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1953/05/15 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第37号
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1953/05/15 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第37号

#1
第019回国会 法務委員会 第37号
昭和二十九年五月十五日(土曜日)
   午前十時五十二分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
五月十四日委員山縣勝見君辞任につ
き、その補欠として大谷贇雄君を議長
において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
           宮城タマヨ君
   委員
           青木 一男君
           大谷 贇雄君
           楠見 義男君
           三橋八次郎君
           小林 亦治君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  国務大臣
   法 務 大 臣 加藤鐐五郎君
  政府委員
   法制局長官   佐藤 達夫君
   保安庁長官官房
   長       上村健太郎君
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務省刑事局長 井本 台吉君
   法務省矯正局長 中尾 文策君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  説明員
   法務省刑事局公
   安課長     桃沢 全司君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
 保護法案(内閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (売春対策に関する件)
 (検察庁法第十四条の運用に関する
 件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今から委員会を開会いたします。
 前日に引続き日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。
#3
○青木一男君 この本法の立案の趣旨、目的でありますが、この法律案は日米相互防衛援助協定に伴う約束の履行として、こういう立法が必要であるという趣旨にあるとの御説明があつたのですが、同時に日本国の安全のための立法であるようにも考えられるのでありますが、その目的の重点の置き方はどういうふうにお考えでありますか、先ずその点をお伺いします。
#4
○政府委員(佐藤達夫君) 私どもの考え方といたしましては、先ず国内立法でございますからして、我がほうとしての必要性、これを先ず考えておるわけであります。即ち秘密の兵器をこつちで持つて、それが外へその秘密性が漏れるということは、結局日本の防衛のためにこれは重大な障害を生ずる。そういうわけでその秘密を保護しなければならん、これが第一次的に頭に上つて来る事柄であるわけであります。
 そこで、その兵器というものは、日本独自で作り上げて持つているのかどうかということになりますると、これは今お言葉にもございますように、相互防衛援助協定によつてもらつたものである。そうしてその援助協定には、又只今お示しのようなことは一つの約束としてその秘密は守る、日本としても守つてくれという約束で来ておるわけであります。その意味では丁度先に申しましたところと表裏一体の関係になる、かようなふうに考えておるわけであります。
#5
○青木一男君 まあ第一の目的が国家の安全ということにあるという御趣旨と拝しましたが、そうすると、この本法によつて保護せんとする秘密は、米国から供与を受けた装備品又は情報以外に、日本独自でこういう秘密は現在のところまだないという趣旨でございますか、或いは将来はその関係はどうなるのか、その点もお伺いしたいと思います。
#6
○政府委員(佐藤達夫君) 率直に私どもの心理作用の経過を申上げますというと、秘密の保護、而も防衛上の秘密の保護ということになれば、実はアメリカからもらいましたものばかりでない、ほかの部面にも観念上考えられるわけであります。従いまして、或いはこの法律の形を我々が考えますときにも、防衛援助協定だとか、船舶協定とかそんなことは何も出す必要はないので、およそ日本の防衛のためにする秘密保護という形でいいのではないかという筋が一応出て来るわけであります。併しこの現実問題といたしまして、昔の戦争前の日本でありまするならばいざ知らずでございますが、今日の段階において、まあ日本の自衛隊なり、或いは保安隊、現在保安隊でございますが、自衛隊になつた後におきましても、その持ち物というものを見回して見た場合に、法律を以て罰則を以て臨むような高度の秘密のものにどういうものがあるかということになりますというと、先ほど申上げましたように昔の日本の軍隊であれば別でございますけれども、今日の現状においては結局それを見回したところで、このアメリカからのもらい物というものが一番秘密件の高いものであるということがどうしても言えるであろう。そういたしますというと、広い形でおよそ日本の防衛のための秘密保護法というものも考えられますけれども、ぎりぎり結着のところでそういうものだけに限られるということになれば、むしろたびたび今御審議の段階に出ておりますように、秘密保護の立法ということは、いろいろ善意の国民に対し迷惑を及ぼすような懸念も伴うものでございますからして形としても成るべくしぼつた形にして置いたほうが、そのほうが適正であろうというわけで、むしろ率直に援助協定なり或いは船舶貸借協定によるその高度のものだけに限定するということがよかろうということで、こういう形にしておるわけでございます。従いまして今後どういうふうな発展を遂げて参りますか、場合によりましては、これらのアメリカからのもらい物以外の関係において、高度の同等の秘密を、日本独自の秘密というものがこれは又理論上考えられるわけでございます。保護すべき場面も又出て来ると思います。これは又そのときに法律の改正なりなんなりお願いして行くことが、むしろ立法の態度としては妥当ではなかろうか。こういう立場でかような案を御提案申上げておる次第であります。
#7
○青木一男君 この日米協定に伴う約束の履行としての立法という意味におきましては、これは国際信義その他の点から、どうしても日本としては今後の日米関係の円滑なる運行のためには、まあ必要だと思うのでありますが、併しこの約束というものは、どの程度まあ強い意味を持つておるのか。万一これができないというような場合には、どういう影響を与えるか。そういうような点についてのお見通しを伺つておきたい思います。
#8
○政府委員(佐藤達夫君) 筋を辿つて考えてみますと、要するにこの相互防衛援助協定によつていろいろな武器を日本に供与する、それについては何らの法制上刑罰を以て臨む、そうしてその秘密の漏れることを守つておるというような高度の秘密のあるものもこちらによこしてくれるということでございますからして、向うの気持としては、自分の国で厳重に秘密保護の立体の下に置いてあるものが、日本に渡された場合に、それが完全に守られないということでは、これはもう意味をなさないということになるわけであります。向うの立場から考えれば、自分の国で秘密保護の措置をとつておるものについては、日本でも同様にとつてもらわんことにはやれないという結論に私はなるのは当然なことである、その意味のことは、この協定の中にも認つてはあつたわけでございますからして、それに対応するこの法律が仮に通らないということになれば、結局向うの立場から言えば、これは貸せない、やれないということに、すなおに考えれば辿りつくわけでありまして、従つて折角防衛援助協定ができましても、その実効を収めることはできない結果に繋つて行くというように辿つて考えるわけでございます。
#9
○青木一男君 そういう考え方は私も大体了解できるのでありますが、そうすると日米相互防衛協定の趣旨に賛成する人は当然この種の立法にも、これはもう同意せざるを得ないと思うのでありますが、ただ、問題は立法技術として、本質的にはそういう国際関係から見ても、又日本の安全のために必要な立法であるが、立法技術の上からこれが濫用されたり拡張解釈されて、国民の権利に不当なる圧迫を与えやしないか、そういう点に問題が集中して来るのではないかと私は思うのでありますが、そういう意味において一番問題になる点二、三について伺つておきたいと思うのであります。
 この第一条の第三項ですかの、「公になつていないもの」、こういう規定の仕方でありますが、これが広過ぎて国民一般に周知する上から言つても、或いは法の適用の上から言つても、不安があるのではないかと思うのでありますが、この点において、この「公になつていないもの」という観念で、そういう心配があるかないかということについて、立案者の御見解を伺つておきたいと思います。
#10
○政府委員(佐藤達夫君) 大原則といたしましては、この法律で保護しようという秘密は、たびたび申述べておりますように、非情に高度なもので、ございまして、普通の我々の、一般生活をしているような我々が関心を持つような、或いは触れる機会のあるような、そういうものでは元来ないのであります。従いましてこの公になつているかいないかということを、私どもが個人的な生活をやつている上において一々それを気にして、確めた上でなければ、普通の日常生活ができないというような、そういう性質のものではないと思います。併し理論上の問題としては、罰則を以て臨んでおることでありますからして、この「公になつていないもの」という点は、今のような立場からはこれは一応精密に検討しなければならんことはお考えの通りでございますが、そこで昔の軍機保護法のことを思出してみますと、丁度これに当るようなものとしては、政府が官報で指定をいたしまして、官報で指定したものは秘密を解除される、そういうような形になつておつたのであります。この官報に指定されるということになりますというと、これは極めてはつきりしているわけでありまして、何が解除されたということは、一般にすぐ明らかにわかるということで、よさそうに思えるわけでございますけれども、それを一つもう少し掘り下げて考えてみますというと、その当局者が一体忠実に官報において次々と指定して行けば、これは非常にいいことでありますけれども、そこは今日の我々の立法の態度としては、成るべく行政権というものにいろいろそういう措置を途中の段階でさせるということよりも、法律そのもので、できるだけ客観的な基準をきめてしまつて、それであとは裁判所の判断に一足飛に任すということが、法律の建前としては新憲法の趣旨に副うであろう。今のような例えば当局者が指定によつて解除するということになりますと、実はよその国でもう取られてしまつておるものでも、つい指定による解除をしないために、日本の国民だけは処罰されてしまうという馬鹿げた場面も出て参ります。そういうことに頼らないで、すべて客観的にここで基準をきめてしまう、そういう態度で公けなつていないというような書き方をしておるわけです。これはもうお耳に入つておりますように、たびたび御説明いたしました通り、日本国内のみならず、どこの国においても公の出版物に出た、或いは出版物でありませんでも、不特定多数の者が知り得る状態に置かれたという事実があれば、その事実によつて当然これは秘密の対象から除かれるという建前になつておるわけでありますから、その意味では私どもは先ほど例を挙げました昔の軍機保護法の行き方よりも進んだ行き方であろうと考えておるわけであります。先に本委員会にずつと前に御審議頂きました駐留軍関係の刑事特別法からこういう建前をとつて参つておるわけであります。
#11
○青木一男君 その次に一番問題になつている第三条の罰則でありますが、この第一号に「防衛秘密を探知し、又は収集した者」という、これは積極的意思を持つてそういう行為をやつておることを罰するのでありますが、ここに上段に目的罰と、それからその次に手段、つまり「不当な方法で、」というものを合せて処罰する仕組になつているのでありますが、目的罰の方面からのは世間にも余り反対はないようでありますが、「不当な方法で、」という表現がどうも不明であり、又拡張的に解釈されるのではないかというような不安を持つておるようでありますが、不当な方法という意味、それからこれがこういう規定であつても、普通正当なる業務によつて行なつておる場合に、これは適用されるものではないというような点の保障があれば、そういう不安はなくなると思うのでありますが、その点についての御説明をお伺いしたい。
#12
○政府委員(佐藤達夫君) この法律の本当の狙いから申しますると、この秘密というものである以上は、取られてしまつたらもうおしまいでありますからしてこの面だけから一方的に考えますというと、目的がどうであろうと、手段方法がどうであろうと、およそ探知し、収集した者は処罰するということでないと、徹底しないじやないか、こういう一面からの考え方もあるわけです。元の軍機保護法のとつておつた態度はそういう態度であつたと思います。併しこれも先ほど来述べましたような趣旨から申しまして、今日の憲法の下においては、それはやはり行過ぎであり、善意の人々に不測の御迷惑を及ぼすという結果が又あり得るわけで、それを限定して、少くとも反社会性の認められるようなものに限つて行こうということで、この一号の目的と、それから不当な方法ということが出て参つたわけでございます。この不当な方法と申しますのは、要するに普通の一般社会通念から申しまして妥当でない方法ということになるわけでございますが、これは客観的の飽くまでも基準でありまして、決して主観的なものではないわけでございます。そういう一般通念から言つて不当な方法であると見られる手段によつて、而もそういう手段をみずから意識して行なつたという者のみが処罰の対象になるしけでございます。一方から言うと、先ほど最初に申しましたような要請から申しますというと、これで食い足らんじやないかという要請が、御議論にも出たのでありますけれども、それは又それに対して述べましたような趣旨から、この限度でここで限界線を引くことが、両方から見て最も穏当なる調和点であろうというふうな趣旨で、かような措置をとつておるわけでございます。
#13
○青木一男君 不当ということは、大体社会通念で判断するということでありますが、これは多くは犯罪でも構成するというようなことに該当するのでありましようか。或いはもつとずつと広いものでございましようか。さような考え方は……。
#14
○政府委員(佐藤達夫君) これはこの前の刑事特別法にも、実は不当な方法という言葉をこのまま使つておるのであります。その当時丁度今のお言葉のような犯罪を構成するようなものというような、むしろそういうものに重点を置くべきではないかというような御議論も一方においてはありました。即ち言葉を換えて不法な方法という、不当でなしに不法というふうにやつたらどうかというようなお話も出たことが曾てあつたわけであります。これは私どもの考えておりますところは、例えば立入禁止になつているところへ押込んで行つた。丁度まあ家宅侵入みたいな形で行つて、そうして秘密を探つたとすれば、これはもう今のお言葉にあります犯罪になるような、即ち違法の手段であります。今の言葉で言えば、不法と言えばそれらも入るわけでありますが、ただこの秘密保護法の関係から申しますと、そういう犯罪になるような行為ばかりでなしに、まあ中山委員が昨日あたり非常に御心配になつておられたのでありますが、このスパイの関係などは色仕かけが一番こわいのだというようなことを中山委員が非常に言つておられました。まさに我々の例に挙げておりますのも、今の犯罪までは行かんけれども、併し色仕かけというようなものがやはり一番恐ろしいのじやないか。そういうものはやはり不当な方法という言葉にしておかないと入つて来ない。それから故意に酒をうんと飲ませて、そうしてしやべらせるというような場合も、そのこと自身は犯罪ということにはなりませんけれども、それによつて秘密を探るということであれば、これは勿論不当な方法に入るわけであります。そういう場面を考えて、かような用語を用いておるわけであります。これも刑事特別法に使つた文字と同じ文字を使つておるわけであります。
#15
○青木一男君 この第二号のほうでは、客観的に、通常不当な方法によらなければ探知することができないものというふうに規定されておるのでありますが、これはこういうことによつて漏らす場合は、故意によつてやつた場合に限るのか、過失の場合はあり得ないのか。これは第四条の過失犯罪との関係から御説明願いたい。
#16
○政府委員(佐藤達夫君) 御尤もなお尋ねと思いますが、この第二号は、防衛秘密であるということを知つておつて、且つそれが通常不当な方法でなければどうしても探り得ないものだというようなことを知つておつて、且つ他人に漏らす場合であります。お言葉にありますようにこれは故意に漏らした場合であつて、過失のものは実は含んでおらないわけです。
 そこでこの第四条の関係は、特に第三号というものが三条のほうに設けられておるわけでありますが、これはむしろ第四条との関連においてこの三号を設けたと申したほうが率直であろうと思いますが、少くともこの防衛秘密について業務上の責任を持つておる、そういう関係を持つておるものについては、これはやはりその当局者の心がまえということからしても、もつと強い責任が本来要請されておるわけでありますから、そこでそういう人たちについては過失によつて漏らした場合でも処罰するという建前にしておるわけであります。
#17
○青木一男君 その場合の過失の観念でございますが、防衛秘密であることを知つて話したというその事実について、過失であるかどうかということのその区別は、どういうふうにされるわけですか。
#18
○説明員(桃沢全司君) 過失の多くの場合は、例えばこの防衛秘密に当ります文書を持ち歩いて、それを網棚の上に乗せたまま忘れてしまつて取られた。こういう場合は過失として処罰されると思いますが、只今青木先生の仰せられました話の場合日は、過失によつて話をして漏らした場合と、それから故意に、認識を持つて話をした場合と、この限界はなかなむずかしい問題があると存じます。個々の具体的事件で或いはこれが過失罪に該当する場合も出て来る場合もあろうかと存じますが、多くの場合はそういう話をするのでありますから、これは認識を持つている。即ち故意だつたと推定される場合が多かろうと存ずるのであります。まあ一つ考え付きますのは、相手方が防衛秘密を知り得る権限を持つておるものと誤認して話をしたところが、その相手方というのはこの法律に定める他人であつたというようなこと、こういう場合には、或いは過失が成立する場合もあるのじやないかと思います。
#19
○青木一男君 次に、第三号の「業務」でありますが、この業務という言葉の意味について世間でも大分不安を感じておるようでありますが、その意味をはつきり御説明願いたい。
#20
○説明員(桃沢全司君) 「業務により」と申しますのは、自己の従事する業務に起因いたしまして当然知るべくして知つておる、これが業務により知得、領有という関係になるのであります。即ちその知ることが、職務権限上知る、こういう関係にございます。最近新聞等でこの「業務により」という点も非常に心配されておる。又委員会におきましても、この「業務により」ということが不明確ではないかという質問をたびたび受けたのでありまするが、この点は軍機保護法、或いは国防保安法の審議の過程においても、この業務の範囲は明確になつておるのでございます。一般に伝えられております新聞社関係、これはこの業務に入らないことはその当時からきまつておるのでございます。
#21
○青木一男君 つまり業務という文字が、従来の日本の立法慣例から見て今お示しのような防衛関係の秘密を扱う業務という意味であるから、この業務という簡単な表現で同じ意味になると、こういう趣旨に了解してよろしうございますか。
#22
○説明員(桃沢全司君) 仰せの通りでございます。
#23
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
   〔速記中止〕
#24
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
 売春対策に関する問題を、秘密保護法案の審議の途中でございますが、ちよつと挾みたいと思いますから、御了承願います。
#25
○宮城タマヨ君 刑事局長見えておりましようか。……法務大臣のお疲れのところを甚だ恐れ入りますのでございますが、実は売春等処罰法案が衆議院のほうに議員提案として出て参りましたものでございますから、そうでございませんでも一度新らしい法務大臣に是非伺いたいと思つておりました折でございますので、今日お願い申上げましたような次第でございます。私この衆議院に議員提案としてこういうものが突如として出て参りましたことについて、ちよつと驚きましたのでございますが、これは恐らく政府のほうの提案が本国会にもなされないというようなところからではないかと私は推察いたしておりますのでございますが、もうこの法案について衆議院のほうでは何か大臣に対しこの質疑でもございましたでございましようか、如何でございましようか。
#26
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 只今宮城さんから御質問の売春等処罰法案と、うものは、提出されてはおりますが、委員会はまだ開いておりませんですから、私としてはまだ公式の委員会において御質疑はありません。
#27
○宮城タマヨ君 前法務大臣からこの売春対策についてのお引継ぎがございましたでしようと思つておりますが、現法務大臣は前法務大臣のあとを継いで、前法務大臣のこれを政府提案をやろうとおつしやつた方向に実はいらつしやろうというような御決意はございましたのでしようか、その点のお引継ぎは如何でございましたか。又この点についての法務大臣の御意見は如何でございましようか。
#28
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 犬養前法相から総括的な引継ぎは受けたと思いますが、私といたしましてはこれをまだ提案するまでの決心に至つておりません。
#29
○宮城タマヨ君 本委員会におきましても法務、文部、厚生、労働四省に関係しておりますこの売春対策の問題でございますので、審議会を四省協力で開いて項きたいと要求いたしました結果、審議会はできませんでございましたが、売春対策協議会というものが今年の一月に内閣の協議会としてできましたのでございますが、その協議会でもつぱら法案の審議が進められておりますやに伺つておりましたので、実はその進度の様子なり経過なりを一度ゆつくり伺いたい。これは法務大臣まだ御存じございませんでしたら、刑事局長からでも、又その他の係りからでも一つ御説明願いたいと思います。
#30
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 只今お話のごとく、内閣に売春対策協議会というものが設置されまして、学者又経験ある方々がお集りになりまして、すでに私の知るところによりますというと九回に亙つていろいろ対策を審議中であるのでございます。
#31
○宮城タマヨ君 刑事局長から、もつと評しい法案の審議のどの辺まで進んでおりますかということは、伺えないでございましようか。
#32
○政府委員(井本台吉君) 只今大臣から御答弁がありました通り、最近までに九回この売春対策協議会を開きましてこの協議会には各省の次官並びに有識者が十五名委員になつておるのでございますが、ほかの委員会と違いまして、代理者が殆んど出席いたしませんので、全部お忙しいのにもかかわらず本来の委員、幹事が毎回出席せられまして非常に御熱心に御討議頂いたのでございます。
 結局売春対策というものは、単なる刑罰だけを以て強行いたしましても、これは根本的な対策にはならないということが全体の空気でございまして、そのために直接の婦女の売春行為というものは、その悪質なものはこれは刑罰を以て処分しなければならないけれども、原則といたしまして保護処分というようなことを考えておるのでございます。又処罰するにいたしましても、従来のような罰金だけであるとか、或いは刑も定期的なものじやなくて不定期的なものを考えたらどうかというようなことを考慮いたしましております。それから勿論娼家経営者等につきましては、これは厳重に処分しなければいかんというようなことの方針には変りないのでございます。かような観点につきまして大体一応の結論を得まして、それを目下小委員会に付しまして、どういうふうな形で法文化するか、法文化の前提の要綱などをまとめようということで、この次の小委員会がたしか今月二十一日に開かれることになつております。それまでに全体の今までの経過を全部まとめたいというように考えております。
#33
○宮城タマヨ君 そういたしますと、今度衆議院のほうに提案がせられましたことについては、こちらの協議会はどういうことになりますか。従前通りの方針を変えないでやはり立法措置をしようという方向でいらつしやるつもりでございますか。これは刑事局長に……。
#34
○政府委員(井本台吉君) 私どもそのために約十回に亙りまして御熱心な御討議を頂きましたので、衆議院に提出されたような刑罰だけの法案でござましたら、これは一晩でできるので、あのような提案については無条件にはどうも賛成いたしかねるというように考えております。
#35
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 私からもその点についてお笑えいたしたいと思いますことは、先刻お答えの中に、この法案について、ということはこの提出法案についての御審議はないのでありましたが、ほかの衆議院の法務委員会において売春取締法に関する只今の売春対策協議会のことについて政府の所見を質されましたのですが、私は当時これは俄かに賛成することはできがたい。この対策協議会において十分の検討を終えて総合対策ができ上つてから提出いたしたいと思つておりまして、この売春等所罰法だけでは俄かに御賛成できんという意思を表示いたしたことだけ申添えておきます。
#36
○宮城タマヨ君 今大臣からも局長からもお話がございましたが、私どもが実はこの十五国会に今度提案されましたと同じようなものを実は出しましたのでございます。そのときも私どもこの法律の文面には現わすことができなかつたのでございますが、どうしてもこの保護処分の必要があるということを認めてどうかしてあの少年法のような工合に大体保護処分で行つて、そして止むを得ざるものに刑事処分をするといつたような、つまり保護とそれからこの刑罰と両方面でというようなことを大分研究をいたしたのでございますけれども、それがなかなかむずかしいものでございますから、つまり保護の面のことは施設その他民間のものを以てというようなことにする準備をいたして提案いたしましたが、あの通りに国会が解散になりまして流れてしまつたようなわけだつたのでございます。でございますけれども今ここに今国会におきまして刑法の一部改正で初度目の執行猶予者に保護観察がつくことになりましたので、私はこれでつまり全国五万人以上の保護司に一つまあ一層の御苦労を願えば、或る程度まで賄えないかというようなことを考えておりますが、刑事局長この辺の点についてのお考え如何でしようか。
#37
○政府委員(井本台吉君) 刑法の改正による保護観察というのと、婦女の売春したものの保護処分というのとは、多少私どもも考え方を変えていいのじやないかというように思つております。お話のようにもう少しこの少年の保護処分に似たような制度で、刑罰ということを少し離れまして、保護のほうを少し重視して行きたいという考えを持つております。尤もこの処罰ということも、これもなければなりませんので、只今のところでは悪質なものは処分するというふうな一応の観点を持つておりますが、保護処分と刑罰というものを並行的に考えていいのではないかということを考えておりますが、さような点についても先ほど申上げましたように、小委員会でまあ具体的な案をまとめたいという考えを持つておる次第でございます。
#38
○宮城タマヨ君 大臣もお急ぎのようでございますから、もう少し法律上の点で伺いたいと思いましたが、次回に廻しまして、今日は法務大臣に前大臣と同じように是非一つ熱意を持つて、この売春対策について処罰で行くか保護で行くか、或いは両方で行くかというようなことは又いろいろ研究の余地があると思つておりますけれども、一つ是非何とかして頂きたいということを切にお願い申しておきたい。と申しますことは、この間あのように世間を騒がせました鏡子ちやん殺しのあの坂巻という少年でございますが、この少年は十五歳の時以前から親の物を盗み出しまして金その他家からだんだん今度は窃盗の範囲が拡がりまして、周囲の物を盗むというような外部的な窃盗をいたすようになつたのでございますが、その時に家庭裁判所へ行つております。つまり今挙つております本富士警察に挙げられまして本富士警察から家庭裁判所に廻つて、家庭裁判所の調査によりますというと、その金を盗みましたのは淫売を買う金だつたのです。でございますから、この少年は表に現れましただけでも、調査によりましただけでも、十五歳前後からそういう行為をいたしておりますから、そこで私はその点についていろいろ伺いたいと思つておりますのでございますが、どうも私はこの少年についてもつともつと知りたいと思いましたために、家庭裁判所のほうに非公式に調査して頂きまして、漸く二十四年に家庭裁判所に来ておるということがわかりましたけれども、この少年は非常に変質者でございまして、窃盗のほかに墓場を掘る癖があつた、死人を掘り出す癖があつたというようなことも出ておりますようでございます。そこでこれは専門的に申しますというと、保護観察の問題、それから鑑別所の整備の問題といつたようないろいろの問題がございますが、法務大臣に対しまして、とにかくこれだけ世間を騒がせましたし、又世の中の母親が実に戦慄いたしまして、私のところなどにもこれはもう売春処罰法を早く制定してもらつて、この売春に対して厳罰を以て臨んでもらわなかつたら、だんだんこういうことになつて行くというような、つまり今まで余りに売春行為というものに対しまして、男子にも女子にも軽んぜられて、そうして国家が又このことを黙認しております、公認しておりますということが、こういう事件になつたんではないか、僅か一人の問題でございますが、これは非常に大きい問題なのでございます。そこで私はこの事件から推して参りましても、どうしてもここで処罰をする、売春は許せないところの罪悪であるということを、明かな国家の意思として高いところに掲げて頂きまして、そうして警鐘を乱打してもらいたい。この事件からも切に私は売春取締を強化したいということを願うわけなんでございます。そこで大臣お時間がございませんでしたら、私は今日は大臣に対しましてお願いだけにいたしておきまして、日を改めましてもう少し法律の面からいろいろお伺いしたいと思つておりますが、若しできましたら刑事局長それから矯正局長もおいで下さいましたでしようか。
#39
○委員長(郡祐一君) 見えております。
#40
○宮城タマヨ君 それでは大臣に対する質疑はこれでやめますでございます。
#41
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 只今宮城さんからいろいろの御注意有難く拝承いたしました。売春問題は極めて平凡な問題でございまするが、又この解決はなかなか困難な問題であると、こう私は信じておるのであります。一面婦人の人権に関する問題でございまするし、又風紀に関する問題でありますし、又一面病毒というこの重大なる問題を持つておる問題でございまするが故に、単なる一つの考えだけでは、これはけりをつけるわけには参らんとこう思うのでございます。又無闇に法律を出しましたところが、その法律が実際行われないような法律でありましたならば、全体の法律の権威にもかかわることでございまするが故に、これは極めて平凡な問題でございまするが、政府といたしましては只今申しましたように、協議会の意見の結論を伺いまして、十分研究いたしまして対策に乗出したいと、こう思つておるのでありまするが、繰返しますが、極めて平凡な問題にして極めてむずかしい問題であるということだけをお答えいたしておきたいと思います。
#42
○宮城タマヨ君 もう一つ、大臣は極めて平凡とおつしやつていらつしやいますが、極めて平凡というこの御趣旨は、私にはよく了解できませんが、私どもは極めて緊急な、極めて深刻な問題だと思つております。それでどうぞよろしくお願い申上げます。
#43
○楠見義男君 法務大臣にかねてお伺いしたい機会を求めておつたのでありますが、なかなかその機会がなく又本日も非常にお忙しいようでありますから、私は詳細は別の機会に譲りまして、幸い刑事局長も御一緒の席でありますから、極く簡単にお伺いしたいのであります。それは検察庁法第十四条の指揮権発動の問題であります。この問題については、かねて御承知のように参議院としては院議が尊重されない、無視されておるということからいたしまして、再々本会議場でも緊急質問を重ねておるような状況でありますと同時に、私ども参議院議員としては飽くまで、院議尊重の結果が生ずるまで何回も続けてこの問題は究明して参りたいと、まあ考えておるようなわけでありまして、そこでこの問題について委員会或いは本会議場においていろいろ政府と議員との間の質疑応答が重ねられまして、未だに意見の一致と申しますか、了解をとりつけるまでに至つておりませんが、ただ明かになつたことは、政府は重要法案の成立の目途がついたときに指揮権を撤回する、こういうことを言つておられるのですが、この重要法案の成立の目途がついたという、この目途というのは一体何を指して言つておられるのか。或いは重要法案が衆議院を通過した際を言つておられるのか、或いはそのほかのことを考えておられるのか、この点を先ずお伺いしておきたいと思います。
#44
○国務大臣(加藤鐐五郎君) 参議院からこの問題に対しまして警告の決議を与えられたことに対しましては、しばしば総理、副総理、私どもも本会議しおいて申上げた通りに、誠に申訳のないようなことでありまして、敬意を表して承わつておき、少くとも速かなる機会において重要法案の通過の見通しがつくまでと、こう申しておることは御承知の通りでございまするが、その見通しということは、誠に犬養前法相も見通しのつくまでということでありまするが、これは参議院におきまして、私どもは政府が申しました重要法案が通過する、通過したい、通過の見通しと申しますというと、どうも言葉が抽象的になつておりまするが、通過いたしましたらば、という意味に私は解しておるつもりでございます。一例を申しますれば、この教育法案がこれが通過しましたが、通過したらばという意味に只今解釈いたしておる次第でございます。
#45
○楠見義男君 これはまあこの問題を今やつておりますと時間がかかりますから、ただ総理大臣或いは緒方副総理、それから加藤法務大臣がおつしやつた重要法案の成立の目途がついたということは、私は実はそういうふうには解釈しないので、衆議院で法律が通り、それが参議院に回付され、参議院が通過したということは、それは成立ということなんで、成立の目途がついたということは、もう少し意味が違うのじやないかと思いますが、それをやつておりますと時間がかかりますから、今日そういうことをおつしやつたということたけを、帰りまして緑風会に伝えたいと思つております。
 それからもう一つこれはお伺いであると同時に、御要求のようなことになるのでありますが、かねてこの発動によつては捜査は支障を来さないと、こういうことを政府側は言つておられます。併しいろいろ議院運営委員会或いは本会議等で私ども伺つて承知しておる結論から申せば、私は捜査に支障を来しておると、こういうふうに理解しております。まあ政府のほうはそうでないということをおつしやつておりますが、どうもそういう結論にならざるを得ないと私は考えておるのでありますが、それはそれといたしまして、御要求申上げたいことは、この指揮権発動の問題に関して検察庁とそれから法務省との間で、事柄が極めて重要であるからというので、文書で以て往復がせられたことと承知しておるのでありますが、若しそれがそうでなければ、私の今これから申上げることはその必要はないのでありますが、文書で検事総長から法務大臣に御要求になり、それに対して法務省から御回答にこれ又文書でおやりになつたように承知しておりますが、若しそうだとすれば、その往復文書をこの委員会に御提出願えるかどうか、このことを御要求を兼ねてお伺いいたします。
#46
○国務大臣(加藤鐐五郎君) この問題は今捜査の過程にありますが故に、その文書というようなものはここで公表することは遠慮いたしたいと、こう存じます。
#47
○楠見義男君 捜査の内容に関することであれば、おつしやる通りだと思いますが、そうじやなしに検事総長のほうから法務大臣に、これは捜査上必要であるからというので、捜査の内容それ自体には触れずに御要求になつておられる、それに対しての往復文書だと思つておりましたが、その点は刑事局長如何でしようか。
#48
○政府委員(井本台吉君) 私から事務的な問題ですからお答え申上げます。この被疑事実、並びにどういう点について証拠隠滅の虞れがあるかということについて、詳細な文書が検事総長から法務大臣に当てて伺いが出ておるわけであります。それに対する資料も出ておるわけであります。大体の骨子は新聞に発表された通りでございますが、その内容につきましては、今現に調べ中でございますので、只今のところでは捜査の関係上、発表の点は御猶予頂きたいと考える次第でございます。
#49
○楠見義男君 別の機会に……。
#50
○委員長(郡祐一君) それでは法務大臣は他の委員会の御要求を受けておるようでございますから、法務大臣はこれで退席をして頂きます。
#51
○宮城タマヨ君 刑事局長にお尋ねいたしますが、先ほどの続きで鏡子ちやん殺しの坂巻修吉の事件につきましては、どの程度のお調べが進んでおりますのでございますか。
#52
○政府委員(井本台吉君) 甚だ恐縮でございますが、実はその点に関して報告を調べて参りませんでしたから、どの程度に進んでいるか、今御答弁申上げかねる次第でございます。今、石井検事に聞きましたのですが、石井検事も何も聞いていないと言つておる次第であります。
#53
○宮城タマヨ君 実は私も本富士署に行つて少年に会つて見たいと思つております。それは私は私の立場で、私の考えで会つて見たいと思うのでございますけれども、両三日のうちに一つ捜査、調査の進度を一つ伺いたいと思つておりますから、お調べ願いたいと思います。それで事件はともかくといたしまして、とにかく坂巻修吉少年は十五才前後から非常に女に関係がございますということは、前に事件のときにも明らかでございますが、どうもその後、ずつとそのために窃盗もし、もうすべての問題がそこから起つておるというように思われる節がたくさんあるのでございます。それで事件を聞きましたところが、その当時は大したことでないように調査官が考えておりまして、家に帰しましたらしいのでございます。つまり在宅で調査されたようであります。
 そこで私は又甚だいつもやかましく申しまして、しつこうございますけれども、鑑別所の問題を少し今日伺つて見たいと思つておりますが、こういう子供に対しまして、鑑別所が本当の意味で利用されておりますならば、その当時に変質者であるとか、もつと肉体的にも、精神的にも、心理的にも環境調査の上のいろいろなことが出て来るはずだと思つておりますが、どうも鑑別はされていなかつたように思つておりますのでございます。そこで今の鑑別所なるものが、その当時もなお更でございましようけれども、本当のことは拘禁或いは拘置所の代理、いわゆるデテンシヨン・ホームの代りをするということが鑑別所の目的であるかのようにされているということが、つまり拘禁する必要はない、家に帰しても逃げる心配はないというような意味でこの少年を家に帰されたのじやないか。そして鑑別所の門をくぐらないで結局逃れておりますために、今日この大事件を惹き起すようになつたのではないかというように考えておりますが、局長は、鑑別所の問題に関しまして、局長の一つ御意見と申しますか、今後のあり方と申しますか、一つ伺いたいと思つております。それは、この前に局長のいらつしやらないときに申したのでございますが、家庭裁判所のほうでも、やつぱり同じような医務室を設けて鑑別設備をするというので、今年は十カ所の家庭裁判所にこれを設備する意味で予算を八百万円ほど取つているのでございます。そこで私は、本当のことは、法務省の今までの鑑別所に対しまして、もつともつと予算を取つて、これを充実すべきが私は第一段階ではないかというように考えておりますのでございますが、機構改革のときも問題になりましたように、もう鑑別所でなくて拘置所に子供を移されるというようなことも出ておりましたのでございますが、この見通しと申しますか、局長の一つのお考えを伺いたいと思つております。
#54
○政府委員(中尾文策君) 鑑別所のことでございますが、鑑別所が法律で要求されておりまするような機能を、まだ十分果し得ておらないということにつきましては、大変私たち責任者といたしまして恐縮をしておる次第でございます。併しまあ裁判所の医務室との関係でございますが、このほうは観護処分、つまり身柄の拘束を伴わないものにつきまして鑑別をする。或いは家事事件なんかにつきまして、科学者の力を借りる必要があるというような場合、そういう方面を十分充実をしておかれる必要があるというわけだそうでございまして、別にこれは私たちのほうの鑑別所とは衝突をするものではないと存じます。私たちのほうといたしましてはやはり観護処分にしなければならない少年はたくさんございますし、なお身許にずつと置いておきまして、そして一日中の食生活を仔細に観察いたしまして、その上でなければ鑑別はできないというような少年も随分たくさんあるのでございまして、鑑別所は鑑別所といたしまして独自の使命があると思いますので、この方面にますます充実して行かなければならんと感じておる次第でございます。なお又、一向法律が要求しておるようないい成果を挙げておらんということも事実でございますが、何しろ人間を判断するとか、或いはその人間の将来をどうしたら一番いいかというようなことにつきまして見通しを付けるというようなことはなかなかむずかしい問題でございますし、なお又御承知のように、まだこういうふうな仕事を始めましてから僅かしか経つておらんというような関係もございますので、私たちといたしましては非常に問題をたくさん今のところ持つておりまするが、まだその快心の仕事をするというところまで至つていないのは残念でございますが、なお一層この点につきまして努力をして行きたいというふうに考えておる次第でございます。
#55
○宮城タマヨ君 鑑別所は、鑑別所の目的がございますることは、私も幾分存じておりますが、そこに子供を収容いたしまして、その子供の本当の性能、慣習いろいろなものを調査、鑑別いたしますにつきましては、やつぱり子供らしい自然の生活をさせて見るということがむしろ大事なことで、一つ部屋にといいますか、雑居もございましようし、それからいわゆる独房のようなものもございまして、あの中に入れておきまして、便所もあの中にあつて、じつと坐らしておいて、あたかも未決の被告のような形をとらせておきますということは、私は子供の本当のことはわからないのじやないか。そして実際何十時間もあそこにおります間に、本当の鑑別のつまりいろいろな調査の機械によつて調査される時間も、僅かに二時間乃至四、五時間というようなことを全国的に調べて見ると言つているけれども、その機械で調べることはそう長くはかからないと思いますけれども、あそこに本当に拘禁しておきますということが、私は鑑別所の使命じやないと思つているのでございます。この点につきましては、私は一つまあ観護処分をしなくちやならない少年もたくさんおりますのでございますから、余り理想的なことばかりを言つてはおられませんけれども、どうしても私は少年法による保護処分の過程におきまして最も改善を加えなければならない点は、鑑別所の問題だろうかと思つているのでございます。それで今度の鏡子ちやん殺しの坂巻少年につきましても、この子供をもつと完備した本当の使命による鑑別所に入れまして、観察し鑑別いたしましたら、この子供は非常に変つているということを私は発見されるのじやないか。而も私はここにもう一つ問題がございますのは、これだけの子供につきまして保護処分の、つまり保護観察に付されていないということなんでございます。このことが結局は、この少年法の運営の過程にございます警察、検察庁、それから家庭裁判所、それからまあ鑑別所、観察所、それから少年院といつたようなものが、今日におきましてはそうでないと口では言いながら、やつぱり私はここに畑争いがあるんじやないかというようなことを懸念いたしているんでございますが、如何なものでございましようか。この家庭裁判所面から伺つてみますというと、鑑別所、つまり、鑑別所という名前ではございません、医務室の強化ということを言われておりますけれども、結局はこれはこの法務省関係から鑑別所を家庭裁判所に移してもらうのが本当の途ではないか、本当の仕事のいい処理をするのに役に立つのではないかというようなことを言われておるのでございます。或いは私はそのほうがいいかも知れないと思うんです。でございますが、折角今までこの法務者関係といたしまして各県にたくさんの費用を使つてできておりますので、これを何とかこのままにして、もう少し役に立たせたいということを私本当に念願しているんでございますけれども、何とかならないものでございましようか。私は一つは取扱う人の頭の改進ではないかというように考えておりますのでございますが、いろいろごたごた申しましたけれども局長さんのお考えをお伺いしたいんでございます。
#56
○政府委員(中尾文策君) まあ仰せの通りに鑑別所で実際仕事をやつております者の質の問題は非常に大きな問題だと思います。何しろあれは急場で、一遍に全国にできましたために、職員を募集いたしまするのに非常な困難を来しましてそうしてその人選について、実は理想ばかり言つておられませんというわけで、今になつて考えてみますると、あの程度の人じやどうか知らんと思うような者がまあ相当ございますので、そういうことのために職員の人数も少いというようなこともいろいろ因果関係がございまして仕事の能率が思うように上らない。これだけのお金をかけて、これだけの設備を持つている以上は、もつと何とかできそうなものだということを確かに私たち感ずるわけでございますが、併しこの家庭裁判所との縄張り争いというようなことは、私たちとしては別にそう考えておるつもりはございませんが、ただお互いに相手のやり方を見ておりますと、もつとこういう点が力を入れなければいかんじやないかというふうなことをお互いに指摘し合つたり感じ合つたりするわけでございますが、併しそれはお互いに会いまして、そうして意見を交換したりなんかしておりますというと、そういうことがきつかけになりまして、仕事の向上というようなことに役立つておるということも感ずるのであります。それから鑑別所を裁判所に移したらどうだというようなことも私も考えたこともございますので、これはまだ法務省として検討したわけでございませんので、全くの私見でございますが、私も一時そういうことを考えまして、又アメリカなんかでもそういうことをやつておるところがございますので、どうか知らんということを検討してみたのでございますが、どうも私として踏切れませんのは、あそこの鑑別所で観護処分をやつた少年を、あそこで管理しておるわけでございますが、この鑑別所の管理ということは非常に大きな行政でございまして、裁判所はこれだけ大きな行政というものを果して持つていいかどうか。三権分立の建前から申しまして、この点に相当大きな根本的な問題があるんじやないかということを考えるわけでございます。それでこの問題は極めて一部分ではありますが、拘置所なんかについてもその問題がございまして、つまり未決拘禁をする、未決拘禁の執行所というものは他の官庁、裁判所へ付けたらどうかというような説もまれにはあるわけでございますが、併しやはりこれも非常に大きな行政でございますので、これは今のところでは到底できないというふうに考えられているわけでございますが、それで今の範囲内で家庭裁判所と協力して行つて、そうしてまだまだ能率を上げられる余地が相当あると思うのでございます。なお又、この鑑別所はその中に入つております少年の鑑別自体につきましては、まだ相当いろいろ問題もございますが、行政部門におきましてそのほかに少年院とか刑務所とかいうふうなものがございますが、そういう方面に対しまして鑑別所の専門家が相当啓蒙的な指導的な役割を今果しているわけでございます。例えてみますというと、鑑別所から送りました少年、それが少年院に入つておりますが、そういうものにつきまして少年院の者とその鑑別所の者とが一緒になりましてそうしてその少年の処遇方法なんかにつきましてケース・スタディをやつておりますが、それをずつとほうぼう二、三年あちらこちらで始めまして、だんだんとそのために職員の訓練もでき、又少年の処遇方法、見方なんかにつきましても啓蒙、啓発されまして、私たちの見るところによりますというと、だんだんこれで成果が挙つて来ているように思うわけでございまして、なおできますならば、この刑務所のほうの成年の受刑者の矯正ということにつきましてもそういう専門家の知識を借りたいというようなことを考えておりますが、まあそんなよそのことをやらないで、鑑別所自身のことをもつとやるのが本旨でございますので、勿論そういうつもりで仕事はいたしておりますが、併し自分のほうから送つた少年が少年院でどういうふうになつているかということを、ずつとあとをつけて研究させることも、鑑別に役に立ちますので、今そういう方面も同時に余り本来の仕事に支障を来たさない限りやらせているわけでございまして私どもは勿論現状は甚だ申訳ない状態でございますが、これはあとだんだんと年を経るに従いましてもつと御期待に副うようなものになれるだろうということを考えているわけでございます。
#57
○宮城タマヨ君 これは憲法の問題もございますけれども、旧少年法のように家庭裁判所の少年部というものをもう一遍法務省に取上げるというお考えは、取上げたら仕事はうまく行くというお考えは、ございませんでしようか。
#58
○政府委員(中尾文策君) 折角今のような体系で出発いたしたところでございますし、なお少年関係の裁判官に相当優秀な方があるようにも存じておりますし、私はやはりこの新らしい方法で、ずつと行つたほうがいいということを考えておりますので、まさかその少年部をこちらへ持つて来るというようなことはちよつと今のところ考えられないことでございます。
#59
○宮城タマヨ君 実際の仕事から言いますと、保護の道程において、執行と決定とが別の機関でやられるということはこれは理窟から言つてもおかしいと思う、むずかしいと思うのです。ですからところかまわす私にものを言わして下さるならば、本当のことは旧少年法のほうが私はよかつた、子供のためになつたと思つております。で、それは今言つても仕方がございませんけれども、そこで私は決定の機関、執行の機関すべて、又警察、検察庁あらゆる面の人たちがもうとつくりと子供を中心にして、どうすれば間違つたことをする子供たちが救われるかという点について胸襟を開いて相談するといいますか、研究すると申しますか、そういう人が集まつて相談する相談会と申しましようか、もつと官庁的に言えば協議会かも知れませんが、何か一つここに方法を立てまして、もう根本的に機構改革をするくらいな意気込みを持つて、できるならば児童省といつたようなものを作つて、もう子供のことはここで何もかもやるといつたような構想を持つて、一つ集つて研究してみたらどうかというようなことをかねがね思つておりますのですけれども、時間がございませんから、まあ今日はこれきりでやめますけれども、そういう点について一つ局長は家庭局長その他とも御相談下さいまして、一つ案をお練り願いたいということをお願い申上げておきます。
 それでいま一つこの鏡子ちやん殺しの坂巻はまだ二十一才でございますようです。今年の六月になれば満二十一才になると思つておりますのでございますが、この少年法の運用によりましては二十三才まで保護ができるわけたんでございます。これは一つ法務省で特別のケースとして研究して頂きたいと思つております。そうして私は売春問題ともこれをからませまして、殊にこの坂巻少年が実に十四、五才、十五才前後から非常な悪い習慣を持つておりますというこの子供について、一つ優秀なケース研究家、ケース・ワーカーにお頼み下さいまして、ケース研究としてこれをやつてみて頂きたいと思います。こういう子供は、殊にモヒ中毒なんかの子供は今日たくさんおりますので、これは一人の問題でなくして千人、万人の問題だと思つておりますから、お願い申上げておきます。私はこれでよろしうございます。
#60
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
   〔速記中止]
#61
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。
 先ほど引続き御審議を願つておりました途中におきまして加藤法務大臣に対する質疑をはさみましたが、もとに戻りまして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案についての御質疑を願います。
#62
○楠見義男君 秘密保護法案につきましては、先般概略のことについて法制局長官を初め政府のほうに御質問申上げたのでありますが、なお漏れておること二、三についてお伺いしたいと思つております。これは主として保安庁関係、或いは法務省関係になるかとも思いますが、問題は一条の三項と、それから二条の標記の問題であります。この点は先般も私は羽仁さんの御質問に関連してお伺いしたのでありますが、とにかく本来現在の日本には軍事秘密というものはないはずだ、旧憲法当時又旧軍国主義当時においては漠然とではありますが、或いは又漠然とした通念として軍事秘密があつて、通常の社会観念として近寄りがたい、近寄つてはならないというような漠然とした秘密が、軍事秘密があつて、その秘密の中で具体的に軍機保護法とかいろいろな法律があつたのだけれども、新らしい憲法の下においてはもはや本来防衛秘密というものは日本にはないはずである。そこでこの法律によつて初めて防衛秘密というものが出て来るわけだから、そこでこの三条の公になつている、いないという問題、これが非常に重要な意味を持つて来るということを申上げ、又質問もいたしたのでありますが、お伺いいたしたいことは、この第一条の三項で「公になつていないもの」とそれから二条の標記の問題であります。これは標記を附したものは勿論これははつきりするわけでありますが、標記を附せないものについてはどういう取扱いになるか。実は前提としてそれも防衛秘密ではないかということを疑問として先般は申上げたのでありますが、この点は改めてお伺いしておきたいと思うのであります。
#63
○政府委員(上村健太郎君) お答え申上げます。標記としてあるものと、してないものとの区別でございますが、標記ができますものにつきましては可能なる限り標記をいたすつもりでございます。併しものによりましては標記をなし得ないものがあるのではないかという考えを持つております。又、この武器の一部等につきましては、その場所或いはその部屋に一般の方は立入らないようにというような注意書きをいたし、この標記に代えるというようなこともございます。標記をしていないものにつきましてもこの防衛秘密ということはあり得るわけでございまして、但し防衛秘密は先般来お答え申上げております通りに、相当高度のものでございまして、一般国民が接触する機会が先ずないものと考えられますし、又この法律によりまする罪に当りますためには、そのものが防衛秘密であるという認識を必要といたしまするので、この標記をしてないものにつきまして制せられる場合というのは、たとえ場合がありましても非常に少いのではないか、一般国民に対しては殆んどないと考えておる次第でございます。
#64
○委員長(郡祐一君) ちよつと申上げますが、法制局長官が十二時半から公用があるそうでございまして、若し法制局長官の御質疑があれば法制局長官に……。
#65
○楠見義男君 だから私は最初から断つておきましたのですが……。今もお話になりましたように罰則の適用を受ける場合には、防衛秘密であるということについての認識が必要であると、こういうことなんですが、そうなつて来ますと、余計に第二条第三項の公になつておるという意味が非常に厳格に考えなければならんと思うのですが、と申しますのは、一般の国民はそのものが公になつておるかなつておらないかということについて知り得る機会というものは非常に少いのではないかと思うのです。今おつしやつたように標記が附せられておるもの、これははつきりしておると思いまするし、又お言葉の中にあつたように標記に代るものとしての何らかの取扱いを受けておるもの、これもまあ大体標記に代るものとして明らかでありますから、その点はいいと思うのであります。ところが標記を附せず、或いは標記に代るものを附せられておらないという場合に、そのものが具体的に公になつておるか、なつておらないか、而もその公という意味が、これも先般お伺いしたところでも明らかのように、ひとり日本の国内におけるのみならず、外国において或いは新聞雑誌、或いは又国会の論議、公聴会等で述べられたものもすべて公になつておるものと解釈するとこういうことでありますから、そうなつて来ると今申上げるようにこれが公になつておるのか、なつておらないのかということについては、実は一般国民は非常にこの点については知り得る機会がないと思うのです。それがたまたま公になつておらないという結果から見て、そういうことで罰則に付せられ、たまたまそれが外国の新聞雑誌に出ておつたという事実によつてこの公になつておるということで取扱われるということでは、私は非常にこの法律を運用する面から言えば、或いは便宜かもわかりませんが、受ける面から言えば非常に心配になることだと思うのであります。従つて公になつておらないということと、標記を附すということ、これを結び付けなければ、なかなかむずかしいのじやないか、適用上……、こういうふうに思うのですが、この点についてもう一度お伺いいたしたいと思います。
#66
○説明員(桃沢全司君) 只今楠見先生の仰せられましたように、この公になつていないかどうかということを一般人がなかなか知りにくいのではないか、これは確かにお話の通りと存じます。併しながら私どもがこの「公になつていない」ということで救おうとしておるのは、これは一般人でございます。例えばアメリカの放送を聞いた、或いは北京の放送を聞いた、それで聞いたものを喋つた場合に、その聞いた人はこの「公になつていない」ということをよく知つておるわけでございますから、そういうものはこれは処罰の対象にはならないということも御本人もよく御存じになるわけなんでございます。取締りの立場に立ちます、例えば検察庁のごときは「公になつていないもの」ということの立証その他で非常にこれはむずかしくなつている、取締りの面では非常に重荷になりますけれども、一般の人はこれによつて救われるのではなかろうか、かように私どもむしろ逆に考えておる次第でございます。
#67
○楠見義男君 いや私の言つているのは、あなたの今おつしやつたと逆なことを言つておるんですが、たまたま海外放送で聞いたとか、或いはその海外の新聞雑誌を読んでおる人とか、そういう方はもう公になつておることなんだからということで問題はないわけなんです。ところがそういうことを客観的には外国の新聞雑誌に出たという事実があつて、その事実があればすでにこれは公になつているものと解釈すると、こういうことなんですから、そこで或る人がこれに触れるようなことをやる。ところが本人は何も知らない、ところがたまたまどつかの外国でそういうことが新聞に出ておるということによつてそれが公になつておつたり、なつておらないということになると、まあ普通に動いておつて、そうしてその公になつたか、なつていないか、ということは実はわからずにやつておつて、それがたまたま新聞に出ておるという一事で以てこの罰則の適用は排除され、或いは罰則が適用される、而も検察官も失礼ですが同じような立場の場合が多いのじやないかと思う。そうするとこれも先般の参考人の方がお話になつておつたように、これは一体その公になつておるか、なつておらないか、ということを日本政府に聞き、或いはアメリカ政府に聞くというようなことをしなければこの法律の適用がされないという場合も出て来るのじやないかということでは、如何にもこの法律を適用する上において不確定と申しますか、アンビギユアスになつて来るのじやないか、という点が実は心配になつて申上げる。それも前提は再三申上げるように、本来日本に防衛秘密というものがあるということが社会通念上認められておつて、従つて成るべく危いものには近寄るなというような慣習といいますか、通念があればまだしも、そういう通念はもはやなくなつたのだから、余計これは不的確といいますか、アンビギユアスになりはせんかと、こういうことなんです。従つてできれば標語のあるものというものに限定をして、或いは標記に代るものが附せられたものに限定をしてやることが一番いいんじやないか、こういうことなんですが……。
#68
○説明員(桃沢全司君) 只今最後のほうで、楠見先生は今これが公になつているかどうかを知らなくてわからないから、それで伺いを立てると、こういうふうに仰せられたのでありますが、では一体そういう内容のことをその人がどういう経路で知つたかということが実際問題としては問題になつて来ると思うのであります。それがラジオで聞いたり、新聞で読んだりした場合、これは問題でございませんが、他人から聞いたような場合が少し問題になると存じます。これも例えば保安庁の役人からこれはこういうわけでこういう点が非常に高度の秘密として守られなければならないのだということで、たまたまその話を聞いたという場合、これは又判断ができると思います。そうでなくて、世上に流布されていることを開いたというだけならば、これは恐らく多くの場合に、それが防衛秘密に当るという認識がない場合が多いのではなかろうか。それを又公であるかどうかということを確めるまでもなく、その方面から外れる場合が多いのではなかろうかと考えます。
 なお先ほどラジオ、新聞は申上げましたけれども、刑事特別法で公になつていないものをいうといつた例がございます。この間も羽仁先生にも少し例を申上げておきましたが、例えば前の刑特法では機関銃座、これを撮影してはいかん、これも秘密になつていたようでございますが、これも一般人が通行し得るような場所でそれを写真にとる、これは公になつているという点で、外れて来るわけでございます。又これは事件にはしてございませんが、或る土地で防潜網の地図を写したという事件がございました。これも防潜網は漁船で通れば見えるのでございますから、そういう意味で、前の軍機保護法当時は防潜網の所在というようなものも軍機として取扱つておつたようでありますが、この立て方から申しますと、公になつているという点で、これも外れて来る。ですから一般の国民の保護という面からは公になつていないものということで相当救われる。そのほうを私ども強調してこの立案に当つているのでございますが、仰せのように、客観的に公になつているかいないかはきまるのだから、その事件々々によつて甲乙が出て来るのじやないか、又それを公になつておるかいないかということを十分明らかにするのは困難ではないか、これは確かにあると思いますが、保安庁のほうでもよく連絡をとつて、公になつているものはどんどんわかつた範囲では、防衛秘密から落して行くという努力は、これは当然私どもとらなければならないところだと思つておる次第でございます。
#69
○楠見義男君 今のお話の中で、防潜網の問題とか或いは機関銃座の問題が出ましたが、曾て旧時代には要塞地帯の撮影禁止、併しそこは人がしよつちう通る実にナンセンスな場合もあつたのですが、併しそれはそれでもさつきから申上げるように、軍機、秘密というものが抽象的に通念上あつて、とにかくそれには触れてはいけないのだという、気持があつたから、まだ一部では恕せられる点があつたかと思うのでありますが、ところが今度はそういうことはない。そこで極めて平俗な庶民的な感情からものを伺いますと、人には好奇心というものがある。そこで例えば具体的に一つの兵器なら兵器についての性能、あの兵器は実にすばらしい性能で、こういうことでこうなんだと、こういうことを好奇心で言う人があり、又聞きたいということは、これは世間で間々あることなんです。ところがその性能についてたまたまアメリカならアメリカの軍事関係雑誌に載つておつたということになると、それはもうこの防衛秘密にならない。そこでそういう場合には介護士さんがアメリカの雑誌を探し廻つて抗弁にしなければならんというような、そういうことはあるかどうかわかりませんが、そういうことは如何にも馬鹿げたというか、或いは偶然のことによつて適用される、又適用されないということは、如何にもこれは不公正じやないかということを私は申上げておるので、これが標記或いは標記に代るものとしてのものが何かあれば、これはもう問題ないことなんですから、それでいいんじやないかということなんですがね。
#70
○政府委員(上村健太郎君) 御尤もなお尋ねだと存じますが、私どものほうといたしましても、この防衛秘密の内容は米国側においても同時に秘密にしております相当高度のものに限られることと存じまするし、又私どものほうといたしましても、米国その他の外国の刊行物等も絶えず注意して見ておりますので、そういうものに出ておりますものが万一ございますれば、この秘密から外すのは当然でございます。又そういうものに出ておりますものについては、私どもとしましても保護の必要がなくなるわけでありますから、極力そういう方面については注意をいたしまして、外して行くつもりでおります。併しながら今回のこの防衛秘密で指定いたしますものは相当高度のものであることは間違いないと存じまするが、現在借りております武器につきましても、先般も申上げましたが、保安隊につきましては全然ございません。船につきましても極めて一部のレーダー関係のみでございまして、今後来るものにつきましても、どれもこれもが秘密だというものではないと存じますので、御心配頂きますような点については、私どもといたしましては、この法律でやつて行けるのではないかと存じておるのでございます。
#71
○楠見義男君 ですから私はさつきから申上げておる。これを適用する立場から見ればこれは極めて問題のない、今も官房長がおつしやるように心配はないということをおつしやるのですが、私もその点を申上げているのです。取締るというか、適用するほうから言えばこれは問題のないことなんです。これは今御設例にもありましたように、外国のいろいろの新聞雑誌その他をしよつちゆう御覧になつてそうしてこれはもうすでに発表されたということであるならば、防衛秘密からどんどん落して行く、こういうことをおつしやつたのですが、それもさつき申上げたように、適用する面から言えばその通りで、結構なんです。ところが適用される面から言えば、例えば今日までは防衛秘密であつた。ところが明日の日は保安庁のほうで雑誌を探しておられたり読んでおられたら、その中に発表されておつた。従つて明日の日からはこれは防衛秘密でなくなるということを、心覚えに持つておられる。心覚えに持つておられるのだが、併しそれは全然公表も何もなつていない。そこで引つかかるほうの立場から言えば、今日は引つかかるが、明日の日は引つかからない、こういうのが何ら自分では知り得る機会なくしてそういうことになるのが如何にもおかしいじやないか。それも、そのあとに出て来ますように、どうも「我が国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」とかというような、こういう場合だけじやなしに、この場合だつて客観的に判定をし得る場合があると、こう言うのでありますから、国民の立場から見れば、極めて不安定な状態におかれやせんか、こういうことなんです。
#72
○政府委員(上村健太郎君) 先ほども申上げました通り、防衛秘密の内容が相当高度なもので、極あて限定されておるという点と、なお第三条以下におきましての目的罪、或いは不当な方法、或いは二号の、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものというようなしぼり方をいたしておりまするので、法の運用についてはそう不当なことはないと存ずるのでありまするが、なお防衛秘密の内容が一般国民にわからないではないかというお話でございますが、この防衛秘密の性質上、相当限られておるものではありまするけれども、或る程度これが秘密だということを一般に公表する、乃至は特に一般国民全部に知らせるというようなことができないのではないか、この点は防衛秘密の性質上むずかしい。このむずかしい点は法律で書いてございますような、防衛秘密の認識がいるということと、又方法等その他でしぼつておつてて、一般善良な、善意の国民が脅威を感ずるというようなことはないということを確信しておるのでございます。
#73
○説明員(桃沢全司君) 先ほどのお話の第二条で、「標記を附し、」これをもう少し重要な意味を持たせたらどうかという御趣旨だつたと思うのでありますが、立案の途中において、防衛秘密というものを自然秘として扱うか、或いは指定秘として扱うか、指定したものだけが、即ちそれによつて標記されたものだけが、これが犯罪の構成要件に該当するという取扱いをする定め方もあるのでございます。併しながら半面防衛秘密として担当の長官が指定すれば、それが全部秘密になるという虞れも又出て来るわけでございます。即ち、前の、旧軍機保護法当時におきましては、最初は相当厳格な指定秘制度をとるつもりでおつたようでありますが、実情を見ますると、だんだん広くなる、行政庁の見方で以てどんどんこれが拡がるという心配のあるようなきめ方は如何であろうか。やはりこれは自然秘として相当高度なものに限定したほうがいいのではなかろうか、同時にそれは又運用の面において、アメリカで秘密とされておるものだけを取扱うということで範囲が明確になつて来るのではなかろうか、かように考えたわけでございます。なお、それでアメリカから供与される秘密、これを構成要件にしたらいいじやないか、そうすれば範囲も非常に明確になり、濫用の虞れがないのではないか。こういう考え方もあつたわけでございます。併しながらそういたしますと、この法律違反の事件があつた場合に、一々これが秘密であるかどうかということをアメリカに問い合せなければ、日本で裁判ができない。これもどうもとるべき途ではないのではなかろうか、その最後の判定権は、やはり日本の裁判所に独自の権限を与えて然るべきだ、かようにいろいろ論議を交した結果、相当高度な自然秘、こういう扱いを法律上いたした次第でございます。
#74
○一松定吉君 ちよつと関連してお尋ねしたいのですが、これはやり方によつては、防衛秘密に関する秘密というものが、或る者のために蹂躪せられて、全部秘密でなくなつてしまうことも私は考えられると思うのです。例えば或る者が、或る目的を持つてこの防衛秘密を探知する、探知して、そうしてそれを全部新聞に発表してしまう。自分が処罰される目的を持つてそういうものを全部公にしてしまう、そうすればそれは全部秘密でなくなつてしまう、そういうようなことも予想されますが……。
#75
○説明員(桃沢全司君) 確かにそういう場合があろうかと思います。これは究極においては、或る国にその秘密が漏れては困るというのでありましてその一番心配の相手方に漏れてしまうような状態に置かれたという場合に、その後のことは問題にする必要はないのではないか。即ち某国にその秘密が全部筒抜けになつてしまつたものを、日本の内部だけでそれを又話をしたから処罰をする、これはどうも少し筋が違うのではなかろうか、公にした人はそこまで処罰されますけれども、公にされた結果それを開いた者、或いは読んだ者、これはもう処罰の対象にはならない、又そういうものを、すつかりわかつたものを防衛秘密として取扱わない、かような関係になると存ずるのであります。
#76
○一松定吉君 私の言うのは、防衛秘密であつたものが、或る一人の悪意によつて全部秘密でなくなつてしまうということが想像されるのじやないかというのです。そうすると、折角こういうものをこしらえても、私が、第一条第三項によつて「左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画」、こういう物件について、私が業務上知ろうと、或いは不当の方法によつて知ろうと、知つたものを私が全部発表してしまう。そうすれば私はまあ罰金又は十年以下の懲役にやられるわけです。そうすると秘密はなくなつてしまう。そうでしよう、新聞、雑誌に、私が十年以下の懲役にやられることを覚悟の前でそういうことをやつたとしたならば、全部秘密がなくなつてしまうが、折角こういう法律を作つても、そういうようなものを防ぐような措置はとらんでもいいのですか、どうですか。
#77
○説明員(桃沢全司君) そういうふうに公にされてしまいますと、例えば日本の大きな新聞に出てしまうということになりますと、この新聞記事を基にしまして、各国の新聞記者も日本におるわけでございます。ソ連にも、中共にも、或いはアメリカにも、イギリスにも全部その内容が報道されるわけでございまして、そう世界全般に知り得る状況になつたようなことを、果して日本だけが防衛秘密として守るという実益があるかどうかということを考えますと、これはもう秘密でなくなつたものとして取扱わざるを得ないのではないか、かように考えております。
#78
○一松定吉君 そうすれば折角秘密を守らなければならんというものが、一人の不法行為によつて全部秘密がなくなつてしまうということになれば、今あなたのおつしやる通り、もうそれは秘密ではない。そうすると秘密はなくなつてしまう。そういうような欠陥の多いようなものに対して何か秘密を守るというようなことについて、もう少し案を練る必要はなかつたのですかと聞くのです。
#79
○説明員(桃沢全司君) その悩みは恐らく明治以来の軍機保護法以前、昔からあつた問題だろうと思います。スパイがうまく取つてしまつたということになると、もう秘密はなくなるわけで、それの防ぎ方は防止するという、こういうことで解決するより、法規ではどうも解決できない問題ではなかろうかと存じます。
#80
○一松定吉君 それはいわゆる罪と刑との比較によつて如何ようにもなる。そういうことをすれば死刑に処するのだということだつたら、俺が死なにやならんのでは困るからやるまい。懲役十年ぐらいなら行けるというてやる、こういうようなこともできるのだ。併しそしれは非常に困るのだろう。そこで問題を変えて、この間私は裁判のことを伺つたのだが、裁判は、政治犯罪は必ず公開しなければならないということが憲法に規定せられてあるが、仮にこれは政治犯罪でなくても、外国と通謀して秘密を漏らして、我が国の不利益になり、外国を利するというような目的でやつたというような事件は、これを政治犯罪と見るかどうか、裁判所の認定に待つのでしようが、そういうときには公開しなければならないということと同時に、もう公開によつて全部秘密はなくなつてしまうのです。そうすると折角設けておいて、そういうようなことがあると、これを何かこう防ぐ方法がなければならないと思うが、そういう点については何も考慮を払わなかつたのですかということと、それから公判になれば公判記録というものは昨日も衆議院で社会党の方が質問しておつたように、当然弁護士はその公判記録を読むことができる、写すことができる。そうすると、そういうようなものを被告を弁護するために党々と法廷において発表することができる、それからその弁護人は自分が調査研究をしたことを、共同弁護人に話すことができるというようなことになつて来ると、秘密を守れないようになるのだな、それについてどう考えるのですか。
#81
○説明員(桃沢全司君) その点は衆議院の外務委員会におきましても河野委員から相当傾聴すべき御議論を拝聴した次第でございます。私ども考えておりますのは、この憲法の八十二条なり、三十七条でございましたか、この公開の原則というもの、これは憲法で保障された基本的人権に相当深い繋がりを持つている問題でございます。果してこの法案違反の事件がすべて八十二条の第二項の但し書に該当するかどうか、これは非常に疑問がありますが、或いはその中の絶対公開事件とせらるべきものでありました場合には、御説のような第三者に広く漏れて行くという心配も出て来るかと存ずるのであります。これは裁判所なり、検察官なり或いは又弁護人の方々の良識によつて不必要に広範囲に漏れないように適当な措置が考慮せられると思いますが、仮にこれがどうしても事案審理の上に法廷で十分その点が明らかにされなければならない。かような関係で漏れたといたしましても、これはこの法律で持つている秘密の重さというものと憲法の人権擁護の規定の重さというものの調和の問題でございまして、憲法の条項に違反してまでも秘密が絶対に漏れないようにするという建前は私どもとしては考えられないところなのでございます。そういう意味でこの憲法に違反するような漏洩防止の方法を立案するということは考慮の外にあつた次第でございます。
#82
○一松定吉君 そこは非常にむずかしいところだが、それで私がこの前お尋ねした第三条の第一項の第三号ですが、「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」、これは刑法の三十五条との関係でこの間話をしたのだが、ここに不当にとか、不法にとか、不正にという文字を入れておれば、今のようなものが多少防げると思うのだが、又素人も、成るほどこれは不正にやつたからいかんのだ、正当の業務によつて正しい意味においてどんどん意見を発表したからといつて対象にはならないのだということが安心してできるように、ここにそういう文字を入れたらいいと思いますが、それはどういうことなんですか。
#83
○説明員(桃沢全司君) 先日もそういうお話を一松先生から伺つたのでございますが、これまでのこの種の法律の立て方も、この法案の立て方と同様でありますし、仰せの点は、正当業務の点で刑法三十五条によつて当然免責せられるのでございますから、特にこの第三条の第一項第三号にその点を規定いたさなくても、解釈上当然であろう、かように考えておつた次第でございます。
#84
○一松定吉君 それは専門家ばかりこの法律を見るのならいいのでしよう。それで専門家ばかり見ても、これは刑法三十五条にこれは何々だ……、これは専門家ばかりに見せるのじやない。普通一般の人が見てこの法律で危惧の念を生じないようにするということについては、そういうような疑いを除去するような方法の文字を使うことは、それは非常に金がたくさん要るとか、非常に慣例に反するということなら別だけれども、重複したようなことは幾らも法文にあるのだから、或いは二、三字入れればそういう疑いはなくなるのだね。これはこういうことをあなたに私が聞くのは、あとで修正意見を述べるつもりだから、その時分に修正をしたらどうかということを思うのだから、今あなたの意見を聞いておるわけでございます。
#85
○説明員(桃沢全司君) 業務により知得し、又は領有したという人は、これは非常に限定されておりまして、一般人はこの規定の適用はないわけであります。先ず第一に適用される人と申しますのは、自衛隊の秘密を扱う人或いは保安庁の秘密を扱う人でありまして、それがどういう人にしか漏らさないということは、その職責上よく知つておるわけであります。で或いは過失でも、そういう人は処罰されるという関係になります。その次に業務によつて知得、領有するという関係にありますのは、恐らくその兵器の修繕或いは製造、修理に当る技術者だろうと思います。これらの人も、やはりその職責上当然漏らしていいか、漏らして悪いかという判断は十分できる人々であります。まあ稀にこの間例が出たのでありますが、或いは国会議員の方々が秘密会で当然これは漏らしてはいけないという注意の下に政府委員からでも報告を受けられたという場合、これは当然良識を以て御判断願えるのでありますし、そのほか「業務により」と申しますと、例えば検察官がこの種の事案を取扱つた場合、そういうふうに非常に限られておりますので、特に只今一松先生の仰せられたような文言を用いませんでも、この業務によつた人だけでありますから、そういうような御心配はないのじやなかろうかと思います。
#86
○楠見義男君 先ほどの法務省及び保安庁官房長の御説明は、一条の第三項の公の問題、それから第二条の標記の問題は、再々申上げましたように旧軍国主義時代なら、私はその御説明でよく了承できるのでありますが、前提が変つた現在では、どうしても私は納得できにくいのであります。これはこのままやつておりますと、いつまでもはてしが尽きませんから、又別な機会に譲ります。
 そこで第一条第三項の各号の問題でありますが、これもお伺いしようと思つておりましたが、官房長からお話がありましたのでわかりましたが、現在は保安隊には防衛秘密は全然ない、海上関係である。それは再々御説明でも伺いましたように、レーダー関係、フリゲート艦のレーダー室だと思いますが、そういうものはこれは標記を附せれば、当然そこに入つて探知するということはこれはできないことになるわけなんですから、そういうものは私は標記で間に合うと思います。それ以外にはない。ところが今後出て来るかもわからん、そこで問題は、これも先般お伺いしたんでありますが、ニの「品目及び数量」これらについてどういうものが予想されるかとお伺いしたところ、現在は不明である。若し想像するとすれば何かジェット機の部品の数、その数量によつて性能なりが大体察知されるかもわからんと、こういうような御説明があつたのですが、そういうふうにこの対象とする防衛秘密というものが、まあ将来或いはあるかもわからん、而も現在はそれがわからない。こういうことで、この問題になつておる法律を作るということは、私はまあ如何かと思うのでありますが、従つて明らかに、何といいますか、アメリカから供与されたもので具体的に例えば品目、数量というものがどうしてもその防衛秘密にしなければならんというような、そういうものを供与されたときに、必要に応じて或いは法律を改正して追加するとか、そういうようなことはできないものなんでしようか。
#87
○政府委員(上村健太郎君) この秘密は前に申上げました通り、本来は第一義的には日本の秘密になつておりますけれども、併しMSA協定等によりましてアメリカ側から供与される装備品、従つてアメリカの秘密に同時になつております。従いましてこの協定に基きましてどういうものを秘密に扱うべきかということにつきましては米国側と折衝いたしたわけでございます。その際にも大体この第一条第三項のイ、ロ、ハ、ニと書いてありますようなことが適当であろうというような結論になつたわけでございまして、現在におきましては先ほど申上げましたように、品目及び数量に該当するものはございませんが、今後MSA援助等によりまして来るものにつきましてはあり得るというふうに考えております。先般申上げました通りに、今後は航空機及び駆逐艦等が参りますと、特に航空機等におきましてはそのうちの取りはずしのできるものであつて、品目及び数量という装備品が出て来ることも想像できると思つておるのであります。そのときになつてというお話もございまするが、今年度におきまして国会開会中にもMSAによつてもらうものが出て来る可能性もあると存ぜられまして、ここに入れてあるわけでございます。
#88
○楠見義男君 そこでお伺いしたいのは、MSA協定の第三条で「両国政府の間で合意する秘密保持の措置」云々とあり、附属書Bで同様の文言があり、その協定に基いてこの法律ができておるという御説明なんですが、その点はMSA協定或いは附属書だけでは実ははつきりしないのですが、これに基いて両方で協定をされておる具体的な事項があれば、それは全部この法案に盛られておることだけなのか、それ以外にもあるのか。或いは法案には、日本政府で協定に附加してこの法案ができておるのか。その辺をお伺いしたいのです。
#89
○政府委員(上村健太郎君) 前回木村長官からもお答えがありましたように、この第三条に基きまする秘密保持の措置といたしましては、日本政府側におきましてどういう措置をとつたらいいかということを検討いたしまして、結局まあこういう立法をする、行政措置は行政措置で、別に部内限りにおいてできるだけの秘密保持の措置をいたしますが、そのほかに法律を以ちましてこういうような措置をする、こういうことに合意をいたしております。尤もこの法律の内容につきましては、どういう犯罪構成要件であるとか、或いはどういう刑を科するとかいうことは、米国とは全然相談いたしておりません。併しながらこの防衛秘密の内容、秘密を保護すべき内容というものにつきましては、外務省と米国当局と協議ができております。なお、米国側の秘密保持の要望があるわけでございますが、それ以上に日本政府で附加えて拡げておるというようなことは、ございません。日本とアメリカ側とこちらできめましたものについて先方の意見も聞いて、合意に達しておるというふうに外務省当局からは聞いております。
#90
○楠見義男君 そうすると、大体刑の量定だとかその他はこれは別にして、立法措置をしなければならんということ、これは協定のうちにもありますからわかりますが、同時に何を防衛秘密にするかということも協定によつてできていると、こういうお話なんですが、そうしますと仮に国会で防衛秘密の内容を国会審議の上において修正をすると、こういうことになつた場合には一体どうなるのか。逆に言えば国会の審議の前に両国政府で協定をしておるということは、或る意味においては国会審議権の、何と言いますか、侵害のような恰好にもなるのですが、併しそれは国会でおきめになることだから結構ですということになれば、若しこれが防衛秘密の内容が修正されると、こういう場合にはそれはどういうことになりましようか。協定の又やり直しということになりましようか。
#91
○政府委員(上村健太郎君) 内容につきましては正式な協定ということにはなつておらないように私ども外務省から承知いたしておりますが、若し万一国会におかれましてこの内容について御修正がありますれば、その事項につきましては、先方と又折衝をいたしまして両者改めて別に合意に達する必要があると存じます。その際に、先方がそれは非常に困るというようなお話がありますと、例えば先ほど御設例になりました品目及び数量等ついて、それでも米国側が供与してやろうというのであれば別ですが、先方がこれをとることに納得しないということになりますれば、或いはそのものについては供与をしないということも想像できます。いずにいたしましても先方との合意ということは、法律の中に盛る内容について合意を……、一応の事前の合意ということでありまして、正式な協定等で了承しておるというものではありません。従いまして御修正がありますれば、改めて又これでやろうというような新らしい合意は必要であると存じます。
#92
○楠見義男君 私はこの委員会を二、三回抜けましたから、或いは御説明があつたかも知れませんが、今の質疑で明かなように、日米両国政府間で取極められた秘密保持の方法に従つて、この措置に従つてこの立法措置が講ぜられ、或いは又この法案の内容がきまつた。而もそれは保安庁なり或いは法務省は外務省からの報告に従つてと、こういうことなんですが、そこでこの委員会では外務省のほうから公式に両国政府の協定というものについてお聞き取りになつたのでしようか。若しお聞き取りになつておらないとすれば、やはりこの委員会でお聞き取りになる必要があると思うのですが、これはまあほかの委員の方々の御意向もありましようけれども……。
#93
○羽仁五郎君 いや僕も賛成です。楠見さんに賛成です。
#94
○楠見義男君 私はそういうふうに思うのですが、如何でしようね。
#95
○委員長(郡祐一君) 今までの委員会におきましては、皆さんの御要求によりまして、御要求の質疑の点について下田条約局長から答弁をいたした点がございます。只今の御意向がありますから、月曜日の日には条約局長に出席を願えますように取計らいます。
#96
○楠見義男君 それはこれの基礎をなすことになりますから、外務省のほうから積極的にこういう点については日本政府の自由になつているんだけれども、こういう点だけはすでに協定にあつたんだとかいうような内容についての積極的な御説明をして頂く機会を是非お作り頂きたいと思います。
#97
○委員長(郡祐一君) 承知いたしました。
#98
○楠見義男君 それからもう一点、第三条の「わが国の安全を害すべき」云々の問題なんですが、これは実は私は自問自答をしておるのですが、安保条約に基くこの防衛秘密、アメリカ軍の防衛秘密には特別の法律がございますね。この場合はそうじやないんだが、建前はそうじやないんだが、実際はアメリカから供与されるその武器の構造、性能その他が防衛秘密で、これが漏れるということは実は先ほどもお話がありましたが、アメリカの安全を害するという点にも非常に大きなあれがある。ところがそれを我が国の安全を害するとここに又持つて来ておるのは、一体どういう意味であろうかと自問自答したところによると、それは又同時に日本がそれを借りて防衛をやるのだから、日本の安全も害せられるとこういうふうにとれて、そこでここにこういう文字が入つているのじやないかとこう理解をしたのです。そこで先般それじやアメリカ軍の軍人にこういう話をすることは、これに触れるか触れないかということをお聞きしたのは、そういう前提であつたのですが、前提を飛ばしたものですから、まあお答えも実は月並みのお答えを頂いたに過ぎないのですが、この点をもう少し詳しく御説明頂きたいと思います。
#99
○説明員(桃沢全司君) このMSA協定に基きましていろいろの装備品をアメリカから供与される、これは勿論立て方といたしましては日本の防衛の占めにそういう供与を受けるのでございまして、アメリカのためではないわけでございます。ですから第一義的にはその防衛の必要上供与を受ける装備品のその防衛秘密というものも、これは日本の防衛のために守られなければならない、こういう関係になると思うのであります。その意味におきまして第三条の第一項の第一号は日本の防衛上の安全を害する、そういう用途に供する目的を持つたものは処罰するとこういう立て方をいたしたのでございます。
#100
○楠見義男君 そこで一方の陣営に対して話をする場合には、これはもう勿論これに当るのでしようが、そうでない場合はどうかということを質したところ、それはそういうまあ与国といいますか、その陣営に対する場合でもうれに当る場合もまああるとこういうお話があつたのですが、もう一度お伺いしたいのですが、明らかに犯意を持つていたす場合はこれはもう当然なんですが、而もそれが自供その他で明らかな場合は、これはもう問題ありませんが、客観的にそうだと認定する場合ですね、これは通例どういう場合を予想されておりましようか。その点をお伺いしたい、認定の場合です。
#101
○説明員(桃沢全司君) 例えばその被疑者がスパイ団に所属しておつたということが他の証拠で明白になつておるような場合、これはたとえ本人が黙秘しておりましても、この目的を持つておつたということが証拠上推定されるのじやなかろうかと思います。これが一番典型的な例でありますが、その他関係者の供述等によりましてその目的が推定し得る場合が相当あろうかと思います。なお先ほどちよつと御設例でアメリカ軍人に対して話した場合はどうかというお話でございましたが、その場合も第二号で問題になる場合があろうかと思います。アメリカに知らせる目的で以て防衛秘密を探知、収集するということもちよつと或いは観念的にはあり得るかも知れませんが、実際上は考えられないのではないかと考えられます。
#102
○楠見義男君 私のお伺いする趣旨は、こういう問題は明らかにスパイ団とか何とかいうものが引つかかるのは、これはもう当然なことなんですが、この法律を恐れ或いはいやがるのは、全くそういうふうに明らかなスパイ団でない人々がこの法律でやられる、これは現に軍機保護法時代にそういうものが多かつたのですね、而もそれは本人の供述とか何とかいうことでなしに、傍証といいますか固めて、而もその固めるのも正当な固め方じやなしに裁量によつて認定されて、それで引つかかつて行くという点に過去においても一番問題があり、将来もその点、例えば新聞協会その他からいろいろのことを言つて来るのも、その点にあるわけなんです。ですから問題はそういう意味でお伺いしておるのです。
#103
○説明員(桃沢全司君) そういう御心配の点もありまして、前の軍機保護法、国防保安法にはなかつたしぼり方の目的なり、方法なりを規定して、未然にそういう不都合のないようにと考えた次第でございます。
#104
○楠見義男君 そのしぼり方が私は逆になつておると思うのですが、これは併し最前申上げましたように前提が違いますから、これは水かけ論みたいになりますから……。
#105
○説明員(桃沢全司君) 特に刑事訴訟法などがすつかり変つておりまして昔のような御心配のようなことは訴訟法の精神から見ましてもないばかりでなく、構成要件も非常に厳格になつております。最近の捜査におきましては、今度の汚職事件でもそうでございますが、黙秘権が認められておる、その下における捜査というものは前から比べて非常に困難になつております。併しながらこの黙秘権の認められておるというのは昔のような自白強要に陥らないようにという建前からでございまして、その精神は十分警察官も知つておるはずのところでございますから、御心配の点は余りなかろうと、かように考えておるわけでございます。
#106
○楠見義男君 それからもう一つ、念のために重ねてもう一度お伺いしたいのですが、四条のこれも先般お伺いしたことなんですが、「他人に漏らした者」、即ち漏らされた他人が又第三者に漏らす場合には、これは第三条のどれにも該当しない、勿論この業務とか何とかいうことに関連する場合はこれは当然ですが、そうでなく一般人が漏らされて、それを第三者に漏らすという場合には、これは、而もそれは安全を害しようという意思もなしに、又不当な方法で探知したのでもない。こういう場合が洩れておるのはおかしいのじやないか、こういうことをお伺いしたのですが、この点についてもう一度御説明頂きたいと思います。
#107
○説明員(桃沢全司君) この第四条の、「過失により他人に漏らした者」これは第四条で処罰を受けるわけでありますが、その人から聞いたものはどうか、多くの場合にそういう過失によつて漏らされたものを問いた者は、防衛秘密であるという認識がない場合が多いのではないかと思いますが、その場合には犯意がないということで、これをその次の者に漏らしても処罰の対象にはなりません。併しながら先ほどもちよつと例に出ました防衛秘密という判の捺してある文書を網棚に忘れた、これをたまたま第三者が拾いまして中を見たら、防衛秘密ということが書いてあつた。而もそのことを知つてこれを第三者に漏らした、或いはスパイとしてそれに渡したというような場合には、第三条の第一項の第二号に該当する場合も出て来るわけでありまして、全部野放しになつているという趣旨ではございません。
#108
○楠見義男君 ですから、防衛秘密と標記の問題を冒頭に私はいういろいろどくお伺いをしたのですが、ところがそういうものは、今の網棚の例でこの前もおつしやつたようなことは、これは常識的なものじやないかとこういうふうに思うのですが、ところが必ずしも標記になつたものだけではないとこういうことなんですね。而もそれは例えば偶然の機会に、或いは又友人の会合等でそういう話を聞き、漏らした者は勿論これは過失で行くけれども、その人間はこの第三条には何ら該当しない。そうしてそれを他人に漏らす……、ところがその場合は何をそれじやこの法律は保護せんとしておるかというと、防衛秘密だとこういうことになつて来ると、一方では偶然のことで公にされておるかおらないかもわからんのに、知り得る機会もなしに引つかかることもあれば、又そういう今のようなものについてこれは秘密は漏れて行く。而もそれは法益としてはここでは対象にならないかの感を持つという……、一体それではこの法律は何を保護せんとしておるのかとこういう疑問が出て来るわけですね、その点がどうもこれは半ば意見になりますが、ちよつとおかしいのじやないか、こういうふうに思うのですが、もう大体時間が過ぎたから……。
#109
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#110
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。次回は明後十七日午前十時から開会することにいたし、本日はこれを以て散会いたします。
   午後一時二十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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