、この法律案の内容の概略について申し述べます。
 この法律案は、六カ条と附則一項からなつておりまして、第一条は、この法律において使用する言葉の定義を定めたものであります。特に、この法律において保護する秘密については、前に申述べました両協定によつて供与された装備品又は情報等のうち特定事項に限り、而も公けになつていないものと規定して、その範囲をできる限り明確ならしめるよう考慮いたしました。第二条は、更に、国民が秘密事項を具体的に認識し得るよう、又併せて秘密の漏せつを防止するため、政令で定めるところにより、標記その他の措置を講ずることといたしました。次に、第三条から第五条までは罰則でありまして、秘密を探知又は収集する罪、秘密を漏らす罪、業務上の秘密を漏らす罪、過失により業務上の秘密を漏らす罪等を規定したものであります。又これらの規定について定めていまする法定刑につきましては、前に申述べました刑事特別法等を参酌し、妥当を期したものであります。第六条は、自首減免についての規定であります。
 以上、この法律案につきまして概略御説明申上げた次第でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
#20
○議長(河井彌八君) 只今の趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。長谷山行毅君。
   〔長谷山行毅君登壇、拍手〕
#21
○長谷山行毅君 私は自由党を代表いたしまして只今上程になりました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案につきまして、政府に対し若干の質問をなし、その所信を質したいと存じます。
 この法案は、その名の示す通りにMSA協定等に伴う秘密保護法案であります。政府は先きに調印いたしましたMSA協定の第三条におきまして、秘密の物件、役務又は情報等についてその秘密の漏せつ、又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置をとることの義務を負つたのであります。我が国がMSA協定によて米国の秘密とする兵器その他の供与を受ける以上、その秘密の保全に協力するのは当然でありまして、この種の立法が必要であるということについては我々は何ら疑念を差挾むものではありません。従いまして、私はこの種の立法について基本的には賛成の立場に立つものでありまするが、ただこの法案には、なお不十分と思われる点、或いは不明確な点、或いは将来に亘つて若干の危惧を感じさせる点等がありますので、以下これらの諸点について政府の御所見を伺いたいのであります。
 先ず第一に、この法律はMSA協定等に伴う秘密保護法であります。然るに、政府は今回保安庁を改めて防衛庁とし、保安隊を改めて自衛隊とする濃案を提出して、自衛力の増強を図ろうとしております。自衛隊の任務とするところは国の防衛であります。国の防衛にはあらかじめの防衛の計画を立てることも必要でありましようし、その目的に副うように隊員を訓練するための計画を作ることも必要でありましよう。又防衛庁設置法案は、これらの事項につきまして統合幕僚会議を設けることにいたしまして、その幕僚会議におきましては、防衛計画、訓練計画のごときが作られるのでありまするが、これら国の防衛を全うする上から見まして、これらの計画は、最高度の秘密を要求するはずであると考えるのであります。若しこの種の計画が外国に筒抜けになるようなことになりますならば、防衛の完璧を期し得ないことは申すまでもありません。然るに、ここに提出されております秘密保護法案は、もつばらMSA協定等によつて供与せられる物件、情報等に関するものでありまして、国の防衛計画、自衛隊の訓練計画、或いは後方補給計画、その他重要施設等には何ら触れることはなく、これに対しては従来通りこれを探知することも、それに関する資料を収集することをも全く自由に放置されておるのであります。併しながら、これらの計画が最高度の秘密事項であるということは、政府といたしましても当然そのようにお考えであると思いまするが、保安庁法の改正及び本法の制定を機として、こういう日本独自の秘密についても適切な保護の途を講ぜられなかつたのは一体如何なる理由によるものであるか、或いは近い将来にそうした法案を提出されるお考えがあるかどうか。その点を政府にお伺いいたしたいと思うのであります。
 次に、第二といたしましてお尋ねいたしたいことは、本法によつて保護せらるべき秘密は日本の秘密であるか、それとも米国の秘密であるかという点であります。この法案の第一条は「防衛秘密」の定義を与えておりますが、これを読んでみますると、ここに揚げておる事項、物件、情報等はすべてアメリカから供与せらるるもので上ります。従つてその供与される装備品、或いは情報などで、防衛秘密とされるものは、これはアメリカが秘密にしなければならないもの、つまりそれを探知されたり収集されたりしたならば、アメリカの安全を害するからして、アメリカとしては秘密にしておきたいものに限られると考えられるのであります。して見ますれば、防衛秘密なるものは、実質的にはアメリカの秘密であると読めるのでありまするが、そのように解釈してもよろしいかどうか。この点を特に問題とするのは、第三条第一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて」云々という文字があります。これによりますと、又防衛秘密は日本の秘密であるかのようでもあるのであります。このように考えてみますれば、この法案によつて保護せらる、べき防衛秘密なるものは、一体どこの国の秘密なのか。日本の秘密であるのか、アメリカの秘密であるのか、或いは日米両国に共通するものであるか、疑問を抱かざるを得ないのであります。将来この法律を施行して行く上に、この点が漠然としておつたならば、思わぬ紛争が生じて来る虞れもあろうかと思われるので、この点の解釈を明瞭にして頂きたいのであります。
 第三にお尋ねいたしたいことは、本法案とMSA協定との関係であります。その第一点は、只今木村国務大臣の提案理由の御説明にも、本法案はMSA協定の第三条及び附属書Bの規定と船舶貸借協定第七条に基いて、その必要上立法されるものと説明されたのでありまするが、これは右協定に伴う日本国政府の当然の義務の履行と解すべきか。或いは国際信義に基くところの誠実の現われと解すべきかどうか、この点に関する政府の御見解はどうか、お尋ねいたすのであります。その第二点は、本法案がMSA協定第三条によるものとすれば、同条には、秘密の物件、役務、情報とあるのに、本法は何故にこの役務の点を除外したのであるか。役務の秘密は、保持する必要がないのかどうか。又この点については両国政府間の合意がなかつたのかどうか、お伺いいたすのであります。その第三点は、MSA協定第三条第二項と本法案との関連であります。同条の第二項には「各政府は、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。」と定められているのでありますが、この適当な措置について、政府は如何なる具体策を考えておられるか。又これは同条第一項と切り離すことのできないものと思われるのでありまするが、何故この措置を本法案に盛り込まなかつたのか。更に又、この秘密保持と矛盾しない適当な措置とは、具体的には如何なる措置を指すものであるか。この点、具体的に御説明を伺いたいのであります。その第四点は本法案における秘密保護は、いわゆるMSA協定と、昭和二十七年条約第二十号のいわゆる船舶貸借協定の、二つの協定に伴うものに限られておるのであります。然るに、将来この二つのもの以外にアメリカ政府と同種の内容の協定を結んだ場合には、当然この法律によつて秘密の保護をすべきものと思うのでありまするが、かような場合には、本法を改正してそれを追加するのかどうか。その際の措置についてお伺いいたします。
 次に第四といたしましてお尋ねいたしたいことは、本法は、書論出版の自由に不当に制約を加うる危険がないかという点であります。この点は誠に重要な点であります。今日、新聞、雑誌、言論界等において、この法案に対する反対論はいろいろな角度からなされておるのでありまするが、それらに共通いたしまして基調を成しておるものは、旧軍機保護法や旧国防保安法の流した非常な弊害についての生々しい記憶であります。我々は過去の失敗を再び繰返すようなことがあつてはならないのであります。世上行われている反対論の大部分が、曾てのような言論統制が再び復活しはしないかという懸念を一様に述べているというこの事実に鑑みまして、本法案は、前の軍機保護法或いは国防保安法と根本的に違うのかどうか。その点についてはつきりした御答弁が願いたい。又この法案は言論統制の復活を招来するものでないというはつきりした保証を、この際、政府は進んで与えなければならないと思うのであります。(「その保証はなかなかされないだろう」と呼ぶ者あり)由来、軍機に関する秘密保持の立法は、古今東西を問わず極めて漠然とした表現が多いのでありましてこれは事の性質上或いは、やむを得ないかも知れないのでありまするが、秘密の内容は頗る漠然としており、外国の立法例も又然りであります。本法案を見ましても、第一条に防衛秘密が定義されているのでありまするが、その用語にいたしましても誠に難解なものが多いのであります。例えば「その他の装備品及び資材」或いは「公になつていないもの」或いは又「供与される情報」等の用語であります。この点については委員会において詳しく論議され明確化されることと存じますが、そのうち最も重大な点といたしまして、ここに明確にされたいのは、この「供与される情報」という字句の意義であります。先ずこの「情報」という字句は極めて明確を欠く文字であります。組織法は別といたしまして、恐らく刑事法令においては未だ曾て用いられたことのない用語だと思うのであります。更に疑問を持つのは、この「供与される情報」、即ち「供与される」とは如何なる意味であるか。即ちすでに供与された情報をいうのか、或いはそれとも将来供与されんとする情報をも含むのかどうか。この点の解釈を明快にせられたいのであります。情報の秘密保持の措置は、その本質上、必然的に言論及び報道機関の活動と関連し、延いて言論出版その他一切の表現の自由を侵害し、更に進んで検閲を実現する結果をも招来するのではないかと危惧しておる向きが相当あるのでありますから、政府はこれに対する確固たる所信を表明すべきであると思うのであります。
 更に又、この人権擁護の保障に関連いたしまして、本法は旧時代のいわゆる憲兵制度の復活にならぬかどうかという点についてお伺いいたします。保安隊、警備隊には、部内秩序の維持に専従するための警務官という特別司法警察職員が置かれているのでありますが、このような警務官が本法違反の被疑事件について全般的な捜査権を持つことになりますると、国民に対し往年の憲兵制度を復活するのではないかというような危惧の念を与える慮れがあると思われるのであります。政府はその防止策として何らかの措置を講ぜられるつもりであるかどうか。その点の御見解を伺いたいのであります。
 次にお尋ねいたしたい点は、世上には、かような法律を制定いたしましても、一体どれだけの実効が期待されるか疑問であるという一種の反対論があるのであります。つまり防衛秘密は、性能等の高度のものになればなるほど、そうした秘密の存在することそのことすら秘密にしなければならないわけであります。ところがかような高度の防衛秘密を探知収集した者を裁判にかけるならば、その秘密の存在はもとより、場合によつてはその内容すら公けにされるという結果になるのであります。それは秘密を未然に保持するというこの法律の目的に反する結果になります。それならば、この法律に関する犯罪事件に限つて裁判を非公開にすることができるかどうかという問題が起るのでありまするが、この点に関し、この防衛秘密に関する犯罪は裁判を非公開にすることができるという見解を持つ人もあるようでありまするが、この見解は裁判の公開の原則を規定しておるところの憲法第八十二条と矛盾しないものであるかどうか。この際、世上の疑念を一掃するためにも、政府の明確なる御答弁をお願いいたします。
 最後に私は、希望をも含めまして、政府の所信のほどを伺いたいのであります。この種の立法は、国の防衛に関心を持つ者であるならば、誰しもその必要性を認むるにやぶさかではありませんが、ただ本法のごとき取締法について国民が危惧の念を持つのは、この種の法律の運用に当りまして、ややもすれば生じて来るところの好ましくないところの副作用に対してであります。即ち、非常によく効く新薬ができた場合におきましても、その用法を誤まると、その病気が治つても却つて予期しない副作用を生ずる場合があるのであります。これと同様に、かかる法律も、時の為政者の勝手な解釈によりまして法律運用の範囲が不当に拡大せられる危険が生ずる場合があるのであります。過去におきましても、そうした不当な拡大解釈によつて立法当時の法律の趣旨が悪くゆがめられ、弊害を生じた事例は少くないのであります。こうした拡大解釈を防止するのに最も必要なことは、法律そのものが勝手な拡大解釈を許さないほど厳密に一点のあいまいさも残さないように規定されるということであります。なお、その上に、立法の当時に、将来疑義の生ずる虞れのある点について、一義的に明確な解釈を決定しておくことが必要であります。この点、政府は、この法律が将来勝手な拡大解釈を許さないほど十分厳密な規定になつておるという自信があるかどうか。その点を国民に徹底するように明確にすべきだと存じます。
 私はこの際、政府が今、世上に流れている種々の疑念を完全に晴らすに足るだけの明確なる態度を表明せられることを期待いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 秘密保護法案の立法の必要性でありまするが、日米相互防衛援助協定に基き、アメリカから供与される秘密の装備品等又は情報について秘匿を要する事項につき、その秘密の漏せつ又は漏せつの危険を防止するために必要の措置を講ずる必要がありますので、この法案の御審議を願うに至つた次第であることは、先ほど保安庁長官から説明申上げた通りであります。併し現在の我が国におきまして、在日米軍の秘密を保護するためのいわゆる刑事特別法を除いて、この種の秘密を保護するための一般的な取締法令がない。そこで今回この法案を提出するに至つたのであります。
 それが日本の機密であるか、アメリカの機密であるかという御質問でありましたが、これはアメリカの機密でありますると同時に、保護しておる機密は、これは日本の機密でありまして、機密なる点におきましては、日米共通の機密でありまするが、この法律が保護するものは明らかに日本の機密であります。
 それから日本独自の秘密をこの法案のほかに保護する必要があるのではないかと、装備品に関する秘密の保護につきましては、差当り本法で十分であると政府では考えております。日本の独自の秘密保護につきましては、将来なお研究する考えで、勿論その必要が生じた場合には法律を作らなければなりませんが、今のところでは、これで十分であると考えております。
 それから旧軍機保護法或いは国防保安法のような弊害を生ずることはないかという御質問でありましたが、旧軍機保護法又は国防保安法の弊害につきましては、まさしく只今御指摘になつた通りでありまして、これは国民大衆の記憶にも新たなるところであると考えます。政府といたしましては、かかる誤りを再び繰り返さぬよう、本法案におきましては、これによつて保護される利益と、これによつて制約を受ける国民の立場とを調節、勘案して妥当を期する必要があると考え、その内容を必要最小限度の事項にとどめたのでありまして、旧軍機保護法のような、あの法案の運用によつて生じましたようなことは絶対にやらない所存でございます。
 又検閲制度、憲兵政治というようなものの復活は絶対にやらない所存でありまするし、検閲制度につきまして、衆議院等におきましていろいろ御議論がありまするが、政府としてはこの態度は変えないつもりであります。
 爾余の御質疑に対しましては所管大臣から御答弁申上げます。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(木村篤太郎君) 大体御質問の概略は、今緒方副総理から答弁あつた次第で御了承願えると思います。将来自衛隊となつた場合に、自衛隊自体の保護すべき秘密があるのではないか。即ち言い換えますると、一番問題でありまする防衛出動、外部から直接侵略があつた場合に出動しなければならん、それらの場合において、その行動等について、これを秘密にする必要があるのではないか。然らば何が故に本法案において盛らなかつたかという御質問であります。これは私は御尤もな御意見と考えております。併し現在において差当り我々が一番問題にするのは、MSA協定においてアメリカから貸与を受けまする装備品であります。これは申すまでもなく、アメリカにおいても高度な秘密を保持しておるものであります。これを日本へ持つて来て、日本の保安対隊なり、又将来創設さるべき自衛隊において使う場合において、これが秘密が漏せつされるということになりますと、日本のいわゆる国防上においても非常な支障を来たす。従つてこれは十分に保護する必要があるのではないか。又MSA協定においても共同の秘密の措置をとるという約束がある以上は、両面から以ちまして、かような高度の装備品については是非ともこれを秘密に処置をしなければならんというのが今度の、今提案いたしました法案であります。而して将来におけるいわゆる日本自体の必要なる秘密の保持ということについては、これはいろいろな観点から研究するる必要があると考えますので、今折角検討中であります。従いまして本法案におきましては、差当りアメリカからもらい受けまする装備品等についての秘密保持に関しての法案を作成した次第であります。結局は日本のためでもあり、又アメリカに対するMSA協定の約束を履行するゆえんでもあると考えております。
 次に一番ここで問題になるのは、言論の抑圧或いは出版に対して非常な影響を及ぼすのではないかという御質問であります。これは誠に尤もなことであり、我々はさようなことがあつてはならんという見地から、この法案におきましては、秘密にすべき事項については最小限度にしぼつておるのであります。先ず第一に、この秘密の範囲をどこに持つて行くか。これは申すまでもなく、法案に明らかにありまするように装備品であります。結局アメリカからもらいまする一つの武器について、高度の秘密を保たなくてはならんというもの限定いたしておるのであります。その秘密にすべき事項というものは、申すまでもなく新聞紙上或いは雑誌上において一般の取材活動の対象となるようなものではないのであります。常識に富みまする出版界において、常識に基いて行動をする限り、かような対象物は一般の取材活動にはならん、これであります。従いまして言論出版については、何らの影響はないものと私は考えておるのであります。
 又次に、この秘密について最も我々が注意を払つたのは、不当なる方法を以て知つた場合、公けにされたものは絶対にこの中には入らんのであります。公けにされたものは、悪意によつて公けにされようが何によつて公けにされようが、その原因を問わず、一旦公けになつたものについては、絶対にこの法案の対象物にはならん。例えて申しますると、すでにラジオで聞いたとか、或いはアメリカの雑誌とかイギリスの雑誌とか、その他の雑誌によつて、ちよつとでも載つて公けになつたものは、どんな秘密でもこの法案の対象にはならん。ここであります。従いまして、私は言論、出版界に対して決して迷惑をかけるようなことはないと考えております。
 次に、隊外においてのいわゆる警備員が、これらの秘密事項についての犯罪の捜査でもするのではないかという御疑念でありまするが、さようなことは絶対にないのであります。警備員は、部内におけるいわゆる取締の任に当りまして、部外に対しては絶対にこれはやらせることはないわけであります。従いまして部外においてやつたものについては、一般警察活動によつて取締るということであるのでありまして、昔の憲兵隊の再現というような慮れは毛頭もないわけであります。我々が特に御注意をお願いいたしたいのは、今申上げました通り、本法案においてその範囲を極めて局限した、而も非常に、敵国と言えば語弊がありまするが、第三者に、悪意で以てこれを通報するというような気持で探知、収集することが、即ちこの対象になるのであります。普通の場合においては、この法案の対象には毫もならん。従いまして私は一般国民に対しては、何らの迷惑をかける虞れはないと確信しておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。
 本法案に規定してあります秘密ということを極力具体的に絞りました点については、すでに保安庁長官からお答えがありましたので、私は省かして頂きます。
 ただこの場合、裁判所を公開するのか、しないのかと、こういう問題についてお答え申上げたいと思います。
 本法案は御承知のように秘密保護に関する規定でございますから、公開の法廷で審理が行われるということは、秘密保護の見地から見れば望ましいことではございませんけれども、本法の違反事件の審理といえども、裁判所が憲法第八十二条第二項に該当すると認める限り、裁判は公開せられると考えております。ただ該当するかどうかは、裁判所が厳正、公正に定めるものと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(岡崎勝男君) MSAの協定に関してのお尋ねでありますが、MSA、相互防衛援助協定の第三条及び附属書のBにおいて、我々はこういう法律を作る義務を負つているかどうかというお尋ねでありますが、この第三条や附属書Bにおいては、日米間に、合意する必要な措置をとるということになつておりまして、これからは直接に法律を作つてこういう規定をするということは出て参りません。ただこの協定の第三全等にありまする規定に予想されているような秘密保持の措置をとるためには、只今我が国におきましては適当な法律がありません関係上、立法措置が必要となる。こういうことになると考えております。
#26
○議長(河井彌八君) 中山福藏君。
   [中山福藏君登壇、拍手〕
#27
○中山福藏君 本法案とMSA協定第三条、附属書B等に関する法律的の関係につきましては、長谷山議員から詳細に御質問になりましたから、重複を避けまして他の点について、私は若干の質問を試みたいと存ずるのであります。
 日米相互防衛援助協定が発効いたしますれば、そこには常識的に或る範囲の防衛秘密に関する保護的立法措置が講ぜられることは首肯できる事柄でありまするが、併しその半面には、その保護が或る限度を超えた場合、ややもすれば憲法に保障された基本的人権を多分に侵害し、なかんづく言論、通信の自由を極度に制限する結果を招来しないとも限らないのであります。従つて政府提案にかかつておりまする今回の防衛秘密保護法案は、その内容、その性質、その範囲が極めて多岐多端に亘つておるのでありまして不明確の点を多分に包蔵して、一たびその適用を誤らんか、昔日の軍機保護法の復活の突破口となり、国民を駆つて、見ざる、聞かざる、言わざるのつんぼ桟敷に追い込み、再び封建的な精神上の奴隷生活を営ましむることなきやを保しがたいのであります。この点に関し、政府は如何なる認識と、如何なる予防措置を講ぜられんとしているのでありまするか。緒方副総理の御親切なる御答弁を煩わしたいと存じます。
 第二点、日米相互防衛援助協定そのものは、主観的、対内的には、自衛及び経済援助であり、決して軍事援助ではないと政府は言つておられまするけれども、国際的、客観的、実体的には軍事援助と何ら選ぶところはないのである。とにもかくにもMSA協定ができ上つた以上は、直接間接の侵略から国家を守り、その独立を保持するために或る程度の防衛秘密を保護する必要があるのは理の当然であります。とは言え、政府当局の毅然たる態度がなければ、何を秘密にするかについて、政府は今後日米合同委員会を作つて秘密指定の内容を検討するというのであるから、私どもといたしましては、その都度アメリカからイニシアチーブをとられる虞れがあるのではないかという危惧を持たざるを得ないのであります。取り分け秘密防衛の手段、方法、本法の文理解釈、精神解釈、類推解釈の点について米側より相当の掣肘を受けるのではないか。巷間この立法措置は、MSA協定によつて日本が義務付けられたと言われておる今日、政府は如上の点につき、その覚悟を国民の前に披瀝し、独立国家としての面目を発揮すべきだと考えるのであります。この点に関する政府の所見如何、緒方副総理より御答弁を煩わしたい。
 第三点、本法において最も私どもの注意を喚ぶ問題は、本法案第三条第一項第二号の防衛秘密中、不当な方法によるにあらざればこれを探知し、又は収集することのできないようなものを他人に漏らした者は、十年以下の懲役に処するという規定でありまするが、この「不当」の意味は、誠に漠然としておるのでありまして、その真意を捕捉偏するのに苦しむのでありますが、「不当な方法」とは具体的に如何なることをいうのであるか。その解釈如何では、非常なる危険と誤解をはらむのであると考えまするが故に、これを例を挙げて説明をせられたいのであります。これは特に木村保安庁長官によつてお答えを願いたい。
 第四点、憲法は第二十一条において、言論、出版その他一切の表現の自由を保障し、なお且つ検閲を禁じ、通信の秘密を守ることを担保し、個人の尊厳を擁護しておるとは言いながら、万一言論報道の任務に携わる人々が、何らかの新事実について俗に言う特種を報道した場合、その一部たりとも防衛秘密に関連する際は、本法に牴触するものとして処罰の対象となるということに相成るのであります。たとえこの法案に言う防衛秘密が、刑事特別法の合衆国軍隊の秘密、即ち要塞地帯の軍事施設、その作戦輸送状況を含まず、MSA兵器のみに限定せられるとはいえ、報道の自由を剥奪する危険は多分にあると私は存じます。若しそれ、報道の自由にして阻害せられた場合においては言わずもがな、総国民の知識の低下を来たし、国家の進運に多大なるところの損害を与えることは炳乎として明らかであります。政府はこの際、MSA協定に伴う秘密事項を拡大解釈せずということを国民に誓う必要があると私は考えておるのでありまするが、法相、緒方副首相の御答弁を煩わしたいと思います。
 第五点は、本法案第一条第三項に謳つておるところの防衛秘密の範囲は、大体、船舶、飛行機、武器、弾薬、装備品その他ということになつておりまするが、同条の(イ)の供与兵器の構造又は性能について、政府当局は、取締の対象は構造であつて形態ではない。従つて秘密兵器の外郭の写真を撮つても本法に触れないと言つておるやに聞くのでありますが、形態と構造とを如何なる線によつて区別されるのか。その点について保安庁長官の明確なる御答弁を煩わしたいのであります。
 又、同条(ハ)の「使用の方法」とは如何なる場合を指すのか。単に兵器を動かす操作方法を言うのであるのか。特にレーダーなどの場合、その使用方法、訓練等は秘密事項のうちに含有せられておるのかどうであるか。これは木村保安庁長官より御答弁を願いたいのであります。
 第六点は、秘密とは如何なるものであるかという点であります。政府は新聞紙上等において秘密とは公にせられていないもの、即ち日米両国いずれの国でも正式に発表されたり、新聞雑誌に載つたことのないもの、換言すれば公知公行せられていないものを言うと解しているようであります。併し日本国民の九割九分までが、この秘密事項というものは、アメリカで公知公行のものであるかどうかということは、殆んどこの九割九分までの国民は知りません。その知らない事柄を持つて来て、これに本法案を適用するというような事態を惹起せしむるというようなことは、非常なる危険を私は胚胎しておるものと考えるのであります。従つて私は、米国で公知のものか否かを知らず、又疑惑がある問題に当面いたしました場合、その都度、関係当局に一々走つて行つて、この問題は本法案に触れますかどうかということを問い合せるというようなことになるならば、ここに検閲制度というものの、何と申しますか、厳然たる事実というものが現われて来るということになるのではないか。これは私は、何らかのこの点に関する政府の御親切なる手を打たれるということが必要ではないかと考えるのであります。即ち、まかり間違えますれば、検閲制度の復活ということがここに起つて来るのではないか。これは先ほど緒方副総理から長谷山議員にお答えになつた点から考えますと、そんなことはないと言われますけれども、これはアメリカに一々飛行機に乗つて行つて事実を問い合せて来るわけには参らんのであります。でございまするから、こういう危険を孕んでおりまする問題については非常な注意を必要とすると考えまするが、政府はかかる点について如何なる考慮を払つておられるのでありましようか。
 又、現在保安庁には隊員の規律や隊員と外部との接触面を監視する警務隊があり、又、隊務に関する情報収集のための調査係というようなものがあります。これらが秘密保護法実施と共に、往時の、只今緒方副総理が言われました憲兵制度というものに復活をして来るのではないか。或いは復活をするという具体的な事業が現われないでも、事実そういうふうな行為というものが頻々として行われる虞れがないのであるか。政府の御所見を承わつておきたいと存ずるのであります。
 最後に私は犬養法相にお尋ねしたいのは、先ほど木村保安庁長官は、憲法第八十二条の審理公開の原則、いわゆる裁判の公開の原則というものは、その都度、犬養法相によりまするというと、そう都度、裁判官、事実承審官たる裁判官がきめてよいとおつしやる。ところが木村保安庁長官によりまするというと、一度発表されたものは、悪意であろうと善意であろうと、それは公知のものであるとおつしやる。この公知になりました事実を、いわゆる秘密を漏らしたこの事実を裁判にかけて、その審理に当ります場合において、これを原則的にどう取扱うかということは、これは一応おきめになる必要があるのではないか。私は木村長官のお言葉と犬養法相のお言葉とは矛盾して来ると考えております。成るほど、その内容、その性質において、事実承審官たる裁判官がこれを決定をして行くということは、これは必要でありましよう。併し、情報或いは装備に関するところの秘密の漏せつというものは、大体その線がはつきりしておると思うのであります。従つて公開の原則をこれに適用するということは理の当然ではないかと私は考えておる。この点についてもう一回政府の明確なるところの御答弁を煩わしまして、私は降壇いたしたいと存ずるのであります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇「拍手〕
#28
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 言論の統制というようなことでは、日本は非常な苦い経験を持つておるのであります。私も言論関係に携わつておつたことがあるのでありまするが、言論或いは報道の抑圧は勿論、統制というようなことを政府の権力を以てするということは、すべての場合において逆な効果を来たす。この意味から、私は将来民主主義の進展と同時に、この言論政策につきましては、根本的に原則的に、できるだけ自由を尊重する、言論の自由ということが、私は如何なる場合にも、民主主義の進展のため、又、日本の将来のためにも根本の方針の一つでなければならんと考えております。そういう意味から、今回の法案におきましても秘密の範囲というものを最大限にしぼつておりますることは、先ほど保安庁長官から御説明がありました通りであります。同時に又、常識に富む言論界が、その常識で行動する限り、一般の取材活動がこの規定に触れるようなことは先ず私は想像されないと考えております。不当な方法を用いなくても知り得る事項は、罪の対象にはならない。そういう点から考えまして、この法案が実施せられました結果、不当に言論を抑圧することにはならないと信じております。
 それから又、将来この法案の趣旨が日米の間に発展して来て、今予期しない事態が生じはしないか。かくしてこの秘密保護法が拡大されて行きまして、憲法の保障する基本人権を圧迫するようなことはないか。それに対する政府の態度はどうであるか。先ほど申上げました通りに、私はこの点は、真に日本の民主主義の今後の発達の上からも、政府といたしましても、又、国といたしましても、余ほど重大に考えて、この点は厳守しなければならん。さように考えております。で、この将来の密保護に関連しましていろいろな予想せられる場合をお話になりましたが、これは例えばアメリカにおいて公けにされておるものが日本の一般大衆にわかりようがないではないか。成るほどそれはそうであろうと考えます。そういう場合が多々あろうと考えます。こういう点につきましては、私はこの戦争以前の政府と大衆のあり方でなくて、官民の間の接触或いは理解を十分にするためにあらゆる機会を利用して、そうして秘密でありまするとか、国の重大な問題というものに対しまして認識を一にしておく、認識をできるだけに統一するということが最も望ましいことでありましてこの点において政府も十分の努力をいたしたいと考えております。
 それから検閲のことでありまするが、先ほどお答えいたしましたように、政府としましては検閲ということは全然考えておりません。この検閲に代る意味において、而も国の利害を尊重する意味におきまして、今申上げましたように、すべての国の大きな問題につきまして官民の間の認識の統一ということを、あらゆる機会を利用いたしまして、(「官民という観念はないのだよ」と呼ぶ者あり)特に今日のごとく言論機関が発達をいたしました際におきましては、言論機関を通じ、この間の認識の統一ということを心掛けて参りたい。それによつて私は大体今、中山さんから御心配になりましたようなことは、政府の考え方の如何によりまして十分に防止し得ると、さように考えております。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(木村篤太郎君) 第三条第一号の「不当な方法」の意味如何という御質問であります。これは社会通念に照らして一応解決すべきものであると思います。即ち我々が妥当とは認められない方法と、こう解すべきであろうと思います。例えば保安庁の施設や区域に立入つてこれは全く禁止されておる場合において、近寄つてはいかんというような標札を揚げておるにかかわらず、その中に入つて或いは写真をとるとかいう場合に該当するのであります。或いは又欺罔手段或いは金銭を供与して秘密を探知、収集するというような場合を言うのであります。併し保安隊が営舎外で演習をしておる場合の近傍におつて、その武器や車両の台数を見聞したりするような場合は決して該当いたしません。又写真をとつたりするような場合でも該当しないのであります。要は我々の通常の社会通念から言つて妥当じやないというような方法で探知、収集する場合は、これに該当するのであります。
 次に、構造又は性能というのはどうだということでありますが、これは申すまでもなく構造は組立であります。或いは大砲の組立であるとか、通信機の組立であるとか、細部に亘つての組立を言うのであります。性能とは要するに、それは例えば大砲であれば、射程は幾らで爆発力は幾らという詳細な点を指すのであります。外形だけを以てしてはこれは該当しないのであります。使用の方法も、又かような高度の兵器についていろいろなむずかしい使用の方法があるのであります。さような場合を指すのでありまして、一般的に我々が外形から見て、これはどうかこうか、というようなことは問題にならんわけであります。要するに極度の秘密を守ろうとするのが本法案の目的であります。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。二点に亘つてお答え申上げたいと存じます。
 いわゆる本法の対象物に当るものが、善意にしろ悪意の方法によるにしろ公けにされた、もつと詳しく申上げますならば、或る刊行物で例えば装備の内容を発表した場合、それが取締当局から見て不穏の発表であると見ても、一般読者たる国民から見れば、公けにされたものでありますから、これは秘密でなくなるのでありまして、従つて公訴提起の案件にはなり得ないのでございます。
 次に、憲法第八十二条第二項の但書を素直に読みますと、この場合公開裁判が原則でございます。但し、これは個々の場合を申上げますと、すでにお答え申上げました通り、裁判所の認定によるものでございますから、裁判所の認定を差しおいて、法務大臣が、或いは原則だけを申上げることは不穏当と思いましたので、答弁といたしましては、それは裁判所が憲法第八十二条第二項の但書に該当すると認める場合は云々と、こういう御答弁を申上げる次第でございます。(拍手)
   〔中山福藏君発言の許可を求む〕
#31
○議長(河井彌八君) 中山福藏君。
#32
○中山福藏君 簡単でありますが。
#33
○議長(河井彌八君) 御登壇を願います。
   〔中山福藏君登壇〕
#34
○中山福藏君 只今木村保安庁長官の御答弁がございまして、いわゆるこの不当な方法にあらざれば探知、収集したとすることができないということは、不当な方法でなければ、正当な方法であつたならば、これを知り得ても、漏らしても罪にならないと、こういう半面解釈ができると私は思う。古今東西を問わず、いわゆる昔から人類の保存のために恋愛というものを神が人間に与えておりますが、多くの男性というものは女性にかかつては実に弱いものなんです。御承知のように、新田義貞が足利尊氏を取逃がしたというあの一事でも、全くこれは女だ。ここで或る男が日本の女に懸想をしてその軍の秘密を正当にその女に漏らした場合は、これは決して不当に知り得たものではない。そういうような秘密を漏らした場合は、これはどうなるのですか。その一点、誠に卑俗なる質問でございますけれども、木村長官の御名答をお煩わしたい。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#35
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 例えばパンパンガールから中山さんが或る秘密の事項を聞いた。これは普通に聞けば決して問題になるわけではありません。これは或いはその者をたぶらかし、或いは金銭をやつたり、そうして特にそういうような秘密のことを収集しようという目的を以てやれば無論本案に該当するわけであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(河井彌八君) 亀田得治君。
   〔亀田得治君登壇、拍手〕
#37
○亀田得治君 私は日本社会党を代表して秘密保護法案に関し重要な点について質問をいたしたいと存じます。私の質問は十一点に亘るのでありますか、そのおのおのについて一つ項目別に明確な御答弁をお願いしたい。限られた時間でありますから、できるだけ私のほうの意見は避けまして進めたいと思いますので、さよう御了承願います。そこで第一の点でありますが、この法律は日本の憲法に違反しておる。私はこの点について確かめたいのであります。現在吉田内閣が進めておるいわゆる自衛力増強の方針、これは明らかに忍法を事実上破壊して行く。こういうことは今日社会の常識になつております。そういう憲法上許されないような粗織、この保安隊、自衛隊、こういうものに持たすところの装備品、その秘密を保護する、憲法上認められないものに持たす道具の秘密を保護する、こういうことは当然憲法上許されない(拍手)これをどう考えられるか。私はこの点に関して一つ、現行刑法との規定の関連において政府の見解を更に具体的に聞いてみたい。それは昭和二十二年の七月に刑法が改正されるまで、いわゆる古い刑法ですね、この古い刑法の第三章には、外患に関する非、これによりますと、第八十一条から第八十九条に至るまでに、軍事上の機密に関する規定、その他詳細な条項か設けてあります。要するにこれらの規定は、日本の外国に対する組織的抵抗力、即ち軍隊があり、それが外国と交戦することのあることを前提とし、その組織を保護するために設けられた規定であることは明白である。ところが平和憲法が制定され、日本は戦争と軍隊を放棄すると、こういうことになりました結果、刑法の外患に関する罪の規定が再検討の必要に迫られ、現在のように変えられて僅か刑法の八十一条、八十二条、この二カ条に整理されてしまつた。で、この間の事情は、昭和二十二年七月に政府が刑法の一部改正を国会に提案をしたその提案理由の説明或いはその際交わされたところの質疑応答を議事録によつて調べてみましても明白であります。即ち保安隊は憲法を中心とする日本の法律体系の中にあつては認めることのできないものになつておるのです、すでに。それは刑法という従来持つていたこの法律の保護ですね、この保護の枠内から、すでに放り出されてしまつておる。憲法第九条の抽象的な論議をしておると話が少しぼやけるのですが、すでに法律の保護から具体的に刑法の改正によつて、これは否定されておるわけなんです。この点を一体どう考えておるか、こういうのです。憲法に合わない非合法的な組織だ、これは。こういうものに持たすところの兵器の秘密、こういうものを保護する法律というものは、例えて言うならば、強盗の刃物を擁護する法律を作るようなものなんです。(拍手)私はこういう意味で、この秘密保護法というものは、二重に我が平和憲法というものを犯すものだと考えておるのでございます。即ち私はこの点について政府に聞きたいことは、憲法第九条の三百代言的な解釈ではない。憲法第九条の延長として、刑法などの保護を剥奪され、未だにその保護を回復しておらない組織ですね、そういう組織のための秘密保護法というものが、憲法上一体許されるものかどうかということを、刑法の外患に関する規定の改正過程との関連において、自信ある答弁をお願いしたい。これは基本的な問題でありますから、一つ緒方副総理に御答弁をお願いしたい。若し少し不明確な点があれば、ほかの大臣によつて補足願つても結構であります。
 それから第二の点は、この法律はアメリカによる日本の主権の侵害にならないか、この点でございます。この法律は、MSA協定第三条第一項の「秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする」、この規定から由来するものでありますが、これによりますと、日本がどのような法律を作るかということは、結局アメリカの同意を得なければならないと、法文上、協定の字句通りに解釈してもそうなるのでございます。ところが更にMSA協定附属書Bによりますと、「合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保する」と、こういうふうになつてありまするから、結局は日本の選択の自由というものは、この附属書によりまして完全に奪われておるのでございます。即ちMSA協定の本文では、如何にも日米両者は合意で決定するかの、ごとく装いながら、実際は附属書によりまして、人の目につかないように、アメリカの法律がそのまま日本の中に入つて来る、こういうことになつておるのでございます。(拍手)従つて例えばアメリカの秘密保護法が改正される、そういうことになれば、当然日本の法律も変えて行かなければならない。私はこれは日本の主権を侵害するものだ、こう考えておる。現在アメリカから援助を受けておる国はたくさんあります。それらの国々も同じような法律をもつておる、こう言われるのでありますが、それらの国は、飽くまでもその国独自の立場で立法しておる。ただアメリカから来た兵器が、その国の秘密と一緒になつて保護されるということが、結果的にこれが出ておるに過ぎない。例えばこれは少し古い例でありますが、戦前の満州国ですね、これは世界の人が日本の傀儡政権、こうみなしておつた。そういう満州国の軍機保護法、これを見ましても、全文二十カ条から成つておるのでありますが、その立法の方式は飽くまでも満州国自身の立場で立案されておる。そうしてただ最後の第二十条目にですね、日本から援助されておる兵器の秘密については、満州国自身の秘密の中の一部として同様に保護する。こういうふうに継ぎ足しにこれを取扱つておるのに過ぎない。私はいやしくも日本が独立国である。こういうことならば、これらの国々と少くとも同じような方式を私はとるべきであろうと考えておる。日本が援助を受けた援助を受けたと言いますが、援助を受けてしまえば、受けた装備というものは、飽くまで日本独自の立場で処理して行くべきだ。日本のほうからその秘密を保護する。そういう立法をとることもありましようけれども、そして又その反射的な結果として、アメリカから渡された秘密が、日本において保護される。こういうことはありましても、今日政府がやつておるようなアメリカの法律が直ちに日本に入つて来るようなのとは、およそ私は立場が違うように考えるのでございます。従いまして只今明確になつておるようなこの立法の仕方、これは明らかに我々として、独立国の体面を顧みない、いわゆる従属国の法律、こういうふうに考えるのでありますが、政府はどうお考えになりますか。(拍手)今申上げましたように、満州国の軍機保護法、今申上げた通りこの提案されておる秘密保護法、この二つを公平な、冷静な法律家が批判した場合に、恐らくその法律家は、日本という国はあの満州国以上にアメリカの傀儡政権ではないか。こういうふうに法律の面からだけ考えたら感ずるだろうと思います。緒方副総理はこの点どういうふうにお考えになりますか。率直なる御意見を聞かして頂きたい。私は吉田内閣が、平生からアメリカ一辺倒と言われると非常に憤慨されるのでありますが、こういう立法の具体的事例を通じて、私どもはそういう批判を実はしておる。この点、どうお考えになりますか。はつきりとした御答弁を副総理より直接お願いしたいと思います。
 それから第三に、本法には抽象的で極めて不明確な言葉がたくさんございます。これらの点につきましては、先ほど長谷山議員或いは中山議員から、いろいろ具体的に質疑がありました。私も質すべき点がたくさんあるのでございますが、それは一つ委員会の審議に譲ることにいたしたいと思いましてただ一点お聞きいたしたいことは、今こういう法律を政府が提案されておりまするが、一体、現在日本がアメリカから供与をされておるところの装備品、武器、兵器、この中でこの法律に該当すると思われるようなそういう秘密、これがどれだけあるのか。現在はまだこの法律が実行されておらないわけですから、ここで当然あなたは答える義務がある。これを私は明確にしてもらいたい。私はそういうものが余りないと現在聞いておるのでありまするが、具体的にそのことが事実かどうか。法律というものは、飽くまでも、現在法律で取締らなければならないたくさんのものが出て来て、それに対する問題を処理して行くのが立法の正しいやり方なんです。少しその線からそれたような立法だと思いまするので、その点を一つ具体的にお聞きしたいと思うのでございます。第四の点は、本法の第二条によりますと、国民に対して、秘密事項を認識できるようにするために、標記などの措置をとることになつておりますが、その具体的な方法は政令に譲られておるのであります。実際問題として、何が秘密になつておるかということは、国民は一般に知らないのでありますから、国民がうつかり本法の違反に問われることを防止するためには、これは適当な措置であると私も思います。併し秘密の性質上、その秘密が暴露されるような方法を採用することもできないのでありますから、この標記などの措置を適切に行うということはなかなかむずかしい問題を伴うのであります。併し如何にこれがむずかしい問題であるといたしましても、その措置が不適切でありますると、国家も国民も非常な迷惑をするのでありまして、従いまして私はこの法律をここに出される以上、如何なる一体標記等の措置を政令案として考えておられるのか、その大綱をお示し願いたいと思うのであります。
 第五点は、本法第一条の防衛秘密と、第二条の、今申上げた標記等の措置との関係であります。即ち第一条の防衛秘密でありますが、それに対して政府が標記などの措置をしなかつた、或いは又その措置が不適切であつた、そういうことのために秘密であることを知らなかつた。そういう者についても違反の責任が問われるものであるかどうかということをお聞きしたい。
 第六にお尋ねしたいことは、本法第五条の第二項の教唆、これは独立犯罪として規定されておるのでありますが、なぜこのような必要があるか。これを明確にしてもらいたい。我が国の刑罰の通則から言いまするならば、教唆された者が犯罪を実行することによつて初めて教唆犯というものが成立するのです。被教唆者が実行もしておらないのに教唆者を罰して行くと、これはよし悪しは別といたしまして、社会の犯罪常識から見て苛酷過ぎると、こういうことで日本の刑法というものはできておるのです。これは戦前の軍機保護法或いは悪法の代名詞と言われた治安維持法、そういうところを見ても、教唆犯に関しては、教唆の従属性というものが守られて来ていたのです。ただ戦争が非常に激烈になつた昭和十六年、そのときに立法されました国防保安法、ここで初めて独立教唆犯というものが認められたのでありますが、これは当時の特殊な切迫した事情に基く例外的な現象と私どもは考えております。今日の情勢は、誰が見ても常識的にそんなに切迫しておる情勢ではございません。然るに政府は先に破防法の制定のときに、独立教唆犯というものを例外的にここへ押し込んで来た。これを一旦やりますと、その後政府は社会的に批判の的になるような法律に限つて、この独立教唆犯というものを挿入する努力をしておるのでありまするが、これは私どもの従来の犯罪に対する考え方から言うならば、非常に間違つておると思うのでございます。私は社会的にその立法が正しいかどうか。そういうことが問題になるような対象、そういう対象が、なぜ一般の破廉恥犯とか、そういう人たちよりも不利益な取扱を受けなければならないのか。これは納得ができない。その理論的な根拠と必要性ということを具体的に明確にしてもらいたい。
 第七は、本法の濫用の問題でございます。私は、政府がこの法律は濫用しないようにすると、先ほどから各質問者に対して答えておりますが、そういう抽象的な言い方ではなく、濫用しないものは、しないだけの具体的な措置というものが出て来なければならない。それをお聞きしたい。どういうことを一体考えておるのか。戦前私どもは言論が圧迫された。そういう経験をたくさん持つておる。そういう経験を調べてこういう法律を作る場合には、こうすべきだと、こういうことを具体的に何か準備をされておるかどうか。この点をお聞きしたいのであります。
 私はその点に関して更に一つ質したいことは、政府が最近提出されるいろいろな法律を見ましても、法律の最初にその法律の目的、これを書いておられる場合が非常に多い。或いは又非常に論議のある法律につきましては、間違つた法律の扱いがなされないようにする、そういう意味の条項を挿入されておる場合が極めて多い。ところがこの秘密保護法を見ますると、そういうことが全然ない。これは一体どこを狙つておるのか。どこに一体この法律の重点があるのか。そういうことが一つもここでは現われておらない。私はこういう白紙の状態に出されておる法律というものは、法律の体裁そのものからいつても、極めてこれは濫用の虞れがあるものであると考えておる。(拍手)なぜそういう目的なり濫用防止に対する注意的な規定、これを入れなかつたか。入れても少しも法律が不体裁になることはないでしよう。その点と、それから本当に濫用しないというならば、それに対する如何なる具体的な措置を考えておるのか、これをお聞きする次第であります。
 それから次に第八に、政府は将来この法律を拡大する意図、私はこれは確かにあると思つておる。この法律の作成の過程を私どもは見ておりましても、木村長官は、広く防衛秘密一般を保護したい。こういう立場から最低、防衛出動時における作戦計画、部隊行動、通信内容、暗号などの防衛秘密をも織込んだものにしよう、そういうことを主張された。ところがそういうことでは世論の反撃が激しくなるだろうということで、一時的にあなたはこれを引つこめておるに過ぎない。先ほどの質疑応答を聞いておりましても、当分は、当分といいますか、現在はこれで行きまするが、将来については考えなければならない。折角研究中だと言われておりますが、私は、あなたはここには出されておりませんが、すでに法案を持つておると思う。通りやすいようなやり方で、一旦この法律を通しておいて、その改正という形であなたは必ず私は出して来ると思う。そういうことを一体あなたはされるかどうか。されないのであれば、されないということをここで明確に、この最初の審議に当つて明らかにしてもらいたい。(拍手)
 第九の問題は、検閲制度復活の問題であります。これもほかのかたから質疑がありましたから、私は省略をしてもいいのでございまするが、併しながら、先ほどの答弁では政府側は、そういう意図はないと、こういうことを言つておりまするが、併し私どもが無視することのできない一つの事実は、去る三月二十四日の衆議院の外務委員会で、政府側山田保安局長、福永官房長官、こういう人の答弁によりますと、事前の検閲は行わないが事後の調査などと、極めて慎重に調査などと、などはあり得る旨を称しておるのであります。私はこれは非常に重大なやはり発言たと思います。事後調査と、こういうことが始まれば、出版業者は、あとから調べられるくらいなら、一つ始めから間違いないように、ということに今度は事前の打合せになることはきまつておる。事前の打合せになれば、これは検閲制度の一歩手前である。事実上検閲制度に入つておる。こういうことは断定できるじやないですか。この二十四日の衆議院の外務委員会で、福永官房長官、山田保安局長、山田局長は木村長官の部下ですね、案外部下なんかが、そういう委員会なんかで本当のことを言うことがある、この部下の山田局長が言つたことを、あなたはどうお考えになるか、ここで明確に責任者として答弁してもらいたい。本当にそういう事後調査ということを考えておるのか。考えておるとしたら、その事後調査をあなたはどういう方法でやるつもりなのか。そうして又たとえ事後調査まではやつても、絶対に検閲制度といつたようなことまで発展させないから御安心願いたい。そういう考えなのか。これを一つはつきりとお答えを願いたい。
 最後に、秘密裁判の問題であります。私、これはいろいろお尋ねしたいものを持つておるのでありますが、これも先ほどからいろいろ質疑があつたから省略をいたします。ただこれは犬養法務大臣に聞きたいのでありますが、先ほども政府側の答弁によりますると、違反犯罪行為であつても公開されたものは秘密でないと、こう言われておる。そうすれば、憲法八十二条によつて本件に関する裁判というものが非公開になることはあり得ない。あなたは先ほどの答弁によりまして、それは裁判所が決定すべきもの、こういうことを繰返して言われておる。裁判所が決定すべきものではないでしよう。法律を作る人が、犯罪行為であつても一旦公けになつたものは、もう秘密性はないのだと、こういうふうに考えておれば、裁判所もそれに従わなければなら、ないでしよう。裁判所が判断するのはそういうことではないでしよう。その法律の解釈がきまつてきまつた法律の適用だけの問題ですよ。だから私は、本当にあなたが秘密裁判というようなことを考えておらないというのであれば、この場所でですね、裁判所が決定すべきものといつたような、何かあとに問題を残すような言い方でなく、はつきりと、この裁判は一切公開裁判であるということを言明できると思う、この点を重ねて一つ確めたいと思います。もう一つ問題があるのでございますが、これは大分重複している問題であるから、省略いたします。
 以上、相当たくさんなことについて項目的にお尋ねいたしましたが、御答弁によりまして、時間の範囲内で再質問をいたしたいと存じます。(拍手)
   [国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手]
#38
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 本法は憲法違反ではないかという御質問でありましたが、これはこの法案は、国の固有の自衛権の発展として国として自衛上の秘密を保護するものでありまして、これは私は当然のことである。強盗の兇器を保護する場合と比較されるべきものではないと考えるのであります。従いまして憲法違反ではないと信じておりまするが、なお憲法の解釈に属することでありますので、後刻法制局長官から御答弁申上げます。
 この法案は日本の主権侵害の立法ではないか。相互防衛援助協定は、日本の自衛のために、自主的に締結したものでありますが、この協定の秘密保護の措置も又我が国がみずから決定すべをものでありまするが、我が国においては、同様な協定を締結した諸外国のように、この種の秘密を保護する取締法令を有しておりませんので、憲法にありまするように、条約を誠実に履行する前提として、この法律を必要とするわけであります。従いまして、この法律において保護すべき秘密も、第一義的には我が国の自衛上の秘密でありますから、アメリカ合衆国による我が国の主権侵害とは考えておりません。
 それから本法を更に拡大しないという約束ができるかという御質問でありますが、本法案は日米相互援助協定等の締結に伴い供与される装備品等、又はそれに関する情報に限定してありますので、本法案の基本的な性格上拡大されるということはあり得ないと考えております。
 なお検閲について御質問でありましたが、私は言論、報道の自由というものは、今世間で考えられておりまするより、より以上私は重大なものであると考えております。従つて検閲ということは想像しておりません。これは戦争になりまして、総力戦的な段階に入つたときは別といたしまして、平時におきまして言論、報道の統制というようなことは、特に権力を以てする統制というようなことは、先ほども申上げましたように、全くこれは逆の効果を来たす以外の何ものでもないと、さように考えております。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(木村篤太郎君) 本法案の第三条の、その政令案の内容をどう考えているかという御質問でありますが、只今この政令案の内容について、折角慎重に研究いたしております。併し我々の考えているところは、第一は、「標記」であります。秘密事項のうち標記のなし得る文書、図画又は物件につきましては、それが防衛秘密に属するものであるということを明らかに標記したいと考えております。
 第二は、秘密事項を取扱う民間業者その他特に密接な関係のある方面へ、文書又は口頭で、当該事項が防衛秘密である旨を明らかにあらかじめ通知いたしたいと思つております。
 第三は、秘密である物件の所在地にその旨の掲示をいたす考えであります。なお、以上の場合における標記、掲示等につきましては、国民が一見してそれが防衛秘密に関するものであるということを知り得るように、この政令によつて形式を一定にいたしたい考えであります。
 第四は、防衛秘密に等級を付することを考えております。これは秘密事項の保管取扱等に必要なる行政処置でありまするので、目下のところ三段階程度に区分する考えでおります。
 第五は、今申述べました秘密事項の保管取扱等に関し関係各省庁の長が定める訓令等の、部内規定等の基準となるべき事項をこの政令で定める予定であります。なお今後十分に検討いたしたいと、こう考えております。
 次に、只今保安隊、警備隊で、アメリカから貸与を受けているもののうち、秘密に属するものはどんなものかというお尋ねであります。それは現在フリゲートだけであります。
 それから事前の検閲はどうか。これは絶対にやりません。さようなことは考えておりません。その後のいわゆる事後調査について、先日の山田局長の答弁に対しての御質問でありましたが、山田局長の考え方は、これは私と同一であります。私の考え方と御了承を願いたいのであります。いわゆる秘密事項についてスクープが新聞であつたような場合に、それはどこから出たかということの調査はいたすという旨であります。これを一般的に検閲なんかはいたしません。
 次に、今後のこの日本固有の防衛必要時における場合に処して、秘密保護法的なものを作る考えであるかどうかということであります。先刻申上げました通り、只今のところは考えておりませんが、今後の情勢の変化、殊に日本の防衛の処置について大いに考えるべき点が私はあると考えます。日本の自衛のために万一外部から不法の侵略を受けるような危険のある場合において、日本の自衛隊が出動する場合の行動その他に対して、これは秘密にすべき必要が十分あると考えます。併しこれは今後の問題であつて、当面の問題は、私はこの秘密保護法案において事足りると考えております。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。
 秘密裁判の問題についてお答えを申上げたいと存じます。憲法第八十二条第二項但書をそのまま読みますれば、公開裁判が原則でございます。併しながら私どものほうでこの法律を扱いますときに、会議を開いて、かく認定をいたしたのでありますが、例えば全く個人的な利得に目がくらんで、俗に言う金に目がくらんで秘密を取得したような場合においては、裁判官において政治犯罪と認めない場合を想定し得るのでありまして、この場合、而もその上に裁判官が公けの秩序、又は善良の風俗を害する虞れがあると認めました場合には、非公開の場合があり得ると、こういう解釈をしているのでありますが、憲法八十二条第二項但書をそのまま読みました上での原則論では公開裁判ということが至当である。但し例外もあり得る。併しそれは裁判官の認定によると、こういうふうに解釈をいたしているのでございます。
   〔政府委員佐藤達夫君登壇、拍手〕
#41
○政府委員(佐藤達夫君) この法案と憲法との関係について先ほど緒方国務大臣から指名がございましたから、私からお答え申上げます。
 先ほどの亀田議員の御質疑の中に、刑法の八十三条乃至八十六条の改正の経緯等の関係から問題にお触れになつておつたわけでありますが、この点は申すまでもなく、刑法とこの法律案とは、憲法の下においての法律相互の関係でございますから、それ自体憲法問題にならないことは、これは法律家であられる亀田議員も御承知の上のことと思います。
 そこで問題は、むしろこの先ほどのお言葉にもありましたように、又先ほど緒方国務大臣からも触れられましたように、自衛力増強の合憲性の問題が私は根本であろうと思います。而してこれについては、政府はたびたび述べております通りに、一定の限度内における自衛力の保持というものは違憲ではないと信じておるわけであります。その限度内において必要な武器を整え、その秘密を保持するということは、自衛上当然なこととして、これ又憲法の容認するところであろう。従つて本法案は、憲法に違反するところはないと考えておる次第でございます。(拍手)
#42
○亀田得治君 答弁がまだ足りません。
#43
○議長(河井彌八君) もう一度御登壇願います。
#44
○亀田得治君 前の答弁ですよ、教喚の独立性の問題です。
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(犬養健君) 私から便宜上お答え申上げます。
 教唆、扇動を独立犯として処罰することは行き過ぎではないかという御質問でございます。秘密保護の本質は、御承知のように秘密が外部に漏れることを事前に防止する点にございますので、一度外部に漏れた秘密は、その行為者のみを処罰することでは回復できないのでございますから、この考え方から、秘密の探知や収集、又は漏せつをもたらす危険性多い教唆と扇動を処罰の対象といたした次第でございす。
#46
○亀田得治君 もう一つあります。全部、きつちり答弁してもらわないと困るですよ。
#47
○議長(河井彌八君) 亀田君。
   〔亀田得治君登壇、拍手〕
#48
○亀田得治君 時間があと四、五分らしいですから、(「六分」と呼ぶ者あり)簡単に。
 只今犬養法務大臣は、憲法八十二条の問題について御説明をいたされましたが、特殊な場合に例外的に秘密裁判のあることは、これは何もこの法規に限つたことではない。そういうことはいろんな犯罪について言えるのです。言えるのに、なぜこの法律についてだけそういうことを言われるか。これが問題なんです。これはほんの稀な場合に、本法の場合でも秘密裁判が必要な場合があるかも知れない。それは一般の犯罪についてもあり得ることなんです。そういう意味に解釈していいかどうか、この点を再度確かめて置きます。
 それからもう一つは、これは保安庁長官は、フリゲートだけだ、現在の秘密は。ところが私は、想像ですが、フリゲートなんかは日本にすでに渡されておる。こんなものはもう世界的には秘密じやないと私は考えておる。
 私、端的に質問したいのは、結局はアメリカは、日本に原子兵器を持ち出そいうとしておる。(「そうだ」と呼ぶ者あり)笑い事じやないですよ。その原子兵器の秘密保護、これが差迫つた問題なんだ。私どもは、そういう立場からこの法律を考えると、非常なこれは危険な問題に結び付く法律なんだ。我々が原子力の前進基地にされるのです。それを守るのがこの法律なんです。フリゲートなんか、何です、そんなものは。この点についてあなたは一番知つてるはずなんですが、どうお考えになつているか。現在であれば率直に言えるはずですから、お答えを願いたい、再度。
 それからこれは犬養法務大臣に御答弁を願うはずであつたのが、やはり答弁がなかつたのですが、人権擁護といいますか、濫用防止。そういう問題について、どういう具体的な措置を考えておられるか。私がこれを聞くのは、例えばあなたは昭和二十八年十一月十三日、全国人権擁護委員連合会長の合同会議の午餐会で、人権擁護局縮小のような話があるが、法務省の絶対にこれは同意できないところだから善処する。こういうことを言つている。こういう同じ趣旨のことをあなたがほうぼうの会合で言われている。時間がないから一々申上げません。人権擁護局を廃止するようなことがあつたら、これは国際関係から見ても面白くない。こういうふうなことを、これは日本弁護士連合会の理事者の招待の席上でも、そういう趣旨のことを言われている。本当にそうかどうか。これはですね、こういう秘密保護法というような悪法が一方で要望されている場合には、出ている場合には、一層これは重大な問題です。ところが一方では、人権擁護局の縮小とか、格下げとか、こういう問題が具体的に出ているじやありませんか。政府がこの濫用は極力避けるようにすると言つたつて、具体的にやつているところの措置というものは、それに伴つておらないじやありませんか。これをどうお考えになるか、一つはつきりと品お答えを願いたい。丁度時間ですから、これで打切ります。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(犬養健君) お答えいたします。たびたび御答弁を落しまして誠に失礼いたしました。(「どうかしているな、やつぱり」と呼ぶ者あり)先ず公開裁判の問題でございますが、仮に私が御質問に答えまして、憲法第八十二条第二項但書が、そのまま読めばこうであるから、公開裁判であると申しましたら、如何なる例外も法務大臣は認めないことになるのでありまして、例外の場合があるということを申上げた次第でございます。まして、この頃のような経済情勢、或いは国民一般の智性といいますか、そういうものから勘案いたしまして、我が国の秘密を漏らしてやろうと思う原因でなく、純然たる暮らしが困るからという単純な、いわゆる金に目がくらんでの犯罪行為も十分に想像できまするので、従つて例外の点を、特にはつきり申上げた次第でございます。
 又人権擁護につきましては、まさに仰せの通りでありまして、人権擁護の政府機関を不当に縮小するということは、国際的にも私は響くことだと存じております。従つて法務省といたしましては、行政改革の必要からは、いろいろ十分な理由があることは認めるのでございますが、法務省としては、これからますます人権擁護の仕事が殖える。この間も、人権擁護局長が亀田議員にお答え申上げましたように、今、人権擁護に関する訴えというものは氷山の一角でございまして、いわゆる泣き寝入りの事案というものは多いのでございますから、私は法務省の仕事のうち、人権擁護の仕事は特に重大であるという認識は毫も変つていないことを申上げておきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 フリゲートに対して、ああいうものに秘密はないじやないかというお話でありますが、全然さにあらず、このフリゲートに載つている或いは射撃板、その他レーダー、これは他に漏らしては相ならん秘密の事項があるのであります。かかるが故にフリゲート艦それ自体は秘密じやないが、そのうちに載つている幾多の通信機、その他について秘密になつている事項があるのであります。これを我々はやはり守りたいと考えております。
 なお、原子兵器云々の話があつたようですが、我々は原子兵器をアメリカからもらうような考えは毛頭ありません。はつきり申上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#51
○議長(河井彌八君) 棚橋小虎君。
   〔棚橋小虎君登壇、拍手]
#52
○棚橋小虎君 私は日本社会党第二控室を代表して、秘密保護法について質問をいたしたいと思います。
 政府は本案、原案を作成する初めに当りましては、非常にこの秘密防衛の範囲を拡げまして、そうしてなお刑罰も無期懲役までこれに加えようとして、非常に広汎な立法を考えておつたようでありますけれども、世論の反対に出あいまして、にわかにその方針を変えまして、只今ここに提案になりましたような、やや緩和された法律を糧案されたようであります。併しながらこれにつきましても、なおたくさんの問題点があるのでありまして私はこれらの二、三の点について政府に質問をいたしたいと思うのであります。
 秘密保護法はMSA協定の第三条によつて規定されておりまする通り、アメリカからして供与された秘密の物件等について、その秘密の漏せつを防ぐために、両国の合意によつてとるところの秘密保持の措置の一つと言うべきものであります。この立法は、かような事情でできる立法であり嘉するからして、我が国の自主的、自発的の立法ではなくて協定の義務としてこれは避けることのできない立法と言わなければならんのであります。
 又、この法律によつて保護されておるところのいわゆる防衛秘密というものは、アメリカから供与されるところの船舶、航空機、武器、弾薬等の装備品及びこれらに関する構造、性能、製作及びその修理に関する技術、その使用方法等の公けにされていないものということになつているのであります。そしてこれらの防衛秘密というものが、どういうふうにして決定されるかと申しますというと、アメリカがこれを秘密として指定しまして、そうしてれを日本政府に通告するならば、日本政府は、これをいわゆる保護すべき防衛秘密として、これを法律によつて保護しなければならないのでありまして、保護される秘密の対象というものは、全くアメリカが一方的にこれを仕定したものとなるのであります。日本政府はこれに対して自主的にこれを決定する権限はないのであります。このことは、行政協定による刑事特別法によりましても同じようなことが言われておるのでありますが、併し刑事特別法におきましては、日本に駐留するアメリカの軍隊の秘密を防衛することが目的でありまするからして、かようなことも許されるのであります。併しながらこの秘密保護法によつて保護するところの秘密というものは、日本の保安隊、自衛隊に関するところのもので、日本の国防に関する重大な問題なんであります。ところがその保護すべきところの秘密の対象物というものが、日本政府の決定によらなくて、アメリカの一方的決定によつて通告され、そうしてこれを日本政府が保護しなければならんということになりますならば、一体この法律というものは、何のために制定する必要があるのかということを考えざるを得ないのであります。かようにアメリカからして押し付けられてそうしてその秘密を我々は守らなければならんというので法律を制定するが、その秘密というものはアメリカには筒抜けになつて行くのであります。そうして日本は何らこれに対して自主的に決定をすることができないということに相成りまするならば、かような秘密保護法というものは何ら日本の国防に対して、これを防衛する必要のないものと言わなければならんのでありまして、全く自主性を喪失したところのものであると言わなければならんのであります。
 大体一国の国防というものは、その国の国民が自身で以て決定をなすべきものであります。又その国民の協力と理解がなかつたならば、重大なる国家の防衛というものの重責を果すような防衛隊を作ることはできないのであります。ところが今日政府は躍起となつて日本の防衛隊の増強を図つておるのでありますが、これに対しましては、国民は何ら関与するところがない。何もこれを知らされておらんのであります。むしろ政府は、盛んにあらゆる欺瞞と、そうしてあらゆる詭弁を弄して国民をつんぼ桟敷に上げてそうして必死となつて只今防衛の増強を図つておるのでありますが、それはアメリカのいわゆる極東政策に基いてアメリカが一方的に決定するところのその方針を日本はMSA条約によつて押付けられまして、そうしてアメリカの方針をそのままに日本の国防の方針を決定しようとしておるのであります。MSA協定というものがかような自主性のないところのものでありますが、そのMSA協定に基いてできまするところのこの秘密保護法というものは、全くやはり自主性を喪失したところのものでありましてかかる屈辱的な母体から生れたところの申し子であると言わなければなりません。それ故にこそ、この秘密保護法も又只今申した通り全く自主性を欠如して、いわゆる畸形児の恰好となつてここに提案されて参つたのであります。政府は一体かような法律を独立国の政府として提案することに対して何ら恥辱を感じておらないかどうか。この点につきまして、私は外務大臣、法務大臣の如何なるお考えを持つておられるかどうかということをお聞きしたいと思うのであります。
 第二に、この法案は、将来防衛力が増強され、自衛隊がその性格を一変して軍隊となつた場合に、この法律がこれと相伴なつてその範囲を拡大し、強化されて行く心配はないかということであります。国民はこの点について非常に心配をいたしておるのでありますが、戦前にありましては、軍隊の機密を守るために軍機保護法というものがあつた。これは昭和十二年に日支事変の勃発と共に改正強化され、続いて昭和十三年には、国家総動員法とか、引続き昭和十六年には、外交、財政、経済その他あらゆる重要国務の秘密保護からスパイ防止までも含めた大規模の国防保安法というものが制定されまして刑罰も死刑から無期懲役を加えてこれが戦時下の日本国民を弾圧する軍閥の道具と化したのであります。吉田総理もこの法律の犠牲となつて、暫らくあちらへ行つておられたようでありますが、その当の吉田茂御本人が今日この機密保護法を再び復活するために、かような秘密保護法を提案されたということは、如何にも皮肉な運命の巡り合せと言わねばならんと考えるのであります。従来の例によつても明らかなように、この種の立法というものは、一度制定されれば、機会あるごとに拡大強化されて、遂には国民の自由と基本的人権を蹂躪することは明らかであります。殊にこの法律の主管大臣である保安庁長官は、この法律の制定に当つては最も強硬なる拡張論者でありまして、単にアメリカから貸与さるる武器の秘密保護にとどめず、これを防衛保護法として、部隊の編成、組織、行動から暗号及び作戦等に至るまでその範囲を拡大し、刑罰も無期懲役までに及ぼうとして最後の土壇場まで大いに頑張つたとのことでありますが、長官は今日でも、そういう考えかお持ちになつておるかどうか、木村長官の信念のほどを伺いたいのであります。
 更に、本案は用語が非常に不正確であり、その言葉によつて表現されておる内容も不明確でありまして、その適用に当つては不当に国民の権利を侵害する危険が少からずあると思うのであります。例えば第三条第一項の二の規定には、「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」云云、こういうことになつておるのであります。併しながら不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものでも、必ずしも不当な方法によらなくても探知することができるのであります。例えば自分の兄弟であるとか、或いは友人であるとかいう者が自衛隊員として勤めておる、その者が、普通不当な方法によらなければ探り得ないような秘密を問わず語りに話してくれましたときに、こちらはそれをうつかりと電車の中などででも話しますれば、これは直ちにこの条文を適用されまして、十年以下の懲役に処せられるということになるのであります。併しながらこういうことはその他にもあるのでありまして、例えば我々が演説をする。そういうことを聞きまして、そうしてうつかりそれを演壇で喋べれば、これも又この法律の適用を受けなければならんことになるのであります。又学者なども非常に研究に熱心なる余り、いろいろ武器等の構造などについて問い質しますときに、これがその目的が国家の安全を害する目的を以てやつたということであれば、これは勿論この法律の条文を適用されるのでありますけれども、併し学者の研究のためにやつたことが、若しこの適用を不当に拡張解釈して行きまするならば、我が国の安全を害すべき用途に供する目的を以てその秘密を探知し、又は収集しようとしたという疑いを受けましてこの法律の適用をいつ受けないとも限らないのであります。又通信、報道に従事する人たちが、何か新らしいニュースを読者に提供しようといたしまするときに、多少これは従来果して公けにされておるものであるかどうかということに疑問を持つことがあるといたしましても、その公けにされたか否かということは、これはなかなか容易に普通では知ることができないのであります。いわんやアメリカにおいてこれが公けにされておるかどうであるかということは、到底国民の大多数の人はこれを知る機会がないのであります。ところがかような場合におきましても、やはりこれを発表しまする場合には、或いはこれによつて本法律の適用を受けないとも限らないのであります。こういうふうに考えて参りますと、この適用におきまして、これが拡張解釈されたり、或いは不当に拡大されて適用される場合におきましては、国民の知る権利或いは学問、研究の自由、又言論、出版の自由、報道の自由というものが著しく阻害されるのでありまして社会生活の不円滑を来たし、そうしてこれによつて社会が非常な萎縮をして、萎靡沈滞するということが考えられるのであります。憲法におきましては、第二十一条の規定に、国民の基本的人権として言論、出版、その他一切の表現の自由を保障し、第二項では「検閲は、これをしてはならない。」ということになつているのであります。勿論憲法の保障といえども、絶対的なものではないのでありまするけれども、併しかような広範囲に亘つて憲法の保障する基本的人権を制限するということは、これは軽々しく許さるべきことではないのであります。これに対して政府は、この法律の適用に当りまして拡大解釈のできないように、その適用を最小限度に局限する何らかの措置をおとりになる考えであるかどうか。この適用をできるだけ最小限度に局限するということに対して、政府はどういう用意をしておられるかということをお聞きしたいのであります。
 最後に、裁判公開の原則でありますが、これは先ほどからしてたびたび質問をされまして、政府のお考えは、併しながらまだ十分に私は納得が行きかねるのでありますが、一体「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」ということになつているのであるが、これはこの法律を制定しても、若し裁判が公開されるならば、何らこの法律を制定した意味はなさないことになつて来るのであります。そこで一部の政府部内では、この第二項の規定を適用いたしまして、「裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しない」というこの条文を適用しまして、非公開にするということを考えておられるというのであります。併しながら若しこのことによつてこの法律によるところの犯罪を全部非公開にするということは、これは許さるべきことではないのでありまして裁判の公開の原則に反することになるのであります。一つ一つ事件についてその事情を調べて非公開にするということでありまするならば、中には公開されるものもある。そうするならば折角この法律によつて秘密を保護しようとしたところのものが公表されるということになるのであるか。こういう場合の不都合に対しては、政府はどうお考えになつておるのであるか。政府のお考えは、一体裁判公開の原則を実行しようということであるか、或いはどの程度まで非公開にして裁判をしようというお考えを持つておるのかということを私はお聞きしなければならんと思うのであります。
 以上、私は簡単でありまするが、質問をいたしまして、政府の御答弁を要求する次第であります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#53
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 この秘密保護法は屈辱的な立法ではないかという御質問でありましたが、相互防衛援助協定は、我が国が我が国の自衛のために自主的に締結したものであるのであります。同協定によります秘密保護の措置も又我が国が決定すべきものでありまするが、我が国におきましては、同様に協定を締結した諸外国のように、この種の秘密を保護する取締の法令を従来持つておりませんので、憲法にありますように、条約を誠実に履行する前提としてこの法律を必要とするわけであります。又秘密の漏せつは事のある場合において我が国の保安隊や警備隊の自衛力に重大な損害を与え、延いては我が国の安全にもかかわるものと考えられるのであります。以上のような次第でありまするから、この法案を御審議を願つておりまするので、政府といたしましては、この法案が屈辱的なものであるというようなことは絶対に考えておりません。
 それから将来秘密の範囲を拡大するようなことがないか、拡大しないと確約できるかという御質疑でありましたが、そのような御心配はないと考えます。本法案の適用範囲は、相互防衛援助協定等によりまして供与される装備品、又は装備品に関する情報に関する秘密に限定されているわけであります。従いまして、それ以外の事項には絶対に及ぼさない所存であります。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇〕
#54
○国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。
 裁判の公開、非公開についての御質疑でございますが、只今のお話のように、政府が公開にしたいものだとか非公開にしたいものだとかいうような考えでやつているというのではないのでありまして、法務省といたしましては、憲法第八十二条第二項の但書をそのまま読んでみますると、公開が原則ではあるけれども、そして秘密保護という精神から見て公開裁判で秘密を論議されることは好ましくないが、併しなお且つ、憲法第八十二条第二項の但書を読むと、これは公開が原則である。併しながら個々のケースについては、裁判官の認定によるものであつて、裁判官の認定が先ほど亀田議員にお答え申上げましたような場合においては、非公開を是なりとする場合も想定し得る。こういうふうに考えまして御答弁を申上げる次第でございます。
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手]
#55
○国務大臣(岡崎勝男君) この法律案が屈辱的でないということは、今緒方副総理からお答えした通りであります。アメリカにおきましては非常に厳重な機密保持の法律を持つておりまして、これに基いて兵器等についても等級を付してその機密を守つておるわけであります。で、そういう機密な兵器を我がほうで譲り受ける場合には、これは日本の防衛力に非常に大きく寄与するものでありますが、そのためにやはりアメリカで守つている程度の秘密を守らなければ、譲り受けることは困難だと思いますので、この種の法律は、当然のことと考えております。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手]
#56
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 私は先刻も申上げました通り、いわゆる防衛出動時において、その出動すべき自衛隊の行動、編成、装備等からいえば、これは相手方にわかつては相成らんものであります。さような場合において秘密を保護すべき必要はあると考えております。そうでなければ、日本の安全と独立は守つて行けない。これはやむを得ない処置であります。一体、一国においてさような場合においていわゆる秘密を守るべき法律のない国はないと記憶しております。我が国にもそれはあつて当然だと考えておるのでありまするが、現段階におきましては、これは十分に私は検討すべき必要がある。即ち内容、時期等においてなおよく検討すべき余地があると私は考えております。従いまして今日は、いわゆるMSA援助に基いて我が国の自衛隊が将来持つべき装備等についての秘密の保護を守れば、差当り事足ると、こう考えておる次第であります。(拍手)
#57
○議長(河井彌八君) 一松定吉君。
   〔一松定吉君登壇、拍手〕
   〔「自由党どうした」「定足数を欠くぞ」「議長、休憩だ」「休憩々々」と呼ぶ者あり〕
#58
○一松定吉君 休憩ですか。
#59
○議長(河井彌八君) 休憩ではありません。
#60
○一松定吉君 私は改進党を代表いたしまして本問題について、少しく質疑を進めたいと思いますが、大体のことは、今までの質問者によつて十分要領を得たと思いまするから、質問者の余り質問しない点について私の気付いた点をお尋ね申上げたいと思うのであります。
 先ず本件は、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案でありまして全くMSAの第三条の規定から来る法案であるということは周知の事実でございますが、問題はこういうような、いわゆる十年以下の刑罰で以て縛るというような法律については、国民に徹底的にこれを周知するという方法をとらなければならんと思うのでありまするが、本法につきましては、今までの質問者の言われましたように、どうも難解の字句が用いられておることが多いのでありましてこれらの点を国民に徹底させる必要があると私は思うのであります。法文はよろしく簡明、明瞭、平易、荘厳であるということが、法律のすべての用語において用いらるべき言葉でなければなりません。然るに本法はどうも解釈が、非常に難渋な解釈であつて疑問が多い点が非常にあるのでございまするから、そういう点について少しくお尋ねをいたします。
 先ず第一条の三項のいわゆる「公になつていないものをいう。」と、公けになつておるということは、一体どういうことを言うのであるか。官公署が発表したことだけを言うのであるか。或いは第三国で発表したものでもいいのであるか。或いは官公署が発表せず、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ等で発表したようなものでも、もうそれは秘密ではないのであるか。こういうような点について一つお伺いしてみたいのでありまするが、この点につきましては木村保安庁長官は、第三者が悪意を以て発表したものであつても、「もうすでに発表された以上は、それは秘密ではないんだからして」という御答弁があつたようでありまするが、それならば、一つお前は、十年以下の懲役に行くことを覚悟してこれを一つ発表しちやどうか、よろしいと言うて、或る者が監獄に行くのを覚悟してこの重大な秘密を発表する。そうするとこの者は、勿論本法において罰せられるが、発表されたことは、もうすでに秘密ではないんだからして、国民何人でもこれを利用し、これを演壇で発表し、これを新聞、雑誌に発表するということは少しも差支えないということになる。いわゆる秘密保護ということの目的が十分に達せられないように思うんですが、この点はどういうような措置をおとりになるお考えでありますか。この点を一つ伺つてみたい。
 それからその次には、第三条のいわゆる「不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」とあるが、不当な方法でないやつは、いわゆるこの三条の制裁は受けないことになると思うのであります。例えば国会議員が或る工場を視察し、それについての話を聞いて、その使用法を自分が研究するというようなときに、国会議員としてそれをやつたというようなときに、国会議員がこの議場内においてその知得したる事柄を発表したら、これはどうなるか。これは即ち不当な方法ではない。正当な方法によつて自分の知得したことを発表する。こういうようなことがこの法案に触れないということであれば、折角この法案を作つたということが十分の効果を挙げないように思うが、そういう点は一体どうなさるお考えでありますか。この点についても一つお答えを願いたい。それから第三国で、日米では発表しないけれども、いわゆる日本とアメリカのこの協定を結ぶと同じように、アメリカと他国との間にやはり協定が結ばれているのでありまするが、そういうときには別に本法のような秘密保護の法律はないということは、木村保安庁長官の提案理由の御説明の中にもあつたのでありまするが、第三国が日米のこの秘密に開することを発表した。その発表したことを我が国の新聞、ラジオ、その他雑誌等でこれを発表したというようなときにもやはり責任はないというふうに考えねばならんと思うが、その点は如何でありましようか。
 それからその次に伺いたいことは、本法の第三条の制裁規定は、いわゆるMSAの第三条の規定から来たのであり、而もこれは提案理由の御説明にもあつたように、いわゆる刑事特別法の第六条から七条、八条の規定がこれはお手本になつている。この刑事特別法の六条、七条、八条の規定がこれに多く採用されているということは、この法文を対照して明らかでありまするが、刑事特別法には、第六条の規定を見ると、この本法の第三条の一と二、これだけのことはこの刑事特別法に規定があるが、三の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」というのは、刑事特別法にはこれはございませんね。それから同じく第四条の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により他人に漏らした者は、」云々というこの法文も刑事特別法にはありませんね。こういうような刑事特別法にないものを特に本法に規定しなければならない特別の事情はどこにあるのか。それを一つ説明してもらいたい。保安庁長官の御説明には、成るたけ明瞭に、必要最小限度に事項を規定するにとどめて、そうして大勢の国民に迷惑のかからんようにする。それがために刑事特別法を参酌してこしらえたのだとあなたは仰せになつた。ところが今のような刑事特別法にないようなことがこの法文の中に織り込まれているのは、どういう必要があつてそういうことをしたのであるか。その点を一つお話を願いたい。
 それからこの二条には「防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な措置を講ずるものとする。」とあるが、これは亀田君も、或いは中山君も尋ねましたが、「保護上必要な措置」というのは一体どういう措置をするのかということが一つ。それからMSAの第三条の二項には、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置をとらねばならんと書いてある。いわゆる公衆に周知させるための措置をとらなければならん。ところが本法についてはこのMSA協定第三条のいわゆる「公衆に周知させる」という方法についての規定はなくて、ただ関係者に通知する等の措置をとる。これではMSAの第三条の周到なるいわゆる規定がこの本法に織り込まれていないところは、私は甚だ遺憾に思うのであるが、これは一体どういうお考えで周知させる方法をとらないのか。或いはそれは保護上必要な措置を講ずるのだ。その措置を講ずることはいいが、それは公衆に向つて周知する方法でなくて、秘密保護上必要な措置を講ずるということであつて、衆人に、多くの人に向つて周知せしむるという方法をとられないことが、国民が甚だ危惧の念を持つて、これに関心を持つているものであろうと私は思うのでありますが、それはなぜにお入れにならなかつたのか、その点を一つ明らかにして頂きたい。
 それから第二条のいわゆる行政機関の長が、防衛秘密について標記を附するというので、これは「政令で定めるところにより、」とあるが、政令が今我々の目に触れておりませんから、どういう政令を作るかわかりませんが、その政令によつて定めるところの方法によつて、防衛秘密についての標記をする、この関係者がう防衛の秘密にかからないような品物でも、これは防衛の秘密だという標記を附するというようなことになると、いわゆる防衛の秘密ということが、この行政官によつて拡大強化されるということになつて来ると、新聞雑誌、我々国民が、いわゆる秘密防衛のために範囲が拡大されることによつて、我々の行動が制限を受けるということになると思うのだが、この点についてはどういうようなお考えを持つていらしやるか。その点を一つ明らかにして頂きたい。
 それから不当な方法ということについて、中山君が質問をいたしましたが、これは不正だとか不当だとか、或いは欺すとか賄賂とか酒とか、たばことをのませるというようなことでやることは、勿論不当な方法でありましようが、先刻言つたような、国会議員が視察してその結果を話すということは、不当な方法に入らんと思うが、その点はどうか。そういうような抜け穴をこしらえていることが果して適当であるかどうかという点についても一つ御答弁願いたい。
 それからその次には、この三条の二号に「収集することができないようなものを他人に漏らした者」とある。或る人が保安庁の役人から、いろいろな防衛に関する話を聞いた。それだからこれは、自分は一つ何か話してやろうと思つて話すときに、これはひよつとすると収集することのできないようなものだろうかと自分が思いながらこれを発表すると、すぐにこれに当てはまる。刑法から言うと、いわゆる不確定の故意ということに当るのですが、どうですか。これは木村さん、一つ専門家だから答えて頂きたい。不確定の故意だから、これに当つて罰するのだ。こういうような御説明であるのかどうか。その点は主観的にきめるのか客観的にきめるのか、明らかにして頂きたい。それから第四条のいわゆる業務によつて知得したもの、或いは使用の方法たとか、或いは製作、保管、修理に関する技術等についての話を、授業を受持つている者が、業務によつて知得したそのことを、これを自分が生徒に教えるとか、或いはこれを職務権限によつて発表するとかいうようなことは、いわゆるこれは不当な方法であるのかどうか。そういう点について、いわゆる業務によつて知得し、若しくは了得した秘密を他人に漏らしたということについて、不当な方法だとか、或いは正当な権限によつてというようなことがない以上は、業務によつて知得したここを業務上発表しても、これがそれに当てはまるような法文の書き方は、解釈上疑いを容れる余地があるのではないか。その点についてのお答えを伺いたい。それからいま一つお伺いしたいことは、今御承知の通り問題になつておりますビキニの灰ですね、この原子爆弾の灰を今静岡で頻りに研究しているが、この灰の内容構成分等を発表するというようなことがあれば、これはいわゆる防衛の秘密に背いたようなことになるのかどうか。これは勿論、今この法律ができておりませんから、我が国でこの法律において処分することはできますまいけれども、そういうようなものはいわゆる第一条の船舶、航空機、武器、弾薬その他の装備品及び資材といううちに勿論入ると思うが、それはどうなるのか。そういう点について一つ御発表を願いたいのであります。
 それからその次に、最後ですが、副総理は、将来、今現在の防衛秘密以上には秘密を保つというような法律をこしらえる考えはないのだとあなたは仰せになるが、これはますます、いわゆる我が国の保安隊が防衛隊になつて、そうして外敵の侵入を防ぐというようなことになり、場合によれば外国にまで進出しなければならんというようなことになつたときに、或いは作戦だとか、或いは員数だとか、或いは戦闘方法だとかというようなものについて、秘密を保たなければ、我が国のために非常に不利益であるというようなときには、当然秘密保護法というものをこしらえなければならんものと思うのであるが、これは木村長官は、将来は考えていると言う、副総理は、そういうことは考えておらんと仰せになるが、これは、必要があるのではありますまいか。その点について一つ遠慮なく、本当に秘密の防衛を規定しなければならんということであれば、これ以外に、我が国のいわゆる安全を害すべきような行動を取締らなければならんから、当然私は秘密の保護の必要があるものと思うのであるが、それでもないと仰せになるのかどうか。その点を一つ御答弁を願いたいのであります。その他いろいろな問題もありまするけれども、他の諸君がすでに質問をして、答えておりますから、これ以上の質問はいたしませんで、あとは委員会において意見の発表をいたしたいと思いますが、どうか腹蔵なく詳細にお答え願いたいのであります。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
#61
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 将来、日本が海外に出兵するような場合等を考えて、日本独自の秘密を守る法律が必要でないかという御質問でありましたが、現行の憲法の下におきましては、海外に派兵をいたすことは考えられませんし、又政府の考えといたしましても、仮に直接侵略の防衛に当る場合も、海外に出兵する等のことは考えておりません。従いまして今お挙げになりましたような事態は、全然変つた事態でありまして、そのときの事情に応じまして別に考えるのでありまして、今のところ、御指摘になりましたような立法は考えておりません。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#62
○国務大臣(木村篤太郎君) 一松君の御質問が、如何にも細目に亘つておるのでございますが、これは委員会において十分御納得の行くように説明いたしたいと思います。
 概略だけ申上げますと、先ず、刑罰を受ける覚悟で以て秘密を漏せつした場合に、その秘密を聞いた者が更に他人に話したときにはどうなるかということであります。勿論刑罰を受ける覚悟で以て秘密を漏せつした者が刑罰を受けるのは勿論であります。併しそれを聞いた者が秘密であるかどうかわからずに聞いて、そうして第三者にそのことをやはり告げたというような場合には、本法案の刑罰の目的にならんと考えて頂きたい。何らの犯意がありません。
 次に、業務によつて知得し云々、この業務ということについては如何にも広いじやないかという仰せでありまするが、特にこの条文に「業務により」云々ということを入れましたのは、御承知の通りこの対象となつております装備その他は、これは修繕にも出さなければなりません。又複製もしなくちやならん。従いまして民間工場に向けてこれを修理注文しなければならん。その場合に業務によつて知得した者を対象にしなければ、秘密が漏れるわけであります。そこでそういう業務によつて知得した者をこの法文の対象としたわけであります。
 次に、弘報関係についてはどうか。勿論この広報関係の必要はあろうと思います。併しこれは本法文に入れるべきものでないので、これは別個の行政措置でやるべきものと考えます。ただ本法において特に注意したのは、秘密であるものは、いわゆる秘密であるということを一般の人たちにわかるように手だてをしたり、或いは標札を立てるとか或いは記号をつけるとか、これは秘密であるということを一般人に十分にわかるようにして取扱を厳密にいたしたい。こう考えております。間違いはここから出て来るような余地はないと考えております。
 次に、国会議員が工場へ見学に行つてたまたま秘密の事案知つてそうしてほかに漏らした場合どうか。これは工場へ行つて秘密であるということを知らずに秘密事項を知つて、これを他人に漏らしたところで、この法案の対象にならんことは明らかであります。ただ秘密であるということを十分承知しながらこれを他人に漏らす場合には、この法案の適用を受けることは当然であろうと思います。何人といえども、この秘密を保持する義務があるのであります。
 次に、ビキニの灰の問題が出ましたが、御承知の通りこの法案の対象となるものは明らかに構造又は性能、製作、保管又は修理に関する技術、使用の方法と限定されております。さようなビキニの灰のようなものは、将来とても問題になる余地はないわけであります。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#63
○国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。
 大体保安庁長官から御答弁がございましたので、私のほうは、即ち罰則の問題に関係あることで、一、二お答え申上げたいと思います。先ほど一松さんの御指摘になりました、或る人間が十年の刑期覚悟で秘密を発表するという場合は、主として保安庁長官から御答弁がありましたが、この場合、そうやれと言つたいわゆる共犯の場合でございますが、これは御承知の通り第三条の本犯の共犯となります。又すでに御承知のように刑法総則に則つて罰せられるわけでございます。
 それから第二に、刑事特別法第六条以下と本法第三条との食い違い、狭さ広さについての御質疑でございますが、刑事特別法の問題は、御承知のようにアメリカの軍人軍属の行為に関係いたしますので、日本における刑事特別法は狭くしてございますが、本法は、アメリカの軍人に関係する秘密保持ばかりでなく、日本の国の秘密保護に関する法律でございますから、それだけ拡げてあるわけでございます。
 以上、お答えを申上げます。(拍手)
   〔一松定吉君発言の許可を求む〕
#64
○議長(河井彌八君) 一松定吉君。
#65
○一松定吉君 まだ質問いたしました、第三条の第三項並びに第四条の規定が刑事特別法にはないけれども、これに織り込んだのは何か理由があるかということをお尋ねしたのですが、それについてお答えがないのです。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#66
○国務大臣(木村篤太郎君) 特に業務に関しての法文を織り込んだのは、只今申上げましたようにこの秘密保護法の対象となつておりまする装備品、これを民間に修繕或いは複製のことを委託しなくちやなりません。これの必要上、特にこの規定を設けることになつたわけであります。
    ―――――――――――――
#67
○議長(河井彌八君) 羽仁王郎君。
   〔羽仁五郎君登壇、拍手〕
#68
○羽仁五郎君 本法案に対し、我が国会及び内外の世論は甚だ深刻の憂慮を示しているのは何故でありましようか。三段九点について、政府に質すことを許されたい。
 先ず第一に、本法案がいわゆる日米相互防衛援助協定案と直接に関連している限り、いわゆるMSA案について厳重に政府の認識を質さなければならないことが三つあります。
 その一。政府は、アメリカとMSA協定を結んでいる国が世界に五十カ国に及んでいるので、日本がこの列に加わることに何の差支えがあるかと言つているが、これは国民を欺くものではないか。即ち、世界のあらゆる国国、なかんずくいわゆる二つの世界というか、米ソ両方と外交関係を結んでいる国がMSAを結ぶか結ばないかという問題と、日本のように世界の一方、アメリカなどとは外交関係が回復されたが、進んで一刻も早く世界のあらゆる国々とも外交関係を回復しなければならない国が、これらの全面的関係を解決する前に、アメリカとの一方的関係のみにいよいよ深入りすることがよいか悪いかという問題とは、同列に談ぜらるべきではない。
 その二。政府は、日本と世界のあらゆる国々、ソ同盟や中華人民共和国、朝鮮、インドなどとも、外交関係又は経済関係を回復する努力を先にし、その見通しを得た後にアメリカとのMSA案や本法案などにつき国会及び国民に問うべきではないか。
 従つてその三。政府は、日本の国際関係の全面的改善の努力を先にしないで、日本をアメリカとのみの関係に深入りさせる結果、本末を顛倒し、前後を誤り、日本の国際的経済的地位の改善にとつて有害の結果を生じた場合には、政府は如何なる責任をとるのか。現に政府はMSA案により、先に国会が行なつた中国貿易促進の決議を事実上に蹈みにじることとなつたらどうするか。日本のMSA受入によつて、政府は日本とソ同盟や中華人民共和国、インドそのほかアジア諸国、又オーストラリア、カナダなどとの外交又は経済の関係が不利とならないと断言し得るか。本員は先ず、これら三点につき政府の責任ある言明を求める。
 日本国は、政府、吉田首相、岡崎外相などの私有物ではない。共産主義や社会主義をどう見るかという党派的見地に没頭して、日本の外交を犠牲にし、日本経済の国際的条件を悪化させ、日本国民をこれ以上に苦しめるべきではない。いわんやソ同盟や中国は、最近、或いは日本国民の本国帰還につき、或いは原爆、水爆などの恐怖の除去のための国際的協調につき、或いは広く一般に国際緊張の緩和につき、イギリスのチャーチル首相なども好意的と判断しているように誠意ある態度に出ていると判断されるのに、日本がこれらの誠意を蹈みにじり、みずから窮地に陥ることを我が国民は憂えているのであります。
 次に、本法案そのものについて政府の言うところに重大な矛盾がないか。三点につき厳重に質したい。
 その一。本法案は、若し日本がMSAを受諾すれば必至のものであるか否か。若し然りとするならば、今後MSA受入に関連して如何なる問題が次々と必至となるか。政府の認識しているところをこの際明らかにされたい。それとも政府は、それらについて見通しもなくいわゆるその都度主義を続けるつもりか。国民は不安も甚だしい。答弁されたい、
 その二。一昨日衆議院外務委員会において、与党佐々木盛雄委員が、本法案は義務的のものかと質問したに対し、政府下田条約局長は、MSA協定は日本にこうした立法の義務を負わせてはいないが、日本側が措置をとることを規定しているので、この協定の趣旨の実現のため立法が必要になると答えている。MSA受諾による日本の義務は、常にかく最大限に日本にとつて非自主的に解釈されざるを得ない虞れがあるのではないか。日本に立法の義務なきものを、何故に政府は国会に立法を提案しているのか。立法によらないで、ほかに措置がないのか。若しないとすれば、MSAに措置と規定しているのは国民を欺くものではないか。MSA調印の際、政府は、具体的にこの措置の内容として何を考えていたのか。その内容としてほかに何の考えもなく、初めから立法を考えていたとすれば、なぜ措置と言わず立法と明記しないのか。かく外交文書において措置というような最小限の規定によつて、国内の立法というような最大限の義務を、形式上にはなくて実質上に負うということは、これ即ちアメリカの日本に対する内政干渉に隙を与えるものではないか。日米安全保障条約、更に遡れば、いわゆる平和条約第六条(a)項但書、外国軍隊の日本駐留の規定、これらにすでに実質的にアメリカの日本に対する内政干渉の必至の条件があつたのではないか。若し然らずとするならば、MSA案にいう措置を、本法案のごとき日本国民の基本的権利の刑罰による制約を含む立法等によらないで解決する方法をとるべきではないか。
 最近のビキニ水爆実験による我が平和なる生業に従事する漁民の被害につき、ワシントン二十三日発、AP電報によれば、アメリカ上下両院合同原子力委員長が、これら日本人が漁業以外の目的で実験区域に入つたとも考えられないことはないと発言し、漁業以外の目的とは、スパイ行動としか解釈され得ないが、この重大発言につき、我が政府は如何なる措置をとつたか。又とろうとしているのか。政府の答弁を求める。
 日本の原子力研究の専門家は、日本がアメリカそのほか外国の原子力関係の秘密を日本に移入すべきでないと公式に見解を表明しているが、日本がアメリカの秘密兵器装備を借りることには、重大なる害悪がある。最近アメリカの秘密の解釈は拡大の一路を辿り、国際連合の職員がアメリカの秘密主義によつて圧迫されている。そして又日本には過去における軍機保護法、そのほか曾つて吉田首相自身が疑いを受けて逮捕されたというようなことまで起つたような秘密政治、国会の審議に対して黙れという暴言をさえ生じさせたような恐るべき軍事的秘密主義、国会の監視も及ばない重大な秘密軍事予算及びそれに結ばれた汚職などの害悪まで発生させた秘密主義の伝統が根深く存在し、今日これらが根絶されたとは政府も断言し得まい。主権在民の憲法はあるが、政府官僚などに人民主権を尊重する一片の誠意が認められない日本の現状において、チャップリンをさえ危険視するような秘密主義の弊害、日に日に恐るべきアメリカの兵器装備の秘密を入れることは、誠に百害あつて一利がない。いわんやアメリカにおいては秘密主義のため原子力研究も阻害され、そのために現在アメリカはソ同盟などの原子力研究の進歩に遅れをとりつつある事実を、アメリカ両院合同原子力委員会のコオル委員長が認めているではないか。決定的の意義もない、大して役にも立たないアメリカの兵器を日本に入れて、日本国民の権利を制限する虞れを抱かしむる立法をなすべきではない。政府は本法案のごとき立法を考えるよりは、アメリカが秘密にしているような兵器装備などは日本は借りないという措置をとるべきではないか。政府の所見如何。慎重の答弁を求める。
 本法案は、アメリカの秘密を守るために、日本国民の基本的権利を制約するものか。若しそうだとすれば、一昨々日、朝日紙上に、久しく言論の経験を有し、現在東大新聞研究所長である千葉雄次郎君が言つているように、武器の援助を受けるが故に、日本国民が保守隊の装備などについて、アメリカ国民よりも少く知らされたり、より多く処罰されたりする虞れがある。のみならず、日本国民或いは保安隊員をして、実質的にアメリカに対し忠誠を誓わしめるに至る虞れさえあるではないか。
 その三。本法案は、アメリカの秘密を守るために日本国民の権利を制約しようとするものではなく、日本の自衛のための秘密を保護しようとするのだと政府が言うならば、自衛のための秘密とは何ぞや、この点を政府に質さねばならない。外国侵略を計画するものは、その準備を国内の国民にも隠さねばならない。日本がみずから侵略戦争を計画せず、又アメリカが侵略戦争を計画して、これに日本の加担を強制しているという事実もないならば、日本国憲法に違反する重大の犯罪の虞れもなく、認められることのできる範囲内の自衛に、国民を懲役十年の重刑を以て束縛せねばならないような秘密があり得るはずがない。我が国民が、我が国家の状態について十分に知る権利こそ、現在我が国において最も尊重さるべきではないのか。我が国民は余りにも何事も知らされず、そのためにいやされがたい悲惨に導かれた。政府は、明治、大正、昭和と我が国民が耳目と口とを塞がれて苦悩して来た実情に心をいたすなら、区々たる秘密の保護などということに目を奪われて、我が国民が我が国家の状態について知る権利を制限することを急ぐべきでない。我が国が外国を侵略する意図なく、又外国の侵略的意図に加担する意思なきことをこそ中外に明らかにすべきである。そうすれば、何で外国が、そのような我が国にあえてスパイを潜入させるようなことをなし得ようか。万一そのようなことを企てる外国があれば、国際的制裁によつてこれを退けることができる。我が憲法の平和主義、我が憲法の主権在民の原則、これらの貫徹にこそ、現在政府は全力を挙ぐべきである。政府は、この我が国が新生すべき方向にどれだけ努力したか。反対に政府は、ややもすれば我が国を再びポイント・オブ・ノウ・リターン、取返しのつかないところへ連れて行こうとしているのではないか。政府は我が憲法の主権在民の主旨に忠実を誓い、眼前一時の防衛秘密の保護などという如何なる措置も、我が主権在民の国民がすべてを知る権利を侵してはならないことを銘記すべきではないか。主権在民の権利を侵して何の自衛か。
 最後に、かく幾多の容易ならぬ問題を含む本法案並びにMSA案など重大なる案件を国会に提出する政府の資格について、政府に質したいことが三つある。その一。政府は、現在我が国民を悲しませている汚職疑獄事件続発につき、政治道徳上に責任を感じていないのか。政府は、刑法に触れなければ免れて恥なしと考えているのか。国民の血税が私され得るような政治が行われているという疑惑だけでも政府は責任をとるべきではないのか。(拍手)それとも政府は、造船利子補給法案の立法当時には、かくのごとき大規模の疑獄の発生の虞れを少しも予感していなかつたのか。そのような政治感覚しか持たない政府は、我が国の主権、又我が国民の主権在民の基本的権利を侵す虞れがあると、世論の警告しているようなMSA案や、本法案などを提案する資格がないのではないか。事は汚職の程度ではなく、我が国の主権、又我が主権在民の国民の基本的権利に関する問題であるから、政府の最も厳粛なる答弁を要求する。
 本法案だけを切り離して考えることは極めて危険である。本法案は、MSA案、又防衛庁法案、自衛隊法案などと並んで、又警察機構を改変する法案、又教育関係二法案などと並んで提出されているのであります。これら一連の立法案を相互の関連において判断するとき、国内及び国際の世論は、政府が、一、日本に軍国主義を復活させ、二、警察国家を再現させ、三、学校を支配し、四、労働組合を統制しようとしているのではないかと深甚の憂慮を示している。政府はそういう虞れはないと判断しているのだろうが、疑獄事件が与党の中心、文内閣に波及すれば総辞職せねばならないという現在の段階にある政府が、我が国の運命に関するこれら重大の問題につき判断を誤まらないと断言する資格があるのか。疑惑を一掃することを先にすべきでないのか。
 その二。大達文相は、先日所も更にわきまえず、我が国会における公式の見解の表明において、先の戦争犯罪裁判に対し、暴言を吐いて、内外の識者の指弾を浴びているが、この点について吉田首相乃至政府も大達文相と同じ見解に立つているのか否か。明確に答弁されたい。侵略戦争及び一般戦争犯罪について、又国際紛争の解決の手段として戦争を計画し遂行する行為について、これらを犯罪とする規定は、今日国際法上に確認されたる通念であるが、現在政府は、これら国際法上の最近の結果を否定するがごとき疑いを免れない考え方に立つものであるか。日本が侵略戦争が犯罪であることを否定し、国際紛争の解決の手段としての戦争の禁止に関する国際的規定を否定するがごとき疑惑を招くすべての責任は政府にある。これ又本法案と関連し、且つ極めて重大なる問題であるから、政府の厳粛の答弁を要求する。
 その三。政府はMSA案、又本法案など憲法違反の疑いを免れんのみならず、日本がアメリカの延長であるかのごとくにも判断されるような一切の行為をなすべきでない。この点につき政府の自覚をたださねばならない。アメリカ人は日本なりアジアなりで失敗すれば、日本なりアジアなりを引揚げてアメリカに帰ることができる。併し日本国民は永久に日本に生活するのであり、その日本はアジアにある。今日政府が党派的見地に没頭して、本法案などの国会通過を急ぎ、アジアにおいて善隣の関係を害する虞れがあるような関係に我が国を置くことをあえてして、永久に許されない罪を犯すよりも、国際連合における新中国の承認を真近にして、東京と北京との親善関係の回復の努力を先にすべきではないのか。政府は全体主義の立場をとらないならば、国会の質疑に対し見解の相違などという言辞を弄して討論を回避すべきでない。我が国民の憂いを代表する本院の質疑に誠意ある答弁を要求する。(拍手)
   〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#69
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 本法案は世界のあらゆる国と日本との関係を全面的に改善する機会を失わしめるものでないか。特に又ソ連、中国、インドなどの外交又は経済の関係を悪くしやしないかとの御心配のようでありますが、MSA協定、又本法案は、ソ連、中国、インド等との外交、特に又経済関係の改善を阻害するものではないと考えております。政府としましては、これらの国との相互関係の改善を希望はいたしまするが、それは既定の基本方針に副う限りにおいてであります。本法案及びMSA協定は、中国貿易促進の国会の決議を蹈みにじり、日本の経済の国際的条件を悪化させやしないか。MSA或いは本法案が中国貿易に悪影響があるとは考えておりません。
 更に、疑獄の噂の飛んでおる中に、政府はこういう法案を出す資格があるかというような点でありましたが、現在いわゆる汚職問題につきましては、司直の手で取調中でありまして、事実の全貌が明らかになつてから善処するということは、しばしば本議場におきましても申して参つた通りでありまして政府が、国民の信託の上に存在いたしておりまする以上、国務は一日も猶予することができないことは御承知の通りであります。
 大達文相のことを御引用になりましたが、大達文相は、本法案に関する政府の見解に反対の考えを持つているとは考えておりません。
 以上、お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#70
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 私は羽仁君と世界観を異にしております。我々は、結局日本の安全と平和を保つためには自由国家群の一翼となつて行かなければならんというこの建前をとつておるのであります。そうして今度の秘密保護法案にいたしましても、我々はアメリカと手をつないで、日本の防衛の全きを期したいという精神から出でたのであります。要するにこの法案の目指すところは、アメリカから受け得るところの兵器その他の秘密を保護していわゆる日本の国防の全きを期したい。こういうのであります。これが第三者に筒抜けになつてしまえば、日本の防衛態勢は崩れる、崩れてはいかん。従つて我々といたしましては、日本の平和と独立を守るために、最小限度の法案として我々は提出した次第であります。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#71
○国務大臣(岡崎勝男君) 大体のことは副総理からお答えになりましたが、MSA協定の第三条にあるのは、あれは義務かどうかというような点でありますが、これは義務ではない。それでは措置の内容はなぜ立法措置と書かないで、ただ措置と書いたかと、こう言われますが、立法措置をするかどうかということは、日本の国内できめることであつて、協定では、国際的には、日本に信頼して適当の措置を求めることを書けばそれで足るのであつて、それ以上立法措置とか何とか書けば、それこそ内政干渉になるのであります。
 第二に、この法律で日本の国民の知る権利を害するようなことをする必要はないじやないかというお話でありますが、この法律がなければ、米国から機密の兵器の供給等はないのでありまするから、従つてやはり当該機密は日本に来ないのてあります。これは決して日本の国民の知る権利を奪うわけではないのであります。(拍手)
#72
○議長(河井彌八君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#73
○議長(河井彌八君) 日程第二、統計法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長小酒井義男君。
   〔小酒井義男君登壇、拍手〕
#74
○小酒井義男君 只今議題となりました統計法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果について御説明いたします。
 先ず、政府がこの法律案提案の理由として説明するところを御報告いたします。この法律案は、現行統計法で定めている国勢調査実施の間隔を延長すると共に、国勢調査の中間において簡易な国勢調査を行うよう統計法の一部を改正するものである。昭和二十一年に統計法が公布せられる以前の国勢調査は、明治三十五年に公布された「国勢調査二関スル法律」によつて行われ、この「国勢調査二関スル法律」は、国勢調査は十カ年ごとに一回施行するほか、調査後五年目に当る年に簡易な国勢調査を行うよう定められ、そうしてこの法律による十年ごとの国勢調査は大正九年、昭和五年及び昭和十五年の三回に亘つて実施されたのである。昭和二十一年に新たに統計法を公布するに当り、先の「国勢調査二関スル法律」を廃止すると共に、その当時は終戦に関連して人口の移動の激しい時期であつた関係上、国勢調査を五年ごとに行うように定めるのが適当と考えられ、統計法第四条に、国勢調査は五年ごとに行う旨規定を設けることにした。この統計法に基く最初の国勢調査は昭和二十二年に臨時の国勢調査が行われたが、次いで先の「国勢調査二関スル法律」によつて行われた最後の国勢調査である昭和十五年の国勢調査から数えて丁度十年目に当る昭和二十五年に、国際連合加入諸国と共に世界人口センサスとして統計法に基く国勢調査が行われ、従つて現行統計法によれば、次期の国勢調査はそれから五年目に当る昭和三十年に行われることになるのである。
 政府は行政の簡素化についてはかねてから研究を続け来たつたが、国勢調査実施の間隔の点についてもその見地から検討を加えた結果、国勢調査と次期国勢調査との間にはその中間をつなぐ標本調査が発達し且つ終戦直後のような激しい人口移動も行われなくなつておる今日、厖大な金額に上る国費を以て五年ごとに国勢調査を行うことを定めている現行統計法を改めて、曾つての「国勢調査ニ関スル法律」が定めていたように、国勢調査実施の間隔を十年ごとに改めると共に、国勢調査を行なつた年から五年目に当る年に簡易な方法により国勢調査を行うよう統計法の改正をいたすべきであると考えるに至つたので、ここに統計法の一部を改正する法律案を提案した次第である。従つてこの改正法律が成立すれば、昭和三十年には簡易な国勢調査が実施されることになるのである。なお、近年統計の国際比較性が重要視されるようになつておるが、世界各国とも大規模の国勢調査は十年ごとに行われており、それらの大部分の国の実施の年度は、この法律改正により、我が国において国勢調査を行うこととなる年度と合致することになるので、国際比較性の点にも何ら支障を生じないのである。
 以上が、本法律案の提案理由として政府の説明しておるところであります。
 内閣委員会は、委員会を四回開きまして、本法律案の審議に当つたのでありますが、その審議の結果明らかにされた主な問題点を御報告いたしておきます。
 その第一点は、経済社会の安定した国、例えば英米等の国々では、一般的の人口調査は十年ごとに行うのが例であつてこれらの国々ではその間に簡易な調査もいたしておらない。我が国の現状は、英米並みの状態にはなつておらないが、併し終戦直後のような非常に激動しておる状態から比べると、よほど社会も安定しておるので、結局経済社会の非常に安定しておる諸外国と、終戦直後の激動期との中間を取つて、大規模な調査は十年ごとに行うこととし、その間の五年ごとに簡易な調査をするのが、我が国の現状から見て適当と思われるので、この案のごとくしたとの政府当局の説明であります。その第二点は、中間の五年ごとに行う簡易な調査で、我が国の国政の運営上支障がないものかどうかという点に関しまして、政府当局の説明によりますと、統計資料が行政上最も必要なのは、例えば選挙とか平衡交付金などの基礎資料に利用される場合であるが、この場合には府県別或いは市町村別、男女別、年齢別の人口調査が必要になつて来るが、これは当然五年ごとの簡易な調査で調べ得られる。次に必要性の高いものは、産業別と職業別人口調査であつて、この調査も行政上の必要があれば、当然五年ごとに行う調査に含まれることになるが、その他の調査事項は十年ごとの調査で事が足りると信ずる。要するに人口調査は大規模のものは十年ごとに、又簡単なものは五年ごとに行うことによつて十分行政その他各般の目的を達し得る。そうしてこの人口調査の方法は、統計審議会において十分審議された末、この議論に達したのであるとのことであります。
 その第三点は、昭和三十年に行う簡易国勢調査の費用如何という問題でありますが、若し昭和二十五年度と同じ程度の大規模な調査を現在行うものとすれば、恐らく二十五億円乃至三十億円を要するが、簡易な調査であれば大体十億円前後と推定せられるとの政府当局の説明でありました。
 その第四点は、昭和三十年に行う予定の簡易国勢調査の調査事項如何という問題であります。統計事務当局の案としては、一、世帯の種別、二、氏名、三、男女別、四、出生年月日、五、配偶関係、六、職業別及び産業別の調査を予定しておるとのことであり、これは各行政官庁の要望にも副つておるものであるとのことであります。
 内閣委員会は、昨日の委員会におきまして本法律案についての質疑を終了いたしましたので、討論に移りましたところ、矢島委員より、「本法律案の内容は、統計審議会の審議にかけ、その答申に基いたものであり、又統計の国際比較性の上からも支障がないものと認められるから原案には賛成である。又昭和三十年の簡易国勢調査を行うに当り、政府は各省との連絡を十分とつて効果ある調査が行われるよう留意せられたい。又これらの統計の有効なる利用の方法について、政府は今後十分考慮せられんことを要望する」旨の発言がありました。
 討論の後、本法律案について採決をいたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと議決せられました。
 以上を以て報告を終ります。(拍手)
#75
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#76
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#77
○議長(河井彌八君) 日程第三、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長上條愛一君。
   〔上條愛一君登壇、拍手〕
#78
○上條愛一君 只今議題となりました未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会におきまする審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 未帰還者の留守家族及び未帰還者が帰還した場合における援護につきましては、第十六回国会において未帰還者留守家族等援護法が成立いたし、昨年八月一日から施行され、国の責任において各種の援護が行われるようになりまして、今回援護の措置を更に強化するため、この法律の一部を改正しようとするものであります。
 改正の要点は、第一に従来の遺骨埋葬経費は、未復員者、ソビエト社会主義共和国連邦の地域内の未復員者と同様の実情にある者、又は戦争裁判受刑者の死亡の事実の判明した場合にのみ支給されていたのでありますが、右以外の一般邦人未帰還者の死亡の事実が判明した場合においても、その遺族に対してこの経費を支給することといたし、且つその名称を葬祭料と改めようとするものであります。
 第二に、遺骨引取経費は、遺族がない場合においても、葬祭を行う者があれば、その者に支給することができるようにいたそうとするのであります。
 第三に、未帰還者留守家族等援護法は沖繩地域にも施行されているわけでありまするが、同地域の置かれている特殊の状態のために、法の実際上の適用が極めて困難な状況にありまするので、当初から法が円滑に適用されていたと同様の効果を生ぜしめるよう特別の措置を講ずることが適当と考えられ、右の措置を講ずるに当つては極力現地の実情に即するよう配慮の要があるので、これを政令で定めることができるようにいたしてあるのであります。
 第四に、従来外務省において実施しておりました一般邦人未帰還者の調査業務は、明年度から厚生省に移管されることになりましたので、これを機会に厚生省の附属機関として、従来の留守業務部を改編し、これを未帰還調査部とし、旧軍人軍属未帰還者等の調査業務と併せて未帰還者等の調査、究明を一元的に実施する等の措置をいたすことが適当であるとの見地から、厚生省設置法に所要の改正を行うことといたしてあります。
 第五に、未帰還留守家族等援護法の施行に伴い、一般職の職員の給与に関する法律の一部が改正され、未帰還の国家公務員は未帰還中の給与を支給されないことになり、従つて国家公務員共済組合法の組合員たる資格を失うこととなり、又未帰還の地方公務員についても、国家公務員の例によりその給与が定められている関係上、同様の事情にありまするので、従来の実績を保障する意味において、これらの未帰還者に引続き組合員たるの資格を保持せしめるようにするため、国家公務員共済組合法に所要の改正を行うことといたしてあるのであります。以上が本案の提案理由並びに改正の要点であります。
 厚生委員会におきましては、慎重審議を重ね、熱心なる質疑が行われたのでありまするが、そのうち論議の中心となりました問題は、本法第十八条及び附則第二十二項の規定により療養の給付を受けている者のうち、約四千名が本年十二月二十八日で療養の給付を受ける期間が満了するにもかかわらず、これに関して今回の改正案では何らの措置も講じてないという点でありまして、これに対しまして政府委員から、「この問題につきましては今後引続き本法で療養の給付を行うべきか、或いは生活保護法の医療扶助に切替えるべきか、又はその他の方法により措置すべきか等々について種々検討を加えたのであるが、未だ結論に到達しないので、今回は改正措置を講じなかつたのである、今後更に研究して善処する方針である」旨の答弁があつたのであります。その他詳細は速記録によりまして御了承願いたいと存じます。
 かくて質疑を打切り、討論に移りましたところ、藤原委員より、本案に対する修正の動議が提出されたのであります。修正案の要旨は、現行法第十八条及び附則第二十二項の規定により療養の給付を受けている者が、その療養の給付を受ける期間満了後、なお引続き療養を要する場合においては、更に一年間療養の給付を受けることができるようにし、これによりまして今年十二月二十八日で療養期間が満了となるものを一応救済しようとするものであります。これに対し大谷委員より、「療養期間を一カ年更に延長して、この間に他の立法等の関連を考慮して適当なる対策を樹立するか、又は本法を継続すべきか否や等につき十分な考究をなし、いずれにしても政府は患者たちが安心して療養をなし得るよう万全の措置を講ずることを切望して修正案に賛成する」旨を述べられました。
 かくて討論を終結し、先ず修正案について採決いたしました結果、全会一致を以てこれを可決し、次いで修正個所を除く残余の部分について採決いたしました結果、これ又全会一致を以ちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。よつて本法案は修正議決すべきものと決定いたした次第であります。
 以上、御報告申上げます。(拍手)
#79
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決の報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#80
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
#81
○議長(河井彌八君) 日程第四、商品取引所法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員長中川以良君。
   〔中川以良君登壇、拍手〕
#82
○中川以良君 只今議題となりました商品取引所法の一部を改正する法律案につきまして、通商産業委員会における審議の経過と結果を御報告申上げます。
 御承知の通り商品取引所法は、商品の大量取引が迅速確実に行われ、且つ公正な相場が形成されること等を目的といたしまして昭和二十五年に制定され、その後約三年間に二十ヵ所の商品取引所が設立されたのであります。この間本法も三回ほど部分的な改正を見ましたが、近来の実情よりいたしますれば、どうも投機市場化する虞れの多い取引所が濫立する気配がありますし、又業務規程などに関する扱い方も公正な取引の確保や委託者保護の見地などから、かなり広汎な改正をする必要が生じて参つたので、ここに本改正法案の提出を見るに至つた次第でございます。
 改正案は関係条文が九十五カ条にも及ぶものでありますが、本改正の要点を申上げますと、第一に、商品取引所の設立を許可制に改めております。即ち現行法では自由設立の建前をとり、登録制となつておりますが、取引所の公共的な機能と性格に鑑み、堅実な発達を期待できぬような取引所は設立せしめないという趣旨で、許可制に改めているのであります。
 第二に、定款の変更と業務規程中の重要事項の変更は、主務大臣の認可制に改めております。即ち取引所の取引の種類や、取引の期限や、受渡場所の変更などは現在届出制でありますが、過当投機の防止のため、改正案では認可制といたしております。
 第三に、会員の最低純資産額について、これは会員の信用測定の基準でありますが、今般担保としての性格を併せ持たせることといたし、同じ取引所の二つ以上の商品市場又は他の取引所の商品市場で併せて取引する会員の場合は、この最低純資産額をその他の会員の最低純資産額より多いものに定め得ることにいたしております。
 第四に、持分の承継と取引所の決済について、新たに持分を承継して会員となつた相続人や受遺者は、被承継人の未決済取引の権利義務を承継できることになつております。又脱退した商品仲買人でも、脱退前に受託した未決済売買の処理ができるようにいたしておるのであります。
 最後に、第五として、会員信認金、仲買保証金及び売買証拠金に充用できる有価証券の範囲を拡張して、特別の法律により法人の発行する債券などで、政令で定めるものもこれに加えることになつております。
 当委員会におきましては慎重に審議いたしましたが、質疑の主なるものは次の通りであります。「本改正法案の立案に際して、当業者側で官僚統制の強化であるとして反対の意見があつたが、その懸念がないかどうか」という質問に対しまして、政府当局より、「許認可制は強くなつたが、個々の取引内容を規制する気持は全然ないので、現在ではどこの商品取引所もこの改正案に賛成をしておる」という答えがございました。
 又「設立許可につき、当該取引所を設立することが必要且つ適当であることとは如何なる内容を含むものか」との問に対しましては、「その地域での取引高が相当にあつて買占め、談合、売崩しなどができない程度の金高に上り、又他の取引所と競合関係がないことである。なお、その許可基準に関しては特別な内規はないが、過去の例にならつて許可をする」との答弁がありました。
 次に、「その他過当投機を行政的に如何にして防止するか」との問に対しましては、定款の変更命令を出すことができるし、特に取引決済のため受渡しできる商品の範囲を拡大することを勧告し、売買証拠金の引上げを命ずる等の措置を行う」との答弁があつたのであります。又「信認金、保証金及び証拠金として新らしく充用できる有価証券のうち、特に政令で指定を予定をしておるものはどういうものであるか」との問に対しましては、「その一は、銀行法に基く銀行の株券のうち取引銀行の株券、その二は、日本銀行が発行をする出資証券、その三は、証券取引に上場されておる会社の発行する社債券などであり、又金融債も予定をしておるのである」と答弁がございました。その他詳細については速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
 かくて質疑を終りましたが、討論を省略して、採決に入りましたところ、全会一致を以て本改正法案は、原案通り可決すべきものと決定をいたした次第であります。
 以上、御報告を終ります。(拍手)
#83
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#84
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時四十三分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、原爆被害緊急処理に関する緊急質問
 一、日程第一 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(趣旨説明)
 一、日程第二 統計法の一部を改正する法律案
 一、日程第三 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案
 一、日程第四 商品取引所法の一部を改正する法律案
ソース: 国立国会図書館
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