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1953/03/16 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第9号
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1953/03/16 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第9号

#1
第019回国会 法務委員会 第9号
昭和二十九年三月十六日(火曜日)
   午前十時三十二分開会。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
           宮城タマヨ君
           亀田 得治君
   委員
           楠見 義男君
           中山 福藏君
           三橋八次郎君
           一松 定吉君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務大臣官房調
   査課長     位野木益雄君
   法務省刑事局長 井本 台吉君
   法務省保護局長 斎藤 三郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判所職員定員法等の一部を改正す
 る法律案(内閣送付)
○下級裁判所の設立及び管轄区域に関
 する法律の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○執行猶予者保護監察法案(内閣送
 付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (検察官の供述調書に対する弁護人
 の閲覧要求に関する件)
 (弁護人と被疑者との接見制限に関
 する件)
○千葉少年鑑別所施設移転新設反対に
 関する請願(第一二九〇号)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。
 先ず裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案について提案理由の説明を聴取いたします。
#3
○政府委員(三浦寅之助君) 只今議題となりました裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
 この法律案は、先に奄美群島に設けられました裁判所の職員の定員を裁判所職員定員法中に組み入れることといたしますと共に、今次の各行政機関における職員の定員の縮減に応じまして、裁判所の職員についても、司法行政事務の簡素化等によりその定員を減少いたしますため、裁判所職員定員法等に所要の改正を加えようとするものであります。
 御承知の通り、奄美群島における裁判所の職員の定員は、奄美群島の復帰に伴う法令の適応の暫定措置に関する法律に基き最高裁判所規則によつて暫定的に定められているのでありますが、今回これを他の裁判所の職員の定員と同じく裁判所職員定員法中に組み入れることといたしました。ただ、この組み入れに当りましては、次に申上げます司法行政事務の簡素化等の趣旨を斟酌して、現在よりは幾分減員いたしました結果、奄美群島における裁判所の設置に伴う裁判所職員の増員は判事及び簡易裁判所判事それぞれ二人、裁判官以外の裁判所の職員二十七人となつております。
 次に、裁判官以外の裁判所職員の減員の点について申し上げます。このたび政府におきましては、行政費を節約すると共に、行政事務の能率化を図るため、各行政機関の事務を簡素化し、その人員を相当数縮減することといたし、そのために必要な法律案を今国会に別途提出いたしたことは御承知の通りでありますが、本法律案は、裁判所につきましても、これに対応して司法行政等の事務を極力簡易化、能率化して人員の整理を行おうとするものでありまして、裁判官以外の裁判所の職員の員数を、奄美群島に置かれた裁判所の職員の増加分を差し引き、三百九十三人だけ減少すると共に、裁判所事務官の中から命ぜられることとなつている検察審査会事務官の員数を、三十人減少することといたしたのであります。
 最後に、この法律案の附則でありますが、このたびの裁判所職員の人員整理につきましては、一般公務員の人員整理の場合に準じ、一定の猶予期間を設け、その間は新定員をこえる員数の裁判所職員を定員の外に置くことができるものとすると共に、新定員又はこれに基き定められる配置定数を超えることとなる員数の職員で、配置転換が困難な事情にあるものについては、最高裁判所規則で定めるところにより、本年六月三十日までの間において、その職員について、臨時待命を命じ又はこれを承認することができることにいたしたのであります。
 以上、この法律案の内容の概略について説叩いたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(郡祐一君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由の説明を聴取いたします。
#5
○政府委員(三浦寅之助君) 只今議題になりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について提案の理由を説明いたします。
 今回の改正の要点は次の通りであります。
 第一は、簡易裁判所の名称の変更であります。即ち、岡山県英田群美作町の設置に伴い、林野簡易裁判所の名称を美作簡易裁判所に改めようとするものであります。
 第二は、簡易裁判所の管轄区域の変更であります。即ち、茨城県新治郡千代田村の設置に伴い、土浦簡易裁判所管内の茨城県新治郡七会村の区域を石岡簡易裁判所の管轄に、富山県西礪波群戸出町の設置に伴い、高岡簡易裁判所管内富山県東礪波群旧北般若村、同県西礪波郡旧戸出町及び同県同郷旧醍醐村の区域を礪波簡易裁判所の管轄に、因島市の設置に伴い、竹原簡易裁判所管内の広島県豊田郡旧東生口村の区域を因島簡易裁判所の管轄に、井原市の設置に伴い、笠岡簡易裁判所管内の岡山県小田郡旧稲倉村及び旧大江村の区域を井原簡易裁判所の管轄に、鳥取県八頭郡郡家町の設置に伴い、鳥取簡易裁判所管内の鳥取県八頭郡旧下私都村及び若桜簡易裁判所管内の鳥取県八頭郡旧大御門村の区域をそれぞれ河原簡易裁判所の管轄に、又土地の状況等にかんがみ、森簡易裁判所管内の北海道茅部郡落部村の区域を八雲簡易裁料所の管轄にそれぞれ変更しようとするものであります。
 第三は、市町村の廃置分合による行政区画の変更、市町村の名称の変更等に伴つて、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表に当然必要とされる整理を加えようとするものであります。
 第四は、さきに、奄美群島の復帰に伴う法令の適用の特定措置等に関する法律(昭和二十八年法律第二百六十七号)第五条の規定により、昭和二十八年十二月二十五日設立されました名瀬簡易裁判所及び徳之島簡易裁判所を、この際、他の簡易裁判所と同じく下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律により設立される裁判所としようとするものであります。
 なお、以上説明いたしました裁判所の名称及び管轄区域の変更につきましては、いずれも、地元市町村、関係官公署、弁護士会等の意見を十分斟酌し、最高裁判所とも協議して決定したものであります。
 以上簡単にこの法律案の提案の理由を申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
#6
○委員長(郡祐一君) 只今提案理由を聴取いたしました二法案につきましては、次回以降において御質疑を願うことといたします。
  ―――――――――――――
#7
○委員長(郡祐一君) 次に刑法の一部を改正する法律案及び執行猶予者保護観察法案についての逐条説明を聴取いたします。
#8
○政府委員(斎藤三郎君) 只今議題になりました刑法の一部を改正する法律案及び執行猶予者保護観察法案につきまして、逐条説明を申上げます。
 先ず刑法の一部を改正する法律案でございまするが、これは大きく分けまして二つに分かれます。一つは日本の航空機が最近国外航空を開始いたしましたので、それに伴う手当と、もう一つは、執行猶予者の保護観察に伴う改正でございます。
 第一条の二項中に「日本船舶」の下に「又ハ日本航空機」を加えておるのでございまするが、現行法によりますると、国外にある日本航空機内で外国人が犯罪を犯した場合には、内乱、外患及び或る種の偽造罪等を除いては、これを罰し得ないものとされており、又日本人が罪を犯した場合でも、暴行、脅迫、略取、誘拐、賭博、阿片、麻薬に関する罪等は処罰ができないこととなつております。今回日本の航空機が国外航空を開始いたしましたので、日本の航空機を日本の船舶と同様に取扱つて、右の不都合を避けようとするのがこの改正の目的でございます。この改正は属地主義の原則に則つた改正でございまして、日本の船舶を日本領土の延長と考えるのと同様の観点から、日本の航空機を日本領土の延長と見て、日本の航空機内の行為について、全面的に我が国の刑罰法規を適用するものとしているのでございます。我が国においては、刑法改正予備草案及び改正刑法仮案がすでに刑法第一条第二項に「航空機」を追加すべきものとしており、外国の立法例の中にも、同様の明文規定を置かれておりますので、この改正は、国際刑法の原則に反するものではございません。日本の航空機というのは、航空法によつて我が国で登録された航空機をいうのでございます。機長や乗組員の国籍とは関係がないのであります。
 又この改正に伴い、附則第三項で、日本航空機内の犯罪についての土地管轄につきましても、日本の船舶と同様の特例を設けるために、刑事訴訟法の一部改正を行うことといたしております。
 次に執行猶予に関する保護観察の分でございます。第二十五条第二項の但書中「第二十五条ノ二ノ保護観察ニ付セラレ」とありますのを、「第二十五条ノ二第一項ノ規定ニ依リ保護観察ニ付セラレ」と改めようといたしておりまするが、これは「第二十五条ノ二」に今回の改正案では第二項及び第三項として保護観察の仮解除の規定が設けられましたのに伴いまして、条文の整理をしたのでございます。
 「第二十五ノ二」の改正でございまするが、これは三つの面に分かれております。一つは、初度目の執行猶予につきましても、保護観察を必要によつてすることができるようにいたしておる点でございます。第二は、保護観察の仮解除という制度を設けた点でございます。第三は、現行法の「保護観察ニ付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」という規定を削除した点でございます。以下各項の説明においてその理由を申上げます。
 「第二十五条ノ二 前条第一項ノ場合ニ於テハ猶予ノ期間中保護観察ニ付スルコトヲ得前条第二項ノ場合ニ於テハ猶予ノ期間中保護観察ニ付ス」と、この項は第十六国会に提案いたしました政府の原案と形式上は全く同一でございまして、前段を今回追加いたしまして、初度目の執行猶予につきましても、裁判所の裁量により保護観察を付することができるようにしようとしておるのでございます。併しながらあとで申上げまするように、保護観察の内容、その遵守事項及び遵守事項違背を理由とする執行猶予の取消し等につきまして、重要な改正を加えたほか、保護観察の仮解除制度を導入しまして、実質的には、第十六国会の政府原案と全く面目を異にいたしておるのでございます。保護観察の内容及び保護観察におきまする遵守事項は、このあとで申上げまする執行猶予者保護観察法案において定められております。このように執行猶予者の保護観察について独立の単行法が制定されることになりますれば、刑法の中に現行法の第二項のような「保証観察ニ付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」という規定を設ける実益がないばかりでなく、刑法の体裁からいつても、かような規定を置くことがそぐわないと考えまして、これを削除いたした次第でございます。
 次に、仮解除の点でございます。保護観察に付されたものが保護観察の過程中において、その必要がないと認められた場合に、仮解除を行うというのが、この仮解除の制度でございます。この保護観察の仮解除は、あたかも仮出獄の場合に、刑の執行をとめるのと同じように、保護観察における指導監督、補導援護の措置を行わないものとするものでございまして、保護観察に付する旨の言渡しの効果を消滅させるものではないのであります。かような観点から、仮解除を行政官庁の処分にかからしめたのでございまして、丁度仮出獄が行政官庁の処分によるのと軌を一にいたしておるのでございます。いずれもいわば刑の執行の態様を緩和するに過ぎないので、刑の言渡しそのものの効果を失わしめるものではございませんから、行政官庁の処分にかからしめるのが相当であると考えたのでございます。行政官庁としては、地方更正保護委員会が現在仮出獄の権限を持つており、而も保護観察所を監督する立場にございまするので、この地方更生保護委員会にこの権限を持たしめることが最も適当であると考えられるのでありまして、執行猶予者保護観察法案において所要の規定をいたしておるのでございます。
 又、一方におきましては、この項では仮解除の取消については明らかにいたしておりませんが、次の項において仮解除の取消を予想する規定が置かれておるばかりでなく、「仮ニ之ヲ解除スルコトヲ得」という文言自体からも、仮解除の取消ということを予想いたしておるのでございます。そこで執行猶予者保護観察法案においては、仮解除の処分をした地方更生保護委員会に、再び保護観察を開始するのを相当とするような情況が生じた場合には、仮解除の取消をなし得る権限を与えており、更にこの仮解除の取消処分につきましては、中央更生保護審査会に対して不服の申立の道を開いて、仮解除の取消を慎重適当に行うべきことを期しておるのでございます。
 次に、保護観察を仮に解除されたときの効果の最も多い点を、重要な点を規定いたしておるのでございます。申上げましたように、保護観察の仮解除は、保護観察の実際の措置を仮に解除するのでございまして、保護観察の言渡そのものの効果を失わしめるものではございませんが、実際上において保護観察における指導監督及び補導援護の措置を行わない以上、その期間中に犯した行為について現にさような処置を受けておる者と同様の不利益を帰せしめることは妥当でないと考えましたので、その不利益を除去しようとしておるのでございます。この規定の結果、保護観察の仮解除を受けた者は、仮解除の処分を受けた日から仮解除の取消の処分のあるまで、これがずつと続く場合には、結局執行猶予の期間が全部経過することになるのでございますが、その間は、再犯を犯しても、再びその罪について刑法第二十五条第二項の適用を受けて、そうして重ねて執行猶予の言渡を受けることができることとなり、又その期間中に遵守事項に違背するということがありましても、執行猶予の取消を受けることがないように規定いたしたのでございます。
 本項の効果は、以上申上げました限度でございまして、仮解除を受けた者も保護観察に付されたという地位を失うのではございませんから、一応保護観察における遵守事項を守るという義務は存続するものと考えておるものでございます。ただ、その遵守について保護観察所の指導監督を受けることもなく、又遵守事項に違背したからといつて執行猶予の取消の原因にはならない、かように考えておるのでございます。
 次に第二十六条ノ二第二号の改正でございます。これは従来の規定に「其情状重キトキ」という点を追加したものでございまするが、遵守事項の違背を理由として執行猶予の取消をする場合には、その違背の情状の重いということを要件とするのが相当であると考えましたので、前回の改正点を更に修正いたした次第でございます。
 なお、遵守事項は、執行猶予者保護観察法案の第五条において定めておりまするが、法律上に定められた法定遵守事項のみでございます。而も従来の犯罪者予防更生法第三十四条第二項に定めておりまする法定遵守事項に比べますると内容が著しく緩和されております。即ち従来からあります法定の遵守事項には、正業に従事すること及び犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないことというような遵守事項がございましたが、その二点はこの案では廃止いたしております。同時に従来の遵守事項では、住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ保護観察を行う者の許可を求めなければならんござういうことになつておりましたが、「長期の旅行」というのは明確でございませんので、その点をこの改正案では一箇月以上の旅行」というふうに期間を明確にいたしますると同時に、許可を受けなければ旅行も転居もできないという点を届出ということに改めまして、居住、移転、旅行の自由を保障するようにいたしたのでございます。
 遵守事項の違背を理由とする執行猶予の取消手続の内容については、今回は改正をいたしておりません。ただ、執行猶予者保護観察法の立案に伴いまして、従来の犯罪者予防更生法中の関係条文の二、三をここに移しておるのに過ぎないのでございます。
 次に附則でございまするが、第一項は施行期日に関することでございまして、保護視察に関する改正規定の施行につきましては、諸般の準備を要しますので、施行期日に余裕を置くことといたしまして、ただ航空機内の犯罪の処罰については、現に国外航空が始つておりまするので、公布の日から施行するものとしたのでございます。
 第二項は、執行猶予に保護観察を結びつけるということは、形の変更ではなく、執行猶予の態様に変更を加えるものにすぎないので、従いましてござの場合には形法第六条の適用はないと考えておりまするので、本項のような規定を粋かなければござの改正法案が成立して施行された場合に、施行前に犯された罪につきましても、新法が適用されることとなるのでございまして、従来の規定によれば、いわば野放しの執行猶予を受け得た者について保護観察を付することができるということになりますると、その者に新たな不利益を帰せしめる面もあろうかと考えられますので、特にかような経過規定を設けた次第でございます。ただござの法律の施行前と施行後とに罪を犯して併合罪として一つの刑で処断するというような場合において、刑を分割することができませんのでござの場合には、その刑の執行猶予については、初度目の猶予であつても保護観察を付することができるようにいたそうといたしておるのでございます。
 次に第三項、刑事訴訟法の改正でございまするがござれは刑法の改正によりまして、日本航空機内の犯罪については日本船舶内の犯罪と同一に取扱うようにいたしますに伴いまして、裁判所の土地管理についても、船舶の場合と同様の特例を設けようとするものでございます。船舶の場合には、「船籍の所在地」も土地管轄の一つの基準になつておりまするが、航空機の場合にはこれに相当する「航空籍」というようなものがございませんのでござれを除いておるのでございます。
 以上が刑法の一部を改正する法律案の説明でございます。
#9
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
   〔速記中止〕
#10
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#11
○政府委員(井本台吉君) 次に、執行猶予者保護観察法案について逐条説明を申上げたいと存じます。
 この法律案は、刑の執行を猶予せられ保護観察に付された者の保護観察に関しまして必要な事項を定めようとするものでござざいます。
 保護観察というものを規定する法律といたしましては、すでに犯罪者予防更生法が施行されており、仮出獄者であるとか、或いは仮釈放者であるとか、或いは家庭裁判所から保護視察に付された者及び現在では二度品の執行猶予に伴い保護観察に付する旨の裁判を受けている者はござの法律によつて保護観察を受けておるのでございますが、前国会の審議の状況に鑑み、種々検討いたしまして更に執行猶予者に適当な単行法を作るのが適当であろう、かように考えましてこの法律案を考えた次第でございます。
 第一条はござの法律の目的でございましてござの法律案の目的と趣旨を明らかにし、同時にござの法律が刑法第二十五条ノ二第一項の規定によつて付せられるその保護観察の内容を規定するということを明らかに宣言いたし、そうして保護観察の内容中に重要な遵守事項及び保護観察の方法や運用の基準その他を定めることを明らかにし、保護観察の目的が懲罰的に本人の自由を制限するものではなく、本人の更生を助長するためのものであるということを明らかに宣言いたしておるのでございます。
 次に第二条は、保護観察の方法と運用の基準でございます。本条は、その趣旨において刑罪者予防更生法と異なるものではございませんか、ただその対象がすでに刑務所であるとか、少年院とかいうような矯正施設に収容された経験のある仮釈放者や或いは問題の少年とは異なる対象者が多いと考えられます。又その対象者の多くが一家の経済的な柱として社会生活を営む者が多いとも認められますので、みだりにその社会活動を制限することのないよう、その職業等にも十分注意を払つて、そうしてその実施はケース・ワーカーによつて画一的に行うのではなくて、本当に本人の置かれておる環境なり、本人の性格なり、本人の家庭なり、そのときそのとき、最も必要なことに合うように、画一的に行うのではない、個別的に本人の更正を図つて行くのだ。こういう趣旨を明らかにして、保護観察の運用の根本の考え方をはつきりさした次第でございます。
 第三条は、保護観察を掌る機関について規定いたしたのでございまして、本条にいうところの保護観察所は、法務省設置法によつて各都道府県に置かれておりまする保護観察所を指すのでございまして、そして又保護観察所の権限を定めておりまする犯罪者予防更生法第十八条によりますると、保護観察所は、犯罪者予防更生法の定めるところによつて、犯罪者予防更生法の対象とする保護観察を実施するほか、「その他この法律又は他の法律により保護観察所の所掌に属せしめられた事務」等を掌るのだという規定にしておりますのと、それと相待つてこの第三条によりまして保護観察所が、この法律による、執行猶予者保護観察法による保護観察を掌るということを明らかにいたしたのでございます。なお「この保護観察に付せられている者の住居地(住居がないか、又は明らかでないときは、現在地又は明らかである最後の住居地若しくは所在地とする。)」かようにいたしまして、従来の犯罪者予防更生法第三十七条の管轄規定で不分明な管轄を補正いたしておるわけでございます。
 次に第四条でございます。これは保護観察開始前の環境調整の規定でございまして、「保護観察所の長は、刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付する旨の言渡があつて、その裁判の確定前本人から申出があつたときは、保護観察の開始を円滑ならしめるため、その者の境遇その他環境の状態の調整を図ることができる。」、かように規定いたしまして、その保護観察に付するという裁判があり、本人は執行猶予の判決があつたので、勾留中の者はすぐにその場で釈放されることに相成つております。ところが、かような保護観察の宣告を受けた者のうちで、その場で釈放されてもどこにも住むところがない、又住居はあつても遠隔の地であつて、汽車に乗つて帰るという旅費等もないというような場合がございます。さような場合に、裁判の確定後保護観察が円滑に開始され、そしてその効果を挙げるというために、本人の申出ということを条件といたしまして、保護観察所の長が本人の環境調整につき善処することができるように本条を設けた次第でございます。なお、この法案の附則第四項におきまして、更生緊急保護法という法律を改正いたしまして、必要な場合には、これらの者に対しまして、国が委託費を出して保護会に収容ができるというような援護措置もとることができるようにいたしてございます。
 次に第五条は、保護観察中本人が遵守すべき事項を規定いたしたのでございまして、「保護観察に付された者は、すみやかに、一定の住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にこれを届け出るほか、保護観察に付されている期間中、左に掲げる事項を遵守しなければならない。一 善行を保持すること。二 住居を移転し、又は一箇月以上の旅行をするときは、あらかじめ保護観察所の長に届け出ること。」この遵守事項につきましては、刑法の一部改正について一言申上げましたように、従来の他の種類の保護観察の者よりも条件を緩和いたしております。そして現行の二度目の執行猶予者の保護観察と同じように、一般的な法定遵守事項だけによらしめ、特別遵守事項を定めるという制度を採用いたさなかつたのでございます。これは特別遵守事項ということを考えまする場合に、その性質上、裁判所が定めるということが相当ではないかというふうに考えられまするが、現行の刑事司法手続の下にあつては種々の困難が予想されます。やはり判決前に調査官があつて十分調査するというふうな制度がない場合においては、実施上なかなか困難であろうということが予想されまするのと、同時に法定遵守事項だけでありましても、保護観察を担当する者の指導監督のやり方によつては十分成果を挙げることもできるというふうに考えたからでございます。本条におきましては、保護観察の言渡の確定した者に対しまして、先ずその当初において速かに住居地を定めて、且つこれを観察所のほうに届出ることを義務づけ、保護観察を実施する上においては是非とも本人の連絡を保つことが必要でございまするので、その連絡の保持を図つたのでございます。保証観察を実施いたしますのには、どうしても保護観察官や或いは保護司によつて行うのでございまして、この保護観察を実施する者とそれを受ける本人とが十分に知り合い、そして本人の住居地、住所をいつでも知つているというふうにしなければ、保護観察を開始することができませんので、現在裁判があつて確定するまでに若干の日にちがかかり、その間に本人の所在が転々するということが、すでに現行法の二度目の執行猶予の保護観察は昨年の十二月の十日でございましたが、実施いたしましてからかような事例も起つておりまするので、今回の立案についてはその点を考慮いたした次第であります。
 次に、保護観察に付されている期間中遵守すべき車項といたしましては、現行法の遵守事項の内等を著しく緩和して、正業に従事すること、犯罪性のあるもの、素行不良のものと交際しないこと、この二つの遵守事項を廃止して、更に住居の移転、長期の旅行という場合には、先ほど申上げましたように、期間を明確にし、且つ許可を届出に改めるということにいたしたのでございます。なお、現在残つておりまする善行を保持するということでございまするが、これは必ずしも本人が非常な人の模範になるという善行をやらなければいかんという意味合いではなくして、善良な一般の市民生活を送るということでございまするが、ただ遵守事項というのが本人の指導監督上の努力目標でございまするので、悪いことをするなというふうなことを規定することは望ましくないというふうに考えましたので、善行を保持するという規定をここに持つて参りまして、同時に遵守事項違反による取消の条件にその情状重きときという字句を入れまして、調整を図つたような次第でございます。なお、犯罪性のあるもの或いは素行不良のものと交際しないというようなことを廃止いたしました一つの例といたしまして、現在の犯罪者予防更生法で仮出獄の場合には、もとの刑務所の仲間と交際するというようなことが再犯を誘発する相当の原因になる場合が多いので、さような場合にはそういう事項が必要ではありますが、本法についてさような規定は削つたほうがよいのではないかというふうなことを考えた次第でございます。
 次に第六条の補導援護の規定でございますが、保護観察の目的は第一条に規定しておりますように、本人の更生を図るものでございまして、その方法といたしましては消極の面と積極の面と両面あろうと存じております。即ち消極面としては本人が個人的な自由を無分別に用いるということを防いで、そうして再犯を防ぐという消極面がございます。と同時に、積極面では、本人が更生をして行くという積極の面でございまして、どちらに重点があるかということを考えてみますと、保護観察の目的から言いましてやはり補導援護という積極面を重点に考えるべきであると考えて、第六条に補導援護とし、第七条において指導監督という順序を考えた次第でございます。
 この第六条におきましては、補導援護のうち、専ぱら外的な、物的な面について例示をいたしたのでございまして、その第一としては就職を援助するというようなこと、それから職業の補導或いは医者の治療を受けさせるとか、或いは泊り場所を援助する或いは本人の家庭、その他の環境を調整するというようなことを例示いたし、そのやり方といたしましては、先ず第一段階としては公共の衛生福祉、その他の施設に斡旋するというような方法を講ずる。そうして第二段としてさような公共の施設から必要な援護が得られず、そのために本人の更生が妨げられる虞れがあるというような場合には、保護観察所みずから国の予算を以て行うことができる、かようにいたして一般の無差別平等に行うベき社会福祉関係の施設の優先、そういう公共の優先の原則を示しておるのでございます。公共の衛生福祉施設としては、官公立の病院或いは生活保護法による市町村が設ける授産所であるとか、無料宿泊所その他養老院等の保護施設、或いは児童福祉法による母子寮であるとか、養護所というような児童福祉施設、更に職業関係におきましては職業安定法による職業安定所、職業補導所等を先ず第一番にそこに斡旋をする、それらから十分の援護が得られるように努めるということを考えておるのでございます。
 なお、犯則者予防更生法の第四十条は、これは大体同趣旨の規定でございまするが、その規定には、これに必要な費用は予算の範囲内で支払うものといたしておりまするが、これは当然のことでございまするので、さような規定は今回は抜いておるのであります。
 なお、先ほど申上げましたように、更生緊急保護法の規定を改正いたしまして、執行猶予者の保護観察も、必要によつては更生緊急保護法によつてできておりまする更生保護会に委託ができるように附則において改正をいたしておるのであります。そうして第六条の補導援護の措置が洩れなく行われるようにいたそうといたしております。
 次に第七条、指導監督でございます。この指導監督は保護観察の消極面でございまして、本人の更生を助長するために補導し或いは監督するという方法でございまするが、これも警察官等の一方的な監視というものとは全く異にするものでありまして、保護観察を行うもの、これを受けるもの、本人との相互の人間ととしての信頼の関係において成立つものでございまして、この条文においても方法において規定いたし、現行の犯罪者予防更生法三十五条の必要にして且つ適切と認められる指示を与えるというのと趣旨において同一でございまするが、更にこれを詳しく敷衍して本人が遵守事項の違反或いは再犯等に陥る危険を防止するために、性格であるとか、環境であるとか犯罪の動機、原因等を十分に考慮した上で、本人の指導目標を抽出し、これを本人に納得さして、わしも一つこれをまじめにやりましようという本人に覚悟を起さして、その覚悟をゆるめることのないように、その目標を忘れることのないようにして適切な指示を与えて更生を完成させようという趣旨を第七条で書いた次第でございます。なお、この指示ということは、法定遵守事項の範囲を超えることはできませんし、又特別遵守事項でございませんから、その指示に従わなかつたと言つて法律上何らの不利益な措置もないというふうに考えております。
 次に、第八条は、保護観察の仮解除の規定でございます。先に刑法の一部を改正する法律で申しましたように、保護観察を開始して、その後の状況の変化によつて本人が保護観察の措置を受ける必要はない。そういうことをしなくても本人が遵守事項を守つて、そうして更生に励むという十分の見通しがついたというときは、無論保護観察を何らかの形で打ち切るということが、却つて本人の更生を励ますきつかけとなりますので、今回仮解除の規定を刑法に出しまして、又その重変な法律上の効果を刑法のほうに規定すると同時にその実施の手続等を保護観察について全般的に所要の事項を規定する法律で書く、その規定といたしまして第八条を設けた次第でございます。先に申上げましたようにこの仮解除の許可を地方委員会の権限といたしましたのは、現に地方委員会が仮出獄を許可する権限を有しておるのであつて、而も管内の保護観察を監督する立場にございますので、地方委員会の権限といたしましてそうして仮解除の運用において不均衡のないことを期するほか、保護観察所が実際に本人の保護観察を掌つて、本人の成績を最もよく承知いたしておりますので、保護観察所の申請に基いてそうしてやる、地方委員会がその許可を決定して行くということによつて、仮解除の許可が適正妥当に行われることを期した次第でございます。
 仮解除の規定は、現在の再度の執行猶予によつて保護観察に付されておる人にも適用されることになりまするので、現在再度の執行猶予に伴つて保護観察に付されたものが、この法案の施行後成績良好の故を以て仮解除の決定を受けますと、その後の犯罪については刑法第二十五条二項二号の適用を受けて、重ねて執行猶予が可能となるということに相成ると存じております。
 本条の第二項は、仮解除の決定を受けたものが、不幸にしてその後環境が非常に悪化したとか、或いは本人の態度がよくなくなつたというような場合で、やはり保護観察において行う補導援護、指導監督がなされなければ、遵守事項を遵守して更生を期待することが困難だという場合には、地方委員会が仮解除の処分を取消すことができることとして、それによつて保護観察を再開して、本人ができるだけ再犯行に陥らないで、更生の途を進ましたい、こういう趣旨でございます。
 次に第九条は、執行猶予の取消の申出の点でございますが、これは現行と同じように遵守事項違反の場合には保護観察の長が検察官に申出るということが適当であると思いまして、犯罪者予防更上法の四十六条の規定をここに持つて参つた次第でございます。なおこの規定をここへ移しますると犯罪者予防更生法の四十六条は不必要に相成りまするので、附則三項におきまして不必要となる犯罪者予防更生法の四十六条を削除いたすことにいたしております。
 次に第十条は、呼出、引致でございます。これも現行法と殆んど同じでございまして、第一項は、地方委員会又は保護観察の長が必要によつて保護観察に付されているものを呼出し又は質問し得る権限を規定しておるのであります。ただ保護観察に付されておるというふうに申しておりまして、保護観察を受けているというふうに規定いたしておりませんので、仮解除中の者も呼出すことができる。これは実際上仮解除を取消すという場介に、やはり地方委員会、保護観察所に呼出しをして、そうして本人から事情を聴取するというようなことも実際上あろうかと存じております。
 第二項はこれは引致の規定でございまして、この対象者は保護観察を受けているものでございまして、仮解除のものは含まない、かように考えております。引致の要件につきまして、第一号が現行の犯罪者予防更生法の規定と異なつておりまするが、実際は変らないというふうに考えております。この執行猶予者保護観察法は犯罪者予防更生法と違いまして、遵守事項等において居住すべき場所を特別遵守事項として定めるというふうな規定がないので、それらに関連いたしまして「一定の住居に居住しないとき。」というふうに一号を改めております。かようにいたしまして、同様に犯罪者予防更生法もこれに形を揃えまして、結局犯罪者予防更生法でも居住すべき場所に居住しないという場合には、結局特別遵守事項に違反するということで、第二項に当ります。結局残るのは一定の住居に居住しないというようなことになりますので、犯罪者予防更生法の附則においてこの本条の第一号と同じように改正するのが適当であると考えまして改正いたすことに考えております。
 本条の第三項は、引致状及び引致について犯罪者予防更生法四十一条第三項から第七項までの規定を準用することと、所要の読替規定を設け、なお附則の三項において犯罪者予防更生法の第四十一条の第三項を改正いたしておりまするが、これは引致状を発する裁判官を明確にするために、従来の規定を補い正したに過ぎないのでございます。
 次に第十一条の留置の規定でございますが、これは執行猶予の取消を審りし、又は決定するに際し、従来のように本人がすでに確定判決によつて在監をしているという場合だけでございますると、身柄を拘束する必要はないのでございまするが、保護観察中に遵守事項違反があつたということを理由として取消をする場合がありますので、かような場合にはあらかじめ本人について遵守事項の違反の有無、或いは取消の当否等について審理を行う必要がありますので、この審理のために或る期間の身柄拘束を必要とする場合が多いので、留置に関する規定が必要でございまして、本条はその内容におきまして、現在の犯罪者予防更生法第四十五条の規定と異なるところなく、そのままこの法案に移して若干の補足を加えておるに過ぎないのでございます。
 次に第十二条の審査の請求でございます。本条に言う中央更生保護審査会、これは法務省設置法の第十三条の七によつて犯罪者予防更正法第三条に定める事務を掌るために置かれておる審査会を言うのでありまして、犯罪者予防更生法の第三条は、地方更生保護委員会がした決定についてこの法律の定めるところにより審査を行い、決定をする。その他この法律又は他の法律により審査会に属せしめられた権限等に関する事務を掌ることを規定いたしておりますので、この法律によつて地方委員会が保護観察の仮解除の取消をしたという取消の処分について不服のある者が審査を請求する。その場合の審査の権限を中央更正保護審査会に与える所要の規定を二項以下に規定した次第でございます。
 第十三条は、審査会、地方委員会又は保護観察所の長がこの執行猶予者保護観察法によつて保護観察を行う場合に権限を行使し得る今までの各条に掲げた以外の手続に関する権限を、犯罪者予防更生法の規定に準じて改めようとするものでございます。
 第二項は、犯罪者予防更生法中の、関係人が再度の呼出しに正当の事由なくして応じなかつたというような場合に、裁判所に申出て、裁判所が科料を言い渡すことができる。それから援護に要した費用を市町村に頼んで、市町村長が徴収することができるという規定が犯罪者予防更生法にございまするのを、この法律の実施の上でも必要であろうと存じてそれを準用する規定でございます。
 第三項は、中央更生保護審査会或いは地方更生保護委員会又は保護観察所の職員又は職員であつたものが、保護観察に関するこれらの事務の遂行上、本人の家庭内或いは本人の身の上についていろいろな秘密に関する事項を知る場合もございます。その秘密に関する事項に関しての証言を場合よつては拒否することができる。現在の犯罪者予防更正法と同じ建前をこの法律にも盛つて参つた次第でございます。
 次は附則でございまするが、この法律の施行は刑法の保護観察に関する改正と同時である必要がございますので、これと同時に施行することにいたしております。
 第二項は、この法律施行前に現在犯罪者予防更生法によつて二度目の執行猶予になつて保護観察を受けている人が、引致とか或いは留置によつていろいろな手続があることがあり得ますので、これらの場合、これがこの法律によつて有効になされたというふうにする必要がありますので、さような規定を入れた次第でございます。
 第三項は、犯罪者予防更生法の第三十三条第一項第三号は、今度のこの執行猶予者保護観察法によりまして、犯罪者予防更生法の適用は受けなくなりますので、その引受窓口になつておりまする三十三条の一項中から第四号を削る。それから先ほど申上げましたように、保護観察の管轄というのを引続いて補正を加えた。それを犯罪者予防更生法にも加えたというのでございます。その他それぞれの関係条文において申上げた通りでございます。
 第四項は、更生緊急保護法の一部を改正する法律でございまして、この更生緊急保健法は保護観察の対象ではない人でありまするが、刑務所や少年院から身柄を拘束されておつて、満期或いは起訴猶予とかいうようなことで釈放された。併し行くに行く先もないというような人を、本人の申出によつて国が保証することができる。このために保護会を認可をして、そうして保護会を健全に発達さして行き、そういうような保護観察の対象ではないが、刑事上の手続によつて身柄を拘束され、社会復帰が困難である人の社会復帰を助けようとする法律でありまして、この法律によつて今回の執行猶予になつて保護観察を受けた人、或いは保護観察を受ける確定前の人、こういうような人もそういうような援護が受けられる。それから執行猶予で保護観察を受けている人を、必要によつては保護会に委託ができるというふうに所要の改正をいたした次第でございます。
 次に刑事補償法の改正でございまするが、これも現行法の建前と同じでございまして、この法律によつて抑留、留置を受けるというような場合に補償の対象になり得るよりに改正しようとするものでございます。
 以上くだくだしく申上げましたが……。
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#12
○委員長(郡祐一君) 只今提案説明を、逐条説明を聴取いたしました二法案につきましては、次回以降に御質疑を願うことにいたしまして、次に、先に亀田委員から御質疑の通告がございました検察官の供述調書に対する弁護人の閲覧要求に関する件についての御質疑を願います。
#13
○宮城タマヨ君 その前に私は保護局長に少し資料の要求をしたいのでございますが。
#14
○委員長(郡祐一君) それではちよつと御質疑お待ち願つて、保護局長への資料の御要求がございましたら、お申出を願います。
#15
○宮城タマヨ君 保護局長に対しまして私は資料をお願いしたいのでございますが、実はこの保護観察につきましては、随分いい成績が上つておりますが、それにはケース研究などというようなことも大変近頃盛んになつておりますけれども、そのケース研究の結果でございますね、まあ悪くなつたことでなくて、よくなつたケース研究のその過程と結果というものがはつきり現われているものがございましようか。統計という意味じやありません。個々の事実について、ケース研究の結果が明らかになつておりますものがあつたら頂きたいということ。
 それかいま一つは、今まで司法保護事業というものが民間の事業も合せましてもう七、八十年の歴史を持つておりますが、その間の成績の良好であつたものの経過報告といいますか、及びその結果についての何か資料があつたら私頂きたいと思います。
 それからいま一つは、特殊面接委員というのが昨年からできておりますね。その特殊面接委員と保護司の関係について私ちよつと調ベたいと思つているのでございますけれども、全国的にどういう人が面接委員になつているかということが保護局でもわかつておりますか。これは主に矯正局の仕事だと思つておりますけれども、この保護司の関係を私調べてみたいと思うのです。それは特殊面接委員に保護司は入らない建前でございますか、どうですか。
#16
○政府委員(斎藤三郎君) 特殊面接委員は、現在刑務所は教誨師を置けないようなことになりましたので、死刑を受けた人なんかが非常に煩悶する場合に、刑務所職員ではなかなか賄えない場合もある。そういう点も一つの理由になりまして、十分保護局と協議の上あの制度を作つたわけでございます。そうして私どもといたしましては、将来の生活設計、生活計画に関するようなものは、保護観察の実施等に悪影響があつてはならないから、そういう面ではできるだけ保護司の人に頼んでくれ、そうして保護司の人は観察者と十分連絡をとつて、そうして将来の保護観察と矛盾のないような、むしろそれを援助するようなふうにいたしたい、かような意味で保護司の人をできるだけ観察者と連絡の上、一つ頼んでくれ、こういうことを運用の上に注意いたしております。実際にどの程度となつているかということにつきましては、まだ報告を受けておりません。
#17
○宮城タマヨ君 私は実際に保護司がその面接委員に採用されている人があるとすれば、どのくらいあるかということが聞きたいのでございますけれども、それはなかなか調べることは困難でございましようね。急には調べられませんか。
#18
○政府委員(斎藤三郎君) できるだけ調べて御報告申上げたいと思います。
#19
○宮城タマヨ君 ちよつと調べてみて頂きたいと思います。この保護司のいろいろな仕事の上に、それから今度の法案の上に私はちよつと材料にしたいものでございますから、お願いいたします。それで済みました。
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#20
○委員長(郡祐一君) 他に資料の御要求ございませんか……。ございませんければ亀田委員の御質疑を願います。
#21
○亀田得治君 私の質問いたしたいことは、主として刑事訴訟法の三百二十一条二項に規定されてある検察官の面前で被告人以外の人がしやべつたことを録取した書類ですね。この書類の閲覧の問題について法務当局の御見解を明らかにしてもらいたい、こう考えております。で、私どもの見解では、被告人以外の人で検察官の取調の段階において証人として調べを受けた。その調書は起訴があつた場合には、直ちにこれを被告人並びに弁護人に見せて行かなければならない。こういうまあ結論としては考え方を持つております。ところがこの問題について現在訴訟の実際におきましては、検察官の態度が各地でまちまちで非常に迷惑をしておるわけです。で、或る場所によつては少しも制限を加えないで全部弁護人に閲覧させる、こういう態度をとつておる。或る場所では同じようなケースでありながら全然見せない。或る場所ではその中間のような取扱いをしておる。例えばそのうち検察官が差支えないと考えるようなものだけを見せておる。検察官の考え方でですね。そういうふうに非常にまちまちなんです。で、而もその見せる見せないが起るのは、例えば選挙関係とか、或いは擾騒関係とか、非常に政治的な色彩を持つたような事件でそういう問題が多いと私の経験では考えております。ほかの詐欺、窃盗、そういう事件でこういう調書閲覧の問題が起きたことはございません。むしろそういう一般的な破廉恥罪よりも、別に法律に規定しておる以上の優遇はしてもらわなくてもいいのですが、少くともそういう一般的な破廉恥罪よりも不利な取扱いを被告人に対してする。これは私非常に不当と考えておるのですが、法律の解釈として……。一つ御見解を承わりたいのです。それからなおこれは御注意までに申上げておくわけですが、勿論この被告人や弁護人が検察官の記録を見せよという要求をした場合に、関連事件で捜査中のものがございます。関連事件で捜査しておるその捜査中の事件にその記録を見せることが非常に妨げになる。そういうものまでもこちらは要求しておるわけではないのです。そういう点も一つお含みの上で、どのようにお考えになつておるかお開きしたい。それでこの問題は同時に刑事訴訟法の三百二十二条の被告人の供述調書、これにも関係のあるわけですが、理窟は同じことです。併しまあ被告人の検察官の面前における調書を裁判所に出さない、或いは事前に弁護人に見せないというふうな事案は余りないように私ども聞いておるので、一つ問題を三百二十一条の二項の調書、これに一つ限定していろいろ御質疑をしてみたいと思います。そこでまあ一応法務当局の御見解をお聞きすることにいたします。
#22
○政府委員(井本台吉君) お答えいたします。先ずこの条文の文理上の点から一応お答えいたしたいと思います。刑事訴訟法の第三百条には「第三百二十一条第一項第二号後段の規定により証拠とすることができる書面については、検察官は、必ずその取調を請求しなければならない。」こうなつておるのでありまして、納品お話の三百二十一条第一項第二号の後段に当る書面は取調の請求をしなければならないということになるわけでございます。ただ、いつその取調の請求をするかということになるわけでございますが、結局この規定はその前の条文の第二百九十九条に関連があることになります。第二百九十九条には、「検察官、被告人又は弁護人が証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問を請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名及び住居を知る機会を与えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。」と規定されております。なお、この条文に関連いたしまして刑事訴訟規則の第百七十八条の三の第一項を見ますると、「第一回の公判期日前に、法第二百九十九条第一項本文の規定により、訴訟関係人が、相手方に対し、証人等の氏名及び住居を知る機会又は証拠書類等を閲覧する機会を与える場合には、できる限り、五日の余裕を置かなければならない。」こうなつております。従つてあらかじめ三百二十一条一項二号の取調をしなければならない書類でございますれば、第一回の公判期日の前五日の余裕を置いて相手方に知る機会を与えなければならないということになるわけでございます。ただお話の第三百二十一条一項二号の調書に当るか当らんかということは、第一回公判期日当時においてはまださような段階になつていない場合が多かろうと思うのであります。例えば関係の人間を証人として法廷に喚んで、証人が調書にある通り調書の趣旨と違わない証言をいたしますれば、さような調書はこれは法廷に出す必要がないということになるので、第三百条の規定の適用がないということになる次第であります。従つて各地の取扱いもいろいろございますが、私どもの解釈といたしましては、刑事訴訟法の第二百九十九条或いは三百条の規定、これは前以て弁護側にその調書を閲覧させなければならないという規定の根拠にはならないと考えるのでございます。
 ただ、このように直接根拠となる規定はないといたしましても、実際問題といたしましては、弁護人の証人に対する反対尋問権の行使を容易にし、又訴訟の進行を図る意味におきまして、検察官が事前に弁護人に対して検察官面前調書の閲覧を許すことは一般に申しまして好ましい適用であると存じます。さような観点で処理しておるのでございます。
 なお、この解釈を下しました事情につきましては、若しお許しを頂けるのであればもつと詳しくあとで説明申上げてもいいと思います。
#23
○亀田得治君 只今一応の御見解を聞いたのですが、そういう解釈を下した事情について詳しいいきさつを申上げてもいいということですから、ついでにやつてもらつていいのですが、非常に長いものですか。
#24
○政府委員(井本台吉君) そう長くはございませんけれども……。
#25
○亀田得治君 それではあとの質疑に関係があるので、同時にやつてもらいたいと思います。
#26
○政府委員(井本台吉君) 実は刑事訴訟法第二百九十九条の規定の由来は、これはアメリカの証拠法の関係に密接な関係がある次第でございます。私どもの考え方といたしましてどうしてもこの問題を解明するにはアメリカの従来のいきさつを一応参考にしなければならないということで次のような研究をした次第でございます。
 結局アメリカにおきましてはかような調書閲覧問題というのは、弁護側のいわゆる魚釣の旅というふうに申しておりますが、フイツシング・エクスピデシヨンというふうに言葉を使つております。その魚釣の旅の希望にあります。何が自分のほうの利益になるかどうか、何かさような事実が魚釣をやつておつて、ひつかかつて来るかも知れないということを望みまして、自分の知つている事実に基礎をおくことなしに相手方の手のうちを見ようとする希望に由来するもののようでございます。
 併しこのこと自体決して一概に不当な希望であるということはできないのでございます。アメリカでも連邦民事訴訟規則上この魚釣の旅的な質問を相手方に浴びせましても、相手方は魚釣の旅であるということを以て答弁を拒否することはできないこととなつておるばかりでなく、日本のように全体の訴訟の構造上、弁護側の力が比較的弱いというところでは、検察官側の資料を頼りに弁護の材料を集めたいという希望の起ることも無理からぬところがあるからであると考える次第でございます。
 このような相手方の収集した証拠の利用が問題になるのは、英米のような当事者主義的な訴訟構造の下においてでありまして、ドイツのような、又は日本の旧刑事訴訟法のように、起訴と同時に一件記録が裁判所に提出せられまして、裁判所が訴訟の指導権を握るような職権主義的な構造の下では、弁護人は公判前に裁判所において検察側の収集したあらゆる資料を閲覧することができるので、このような問題の起る余地は非常に少いのでございます。勿論当事者主義的訴訟構造を徹底しますれば、一方の当事者が相手方に対しあらかじめ手のうちを見せるなどということは考える必要がございません。米英でも旧来のコンモンローにおいては、そういう問題はなかつたのでございます。併しながらエクイテーの裁判所においてはローマ・カノン法を継受しまして、相手方に自己の手のうちを知らせなければならないという制度を採用したようでございます。これをデスカバリの制度というのでございます。これは田中和夫教授は開示と訳し、羽山検事は露証というように訳しております。この制度は後にコンモンローの裁判所にも採用されました。訴訟を単に勝敗の面からばかりでなく、真実発見という面からも考えるべきであるとし、相手方を不意打ちにして混乱させて勝利を得るために、自分の知つている事実や自己の持つている証拠を公判まで隠しておくことはフエアでない。而も訴訟を遅延させるもので、公判まで事実及び証拠を無制限に隠しておくことと許すべきではないと考えるようになつたのでございます。つまり開示の制度は公正にして迅速な訴訟ということを目的とするために採用せられるに至つた制度であることに留意する必要があると考えるのでございます。我々の現存刑事訴訟法は当事者主義的色彩を強くする半面、それによる訴訟のスポーツ化を防ぐための一つの手段として第二百九十九条の制度を採用したものと考えられるのでございます。従つて同条の解釈運用に当りましては、常に公正且つ迅速な裁判を念頭におかなければならないと考えるのでございます。田中教授の研究によりますと、イギリスの開示制度、これは民事でございますが、いろいろ説明しております。ちよつと長くなりますけれどもお許しを得まして……。
 (イ)事実の開示、相手方に対しまして裁判所の許可を得て事実に関する質問事項を列記した質問書を送達し、相手方はこれに対し宣誓供述書によつて答弁する義務を負う制度であります。
 (ロ)文書の開示。これを二に分けます。(1)文書の一般的な開示。これは次の特定文書の開示に対応するもので、当事者の申立により裁判所がその必要とする限度において当該事件で問題となる事項に関する文書で相手方が現に所持又は支配し、或いは曽つて所持又は支配したものの開示を相手方に命じ、相手方がこれに応じてかかる文書を列挙した宣言供述書を提出する義務を負う制度。(2)といたしまして、特定の文書の開示。当事者の一方が宣誓供述書で特定又は特定種類の文書を指定し、その文書が相手方の支配内にあるか又は曽つてあつたと信ずる旨及びそれが事件において問題となる事項に関係があると信ずる旨を述べ、相手方が宣誓供述書でこれに答えることを裁判所から相手方に命じてもらう制度。
 (ハ)といたしまして文書の閲覧、相手方がプリーデイング、これは訴答と訳しておりますが、プリーデイング又は宣誓供述書に引用又は記載した文書とそうでない文書とに分れます。前者についてはその相手方に対する書面の通知によつて閲覧及び謄写を求めることができます。後者については自己に閲覧権のあること及び文書が相手がの支配内にあることを述べた宜誓供述書を附して裁判所に命令を求め、その命令を得て相手方の文書の閲覧謄写をすることができます。
 右の三つのば合に、最初から裁判所の命令を求めて行う場合とそうでない場合とがありますが、後者の場合は、相手方が応じない場合は改めて裁判所の命令が求められるのでありまして、裁判所の命令があればそれに応じないと裁判所侮辱罪となります。
 なお同氏の研究によりますと、アメリカの制度、これは民事でございますが、次の通りであります。
 (イ)証言調書、デポジシヨン、相手方でも第三者でも公証人の面前で証言させて、事実の知識を得るために行われます。この証言聴取には厳格な証拠法則の適用はございません。訴え提起後二十日以内であれば裁判所の許可不要。証人に対しては罰則附呼出状の使用が認められます。証人から異議の申立があると、裁判所は尋問を却下するか条件を付けます。ただ事件との関連性を要し、証言拒否権のある場合には及ばず、更に自己の訴訟準備のため不可欠でないにもかかわらず、開示の方法によつて相手方の訴訟準備をのぞき込み、又は利用しようとすることは許されないとされます。
 (ロ)質問書の制度、インタロゲートリーズ・トウー・パーテイス、相手方のみに対して行われる。訴提起後十日以内は裁判所の許可不要。相手方は原則として受領後十五日以内に宣誓答弁書を送達する。質問事項は、事実でも、証人の氏名住居でも、文書の存在に関する情報でもよい、魚釣り的質問でもよい。
 (ハ)文書及び物件の提出及び閲覧、当事者に対してのみ求められ、裁判所は正当な事由の存在があると思つた場合にのみ開示命令を発する。文書、書籍、計算書、手紙、写真、物件等を指定し、提出、閲覧、謄写、撮影を求めるものと、土地建物を指定し、検査、測量、撮影、立入を求めるものに分れます。
 (ニ)身体の検査、裁判所の命令で医師による当事者の身体精神の検査をするもの、これはセルフ・インクリミネーシヨン、禁止の原則には触れないとされていまいす。
 右の(イ)(ロ)(ハ)の場合、裁判所の命令に服従しないときは裁判所侮辱となり、裁判所の命令なくして行われた相手方の要求を拒否したときは、裁判所の命令が求められると共に費用の弁償を命ぜられます。又は証言調書をとる旨の通知をしながらみずから出頭しなかつたとき、質問書に対し答弁書を出さなかつたときはその者のプリーデイングの全部又は一部の抹殺等の不利益を受けます。
 アメリカではこの民事関係制度の運用状況を見ますると、費用と時間とがかかり過ぎるとの非難があります。又事件に関連のない私的な事柄の詮索に濫用されているとの非難があります。又裁判所に予想以上の時間を費させているとの非難があります。更に裁判所に開示申立の処理能力の欠除という非難があり、又開示の段階では事件について十分な知識がないため、裁判所の裁定が適当でない場合もあるのでございます。又不埒な当事者が開示を策謀に利用するとの非難があります。併し実際はそれほどでもなく、却つて相手方の偽証を防止するために利用されておる模様もございます。弁護士が相手方の労力でみずから労せず武器を取上げ、誠実な弁護士の注意深い調査を報いられないものとしているとの非難がございます。
 これらの点に関しまして、証拠法の関係で研究いたしました羽山検事はウイグモアを引用いたしまして次のごとく申しております。
 開示の制度は真実発見の面からは必ずしも合理的であるとは言えない。相手方に十分準備させることになる利益と策謀の機会を与える不利益とがあるからであります。訴松促進の面からは利益になります。併しイギリスでは法曹実務家の減収と策謀の危惧から原則としては開示を否定しておるのであります。併し相手方に策謀の余地の少い場合、民事について当事者が証人となる場合の証言及び既成の文書その他の証拠及び策謀があつても開示するのを妥当とする場合(例えば検事側の証人)等について開示を認めるに至つております。この後者の場合の例として刑事被告人に送達される訴訟状謄本の裏面又は末尾に大陪審の面前で又は検察官が取調べた証人の住所氏名を記載することが挙げられます。刑事で検察官に文書その他の証拠の開示は認めてはおりません。
 で、かような開示の制度に関してモデルコード・オブ・エビデンス、これは刑事にも適用があるそうでありますが、次のごとく当事者双方に文書の開示の義務を認めております。
 このルールの五百十九条を見ますると、「裁判官は、自己の裁量により、第五百十五条(公文書)第五百十六条(権限ある行為の報告を要求されている者によつて作られた文書、第五百十七条、(公務所の記録の内容の証明書)及び第五百十八条、(結婚証明書)により許容される証拠を、それを提出する当事者の相手方がその写し又は重要な部分の写しを、その証拠が提出される以前の合理的な時間内に附与されていないと認めるときはこれを排斥することができる。」と規定されております。判定理由といたしまして、本条は不意打ちからの保護及び相手方が第五百十五条乃至第五百十八条によつて提出する書面の有効性又は正確性を調査する機会を与えんとするものであるとされておるのであります。
 これが大体アメリカの傾向でありまするが、日本の従来の経験によりますると、大阪の枚方事件及び吹田事件が非常に参考になるべき事情を提供しておるのでございます。
 両事件の主な弁護側の資料を見ますると、(イ)刑事訴訟法は人権擁護の見地から解釈運用しなければならない。
 (ロ)第三百条を実質的に保障し得るのは弁護人であるから、弁護人は検察官調査全部を閲覧し得べきで、第二百九十九条はそのための機会を保障している。
 (ハ)反対尋問権を十分行使し得るためにも閲覧が必要である。
 (ニ)証人を検察官の尋問による心理的拘束から解放するためにも閲覧が必要である。
 (ホ)弁護人の冒頭陳述のためにも閲覧が必要である。
 (ヘ)政治的犯罪についてのみ閲覧を拒否するのは不当である。
 (ト)訴訟遅延の責任は検察官が負わなければならない。
 これが大体の弁護側の主張でありまするが、検察側の主張といたしましては、(イ)証拠として使用するかどうか判明しないうちに閲覧させる必要はない。
 (ロ)弁護人は被告人との間に自由交通権を持つているから、証拠に出されていない書面まで閲覧しないでも反対尋問はできる。
 (ハ)第三百条を根拠とする見解は、弁護人に検察官の義務の履行を監督せしめることとなつて甚だ不当である。
 (ニ)冒頭陳述は弁護人側の証拠に基いて行えば足りる。
 (ホ)政治的事件というので閲覧させないのではない。
 かようなことに帰着します。
 裁判所の見解といたしましては(イ)第二百九十九条に法律上合致しても、同条はアンフエアとなるべき最小限度の行為を禁止しているのであるから、それたけで直ちにフエアであるとは言えない。訴訟はフエアでなければならない。
 (ロ)弁護人は検察官に対抗できるほど強力ではないから、弁護人が検察官の所持する資料に手がかりを求めて活動を開始するのが一般の慣行となつている。
 (ハ)当事者間で解決されるまでは、検察官側の立証事項、尋問事項を詳細に書いて提出することにより、弁護人の尋問を可能容易にすることとする。
 (ニ)証人尋問終了後調書の取消請求があつた場合には、更に改めて証人を喚問し反対尋問の機会を与える。
 こういうような見解でございます。これは結局刑事訴訟法第二百九十九条の法律解釈としては、検察官が証拠として提出する証拠についてのみ事前閲覧の機会を与えればよいとしつつ、運用により弁護人の希望をできるだけ満足させようとしたものである。
 その後この吹田、枚方両事件では次のような了解ができております。
 吹田事件第九回公判(昭和二十八年二月十一日裁判長弁明)「調書閲覧問題でありますが、これについてはあれから三回に亙つて裁判所が中に入り、検察官と弁護人との間で話合を重ねました結果、基本的な主張は別として本件の具体的な措置としては次のような方法、即ち裁判所で採用決定された証人につきましては、立証段階に応じグループごとに従来の慣行通り証人全員の供述調書を証人尋問手続前に相当の猶予期間を置いて弁護人側に閲覧せしめる。」
 枚方事件第十一回公判(昭和二十八年三月十二日)
 この裁判長からは、「尋問調書の閲覧の問題に関し、先般裁判所、検察官、弁護人間で会談の結果了解に達した。それは証人を小松方の被害関係、山上の集合関係、公務執行妨害関係というように、それぞれのグループに分けて採用決定をし、その決定した証人に対する調書は、証人尋問前に閲覧させるというのである。この方法をとることにしてこれから証拠調に入りたいと思う」旨の発言があり、これに対し東中弁護人は、「弁義人側の承認した理由は、これにより十分に防禦権の行使ができ得ると考えたからではない。ただ訴訟進行に協力する意味において承認したのである。従つて訴訟遅延による異議権はこれを留保するものである。」というようなことを述べております。結局以上の資料によりまして、第二百九十九条が米英の開示の制度に由来しているものであること、この開示の制度はエクイテイ的な考え方によるものであつて、それが訴訟のスポーツ化を排し、真実の探求と、訴訟の促進という要請から、開示による不都合な結果、殊に相手方の策謀を十分に警戒しながらも、次第にそれを乗り越えて発達して来たものであるということ、従つて法律の解釈としては、最小限度証拠に提出するものだけ閲覧させればよいのであるが、それ以上に及ぶことが好ましいけれども、それは具体的場合における諸般の事情を考慮して検察官の判定すべきことであること、米国でも刑事では丁度我々が二百九十九条と同じ程度の開示をしていることを知り得るのでございます。
 第三百条及び反対尋問権の確保を根拠として、第二百九十九条の拡張解釈をするのは、私どもといたしましては根拠に乏しいという考え方でございます。第三百条については、検察官の職務履行を監視するために、検察官の全調書の閲覧権を弁護人に与えるべきだという主張には、多少の飛躍があり、反対尋問権確保については、証拠になる書面についてのみそれを与えれば足りるので、若しさような主張のごとくであれば、記録の全部の閲覧を許さなければならないということになるのではないかと考えるのでございます。ただ検察官といたしましては、訴訟遅延の非難を甘受しても、証人の証言前の閲覧を拒否しなければならないかどうかについて、慎重な配慮をしなければならないし、その他証拠に提出できない書類でも、弁護人側の全体の構成上、比較的地位の弱い現状を十分認識して、これは早目に閲覧等の機会を与えて処理すべきであるというような考え方を持つに至つた次第でございます。
#27
○亀田得治君 非常に詳細な御説明がありましたので、先ほど御説明されたアメリカの制度その他ですね、これは主として民事関係に関する証拠方法を根拠にされておるわけですか。その点どうですか。
#28
○政府委員(井本台吉君) この訴訟全体の構造が、勿論民事に主たる根拠を置いておりまするが、勿論これは刑事にも及んでおる。従つて刑事でも同様にかような結論になつておるということを申上げた次第でございます。
#29
○亀田得治君 そこでまあ現任、例えば大阪の裁判所が、枚方事件、吹田事件等でとられた解釈に結論としては、只今の御説明に落ちついておるようですが、一つお尋ねしたいのは、検察官が三百二十一条の二項の、書類を三百条によつて必ず取調べをしなければならん、こういう義務を受けておるわけですね。これは非常に重要な点だと思うのです。そうしてその義務を検察官が必ず履行するかどうか、これを監視するような考え方は少し行き過ぎじやないか、弁護人が監視する行き方は行き過ぎではないかというような考え方が、少し基本的な態度としてあつたようなんですね、これは私そうじやないと思うのですね。その点は非常に大事だと思うのです。例えば前に検察官の書類があり、そうして同じ人を公判で証人として調べて、で証言と書類とが食い偉いができる場合が相当たくさんあります。その際に、この被告人に証言が有利になつても、不利になつても、書類がこういうふうになつているということを出さなければいかんわけですね、三百条によつて……。そうでしよう、その点は……。被告人に何でしよう、不利なものだけ出すわけじやないのでしよう、三百条というものは……。三百条によれば、証人はそう言つているが、つまり証人は以前よりももつと悪いことを被告人のために喋るわけですね、公判において……。そうすると、以前の書類は被告人にとつては有利なんです。でこれは検察官はなかなか出したがらない、実際問題としてはそういう書類は……。それに対して弁護人のほうが、証人はそうおつしやるが、だがもつと君は、以前にはこの被告人に有利に言つているじやないか。これはこういう証人は、いろいろな利害関係があると証言が変つて来る場合も予想されます。それでそういうことが起るわけです。すると検察官だけがその書類を見ておつたのでは、弁護人はそのことを発言できないわけでしよう。これは決して検察官の義務の履行を弁護人が監視するとか、そういう意味じやないのでして、三百条そのもののこれはもう正しい適用なんです。検察官であろうが、弁護人であろうが、裁判長であろうが、これはもう三者同等だと思うのですね。で弁護人がそういう考えを持つた場合には、この二百九十八条、この規定によつて、やはり弁護人としても検察官が隠して持つておるこの書類を証拠として調べてもらいたいという要求を、これは裁判所にできるのですよ、我々としては……。ところが私はそれができないということになつたら、これは大変だと思うのです。私はできると思う。ただ、それができるためには、あらかじめ検察官の手許にある書類が我々に見せられておらなければ、それが実際問題としてできない。で決して、この検察官の調書とか、いろいろなあらゆる書類一切を出せ……、まあその問題もあるのですが、今の問題はそういうことじやない。この法律の規定によつて、あとから出て来る可能性のある文章なんですね、三百二十一条と二十二条の文章というものは……。そういう可能性のあるやつにつきましては、これは私ははつきりこの書面、法律には証人調前にそれを見せるべしとは書いてないけれども、そういうふうに解釈しなければ、この三百条というものは実質的に私は死んでしまうと思うのですよ。なぜならば、こういう三百条のような、検事に対する義務付けの規定を置かなくても、検事は自分のほうは被告人にもつと不利な書類が自分の手許にあるということであれば、そんなに強制するようなことを言わなくたつて、それは検事は積極的に出しますよ。そうじやなしに、一番この三百条の妙味のあるのは、証人はそう言うけれども、被告人にとつてはもつと有利なことが以前に喋られておる。私はむしろ逆にその点にあると思うのですね。これは決して弁護人が検事の行動を監視する、そんなちつぽけな問題じやないのでして、当事者を対等に取扱つて行く、こういう立場から行つたらそういうふうに解釈をしなければ辻褄が合わないと思うのです。
 なお、これは弁護人のそういう態度ですが、弁護人がそういうふうに検察官の手許にある被告人の有利な調書についての問題点を指摘する。指摘した場合に、裁判長としても、二百九十八条によつて、それは適当にやはり証拠調べをすべき文章だと思えば、弁護人はそういう権利としてそれを提出させよというような強く要求をしなくても、裁判長はその発言の結論として、その証拠の提出を命じて証拠調べに入る。私はその点が是認されれば、条文には規定していないのだが、本件の記録の閲覧というものはやはり閲覧の権利であり、従つて検察官としてはこれは義務だと思います。
#30
○政府委員(井本台吉君) お話の第三者が検察官の面前で被告に利益な供述をした場合に、法廷でその証人が、第三者が不利益な供述をしたという場合にはどうかという点は、全くお説の通り、さような調書が三百条並びに三百二十一条一項二号によつて当然法廷に呈示しなければならないと私は考えます。ただそのことをあらかじめ検察官の調書を弁護側に開示するということとは問題が少し違うのでありまして、確かに有利な供述をした第三者の、後に証人となつた供述調書はこれは出さなければなりませんが、さればと言つて、公判前に全部さような調書はこれを開示しなければいかんという結論には、私はちよつとならないのじやないかと考えるのでございます。
#31
○亀田得治君 私が申上げるのは、この二百九十九条のあらかじめということによつて閲覧をさせよう、そういう主張ではないのです。二百九十九条のあらかじめ閲覧させようというのは、これは正式の証拠調べに入つた段階における正規の手続を言つているのです。だから、私の申上げるのは、この三百二十一条とか三百条、それから二百九十八条等の立場を考えますと、ともかく後に証拠として出て来る可能性のある文書は、当然弁護人が見るべきなんだ、そういう主張なんです。これは当然なこととして書かれなかつたわけか。或いはそこまで十分刑訴法を作るときに気が付かなかつたのか知りませんが、ともかく見ることがこれは前提になつておるというわけです。勿論見た中で、じや正式に証拠調べをするということになれば、これは勿論二百九十九条、これは正式に又法廷で改めてもう一遍閲覧させる、これは正規の手続を言つているのです。検察官はここにあらかじめと書いてあるだけであつて、何も時間についてはそんなに限定していないのだから、証人調べをした後にいよいよその書類を使う、こういうふうに検事が決心をしたときに見せればいいのだ、こう言つているのですが、成るほどそれもあらかじめかも知れません。併しそれは正規の証拠調べの段階における問題なんです。私の申上げるのは、これらのこういう細かい条文を前提として調書閲覧権というものがなければ、弁護人の立場というものが公平に保持できないじやないか、こういうことなんです。そういう立場から閲覧権を前提とした一切の規定である、こういうふうに解釈する。この点二百九十九条によつてこちらは要求しているわけなんですね。これはどういうふうな御見解ですか、そういうふうに私どもは考えますが……。
#32
○政府委員(井本台吉君) 訴訟の実際の運用といたしましては十分傾聴に値いする御議論だと思うのですが、法律上検事が三百条によつて自分のとつた調書を全部弁護側に開示しなければいかんということは、どうしても私どもの解釈としては条文から出て来ないという解釈でございます。
#33
○亀田得治君 条文からは出て来なくても、そのことが前提になつておらなければ、この三百条なり二百九十八条というものが公平な立場で守られるということには私はならないと思います。それは条文がなくても、そのことが訴訟上当然だというなら、やはり義務と言つて差支えないのではないかと思うのですが、これはどうでしよう。
#34
○政府委員(井本台吉君) そうすると、とにかく検事が使つた調書は、全部起訴されると同時に弁護人に閲覧させなければいかんということになるのでありまして、この当時の建前は先ほど来縷々申上げましたように、いろいろ相手方の不意うちをどれだけ禁止するか、訴訟の運用上如何にすれば訴訟がフエアーに且つ迅速に行くかということに帰着するのでありまするが、今の刑事訴訟法が検察官のとつた調書を全部起訴と同時に弁護側に閲覧せしめるというようにどうも私なつているようにはとれないのでございます。簡単な例を申上げますと、参考人である第三者が検事の面前で供述したその調書と同じことを法廷で証言しますれば、さような調書は、これは法廷に出す根拠もないわけでありまして、さようなものはあらかじめ見せるというのも、これは条文上どこにも書いてないと私は考えるのでございます。結局お話の、例えば第三者が被告人に利益のある供述をしたものをどうして知るか、弁護人や被告人がどうして知るかという点に帰着すると思いまするが、これは検察官、原告側でございますけれども、公益の代表者として公正な立場でやつておるということを御信用頂いて、出すべき三百条、二百九十九条の適用の書類は、必ず取調べの請求をするという点を御信用頂くよりほか、いたし方ないと思います。若しさような調書をそこで破つたとかなんとかいうことになれば、これは又公文書毀棄罪になりますし、さような点については十分刑法上にも担保されているというふうに私は考える次第でございます。
#35
○亀田得治君 これは検察官を信用する以外に方法はない。そういうことでは三者構成の公平な法廷というものは私はやはり守られないと思うのです。やはり信用とか不信用とか、そういう問題じやないのでして、例えば一番微妙な証人の証言と、検察官が手許に持つている調書が一致しているかどうか、このこと自身が非常に問題でしよう。一致していると判断するかどうか。これはすべて人の言うたことを、ときも違う、文書ですから……。一方は証人調書、一方は供述調書、これはどうせ抽象的ですよ、言葉で喋つているのですから……。だから一到しているかどうかも、その判断自身もこれは問題なんです。これは弁護人がそのことについて関与できないなんというようなことを認めたら大変なことになると思うのです。あなたのさつきおつしやるのは、遅つているということであれば、これは検事は役人でもあるし、必ず出すと信用してもらいたい、こういうような気持のようでもありましたが、ただ一到か不一致かの判断、これがつまり検事でも間違う場合がある。これは信用することはできないと思うのです、絶対的には判断が間違わないというようなことは……。こんな人間に対して信用せよということは無理です。だからそういう善意の場合もあるわけですね。そういう文書に限つてそれによつて無罪が決定されたり、非常に妙なことになる場合が多い、問題になるのは……。だからそこで問題になるわけですが、その判断の点はあなたどうお考えになりますか。検事は絶対判断を間違わんというふうにお考えになりますか。
#36
○政府委員(井本台吉君) そういうふうにおつしやられると非常に恐縮なんですが、証言が済めばさような検事調書は、これは御請求があれば検事のほうでも率直にお見せすると思います。ただお話の証言前に、例えば起訴直後に全部検察官の調書を見せるべきであるかどうかという点になりますと、これはどうも私ども全部見せるべき法律上の義務はないということを申上げただけでありまして、証言が済めば、その証人の関係の調書は御請求があれば検察官は必ずお見せすると私は考える次第でございます。
#37
○亀田得治君 証言が済んで見せるものであれば、これはなお更先に見せるべきなんですが、例えばこういう事例もあるのです。先ほど吹田、枚方事件は私も、最近は殆んど出ませんが、一時立会つたことでありますから、あの経過は大体私も現状では仕方がないではないか、ああいう中間的な取扱はですね、そう思つておりますが、ただ例えば昨年の炭労の裁判を現在福岡地裁と大牟田の福岡支部、それから佐賀の地裁でやつておりますか……、ちよつと速記をとめて下さい。
#38
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#39
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。
#40
○政府委員(井本台吉君) この訴訟の進行が恐らくお話のような工合に、全然調書を見せずに尋問が始まり尋問が終つて調書を出す。従つてその調書については検討の上更に反対尋問をする。それにはもう一度証人に出てもらわなければならんというようなことになつて、訴訟が非常に遅延することが考えられます。ただ、現在の日本の民衆の何といいますか知識水準、裁判所に対する証言の重要性というような点が非常に欠けておりまして、具体的に例を言うのではございませんが、とかく証人に対していろいろな働きかけがあるとかいうふうなことで、公益の代表であります検察官といたしましては、できるだけ公正な証言が得られるように努力しておるのでございます。お話の実例から行きますと、結局非常に特有な点についての心配がございます。ただ具体的にそれでは全部検察官調書は起訴と同時に見せなければならんかということになると、それはどうも現在私はその点についての断定的な結論を出しかねるのでございますが、訴訟の段階が或る程度まで参りますれば、枚方或いは吹田事件等々のことがあつてもいいのではないか、こう思うのでございます。従つて今三百条若しくは二百九十九条を改正いたしまして、起訴されれば将来証人になるかも知れんような第三者の供述は、全部弁護人に閲覧せしむべしというふうなことの改正をしていいかどうか、まだ結論をいたしかねる次第でございます。
#41
○亀田得治君 そういう改正をすることについての結論的な意見は今のところまだはつきりしない、こういうようなことなんですが、そういう改正をして差支えがあるというふうな根拠は何かありますか。
#42
○政府委員(井本台吉君) 結局先ほど申上げましたような、証人の供述が他の外部の力によつていろいろ動かされるというような例も一つの例として考えられるのでございます。具体的に若し改正すればどういう点が不都合であるかということをちよつと申上げかねますが、事件の種類によつては閲覧を済ませました検察官の調書を種にいたしまして、証人を相当脅迫したとか或いは暴行を加えたとかいうようなことも聞いておりますので、さような点は十分これは監視しなければならんと考える次第でございます。
#43
○亀田得治君 今刑事局長が言われたような一、二の具体的な理由はこれは私理由にならんと思います。偽証が明確になればどんどん偽証罪で処分して行つたらいいと思います。私実際に裁判にいろいろタツチしておつて、偽証ということ余り軽く考え過ぎていると思うのですね。日本の慣行が……。で、そのことがいけないのです。むしろそういうことをまあそういう偽証的な傾向が幾らかあるからというふうなことを認めるということはおかしいと思うのですね。それじやいつまで経つてもよくなつて行かない。やはりそれから例えば証言調書を理由にして脅迫するとか暴行するとか、それはそんなことは勿論悪いわけですけれどもね、それはそのものとして処理して行けばいい。私どもがやはり一番関心を持たなければならんのは、公平な裁判なんですよ。公平で迅速ですよ、何と言つたつて……。裁判をだらだら引張られるのはかなわんものですからね。そういう検察官の調書を見せないというようなやり方は、飽くまでも突つぱつて行けば非常に不都合なんですね。これはもう刑事局長もおわかりになつておるから、私から改めて言わんでもいいのですが、検察官が先ず証人を調べる。そうすると、大阪の吹田、枚方のあのやり方で行けばですよ、若し検察官が事前に書を見せない場合には、あらかじめ提出した尋問事項に質問を限定する、こういうことも入れているはずであります。ところが、実際に証人調べに入れば、検察官はあらかじめ書いてないことでも、質問しておる間に聞きたくなつて来るわけです。その質問をすると弁護人のほうから異議が出るでしよう。そうしたら検察官は又改めてその証人を呼び直して、尋問事項を提出し直して調べるということになる。それだけでも二回かかるでしよう。それから弁護人のほうは弁護人で一応証言調書ができ上つたのを十分拝見して、それから新たな日に又その証人に質問をして行く、これで三回になるでしよう、それだけでも……。而もそういう同じ証人に同じ問題を三回にも分けてこま切れ的にこれは聞いて御覧なさい。文書に現われるものは必ず矛盾して来ますよ。これは一体どれをとるのです。言葉ですから必ず幾らか違つたものも出て来ますよ。そんなことではそれはもう真実の発見なんということはとてもできることではないのですよ、これはもう私から特に言わなくても……。だから、決して何も検察官の持つておる調書を悪用するとかそういう意味じやないのですよ。検察官と同等の立場というものが現在の日本の在野法曹としてはとれないわけでしよう。だからそういう意味で検察官のものをざつくばらんに出したらどうか。検察官としても、勿論これは確信を持つて起訴するわけでしようが、何も最後までどうしても有罪にしなければならん、そういうものじやないでしよう。真実の発見を裁判所に最後に公平に判断願う、そういう立場でしよう。だからどこまでもこいつを刑務所にぶち込まなけりやいかん。若しそんな考えで検察官がやつておられるとしたら、これはむしろ間違いですよ。そんなことから言つても見せることがどうしていけないのか、少しも出て来ない。而も何も検察官の私文書の提出を求めておるのではない。公けの文書ですよ、すべて言つているのは……。而も公けの文書の中でも具体的な各条文に関係のあるところを言つておるわけなんです。だからこれはどうも腑に落ちない。それで私例えば具体的に刑事訴訟法の四十条ですね。ここに公訴提起後の訴訟書類の閲覧、謄写の規定があるわけですね。この規定をむしろ改正すべきだと思つておるのです。三百条とか二百九十九条とかいうのは、これは証拠調べにおける技術的な問題です。二百九十九条は私はこのままでいいと思う。これは正規の手続ですから……。正式に裁判所が受取る場合には、たとえ事前に弁護人が見ておつたものであつても、一応やはりこの手続をとつて行くべきですよ。だからこれは証拠調べの技術的な面の規定だと私は解釈するので、私の申上げるのはむしろ刑事訴訟法の第四十条、これが正式に裁判所になされた証拠着類と、こういう意味でしよう。恐らくこれは……。この中にはまだ裁判所まで出て来ておらん、検察官の手許のやつは入らんという、それはこの条文としては正しい。だから、その点を少し広めるようにこの規定を改正したら私はいいと思つておるのですがね、具体的には……。或いは四十条の一というようなものを作つてやつてもらつてもよい。但し最初に申上げたように、関連事件で捜査しておるものがあると、それを見せるとその捜査に妨害がある。こういうものは、これは勿論例外的に禁止したらいいですよ。その程度であつて、現在のような解釈は私は非常に間違いだと思う。そういうふうに一つ少し改正をお考えになるようなふうに努力して欲しいと思うのですがね。これは衆議院の法務委員会の人たちもいろいろ問題にしておるようです。ただ衆議院のほうで保全経済の問題とかああいうふうな問題がずつと出て来ておるものですから、参議院のほうでそういう点の質疑をやつてみてくれんかということをあちらの委員のかたから言われたものですから、実はこういう質問をした次第であります。どうですか、もう少し積極的に。ちつとも私は差支えないと思う。
#44
○政府委員(井本台吉君) 御趣旨はわかりましたが、よく研究したいと思います。
#45
○亀田得治君 その法律の改正ができるまで、少くとも現在の検察庁のばらばらの態度ですね。これは私は非常に不当だと思う。検事総長にここの事件でこういうふうに検事がこういう態度をとつておる、あつちの事件ではこういう態度をとつておる。これで一体検察庁としていいのかどうかという質問をするということになれば、これはあなたはどうお考えになるのですか。いいと考えておるのですか。
#46
○政府委員(井本台吉君) それは結局先ほど来申上げましたように、運用の問題として、如何にすれば訴訟が経済的に且つ迅逃に実体がはつきりできるかということに帰着するので、被告の構成、事件の内容その他によつて、結局いつ、どういう形で調書を見せるかということは具体的事情によつてきめるということに帰着するので、ばらばらでけしからんと言われれば、これは訴訟がいろいろある関係上止むを得ないことになるのじやないかというふうに私は考える次第であります。
#47
○亀田得治君 訴訟がいろいろあると言いますがね、同じような事件で担当検察官が違うと違つておるのがあるのですよ。同時に起きた炭労の事件、先ほど申上げた佐賀地裁と福岡地裁、大牟田の支部、これは皆一緒の事件ですよ。佐賀では全然見せない。こんなことは私はどうかと思うのですよ。そういうことを是認されるというのなら、法律の運用なんというものはその条文にさえ合えば、運用面ではどんなにばらばらでもいいということになる。そういう結末はお認めになりますか。
#48
○政府委員(井本台吉君) そういうふうに言われるとどうも私も恐縮なんですが、今申上げましたように、同じような事件でも、例えば全然争つていない事件もありましようし、或いは根本から争つておるというような事件もございましようと思います。さような場合に事件の形が似ているから扱いも全部同じだと。そういうふうにすべきだというふうにはちよつと私ならないと思うのでございます。具体的には佐賀と福岡ですか、九州地方に炭労関係の事件が三、四件起きておりますが、これはもう少し調査しないと、どういうふうに違つておるか具体的には申上げかねますが、ただ同じような事件だから全部同じにやるべきだと、原則としてはそうかも知れませんが、事件として、一つとして同じ事件はないはずですから、従つて運用の面に結論の違うという法律の解釈が出て来れば、扱い方も違つて来るのは止むを得ないかと私は考えております。
#49
○亀田得治君 これはそう簡単に行かないと思うのですよ。あれは三つとも全部否認している、而も否認の態度は同じなんです。否認の理由は或る程度の事実関係というものは全部認めて、而もその事実関係の法律解釈というものは違つておる、こういうことなんです。みんな建前としては一緒です。だからこれは検察官のほうが極めてばらばらだというのは紛れもない事実なんです。こんなことまで弁護する必要はないと思う。ただばらばらであつてもいたしかたないという解釈を法務当局が持たれるならこれは止むを得ませんけれども、具体的に個々のケースに当つてみなければわからないということはちよつと納得しかねるのですよ。私はむしろこういう見せるべき合理的な事情がありながら見せないというふうな場合には、違法なやはり裁判手続になつて行くのじやないかと思うのですが、これは最後には最高裁が決定すべき問題でしようが、そこまで行かなくても、例えば憲法の十四条では、やはり法律の前にはみんな平等に取扱つて行く、こう言つているでしよう。そういう精神からみたつて勿論それは憲法の条文だけでいろいろなことをやれるわけじやありませんけれども、併し余りにも憲法の条文というものを無視し過ぎると思うのですよ、こういう取扱いは……。だからこれは法務当局として検事総長に対してやはり一つの監督権というものはあるわけですから、善処されるのが私は至当たと思うのですが、どうも判断がつかんと言うのでしたら、検事総長に一度来てもらつて、具体的にこれは見解を聞いてみてもいいですがね。
#50
○政府委員(井本台吉君) 今申上げましたように、具体的事案を一応私どもに報告は出ておりますが、本日亀田さんのお話もありましたので、もう一度検討いたして善処したいと思います。ただ同じような事件に個々ばらばらの判断があつていいかというふうに言われましたが、それはいけないにきまつておるのでありまして、如何に似たような事件でありましても、一つとして同じ事件というのはございません。従つて違つた事件に違つた法律の適用があるというのは、これは止むを得ないこととして御了承頂かぬと、何か法律の前に違つた人間の扱い方をするというふうにおとり下されては甚だ恐縮する次第でございますから、その点は一つ御了承を頂きたいと思います。
#51
○亀田得治君 福岡の関係は或る程度、私非常に感情的なものがあるのではないかと思うのです。というのは刑事局長も御存じでしようが、例の嘉穂事件ですわ、嘉穂炭鉱の事件、あれが裁判所で無罪になつていますね。現在控訴審にかかつていますが、あの事件は記録を全部見せたように私担当の弁護人から聞いておるのです。何かそういうことが一つ影響しているのではないかとも思うのです。そんなことでしたら、決してこれは理由的な立場で見せる見せんじやないのです。ともかくどうしても有罪にするためには、そんなものを見せたらいかんというような結論が強い。そんなことでこういう重大な問題を左右されては困ると思うのです。福岡とか大牟田では検察官のほうが文書を見せない理由を、次に意見を述べるというようなことを言つておりますが、これは恐らくそれは法廷では検事が自分だけの判断ではちよつと工合が悪いというようなことも、或る検察官は言つている。やつぱり何か検事総長が全体的に指示を与えておるようでもあるし、与えていないようでもあるし、こんなばらばらのことは無茶苦茶ですよ。見せないなら見せないで全部を見せない、強盗も窃盗も強姦も何も見せない。その代りその法的な根拠というものを明確にしなければいかんですよ。大体この条文でも見せないという、見せてならんという根拠もはつきりしておらんのですから……。成るほど我々の言う見せいという根拠も或いは不明確な点はあるかも知れん。併し見せてならんということは何もこれははつきりしていない。そうでしよう。だからこれはそんな、このままで放置しておくべき問題では絶対ないと思うのです。これはともかく一年か二年、もう少しいろいろ裁判所の慣行を見てそれからだということになるかも知れんが、これは最初申上げたように、弁護人というものはそんな詐欺、窃盗とかそんなような事件でそんなにかかりきつておれるものではないです、調書なんかの問題で……。そうすると慣行に待つということになれば、結局見せないほうの慣行が余計になつてしまうのです。結局そういう選挙違反とかいろいろなそういう政治的な色彩を持つた、そういうようなものだけで議論されるわけですから、慣行に待つということは実際問題として不当だと思う。こんなことは放置しておくべき問題では絶対ない。たくさんの法務関係の立法もございますが、これはどうしても法務当局がみこしを上げられないということになれば、やはり議員立法ででも考えなければならん問題だと思うのです。これは少しも予算に関係する問題でもないのですから、こういうものこそ議員立法に僕は一番適当なものだと思つておるぐらいです。併し議員立法というようなことよりも、これは実際大きな問題ですからもう少し真剣に考えて欲しいのです。調書を見せるということも、何か弊害があるということなら、その弊害が起らんようなことも一方で考えてもらつたらいいと思う。私どもは大した弊害はないと思うのですけれども、併し専門的に見て、先ほどあなたのほうが詳細にいろいろ申された中で、幾らか弊害と思われるような点もあれば、それは又これを立法化するということになれば、その中で適当にこれは措置できる問題だと思います。立法化するということだけは、これは取上げてもらわんと、現在では責任を果しておらんと思うのです。これは申上げておきます。この程度で……。
#52
○委員長(郡祐一君) 別に政府の発言はありませんか。
#53
○亀田得治君 今朝急に突然ですが、同僚の海野参議院議員から委員外発言をさせてもらえないか。非常に急な問題なんですが、そういう話があつたのです。私それでは丁度刑事局長が見えるから私が代つて質問してみましよう。若しそれで不十分であれば一つ適当な機会に委員を差代えるなり、或いは委員長の許可を得て委員外発言をするなりということで実は私突然ですが引続きちよつと質問してみたいと思います問題があるのですが、いいでしようか。
#54
○委員長(郡祐一君) どうぞ……。
#55
○亀田得治君 これは新聞でもすでに出ている山形県の山形市長の問題なんです。一点お伺いを先ずしたいのは、現在まあ市長は逮捕されているのですがね、私どもとしてはまあそういう容疑があれば十分取調べてもらう、これは当然で異議がない。一つ問題は弁護人の面会を実際上阻止している、こういうことなんですね。で、これは私おかしいじやないか。法規によつてもそんな面会を禁止することはこれはできない。ただいろんな捜査上の都合で面会の時間とか場所とかそういうこともまあ限定することはできるわけですけれどもね、遮断してしまう、こういうことは私はもつてのほかだと思う。で、昨日の電話連絡によつてもどうもそういう状態だ。私これは専門家の検察官がそんなことを頭から面会させないとは言つているのじやなかろうと思うのですね。恐らくいついつかに指定するとかいうような、その指定の仕方を非常になんと言いますかね、意地悪くやられて結局弁証人としてはそのとき行けないし、駄目だというふうなことになつているような問題じやないかと思うのですがね。初めからそんなことをしてはそれはすぐに首にしてもらわなければいかん問題ですが、どうも私そういうように感ずるのです。重要な一つ人権問題ですからね、法務大臣からも検事総長に通ずるなりしてですね、実情を調べてもらいたいのです。面会の問題ですわ。
 それからもう一つは市長が一度も調べられないでいきなりばつと逮捕されたのですね。これは市長が否認をしているのです、この事件を……。そうしてそのために現在市会が開かれているのですが予算説明もできない、こういう状態なんです。で、問題はそれから否認はしているが、検事正の新聞記者との談話によりますと、否認はしているが傍証は全部固まつている、こういうまあ建前なんです。で私の尋ねたいことは、そういうふうな事情にあるものをどうして逮捕しなければならないのか。本人が否認しているものを幾らこれは引張つておつても何もならない。傍証は十分固まつているというのだからそれで起訴できるわけでしよう。単なるこれは政治的な妨害にしかならないのです。市会中に市長が出られない、これは重要な問題が起きて来る。で、私は逮捕自身の問題になりますとこれはいろいろ見方ができるでしよう。たとえ否認しておつても、逮捕しておけばそのうちに言うかも知れない。それも私は専門家としてわかるのです。ただ市長なんかの考えでは、ともかく一方で市会を開いて、そうして来年度の当初予算ですからね、その予算の説明もできない、それは延長すればどうなるんですか。これは市長をやめなければしようがない、責任上そういうふうに発展して来るでしよう。で私そういう政治的なやはり疑いを持たれるような取扱いは非常にまずいのじやないかと思うのですね。例えば逮捕中であるが、それじや監視付で予算の説明だけ一応させる。そうしてすぐ又必要があれば戻つて来る。そういうふうなことだつて私はできる問題だと思うのですね。国会議員の場合と違つて逮捕に議会の許諾を求める、そういう規定がなくても、これは取扱いとしてはやはり十分慎重にやらなければならんと思つているわけです。そういうことで市長が辞職するということがあつたら、これは重要な問題だと思うのですよ。そんなところまで持つて行かんでも調べはできるのですから、傍証は全部固つていると、こう言つているのだから、だから恐らく想像では、その傍証の価値判断の問題なんだろうと思うのです。これは裁判所が判断する以外にない、本人が否認しているとすれば……。で、そういうことが先ほどの面会の謝絶禁止ですね、事実上の遮断、こういうこととからんで、非常にこの市長並びに市長の関係者にいろいろなやはり疑惑の目を以て見られているわけですね。これ一つ調査をして次回には真相を明確にして欲しいと思いますが、一応のあなたの御見解を承わることができれば結構だと思います。こういう問題が起きている……。
#56
○政府委員(井本台吉君) 弁護人の接見交通権は刑訴法の三十九条ですかにはつきり明記されておるのでありまして、これをとめることはできないわけであります。ただ、この今亀田さんから御指摘の通り検察官は一々場所を指定することができるということ、いつどこでどのくらい会うというような指定をした場合には、その指定の時間に会うことができるというような扱いになつておりまして、全然その逮捕勾留したから、会わせないというようなことはあり得べからざることだと私は考えております。この点も面会がどのようになされておるか、接見交通がどのようにされておるか、これは調べて次回に御報告申上げます。
 それから新聞記事をよく読んでいないのでありますが、第二点の傍証は全部集つているから、なお逮捕勾留する必要はないじやないかというお話でございますが、これはこの傍証が全然揺ぎのないもので、それ以上調べる必要が全然ないというのであれば、確かにお話の通りと思いますが、検察官にも公訴上の責任があります。与えられた刑事訴訟上の調べる時間、日時もございます。これを十分活用して検察官として努めなければならない。捜査を十分するというのもこれ又検察官の義務でございます。結局市長というような人を勾留するのでございまするから、その影響も相当あることは監督官である柴田検事正その他十分お考えになつてやつたとは思いますけれども、事案の事情もよくわかりませんので、これも調べまして御報告したいと思つております。ただ傍証があるから、じや本人は調べなくてもいいんだというわけにはなりかねるということを御了承願いたいと思います。
#57
○亀田得治君 逮捕の継続の必要があるという場合であつても、市会がそういう現状であれば、適当な方法で予算説明なんかができるようにする、こういうことは刑事局長はどうふうにお考えになりますか。
#58
○政府委員(井本台吉君) ちよつと具体的の事件を検討してみませんと、さような重要なものだから出して予算の説明をさせる、それが相当であるという結論的な断言は申上げかねます。国会法に規定されているような国会議員でございますれば、これは有田問題に現われました通り、場合によつては逮捕の拒否もできるのでございますけれども、そのほかの公職者につきましては、さような例外は認めていないのでございます。法律的に当然なすべきであるというような結論は出ません。ただ、その人の地位に応じて若し必要であればこれらのことも全然でき得ないというふうには考えておりませんが、当然やるべきであるというふうには考えておりません。
#59
○亀田得治君 じやその点も一つ具体的に至急お調べになつて適当な御判断を一つ聞きたいと思います。その上で更に又私の見解を申上げたいと思います。
 それから委員長……、引続いてですが、請願が出ておりますね。千葉の少年鑑別所移転新設反対に関する請願、これは時間が大分遅くなつておるのですが、よく私も請願書を出されてから加瀬君からもちよつと事情をお聞きしたりした問題なんですが、現状はその後においてもやはり工事が進められておるのです。私これはこんな状態でこういう施設を進めるというのは非常にまずいと思うのです。置く置かんにかかわらず、最後にやはりここしかないということになるにしても、もう少し処理の仕方というものがあるのじやないかと思つておるのです。決して私どもこういう問題について差別的な考えを持つておるのじやないのですよ。むしろ私どもはそういう差別感をなくするという考えなんです。併しそんなことを、これは理窟を言つたつて現実との間に相当ギヤツプがある。そうするとなお更こういう施設ができた場合に長くずつと附近の人と一体になつて行かなければならん問題でしよう。そうならなお更この設置というような問題について、もう少しスムースにやるべきだと思うのです。で幸いやはり請願書が来ておるわけですから、ほかの税法の請願とか何とかというような問題であれば、これはいろんな税法全体のことも考えたりして、これは慎重にやつていいわけですが、併しこういうやつは至急やつぱり請願をどうするのか、結論を出すべきだと思うのです。この請願の趣旨がいいか悪いか、或いは何か中間の措置が適当と思うとかなんとか……。そうしなければこれは国会へ請願を持つて行つたつて何にもならない。済んでしまつてから結論が出て来た、こんなことでは非常に私は問題だと思います。知らんうちにそういうことになる場合もあるかもわからないが、知つているのだからね。我々は知つている以上はそういう無責任なことはいけないと思います。そういう意味で取上げてもらいたいと思うのです。
 それからもう一つは、大蔵委員会でこのことを、実は私ども不在中に問題になつたようなんですが、それは移管変えの手続ですね、法務省に移管変えの手続、これが正規にやられておらない。大蔵省でも窪谷局長もこれを知らないのです。私そういうことなんかも非常に無理だと思うのですよ。こういう問題になつた所であればあるほど、とにかくあらゆることが万全の策を講じてやられませんと非常に私はいかんと思う。私はむしろ設置云々の最後の結論よりもこういう問題の起きているものを本省の局長なんかが知らない。そうして現場の人だけでばたばた処理している。そんたことは余計問題を紛糾させる。たとえそれで押切つてやつたつて、あとに問題がたくさん残ります。そういうことも一つ明確にされて委員会としての結論を早く出して欲しいと思うのです。どうも請願というものはあとのほうで一括して採択するというような慣例があるのでありまするが、ものによると思うのですよ。これを一つ委員長のほうで考えて欲しいのですが、政務次官もこのことを御承知なんですが、これはどうですかね。正規な移管変えができておらないということは、大蔵委員会の質疑応答から考えて、いささかその点ちよつと政務次官の意見もお聞きした上で、そういうことも含めて委員長のほうとしての適当なお取扱いをお願いしたいと思います。
#60
○政府委員(三浦寅之助君) 只今の点これまで大蔵省の窪谷局長がどう言つたかということもよくわからんので、若し何なら主管局長から調べたいと思います。
#61
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
   午後一時十八分速記中止
   ―――――・―――――
   午後一時三十三分速記開始
#62
○委員長(郡祐一君) じや速記を始めて。次回は公報を以つて御通知申上げます。
 本日はこれを以て散会いたします。
   午後一時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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