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1953/06/02 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 本会議 第57号
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1953/06/02 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 本会議 第57号

#1
第019回国会 本会議 第57号
昭和二十九年六月二日(水曜日)
   午前十時五十九分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第五十七号
  昭和二十九年六月二日
   午前十時開議
 第一 防衛庁設置法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第二 自衛隊法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案(鶴見祐輔君外八名発議)(委員会審査省略要求事件)
 第四 第十次計画造船実施促進に関する決議案(松浦清一君外十名発議)(委員会審査省略要求事件)
 第五 国有財産特別措置法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第六 企業再建整備法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第七 精神衛生法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第八 小田急電鉄参宮橋駅附近の踏切改善に関する請願(委員長報告)
 第九 小田急電鉄代田二号踏切等改善に関する請願(委員長報告)
 第一〇 鉄道踏切施設整備強化に関する請願(委員長報告)
 第一一 赤穂線鉄道敷設促進に関する請願(委員長報告)
 第一二 長崎本線回り東京、長崎両駅間特別急行列車運行に関する請願(委員長報告)
 第二二 第十次造船計画促進に関する請願(委員長報告)
 第一四 第十次造船計画促進等に関する請願(委員長報告)
 第一五 ダムの漁業権に関する請願(委員長報告)
 第一六 東京内湾のヒトデ被害対策に関する請願(委員長報告)
 第一七 第十次造船計画促進に関する陳情(委員長報告)
 第一八 長尾、木津両駅間にジーゼルカー運行の陳情(委員長報告)
 第一九 別府湾の遺棄毒ガス弾による漁業被害補償等の陳情(委員長報告)
    ―――――――――――――
#2
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、防衛庁設置法案
 日程第二、自衛隊法案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長小酒井義男君。
   〔小酒井義男君登壇、拍手〕
#5
○小酒井義男君 只今議題となりました防衛庁設置法案及び自衛隊法案の内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
 本二法案は去る三月十七日、本会議において、政府より本二法案提出の趣旨説明があり、翌十八日、これに対する質疑が行われたものであります。本二法案につきましては、今申述べましたように、政府よりすでに趣旨説明がありましたので御承知のところと存じますが、法案の重要性に鑑みまして、ここに重ねて二法案提案の理由として政府の説明するところを御報告いたします。
 現在の保安庁は、昭和二十七年八月、当時の警察予備隊及び海上警備隊を統合して創設したものであつて、我が国の平和と秩序を維持し、人命財産を保護するため特別の必要ある場合において行動することを任務としたものである。保安庁は創設以来、保安庁法の規定するところに従つてその任務を遂行するため、着々諸般の整備を図り必要なる訓練を行なつて今日に至つている。然るに今般政府においては、現在の国際及び国内諸情勢に鑑み、我が国の平和と独立を守り国の安全を保つため、この際更に自衛力を増強することを適当と認めるに至つた。よつて今回保安隊及び警備隊を陸上自衛隊、海上自衛隊に改め、自衛官等の定員を増加すると共に、新たに航空自衛隊を設けることとし、且つその任務として、外部からの侵略に対する我が国の防衛を明確に規定する等の目的を以て、保安庁法を全面的に改正して、防衛庁設置法及び自衛隊法を制定せんとするに至つた次第である。以上が本二法律案の提案理由として政府の述べたところであります。
 次に、両法律案の内容の概略について御説明をいたしておきます。
 第一に、防衛庁設置法案について申上げます。防衛庁は総理府の外局として設置されることになつておりまして、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を管理し、運営し、これに関する事務を行うことを任務とするものとなつております。防衛庁の長は、従前通り国務大臣を以て充てることとなつておりますが、今回内部部局に新たに教育局を加えると共に、防衛庁の所掌事務に関する基本的方針の策定について長官を補佐する参事官の制度を設けることとし、他面、従前ありました内部部局の課長以上の職に対する制服職員の経歴者の任用制限はこれを設けないこととされております。
 次に、幕僚監部につきましては、航空自衛隊の新設に伴い、従前の第一幕僚監部、第二幕僚監部に相当する陸上幕僚監部、海上幕僚監部のほか、航空自衛隊についての長官の幕僚機関として、新たに航空幕僚監部を設けることとし、又自衛隊の増強に伴い陸上、海上、航空の各自衛隊を統合した見地からの防衛計画、後方補給計画、訓練計画の方針の作成及び調整や、出動時における指揮命令の統合調整等に関して、長官を補佐することを任務とする統合幕僚会議を新設して、自衛隊の総合的且つ有効なる運営を図ることを期することとされております。なおこのほか、陸上、海上、航空各自衛隊の所要物件、並びに役務の調達の可及的一元化と能率化を図り、建設工事等についても、これを統一的且つ経済的に処理せしめるため、新たに防衛庁の附属機関として調達実施本部及び建設本部を設けることになつております。
 国防会議は、国防に関する重要事項を審議する機関として内閣に置かれることとなつておりまして、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等に関して、内閣総理大臣の諮問に答え、国防に関する重要事項につき、必要に応じ内閣総理大臣に対して意見を述べることを任務とするものであり、国防会議の構成、運営等は、別に法律で定めることとなつております。
 第二に一自衛隊法案について御説明いたします。この法律案は、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及権限、隊員の身分取扱等に関し、おおむね現在の保安庁法の内容を基礎として規定したものでありますが、次に述べる任務に即応し、必要な規定の追加、整備を行なつております。先ず自衛隊の任務としては、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対して我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じて公共の秩序の維持に当るものとして、その防衛の任務が規定されております。
 次に、自衛隊の行動につきましては、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛するため必要があるときに、内閣総理大臣は原則として事前に、特に緊急の必要のある場合には事後、直ちに国会の承認を得て、自衛隊に対し防衛出動を命ずることができることとされております。この防衛出動時における自衛隊の武力行使は、国際の法規、慣例を遵守し、且つ事態に応じ合理的に必要な限度にとどまるべきものとし、又この場合には原則として都道府県知事を通じて、一定の地域において施設の管理、物資の収用、業務従事命令等を行うことができることとしております。
 この法律案におきましては、このような事態に処して自衛隊の防衛に当る実力を急速且つ計画的に確保することを目的とし、新たに志願による予備自衛官制度が規定されております。予備自衛官は、防衛出動時に内閣総理大臣の承認を得て発せられる長官の防衛招集命令に応じた場合には自衛官として勤務し、その他の場合においては、所定の期間、訓練招集に応じて訓練を受ける以外には、勤務することのない隊員であつて、その採用は自衛官等の退職者中より志願により、三年を期間として任用することとし、その手当等について、規定されております。
 この法律案におきましては、前述の防衛出動のほか、公共の秩序維持のため、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般警察力を以ては治安を維持することができないと認められる場合における内閣総理大臣の命令による出動、治安維持上重大な事態につき、都道府県知事の要請があつた場合における出動、海上における警備行動、災害時における救援のための行動等、すべて現行保安庁法において認めていると同様の規定を設けておりますが、更に外国の航空機が不法に我が領空に侵入した場合における必要な措置について規定されております。
 この法律案中に規定するその他の事項はおおむね保安庁法と同様でありますが、この法律案におきましては、自衛隊の指揮監督、部隊等の組織及び編成の大綱等を規定し、隊員の服務についてのよるべき明確な規定を設け、罰則を整備し、関係法律の適用について一層の整備を行う等、必要な整備を行なつております。なおこの法律の施行に伴い、現在の海上公安局法はこれを廃止することとされております。
 なお防衛庁設置法は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において、政令で定める日から施行し、自衛隊法は防衛庁設置法施行の日から施行する。但し保安隊から自衛隊に切替えられる職員の服務の宣誓等に関し、必要な規定は公布の日から施行することとなつておるのであります。以上が本二法案の内容の概略であります。
 本二法案は、五月七日、衆議院本会議において可決せられ、即日、本院に送付せられ、直ちに内閣委員会に本付託となつたものであります。本委員会におきましては、当時行政機関職員定員法の一部を改正する法律案の審査の途上にあつたのでありますが、今申述べましたような本二法案の重要性に鑑み、一時定員法改正に関する法律案の審議を中止いたしまして、直ちに本二法案の審査に入つたのであります。
 内閣委員会におきましては、本二法案の重要性に鑑み、法案の審査の順序として先ず政府当局より、二法案につき提案理由並びにその内容ついて詳細なる説明を聴取し、次いで総括質疑、一般質疑及び逐条質疑の順序によつて周到なる審議の歩を進める方針の下に、先ず五月十九日より四日間に亘り、吉田内閣総理大臣及び木村保安庁長官に対し総括質疑を行い、次いで五月二十四日より一般質疑に入り、主として緒方国務大臣、木村保安庁長官、岡崎外務大臣、小笠原大蔵大臣、愛知通商産業大臣、大達文部大臣、加藤法務大臣の各省大臣その他政府委員との間に質疑応答を重ね、次いで両法案の逐条審議に入り、最後に再び総括質問を行なつたのであります。
 なおこの間、法案審査の慎重を期するため、去る五月十八日、公聴会を開きまして、中村哲君外五名の公述人より、二法案に対する賛否の意見を聴取いたしたのであります。
 防衛庁設置法案及び自衛隊法案の両法案は、相互に不可分の関係のあるものでありますため、委員会における総括質問、一般質問の段階においては、終始両法案を一括して審議を進めたのでありますが、今、法案審議の過程におきまして、問題の中心となりました主なる点につきまして御報告申上げます。
 第一は、防衛二法案と憲法との関連の問題、第二は、国防会議に関する問題、第三は、最高指揮権の抑制に関する問題、第四は、陸、海、空、三自衛隊の調整に関する問題、第五は、防衛計画と一般産業計画との調整の問題、第六は、自衛力増強と国庫負担力の問題、第七は、防衛庁の機構に関する問題、第八は、制服職員の内部部局の幹部への採用制限の撤廃に関する問題、第九は、隊員の精神的支柱の問題、第十は、海外派兵の問題等であります。
 さて第一は、防衛二法案と憲法との関連問題であります。従来吉田総理は、自衛権の発動としての武力行使はできない。武力以外の外交等の手段によつて自衛すべきであるとし、自衛権の行使を目的とした組織制度は認めないと言明し来たつたのでありますが、今次の防衛二法案に盛られておるところは、「明らかに直接侵略及び間接侵略に対し、陸、海、空、三軍方式を確立して武力行使をするということは、吉田総理みずからが、過去の言明を無視しており、吉田内閣は、先に朝鮮動乱の勃発を契機として、急遽警察予備隊を作り、次いでこれを保安隊に改編し、MSA協定の締結に伴つて、更に今回これを自衛隊と称する陸、海、空、三軍方式による部隊を編成するに至り、外敵の侵略に対抗する武力抗争を主目的とするに至つたことは、これは明らかに憲法違反であると断ぜざるを得ないではないか」という問に対し、吉田総理は、「我が国が独立国家である以上は、外敵に対し正当防衛の措置を講ずるということは、独立国として固有の権利であつて、憲法上禁止されておる戦力に達しない程度の自衛組織を持つことは何ら憲法違反ではない。新憲法制定当時は成るほど高遠な理想の下に戦力放棄の条文ができたのではあるが、その後内外の情勢は、深刻な変化を展開して参つておる。防衛二法案の定めるところによつて、我が国の平和と独立を護り、国の安全を保つために日米安全保障条約の範囲内において適当な自衛措置を講ずるということは、何ら憲法に違反するものではない。自衛力を漸増すると申しても、無制限に増強し得るものではないので、一に国力と外界の事情如何によることであつて、今はこの程度が我が国のなし得る限度であろうと思う」と答えているのであります。なお、「戦力のあるなしはともかくとして、国民の中に、自衛隊を軍隊と呼ぶ者が多いという点について吉田総理は、これを如何に考えるか」という問いに対しては、「それは用語の定義の問題であつて、国民が自衛隊を如何に解釈するかという点にかかる問題であろう。国民の考えが戦力のない自衛隊のごときものを軍隊と呼ぶべしというのであれば、軍隊と称してもよいであろう」と答え、なお、「アメリカの軍事顧問団長ヒギンス少将が、アメリカ三軍記念日の会合の席上で、我々は日本の軍事同盟国であると言つたとのことであるが、日米安全保障条約は、果して日米軍事同盟であるか否か」という問いに対し、吉田総理は、「安全保障条約の内容が示す通りであつて、その解釈は自由である」と答え、木村保安庁長官は、「安保条約を軍事同盟と言えば軍事同盟であり、安保条約は、日本の安全防衛のみを目標としている点から考えて、純粋な意味での軍事同盟とは考えられない」と答えているのであります。
 次に、憲法第九条第二項において「国の交戦権は、これを認めない。」と規定しているが、「外敵侵入に対する自衛隊の出動は、明らかに交戦権の発動ではないか」という質問に対しては、政府当局は、「自衛権と交戦権とは不可分のものであつて、自衛権を行使する範囲内での武力行使は交戦権の行使とは言えない」との見解を堅く持しているのであります。(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)
 次に、「戦力とは如何なる判定標準によるのであるか、又軍隊と戦力との関係について、米ソのごとき厖大なる戦力を有する二、三の国を除いては、現在世界の多数の国々が有しておる軍隊を、政府は戦力にあらずと見るのか」という質問に対して、木村保安庁長官は、「国内の治安維持を目的とする警察といえども、その装備、機能が著しく厖大化すれば戦力というものにもなり得るであろう。自衛隊は、我が国の安全を図るために、外敵の侵入に備えるための部隊ではあるが、近代戦争を有効的確に遂行し得る程度には遙かに及び得ないものであるから、憲法上で言う戦力とは申されない。諸外国の軍備と比較してといつても、それはその国その国の環境、国情が異なるので、一概に断定するわけには行かない。我が自衛隊は、客観的に見て憲法の禁止しておる戦力に達しているか否かを判断すべきであると思う。自衛隊は再々申す通り、近代戦争を有効的確に遂行し得るほどの戦力には、まだまだほど遠いものである」と答えているのであります。
 次に、「緒方副総理が先に、自衛隊は軍隊と警察との中間の特殊なものであると言つたが、この特殊なものとは、憲法第九条第二項の「その他の戦力」に当ると思われるが如何」という質問に対し、政府は、「客観的基準で判定しておるのであつて、その総合実力が戦力と判定されるに至らない限りは、「その他の戦力」にも当らないという見解を持している」のであります
 第二は、国防会議の問題であります。国防会議に関する問題は、本二法案を審議する上においては、中心となるべき重要な問題であり、又国防会議の構成等については、三党折衝の経緯などもありますので、これはあとに改めて詳しく御報告することといたします。
 第三は、最高指揮権の抑制の問題であります。「行政の最高権力者たる内閣総理大臣が、同時に自衛隊の最高指揮官となることは、旧憲法時代の統帥権を想起させるものがあり、この点に関し、何らか内閣総理大臣の独断専行を抑制する方途を講ずべきではないか」との質問に対し、政府は、「部隊に指揮官が要るのは当然であり、その指揮権は三権分立の建前から申して明らかに行政権であり、従つて内閣総理大臣が自衛隊の最高の指揮監督権者になることは当然であるが、総理の諮問機関としての国防会議が設けられ、総理大臣としての権限が行使される場合は、閣議の決定も経るであろうし、新憲法下の今日では、旧憲法時代のごとき統帥権問題などは起り得ない」と答えているのであります。
 第四は、陸、海、空三自衛隊の調整に関する問題であります。「自衛隊は今回新たに陸、海、空三軍方式をとつているのであるが、これは我が国が独力を以て国防態勢を確立しようとするためであるか」という質問に対し、木村保安庁長官は、「今後においても、アメリカと協力態勢を堅持して行く方針である。陸、海、空のバランスは今後の研究課題であり、現在は陸上自衛隊に里きを置いているが、我が国の地理的条件は四面海に囲まれ、海岸線も九千マイルにも及ぶという特殊事情を考慮し、将来海上自衛隊の充実の必要があり、航空自衛隊についても同様拡充を要するものが多々あるが、今直ちにバランスのとれた三軍方式ということは、国費との関係もあつて実現し得ない実情にある」と答えているのであります。
 次に、「三軍方式について、長官の下に陸、海、空の三自衛隊を統卒する指揮官を置く必要はないか。戦前我が国における陸海軍の伝統的対立は、国を破局に陥れたという過去の経験に徴しても、新たに国軍の再建を図るに当つては、その点最も注意を要するものと思うが如何」という質問に対し、木村長官は、「そのために今次の防衛庁設置法案においては、統合幕僚会議を設け、自衛官中の最上位にあるものを専任の議長とし、その下に陸上幕僚長、海上幕僚長及び航空幕僚長を以て会議を組織し、陸、海、空一体となつて長官を補佐せしめることとしたものであつて、統合幕僚会議の議長がまさにその役割を果すものと考えられるから、この場合別に陸、海、空を統轄指揮するものは不要であると考えている」との答弁をしておるのであります。
 第五は、防衛計画を一般産業計画との調整の問題であります。「国防会議は防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱を審議することになつているが、果して調整のとれた産業計画を樹立する見込はあるか。政府はここ数年間に如何なる産業を重点的に育成して行くという考えであるか」との質問に対し、愛知通産大臣は、「防衛計画は飽くまでも我が国の経済力に調整のとれたものであるべきだと思う。現在のところこれに関する産業計画は立つておらないが、ここ数年の見通しとしては、大体の傾向として、船舶、飛行機、弾薬、火薬等の製造に向うのではないかと思われる」と答え、又、「MSA協定締結後は、我が国の産業に急激な変革が招来されると思われるが、ただ単に国際収支の点ばかりを重視して、徒らに再軍備の線を強化する政策をとれば、我が国の産業構造が軍需産業を中心に転換して行く危険があると思われる。我が国を東亜の兵器廠たらしめるというようなことは極めて危険な考え方であり、将来東南アジア等との貿易の不振を招く結果となる心配はないか」という質問に対し、愛知通産大臣は、「現在我が国が持つている既設の設備だけによつても軍需関係の域外発注を十分こなしている状態であるから、今後著しく軍需産業に転換をさせるようなことのない限り、目下のところその心配はないと思われる。なお、防衛関係の産業の構造については、着実に将来長きに亘つて経済第一主義を重点として考えるべきものと思つている」という答弁があつたのであります。
 第六は、自衛力の増強と国庫負担力の問題であります。「我が国の防衛費として国民所得の何パーセント程度を出し得ると思つているか、アメリカの国会内では日本は、日本の歳出総額の二〇%程度は出せるという意見があるということを聞くが、政府は今後も引続き防衛力の漸増を継続して行こうとしているのか」との質問に対し、小笠原大蔵大臣は、「国民所得に対する国防費の割合といつても、富裕な国の国民所得と貧乏国の国民所得とは同一に論じられないと思う。現在の我が国の場合にあつては、国民所得の三%以内くらいが穏やかなところであろうと思われる。本年度の我が国の国防費は千四百五十三億円であるから、その額は歳出総額の一割四分強になつているが、只今のところこの程度が適当なところであろうと思われる」と答えているのであります。
 次に、「自衛隊を作ることは、勿論我が国のためのものではあるが、これは即ちアメリカのためでもあるから、ガリオア、イロア等による債務は棒引されても然るべきだと思うが、政府はこれをどう考えるか」という質問に対し、小笠原大蔵大臣は、「独立国としてガリオア等は一応債務と心得ている。尤も学童の給食等のごとき分については免除されてもいいのではないかと考えている」という答弁があつたのであります。
 次に、「近代国家の国策の中心は財政、外交、国防の三つであるが、自立経済の確立ということは最も重要なことであり、本年度の一兆円の予算の貫徹はいいが、国防関係国費の圧縮と、軟弱外交の排除が大事なのではないか」という質問に対し、小笠原大蔵大臣は、「国防費は国力を超えたものであつてはならない。自衛力の漸増もこの線を逸脱してはならないと思う」と答えているのであります。
 次に、「我が国の国力から見て、本年度の防衛支出予算は多過ぎるのではないか。国力に応じてという考えなら、昭和二十八年度よりはむしろ減額するべきではないか。MSA協定に強圧されて国力にふさわしくない支出を強いられているのではないか。元来軍事費というものは、いずれの国においても累増する傾向を持つているが、明年度予算においては総額千五百億円程度にとどめることができるか」という質問に対し、小笠原大蔵大臣は、「未だ何ら成案を持つているわけではないが、財政計画としては、今年度の額以上を防衛費に支出することは困難であろうが、それも国民所得の増加と国際情勢の変化等をよく勘案して決定されるべきものと思う。但し一兆円予算から見て、本年度の防衛費千四百五十三億円は必ずしも過大であるとは考えていない」との答弁がありました。
 次に、「我が国の自衛力の漸増は、アメリカの援助によるところが多いが、今後とも引続きアメリカの援助を受けるつもりか」という質問に対し、吉田総理は、「我が国の自衛力の漸増は、日米安全保障条約の範囲内において国力の可能な程度以内でやつていることであつて、徒らにアメリカその他、他国の援助に縋つてやつているものではない」と答え、又「駐留軍が全部引揚げた場合、我が国の防衛に要する兵力はどのくらいのものと考えるか」という問いに対しては、「駐留軍の実兵力が全く不明であるが、この点は飽くまでも自主的に考慮すべき問題である」と答えているのであります。「自衛隊の増強と共に米駐留軍は漸次撤退する建前であるというが、米駐留軍の完全撤退の時期はいつ頃の見込みであるか」という問いに対し、政府は、「我が国の自衛力が増大するに連れ、駐留軍の引揚げることは明らかであるが、自衛隊の隊員を募集し、採用するに連れてだんだんに自衛力の増大することは当然であるが、新規採用の者が一人前の自衛隊員となるまでには相当の訓練を要するし、国家財政の上から、にわかに厖大な隊員とその装備、艦船、航空機等を整備することは困難であるから、米駐留軍と同程度に達するまでには、なお相当の日時を要するものと思われるので、只今のところ、はつきりした見通しはつけかねる」との答弁でありました。
 第七は、防衛庁の機構の問題であります。「防衛庁設置法案によれば、防衛庁の内部部局は長官官房のほか、新たに設けられた教育局を加えて五局となつているが、戦前の実績に徴して医務局の設置を必要としないか、軍医学の伝統は一朝一夕にできるものではなく、これを育成して行く必要があると思うが如何」という問いに対し、木村保安庁長官は、「御尤もな御意見ではあるが、直ちに実現することは困難であり、現在、部隊には衛生官を配置して、その下に医務課長を置き、でき得る限り医療衛生の面について意を用いてはいるが、防衛本庁に医務局を設けることは近き将来に実現したいものと考える」との答弁でありました。
 次に、「保安庁長官のブレーンは参事官であるということであるが、定員人名の参事官のうち六名は防衛庁内局の官房長及び五局長に補せられ、残る二名は機動的に長官を補佐する役割を持つものであるとすると、参事官は幕僚長に比して一段高い地位にあるごとくに見えるが、この点はどうであるか。政治が軍事に優先することは不可欠の要件であるが、参事官と幕僚長との関係は、一見官僚優先の観があり、長官は参事官と幕僚長とそのいずれに重きを置いて考えているか」という質問に対し、木村保安庁長官は、「御尤もなお尋ねであるが、参事官も幕僚長も、共に等しく長官の補佐機関として上下はないのであつて、ただ参事官のほうは、専ら防衛庁の所掌事務に関する基本的方針の策定について長官を補佐するものであり、幕僚長のほうは、幕僚監部の所掌事務の面から長官を補佐すると共に、長官の命令を配下の部隊に下達し、執行させるという両面の職務権限を有しているものであつて、結局参事官も幕僚長も、共に長官の最高ブレーンであるには何ら変りはない」との答弁がありました。
 第八は、制服職員の内部部局幹部への採用制限の撤廃に関する問題であります。「この改正案において何故に従来あつたこの制限を撤廃したのか」という問いに対し、木村保安庁長官は、「文官優位という言葉は使いたくない。政治が軍事に優先するということは飽くまでこれを堅持すべきであるが、防衛庁の内部部局の職員と陸、海、空自衛隊の隊員との間の融和を図ることが大事であり、一たび制服職員となつた者は、単に自衛隊員であつたという経歴のみで、如何に適材の士であつても、これを内部部局の幹部には絶対任用し得ないという禁札を設けておくことは有害無益であると信ずる。但し、現在部内に、そういう不平不満があるわけではないし、制服職員を今直ちに内部部局に採用せんがために、この制限を撤廃するというような考えでは毛頭なくて、それぞれに適材適所、而も渾然一体となつて国の安全を図るという崇高なる使命に徹せしめたいとの念願によるものである」との答弁でありました。
 第九は、隊員の精神的支柱の問題であります。「自衛隊の隊員の支柱をどこに置くのか」という質問に対し、木村保安庁長官は、「自衛隊法案の第五十二条に、服務の本旨として、「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の、完遂に努め、もつて国民の負託にこたえることを期するものとする」と示してある通り、団結、規律、修養、責任感、挺身の心がまえに尽きていると思う。過去の軍隊教育においてよく見られたような、徒らに身命を軽んずるということは禁物であると考えている」と述べているのであります。
 第十は、海外派兵の問題であります。「国民の間に防衛力増強に伴つて、保安隊が自衛隊となり、形の上で陸、海、空三軍の復活となり、これに伴つて海外派兵の噂が高いが、これに対し何らか国民を安心させるため総理の確言を得たい」、こういう質問に対し、吉田総理は、「海外派兵はいたしません。今のうちは海外に部隊を派遣するなどということはいたさないほうがよいと思う。国民の好まないことはしない」と答え、又、「外敵の侵略があつた場合、敵の侵略基地に出かけて攻撃をするというようなことはないか」という問いに対し、木村保安庁長官は、「自衛隊の出動は、真に止むを得ざる場合にのみ発動する自衛行動であつて、積極的に部隊を海外に派遣するなどということは考えられない」と答えているのであります。
 又、これに関連して、「MSA協定の中には、海外派兵のことは表面何ら触れていないが、将来東南アジア同盟などに加入するようなことになれば、熱い相互援助の建前から海外に派兵することにもなるのではないか」という質問に対し、岡崎外務大臣は、「東南アジア同盟の問題については、これまで政府として何ら具体的な申入れを受けていない。軍事同盟を予想して、MSA協定を締結したなどということは思いもよらないことで、時間的な関係から見ても、かかることは考えられないことである」と答えているのであります。
 なお、これに関連して、「他国と軍事同盟を結ぶ場合は憲法を改正する必要があると思われるし、国連に加入する場合等も、憲法の改正を要することと思うが如何」という質問に対し、岡崎外務大臣は、「軍事同盟を結ぶということは現憲法下ではできない。又国連に加入する場合も、その条件如何によることであつて出兵の義務などの条件がその中にあれば、我が国としては当然問題として考慮すべきである」と答えているのであります。
 その他岡崎外務大臣は、衆議院において、「MSA援助は三年ぐらいは続くであろうと述べたということであるが、真実であるか、来年度の交渉は始めているのか、艦艇貸与協定は当初無償のつもりであつたが、のちに有償となり、更に旅費二億五千万円を要する。文貸与協定第三条によれば、米側の必要によつていつでも引揚げられるであろうと思われるので、自主性が全くないのではないか」という問いに対し、岡崎外務大臣は、「MSA援助は三年ぐらいは続くであろうと思つている。来年度分の援助については未だ交渉していない。艦艇貸与はMSA協定に基く分は贈与であり、その他のものは貸与である。旅費を要するのは、当方の自力で運航して来るための諸経費である。米側が場合によつて自国の防衛上の必要で貸与艦艇を引揚げる場合がないとは言えないが、かかる場合は止むを得ないことであり、このため我がほうの自衛には別段の支障はないものと考える」との答弁がありました。
 日米行政協定第二十四条は「必要な共同措置を執り」云々とあるが、「共同措置とは自衛隊の出動をも含む意味か」という問いに対し、木村保安庁長官は、「日米間に緊密な連絡をとつて共同行動をとることにはなるが、自衛隊を米軍の指揮下に任せるようなことはない。飽くまでも自衛隊は自衛隊として自主的に行動をとるものであり、もともと自衛隊の出動には自衛隊法第七十六条により国会の承認を要する。従つて自衛隊の行動については、何ら米軍の指揮命令を受けるようなことはないのみならず、何らの掣肘も受けない」と答えており、「共同措置をとるための協議」というのは「如何なる機関がこれに当るのか。これは部隊の出動と直ちに関連する重大な問題であるが如何」という質問に対しては、木村保安庁長官は、「双方から適任者を出して協議する、原則としては両国の政府を代表する者の間に協議を行うこととなる」と答えているのであります。「行政協定第二十四条によれば、我が国の領域に敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日米両国政府は防衛のため必要な共同措置をとり、直ちに協議しなければならないとあるが、この規定にかかわらず、我がほう独自の見解で行動することもあり得るか。又有事の際に日米共同作戦の場合の指揮権をどうするか」という問いに対し、木村保安庁長官は、「例えば我が国の或る地点に突如として外敵の攻撃を受ける場合も起り得ると思われるのであるが、かかる場合米側と協議する時間がないような場合は、勿論自主的に行動する。又有事の際の日米共同作戦を遂行する場合の指揮権をどうするかということは重大な問題で、日本部隊の中にアメリカの部隊が入る場合もあり得るし、種々の場合があるものと考えられるから、更に研究したい」との答弁があつたのであります。
 アメリカの軍事顧問団について、「顧問団は各部隊に配属されて、間接的に部隊を指導するのではないかと思われるが、その職務権限は如何なるものであるか、各部隊或いは各学校等からは引揚げて、中央だけに駐在する考えであるか」という質問に対し、岡崎外相は、「軍事顧問団の所掌する事務は、日米相互防衛援助協定第七条に明記されている通りで、同協定に基き、アメリカから、日本政府に供与される装備、資材及び役務に関するアメリカ政府の責務を遂行し、且つこの協定に基いて、アメリカ合衆国政府が供与する援助の進捗状況を観察することを任務としているものであつて、直接には勿論、間接にも部隊を指導するとか部隊の行動に干渉するなどということはない。恐らく中央に留つてその職務を行うものと思われる。又防衛庁の中に事務所を置くなどということはない」と答えているのであります。
 次に、「自衛隊員の採用については、従来通り募集制度をとつているようであるが、最近応募者が激減しているということを聞くが、その実情はどうであるか。又自衛隊の隊員を漸増する方針だというが、任意募集の制度もその限度があるであろう。今後の見通しについてはどのくらいまでは募集によつて増員することができると思つているか」という問いに対し、保安庁当局は、「応募者が若干減つて来ていることは事実であるが、その原因はほかにもいろいろあるようであつて、現在のところ、隊員の補充には別に支障はない。比較的少数の応募者の中からでも、質的に優秀な者は得られる状況である」と答えており、木村保安庁長官は、「募集制で増員のできる限度はおよそ二十二、三万くらいかと思われる」と答えているのであります。「自衛隊法案の第六十六条中に、予備自衛官の員数を一万五千人としている根拠は何か。又その任用期間を三年とする理由は如何」という問いに対し、保安庁当局は、「本年は任期満了の者が約四万五千人あり、そのうち農村、漁村出身者の数を目標として上万五千人としている。又予備自衛官の任期を三年としたことは隊員として修得した技術の面識を考慮し三二年程度が適当と考える」との答弁があつたのであります。
 以上、防衛二法案に関する主なる問題点について、質疑応答の概略を御報告いたした次第であります。
 法案審議の最終段階に至りまして、国防会議の構成等に関し、緒方副総理より政府の正式見解の説明がありましたので、本委員会は、国防会議の重要性に鑑みまして、特に時間を割いてこれに関する質疑を行なつたのであります。今簡単に国防会議の問題につきまして、委員会における審議の経過を申上げます。
 国防会議の問題につきましては、法案審査の当初におきまして、五月二十日保安庁より国防会議の構成等に関する件、保安庁において研究中の案(未定稿)なる一資料の配付を受けたのでありますが、これは保安庁事務当局の一試案に過ぎず、更に五月二十二日、重ねて木村保安庁長官より保案庁案として国防会議の構成等に関する件と題する資料を提出したのであります。本委員会は、木村長官より提出された「国防会議の構成等に関する件」なる文書といえども、政府の一部局案であつて、政府を代表する正式なものと認めることができないから、防衛二法案審議の期間中に、政府より国防会議に関する法律案を提出すべきであるとし、若し右の法律案が間に合わない場合には、少くともこれに代るべき政府の確定案を提示されない限り、二法案の審議を進めて行くことができないとして、政府に対し、強くその提出を要望したのであります。その結果五月二十八日夕刻に至り、緒方副総理が本委員会に出席して、「国防会議の構成等に関する件」と題する資料を配付し、これは保守三派の折衝が妥結した結果によるものであつて、未だ正式の閣議の決定を経ておらないが、自分は責任を以てこれを閣議の成案としたいと思うと述べ、その内容を説明されたのであります。本委員会といたしましては、以上のようないきさつを経て、五月三十一日に至り、改めて緒方副総理の出席を求めまして、この提出された政府案に関し質疑を行なつたのでありますが、その質疑の概要は、次のごとくであつたのであります。
 第一点は、「憲法において軍備が否定されている日本においては、仮に国防会議という大袈裟なものを作るとしても、その内容は軍備を有する諸外国の国防会議との間にはおのずからはつきりとした区別を付けるべきではないか。例えば軍備を否定する日本としては、規模においてもでき得る限り小規模でなければならん。又武官を多数国防会議の議員に選ぶことはもとより避けるべきである。又国防会議の目的も、戦争の準備とか、曾つての戦争指導会議のようなものではなく、如何にして戦争を避けるか。如何にして平和外交を推進するか。如何にして民心を安定させるかということを国防会議の根本目的とすべきではないか」という質問がありました。これに対して政府側より、「いわゆる軍備という言葉に値する軍備を容易に持ち得ないことは事実であるが、日本を包む今日の国際環境の下において、外国の日本に対する侵略の意思が若しありとすれば、日本としては防衛力のないとあるとにかかわらず、あらゆる場合に備えて国防会議の協議する範囲をきめておく必要がある」という答弁でありました。
 第二点は、五月二十八日、緒方副総理より提出された政府案が、先に配付された保安庁案と相違する点の一つは、政府案は、国防会議の構成員のうちに民間人を参加せしめた点であるが、「如何なる理由で以てかかる変更をしたのであるか。民間人を参加せしむべしとする主張の理由として二つある。その一つは、総理大臣に極度に集中している権限を抑制するために必要である。例えば防衛出動の可否のごとき国の運命を左右する重大なる問題を総理大臣の専断に委ねる危険を防ぐために民間人の参加が必要であるとする主張である。又他の理由として、防衛二法案の内容を見ると、武官が防衛の実権を握る建前であることが明白であつて、この点曾つての軍閥のごとき軍部進出の弊害を除くために民間人を加えることが必要だとする主張があるが、政府はこれらの点を如何に考えておるか。又国防会議の議員として民間人を参加させる場合、総理大臣の前歴のある者に限つた理由は何か。総理大臣必ずしも適任とは限らんではないか」という質問がありました。これに対して政府側からは、「当初民間人は成るべく参加させたくないという考え方であつたが、三党折衝の結果、総理大臣の前歴を持つ者の中から若干名を選ぶことに方針を変更したのである。民間人を加えたのは、総理大臣の権限が強大となつているのを防ぐという考え等からではなく、識見の高い練達の士を選び、このようにして慎重の上にも慎重を重ねて判断の公正を期したいからである。権限が総理大臣に集中していることは、責任を明確にする上からむしろ当然のことである。
   〔議長退席、副議長着席〕
特に総理大臣の前歴のある者を選んだのは、民主主義の下、国家の重鎮として、国会の同意を得て任命する、識見の高い練達の士こそ最も適任であるという考えに基くものである」という答弁でありました。
 第三点は、「国防会議の構成は、現憲法の規定する内閣責任制を侵害することはないか。即ち国防会議が防衛出動の可否と、いう重大な問題を審議し、その決定を左右するということは、行政部の内閣責任制を分散する虞れはないか」という質問がありました。これに対する政府の答弁は、「国防会議は飽くまで政府の諮問機関であつて、政府は国防会議の意見を参考とするに過ぎない。最後の決定は内閣にあるから、内閣責任制に反することはあり得ない」との答弁でありました。
 第四点は、「国防会議に事務局を設け、この方面の専門家やその他の民間人を参画させ、立案に専念させることが、広く国民の意向を反映せしめる上において必要ではないか」という観閲がありました。これに対し政府側より、「国防会議の庶務は、内閣において掌り、議案の作成等は、防衛庁の内局が関係各省と協議の上主として所掌することになつている。特に国防会議の下に厖大なる事務局を設けることは、これらに会議を動かす力を持たせる危険があつて、これは国防会議の本来の性格を無にするものであるから、かような点からも事務局を設けないほうが望ましい」という答えでありました。なお、緒方副総理より示された国防会議に関する政府案は、六月一日の閣議において正式に決定されたとのことであります。
 次いで内閣委員会は、六月一日の委員会に吉田内閣総理大臣の出席を求め、防衛二法案の審議の締括りとして次のような総括質疑を行なつて、総理の外遊に先立ち政府の所信を確かめたのであります。
 その第一点は、「原水爆に対する政府の防衛政策如何」という質問であります。これに対し、「原、水爆の問題は、全世界に関係のある問題であつて、政府としてもこれに注意を怠らないが、直ちにこれに対する防衛政策を立てることは至難である」との答弁でありました。
 その第二点は、「日本は東南アジア条約機構及び太平洋防衛同盟に加入する意思ありや」という質問であります。これに対し、「日本の防衛の問題は、日米安全保障条約にとどめたいので、東南アジア条約機構や太平洋防衛同盟には加入する考えはない」という答弁でありました。
 その第三点は、「保安庁を将来独立の国防省にする考えありや」という質問であります。これに対し、「保安庁を独立の国防省にする考えは現在ない」という答弁でありました。
 その第四点は、「将来徴兵制を布く考えありや」という質問であります。これに対して、「徴兵制を布く考えはない」という答弁でありました。
 第五点は、「自衛隊増強は、地上部隊を主とするか、三軍均衡方式をとるか」という質問であります。これに対し、「自衛隊増強については、海、空に力を注ぐ必要があるが、これも財政上の制約を受けざるを得ぬ」旨の答弁があつたのであります。
 なお右質疑の終了後、保安庁当局上り、現在の保安隊、警備隊の装備等、現有勢力について詳細なる説明がありました。
 次いで石原委員より質疑打切りの動議が提出され、植竹委員より賛成の旨、又木村委員より反対の旨の発言がありましたので、右の動議につき採決をいたしましたところ、多数を以て可決せられました。
 ここにおいて直ちに本二法案の討論に入つたのであります。岡田委員は、社会党第四控室を代表して本二法案に反対である旨、その反対の理由は自衛隊は憲法第九条に違反するものである点、自衛隊は真に日本の防衛の必要のために生まれ、増強されたものではないという点、その他反対すべき多くの点が挙げられたのであります。
 長島委員は、自由党を代表して政府原案に賛成の旨を述べ、賛成の理由並びに要望事項等かずかず用意してはねるが、時間の関係上その全部を本会議に譲る旨の発言がありました。
 山下委員は、社会党第二控室を代表して両法案に反対である。本法案は、第一、憲法蹂躪の法案であるという点。第二、平和破壊の法案であるという点。第三、米国従属の防衛計画案であるという点。第四、海外派兵が将来不可避となる点。第五、徴兵制度の実施が不可避である点。第六、国力不相応の軍備である点。第七、両法案とも極めて欠陥が多い点等を指摘して、我が党は平和を愛好し、現行憲法を遵守するものであるから両法案に反対する旨発言がありました。
 竹下委員は、緑風会を代表して原案に養成の旨を述べ、近時の国際情勢は、必ずしも戦争を招来する風潮を見せてはいないが、それが直ちに防衛無用ということにはならない。我が国は敗れたりとは言え、自主独立の気魄を持つて憲法に背反せざる範囲内で自衛態勢を確立すべきである、但し防衛態勢は飽くまで国力に副うべきであると述べ、なお、政府に対し二、三の要望の点を述べられました。木村委員より、無所属クラブを代表して原案に反対である旨、そして二の反対の理由は、本法律案は、第一に、米国の権威に隠れた憲法違反の法案である点、第二に、新設される自衛隊は日本の自主的なものでない点、第三に、二法案の内容は支離滅裂である点、第四に、防衛計画の規模が国民生活の負担を重くする点、
   〔副議長退席、議長着席〕
 第五に、ビキニ水爆の実験以来、武力による防衛は完全に意義を失つた点、第六に、再軍備体制は日本をアジアの孤児たらしめる契機を作る点、第七に、再軍備が米日独占資本の利潤確保の道具であるに過ぎん点を指摘して、両法案に反対する旨の発言があり、堀木委員より、改進党を代表して、原案に賛成である。自衛権は国民の基本的人権と同様に国家固有の神聖なる権利である。世界に二大勢力の対立する今日、国の平和を希望するだけでは平和を実現することはできない。自衛体制を整えることこそ独立と防衛を確保するゆえんである。自衛力のない国は外国の侮りを受け、又国民精神の萎靡沈滞を招く、政府のこれまでの再軍備政策は自衛軍備をごまかした欺瞞的なものであつた。併し民主国家にふさわしい民主的自衛軍の創設は、現憲法に何ら違反するものではない旨の発言があり、三浦委員は、純無所属クラブを代表して、我が国の現在おかれている国際的、地理的条件から考え、武力を持つ必要があるから、原案に賛成である旨を述べ、更に次のような要望が表明されたのであります。即ち第一に、三軍方式をとることを明らかにしている点は時宜に適したものであるが、現在の自衛隊は、必ずしもこの構想がはつきり現われていないから、国力とのかね合いで充実してもらいたい。第二に、武力の行使は自衛権の範囲内に限りてもらいたい。第三に、文民優位の体制を保持してもらいたい。第四に、徴兵制度を採用せぬことを言明しているが、この言明を守つてもらいたい。第五に、自衛隊の構成は軍隊と呼ばれても仕方のないあいまいな存在であるから、憲法を改正して真の軍隊を作つてもらいたい。又、長期の国防計画の大綱を一日も早く示してもらいたい旨の要望が述べられました。
 以上を以て討論が終了いたしましたので、直ちに原案につき採決いたしましたところ、多数を以て可決すべきものと議決されました。
 なお、この際二言御報告いたしたい問題がございます。昨日の委員会におきまして、参議院議員鶴見祐輔君ほか八名の発議にかかる「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案」について、発議者より案の趣旨説明を聴取いたしたい旨の動議が矢嶋委員より出され、この動議が成立いたしましたので、本二法案の審議の途中、鶴見祐輔君の出席を煩わしまして右決議案について説明を求めましたところ、当委員会は、全会一致を以て右決議案の趣旨に賛成いたすことになりました。この点を本二法案の審査報告に附加して御報告をいたしておきます。(拍手)
#6
○議長(河井彌八君) 暫時休憩をいたします。
   午後零時五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十一分開議
#7
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 日程第一及び第二の両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。矢嶋三義君。
   〔矢嶋三義君登壇、拍手]
#8
○矢嶋三義君 私は、只今審議の対象となつております防衛関係二法案につきまして、日本社会党を代表いたしまして断固として反対の意を表明するものであります。(拍手)
 吉田総理は明後日、この二法案を旅行鞄に収めて日本を飛び立つてアメリ功に着いたとたんに、その苦虫を噛みつぶした顔はにこにことなることでございましよう。(笑声)私はその旅行鞄の中に、これから私がなさんとするところの反対討論も入れて頂きたいということを強く要望し、以下、反対討論を展開せんとするものであります。
 先ず反対の第一点は、本二法案は、国民を欺瞞する再軍備を促進するところの明らかに憲法違反の法律であるという点でございます。昭和二十五年警察予備隊を創設し、その後昭和二十七年に保安隊、警備隊を創設いたしましたが、その当時の保安庁法を見ますというと、その任務に明記してありますように、我が国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護することを目的といたしたのでございます。ところがこのたびの自衛隊の任務は、第三条に直接侵略及び間接侵略に対し、我が国を防衛することを主たる任務といたしまして、警察的任務というものは姿を没したのでございます。そうして三軍方式をとり、統合幕僚会議を設け、予備自衛官制度を設け、隊員の退職制限等を設けているのでありまして更には一定地域内における施設の管理、物資の収用、業務従事命令等を規定いたしておりまして、あたかも戦時態勢に酷似しておるものがあり、その軍隊的性格というものは否定することができず、明らかに憲法第九条違反と断定せざるを得ません。(拍手)勿論私どもは独立国家としてその存立の固有の権利を否定するものでは毛頭ございません。併しながら憲法第九条に規定するところの自衛権とは、自然発生的の自衛権であり、自然発生的な抵抗であり、広義の自衛権を指すのでありまして、政府が提案しているような法案の示すごとく、外敵対抗目的とし編成され、装備され、訓練されたるものによる武力の実力行使というものは明らかに憲法に背反するのであります。曾つて吉田内閣の各大臣は、或いは国家正当防衛権を否定するところの言動をなし、更に外敵抵抗の戦力を持つところの軍隊は明らかに憲法第九条の違反であると述べたかと思えば、そのあとで否定するがごとく、或いは戦力の問題についても、その時と場所において、その所論は異なつて参つたのでございまして、この憲法九条を国民にごまかすために、最近は、戦力とは近代戦を有効適切に遂行するための能力を持つた装備と編成を具備したところの部隊であるとか、或いは独力で防衛できるところの力であるとか、或いは他国に脅威を与えるところの力を、憲法第九条が禁止しておるところの戦力であるというような説明をいたしておりまするが、この説を以てするならば、独力で自国を防衛できる力といたしますならば、恐らく米英のみでありましよう。米国といえども自国だけでは防衛できんが故に、他国に軍事援助をして集団防衛態勢を固めつつあるわけでございまして、政府のような見解を以てするならば、いずれの国も憲法九条に抵触するところの戦力はないということになります。又他国に脅威を与えるものが戦力であるとするならば、ビルマ、インドネシヤ、大韓民国の軍備力というものは、政府提出の資料によつても明らかに自衛隊よりは低位にあるわけでありまして、これらの国に対して日本の持つておるところのこの自衛力は、政府の説明によつても、明らかに戦力となる次第でございます。要は実力組織を以て武力に訴えるということが問題でございまして、日本の自衛隊がアメリカと例の行政協定の二十四条において共同作戦をやる場合に、これは強大なる国際総合戦力となりまして、憲法九条に抵触するということは明々白々たる事実でございます。(拍手)それを本日、なおこれは憲法に抵触しないものであるということは、詭弁、曲論を弄するも極まれりと言わなければなりません。(拍手)我々の現在の憲法は、主権在民の精神に立つておるものでございます。かくのごとき自衛隊を設ける上には、政府はよろしくこれを国民に問うべきであるにかかわらず、昨年の総選挙においても、再軍備をいたさないという公約の下に選挙を闘つて、本日、かくのごとき軍隊を創設するということは、国民に公約違反をなすものであつて、断じて許すことのでき一ないことであります。若し皆さん方が、この自衛隊等が憲法に抵触しないものであるとするならば、お帰りになつてお子さんに聞いて下さい。子供ははつきりと解答を与えてくれるでございましよう。(笑声)我々は、この法案の審議の段階において公聴会を開催し、法政大学中村教授或いは旧陸軍大学の岡村教授等からその公述を求めましたが、すべての人が明らかに、これは戦力であり、憲法違反である、従つて憲法を改正するにあらざれば、かくのごとき軍隊というものは持てないということを公述いたしておるのでございます。輿論、論調又同様でありまして、皆さんの御承知の通りでございます。民主主義、平和主義破壊の反動吉田政権、国家の基本法たる憲法を破壊するところの吉田総理並びに吉田内閣というものは、国民の名において断固弾劾しなければなりません。(拍手)曾つて日本を敗戦に導き国民を塗炭の苦しみに投げ込んだ戦争指導者並びにこれに連なる一連の方々は、再び過ちを犯そうといたしておるのでございます。これが反対の第一の点であります。
 次に、反対の第二の理由は、この自衛隊は、自主性なき、傭兵的性格であり、日本経済を破綻し、民生安定を損うものであるということでございます。御承知のごとく現在の保安隊並びに警備隊の持つているところの武器は、全部これはアメリカからの借り物でございまするし、このたびのMSAの援助によつて、更にアメリカの武器が供与されて参ります。更に先般本院で審議されましたところの艦艇貸与協定、これに基くところの軍艦は、アメリカが必要とあれば、貸与期間中でも、いつでも引揚げることができるような協定になつておるわけでございます。これらの供与によつて日本は再軍備を義務付けられ、そうしてアイクが、アジアの紛争はアジアの青年の手によつて処理されると言つたあの言葉の下に、アメリカの世界政策の一環として強要されたのがこの自衛隊でございます。日本のためよりは、むしろアメリカの戦略目的のために作り、その兵器は補給源をアメリカに求め、アメリカに依存する建前をとつているわけでありまして、一言にして尽すならば、アメリカ極東軍の補助部隊として、その傭兵的性格は極めて明確であるのでございます。更に安保条約、行政協定、MSA協定等から集団自衛の義務が課せられまして、いずれは自衛隊は海外へ出動することがあるであろう。これは国民の最も心配しているところでありまして、審議の段階においていろいろとと質疑いたしましたが、明確でございません。又アメリカの要人は、日本との協定においては、海外派兵は否定してはいないというような表現で答えているのでございまして、私どもこの海外派兵の虞れのあるところのこの自衛隊には断じて賛成することはできないのでごう、います。自由党の諸君が、公述人として推薦いたしました元陸軍大学教授岡村氏は、公述人として公述台に立つや、私はこの法案に賛成は絶対できない。しその最も大きな一つの理由は、日本独自の軍隊たり得るか。極めて深く私は憂いを以て眺めているのであります、こういうふうに公述いたしたのでございます。更にこのアメリカの要請というものは極めて強く、近くはヴアン・フリート、ウィルソン等が日本に参りまして、日本政府といろいろと交渉いたしておりまするが、更に来年度五万人の自衛隊の増強を要求し、近くは三十二万五千人の自衛隊の増強を強く日本政府に要請し、その予算は日本の歳出総予算の二〇%を強く要望いたしておるのでございます。これ以上の軍事費を予算に組んだ場合には、さなきだに少いところの社会保障費、教育文化費、日々倒産しつつあるところの日本の中小企業というものは、誠に重大な危機に陥ると思うのでございます。
 更に年々この軍事費は増額されておりまするが、その自衛力増強の計画如何にと伺つてみますると、何ら計画はないのでございます。一部には政府与兄の五カ年計画としてその予算額一兆出千億の案がございまするが、併しながらアメリカの支配下に、その影響下に創設しようとする軍隊でございまするので、日本独自に計画を立て得ないというところに、この自衛隊が自主性のないものであるということがはつきりと現われている次第でございます。私どもは、この荒れ果てた日本の国土を保全し、国土の総合開発を図り、災害の復旧を図り、平和経済、平和産業の伸展のために努力し、民生の安定を図ると同時に、自主中立、平和外交によつて日本の安全と独立を守ることこそが、かくのごとき自衛隊を作ることより、国家の安全はよほど安定して来るという立場に立つて、断固この法案に反対するものでございます。(拍手)反対の第三点といたしましては、この自衛隊を作るに当りまして、国民を納得せしめるところの説明に乏しく、且つ日本の安全のため危険があるということでございます。吉田総理大臣以「関係大臣は、盛んに他国から直接侵略がある云々ということを述べておりまするので、然らば直接侵略は如何なる国が如何なる構想の下に予想されるりか、この点を尋ねますると、何ら答弁はできないのでございます。皆さん御承知の通り一時的にせよ、世界の緊張は緩和しつつございますし、又最近問題になつておりますところの原子力の平和利用も、米ソの首脳者の間で話合いが進められているところの現段階でございます。このときに近隣諸国との間の緊張を強めるでありましよう。更に米ソの対立をいよいよ深刻ならしめ、場合によりましては、他国の動乱に捲き込まれる虞れがあり、而もその武器はアメリカの供与であり、こういう軍隊を作つたときに、日本の書年は弾よけとして使われるに過ぎない結果になる虞れは十分にあるのでございます。元陸軍大学教授岡村君は、参議院の公聴会においてこういうふうに述べております。国防イクオール再軍備、こういう思想が流れておりまするが、兵隊だけが我々の国の生存と平知を守る、そういう考えは極めて危険な思想であります。それが本当に逆コースである云々と、こう吉田内閣の自補力増強方針を峻烈に批判したのでございます。この人は自由党委員が推薦したところの公述人でありましたことも、自由党諸君はよく頭に入れておいて頂きたいと思います。
 反対の第四点は、よく指摘されるところでございますが、この二法案が支離滅裂で杜撰なものであるということでございます。この点は岡村公述人、更には元陸軍大佐大越公述人も指摘したところでございまするが、要点を申上げますと、先ず現在の憲法において自衛のためには戦力を持てる。再軍備ができる。こういう見解に立つところの改進党、それから自衛のためにも戦力は保持できない。憲法を改正しな正れば戦力を持てない。再軍備はできないという立場に立つところの自由党、この合作と、その間に行政協定二十四条から予想されるところの共同作戦州ありますので、その編成、装備、訓練の統一を要望するところのアメリカ側の要請、更に憲法九条の下では、戦力は持てないと解釈するところの政府与党が、この憲法九条に抵触しないように何とか法案を作り上げよう。これらの三つの要素がこんがらがつてできているのが、この二法案でございまして、仔細に検討すると、その欠点が随所に現われておるのでございます。例えば自衛隊法の第三条には、直接並びに間接侵略に対して防衛すると同時に、公共の秩序維持云々ということも規定されておるのでございます。然るところ防衛庁法の任務のところには、公共の秩序関係は全く活字がございませんで、純然たる国防の一語に尽きているわけでございます。これは当初自由党は一本の法律にしてようとした、改進党はこれを二本の法律にしようとした、防衛庁の案というものは、改進党の案が通つたわけでございまするので、従つてここに食い違いが来ているわけでございます。更に国防会議の問題にいたしましても、これを強力に主張したところの改進党、並びにこの否定的な立場に立つたところの防衛庁の事務当局、並びに比較的消極であつた自由党、これらの関係から、国防会議の性格、構成、こういうものが極めて不明確に相成つておる次第であります。更にもう一つ例を挙げまするならば、軍隊的色彩を持つた自衛隊においては、その隊員の服務の本旨に、「危険を顧みず」に云々ということを規定いたしております。ところが、「危険を顧みず」に行動したところの隊員が、若しも傷ついた場合のその補償、それらについて、何ら規定をいたしていないのでありまして、この点が、一方では軍隊、一方では軍隊でない、こういう考え方の違う人が合作した法律でございまするから、法律としては意識の統一が図られていなくて全く支離滅裂なものであるとい石ことでございます。岡村公述人は、次のごとく、この二法律案にとどめを刺しました。それは、「国防方針を、どの機関で、誰が責任を持つてきめるか、それすら不明である。而も用語は極めて不明確、不用意である。冒涜、濫用されている。かくのごとき二法案で、事があつた場合に人間の命をかけるところのこの法律としては、誠に杜撰極まりないものである」と、こういうように公述いたしたのでございます。この二法案が支離滅裂、杜撰であるということが私の反対の第四点でございます。
 反対の理由の第五点は、本二法案によりましてできるところの自衛隊は、軍事独裁を招来し、総理専断の虞れがあるということでございます。我々は兵権優先に慣れて参りました。このたびの二法案を見ますると、命令権と指揮権を掌握しておるところの陸海空の幕僚長は、司令官的性格を持つております。恐らく隊員は幕僚長を中心に結集するでございましよう。その上に更に統合幕僚会議というものが設けられておりまするが、これと、この防衛庁において最も重要な役割を果すところの官房長並びに五局長、いわゆる内局に制服就任の制限を撤廃いたしました関係上、純軍事的な要望の強い人物がここに入つて来た場合に、この自衛隊の最高指揮監督者という立場に立つている総理も、その補佐のスタツフを持つておりませんので、名目的な最高指揮監督者となつて、軍事独占、軍事独裁、政治を軍人が支配するところの虞れが多分にあるのでございます。(拍手)もう一つは首相の専断でございまするが、この法案を見まするというと、国会閉会中には、方面隊、管区隊、地方隊等を増すことも、減らすことも、又その所在地を変えることも、自由自在にできることになつているのでございます。更に命令による治安出動というものは、国防会議に諮ることなく、首相の一存でできたことになつております。(「危ない、危ない」と呼ぶ者あり)外敵と対抗するところの防衛出動につきましては、一応国防会議の諮問事項になつておりまするが、併しながら質問の段階において明確になつたことは、国会開会中といえども防衛出動について国会に諮らない場合があり得ると、こういうふうに答弁していることから察しまするに、殆んど防衛出動に関するところの国会での審議というものは、事後承認の形がとられるということは想像できるのでございます。ここに総理の考えによつて戦争を挑発するところの可能性が極めてあるわけでございます。その国防会議につきましても、首相の専断を抑制するとか、或いは軍事的要求を抑制するとかいうような性格を持たせるかどうかということについて、未だに明確になつておりません。当然この国防会議に関するところの法律は、この二法案と同時に国会に提案すべきであつたにもかかわらず、政府の怠慢によつて法律が出されず、而もその内容が、随分と質疑をいたしましたが、明確になつていないということは、この法案に反対せざるを得ないところの大きな理由ともなつているのでございます。こういうことを考えまするときに、この自衛隊が、絶大なる権力を持つところの総理大臣の私兵化するところの虞れが十分あるわけでございます。皆さん、旧陸海軍大臣が当時の内閣において特異の地位を保つておりました。このたびの法案におきましても、防衛庁長官は総理大臣との関係で内閣で特異の地位を持つことになりましてこの純軍事的な強い要請の下に、後日お互いが軍事予算を鵜呑みにさせられて、総理の専横の下に民主主義は衰退し、国民は、軍国主義下に、暗黒政治に泣く時代が来ないと誰が断言できますか。私は、軍事独裁を招来し、総理の専断の虞れがあると、この理由を以て反対の第五点といたす次第でございます。(拍手)
 最後に申述べたい点は、このたび自衛隊の最高指揮監督者としての絶大なる権力を持つ地位に立つところの吉田総理は、曾つて二十七年には、あの無謀な抜打解散をやりました。更に近くは、国民の輿望に背いて、検察庁法の第十四条を発動することによつて、あの汚職の追及に水をぶつかけた。この吉田総理の態度、更に、再軍備はしない、憲法は改正しないと、国民に常に約束をしながら、その約を破棄し、憲法を曲解し、再軍備を強行し、アメリカの要望に屈して、国民生活を犠牲にしてまで、戦争に捲き込まれる虞れのある自主性なき軍隊を創設しようとするところの吉田総理の政治的責任を、国民に代つて断々固として追及せざるを得ません。(拍手)このことたるや、歴史に残すべき民主政治の破壊の吉田反動政権として、我々はここに、はつきりと申述べておきたいと思うのでございます。(拍手)
 最後に申上げたい点は、この重要なる二法案の審議の段階において、私は逐条審議をすることによつて、この法律案の審議の責任を果したいと考えましたが、与党自由党諸君の反対によつて逐条審議さえ行うことができなかつたことを、誠に遺憾に思います。(「けしからん」と呼ぶ者あり)なおこの席上から明確にいたしておきたいことは、与党の諸君がこの二法案を通過成立させることのみに狂奔して、殆んどこの重要な二法案に質疑をなすことなく、吉田外遊の土産を一刻も早く作り上げようとする一点にのみ狂奔したことは、私は、議員の一人として誠に遺憾であつたということを申述べておきたいのであります。吉田総理は、私は目頭申上げましたように、明後日、恐らくこの二法案を旅行鞄の中に収めて渡米するでございましよう。アメリカに行かれたならば、委員会において我々に言明されたごとく、再軍備は絶対にやらない。憲法改正も又やらない。日本の国力、経済力からいつて自衛隊の増強ということは不可能事である。更に如何にアメリカの要請が強かろうとも、集団防衛機構に参加して自衛隊の海外出動の虞れのあるようなことは、国民の総意によつて断固排撃するものである。こういう立場において、アメリカで明確にアメリカの要人と対処して頂きたい。こういうことを私は強く要望いたしておきたいのでございます。我が日本社会党は、民主主義、平和主義を守り、日本民族、国家のために、今後、断固引続き闘うであろうことをここに宣明すると共に、仮に、曾つて日本を敗戦に導き、国民に塗炭の苦しみを嘗めさしたところの曾つての戦争指導者、それに連なるところの諸君の多数の暴力によつて、この二法案が成立した暁においては、我が日本社会党は、不断にして厳重なる関心を払い、日本が、再び軍国主義国家として再現し、再び過誤を犯し、国家の滅亡を招来せざるよう、徹底的に闘うことをここに表明し、断々固としてこの法案に反対するところの反対討論といたす次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(河井彌八君) 植竹春彦君。
   〔植竹春彦君登壇、拍手〕
#10
○植竹春彦君 私は自由党を代表いたしまして、この防衛庁設置法案並びに自衛隊法案に対して賛成の討論を申述べます。
 防衛に関する基礎理論の第一頁が、生物の通有する自己保存の本能から始まるという趣旨の論述は、すでに各方面において述べられ、衆議院の討論中にも、本院の過日の秘密保護法案の討論のうちにも述べられている通りでありまして、従いまして、集団生活を営む人類が集団防衛をすることも、この本能に源があるのであるから、国家という集団生活において、防衛が相当の組織化せられました実力を持ち、国家に自衛権があることは、憲法に明文があるとないとにかかわらず、国際法において国家の当然の基本権の一つとして、世界の国々の間におきまして認められているということは、何人も異論がないところであります。(拍手)我が国は第二次世界大戦の創痍未だ癒えざるも、防衛力なかりせば、波高き太平洋岸の国際情勢に直面して我が国の独立と安全と平和を維持することは絶対にできないのであるから、我々は真剣に、防備を増強して国を護つて行かなければならないのであります。殊に世界における防衛の構成が、二つの国家群に分れて互いに集団防衛の形をとつておることは現実の姿であり、我が国の防衛方針は、自由国家群の一員として、互いに独立を尊重しつつ相援けて集団的に条約と信義とによつて、互いに安全を保障し合つて行くこの方針こそは、ひとり自由党の政策たるにとどめず、国防と外交に関しましては、各党は願わくば互いに超党派的の理解と協力を以て我が国の一貫せる国是として、これを貫徹させて行く努力をいたすべきものと考うるのであります。即ち、日米安全保障条約の前文及び各条章に照らしましても、我が国は適当なる自衛力の確立維持に当らなければならないのであつて、集団防衛に参加する日本が米国の傭兵というがごときは、自己否定も甚だしい暴論と言わなければならない。(拍手)今こそこの二法案の通過を図る熱意は、我が党当然の固き方針によるものであります。
 次に、本法案審議の際に問題となりました点を、数項目に分けまして論議を進めたいと存じます。
 第一点は、戦力論であります。即ちこの問題は、この二法案の示す自衛力の実力の限度が、憲法第九条に背反するか否かの認識の問題でありまして、いわゆる戦力論争として、政府と与野党との間に、今日まで華々しく論争が展開せられておることは、御承知の通りでありまするので、私はここで我々の主張を簡略に表明いたします。即ち我が憲法には、国際紛争を解決するための手段といたしましては四つの禁止事項が掲げられております。第一には、国権の発動たる戦争をしてはいけない。第二には、武力による威嚇もいけない。第三には、武力の行使もいけない。第四番目には、自衛のためでも戦力はいけない。以上の禁止事項は、いずれも国際紛争解決の手段としてはいけないというのであるけれども、併し自衛権は否定したものではないのであります。従つて、法案の言うところの自衛隊は、近代戦を有効且つ適切に遂行するに足る能力、即ち戦力を持ちませんので、自衛隊は憲法第九条第二項の規定に違反するものではありません。これは去る三月十八日に、私がこの壇上から述べました通りに、純粋の警察力だつて、今日では飛行機でもタンクでも持つべきものであるということを外国の諸立法例を挙げて詳細に述べました通り、自衛隊は憲法違反ではないのであります。私は、自衛隊は直接侵略を防ぐ点におきまして違憲と言う者がありまするけれども、外敵にして若し国内の治安を乱すものがある場合には、国家はその国民の生命と財産とを保護する義務があるのでありまするから、直接侵略に対して、或る程度の範囲内において自衛行動をとり得るということは当然であるのであります。(拍手)これが我々の固き信念でありますると同時に、一般の世間の常識であります。(「放射能に対する自衛はどうするんだ」と呼ぶ者あり)物事の認識はそのときの社会情勢によつて変化すべき場合があります。例えば社会党の右派のごとき場合であります。右派は、最初は保安隊も違憲なりと主張しておられたけれども、現在の保安隊の程度は認めるということは、新聞紙上によつて承知いたしております。これは社会党の非常な成長であつて、やがては自衛隊に対しましても、我が党同様の立場をとられる時代が来るものと考えます。又社会党の左派におきまして、只今の討論において、日米が一緒に防衛するときは、戦力になるというけれども、一緒になると戦力になるというならば、一振りの刀でも、大戦争に参加すれば戦力になるというのと等しく、余りにもこれは当然過ぎるほど自然な、問題とするに足りない議論であると考えます。
 第二の論点は、水爆等の原子兵器が直接侵略に利用され得る現在、今回の自衛隊設置の存在理由はないという説でありまするけれども、今日の直接侵略は原子兵器を用いざる程度の侵入の不安と、戦線なき非平時状態の現出や治安潰乱の恐怖は、朝鮮半島に、イントシナに、我らの目撃するところであります。(「インドシナは独立戦争だ」と呼ぶ者あり)
 第三の論点といたしまして自衛隊の統率の問題と国防会議に言及いたしたいと存じます。この問題は三つに分けて申述べたいと存じます。第一には、曾つての軍閥跋扈的ないわゆる制服の独善を警戒する意見が、繰返して各所に発表せられ、政府原案は、首相が下僚の計画起案にいわゆる据膳の食事的な制度であるということを指摘する議論が多いのであります。第二には、逆に首相の権限が極めて強大のために、首相が超過大の、而も法律に認められた指揮権を揮つて自衛隊を駆使し、以てクーデター的な政治行動に悪用することが警戒されておるのであります。更に第三には、自衛隊内部の陸海空三隊の軋轢確執を案ずる議論は、これをおろそかにしてはならないと考えます。以上の三項目は、指揮統率に関する課題でありまして、いずれも政府において心配なき旨の詳細の御説明があつたので、これを諒とする次第でありますが、(「みんな諒とするのだろう」と呼ぶ者あり)なかんづく陸海空三隊の分立につきましては、曾つての日本軍内部におきましても、外国にお汁る実例を見ても、三軍の間の軋轢の麻史に鑑みまして、その運用に過ちなきを期さなければならないという点を要望いたしておきます。
 更に、又、総理大臣の強大なる権限に対しましては、内部制約的な制度を確立して、隊員の緊急出動のごときは、国防会議の同調によつてこれを行うことも一方法であろうと考えられるのであつて、首相の強大なる現在の権力は、一方においてかくのごとき国防会議によつて内部制約を受けつつも、而も他面迅速果敢なる行動を妨げないという、この二つの、一見相矛盾せるがごとき民主主義的な要請を同時に果して行くような出動措置を実践して行くことができるように国防会議の運用を図り、更に、政府答弁の通り、世論の啓発と選挙とを通しての国民の監視を信頼することが極めて肝要であると信ずるのであります。
 最後に、第五の点として申上げたいことは、自衛隊員の精神訓練でありますが、当局は、教育に熱意を傾けているということはよく了承いたしましたけれども、この上とも隊員をして真に人類生活の根本哲理に徹せしめ、祖国を愛し、情操豊かにして而も勇猛果敢なる国民の模範となるべき自衛隊青年の養成に当ることを強く望む次第であります。
 而して、この際併せて要望いたしたきことは、国の防衛は自衛隊ばかりでは完全に任務を遂行することはできないのでありまして、この任務を立派に果して、国民の要望に応えるには、自衛隊に対する国民自身の盛り上る支持と熱意とを要し、そのためには、隊は常に国民に親しまれなければならないという一点であります。昨年の風水害に、自衛隊の出動が罹災国民から感激を以て迎えられた抜群の功績は、我らも又心から感謝するところであります。この実践こそは、国民の自衛隊として国民の支持を得たゆえんであることを思い、これに対して国家も又、自衛隊員に対して勲功賞罰共にもつと明確にして、恩典制度、給与制度につきましては特段の研究を遂げられて、物心両面の制度の完備を要望する次第であります。(拍手)
 以上論じ来たりますれば、本法案の審議に当り、幾多の要望事項と将来の改善の余地はあるのでありまして、これ又、すでに過日の本会議に、この壇上から詳細に申述べた通りでありますが、ここにこの二つの法案に対する結論を申上げます。この法案は、終戦以来、警察予備隊から保安隊の段階を経て、国力に応じて漸増せられて来たところの治安と防衛力とを増強するために設置せられんとしているものでありまして、現在の我が国力としての最小限度の防衛力であると考えられるので、他国を侵略し、又は他国に脅威を与える程度のものではありませんし、更に又海外派兵もしないという政府の説明も明確でありまするし、出動時の行動の限界も明瞭に規定されておるので、本法案は、自衛隊本来の任務を逸脱するものではないと信ぜられるのであります。されば、政府原案は、おおむねその目的に適うと思量せられまするが故に、内外諸情勢を総合判断いたしまして、一刻も早く速かに本法案を成立せしめ、内に治安維持と防衛力との確立を図り、外、国際情勢の現実に即応する態勢を整備して、我が友邦たる自由国家群の期待に応えなければならないことを信じまして、これを以て、私の本法案に対する賛成討論といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(河井彌八君) 戸叶武君。
   〔「吉田どうした」「総理はどうした」「総理が来るまで休憩」「進行進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し]
#12
○議長(河井彌八君) 戸叶武君の登壇を望みます。
   〔戸叶武君登壇、拍手〕
#13
○戸叶武君 私は日本社会党を代表して防衛庁設置法案及び自衛隊法案に対して反対討論を行わんとするものであります。
 この二法案は、MSA協定に連なるものであり、同法案と共に、我が国の国家性格の変更に重大な影響を与えんとしております。吉田内閣は、これが政府の最重要法案なりとし、その総力を挙げて、国民の反対を押し切り、強引に国会通過を図つております。汚職事件で逮捕されんとした自由党の佐藤幹事長の身柄擁護のための法務大臣の指揮権の発動も、これに関連しての本院の警告決議の院議無視も、吉田首相の外遊延期も、すべてこの法案の成立にかけられているのであります。
 私たちが反対する第一の理由は、両法案はまさしく憲法違反の法案であります。申すまでもなく、我が国の基本法たる日本憲法は、その前文において「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」、と宣言し、憲法第九条に「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍の他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と明示しております。然るに両法案による自衛隊の目的たるや、国家防衛を主たる任務とし、公共の秩序維持を従たる任務といたしております。従つて自衛隊は、今までの保安隊や警備隊と全くその性格が異なり、国内の治安維持よりもむしろ外敵の侵略に対抗することがその使命となつたのであります。ここに至るまでの過程において吉田首相は、憲法改正はいたしません。従つて軍隊は持ちませんと断言し続けて参りました。今にして思えば、吉田首相は、憲法の範囲内における自衛力の漸増と称して再軍備の実績としての既成事実を作り上げていたのであります。木村保安庁長官は、自衛隊は戦力なき軍隊であるとの詭弁を弄しておりました。然るに吉田首相は、遂に先般の内閣委員会において我が党の山下委員の追及に屈服し、自衛隊のことを国民が軍隊と言うならばそれでもよいと兜を脱ぐに至つたのであります。これを見てもわかる通り、吉田首相の憲法論は鎧の上に衣を着た平清盛的憲法論に過ぎなかつたのであります。自衛隊も、防衛二法案によりその覆面を脱ぎ、陸海空の三軍を整備し、国内治安維持の警察的性格を捨てて、外敵防衛の軍隊的性格を身に着けて立ち現われて参りました。自衛隊は軍隊であるかどうかのこんにやく問答は、もはや無用であります。このことは後世までも「冗談音楽」の話題として残ることでありましよう。国民の輿論もすでに、自衛隊は、名前は自衛隊でも、実質は軍隊であるとの判定をしておるのであります。
 反対の第二点は、政府は日本国憲法と自衛隊創設の矛盾とを今後如何に調節するかについてであります。吉田首相は曾つて、日本は戦争を放棄し、軍備を放棄したのであるから、国を護る自衛権はあつても、武力によらず、外交その他の平和的手段によつて国家を自衛すると主張しておりました。我々の見解と若干似ておる点はここでありまして今日の吉田首相の態度は、先の植竹君が言つたように、我々の主張とは根本的に違うのであります。ところが今度は武力を持つ自衛隊を持つに至つたのです。政府は武力的手段を活用せざるを得なくなつたのです。君子は豹変すとうそぶく変説論は、古代より亡国の政治家の常套的手段として用いられております。吉田首相は、デイプロマシイとは、権謀術策なりと考えられた前世紀的宮廷外交官として育つたかたであります。自分は自分なりに信念を持つてその信ずる道を歩んでおることと推察いたします。併し私たちは、戦争と暴力革命とに明け暮れた時代の宿命的な呪いを背負つた旧式政治家により、民族の運命が再び奈落の底に導かれることに対しては、これを肯んずることはできないのであります。吉田内閣は、サンフランシスコの講和会議以来、日米安全保障条約、行政協定、MSA協定と、一貫した対米依存の防衛体制を確立いたしました。自衛隊はアメリカの古い武器で武装され、アメリカの軍事顧問団の教育訓練を受け、そして日米共同防衛の義務を負担させられております。又、必要に応じては海外に出動せねばならなくなりました。これが即ちMSA協定第八条の軍事義務の忠実な履行であり、防衛能力の増強に必要な合理的措置の事践であります。又、防衛二法案から受ける拘束であります。
 反対の第三点は政府の自衛力の漸増方式に対する疑念であります。吉田首相は、国力に応じて自衛力の漸増を図ると力説されて来たのでありますが、果して政府によつてこの原則が堅持せられておるでありましようか。自衛力は漸増したが、これらの母体とされておる国力や経済力は、自衛力の漸増を許すほど強化も繁栄もしていないはずであります。又、政府はたびたびその施政方針演説において、貿易を振興させ、国際収支の均衡を保つために努力し、自立経済の確立に邁進するとの誓約をしております。然るに政府の公約した経済自立の実績はどこにも発見することが困難であります。吉田内閣の失敗の最大なるものは、その財政金融政策であります。同じ敗戦国ドイツと比較してごらんなさい。西ドイツはこの数年間に、貿易の振興、産業の合理化においてすばらしい成績を挙げております。日本では、朝鮮事変が休戦となわ、特需によるドル収入の途が断たれるや、政府は、その好むと好まざるとにかかわらず、MSAに頼つてその経済破局を切抜けざるを得なくなつたのであります。岡崎外相が、純然たる軍事援助であるMSA協定に経済援助を期待したのは、この意味で、万更、根も葉もなかつたわけではないのであります。溺れんとする者は藁をも掴む。これかまさに没落せんとする者の情ない心理であります。これに反して、同じ保守党でも、見識と教養を持つ英国保守党のバトラー蔵相は、「軍事援助に頼つて徒らに軍備を拡大すると、自国の産業が軍需産業に圧迫せられ、輸出の不振と国民負担の増大を招くことになる。英国は、防衛費に押されて経済自立の体制を崩し、国際経済競争から落伍するようなことがあつてはならない」と警告をしております。吉田首相も、このたび英国や西ドイツを訪るるならば、両国のこの実績から大いに学び取つて来られることとを望みます。私たちが、国民と共にこの法案に一番心配しておる点は、海外派兵と徴兵制度の復活であります。MSA協定調印の際には、岡崎、アリソンの日米両国代表が、この中に海外派兵が含まれていないと挨拶しております。ところがMSAはそうであつても、自衛隊法第十六条によれば、内閣総理大臣が防衛の必要ありと認めたときには防衛隊を海外出動せしめることが可能になつておるのであります。政府側の答弁によれば、海外派兵も可能であり、公務員の海外出張と同様に取扱われ、インドシナ等において戦争に協力しても違憲でないとの拡大解釈がなされております。これがために国民の不安が増大し、今年は自衛隊の志願者が激減しております。そこで国会は保守党まで、自由党までそれに加わつて、海外派兵禁止の決議まで行なつて、国民の動揺を防ぐための努力を必要とするに至りました。(拍手)又木村保安庁長官は、志願兵制度は二十二、三万が限界であると、暗に徴兵制度をほのめかしております。このことに対しても安心することができません。
 このように自衛隊の実体が判明するに従つて、国民は今や国防に関する重要事項を審議する機関としての国防会議に無関心たり得なくなつたのであります。いずれにしても、行政府の首長としての内閣総理大臣が、新たに軍隊の最高指揮官の地位を持つようになり、総理大臣の手に政権と軍権が掌握せられるに至つたことは見逃すわけには行かないのであります。これによつて戦争もクーデターも、総理大臣の胸三寸によつて決することになつたのであります。この気違いに刃物といいますか、このワンマンの手によつて絶大なる権力を持たれた以上、これを抑制しなければなりません。(拍手)それをなし得なければ、吉田幕府の出現の可能性があるのであります。国防会議は、総理大臣の諮問機関であり、国防の基本方針、防衛計画の大綱並びにこれに関連する産業の調整計画の大綱、防衛出動の可否及びその他の国防に関する重要事項がここで審議されるのであります。国防会議は内閣の責任において運営せられるでありましようが、国会及び国民の意思と直結した文民優位の民主的機関として存在し、首相の独裁と軍部の専横を抑制し得るものでなければ、その存在の意義がありません。併しこのことは、吉田内閣にそれを期待するほうが無理なのであります。
 最後に、私は本法案を中心とするMSA協定にまつわる重要法案の国会通過後、これを手みやげとして外遊の遂に上らんとする吉田首相に、あなたの外遊に反対の立場から、精神的な贈物をいたします。
 吉田さん、あなたは占領下から長期政権の総理大臣の地位にありましだ。よくも日本をここまで引きずつて来たと感じませんか。あなたの行為は、アメリカからはほめられるかも知れませんが、日本国民からは感謝されておりません。(拍手)アイゼンハワー大統領と会見の際も、チャーチル首相と握手する際にも、あなたの外交は、民族の憂い、民族の悲しみ、民族の貧しさを知り抜いた外交ではない。向米一辺倒の外交であり、日本民族の魂まで外国に譲り渡さんとした、腰抜けの卑屈外交であるとの非難と憤激が、あなたの出発する最後の日まで国会の反対党及び民衆の間から捲き起つていたことを記憶していて下さい。そうして心になければならないことは、我が国に近接した諸国家は、いずれも日本の再軍備から強烈な刺激を受けていることであります。
 私は年少の頃からアジアの諸民族と交わり、長きに亘つてアジアの諸地域は広汎に踏破し、アジアの諸民族の動向に深い関心を寄せている一人であります。日本は断じてアジアから孤立し、アジアの孤児となつてはいけません。現在アジアの諸民族は、アジアを襲うている三つの恐怖におののいております。一つは戦争の恐怖。一つは暴力政治の恐怖。一つは貧困の恐怖であります。(拍手)特に東南アジアの諸民族は、背面からは中共の軍事的圧力に脅え、前面からはアメリカの反共軍事同盟の結成による戦争への利用を極端に恐れております。朝鮮事変もインドシナ戦争も、中共の軍事的圧力とアメリカの軍事援助との抗争によつて深刻化されたものであります。而も武力戦によつてアジアに潜む根本的な問題は何一つ解決しておりません。(拍手)ジュネーヴ会議を前にしてアジア社会党会議の幹事会は、共産地区たると要欧政治勢力圏たるとを問わず、一切のコロニアニズムの清算を要請しております。アジアの諸民族だけではありません。全世界の諸民族がすべての他国の植民地奴隷になることを欲していないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)夷を以て夷を制する。即ち異民族を利用して異民族と戦わせ、自己の犠牲を少くして他を支配せんとする帝国主義的な侵略主義の権謀術策を生命とするマキアベリズム、全人類から反対されなければなりません。(拍手)特に、アジア民族の悲願は、戦争、暴力政治、貧困からの解放にあります。アジアの人々は、共産主義の侵略行為を恐れながらも、アメリカの考えるような軍事的防波堤によつて、これを阻止することはできないと思つております。万里の長城の現代版は、無用の長物以外の何物でもないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)私たちは高い理想を掲げながらも、決して現実から遊離した考えは持つておりません。私たちは日本の国民として、自衛権の確立を主張します。そうして他国の侵略に対しては身を犠牲に供しても、これを拒みます。又社会主義の精神は、外交政策においても、自分だけ完全であればよいとの自己中心の利己的中立主義を許しません。国際的な民主主義の精神は、他民族の不幸に対しても、これを傍観することは忍びかたいのであります。(拍手)従つて私たちは国際連合に加入し、集団的安全保障による相互協力の責任をも果さんとするものであります。併しそれには、その前提が必要であります。即ち日本民族の完全独立であります。マツカーサー元帥は占領軍司令官として、「経済独立なくして政治独立なし」と叫ばれましたが、その言葉だけは正しいのです。民族の魂の独立なく、独立自主の政治外交の躍動しないところには、経済の自立も政治の独立もないのであります。(拍手)
 吉田首相の外遊に際しても、これを迎える九カ国の反響を見るに、これはという反響はありません。多少期待らしいものを示しているのは、インド、パキスタン、イタリアくらいだとのことです。アメリカにしても、吉田首相から、経済援助、外資導入、中央貿易拡大などを提議しても、琉球、小笠原の返還と同様に、なかなかその解決は困難とされております。むしろ国民の恐れているのは、吉田首相がおみやげ法案を持つて行くと、待つていましたとばかり、その際にSEATOやPATOへの加盟が押付けられ、この共同軍事防衛体制への加入、更に再軍備が推進されるのではないかということであります。
 吉田さん、私たちは善良な政治家鳩山さんのように、あなたの子供だましのおもちやのおみやげは待つておりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)改めて襟を正して、吉田さんに伝えたい。日本の悲劇は、太平洋戦争以来今日に至るまで、まだ継続しておるのであります。ネール首相は、戦後アメリカに招かれた際に、「アジアは産業革命以前は、西欧諸国よりも遅れていなかつた。アジアの学ぶべきは、その近代化である」と発言しております。吉田首相の御承知のごとく、日本は明治維新を断行して、アジアで一番最初に近代国家を形成いたしました。そのアジアの暗黒に光を投げ与えるアジアの燈台とまで期待された日本が、何が故に戦争に敗れたのでしよう。維新精神の躍動、自由民権の主張が、官僚、軍閥に圧殺され、日本に民主的基盤が培養されなかつたからであります。(拍手)そしてアジアの先駆的役割を果すべき日本民族が、アジアの諸民族に対して、誠実と愛情を失つたからであります。私たちは心から反省しなければなりません。それと同時にアメリカも、戦前戦後にかけての極東政策の失敗を謙虚な精神で清算すべき時期に到達したのであります。アメリカのルーズヴエルト大統領が、スターリン、チャーチルを誘つて行なつたヤルタ秘密協定による軍事謀略によつて、日本は樺太、千島、沖縄、小笠原をソ連及びアメリカに略奪されております。アメリカは戦争の末期に、広島、長崎で原子爆弾の残虐な洗礼を授けたことを似て足れりとせず、ビキニの水爆の実験による死の灰は、日本民族の頭上に降り注がれております。(拍手)昔、エルサレムの一帯がローマ軍隊に征服されたときのように、現在の日本も、阿附と追従の迎合主義により、民族が虚脱の状態にあります。(拍手)冷酷な税金取りとパンパンの氾濫する絶望のどん底から、予言者ヨハネは、救世主出でよ、我が後から来るものがメシアなりと野に叫び続けたのであります。日本のこのどん底の世界の中から、今日の自由党の汚職政権を倒すために、(拍手)新らしい政治勢力が必ずや躍動して参ると私は信じます。(拍手)日本を救うものは残念ながら吉田総理大臣、あなたではない。過去の惰性に支配されて行動する単純な再軍備論者でなく、高いモラルを持つた徹底した平和愛好者でなければなりません。
 私は防衛二法案に反対し、併せて吉田首相の退陣を祈りながら、ここに外遊を前にして心からの告別の辞を捧げる次第であります。(笑声、拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(河井彌八君) 竹下豐次君。
   〔竹下豐次君登壇、拍手〕
#15
○竹下豐次君 私は、只今議題になりました防衛二法案につき、緑風会を代表して賛成の討論をいたしたいと思うのであります。以下簡単に、賛成の理由を申述べたいと思います。
 現在の国際情勢を見まするに、朝鮮戦乱は幾多の紆余曲折を経て休戦が成立し、現に政治会議の渋滞にもかかわらず、戦火は収まつております。先般、ベルリンで開かれた四大国外相会議においては、何ら具体的解決を見なかつたとは言え、最終的決裂は避けられ、現在ジュネーヴにおいて主要国家の会議が開かれておることは、諸君御承知の通りであります。かくのごとく最近における国際情勢の動きは、一触即発の緊張状態から脱却して、国際問題を武力によらないで、平和裡に解決して行こうという傾向に移行しておる事実は否定できないところであります。併しながら単にこれだけの理由を以て我が国に防衛力を持つ必要がないということは断じてできません。現在の世界は、それぞれ主権を持ち、軍隊を持つ国家によつて構成せられ、これらの国家群における紛争は、決して、超国家的な公平な立場から、合理的に解決されてはいないのであります。別言すれば、力による手段に訴えられることが絶対にないとは、誰がこれを保証することができるでありましようか。世界国家、無軍備、合理的平和的方法による紛争解決。これはもとより望ましいことであります。等しく我々人類の理想とするところであります。各国が武備を整え、人命を犠牲に相戦うがごときは、人類最大の悲劇であります。人類同士相せめぎ、遂に殺裁に至るは、最も卑しむべき人間の本能、野獣性の極端なる発現であります。誰が戦争を好むものがありましよう。
 併しながら、現在のごとき文化の低劣なる国際関係の中におきましては、ただ一人、みずから高うして、なすところもなく徒らに平和を待つことは許されません。(拍手)国の独立を守り、安全と平和を図るためには、国力相当の防衛力を持つことが絶対に必要であります。(拍手)従つて我が国における防衛力増強の必要は、現在主権を持ち、軍事力を持つ諸国家群によつて世界が構成されておるという、現実の条件の中から生れて来る当然の帰結と言わなければなりません。(拍手)被統治民族が如何に悲惨なものであるか。如何に哀れむべきものであるかということは歴史の示すところであります。我が国も又第二次大戦に惨敗して連合軍の占領するところとなり、完全に武装を解除され、祖先から預けられた国の守りを、我々の世代になつて異民族に委ねざるを得ない悲痛極まる状態に至つたことは、我々国民の永久に忘るることのできない痛恨事であります。その後、サンフランシスコ条約によつて、漸やく独立を回復することができたとは言え、今なお国の防衛を米駐留軍に依存しなければならん恥多き状態が続けられております。
 最近までは、世界の強国と信じ、尊き伝統を有することを確信し来たつた八千万民族のよく耐え得るところでありましようか。併しながら、敗戦以来、極端に弱体化した現在の我が国力に鑑みるとき、これも又一応止むを得ないことでありましよう。我々は暫らく忍びましよう。併しながら、我々は絶対に、恥を知る国民でなくてはなりません。(拍手)一日も早く名誉を回復せねばなりません。ただ便々と、外国の援助に依存するがごときは、我々の最も恥辱とするところであります。(拍手)米国の援助は、結局米国自身の利益のためであります。それは、MSA法の規定する条項に明示して明らかなるところであります。併しながら、私はその故を以て米国を恨むものではありません。何となれば、今日までの世界歴史において、自国を犠牲にして他国の利益を図つた例は遺憾ながら殆んどありません。ひとりこれを米国にのみ求むることはできないと思うからであります。一身をよく守り得る者は我々自身のみであるごとく、我が国を守る者は我々八千万の同胞あるのみであります。(拍手)諸君、徒らに争うことをやめて、共に共に一致協力、以て国民の先頭に立つて国の独立を固めようではありませんか。(拍手)
 以上、私は我が国を守る者は、ひとり我が国民あるのみと強調しましたが、一面又近代の交通、通信の画期的進歩と武器の驚くべき発達を見るとき世界いずれの強大国といえども、単独の力を以てその守りを全うし得るものではありません。これ即ち集団安全保障、国際連合の組織を見るゆえんであります。いわんや現在の国力微々たる我が国において、独力を以てその自立を図るがごとき、到底及ぶところではありません。他の協力を求むると共に、他に尽すの義務を忘れず、相依り相扶けて国の守りを固めつつ世界の平和を希求しなければなりません。(拍手)曾つて国際連盟の華やかなりし頃、平素更に協力の態度をとらず、而もその分担金すら納めなかつた某大国代表が、連盟総会におきまして堂々の論陣を張つて、自国の利益を能弁に主張いたしましたが、その得るところは、ただただ満場の嘲笑のみであつたという記憶が今なお新たであることを申上げたいのであります。(「何だそれは」と呼ぶ者あり)我が国もやがて国際連合に加入し、各国に協力しなければなりません。会議において強き発言権を有する者は、平素他国に対し、信義を重んじ、自己の責務を尽しておる国家のみであることを銘記しなければなりません。現実の問題として、「私の国は、防衛態勢を整えることはいたしません、将来も、軍事力を提供することはできませんが、あなたのほうは、日本を守るために兵力を提供して下さい」と言うのであつては、どこに我が国の権威を認むることができましようか。このときに当り、従来国内の治安警察を以て主たる目的とした保安隊を、国防を主たる目的とする自衛隊に切替えんとする政府の企図は、誠に時宜に適した措置であり、満腔の賛意を表するものであります。(拍手)
 併しながら我々が、ここに最も警戒と注意を要する重大な問題があります。それは神聖な目的を以て組織されたところの防衛態勢を、自衛の美名に隠れて侵略の具に供してはならないということであります。今日までの戦争において、侵略を表明された戦争は殆んどありません。いずれも自衛の美名に隠れておることは歴史の証明するところであります。我が国の防衛態勢は、絶対に防衛でなくてはなりません。一部の者に利用され、侵略の具に供せらるるがごときことなきよう、国民の細心の注意と警戒を要するものであります。(「何を言つておるのか」と呼ぶ者あり)而してこれを防止するただ一つの方法は、国民に対する徹底した曲げられない真の平和教育あるのみであります。
 以上、私は国防のため、自衛隊の創設を必要とするゆえんを述べましたが、防衛力の増強は、もとより国の経済力の許す限度を超えてはならないことは言うまでもありません。今回計画された増強は、まさに我が国力の限度に達していると思うものであります。併しながらこれは、現在の日本の経済力においてというのでありまして、(「又殖やす気か」と呼ぶ者あり)未来永劫、日本の経済力は、今日のごとく微力であるというのではありません。又あつてはならないのであります。繰返して申しますが、国力を顧みず急激なる防衛力の増強を図ることは、やがて日本の経済を破滅に導き、延いては国民をして塗炭の苦しみを舐めしむるに至ることは必至の事実でありまするので、最も戒慎を要する重大な問題であります。併しながら又一面において、防衛力増強がもたらすプラスの面があることを見逃してはなりません。即ち、初めて独立を失つた敗戦後の日本国民は、たとえそれが一時的とは言え、生活の目標を失い、努力の精神的支柱を見失つており、そのため働く意欲が大いに減退しておることは、遺憾ながら否めない事実であります。今日防衛態勢の確立によつて、日本の国は我々の手によつて守るのであるという強い独立の気概が生れることは、延いては国民の中に、他人依存からの脱却と、みずから立上ろうとする活力を与えるものでありまして、この活力が、日本の国力全体に及ぼす効果はまさしく評価されなければならないでありましよう。(拍手)この国民的気概を喚び起すことこそ、我が国の再興の最も重要なる要件であると思うのであります。
 次に考えなければならないことは、米国やソ連を恐れ過ぎてはならないということであります。世界の情勢は、時々刻々に変化しております。さすがに強大を誇る米国やソ連も、その将来を警戒するでありましよう。我が国の明治初年における国力は、実に微々たるものであつた。その当時におきましては……。その後僅かに数十年間に、我が国が世界三大国に数えられようとは、恐らく何人も予想し得なかつたところでありましよう。然るに我が国民の優秀なる素質と懸命の努力は、遂に彼岸に到達することができたのであります。日本の学者が、外国の学者に劣らない優れた発明や発見をなし得ないと、誰が確言することができるでありましようか。日本の貿易は、永久に不振であると何人が証明することができましよう。我々はよろしく国民的信念を取戻し、溢れる勇気を以て国力の回復に努力しなければなりません。この勇気と努力を以ていたしまするならば、この際外資の導入をすると、外国に抑えられはしないかとか、外国に従属するのではないかとか、借入金の返還ができないのではないかなど心配する必要はございません。抑えられるか抑えられないかは、一に我が国民の決意と努力如何にかかつております。(拍手)我が決意固ければ他力を以てこれを如何ともすることはできません。徒らに他を恐れる者こそ、他の支配を受ける要素を含んでおる者でございます。MSA協定などの援助も、米国が援助してくれるというなら遠慮なしに受入れてよろしい。大いにこれを受入れ、これを利用して国力の増強を図るべきであります。依存するというのと、利用するというのは全く違つております。我々は大いにこれを利用し、一日も早く防備を固め、而して一日も早く駐留軍の撤退を要求しなければなりません。徒らに外国を恐れ、而もみずから守る対策を立て得ないような国民であるならば、いずれ自滅の道を迫るに違いないのであります。我々は、我々みずからを侮蔑してはなりません。我が民族の優秀性を確信せねばならないのであります。
 終りに、私は政府に二、三要望をいたしたいと思います。第一に、本二法案による防衛態勢は、それが軍備であるか否か、即ち憲法第九条に違反するか否か、(「反するよ」と呼ぶ者あり)実にすれすれのところまで来ております。私はこの程度では、まだ憲法に違反していないと思うので、本案に賛成するものでありますが、(「何を言つているんだ」と呼ぶ者あり、拍手)この問題については、国民の多数も大きな疑惑の眼を以て見張つております。而して現実の事態は、防衛力の増強、将来の軍隊化、従つて憲法改正を当然のこととして要請しており、又実際にその方向に向つて進んでおります。然るに吉田総理は、国会の論議において、憲法改正はいたしませんとたびたび述べられ、これがために政府の言動に対する不信、延いては国政全般に対する不信をもたらしております。私は過日の内閣委員会において、吉田総理に対してこの点を質しましたところ、(「本当か」と呼ぶ者あり)首相は私の質問に対し、政府としても憲法の研究については、関係方面において、それぞれ慎重にいたしております、又それぞれの権威者を集めて、研究をさせておりますが、併し発表いたしまして、そうして憲法の研究を、これこれで、これこれの学者(笑声)或いはその他でもつてやつているということになりますと、徒らに世間を騒がしますから、発表はいたしませんが、憲法は国の重要なる法として、政府においても十分研究をするために用意はいたしておりますと答えられたのであります。この首相の答弁は、従来の、憲法は改正いたしません一点張りの答弁に比べて、一段の進歩を見ておるものでありますが、着々とこれを実行に移されまするよう強く要望するものであります。
 第二に、本法案を通じて感得しまするところは、両案とも、その内容、形式共に不備な点が相当にあります。例えば総理大臣、防衛庁長官、統合幕僚会議議長、国防会議等、重要機関の権限の分界が明確でない点が多い。ついては、これが運営を誤らざるよう十分の御注意を要望いたします。
 第三に、本法案の運営に当つては、政治優先の方針を厳守し、権力の集中排除につき最善の努力をされんことを要望いたします。
 第四に、日米安全保障条約、MSA協定等の実行面において、今後米国からいろいろ要望があることと想像されます。条約を尊守すべきは当然の国際的義務でありますが、万一不合理な要求のある場合においては、政府は絶対に我が自主性を堅持し、いやしくも彼に追随するがごとき卑屈なる態度をとることなく、毅然たる態度を以て、断固これを拒否せらるることを要望するものであります。
 第五に、防衛庁設置法中、最も重要なる部分を占めておる国防会議に関する法案は、当然本案と同時に提案さるべきにかかわらず、遂に会期中にその提案を見なかつたのは、実に遺憾であり、政府の怠慢も又甚だしいと言わざるを得ません。参議院内閣委員会の追及にあつて、急遽三派の協定を得て一応政府案としてその要綱を提示されさしたが、我々のなお納得できない点が甚だ多いのであります。(「じや反対しろ」と呼ぶ者あり)内閣委員会におけろ論議を十分に尊重し、更に慎重なる研究を重ねて、完全なる成案を得られんことを切望してやみません。
 最後に、政府が国民のはき違いのたい真の平和教育に格段の努力をいたされんことを重ねて要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(河井彌八君) 木村禧八郎君。
   〔木村禧八郎君登壇、拍手〕
#17
○木村禧八郎君 私は無所属クラブを代表いたしまして只今上程の防衛関係二法案に反対するものであります。
 只今賛成論者の御議論を聞いておりますと、御議論の筋よりも、吼えるがごとく大声疾呼して、そうして内容の空虚を補わんとしておる。曾つて私は、一度ここで述べたことがありますが、福沢諭吉先生も、「空樽の音は高し」と、空樽の音は高い、空虚なる器は叩けば叩くほど音が高いのである。空虚さを以て空虚なる言葉を補わんとしても、私は納得できません。これらの二法案は、日本の民族の運命にも関するような重大な法案であることは御承知の通りです。この重大なる法案に対する審議の状況はどうでありましようか。十分にこの法案が国民の代表として遺憾なく審議されたと言えるでありましよか。病気ではありましたが、吉田総理の長期の国会欠勤、又汚職事件の発生によつて自由党或いはその他の会派の諸君は、てんやわんやであつた。議案の審査どころではなかつた。又総理の外遊と、それによつて又この法案の審議が制約され、この重大なる日本民族の運命にも関するような法案の審議が十分にできなかつたということは、国民に対して重大な責任があります。私は本日、この重大なる法案が……、(議場喧騒)
#18
○議長(河井彌八君) 議場の静粛を望みます。
#19
○木村禧八郎君(続) この際討論採決するに至つたことに対しては、審議不十分のまま討論採決することに対しては、非常に……、(議場喧騒)
#20
○議長(河井彌八君) 議場の静粛を望みます。
#21
○木村禧八郎君(続) 私のこの法案に対する反対の理由は二つであります。
 その第一は、先ほど植竹氏が、太平洋の波が高いから軍備をしなければならんと言つたり、又あとで恐らく堀木さんから御説明があると思いますが、独立国であるから軍備をしなければならん。こういうことは、私は嘘だと思う。この二つの法案の裏には、本当の目的、意図というものが隠されておるのです。私の反対理由は、この法案の裏に、本当の意図或いは目的というものが隠されている。このことが本当に国民に伝えられていないということであります。何が隠されているか。私は二つのものが隠されておると思うのであります。(「札をがちやがちや叩くな」「外で叩け」と呼ぶ者あり)隠されている意図及び目的の第一は、アメリカの意図及び目的であります。アメリカは、いわゆるニュールック政策によつて戦略転換をやりました。ニュールツク政策の戦略転換の意義は、本年の一月十二日ダレス国務長官がニューヨークの外交問題協議会ではつきりと述べております。その理由は、これまで、戦争があると思つて、アメリカはどんどん軍事費を増強して来たが、一カ年、約、内外の安全保障費として五百億ドルもかかる。一九五三年には九十億ドルの赤字になり、一九五四年には百十億ドルの赤字で、このまま行けばアメリカは破産してしまう。こういうことを述べております。従つてこれまで作戦が経済を支配して来たのを、逆にアメリカの経済が行詰つたために、経済が作戦を指導するような形に戦略を転換しなければならない。それには少い経費で破壊力の大きい武器を用いる必要がある。従つて空軍と原子兵器を中心とする戦略に転換したことは御承知の通りであります。前の空軍参謀総長であるアーノルド大将が計算したところによりますと、日米戦争のときに、アメリカ第二十空軍は、日本の都市を破壊した場合の費用は一平方マイル当り三百万ドルであつた。ところが広島及び長崎に原子爆弾を落して、そうして破壊したときの費用は一平方マイル当り五十万ドルである。即ち六分の一で済んだ。従つて原子兵器を作るときにはその設備その他に金は要りますが、一たびこれができますと、非常に安い費用で非常に大きな破壊力を持つことができる。軍備拡張でアメリカが破産状態になり、遂にこの原子兵器及び空軍を中心とする戦略に転換するに至つたのは、ここにあるわけであります。その影響から、日本が再軍備を要請された。アメリカは軍事費の負担に堪えない。原子兵器及び空軍の戦略に転換すると共に、アメリカの軍事費を日本国民の血税に転換させようと、日本国民の税金によつて、アメリカの国防の一翼を負担させよう。これがMSA協定の狙いであります。この意図が隠されておる。表面では、あたかも日本が自主的な軍隊を作るがごとく一生懸命弁明しておるが、アメリカの真の意図を隠さんとして政府は努力しておる。これは独立国の政府でなく糖価政府であります。傀儡政府の態度であります。この真の意図が第一、隠されております。
 第二に隠されておる意図は、日本の大資本家及びその代弁を勤め、御用を勤め、そうしてそのおこぼれのリベートとか汚職なんかを頂くところの自由党その他の保守政党の諸君の、本当の意図が隠されておるのであります。吉田政府は、アメリカと取引をしておる。アメリカに日本を軍事基地として提供し、その代りに、これまで民主化政策によつて大きな資本家の失われた過去の特権を回復しようとしておるのだ。そのために独占禁止法を緩和し、破防法を制定し、そうして今度はMSA再軍備の一環として、教育二法案を制定し、そうして秘密保護法、警察法の改正、この一連の措置によつて、失われたところの旧財閥の支配者、或いはそれと結付いたところの特権官僚、或いは政治家等の失われた特権をアメリカとの取引において回復しよう。そういう意図が隠されている。自由党の諸君は口を開けば、国家の防衛とか、国のためとか言いますけれども、そんなに愛国心があるならば、なぜセメントは独占価格を吊り上げて国家に売りつけるのでありますか。(拍手)そんなに愛国心があるならば、なぜ肥料の独占価格を吊り上げて売りつけるのでありますか。鋼材の価格も、石炭の価格も、設備があるのに操業短縮をして、独占価格を吊り上げて国家に売りつける。ですから公共事業費は千何百億に達しておる。この独占価格を廃止すれば、その二割、三割を節約することは容易であります。二百億三百億を節減することは容易である。口を開けば愛国心というけれども、誰のための愛国心であるか、大資本家の利潤を擁護するための防衛であり、愛国心であるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)特にこの二法案によつてこれから再軍備が促進されますが、今後の日本の防衛負担というものを考えれば、そう簡単にこの防衛法案に賛成できるはずがありません。一応本年度の予算には保安庁費七百八十八億と現われておりますけれども、これを平年度化して計算してみますれば非常に大きいのであつて、例えば二十九年度の予算を見ましても、防衛費七百八十八億に防衛分担金五百八十四億を加え千三百七十二億になつております。これを平年度化すると、これに少くとも百五十億を加えなければなりません。そうしますと、二十九年度の規模で三十年度の予算は千四百二十二億、これに対して三十年度の陸軍二万、海軍六千、空軍八千六百を加えれば、少くともこれは三百債かかります。そうすれば三十年度の保安庁費だけで千七百億を超えるのです。優に超えます。更に賠償があり、対日援助の返済があり、今の底の浅い、危機の状態にある日本の経済が、どうして負担できますか。而もこの防衛費を負担するのは誰でありますか。誰が負担するか。(「それは国民だ」呼ぶ者あり)これは労働者或いは農民、中小企業者、勤労者であります。そうしてこれに賛成するかたがたは、リベートとか汚職とか(拍手)そういもので損をしないのであります。この防衛費を負担しない。その負担は勤労者に転嫁してしまう。ですから賛成するのでありましよう。二十九年度に現われておる防衛費は氷山の一角である。政府の答弁によりましても、二十九年度は地上軍に重点を置くが、今後は空軍に重点を置いて行くと言つておるのです。御承知のように、空軍の消耗度は非常に大きいのであつて、そうこの二法案を認めてここではつきりした再軍備にスタートすれば、これは累進的に、加速度的に大きくなります。その費用を皆さんがたが負担し、戦争が起つたときに皆さんがたが鉄砲を担いで行くならばいいでありましよう。併し鉄砲を担いで行くのは誰であるか。この防衛費を負担するのは誰であるか。これは明らかではありませんか。私はこういう観点から、二法案に賛成できないのであります。
 そこで、若し二法案が通過して七月の一日から実行される場合、これによつて日本は、アジアの孤児になる。又憲法に違反し、憲法違反と道義の頽廃を招きます。日本民族を堕落させます。そういう犠牲を払つてまでも、独占資本家の利益のために、日本の防衛のためではありません。資本家の利潤の擁護のために、この再軍備が行われる。断じてこういうような内容の法案に養成することはできません。
 第二の反対理由は、これは先ほど矢嶋君も言われましたので、私はその要点だけを申上げますが、この法案を眺めて、これくらい矛盾した、用語のあいまいな法案はありません。軍事専門家の岡村元陸軍大学教授も、はつきりと公述で述べています。国防上の規定において言葉を冒涜し、濫用するということは、これは師団の七つや八つ作つたり減らしたりすることよりも、もつと根本的な問題である。人命並びに国の安危存亡に関する問題において、こういう内容の不明瞭な言葉で規定することは非常に危険ではないか。そういう上に立つた国防に関する法律というものは危険極まりない。結局、言葉が非常にあいまいであり、規定が朦朧とし、思想がぼんやりしているのは、吉田内閣と改進党と妥協しまして、改進党はいわゆる芦田理論によつて、自衛のためならば戦力を持つてもよろしいという立場に立つて、政府が、自由党が、自衛のためでも戦力を持つてはいけない。全くこの反対の立場の者が妥協したのです。そこで思想の非常な昏迷が起きています。更に又アメリカの意図に基いて、再軍備をしなければならん。憲法の九条に違反することをカンニングしなければならない。そのために用語があいまいとなり、朦朧となり、思想が統一されていない。このような法案に基いて自衛隊が創設されたならば、非常に危険である。而も衆議院の委員会においては、辻政信氏は、このような法案によつて自衛隊を作ると、クーデターが起る危険がある。ここに再軍備した場合、皆さん方のほうへ銃口が向くかも知れません、将来、そういう危険性もあるというのです。又、軍事独裁の危険もある。三軍抗争の危険もある。首相、長官の権限が強大過ぎて、そうして戦争に捲き込まれる、戦争を挑発するという危険もある。このような非常な不備な法案に我々が賛成していいでありましようか。この瞬間におけるところの我々の一票は日本の運命を決する。
#22
○議長(河井彌八君) 木村君。
#23
○木村禧八郎君(続) あとからでは追いつきません。
#24
○議長(河井彌八君) 木村君、時間が切れました。
#25
○木村禧八郎君(続) どうか皆様方の聡明なる、子供さんもお孫さんもあるでありましようから、(笑声、拍手)戦争に捲き込まれないように、聡明なる一票を御投票あらんことを希望し、期待いたしまして、私の反対討論を終る次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(河井彌八君) 堀木鎌三君。
   〔堀木鎌三君登壇、拍手〕
#27
○堀木鎌三君 私は改進党を代表いたしまして、只今審議の対象になつている二法案に賛成の意を表します。以下その理由の主なるものを申上げます。
 およそ独立国家として、自衛権を保有することは、あたかも国民がすべて基本的人権を享有し、天賦の権利として、法律を以てしても何人もこれを奪うべからざるものとしているのでありますが、これと同様の事柄であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)このことは国連憲章におきましても、平和条約におきましても、国家固有の自衛権についてはこれを確認しているところであつて、世界共通の観念であり、独立国家の国民として何人も疑いを持たないところであります。(拍手)これを神聖なる権利義務と感じ、みずからこれを守らんとするところに、独立国家の本質があると言い得るのであります。(拍手)我々は独立の完成と世界の平和とを切に念願し、その達成のためには全力を挙げんとするものでありますが、ただ徒らに小児病的に、口に筆に平和を希望するだけでは、決して実現するものではないのであります。(拍手)世界が二大勢力圏に分れて相対立し、ときに局地戦が身近かに行われる現在の国際情勢下にあつては自衛態勢を整えることこそ、独立を維持し、平和と自由を守るゆえんであることを深く思わなければなりません。(拍手)中立を以て国是とし、久しく戦争に捲き込まれたことのないスエーデンが、如何に中立を維持することに腐心し、自衛のための軍備を充実し、進んで北欧三国と手を携えて防衛に努力しているかは、今更改めて申上げる必要もないことと存じます。自衛なき国は、他国の軽侮を招き、内、国民の精神を萎靡沈滞せしめるのみであります。
 政府は、従来独立国家として本来持つべき自衛軍備をごまかし、警察予備隊、保安隊の名の下に、国民の眼を蔽うに汲々として参つたのでありますが、我が党はかかる魂のない欺瞞的軍備に反対し、公然堂々と国力に応じた民主的自衛軍の創設を主張して参つたのであります。(「もう一回戦争したいのか」と呼ぶ者あり)その基くところは、現在のごとく外国よりの直接侵略に対する国土防衛を、挙げて外国軍隊に委すがごときは、独立国家としての体様を備えたものではないのであります。(「武器はアメリカのものだ」と呼ぶ者あり)速かに自衛軍備を整備充実して、外国軍隊の迅速なる撤退を期すべきであります。
 サンフランシスコ平和条約に基いて、米国と安全保障条約を結び、国防については共同防衛の責任を負うことといたしましたが、これは飽くまでも過渡的措置であつて日本の防衛に当る米国自身も、その兵力の早期撤退を強く希望しているのであります。又、我が国は国連憲章加入を希望いたし、集団安全保障制度に参加し、積極的に世界平和建設のために寄与せんとしているのであります。然らば、当然自衛軍備を持つことが必要であるのであります。これらの主張が、我が党の堂々と自衛軍備を主張する根拠であります。(「行進曲か」と呼ぶ者あり)
 我が党は、現行憲法第九条第二項によれば、国際紛争を解決する手段として軍備及び戦力は、これを厳に禁止しているところでありますが、外国の直接、間接の侵略に対抗する自衛のたあの軍備は、軍隊であり戦力であつても、真に自衛のためならば、これを埜止するものでないと考えているのであります。政府はみずから安全保障条約において、直接、間接の侵略に対し、自国防衛のため漸増的にみずから責任を負うという条約を結びながら、常に消極的態度を持して、その自衛軍備を否認し来たつたのであります。然るにMSAに関する日米交渉が開始するに及びまして、憲法の解釈はともかくとして、にわかに従来の態度を改め、遂に、この際自衛力を増強する方針を明確にし、駐留車の漸減に即応し且つ国力に応じた長期の防衛計画を樹立することとし、現在の保安庁法を改正し、保安隊を自衛隊と改め、直接侵略に対する防衛に当らしめるといういわゆる重光・吉田共同声明となつたのであります。これ我が党の主張に承服するに至つたのであります。即ちその結果、差当り現行憲法の範囲内において、従来の治安維持を任務とした保安庁法に代うるには自衛隊を管理運営するための業務機関として、国家行政組織法に基いて総理府の外局として防衛庁を設置し、他は隊の任務、組織、編成、服務等について、その使命、目的、性質を明らかにするため自衛隊法を制定したのであります。ここにおいて初めて我が国の防衛体制確立の基礎ができたと言い得るのであります。
 自衛隊法第三条によりますれば、自衛隊の任務は、我が国の平和と独立を守るため、直接及び間接の侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ公共の秩序の維持に当るものとすると規定しております。直接侵略に対し国を防衛することを主たる任務とするもの即ち軍隊であります。これをしも軍隊にあらずとするは、「白馬は馬にあらず」と言うの類でありまして、必要に応じ公共の秩序を維持することは、従来とも軍隊の従属的役割として如何なる場合にもあつたものであります。併しながら新たに創設せらるる軍備は、飽くまで祖国の独立自衛のため必要であつて、この限界を超えてはならないものであります。又決して過去の軍国主義の再現を許してはならないのであります。即ち民主主義国家にふさわしい国民の意思を体し、平和を守ることを使命とする国土防衛軍であつて、如何なる名目の下にも他国を侵略し、又は戦争を挑発し、若しくは他国を威嚇する手段に用いてはならないのであります。これらは現行憲法の厳に禁ずるところであります。以上の目的を以て自衛隊法第二章第七条、第八条によりますれば、自衛隊の最高の指揮監督については総理大臣がこれを保有し、隊務の統括については国務大臣たる長官が内閣総理大臣の指揮監督の下にこれを行うことになつておるのであります。又新たに内閣に国防会議を設けまして、国防に関する重要事項について審議する機関とし、その構成については特に識見の高い練達の士を、両議院の同意を得て任命する等、文民優位と総理大臣の権限の仁徳について特別の配慮をしておるのであります。又自衛隊法第七十六条の防衛出動については国防会議に諮らねばならないこととし、国会の承認を必要としておるのであります。又特に緊急の必要により、国会の承認を得ないで出動いたしました場合は、その不承認の議決があつたときは撤収を命じなければならないことにしておるのであります。又旧軍閥時代の三軍割拠の弊害を矯めるため、防衛庁設置法第四節において統合幕僚会議を設けておるのであります。自衛隊については服務について所要の制限を課しますると共に、予備自衛官の制度を採用していますが、飽くまでも志願兵制度をとり、その組織、編成は我が国力に相応する限度において、法律、予算により国会の定むるところによらしめておるのであります。これらの諸点は、おおむね民主主義国家にふさわしい新軍備の方向を示すものと言わねばなりません。これ本法案に賛成するゆえんであります。
 最後に日本経済と軍備の関係についての所見を明らかにしたいと思います。世論往々にして軍備は経済を破壊するとか、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)経済を復興してから防衛をとか言われるのでありますが、経済を破壊して防衛そのものが成り立たないことは言うを待たないのであります。又防衛をすればそれだけ国民負担が多くなるか、或いは他の経費をそれだけ削減しなければならないことも当然であります。(「だから反対しているんだ」と呼ぶ者あり)要は総合国力をどう按排するかの問題であるのであります。各国が一般会計の上で二五%から三五%程度までの軍事費を負担し、西独においては四〇%近くの占領軍費を負担し、国民所得から見ましては五%から二〇%前後までの軍事費を負担しつつ、戦後今日の経済の回復と繁栄をかち得ているのであります。戦争に勝つたイギリスでも、国民は耐乏生活を続け、饑餓輸出の段階を経て経済を回復したのであります。アメリカですら朝鮮事変の勃発後においては、賃金、物価のストップ令を出したぐらいであつたのであります。世界各国がこの二つの問題と真剣に取組み、これを解決し、これを克服しつつあるのであります。若し日本が敗戦の故にこの問題を解決できないとして、手をつかねて、防衛は挙げて他国の態度に依存するがごときは、独立国家として決して尊敬と信頼を得る途ではないのであります。いわんや経済を回復してからと称して放漫な古典的な自由主義経済を奉じて、防衛を怠り、経済を今日の救いがたい破局的状態に追い込んだ責任は重大と言わなければならないのであります。併しながら経済と防衛とは、現実の問題として飽くまでもこれを解決しなければならないのであります。我々は決して今日の日本の経済の状態において厖大な軍備を考えておるものではないのであります。否、却つて少数の均衡の取れた精鋭主義をとると共に、偏狭な民族主義を排し、他国と共同して集団防衛体制を整えんとするものであります。本年度防衛費は防衛支出金及び保安庁経費を合わせまして千三百七十三億であります。国民所得から見ますると二・三%、一般会計から見まして一四%であります。これを他国に比しますときは、甚だ低位にあると言わねばなりません。又本年度の防衛関係の経費が昨年度に比し百四十億殖えておることを取立てて、この法案の故にと言われるのでありますが、二十七年度は防衛分担金、安全保障諸費、保安庁経費の合計は実に千八百億円であつて、五百億遥かに高いものであつたことを考えねばなりません。でありまするから、本年度の防衛費が特段に殖えたということは、事実を私は曲げておるのだというのであります。併しそれだけに自衛隊の内容を充実し、而も目的に徹底した魂の入つた精鋭でなければならないと思うのであります。これは本法案の制定を必要としたゆえんでもあり、我々の賛成する理由でもあるのであります。
 ただ、最後に附言いたしたいことは、本法案審議に当つて、憲法改正の方針については、依然として従来の説明を繰返すことより一歩も出ていないのであります。私はこの際、政府が政治の方向を明かにすることを期待したのでありますが、遂にその回答を得られない。又本法案の裏付けとなる長期防衛計画の策定は、日本の自立経済計画と一貫してこれを明示すべきでありますにかかわらず、共にそのことのなかつたのは甚だ遺憾であります。
 政治の要諦は国の方針を明らかにし、国民の判断に待ち、理解と協力を得ることこそ大切であつて、徒らに言葉の末に走り、現実を糊塗して既成の事実を作り、国民をして却つて帰趨に迷わしむるがごときは、政治のあり方として誠に遺憾に湛えないと思うのであります。政府はよろしく大胆率直に、これらの諸問題についてその方針を明確にすべきことを強く要請いたしまして、賛成討論を終りといたします。(拍手)
#28
○議長(河井彌八君) これにて討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案の表決は、記名投票を以て行います。両案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼]
   〔投票執行]
#29
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れはないと認めます。
 これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#30
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数 二百三十一票
 白色票 百五十二票
 青色票 七十九票
 よつて両案は、可決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名 百五十二名
   河野 謙三君  佐藤 尚武君
   小林 武治君  小林 政夫君
   岸 良一君   北 勝太郎君
   加藤 正人君  片柳 眞吉君
   梶原 茂嘉君  上林 忠次君
   井野 碩哉君  石黒 忠篤君
   飯島連次郎君  加賀山之雄君
   赤木 正雄君  山川 良一君
   森 八三一君  森田 義衞君
   村上 義一君  溝口 三郎君
   三木與吉郎君  三浦 辰雄君
   前田  穰君  前田 久吉君
   廣瀬 久忠君  後藤 文夫君
   早川 愼一君  野田 俊作君
   西田隆男君   中山 福藏君
   常岡 一郎君  土田國太郎君
   田村 文吉君  館  哲二君
   竹下 豐次君  高橋 道男君
   杉山 昌作君  高瀬荘太郎君
   高木 正夫君  新谷寅三郎君
   島村 軍次君  白井  勇君
   横川 信夫君  深水 六郎君
   木村 守江君  安井  謙君
   伊能 芳雄君  青柳 秀夫君
   高野 一夫君  西川彌平治君
   石井  桂君  井上 清三君
   関根 久藏君  川口爲之助君
   吉田 萬次君  酒井 利雄君
   佐藤清一郎君  鈴木 亨弘君
   森田 豊壽君  谷口弥三郎君
   宮本 邦彦君  長島 銀藏君
   長谷山行毅君  宮田 重文君
   瀧井治三郎君  田中 啓一君
   大矢半次郎君  石川 榮一君
   岡崎 真一君  石原幹市郎君
   植竹 春彦君  岡田 信次君
   松岡 平市君  團  伊能君
   一松 政二君  西郷吉之助君
   中川 幸平君  北村 一男君
   左藤 義詮君  寺尾  豊君
   中山 壽彦君  中川 以良君
   山縣 勝見君  吉野 信次君
   重宗 雄三君  津島 壽一君
   大達 茂雄君   青木 一男君
   大野木秀次郎君 小滝  彬君
   古池 信三君  伊能繁次郎君
   杉原 荒太君  榊原  亨君
   大谷 贇雄君  宮澤 喜一君
   高橋  衛君  横山 フク君
   西岡 ハル君  重政 庸徳君
   小沢久太郎君  鹿島守之助君
   木内 四郎君  藤野 繁雄君
   雨森 常夫君  石村 幸作君
   青山 正一君  秋山俊一郎君
   入交 太藏君  高橋進太郎君
   仁田 竹一君  松平 勇雄君
   加藤 武徳君  上原 正吉君
   郡  祐一君  山本 米治君
   小野 義夫君  愛知 揆一君
   平井 太郎君  川村 松助君
   堀末  治君  白波瀬米吉君
   池田宇右衞門君 島津 忠彦君
   松野 鶴平君  小林 英三君
   草葉 隆圓君  泉山 三六君
   黒川 武雄君  石坂 豊一君
   井上 知治君  岩沢 忠恭君
   木村篤太郎君  木島 虎藏君
   白川 一雄君  野本 品吉君
   三浦 義男君  石川 清一君
   有馬 英二君  三好 英之君
   鈴木 平強君  深川タマヱ君
   武藤 常介君  寺本 広作君
   紅露 みつ君  最上 英子君
   堀木 鎌三君  笹森 順造君
   菊田 七平君  鶴見 祐輔君
   一松 定吉君  苫米地義三君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  七十九名
   高良 とみ君  楠見 義男君
   永岡 光治君  三輪 貞治君
   湯山  勇君  大和 与一君
   木下 源吾君  内村 清次君
   秋山 長造君  阿具根 登君
   海野 三朗君  山口 重彦君
   大倉 精一君  河合 義一君
   岡  三郎君  亀田 得治君
   小松 正雄君  近藤 信一君
   竹中 勝男君  滑津 俊英君
   成瀬 幡治君  小林 亦治君
   小酒井義男君  佐多 忠隆君
   重盛 壽治君  江田 三郎君
   小林 孝平君  久保  等君
   堂森 芳夫君  田畑 金光君
   森崎  隆君  高田なほ子君
   安部キミ子君  矢嶋 三義君
   藤田  進君  岡田 宗司君
   田中  一君  戸叶  武君
   栗山 良夫君  吉田 法晴君
   藤原 道子君  小笠原二三男君
   菊川 孝夫君  若木 勝藏君
   山田 節男君  天田 勝正君
   松本治一郎君  中田 吉雄君
   三橋八次郎君  千葉  信君
   羽生 三七君  野溝  勝君
   荒木正三郎君  三木 治朗君
   曾祢  益君  山下 義信君
   市川 房枝君  東   降君
   松浦 清一君  赤松常子君
   松浦 定義君  須藤 五郎君
   平林 太一君  八木 秀次君
   加藤シヅエ君  八木 幸吉君
   鈴木  一君  加瀬  完君
   千田  正君  松澤 兼人君
   上條 愛一君  長谷部ひろ君
   木村禧八郎君  相馬 助治君
   村尾 重雄君  棚橋 小虎君
   松原 一彦君  羽仁 五郎君
   大山 郁夫君
     ─────・─────
#31
○議長(河井彌八君) 日程第三、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案(鶴見祐輔君外八名発議)
 本案は、発議者から、委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り、委員会の審査を省略し、直ちに本案の審議に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて本案を議題といたします。これより発議者に対し、趣旨説明の発言を許します。鶴見祐輔君。
   〔鶴見祐輔君登壇、拍手]
#33
○鶴見祐輔君 私は、只今議題となつた自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案について、その趣旨説明をいたさんとするものであります。先ず決議案文を朗読いたします。
   自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議
  本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。
  右決議する。(拍手)
 この趣旨は、すでに三月八日、日米相互防衛協定調印の際、岡崎外務大臣とアリソン米国大使との挨拶のうちに述べられていることでありますが、我我は国民の名において、本院により改めてこれを確認せんと欲するものであります。
 只今本院を通過成立をいたしました防衛二法案は、委員長の報告によりましても、誠に重要なる内容を有するものであります。先般成立いたしましたMSA協定と相待つて、戦後日本に新らしき方向転換を示唆するがごとき要素を含んでおるのであります。自衛隊法により生まれんとする三部隊、殊に陸上自衛隊は、その名称の如何に呼ばれましようとも、その数量と装備、武器に至つては、満州事件前の我が国の陸軍に次第に近似するがごとき実力を備えんといたしております。又、その任務については、同法第三条におきまして、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛す」となし、その方法としては、第八十八条におきまして、「必要な武力を行使する」と明記してあります。而もこの自衛隊の数量は、米国駐留軍の漸減に応じ漸増せんとするのでありますから、戦力という文字の解釈如何にかかわらず、常識的用語としての軍隊の内容に近づきつつあることは、否みがたいのであります。故に今日の程度においても、すでに憲法第九条の明文に違反するとの議論が生じております。いわんやこれが更に数量的に増加せられ、又その使用の範囲が拡大せられるといたしますならば、我が国が再び、戦前のごとき武装国家となる危険すら全然ないとは申せないのであります。故に自衛隊出発の初めに当り、その内容と使途を慎重に検討して、我々が過去において犯したるごとき過ちを繰返さないようにすることは国民に対し、我々の担う厳粛なる義務であると思うのであります。
 その第一は、自衛隊を飽くまでも厳重なる憲法の枠の中に置くことであります。即ち世界に特異なる憲法を有する日本の自衛権は、世界の他の国々と異なる自衛力しか持てないということであります。
 その第二は、すべての法律と制度とは、その基礎をなす国民思想と国民感情によつて支えられて初めて有効であります。そして今日の日本国民感情の特色は、熾烈なる平和愛好精神であります。従来好戦国民として世界から非難をこうむつておる日本国民は、今や世界においても稀なる平和愛好国民となつておるのであります。それは日本国民が、最近九年間に実に深刻な経験をいたしたからであります。その一つは敗戦であります。これがどのように日本国民の思想に影響を与えたかは申述べる必要はありません。この悲痛な幻滅が戦争に対する日本国民の考え方を激変させたのであります。併し、日本の国民思想に深刻な影響を与えたいま一つの事実は、戦争後における勝利者と敗北者との関係であります。敗戦後の日本国民は、深い反省をいたしました。そうして謙虚な気持で新らしい出発をしようと思つていた。併し我々の期待を裏切るような出来事が国の中においても、海の外においても起つたのであります。我々が戦前に抱いたと同じような考えが、再び世界に抬頭せんとすることを我々は眺めたのであります。そして我々は無条件にそういう道ずれにはなりたくないと思うようになつたのであります。この二つの深刻な幻滅の結果として、日本民族の尊き体験として学びとりましたことは、戦争は何ものをも解決しないということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)殊に原爆と水爆との時代において、戦争は時代錯誤であるということであります。(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり拍手)この惨禍をこうむつた唯一の国民として日本はこれを世界に向つて高唱する資格を持つておるのであります。然るに戦後九年にして、世界は再び大戦争の危険にさらされんとしておる。殊に東洋においてその危険が横わつておるのであります。そのときに日本に、自衛隊が誕生したのであります。故に我々はこの自衛隊の意義を明白に規正しておくことが特に必要であると思うのであります。思うに自衛隊は現在の世界情勢に対応するための時的な応急手段であります。若し国際情勢が今日のごとく二大陣営に分れて緊迫していなかつたならば、この程度の自衛隊をも必要としなかつた筈であります。七年前我々は、平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼して、みずから進んで戦争を放棄したのであります。故に今日創設せられんとする自衛隊は、飽くまでも日本の国内秩序を守るためのものであつて、日本の平和を守ることによつて東洋の平和維持に貢献し、かくしてより高度なる人類的大社会的組織の完成を期待しつつ一つの過渡的役割を果さんとするものであります。それは決して国際戦争に使用さるべき性質のものではありません。この日本国民の平和に対する希求は外国の指導に原因するものでもなく、又一時の流行でもありません。あの戦後の深刻なる幻滅に刺激せられて、国民の中に起つた一つの精神革命の結果であります。この九年間に我々は過去の国家至上主義の思想から解放されて、人間尊重の考え方に転向したのであります。殊にそれは若き世代と婦人との間に力強く成熟しつつある思想であります。この個人を尊ぶという考え方は、民主主義の基底であり、それは世界平和の思想に連なるものであり、この国民感情が憲法第九条の明文と相待つて、自衛隊の行動を制約すると思うのであります。然るにこの自衛隊という文字の解釈について、政府の答弁は区区であつて、必ずしも一致しておりません。この間、果して思想の統一があるか、疑いなきを得ないのであります。その最も顕著なるものは、海外出動可否の点であります。何ものが自衛戦争であり、何ものが侵略戦争であつたかということは、結局水掛論であつて、歴史上判明いたしません。故に我が国のごとき憲法を有する国におきましては、これを厳格に具体的に一定しておく必要が痛切であると思うのであります。自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であつて、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。故に我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮窟であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。外国においては、過去の日本の影像が深く滲み込んでいるために、今日の日本の戦闘力を過大評価して、これを恐るる向きもあり、又反対に、これを利用せんとする向きも絶無であるとは申せないと思うのであります。さような場合に、条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。
 何とぞ満場の御賛同によつて、本決議案の可決せられんことを願う次第であります。(拍手)
#34
○議長(河井彌八君) 本決議案に対し討論の通告がございます。発言を許します。羽生三七君。
   〔羽生三七君登壇、拍手〕
#35
○羽生三七君 私は日本社会党を代表して、只今提案された決議案に賛成の意思を表明したいと思います。
 特に防衛二法案の通過したこの機会に、この提案がなされたことは、誠に機宜を得たものと考えるわけであります。この決議案に対する各派の賛成の理由やそのニユーアンスは、それぞれ異なるところがあると思います。併しそれにもかかわらず、自衛隊の海外出動を認めないという一点で各派の意思が、最大公約数でまとまつたことは、参議院の良識として、誠に欣快に存ずる次第であります。(拍手)
 私がここに改めて指摘するまでもなく、我が国の憲法は、戦争放棄を世界に宣言したものであり、このことは世界の、そして全人類の未来に対して、新らしい希望を掲げたものとして高く評価されて然るべき権威を持つものと確信をいたします。(拍手)私はこの機会に、平和憲法の立場に立つ我々の基本的な見解を明らかにして置きたいと存じます。
 自衛隊の創設は、直接侵略に対応するものとして企図されたものであり、且つ又安全保障の手段ということを目的とするであろうことは言うまでもありません。併し一国の防衛問題は、その国の置かれた国際的、国内的諸条件、兵器の発達、総合国力等の関連において検討さるべきでありまして国を守るための希望或いは願望というような、純粋に主観的なものと混同してはならないと思います。このような混同は、日本では余りに多過ぎると思います。独立国家に国際法上の権利たる自衛権があるかと言えば、そのような権利があることは当然であります。そして又或る種の国際的条件の下では、軍備を必要とすることもあるでありましよう。併し又その反対に、或る種の国際的条件や地理的条件の下においては言うに足りない軍備を持つことよりも、むしろ他の手段、例えば国民生活の安定、治安に必要な程度の警察力、自主的にして且つ弾力性のある外交手段等の総合的な国家安全保障措置のほうが、前者よりも遙かに安全の度合いを有する場合もあるのであります。(拍手)
 更に又原爆、水爆というような恐るべき兵器の発達によりまして、従来の防衛方式が根本的に再検討されなければならぬことは当然であります。併しこの場合に、特に最近には、一部の意見でありますが、朝鮮やインドシナの事例を引きまして、局地戦争、即ち制限戦争を云々される向きもございます。併し我々の注意しなきやならんことは、これらの国々が例外なく、同一国内に二つの政権を有しておるということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)即ち朝鮮は北と南に、中国は本土と台湾に、インドシナは又御承知の通りの状態であります。即ち同一国内に二つの政府が存在しておるのであります。そしてこれら諸国の戦争は、言うまでもなく内戦であります。国内の戦いであります。いずれかの政権がへゲモニーを確立するための政権争奪のための戦いであることを見逃すことはできません。吉田政府がよかれ悪しかれ、日本に二重政権は存在いたしません。このような場合に、而も又日本のような地理的条件の国に、海を越して加えられる攻撃があるとするならば、それはそれ自身、局地戦争の限界を超すものであります。そして又我々の常識の範囲では、更に又、我々の見通し得る近い将来におきましては、このような理由なき直接侵略を想定することは困難と言わなければなりません。(拍手)
 今日我々は、もとより絶対的な安全保障を想定することは困難と考えます。何人といえども、それを保障することはできないでありましよう。併し安全保障は結局において相対的なものであり、且つ又比較とウエートの問題であります。今、日本は直接侵略の危険のみが想定され、かかる見地から、防衛問題や安全保障が論じられておるのでありますが、直接侵略そのものと、日本以外の第三国相互間の紛争に日本が捲き込まれる危険と、これを我々は厳密に区別しなければなりません。この場合危険の度合い、そのウエートはいずれが多いでありましようか。
 今、アジアでは御承知のようにアジアの平和とか或いは国際緊張の緩和ということで、インドシナ問題を中心に自由諸国の統一行動が説かれております。それがPATO或いはSEATO等の名前を以て呼ばれておることは、皆様御存じの通りであります。併しアジアで言われておる自由諸国の多くが、先ほど申上げましたような同一国内に二重政権を持つその一方であるということは、改めて申上げるまでもございません。例えば朝鮮の場合、自由諸国という場合には、南鮮を指す、台湾で言う場合には蒋介石政府を指す、イントシナで言う場合にはバオダイ政権を指す、これがアジアで言われておる自由国家である。ヨーロッパで自由諸国という場合には、例えばイギリスにしても、フランスにしても、或いはイタリアにしても、自由国家のよし悪しは論議する必要はありませんが、それは申すまでもなく、単一の自由国家であります。然るに、これらの国々は、同一国内に二つの政府があつて、その一方が自由国家と呼ばれている。而も現にこれらの国は戦つており、又現に戦争の危険を内包している国であります。その一方と結ぶことが、果して我が国の安全に役立つでありましようか。極東の平和或いは国際緊張の緩和ということで、その一方と結ぼうという構想が伝えられておるのでありますか、それは断じてアジアの平和にも或いは我が国の安全にも役立ちません。(拍手)それはむしろ安全とは反対に、危険を、平和とは反対に、戦争への道に通ずるものと言わなければならんのであります。(拍手)主観的にはそれがどのような善意から出発しておりましようとも、又どのように美しい名の下に呼ばれましようとも、国際紛争に介入するような自衛隊の出動は、断じてこれを避けなければなりません。
 我々は東西両陣営が、その相異なるイデオロギーにもかかわらず共存することが可能であることを信じ、且つ又あらゆる努力を払つて、その共存を確立しなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)若し戦争になつたならどうするかという議論もありますが、併し第三次世界戦争の意味するものは、全人類の破滅であります。祖国の破壊であります。我々に必要なることは、戦争になつたらどうするかということではなく、戦争を起さないこと、且つそれを避けるための無限の努力にあると言わなければなりません。(拍手)
 広島、長崎において世界で初めて原爆の洗礼を受け、更に又世界で初めて水爆実験の被災を経験した我が日本民族は、それ故にこそ強く世界に、日本国憲法の精神を以て訴えるべき最善の立場に置かれております。(拍手)この立場に立つて自衛隊の海外不出動を示した本決議案の精神には、自由党も社会党もなかろうと思います。これは我が八千万日本民族の悲願であり、そして更には又、世界全人類の希望と言うべきものと思います。自衛隊創設の賛否は、いずれにもあれ、この決議案に盛られた精神が知性と高い良識を以て貫かれることを衷心より希望し、更に又国際緊張の原因を除去するために、武力ではなく、雄渾な外交を以てこれに応えんことを希望し、本決議案に賛成の意思表示をなすと共に、(拍手)更に併せて只今申述べた精神が吉田首相外遊のはなむけとなれば幸いと存ずる次第であります。
 以上を以て本決議案賛成の討論といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(河井彌八君) 松澤兼人君。
   〔松澤兼人君登壇、拍手〕
#37
○松澤兼人君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして只今上程されました自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案に対し、賛成の討論をいたすものであります。
 今更申すまでもなく、我が国の憲法第九条は、厳として「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」し、一切の戦力と交戦権とを放棄しているのであります。ところが、吉田内閣は、アメリカの再軍備要求に屈伏し、戦力にあらざる軍隊というソフィスト以上の詭弁を考え出して、今日までのごまかしの軍備を強行して参つたのであります。警察予備隊は保安隊となり、保安隊は自衛隊となり、遂に今日おたまじやくしは立派な蛙となつて誕生してしまつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)この事実は、政府が如何に軍隊でないと強弁しようとも、或いは戦力にあらざる軍隊などと言い張ろうとも、今や三才の童子といえども、一人としてこの言を信ずる者はないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この憲法違反、憲法無視、意識的に憲法の空文化を図り、その既成事実の上に立つて憲法改正の方向へ誘導せんとする態度には、我々は断じて承服し得ないのであります。(拍手)
 更に、四月二十八日、参議院本会議を通過して発効を見たいわゆるMSA協定によつて、吉田内閣の憲法違反の罪悪は更に加えられたのであります。特に今日、国民一般の不安と恐怖の重要な原因は、このMSA協定の成行きに注がれているのであります。即ちこの協定によつて、相互の義務を負担することは明確であつて、これによつて日本が再び戦争の惨禍に捲き込まれる危険が増大し、それが現実の姿として浮び上つて来たからであります。安保条約は片務的な保障協定でありますが、このMSA協定は双務的安全保障協定でありまして、理論上海外派兵の途が開かれて参つたのであります。勿論アリソン大使が言うように、MSA協定の文字の中から、日本。青年が海外で戦うという義務を発見することはできないかも知れないが、あの協定の審議の過程において、この一点だけは全く明らかとならず、国民を納得させることができなかつたことは事実であります。(拍手)それのみならず、その審議の過程で、政府側の答弁を聞きますと、本協定に関連して、我が国の保持し、且つ行使し得る自衛権の範囲及び発動の条件については、おおむね国連憲章第五十一条の制限の下における自衛権であると信ぜられるに至り、更に我が国の領土外に自衛権が行使される場合も、理論上あり得ることが明らかとなつたのであります。政府は、この理論的必然の結論に対し、何らその危険を防止する措置もとらず、ただ声明の中で約束はしなかつたと言つてごまかそうとしたのであります。併し国会における審議が進むに従つて、隠し切れなくなると、自衛隊の海外出動は、公務員の海外出張という形で行われることがあることを白状してしまつたのであります。全くこの海外出張、而も吉田内閣的表現によれば、自衛隊の、軍艦による集団的海外出張ということは明白であつて、この表現こそ、吉田内閣の一貫してとつて来た「戦力なき軍隊」的な理論であり、巷の三百代言的議論と何ら選ぶところがないと信ずるのであります。(拍手)従つて如何に政府が、いろいろな表現を使つて弁解しようとも、国民はその言を信ぜず、不安は去らないのみでなく、いよいよ深刻となり、日に日にこの不安は恐怖に変り、拡がりつつあるのであります。故に政府の百万言の詭弁を聞いても、あえてここに参議院は、この決議案を提出しなければならない原因があることを政府は深く反省しなければならないのであります。(拍手)
 特に、この不安と恐怖を拡大する情勢がインドシナ戦争をめぐつて作り上げられ、ディエンビエンフー陥落以来、現実的な深刻さを以て加えられて来ているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この事態は、第二の三十八度線突破であり、全くあの朝鮮動乱の開始と相似た形をしていることであります。即ち民族解放を目標とする共産陣営の政策に対抗せんがために、アメリカはSEATO、即ち東南アジア同盟条約に躍起となつているのであります。一方日本に対する最近の米軍関係要人の往来が極めて頻繁であります。国防長官が来たかと思えば、曾つての第八軍司令官ヴアン・フリート大将が飛んで来る等、実にあわただしい雲行きを呈しているのであります。この動きは、日本の自衛隊やMSA協定とは決して関係のないことではないのであります。(拍手)従つてこの東南アジアをめぐる情勢の中における日本は、曾つての朝鮮動乱とは全く違つた軍事的積極的立場に立たされているのであります。総理並びに外相は、SEATOに我が国が参加を求められても、これを拒否すると述べておりますが、この際、本院の決議を以て、事態を明確ならしめることが何よりも肝要であると断言せざるを得ないのであります。(拍手)
 以上の情勢の中で、更に日本人の恐怖心をかき立てているのが吉田首相の外遊問題であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田首相みずからも国会において言明しているがごとく、おみやげは期待できないと言つているのであります。とするならば、一体何の目的で、あらゆる国内輿論のごうごうたる非難と反対を押切つてまでも外遊をしなければならないのでありましようか。未だ以て、その目的すら明らかにしていないのであります。国会に出席することすら本心好まない首相が、遥々海を飛び越える決心をしたということは、よほどの理由と必要がなければならないはずであります。而もこれについて、幾ら国会で追及いたしましても明らかにされておりません。このような事実から推して、アメリカから如何なる要求があり、而も又ワシントンで何が待ち受けているかは推察に難くないところであります。(拍手)アメリカの議会においては、地上兵力は現地兵を充当するほうが安上りであるという議論が支配的であります。今までの吉田首相の態度は、これに対して煮え切らないといつて、日本の再軍備に対する態度の不満をぶちまけているのであります。ワシントンに着くや否や、吉田首相はこの米国政府及び議会方面から、再軍備の強化、SEATOの参加、海外派兵等に対する言質を強要されるであろうことは当然と言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そして吉田首相が、アメリカからイギリスに出発せんとするとき、ワシントンにおいてトルコ総理大臣並みの歓待を受けて日本では見られないにこやかな笑顔を見せている姿が新聞に出たとするならば、それは日本国民にとつて目をつぶらなければならない瞬間であります。(拍手)我々は勿論、国民すべてが、吉田首相の外遊に対し、この種のおみやげを期待している者は一人もおらないのであります。評しろそれよりも、吉田総理が日本を再び誤まつた道に進まないように、毅然たる態度を以て一貫してもらいたいということであります。(拍手)これこそが、参議院がこの決議案を満場一致で可決し、吉田総理の外遊に対するおみやげの最も大なるものとして持参してもらいたいと思うのであります。(拍手)
 今や、世界の勤労大衆は、再軍備の重圧の下に喘ぎ、加えて人類の文明は水素爆弾の恐怖にさらされているのであります。ビキニ環礁実験の犠牲になつた現地島民すら、堂々と国連に対し、原子爆弾禁止と被害の補償を要会しているのであります。(拍手)ところが、日本における外務大臣は、水爆実験に協力しなければならないという放言をあえて行なつているのであります。今般ビルマで開催されましたアジア社会党第三回幹事会は、全会一致を以て、有効なる国際的管理の下に、一般的軍縮と原子兵器の製造、保持、実験及び使用の禁止、原子力の平和的利用を実施すると共に、軍備に充当する財源を、大衆の福祉増進と後進国開発に振り向けることを決定したのであります。(拍手)これ正しく、先般の本院の決議に対応するものであると共に、吉田内閣の外交政策に対する厳重な警告にほかならないと信ずるのであります。(拍手)
 我々は、ここに吉田内閣の下における防衛庁法、自衛隊法が、我々の反対にもかかわらず成立し、且つ吉田総理が海外に出張する機会において、自衛隊の海外出動禁止の決議に賛成すると共に、吉田内閣の危険極まりない外交防衛方針に断固反対の意を表するものであります。(拍手)
#38
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立]
#39
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本決議案は、可決せられました。(発言者多く、議場喧騒)静粛に願います。
 只今の決議に対し、木村国務大臣より発言を求められました。木村国務大臣。
   〔「総理を呼べ」「総理はどうした」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#40
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の本院の決議に対しまして、一言、政府の所信を申上げます。
 申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持つていないのであります。従いまして、只今の決議の趣旨は、十分これを尊重する所存であります。(拍手)
   〔「議長、約束が違うぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場喧騒〕
#41
○議長(河井彌八君) 議事の都合により、暫時休憩いたします。
   午後四時四十五分休憩
   〔休憩後開会に至らなかつた〕
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 防衛庁設置法案
 一、日程第二 自衛隊法案
 一、日程第三 自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議案
ソース: 国立国会図書館
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