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1953/05/21 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 地方行政委員会 第41号
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1953/05/21 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 地方行政委員会 第41号

#1
第019回国会 地方行政委員会 第41号
   公  聴  会
――――――――――――――――
昭和二十九年五月二十一日(金曜日)
   午前十時三十分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
五月二十日委員田中啓一君及び酒井利
雄君辞任につき、その補欠として堀末
治君及び高橋進太郎君を議長において
指名した。
  ―――――――――――――
   委員長     内村 清次君
   理事
           石村 幸作君
           館  哲二君
   委員
           堀  末治君
           伊能 芳雄君
           伊能繁次郎君
           高橋進太郎君
           長谷山行毅君
           小林 武治君
           島村 軍次君
           秋山 長造君
           若木 勝藏君
           松澤 兼人君
           笹森 順造君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       福永与一郎君
   常任委員会専門
   員       伊藤  清君
  公述人
   大 阪 市 長 中井 光次君
   東京大学教授  杉村章三郎君
   日本労働組合総
  評議会常任幹事  塩谷 信雄君
   神奈川県議会議
   長       松岡 正二君
           吉見 一也君
   都道府県公安委
   員会連絡協議会
   代表      土井彦一郎君
   全国自治体公安
   委員会連絡協議
   会代表     神宅賀寿恵君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○警察法案(内閣提出、衆議院送付)
○警察法の施行に伴う関係法令の整理
 に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(内村清次君) これより警察法案及び警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案につきまして地方行政委員会の公聴会を開会いたします。
 開会に当りまして、公述人として御出席下さいました各位に御挨拶を申上げます。
 本日は御多用中を繰合せこの公聴会においで下さいましたことを厚くお礼を申上げます。御承知のごとく、現行警察法は昭和二十二年末に新らしい警察法として出発したのでありますが、今ここに警察法案として改正案を内閣は提出して参つたのでございます。本法律案が提出せられるや、各方面より多大の関心が寄せらつれておりまして本委員会といたしましても、その重要性に鑑みまして、公聴会を開催しまして、国民の各方面からの忌憚のない御意見を拝聴することになりました次第でございます。どうか腹蔵のない御意見を聞くことができまするようにお願いをいたしたいのでございます。各位お一人の公述時間は三十分程度にお願いいたしたいと思います。公述は求められましたこと以外には亘らないようにお願いをいたします。又公述が皆終りました後、委員各位から質疑がございますれば、御遠慮なくお答えを頂きたいと思います。
 これから始めることにいたします。先ず全国市長会代表、大阪市長中井光次君。
#3
○公述人(中井光次君) 私は只今御紹介にあずかりました全国市長会会長、大阪市長の中井光次でございます。本委員会におきまして警察法案に対する所見の一端を申述べ得る機会を得ましたことを衷心より御礼を申上げる次第でございます。
 都市は自治体警察発足以来六年、困難な条件の下にありながら、民主警察の育成につとめ、而も人権の尊重と秩序の維持に遺憾なきを期して参りました。然るに、政府は今回都市警察を全廃して、府県一本化の、而も過度の中央棄権を企てた改革案を提案するに至つたのであります。ここにおいて私どもは、都市自治の擁護と、警察民主化の立場がらこの法案の大幅修正を強く要望して参つたのであります。衆議院においては、原案に対しまして人事権の中央集権化に対する或る程度の緩和が行われたのでありますが、都市警察については、五大市に一年を限る存続を認めたのみで、原則として都市警察の全面廃止と相成つた次第であります。我々が強く要望いたしましたところの、過去六年の実績を顧みて、能力ある都市に都市警察を認め、将来の警察制度はこれを中核として民主警察の育成を図るという主張は、全然顧みられなかつたのであります。私は何故に今日の事態に立至つたがを反省しつつ、この機会に今一度都市警察存置についての私どもの所見を申上げ、皆さまの御審議の御参考に資したいと存ずるのであります。
 警察制度改革の方向といたしましては、能率と責任の明確化の要請があるといたしましても、地方自治の本旨を損うものであつてはならないと存ずるのであります。もとより国及び地方行政におきましては、警察行政も又他の行政分野とひとしく国家的要請に応えなければならないことは勿論であります。この国家的要請は特に最近政府によつて破壊活動に対する治安対策として強調されているのであります。而もこの要請に対し、見方によれば戦前よりも更に権力的な警察制度をもつて対処しようとしておりまするが、専ら警察の権力化のみによつては、その目的は達成されないのでありまして、市民に親しまれ、市民の心からなる協力が得られる警察制度にして初めて治安の確保が期待されるのであります。我々が都市自治体警察の存続を強く要請する理由もここにあります。都市警察に十分な自主性を与え、国が真に必要な限度において指導監督権を握ることによつてこそ、今日民主国家の最大の課題である地方自治と国家的要請の調和という目的が達成せられると信ずるのであります。私どもはこのように警察制度の主体が飽くまで自治警察になければならないと考えるものでありまするが、次に、それでは警察と地方自治とが都市行政におきまして如何に密接な結びつきの下に運営されており、又されなければならないかということを二、三申述べたいと思うのであります。
 大阪市警察についてみまするに、犯人の捜査、逮捕、暴動対策等に関する司法警察と、交通、風紀の取締り、並びに防犯等を内容とする行政警察の事務量を比較すれば、司法警察が全体の三〇%弱であるのに対し、行政警察が七〇%強を占めております。このことは警察行政と一般行政との深い繋がりを示すものであります。換言しますれば、警察の日々の運営は、住民生活に直結した公衆衛生、道路行政、青少年の補導等の一般市政と有機的に極めて密接な結びつきを持つているのであります。従つて都市警察は市政と一体化することによつて総合的に能率化されるのであります。例えば旅館、劇場、浴場等の取締りは警察、衛生面当局の指導取締りの協力によつて、切めて衛生上にも、保安に関しても能率が上ることとなり、市民は安心して生活ができるのであります。又食品衛生に例をとつても然りでありまして、一件の中毒事件の処理にいたしましても、警察署と保健所、或いは区役所の地道な協力、精神的結合によつて行政の能率を高めておるのであります。更に道路の管理と交通取締りにおける土木、交通両局と警察の協力、災害時における警察の協力など、都市警察にして初めて達成できる成果でありまして、これが分離により一般市政並びに警察行政に及ぼす損失は測り知れないものがあります。これが府県警察になるとどうであるかと申しますると、府県も同じく法制上の自治体なのでありますが、その沿革と伝統から見まして、官治的色彩が濃いばかりではなく、その行う事務の内容は住民に接触の少い監督行政や区の委任事務が極めて多いのが実情であります。従つてその性格は権力的であり、官僚的でありますので、この権力的な而も官僚的な府県に警察を一本化することは、必要以上に権力化する危険が多いと言わざるを得ないのであります。従いまして、現行警察制度が国警、自警の二本建であり、而も自治体警察には規模能力において独立の単位とするに余りに弱小なものまで含んでいることの弊害は認めなければなりませんが、府県警察はこの都市警察の補完的或いは並行的なものとしてのみ認められるべきものであろうと存ずるのであります。
 都市警察が以上述べましたように地方自治の本旨にかない、且つ警察の民主化に役立つとしても、それだけで果して近代国家の要請する警察の能率化、合理化はどうなるかという御懸念もあろうかと存じますので、この点について若干の見解を申述べたいと存じます。
 第一に、都市の区域の問題であります。府県警察に賛成する根拠として、今日犯罪は市域を越えて自由に行われている。市域はもはや警察単位として狭きに失するということが言われます。併しながら結論的に申しますならば、犯罪は市域のみに限らず府県の区域をも無視して行われているのであります。問題は、例を大阪にとりますれば、大阪市から十分乃至三、四十分で兵庫県に入り、京都市に入るという都市発達の実態にあるのでありますから、これに対しては府県の区域を以てしても応じきれるものではないのであります。統計によりましても、例えば大阪市内の犯罪被疑者中二〇%が市域外の居住者になつておりまするが、そのうち府下居住者は約半数の一〇%であつて、残りの一〇%は他府県在住者であります。都市警察は、周辺部との連繋も勿論必要ではありますが、全国都市との、或いは他府県との密接な連繋こそ必要なのであります。都市警察は、現にこの問題を通信、鑑識施設の整備、周辺都市との応援協定の締結、或いは又全国都市との連繋等によつて技術的に解決しつつあるのであります。
 次は都市警察の規模能力についてであります。都市警察が全国警備力の約六%を占めているという事実は、現実において都市警察が現行警察の中核を成していることを如実に示すものであります。然るに、都市には警察維持の能力が十分でないという意見があります。かかる批判を生じた主な理由は都市財政の窮迫に基くものであり、それは地方財政制度が確立していないということに真の原因があると言わざるを得ないのであります。
 警察の規模能力の観点から、小規模の都市には自治警の廃止を認めることも止むを得ないといたしましても、全部の都市警察を廃止する理由は理解しがたいのであります。例えば多くの有力な都市について申しますと、人口のことは申すに及ばず、警察職員数を例にとりましても、五大市はいずれも三千乃至八千の職員を擁し、最も有力な府県に比較してもはるかにまさるものが多いのであります。他面最も定員の少い県におきましては、約六百五十三名という警察職員でありますから、札幌市の市警とほぼ同人数で、都市警察でこれ以上の規模のものは五大市を除いてもなお六つの市を数えるのであります。
 最後に、都市警察の能率と経費節約の点についてであります。例えば犯罪の検挙率について見ましても、現在の都市警察の成績は次第に向上し、決して悪いものではありません。これを府県警察に統合しても必ずしも成績の向上を期待し得るとは断じられないのであります。都市警察が府県警察に統合すれば、各種の施設の重複が省け、経費が節約できるという主張もありますが、これは施設運営の実情を無視した議論であつて、通信、教育、鑑識施設等いずれも現在殆んどフルに使用されており、むしろ不足しているのでありますから、統合によつて整理節約できる範囲は極く例外的なのであります。
 かように見て参りますならば、都市警察は民主警察の担い手として最も適当であるばかりではなく、警察の能率化、行政の経済化という要請にも応え得るものであることが御了解願えるかと存ずるのであります。
 併し警察制度改革の問題につきましては、政府のみならず学界、世論も多大の関心を払つておりますが、昨年十月政府の地方制度調査会が行ないましたる当面改革を要する事項に関する答申におきましては、一年有余に亘る審議の結論として警察の府県一本化と併せて十分の規模能力ある大都市警察の存置を認めたことは御承知のことあでります。言論機関も殆んど一致して警察の中央集権化、政党化、官僚化を戒めており、いやしくも地方自治の存立を認めるならば、その中央集権的統制には憲法上の限度があるとなし、或いは一部の自治警に弊害があるからといつて、角を矯めて牛を殺すごとき改革はなすべきでないとして、警察制度と地方自治との関係を強調する立場に立つての反対が強いのであります。
 学者の意見を見ましても、中都市や大都市では治安維持の能力について何ら心配は要らないから、これを存続すべきであるとするもの、警察単位を異にすることから生ずる不便は府県警察相互の間についても言えることであるから、それが直ちに都市警察否認の強い理由になるとは思えないなどの意見が多いのであります。世論調査等に現われたところによりましても、都市警察を存置すべしという意見が圧倒的に多数を占めております。
 これを要しまするに、都市警察は過去六年の実績によつて市民の信頼をかち得、而も住民の自覚と責任による自治警察としての地盤を築いたものと確信するものであります。衆議院におかれて政府原案に対し、若干の修正は行われましたものの、今日まで極めて困難な状況の下に都市の自治体警察を守り育てて参つた全国都市の熱烈な要望が容れられなかつたことは甚だ残念に思うものであります。本委員会におかれましては、何とぞ慎重に御審議を腸り、都市警察存置について格別の御配慮を頂きますようお願い申上げる次第であります。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(内村清次君) 次に、東京大学教授杉村章三郎君。
#5
○公述人(杉村章三郎君) 私は只今議題に供せられております警察法案が目指しております府県警察一本建の警察が、従来の国家地方警察及び自治警察二本建の制度よりも民主的で又強力且つ能率的であり、講和後の現在の治安事態に処するにふさわしいものであるかどうかというような、いわば政策的な見解を申上げるのではなくして、多年地方自治制度を研究しております一個の学究といたしまして、平素考えております地方自治の理念から申しまして、この法案がどのような理論上の欠陥を包容しているかを申上げるにとどめたいと存じます。従つて以下私の申上げんとすることは、或いは抽象的な議論に終始するかも知れませんので、結論を先に申上げるならば、次のようになると思います。
 即ち本法案のような制度の実行は時期尚早である。この時期尚早という意味は、この法案による警察制度というものは、現在の府県の性格と相容れないものではないか、従つてれこを立案する前に先ずなすべきことがあるということであります。それは即ち地方自治法を改正しまして、府県の完全自治体たる性格を変更すること、少くとも昨年の地方制度調査会の結論にもありますように、府県の国家的性格というものをもう少し強く改めなければならんのではないか、こういうように考えている次第でございます。これは一応結論として前に申上げておく次第であります。現行の警察法は昭和二十二年占領初期の時期におきまして、司令部の書簡に基いて制定されたものでありまして、いわば占領の申し子の最たるものの一つであるということは言うまでもありません。併しそれは世界にも稀な中央集権的な制度でありました我が国の警察を、一挙にして多数の市町村自治体警察に寸断しまして、人口五千未満の町村の警察、即ちいわば片田舎の警察だけを国家に移すという非常に思い切つた改革であつたのであります。司令部が行政にかような態度をとつたかと申しますと、これは日本の警察の言わば治安能力というものを削減して、日本の国力を弱めようとする意向があつたかも知れないのであります。でありますから、占領政策の是正ということにおきましては、警察制度にとつてはまさに行われて然るべきことであるかも知れないのであります。併この場合に考えてみなければならないことは、当時のいろいろな改革がただ警察制度だけを目標として行われたものではないということであります。その背後には地方自治制一般の考え方が潜んでおるのでありまして、警察法の前文におきましても、日本国憲法の精神に従い、地方自治の真義を推進する観点からこの法律を制定すると言つております。それでありますから、憲法や地方自治法をそのままにしておいて警察法だけの改正を行うというならば、これはやはり憲法なり地方自治法の精神に副うものでなければならないわけであります。
 朝鮮事変以来警察法に対しまして二回ほど重要な改正が行われましたことは皆様も御承知のことと思います。それは昭和二十六年六月に町村警察に対して、その警察権を放棄するということを内容とした改正、それから第二回は昭和二十七年八月の改正でありまして、これは内閣総理大臣に対して公安委員会に対して指示する権能を認めたのを中心とした改革でありました。これらの改正は非常に重要な改正でありますけれども、併し現行法の建前を崩さない範囲におきましての改正であつたので、いわば現行制度の枠内における改正であつたわけであります。これに反して今回の改正法案は、現行法の建前を根本的に覆するものでありまして、誠に重要性が存する次第であります。この法案が合理的なものであるためには、憲法及び地方自治法の精神に反しないということが要件となるわけであります。で、それでは憲法の精神に副い、或いは地方自治の真義を推進するということはどういう意味であるか。これは私くだくだしく申すまでもありません。又ここに堅苦しい議論をするつもりもありませんので、一切それを抜きにいたしまして、私は憲法及び地方自治法の精神は都道府県と言わず市町村と言わず、地方団体はそれぞれの固有事務を民主的に構成された自己の組織を以てそれぞれの住民の税金で処理する、こういうことであろうかと思います。この精神を貫徹するために終戦後今まで国と府県、市町村との間における行政事務についての再配分を行い、三段階の団体の行政事務、行政責任を明確にしようという努力がなされたことでありました。又同様の趣旨から、終戦前におきましては半官治的な自治体でありましたところの府県も、完全自治体としてその存在を認められるようになつたわけでありますし、又地方自治法の第二条におきまして、地方団体の担任すべき行政事務の範囲もほぼ明確にせられたのであります。警察事務について申しますならば、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全を保持すること、という警察本来の目的が地方団体の事務のこの地方自治法における例示現定の真先に掲げられておるのであります。更に地方自治法におきましては、府県及び市町村はそれぞれ条例を制定する権能を持つておりまして、その条例に対しては二年以下の懲役、十万円以下の罰金を科することができるようになつておりまして、従つてこの罰則違反を予防する警察事務というものはどんな山村漁村でも持ち得ることになつておるのであります。でありますから、事務配分の見地から申しまするならば、現行警察法が市町村自治体警察を以て第一義的のものとしたのは、警察事務を一応地方団体の事務とし、又市町村を基礎的地方団体と考えた結果でありまして、その実績のよしあしは別としまして、制度自体としましては不合理的なものとは考えられないわけであります。
 以上のような概論的なことを前提といたしまして、今回の警察法案の内容を検討いたしてみますと、この法案におきましては、従来の国家地方警察と市町村自治体警察の二本建の警察を廃して、これを都道府県警察に一本化しておるのであります。法案に言うところの府県警察というものが正確な意味における府県自治体警察であるならば、国家警察を廃止して自治体警察で貫しておるのでありますから、或る意味では自治権の尊重と言えないこともないのであります。問題は法案に言う府県警察が自治体警察であるかどうかという点に存するわけであります。この問題こそが本法案の基礎に横わる最大の問題と言わなければなりません。私は従いましてこの点に焦点を絞つてお話いたしてみたと思います。
 先ず政府の提案の理由の説明によりますと、府県警察は第一に知事の所轄の下に府県公安委員会が全面的にこれを管理するということ、第二に、その職員は原則として地方公務員の身分を有するということ、第三には、府県警察の組織や職員の人事管理その他行政管理事項は、いずれも府県条例を以て定められ、警察は議会の審議を通じて住民の批判の矢面に立つておるということ、第四に、府県警察の経費は原則として府県の負担であること、などの理由によりまして、これは自治体警察である、こういうように言つておるわけであります。併しちよつと申上げておきたいことは、法文には自治体警察ということは書いてありません。旧法では自治体警察というのは明瞭に章の名前に出ておつたわけであります。併し試みにこれと反対にこの法案に言うところの府県警察がどのような国家警察的な特色を持つておるかということを挙げてみますと、第一に府県警察の実権を握つておる警察隊の長である警察本部長は、国務大臣を以て長とする国家公安委員会が府県公安委員会の同意を得て任免することになつております。政府原案は警視総監は総理大臣、警察本部長は警察庁長官が任免することになつております。第二点は、警視正以上の幹部職員は国家公務員であるということであります。それから第三は、国の公安にかかる事項につきまして、府県警察の全体が警察庁長官及び管区局長の指揮監督を受けるということであります。それから第四に、府県警察の職員も警察吏員とは言いませんで、警察官という名称で統一してありまして、その階級も法律で細かく規定してあります。こういつたような点が目につくわけであります。こういうように政府のほうで説明しております。この自治体警察たる面と、私が今申上げました国家警察的な面の双方を比較して見まして、いずれに重点があるか、こういうことを考えて見ますと、まあ警察作用の本質から来ることでありますけれども、警察作用というものはこれはほかの行政と違いまして上命下従と言いますか、そういうような軍隊類似の組織によつて切めて運営せらるるようになつております。従いまして、そういうことを考えますと、幹部職員に国家的色彩を強くした新制度は国家警察の性格を帯びざるを得ないことになるのではないかと思われるのであります。殊に警察職員は国家公務員の身分を持つておりますものでも、或いは地方公務員の身分を持つておりますものでも、職員同体すら結成することが公務員法の規定によつてできない現状になつております。従いまして、地方公務員たる警察職員の上官に対する発言力というものは非常に弱体とならざるを得ないものではないかというふうに思われるのであります。
 こういうふうに見て参りますと、改正法案による府県警察というものは形式はとにかくとしまして、国家警察の実体を持つものと言わざるを得なくなるのであります。従いまして、府県は原則として自分の経費で国家の警察を賄うというようなことになるのでありまして、終戦前の警察制度の復活を思わしめるものがあります。又憲法や地方自治法の認める地方自治の原則や事務配分の原理から見ますれば、かなり不合理なものとなつて来るのではないかというふうに考えるのであります。二、三日前の新聞に、大都市警察に対してとつた警察法案の処置が生殺しの警察であるというふうに書いてありましたが、これはむしろ生殺しの府県を作つたというようなことも言えるのではないかというふうに考えるのであります。
 なお私この点もう一つ疑問としておりますところは、警察庁における警察官とそれから管区警察局に配属された警察官の性格でありまして、これらは恐らく従来の国警職員、更に本部の職員、管区本部の職員を言うのでありましようが、これは即ち恐らく国家直属の警察隊ではなかろうかと推測するのであります。或いは私の見方が間違つておるかも知れませんが、こういうように解しますと、政府の主張する府県警察への一元化ということは、この点からも崩れることになるのではないか。従つて実質上は国家警察と自治体警察のやはり二本建になるのじやないかというふうな感じがするのであります。
 又この警察法案の一つの目標としておるところは、内閣の警察責任を明確化する、こういうことを狙つておるようでありまして、これはまあ十分に達せられておると思うのでありますが、今度は府県警察における責任の明確化ということをどういうふうにするか、これが問題ではなかろうかと思われるのであります。即ち府県警察プロパーに関する事項につきまして、警察本部長というものの責任をどういうふうにして、知事なり或いは議会なりが追及することができるか、こういう問題があるというふうに考えられるわけであります。で、まだ国家公安委員会の問題がいろいろあると思うのでございますけれども、私の考えて参りましたのは、そういうような府県警察の性格ということだけに絞つて参りましたので、この点を中心としてお話申上げたわけであります。
 以上のような私の見解に対しましては、これは観念的であつて、現在の自治体警察は不経済、非能率であり、又警察単位の分割によつて生ずる盲点というものがこの警察の効率的な運営を傷つけている現場を知らないものであると、こういうふうにいわば机上の空論であるという非難もあるでしよう。或いは本来警察作用というものは国家的な面もあるのであつて、殊に集団犯罪や大規模に亘る知能的な犯罪が多くなつておる現状におきましては、市町村警察では到底効果的な警察運営というものはできないという論難も想像されるのであります。前の非難、即ち非能率、不経済というような非難というものは、これは民主制度の一般に当てはまることでありまして、恐らくひとり警察制度ばかりではないと思われますし、又そういう民主的制度を能率化し、又経済化するという方法は幾らもあろうかと思います。後の非難、即ち警察作用の本質につきましては、これは考慮に値いすると思うのでありまして、警察作用のいわゆる広域行政、広い区域における行政となつて来ておるという現象は、これは地方分権の祖国とも言うべき英米両国におきましても見らるるところでありまして、従つて事務配分の理想から言いますならば、アメリカのように連邦警察たるFBI、州警察、市町村警察という三段階の警察組織があつて、それぞれの分野において治安を確保する、そういう組織が望ましいのでありますが、無論財政貧弱な日本の現状におきましてはそれは望むべきことではないのであります。とすれば市町村自治体警察を縮小して、客観的に見て能力のあるものだけを残して他はすべて国家地方警察に吸収して、国家地方警察を強化するということも一案でありましよう。又若し治安の状況に照らして国家警察一本として行きたいということであるならば、府県警察というような中間案としないで、むしろ堂々と旧制度のような国家警察として府県からは若干の分担金を徴収する、或いは負担金を受ける、こういうような制度にしたほうが趣旨が通るのではないか、こういうように考える次第であります。
 いずれにしましても、結論といたしましては、先ほど申しましたように、本法案のような府県警察は完全自治体たる府県の現在の性格と相容れないものでありまして、このような案を成立させるためには、地方自治法を改正して府県の性格をそれに応ずるように変える必要がある、こういうように考える次第であります。
 これを以て私の陳述を終りたいと存じます。
  ―――――――――――――
#6
○委員長(内村清次君) 次に、日本労働組合総評議会常任幹事、塩谷信雄君。
#7
○公述人(塩谷信雄君) 総評の常任幹事塩谷信雄でございます。多少重復する点もあるかも知れませんが、なお梗概について申上げます。
 私は今日労働運動というものが民主的に発展し、国家社会に貢献できるかどうかということは、組合自体はもとよりでありますが、社会にも又大きな責任があると思うのであります。殊にしばしば労働者に対して取締り対象として登場いたして参ります警察が民主警察としての実を持つておるかどうかということは大きな問題であるという、こういう立場から今回の政府原案及び衆議院におきまして修正をされました法案に対しましても反対である、こういうことで概略その理由を申上げたいと存じます。
 犬養法務大臣によりますと、治安任務遂行上の能率化と責任の明確化が本法案改正の主眼だと説明をされております。表面は事理極めて当然のごとく見えるのでありますが、民主的な手段を通じて能率を上げ、民主性を失うことなしにいつも責任を明確にしておる、こういうことは容易ならざることであると思うのであります。すでに経験によつて御承知の通り民主的な訓練が十分身についていないような場合には行動を民主的に推進しようとすればするほど能率を上げることは困難になる場合が多いのであります。三権分立の建前上、行政権は内閣に属するということから、政府が所轄事項に対して責任があるとすることは、職務上の指揮監督をしない場合におきましても民主的運営を貫くためには必要なことであろうと存じます。従つて責任を明確にするためと称して常に責任と同じ量の権力を政府が主張するということは、権力の過度集中を来たすのでありまして、民主主義にとつて危険なことだと思うのであります。要するに以上の二項を貫くための本法案というものは、角を矯めんとして牛を殺すの類でありまして、結果は親しまれない警察と化し、治安の確保に民衆の協力を得るということが困難となりまして、フアツシヨ的な反動警察となることは、今日我が国の辿りつつある一般社会情勢において特に指摘をしなければならないところであると存じます。
 私は昭和二十六年、自治体警察の住民決議による廃止を主要な狙いといたしました最切の改正案公聴会におきましても反対意見を申述べました。当時も今日も市町村自治体警察関係者を初めといたしまして、多くの代表が、又世論も殆んど大同小異の御主張によりまして強く反対をしたのであります。併しながらこの種公述というものは実績が示しておりまするように、結果的には殆んど無意味に等しく扱われておるのであります。特に、当時当局の御説明は、自治体警察を地域住民の意思を尊重いたしまして廃止できるようにしたからといつて極く一定限度少数の廃止にとどまるであろう、こういうことはむしろ明らかであるから、自治体警察の運命を左右するなどということはないということを繰返し御主張になつたのであります。併しながら昭和二十三年当時千六百五の市町村自治体警察が二十六年には早くも千二十四を廃止いたしまして、僅か五百六十となつております。二十九年一月一日現在には四百六に減少してしまつておることは、国警本部の資料によつて明らかであります。而もこの事実を踏台といたしまして、昨年は国警一本に統合改正しようとさえされたのであります。私は改正案の中の総理大臣の権限、公安委員会と又都道府県警察の取扱い方、こういうもの等よりいたしまして、改正後はやがて既成事実の積み重ねの上に立ちまして、場合によりましては内務省警察復元以上のものへの一つの布石といたしまして、たとえ現在の政府の真意がどうでありましようとも、運用される可能性というものが強いということを心配いたすのであります。
 以下法案の内容につきまして、若干反対の理由を申上げます。政府改正原案によりますと、警察庁長官の権限は大変大きくて、戦前警保局長の持つていたものよりも遙かに強大であると言われておりまして、曾つて見られない中央集権を目指すものでありましたが、衆議院の修正によりまして、警察庁長官、警視総監、都道府県警察本部長の任免権を国家公安委員会に持たしました点につきましては、一応うなずけるのであります。併しながら残念なことには国家公安委員会の委員長には依然として国務大臣を当てることになつておりまして、法案の最初に不偏不党、且つ公平中立を旨とし云々とあるのでありますが、国務大臣は多くの場合党人がなつておるのであります。最も偏つた存在であると言わなければなりません。その偏つた委員長が会務を総理し、委員会を代表いたしまして、五人のうちで二人までは同一政党に所属することができるわけでありますから、結局五人のうちで三人までが同一政党の所属というものを狙うことができる仕組であります。総理大臣は国務大臣を意のごとく任免できることは現状のごとくでありますから、委員の任免権者であります総理に対しまして、身分保障制をとつたことは破られておるのであります。又警察庁長官以下の任免には国家公安委員会が総理の承認を要することとしてありますから、併せて絶大なる権力が総理に集中することになろうかと存じます。委員会は委員長又はその代理者を含めて四人で成立し、過半数議決でありますから、出席委員が四人でも五人でありましようとも、委員長一派を以て十分会議をリードできるわけでございます。不偏不党という立看板によりまして、而もその運営というものは大変一党独裁に近いものでございます。民衆の目はこれによつて或いはそらされるかも知れません。そうして名前だけが民主的な国家公安委員会という、そういうものの手によりまして一本となつた都道府県警察を牛耳るといたしましたならば、政党警察の弊害は誠に恐るべきものであろうと存ずるのであります。この道というものは我々がいつか来た道でありまして、堕落をいたしました曾つての政党警察のサーベル時代から東条軍閥の憲兵、そして敗戦となつているのでありまして、ここにフアツシヨ的な方向に道を譲りまする大きな落し穴があるということを指摘しなければなりません。
 次は地方分権の問題であります。私は一定条件の下で、即ち日本のような民度、国情、又土地の広さ等を以ていたしましては、行政の地方分権こそ民主主義的であると考えるのであります。従つて我が国の今日の段階におきまして、市町村自治警察の廃止ということは、民主警察の芽を双葉のうちに刈取る危険を持つておると存じます。改正案は国家地方警察及び市町村自治体警察を共に廃止いたしまして、都道府県警察一本としておるのでありますが、都道府県のより強い国家的な性格と警視総監、警察本部長、方面本邦長、警視正以上の警察官等に対する、先に申述べました実質的な総理の任免権を併せ考えますると、その実体はまさに自警の全廃となると存じます。中央集権的な強力な権力者の下で、上命下従の関係に立ちます一本組織の警察を組織として運営して参りましたならば、時の権力者の意図のごとくこれを駆使し得ることは自明と言わなければなりません。上役の眼色やその意向を忖度いたしまして動かなければ、腹の空いたお腹をくちくすることもできないような惨めな待遇を与えておきまして、あごで使いこなして参りましたような、こういう状態、而も今日なお労働者として団結することもできないような仕組にしておるこの実情を併せ考えました場合には、過去の実績というものは今日もなおはつきり生きておると言わなければなりません。
 次に、特別市制の多少の問題もありますけれども、いわゆる衆議院で修正いたしました五大市の自治体警察一ヵ年の存続という問題は、これは特に意味のないものだと存じますから、省略をいたします、
 総理の権限強化と関連をいたしまして緊急事態の規定でございますが、現行法上国家非常事態の宣言は、衆議院解散の場合は参議院の緊急集会で承認を求めることができるのでありますが、改正案では参議院の緊急集会にかけないで、その後の最初の国会で承認を求めることになつております。従つてこの間国民の利害に重大な関係を持つこの宣言に基く重大な警察行動が、国会の審議を経ずに若し濫用されるといたしましたならば、誠に予測のできない結果の発生を覚悟しなければならんと存じます。政府は治安責任の重大性を殊更強調されているのでありますが、改正案の総則を拝見いたしましても、現行法前文にありまする人間の尊厳を最高度に確保し云々という人間の尊厳という文字がどこにも見当らないのであります。仮にたとえ裏付のあいまいな修飾語でありましようとも、これを掲げることができないということは極めて重大な意味があると思うのであります。これは治安確保を要求するの余りに、警察活動において人間尊重の精神の後退することを示していると言わなければなりません。人権尊重の精神の後退することを示していると言わなければなりません。およそ治安確保の根本は人権尊重の基盤に立つた国民生活の安定向上にあるのでありまして警察活動を主軸として、治安を確保せんとするこういう行き方というものは本末顛倒していると考えるのであります。従つて政治の動向如何ということが治安に重大な影響を与えることは申上げるまでもございません。然るに人権無視と思想統制の傾向は急速に進んでおります。他面には労働者に対して、又農市民に対してその生活は、国民大多数の反対を退けまして強引に推進めておりまする再軍備政策のこの犠牲となりまして、まさに破綻に瀕せんとしているのが今日の実情であろうと存じます。このように治安紊乱の原因をあえて作り上げている、そうして治安の責任のみを強調いたしまして、権力の強化を図つていると考えられる節があるのであります。そうして国民全般の利害を対象とすべき公共福祉の名におきまして、或いは国家といい、社会公共と称しまして、実は国民全般の一部でありまする働労者、勤労者、こういう者の合法的な運動を弾圧する具に供せんとする危険性というものが多分にあると申上げなければなりません。今日日本の労働組合運動は、健全な日本の労働組合運動というものは、まさに日本の民主主義の支柱であると申上げて過言ではないと存ずるのであります。而も半面、共に憲法に明定をされました国民生活の安定向上という重大な政府の責任につきましては、残念ながら何ら顧みていないと申上げたいと思うのでおります。むしろ破壊しつつあるとさえ言わなければならんでありましよう。こういう一方的なやり方というものは治安確保の上にむしろ重大な蹉跌を来たす危険な政策であるとさえ存ずるのであります。殊に本法案の実施によりまして、団結権、罷業権も与えられておらない個人といたしましては、極めて弱い下級警察官約三万名を狙いまして、そうして困難を極めている行政整理のはけ場を作ろうとするような行き方というものは、誠に弱肉強食に等しい措置であると申上げなければなりません。内務官僚の大変多いと言われます政府自由党が、過去の苦い経験を御承知でおられるのであります。然るにもかかわらず、あえてこのような悪法を制定せんとしておられるところに、今日民主主義の危機があるかと思うのでありまして、どうか本法案の廃案を切に期待いたしてやみません。
 以上簡単に反対の理由を申上げました。
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#8
○委員長(内村清次君) 以上を以ちまして公述人の公述は終りました。委員のかたがたの御質疑を求めます。
#9
○秋山長造君 東京大学の杉村先生にお尋ねをしたい。先ほどのお話で先ず第一の点として、現在の憲法なり、自治法なりの建前からできておる現在の警察制度を改めるためには、やはりその前提として今の憲法なり、自治法なりが考えておる地方自治の性格というものを変えた上でなければ本末顛倒だ、こういうお話が第一にあつたわけであります。その点につきまして、先生の御見解として日本の地方自治の今後のあり方、又特に府県のあるべき姿というようなものをどういうふうにお考えになつておるか、それを先ずお尋ねしたい。
#10
○公述人(杉村章三郎君) 私は府県というものは町村と共に並立する地方団体であるということを認めたいと存じます。併しその権能は市町村と府県とはそれぞれ違つた権能を与えらるべきである。こういうように一応自治体としては考えておるわけであります。それじや府県の特殊な性格、権能というものはどこに求むべきかと申しますと、これはやはり自治団体としては市町村が基礎的な自治団体である。こういう考えを持つておりまするから、府県の権能というものは、やはり市町村ではできないような事務で、而も自治事務として行うべきものであることに集中せられるわけでありまして、それはいわば補完行政と、それから市町村の区域では行い得ない公域行政、或いは市町村間の調整、こういつたような事務が府県の事務になる。そういうことで府県の自治体としての存在は意義があるのじやないか、こういうように考えております。
#11
○秋山長造君 そこでこの地方自治行政のいろいろな事務の中の一つとして、警察事務という問題があるわけなんでありますが、この警察は市町村の事務として考えるべきものか、それとも府県の事務として考えるべきか、或いは双方の事務として考えるべきものと、こうまあ大体三つ考え方があると思いますのですが、その点についてお伺いしたい。
#12
○公述人(杉村章三郎君) 警察にもいろいろ対象がありまして、本来ならばやはりその区域における治安というものは、その市町村が先ず負担すべきものである。併し市町村の区域に外れた、又外れるような警察であれば、これは府県が担当してもいい、こういうふうな考えでおります。で、やはり双方で担当すべきことかと思いますけれども、併しこれはその区域が限界が非常にはつきりいたしませんし、又市町村みずからのところで、市町村自身で、この前の改正のように自分のところでは警察を放棄する、こういう意思表示をすれば、それは市町村がそうまでしているのに、市町村にその事務を押付けることはできないわけでありますし、又現在も山村漁村においては警察を初めから持たしめられない。これはやはり一方においては何と申しますか、それだけの能力があるかどうかということをやはり判定し、これは客観的に判定しなければならん、そういうことで現在の警察法というものは成立つておる、こういうふうに考えております。
#13
○秋山長造君 そういたしますと、地方自治という建前、現在の警察法の前文にも、地方自治の推進ということを強く謳つておるのですが、結局地方自治の育成強化といいますか、地方自治の建前を飽くまで貫いて行こうという前提に立つ限りは、やはり改正案よりも現在の警察制度のほうが好ましい、こういうように考えてよろしゆうございますか。
#14
○公述人(杉村章三郎君) 私は原則としてはそういうふうに考えております。ただ例えば治安に関する国家的犯罪というようなものがまああると思いますが、そういう場合におきましては、やはり国家の警察というものを、警察権というものをやはり認める余地はあると思いますけれども、現在の警察法の大体の考え方としてはそれでいいと思つております。
#15
○秋山長造君 更にもう一つお尋ねしたいのですが、先生のお話で大体私もよくわかりましたのですが、結局警察という事務はやはり地方自治の中の最も大きな事務の一つである、而もそれを府県が担当するか市町村が担当するかということは、それぞれの団体の経済力なりその他いろいろ実情によつて判断すべきものであるというお考えも私も非常にその点御同感いたすのでありますが、御承知のように一口に市町村といいましても、大阪だとか名古屋だとかいうような、いわゆる五大都市というような厖大な人口と、そうして厖大な地域を抱えた、而も非常に経済的に充実した力を持つた団体、それから非常にいわゆる農山漁村というような貧弱な団体とでは、これはてんで桁が違うわけですが、むしろそういう大都市は府県と同じように考えたほうが却つて実情に即するのではないかというように考えられるところも少くない。大都市問題なんかというのもそういう立場からして年来の懸案になつているのだろうと思いますが、必ずしも五大都市というようなものに限る必要はないと思いますので、少くとも数十万というくらいの人口を持つた都市でありますならば、或いは却つていろいろな面から考えて、七十万や八十万の人口を持つた小さい県あたりよりももつと自治体としての一体制というものもはるかにしつかりしているし、いろいろな面で自治警察というものを依然として守つて行くだけの実力と又ふさわしいいろいろな理由があると思う。そういう点につきまして、都市警察という問題について先生のお考え方を一つこの際お聞かせ願いたい。
#16
○公述人(杉村章三郎君) 私も大体同一意見でございますが、都市警察というものも、現在の都市にどの程度に警察を認めるかという政策的な問題になるのでありまして、これは警察方面のかたの技術的な観測もあるのでありますが、或る程度の警察職員というものを持たなければ、警察というものは実際において機動的に活動できないということを言われます。これは実際そうだろうと思います。そういう機動力を発動し得るような警察を持ち得る都市警察というものは一体どの程度の大きさであるか、こういう問題が前々から論ぜられているわけであります。或いはそれを十五万とするか二十万とするか、これは私判断ができないのでありますけれども、その程度の都市でありますれば、恐らく多くの人の期待に背かないような警察力というものができるのじやないか、こういうように考えております。
#17
○秋山長造君 その点はよくわかりました。有難うございました。
 それから最後にもう一つ先ほどのお話の中になかつた点で、而も非常に重要な点でございまするが、政府のほうでは治安に対する政府の責任といいますか、警察責任といいますか、そういうものを明確にするということを非常に強調しておられる、そのために本来完全な会議体であるべき国家公安委員会の委員長には、これはもう自動的に国務大臣を据えるという非常に妙なやり方を考えておられる。これによりまして、成るほどよく言えば治安責任といいますか、そういうものが或る程度維持されるでありましよう。或いは或る程度でなしに政府の思い通りに維持されるであろうと思いますけれども、併しその半面警察の最も重要な根本的な原則であります政治的中立という問題はこれは殆んど骨抜きになる。この点について政府の言う、又この警察法案の提案説明に言う治安責任、警察責任という問題を先生はどのようにお考えになり、又こういう形で治安責任というものを政府が買つて出るべき性質のものであるかどうか。それから又別に何かいわゆる治安責任というようなものが必要であるとした場合に、どういう方法が考えられるか、これについて御意見をお伺いしたいと思います。
#18
○公述人(杉村章三郎君) 結局政府の警察責任というものをどういうふうな方法でとるかということでありますが、これは権限を若し自治体警察だけにしてしまうならば、これはその責任というものはやはりとりようがない、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、これは併し現在の警察法におきましても、国家地方警察をやつております関係におきまして、やはりそこに国家地方警察なりの責任というものはあると思われるのでありまして、これは担当大臣というものを設けて今までもやつておつたのでありますから、その点は現在の制度としてはその程度しかできないということは、これはまあ止むを得ないことであります。若し政府が警察責任を全体的に負いたい、こういう考えであれば、これは全体的に国家警察とするよりほかに仕方がない、こういうふうに思われます。
#19
○秋山長造君 それで先生のお考え方は一応わかりましたのですが、もう一つお尋ねしたいのですが、大体政府のほうのいろいろな機会に説明しておられるところを聞きますと、やはり現在の制度は三権分立だ、警察は要するに行政権に属すべきものであつて、だから議院内閣制度の建前として内閣が責任を持つべきものだというような論法で、結局警察責任という大原則を打ち出して、そうして当然国家公安委員長は国務大臣が担当すべきだというような論法で行つておられるように考えるのですが、大体三権分立制度だからといつて政府のおつしやるように、警察責任なり治安責任というものをそこまで積極的に政府が買つて出なければならないものかどうか、それがなければ三権分立と言えないのかどうか、その点一つ先生の御意見をお伺いしたい。
#20
○公述人(杉村章三郎君) 三権分立という言葉から警察責任を負わなければならない、こういうことは一応理窟としては言えるかも知れませんけれども、併し行政権といいましてもいろいろな種類のものがあり、又いろいろなふうにやつておるのでありまして、従つて結局何らかの形において内閣に責任が来るというところで、又何らかの形においてそれに内閣が参加しておるということでいいわけでございまして、そう国務大臣がその事務を担当しなければ行政権が内閣にあるということの原則から反するというようなことは、これは言えないのじやないかと思います。それはいろいろな行政委員会の制度を見ますれば、一応そこでいろいろなものを決定してしまうわけですが、それはそれ自身作用としては行政作用である、併し例えば人事院のようなものでありましても、人事院で決定することは政府では責任を負えないわけでありますが、それでやはり行政権は内閣に属する、こういうふうにその原則と別に矛盾しておらないというふうに考えるのでありまして、まあ国家公安委員会の場合にしましても、国務大臣が無論入つておればそれだけ発言力が強くなる、その委員会における発言力は無論強いわけでありますけれども、併しその国務大臣は国家公安委員会の一員として行動しておるにとどまるのでありまして、その国務大臣自身のそれは責任である、こういうようには考えられないわけでありまして、従つていろいろな方法で行政というもので行われておるので、そう簡単にすべてを内閣が自分でやらなければ責任が負えない、こういうようなことはちよつとおかしいのじやないかと、こういうように考えます。
#21
○小林武治君 杉村先生に一つ伺いたいのですが、先生は最初この法案は今時期尚早だ、こういうことをおつしやつておられるし、又地方自治法を変えて、或いは府県の国家的性格を強くする、こういうようなことをおつしやつておられるのでありますが、然らば果して時期が尚早でない時が来るかどうか、この法案でやれるときが来るかどうか、こういうことを伺つておきたいのであります。他のお二方の議論は極めて明確にお聞きしたのでありまするが、先生の意見は私どもお聞きすると、極めて割切れない感じを持つておるのでありますが、その点時期尚早とかでなくて反対かどうか、或いは私が重ねて申上げるように、この法案が適当となる時期が来るものかどうか、どういうときがその時期であるかということを伺つておきたい。
#22
○公述人(杉村章三郎君) 私は時期尚早と申しましたのは少し言葉があれかも知れませんけれども、結局どういう時期においてこれがこういうことになり得るか、それは先ず自治法の改正を先ず先にして、それで府県とはこういう性格のものだということをきめて、そうして今度は警察法において府県に対してこういう関係にするのだ、こういうふうに定めれば、それは一応の筋が通る議論になると思います。こういうように思うわけであります。
#23
○小林武治君 府県の性格につきましても、先ほどのお話では市町村と並立する自治体である、こういうことを言われておるのでありまするが、この性格がそのままでも府県警察というものでよろしいものかどうか、こういうことであります。私は先ほど或いは先生がもう少し自治法を改正して、府県というものは町村とは違つた、例えば或る程度権力的と申しまするか、国家事務を多く担う団体と申しまするか、そういうふうな性格変更があつた場合には府県警察になつてもいい、こういうふうなお考えではないかと伺つたのでありまするが、今お聞きすれば、さようでもないように思うのでありまするが、今の性格については我々もいろいろ意見を持つておるのであります。現行の府県の性格をああすればいい、こうすればいい、これにつきまして、今先生は府県の性格を市町村と相当変つたものにする必要があると思つておられるか、今のような並立でただいいのかどうか。それは先ほどお話のように広域の行政とか、或いは町村地域内だけではできないいろいろな行政、無論含みがあるのでありまするが、ここにもう一ついわゆる国家事務の代行、こういうふうな性格を多く加えるべきものかどうか。この点を伺つておきたい。
#24
○公述人(杉村章三郎君) 私は今こういう警察法案ということを中心としてお話したので、私の意見と見いますか、私の今までやつて参りましたことはむしろこれとは逆の方向でありまして、府県というものはいわゆる自治体としてむしろ強化されるべきものである。こういう考え方を持つておるわけでありまして、従いまして自治体警察府県警察にするならば、府県の本当の意味における自治体警察にすべきである。それでそういう点私ども関係しております小さい研究会では、そういうふうな方向で府県警察ということを主張しておりますけれども、それはこの法案における府県警察ではない、こういう意味の府県警察ではないのでありまして、本当の意味における自治体に与えた自治事務としての警察という、そして又自己の組織によつて府県職員によつてなされる府県警察官によつてなされる警察、そういう意味に申しておるわけでありますから、府県の国家的性格ということにつきましては、実は昨年の地方制度調査会の答申というものにつきましては、私は非常に疑問を持つておるのでありまして、ああいうふうなあいまいな性格では何だかわからないというふうに考えておるわけでありまして、むしろ私の今までやつておりました行き方というのは、そういうふうな国家的性格の事務であつても、府県が若し自力でできることであれば、むしろ府県の事務にしてしまう、そういうふうな考え方でおるわけであります。これは実際上非常に困難な問題でありますけれども、何と言いますか理想というものはそこへ置いて考えておるわけであります。
#25
○小林武治君 わかりました。
#26
○松澤兼人君 只今小林委員から御質問がありまして、この法案は時期尚早であるという御答弁でありました。そうしますと、現在の府県の性格と相容れないものである。或いは将来府県が性格を変えたならば改正警察法というものを実施するのが適当な時期である。従つて現在のままの段階においてつまり府県というものの現在ある状態及び改正警察法が現状のままであるとすれば、もう一つ先の結論は大体反対とお聞きしてよろしうございますか。現在の時期においてこういう警察法なり、或いはこういう府県というものと比べてみて警察を考える場合には、反対と解釈できるように思うのですけれども、その辺如何ですか。
#27
○公述人(杉村章三郎君) 私の申しました前提を御承認下さるならば、私はやはり反対であると言つてよかろうと思います。現在のままでは。
#28
○松澤兼人君 先ほど秋山委員との質疑応答で、都市的な警察というものはこれは存置してもいいということをおつしやつたように聞いたのでありますが、市町村全部に行き渡るような自治体警察というものは、いろいろ財政負担の関係もあり、或いは警察というものは一定規模の実力を持たなければならないというような点からいつて、市町村全部に亘る自治体警察というものは必ずしも賛成ではないが、都市、まあ中郡市と申しますか或いは大都市と申しますか、一定規模の郡市についてはこれはこの自治体固有の事務として警察というものはあつたほうがいいというふうにお聞きしたわけであります、そういたしますと、一定規模以下のものは、大体において警察を運営して行く能力がないからこれを外して、そうして府県の自治体警察によつてこれを補つて行くほうがいい、こういうお考えでございますか。その点……。
#29
○公述人(杉村章三郎君) 私は大体そういう今お話のような意見でございます。
#30
○松澤兼人君 府県と市町村の並立ということを仰せになりました。そうすると警察もそういうような意味において並立ができるのであるというふうに解釈できるわけであります。先ほど秋山委員の質問にお答えになりました中に、警察作用にもいろいろあるというようなことをお聞きしたのでありますが、警察作用そのものの本質から考えまして、府県警察、勿論それは自治体警察でありますが、府県自治体警察として固有の事務と考えられるもの、或いは都市自治体警察として固有のものという警察作用そのものの本質において、一方は府県自治体警察に運営させる、一方は都市警察に運営させるという警察作用の本質それ自体を区別するということはできますか。
#31
○公述人(杉村章三郎君) 私は、本質上やはり区別はできない。やはり都市警察と府県警察を並立させるとすれば、それは地域による区別に過ぎないわけでありまして、本質的には区別できないというように考えております。
#32
○伊能芳雄君 中井さんにお伺いいたしますが、今まで府県警察或いは市町村警察という問題で大分論じ合つて来ておるのですが、現在の段階におきましては、ともかくも私どもは衆議院から送付された改正案を中心として審議しておるわけであります。そこで私、一番中井さんの立場として、中井さんの立場において是非お聞きしたいのは、衆議院修正案の中で、五大都市は政府原案通り廃止するが、一年間その実施を延期する。これについては五大府県の知事並びに五大都市の市長というのは最も私は関心を持つておられると思うのです。その点について余りお触れになりませんでしたが、この一年延期するについての御見解を伺つておきたいと思います。
#33
○公述人(中井光次君) 只今のお尋ねでありまするが、参議院の御審議につきましては、衆議院の修正もさることながら、原案全体についていろいろ御検討もあることと考えましたのと、又且つ私は五大都市大阪の市長であると同時に、全国市長会の会長ともなつておりまする関係上、全国市長会の全市長の公式な決定に基く意見を申上げておつたようなわけであります。で、これはちよつと御質問を離れて参りまするが、先ほどからも御質疑応答がございましたが、全国市長会は都市自治警察を存置してほしい、これは市民と共にそういう希望を持つておるのであります。併しながらその中にはいろいろ皆様方のところに伺つて、個人的な意味においてはこれを欲しないということも申した方もあろうと思うのです。併しこれは主として財政上の理由であります。財政上の理由がこれを許すのであれば、財政的な裏付があるならば、これは全市長挙げての要望であるということを一つ御了承願つておきたいと思います。
 それから規模の問題につきましても、いろいろこれは御研究、我々においても意見もありますし、或いは市長会の中にも意見がございまするが、これは御検討の資料は我々においても幾らでも提供いたしまするから御検討を煩わしたいと存じます。これは御参考になるかどうか存じませんが、お手許に全国の都道府県と五大市別の警察定員、犯罪発生、交通事故、人口調査等、この府県の中に入れまして、御比較の便利にした表を差上げておりまするから、御参考に御覧を願いたいと存じます。なおその都市の人口とか、或いは警察力の規模等につきましては、それと第二表に、人口十五万以上の都市の警察定員、人口一覧表というのを比較して出しておりますから、これを一つ御参考になりますれば仕合せと存じます。
 さて、この衆議院送付の、いわゆる五大都市に自治体警察を一年間存置するという問題でありますが、これについて率直な意見を申上げろということでありますが、これは、私は申上げるまでもなく、衆議院においても非常な長い期間、約三十二回委員会を開催されまして討議されました結果、最後にああいうことに御決定に相成つたのでありまするが、先ほど申しました趣旨によりまして、趣旨を貫く意味におきましては、甚だ遺憾のことと存じます。併しながら今申上げましたように、長い間の衆議院における御研究、あらゆる角度からの御研究の結果であるといたしますれば、私どもはその御研究と御交渉との結果に対して多大な敬意を表するものであります。然らばこれをどういうようにということを率直に伺われたといたしますと、私は、これは一年の間にもつと慎重に研究してもらいたい、これは五大都市だけの問題ではなく、先ほどからもいろいろお話もございました点について、研究はいたしますが、又御研究を願うよすがにもなるのではないかということも希望いたしまするが、併しそうすると、ものが非常に混乱いたしまするから、五大都市だけに関連いたしてこれを申上げれば、私は一年ということでなしに、これは何も無理やりに、先ほどから申上げましたように六年間都市警察を各都市にやらして来て、急激に前の警察法前文を無視したような、単に能率と責任ということだけで警察法を改正するというような行き方じやなしに、この点は穏やかに皆様方において御研究のできる状態において、いずれかの御決定を願いたい。そういうつまり一年ということは、或いは新聞などにもありまするが、いろいろの点で即ちあとを区切つておりまする点で、移行には便利である、即ち本来の改正前の、修正前の警察法をそのまま強行するには便利である。併しながら、都市自治体警察の可否についての議論は相当ある。又いろいろの資料によつて御覧の通り実力もある。何らこう並べて見て不都合がないと私は思うし、又下都合のある点が余り明確に指摘されないと思いまするから、年限を取つて頂きたい。むしろそうしていつでも国会が果してこれが国家のためになる政治の行き方としてこうやることがいいんだ、先ほど杉村先生が学問的におつしやつたようでありますが、或いは学問的ばかりでなくも、実際の状況としても、いつ如何なるときにこれを移行することがいいか、或いは変えるならば変えることがいいかということを、もつと国の行政の行き方として私は考えて頂きたい。然るのにはこの年限を一年と置くことは却つてどうであるか、むしろその時期を国会が御認定になる時期まで延ばして頂くことがいいんじやないかというように考えておるのであります。
#34
○伊能芳雄君 杉村先生に少し教えを受けたいのですが、先ず第一に日本が現在の警察制度、明治の初年に初めて入れた警察制度というものは、いわゆるドイツ式な或いはフランス式なものであつたわけであります。それを更に非常に国家集中的な警察にし上げてしまつたわけでありますが、戦後においては非常に民主化という上から細分化された自治警察ができたのでありますが、その理念はいわゆる英米式な警察制度を入れたわけであります。そこで同じ日本が初めにはドイツ、フランス式の大陸式の警察制度を入れ、終戦後に民主化しようとして入れた警察制度は英米式のものである。そういう二つの流れというものが、どうしても割切れないものが、同じ日本の警察として調和して行く上において何らか割切れないものがありやしないかという感じがあるのであります。そういう点から見まして、日本の国民性に又日本の国情にやや近い、消化し得るものは英米式のものがいいか、或いはフランス、ドイツ式のものがいいか、尤もドイツ式のものと言いましても、戦後の西独で行なつている制度はああいうふうに非常に分割されておりますので、フランスの管理にあるところではフランス流の警察を行い、英米地域におきましてはそれぞれ英国及び米国の式を入れておるという状態でありますが、従つてむしろ大陸式と考えて頂いて、大陸式のものがいいか英米式のものが日本の国情に合うか、この点についても御見解を伺いたい。
#35
○公述人(杉村章三郎君) 警察制度につきまして、従来の大陸流から英米に転換したということ、これはもう実は警察制度ばかりでなく、行政裁判の制度にしましてもいろんな面に、裁判所制度にしましてもいろんな面に現れておるのでありまして、それを如何に調和するかということは私ども学問的にも非常に苦しんでおるところでありまして、警察制度につきましてもたまたまそういう問題があろうかと思うのであります。これを現在どういうふうにしたらいいかという、大陸流にすべきか或いは英米流にすべきかという御質問でありますけれども、これはやはり前の大陸流のもので我々はかなり中央集権的な、又官僚的な警察に従わせられて来たわけであります。そういう苦い経験もありますわけであります。相成るべくはやはり英米流の警察と言いますか、そういう分権的な警察法の制度がいいのではないか、こういうように大体方向としては考えるわけであります。これを併し民衆、一般国民がどういうように今までこれを実行して来たか、又これからどういうふうに発展させるかどうかということは、ちよつと予測ができないのでありますけれども、私どもの考えとしては、やはり民衆警察というものをやはり中心として、それに国家の要請があれば、どうしても治安上こういうことにしなければならんということであれば、それはそういうような方向と矛盾しない範囲で又調和させるようにしてその要求を容れる、こういうふうな方向で行くべきではないか、こういうふうに考えております。
#36
○伊能芳雄君 地方自治法第二条におきまして、地方自治体が云々ということが、第二条の第一号で警察をやるべきこと、このように規定をされておりますが、この地方自治法制定の頃からすでに先生は大分これらの問題に御関係があつたように聞いておりますが、警察を一体自治として考えて、県というような、県のほうの府県自治体に重点を置くか、或いは市町村自治体に重点を置くかというようなことについては、当時から別に自治法制定の頃にはそう予定されたものはなかつたのでございましようか、お伺いいたします。
#37
○公述人(杉村章三郎君) 私は実はその方向はどういうふうになつておつたかということは私は存じませんけれども、だんだんとにかく私は地方行政調査委員会議などをやつておりましたような関係で、やはり法律には、あの法律のときの条項もあとで入つたのでありますけれども、併しその頃の考え方としては、例えば市町村でできるものは市町村でやれ、市町村でできないことは府県でやれ、府県でできないこと、又もつと大きなこと、全国一般的なことは国でやれ、そういうような方向で事務を配分して、そうしてお互いに責任を明らかにするというのが適当であるという方向で大体行つておるわけでありまして、従いまして自治法におきましては、あの第二条の規定におきまして、警察が府県にやれとも或いは市町村にやれとも言つておらないわけでありますが、今までの方向としましては、市町村でできない場合に府県がこれを担当する、こういうふうな行き方であつたように私は観察しております。
#38
○伊能芳雄君 一般的事務についてはお言葉のような経過があつたことも私も伺つておりますが、又この精神もそうであるように思いますが、警察事務というのは、そうしますと、市町村で原則として行い、更に補完的のものを県で行い、更に又大きな立場から国家的性格のものは国で行う、三段階にしますると、これは非常に複雑な警察制度ができ、又重複する点ができて、今日の日本のような苦しい貧乏国としてはとてもそれはやれないと思うのですが、そういう点から考えまして、地方警察というものを市町村を中心にすべきか、府県を中心とすべきかというようなことについての御見解を伺えれば幸いだと思います。
#39
○公述人(杉村章三郎君) 市町村で、これはやはり警察の治安の状態ということと非常に関連して来るわけでありまして、非常に治安が麻のごとく乱れるということになりますれば、これは国家の非常大権と言いますか、非常事態に即する国家警察というものが現在の憲法、警察法の下においても考えられておるわけでありますけれども、併し普通の、通常の治安状態でありますれば、市町村でやれることは警察事務でもやつたらいいのではないか、こういうように考えておるのでありまして、併し現実の問題としましては、市町村殊に町村は大部分警察を放棄しておるわけでありまして、そういうような状況から見まして、治安の状況と照らしてこれは考えて、いわば流動的に考えなければならん問題であろうと、こういうように思つておる次第であります。
#40
○伊能芳雄君 話がいろいろ又飛びますが、府県警察の、この法案によりますと、警視正以上の者は国家公務員になつております、本部長は勿論国家公務員になつており、警視以下の者は全部地方公務員という建前になつておりますが、ほかに例がないことはないと思いますが、警察のようなこういうような制度の下において、制服で非常に組織的なこういう組織の下において、国家公務員が地方公務員を指揮監督するというような建前というものは法制として適当でありましようか、それともそういうことについてはこだわる必要はないものでしようか。
#41
○公述人(杉村章三郎君) 私はお説のようにそれは非常に異例なことだと思います。先ほどもちよつと触れたことでありまして、府県自治体警察自身を国の公務員が指揮して、そしてその責任はどこへ一体行くのだろうかというようなことを考えますときに、そこに一つのこの法案における府県警察の矛盾というものが、法制上の矛盾というものがあるのではないかと思うのであります。これは現在も府県知事に対していろいろな事項を委任しておる、国の事務を委任しておるわけで、その範囲において府県知事も国の機関ではあるのですけれども、これは身分が公選の知事で、府県の事務ということになつておりますから、これはただ委託を受けてやつたということにとどまるわけでありますけれども、その府県警察の中にそういう国家公務員というものを置いて、そしてそれが府県警察をやるということは、これはどうも説明できない、私どもの考えではちよつと説明できないと思つております。
#42
○伊能芳雄君 有難うございました。
#43
○委員長(内村清次君) ほかに御質問もなければ、これで午前の公聴会を終り暫時休憩いたします。
 公述人のかたに申上げます。どうも御多用中長時間おのおの有益な公述を頂きまして誠に有難うございました。この委員会におきましては、貴重な審議の参考といたします。有難うございました。
   午後零時十三分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時四十四分開会
#44
○委員長(内村清次君) 午前に引続きまして、地方行政委員会の公聴会を開会いたします。
 開会に当りまして、公述人として御出席下さいました各位に御挨拶を申上げます。本日は御多用中お繰合せを願いまして、この公聴会においで下さいましたことに対しまして、厚くお礼を申上げます。警察法案は重要案件といたしまして、本委員会におきましては十分国民の各方面からの忌憚のない御意見を拝聴することといたしておるわけでございます。どうか腹蔵のない御意見を聞くことができまするようにお願い申上げます。各位お一人の公述時間は三十分程度にお願いしたいと存じます。公述は求められたこと以外には互らないようにお願いいたします。又公述がみな終りました後に、委員各位から質疑がございますから、御遠慮なくお答えを頂きたいと存じます。
 それではこれから始めることにいたします。全国都道府県議会議長会代表神奈川県議会議長松岡正二君。
#45
○公述人(松岡正二君) 私、只今御紹介にあずかりました神奈川県の議長でございます。全国都道府県議長会を代表いたしまして、警察法の改正案に対する我々の意見を述べてみたいと思うのであります。
 かねてから我々は地方制度の改革に当り、なお、この問題に関しまして行財政の両部門に対し、私どもの意見を主張して参つたわけでございます。特に警察制度の改革につきましては、治安という問題が地方自治の根幹に連なる問題でありますだけに、終始一貫した基本的態度を以て臨んで参つたわけでございます。即ち我々は憲法の精神に従いまして、地方自治の真義に徹するという観点から、飽くまでもその民主的権威を保障すると共に、一方におきましては戦後余りにも細分化し、而も弱体化したところの警察機能の強化と能率化を図りまして、他方におきましては国民の負担を軽減し、窮迫したところの地方財政の確立を目指しまして、でき得る限り経費を節約し、その経済化を図るために現行国家地方警察と市町村自治体警察を廃止して、都道府県単位の自治体警察として一本建にするということを強く主張して参つたわけでございます。要するに中央集権的国家警察の危険に陷ることなく、これを極力排すると共に、警察の機能強化上自治体警察を併せ統合して、広域行政機能を有するところの都道府県単位の自治体警察を設けることが最も適当である。又このようにして初めて警察行政の能率的、経済的、合理的且つ機動的な運営が果されまして、その本来の使命を達成することができるゆえんであることを主張して参つたわけでございます。こうした従来の基本的の態度に鑑みまして、我々は今次警察法改正案の衆議院修正案に対しましては、一、二遺憾な点を除きましては、その基本的方向においては衷心から賛意を表するものであり、且つこれを支持するものでございます。
 以下衆議院修正案に対しまして、我我の所信を申上げて審議の御参考の一端に供したいと存ずるわけでございます。第一に、衆議院修正案と私どものかねてからの主張であるところの府県自治体警察ということの関連についてであります。御承知のように昨年地方制度調査会は地方制度の改革に関するところの答申におきまして、すでに皆様方には御存じの通り、府県の性格として府県は本来その自治事務を処理すると同時に、市町村とは異り、市町村を包括し、市町村と国との中間に位するところの広域自治団体として国家的性格を有する事務をも処理することをその任務とすると、こういう工合に規定いたしてあるわけでございます。当当時私も委員をいたしておつたわけでございますが、私はこの議論は当然のことと存ずるわけでございます。従来ともすればあいまいであつたところの府県の自治団体としての性格をはつきりさせたものとして極めて意義あるものと思うのでありますが、同時にこの明確にせられました府県の性格によつてみましても、警察行政こそまさに府県が担当すべきものであると、かように信じて疑わないものであります。警察行政の本質にはもとより地方々々の地元におきまして自主的に解決せられるべきもの、例えば道路交通の取締でございますとか、青少年の問題であるとか、その他軽犯罪などもあるわけでございますが、同時にその多くの犯罪が広い地域にまたがることも又自明の理でございまして、刑事、警備等治安の維持は迅速にして機動性を要するところの広域行政であり、更に大規模の災害又は騒乱その他緊急事態の特別措置など、その規模の如何によりましては国家的性格の行政であると、かように存ずるわけでございます。こうした本来の自治事務から広域行政、更には国家的性格を有するところの事務をも遂行し得るものは、府県という広域自治団体をおいて他にないのでございまして、実に警察行政こそ府県が行うことを最も適当とする行政であるということを信じて疑わないのでございます。そうしてこれは大都市の所在するところの府県においても何ら例外をなものでなくして、大都市なるが故に特別的処置を講ずる何らの理由も見出し得ないわけでございます。
 又警察法の改正案におきまして、府県警察本部長以下警視正以上が国家公務員となつていること、中央が府県本部長の任免権を持つていること、その他が中央集権的色彩の濃厚なるものとして、この問題につきましては従来より自治体警察としての性格を弱化せしめる懸念がございますので、これが修正を要望して参つたのでございます。勿論警察の任務の中には、公平に見て完全に地方分権に適しないところの面があることは我々も承知いたしておるところでございます。地方自治を本旨といたしまして、併せて国家的な要請に応え、その調和を構成するところの軸をなすものが府県でありまして、府県自治体警察はこの使命に応えるためには、特に人の関係におきましてどのような調整をなさなければならんかということが重大な本問題解決のポイントでなくてはならんと存ずるものであります。然るところ政府原案が「警察本部長は、長官が国家公安委員会の意見を聞いて、任免する。」と、かようにありましたのを衆議院で修正いたしまして、国家公安委員会が道府県公安委員会の同意を得て任免するといたしましたことは、我々といたしましても同感いたすものでございまして、府県警察の自治体としての性格に重要な礎石を置いたものと思うのであります。かくしてこそ都道府県議会が知事の公安委員の任命に対しまして同意を与えることも大きな意義を生ずるのでありまして、府県警察は我々府県議会を通じまして常に住民の批判と監視の下に立つわけでございます。更に警察が住民を代表するところの府県公安委員会に全面的に管理せらるることによりまして、警察の自治化、中立化を図ることができると思うわけでございます。以上のような事情がありますので、一部論者が説くごとく、市町村自治体警察を廃止して府原警察となれば、住民との親近感が薄れるというようなことは全く杞憂に過ぎないと存ずるわけでございます。なお、一部の論者は府県の性格を変更して、府県を以て国の出先機関といたしまして、知事の公選制を廃止して、官選にすべしと、かように説く者があるわけでございますが、これは明らかに現行憲法の精神に反し、地方自治の本旨をみだるものでありまして、我々の絶対に容認し得ないところでございます。従いまして府県警察を以て中央集権の地方牙城とみなし、知事官選への橋頭堡を築くものであるという府県警察反対論も、我々としては甚だ迷惑に存じておるところでございます。我々府県議会といたしましては、逆に府県こそ中央集権に対する防塞であるという自覚の下に、府県警察に対するところの我々の重大なる職責を全うして行こうと存じておるわけでございます。
 次に第二といたしましては、府県警察と大都市の関係について申上げたいと存じます。原案におきましては、大都市警察はこれを廃止して府県一本にするという原則を貫いております。これは申すまでもなく、都心と周辺地区とが全く一体をなしておる関係から見まして、警察行政が社会経済の実態に即応しなければならん以上理の当然でございます。頭脳と心臓と胴体とばらばらにして、全体としての統一的、能率的な警察活動は期待できないわけでございます。然るに衆議院の修正案におきましては、特に大都市警察に限つてその廃止を一ヵ年延長いたしておるわけでございます。何が故にその必要があるのか、私たちの了解に苦しむところでございます。大都市と周辺地区との跛行的、二元的警察運営は百害あつて一利なく、徒らに対立を激化するがごとき結果を招来するやを憂うるものでございまして、却つて大都市と周辺地区なるが故に、これらの関係に立ちまして一日も早くその一元的、立体的運営が緊要であろうと存ずるわけでございます。若しその大規模な機構と人員、施設を擁するが故に、切替のために日時を要するというならば、これは全く理由をなさないものであります。六年前に当時の日本の警察が国家地方警察と市町村自治体警察に僅か三ヵ月の期間を以て全面切替を完了いたしておることを想起いたすならば、大都市の警察といえども切替には三ヵ月の日時を以て十分に足りると思うわけでありまして、明年六月末まで五大市に警察を認められましたことは、県側にとりましては誠に迷惑と存じておるわけでございます。何となれば、今回の改正をめぐつて生じたところの各種の対立抗争を更に一ヵ年継続することになるわけでございまして、問題はなおこれ以上に激化を予想せられるからでございまして、五大市にのみ一ヵ年放置して不安定な状態に置くことは、先にも申上げましたように警察機能が機敏と能率と合理性を使命とすることに鑑みまして、治安の確保にも悪影響を及ぼし、現下重要時期において治安の維持上万全を期するゆえんでないからでございます。これを当神奈川県の例にとつてみまするならば、神奈川県の警察は横浜におきまして大幅に分断せられて、川崎地区における県警察は孤立化することになるわけでございます。かくして治安の盲点を作り、相互の円滑な応援等にも支障なきを保しがたいわけでございまして、京浜地帯として一体をなしておりますところを分断することがそもそも不自然と考えるわけでございます。而も一ヵ年延長の措置は警察行政についてのみならず、五府県と大都市との間におけるところの一般行政につきましても、中途半端な不安定な状態を醸成いたしまして、種々思わしからざるところの事態を生ずることを憂えるわけでございまして、こうした筋を通さない、かりそめの妥協的措置をなすことが悔いを千載に残すことを深く惧れるものでありまして、私は参議院におきまして、この衆議院の修正案が訂正せられまして、五大市の特例を認めないというように強く要望するわけでございます。なお、大都市に関しましては、又衆議院の修正によりまして市警の本部が府県警察事務をも分掌することとなつておるわけでございますが、この特例的制度を設けることはいたずらに機構を複雑化して、府県警察一本化の実を失わせることになりはしないかと、かように危惧するものでございまして、この点はとくと御検討を賜わりたいと存じます。
 第三としては、経費の問題に触れたいと存じます。我々はかねてから地方制度の改革を通じまして、国民の負担を軽減するということ、無駄と複雑を排除してでき得る限り経費を節減し、地方行政の経済化、合理化を図り、窮迫したところの地方財政を再建するということを我々の基本的態度として主張して参つておるわけでございます。今田の警察法改正は端的にこの目的を達し得るものであると確信しております。即ち大都市の警察の廃止によつて、人員において三千乃至三千五百、経費において十五億乃至二十億の節減が可能であり、又全国的には四年間で人員三万を減じ、おおむね九十億に上るところの減額が見込み得るわけでありまして、警察行政の能率化、合理化と共にその経済化を図ることができるわけでございます。これは又都道府県警察に要する経費を国庫直接支弁金と都道府県支弁金の二本建としたことと相待つて地方財政に寄与するところがあり、かねて国民負担軽減の一端に資することができるわけでございます。
 以上警察法及びその修正案に対するところの私の所信を率直に申上げまして御考慮を煩わしたいと存ずるものであります。何とぞ全国都道府県議長会の主張に深い御理解を賜わりまして、本法案は一部修正によりまして一日も早く成立せしめられて、かりそめにも審議未了に終ることのないよう、この点につきましては全国議長会累次の要望でございますので、特にお願い申上げる次第でございます。
 以上申上げまして、私の公述を終る次第でございます。御清聴誠に有難うございました。
  ―――――――――――――
#46
○委員長(内村清次君) 次に、一般応募長野県諏訪郡玉川村八ツ岳中央農場吉見一也君。
#47
○公述人(吉見一也君) 私は一民間人でありまして、警察法というようなものの専門家ではございませんが、改正に関しまして一応の意見を持つておりますので、ここで述べさせて頂きます。
 先ず第一番に申上げることは、この改正案に反対であるということであります。これは従来我々が少年時代から持つておりましたところの警察に対する或る種の恐怖感というようなものは、自治体警察というものができることによりまして、おおむね一掃されまして、大衆と警官との親近感というものが犯罪者にあらざる限りは非常に強くなつております。これは今後の警察の公正な運営を行うについて警察自体だけの問題ではなく、大衆との共同という面に非常に大きな役割を果すものではないかというふうに考えますので、いわゆる自治体警察廃止ということを、従来の自治体警察廃止というような内応を持つた今回の法案に反対するわけであります。
 それから警察法の条項について申述べますならば、第六条にいわゆる国家公安委員長は国務大臣をもつて充てるということは、第一章総則にありますところの不偏不党の原則というものに飽くまでも忠実であり得るや否やということに非常に疑問が持たれまして、これは単に待遇その他の面で国務大臣と同格にするという程度にとどめることが当然だと思います。
 それから第十六条、四十九条、五十条、五十五条というような各条項におけるところの公安委員或いは警視正以上の警察官の任免というようなことについての衆議院修正は、これは公安委員会の存在というものを単に字句的な問題だけでなく、やはり何らかに隷属するというような形の修正だというふうに受取れます。これは例えば第十六条におけるところの警察庁長官の任免については飽くまでも「公安委員会の承認を得て、」修正案通りにするのが当然でありまして、「意見を聞いて」というような生ぬるい態度ではよろしくないと考えております。以下何様であります。
 それからこれは警察の責任ではないとは思いますけれども、現在の治安の状態で見ますと、私のおりますところの村なんかには国家警察の巡査が一人駐在されておりますが、まともに盗難事件その他の事件が解決したことは未だ曾つてないというような状態でありまして、軽々しく人員を整理するという、或いは財政負担を少くするというような意味だけで警察制度を改正するということは十分考えなければならない問題だと思います。大都市においては相当数の警官を擁しておりますので、まだまだそんなことはありませんが、末端の町村に参りますと、非常に面積の広い所をたかだか一人の警官を以てしては如何ともしがたいというのが実情でありますから、単なる形式的な人員整理というような問題だけでこういう法案を提出すること自体が誤りであるというふうに考えます。
 今申上げましたような技術的な、或いは具体的な問題もございますけれども、要は国民の警察に対する親近感というものを失わしめるような形の警察制度の改正というものには反対であるということを最後に申上げて、終りたいと思います。
  ―――――――――――――
#48
○委員長(内村清次君) 次に、都道府県公安委員会連絡協議会代表土井彦一郎君。
#49
○公述人(土井彦一郎君) 本日は参議院地方行政委員会の御主催の下に開かれました、警察法案ほか一件についての公聴会に出席いたしまして、国警側より公述人として意見を述べる機会を与えられましたことは、私どもの深く欣快といたすところであります。
 只今お手許に差上げました順序書のように、問題の種類に基きまして、次の六つの表題に分類して順次申上げたいと思います。
 第一は、大都市の治安維持の完璧を期する条件について、第二は、国家公安委員長に国務大臣を充てるの可否について、第三は、任免権問題について、第四は、管区本部の存置について、第五は、警察法案に対する学者の論説について、第六は、現在の警察官に対する立法者の認識是正について、以上六点であります。
 先ず第一の課題について申上げますると、大都市の治安維持はその衛星市町村やその周辺の地域を一つのまとまつた行政管轄内に含めて行うことによつて、警察機能と能率の見地から初めて完璧が期せられるのであります。この事実を実例を以て立証するために、一、二の先進国の大都市警察の過去と現在について考察して見たいと存じます。例えばロンドンの警視庁の管轄区域は現在約七百平方マイルの広大な地域に亘つておりまして、チエアリングクロスから十五マイル四方に及んでおります。そのためロンドン県のほか実に五つの県にまたがり、多くの市町村を含む大地域が一つの治安単位で警察行政が行われておるのであります。七百平方マイルと申しますと、日本の場合では大阪、京都、名古屋、神戸、横浜の五大市の面積全部を合計いたしましても六百九十平方マイルでありますから、五大市全部を合せた面積よりもなお十平方マイル広いのであります。そうして今日のロンドン市民は市の治安の完璧さを非常に誇りといたしておりますが、それでは当初からこんなに広大な都市警察であつたかどうか、又はこの大都市の治安は昔からこんなに完璧であつたかどうかと申しますと、決してそうではなかつたのであります。只今の一単位の大警察制度は一八二九年のピール条例によりまして創設せられたものでありまして、それまでの警察は有名な警察学の世界的学者であるレイモンド・ビ・フオスヂツクの著書によりますと、こういうふうに表現されております。多数の小単位の独立した自治体がおのおの能力の違つた警察力を持つていたのであり、そのためにロンドンの犯罪状態が各警察の相互に抵触する権限の下にますます悪化するのみであつたので、その救済がどうしても必要になつたのであると申しております。かくのごとくであります。
 さて、警察行政は理論ではなく警察事務という実際の生きた行政事務の一つであります。先進国が辿つて参りました過去の実際の経過から考察いたしまして、それらと比較いたしまして何年か遅れておりまする我が国のこの分野の前述を考えて頂くことによつて、御判断願いたいと思うのであります。今日日本の東京の警視庁を除いた他の五大都市の警察存置を主張せられます各位が、その衛星都市や周辺の地域の存在を除いたその一つの市そのものに限つての狭い孤立した一地域のみの警察行政を主張せられますのと考え合せて、けだし思い半ばに過ぎるのであります。その他警察官定員の合理化、施設装備の重複の是正等々、現在の日本の国情が強く要請いたしておりまする行政簡素化を目標とする面からも、一切の都市を含めた府県単位の警察の実現を要望するものであります。
 第二の課題は、国家公安委員長に国務大臣を充てることの可否であります。政府原案中第六条の、「委員長は、国務大臣をもつて充てる」案についての意見を述べます。次の第七条に、「委員は、警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴のない者のうちから、内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する。」云々とあります。現行法の第五条第二項にもやはり同趣旨の規定が設けられておりまして、この種官吏の前歴のある者の就任を法は禁じておるのであります。すでに前歴のある者すら法は排除しておるのでありますから、国務大臣のごとき現職の官吏から委員を求めるがごときは現行法と比較して又何をか言わんやであります。殊に警察の本質上如何なる政治勢力にも侵されることのない警察の公正中立性を確保することが基盤である以上、この案が立法当初の警察法の根本精神と一応矛盾対立することは申すまでもないのであります。なおこの案の弱点は、法的には矛盾があるということであります。その第一の理由は、国家公安委員会は現行法第五条によるまでもなく五人の委員から成る会議制の機関であるということであります。由来国務大臣は大臣である本質上一切の政治責任を持たなければならない、そして大臣が委員会の委員である場合に、若し委員会が或る課題について不同意である場合に自己の責任が果されないのではないかという一応尤もな法的論拠が生ずるのであります。併しそういう法理論は暫く別にいたしまして、実際面からこの案を検討してみたいと存ずるのであります。由来イデオロギーと実際が衝突いたす場合には、英国人はいつも平気でイデオロギーを一時棚上げいたしまして、スムースに現実の政治を上手に行うあのやり方を学びたいと思うのであります。第一に公安委員会制度は元来警察の行過ぎに対する輿論の反映機関である以上、たやすく権力の前に屈服することは考えられないのであります。加うるに国家公安委員は人格高潔、卓越した識見を持たれる方々でありますから、たとえ委員長が大臣だからと言つて他の委員がそれに引きずられるようなことは絶対にあり得ないことと信ずるのであります。私は過去の実際の経験からこの点を断言し得るものであります。この案が実現いたしますれば、政治的又実際的に左記の利点があると思うのであります。この前の政府の原案中にあつたごとく、警察庁長官に大臣を配し、以て治安の責任の所在を明確にしたいというあのとんでもない時代逆行的な案に終止符を打つことができるのみならず、更に一歩前進いたしまして、形を変えて政府原案の意図の実現に妥協し得ることもなるのであります。将来どの政府かによつて立案されるかも知れない前述のような最悪の意図に対し、永久的に終止符を打つ上において消極的でありますが、併し重大な役割を果すものと信ずるものであります。昨年春、第四次吉田内閣によりまして、当時の国会に提案になりましたこの案が如何に時代逆行的なものであつたかということを御参考のために一言附言いたしますと、国務大臣を以て警察庁長官に充てたあの代表的な異例は、一九二二年に創設された世界周知の残忍なるソヴイエトのゲ・ぺ・ウの秘密警察であつたのであります。ゲ・ぺ・ウは我が国の戦前の憲兵と警察とを兼ねたようなものでありまして、初代の長官のジエルジンスキーは国務大臣級であり、忠実なるソヴイエト政府の耳目として国内治安の維持に、革命擁護に、政治犯逮捕に活躍し、その勇名、否悪名を世界に馳せたのであります。然るに一九三六年、この凄味のある、泣く子も止むというゲ・プ・ウという名称も公には廃止せられたということであります。言葉を換えて申しますれば、共産国家ですら十八年以前にやめてしまつたような独裁的な制度を自由国家であるどこかの国が昨年新たに採用しようとしたということを我々は深く銘記して、かような傾向を有する種類の案を未来永久に葬ることにいたしたいので、このたびの案の実現を以てかくは終止符を打つということを特に申上げたのであります。
 次に私どもが一両年来強く要望して参りました、国家公安委員会が実際の内閣の治安最高会議に参加すべきであるという要望が結果において解決され、公安委員会の趣旨を政治的に反映することができるという非常に大きな利益が生ずるのであります。なお、ここで考え落してならないことは、従来の情勢から判断いたしますと、政府は警察法がたとえ改正になりましても、治安の最高会議に果して公安委員の参加を許す、参加を求めるや否や、恐らく然りと答える人は少いであろうと思うのであります。それがためそういういわば行政委員会であるべき公安委員会の致命的欠陥を法案第六条が満してくれると存じておりまして、私どもは将来に大きな期待をかけるものであります。即ちそうすることによりまして、政府と公安委員会両君相互の理解を深めるという利点があり、これは国家の治安行政上図り知るべからざる大きなプラスとなると信ずるのであります。公安委員会及び警察当局の意向や要望が直接且つ遺憾なく政府当路者に反映し得る途が開けること、その結果予算獲得やその他事務万端がスムースに運び、且つ利便が頗る多いと思うのであります。以上は当面の改革案についての一部の私見でありますが、公安委員会制度を永久に維持するという一層高い根本的観点からも本案の実現は絶対に望ましいと信ずるものであります。然らば一属高い観点からとは何でありましようか、その理由を左に申上げます。
 民主主義警察のバイブルとも申すべき現警察法の全法規は、殆んどが公安委員会の規定か、或いは少くとも公安委員会に多少とも関連のあることを規定しておるものであります。従つて民主主義警察制度と公安委員会制度は理論的に申上げますれば目標と手段であり、両者は二にして一、一にして二という緊密なる関係の下にあるのであります。然るに実際の運営の面においては如何でありましようか。一言にしていえば頗る遺憾なき能わずという状態であります。制度改革以来、政府は公安委員会を国家治安の最高会議に招聘したことは余り聞いておらないのであります。否一回もないのではなかろうかと私は思うのであります。その責は一部は公安委員会にもあることは認めざるを得ませんが、これでは公安委員会無用論の出るのも又止むを得ないのではないでしようか。よろしく公安委員会は行政委員会であるというこの警察法の立法精神に基きまして、政府に対し、国家治安の最高会議に当然参加さすことを積極的に且つ法的に要求すべきではないでしようか。国家治安の維持は政治の最も根本的な重要なる分野であります。而して民主主義の所産である責任内閣制度の精神から見まして、国家治安の最高にして最終の責任者は時の政府でなければならないのであります。然るに政府が招かないのか、或いは公安委員会が無関心なのか、そのいずれにいたしましても、政府と公安委会員と現在のごとく別々の存在であつてはならいのなであります。若しこの情勢が続くなれば、いつかは公安委員会制度が現実の政治から当然に締出され、無用なるものは消滅するという進化論の法則によりまして、将来制度としての存在理由を失うということになることは火を見るよりも明らかであります。又実際の政治面におきまして、国家公安委員に時の政府の大臣を加えることは、国民の総意によつて新たに成立したる政府が、治安行政に関する自己の政党の政策を行う上において利便が多く、且つ妥当でもあると信ずるものであります。これは政府と公安委員会の両者の協力の面において、治安行政面において大きなプラスとなるばかりでなく、国家百年の計としてなお一層高い見地から我が国の公安委員会制度を永久に保持育成する上から最も望ましく、且つ日本の政治の現在の段階から見て適当なる措置であると信ずるものであります。換言いたしますれば、本案は民主警察の要となると共に、よい意味における公安委員会の保身術となるでありましよう。最後に付言いたしますと、この案は理想的とは言えないのであります。併し余りに高遠な理想は現実を指導する力を持ちませんという意味で、肯定するものであります。以上の理由と見解から、私は政府のこの案に賛成するものであります。
 第三の課題は、任免権の問題であります。これは先ほど松岡神奈川県議長が述べられたのでありまして、大体趣旨が同一でございますから、この点は時間の関係上省かして頂きます。
 第四の管区本部の存置について、政府の原案を通読いたしますと、現行法の警察管区本部の規模と比較して大分簡素化されておるようであります。この点は私ども公安委員といたしまして大変遺憾なことであります。その理由といたしまして、管区本部の存在理由を私は次のように挙げたいのであります。公職選挙法取締についての統一機関であるということ、警察の中央集権化が計画されておる際、多かれ少かれ将来このような傾向、又これが実現化は免れがたい。その際に公職選挙法取締について中央一本化の取締方針の下に執行されることは政治的に回避すべきばかりでなく、技術的にも困難であると存ずるのであります。数県に跨る場合に、各管区ごとにこれが取締に当る従来の方針が最も効果的で且つ適正であると信ずるのであります。第二は、破壊活動団体の軍事活動に対処するため不可欠の機関と信ずるのであります。第三は、旅行的犯罪等の広域化に伴う必要であります。第四は、大規模な災害発生時の緊急対策機関として必要であります。その最もよい例は、最近の九州、近畿の水害であります。第五は、警察通信のセンターであります。第六は、関係機関との連絡協調のため必要であるということであります。第七は、最後に過去の体験から考察しまして、管区本部の存在が管区内の公安委員会の活動のため、相互間の連絡協調の上に如何に輝かしい成果を挙げたかということは、すでに十分実証されておるところであり。最も大きなる褒辞を以てしてもなお足りないのではないかとさえ考えるのであります。この点は他の管区も恐らく同様と存じますが、国警、自警の両者の公安委員会から結成されております東京警察管区内の公安委員会連絡協議会というものがなかつたら、到底今日のごとき公安委員会に対し、法が要請する成果を挙げ得られなかつたのじやないかと私は懸念する一人であります。以上七つの理由から管区本部は政府原案のごとく簡素化することなく、むしろますます充実発展することを要望するものであります。
 次の第五の課題は、警察法案に対する学者の論説についてであります。私は警察に関し権威ある学者、専門家の発表されまする見解や、新聞紙上に掲載される論説に大なる関心を持つて通読することによつて常に啓発されておる一人であります。而していつも感謝しつつあるものでありますが、以下の意見は、一公安委員の意見であるという謙虚な気持で感じたままを率直に申上げるのであります。先般某新聞紙上で某氏の次のような論文を拝見いたしました。「法案を一読すればすぐわかる通り、警察庁長官の権力は非常に強いものになつている。問題の核心はそこにある。」中略、「換言すれば全国十数万の警察官は、警察庁長官の指揮のもと、一糸みだれざる行動をとり得るものである。かくのごとき権力の集中はナチスドイツのヒツトラーの下におけるヒムラーの場合か、或はソヴエトロシアのスターリンの下におけるベリヤの場合等に匹敵するもので、民主政治をやつている他の欧米諸国においてはその例を見ないし、我国においても専制政治の時代なればいざ知らず、われわれの時代には空前の事である」云々。又、前略「戦前の警保局長など比べものにならぬほどの強い権力を持つことになるのである。そのわけは警察庁長官は、道府県警察本部長の任免権を持つている。法案にはこの場合公安委員会の意見を聞くこととなつているが、必ずその意見通りにせねばならんわけでないのだから、警察庁長官は公安委員会の異議を無視して道府県本部長を任免することが出来る。」云々であります。論者の御説は戦前の警察が治安維持法、治安警察法、行政執行法言論出版取締法等が施行されておりました時代の社会環境における考え方でありまして、戦後の、殊に今日の環境とは全く異つております。率直に申しますれば、今日の警察活動の指針となりますものは、警察官の職務執行法と刑事訴訟法の二つよりないのであります。又論者の御説は、公安委員会の無気力と無能力を前提として初めて成立するものであると思うのであります。国家公安委員会には国務大臣を委員長とするほかに、五人の公安委員が長官の活動を常々監視しておるのであります。又一方府県のほうにも三人乃至五人の公安委員から結成される府県公安委員会が存在しておる。これが全国で百五十人以上の委員が控えておるのであります。故に決して論者の懸念せられるような警察行政を長官ができるはずはないと信ずるものであります。今仮に数ある公安委員の中でありますから、何名かそういう職責を果し得ないと無能力な人物がおつたとしても、それは決して制度の罪ではないのであります。公安委員会へのかかる信頼は、私自身の過去の体験から確信を以て申上げることができると思うのであります。いやしくも公安委員会が厳存しておる限り さような懸念は絶対に御無用であると断言することができるのであります。行政管理権を持たなかつた今までの府県の公安委員会でも、従来相当な活動をして参りましたし、かなりの業績を挙げたと信ずるものであります。新らしい法案の成立によつて公安委員会は行政管理中の最も重視される人事権の一部を持つか、少くとも人事問題に介入できる以上、私ははつきり繰返してさような御懸念は有能且つ良心的なる公安委員会の存在する限り御無相であると申上げて、本題を結ぶものであります。
 最後に第六の課題といたしまして、現在の警察官に対する立法者の御認識を改めて頂きたいという要望を述べまして、私の公述を終りたいと存じます。
 昭和二十三年の春、私どもが公安委員に就任いたしました当初のことでありますが、警察法というものを初めて通読いたしましたときに、何だか割り切れないという印象を受けた一、二の点に気付いたのであります。その一つに、先ず法第一条の第二項に「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限らるべきものであつて、」中略「その権能を濫用することとなつてはならない。」とある点であります。これはいわゆる一九四七年九月十六日付のマ元帥書簡中のあの歴史的な考え方に基いた立法であります。警察がその権力を濫用してはいけないということは警察行政に当つての世界の共通的通念であります。ひとり日本のみならず、世界のあらゆる国家の警察行政に当つて普遍的に適用されなければならない大原則であります。然るにこんなわかり切つた幼稚な、いわば啓蒙的な、或いは少くとも教訓的な原則をわざわざ一独立国家の警察法の冒頭に入れなければならない理由はどこにあるのでありましようか。又それほど日本の警察は過去において不当な権力を用濫していたでありましようかどうか。私は当時この法文を前にして思わず眼をみはり、息を呑んだものであります。これは日本の警察が過去に行なつた罪悪の事実を警察法の冒頭に掲げることによつて、一つは過去の罪の償いとし、一つは前車の轍を踏ませない後車への戒めとしたのでありましようが、同時に明らかに戦勝国が戦敗国に課した一種の烙印とも称すべきものではないでありましようか。いずれにいたしましても、日本の警察にとつてこの上もない不名誉な規定であります。この種のいわば贖罪的な規定は、ひとり警察法中のみならず、アメリカ占領国軍によつて立法されました他の法律にも見受けられるのであります。
 余談ではありますが、丁度警察法の場合と同様でありますから、一つの例を引用いたしますと、日本憲法第九十八条にこういう条項があります。「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とあるのであります。併し条約や国際法を守ることは、国際法上否人類の道義上、国家の基本的義務の一つでありまして、ひとり我が国のみならず地球上のあらゆる国家に普遍的に適用されなければならない国際上の大原則であります。今立場を変えてこれを個人の私生活に当てはめて言い換えますると、お互いに約束したことは誠実に守らなければならないということになるのであります。然らば何故に日本憲法にのみ特にこんな普遍的な大原則を掲げなければならなかつたかと申しますと、それは申すまでもなく、日本が満洲事変以来、条約や国際法を無視して侵略を逞しゆうしたという、あの一連の背信的な歴史的事実が占領軍司令部の憲法起草委員を動かした結果としか考えられないのであります。果して然らば、憲法第九十八条は、日本が条約違反を行い、国際法違反を行なつた事実を国家の最高法典である憲法の正文を以て公式に証明するに等しいものでありまして、日本国民にとりましてこれよりも不名誉な規定はあり得ないのであります。警察法についても同じことが言えるのではないでしようか。私は、警察法第一条第二項の規定も、過去の日本警察が犯した行き過ぎに対する強い反省の要望であることを認めるものでありますが、併しその故に警察の機能まで限定されるに至りますれば、いわゆる角を矯めて牛を殺すことになると思うのであります。現在戦前と比較いたしまして遙かによくなりました警察官を再認識して、立法に当つて緩和して頂くことを特に今日諸先生にお願いいたす次第であります。殊に警察法第一条第二項の規定は、まだ世上の批判の的となつておりませんが、警察の活動に関する解釈は、過渡期における国際的政治情勢の圧倒的影響を受けておりましたと同時に、戦後の偏つた国民一般の思想も多分に反映しているものであります。これらの被占領下特定の時代制約のもつ行き過ぎの制度を是正し、以て現在の我が国情に則した新らしく且つ妥当な見解をとり、警察の機能を十分に発揮せしむることは、機構改正と同時に並行して必要であると信ずるものであります。回顧いたしますれば、戦争前の特高警察は思想統制等の名の下に、警察が往々善人を圧迫いたしました。これ終戦と共に警察法が改正された理由の一つであります。然るに、終戦後八年有余を経過した今日、戦後過分に放任したために、このたびは民間の悪人が善人を圧迫するようになつたのであります。例えば一部のあいまいなる特殊金融業者又は悪質なる新興宗教家が善良なる一般人を搾取しているごとくであります。この社会は進展して参ります。然らば警察も又前進しなければならないと思うのであります。そして社会の進展が社会各領域相互関係の複雑化を伴うものならば、警察がその治安維持の対象を社会各領域へ拡げねばならないことは当然であります。人或いは、然らば警察は全社会の中へ埋没し消滅し去るであろうと申します。併しかかる誤解は、およそ社会の機能と領域との全く異なつた二つの概念の混同より生ずるものであります。例えば、警察が肺病の病人に整形手術を施すとすれば、これは医術的領域への侵害であります。併し、インチキな肺病新薬の賄賂による国立病院への売り込みを看過するとすれば、これは警察的機能の不活動であり職務の怠慢であります。警察は社会の全領域へ関係せねばなりませんが、併しそれは社会の治安維持というただ一つの機能を通じてのみ社会の全領域へ関係すべきであります。若し警察がいわゆる従来の警察プロバーの仕のみを以て自己の職責なりと判断するならば、けだし高度文化社会における警察機能は一大掣肘を受けるでありましよう。若し社会各領域への滲透を拒否するとすれば、その機能は完全に停止すると言つても過言ではないのであります。社会の各領域の限界領域として、今日の我が国では到る所に真空地帯を現出しております。この真空地帯こそ知能犯の好個の繁殖地帯であることは、最近保全経済会をめぐつての大蔵省と法務省との責任転嫁問題が鮮やかに象徴しています。とすれば、かかる真空地帯こそ治安維持、擾乱発生地帯として、むしろ警察機能にとつての専門的固有領域と言わなければなりません。それには、改正警察法の立法に当られまする諸先生は、従来の領域的解釈を捨て去り、新たにその機能的解釈を採用して、これが運営を大幅に拡大せられたいのであります。それがために、改正警察法規の立案に当られまする御当局におかれましては、この点に十分なる思いをいたされ、警察の活動に関する責務の範囲について更に更に新らしい見解を以てせられまして、以て第一線に活動する警察官をして現在の我が国情に則したる万全なる取締が可能になるように要望いたす次第であります。
 終りに臨みまして、長い間御清聴をこうむりましたことを深く感謝いたしまして、私の不束かなる公述を終らして頂きます。
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#50
○委員長(内村清次君) 次に、全国自治体公安委員会連絡協議会代表神宅賀寿恵君。
#51
○公述人(神宅賀寿恵君) 私は只今御紹介にあずかりました、全国自治体公安委員会連絡協議会副会長、大阪市公安委員長の神宅賀寿恵でございます。
 このたび参議院地方行政委員会において警察法案の御審議をなされるに当りまして、自治体警察側の意見を開陳する機会をお与え下さいましたことは、誠に感謝に堪えないところでありまして、ここに衷心よりお礼を申上げる次第であります。
 さて、私がお聞き取り頂きたいと存じますことは、大別して二つの点に要約されるのであります。その第一点は、今次の警察法案に対する反対の論拠と理由を明らかにすることであります。第二点は、自治体警察側が警察制度の改正について如何なる考え方を持つておるかということであります。以下簡単にその要旨を申述べさして頂きたいと存じます。
 先ず第一点の今次警察法案に対する反対意見について申上げます。憲法及び行政法の専門家でない素人の実務者が立法府においてかようなことを申上げることは、僣上の沙汰でお聞き苦しいことと存じまするが、暫らく御清聴をお願いいたします。この警察法案はその根本において憲法違反であると存ずるのであります。若し仮に然らずといたしましても、憲法の精神に背馳するものであることを確信するものであります。即ち民主主義を国家統治の基本理念として採用し、地方分権を政治と行政の根幹であることを認める限りにおきましては、警察制度も又当然に民主的且つ地方分権的でなければならないと存ずるのでありまして、日本国憲法はその第八章に地方自治に関する規定を設け、地方公共団体の組織運営と機能に関する基本的保障を明確にしておるのであります。その第九十二条には「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律で定める。」ことを規定し、地方公共団体の組織や運営に関する事項はすべて法律で規定すべきこと、及びその法律制定の理念は地方自治の本旨に基くべきものなることを併せて明示しておるのであります。而して更にその第九十四条におきましては、「地方公共団体は……行政を執行する権能を有し……」と規定して地方公共団体の行政執行権を保障しているのでありまして、警察権行使の権能も又当然にこれに包含されておるのであります。又この理念に基いて制定されました地方自治法は、その第一条において「この法律は地方自治の本旨に基いて……地方公共団体における民主的にして能率的な行政を確保すると共に、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的」とすることを明記し、且つその第二条においても、市町村の固有事務として「地方公共の秩序を維持し」との条項を規定し、よつて以て市町村の警察維持の責務と権限は、市町村であるが故に当然に固有するものであることを明らかにしておるのであります。更に現行警察法はその前文において「日本国憲法の精神に従い」「地方自治の其義を推進する観点から」「国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て」警察法を制定するものなることを厳粛に規定しているのでありまして、我が国における警察組織はその基本において民主的且つ地方分権的であるべきことが不動の原則でなければならないと思うのであります。然るに、今次の警察法案は、第一義的地方公共団体である市町村の警察維持の権能を根底から抹殺して、単に行政区域としての府県を単位として警察を設置し、人事権を通じて中央集権的警察国家を企図するものと認められるのでありまして、かくのごときは憲法及びこれに基く組織法の諸原則に違反するものと断ぜざるを得ないのであります。かかる見地からいたしまして、今回の改正法案において市町村警察即ち都市自治体警察を全廃して、極めて性格のあいまいな府県警察に統合せんとすることは、私どもの断じて認容し得ないところであります。而も後にも述べるがごとく、人事権を中央に掌握して一元的な警察運営をなさんとする狙いを持つ今次警察法の改正は、やがて又警察国家再現の旧弊に堕するにあらざるやを深く恐れるものであります。
 次に、今次警察法案による警察制度は、政党警察になる慮れを多分に包蔵している点を指摘したいと存じます。そもそも警察の政治的中立性を確保いたしますることは、正常な民主政治を図る上に不可欠の要素であると存ぜられるのであります。然るに今次の警察法案によりますれば、国家公安委員会の委員長には時の政党内閣の閣僚である国務大臣がこれに当り、この委員長を中核として運営せられる国家公安委員会が内閣総理大臣の承認を得て警察庁長官を任免し、更に警視総監及び道府県警察本部長の任免も又その主体性を国家公安委員会が掌握することになつておるのであります。この点につきましては、当初の政府原案に比して一見民主的要素を加えたかの感を与えているのでありますが、実体はやはり人事権が政党を母体とする政府に直結しておると認められるのでありまして、依然として政党警察乃至は政府の警察になる虞れを多分に蔵しているのであります。警察の政治的中立性を確保し、民主的管理の保障を確立いたしますためには、中央地方を通じまして、警察を政権から遮断し、人事権を含む警察の管理権を住民の代表者のみを以て構成する公安委員に委ねるものでなければならないと信ずる次第であります。
 更に申上げたいことは、国家的治安対策として制度の中央集権化を図らんとすることは甚だしき誤謬であると存ずる点であります。政府及び国警当路者は国内の暴力的破壊活動の現段階に照応して、警察制度改正の必要性を強調しておるのでありますが、かくのごときは国内治安の現状認識において必ずしも正鵠を得ていないと思いまするし、又これらの宣伝も何らかの意図に基くものがあるかに疑わざるを得ないのであります。のみならず、予想される治安状況に対処する方策として、警察の中央集権的統一を考えることは、その根抵において重大な誤謬を侵しているものと認められるのであります。周知のように、これら不法分子はその重要な戦術として警察と民衆とを離反せしむるためあらゆる方策をとつておるのであります。このことは暴力的破壊活動に際し、権力機関から国民を孤立させ、或いは傍観者たらしめようとするものであることは言うまでもないのであります。警察はもとよりこれらの活動に対して国内治安保持のために、万全の用意をいたすべきことは当然であるとは言え、究極するところ、民衆の支持と協力を得ずして治安維持の全きを期し得られないことは言を待たないところであります。而して民衆の支持と協力を得るためには、警察が常に民衆と密着し、親愛されていることが不可欠の要素でありまして、このことが一朝有事に際して最も強力な治安体制であると確信するのであります。このためには地域社会を同一にし、日常活動において常に民衆に密着して運営せられる民主的自治体警察こそ最も理想的な警察制度と言い得るのであります。警察の中央集権化は、暴力的破壊活動の育成培養にこそ役立て、治安対策としては最も愚劣なものであると確信いたす次第であります。
 次に第二の点について申上げます。現行制度が布かれまして六年有余に相成るのでありますが、この間終戦直後の未曾有の混乱期に対処いたしましても、都市自治体警察はよくその機能を発揮して国民の負託に応えて、今日一応安定した治安情勢に導くことを得たのでありまして、これらの自治体警察の涙ぐましい努力とその成果を全然無視して、単に自治体警察は無能である、又非能率であると片付けられますことは、私どもの誠に心外に堪えないところであります。併しながら私どもといえども、現行警察制度が完全無欠のものであり、毫も改正の余地のないなどと豪語する気持は少しもないのでありまして、むしろ謙虚な気持で現行制度への反省を加えつつあるのであります。
 以下私どもの警察制度改正に関する意見を率直に申述べたいと存じます。その一つは、都市自治体警察は飽くまで存置する。但し存置を希望しない都市は住民の意思によつて警察を置かないことができるよう法律の改正を行うべきであるということであります。前にも述べましたように、私どもは憲法の精神、地方自治法及び現行警察法の精神よりして、都市自治体警察を本則として警察制度が布かるべきものであることを主張するものであります。併しながら市町村警察の中には現実には財政その他の関係から警察維持に熱意を喪失しておるところがあることも事実でありまして、かかる現実に即し、警察の存廃を一片の法律を以て一挙に決定するのがごとき手荒な処置を避け、飽くまでも民主的且つ漸進的に民衆の意思によつて警察の存廃を決定せしめ、いわゆる適者生存の法則によつて落着くべきところに落着かしめることが民主的政治のあり方ではないかと存ずるのであります。
 その二つは、都市自治体警察の職員の身分はすべて地方公務員とし、警察長の任免は中央の意見を聞いて、都市公安委員会が行うものとすべきであるとの改正意見であります。都市自治体警察職員の身分が地方公務員であるべきことは当然のことでありまして、若し職員の身分を国家公務員とし、警察長などの任免を中央で行い、人事権が中央機関によつて掌握され、或いは中央の強い影響下に置かれるならば、警察の性格が外形上自治体警察の体裁を備えていても、その実体は中央集権的な国家警察になる虞れが多分に存するのでありまして、断じて許容すべきでないと存ずるのであります。民衆に繋がり、民衆と苦楽を共にすべき警察職員の身分はすべて地方公務員とし、人事はそれぞれの都市公安委員会の管理するものでなければ、完全なる自治体警察とは言い得ないと思うのであります。併しながら警察長の任免は極めて重要なる人事でありますから、中央の人事に関する全般的な配慮などからする意見をとり入れることは人事を慎重にするゆえんでもあり、これを独断的になすことなく、十分中央の意見を聞いて実行するようにいたしたいので、この点の改正を望むものであります。
 その三は、特定の国家的事案については自治体警察は中央の指揮監督を受けるものとし、これに従わない自治体警察の警察長に対しては、その自治体公安委員会に対し中央は懲戒罷免の勧告権を持つものとするよう、法の改正をなすことについてであります。暴力的破壊活動その他いわゆる国家的事案につきましては、事柄の重要性に鑑み私ども自治体警察側におきましても格別の関心を持つところであります。併しながら地域的に限られた都市警察におきましては、ときに事案の全貌の把握の困難な場合も予想され、従つて広地域における取締のためには常に全体の動向を察知せられる中央の指揮下に置かれることが適切な措置であると思うのであります。かかる見地からこの種限定された事案の範囲内においては、自治体警察は進んで中央の指揮に従うべきものであることを提唱し、若し万一中央の指揮に従わないような警察長があるときは、その警察長の罷免勧告を中央から地方の公安委員会になし得るよう措置して、中央の指揮権を確保し、以て特定の国家的事案に対する警察取締の実効を期するよう法の改正を望む次第であります。
 又今回の警察法の改正の狙いとして人員整理のことが挙げらているのでありますが、我々自治体警察の側におきましても、地方財政の緊縮に協力するため国家地方警察の例に準じ、治安の状況を勘案しつつ順次適当な整理をなすことを発意しているのであります。警察法改正の過程に徴しまするに、政府におかれては自治体警察に犠牲を強い、制度の改革によつて行政整理の目的を達しようとする意図あるやに見受けられますことは、誠に遺憾に存ずるところであります。
 最後に今回の警察法改正の目的は、警察運営の能率化を図らんとするにあると言われるのであります。私どもはいろいろな毎度からこれに対する批判を持つのでありますが、ここでは給与措置の一点からして形式的な府県警察への統合によつては、到底警察の能率的な運営が期しがたい理由を端的に指摘いたしたいと思うのであります。法案による給与措置では現在の自警職員、国警職員共に不満を生ずると認められるのであります。改正法等によれば、都道府県警察職員の給与は警視正以上の階級については一般職の国家公務員と同様とし、地方警察職員に対しては国家公務員である警察庁職員の例を基準として都道府県条例で定めることになつているのでありますが、現在の自治体警察の給与の実態から見て、新制度になつた場合自治体警察職員に対しては押しなべて相当大幅な基本給の引下げが行われるであろうことは必至であります。そこでかかる措置によつて手取額の減少を来さないために、現在の俸給を基準として新本給との差額を調整手当として支給することとしているのであります。然るにかかる措置によつては、先ず第一に自治体警察から転移する職員が不満を持つことを考えなければならないのであります。即ち自治体警察から転移した職員の手取月額は相当長期間据置にされることは必至であります。前述いたしましたように、現在の俸給を基準にしてこれより相当低い新本給を定めるのでありますから、新本給に格付けされた後に昇給しても、それは調整手当が昇給額だけ本法に繰入れられるのみであつて、手取額の増加は相当長期間望めないのでありまして、必然的に士気の沈滞が予想されるのであります。又恩給退職金等の算定が著るしく不利となるのであります。自治体警察から転移した職員のうち、上級の幹部、永年勤続者等にあつては新制度において今後長期に亘る在職は実際上困難が予想され、現在の俸給に達しないうちに退職を余儀なくされる者も相当多いことが予想されるのであります。かくては恩給退職金等の算定は現在よりも著るしく不利となり、営々として半生を警察に捧げた警察職員としては遺憾なことと言うべきであります。
 以上は、自治体警察職員の場合であるが、立場を変えて国警職員から転移する者にとつても前述の給与措置に対しては不平不満を持つものと思われるのであります。即ち調整手当という名目であつても勤続年数が同一であり、又何一階級である者が単に自警から転入しただけの理由で同一の職種にありながら手取月収が相当多額であることは、決して愉快なものではないのであつて、かく国警、自警の職員の間における給与の不平等から来る不平不満が生ずることも又当然と言わねばならないのであります。更に自治体警察の有能な幹部、熟練した永年勤続職員を退職の余儀なきに至らしめ、治安態勢を弱化せしめることも考えられることの一つであります。
 前述の恩給措置は、自治体警察の幹部、永年勤続の警察職員等をその進退に関し相当深刻な苦悩に追い込んでいることは事実でありまして、若し仮にかかる法案が通過した場合には、相当多数の有能な幹部、熟練された職員が法律施行直前に退職することも予想されるのでありますが、かくてはこれら退職者個人に対する同情は別としても、治安態勢に有形無形の影響があることも認められ、甚だしく遺憾とするところであります。
 以上のごとく、今後改正法案による給与措置は現在の自治体警察職員、国家地方警察職員共に不満足なものであり、而もこの不平不満は一時的なものではなく、相当永年に亘つて継続されるものでありますことを思うとき、形式的に府県一本の警察を作つても人事管理上の不合理を内蔵するものであつては、政府の所期する警察運営の能率化は到底期待できないと思うのであります。
 以上で私の公述を終ることにいたします。委員の皆さんにおかれましては、何とぞ私たちの意のあるところを斟酌下さいまして、何分の御配慮を賜りますようこの席を借りまして、お願い申上げる次第であります。
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#52
○委員長(内村清次君) 以上を以ちまして、公述人の公述は終りました。各委員のかたがたの御質疑をお願いいたします。
#53
○若木勝藏君 土井さんにちよつと伺いたいと思います。非常に口調が早かつたことと、それから要綱がありませんので、或いは私が聞違いの点があるかも知れませんけれども、あなたの陳述の中にまあ相当力を入れておつしやつたのは、国家公安委員会の委員長を国務大臣にするのが誠に至当であると、こういうふうなことがあつたようですが、それに関連いたしまして、そうすることがこの公安委員会がよく政府と一体になつて、そして十分その機能を発揮し得るものであり、延いては将来に亘つてこの公安委員会というふうなものの存在も確固たるものになるであろう、こういうふうな陳述がなされております。その点につきましては、これは昨日来の私、陳述を聞いておりまして、府県警察一本でなければならないというふうな論の中には、国家公安委員会の委員長を国務大臣にするということに対しては異議がある。現に愛知県の知事さんもその点が修正されるならば、この衆議院の修正案を含めて送付案に対しては成立することを望んでおる、こういうふうなことがあつたのであります。そこであなたのようなお考えで以て進むとすれば、私はいわゆる警察の中立というふうなこと、或いは警察の政党化ということに対しては非常に危惧を持つのです。いわゆる公安委員会というふうなものの制度が置かれたことは、これは警察の行過ぎを是正するために、中立性を強調するためにこういうふうなものが、こういう制度が置かれたと私は考えております。それが国務大臣がその委員長になつて、而も政府と一体となつて来るということの論が進められるということになれば、いわゆるこれを置いたところの趣旨に相反して忌わしきところの政党警察というものがここに出て来るのである、こういうふうに考えられるのでありますが、その点についてもう一度御見解を承わつておきます。
#54
○公述人(土井彦一郎君) 只今若木先生の御質問で、御尤もな点も確かにございます。実はこの点については最後に申述べましたように、この案は理想的なものとは言えない。併し余り高遠な理想を現在の日本警察の段階におきまして、日本の国情の段階におきまして、これ以上のことを望むことは、実際において実行不可能であるというような見地から私はこの案を支持しておるのでございます。只今仰せのように、私の陳述の最初の前段に述べたように、この案の弱点もございます。或いは現職の官吏を持つて来ること、殊に警察法の中に政党を非常に排除いたしておりまするにもかかわらず、その政党の首班である、内閣首班である総理の下にある閣僚を委員長に持つて行くことにつきましては、これは確かに議論があると思うのであります。その点は御説の通りだと思うのであります。私は愛知県の知事さんの話は存じ上げないのでありますが、このことにつきましては、私ども公連といたしましても、全国の公安委員会連絡協議会の中にもかなり議論があつたのでございますが、併し過去六ヵ年の私どもの体験からいろいろ勘案いたしまして、私の中に述べました通り、たとえ警察法が改正になりましても、なかなか政府と一致して治安のいろんな問題に携ることは不可能であるというような点から、次善の策といたしましてこの案を支持しておる次第でございます。仰せの通り、理論的には確かに一つの議論もございますし、又警察法の当初の立法精神から申しましても、一応のいろいろ矛盾した点があるのでございますが、併し実際面におきまして、こういう方法をとることによつて、私どもの念願しておりまする公安委員会の行政委員会であるという本質の建前を生かす上において、こういう方法によるより方法がないと、そういうところから申上げたのであります。
#55
○若木勝藏君 今の公安委員会は行政委員会であるというふうなお話もあつたんでありますが、これは私は普通の政府の行政委員会というふうには即座には考えられないんじやないかと思う。いわゆる治安の責任を政府というふうなものから一応内容的に切離して、独立機関のような形におけるところの私は公安委員会であると思う。その点はあなたの御見解と大分私は違うのであります。そういうふうな委員会を一気にこれは行政委員会であるというふうな、他の行政委員会と同様に考えられるところに誤りを生じて来る場合があるんじやないか、こう思うのでありまして、どこまでも警察の中立というようなことを狙つた制度とみれば、むしろ本当から言つたならば独立機関でなければならない、こうも私は考えておるのであります。併し行政委員会としても、これは他とは全く内容を異にしたところの独立機関的な存在を持つておる委員会であるように考えられるのであります。そこで、若しそれを内閣と一体の一つの行政委員会とみて、内容的に、而も大臣をそこに入れて来るということになれば、先般起りましたところのいわゆる検察当局に対する法務大臣の指揮権発動、これと同じような不明朗な事態がむしろそれ以上にしばしば行われて来るのではなかろうか、警察行政に対してそういう点を私は惧れるのであります。
 そこで、それに関連して参るのでありまするが、あなたは大体この案に対して御賛成のようであります。それから陳述の総体からみましても、そういうふうに考えられる。そこであなたの陳述の様子から考えてみまするならば、或いは趣旨の点から推して行くならば、これはむしろ修正案でないほうがいいようにも思う。いわゆる修正案におけるところの任免関係において、長官の任免は国家公安委員会が総理大臣の承認を得て行うこと、こういうふうに修正記されておるのでありまするが、むしろあなたの考え方から言えば、前にあつたように、長官の任免につきましては原案にはこういうふうにあつた、警察庁に長官を置き一般職の官吏とし、内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて任免する。むしろこのほうがあなたの御趣旨に合うようにも思うのであります。警視総監の任免も同様であります。更に大都市の存置に対する一ヵ年延期、こういうふうな問題もむしろあなたのお考えからいつたならば不要なことにならなければならない。そういうふうに考えられるのでありますが、この修正案に対してもこのまま御賛成なのであるか、その点を伺いたい。
#56
○公述人(土井彦一郎君) 只今の最後の御質問の、修正案に対しましては、やはり政府の原案には反対でございまして、警察庁長官は、国家公安委員会が内閣総理大臣の意見を聞いて行うということを私ども支持しておる次第であります。と申します次第は、国家公安委員会には先ほど申しましたように、委員長のほかに五人の委員がおりまして、それが絶えず会談の衝に当つておるばかりでなく、委員長である国務大臣には表決権を持たさないということになつておるわけであります。で、実際の委員長でありまするけれども、これは普通の今までの警察法にありますような国家公安委員会の委員と性格が違つておりまして、表決権がないという……、で、ただ私の願つておるところは先ほど申しましたように、政府との連絡強調その他において治安上の十分な連絡を強化したい。そうして、それが国家治安上の大きなプラスになるという点から申したのでございます。繰返して申しますが、最後の御質問の任免権の問題は、やはり国家公安委員会が総理大臣の意見を聞いて行うということを支持しておる次第でございます。
#57
○若木勝藏君 そこで今あなたの御答弁を伺つておりまして、私は更に考えておるのでありますが、先ずこのたび国家公安委員会の委員長に国務大臣を持つて来るということは、これは政府の考え方として極めて重大なものであると思う。というのは、警察に対して国家が政府の責任の明確化を図る、こういうふうなことから大臣を委員長にしておる。こういうふうになるのでありますが、そこで、あなたのお考えはよくそれでわかりました。
 それで私は神宅さんにこの点を伺いたい。同様な問題で、あなたは自治体警察というふうなものを現行法通りどこまでも持つて行かれるというふうなことの御趣旨のようでありまするが、そこで今問題になつておるところのいわゆる国務大臣をして委員長に当らしめるという根本の問題は、この国家的な治安に対して政府が責任をとらなければならない、そういうためにはこれはどうしてもそういう委員長を国務大臣にするという制度にしなければならないというふうに考えられておるのでありまするが、その警察の責任に対して政府が責任を明確化して行くというふうなことについては、あなたはどういうふうにお考えになるか、その点を伺いたい。
#58
○公述人(神宅賀寿恵君) 国家公安委員会の委員の各位が、どういう方が選任されるかはわかりませんが、恐らくこれは他に職業を打つ有能達識な人であろうと思います。国家公安委員長は国務大臣でありますから、これによりますと、日勤されて警察庁長官と毎日御相談になる。委員長と警察庁長官がその相談なさつたたことを、恐らく公安委員会は一週間に一回くらいしかお開きにならんと思うのですが、そこでお聞きになつて可否を決するのでありますから、本当の警察事務に関しては私はおおむね多くの場合委員長の御意見通りになるのじやないかと思うのであります。警視総監、都道府県警察本部長の任免につきましても、これがいいんだ、こう言われたならば、その人は不適任だという反証を挙げることは非常な困難を生ずるのではないかと思うのです。それから土井さんは、委員長は表決に加わらないとおつしやいましたけれども、十一条によりますと、国家公安委員会は、委員長が召集する。委員長及び委員が三人以上出席して会議を開く、出席委員の過半数を以て議事は決する、可否が同数であつたならば国務大臣である委員長が決するとなつておるのでありますから、委員長の国家家公安委員会における発言は私は非常に強くなり、これによつて政府の意見が行われるのではないかとかように考えますので、政府が警察について、即ち治安について責任を持つという点から言いますと、十分であるかも知れません。併し一体政府が治安上の責任を持つということ、そのことの内容が私にはわからない。若し相当規模の騒動、騒擾があつた場合に、その内閣が責任をもつて辞職なさるという責任のとり方ならば、私はこの国家公安委員会組織でいいと思うのでありますが、関係者を相当処罰するのだ、こういうことで若しありますならば、現在においても府県の公安委員会、国家地方警察のほうではどうかは知りませんが、自治体側におきましては相当責任をとつております。警察長がまずいことがあれば罷免もしております。公安委員がやり損いがありまするならば公安委員も辞職しております。で責任の所在を明らかにすることに現になつておるのであります。それからこの責任の明確化であります。現行法におきましても六十一条の二でありますか、総理大臣の指示権という規定がありまして、「総理大臣は、特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の意見を聴いて、都道府県公安委員会又は市町村公安委員会に対し、公安維持上必要な事項について、指示をすることができる。」、でさような場合に、これは二十七年の改正でありますが、この法律ができまして以来、細則なり附則なりはできておりますけれども、一遍もこれが発動したことがないのであります。で、この発動によりまして国家的な事案について内閣総理大臣が十分責任をおとりになることができるのであります。それから国家非常事態の宣言による総理大臣の権限によりまして、全国若しくはその方面の警察を統合して自分の指揮下においてすることもできますし、なお警察統制をする計画も立てられるのであります。現行制度で総理大臣の指示権の範囲をまだかような「特に必要があると認めるときは、」というようなことでなく、特定の事案に対してということを明確にされます方法もありましようし、私が先刻申上げましたように、総理大臣の中央の指示権に対して服従しない自治体警察の警察長に対しては相当な方法を講ずることによつても又なし得るのでありまして、責任の明確化、行政は内閣に属するからという立場からかも知れませんが、自治体全体の事務として教育を司つておるもの、道路行政を司つておるもの、衛生もありましよう。その他のものについての政府の責任というものは、教育のものについては文部大臣が責任をとられるでありましようが、例えば只今問題になつておりまする京都の旭ケ丘中学校の問題で、すぐに文部大臣は責任をとらない。これは地方自治体に任しておる仕事でありますから、自治体内においてその責任者をきめるのであります。でありますから、国会に対して治安に関してのみ内閣は責任を直接負わなければならないとする考え方に、私ども内閣を組織したことがありませんからわからんのでありますけれども、(笑声)以上のような措置によりまして、内閣の責任は直接警察を握らなければとられない、かようなことには私はならないと考えるのであります。
#59
○若木勝藏君 その政府の責任に対しまして土井さんはどういうふうにお考えになるか、今御宅さんの意見を聞きまして。
#60
○公述人(土井彦一郎君) 私が若し内閣を組織いたしましたならば、一朝警察の手において誤まつた施政をいたしました場合には潔く辞職するのは当然であると考えます。(笑声)
#61
○松澤兼人君 大変明快な、責任をおとりになることは明らかになりましたが、この点についてはそれ以上お尋ねすることはないのでありますが、責任をとるということから言えば、国家公安委員会というようなものは全然要らない。警察大臣があり、その下に警察長なり、警察長官というものがあつて、従来のような警察運営をして行けばいい。併しそこに国家公安委員会というものを入れたということは、やはりただ上からの支配を下に流すといういわゆる行政そのものということでなくて、いわば他の民主的な要素というものをここに入れることがまあ緩衝地帯にもなるし、いいであろうということで入れてあるのだろうと思うのであります。でありますから、やはり問題は委員長に国務大臣を以て充てるということは責任を明確にするようでありますが、一方から言えば、非常に国家的な統制が強くなつて来るということに結論としてなるのではないか。私どもが心配しますことは、そういう形をとりますと、やはり不偏不党であり、公平中正であるとかいうことが損われる心配があるということを懸念しておるものであります。そこでお尋ねいたしたいことは、この委員長が国務大臣であるということのために、不偏不党或いは公平中正ということが損われないかどうかという点が一つ。それからもう一つは責任関係からいえば、やはり府県警察にしましても、府県知事が或いは警察に対して県民に対して責任を感じなければならない。そういうことからいえば、やはり責任関係が簡明直截に明らかになるという制度としては、従前のように警察部長があり、その下に各警察署長がいるという関係が一番明確なわけであります。ところが府県公安委員会というものがあつて、そうしてそれが府県警察を運営して行くということであれば、やはり県知事として県民に対し、或いは国に対し警察の責任を十分にとることはできないわけでありますから、国家公安委員会の委員長が国務大臣であると同じように、府県公安委員会に対しても府県側が府県知事がもつと責任を明確になし得るような方法を講じなければ、国家の場合と府県の場合と非常に違つて来るのじやないか、仮にこういう警察をやつて見て、或る府県において騒擾事件が起つた、そうするとその責任は誰が負うのだ、公安委員会が負うかも知れませんし、県知事としても県議会で質問をされる場合、おれは全然知らないというわけには行かない。そうすると県側がどの程度の責任をとるか、その責任を明確にするという一つの機構が必要じやないかと、こう考えますが、府県の場合は何も県が責任をとらないでもいい、国の場合は国務大臣というものが委員長としているから、責任が政府とそれから警察行政というものが明確化される。府県の場合にはそういう関係が全然ない。府県知事の責任と或いは県民に対する、県議会に対する責任というものはどういうふうにお考えになりますか。
#62
○公述人(土井彦一郎君) 只今御質問の趣旨がちよつと私には、初めのほうを聞き落したところがございますが、第一の御質問の趣旨の点で、端的に言いますと……もう一度恐縮でございますが伺いたいのですが。
#63
○松澤兼人君 第一の点はもうすでに多くの人によつて言われておりますように、この警察法の改正というものは警察は不偏不党でなければならん、或いは公平中正でなければならん、こう言われているにかかわらず、時の内閣の国務大臣が公安委員長をやつていれば、やはりその政党の色彩が付いて来る、その政党の考え方というものが警察の運営に対して出て来ることは当然である、これを防ぐという方法はどういうことになるのか、或いは警察法で謳つている不偏不党或いは公平中正というものと、時の国務大臣を以て公安委員長に当てるということとの関係は、どうなりますかという問題であります。
#64
○公述人(土井彦一郎君) 只今の府県における騒擾の発生した場合にその責任の所在が那辺にあるか、こういつたような御質問の御趣旨のように伺うのでありますが、この警察法の解釈によりますると、多少その点について責任が果して那辺にあるかということについて疑問もあつたかのように私ども感じておつたのでありますが、併し何分責任内閣制度から申しまして、普通の責任の何と申しますか、所在から申しまして、府県の場合には府県の知事にあるということになると思うのであります。それから国家の場合におきましては、これは申すまでもなく担当の責任内閣制度である以上は内閣にある、こういう工合に私は考えていいのじやないかと思うのであります。ただ公安委員はその内閣におりまして、そういつたような事態に導かないための一つの緩衝地帯でございまして、四六時中そういつた問題を絶えず監視し、或いは言葉を換えて申しますれば、警察の一つの元締めと言つちや言い過ぎかも知れませんが、監視機関というような機関でそういつたような責任事態に導かないための一つの使命を持つているのであります。併し事態が発生いたしますれば、その責任は私は第一最終の、最高の責任はやはり国家では内閣が責任をとるものであり、それで府県の場合には府県知事が責任をとるものである、こう私は考えるのであります。
#65
○秋山長造君 私も土井さんにちよつとお尋ねしますが、私は現在の、現行の警察法の精神というものは、仮に今度の警察制度の改革に賛成する立場の人にせよ、反対する立場の人にせよ、少くとも現行の警察法の底を流れておる民主主義といいますか、地方自治といいますか、或いは基本人権の尊重といいますか、そういう根本的な精神というものは飽くまで尊重し、高く評価さるべきものだと思うのです。その点については恐らくあなたも御同感だろうと思いますが、先ほどの御陳述の中で、現行警察法の前文或いは一条のごときものは、これはなくていいものだというような、至極あつさりしたお話があつた。又更にそれに関連して日本国憲法の九十八条の条約の遵守義務というようなこういうものも、これは要らんものだというような割切つたお話があつた。併しこれは私は大変だと思うので、やはり今日の公安委員会制度というものが、そもそもあの警察法の前文なり或いは第一条なりに謳われているような警察の民主化の保障であるとか或いは政治的中立性の確保であると、そういう大精神からできておるものであり、又そのためにのみ公安委員会というものの存在意義があるのだ、にもかかわらず、そういう大前提になつておるものをあつさり要らないものとして片付けられるというお考え方はこれは私は非常に困ると思うのです。で条約の遵守義務にしてもこれはどこの国の憲法にもないとおつしやるけれども、これはないことはないので、どこの国の憲法でも、ただ日本の国と同じ文言は使つていないかも知れませんけれども、条約が国内法に優先するとか、何かそういう形で国際条約というものは国際信義上何よりも尊重しなければならないものだという定めはどこの国の憲法でも謳われておるのです。にもかかわらず、そういうことを十把一からげに公安委員という非常に重大な責務を持つておられるあなたが否定し去られるということになりますと、私どもとしては公安委員という制度そのものに対して大いに不安を持たざるを得ない。その点は如何でしようか、あなたの御信念をもう一度承わりたい。
#66
○公述人(土井彦一郎君) 只今秋山先生の御質問でございますが、私は先の陳述の中で警察法第一条第二項の問題に関連いたしまして、憲法九十八条を陳述いたしますときに、これは警察法と共通した一つの条項であるという意味で引用さして頂いたのでございます。私が聞くところによりますると、この九十八条を制定されましたときには、この憲法起草委員が日本が単一国家であるという意味を忘れて、アメリカの憲法をコツピーするに急なるが余り、連邦国家であるアメリカのような憲法に傚つて作つたのである。ところが作つてみて初めてそれを振返つてみると、日本が単一国家であるということが初めてわかつて、従つて最高法規の中に入れたかのように、私の研究した法律の考えではさように承知しておる次第であります。そういう点からこの憲法の問題につきましては、只今のお説のように、決して私は条約を守らなくていいとか、或いはそういう義務がないとは申しておりません。ただそういつたような普遍的な大原則を国家の最高法典の中に入れなければならなかつた理由がどこにあるのかということを私が疑いを持つたわけであります。それと同じ意味で警察法第一条第二項の問題におきましても、何も警察が職権を濫用してはいけないということは、これは警察法立法に際しての世界的通念である以上、日本の警察法にそれを入れる必要はない、入れなくてもわかりきつたことだと、そういうことを入れることによつて警察官の第一線における仕事に大きな支障を起すようなことがあつた場合に、それが却つて支障になるという意味のことを申上げたのであります。若し私の陳述があなた禄にそういつた感じをお伝えしておるとなれば、私の陳述の仕方が悪かつたのであります。趣旨はそういう趣旨で申上げたのであります。
#67
○秋山長造君 それならなお更困るので、あなたは普遍的大原則だから憲法に謳う必要はないとおつしやるけれども、我々の常識では普遍的な大原則だから憲法に謳つて然るべきだと、これが私は常識的だと思うのです。そのこと自体よりもあなたはこの憲法の成立の事情について多少御異論があるようですから、それはそういう事情があつたかどうかは論外として、併しこれは大原則だから憲法に謳う必要はない、或いは権利を濫用してはいかん、職権を濫用してはいかんということは、これは世界の常識だから、警察法に謳う必要はない、これははやはり少し論理が飛躍し過ぎておると思う。現にあなたが支持しておられる今度の新らしい警察法の第二条にはつきりそういうことが書いてある。それから又あなたの今のような議論で行きますと、こういうことを、特に職権を濫用してはいけないというようなことを法律に謳うことは、却つて警察官に悪影響を及ぼすというようなことは、これはまあちよつと論理が飛躍して過ぎて、どうにも議論のしようがない。そういうことを言えば、現に警察官は職に就くときには宣誓をするのでしよう。その宣誓の中にちやんと日本国憲法及び法律を擁護し云々ということがある。これはまあ国家公務員にも地方公務員にも皆あるわけですね。その宣誓義務、そういうことでも、何も今更そんなことはわかり切つたことで、日本国民が日本国憲法に従うのは当り前のことだ、そんなことをする必要がないじやないか、そんなことをやらせば却つて卑屈な感じを与えて弊害が起るという理窟になる、これはやはりそういうものではないと思うので、そういうわかり切つたことであつても、やはり公務員は、特にわかり切つたことを、更に常に念頭に置いて、いやしくもその憲法や法律に違反するというようなことが万が一にもあつてはならないという戒めのためにこういうことをやつておられるので、だからあなたといえども、宣誓義務というようなものを否定はなさらんと思う。又あなたの前で多くの警察官が宣誓をやつておるのじやないかと思うのですね。その点は一つもう一度考え直して頂きたいと、こう思います。
 それからその次に、先ほどの御陳述の中に、管区本部の必要というものを非常に力説強調なさつた。この点が私ちよつと腑に落ちない。今日私どもがまああなたは、失礼ですが、どこの県の公安委員をなさつておるのか私ちよつと承知しませんけれども、私どもがあちらこちらよく接する限りにおいては、自治警の公安委員さんは勿論ですが、従来の都道府県の公安委員の方方、或いは警察関係の直接警察をやつておられる関係の方々のお話を聞きましても、殆んど大多数の人が管区本部というものは要らないものだ、これは屋上屋を架するもので、全然要らん。無用の長物だと、極端に言えばそういうことがまあ私の知る限りでは常識になつている。ところが、今あなたのお話を聞くと、非常にこれは必要不可欠のもので、これがなければ警察が動かないというようなもののように伺う。その点についてもう一度あなたに、どうしてそこまで必要なのか、又これがこの行政整理或いはその他の関係で廃止された場合には、府県警察というものはもう二進も三進も動かなくなるものかどうか。その点お尋ねしておきたい。それから同時に、同じ点を大阪の公安委員長をやつておられる神宅さんにもお伺いしたい。
#68
○公述人(土井彦一郎君) 只今前半のお話の、警察官の自誓という意味につきましては、秋山さんのお説の通りでありまして、決して私はこれを否定はいたしておりませんです。お説の通りだということをはつきり申上げておきます。
 それから管区本部の問題でございますが、実は私自身も管区本部が屋上屋であるということは随処に聞いております。併し今日こうして私ども不敏な者をこの席にお招きに与りました御趣旨は、体験者としての、自分たちの体験を率直に語らしめる機会を与えられたものと存じまして、世評に反対でございますが、自分の考えを率直に申上げた次第でございます。私は過去六ヵ年間公安委員長をいたしておりますが、東京管区に属しておるのでございますが、この管区本部の必要ということは非常に痛感いたしております。御承知の通り府県の公安委員会と申しましても、ただ神奈川県なら神奈川県、山梨県なら山梨県だけに割拠しておるような場合には、どうも警察の仕事というものは、府県のほかにやはり国家的な性格を多分に持つておるものです。どういたしましても高い見地から、広い視野から私どもが警察事象一般を知ることによつて、府県の警察も円滑に行えることだ、こう信じておりますために、管区本部によりまして私どもが受けております利益というものは非常に大だと、私はそう考えております。ただ私の体験を率直に謙虚な気持で申上げた次第でございます。以上であります。
#69
○公述人(神宅賀寿恵君) 現行法における管区本部の必要があるかないかという点でありますが、私の承知しておりますところによりますと、管区本部をこしらえましたのは、軍隊なきあと日本の治安を守るものは警察だけであつたのであります。警察だけでやりますときに、ばらばらの警察だけでは困るという点があるので、六師団に相当するように、六個の管区本部ができたと考えるのでありますが、管区本部の構成上の仕事といたしましては、国家地方警察本部の所掌する行政管理に属する事務の分掌だけでありまして、運営管理の面には管区本部は口ばしを入れないことになつております。現行警察法の二条には、警察官理を運営管理と行政管理に明らかに区別せられておりまして、運営管理に属する事項は、国家地方警察の方面におきましても、都道府県公安委員会の指揮下で、都道府県公安委員会の管理下で都道府県警察がせられるのであります。自治体警察におきましては、自治体の公安委員会が行政管理並びに運営管理をするのでありまして、管区本部がこの運営管理の面に干渉をしないということになつたのであります。そうしますと、現在のように保安隊のある事態から言いまして、政治的に言いましても、非常事態の問題を処理する場合のことから考えましても、管区本部はなくていいものと考えるのであります。都道府県の行政事務、或いは非常事態に対処するための警察の統合計画の立案及び実施に関する事項、これが管区本部の仕事でありますので、かようなものは要らない、現に管区本部がどういうことを実際おやりになつておるかの実情は私よく知りませんけれども、衆議院の本警察法の改正法案が出ました当時に、国家地方警察本部の総務部長柴田さんの名において、管区本部を必要とする事例というものが出されておるようであります。これによりますと、管区本部は革命的勢力の活動の内偵の指示、騒擾事件に対する措置の指令、智能把及び兇行犯の捜査、検挙に関する指揮等の具体的事例をお書きになつておるのであります。かようなことを現在の管区本部がおやりになつておるということになりましたら、私は管区本部は行き過ぎであると考えるのであります。管区本部といいますのは、かような運営管理の面に関してはタツチしないのが法律の建前になつております。府県公安委員会若しくは市町村公安委員会が運営管理を司るのです。それにもかかわらず、この幾多の事例の中にはさようなことが規定されておるのであります。管区本部を管区警察局として一部の機構は縮小されましたけれども、置く場手は二カ所殖えたのであります。これは裁判所の関係の高等裁判所、高等検察庁と同数のものになつておるのでありますが、政府は改正の目的の一つとして、経費の節減を上げておられるのでありますが、管区本部は屋上屋を架した存在としてなお且つ必要だというのは私には理解できない。曾つての内務省警察の場合でも府県単位の警察だけでありまして、管区本部或いは管区警察局なるものの存在はなかつたのであります。それで治安は十分に維持されておつたのであります。屋上屋を架するような人のための制度をこしらえますと、何かの仕事をなさるのでありましようが、第一戦で働く警察官から言いますと、警察庁本庁からのいろいろな指示もありましようし、管区警察局からのいろいろな御注文もありましよう。さようなことで事務は非常に煩雑になるだけでありまして、内務省警察時代より通信関係からいいましても、交通関係からいいましても、非常な完備されておる現代に、管区警察局は全く私は無用の長物でありますし、経費節減の一つの目的としてなされるという警察法の改正には全く相反する制度だと、かように考えるのであります。
#70
○秋山長造君 今の大阪の公安委員長のお話で私もちよつと気付いたことがあるのですが、先ほど土井さんのお述べになつた、管区本部の必要理由として縷々お述べになつた内容は、今、神宅さんのおつしやつた中の、主として運営管理に属する問題であるようであります。で行政管理の点についてはこれはいわば極く事務的な問題が主たる内容である。そういう事務的な問題にのみ管区本部というものが関与するというのが、これは警察法の建前だつたわけなんです。にもかかわらず土井さんのお話では、本来府県の公安委員、言葉を換えて言えばあなた自身がおやりになるべき運営管理について、上のほうから、管区本部或いは国警本部というような上のほうからの指示なり何なりに全面的に頼られて、そうしてそれがなければ警察が二進も三進も行かないというようなお考え方なり御説明というものは、実際の運用のこの便宜とか都合とかいうことは論外として、少くともこの公安委員会制度の建前なり或いは現行警察法の建前なりから言えば、公安委員みずから、みずからの権限を放棄して、他にこれを委任しておるというような譏りを免れないのじやないかというように私は疑わざるを得ないのですが、その点は如何ですか。
#71
○公述人(土井彦一郎君) 只今、秋山委員の御質問でございますが、管区本部は私どもの公安委員会の運営管理には絶対に関与いたしておりませんです。私どもはただ管区本部の先ほどいろいろな職務と申しますか、任務というようなものを申しました中に一つもそういうことは申していないのであります。例えば大規模な災害時の緊急対策として、どうも数府県に亘る大規模な災害の発生したような場合に、地方との連絡を待たず、現地において自主的に事を処理しなければならん場合に、一々この中央の指示を仰いでおりますと、事が機宜を失するような場合に、急拠且つ計画的に事をやらなければならん場合に、管区本部の必要があるということをさつき申述べました。又警察通信のセンターというような意味での本部の必要をさつき申上げたのであります。通信網の必要なことは、警察にはこれはもう必要で、情報なくして警察の完全なる職務は行えないということは申すまでもないのであります。そういつた関係で、この点においてこの大きな働きを管区本部がいたしておるのであります。又関係機関との連絡協調の場合におきましても、いろいろ或いは高等検察庁或いはその他の機関のほうとのいろいろな場合においてそういうものとの連絡協調に管区本部が当つております。殊に私が先ほどお耳障りになつたかも知れませんが、最後に私ども公安委員といたしまして、連絡協調をとる上において非常に大きな利益を得つつあるということをさつき申上げたのであります。決して運営管理、私どもの公安委員の固有の事務の内容については一歩も障つておりませんし、又私どももその場合にははつきりお断りするだけの決意は絶えず持つておるのでありますが、ただそういつたような数府県に亘りますような会議のような場合に管区本部が音頭をとつてくれまして、公安委員の連絡協調の場合においてこれは輝しい成果を私は収めてくれておるだろうと思うのであります。ただ、只今の運営管理に携つておる公安委員がそういうものに依存して自己の職責を放棄しておるのじやないかというお尋ねでございますが、決してそうでないということを申上げておきます。ただ最後のその点を特に私は感謝して申上げたいと思う次第であります。
#72
○秋山長造君 おつしやるお気持はよくわかりました。結局連絡協調というような点でまあ誰かが音頭をとつてくれなければいかん、そういう場合に管区本部があれば非常に便利だというお話なんで、まあその程度なら私もよくわかつたつもりです。で、そういたしますと、仮にこの経費の節減という今度の警察改革の一つの大きい原則がありますが、この経費の節減というためにはこれは何事によらずですが、できるだけ中間的な機関を省くなり或いは極力簡素化するなりして、そうしてそういう中間面での経費を浮すということがこれはもう常識だろうと思う。そうなりますと、今おつしやつたような連絡協調なりいろいろの会議をやるというような場合の音頭をとるというような程度のものならば、むしろやはり経費の節減という大原則のほうを、我々はどちらを選ぶかといえば、経費の節減という面を私どもは選んでそう差支えないのじやないかというように考えるのであります。で連絡協調というような点については、全国の公安委員会の連絡協議会というようなものもございます。又管区ごとにブロツク別にそういうものもあるだろうと思うのです。又隣りの県との連絡調整というようなことも不断にこれはおやりになる途は又あると思う。でそういう点で何とか経費の節減という要求に応えることはできるのじやないかというように私は考えます。特に月本の従来の警察は非常に幹部が多過ぎて一線で働く兵隊が非常に少いというところから、経費がかかり過ぎるということが言われておつたのですから、そういう面から言うと、管区本部というようなものは殆んど幹部だろうと思うのです。平の兵隊というものは余り要らないのですから、直接警邏をやるわけじやないし、何にも必要ないのですから、だからやはり管区本部というものの存在理由というものは非常に小さくなるのじやないか、又小さくていいのじやないかというように私は考えるのですが、その点は如何ですか。
#73
○公述人(土井彦一郎君) 管区本部の必要な点につきまして、私の考えと秋山先生のお考えとどうも少し違うように存ずるのでありますが、私は先ほど申しましたほかに、或いは公職選挙法の取締についての一つの中央機関としても必要じやないかと思うのであります。現在政治の情勢が非常に中央集権的のそういうような傾きを持つておりますときに、選挙の際に一々中央から指令が出るような場合にも、これは非常にそこに政治的に問題が起るのじやないかと存じます。又取締の場合におきましても、どうも中央からすべてのことをやるよりも、数管区に跨がる管区がそれに当る、或いはそういつたものについて当ると申せば、又運営管理というお叱りを受けるかも存じませんが、そういつた面の連絡を、公安委員会の本質的機能を十分発揮さすべく私どもにいろいろな材料或いは資料だとか、そういうものを提供してくれるという意味におきましても、私は大変必要じやないか、これはそれにとどまりませず、その他各ブロツクごとに特殊のいろいろ社会情勢がございますし、やはり私どもの警察はその特殊の社会情勢に対応した警察でなければ本当の警察じやないと私はこう存じております。そういう意味で隣県の情勢を絶えず私どもに連絡をとつてくれますような意味においても、大変私は大きな仕事をするのじやないかと思つております。ただ経費の節減というようなお話でございますとこれは一言もございませんが、又そのほかに何か方法があるのじやないかと思うのでありますが、管区本部は成るべく縮小せずに置いておいて頂きたいという私の念願でございます。
#74
○秋山長造君 その点はどうも又ちよつとわからなくなつたのですけれども、これは水掛論になりますからやめておきますが、ただ願くは選挙の取締とか何とかいうようなお話もありましたが、これは申すまでもなく運営管理で、公安委員会が責任を持つてやるべきもので、管区本部にとやかく指示を受けるべき性質のものではない。ところが従来管区本部からそういういろいろな指示なんか流れておるということも私は聞いておるのですが、そういう点は一つはつきり使い分けして考えられ、又区別して一つ行動して頂きたい、こう思います。
 それから次に神奈川県の議長さんにちよつとお尋ねをしたいのですが、府県を完全自治体に持つて行こう、従つて知事官選等の動きに対しては絶対反対だ、この御趣旨は私も全然同感なんです。ただ問題は今我々の前に提供されておるこの新らしい警察法が果してあなたの期待しておられるような、又おつしやつておられるような府県の完全自治警察であるかどうかということがやはりポイントになると思う。その点について私お尋ねしたいのですが、例えば警察なんかのような特に権力を扱う仕事ですから、最も重要なポイントは人事権の所在がどこにあるかということだろうと思う。その点について府県の警察とは言いながら、従来の警察法でははつきり自治警察と謳われておつたけれども、今度の警察法にはどこにも……、ただ犬養さんが提案説明で自治警察だというような意味のことをおつしやつただけで、この法律の中にはどこにも府県の自治警察ということは書いてない。その点について先ず私は不安を持つ。
 それから第二は今の人事権の問題ですが、府県警察を実質的に指揮監督してゆくところの最高のポストに座る警察本部長の任免権というものが地方にないのですね。まあ「道府県公安委員会の同意を得て」ということを修正で衆議院が挿入しましたけれども、併しこれはいわばアクセサリーなんです。また大体任免権は中央にある、こう断言して間違いはない。そうなりますと、中央によつて任免されるところの、而も国家公務員であるところの府県本部長が更に部下の警察官を指揮監督をして行く、こういう人事の面一つとつてみても、中央からずつと一筋に線が通つているのですね。で、こういう制度であつて、なお且つこれが府県自治警であるかどうか、又完全府県自治体警察ということを常に主張し推進しておられるあなた方の立場からお考えになつて、それで満足であるかどうかということを先ずお尋ねしたい。
#75
○公述人(松岡正二君) 只今の秋山委員の御質問にお答えいたします。我々といたしましては、年来府県単位の自治体警察ということを主張して参つたわけであります。たまたま私も地方制度調査会の委員といたしまして、行政、財政の審議の過程の中においてもこの点を強調して参つたわけでございまして、その過程の中におきましては、いろいろな問題が全国議長会の中でも起つたわけでございます。併しながら現実の問題といたしまして、当初我我としては府県の自主性を確立するために、少くとも身分は全部地方公務員にしてもらいたい、又そうあるべきだ、こういうことの主張を続けて参つたわけでございます。然るところ実際我々が地方制度調査会の委員として入り、全国議長会を累次に亘つて開催をいたしまして協議いたしまして行く場合に、政府のこれらの問題に対する考え方、これらを考えるときに縦横の連絡、或いは警察という特殊の機能からして、この程度でどうしても行くよりほかない、又現在の段階ではこれ以外に方法はないのじやないか、かような観点に立ちまして、同意という問題は我々としては一応この線で了承しておるわけでございますが、でき得るならばこの点は人事権という問題は府県公安委員会に持たしてもらいたい。併しそれじやできないという観点に立つ場合にはこれで止むを得ないのじやないか、かような考えを今持つておるわけでございます。以上でよろしゆうございますか。
#76
○秋山長造君 そうすると、議長さんはやはり完全自治体警察というこの本来の目標からは大分はずれているけれども、今そんなことを言つてみてもなかなか国会を通りそうにないから、まあこの程度で一応止むを得ないものとして我慢すると、こういうことなんですか。
#77
○公述人(松岡正二君) 只今の御質疑にお答えいたします。私は今度の警察法の中に、私から申し上げるまでもなく、三十六条でございましたか、あの中に府県警察が運営管理と行政の管理を持つ以上、この中におきまして十分その役目を果し得られる、かように考えております。
#78
○秋山長造君 更にもう一つ伺いたいのですが、あなた方はやはり県大事ですから、県会議長をなさつておるので、どうしても神奈川県を第一にすべてを考えられるということはこれは私もよくわかります。それはよくわかりますが、その神奈川県の警察というものは今度できるわけです。而もそれは本来の自治警察、完全な自治警察という理想からは大分外れているけれども、まあ何がしか自治警察らしい要素も残しておくという程度のもののようでありますが、ただ府県として一番大きい問題は、やはり経費の問題だと思うのです。予算の問題だと思うのです。財政的な問題について全般的には今度の警察改革によつて、さつきお話がありましたように二十億とか三十億とか、何か四年間に九十億くらい節約になるというようなことを政府のほうも説明しておられる。又あなたがたのほうもそれをそのまま信用してそう言つておられる。ところが私どもが現に地方の府県に行つて財政的な面をいろいろ聞いてみますると、どうもやはり今政府が考えておる財政計画で、あの程度の政府の財政的な手当では府県はどうしてもやつて行けない、警察費については。非常に負担が過重になつて来るという声を非常に聞かされるのです。その理由は私も細かい点はよくわからないのですけれども、従来例えば国のほうの平衡交付金なんかの考え方にしても、実際自治警では一人平均三十万或いは三十五万くらい使つているのです。ところが国のほうでは一方的に一人について十八、九万円くらいしかくれない、あてがい扶持でこれでやれと言うけれども、そこにたちまち早十万品から十五万円くらいの開きが出て来るのです。そういう問題がやはり今度の改革によつて府県警察へも又持込まれるのではないかということが一つ。それからもう一つは従来府県のいわゆる警察というものを考えた場合に、成るほど予算面にははつきり警察費として出ている費目というものは僅かでしよう。併しながら実際に府県がいろいろな名目で警察関係、国家警察についてですよ、国家警察の関係に府県が使わされて来た経費というものはとてもそんな小さなものではなかつたと思うのです。従来といえども。ところが今度の警察の切替えによつて国のほうはそういう目に見えない金は一切目をつぶつて見ていないのです。ところが府県のほうはやはり今まで以上に続けて行かなければならない。特に今度制度の切替えになりますと、御承知の通り初度調弁費というような性質のものからしてすでに臨時的な経費が非常にかかるということは火を見るよりも明らかであります。あれやこれやを考えます場合に、府県が自治警自治警と言つて喜んでおられるけれども、併し財政的な面でたちまち手を挙げられるのではないかという私は非常な心配を持つておるのですが、そういう点の見通しについてどういうふうにお考えになつておりますか。
#79
○公述人(松岡正二君) 只今の秋山委員の御指摘にお答えいたします。仰せ御尤もでございまして、各府県ともこの問題では問題をあとに残しておるわけでございまして、この問題につきましては、地方々々に対するしわ寄せの来ないように我々は希つておるわけでありまして、現在も国警の問題につきましては、たしかに応分の援助はいたしておるわけでございまして、それから今度当然県が負担しなければならん問題、これらの問題に対しましては皆様のお力によりまして、しわ寄せの来ないように、その点は確かに我々も存じておりますので、その点は御了承願いたいと思います。
#80
○秋山長造君 どうも一人ばかりしやべつて恐縮ですけれども、もうちよつと……。その点は更に現在私の承知するところでは、都市警察等の自治警あ関係は余り警察費の寄附ということをやつていない。ところが国警の関係になりますと、各府県とも大つぴらにこれは県が負担すると言つても負担する義務はないのですから、法律の建前から言えば……。そういうこともありまして、いろいろな面からの治安関係に対する寄附というものが相当これはある。恐らく国警当局としても今度制度の切替えを機会にそういう警察に対する寄附ということは抑えて行こうとなさるだろうと思う。そうすると、そういうものも又県のほうでも今度ははつきりと予算側に上つて負担にかかつて来るということが予想される。だからこれは大変だと思うのです。県のほうはその点は一つ覚悟して頂きたいと思います。
 それからもう一つは、やはり財政面についてお尋ねしたいのは、県の警察である以上は、いやしくもその警察の予算関係というものは全部一応県の予算に組まれなければならない。これはもう当然のことなんです。又県会は予算を通じて警察に対していろいろ批判の機会を持たれるわけです。ところが今度の警察法によりますと、大体は県の負担になつておりますけれども、併し国庫で支弁する費目がございます。そういうものは、これはどうも私はよくその点がわからないのですけれども、県の予算を通じないで国警本部から、警察庁から直接県会も県の手も通じないで、直接県の警察本部へ行くようになつておるようです。そういうことになりますと、県の警察とは言いながら、その警察の予算というものが県の予算を通じ、或いは県会を通じて論議されるところの、扱われる予算というものは総体の予算の中の一部分に過ぎない、こういう点についてあなたはどういうふうにお考えになりますか。
#81
○公述人(松岡正二君) 只今の問題でございますが、ただ単に警察費だけでなくして、他の部門にもこういつた問題はあるわけでございます。問題はただ単に警察費の問題だけでなくして、土木の関係にしても、或いは衛生の関係にしても、それぞれあるわけでございますが、只今秋山委員のお話では大部分が国家のほうであつて、一小部分がというのは逆でございますが、私は大部分が県のものであつて、一小部分が国から来る問題と、かように解釈いたすわけでございまして、勿論国から来る問題につきましても、只今までの慣例からすれば県会の審議の対象にいたしてあるわけでございまして、十分これが問題につきましては我々としての審議の対象にすべく努力する、又そういう工合に進めたい、かように考えております。
#82
○秋山長造君 その点はちよつと議長誤解しておられるのじやないかと思います。私の言うのは、勿論義務教育の国庫負担金にしても、或いはいろいろな国庫の負担金、補助金でありますが、こういうものは併し一応県の会計に入つて、県の予算の中にやはりそういう適当な費目に上つて、そうして扱われるという手続になつておる。だから今まで国庫が負担し或いは国庫から補助するような金を県の予算を通じないで、県の金庫を通じないで直接何か他へ、東京から直接金を送つて来るということはない。一応は国から出たものも県を通じて、又その適当なところに届けるようになつておる。ところが今度の警察法改正によつて三十七条でしたか、国庫が支弁する。「都道府県警察に要する左に掲げる経費で政令で定めるものは、国庫が支弁する。」こういう条文があるのです。これはそういう一般の負担金や補助金とは扱いが違うのです。これは全然県には関係ない、県をつまり通じない、県の予算も通じないのです。だからどういうものが県の警察本部へ中央から来たかということは全然あなたがたはこれはつかまえられる機会が与えられない。そういうやり方で果して自治警察と言えるか。どうか。又現在の財政運営の責任を分担しておられるあなた方のお立場としてそれでいいのかどうかということをお尋ねしておるわけです。
#83
○公述人(松岡正二君) 勿論それでいいわけはございません。でき得べくんば県会自体の審議の中に織込むことが当然であり、又そうあつて欲しいということを考えております。
#84
○伊能芳雄君 土井さんに少し伺いたいと思います。公安委員は、国家公安委員といわず府県の公安委員といわず、資格制限が現在においては非常に厳重なものであります。これは憲法の精神から言えば必ずしも適当ではなかつたでありましようが、こういう運営についてできるだけ素人の国民全般の常識によつてやろうという民主的な精神を打込みたいためにやつたものだと思う。今回の政府提案ではこれを大分緩和しました。更に衆議院修正におきましては一層これを緩和しておりますが、この資格制限についての御見解を承わりたいと思います。
#85
○公述人(土井彦一郎君) 只今の御質問の趣旨は誠に私どもが非常に重大視しておる点でございます。公安委員の資格制限ということにつきましては、警察法が当初できました当時は非常に厳重な限界を定めておつたのでありますが、前年の改正によりまして、一般官吏であつても十ヵ年を経過した者は資格があるということになつたのであります。今度の政府の原案で見ますると、なおそれが多分に緩和されておるようでございますが、どうもこの点につきましては員どもの属しておりまする国公連の考え方を、国公連の中に警案制度審議会というものがありますが、それの考え方を率直に申上げますと、成るべく資格は余り緩和しないで欲しい、資格を緩和することは公安委員会本来の性格に支障を起すべきものであるという見解を持つておるわけであります。その点は、只今の御質問の御趣旨の通りの考えを私ども持つておるということを申上げておきます。
#86
○伊能芳雄君 今回の衆議院修正におきまして、五大都市の解消を一年延期ということになりましたが、土井さんは直接もうすぐお扱いにならなければならないのですが、若し法律が決定いたしますと、すぐ問題になるのは、この衆議院修正通りで行きますと、非常に妙な恰好になると思うのは、横浜は来年七月に解消され、お隣りの川崎或いは横須賀というような大きな所はこの七月にすぐ解消になる、こういうようなことについてどんなお考えをお持ちですか、御見解を承わりたいと思います。
#87
○公述人(土井彦一郎君) 只今御質問の御趣旨は私どももやはり大きな疑いを持つている一人であります。本来の理論から申上げますれば、このどつちかはつきりすべきものじやないかというような考えを持つております。ただ私どもの力の及ばない政治上のいろいろな悪く言えば駆引と申しますか、そういつたような政治上の一つの交渉の結果、こういう面において打開の途を見出したというようにしか私どもは考えられません。従つてこの点につきましては、私ども自身といたしましても疑いを持つているということを申上げます。
#88
○伊能芳雄君 衆議院修正の一つの大きな理由が事務的その他いろいろな技術的な問題で間に合わないだろう、大分これは当初よりも法案の審議が遅れて来ましたので、本来予定せられたよりもずつとずれて来ます。そういう関係で間に合わないだろうということが一つの大きな理由になるのでありますが、あなたの神奈川県公安委員の場合においては、横浜を接収するとして、どのくらいの期間があつたら準備が間に合いますか。今すぐここで予想するのが困難であれば、大体のめどといいましようか、極く大ざつぱなところで結構ですが、お聞かせ願いたいと思います。
#89
○公述人(土井彦一郎君) 只今御質問の御趣旨の点でございまするが、一年延期になりましたことによつて却つて事態が私どものほうは複雑になるということになるのでありますが、決して間に合わんということは私は絶対にないと、神奈川県の場合はそう考えております。若しも衆議院なり或いは参議院の御決議が、六月を以て全部の解消となりましても、神奈川県の場合におきましては、はつきり間に合うということをお答えしたいと思います。
#90
○伊能芳雄君 吉見さんにお伺いしたいと思います。先ほど本法案に反対だと言われた理由の一つに、今の駐在巡査が非常に犯罪検挙などに無能力だ、だからいかん、こういうような御意見が一つあつたと思うのですが、そうすると自治警にすれば駐在巡査がもつと能率が上るというように裏面的には言われるわけですか。この点伺いたいと思います。
#91
○公述人(吉見一也君) その点はやはり改正につきましては、いろいろな意見はありましようけれども、その中に行政整理、人員の整理というようなことが非常に大きく謳つてある。人員の整理、或いは財政的な支出の節約というようなことが謳つてありますけれども、そういうことを考える前に、そういう無能力ということは、これは個人の問題かも知れませんけれども、たつた一人か二人というような問題もありますから、そういう点を考える必要があるという意味で申上げたのであります。
#92
○伊能芳雄君 そうすると、今の駐在巡査が余り犯罪松挙などの能力がないということは、別に本法案の賛否には関係がない問題だ、こう解していいのですか。
#93
○公述人(吉見一也君) 関係は出て来ると思います。人員整理ということについて、結果この法案を実施するについては三万人、四万人の警察官を整理するということが一応主要内容をなしておると思います。そういう意味で、然らば現在町村に一人しかおらんものを二名にすれば、これは或いは殖えることになるが、そういう意味です。
#94
○伊能芳雄君 私どもは少しくとも今の点については、三万人を浮かす問題は、大きな都市、それからそういうところの警察の本部というところの整理を狙つていると思うので、駐在巡査などを減らすということは私どもは到低考えられないことであり、この法案の中でも恐らくそういうことは予想されないことだと思うのです。ですから今度の行政改革といいますか、そういうものを含んだ意味のこの法案ではありますが、そういう意味から反対であれば、私はこの反対の理由は全く無意味な反対だと、こういうように理解いたします。これでよろしゆうございますか。
#95
○公述人(吉見一也君) それは問題をそれだけに限れば御意見の通りかも知れませんけれども、それでは私は駐在巡査を廃止するとかしないとか申上げたことはありませんけれども、先ほどから問題になつておりますところの管区本部の人員を廃止するとか、或いはとにかく中央におるものを廃止するとかいうようなことは、主要な狙いであるとしましても、末端の無能力の状態を改善するためにここに増員するということになれば、或いは現在やつておるところの三万とか四万の減員どころか、二万、三万の増員ということにもなりかねないということは考えられると思います。
#96
○伊能芳雄君 もう一つ伺いたいのですが、吉見さんのおられる近くに二十六年以来逐次自治警から自分のところは自治警やめたいというので、住民投票によつてやめた町村がありはしないか、自治警をやめたところがありはしないか。そういう町村におきまして、今まで民主的であつた警察が独善、非常に町村民に対して官僚的になり、その他弊害が起つて来たというようなことをお聞きになつた例がありますか。或いはその点については別に何もお聞きになつていませんか、この点ちよつと伺いたい。
#97
○公述人(吉見一也君) そういうところはございません。ここへ参ります前の日に、たまたま自治警の人が見えましていろんな話をしましたけれども、詳細は聞きませんでしたが、自治警の人は飽くまで残してもらいたいというような意見だつた。これは私が最初に申上げましたように、とにかく私自身ももう十年前、或いは二十年くらい前に、警察或いは憲兵隊にものすごい取調べを受けたことがありますので、思想的な問題で……。警察というものに非常な反感は持つておりますけれども、現在はとにかく自治警というものができたことによつて大衆と警察との近親感が非常に殖えておるということを強調したいわけです。だからあえてこれを廃止する必要はないと思います。
#98
○小林武治君 大阪市の公安委員のかたにちよつとお伺いしたいのですが、今度の衆議院の修正では、一ヵ年間だけ大阪市の警察を延期するということは、今朝の大阪の市長のお話では、大した意味はない、従つてこれは無期延期にするなら意味はあるが、一年間くらいなら大した意味はないようなお話を聞いたのであります。この点についてあなたはどういうふうにお考えになりますか。
#99
○公述人(神宅賀寿恵君) 私は大体先に申上げましたように、この改正案全体を反対するものでありますので、その点を深く考えたことはありませんが、一年間延期するのでも、しないよりましだとも一応一面には見えるかも知れない。併し、これは土井さんがおつしやつたように、衆議院の各政党におけるいろいろな御事情からこういう不徹底なものができたと思うのであります。五大市のような警察の規模から言いましても能力から言いましても、完全に独立した治安維持の責任関係がとれるものにつきましては、警察は独立して存在、永久に存在させたほうがいいんじやないか。勿論五大都市だけに限りません、他の自治体につきましても治安維持の能力ありと自信し、その規模なり何なりあるものは残さるべきものでありまして、一年間延期、五大都市に限つて一年間延期するというのはどうかとも考えるのでありますが、まだこの点に関しては私深く考えておりませんので、十分なお答えができないかも知れません。
#100
○小林武治君 そうすると、まあこんな枝葉末節なことはいわばナンセンスだ、こういうふうに御了解になつたというふうに我々考えて差支えございませんか。
#101
○公述人(神宅賀寿恵君) ナンセンスだとも考えませんが、まあ私のほうの市長が全国市長会を代表して述べたのでありましようから、さようにおとりを願つて結構だと思います。
#102
○委員長(内村清次君) ほかにございませんか……ほかに御質問もなければこれで公聴会を終り、散会したいと思います。
 公述人の方に申上げます。どうも御多用中長時間おのおの有益な公述を頂きまして、誠に有難うございました。委員会の非常な審議の参考といたします。有難うございました。
   午後四時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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