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1953/05/14 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 本会議 第46号
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1953/05/14 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 本会議 第46号

#1
第019回国会 本会議 第46号
昭和二十九年五月十四日(金曜日)
   午前十一時三十一分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第四十六号
  昭和二十九年五月十四日
   午前十時開議
 第一 漁港審議会委員の任命に関する件
 第二 けしの栽培並びにあへんの生産、国際取引、卸取引及び使用の制限及び取締に関する議定書の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
 第三 通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
 第四 離島振興法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第五 交付税及び譲与税配付金特別会計法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第六 経済援助資金特別会計法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第七 閉鎖機関令の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第八 旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第九 金融機関再建整備法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一〇 大蔵省関係法令の整理に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一一 農林省関係法令の整理に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一二 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一三 補助金等の臨時特例等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一四 軍事郵便貯金等特別処理法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一五 通商産業省関係法令の整理に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一六 厚生年金保険法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一七 船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一八 厚生年金保険及び船員保険交渉法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一九 公職選挙法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第二〇 日本放送協会昭和二十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書(委員長報告)
 第二一 旧海仁会等の施設及び附属物の転換処理に関する請願(委員長報告)
 第二二 農山漁村の農業協同組合等の法人税減免に関する請願(委員長報告)
 第二三 国有地の地上権確認に関する請願(委員長報告)
 第二四 旧軍用財産の防衛諸施設使用計画に関する請願(委員長報告)
 第二五 岩手県田瀬ダム建設に伴う漁業権補償の請願(二件)(委員長報告)
 第二六 兵庫県猪名川改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第二七 群馬県藤原ダム建設に伴う補償等の請願(委員長報告)
 第二八 群馬県藤原ダム建設に伴う補償道路等確定の請願(委員長報告)
 第二九 災害復旧費国庫補助概算交付に関する請願(委員長報告)
 第三〇 兵庫県円山川改修工事促進に関する請願(委員長報告)
 第三一 高知県物部川東岸改修工事促進に関する請願(委員長報告)
 第三二 岡山県粟谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三三 岡山県湯船川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三四 岡山県野土路川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三五 岡山県中谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三六 岡山県山乗川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三七 岡山県西谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三八 岡山県皆畑川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第三九 岡山県旦土川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四〇 岡山県西河内川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四一 岡山県行者川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四二 岡山県引谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四三 岡山県塩谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四四 岡山県中谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四五 岡山県道仙寺川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四六 岡山県羽出西谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四七 岡山県下り芳川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四八 岡山県舟山川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第四九 岡山県鵜の羽川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五〇 岡山県阿波川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五一 岡山県加茂町公郷地内砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五二 岡山県中田川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五三 岡山県五番川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五四 岡山県岸谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五五 岡山県栃谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五六 岡山県大井町宮部上地内砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五七 岡山県宮地川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五八 岡山県大谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第五九 岡山県寺部川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六〇 岡山県未谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六一 岡山県細田川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六二 岡山県小坂部川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六三 岡山県井原川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六四 岡山県三室川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六五 岡山県高野川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六六 岡山県井原川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六七 岡山県高尾川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六八 岡山県後門川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第六九 岡山県東谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七〇 岡山県梶並川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七一 岡山県那岐、成松両河川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七二 岡山県和田谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七三 岡山県入江谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七四 岡山県津和谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七五 岡山県河内谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七六 岡山県小高下谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七七 岡山県清常川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七八 岡山県興法寺川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第七九 岡山県尾原川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八〇 岡山県大谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八一 岡山県下郷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八二 岡山県坂本川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八三 岡山県島木川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八四 岡山県井谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八五 岡山県長谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八六 岡山県横谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八七 岡山県血吸川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八八 岡山県新本川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第八九 岡山県滝山川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九〇 岡山県大武谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九一 岡山県牛神谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九二 岡山県八塔寺川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九三 岡山県長谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九四 岡山県奥山川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九五 岡山県竜王川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九六 岡山県正ブ谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九七 岡山県豊浦川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九八 岡山県鳴滝川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第九九 岡山県鳩岡川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇〇 岡山県本庄川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇一 岡山県鴨川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇二 岡山県簗瀬川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇三 岡山県保々呂川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇四 岡山県水尻川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇五 岡山県山王、清迫両河川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇六 岡山県金上川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇七 岡山県三原川外二河川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇八 岡山県小田川上流砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一〇九 岡山県塩木川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一〇 岡山県大谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一一 岡山県谷山川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一十二 岡山県砂川支流砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一三 岡山県長谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一四 岡山県西宝伝川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一五 岡山県平田川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一六 岡山県高梁川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一七 岡山県三谷川砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一八 岡山県馬屋下村地内山林砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一一九 新潟県津川改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一二〇 災害復旧対策に関する請願(委員長報告)
 第一二一 北海道頓別川等治水工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一二二 北海道頓別町市街地海岸防災工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一二三 埼玉県小山川改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一二四 大阪府淀川補修工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一二五 兵庫県曇川一部改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一二六 京都府不動川等改修工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一二七 災害復旧事業促進等に関する請願(委員長報告)
 第一二八 長野県三滝川改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一二九 湯田ダム建設に伴う早期補償に関する請願(委員長報告)
 第一三〇 広島県上蒲刈島村梶屋谷砂防工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一三一 佐久間ダム建設に伴う天龍川西岸湖畔道路新設の請願(委員長報告)
 第一三二 北海道夕張市紅葉山、占冠村間等に道路新設の請願(委員長報告)
 第一三三 国道二十九号線改良工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一三四 国道二十九号線中一部改良工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一三五 鹿児島県串木野市内国道舗装工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一三六 二級国道宮崎福山線中一部改良工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一三七 県道小出只見線中一部改良工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一三八 道路整備費の財源等に関する臨時措置法の励行に関する請願(委員長報告)
 第一三九 北海道日勝道路開設に関する請願(委員長報告)
 第一四〇 北海道洞爺湖、虻田駅間道路舗装工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一四一 北海道二股、上猿払間産業開発道路新設に関する請願(委員長報告)
 第一四二 関門国道トンネル工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一四三 一級国道十七号線中三国峠開さく工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一四四 岡山県道周匝弓削線改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一四五 道路整備費確保に関する請願(二件)(委員長報告)
 第一四六 静岡県清水市、新潟県直江津町間道路改良工事促進に関する請願(二件)(委員長報告)
 第一四七 宮城県県道白沢長町停車場線改良工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一四八 国道三十三号線中高知県大崎村寺村橋架替促進に関する請願(委員長報告)
 第一四九 府県道等の除雪費国庫補助に関する請願(委員長報告)
 第一五〇 国道一号線中箱根道路改修工事施行に関する請願(委員長報告)
 第一五一 大分県久住町、幅岳村間に自動車道路開設の請願(委員長報告)
 第一五二 県道後免佐古線を東佐古まで延長するの請願(委員長報告)
 第一五三 広島県県道隠地天応停車場線復旧改良工事促進に関する請願(委員長報告)
 第一五四 国道四号線中広瀬橋の幅員拡張に関する請願(委員長報告)
 第一五五 京津国道中京都市山科ガード下に歩道設置の請願(委員長報告)
 第一五六 都市計画法等改正に関する請願(委員長報告)
 第一五七 東京都国立町周辺排水幹線路建設に関する請願(委員長報告)
 第一五八 住宅建設増加促進に関する請願(委員長報告)
 第一五九 公営住宅建設財源確保に関する請願(委員長報告)
 第一六〇 住宅金融公庫融資の賃貸共同住宅重点化に関する請願(委員長報告)
 第一六一 首都圏の住宅供給対策に関する請願(委員長報告)
 第一六二 産業労働者給与住宅融資の二元化に関する請願(委員長報告)
 第一六三 第二期公営住宅建設計画に関する請願(委員長報告)
 第一六四 建設省補助員の身分保障に関する請願(委員長報告)
 第一六五 国連軍の演習場使用に伴う損害補償等の請願(委員長報告)
 第一六六 駐留軍労働者の退職手当に関する請願(委員長報告)
 第一六七 農林漁業金融公庫出資金のわく拡大等に関する陳情(委員長報告)
 第一六八 中小企業の金融難打開に関する陳情(委員長報告)
 第一六九 信濃川水系砂防工事促進に関する陳情(委員長報告)
 第一七〇 岩手県伊手川上流に砂防ダム構築の陳情(委員長報告)
 第一七一 静岡県瀬戸川改修工事施行に関する陳情(委員長報告)
 第一七二 災害復旧費の施行年割額繰延べ反対に関する陳情(委員長報告)
 第一七三 山口県有帆川等改修工事施行に関する陳情(委員長報告)
 第一七四 埼玉県二瀬多目的ダム建設促進に関する陳情(委員長報告)
 第一七五 静岡県桃沢川砂防工事施行に関する陳情(委員長報告)
 第一七六 過年度災害復旧促進に関する陳情(委員長報告)
 第一七七 石川県浅野川改修工事施行に関する陳情(委員長報告)
 第一七八 準用河川厚別川改修工事施行に関する陳情(委員長報告)
 第一七九 砂利道補修等の公共事業費国庫補助復活に関する陳情(委員長報告)
 第一八〇 一級国道八号線改良工事促進に関する陳情(委員長報告)
 第一八一 道路整備費の財源等に関する臨時措置法の実施等に関する陳情(委員長報告)
 第一八二 国道一号線中瀬田川の架橋に関する陳情(委員長報告)
 第一八三 道路整備費の財源等に関する臨時措置法の励行に関する陳情(二件)(委員長報告)
 第一八四 道道札幌稚内線中一部舗装工事等施行に関する陳情(委員長報告)
 第一八五 都市計画促進に関する陳情(委員長報告)
 第一八六 住宅難解決促進に関する陳情(委員長報告)
 第一八七 国連軍の土地施設収用に伴う特別損失立法化の陳情(委員長報告)
    ―――――――――――――
#2
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。宇垣一成君から、病気のため八日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○羽仁五郎君 私はこの際、警察大学における憲法違反の疑いある教育に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#6
○天田勝正君 私は、只今の羽仁五郎君の動議に賛成いたします。
#7
○議長(河井彌八君) 羽仁君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり、拍手〕
#8
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。羽仁五郎君。
   〔羽仁五郎君登壇、拍手〕
#9
○羽仁五郎君 尊厳なる我が国会議員各位の前に、私は最近政府機関たる警察大学がその現実の活動において、憲法を踏みにじつているという疑いを受けている事実につき、その責任につき政府の判断を質すことを許されたいのであります。
 今日、いわゆる左右の問題の対立の中に、自由を守り、民主主義を守り、人権を守らんとすることは、政府当局、我々国会お互いに全力を尽しつつあるところであると確信しております。自由に対する鋭敏の感覚が常に目覚められているのでなければ、自由を守ることができません。只今の問題のような問題であいまいに始末され、我が国民の自由に対する感覚が遅鈍にされ眠らされてしまうことほど恐るべきことはございません。秩序が守られているということは、一体どういうことでありましようか。政府において、秩序が守られているということは一体どういうことだとお考えになつておるか。我々の先輩である日本民主主義の先覚者植木枝盛が曾つて言つたことがあります。民衆が武器をとつて政府に対抗するというのだけが内乱ではない。政府が国民の人権を蹂躪することは更に恐るべき秩序の紊乱であり内乱であると。(拍手)我が憲法が日本国民に保障する基本的人権は、世界の人類の多年に亘る涙と血とによつて自由を得て来たその努力の結晶であります。これらの権利は、過去の幾多の試錬の一つ一つに堪えて、そして現在及び将来の国民に対して侵すことのできない永久の権利として信託されたのであります。憲法第十章最高法規、第九十七条はこれを明文を以て保障していることは御承知の通りであります。そしてこの憲法が国民に保障する自由及び権利は、我が国民の日々、時々刻々、不断の努力によつてこれを保持しなければならないということを憲法は第三章第十二条によつて命じております。国民の人権を侵すということが如何に恐るべきであるかということについては、私は旧約聖書を思い出さざるを得ないのです。旧約聖書の中にダヴイデという、皆さんがよく御承知の英明の君子と言われている、名君の代表のように言われていたダヴイデが民の数を数えようとしたときに、パレスチナに疫病が起つたということが書いてあります。これは今日の言葉で言えば国勢調査というものであつても、それが国民の、民衆の人権を侵すということになれば、そこに疫病が起るのだということを、すでにこの古い時代に我々の先覚者は教えているのであります。我が日本国の国民にいたしましても、百姓町人が如何に多年の努力によつて、今日の憲法が保障している基本的人権を得たかということは、或いは佐倉宗吾であるとか、或いは福沢諭吉であるとか、或いは自由民権に闘われた我々の先輩であるとか、そういうかたがたの話として決して忘れることはできない。又先年の悲惨なる戦争の前におきましても、或いは滝川教授であるとか、或いは河合栄治郎教授であるとか、この河合栄治郎教授が、如何に当時、人権蹂躪と闘われたか、その日記は、我々が涙なくして読むことはできないものであります。そうして又現在警察の国務を担当しておられます国務相の、恐らく愛し尊敬してやまれなかつたであろう美濃部博士が、如何に人権を迫害されて苦しまれたかは私から申上げるまでもありません。又大内教授が、如何にこの人権を守るために涙の戦いをせられたかは、最近教授が発表せられた回顧録の中にも記されておる。私は戦争の終りの頃に牧野伸顕伯爵をお訪ねしたときに、私がお訪ねする打合せに電話を使用することができないというように言われたことを今でも忘れません。そうして戦争が終る直前の昭和二十年三月に、私が逮捕されて、そうして私の家内が牧野伯爵をお訪ねしたとき、牧野先生が最初におつしやつた言葉は、この乱世というものは長く続くものではない、自分の机の中に入つている封書がときどき紛失する、そうして暫らくするとその封書が自分の所へ又戻つて来る。これは自分の屋敷を警戒するという名目でつけられているところの警官がなすことだと思う。人の信書の秘密を破ろうとすることはこれは乱世だと、牧野先生が私の家内に言われたということを私は聞いております。こういうかたがたをも苦しめたような人権蹂躙の悪習というものを根絶する決意を、小坂国務大臣は必ずお持ちのことと私は確信します。そうしてこれらの血の滲むような努力の結果、敗戦後、新憲法は、基本的人権を永久に侵すことのできないものとして、これを我々に信託したのであります。
 然るにこの新憲法下において、再び人権蹂躪の悪習が復活しようとしているのであります。先年これは自治体警察であつたでしようか、東京警視庁でありましたろうか、指紋を取りたいということを考えて、そうしてその指紋に対する国民の気持を啓発するのだというようないわゆる宣伝活動を企画されて、そうして名士の指紋を取つて頂くということを始めたことを新聞で読みました。そのときに鷹司平通君の所を訪ねて、指紋を頂戴いたしたいということを言われたそうです。そのときに鷹司平通君が、自分が指紋を差上げていいものかどうか、自分の家内にも相談したいと思うと、それで警視庁でしたか、その警察関係の方はそれを喜ばれて、それではお宅に伺つてお二方頂戴すればなお結構だと言つて、家庭をお訪ねになつたそうです。そうして鷹司平通君が夫人に向つて、警察がこういうことをおつしやるがどうしようと言われたらば、鷹司平通君の夫人が、自分の父と母とがすることならば私はいたしましようと言つたそうです。国民一人の人権を侵すことは、まさにこの鷹司平通夫人が言われる通り、天皇、皇后の御自身の秘密をも侵すことなんです。今日において私は、人権擁護局が発表しておる数字によりましても、悲しいかな、例年警察官による人権蹂躪事件が殖えている。これらの事例の中には、誠に恐るべき拷問の復活の事例さえございます。これは政府においても必ずや、そういう事実がないというようなお考えはないだろうと思う。警察法の前文に何と書いてあるかは今申上げるまでもございません。そうして憲法第二十一条に何と書いてあるかも今申上げるまでもございません。旧憲法時代におきましても、この信書の秘密を破らざるを得ないような場合については、それぞれ法令の手続というものによつてこれをなしていたということも皆さんのよく御承知の通りであります。
 今日国家地方警察の予算はおよそ二百億、我が国立学校の教育の予算二百億に匹敵するものである。そうして警察大学は恐らく、およそ一億ほどの国費を使つてその教育を行なつているのであります。その警察大学において、刑法第百三十三条に明らかに禁じておるところの故なくして信書の秘密を侵すものは懲役一カ年、そういう刑罰を負わせているところの、信書の秘密を破る講習を行なつているというのは実に驚くべきことであります。この問題は、我が郵政にも不安を与えている。現に先日郵務局においては局長会議を開いて、この問題について郵務局次長の通達を以て、先頃よりして頻々として警察官による信書の秘密の侵害の事件があるが、郵政省当局は断じてこの警察と協力するものではないということを声明しておられる。今や、或いは破壊活動防止法又は警察法の変更又は防衛秘密法案の立法、これらによつて国民の人権を制限するところの手段が、さまざまの理由によつてなされているときに、政府は、特に人権を尊重する意思があるのかないのか、この際はつきりせられたい。議員提出によつて人権擁護委員会法案が提出せられておる理由もそこにあるので、恐らく大多数の議員各位の賛成によつて、これは立法が成功するものと思いまするが、こういう時期に及んで、特に私は、再び或いは美濃部博士の受難せられたような悲しい事件を繰返すべきではない。新聞紙の報道するところは、我々の心を痛ましめるものが多々ございます。例えば昭和二十七年宇部窒素投弾事件などにおいては、特審局がスパイを労働組合に入れて、挑発行為を行なつて爆弾を投じた。そうしてその人が後に十年の刑を受けて、これは特審局から頼まれて爆弾を投げたのだと言つて広島高裁に控訴しておる。こういうような事件まである。これらの事件を根絶せられるために、政府は今警察大学が、国民の税金によつて、国民の基本的人権を侵害する教育を全国から集まつた国家地方警察及び自治体警察の警官に向つて講習しているということは、どうするおつもりであるか。これをそのまま放置すれば、これは全国に拡がつて行われるのであつて、一つの事件とは考えられません。憲法及び警察法前文、そうして警察法の第一章第一条第二項、又その第二章、第十二条第二、三項、第十四条など、これらによつて、政府は、国家地方警察の長官に付して、或いは警察大学の、大学校の体長に対して、それぞれ適法な処置をとられる権限を持つておられるのであつて、決してこれに対して何も手をつけることができないというものではございません。そうして国家公務員法の明記しているように、国民の税金を使つて、国民の人権を侵害する教育を全国より集まる警察官に行なつていることが、これがその職務に適格であるとは判断することができません。どうか牧野伸顕伯爵が嘆かれたような、信書の秘密を侵す乱世の嘆きをされたそうした嘆きを繰返さないために、国民の人権を侵すならば、全国に疫病が起るというように古人が教えておる、こういう問題に対して、その意図の如何を問わず、故なくして国民の信書の秘密を侵害する、こういう教育を行なつておる、これを根絶し、且つ最近頻発している人権侵犯事件を根絶するために、政府が必要にして十分な措置をとられるお考えがあるかどうか、我が尊厳なる国会に向つて明らかにせられたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(小坂善太郎君) 御質問の根拠になつておりまする情報収集活動につきましては、これは警察大学の教程として行なつておるものではございませんが、特別の講習というコースで必要な教科を実施しておるのであります。この講習を実施する目的は二つありまするが、一つは、暴力革命を企図する団体の組織とその活動を内偵いたしまして、暴力事犯を未然に察知して対策を立てると共に、これらの容疑を捜査するに必要であるという観点からであります。例えば或る種の団体につきまして見ましても、公然活動とその組織というものは極く一部分に過ぎないものでありまして、その主たる組織、特に直接武装行動の組織と計画に当るいわゆる軍事組織などは全然表面には現われておりませんで、高度な秘匿技術による地下活動として極めて巧妙な網の目を張り、その強化をもくろんでいるわけでありまして、これらの実態はいわゆる通常のパトロール、職務尋問などの警察活動では把握できないのであります。その地下活動が高度の技術と厳しい規律を持つて行われていることは、例えば日本共産党が党内に流しておりまする各種の技術指導書によつて見ましても明らかなところであります。併し警察としては、この種団体の活動の実態を全然把握することなく、ただ起つた暴力事犯のあとを追うということでは、その都度の警備処置を誤るのみでなく、彼らが暴力を以て立ち上るまで何らの措置ができないということにもなるわけでありまして、それでは到底治安の維持の使命を完うすることができないことになるのであります。
 必要の第二は、それらの組織自体の中に、いわゆる人民監視網その他の対警組織がありまして、警察の組織や装備、或いは活動の内容を調査すると共に、警察の内部へスパイを送り込んで、警察活動を探偵し、或いは内部の対立、離間を図るといつたような活動が企図せられました。又、最近特に目立つて見られて来ました警察官に対する逆尾行などから見ましても、彼らの対警、牽制、麻痺の活動は計画的にもくろまれているのであります。警察といたしましては、彼らの対警闘争の手口を十分に理解し、経験に学び、これらに十分対応できるだけの防衛措置を不断に研究して対策をとる必要が日本共産党の最近の活動からも極めて重要になつて参つているのであります。
 従いましてこの教育はお説のような意図を持つものでは絶対にない。例えば、飽くまで革命勢力による暴力破壊的な企図と活動から、民主主義を擁護するための必要、即ち警察本来の任務遂行の必要から行なつているものであります。法の擁護遵守を第一義とする警察活動そのものが、みずから法の許す範囲を超えるといつたような内容を教育しているということは、絶対に行なつておりません。教育している内容というものは、民主主義的な諸国における活動の経験などに学びまして、さまざまな技術に及んではおりまするが、飽くまでそれは法の許す範囲内において行使すべきものであり、法の許さない行使は、絶対に禁ぜられておりますることは申すまでもございません。
 而うして、そのような観点から、本教育の場合には、特に受講させる警察官には十分な教養を経て、民主主義をしつかり体得させるという前提をおいておるものでありまして、民主主義を守り抜くという強固な信念を持ち、人格の高潔にして正しい者に限定するという方針の下に、先ず適格者を所属の長から推薦せしめ、その中において更に選衡するという方針をとつておりまして厳選しておるのであります。そしてお説のような悪用、濫用の弊害というものについては、これを絶対に起りませんように心がけると共に、更に監督者による不断の指導監督を厳にいたしまして、かりそめにもそのようなことのないように注意いたしたいと考えておる次第でございます。
 なお御質問中にございました指紋の件は、防犯展覧会というものが東京の百貨店で行われたのでありまするが、その際に、名士の指紋というものを出しまして一般に認識してもらう。そういうためにとられた措置でありまして、別に特別の意図はないのであります。
 なお信書の秘密を破るということは、これは絶対に許されないことでありまして、人権の尊重は当然であります。で、先ほども申上げましたように、私どもといたしましては、あらゆる民主主義国が行なつておりまする人権を尊重しつつ、而も如何にして治安を守るかということを研究することの建前でありまして、御懸念のような点については全然その趣旨を持つておりませんことを申上げまして御答弁といたしたいと思います。(拍手)
   〔羽仁五郎君発言の許可を求む〕
#11
○議長(河井彌八君) 羽仁君は、どういうことですか。
#12
○羽仁五郎君 只今の国務大臣のお答えに、私は遺憾ながら満足はできませんので、首相が私の質問の速記を御覧下さいまして、後に、お答え下さるように求めます。
     ―――――・―――――
#13
○八木幸吉君 私はこの際、院議尊重に関する内閣総理大臣に対する緊急質問の動議を提出いたします。
#14
○阿具根登君 私は、只今の八木幸吉君の動議に賛成いたします。
#15
○議長(河井彌八君) 八木君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。八木幸吉君。
   〔八木幸吉君登壇。拍手〕
#17
○八木幸吉君 私は改進党を代表いたしまして、吉田内閣総理大臣に対し、院議尊重に関する質問をいたしたいと存じます。
 検察権の中立性確保に関する廣瀬議員の再度に亘る質問に対し、吉田総理の御答弁を拝聴いたしますと、検察庁法第十四条の指揮権を発動し、与党幹事長の逮捕許諾の請求を延期せしめた理由として挙げられましたところは、重要法案を審議促進せしむるために本人が必要であり、同時に逃亡又は証拠隠滅の虞れはないということの二点であります。更に、警告決議案に対しましては、謹んで承わり、将来の戒めとするとのことでありました。私はこの御答弁を伺つて、一体、総理は、警告決議案を仔細に御検討になつたかどうかということを怪しんだのであります。故にこの際、改めて決議の案文を朗読いたしますから、よくお聞きとりを願いたいと思うのであります。
   法務大臣の検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案
  検事総長が自由党幹事長である国会議員の逮捕請求許可の請訓をなしたのに対して、法務大臣が「法律的性格と重要法案の審議の現状に鑑み、特別例外的事情にある」との理由に基き指揮権を発動してこれをおさえたことは、検察庁法第十四条の不当な運用と認める。議員の逮捕許諾と法案審議の関係は、国会の決すべき問題であつて、政府今回の措置は、国民関心の的である被疑事実に対し、累次の言明に反して、検察権の行使を制約し、捜査を困難ならしめ、延いては国民の疑惑を深め政治の信用を失墜せしめることとなる。本院はこれを極めて遺憾とする。政府は、過ちを改め速やかに善後の措置をとるべきである。
  右決議する。
 即ちこの決議は、第一に、検察庁法第十四条の指揮権の発動は、法の不当なる運用なりと断定いたしたものであります。その結果は、検察権の行使を制約し、捜査の困難を来たし、国民の疑惑を招き、政治の信用を失墜せしめたものである。従つて参議院はこれを極めて遺憾として、政府が過ちを改め、速かにその善後措置をとるべしと警告をいたしたものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)
 そこで私の総理に伺いたい第一点は、総理はこの決議を尊重して、指揮権発動による与党幹事長の逮捕延期を中止なさるか、又は院議を無視して逮捕の延期を強行なさるか、いずれをとられるかということであります。(拍手)
 第二にお伺いいたしたいのは、従来汚職に関連した国会議員の逮捕請求の理由として法務当局の挙げられましたところは、逮捕をなすにあらざれば証拠隠滅の虞れありということであります。今回の指揮権発動によつて、捜査は極めて困難、むしろ殆んど不可能になつたというのが井本刑事局長の説明であります。(「その通り」「頭が痛いぞ」と呼ぶ者あり)今回の与党幹事長の逮捕請求は、検察最高首脳部の慎重熟慮の結果になるものであるにもかかわらず、素人たる総理が、証拠隠滅の虞れなしと断定せられたのは、如何なる根拠に基くものでありますか、国民の疑惑を解くに足る明確なる御説明をこの席上において承わりたいと思うのであります。(拍手)
 第三に申上げたいのは、指揮権発動の他の一つの重要な理由となつておる、重要法案審議の促進ということであります。法案審議と議員の逮捕許諾との関係は、国会の決すべき問題であつて、何ら法務大臣の関知するところでないことは、警告決議案の明快に断定いたしておるところであります。(拍手)
 これに関連して私のお伺い申上げたいのは、戸塚建設大臣の長期欠勤ということであります。戸塚建設大臣は病気のために三月上旬から約六十日欠勤をされ、すでに辞表を御提出になつておると新聞紙は報じております。然るに何が故にこれを放置しておかれるのであるか。建設省というところは極めて重要なる行政官庁であります。昨年は関西地方の風水害、十三号台風など、我が国未曾有の災害に襲われて、その対策樹立のため、臨時国会すら召集せられたのであります。昨日も本議場におきまして、北海道の風水害に対しまして緊急質問が行われた際、総理は、治山治水は政府の重要政策である。治山治水対策審議会において慎重審議中であると御答弁になつておるのであります。その担当大臣の欠勤を漫然放置して、専任大臣を置かないのは一体何事でありますか。一方において重要法案審議促進と称して指揮権を発動し、与党幹事長の逮捕を延期せしめ、他方において、国会開会中にもかかわらず、建設大臣の二カ月に亘る欠勤を見送つて、国務の渋滞を来たす。この両者の取扱いの矛盾を如何に説明されますか。党利党略にとらわれて、国家の大事をなおざりにすると言われても弁解の言葉はないと思うのであります。(拍手)これに対する十分納得の行く御答弁を頂きたいと思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 第四に、昨日、テロ事件に対する質問に対しまして総理は暴力を否定せられましたが、これは当然のことであります。併しながら、私は国民の代表を以て構成する参議院の院議無視は、暴力の温床なりと考えますが、如何でございますか。(拍手)国民の政府に対する要望、批判、不平不満が、国会を通じて表明せられ、それの結集されたものが院議であります。院議を無視すれば、その不平不満は、再び国民に返つて、暴力と化せないとは誰が一体保証いたしますか。(拍手)私の、院議無視は暴力の温床なりと言うゆえんであります。これに対する総理の御見解を承わりたいのであります。
 第五に、総理は、警告決議案が行き過ぎであると申されたと、新聞は報じておりますが、その真偽は暫らく別問題として、総理は、参議院の今回のごとき警告決議案を議決したことが、参議院の使命に鑑み、妥当なりとお考えになるか、妥当ならずとお考えになるか、その所信を承わりたいのであります。
 最後に、私は総理の良心を喚起する意味合いにおきまして、第二次吉田内閣成立当時の新聞記事を御披露申上げます。当時の官房長官は、問題の人、佐藤榮作君であります。これは昭和二十三年十月二十日の朝日新聞の記事でありますが、吉田総理の談話として次の通り内閣の心がまえを述べておられます。「第一に民主政治の要は専ら国民の総意に基き、私心を去り一切の権謀を排し、公明に行動して自己の政治的責任を明らかにすることである」と申されております。更に第二の心がまえとして「政界、財界、官界を通ずる綱紀の粛正と社会道義の確立である。現下の大疑獄は徹底的に且つ公明適切に処理されなければならない。政、官、財界を通じて根を張つた綱紀の紊れと道義の頽廃とは、この際これを抜本的に一掃し、終戦以来失われかけた官紀を振粛し、緩みかけた社会道義を立て直して、正しい者の報いられる道義の国、日本の姿を取り戻すことが祖国再建の根本であると信ずる。」
 更に、翌二十一日の朝日新聞は、吉田兼摂法務総裁が初登庁して、部下の検察職員を集め次の通り訓示していると報じております。「大臣は国民の儀表たるべきもので、今回の事件は日本の民主政治の発達を傷付けたものである。疑獄の糾弾は何の遠慮もなくやつてもらいたい。確固たる態度で、権勢に恐れず、十分活動してもらいたい。」、更に最高検察庁においては検事団に対しまして、「内閣総理大臣といえども疑惑があればどしどし検察権を発動してもらいたい」と述べておられるのであります。(拍手)
 又、同年十二月十一日、衆議院予算委員会における疑獄事件に対する質問に対しまして、「私の内閣としては、かねてから申す通り、疑獄事件は検察当局の処断に政府としては干渉しない。検察当局のなすがままに、或いは民自党員であるから特別扱いをするとか何とかいうようなことは一切しない方針で臨んでいるのであります」、こういう答弁があります。
 以上は、反対党の昭和電工事件という疑獄事件摘発に対する吉田総理の態度でありました。私は疑獄の糾弾、綱紀の粛正が祖国再建の根本であるとするならば、与党たると野党たるとを問わず、これを徹底的に糺明すべきであつて、その間の取扱いに、いささかの差等をつけるべきではないと確信をいたします。(拍手)野党の疑獄摘発には、これを徹底的に行えと指示し、与党の幹事長には、指揮権発動という暴挙をあえてする、(「その通り」と呼ぶ者あり)これで果して正しい取扱いと言えましようか。私は吉田総理の良心的な見解を承わりたいのであります。
 これを以て私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 院議尊重については、しばしば私はここに申述べております。尊重することは当然であります。併しながら政府といたしましては又政府の見解があります。この今回の事件について、政治上の理由、即ち重要法案の通過ということの理由は過日申した通りであります。これまで申した通りであります。又法律上の理由については、昨日申述べました。新憲法においては、基本的人権を尊重するのが建前であります。基本的人権を尊重する以上、むやみに勾留、若しくは逮捕するということは、よほど慎重に考えるべきものであります。この際において、逮捕せずとも捜査は継続できるものと政府は考えるのであります。諸君が何と考えられるか私は知りませんが、政府としては捜査は十分にするがいい。併しながら逮捕せずとも捜査ができる以上は、逮捕せずして捜査せよということが、これは政府として当然なすべきことであると確信いたすものであります、この確信から、院議は尊重いたしますが、この問題に対して政府がなした処置を取消すことはできにくいことは、昨日申した通りであります。
 又、これが暴力行為の原因をなすと言われましたが、政府はすでに、院議を尊重すると申しておるのでありますから、これが暴力行為の原因になるとは私は考えないのであります。又、私はこの院議が行き過ぎだと申したことはないのであります。これは何かの誤解であろうと思います。又新聞談話等でいたしたことはありません。
 又、警察当局に対して、或いは検察当局に対して、只今申す通り捜査は十分するがいいと申しましたが、干渉する意思は毛頭ないのであります。
 又綱紀粛正、汚職問題については、この儀は飽くまでも政府の方針として、綱紀は粛正する考えであります。汚職の問題につきましては、飽くまでも徹底的にその捜査をなすことには、政府は何ら異存はないのであります。(拍手)
   〔八木幸吉君発言の許可を求む〕
#19
○副議長(重宗雄三君) 八木君、何ですか。
#20
○八木幸吉君 再質問。
#21
○副議長(重宗雄三君) 再質問ですか、時間が切れております。
#22
○八木幸吉君 切れておりません。(「そうだ切れてないぞ」「切れてない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#23
○副議長(重宗雄三君) 切れております。
#24
○八木幸吉君 二分ばかりあるわけであります。
#25
○副議長(重宗雄三君) いや、ないのであります。(「あるよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)約一分間延びておりました。お静かに……。
#26
○八木幸吉君 私は前の時計を見て演説をいたしておりました。且つブザーが鳴りませんので、残つております。
#27
○副議長(重宗雄三君) 時間は残つておりません。(「ブザーは鳴らなかつたじやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
 議事の都合により、暫時休憩いたします。
   午後零時十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時十九分開議
#28
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 参事に報告いたさせます。
   〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書を提出した。
 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案修正議決報告書
 教育公務員特例法の一部を改正する法律案(閣法第四一号)修正議決報告書
     ―――――・―――――
#29
○議長(河井彌八君) この際、日程に追加して、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案
 教育公務員特例法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。文部委員長川村松助君。
   〔川村松助君登壇、拍手〕
#31
○川村松助君 只今上程されました義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案、並びに教育公務員特例法の一部を改正する法律案の両案につきまして、文部委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
 先ず初めに、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案について、政府の提案の理由とするところ、並びにその内容の骨子を簡単に申上げます。
 そもそも、教育上、良識ある公民たるに必要な政治的教養は、これを尊重しなければならないことは、教育基本法第八条に規定するところでございますが、同時に同条第二項には、法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないことが明らかに示されております。なかんずく義務教育は、国民教育の基本をなす極めて重要な過程でありますから、特にその政治的中立の確保が必要であります。本法案はその趣旨に基きまして、義務教育諸学校における教育を党派的勢力の不当な影響又は支配から守り、以て義務教育の政治的中立を確保すると共に、これに従事する教育職員の自主性を擁護することをその提案の理由といたしております。
 法案は、この目的を達成いたすために、義務教育諸学校に勤務する教育公務員に対しまして、これらの者が児童生徒に向つて、特定の政党を支持し、又はこれに反対させるための教育を行うように教唆し、又は扇動することを、何人にも禁止しようといたすものであります。この罪の具体的な構成要件といたしましては、教唆、又は扇動が、特定の政党その他の政治的団体の政治的勢力の伸長、又は減退に資する目的を以てなされること、及び教唆又は扇動するに当つて、学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体、又はその団体を主たる構成員とする団体の組織又は活動を利用することが定められております。
 この禁止に違反した者は、一年以下の懲役、又は三万円以下の罰金に処することになつておりますが、その違反行為に対する罪を論ずるに当つては、それぞれの学校の所轄機関の請求を持つべきことになつております。
 次に、教育公務員特例法の一部を改正する法律案について申上げます。
 教育公務員に対する政治的行為の制限に関する現行法は、国立学校の教育公務員と、公立学校の教育公務員との間に、顕著な差異が設けられております。即ち国立学校の教育公務員は、国家公務員として国家公務員法の定めるところにより制限を受けているのに対しまして、公立学校の教育公務員は、地方公務員法による制限を受けておりますから、その制限事項及び罰則の有無について差異がありますのみならず、更にその制限を受ける地域についても、国立学校の教育公務員が全国的に制限を受けているのに反し、公立学校の教育公務員は、原則としてその勤務する学校の設置者たる地方公共団体の区域内に限られております。
 然るに義務教育は国民全体に直接責任を負うて行われるべきものでありまして、一地方だけの利害に関するものではないのみならず、この職務を担当する教育公務員は、行政面を担当する一般公務員と、その職務の性格が大いに異なつております。義務教育を担当する教育公務員の政治的中立性を保障して、その職務たる学校における教育の公正な運営実施を確保するには、公立学校と国立学校の教育公務員の間に、政治的行為の制限に差別の存することは妥当ではなく、教育公務員の職務の特殊性に鑑み、公立学校の教育公務員に対する政治的行為の制限を、国立学校の教育公務員と同様の取扱にいたそうとすることが、本法案の提案の理由であります。
 以上が両法案の提案の趣旨及びその内容の概略でありますが、この両法案は、いずれも衆議院より修正議決の上送付されております。衆議院における修正点を簡単に申上げますと、義務教育諸学校における政治的中立の確保に関する法律案につきましては、次の三点であります。
 第一に、法案の名称を「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」と改めました。
 第二に、本法の中心たる第三条について、第二項を削除し、第一項中の「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育」を「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させるための教育」と改めております。
 第三に、本法案の施行に関して、附則が「公布の日から施行する。」となつておりましたのを、「公布の日から起算して十日を経過した日から施行し、当分の間、その効力を有する。」と改めております。
 教育公務員特例法の一部を改正する法律案につきましては、本法案によつて、公立学校の教育公務員の政治的行為の制限について、これを国家公務員の例によらしむることを当分の間に限定し、又施行期日が公布の日からとなつておりましたのを、十日を経過した日から施行いたすことに、それぞれ修正を加えております。
 次に、文部委員会におきまして、これら二法案を審議いたしました経過並びに結果について申上げます。
 本二法案は、去る二月二十四、五両日に亘り、参議院本会議において、内閣からその趣旨の説明があり、これに対しての質疑応答が行われました上、二月二十五日予備付託せられ、三月二十六日に本付託と相成りましたが、三月十一日に政府の提案理由の説明を聞きまして以来、本委員会では十数回に亘つて審議を重ね、更にこれより先、二法案の関連事項といたしまして、偏向教育の推定される事例に関する資料、及び警察官の教職員に対する思想調査に関する情報につきまして、その真相を確める必要上、二月二十八日から三月七日の間におきまして、第一班は青森県、茨城県、第二班は山口県、静岡県へ、各班とも各党各派合せて三名ずつの調査員を派遣して現地調査を実施いたしました。
 次いで三月十二、十三の両日に亘り、偏向教育の推定される事例九件につき三十名の証人を喚問いたしまして、その真相を確かめ、更に二十二、二十三、二十四日の三日間公聴会を開きまして、十二名の公述人によつて、各界代表者の二法案に対する意見を聴取いたしました。又三月二十日には地方行政委員会と、同月二十六日には法務委員会、人事委員会と、翌二十七日には労働委員会と、それぞれ連合審査を行なつております。委員会におきましては、文部当局は勿論、緒方副総理、労働大臣、国警長官、公安調査庁、人事院総裁、内閣法制局等の出席を求め、あらゆる角度から周到慎重な検討を加えて参つたのでございますが、本委員会及び連合委員会の質疑過程において問題となりましたのは、およそ次の諸点であります。
 先ず、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案につきましては、第一に、「本法案によると、義務教育学校職員が教唆扇動を受けて偏向教育をいたしました場合、その行為自体はこれを犯罪行為とはしないで、教唆又は扇動だけを独立犯としたのは何故であるか。これは或る犯罪行為を前提としてのみ、その実行の教唆又は扇動を処罰するという刑罰法規の一般原則とは甚だ異なる立法であるが、その合理的根拠如何」という点が最も問題となりました。これに対しまして政府から、「教唆扇動だけを独立犯として罰することは決して甚だしい異例ではなく、又教職員の偏向教育を罰しなかつたのは、学校は可及的に警察の範域外に置くことが教育上望ましいと思つたためと、これらの教職員の偏向教育は、現在主として外部からの教唆扇動に基くものであり、先ずこれを抑止することが何よりも必要だからである」旨の答弁がありました。
 第二は、「このような法案が成立すれば、教員は必然的に萎縮し、遂には教育基本法の規定するような、公民たるに必要な政治的教育についても口を緘するに至り、社会科教育等は到底行い得ないことになる虞れはないか」という質問に対しましには、「本法案の目的は、要するに教育基本法第八条第二項のいわゆる教育の政治的中立性を確保することを目的とするものであり、而もたとえ偏向教育と思惟さるる事態があつても、本法案は当該職員を罰する趣旨のものではないから、本法案の成立によつて教職員が萎縮するわけはなく、又若し本法案が目的とする教育の政治的中立性について、その概念のあいまい性を問題にするというならば、教育の政治的中立性を規定した現行の教育基本法第八条第二項自体を非難攻撃することに帰着するのであり、このような批判は理解に苦しむ」という旨の答弁がありました。
 第三には、「本法案の規定する罪は、教員を所轄する各行政機関の請求を待つて論ずることになつておるが、これらの行政機関のうち地方教育委員会は、現在なお甚だ弱体なものが多く、これらのものにもすべて請求の権限を与えるならば、請求権の行使には統一性もなく、又その委員構成の如何によつては権限の濫用を招く虞れはないか」という質問に対しましては、「これらの行政機関は、ただ起訴を請求するだけであり、結局は裁判所によつて問題が決定するのであるから、刑罰権行使の客観性、妥当性については、通常の犯罪行為の場合と全く同様にこれを期待し得る」という答弁がありました。
 第四といたしまして、「成るほど本法案は公訴提起の要件を教育行政機関の請求によらしめておるが、犯罪の捜索はこのような請求と無関係に行われることが可能であり、その結果、たとい本法案は教育者自体を処罰しなくても、実際には教育は警察によつて監視さるることにならないか」という質疑に対しましては、「そのような捜索はできないことはなかろうが、起訴を前提としていないような捜索はナンセンスであり、このような捜索は常識上行わるるわけはない」という答弁でありました。
 第五に、「たとい偏向教育の実例は現実には或る程度これを認め得るとしても、教育問題は権力的手段を以て是非すべきものではなく、教員の自粛自戒等何らかの別個の方法によつて、而もかすに時日を以てしてその是正を図るべきではないか」という点がしばしば指摘されましたが、これに対しまして、政府は、「現在義務教育諸学校について危惧される偏向教育の根源は外部的勢力に基くものであつて、単に教員に対して自粛を求める程度を以てしては、到底これを排除することができないこと、及びこの法案は、むしろこのような外部的威力に対し教職員を庇護し、以て教育の中立性を維持しようとするにほかならないものであり、又教育に対する法的干渉は政府も又決して望むところではないから、事態の推移によつてはこれを廃止し得ることは当然であり、この意味において衆議院が本法案を臨時措置法とされた修正については、これを了承、同意したのである」という答弁がありました。
 第六には、「本法案の犯罪構成要件が極めてあいまい不明確ではないか、殊に衆議院修正案によると、構成要件中特定の政党等を支持させ又はこれに反対させるための教育、即ち「ため」という極めて広汎な表現があるが、これは因果関係を極めて広汎ならしむるものであつて、危険極まりない辞句ではないか」という質問に対しましては、「本法案の犯罪の構成要件は十分に絞つてあり、とり立ててあいまいではなく、又「ため」という概念も、そのように無制限の因果関係にまで拡げる意味のものとは考えない」旨の答弁がありました。
 次に、教育公務員特例法の一部を改正する法律案につき品ましては、第一に、「本法案は従来公務員としての身分上の取扱を受けて来た公立学校の教員を、その政治的活動の点において国家公務員の例によらしめようとするものであるが、何故に地方公務員である教員についてこのような特例を設けるのであるか」という点が最も論議の対象となりましたが、これに対しまして政府は、「一般的根拠としては、教育の国家的特質を挙げ、教育基本法或いは教育委員会法の示す通り、教育は国民全体に対して直接責任を負つて行われるものであり、又常に政治的中立性を保持すべきものであるにかかわらず、現在地方公務員法による政治的行為の制限に関する規定は、地域或いは制限事項等において国家公務員とは差異があり、そのため選挙活動その他活発な政治運動に没頭して、教育の国民全体に対する責任と中立性の保持がとかく背反されやすいため、その点国家公務員の例によらしめ、地方教育公務員をしてそのような煩瑣と危険性から解放しようとするためである」という答弁がありました。
 第二に、「このように政治活動の制限の面において国家公務員並みに取扱うことになると、人事院規則(一四の七)がこれに対して全面的に適用されることになるが、人事院が国家公務員に対して強力な自由制約の権限を持つているのは、一方において人事院が国家公務員の利益保障について、諸種の機能を持つているからである。人事院は地方公務員に対して何らの利益保障機能をも営んではいないにかかわらず、自由の制約だけを人事院の決定に任すことは如何なる理由か」という質問に対しましては、「人事院が国家公務員に対して人事院規則による諸種の制約を加えているのは、別にいわゆる利益保障機能を持つからではなく、両者は決して対応関係によるものとは考うべきではない」という答弁がありました。
 又第三に、「地方教育公務員に対しましてこのように卒然として人事院規則を適用することになると、人事院規則は、本来国家公務員に適用するために構想されたものであるから、実際上多くの矛盾撞着を生ずるではないか」との質問に対しましては、「確かに政治的行為の制限に関する現在の人事院規則は、地方教育公務員に適用する場合、不足乃至不十分の点を認めねばならないが、別に矛盾撞着を生ずるものではない。又不足の点は、今後人事院において然るべく考慮いたす」という答弁がありました。
 第四には、「政治的行為の制限に関する人事院規則は極めて広汎に規定されており、このような規則の下では、地方教育公務員の行為は何らかの意味においてこれに結び付けられ、行動の自由を全面的に束縛されることにはならないか」という質問に対しましては、「人事院規則が精密に違反行為を列挙して規定しておる理由は、法の適用を明確ならしめ規定濫用の慮れなからしめるためであり、むしろ公務員の利益保障の意図に基くものである。又全面的に行動の自由が束縛される虞れがあると言われるが、現在国家公務員たる教育職員は、極めて自由に行動しておるのであり、又この規則は、従来殆んど発動されたこともない。従つて、地方教育公務員も国家公務員たる教育職員が現に行動している埓内にとどまる限り、自由の全面的束縛等ということは全く杞憂に過ぎない」旨の答弁がありました。
 最後に第五といたしまして、「本法案によると、従来地方教職員が、地方公務員法による政治的行為の制限規定に違反しても、懲戒罰を課せられるにとどまつたのが、更に刑事的制裁をも科せられることになり、一般地方公務員に比して甚だしい矛盾、不平等ではないか」という質問に対しましては、「本法案は、教育の特殊性からいたしまして、政治的行為の制限に関し、地方教育公務員を国家公務員の例によらしめる以上、刑事的制裁についても、国家公務員たる教育職員と均衡した取扱となる」旨の答弁がありました。
 かくて四月三十日、二法案に関する質疑を終了いたしまして、五月十四日討論に入りましたところ、加賀山委員より、二法案に対する修正案が提議せられました。修正案を朗読いたします。
  義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案に対する修正案
  義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の一部を次のように修正する
  第三条中「反対させるための教育」を「反対させる教育」に改める。
  教育公務員特例法の一部を改正する法律案に対する修正案
  教育公務員特例法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第二十一条の二の次に一条を加える改正規定のうち、第二十一条の三の見出し中「制限等」を「制限」に改め、同条第二項を次のように改める。
 2前項の規定は、政治的行為の制限に違反した者の処罰につき国家公務員法第百十条第一項の例による趣旨を含むものと解してはならない。
 これらの修正案提案の理由といたしまして、先ず「反対させるための教育」を「反対させる教育」といたしましたのは、「犯罪の構成要件を明確にして、基本的人権の侵害の虞れを少くしたいためであり、又刑事罰を懲戒罰に変えましたのは、教員の政治的行為の制限に当つても、憲法は、国民の政治的活動の自由を原則的に認めている限り、その制限を可及的に軽くしたいためと、政治的行為制限の違反問題に対する制裁を教育行政の枠内において解決したいためである」旨の説明があり、修正部分を除く原案について賛成されました。
 ついで自由党を代表して田中委員は、加賀山委員提出の修正案に対し「反対させるための教育」を「反対させる教育」と改めることは、「教育基本法第八条自体がすでに「特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育」と誰つておる以上、このような修正が行われた場合は、教育基本法の表現と一致しないこととなり、却つて紛糾を生ずること、及び刑事罰を懲戒罰に改めるならば、現在世論の激しい旭丘中学事件では、すでに三教員は懲戒免職の処分を受けているにかかわらず、これを無視して学校管理の暴挙をあえてしているものであつて、懲戒罰を以てしては不十分なことはすでに実証されておること、又争議行為の制限規定違反に対しては、すでに地方公務員法において刑事罰の規定があるのであつて、政治的行為の制限違反の場合を懲戒罰とすることは、むしろ均衡を失する」という点を理由として修正案に反対し、原案に賛成の討論があり、社会党第四控室を代表して荒木委員から、「二法案は憲法の保障する教員の政治的活動を封殺し、組合運動を抑圧するもので、比類のない悪法であり、我々は全面的に反対するものであるが、修正案が悪法の弊害点を或る程度除去しておる限り、現在とり得る途は、修正者の意見に敬意を表し修正案に賛するほかはない」旨を述べ、修正案及びそれを除く原案に賛成せられました。
 次いで、社会党第二控室を代表して永井委員、改進党を代表して松原委員から、又無所属クラブの須藤委員及び純無所属クラブの野本委員から、それぞれ修正案及びこれを除く原案に賛成の討論がありました。
 かくて討論を終結いたし、採決に入りましたところ、先ず内閣提出衆議院送付の義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案につきましては、加賀山君ほか二名提出の修正案を多数を以て可決、ついで修正点を除く原案を同じく多数を以て可決、結局本案を多数を以て修正議決すべきものと決定いたし、(拍手)ついで内閣提出衆議院送付、教育公務員特例法の一部を改正する法律案につきましても、先ず加賀山君ほか二名提出の修正案を多数を以て可決、次いで修正部分を除く原案を多数を以て可決、結局本案も、多数を以て、修正議決すべきものと決定いたしました。
 なお、委員会の質疑応答の内容の詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 以上、御報告申上げます。(拍手)
#32
○議長(河井彌八君) 両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。剱木亨弘君。
   〔剱木亨弘君登壇、拍手〕
#33
○剱木亨弘君 私は、只今議題となりました教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案について、自由党を代表しまして両案の衆議院送付原案に対し賛成、文部委員会可決の修正案に反対の意思を明らかにしたいと存じます。
 参議院において一世の言論を沸騰せしめたこの教育二法案の運命を決すべき最後の段階に立至つた今日只今、日本の文化の伝統を誇る京都において、旭丘中学校事件が発生し、今や全国の新聞、ラジオは、俄然この問題の重大性を報道し、全国民の関心もこのことに集中している事実は、単にこれは偶然の一致としてこれを看過するわけには参らないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)旭丘中学校における偏向教育の事例こそは、本二法案審議に際し、文部省が提出した二十四事例の一つであり、その真偽が本二法案の成立に重大なる関係ありとして、遂に事件の内容を究明すべく、文部委員会は証人喚問を行い、証人との質疑応答を通じて、事件の内容が次第に判明するに連れて、我々は全く戦慄を感じたのでございます。(拍手)而も、証人北小路君は、本校の教育方針は正しいと言明して憚からず、教育に中立性なしとする共産党以外は、旭丘中学校に偏向教育ありと是認せざるを得ないとするその教育を実施しながら、何ら反省の色なきをむしろ驚歎せざるを得なかつたのでございます。それ以後、我々はその後の旭丘中学校に対し、重大なる関心を以て見守つて参つたのであります。
 然るに今、戦後日本教育の民主化のための重要なる機関として設置せられた教育委員会の命令や指示に従わざるのみか、これに反抗し、京都教職員組合の手によつてこれを管理し、組合の闘争本部を校内に設け、赤旗は翩翻として校内に翻り、宣伝カーを市内に横行させ、日教組の平和と独立の教育の突破口として、我らの教育を闘いとれと絶叫しつつある様は、まさに共産革命の前夜、(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)否、その前哨戦として我々は戦慄なくしては見ることのできない事件でございます。
 而も私どもはかかる事態を恐れ、かかる事態の発生を我が国教育界から未然に防がんがために、この教育二法案を今日まで審議して来たのであります。日教組が平和と独立のための教育、平和憲法を守る平和教育として、全国教職員組合にその実施を指令し、これに基いて行われた教育の成果が現実の事態としてここに現われて来たのでございます。(拍手)いわば一定の成果を期待して行なつた実験が、ここに予期の成果を得たものであります。この事態を重視せず、この事実に目を覆つて、この二法案の可否を決することは、あたかも科学の研究におきまして、妥当なる実験の結果が出たにもかかわらず、これを故意にその結論から避けて行く態度と全く同様でございます。(拍手)旭丘事件は一つの特例に過ぎない。かかる稀有なる事象を以て、すべてを律することは当らないと論ずるかたがございます。而もこれが京都教組の指導に基き、着々として実施して来た教育の結実したものであり、偏向教育の表現せられた露頭であることを考えるとき、これが両法案に関係なしと否定せんとする心情を解するに苦しむものがあります。
 又、旭丘事件は破防法の対象となるべきもので、この両法案に関係がないと論ずるかたがおられます。結果の現われた現在の事象については、或いは破防法の対象となることがあるかも知れません。併しこの事件が両法案の対象とする偏向教育の累積の上に成立したものであつて、かかる事実を否定する理由を解し得ないのであります。更に、旭丘事件は、人事院規則違反の行為にあらず、従つて教育公務員特例法とは何らの関係なしとの論をなすかたがございます。如何なる理由で、かかる旭丘事件のごとき顕著なる事実を、あえて公務員法違反と何ら関係なしと主張せられるのか全く理解に苦しむところであります。教育委員会制度は、日本の戦後民主化に対する基本的国策に基き制定せられたのでありまして、その教育委員会の学校管理権を侵害し、その命令に服せざるのみか、却つてこれに反抗し、学校の組合管理を強行していることが人事院規則の「公の機関において決定した政策の実施妨害」の政治的目的に該当することなしとなす、この理由なきことは明白であり、疑う余地はないと考えるのでございます。(拍手)まして懲戒免職を聞き入れず、学校にとどまり、休校の命令に反し、授業を強行している事実が、国家公務員法に関係なしとすることの不可解なることは申すまでもないのであります。
 今回提出された教育二法案は、申すまでもなく、教育基本法に定められた教育の中立性を確保し、教員の政治行為についての行き過ぎを是正せんとするものでありますが、今回その原案を修正し、旭丘事件のごとき明らかなる教育の偏向、政治行為への逸脱をすら、この修正によつて無力にし、かかる事象の発生を未然に防止し得ず、一度かかる事件が行われた場合、本二法案を以て何らの措置に出ることのできないような無力なるものにいたすとするならば、私どもはこの立法は全く無用のものであり、本二法案の成立を心から念願し、日本の教育の正常なる運営から逸脱せんとする傾向を、今こそ是正すべき時期であると認識することの熱意が強ければ強いだけ、かかる修正案に対しては賛成をいたすことは何としてもできません。
 教育二法案が国会に提案せらるるや、全国五十万の組合員を擁する日教組は、その全組織を通じてあらゆる手段方法を講じて、これが粉砕のための闘争を続け、殊に全国一斉に振替授業を実施し、或いは日教組幹部有志はハンストまでも実施して、これが阻止に狂奔して参つたのであります。全国教師よりの両法案を葬むれの通信は、日々数百通を超え、私個人に対しても数千通に及んでおります。学者及び言論界においても両法案の国会通過を阻止せんとする所論及び運動は、極めて熾烈でございまして、表面に現われた現象は、世を挙げて本法案に絶対的反対であるかのごとき様相を呈したのであります。而してその反対の所論の主なるものは、本二法案は教育の自主性を侵害し、不当の支配を及ぼすものであり、教育者を威嚇し、教育の自由なる発展を阻害するものとしているのでございます。文部委員会において、共産党の委員は、「教育に中立性なし」、従つて文部省の提出した二十四の事例のごときは、若しその内容が真実なりとするも、真実を教える教師の態度として当然のことで、これを以て偏向教育なりとすることこそ不当なりとする所論すらなされたのであります。偏向教育の傾向の事実あることを認め、教員の政治的行為に多少の行き過ぎあることを認めらるる両社会党のかたも、あらゆる理論を尽して本法案を全面的に否定せんとする所論が行われて来たことは、委員会における速記録を見られれば歴然たるものであります。(拍手)
 然るに、本日の文部委員会において、緑風会より出られた委員のかたによつて提出せられた両法案の一部修正案に対し、左右両派社会党はもとより、共産党までこれを支持せられ、ここに委員会において修正可決せられたのであります。私ども自由党といたしましては、旭丘中学、山口日記、滋賀日記、武佐中学、その他特筆すべき事例においてのみならず、日教組の教研大会の決定を通じ、又は日教組内に重大なる地位を有する共産党グループ活動の実情を通じ、今や我が国の義務教育をむしばまんとする偏向教育は顕著なる事実としてこれを認めざるを得ず、従つて決して望ましき立法ではないが、現下の情勢下、本二法律案の成立が絶対に必要であると主張し、衆議院送付の原案を飽くまで支持して来たのでありますが、とにかく修正案に賛成された限りにおいて、両社会党はもとより共産党に至るまで、両法案提出の立法理由を承認せられ、恐らく全面的に成立は希望しないが、内容が一部緩和さえすれば、これが成立も又やむを得えざるものとなされたものと考えられるのであります。(拍手)最初この二法案の審議において徹底的に絶対反対の態度であられた方々が、ここまで一大変化をされたことは、実に百時間に及ぶ審議において、或いは三十二人の証人を喚問し、或いは九人の学識者による公聴会を開き、実に熱心なる質疑応答等を通じ、我々と同様、偏向教育の実在を認識せられ、政治的行き過ぎを是認せられ、何らかの法的規正も又やむを得ざるものとする我々と全く同様の立場に立たれるに至つたものとして、百時間の熱心なる審議が、実に無駄でなかつたことを全国民にお知らせすることのできることを心から喜ぶものであります。(拍手)
 ただ、あれほど本法案に対し絶対反対を表明し、全力を挙げて本法案の成立を阻止せんとせられた全国五十万の教育者が、言論界が、学者グループが、果して本修正案を以て満足せらるるか否か、今後私は興味ある問題として注視して行きたいと考えているのであります。(拍手)特に教育に偏向教育なしと主張し、日本共産化の重要なる足場として教育のあらゆる場に侵入せんとする共産党が、本修正案に賛成し、教員の政治活動の自由を主張し、教育者の自主性に待つて法的規正を飽くまで排除せんとした社会党が、年来の主張を一擲し、にわかにその基本的態度を変更して、本修正案に贊成したことは、本修正案が問題となるや、全面的に本法律案を粉砕せんとして実行中のハンストを中止し、旭丘中学問題に関し京教組に態度変更の指示をしたかに承知される等の挙に出たことは、修正を通じて本法案の廃案を企図する戦術的行為なりと論ずる人もありますが、(拍手)私はかかる議論の当否を論することすら不快に感ずるものでございます。
 次に修正点に対する反対理由を申述べます。
 先ず義務教育諸学校における中立性確保に関する法律案第三条「これに反対させるための」の、「ための」の三字の削除の点であります。恐らくこの修正案に賛成せられる方々の中には、僅かに三字を削るだけで、本案の骨子には殆んど大なる影響なきもの、殊に公聴会における牧野博士の「ための」があつてもなくても大した相違はないとの所論により、僅か三字の削除が本法律の生命にも関する重大なる意義を持つものであることを深く御考慮になつていられないかたもいるのではないかと存ずるものであります。御承知のごとく、この「ための」の三字は、政府原案作成の過程において、最も政府部内において論争のあつた点で、最初、文部省原案においては、衆議院送付原案のままであつたものが、政府提出案となつたときには、この「ための」がとられ、その代りに第二項が追加せられたのであります。然るに衆議院における三派修正案において、第二項が削除せられ、この「ための」が加えられたのであります。この「ための」と第二項とは重大なる関係があつて、今この両者とも本法案から削除されることは、極めて重大なる問題であります。本法律案は、教育基本法第八条第二項の偏向教育そのものを示すので、その内容や範囲は全く同様であります。若し「ための」の字句が最初からなく、何らこれに対する解釈上の論争なかりし状態においては、或いは牧野博士の理論は正しいかも知れません。然るに、本法律案の審議を通じ、今や「ための」をとつた場合の偏向教育の内容は、極めて厳格に具体的に特定の政党を支持させ、又は反対させることを明示して行なう場合に限定せられ、従つて現在偏向教育が、殊に児童、生徒に対して行われる場合、極めて巧妙にして、直接論法よりも間接論法を以て行われ、知らず知らずの間に或る特定政党支持への心持を植えつける方法において行われる場合が多い現状であつて総合的に且つ精細に観察すれば、明らかに偏向教育であることは明確である場合でも、直接且つ具体的に特定政党を支持させることを明示しない限り、本法案に該当しないことになるのでございまして、本法適用の事例は殆んど皆無となつてしまうとすら言えると思われるのでございます。
 本法案提出の原動力となつたと思われます山口日記はもとより、その他の顕著なる事例も、殆んど本法案とは関係なきものとなる慮れがあると思われます。或いはこの私の解釈は狭きに過ぎ、予防的には、ないよりもましだとお考えになられる方がおられるかも知れません。併し私は却つてこの「ための」をとることにより、教育基本法第八条の内容を変更し、特定政党を明かに示し行わない限りは偏向教育とはならず、従つて、如何に内心において意図あるも、その意図が明示せられざる限り、自由に行うことは法律も又認めたところであるとの主張さえ起り得る危険さえ伴うものであり、僅か三字の削除ながら、かかる重大なる意義を持つものと解されるので、我々は断じて修正案に賛意を表することができないのであります。(拍手)
 次に、教育公務員特例法の一部改正に関する法律案についてでありますが、公立学校の教育公務員の政治行為の制限を国立学校の教育公務員の例によるが、その罰則の適用を排除せんとする修正案でありますが、本修正に反対する第一の理由は、政治的行為の制限を、国家公務員と同様にしながら、その処罰について一つは刑罰により、一つは行政罰によらんとする両者の矛盾であります。若し政治行為が単なる服務に関する違反であり、服務に関する違反は行政罰を以て足り、刑罰とすべきものにあらずとの論をなすかたがおられますが、若しこれを是認せられるとしましても、何故に国家公務員法そのものを改正しないのか。同様の事例に対し、全く異なれる二つの措置が併立することは、国家意思の分裂であり、立法府として国家最高の機関なる国会としてとるべき態度であるかどうか。いわんや政治行為は単なる服務の問題に止まらず、選挙の公正を保持し、政治的社会秩序に深き関連ある問題であつて、単なる行政罰を以て臨むべきや否やに多大なる疑義があるにおいておやでございます。
 第二の理由は、行政罰とするときは、その権限者は市町村の教育委員会でございます。而うして現在教職員の政治的行為の行き過ぎは全国的規模において行われるものでございまして決して一市町村に限定されません。片田舎の町村の教育委員会が、本案において行われる教員の政治行為を監視する能力があると何人が保証し得られるでございましようか。
 理由の第三は、刑事罰が威嚇的であり、行政罰といたしますことは如何にも教師に対して有利であるかのごとく誤認していられるかたが実に多いのでありますが、事実はむしろ教師にとつては全く不安不利、恐らくは我々が想像しないような、教師に対しまして取返しのつかぬ状態が起り得る可能性があると存ずるのであります。政治行為は必ずしも服務そのものに限定せられるものではなく、選挙活動をも含むものでございます。選挙活動の違反は極めて微妙でございまして、これを行政罰にする危険は、現に知事選挙において、市町村長の選挙において、或いは教育員の選挙において、主観的な解釈によつて公務員が退職を迫られた例を余りに多く私は知つています。このことは同時に、必ず教師自身の上に降りかかる火の粉であります。私は長年教育行政に従事し、教育者に対する尊敬と愛着は何人にも劣らないと信じております。多年日教組と交渉相手となつて来ましたが、教員の待遇改善、地位向上には、全力を挙げて努力して来たつもりであります。このことは交渉の相手方である日教組の方々でさえお認め下さつていると思います。私は、行政罰にすることにより、実質的に教師の上に降りかかるこの恐るべき火の粉について、何故にお気付きになられないのか、全く不可解に存じているものであります。
 第四の理由は、行政罰にすれば、大して罪になるべきものでない者が免官処分にされる虞れが、前に申しましたと同じようにたびたびあると同時に、一方、飽くまでこの行政罰に反抗する者に対しては全く無力であります。北海道の武佐中学の事件につき、あれほど顕著なる服務違反、基本法違反をやりながら、北教組の全面的支持によつて、行政罰を実施することが如何に困難であつたか。今回の旭丘事件においてすら、免職された教師が、公々然と今なお学校にとどまり、教育管理の主導力を握つているではありませんか。要するに、守らるべき国家の法秩序を守る上からも、教師たる個人の身分を保障する上からも、決して行政罰にすることは適当でないと確信するものであります。これを要するに、教育二法案は文部委員会において共産党までの賛成を得て可決成立したのでありますが、本修正案に賛成せられた方々の中にも、恐らく日本を共産化することに対して極めて真剣なる反対の態度を持せらるるかたも多々あるかと存じます。恐らく本法案が修正案として参議院において成立しても、終局において廃案となる場合を期待せざる限りにおいては、共産党も是認し得る程度の法案たることに思いをいたすとき、我らは飽くまでこの修正案に反対する理由を、全国民はこれを是認して下さるものと確信いたすものでございます。(拍手)
 以上の理由で、私は教育二法案の修正に強く反対し、衆議院送付の原案に対して賛成の意を表するものでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○議長(河井彌八君) 加賀山之雄君。
   〔加賀山之雄君登壇、拍手〕
#35
○加賀山之雄君 私は、只今議題となりましたいわゆる教育二法案即ち教育公務員特例法の一部を改正する法律案及び義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の両案に関し、本院文部委員会において可決せられましたところの修正部分並びに修正部分を除く原案につき、緑風会多数の意見を代表して賛成の意思を表明せんとするものであります。(拍手)
 そもそも教育は、人間を作り、社会を作り、国家を作る基礎とも申すべきものであつて、神聖にして厳粛なる使命を有するものであることは申すまでもありません。(拍手)従いまして、教育は、いやしくも一部の人々の意図や特定の団体の恣意にその運営を任せることはできないことは勿論でございますと共に、時の政府といえども、基本的な教育の思想や理念を左右することは許さるべきでなく、この意味よりして、教育は政治権力より隔離さるべきものであつて、絶対にこれに隷属せしむべきものではありません。然らば教育は如何なる理念に基いて行わるべきか、それを定めたものが即ち教育基本法であります。教育基本法は、その第一条教育の目的の項において、「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」と規定し、更に第二条には、「この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めならければならない」。又その前文には、世界中にも通用し、同時に我が民族古来の伝統や個性を十分に生かそうとする我が国独自の文化が推し進められなければならぬ趣旨を要請しておるのでございます。教育基本法は、このように新憲法の下において、新らしい教育の理念と方針とを宣言したものでありまして、誠に立派な法律である。然るにこれらの立派な前文の理想は果して実現されておるか。それぞれの条項は十分に実施されているか。私は遺憾ながら否と言わざるを得ないのであります。その罪は誰にあるか。文部行政の弱体によるものであるか。教育関係者の誤解や錯覚に基くか。国民全体の関心の足りなさによるか。或いは又我々が曾つて受けた時代の教育への懐古意識にとらわれた見方から来る判断に過ぎないと言い得るか。今ここで、その責任を追及すべき場合ではありませんが、折角のこの教育基本法が生かされていない原因というものを、我々国民は先ず挙つて反省いたしてみねばならないと思うのであります。(拍手)
 今回政府が提出いたしました二法案は、この教育基本法第八条が定めておりますところの政治教育に関しまして、義務教育諸学校における教育には、顕著な政治的偏向が認められる、教員の政治活動に行き過ぎがある、教育基本法がこの面で遵守されていない。今にしてこの弊を矯めなければ、国家百年の計を誤まる虞れありという理由の下に立案されたものであります。政治と教育とは切り離し得ない関係にあつて、その一つが他の一つに作用することは当然でありますが、政治が教育を不当に支配することも、教育が現実の政治に深入りをして特定の政治的勢力の消長に貢献することも、そのいずれも、教育基本法の条項に鑑みるまでもなく不法であることは言を待たないところであります。私は、この政府の推断を単なる杞憂と考え、妄想と断じたいのでありますが、遺憾ながら、我が国教育界の現状を見るに、教員諸君の中には公民たるべき政治的教養を与える名の下に、児童、生徒の発育の段階に不適応と思われるような政治教育を行い、或いは教育の本義を忘れたかのような政治的偏向があり、又それらの諸君の組織する団体の運動においても、本来の性格や使命を越えた組織的活動が随時行われ来たつたことを認めざるを得ないのであります。(拍手)これらの事実は、本法案の大前提であると同時に、この事態の認識の程度如何によつて、諸論が必ずしも一致しないゆえんがあると存ずるのであります。これらの行動は教育の本義に照らし、教育基本法の精神に鑑みて、厳にこれを抑制すべきものであつてその点については何らの疑いの余地のないことを確信するものであります。(拍手)この事態を弁護する立場に立てば、新憲法、教育基本法の下に新教育が唱えられて以来日浅く、教育者も被教育者及びその父兄もその把握が十分でないこと、単に教員組合のみでなく、一般的に労働運動としての組織活動が極めて稚拙の域を脱していないこと、教育行政機構は根本的な変革を受けて、その機能は整備充実にはほど遠いことなどの理由が挙げられるでありましよう。従つて教員諸君から言えば、そのよるべき途、頼るべきものを求めて半ば意識的に、或いは無意識的に組織活動一本槍になり、いつしか教育界今日の状況を現出するに立ち至らざるを得なかつたと言い得ると思うわけであります。一方におきましては、組合並びに組合員自体の中に、すでに強い自粛と反省とが行われ、社会の風潮や秩序の鎮静に伴つて徐ろに健全化への歩みを取り戻して行くのではないかとも言われておりまして、この観察も単なる希望的観測とのみは言い得ないのではないかと考えられるのであります。
 我々としては衷心から、教員諸君の同胞民族としての良識とみずからの自粛反省に期待いたしたいのである。現状を一つの歴史的過程として、或いは一時の動揺期としてこれを観察し、この偏向もやがては正常に復するであろうことを願う者は、単に本議員のみにとどまらないであろうと思われるのであります。私は又今日まで終始一貫教意を以て教壇に立ち、愛情を以て子供たちを育み、善意に基いてそれぞれの政治的行動をとつて来た多くの教員諸君のあることにつきましても、決して疑いを差挟むものではないのでありすす。併しながら「地獄に通ずる道は善意という石で敷き詰められている」という言葉のように、その数多くの人々が善意の石を踏みつつ、知らず知らずに或いは時に足を踏み外して、いつしか地獄の門に行きついてしまつてはもはや事は終れりであります。願わくば全国の教員諸君はみずから教職の尊さを思い、幼い者たちの行末を、且つは我が国の将来を考えてこの際三思三省してくれることを心から願うものであります。(拍手)
 今回の二法案は、政府の提案理由もさることながら、私はこの教員諸君の反省に、一つには法的規制による他律的な力を加え、一つにはこれに働きかける他動的な力を禁圧して、その面から教育の真の自由を守るという点に重点を置いて解釈いたしたいのであります。憲法の保障する基本的人権の論よりすればもとよりのこと、反省を与えるに必要にして十分なものであれば足りるという趣旨からすれば、その制約は必要の最小限度にとどめ、その罰則も必要の限度を越えるものであつてはならないことは理の当然と言わねばなりません。(拍手)私は先ず教員を信頼したい。断じて民族としての自信は失いたくないのであります。(拍手)反省ということを考えない人々や、民族意識を喪失した人はいざ知らず、これは日本人誰しもが抱く気持でございましよう。折檻の度を増すことが決して悪癖を矯めるゆえんでなく、熱ざましは強過ぎるほどよいというものではあるまいと思うのであります。これは常識というものである。
 第一のいわゆる特例法の一部改正案につきましては、この法案が特に教育者のみが対象であるという点より見て、教育界の内部、教育行政自体の手によつてこれを匡正し、禍根を除去する方策をとるべきである。眼には眼を、思想には思想を、教育には教育行政を以て報ゆるが当然であると思うのであります。(拍手)修正案において原案の罰則規定を削除し、これを教育行政の措置に委ねたことは、従つて極めて至当な修正と存ずるのであります。
 次に、地方公務員たる公立義務教育諸学校の教員は、この法律によつて地方公務員としての身分はそつくりそのままとして、新たに人事院規則で定められた政治的行為を全国的広汎且つ多岐に亘つて制限されることとなるのでありますが、これらの人事院規則の諸条項は、国家公務員法と共に国家公務員の場合についても再検討を要するものを含んでおり、その解釈においても必ずしも明確にして一点の疑問なしとしないのであつて、その点よりしても罰則までを国家公務員の例によつて刑罰を以て臨まんとすることは、全く不当であると認めざるを得ないのであります。(拍手)この修正意図に対する反対は、行政罰を以てしては目的を達し得ずというにあり、又その理由とするところは、一つは地方教育委員会等の実勢力の強弱、提訴の場合における地方財政のこうむるべき莫大な負担等にあるのでありましようが、これらについてはその困難とする事由の解決に努力すべきが本来であつて、これを以て反対理由とするがごときは本末顛倒も甚だしいと言うべきであります。(拍手)
 次に、いわゆる中立確保の法律案について言いたしたいと思います。教育を政治の道具とすることの危険は今更申すまでもない。曾つてのナチス等の例に徴するまでもなく、我が国戦前の教育についても、果してあの式に限るのだと言い切れるでありましようか。而も基本法第八条に明らかに規定された趣旨を意識的に侵犯し、あえて教唆扇動を行い、政治的野心を満たさんとする者ありとせば、容赦なくこれを刑罰の下に置くべきものであつて、その行為の違法性は改めてここで論ずるまでもないでありましよう。併しながら同法案第三条後段「反対させるための教育」におきまして「ための」の字句は、基本法にその字句が用いられておるからと申しまして、刑罰法規にそのままそれを用いていいということにはならないと考えるのであります。この法案が基本的人権、特に思想、言論、学問、研究、集会、団体活動の自由等に密接な関係を有する点より見て、かの破壊活動防止法制定に当つて論ぜられた精神はこの際想起されなければならないと信ずるのでありまして、(拍手)その解釈と適用を必要最小限度にとどめるべきは当然のことであり、この見地から修正案においてともすれば拡張解釈の虞れのある「ための」の字句を削除したことは当然であると考えるのであります。(拍手)劔木議員は、旭丘中学の事例に触れられましたが、果して事態が劔木議員が述べられるようなことでありますならば、私は今回の二法案を以てしても足りないのであつて、果して事態が然りとすれば、これに対応する更に適当なる法案を必要とすると私は考えるのであります。もともとこの二法案を以てああいう事態に対抗しようとすること自体が、これは無理があると私は思うのであります。
 私は今一つの挿話を思い出すのであります。モスクワの或る学校の教師が、「或る人が五十ルーブルで品物を買い、一割の利益でこれを売ればその人の儲けは幾らになるか」という簡単な問題を子供たちに出したところが、クラスの中の頭のよい子が、「三年間の重労働」と即座に答えたという話であります。(笑声)政治が教育を支配する場合には、かかることも笑い事ではなくなるのであります。(拍手)「革命は感情によつて起るのであつて知識によつて起るのではない」という言葉もあります。学校が社会や家庭と並んで未来の社会を作り出す最も重要な機関であることは間違いのない事実であります。学校の教育が政治をよくするのに如何なる役割を持つべきか、積極的にこれに参加するのがいいか悪いかということは、誠にデリケートな問題であると思うのであります。
 教育は何よりも先ず関係者の信頼を基調とせねばなりません。愛情を以て子供の中にあるものを伸ばし引つ張り出して行くところに教育の本義がある。教育者はこれを忘れてはならんと同時に為政者も教育者も憎悪や反感を助長するようなことをすることこそ革命への最もよい教材であり、教育への反逆であることを知らねばならんと思うのであります。
 単に旧来の教育思想を墨守するのみでは、到底解決の緒は見出されないことは勿論、早急な判断や偏狭な考え方或いは強引な方策が決して問題を解決する何ものでもないことを銘記しなければなりません。(拍手)
 最後に、政府においてはこの国民にとつて不幸とも申すべきこの二法案が通過した暁におきましても、いやしくも我が事成れりとなすことなく、みずからの責任において教育基本法の理念に立脚した正しい教育の目的を遂行するために、必要なあらゆる条件の整備を目標として教育行政の全般的確立に最善を尽されんことを強く要望して、私の討論を終る次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(河井彌八君) 高田なほ子君。
   〔高田なほ子君登壇、拍手〕
#37
○高田なほ子君 人類の破滅を予告するビキニの死の灰の降る中で、明けても汚職、暮れても汚職、綱紀粛正一枚看板の吉田政府の公約はどこへやら、自党の居坐り工作ともなれば全く手段を選ばぬ厚顔無恥振り、政治の道義も自主性も今や完全に喪失した吉田内閣がその身のほどもわきまえずして、教育の民主化の未だ十分に行われていないこの段階に、新教育の芽を摘む虞れのある悪法を提出いたしましたことは誠に遺憾極まりないことであり、日本の将来のための最大の不幸と思わざるを得ないのでございます。今日の吉田内閣には、もはや教育を説く資格はないはずである。若し政府に日本の将来を思う一片の愛情と青少年のために一かけらの正義感が残つておりますならば、先ずみずからの汚れを国民の前に謝し、その非を改め、出直して来べきであると思うのでございます。政府は全国に偏向教育の兆が甚だ起つて来てこれは日本の将来に重大な問題であるから、この法案を出すのだ。成るほど我々も偏向教育を是認する立場はとつておらないのでございますが、全国教育委員会の全国的な調査によれば、偏向教育はただの一件もなかつたということはすでに文部委員会において明確に知られている通りであります。(拍手)京都の旭丘中学の問題について剱木委員は述べられたのでございますが、このことは日本の教育行政の面における重大なる遺憾事と言わなければなりませんし、この遺憾事に対しまして、若し大逹文相が一片の愛情があるならば、この非を国民の前に心から謝すべきであつて 一方的にこれを政争の具にするがごとき行動は断じて許されるべきではないのでございます。(拍手)喧嘩両成敗は常識であります。喧嘩両成敗の原則も又政治の原則だと私は思うのでございます。この原因の究明に当り、この原因の解決に当ることこそ、大逹文相のとられる最大の途であろうと思うものでございます。
 私はここに日本社会党第四控室を代表いたしまして、この際教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに義務教育諸学校における教育の政治的中立に関する法律案に関しまして、平和と民主主義を擁護する名において国民と共にこの悪法の撤回を心の底から願つてやまないものでございますが、(拍手)本院におきましては緑風会議員各位の前後十日間に亘る極めて御熱心なる御検討の結果、ここに加賀山委員ほか二名にかかる修正案が上程されましたが、その御労苦と御良識に対し深甚な敬意を表しまして修正案に賛成し、修正案を除く残余の部分に対して賛成の意思を表明するものでございます。(拍手)本案が衆議院に上程せられまして以来、全国を挙げて悪法撤回の声が津々浦々に捲き起り、各新聞は筆を揃えてその非を説き、その撤回を迫りました矢内原総長、南原前総長、又日本の五十万の教職員を初め各大学の教授、学会、文化人、全国中学校長会、全国小学校長会、全国教育委員会協議会、信濃教育会、PTA、各婦人団体、県議会、恐らく教育に関心を持つ者が挙げてこの法案の行方を注目したのです。七百三十万の組織労働者総評は、国際自由労連の自由諸国家傘下五千四百万の労働者と共に、人種を越え、国境を越えて、この悪法が世界の人類に与える不幸を強く指摘して、去る二月九日オールデンブロツク書記長は、日本政府の法案作成に関して厳重なる抗議を行いました。更に国際公務員書記長M・Cボーレ氏を日本に派遣して、平和と民主主義擁護のために、各方面に理解を深め、この理解を深めるために最大の協力を惜しまず、この悪法の撤回を心から希つたことは、我我の記憶に新らしいところでございます。(拍手)即ちこのことは今日、日本に抬頭しているところのフアシズムに対する世界各国からの厳重なる抗議と考えなければならないのでございます。(拍手)心ここにあらざれば聞けども聞えず、自党の勢力温存に狂奔する吉田政府は、かかる国を挙げての、世界を挙げての世論に耳をかさず、法案の審議は二の次とし、我々野党議員の総括質問も逐条審議も強引に打切り、委員会の最終段階に至るまでその運営に醜態をさらしたことは、広く国民世論の前にさらさるべきであつて、断じて日本の民主政治の許し得ないところでございます。(拍手)
 私はこの法案の持つ性格の二、三について、ここに指摘しなければならないのでございます。即ち本法案の性格は、昨年来池田・ロバートソン会談の日本側の議定書によつても明らかである通り、アメリカの急速なる再軍備の要請に応えるためには、日本側は憲法上、経済上、社会上、教育上の四つの制約があるが、この制約を急速に克復しなければならないとして、教育上の制約としては、占領後八カ年間の教育の結果、直接防衛の任に就かなければならない青少年が、日本は如何なることがあつても武器はとつてはならないという教育を受けたことを指摘し、これを是正するために、日本は教育と広報を通じて再軍備の空気を助長することを定め、日本政府は愛国心の振興に責任を持つことを明らかにいたしました。かかる秘密と独善の向米一辺倒の外交の中で、日本人の愛国心が取引されたということは、独立国家として誠に悲しむべき状態であると言わなければなりません。(拍手)而もこの約束を果すために、この役割を演じたのが、戦争裁判は人食人種の首祭りだと豪語する大逹文相であり、(拍手)それに続くは元特高警察の、ブレーンとして腕を鳴らした田中文部次官、同じく元特高の緒方初等中等局長、およそ教育とは縁の遠い面々が、特に愛国心の強化を掲げたこの教育内容の改善が、如何なるものを意味しているかということについては、すでに我々良識の判断に容易なところでございましよう。(拍手)即ちMSA協定の第八条に明示されてある通り、国際緊張の原因を除去するために、安保条約に基いて負つている軍事的義務を履行することの決意を再確認し、日本の人力、資源、施設を、自国の防衛及び自由世界の防衛力の発展維持に寄与し、自国の防衛力の増強に必要なるあらゆる合理的な措置をとること等、軍事的義務が明らかにされたのであります。即ちこの義務の一環として、物心両面の自衛力漸増を公約した政府は、本国会において防衛二法案を提出いたしました。自衛隊法第八十八条によれば、防衛出動時の武力行使を明文化し、領空侵犯に対する実質的な交戦権を認め、国防会議や統合幕僚会議等、明らかに国防の基本並びにその具体的作戦計画までもが法文の上に示されて、名こそ変れ、大本営の復活を見る国内態勢に変貌したことは、すでに各位の御承知の通りであります。(拍手)この態勢順応のために必要なことは、平和よりも再軍備であり、その精神的な支柱を教育に求め、ここに教育方針の改革をしようという狙いを持つているのがこの法案の性格でございます。
 今日の教育方針は、憲法を確認し、平和な国家社会の形成者として、あらゆる場所で、あらゆる機会に、心身共に健やかな、真の平和と正義を愛する国民の育成を期することになつておりますことは御承知の通りでございます。その目的完成のために、教師は敗戦ののち、平和教育担当者としての資格があるかないかということを検査され、旧教科書に残る軍国調教材を抹殺せよという文部省の方針に従つて、いたいけな子供の手から愛する教科書を取つて、この教科書を破り、墨を塗らせ、心の片隅に残る奉安殿の幻影を拭き消し拭き消し、新日本誕生のために悩み続けながら、教師としての人間像改革に努力し、骨の髄まで戦争反対の改革が行われたのは、ほかならぬ五十万の教職員でございます。君が代を歌つた教師が睨まれ、日の丸を立てようとした教師が睨まれ、教育制度の改革と共に、児童に対する徹底的な平和教育を、教師みずからのものとするために、戦争に対して最も深く、最も厳粛な反省を強いられた今日の教育者、かくて平和を求める教育の実践として出発されたのでございます。私はこの道は、人類の最高の道であり、この道こそは、政争の具には絶対供してならない道であるということを心から叫ばざるを得ないし、(拍手)この日本の将来を託す幼なき者のために、全国民はこの道をこそ、今こそ子供達の前に確信を持つて示さなければならないのではございませんか。(拍手)然るに自由党議員各位には、平和教育なるものの真意を極めて曲解せられ、深い御理解を持たずして、これは共産党の方針であるというようなことを言つておられますが、誠にこれは悲しむべきことであります。
 私は極めて少い時間でございますが、日本の教師たちが、平和教育の実践を如何にしておるかということについて、若干ここにこの記録を読み上げたいと思う。
 即ち、平和教育は、口の先で平和平和。ソ連と仲良くするんだ。中共と仲良くするんだ。こんなことを言うのが平和教育ではない。即ち平和教育とは、真の平和な精神を子供の魂に植付け、やがて世界が戦争を防止する、その大きな精神的支柱を作る、その基礎が平和教育、即ち児童の精神生活を安定せしめ、児童の精神生活を動揺し、邪悪に導くところのあらゆる環境を整備することが、教師の平和教育の実践の第一なんであります。(拍手)
 この記録は、静岡県の女教師の記録でありますが、この中に目を通してみますと、先ず第一に、私たちの静岡はどういうところであるか。私たちの目に映る近頃の子供たちはどうなつているのか。不遇児の施設はどうなつているのか。寮の子供はどうなつているのか。特飲街の子供はどうなつているのか。天神森の子供はどうか。家内工業地帯の子供はどうなつているのか。沼の子供はどう扱われているか。農山漁村の子供はどうなつているかという事態、この実態の上に立つて、原因を追求しておつて、この施設の不足不備、経済生活の貧困、道義の頽廃、封建性、教育への無関心、この原因を如何にして除去することが最も妥当であるかということについて極めて適切なる指導がなされております。
 私はここにその実例を読み上げます。「Nは四年の時母親を結核で亡くし、父親は他の婦人と結婚して行方をくらました。Nは或収容所に入つたが度々の脱出を見かね、叔父が引とる事となつたが虐待されその愛情に飢えた浮浪癖が、よその子供にまでいろいろの批判を受けながら、学校に来ること対しても、決して喜びを持つては来なかつた。五月の中旬より、この子供は日記をつけ始めた。五月二十二日、Nは班の人達と一しよには日記を出さず、そつと職員室の私の机の引出しへ入れて帰つた。開いて見ると、五月二十二日、僕がいつも考えている事は先生のことです。何だかおかあさんのような気がしてなりません。時々『おかあさん』と呼びたくなります時には『おかあさん』と抱きつきたくなることがあります。とあり、私も考えさせられたが、『先生は六年生のおかあさんなのだからNさんにもお母さんです』という意味の批評を書いて返した、すると、五月二十四日、先生ありがとう。僕はこれで毎日楽しく勉強することができます。お母さんと一しよに勉強出来るなんてこんな幸福な者はありません。おかあさんさえあれば悲しいことはありません。おかあさんありがとう。五月二十五日、おかあさん僕はこんな夢をみました。朝起きると『登よもう起きなさい』といつたので、サッと目ざめ、夢だつたのでがつかりしました。又寝ると今度はおかあさんが『今日は日曜だから映画に行きましよう』といつて手をつないでくれたと思つたら、僕と寝ている子の手でがつかりしました。おかあさんは先生でした。五月二十六日、今日一番びつくりしたのは、先生の顔に傷がついていて、ちよつとむくんでいることでした。僕はしんぱいでした。先生は、教室では先生、そのほかはお母さんです。川原へ行つて『おかあさん』といつてみました。こんな日記が一学期の終り頃まで続いたが、その頃には、友達との折合いもよく、明るくなり、学習にも熱心になり、成績も級の上位になり、心に安定感ができ、寮でも責任者の方に非常に可愛がられてきた。」というのが、一女教師の平和教育の実践である。然るに、驚くなかれ、この女教師は何らの思想的なものも持たず、極めて熱心な教師であるにかかわらず、今般平和教育の名を以て遂に当局から不当転任を強要され、一里半の僻地に追いやられたということは誠に悲しみ余りあるものがあります。愛する母親を失つたこの不良児のその心底を思いまするとき、我も又子供を持つ親の身として教育行政の民主化が如何に大事なものであるかということを痛感せざるを得ない。(拍手)
 余聞に亘りましたが、次の私どもの主張といたしまして教育の中立は絶対に確保しなければならないということであります。然るに、本法案において果して教育の中立が守り得るかどうか。即ち、特例法の一部改正においては、地方公務員たる身分の教職員に対して政治活動制限の面だけは国家公務員並みに取扱う結果、人事院規則が地方公務員たる教職員に全面的に適用されることになります。このことは、法の体系を崩すことは勿論、法律専門家以外には法律を見ただけではわからないような単なる規則を以て、勤務時間外の、市民としての行動まで束縛し、而も規則違反に対して重い体刑が科されているので、いつでも検察権が発動できる仕組になつているが、これは明らかに基本的人権の侵害であり、憲法違反の疑いが極めて濃厚でございます。即ち政府は、この規則によつて、あらかじめマークした者を本規則違反を名にして容易に狙いうちすることができるのでありますが、ほかの人が同類の行為をして無罪だからといつて、憲法違反が正式機関によつて立証されない限り、自分の行為の無罪を主張することはできないのでございます。こうした危険性に対して、修正案は刑事罰を削除し悪法の緩和を図られたことは、これは最上の良識であつたかと思うものでございます。
 更に、中立確保の法案においては、教員に限らず誰でもが偏向教育をさせるように教唆扇動する行為を処罰しようというのであつて、教唆扇動の結果、偏向教育をするようにならなくとも、体刑を以て罰せられるという独立罪でありますから、破防法以上の悪法たるゆえんも又ここにあるのでございます。而も、特定政党又は政治団体を支持或いは反対させる「ための」ということになれば、我々が生きて動いてしやべつている限り、一切合財が何かしら、政党の政策、政治団体の主張に繋がらないものはないのであつて、解釈如何によつては、全部「ための」云々に包含せられ、体刑が科されるという、誠に恐るべき法律でございます。このことによつて、教職員を含む何人もが、口を塞がれ、耳を塞がれ、社会生活から隔離され、教職員組合は、このために運動さえも抑圧される結果を生むのであります。このことは、教育乃至学問研究一般にまで制約が加わる虞れ十分であつて、一切の言論が一党一派の主張と一致することを恐れて、重要な教育活動、取りわけ政治教育を遂に逼塞させるに至るということは、火を見るよりも明らかであります。この危険を含む「ための」を、修正によつて削除せられましたことは、拡大解釈を阻止するものであつて、輿論に応えられた修正と見るべきでございます。
 我々は、教育によつて、政治を理解の、現実生活に即して正しい判断の能力を持つ青少年を作り上げて行かなければならない。教育活動において政治教育は現下欠くべからざる必要なものであつて、教師個人の政治活動とはおのずからその限界を異にしておることは、言うまでもないのであります。然るに政府は、中立維持の名において、教育活動と教員個人の政治活動をまるでごつちやにして、教員個人の基本的人権をも禁止してしまうということは、故意に基本法の第八条の精神を歪曲した、実に陰険極まりない方法と言わなければならないのであります。(拍手)我々がここで言う自由は、決して野方図の自由を指しておるのではないのであります。政治教育の面においても、その運営の適正を図るために法の拘束を受けることはありましても、その法律を作る政治そのものを批判する自由を拘束するものではないのであつて最近のような汚職続出の原因は、国民の政治的良識の欠如から来る悲劇であり、こうした悲しむべき現実から、一人々々の国民が、幼きより次第に高められて日本の政治が向上されて行くということは、すべての者の望むところでございましよう。吉田政府の大臣が料亭に飲みに行つて、饅頭食いに行くと言つたり、指揮権を発動して汚職の摘発を抑えたり、これを院議で追及されても、しやあしやあとして一顧の反省もなし得ないような政治家は、幼にして正しい政治教育を受けて来なかつた結果によるのであつて、(拍手)この汚れた政治の中に生き、子供を善導する教師は、今日、襟を正して、正しい政治教育に邁進しなければならないと思うのでございます。
 元来、文部省は、教育行政に対するサービスの省であつて決して取締や弾圧の府ではないのである。そのサービスの省が使命を忘れたところに、今日、日本の二千万の学童が喘ぐところの教育面のあらゆる面の破壊を招来しておるということを、深く大臣は肝に銘ずべきであります。(拍手)今日あなたが真に教育の中立性を主張なさるのであるならば、なぜにこの教育行政の偏向性に目を向けられないのでありましようか。地方教育委員会制度は、日本の教育の民主化のために設けられた制度であるにかかわりませず、自由党政府、それに繋がるところの大逹文相の、その陰に、この地教委が一手に握られて、文部省のあるがままの命令に直ちに服従し得るような体制を作つておる。誠にこのことは恐るべきことである。而も日教組防衛対策なるものを編み出し、暗号電報一本で全国の地教委が日教組に刃向うという、こういうことを指導して、何であなたは教育の中立性を主張することができますか。日本の国の教育の中立維持は、全国民の名において守らなければなりません。地方におけるこの誤まれる文部省の指導こそ排撃されなければならない。あなたこそ偏向の元兇であるということを言わなければならないのであります。最近の風潮は、この地方教育委員会の偏向性によつて、鉄砲をかついで、やれ戦力だ、やれ再軍備だなどという教育を、而も八紘一宇の精神が、今許されておる。文部大臣が認めておる。こうい偏向教育を、なぜあなたは改めることをしないか。(拍手)私どもは、教育の中立を守るが故に、両面における厳正なる批判と愛情のある正し方というものを根本として考えて行かなければならないと思うものでございます。
 最後に申上げなければならないのは、本法案によつて思想警察が復活し、日本が警察国家という形相を呈するということであります。正しい教育、子供のための教育が、警察国家の中おいて果してでき得るかという問題であります。教育の中立は、警察の不当干渉を排除し、政党の不当な干渉を排除するところから始まらなければならない。最近全国各地に起つた教員の思想調査は、遂に子供の鞄の中にまで及んでいるということは、大臣もすでに御承知の通りであります。こんなことが一体許されていいのでございましようか。而も言論或いは思想、これらのものは自由であり、政治への批判も善行として、これは大いに奨励されければならないものを、まるで巡査部長に毛の生えたような、学力の低い巡査のそういう者に、教育基本法の精神をも弁えずして、これが弾圧されるに至つては、我々子供を守る者の立場としては、どうしてもこの警察の干渉を排除して行かなければならない。併しながら今日のこの刑罰法規は、警察権発動の法的根拠を与え、常時警官の監視の中に教育が進められなければならないということは、誠に悲しまなければならないところであります。私どもは民主主義を守るが故に、言論と思想、結社の自由を飽くまで確保すると共に、この正しい道を子供のために伝えなければならないのでございます。我々は太平洋戦争によつて、無謀な指導者によつて、あらゆる幸福を失いました。併しながら戦後八カ年間の平和教育は、幼い者の魂にふつふつと滲透し、やがて我々大人が誤つた道、世界が誤つた戦争への道を行こうとするときに、この小さき者が成長し、これを打開する日本の楔となつて、平和な世界建設のために大いなる力を注ぐであろうということを期待して、どうぞ、この緑風会各位の良識が、全参議院の権威を守るために支持せられますよう心から期待いたしまして、討論を終ります。(拍手)
    ―――――――――――――
#38
○議長(河井彌八君) 相馬助治君。
   〔相馬助治君登壇、拍手〕
#39
○相馬助治君 長きに亘つて世論を沸かせて参りました教育二法案の成否は、あと二、三十分の後に諸君の意思によつて決せられようとしております。日本の教育のみか、日本民族の将来の運命を左右するこの重大なる時期に当りまして、私は二法案に対し、委員長報告の通り、加賀山君提案の修正案並びに修正部分残余の原案に対し賛成の意思を表明すると共に、諸君の賛同をも期待して、以下討論を進めて参りたいと思うのであります。
 申すまでもなく、文化国家の建設とか或いは民主国家の建設と申しましても、その基盤をなすものは、
   〔議長退席、副議長着席〕
まさに健全な教育の伸展を基調とするものでありますることは、教育基本法を引出すまでもなく、諸君の了解するところであります。従いましてこのことは、教育立法はまさに慎重を以てなさなければならないことを意味するのであります。
 本法案上程に当りまして、委員会の審議過程において明らかとなりました政府の見解は、現在の義務教育諸学校においては特に教育の中立が守られていない。第二には偏向教育が行われておる。赤の危険がある。又その手当というものを今にしてなさなければ時機を失する。第三には、日教組は明らかに政治団体で、その主張、行動が非常に左傾して、民族の将来にも悪影響を及ぼすというような極めて一方的な見解を披瀝し、その根の深さからして、この辺で警官と牢屋とを以て教員を威かすにしくはなしとして本法案を提案したと説明をしておるのであります。
 ここで問題になりますることは、局地的に、或いは又五十万教職員の中の一部には、それぞれ毛色の変つた者もあるでありましよう。偏向教育としての誇りを受ける危険のある現象もないではないでありましよう。日教組に対しましても、戦後の混乱期に芽生えた組合運動のさなかにおいて、当然これは運動上の或いは手続上の錯誤等も否定するところではございません。ただ問題は、今日教員に対して親心を持つべきはずの政府、文部当局が、警官と牢屋とを以て教員に立ち向わんとすることは、先ず第一に文部大臣である大逹さんは、みずからの権威をみずから否定するものであると同時に、日本の五十万教職員を侮辱するもの以外の何物でもないということを私は指摘しなければなりません。(拍手)
 あなたは日本の現在の教育の状況を知つておるでありましよう。私は教育界のみが貧困であるとは言わない。併しながら、市井の学校におきましては、給食費を持つて行けない子供、その子供をどうするかと頭を悩ませる受持の教員、又地域社会の貧困、失業者巷に溢れる現在の段階においては、長欠児の取扱或いは又盗癖児、それぞれの特殊児童の取扱に日夜頭を痛めつつある教職員、又危険校舎激増、或いは今般の不幸な鏡子ちやん殺しに現われたような社会悪の激増、この中に教員が如何に苦難の途を歩みつつあるか。問題はこの苦難の途を歩みつつある教員の身分は何によつて保障されておるか、あなたは御承知でありましよう。閣議において、教職員の首を切らないとおきめ下さつた、私はその努力を多とするものであります。然るに何ぞ、地方においては、財政事情の逼迫は当然地方財政の逼迫となり、結果としてこれが教職員の身にふりかかつて、希望退職という名の強制退職が行われて参つておるのであります。特にこれが婦人教員の場合に多い。共稼ぎであるということで首を切られるということは、これは将来にとつて実に重大なる問題でなければならない。若き女教員が、みずからの職場の若き男教員を侮辱するというならば、事は笑い事では済まされないということを私は指摘しなければならない。而も勇退でありまするが故に、一カ年の待命制度もない。六十日前の予告制度もない。そうして勇退せしめられたる校長が、その明日よりは謄写版の原紙を抱えて曾つてみずからの下僚であつた教員の前に頭を垂れて、その職の遂に歩まんとするがごとき悲劇をあなたは知つておいでになるか。かような実質的なる首切りが現に行われておる。その教員に対して一部の局地的な現象を以て今日かかる威嚇法案を以て威かすというがごときことは、誠に問題であると言わなければならんのであります。而もあらゆる問題が、給食のことにしても、危険校舎のことにしても、みずからの身分の問題にしても、今日日本の教員は、これすべて政治的な段階において解決することを知つておる。
 曾つて教育の立法は枢密院においてなされた。今日教育の立法はすべて国会においてなされることを今日教員は知つておる。このこと自体を我々は否定できない。ここで政府のとらんとする道は、教育界を知らないというよりは、教育界というものはどうすればよくなるかということを知らない。そこらのおやじが知らないならば問題でないが、現在の吉田内閣の、而も大逹さんが、この事情を知らないというのは、日本民族のための悲劇であると言わざるを得ない。(拍手)私は今日思いますることは、警官と牢屋によつて、即ち刑罰を以て教育を威かすということは、ただ沈黙に通ずる道であるということを指摘したい。成るほど教員は勇気を持たなければならない。真理は堂堂と発表しなければならないと申しましても、個々の教員は誠に猫のごとく弱いものである。この教員が、教育というものは批判精神を培うことである。真理を守ることが大切であると、頭の中で知つていても、かかる悪法の前にさらされる教員は、賢明にもみずからの蓋をするであろう。このことを思いまするときに、私はあなたに訴えなければならないことは、お母さんが赤子に乳を飲ませないで殺したという場合に、このお母さんは赤子に対して何ら手を下していない。然るにもかかわらず、そのお母さんは刑法上の殺人罪になる。母親としての当然の義務を遂行しなかつたからである。教員は子供をすくすく育てなければならない。正しい考えを教え込まなければならない。やがて世界の平和に貢献するような立派な人間を作らなければならない。こういうことを義務として知つておりながら、この二法案に邪魔されて、そうして正しいことがなされなかつたとしたならば、そのことこそが私は問題であるとあなたに訴えなければならない。学制発布八十年が先般祝されたのでありますが、教員が自由にものを言えた時代は残念ながら日本においては極めて短かかつた。この時代において民主主義への期待を持つたのでありまするけれども、私どもは曾つてのあの戦争時代、血腥い戦争に我々の人命がやすやすと捧げられたあの奴隷時代というものを、今日端しなくも、次の時代に、我々は恐れおののく姿として予期せざるを得ないことを、国民と共にこの立法府は悲しまなければならないと思うのであります。日教組の問題にしてもそうです。戦後発達して来たこの教員組合運動というものが、いろいろの行き過ぎはあつたのでありましよう。併しながら、平和憲法を守れとする主張は、誰が何といつても正しい。民主主義を徹底せしめ、子供を戦場に送るなというかけ声も、理窟はあろうけれども、間違いと何人が否定することができますか。問題は、ただ両条約を支持しなかつた議員に対しては云々というようなことがなされたことを私はふと記憶いたします。一方において国会が意思を決定したかかる問題に対して、経済団体としての日教組の一部が、かような見解を出すことは、これは非常なる誤解を招く種であるということを私は信じます。今日日教組の幹部諸君と言わず、これに結集した諸君は、このことを明らかに反省しておる。そうして日本の教育を守り、これを復興するものは我々であるという熱意に燃えておる。我々は考えなければならないことは、若しそれ教育界が間違つていた、偏向教育を行なつたとしても、先ず教員並びに教育界自身の反省によつてこれを矯正させなければならない。
 第二には、地域社会における与論の力がこれを救うものでなければならない。そうして万々止むを得なかつた場合において立法措置を講ずべきである。このことは委員会の審議の過程において、松原委員によつて、羽仁委員によつて、或いは野本委員等によりまして、烈々として説かれたところでありまするけれども、政府を反省せしめることのできなかつたことを私は痛恨事とするものであります。要しまするに、この段階において非常に問題となつた旭丘の問題を取上げて見ました場合においても、これは両派社会党が見解を表明いたしておりまするように、そのとりました態度というものは、誠にこれはまずいのであります。学校を組合管理の下におくというがごときことは、理由の如何を問わず断じて許容し得ないところであります。併し問題は、剱木委員が指摘して、旭丘の事件は、政府原案ならば取締れる、加賀山修正案では駄目だ、誠に牽強附会、先の文部次官の言葉とは受取れないのであります。なぜならば、旭丘の事例が若しそれ真に或る職員の教唆扇動によるとするならば、明らかに地公法三十七条一項、六十一条四項の援用を以てこれを三年以下、十万円以下の処罰に該当せしめることが可能なのであります。問題は今日この法案において、この審議過程において旭丘事件を鬼の首をとつたように騒ぎ立てる与党の態度は、笑止と言わんよりは、むしろその知識の浅薄さに一驚を喫するものであります。(拍手)併しながら、問題はこの二法案は直接教員を対象として、一方においては政治活動の制限の面において国家公務員並みに取扱おうとするものであり、一方においては何人もという言葉を冠して、その教唆扇動を取締らんとするものであります。私は先般夕食後、NHKの放送を聞いていた。すると、ユーモア劇場という中にこんなコントが出て参りました「今から教員の審査をする、あなたは自由党という政党を知つておりますか、どういうことを主張しておるか知つておりますか。知りません。共産党はどうだ。知りません。再軍備についてはどう思うか。どうも思いません。マルクスというものを知つておるか。どういう人か知りません。よし、教員として適格。」(笑声)実にこれは痛烈である。一体こんな教員に、私の例は、勿論極端である。併しながらこのユーモアが……(「まじめにやれ」「ここは国会だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)弥次らずに開いて下さい。たつた只今までは、このユーモア劇場は、これはユーモアの素材である。併し本法案が成立するならば、これはユーモアでないということを私は指摘するのである。(拍手)要するにこの二つの法律案は非常な問題を含んでおる。人事院規則の適用がそれであり、拡大解釈の虞れあることが、それであり、「当分」というような言葉を入れてごまかしておることがその問題の第三点であります。
 第二の法律案におきましても、これは又非常に「ために」という言葉を入れたことによつて拡大解釈を自在ならしめておりますと共に、この法律案は罰刑法定主義の理念に著しく反するものであることは諸君の知るところであります。私どもがこういう法律案が成立したときの虞れを述べまするというと、文部大臣は事もなげに、それは教員をやめればいい。かかることを言つておる。これに対しては、まじめに私は批判討論する勇気を持たない。
 次には、刑法上の処罰にしておけば、これはいずれ公判ではつきりする、だから心配はない。これは又、公務員の席に一月も着いたことのない議員さんの言いそうなことである。公務員というものは、罪があるかないかということより、警官に取調べられたらもう問題だ、引つつかまつたらなおのこと問題である。起訴されたらなおのこと問題だ。そうして無罪になつたとしても、その長期間の苦難というものを耐え得るものでない。而も長期間によつて彼は人間的に殺されておるということを私は幾多の事例によつて諸君に訴えなければならない。
 以上のように、政府原案を中心としたこの衆議院回付案は恐るべき悪法である。我々は、今日声を大にしてこれに反対しなければならない。加賀山修正案はその意味において、その弊害を救うものである。即ち刑法罰より行政罰にこれを移すということは、少くとも現実をまじめに見た者の当然生れる結論でありますると共に、「ための」を削除するということは、この中立維持法案というものが拡大解釈され、時の権力者の恣意によつて教育を誤ることのないことを厳重に監査するというような意味合いにおいて、その着眼点を私どもは偉とするものであります。
 要しまするに、今日天下の視聴はこの参議院における教育二法案の成否をじつと見守つております七参議院の良識の無限の期待と、それから日本の教育を真実に守らんとするまじめなる者が、一方においては一部の偏向教育を或いは認め、日教組の行き過ぎというようなことを悲しみつつも、それらは問題は時間的に解決される問題であつて、かかる悪法が、そのような原因によつて生れるということを息を殺して、この決定を眺め、心配しておるのであります。(拍手)言うまでもなく教育のことは、一部の政治家のその時の便宜や、或いは軽々しいところの党の恣意によつて取扱われ、悔いを百年のあとに残すようなことがあつてはならないのであります。この際我々参議院は、第二院本来の機能と、意義と、使命とを果すべく、而も参議院の動向を決する鍵を持つておりまする緑風会の紳士諸君並びに改進党、或いは無所属の諸君、諸君の良識こそが、この本院の良識を代表する自負を持つて頂きたい。
 緑風会の加賀山君ほか二名提案のこの修正案が、聞くところによりますれば、幾多の困難な事情を克服して出されたと我々は承知しております。同僚議員諸君、諸君の持つ良識が今は参議院の良識として世論から期待されておることをお互いに自負しようではないか。(拍手)そうして日本の教育を再び暗黒面に逆戻りさせるような政府原案を中心とした衆議院回付案に対して我々は堂々と反対し、加賀山君ほか二名提案にかかる修正案に対し、我々は時宜を得たるものとして双手を挙げて賛成しようではないか。曾つての日本の教育界が誤り、腐つた道筋を静かに思い浮かべ、これを教訓的なる事実として受取ることによつて、我々は思いますることは、若しも誤つて衆議院回付案のごときものが成立するならば、その最大の被害者は教員にあらず組合にあらず、実に次代の日本を背負う国民であることを我々は銘記すべきであります。(拍手)諸君が何と陳弁しようとしても、汚職その他において今日国会の権威は落ちつつある。日本の政治は汚れつつある、そこで我々はこの段階においてこの汚れなき政治を呼び戻すためにも、汚れなき教育を建設するためにも、加賀山君ほか二名提案の修正案に賛成すべきであろうと確信いたします。(拍手)
 以上、私は社会党第二控室を代表し、その討論を述べ、諸君の深甚なる考慮と、これが賛同を心から期待いたしまして、論を結ぶ次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#40
○副議長(重宗雄三君) 松原一彦君。
   〔松原一彦君登壇、拍手〕
#41
○松原一彦君 私は参議院改進党議員の同意を得まして、今提案になつておりまする教育二法案のうち、加賀山氏ほか二名の提出されました修正の部分と、これを除く原案に対して賛成の討論をいたしたいと思います。(拍手)
 この法案の性格は、五十万の義務教育に従う教育者の思想、行動を厳罰の下に威嚇的に取締ろうとするものであります。(拍手)御承知の通り教育者たるものの条件は、正しい良識と情熱とを傾けて、その人格一杯の努力を以て国民の信頼を通して日本新建設、次代の一千五百万の児童生徒の教育に献身すべきものであつて、我々はこの教育者の動向が祖国日本をば興すか亡ぼすかの最も大きな鍵を握つておるものと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)この人々に対して威嚇するに厳罰を以てする、さようなことで果して教育者たるものが勤まるものであろうかどうか。我が文部大臣はかくのごとき見解の下にこの法案を出されたとするならば、私は教育者を知らないものであるということを断言いたしたい。(拍手)教育者というものはさようなものではないのであります。信頼の置かれない教育をやつて信頼は置かれはいたしません。只今、日本の教育界に誤りはあり、行き過ぎがあることについては私も認識するにやぶさかではない。(「学校管理はどうだ」と呼ぶ者あり)併しながら、これは決して全般的のことではないのであります。たまたま現れたるところの特例、異例等を以て全般を律するごときは、誤れるも又甚だしいものである。(拍手)特に私はこの法律を編まれたる根本の認識が非常に大きな過誤を犯していると思う。何となれば、本年二月十三日付の自由党報というものが教育委員会を通して全国に配られておりますが、その冒頭にある記事の中には、「今や現在の日本の小中学校の教員は共産党の宣伝隊であり、その職員室は共産党の出張所である」と書いてある。私は驚くべき認識だと思う。一体、どこにそういう事実があるか。たまたま文部大臣がこの法案審議の資料として偏向教育の事例二十四を挙げて出されておる。これが全国から集められた資料である。辛うじて全国から集められたる資料二十四の中には、決してかようなものはない。それはたまたま北海道にある。或いは今回の旭丘中学のごときは確かにそれは偏向若しくは行き過ぎの事例であるに違いないけれども、全国から集めたものが五十万の教員のすべてをば共産党の宣伝隊であるというがごときは、誣いるも甚だしいものである。(拍手)さような認識の上に立つての法律であることを、私は如何にも残念に思うのであります。私は決して共産党を礼讃するものじやない。私の友人で大連におつて長く教育に従事し、而も共産党のためにひどい目にあつた男がおる。この男は、理論的にも、共産党の事実の上からも、非常な共産党嫌いであるが、その嫌いである私の友人は、この法案を見て、何という馬鹿気きつた法律案であるかと言つて来ておる。(拍手)日本の現在の教育を知らざること甚だしいものである。併しながら、その誤解を招いたるところの原因の一つに日教組があることだけは免れないと書いてある。であるが故に、一時臨時措置法として先ず置いておくことも止むを得ないだろうと、かように結んでおるのであります。
 アメリカにマツカーシーという人がおつて、上院議院でありますが、何でも、共産党と言う、これがいつでも、かようなことをば、人を見れば共産党のように思うてやつておりますが、私どもが知つておる限り、先日も長野県の教員、各学校長の代表がやつて来て言うのには、長野県においては日教組のこの組合の下にあつて闘つておる。それは我々の待遇とか、身分とか等についての問題であつて、事教育に関する限りにおいては、我々は何らの指令も受けもしないし、受けても行いはしないと断言している。而も彼ら曰く、長野県は日教組の指令によつて投票したこともない。指令は、指令があるかも知れんが、我々は投票権は自由であるということを主張している。日教組は、我々の教育上の指導者じやないということを断言いたしておる。そうして曰く、我々がたまたま現れたところの偏向の事例によつて、かくのごとき法律によつて縛られることは遺憾に堪えない。これはまさに自由党の選挙対策である。(拍手)自由党の選挙対策によつて全国五十一万の教員が妙な目を以て見られることは誠に残念に堪えないということを言つておる。皆さん、教育者の動向が、その国の盛衰に如何に大きなものであるかということは、曾つて普仏戦争における勝利が、プロシヤの勝利が、それはドイツの小学校の先生の勝利であつたということは、昔から伝えられておる。日本においても日清、日露戦争の勝利が、日本の義務教育の先生の勝利であるということも言われておる。併しながらこの人々が、天皇絶対の観念の下にあの教育勅語暗誦に没頭して政治的権力に対する批判を忘れた結果がどうなつたか。それはミリタリズムを招来し、そしてまさに日本を亡国の危きに陥らしめた新らしい事実である。私どもは、私も教育者の一人であつた事実をば心から恥じるものである。省みて誠に相済まなかつたという懺悔が教育者を通じてあるのであります。(拍手)曾つてフイリピンの戦線において、日本の弾丸にあたつてまさに死のうとする兵士の遺言の中に、日本の教育の誤りを正さねばならん。自分が戦死すれば、アメリカから一万ドルの遺族扶助料がやつて来る。その遺族扶助料は母校に頂けるから、母校に委託して、日本を救う教育者を養成してもらいたいという遺言をして死んでおる。(拍手)私は昭和十一年の春に現われたるこの記事を読んで、心から懺悔いたしたのであります。恥じ入つたのである。日本の教育を、人殺しの教育からヒユーマニズムの教育に切替えなくてはならない。(拍手)平和な文化国家の建設を民主的に行うというこの新らしい憲法の理想の下に打立てる教育は、戦前の教育とは根本的に質が違うのである。(拍手)その質の認識がわからないで、そうして今日この教育者の管理をする者が、それは全国市町村の教育委員である。地方教育委員の方々である。これが文部大臣の代理をいたすのであります。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)ここに、代理というのは言葉が当らない。昔は文部大臣が教育者を管理した。今日は文部大臣には管理権はない。この人々が教育を管理するばかりじやない。今やこの二法律によつて一人々々の教員の行動を監視するのであります。この監視ほど危険なものがありましようか、皆さん。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而もこの監視者があらゆるものを赤く見る。そうしてこれをば起訴に値するものとして請求する。そこには、何ら捜査の手段がない。警察に訴えざるを得ないのです。刑事罰を以てするのである。警察を使う時期が来るでしよう。裁判所に訴えなくちやならない。そうして学校の中は、裁判官、警察官によつていろいろな泥足が印せられるのであります。皆さん、私は日本の教育者が決して今の姿を以ていいと申すのではない。偏向もあれば行き過ぎもあるけれどもが、それをば威嚇するがごとき、厳罰を以てするがごときは、日本の政治の貧困を語るものである。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)殊に今日の吉田内閣の悪政が、或いは汚職を実現し、又指揮権を発動して、捕うべき者までも政治的にこれを捕えず、そうして闇の軍隊を置いて、憲法は変えない、再軍備はせんなどというような厚顔無恥なことをやつておる。(拍手)かくのごときことを……、自由党の諸君にお尋ねする。あなた方が教員となつて、憲法を子供の前に説いたときに、何とこれを説くか。(拍手)私は最近まで校長を勤めておつた。併しながら憲法の解択のときに、はたと行詰つてしまつた。仕ようがない。これは間違いだと言わざるを得ないのであります。諸君、裸の王様は大人を欺くことはできたが、子供を欺くことはできないのであります。(拍手)
 私は幸いにしてこの法案の一部が緑風会の委員諸君によつて緩和せられた。この法案は二つであつて、実は一つであります。政治的行動の軽き者は、これは行政罰を以て律し、偏向の甚だしいものであり、児童を通じて政党をあげつらい、若しくはこれを批判する等の行動のあつた者に対しては刑事罰を以てする。行政罰でも行ける、刑事罰でも行けるようにできておるけれどもが、これを私は暫定法としたところに、非常な妙味があると思う。かくのごとき法律はなきにしかず、一日も早く我が教育界が、自主、自制によつて、そうして全国民の信頼を取返し、安心して我が子を託し得るような状態が参ると同時に、かくのごとき法律の不要になる日が一日も早く来たらんことを期待いたしまして、私の討論を終ります。(拍手)
    ―――――――――――――
#42
○副議長(重宗雄三君) 長谷部ひろ君。
   〔長谷部ひろ君登壇、拍手〕
#43
○長谷部ひろ君 私は無所属クラブを代表いたしまして、只今提案になつております教育二法案に対するとるべき態度を表明申上げたいと存じます。
 皆様も御存じの通り、教育基本法の根本理念は、真理と平和を希求する人間の育成ということでございます。この根本理念を離れての教育はございません。申上げるまでもなく、教育というものは真実の上に立たなければなりませんので、嘘いつわりを言つてはならないのでございます。つまり真実を伝え真実を語るということが学問の根本の指導精神であり、真理を探究するということが学問の神髄と申さねばならないのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)このような点から正悪の判断力、批判力を養いますことは、学問の使命でございます。これが即ち教育基本法第八条の「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」と示しているゆえんでございます。
 さて、大逹文部大臣は、この二法案の目的は、教育の政治的中立の維持のためであると申されておられましたが、これは中立の維持という美名によつてなされる吉田政府の政策であるところの戦争のための言論、思想の自由を奪う目的を以て出された法案であるということを、はつきり申上げなければなりません。(拍手)これはまさに憲法違反であり、教育の破壊でございます。(拍手)この法案が国会に提出されましてから、新聞、ラジオを中心といたします世論は勿論、学識経験者、学校職員、教育団体その他PTA又は婦人会等こぞつて立ち上り、この悪法の反対を叫び続けているのでございます。(拍手)又陳情の手紙、電報なども連日たばになつて参つております。それは皆さんのところもそうだろうと存じております。このように全国民的な世論を捲き起しましたことは教育史上曾つてなかつたと報じられております。
 本院におきましては、先ほど川村文部委員長の御報告にもございました通り、四月二十日に地方行政委員会と、四月二十六日には法務並びに人事委員会と、翌二十七日には労働委員会との連合委員会を開き、慎重に審議をいたしましたことは、この二法案の及ぼす影響の如何なるものであるかを明らかに示しておるのでございます。その委員会におきましての同僚羽仁議員の発言の一端をお伝え申上げますと、民主主義の世の中で、政治教育は美徳である。その美徳であることが刑罰の対象になるということと、その美徳の活動を外部から働きかけをすることが刑罰の対象になるということがこの法律である、美徳である政治活動の行き過ぎがある場合、それは、それを救い得るものは政治活動あるのみである言論を救うものは言論である。これらが直ちに刑罰の対象になることは、大きな問題がある、又刑罰は人格上に及ぼすものであるし、たとえ行政罰にせよこれは身分上に及ぼすものであるなどとの御発言があり、その他の委員の方々からも、それぞれの専門的な立場から、教育という侵すべからざる分野に対し言論と思想、人権上の問題として鋭く追及されたわけでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 この法案の裏付けとして出されましたいわゆる二十四の偏向教育の事例は、例えば山口日記で特に取上げられましたのは、再軍備反対が強く出ているとか、自衛隊を批判したとか、或いは京都旭丘では文部省推薦の映画ひめゆりの塔、原爆の子などを見せて、そのあとで批判させたとか、又京都大将軍では、貧困のために給食費が払えないという子供たちに、先生とPTAとが一緒になつてこのために努力したとか、岩手県では君が代を歌わせなかつたとか、その他滋賀県での冬の友日記では、中国から帰つた子供が、その童心に映じた中国をありのまま作文したものが日記に載つているので、中国礼讃であるとか、こうしたことばかりなのでございます。こうした問題を取上げて偏向教育と銘をお打ちになつたこと自体が私にはどうしても納得ができないのでございます。(拍手)
 文部の最高の責任者でおありになる大連文部大臣の手許から、立法の府である国会に出されましたこの資料の出所及び調査方法につきまして、何度お伺い申上げましても、言えませんの一点張りで、資料は自然に集まつたものである。自分は真実と認めるが、それをどう認めようが、各委員の判断次第で勝手であると、終始非常に強引な態度をとつておられましたが、なぜその出所や調査方法がおつしやれないのでしようか。なぜこのように秘密になさるのでございましようか。これは明らかに公然と調査したものではなく、憲法に違反する思想調査などが、秘密裡になされたものであることを物語つていると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 そこでこの資料を中心に四月十二日、十三日の両日、三十人の証人喚問をいたしましたところ、その証人の証書すら真実と思えないという大逹文相の横暴ぶりは、如何にその事例の根拠があいまいであつたかを如実に物語つております。(拍手)
 現場に働く教職員の方々は、過去の過ちを再び繰返さないためにと、平和憲法を守ることを誓わされ、宣誓書まで書かされているのでございます。そして足りない教室、足りない教材、余りにも乏しい文教予算の中で文字通り血のにじむような苦しい毎日を、ひたすら平和と自由を希求する偉大な愛情を以て、いたいけない子供たちと共に学び今日に至つたのでございます。御存じの通り、民主主義の確立は決してなまやさしいことでなく、終戦後九年の歳月を経たとは申せまだまだ過渡期でございます。このような中で先生たちの至らなさも行き過ぎも、それはあつたかもしれません。併しこれは今後先生たちの真剣な反省によりまして或いは切瑳琢磨によつて必ず是正されることと私は信じております。(拍手)併しながら現在先生方はこの二法案の内容から来る言い知れない圧迫感に毎日を不安な中で教鞭をとつておいでになる有様でございます。
 この法案の解釈に対しましては、委員会でも又あらゆる学識経験者などの方々も、「明確にできない」と断言さておりますが、大逹文相は、「観念的には言えるが、具体の場合には、はつきりできない」と御答弁になつておられますが、何人にも的確な判断のできない法律に、刑罰があるなどということは、全く文化国家にはあり得ないうことであります。(拍手)そして又処罰の対象となる先生の証人に児童、生徒がされるということを、私は特にお考え頂きたいと思うのでございます。先刻劔木議員が、この法案の必要の根拠であるがごとく取上げられました旭丘中学の問題は、実は極めて反動的な教育委員長の存在に由来するものでございます。(「とんでもないことを言うな」と呼ぶ者あり)本事件で非常な迷惑を感じておりますのは児童及び教職員の方々でございます。万一自由党のお望み通り通過成立いたしましたならば、第二、第三の悪質反動の教育委員長及び教育当局者がこれに勢いを得て第二、第三の旭丘事件を殊更に引起すであろうことを心から私は心配いたすものでございます。(拍手)
 汚職で汚れた政府の黒い手で作られたこの法案に何の権威がございましようか。五十万教職員たちは、この二法案の帰趨が如何になろうとも、勇気を持つて教育を正しく守り抜くことを私は強く期待いたします。真理を求める正しい理性と深い子弟愛に貫かれた教育の尊厳は何物にも、又どのような法にも侵されませんし、侵すことのできないものでございます。これはすでに長い歴史が明白に証明しておるところでございます。
 以上を以ちまして、私はこの二法案の提案意図並びに内容が教育を束縛し、低下せしめるためのものと考え、強く反対いたすものでございますが、このたびの修正案はこれに対しまして或る程度束縛を緩和するものでございます。現在の情勢におきましては、自由なるべき教育を束縛からいささかでも守ることが大切であると考えまして、私はあえて修正案に賛成をいたし、且つ修正部分を除く原案に賛成いたす次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#44
○議長(河井彌八君) 中山福藏君。
   〔中山福藏君登壇、拍手〕、
#45
○中山福藏君 私は只今上程されました教育二法案の修正案賛成、修正案を除外した残余の法律案に賛成の諸君の議論を謹んで拝聴いたしました。つきましてはこの場合、私は修正案反対、衆議院送付の教育公務員特例法の一部を改正する法律案及び義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の二法案に対して賛成の討論をいたしたいと考えるのであります。(拍手)
 先ず第一に、教育公務員特例法の一部を改正する法律案につきまして、なぜ私が修正案に反対するかという理由を開陳したいと存じます。(「自由党の廻し者」「失礼なことを言うな」「懲罰だぞ」「お前が懲罰だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
 諸君、御承知の通り教職員は、国民全体に対する奉仕者である。このことは、教育公務員特例法第一条に「この法律は、教育を通じて国民全体に奉仕する」云々ということが書かれておることから見ても明らかであり、又憲法第十五条第二項に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と書かれてある。なお教育基本法第六条第二項には「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、」ということを謳われておるのであります。(「何を論じておるのか、何を」と呼ぶ者あり)教育基本法第十条には「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」ということが書かれてある。諸君、地方公務員である教育公務員が国家公務員である教育公務員と不平等な差別待遇を受けるということは、法の精神に反するものである。(拍手)故にこの点に立脚して教育公務員に対しては法律上同一の方針をとるべきである。これこそ公平の原則に副うゆえんである。即ち地方公務員である教育公務員と、国家公務員である教育公務員と、その間に何ら不平等な取扱があつてはならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)然るにこの法律上の理論上の根拠があるのに、公務員たる教育者の政治的行為に対する制限罰則を平等に取扱わないということを若し諸君が肯定するならば、諸君の法律的知識を疑わざるを得ないのであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)従つてこの両者に対して叙上の観点から法律上行政罰、司法罰の差別を排し、これを平等に取扱うことは、理の当然であつて常識上又これを肯定すべきである。又、地公法第三十七条及び第六十一条があるから、教育公務員特例法の改正によつて刑事罰を科する必要がないという者がおるが、これは理論的に根拠がないのである。諸君も知る通り、(「両天秤」と呼ぶ者あり)公務員に対するところの政治的行為の制限と、争議行為の禁止とは別個の必要から生じておるのであつて、政治行為の制限は、職員の中立性を要求するものであり、争議行為の禁止は、政治的中立の要請とは直接関係がなく、主として経済的地位の向上のために行われるストライキ等を予想して、労働者の団体行動権の制限の必要から生れた、いわゆるストの禁止の法案である。従つて地方公務員法の第三十七条並びに第六十一条の規定があつて、地方公務員に対しても、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金ということが規定せられておるが、只今申述べた通り、この地方公務員の規定は、争議行為に関する制限であるので、他の行政行為に対しては、非常なる偏頗な措置がとられておるということになる。これを国家公務員並みに平等なる立場をとらせることは、これ又立法院に議席を有する諸君のまさに行うべき当然の責任と言わなければならんのであります。(拍手)諸君、かくのごとき法律上の観点より、この法律上のでこぼこを平坦ならしむる必要を痛感するのである。若しこれに修正論の諸君が反対すると言ふならば、国民は挙げて、諸君の法律知識が如何に貧弱であり浅薄であるかを認識するであろう。(「何を言うのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)
 第二に、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の衆議院修正中「ための」を削除するというのである。その理由として、かような字句があると、ややもすれば拡大解釈をされて、人権が蹂躪される虞れがあるというのである。即ち基本的人権の重大要素である憲法第十九条に掲げられておる良心並びに思想の自由、憲法第二十一条の言論、表現の自由、憲法第二十三条の学問の自由が侵されると言つておる。(拍手)然るに、今後、国民が主権者たる自覚がある限り戦前のごとき人権蹂躪は、そう簡単にはできないのである。その理由は憲法第十五条に、公務員の選定、罷免は国民の有する固有の権利なりと告げている。(拍手)若し諸君のお気に入らない官公吏があつたら、なぜ憲法の第十五条の適用によつてその首を切らないのか。(拍手)諸君が不埒不当の行動をなす公務員を野放しにしておくことは、これ、とりもなおさず諸君の職務の怠慢である。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)諸君、新旧憲法はその内容その実体、ともに非常なる差異を包蔵しておるのであります。管の官公吏は天皇の官吏であつて国民は多くの場合、これに反抗することはできないものであつた。今や日本の主権者は国民じやないか。その差別を打ち建てる頭がなくては、今日の政治はできないのである。諸君は誠に憐れな人々だと私は感じておる。(「憐れなのはお前だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)私はこういう意味合いにおいて、諸君にもう少し憲法を御研究なさいと勧告する次第である。
 次に私が申上げたいことは、先ほど修正論の諸君がその言葉の中に、盛んに真理とか平和とかいう言葉を使われた。而して昨年の高知市の日教組の大会にも、我が教育基本法の真理、平和ということが問題になつたが、結局ソ連の平和だということになつたじやないか。(拍手)中共の平和だということになつたじやないか。北鮮の平和ということになつたじやないか。今日我が国は申すに及ばず、世界は思想的に分裂して、ソ連の平和とアメリカ式の平和と二つあるということは、諸君御承知の通りだ。然るに日教組がしばしば大会を開いて、ソ連の平和を以て日本の教育の基本的精神とするならば、如何に偏向教育をしないといつても、その教職員の口から自己の信ずることが不知不識の間に生徒の頭に浸み込んで、その結果いつとはなしに偏向教育となつて現われて来る。諸君、私は曾つて果樹園をやつたことがある。果樹というものは、花が咲いたら噴霧器で消毒をしなければならない。更に果樹が実ると紙の袋を着せるのである。河川の氾濫を防止する、ための砂防工事か施し、暴風の危害を免れるために防風林を設置するごとく、将来の日本を背負う子供らのために、最も合理的な法的措置を講ずるのは、子供に対する愛情の発露であり、これを行うのが当り前である。(拍手)思うにこの二つの衆議院送付教育法案は、子供らの雪のよううな心にしみの入らぬための防風林であり、砂防設備である。諸君がそれをやらないから、旭丘の子供や父兄が、あの争議に引込まれておるのである。(拍手)これは在来の日本の教師が、自己の責任に反したる行動をとつておる唯一の証拠であると私は断言する。(拍手)故にかかる証拠の上に立つてこの際私は、飽くまで衆議院送付のこの二法案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
#46
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより両案の採決をいたします。先ず義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の採決をいたします。委員長の報告は修正議決報告でございます。
 先ず委員会修正案全部を問題に供します。本修正案の表決は、記名投票を以て行います。本修正案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。なお松本昇君、西川甚五郎君が、歩行不自由のため、登壇が困難でありますから、投票を参事に委託いたしたいとの申出がございました。これを許可いたします。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#47
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
 これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#48
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数 二百三十八票
 白色票 百二十二票
 青色票 百十六票
 よつて、委員会修正案は可決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名
   河野 謙三君  高良 とみ君
   小林 政夫君  岸  良一君
   片柳 眞吉君  梶原 茂嘉君
   上林 忠次君  楠見 義男君
   奥 むめお君  井野 碩哉君
   石黒 忠篤君  飯島連次郎君
   加賀山之雄君  森 八三一君
   宮城タマヨ君  溝口 三郎君
   三浦 辰雄君  廣瀬 久忠君
   後藤 文夫君  野田 俊作君
   常岡 一郎君  田村 文吉君
   館  哲二君  高橋 道男君
   杉山 昌作君  新谷寅三郎君
   島村 軍次君  永岡 光治君
   三輪 貞治君  湯山  勇君
   大和 与一君  木下 源吾君
   内村 清次君  秋山 長造君
   阿具根 登君  海野 三朗君
   山口 重彦君  片岡 文重君
   大倉 精一君  河合 義一君
   岡  三郎君  亀田 得治君
   小松 正雄君  永井純一郎君
   近藤 信一君  竹中 勝男君
   清澤 俊英君  成瀬 幡治君
   小林 亦治君  小酒井義男君
   佐多 忠隆君  重盛 壽治君
   江田 三郎君  小林 孝平君
   久保  等君  堂森 芳夫君
   田畑 金光君  森崎  隆君
   高田なほ子君  安部キミ子君
   矢嶋 三義君  藤田  進君
   岡田 宗司君  田中  一君
   戸叶  武君  栗山 良夫君
   吉田 法晴君  藤原 道子君
  小笠原二三男君  菊川 孝夫君
   若木 勝藏君  山田 節男君
   天田 勝正君  松本治一郎君
   中田 吉雄君  三橋八次郎君
   千葉  信君  羽生 三七君
   野溝  勝君  荒木正三郎君
   三木 治朗君  曾祢  益君
   山下 義信君  市川 房枝君
   東   隆君  野本 品吉君
   松永 義雄君  石川 清一君
   最上 英子君  松浦 清一君
   赤松 常子君  深川タマヱ君
   武藤 常介君  寺本 広作君
   松浦 定義君  須藤 五郎君
   平林 太一君  八木 秀次君
   加藤シヅエ君  紅露 みつ君
   八木 幸吉君  鈴木  一君
   加瀬  完君  千田  正君
   松澤 兼人君  上條 愛一君
   有馬 英二君  堀木 鎌三君
   笹森 順造君  菊田 七平君
   長谷部ひろ君  木村禧八郎君
   相馬 助治君  村尾 重雄君
   棚橋 小虎君  鶴見 祐輔君
   一松 定吉君  苫米地義三君
   松原 一彦君  羽仁 五郎君
   大山 郁夫君  堀  眞琴君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  百十六名
   佐藤 尚武君  小林 武治君
   北 勝太郎君  加藤 正人君
   柏木 庫治君  赤木 正雄君
   山川 良一君  村上 義一君
   三木與吉郎君  早川 愼一君
   西田 隆男君  中山 福藏君
   豊田 雅孝君  土田國太郎君
   竹下 豐次君  高瀬荘太郎君
   白井  勇君  横川 信夫君
   深水 六郎君  木村 守江君
   安井  謙君  伊能 芳雄君
   青柳 秀夫君  高野 一夫君
   西川彌平治君  石井  桂君
   井上 清一君  関根 久藏君
   川口爲之助君  吉田 萬次君
   酒井 利雄君  佐藤清一郎君
   剱木 亨弘君  森田 豊壽君
   谷口弥三郎君  宮本 邦彦君
   長島 銀藏君  長谷山行毅君
   宮田 重文君  瀧井治三郎君
   田中 啓一君  大矢半次郎君
   石川 榮一君  岡崎 真一君
   松本  昇君  石原幹市郎君
   植竹 春彦君  岡田 信次君
   松岡 平市君  大谷 瑩潤君
   團  伊能君  一松 政二君
   西郷吉之助君  中川 幸平君
   北村 一男君  左藤 義詮君
   寺尾  豊君  中山 壽彦君
   中川 以良君  山縣 勝見君
   吉野 信次君  重宗 雄三君
   大屋 晋三君  津島 壽一君
   大達 茂雄君  青木 一男君
  大野木秀次郎君  小滝  彬君
   古池 信三君  伊能繁次郎君
   杉原 荒太君  榊原  亨君
   大谷 贇雄君  宮澤 喜一君
   高橋  衛君  横山 フク君
   西岡 ハル君  重政 庸徳君
   小沢久太郎君  鹿島守之助君
   木内 四郎君  藤野 繁雄君
   雨森 常夫君  石村 幸作君
   青山 正一君  秋山俊一郎君
   入交 太藏君  高橋進太郎君
   仁田 竹一君  松平 勇雄君
   加藤 武徳君  上原 正吉君
   郡  祐一君  山本 米治君
   西川甚五郎君  小野 義夫君
   愛知 揆一君  平井 太郎君
   川村 松助君  堀  末治君
   白波瀬米吉君 池田宇右衞門君
   島津 忠彦君  松野 鶴平君
   小林 英三君  草葉 隆圓君
   泉山 三六君  黒川 武雄君
   石坂 豊一君  井上 知治君
   岩沢 忠恭君  鮎川 義介君
   木村篤太郎君  三好 英之君
   鈴木 強平君  井村 徳二君
     ―――――・―――――
#49
○議長(河井彌八君) 次に、只今可決せられました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案の表決は記名投票を以て行います。修正部分を除いた原案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#50
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
 これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#51
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数 二百二十六票。
 白色票 二百二十六票。
 青色票 なし。
 よつて修正部分を除いた原案は可決せられました。
 右の結果、義務教育諸学校における政治的中立の確保に関する法律案は、委員会修正通り議決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名 二百二十六名
   河野 謙三君  佐藤 尚武君
   高良 とみ君  小林 武治君
   小林 政夫君  岸  良一君
   北 勝太郎君  加藤 正人君
   片柳 眞吉君  梶原 茂嘉君
   上林 忠次君  楠見 義男君
   柏木 庫治君  奥 むめお君
   井野 碩哉君  石黒 忠篤君
   飯島連次郎君  加賀山之雄君
   赤木 正雄君  山川 良一君
   森 八三一君  村上 義一君
   宮城タマヨ君  溝口 三郎君
   三木與吉郎君  三浦 辰雄君
   廣瀬 久忠君  後藤 文夫君
   早川 愼一君  野田 俊作君
   西田 隆男君  中山 福藏君
   豊田 雅孝君  常岡 一郎君
   土田國太郎君  田村 文吉君
   館  哲二君  竹下 豐次君
   高橋 道男君   杉山昌作君
   高瀬荘太郎君  新谷寅三郎君
   島村 軍次君  白井  勇君
   横川 信夫君  深水 六郎君
   安井  謙君  伊能 芳雄君
   青柳 秀夫君  高野 一夫君
   西川彌平治君  石井  桂君
   井上 清一君  関根 久藏君
   川口爲之助君  酒井 利雄君
   森田 豊壽君  谷口弥三郎君
   宮本 邦彦君  長谷山行毅君
   宮田 重文君  瀧井治三郎君
   大矢半次郎君  石川 榮一君
   岡崎 真一君  松本  昇君
   石原幹市郎君  植竹 春彦君
   岡田 信次君  松岡 平市君
   大谷 瑩潤君  團  伊能君
   一松 政二君  西郷吉之助君
   北村 一男君  左藤 義詮君
   寺尾  豊君  中山 壽彦君
   中川 以良君  山縣 勝見君
   吉野 信次君  重宗 雄三君
   大屋 晋三君  津島 壽一君
   青木 一男君 大野木秀次郎君
   小滝  彬君  古池 信三君
   伊能繁次郎君  杉原 荒太君
   榊原  亨君  大谷 贇雄君
   宮澤 喜一君  横山 フク君
   西岡 ハル君  重政 庸徳君
   小沢久太郎君  鹿島守之助君
   木内 四郎君  藤野 繁雄君
   石村 幸作君  青山 正一君
   秋山俊一郎君  入交 太藏君
   高橋進太郎君  仁田 竹一君
   松平 勇雄君  永岡 光治君
   加藤 武徳君  上原 正吉君
   郡  祐一君  山本 米治君
   西川甚五郎君  小野 義夫君
   愛知 揆一君  三輪 貞治君
   平井 太郎君  堀  末治君
   白波瀬米吉君 池田宇右衞門君
   島津 忠彦君  湯山  勇君
   大和 与一君  松野 鶴平君
   小林 英三君  草葉 隆圓君
   泉山 三六君  黒川 武雄君
   石坂 豊一君  井上 知治君
   岩沢 忠恭君  木下 源吾君
   内村 清次君  秋山 長造君
   阿具根 登君  海野 三朗君
   山口 重彦君  片岡 文重君
   大倉 精一君  河合 義一君
   岡  三郎君  亀田 得治君
   小松 正雄君  永井純一郎君
   近藤 信一君  竹中 勝男君
   清澤 俊英君  成瀬 幡治君
   小林 亦治君  小酒井義男君
   佐多 忠隆君  重盛 壽治君
   江田 三郎君  小林 孝平君
   久保  等君  堂森 芳夫君
   田畑 金光君  森崎  隆君
   高田なほ子君  安部キミ子君
   矢嶋 三義君  藤田  進君
   岡田 宗司君  田中  一君
   戸叶  武君  栗山 良夫君
   吉田 法晴君  藤原 道子君
  小笠原二三男君  菊川 孝夫君
   若木 勝藏君  山田 節男君
   天田 勝正君  松本治一郎君
   中田 吉雄君  三橋八次郎君
   千葉  信君  羽生 三七君
   野溝  勝君  荒木正三郎君
   三木 治朗君  曾祢  益君
   山下 義信君  鮎川 義介君
   市川 房枝君  東   隆君
   木村篤太郎君  野本 品吉君
   松永 義雄君  石川 清一君
   最上 英子君  三好 英之君
   鈴木 強平君  松浦 清一君
   赤松 常子君  深川タマヱ君
   武藤 常介君  寺本 広作君
   松浦 定義君  須藤 五郎君
   平林 太一君  八木 秀次君
   加藤シヅエ君  井村 徳二君
   紅露 みつ君  八木 幸吉君
   鈴木  一君  加瀬  完君
   千田  正君  松澤 兼人君
   上條 愛一君  有馬 英二君
   堀木 鎌三君  笹森 順造君
   菊田 七平君  長谷部ひろ君
   木村禧八郎君  相馬 助治君
   村尾 重雄君  棚橋 小虎君
   鶴見 祐輔君  一松 定吉君
   苫米地義三君  松原 一彦君
   羽仁 五郎君  堀  眞琴君
#52
○議長(河井彌八君) 次に、教育公務員特例法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 委員長の報告は修正議決報告であります。
 先ず委員会修正案全部を問題に供します。本修正案の表決は記名投票を以て行います。本修正案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#53
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
 これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#54
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数 二百三十八票
 白色票 百二十三票
 青色票 百十五票
 よつて委員会修正案は可決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名 百二十三名
   河野 謙三君  高良 とみ君
   小林 政夫君  岸  良一君
   片柳 眞吉君  梶原 茂嘉君
   上林 忠次君  楠見 義男君
   奥 むめお君  井野 碩哉君
   石黒 忠篤君  飯島連次郎君
   加賀山之雄君  森 八三一君
   宮城タマヨ君  溝口 三郎君
   三浦 辰雄君  廣瀬 久忠君
   後藤 文夫君  野田 俊作君
   豊田 雅孝君  常岡 一郎君
   田村 文吉君  館  哲二君
   高橋 道男君  杉山 昌作君
   新谷寅三郎君  島村 軍次君
   永岡 光治君  三輪 貞治君
   湯山  勇君  大和 与一君
   木下 源吾君  内村 清次君
   秋山 長造君  阿具根 登君
   海野 三朗君  山口 重彦君
   片岡 文重君  大倉 精一君
   河合 義一君  岡  三郎君
   亀田 得治君  小松 正雄君
   永井純一郎君  近藤 信一君
   竹中 勝男君  清澤 俊英君
   成瀬 幡治君  小林 亦治君
   小酒井義男君  佐多 忠隆君
   重盛 壽治君  江田 三郎君
   小林 孝平君  久保  等君
   堂森 芳夫君  田畑 金光君
   森崎  隆君  高田なほ子君
   安部キミ子君  矢嶋 三義君
   藤田  進君  岡田 宗司君
   田中  一君  戸叶  武君
   栗山 良夫君  吉田 法晴君
   藤原 道子君 小笠原二三男君
   菊川 孝夫君  若木 勝藏君
   山田 節男君  天田 勝正君
   松本治一郎君  中田 吉雄君
   三橋八次郎君  千葉  信君
   羽生 三七君  野溝  勝君
   荒木正三郎君  三木 治朗君
   曾祢  益君  山下 義信君
   市川 房枝君  東   隆君
   野本 品吉君  松永 義雄君
   石川 清一君  最上 英子君
   松浦 清一君  赤松 常子君
   深川タマヱ君  武藤 常介君
   寺本 広作君  須藤 五郎君
   松浦 定義君  平林 太一君
   八木 秀次君  加藤シヅエ君
   紅露 みつ君  八木 幸吉君
   鈴木  一君  加瀬  完君
   千田  正君  松澤 兼人君
   上條 愛一君  有馬 英二君
   堀木 鎌三君  笹森 順造君
   菊田 七平君  長谷部ひろ君
   木村禧八郎君  相馬 助治君
   村尾 重雄君  棚橋 小虎君
   鶴見 祐輔君  一松 定吉君
   苫米地義三君  松原 一彦君
   羽仁 五郎君  大山 郁夫君
   堀  眞琴君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  百十五名
   佐藤 尚武君  小林 武治君
   北 勝太郎君  加藤 正人君
   柏木 庫治君  赤木 正雄君
   山川 良一君  村上 義一君
   三木與吉郎君  早川 愼一君
   西田 隆男君  中山 福藏君
   土田國太郎君  竹下 豐次君
   高瀬荘太郎君  白井  勇君
   横川 信夫君  深水 六郎君
   木村 守江君  安井  謙君
   伊能 芳雄君  青柳 秀夫君
   高野 一夫君  西川彌平治君
   石井  桂君  井上 清一君
   関根 久藏君  川口爲之助君
   吉田 萬次君  酒井 利雄君
   佐藤清一郎君  剱木 亨弘君
   森田 豊壽君  谷口弥三郎君
   宮本 邦彦君  長島 銀藏君
   長谷山行毅君  宮田 重文君
   瀧井治三郎君  田中 啓一君
   大矢半次郎君  石川 榮一君
   岡崎 真一君  松本  昇君
   石原幹市郎君  植竹 春彦君
   岡田 信次君  松岡 平市君
   大谷 瑩潤君  團  伊能君
   一松 政二君  西郷吉之助君
   中川 幸平君  北村 一男君
   左藤 義詮君  寺尾  豊君
   中山 壽彦君  中川 以良君
   山縣 勝見君  吉野 信次君
   重宗 雄三君  大屋 晋三君
   津島 壽一君  大達 茂雄君
   青木 一男君 大野木秀次郎君
   小滝  彬君  古池 信三君
   伊能繁次郎君  杉原 荒太君
   榊原  亨君  大谷 贇雄君
   宮澤 喜一君  高橋  衞君
   横山 フク君  西岡 ハル君
   重政 庸徳君  小沢久太郎君
   鹿島守之助君  木内 四郎君
   藤野 繁雄君  雨森 常夫君
   石村 幸作君  青山 正一君
   秋山俊一郎君  入交 太藏君
   高橋進太郎君  仁田 竹一君
   松平 勇雄君  加藤 武徳君
   上原 正吉君  郡  祐一君
   山本 米治君  西川甚五郎君
   小野 義夫君  愛知 揆一君
   平井 太郎君  川村 松助君
   堀  末治君  白波瀬米吉君
  池田宇右衞門君  島津 忠彦君
   松野 鶴平君  小林 英三君
   草葉 隆圓君  泉山 三六君
   黒川 武雄君  石坂 豊一君
   井上 知治君  岩沢 忠恭君
   鮎川 義介君  木村篤太郎君
   三好 英之君  鈴木 強平君
   井村 徳二君
     ―――――・―――――
#55
○議長(河井彌八君) 次に、只今可決せられました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案の表決は記名投票を以て行います。修正部分を除いた原案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#56
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#57
○議長(河井彌八君) 投票の結果を御報告いたします。
 投票総数 二百二十
 白色票 二百二十
 青色票 なし
 よつて修正部分を除いた原案は可決せられました。
 右の結果、教育公務員特例法の一部を改正する法律案は、委員会修正通り議決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名 二百二十名
   河野 謙三君  佐藤 尚武君
   高良 とみ君  小林 武治君
   小林 政夫君  岸  良一君
   北 勝太郎君  加藤 正人君
   片柳 眞吉君  梶原 茂嘉君
   上林 忠次君  楠見 義男君
   柏木 庫治君  奥 むめお君
   井野 碩哉君  石黒 忠篤君
   飯島連次郎君  加賀山之雄君
   赤木 正雄君  山川 良一君
   森 八三一君  村上 義一君
   宮城タマヨ君  溝口 三郎君
   三木與吉郎君  三浦 辰雄君
   廣瀬 久忠君  後藤 文夫君
   早川 愼一君  野田 俊作君
   中山 福藏君  豊田 雅孝君
   常岡 一郎君  土田國太郎君
   田村 文吉君  館  哲二君
   竹下 豐次君  高橋 道男君
   杉山 昌作君  高瀬荘太郎君
   新谷寅三郎君  島村 軍次君
   白井  勇君  横川 信夫君
   深水 六郎君  安井  謙君
   伊能 芳雄君  青柳 秀夫君
   高野 一夫君  西川彌平治君
   石井  桂君  井上 清一君
   関根 久藏君  川口爲之助君
   酒井 利雄君  森田 豊壽君
   谷口弥三郎君  宮本 邦彦君
   長谷山行毅君  宮田 重文君
   瀧井治三郎君  大矢半次郎君
   石川 榮一君  岡崎 真一君
   石原幹市郎君  植竹 春彦君
   岡田 信次君  松岡 平市君
   大谷 瑩潤君  團  伊能君
   一松 政二君  西郷吉之助君
   北村 一男君  左藤 義詮君
   寺尾  豊君  中山 壽彦君
   中川 以良君  山縣 勝見君
   吉野 信次君  重宗 雄三君
   大屋 晋三君  青木 一男君
  大野木秀次郎君  小滝  彬君
   古池 信三君  伊能繁次郎君
   杉原 荒太君  榊原  亨君
   大谷 贇雄君  宮澤 喜一君
   西岡 ハル君  重政 庸徳君
   小沢久太郎君  鹿島守之助君
   木内 四郎君  藤野 繁雄君
   石村 幸作君  青山 正一君
   秋山俊一郎君  入交 太藏君
   高橋進太郎君  仁田 竹一君
   松平 勇雄君  永岡 光治君
   加藤 武徳君  上原 正吉君
   郡  祐一君  山本 米治君
   西川甚五郎君  小野 義夫君
   愛知 揆一君  三輪 貞治君
   堀  末治君  白波瀬米吉君
  池田宇右衞門君  島津 忠彦君
   湯山  勇君  大和 与一君
   松野 鶴平君  小林 英三君
   草葉 隆圓君  泉山 三六君
   黒川 武雄君  石坂 豊一君
   井上 知治君  岩沢 忠恭君
   木下 源吾君  内村 清次君
   秋山 長造君  阿具根 登君
   海野 三朗君  山口 重彦君
   片岡 文重君  大倉 精一君
   河合 義一君  岡  三郎君
   亀田 得治君  小松 正雄君
   永井純一郎君  近藤 信一君
   竹中 勝男君  清浄 俊英君
   成瀬 幡治君  小林 亦治君
   小酒井義男君  佐多 忠隆君
   重盛 壽治君  江田 三郎君
   小林 孝平君  久保  等君
   堂森 芳夫君  田畑 金光君
   森崎  隆君  高田なほ子君
   安部キミ子君  矢嶋 三義君
   藤田  進君  岡田 宗司君
   田中  一君  戸叶  武君
   栗山 良夫君  吉田 法晴君
   藤原 道子君 小笠原二三男君
   菊川 孝夫君  若木 勝藏君
   山田 節男君  天田 勝正君
   松本治一郎君  中田 吉雄君
   三橋八次郎君  千葉  信君
   羽生 三七君  野溝  勝君
   荒木正三郎君  三木 治朗君
   曾祢  益君  山下 義信君
   市川 房枝君  東   隆君
   木村篤太郎君  野本 品吉君
   松永 義雄君  石川 清一君
   最上 英子君  三好 英之君
   鈴木 強平君  松浦 清一君
   赤松 常子君  深川タマヱ君
   武藤 常介君  寺本 広作君
   松浦 定義君  須藤 五郎君
   平林 太一君  八木 秀次君
   加藤シヅエ君  井村 徳二君
   紅露 みつ君  八木 幸吉君
   鈴木  一君  加瀬  完君
   千田  正君  松澤 兼人君
   上條 愛一君  有馬 英二君
   堀木 鎌三君  笹森 順造君
   菊田 七平君  長谷部ひろ君
   木村禧八郎君  相馬 助治君
   村尾 重雄君  棚橋 小虎君
   鶴見 祐輔君  一松 定吉君
   苫米地義三君  松原 一彦君
   羽仁 五郎君  堀  眞琴君
     ―――――・―――――
#58
○議長(河井彌八君) この際、日程の順序を変更して、日程第一より日程第十二までをあとに廻したいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#59
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
 日程第十三、補助金等の臨時特例等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず、委員長の報告を求めます。補助金等の臨時特例等に関する法律案特別委員長松永義雄君。
    ―――――――――――――
   〔松永義雄君登壇、拍手〕
#60
○松永義雄君 只今議題となりました補助金等の臨時特例等に関する法律案の特別委員会における審査の経過並びに結果について御報告申上げます。
 特別委員会は、去る三月一日本法律案の審査のために設置されたものでありますが、委員会におきましては、翌二日委員長及び理事の互選を行い、来二十二回に亘りまして慎重に審議いたしたものであります。
 先ず、本法律案の内容につきまし簡単に御説明申上げます。本法律案は、国の財政の健全化及び中央地方を通ずる財政調整の見地から、後日適当の措置をとるまでの間の臨時的な措置として、この際妥当と思われる補助金、負担金等について整理しようとするものでありまして、文部省関係では、公立高等学校定時制課程職員費の国庫補助は、これを停止することとし、公立の公民館、図書館及び博物館についての維持運営費はそれぞれこれをやめまして、施設に関する補助のにとどめようとするものであります。又、産業教育に関する理科系統の教科書発行の経費についての補助を停止し、更に、新入学児童に対する教科書の無償配付についても、この際これを停止しようとするものであります。
 厚生省関係では、保健所法に基く負担の特例が衆議院において修正削除されましたが、児童福祉の従来の母子手帳に関する国庫負担及び母子相談員に要する経費についての国庫負担は、これを停止して、それぞれ地方において負担させようといたしているのであります。又、公立の性病診療所に対する負担率及び公立精神衛生相談所の運営及び職員の費用に関する補助率を、それぞれ二分の一から四分の一に低減しようとするものであります。
 農林省関係では、農業改良研究員、専門技術員或いは改良普及員等の設置に要する経費の補助率を三分の二から二分の一に低減し、漁業調整委員会の費用の全額か国庫が負担していたものを、そのうち事務局に属するところのいわゆる書記の経費については、政令によつてこれを三分の二に改めようとするものであります。又、家畜伝染病の中の寄生虫についてのみ、従来全額国庫負担であつたものを二分の一に低減し、水産資源保護法に基く貝類等の種苗の保護に要する経費も同じく全額国庫負担であつたものを、予算の範囲内においてその一部を補助すると規定しており、昭和二十九年度においては二分の一が予算化されているのであります。更に、漁船保険の保険料半額国庫負担につきましては、現行法では付保義務漁船の範囲を百トン未満とあるのを二十トン未満とすべく、「政令が指定する漁船」に改めようとするものであります。
 通商産業省関係では、自転車競技法及び小型自動車競技法に基く国庫納付金制度を廃止してこれも地方公共団体の自主財源として地方財政収入の中に見込もうとするものであります。
 運輸省関係では、日本国有鉄道法に基く共済組合事務費の全額国庫負担の規定を削除し、又、モーターボートに関しても競輪等と同じく納付金制度を廃止することになつております。外航船舶建造の利子補給に関しましては、従来開発銀行に対して五分と三分五厘の間の一分五厘について利子補給をしていたのを、今回これを停止しようとするものであります。更に一地方鉄道軌道整備法により、固定資産価格の六分相当額或いは欠損相当額の補助をするとあるのを、それぞれ六分相当額を限度として、或いは欠損相当額を限度としてというように改めようとするものであります。
 最後に、建設省関係では、第一種公営住宅建設についての補助率を二分の一から二分の一以内に改めようとするものでありまして、実際には八階以上の高層耐火住宅をその対象にいたしているのであります。なお、本法律案は、衆議院の修正によりまして、日本国有鉄道共済組合の事務に要する費用の全額国庫負担の規定を除き、他はすべて昭和三十年三月三十一日限り失効するところの、いわゆる一年間の時限立法と相成つておるのであります。
 以上が本法律案の内容でありますが、委員会におきましては、本法律案の重要性に鑑み、副総理、官房長官、大蔵大臣及び農林大臣等関係大臣及び政府委員の出席を求めまして、委員との間に極めて熱心な、而も率直な質疑応答が交わされたのであります。ここにその主なるものを御報告申上げたいと存じます。
 第一は、「本法律案提出の理由及び補助金制度に関する政府の基本的な考え方如何」という点でございます。この点に関しましては、政府から、「補助金制度からする考慮も勿論あつたが、その主なる理由は、緊縮予算面からの制約に基因しており、補助金制度全体に関しては地方制度調査会その他の要望等もあり、政府においてもその根本的検討を重ねてはいるが、未だ最終的結論を得るには至つていない。併し衆議院の修正により一年間の時限立法となつているので、その間に成るべく結論を出したい」との答弁があつたのであります。
 第二は、「多くの補助金等のうち、本法律案に盛られている品目を抽出した基準如何」という点でございます。この点につきましては、最も議論の沸騰したところでありまして、総論的には、政府は補助金制度に関する基本的検討を行うことなく緊縮予算の面から単に事務的に抽出したのではないかという観点から、又、各論的には、個々の品目についてその重要度を比較して、例えば「義務教育無償の原則の現われとして極めて重要な意義を持つ新入学児童に対する教科書の無償配付を停止して、憲法の精神に逆行するの措置をとり、或いは食糧増産のための科学的知識普及対策としての農業改良普及事業に対する補助率を引下げて事業の継続困難或いは人員整理という窮地に追いつめ、又百トン未満の中堅漁船に対する保険料補助を停止して、水産業の発展、向上を阻害するような措置をとろうとしているが、これらのものを抽出した基準はどこにあるのか」との質疑に対しましては、政府から、「民間団体に対する補助金等はこの際成るべく整理し、又地方自治の建前から補助金等を少くして、自主的に地方の自治に待つよう措置すると共に、補助金等のうち、その目的が一応達せられたと認められるもの及び少額のものは、この際整理して効率的に使用しようとの趣旨と、他方、緊縮予算という大きな線に沿つて諸種の事情を勘案した結果、妥当と思われるものを抽出したものであり、新入学児童に対する教科書無償配付の停止については、他面貧困者に対する生活保護法の規定の活用によつて善処し、農業改良普及事業については、事業の重要性は十分これを認めるが、その成果も一応現われ、本事業の性質上、国と地方が協同して遂行して行くべきものであるとの建前から、国庫補助を二分の一とし、三分の二との差額は地方交付税交付金に廻して、実質的に地方の負担が重くならないように措置している。更に、漁船保険の付保義務範囲の縮小については、水産業界における漁船の実態と緊縮予算の建前からする止むを得ない措置であつて、政府としては、いずれも最善を尽したものである」との答弁があつたのであります。
 第三は、議員立法に対する政府の基本的態度に関連して、「制定以来一度も実施されていない法律或いは二十九年度において初めて予算化さるべき法律が、今回の措置によつて全然陽の目を見ないうちに抹殺されようとしており、内閣のかかる提案は憲法違反の疑いさえある」という点でございます。この点につきましては、政府から、「議員立法の如何にかかわらず、法律は誠実に実施すべきものと考えるが、財政上の理由から止むを得ず実施できなかつたものもある。公立高等学校定時制課程職員費の補助については、昭和二十五年以来、平衡交付金でみており、日本国有鉄道共済組合の事務費補助については、他の公社とのバランス上、従来とも補助してなかつたものであるが、法律をそのままにしておくことに、とかく疑義があるようでは如何かと思われるので、今回の措置をとつたのである。補助金等の整理については、全体として百件あり、法律の改正を要するもの二十三件のうち十三件が議員立法によるものであるが、特に議員立法の故を以て云々ということはない。又、法律案の提出権は従来とも内閣にもあるとされており、最終的には国会が決定するものであつて、憲法違反にはならない」との答弁があつたのであります。
 第四は、本法律案の形式並びに手続に関する点でございます。「本法律案は、個々独立の法律を内容としているにかかわらず、これを一本とし、ひいては所管事項に基く常任委員会制度による国会の審議を拘束する結果になると思うが、どうか」との質疑に対しましては、政府から、「個々の法律は、それぞれ独立した別個の法律ではあるが、等しく補助金等の整理という面においては共通しており、又一括審議のほうが一貫した公正な判断が下せるという点も考慮したものであり、法律的にも疑義はない。又先例もある」との答弁があつたのであります。
 第五は、本整理に伴う地方公共団体に対する財源措置及び国費節約の点でございます。この点につきましては、政府から、「内容的に停止するものを除いては、すべて地方交付税交付金として財源を与えることになり、富裕県との関係で、その約八五%の額が予算に計上されている。ただ第一種公営住宅建設費の分は起債を認めることになつており、地方財政計画の中に繰込とでいる。更に、本整理により、国としては約三十億円の節約になる」との答弁があつたのであります。
 以上が質疑応答の主なるものでございますが、その他これら補助金等の整理により、さなきだに窮迫した地方財政をますます圧迫することになるのではないか、或いは競輪等国庫納付金制度の廃止に伴う当該地方公共団体に対する財源附与を、その基準財政収入として正式に認めることの是非或いは本法律案と地方財政法第十条との関係、更には、整理の対象にならない他の多くの補助金等と対比しての各品目別の軽重度等について、極めて熱心な質疑があり、これらに対し政府の答弁があつたのでありますが、詳細は速記録に譲ることといたしまして御了承を得たいと存じます。
 なお、委員会におきましては、三月十五日及び十六日の両日、参考人として関係者十二名から意見を聴取すると共に、今回の整理の対象となつている諸施策、特に農業改良普及事業の実態等について、四月十六日から三日間を長野県、十七日から二日間を千葉県と、二班に分れまして議員派遣による現地調査を行う等、極めて慎重な態度で審議を進める一方、事情の許す限り委員会を開会して法案の実質的審議に専念いたしましたことを特に申し添えておきたいと存じます。
 かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、上林委員から緑風会を代表いたしまして、農業改良普及事業の重要性に鑑み、これに関する第十一条を削除すると共に、新入学児童に対する教科書の無償配付及び漁船保険に関する経過規定等の修正案が提出されました。又、青柳委員から自由党を代表いたしまして、緊縮予算の建前と、一年間の時限立法であるという点において各委員の御賛同を得たいとして漁船保険に関する経過規定等についての修正案が提出されると共に、農業改良普及事業に関する補助金及び漁船保険に関する負担金について、「政府は可及的速かに適当の措置を講ずるものとする」旨の附帯決議案が提出されました。次に、千田委員から、「二十トン以上百トンまでの漁船に対しても、二十トン未満の動力漁船と同一の取扱をなすよう、最近の補正予算編成の機会において、予算措置及び第十四条の政令の改正を講ずべきである」との附帯決議案を提出して、現状においては止むを得ず上林委員提出の修正案に賛成する旨の意見の開陳がありました。又小笠原委員、戸叶委員及び鈴木委員から、それぞれの会派を代表いたしまして、補助金制度全体に関する根本的検討なしに行う、かかる整理案には極めて不満足であるが、現状においては農業改良普及事業の重要性に鑑みての上林委員提出の修正案に養成すると共に、千田委員提出の附帯決議案に賛成する旨、それぞれ意見の開陳があつたのであります。
 かくて討論を終り、採決を行なつた結果、上林委員提出の修正案は、多数を以て可決、修正部分を除く原案は、全会一致を以て可決され、よつて本法律案は、多数を以て修正議決いたした次第でございます。
 なお、千田委員提出の附帯決議案は、多数を以てこれを附することと決定いたしました。
 以上、御報告申上げます。(拍手)
#61
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。委員長の報告は、修正議決報告でございます。先ず委員会修正案全部を問題に供します。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#62
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて、本修正案は可決せられました。(拍手)
 次に、只今可決せられました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#63
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて修正部分を除いた原案は、全会一致を以て可決せられました。よつて本案は、委員会修正通り議決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
#64
○議長(河井彌八君) お諮りいたします。この際、日程の順序を変更して
 日程第十六、厚生年金保険法案
 日程第十七、船員保険法の一部を改正する法律案
 日程第十八、厚生年金保険及び船員保険交渉法案(いずれも内閣提出、衆議院送付)以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長上條愛一君。
   〔上條愛一君登壇、拍手〕
#66
○上條愛一君 只今議題と相成りました厚生年金保険法案外二法案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 先ず厚生年金保険法案について申上げます。
 この法案につきましては、先般本議場におきまして、政府当局より提案理由並びに法案の内容につきまして一応の説明がなされ、これに対し同僚議員より種々質疑が行われたのでありまするが、なお簡単に本法案の大要を御説明申上げます。
 今回の改正は、厚生年金保険制度の全般に亘つて再検討を加え、保険給付の内容を改善し、且つ、その将来に亘つての恒久的な財政計画を樹立することによつて、長期社会保険としての基礎を確立いたそうとするものであります。
 改正の要点は、第一に、保険給付及び保険料の計算の基礎となる標準報酬については、できるだけ被保険者の賃金の実態に合うようにすると共に、労使の負担増を考慮して若干の引上げを行うことといたしておること。第二に、すべての年金給付が、老齢年金の給付内容を中心として均衡を保つような体系を考慮してあること。第三に、老齢年金の支給開始年齢を五年引上げ、男子は六十才、坑内夫及び女子については五十五才とし、この年齢の引上げ措置は、二十年間に亘つて漸次行うようにすること。第四に、年金給付の額については、定額に報酬比例額を加えたものとし、更に被保険者によつて扶養されていた者の数によつて、加給年金を支給し、生活の実態に副い得るようなものといたしてあること。第五に、現行法においては、年額千二百円となつている老齢年金の額の最低を二万一千六百円とし、標準報酬の額に応じて更に増額するようにいたしてあること。第六に、障害給付については、障害の程度を合理的に区分すると共に、障害の程度の増減に応じて、給付額を増減し得るように改めてあること。第七に、現行の遺族年金、寡婦年金、かん夫年金及び遺児年金を一つの総合的な体系に統一して、新らしい遺族年金の制度を設けることといたしてあること。第八に、脱退手当金の制度を改正したこと。第九に、従来支給していた年金のうち、低額なものは一定額まで引上げるよう特別の措置を講じてあること。第十に、坑内夫以外の被保険者についての国庫負担の割合を、保険給付費の一割から一割五分に引上げることといたしたこと。第十一に、労使の負担を勘案しつつ、財政の均衡を将来に亘つて保ち得るようにするために、保険料率を調節すると共に、少くとも五年ごとに再計算することといたしたこと等であります。以上がこの法案の要点であります。
 衆議院におきましては、本法案に対し、次の諸点につき修正を加えた上議決されたのであります。即ち、衆議院において修正された要点は、
 一、基本年金額中、定額部分を一万八千円から二万四千円に引上げたこと。二、遺族年金の子又は孫に関する受給資格要件たる年齢を、十六才未満から十八才未満に引上げたこと。三、加給金の対象となる子の年齢を、十六才未満から十八才未満に引上げたこと。四、従前の遺族年金、寡婦年金、遺児年金の例による保険給付に関しても、子又は孫の年齢を、十六才未満より十八才未満に引上げたこと。五、従前の障害年金の例によつて支給する保険給付の最低額を、二万一千六百円から二万七千六百円に引上げ、又従前の遺族年金、寡婦年金、かん夫年金、又は遺児年金の例によつて支給する保険給付の最低額を一万八百円から一万三千八百円に引上げたこと等であります。
 本委員会におきましては、先ず政府当局より、提案理由並びに法案の内容について、又青柳衆議院議員より、衆議院における修正点について、それぞれ詳細なる説明を聴取いたしましてから審議に入つたのでありますが、本法案の重要性に鑑み、特に公聴会を開いて湯浅蓄電池製造株式会社社長湯浅佑一君外五名の公述人より、それぞれ本法案に対する意見を聴取して審議上の参考に資したほか、労働委員会と連合委員会を開いて審議する等、慎重審議を重ねたのであります。
 委員会におきましては、種々活発なる質疑応答が行われたのでありますが、なかんずく論議の中心となりました問題は、従業員五人未満の事業所に対しても本法を適用すべきではないかという問題、老齢年金基本額の定額分を三万六千円程度まで増額してはどうかという問題、老齢年金支給開始年齢、男子六十才を五十五才に、坑内夫及び女子の五十五才を五十才にそれぞれ引下ぐべきではないかという問題、厚生年金積立金の運用問題、脱退手当は現行法通りとすべきではないかという問題及び各種社会保険の統合一元化の問題等でありましてこれらについての詳細は速記録によりまして御了承願いたいと存じます。
 かくて質疑を打切り、討論に移りましたところ、先ず藤原委員より修正動議が提出され、堂森委員がこれに賛意を表されました。修正の要点は、一、老齢年金の受給資格年齢を原案より五才引下げて、坑内夫及び女子については五十才に、その他の者については五十五才とすること。なお、これに伴つて高年齢者措置の労働年数を十五年から十三年に引下げること。二、遺族年余につき、妻に関してはその受給資格年齢を三十七才に引下げ、又その受給停止年齢を五十才に引下げるほか、夫、父母又は祖父母についてはその受給資格年齢を五十五才に引下げること。三、施行期日を公布の日から施行し、昭和二十九年五月一日から適用するに改めること。四、右の修正に伴い附則を整理すること。以上であります。
 次に、有馬委員からも修正動議が提出され、谷口委員がこれに賛意を表されました。修正の要点は、一、施行期日を「公布の日から施行し、昭和二十九年五月一日から適用する。」ことに改めること。二、右の修正に伴い附則を整理すること等であります。
 引続きまして、有馬委員より附帯決議の動議が提出され、谷口委員がこれに賛意の表されました。その案文は次の通りであります。
  政府は調査研究の上速かに左記諸施策を実施して、厚生年金保険の内容充実を図ると共に、各種年金制度を整備統合して、国民年金制度を樹立するよう最善の努力を払うことを要望する。
  一、本法の適用範囲を従業員五人未満の事業所に拡張するよう直ちに調査準備すること。
  二、老齢年金の支給開始年齢を、男子六十才を五十五才に、坑内夫及び女子五十五才を五十才に引下げること。
  三、老齢年金基本額の定額分を三万六千円に引上げること。
  四、重筋肉労働、光熱有害作業等の特殊労働に就業する者については坑内夫と同等の取扱をすること。
  五、保険給付費の国庫負担金を増額すること。
  六、脱退手当金の支給要件を従来通りにすること。
  七、厚生年金積立金についてはこれを民主的効率的に管理運用するよう特別の措置を講ずること。
  八、厚生年金積立金を大幅に還元融資し、老人ホーム、児童保護施設、医療施設及び住宅等を増設して、被保険者の福祉増進を図ること。
 以上であります。
 而して常岡委員、有馬委員、谷口委員の各委員は、有馬委員提出の修正案及び附帯決議案に賛意を表し、残余の部分については種々希望意見を求べて原案に賛成する旨を開陳せられ、又藤原委員、堂森委員、竹中委員の各委員は、それぞれ反対理由を述べて、原案に反対の旨を開陳されたのであります。
 かくして討論を終結し、先ず藤原委員提出の修正案のうち、有馬委員提出の修正案と異なる部分について採決いたしましたところ、少数のため否決となり、次いで有馬委員提出の修正案は多数でこれを可決し、修正箇所を除く残余の部分につきましても、多数を以ちまして衆議院送付案通り可決すべきものと決定をいたしました。なお附帯決議案につきまして採決いたしましたところ、多数を以てこれを可決決定いたしました。
 次に、船員保険法の一部を改正する法律案について申上げます。
 先ずこの法案の提案理由並びにその内容につきまして簡単に御説明申上げます。
 船員保険法は、昭和二十四年に制定されまして以来、今日まで船員労働者の生活の安定と福祉の向上を図るための、唯一の総合的な社会保険制度として実施運営され、この間社会情勢、経済情勢の変動に即応するため、二十数次に亘る改正がなされたのでありますが、この際、保険給付の内容を改善、合理化すると共に、保険財政の基礎を将来の見通しの下に確立いたしまして、できるだけ船員保険制度の内容の充実と合理化を図るため、本法の一部を改正しようとするものであります。
 改正の要点は、第一に、標準報酬につきましては、他の社会保険との調整を図り、現行の二十一等級を十九等級に改めると共に、標準報酬の計算の基礎となる報酬月額の算定方法を合理化しようとするものであります。第二に、従来船舶内にある期間には支給されていなかつた療養の給付を、一定の場合には支給することといたしてあります。第三に、分娩等に関する保険給付として新たに分娩費、出産手当金及び育児手当金を創設いたしてあります。第四に、失業保険部門につきましては、失業保険法に準じて制度の合理化を図ろうとするものであります。
 第五に老齢年金につきましては、現行の二万四千円の頭打ちを外すと共に、その額は厚生年金保険法の改正と歩調を合せて、定額に報酬比例額を加えたものとし、更に被保険者によつて扶養されていた者に加給金を支給することといたしてあります。なお、老齢年金の支給開始年齢は、現行の五十才を五十五才に引上げることとし、且つこの年齢引上げは二十年間に漸次引上げるよう経過的措置を講じてあります。第六に、職務外の事由により支給する障害年金及び障害手当金並びに寡婦年金、かん夫年金及び遺児年金の額の計算の基礎となる標準報酬月額につきまして、現行の最終標準報酬月額をとることを改正して、平均標準報酬月額によることといたしてあります。第七に、脱退手当金の制度を合理化してあります。第八に従来支給しておりました年金のうち、低額のものは一定領まで引上げるよう特別の措置を講じてあります。第九に、船舶所有者及び被保険者の負担を勘案しつつ、財政の均衡を将来に亘つて保ち得るようにするために保険料率を調整すると共に、少くとも五年ごとに再計算することとし、当分の間保険料率は、失業保険の適用を受ける者については千分の百六十一に、その適用を受けない者については千分の百四十五にいたそうとするものであります。
 以上がこの法案の大要でありますが、衆議院におきましては、厚生年金保険法案の修正に伴いまして、本法案に対しましても次の諸点につき修正が行われたのであります。
 即ち、一、老齢年金額中定額部分一万八千円を二万四千円に引上げること。二、遺族年金、寡婦年金、一遺児年金に関する受給要件たる子又は孫の年齢を十六才より十八才に引上げること。三、加給金の対象となる子の年齢を十六才より十八才に引上げること。四、従前の遺族年金額の最低を一万一千四百円から一万四千四百円に引上げること等であります。
 本委員会におきましては、慎重審議を重ね、各委員より熱心なる質疑が行われたのでありますが、その詳細は速記録によりまして御承知おき願いたいと存じます。
 かくて質疑を打切り、討論に入りましたところ、藤原委員より修正動議が提出されたのであります。その要旨は、
 一、寡婦年金の受給資格年齢を、現行法通り五十才に、かん夫年金の受給資格年齢を五十五才に据えおくこと。
 二、老齢年金の受給資格年齢を現行法通り五十才に据えおくとともに、高年齢者措置の所要労働期間を厚生年金保険の場合と同様に短縮すること。
 三、施行期日を、「公布の日から施行し、昭和二十九年五月一日から適用する。」に改めること。
 四、右の修正に伴い、附則を整理すること。以上であります。
 次いで有馬委員からも修正動議の提出がなされたのでありますが、その要旨は、厚生年金保険法案と同様に、施行期日を、「公布の日から施行し、昭和二十九年五月一日から適用する。」こととし、その他関係条文の整理をすること等であります。
 かくて討論を終結し、先ず藤原委員提出の修正案について有馬委員提出の修正案と異なる部分につきまして採決いたしましたところ、少数のため否決となり、次いで有馬委員提出の修正案は、多数でこれを可決いたし、右修正点を除く残余の部分につきましても多数を以て、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
 最後に厚生年金保険及び船員保険交渉法案について申上げます。
 このたび改正される厚生年金保険及び船員保険の両制度におきましては、老齢年金及び遺族年金については、その給付の基準を原則として同一にいたしてありますので、この機会に、両保険における被保険者期間を通算して老齢年金又は遺族年金を支給できるようにいたし、以て両保険の被保険者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するようにいたしたいという趣旨に基きまして、この法律案が提出されているのであります。この法案の要点は、
 第一に、両保険における被保険者期間を通算することにいたしてありますが、この通算は、老齢年金を支給する場合、及び老齢年金の受給資格期間を満たしている者が死亡したことによる遺族年金を支給する場合、並びにいずれかの保険において任意継続被保険者となるために必要な被保険者期間を計算する場合の三つの場合に、これを行うことにいたしております。
 第二に、両保険における被保険者期間を通算した場合における保険給付は、原則として最後に被保険者であつた保険においてこれを行うことにいしてあります。
 第三に、老齢年金の受給資格を得るために必要な被保険者期間は、厚生年金保険法においては原則として二十年、船員保険法においては原則として十五年となつておりますので、両保険の被保険者期間を合算する場合には、この点を勘案して、それぞれの期間につき必要な調整を行うことにいたしております。
 第四に、一の保険における老齢年金の受給権を有する者が他の保険の被保険者となつた場合、又は一の保険における障害年金の受給権を有する者が同時に他の保険における老齢年金の受給権を有する場合、或いは同時に両保険における遺族年金の受給権を有するに至つた場合等につき、それぞれ必要な調整を行うことにいたしてあります。
 第五に、両保険の被保険者期間を通算して行う保険給付に要する費用については、政令の定むるところにより、厚生年金保険特別会計と船員保険特別会計とにおいて按分して負担することにいたしておるのであります。
 以上がこの法案の大要でありまするが、本法案に対しましても、衆議院におきまして次のごとき一部修正が加えられたのであります。即ち衆議院修正の要旨は、基本年金額中定額部分一万八千円を二万四千円に引上げることであります。
 本委員会におきましては、慎重審議を重ね、種々熱心なる質疑応答が行われたのでありまするが、これらの詳細は速記録によりまして御了承願いたいと存じます。
 かくして質疑を打切り、討論に入りましたところ、藤原委員より修正の動議が提出されたのであります。その要旨は、
 一、厚生年金保険法案並びに船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正に伴い、本法案に対し所要の調整を行うこと。
 二、施行期日を、「公布の日から施行し、昭和二十九年五月一日から適用する。」に改めること。
 三、その他附則を整理すること等であります。
 次いで有馬委員から修正動議が提出されたのであります。その要旨は、施行期日を「公布の日から施行し、昭和二十九年五月一日から適用する。」に改めることとし、これに伴い関係条文を整理することであります。
 かくて討論を終局いたしまして、先ず藤原委員提出の修正案につき、有馬委員提出の修正案と異なる部分につきまして採決いたしましたところ、少数のため否決となり、有馬委員提出の修正案は、多数でこれを可決いたし、右修正点を除く残余の部分につきましては、多数を以ちまして、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 以上、御報告申上げます。(拍手)
#67
○議長(河井彌八君) 三案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。竹中勝男君。
   〔竹中勝男君登壇、拍手〕
#68
○竹中勝男君 只今提案されております三つの厚生年金保険法の修正及びこれに関係する法案に対して反対の意見を日本社会党第四控室を代表して申上げます。
 これに反対する理由は、我が国一千万労働者の老後の生活を保障すべき唯一の年金制度を規定するこの法案が、あまりにも日本の労働者の意思を無視し、その希望を蹂躙した形でここに提出されているからであります。政府は、これを画期的な改正法案だと言つておりますが、画期的ではなく、むしろ現在の法律よりも、重要な部分で後退している点すらあるのであります。例えば現行法におきましては、老齢年金の支給開始年齢は、男子は五十五才であるのを六十才に引延ばしております。又、坑内夫及び女子は五十才であるのを五十五才に引上げているのであります。又、脱退手当金の支給条件の中にも、改正によつてむしろ受給者は不利になつている箇所がありますし、障害年金のごときも、その一部の受給者は現行法よりも不利な条件に置かれているのであります。これは明らかに改善ではなくして改悪であり、進歩ではなくして後退であると考えます。従つてこれは画期的な改善というようなふうに考えられない。労働者の期待を裏切るところのものであるという立場から反対しているのであります。
 反対の理由数点を挙げたいのでありますけれども、時間の関係上、重要なものを二、三申上げます。
 第一の点は、本法案は我が国の社会保障制度の根幹をなすべきところの将来国民年金保険制度の基礎となるべきものでありますからして、現在我が国に行われておりますところの各種の恩給、公務員とか軍人の恩給、共済組合、船員保険その他各種の退職金制度などを統合して、そのでこぼこを調整し、将来単一の国民年金保険法を作り上げる基礎となるべきものであるにもかかわらず、僅かに船員保険法の一部と調整を図つたのみで、他の現在の年金或いは恩給或いは退職金制度などとの調整は殆んどこれを、調整を顧みられていないのであります。で、日本労働者が受けるところの各種のこのような年金が公務員や軍人の恩給に比べて格段に低い、又各種年金間にでこぼこがあるということ、又その所管が、行政的な所管が分散しておるというようなことは、日本の社会保障制度を建設して行く上に、或いは国民年金制度を樹立して行く上の大きな障害になつておるのでありますが、これを取払うところの努力が本法改正案においてなされていないということが非常な欠点であると思います。
 第三に、この法案は我々がかねてから反対し、又かねてからこれに入れることを要望し、又社会保障制度審議会がたびたび、数年亘つて勧告しておりますところの五人未満の雇用者をこれから外しておることであります。日本産業の特色は、言うまでもなくこの零細な、小さい企業に雇用されておるところの労働者によつて担われておる部分が極めて重要な部分をなしておるのであります。恐らくこの対象となる者は三百三十万人ほどあるのでありますけれども、これが全く外されておるということは、この年金保険法の重大な欠点であると思います。こういう低劣な労働条件によつて労働しておるところの日本労働者か守ることこそが、即ち個別の資本がこれを守り得ないときに、総資本家なるところの国家がこれに代つてこれを守ることが社会保障制度の本質である。この本質をすでに無視しておるという点であります。
 それからこの老齢年金の給付が非常に低いということであります。恐らくこれは二万四千円でありますけれども、三万六千円にしなければならない現実の要求であります。こういう生活保護法にも等しいところの恩給を以て六十まで働かして、そうしてこういう年金であるということについては、現在の日本の労働者が希望を持つて働くことはできない。軍人恩給のときの、これは二等兵曹の半分にもなつていないのであります。旧軍人を優遇し、日本労働者を冷遇すること、これはむしろ防衛隊を強化するような政策に一致するかも知れないけれども、真に日本産業を復興するところのゆえんではないと考えております。
 又、国庫負担部分も僅かに一割五分でありますが、恐らくこれは三割程度まで国庫が負担をすることによつて、初めて真の長期年金保険制度というものはでき上るのであつて、余りに過小であります。積立金のごときも二十九年度末においては一千億を超える状態になつておりながら、これが運営において、この大蔵省の資金運用部において運用されておるのを、共済組合のように特殊なものにして、これを労働者に融資還元する方法を講ずべきだと考えております。又直接労働者の福祉のために、これを僅かその利息にも及ばないところのものしか支出されておらない。今年度は三十五億でありますが、少くとも五十億円の支出をなすべきだというのが我々の主張であります。
 殊に老齢年金において、現在あるところの五十五才を六十才に引延ばしておるという点は、我々がどうしても承服できないところであります。すでに各種の恩給或いは退職が五十五才であるのであります。殊に私鉄の運転手やバスの運転手のごときは五十五才が停年であります。六十才に彼らがなるまでに、彼らは多く死んでおるところの者が出ておるのであります。それを一生働いて、そうして六十才にならなければ、五年間は年金がなしに退職しなければならないというような、こんな矛盾は我々が到底認めることができないのであります。(拍手)年寄りが六十まで働いて、政府は老人が年金を早くもらつて遊んでおつてはいけないと言うけれども、日本では若い者が仕事がなくて一千万人も半失業者状態に置いて、昼間からパチンコをしたりして遊んでおるじやありませんか。女子が売笑婦にならなければならないという状態に置いて若い者が遊んでおつて、そうして老人が六十まではどうしても重労働、筋肉労働に従事しなければならないというような、こういう矛盾を持つたところのこの法案については、我々は根本的に改めたいと考えておるものであります。(拍手)
 で、政府は、この社会保障費の支出をあたかもマイナスの支出であるかのように考えておるのではないかと思うのです。本当の社会政策は、実は決して、社会政策費というものは、社会保障費というものは、決してマイナスの支出ではなくて、これはその国の産業を強化するための生産的な費用であると私どもは解釈しておるのであります。同じ敗戦国西ドイツは三五%の社・会保障費を支出しておるにもかかわらず、我が国においては、あらゆるものを入れて八分ぐらいの国家財政支出をしておるだけに過ぎないのであります。従つて我が国においては労働争議も熾烈化し、或いは生産労働力が低位であります。従つて生産費が高くなる。で、こういう大きな、日本経済にマイナスするところのものは、この費用を政府が出し惜しみするからなんです。社会政策は決して消極的な救済をやつておるのじやない。真の社会政策は、経済政策である。真の社会政策は、生産政策であると私どもは考えております。(拍手)我々が汚職やこの賄賂に使うところの巨額の金を一方におきながら、日本労働者を培養し育成して行くところの、そうして優秀な労働力をその中から確保しようとするところのこの社会保障政策に僅か八分ぐらいの国庫支出をしなければならない。(「わかりました」と呼ぶ者あり)そうして大きな賄賂の金が動いておるというような、こういう国においては、私は本当の産業の復興、経済の復興はあり得ない。最善の社会保障政策を我々は確立しなければ、日本民族の前途も、日本経済の前途も実に危いものであるということを憂えておるが故に、私どもはそうして更によいところの社会保障制度を確立するために、この年金保険法案に反対しておるところのものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#69
○議長(河井彌八君) 堂森芳夫君。
   〔堂森芳夫君登壇、拍手、「簡単簡単」と呼ぶ者あり〕
#70
○堂森芳夫君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして只今の厚生年金保険法案に対しまして反対し、簡単に原則的な点についての意見を強調いたしたいと思うのであります。
 我が国におきまして各党がお互いに社会保障の実現を主張いたしておりまするが、我が国の社会保障制度の体系の中で、今日行われております年金制度ほど、各個ばらばらでありまして不統一極まるものはないのであります。社会保障制度審議会も、すでに三回に亘つてその整理統合を勧告して参つたことは諸君も御承知の通りであります。公務員の恩給といい、国家公務員共済組合制度、町村職員恩給組合のそれといい、公共企業体従業員のそれといい、民間産業労働者の厚生年金制度といい、その他さまざまの年金制度は、実にばらばら無関係に制度化されまして、多年に亘つて放任されて参りました結果、年金を受ける資格におきましても、支給を開始する年齢におきましても、受ける額におきましても、年金給付の国庫の補助率におきましても、全く各個ばらばらであります。従つて、厚生年金保険法の今度の改正では、このような不統一ばらばらの年金制度を一本にまとめようという大理想があつて然るべきであると思うのであります。(拍手)然るにこのたびの年金保険法の改正案は、成るほど二年に亘りまして当局が苦心した跡は歴然と認めるものでありますけれども、併しながら、現行年金制度の統一、進んでは全国民を対象とする国民年金制度の実現に対しての何らの意欲も示されていないことは、誠に遺憾千万と言わなければなりません。
 公務員の普通恩給が約六万円になんなんとしておるのでありまするが、労働者の年金が、本改正を以てしましても、本年から支給される坑内夫の年金は四万円にも満たないのでありまして、法の前に平等であるべき国民の生活権が、まだまだ極めて不平等な状態に放任されておるばかりではなく、明治時代の遺物、官尊民卑、官僚独善の思想が現在の恩給制度にも強く温存されておると断ぜざるを得ないのであります。
 次に、三百万を超える五人以下の事業所において働いております人たちが適用外に置かれている点は、すでに竹中議員も触れられましたから、私はこれを簡単に触れるものでありまするが、成るほど委員会におきまして、本法の審議過程において政府当局の説明にも見られますように、五人以下の事業所という極めて不安定な移動の激しい事実は認めますけれども、一生を通じて、二十年、三十年、全く肉体的にも精神的にも全精力を消耗し尽しましたこれらの人たちを、その適用外に放置したことは、何としても承知できないのであります。
 年金額について見ますると、本年はいよいよこの改正によつて三万一千円平均、更に衆議院修正案によりまして三万七、八千円でありまするが、日本の基幹産業たる炭鉱労働者、なかんずく悪条件の下に十数年の間営々として働きながら、而も長年に亘る悪条件の下における労働によりまして生産の能力を失いましたときの年金額が、生活保護法に基く生活扶助額よりも低いということは絶対に納得することができないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)或いは年金支給年齢にしましても、恩給法によりますときは、官吏は若年停止でございますけれども、四十五才から始まります。而も本案により民間労働者は六十才にしなければならないという理由はいずこにも見出すことができないのであります。政府は五十五才における雇用率は相当の高度に達しておるからと言つておられまするが、我々は納得ができないのであります。殊に殆んどの事業所におきましては、停年は五十五才を以て定められておりまするから、この五年間を如何ようにして生活しろと政府は考えておられるのでありましようか。
 標準報酬についてもそうであります。健康保険は三千円から刻みまして三万六千円、船員保険は四千円から三万六千円、本法は一万八千円に抑えておりまするが、社会保険審議会の審議の過程を見ますると、日経連の主張に完全に屈伏したことを物語つております。その結果、保険料の収入が低くなり、労働者に与える年金支給額が低くなるという悪循環を来たしつつあるという事実は、明らかに、政府が日経連の代弁者となつて、労働者の保険ではなく、経営者の利益を図つていると言われましても、これは過言ではないと思うのであります。(拍手)
 又、積立金方式の問題にしても、数十年後には二兆億にも達すると言われております積立金の運用方法、国庫補助の増額につきましても、すでに竹中議員から申されましたので、私は省略いたします。
 ともかく今日、社会保障制度は全世界の政治最高の目標となつておるのであります。然るに政府は、MSAの受諾に伴う防衛費の義務的支出は千三百億、社会保障費を八百八十億に抑えておるのであります。このようにして、国民の生活安定を軍事的な危険極まる冒険政策の犠牲に供せんとしておるのであります。政府は耐乏生活を国民に説いております。イギリスの国民に見倣えと言つております。併しイギリスの耐乏生活は、がつちりと社会保障が国民生活を守る盾として確立しておることにこそ政府が見倣うべきであるということを強く警告いたしまして、私の討論を終るものであります。(拍手)
#71
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#72
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
#73
○議長(河井彌八君) 日程第一、漁港審議会委員の任命に関する件を議題といたします。
 四月二十一日、内閣総理大臣から、漁港法第九条第一項の規定により、井出正孝君、小田賢郎君、板垣卯佐治君、松平武一君、池田駒平君を漁港審議会委員に任命することについて、本院の同意を得たいとの申出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#74
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本件は同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#75
○議長(河井彌八君) 日程第二、けしの栽培並びにあへんの生産、国際取引、卸取引及び使用の制限及び取締に関する議定書の批准について承認を求めるの件
 日程第三、通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批准について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上、両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#76
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長佐藤尚武君。
   〔佐藤尚武君登壇、拍手〕
#77
○佐藤尚武君 只今議題となりましたけしの栽培並びにあへんの生産、国際取引、卸取引及び使用の制限及び取締に関する議定書の批准について承認を求めるの件につきまして外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 政府の説明によりますと、この議定書は国際連合主催の下に昨年五月からニューヨークで開催せられましたあへん会議において作成せられ、三十六カ国によつて署名せられたものでありまして、我が国もその審議に参加し、昨年六月二十三日これに署名いたした次第であります。本議定書は、従来の麻薬に関する諸条約を更に推進し、麻薬の害毒を一層強力に防衛することを目的としておりまして各締約国が、けしの栽培及びあへんの生産、使用、取引等を取締るための機関を設立すること。二、あへんの在庫量を制限すること。三、特定の締約国で生産されるあへん以外のあへんの輸出入を禁止すること。並びに、四、あへんの使用及び輸出入の目的を医学上及び化学上の需要に限定すること等を主な内容とし、二十五カ国が批准又は加入したのち三十日目に効力を生ずることになつている旨の説明がありました
 質疑におきましては、日本は曾つて殊に戦時中は麻薬の取締について、とかく国際間に信用がなく、しばしば諸外国から問題にされていたのであるが、現在は反対に密輸のために被害を受ける立場に置かれている。「現在我が国におけるけしの栽培並びに麻薬の密輸入及び取締の現状はどうなつているか」という質問に対し、「国内におけるけしの栽培はその八、九割が和歌山県と大阪府で行われており、国内での麻薬の密造は大したことはなく、いずれも手落ちなく十分に取締つているが、問題は密輸入である。終戦後密輸事犯は激増し、例えば昨年の検挙数は千三十件、千四百六十二名に上り、うち日本人は八百三十八名で、朝鮮人、中国人がこれに次ぎ、密輸品の大部分はヘロインである。密輸ルートは朝鮮、大陸、南方の三つの方面からであつて、このうち大陸から香港経由で外国汽船と航空機によつて持込まれるものがその大部分を占めている。日本での荷揚地は時により移動していて、一昨年は密輸品の六、七割が阪神地区に、昨年は六、七割が京浜地区に持込まれることになつた。密輸の数量は正確には掴み得ないが、国内にいる麻薬中毒患者の数は、最小限三万人と推定され、各自一日の使用量を〇・二グラムとし、又ヘロインの密売値段を一グラム平均五千円とみれば一年間の密輸量は二千百九十キロ、価格にして実に百九億五千万円に上ると推定され、又香港経由で行われる密輸の根源地がどこであるかは確かめ得ない。国際間の麻薬密輸状況に関する情報は、国連麻薬委員会から入手しているが、これを確認するまでには至つていない。併し本議定書第十二条の規定によれば、密輸に対し、根源地の国に対し間接的に圧力を加えることが可能なわけである」との答弁がありました。
 委員会は五月十日、質疑を終了し、討論を経て採決を行いましたところ、本件は、承認すべきものと全会一致を以て決定いたした次第であります。
 次に議題となりました通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批准について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 政府の説明によりますると、本件協定成立までの経緯とその内容は、おおむね、次の通りであります。
 戦前、日加両国間の通商関係は、カナダが大正二年五月に加入した旧日英通商航海条約によつて規律されておりましたが、同条約は昭和十七年七月失効いたしました結果、両国間の通商関係は無条約状態となり、このため我が国よりカナダに輸出する産品には、同国の最高税率である一般関税税率が適用されることとなり、戦後の対加貿易は甚だしく阻害され、例えば一九五三年のごときは我が方よりの輸出千五百万ドルに対し、輸入一億四百万ドル、差引八千九百万ドルの入超という著しい片貿易となつております。よつて政府は相互に最恵国税率を与える協定を締結するために、昭和二十七年十一月以来カナダ政府との間に折衝を重ねました末、今般この協定について両国の合意が成立し、去る三月三十一日オタワにおいて署名を行なつた次第であります。
 この協定の成立によつて、我が国の産品はカナダにおいてガット税率による最恵国税率を適用されることになりまするので、今後我が国の対加貿易は大幅に増大することが期待できるとのことであります。なお昨年十月我が国のガツト仮加入に際し、カナダは他の英連邦諸国と異なり、積極的に我が立場を支持する態度に出たのでありますが、この協定の交渉も同国の理解ある態度によつて順調に進められることになりました。
 次に本協定の内容としては、一、両国が相互に関税に関する最恵国待遇を与えること。二、為替及び貿易制限に関し、原則として無差別待遇を与える一方、国際収支擁護のため必要な差別的制限を行い得ることを骨子とするものでありまして、批准書交換の日に効力を生じ、一年間有効と定められております。
 なお本協定には、三つの附属の交換公文がありますが、その交換公文におきましては、一、沖繩に対して与えられている利益については、この協定の最恵国待遇の規定が適用されないこと。二、カナダにおいて国内産業に重大な損害を与える産品の輸入に対し、その損害を防止するために必要な関税評価を行い得ること。三、我が国において小麦、大麦、木材、パルプ等の九品目について原則として無差別待遇を与える旨を述べております。以上が政府の説明でありました。
 委員会は四月三十日以降五回に亘つて本件の審議を行いました。
 次に質疑の主なるものを挙げますれば、「協定有効期間の短い理由。日加貿易が片貿易である原因と今後の見通し。交換公文の趣意如何。又第二、第三の交換公文は片手落ちではないか」等の質問に対しましては、「我が方は恒久的通商条約の締結を希望したが、先方は一般的通商条約については、英連邦諸国の間では、日本と恒久的のものを結ばないとの申合せがあり、他方ガツトの今後の成行とも睨み合せて考える必要があるので、今回は先ず急を要する貿易だけについて取極めたいとの意向でありましたので、我が方もこれに応じ、暫定的な意味でこの関税協定ができたわけである。対加貿易が著しく片貿易となつているのは、我が国において絶対的に必要とする小麦、大麦の輸入が総輸入額の約七割を占めているからであり、これに対し我が国からの輸出品はみかん、茶その他概して細かい雑貨類などであるから貿易のバランスは容易に望み得ない。併し本協定によつて我が輸出品に対する適用税率が著しく引下げられる結果、今後我が国の輸出が年額千万ドル見当の増加を見ることは困難でないと思われる。次に、沖繩に関する交換公文は、日米友好通商航海条約の附属議定書第十四項(b)の規定と同様の趣旨に則つたものであり、又タイ国などとの民間航空協定の附属交換公文の精神とも相通ずるものである。又第二の交換公文は、他国のダンピングを防止するために設けたカナダ関税法の規定の趣旨を明らかにしたものであつて、カナダは各国に対するガツト税率の適用に際しても同様の留保を行なつている。この関税法の規定は交換公文がなくてもカナダとしては自由に発動し得る性質のものであるが、我が国に対してこれを発動する場合にこれが濫用されることのないように意を用い、早目に日本側に通告するとか、日本に協議の機会を与えるとかを条件とすることを約束しているわけである。今日までの貿易状況では、この規定が発動される虞れはない。将来これが問題となり得る場合といえば、カナダの紡績業者が本協定に反対している現状に鑑みて、綿製品中、高級でない物の対加輸出が急激に増加する場合くらいのものであろう。第三の交換公文は、カナダは輸入制限を行なつていないのに対し、日本が輸入制限を行なつている事情を考慮し、日本はカナダからの輸入品中九品目に対して差別的待遇をしないというだけの趣旨であつて、何ら片手落ちではなく日本はこれらの物をどこの国からでも自由に輸入し得ることには変りはない」との答弁がありました。
 委員会は五月十一日、質疑を終了し、引続き討論に入りましたところ、曾祢委員は、「本件協定に賛成する。この協定により対加貿易の障害が一応除去されることになるので歓迎する。ただ政府に対して、対加輸出の増進に倍旧の努力を払う一方、輸入品についてはアジアその他の地域からも輸入するように市場の転換を図ること。二、これを切つかけとして全般的通商条約の締結に進むこと。三、英連邦の特恵関税一制度は現状では認めざるを得ないが、抜本的には容認しがたいから、これが是正に今後とも絶大の努力を払われんことを要望する」旨を述べられました。
 次に佐多委員は、「この協定は関税の最恵国待遇、為替及び貿易制限の無差別待遇を骨子として片貿易の是正を主目的としているのでこれに賛成する。ただ、片貿易是正についての政府の努力にはまだ欠けるところがある。輸出については各品目別に詳細にその振興策を立て、輸入についても中国市場等への転換を図らんことを切望する」と述べられ、次に高良委員は、「この協定を今後正式の通商条約に発展せしめること、隣邦たるカナダとは一層貿易、文化の交流を図らんことを希望して賛成」され、次に團委員は、「この協定の成立は日本の経済発展上大きな効果がある。英連邦との調整上にいい例を開いたものであり、又これにより米大陸との貿易関係も緊密になる。ただ、日本が余りにカナダに力を集中する結果、先方に脅威を感ぜしめるがごときことのないよう公正な態度を持し、又粗悪品を出すことなく、信用を高め、以て健全な貿易の発展に努められたい」との希望を附して本件に賛成せられました。最後に鶴見委員は、「賛成である。ただ一つ、希望としてカナダの英連邦内における比重が年々増加しつつある事実と、カナダの米国に対する比重の非常に大きいことを十分に認識して施策すべきであることを附言しておきたい」と述べられました。
 以上を以て討論を了し、次いで採決を行いましたところ、本件は、承認すべきものと全会一致を以て決定いたした次第であります。
 右、御報告申上げます。(拍手)
#78
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両件の採決をいたします。
 両件全部を問題に供します。委員長報告の通り両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#79
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両件は、全会一致を以て承認することに決しました。(拍手)
     ―――――・―――――
#80
○議長(河井彌八君) 日程第四、離島振興法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
 先ず、委員長の報告を求めます。経済安定委員会理事岩沢忠恭君。
   〔岩沢忠恭君登壇、拍手〕
#81
○岩沢忠恭君 只今議題となりました離島振興法の一部を改正する法律案につきまして経済安定委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
 本法案は、衆議院議員綱島正興君ほか五十二名より発議され、去る四月二十日衆議院において可決の上、即日本院に提出されたものでございます。
 この内容について簡単に御説明いたしますと、離島の振興に関しましては、その後進性を除去するために、先に第十六国会において離島振興法が制定せられ、これに基く事業が現在進められつつあるのであります。然るに離島振興法におきまして港湾工事の費用負担割合につき港湾法の特例が設けられておりますのは、港湾管理者の行う工事に限られており、国が直轄の港湾工事を行います場合には特例が認められていないために、離島振興上に一つの障害となつておるのでございます。今回この点の不備を改正いたしまして、国の直轄工事につきましても、港湾管理者が行う工事の場合と均衡をとり、費用の負担に関する特例を設けることにいたしたのでございます。委員会におきましては、発議者園田直君より提案理由の説明を聞き、発議者及び政府関係官に質疑を行いましたが、その内容につきましては速記録に譲ることを御了承願いたいと思うのであります。
 かくて質疑を終り、討論に入りましたるところ、岩沢委員より、「港湾法改正法案が修正成立せることに伴う条文整理のため、本法案に所要の修正を加える」旨の動議が提出され、採決に入りましたるところ、本法案は、岩沢委員の修正案通り修正議決すべきものと、全会一致によつて決定いたしました。
 右、御報告申上げます。
#82
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#83
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て、委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
#84
○議長(河井彌八君) 日程第五、交付税及び譲与税配付金時別会計法案
 日程第六、経済援助資金特別会計法案
 日程第七、閉鎖機関令の一部を改正する法律案
 日程第八、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案
 日程第九、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案
 日程第十、大蔵省関係法令の整理に関する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上、六案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#85
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長大矢半次郎君。
   〔大矢半次郎君登壇、拍手〕
#86
○大矢半次郎君 只今議題となりました六法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 先ず、交付税及び譲与税配付金特別会計法案について申上げます。
 本案は、地方交付税及び地方譲与税の配付に関する政府の経理を明確にするために特別会計を設置しようとするものであります。大要について申上げますと、この会計は、内閣総理大臣及び大蔵大臣が共同管理し、地方交付税相当額の一般会計からの繰入金、入場税収入及び附属雑収入を歳入とし、地方交付税交付金、入場譲与税譲与金、入場税収入の一割相当額の一般会計への繰入額及び附属諸費を歳出とし、毎会計年度の決算上の剰余金は翌年度の歳入に繰入れ、毎会計年度の歳出予算支出残額は翌年度に繰越して使用することができることとする等、交付税及び譲与税の配付に関し、必要とされる会計運営の制度を規定すると共に、昭和二十九年度の揮発油譲与税の配付に関する経理につき所要の規定を設けることといたしております。
 なお、本法案につきましては、衆議院において、この法律は公布の日から施行し、昭和二十九年度分の予算から適用することとし、又昭和二十九年度に限り、入場譲与税法附則第二項の規定により、一般会計において負担すべき額がある場合においては、入場税収入額中の一般会計に繰入れるべき金額を以てこれに充当することとし、なお、不足があるときは、一般会計からこの会計に繰入れることとすると共に、一時借入金が歳入不足のため償還できないときは、借換をすることができ、又、右の借換を行なつた場合は、一年以内に償還しなければならないこととする等の修正が行われました。
 本案の審議に当りましては、各委員から熱心な質疑が行われましたが、その主なものについて申上げますと、「入場税の税率が修正され、引下げとなる結果、昭和二十九年度の入場税収入は予定額の百九十二億円に達しないような場合も考えられるが、このような場合、入場譲与税を予定額通り交付するために、政府はどのような対策を講ずる考えであるか」との質疑には、「先ず、入場税の収入額の十分の一に相当する金額の一般会計への繰入をとりやめ、又二十億円の一時借入金の借換が認められることとなるので、これで補い、なお、これらの措置を講じても不足することとなれば、昭和三十年度予算で支出の方法を考えなければならないと考える」との答弁があり、又「入場税法の施行は相当遅れることとなるが、その施行が遅れても、本年度百七十二億八千万円の入場譲与税は予定通り支出しなければならないのか」との質問に対し、「この法律の施行が一カ月或いはそれ以上も遅れることとなれば、この数字は当然変更が加えられなければならんと思うが、なおよく研究してみたい」との答弁がありました。その他詳細は速記録によつて御承知願いたいと思います。
 質疑を終了し、討論に入り、採決の結果、多数を以て衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 次に、経済援助資金特別会計法案について申上げます。
 本案は、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基いて、本邦の工業の助成その他経済力の増強に資する目的のために、アメリカ合衆国政府から贈与される円資金を以て、新たに経済援助資金を設置し、その資金の経理を明確にするため、特別会計を設けようとするものであります。
 以下、本案の内容の概略を申上げますと、経済援助資金は、前述の贈与円資金及び資金の運用収益金等を以て充て、工業の助成その他経済力の増強に資するため必要な費途にこれを運用又は使用することとし、又本特別会計は、贈与円の受入金、運用資金の回収金、運用収益金等を歳入とし、資金の運用又は使用のための支出金を歳出として、その経理を行うことといたしております。
 なお、本案は、政府原案では、この法律は昭和二十九年四月一日から施行することとなつておりましたが、衆議院でこの法律は、公布の日から施行し、昭和二十九年度分の予算から適用することに修正されました。
 本案の審議に当りましては、協定と本会計との関連、資金の費途、その運用及び使用方法等について熱心な質疑が行われましたが、その詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、討論に入り、菊川委員より反対の意見が述べられ、採決の結果、多数を以て、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 次に、閉鎖機関令の一部を改正する法律案について申上げます。
 閉鎖機関の特殊清算につきましては、昭和二十年九月以来、鋭意その処理を進めて参りまして、当初千八十八に上る閉鎖機関のうち、現在まで約千五機関が特殊清算の結了を見たのであります。従来閉鎖機関の清算は、その本邦内にある財産についてのみ行われ、在外店舗にかかる債権債務は、清算の範囲外のものとされておつたのでありますが、今般、在外財産問題調査会の答申を参酌し、これまで未処理のままとなつていた未払送金為替及び外地預金等にかかる債権債務を弁済する途を開くと共に、閉鎖機関の清算を促進するために必要な措置を講ずることを目的としておるのであります。
 次に、本案の主な内容についてその概略を申上げます。第一に、閉鎖機関は、在外店舗にかかる債権債務のうち未払送金為替、外地預金等については、本邦内に住所を有する個人、法人及びその他の閉鎖機関、在外会社に対して、現在残存しておる国内資産の限度内で支払を行い得ることとし、その場合、受領人に対して有する反対債権を相殺できるようにしようとするものであります。なお、これら債権債務のうち現地通貨建乃至外貨建のものについて、その額の本邦通貨額への換算につきまして所要の規定を設けようとするものであります。第二に、閉鎖機関の外地にある財産についても、特殊清算人は大蔵大臣の承認を得て、管理、処分等の職務を行い得るものとしようとするものであります。第三に、閉鎖機関の債務のうち少額のものについても、これを信託又は供託して弁済を免れ得ることとし、又、閉鎖機関はその発行した社債、営団債につき、銀行に償還の委託をすることにより、その債務を消滅せしめることにしようとするものであります。
 本案審議に当りましては、閉鎖機関の債務のうち少額のものについては、これを信託又は供託することができることとなつているが、その信託又は供託する相手方について、特別の考慮を払う必要があるのではないか。又未払送金為替等の支払金額の限度、換算率の基準の適否等について質疑がなされたのでありますが、それらの詳細は、速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
 質疑を終り、議論に入りましたところ、安井委員より、「在外財産の処理が速かに行われることを希望して賛成する」旨の意見が述べられ、野溝委員より「一、審議会の委員に現地にいた在外資産の関係者を入れること。二、換算率は不徹底であるので、現地の関係者の意見を聽取して決定すべきであること。三、未払送金為替の支払金額の限度を二十万円とすべきであること」などの要望を附して、賛成の意見が述べられ、次いで平林委員より、「一、本案は引揚者の耐乏に報いるに極めて軽少であるので、新内閣によつて完全な措置を講ずべきである。二、去る四月二十三日の本院の決議に鑑み、内閣は退陣すべきであるとの観点より本案に反対する」との意見が述べられ、更に小林委員より、「未払送金為替等の証拠書類をすでに紛失している者も相当あるので、債権者即ち引揚者に有利になるような含みを以て処理されることを希望して養成する」との意見が述べられたのであります。
 討論を終り、採決の結果、多数を以て、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 次に、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案について申上げます。
 先ず本案の提案の理由を申上げます。旧日本占領地域に本店を有する会社、いわゆる在外会社の特殊整理につきましては、従来この政令の規定に従い、その本邦内にある財産の特殊整理を実施して参つているのでありますが、当初指定されました千百七十五社のうち、本邦内に資産がないため指定を解除したものが六百三十社、整理を完結したものが五百八社で、現在未整理のものは僅かに三十七社となつております。この在外会社のうち、金融機関である在外会社につきましては、その在内残余財産がある場合にも、未払送金為替及び在外預金にかかる債務等は在外の債務であるとして、従来この特殊整理の対象から除外されておりましたところ、今回在外財産問題調査会から内閣総理大臣に対し、提出された答申書の趣旨に従い、これらの債務を支払う途を開くと共に、在外会社の特殊整理を促進するために必要なる措置を講ずることを目的としているのであります。
 以下、本案の主な内容につきまして、その概要を申上げます。
 第一に、在外金融機関は、在外店舗にかかる債権債務のうち未払送金為替、在外預金等にかかる債務を特殊整理の対象に組入れ、これを本邦内に住所を有する個人、法人、閉鎖機関及び在外会社に対して、現在残存している国内資産の範囲内で小額債務を優先して支払うこととし、その場合受領人に対して有する反対債権を相殺することができることといたしております。
 第二に、これらの債権債務の中には、現地通貨による表示のものもありますので、これらを本邦円貨額に換算するための所要の規定を設けることにいたしております。
 第三に、在外会社は金融機関から未払送金為替、又は在外預金にかかる債権の支払いを受けることができることになつております。本案審議の詳細は速記録によつて御承知願います。
 質疑を終り、討論、採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定をいたした次第であります。
 次に、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案について申上げます。
 戦後、金融機関は、金融機関経理応急措置法及び金融機関再建整備法に基いて、その旧勘定に属する資産及び負債の整理を行うこととなり、昭和二十三年、その大多数は、資本及び第二封鎖預金等の切捨てを行い、更に相当数のものは政府の補償を受けることにより、旧勘定の最終処理を完了したのでありますが、その際、これらの金融機関は旧勘定の整理に伴う事後調整のために、新たに調整勘定を設け、前に旧勘定に属した資産負債の処分その他によつて生じた損益をこの勘定で経理することになつたのであります。その後この調整勘定の利益金は予想以上に蓄積され、相当数の金融機関は、右利益金を政府補償の返済、旧預金者に対する分配等に充てて来たのでありますが、この際、右調整勘定の処理を一層促進すると共に、当初金融機関の再建整備に当り、その対象から外された在外店舗にかかる資産及び負債についても、可能な限り速かにその処理を促進するために本案が提出されたのであります。
 次に、本案の主な内容につきまして、その概要を申上げます。第一に、金融機関は、前に旧勘定に属した資産につき再評価を行なつた後にこれを処分したときは、その処分益に新たに再評価差額をも含めて、これを調整勘定で経理することとし、この場合には再評価積立金を取りくずさなければならないこととしようとするものであります。
 第二、金融機関は、前に旧勘定に属した資産及び負債について、その整理の促進を図るため、新たに確定評価基準を設け得ることとし、これによる評価を行なつた場合にも調整勘定を閉鎖することができることにしようとするものであります。
 第三に、金融機関は、その調整勘定を閉鎖する際、同勘定に利益金の残額があるときは、確定損を負担した株主に対し、その負担額及び利息に相当する金額を分配することができることとし、但し、在外店舗を有した金融機関につきましては、在外資産負債処理勘定に先ず繰入れて在外負債の支払財源に充て、更にこの在外勘定を閉鎖する際、同勘定に資産の残額があるときは、旧株主へ分配するということにいたそうとするものであります。
 第四に、金融機関の在外資産負債につき、先に在外財産問題調査会が内閣総理大臣宛提出いたしました答申の趣旨に則り、いわゆる未払送金為替や在外預金の支払の途を開くことにしようとするものであります。即ち金融機関は新たに在外資産負債処理勘定を設けまして、当該金融機関への帰属が確定した在外資産調整勘定利益金の残額等を同勘定の資産の部に計上し、これらの資産の範囲内でその金融機関が本邦内に住所を有する者、閉鎖機関又は在外会社に対して負つておる未払送金為替及び外地預金等の在外債務を支払うことにしようとするものであります。併しながら当面この在外資産負債処理勘定の資産の部に計上されるのは、一、二の銀行を除いては極めて僅少にとどまると思われますので、特に未払送金為替につきましては、一件の金額五万円までの部分は優先的にこれを支払うこととし、その不足する支払資金を調整勘定から借入れることができることにしようとするものであります。
 なお以上、未払送金為替、外地預金等の債務又は債権のうち、現地通貨建乃至外貨建のものについては、その額の本邦通貨への換算につきまして別表の規定を設けることにしようとするものであります。
 要するに今回の改正は、営業を続けながら整理を進めるという金融機関再建整備法の立法の趣旨を尊重しつつ、できるだけ関係者間の利害の調整を図ろうとするものでありまして、従つて在外資産負債の関係で、調整勘定利益金の分配を今日まで認めなかつた銀行につきましても、諸措置と併行して旧預金者に対する分配を認める方向で考えられているのであります。
 委員会における審議に当りましては、調整勘定に属した資産及び負債の整理状況並びに資産再評価積立金の取崩し、送金小切手、在外預金等に対する支払の見通し等の諸点について熱心な質疑応答が交わされたのでありますが、それらの詳細は、速記録によつて御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、討論採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
 最後に、大蔵省関係法令の整理に関する法律案について申上げます。
 本案は、大蔵省関係法令のうち、すでに実効性を喪失したもの等を整理のため廃止し、併せて事務手続を簡素化するため、たばこ専売法等を改正すると共に、これらの法令の改廃に伴つて経過措置を必要とするものにつき所要の規定を設けようとするものであります。
 以下、その大要について申上げますと、先ず第一に、明治四年に制定せられました太政官布告、新紙幣を発行する件外二百五十九件の法令は、おおむね特定の時期を対象とし、その時期における特定の措置を規定したものでありますが、現在においてはすでに実効性を失つておりますので、これらの法令を廃止することといたしております。
 第二に、事務簡素化の見地から、巻紙の輸出につきまして、従来の日本専売公社の一手買取制を廃止し、日本専売公社の輸出と並んで、製造業者等の自己輸出を認めることとし、又にがり専売は、昭和十九年四月金属マグネシウムの増産確保の要請によつて実施されたものでありますが、現在においては実施当時の目的の大部分は失われておりますので、この際これを廃止することとし、たばこ専売法、塩専売法等の一部を改正することといたしております。
 第三に、終戦後の日本銀行が国内居住者から保管した外国通貨等のうち、今なお保管しているものにつき、これを各所有者に返還するため、この際、右保管を取りやめることとし、又終戦後は財閥系会社に対し、同一資本系統の会社の株式の保有を禁止した際、特に金融機関に対しては、担保権の行使等により取得した株式に限り、例外的に保有を認めておりましたが、最近に至りこの保有株式の処分も完結いたしましたので、この際この特例を廃止することとし、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に塞ぐ大蔵省関係諸法令の措置に関する法律の一部を改正することといたしております。右のほか、以上に述べました法令の改廃に伴つて経過措置を必要とするものにつきまして、所要の規定を設けることといたしております。
 本案の審議の詳細は、速記録によつて御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上、御報告申上げます。(拍手)
#87
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより六案の採決をいたします。
 先ず交付税及び譲与税配付金特別会計法案
 経済援助資金特別会計法案
 以上、両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#88
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて、両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#89
○議長(河井彌八君) 次に、閉鎖機関令の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#90
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて、本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#91
○議長(河井彌八君) 次に、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案
 金融機関再建整備法の一部を改正する法律案
 大蔵省関係法令の整理に関する法律案
 以上、三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#92
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて三案は、全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#93
○議長(河井彌八君) 日第十一、農林省関係法令の整理に関する法律案
 日程第十二、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#94
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。農林委員長片柳眞吉君。
   〔片柳眞吉君登壇、拍手〕
#95
○片柳眞吉君 只今議題となりました農林関係二法案につきまして、農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
 先ず農林省関係法令の整理に関する法律案について申上げます。
 本法律案は、すでに他省のものについても行われましたように、政府の企図する行政事務の改善、簡素化の一環として、農林省関係の法令について取りあえず整理すべきものと認められるものを廃止改正を行わんとする趣旨を以て提案せられたものでありまして、明治六年太政官布告第百六十三号、人家稠密の地において牛豚類の豢養を禁ずるの件外七法令を廃止すると共に、占領行政の遺物である桑園の登録、家畜人工授精師の毎年の届出義務というような不要と認められる制度を廃止するため、蚕糸業法及び家畜改良増殖法の一部を改正せんとするのがその内容であります。
 委員会におきましては農林当局から逐条的な説明を聴取する等審議が行われたのでありますが、ここで特に申上げることもなく、採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。
 農地、海流排水施設及び農道等の農業用施設、林地荒廃防止施設及び林道等の林業用施設並びに水産業協同組合の維持管理に属する外郭施設及び繋留施設等の漁港施設等の災害復旧につきましては、従来これら復旧事業を行う個々の者に対して、国から直接に補助することになつていたのでありますが、年々頻発する災害に伴いまして、復旧事業の件数も、又事業量も累増し、これら個々の者に対して、一々国が直接補助金を交付して、これがすべてについて責任を負うことは実際上不可能であります。現に補助の指令は国が行なつてはおりまするが、その支払は、都道府県に委任するというようなやり方をいたしておりまして、かような権限の不明確なやり方が不正不当事件発生の重要な原因となつているとの見解によつて、この際かようなやり方を改めまして、(「政府はどうした」と呼ぶ者あり)都道府県が行う復旧事業については、従来通り国から、直接都道府県に対して補助金を交付するのでありますが、都道府県以外の者の行う復旧事業につきましては、都道府県から、その者に補助金を交付し、それに対して規定の率によつて、国から補助金を都道府県に交付する、いわゆる間接補助にしようとするのが本法律案提案の趣旨及びその内容であります。なお、国からの補助率は、いずれの場合も従来通りであります。
 委員会におきましては、農林当局との間に、「今回の改正は、批難事項を都道府県に転嫁することになるものとも見られるが、会計検査院当局の意向はどうであるか。都道府県は単に経由機関であるに過ぎないのであるが、それで以て果して所期する成果が得られるか。今回の措置は、将来における補助率引下げの前提ではないか。間接補助に改めることによつて、復旧作業に遅延を来たすようなことがないか。都道府県における事務費が増大することと思うが、これに対して国庫補助の裏付けが用意されているか。都道府県における事務費に対する国庫補助が激減せられ、要員維持に支障を来たしている向きがあるが、これが対策は如何であるか」等、諸般の問題について質疑が行われ、これに対して、「災害復旧国庫補助については、当初から間接補助で行きたい希望であつたが、占領下でその希望が容れられず、ために直接補助としたものであるが、併し実情は、都道府県に対する委任施行というような複雑なやり方をしていたのであつて、今回の改正によつて都道府県の責任が明確化せられ、成果が収められると思われる。会計検査院の意向も本措置に養成である。又都道府県の事務費の補助については善処したい」等、政府側から答弁があつたのでありまして、これらの詳細は、会議録に譲ることを御了承願いたいのであります。
 かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、特に発言もなく、採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 右、御報告いたします。(拍手、「政府は出ていない」「前例になる駄目だ、駄目だ」「悪例を残しちやいかんよ」と呼ぶ者あり)
#96
○議長(河井彌八君) 只今、農林当局の出席を求めております。
   〔「議長、休憩」「政府は怠慢だ」その他発言する者多し〕
#97
○議長(河井彌八君) 諸君に申します。
 議長は、政府から提出せられておるこの議案が日程に載つておるにかかわらず、政府当局の出席のないことを遺憾といたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり、拍手)そこで、只今農林政務次官の出席を求めておりますが、まだ見えません。
 よつて、諸君にお諮りいたします。この両案、即ち日程第十一及び第十二の両案の採決は、本日はこれを延期いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#98
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。さように決します。
     ―――――・―――――
#99
○議長(河井彌八君) 参事に報告いたさせます。
   〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書を提出した。
 国務大臣等の私企業等への関与の制
 限に関する法律案修正議決報告書
     ―――――・―――――
#100
○議長(河井彌八君) この際、日程に追加して、国務大臣等の私企業等への関与の制限に関する法律案(八木幸吉君外人十二名発議)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#101
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長小酒井義男君。
   〔小酒井義男君登壇、拍手〕
#102
○小酒井義男君 只今議題となりました国務大臣等の私企業等への関与の制限に関する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
 本法律案は、参議院議員八木幸吉君ほか八十二名の発議にかかるものであります。先ず、発議者の本法律案の提案の理由として説明されておるところを御報告いたします。
 内閣総理大臣、その他の国務大臣、内閣官房長官及び政務次官は、我が国の行政府において、最も重要な職であつて、その政治的活動が、我が国の商業、工業、金融業等の私企業には申すに及ばず、私企業以外の事業にも有形無形の影響を及ぼすことは言をまたないところであります。若しこれらの人人がこれらの事業に関与いたしている場合には、その公正なる職務を遂行する上に支障を来たすことも予想されるのみならず、その職務遂行の上に、世上の疑惑を招く虞れが多分に予想せられる。いわんや官紀がややもすれば乱れんとしている今日においては、右に挙げたような要職にある人は、いやしくも世上の疑惑を招くがごとき私企業等の関係を一切断ち切つて、その行動の公正を期することが必要であろうと思われる。
 以上が提案理由として述べられたところであります。
 次に発議者代表から、本法律案の提案理由の説明の補足として説明された要点を御報告いたします。
 この法律案の主な狙いは、国務大臣等は行政府における最も重要な職であるので、若しこれら国務大臣等が私企業等に関与いたしておつたならば、一方においては、その本務を公正に行う上に支障を来たすことが予想せられ、又、他方においては、これらの人々が一身を捧げて、その本務に専念することが妨げられることともなるので、この法律案では、この二つの点を防止せんとするものである。本来、国務大臣等の私企業等への関与を制限することは、国務大臣等の重要な職責に鑑み、政府みずからの手で自粛されるべき筋合いのものであつて、これがために新たに立法の必要はないようにも考えられるが、すでに過去においても、国務大臣等で私企業に関与しておつた人々もあり、又現閣僚の中にも私企業に関与している人があることは、当委員会で緒方国務大臣の答弁によつて明らかであるので、現在の世情から見て、これを現状の主まで、もはや放任しておくことのできない段階に達しておるものと認め、ここにこの法律案を発議することに決心した次第である。
 以上が、この本法律案の提案趣旨の補足説明であります。
 内閣委員会は、委員会を八回開きまして、本法律案の審査に当り、この間、緒方国務大臣の出席を求めまして、委員長よりこの法律案に関連して、次の三点について政府の所見を聴取いたしました。
 その第一点は、「政府は、国務大臣の服務について、明治二十年勅令第三十九号官吏服務紀律の適用ありと解釈されておるかどうか。
 その第二点は、「若し国務大臣に、この官吏服務紀律の規定の適用ありとの政府の解釈でありとすれば、次に政府に伺いたい点は、その第七条には、官吏は本属長官の許可を得るに非ざれば、営業会社の社長又は役員となることができない。又その第十三条には、官吏は本属長官の許可を得るに非ざれば、本職のほかに給料を得て他の事務を行うことができないという趣旨の規定があるが、現在、国務大臣が私企業等に関与する場合には、内閣総理大臣は、これらの規定を適用して、これらの規定にある本属長官として許可を与えておられるのであるかどうか。
 その第三点は、「国務大臣の服務に関し、この官吏服務紀律の適用の有無にかかわらず、政府は、今後国務大臣の私企業等への関与について、全面的にこれを許さないという方針であるかどうか。
 以上三点につきまして、政府の所見を質したのでありますが、これに対し、緒方国務大臣より、次の答弁がありました。
 第一点について。国務大臣の服務については、「官吏服務紀律によつて規律されておるものと解釈する。」
 第二点について。「従来から、国務大臣が私企業に関与する場合には、内閣総理大臣は、官吏服務紀律によつて、国務大臣に就任の際、又は在任中のときは、その都度許可を与えておる。即ち内閣総理大臣を本属長官としておる。」
 第三点について。「国務大臣の私企業への関与については、職務に直接関係のないものをも含めて、一律に全面的に禁止することは、必ずしも実情に即するものでないと考える。今後、職務と私企業との関係、私企業における地位等を慎重に考慮して、個々の場合について善処したいと考えておる。なお、制度上の問題としては、公務員制度調査会を設けることになつておるので、その意見も参酌して更に検討を加えて行きたい考えである。
 以上が、右三点に対する政府の所見として明らかにされた点であります。
 なお、緒方国務大臣より、この問題に関連して、「最近、種々の汚職問題が相次いで起つておるので、そのようなことも勿論、従来内閣総理大臣の許可、不許可の際に、考慮に入れたことではあるが、更に今後も、そのような点については厳重に研究し、許可、不許可をきめることが必要ではないかと考えておる」との発言がありました。
 内閣委員会は、本日の委員会において、本法律案についての質疑も終結いたしましたので、討論に入りましたところ、長島委員より、本法律案に対し次の修正案が発議されました。これを朗読いたします。
  国務大臣等の私企業等への関与の
  制限に関する法律案に対する修正
  案
  国務大臣等の私企業等への関与の
 制限に関する法律案の一部を次のよ
 うに修正する。
  題名中「国務大臣等」を「国務大臣」
 に改める。
  本則中「、内閣官房長官及び政務
 次官」を削る。
 修正案発議の理由としては、原案におきましては、私企業等への関与の制限を受ける者の範囲を内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房長官及び政務次官といたしておりますが、内閣官房長官及び政務次官は、国務大臣と比較いたしまして、その内閣における地位及び職務権限が著しく異なつておりますので、これらを国務大臣と同一に律する必要はないものと認めまして、ここに本法律案に対し、修正を発議する次第であります。
 討論の終了後、先ず修正案について採決をいたしましたところ、全会一致を以て可決せられ、次いで修正案を除いた原案について採決いたしましたところ、これ又全会一致を以て可決すべきものと議決せられました。
 以上、御報告申上げます。(拍手)
#103
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#104
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
#105
○議長(河井彌八君) この際、お諮りいたします。農林委員長から、凍霜害に関する実地調査のため、埼玉県、群馬県に上林忠次君、河合義一君、群馬県に松永義雄君、栃木県に関根久藏君、鈴木一君を、明日から二日間の日程を以て派遣されたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通り議員を派遣することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#106
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
     ―――――・―――――
#107
○議長(河井彌八君) 日程第十四、軍事郵便貯金等特別処理法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。郵政委員長池田宇右衞門君。
   〔池田宇右衞門君登壇、拍手〕
#108
○池田宇右衞門君 只今議題となりました軍事郵便貯金等特別処理法案について、郵政委員会における審議の経過並びに結果につき御報告を申上げます。
 この法律案は、戦時中に設けられた野戦郵便局又は海軍軍用郵便所で取扱われた軍事郵便貯金及び軍事郵便為替並びに旧外地等にあつた郵便局で取扱われた外地郵便貯金、外地郵便為替及び外地郵便振替貯金について、貯金通帳等に表示されている金額を一定の換算率により換算して支払うこととし、軍事郵便貯金及び外地郵便貯金の貯金通帳と引換えに、新たに通常郵便貯金の通帳を交付し、又、預金者等を保護するため、払戻証書等の有効期間についで特例を設けようとするものであります。
 従来、これら為替貯金等の支払に関し、郵政当局が現在までとつて来た措置について申上げますと、軍事郵便貯金につきましては、昭和二十年八月十六日以後の預入金のうち、千五百円を超える部分、外地郵便貯金及び外地郵便振替貯金につきましては、同年十月一日以降の預入金及び払込金の全額について、それぞれ支払を留保し、又、軍事郵便為替及び外地郵便為替につきましては、同年九月三十日以前に本邦に到着したものの千円を超える部分、及び同年九月二十四日以後本邦に到着したものの全額について支払を留保して参つたのでありますが、この支払の制限につきましては、従来預金者や受取人からその解除方を強く要望されていたところであります。
 ところが、今回軍事郵便貯金と同様に、その支払が停止されておりました一般の在外金融機関の取扱にかかる送金為替及び預貯金について支払の措置がとられることとなりましたので、軍事郵便貯金等につきましても、同様支払の措置を講ずることが必要でありますので、在外財産問題調査会に諮問いたしまして、その答申に基いて支払の制限を撤廃しようとするものでありますが、その預入金等が、終戦後の価値の下落した現地通貨等によつて受入れられている実情を考慮いたしまして、表示金額のままで支払をすることは適当でないので、この点につきましても、右調査会の答申に基きまして、その取扱機関の所在地域及び表示金額に応じ、一般の金融機関の未払送金為替又は在外預金の支払の際の換算率を適用し、その金額を換算して支払をいたそうとするものであります。而してその換算の方法は、一般金融機関の未払送金為替及び在外預金等の支払措置とは若干異なり、軍事郵便貯金等の取扱実情及び軍事郵便貯金等が少額債券である特殊性を考慮して、取扱機関の所在地域と、各地域発行の通帳の表示金額につき、それぞれ甲、乙、丙と三段階の換算率によつて表示金額を換算しようとするものであります。なお、以上のほか、本件に基いて支払をなすに当つての手続として、通帳の引換、払戻証書等の有効期間の特例等について規定したものであります。
 委員会における質疑の主なるものを申上げますと、第一に、「本法律案によつて救済せられる通帳数及び金額は全体で幾らか」との問に対しましては、「通帳延数約七十四万五千通に達し、支払総額は約四億二千万円である」との答弁があり、又、「支払の最高額はどのくらいか」との問に対しましては、「十万円以内である」との答弁がありました。又、「換算率としてこの別表は如何にして定めたか」につきましては、「郵政大臣において換算率をみずから制定することはできないので、一般在外財産問題処理方針の問題について、内閣に設置せられている在外財産問題調査会の答申によつたと同様、同調査会の軍事郵便貯金等の処理についての答申に基くものである」との答弁がありました。又、「七十数万通の貯金又は為替を本法に基いて処理することは、相当の労働量であり、これがためには定員の措置を必要とすると思うが」との問に対しましては、「郵政局は、すでに本法律実施以前においても、一定の制限の下に支払をしているので、従つて定員についてもそれを見込んでおり、既定定員によつて処理し得る」との答弁がありました。最後に、「本法実施のために要する四億二千万円はいずこにおいて負担することとなるか」との質問に対しましては、「臨時軍事費特別会計の整理の段階において、これと睨み合せて最終的に決定せらるべきもので、恐らく一般会計において負担することになるであろう」との答弁がありました。
 かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、三木委員より、「本法律実施に伴い支払に要した資金については、将来政府は一般会計よりこの全額を補填すべきである」との附帯条件を附して賛成する旨の発言がありました。他に発言もなく、討論を終結し、採決の結果、三木委員の発言の通り附帯決議を附して、全会一致を以て、可決すべきものと決定した次第であります。
 右、御報告申上げます。(拍手)
#109
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#110
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて、本案は可決せられました。(拍手)
 議事の都合により、本日はこれにて延会いたします。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後九時十七分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、議員の請暇
 一、警察大学における憲法違反の疑いある教育に関する緊急質問
 一、院議尊重に関する内閣総理大臣に対する緊急質問
 一、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案
 一、教育公務員特例法の一部を改正する法律案
 一、日程第十三 補助金等の臨時特例等に関する法律案
 一、日程第十六 厚生年金保険法案
 一、日程第十七 船員保険法の一部を改正する法律案
 一、日程第十八 厚生年金保険及び船員保険交渉法案
 一、日程第一 漁港審議会委員の任命に関する件
 一、日程第二 けしの栽培並びにあへんの生産、国際取引、卸取引及び使用の制限及び取締に関する議定書の批准について承認を求めるの件
 一、日程第三 通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批准について承認を求めるの件
 一、日程第四 離島振興法の一部を改正する法律案
 一、日程第五 交付税及び譲与税配付金特別会計法案
 一、日程第六 経済援助資金特別会計法案
 一、日程第七 閉鎖機関令の一部を改正する法律案
 一、日程第八 旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案
 一、日程第九 金融機関再建整備法の一部を改正する法律案
 一、日程第十 大蔵省関係法令の整理に関する法律案
 一、日程第十一 農林省関係法令の整理に関する法律案
 一、日程第十二 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案
 一、国務大臣等の私企業等への関与の制限に関する法律案
 一、議員派遣の件
 一、日程第十四軍事郵便貯金等特別処理法案
ソース: 国立国会図書館
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