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1953/04/16 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第20号
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1953/04/16 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第20号

#1
第019回国会 法務委員会 第20号
昭和二十九年四月十六日(金曜日)
   午後一時三十四分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
           宮城タマヨ君
           亀田 得治君
   委員
           楠見 義男君
           中山 福藏君
           棚橋 小虎君
           一松 定吉君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務大臣官房調
   査課長     位野木益雄君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  説明員
   法務省民事局参
   事官      平賀 健太君
   法務省刑事局総
   務課長     津田  実君
  最高裁判所長官代理者
   (事務総局民事
   局長)     関根 小郷君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○公聴会開会に関する件
○日本国における国際連合の軍隊の地
 位に関する協定の実施に伴う刑事特
 別法案(内閣送付)
○裁判所法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○民事訴訟法等の一部を改正する法律
 案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。
 本日は先ず公聴会の開会についてお諮りいたします。先般の委員長理事打合会におきまして、且つ本委員会にも御披露申上げました通り、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案につきまして公聴会を開くことが必要であると決定しておりまするが、打合会の決定又委員会に御報告いたしました通り公聴会を開くことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めてさよう決定いたします。
 なお、公聴会開会の日時でございますが、これは公述人応募、選定等の日数も必要でございますので、四月二十七日午前十時より開会いたすことといたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。なお、公述人の数及び人選等につきましては、応募の結果をも参酌いたし決定いたすこととし、便宜委員長と理事にお任せ願いたいと存じますが御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。本院規則第六十二条によりますと、公聴会の開会には議長の承認が必要でありまするから、只今の御決定に基き私より議長宛て開会承認要求書を提出いたします。
  ―――――――――――――
#6
○委員長(郡祐一君) 次に、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案、予備審査、先ず提案理由の説明を聴取いたします。
#7
○政府委員(三浦寅之助君) 只今議題となりました日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案につき提案の理由を御説明申上げます。
 本法案は、去る二月十九日署名されました日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国内手続についての規定を定めたものであります。
 日本国に駐留する国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使につきましては、すでに昨年十月二十六日署名された日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の発効に伴い、その国内手続につき日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法が公布施行されているところでありますが、今回締結されました右の協定は、その第十六条におきまして右議定書と全く同様の規定を設けており、日本国との間にこの協定の効力が発生した国に属する国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使につきましては、爾後この協定によつて規律されることになつているのであります。そこでこの協定の発効に伴いまして、一九五〇年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議並びに一九五一年二月一日の国際連合総会決議に従つて朝鮮に寧隊を派賦したアメリカ合衆国以外の国で、日本国との間にこの協定の効力が発生した同が右の諸決議に従つて朝鮮に派かした陸軍、海軍及び空軍の日本国に在る間におけるものに関しましては、右協定の趣旨に則り、刑事上の手続法につきまして若干の特別規定を設ける必要が生じましたため、この法律餐を提出することといたしたものであります。
 申すまでもなく、これらの軍隊の構成員、軍属又は家族に対しましても、我が国既存の法令は、原則としてその適用を見るのでありますが、右協定の刑事裁判権に関する条項によりまして刑事手続関係の法令につきましては若干の特別措置を必要といたしますので、その必要最小限度の規定をこの法律案にとり入れた次第であります。従いまして、この法律案に特別に規定していない事項につきましては、原則として既存の各法令が適用されることと相成るわけであります。
 この法律案は、第一章総則、第二章刑事手続の二章十二カ条と附則からなつておるのでありますが、ここにこの法律案の主要点を申上げます。
 先ず、第一章総則の章は、一カ条でありましてこの法律において使用する語の定義を定めたのであります。この定義は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定第一条に定められている定義に則つたものであります。
 次に、第二章刑事手続の章は、十一ヵ条よりなり、国際連合の軍隊の構成員又は軍属が国際連合の軍当局において裁判権を行使する第一次の権利を有する罪を犯した場合における同軍隊への身柄の引渡、国際連合の軍隊がその権限に基いて警備している国際連合の軍隊の使用する施設内における逮捕その他人身を拘束する処分及び差押、捜索等の処分の執行、同施設内等において逮捕された者に対する日本側の受領手続、派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊の当局の刑事手続に対する我が国の当局側の協力及び派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊による抑留又は拘禁についての刑事補償法の適用等いずれも刑事手続に関する現行の法令を以てしては処置し得ない問題をとり上げて特別の規定を置いたものであります。これを要するに、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法及び日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑出特別法の場合と殆んど同趣旨の刑事手続を規定したものであります。
 以上この法律案につきまして概略御説明申上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
#8
○委員長(郡祐一君) 次に、本法案の逐条説明を聴取いたします。
#9
○説明員(津田実君) 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法逐条について御説明いたします。逐条の説明につきましては、かねてお手許に刑事特別法案解説書というのを廻してございますので、御参照下されば幸いであると存じます。なお、逐条に入りまする前に、只今提案理由の説明にございました以上に、一般的な事項について細かかく御説明申上げたいと思います。
 先ず昨年十月二十六日東京におきまして、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書というのが署名されましたわけでございます。これから議定書と申しますのは、これを指すことに御了解願いたいと思います。この議定書は同月の二十九日から発効いたしたわけでございますが、これは刑事裁判権のみについての議定書でございまして、一般のその他の各般の事項につきましては当時といたしましては、まだ協定を結ぶに至つておらなかつた次第でございます。ところがこれに伴いまして国内手続に関する立法を必要といたしますので、先般の国会におきまして、同議定書の実施に伴う刑事特別法案が提案されまして御審議を願いまして、御可決を頂きまして、同法は昨年の十一月十二日に公布即日施行になつたわけであります。ところがその議定書中におきまして、将来この国際連合の軍隊の日本国における地位に関する一般協定が締結された場合には、この議定書は同協定に統合されるべきものであるということが示されておりましたところ、本年の二月十九日に至りましてこの国際連合の軍隊の地位に関する協定というものが罪名を見た次第でございます。で、この協定はすでに国会に提案されておりまして、御審議をお願いしてあるわけでございますが、同協定の第十六条には前のこの議定書と形式的に殆んど同じ規定を協定いたしております。でそれは要しまするに前の議定書をこの新らしい協定に取込んだとこういうに相成る次第でございまして、実質は全く同じでございます。
 そこでこの従来の議定書につきましては現在どのような国が署名いたしておりますかと申上げますると、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、グレートブリテン及び北アイルランド、フランス、イタリー、フィリピンそれからオランダという国が前の議定書に署名いたしておるのであります。ところが今度の協定につきましては、この統一司令部として行動いたしまするアメリカ合衆国のほかに、やはりオーストラリア、カナダ、ニユージーランド、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国即ちイギリス、それから南アフリカ連邦、フィリピン、この六カ国が現在署名いたしております。併しながらこの協定の効力は国会の御承認を得ました上で、日本国がこれを受諾した後十日経つて効力を生ずることになるわけでありまして、勿論未だ効力を生じておりません。そこでそれは日本国が受諾いたしまして十日後に効力を生じますが、それまでに他の国についてはどうであろうかと申しますと、これに署名いたしております先ほど申上げました国々のうちアメリカ合衆国、それからイギリス、オーストラリア、フィリピンは無条件でこれを受諾するということになつておりますので、日本国について効力を発生すれば、この時にこの協定が先ず最初に効力を発する、こういうことになるわけでございます。それからその他の筆名国につきましては、本国の受諾を要するわけでございまして、その受諾があつた日の後やはり十日を経て当該国については効力を生ずる、かように相成る次第でございます。
 で、今回この提案されました刑事特別法は、この協定の実施に伴つて必要な国内手続を定めたものでございますが、前の議定書の刑事特別法との関係につきましては、前の議定書に署名をいたした国で、今度の議定書に署名いたした国があるわけでございます。それは今度の議定書が効力を発生いたしまするごとに、今度の協定によるわけでございまして、前の議定書はその都度効力を当該国について失つて行く、かようになつて新らしい協定に乗り移つて行く、かように相成る次第でございます。この刑事特別法につきましても応じような関係が出て参る次第でございます。
 一般論といたしまして以上の点を申上げまして、次に逐条の御説明に移りたいと思います。この刑事特別法は前の議定書の刑事特別法と全く同様でございます。多少議定書という字句を協定という字句に変えましたとか、多少の字句の修正をいたしておりますが、その他は全部同じでございます。勿論実質も全く同じでございます。
 先ず第一条は、定義規定でございまして、これはこの刑事特別法の用語の定義を定めたものでございます。で、この法律におきまして「協定」と言つているのは、只今申上げました国際連合の軍隊の地位に関する協定をいうものでございます。
 それからこの法律におきまして「派遣国」というのは、千九百五十年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会の決議並びに千九百五十一年二月一日の国際連合総会の決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣しておりますところのアメリカ合衆国以外の国であつて、日本との間にこの協定が効力を有している間におけるものをいうことになるわけでございます。即ち日本国と協定の効力がある間における国で、而もアメリカ合衆国は除く、こういうことになつております。アメリカ合衆国を除きました。これはアメリカ合衆国につきましては、別に日米安全保障条約に基く行政協定に伴う刑事特別法がございますので、それによつて律することに相成りまするから除いてございます。
 それからその次に「国際連合の軍隊」といいまするものは、当該派遣国がこれらの決議に従つて朝鮮に派遣いたしました陸軍、海軍及び空軍であつて、日本国内にある間におけるものをいう、こういうふうになつております。従いまして、この派遣国が、決議に従つて朝鮮に派遣するために出した軍隊、それが日本国におる問ということでございます。従いまして未だ朝鮮に到達しない前におきましても、朝鮮に派遣する目的を以て日本国に取りあえず来たようなものは無論含まれる。併しながらかような目的を持たない軍隊は、たとえ当該派遣国の軍隊でも、ここにいう国際連合の軍隊には入らない、かように相成るわけであります。
 その次「国際連合の軍隊の構成員」と申しますのは、その軍隊に属する人員で、現に服役中のもの、いわゆる軍人というものでありまして、現役軍人或いは召集中の軍人等を指すわけでございます。
 それから軍属と申しまするのは、派遣国の国籍を有する文民で国際連合の軍隊に雇用され、これに勤務し又は随伴するものを言うのでありまして、そのうちで二重国籍者につきましては派遣国が日本国に命令を以て連れて来たもの、それから通常日本国内に居住しておる人が軍属のような仕事に服してもこれは除くという除外例を以て軍属を定義いたしました。
 次に、家族につきましては日本の国籍を有するもの、つまり日本人を除きまして、この国際連合の軍隊の構成員又は軍属の配偶者及び二十一歳未満の者、或いはそれらの父又は母或いは二十一歳の子でありまする場合には生計費の半額以上がそれらの構成員又は軍属に依存している人、かような者を家族と言います。で、この構成員、軍属、家族の点につきましては全く日米、つまりアメリカ在日米軍の場合と全く同じ範囲になつておるのであります。
 その次に、第七項におきましては、国際連合の軍隊の使用する施設の定義を掲げてあります。これはこの協定の五条一項に掲げておるところの施設を指すものでありまして、日本国が第五条によりまして、合同会議を通じて国際連合の軍隊に使用を認めた施設を指すわけでございます。この施設というだけでございまして、区域というのはございません。日米の場合におきましては区域というものも提供いたしておりますが、国際連合の軍隊に対しましては施設だけを提供するということになつております。この点日米と違うところでございます。
 その次は第二条でございます。これは刑事手続の章、この今度の刑事特別法におきましては、日米の場合と異りまして、罪に関する章は設けておりません。その点につきましてはこれを設けると否とは全く日本の裁量によることに話合いになつておりますが、日本側としてはこれは設ける必要が認められないという意味におきまして罪の章は設けないことにいたして刑事手続の章だけを設けた次第であります。第二条以下につきましても勿論先般の刑事特別法と全く同じでございます。で簡単に御説明をいたしますと、第二条は、施設、国際連合の軍隊がその権限に基いて警備しておる施設内におきまして逮捕をしたり勾引状、勾留状の執行をしたりするような場合におきましては、この当該軍隊の権限ある者、主としてこの司令官コマンデイング・オフィサーと申しますが、司令官の同点を得て行うか又はその者に嘱託をしてする、こういうことになります。これは協定第十六条の十項と、十項に関する公式議事録に関連して設けた規定でございまして、軍隊が軍隊として駐留いたしております場合におきまして、こういう強制的な処分を行う場合にすべき国際慣例として当然な事柄だというふうに考えられる事項を規定したわけでございます。
 それから第二項におきましては、たださような常に同意を得て、或いは嘱託して行おうとする場合では目的を達し得ないような場合、即ち死刑、若しくは無期、懲役三年というような重い懲役又は禁固に当る罪にかかる現行犯を追跡しておるような場合に施設の中に飛込む、こういうような場合は同意を得ずして直ちに追跡をして行つて逮捕ができる、こういうことになつております。これは緊急性とその犯罪の重大性から当然のことだと考えられる次第でございます。
 次に第三条は、一般刑事訴訟法の規定におきまして、検察官或いは司法警察員がこの国際連合の軍隊の軍人或いは軍属を逮捕し或いは逮捕された者を受取るというような場合におきまして、その当該構成員又は軍属が犯しました罪がこの協定の第十六条第三項に掲げる罪のどれかに該当する場合には刑事訴訟法の規定にかかわらず直ちに被疑者を当該軍隊に引渡す、これはどういうことかと申しますと、協定第十六条第三項と申しますのは、国際連合の軍隊側に第一次の裁判権がある場合でございます。どういう罪かと申しますると、構成員又は年属の犯しましたところの当該国際連合の軍隊の財産若しくは安全のみに対する罪、又は専ら当該国際連合の軍隊の他の構成員、軍属若しくは家族の身体若しくは財産のみに対する罪即ち国際連合の軍隊の所属員相互間の罪というようなものが主なものでありますが、つまり言うと、日本に被害法益が及んでいないような罪が主なものでございます。さような罪、それから当該軍隊の公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪、かようなものでございます。
 恐縮でございますが、解説書の十ページのところの「公務執行妨害」と書いてございますが、「妨害」というのは「中」の誤りでございます。かような罪は日米行政協定の場合におきましても又司際連合とのこの協定におきましても、当該軍隊が第一次の裁判権を持ち日本側が第二次の裁判権を持つ、かような犯罪でございますので、第一次の裁判権を持つ事件につきまして日本側が先ず逮捕した場合は、被疑者を相手かたの軍隊に引渡してやる、こういうのが第一項。
 第二項はさように司法警察員が引渡した場合におきましても捜査をして速かに書類と証拠物を検察官に送致しろ、かような規定でございまして、これはむしろ念のために刑訴の規定により事件送致をしておかなければならないという司法警察員の義務を規定したものでございます。
 次は第四条でございまして、第四条は、国際連合の軍隊によつて逮捕された者の受領に関する規定でございます。例えば国際連合の軍隊の施設の中で日本人が何か犯罪をいたします。さような場合は勿論施設の中には日本の警察官は通常おりませんので、当該軍隊の法律執行員つまりMPなどが逮捕するわけであります。或いは日本人に限らず当該軍隊の構成員にいたしましても、日本に第一次の裁判権があるようなものを逮捕するような場合があります。つまり言うと、当該軍人が施設の中で日本人に傷害を与えた、或いは日本人のものを盗んだ、かような場合には、日本に第一次裁判権がございます。さようなものにつきましては向うから日本に渡す、こう言つて来る場合があります。その場合におきましては、日本側はこれを受取らなければならないのでありますが、ただ単に受取るわけには参りませんので、これは裁判官の発する逮捕状を持つて行つて引渡しを受ける、そういうことを規定したのが第一項でございます。
 併しながら裁判官の逮捕状を受けるいとまがないような場合、或いは向うから言われた事実がどうもよくわからないから、逮捕状をもらうことができないというような場合は、速かに出かけて行つて一応受領するわけでありますが、その受領の際に、日本の法令を犯したことを疑うに足る十分な理由がある場合は、この場合はその場で緊急逮捕をいたしまして、後に裁判官の逮捕状を求める、こういうような手続をするということになる。併しながら、その場合逮捕状が発せられないときは、宜ちに釈放することになります。
 又引渡す旨の通知が国際連合の軍隊からありまして、司法警察員等が出かけて行つた場合におきましても、いろいろ検討してみてもそれは犯罪にならない、或いは犯罪の嫌疑がないというような場合は、すぐその場で受取つて釈放する、こういう必要があるわけであります。これが第三項でございます。それから第四項は、その場合におきますところの、引渡しのあつた場合におきます刑事訴訟法の規定の準用に関する規定でございまして、特に御説明申上げる必要はないと思います。
 それから次は第五条でございまして、第二条は施設内の逮捕の問題でありますが、第五条は施設内の日本側がする差押、捜索等の問題でございます。軍隊が警備しておる施設内におきまして、或いは施設外にありましても、軍隊の財産つまり国有財産、軍隊の財産につきまして捜索又は差押、検証をする場合には、あらかじめ権限ある者の同意を得てする、又は嘱託してする。裁判所又は裁判官の検証の嘱託は裁判所又は裁判官からする、こういうわけでありまして、これは勿論大体逮捕の場合と同じような形になつております。
 その次は第六条でございますが、第六条は、この協定によりまして派遣国の軍事裁判所、つまり派遣国の軍法会議が裁判権を行使する事件でありましても、つまり肯うと、派遣国軍に第一次の裁判権があるというような事件でありましても、日本の法令違反の罪であります場合には、検察官、検察事務官、司法警察職員、或いは鉄道公安職員は捜査することができる、刑事訴訟法上の規定に従つて捜査することができる。又裁判所、裁判官は令状発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使できる、こういうことになつておりますが、これはもとより当然なことなのでございますが、或いは疑義があるといけないということから従来設けておる規定でありまして、これは六条の規定がなくても当然しかく解釈さるべきものと思われますが、念のために設けておる次第でございます。
 次は第七条でございまして、第七条は証人の出頭等の義務についてでございます。派遣国は、自己が第一次裁判権を有する罪、或いは専属裁判権を有する罪につきまし、日本国内で申事法廷を開きまして、当該国の構成員、軍属、家族を裁判するわけでありますが、その際の証人が日本人であるという場合、或いは日本に一般に居住する外国人というような場合がございます。その場合如何様にしてその証人の出頭を求めるかということにつきまして規定したわけでございます。それは直接本人の出頭を求めるのでなくして、日本の裁判所に嘱託すると、こういうような考え方をとつております。そこで軍事裁判所の嘱託によつて日本の裁判官から当該軍事裁判所に出頭すべき旨を命ぜられたもの、或いは当該裁判所において宣誓若しくは証言を求められたものは応じなければならない。これは一般証人は日本の法廷において証言する義務は当然あるのでありますが、軍事裁判所において証言する義務は必ずしもないのであります。ここでその規定を設けました。併しながらかような日本の裁判官から出頭すべく命ぜられたものが出頭しない、或いは宣誓、証言を拒んだときは一万円以下の過料に処すという規定を設けておりますが、これは日本の当該規定の場合よりもずつと軽い罰で済ませる、こういうことになつております。これも従来から存しておる規定そのままでございます。
 その次は第八条でございますが、第七条の出頭命令に応じない証人について、更に軍事裁判所から嘱託がありましたときは、勾引状を発して勾引する、かような規定でございます。この軍事法廷をして完全にその裁判を遂行せしめるために、是非必要な承認が出頭しない場合は、かような強制措置も止むを得ないというふうに考えて設けられております。その勾引状につきましては、日本の裁判所の証人に対する勾引状の場合と全く同じであります。
 次は第九条でございますが、裁判所、検察官或いは司法警察員が保管しておる書類或いは証拠物につきまして、国際連合の軍隊側の裁判所或いは捜査当局から、刑事事件の審判或いは捜査に必要があるから、それを提供してもらいたいという申出があつた場合、これは協定にもございますが、相互協力という建前になつておりまして、その場合には閲覧若しくは謄写を許し或いは謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは日本裁判所等で必要のない場合は永久に引渡すということを規定したものでございます。
 次は第十条でありまして、この日本国の法令違反の罪は、当然日本の刑事訴訟法によつて措置ができるわけでありますが、日本国の法令違反ではない罪というのがございます。例えば当該軍隊の逃亡罪というようなものにつきましては日本に何ら規定はありませんので、日本では処置することができない。併しながら刑事事件について相互協力をするという協定の建前もございますし、更に逃亡兵をそのまま日本で置いておくということになりますと、日本の治安にも相当影響する場合が多多出て参りますので、かような当該国の刑事事件については協力をしてやるという建前をとつておるのが第十条でございまして、その協力の仕方を規定しておる、かような刑事事件につきまして、軍人、軍属、家族の逮捕の要請を受けたときは逮捕し又は逮捕させる、こういうことになつているのが第一項。
 それから第二項はさようなものの逮捕要請があつたとき、これが人の住居或いは建造物等にいるような場合、その場合は令状なくして当該の家に入るということは勿論憲法の精神に反するわけでございますから、そこでその場合は裁判官の許可状を得て入つて捜索することができるということを規定したのが第二項。それから追跡して行くような場合は、もはや裁判官の許可を得るいとまがない場合がございますので、さような場合は、許可を得ることを要しないというのが但し書の規定でございます。
 それから第三項は、さようなものを逮捕したときは、直ちに軍隊に引渡す、これは当然なことでございます。
 それから第四項はさような構成員、年属、家族を引き渡した場合におきましては、検察官にそれを通報する。これはいろいろの中央折衝、或いは統計上の必要等もございますので、検察官に通報し、検察官によつて中央に通報する、こういう形をとつております。と申しますのは司法警察員の中には自治体警察もございますので統制が困難である場合もありますので、かような規定をいたしております。
 それから次は第十一条、同じく日本国の法令による罪以外の事件についての協力の問題でありまして、日本側に捜査について協力を求めて来た場合これに応ずる手続でございます。先ず参考人を取調べたり実況見分をしたり、書類その他のものの所有者又は保管者に提出を求める。これは検察官、司法警察員がするのであります。そういう処分を受けるものに対しましては、さような要請によつてさような処分をするものである旨を告げなければならんというのが第三項でございます。かような協力につきまして何ら法上の規制がありませんとこれらの方法を講ずることができない場合もありますので、正当な理由がないのにかような処分を拒んだものにつきましては一万円以下の過料に処する、こういう第四項の規定を設けております。
 その次は第十二条でございますが、これは刑事補償に関するものであります。この派遣国の軍事裁判、或いは国際連合の軍隊におきまして抑留或いは拘禁されましたものが、日本の裁判所で裁判を受けまして無罪になりました場合には、通常の形におきましては刑事補償の余地がないわけでございます。併しながらそれは日本が嘱託して抑留或いは拘禁する場合もありまするので、さようなものにつきましてはやはり刑事補償法の補償の規定の適用があつて然るべきものと存じますので、これを刑事補償法による抑留又は拘禁とみなし刑事補償をする、かような規定が第十二条でございます。
 以上全くこれは日米行政協定の刑事手続の場合、それから先ほど申上げました議定書の刑事手続の場合と全く同じ内容でございます。
 次に附則について簡単に御説明申しますと、これは「日本国とアメリカ合衆国以外の国との間における協定の最初の効力発生の日から施行する。」であります。効力発生前には勿論刑事特別法の必要がございませんので、その日から施行するということになつております。
 それから第二項におきまして先ほども申上げましたように議定書に伴う刑事特別法によつて手続をいたします。さようにいたしたものが今度はこの協定の効力発生の日から議定書が効力を失いまして、この協定に乗移るという場合に、前の議定書に伴う刑事特別法によつて行いました手続処分の効力如何という問題が起りますので、それは新らしい相当規定によつてやつた手続処分とみなすということを規定してこの一貫性をとつたわけでございます。
 それから更に法律が施行後乗移つて来る場合もあり得るわけでございますが、さような場合におきましては、乗移つた後は乗移つた前の手続処分もやはりその乗移つた後の手続処分に関する相当規定によつてなされたものとみなすというのが後段でございます。
 それからその次、第三項は前の議定書の刑事特別法の一部を改正する規応でございます。それは前の議定書につきましては議定書の刑事特別法におきましては「第一条第二項中「議定書に署名し、且つ、日本国との間に議定書の効力が発生したもの」」かようになつておりますが、この議定書は今度の協定に乗り移りますごとに効力が当該国の間になくなつて参りまして、最終に乗り移つた国が、乗り移つてしまえば議定書は必要ない。従つて議定書に伴う刑事特別法は必要ない、こういうことになりますために、それはそういうことが起つたときにその効力をなくするための改正でございます。この二項というところに「この法律は、議定書が効力を発生したすべての国と日本国との間において議定書が効力を失つたときは、議定書の最後の失効の時に、その効力を失う。但し、その時までにした行為に対する罰則の適用及びその時までに派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊によつてなされた抑留又は拘禁についての刑事補償法の適用に関しては、この法律は、その時以後も、なおその効力を有する。」かようにいたしまして、前の議定書に伴う刑事特別法は当該議定書が効力を失つたときには失効するということにいたしまして、法律が二重に存する事態を防ごう、こういうことにいたした改正がこの最後の項でございます。
 以上を以ちましてこの刑事特別法の逐条説明を終ります。
#10
○委員長(郡祐一君) 只今の刑事特別法提案説明並びに逐条説明につきまして、次回以降に御質疑を願おうかと存じますが、若し御質疑がございましたら、お願いいたして結構でございます。
#11
○楠見義男君 簡単なことだけ一つ伺つておきたいのであります。先ほどお話で従前の議定書の実施に伴う刑事特別法と今回の協定に伴う刑事特別法案との間には、大体同じようだという趣旨の御説明があつたかと思いますが、若し違つている点があれば、違つている点だけを特に抜き出して簡単にその場所だけをお示しを頂きたい。それが一点と、それからもう一つは施設の問題があつても区域の問題はないのですが、この日本国における国際連合の軍隊の区域に関する協定、この一般協定の第五条ですか、第五条の二項に国際連合の軍隊の区域を使用し得る場合のことが規定されているのですが、この区域以内における問題はどうなるのか、その点と二つお伺いしたい。
#12
○説明員(津田実君) 前の議定書の特別法と今回の刑事特別法の違いでございますが、先ず第一条のところの協定とありまするのが、前は議定書というふうになつている、あとの点も全部議定書が協定に変つたという点でございます。それから第一条の七項が、新しい規定でございます。これは従来は議定書の場合は施設ということにつきまして協定は何らございませんで、従来の慣行と申しますか、従来の事実上の施設になつておつた。それが今度は協定上の施設というものの定義が出て奏りましたので、ここにとり入れた次第でございます。そのほかは先はど申しました議定書を協定に直したほかは令部変つておりません。
 それから第二の第五条二項でございますが、これは国際連合の軍隊が日米行政協定によつてアメリカ側に提供している施設、区域を使用できる、日本政府の同意を得て使用できる、こういうことでございます。この場合は当該区域はアメリカ合衆国の主管に属するわけでございますので、ただアメリカと国際連合の軍隊との間の使用の合意と、日本側の同意を条件にして使用できるということになつております。管理その他は全部アメリカ側がするわけでございますので、こちらの刑事特別法の関係は出て参らないということになつております。
#13
○楠見義男君 そうしますと、その場合にはアメリカ合衆国も権限に基いて警備しておる施設であり、それからその国際連合軍隊も合同会議を通じてこの区域の使用が認められておるのですから、その場合には国際連合の軍隊もその合同会議というものを通じ、或いは日本政府の同意を得てやつておるのだから、権限に基いて警備をしておる区域と、こう両方が競合するのですか。そういう場合であつてもこれはアメリカ軍隊の権限に基いた警備区域と、こういうふうに理解するのですか。
#14
○説明員(津田実君) その点は後者でございまして、アメリカの権限に基いて使用しておる。同じ使用という文句を使つてございますが、この五条二項において使用するというのは当該国際連合の軍隊の固有の施設として使用するという意味でなくて、アメリカの使用している施設を使用する、いわば又借りのような形を考えておるわけでございます。
#15
○楠見義男君 そうするとその区域内における国際連合軍隊の犯罪行為というものは、全くこちらのほうで自由に管轄権を持つのですか。
#16
○説明員(津田実君) その区域の中はアメリカが警備いたしておるということになる場合におきましては、アメリカによつて逮捕されるということになりまして、それは勿論日本側に引渡されるわけです。それからアメリカ側が警備していない区域のような場合、全然いない、演習場でございます。提供はされておるがアメリカ軍はいない。そこを国際連合の軍隊が使用して演習するというような場合におきましては、その軍隊内部のことにつきましては当然自律権によりましてみずからできますが、勿論日本の警察官も中へ入つて逮捕ができるということは当然であります。
#17
○委員長(郡祐一君) 他に只今の刑事特別法案について御質疑ございませんか。……それでは本法案につきましては只今説明を聴取したばかりでございまするから、次回以降に御質疑を願うことにいたします。
  ―――――――――――――
#18
○委員長(郡祐一君) 引続き裁判所法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案、両法律案を議題に供します。両法律案につきましては昨日申上げました通り逐条審議の意味合いを以ちまして、先ず民事訴訟法第二十二条から第三百五十九条までについて御質疑をお願いいたします。
 ちよと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#19
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。
 資料として配付されました規則の要綱案について、関根最高裁民事局長から御説明を願います。
#20
○説明員(関根小郷君) 昨日の委員会におきまして、今度の法律案が若し通過いたしますると、最高裁判所の規則に任せられております分がございますので、そのルールの内容はどうかということをお問いがございまして、その大体の要綱をお手許に今日差上げました次第でございます。これは先般一度申上げたのですが、簡単に要約して申上げますと、現在の調書は六十年前の民事井松法施行以来同様の形式のままの調書でございまして、言葉を換えて申上げますと、年月日順に綴じるだけでございまして、いわゆる大福帳式の型でございます。それを何とかして合理化いたしまして、利用者の便を図るということを考えまして、今度法律の改正案が若し通過いたしますれば、この要綱案のような形にして頂きたいという考え方でございます。
 それで先ず第一は現在大福帳式でございます長所を弁論調書とそれから証拠目録、証拠調調書というふうな形にして行つたらどうか、これもお手許に差上げてございますが、調書の様式を実際のものに合せまして、お手許に差上げてございます。これが主張関係書類とそれから証拠関係書類、雑書類、この三つに記録を分けまして、調書の上ではこの要綱に書いてございますように、弁論調書と証拠目録と証拠調調書、こういうふうに三別するという考え方でございます。そういたしまして、この狭義の弁論調書には、いわゆる形式的記載事項のほかに、事実及び法律に関する当事者の主伐、いわゆる弁論等を記載する。そういたしまして、この弁論調書には、当事者の準備書面にいいのがありますれば、それを引用する。それから弁論調書には、裁判所書記官が署名押印いたしまして、裁判長は、現在の法律では署名捺印ということになつておりますのを、裁判長が判を押せばいいようにしたらどうかという考え方でございます。
 それから第三といたしまして、証拠目録、これも実物の模型がございますが、この証拠目録も一見してどういうものが証拠になつておるかということをわからせるために、目録を作るわけでございまして、これも書類によりましていろいろありますが、例えて申しますと書証の目録、或いは人証の目録ということにいたしまして、申請があつてそれが採用され、或いは弁証に例をとりますると、それについての成立を認めるかどうかということは一見してわかるようにしたらどうか、これも実物を御覧頂くとわかると思いますが、それが証拠目録の点でございます。
 それから、この証拠目録につきまして、一々裁判長の署名或いは押印という手続を簡略化いたしまして、裁判官が認印すればいい、或いは裁判所の書記官が認印すればいいという形にしたらどうか。これなどにつきまして、一々裁判長の署名を要するということは如何かという点から、こういう考え方で参つたらどうか。
 それから第四といたしまして、証拠調べ自体については、非常に詳しく書くべきじやないか。例えて申しますと、一問一答でやつておりますので、それを一問一答式で、でき得べくんば書いたほうがいいんじやないか。これもお手許に差上げてございます記録の見本には、そういうような形で、赤い文字で書いてございますが、でき得べくんばこういつた方向にして行きたい、こういう考え方でございます。
 それからなお、この要綱の中の最後の点でございますが、証拠調べを長期間に亘りましていたした場合、そのあとで証拠調べを見ますると、結局事件の裁判をしなくとも和解ができてしまうということがままございます。そういつたことのときに証拠調調書を一々細かく作らなくとも、当事者が納得いたしますれば、その本当の要綱だけを書けばいいというようなことも考えられるのじやないか、これなどにつきましても当事者に異議がないという場合だけを限りまして、そういつたことが考えられる。で、現在の民事訴訟法の規定では、こういつた行き方がどうしてもできませんので、特に今度の法律案が通過しますれば、こういつた行き方に参りたいという考えでございます。又御質問がございましたら、お答えいたしたいと思います。
#21
○一松定吉君 大変よいお考えで、簡略にすることは結構ですが、今までのような形式にすると、裁判長並びに裁判所書記という方が署名捺印しておつたが、いわゆる訴訟記録の偽造というような場合には、いわゆる今までの定説によると、署名者の資格を偽わるということになつておつた。今度署名がない。捺印だけということになると、これはどうなる。その文書偽造ということについての始末を……。判事、書記官の名前がないと、そのときいわゆる今までの解釈は、署名の資格を偽わることが文書偽造だつた。内容の変更は内容の偽造であるので、だからそれは変造になるのでして、偽造にならないというような議論が学説で、判例もきまつておつた。今度この名前がない、判だけだということになると、そこにどういうふうに変造、文書偽造ということに対して取計らうお考えですか。
#22
○説明員(関根小郷君) 今の一松委員の御意見、これは弁論調書のほうは重要なものでございますので、書記官の署名を要するということにいたしてあります。それからそのほかの証拠関係の目録等につきまして、今申上げましたように、認印、判を捺すだけでいい。これは刑事関係の問題でそういうことはないかと思いますが、若し今御心配のように偽造、変造というような問題が起きて参りますことを予熱いたしますると、或いは印章偽造、文書偽造の問題にからみまして、刑法上の問題が出て来るかと思いますが、署名がない点につきまして、印章偽造という問題はあり得るかと思います。併し私、そこの点までそういつたことまで予想いたしておりませんので、よくもう少し研究いたさないと……、専門家である一松委員にもお教え頂きたいと思います。
#23
○一松定吉君 大変これはよかつたのです。その点私、今これは咄嗟の考えだから、印章偽造は勿論これは刑法で処罰があるが、文書偽造というものを、その点についてもう少し研究して、どういうふうにしてそういうときに救済するかということを、一つ考えて頂かんと、必ずそういうことはありますよ。署名者というものはなくなる、印だけ捺すということになると、印だけ捺して、これと同じようなものを以て、そうしているくと自分の利益にこれを利用するということは、必ずあり得べきことだ。その上に文書偽造というようなことではなくて、印章偽造というようなことでどうだというような問題は、これは当然起り得べきものだと思うのです。まあ一つ御研究願つて、適当の時期にお答え頂ければ結構です。これは非常に、成るほど簡素になつて、私ども専門家から見てこれは非常にいいと思う。私も賛成せざるを得んのだね。まあ具体的の内容については別ですけれども、大体についての私の考えは、記録を閲覧するのに一見してすぐわかるというやり方で、非常にいい。もうすでにこういうような方式をぼちぼちとりつつあるところもある。刑事事件なんかで、証拠申請なんかのときに、こういうようなことは非常にいいのです。いずれ逐条審議につきましては、又時を変えてお尋ねすることにいたして、今のところは取りあえずその点だけお伺いしておきます。
#24
○委員長(郡祐一君) 調書及び判決書等の簡易化等につきましては、又改めて御質疑を願う機会はあると存じますから、又そこへ戻つて御質疑下すつても結構でございますから……。次はこのたびの改正の大きい眼目が含まれていると思います控訴及び上告関係、上告制限、上告却下等の点を含んでおりまする三百八十三条乃至四百九条ノ六、これまでを一括して御質疑願いたいと存じます。
#25
○一松定吉君 これは昨日問題になつたこの百十四条の問題で、今日今この解釈の印刷物をもらつたのですが、この「原告が担保提供期間内に、担保を供しないときは、裁判所は終局判決によつてその訴を却下する。この判決は口頭弁論を経ずに為し得る意味で、『得』となつているが、」とありますが、一体却下は必ずしなければならないという解釈は、これはどこから来るのですか。
#26
○説明員(平賀健太君) 担保の提供ということは訴えの要件に相成ります関係で、若し要件が備わつていなければ却下すべきものである。併しながら要件が備わつていない場合に却下いたします場合には、必ずしも口頭弁論を経なくても事案が明らかでありますので、口頭弁論を経ることは要しない、そういう意味でこの規定の最後が「得」となつているのではないかと昨日民事局長から御答弁申上げたのでありますが、帰りまして私ども参考書をいろいろ調べましたところ、やはり同一の解釈のようでございまして、「得」とあるけれども、裁判所の裁量によつて却下してもよろしい、却下しなくてもよろしいという解釈はちよつと見当らなかつたのでございます。
#27
○一松定吉君 併し百十四条の法文をそのままずつと読下してみれば、担保を供すべき期間内に供しなかつた時は、「裁判所ハロ頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」と、これは一ツの言葉じやないかね、これをあなたがたのように担保を供しない時は終局判決によつて却下することができるのだ、それは口頭弁論を経ずしてすることができる慮味だと、こう解釈するのは、これはこの百十四条を真正面から解釈すれば、こういうことは出ないのみならず、担保を供すべき期間内に、例えば四月の二十日までに供せよということであつたのだが、二十日まで担保を提供しないのだというときに、裁判所は口頭弁論を経ずして判決を以て訴を却下することもできるが、併し却下せんで、口頭弁論を開くこともできる。そうして開いておつてやつておるうちに担保を提供したような場合には、いわゆるこの但書で判決前担保を供したときということに当るのだ、なぜそう解釈ができないですか。この解釈にすると担保を供しないということそれ自体を捉えてすぐ訴が却下できるのだ、口頭弁論を経ずして訴が却下できるのだと、成るほど口頭弁論を経ずして却下できるということはわかるが、口頭弁論を経ても却下はできる。なぜかというと担保を提供しないのだから、そう解釈するほうが当事者の権利を擁護することもできるし、又口頭弁論を進行しておる間に担保を供するということもできるのだから、若し今のこのような解釈にすると、二十日なら二十日までに担保を供せいいうのに、二十日までに供せなかつたならば、直ちに却下するということになると、当事者の虚を衝くようなことになる。ところがこの民事訴訟法の百十四条の一項は、今ここにタイプに印刷したような意味でなくて、これは訴を以て却下することもできるし、却下せんでもよろしい。却下せんでどうするのだ。却下をしなければ口頭弁論を経るのだ、そうして口頭弁論を経て適当な時期までに担保を供すればそれでよろしい。終局判決に至るまで担保を供しないときは、すぐに却下をしてもよろしい。こういうような意味に解釈するほうが、この法文を活かす意味においていいのじやないかと私は思うのですが、今あなたの見当るとか見当らんというのは、それは学説ですか。
#28
○説明員(平賀健太君) 学説を一通調べたのでございますが、訴が元来不適法であります場合には、これは相手方があることでありますから、不適法であるのに却下しないでよろしいというわけにはこれは行きませんので、裁判所の裁量にこの点が任せられておるとはちよつと考えることができないと思うのであります。成るほど百十四条は「得」となつておりまして、一松委員仰せられるような解釈の余地もあるかのようにも考えられますけれども、併しそもそも訴が不適法なのでありますから、相手方としては、裁判所の自由裁量によりまして却下したり却下しなかつたりということは、これはやはり訴訟の公正というものが維持されないわけであります。そういうふうに考える次第でございます。
#29
○一松定吉君 それならばですね、このいわゆる二項を削ることは不穏当ですよ。この百十四条の二項は「口頭弁論ヲ経スシテ訴ヲ却下スルトキハ裁判所ハ判決前原告ヲ審訊スルコトヲ要ス」とこういう規定によつて、お前は裁判所の定めた二十日までに担保を供せんからして訴を却下するぞというようなことで、原告を審訊するということになると、それならにわかに担保を供しなければいかんというわけで、怠慢を自覚して自分の権利を擁護するという意味のこれは二項なんだから、その二項を削つてしまつて不意打ち的に担保を供しなかつたからと言つて、口頭弁論を経ずしてさつと却下するということは、これは訴訟を簡素にするという意味からはいいかも知らんけれども、当事者の主張を軽率に取扱わせるという意味からするならば、これがあるほうがいいので、これを削るということは如何でしようか。
#30
○説明員(平賀健太君) 一応御尤もであると思いますが、ただこれは不意打ちに突如として却下するのではないのでございまして、やはり担保提供命令を出しまして、いつ幾日までに担保を提供しろという命令が出ているわけでありますから、決して不意打ちではないのではないかと考える次第でございます。ついうつかりして担保の提供を忘れておるという場合に、この審訊をいたしますと、成るほどと気が付くことがあるかも知れませんけれども、まあ訴訟というものはそういうついうつかりして怠慢である人までも万全な措置を講じて、それから生じますところの結果を防止すると、そこまで行くべきではないのではないか。一応これはいつ幾日までに担保を提供しろという命令が出ておりますし、その命令に従わない場合には訴を却下するということは、訴訟法にちやんと書いてあることでありますから、決して不意打ではないのではないかと私ども考えております。
#31
○一松定吉君 訴訟法に書いてあると言つても、それは現行の訴訟法を基礎にして、やはりこの二項があつての訴訟法ですね。今度のやつは二項を削るというんでしよう。二項を削るというんだから、私はやはりここの一項で審訊も何もせずにすぐに却下するということはよくない。二項があれば二項によつて原告を密謀して、忘れたとか忘れんとかいうのではなくて、何故に担保を提供することができなかつたということについては、いろいろの事情があるでしよう、複雑な事情がある場合があるでしよう、そういう場合に裁判所に聞いてもらつて、成るほどそうか、それなら担保はまあ暫く供せんでも、口頭弁論だけは進行してお互いの主張を明かにしよう、そのうちに担保を提供せよと、こういうほうが親切であるように思うが如何ですか。
#32
○説明員(平賀健太君) この一項につきまして、期間内に担保を供しない場合には、口頭弁論を経ないで裁判所は訴えを却下するんだという規定がすでにあります以上、担保提供命令によりましていつ幾日までに担保を提供せよという裁判があります以上、その裁判で、その命令で定められました期間内に担保を提供しない場合には、訴を却下されるということは、当然その命令は原告としてはわかつておることでございますので、その際に十分予告を受けておることではないかと思うのでございます。そういう意味を以ちまして、決して不意打ではないということを申上げた次第でございます。
#33
○一松定吉君 今あなたの御説の通りであれば、現行の民訴を作成するときに、立法するときに、二項は要らんことになる。二項を特に設けたのは、つまり今私の言うような場合もあるから、これを鄭重にして、当事者の権利を擁護するという建前から、特に現行法では二項というものを設けてある。然るに今度の、二項を削つてしまうんだということになれば、而も一項の解釈は、担保を供しないときにはすぐ訴を却下するんだ、但しそれは口頭弁論を径ないでもいいんだということがここに書かれたという解釈にすると、一層解釈が狭くなつてしまつて、私はこの当事者の権利を擁護する現行法第二項のあるほうがいいと思います。
#34
○説明員(平賀健太君) この現行の民事訴訟法第百十四条ができました際には第二項はなかつたのでございます。第二項は後になつて追加されました規定でございまして、これは昨日も御説明申上げましたように、占領期間中に言わば占領軍の示唆によりましてこの第二項の規定は入つた規定なのでございます。で、大正十四年にこの民事訴訟法が施行されまして以来この第二項が追加されますまでは、第一項だけで大かた処理して参りまして、別段の不都合というものはなかつたのでございます。そういういきさつでございます。
#35
○一松定吉君 ますますおかしいのでありまして、第一項だけでは悪かつたから二項ができたんだろう。その悪かつたから二項ができたのを、今度はそれは占領中だから二項をこしらえたが、占領がやまつたから、この占領中に必要であつた二項はもう要らんようになつたということは、君、折角設けたということは、当事者の権利の擁護のために必要で二項を設けた、それを今度は必要がなくなつたんだということになれば、独立国になつたから必要がなくなつたのだ、こういう解釈よりしようがないことになるが、それでは二項を設けたというのは、一項では不十分だということで二項を設けたんだが、然るに二項というものはあることが悪いということで今度二項を削るというような意味なら了承しますよ。併しながら元は一項であつたのに二項を設けた、その設けたのは一項だけでは不十分であるし、当事者の権利を擁護するのに不十分であるということで二項を設けたならば、その二項を今度削るということについては、その設けたよりも、削るほうがこういうような利益があるというようなことが明らかにならなければこの二項を削るということはよくないのみならず、今あなた方のいうように「却下スルコトヲ得」というのはこれは口頭弁論を経ぬことだけを言うのであつて、却下は当然却下できるということに解釈すれば、なお第二項は必要だと思いますがどうです。
#36
○説明員(平賀健太君) 先ほどの私の説明或いは足りなかつたかも知れないのでございますが、この第二項を削りましても、裁判所におきまして、なお事情があり、一応調べて見る必要があるということになりますと、口頭弁論を経まして、審理いたしまして「訴ヲ却下スルコトヲ得」これは勿論できるわけでございます。口頭弁論を経ることを一項は決して禁止しているのではないと思うのでございます。
#37
○一松定吉君 それだからこの「得」という言葉を私は今のような解釈をしなければならんと思います。「得」ということは口頭弁論を経んで却下もできるが、口頭弁論を経ることもできるんだということで、「判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得」なんだから、却下せんでもいい、そこでこの「得」が活きるのてあつて、あなた方の言うように、この「得」というものは必ず百十四条では却下するのだ、「得」ということは口頭弁論を開かんということになるとあなたのような解釈は出て来ないのじやないですか。
#38
○説明員(平賀健太君) 要するにこの百十四条の一項というのは担保提供命令に従いません場合には、「訴ヲ却下スル」という運命は免れないのでございますが、口頭弁論を経るか経ないかというと、その点が裁判所の裁量に任せられておるのでございまして、或いは当事者のほうから何か事情の中立があるというようなことで、これは調べてみる必要があるということになれば、口頭弁論を経ることも勿論できるのであります。若しこれを仮に口頭弁論を経ずして判決を以て訴を却下することを要すという普き方をいたしますと、口頭弁論を経てばいけないことになつてしまう。それではやはり窮屈過ぎまするので、口頭弁論を経ると経ないとは裁判所の自由裁量に任せられるのであるが、最後には併し「訴ヲ却下」の運命は免れない、この趣旨をこの一項の条文は表現しているのではないかと思うのでございます。
#39
○一松定吉君 私が解釈するのは、これは裁判所が口頭弁論を経んで判決を以て訴を却下することもできるし、口頭弁論を経て判決を以て訴を却下することもできる、こう解釈すれば、この条文そのまま解釈できるわけですね。
#40
○説明員(平賀健太君) 私の申上げているのもその趣旨でございます。全くその通りでございます。
#41
○一松定吉君 それならば、君、この今日のこのあれは間違いですよ。まあこのくらいにしておきましよう、あなたをいじめるのじやないのだから……。
#42
○中山福藏君 ちよつとお尋ねしておきますが、今のお話私ははつきり理解できなかつたのですが、これはこういうことじやないんですか。裁判所がこういうよりな改正案を出されたというのは、一項さえあれば二項がなくても賄えるという意味から来ているのじやないのですか。あつてもなくてもとにかくこの二項というのは一項さえあればいいのだ、こういう意味で改正案が出ているのじやないのかと私は思うのですが……。
#43
○説明員(平賀健太君) 二項を削除したします理由の一半は、まさしく仰せの通りでございます。二項がなくても決して下都合は生じない、実益がないということが第一で、それから第二にはやはりこの審訊の手続をいたしますというと、それだけやはり訴訟が延びるわけでございまして、これは相手方にとつてはやはり不利益になるわけでございまして、余り実益がない、而も訴訟がそのために解決が遅れる、そういう理由で以て二項は削除したい、こういう趣旨でございます。
#44
○中山福藏君 今参事官のおつしやる通りであるとするならば、なおこの第一項の「得」という字はやはり任意解釈しなければあなたの目的は達せられんのじやないかと思うのですが、これは口頭弁論を経てもいいし、経んでもいい、どちらでもそのときの事態に応じて便宜な措置をとれ、こういう意味に解すると、これは二項がなくてもこれはいいと思うのですが、そう解しなければ意味がどうも徹底しないように思うのですが……。
#45
○説明員(平賀健太君) 結局くどくど申上げましたが、そういうような趣旨でございます、百十四条の一項というのは……。
#46
○中山福藏君 ああそうですか。じやわかりました。
#47
○委員長(郡祐一君) 速場をとめて。
   〔速記中止〕
#48
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#49
○中山福藏君 百四十三条の改正案でございますが、これは何でございますか、「調書ニハ最高裁判所規則ノ定ムル所二依リ期日ニオケル審判二関スル重要ナル事項ヲ記載スルコトヲ要ス」と書いてあるのですが、これは最高裁判所の規律すべきところの重要な範囲、範疇というものをおきめになつてのちお出しになるつもりで、これはお書きになつたのでございましようね。
#50
○説明員(平賀健太君) まさしくその遁りでございまして、最高裁判所の規則の中で細かいことが規定されるということを予定しておるわけでございます。
#51
○中山福藏君 そうするとこの現行法の百四十三条の重要事項と思われる項目はここに一から六までございますが、これだけの部分にまだほかにお加えになつたものを規則の中にお入れになるつもりでございましようか。大体これは重要事項だと思われるのですが、現行法に書いてある項目は……。
#52
○説明員(平賀健太君) 現行法では調書の記載事項の第百四十三条、百四十四条その他にもあるのでございますが、最高裁判所のほうでよく実情を御存じでありますので、いい規則ができることと私どもは信じておるのでございますが、現行法の中に規定しておりますような重要な事項は大体規則の中で洩れなく取上げられるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
#53
○中山福藏君 そういたしますと、これはこの百四十三条、百四十四条これらの項目に必要事項を追加されたらそのほうが簡単に行くんじやないですか。これをわざわざ削つて、新たに規則のうちにはめるということはどうもおかしいような感じがするのですがね。むしろこれは法律にあるべき事項ではないかと思うのですが、規則のうちに入れるよりも、そういう考えがするのですが、如何ようなものでございましようか。
#54
○説明員(平賀健太君) この調書の記載事項と申しますのは、結局訴訟で問題になつておりますところの実体法上の権利義務に直接関係があることではないのでございまして、又非常に技術的な事項にもなりますし、この法律で細かく規定するよりも、やはり最高裁判所の規則できめることとしたほうが立法政策としまして、妥当ではないかというので、この百四十三条の改正案ができておるのでございますが、この現行法のままにいたしますと、昨日も最高裁判所のほうから御説明になりましたように、現行法のままでは、どうしても合理的な調書の記載方式の改正が行詰る。現行法のままでは、どうしてよやはり如何にいい合理的な調書を作ろうとしましても、現行法のままでは差支えるという事情がやはりあるのでございます。そういうわけを以ちましてこの規則に譲るという案ができておるのでございますが、この規則に仮にこういうふうに譲りましても、最高裁判所としては訴訟の実情をよく御存じのことでありますし、又規則制定諮問委員会にお諮りになつて作られることでございますので、十分最高裁判所を信頼いたしまして、決して国民の権利義務に影響を及ぼすようなことがないがしろにされるという懸念はないと考えていいのではないかと思つている次第でございます。
#55
○中山福藏君 これは百四十三条並びに百四十四条の規定を見ますると、実体関係の規定もあるし、手続関係のよのも、これは両面含まれておると思うのですが、これはまあ師にかけて、今度分類しては面倒だから一括してこれを規則に譲るというふうにも見えるのですが、これは実体的の規定のうちに百四十四条なんかのうちに入るのが相当であるように私はこれを拝見すると見えるのですがね。
#56
○説明員(関根小郷君) 今中山委員のお問いの、規則を作るときのことに触れるかと思いますので、便宜私から御説明申上げたいと思います。今お話がございましたように、百四十三、百四十四条と御覧頂きますと、百四十三条は調書の内容と申しますよりも、むしろ形式的要件、どういう事件についてこの調書ができているかという、例えば事件の表示とか、事件番号、それから裁判官、裁判所の書記官の氏名と、そういつたものでございます。ところが百四十四条に参りますると、内容でございますね、どういうことを当事者が言つた。或いは証人がどういうことを言つたか。それから裁判官がどういう裁判をしたかというような内容的のものであります。簡単な言葉で申上げますと、百四十三条は要するに形式的記載事項、それから百四十四条は実質的記載事項ということになろうかと思います。
 そこで若しルールに譲つて頂くとしますと、これ以上附加えるものがあるのかどうか。それから更にこれを削るかどうかという問題になろうかと思いますが、現在この民事訴訟法に規定してございます形式的記載事項も、実質的記載事項もこれに追加するべきものが特にあるかと申しますと、特にございません。併し先ほど私が御説明申上げましたように記録、それから調書を内容別に分けますと、例えて申上げますと百四十四条の中には、調書には弁論の要領を記載してございまして、この弁論の要領、先ほど私が御説明申上げました主張に関係する分でございます。当事者が金を貸した借りないというようなこと、それから更に進みまして証人の陳述が第二号にございますが、こういつたものは証拠の関係のものということになろうかと思います。更にそれから進みまして五号に、「書面二作ラザル裁判」こういうのは証人を調べるか調べないかという裁判、これは調書に載ります。そういつたのを今度の方式で、先ほど御説明申上げました方式で行きますと、百四十四条の内容毎によりまして区別をするわけでございまして、その区別を区別した内容に応じて百四十三条のほうの記載、形式的記載要件を区別してやつて行くということになるわけであります。例えて申上げますと、証拠の関係の部分については、いちいちその細かい百四十三案の要件全部を書く必要がないのじやないか。百四十三条を全部書く必要があるのは弁論の要領を書く主張調書、狭義の弁論調書というふうに非常にざつくばらんな言葉で申上げますと、百四十三条と百四十四条をそれぞれ内容に応じてばらして、その内容毎にその百四十三条と百四十四条を併せて作つて行かなければならん。そういたしますと非常に技術的なものになつてしまう。でこれを国会の御論議を経ましてお願いするのには余りに実際的技術的な問題である。さればこそ憲法七十七条が最高裁判所に譲るということができて来たゆえんでもあろうかと思います。こういうふうな問題になりますと、でありますので、百四十四条と百四十三条を規則に譲つて頂ければ、先ほど申上げましたような合理化のほうに進み得るのではないかという次第なのであります。
#57
○中山福藏君 ただ私の感じでは、訴訟記録を作成の便宜のために分類されるというような感じを持つたものですからお尋ねしておるわけですが、実体的規定と形式的規定とごちやまぜにして記録作成の便宜にこれを供する。いわゆる権利義務の実体に関係あるものまでもこの規則に譲つてしまうということは、どうも余りその権利義務の関係というものを軽視する傾きがここに生れて来やせんかと実は懸念したものですから、一応お尋ねしたわけです。これ以上はお尋ねする必要はないと思うのです。
#58
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#59
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#60
○一松定吉君 百四十七条「口頭弁論ノ方式二関スル規定ノ遵守ハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得但シ調書が滅失シタルトキハ此ノ限二在ラス」これを「口頭弁論ノ方式二関スル規定ノ遵守」をとあるのを「口頭弁論方式二関スル事項ニシテ調書二記載シタルモノ」これをこう変えなくちやならんわけは、それを一つ……。
#61
○説明員(平賀健太君) これを改正いたしましたのは、この「口頭弁論ノ方式二関スル事項」の中には、至つて形式的なものもございますし、必ずしも調書に記載しなくてもいいような事項も或いは出て来るのではないかということであつて、若しそういう場合に調書に記載がないからと言つて、その方式が直ちに遵守されないということになつてはやはり困りまするので、調書に記載のあるものにつきましては、調書の記載を、争うことのできない証拠になるのでございますけれども、調書に全然記載のない場合につきましては、ほかの立証方法も許すと、そういう趣旨でこれを改めたのでございます。刑事訴訟法とやはり歩調を合わせた次第であります。
#62
○一松定吉君 おかしなことじやかね、これは今度の修正の通りに読みかえるとするとですね、「口頭弁論ノ方式二関スル事項ニシテ調書二記載シタルモノハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得」と、そうするとちつともわからないのですがね。記載したるものは異議を持たせることはできんとか、記載したるものはその通りのものであつて、効力を変更することはできんということであるのならばわかるんだが、「事項ニシテ調書二記載シタルモノハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得」これはやはり現行法のほうがいいんじやないか。そうでしよ。百四十七条のこの「口頭弁論ノ方式二関スル規定ノ遵守」まであるからして、遵守から下の「ハ」から生きているのだろう。遵守とあるのだから、これはつまり「口頭弁論ノ方式二関スル事項ニシテ調書二記載シタルモノ」これまで変えるのだ、「モノハ調書二依リテノみ之ヲ証スルコトヲ得」とこうなるでしよう。「事項ニシテ調書二記載シタルモノハ調書ニ依りテノミ之ヲ証スルコトヲ得」というのはちよつと意味がわからんようだけれども、調書に記載したるものはそれを効力を有するとか、これを変更することができんとか、或いは調書に記載したるものはこれは異議を言うことはできんとか、調書に記載したるものはこれは反証を上げてこれを復すことができんとかという意味ならはわかるんだが、「調書二記載シタルモノハ調書二依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得」、調書に記載したるものは調書に記載した通りなんだ。どの調書によりてこれを証するのですか。この調書によつてこれを証するのですか。
#63
○説明員(平賀健太君) これは一松委員のおつしやる通りの趣旨の規定なのでございまして、この文句は刑事訴訟法の「第五十二条公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができる。」という規定が五十二条にあるのでございますが、この規定の体裁を変えたわけでございます。併し趣旨は一松委員のおつしやる通りの趣旨なのでございます。
#64
○中山福藏君 これはなんですかね、こういう規定をこれは普通学校を卒業した人がわかるでしようか。こういう書き方で、私どもでもこれちよつとわからんですよ。これは一般の大衆に大体法律というものが、わからせるということを本旨とするというのが時代向きじやないかと私は考えたのですが、これはなんですか、現行法と同じ意在のことをお書きになつているのですか。
#65
○説明員(平賀健太君) 大体同じ意味でございますが、この調書の記載事項を規則に譲るということにいたしましたので、この規則でどういうふうに定まるかわかりませんが、重要な言葉は全部盛られると予想されるのでございますけれども、やけり刑事訴訟法と同じように改正をしておいたほうが適当ではないか、というのでこういうふうに改めたのでございます。
#66
○一松定吉君 これは私現行法のほうがよくわかる。「口頭弁論ノ方式二関スル事項ニシテ調書ニ記載シタルモノハ調書ニヨリテノミ之ヲ証スルコトヲ得」だからそれを刑事訴訟法の五十二条は「公判期日にづける非訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができる。」というのは、却つてこのほうがわからんね、民訴の百四十七条のほうがよくわかる。今中山君の言うように素人が見てもわかるということであつて、これ却つてわからんように改正するというのはどうかと思うのだがね。これは意見の相違だからこれ以上は言いますまい。
#67
○中山福藏君 これは同じ意味だとおつしやいますが、この「口頭弁論ノ方式ニ関スル規定ノ遵守ハ」ということが書いてあるのですね、「方式ニ関スル事項ニシテ調書ニ記載シタルモノハ」とか、遵守されたから結局調書にその法式というものが定つて、規定の方式が定まつておつて、それを遵守しておるという精神に則つて、この「調書ニ記載シタルモノハ」という意味でしようね。これは同じ意味だとすればどうも非常にわかりにくいように思うのですがね、これは。
#68
○説明員(平賀健太君) この同じ意味と申しますのは、この調書の記載が絶対的な証明力がこれはある、事実は調書の記載とは違うのだ、反証を挙げてその調書の記載と異る主張をすることができないという、そういう点ではこの改正案、現行法と同じでございまして、ただ現行法でありますと、若し調書に記載していないことがありますというと、方式が遵守されなかつたことになつてしまうわけであります。ところがまあ口頭弁論の方式といいましても、例えば裁判所で口頭弁論開いたとか或いは公開したとかいうようなことは、もうまあそれは一例でありますが、非常に重要なことではございますけれども、必ず特別の場合でなければ裁判所以外で口頭弁論が開かれるというようなことはございませんし、又弁論を公開しないということは殆んどない。特に弁論を秘密にする、公開しない、特定の場合を除きましては必ず公開されるのでありまして、それをいちいち調書に書かれなくてもいいじやないかということも考えられるわけでありまして、仮に裁判所で開いたということは、いちいちの調書には書く必要がないということに仮に規則がなりました場合は、裁判所で開いたということが若し調書に記載がございませんと、裁判所でないほかのところでやられたことになつてしまうわけであります。そういうことになつては不都合を生ずるということを考えまして、調書に記載された限りにおいては、これは絶対的な証明力があるのであるけれども、調書に記載のない事項につきましては、これは反証も許す、或いはそのほかの証拠で以ちまして方式が遵守されているとか、遵守されていないとか、そういう主張ができるということにしたのであります。その点では現行法と少し違つて来るだけであります。
#69
○一松定吉君 現行法より却つて悪くならんかね。現行法は口頭弁論の方式に関する規定を遵守したかせんかということは、調書によつてこれを立証して、反証を許さんのだから、そうすると調書に判事が立会つたということがなかつた、判事の名前が調弁にはなかつたということになつて来ると、百四十七条の規定の遵守をしないということがこの調書によつてこれを証せられるが、ところがこのこつちの新たのほうは「口頭弁論ノ方式ニ関スル事項ニシテ調書ニ記載シタルモノ」は、この調書を遵守しなければいかんが、調書に判事が立会つたということが記載してないときには、反証が挙げられるという意味だね、それならわかる。
#70
○説明員(平賀健太君) そういう意味でございまして、判事が列席したという記載が若し調書になかつた場合にはどうなるかと申しますと、実際なかつたのだという証拠を挙げて、この口頭弁論は不適法であるということもできますし、いや実は判事は立会つておつたのだという証拠を挙げて、口頭弁論は適法だという主張もできる。
#71
○一松定吉君 だからこの現行法通りすると、判事は立会つていないにかかわらず、立会つたと書いてあつたときには、立会つていなくても立会つたことに証明力があると、こうなるね、現行法では。ところが今度こつちのほうでは調書には立会つておるということを書いていないのだ、だからしてこれは立会つていなしのだからいけないのだということを、反証を挙げて争うことができる、それならば立会つておるということを書いてあるが、本当は立会つていなかつたのだが、その時分には反証を挙げられないことになる。立会つていないのに立会つておると書いてある。ところが現行法では立会つていなくても立会つていても、立会つたと書けば反証も挙げられんのだ、現行法では……。こつちの新法の今度改正する法律は、判事は本当は立会つていない、立会つていないのだけれども、立会つておるとこう書いてある時分には、それはやはり反証を挙げられんことになり、現行法も同じで現行法も立会つていないけれども立会つておると調書に書いてある時には反証を挙げられない。ところがこつちのほうでは判事が立会つておるともいないとも書いてないというときには、これは本当は立会つていたということを反証を挙げ、若しくは立会つておつたのだけれども書いてないのだということの反証を挙げられる。こつちのほうが反証を挙げられることが広いことになる。そうすると調書の信憑力というものは、これよりも現行法のほうが、反証が挙げられん、挙げることができんということのほうが効果的じやないかと思う。そこは多少違うね、成るほど……、まあいいでしよう。それから百四十八条をなぜ削るのですかね。この現行法では裁判所で必要ありと認める時には、職権を以て速記者をして口頭弁論における陳述の全部又は一部を筆記せしむることができると、非常にこの訴訟の弁論の手続等について速記を入れてやるということになると、信憑力を強めることになる、それを削つてしまつたりするということは、何か蓄音機でも取るというのか、或いは速記というと限定されるから速記者でなくて、機械を使うという意味で、百四十八条が邪魔になるという意味で削るのですか。この百四十八条の削除は。
#72
○説明員(平賀健太君) これは百四十八条が邪魔になるという趣旨ではないのでございまして、速記を取るか取らないかというようなことは、やはり訴訟手続に関することでございますので、これは最高裁判所の規則で一つ規定したらいいのじやないか。それは速記だけではないのでございまして、最近では録音というような手段もございますし、現行法では録音なんかできないことになつておりますから、録音なんかもやはりとり入れるべきものではなかろうかと、そういう必要もございますので、これは決して速記ということは廃止する意味じやなくて、規則の上にこれを委ねまして、なお速記以外の、ほかの適当な方法があれば、それもとり入れる余地を残そう、そういう趣旨なのでございます。
#73
○中山福藏君 この百八十九条をお削りになるというのは、これはどういうわけですか。百八十九条ですよ、判決の言渡しに関するものですね。
#74
○説明員(平賀健太君) この百八十九条はこれは判決の言渡の方式を規定いたしておるのでございますが、この判決は言渡によつて効力を生ずるということは、百八十八条で規定してございまして、この百八十八条は全然手を付けずに、これは基本的なことでございますので、現行法通り勿論存置するわけでございます。併しこの百八十九条というのは言渡の方式に関することでございまして、これもやはり最高裁判所の規則に譲つたほうが適当ではないかということであつて、百八十九条を削除することにしたのでございます。決してその言渡の方式を簡素にしてルーズにするという趣旨で削除するというのではないのでございます。
#75
○中山福藏君 大体併し判決の言渡というのは、民事でも刑事でもその裁判の結果というものを明確に言渡されることで、相当重要な事柄と思うのですが、こういう事柄を規則でやるということは、余りに判決というものを軽んずるということになるのじやないでしようか。そういう簡単な取扱いをするということは、私はこの判決の言渡なんかというのは厳粛なものだと思つておりますがね。これこそ本当にやはり法律できめられるべきものだと思うのですが……。
#76
○説明員(平賀健太君) この百八十九条を削除いたしました理由は、先ほど申上げました通りでございますが、例えば欠席判決かなんかでありますと、現行法は判決原本に基き言渡さなければならないということになつておるのでありますが、非常に明瞭な欠席判決なんかでありますと、必ずしも判決原本に基かなくてもいいのじやないか、そういうような場合があるわけでございます。でありますから判決が言渡によつて効果を生ずるということは、これは基本的なことで大事なことでございますので、百八十八条はそのまま存置するということにいたしたのでございます。それからなお刑事訴訟法、刑事の判決におきましても裁判の言渡、刑事では裁判の宣告と申しておりますが、裁判の宣告の場合には、やはり刑事訴訟規則できめておるのでございます。刑事訴訟規則の第三十五条「裁判の宣告は、裁判長がこれを行う。判決の宣告をするには、主文及び事由を朗読し、又は主文の朗読と同町に理由の要旨を告げなければならない。」これは刑事訴訟規則で規定しておるのであります。従来この民事と刑事が、ほかの点もございますが、非常に片ちんばになつております。やはり合せたほうが合理的であると思われるのでございます。
#77
○一松定吉君 私はやはり中山君の言うように、判決はやはり「判決原本二基キ裁判長主文ヲ朗読シテ之ヲ為ス裁判長ハ相当ト認ムルトキハ判決ノ理由ヲ朗読シ又ハロ頭ヲ以テ共ノ要領ヲ告クルコトヲ得」というほうが、判決の神聖を維持し、いい加減に判決の内容を変えたり、判決主文があとで変つたりするようなことができないようにして、非常に峻厳にやるということのほうがいいと思う、現行法のほうがね。併しまあこれも意見の相違だから、我我がこれを今政府の出した原案を通すか通さんかは我々の意見によるのだが、やつぱり百八十九条は存在するほうがいいと私は思う。刑事訴訟規則に委ねたように、最高裁判所の規則によつて云々というのは、それは却つてそのほうが悪い。そういうことがやつぱり国会の承認を経ずして最高裁判所が勝手にきめたということが、そういう欠陥を生んでいる、私はこう考える。
#78
○中山福藏君 これは削る削らんは私どもがきめるのだが、これは非常に重大な問題だ。
#79
○一松定吉君 これは重大な問題だ。最高裁判所がそういう勝手な規則をこしらえてきめたりするということのほうが悪い。それだから我々が最高裁判所の規則に一任するということは、立法府としてよほど考えなければならないということはそこから出る。百九十一条を改めて「判決二於テハ最高裁判所規則ノ定ムル所二依リ主文ノ外事実及争点並理由ヲ明ニスルコトヲ要ス」これは現に百九十一条にその通りあるじやありませんか。それをわざわざこれを削つて最高裁判所の規則に譲るというのはどういうわけですか。つまり「主文ノ外事実及争点」、百九十一条の現行法では「主文、事実及争点、理由、当事者及法定代理人、裁判所」それを主文、事実及争点、理由、それから当事者及び法定代理人、裁判所というのもやはりこの判決に明かにするほうがいいのに、わざわざ百九十一条を削つて「最高裁判所規則ノ定ムル所二依リ」云々とこうすることは、如何にも最高裁判所万能主義のように思われるのだね。この百九十一条は今度新たに改正しようという趣旨と同じことでなければならんのに、これを削らなければならんという理由、それを御説明願いたい。
#80
○説明員(平賀健太君) 現行法の下におきましても判決につきましては、この百九十一条のほかに、簡以裁判所の判決につきましては、三百五十九条の規定があるのでございます。多少簡易化されておるのでございますが、三百五十九条の規定がございます。それから控訴審の判決につきましては、三百九十一条がございまして、この「判決ニ事実及理由ヲ記載スル二八第一審判決ヲ引用スルコトヲ得」第二番判決の引用を認めておる。こういう簡易化された判決をも認めておるわけであります。判決につきましてもこういうふうに三つ規定があるのでございまして、特に控訴審の判決には、一審判決を引用できると書いてございますが、併し実際の場合には、判決には場合によつては事実の記載なんかにおきましては訴状であるとか、或いは準備書面であるとかを引用しても差支えない場合があるのではないかと思われるのであります。ところが現行法の下では、果して訴状や準備書面を判決中に引用することが適法かどうかということがやはり疑いが出て来るわけでございます。
 それからなお今のは判決でございますが、この判決の規定は、決定にもやはり準用されておるのでございまして、決定、命令にも第二百二十四条で以て準用されておるのでございますが、この判決には成るほど裁判官の署名捺印、これは欠くべからざるものと考えるのでございますけれども、決定、命令なんかには必ずしも裁判官の署名捺印まで必要ないのではないか。押印だけで足りるということも考えられるのでございます。でありますからこの判決の形式的事項につきましてはやはりこれも規則で、裁判の形式的な記載事項につきましてはやはり規則に任せておいて、裁判の生命とも申すべき主文、事実、争点、理由、これだけを法律ではつきり明記しておいて、細目の方式は規則で定めることのほうがむしろ合理的ではないかということで以て、百九十一条をこの通りに改めようとしておるのでございます。なお、そのために判決を非常に簡略化いたしまして裁判所の手を抜くというふうなことを決して考えておるのではないのでございます。
#81
○一松定吉君 これはね、あなた方と我々と考えが違うのだが、判決というものは公平にして峻厳、無私、そうして裁判官に対する国民の信頼というものを高めて、この裁判官は公平無私の判決をしたので、少しも偏頗の裁判ではないのだということを国民に信頼せしむるような方法でなければいかんわね。そうするについてやはり裁判官の署名も捺印もあり、そうして一つのその裁判に対して有難味を持たなければならない。それをただ主文のほかに事実、争点と理由だけ書いて、あとは判事が印を押して名前も書かんでもいいというようなことは、判決のいわゆる峻厳にして公平無私であるというようなことと多少違うように私どもは考えるのだね。而も百九十一条の第二項第三項は、「事実及争点ノ記載ハ口頭弁論二於ヶル当時者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シテ之ヲ為スコトヲ要ス」そこで当事者の主張がこれは明かなんです。裁判官は判決に署名捺印するに支障のあるときは、他の裁判官判決にその理由を記載して他の判事が署名する。そこまでしている。裁判長はなぜ署名しないのか。裁判長が転任したから署名ができないとか、裁判長が身体が不自由であつて筆をとることができんとか、それで他の判事が責任を明かにするためにしたのだということによつて、判決の威信を維持し、国民の信頼を高めるということでなければならんわね。それをそういうことはやめてしまつて、この印を捺せばいいというようなことは、余りに裁判というものを軽視するのじやなかろうかと私は思う。その点はどうですかね。
#82
○説明員(平賀健太君) 印だけと申しましたのは、主としてこれは決定、命令につきまして私申上げたのであります。判決におきましてはやはりその判決の神聖を保ちますために裁判官の署名捺印はやはり要すると思うのでございます。判決も印だけでいいという趣旨でこの百九十一条を改めたのでは決してございません。それからなお刑事訴訟法におきましても、刑事の重大な判決につきましてやはり判決書の方式につきましては、刑事訴訟規則で二百十八条であるとか二百十九条という規定があるのでございまして、起訴状記載の公訴事実を引用することができるとか、或いは調書判決を認めるとかいう規定があるのでございまして、民事でもやはり同じような必要が生ずるわけでございまして、このように改めようという趣旨でございます。
#83
○一松定吉君 百九十一条には、確かに裁判官が署名捺印しなければならん、裁判官が署名捺印することができなかつたときには、その他の判事が署名捺印しなければならんということがあるが、今度修正しようというこの百九十一条にはそれがないのですが、それはどこから来るのです。その署名捺印が必要だという論拠は、それは最高裁判所の規則でそこまで定めるという、これから定めるという意味でそれは心配ないとこうおつしやるのですか。そういうことがきまらん以上は、この百九十一条、新たな百九十一条だけでは裁判官が署名捺印する、署名捺印できないときには他の判事がするというような現行の百九十一条の一項若しくは三項の規定はない。一項、三項の規定がないのに、あなたの言うように百九十一条を削つてもその通りやるのだということについては、どこを根拠にしてそういう主張ができるのですか。
#84
○説明員(平賀健太君) とにかく判決というのは、これによりましてその判決が確定いたしますと、当事者の権利義務ということが確定して来るわけでございまして、非常に重要な意味を持つているものでありますから、飽くまで神聖を担保とする必要がある。そういたしますと事柄の性質上、やはり署名押印ということはやはり不可決のことではないかと思うのでございます。従いまして最高裁判所で規則を作られますときも、この点は決して無視されることはない、まあそういうふうに私ども預じておる次第であります。
#85
○一松定吉君 それならばですね、最高裁判所がただそうするだろうということをあなたが言うだけであつて、百九十一条のように明記はしないということは欠陥じやありませんか。最高裁判所があなたの言うようなことをやつて我々に見せて、この通りするのだから安心するのだよということならいいが、最高裁判所のほうはそうはできない。それが昨日あたりから論議の中心になつているのですね。だからあなたが言うように我々は最高裁判所が裁判官の署名捺印を規則のうちにきめるだろうということは、これは一つの想像に過ぎないので、堅くきめるのだということの確定的の意思表示があればこれは別ですよ。けれども明文も何にもない、現に現行法の明文も何もないやつを削つて最高裁判所の規則に護る。それで裁判官の署名捺印ということはどこから来るかと言うと、最高裁判所が規則を作るときにそうするだろうということでは、これはちよつと信用できんじやないですかね。
#86
○説明員(平賀健太君) 要するに、この調書の点でも裁判書の点でもございますが、やはり気法の規定の下に立脚しました最高裁判所を我々としてはやはり国会に対して私どもが信頼をいたしておるのと同様に、やはり最高裁判所の良識というものに我々は信頼を置いておるわけでありまして、この信頼がなければ規則に護るというような立法はできないと思うのでございまして、判決のような重要なものにつきましてはこれは当然その神聖を川保するためのそれにふさわしい方式を規則でお定めになるということを期待してもいいのじやないかと、そういう意味で申上げたのでございます。
#87
○一松定吉君 それではあなた同じやありませんか、あなたのように憲法の七十七条を根拠にしておつしやるならば、最高裁判所が憲法七十七条によつてそうしてこの手続上の問題やその他の問題は最高裁判所が規則を定めるのだ、これに信頼すればよいのだということであれば、そういうような最高裁判所がどういうようなことをするかせんかということは、国会議員たる我々が審査も何にもしないで最高裁判所に任せればいいということでは、余りに立法手続を軽視するものです。憲法七十七条にはこういう規定があるから、その規定に従つて最高裁刊所はこういうことをするのだろうということならば、あなたいろいろなこういう判決においては「最高裁判所規則ノ定ムル所二依リ主文ノ外事実及争点並理由ヲ明ニスルコトヲ要ス」ということは要らん。最高裁判所に任せればいいのだ。最高裁判所の規則によれば、こういうことは最高裁判所がちやんと公平無私にするということであれば、百九十一条の「主文ノ外」云々の制限を加える必要はないことになる、それはちよつと、あなたの言うのは少し我田引水の理窟であつて、直ちに首甘はできませんね。
#88
○説明員(平賀健太君) 先ほど民訴百九十一条の3項の点、「裁判官判決ニ署名捺印スルニ支障アルチキハ」とあるこの「トキ」、この規定は非常に重要だと仰せられたのでございますが、まさしくこれは重大なのでございますが、刑事訴訟法規則五十五条を見ますると、「裁判書には、裁判をした裁判官が、職名押印しなければならない。」と署名押印ということがはつきり出ているわけでございます。「裁判官が署名押印することができないときは、」という工合に裁判官の一人が署名押印できない場合の措置を刑事訴訟規則にちやんと規定いたしているわけでございます。それで署名押印の点では民事、刑事の判決、これの署名押印の点ではどちらも重要性に差等があるとは考えられませんし、この刑事訴訟規則の五十五条から考えましても、この法律が通りました焼、できますところの最高裁判所の規則におきましても判決の署名押印についてはやはり五十九条、刑事訴訟規則五十五条に相当する規定が当然設けられると考えてもいいのじやないかと思うのでございます。
#89
○一松定吉君 刑事訴訟規則を引用して、これをあなたが我々に民訴を改正するに、刑事訴訟法の運用について最高裁判所の定めた規則があるからその通り多分やるのだからとかおつしやるが、この最高裁判所の刑事訴訟法に関する規則の制定というものは、これは我々がいわゆる何の審議もしなかつた、憲法七十七条の規定からこれは来た。刑事訴訟法にそういう規定があるからすぐ民訴もそういう規定をするのだということになつて来ると、刑訴にあるようなことは民訴にあることを片つ端から削つてありますからあとは最高裁判所の規則に委ねるということになるのですか。そういうようなことよりもやはり、明らかにして、こういう最も大したことを、細末の小さいことはどうでもいい、中山君が今言うように、又私が今言うように裁判の言渡というものは最も神聖にして当事者の信頼するような形式方法をとらなければならないということを前提とするならば、やはりそういうことをここに書いておいたほうが、私は「主文ノ外事実及争点並理由ヲ明ニスル」ということと同じように若しくはそれ以上の効果のある裁判官が署名捺印しなければならないというようなことは重要なことなんですから、それを書かなければならないのに、書かんところに我々が疑問を持つて今あなたにお尋ねしている。刑事訴訟法運用に対する規則がこうなつているので多分そうするんだろうと、だろうをあなたは前提としてこの現行法を改正するということについては、少し我々も考えなければならないと思うので、こういうことをお尋ねするのですけれども、併しこれ以上のことは議論になるからこれはいたしません。
#90
○中山福藏君 ちよつとお尋ねいたしますが、これは条文についてお尋ねするのではないが、大体裁判所などでけどう考えておられるのですか。日本人というものは大体法律の知識が非常に乏しいと私は考えている、普段から……。併し失際は現在日本人の民主主義的な行き方から申しますれば、みずからを治めるという気分、みずから法律を知るという気持のあることは或る意味においては言えると思う。従つてみずから法律を知るということは、法律の解釈が非常に安易で奔易に解釈が引きるという、法文の趣旨を国民全般べ親しみをもつて理解するというような立法措置を講ずるというのが本当ではないかと実は私は考えている。それでそれに当られる方々は特にそうお考うになつて然るべきではないかと思よが、こういう民訴に削らなくてもいものを簡略にしたり、削除したりせられて、これを最高裁判所の規則に譲るということに、一般国民とは何らの関係がなく雲の上で事件を処理するというような感じを実際私ども持つのですが、むしろ時代に逆行しておるこれは法的処置ではないかというような感じもするのですがね。どういう意味で、こういうようなこの規則に殆んど全部譲るというようなことをなさるのか、或いは刑事訴訟法とか、刑事訴訟に関する最高裁判所の規則があるからとか、他に規定があつて、それと重複するからというような簡単なことから出発しておるということになれば、これは成るほどそういうような統一的な事柄をおやりになるということは結構ですけれども、時代というものはそういうものじやないと私は考えるのです。現在の時代ですね、法律を国民全般が容易に知り得るというこの立場をですね、最高裁判所みずから作つて行くという形が、法治国の精神を生かすということになるんじやないでしようか。私はそういう考えで、逆行しておる改正じやないかと思うのです。ただ単に改正をするのだから、改正するというような、形を整えるのだというような感じを受けるのですね。今度の一兆億予算という首相のかけ声があれば、歳出面を落としておいて、一兆予算の枠内に、すべての歳出を合わして行くというようなそれと同じような行き方じやないかと思うのですよ。特にそういう感じがする。最高裁判所の規則に譲つてしまつたら、実際に国民は殆んど規則を読みませんよ。たまたま読んだところで、手続法の刑事、民事に関するくらいのもので、これは現在普通読むように辛うじてなつている。規則に譲られたら読みませんね、これは……。私は時代にそういう点は逆行するのじやないか。いわゆる観念的に法律をもてあそんでおる結果が、こういうようになるんじやないかと思うのですよ。私は国民大衆と法律というものが、国民大衆の中に法律が融け込んで行くという、時代にマッチした態度ではないというような感じを受けるのですが、どうです、あなたがた若い方々はどういう感じを持つておりますか。我々年寄りはそう考えるのですが、どうですか。一つそういうところで意見を述べてもらいたいのですが……。どうも雲の上で仕事をするという感じを私どもは受ける、こういうような改正は……。
#91
○説明員(平賀健太君) 法律を国民にわかりいいようにすると、これはまさしく仰せの通りでございます。そういう見地から見ますと、現行の民事訴訟法、この文語体で書きましたこの現行の民事訴訟法というのは、一般国民にはむしろ親しめないものじやないか、非常にわかりにくい、寺門家が見ましても、いろいろな疑義が生ずる点がございまして、用語もむずかしうございますし、却つてこの現行の民事訴訟法なんか非常にわかりにくいのじやないかと思うのでございます。そういう点から言いますと、現行の民事訴訟法も、本来ならば全面的に改正いたしまして、これを刑事訴訟法と同じような工合にやはり口語体に直しまして、用語ももつと日常の用語をたくさん取入れまして、国民にわかりいいものにするという必要があるわけなのでございます。で、将来そういう改正が、全面的な改正が行われるべきものと思うのでございますが、今回は左当つてこの上告制度の問題が中心になりました関係で、そこまでは手が行き届かなかつたのでございます。併しもつとわかりやすい、親しみやすいものにしなくてはならんということは、まさしく仰せの通りなのであります。
 それからこの法律案におきますように、いろいろな点を最高裁判所の規則に譲りましても、やはり最高裁判所の規則も官報で公けにされますし、それからこういう六法全書にも勿論載るわけでございまして、現行法よりも、現行法の状態よりももつとわかりにくくなるということは、むしろないのではないかと思うのでございます。むしろこの判決なんかを規則に譲るという趣旨は、現在の判決というのが明治以来の古い型をそのまま現在まで踏襲しておつて、判決自体が非常にわかりにくい、法律の規定がわかりにくいよりも、もつと当事者が、素人の当事者が読みまして、判決というのが非常にわかりにくい。そういうことを改めまして、本当に当事者にわかりやすい合理的な判決にしたい。そのためには現在のように規定があつちこつち分れたりしておつて、非常に制約がある。それよりも規則で本当に実のある、実質のあるわかりやすい判決を書けるようにという趣旨で、規則に譲ろうという趣旨でございまして、決して雲の上で、裁判所が裁判所に自分の手を省くだけの便宜を与えよう、そういう趣旨では決してないのでございます。
#92
○楠見義男君 ちよつと速記を……。
#93
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて下さい。
   午後三時五十七分速記中止
   ―――――・―――――
   午後四時十三分速記開始
#94
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。
#95
○楠見義男君 私は一つだけ、先に戻るのですが、百五十一条の第四項を削除しておりますね。これは削除の趣旨はこういうものをしないという意味なのか、或いは先ほど来話がありますように、規則のほうにこういうような一つのものを入れる、こういう意味なんですか、どうなんですか。
#96
○説明員(平賀健太君) これは訴訟記録の製本なんかの作り方、まさしくこれは書類の作り方の細目に関する手続でありますから、規則に譲つて規則で規定しようとこういう趣旨であります。こういうものをなくすという趣旨では決してございません。
#97
○委員長(郡祐一君) よろしうございますか。……次回は来る二十日午前十時から開会することにいたします。本日はこれを以て散会いたします。
   午後四時十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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