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1953/05/06 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第29号
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1953/05/06 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第29号

#1
第019回国会 法務委員会 第29号
昭和二十九年五月六日(木曜日)
   午前十一時五十九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
           亀田 得治君
   委員
           青木 一男君
           中山 福藏君
           三橋八次郎君
           棚橋 小虎君
           羽仁 五郎君
  国務大臣
   法 務 大 臣 加藤鐐五郎君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務省刑事局長 井本 台吉君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○検察及び裁判の運営に関する調査の
 件
 (検察庁法第十四条の運用に関する
 件)
 (検察審査会の議決に関する件)
 (告訴・告発事件に対する検察当局
 の取扱いに関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より本日の委員会を開会いたします。
#3
○亀田得治君 法務当局に二、三この際緊急に御質問をいたしたいと思います。
 一つは、検察庁法十四条の問題ですが、これは従来から参議院の本会議においてもしばしば質疑応答がなされて来ておる問題ですけれども、本会議の性質上、細かい問題に詳細に入つて行く、こういうことがどうしてもできません。議運等でも相当細かく論議はされておるようですが、併し問題の性質上参議院の法務委員会において詳しくこれは一つ検討して見る、こういうことが非常に必要ではなかろうか。恐らくこの問題は今後類似の問題が起きた際に、第十九国会における取扱いなり議院の考え方はどうだつたのだ、こういうことが必ずこれは出されて来る。そういう意味では誠に歴史的な一つの意義を持つておる実は問題だと思つているのです。そういう立場から私どもは新らしく法務大臣がお代りになつた直後にこの点について十分質したいと思つていたのですが、現在までその機会が得られなかつた。本日は第一回の機会に恵まれたわけでありますから、或いは本日の質疑だけで十分尽すことができないという点もできようかと思いますけれども、一応この問題について一つ質したい、こう考えておるわけであります。
 それからもう一つの問題は、去る四月二十九日の各新聞によつて報道されました問題でありますが、岡崎外務大臣の選挙違反の問題、これは横浜の地検におきまして以前に起訴猶予、こういう処分に付された事件です。その後横浜の検察審査会におきましてこれが、審議された結果、やはり起訴をすべきものではないか、こういう結論が出された問題であります。これも新聞に公表された直後に、衆議院においても法務当局に対する見解を質されておるようでありますが、その際には法務当局としては十分な情報を握つておらないというふうなことから、明確な答弁ができておらないようです。併しこれも私どもは従来からいろいろな告訴をした事件について、どうも検察庁が必ずしも積極的にやつておるとは思えない。そういつたような事案がほかにも多々あるわけですが、それとも関連をいたしまするし、或いは先だつても検察審査会そのものの機能、使命、こういうことについて法案に関連して相当重要な質疑が行われた直後でありまするので、私はこの事件の取扱い方というものが、いろいろなところにやはり影響して行こうかと考えるのです。そういう立場からこの問題を一つ質して見たいと思います。
 問題の性質上、検察庁法の問題は相当時間がかかるかと思いますので、先ず選挙違反の事件に対する審査会の見解の問題から一つ入りたいと思うのですが、衆議院でこの問題に対して政府がお答えになつたところによると、どうも事態そのものを余りそのときには明確につかんでおられない、そういうふうなことが前提になつたようですから、突込んだ質疑がない。そこで先ずその点からお伺いしたいのですが、衆議院でああいう質疑があつた、それからすでに約一週間経つておるわけですから、これは十分その間の事情をお調べになつたと思いますが、そのお調べになつた結果に基きこのような結論が出された経過、あなたのほうの手許で持つておられる資料に基く経過を先ず承わりたいと思うのです。
#4
○政府委員(井本台吉君) 事務的な問題でございますので、私のほうから一応お答え申上げます。横浜の検察審査会は、昭和二十八年九月四日横浜地方検察庁が犯罪の嫌疑がないということで不起訴処分にいたしました岡崎勝男氏らに対する公職選挙法違反被疑事件につきまして、職権を以てその処分の当否を審査したのでございます。この被疑事件は川崎勝男氏が昭和二十七年十月一日施行の衆議院議員総選挙に際しまして、同年九月五日藤沢市稲毛屋旅館において六百名の選挙人に対して自己に対する投票取りまとめ方を依頼する趣旨の下に酒食の供応をしたという被疑事実でございます。この事実につきましてその処分の当否を審査いたしました結果、去る四月二十八日右被疑事実につきましては、横浜地方検察庁検事のいたしました前述の公訴を提起しない処分は相当ではないという議決をしたのでございまして右議決をするに至りました理由は、議決書に掲げております。理由の要旨を見ますると、おおよそ次の通りでございます。即ち検察官は被疑者が右の供応の席にいたる事実、及び右の供応について事前に会議をした事実のいずれをも認定するに足りる十分の証拠がないという結論を出したのでありますが、右検察審査会はこの供応に参集した者約五十六名を取調べました結果、そのうち十一名が右の宴席において、又は酒席終了後、この旅館におきまして被疑者を目撃したと述べていること、及び被疑者の同日における東京到着時間との関連において、東京藤沢間の自動車所要時間の認定につきまして検察官と見解を異にし、被疑者が右の旅館を午後三時三十分頃に立ち去つたとする検察官の認定に対しまして、大よそ三十分くらい後のおよそ四時前後までその旅館にあり得たものとし、その認定に基き被疑者の岡崎勝男氏らは右の酒席に列席していたと推認すべきものと述べているように考えられるのであります。結局候補者が供応の席に出席しておる以上は、この供応の事実につては共犯であるというような認定をしているものと考えられるのでございます。横浜地方検察庁におきましてはこの議決書の送付を受けまして、目下この議決書について、これを参考としてすでに行なつた不起訴処分の当否を慎重に再検討しておる次第でございます。これを如何にするかということは、只今のところではまだ結論が出ておりませんが、二、三日中に或る程度の結論は出し得る見込みでございます。
#5
○亀田得治君 いろいろ御質問したい点があるのですが、二、三日中に結論を出し得る見込み、或る程度の結論とおつしやつたんですが、こういう場合には起訴するかしないかということでありまして、或る程度ということの意味が少し明確でないのですがそれはどういう意味でしようか。
#6
○政府委員(井本台吉君) 或る程度の結論と申上げましたのは、この起訴勧告が不相当であるというので、相変らず前の不起訴処分を維持するということになるか、或いはいま一度この事実につきまして関係者を取調べなければならんかという、いずれかの結論が出るということを申上げたのであります。従つて若し直ちにこれは前と同じ結論であるということになれば、そのまま不起訴処分になりまするが、いま一度調べてみなければならんという結論になりますると、更に関係者を調べなければならんということになると存じます。そういたしますとその関係者の取調べが済まなければ更に起訴、不起訴のいずれにするか、まだ結論が出ないということになると私は考えるのでございます。
#7
○亀田得治君 成る程度の意味はわかりましたが、そのような成る程度の結論を法務当局ではなしに、横浜の検察庁が出すだろうという意味でしようか。
#8
○政府委員(井本台吉君) さようでございます。
#9
○亀田得治君 それに対して法務当局としては何らの意思表示はやられないつもりでしようか。私がお尋ねする意味は、こういうときにこそ検察庁法の十四条、これが私非常に法務大臣が場合によつては活用すべま問題である。これはもう少しいろいろな質疑を経なければなりませんが、実はそういう考えがあるのです。これは検察審査会というこういう民主的な制度が置かれた趣旨というものを考えるならば、当然それは検察審査会のそういう意見を尊重するということがその背後にあるわけですから、それとの関連において実は考えておるのですが、そこで横浜の地検が或る程度の意見を出すだろう、そういうことを法務当局がただ漫然と見ておられるつもりか。或いはそれに対しておれのほうもちやんと正式文書の報告を審査会から受けておる。これは地検とは別個に受けておりますね、受けておるのですから、それに対して何らかの見解を持ち行動をとられるかどうか、その点から先ず先に伺つておきたい。
#10
○政府委員(井本台吉君) 従来の事実上の慣行といいまするか、従来やつて来た事例と同じように本件も扱つて行きたいと考えておるのでございます。従つて横浜の地方検察庁におきましては、この事実が起訴すべきほどの材料があるかどうかという点について認定をすることになるのでございますが、事実上の問題といたしまして、高等検察庁、最高検察庁並びに法務省にこの審査会の決議書の写が報告になつて来ておりますので、私どももこの事案について非常に関心を持つておるのでございます。恐らく横浜地方検察庁といたしましては事案を重大な問題と考えまするので、この処理につきましては上司である高等検察庁、最高検察庁並びに法務大臣に或る程度の指揮を受けに来るというように私は考えております。
#11
○亀田得治君 そうすると、具体的に言いますと、或る程度の指揮を受けに来ると思うから、その際に何らかの意思表示をしたい、そういうことでしようか。私はもう少し積極的なものを期待しておつたわけなんですが、そういうふうに言い切つていいのかどうか、もう少しそこを明確にしてもらいたいと思います。
#12
○政府委員(井本台吉君) 事件の有罪であるかどうかということの認定の問題でございますので、事実の認定は第一線に大部分任しておるのが従来の慣例でございます。従つてこの事案につきましても積極的に私どものほうから、事実の認定如何を問わずこれをどうせよというような指示をいたしますことは、少しく行き過ぎではないかと考えますので、その点につき」ましての指示を積極的にいたすという考えは私どもといたしましては今考えておりません。
#13
○亀田得治君 これは私非常に重要だと思いますから、法務大臣の意見も聞きたいのです。これは世間の常識から考えまして、横浜の地検が告訴者の意向を無視してそうして不起訴にした、相手は現職の大臣なんです。これは重要な問題です。それに対して検察審査会が反対の結論を出しておる。検察審査会というものは、相手が現職の大臣であるというような場合、下手に結論を出したのでは、これは要らんところに迷惑を及ぼし、いろいろ波紋を起す、これは誰だつて考えておることでしよう。従つてこれは十分慎重な結論を出すに違いない。而もそういう結論を出しても、地元の単なる一検事がそういう処分をしたとか、そういうことではないのですから、重要な問題ですから、地元の検察当局ではいろいろ協議歳をして最初の結論を出しておる。それに対して反対の結論を出しておるのですから、だから一体これを裁くものは誰かど言えば、これはもつと上の誰かがやらなければならない。これは私常識だと思う。普通の余り大した事件でないことについて横浜地検の一検事がそういう処分をした、それに対して検察審査会が逆の意見を出して来た。検事正が調べて見ると、大分うちの検事にも少しこういう点がぬかりがあつたようだ。だから一つ横車正としてはこういうふうにしたらどうかと思う、これはできる。ところがこういう事案というものは、同じように考えたら……、先に間違つた結論を出した、そこへ又同じことの判断を願うことになる。これはあなたは専門家の刑事局長で十分おわかりでしよう、そういうことが不適当かどうかということは……。私はこういう際にこそ、検察庁法の十四条が置かれておる。法務大臣の見解は最後にしまして刑事局長にもう一度お聞きしますが、この横浜の検察審査会の陣容ですれ。私はほかの陣容から見ても、必ず元検察に関係していた専門家とか、そういう人もまざつておられる、或いはその審査会の事務局なりそういうところに参加しておられると思うのですが、その陣容から先ずこの際お聞きしておきたいと思う。これが判断の一つで大きなやはり資料になりますから……。素人ばかり寄つての検察審査会並びに事務局じやなかろうと思う。その点はどうなつておりますか。
#14
○政府委員(井本台吉君) 実はこの報告書は一昨日昼過ぎに私の手許まで参つたので、審査会並びに会長の名前はここにわかつておりますが、この会員その他会長がどういう職業でどういう経歴の者かということはまだ調べができておりません。
 それから立つたついでに、今の指揮の問題についてちよつとお答えいたしたいと思いますが、検察審査会の決定につきましては、これはその通り全部従わなければならないのではありませんが、十分尊重しなければならんということは私もさように確信いたしております。そこでこの全国的な統計を見ますると、起訴勧告のあつたもののうもの約五分の一が不起訴になつておるのでございますが、更にこれを慎重にしたいということで、私どものほうからは五月一日付の依命通牒で、起訴勧告を受けたものを不起訴にしたという場合には、詳細にその関係の書類、記録等を上司のほうに送れということを申し渡してあります。これは一旦不起訴にしたものを、更に起訴の勧告があつて、又それを前の不起訴を維持して不起訴にしたというような場合には、これは第一線の検事正以下の検事の処分にだけ任しておくというのは、多少穏当ではないと考える点がありますのて、さような通牒を出した次第でございます。この事案につきましても、私どものほうから積極的に今どうせいということは考えておらないのでありますが、若しこのまますぐに不起訴にしたというような場合には、この記録について慎重に検討したいと考えておるのでございます。又恐らく、先ほど申しましたように、事実上これは一線の検事のほうからどういう処分をすべきかという点について指示を受けに参ると私は確信をしておる次第でございます。
#15
○亀田得治君 そうすると、理論上はあなたのほうが意見を聞かれてどういう意見を出されるか、これは勿論今予測できないわけですが、その意見の如何にかかわらず再び不起訴になる。そういう場合にはその理由を詳細に本省のほうに書面で出す、こうなりますから、その書面を更に検討して不適当だという場合には、それに対して変更を、命ずることは理論上はあり得るわけですね。まああるかないかは別として、理論上は……。
#16
○政府委員(井本台吉君) 勿論裁判所の判決と違いまして一事不再理はございませんから、さような処分が不当であれば、変更を命ずるということはあり得ると思います。
#17
○亀田得治君 それで少し実体的な問題についてお聞きしますが、その報告書によりますと、一番大事な点は、結局岡崎外務大臣の供応の場所ですね。その場所に外務大臣がいたかどうか、これが大きな争いなんですね。不起訴にした理由は、いない、こういう断定でしよう。ところが審査会のほうはいた、こう断定しておる。断定の根拠が六十五名を調べたうちに十一名の人がその場所にいたことを目撃した、こう言つておる。私はこの事実というものは非常に大事な点に実は触れておると思うのです。これは私どももよく思うことですが、いろいろな人がたくさん集つておるところで起きた大衆的な規模の犯罪ですね、そういう場合によくたくさんの人が出て、見たか見んかとかいろいろなことを取調べを受ける。私どももよくそういう関係者の事件にタッチする。そういう際に十人調べて七、八人までがどうもわからんと言つても、一人か二人見たというのが出て来ると、有罪の可能性が非常に強くなつて来る。これは私は実見法則としてそれは正しいことだと思う。多数の人が見ないと言つても、見ないということが直ちにそこにおらなかつたということにはこれはならないのですからね。外務大臣がその場所にいないときに、たまたまその人が出てそうして帰つてしまつておれば、これは見ないのが当り前なんです。或いは又一緒にいても、たくさんおる場合に気が付かなかつたということもあり得るでしよう。だから六十五名のうち十一名もの人が見た。相手が外務大臣ですからね。有罪になればいろいろなところ影響がある。こういうことは十分考えながらも、それだけのことがはつきり審査会に対しても調べの結果出て来る。私はこういうことでもつて出されておる結論というものは非常に重要だと思つているのです。で、こういうものは書類でもつてあなたもそれを御覧になつておるのであれば、もつと積極的な立場がこういう事件に対してとられるのが、世間に対して検察の運営の公正なやはり印象を与えるゆえんだと考えるのですが、一般の世間の人は、成るほど新聞記事によつてだけしか知らない。だから或いはそこまでの感じは持たないかも知れませんが、この事件を取扱つた横浜の検察審査会の人たちは知つておるのですからね。或いは又その関係の横浜の地区における人たちはみんな知つているでしよう。どうもこれだけの結論まで出しておるのにおかしいものだな、こういう印象を私必ず受けると思うのですよ。その点どうですか。私はそういう印象を、若し消極的な立場を法務当局がとつておる場合には受けると思うのですが、あなたたちのその点に対する感じ方はどうですか。
#18
○政府委員(井本台吉君) 選挙の関係の供応事犯でございますが、普通の供応事犯におきましては、共犯が先ず第一に事前の会議をしたという点が非常に重要な認定の資料になります。その次は現実にその供応の席へ共犯が出席をして、供応をしておるというのが又その次の重要な認定の資料になります。更に供応を受けた被供応者側が一体どの程度供応を受けて、その際の金の支払、例えば持寄りの会費を持つておつたとか或いは払わなかつたとかいうふうな事情、果して御馳走になるために行つて御馳走になつたのか、さような点も認定の重要な資料になります。この事案につきましては、まだ記録を詳細に取調べておりませんが、審査会の決議を見ますると、事前の会議というような点につきましてはこれは全然触れていない。むしろさような点は調べができないというか、何もわからないということになつております。ただ、この供応の席に候補者が約二、三十分いたのではないだろうかという認定をしておるやに見受けられるのであります。その認定の模様は、先ほど申上げましたように、供応が始まつたのが当日の三時三十分頃で、四時頃までいたのではないだろうかということが、時間的に見ると、こういうことがこの議決書の中に書いてございます。それで、この関係につきまして検察庁は前に約百五十人ほどの関係者を調べております。今度は検察審査会で、これは同じ人間を調べたのかどうかわかりませんが、約六十五人調べておるということでございますが、これは一般的に言いますると、理想的にはこの六百人ほどの関係者を全部調べれば一審事情がはつきりするのでございますが、この受けた印象ではまだ少しく調べがし得る余地があるのではないかということを私は考えております。先ほどお、守れのかような事案につきましては、法務省といたしましてむしろ積極的に審査会が有罪起訴勧告をしたのであるから、起訴するように指導するのが相当ではないかというような御質疑のように私受取れたのでございますが、事実の認定でございますから、かような事案の認定は原則といたしまして第一線の検事正以下に責任を負つてもらつて認定してもらうというのが私は相当ではないかと考えるのでございます。ただ、先ほど申しましたように、若しその認定が甚だしく不相当であるというような場合には、これは矯正しなれはなりませんので、書類その他の報告は十分これを徴しまして、一般の印象も不公平な裁決が行われたというようなことのないようにいたしたいというふうに私は考えておるのでございます。
#19
○亀田得治君 更に詳しくその点わかつたわけですが、二、三十分もその現場にいたということですと非常にはつきりするのですね。大概の事案は、いたとしてもちよつとまあ顔を出してどこかに行つたのだ、何かの用事でちよつと打合せがあつてというようなことで非常にぼやける。あの忙しい人が二、三十分もそこにいたということが明確であれば、私はもう事案全体というものは非常に一番大事な点がはつきりしているのじやないかと思う。そのほかのことはこれはみんな人の考え方の問題ですから、これはやはり逮捕すべきものは逮捕したりしてですね。関係者を個別に、いわゆる何と言いますか、証拠湮滅のための打合せ等ができたいようにしてやつて行かなければ調べがつかないことになる。気持だけでどうにでもいえると思うのです。隠すことのできないのはこの二、三十分外務大臣自身がその場所にいたと、もうこの事実が一番大事なことなんです。で、私はそういうふうな問題ですから、検察審査会としてもこれは十分検討をして、考えに考えてやけりはつきりした英断を言われたのだと思う。で、先だつてこの定員法の問題に関連しまして、検察審査会の運営ということについて相当当委員会で、あなたはおられなかつたと思うが、質疑があつたのです。その際にも従来いろいろ告訴したりした事件、どうも検察官が直接手をつけたようなやつは熱心にやるのだが、そうでない傾向が見られる。こういうことはよろしくないのじやないかというふうなことがいろいろあつたわけです。その際あなたのほうの答弁をされた方は誰でしたか、今記憶しておりませんが、やはりこの検察検査会というものがある以上は、事務当局に検察事務に経験のある人も参加しておやりになるわけですから、検察審査会の結論を尊重して起訴すべしと出した具合には、やはり幾らか疑わしいような点があつても、起訴して行くのが本当じやないかと思うというような答弁もあつたはずなんです。従来はその点から見ると、相当審査会の意見が尊重されておらない、これは遺憾じやないかという、私ども実はこれは殆んど法務委員の全員一致の意見でしたよ。で、恐らくそういう注意があつたから、先ほど、今後審査会の意見を無視したような場合には、その理由等を詳細に書面で出しなさい。こういうふうに下部のほうに通知を出されたのだと思いますが、私はそのことはその通牒自身は非常にいいと思います。今後今までの行き方を幾らか改める意味において、私はそういう行き方をして行くとするならば、これはもうどんな場合でもそうですが説教では駄目なんです。一つの具体的な事件について毅然として一定の方向を示してやる。そうするとこれは全国の検察審査会も奮い起つし、又ややともするとそういうものを軽視し勝ちであつた、それは人と場所によるでしようが、恐らくそういう傾向のある検察当局におかれましても十分そういう点を又反省して行かれる、そうするとこういう制度のある意義というものが非常に明確になつて行くわけだ。この事実でやはりきまると思う。五月一日に出されたその通牒がどういうふうに受取られるかということはその通牒……、どういう通牒ですか、その通牒は……。全文そこにありましたらちよつと読んで下さい。
#20
○政府委員(井本台吉君) 簡単な通牒ですから朗読します。
 検察審査会において起訴相当の議決のあつた事件の取扱について。
 「従来、検察審査会が起訴相当の議決を行つた事件については、当該地方検察庁の検事正において、右議決を参考として、不起訴処分の当否につき、再捜査その他これが再検討に関して適切な措置が講じられているところであるが、右再検討の結果、検察審査会の議決にかかわらず従来の不起訴処分を維持する場合においては、その措置の公正且つ妥当であつたことを事後に監督機関において確認しておくことが望ましいと考えられる。よつて、本年四月一日以降検察審査会において起訴相当議決のあつた事件について、不起訴処分を維持する旨決定したときは、検事正は、刑事関係報告規程……」による処分報告に際し、右報告とともに所轄高等検察庁検事長に対して当該事件記録を提出することとし、高等検察庁検事長においては、事件記録に基いて右の措置の当否を審査することとせられたい。右命によつて通牒する。」
 これが通牒の全文てございます。ただ私特に申上げたいのは、検察審査会の議決が、これは尊重すべきものではございますが、検察官はこれに盲従しなければならんものではございません。検察審査会の議決が一般の国民の声として十分それを傾聴しなければならんとは考えますが、一面から言いますると、被告に対しまして公訴を提起するということは重要な処分でありまして、審査会の議決が納得が行くのであれば、これはそれに従わなければなりませんが、納得が行かない、無罪であることが明らかであるというような事案につきましても、審査会の議決があつたから、すぐこれに従わなければならんというように私は考えていないのでございます。
#21
○亀田得治君 ちよつと本会の時間が来たのですが……、盲従というようなことは勿論要りませんが、相当な根拠を以て出された場合には尊重して行く。そして幾らか疑わしい点がありましても、疑わしい場合にはなかなかこういう重大な事件に関しては検察審査会はそんな大胆な結論は私出さんと思うのです。これは決して左派社会党や、そういう反対党が策動したからといつて動くような検察審査会の陣容じやないのですから、むしろ逆です、どちらかと言えば……。そういう人たちが出しておる結論ですから、何と言つてもこれは尊重すべきものなんです。まあ百に一つ無罪になるようなことがあつても、私はそれは裁判所において明白にしてもらつたらいいことだと思う。検事が自信を持つて起訴されるような事件だつてそれは無罪になる場合だつて前からあるわけですから、私はこういうような問題を扱う場合に、余り強調したのでは結局審査会の民主的な制度というものの意味がなくなる。これは一つ抽象論を繰返えしてもいたし方ありません。処分がそう遠い時期でないようです。今度の国会にも、私どもは反対ですが、若し延びれば国会中に恐らくその結論が出て来るような印象を先ほどから受けておりますから、私はその上で更にこの問題について一つ検察審査会の制度の根幹に触れた問題だと考えまして、更に質してみたい、こう考えるのですが、そこで先ほどからの質疑応答は刑事局長との間にいたしたわけですが、最後に法務大臣の考え方、これは漠然と考え方をおつしやつてもらつても、ちよつと困るわけなんですが、時間が来ておりますので、一応大臣の見解をここで承わつておいて、そうして細かい点についてはいずれ明らかになる事態に関連してお尋ねをしたいと思います。
#22
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 横浜地区の検察審査会が岡崎外務大臣の選挙違反事件につきまして起訴をすべしという議決をいたしましたことは、只今報告を受けたことで、皆様お聞きの通りでございます。この事件はどうなるかという問題は、亀田君御承知のごとく横浜地検がこの議決を参考といたしまして公訴を提起するかどうかということを決定する前に報告するということでございまするが、まだその報告も私見ておらないし、又報告もいたしておりませんが故にその上に事実についてとくと考慮いたしたいと思つておる次第でございます。
#23
○亀田得治君 大臣はこの事件を余り知つておられないようですが、日が相当経つておるわけですから、私は非常に怠慢だと思います。これは法務大臣はこういう関係には素人かも知れませんが、重要な問題なんです。これは第二の検察庁法十四条との関係においても重要な問題なんです。そういう重要な問題なんですから、そういうふうに現在に至るまでまだよく事情は知らない、こういうことは私としては非常に不満なんです。併しこれは質問でなしに、一応私は今の答弁に対する気持だを申上げて、ここで質問を打切るのじやなしに、一応中止いたしておきます。
#24
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
#25
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
 それでは暫時休憩いたします。
   午後零時四十八分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時二十九分開会
#26
○委員長(郡祐一君) 休憩前に引続き、委員会を開会いたします。
#27
○亀田得治君 岡崎外務大臣の問題は午前中申上げたように、これはもう少し事態が明確になつた上で更にお尋ねをしたいと、こう思つております。そこでこの検察審査会といいますか、この告訴事件に対する一般的な扱い方ですね、これがたびたびここの委員会でも、もつと熱心にやつてもらいたいという検察庁側に対する要望がいろいろな形で出るわけなんですが、まあ御趣旨は御了解願えるんですが、実際の問題になるとなかなかそういうわけに行つておらない。そこで私どもこれはひどいと思うような具体的な事情が起きますと、このこともまあその都度申上げるんですが、申上げますと、それは一つよくお調べして、その上で答弁なり、善処しますと、そういう程度になつてしまうので、実は非常に困るのです。それでいま一つ、これは具体的に問題を提起したいのが一つあるのですが、それはどういう問題かと言いますと、いわゆる街の暴力団ですね、これが良民を非常に苦しめている、こういう事件なんです。これを警察、検察庁あたりに持ち出しておるのですが、いわゆる告訴事件ということで、非常に扱いが軽視されておる。そういう抽象的な言い方じやわからんでしようから、具体的に申上げておきますが、告訴人は東京相互タクシー株式会社、それから告訴の日に昭和二十八年八月八日です。それを告訴した官庁は麹町警察署です。事案の内容は、この会社が或る事業のために土地を購入したわけです。その購入したのは昭和二十八年の六月二日となつておる。これは代金を支払つて完全に六月二日に所有権の移転登記を終了したわけです。それでこの会社がこれは何か官庁の許可が要るような仕事らしいのですが、それを受けて、そこの場所へ建設工事を始めようとして取かかつたとたんに、これはずつと以前に本当の所有者があつたのだが、それが間違つてほかの人の土地になつたんだ、その間違つた人からその後順々に譲り受けられた土地なんだ、従つて君のほうは正式にそういう金を払つて買つたかも知れないが、実は所有権について疑義があるんだ、こういう申出によつて暴力的に妨害行為に入つて来た。で私はよく関係者から話を聞いてみますと、こういう問題を専門にやつているんですわ、どうもやり口が……。つまり人の土地なんですから、いきなりそこへ入つて行つたんじや、直ちに業務妨害とかいろいろなことでくくられますから、そういう形を避けるために、事前に内容証明によつてそういうふうな、あたかも何か民事関係の権利関係について争いがあるかのごとく装つて、それからこの暴力を行使して来ているわけですね。で普通の人がやるならば別に問題ないでしよう。そういうことをやつておる人たちのずつと事情を調べますと専門にやる人です。而も麹警察署がどういうことなのか、とにかく初め現場にその関係者が警察の人を連れて行つたというんですね。連れて行つても結局うやむやになつている、その後、検察庁にこの関係の問題が廻つておる、民事関係の訴訟にもなつておる。民事関係の起訴になりさえすればこれは民事だから、刑事関係には触らないんだというふうな一つのしきたりがあるととか或いは莫大な金を暴力団に出して手を打つんですが、余りにやり方がひどいので強硬に突つ張つておるのですね。それでそんなに強硬に突つ張るならば、普通のやつでは駄目だというので、途中で更に殉国青年隊、これははつきりしておりますが、そういう諸君が又これに参加して来て、その土地の所に小さな小屋を建てたりそうして座り込む一方で警察や検察の問題になつておるのに、少しも問題が進展しておらん。で関係者はたまりかねて、昭和二十九年の二月に更にその後に上申書を東京地検に出しておるというのです。それから更に引続いて今年の三月にも更に追加の告訴状を検察庁に出しておる。それから先だつて四月になつてからも督促のための上申書を出しておるというのです。私たまたま或る会合でこういう話を聞いたものですから、それは余りひどいじやないか、これは検察庁、警察というものは何か民間から言つて来ることは非常に軽く扱う、これはもうその標本だと思うのです。こういう事件がうやむやにされれば、これは当然関係者として納得できませんから。必ず検察審査会に又持出すと思うのです。私もそういう場合にはこういう制度があるからと話はしておきました。併し問題は検察審査会で適当な結論を出してもらつても、これは本当の仲裁にならないわけなんです。そういうものが出るまでの良民の迷惑というものは大変なんです。これほ幸い相当心臓の強いがんばりのきく諸君ですからがんばつているだけの話です。私はこういうようなことを見ますると、告訴事件一般に対する扱い方というものが非常にこの筋が通つておらない。こういうふうなことを言うて、いろんか文句を言つたり、もつと強硬にやつてもらいたいというようなことをどの事件でも言えるわけじやない。やはり泣寝入りになつておるものがたくさんあると思う。私はこういうことをいろいろ法務当局もお聞きになつていると思いますので、先ほど検察審査会の問題についてはああいう通牒が出されたようでありますが、こういう告訴事件についてどういう態度を最近とつておられるのか、こういう点一つ一般的な問題として先ずお伺いし、それからこれはもう非常に悪辣なこういう問題が現実に法務当局の地元である場所で起きて折るのだが、こういう点についての一つ考え方をお伺いしたい。二つに分けて一般的な問題として。
#28
○政府委員(井本台吉君) お答えいたします。告訴事件も普通の事件と同じでございまして、これをないがしろにするという考えは毛頭ございません。私どもも機会あるごとに一般の事件と同様に迅速に調べを済ませまして、その処理を急いでおるということになります。勿論あらゆる完璧の方法で告訴事件がないがしろにされるということはないように努力しておるのでございます。ただ、この私どもは亀田さんもよく御承知と思いますが、中には告訴狂に類するような又告訴ばかりしておる者があり、又告訴そのものが何ら印紙などを要しませず、ただ告訴状一本出せば告訴事件として一応成立するというようなことで、早手廻しに自分を有利に事件を解決するということで、簡単に告訴をするというような者もままあるのでございます。かような者が取上げにならないことは当然でございます。併しながら印紙もはれず、救済の方法もないということで止むを得ず告訴をいたしまして捜査関係の救済を求めて来るというような者につきましては、できるだけ早くこれを取上げまして事案の真相を明らかにして適切な処置をするということには終始努力しておる次第でございます。
 それから第二点といたしまして、具体的のこの麹町の東京相互タクシーの事件というものは、私まだ承知いたしておりませんので的確のお答えはいたしかねるのでございます。これは早速調べまして、できるだけ善処いたしたいと考えておる次第でございます。ただ、この事件を指して言うのではございませんが、麹町方面にかなり悪質の土地ブローカーがおりまして所有者に無断で私文書偽造、公正証書原本不実記載などをいたしまして土地の名義登記簿を獲得いたしまして、それを転々として名義を変えまして売りつける。従つて本来の所有者は何ら知らないうちにいつのまにか名義が転々いたしまして、その最後の所有者は恐らく善意だと思うのでありますが、さような善意の所有者と初めの本来の名義所有者との間に争いが起きておるというようなことを一、二聞いております。その他人の名義を謀用いたしまして詐欺的な行為をいたしました事案が非常に巧妙でありまして、警察官も検察官もなかなか調べができないでおるというようなことをまま聞いております。本件にどちらに非があるかということは只今私から申上げかねますのでありますが、新らしく買つた善意の所有者に該当するものの言い分も相当理由があることでありましようし、又この相手方がどのような理由があるのか、これもつまびらかにいたしませんので、的確なことは申上げかねます。併し殉国青年隊というような何か団体の威力を背景にいたしまして理のないところを押し通すというようなことが若しありといたしますれば、これはいろいろの法律に触れるということになりますので、事案をいま少しく取調べましてから御答弁申上げたいと考えます。
#29
○亀田得治君 今刑事局長から設例されたような問題とは全然違うのです。ただ私自分が見せてもらつた具体的な事実に基いてだけ、余り内容的な問題を申上げては、先入観を持つてもらつても困ると思つたから申上げたのですが、非常に大事な点だけ申上げますと、この会社がこの土地を買取つた。つまり売主ですね、売主そのものがほかの人に連絡をしてそうしてそういう行動に出さしておるわけなんです。そういうことがずつと紛争の途中で明白になつて来ておるのです。これは東京の民事裁判所のほうにおいてもそういう点が明白になつて来ておる。従つて仮処分等においては勿論それは暴力団の諸君なんかの言い分が通らないのです。従つてこれはもう全然何か本当にこの権利の争いがあるとか、そういう問題でない。だからそういうふうなものであるにもかかわらず、この警察なり検察庁がどうしても動かない。被害者のほうは、場合によつては何もそれは金もたくさんある会社だし、民事関係だけで片付けばそれでいいという気持ならそれは片付くのです。だけれども余りにもひどいから、こういうことはもう道義的にも許されんじやないかということで、もう現在となつたら、そういう存在は許されないという立場で検察、警察に当つておるのだが、四回もこの書類を出しても……この書類を見て下さい、非常に詳しく書いてございます。一向にお取上げにならない。そうすると、そういう人たちは非常に悪く推察すると、どうも警察なんというのはああいう所と少し関係があるのじやないか。甚だ言いにくいことですがね。そういう邪推も出て来るのですよ。理窟の上から言うならば当然そんなことは是認されないことなんです。私はそういう立場で十分お調べ願つて、やはりこういう民間の正しい意見というものは率直にやはり検察関係には反映して行くようにしてもらいたいと思つておるのです。そういう気持で、これはお座りに、まあ一遍言われたから当つてみるとかそういうことじやない。検察行政のやはり公正なあり方の一つの問題として検訂してみてもらいたい。その上であなたの御返事を私一度正式に聞きたいと思うのですが、そのことのほうが告訴問題に対する具体的な回答になつて来ると思つて、実はこういう具体的な問題を出しておるのです。そういうことで一つこの点は一応留保いたしておきます。
 そこで肝腎の検察庁法十四条の問題に、大臣も余りおられんようですから、すぐ入りたいと思いますが、先ず最初に法務大臣にお尋ねしたいのは、大臣は本会議なり或いは議運におきまして、犬養法務大臣のとられた処置、これは言い方がいろいろ、ありますが、ともかくあれでいいんだ、自分もそれを認めて行く、こういう立場でお話になつているようですが、現在でもそういう考え方かどうか。そういう点先ずお聞きしたいと思います。
#30
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 現在でもその考えでおります。
#31
○亀田得治君 それから次に刑事局長にも、先ず質疑の進行上確めておきたいことは、議運におきまして刑事局長はああいうやり方で第十四条を発動されたことは捜査上困る、あとの政治責任とか何とかそういうことは別です。或いはああいう措置をとつた政治的な考慮とか、そういうことは抜きにして捜査という観点から行つて技術的に大変困つたことだ。こういう意味のことを言明されておりますが、その考えは現在も変らりないと思いますが、どうでしようか。
#32
○政府委員(井本台吉君) 私は終始一貫さような考えを持つております。
#33
○亀田得治君 そういたしますと、私どもとして非常にここで割切れない問題にぶつかる。法務大臣は検察関係の頂点に立つておるわけです。それを刑事関係で補佐するのは、刑事局長が補佐関係においては頂点に立つておる。そこの意見が捜査という問題に関して非常に立場が食い違つておる。食い違つておるということは、お互いにこれは認めておられることなんでしようと思いますが、どうなんですか。大臣のほうから先ず……。
#34
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 捜査の上よりいたしますれば、拘束したほうが一番便宜であると思います。却つて任意出頭さしておりますれば、捜査の上において不便ではあろうと思いまするが、この場合は私どもは止むを得ざる措置であつた。いわゆる重要法案を通過さすために止むを得ざる措置であつた、こう思います。不十分ではあろうと思います。不便ではあろうと思いますが、暫く逮捕を猶予さしたい、こういうことでございます。
#35
○亀田得治君 刑事局長はどういうお考えを持つておられるのですか。私どもは非常にそこに気まずい状態があると思いますが……。
#36
○政府委員(井本台吉君) 私は涜職事件につきましては、何回も衆議院の議院運営委員会、或いは参議院の議院運営委員会におきまして関係者を逮捕、勾留いたしまして、交通遮断しなければ、捜査技術上取調べが困難であるということを繊々説明して参つたのでございます。佐藤氏の関係につきましてもいわゆる涜職事犯でありますれば、同じような技術上の問題が生ずるわけでございますが、その技術上の問題を離れまして、更に諸般の政治上の立場から大臣等におかれまして別の観点から判断を下されるというのであれば、そような判断もこれはないとは言えないのでありまして、検察庁法第十四条但書にある以上、私どもがその判断に服さざるを得ないという結論に達した次第でございます。
#37
○亀田得治君 その点又最後に聞くことにしたしまして、この犬養法務大臣の二十一日午後零時半に発表されました例の声明書、十四条を発動した理由というものがここで公式に発表されておるのですが、それも現在の法務大臣も受け継いでおられるわけてですが、ここに大きな疑問点が私ども二つあるわけです、この声明事の中で純粋に法律的にこれを分析して見て……。これも本会議等でいろいろ言われておるのですが、先ず第一に、こういう十四条を発動した理由というものを、この声明書をいろいろな角度から読んで見て、要約されることは二つになる。その一つは、事件の法律的性格ということなんです。甚だあいまいな言葉なんですか、それからもう一つは重要法案の審議に鑑みて、こういうことなんです。これが根本的なんです。この声明文をずつと読んで見ますと、そのほかの言葉も、これはいろいろ入つております。重要法案通過の見込みがつくまで云々とか、いろいろなことが入つておりますが、それらは結論ではない説明文なんです。結論的な理由というのは、結局事件の法立的な性格ということ、重要法案の審議に鑑みて……この二つになつて来る。そうなると、私どもがこういう委員会としてはとつくりと御意見も聞いてみなければならないのでずが、この事件の法律的性格というのは、私は勿論自分なりに解釈しておりますが、この声明を是認しておられる法務大臣はどういう意味にこれを解釈されておるのか、この点をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
#38
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 犬養前法相は只今御質問のありましたごとく法律的性格というものは、第三者収賄等の問題だと信じます。それから私が一番この中で重点を置きますのは、いわゆる重要法案の通過の見通し、国家の大所高所より立つた問題を最も主として私は踏襲いたしておる次第でございます。
#39
○亀田得治君 つまり本会議等では、実際はこの声明書の二つの大きな要点のうち、第一点というものがいつの間にか横へ置き忘れになつているのですよ。法律的性格の問題については余り説明文が付いておらないのですから、そういう関係もあつたのじやないかと思います。あとの重要法案の審議に鑑みてというのに関しては、いわゆる重要法案通過の見込みがつくまで云々というようなことがあつたりして、ここに特に論議の中心が来たようですが、私ども法務委員会としては、むしろ前段のほうに重大な意義を考えておる。その点法務大臣のお話からいたしますと、第三者収賄というような事件の性格に鑑みて、こういうふうな何か御答弁のようですが、これは私どもの解釈では、その犯罪自身は何かそれが収賄罪か、或いは背任か、横領か、そんなことよりも、逮捕を必要とするような事件であるかどうか、こういうこと思うのです。今何もここで裁判所で有罪を言い渡すかどうか、そういうことに問題になつているのじやない、逮捕を必要とするかどうか問題になつておる、第一には……。勿論それに関連して、それじや必要とする事件というのはどういう事のことなのか、そういう意味では第二次的にそれは犯罪の内容ねそういうことについてもこれは関係があります。法律的な問題としてありますが、こういう際における事件の法律的な性格ということは、逮捕を必要とするかどうか、そういうことでなければならんと思うのですが、これは刑事局長がむしろ専門ですからはつきりお答え願えると思うのですが、どうでしよう。
#40
○政府委員(井本台吉君) これは犬養前法務大臣から雑談の際に伺つたのでございます。か法律的性格というのは、只今加藤法務大臣から御答弁になつたように、主として第三者収賄を指すというようなことでございますが、少くも殺人罪とか、騒擾罪とか内乱とか、さような重大犯罪であれば、これはいろいろな要件がありましても即座に調べるということになると思うのでありまするが、第三もの収賄相というような犯罪であるという点も一つ加味いたしましてれその大部分の理由はその以下の国家的重要法案の審議の現状に鑑みて暫く逮捕を延期したという趣旨に私は聞いております。お話の逮捕を必要と、するか否かという点の法律的性格について、特に考慮されたというような点は私は聞いておりません。
#41
○亀田得治君 そうすると、犬養法務大臣の言葉の使い方が非常にこういう場合における声明書としては私は不適当だと思う。不適当であつても本人がそのつもりで使つたのだということになれげ、一応そつもりで解釈しなければなりませんが、そうしますと、犬養法務大臣は、こういう政治的な考慮は別ですよ、あとのほうに書いてあるそういうことを別にして。先ずこれは逮捕の必要性があるのかないのか、法律的にその点についての判断をしなかつたわけですね。そういう意味で使つたいうことになると、これは大きな失態であります。その判断をして、而もあとのほうに書いてあるのは、これは政治的な考慮なんですから、その考慮がこう加わつて来るのならいいのですが、そういう逮捕の必要性の問題というものが法律的に少しも先ず検討されておらない、純粋に技術的に……、この声明から受ける感じはそういう意味だとすると……。私はそういう意味でこれは法務大臣の声明としては甚だ以てまずい声明たと思うのです。で、これは少しこの際お伺いしておきますが、こういう声明を出されるについては、刑事局長は何か法律的な立場からなり、御相談でもあつたわけでしようか。
#42
○政府委員(井本台吉君) この声明文につきましては、前大臣が自分で筆をとられまして発表されたのでございます。技術的に例えば検察庁法第十四条の規定を採用してありますが、さような点についての誤りがあるかないかという点らつきましては、私は一応相談にのつておりますが、全体の構想そのものは前法務大臣が自分で起案されたのでございます。
#43
○亀田得治君 併し発表までには一応それでしたら検事局長も案文は御覧になつたわけでしよう。
#44
○政府委員(井本台吉君) 案文は読んでおります。
#45
○亀田得治君 そうしますると、専門の刑事局長かお読みになつたのですが、事件の法律的性格ということの意味はどういうことかということをあなたがお聞きになつて了解されたのは、この声明書の発表前なのですか、或いは国会でいろいろと論議が始つてからなのですか、どうでしよう。
#46
○政府委員(井本台吉君) たびたびかような点については話をしておりますので、いつどういう話をしたかはつきり覚えておりませんが、要するにこの逮捕の延期をしようという主たる理由は、政治的な考慮にあるのでありまして、前の法律的性格というのは附随的な意味と私は承知いたしております。
#47
○亀田得治君 併し言葉の順序から言いますと、事件の法律的性格というものが先ず上に来ているのですよ。そうして全文僅かの言葉の中にこれが入つて来ているわけですから、非常に重要な意味を持つと思う。これはなぜ私がこれを問題にするかと言いますと、これは現在法務大臣があの声明は一応どうも認めがたい。併し自分としては又別個の立場からこういうふうにやつて行く、こういうことなら、その別個の立場を、もう少し明確にしてもらつて、それについて御質問を申上げたらいいのですが、一応これを基礎にされておるようにずつと承わつておるものですから、はつきりしておきたいと思つているのです。なお、この事件の法律的性格ということがここで使われたことは、今回の事件に関連して、今後やはり日本の法曹が非常に注意する問題だと思うのです。例えば専門の小野博士にいたしましても、この点について非常に疑義を持つておられる。逮捕の必要性があるかないかということを一応吟味したという意味に、やはり小野博士なんかもとつておるようです。若しそういうことであれば、そういう捜査の判断は、これは裁判所が検察庁から書類を受取つたとき判断すべきことであつて、法務大臣がそういう立場でものを言うべきじやない、こういうふうにおつしやつておる。大抵の人はやはりそういうふうに解釈しているのじやないかと思うのです、法律的性格上と言えば……。若しそういう意味だとすれば、法務大臣がそういう解釈を下すべきじやないので、先ず書類を内閣に出して内閣からすぐ国会に出して国会を通過すれば、その書類が今度裁判所に廻るわけですから、そのときに裁判所の判事が法律的な一体必要性があるかないかそこできまるわけでしよう。法律的性格の判断というものは、そこで決定付けられるわけですからね。だからこういう言葉を使つた以上は……、法務大臣がこれを使うたのですから、これは誤解されますと、そういう裁判所で、判断すべき事柄について僭越にも法務大臣が越権行為をやつておる、こういうふうにとられるわけなんです。それで私この点も実は糾明しておるのですが、先ほどからのお話だと、それはどうも附随的な意味しかない。而も附随的な意味の内容は第三者収賄というような、そういう犯罪の実体関係についての意味なんだ。だから例えば強盗とか殺人とかそういうものに比較すると、実体的に見て幾らか軽いのだ、そんなような意味にとれるのですが、そう解釈していいわけですね、法務大臣の先ほどの御答弁は……。
#48
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 私は犬養君の声明の文案について批判は一切避けたいと思うのですが、ただ私が踏襲したいと思う一番主なる問題は、国家的重要法案の通過の見込のつくまで逮捕を延期したいという、この点が一番主たる点であるのでございます。
#49
○亀田得治君 法務大臣は結論だけを絶えず言われるわけですが、これは日本の法曹界における問題としてはそう簡単にはゆかないのです。たとえ結論が同じであつても、経過が悪い場合には、法律家の世界では通らん場合がたくさんある。だからそういう点はこれは新らしくあなたがあとを引受けられたわけですから、その声明文はやはりもつと検討してもらいたいと思うのです。大体の精神だけは了解しているのだ、それを受継いで行くのだとそう簡単には済まないのです。だから私が今指摘したような点が余り検討されていないのであれば、十分検討してあなた自身がやはり考え方をきめてもらいたいと思うのです。若しいやしくも法政大臣がやつた声明が間違つておる、結論は同じであつても、こういう点は間違いだということが明確になれば、これはやはりこの機会にはつきりしておく必要がある。だからこれは一つ検計は要求しておきますが、そういう検討はされますか、やる御意思がありますか。
#50
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 勿論検討いたしたいと思いますが、この第三者収賄罪の問題については、法律的にもいろいろ疑義のある問題だあるのでありますが故に、ここにこれを記載してあることだと、こう信じておるのでございます。で検討はいたしますけれども、私の結論といたしましては、一番踏襲することは、国家の重要法案の通過ということであるのであります。
#51
○亀田得治君 結論のほうは法務大臣の立場は私は一応了解しておりますが、もう一つそれじやお伺いしますが、何か第三者収賄というものを非常に軽くお考えになつておる気持があるのじやないか、先ほどからのお話を聞いていると、そういう面も感じられるのです。併し一般的な問題としては、それは殺人とか強盗とか強姦とか、こんなことを言えばあれはひどいやつだ、こう感じますが、それと混同されておるのじやないかと思うのです。そうじやなしに、そういう実質的な面から言うならば、罪名もさることながら、これの及ぼしている影響ですね、私はどこに殺人犯があつたとしましても、実質的な面から言つてこれほど国民的な一つの要望として、あいつ怪しからんと大きな朝日、毎日をはじめ、今まで政府を擁護しておつた人たちまでが公然と論説にまでも書く、こんなことが今までの殺人事件なんかにありません。そういう実質的な面をこの法律的な性格ということでお考えになつておるのであれば、もう少しそういうふうに問題を掘下げて、どれが一体罪状が重いか、そういう立場で考うべきだと思うのです。ただ取つた金を本人が余り使つていないのだか何とか、そんなような形式論じやなしに、この及ぼしておる影響とかそういう点から考えたら、この法律的な性格から見て、逮捕を延期するというようなことになつて来ませんよ。そういう面から言つてもこれは逮捕をしなければならん、こうなつて来ます。だから初めからこういうものが入つていないのならいいのですが、入つておるのですから、入つた以上は、今後このことが一つ先例になるのです。で今私が犯罪を比較して申上げたのですが、あなたのほうじやそういう実質論から言つて、今回の問題が法律的にそんなに軽微だとお考えになつておるのですか、どうでしよう。
#52
○国歌大臣(加藤鐐五郎君) 私はこの第三者収賄罪というものが決して軽いとは思つておりません。これが只今の御質問などによりますれば、政界粛正のためにこれは相当重大なる問題であるという、御質疑の御要旨であろうと思いまするが故に、決して軽くは見ておらないのでございます。但し、私がこの逮捕を暫く延期せよということは、それ以上重要法案の通過ということが必要であると、こう私は解釈いたしておるのでございまして、決して軽く見ておるという意味ではないが、若しそれ比較をいたしましたならば、重要法案の通過のほうが更に大なるものであるとこう思つておるのでございます。
#53
○亀田得治君 私の質問しているその比較の問題は一般の殺人、強盗、強姦というような悪質犯と言われておるものと、あれだけの影響と旋風を巻き起したこの問題とをどつちが一体重いと見ておれられるのか、こういうことなんです。この法律的性格というものはそういう実質面からの意味のようですから、お聞きしておるのです。
#54
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 私は単なる市井の殺人だとか何とかいう個人個人の問題よりも、この問題が重要であると思いますことは、亀田君の御意見の通りでございます。
#55
○亀田得治君 そうするとこの事件の法律的性格という言葉は、普通世間の人が考えておるような意味から言つてもどうも要らない言葉なんです。又実質的な面から言つても、逮捕を延期するのに、こんな言葉を挿入すべきじやない、どうしても私はそう思います。重要法案の通過の見込が付くまでと、そういうことが本当に頭の中にあつて、こういうものが書かれたのなら、それだけ書いておいたらいい。それは見解の相違なんですから、仕方がないのです、それがいいか悪いかは……。それならそれだけ書いておいたらいいのです。だからこの事件の法律的性格というのは非常な誤解を或る意味で及ぼすわけです。だからこれはそういう意味であなたもよくこれの及ぼしておる影響も考えて検討してもらいたい。自分は法律関係は専門でないから、そんなことはどうもそんなに突込んでやる気持ちもないということではやはり済まされない。これは重要な問題ですから、あなたの在任中にやはり明確にして頂きたい、もう少し御検討の上で……。これはほかの方もいろいろ御質疑もあると思いますから、再度私はさらに確めることにいたします。
 それから次の重要法案の審議に鑑み、この問題にそりでは移りましよう。これが重点だとさつきから言われておるわけです。これらの点は本会議でそれこそたびたび議論が出ました。国会のほうでは重要法案をどういうふうに取扱うか、これは国会自身が処理して行く問題なんだ、勿論政府も関係ありますよ。関係ありますが、主たる仕事は国会の仕事なんだ、こういう見解を大まかに言つて出しておるわけです。これはどうも法務大臣なんかはその点において真正面から今までお答えにならないで、何かちよつとそういうふうな点をずらして、結局重要法案審議のために必要なんだからというようなことでお答えになるようなんですが、そうではなしに、国会のほうでははつきり重要法案の問題は国会自身がやるべきなんだ、そういうふうに結論をはつきり出してものを言つておる。この国会の法律的な考え方、これ自身を一つあなたのほうで批判してもらいたい、どういうお考えを持つておるか……。そうしませんと私どものほうでゆつくりいろいろ又問題を考えてこの事態に対して質疑を深めて行くということができないわけです。先ずその点のあなたの考えでなしに、国会が言つておる、それが間違つておるのか正いのか、若し法務大臣で工合が悪ければ刑事局長でもいいが、できるだけ基本的な点についてはやはり法務大臣から答えて頂きたい。
#56
○国務大臣(加藤鐐五郎君) お断りいたしておきますが、犬養君が書かれました声明の文案その他につきまして、はこれはいろいろお話がありましたが、これは前法相の書かれたことでございまして、この批判は一切避けたいとこう思つておるのであります。それで只今の御質問の要旨は少しく聞取りにくかつたので、或いは私は聞き損なつたかも知れませんが、重要法案を通過さすために、政府及び与党といたしましては全力を挙げてその通過を図りたい、こう思つておるのでございまして私は政府としては全力を挙げてその通過に努力したい、こういう意味を持つております。
#57
○亀田得治君 いや、そうなりますと、つまり問題の焦点にだんだん入つて行けないのです、そういう答えでは……。政府のそのお答えは本会議でも、議運でもたびたび聞いておる。ところが国会のほうは明らかに、ともかく議案審議に関する問題は、これは第一次的には国会自身が心配するのであつて、政府も勿論関係があるでしようが、重大な問題を三原則から曲げてまでやらなければならんほどのことはない、国会自身がやる問題なのだ。こういうことをはつきり言つている。その国会の法律的な見解というものが現行法上は許されない、そういうふうなお考えがどうかということを聞くのです。これは刑事局長はどうです。
#58
○政府委員(井本台吉君) 四月二十三日の参議院における決議によりますと、議員の逮捕許諾と法案審議の関係は国会の決すべき問題であつて、政府今回の措置は云々と、こう書いてありますが、かような決議の御趣旨は誠に御尤もであると、尊重すべきものと考えております。
#59
○亀田得治君 その尊重する、しないは価値判断の問題ですから、言つてもらわんでもいいのです。今申上げておるのは、検事局長が読まれた参議院の正式の意思決定ですね。それは法律的にに正しいというふうに私受取つてもいいと思うのです、今の答弁からすると……。これは重要なことですから法務大臣に念を押しておきます。あと尊重する、しない、そんなことは触れないで、それは第二段、三段になります。どうですか。
#60
○国務大臣(加藤鐐五郎君) もう一度御質疑願えませんか。
#61
○亀田得治君 この重要法案審議の問題は、これを国会てでどう扱うかということは、これはもう国会自身がやる問題なので、そのことを、参議院の決議案でも書いてあるわけですね。で、その点は間違いないとあなたもお認めになるでしようか、こういうことなのです。
#62
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 勿論国会自身のおやりになることで、その点は間違いないと思います。
#63
○亀田得治君 そうすると、結局問題は、勿論又犬養前法務大臣のあれに戻るのです。で、人がやつたことを自分は批判したくないとおつしやいますけれども、どうもそうは許されない。これは法務大臣も今日の質疑を通じて、ではもう少し考えてみようとおつしやつているから、私も考えるのを待つつもりもあるのですが、これは決して法務大臣の私的な文書ではないのですからね。何といつてもあれ自体前後の事情から考えても、内閣全体のやはり行動として世間は受取つている。総理大臣も本会議においてはその処置をやはり認めておるわけですね。そういうふうな気持で犬養法相談を分析しますと、事件の法律的性格というのもどうも根拠がない。それから重要法案の審議に鑑みということも、参議院の先ほどの決議案を法律的に見てその部分は間違いないということになれば、あとに何も残らんのですね。犬養法相の談の中には何もない、空鉄砲のようなもので、理由らしいものは何もない。そういうふうに分析して見れば一層そういうことが明らかになる。そうなりますと私、法務大臣がこのままで過して行く、これは、どうしても納得ができないのです。あなたのほうでおつしやるのは、ただ院議を尊重するつもりはあるとか、いろいろなことを言われるが、最後には重要法案の通過の見通しがつくまでしばらく逮捕を延ばしたい、それだけのことなんです。これは単なる気持に過ぎないのですね。その前提となつておるものは、如何なる面から見ても、全部崩れて来ておる。これはすでに済んだ問題だとお考えになるかも知れませんが、済んだ問題じやなしに、これは続いておる問題なんです。ずつと全体の、汚職事件というものは続いておる問題なんですから、そういう角度でこれは慎重に検討して欲しい。
 それから刑事局長にお尋ねしますが、犬養法務大臣がああいう無茶な権限の濫用をやつた、その直後検察当局が、首脳部以下序表を出す、こういうふうな動きも私どもあつたことを新聞なり、その他の情報で知りましたが、その問題は一体その後どうなつておるのか、これは国民も非常に、事件が事件であるだけに、注目をして見ておる。せめて政府がそういう政府ならこの際は検察庁の毅然たる態度によつてでも、やはり最後の、法治国としての体面を保ちたい、こういう気持は非常に強い。そういう角度からこれは注目している問題なんですが、ざつくばらんに言つてこれはその後どうなつておるのか、そういう問題は……、お聞きしたい。
#64
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 只今参議院の決議では議員の逮捕許諾と法案審議の関係は、国会の決すべき問題である、これは私は肯定いたしました。それで只今の、質疑は、そうすれば国会の決すべき問題であるが故に政府としてはそれは手を拱いて見ておつていいかというような結論にもなるように思われますが、それだけではなかなか行かんのでありまして、事実政府は法案通過のために、御承知の通りに全力を挙げてこの国会の通過のために図らねばならんのでありまして、政党政治である以上は、党と与党といたしましても全力を挙げてその法案の通過に努力せにやならんのであります。勿論国会の決すべき問題ではありまするけれども、ただ政府はそれでもう知らん顔して放任して、法案だけ出して置けばいいというわけには参らんことは御承知の通りでございまして、そういう意味ではあるまいと思いますが、只今の御質問の要旨を伺つてみると、もう政府は出せばそれでいいじやないかというふうな意味にもとれないではございませんので、政府も大いに努力せねば法案は通過しないと、こういうことも附加えて申上げておきたいと思います。
#65
○政府委員(井本台吉君) 辞表を出されたということは私は聞いておりません。この指揮権発動の事案に対しましては、捜査技術上非常に困難でありまして、而も一日遅れても捜査がうまく行かないというような事案でございますから、このために実際上質すべき事件も質せなくなるというような心配もあつたわけでございますが、併しながら、一面から言いますると、全部被疑者を逮捕しなければ調べができないというようなことでは、これは甚だ考えが浅過ぎるということで、可能な範囲でできるだけ捜査を進めまして、果して満足の行く結果になるかどうかわかりませんが、可能な範囲でできるだけの結論は得たいということで、引続き捜査を進めて事件をまとめたいということに考えを変えまして、そのまま引続き捜査を続けておるという実情でございます。
#66
○亀田得治君 先ず加藤法務大臣が今お語りになつたことなんですが、政府が重要法案の通過を図りたいという気持は勿論わかるのです。ただ声明文に書かれたような二つの点が極めてよく冷静に分析して見ると、理由がないことだと明確になつて来ておるにもかかわらず、検察庁法十四条まで世間の非難を浴びながら、そのことについて政府が容喙しなければならんかどうか、そういう問題なんです。私は決して政府が法案の問題等について無関心であつていいというようなことを申上げているんじやないのですよ。今申上げたような二つの理由が崩れ、而も世間の非難を浴びておる、その中でこれがやつていいかどうか、こういう立場で申上げているんですよ。併しこれは又後刻もう少し問題を掘下げることにいたします。
 刑事局長が今お答えになつたところによりますと、辞表というものは出なかつたということなんですが、皆総辞職をもあえて辞せないというような動きはあつたんでしよう、どうなんですか、
#67
○政府委員(井本台吉君) 私はさようなことを聞知しておりません。
#68
○亀田得治君 聞知しておりません……。刑事局長自身はどうされたのですか。
#69
○政府委員(井本台吉君) 私のことは自分の一身上のことでございますから、さようなことはないと、こう申上げます。
#70
○亀田得治君 一身上じやないですよ、この問題は……。大きな日本の法が守れるかどうか、そういう立場でみんな注目しているんです。で、あなた自身は法務大臣との間にそれだけの意見の食い違いができても、職を辞してでもそういう事態に対して間違いが起らないようにというような決意はされなかつたのですか。私はされたものだと思つていていたのですが、今のお言葉によるとどうもおかしい。これは私の推測になるかも知れませんが、当時の空気は確かに私そうだつたと思う。ところがその後いろいろ内部で話合いがついたものですから、今日の状態ではやはり円満なような、外部に対しては答弁して行こう、何かそういう気持ちがあるんじやないかと思うのです。当時の状態を私は聞いておる。非常に大事だと思う。ああいう状態に直面して捜査の責任にある人たちがそんな生やさしい気持ちでおられたとは私感じないのですが、もう少し率直にその辺の事情を話してもらいたい。その当時はごうだつたが、現在はこうこうこういう状況でこういうような態度に変つて来た……。
#71
○政府委員(井本台吉君) 結論に至る過程は、人間の心理過程でございますから、今申上げてもいたし方ないので、結局結論といたしましては異常のある問題はなかつたというように御了承願います。
#72
○亀田得治君 結論においてはさようなことはなかつた。結論というのは、いろいろな経過を辿つて出る結論ですから、経過をお話しにならなきやはつきりしないのです。あの当時は相当な経過を辿つていますよ。私ああいう重大な問題について責任ある新聞なんかがそんなに間違つたことを書くもんじやない、その通り書いておるかどうか、これはまあ別ですが、それをお聞きしたい。私そのくらいの気概が検祭陣になきやならんと思つて聞いておるのですが、それはおかしいですね。もう少しその経過を話して下さいよ。
#73
○政府委員(井本台吉君) 新聞に書いてあることをよく御覧になつて頂けば、どう書いてあるかおわかりのことと思うので、事実さようなことがなかつたということになるのですから、さように一つ御了承願いたいと思います。
#74
○亀田得治君 国民の気持はいろいろな論説等にももう現われておる通りなんです。検察陣の方々は事態がこういうふうになつたら仕方がない。併し残つたやつでも何とか少し処分してできるだけの努力をしようと、どうもこういう御見解のようです。併し国民はそういうことを期待してない。そんなことは本当のところ……。十四条の発動によつて裁判所ほどに勿論独立性を持つておるものじやないのですが、行政機関の内部においても特殊な地位を持つておるべき性格のものですね、検察陣というのは……。そういう特殊の性格、そういう意味の独立性だ。これが傷つけられた。これを心配しておるのです。それと引き換えに残つたほうを少しできるだけ努力をするから御勘弁願いたい、こんな程度の問題ではないですよ。だからその点に対する検察陣としてもそういうことじや答えが足らんと思います。もう十四条を濫用した諸君の立場と一緒だと思うのです。佐藤検事総長が非常に憤慨されてあの直後に声明をされておる。あの精神から行くならば、こんなことで私はすまんと思います。こういうことで果していいかどうか。そういう点をどういうふうにあなた、これは検事総長にむしろ聞くべき問題でしようが、はつきり開きたいと思います。もう心外で心外でたまらんのだが、実はこういう事態があるからと、こういう事態の説明が詳細に私どもに合理的に説明が行くのなら納得しますよ。一方は濫用する、濫用されたほうもこういうぶざまな状態だ。こういうことは承知できませんよ。こういうことを見逃せば、現在の国会議員全部が或る意味じや共同責任である。私はそういう意味で佐藤検事総長に是非……頑張つておるというのなら、これはそう申上げませんが、烈しいことを……。今刑事局長がおつしやつたようなことでしたら大変なことになる。いやしくも検察陣の方々がそんなことを考えておられたら大変だと思う国民の気持というものをあなたたちはどういうふうに受取つておりますか、検察内部の人たちは……。その点国民の気持に対する皆さんの気持、これを聞かしてもらいたい。
#75
○政府委員(井本台吉君) とにかく与えられた権限の範囲でできるだけのことをして調べたいという気持には燃えております。但し憲法、国会法等の議員の不逮捕特権の問題等もございますし、この問題が仮に法務大臣の指揮に反して逮捕請求があつたといたしましても、これは恐らくかような事情があれば、荒木氏の事件と同じように国会では逮捕が許諾にならなかつたであろうというような想定が付くわけであります。さようなことでは、これは何ら逮捕の目的は達しないわけでありまして、そういうことであれば、これは捜査の時期が間違つたか、或いは自分たちの説明の誠意が足らなかつたのか、若は国会のいろいろな重要法案の審議の必要上むしろこの際暫く逮捕を猶予することが国全体のためになつたのか、さような点の判断がつきかれるという状態にあつたので、とにかく与えせれた範囲で、できるだけのことをして取調べを続ける、そしてまとまるものならまとめて行こうということで捜査を引続き続行しておるということであります。この事件を投げたとか、何とかいうことじやありませんので、とにかく法律には制約がございますから、仮に一月でも二月でも拘束すれば、そのほうが調べが有利でありましても、これは逮捕期間は二十三日しかございませんし、勾留期間は一定の限度しかございません。それ以上続いて勾留若しくは逮捕などいたしますれば、これは違法の逮捕勾留になりますので、与えられた法律の枠の範囲内でできるだけ努力するという以外には途はないと考える次第でございます。
#76
○亀田得治君 荒木さんの問題もちよつとあなたは触れられましたが、検察陣がそういう弱い態度を示すから、ああいう結果になつたのですよ。現に荒本国会議員以外の人は許諾が与えられているじやないですか。これだけこの荒木さんとそれ以前の人と比較したつて、こんな筋の通らんことはないのですよ。そういう事態に追込まれてもなお且つ黙つて見ておる。検事総長以下が職を賭してでも頑張るという気持ちになりさえすれば、法が守れるのですよ。総理大臣なんというものは、これは相当そのときの政治的な考慮、これが働くまあ種類の人ですよ。検事総長がそういう気持ちになつちやあ駄百でしようが、同じように本当に自分がこういう不当なことをされるなら責任も持てない、部下に対しても済まない、そういう気持ちで頑張つて御覧なさい、事態は一変しますよ。私ども何もそういうことを基礎にして、社会党の勢力をどうしようとか、そんなことを考えているのじやない。社会党内閣がそういうことをやろうとしたつて、私が若し国会議員でおれはもう自分の地位を放つてでもそれは阻止しますよ。どういう政府がそういうことをやつたつて、一旦そういうことをやられたら、みんな真似しますよ。あと検察庁もそれに従つておる。ここで今の検察陣が頑張つておれば、次の検察陣がやはり頑張るでしよう。一旦ここで折れてしまえば、これは以前にも例がある、こういうことで又折らされますよ。私はもう絶対に不満だ、今日の答弁は……。法務大臣のほうは、むしろ私はまあ最高責任は吉田首相なんですね。吉田総理大臣に追及することにします。検察陣の問題は一つ検事総長に改めて来てもらつて私はもうはつきりしてもらいたい、この問題は……。国の最高の機関の国会がこういう問題をうやむやにしておくなんということはもつてのほかだ。僕はそういう意味じや国会全体の今の動きですね、これは非常に問題だと思う。言葉の使い方を間違うと、どうも議会政治というものを否認するような印象を与えていかんと思うから慎んでおりますけれども、私はせめて法務委員会あたりはもつとこういう問題をはつきりしてもらいたい。こう思つておる。そういう立場から一つ検事総長にも今日の私どもの考え方を刑心局長からやはり伝えてもらつて、そうして適当な機会にやはり出て来てもらつてこの問題は一つ時期を延ばすんじやなしに、やはり今国会中に起きた問題ですから、今国会中にいい見通しというものをつけてもらいたい。事件の見通しじやないですよ。こういう法律的な扱い、又それに対するみんなの態度、理窟通り行かん点はこれは止むを得ません。了解しますよ、そういう点は……。併し理窟通り行かんことがいいのだ、それが是認されるのだというようなことを、ここで印象を与えるようなことをしたら大変なんです。検事総長にその点十分一つ伝えておいてもらいたい。よく検討された上で私どもに対して責任のある答弁を一つ次回にしてもらいたいと思います。これを一つ要求いたしておきます。
#77
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
  [速記中止]
#78
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
 他に御質疑はございませんか。……それでは次回は明七日午後一時から開会することにいたしまして、本日はこれを以て散会いたします。
   午後四時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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