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1953/04/02 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第15号
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1953/04/02 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第15号

#1
第019回国会 法務委員会 第15号
昭和二十九年四月二日(金曜日)
   午後二時五十七分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
   委員
           小野 義夫君
           加藤 武徳君
           楠見 義男君
           中山 福藏君
           三橋八次郎君
           棚橋 小虎君
  政府委員
   法務省民事局長 村上 朝一君
   大蔵省銀行局長 河野 通一君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○参考人の出頭に関する件
○利息制限法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。
 先ず参考人より意見聴取に関する件についてお諮りいたします。一昨日の委員長及び理事打合会におきまして、裁判所法の一部を改正する法律案及び民事訴訟法等の一部を改正する法律案の両案につきまして参考人より意見を聴取いたすことを申合せておりますが、両案につきまして参考人の出席を求め、意見を聴取いたすことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#3
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。
 なお、参考人の数、人選、意見聴取の日取り等は便宜委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認め、さよう取計らいます。大体只今予定しております期日は、八日来週の木曜日に行いたいと思います。又その範囲は、裁判官二名、弁護士一名、学識経験者一名、このような範囲でそれぞれの機関に人選を依頼し取計らいたいと存じております。
 なお、念のため申しておきまするが、六日、来週の火曜日に秘密保護法について外務委員会と連合委員会を開く予定にいたしております。
  ―――――――――――――
#5
○委員長(郡祐一君) これより議案の審査に入ります。先ず利息制限法案(予備審査)を議題に供します。村上民事局長より内容についての御説明を願います。
 ちよつと速記をやめて。
  [速記中止〕
#6
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#7
○政府委員(村上朝一君) 先ずこの法案の大要につきましては先般提案理由を御説明申上げました際に申上げてございますので、本日は逐条について御説明を申上げたいと存じます。
 第一条でありますが、本条は現行法現行法の第二条に代わる規定でございます。現行法の第二条は「契約上ノ利息トハ人民相互ノ契約ヲ以テ定メ得ヘキ所ノ利息ニシテ元金百円未満ハ一ケ年ニ付百分ノ十五百円以上千円未満ハ百分ノ十二千円以上百分ノ十以下トス若シ此限ヲ超過スル分ハ裁判上無効ノモノトシ各其制限ニマテ引直サシムベシ」とございます。このように元本を百円未満、百円以上、千円未満、千円以上の三段階に分けまして、利息の最高限度をそれぞれ一割五分、一割二分、一割と定めておりますが、この百円、千円を以て線を引きました元本の区分は、明治十年に太政官布告として制定されましたとき以来変らない区分でございまして、現在の貨幣価値から見ますと、甚だしく不合理なものとなつておるのであります。又利率の最高限度は、大正八年にこの法律が改正になりますまでは、二割、一割五分、一一割二分の三段階であつたのでありますが、大正八年の改正以来現在の通り改められておるのであります。現在の経済情勢から考えますと、すべての場合に通ずる貸金の利息の最高限度としましてはやや妥当を欠くのではないかと思われるのであります。かような点が現行法のこの太政官布告という古めかしい体裁及び条文の表現と相待ちまして、とかく利息制限法を軽視する傾向をもたらした一つの原因になつておるのであります。
 そこで元本の区分及び利率の限度をそれぞれこの案にありますように改めようとするものでありますが、改正案におきましては、十万、百万の線で元本を区分いたしまして、利息を二割、一割八分、一割五分と改めておるわけであります。この元本を十万、百万のところで線を引きましたのは、必ずしも貨幣価値の比例のみによつたのではございませんので、いわゆる庶民金融と称せられるものの実情なり、金融機関による貸出金利の取扱い方針、基準等を参酌いたしたわけであります。利率は正規の金融機関による貸付金利の趨勢等を考えまして、現在におきましては、すべての場合に通ずる最高限度としては年二割、一割八分、一割五分程度を相当と考えたのであります。
 現行法におきましては、先ほど読みました通り、限度を超える部分の利息を約定の裁判上無効ということにしております。裁判上無効と申しますのは、裁判所においては無効のものとして取扱われるが、裁判所外では無効ではなくて裁判所外で債務者が任意に支払つたときは、その取戻しの請求ができないという解釈が多年の判例となつておるわけであります。尤も学者の多くは、この裁判上無効というのは、法律上無効というのと同じ意味であるというふうに言つておるのでありますけれども、かような学説上疑義のあります裁判上無効という表現を使うことを避けまして、判例の解釈しておりますような裁判上無効と同じ効果を認めようという趣旨で、第一項におきましては「超過部分につき無効とする。」、第二項において、任意に支払つたときは、返還の請求ができないということにした次第でございます。従いましてこの第一条は元本の区分及び利率の点を除きましては、現行法の第二条と趣旨が異ならないわけでございます。この利息の私法上の制限につきましては、いろいろな考え方があるわけでありまして、貸金の利息というようなものは、これは本来経済法則によつてきまるものであつて、これを法律を以て制限しようとしても実効は期待できない。契約自由の原則によつて当事者の自治に任せて、ただ債務者の窮迫無知に乗じて不当な高利を定めたような場合にのみ、具体的事案ごとに裁判所の判断によつて減額させることがいいという意見もあるのであります。少くとも一律に利息を制限することは、消費生活のための貸金いわゆる消費信用の場合だけに限つて、生産活動のための貸金、生産信用と申しますかの場合には、当事者の自治に任せていいという考え方もあるのであります。併し債務者が訴えを起したり、或いは訴訟で抗弁を出したりして初めて減額されるということでは、債権者の側の圧迫に対して債務者を保護するというこの立法の目的から考えますと、多く期待できないのみならず、窮迫無知に乗じて不当の高利を定めたものであるかどうか、殊に幾らから不当高利と見るべきであるかというようなことが逐一訴訟において争われるということになりますと、相当立証その他困難な而も出て参りまして、債務者の保護に十分でないということもございますし、又いわゆる消費信用と生産信用とを明確に区別することも、困難な場合が多いのでありまして、生産信用の産業資金等にありましても、一時的な異例な場合を別といたしまして、極端な高利を払いましては、健全な生産活動の継続は不可能になるわけであります。従いまして消費信用以外には利息の制限は無用であるということも言えないかと思うのであります。もとより経済法則に逆行いたしましては、私法上の契約の効力を制限いたしましても、それだけでは完全な効果は期待できないでありましようけれども、少くとも債権者側から裁判又は強制執行により、即ち国家権力を借りて強制的に高利を取り立てるということは、これは利息制限立法によりまして有効に制限することができるのであります。現行法も先ほど軽視される傾向にあると申上げましたけれども、この意味におきましては、現に有効な働きをしておるわけであります。この改正案は利息の私法上の制限に関しまして、現行法のとつておりますのと全く同一の政策を踏襲したわけであります。債務者の保護を徹底いたしますためには、第二項のような規定を設けないで、制限超過の利息を支払つたときは、それを取戻すことができるようにするほうがいいのではないかということも考えられるのでありますけれども、そこまで徹底いたしますと、現在の実情から申しまして、却つて金融の道を塞ぐ虞れもあるのではないかという点も考えられますので、この点につきましても現行法の内容をそのまま踏襲したわけであります。
 なお、先にこの国会に提案されまして、只今大蔵委員会で審議されております出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案との関係について一言申上げますが、現在一般に利息を抑制する法律としましては、利息制限法のほかに物価統制令というものがありまして、暴利行為となるような不当な行為につきましては罰則があるのであります。併し、この物価統制令も不当の高利という抽象的な基準でありますために取締りに困難がありまして、殆んどこれは実効を挙げておりません。一方貸金業者につきましては、貸金業等の取締に関する法律がありまして、これは貸金業者が営業を始めます前に、業務方法書に利息を記載しまして大蔵大臣に届け出ることになつておるのでありますが、運用の実情は日歩五十銭を超える利息が書いてございますと、大蔵省は届出を受理しない。併し日歩五十銭までならば受理するという運用になつておるのであります。貸金業者がこの業務方法善に記載した利息の限度を超えて利息を取りましたときは、貸金業法によりまして刑罰が科せられることになつておりまして、この面から利息の抑制が行われておるわけでありますけれども、日歩五十銭という運用、これは月にいたしますと一割五分、年十八割なのでありまして、これが非常に高いということは申すまでもないのであります。今般別の理由によりましてこの貸金業の取締に関する法律が廃止されることになりました。これを廃止するに当りまして、高金利の取締りにつきましても、こういう業務方法書に利息を記載さして取締るというような迂遠な方法をとらずに、直接金利を制限するということと、又物価統制令の運用上による不便を回避するために、新たに出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案に第五条を設けまして、その第五条におきまして日歩三十銭を超える高利に対して罰則、これは三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金でありますが、罰則を以て臨むことにしておるのであります。この只今申しました罰則と利息制限法案とによりまして、利息の制限というものが三段構えとなるわけであります。即ち利息制限法の限度内、これは最高が年二割となつておりますが、日歩五銭五厘でありますが、この限度内は裁判所に訴えを以て請求し、国家の力を借りて保護を受けることができる。この限度を超えて日歩三十銭までの利息は裁判所に請求することができませんが、刑罰の制裁はない、いわば放任されるわけであります。日歩三十銭を超えますと、これは反社会的な行為として刑罰の制裁がある。こういう三段構えになるわけであります。
 次に金融機関の金利につきまして、臨時金利調整法という法律がございますので、これとの関係について一言申上げますが、金融機関の金利につきましては利息制限法の適用があることは勿論でございますが、このほかに臨時金利調整法第五条によりまして、日本銀行政策委員会におきまして金融機関の貸付金利及び預金の金利の統制をしているのであります。この臨時金利調整法における金利の統制は、これは金融機関のみを対象にいたしております。又その規制の趣旨が金融機関相互間の競争を排除する金利統制ということを目標にいたしておりますので、利息制限法が経済的な弱者、弱い立場にある債務者を保護するという、いわば社会政策的立法であるのとその趣きを異にしております。この点から申しまして臨時金利調整法は利息制限法の適用を排除するものではなく、格別の効力を有するものと従来一般に解されているわけであります。即ち利息制限法の定める限度を超える利息は、臨時金利調整法に基いて定められております金利の最高限度を超えると否とを問わず、裁判上無効と解されております。又臨時金利調整法に定められております限度を超えまして金融機関が利息をとりますと、利息制限法の限度内でありましても、これは法令に反する行為として銀行法その他によりまして、役員の解任なり事業の停止、或いは免許の取消等の行政処分が行われるわけであります。この改正案と臨時金利調整法との関係も従来と全く同様でありまして臨時金利調整法に基いて定められます金利の最高限度はこの利息制限法の制限の範囲内にとどまることがもとより望ましいのでありますが、利息制限法案が民事上の効果だけを考慮して利息の限度を定めまして、別に罰則を以て制限する限度が定められておりますので、そのことを前提として行政官庁が行政監督の必要上金融機関の金利を定めるということになるわけであります。従来の実績から申しますと、現行法の千円以上、年一割という限度が実情に即さないためにでございましよう。正規の金融機関の金制はしばしばこの限度を超えて定められた例があるのでありますが、今度の改正案の金利でございますと、大部分のものがこの枠内に納まります。金融機関のうち信用金庫或いは協同組合等の極く一部のものはこの枠外に出るものもございますが、これは大蔵省当局の今後の行政指導によりまして、この枠内に少くとも金融機関のものは納める方針であるということであります。
 次に、第二条は利息の天引の効果を定めたものでありまして現行法にはございません新設の規定でございます。利息を天引いたしました場合に、利息制限法がどういうふうに適用されるかにつきましては、消費貸借の要物性、即ち消費貸借契約、即ち貸金というものは現実に金銭を授受するか少くともこれと同一視すべき経済上の利益を与えた事実がなければ、消費貸借は成立しないという民法の原則と関連しまして、天引の場合の効果について解釈上いろいろ疑義があるわけであります。現行法で規定がございません結果、いろいろな説があるのでございますが、最も合理的だとされておりますのは、天引額のうち利息制限法の限度内の利息に相当するものは、経済上現金授受と同一視すべき利益の交付があつたものと見て、即ち要物性を満たすものとして元本を算出するのであります。この計算方法によりますと、長期間の利息を天引しましたときには、限度内の利息でありましても、利息の総額が嵩みます結果、手取額に比してはるかに多い元本債権の成立を認めることになります。その結果、更にこの理論を修正することが必要になつて来るわけであります。そこでこの改正案の第二案におきましては、現行法の下における天引の場合の学説のうち一部有力な学説に従いまして、受領額に対する限度内の利息に当る金額を受領額に加えた額のみについて元本債権の成立を認めることとしたわけであります。この条文の表現はやや技術的に過ぎる嫌いがございますけれども、要するに利息を天引した場合の元本の計算方法を規定したものであります。
 次に第三条は、現行法の第四条に当るわけであります。貸主が利息のほかに礼金、割引金、手数料、調査料等を取ることがあるのであります。これらのものは利息、即ち元本使用の対価たる実費を持つている場合が多いばかりでなく、これらの名義を用いまして利息の制限をくぐることを防ぐ必要がありますので、これを利息とみなすこととしたのであります。尤も名義の如何にかかわらず、契約の締結に関する費用及び債務の弁済の費用という実質を持つものは、これは元本使用の対価ではないんでありますから、利息とはみなさないということにしております。これらの費用の負担につきましては、それぞれ民法の規定によりまして、当事者の意思によつて或いは債権者の負担となり、債務者の負担となる場合があるわけであります。
 次に第四条は、賠償額予定の制限の規定でありますが、現行法の第五条に代る規定であります。民法の四百十九条によりますと、金銭債務の不履行による損害賠償の額は、約定利率がありますときは約定利率により、又約定利事がないときには法定利率によつてきまるわけであります。例えば年一割の約束で借りた債務、借金を弁済期に支払いませんと、同じ年一割の率による損害賠償をするわけでありまして、この場合、実際の損害額とは関係なく
 この率によるわけであります。ただ、当事者が特に債務不履行による賠償額をあらかじめ定めましたときは、民法にいう賠償額の予定でありまして、これは約定利率なり法定利率とは関係なく、別に定めることができるわけでありまして裁判所はその賠償額の予定を増減することができないことになつております。実際の損害とは関係なく、予定された賠償額を支払わなければならんという、ことになつておるわけであります。利息は年一割でありましても、弁済期以後は年三割を支払うということならば、その賠償額の予定として裁判所がこれを増減できないというのが民法の原則でありますが、現行利息制限法の第五条は、この賠償額の予定に関する民法の規定の例外をなすものでありまして、裁判所が実際の損害に比して不当に高額であると認めたときは、減額することができるということになつておるのであります。而も商事にはこれを適用しないということになつておりますので、商事の金銭債権に関する賠償額の予定は、民法の原則に奥つて完全に契約の自由が認められるわけであります。現行法の第五条の規定は賠償額の予定について、完全なる契約の自由が認められております。民法の原則に比較いたしますと、債務者の保護になるわけでありますけれども、具体的事案ごとに裁判によらなければ減額されないということでは債務者の保護に十分でなく、殊に実際の損害額に比して不当な高額であるかどうかという証明は極めて困難なのであります。そこで一律に賠償額の予定を制限することが債務者保護のために最も適当であるわけでありますが、一面この賠償額の予定というものは、期限を過ぎますと、従来よりも高い金利を払わなければならんという不利益を与えることによつて、債務の履行を確保するという目的を持つておるわけでありまして、かような目的のために、約定利息よりも高い率による賠償額の予定を認めることが適当と思われますので、この案におきましては、賠償額予定の場合の率を、第一条の約定利息の限度の二倍まで認めることにしたのであります。又非常に高い賠償額を予定して、これによつて不当に債務者を圧迫する手段とするということを防ぐ必要のありますことは、商事につきましても一般にその必要があると考えられるのでありまして、商事と申しましても現状から申しますと、貸金業者の多くは株式会社等の組織になつておりますので、貸主が商人であるために商事債権という推定を受けておりますけれども、借主必ずしも商人ではないわけでありまして、商事についても一般的に必要があると考えられます。又商事債権という名前で現行法第五百条は殆んどその適用をする場合を見ないほど潜脱されておる実情でありますので、この商事の例外を認めないこととしたのであります。
 附則の第三項におきまして商法施行法の一部を改正しまして百十七条を削除いたしましたのは、百十七条におきまして「利息制限法第五条ノ規定ハ商事ニハ之ヲ適用セス」とありますので、この規定を削除いたしたわけであります。普通の株式会社組織の貸金業者が金を貸しますときには、弁済期までの利息は、利息制限法にある年一割の範囲内の利率を定めましても、弁済期を過ぎますと、日歩三十銭なり五十銭という高い賠償額の予定をするのが普通のようであります。これは商事については契約自由の原則が認められていると申しましても、裁判所に参りますと余り高い賠償額、いわゆる遅延損害金は公の秩序、善良の風俗に反するということで制限をするわけでありますけれども、公序良俗というような抽象的な基準で制限いたしますために、或る裁判所では日歩二十銭ぐらいで制限するところもあり、或るところでは日歩五十銭でも公序良俗に反しないという判断をしておるところもあるのであります。裁判所自身どこで線を引くかということに非常に苦心があると思うのであります。そこでこの改正案のように、第一条の限度の二倍という限度で賠償額の予定を制限いたしますと、一律に日歩十一銭であります。日歩十一銭までならば認められる、それ以上ならば認められないということになるわけであります。でこの改正案の第三項におきまして違約金は賠償額の二倍とみなすということでありますが、違約金即ち債務の履行を怠つたときに支払を約束する金額というものは、或いは損害賠償額の予定であることもあり、又いわゆる違約罰と称せられる制裁のこともあるわけでありますけれども、いずれも弁済期に債務を任意に履行させることを心理的に強制するというための、履行を確保するための手段として利用されるものでありまして、実際又賠償額の予定であるか、違約罰であるかという区別は非常にむずかしいのでありまして、これを若し賠償額の予定について制限はするけれども、その他の違約金については制限をしないということでありましたならば、折角の第四条の適用を免かれる、脱法的な契約が行われる虞れもありますので、違約金はすべて賠償額の予定とみなしてこの第一項、第二項を適用するということにした次第であります。
 次に附則の第四項におきましてれ、「この法律施行前になされた契約については、なお従前の例による。」ということにいたしておりますが、従来の金利よりも今度の改正案によります利率は高くなるわけでありますが、この旧法の下において裁判上無効とされておりました契約を新法施行後この限度まで有効とすることは妥当でないというので、一般のいわゆる不遡及の原則に従つたわけでございます。
 以上御説明を終ります。
#8
○委員長(郡祐一君) 只今説明を聴取いたしました利息制限法に対して御質疑のある方は順次お願いいたします。
#9
○中山福藏君 先ず基本問題について二点だけお伺いしておきたい。それは予定賠償の場合に、最高の利息の二倍というふうにここに堰を設けられているわけですが、これは併し裁判をやつておりますと、大体長いのは二、三年、最高裁まで行くと五年ぐらいちよつとむずかしい事案はかかる。そうすると最高限の二割の利息で堰とめられておるということは、非常に債権者に不利益の場合が出て来ると思うのですが、これは何年経つても結局最高利息の二倍しか取れない、こういうことをお考えになつておるのでしようかどうですか。
#10
○政府委員(村上朝一君) その点も無論考えたわけでありまして、この第一条の利息の制限が従来のように年一割以下という非常に実情から見まして安い率でございますと、その二倍ということでは債務の履行を確保するという手段としては非常に弱いものと思います。今度の改正案によりまして第一条の金利もかなり実情に合うように引上げておりますので、賠償額予定の限度額としましてはその二倍ぐらいが相当じやないか、かように考えたわけであります。
#11
○中山福藏君 大体予定損害という場合、その額については裁判所は予定された限度で従来判決を下されるわけですから、今度はこれが作られますと、非常に年数によつては第一条の規定そのものよりも下廻るだろうと考えられるのですが、零細なところに行くのではないかと思われますが、どんなものでしようりか。
#12
○政府委員(村上朝一君) その点は第一条の年二割の二倍でございますから年四割になるわけでございます。遅延掛寄金は長ければ長いほど額が殖えるわけであります。期間が長くなつたら、零細になるということはないと考えられます。
#13
○中山福藏君 これは何ですか、第四条の意味というのは、それに釘付にするという意味じやなくして、年に二倍という意味なのですか。
#14
○政府委員(村上朝一君) そうです。つまり第一条が弁済期までの利息の利率でございます。第四条は弁済期後の利率になるわけであります。つまり弁済期までは年二割で抑えておる場合、弁済期を過ぎますと年四割の割合で損害金が発生する。
#15
○中山福藏君 利息を標準にして予定賠償額を定めるという意味じやない、この四条はそうじやなくして、年最高利息の二倍を予定するという意味ですか。
#16
○政府委員(村上朝一君) 弁済期までの利息の最高限度を年二割と抑えられておる場合遅延損害金の最高限は年四割と抑えられる。約定利率が年一割の場合、遅延損害金は年四割と定めることもできるわけであります。約定利率が二倍という意味でなく、限度が二倍になるわけであります。
#17
○中山福藏君 予定賠償額というものは、結局あなたのほうの解釈のしようもいろいろりましようが、大体賠償金というものの増減の額は、予定されただけの額ということで、違約金の額を定めるのではないのですか。年々二倍ずつ重つて行くというと大変な大きものになりますが、違約金というものは大体最初から予定された予定賠償ですから、若し不履行の場合、これだけの予定の額を払うという予定賠償なのです。予定されたというような意味にも解されるし、又予定されないという意味にも解されるのですか。
#18
○政府委員(村上朝一君) 第四条は、賠償額を予定する場合の予定する限度をきめたつもりであります。つまり仮に五万円貸して年一割五分という約定の場合には、このままにして置きますと、弁済期後も年一割五分の遅延損害が発生して来る。これは民法四百十九条の規定によりまして一割五分の利息が発生するわけであります。弁済期が過ぎたならば、その倍の年三割の遅延損害金を払うという約束をした場合には年三制になる。ただ、その弁済期を過ぎたら、どれだけの遅延損害金を払うかという限度を年四割よりも高い限度にきめることは四条で制限する。年四割までの範囲内で認める、こういうことです。
#19
○中山福藏君 これは違約金という性質としているのですから、違約金というものについては制限はないわけですね、本質から言えば……。併し一年の利息の二倍、これは毎年取つていいということになれば、この条文の書き方はどうでしようか、不明確ということになりはしないでしようか。これでわかりますかね。どうでしよう。ちよつとわからんのじやないか。違約金を年二倍ずつ殖やして行くということになるのか、違約金と言えば大体これだけ払わないんだから、これだけ違約金を払うという限定されたものじやないですか。どちらを指しておられるのかはつきりしないと迷うのじやないかという気がします。この書きようでわかるのでしようか。違約金というものをこれだけ違約金を払うということになりますと、一年に最高限度額の二倍のいわゆる利息の二倍に相当する額を払う、これが違約金だ、こういう意味に書かれたのか、或いはこの債務の履行を怠つた場合にはこれだけの違約金を払えばいい、こういう意味に書かれたのか、或いはこの債務の履行を怠つた場合にはこれだけの違約金を払う、これだけの違約金を、払えばいい、こういう意味にも解せられるのですがね、これでわかるでしようか、どうでしようか。
#20
○政府委員(村上朝一君) 違約金は賠償額の予定とみなしております。この趣旨は普通は弁済期を過夢ますと、違約金なり或いは遅延損害金として百歩何銭というきめ方をするわけであります。その日歩何銭が第一条の利息の年二割ですと、日歩五銭五厘になりますが、その二倍即ち日歩十一銭よりも高い割合を定めてはいけない。それ以上のものは保護されないということです。例えばいついつかまでに払わなければ一万円の違約金を払うという約束の場合です。こういう場合はこの率によつて定めた違約金でない場合は四条の適用によらないという趣旨でありますが、ただこれがこの表現でそういうふうに読めますかどうですか、その点或いは中山先生のおつしやるような疑問があるかも知れません。
#21
○中山福藏君 これは毎年これだけの違約金を払うとか、毎月これだけの違約金を払うのだと言うのだつたらわかる。
#22
○楠見義男君 今のに関連して……、金額で定めた場合には四条の適用がない、こうおつしやるのだけれども、その場合も四条の適応があるのじやないですか。
#23
○政府委員(村上朝一君) 只今の説明間違えました。金額で定めた場合も、例えば一日遅れても一万円払うというようなときには、やはり一日分の利率の倍額で抑えられるわけであります。
#24
○中山福藏君 これはこの注文の書き方が……、これは例えば年二割なら二割、年一割五分なら一割五分と分れますね。毎年これだけの違約金というものを払つて行くという意味になりますれ。重なつて行きますか、毎年々々、年に従つてあなたの御説明のようになれば、毎年々々重つて行くわけですね。予定賠償というものはそういうものじやないのじやないですか、額は一応限定するのじやないのですか、よく証文にはそう書いてありますがね。この債務履行を怠つたときは、これだけの賠償金はあらかじめ払うという額をきめてきめるのですよ。
#25
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
   〔速記中止]
#26
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#27
○政府委員(村上朝一君) 定額の違約金を約束した場合に、弁済期から弁済をしたときまでの期間に対する四条の割合による金額を超えている部分については無効だ、そういうことになるわけであります。
#28
○上原正吉君 この二条の天引利息を制限したのは大変適切な処置だと思うのですが、実効を挙げるのはなかなか困難じやないかと思われるのですね、例えば十万円の借用証書を書かして全部書類を揃えて現金は八万円か渡さない、そういう方法で天引利息を取る。併し二万円には天引利息を払つたということになりますと、任意に払つた利息で取返す権限がないというほうに入つてしまうのじやないですか、実際の処置として……。
#29
○政府委員(村上朝一君) 例えば十万円の貸借につきまして二万円利息を天引してしまつたという場合ですね、そうしますと、この第二条の計算によりまして、例えば期限が六カ月先だ、で制限が年二割だといたしますと、六カ月ですから年一割が限度です。利息は一万円しか取れない、それを三万円取つているわけですから、現実に受領した八万円に対する限度内の利率による金額、つまり八千円だけが利息として認められるわけで、つまり差引きしました二万円のうち八千円を超す一万二千円は元本に入つたものというふうにこの二条で計算するわけであります。従いまして十万円の債権が成立するのではなくして、一万二千円を差引きました八万八千円だけの債権が成立する、こういうことになる。
#30
○上原正吉君 それは十万円の書類を作つて二万円の利息を天引頂戴した領収書があれば、そういうことが証明されますけれども、実際に八万円しか受取らなかつたという証拠が何も残つていなければどうにもならないじやないですか。
#31
○政府委員(村上朝一君) 今の例で実際は八万八千円しか元本が残つていない。にもかかわらず証書は十万円になつておつて、十万円請求の訴訟を起されたという場合に、証拠は何も紙に書いたものに限りませんから、他の証拠も、例えば債務者自身の供述も証拠になるのでありまして、それも裁判所に信用されなければこれは止むを得ないわけですが、書いたものがなくても二万円天引きされたという立証がつけば、八万八千円の限度に制限される……。
#32
○上原正吉君 立証がつけばですね、それはわかりました。それから利息の天引をした場合には、第二条の規定は大変こういうものに適切だと思うのですが、天引きし得る期間の制限がなければ、これもその実効を挙げ得ないと思います。一年分や二年分天引きしたのならいいけれども、三年分も五年分も天引きされたら、どれほど少い利率でも非常に高いものになる。年に一割、五年間利息を天引きしたら元本は半分になつてしまうのですからね。
#33
○政府委員(村上朝一君) 改正案の第二条は、実は長い期間の利息を天引きした場合の不都合をこれで救済するつもりなのであります。先ほども申上げましたように、従来の計算方法ですと、天引きした額のうち限度内の利息に相当する部分は消費貸借の要物性を満たす、現実に同じ利益を与えたものということでそれを受領額に加算いたしますから、長期間に亘りますと債務者に非常に不利なことになるわけです。この計算によりますと、長期間の利息を天引きした場合には、受領額をもとにいたしましてそれに対する限度内の利率をかけたものを天引額から差引きまして、その残りが和本に入つてしまいますから、現実の受渡した手取額が少なければ、それだけ元本の額が少くなるということになるわけです。仮に計算して申上げますと、年二割で元本十万円を貸しまして三年間天引きしたといたします。そうすると六万円天引きして、四万円受領したという場合、従来の計算方法ですと、これは年二割が利息制限法の認める限度であるといたしますと、三年分の利息六万円は要物性を満たしておるということで、要するに四万円受領して、六万円の天引き額は要物性を満たすものとして、十万円の債権の成立を認めるわけであります。この改正案の第二条の計算によりますと、四万円に年二割の三年分、即ち六割をかけました二万四千円、これを天引額六万円から引きますと、三万六千円は元本十万円の弁済に充てたものとみなしますから、結局十万円から三万六千円を引いた六万四千円だけが貸金として成立する、つまり手取額四万円に対して六万四千円の元本が残る、こういう計算になります。
#34
○上原正吉君 三年くらいならそれでわかりますけれども、仮にこれを五年、八年としますと、如何に利率が低くても非常に手取が少くなる。先に払う限りでは……。ですからこういう制限があつて、二割しか天引しないといつても、今まで三年分の天引で貸しておつたものを五年分の天引で貸すということになると、手取が少くなつてしまう、そういうことになるのじやないですか。
#35
○政府委員(村上朝一君) 七年、十年というような、長期の貸借の場合には、普通利息の天引というようなことは行われないのじやないかと思いますが、非常に長い期間の利息を天引するということになりますと、或いはそういうような、債務者に不利な場合も出て来るかと思いますが、少くとも現在行われておりまする計算方法よりは遥かにいいということにはなります。殊に天引額が多ければ多いほど受領額は少いわけですから、そうすると受領額が少いということは天引額のうち元本の弁済に充てられた額はそれだけ多くなるのであります。
#36
○上原正吉君 ですけれどもそれを長期にすれば、やはり元本に対する利息も大きくなるのですから、元本の弁済に充てられる金額が減つてしまう。
#37
○政府委員(村上朝一君) 今の五年間天引の場合ですが、年二割で五年間天引しますとゼロになりますから、これは金は貸さんということになつて、五年より長いものは考えられない。
#38
○上原正吉君 ですから一年一割にしても、四年分の利息を差引くということになると、結構高利になるのじやないですか。
#39
○政府委員(村上朝一君) 四年分を十万円から差引きますと、手取額三万円に対する年二割、四年間ですから一万六千円を除いた六万四千円が元本に入つたことになるわけです。ですから手取二万円で元本が三万六千円……。
#40
○上原正吉君 三万六千円の利息を払わなければならんということになると非常に高い。
#41
○政府委員(村上朝一君) 受取つて五年先に三万六千円返せばいい、こういうことになるわけでございます。
#42
○中山福藏君 ちよつともう一つお尋ねします。あなたのおつしやることはよくわかつたのですが、私が不思議に考えますことは、これは民法の規定に違約金予定賠償という条項があるわけですね、それを民法の一部改正という形をとらずに、私は当然そこに項目を分けてこれはその条項のうちに書き加えるのが本当の体裁じやないかと思うのですが、予定賠償金のいわゆる違約金とかこういう問題について、利息制限法にこれを加えることになつたというのはどういうわけですか。
#43
○政府委員(村上朝一君) 利息制限法は第一条以下すべて金銭を目的とする消費貸借に関する規定でございまして民法の違約金の規定はすべての債務に通ずる規定でございます。で中山委員の仰せのように金銭を目的とする消費貸借の利息に関する規定も、民法の消費貸借のところに入れるということも考えられるわけでありますが、現行法の建前はこれは民法とは別の特別法で行くということになつておりますので、金銭を目的とする消費貸借に関する違約金については、こちらのほうへ規定する、かように考えております。
#44
○中山福藏君 わかりました。それからもう一点、これは成るほど非常にいいことだと私はこの法律を見て考えたのですが、ただ一つ私が一番解せないことは、終戦後の物価指数が百倍、二百倍と飛躍的な形をとつているわけですね。そうすると十年前に百円貸したものはやはり今も百円というような基準になつて、そうして一般に裁判が行われておるのですね。これは併しその貨幣価値の変動というものは相当裁判所としても考慮なさる必要があるのじやないか、実はこれは社会の実際面から考えまして、いつもこの点について私疑問を持つております。それでそういうふうなことは、例えば十一年前の百円というものは大体今百倍から二百倍くらいの普通の物価は上つておるわけです。従つて貨幣価値が二百分の一に減つておるわけですね。そうすると十一年前に百円というものを貸した者は今の金にこれを換えてみますと、その価値というものはこれは百倍或いは百五十倍、二百倍、こう現われて来るだろうと思うのです。こういう点については、裁判所のほうとしてはお考えになつたことがございますか。又法制審議会なんかではそういう点について考慮を払われたことがあるでしようか。これは利息の問題ですけれども一応元本についても私は関連してお尋ねしておきたいと思います。そういう点について審議されたことがあるのですか。
#45
○政府委員(村上朝一君) インフレーシヨンによりまして私法上の法律関係に、いろいろ結果において不当なものが現われて来ることはこれはありがちでございましていわゆる事情変更の原則というようなことが考えられる場合もあるわけでありますが、貸金その他証券なり或いは現金を握つていた間に、貨幣価値が下つてしまつたというようなことによる損害というものは、これはインフレーシヨンに伴う止むを得ないものと一般に考えられておるのではないかと思います。この点について特に法制審議会その他で法制上の対策というようなことを考えたことはございません。
#46
○中山福藏君 私はやはり裁判所としては貨幣価値の変動というものに相当目をおつけになつて、利息制限というものも御吟味なさるのがこれは常識であるべきだと実は考えておるわけであります。利息だけの制限ということになりますと、これは債務者を保護するという立場になつて来るのであります。そうすると元本に対する経済上の変動による貨幣価値の数字というものを考慮すれば、これは債権者を保護するという意味になつて来ると思うのですが、債務者だけの保護ということに重きをおいて債権者の保護ということをなおざりにするというような嫌いが或いは現われて来るのじやないかと実は思うのですが、まあ全然そういうことが法制審議会なんかでは議論されないということは、これは片手落ちではないかという考えもするのですが、これは利息と元本というものは相対立しておりますから、関連事項としてお尋ねしておくわけですが、これは一回もそういう議はありませんのですか。
#47
○政府委員(村上朝一君) これまでのところございません。
#48
○中山福藏君 それだけ伺つておきます。
#49
○楠見義男君 さつきの上原さんの御質問に関連してお伺いするのですが、例えばさつきの例で言われた十万円に対する六万円先取りの問題ですね。これは十万円に対して三年の期限で二割だと丁度六万円になる、ところが、実際もらつたのは、借りたのは四万円だ、四万円に対して六万円になりますと三年間で言えば一五〇%になつて年利は五割になる、利息制限にはこの法律によると引つかかる。そこで一体証書面に十万円という字があれば十万円というもので計算をするのか、実際の金利を制限しようという建前から行けば、借りた金に対する金額なんですから、それが利子はあとで払うか前で払うかという相違だけが出て来るわけです。だから例えばもう少しわかりやすく言えば、十万円というけれども、実は八万円借りて二万円は先に払つておる。これを八万円に対する利息として見れば三万円は二割五分に当る。ところが十万円とすれば二割になる。それはこの法律ではどういうふうに見ておられるのですか。証書面の十万円というものを保護するのか、或いは債務者の八万円借りたのに対して二万円を取つておる、こういうふうに保護して行くのか、それはどちらを保護されて行くのですか。
#50
○政府委員(村上朝一君) 十万円の貸金の証書を作りまして二万円天引して八万円渡したという場合に、八万円だけについて元本の成立を認めるべきではないかという議論も現にあるのであります。それに対しまして天引額が利息制限法の限度を超えていなければ、それは経済上現金を授受したのと同じ利益を与えておるものと見て全額について元本の成立を認めるという解釈と、従来も両方あつたわけであります。大審院の判例及び多数の学説は限度内の利息の天引はこれは経済上現金授受と同一の利益を授受したものということで、それを含めた元本の成立を認める解釈になつておりますので、その解釈に従つてこの案を作つたわけであります。
#51
○楠見義男君 その限度内というのが問題なんですね。今の計算方法で十万円に対する六万円、四万円に対する六万円というこの説例で参りますと、四万円に対する六万円はこれは年利五割になつて限度外になるわけですね。その場合にはこれは認めないということになるのですか。それとももう飽くまでそれは十万円とする。十万円とするかしないかというのが今おつしやつた限度内の問題に引つかかつて来る。その限度内をどういうふうに解釈するかによつて非常に大きな違いが出て来るのですね。それはどうも今の判例だけでは解決すべき限度内というところが解決されてないように思うのだけれども、どうですか。
#52
○政府委員(村上朝一君) 第二条の計算方法は一応只今の例で申しますと、十万円全額について元本が成立したものと仮定いたしまして、そのうち手取り額を元本として限度内の利息を算出しまして、天引額がその額よりも多ければ、その多い部分だけは元本に入つてしまつたものということで元本を算出するわけであります。
#53
○楠見義男君 そこで根本論になるのですが、一体利息制限法というものはどういう法益を保護しようとしておるのかという問題です。先ほどもお話があつたように、三十銭を超える場合については反社会性として罰則を以て臨むとか或いは“政処分の対象として臨むとかいうようなお話が出たのですが、そういうふうに反社会性という点に強調を置き、そうして又債務者を保護するという観点から行けばおのずからそういう立法の精神であるとすれば、今の説例の場合でもどちらをとるべきかということが自然に結論づけられるわけなんです。そこで先ほど上原さんからお話があつたのですが、例えば二条なら二条というもので、実際の証拠というものは単に被害者の言つたというだけでは、恐らく裁判上の問題になつた場合に、それだけではなかなか行かないのではないか、と同時に無知或いは窮迫状態に陥つたものを救済すると言うけれども、実はそういう無知、窮迫の人々はむしろ裁判に持出すとかなんとかということができなくて、そうでない人間が裁判上の問題としてこれを利用しようということ、普通の場合は、破産なんかの場合は別でございますけれども、そうでない場合に大体そういうことになるのじやないか、こういうふうにも思われるのです。そうすると今のお答えによつても、それから又上原さんの御質問の何から言つても、結局これは従来と同じように守られない法律といいますか、になる。本当に擁護せんとする法益といいますか、そういうことは擁護できないのじやないかという気がするのです。それはどうでしようか。
#54
○政府委員(村上朝一君) 反社会性のあるものを罰則を以て臨むというのは別に提案になつております法律の問題でありまして、この利息制限法自体は債権者、債務者の関係におきまして債務者の経済的に弱い地位を保護するというところに主眼があるわけです。守られない法律ではないかという点でありますが先ほども申上げましたように、この限度を超えたものを、裁判外で任意に授受する高い金利で金を借りてそれを返すということが行われて来る。それまでもこれで抑える力はないかと思います。ただ債務者が払わない場合に裁判所に訴えて、或いは執行吏のところに持つて行つて強制執行までして強制的に取立ることはできない。この限度までであれば裁判所でも認めて保護されるけれども、この限度を超えるものは債権者が裁判所に保護を求めてもこれに応じられないという点で、現在の利息制限法も同様でありますけれども、この法案も、債務者保護もその程度における実効を期待できるかと考えております。
#55
○楠見義男君 そこで今の反社会性という問題は社会悪とこう見るわけですね。従つて日歩三十銭以上のものについての法律ができておるわけですが、利息制限法における制限の基本観念は一体どこにあるのか、さつき申上げたように、大体苦しくとも無理をして今まで取られておる、払えないという場合もあろうが、払えないという人間がたまたま救済される、こういうことになるわけですね。それはこの利息制限法でそういうものを救済するという基本観念はどういう点に置かれておるのですか。
#56
○政府委員(村上朝一君) 同じように苦しくとも、誠実に払う者はこれは法律で抑えられない、ずうずうしい者が保護されるという結果になるのではないかという御質問かと思いますが、少くとも金を授受しますときに、公正証書などを作りまして債務名義をつけて行こうというときにこの法律がありますと、この限度を超えて債務名義はつけられないわけであります。そのときからすでにそれだけの働きはするわけであります。成るほど或る程度我慢して払つたものは損をするという嫌いは殊にこの二項に関連してございますけれども、まあ止むを得ないじやないかと考えております。
#57
○楠見義男君 これは意見にもなるのですが、裁判所というか、法律が保護すべき法益、その保護を必要とする基本観念というものを掲げておつてそうしてたまたまそこに来ない者はこれは本人の意思に従つて、法律がこれを守ろうと言うのに、守つて欲しくない、任意にこれにぶつかつて来ないのは、これは止むる得ない。ところがたまたまぶつかつた者をこれを保護しようというようですが、その保護する旗印を掲げておることについては、くどいのですが、さつきの社会悪とか何とかいう一つの基本的な考え方があつて、それを掲げずして法律が保護するとか保護しないとかいうことは私はおかしいと思う。だから近頃の法律、立法例でも、この法律はこういうことを目的にして或いはこういうことに資することを目的としているのだということを、法律の趣旨を宣明しているのであります。利息制限法においては然らば何を目的にして、何を趣旨としてやつているのかという点は、今の話では結局正直者は余り保護されずに、開き直つた者だけが保護されるというようなことになつて、どうも解せないような気がするのですが、そこに一つの旗印があればはつきりとわかるのですが……。
#58
○政府委員(村上朝一君) 旗印はやはり不当な高利の抑制ということでありまして、抑制方法が裁判上の保護を与えないという形によつて、不当な高利が抑制されるわけです。或る者が保護され、或る者が保護されないというようなことでありますが、少くとも国家機関の力を借りて、この限度以上の高利を強制することはできないという意味におきまして、その不当な高利の抑制という働きはできるのじやないかと、かように考えております。
#59
○楠見義男君 そこで別にこれは言葉尻をつかまえるわけでもなく、又私の意見になりますが、さつき申上げたように、不当なものを抑制するという基本観念であるならば、さつきも設例の十万円、六万円の場合はそういう観念から限度というものを解釈するのが、守らんとする法益から見て当然の帰結じやないかと思うのですが、これは私の意見になりますから別にお答も要りませんけれども、私はどうもそういう旗印を掲げる以上は、むしろ債務者を保護するという観点から限度というものをきめるのが至当じやないか、こういうふうに思うのです。これは私の意見なのですから……。
 あとは少し細かいことでお伺いしたいのですが、先ほどの御説明を伺つて、御説明についてお伺いしたいのですが、臨時金利調整法との関係の問題なのですが、今回の利息制限法案によつて、今までは枠に出ておつたものも大体納まる、ただ若干のものがそれに納まらない、それについては大蔵省の行政指導の而によつて納めるようになる見込だ、こういうお話があつたのですが、その若干のものというものについて、例えば農業協同組合とか、そのほかのことをお挙げになつたのですが、そういうのは一体どのくらいの金利を取つておるのでしようか。その実情だけを伺いたいと思うのです。
#60
○政府委員(村上朝一君) 後ほど表にして差上げたいと思いますが、農業協同組合が平均年一割九分五厘、最低一割九分三厘、最高二割一分七厘、水産業協同組合も平均が年一割九分五厘、これは年五厘五毛から二割九分二厘まで、信用協同組合、手形及び証書貸付が日歩五銭以内、年一割八分三厘、手形割引は五銭以内、当座貸越しが五銭以内、信用協同組合のほうは年一割八分二厘でありますから、百万円以下のものについては限度を超えないわけです。
#61
○楠見義男君 それから法律の中に入つて、第一条の分け方なんですが、明治十年の太政官布告の場合には、二割、一割五分、一割という刻みですね、それから大正八年のときには一割五分、一割二分、それから一割と、こういう刻み方をやつておるのですが、いずれにしても従来の最高は二割で、その次に一割五分、最低が一割と、こうなつておりますが、今度は二割、それから一割八分、一割五分と、この刻み方をやつたのはどういう事情なんですか。
#62
○政府委員(村上朝一君) これはいわゆる金融機関によつて行われております貸付金利というものは、大体現在における正常な金利の一つの目安になるのじやないかというところから検討したわけでありますが、先ほど申上げましたように協同組合の極く一部を除きまして、大部分金融機関による金利を枠内に収める率としては、この年二割、一割八分、一割五分という区分が相当だということでこの数字を出したのです。
#63
○楠見義男君 昔のことで甚だ恐縮なんですが、大正八年に利息制限法を改正したときに、今申上げたように従来の二割、一割五分、一割を一割五分、一割二分、一割と率を下げてやつたときの事情を、恐らくこれは一般の金融情勢とかそういうものがあつたと同時に、これが守れるというつもりでこの法律の改正をやつたんじやないかと思うのですが、甚だ恐縮ですが、過去のことで恐縮ですけれども、そのときの事情はどういう事情か、簡単にお聞きできたら……。
#64
○政府委員(村上朝一君) そのときの事情を実は詳細今申上げる準備をしておりませんが、このお配りいたしております資料の中に金利のグラフがございます。これを御覧頂きますと、大正八年に改正になります前数年は、相当低金利になつておるのであります。これは金融機関による金利のグラフであります。大正八年には利息制限法の改正までやつてこの率を下げたわけでありますが、下げた直後にこの図にありますように、市中の貸出金利が上つているわけであります。で、このときからもうすでに利息制限法というのは金融機関によつても守られていなかつたということが窺われるのであります。大正八年の利息制限法の改正当時、或いは将来の経済情勢の見通しについて、多少の齟齬があつたんじやないかというふうに考えております。
#65
○楠見義男君 そうしますと、結局金利が下がる傾向のときには、例えば今の御説明のように、大正八年の改正前の数年とか或いは昭和五、六年から終戦に至るまでの、こういうふうに下降傾向のあるときに利息制限法というものは実は余り働かない法律になると、その範囲内で大体やるから……。それから高くなつたときは又守られない、こういうことになつて、いずれにしてもこれは或るときは守られないし、或るときは用をなさない、こういうようなことになりはしないでしようか。
#66
○政府委員(村上朝一君) これはいわゆる正規の金融機関の例でありまして、金融機関の金利がこれは日歩二銭以下の線に下つておる昭和の初年頃におきましても、金融機関以外の貸金業者の金利も恐らく利息制限法を越えるものがあつたんじやないかと思います。で利息制限法が無用であつたという時期はなかつたんじやないかというふうに考えております。
#67
○楠見義男君 そこで無用であつたかないかということがわかるのは、裁判所の問題、裁判所の処理されたという事例の件数ですね、件数が一つのめどになると思うのですが、これはなかなか実際問題としてお聞きしてもむずかしい問題だろうと思いますけれども、その状況はどうなんですか。
#68
○政府委員(村上朝一君) 裁判所へ持ち出しますときは、利息制限法の枠内で持ち出すのが普通でございます。裁判所へ現われました事件だけから必ずしもいわゆる貸金の請求の中のどれだけが現実には限度を超えておつたのかどうかということはつかめないんじやないか、かように思います。
#69
○楠見義男君 そうするとこれも私の意見になりますけれども、そうすると守られたか守られないかということもわからん、知り得るチャンスというものは殆んどないということにならないでしようかね、これは意見ですけれども……。金利が安いときには大体その範囲内でやつておるから問題はない。ずつと上つたときは、これは今お話のあつたように守られない。それじや守られておるかどうかということは裁判では出て来ない。こうなつて来るとこの法律というものは一体守られているんだから守られてないかということは知り得る機会というものはどういう機会にあるのでしようか。
#70
○政府委員(村上朝一君) 裁判所に出るという形では常に守られておるわけであります。裁判所ではこれ以上の金利を認めた例はないのでありますから、常に守られておるのでありまして、裁判所へ出ないところで守られなかつただろう。殊に正規の金融機関以外の対象についてはずつと守られない場合のほうが多かつただろうと思いますけれども、少くとも裁判所においてはこれ以上のものは認めておらなかつたのであります。
#71
○楠見義男君 その程度にして、あともう一つ第三条の但書のなんですが、利息に含まれないとみなされる契約の締結及び債務の弁済の費用ですね。これについては通常かくあるべしというような標準は恐らく個々の事例によつて違うでしようから、そういう場合はないようにも思えるのですが、これの認定はどういうふうにしてやつて行くのでしようか。
#72
○政府委員(村上朝一君) この契約の締結の費用、これは民法の五百五十八条ですか、売買契約に関する費用は当事者隻半分して負担する。例えばまあこの規定が有償契約ということで消費貸借にも準用されるわけでありますが、公正証書作成の費用であるとか、証書に貼用する印紙の費用であるとか、そういうものが契約の費用に入るわけであります。これは債権者債務者半分して負担するわけであります。尤もこれは任意規定でありますから、当事者の合意で債権者或いは債務者の負担とするということもあり得るわけであります。それから弁済費用のほうは、民法の四百八十五条、「弁済ノ費用二付キ別段ノ意思表示ナキトキハ共費用ハ債務者之ヲ負担ス」ということがありまして、原則として債務者が弁済の費用を負担する、こういうことになります。
#73
○楠見義男君 私のお伺いしたいのは、単純な契約の締結という費用でなしに、ここにもいろいろありますけれども、例えば調査料というような、調査料という名目は使わない。併し契約を締結するのに、単に例えば或る場所へ行くまでの足代だとか、或いは紙代とか、或いは公正証書を作るならその印紙代とか、何とかいうそういうだけでなしに、いろいろ契約を締結するにはかくかくの費用が要るというようなことで、契約締結の費用を出して、それを先に取る、こういう事例があるのじやないかという心配をするわけです。その場合借りる金額が少ければ少いだけその費用がかぶつて行きますから、非常にこの利息制限法を脱法する手段に使われはせんかということを想像されるわけであります。そこでここで言つておる契約の締結の費用というのは、どこまでも締結の費用というのか、そういう観念はあるのでしようか。
#74
○政府委員(村上朝一君) 抽象的に申しますと元本費用の対価と認められる実質を持つておれば、これは費用でなくて利息であり、そうでない費用はそこから除かれると、こういうことになるわけでございますが、具体的には、例えば調査料と称する場合でも或いは契約の費用の中に入るものもあるかも知れない。実質がどういうものかということによつて、但書の費用に入るか或いは本文の利息に入るかということになろうかと考えます。
#75
○楠見義男君 ですからそういう、ここに「調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなす。」こういう文句もあるのですが、ところが調査料でも、今おつしやるように契約の締結に欠くべからざる費用というものがあるということになれば、それに籍目して脱法行為に利用されるという虞れがないか、こういうふうに思うのですが、従つてこの契約の締結の費用というものは、はつきりと具体的にあらゆる場合を挙げては言えなくても、大体こういう場合の費用だというように通常の観念としてこの立法に当つてお考えになつておるものはないのですか。
#76
○政府委員(村上朝一君) 但書によつて契約の締結に関する費用としてはつきりしておるものを申上げますと、先ほど申上げましたような証書作成のための手数料であるとか、紙代であるとか、印紙とかそういうものの程度であろうと思います。例えば担保物を見に行くための旅費であるとかそういうものは、債務者が支払えばそれまでですが、債権者がその金を取るということになりますと、やはり本文で利息とみなされる額に入るかと思います。
#77
○上原正吉君 この第一条と第四条との利息は複利で計算することができるというのですか。
#78
○政府委員(村上朝一君) 複利の場合につきましては現行法におきましても別段規定がないのでありますが、民法では法定重利という規定がありまして、一年分以上利息が延滞しますとそれを一方的に元本に組入れることを認めているわけです。一年分以内の短期間ごとに複利計算して行きまして、一年分を通算すれば、この限度利息を超えるというようなときには、やはりこの限度で縛られるのじやないか。一年分以上に亘る場合にはやはり法定重利による組入と同様の効果が認められているのじやないかとかように考えております。
#79
○上原正吉君 それからこれはやはり私意見なんですが、利息を天引して金を貸すということは、いわゆる社会悪そ、経済的優位にある人が弱者を虐げるということを防ぐ手段として、利息を天引して金を貸すということは禁止すべきだと思うのです。これは実際問題として利息を天引して金を、貸す場合には、利息制限法を免れるということ以外に効用がないのです。手形割引みたいな場合も考えられますけれども、これは正規の金融機関で正規の手続でやる場合は別としても、金貸業者は利息の形で利息を天引する場合には、やはり利息制限法を免れる手段として用いる。利息天引とい方法で金を貸す場合には、暴利を負るということは防ぎ得ないのです。何ら証拠がない。書類だけは完備しておるから防げない。これじやなくて、ほかの法律でも結構ですが、さつきお述べになつた法律でも結構なんですが、罰則を以て臨むならば、貸金業者の取締法とかいうようなもので天引きして利息を取るということは禁止すべきであると思うのです。天引きして利息を取らなくても同じことなんです。いずれにしても、担保を信頼するか或いは弁済能力を信用するかして金を貸す。貸す金はどつちみち何ほどかの金を幾ら天引きしても残りは同じなんですから、例えば十万円の金を貸して二万円の利息を天引きして八万円を金を貸して十万円の証書を作つても、八万円の金を貸して八万円の証書と二万円の利息を払うという証書を作つても、どつちみち渡した金は八万円で、それに対して十万円受取られるということの危険に対しては何ら内容上変りがない。ですから天引きして八万円渡した場合には、八万円の証書を作り、十万円の証書を作るということを法律で禁止して、それを罰則を以て臨むということが実際問題として暴利を取締るというという目的のためには私どもは是非必要なことだと常々考えておるのですが、これはそういう法律を作る場合には御考慮願いたいと思う。これは意見ですから、それで結構なんです。
#80
○中山福藏君 これは第一条のところ、これをうまく巧妙に使いますと、百万円超したのを百万一円超しますと、これを十に分割して十万円それがしというものを十口分に分けて貸しますと利息が年に五分儲かるのです。例えばこれは十万円未満のものは年二割、そうすると百万円以上の場合には年一割五分ですから、これは一つ話合でこれを十に割つてくれ。わしのほうは馬鹿臭いけれども、お前さんを助ける意味において貸すんだから、これを十に分けて一つ貸すからということになりますと、二割と一割五分の差金がこれは五分開きが出るわけです、同じ百万円貸すにしてもですよ。そうすると百万円について五万円年に儲かるわけですね。これに対して予防方法は講じてないわけですが、そういう場合があるということは思われませんでしようか。私はそういう場合があると思うんですがね。金貸しはかくかく法規の網をどうしてくぐるかということばかり考えるわけですからね。
#81
○政府委員(村上朝一君) いわゆる脱法的な手段を講ずる場合であります。刑罰法規なんかですと、よく脱法行為を処罰するという規定があつて、刑罰法規には適当なんでありますが、民事の実体法規につきまして脱法行為は無効であるというようなことを規定すること自体が余り意味のないことであります。ただ百万円を十口に分けて貸したということが第一条の利息制限をくぐる目的でやつたのである、実際は百万円一口の貸借関係であるが、証書面だけ百万円を十口に分けたに過ぎないんだということが裁判所において明らかになりますれば、裁判所としては、これは百万円の消費貸借一つ一個と見まして第一条の制限は適用して行くと思うのです。
#82
○中山福藏君 局長は民事局長なんでしよう。そういう裁判をするだろうとおつしやる。これは若し一日ずつ日をずらして行けば、これは泥を吐かん以上は、やはり別個の貸借関係になると私は思うのです。そうするとやはり百万円について五万円儲かるのです。それは処罰する規定がないとか、或いはこれを一個と見なすとかいう特別の規定があるか、或いは同じ消費貸借の関係、当事者の間においては、これは百万円が十万円ずつ分割された場合は一個と見なすという特別の規定があれば、それはあなたの仰せられるようなことになると思いますが、如何でしようか。そういうような裁判所に力があるでしようか、一個と見なすという……。これはなんですよ、借りた人と貸した人が、これは百万円借りるつもりだつたけれども、こういうふうに話合いでやつたのだということを泥を吐かない以上は、水掛論になつてなかなかむずかしい問題じやないかと思うのですが、どうでしようか、あなたのおつしやるようにうまく行くでしようか。
#83
○政府委員(村上朝一君) 百万円を貸そうという合意ができまして、今日十万円現金を受取つたあと、一日ずつずらして十万円ずつ十日間に分けて受取つたというときには、消費貸借の要物性はその都度十万円ずつ満たされて行くわけでありますから、十日間かかつて百万円の一個の消費貸借が成立するわけであります。泥を吐かなければ、成るほど裁判所は認めるわけには行かないのでありますけれども、ただ裁判所としては証拠がなければ認めるわけに行かないのでありまして、債務者が訴訟でそういう主張をいたしまして、そういう立証があれば、裁判所としてはこれは一個の消費貸借というふうに認定するだろうと考えます。
#84
○中山福藏君 その認定が問題なんですけれども、これは当事者を変えてでもやれるわけです。そういうものについて認定がなかなかむずかしいだろうと思うのです。だからそういうふうな煩雑な事態が惹起するということを予防するということは、やはり利息制限法をお作りになるときには当然お考えにならなければならんと私は考える。それが一つ抜けておるのじやないかと思うのです。どうも私はそういうところに疎漏があるような気がいたしますが、これでいいでしようか。
#85
○政府委員(村上朝一君) 現行法におきましても千円以上は年一割百円以下ですと一割五分でやはりそこに五分の差があります。ただ従来只今おつしやつたような意味で脱法的に幾口かに分けて消費貸借をした、そのために債務者が苦しめられたというような例は聞いておりませんし、又現行法においてそういう場合の手当はしておりませんのんで、改正案におきましてもその点考えなかつたわけであります。
#86
○中山福藏君 今までの利息制限法は極く金額は少いのですからね、そういう場合が起らなかつたのです、実際は……。こういう商法に基いた訴訟といえども或いは民法に基いた訴訟といえども、額が、非常に利息は低いものですから、私が只今述べたような場合が起り得なかつたのです、多くは……。今度は二割とか一割五分とか大きな額になりますから、相当まあ数字から言えばですよ。だからそういう場合をここにまあ想像することができるのです、そういう場合があるということを……。これは千万円ということになりますと、これを分割してやるというと大変大きな金になる。だからこれはやはり予防措置というものをこの場合設けておくということが安全じやないかと実は考えるわけなんですがね。それは老婆心みたいなものですから、一応やはりそういうことを私が考えた場合、当局としてはどうでしようか、同意されるということが当然だろうと思うのですがね、どうでしようかね。
#87
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#88
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
 本日はこれを以て散会いたします。
   午後四時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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