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1953/05/04 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 内閣委員会 第27号
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1953/05/04 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 内閣委員会 第27号

#1
第019回国会 内閣委員会 第27号
昭和二十九年五月四日(火曜日)
   午前十一時三十八分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     小酒井義男君
   理事
           長島 銀藏君
           植竹 春彦君
           竹下 豐次君
   委員
           井上 知治君
           矢嶋 三義君
           山下 義信君
           堀  眞琴君
           三浦 義男君
  委員外議員
           亀田 得治君
  政府委員
   行政管理庁次長 大野木克彦君
   行政管理庁管理
   部長      岡部 史郎君
   法務省人権擁護
   局長      戸田 正直君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       杉田正三郎君
   常任委員会専門
   員       藤田 友作君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○人権委員会設置法案(亀田得治君外
 九名発議)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小酒井義男君) それでは只今より内閣委員会を開会いたします。
 先ず、人権委員会設置法案を議題といたします。前回に引続きまして質疑を続行いたします。
#3
○矢嶋三義君 提案者の代表がお見えになつていらつしやるようですが、法務省の人権擁護局からはどなたがお見えになつていらつしやいますか。
#4
○委員長(小酒井義男君) 戸田局長が見えております。
#5
○矢嶋三義君 本法案について若干提案者並びに政府委員に対して質疑を申上げます。
 この法案は、本国会開会冒頭において本委員会でもいろいろと内容的に懇談した案件でございまして比較的に問題点は少い案件と私はまあ考えるわけでありますが、先ず提案者にお伺いいたしたい点は、現在の法務省の設置法の中において人権擁護局というものがあつて、その形において人権擁護の行政をやつて行くのと、外局としてここに人権委員会を設けて、そしてやつて行くのとの間に如何ようなプラス面が生れて来るか、又かくあらしめなければならんというような御見解の下に提案されたか、その基本的な点について伺いたいと思います。
#6
○委員外議員(亀田得治君) 現在の擁護局ではなく、新らしい機構にしたらどういう。プラス面が基本的にあるのかと、こういう非常に重大な点ですが、これはいろいろその点在考えられますが、人権擁護という仕事の内容ですね、具体的に考えてみると、例えば警察官によつて国民が拷問を受けたと、そういつたような問題が間々あります。そういう問題が起きますと、当然最終的には裁判所に持つて行つて、職権を濫用した者を処罰してもらうと、こういうこともできます。又一つの、何と言いますか、民事上の損害賠償の請求等もできます。併しまあこれは一つの訴訟手続を経て、厳格な証拠を集めてそうして結論を出して行くと、こういう仕事になるわけです。裁判の仕事ですね。それでは実際問題としては非常に結論が出るまでに時間がかかります。これは一例でございますが、それに類した問題におきまして非常に時間というものがかかるわけなんですね。そういう時間を省いて、できるだけ迅速に問題を処理する。これはまあ言換えれば、一種の司法的な仕事を行政的な機構で迅速に処理する、本来こういう仕事なんですね、人権擁護の仕事というのは……。だからこれは制度をお作りになるときにこの仕事の本質をもつと究明されて、初めから準司法的な仕事を取扱うのだからということで、外局である委員会制度、こういうものにしてもらつておくべき筋合のものではなかつたかと、実はこう考えておるのです。だから、そういう点が一つ基本的な問題と、それからもう一つは、これも事柄の性質上どうしても一般の行政官庁に対して或る程度の独立性を持つておらなければなりません。これは非常に大事な点なんです。勿論独立性といつても、これは行政機関の一つですから、内閣の監督と言いますか、そういうものから全然離れた意味の独立性では勿論ないのですが、行政部内における一つの枠の中においての独立性というものはどうしても必要なんです。現在の人権擁護局という機構は、そういう意味では形の上からいつても独立性が保持されておらない。こういう二つの点で従来問題があつたことが、この法案が若し御承認願えるならば非常にすつきりした形になつて来ると、こういうふうに実は考えております。
#7
○矢嶋三義君 昭和二十三年発足して以来約五年有余経過しておるわけですが、その間に実際この業務に携わつて来られた局長としては、又所見があられるかと思うのです。この際局長の所見を承わつておきたいと思います。
#8
○政府委員(戸田正直君) お答えいたします。昭和二十三年に当時の最高法務庁に人権擁護局が設置せられまして、只今お話のように約六年経過いたしておるのでありますが、当初人権擁護局ができましたときに、人権が侵犯せられた場合にどこへ救済を求めてよいかということが一般国民にも普及されておりませんような関係で、二十三年度に受理しました事件は僅かに四十八件でございました。当時政令によりまして、全国に百五十名の人権擁護委員を設置いたしたのでありますが、これが極く僅かな数でございまして、その後人権擁護委員の数を逐次増加して参りまして只今では約四千五百名が委嘱せられておるのでありますが、この人権擁護委員の数に比例いたしまして、爾後侵犯事件も相当増加いたして参りました。
#9
○矢嶋三義君 答弁の途中ですが、又それらの点はあとで伺う機会もあると思うのですが、今の質問のポイントですね、人権擁護局を法務省設置法の中から落して、人権委員会というものを外局に設けるわけですね。それによつてこの人権擁護の行政運動をやつて行くに当つて如何ようにプラスになるかという、そういう角度から、この相違点という立場から絞つて一つ御答弁願いたいと思います。
#10
○政府委員(戸田正直君) 先般、この前の委員会でございましたか、政務次官から法務省側の意見を述べられたのでございますが、多少委員の皆様の中から御不満もあつたように聞いておりますが、ただ、法務省としては政務次官が一応答えられたような気持を持つておるのでありますが、私としては純理論的な立場で極めて高所から私としての意見を申述べたいと思います。従来私たちが侵犯事件を取扱つて参りまして、決して内局であつたがために侵犯事件ができなかつたというようなことは、それはないと考えております。勿論機構とか、予算面等の制約から、十分な仕事ができたとは申上げられませんが、予算なり機構なりにできる限りの努力をいたして参つたのであります。ただ人権擁護の仕事の本質から申しまして、只今亀田先生からもお話がありましたように、この仕事自体が憲法に保障せられた極めて高度の理想を掲げておりましてどうしても独立した而も信頼と権威のあるところの機構の必要であることは言うまでもないことであります。又この仕事が他の官庁に対して勧告等をいたす場合が始終ございますので、どうしても第三者から極めて公平に処理せられたという信頼を持たれませんと、十分な適切なる処置ができるとは申上げられないのであります。従つてそういうような面から外局にするほうがいいか、どうかということに対しましては、私の只今の立場としてははつきり申上げにくいのでありますが、仕事の性質からはやはり独立した権威を持つた機構を持ち、そうして第三者から人権侵犯事件に対する処理が極めて公平に適切に行われておるというふうに見られるような機構を持つことが必要であると、かように考えますし、同時に従来のようなあの貧弱な機構と予算では到底国民の人権を擁護し、救済するというようなことにはまだほど遠いのでありましてどうしても機構なり予算の強化、拡充ということは必要であるということを痛感いたしておる次第でございます。
#11
○矢嶋三義君 幸いに行政管理庁のほうからお見えになつているようですから伺いますが、この外局の委員会制度、これは終戦後我が国に取入れられた一つの形態だと思うのですが、そうしてその後昭和二十七年の機構改革のときにかなりの整理をしたようですね。従つて私今伺いたい点は、ここに問題になつているような委員会、これらの形態のものが一番多いとき幾らあつて、その後整理されて現在幾ら残つており、そうしてその委員会の運用の極く概況でいいですから、どういう状況にあるか、参考に聞きたい。
#12
○政府委員(大野木克彦君) 今はつきりと数を記憶いたしておりませんが、たしか一番多いときで委員会の数が二十四ぐらいあつたと思います。これはなおあとで調べまして、間違つていたら訂正いたします。それが今は人事院も入れまして多分十三くらいになつておるようであります。それで只今お話のように、行政委員会制度につきましてはいろいろ意見がございまして二十七年の機構の改正がありましたときに、多くのものが簡素化の立場から廃止されたのでございますが、現在残つておりますものの主たる任務は、やはりそのときの方針によりまして純粋に審判的な機能を営むもの及び試験、或る一定の資格を与える等のための試験の機関というようなものについては、やはり会議的な形のものが適切であろうということで、大体そういう方針で整理をいたしましたので、現在残つておりますのは勿論その審判とか、試験とかいうものをやるというものばかりではございませんけれども、そういう点に重点を置かれるような委員会が大体残つておるわけであります。
#13
○矢嶋三義君 私これからあとお伺いするに当つて必要なので、数的なことを伺いますが、間違つておりましたら訂正して頂きたい。これは戸田局長に伺いたいと思いますが、人権擁護局は一現在定員として十二人である。それから法務局が八、地方法務局が四十一、これらの職員は人権擁護局の十三人を除いて百六十三人、それから予算総額は千百六十二万六千円、それから擁護委員は約四千五百人、この数字は間違いないかどうか、間違つておつたならば先ず訂正して頂きたい。
#14
○政府委員(戸田正直君) 只今のお話、大体その通りでございますが、現在擁護局の定員はまだ十四名でございます。
#15
○矢嶋三義君 それでは伺いますが、提案者の亀田君がこの法案の提案理由をここで述べられたときに政務次官から、趣旨は結構であるが人員増加と予算の増額等を伴うので、政府としては今直ちにこれに賛成いたしかねる、こういう発言がなされたわけでありますが、この外局の設置によつて予算はどのくらい膨脹すると予想されておられるか。人員のほうはこの提案によりますと、外局は十三、こういうふうに書かれておりますので、提案者の側においては、人員増加ということは今のところ考えておられないようなんです。で、予算のほうはどの程度に膨脹するとお考えになつていらつしやるのか、先ず提案者のほうから伺いたい。
#16
○委員外議員(亀田得治君) 予算面ですが、現在の人権擁護局の事務機構は一応そのまま引継ぐつもりですから、そういう事務的な関係における膨脹はございません。で、この法律で新たにどうしても殖えまするのは、委員長一名と、この法律による委員四名、このかたの人件費です。私どものつもりでは、委員長に対しては常勤として現在の法規で許されておる最高のやはり待遇をすべきじやないか、そういたしますと、委員長に対して月額八万二千円、それから委員四名に対しては、出て来たときに日当を与えるという状態で、現在の法規で最高二千円ですが、まあ二千七百円程度でいいのじやないか、こういうつもりです。それじやその委員会はどの程度開くか、それによつて経費の面が相当違つて来ると思いますが、委員会は週一回は開くべきだろう、こういうつもりです。それらを総計いたしますると、大体年間百五十万程度の予算の増加に過ぎない、これは先ほど局長からもちよつとお話がありましたように、この厖大な件数を抱えておるこの部署の仕事としては極めて予算面では不満足なんですが、まあ出発点といたしましては、その程度で一応出発して行きたい、こういうふうな提案者側の気持、考え方です。
#17
○矢嶋三義君 従つて私は政務次官が予算云々ということをここで申されたことは問題にならないと、こういうふうに私は考えております。
 次に伺いたいのは、このたびも人権擁護局は一人の定員減をされようとしているわけですが、行政管理庁は一体どういうふうにお考えになつておられるのか、もう少し私は申上げて伺いたいと思うのですが、私がここで申上げるまでもなく、今の憲法は主権在民と基本人権尊重というのは大きな新憲法の柱になつておると思うのです。昨日は憲法記念日でありましたが、政府のほうでは憲法記念日をやらないというような態度に変つておられる、この人権の侵犯事件というものは年々殖えつつある。この人権擁護局法を頂いておりますが、この中に人権侵犯の事例というものの処理例が出ておりますが、こんな例というものはこれは幾らでもあります。従つてそれは結局私この人権擁護委員法等では人権擁護委員は積極的に人権侵犯事件を調査する、それから処理をするというように、法律ではそうなつておりますが、積極的な活動というものは申告を待たなければ殆んどなされていないのが実情だと思うのです。これは人員の面と、それから予算の面から私は来ておると思うのです。具体的に伺いますが、この人権擁護委員は各市町村に設けるようになつて法律では「二万人を越えないものとする。」と書いてある、第四条には……。ところが人権擁護局が発足して六年もたつて法律には「二万人を越えないものとする。」というのに、僅か四千五百人くらいにしかなつていない、これはどういうことですか、これが一つ。これは戸田局長から伺いたいと思うのですが、それと、先ほど私が申上げた人権擁護局に十四人と、それから法務局、地方法務局等で二百人足らずの人で人権擁護の啓蒙宣伝、それから侵犯事件の処理が一体できるとお考えになつているかどうかということです。それから更にこのたび、たしか十四人を十三人、一名減員しようというわけですね、そうしてこの人権委員会の設置法については人員が殖える、或いは予算が若干膨脹するので反対である、こういう立場を政府はとられておる、そうすると、憲法の中の一つの大きな柱になつている人権擁護ということについて一体政府はどういうお考えを持つていられるのか、基本的なその考え方を疑わざるを得ない。管理庁の次長がお見えになつておるわけですが、これらの定員の問題については、それぞれ上司の命令等もあつていろいろ協議されてこういう取扱いをされておるのでしようが、どういうお考えでおられるのか、その点伺いたいのです。先ず戸田局長のほうから伺つて、それから大野木次長の答弁を願います。
#18
○政府委員(戸田正直君) 只今御質問の二万名まで取ることができるということになつておりまして、最高限度を二万名においたのでありまして、委員法では各市町村に人権擁護委員をおくということになつておりまして、定数規則で町、村では各一名ずつ、市は人口によりまして二名以上委嘱することになつておりますが、法務省の定数規則によりますと、市町村全部おきますと一万一千名くらい委嘱することになるのであります。そこで現在は先ほど申上げましたように四千五百名しか委嘱いたしておりません。六年もかかつてなぜこれだけしか委嘱しないか、全部委嘱しないのだということでございますが、確かに御尤もなんでございますが、私のほうとしてもできる限り早急に委員を委嘱したいということは年来考えておつたのでございまするが、人権擁護委員としての予算上認められました数が三千九百二十三名、一人の委員の調査その他に要します費用が年間千円ということになつておりまして、従つて三百九十二万三千円予算を認められておるのであります。そこで予算定員が三千九百二十三名でありまするために、どうしても二万名までおくということが事実上できないような次第で、併し何とか殖やしたいというので予算を抜きにして四千五百名まで現在委嘱いたしておるのでありまして、なお二十九年度においては、これも予算を考えずにできる限り委嘱したい、そこで地方法務局及び各都道府県にありまする人権擁護委員連合会等にもいろいろ事情、希望等を聞まして、予算に関係なく委嘱してもらいたいというところから早急に委員を殖やして行きたい、かような方針を立てまして只今着々と増員を考えておる次第でございまして、二十九年度においては相当数予算に関係なく委嘱いたしたいというふうに私としては考えておる次第でございます。そこで、かような貧弱な予算で一体啓蒙活動であるとか、侵犯事件の処理が積極的にできるかどうかという御質問でございまして、これもかような予算では到底委員の皆さんが積極的にするというようなことは、これはもう事実上困難であるというふうに私としても考えておるのでありまして、どうしても予算と機構の拡充ということは必至のことであるというふうに従来考えておる次第であります。なお、人権擁護委員と各法務局が協力してやりました啓蒙活動を御参考までに申述べたいと思いますが、これは殆んど予算がございません。予算なしにいたしました活動状況を御参考までに申上げておきます。勿論これには人権擁護委員の皆さんが、中には自腹を切られていると思います。非常に献身的に無報酬でこれだけの仕事をいたしておりますことを御参考までに申述べます。前のことは長くなりますから、二十八年度、昨年度の統計だけを申しますと、人権相談所を開設いたしましたのが五千四百三十八回、講演と映画の会をいたしましたのが百三十四回、講演会を開きましたのが千二百五十九回、学生を対象とした学校講演会が千九百四十三回、討論会が百二十五回、映画会が二千七百六十三回、座談会が千五百四十二回、その他ラジオ放送であるとか、スポツト・アナウンスとか、ポスターとか、パンフレット、リーフレット、或いは懸賞論文の募集というようなものもたくさんございますが、啓蒙活動として大体大きな数は只今申上げた通りでありましてこれを併せますと、これだけでも昨年度で一万四千三百八十一回という非常にたくさんの回数、たくさんの仕事をいたしております。これは殆んど予算というものはございません。これは中央も多少入つておりますが、中央以外のこの数の殆んど全部というものが地方における行事、こうお考えになつて差支えないと思いますが、これだけのものを予算もなくてこれだけの仕事をいたしておるような次第でございます。
#19
○矢嶋三義君 大野木次長の答弁の前に伺いますが、只今の答弁では、予算定員は三千九百二十三人で、一人当りの調査費を千円と見ておるわけですね。
#20
○政府委員(戸田正直君) さようでございます。
#21
○矢嶋三義君 それでは、あなたは予算にかかわりなく二十九年度においては相当増員いたしたいと言いますが、その意味は地方公共団体に負担して頂くということを予想しておりますか、どうですか。
#22
○政府委員(戸田正直君) 実情を率直に申上げます。只今申上げたようなわけで、予算的措置というものが極めて貧弱でございますために、人権擁護委員協議会及び連合会等がいろいろ仕事をして行きます上に、どうしても予算というものが必然的に伴うのでありまして、個々の委員の皆さんが積極的に自分から、中には費用を負担せられて献身的にお骨折り願つておるかたもございますし、なお協議会、連合会等の運営をして行きます上にかかります予算は、これを何とか賄わなければならないというようなことから、協議会、連合会の委員が自分から進んで各所属しておりまする市町村に負担金と申しますか、何分の寄附と申上げてよろしうございますか、或る程度の費用を負担して頂いて実際には賄つております。これは各市町村から選出された委員であり、同時に各市町村は各市町村民に対する人権思想の普及高揚ということに対しては、やはり進んでしなければならんというふうな考え方も入つておりまして、各市町村としても全国全部ではございませんが、かなりの数が市町村から負担金を頂いて実際上には運営いたしておるという次第でございます。
#23
○矢嶋三義君 そういうところに、私は困窮している市町村の財政的な立場からも問題がございますが、それ以上に人権擁護運動並びに行政の適正という立場から、公正という立場から問題点があると思うのです。昨年の法の改正によつて人権擁護委員の推薦の形態が変つて来ましたので、この人権擁護委員の最終決定に対する市町村の発言権というものは非常に強化された。そうしてこの費用まで若干市町村が負担をするということになりますれば、人権擁護委員のボス化というものが当然生れて来ると思うのです。何か事件が起つた場合に、すぐ市町村長がその揉み消しをするとか、或いは市町村長に分の悪いような事件は人権擁護委員が積極的に取上げて行かないというような事態が私はかなり起つて来ると思うのです。それでなくても委員の再選を妨げていないので、全国約八十人からの擁護委員は、五年以上に亘つて勤務しているという統計資料が出ているわけですね。これらと併せ考えるときに、人権擁護委員のボス化、適正公正なる運用ができないということは、その予算面から出て来ると思うのですが、こういう実情打開については、大蔵当局との話合はしたのですか、したけれども付かないのですか、どのような状況か簡単にお答え下さい。
#24
○政府委員(戸田正直君) 予算の僅少であることはもう議論の余地はございませんので、毎年予算の折衝にはできるだけの努力を払つておるのでありますが、これも率直に申上げますと、毎年のように人権擁護局の縮小の問題が常に国会で問題になつておるわけであります。従つて大蔵省と折衝しておりましても、人権擁護局は縮小になるのじやないかというようなことで、大蔵当局としてもどうもそういう面に相当影響されているのじやなかろうかと思うのです。現に今度の場合でも、今回は幸いかように政府案として人権擁護局の縮小が出ないようなことに承わつておりますが、併し前には出るような噂が非常にございましたために、大蔵省でもどうも人権擁護局は縮小されるのじやないかというようなことも私多少耳にいたしたのでございますが、さようなことで機構の問題が常に俎上に載りまするために、どうも予算獲得等にも非常に影響があるというふうに伺つております。決して私どもはかような予算で十分だとは毛頭考えておりませんので、何とかして予算獲得にはできるだけの処置をして、委員の皆さんが或る程度の活動ができるような措置をいたしたい気持は常に一杯に持つております。或いは私たちの力が足りない患つているのですが、いろいろの国家財政等の立場もあることですから、思うような予算措置がとられないで、実は困窮いたしておるような次第でございます。
#25
○政府委員(大野木克彦君) 人権擁護と申しますことが非常に大切でありますことは只今お示しの通りだと思います。併しながら、遺憾ながらこの事件もなかなか多いのでございまして、その点もお示しの通りで、これを全部行政機関で扱いますことはなかなか困難でございますので、結局先ほど局長からもお話がございましたように、公共団体なり或いは民間の方々の御協力を得てやつて行くというよりほかないのではなかろうかと存じます。人権擁護につきまして委員制度がとられておりますのも、やはりそういう趣旨ではないかと考えておるのでございます。要するにこのことは、国全体がその気持になつてやつて行かなければならないのではないかというふうに考えております。それから今回の定員法の改正で、人権擁護局から一名定員を削減されるようなことになつておりますが、これは大体法務省のほうの御判断によるものでございまして、やはり全体として行政整理ということがございますので、何分事件がどちらかと言いますと、地方のほうに多い状況でもございますので、全体の整理の趣旨を汲まれて擁護局本局のほうからも一名だけ定員を落されるという処置をとられたのだろうと思います。
#26
○矢嶋三義君 只今の答弁は一応承わつておきます。
 ここで提案者にさつきのと関連して伺いますが、この委員長及び委員の選任については、第六条等でかなり提案者は意を配られておるようでございますが、七条で任期を五年としてあることについては如何ようにお考えになつていらつしやるか承わりたいと思いますが、私は今の人権擁護局、これからこの法律案が通過すれば人権委員会となるわけですが、末端の人権擁護委員のボス化というものは私は防ぐべからざる状況に来ておるように考えるのです。この委員長及び委員の任期を五年とすることは、やや長きに失するのではないかと、こういう私は感じを持つておるわけでございますが、提案者はそれを如何ようにお考えになつてこうされたのか承わりたいと思います。
#27
○委員外議員(亀田得治君) 普通の委員の任期から言いますと、一応御質問のようなお考えが出ると思います。ただ私どものほうで考えて五年ということにいたしました理由は二つあるわけです。その一つは、委員長並びに委員を任命する場合に、第六条第一項にも書いてありますような、特に人権擁護のことについて理解のある人、こういう人を中央で探そう、で、これは僅かの限られた人数ですから、その人が長くやつておるために途中で何かボス化するとか、そういつたような人は、もう初めからその選に入つて来ないと思うのです、こういう委員会の性格上……。殊に委員長というような場合には、なかなか実は人選にもむずかしいような問題も相当あるくらいに思うのです。そういう委員ですから、幾らか長くしても差支えないのじやないかということが一つ。それからもう一つは、今度は積極的な面ですが、統計にもありますように、年間二万件を超えるようなたくさんの而も複雑な事件がございます。これはもつと法務省当局の見通しでも殖えるというような予想なんです。而も事件の性質上結末が長引く事件もございます。だからそういう複雑なたくさんのいろんな事件を処理して行くわけですから、委員になられるかたは相当長期に亘つていろんな事情を知つてもらう、こういうことが非常に必要なんじやないか。相当慣れて、これからという頃になつて丁度三年目に変るというなことでは非常にまずいだろう、こういうふうな点も実は考えたわけです。勿論再任されるのだから三年くらいで、もういい人が更に再任してもらつたらいいじやないか、こういうことも考えられるわけですが、一応こういう公正な立場で選ばれるのは、そういうことを前提にして考える場合、この仕事に打込んでもらう、こういうふうな点で五年といたしたような次第です。但しほかのいろいろな委員制度に比べますると、ちよつと一年くらい長過ぎるような感じも実は持つております。
#28
○矢嶋三義君 まあ御尤もな御所見のようでもありますが、併し私意見をここで多く述べませんが、私はやはりちよつと考えが違うんです。というのは、こういう仕事はよほど熱意を以て積極的な行動力に富んでおられるかたでなければ、実際私は仕事はできないと思うのですね。一応立派な人をお選びになるでしようが、任期五年となりますと、龍頭蛇尾に、あつてなきがごとしというような恰好にならないとも限らない。そういう危険のほうがむしろ多いんじやないか、こういうふうに私感じますのでお伺いいたした次第でございます。まあそれは意見でございますから、その程度にいたしまして、次に私は具体的に承わりますが、人権擁護局から人権委員会になる場合、やや私は積極的な動きしというものが期待できるのじやないかと、こういう考えを持つているわけでございます。で、具体的に伺いますが、最近の人権審判事件というものは特別公務員に非常に多いということが資料の上で出ているようでございます。あなたのほうから頂いたこの人権擁護局法によりますと、例えば三重県で警官が非常に拷問に類したことをやつた。これに相当手厳しい勧告処理をやつた結果、三重県の警察官の態度というものが変つて、そういう事件が少くなつたと、こういう報告がなされているのでございますが、それが事実だとすれば誠に結構なことだと考えるのです。こういう警察等の人権審判事件について、かなり積極的に、出過ぎてはいけませんが、出て行くのかどうか、どの程度やられているのか、申告がない限りは一切いろいろなことを聞いてもそれに触れないでおるのか、その点なんです。学校の場合を例にとりますが、最近学校でもやや体罰が多くなりつつあるということを聞きもするし、資料の上でも私承知しているのですが、この傾向というものは一時も早く阻止しなければならないと思うのです。具体的な例を挙げますが、二、三日前東京の新聞には都内の某中学校で女生徒を長時間に亘つて駈足をやらした、これは学校の教師には教育上懲戒が許されているわけですが、正当な懲戒権というものを過剰に行使しているのじやないかというような立場からジャーナリストはこれを取上げたんだろうと思うのですが、ああいう案件があつた場合に、これは学校内の問題だからというのでそのままにしておくのか、それとも人権擁護委員というものは、まあ出過ぎてはならないのですが、或る程度調査をしてみて、そして正式な問題に取上げられない場合には、何らかの穏やかな勧告を以てそういう是正がされるように実際やつておられるのかどうか。もう一つ私は具体的に伺いたいのですが、これはまあ全国的な問題として取上げられましたが、まだ十分解決いたしておりません。例の熊本のらいの非感染児童の就学の問題ですね、これは私はまあ新聞だけしか承知していないのですが、これは全国にとつて由々しい私は重大な問題だと考えているのです。で、ああいうらいの非感染児童の就学の問題というものは他に起つた例があるのかないのか、又ああいう問題が起つたときに福岡の法務局ですね、或いは熊本の地方法務局、或いは熊本市の人権擁護委員というものはどういう動きをなさつたのか、又あなたのところにはどういう報告がなされておるのか、そういう点、私はこの際具体的な例でどういう動きをしているのか承わつておきたいと思います。それと、これをもう一つ、ちよつととつぴなことになりますが、私は提案者に伺いたいと思うのですがね、やはり一つの例ですけれども、先般の汚職事件ですね、贈収賄の案件というものは、口裏を合せるために逮捕しなければ最後の調査はできないというので、国会議員に対しても逮捕許諾の請求が一部なされたわけですね。あの際に飯野海運の俣野社長は異例的に三回逮捕されたわけですね。これは法務省の刑事局長の説明によると、容疑案件が異なれば、違う案件によつて何回でも逮捕できると、極端に言えば百の容疑事件があれば百回逮捕ができるという解釈をとつておる。従つて俣野社長の場合には三種類の容疑事実に基いて三回連続逮捕した。これはまあ法で許されるのでしようが、やはり人権擁護という立場からかなり問題点を私は残すんじやないかと思うのですがね。ところが一方収賄側ですね、それの逮捕というものがなされて初めて俣野氏の三回の逮捕というものが意味があるわけですが、ところが相手の佐藤幹事長の逮捕については、御承知のように法務大臣の指揮権の発動によつて、御承知の通りの結果になつたわけですね。これは人権擁護という立場からと、法の前にはすべての国民は平等であるという憲法十四条との関係から私は相当問題があるのじやないか、これについて提案者はどう考えておられるかということと、それから人権委員会という、こういう外局になつてやや力が強くなつた場合に、人権擁護という立場からは戸田局長のほうでは俣野氏のような場合どういうふうにお考えになるのか。この汚職を徹底的に追及するために、若干人権擁護という立場から遺憾な筋があるということがあつても、汚職を追及するために一つの方針をきめたならば、法の前に平等という立場からはやはり相手の収賄側も徹底的に取調べるという筋を通した行き方をしなければ、私は先般のような行き方というものは法務省一本の立場から考えた場合には非常に不平等であり、遺憾な取扱い方だつたと思うのですが、念のために一つの例として承わつておきたいと思います。
#29
○委員外議員(亀田得治君) 逮捕を同じ人物に対して名目を違えて継続する。私どもは勿論これは原則的にはこういうやり方はいけない、こういうふうに確信いたしております。まあ昔よく、本当に相手をいじめるためにそういうことが意識的にやられたこともあります。こういうのは勿論いけない。これはもう絶対にいけない。積極的にこれは違法行為をやつておる、そういう場合には……。そうでない場合でも、刑事訴訟法では起訴前の逮捕の期間というものをきめておるわけですから、やはり形式的な名目だけを違えて、結論においては刑事訴訟法の期間を非常に越えている、こういう結果になることは非常にまずいと思います。そのことは誰の場合でもやはり純粋に法律的な立場からいつた場合は同じであると思います。ただ問題はそれじや俣野氏の場合をどう考えるか、こういう御質問ですが、これはまあ見解がいろいろ出て来るだろうと思いますが、極めて稀に認められる現象だろうと思うのですね、法律的には……。俣野氏の場合であつても、私は先ほど申上げたような原則、そういうものは曲げることはできないと思います。然るにもかかわらず、三回それが名目を違えて繰返された、これは検察庁側はどういう弁解をなさるかわかりませんが、よほどのやはりその原則に対する例外を認められるような理由というものがあるんだろう。これはまあそういうことは想像できます。まあ社会的には恐らくああいう措置はあの事件に関しては納得しているのじやないかと思うのですね。贈賄側と収賄側が同時に未決で一緒にならなければ、これは刑事訴訟法の捜査という目的自身を達しないわけですから、拘留期間の問題よりも刑事訴訟法全体の目的が達せられない、そういう立場で恐らく検察庁はやつているんだと思いますが、そういうことが認められれば一応措置としては是認できるのじやないか、そういうふうにも考えます、止むを得ない措置として……。併し決していい措置だつたとは考えられないと思うのです。
#30
○矢嶋三義君 一方のそれに対して佐藤幹事長の場合、ああいう方法をとられたことは、これは憲法十四条の法の前に平等という立場からは非常に私は遺憾なことだと考えるわけですがね。こういう場合に人権委員会というように外局となり、やや強くなつた場合に、人権擁護と、それをあえてしたそういう刑事政策は非常に憲法第十四条の、法の前に平等という立場から不平等になつておるというような点については、何らか僕は発言があつて然るべきじやないかと思うのだけれども、人権委員会になつた場合に、そういうことはやはりできませんか、どうですか。
#31
○委員外議員(亀田得治君) 人権委員会になつた場合どうか、そういう場合に、この法案にあるように、一応行政の枠内であるが、ほかの行政機関から独立の地位を持つておる必要があるということがやはり出て来ると思うのです。従いまして、そういう事件が起きた場合には、たとえ政府がやつたものであつても、人権擁護の立場からはこう考えるというふうな意見の発表は、これは当然できると思います。勧告までできるかということなんですが、法律は勿論勧告していいことになつているのですが、決して放置していい問題ではないと考えます。
#32
○政府委員(戸田正直君) 質問がたくさんございましたが、最初の教員の体罰のことからお答えいたしたいと思います。先ほどお話のありましたように、教員の生徒に対する体罰の問題は最近全国的に非常に多くなつて参つております。人権擁護局の取扱つております事件としても、かなり数が都市と地方を通じて上昇いたしております。今統計を私ちよつと持ちませんので、数がちよつと申上げられませんが、とにかく非常に殖えて来たということは間違いない事実であります。そこでこういう問題が起きた場合に人権擁護局としては、或いは人権擁護部としては積極的にどういうふうにしておるのかというお尋ねでございますが、主として教員の体罰問題等は被害者から申告されるというのもございますけれども、殆んど申告されて来るという事件は割合に少いのでありまして、新聞、ラジオによる報道関係から事件を認知いたす場合が非常に多いのであります。人権擁護局として事件が起きました場合、一般的な例を引きますと、大体被害者からの申告、その次に情報の認知、これは申告がなくとも積極的に進んで事件を取上げなきやならんというので、情報の認知ということにも意を注いでおります。そこで今の教員の体罰問題は主として、申告もございますが、大体において新聞、ラジオによる報道から情報を得たというのが非常に多うございます。その情報を得ました場合に人権擁護局、地方においては法務局、それから人権擁護委員においてこれを積極的に取上げて事件を処理いたしております。この教員の体罰の問題でありますと、教員であるという立場もあると思いますが、大体においてみんな正直に、否認しているような例は私の見たところでは一件もないと申上げてもいいかと思います。正直にこういうわけで言うことを聞かんから生徒を殴つたとか、こうしたとかいうようなことを殆んど認められております。そこでこれはまあ警察官と対比してはちよつと質問とはやや離れますが、警察官は警察の内部において行われるので、これが殆んど否認せられてしまう。そこで証拠をつかむ上に非常な困難を来たしておるのでありますが、教員の場合は非常に率直に事実を認めております。これは例外なしと言つていいくらい認められております。事件によりましては法務局に来てもらう、当該の教員に来てもらう、或いは人権擁護局或いは地方の法務局の職員が学校に出向いていろいろ事情を調査するというような方法をとりまして、積極的に調査をいたしております。そこで今申上げたように殆んど全部が直に認めることになりますので、合理的な懲戒権の範囲を超えたものに対しては、殆んどといつていいくらいこれを勧告いたしておりまして、中には自発的に反省して自分から教員の職を去るというようなものもかなりございます。これはちよつと変な言い方なんですが、警察官の場合と比較して少し気の毒じやなかろうか、処理の仕方が教員のほうにはもう殆んど勧告等ができるが、警察官のほうは証拠等の関係から容易にできないというようなことで、何か私たちが事件を処理する気持の上に割り切れないものを実は持つておるのですが、そういうわけで教員に対しては殆んど勧告をしておる例がかなりございます。ただ事件が極めて軽微であり、又諸般の事情、それから教員の反省の程度等から不問にして勧告まで行かないという例も、これもございます。というようなことで、情報を積極的に認知して積極的に侵犯事件に対しては処理をいたしておる状態でございます。それから熊本のらい患者の、非らい児童の事件の御質問がございましたので、これも簡単と申しますか、大体事件の概略を一応御説明申上げたいと思います。これは昨年の十二月に熊本の地方法務局におきまして、人権週間中、らい患者を収容しておりまする恵楓園から、過去十数年来恵楓園に、入院しております患者の児童でらいに感染しておらない、感染しておるという言葉はちよつとあれでございますが、らいでない非らい児童を親が入院中ですから、親戚その他等が引取手がないというようなものに対しては保育所に収容いたしておるのであります。そこでその保育所の中に分校を設けまして、分校場で教育をさしておる、従つて一般学校と違つた教育を従来いたして参りました。そこで何とか一般の児童と同じような教育をさしてもらいたいというので、十年来いろいろ陳情をし、運動をして来たようでありまするが、この問題が容易に解釈されないというようなところに、今申上げた人権週間中に、これは人権擁護の問題として法務局に持つて行つたら何とかしてもらえるのじやないかというので、熊本の地方法務局に恵楓園の園長から申告がございました。そこで直ちに熊本の地方法務局におきましては、この事件を取上げまして、非常な努力を以て調査をいたし、又その子供が実際にらいに感染しておらないかどうか。又他に感染させるような危険があるかどうかということに対して非常な専門の医者、又大学の権威のある学者の鑑定を求めまして、決してこれは他の児童にも感染させる心配もなし、又その子供がらいになつておらないのだ、感染しておらないのだ、従つて心配はないという鑑定を得たのであります。そこで人権擁護局としては、この熊本の詳細に亘る調査の報告を受け、同時に熊本の法務局長を上京させまして詳細なる報告を受けたのであります。そこでその当時人権の問題として法務局に持ち出したというので、PTAがこれに対して反対の動きがかなり強くなつて参つたのであります。これらもそういう情報を、報告を受けましたので、この問題を理論的にただ割切つただけでは本当の解決にならないという考えを私ども持ちまして、この非らい児童の通学に関係ありまする関係各省と協議をしてこの事件の解決を図りたい、かように考えまして、厚生省と文部省にも来て頂きまして、三省の協議をいたしました。その結果厚生省としてはこの児童は非らい患者であつて、らいの発生の危険がないという意見を出しました。文部省と私のほうとしては、従つて非らい児童は一般学校に通学なせなければならない。それは憲法の教育の機会均等、又らい予防法、教育基本法等の精神からみて、分教場における一人の年とつた先生が一年から六年まで二十三名を教育するということは教育の平等に反するというような見地から、一般学校に通学させなければならないものであるという見解をとりまして、熊本市の教育委員会にその趣旨を申入れいたしたのであります。その結果市の教育委員会としては、新らしく入学する四名の児童を取りあえず今度は入学させるということに決定いたしたのでございます。ところが、これがそういうことになりましたところが、今度はPTAの中から非常な反対が出まして、遂にこれが同盟休校にまで入つたのであります。そこで私のほうとしても、理論的には割切つて意見を出したのですが、事実問題としてはどうも千九百名からの児童が、最初の日には僅か七十名足らずの登校者しかなかつた。翌日は大体三百名ぐらいに殖えまして、まあ大体三百名前後しか登校しない、あと大部分はストライキに入つておる。又ストライキのやり方等も余り感心できないような面もあつたのでありますが、何とかしてこの問題を解決させなくちやならんというので、再度熊本の法務局長を呼びまして、その後の事情等を聞き、又速かにストライキを解いて解決するように努力してくれというふうに指示いたしました。最近においては、これがもう殆んど解決に近付きまして、熊本の大学の医者に見せて心配ないということならば善処するというようなPTA側の回答を得ましたので、只今新入学生四名に対する健庫診断をいたしております。大体その結果これが入学できるものというふうに考えておりまするし、又ストライキは、これはもう先ほど申上げた事情からやめまして、目は今ちよつと記憶忘れいたしておりますが、ストライキを解いて市の教育委員会としては教育学校法でしたか、教育基本法でございましたか、委員会からの支持によつて臨時休校する。健庫診断をする間臨時休校に入るというような処置をとられまして、大体において私の知つておる範囲では、この問題も解決に殆んどなつておるというふうに承知いたしておる次第であります。
 それから汚職の俣野事件でございますが、これは私事件の内容を詳しく承知いたしておりませんので、具体的にこの件事に対して意見としては申上げられないのでございますが、ただ一般的に申しますと、先ほど亀田先生も言われましたように、人権擁護の面から申しますと、逮捕するということは私は例外だというふうに考えております。それは逮捕するのは捜査上止むを得ない、即ち逃走の虞れがあるとか、証拠湮滅の虞れがあるとかいう以外は、原則としては濫りに逮捕すべきものでないというのが一般的な事件であるというふうに考えております。又事件に関連しておりまする例えば贈収賄等の場合に、一方のものを逮捕し一方のものを逮捕しないということに対しても、これは先ほどお話になりましたように、憲法のいわゆる法の下に平等であるという精神から参りますと、これも余り異なつた取扱いをするということは、これはやはり面白くないことであるというふうに考えております。ただ諸般の事件のいろいろの内容からいたしまして、これは具体的な事件でないと何も申上げられないのでありますが、一般的な考え方としては、成るべく平等の取扱いをするということは、これはもう当然のことというふうに考えております。それから再逮捕等も、一般的な事件としてはこれはやたらに再逮捕すべきものではございません。刑事訴訟法上勾留期間というものはきめられておりますので、これを脱法的にするために再逮捕の方法を用いるということは、これはもう当然許されないことであります。ただ事件によりましては、実際にそういう意図でなく、調査しておるうちに別のいろいろの問題が出て来た、それを調べるには止むを得ないというような場合も中にございますので、私の答えとしては一般的なあれになりますが、できるだけ再逮捕等はこれを避けるべきであるという考えを持つておる次第であります。
#33
○矢嶋三義君 時間が大変延びましたので、これで私一応終りますが、私今こういうことを伺つているわけは、人権ほど大事なものはないと思うのです。私たち……。だから私は若干尋ねたわけですが、更に熊本のこのらいの非感染児童の問題は、この法案と若干関係あるからここで私伺つたのですが、私の考えを以てすれば、これは立法府としては国政の調査権を発動して、そうして行政府のあり方に猛烈に反省を促して然るべき根本問題を人権擁護の立場から持つておる、こういうように私は考えるのです。併し私は内閣委員でありますし、こういう調査権を発動する立場になつていないので、まあこういう丁度法案に関係があるから伺つたのですが、ただ私はここでついでに申上げておきたい点は、結局これは法務局、それから人権擁護委員、こういう数量ですね、人数、それから質ですね、これにまだ予算ということも関連ありましようが、それらの貧困さというものがこういう事態を招来したのじやないかと私は推察しておるのですが、全国的にらいの非感染児童というものは相当あると思うのですが、こういう子供の就学の問題が、私新聞だけで見ておるのですが、今局長からも承わりましたが、何十日間に亘つての同盟休校、更に臨時休校という、これまで発展しなければ解決できなかつたかということなんです。そこに私は人権擁護局が中心になつてそれから文部省もあることだし、更には地方に教育委員会もあることですし、それから厚生省もあるしですね、厚生省の出先機関もあることなんだから、殊にあそこに恵楓園というものもあることなんですからね。こういう機関が一〇〇%とは言わなくても、約八〇%までの力を発揮したら、こういう事態にならなくて私は解決できたのだろうと思うのです。特に新聞で見ると黒髪校という学校のPTAの会長さんは県会議長であり、而もお医者さんなんですね。それがこれほどの問題になつたということは、このらいを収容している収容所というものは、国立は熊本だけでなくして全国に数多くあるわけなんですが、これは全国のらいの被感染児童に共通した問題であり、而もそこには人権擁護という大きな問題があるわけなんですから、これも結局今の人権擁護に関する今問題になつている機構、それからその機構の中にある人員の不十分さというものが、やつぱり関連してこういう事態が起るのだろうと思うのですが、あの問題の当面の処理もさることながら、ああいう類似の事件が起らないように、未然に人権擁護局は十分留意願いたいということをこの際ついでに強く要望いたしておきます。
 私の質問はこれで終ります。
#34
○政府委員(戸田正直君) 大変御尤もな御質問でありまして、私たち有難くお受けいたしておきますが、予算の面から十分なことができない、従つて殖やさなければならない。是非さようにお願いしたいと思うのですが、このら、いの事件はほかには殆んどございません。この熊本だけが一般学校に入れずに分校に入れる。そこで一般の、これはまあ我々も実はこの事件を受けるまで多少そういう感じを持つていたので、まあ我々もその点よく知らなかつたのですが、らいに対して非常な恐怖心を実は持つておる。これはらいに関する恐怖感情というものが非常に強いものでございまして、現に私はこの事件を受けた当初にも、らいに対する危険というようなものを非常に気持の上に持つたのであります。それで事件をやつておりますうちに、私も初めて心配ないという確信を得たのでありますが、どうも科学を信用するということが十分にまだ日本の国民にはできていないというところに、今度の問題の大きな根本の原因があつたと思います。これは今度の人権擁護局が扱いました、或いは処理等につきましては、これ勿論いろいろ仕事の上の一層の努力ということは必要でありますが、これは私はむしろお褒めにあずかつてもよかつたのじやないかというふうな事件であるように私どもは思つておりました。これはどこでも取上げられず、どうにもならなかつた事件でありますが、これが幸いに人権擁護局に人権擁護の問題として持つて来られましたために、僅かな予算の、予算の足らない地方の職員でありましたが、これに短期間に非常に努力いたしまして、なかなか思い切つた結論を、実は私どものほうとしても出したのであります。それによつて、現地でなければわからないほどの非常な紛争と、又PTAの非常に強力なる反対がありまして、我々が到底ここにいてはわからんほどの強い反対があつたのでありますが、教育委員会も我々の趣旨に賛成されて、非常な反対と混乱の中に思い切つて教育委員会もそういう措置をとつた。勿論その後のストライキが起きたということに対しては、これは別の人権擁護の問題であるし、そういうことに対しては甚だ遺憾だというふうに、又別の問題としてこの問題の処理を考えておりますが、殊にらい患者の被らい児童を一般学校に入れるまでに持つて来たということは、私は人権擁護上人権擁護局の仕事の上に非常に大きな意義のある仕事だと、こういうふうに確信いたしております。なお一段の努力をしまして、速かにこの問題が解決するように、又将来そうした問題が再び他の地にも起きないように努力をいたしたいと考えます。
#35
○委員長(小酒井義男君) 速記を止めて下さい。
  [速記中止〕
#36
○委員長(小酒井義男君) 速記を始めて下さい。
 それでは暫時休憩いたします。
   午後一時十四分休憩
   〔休憩後開会に至らなかつた。〕
ソース: 国立国会図書館
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