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1947/06/15 第2回国会 参議院 参議院会議録情報 第002回国会 予算委員会 第30号
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1947/06/15 第2回国会 参議院

参議院会議録情報 第002回国会 予算委員会 第30号

#1
第002回国会 予算委員会 第30号
昭和二十三年六月十五日(火曜日)
   午後三時十四分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○昭和二十三年度一般會計豫算(内閣
 送付)
○昭和二十三年度特別會計豫算(内閣
 送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(櫻内辰郎君) これより開會いたします。御通告順により質疑を行います。只今運輸大臣がお見えになつておりますから、運輸大臣に對する質疑を各委員からして頂きたいと思います。石坂豊一君。
#3
○石坂豊一君 お見えになつた大臣からちよつと急ぎますからお尋ねしたいと思いますが、運輸大臣に對しまして極く簡單でありますが、御所管の運賃値上げという重大な問題は只今伺うつもりはございません。これは別の機會において総理、大藏等に國策基本として伺いたいのでありますが、先ず運輸大臣に伺いたいのは、鐵道などにおきましても、鐵道會計などは一番不健全財政の最大なるものでありまして、料金を値上げしても尚足らないで一般會計から補助して、更に尚その以上に公債借入金で賄つておる。曾て私は申しましたように火の車財政であるわけであります。かような場合におきましては手持の、必要でない又多少必要であつても、我慢ができる、いわゆる拂下げ等によつて收入を圖るということが考えられるのであります。差當つて私の開かんと欲するところは、現運輸大臣は各地方鐵道等よりして、戰時中に無理に買收した鐵道を拂下げて呉れ、いわゆる還元して呉れという希望が多數出ておるのでありますが、現に午前中の運輸交通の委員會におきましても話がありましたが、私共もその國民の希望のあるところを幾多耳にしておるようなわけでありまするが、これに對して政府委員からは事務的な立場から多少説明をしておられたのでありますけれども、我々はまだこれに對して十分の政策的に説明ができておらんと思います。只今御臨席になりました運輸大臣は、この處置を如何になさるつもりであるか。その點を私は先ず以て伺いたいと思います。
#4
○國務大臣(岡田勢一君) 石坂さんにお答え申上げます。戰時中に半強制的に地方の鐵道を買上げをいたしております。このうち還元拂下げを希望せられる會社もございまして、その申出のございますことは石坂さんのお話の通りでございますが、大體鐵道經營は御承知のように數十年來日本におきましては國管を建前として行なわれておりまして、この國營方式の考え方を民營にするかどうかという問題が相當重大でございますが、私の考えといたしましてはこの種の地方のいわゆるローカルの小さい線等は必らずしも拂下げてはいけないというような考え方は、持つておらないのでございます。併しながら商品とか材料とかの拂下げ、賣却取引等とは違いまして、鐵道は公共的性質を帶びております。地方の産業經済に多大の關係がございます。拂下げすることに原則として異論はなくても、その一つ一つの路線の實體をよく調査する必要があるのであります。それを調査するにいたしましても、地方の産業經済の状態或いは又地方住民の希望せられるや否や、或いは又希望せられるその團體或いは個人の内容、よく拂下げをいたしましてからこの公共的性質、その企業を立派に經營される能力がありや否やという問題、それから評價の問題、その他いろいろの角度から検討を必要といたしますので、運輸省といたしましてはこれを畫一的な考え方でどうするこうするということを決めるということはよくないと考えております。個々の路線につきましてあらゆる角度から調査をいたしまして、その上でどうするかということを決めたいと思つております。幸に國有鐵道審議會というものも今度設置することになつておりますので、この審議會等にも掛けましてよく檢討して根本方針を決定いたしたいと思つております。この私鐵の拂下げ問題につきまして、當の責任者でございます私が、或るアイデアでこの議席においてその方針を言明いたしますことは、相當重大な影響がございます。そのためには或いは思惑を誘致いたしましたり、又は或る熱望されておる地方の會社又は個人或いは住民に必要以上の期待を持たせましたりするような影響も相當ございますので、只今の段階におきましてはその経費或いは方針のはつきりしたことを申上げる段階に至つておりません。併しながら相當参議院といたしましては、第一國會頃から論ぜられて参りました問題でもございます。承りますと運輸交通委員會におかれては、個個の私鐵の拂下げが是か非かということについて御調査もあらましできておられるようなことも承つております。又参議院に對しまして私鐵拂下げの請願も澤山出ておるように承つておりまして、その態度を決定せられる必要があるということも承わつておつたのでございます。そういう關係でますます事は愼重に私らとしては取扱わなければなりませんので、成るべく早い機會に個々に愼重に調査をいたしまして方針を決めたいと存じますが、今日のところははつきりしたことは先にも申上げました通り言われない段階でありますことを御了承願いたいと思います。
#5
○石坂豊一君 只今の御答辯によりまして、拂下げは必ずしも不可と考えてもいない、つまり鐵道は國有にして是非これを持つておらにやならんという考えもない。併し又一般的にどれもこれも元の通りに返してやるということも、産業振興その他に顧みて軽率にできんから一應審議會に掛けてその上で決する、こういうように解釋をいたしました。それも誠に止むを得ない處置かも存じませんけれども、鐵道會計の建直しは頗る喫緊に迫つておると私共は考えます。あまり委員會というものに頼り過ぎて時を稼いでおるべきではなかろうと思いますから、この問題については鐵造當局においては最も愼重を執られるよりは、今言うた國家急務の場合を考えられて速かに裁断して頂くことを地方交通の上から、又國家再建の上からも適當と思いますから、その點について特に一つ大臣より取急いで頂きたい。又地方鐵道その他から要求しておるのも、そんな氣永い問題ではないのでありますから、その點を特に大臣として御考慮願いたい、かように思います。総理が見えておりますから総理への質問を続けてよろしうございますか。
#6
○委員長(櫻内辰郎君) よろしうございます。
#7
○石坂豊一君 私は芦田総理に對して二、三點お聞きしたいのでありますが、實は先程來お前の聞く點は大抵分つておるから、繰返し繰返し報告しているから餘り長いこと聞くなという好意ある御忠告もあつたようであります。決して私は大臣を苦しめるために聞くわけではありません。(笑聲)多年政治上の同志として私共指導して頂き、又懇切にして頂いておる間柄でありますから、今見ましても決していじめ倒すというような考えは聊かも持つておらん。併しこの國家再建途上においては眞劍に國務を論議しなければなりませんから、多少耳の痛いことがあるのは勿論我慢して頂かなければなりません。
 先ず私が伺いたいのは、総理は行政整理を徹底的におやりになる意思があるのかどうか。ただ月並式に政府は一割五分の整理をするのである。これを織込まなければどうも内閣の政策として物足らんというような考えで御發表になつておるのか。眞劍におやりになるのであるかどうか。先頃衆議院における質疑應答の際に、植原氏から現政府は一割五分ということを言つてお茶を濁しておるという質疑に對して、總理大臣は、お前の内閣のときにはお茶も濁さなかつたというようなことをお答えになつたりしておるが、これは併し總理の言い過ぎであつて、當時の内閣の使命と現内閣の使命とは非常な異なつた様相になつておる。吉田内閣の常時におきましては我が國の制度文物、すべてやり直しの時代であつて、現に憲法から改めてかかり、その憲法改正の委員長は現に芦田首相その人である。而して當の最高幹部として吉田内閣の閣僚ではないけれども、一心同體の立場におられたのだ。岩田内閣を禮讃するわけではありませんけれども、立法において非常な使命を持つておつたのみならず、また經濟財政の面におきましても財産税を設けるとか、賠償の問題とか、非常に大きな仕事をしている。その中からも更に内部からの行政整理をしておるのであります。この事實を無視して、賣り言葉に買い言葉というとがありますけれども、如何に近しい間でありしまても、今日は野黨と與黨に分れておる間柄において總理ともあろうもののがお前はお茶も濁さなかつたと言うてこれを退けられておることは、これは非常に思慮周密なる總理として誠に軽率な言葉じやないかと思うのであります。それ程に力強きお言葉があるならば、現にこの行政整理についてどこまでの御決心があるのか、それを伺つて置きたい。先ずこのことから御答辯願いたい。
#8
○國務大臣(芦田均君) 石坂君にお答えいたします。石坂君は冒頭に、お話の通り我二人は昭和七年以來同じ政黨に属して今日に至つた間柄でありまして、石坂君が私をいじめ倒そうなどというお考えのないことは無論申すまでもないと思うのであります。殊に議會における質問、御論議は一に國家のために吐かれる御意思であることは十分了解いたしております。そういう誤解は毛頭抱いていないのでありまして、若しそういうふうに私が受取つておるという印象を與えたとすれば、それは私が非常に至らなかつたのでありまして、さような心持は毛頭持つておりません。
 只今お尋ねになりました行政整理の問題につきまして、實は本會議においても数囘に亙つて政府の所信を申述べたのであります。先般非公式に石坂さんに通告いたしまたのは、この問題については繰返し政府の所信を本會議で表示しておるのであるから、御質問があつても更に新たなる答辯をすることはむつかしいと思いますということを申上げておつたのであります。
 只今重ねて御質問でありますから…、政府においては組閣以來すでに世間に發表しましたように、大體人件費の一割五分という政費を節約する。一割五分の經費を節約するには實は人員の數において、一割五分以上の者を配置轉換その他によつて處理しなければ、行政費の一割五分の節約はできない。こういう實情にあるわけであります。その中には前にも本會議でお答えしたように、出先官憲の配置についても具體的な案を作つて、すでに政府の案はできておるのでありますが、これを必要な方面に打合せをしておる結果、その囘答が來ないために實行することができないというふうな事情にあるのでありまして、今日の我が國の財政の現状から申せば必要なものは無論作らなければなりません。併しこの貧乏な世帶に相當するだけの世帶でやつて行くより外は途がないのでありますから、誰が政府に立たれてもこの際一應行政整理に著手されることは、國家のために必要な措置であります。かような考えの下にできるだけその實行を急ぎたいと考えておる次第であります。
#9
○石坂豊一君 總理が整理する御希望はそのようでありましようが、私がこの質問を發する所以のものは、行政整理を一割五分すると申しましても、多少その機構の根本改革というものに触れなければ、人員整理だけでできるものでないと思います。然るに我々の眼前に現れるところの政府の所作を見ますというと、これは政府だけの意思ではないかも知れない、又議會もそれならば止した方がいいのじやないかというようなことを言われましようけれども、一つ一つ人員が非常に殖える一方であります。中小商工業の振興方策を採るとか、或いは又經濟査察機關を設けるとか、事毎に多くなつて参つております。各々その理由等はつきましようし、必要でもありましようが、又議會そのものから見ましても委員會中心になつておりますために、在來から見ると非常に人が殖えておる。で、そういうようなことでありまするから、口先で言う點と――なすところはこれと反對のことだということになると、どうもこれは言うてみるだけであつて空念佛である。眞に行政の機關を統括しておられる總理が、行政整理をするという本當の熱意があるならば、今おつしやつた出先機關の整理などもまだ徹底しておりません。議會においても決議をし、政府も亦その聲明をしておられるけれども、どうもこれは徹底しておりません。
 殊にひどいのは、出先機關に……、總理自らいわれたから論及しますが、昨年知事も公選になり、市町村長も普通選挙になつて以來、官の方では一層民選のものに對する信を置かない有様で、何でも悉く中央政府の出先機關に取上げてやつておる。一例を擧げれば、農林省の資材調整、僅かに資材調整という機關を設けまして、建築するにも資材をそこから貰う、又復興院の出先にもそういうのがある。炭を焼くにも亦その通り、薪炭の方の事務所もできておる、食糧事務所もできておる、七重八重にそういうものができておる。一つも整理されておりません。この整理は、議會に出ておるもののみならず、地方の首脳者が口を揃えてそれは要求しておるけれども、それは實現しない。これは非常な堅牢なる鐵のごとき官僚陣なるものがありまして、各々理由をつけてこれに應ぜんということがありましようけれども、非常な決意がなくてはこれはできるものではない。そのようなことについて確たる御確信があるかどうかということを、私は伺いたいのであります。
 同僚の質問に對し、繰返お答えになつておることはよく存じておるのでありますが、その徹底したる御意見は未だ以て詳かにすることができないから、この機會に重ねでお尋ねせなければならんと思うのであります。總理はその點に對して日本の國情はそれぞれのことがあつて、どうもいかんから、これ以上できんと仰せられるか。又全力を擧げてでも排除して、機構の點においてこれに触れるべきことは触れ、而して更にその整理については努力するというお考えであるのか、そこをもう一應確めて置きたい。
#10
○國務大臣(芦田均君) 政府はできるだけの力を盡して行政整理の方針を貫徹したいと考えております。今日においても尚行政調査部において、各機構の統合調整等について調査を続けておる點もありますが、これは第二次、第三次の行政整理方針として漸次發表いたしたいと思つております。現在第一次に著手いたしました分は、先程申しましたように政府においては案ができておるのでありますが、まだこれを實行する上において、同意を得なければならん關係の部分がありまして、そこで最後の決濟を得ることができないために遅れておる、これも精々努力いたしまして、早く解決するように取計らいたいと考えております。
#11
○石坂豊一君 お話を伺えば誠に尤ものように聞えますけれども、整理の徹底を期するときには、ある程度までやはり統制を撤廃しなければ、これに澤山の係員が掛つて、容易でないと私は考える。然るに今のようなことで、あまりその方面において手を加えられるどころか、却つて經濟査察のようなものを設けて、これを繰返しておるというような状態であり、又この豫算を見ましても、これは暫定豫算にもありますが、公共事業費のごときは、これは、各官廳、我々は決議して、各主務大臣が責任を以てこれを直ぐさま實行ができるようになつて劣るが、豫算の總則において、公共事業費は一々安本長官の承認を得なければならんという、かくのごときことは、やはり一つのところにおいて統制してありまするから、物の配給を受けるために止むを得ないかも知れませんが、それは各大臣の責任においてこれを責任させることにしなければ、時機を逸してしまう。口では統制を整理するといわれるけれども、先ずそういうところにおいて金縛りをかけ、帷りを降ろして來ますから、なかなか容易でないという考えか。その點について、これは繰返す必要もないようでございますけれども、總理はそれはどうも止むを得ない、そこまでやるつもりはないんだ、ただ立案しておるものは、これこれのものであるということならば、何をかいわん、そこまで徹底して統制經濟の撤廢等によつて、人員を整理するというところまで考えておるというお考えか、それをもう一度伺います。
#12
○國務大臣(芦田均君) 統制のやり方についての幾多の弊害があることは政府においてもよく承知をいたしておるのであります。從つて不必要なる統制を外すということは、私の施政演説においても明瞭に表示いたしたのでありまして、今尚この方針に變りはないのであります。例えば亞炭の統制を最近にこれを或る程度外しまして、それから鮮魚についても恐らく遠からざる機會に一部分の統制を外すことが實現できると信じております。その他統制あるがためにただ害のみあつて、何ら益するところないごとき種類のものは十分調査の上で、一日も速かにこれを外したい、かように考えておりますが、併し今日の我が國の經濟の實情におきましては、統制を全部外すというような方向に政策を實行して行けないことは、石坂君においても恐らく事情を御承知のことと思います。併し今日の政府が統制を徒らに拡大し、強化するというふうな考え方でないことは十分御了承願いたいと思います。
#13
○石坂豊一君 私はこの問題を繰返して、次に問いたいと思いますが、總理は非常に巧みに答辯せられておつて、私はこの場合において一つの資料によつて確かめて置きたい。それは整理せられるというが、この豫算に對して、これは整理した豫算であるか、又今後この豫算の以外において整理して行かれるのか。我々の手許にある資料によりますと、二十三年度一般會計豫算豫定々員数という、その中において官吏は前年度は十七萬九千三百八十二というのが、二十四年の三月におきましては、これは二十萬八千九百九十五という數字が出ておる。その中一級官は、前年度豫算は二千二百五十五人のものが、この二十三年の四月において三千二百六十六という數字になつて、二級官は四萬七百八十人というものが、これは少し減つておりますが、三萬七千八百四十二人、段々最後に行きまして、四萬二千八百二十八人、三級官は前年度豫算十三萬六千三百四十七人が、これは十六萬二千八百二十一人と、そういうふうに出ておる。これをも一割五分の人員査定になると私は思うが、計数は上でも金だけは減るのだという考えであるか。この點については頗る總理の御辯明と現在の實情と違う。又私の聞くところによりましても、現在各局において必ず何名かの欠員がある。これはやはり補充して行くつもりであるそうでありますが、そうなると、内閣において徹底されるのと事務當局が實際やつて行くのとは容れないようなことになつておるがその點はどうですか、いずれこれは更に改めて聞く機會もございましようけれども、總括質問において一應この計數の上より確かめて置きたいと思います。
#14
○國務大臣(芦田均君) 只今石坂君の御質問にありましたように、政府は一面において行政整理によつて人員を整理する部門と、一面において人員及び新たなる官廳を設けなければならない種々の部門がこの計數に現われておるのであります。例えば特別會計における、殊に現業に關する部門においては勞働調整法、勞働基準法等の實施に伴つて人員を殖やさざるを得ない部門もあり、又關係方面の意向によつてどうしても政府がこれに即應する機關を新たに設けなければならん場合が相當數多いのであります。從つて御承知のように經濟査察廳のみをとつて御覧になつても、本來このために約二萬人の増員を必要とするごとき意向があつたのを政府においては漸くこれを五千名に切詰めて、今囘必要な法律案を出しておるのであります。最近における人員の増加が一面において行政整理をせんとするその部面と一見して矛盾するがごとき形を備えておることは、誠に首尾一貫を欠く點であると思いますが、結局設けざるを得ないものは止むを得ず最小限度に人員を切詰めてこれを設ける。その外、一面においてはこれを整理して人員を減少して行く。かような二本建で今日進んでおるのであります。只今御指摘になつた數字は正にその間の消息を物語つておる。かように御了承を願います。
#15
○石坂豊一君 私の只今申しました數は特別會計の計数ではない。一般會計の官吏だけを取つて申上げた。特別會計の鐵道等における計数から言いますと、又何萬人か入るようなことを聞いておりますけれども、そういう計数を擧げて私は申上げるのではない。整理は一割五分するとするならば人間は當然減らなければならん。減つておつた面において殖えるということになると非常な人員の増加である。これはすべて数から來て明瞭になつておる。その數が減つておらん以上は一割五分の整理ということは、これは羊頭を掲げて狗肉を賣つておる。國民を騙す一つのインチキ整理ではないかと、こう言われても仕方がない。明らかに殖えておる。今申す通り減らすものは減らしたが、増すところは増しておる。それで濟むのであるとこういう御辯明であるとすればこれ以上問う必要はありません。その點はどういうことになつておるか、實は計數を見て我々合點がいかんから先程總理の御意見とどうも一致しないのでありますから、念のために伺つて置きます。それでも仕方がない計數であるというだけなら、この質問は止めて置きます。
#16
○國務大臣(芦田均君) 私の説明が少し不十分であつたかも知れませんが、行政整理を行うには確か本年一月末日の現在定員を抑えて、それから一割五分の數を減ずる。或いはもう少し多くなるかも知れません。併し只今出ておる数字は整理を實行してその結果の數が出ておるのでなくして、現在數が恐らく出ておるのだろうと思います。ただその現在數から一割五分なり二割の人員が減ると、こういう結果になるのでありますが、その整理した後の數字はそこには出でおらん。そういうことだろうと思うのであります。従つて一割五分を減すといつておりますこの數字ではどうもインチキだという御批判がありましたけれども、それはそうではなくして、行政整理を行なつた結果は減少した數字がはつきり出て来る。こういうふうに御了解を願います。
#17
○石坂豊一君 それであるから私は先程この豫算は一割五分の整理を見込んで編成しておるのか、それはそれとして豫算は豫算としてあとで整理するのかと言えば、その数字は整理を見込んだ豫算だとお答えになつた。ところがこの資料は今の豫算には附属する資料でありまして、豫算を外れたものではないのであります。それでありますからこの数字の役人の定員というものは、私は去年の豫算定員と、今年の豫算定員の比較表であるから、これによつて増員になつておる分は一割五分節約するという御意見は徹底していないのだ。こう解する。從つて地方出先機關のごときも依然として各省の中に存置して置く。或いは又現在追加豫算で要求するつもりでこの中にそのまま振込んでおるものもあるということになりますと、ますます分らなくなる。それで疑いを質したい必要からお尋ねをしておるのです。まあ總理はあまり事務的のことをお分りにならんから、それで答えられんとおつしやれば他の機會に問いますが、併しこれは閣議に出ている重大な問題ですから、そこから出ておる計數であると思いますから間違いないと思います。どうかそれについて一應……
#18
○國務大臣(芦田均君) 定員をはつきりと整理後の数字を示すことは困難でありましたから現在數が出ております。併し給與措置の方では一割五分の人件費を引いたものをだしております。そこに豫算に出ていないといういろいろな議論があつたようでありますが、政府の出しておる豫算は今私がお答えしたような方針でできておるということを御了解願います。
#19
○石坂豊一君 ともかくもこの政府の示した材料によりますと、假に臨時職員、雇員、傭人を合せまして、前年度に比しまして七萬以上の人員が増加しておるということが完全に見せつけられておるのであります。現に行政整理を一割五分とするということついては、我が輩は只今の説明だけでは信を置き難いのであります。但し總理のお心持はよく分つておりますから、この上十分努力を頂いて、一割五分以上の整理をされることをお願いいたします。
 次に伺いたいことは、この六・三制の問題、教育上の見地から私は聞くのでありますが、財政上においてこれは非常に大きな問題になつている。現に我々の手許に封して町村長か續々毎日、北は北海道、青森から、南は九州の邊まで、町村長一齊に六・三制問題の増額を叫んでおりますのは、これは實際において制度そのものについては非常によい制度でありましようけれども、この地方自治團體にとつて見ますと、全額を國庫に持つて行くという前提でなくては實施できない制度のように我々は聞いておるのであります、そのために我々の小さな縣にも、もう三十人から町村長は辞めておる。これを持て餘してどうにもできんからなんとか方法がつくまで我々はどうにもやれない、ここにおいて長いことなおざりにしておる問題ではないので、政府は根本的にこれの經費は全部國庫で持つのであるか、或いは補償程度にしておくのか、或いはもう一遍教育の本筋に立戻つて再檢討して、地方自治團體の負擔に堪え得るようにするのであるかという根本的な措置を取らなければ、非常に自治團體の運營を妨げる重大な問題になつて來ておるように私は考えるのであります。地方の自治團體において義務教育費を全部國庫になすりつけるということは、これは今日敗戰國であり、殆んど破滅に近い日本の財政として果してそれはできることであるか、この點も考えて見なければならんが、如何に瘠せ我慢にしてもやるところはやつて行かなければなりませんので、この點について非常にこれは國策として根本的な考えを廻らして行かなければならん問題であつて、ただいい加減に、ある方面で言われたから無理やりにできるとかできんとかいうようなやり方では濟まん問題になつて來ると思う。段々そういうことになつて來ておる。でありまするから、これに對する内閣全部背負つておる總理の考えとしてどう落ち書けられるのであるか、それをどうしても伺つて置かなければならんと思う。我々は我々としての意見もありますので、この場合現内閣の所信はどういうお考えを持つておるのか、只今見るところによると、公共事業費は若干増額にはなつておりますが、そのくらいのことで濟む問題ではないので、その點御説明を願います。
#20
○國務大臣(芦田均君) 六・三割の實施がさなきだに困難なる地方財政に、非常に重壓であるという事情を、只今石坂君がお述べになりまして、私もその通りに考えます。又國庫としても今日の財政の實情から見れば、非常な大きな負擔であるということも了解されるのでありますが、両院に現われたる御意見、文化委員會等の御意見によつて見ましても、若しくはその背景となつている各政黨の掲げられている政策を見ましても、只今私共に映じた國會の意向は六・三割のためにできるだけの資材と國庫の經費を注入すべきである、こういうふうに私共は承知いたしているのであります。その御期待に副つて、中央財政の許す限りこれを實行して行きたいというので今囘の豫算を組んだのであります。決して國會の意向に反する方向に政府が六・三制問題を取扱つているとは考えていないのであります。併し、つらつら地方の實情等を顧みまして、只今石坂君がお述べになりました點は十分私共はよく分つております。これを如何にして地方財政に對して中央政府から必要な經費を支給して行くかということに、相當の苦心をいたして來たという事情はどうか御了察を願いたいと思います。
#21
○石坂豊一君 六・三制に射して國會の意思をよく採り入れてあるというお言葉でありますが、それならば公共事業費における今囘の支出というものは非常に少い、どうも政府の方は生かさず殺さずのように見えるのでありますが、全國の町村から多量な陳情書が出て來るということは一つはそこにあると思う。如何にも實施するがごとくにして實施できない程度の金がばらまかれている。そういうことでありますから計数を擧げて申上げてもよい。それならば私は、國會の決議に亦相去ること頗る遠いものである、政府は國會國會いうことを頻りに申されたけれども、その國會の議決は採り入れられていないように考えます。總理はそれでも尚採り入れてあるというお考えでありますか。その點を一つ。次いで又公共事業費について伺いたいことがありますが、先ず六・三制の範囲において御答辯を願いたいと思います。
#22
○國務大臣(芦田均君) 六・三制を完全に實行するために本年度の豫算に現われている經費は決して十分とは言えない。まだまだ支出しなければ到底豫定の通りの設備はできないのだという御議論は私もよく了解いたします。できるならばまだまだ經費を支出して六・三制の實施に當るべきでありますが、一面においては財源の問題、もう一つは資材の問題、現在公共事業費として計上しております各種の事業を行うために必要とする資材の分量は、すでに飽和點に達しております。勿論その人々の見方によつて統計はいろいろありましようが、政府の持つている統計によれば、現在の程度の公共費の豫算を以てしてはこれで資材が一ぱいなのであります。これ以上どう見ても資材が出て來ないということが一つ。尚一面においては必要な財源が見つからない。こういうことでありまして、平つたい言葉で言えば、ないが思案の總じまいということで、今度の豫算ができているのであります。その邊は石坂君も御了解下さることと思います。
#23
○石坂豊一君 そこです。それならばそのように自治團體が料理し切るようにこの制度を立て直さなければならない。六・三制として、義務教育として津々浦々までこれを布いて行くには、第一これを教育するところの教師が必要である、その次に、收容する校舎が必要である。その點において、校舎が必要な場合において資材も貰えるということであればどんどんできます。又教員の點から申しますと、女學校の卒業生のような者を集めて短期講習をしてそれぞれお茶を濁している。一面からいうと、編成した當時の制度はよろしいが、實際指導される場合に當つて完全な教育が受けられないということになる。そこを思い切つて政府が、この國民の教養を高める點において、どの程度にすべきかということをもつと深く掘り下げて考えなければならんのじやないかと思うのであります。或る方面から進められた制度であつて、又文部大臣の言葉を借りて申しますと、連合軍に對して約束をした制度であるから、是非共やらなければならんと言われるが、できない相談はどこまでもできない相談である。そこは、日本を助けてやらう、食糧まで放出して日本国民の生活を確保し、又教養も高めて、飽くまで道義國家、平和國家を建設してやりたいという、誠に親切なる考えを持つているところの連合軍においては、理解しないことはなかろうと思うのであります。それをいい加減に受け入れて、成る程これはできるところもあります、できるところの豊富な資力のある自治團體もあるが、できない自治團體が天下に充満しておる。それをいい加減にして、やろうとしても資材がないからできないということは最檢討すべきだと思う。だから教育當事者の考えは別として、總理の大なる大所高所からの決心を聞きたかつたのであります。只今の御説明によつて、大體の總理のお考えの點は分りましたが、この點については政府はよろしく一つ一反省せられて、國民の向學心又國民の資力ということをよく考えてやつて頂かんというと、とんでもない姑息な制度の中に日を送つて行くというようなことになつて、その結果國民の教養を高めるどころか、不良少年の養成所に變化して行くという虞れが多分にありまするから、私は敢てこの言を申すのであります。
 次に伺いたいのは、政府は口を開けばいつも施政方針の中に戰災者、引揚者、その他に對するいろいろ御同情の言葉があります。併し、今度の公共事業費を見ましても、戰災復讐に對しては餘り多くのものを盛つていない。成る程經費は住宅の方に多少あり、又都市計畫の方もありますが、都市計畫の經費は必ずしも戰災復舊ばかりに使われているのじやない。少しも戰災にあわない都市までも入れた經費が入つておるのでありまして、その經費は十三億七千四百六十四萬六千圓、それから住宅の方の經費は、二十七億七千五百九十五萬圓を入れてあります。けれどもこれを合せましても四十一億七千四百六十四萬六千圓くらいで、公共事業費の一割にもならん。戰災復舊ということは、これは全く日本の戰争の犠牲でありまして、これによつて家を失い、財産を失つた者は非常に多い。芦田さんも非常に痛手を受けられたことは、私はそのことをよく知つておるのであります。然るにこの戰災者に對しては、もう燒損である、又そんなことはどこにもあることであるから、特に構う必要はないというふうに言うておる。今度はその戰災者は政府の處置に對して非常に恨んでおる。日を經るに從つて忘れられておる。成る程住宅その他のことに多少の資材等を貰うけれども、建築には非常な制限がある。又區劃整理については遅々として進まない、豫定の一割もできないというようなことで皆困り果てておる。で戰災の都市は百二十もあるのでありまして、その外詳しく擧げれば百九十ばかりもある。これは一々申上げる必要はないと思います。これらの連合會の會長から實に切々たる陳情書も出ておる。よもや總理は御存じないことはなかろうと思う。その點に射して普通一遍のお考えで取扱いなさるつもりであるか。又今の經費の取り方は實際に適應しない、又痛烈に起つておるところの、戰災者の心理を如何にも冷眼視したようなやり方になつておるから、もう少し再認識するというお考えはないものでありましようか、その點を總理に伺いたい。
#24
○國務大臣(芦田均君) 戰災都市の復舊のために一日も早く必要な措置を取らなければならんことは、石坂君の只今お述べになつた通りであります。東京の眞中でさえもまだ燒木の横たわるままに残つておるという實は惨憺たる状態であり、住宅も非常に不足をしております。誰が見ても戰事の犠牲を均等に負擔するという立場から言えば、國家としてなさなければならんことが山積しておるということは痛感いたすのであります。然るに事實これらの事業を相當短期間に實行する場合においては、可なりの資材とそうして莫大な國家の費用を必要とするので、あります。止むを得ず戰災復興のために充當する經費をこの程度に縮めざるを得なかつた、こういうのが豫算編成當時の政府の立場であります。併しながら今後經濟再建が緒につくに從つて、必要なる財源を見付けて、そうして或いは戰災復興事業であるとか、災害復舊であるとかといつた事業のためには、優先的にこれを拡大強化して實行しなければならないというふうに、私共一同痛感しておるのであります。現在の財政状態において止むを得ずこの程度にせざるを得なかつたという事情であります。
#25
○石坂豊一君 只今の御言明でありますが、どうも政府はこの點において、時を經るに從つて少し頭がまぶしてきたと言いますか、どうも仕方ないと言うか、力が入つておらん。現に戰災後すでに二年何ケ月、いやもうすでに三年にもなつておるところもありますが、もう六割もできておるところもありますが、假住宅のごとき住宅を通じて漸く一割七分に達するか、達せんかくらいで、あとの者はぐらついた生活をしておる。實に氣の毒だ。住宅問題は非常に深刻な社會問題だと思う。曾て芦田君は厚生大臣になられたときに、私は常時或る種の世話役をしておりましたが、私共が申上げたところ、自分はこの職を引受けてこの年の暮に罹災者がどうしてこの冬を越すだろうかと思うと胸が一ぱいになる、一生懸命に住宅のことを心配しておると言われて、我我に對しても非常に好意ある御援助を與えて下さつた。ところがその當時の考えは……あるいは場面に出られたために、そうでないかも知れないけれども、如何にもどうも戰災復興等に對しては冷淡なように考えるのでありまして、その證據は現に予算に現れておるように私は思います。どうか一段とこの點についてはお力を添えてやつて頂かないと非常に國家再建の促進ができないように私は考えます。中小工業と言いましても家のないところでは何もできないのであります。多數の家内工業が集まれば見返り品もできます。併し家のないところでは何にも仕事ができない。そういうようなことから考えましても、これは決して等閑に附すべき問題ではないと思います。等閑に附しておらんと言われますが、事實においては、多少弛んでおるように思いますが、この點に特に政府に注意をお願いしたいと思います。
 續いて私はもう一つ伺いたいことは、軍公利子の停止のことでありますが、どうもこれは私は芦田總理も、北村藏相も又安本長官の栗栖君も、これは皆反對であつたと私は思うのであります。先月の二十八日でありましたか、暫定豫算の審議の際に、ここで取急いで質問をいたしましたときには、今正にこの問題については、委員會に掛けておる。その委員會の決定を待つて何とか處置するということでありましたが、併し總理の考えは委員會で是非共これは拂うべきものであるということを決定するのを待つて、ああいう案を作られておられるんでありましようが、木村君より痛烈にそれを攻撃せられまして、その委員會なるものは、一遍の懇談會として、それで話合で以てそれが纏まるものではない。そういう工合に決まつておる。然るにその處置は今日まで延びておるということは、怪しからんということでありました。で社會黨の言われるのは、これは戰争の金であるから止めてしまえという。ところがそれは、社會黨の主張は、それで一片の道理はないではありませんが、併し今のはそうではない。これは拂うものであるということに決めて置いて、一年だけこれを待とうという、而もこれは國家と個人と對等の位置において、債權債務の關係になつておる公債である。その公債を國家の權力を以て一方的に一年間拂わん。棚上げするという、そういう得手勝手というものは、世の中に通ずるものではない。道義を重んぜられるところの首相は、かくのごときことをして、このいわゆる借りたものは必ず拂うものであるという観念を破壊されるような、逆行動を取られたのに對して、私は了解できない。如何なる場合の説明においても、殊に北村藏相のごときは、世間には公債を打切るということまで話があつたから、せめて一年ぐらい利拂いを止めてもよかろうというのでやつたと、こう言われますが、これは社會黨の主張に限るので世間の大衆は一年だけだと思つておる。(「ノー」と呼ぶ者あり)そうすれば、その世間では、拂うべしというのと、拂わなくてもいいというのと二つあつた。で今の處置を見ますると、利拂停止、棚上げでありますから、一年間社會黨どの休戰をしておられるように考えられる。社會黨との休戰をするのであつて、これは試験的にやつておられるように我我は考えられる。都合がよければそのまま都合が悪ければ、誰か次の内閣が出て、うまくやつて行くだろう、とにかく一年間棚上げをする、これ程の狡猾な政治は世の中にはないと私は思います。只今私が伺いたいのは、かようなことは本當に芦田君の腹の中から出たことか。ただ三黨協定のために自分の腹の中にないことであるが、止むを得ず行なつたことの窮策であるのか。ここを伺つて置きたいと思います。
#26
○國務大臣(芦田均君) この問題は、すでに暫定豫算討議より、各方面の論議の的となつた問題でありまして、本會議の豫算質問の際においても、多方面あの代表議員の方より質問があつて、それぞれ政府の所信を明かにし、答辯をいたしたのであります。今日重ねて石坂君よりお尋ねがありましたが、この問題は、政府は閣議において決定したる方針に基いて提出いたしたのでありまして、その方針は私自身においても、これを堅持する考えの下に提案いたしたのであります。尚詳細の事は今日までにお答えいたしましたところによつて御了承を願います。
#27
○石坂豊一君 私は率直に申上げます。かくのごとき支拂停止は、別途法律案が出ますが、それによつて更に審議されましようが、これは衆議院で、或いは怒濤のごとき與黨の力で、或いはどうなつて行くか分りませんけれども、我々は、参議院の立場においては、かくのごとき停止の問題は同意し難いという、若しさような場合においては、首相はどうなさるか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それは國會の意思であるから、その意思に従うという考えであるか。それとも内閣の方針を確保するという趣旨であるかどうか。その點も伺いたい。私はかように申上るということは、先日衆議院においての質疑應答において衆議院の本會議において、總理は、かくのごとき處置を取つても、國際的に日本の信用に影響することはないかという質疑であつたと思います。それについて、ロンドン、ニユーヨークの日本の公債は下つておらんという御言明であつた。又参議院の本會議においても、同様な質問に對して答辯された。常時ロンドン、ニユーヨークの相場は存じませんが然らば近いところの、日本における、ところの訪日投資家などの意見はどうか。私の聞き及ぶところによるとそうでない。非常に日本の經濟上の處置として、大變大膽なことをする。かくのごときことをするのでは、外資導入もなにもあつたものでないということを警告しておる人があるということを伺つておる。それは総理の耳に入つておると思いますが、その點を伺つて置きたい。即ち第一には、この案は修正されて、支拂いをしなければならんということになつたときの處置、及び又この問題は、國際的に何らの影響がないとおつしやるが、依然としてさようなお考えであるか。その點を伺つて置きたい。
#28
○國務大臣(芦田均君) 只今の御質問は参議院の本會議においても、同僚諸子の左藤君よりも御質問があり、尚その他の方々からも御質問があつた問題であります。政府の持つている種々の情報によりますと、これがために、我が國の信用を害して、公債が下つたとか、或いは我が國に投資せんとする連合國の公けの機關、個人が、特に投資に躊躇したとかいうような情報は得ていないのであります。その結果、政府としては、この問題が必ずしも海外信用を傷つけたとは考えていないというお答えをしたわけであります。
#29
○石坂豊一君 總理のお答えは得ましたけれども、私は總理として、政府として集めておられる情報の中に、或情報の一部を、ことさらこの問題を輕く扱わんがために、お聞きになつておらんのではないか。我々の手許に來ておる全國の經濟團體の會長から、訪日投資家などは、これに對して非常に憂慮して、これは誠にひどい處置であるということを言うておるということが明瞭にある。その報告書を謹んで見ろと言えば謹みますが、時間の都合上、私はそこまでも聞かさんでも、聰明な總理は、特に御承知と思います。ただ政府は、この問題を小さく扱わんがために、成るべく壓縮して、そんなことはどうでもいいと、簡單なように片付けられておりますが、なんぞ知らん。その反面においては、非常に對外信用を傷つけられたものであるということを我々は眞劍に憂うる者である。先般左藤君の質問にお答えになつておりますけれども、その點について、民間投資家としての意見は、これは、米國などにおいては、非常に重く響くのである、如何に芦田君は、外資導入が七月頃からぼつぼつ入りつ來ると樂観しておられまして、或方面におけるところの又政府の力がありましても、やはり民間の訪日家などが、日本の經濟界に不信を抱くようなことになつたならば、これは折角のこちらの希望も達成できないことになるのじやないかと思います。さようなことは、今日の場合において注意しなければならん。私は芦田君が何のためにかようなことに手を著けられたか、非常にその點を疑うのであります。強いて言えば、これは三黨協定に忠實にして、内閣の命脈を維持する一時の方便なりと見られても、私は仕方がないのではないかと思います。その點私は明治憲法の時代において、貴族院において、成る財政家から、ときの政府に射して、日本の外債の利子が高い、これを低利に借換える方法がないかということを質問したときに、時の大藏大臣高橋是清さんは、非常に昂奮せられまして、さようなことはできることではない、この外債借入については非常に苦心をして、各種の交渉を經て、即ちその年限なり、利息を悉く米國の資本家、その他各國の資本家の了解を得て實行しておるもので、それを途中から、こちらの都合によつて低利に借換えたり、年限を縮めたり、伸ばしたりすることはできない、さようなことをすれば、一擧にして日本の信用を害することになると言われたが耳に残つております。そうあるべきものだと思います。これは外債でありませんけれども、日本の内債にしても、如何に國内の問題にいたしましても、貸し、借りの債權債務の關係を、一方的に國家の權力で變更することは由々しき問題であると私は信じておる。若しそれ社會黨の政治理念から言うならば別だが、而もそれを一年先きに延ばして置く、そうして延ばした結果、税金でも、取引高税でも止めるというならば別だが、それは方々にばら撒かれてしまう、なんたることだ、得手勝手に外に使う、かような政策が國會を通過するものならば、私はこの國會というものはどうかしておると思う。(「飛んでもないことを言う」と呼ぶ者あり)その點については意見の相違でありまするから(「獨断だよ」と呼ぶ者あり)多く議論する必要はありませんが、最も信頼せる芦田君の處置として私は理解し兼ねる。殊に一年後に参ると、現政府が後に行つて後始末ができるものでないと思う。私はこの點についても、どうも現内閣が餘りにもあれだと思う。お答えがあれば承ります(「答辯要なし」と呼ぶ者あり)
#30
○木下源吾君 私はこの機會に總理大臣に二、三お伺いしたいと思うのでありますが、(「八百長は止せ」と呼ぶ者あり)私は惡意を持つて質問するのでもなければ、又八百長というような只今お言葉もありましたが、そういう氣持で質問するのではありません、ただ互いに日本のためを思つてでありますから、率直に一つお願いしたいと思うのでありますが、先ずこの本豫算の提出に當りまして昨今非常に政局が不安というような状態になつておる。これはもう蔽うべくもない事實であるのでありまして、そのために國家百般の各方面に影響するところが多い。この根本的原因が一體奈邊にあるかということについて、一つ總理大臣の御心境を承わりたい。かように考える次第であります。私はこの本豫算案が上程されたために、この豫算案の内容についてのためでもあろうかと思うのでありますが、一切を引つくるめて、どういうところからこのような不安の状態にあるのだということを一つお尋ねしたいと思うのであります。先ずこの點をお伺いしまして、もう二、三點……一つお願いいたします。
#31
○國務大臣(芦田均君) 戰争によつて莫大な被害を受けて、而も國民生活がかかる窮迫の時代においては、如何なる人が政府に立つても、國民に向つて多大の犠牲を要求せざるを得ないのであります。併しながら國民の全部が必ずしも我々日本人の置かれたる現在の環境を十分に理解しておるものばかりとは言えません。ときには敗戰國たる現實の事實さえもまだ徹底しない、そうして一面には、經濟的窮乏に喘いでおるのでありますから、すべての惡條件は、政府に立つておるものの責任であるという、一應の考えを持つことは世界各國において免がれ得ない。如何なる國においても、かくのごとき環境の下に、政府に立つものが國民の多くの非難の的になる。こういうことは、これは極めて共通の事實であります。日本ばかりが例外であるとは思えません。待つてその風潮によつて、相當の文化の程度のある人々までが、その漠たる國民の怨嗟不平に基いてものを判断するごとき場合が頗る多い。ときには行き過ぎであると知りつつも、その俗論に媚びて行動せざるを得ないような立場におる人も必ずしもないとは言えないそういう場合において、かくのごとき難局に立つ政府が、あらゆる非難の的になるということは初めから分り切つたことであります。今日政府が不安であるという風評が出るということは、私は必ずしも不思議と思いません。併しながらそこは政府にあるものがあらゆる非難の前に立つても、本営に日本再建のためにどうしてもこの途でなくちやならないという確い信念の下に、これに適應したる政策を以つて勇敢にその施策を實行するということは、國家民生に對する當然の責任である、かように私は確く信じておるのであります。
#32
○木下源吾君 よく分りました。そこでこのような過渡期においては止むを得ないことであるというような建前からですね、いわゆる昨今の政黨が一部の資本家といいますか、そういうものから特定な援助を受けて政治をやつておるのだというような、この印象を國民が受けて、それに對する批判的な態度に出ておるというような場合においても、今日の段階としては、この程度は止むを得ないというように、やはりお考えになるのかどうか。私はこの豫算案がそういう根本的な建前に立つて編成されたとは考えませんけれども、國民はこの廣汎な豫算を一々仔細に檢討する前に、このような政治、政黨の状態にある場合においては、豫算の内容においても、資本家というものに忠實に、有利にしておるのではないかという疑念を起すが、かように考えるのでありますが、この點總理大臣はこの機會に明確にして置かれることが大切だと考えますので、御答辯をお願いしたいと思います。
#33
○國務大臣(芦田均君) 只今の御意見は、この豫算の如何なる部分が豫算の、いわゆる資本家というものの利益を圖つて編成されたかという問題を、少し具體的に承わらないと、私にはちよつと心付きがありません。むしろ今囘この豫算編成に伴つて、政府の提出いたしておりまする勤勞所得税の引下げにしましても、その他各方面の引揚同胞に對する特殊の設備のために、無理な財源を搾り取つてもその方面に充當した、現に公債の利子支拂を延期したあの十數億の使途についても、相當の部分を引揚同胞の住宅建設のために使用したという事實を御覧になつても分る通り、でき得る限り大衆のために圖つて必要な施設を實行して行きたいという方針の下に編成されたのでありまして、この豫算が資本家のために有利にできておる豫算であるなどという批判を聞くに至つては、私は誠に心外千萬だと感ずる一人であります。
#34
○木下源吾君 今總理大臣から御答辯がありましたが、前段についての私の質問にはお答えがなかつたようであります。ただ後段の本懐算に關することは、前段の問題をどういうようにお考えになるかということから引例したに過ぎない一つの質問であつたのであります。それは然らばそれとしてよろしいのでございますが、次にはこの政府は全官吏の勞働組合からは對立物のような形に置かれておる。或いは又鐵道などにおいては資本家對勞働者という形に置かれておるし、世間も亦おしなべてそういうように考えておるのでありますが、こういうような結果を來たしておるということは一體何に起因するのであるか。政府は資本家ではないのである。政府は決して資本家的立場でこれを經營しておるのではないということが、日常具體的に現われており、そうするならば、かような對立というものがないではないか、かように考えるのでありますが、どういうわけで一瞬かような樹立的なものが生れてきておるかということについて、お尋ねしたいのであります。
 尚度々お立ちになりますので私はもう二、三點続けて申上げますが、鐵道竝びに通信料金の値上げに際しまして、これは普通の經營から行けばその他の物價等々と比較いたしまして、値上げの率は未だ低いということは我々は分るのであります。にも拘らず、澎湃として国民がこれに反對するところの理由について、何かお考えをいたしたことがありましようか。ございまするならば、これを一つこの機會に御答辯を願い、且つ御答辯の結果といたしまして、若し運賃竝びに料金等に對する國會の大なる修正があつた場合においてもです、政府は本豫算を通過せしめる上において御用意があるのかどうか。私はこの豫算は、二十三年度の本豫算は一日も早く通過せしめなければ國民に相濟まんと考えておる一人であります故に、その點を明瞭に一つお聞きしたいと思うのであります。
#35
○國務大臣(芦田均君) 公務員と政府とが雇主と雇われ人とのような心持で對立しておる原因がどこにあるかというお尋ねであります。それは憲法の精神が分らないからであります。公務員は國家の奉仕者であつて國民全體の公僕である。政府の役人も、その他の官公廳の役人も、國民の公僕たる地位においては何も變りはない。ただ政府におる關係上、國民を代表して給料の交渉に當つておるだけのことである。從つて官公勞組合員の賃金鬪争は組合員對國民の争議であります。それだけの簡單な事實がよく分りさえすれば、今日現われておるような矛盾した樹立は絶對にあり得ない。私はさように思います。
 尚鐵道運賃の問題についていろいろお話がありました。このことはすでに運輸大臣より度々本會議等においても説明をいたしたことでありますから、私からは繰返しませんが一口でいえば、日本の鐵道が國有でなかつたら運賃値上げはもつと簡單に行われたと思います。若しこれが國有鐵道でなかつたら、鐵道はもう二、三年前に破産してしまつて、倒れてしまつたに違いない。ただ偶然に國有鐵道であつたから、政府が何とかして助けてくれるだろうというわけで、鐵道の資金を上げなかつた。そうして鐵道賃金というものは今日まで比較的低い地位に残つておる、これは國有鐵道のお蔭であります。若し今日この銭遣を民間に拂下げて、そうして今のような經營をやつておつたら、恐らくもう二、三年前に倒れておつたろう、私はさように考えております。
#36
○木下源吾君 前問で打切ろうと思いましたが、重ねてお伺いしなければならんことに相成つたことを、甚だ遺憾に思うのでありますが、私は今の公吏が、官吏が、總理大臣の今言われたようであるということは、私は承服いたしかねます。同時に今日の官吏の一部は誠に、私は國民の名においてこれを言うても差支ありませんが、汚職の傾向があると思うのであります。で、これは私は先ずそれを責める前に、政府みずからが範を垂れて確固たる指針を與えるべきだと考えておるのであります。政府が今官吏に對する御見解がかくのごとき御見解であるとするならば、恐らくこれらの官吏を粛正することは困難であろうということを、私はここで申上げて置くに止めます。
 そこで私の伺いたかつたことは、運輸大臣はしばしばの御説明がありましたけれども、獨立採算と公益ということに關する限界について、改めて私はこの機會にお伺いしたいと考えたのであります。ただ我が國の今日の民主化の發達の程度が、これをこの程度にして置くより止むを得ないというお考えであるのかどうか、これをはつきり一つ御答辯を願いたいと思うのであります。
#37
○國務大臣(岡田勢一君) お答えいたします。この度の運賃値上げが獨立採算制のためのみに割出したものでありませんことはしばしば御答辯申上げました通りでありまして、ただ今日の困難な國家の財政の現状から考えまして、又もう一つには、運賃は國民大衆の生活竝びに生産、經濟に多大の影響を及ぼしますこと、竝びに物價の如何によりましては只今のインフレーシヨンに大なる關係がございますこと、そういういろいろの角度から檢討いたしまして、只今の現状から考えますこと今決定しております倍率程度の引上げをお願いした方が通常であると考えまして、策案いたしました次第でございます。
#38
○石坂豊一君 この場合鈴木法務總裁に極く簡單に二つの御質疑をいたしたいと考えます。その一つは、法務總裁が前の司法大臣と違いまして、非常に重責を負われて、國家の安寧秩序を保持するところの檢察當局を監督せられておる。その上に又立法上の法制事務をも所管しておられるのでありまして、この點におきまして御多忙のことと存じます。然るに檢察當局の御處置として世人が非常に疑いを持つていることが一つある。それはどういうことかと申しますと、檢察當局が非常に正を履んで恐れず、堂々とやりたいけれども、法務廳に伺うと、それを揉み消すというようなことが世間に傳えられているのであります。これは先ず、もう一つ掘下げると、どうも法務廳ばかりではないので、その背後に有力なる權力があつて、それが使嗾するのである。そういうことも傳えられております。私の考えるところによると、連合軍當局は日本の國内の治安、秩序を維持し、且つ又日本國民の食糧までも心配して、その生活を保護することに努めておる親切なる占領の仕方でありますから、凡そ國内を粛正するところの檢察事務に對してさようなことをいうことは決してなかろうと思います。そうすると法務廳を牽制するものは想察すると、一つの政治である以外の何ものでもない。果して法務廳はさように牽制を受けておられるのであるか、決してそういうことはない、正しく強く、又極めて朗らかに事務を處理されているのであるか、その點を一つ伺いたいのであります。實例を擧げて御質問することも必要でありまするが、全般的にこの點を一つ伺いたいのであります。
#39
○國務大臣(鈴木義男君) 只今の御質問は意外なことを承るという感じであります。檢察當局は非常に熱心に檢擧に従事いたしておりまして、苟しくも非違のあるときは、そしてこれを發見いたしました以上は何ものをも恐れず、何ものにも遠慮せずやつている筈であります、事實私共は今まで常にやり過ぎるということについての御非難は受けておりますが、やり足らないということで何者かがこれを抑えているようだというようなお言葉は只今の石坂議員から初めて承ると申して差支えないのであります。若し具體的にあの事件はどうしてやらなかつたかというようなことがありまするならば、喜んで十分理由を御説明申上げるつもりでありまするから、どうか遠慮なく御質問願いたいと存ずるのであります。大體は關係方面におきましても、單に日本の檢察權に委せて置くだけでなく、進んでみずから犯罪を捜査し、そしてこれを處理すべきことを檢察廳に委ねるような次第でありまして、檢察廳といたしましては實に定員に對して四割程の欠員を持つているにも拘わらず、晝夜兼行の状態で努力いたしておるのでありまして、手が足りないために處理が遅れている或いは比較的微罪であるから、或はあと廻しにして大物を擧げることに努力すべきである、力には限界がありまするから、そういう意味で止むを得ずあと廻しにするとか、この程度のものは暫く見逃してもお許しを下さるであろうという程度のものを或いは見逃しておるんじやないかと存じます。意識的に何者かの力が加わつて檢擧するなといつたようなことは、私就任以來ただの一つもないつもりであります。どうかその點は誤解のないようにお願いいたしたいのであります。
#40
○石坂豊一君 極めて明瞭なる御答辯を得まして安心をいたしました。併し私は法務總裁を信ぜずして御質問申上げるのではないのであります。これは廣く世間の噂にかかつておることであり、事件そのものも私は知らんではありませんけれども、軽率に私はこれを言い現わすことは控えますが、又今日國民は警察力の割合に弱くなつた場合において、特に社會の秩序を維持して呉れておるものは檢察當局の睨みがあるからであるということもよく知つておる。又司法権を維持するために非常に皆努力しておるということも知つておる。
 然るに廣汎的に一つの例を擧げますると公吏の中には非常に不心得の者かおつてからに、支出すべからざる經費を支出したり、又給與すべからざる者に給與をなしたためにいろいろ問題を起しておる、これらに對して檢察當局は法令の命ずるところに従つてびしびし處置をしておるが、その後の檢察のやり方は進んでいない。これに對して世人はどうもあれば地方の檢察當局において上申はしてあるけれども、上の方で抑えておる。その抑えておるということをもう一遍掘下げると、或る權力が加わつて、そんなことをやらんでもいいということがあつてやらんでおるという、こういう噂が傳わつておるのであります。それで只今鈴木總裁のお話を聞けば、鈴木總裁の目の黒い間は断じてそういうことはない、一遍一遍やるというようなことでありますから、私はその言を信用したい。而して世間の噂を打消すようにしたいと思いますが、併しこういうことは各府縣にあるのであります。先程木下君もいわれたごとく、官公吏の涜職というものは全國に拡がつておる。これは實に憂慮すべきことであるから、檢察當局の大いに努力をお願いしなければならんことであるが、その後についててきぱきと運ばれておることは事實であります。かようなことからして、今の私の申上げたようなことが傳わつておる。どうか尚その點において法務總裁の努力をお願いしたいと思います。
 それで次に伺いたいのは。先日同僚である佐藤君から、某國務大臣に對して最高檢察廳から起訴の稟議があつた場合に總理大臣はどうするかという質問をしました。併しこれに對しては必ず法務總裁の手を經て行くものでありまするが、かような場合において法務總裁が如何なる處置をなさるか、その點を伺いたいと思います。
#41
○國務大臣(鈴木義男君) 前段のお言葉に對して補充、補足いたして置きますが、石坂議員の仰せられることが、食糧公團の檢擧の問題というようなことを指しておるのでありまするならばこれはいろいろな見方があり得ると思うのでありまして、今全國に亙つて檢擧をいたしております。一體これを檢擧することが、正しいかどうかということについて、すでに議論があるのであります。しかし惡意を持つてその退職手當等を與えたかどうか、或いは當局の意思を誤解して與えたものもあるじやないか、餘り職員が猛烈に運動をした結果、餘儀なく與えたのではないか、いろいろそういう事情もありまして、これを一齊に檢擧はいたしておりまするが、關係方面の御注意等もありまして、さてこれを如何なる限度まで處罰すべきかということにつきましては、愼重に當局として考慮いたしておる筈であります。私は毫もこの議に與つておりませんが、併し一般的には、やるべきものはやらなければならない、又やり過ぎてもいけない、正しく法を解し、又事情を解してやるべきである。こういう考え方をいたしておりまするから或いはそういうような問題について特に御指摘でありまするならば、これは非常にデリケートな問題で、何者の力の加わるのでなくても、誰がこれを檢擧いたしましても、相當これの處理については非常にむずかしい、考慮すべき點が多々ある、こういうことを一つ御了承置きを願いたいと思います。後に充分にその理由を附して處理を公表いたす豫定であります。
 第二の某國務大臣と仰せられましたが、西尾國務大臣と申して差支えないと思います。すでに餘りにも明らかになつたことでありまして、檢察當局に對しては、私は事は現職の大臣の關係することでもあり、又一日を争う問題でもないのでありまするから、昨年の春ありましたことについて、而も政令違反ということで届出を一本書いたか、書かないかということだけが問題になつておることについて、而もそのときのその人の資格、その他いろいろなことがやはりデリケートな問題になつておりますることでありまするが、そういうことについて、これを決しまするについては、十分諸般の事情を考慮して決しなければならんのでございますから、餘りこの最後の決定に達する前に、天下に向つて公表をする、或いはこれを倒閣の具に供するというような疑を受けますることは、面白くないことである、こう考えましたるが故に、發表することを差止めて置きましたが、敏活なる新聞記者諸君の活動によりまして、すでに漏れておるのであります。漏れた以上は強いてこれを隠す必要もないと考えまするから率直に申上げます。成る程起訴凛旨というものが私のところまで参つております。これを見まして種々私が起訴、不起訴を決裁いたしまするについてはもつと確めたい點があつたのであります。故にこの點について、今一應の調査をして御報告をして欲しい、こういうことを命じてありまするので、その報告が参りましたならば、そのとき私は起訴の禀請に對して私の決裁を與えまするがその結果に基いて總理大臣に同意を求めて、その先の段階の手續きを取るこういうつもりでおります。決してこれを揉み消すとか揉み潰すとか、そういうことは断じていたさんつもりであります。正しく處理する考えであり、又すべての經過もその時が参りましたならば、公表いたすつもりでありまするから、どうぞ御了承願いたいと思います。
#42
○石坂豊一君 只今のお答によつて、私は西尾國務大臣に對する起訴問題は法務總裁の手許に來ておるということは初めて分つたのであります。そうすれば私の考えるところによります、と、その起訴というものは、一國の檢察事務を總攬する檢事總長のいわゆる最高檢察廳の稟申によるものと信じます。恐らく最高の檢察廳が更に調査をする、更に一段の調べを要するというような危險性のあるものを稟申されることはなかろうと思います。餘り長引くということになりますと、法務總裁は倒閣の具に供するとか、いろいろなことに疑を受けていかんと仰せられまするが、あべこべに法務總裁は政府を支持して、現内閣の命脈を繋ぐために、殊更遅らしておるという嫌疑を受けないとも限らないことであります。
 曾て大隈内閣のときに、ときの内務大臣の大浦兼武氏がある事件に嫌疑を受け檢事總長の平沼氏より稟申が出た。その際における司法大臣は我々が憲政の神様として尊崇しておる、現に衆議院議員の尾崎行雄氏である、尾崎氏は内閣の一閣僚に向つて、起訴をするということは、倒閣の速かなる時期が到來することであるから、私情において忍びん、又同僚を起訴するというようなことに決判を與えるということは、私情においては忍びんけれども、法を守るために、涙を揮つて馬駿を斬るところの慨を以てこれに當られた。そうして毅然として大浦氏を起訴した、大浦氏はこれがために逗子かどこかに引込んで謹愼せられたということであります。我々は當時よく正を履んで誤らざるところの尾崎氏の行動に對して敬服しておつた。今日においても我々は立憲政治を擁護し、法を守るところの立派なる政治觀ということに敬服しておるのである。
 今鈴木總裁は左様な確たる證據を以て、稟申が來ておるものを長引かせるということは、却つて法務總裁の今日までの事績に對して暗影を投ずるものではないかと、亦その點においても心配するものであります。私は法務總裁が今日までなさつた嚴正公平なる行為に對して非常な敬服をしておる。社會黨に鈴木さんが二人おられる。一人は豫算委員長の鈴木君であつて、理論はともかく、この人のやり方に對しては委員長として立派な人で、やり方は非常に公明である。又法務廳におられる所の鈴木君も、これ亦非常に立派な人であることを確信しておるのであります。今自分の手許にあるけれども、握つておるのであるということを聞いて、聊か私は思い直さなければならないように考えます。(笑聲、拍手)どうかこの點については毅然として我々は正しくやつて貰うことがいいのであつて、かような問題で倒閣するというような、衆議院における所の黨派的な精神に燃えておる者は別として、参議院におけるところの我々は、決してそこまで私は僻んでおらん。正しく行きたい、そうして正しく行つて鈴木總裁は一つの手本を後世の日本の憲政史上に残して貰いたい。これについて何かお答えがあれば伺います。又続いて私はこの問題について總理に伺うつもりであるのでありますが、總理は退席されましたから、他の機會にこれに關連して伺いますが、先ず以てその中継機關であるところの法務總裁の牢乎たる決心を一つ承りたいと思います。
#43
○國務大臣(鈴木義男君) 只今のお尋ねは御尤もでありまして、私は大體澤山の、事件について稟申がありましても、無批判に取次ぐことも、亦決裁をすることもあるのでありますが、併し私が決裁を遅らせますれば、石坂委員が御質問されるような疑いを受けるということは、十分承知いたしております。私は檢察權の獨立を守るためには、尾崎先生のような立派な態度でありたいということは、尾崎先生に劣らない熱意を持つておるつもりでありまするが、併し自分が納得のできないことを決裁を直ちにしてしまうということは、天下後世に對しても私として申訳が立たんことでありまするから、何人に向つても立派に説明のできる條件の下において決裁をしたい。どういう點に私が疑問を持つたかということも、後日明らかにいたすつもりであります。とにかく大浦事件のごとく、金をやつた、貰つた、これはもう證據が十分に當事者の自白によつて得られておつたわけであります。それに對して再調査を命ずる餘地はないと信ずるのであります。これを起訴すべきか否かだけが残つておる。併し今度の問題は、法律上から見ましても、事實上から見ましても、檢察當局といえども氣付かないようなデリケートな問題が潜んでおる。それらの點を明らかにした後、たとえ如何なる御非難を受けようとも、十分に遺漏なき調査を遂げて、そして決裁を與えるのが法務總裁として正しい態度である。その間いろいろな御非難を受けましても、敢て甘受いたすつもりであります。
#44
○石坂豊一君 御精神はよく分りました。併し尚多少疑いを持つと仰せらるるが、大浦事件のごときは、これは實は暗黒裡に、暗黒と申しては語弊がありますが、左程天下に對して、ガラス箱の中において審議されておつたのではなく、檢察當局が知つておつたくらいのものである。ところが今度の事件は、憲法によりまして、新たに國會に與えられたる権限によりまして、衆議院の不當財産調査委員會において公明正大に行われておる。何人が見ても、これに對する疑いは凡そないのであります。ただ贔屓目に見て、強いて理窟を付ければ、いろいろなところに理窟は附くでございましようけれども、國民は分けの金を分けの機關から、或る政黨の職にある者が取つたものである、而してこれはその意味を以てばら撒かれておる、こう見ておる。若し私人から私人の手に渡つたものであるならば、所得税を納めなければならん。その點において、非常な脱税をしておるということになる。恐らくはさようなけちな考えを持つておつたものではなかろうと思う。調べられた上で初めていわゆる一種特別なる某職務にあるところの個人と、こういうことになつておると私は伺つておるのであるが、さようなことは、そう何遍も何遍も申上げんでも、聰明なる法務總裁がお分りにならなければならんことのように世人が解しますから、成るべく早い機會に明るみに出して頂くように、切にこの機會に改めて御注意を申上げて置きます。法務總裁に封ずる私の質問を終ります。
#45
○左藤義詮君 石坂委員の質問に關連しまして、只今倒閣の具に供するような疑いを非常におつしやられたようでありますが、檢察當局としては十分に取調べをし、協議をして、起訴すべきものとして稟請をした。それを輕々しく決裁をしては倒閣の具に供せられるのではないかというので、御心配になつたようでありますが、さよういたしますと、今のお言葉によりますと、檢察當局が何か倒閣のために起訴を法務總裁に稟請したかのように、うつかりすると印象を受けるのでありますが、その點を一つ明らかにして頂きたいと思います。
#46
○國務大臣(鈴木義男君) それは發表の仕方、それから發表の時期等によつてそういうことに利用される虞れがありまするから、それで檢察當局は常に中立であるということを誤解されないようにという私の老婆心を申上げたわけであります。その外に他意はございません。いつもこれは私が決裁しないうちに世の中に發表されるものではない、今度は例外であります。
#47
○左藤義詮君 かくのごとくにしてすでに發表されました。併し檢察當局が稟請をいたしましたについては、さようなことは十分に檢察當局としては考慮していたしたものである。ところがそれを法務總裁が、これはうつかりするというと倒閣の具に供せられるということを御心配になつてお抑えになつたということは、檢察當局のさような疑いを受けるような虞れのあることに對する十分の考慮が足りなかつた、檢察當局はそういう危險のあることを稟請して來たというようなふうに御解釋になるのでありますか。その點を明らかにいたしますために、法務總裁が、これではまだ十分でないというので、檢察當局に差戻されたと言いますか、書類を止めて置くようにおつしやつた。どういうような點について不備な點がございましたか、梨下の冠瓜田の履と申しますが、私は法務總裁の立場をはつきりなさる方がよいと、どういう點が不備であつたか、檢察當局が十分の確信を以て重大な稟請をして來た、それを御決定にならなかつたについては、どういう點が不備でありますのか、どういう點を整えて來いという御要求をなさつておるのでありますか、その點を一つ明らかにして頂きたいと思います。
#48
○國務大臣(鈴木義男君) 御承知のように、刑事事件はすべて、不起訴になれば尚更でありまするが、起訴が決定して世の中に發表いたしまするまでは捜査の機密に属しておりまするので、この内容について説明をいたしますることはできないのであります。いずれ決裁をいたしました後に、その理由として御説明を申上げるときが來ると思いますから、どうぞそれまでお待ちを願いたいと思います。
#49
○委員長(櫻内辰郎君) 外に法務總裁に御質疑はございませんか。
#50
○小野光洋君 只今のお言葉によりますと、新聞記者が起訴の禀議を法務總裁の手許に出したことを嗅ぎつけて發表したようなふうに言つておられるようでありますが、今朝の新聞に確かそれは出ておりますが、それは社會黨の中央執行委員會か何かで、法務總裁御自身が發表しておられるのではないかと思います。今本委員會において御發表になつておる前に、御所属の黨派においてさようなことが論議されておる。そこではどういうふうな御發表をなさつたのか、もう一遍ここで繰返してお願いいたしたいと思います。
#51
○國務大臣(鈴木義男君) それは非常な間違いでありまして、私の名誉のために明らかにして置きたいと思います。私は常に公私の區別を立てて仕事をしておるつもりでありまして、社會黨に参りまして中央執行委員として發言をしたことは、殆んど数えるくらいしかないのでありまするが、假に發言をいたしまする場合には、中央執行委員として差支えない限りにおいての發言をいたす、苟くも捜査の機密に關すること、法務總裁としての職務に關することなどを發言したことはただの一度もありません。昨日衆議院の議院運營委員會に召喚せられまして、その席上において社會革新黨の成重議員から、只今石坂委員が御質問になつたと同じ御質問があつたのであります。故にその席で私はすでに新聞に出ておらなければ決裁するまでは發表しないつもりであつたが、すでに新聞に出ておつて却つて疑惑を深めるから、事の眞相はこういうことであると率直に申上げて置くと語つたことが、今日の新聞に出ている。確かに私が申したに相違ないのでありますが、私の言う新聞に漏れたというのは、それより前のことを指すのであります。どうか誤解のないようにお願いいたしたい。
#52
○委員長(櫻内辰郎君) 法務總裁に對する御質問はありませんか。
#53
○西川昌夫君 只今法務總裁の話を聞きますると、同僚の佐藤君からの質問に對しまして、かようなことはこの席上申上げることはできないという話でありました。それに續きまして、政争の具に供するということを恐れるようでありますが、私の聞いている感じからいたしますと、法務總裁はむしろそういつた措置をしたことが政争の具に關連せしめたように思う。その點をはつきりお伺いしたい。
#54
○國務大臣(鈴木義男君) 先程から申上げております通り、そういう誤解を受けることは止むを得ない。併しそれでも自分が不本意とする書類に決裁をすることが正しいかやはりそういう批判は受けつつも、自分は納得の行くまでやつた上で決裁をするのが正しいと考えた結果、誤解を受けることは止むを得ないと覺悟いたしまして、後の立場を取つたのであります。その點は御了承を得たいのであります。
#55
○小野光洋君 檢察當局は相當の権威を持つていつでも稟議をしているのではないかと思います。特に苟しくも國務大臣の起訴についての稟議をするに當つて、法務廳當局がさような軽率な稟議をするということはちよつと我々部外者には判断のつかないことである。特にさような點で法務總裁が檢察當局から提出された稟議に射して決裁を拒否した、これを否定したというような事實が曾てもあつたかどうか、さような粗漏な稟議を度々した事實があるかどうか、初めてであるかどうかその覇も伺つて置きたい。そういう點について荷くも檢察當局が愼重審議の結果、而も昨今起つたことではなく、今お話を伺うと、昨年の春からそういう問題があつたということもおつしやつておるのでありますが、そうしますと、相當愼重に論議せられて、捜査も行届いておつたのではないかと思います。衆議院における特別委員會における状況、或いは檢察當局の捜査いずれにしましても世間の耳目を聳動するに足る大事件であります。これについてそう軽々に稟議をしたとは考えられないのであります。その點についてももう少し明確な御所見を發表して頂けた方が我々としては甚だ了解しやすいのであります。常識論ではありますが、國民はさような常識の水準にあるのでありまして、これを何とか納得させるのが政治家としての責務ではないかと思うのであります。
#56
○國務大臣(鈴木義男君) この稟議に對する決裁の慣例等はまちまちでありまするが、いつまでに決定しなければならないというような制限はないのであります。事實、旅行などで忙しい場合、或いはいろいろなことで非常に決裁が遅れておる實例は、私が就任してからもありますが、又私はそういう經験は持つておりませんけれども、いろいろ取調べを追加的に命じたというようなことは聞いております。それから例えば死刑の執行というようなことはやはり法務總裁が最後の決裁を與える。私の前に司法大臣をいたしておりました人などは、決裁が來るとこれを家の中に持ち歸つて、そして繰返し讀み、佛壇に棒げて、そして祈をしつつ誤がないかどうか、今一度調べ直して、直す必要がないかということを關係者を呼びまして十分に調査した上で決裁をいたすというような習慣があつた大臣もあつたというようなことも承つておるのでありまして、只今の場合は、私がどうしてもこの點は調査をして貰わなければ、後に必ず波瀾が起るであろう。こういうふうに豫想いたしますが故に、結果については私が全責任を持つという覚悟を以ちまして、命じておることでありましてこれをここで發表いたしますことは、捜査の機密を漏すことでありましてそれは私の立場は両立しないと思います。やはり發表し得るときが來るまではどうしても發表することはできない、こうするより外ない、決して発表しないというつもりではないのであります。どうか御了承願います。
#57
○左藤義詮君 只今の御言葉によりますと、このままで法務總裁が決裁されると、後日重大な波瀾を起すと仰せられたのでありますが、さよういたしますと、若し御決裁になれば重大な波瀾を起す。法務總裁がそういう處置をなさなければならん伏線と申しますか、或いは政治的な含味と申しますか、そこまでは言葉が過ぎるのでしたら、非常に問題を含んだ、後日波瀾を起すようなさような決定をいたして、檢察廳の稟請が後日波瀾を起すような内容を持つて稟請をいたしたと、かように今の言葉を確認いたしまして差支えないのでございましようか。
#58
○國務大臣(鈴木義男君) これは檢察當局は自分の氣付いた範囲で最善を盡して捜査を遂げたものと認めます。併し人の能力には限りがあります。又人の注意力の及ぶところは人によつて異なりますし、檢察當局として、そういう點に氣付かなかつたとしても決して落度でない、けれども私から見れば必ずこの點はあとで問題となるであろう。故にその點を調査して置くことは起訴、不起訴を決める前の大事な仕事である、こう認定いたしたのであります。檢察當局がなんか足りないということとは少し趣を異にするのであります。
#59
○左藤義詮君 今の言葉によりますと昭和の尾崎さんと言われる名法務總裁なかりせば後になつて重大な波瀾を起すような檢察當局は決定をして稟請した。かような事實だけは法務總裁はお認めになりますか、その點だけを一つ確認して置きたいと思います。
#60
○國務大臣(鈴木義男君) 波瀾を起すということは、どんな事件でも、最初越訴するときに十分に取調べてやつたつもりでも……私は曾て辯護士をしておりまして、帝人事件の辯護もいたしました。或いは國際スパイ團の辯護もいたしました。又いろいろな事件を擔當いたしましたが、これは檢察當局は百%の確信を持つて起訴した事件でも、然るに波瀾萬丈遂に全部が無罪になつた、こういうようなことに相成つたのであります。でやはり私の場合に、私は過去に辯護士としてそういう經驗を持つておつたが故に、法務總裁として決裁したことが同じような波瀾に遭遇することは好ましくないことでありますから、豫想される限りはやはりそういうものは事前に明らかにして置く、これが正しい態度だと、こういうふうに思つております。
#61
○石坂豊一君 私は質疑をするつもりではなかつたのでありますが、けれども同僚から法務總裁に射して質問を重ねられたことに、ちよつと合點が行かないことが私に浮んで來たので、それを質して置きたいというのはどうも法務總裁が非常に嚴正にやつておられるけれども、今度は自分の友人に關することであつて、同じ閣僚の身分に属することであるから、人間鈴木として多少躊躇なさつて治るのではないか。この場合においてはやはり法務總裁は毅然たる態度を取られて、而して速かにこの事件を處理なさることが最も必要なことではないか。その點においては御本人は氣が附かれておらんかも知れんが、はたから見ると如何にもこれは手のうちの丸薬で、丸くも四角にもできる、自分の手近なところにあるからして勝手な處置をしておるとこう人が疑う。曾て林平馬君の追放問題のときも鈴木總裁は非常に嚴正な處置を取られましたが、非常に政府方面からかれこれの批評を受けたが法務總裁の處置が正しかつたということは世人が認めておる。そういうようなことで、この場合において法務總裁が人間鈴木ということを離れられて處置をなされなければ、これは解決せん問題である。どうかその點について毅然たる態度を取つて頂きたい、かように考える。私は敢てこれをそうなさいとも言わず、又どうなさいとも言わないが、所信を確かめて、明らかに處置をなさらんと、いつまでにそうせいという期限がないから、いつまででもいいということでは、これはますます疑惑を深められることであろうと思いますから、そう考えられることは、そう長い時期を要する問題ではなかろうと思いますから、その點に對して特に法務總裁に嚴正なる御處置を要求して、そうしてその時期が、成るべく早い機會になさる方が適當な措置であり、いわゆる天下の人心を正しうするためと、こう考えますから、一言最後の私の、法務總裁に對する質疑に併せて、所見を申上げて置きます。
#62
○國務大臣(鈴木義男君) 石坂さんの御忠言は謹んで承わります。私は平野事件で平野さんをああいう立場に落さなければならなかつたときに、社會黨の代議士會で四方八方から私を、攻撃し、糾弾されたのであります。併し私の恩誼は飽くまで私の恩誼公人としては遺憾ながら正しい道を歩まなければならん、自分は大義親を滅するという覺悟でやつておるので、そのときに使つた言葉をここで申上げまするが、自分は決して西尾さんの味方でもなく、又平野さんの味方でもない、ただ正しくやらなければならないという義務の観念に立つておる、それが假に西尾さんに同じような問題が起つたならば、私は断乎としてやることを皆さんの前にお誓い申すとその席上において述べたのであります。故に私は石坂議員が御心配になられまするような公けと私を混同するような氣持を更に持つておりません。どうかその點は御心配なきようにお願いいたしたい。
#63
○小野光洋君 甚だ執拗いようで相濟みませんが、(「簡單々々」「議事進行」「豫算案に關係ないじやないか」「あるよあるよ」と呼ぶ者あり)總裁の心情は甚だ御尤もと思います。ただ私はこの際重大な關心を持つておる問題であるだけに、この點につきましては検察當局の決定、法務總裁に出されたその捜査決定事項の内容に、法務總裁としてはどうしても承服いたしかねる欠陷があるということを認めるということだけは確かなように思いますが、その點は法務總裁もお認めになつておられることと思います。勿論檢察當局にいたしましても神様ではありませんから、法務總裁から見ますればその決定にいろいろな欠陷があることと思います。その欠陷を法務總裁は指摘せられた。從つて検察廳當局の提出した決定書はそういつた欠陷を含んでおるものであつた、こういうことだけは確かな事實だと了承して差支えないかと思います。もう一度お伺いしたい。
#64
○國務大臣(鈴木義男君) 欠陷があるというと非常に問題がデリケートに聞えるのでありますが、私は欠陷とは思つておりません。それは明らかにして置くことが後のためによろしいことであり、正しいことである、こういう點を發見した。欠陷とまで申す必要はないのであります。
#65
○委員長(櫻内辰郎君) お諮いたします。明日午前十時より再開することといたしまして、本日はこの程度で散會をいたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#66
○委員長(櫻内辰郎君) それではこれにて散會いたします。
   午後五時二十六分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     櫻内 辰郎君
   理事
           木村禧八郎君
           西川 昌夫君
           岡本 愛祐君
           村上 義一君
           中西  功君
   委員
           岡田 宗司君
           カニエ邦彦君
           木下 源吾君
           小泉 秀吉君
           波多野 鼎君
           村尾 重雄君
           石坂 豊一君
           小野 光洋君
           左藤 義詮君
           寺尾  豊君
           入交 太藏君
           鈴木 順一君
           田口政五郎君
           油井賢太郎君
           飯田精太郎君
           島津 忠彦君
           島村 軍次君
           鈴木 直人君
           東浦 庄治君
           池田 恒雄君
           藤田 芳雄君
  國務大臣
   内閣總理大臣
   外 務 大 臣 芦田  均君
   國 務 大 臣 鈴木 義男君
   運 輸 大 臣 岡田 勢一君
   逓 信 大 臣 冨吉 榮二君
  政府委員
   總理廳事務官
   (經濟安定本部
   建設局次長)  内田 常雄君
   大藏事務官
   (主計局第一部
   長)      東條 猛猪君
   大蔵事務官
   (主計局第二部
   長)      河野 通一君
ソース: 国立国会図書館
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