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1953/05/19 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第40号
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1953/05/19 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第40号

#1
第019回国会 法務委員会 第40号
昭和二十九年五月十九日(水曜日)
   午前十一時二十三分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
           亀田 得治君
   委員
           大谷 贇雄君
           楠見 義男君
           棚橋 小虎君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  政府委員
   法制局第二部長 野木 新一君
   保安庁長官官房
   長       上村健太郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  説明員
   保安庁保安局調
   査課長     綱井 輝夫君
   法務省刑事局公
   安課長     桃沢 全司君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○本委員会の運営に関する件
○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
 保護法案(内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。
 本日は先ず今後の委員会の審査日程についてお諮りいたします。本件につきましては、昨日各委員の方と御協議、御懇談願いましたところによりまして次のように御決定願いたいと存じます。先ず秘密保護法案につきましては、本日は一般質疑を行うこととし、その総質疑時間は答弁時間を含めまして総体で四時間三十分とし、お申出に従いまして亀田君三時間、楠見君、棚橋君、三橋君、羽仁君各二十分、青木君十分といたします。一般質疑は本日を以て終了することといたしまして、明日は総括質疑を行います。総括質疑の時間は答弁時間を含めまして総体で二時間を以て終了することといたします。各委員の割当時間は後刻表にしてお知らせすることといたします。なお、秘密保護法案の質疑終了後の日程及びその他の法案の審査日程は、後刻お配りする表によつて御承知願いたいと存じます。以上の通り決定することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。なお、質疑時間中に御連絡申上げてもお出でにならない方は、棄権されたものと認めますからあらかじめ御承知おきを願います。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(郡祐一君) 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題に供します。
#5
○亀田得治君 最初にお尋ねいたしますのは、こういう問題を含んだ法律でありまするから、やはり普通の例に従つて本法の目的並びに濫用禁止の規定ですね、たとえそれが注意的な効果しかないというふうなことでありまして、そういう点を明確にしておくことが、この種の法案としては適切じやないかというふうに私どもは考えるわけです。勿論その現わし方はいろいろあるでしようが、例えば私が一つの例として考えてみましたのは、この法律は日米相互防衛援助協定及び船舶貸借協定に基いて供与される装備品などの秘密を守ることを目的とするものであつて、その解釈適用に当つてはいささかその人権侵害に亘ることなきよう注意しなければならない。まあ字句的に少し問題もあるでしようが、こういうふうな建前で目的をやはり明確にすると共に、問題になつておる人権侵害というふうな考え方は全然持つておらないということを最初にやはり明確にしておく、こういうことが非常によろしいと思いますが、こういうことについて恐らく立法されるときに御論議があつたのじやないかしと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
#6
○政府委員(野木新一君) 御趣旨のことは傾聴いたしたわけでありますが、政府といたしましてこの法案の立案に当りまして別にそういう目的規定をこれに入れませんでしたのは、法案自体が比較的簡単でありまして、これ自体でわかることであつて、あえて人権を侵害しないようにしなければならないというような当然の規定は必ずしも必要ではないのじやないかという趣旨で、特に特別の一条を設けなかつたわけでありますが、この法律の趣旨がおつしやるような趣旨ではないというわけでないことは勿論でございます。
#7
○亀田得治君 趣旨が私が申上げたようなつもりだということであれば、そういうことを明確にしたところで差支えないわけですから、お書きになつたほうが私よかろうと思うのです。ただ、その際問題になる点は一つあるのだろうと思うのです。目的の点についてどういうふうに現わすか、恐らくこの法案の基礎になつている気持ち、考え方としてはアメリカから供与される装備品などの秘密、そういうこの考え方の中に、アメリカの秘密を保護するという気持と、供与されたものは日本の品物だから、それは日本の秘密も保護するのだというふうな考え方が二つ混ざつておると思うのですね。従つてこの目的を現わしにくいというふうなところにあるのじやないかと思うのですが、若しそうであれば、率直に事実だけを現わして行つたらいいのだろうと思う。アメリカの秘密とか、日本の秘密とかそういつたような用語を避けて、とにかく二つの協定によつて供与される武器、その秘密を守ることを目的としていることは間違いないのだから、そこだけをはつきりと限定して現わして行つて、従つて重点は、その目的に関連してあとのほうに出て来る人権侵害に亘らないような法の運用、こういうところにむしろ我々は期待を持つているわけですから、そういりやり方で表現なさるとすれば少しも差支えないように私考えるんです。で、この条文が五ヵ条で、非常に簡単だから条文自体によつてそう誤解も起きないというふうに言われるわけなんですが、必ずしも条文自体によつて、誤解が起きないことはない。これは質疑応答の途中でいろいろ論ぜられておるところでありまして、一々それを繰返えす必要はないと思うのですが、むしろ簡単だからこそいろいろそこに推測が生まれるわけです。でそういう目的なり人権侵害の注意規定というものを入れることは、やはりこの法律を扱う人たちに対して非常にいいことじやないかと思うのですね。決してこの法律を扱う人が必ずしも全部非常に法律の最高の理念に徹した人ではない。むしろ最末端で捜査が始まる際においては、まあ失礼な言い分になる場合ももるかも知れませんが、必ずしも法の本当の趣旨というものを辨へておらない方もあるかも知れない。そういう人にとつては法律の冒頭にそういう字句が掲げられることは非常に私適切だと考えるんですが、どうも簡単な条文だから、誤解も起らないだろうと言われるんですけれども、実情は必ずしもそうではなかろうと考えるんですが、差支えないように私どもが例えば修正をしてそういうふうに適当な文句を入れるということであれば、法律そのものの実体がそれによつて変るわけじやないんですから、適当な修正であれば結構だというふうな考え方をお持ちかどうか、再度確かめておきたいと思います。
#8
○政府委員(野木新一君) 御質疑の点は拝聴いたしたわけでありまするが、先ず第一に目的を書く際に、この法律自体がアメリカの武器等の秘密を保護するだけでなくて同時に我が国の秘密を保護するものであるだろう、それであるからその点を目的を書く際に注意しなければならないだろうという点は、誠にその通りであると思いまして、趣旨は若しそういうことであるならばその点を注意して書くことになるのじやないかと思います。それから更に進んでそういうような趣旨においておつしやつたような目的規定、即ちこの法律の目的、そうしてその法律運用に当つては、いささかもその目的を逸脱して濫用に亘るようなことがあつてはならないというような文句を入れるということ、そのことはその限りにおいて別にこの法律の実体を変えるわけでもありませんし、差支えはないと存じます。ただ、政府といたしましてはこの法律はこれ自体において、先ほどの言葉を繰返すようになりまするが、簡単で明瞭にできておりまするから、必ずしも一々濫用してはならないというような常套文句を加えるほどのこともあるまい。むしろ国会のほうでそういう御懸念があるならば、その趣旨は趣旨として十分他の方法によつて取扱官にその趣旨を徹底されることもできるのであるから、必ずしも絶対に加えなければならないというほどには考えておらないわけであります。
#9
○亀田得治君 まあこういう目的規定なり或いは濫用禁止の注意規定というものは、実体的な関係、従つて最終的な裁判の段階においては大して問題は、あつてもなくてもいいことかと思うのです。ただ一番大事なことは捜査の段階なんですね。而もこういう法案の性質上非常識な、或いは教養の足らない出先の捜査機関なんかがややもすると秘密ということ自身にとらわれ過ぎて行過ぎた捜査をやる、こういうことが懸念される。そういう人達に対してこういう目的規定、注意規定というものは確かにやつぱり反省させられる一つのいい根拠だと思う。何かあつた、やつてみようと思つたんだが、法律を見ると第一番にそのことが注意されておる、これはひよつとすると俺、捜査に一つ着手してみてやろうと思つたんだが、或いは行過ぎるかも知れない、着手前に一つもう少し慎重にいろいろほかの人の意見を聞いたり、捜査という段階でないような予備的な一つのもう少し内偵をしてみよう、それからでないとちよつと困るかも知れん、こういうふうな気持にやつばりなるわけですね。そういう規定が置かれれば法務当局でもこの法律の運用についていろいろ指示される場合でも、はつきりと指示が又できるわけなんです。国会の審議の過程でいろいろ注意があつたからこれは十分注意して運用してもらいたい、そういうことよりも非常に強いわけなんですね。そういう意味で私どもは破防法なりこういう社会会的ないろいろな意味を持つた法律につきましては、ぜひともそのような規定を置いてもらいたいものだ、こういう希望を持つておるわけです。大体政府の考え方もこの点に関してわかりましたから、一応この程度にこの問題は打ち切ります。
 それから次にお尋ねいたしておきたいのは、第一条の第二項の中で「資材」という言葉が使用されております。これは普通には大体わかつておるような意味でありますが、併し法律的な用語として厳密に考えてみますと、又不明確な点もあるわけなんです。それでお尋ねするわけですが、何か一つの例えば「探知」「収集」といつたような法律用語であれば、これが大体一つの定義付けられたような解釈というものが困つておりますが、そういうふうな意味でこの資材というものを一つ何といいますか、公の解釈といいますか、定義付けると一体どういうことになるのか。どういうふうに定義をまとめておられるのかどうか、お聞きをしておきたいと思うのです。
#10
○政府委員(上村健太郎君) そこに書いてございますものの四つの下の「その他の装備品及び資材」と申しまするのは、この四つ以外の通信器材、光学器材、それから施設機材及び以上の四つを含みましたものの部品或いは交換用予備品、予備部品、原材料というようなものを言つておるつもりでございます。従いまして、上に書いてありまするものの一部をなしておりませんでも、もつぱら製作、修理のみに使用される工具でございますとか、機械等のものにつきましても或いは一部は含まれるかとも存じまするが、「装備品及び資材」と申しまするとまとまつて一つのものになつておりまするもの及びそれの部品、原材料、こういうような意味に解釈いたしております。
#11
○亀田得治君 「その他の装備品」というのは、今の御説明によりますと、通信器材等四つばかりお考えになつておるようでして、大体その点はわかりますが、この資材の点ですね、資材の点に、只今御説明によりますと、それらの装備品の部分品ですね、これが一つ、それからそういう装備品或いは部分品を構成しておる材料ですか、材質を言うのですか、どういう意味ですか。その部分品の点はわかりますが、材料という場合ですね、装備品又は部分品の材料というのは、材質のことを言つておるのか……。
#12
○政府委員(上村健太郎君) 材質というような意味を含みました材料、原材料の意味でございます。
#13
○亀田得治君 まあ私わかるような気もしますが、それからそういう装備品、部分品等を離れてそれらを製作する工具なども入る、入るものもあるというのですか、その点はどういう範囲でお考えになつておのるですか。先ほどの御説明では少し不明確なようでした。
#14
○政府委員(上村健太郎君) この工具、機械で入るのは恐らく稀であろうと存じまするが、こういうような秘密の装備品等にもつぱら使われまする工具で、そこの口に関係をして参りまするもの、修理に関する技術というものに関係をして参りまして、切離して考えられないというようなものは、工具或いは機械等でも入つて来ないことはないというふうに考えております。
#15
○亀田得治君 そういう工具などは普通の概念では資材と言わないのじやないですか。若し工具とかそういう特殊な機械の内容で秘密事項があれば、そういうものの秘密事項を含めるためには、もう少し言葉の書き方を変えないといかんようにも思うのですが、資材と言えば普通はその或るもののともかく内容、こういうふうに誰でも考えているのだが、そのものを作るための道具なんかについてはちよつと違うんじやないかと思う。若しそういうものも入れたいのであれば、やはり装備品を作るための機械、器具ですか、何かそういうものが一つ入つて来ませんといけないようにも思うのですがどうでしようか。資材の中にそういうものまで含ますのは用語上少し普通じやないように考えるのです。
   〔委員長退席、理事上原正吉君着席〕
#16
○政府委員(上村健太郎君) 資材とい言葉がほかの法律にありますかどうか私存じませんのですが、私どもが考えておりますここにいう資材の中には、先ほど申上げましたように、修理、製作に関する技術ということに関連いたしまして、切離し得ないもつばらこういう装備品の製作に用いる工具等も含ませて考えておる次第でございます。
#17
○亀田得治君 どうしても第一条第二項の条文をそのままにしておいて、今お話になつたような工具や機械等も含めるというのであれば、むしろ装備品の中に入ると解釈するのがまだ適当なんじやないのですか。装備品つまりアメリカから供与されるいろいろな装備品、その装備品にどうしてもくつつけて出してやらなければならない工具、機械ということになれば、やはり一種の装備品というふうな解釈をとられるなら、直接戦闘の用に立つものでなくても、いろいろ装備というものはあるわけですから、その装備品の中にむしろ含まるべき概念じやないかと思うのです。これはどうでしようかね。
#18
○説明員(綱井輝夫君) この定義におきまして、装備品という定義を使いましたように、いわゆる前段に言うておる装備品を離れて資材を全く関係なく資材という概念を考えておるわけではございません。装備品等という言葉を分解いたしまして、前段で言うておる装備品、つまり一つのでき上つたものとして、それ自体で防衛目的に使われるようなもの、資材という言葉でそれらを構成して行く物件、こういうものを考えておるわけでございます。
#19
○亀田得治君 この第一条の第二項で「装備品等」というのは、これは装備品並びに資材というのをただ略した意味だと私考えておるのです。だからその点はそういう意味なんでしよう、「装備品等」というのは、本来は装備品及び資材と書くのを面倒くさいから「等」ということで現わしておる。従つて「等」というのは、ただ資材という言葉を省略しただけなんでしよう。
#20
○説明員(綱井輝夫君) お説の通りであります。
#21
○亀田得治君 これはどうなんですか、そういう工具や機械などは、装備品ではなしに資材というふうな考え方を、検討された上で出しておる結論ですかね。
#22
○政府委員(上村健太郎君) 私先ほど定義を申上げましたが、「その他の装備品及び資材」の中に入ると存じます。工具は装備品になりますか、資材になりますか、私どもの解釈では資材に入ると一応考えておる次第でございます。
#23
○亀田得治君 それはどつちにしてもどつちかに入ることになるだろうと思いますから、これ以上は追及しないことにしておきますが、非常に併しあいまいだと思うのです。入れるのであればむしろ装備品の一種だと考えるのです。装備品にはたくさんあるのですから、必ずしも戦闘用の物ばかしじやないでしよう。
 それから次に第三項の、これはたびたび問題になつたことだと思いますが、いろんな問題になつた点を私省略して、自分として是非ちよつと確めておきたいという点をここでお聞きしておくわけですが、「公になつていないもの」ということですね。例えばこの本法で言う防衛秘密であるが、それが非常に科学的な専門雑誌にちよつと載つたことがある、こういう場合には一体どういうふうな判断をされるのですか。普通の雑誌じやなしに専門家の見る科学的な雑誌に少し載つたことがある、こういうふうな場合……。
#24
○説明員(桃沢全司君) 只今のお設例の場合には多くの場合公になつたものに該当するであろうと考えます。
#25
○亀田得治君 そういう場合に公になつたと判断する、しないは、何か具体的な基準というものをお考えでしようか。個々の場合に非常に判断のむずかしい点ができることだと思いますが、大まかな考え方として一つの基準ですね、お考えでしたら披瀝してもらいたい。
#26
○説明員(桃沢全司君) 只今亀田委員の仰せになりました雑誌というものは市中で販売せられているというような場合には、これはもう公になつたものと解していいと思うのであります。極く少数の特定の研究家の間でそれが回覧されているような場合、こういう場合にはその個々の事件によりまして公になつているかいないかきまつて来ると思うのであります。私ども考えておりますのは公になつているかいないか、これはまあ抽象的には不特定多数人に知られていることが公になつているということになると思うのであります。
#27
○亀田得治君 それから何か田舎の小さな新聞にちよつぴり載つた、こういうような場合は新聞である以上はもう公と、こういうふうにこれはもう例外なく断定をおいていいでしようか。
#28
○説明員(桃沢全司君) それが公に発売されているというふうな新聞であれば、お説の通りと思います。
#29
○亀田得治君 よく田舎に発売されておるのが、定価は書いてあるが余りお金も普通の新聞のようにもらつておらないが、併しまあ全然ただでもない。そして或る程度広汎に出しておる、そういう新聞がよくありますね。そういうものに例えば載つた場合……。
#30
○説明員(桃沢全司君) 多くの場合は、亀田委員の御設例のような場合にはこれは公になつたものと我々は考えます。
#31
○亀田得治君 それから裁判に関連してやはり公という問題を確かめておきたいのですが、例えば起訴状の書き方にしても、非常に検察官が注意をして秘密自身がわからないような書き方をしている、併し違反事実だけは明確になるような……。そういう書き方をしている、そして又裁判官の審理もこれはまあ注点してやつている。そういう場合には恐らく被告人が犯罪を自白をし、自分で公判廷においても余り争わないと、そういう事件だと思いますが、そういうふうな状態で行われた起訴或いは裁判の場合には、これは公になつたものとみなさないのかどうか。それを通じてはどうも第三者が見ても秘密たることがわからない、その書類を見ても……。そういうふうな解釈をとられるのか。いやしくも公判にかかつた以上は、その起訴状なり或いは裁判の進め方の如何にかかわらず公だと、こういうふうな解釈を持つておられるのか。
#32
○説明員(桃沢全司君) この法案に違反する事件が裁判にかかつた場合、御承知のように裁判の過程において秘密の内容というものを十分に質さなくても、この審理ができるという事件があると思います。かくのごとき場合は個々の具体的な事情によつて違うと思いますが、直ちに裁判にかかつたからといつて、それが即ち公になつたもの、そのようには解されないのでありまして、場合によつては公になつたものと認められる場合もありましようし、公になつていないと認められる場合も出て来ると存じます。
#33
○亀田得治君 そういたしますと、公ということについて三つばかり私具体的に聞いて見たわけですが、なかなか具体的な事案にぶつかりますと、非常に微妙な点が出て来ると考えられるわけです。たしか桃沢課長の御答弁だつたと思うのですが、アメリカのほうで武器を日本によこす場合に、この分とこの分は秘密だ、こういうふうに指定されて来た場合には、行政機関としては当然にそれに拘束される、こういう意味のことを言われております。但し裁判所の場合には独自の判断で行動していい、そういう意味のことを、衆議院の記録を私拝見したところ桃沢さんがおつしやつたようですが、その点ちよつと聞きたいのですけれども、たとえアメリカがこれは秘密にしてくれと言われても、それによつて直ちに日本の行政機関が拘束されるということには私はならんのじやないかと思うのです。裁判所だけが独自の判断で秘密であるかないかということを判断するというべきものではない、行政機関だつてその点は一緒だと思います。裁判所の場合はいよいよ人を刑務所に入れるという段階でありますから、極めて慎重に判断しなければならない。秘密と言われておるが、公になつておるという被告人の抗弁があれば、その点についていろいろ調べてみる、これは行政機関の場合でも同じでしよう。だからどういう意味なのか、その点少し明確にしてもらいたいと思います。
#34
○説明員(桃沢全司君) お説の通りでありまして、若し私が行政機関が拘束されると言いつ放しにしておるとすれば、少し問題だと思います。併しながら私の記憶から申上げますと、その時でありましたか、或いはその前後に若しアメリカのほうでこの部分がこういう意味で秘密だということを通告して参つた場合に、それは日本側におきましてすでにそれだけの科学的知識を有しておる、それはすでに公になつておるものであると考えられる場合には、その事情を先方に話合つて、そうしてそれは防衛秘密として日本が取扱わないということもあり得るであろうということを申上げたつもりでございます。その点は龜田委員の仰せられます通りと私も思います。それから裁判所の独自の判断という問題でございますが、これは勿論公になつているかなつていないかという判断は、裁判所にあることは当然でありますが、そのほかに私ども考えております自然秘密という性質から、それが高度の秘密であるかどうか、防衛秘密に該当するかどうかということも、裁判所は究極的には独自の判断でおきめになるであろうという意味で申上げたつもりであります。
#35
○亀田得治君 その点お答えによつて明確になりましたが、これは先だつても少しその点に触れてお聞きしたわけですが、そうしますと、やはりアメリカからこれを秘密にしてくれという要求がありましても、実際問題として一々その要求が妥当かどうかということを日本政府の役人の方が検討されるかどうか、これは別ですが、本来ならばたとえアメリカのそういう要求があつても、一応検討して見るべきものなんですね。そうしてそこで確認をするということになる。若しアメリカの要求が行き過ぎておるということになれば断つていいわけですね。そういう意味から言いますと、どうしてもこのような建前における秘密という場合には、日本政府の確認行為が、指定というか何というかは別として、どうしてもそれが一つそこに入つて来る、このことはお認めになりますね。一方から言われて自然にそれが秘密というわけじやないでしよう。大体がそうでしようが、やはりそこに確認行為というものがあるわけですね。
#36
○説明員(桃沢全司君) 法律的に申上げますと、私どもの立て方は自然秘でございますから、そのもの自体が相当高度な秘密性を持つていなければ、仮にアメリカから言われても、これは直ちに防衛秘密に該当するということにならない場合も考えられるわけであります。併しながら前にも申上げましたように、現在保安隊が供与を受けております武器、兵器につきまして、相当日本が曾て持つていたものより高度なものであつても、なお防衛秘密に該当するような秘密を有していないという実情でございますので、恐らくアメリカが秘密と言つて来るものは、これは日本の現在の科学の状況、或いは兵器の状況から申して、相当高度のものだけを言つて来られる。即ちその意味からは実質的にアメリカがこちらに通知して参りますものは相当高度の秘密であろうと、事実上としてはかように考えられるわけであります。そういう立て方をしておりますので、政府の認定と申しますか、確認と申しますか、そういうことは法的にはこの秘密保護法の関係では私は生まれて来ないと思うのでありますが、併し行政措置の問題としてそれはアメリカの通知によつて何らかの階級に属するものとして、取扱いをするという観点から、行政的の立場から政府がこれをどういうふうにクラシフアイドするかという問題について、亀田委員の仰せのように確認ということはあり得ると思います。
#37
○亀田得治君 その点の見解が少し違いますが、私はそういう行政的ないろいろな表示とか通知の以前に確認行為がある、そういうふうに考えておる。議論になるからよしておきましよう。そういう事実関係だけここで明らかにしておけばいいわけです。
 次に第一条の第三項の第二号の情報、これもたびたび議論になつておるところでありますが、普通は日本で情報というような言葉は余り法律上はないと思うのです。何々に関して例えば知得したというようなことになれば、それは内容がはつきりわかつておるという意味が強く出て来る。情報と言いますと、そういう秘密物件或いは秘密事項に関する噂さというような非常に不正確な知識の内容までが含まれて来る感じがする。それはそういう不正確な知識の内容までも含んでおるのだという政府側のお考えなら勿論それでいいのですが、そこで先ずお聞きしたいのは、第一号のイ、ロ、ハに掲げられておる知識、その知識と言えば正確度において非常に違いがあるわけですね。イからハまでの事柄に関する情報というのを知識という言葉で直して見ましよう。その知識には非常に濃度の濃いものと薄い漠然としたもの、こうあるわけです。そういうふうに分けて考えて見た場合、提案者のお考えとしてはこの情報というのは一体どういう程度のことをお考えになつておるか。そういう形で一遍聞いておきたいと思います。
#38
○説明員(綱井輝夫君) これは只今お話がありましたように構造、性能、保管、修理、使用の方法というふうな種類の情報でありますから、漫然たるあやふやな話を秘密にするというようなことはあり得ないのでありまして、それらに関する具体的な且つ正確な科学上の知識ということになります。ここで情報という言葉を使いましたのは、防衛秘密を探知、収集する側から見ればそれらは一つの情報ということに考えられる、持つておる立場から見れば知識であります。取ろうとする立場から言えば情報であります。
#39
○亀田得治君 これは法律用語として適当かどうかわかりませんが、知識とか何とかもう少し明確な言葉が使えないでしようか。例えば青写真は入る、こういう設例はたびたび政府からされておる。これは非常に正確です。これはものをそのままそこに写し出されておりますから、だから法文の解釈としてそういう青写真のようなものでなくとも、青写真程度にともかくそれによつて秘密事項が明確にわかる、こういうふうに解釈しておいていいのですか、その点を伺いたい。
#40
○説明員(桃沢全司君) 仰せのような場合が多かろうと思いますが、第二号の情報で「前号イからハまでに掲げる事項に関するもの」この情報ですが、それが又戻つて参りまして第三項の「左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書」この文書がその青写真に該当するということになろうと思います。それでこの情報という言葉は、仰せられますように、いろいろに解釈される心配もあるかと思いますが、これはこの協定のインフオーメイシヨンの訳に該当いたします。決して広い意味の情報を我々考えておるのではございません。ただ、一号のほうにおいては「供与される装備品等」ということでイからニまでがきまつておる。それから二号のほうは供与される情報でイからハに関するものということで、その内容に供与される装備品等の場合と供与される情報の場合と全く同じことを私どもは考えておるわけであります。
#41
○亀田得治君 そういたしますと大分明確になりましたが、こういうふうに解釈していいのですね、イ、ロ、ハというのは具体的なものに関する事項を先ず取扱われるわけですから、非常に対象が明確ですね。ところが物でない文書或いはその他の方法による場合には、やはり物と同じように内容のあるものでなければ情報にはならないのだ、こういうふうに解釈していいのですか。
#42
○説明員(桃沢全司君) 大体仰せの通りと思います。この供与される情報で、何でも情報ならば入るというのではなく、そのあとに装備品等に関するということになつておりますので、この装備品ということを離れた情報というものは全然予定していないわけであります。
#43
○亀田得治君 勿論それは装備品等に関する情報を私は言つておるのです。ただ装備品等に関する情報の内容が非常にあいまいだといつたようなもの、或いは具体性を欠いておるとか、そういうことになると情報に入らないというふうに大体今わかりましたが、ところがこういう一つの疑問が起きて来るのです。成るほどあいまいな情報のようだが、相当な専門家から見るとそれは非常に一つの大きな有力な情報なんだ、専門家の持つておる特殊な能力からして、そういう場合にはこの情報ということにその専門家に関しては押付けられて来るようなことはありませんか。客観的にそういうあいまいなものであれば、それを取扱つたものがたまたま特殊な知識、能力を持つておるがために、その情報というものが非常に役立つ、そういうふうな特殊な事情は考えないというふうに了解していいのですか。
#44
○説明員(桃沢全司君) もう少し具体的にお話願いませんと、ちよつと只今のお話だけではお答えしにくいのでございますが……。
#45
○亀田得治君 具体的といつても私まあそういう秘密を集めておるわけでもないし、設例になかなかこれは困るわけですが、先ほどから明らかになつたことは、情報といつてもいわゆる世間で普通いう噂さとかそういうものじやない。少くとも明確なものでなければならんものとか、そういつたような場合と同じように……。ところがその立場から言うと非常にあいまいな情報がここにあつたとする。従つてそれは先ほどの説明から言うと情報にならない。ならないのだが、それは普通の人から見てあいまいなので、専門家が見ると、そういうあいまいなものであつても、それを通じて組織的な推測が成り立つのだ。そういう特殊な場合には、その専門家の知識はそれはやはりこの情報、法律でいう情報を侵したことになるか、こういうふうに押付けられないかということを心配しておるわけであります。意味はわかりましたか、おわかりでしよう、私の言わんとするところは大体……。
#46
○説明員(綱井輝夫君) おつしやることはわかるのでありますが、実際問題といたしましては、それぞれの専門家にとりましては先ほどおつしやられましたような、一般には極めてあいまいであるが、何かそれを得れば非常なヒントが得られるというようなデータじやないかと思つております。そういう事柄は殆んどわかつてしまつているのでありまして、結論だけ申上げますれば、そういうものまでここで言う情報として取扱うという考えはないのであります。
#47
○亀田得治君 それで非常に明確になつたわけです。弁護士とか、学者とか、新聞記者とか、こういう人たちがいわゆる合法的な手段でどんな推測記事を書こうと、それと同じに取扱うというふうに大体なろうかと思うのです。
 そこでもう一つこの情報で聞いておきますがアメリカから情報を受けて、その情報に基いて日本で品物を作つた。作られた品物は秘密物件になるのですか、ならんのですか。日本で作つたやつ、供与されたわけじやない、根拠になる情報は供与される……。
#48
○説明員(桃沢全司君) 只今の御設例の場合は、第一条第三項のこれらの事項にかかる物件に入つて参りまして、これはやはり防衛秘密の対象になると考えます。
#49
○亀田得治君 その事項そのものは秘密かも知れんが、物それ自身は秘密じやないのじやないですか。飽くまで物そのものは第三項一号に書いてありますように、アメリカから供与された、これが一つの条件でしよう。だからその場合には私は物と秘密情報というものが分離して考えられなければならない。アメリカから供与されたものと同じように取扱うわけには行かないでしよう。
#50
○説明員(桃沢全司君) この第三項に書いてありますのは、第一号と第二号を含めておるのでございまして、大体の立て方はこの事項を中心に考えております。その事項及びこれらの事項に係る文書、例えば青写真、或いはその事項に係る図画又は物件ということになつて参りまして、お話の場合は、「供与される装備品等について」の第一号の場合と「供与される情報で、装備品等に関する」云々の場合と私は差はないと考えております。
#51
○亀田得治君 まあその点の説明わかりました。
 それから次に第三条の罰則について少しお伺いしたいと思うのです。これはたびたび各委員からも意見の出た点ですが、第三条ではこの罰則が全部一つになつておりますが、これは私非常に不適当だと思うのですね。もう少し内容的に検討をしてそうして区別すべきじやないか。一切を裁判所の量刑に任しておく、これではやはり立法者の重点の置きどころ、これがやはりわからないと思うのですね。でそういう意味でこの点はなぜ区別を設けられなかつたものか、若干御説明願いたい。
   〔理事上原正吉君退席、委員長着席〕
#52
○説明員(桃沢全司君) この第一条の刑の点でございますが、第一に私ども参照いたしましたのは、昨日も申上げましたようにいわゆる刑事特別法によつたのでございます。刑事特別法では第一号及び第二号に丁度相応する規定がございまして、これはいずれも本法案で規定いたしておりますように十年以下の懲役になつております。これをそのままとつて参つたのでございます。新らしく入りました規定は第三号の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」であります。この点私どももいろいろ考えたのでございますが、結局「業務により」というのはこの取締りの対象になるものが相当限定されて来る、業務によつて知つた者は常にこの第三条違反に曝されているという関係が、一般人とは異なるのではなかろうか。その意味におきましては相当重い責任を日頃から業務による者は持つているということを言えると思うのであります。と同時に「通常不当な方法によらなければ」というしぼりが一般の者にはあるのでありますが、業務による者にはそういうしぼりがないというような点から考えまして、これをより以上重く、例えば十年以上というような刑に持つて行くことはどうであろうか。それらの点を考慮いたしまして一号も二号も三号もこの刑特の定めている十年以下の懲役ということでいいのではなかろうかと考えたわけであります。私の聞いておりますところによりますと、いわゆる刑事特別法で十年以下という刑を定めたのは、不当な方法でやられたときというのは、詐欺でやつた場合、或いは窃盗で探知、収集した場合、そういうふうなものを考えられまして、この窃盗、詐欺の量刑等と彼此照合わせまして大体十年以下ということでよいのではなかろうかというところから、そのような刑の定め方がされたと聞いておるのでございまして、それを踏襲した、かように御了承願いたいのでございます。
#53
○亀田得治君 まあいろいろこの点は問題点がありますが、例えば今申された不当な方法というのの中に窃盗とか詐欺とかそういうこともお考えになり、窃盗、詐欺等において十年以下の懲役となつておるから、そういうことが一つの根拠にもなつたというような御説明でもありますが、若しそうであれば、この手段について不当なという方法じやなく、違法な方法、何かそういうふうになつておれば、相当詐欺、窃盗の場合の十年をここに持つて来るという一つの根拠にもなろうかと思う。ところが詐欺、窃盗でないようなそういう違法行為よりも広い意味の不当性というものをここで出しておられるわけですから、直ちに詐欺、窃盗が十年だからこの場合も十年でいいんだと、これはちよつと出て来ないように私思う。それから刑事特別法の引用もあるのでございますが、刑事特別法の場合には、アメリカ軍の持つておる秘密、併しこのアメリカという国並びにそれに関連してアメリカ軍というものと日本の国、それに関連して日本の保安隊、自衛隊、これはもう性格が少くとも政府の説明によれば違うわけなんですから、だから私直ちに刑事特別法で同じようなことが十年になつておる、従つてこちらもしなきやならない、これも直ちにはそう断定できないと思う。そういう軍隊を持つた一種の軍事国家なんですから、そういう国家においてはこの種の犯罪を重く見る、これは当然了解できる、被害法益だから……。ところが日本の場合にはこれは相当国の事情が違うわけですから、だから私は若し手段の点について詐欺、窃盗というようなことが参考になり、或いはもう一つは類似の立法として刑事特別法が参考になつたというのであれば、むしろそれを参考にして実質的に比較をすれば、十年よりも下げて来るのが本当の参考の仕方だ。比較とか参考というのは何も同じにすることじやないのですからね。実体の違いをむしろ発見して、違いがあれば違いに応ずるような差等を付けることが本当の比較なんです。だからそういう意味から言うと、どうも私はこの第一号のような場合に十年以下の懲役、これは初めてここで新らしく生まれる秘密保護法の罰則としては少し強過ぎると、こういうまあ感じを非常に強く持つわけなんですが、如何でしようか。先ほどあなた刑事特別法と詐欺、窃盗を引用されたのですが、引用そのものがどうも適切じやないように思う。
#54
○説明員(桃沢全司君) 第一の問題は刑事特別法におきまして十年以上の懲役ときめた理由についてでございますが、これは先ほども申上げましたように、ちよつと私の聞いているところを申上げただけであります。なおそのほかに勿論前の軍機保護法の刑その他を参釣して被害法益の大きさ、詐欺、窃盗の場合の被害法益の大きさ、そういうようなものと彼此考証いたしまして十年という刑がきめられたと思うのであります。旧軍機保護法は改正前の明治時代のものと比較してみましても、それよりはずつと軽くなつているという関係になつているのであります。で刑特とこの秘密保護法案とは法益が違うんだから、又刑の量定においても変えてよいのでなかろうかという御質問でございます。その点は法的には保護法益が違うことはお説の通りでございます。併しながらそこで守られます秘密の実際的の内容というものは、アメリカ軍の持つておりますものも今回アメリカから日本が供与を受けますものもこれは同様なんでございまして、同じものでございます。その扱いが刑期の上において違うということになりますと、結局アメリカの持つている秘密よりももつとその程度の低いものだけが日本に来るんだというようなまあちよつと誤解も受ける。又逆に言いますと、そういう秘密性の低いものを日本にやるだけだということにもなる可能性もあるのではないかと考えられまして、その点刑特以下の刑を定めるということは私どもとしては考えられなかつたのでございます。なお、法益の問題から申しましても、日本の防衛の必要からかような武器の供与を受けるのでございまして、その秘密を日本の秘密として守るという点から申しますと、或いはアメリカ軍の持つている秘密を守る以上の手段を講ずるのが当然であるというような考え方も一面成り立ち得るのでございまして、私は刑特と特に刑を変えなければならないとは考えていないのでございます。
#55
○亀田得治君 アメリカとの関係は、日本がこういう考えを持つからという考え方がきまれば、これは十分アメリカ側に説得したらいい問題だと思うのです。アメリカとして要求してることは、そういう刑の範囲にまで入つておらないようにこれは何遍も委員会で御管弁受けておる通りなんですから、それはどういう犯罪の場合でも、その犯罪行為に対するその国の評価ですね、評価の仕方によつて刑罰のきめ方が違つておるわけですからね。これは単に秘密保護法の場合だけじやないでしよう。普通の破廉恥犯の場合だつてそういうことがある。或いは例えば姦通罪といつたような場合には、これはもう御存じのように非常に国によつて考え方によつて、一方は有罪、それから全然刑法上の犯罪と考えない所もある。そういうふうに社会が違うことによつていろいろ同じ行為であつても、評価が違うのが私当然だと思うのです。で刑罰法規が一体どの程度が適当なのかということは、そういう意味から言うならば決してこれは単なる各国の刑法の比較とか、そういうことも必要ですが、同時に一体その秘密そのものがその国においてどのように社会的な評価をされておるのか、こういうことが一番大事なことじやないかと思う。ところがそういう立場からこの法案を考え見ますると、これもまあいろいろな総括的な又質問の内容に戻りますから、別に繰返えしては申上げませんが、この保護法自身がいろいろな意味で問題になつている。そういう意味では決してアメリカの国内におけるような、或いはアメリカ軍の持つている秘密なんかとはもう社会的な評価が違うんですよ。だから私は新らしくこういうものを作る今の段階としては、何と言いますか、処罰するにしても一番一つ初歩的なところからお始めになつたらどうか。どうしてもそれで足らないというふうな現実の事情がいろいろ事実上現われて来れば、それを根拠にして更に考えるということはあり得る。そういう気持で申上げておるのでありまして、立案当局でもこれはいろいろ考慮された問題だと思いますが、私どもの立場から見ますると、これは少し重過ぎる、こういう感じを強く抱きます。
 それから更に一点伺いますが、防衛業務に関係のある役人が我が国の安全を害する目的を以て防衛秘密を探知、収集してこれを漏らした、こういう場合には一体どういう科刑がされるわけですか。この第一号と第二号との関係はどういうふうにその場合なつて行きますか。併合罪として更に加重するという考え方なんでしようか。
#56
○説明員(桃沢全司君) 業務によりでなくて、第一号と第二号との関係でございますか。
#57
○亀田得治君 ええ。
#58
○説明員(桃沢全司君) この点は併合罪であるか、或いは手段、結果の牽連犯として一罪として処断すべきかという法律問題、これは非常にむずかしい問題であると私ども考えております。前のいわゆる刑事特別法の際には、これを別罪として二罪に一応行政解釈をいたしたようでございます。現在の段階におきましては私どもそれに従うつもりでございますが、なお疑念もございますので、慎重に検討したいと思つております。
#59
○亀田得治君 二罪ということになりますと、併合罪の規定によつて最高十五年、こういう考え方ですか。
#60
○説明員(桃沢全司君) 只今申上げました通り、結論においてはそうなつて参ります。ただ、その問題は本質的には刑事訴訟法が改正されましてから余り大きな問題ではなくなつたのではなかろうかと考えます。と申しますのは、連続犯の規定がなくなりましたので、何回もかようなことをしたという場合には、やはりそれぞれ別罪として取扱うという点が旧刑事訴訟法と違つておりますので、この場合だけ併合罪であるか、或いは牽連犯として一罪として処断されるかとい問題は、それらとも関連してそう大きな面を占めていないように私は考えております。
#61
○亀田得治君 私はこの秘密保護法の中で一番国家として注意しなければならない犯罪は、一つは、これはまあ政府からも説明があるように、専門のスパイ、それからもう一つは、これもたびたび議論が出ておるように、防衛業務に関係のある人たちが漏らす問題、私はその中でも、なかんずくですよ、なかんずく防衛業務に関係のある人が計画的に秘密を集めて漏らすと、これだつたらすつかり行けるわけですね、すつかり……そうでしよう。洗いざらい行けるのですよ、これは……。いやそういう者はいやしないと、こうおつしやるかも知れませんが、それは法規を作る立場としてそんなことは考えるべきじやない。法規というものはどんな条文だつて犯されることを何も歓迎しているわけじやない。又犯されないように努力もする。どんな条文だつてそうですよ。努力もするのだが、而も犯されることが予想されていろいろな規定がここに現われるわけなんですよ。そうしますと一番大事なのは、防衛業務に関係のある人が他に漏らすというのじやなしに、これが例えば第三条の第一号のような目的を以て計画的にやつたと、こういう場合、これだつたらもう全部行けますよ。そういう場合には恐らく私各国の立法はよくは存じませんが恐らく死刑制度を持つておる国においてはそこまで行つているのじやないかと思うのですね。だから、その一つだけを考えてもですよ。私は何も官吏のやつをもつと重くせえと、こういう意味で言つているわけじやない。それほど質的に重要な意味を持つておるものと、それから専門的なスパイでもないようなやつでひつかかるかも知れないというような虞れのあるものと、それらが一緒になつておる。これは私甚だ腑に落ちないのですがね。今私が設例したような場合には外国の立法例は一体どうなつておりますか。若し資料がありましたら二、三でもいいですから、一遍聞かしてもらいたい。
#62
○説明員(綱井輝夫君) 御質問の例をそのままぴつたりと申上げるというわけには参らないかも知れませんが、例えば合衆国の防牒法におきまして、差上げてあります資料の第二の第一のこのd項に、合法的に国防に関係ある情報を所有しておる者が故意に漏らした場合、e項は許可を得ないで国防に関係のある文書等を所有しておる者が漏らした場合、これらは同一の罰則を附せられております。
#63
○亀田得治君 それは何ページですか。
#64
○説明員(綱井輝夫君) 資料(二)の第一ページであります。第一ページのd、dの最初は、「何人と雖も合法的に国防に関係のある」云々と書いてありますが、情報の所有者が故意にこれらを受領する権限のない者に通報した場合、e項は、許可を得ないで国防に関係ある情報を所有しておる、これはまあスパイその他を指すと思いますが、それらが通報し、伝達した場合、これは同一の罰に処せられることになつております。
#65
○亀田得治君 例えば同じ資料の第二頁ですね。第二(条)に書いてある「外国政府を援助するための国防情報の収集又は交付。」と、こういう場合には更に刑罰が重くなつて二十年以下の禁錮、それが戦時である場合には死刑又は三十年以下の禁錮、こういうようなふうにその内容によつて非常にまあ違つて来ているわけですね、この資料によつても……。で、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」というのですから、この内容は勿論いろいろ問題点があるでしようが、相当大それた目的を以て専門の防衛官吏が秘密を外国に漏らすということがあつた場合には、それと間違つて引つかかるというようなやつとが一緒だというのは、このアメリカの場合を引用された法律から見ても、少くとも公平じやない、このことだけは私は言えると思うのですがね。それじやどの程度にこの刑を違えるかということは別な問題ですけれども……。
#66
○説明員(桃沢全司君) 只今亀田委員の仰せられましたような考え方は、これは相当有力に成り立ち得ると私たちも考えます。併しながら先ほど申上げましたように一応刑特の線が出ておつて、その繰返しになりますが、特に変えなければならないという判断が我々にはできなかつたわけでございます。そういたしますと、若しこの新らしく入りました「業務により」、只今仰せられたような場合を想定いたしますと、それ以上の重要性を持つているのじやないかということになるわけでございます。そういたしますと、結局業務によつた場合の或る特殊な例をもう一項設けましてこれに対して十年以下というのじやなく、もつと重い刑罰を科するという立法形式をとらざるを得なくなつて来るのでございますが、私はそこまで行かなくても裁判所の良識に訴えまして、その情状によつて非常に軽い刑も加えられる。一番重いものが十年までだ、それで賄えることが一番いいのじやなかろうかと、かように考えまして、このような刑を考えた次第でございます。
#67
○亀田得治君 第三号の「業務により」これを「他人に漏らした者」という中には、非常に不当な方法を用いた者も入れば、非常に悪辣な国家に対する有害な目的を持つた者もすべて入つて来るわけですからね。そうでしよう、これは最低線をここに書いているだけでそういう悪い条件がどれだけ加わつてもこれで行くわけだ、原則として……。そうなりますと、一つの量刑でそこをやると言つたつて、もう上がつまつているわけですから、処理ができないでしよう。だから私はそういう意味で、刑全体を重くするのじやなしに、やはり「業務により」というのが十年以下であれば、ほかのやつを下げるなり、何とかこれを考慮しないと非常にまあ下都合な感じを与える。
 それからもう一つはこういうことがあるでしよう。十年くらいの刑であれば、なに有罪になつたつて大体途中で仮出獄なりいろいろな関係で十年もおるわけじやない、半分なり三分の二経てば大体出られるわけでしよう。そうすると六年や七年は一つ計画を以てやろうという人なら幾らでもこんなことはやれますよ。何もそれで殺されるというわけじやない、又一生准そこで無期徴役というわけじやない。だから若し日本が本当の軍事国家であれば、私はその点がもつと厳密に考えられただろうと思う。そういう重いものをも国の体制が違うから、僅か十年にしておるわけだ。そうならそれを基準にして私は一般のやつはもつと下げてやるべきじやないか、こう考えるのです。これは一つ大分考え方もわかりましたから、私どものほうで一つ又いろいろこの点は考えさせてもらいたいと思います。
#68
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて下さい。
   〔速記中止〕
#69
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。午後二時まで休憩をいたします。
   午後零時五十二分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時二十七分開会
#70
○委員長(郡祐一君) 休憩前に引続き委員会を再開いたします。
#71
○亀田得治君 直接の法案関係はもう中止いたしまして、最後に二、三点関係事項を聞いておきたいと思います。
 この自衛隊法の五十九条によりますと、例の、衛隊員の行政上の秘密を守る義務が規定されておりますが、これはまあ一般の官庁、一般の公務員の義務と同じような規定になつておりますが、自衛隊の関係では、この自衛隊法でいう秘密の決定というものはどういうふうになされているか、お聞きしたいと思います。
#72
○政府委員(上村健太郎君) 自衛隊の内部訓令によりまして、やはりその程度を分けて、書類の保管その他をやつておりまするけれども、併し現在の保安隊におきましては、武器、装備等の秘密がございませんので、ただ単に一般官庁と同様な未決定の事項、まだ官庁としてきまらない事項、部外秘に扱うとかそういうような程度のものでございまして、ここにこの法律にいうような性質の秘密というものはきめておりません。
#73
○亀田得治君 この決定事項でいわゆる秘と、部外秘となつているものは現在はないのですか。
#74
○政府委員(上村健太郎君) 例を挙げますれば、例えば現在の保安隊におきましては、国内の騒擾鎮圧の方法でございますとか、或いは演習の内容等が一般に漏れること自体が保安庁といたしましては支障を生ずることがございますので、そういうものにつきましては、決定して文書になつているものでも部外には秘密にいたしております。
#75
○亀田得治君 部外秘というものをきめる場合には、長官だけの決裁でやるのかどうか、何か特別な委員会のようなものでもあるのでしようか。
#76
○説明員(綱井輝夫君) 特別の委員会はございません。
#77
○亀田得治君 そうしたらそこの各部署の責任者が適当にこれは秘にして置こう、ぽんとこう判を押せばそれで秘になる、こういう簡単なものでしようか。
#78
○説明員(綱井輝夫君) これはその中身は勿論違いますが、例えばアメリカの場合、日本の旧軍機保護法、こういうような立場をとりますと、これこれの事項については秘密とする、そういうふうに法律乃至省令のようなものできまるのであつて、それに従つて各担当者がそれぞれの格付けをするわけでありまして、第五十九条の関係の隊員が守るべき秘密につきましても、機密、極秘、秘、部外秘という四段階をきめておりますが、大体どういうものがこれに該当するかという一般原則をきめておりまして、それぞれの方面で主務者がいるわけでございますから、それらにつきまして、これは極秘に該当すると考えれば極秘の判を押すわけでございます。以上のような手続できまるわけであります。
#79
○亀田得治君 その一般原則がきめられているというのは、どういう形式できめられているのですか。これは保安庁長官が内部に対する一つの準則としてきめている、そういうものですか。そして又同じようなことがほかの官庁においても同じようにやられている、そういう性質のものでしようか。
#80
○説明員(綱井輝夫君) 今御質問されている意味の秘密遵守の規定乃至方法、取扱、それらの内容等は、大体一般官庁のものと同様であります。
#81
○亀田得治君 一般官庁と同様といつても、少し一般官庁のほうもわからない点があるのですが、その一般的な基準ができている、どういうものをいわゆる部外秘にするかという一般的な基準ができている、その基準に従つて、各部門の例えば局長なりそういう人がそれを認定すればそれでいいのですか。或いは局長が認定するに当つて、例えば更に長官の承認を得るとか、そういうことになつているのでしようか。その点をもう少しはつきりして下さい。
#82
○説明員(綱井輝夫君) それは一応局長なら局長が認定するわけでありますが、その上級者はその秘密を変更することができるわけでございます。
#83
○亀田得治君 上級者が変更することがあるといいますと、そうすると一応そういう内部秘密を決定しますと、上官に承認を求めるのではなしに、報告をするわけですね。そういう内部手続になつておるわけですか。
#84
○説明員(綱井輝夫君) 勿論これらの秘密区分の最終決定権は長官にあるわけでありますが、実際上の取扱としましては、実際の担当者が一応その区分をする、勿論それは主として文書が多いわけですが、文書はそれぞれ上級者に通達されるわけでありますから、それらが不適当だと思えば、上級者はこれを変更する、そういう建前になつております。
#85
○亀田得治君 このそういう内部の秘密、いわゆる部外秘に違反をいたしますと、一年以下三万円でしたか罰金、そういうことですね。従つて違反いたしますと刑事上の処罰まで来るわけなんですから、それで私、内部秘密の認定ということをどういうふうにおやりになつておるか、この点を確めたわけなんです。今お聞きしたようなやり方ですと、内部秘密にそれを取扱うという場合に、結局その担当の責任者、部局長、こういつたような人が、先ずこれをきめるように感ずるのです、ほかに委員会等もないようですから。そういうことになりますと、各担当の部門において部外秘とするものが相当でこぼこができるのではないか、こういう感じもいたしますが、これは実績等に徴してどうでしようか。
#86
○政府委員(上村健太郎君) 内部で一応の基準ができておりまして、原則といたしまして、ともかく未決の文書、未決の事項は部外秘になります。従いまして大体起案者が新らしい事項を起案いたしましたり、新らしい又書を作りまして、局長なり上司の決裁を得るまでは部外秘になつております。そこで案がきまりますれば、これをどういう秘密扱いするかということは、書類に判を押しましてそうしてきめるわけでございまして、課長なら課長、局長なら局長がこれを秘扱いすると申しましても、その書類が長官のところまで出まして、或いは中間段階の次長のところに出まして、これは秘でなくてよろしいというものなら、その秘の判を消すということになるような内部の取極ができております。
#87
○亀田得治君 この未決事項の中で部外秘にするというのは、例えば保安庁が外部と物品等の取引の契約をする、そういつたようなことが主なんですか。いわゆるそれ以外には余り未決定事項だからといつて、例えば先ほど設例された演習の内容とか、これは決定事項ですが、そういう演習の内容等に関する未決定事項はこれはわかりますが、決定事項も部外秘になるのですから、未決定事項はなお更部外秘でしよう。そうするとあとは今申上げたような物品等の取引、そういつたようなもののように思うのですが、それ以外にも秘とされるものは相当あるわけなんでしようか。
#88
○政府委員(上村健太郎君) それ以外にも一般の人事等につきましても勿論ございまするし、なお各局予算の関係についてもございますでしようし、それから警備の関係についても勿論あると存じております。
#89
○亀田得治君 それで大分内容がわかりましたが、従来こういう規定がありまして、一年以下、三万円以下といつたようなこの刑罰、こういうことに該当をするような秘密漏洩事件というものは幾らかありましたでしようか。
#90
○政府委員(上村健太郎君) 私どものほうの官庁に関する限りは事件として取り扱つたことはございません。何にしても高度の刑罰を以て臨まなければならないような高度の秘密というものが現在ないものですから、例は今のところございません。
#91
○亀田得治君 もういいです。
#92
○委員長(郡祐一君) そうでございますか。それでは御通告のありました羽仁委員、楠見委員どちらからでも御発言を願います。
#93
○羽仁五郎君 今亀田委員が御質問になつた点と関連して来る点について第一に伺いたいのですが、仮に本法案が成立し、それから自衛隊法案が成立した場合を仮定いたしまして、それで自衛隊の隊員、これは自衛隊のメンバーですね、隊員というものは正確にはどの人を隊員というか、そのかたがたが本法案にいうような秘密の保護の措置に違反した場合、そのかたがたに対してはこの保護法が適用されるのですか。それとも自衛隊法が発動するのでしようか。
#94
○説明員(桃沢全司君) 刑法学設上のいわゆる法条競合という場合であろうと思いますが、防衛秘密であります場合いには、この秘密保護法の第三或いは第四条によつて処罰されるということに相成ると思います。
#95
○羽仁五郎君 この問題に関して、二つ私はどうも国民が疑問を持つのじやないかと思うのですが、今までの慣例では、これにそつくり当てはまるかどうかわからないのですが、似たような場合ではどういうふうに今まで慣習上なつておるのでしよう。つまり役所のかたが一般の人にも関係して来る法律に触れる、こういう場合ですね、その場合に普通役所で懲戒とか行政処分とか免官、普通首になるとかいうことで、この刑罰の法規のほうに適用されない場合がどうも日本じや多いのじやないかと思うのですが、どうですか。
#96
○説明員(桃沢全司君) この自衛隊法の五十九条の場合も、これはやはり行政罰の対象になる。併しその扱いを、行政罰を先にするか或いは刑罰を先にするか、これはそれぞれの犯罪の内容によつてきまつて来ると思いますが、現在の国家公務員法違反、丁度この五十九条に該当するような規定もございます。その他政治活動、いろいろ規定がございますが、これまでの取扱は、主として行政罰先行という方針のようになつております。
#97
○羽仁五郎君 それでどうも、つまり平たく我々の民間の百姓、町人の言葉で言えば、役人が悪いことをしたときは首になるだけでなかなか牢屋に入れられるということはないのです。国民のほうは真先に牢屋に入れられるという感じが私ども戦前から強い。それでそれには根拠がどうも今の御説明であるらしいですね。例えば最近頻々と起つている警察官が信書の秘密を破ろうとしたというような場合が仮に問題になつても、警察官なり国警長官なり何なりがやめる、やめられるというだけで重い罪にはなかなか……実際にはこれは公務員法違反でしようし、憲法にも違反しているし重大なる罪なんだが、そつちのほうはやられないで、極端な場合には何というのですか、譴責とか何とか軽い処置があつて、同じようなことが国民の場合であれば非常に重い罪になる。役人の場合には非常に軽い罪だというのが、日本国民のこれはもう世論ですよ。世論の批判だ。これは役所の中にばかりおいでになるとそんなことは甚だ御納得できんとお考えになるかも知れないのだが、我々役所なんかにいたことのない人間から見ると、大体役人は免かれて恥なしという感じを抱いている。ところで今のお話だと、やはりさつきの御答弁と今の御答弁とは矛盾して来るのじやないか。行政罰のほうか先だ。それで行政罰で処置がつくと今度秘密保護法の適用を受けるということは余りないのじやないかと思うのですが、どうですか。
#98
○説明員(桃沢全司君) 先ほどは行政罰が先ず行われるであろう。それが原則のようになつていると申上げたのでありますが、これは一般人は処罰の対象にならない場合であります。役人であるが故に処罰をされるという規定、この違反の場合でありまして、そうでなくて一般国民も処罰もされ、それから公務員も処罰をされる、こういうような場合に公務員であるから行政罰にとどめる、かようなことはないのでございます。その点は御心配のないようにお願いしたいと思います。特に公務員法で問題になりますのは、争議のような場合、争議は禁止されているわけです。争議をやつたらすぐ処罰するか、刑事罰を以て臨むかということになりますと、その事案々々に応じまして、一応懲戒処分で納まるならば特に刑事罰まで行かなくてもいいじやないかというような観点のものが多いわけでございまして、只今の羽仁委員の御心配の点はなかろうと存じます。只今の例に信書の秘密の問題を出されたのでありますが、最近の斎藤国警長官の答弁、これは私速記録も拝見いたしておりませんし、事件は存じませんが、その前の、例えば只今の公安調査庁の問題、これは先日も高橋次長からお話がありましたように、憲法の通信の秘密というものには或いは触れるという点で非常に恐縮しておつたのでありますが、信書の秘密というものではない。即ち刑罰法規はないわけでありまして、その点も同時に御了承頂きたいと思います。
#99
○羽仁五郎君 そこでちよつと具体的にですね、秘密を、つまりこの秘密保護法案が法律に仮になつた場合には、この法に触れるという行為を保安隊なり自衛隊のかたが不幸にしてなさつた場合ですね、その場合には、結局そうするとどうなるんですか。先ず第一に、自衛隊法が仮に法律として成立すれば、それが適用されて、それからその次に今度は秘密保護法が適用されるのでしようか。
#100
○説明員(桃沢全司君) 実際の取扱におきましてはこの秘密保護法の防衛秘密に該当する場合には秘密保護法一本で取扱うことになると思います。
#101
○羽仁五郎君 そこで今度次の問題が発生して来るのですが、保安隊も今は、つまり昨日か一昨日かも伺いましたように、月給取りですからね。自由契約でお入りになるわけです。だからそれには契約したときの条件というものは、やはりそうあとからいろいろな事後承諾というのですか何ですか、契約をしたときには、入つたときにはなかつた条項をくつつけてもいいものでしようか、どうですか。私はどうもそういうことは余り善良な風俗だとは言えないように思うのですが、今お入りになつているかたは、こういう法律ができて、業務によりとか何とかと、過失で漏洩しても非常に重い刑罰を受ける。この過失による漏洩の点は一松先生からでも又十分にやつて頂かなければならない。元の軍用資源秘密保護法とかと比べてみても非常に重いのじやないか。刑事特別法にもないというような重い刑罰がくつついているのだが、そういうふうになるのだということを承知して契約して入つているのじやないでしようから、その関係は問題ないのですかどうですか。政府はどうお考えになつておりますか。
#102
○説明員(桃沢全司君) この法案で定めておりますところは、これによつて防衛秘密を守るという要請に基いてできているのでありまして、特にこの第三条あたり、そこに大きな反社会性というものを認めているわけでございます。これを法律で規定するということは、この契約とは関係なくできることと思います。只今業務によりを防衛隊員だけに仰せられましたけれども、それはそうではなくて、或いは裁判官或いは検察官、これらもすべてその対象になり得る場合があるわけでございまして、一般的にこういう規定を設けるということはこれは許されている、かように考えます。
#103
○羽仁五郎君 その一般的の場合もですが、保安隊に志願して入つている人ですね、今自由契約をして、その人は保安隊という所はそんなおつかない秘密のある所だとは全く了承してないでそれで入つているんだから、少くともこの法律ができたら、その契約を続けるかどうかということぐらいは聞いておやりになつたらどうなんですか。随分親切の意味からは―法律的には差支えないとおつしやるかも知れないけれども、仮に私などが万一保安隊などに入つているとすると、こういうことになるならばやめたいという自由の意志で思うかも知れない。そういうふうになさるほうが憲法なり何なり民主主義のほうからいつてなさるべきじやないんでしようか、そんなことはしなくてもいいというんですか。
#104
○政府委員(上村健太郎君) 保安隊に関することだけ申上げたいと存じますが、保安隊は隊員に入ります場合に、法令に従つて、職務の遂行に当るという宣誓をいたします。尤も今回自衛隊法ができますると、附則によりまして、改めて宣誓をしてもらうことになります。又宣誓をして、あとでこれは話が違うというときには、本人は自発的に退職をいたすことになるだろうと思います。
#105
○羽仁五郎君 私はやはり憲法の趣旨に忠実に、細かい法律上のことは私も知りませんが、常識として善良なる風俗という点からいつて、こういうなかなか重い罪のある責任まで負うということになるなら、一遍隊員にこれでもやるかどうかということはお聞きになるほうが当然じやないか。それが自由契約、即ち月給取り、即ち民主主義的防衛力、民主主義的軍隊とは申上げないけれども、民主主義的防衛力というものを育てて行くいい方法ではないかと思いますが、そういうふうになさるお考えはあるんでしようか。
#106
○政府委員(上村健太郎君) 保安隊員にはこの秘密を守る義務のほかに、まだいろいろな義務もございまするし、又罰則も付いております。隊員を採用いたしますについて、一々念を押して、これでもいいかということで採るのはなかなか親切だろう思いまする。けれども、保安隊を志願するにつきましては、やはり本人の自由意志に基きまして、従来保安隊に入つている人の話なども聞きましたり、保安隊員になつてからどうなるんだということも一応検討はして志願をして来ていると存じます。それから入りましてから非常にいやだという者は無理に引きとめるようなことはいたしませんから、自発的に退職をいたすかと思います。非常にたくさん義務がございまするから、或いは一々説明をしてというふうにはなかなか参らんかと思いまするけれども、一応は研究をして来て志願をすると存じております。
#107
○羽仁五郎君 ほかの場合と違つて、かなり重い刑罰を受ける、そういう新らしい事情が発生するんですから、私は新らしい事情が発生したことについて何か御親切にお考えがあるかと思つたら、余りないということはよくわかりました、それからこれに関連して、前に一松先生からも御質問があつたかと思うのですが、十分にお答えを私は伺つていないので……、この第四条で業務上の過失漏洩罪を科することになつている。これは前の刑事特別法にはそういうものはない。特にこれを加えたのはどういう理由でこういうのをお加えになつたかということについてお伺いした。これは御説明ありましたか。
#108
○説明員(桃沢全司君) いわゆる刑事特別法には業務関係が全部ございません。第三条の第一項第三号はなかつたわけでございます。これはこの業務を担当する者は、いわゆる刑特法におきましてはアメリカ軍及びその関係者でありまして、日本人がこれに携わるということは予測してなかつたために規定をいたしていなかつたわけであります。従いまして第四条の過失罪も同様でありまして、刑事特別法ではこれを予測せず、又従つて規定もいたしてなかたのであります。この過失で洩れる点でございますが、これは如何ような方法であれ、この防衛秘密がよそに洩れるということは極力防止しなければならないのであります。従いましてこの業務により防衛秘密を扱つている者の過失で以てよそに流れたということになると、これはやはり刑罰を以てこれを取扱い、その防衛秘密を取扱う人人に対して十分の注意をしてもらうということが当然に必要になつて来ると思うのであります。前の軍機保護法にもこの過失罪の規定があるのでありますが、それらの刑をも参酌して、それより似い二年以下の禁錮又は五万円以下の罰金というような規定を考えた次第でございます。
#109
○羽仁五郎君 その刑事特別法でも業務関係て今おつしやる程度にとどまらないんじやないかと思うんですがね。で、本法案について御説明になつている場合には、業務関係というのはかなり広く御説明になつて、国会議員だの弁護士だの新聞記者だの学者だのまでが若干の不安を感じているくらいなんですが、刑事特別法の場合は、やはり機械の修理とか何とかいうことになれば、相当広くあれはあつたものじやないかと思うのです、常識的に考えて。で、それをそんなところまでは追及しないという態度をとられたことは、これはその限りにおいては尊敬に価するのではないか。そんなに女々しく秘密の漏洩ということをあつちやこつちやまで追つかけて行く……、まあ姦通罪を廃止したような男らしい気持で、そういう秘密の漏洩ということを女々しく追つかけないで、それよりはもつとずつと進んだ兵器でも自発的に工夫されるというような態度でしたのに、今度は大層しつこく追つかけている。それでさつき申上げたように、そんなこととも露知らず入つたような人が随分過失の漏洩で罪になる。而も伺いたいのは、戦時中の国防保安法第七条、軍機保護法第七条、これからといつてもそういうものを我々が思い出して甚だ暗い感じを抱かざるを得ない。政府のほうから言えば女々しいし、我々のほうから言えば暗い感じを抱く、その上その法定刑も戦時立法で三年以下の禁錮又は三千円以下の罰金とあつたのに、本法案では平時法として重きに過ぎないか。軍用資源秘密保護法ではこういうような漏洩罪の規定がなかつた。その点から考えてこれは均衡を失してはいないかというようにも考えられるわけですが、その点如何ですか。
#110
○説明員(桃沢全司君) この業務によりという場合は、仰せのように一番考えられますものは自衛隊員によるもの、或いは自衛庁の役人、こういうものが一番多くあると思いますが、それに該当するものは刑特法においてはアメリカの軍人ということになると思います。それからその次に考えられますのは民間工場だと言われますが、これらは高度の秘密を持つものはアメリカ側においては自分の持つております施設において秘密の修理をいたすのでありまして、日本側の工場にそれを流すことはないだろうという予測の下に、この業務により特に知得し又は領有した防衛秘密を過失によつて他人に漏らしたということを刑特法においては考えなくてもその目的は遂げられる、かように考えたのでありまして、その点はこの法案と大分実質的に違つた点であると考えます。
#111
○羽仁五郎君 持ち時間がなくなつて来たらしいので十分に伺うことができないのですが、甚だ残念ですが、次の六点について私ちよつと御説明を伺つておきたい。これは委員長のお許しを得て、成るべく簡単に申上げますが、そこで伺いたい点は、先日のお話で標記の附けられていないものというのがあることはわかりました。例えば防潜網のごとく、つまり標記が附けにくいというので附けがたい。これはやはり私は如何に附けにくくても、防潜網に標記を附けることがむずかしければ、その周囲にここにそういうものがあるとか何とかいつて、そのものにうまくぴつたり糊で貼れないということでなくて、親切にそのものに糊で貼れなければ近所に札を立てるなりして、そのものの性質によつては標記の附けられないものがあるというふうに突つぱられると甚だ非民主主義的だという感じを抱くのですが、これはそういうふうに御努力願えるものと思つてお答えを頂かなくてもよいかと思いますが、その次に一番問題になるのは、この間も申上げたように、時というものに逆行する法案である、そのためにいろいろな矛盾が起つて来る。その中の最も具体的なものは、公になつていないものというのが絶えず公になつて来る。それからこの法律で、フアストの中に出てくるように「時よとまれ」というように言つて、秘密というものを固定するのですが、然るに時はとまらないのですから、どんどん不在なつて来る。そこで問題になつて来るのは、保安庁というのは何というか、この役所の中にそういう研究所でもお持ちになるのですか。絶えずそういう軍事機密関係のものが公になつて行くが、世界万国の雑誌類とか新聞とかいうものを絶えず毎日読んで公になつているものがあれば片つ端からこれを外す。という義務は先日頂戴した施行令要綱というものの第三で、「防衛秘密として秘匿する必要がなくなつたとき、又は公になつたものがあるときは、その部分に限り、すみやかに秘密を解除するとともに、標記の抹消その他必要な措置を講じなければならない」ということになつている。これは法律じやないから御自分の責任ということなんでしようけれども、こういうことをお書きになる以上は、これがやれるような研究所でもお持ちになるのですかどうですか。そうでもないというとなかなか挙証責任は自分のほうで負うというような大きなことをおつしやつたけれども、実際にはそんなことはおかしくてできやしないですよ。我々のほうは結局弁護士のかたが御心配になるような、こつちで教えて上げなければならん、これはソヴエトの雑誌に出ているのですよというふうに……、ああそうですかということになるのじやないかというのです。そういう研究所か何かをお作りになるのかどうか、それを一つ伺いたい。
#112
○政府委員(上村健太郎君) 私どものほうは防衛秘密との関連におきましても特にそうでございますが、世界各国の防衛に関する書物等はできるだけ取つております。絶えず研究をいたしておりますので、防衛秘密として指定されるものは極めて数も少く、且つ相当高度なものであると思つておりますから、一般の公刊文書にこれが出ているということは、その都度わかると存じております。
#113
○羽仁五郎君 それは大変有難い。是非十分努力してもらいたい。
 その次に第四に伺いたいのは、解除抹消などが遅れた場合、すでに客観的に公になつている。ところがあなたのほうではまだそれをお気付きにならなかつたりして引張つてしまう場合、そういう場合はどうなんですか。
#114
○説明員(桃沢全司君) 行為前に公になつた場合には、これは仮に標記したりしても、本条のいわゆる防衛秘密論は省かれるわけであります。
#115
○羽仁五郎君 そうしてそのかたを逮捕したり何かしたときには、弁償というのですか何というのですか、償いをなさるのですか、なさらないのですか。
#116
○説明員(桃沢全司君) 若し誤つて身柄拘束を受けて起訴された場合、これは刑事補償法の対象になつて、補償を受けるということに相成ります。
#117
○羽仁五郎君 そういうこともきつと或いは起るかと思うので、十分慎重に、これはどうも公になつていないのじやないかと思つて、簡単に我々を引張らんようにお願いをします。くれぐれも国民に代つてお願いをしておきます。十分御研究になるでしようけれども、ことによると学者の研究には及ばないというようなことがあるから、殊に学者などに対しては、こんなことをやつているが、これは外国の雑誌に出ているのかも知れない、おれのところの資料にはないかというふうにお考えになつて、先ず引張るということをお考えにならないように、くれぐれもお願いを、最後のお願いですから一つよく開いておいて下さい。
 それから第五なんですが、そこでさつき申上げた時に逆行しようというこの法律案の最も恐ろしい点は、行為を犯した場合にはいわゆる形式的に公になつていなかつた、従つて形式的には罪なんです。併しながら客観的にはもはやそういうようなものは学者の見識なり何なりから言えば、そんなものを秘密としておくべきではないというので、勇気を振つてこの程度のことは議論をする、議論の必要がどうしてあるかと言えば、安い有効な防衛力というものを作るためには、学者などが相当議論し、防衛庁の仕事だというのでそのままにしておいては、有効じやないような十年も昔の軍艦を借りて来るというようなことをおやりになるのですから、それに対しては我々なり学者なりが相当議論しなければならん。もう少し安いものがあるのじやないかというような議論をやるときには公になつていない。併しもうすでに公になりつつあるのだ。明日にも、来週にも、来月にも公になるものだという確信を持つておいでになるかたがあるかも知れない。こういう勇気は尊敬すべきだと思う。現に捕まるときには公になつていない。裁判でも始めている過程においてはどんどん公になつて行く。これが私は非常に問題だと思うのだが、これは裁判をあなたの、桃沢さんなり何なりの頭でやれば、それだつて刑罰なんだから有罪になるのでしよう。有罪になるならば、そういう裁判の判決というものは国民を納得させません。従つて裁制所に御迷惑だと思うのだ。裁判所もまあ今日は公になつてしまつたのだが、逮捕した当時は公になつていなかつたのだから、この法律の言う通り有罪だと言つて三年とか十年とかやるのだが、裁判官だつて内心どうも甚だ気の毒だ、おかしなものだというのは、これは時に逆行する法律だからですよ。こういう場合は余り御心配にならんですか。平気ですか。
#118
○説明員(桃沢全司君) 最初のお話の学者が自分の学識経験に基いて御研究を続けられる。これは一つもこの法案の対象にはしていないのであります。お話の駆逐艦、これはもう十年前の船であるかも知れませんが、その船そのものが秘密であると我々全然考えていないのでありまして、もつと優秀なものを一つ学者に考えて頂きたいと望みます。ただその中の一部分に特に高度の秘密、例えばレーダーとか、或いは魚雷の発射機関とかいうもので、特に高度なものがあるかと思いますので、こういうものについては、もう十年前のものでなくてやはり新らしい秘密性のものが来るのではなかろうかと考えておる次第であります。
 それから裁判の過程においてそれが公なつた場合、これはいろいろ場合があると思います。その一つは、その被疑者の手によつてそれが公にされてしまつてもう守る必要がなくなつたということもありましよう。これはまあ論外といたしまして、そうでなくて科学の歩進によつてそういうものを秘密にしなくても済むようになつたというのは、これはもう当然情状問題として裁判所は判断すると思います。そんな非常識な判決があるということは私ども考えておりません。
#119
○羽仁五郎君 それは大変有難いのです。そうでないと国民も心服しないし、裁判所のほうも、甚だつまり滑稽な役割を日本の裁判所をして演じせしめるというようなことになつちや、これは法の権威のために甚だな歎くべきだと思うからです。で、こういう点で私はこの法案全体が、一言の下に言えば、時に逆行しようという、人間として甚だ無理なことをやろうとする、これはいわゆるスパイを取締ろうとする各国の法律が全部そうですよ。その最も端的な例は、最近のアメリカのオツペンハイマー教授を迫害するというようなことにおいて最も端的にこれが現われて来るのですから、だから仮に不幸にしてこれが法律として成立するようなことがあつても、私はその適用においてもつと大所高所から考えて、区々たる秘密なんぞを気にしないで、もつと日本国民自身がいろいろな斬新奇抜なものを考えて、そうして安上りで以て有効な防衛力を発揮するというほうが大事なんで、アメリカから借りて来たものなんぞを、そしてこれは外交上の儀礼ということもありますから、実際はばらされたつて、よその国に向つて自分の国の秘密を貸したものをばらしたからといつてそれに余り重い罪を要求するというのは随分おかしなものですよ。人にくれてやつたものをあとから返せというのと同じように、甚だ世間の常識から言えばおかしなもので、現に附随書Bでは、これは単に外交上のものだという枠にはまつておるのですから、だから外交上から行けば、相済まなんだというふうに一言謝まる程度のものしか向うは貸さないと思うので、この法律を非常に何かこれによつて国が守れるとか何とかいうような程度にお考えになることは私はいかんと思うのだが、その点について一つ政府の所見を伺つておきたいのです。
#120
○政府委員(上村健太郎君) 御意見として承わつておきます。
#121
○一松定吉君 ちよつと私伺いたいのは、この日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法というやつは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、これを基礎にしてできたのでしよう。それならばこの相互防衛援助協定の第三条には「秘密の物件、役務又は情報について」と、こう三つ書いてある。ところが本件の秘密保護法では、物件と情報だけで役務を抜かしている。それはどういうことかということが一つ。重ねて言いますが、それは三条の一項だね。それから二項は、「政府は、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。」、ところがこの三条の二項に基くこの「適当な措置」はどのようにおとりになるのですか。これを明らかにして頂きたい。それだけ一つ。
#122
○政府委員(上村健太郎君) 第二の点だけ私のほうから申上げますが、三条の二項の「公衆に周知させるため、」と申しまするのは、協定の実施についてでございまして、従いまして援助を受ける全体についてそれぞれ国民に知らせるということでございます。但しそれについても、この秘密の物件等があるから知らせはしない。その他については大いに広報活動をやつて、この協定の趣旨の存するところ及びこの協定に基いてどういうものを借りた、どういうものに役立つというようなことを各政府がやるのだということの規定でございます。
#123
○一松定吉君 私のお尋ねしたのは、この「適当な措置を執る。」ものとするというその「適当な措置」はどのようにおとりになつたか、これがわからん。
#124
○政府委員(上村健太郎君) これはこの条約が成立いたしましてから援助が実際に参りまして、その後の政府の広報活動でございますので、今後の問題だと存じます。私もまだどういう広報活動をするかということについては、外務省からの意見を聞いておりませんし、私どもとしてもまだ確定いたしておりません。
#125
○一松定吉君 併しこの相互防衛援助協定によつて、この秘密保護法というものが提案されて、そうしてその秘密保護法は今現に審議されておるときに、この秘密保護法が両院を通過していよいよ法律として活動するようになれば、当然その協定に基く活動についての適当な措置というものは国民は知らなければならない。それがまだ何もできていないということになつて来ると、これは亀田君がいつも心配するように非常に政令でいろいろなことを定めて見たり、予期していないような措置をとられてみたりするというと困るからということを言われておるので、私どもこの法案を通過させるについては、この協定の活動について、やはり適当な措置で公衆に周知さして頂かなければいかんので、それがまだできていないということですか。それならそれでよろしい。あえて追及はしない。
#126
○政府委員(上村健太郎君) 実はこの前もお尋ねを頂いたのでありますが、第三条の一項と二項は、全然別個のことを規定してございまして、本来ならば別の条文になつてもいいことであると解しております。即ち一項につきましては秘密保護の規定であり、二項については広報、宣伝の規定である。二項についてはこの協定に基く活動と申しまするのは、秘密保護法の措置ではございませんで、協定によつてどういうものをもらうか、協定によつてどういうふうに日本の自衛上の措置がとられたのか、そういうような全条文に亘つての広報活動の規定のようでございます。これを一つの条文にまとめることがおかしいじやないかというふうなお尋ねがございましたが、本来は同一条文に書かないでもいいようなものではないかと思うのであります。
#127
○一松定吉君 私の伺つているのはそんなことじやない。「適当な措置を執るものとする」とあるが、適当な措置をとつたかどうかということなんです。又それで適当な措置をとらなかつたというのならわかるが、適当な措置をとつたというのは、どん措置をとつたかということを聞いている。
#128
○政府委員(上村健太郎君) この協定ができたばかりでございまして、実施に移つておりませんので、現在の段階といたしましては、こういう協定ができたというような発表をするという程度だと存じております。いずれこの協定が実行に入りまして、どういう装備品がもらえるか、或いはどういう武器、船が来るかということが具体的になりますれば、その都度政府は国民に周知徹底させる広報措置をとりたいと存じております。
#129
○一松定吉君 それじや結構です。次に役務だけを除外した理由を一つ。
#130
○説明員(綱井輝夫君) 仰せのごとく協定では「秘密の物件、役務又は情報」という言葉を使つておりますので仰せのような疑問が生ずるのかと思いますが、役務は英語で言いますればサービスでありますが、その実際的な内容は、教育訓練というようなものでございまして、その教育訓練の実際の内容はここに書いてありますように、その供与された物件の使用の方法或いは構造又は性能について解説し、乃至指導する、又情報についても同様なことが行われるのでありまして、役務として与えられることの内容を実際に具体化して書き込んでみると、一号、二号と書いてあることで大体尽きる、従つて役務というこの言葉自体は相当広汎な観念を包蔵しておるのでありますが、それよりももつと限定した意味に書き現わしたほうがいいということで、この法律案では使つていないのであります。
#131
○一松定吉君 一号、二号に役務のことを書いてあるというのですが、この秘密保護法のどの一号ですか。
#132
○説明員(綱井輝夫君) 第一条の第三項一号、二号でございます。
#133
○一松定吉君 一号、二号に役務のことが書いてある……。
#134
○説明員(綱井輝夫君) 例えば「使用の方法」というのが書いてございますが、これは武器なら武器の使用の方法について向うからサーどスとして指導される、そういう意味であります。
#135
○一松定吉君 そうすると訓練だとか、出動であるとか、防備だとかいうようなものは役務じやないのですか。出動、訓練、防備の方法だとかいうようなことは使用の方法や、それから製作、保管、修理に関する技術という以外に役務という範囲は広いと思いますが、その範囲の広い役務というものはこの協定のうちには明らかに書いてあるのに、この秘密保護法にこの役務を除外したのはどういうわけかを聞いている。
#136
○説明員(綱井輝夫君) 役務の実際的な内容につきまして、その中で秘密として取扱われるものというものを日本の法案に直しまして、具体的に書いたところでは大体この範囲で尽きる、こういうわけであります。
#137
○一松定吉君 そうしますと、今例えばこういうようなことについて訓練をやつている、或いは出動する、隊伍を組んで出動しておる、今どこそこにこれが出動するということは、これは秘密じやないのですね。
#138
○説明員(綱井輝夫君) 普通の言葉で使います出動乃至編成とか、装備とかいうものは秘密の内容として考えておりません。
#139
○一松定吉君 考えていないじやない。私の尋ねるのは、この協定にあるのは、この協定を日本政府と合衆国政府の問で守るためでしよう。然るに協定の三条にこういう規定があり、又七条にもちやんと装備、資材及び役務に関するこれこれについて、日本国の領域において遂行し、且つ云々ということがある。ところが役務というものは、もうあなたのおつしやるところによると、この一条三項の一の中にイ、ロ、ハ、ニとあるこのロ、ハに入るんだということをおつしやると、役務ということはロ、ハよりも範囲が広いという私は解釈なんです。その範囲の広い解釈について、この日米の協定に定められた役務ということは、日本の秘密保護法では保護せんでいいのか、こう聞くのです。保護しなければならんのならば、それはのけているが、どういうわけか、こう聞くんです。
#140
○政府委員(上村健太郎君) この協定にございまする役務の内容は、先ほども申しましたように、サービスというような訳語でございまして、供与される装備品等の主として使用方法に関する教育訓練、なおこの修理に関する技術の指導等、もございますが、それ以外のことは私どもとして考えておらないのでありまして、従いましてそのサービスの内容になるものは製作、保管、修理に関する技術及びこの武器等の使用の方法ということになりまするから、このロ、ハを規定いたしますれば、この役務の内容についての秘密保持の責は達せられるのじやないかと思います。
#141
○楠見義男君 若干お伺いしたいのですが、今一松さんの御質問になつた役務の問題、私実は伺いたいと思つておりましたが、大体御説明がありましたからそれで結構ですが、この協定の三条とそれから附属書のBに関連してなお残つた問題を若干お伺いしたいと思います。
 それは「両政府の間で合意する」云云という字句があるのですが、この合意の意味なんですが、先般も条約局長から御説明を承わつたところによると、本件については、日本側で立法措置の義務も負わされていなければ、どういう刑に処さなければいかんという義務も負つていない。ただ一方的に口頭で以てこの法律の一条の三項の一のイからニまでの事項を通報したにとどまつて、向こうはそれに対して何らの異議を申出て来なかつたんだ、こういう御説明だけを伺つたのです。そこで「両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする。」という、こういう意味は一体どういう意味なんだろうかということなんです。例えばこの法律ができてから、日本側はこういう法律ができました、如何でございましようかということで合意取付けをするのか、どういう方法を今後とつて行かれるのか。この間の条約局長のお話では、内容に関するイ乃至ニに規定された事項の修正とか、そういうような場合には向う側に了解取付けをしなければならんかもわからんが、それ以外には何もすることがないようなお話だつたのですが、一体合意というのはどういうことを意味しているのか、その合意の意義をお伺いしたい。
#142
○政府委員(上村健太郎君) 先般条約局長からお答え申上げました通りだと私存じております。秘密保護の範囲につきまして、先方に通告をいたしまして、先方から何らの異議もございませんければ、それが一つのやはり合意だと存じまするし、又国会にこの法案を提案いたしておりますれば、この法案自体は先方に通告をいたしておりませんけれども、先方もこういう法案が国会に提案になつているということは承知をいたしていると思います。従いましてこういうような日本がとつておりまする秘密保持の措置を前提として実際の武器の供与の相談をいたし、且つ先方が秘密の部分についても供与をしてくれるということになりますれば、事実上の合意は、特別な協定等を結びませんでも、でき上つていると認めていいのじやないかというふうに、極めてルーズな考えでございますが、そのように考えております。
#143
○楠見義男君 実はこの前内容の問題についてお伺いしたときに、今申上げたように、そういう内容のうちで一つ欠けるというようなことになつた場合には了解を取りつけなければならんし、又そういうふうに変つて来るならば、供与もしないというようなことを向うから申出る場合もあるかもわからんというような、将来における懸念の問題も我々伺つたのですが、今の御説明で行けば、その内容自体が変りさえしなければ、本文その他において如何ように改正をしても、もはやこれは先般通報したことを以てここにいわゆる合意と見ると、こういうことであるならば、それで法律の内容さえ変更しなければいいのだと、こういうように了解していいのですか。
#144
○政府委員(上村健太郎君) 事実御修正等がありました場合には、どういうような措置をとりますか具体的にはまだきめておりませんけれども、この内容、防衛秘密の内容につきましては事前に通告をいたしておりまするので、内容について御訂正がありますれば、外務省当局において勿論先方に通告をいたすと存じます。通告をいたしまして向うで不満足な点がないならば、これはそのままになることもあり得ると存じまするし、又そこのところを削られたんなら困ると言いこます場合には、場合によりましては、その船の一部の器材等を取りはずして供与をするという場合も想像できると存ずるのであります。
#145
○楠見義男君 その点で実はお伺いしているのです。この「両政府の間で合意する」という意味は、仮にこの法律ができたならば改めてその法律を以て向うと相談するのかということをお伺いすると同時に、先般の外務省条約局長の本委員会における説明を附加えてお伺いしたわけです。そこでその場合に、ただ内容の修正の場合は、これはもう条約局長も先般お話になりましたからよくその点はわかつておりますが、それ以外のことで、すでに先般内容を通報したということで以て、ここにいわゆる「両政府の間で合点する」、こういうことが成立しておるとすれば、而もその際には再々申しましたうに、立法的措置についての義務も負つていなければ、刑の量定についての義務も負つていないということであるならば、この内容以外の点では、両政府の間で改めて又やるということの必要はないという結論になるのではないでしようか。
#146
○政府委員(上村健太郎君) 防衛秘密の内容につきましては、秘密を守る対象でございませんから、先方から考えれば。
#147
○楠見義男君 それはよくわかります。
#148
○政府委員(上村健太郎君) その他の点につきましては、まだ先方に通告をいたしておりませんが、併しこの法案が成立いたしますれば、事実上の問題としてこういう法律ができたんだ、秘密の武器をくれる場合には、こういう措置をとるという通告は、通告と申しますか、口頭の話合いといいますか、正式の協定にはいたしませんけれども、ここに書いてありますように合意なり秘密保持の措置という条約でございますから、いたすことと存じます。
#149
○楠見義男君 そうしますと、結局内容以外には向うに通報していないのだから、従つてこの法律が仮に原案通りとなつたとしても、改めてこの法律を以て向うとここにいわゆる合意の手続をとるということになるのじやないか。そのやり方は、例えばこちらからこの法律ができたという通報をして、向こうが何らの異議を申立てなければ、それで合意が成立したという、こういう解釈には仮にできるとしても、いずれにしてもこの法律ができてから向うと合意をすると、こういうことになるように今の御説明では伺えるし、前の説明ではもうすでに両政府の間の合意というものはできておるのだ、こういうふうにも受取れるわけですが、どちらですか。
#150
○政府委員(上村健太郎君) この合意というものがどこまでの範囲をいうものかということにつきましては、そう厳格なものではないと思います。法律のほかにも、例えば業者等に発注する場合を考えてみましても、業者に対してはこういうような厳重な契約で、こういうようなやり方でするというようなこと、行政措置も恐らく事実上秘密の武器の修理をするというような場合には、個々の問題についてでなくても概括的には話合いをすると存じます。従いましてこの法律の場合にも、そういうような話のときに、法律が成立いたしますれば、この法律を英訳いたしまして先方に渡して、こういう法律ができたんだということで事実上の話合いはすると存じます。その際に先方がそういう法律ではまずいと言わない限りにおいては、それを前提として秘密武器の引渡しというものが行われまするから、改めて協定というような堅いものなかでくとも、合意に達したと認めてやつて行けるのではないかと存じまておるのであります。
#151
○楠見義男君 どうもこれは伺つておるとどちらがどうだかよくわからなくなつて来たのですが、そうすると、仮にこのMSA協定を受けたいというふうに考えておる立場をとつておる人のその立場から考えると、法律が制定されても、或いはその法律については異議が向こうから来るかもわからん。それでもう少し向うの内容を聞いてから立法措置を講じたほうが……、そうでないと又法律改正ということをやらなければならん、こういうふうにもなる懸念がするのですが、その点はどうですか。
#152
○政府委員(上村健太郎君) その点は私どもといたしまして、世界各国の例を見ましてもこういう秘密保持の法律がないのは日本だけでございまして、この法律は世界各国の例から見ましても、米国側でこういう法律では困るということは言わないと存じております。
#153
○楠見義男君 そうすると結局やはり内容だけが問題で、而も先ほども申上げたように、何らの義務も負つていない、ただ内容を一方的に通報しただけということであるならば、その内容さえ変更しなければ向うに了解を取付けるとかいうような問題は、この立法さえ措置を講ずればいいのではないかというふうにも取れるのですが、重ねてお伺いをいたします。
#154
○政府委員(上村健太郎君) この内容の点を除きますれば、世界各国の例から見て、非常に秒密保護上の法律措置としては基だしく不十分であるというのでない限りにおいては、そう異議は申出でないと思います。
#155
○楠見義男君 その甚だしく妥当であるかどうかということの認定は、そうするとどこがするのですか。
#156
○政府委員(上村健太郎君) それは日米両国の政府の話合いでございまするから、若し法案を以て日本が秘密保持の規定をしましたけれども、それについて先方が秘密保持は到底困難であると認めますれば、そういう兵器を貸してくれないだけになると思いまするから、日本とアメリカとの間の話合いの問題になると存じます。
#157
○楠見義男君 兵器を貸してくれないかということを心配をして、その立場から言うと、従つて問題はこいうものができましたということを、あとで向うとこの秘密保持がこの法案でできるかどうかということの認定は、両国政府の決定といますか、話合いだと、こういうことになつてくれば、その法律ができたら、向うでやつばり相談するということになるのではないですかな。
#158
○政府委員(上村健太郎君) 事前に相談はいたしておりますけれども、この法律の内容でございますれば、世界各国の例から申しましても、これは不満足だからMSAに基く秘密兵器はやらないということは私ども想像いたしておらないのでございます。
#159
○楠見義男君 そうするとその認定は結局日本政府というか、保安庁のほうでせられるということになるので、向うとの認定、合意の問題は出て来ないのではないですか。
#160
○説明員(桃沢全司君) この第一条の第三項の防衛秘密の内容、これは先ほど問題に出ておりますが、〔「よくわかつておる」と呼ぶ者あり〕
あとは罰則の問題になると思うのであります。この罰則はどちらかと言いますと、法務省のほうで担当して作成しておるのでありますが、その点は自主的な判断といたしまして、いわゆる刑特法できめてある。これでアメリカ合衆国軍隊の機密というものが守られておる。向うも勿論それで了承しておるのでありますから、この線ならばアメリカへ出しても絶対に異論はないだろうという我々は確信を持つておつたのであります。でありますから、昨日も申上げましたように、是非この第三条の構成要件を余り変えますとそこに問題が出て来る可能性もございますので、その点御了承願いたいと考えます。
#161
○楠見義男君 そうするとやつぱりこの法律ができますと、この法律に従つて向うとここにいわゆる合意という手続をとることになるのではないでしようかね。例えば十年を仮に九年にしたということになると、向うと合意しなければいかんとか、或いは公になつていないものというのを、それを公になつていないもので、例えばそれに且つ標語を附したものと、こういうものにした場合も同様ですかね。結局その法律ができたら向うと合意するというここになりはしないですかね。
#162
○説明員(桃沢全司君) この間の下田条約局長のお話を聞いておりまして考えますことは、恐らく立法措置をとつたということで、これで合意の点は解決するのではなかろうかと思います。ただあとはこちらのとりました措置に応じた秘密をこちらによこす。ですかりこららの措置が十分でなければ、それに対応する秘密しかこちらによこさない。そういう心配が起きて来るのではなかろうか。うまくもう一遍作り直すということは私はないと思います。
#163
○楠見義男君 桃沢さんのお話で行きますと、口頭で一方的に通知して、向うから何らの申出がなかつたというようなことで、もうすでに両政府の間で合意ができているのだと、こういう先ほどの官房長の御説明と符合するように考えるのですが、そういうふうに理解していいのですか。
#164
○説明員(桃沢全司君) この協定のほうの正式の解釈のほうは私直接責任を持ちかねますが……。
#165
○楠見義男君 というのは、私はなぜ御両所に伺うかというと、先般の条約局長の説明とあなたの説明が違つておるので、おかしいじやないかというので聞いてみると、条約局長の話は間違いだ、おれのほうが正しいのだとこういうお話だから、従つてあなたがたを中心に私はお話を伺つておる。
#166
○説明員(桃沢全司君) 特に食い違つているとは思わないのですが、少し理解の仕方が足りないのかと思います。
#167
○楠見義男君 こちらの聞き方が悪いのかと思います。
 それじや時間がかかりますからその次の問題へ行きますが、附属書Bの「日本国が受領する秘密の物件、役務又は情報については、アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで、日本国政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏らしてはならない。」と、こういうふうになつておるのですが、例えばこういう条文から防衛秘密に該当する兵器類を修理に出すという場合ですね、修理に出すという場合に、修理に出せば当然どういうことになりましようか。秘密がわかるわけなんですが、従つてアメリカ合衆国政府の事前の同意を得るということから、修理業者等に対して、修理業者等の指定等に対して、アメリカ側のあらかじめの了解を得られないというような事態が生ずる虞れがないかどうか。この点を一つ伺いたい。
#168
○政府委員(上村健太郎君) 委託を受けた者については「事前の同意を得ないで」という言葉が当らないのではないかと思いましてどこへ委託するかということは、事実上修理の技術その他がありまするから、顧問団と或いは口頭で相談することはあるかも知れませんけれども、条約上に基いてどこに委託するかということに先方が制限をして来るとか、或いは口出しをして来るということはまあないと存じます。
#169
○楠見義男君 あとは亀田さん、それから羽仁さんの質問、それに対する御答弁に関連してちよつとこう疑問なり或いは又もう少し聞いておきたいという点を二つだけ簡単にお伺いします。一つは、亀田さんと桃沢さんとの間の質疑の問題に関連して、公になつているということに関連をしまして、科学雑誌に掲載されておる場合にはどうだろうかと、こういうまあ質問に対して桃沢さんのお答えで、極く少数の人の間で回覚されるような場合は、個々の事例によつて判断するという御答弁があつたのです。私はこの極く少数の人の間での回覧であつてもですね、この人々が本来業務によつてそのことにタッチしておるという、そういう人々の間の回覧的な雑誌に掲載されておるものならば、或いは公になつているということが言えないかも知れんが、そうじやなしに、それらの人々はいわゆる防衛秘密に関する業務にも携つておらなければ、或いは又委託を受けておる人々でもない。まあ科学者の間の回覧的な雑誌であつて、それらの人々は全く業務には関係しておらない。そこに回覧されているような雑誌であれば、それは明らかに公になつていると、こう解釈をするのが正確な法律解釈じやないかと思うのですが、その点はどうですか。
#170
○説明員(桃沢全司君) 極く少数に、もう一つ特定という言葉が必要になつて来ると思うのですが、特定した少数のかたで、まあ極論的に申しますと、何か秘密団体間で回覧した雑誌という形で結構ですが、これはやはり公になつていないと解される余地が相当あるのじやなかろうかと考えます。併しそうでなくて、不特定多数の者にそれが行つたという場合には、これは公になつたものと解することになると思います。
#171
○楠見義男君 そうすると特定、不特定が又なかなかあれなんですけれども、例えば科学研究の会なら研究会というものがあつて、それはそれらの人人は全く業務には関係がなしに、例えばジェットならジェットに関することについての研究をやつておられて、そこでそれはそれらの人々は周知の事実として使つている、その人々の間で発行されている雑誌は、同人雑誌みたいなものですね、それに掲載されているというものは、これは公になつていると見るのが常識的じやないでしようかね。
#172
○説明員(桃沢全司君) 仰せのような場合もあり得ると思います。併しながらこれがアメリカから供与を受けた装備品等に関する防衛秘密であるという認識を持つて、そしてやる場合にはこれは本人たちも公にしないつもりでやつていることになるのです。そうでなくてこれが防衛秘密であるということを知らずに、ただジェットの構造がこうなつているということの研究を単にされる、そのことが回覧雑誌に出ても、これはこの法案の対象にはならない。そのことによつて楠見先生の御心配の点は外れるのじやないかと思います。
#173
○楠見義男君 その今の御説明の、これはアメリカの秘密だということを認識してい場合、これは又いろいろ問題が或いはあるかもわかりませんが、そういうことじやなしに、それらの人人が研究している、それから一方それは防衛秘密になつている、無関係に防衛秘密になつている、成る人が防衛秘密についての違反で捕えられた、併しそのことは防衛秘密だというけれども、すでにここでは周知の事実になつているというような場合は、これはいわゆる一条の三項の、日本、アメリカを通じて一本としての公の問題なんですから、それは恐らく対象にならないというのが本当じやないでしようか。
#174
○説明員(桃沢全司君) 只今の御設例のように、その構造なり、性能というものが周知の事実になつている、科学者の間ではわかつているというようなのは、これはやはり公になつたもの、かように考えます。従つてそれは回覧雑誌で廻つているのを見たという場合に、一般に公になつているということに該当するわけであります。
#175
○楠見義男君 要するにさつきの設例の範囲を持つている場合は一応問題外にして、それらの人々が業務者と見るか見ないかによつて、その判断を右か左かにするというような考え方はいけないですか。
#176
○説明員(桃沢全司君) そういう場合もあると思います。ただ純粋に科学的知識を論議する、討議するというふうな場合と、それが防衛秘密であると知つてやる場合と、これは取扱がおのずから違つて来ると思います。
#177
○楠見義男君 今の場合は、防衛秘密だということを知つてやつている場合は、そうすると回覧雑誌に載せること自体がやはり引つかかることになりましようか。
#178
○説明員(桃沢全司君) その虞れは多分にあると思います。
#179
○楠見義男君 もう一つは、羽仁さんとの質疑応答に関連してなんですが、これは直接この法案に関係なしに、刑特法の問題なんですが、刑特法では防衛秘密というもを別表で掲げておりますね。そこでその中で、「運輸又は通信に関する事項」というのがあつて、「軍事輸送の計画の内容又はその実施の状況」、軍事輸送の実施の状況、これは結局日本では運輸省の人々が当然業務上知つていることなんですが、併し業務というものは全然、先ほどのこの質疑応答で明らかなように、アメリカ側の人だけが業務関係者で、日本の運輸省の人は、これはここでいう業務には関係ない。そこで軍事輸送の実施の状況はこれは知つている、而もそれは不当の方法で探知しておるのではなくて、当然業務上知つているという場合に、それが第三者に話をするという場合は、先ほど来の御説明なりお話で伺うと、特に「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的」ということが積極的になければこれには触れない、こういうふうに了解してよいわけでしようか。
#180
○説明員(桃沢全司君) ちよつと最後のほうを聞き漏らしましたので失礼いたしましたが、成るほどこの刑特法の附則にはお示しの「運輸又は通信に関する事項」、これがあります。「この運輸又は通信に関する事項」、通信のほうは別といたしまして、運輸に関して日本側がタッチするということも考えられるのでありますが、その実情がどうでありますか、これは私よく存じません。併しながらこの刑特法の場合には、この業務に日本側が当るということは極めて稀な場合しかないのではなかろうか、そういう稀な場合には特に規定をする必要はないのではなかろうかというふうな考えだつたと、かように伺つているのであります。
#181
○楠見義男君 さつきの御説明で、なぜ業務がないのだという羽仁さんの御質問に対して、それはここでいう防衛秘密に関する業務というのはアメリカだけなんだと、こういうお話があつたものですから……、それとは直接関係はないのです。先ほど申上げたように直接関係はないのですが、運輸省の人人が当然実施の状況というものを知る場合がありますわね、而も不当な方法で探知しているのではなしに、当然知つていることがある。更に合衆国軍隊の安全を害すべき目的を持つていない、積極的にそういうものを持つていないという場合にはこれは触れない。併し防衛秘密が考えている、法城は侵害されることになるけれども、それは問わない、こういうふうに解していいわけですね。
#182
○説明員(桃沢全司君) お説の通りと存じます。
#183
○楠見義男君 時間が来ましたからただ一点だけ、もう一つ伺いたいのですが、最初の両国政府の合意の問題、これはこの法律が原案通りになるか修正になるか、いずれにしても法律的に或いは協定の上から見て、日本政府はアメリカに合意を求めるとか、通報するとかという義務は持つていないと、こう理解していいのですか。
#184
○政府委員(上村健太郎君) 秘密の武器の供与を受けますについて、どういう秘密の保持の措置をとるかということについての合意は必要でありまするから、具体的に個々の義務ということは生じないかも知れませんが、方法は別といたしまして、何らかの方法で先方と相談をする。で、先方が同意をしない措置でありますれば、この供与を受けられないということになるだけだと思います。
#185
○委員長(郡祐一君) それでは以上を以ちまして、本法案に対する一般質疑は終了いたしました。
 明二十日は午前十時より委員会を開きまして、御決定を頂きました日程に従い、本案に対する最終の総括質疑を二時間お願いいたし、質疑終了後、民事訴訟法関係の法案の御審議をお願いいたしたいと存じます。
 本日はこれを以て散会いたします。
   午後四時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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