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1953/05/28 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第48号
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1953/05/28 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第48号

#1
第019回国会 法務委員会 第48号
昭和二十九年五月二十八日(金曜日)
   午前十時三十八分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
五月二十七日委員大谷贇雄君辞任につ
き、その補欠として井上知治君を議長
において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           上原 正吉君
           亀田 得治君
   委員
           青木 一男君
           楠見 義男君
           三橋八次郎君
           棚橋 小虎君
           羽仁 五郎君
  国務大臣
   国 務 大 臣 小坂善太郎君
  政府委員
   国家地方警察本
   部長官     斎藤  昇君
   国家地方警察本
   部総務部長   柴田 達夫君
   国家地方警察本
   部総務部会計課
   長       中原ただし君
   国家地方警察本
   部刑事部長   中川 董治君
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務省民事局長 村上 朝一君
   法務省保護局長 斎藤 三郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  説明員
   調達庁不動産部
   次長      大石 孝章君
   法務省民事局参
   事官      平賀 健太君
   法務省人権擁護
   局第二課長   斎藤  巖君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (警察法案及び警察法の施行に伴う
 関係法令の整理に関する法律案に関
 する件)
○戦犯者の釈放等に関する請願(第二
 六二四号)
○でい酔者取締に関する陳情(第六九
 一号)
○接収不動産に関する借地借家臨時処
 理法案(衆議院提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今から本日の委員会を開会いたします。
 先ず検察及び裁判の運営等に関する調査案件といたしまして、警察法案並びに関係法令の整理に関する法律案について御質疑を願います。
#3
○羽仁五郎君 本来連合委員会で審議をなすべきことであつたのでありますが、併し審議の進行上ここで質疑をするということをお願いしましたのは、実は十分に伺わなければならないことがあると思つたからです。それで、端的に伺つて行きますが、この法律案又はこの法律案以外にも現在政府で共産党を非合法化し、又は共産党に対して特に何らかの手段に出ようとしておる意図がおありになるかどうか。これはどうか率直に答えて頂きたい。
#4
○国務大臣(小坂善太郎君) 別段に聞いておりません。私も考えておりません。
#5
○羽仁五郎君 第二に、現在提出されておりますような警察法案や、それからそのほかの秘密保護法や最近政府がいろいろとやられておられるような立法及びその他の施策それから又実際における警察当局或いは公安調査庁なんかの活動というものは、客観的に共産党を非合法化するような方向に動いておる慮れが多分にあるのじやないか、客観的にですね。だから主観的にそういう意図がおありにならないと言うが、それはどうか。小坂さんが今のところ聞いていないというお答えだつたのですが、もう少し責任ある意味においてお答えを願つておきたいと思うのですが、恐らく、或いは若し国警長官のほうからその点について施策を持つておるというのがあるならば……。
#6
○政府委員(斎藤昇君) 政府といたしまして、特に共産党というものを対象にした何らかの取締なり或いは弾圧と申しまするか、そういつた意味の施策は何も考えていないという大臣のお答えでございます。私どももその通りだと考えております。共産党に対する対策は、弾圧に対する対策ではなくて、むしろ一般の政治をどう持つて行くかということが一番の問題だと我々治安当局としても考えておるのでございます。だから共産党のいわゆる暴力革命を達成するための地下組織、地下活動というものにつきましては、これは治安当局といたしましては絶えず関心を持たなければなりませんが、併しその関心を持ちながら、現在の刑法なり或いはその他の特別法なりに触れる段階にあるかないかという事実上の調査をするに過ぎないのでありまして、積極的に法を離れて如何なる事柄を行うかというようなことは全然ないのであります。ただ法に触れる行為がありはしないかどうか、又そういつた事柄が法に触れるような事態に発展する状況が近づいているかどうかというようなことに対して観察をして行くというだけの状況でございます。
#7
○羽仁五郎君 私は小坂さんは今でも恐らくそうだろうと思うのでありますが、やはり修正資本主義という立場を理論上とつておられる。それから斎藤さんも前にこの法務委員会に、これは大分前、二年くらいだつたかと思いましたが、破防法なんかの問題が起つて来る前に、この法務委員会にお見えになつて委員の質疑にお答え下さつたときに、共産党の活動というようなことに対して、特に現在以上の警察力というような、そういう意味のあれをしなければならないというような、そういう緊急の状態があると見ていないというように、大分落ちついたお答えに私も敬意を表したのでありますが、この問題は端的に申上げて、現在政府は共産党の非合法化ということを場合によつてはやろうと思つているのか、それともそういうことは絶対にいけない、共産党は非合法化すべきでないという立場に立つておいでになつておるのか、その点小坂さんから若しお答え頂ければ……。
#8
○国務大臣(小坂善太郎君) 国警長官が申上げましたように、我々としては国民の福祉を守る人権を尊重するという建前に立つて法律かできておるのであります。法律に外れるものに対しては、これを戒めるという立場でおるわけでございます。特に法律に触れるものがあれば、これを取締りますので、これを直ちに非合法化するということは却つて影響がよくないのじやないかというふうに思つております。
#9
○羽仁五郎君 私の意見は、余り長く申しますのも失礼ですが、これは私殆んど毎年この問題を学問的に苦労して来たので、どうか誤解がないように、率直に聞いて頂きたいのですが、最近ヨーロツパを歩いて見たりして、一層そういう感じを抱くのですか、共産党の非合法化ということはどうかやめて頂きたい。共産党を非合法化することは、共産党自体にとつては実際は問題じやないのです。共産党は地下に潜つてしまえばそれきりなんです。共産党は或る意味では、地下に潜れば一層別の系列というか、しつかりしたものに育つて行つてしまうのです。帝政時代のロシアが丁度そういうふうにしてしまつた。それから警察のほうでは、地下に潜つた共産党を追おうと思えば秘密活動、秘密警察というものになつてしまう。第三に最も困るのは、潜れない批判的な、自由主義的な人が非常に困る。一般国民も困る、何か政府に対して批判をすれば、それは共産党と同調する者であるというふうに思われれば、それ以上のことは言われませんから、黙つてしまう。これはこの前の治安維持法なり、皆様もよく御承知の通りであります。大正の末年から昭和にかけてそういうことをやつて来たのです。今特高警察をやろうとか、何とか、そういうことを私は聞いておるのじやないのです。ああいうことを繰返しては大変です。初めは共産党を治安維持法で非合法化する、よく御承知のように初めは決して思想運動を取締るのではない、今お話のように暴力運動を取締るのだというふうに若槻さんですか、おつしやつておる。ところがだんだんそういう暴力運動だけじやない、思想運動を取締るようになつて来ておる。そして遂には小坂さんの愛して尊敬しておつたであろう美濃部博士までも迫害されるというようなところまで、そうして我々までも何度もつかまえられて、放り込まれて拷問をされる。そして小林多喜二のような文芸家もああいう残酷なことで殺される。拷問で殺したと言えば、そうじやないと……、いろいろ御弁解はあろうが、ああいうことを繰返すことは是非やめて頂きたい。共産党の非合法化ということは、第一には共産党を地下に潜らせるだけだ、第三には警察が秘密活動を始めるだけだ、第三には一般国民の批判、言論の自由というものが非常に圧迫されることになつて来る。つまり共産党の非合法化というものは民主主義じやなくなつてしまう。最近ヨーロツパに参つたときに、西ドイツの労働者と話をしたときに、西ドイツの労働者は共産主義には絶対反対だ、併し共産党の非合法化にも反対だ、共産党を非合法化することは民主主義じやないと言つております。この点はどうか一つ十分にお考えを頂きたい。今それに賛成とか、反対とかいう答えを頂くよりも、これは私は本当に心からお願いしておきます。そこでこれを十分に気を付けてやつて頂きたいのですが、その点で少し、判断を誤ると、この間うちから起つておるような人権蹂躪とか、或いは通信の秘密を侵したとかいう問題が起つて来るのじやないかと思うのです。私は斎藤さんなり或いは小坂さんは、御自分では私が今申上げたようなことは十分御認識がおありになるであろうと思う。ところが昔の軍部と――或いは日本の警察とかというようなところであつたように、なかなかこの中堅というか、若い人ですね、その職務に熱心と、褒めれば職務に熱心ということなんですが、併しあたかもまるで日本の将来を警察が背負つておるような考え方になる方が間々あるのです。そういう方を国警長官は十分制御をして、そうして一面ではそういう人たちが持つておる善意というものも活かしながら、そうした行過ぎをしないように十分御配慮になつておることは、よくお察しをするのですけれども、併しなかなかそういういわゆる何と言うか、熱心な余り、あたかも警察で以て国を守るというように考えて、それで基本的人権というようなものを踏みにじつてもかまわないとは思わないけれども、それよりも警察の取締というほうを重く考えて来るという考えの人がなかなか多いと思うのです。あなたの、国警長官の周囲にもそういう方が随分多いのじやないか。それからもつと第一線の警察官の中には、なかなか今の共産党を非合法化するということは、民主主義でないということは十分に御了解が行かないのじやないか。相当教養があつて初めてそれがわかるので、第一線に立つておられる警察官は、待遇の面から言つてもそれだけの教養を期待するということはできないので、どうかすると、つまり共産党ということなど法の外にあるかのごとき感じを抱いておる人が多分に多いのじやないか、そのためにいろいろな行過ぎが起つて来るのじやないか。これは、ですから高いレベルに立つて責任をお持ちになつておる方が、それをどつちに向けるかで私は非常に意外な結果になつてしまうのじやないか。そこでこれからいろいろ伺つて行きますが、今申上げるよりな意味で、小坂国務相なり斎藤長官なりが勿論その部下をお庇いになるとか、或いは警察の仕事というものをやつて行く上に、そう理窟を言われても、そんなことをやつて行けば警察の任務はできないという面もおありになりましようが、併し高いレベルに立たれる方がどつちに向うかで、その幹部なり、スタッフなり、或いは第一線の方々なりというものが、今のようにして飽くまで民主主義を守つて、共産主義に反対するとか、或いは共産主義関係の犯罪とか暴力行為とか、そういうものについても落ちついたフエアーな民主主義的な方法はとれるし、その高いレベルの方のやはり態度が幾分崩れますと、私は末端からだんだん崩れて行く虞れがあるのじやないかと思うのですが、そういう点についてはどんなふうにお考えになつておられますか、小坂さんから伺いたいと思います。
#10
○国務大臣(小坂善太郎君) 共産党に対してまあ我々としてもいろいろ関心を持つて研究はいたしておりますけれども、現在法を乗り超えまして非合法な活動をするという人も中にはあるかとも思うのであります。そういうことになりますと、これは大変なことでございますから、そういう人に対する制御といいますか、これはやはり法を守るという立場から扱わなければならんと思うのであります。併しお話のように、殊に一本気になり過ぎる余り、全体を警察だけで守つて行けるのだというような考え方になります危険もございます。併しこれは結局警察官の教養の問題であろうと存じますから、そういう点につきましてはよく意を用いたいと思つております。斎藤国警長官個人について引合いに出すのは甚だ失礼でございますけれども、まあ従来いわゆる警察専門の道を歩いて来られた方でないで、いろいろ他方面に亘つて社会一般の常識なり教養なりというものを現実の行政面を通して見ておられる方でありますから、こういう方がずつとやつておられれば、そういう懸念は非常に少いと思いますが、将来の問題として、警察が一本になりますと、ほかの分野を全然経験しない行政官が警察行政をやつて行くという、そういうことは少し問題はあろうかと、率直に言つて思つておるのであります。併しこれは将来のことに属しますので、それはそのときまでにそういう点の人事の交流というようなものもやはり行い得るような余地を作つておいたらどうかというように考えておるのでございます。まあここに御審議頂いております警察法自体は組織法でございまして、御懸念のような点はむしろ執行部面の法律にあろうかと思うのであります。或いは警察官等職務執行法とか、或いは刑事訴訟法というものが非常に民主的な考え方に立つて組立てられております。曽つてのような行政検束を勝手にやれるというような、そうした執行法ではございませんので、そういう法律を作るということになりませんように、我々としては十分注意したいと思つております。
#11
○政府委員(斎藤昇君) 共産党に対する考え方又思想問題といいますか、そういつた事柄に対しまする考え方につきましては、只今羽仁先生のお述べになりました考え方と私どもは殆んど完全に御同意申上げておるのでございます。私のみならず我々の幹部におきましても大体只今のお考えのような考えでおります。これは私は議会答弁として申上げるのはございません。本当のことを申上げておるのでございます。にもかかわらずいろいろな新聞に出るような事柄があるじやないかというお尋ねが次にあると思いますが、それらにつきましても私この際十分御理解を頂けると思うのでございますが、只今それらについて全部を先に申上げてしまつてもよろしいのでございますが、恐らく御質問に出て来るのじやないかと思いますから、御質問に応じましてお答えいたしたいと思いますが、若しそれらに御質問がございませんければ、これらに対する全体的な実際のあり方、どうしてああいうことが起つておるかということなんかも率直に申上げたいと思つております。
#12
○羽仁五郎君 その基本的な点で私のさつき述べましたようなことは、ただ私の意見というものでなく、やはり民主主義の基本であると思いますので、それに対して御同意を頂いたことは誠に仕合せなことであります。なかなか併し民主主義の基本というものを守つて行く上にいろいろ御苦心がある。そうして我々もそれは非常に困難なことだ、恐らく民主主義の基本を守つて行くということは一番むずかしいことでしよう、もつと簡単にやる方法はいろいろある。それは簡単にやれば恐るべき結果になる。だからどうか簡単にやるということを考えないで、どんなにむずかしくても民主主義の基本で、やつて行くというふうにお願いをしておきたいと思うのであります。というのは要するに世の中というものはどうしたつて進歩して行くものですから、それで進歩ということにはどうしても、つまり次第に世界が社会主義的な方向に向つて行くということは、人の力で防ぐということができるものじやない、共産主義というものに賛成する人も賛成しない人も、殊に賛成しない人にとつても、やはり社会が次第にそういうふうに動いて行く客観的な必然性を持つておるのだということは、これは認めざるを得ないのじやないか。現にそれなればこそ資本主義を修正して社会的進化、社会的進歩というものが平和に行われるようにというふうにお考えになつておられるだろうと思うのです。この歴史の進歩に逆行しようとすれば、あらゆる悲惨なあらゆる残酷なことがここに起つて来ます。これはどうか防いで頂きたいと思うのですが、その点については如何でしようか。
#13
○国務大臣(小坂善太郎君) 歴史の歩みというものがどういうものか、私もよくそれについてのまあ意見を堂々と申上げるほどの知識を持ちませんが、少くとも人間が社会性を持つという方向を行くことは間違いないと思います。全体の人間の考え方というものはよりコンミユニティ的な考え方ということは間違いないと思います。そういう考え方を特に歯車を逆にするというようなことは、これは非常に政治が無理になるわけです。やはり全般の人間の基本的な人生、或いは世界全体に対する考え方の方向に沿うて行くことが政治であるということは、私も基本的な考え方として持つておるつもりであります。
#14
○羽仁五郎君 そこで本法案に直接入つて伺いたいのですが、私はそのいわゆる暴力革命というものについては、共産党なり共産党の一部の人々はそういうことを計画しているかいないかということは、別に政府なり或いは一般の国民なりが又考えなければならない問題があると思うのです。で政府なり国民なりがとる態度によつて、共産党なり何なりがそういう方向にやられて行かざるを得なくなつて来るという方向もある。これは双方の私は問題だと思う。決して一方だけの問題でないと思うので、勿論政府はそういう意味の暴力革命のようなものを歓迎されないということは伺うまでもないと思うのです。そこで暴力革命のようなものがどういう場合に起つて来るかというと、反革命を行なつて行きますと、これはどうしてもそういう革命が生じて来る。ところが最近政府のやつておられることには、どうもこの反革命をやつているんじやないか。公平に見てこれを普通の世間の言葉で言うと逆コースと言つているのです。それからこの占領政策の是正ということにも、どうかするとこの反革命的なものがあるのじやないか。で先ず第一にこの法案について、私は非常に驚くのは、この法律案のこれは全文とおつしやるのでしようか、警察法の全部を改正するというふうに……、これはその通りですね。
#15
○政府委員(斎藤昇君) そうです。
#16
○羽仁五郎君 これは私はなかなか容易ならないことなんじやないかと思う。それで揚げ足をとるというとかなんとかいうんじやない、よくお聞き取り願いたいのですが、まあ法律の全部を改正することは決して例のないことではないんですね。けれども現行警察法というものがどういうものであるかということを考えますと、この現行警察法というものの全文を改正するというふうになさるということは、これはよほど危険なことではないかと思うのです。それで現行警察法というのは私から御説明申上げるまでもなく、従来の警察法と根本的に違いますね。そうしてこれは先ほどもお話がありましたように、刑事訴訟法とか或いはもつと遡つて言えば憲法、そういうものと並んで現行警察法というものは国の基本制度を民主主義の方向に持つて行くという上から現行警察法というものができている。だからその全文を、全部を改正するということになつて来ると、現行警察法の根本を改めるということになつて来る。そうするとこれは更に遡つて言えば基本制度ですね。現行の現在の警察制度の基本を改めて来る、つまり民主主義或いは自治主義、そういうものを覆して或いは国家主義という方向に行こうとする、或いは現行警察法が基本的人権というものを何よりも大切にしておる、これを覆そうとしておる。或いは現行警察法というものが主権在民の趣旨に立つている、それを覆して行くというように考えられる虞れが多分にある。昨日の各委員からの御質疑も皆、そこに繋がつています。ですからこれはどうか一つ議会答弁をなさらないで、これはよほど私はお考えにならんといけないんじやないか。こういうことをなさると、将来常に今の自由党なり何なりが政権を取つておいでになるのではないのですから、別の政党がやつぱりこういうふうにして行くというようなことがあつた場合に、これは自由党なり、或いは現在の我々としてそういうことはいけないんだというように批判することができなくなります。で私はどうも警察法の全部を改正するというのは、やはりこの憲法の全部を改正するということに繋がつて来る虞れがあるのじやないか。でそういうふうになつて来ると、いわゆる合法的手段を以てクーデターをやるというような逆の現象が起つて来る。この場合は合法的とは言いながら実際はクーデターであつて、それについて批判するという権利をあらかじめ現在の政府が放棄されるようなことになるのではないか。これは私はよほど重大問題じやないかと思うんですが、如何でしようか。
#17
○国務大臣(小坂善太郎君) 反革命が革命を呼ぶということは、私は一面においてそういう点があろうと思いますけれども、やはりこの国の存在、国家の存在ということがある以上、その存在、国の存在についての基礎条件、経済を自立させて、その国内において均衡を得ていくという考え方はどうしてもとつていかなきやならんと思うのです。占領下において非常に理想主義的な考え方で作られました諸法令の中に、やはりこの意識と現実との間のギツヤプのあるものも感ぜられると思うのです。そういう点を根本の民主化という民主主義を打建てる、守るという基本線を外れないで、どうしたら国情にマツチできるかということをやはり考えていかなければならんかと考えておるのであります。この警察法について全部を変えるということはその通りでございまするが、御承知のように、非常に翻訳的な臭いの強い法律でございまして、この法律制定の経緯は私は直接存じないのでありますが、当局より聞きますと、一字一句直すなという強い話であつたようであります。そこで翻訳調を日本のといいますか、我々の目から見ておかしくない文章にしようということも必要でございますので、これを全部に手をつけざるを得ないのであります。併し、第三条のごときは、宣誓の内容はすべての警察官というようなことかそのままになつておつて、一昨日はそれについておかしいところがあれば御訂正してもいいということを申上げた次第ですが、どうしてもそういう点が問題になりますので、全部ということになつております。なお考え方を変えてもう一つの観点から申しますと、国警、自警というのを二つながらに置いておつて、お互いに協力義務があるけれども、その間に意思の疎通を明確化ならしめることがどうもできない現状において、やはりもつと有機的によく連絡できる仕組みに変えなきやならんとこう思つておるのであります。成るほどこの非常な勧告、指導を受けましたアメリカにおいても、FBIから国警、州警、地警と三つに分れておりますけれども、これは自警の中にどんどん国警が入つて行つて勝手に捜査もできるし、仕事もできるという仕組みで、日本のように区域が確然としておつて非常に感情的なセクシヨナリズムで以てお互いの干渉を排し合うというような制度は、世界各国いずれにもないようでございます。そこでそうした仕組みを以て今申上げたような能率的なものに変える、併し自治警察というものをこの最もよい点は十分取つてそうして国警、自警という二本建を府県自治警察という一本建にすると、こういう趣旨でございますが、仕組みを変えまするために、法文全部について変えざるを得ない、こういう点がございまするのでありまして、要するに形式が変る、仕組みが変るということでありまして、根本精神は変つていない、こういうのが私どもの考えでございます。
#18
○羽仁五郎君 余り議論になるようなことを申上げたくないのですが、その点は特に小坂さんがいやしくも、仮にも警察を担当せられる最高の責任者で現在おありになるのですから、十分考えて頂きたいと思うのです。でこの今お話のところでも基本的な問題を変えているということもみずからお認めになつております。その一つはこの改正によつて基本的人権の擁護或いは主権在民の趣旨というものが拡張される点がありますか、今までよりも……。能率という点は確かに今までよりも拡張する、能率という点では、能率的になるのでしようね。併し主権在民或いは人権擁護という点で、こうしたほうがいいのだといふうな自信を持つておつしやれる点がございますか。
#19
○国務大臣(小坂善太郎君) 私はこういうふうに考えておるのでございますが、国がやる仕事は非常に非民主的で、地方がやる仕事が民主的であるということは必ずしも言えんと思います。それは国によつてやる仕事も国民の直接のポプユラー・ボードで以て選ばれたものが代議政体によつてやつてやることであるならば、地方の自治政治がやつぱり直接の投票によつて選ばれた代議員によつて行われるということと少しも私は違わない、精神において違わない。これもその仕組みの点も私は現在の自治警にありますが、この考え方というものを府県という自治体において行うということでありまして、ただ警察の仕事として国警というものを一方に持つておる。この要素も併せて見ればといいますか、そのような形になつておると思います。かように了解しておるのであります。
#20
○羽仁五郎君 非常に御苦心の御答弁ですが、能率の点は格段に、つまり強い能率が得られる、客観的にそう言つてるのですが、併し主権在民、基本的人権の擁護という点は今の小坂国務相の答えでもまあ今までよりもそうそれは悪くなるとも思えないけれども、それが格段に基本的人権の擁護、主権在民の趣旨の確立ということにおいて、こうしたほうが格段にそういう効果が上るのだというふうにお答えになることができない。そこでそれに関連して来ます問題は、警察が余りに能率的であるということに問題があるのじやないか。過去の日本の警察は世界第一の能率的な警察であつた。そのために、国民はものを言うこともできない。それで間違つた道だという方向でも、それは一般国民ばかりじやない。高いレベルにおられる学者までがこれは間違つておるのだがどうも仕方がない、先日来たびたび本会議でも例を挙げておりますが、牧野伸顕伯というような方でさえこれは間違つておるけれどもどうもできん、現に伊沢多喜男さんのような方も、先日お目にかかつたときに、私はこういうふうにするつもりはなかつたのだけれども、それは本当に慨歎されているのだけれども、どうもしようがないというふうで、これはこの前に警察法が大きな改正をされて、人口の少い市町村では自治警を置いてもよろしいし、やめてもよいという改正をせられるときに、この参議院の公聴会に土屋さんがお見えになつてお述べになつたことがあります。これは斎藤さんもよく御記憶であると思う。小坂さんも是非読んで頂きたい。これは土屋さん御自身が日本の警察に長く経験を持つておられる方だから、特にイギリスのリーという方の警察史などを引用されて、そのイギリスの例を引かれて、イギリスというところは決して治安がそんなに常に守られていた国ではない。現に極端な場合に行けば、国王が断頭台で死刑にされるというような事件まで起つた国である。イギリスの警察をもう少し能率的にすれば、そういう治安の問題というものはあれほどには起らなかつたのではないか。ところがそのリーが幸いなことに、そうしてイギリスの自由にとつて幸いなことにイギリスの警察というものはそんなに能率的なものではなかつた、これを土屋さんが引用されて私は忘れることができない。我々素人がそういうふうに考えるのはそんなに困難じやありません。土屋さんのように警察の仕事を長くやつておられた方がこんなふうに考えております。或いは土屋さんが今どういうふうにお考えになつておるか知りませんが、あの当時そういうふうにお考えになつたことは忘れられない。警察が余り能率的になつて行くということは、小坂さん双手を挙げて御賛成になりますか。
#21
○国務大臣(小坂善太郎君) 警察というような権力を持つものが非常に能率的になるということは、これはよい意味で能率的になることは望ましいことだと思いますが、やはりそこに人権を尊重するということが損われつつ能事的になるということになれば、そういうことはいかんと思つております。この警察制度におきましても、そうした保障というものは公安委員会の良識というものを強く表面に押し出してチエツクする、こういう考え方で起算しておりますと同時に、先に申上げましたように執行法をきちんとしておく、そうした人権を尊重しないようなことが行われないように規制をいたしておる、こういうつもりでございます。
#22
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#23
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#24
○亀田得治君 時間が余りありませんので、大事な点だけを拾つて御質問申上げたいと思うのですが、先ず最初にこの警察制度を今度全面的に改正された。これは緒方副総理も一昨日でしたか、六年間の実行の経験に鑑みてこういう結論を出したのだというようなこともおつしやつていたのですが、抽象的ではなく、こういう実は困つた問題があつたのだがという点を一つ二、三御披露願いたいと思います。
#25
○政府委員(斎藤昇君) この改正の理由は、大臣の提案理由でも申上げておりまするように、成るほど只今おつしやいました特に困つた点がなかつたかとおつしやれば、これはないことはございませんが、そういう個々に困つたという点よりは、全体的に何といいますか、もう少し能率がよく、そして日本の国情に合つた経済的な警察で、そうして民主的な保障も十分与えられて、国民が警察に対して十分その何といいますか、力においても、又民主的なあり方においても国民から信頼されそうして喜ばれる、そういう組織を作りたい、こういうのが理由でございまするので、特に或る事件についてどうだというものを挙げて御説明いたしますることは、必ずしもこの法案の提案の根本的な考え方を御説明申上げる材料にはならないかと思うのでございます。ただ強いて挙げてみろとおつしやいまするならば、表面に現れた事件としましては例えば吹田事件のようにああいつた大規模な、数警察の単位にまたがつて行われるというような場合に実際の処理に非常に困つたという事例はありますが、併しああいつた事件がしよつちゆう起つておるわけでもございませんから、そういつたものは、この法律の改正の大きな理由はなしておりません。
#26
○亀田得治君 従来の警察法といえども、私は抽象的に考えた場合には、憲法の精神に従つて来られたものだという説明をされると思うのです。このことは否定されない。今度の警察法の御説明を聞いていても、その点はやはり通つておるわけです。そういたしますと、やはりいやしくも国会を通過した制度、そうしてそれが何回も検討の機会があつて、そうして今日まで来た。そういう法律制度を変えるのですから、具体的にこれで非常に困つたのだ、こういうことがあつて初めて変つて行くのが私正しい法律制度の変え方だと思うのです。今まだ衆議院を通過しておりませんが、例の教育二法案でも、これは私いつもこういう立法の場合に引く例なんですが、二十四の例を文部大臣は出されたわけですね。こういう事態があるからどうしてもこれが要るのだ、こういう話なんです。二十四の事例が果してその通りあつたかどうか、適切なものかどうかという批判は別として、一応立案される方はそういう具体的な根拠というものを持つて来られないといけない。そうしませんとあとの説明というものは、これは抽象的に言うのはどうにでも言えるのです。小坂さんが前に出されたスト規正法でも、丁度電産、炭労のスト、そういう事態というものをやはり根拠にされて出されておるわけです。そうしなければ、世間というものはやはり納得しないのです。どうも自治警と国警とが乱立しておる、その辺がどうも工合が悪いだろうといつたようなそういうふうにも考えられるが、併し一方においては必ずしもそうとも考えられない。これは抽象的にはみんなそういうものなのです。だから結局は決定的になるものは、そういう具体的に実はこういう問題が起きて、二進も三進も行かないのだ、これが来ませんと、やはりこの制度に関心を持つておる人は納得しないだろうと思うのです。それでいろいろな反対にもかかわらずこういう大きな改正案が出て来るわけですから、そういうものを御用意になつておると思つて二、三の事例を一つお聞きしたわけですが、例えば吹田事件をお挙げになりましたけれども、これは大した別にこの法案の根拠でもないのだ、強いて挙げれば、というふうな程度のことのようなんですが、それではどうも私は法律制度の改正の正常なあり方じやないと思う。そういうものがないとすると、結局は何らかの意図を以て無理やりに変えんでもいいものを変えて行つているのだ、こういうふうに一方では推測されておるわけですね。ああいう無理やりに政府の一つの意図に従うような警察制度にして行こうと考えているのだとか、そういつたようなことが盛んに批判されておるわけです。その批判というものがやはり尤もらしく聞えて来るわけです。この点どうでしようか、小坂さんは途中でこの法案の御説明担当というような軽い意味で御参加になつたようでありますが、私は立法の普通の順序としてはこれは少しおかしいのじやないかと思うのですが、如何でしようか。
#27
○国務大臣(小坂善太郎君) 現在国警、自警の二本建になつておつて、その制度そのものがやはり又盲点を作つている。こういうことがどうも国民全般から見て非能率、不経済であるということが理由の一番根本のように私は思うのでございまするけれども、それじや具体的にどういう点が工合が悪いのかということでございますが、これは常識的に申しましてそう思うということ、なお費用の点についても昨日も申上げましたような九十億からの節約ができるというふうな点で見ましても、確かにそのほうが国民の目から見てよろしかろうというのでございますが、それじや具体的に何か示せということですが、そうなりますと、非常に私どもとして他の法案と違いまして工合の悪いことは、現在国警、自警それぞれ自分のほうで大いにやつておるつもりでおるのでございますから、何かそういうことを申しますと、それじや自警のほうが能率が悪いのか、或いは国警のほうが能率が悪いのかというふうに、それぞれやはり大分故障の出て来る向きが多いのじやないかと思うのです。で具体的にそれじやそういうことを言うていいのかというと、これはやはり認定の問題でございまして、非常にその点は他の問題と違つてやりにくいことがある。併し今国警長官が言われましたように他地区の警察署のほうにまたがる広域な犯罪というようなものの処理については、確かに工合の悪いことがあるというふうに思はれる次第でございます。なお、具体的の問題は一つ国警長官からお聞取り願いたいと思いますが、国警長官がそういうふうに御答弁申上げまする趣旨は、やはり国警長官として自治警を批判することは非常にむずかしい、又これは自治警としても同様だろうと思います。そういう点が根本かと考えておりますが、若し違いましたら国警長官がそうでないと言つて頂けば、これは担当者のことですから、或いはそのほうが確かかと思います。
#28
○政府委員(斎藤昇君) 大臣のお述べになりました通りでございまして、我我実務者として六年間やつて参つたわけでございますが、そういつた我々自身の経験から考えてみましても、今の国警と自警の二本建という制度、国家地方警察は当初三万、今約四万八千になつておりますが、四万八千の実は一つの警察体というふうな形でこれができておりますが、これが果して本当に民主的な警察のあり方か、私自身その責任者でありながら考えてみますと、やはりこれは府県あたりでもう少し自治体的な色彩を加えて行かなければ、何と言いますか、地方の行政と遊離する虞れがありはしないか。これは絶えず府県の警察隊長あたりにもお話を伺つておりまするけれども、併し機構がそういうふうになつておりますると、府県会にしても、或いは府県の知事さんにしましても、警察に向つて言うべきことも遠慮をする。そこで府県の警察隊長あたりにもおのずから地方的な行政のあり方というものに対する関心が無意識の中に薄れて行く。私はこれは非常に重大なことだというふうに感じておりまして、いつのときかこれはやはりもう少し府県の自治体的な性格を持つて、組織の上で府県会を通じて府県住民の意思というものが府県の警察運営に反映しないと、先ほど羽仁委員から仰せになりましたような、将来国民から遊離するようなものになる虞れがあるのじやないかということを非常に心配をして今日まで来ておるのであります。ただ、それだからと言つて警察官の仕事の執行振りが自治警に比べて非常に非民主的になり、人権の尊重というものを軽んじるというふうに私はなつておるとは思いませんが、警察官の個々の教養においては、私は決して以前に比べましても、又今の他の自治警に比べましてもひけをとつておるとは考えませんけれども、機構が何といつても四万八千の全国一つの警察体という形はやはり将来において禍根を作る虞れがありはしないだろうかという心配をいたして来ておるのであります。一面自治体警察のほうはこれは成るほど自治体の完全独立警察でありますから、完全な地方分権の地方住民親しまれるという面はこれは非常に多いと思いますが、併し自治体、殊に大都市の治安というものは直接国の大きな治安にかかつている問題が非常に多いのであります。でこれらの警察の事務の処理の仕方、或いは自治体警察のあり方というもの自体が、これは直接国の治安に影響をすると思う。と申しますることは、自治体警察がどういうあり方であるかということ、これも羽仁先生がおつしやいましたようにこれは国の治安に非常に大きな影響をもたらすわけであります。これは行き過ぎがあつてもなりません、行き足らんでも又いけない。或いは端的に言いまして地方ボスに左右されるという警察であつてもいけません。地方住民としましてはこれを正しく持つて行くということがなかなかむずかしいというような場合に、そこにやはりその権力機関のあり方というものが国民一般の心理にどういう影響を及ぼすか、これは広い目で見て治安にどういう影響を及ぼすかというと、非常に大きな問題になるのであります。又実務の面から見ますると、大都心或いはその周辺、とにかく治安の対象になる地帯が一つの区域であるというものは、できるだけ一つの区域に、警察の単位区域にすることがこれが望ましいのでありまして、丁度イギリスの例を先ほどお引きになりましんが、あのロンドン警視庁というものは、ロンドン市のほかに数個のカウンテイの区域も一つにした非常に広い十数平方マイルの地域を担当している、あれは国の警察でございますが、あれによつて初めてロンドン及びその周辺、これが殆んど英国の治安であります、それが全うされておるのでありまして、これが地域ことに個々に分立しておつたのでは、ロンドン市自体とその周辺は勿論、英国全体の治安に非常に悪い影響を持つというので、ああいう体制になつて参つたのであります。そういう意味から申しまして日本の治安、これは権力治安という意味ではございませんで、全体の民主的な警察で、そうして権力を用いないで自然に十分に治安が保たれ、国民も安心ができる、そうして今のようなダブつた人員、ダブつた経費、施設を持たないでやつて行けるということが非常に望ましい。そういつた考え方から当初作られました警察法案を根本的に考え直して見るべきだという声が、この警察法の実は制定のときから起つておつたと思うのであります。我々事務当局といたしましては併しこの国会で、与えられました警察法案をできるだけうまく運用して、そうして大きな根本的な組織を変えてしまうということでなくて、この制度のまま運営を如何にして行つたらうまく行くかということに自治警、国警お互いに努力をいたしましたが、一般の識者の声もやはり根本的に考え直すべきじやないかという声が非常に高まり、自由党におきましても、或いは政府におきましても、昨年、一昨年来からその考え方に立ちまして、この制度をもう一遍日本の国情に合うものに考え直すということでこの法案の提出という経過に相成つたのでございます。
#29
○亀田得治君 いろいろ詳しい事情の説明がありましたが、その中で例えば国警のほうで現在四万八千人の職員がおる、それを一人のものが指揮しておる。こういう点についてのむしろ反省的な立場も今お話があつたのですが、私はむしろそういう点の反省があれば、やはり折角育つて来ておる地方における自治体警察というものについて、もつと立場を考えてやるべきじやないか、こう考えておるのです。で長官のお話は結局四万八千人も一人で動かしているのはいけないから、これを府県単位の自治体警察にばら撒いて行くのだ、こういうお話のようですが、実際上はこの法案の……これはあとから又更にその点に触れて行きたいと思うのですが、長官が説明されるような府県の自治体警察というものが期待されるかどうか、この法案では非常に私擬間だと思います。それが完全に府県の自治体警察というものが成長して行けるという予想が立つのならば、その点はまだよろしいのですが、その点については私非常に疑問を持つのです。そういう状態であれば結局は芽生えて来た警察制度の自主的な運営というものはもうだめになつてしまう、こういうことを非常に心配するのであります。それから費用の点ですが、これは恐らくあとから出された問題であろうと思うのですが、自治体警察がたくさんあれば問題が重複して幾らか無駄な点もできることは争えないでしよう。併しこれは一つの制度を育てて行くとか、或いは人権擁護とか、そういつたような場合には当然出て来る費用なんです。人権擁護の仕事なんというのは、これは或る意味では無駄な仕事だということになるのでしよう、立場を変えれば……。ところが警察制度には絶えずそのことを考えながらいろいろ問題を処理して行かなければならないという点があるわけですから、単に費用の点だけを余り強調されることは非常にやはり問題があろうと思います。それからもう一つは、自治体警察があつてその取締り上の盲点ができる、こういう点ですね。これは成るほど現行法上そういう点が改正せられる点もありまするし、又非常に控え目な事例として出された吹田事件なんか見ても、幾らかそういうふしもありましたが、併しそれは現行法の体系を変えなければ解決のつかない問題じやないと私は考えるのです。現在の警察制度でも自治警間の協力とか、自治警と国家警察間の協力、こういう規定があるわけですね。これらの規定を更に再検討して、その協力関係をもつと密にすべきだということであれば、その点の改正はやつていいわけです。その自治体警察とか、そういう組織そのものに手を付けなくても、これはやれるわけですね。国警であろうが、自治警であろうが、法律によつて詳細にこういう場合にはこういう協力をしなければならないということがきめられれば、その法律に従う義務があるわけですから、だからその点から当然そういう不便は、基本的な問題に手を付けなくても私は解決がして行ける問題であろうと考えておるのです。
 併しまあこういう基本的な問題について議論を長くいたしますと、非常に問題が問題であるだけに時間がかかり過ぎると思いますので、この程度で私の意見だけを申上げて打切つておきたいと思うのですが、ただ一つ今私が申上げたような点は、恐らく改正しようという人から見れば非常に議論のある点であろうと思う。思いますが、右か左かどうもはつきりわからんというような場合には、国民の輿論、こういうものを御参考にされることが非常に私必要じやないかと思います。でそういう立場から考えますと、これは総理府の国立世論調査所で警察官の教養に関して調べられたものでありますが、これによりますと、その輿論調査の最後にこういうのが一つございます。「ところで警察官は「皆さんの警察官」と呼ぶのにふさわしい位まで民主化されていますか。それとも、まだまだと思いますか。」と、こういう項目が一つあります。これに対してまだまだというのが六一%、ふさわしくなつたというのが二三%、不明というのが一七%出ておるわけです。この不明というのを、まあこれは半分づつ両方に分けますと、六九%、約七〇%になるわけですね、まだまだだというのが……。七、三なんですよ。そうしてみたら警察制度を取り上げる場合に、注意しなきやならないのはその点だと私は思うのです。その点の民主化ということが警察官の教養の面から言つても、相当国民から認められる段階になつて来た、こういうことであれば、私はいわゆる能率化のほうに相当力をお入れになつても心配されるような事態が出て来ないと思う。だから決して人権擁護とか或いは能率化とか、こういう問題は、先ほど小坂さんも非常に巧妙に両方がうまく行くようにするのだと、こういうことをおつしやつておるのですが、それは抽象論なんです。絶えず制度は具体的に日本の現状ではどうか、そういう立場に立つて考えて行かなければならない。そういう立場からいたしますと、この総理府の世論調査所の只今申上げたような結論というものは、これは十分制度を扱う人が注意しなきやならない問題だと私は考えるのです。私の友人で大阪でやはり世論調査をやつておる人がありますが、この方が最近国警と自治警の問題、こういうことについて調査をしたのを私に参考までにというので手紙で送つて来たのがあります。自治体警察を現状ではやはり置いておきたい。絶対的なものじやないのです。やはり現在における日本の情勢なり、警察官の教養なり、そういうことから判断されておるわけです。この数字を合計いたしますと、やはりこれが五六%という数字になつておる。わからないというのがありますから、わからない部分を更に半分に割つて加えますと、六八%になります。先ほどの国立世論調査所の七〇%というのと大体一致するのです。私は世論調査というのはいろいろ批判がありますが、大体にはやはり国民の気持というものはこういうところに現われておると思う。この点は非常に重要だと思うのですが、国警長官なり、国務大臣小坂さんはどういうふうにこの点を見ておられるか、あとの問題はなかなか一種の水掛け論になる立場がありますから、私はその問題には触れませんが、併しここに数学的に出て来ておるこの国民の気持ちというものは、これを無視することができないと思う。これは決して特に利害関係のあるどこそこの自治体の人が調査したとかそんなのじやない。警察官がこういう投書をしたとか。或いはどんどん電報を打つ来るとかそういうやつじやない。国民の気持ちをずつと調べたのですよ。この点は私は無視してならないと思うのですが、この点はどうお考えになるでしよう。
#30
○政府委員(斎藤昇君) 先ほどこれはもう答は聞かないとおつしやいましたが、例えば完全な自治警としてやつて行き得るかどうか、この問題については日本の国で完全な自治警察だけでよろしいかどうかという一つの大きな問題が存在をしておるのであります。又費用の点、特に盲点の点、この点も私は時間があればもう少し技術的にどういうことなのかということを御説明申上げたいのでありますが、それはもう聞かなくてもいいということでございまするので、時間もございませんから省略させて頂きまするが、本当はもう少し御理解を頂きたい点があるのであります。
#31
○亀田得治君 非常に重要な点があつたらちよつと附加えてもらつてもよろしいのです。
#32
○政府委員(斎藤昇君) 例えば完全な一体自治警になり得るかどうかということでありますが、これは府県の自治体警察は完全な自治体警察ではございません。国が必要とする最小限度において国のほうで或いは監督或いは統轄の権限を留保しておりますから、そこで日本のような、日本のようなというよりも、どこの国におきましても警察を例えば市町村の自治体警察だけに委して、そうして国の法律が適正に執行されるかどうか、これは非常に大きな疑問で、そんな国は実際はどこにもないのです。完全な自治警を置くということでありまするならば、もう一つ国の法律を執行する警察というものをその地域においてダプツて又一つ持たなければならない。大臣が先ほどおつしやいましたように、アメリカには連邦警察、州警察、そうして市町村警察、これらは市町村の区域内において市町村警察が活動し、州警察が活動し又へ連邦警察が活動し得るという建前をとつております。そういうような点から言いまして、日本にもそういうような形を考えれば、全国市町村に自治体警察を置き、これを自治体の本当の完全な警察にする、そうしてそのほかに国の法律を執行する国家警察というものをもう一本置かなければならん。そうでありませんと、自治体の完全な警察でありますれば、自分の自治体の利害からだけ考えて、国の利害に関係が非常に強くても、当該自治体にはむしろ逆だ、利害が逆になるという場合があるのでありまして、例えば密貿易、或いは一番端的な例は経済取締でございまするが、自分のところでは経済取締りをやらないほうが有利である、国といたしましては極めて重要だ。そういうような事態に相成りまするので、この調整をどうとるかというのが今度の、これを一つの組織において調整をとろう、現在は地域において国家警察それから自治体警察というものを置いてまあそのバランスで何とかやれんだろうかという現行法でございまするが、これには限度があつてできないのでありまするからして、そこで府県警察というものにおきまして、自治体警察にはするが、併し国の要請で必要なものは或る程度統轄をするという形をとつたのでございまするから、完全自治体警察というものはなくなるわけでございます。
 もう一つ申上げておきたいと存じまするのは、いわゆる都市及びその周辺という盲点という点でございまするが、例えば大阪を例にとりますると、大阪の市警のほかに周囲十幾つの警察がございます。これらは例えば東京で言うならば、現在の二十五区のうちで旧市と新市の区域にそれぞれ別の警察単位を持つておるというような状態でありまして、人口の昼夜の状態からいたしましても、犯罪人が犯罪を犯してあちらへ飛びこちらへ動く、又犯罪計画をこちらでやつてこちらの地域でやる、これは全く一つの地域で、その一つの犯罪地域を自治警として十幾つ、その周辺に国警、こういうように分けて置いて、そして成る犯罪が起つたら連絡をうまくやればいいじやないかとおつしやいますが、これにはおのずから限度がございます。最もわかりやすく申上げれば、警察活動はこの通信連絡、いわゆる神経系統をどう持つかということでございます。単位が二重三重に置かれておれば、この神経系統はそれぞれ別になつておる。大阪市内で強盗犯罪が起つた、これを手配するという場合に、大阪の市警が自分の管内には一斉通信で直ちに手配ができる。他の周辺の所にはそれぞれ周辺の警察の本部に連絡をする。その本部から更に下部の署、下部の派出所に連絡をする。これに数時間を要するわけであります。連絡を受けた場合に、そういう犯罪人はおれの所にはいないだろうから手配をする必要はなかろうというわけで余り手配もしない、協力もしないという場合もありましよう。これが一つの単位でありまするならば、有線にしても無線にいたしましても、一つの通信司令所から通信をするということだけで大阪府内全部に通信が行き渡る、それで直ちに手配ができる。そういつたこれは一つの技術的な面でありまするが、すべての点がこれに関連をいたすわけでございます。それでございますから、先ほど申上げましたロンドン・シテイの警察のごときも、小さな周辺の或いはカンテイ或いはバラの警察を全部統一してあの広い大ロンドン警察のスコツトランド・ヤードというものを設けたのでありまして、これはどの国におきましても、警察の組織というものを考える場合に、そういう工合にだんだんなつて来ておるというのが現実なのであります。これを小さな区域に分別したということは、そういつたいわゆる警察組織を考える基本的なものをぶち壊して最初から作つておるのだ、警察組織の進歩して行く状態に百八十度逆転した組織に最初組立てられたということが、今度の制度の改正の一つの大きなあれになつておるのでございます。盲点というのはそういう意味でございまして、どこかに穴があいておるというような意味ではございません。その点を十分御理解頂きたいと思います。
 それから警察官の民主化の問題と輿論の問題、誠に御尤もでありまして、警察官の民主化ほど私は大事なものはないと考えております。警察官の民主化が完全にできるならば、民主警察の確立はもうそれによつて成つた。勿論そのために組織の持つ影響、組織自体から来る警察官の民主化に対する影響というものは重大なものがございまするが、同時に教養の問題というのが一番大きな問題でございます。私或いは少し言い過ぎになるかも存じませんが、日本の現状におきまして、完全な地方分権の警察で、そしてその警察の本当の意味における民主化というものが早くできるかどうか、私は非常に疑問を持ちます。というのは、私は日本全体の民主化というものを今後ますます推し進めて行かなければならん。殊に警察官の民主化は従前に比べて非常な速度で民主化に持つて行かなければならないと思いますが、この人間改造というものはなかなか急には参りません。極めて何といいますかまだるつこい感じを持つのでありますが、むしろそういう面から申しますると、警察官の民主化は、先ほど羽仁先生がおつしやいましたように、この民主化というものを念頭に置いた幹部が、絶えず警察官の行動に対して、教養の面においては勿論、人事の行動に対して強い監督或いは教育といいますか。躾けというものをいたして参りませんと、ともすると昔のままになりやすいのでございまして、そういう意味から申しますると、私は警察の単位をできるだけ大きくし、立派な幹部が得られ、そして又その教育についてはやはり中央から相当強い指導のできるという組織は私は最も望ましいんじやないか。成るほど中小の自治体警察で、警察官が民衆になじむという点もございまするが、ただ何といいますか徒らに民衆になれると申しますか、本当の意味において自治体のほうが警察官自身が民主化しているか、或いは今の国警の地域における警察官が民主化しているかというと、私はここに非常な疑問がありやしないか。そういう意味から、今度の制度におきまして、警察官を教養して行く或いは日常の業務において監督して行く、民主化の線に持つて行くという上において、今度の制度のほりが前よりも悪くなるというよりはむしろプラスする面が非常に多いのじやないだろうかと、率直にさように考えております。
#33
○亀田得治君 これは又この問題を繰返しておるとやはり時間がかかるようだからもう余り触れませんが、例えば民主化の問題でも折角幾らか戦前よりもよくなつて来ておる、これはもう自治体警察は確かにそういう感じを一般の国民に与えております。恐らく国警長官から見たらあれは少し民衆に諛つているのじやないか、こういうふうな感じもあるのじやないかと思うのですね。私そういう場合も率直に言つてあろうと思うのですね、あつてもいいと思うのです。それではそのために法律を無視できるかといつたらそうは行かないのですよ。そこまで行けばやはり住民のいろいろな批判が出て参りますから、法律を無視することはできません。だからむしろ逆の現象が恐ろしい。自治体警察が廃止されるという一つの心理的な影響、それが而もこの府県自治体警察だというが実際は中央にずつと繋つておる、これはもう一本の警察になる。そのために起るところの警察官のやはり全体の逆行ですね、こういう点は一つ十分注意をしてもらうことにいたしまして、そこで少しく法文の問題に入りたいと思うのです。
 昨日小坂大臣は公安委員長は決議権はないが採決権はあると、こう言われたのですが、その採決権の根拠というのは法律上どの点でしようか。
#34
○国務大臣(小坂善太郎君) 十一条二項にございまして、「可否同数のときは、委員長の決するところによる。」そういうことでございます。
#35
○亀田得治君 それからもう一つお尋ねしておきたいのは、公安委員長は公安委員に対する指揮監督権というものがあると考えておられるのかどうか、はつきり一つこの点。
#36
○国務大臣(小坂善太郎君) それは全然ございません。
#37
○亀田得治君 府県の公安委員長ですね、これはほかの公安委員に対して指揮監督権はございましようか。
#38
○国務大臣(小坂善太郎君) ございません。
#39
○亀田得治君 公安委員長は会務を総理し、公安委員会合を代表すると、こういうふうになつておるのですが、これは具体的にはどの程度のことができるのですか。
#40
○政府委員(斎藤昇君) 会議を招集をいたしましたり、そうして招集して議事を進めて行く、丁度ここの委員長のような仕事の内容でございます。それからなおこの議事の方法その他公安委員会の運営の方法につきましては第十四条で公安委員会に任せてあるのであります。現在の公安委員会の規定におきましても、この法律には委員からの招集の請求権というようなものはございませんが、二人以上から開いてくれという要求があれば、これを開かなければならないというような規定などもこの十四条の公安委員会の規定で作るように相成つておるのでございます。如何に運営して行くかというのは、委員の間でおきめになりました十四条の規定で運営をされて行くという仕組みにいたしておるのでございます。
#41
○亀田得治君 委員長は会務を総理し、委員会を代表する、あとのほうは対外的な意味ですが、会務を総理するというのは、具体的に考えますと、公安委員に対する非常に弱い意味での指揮というものは入つて来ませんか。全然指揮権がないということであれば、この点はもう少し書き方を変えないと、公安委員会できまつたことをそれだけを事務的に処理して行くんだということであれば、これは総理ということと少し概念が私違うように考えるのですが、これは昨日も公安委員長が一体どういうことをするかということで実はみんなが疑惑を持つている点なんですね。この総理するという言葉を使いますと、私は自然に指揮監督というような面に入つて行くように考えるのですが、如何でしよう。
#42
○政府委員(斎藤昇君) 指揮監督というのは、例えばどういうようなことが考えられるかという問題でありますが、委員長が公安委員にこうしろああしろというようなことはちよつと考えられないと思うのであります。委員会でいついつか会議を開くようにしろ、皆よろしいと承知する、それについてやつてくれということでありまして、会議をこういうように、委員長の意見はこうだ、それに従えというようなことにつきましては、この総理の内容には全然入つて参らない、かように考えるのでございますが、この条文は例えば公安審査委員会の第十条の規定でございますとか、公正取引委員会の第三十三条に使つてありまする文句と全く応じでございまして、委員長は会議を主宰するということ以外に内部的に指揮命令というものは入つて来ないと思うのであります。
#43
○亀田得治君 公正取引委員会とかそういうようなものは別個な性格を持つておりますから、別にそんなに検討する必要もなかろうと思うのですね。ただ、この場合には内閣との関係があるので、非常にやはり重要な言葉に私なろうかと思うのです。例えば重要な警察の問題について会議を開く、そういう場合に、委員長は会議が紛糾して来る、委員の方は是非とも今日結論を出してもらいたい。こう考えてみても、今日はこの程度で打切ると、今日進めたんでは政府の立場が悪くなるから今日は打切ると、こういう場合も考えられないことはない。そういう場合にはこれは何でしよう、公安委員長としては会務を総理するという立場からであればできるでしよう。一方はやつてもらいたいと言う、一方は打切ると言うのですから、これはそういう意味では指揮していることになるでしよう。その点はどうなんです。
#44
○政府委員(斎藤昇君) それは例えばこの委員会におきましてはどういうふうに運営されておるか存じませんが、普通委員長はこの会議はこれで閉じるという権能はあるだろうと思います。併しそれについて、例えば一応理事会で皆の承認を得てやるという内部運営の規定があろうと思います。それと同様に法律上の権限はありましようが、併し運営の面において、或いは公安委員会の規定で、そういう場合には皆に諮らなければ会議が閉じられないとか、或いは閉じても何名以上から再開の要求があればすぐ開かなければならないという規定を公共委員会の運営規定で設ければ設けられるのでありまして、そういつた五人の公安委員の納得のできないような総理の仕方をすれば、五人の委員の方々の発案でこの運営規定というものが委員長の独善的な運営方式にならないように当然運営規定をきめられると、かように考えるのでございます。
#45
○亀田得治君 そういう運営規定がうまくできるかできないかはこれは未知数ですが、それは先のことでして、法律上やはり公安委員長はそんな大きな権限はないのだということであれば、この点の書き方はもう少し違つた書き方をすべきじやないか。例えばその会議における議題の取上げ方でも問題があるでしよう。議題が三つ四つある、委員長は自分の都合のいいそのうちの二つだけを今日は取上げる、これはそういうやり方は会務を総理する中に入つて来ますし、俺はこの第六条の二項によつて総理するのだから、その程度のことは俺の判断に任してもらわないと困る、こう言われたら困るじやないですか。今長官はそういつたようなことは後ほど又公安委員会の規則でいろいろきめたらよかろうと言われるのですが、その規則をきめる際に、公安委員長が法律の第六条の二項によつてそういうことは俺が独自にやれる権限を持つているのだから、そういうものを制限するような規則を作ることは困るのだ、そんなものを作つても無効だ、そういう言葉は使わんでしようが、そういう意味のことをおつしやるかも知れない。だからそういうような実質的には委員の行動なり考え方に影響を及ぼして行くようなことはさせないのだということなら、どうもそのようでありますから、若しそのようであれば、これは内閣との関係があるだけに、この点の言葉の使い方はもう少し慎重でなければならないと考えるのですが、大臣は昨日も何か一、二個所言葉の不適当なところをお認めになりましたが、その点はどうお考えになりますか。
#46
○政府委員(斎藤昇君) 我々政府の立案の意思といたしましては、公安委員会がまあ常識的に運営されるという前提に立つておるのでございます。それは間違つているじやないかとおつしやれば、成るほどそうかもわかりません。併し五人の公安委員が委員長の会議のやり方について非常に不服があるということであれば、そうすれば、そういう専断的な運営のできないように運営規定が作られるのでありますから、その点は私は五人の公安委員というものを何と言いますか、信頼して然るべきじやないか、こういう考えでおるのでございます。大体この法案は五人の公共委員は五カ年の任期を持ち、政府が変つたからといつて罷免はされないという保障の下にできておる公安委員でございまするから、その公安委員を全面的に信頼をするという建前にできているのでございまして、この公安委員を信頼することができないということであれば、これはこういつた公安委員会制度というものも無価値なものとこう言わざるを得ないと思うのでございます。
#47
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#48
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#49
○亀田得治君 先ほど長官は委員を信頼するとかしないとか言われたのですが、やはり法律案を審議する場合には、そういうことではいけないと思うのです。委員は必ずいい人だと思いますが、中には悪い人もあるだろうし、又委員長も必ず適当な方が出て来られると思うのですが、必ずしもそうでない場合もある。そういうことを予想して実は間違いがないようにということで法律が要るわけですから、そんなにいい人ばかりならそういう法律なんか詳しく作らんでもいいのです。だからそういうほかの御議論はやはり余り一つ持込まれないようにして、純粋に法文を検討してもらいたいのです。
 それから例えば、委員長がこういうことを発言される場合があろうと思う。政府の立場を公安委員の諸君にわかつてもらうために、一つ次の公安委員会には委員長は政府の何々大臣を一つ呼ぼうと思う、或いは総理を呼ぼうと思う。
   〔委員長退席、理事上原正吉君着席〕
 実際は総理なり誰それが来て一つ公安委員の諸君と会つて、それによつてまあ一種の圧力をかけて自分たちの意見を通じて行こう、こういうふうに考える場合もこれは予想されるわけです。世間の一つの事例としては……。そういう場合に委員長がそのことを主張する、ほかの委員が、これはどうも公安委員会の自主性を阻害される虞れがあるから困る、併し委員長は俺は会務を総理する権利を持つているのだから、その程度のことは俺に任してもらわんと困る、意見が違うのなら、仕方がないから俺の権限でやるから、こういうふうに出られた場合には、これは総理するという中に一体入りますか、入りませんか。
#50
○政府委員(斎藤昇君) 私はそういうことについて委員の中から異議があれば、そうすれば採決をするということが望ましいと思いますが、採決をしましてもその意見を聞く聞かんは自由でございますから、そんな話は聞く必要がないという場合には皆退席されるだろう、かように思います。
#51
○亀田得治君 いやこの総理するという言葉の中に委員会を散会したり、議事が五つあるのに二つにしぼつたり、或いは皆なが余り希望しないのに、つまり非常に強い反対決議をするという場合は別ですが、皆が余り希望しないのに委員長として適当な国務大臣を引張つて来る、こういつた程度のことは総理という中に入るのか入らないのかということをお聞きしておるわけです。
#52
○政府委員(斎藤昇君) そんな委員以外の者を連れて来るということは総理の中には入らないと考えます。
#53
○亀田得治君 或る程度併し入るではないでしようか。会務を総理するのですから、この議題になつていることについて一つ国務大臣なり総理大臣の意見を聞いて見てくれんか、この程度のことは私委員長としてどうも言い出しそうに思うのですが、法務委員会でもありますよ、その程度のことは。私ども合議制でやつておりますが、意見が余り一致しない、そうして決定的な問題でもないという場合には、これは委員長がたつてこうしようというなら一つ郡委員長に任しておこう、こんな程度のことはこの法務委員会でもありますよ。
   〔理事上原正吾君退席、委員長着席〕
 これはやはり委員長としての職権であろうと思います一種の……。だからここで総理すると書いてある以上は、これは総理する権利ですから、その場合には私委員長としてそういう権限を揮うことにこれはなると思うのですが、併しこの公安委員会のメンバーですね、五名のうち三名まではそういう場合に総理大臣を引張つて来て意見を聞くのは反対だとおつしやる、あとの二名はその委員長の、政府側の立場に同調してそれはやはりやるべきだ、こういうことになつたとする。そうすると採決をする段階ではないですよ。そういうことでもめておる。そういう状態の場合にこれは一つ委員長として、この際引張つて来て一応意見を聞いて見よう、これは私会務を総理するの中から普通の概念としては出て来ると思いますが、その程度のことは……。だからそんなこともさせるということであれば、私はこの総理するというのは一つやめて、そうして極めて事務的な単なるこれは内閣との連絡人に過ぎないのだ、こういう意味がもう少し明確になるようなものにしないと、総理というのはあなた何ですよ、内閣は内閣総理大臣ですよ、国全体を総理しておるのです。これは非常に不明確な概念です。私はこういうところをやはり明確にしておく必要があると思うのです。国警長官の答弁には私は満足なんだ、そういう権利はないとおつしやるのだから、ないならば一つこの点はないようにもう少しはつきりしておくべきがと考えるのです。
 それからもう一つは、長官は今私がお聞きすると、ないないとおつしやるのですが、どうなんですか、その点は本当にないと思つていらつしやるのですか。或いは或る程度はあるのだが、この際はないと言つておいたほうがいいという感じもあるのではないでしようか。それもはつきりした感じがないかも知れない、それほど不明確なんです。この文字そのものが内閣との関連において考えると、これは非常にややつこしい概念になるのですが、一つ大臣の意見を聞かして下さい。
#54
○政府委員(斎藤昇君) 法律上の用語として申上げておきますが、会務の総理という中には、今申しましたその会議に誰を連れて来るという、そういう職権は入つておりません、法律……。事実的に連れて来られる場合もあるかも知れませんが、これは公安委員会の人も自主的に或いは人を連れて来て、お前、これを話してくれということがあるかも知れませんが、併しそれは職権として、或いは権限としてそういうものを持つておらない。これは法文上当然含んでおらないということをはつきり申上げます。
#55
○亀田得治君 これは一つ大臣にお聞きしますが、若しそうであればこういうふうにお変えになるべきではないかと思う。もう少し適当な言葉が発見されればそれでもいいのですが、第六条の第二項を、委員長は委員会の意向といいますが、意向に従つて会の事務を司る、こうやつたらいいのですよ。こうしておけば非常にはつきりする。委員会の意向に従つて会の事務を司る。そうすると単なるこれは事務機関になつてしまう。それでいいのじやないですか。どうですか、大臣の考えは……。
#56
○国務大臣(小坂善太郎君) 折角でございますが、そう思いませんので、私は会議体の機関におきましては、意思決定は議決によるわけでございます。議決の方法も、この場合は十四条の議決の方法についてもそうでありますし、それ以外の運営に関して必要な事項すべてを十四条におきまして、国家公安委員会が定めることに法律上なつております。でございますから、この議決の方法、或いは議決によつて定められた公安委員会の運営規則によつての運営の方法、こういうものはもうきまつておるわけでございまして、その線に副うて会務を総理する、こういうことなのでございまするから、御懸念のようなことは私はこの法文上は出て来ない、こう思つております。
#57
○亀田得治君 それは大臣の御説明は逆なのですよ。第十四条によつて会の運営等の規則がきまる、こうおつしやるのですが、その会の運営の規則等をきめるときに、実は第六条の第二項が根本的な問題として問題になつて来るのですよ、逆なのです。そうでしよう。委員長は、おれが会務を総括する、総理する権限が法律上与えられておるのだ。それを前提にしてこの運営規則を作つて活用する、こう言うのにきまつていますよ。委員長は……それは又当然でしよう、法律上与えられた権利なんだから……。だからその際に委員長の権限というものを先ほど私がしぼつたようにしておけば、そのしぼつたような立場に立つて委員会の規則ができて来る。そうなると初め国警長官が言われておるような理想的な規則ができるのですよ。まあ第六条の第ニ項をこのままにしておいても、或いは長官が言つているような規則に落ちつくかも知れませんが、併しそれは保障はできない問題でしよう。委員長がどんなに言うて頑張るかも知れない。いやしくもあなた、警察の事務を取扱う公安委員が法律を楯に取つての主張を無視することができないでしよう、委員長がそういつて頑張つた場合……。私はこの問題はほかの機構の場合には非常にこういう点はまあ余り問題になることもないのですけれども、これはもう公安委員長が国務大臣であるということによつて、実はこの会務を総理するということが非常な問題になる。この二つの字句がうまく利用されれば、これはもう国務大臣は、内閣総理大臣はそれこそもう全国の警察制度を一手に握れる。だから今の国務大臣の説明はその点では間違つていませんか。
#58
○国務大臣(小坂善太郎君) この十四条にございまする会の運営規則というものも、当然議決によらなければならないと考えております。でそのことに基いて会務を総理するのでございまして、いろいろ御懸念の点もございまするが、こうした公式な場における議事録というものは、これは当然法律を運営する場合に根拠になるものでございまするから、私どものこの法律自体から来る解釈も明らかでございます。私どもの言つていることによつても、そういう懸念は払拭される、かように考えております。
#59
○政府委員(斎藤昇君) ちよつと附け加えて申上げておきますが、会務を総理の、その総理の仕方につきまして、この運営委員会できめるべきことという以外に何か特殊の権限があるんじやないか、権能があるんじやないかというところからそういう御質問が出ると思います。先ほども申しまするように、例えば本法及び運営規程できめられました事柄について、或いは招集をする、或いは採決をする、そういう権限はありますが、それ以外に誰を連れて来るとか或いはどういう行動をする、委員会にどういう影響を与えるような行動というような事柄は委員長の固有の権限として、何もこの内容には法文上持たないのでありますから、そういう御心配は法文上から全然出て来ないと思います。
#60
○亀田得治君 法文上からは持つておるとも打つていないとも非常に不明確なんです。考えようによつては持つておるとやはりとることができるわけですよ。だからその点を明確にしておく必要があるんじやないか、こういうわけなんです。これは確かに不明確なんですよ。そうして十四条について今大臣がああいう説明をされましたが、十四条は、この法律できめたもの以外についての運営規則なんですね。従つてこの法律でもうぴちやつときめられたその権限については、運営規則ではどうにもならないのですよ。だから第六条の第ニ項は、その元の権限について今疑問が起きておるわけですから、この点はやはりもう少し検討をしてもらうべきだと私は考えますが、ほかの条文にも一つ触れたいと思いますから、これはこの程度にいたしておきます。
 それからもう一つは、昨日もちよつと問題が出たようですが、第十条ですね、第十条の第三項です。「委員は、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。」、この政治運動という言葉は国家公務員法でいう政治的活動ですか。あれとまあ大体同じような意味だというふうに昨日お話になつておるのでありますが、私は先ずこの旧法では、旧法といいますか現行法では、公安委員には政治活動が禁止されておるわけですね。この点は一般の国家公務員と同じでしよう、その点どうでしようか。
#61
○政府委員(斎藤昇君) さようでございます。
#62
○亀田得治君 現行法で公安委員に政治活動を禁止してある。そうして昨日の御説明を聞いていても、公安委員というものは、たとえほかの民間的な仕事を持つていても、できるだけ専念できるような立場の人になつてもらいたい。まあ民間の仕事までは一切やめさせるということはしないが、とにかく専念してもらいたい。そういう話なんです。そういう立場の人であれば、私は現行法のままで行くのが当然じやないかと思うのですね。これは警察制度の改正について人事権並びにそれと総理大臣との関係などに関していろいろな疑惑が起きておる。そういう際に一般の国家公務員以上にこの点について政治活動を自由にする私はその根拠はなかろうと思うのです。一般の国家公務員は政治活動なんか少々したつて大したことはない。公安委員こそ政治活動をやつたらこれは大変なことでしよう。積極的な政治活動ができるとは書いてないのですが、何もこれを緩めて消極的な政治活動ならできるのだ、こんなような書き方を殊更にする必要は私はなかろうと思うのですが、これはどういうおつもりでこういうふうにされたか。
#63
○政府委員(斎藤昇君) これは内容におきましては、公務員の政治活動の禁止と全く同じでございまするが、ただ公務員の政治活動は、これは一定時間内に、時間的に勤務をしなければならないという建前から来ておる非常に細かい書き方になつておりますから、これを包括的にわかりやすく書いたのでありまして、昨日も御説明いたしましたように、検事でありますとか、公正取引委員会とかという最近の立法の形に表われたこのほうがわかりやすいと思うのであります。この準用する条文の中に書いておりますよりも、こうしてわかりやすく書いておいたほうがいいのではないか、今検事と申しましたが裁判官です、裁判官の政治活動を禁止しておりまする条文と同じ条文に書き改めました。一見してわかりやすくいたしたに過ぎません。
#64
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#65
○委員長(郡祐一君) 速記をつけて下さい。
#66
○亀田得治君 そういたしますと、国家公務員には制限がされておる。それと大体同じような気持だとおつしやるのですか。
#67
○政府委員(斎藤昇君) さようでございます。
#68
○亀田得治君 これもさようにはとれないのですがね。この第十条の第三項から行きますと、委員は政党その他の政治的団体の役員となることはできないと、これははつきりしておる。それから積極的に政治運動をしてはならない。国家公務員の場合には、公務員法の百二条で政治運動の禁止、積極も消極もないのです。はつきりと書いてある。そうして更に人事院規則で、こういうことはいかん、こういうことはいかないということが、十七項目に亘つて明確にされておるのですよ。で私は、同じというのじやなしに、わざわざ国家公務員に対してはこういう書き方をすることによつて、国家公務員として許されておらないことでも、消極的に遠慮しながらやるのならいいのだと、こういうことをこれは意味しておるのではないですか。政治運動をしてはならないというのであれば、一切の政治運動をしてはならないことになる。これはどうしてそういうふうに書かないのですか、積極的にというようなややこしい書き方ではなしに……。これは大臣に、今行かれるそうですから、見解を聞きたいのですがね。
#69
○国務大臣(小坂善太郎君) これは誰しも政治的に意見というものは持つておるのでありまするから、その自分の政治的意見を通すために政治運動をするとことはいかんというのでございまして、斎藤国警長官から答えられましたような趣旨でございます。
#70
○亀田得治君 併し、政治運動をしてはならないとは書いてないでしよう。積極的に政治運動をしてはならない、消極的にならいいじやないですか。こんな言葉の使い方が第一おかしいですね。一つの権限をきめるときに、積極的とか何とかいうのは……。ならんものはならんでいいですよ。政治運動をしてならないと、これだつたらいい。こういう言葉を使うものですから、はあやはり何だ国務大臣を長官に入れて、そうして自分たちの手輩をずつと公安委員に入れて、そうしてこれで以てずつと動かして行くと、この公安委員会が府県の警察の責任者の人事権まで持つておる。これが消極的に動いて御覧なさい、大変なことになりますよ。昔の政治警察と一緒になるじやないですか。だから、これはそんな意味じやないというなら、これは積極的というのを削るべきじやないですか。
#71
○政府委員(斎藤昇君) この条文がどういうように運用されるかということをお考え頂きたいと思います。それは国家公務員でありますならば、これは処罰の対象になります。ところがこの場合には、これは総理の罷免の事由になるわけです。いわゆる職務上の違反をしたといつて総理から罷免される、それだけの効果しかないわけであります。そこで、総理と意を通じておる者は如何に積極的にやつたつて罷免をいたすまい、或いは反対に一方罷免したいという場合にこの条項が発動されるわけでありますから、只今おつしやられました立論から申しますると、これは何か政治運動らしいことをやつたというようなことだけで罷免をするというようなことになつては酷なんで、誰が見てもあれは積極的な政治運動だという場合には総理が罷免をするのは当然だと、かように考えて立案をしておるわけであります。従いまして。これはどちらかと言いますと公安委員の身分保障という点を考えまして、その点は裁判官の身分保障も又同様であります。その点を御了解頂きたいと思います。
#72
○亀田得治君 それではお聞きしますが、消極的に政治運動をすることが、そういう罷免の理由にもならないし、差支えない、こう解釈していいのですか。
#73
○政府委員(斎藤昇君) さようでございます。消極的政治運動と申しまするのは、例えば誰かから政治的な意見を聞かれて、それについて意見を述べたとか、或る会合に出て来て、お前の意見を聞かせろと言われて、意見を述べたというようなことは、これに入りません。
#74
○亀田得治君 そういうことになりますと、あれは公安委員長だと、お前がどんどんやつて来てはいかんから、おれのほうで招待をして席を作つておくから、そこへたまたま来てお前どう思うと意見を聞かれて、たまたま意見を言うたと、こういう形をとつたら、これは消極的な行動にはなつて、差支えないことになるのではないですか。そうしたら、公安委員はそういう形であつちこつちでいろいろなことを発言できるようになりますよ。それではあなたたちが今度の警察制度の改正、昨日も例の宣誓の内容で不偏不党といつたようなことも随分問題になつておりましたが、その趣旨と反して来るじやないですか。私は、現行法の政治活動が公安委員としては制度の立場からできないと、こういうふうにしておることは、そのまま存置すべきだと思う。それを消極的には許されるということになつたら、積極、消極なんて、そんなものは区別がつくものじやないのですよ。例えばこういう場合はどうなんですか。国家公務員の場合には、政党のために金を集めちやならない、或いは特定の候補者を当選させるために運動をするようなことはいけない、こうなつておる。ところがこれにしたつて、それじ特定の政党のために金を集めるのはいけないが、誰それに一つ造船会社の何に紹介してくれんか、こういう場合に、名刺を書いて紹介だけした。これはどうなるのですか。これは大臣も聞いておいてもらいたい。非常に重要な問題なんです。これは消極だと言えば消極ですよ。自分が出かけて行つて、こいつのために一つ政治資金を出してやつてくれんかというのではない、たまたまあなた知つておるようだから名刺書いてやつてくれんか、公安委員という肩書だつたら、現在であつたら或る意味では殊更に効めがありますよ、そういう業者にとつてはね。例えば選挙でも、選挙のために演壇に上る、これは積極的な政治活動だ。それはいかんが、先ほど私が申上げたようなやり方で、有力者が集まつているところに公安委員が出て、今度はやはり誰それでなければいかんだろう、私はそう思う、個人として……とこんなことを言つて御覧なさい、これは何と言つたつて響きますよ。一体これは積極に入るか消極に入るか、どうあなたは断定されますか。
#75
○政府委員(斎藤昇君) 先ず選挙に関する運動を、いわゆる公職選挙法で選挙運動と認められるものは、公安委員は一切公職選挙法で禁止されておりますから、これができません。だが選挙に関しないでこちらでも席を設けあちらでも席を設け、これが自然的であればこれは入りません。併し公安委員と意思を通じてそういうことをやつている、いわゆる積極的な政治運動をカムフラージユするためにやつておるというのであれば、やはりこれは積極的な政治運動ですから、そういうものは罷免の事由になると思います。
 それから最後の御質問は……。
#76
○亀田得治君 名刺を書いたやつです。
#77
○政府委員(斎藤昇君) これは国家公務員法におきましても、名刺を書いたのは政治運動になるかならないか、これは政治運動には私はならないと思います。場合によれば汚職のあれになるかも知れません。併し名刺を書いたから政治運動だということにはならないと思う。これは公務員法においても私は同じだと思います。
#78
○亀田得治君 特定の政党、政治団体のために寄附金を集めるようなことは禁止されておるのですよ、国家公務員法に基く人事院規則によつて……。これは私は国家公務員として当然だと思います。従つてこれは公安委員といえどもそんなことはできないです。あなたは何かできるようなことをおつしやるが、それはちよつとおかしいですよ。それはできない。ところがそういう場合じやない、自分が出かけて行くのじやなしに、そのつもりで名刺を書くようなことは結局は消極局な活動だからということで、公安委員に是認されるようなことになつたら大変だと私は思つておるのです。
#79
○政府委員(斎藤昇君) それは名刺を書くといいましても、ただ普通の紹介名刺だというのであれば、これは積極的な行為ではありませんが、併し特定の政治運動というような意図で名刺を書いてやるというようなことがあれば、これは総合的、積極的な政治運動、こういうように見られるだろうと思います。
#80
○亀田得治君 それは多数、少数といつたつて、それじや十枚程度書いた、こうなつたら多数か少数かわからんということになるでしよう。だからそういう不明確なことにならないようにするためには、こういう「積極的に政治運動をしてはならない。」というのじやなしに、政治運動をとめるならとめる、現行法と同じようにこれはしておくべきじやないですか。公安委員長はこれは国務大臣として完全に政治活動ができる立場の人、又その下におられる委員の人がこういうふうにして現行法よりも緩めてもらう。これは私重大な問題に発展するように思うのですが、先ほどの「会務を総理」するといつたような問題とも関連して国務大臣の意見をちよつと聞きたいと思います。
#81
○国務大臣(小坂善太郎君) その問題の出て来たところは、国警長官からも先ほど申上げましたように、罷免の理由になるにはどういうことがあるかということでございまして、国家公安委員というようなものは飽くまで中正にその職務を行わなければならんのですが、罷免をするものは自分の意思に合わないからと言つて、例えばこれは政治運動をやつたから切つてしまうというようなことになりますと、身分保障ができませんので、そういうことの濫りに行われざるよう身分保障をするという意味において書いてある規定でございまして、むしろ御懸念の点は私どもは逆のように考えておるのでございます。こういうことは身分を保障する必要があるから、特にこの政治運動ということを全面的に禁止するより、積極的に政治運動をしてはならんというふうに書いておいたほうがよかろう、こういう趣旨でございます。
#82
○亀田得治君 ではもう一言、これはあとからそういう説明をされるのではないかと私は思う。罷免の理由なら罷免の理由のところにこれは書いておいたらいいのです。罷免の理由は第九条で取扱つているのです。これは第十条は「委員の服務等」と書いてありますが、それと関連する問題です。これは義務なんです。公安委員だからあなたがおつしやるように不偏不党で行かなければいかんのでしよう。だからそれを保障するためには、政党員になるくらいはいいが団体の役員になつてはいかない、そうして政治活動も禁止する、これが今までの建前でしよう。だからそれを崩されたのは、これは私非常にいけないと思うのです。時間がないから羽仁先生のほうへあとは譲ります。
#83
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#84
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#85
○羽仁五郎君 本法案は現行警察制度の民主主義的な原則を変更するものじやないかという点、第一に現行警察制度が人権擁護を主体としているのだが、本法案は能率増大を主体としていはしないか。第三に、現行警察制度は主権在民の原則を明確にしているが、改正案は政府の責任の明確化というほうを主にしていはしないか。第三に、現行警察制度は飽くまでも自治体警察を中心としているものでありますが、改正案はそうではない。最後に現行警察制度というものは犯罪は地域的なものである、地域的犯罪を主としているのだけれども、改正案は全国的な犯罪というようなものを念頭に置いているのじやないか。以上は、これは警察制度の改正ではなくして警察制度の変革だ、そういう意味において反革命的な立法だと断ぜざるを得ない。そういう非難を受けられても止むを得ないと思いますが、そう思うかどうかというのじやないのです。そういう非難を受けられても止むを得ないと思いますがどうですか。
#86
○国務大臣(小坂善太郎君) 四点を挙げられましてこの立法の反革命性を言われたわけでございまするが、私どもはそう思つておりません。大体警察……。
#87
○羽仁五郎君 そう思つているかいないかじやない。そういう非難を受ける余地があるかないか……。
#88
○国務大臣(小坂善太郎君) 余地はないと思います。私どもは警察事務というものの本来的な性格の中に、民主的な国民の人権を守るという性格と、能率よく、これ又国民の民主的な権利義務の保障をする建前からでありますが、それをやつて行かなければならないという建前とこの二つがあるわけでありまして、この二つながら備えるにはどうしたらよいかということを勘案いたしましたのがこの法律の趣旨でございますし、又第二の点としてお挙げになりました責任の明確化、これも又民主政治の建前は責任政治でございまするので、この責任の明確化を主にしている、こういうことでございます。第三点の自治警が今まで主となつておつたのを、今度は根本的にひつくり返したのではないかということでございますが、そうはおとり願いたくないのでございます。そうではないのでございまして、現在地域的に国警と自治警と二つに分れておりましたのを、その本来の性格からして国家的性格と地方的性格とあるのを三つながらに兼ね備えた府県自治体警察、これは完全自治体ではありませんが、府県自治体警察というものにした、こういう点でございます。第四点として挙げられました地域的犯罪を主としていた警察制度を全国的な犯罪を主としたものに変えたという点でございまするが、そうではないので、現在は地域的犯罪も、又全国的犯罪も二つの線によつてやつておるわけであります。これを一つのものにまとめるということによつて能率化を図り、而も民主的理念に基く警察制度にいたしたい、こういう趣旨でございます。
#89
○羽仁五郎君 今の御説明では私の出しました疑念のつまり反対論証にはなつておりません。人権擁護は増大しておりません。それから主権在民の趣旨は一層明確になつておりません。それから自治体警察というものがこの主体であるべきだということは一層拡大されてはおりません。それから犯罪は地域的な犯罪が主となるべきものであるが、警察はこの大原則を拡大されてはおりません。いずれもこれらの点が拡大されておるという証拠はお挙げにならない。さつき申上げたような非難を受けられる余地があると私は断ぜざるを得ないのですが、併し時間がありませんから次の問題に移りますが、次の問題に入ります前に、今の問題に関連して、先ほどの御答弁の中に、私の納得し得ない点が幾つかございますが、その中の一つですが、長官のおつしやつている中に日本の現状では自治体警察を育てるのはむずかしいのじやないか、これはあなたも本当にそうお考えになつておられるようですが、そういうお考え方を学問的にエクスパンシヨニズムというのです。拡張主義というのです。これは民主主義ではございませんから、十分お考えになつて御反省を願いたいというように考えます。時間がないためにそれを十分に申述べることができませんが、この自治体警察に対する国家地方警察の連絡の関係の際において、常にこの法律案にはエクスパンシヨニズムがついております。これは民主主義を覆すものであります。それから今大臣の御答弁の中にも間違いがあります。これは主体は従来は国家警察と自治体警察は並んでおるのではありません、国家地方警察であります。
 それから第二の問題で伺いたいのは公安委員会ですが、この法律案に出ておるような公安委員会は我が国だけで他に例がありません。我が国に委員会が幾つかあります。十数ありますが、この種の委員会というものはないのです。これは委員会の制度に関する根本的な変革をなさんとするものである。委員会というものは、元来どういうふうな理論の上に立つておるかということを詳しく申述べる時間がないのは非常に残念でありますが、併し現在の委員会がどういう理論に立つておるか、つまり民主主義の上に立つておるということはこれは極めて明らかなことである。ところが、それとは全く違う種類の委員会を作るということは、これはフアツシズムだという非難を受けられる余地があります。その要点を三点だけ挙げます。第一に委員会の上に権力がつくということはフアッシズムです。それから第二に、可否同数にならないという考え方がこれがフアツシズムです。可否同数の状態になるときに初めてそこに輿論が働く余地がある、それを可否同数になる場合を除外しておることにおいてこれはフアツシズムです。この点については時間がありませんから詳しく述べませんが、十分お考えになつて、こういう委員会をお作りになることが如何に危険かということを考えて頂きたい。
 先ずこの点に関して一言伺つておきますが、この国家公安委員長というものが故障があるときに委員がその代理をすることができる、こういう条文がありますが、この故障とは何ですか。
#90
○国務大臣(小坂善太郎君) 国警長官が自治体警察を担当しておると申したのではございません。全国的にただ自警一本でやつて行くということは世界にもないということを申上げたのでありますが、詳しくは本人からお聞きとり願いたいと思います。なお公安委員会は特殊の性格であつて、国家権力が加わつておるということでありますが、随時御説明いたしたことで御了解願つておると思いますが、ただ大臣が委員会に関係するという制度は、外為委員会とか外資委員会とかいろいろございます。現在もこの種委員会というものは他にもございまして、地方財政委員会とか、外為委員会とか、外資委員会もそのような構成になつております。更にこの十一条の事故という場合は病気であるとか、いわゆる短期の故障を言つておるということで御了承願いたいと思います。旅行とか病気とかそういつたような極めて短期間の故障であります。
#91
○羽仁五郎君 選挙をやりますときはどういうふうになりますか、この国家公安委員会の委員長は、国務大臣で……。
#92
○政府委員(斎藤昇君) 自分の選挙で地方に出ておられる、その場合に留守になつているというときには代理の委員長がいたす。やはり故障です。
#93
○羽仁五郎君 その委員長代理の資格は非常にあいまいですね。これはあとから細かい点を伺いますが、又小坂国務相にお考え願いたいことは、おつしやるような経済関係の委員会とか、性質から言えばマネージメントに関係する委員会の場合はいいですが、こういうような政治的な委員会においてこういうことをすることは非常に危険ですよ。つまり委員会の中に委員にあらざる者が入つて来る。ですからこれは先ほどの小坂さんの御答弁では駄目ですから、もう少し考えて頂きたい。それからそういう意味で小坂さんによくお考え願いたいことは、国家公安委員会の委員長に国務大臣をするということは、これはいずれ有力な会派から修正案が出ることでしようが、その際には十分政府として、眼前のことばかり考えないで、余り危いことをやらないほうがよろしいという意見だけ申上げておきます。
 それからこの国家公安委員会と都道府県公安委員会との関係ですが、これは第五条の第三項になりますが、ここに、「常に」という言葉をお使いになつておりますが、これは前の、現行警察法第六十一条の二では、「特に必要があると認めるときは、」これも時間がないからその相違とか、そういう点は略して原則だけ申しますが、国家公安委員会と都道府県公安委員会とが常に連絡をとるということに、これはよほど問題があります。こういう点にもつまり都道府県公安委員会というものが国家公安委員会に対して独立の関係を持つのか、従属関係を持つのかという重大な疑義がここに発生して来る。だからこういうところに「常に」というような字を使われるということはよほど私は問題だろうと思います。
 それから最後に、これは小坂さん、時間が、委員長に協力する意味であなたの御返答を伺わないのだから、意見を聞き流していいというような御了見はないだろうと思いますが、若しそういうことなら又日を改めて御意見を伺います。最後の質問は、緊急事態の発生ですが、それから七十三条の、内閣総理大臣の承認と昨日問題があつた点ですが、これも実際重大な問題ですよ。よくお考え願つて、政府の態度をいずれ明らかにして頂きたい。この緊急事態の場合に、昨日一松さんから御質問がありましたが、国会が閉会中の場合、又は衆議院が解散されている場合は、その後最初に召集される国会、これは現行法では、日本国憲法に規定する緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。これをお変えになつた点ですが、これに対して昨日国警長官は、布告を出したことがいいかどうかは急いできめるよりも、両院が相並んで慎重にきめるほうがいいという御答弁でしたが、その通りですね。そこで小坂さんに伺つておきたいのは、緊急事態の布告を出すときは、緊急に出す。そうしてそれが適当なものであつたかどうかということはゆつくり判断するという、そんなことは成り立ちませんよ。緊急事態の布告をするということは容易ならんことです。そうしてそれがいわゆる行政権の範囲内で以て行われるのでございますから、できるだけ早く主権在民の趣旨によつて国公の判断を受けられることがこれは当然です。ですから昨日の国警長官の御答弁では、これは埋窟が通らない。一松委員も勿論可とされたのじやない。これはやはり現行法通り緊急集会による参議院の承認をお求めになるということが妥当ですよ。こういうことをお変えになつている点でもこれは重大な問題がある。
 以上、最初に申上げた警察制度の基本を変革しているという非難を受けられる余地があるという点、第二には、この委員会というものにおいて民主主義委員会とは全く違うもの、即ち委員にあらざる者を委員会の中に入れようとしているという点、それから最後に緊急事態の布告について直ちにできるだけ早く国会の承認を求めるということをなさらないという点、これらの三点はこれは実に重大な問題なんです。民主主義を覆そうとしているという非難を受けられる場合があるということをお考え願いたい。でそういう民主主義を覆そうとしているのだというような非難を受けられるような場合、勿論政府はそうではないという確信を持つておいでになるでしようが、併し理論的にそういう非難を受けられるような余地のあるような立法をせられるということは、私は如何にも重大な問題だと思う。これは重大な問題だとお考えになるかどうか、国務大臣のお答えを頂きたい。
#94
○国務大臣(小坂善太郎君) 御意見はとくと拝聴いたしますが、第一、第二点につきましてはすでにお答え申上げたことでございますから、この点は又後ほど国警長官その他にも御質疑を賜わることかと思います。第三点の七十三条について申上げます。昨日国警長官がお答え申上げた通りでありまするけれども、私どもとしてこういう緊急事態というものの布告は極めて慎重になすべきものである、従つてその同意というものも、両院の同意を必要とする意味はゆつくりやれという意味ではございませんで、これは極めて慎重に、この承認を得る場合には慎重なる手続が要る。従つて布告を極めて慎重にやらねばならん、こういう趣旨で書いておりまするのでございます。実は保安庁法その他あとで出た法律にもこうした書き方がなされておりますので、一番近い機会における国会の御意思というものを尊重するのが適当であろうというので、この法文を書いております次第でございますから、そのように御了承願いたいと思います。
#95
○羽仁五郎君 じや小坂さん、もう一言伺つておきたいのですが、一、ニの点についてはそういうふうな重大な問題があるというふうに考えておられないのじやないと私は思いますが、十分慎重に考えて頂きたい。それから第三の点も現在あなたよく御承知のように、アメリカで外交問題に関する上院が今まで持つていた権限というものを大統領に委譲しようという修正案が容易に可決されないということもよく御承知でしよう。アメリカの場合は戦争をする場合は国会が承認しなければ戦争ができないのです。そういうふうに本当に民主主義を安全に守つて行くためには、できれば緊急事態の布告ということを国会の承認を求めるというのが本当なら理想的で、それなら間違いがない。それを行政権だけで布告されるのですから、できるだけ早い機会に国会の承認を求められるのが安全の道だ、これは議論の余地がある問題です。
 それから最後に一つだけ伺つておきたいのですが、この警察制度の今申上げたようないろいろな警察制度の民主化を覆すのじやないかというような議論の余地がある改革をどういう時期になさろうとしているのか、ここに二つつまり問題があるのですが、一つは最近人権蹂躪が非常に頻発しておる。人権蹂躪が頻発して基本的人権を危くされているんじやないかというときに、人権の擁護のほうが強くなるのじやなくて、警察権のほうが強くなるという改革をやるというところで私はとどめを刺されるのじやないかと思うのです。ですから仮に妥当なる修正によつて本法案が成立するとしても、この際政府は人権蹂躪を根絶するという異常な努力を私はしなきやならないと思うが、どうですか。
#96
○国務大臣(小坂善太郎君) この警察法は占領下にできたものでありまするので、占領解除と同時にやはり改正を考えたわけでございますが、その後解散その他によりまして今日まで至りましたのですが、とにかく時期の点はできるだけ早く改正しようと思つておつたのでありまするが今日に至つたと、こういうことと御了解願いたいと思います。
 人権蹂躙というようなことは私も最も排撃すべきことと心得ておりまして、この法律も組織法でございますが、執行法の部門におきましては特にその点も注意いたします。現在の執行法というのは非常に民主的にできておると思います。この組織法をいじるということによつて何か人権が特に損われるのじやないかという御疑念は、これは私は思い過ごしだと思つております。我々も警察というものは国民のために、やはり国民によつて管理されるという気持を貫きたいと考えております。
#97
○羽仁五郎君 今の御答弁は非常に不満ですよ。ですから、そういう御答弁だと又ここへ来て頂かなきやならないと思うのです。あなたともあろう方がそんな御答弁をなすつて、将来ある民主主義政治家が……。或る意味において民主主義が生残るか生残らないかという重大な時期なんです。だから生残ろうとするならば、やつぱり民主主義の根本というものに対する本当に明確な態度がなければならん。
 併し時間がないから最後に伺つておきますが、全国的な騒乱があつた場合ですね、政府がこれに警察権を用いるということをお考えになつていることは民主主義と言える言えないか。全国的な騒乱が起ろうとしている場合に、政府が交代することによつてこれを防ぐこともできる場合がある。これは民主主義の根本原則ですね。さればこそ政府は交代する、変るということがある。ですから、政府が交代することによつて全国的な騒乱というふうなものを防ぎ得る場合に、交代しないで警察権を使うということは民主主義ですか、そうでありませんか。
#98
○国務大臣(小坂善太郎君) 国民の多数の意思によつて是なりと認識されることをやることが私は民主主義だと思うのであります。でありますから、この緊急事態の布告というような場合にも特に両院の同意ということを言つておりまするのは、ただ追認を求めるというような軽い意味でなくて、両院の意見を求める、こういう趣旨で書いてあるのでございまして、そのときの国民の気持というものを常に政治に反映して行く、警察の運営というようなことについても常に国民の意思を反映して行なつて行く、こういうことが必要だろうと私も思つております。
#99
○羽仁五郎君 いや、その点は事実的にも問題がありますよ。不幸にしてそういう騒がしい状態が起つているときに、解散されている下院、衆議院というものは直ちに選挙ができるかどうかということは疑問です。だから両院が揃つてというふうに考えておられると、なかなか両院が揃わないという場合ができる。ですから現行法のように参議院の緊急集会を求めて承認を得られるという態度が私は良心的な態度だと思う。
 時間の御都合がありますから最後に一言だけ申上げておきますが、現在の警察法というものが翻訳的であるからということを絶えず言われるが、何故に我々は翻訳的な現行警察法というものを持たなければならなかつたかということの御反省も願いたい。これは過去における日本の警察制度というものは世界に名だたる悪評を持つていたものです。又我々国民としても実に言うに言われない消すことはできませんよ、涙と血というものは……。これはあなただつて御了解願えるだろうと思う。ああいうひどい警察を復活さしちやならん、又ああいう方向に警察が行つちやならないという意味で、現在の警察法ができておるという点も決してお忘れになることは私は許されないと思うが、どうですか。
#100
○国務大臣(小坂善太郎君) その通りでありまして、民主主義警察の精神というものは飽くまで守つておるのであります。ただ民主主義の中には国民の負担も少くするという国民によりよく経済的な地位を得さしめるということもございます。国情から見て無駄な制度であるというものはやはりその線で改革しなければならん、私はそう思つております。
#101
○羽仁五郎君 併しそういうことをするためにもとの警察が復活して来ちや大変です。なお、細かい条文では第三十九条において過去五年間警察、検察に関係のあつた人だけを除外しているというようなやり方なども私はいろいろ問題があろうと思うのです。これはあなたの時間の御都合もあるから、斎藤さんにいろいろ伺つて、どうしても我々が納得することができなければ、又あなたにお願いするかも知れません。
#102
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#103
○委員長(郡祐一君) 速記をつけて。
#104
○亀田得治君 ちよつとこれは重大な問題でありますので、警察の権限の問題に関すると思いますので、確かめておきたいのですが、法務委員会で秘密保護法を審議しておるときに、保安庁の当局から御説明を受けたのですが、例の自衛隊法の第九十六条によりますと、「自衛隊の所有し、又は使用する施設又は物に対する犯罪」、従つて自衛隊の武器なんかを目標にして犯した犯罪、これも警務官の権限に入る、こういうことが書かれておるのです。そうすると秘密保護法の犯罪を民間の人が犯したという場合にも警務官の捜査の対象になる虞れがある。そうするとこういうことは警務官というのは、これは特殊な捜査機関、例外的な捜査機関ですから、成るべく止むを得ない自衛隊の中だけのことに限るべきなんです、警務官の権限なんというものは……。外へ出して来ちやいけない、そういうことを簡単にやりますと、だんだんだんだん拡がつて、これも自衛隊に関係がある、これも関係があるというようなことになつて、結局憲兵がそこへできて来る。だからこれはあなた自身としても権限上の問題がありますし、どのように考えておられるか。保安庁当局では法律ではこういうふうになつておるが、政令で定めるものを除くという第一項の規定によりまして、そういう犯罪は一般の警察の捜査に任すつもりだと、こうおつしやつておりますが、これは一体国警長官との間に十分そういうことが了解がついておるのかどうか。
#105
○政府委員(斎藤昇君) その点は十分に了解がついております。私どもといたしましては以前のようないわゆる憲兵警察というものには絶対反対をいたしておるのでありまして、政府も又同様でございます。従いまして一般警察で事足りることは、最大限度一般警察に任せて、軍隊の施設の内部に入つて、そうして秘密のことにまで警察が入るということは行過ぎの場合もありまするから、できるだけそういう限度に警務官の活動を限りたい、かように考えております。
#106
○亀田得治君 その点は了解がついておるようでありますが、併しそうであるとすれば、自衛隊法第九十六条、この法律の中で、もう少し明確にしておくべきじやないかと考えるのですね。この自衛隊法の論議というものはもつとほかのところでなされておるのでしようが、警察といつたような立場から考えた場合、この九十六条は極めて今後重大だと思うのです。その点と、それからもう一つは、第一号の終りのほうに、「その他隊員の職務に関し隊員以外の者の犯した犯罪」、これがある。この中にいわゆる保安隊、自衛隊の汚職事件ですね、これが入るという保安庁当局の考えなんです。これは私は甚だ不都合だと思うのですが、これは国警長官、こういうことはどう考えるのですか。
#107
○政府委員(斎藤昇君) これはやはり私どもも入ると解釈をいたしております。まあ保安隊の内部から発覚する場合もありましようが、或いは外部から発覚する場合もあります。殊に外部から発覚する場合は、これは先ず手を付けるのは警察が当然だと考えております。内部から発覚いたしました場合は、保安隊の警務官が手をつけるというのが当然だろうと思いますが、発覚をいたしまして実際の捜査に当るというようになりました場合は、両者緊密に連絡をしてやるという取交しをいたしたいと、かように考えております。
#108
○亀田得治君 保安庁当局の説明によりますと、いわゆる贈賄側の人ですね、これについても取調の権限はこの条項によつてあるのだ。これは純粋な民間の人ですがね、少くともこの点は非常に不適当じやないかと思うのですが、これはどういうふうにお考えでしようか。
#109
○政府委員(斎藤昇君) やはり内部の自分たちの職員を取調べる関係上、贈賄者側を取調べるということも必要な最小限度においては止むを得ないであろう、法の建前といたしましては……。併し実際問題といたしましては、許す限りこれを一般警察でやるという協定をいたしておるのでございます。
#110
○亀田得治君 できるだけ一般警察でやるというと、汚職事件のことですか。
#111
○政府委員(斎藤昇君) さようです。内部と外部と関係をいたしておりますもの、殊に警察から手を付けたものは、内部の者につきましても一般警察でやることを原則とするという協定をいたしておるのであります。
#112
○亀田得治君 そういうことは、先ほどのこととも一緒にして、協定とかそういうことじやなしに、やはり法律の中に明確にすべきじやないかと思うのですね。民間の関係のあることについてはどちらが捜査上優先権を持つておるか、そういつたようなことを、例えば鉄道公安官なんかの問題がよく保安庁の人が引用される。鉄道なんかの場合にもああいう別の奴があるのだから、おれのほうも特殊な組織だから別のものを持たしてくれ、こういつたようなことも言われることもあるのですが、鉄道公安官の場合には、非常に場合を限定しておるわけですね。走つておる汽車、停留場それと一体をなしておる鉄道の施設、場所的に限定をして、つかまえたらすぐ一般警察に渡す。ともかく非常にこれは例外現象だということを明確にしておる、法律の中で……。ところが自衛隊法の九十六条の場合には、そういう点が極めて不必要に拡がつていて、そうしてそういう非難のある点については、何か打合せでやつておる……、これは私国警長官として、もう少しこの点は一つ法律ができた後に、更に改正されてもいいのですが、そういうことも、もう少し考えてもらいたいと思います。これは希望です。それからもう一つは、保安庁の内規によりますと、この警務官が保安隊内部の犯罪の捜査に着手する場合に、保安庁長官の承認を求める、こういうことになつておるのですね、保安庁当局の説明によると……。これは甚だ不適当だと思うのですね。犯罪の捜査について承認を求めるなんというようなことは、これは全く現在の捜査機構というものを破壊するものです。承認なんか要るものじやないですよ、何かこの承認といつたら、これによつて決定されるわけですからね。何か適当に意見を聞くとかといつたようなことならまだわかるのですが、そういうものの捜査に着手しなければならんときに、ぽんと蹴られたらそれ切りでしよう。それじや一般警察がその代りに、じや中へ入つてやるかといつたら、これは実際問題としては捜査権はあるというものの、実際上はなかなかできるものじやない。そういうことをするとだんだん問題が内訌して行く。そういう点あなたはこの犯罪ということの性質上一体適当だと思われますか、そういう保安庁の内規のようなものは……。
#113
○政府委員(斎藤昇君) 私はその内規を承知をいたしておりません。又どういう意味で作られておるのか知りませんので、今直ちにそれについてちよつと批評を加える材料を持合せないのでございますが、ただ私どもの例を申しますると、例えば選挙犯罪というようなものに着手する場合には、やはり警部とか或いは警視とか相当な識見を持つた者に一応承認を求めてやるというようにいたしておりますが、これは人権蹂躙を防ぐという意味から、人権蹂躙に非常に関係を持ちそうな犯罪につきましては、下級警察官だけの単独の判断だけではやらないようにという配意を加えてやつておりますが、保安庁の分につきましてはどういう意図で行われておるのか承知をいたしておりません。
#114
○亀田得治君 もう一つだけ、これは細かい問題のようでありますが、非常に法律的には重大な問題ですから、これはこの委員会で保安庁当局の方が説明されたことですから、そういうものがあることは間違いないです。その点よく御検討願いたい。そうして成るほど一つの捜査機関の中で上官と部下の者がこういう事件について一つ着手しようと思うが、どういうふうにしてやろうか、そういつたようなことで指揮を受ける、これは私勿論了解いたし申す。ところが保安庁長官というものは、何もこれは法律上そういう捜査権を与えられたものじやないのでして、別個のものですよ。だから本当にそういう技術的な意味でもつと上級の知識を参考に聞きたいということなら、これは一般のも寄りの警察の署長なり、或いは検事なり、そういうところの指揮を仰ぐなり連絡をするなり、こういうことであるべきじやないかと私考える。でそういう保安庁当局のやり方というものは甚だ以てこれは怪しからんし、こういうことがつまり特殊な捜査機関、いわゆる憲兵制度にやはり発展して行くわけですから、これは一つ総理大臣も言葉の上では憲兵制度復活の意図はないと何遍もおつしやるけれども、その意図に副うようにするためには、国警長官も一つそういうやり方はいけないということで、この点は十分お調べを願いたい。又別個な機会に一つお調べ願つた結果、私又あなたの御意見も聞いてみたい、割当の時間が来ましたから私の質問はほかにもまだたくさんありますが、本日はこの程度でやめておきます。
#115
○羽仁五郎君 斎藤さんに伺つておきたいことは、警察が対象とする犯罪は地域的な犯罪であるという大原則ですね、これはあなたはお認めになりますか。
#116
○政府委員(斎藤昇君) その原則は認めますが、併し最近の犯罪は地域がだんだんと拡つて来ているということは申上げなければならんと思います。
#117
○羽仁五郎君 いや、原則を僕は言つているのです。あなたが最高のレベルの責任者として頭をどこへ置くかということ、余り小さいことにくよくよしないで、やはり一等上の国警長官として責任を持たれるには、御自分の信念として犯罪というものは地域的なものだというこれは実に千古不変の大原則ですね。これを原則としてお認めになるかどうか、これを原則的にはお認めに今なつたのです。それで勿論最近の犯罪は全国的なものが多々あるということはこれはありましようけれども、それだからといつて、警察が警察の責任上、全国的な問題は警察の問題じやないですよ、政治上の問題ですからね。だからあなたが余り警察と政治とを混同されると、やはり政治警察だということにもなつてしまうから、全国的な犯罪というのは、これはなかなか政治的な問題があるので、警察プロパーの対象とすべき犯罪というのは地域的なものであるという原則は、これは是非誤まられないことを希望するのですが、どうでしようか。
#118
○政府委員(斎藤昇君) 地域的と申しますのは、区域的という意味でございますか、或いは地方的という意味でございますか、恐らく区域的という……。
#119
○羽仁五郎君 つまり全国的じやないという意味です。
#120
○政府委員(斎藤昇君) 全国的という意味からエーリアを言われますのか、或いは国家的という意味でありますか、若しエーリアということであるならば、これは地域的なやはり原則でございます。
#121
○羽仁五郎君 これはなかなか大問題ですよ。簡単な例で恐縮ですが、一人、二人の赤ん坊が泣くのなら叱つてもだますことができる。併し全国の赤ん坊が泣くとなると、叱つても仕様がないので、全国的な問題ですね、この判断を誤ると……。ですから政治警察になり、国家警察になるということで、実はあなたの責任としてのこれは大問題ですから伺つておくんですが、犯罪は地域的なものだということをお考えになつて頂きたい。
 それからその次に人権の問題に関連し、昨日から問題になつている警察官並びに警察に関する宣誓の問題ですが、質疑応答で伺つておるときに非常に心配になるのは、宣誓ということを余り重大にお考えになつていないのじやないか。宣誓ということは実に重大なことですがね。それをいい加減な、時間がないものですから、言葉がいい加減になつて恐縮ですが、宣誓についていい加減に考えておられますと、全国の警察官に嘘をつかせることになる。宣誓には立派なことが書いてあるが、実際においては屁とも思わんということになりますると大問題になりますから、それで昨日から人事委員の各位があんなに心配されて宣誓の問題を言われておるのも、やはり宣誓ということも眼前の目的だけでいろいろにお作りになるということはよくない。やはり宣誓というのは今の日本の立場としては人事院というものが全責任を負うてやつておることですから、人事院に向つていろいろな連絡をとられたり意思の疏通をされたりすることは結構ですけれども、人事院の宣誓とは違つた宣誓を警察官がするということはいろいろな問題があります。極く最近の例ですけれども、アメリカでは一般公務員に重ねて教育公務員に宣誓をさせるという例がカルホルニア等にありまして、そこからいろいろな問題が起り、又そこに悲しむべき事件を引起したりしております、問題は違いますけれども……。併しあなたは最高峯におられる方として宣誓の問題を重大な問題というふうにお考えになられると思うが、宣誓についてのいい加減な考え方でやつておると、全国の警察官が嘘をついておる、嘘をついている警察官に我々の治安の維持などを任せることは実際悲しむべきことだと思います。どうですか。
#122
○政府委員(斎藤昇君) 御所見の通りだと思います。私ども第三条に特に宣誓の点を掲げましたのは、この内容の如何を問わず少くとも警察法で警察官というものは宣誓という観念を離れてはいけない。法律を見るときに先ず宣誓が出て来ているという感じを与えさせる気持で考えて特に第三条ができておるのでありまして、普通一般公務員法だけに任せておけば、公務員法の規定によつて宣誓は動いて行きますけれども、併しあれは人事院できめられた宣誓があれだというので、関心が薄れはしないか、それを更に常時喚起させて、我々がこういう宣誓をしているということを注意をさせたい、そういつた意味を多分にこの三条に……、昨日から作り方如何の御問答はございましたが、ここに特に特記いたした次第でございます。
#123
○羽仁五郎君 今の御答弁じや私の質問の意味がよくおわかりにならないようですけれども、残念ですけれども時間がないので次の問題に移りますが、さつき申上げた。パタナリズムの考え方、日本の現状で自治体警察が育ち得るには無理じやないかというあなたのお考えはパタナリズムだというふうに申上げたのですが、その点御反省が願いますか。
#124
○政府委員(斎藤昇君) これは私は誤解を抱いておられるのじやないかと思いますが、私はさように考えておりません。自治体警察としては十分に育ち得ると考えます。併し自治体警察だけで行こうとするならば、もう一つ国家警察が要る。そこでこういつた場合に日本の先ず経済力の点も考えなければなりませんが、果して今までの日本の官僚根性とかいろいろな点から、この国家警察と自治体警察というものは一つの地域でうまく提携してやつて行けるだろうかと考えますると、将来は行けるでしようが、これがうまく育ち得るまでには恐らく十年、二十年、三十年を要するだろう、これが非常に困難ではないか、かように考えております。
#125
○羽仁五郎君 根本的な点で不満ですけれども、時間がないので次の問題に移りますが、今あなたがお考えになつている困る問題と、警察国家ができるということが困る問題とじやどつちが困るかというと、我々国民は警察国家ができるほうが困るのですよ。警察が少しは金がかかるとか、民主々義化には暇がかかるとか、或いは連絡がうまくできないということは辛抱します。併し警察国家ができることは辛抱できませんから、その点はさつき申上げた第一の点ですね、警察制度の民主的根本を覆えそうとする非難を受けられないためにもう少しお考えを願いたい。これは国民に代つてお願いをするということです。そこでさつきもちよつと申上げたのですが、今あるのは国家警察と自治体警察があるのじやないのですね。自治体警察が主であつて、国家地方警察というものがそれを補う程度において存在しているに過ぎない。私はこの考え方というものは実に立派な考え方だと思います。意見を申上げている時間じやないのですけれども、あたかも今国家警察と自治体警察が二つ並んでいるようなお考えは事実に反しますから、それはお考え直しを願いたい。現行法では自治体警察が主であつて、それを補うのにいわゆる国家地方警察というものがあるに過ぎない。ところが今度の改正でお作りになろうとするものは、国家警察というものが新たに作られたのだということです。国家警察を新たに作ることは警察国家の危険が生じて来るのだ、警察についてはですから両面の問題がありますよ。警察の能率という点から考えれば国家警察を作ればいい、併しそうすると警察国家の危険が生じて来る。この警察国家の危険の生じて来ることを防ぐことのほうが大問題です。日本では歴史的に今まで警察国家があつたのです。又そういう方が大分残つている。従つてこの過去五年間に警察、検察に従事した人じやない、それ以前の方々にそういうお考えの方がまだ随分おられるのじやないかということを国民は非常に心配しているのです。これは一々条文を挙げませんけれども、あなたはよくおわかりのことだろうと思うのですが、そういう点について国民は心配しているのだから、だから私はそういうふうな修正には応じられぬほうがいいと思うのです。
 それから今申上げたのは基本的な点ですが、第二の点はやはりどうしても国家公安委員会の委員長に国務大臣をするということは、実に危険極まりないことだというふうに思うのです。私はそういうふうにしなければできないということもいろいろあろうと思うのですが、併しそういうふうにすることによつて生じて来るところの危険のほうが大きいのじやないか。なかんずく私は随分不体裁だと思うのは、総選挙のときなんかだと思うのですよ。公平なる警察の国家公安委員会の委員長として、ちよつと選挙ですから失礼しますと出かけて行つて、至るところで選挙演説や選挙運動をやつて、そうして帰つて来て幸い当選され、又国務大臣になつてそうしてその任務を続けられるというと、又国家公安委員会の委員長に坐られる。これは余り体裁のいいことじやないでしよう。体裁よろしいでしようか。
#126
○政府委員(斎藤昇君) 国務大臣が政党出身の方であればその点は止むを得ないと存じますが、併し私は過去六カ年の経験から、国家公安委員会というものに日夜六カ年接しておるのでございますから、あそこに国務大臣が一人入つて来られてれどれだけの政治的な影響力を与えられるだろうか、私はこれは真剣に考えております。考えておりますが、私はその影響は一般に伝えられるようなそんな御心配はないと私は強く確信いたしておるのでございます。それはお前勝手な確信だとおつしやいますが、併し私は六カ年の経験ですから……、併しこれは国家公安委員のあり方というもの、選任の仕方、或いは質というものが変つて来れば別でございます。併しそういつた心配な国務大臣が入つて来なくても、五人の公安委員に信頼できる人たちがおるかおらんかということにかかるのでありまして、委員長として国務大臣が入つて来なくても、担当大臣でありましても、この五人の委員の方がいい加減な人であれば、同じことになつて行く。むしろそれよりは委員長が国務大臣として、そうして委員長としての責任を負わされるということは、私は国家に対しても、同じ担当大臣として答弁されるよりも、委員長として答弁されるほうが、責任を感ぜられるでありましようし、警察の実際のあり方というものを政府や或いは国会に伝えることもできる、又国会の御要望も警察には本当に伝えられるということになるのではないか、私はこのほうが望ましいのではないだろうか、これは心からこう考えております。
#127
○羽仁五郎君 時間がないので三点だけまとめて申上げますが、第一点、自治体警察というものを存置しておくほうが日本の警察の民主主義を守つて行く上に必要だという有力な議論がある、私もそう思います。こういうふうにやつて行くことによつて警察国家というものができる危険のほうが大きい、この点が第一点、それから第二に、国家公安委員会の委員長に国務大臣がおるということは、非常な問題だと思う。これは一種のフアシズム或いはナチスという非難を受けられても仕方がないのではないか。それから今申上げましたように甚だ不体裁……、折角国務大臣があれしても、選挙の場合にはその委員長が留守になるというようなことは、国家公安委員の権威に関する問題なんです。それから第三の問題としては、国家公安委員会の委員長に国務大臣がおるということは、非常に問題だ。そうして都道府県の警察というものが自治体警察だなんというまああやしげな考え方で以て、今後あなたなり政府なりが日本の警察の民主化というものが守られるかどうかということは一番大きな問題です。それから最後には緊急事態の場合の参議院の承認ということ、現行法には私は十分の理由がある。それを覆すことは非常に問題だろうと思う。特にさつき申上げた人権蹂躙の問題について詳しく実は伺いたかつたのですが、もう時間がないのでこれはどうか人権蹂躙を根絶して頂きたいというふうに政府にお願いしておきます。これは委員長のお許しがあれば、最近の一つの事件について人権擁護局のお答えだけ簡単に伺つておきたいと思います。
#128
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#129
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#130
○政府委員(斎藤昇君) 先ほどもお述べになりましたように、警察が能率化するよりも警察国家になることが恐ろしい、それはお説の通りであります。ただ、私はこの制度におきましてはその危険性ありや否や、これは意見の相違ということにはなるかも知れませんが、ただ私は一般に非常に残念に存じておりますのは、都道府県の公安委員会というものの存在、これの実際上の威力というものを外部の方々に十分お認めになつて頂けていないという点は、私は非常に残念に思います。都道府県三人ずつの公安委員、而も各政党のいろいろな意見を持つておられる公安委員の方々があられまして、これがおられて、そして果して警察国家的な運用を一体中央からできるかできないか。これも私過去六カ年の経験でございまするが、黙つておられても、物言われない三人の公安委員の方々というものの監視は、これは非常に大きな防波堤である。これは私の体験から申上げるのでございますが、この公安委員の方々の意に反した中央一元的な、而も警察国家的な運用というものはなし得るものか否か、私はこの法案通過後もその事実は、今度は現在の公安委員会よりも、都道府県の警察は自治体警察的な……、自治体警察になるわけでございますので、その実が実際に発揮されるであろうと考えます。むしろ今度は任免権について御意見も持つた、予算の権限も府県が持つたということによりまして、非常に強化されまして、私は今おつしやいますような点は希望的な意見でなしに、実際杞憂ではなかろうか、かように思つておるのでございます。ただ第五条の第三項に、都道府県公安委員会と国家公安委員会は常に緊密な連絡を保たなければならない。この趣旨も我々としましては、都道府県公安委員会を統括し或いは監督して実務をやるのは長官でございまして、国家公安委員会じかにやりません。長官を国家公安委員会が管理し監督しておる。その下において長官が執行的には都道府県の公安委員会をじかに指揮監督をして行くわけであります。そこで果して国家公安委員会の中正な、民主的な運営の考えというもの、それが都道府県に実際に現われる場合に、果してそういうように現われるかどうか。長官が独断専行をやつて、そうして長官から警察本部長の所に独断専行をやりやしないかというその監視に役に立たせるべく都道府県の公安委員会かちも絶えず国家公安委員会に連絡をして、どうもあの長官のやり方はいかん、あなたの監督は足りない、どういう趣旨だ、そう言う機会を持たせるためにこれは掲げておるのでございます。さように御了承願います。
#131
○羽仁五郎君 今の点だけですが、今のあなたの御意見には敬意を表するのですが、併し他面において知事官選なんという声もだんだん起つているのです。そういうふうに日本の都道府県というものは法律形式上は自治体であつても、正しい意味における自治体としての伝統にも乏しいし、過去においてはこれは全く中央集権の出先機関であつた伝統が随分強いのです。今のあなたの御意見には敬意を表しますが、そういう心配を持つておる人間もあるということは一つよく考えて下さい。
 最後に一点だけ申上げておきますが、さつき亀田委員からもおつしやつたように、都市警察と自治体警察というものは、昔の日本の警察と違い、民主的な警察ができつつあるのじやないかという国民の希望を蹂み躙られるということは、私はどうか一つやめて頂きたいと思ます。これは私の希望です。以上で終ります。
#132
○楠見義男君 昨日いろいろ質問したのですが、どうもまだ腑に落ちない点があるのと、もう一つは質疑において時間の関係で漏れた点についてお伺いしたいのですが、先ず第一に国家公安委員会の委員長に国務大臣を充てる問題なんですが、私は昨日申上げたように、どうしてもこれは大事な警察運営の目玉である民主的機構の公安委員会に大臣が入つて来るということは非常な改悪といいますか、委員会制度を没却するものだと思うのですが、これは意見になりますが、本日も亀田さんからいろいろ御質問があり、又羽仁さんからも御質問があつて、その質疑応答を聞いておりますと、どうしてもこれは国務大臣を委員長にするという理由がない、というよりも、いよいよ意味がないというような気がして来たのです。というのは、そういう問題について亀田さんから御質問があつて、指揮監督とか、そういうことは実際考えておるようなものじやないという意味の御答弁があり、それから又今羽仁さんの御質問に対しても本来公安委員長がインフルエンスを持つようなふうに考えるということが実は考えられないというような意味のことを今お述べになつた。そうしますと、これだけ世論の批判があり、又強い一部には反対があるものをなぜ国務大臣を委員長にしなければならないかということがいよいよ以てわからない。昨日も小坂大臣は常に政府の意向を公安委員会に反映し、又公安委員会の意向を閣議に反映する、こういうことで必要だ、こういうお話があつた。これは単なる連絡機関みたいなものですが、そこで私は実は昨日そういうことであるならば、国務大臣は担当国務大臣はいつでも公安委員会に出席して意見を述べることができるという規定を一本入れておけば、その連絡の役目は十分果せるのではないか。問題の公安委員長に何も国務大臣を置かなくてもいいじやないか、こういうふうに思うのです。今斎藤さんはインフルエンスを持つということ自体が、どうも自分には了解できないとおつしやつたのですが、それであればあるだけ余計そういう感じが一層強くなつたのですが、その点はどうでしようか。
#133
○政府委員(斎藤昇君) 私の申上げますのは、政府の悪い意味で政治的にアビユーズをするというそういうインフルエンスが、私は国家公安委員会の内部自身においても極めて困難であろうし、もう一つ都道府県の公安委員会というものがあるわけですから、昔の警察のように隠れて秘密にやられるというのじやなしに、都道府県の警察については、傍にいて監視をしている公安委員というものがあつて、それからすぐ意見を言われるという状態の下に置かれて、そんな指令を出せないのじやないか。これは私の体験から申上げるわけです。それからもう一つ、それじやただ外部からの連絡だけでいいじやないか、かようにおつしやいますが、併し実際問題として我々の経験からもそうですが、現在外部の担当大臣ではございますが、実際問題としては事細大漏らさず報告をいたしております。例えば閣議の席でいわゆる政治をやつて行くについて日本の治安の現状、それから警察のあり方、警察から見た治安という面から政府の政策はかくなければならないということを申上げる場合でも、公安委員長として絶えず公安委員会の中におられて、警察の長官以下事務局と絶えず内部において話をしておられて、治安の面から見れば、そういう政策はいけない、そうなれば治安が悪くなる、そうなければならぬと言われる場合に、ただ外部で連絡している担当大臣の資格で言われるのと、公安委員長の資格で言われるのと、私は閣議に対する影響、政治に対する影響が非常に違つて来る、かように思います。又閣議の席でこういう警察に対して非難の声が出た、或いは国会でもこういうあれが出た、そういう非難のないようにやつて欲しいということを公安委員会で披瀝されて、公安委員会がその通りだ、それで長官を呼んでやるということになりまするのと、何か外部からそういう意見がありましたという伝達と非常に違うのじやないか、私はそういうふうに考えております。
#134
○楠見義男君 そうしますと、又亀田さんの心配するようなことになつて来るのですよ。担当大臣としてそこへ出席して、その立場から言うのと、一方民主的な独立機構があつて、それに対して常時出席して意見を述べるという場合と違つた意味が出て来るというのは、今おつしやつたような考え方で行けば、何か機会があれば、公安委員会をリードして行こうという気分がそこに今のお言葉の中に現われている。そうすると今の公安委員会の制度というものを根本的に覆えすといいますか、変えるという意味が非常に私は強くなつて来ると思う。だからその点を亀田さんも心配し、それから一般に民主的機構としての公安委員公制度を設けてこれを盛り立てて行こうという立場から見れば、政党内閣の大臣がリードして行こうということがいけないとこうなつて来るのですから、その点は非常に大きな私は違いだと思うのです。これは時間がありませんから、そのことだけを又重ねて申上げますと同時に、私はやはり疑念は解けないのです。
 その次の問題は、昨日伺つて十分の了解を得なかつたのですが、今度の改正で市警察を残すという問題ですね。あの五十二条の修正なんですが、指定市と書いてあるのですが、その指定市というのはこれは本当を言えば衆議院の修正した人の意見を聞かなければ、指定市の意味がわからないのですが、これが法律の成立した暁における運用の責はあなたがたがお持ちになつておるのだから、その場合の指定市というのはどういうふうにお考えになつておられますか。
#135
○政府委員(斎藤昇君) あの指定市は地方自治法第何条に定むる市とあつて、略称して指定市とこうなつております。その自治法第何条の市と申しまするのはいわゆる今日の五大都市、この五大都市につきましては、知事の行う事務を相当五大都市に委任をいたしております。そういう種類のものでございますから、その指定市が拡がるということはちよつと考えられないので、自治法の一般の事柄に関係するわけでございます。
 それから先ほど公安委員長についてのお尋ねの御心配の点は、私は一応御尤もだと任じますが、先ほども申しますように、この制度を全体として御覧を頂きたい。これは府県の公安委員会というものがない、そうして長官なり公安委員会が直接本部長を任免する、これに対して罷免勧告権も何もないというのであれば、その御心配は私はあるかと思います。併し府県にそれだけの防波堤があれば、今の公安委員会はそれは端的に申しまして成る程度、或る程度といいますか、心配されるような私は政治的な理由というものは公安委員会自身としても殆んど見出だすことが困難であろうと思います。併し政府の考え方というものに近付くということはこれは事実でしよう。併しそれが悪い影響となつて府県にまでどれだけ及ぶかということを考えると、私はいい意味の面のほうが多いのじやないか。全く政治から離れた蒸溜水のような公安委員会というものがそれは一つの理想でございましよう。併し一面やはり治安の責任或いは警察に対する政府の責任というものがあるわけですから、これらの適当なところにおける調和というものは、これはどうしてもしなければならない。どの国におきましても、蒸溜水のような公安委員会だけで警察を運営しているというところはないということから考えましても私は行けるのじやないか、かように思います。
#136
○楠見義男君 今のはアビユーズといいますか、濫用ということのお話が先ほどあつて、それから又今も防波堤といいますか、都道府県公安委員会の存在があるのだから、変なことはできない。こういうようなお話があるのですが、そこでこの問題に関連すると、先ほど羽仁さんからおつしやつた地域的な原則ですね。警察の原則は地域的かどうかということでいろいろ議論があつたその点に関連すると同時に、昨日伺つた本来警察事務というものの性質は国家的事務か地方的事務かという問題にも関連して来るのですが、今おつしやるようにそういう一つの道府県公安委員会という楯があるのだから大丈夫だという意味は、やはり羽仁さんの原則としてお述べになつた地域警察というものの独立性といいますか、主体性を認められておると思うのです。そうなれば余計に地方の警察官というものは一部の者だけを国家公務員にしておるのだけれども、その考え方もおかしいので、同時に都道府県公安委員会の主体性もこの修正ではなお十分でなくて、むしろそれが主になつて国家公安委員会が修正されたようにして、そうして必要な国家的な指事監督命令はできるという規定を置いたほうが私は筋が通るのじやないかと思うのですが、これも意見なんですけれども……。そこで今の市の問題なんですが、指定市の警察をやめるということを原案にお考えになつたのは、これは経費の問題もあるけれども、能率的ということを主にして原案ができておる。それに対して今度は修正ができておつて、それは能率主義的な警察を狙つた原案と非常に違いはせんか。それはいい悪いは別にして、原案としてお狙いになつたところから見れば、却つて改悪するという恰好になりはしないかということを昨日伺つたら、いやそれは府県の下にあつてするのだから、その点は心配はないと、こういうような御答弁があつたのです。ところが今度の修正案で行きますと、警察署長以下の指揮監督はその指定市にあつては市の本部長の指揮監督に従うということになますね。そうしますと、能率主義の立場から行くと余計中間に一つの機関ができて、これはおかしいのじやないか。むしろそのいい悪いは別にして、原案から見れば非常な改悪になるのじやないか。こんなことになるならば、都市警察というものを残して一向差支えないのじやないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうでしようか。
#137
○政府委員(斎藤昇君) お説の通り能率主義という点から一貫しますると、これは市警察というものを設けないほうがいいと考えます。併しながら大都市になりますると、やはり大都市の特性というものもございまするので、それだけ犯罪は地域を超えますから、その中の区域よりも周辺のところと絶えず密接な関連があるわけでございますけれども、併しそれは別にいたしましても、やはり大都市としての特性というものもありまするので、それを活かして行くという点になると、或る程度の能率主義の低下ということはこれは我慢しなければならんのじやないかと……。
#138
○楠見義男君 ですから妙な妥協をするものだから、却つて私は恰好が悪くなつていると思うのですよ。昨日申上げたようにやめるならやめる、残すなら残すということのほうが実際すつきりするので、変な妥協をするものだから、体をなさんような恰好になるのじやないかと思うのですが、これも時間がありませんから、次に移ります。
 昨日聞き漏らした一つの点で、例の警察、検察の事務に従事したという前歴経験者の公安委員就任の制限の問題ですね。これを五年というふうに衆議院は修正されておる。これは本当かうそか知りませんが、旧内務省の先輩の方々の誠に私は悪女の深情けだと思うのですが、そういう御同情心で五年というものになつたように思うのですが、本当に心配でボス的な役割或るは存在に対して心配をするなら、五年というよりもむしろその前の人のほうがもつとボス的な役割を果すだけの能力を持つておる場合もあると思うのです。これこそ私はまさに改悪だと思うのですがその点はどうなんですか。
#139
○政府委員(斎藤昇君) この点は大臣も述べておられましたように、必ずしも好ましいこととは思つていないのでございます。で公安委員会とおつしやつたわけでございます。公安委員会の一体本来のよさというものはどこにあるかといいますと、警察を官僚化させない良識を持つたもので管理をして行くというところにその狙いがあるわけです。そこに専門家が入つて来るということは、公安委員会の性格というものを本貫的に変えてしまうという虞れがあるわけであります。ただ、専門家といえども、何年か経てば、専門家的な臭いが抜けてしまうか、民主化されるかということと関係いたしましよう。五年になるか、十年になるか或い一は生抜けないか、この認定で或いは五年とおつしやり、十年とおつしやる。原案ではそれが一切いけないということにいたしてあるわけであります。
#140
○楠見義男君 それからもう一つ、都道府県公安委員会の委員が今度は三名のところが大きなところは五名になつたわけですね。ところが北海道のような大きいところが依然としてやはり原案通り三人で残つているのですが、これは他の均衡から行くと、一方大きなところが五名になつたなら、北海道のような、下に方面本部が相当あるような大きなところもやはり五人というふうにしなければ均衡がとれないと思うのですが、これもさつきのくだらない妥協で三人が五人になつた、北海道にはそういうことがないからということを言えばそれつきりなんですが、五人にしたというのは大きな又大事なところであるということなら、北海道もやはり同様にしなければ私はおかしいと思うが、その点についてはどうでしようか。
#141
○政府委員(斎藤昇君) これは北海道は地域が非常に広うございますけれども、従つて方面隊を設け、そうして各方面本部にはそれぞれやはり三人の公安委員でおるわけであります。従つてそういつた面から北海道の公安委員はすべてで十八人いるわけです。これは地域的に五つに分れて、そうして本部に三人というわけでございますが、これはこれで十分じやなかろうか。で東京都はあの五大都市とは関係はございませんけれども、やはり五人のほうがよくはないか。大都市におきましては公安委員が直接聴聞会を開いてやるという事件が相当多いわけであります。例えば交通事故であるとか、或いは営業、建設の不許可に対する申立に対して、公安委員みずからが公聴会を開くそういつたような事務分量も相当多いし、そういう意味から大都市を持つところでは公安委員五人が適当であるう、こう思います。
#142
○楠見義男君 最後に一つ、原案で行きますと、大体三月一ぱいくらいには、或いは遅くとも四月一ぱいには成立してそこで三カ月乃至四カ月の猶予期間を設けて七月一日から施行、こうなつておつたわけですね。その理由としてはいろいろ準備が要るということだつたのですが、今度は一年になつていますね。これはどういうふうに我々は理解すればいいでしようか。
#143
○政府委員(斎藤昇君) これは五大都市についての一年とおつしやるのだと存じますが、これはどの委員会でしたか、大臣も含みのある御答弁をしておられましたが、政治的な妥協の所産であるわけでありまして、そこは良識で御判断を頂くより仕方がないのじやないかと思います。
#144
○亀田得治君 東京都の警視総監ですね、この任命については国家公安委員会と総理大臣と都の公安委員会と、この三つの意思が参加している。三人寄れば文珠の智慧ということがありますが、これは併しなかなか重要な人事でありますから、三人寄つたがためになかなか一致しないという公算も極めて又これは大なんです。そういう場合には警視総監はなかなかきまりませんね。そういう場合にはどうなりますか。
#145
○政府委員(斎藤昇君) お互いに意見が合わないという場合には、そういうことも起り得るだろうと考えます。
#146
○亀田得治君 大阪府の例ですが、昨年改選されるはずの労働委員が関係者の意見が調整できないために、結局一年間もずれてしまつている例があるのです。だから恐らく東京都の警視総監の任命だけをとつてみても、こんなことは少しおかしいじやないですか。こういう制度そのものが……、一体その三つの中でどれが一番権限を持つているのですか。
#147
○政府委員(斎藤昇君) これは今度衆議院の修正をされた条文から考えますると、国家公安委員会が主導権を持つている。そうして都の公安委員会の同意を得、総理の承認を得るということになるわけであります。ただ、警視総監というような重要なポストですから、そうみつともなく長く放つて置くというわけには参りませんから、おのずから短い期間に意見の一致を見得るものだ、かように考えております。
#148
○亀田得治君 その意見の一致が見られなかつた場合どう処理するのですか。見得るものと確信するんだと言つたつて、なかなか一致しない場合がありますが、法律上そのままでいいものですか。
#149
○政府委員(斎藤昇君) 大体すべての制度がそうでしようが、民主的な機構というものは、或る程度手間ひまをかけてやるという場合はあつても止むを得ないのじやないかと思います。
#150
○亀田得治君 例えば国会の場合であつても、衆議院と参議院の意見不一致という場合には、どういうふうに処理するかということがちやんと一々書いてあるわけですね。だから全くこの重要な人事について、その点をこういう修正案を作られて、又大体その修正案を呑んでおられる国警長官のほうでどう考えておられるのか。今のお話だと三者の中で国家公安委員会が幾らか主導権があるようにおつしやるのですが、それは法文上そういうことがどうして言えるのですか。
#151
○政府委員(斎藤昇君) これは法文上は国家公安委員会が任免権者であります。公安委員会がこちらの承認を得てやるわけですから、公安委員会が主導権をとらざるを得ないのであります。他の一般の問題について意見が合うとか合わんとかいうのと違いまして、とにかく重大なポストを早くきめなければならんという場合に、そう荏苒と意見が合わんから放つておこうというわけには参らないのであります。お互いに急速に意見の一致の見得る人を選定をするというようにおのずからなると思うわけであります。例えば法案のようなものであれば、これは意見が合わなければ、二年おくとか三年おくとかいうことがあり得るかも知れませんが、総監の席を空席に置いておくということは許されないわけですから、自然のそういつた制約から長い間意見が今わんために空席になるということは、実際問題としてそう御心配は要らないのじやないかと思います。
#152
○亀田得治君 これは実際問題として非常に心配がありまするし、若しそういうふうに問題が解決されるとしたら、今長官は国家公安委員会が主導権を持つておられるように言われたが、それは成るほど法文上は任命権者は国家公安委員会であるからそのようにも言えるのですが、もう少し一歩突進んで実質的に考えると、その国家公安委員の任命権は総理大臣が国会の同意を得てやるわけなんですね。政党政治ですから、当然これは国会の同意を総理大臣の意向によつて取れるわけですね。むしろここに主導権がやはり結局はあるんじやないかと思うのですね、その実質的な関係というものを考えると……。国家公安委員会の任免権というもの。総理大臣が握つておるのだから、国会のほうはそのときの多数党の基礎の上に立つて総理大臣ができておるんですから、国会の同意といつても、まあ大体得られると考えなければならん。そうなると、総理大臣はただ承認するだけだと言つておりますが、結局その承認権者である総理大臣がその三つが鼎立した場合に最大のやはり主導権を私握ると思うのですが、それはどうお考えになりますか。
#153
○政府委員(斎藤昇君) 総理大臣が国家公安委員を任命はいたしまするけれども、この罷免は先ほど申しましたように極く特定の限られた理由がなければ罷免がまあできません。従いまして一旦任命してしまつた以上は、これは総理大臣の意思通りには動かないわけです。端的な例を申しますると、内閣が変つたという場合に、前内閣で任命した人ばかりが全部公安委員としてあるわけです。これを取替えるわけには行かない。従つて法文上は総理大臣とありまするけれども、任命したときの総理大臣と現実にその問題が起つたときの総理大臣というものは、これはまあ大体変つているのが多いわけでございまするから、勿論任命当時の総理大臣がそのまま今度事件の起つたときに又総理大臣であるという場合もこれはありますけれども、併しそうでありましても、とにかく身分があの程度確実に保障されておりまする以上は、総理大臣の考えというものを、公安委員にそう簡単に押付けるというわけには参らんだろうと、かように私は思つております。これはまあ過去六カ年間の経験でございますが。
#154
○亀田得治君 まあ経験に基いておつしやるのですけれどもね、私どもの経験によつてもやはりこの任免権を持つておるということが相当決定的な問題であるんですね、いろいろな場合に……。この点は十分注意されないと、意図と結果が相反したことになる慮れ十分ある。成るほど罷免権は特定の場合にしか持つておりませんが、再任する場合にはやはりその現在の総理大臣が発案するわけですから、そういう点から言つてもやはり身分上に大きな権限を持つておるわけですよ。任命したときの総理大臣が現在まで続いておればなおさらこれは影響力があるでしよう。だからそういう点を考えると、結局は総理大臣が一番主導権をとつて行くと、こういうふうに私思うのですが、その点が法律上解決されておらない。これは甚だまずいと思うのですね。例えば三者の意見が対立して紛糾して、いつまで経つても駄目だという場合には、現在であれば国会が国家の最高の意思なんだから、その国会の判断を求める、こういうことも私一つの方法だと思う。それは如何です。
#155
○政府委員(斎藤昇君) 警視総監の任命権についてでございますか。
#156
○亀田得治君 警視総監の場合もそうだが、例えばあなたの国警長官の場合なんかも起り得ることだと思いますね。
#157
○政府委員(斎藤昇君) 国会の同意を求めると……。
#158
○亀田得治君 国会の同意といいますか、(「仲裁裁定みたいだろう」と呼ぶ者あり)国会の意見を聞いてそれを尊重して最後の結論を出す、こういうふうにあなた法文にしたら最後の決というものはそれでとれる。ともかく法律を作る以上は、あらゆる場合を予想して、こうなつた場合にはこう、こうなつた場合にはこう、やつぱりそういうふうにやつておくべきだと思うのですよ。そうすれば、今の場合は私はやはり結局は国家公安委員と総理大臣の争いなんですから、これを調整するものは国会しかないと思う。そういうふうに持つて来られれば我々も安心するんですよ。その条文がなければ、これは結局は公安委員のほうが負けてしまうなと、こういうふうに私ども予想せざるを得ないのだな。だからそういうふうにしたらいいじやないですか。そうすればみんな安心しますがな。国会の一つ意見を聞いてそれを尊重して最後は処理する。どんな規定だつて意見が対立した場合あとの処理について処理の仕方を書いておるでしよう、労働争議の条文然り。その点は一つこの法案はまあ大分問題があつてこの通りは通らんだろうと思うのですよ。通るにしても大分直されるのじやないかと思うのですね、昨日からのあれを見ておつても……。だから直すべきばどんどん直したらいいと思う。だからその一つの課題にしておいて欲しいですね。これは誰でも考える疑問だと思う。余りはつきりした疑問だから余り言わないだけでね。まあこの程度にしておきます。
#159
○楠見義男君 私はこれは委員長に是非お願いをしたいのですが、それは御承知のような経緯で本来この警察法に関しては昨日の連合委員会を継続して本日もやつて頂きたいのが我々の強い希望であつたわけです。併し地方行政委員会としてはすでに委員長理事打合会でもつておきめになつた日程があり、我々はそれに対してその進行を阻害する意思は毛頭ないのだし、又向うにも御迷惑をかけたくないということで、特にこのように極めて異例に措置としての警察法案の審議をやつたわけなんです。私は実は昨日午前十時から終日連合委員会に出席しておつて特に強く感じたことは、今までいろいろ各種の連合委員会があつた場合における状態とは違つて、本法案の付託を受けた地方行政委員会の方々が終始その席を立たずに一生懸命になつてお聞きになつておられた情景なんです。これは地方行政委員会の方々はそれだけ実は法務委員会をはじめとして、ほかの委員会の意向というものをできるだけ汲取ろう、又それぞれの専門的な立場からの質疑を自分たちの審議の過程において有力な参考資料にしようという御熱心の余りだと私は察して非常に敬意を払つたわけなんです。本委員会としては法務委員の我々は法務委員の立場から私もそういうことを先ず前提にして申上げ、それから羽仁さんも前提にして言われて、それでまあ質疑をやつたわけなんですか、特に羽仁さんは、私も触れましたが、羽仁さんは人権擁護ということが警察の観点から必要だという関心の度合いからの御質疑がせられたわけなんです。私は羽仁さんのそのことを引用すると同時に、併せて秩序の維持というものには社会的な理解協力がなければ維持できないんだ。従つて民主警察というものの重要性が大事だ、これは又我々の法務委員会の所管事項である治安の維持ということと密接な関係があるからというその観点から、公安委員長の国務大臣就任不可の問題とかいろいろのことを聞いたわけなんです。そこで本日は連合委員会というものが今申上げたような経緯で以てできなかつた。このことは我々も遺憾であると同時に、地方行政委員会の方々も遺憾だろうと思う。そこで委員長は昨日来又今朝来の法務委員会における質疑の状況を十分お聞き取り頂いたわけなんですが、大体のこの委員会の質疑応答を通じての意向又各委員の意向、これは大体一致したような意向なんですが、そのことを地方行政委員会において適当な機会に、而もこれは根本的には向うの審議時間をそう侵害することなしに、委員長は他の委員会ではいつでも発言することができる権限をお持ちになつておるんですから、要領よく又向うにも余り迷惑のかからないように考慮の上で、法務委員長として地方行政委員会において発言をして、我々の審議を通じて現われた考え方なり、又共通的な事柄等を発言をして頂きたい。これを私希望したいんですがね。ほかの委員の方々も……。
#160
○羽仁五郎君 全く賛成です。
#161
○亀田得治君 これは是非……。
#162
○委員長(郡祐一君) 承わりました。それで速記も間に合わないことと思いますので、本日の要領は特に専門員のほうに依頼をいたしまして殆んど全部書きとめてもらつております。でこれを私のほうから地方行政委員長には当然経過の内容を詳しく書いて書面で渡すような用意もいたしております。
 速記をやめて。
   〔速記中止〕
#163
○委員長(郡祐一君) じや速記を始めて。
#164
○羽仁五郎君 最後に国警長官とそれから人権擁護局に向つて時間の関係で極く簡単に質疑をさして頂きたいと思います。国警長官に向つてお伺いしますが、あなたは現在昨日、本日の質疑応答を通じて、こういう新らしい警察法案ですね、そういうものの審議を国会に求めておられる際に、最近日本で国内においていろいろな意味から或いは国民に或いは政府部内の一つの郵政省などにいろいろな不安を与えておるような人権侵害が行われているんじやないかというようなことに鑑みられまして、警察による人権蹂躙、殊に国家地方警察による、現在では国家地方警察ですが、国家地方警察による或いは一般警察による人権蹂躙事件というものを根絶する決意がおありになるかどうか、それを伺つておきたい。で勿論いろいろ、何も行政権に我々立入ろうとするものじやなしに、行政上の必要によるものもあることはよく承知しております。それから犯罪捜査とか或いはその他あろうと思う。併し共産党の関係でそういうことはやらざるを得ないんだということは余り言われることは、私は共産党は合法政党として立派にやつておる。そうして又さつきも伺つたように共産党の非合法というものは考えていないという点も十分考慮して頂きたいと思うので、簡単に一言あなたのお答えを頂いておきたいのです。人権蹂躙を根絶する決意があるかないか。
#165
○政府委員(斎藤昇君) 私としましては、これは共産党に対処する場合におきましても人権蹂躙は根絶させたい。そのために最大の努力をいたしたい、いたすということだけ申上げます。
#166
○羽仁五郎君 どうも有難うございまました。
 人権擁護局のほうに伺つておきたいのですが、人権擁護局が絶えず人権擁護のために非常な努力をしておられる。それに対して現在の制度では、なかなか十分にお仕事がなされないということは誠に遺憾に堪えないことなんですが国会においても人権委員会法の提案などもあることでありますし、努力を続けて頂きたいと思うが、最近多多起つておる事件に対してはどうかはつきりした態度をとつて頂きたい。それらの一つに最近学生に関係して起つている事件がありますので、簡単にこの問題点を申上げて、それについてどういうふうにお考えになりますか、直ちに十分調査をし適当な処置をとつて頂けるかどうか、その点を伺いたいと思います。本年の三月十四日の午前六時半頃学生の寮に警察が押し入つた事件がございました。これは新聞にも報ぜられておりました。それについて詳しいことは今省略してもよろしいと思います。この際に問題になりますことは、第一には警察が学生団体の中にスパイを入れているのじやないかという不安が第一の問題です。ここで問題になりますのは、名前を言うのは少し気の毒ですから申上げませんが、おわかりだと思いますが、AならAという人が学生団体の中でいろいろ動いておつて、その人がどうもこれは警察側と連絡をとつているのじやないかというような疑いを、不安を学生に与えておつたという点が第一です。私はこういうことはどうか根絶をされたいと思うのです。このことそのものが法律のどういうところに触れるかということは、別にやはり学生の団体の中にそういうような警察と連絡のあるような人が活動するということは、これは甚だ悲しむべきことですが、これが第一点。それから第三は、学生の寮その他学校が管理しておる場所に警察官が立入る場合には、必ず大学などにおいてはその大学当局と連絡をとつてもらいたいということは、矢内原現東大総長をはじめとして、大学の自治という点から大切な点だと私思いますし、極く最近東大事件の判決の中にも、裁判所としてもそういうような意向を示されておる点もありますので、この事件の場合には学校当局と連絡を取らないでそういうことをやつておる。これは私は甚だ問題じやないか。それから第三点は、この令状のようなものを、逮捕状を持つているという場合に、この逮捕状がこの場合におきましても甚だどうも明確でないのですね。それで、この事件の勾留開示の直後に、その傍聴した人人が帰つて行くときに、一人のお茶の水の大学生が日比谷公園で逮捕された事件がありますが、その場合の逮捕状には色の浅黒い四角い顔をした自称お茶の水女子大学生というふうに書いてある。ところが、逮捕された人は色の白い人である。これは前から法務委員会で問題になつておる点であつて、白紙令状のようなものが出されるということは、人権擁護上甚だこれは重大な問題だということなんですが、どうもそういうふうな心配がまだほかにもあるのじやないかという点が第三です。それから、その令状をいいますか、逮捕状、捜索状なんかの法律上のそういうものの範囲を超えて、その隣の部屋を捜索する、或いは関係のない私信、手紙その他書籍なども捜索するということは、この事件の場合にもやはり事実上あるのじやないか。そういうことが訴えられておりますが、これも私どもは逮捕状などの場合の執行ということは極めて厳格でなければならないと思うので、こういうふうな若し悪習があるとすれば、これは根絶しなければならないのじやないか。それから最後には、この場合にもそうですが、大した犯行とは考えられない学生、殊に先ほど申上げましたようなお茶の水女子大学生というような人を連れて行く場合に手錠をかけて行くというのです。この手錠をかけるということは、そう簡単にしていいことでもないので、その必要がある場合には、止むを得ないのでしようが、併し必要がないのに手錠をかけるということが行われているのじやないか。こういうような心配を私は抱くのであります。これはこの事件一つだけの問題ではないのでありまして、いろいろこの事件を具体的に申上げて人権擁護局のお考えを伺いたいのですが、只今申上げたような点について直ちに十分の調査をして頂き、そうしてそれに対して妥当の措置をとつて頂くことができましようが、どうでしようか。
#167
○説明員(斎藤巖君) お尋ねの事件でございますが、これは申告はございませんでしたが、情報探知によりまして東京法務局に調査を命じております。その結果を待ちましていろいろ又御報告申上げたいと思います。
 それからお尋ねの第一点でございますが、スパイを学校の園内に入れるということでございますが、警察官の職務権限の範囲内でございますならば、差支えないかと存じます。又思想或いは学問の自由を侵害しない程度ならば差支えないと思うのでありますが、併しそういうことが思想或いは学問の自由を侵害するような虞れがありますと、これは好ましくないと存じます。それから第二点でございますが、学校、大学の自治からいいまして、やはり学校の管理者当局と連絡することが好ましいことだと思います。それから第三点でございますが、白紙令状というようなものは元来ない建前になつております。憲法から言いましても、刑訴法から言いましても、ない建前になつておりますが、いろいろの捜査の技術の点から言いまして、そういう事案があるやに承わつておりますが、それについては本件は十分調査しなければお答えできないと思います。それから第四点でございますが、逃亡の虞れある場合に、手錠をはめることは、捜査の上から当然なことだと思いますが、併しながら不必要に手錠をはめることはやはり不当の誇りを免れないと存じます。
#168
○羽仁五郎君 只今の申上げた件についても、これはまあ個々の件についてやはり人権を守つて行かないと、到底守れないことでありますので、どうか具体的に取り上げて妥当な措置をとつて頂きたいと思います。
 それからなお最近頻発しております人権侵犯の疑いのある事件についてどうか十分なる御努力をお願いしたいと思います。
#169
○委員長(郡祐一君) 次に、接収不動産に関する借地借家臨時処理法案の審議に入りたいと思いまするが、三時五十分まで休憩いたします。
   午後二時四十六分休憩
   ―――――・―――――
   午後四時開会
#170
○委員長(郡祐一君) 委員会を再開いたします。
 先ず請願陳情の審査を行います。速記をとめて。
   〔速記中止〕
#171
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
 次に、接収不動産に関する借地借家臨時処理法案を議題に供します。
 先ず村上民事局長から本法案に対する意見の陳述を求めます。
#172
○政府委員(村上朝一君) この法律案は、いわゆる接収された土地又は建物の借地権者或いは賃借人の保護のための立法でございまして、接収のために借地法、借家法による権利の更新、その他の利益を受けることができなかつたため、借地権或いは建物の賃借権が接収中に消滅したこともあります。又対抗要件を欠くに至つた場合もあるものと考えられるのであります。かように接収に起因いたしまして権利を失い、又は権利の対抗要件を欠くことになりました借地権者や借家権者に優先的な土地或いは建物の賃借権の一方的な申出による取得を認めて、これらの消滅した権利を実質上復活させ、又借地権の存続期間を延長し、或いは土地につきましては登記、建物につきましては引渡しという対抗要件がなくても、借地権、建物の賃借権を以て、第三者に対抗することができるようにする等の措置を講ずることによりまして、これらの借地人、借家人の救済を図ろうというものでございます。で、接収に起因いたしまして、借地権或いは建物の賃借権を失うに至つた方々は誠にお気の毒でありまして、借地人、これらの旧借地人、借原人の救済ということは誠に御尤もだと思うのであります。
 ただ、この法案につきまして技術的に検討いたしますと、いろいろな難点もあるかと思われるのであります。私どものほうから先に衆議院のほうに申し出ました意見のほかに、或いは弁護士会或いはビルデイング協会その他地主の方々からの批判的な意見がいろいろ出ております。で、それらを総合いたしまして御紹介申上げたいと思いますが、本日お手許にお配りいたしました各方両の接収不動産に関する借地借家臨時処理法案に対する各方面の意見要旨というものにまとめてございます。で、この法案のようにすでに消滅しました借地権並びに借家の権利を元の権利者の申出によつて一方的に復活させ、又は借地権の存続期間を一方的に延長する措置を講じますと、接収当時の所有者、或いは少くとも接収解除当時の所有者だけならばいいのでありますけれども、その後権利者が変つておる場合も相当ある。土地建物の現在の所有者その他土地建物について正当に権利を取得しておる第三者に不測の損害を与える虞れがあるので、何ら責むべき事由のない現在の正当な権利者の犠牲において、元の借地人、借家人の救済を図る結果となるのであります。従いまして少くとも現在の権利者のこうむることあるべき損失を最少限度にとどめる措置が別に考えられないと、憲法の財産権の不可侵を保障いたしております憲法の精神に違反するのではないかという疑いも生じて参るのであります。又、この法案におきましては、借地権及び建物の賃借権について一般に権利変動の公示方法として用いられております不動産登記、或いは建物の引渡等を要しないで第三者に対する対抗力を認めるということになりますと、権利関係の混乱を来たし、取引の安全を害する虞もあるのであります。
 この法案がお手本としております法律は、罹災都市借地借家臨時処理法という法律がございます。この法律の条文にかなりならつておるように見受けるのでございます。この法律は申すまでもなく、戦災直後の極めて資材その他が不自由でありまして、都市の復興を何よりも先ずやらなければならんという状況の下におきまして作られた法律であります。都市の復興のためには、建物を建てる能力がある人には成るべく建てる機会を与えようということが根本問題であつたのであります。当時とは経済事情も著しく変つておりますし、当時としてはこの法律の規定が止むを得ない異例の措置として是認されたといたしましても、現在の事惰の下にこれと同趣旨の立法をすることが必ずしも常に妥当であるとは言えないということも考えなければならんのであります。
 なお、この罹災都市借地借家臨時処理法は終戦直前の立法であります戦時罹災土地物件令のあとを受けた立法でありまして、当時の状況から申しまして、その規定自体善意の第三者に対して不測の損害を与える可能性も少かつたばかりでなく、当時の経済事情の下では、土地に関する権利関係の変動も余り頻繁でなかつたという状況であつたのに反しまして、今回の法律案につきましては、罹災都市借地借家臨時処理法に対する戦時罹災土地物件令、これは国家総動員法に基く勅令でございますが、こういうようなこれに先行する事前の措置がなく、又接収解除となりました土地建物もすでに相当数に上つておりまして、解除後新たに相当な対価を支払つて土地を手に入れたというような地主も多数できておるので、現在の罹災都市借地借家臨時処理法制定当時とはかなり事情が変つておるということも考えなければならんと思うのであります。又罹災都市借地借家臨時処理法におきましては、借地権の第三者に対する対抗力を認めておるのであります。同法の第十条におきまして、「罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された当時から、引き続き、その建物の敷地又はその換地に借地権を有する者は、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、これを以て、昭和二十一年七月一日から五箇年以内に、その土地について権利を取得した第三者に対抗することができる。こういう規定があつたのであります。そしてこの法案におきましてもこの規定を踏襲しておるわけでありますが、土地を買います場合には、その土地が誰の所有であるか、果して売主の所有であるかどうかということのほかに、その土地の上に借地権があるかどうかということを先ず登記簿について調べるわけであります。登記簿に借地権の登記がなければ、借地権はないものとして安心して土地を買うことができます。又地上に建物があります場合には、その建物について登記がされているかどうかということを建物の登記簿について調べます。建物について登記がしてありますと、借地権の対抗力が出て参りますけれども、建物がない、或いはあつても建物登記がしてないというときには、仮に借地権がありましても、買主は借地権がないものと安心して買うことができるわけでありまして、この場合の借地人を保護するというのが現在の法制の建前になつておるわけであります。只今申しました条文は取引の安全と申しますか、只今申しましたような土地を買う人の立場を保護するという現在の原則的な法制に対する極めて異例な措置でありまして、先般昭和二十一年七月一日から五カ年以内というこの期限を延長してもらいたいという陳情が衆議院のほうに出たことがございます。その際延長するかどうかにつきまして、これは争いが起れば、裁判所の事件になるわけでございますから、裁判所の当局者にも来てもらつて意見を聞かれたわけでありますが、そのときに裁判所のほうから説明されたところによりますと、更地を買つて借地権がないものと思つて安心して建築をやろうとするきとに、実は借地権を自分は持つているのだという人があとで現われて、いろいろな紛争が起り、中には果して借地権者であるのかどうか頗るあやしいけれども、それを簡単に早く片付けて建築を進めて行くためには、何がしかの示談金を出さなければならんという事件が相当多数あるというような実情も説明されまして、かような異例な規定は終戦後五年以上を経たときになつて、こういう異例立法の期間を更に延長することは妥当でないということで、この罹災都市借地借家臨時処理法の第十条の規定に定めております五年の期間の延長は行われなかつた例もあるのであります。この法案によりますと、第八条に同趣旨の規定があるわけでありますが、而もこの起算日が接収解除の公告の日ということになりますので、一つの土地ごとに果していつ接収解除の公告があつたかによつて期間の算定が土地ごとに違つて来るわけでありまして、罹災都市借地借家臨時処理法が一律に期間を定めておるのに比べまして、一層取引の安全を害する慮れがあるのではないか、かように考えるのであります。
 そのほか逐条については先ほど申上げました書類の第二以下に書いてございます。要するに私どもといたしましてもこれらの借地人、借家人を保護する措置が望ましいという点におきまして全く同感でございます。そのこと自体少しも反対する気は持つておらんのでございますが、法案の内容につきまして技術的にいろいろ検討すべき問題があるのではないか、かように考えておる次第でございます。
#173
○委員長(郡祐一君) 次に調達庁から本法案についての説明を求めます。大石調達庁不動産部長。
#174
○説明員(大石孝章君) 占領期間中から講和発効後の現在に至るまで接収不動産につきまして主務庁としての立場から本法集につきましての考え方を申述べたいと存じます。
 私ども接収という土地難物の実務を取扱つておる関係から、従いまして占領期間中の、国と提供する財産の権利者との関係は、契約におきまして土地、建物の所有者との間にのみ契約をいたしておりまして、権利者との関係はその所有権者においてこれを調整するという趣旨の契約によつておつたわけでございます。従いまして土地の借地権者、建物の借家人等が何らかの形におきましてその権利者相互間において調整せらるるという事態は極めて望ましいことであるというふうに考えております。そういつたような見地から昭和三十七年の四月、五月、六月に亘りまして、当庁といたしましては二十七年の、五月の二十六日付日本経済新聞、東京毎日新聞、二十七年の五月二十七日付で朝日新聞並びに大阪西部毎日新聞、二十七年の五月三十日付で朝日新聞の地方版の各紙に接収不動産の関係人宛に、「占領期間中ニ接収サレタ不動産ノ所有者以外ノ関係人デ接収解除ノ通知ヲ希望サレル方ハ来ル六月十日マデニソノ不動産ノ種類、名称及ビ所在地番ヲ具シ、ソノ不動産ノ所在地ヲ管轄スル下記調達局ノ管財部長ニオ申出下サイ。」札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、呉、福岡の各地方調達局におきましてこういつた趣旨の扱いをいたしたのでございますが、その結果各地方調達局別に申上げますと、札幌におきまして借地権一、借家権二十一、計二十二、仙台において借地権十四、借家権二、計十六、東京借地権百七、借家権四十四、計百五十一、横浜借地権七百七十八、借家権百六十四、計九百四十二、名古座借家権二、大阪借地権一借家権七、計八、呉借地権三十七、借家権二、計三十九、福岡借地権百九、借家権三十二、計百四十一、合計借地権一千三十七、借家権二百七十四計一千三百十一というような計数の結果を得たのでございます。尤もこの計数につきましては早急の間に報告をしたのでございますから、はつきりした事態を完全に把握したというわけには参らんと私ども現在でも考えております。
 以上当庁の実務的な立場から前申上げましたように、権利者間の問題が調整せられれば極めて望ましいというように考えております。
 本案の第三十四条で調達局長に官報及び新聞に対する公告義務を課してございます。この点は昭和二十九年度におきましては予算を計上してございません。大体昭和二十九年度に返還になる建物五十、土地十、そういつたような見込みでございます。以上でございます。
#175
○委員長(郡祐一君) 只今政府側より説明をいたしましたが、質疑のおありの力は順次御発言を願います。
#176
○楠見義男君 今調達庁から御報告頂いた借地権千三十七、それから借家権二百七十四、これはいつの状態でございますか、ちよつと聞き洩らしたのでございますが。
#177
○説明員(大石孝章君) 昭和二十七年の五月実施いたしました新聞公告による申出を基礎といたしまして、その後も申出のあつたもの、それから私どものほうでいろいろ事務的につかみ得たものの集計でございます。
#178
○楠見義男君 それから今昭和二十九年度における接収解除の予定の件数をお伺いいたしたのですが、今まで累計して土地、建物の接収解除になつたというものの件数は如何でございますか。
#179
○説明員(大石孝章君) 先ほど御説明申上げましたように、二十九年度のリロケーシヨン・プログラムによりまして解除予定の件数は、行政協定第二条の施設区域といたしまして一団の土地若しくは集約したいろいろの演習場といつたようなそういう問題でありまして、尤も申上げました建物五十、土地十というのは本法律案の対象になる計数だけでございます。御質問の只今までの累計は土地につきまして一千三百件、建物につきまして四千八十件、尤もこの計数は契約別でございますから、先はど御説明しました六十、十、そういう一括したものとはいささか内容を異にいたします。
#180
○楠見義男君 それからもう一つ提案理由を衆議院の方から伺つたときの理由書の中に、特別調達庁の立案いたしました連合国軍使用不動産に存した賃借権等保護法案、これが次官会議において成案を得るに至らなかつた、こういうことが書いてあるのですが、この連合国軍使用不動産に存した賃借権等保護法案というものはどういう内容のものであつたのか、若し資料があれば頂きたいし、資料がなければ、その概要でもお伺いしたい。
#181
○説明員(大石孝章君) お答えいたします。調達庁で立案いたしました内容につきましては、おおむね御審議中の法律案と大体似たような案でございまして、今手許に持合せございません。
 それから次官会議で否決されたかどうかという点につきましては、私当時の事情を詳しく存じませんが、そこまで行かないで事務的に各省協議の段階で、ものにならなかつたのではなかつたかというふうに存じております。
#182
○楠見義男君 今申上げたように、提案理由の中には「次官会議におきまして成案を得なかつた由を聞きましたので、」とこうあるのですが、その前に、「特別調進庁、法務省、大蔵省、東京都庁等の間に議が合わず、」と、こういうことで或いはおしやるようなことかも知れないのですけれども、この法案が今お述べになつたように、現在審議中の法案と大同小異だというお話なんですが、調達庁、法務省、東京都庁等の間で議が合わなかつたというそれぞれの主張ですね。これはどういう主張で議が合わなかつたのか、この点も若しわかつておればお伺いしたい。
#183
○説明員(大石孝章君) 大変遺憾なことでございますが、当時の事情を私からは説明いたしかねるわけでございます。
#184
○委員長(郡祐一君) 誰か当時の事情を知つている人は来ておりませんか。
#185
○説明員(大石孝章君) 調進庁から出席している者では余り当時の事情詳らかではございません。
#186
○上原正吉君 この法律の趣旨は、接収当時に土地を借りておつた人、又は家を借りておつた人を保護するところにあると思うのですが、そうして善意の第三者に対抗できるとして、優先的に土地なり家なりを借りることができるとしましても、相当な条件、相当な対価を払わなければならないように各条項はなつておると思うのですが、併し相当な対価というのはどの辺かわかりませんけれども、仮にそれと何等の土地なり家なりを他に求めることができる値段と、こういうことになれば何ら借地、借家人を保護することにならんと思いますし、それから相当に安い値段というものが予想されておるならば、結局善意の第三者に不測の損害をかけることになるし、恐らくこれは各事件ごとに皆裁判になるのじやないかと思うのですが、そうなると裁判では相当な対価、相当な条件、こういうものをどの程度に判定するものなのでしようか。我々素人でわかりませんから、一つ法務当局の見当をお伺いいたしたいと思います。
#187
○政府委員(村上朝一君) その前に、先ほど楠見委員のお尋ねがありました点につきまして、私の記憶しております範囲のことを御説明申上げます。最初調達庁で立案いたしました法案の内容は、只今審議されております法案によほど近いものであつたかと考えます……。
#188
○楠見義男君 ちよつと、こちらの専門員のほうで調べたやつがありましたから……。
#189
○政府委員(村上朝一君) それに対しまして私どものほうから申述べました意見は先ほど御説明したような意見でございます。むしろこの場合の借地人、借家人の保護方法といたしまして、現在の所有者の犠牲において元の借地、借家人を保護するという方法がいいか、或いは借地人、借家人に占領当時のああいう状態において損害を受けたわけでありますから、国その他から補償をするということがいいかという問題があるわけでございます。仮に現在の所有者の犠牲において、元の借地人、借家人を保護するということであれば、現在の所有者がそのために大きな損害を受けるということならば、現在の所有者に対する補償ということも考えなければならんのじやないか、それが憲法の精神から言つても必要じやなかろうかというようなことが考えられるわけです。私どもとしましては先ほど申上げましたような理由で、こういう立法をするよりも、損失補償というものを常に考慮するのが適当じやないかということを申上げたわけでございます。大蔵省のほうの意見がまとまらなかつたということは、恐らく金を出すということについての反対だつたかと思います。
 只今の上原委員のお尋ねの点でありますが、この第八条によりまして、登記その他の対抗要件がなくても、この土地についてその後本法施行後なり接収解除の通告があつた後、土地について権利を取得した者に対抗できる、借地権のほうが優先するという点につきましては、この案によりましては何らの新らしい取得者に対する対価の支払いその他の考慮はされておらん。対価の支払いが考慮されておりますのは、第三条におきまして、一つは、接収された土地の元の借地人が、現在の所有者に対して一方的に申出れば、借地権の設定が受けられるという点につきましては、相当な借地条件で土地を賃借することができるということになつております。この借地条件という言葉でございますが、これはほかの法律でも使つておるわけでございますけれども、家賃が幾らか、地代が幾らか、その期間は何年にするというようなことをきめるわけであります。いわゆる借地権の対価と申しますか、権利金に相当するものは含まれないという解釈でございます。殊に現在の地代家賃統制令の建前から申しますと、或る種の土地につきましては権利金の授受が禁じられております。許されておるものもありますが、禁じられておるものもあります。そういうふうな借地条件という言葉自体が借地権そのものの対価のいわゆる権利金を含まない、借地権が成立した後の賃借人と家主との間の契約の内容を言うわけであります。仮に第三条のような規定を置くといたしましても、この相当な借地条件という中には、借地権取得の対価、地主が普通に借地に出せば何がしかの権利金を取れる。それが取引の通念として認められておるという際に、権利金を全然払わないで借地権を取得できるということになりますると、少くとも事実上は非常な損害を受ける場合が多かろうということを考え、相当な借地条件という中に、賃借権取得の対価を含めるということになりますと、その点は現在の所有者に対する損害というものはよほど緩和される。まあ意思に反して貸さなければならんという点だけが土地所有者としては困る場合も多いと思います。自分の住宅なり、事務所なりを作るつもりで買つた土地に今まで知らなかつた借地人と称する者が現われて、その人に貸さなければならんということになりますこと自体がいろいろな意味で負担にはなりますけれども、借地権そのものの対価を含めるということになるとこれはよほど軽いということになると思います。
#190
○上原正吉君 十三条の場合に、相当な借家条件という言葉がありますが、これにも権利金のようなものは含まないという意味なのですか。それからそうしてその建物を賃借することができれば、すでに正当な契約権利に基いて入つておる人は無条件で追出されるということになるのですか。十三条の……
#191
○政府委員(村上朝一君) 十三条にあります借家条件という言葉も同様でありまして、いわゆる借家権そのものの対価は含まれない、かように考えております。ただ十三条の但書に「その建物を権原により使用する者があるときは、その申出をすることができない。」というふうにしぼつてございますので、すでにほかの人に貸してあるというときには、その人を追い出して借りるということは制限しております。
#192
○楠見義男君 特別調達庁の方に、さつきこの前のあなたのほうで立案された法律をお示し頂きたいということを申上げたのですけれども、専門員のほうで調べたのがありますから、あとで見ますから結構です。民事局長さんにお伺いしたいのですが、法律的に言えば、罹災都市借地借家臨時処理法において、借地権の第三者対抗力を認めた例はありまして、法律的に見れば、そういう先例もあることだから、まあ五十歩、百歩の問題になると思うのです。ただお述べになつたような、いろいろの当時の経済事情と、それから今の経済事情は違うということは、これは確かにあると思うのです。そこで提案者にも実は明日この委員会に来て頂いて詳しくいろいろ伺おうと思つておるのですが、さつきお述べになつたようなふうに、解決の方法としては善意の第三者取得者を保護するか、その犠牲においてこういうものをやるかという問題と、それから本来国家が何らかの処置を講ずるという考え方、この二つの考え方はおつしやるようにどちらかやはりやるべき問題だと思うのです。ところが今ちよつとお述べになつたように、これは又大蔵省から聞かなければわからんことなんですが、恐らく今までの大蔵省の考え方からいえば、こういうものには金を出さない、こういう結論じやないかと思うのです。そうすると、一体ここで又罹災地借地借家臨時処理法とこの法律の間における比較考量の問題と同様の問題が他の面に含まれて来やしないか。ということは、本来国家が補償すべき又世話をやいてやるべきものであるにかかわらず、政府は一向その面倒を見ない。それじや政府が面倒を見ないから、この人たちは放つておいていいのか、こういうことになると、恐らくそれは先ほどお話されたように、趣旨は誠に結構だと、気の毒だと思うということなのですが、気の毒だと思うということだけで済ませるものかどうかという問題があるわけです。そこで、その場合にこの法律によつてこれらの人を救済するという、救済の重みと、それから一方善意の第三者、これがどれだけあるか私はよく知りませんけれども、そう大した数量のものではないと思いますけれども、そういう人を救うという比較考量と、どちらをとるかという問題なんですね。それは一体どういうふうにお考えになつておるでしようか。一つの点は救済する必要のある人々だ、併し国は一向に財政的には大蔵当局は面倒を見ないということを前提にして、それじや放つておいていいのかというと、それは気の毒だ、そこでそれらの人々を重くとるか、或いは善意の第三者を重くとるか、この点はどういうふうにお考えになりましようか。
#193
○政府委員(村上朝一君) 実は補償するか、或いは取引の安全なり、現在の所有者の犠牲において元の借地人、借家人を保護するかという点につきましては、先ほど申上げましたような経過でありまして、政府部内の統一した意見というものは遂にまとまらなかつたのであります。本日私申上げますことも、法務省の事務当局としての法案の内容についての技術的な考え方を御紹介するのであります。若し補償がどうしても出ないということを前提として、取引の安全を犠牲にし、又現在の所有者に不測の損害を与えて、元の借地人、借家人を保護するということは、立法政策としては妥当を欠くのじやないかと、かように考えております。
#194
○楠見義男君 それからもう一つ、被害者は補償されないで、今のお話のように妥当を欠くという理由の下に、補償されないということと、一方では土地の現所有者は、接収によつて恐らく原始取得の恰好になつたと思うのですね。借地権が消滅してそれらの人々は一般の他の土地所有者或いは他の建物の所有者と比較いたしますと、戦後の急激な土地或いは建物の価格の値上りということから見て、一般の土地所有者、借地権があり、或いは借家人がおる土地、建物の所有者に比較いたしますと、たまたま接取という事実によつてそれらの権利が消滅して、原始取得、いわば土地で言えば更地の恰好になつて、不当な利益、社会通念上ですよ。法律的には別にして、社会通念上は、不当利益を得たような観を呈することがある。その不当利益を得た人々はそのままに放つておいて、被害者のほうは、これ又国家は面倒を見ない。救済のほうも取引の安全を害するということの理由を以て等閑に付するということは、衡平の観念ですね。まあ民事局長として常に衡平の観念を保持し、推進しようという立場におられる観点からすれば、それはどういうふうにお考えになるか。
#195
○政府委員(村上朝一君) いろいろな場合があると思うのでありまして、借地権のついた土地を持つておる人が借地権消滅後に更地としてそれを高い値段で売つたという地主が現在も地主であれば、そういう人たちの犠牲において借地権を復活させるということは妥当であろうと思います。併し借地権消滅後それを更地として或いは接収解除後、殊に最近の不動産の値上り後に現在の時価で買つた人も相当考えなければならん、そういう人に対する関係で妥当でないのじやないか、かように考えます。
#196
○楠見義男君 第三者の点は一応除けてあるのです。最初の質問で、あなたは善意の第三者を保護するということが取引の安全を確保することになるのだから、その犠牲においてこういう規定を設けることは妥当でないと思うというお話があつた。その比較考量の問題は一応除けて、現土地所有者或いは建物所有者は更地になり、或いは偶然の事由によつて全く借地、借家権とかそういうものはなくなつて、そしてその後の地価の値上りとか、いろいろのことで非常に社会通念的に見れば不当の利得を得ておると思う。これらの人人の不当利得を見逃すことと、それからこちらのほうの被害者をそのまま見逃すこととどちらを重きを置かれるかと、こういうことなんですよ。
#197
○政府委員(村上朝一君) 或いは御質問の趣旨を取り違えておつたかと思いますが、先ほど申上げましたのは取引の安全の問題ではなかつたのです。現在の所有者の中にもいろいろあるのではないか、つまり借地権が消滅することによつて更地としての価値を持つたという場合は、地主が接収によつて利得したということが言えると思う。併しながら借地権がなくなつて更地としてそれを取引した人、それを買受けた現在の所有者……、
#198
○楠見義男君 いや、現在の所有者は除けてですよ、どうせ現在の所有者が持つに至るまでは、元の所有者が持つておつてそして相当の更地で売つたのだろうと思うのです。もうその接取という事実によつて原始取得の恰好になつているのですから、従つてこの人は本来ならば借地権とか或いは借家権とかいうものがついておれば、まあ仮に百万円で売買されたものが、そういうものがないから、五百万円とか千万円とかいう価格で現所有者というものは売つただろうということはこれは想像されるわけです。それで四百万円とか或いは九百万円というものは、いわば社会通念上不当利得のような恰好にこの人々はなつている。かような人々に四百万円とか或いは九百万円という利得を、まあ瀧断という言葉は悪いですが、させて、それを見逃しておいて、それでこちらの人は又泣寝入りにさせるということは、公平という観念上おかしいじやないかと、こういう問題、それはどうお考えになられますか。
#199
○政府委員(村上朝一君) 土地の値上りによつて利得する人との権衡はどうかということでございますならば、少し問題が違うわけでありますが、この法案において問題になりますのは、借地権の一方的意思表示により取得をする相手方は、現在土地を持つている人は、例えばもともと借地権付きで百万円に過ぎなかつたものが現在の時価一千万円だとする、そうすると極端な例を挙げますと、数日前に一千万円を出してその土地を買つた所有者が今いるわけです。その場合に、借地権設定による不利益を受けるのは、数日前一千万円で土地を買つた所有者なんです。
#200
○楠見義男君 それはいいですよ。その問題は別にして、今の例で行きますと、数日前に一千万円で元の所有者は売つているわけですね。本来接取という偶然の事情がなければ、御承知のように借地権とか何かというほうが土地の今の価格よりも高いのが現在の実情なんですね。その現在の実情で而も国のほうは補償をしない、こういうふうなことだから、この法律が今出て来ておるわけなんですね。だから衡平の御念から言つてそれはおかしいとお思いになりませんかということなんですよ。
#201
○政府委員(村上朝一君) いろんな場合があると思いますが、常識で考えて確かに不当に利得をしているという地主もあり得ると思うのであります。そういう人たちの犠牲において借地権を復活するという案にはなつていないのであります。飽くまでも現在の所有者の犠牲において借地権を復活する、そういう案になつておると思います。
#202
○楠見義男君 今の場合の例を考えて行つた場合に、その原所有者の場合、原所有者の利得は今申上げたように社会通念上は私は不当利得だと思うのですが、その不当利得は請求できますか今度は法律的に言つて……。
#203
○政府委員(村上朝一君) この案によりますと請求はできないと思います。
#204
○楠見義男君 この案によらない場合はどうですか。
#205
○政府委員(村上朝一君) そういう場合の法律が別にできるか、或いはこの法律案の中にそういう条文ができれば可能だと思いますが、実際上技術的にも又運用上も非常にむずかしい条文になるとは存じます。
#206
○楠見義男君 そうすると、法律的には不当利得の請求はできない、こういうことですね。例えば銀座なら銀座で隣同士になつておつて……一つの設例ですよ。隣同士で、この家は接収された、この土地は接収された、この土地は引続いて今日に残つておる。そこで接収された土地は原始取得の恰好になつた。そこで坪三十万円とか五十万円ということになつておる、それで売れる。こつちのほうは借地権が存続しておるから、土地の所有者というものは借地権は三十万円であつても、土地代というものは一万とか何かこういうことですね。それは社会通念的に見れば非常に不公平だと思うのだけれども、それは法律的には全然不当利得は請求できない、こういうことですね。
#207
○政府委員(村上朝一君) そうでございます。
#208
○楠見義男君 そこでこういう法律が必要になつて来るのじやないかということは、これ又明日よく伺わなきやわからないけれども、そういうことだろうと思うのです。さつきおつしやつたように、国が補償するということがきまれば、これは問題はありませんが、併し国のほうはそれらの面倒を見ない。もう六年も七年も経つて、或いは国会から言つても、第十三回国会から引続いて衆議院で継続審査をやつている。こういうことになりますと、まあこれは意見になりますけれども、こう見ると非常に私は不公平じやないかと思う。そこであなたのほうは、もう一度お伺いするのですが、飽くまでこれはまあ政府の統一した意見はないということは先ほど断わつて言われたからなんですが、事務当局としては、あとのほうの国が面倒を見るべきだとこういうお考えを依然として貫いておられるものと了解していいですか。
#209
○政府委員(村上朝一君) 私ども事務当局だけの考えから申しますと、土地に関する法律関係を複雑にし、又取引の安全を害するというような立法措置をとるよりは、相当な補償をするほうが適当ではないか、かように考えておりますが、若し補償ということが不可能だという前提で考えますと、この法案が全面的に不適当だと言つているわけではないのであります。先ほども申上げましたように……、
#210
○羽仁五郎君 ちよつと今はつきり聞えなかつたのですが、全面的に不適当……、
#211
○政府委員(村上朝一君) 全面的にこの法案が不適当だということを考えておるわけではないのでありまして、本当に損害を受ける所有者、こういう人たちの救済、それから取引の安全の保護というような点を考えまして、或る程度の修正を加えることによつて適当な内容のものになるのではないかと、かように考えます。ただ、この法案自体についてのいろいろな批判的な意見を御紹介申上げたのであります。
#212
○楠見義男君 そこで二つお伺いしたいのですが、一つは私が今申上げたような議論が衆議院でもう随分これは論議のあつたことだと思うのです。これも明日伺いますが、恐らく民事局長もこの法案の審議をせられるに当つては常にまあついておられて、いろいろ質疑を受けられたと思うのですが、この衆議院のほうでは今申上げたようなことについての状況はどうだつたか。これは概略でいいです、詳しいことは明日伺いますから、お伺いして明日又衆議院の方にお見え願つていろいろお伺いする事前の勉強にしておきたいと思うのですが、それが一つ。それからもう一つは、今お述べになつたことで、前提は国家が補償はしないという前提で考えて、この法案は全部は不適当とは思われんと、修正するものは修正というお話であつたのだが、どういう点をどういうふうに修正すればいいとお考えになつておるのか。この二つをお伺いしたいと思います。
#213
○政府委員(村上朝一君) 実はこの法案が衆議院で提案になりましてから大分年月が経つわけでありますが、その提案になります前にたしか衆議院の法務委員会の専門員のところで一応の案が準備された頃に、私は参りませんでしたが、係の者が呼ばれまして意見を申述べたことがあつたのであります。その後審議中に実は法務委員会に私なり或いは係官が出まして御説明をしたり、或いは質疑に答えたということは一度もないのであります。いよいよこの国会の最後頃になりまして、あなたのほうの意見の通り一つ修正して通そうかというようなことを言つた方があつたのでありますが、そういうことならば、それじやあ私どものほうの意見を書面にして衆議院の法制局のほうに申出ておきましようということで申出たことがございます。それは最近であります。それ以外には全然衆議院における審議は関与いたしておりません。
#214
○楠見義男君 あとのほうの問題は……。
#215
○政府委員(村上朝一君) それから修正意見の点でありますが、この点につきましてはなお逐条につきまして先ほど差上げました意見要旨の中にも一部書いてございますが、実は修正するとすればどう改めればいいかという御質問を受けるとは思つていなかつたものでありますから、十分に検討をしておりません。原案に対する批判的意見の御紹介という程度であります。
#216
○楠見義男君 今の修正的なお考えのまあ片鱗として、相当な借地条件というものには通常のまあ法律用語としては、法律的な解釈としては権利金が含まれないという解釈が上原さんの御質疑に対してあつたように思うのですが、その場合に、仮に相当な条件の中に権利金が含まれるとしてやつて行けば、これ又上原さんか指摘されたように相当な権利金を取られるのじや、ちつとも救済にならないと、こういうふうに思えるのですが、この点はどうでしようか。
#217
○政府委員(村上朝一君) まあ解釈上はそういうことになるかと思いますが、ただ地主のほうはいろいろ自分で使う計画であつたものを放棄しなければならんという不利益を受けます。借地人のほうにもともと縁故のあつた土地に復帰できるという利益もあるわけでありまして、必ずしも賃借権の対価を払つて取得することが無意味であるということにもならないかとも、かように思つております。
#218
○楠見義男君 その際の権利金相当というのは結局裁判所へ行つて認定してもらわなければ、これは議のまとまらない場合ですね、結論がつかないということになりますか。
#219
○政府委員(村上朝一君) 相当な借地条件の内容にいたしましても、又仮に借地権の対価というものを加えるにいたしましても、裁判所が非訟事件手続法によりまして鑑定人に鑑定をさせてきめるのであります。何条でありましたか、現在借地人である場合に、その借地人に対して借地権の譲渡を請求できるという場合がありますが、そのときに借地権譲渡の対価を払うということになつております。
#220
○上原正吉君 私はこの法案をこう了解しているのですが、正当な借地権なり借家権のある人は問題ないので、期限が切れるとか、建物が滅却したということかで、従来の法律では借地権も借家権もなくなつてしまつた人の保護の場合にこの法律ができている。こういうふうに了解しているのですが、そうなんでしようか。
#221
○政府委員(村上朝一君) 借地権の場合について御覧明いたしますと、借地権は借地法によりまして、存続期間が堅固な建物の借地権は六十年、その他の建物の借地権は三十年とあります。でありまするから、存続期間の前後に亘つておりますけれども、それはたとえ土地が接収されたからと言つて借地権の消滅する理由は何もない、引続いているわけであります。ただ借地権の期間が満了いたしました場合に、借地法によりますと、借地人から地主に対して借地権の更新を請求することができるわけです。地主は借地に対して正当な事由がなければ更新を拒むことができないということになつております。で、たまたま接収期間中に本来の借地権の存続期間が満了したというような場合に、これは理論上そういう場合でも更新の申出ができるわけであります。接収になつているのだからとてもだめだろうということで更新の申出をしなかつたということが一つあるわけであります。それからもう一つは、先ほど申上げましたように、借地権を以て設定者以外の第三者に対抗するためには、借地権の登記が要るのですが、これは建物保護に関する法律によりまして、地上建物についての所有権の登記がなければならない。借地権は存続しておりますけれども、接収されて壊れてしまつた建物について登記することができなかつた、普通借地権の登記というのは、地主が承諾しないとできないものですから、借地権の登記は殆んど行われないので、建物所有権の登記を借地人がするわけであります。建物を取払われてしまつたために建物の登記をすることができなかつた、或いはもともと登記してあつたのだけれども、建物そのものが取払われてなくなつてしまつた。その後に土地の所有権がほかの地主に移つてしまつたというときには、新らしい地主に対しては、借地権を以て対抗できないことになります。こういう場合があろうと思います。
#222
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑ございませんか。
#223
○羽仁五郎君 その接収という事実は戦争という事実に引続いて発生して来たものだし、その戦争の責任は国にあつたわけなんですし、従つて、当然国がそういう戦争及びその後の占領、それに伴う接収ということに伴う損害というものは賠償しなければならないのじやないですか。そういうことをしなければ正義というものはなくなつてしまうのじやないですか、それはどういうふうにお考えになつておりますか。
#224
○政府委員(村上朝一君) 一種の戦争被害であることは御指摘の通りだと思いますが、戦争被害の種類はいろいろあるわけでありまして、戦争によつて被害をこうむつた人にすべて相当な補償をしなければならんということになりますと、これは結局国民全体の負担にかかつて来るわけであります。非常に莫大な額になるのではないかと考えます。でありますから、戦争被害を補償するということは思想としては正しいと思いますけれども、果して実行可能であるかどうか。すべての戦争被害者に平等に、少くともバランスを失しない程度に損失を補償するということは非常にむずかしいのじやないか。恐らく前回の調達庁から出ました案の際に、損失補償ということについて、大蔵当局に難色がありました理由もそこにあつたのではないかと、かように推測しておるわけであります。
#225
○羽仁五郎君 その点については、これは委員長にお願いするのですが、政府の統一的な見解としてどういうふうに考えておられるのか。若し明日時間が許せば伺つておいたほうがいいのじやないかと思いますが……。
#226
○委員長(郡祐一君) その点、お聞き及びの通りの点を、法務当局において若し、なかなか羽仁委員のお話はむずかしい問題でありまするから、明日答弁が伺えるかどうかと思いますが、只今の意向をお伝えになり、そうして若し答弁が願えるなら御答弁を願いたいと思います。
#227
○羽仁五郎君 ちよつと補足しておきますが、その全額をことごとく補償するということは実際上不可能であります。そうして又現在の国民の負担に堪えないということもよく御説明下さつたことはわかるのですが、併しそうだからと言つて、全然それについて何らの責任も負わないということは、又逆の意味で甚だ不合理だと思うのです。そういう問題について大蔵省なり或いは政府なりが何らの定見を持つていないということは、私は今伺つていて驚き入つたことだと思う。そういう料見だから、又再軍備をやつたり、戦争をしたりするということを平気で言えるのじやないか。これは対外的な賠償の問題でもそうですね。私はどうして政府が中国に対する賠償の問題を考えたらば、大変なことだろうというふうに思うのに、現在の中国に対する外交上の態度というふうなものは了解できないのです、中国赤十字社の問題なんかにしても……。ですからあなたにお願いするのは大変恐縮ですが、やはりそれについて政府は研究をしているということはあるだろうと思うのです。だから研究をしているとすれば、どの程度の研究をしているか、そうしてどういうふうな結論が出そうかということを是非この際伺わせておいて頂きたい。その程度のことはお願いできますか、どうでしようか。
#228
○政府委員(村上朝一君) すべての戦争被害の全部を補償するということが国民の負担に堪えないということは申すまでもないのでありますが、それをそれではどの程度に補償するかということになりますと、いろいろな場合との均衡を考えなければならんのでありまして、先ほど申上げました通り、私どもとしましては均衡のとれる範囲内で補償するという方途を選ぶべきではないかと、こう考えたわけでありますが、それにいたしましても或る程度の補償をするということになりますと、ほかの場合にも同じ程度の保償をしなければならん場合がたくさん出て来るというようなことでありましようから、大蔵省事務当局との間には依然として意見の一致を見ていない、政府の統一した意見を早急に申上げることは困難かと思いますが、なお今後も、非常に大きい問題でありまして、いろいろな方面にまたがる研究をいたしてみたいと考えております。
#229
○羽仁五郎君 その統一した見解がないとしても、最小限のところは今伺えるんじやないかと思うのです。そういう問題を全然無視している、或いは無視する意思はない、研究しているか、ということは最も悪い場合はそんなことは一切無視するんだと、まさかそういう御答弁はないだろう、それではそうではないと、それを研究している、或いはどういうふうに考えている、そういう問題を無視してはいない、どういうふうに考えているというお答えは頂けるのじやないかと思うのですが……。
#230
○政府委員(村上朝一君) 戦争被害に対してどういう措置をとるかという問題はこれは私どもの関係しております部面ばかりでなく、各省を通じていろいろな問題がある。私どもの関係いたしておりまする限り、どういう措置が適当であるか、はかとのバランスの上に立つてどういうことが考え得るかというようなことは絶えず検討はいたしております。
#231
○説明員(平賀健太君) 只今保償をするか、さもなくんばこの法案のような貸借権の設定の申出を認めるか、どちらがいいかということが問題になつておるようでありますが、御参考までにちよつと申上げておきまするが、それはこの法律の第十二条でございます。第十二条を御覧下さいますと、結局これは疎開跡地の旧借地権者に賃借の申出権を与えるという規定になつておるのでございます。これは罹災都市借地借家臨時処理法では九条に当るわけでございますが、実はこの疎開跡地は当時疎開をいたしました際に、地方公共団体におきまして、その疎開跡地を実は買上げるか或いは借上げたのであります。その買上、或いは、借上の際にそこに借地権がありまする場合には、その借地人に保償をいたしまして、借地権は放棄されておるのでございます。その際には完全に保償がされる建前で防空法によりまして補償がされておるわけでございます。従いましてこの法律案の三条、四条とはいささか関係が違いますので、すでに当時補償がされております関係で、国が補償をするという関係はここで起らないと思うのであります。罹災都市借地借家臨時処理法の九条では、どうしてすでに借地権を放棄しました、補償をもらつて放棄した者に賃借の申出権或いは借地権の譲渡の申出権を与えたかと申しますと、結局地方公共団体が土地を買上げ或いは借上げました際に、すでに戦争が終了いたしまして、防空のために地方公共団体がそういう土地を所有し或いは使用する必要がなくなりました関係で、所有者に返すわけであります。返す際には同じことならば、以前の借地権者或いはその地上にありました建物の借家人に返るようにすることが都市復興の見地からも非常にいいのではないか。而も当時は終戦直後でございまして、権利関係の変動ということも殆んど考えられませんし、地主としてもこれを是非自分で使いたいという事情も、今までの人に貸しておつたわけでございますから、是非使いたいという人もないでありましようし、旧借地人或いはその建物の土地にありました旧借家人に復帰を認めましても、ほかの者に迷惑を及ぼすことはないという、善意の第三者に不測の損害を及ぼすという虞れが全然ないと言つてよかつたのでございます。同じことならば、以前そこに住んだ人はやはり帰りたいだろうし、その人たちにこういう優先的な賃借の申出権を与えたならば、都市の復興の促進上もよろしいというので、第九条はそういう補償を得まして消滅しました借地権、旧借地権者或いはその土地上の建物の借主にそういう権利を与えた、いわば何と申しますか、恩恵的にそういう権利を与えたのでございます。そういう次第でございますので、本法律案第十一条で、罹災都市のこの第九条と同じような規定があるわけでございますけれども、これは本来国が補償しなければならんという筋合いのものではないのでございます。で、当時とは事情が違つておりまして、疎開跡地で接収されまして、現在接収解除になつておるものもこれはかなりあるかと思うのでございますが、そういうところは先ほど地主が社会通念上、不当利得と考えられるという御意見もございましたけれども、地主は完全に耕地になつたものをやはり地方公共団体から更に払戻し、土地の返還を受け、或いは地方公共団体が設定しておりましたところの使用権が消滅したのでございまして、これは不当利得という関係ではございませんし、而もその後この権利の変動もこれは相当起つておるだろうと思うのでありますので、ほかの点もいろいろ問題点があるかと思いますが、十二条はそういう事情でございますので、この点においては補償か、或いは現所有者を犠牲にするかという問題は起らないというふうに私どもは考えておりますので、御参考までに申上げておきます。
#232
○棚橋小虎君 この接収不動産について権利を取得した第三者が元の権利者から対抗を受ける場合には、別に第三者の善意、悪意ということは問わないのですか。
#233
○政府委員(村上朝一君) 善意、悪意を問わない建前になつております。
#234
○棚橋小虎君 問わないというのは、どういう理由があるのでございますか。
#235
○政府委員(村上朝一君) 一つの取引において或る権利を対抗できるかどうかということは、その後その権利が転転いたしました場合に、遡つて善意、悪意が問題にされるということになるわけでありまして、結局立証の困難その他から、善意、悪意ということを問題にいたしますと、取引の安全が十分保護されないというところから来ておるのでございまして、民法の不動産に関する物権の得喪変更は、その登記をしなければ第三者に対抗できないという第百七十七条でしたか、この条文の解釈上これが定説となつておるわけでありまして、この条文の解釈についても同様のことになるのじやないかと、かように考えております。
#236
○委員長(郡祐一君) よろしうございますか。……本件につきましては明日も引続き質疑を行いたいと思います。若し質疑が終了いたしたならば、討論採決の運びに行きたいと思いますので討論採決までできますように、各党派の御意見をおまとめ置きを頂くようお願いをいたします。
#237
○上原正吉君 明日は衆議院側の提案者もおいでになりますか。
#238
○委員長(郡祐一君) 明日は衆議院側の提案者の出席を求めまして、政府側のほうにも随時質疑が起ると思いますから、政府側の出席を求めまするが、主として先ず初めに提案者について質疑応答を試みたいと思つております。
 次回は明二十九日午前十時から開会することにいたし、本日はこれを以て散会いたします。
   午後五時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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