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1953/03/26 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第12号
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1953/03/26 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第12号

#1
第019回国会 外務委員会 第12号
  公聴会
昭和二十九年三月二十六日(金曜日)
   午前十時二十九分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
三月二十五日委員徳川頼貞君辞任につ
き、その補欠として鹿島守之助君を議
長において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     佐藤 尚武君
   理事
           團  伊能君
           佐多 忠隆君
           曾祢  益君
   委員
           鹿島守之助君
           西郷吉之助君
           杉原 荒太君
           梶原 茂嘉君
           高良 とみ君
           羽生 三七君
           加藤シヅエ君
           鶴見 祐輔君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       神田襄太郎君
  公述人
   株式会社日本製
   鋼所社長    新谷 哲次君
   財団法人国民経
  済研究協会理事  岡崎 文勲君
   三菱重工業株式
   会社清算人   岡野保次郎君
   法政大学総長  大内 兵衞君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○日本国とアメリカ合衆国との間の相
 互防衛援助協定の批准について承認
 を求めるの件(内閣送付)
○農産物の購入に関する日本国とアメ
 リカ合衆国との間の協定の締結につ
 いて承認を求めるの件(内閣送付)
○経済的措置に関する日本国とアメリ
 カ合衆国との間の協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣送付)
○投資の保証に関する日本国とアメリ
 カ合衆国との間の協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(佐藤尚武君) では昨日に引続き只今より外務委員会公聴会を開きます。日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、以上四件についてであります。
 公述に入る前に本日御出席を頂きました公述人の方々に一言御礼を申上げたいと存じます。本日の御出席は日本製鋼所取締役社長新谷哲次さんと、財団法人国民経済研究協会理事岡崎文勲さんのお二方でございまするが、本日は御多用中にかかわらず、当委員会のために御出席を頂きまして、誠にありがたく存じます。問題は極めて重要でありまするので十分に御高見を拝聴いたしまして、本委員会の審議に誤りなきを期したいと念願しております。幸いに平素御研究の結果を十分に御発表願うことができまするならば、委員会としては誠に幸いに存じます。それでは只今から公述に入りたいと存じまするが、大体三十分から四十分くらいでひと先ず御意見をまとめて頂きまして、あとは質疑に譲るようにして頂きたいと存じます。それでは先ず祈谷哲次さんから始めて頂きます。どうぞお願いいたします。
#3
○公述人(新谷哲次君) 私、日本製鋼所の新谷でございます。本日は私の経験をこの席で申述べさせて頂くにつきましては誠に光栄に存じておりますのでございますが、私はこういうところへ列席いたしますのは生れて初めてでございますので、とんでもないことを申上げたり、或いは皆様に失礼に当るようなことを申上げるかも存じませんが、どうかこの点お許しを頂きたいと思います。
 それでは私の考えておりますことを少し述べさせて頂きます。私はMSAのことにつきまして、政治的や軍事的なことについては余り専門ではございませんわけでございますので、すでに皆さんいろいろの方々から御論述があるようでございまするので、私は経済的、工業的の立場から見ました、条約文の通りに及び附属書に書いてある通りにMSAというものが行われて行くようでございまするならば、これを取入れて行つたほうが我々の工業をやつて行く上において寄与するところがかなりある、こう私は存ずる次第でございますが、この点を私申述べてみたいと存じます。私はこのMSAは日本経済に貢献するところは勿論幾らか直接的なものがこれから出て参ろうと思いますけれども、速効的なものよりもむしろ長期に亘り且つ次第に効果を現すに至るものが多いように私は思うのであります。私はむしろそうであればこそ、尚更今後の日本国家においては、工業的に有意義なものとなろうとも言えると思うのでございます。誠に私これから妙な例を挙げまして失礼かとも存じますが、ドイツの第一次大戦後の復興の状況は、これは私或る本によつて読んだのでございますが、先ずドイツが第一次大戦後非常な賠償を課せられまして、その賠償を払う、賠償物資を作るためにはドイツが非常なインソレーンヨンを起しましたのでありますが、それでもなお且つその賠償を片付けて行こうとした努力で、ドイツの商品が世界的に持つて行かれました。そうして世界市場においてはそのドイツの商品への世界的な関心が大変深まりましたし而も親近感が多くなつて参りまして、従つて輸出が大変伸張したと論じておる人があつたようであります。今度の第二次大戦では第一次大戦よりも更にひどい、完膚なきまでの荒廃に置かれたようであります。先ずドイツの殆んどすべての工業施設というものが、ロシアやイギリスその他フランス諸国に撤去されてしまいました。全く手も足も出ん私はドイツの姿であつたと存じますのでございますが、このことにつきまして、丁度一年前くらいの私は雑誌でこれは読んだのでございますが、その施設の撤去されたことがドイツを今日あらしめたのである、こういう工合に書いてあつたと存ずるのであります。即ちその施設の撤去のためにドイツは全く工業的に手も足も出なくなつて、仕方がないものでありますから、アメリカがその後非常な援助をいたしまして、そうして最新式の機械をドイツに持つて来た。即ちドイツの国家の施設は、アメリカ以上に立派な最新式の施設がドイツの各工場に据え付けられた。こういうことが行われたためにドイツの工業は世界一の立派な施設になつた。こういう工合にいたしまして、ドイツの原価は非常な低減を行うことができるように相成りまして、今日のドイツの輸出の伸張が行われるということに至つたのであつて、この撤去はドイツを不幸にしたものではなくてむしろドイツを幸福にしたものであると書いてあつたと私は思うのであります。私は学校を出て以来技術に専念して参りましたのでありますが、技術というものは決して理屈を言うていたからといつて技術の伸張を期待し得るものではございませんので、技術は実践によつてのみ獲得せられ且つ発展せられるものであると私は思うのであります。私は本当にそのことを身を以て体験しておる人間でございます。それは私がそう申上げますからといつて、兵器漁業を国家産業構造の基礎的な位置に置けという意味ではございませんので、私は、而も日本製鋼所という特殊な会社でございまして、兵器をともかく主体として来た会社に勤めておつたものであります。引続いて今日も日本製鋼所におるのでありますが、如何に兵器産業というものが産業のベースに乗らん産業であるということを私はつくづく感じておるものでありますので、この兵器産業を日本の産業構造の基礎的なものに置いて行くような会社があつては誠に私は危険だと存じます。こういう意味で戦後の日本製鋼所を私がともかく持ち続けて行きます方針といたしましては、必ずしも兵器ばかりに集中いたして行つては相成らんと存じております次第でありますが、併しながらこの兵器工業というものは、又一つの見方をいたしますと、誠にこれは工業全般に亘る、総合工業の所産である、こう私は見ておるのでありまして、私は戦前、終戦まで兵器ばかりを作つて参りました次第でございますが、その兵器ばかり作つて参りました私といたしまして、ともかく日本の兵器は当時をふりかえつてみますると、必ずしも世界的に優秀な兵器であつたと私は申されんと思います。併しながらそれにいたしましても、その兵器は日本における工業技術水準の最高のありとあらゆるものを私は取入れていたと思います。そうして私自身只今アメリカの兵器を修復いたす仕事をやつておりまするので、又これを見ておる次第でございまするが、ともかくもこの兵器を見まして、私の戦争中にやつておりましたことを反省してみる機会をつかんでおる次第でございますが、このアメリカの兵器を見ましても、いわゆる工業の精髄を集めているものであることだけは私は申上げられると存じます。私たちがこれからMSAによつて給与されるか或いは作ることができるのであるかどちらかまだ私といたしましてはよく存じません次第でありますが、この丘器というものが現在我々が取扱つておるものは世界最高のものであるかどうか、又その中に含まれているいろいろの工業技術的な所産は、世界技術の最高のものがそれに使われているかどうかは私はまだよく存じませんけれども、ともかくも世界的水準、最高水準ではないにしましても世界的水準であるということだけは私はたしかだと思うのであります。そこで私たちはそういうものには今後においては直接に触れることに相成りまして、私はこれからこのものに直接触れることによつて我々の工業というものが、大反省が行われることに相成るかと私は思うのであります。一門の大砲を取上げて見ましても、ただ砲身のみに皆さんは気をおとりになられるかもわかりませんが、大砲というものはその大砲を操縦するためには油のようなものから電波、電気、車両、冶金の工業全般に亘るものがそれに総合的に組合されておるものでありまして、而も現在入手し得る最優秀のものをその中に取入れてあると思うのであります。私は今後におきましても、又、或いは今まで余り早過ぎたようでありますが、MSAによつて兵器産業が国家の産業の大きな部分を占めることに相成るであろうことを期待していた向きがあるかのように拝見しておりますが、そういうことは到底あり得ないと思うのでありますが、そういうものを或いは生産し、或いはそういうものに直接に触れることによつて全般的に工業部門への貢献ほうがもつともつと大きなものになるのではないかと思うのであります。アメリカのこれからMSA援助によりまして我々が受取るかもわからん、或いは作ることになるかもわからんその兵器に近いものであろうと思いますが、私たち実際に修理をしておるものから得たことによりますと、その技術一般を見てみますると非常に行き届いた注意が行つておると思います。私の戦争中に行いました技術に比べまして格段の違いの注意の行き届いたものが組合せられている。こう私は存ずるのであります。これを一々皆さまに専門的に申上げましても、ただ専門的に亘り過ぎましておわかりにくいような点があろうかと存じますので、ただこんなものだということで御了承頂きたいと思いますが、例えば何万挺の小銃を持つて参りましても、他の部品を外してどこに持つて行つてもちやんとこれは合います。日本の三八小銃ではこれは何とも隣りの鉄砲へその部品を持つて行つても合いませんでした。これが私は誠に日本を負け戦にせしめた最大のものであつたかもわからんと思うのでありまして、兵器は天皇陛下だということに相成りましたのもそのせいであつたかと思うのであります。鉄砲は失われたらもう再びその鉄砲の補充はできないようなものであつた、互換性のない鉄砲であつた、人間は互換性があつたが鉄砲には互換性がなかつた、これが日本の人民を無駄に使わせたものだと思うのであります。私は何も戦争主義者ではないのであります。日本人の人命が鴻毛の軽きに比せられて小銃が人間の命よりもたつとかつたことが何であつたかと申しますると、この互換性の欠如であつたと思うのであります。又私たちそのものを修理しながら発見いたしますのは、図面を見ながら修理いたします。アメリカの図面によつて修理をいたさねばならんのでありますが、その図面を見ましても、図面には実に行き届いた注意が書き立てられておるのでありまして、個人的判断だとかそういうものは一切排除されたものになつております。これが又私は戦争中に苦しんだ、又戦争以前にも非常に苦んだ点であつたのですが、図面を見、物を作る上において個人的判断によつていいものが作られて行つたということが完全に排除されております。又規格検査方式等におきましても、これは何と申しますか我々の工場においてフール・プルーフ、ばかが検査しようが、少し足りない人が検査しようが必ず同じ結果になつてしまうというフール・プルーフという言葉が我々のほうにあるのでありますが、フール・プルーフになつております。先般、私のところでアメリカ規格の火薬を作つておりますが、このアメリカ火薬の規格を見ますと、誠に簡単な規格であります。顕微鏡で見てみると、こういう結晶の形、この結晶の形が何倍の顕微鏡で見たときに結晶以外のものが含まれている場合はこれは廃品であります。こう書いてある。これだけの規格以外何にもやかましいことは書いてありません。化学とかそういうような分析でなくて、最後の結晶にについてそう書いてあるのでありますが、これについては私は作つて見て感心したのでありますが、その結晶だけになりますとあのような危険な火薬でも非常に安全度が高い火薬に相成るということを私は作つたあとで発見いたしました。こういうような我々同様の火薬を戦争中にも日本でも作つておつたのでありますが、それほどまででなかつたために、ときどきその火薬をいじることにおいて危険を冒したのでありまして、そういう危険が全く排除され、或いは可能な限りの排除が行われた、こういう工合に我々は見ておるわけであります。それからいろいろのパーツにおきましても、最新式の基準、或いは最新式の発明のものが至るところに使われておる。こういう点も余り皆さんに専門的に亘り過ぎるようでありますので、これくらいの点で技術的なものの見方を御了承願いたいと思います。
 私たちといたしまして戦後外国から技術導入もいたしております。スイスからもアメリカからも私は技術の算入をいたしました。その技術の導入に対しましては私として一つの事柄の技術を導入いたしますのに大体一億に近いライセンス料を払つております。そして漸く導入した技術が、例えば日本の市場においてその技術として皆さんにお持ち頂けるようになりますためには、我々は数年間の日子を要することを発見いたしております。一朝一夕にその導入した技術を世の中に認めてもらうようにはなりません。ところが若しも私たちこのMSAによりましてそういう技術を私たちにやらさしてくれるということになりますれば、その中には何百何千の技術が含まれると存じます。而もその技術は実験済みのものでございますので、規格に合いさえすれば必ずこれは使えることだけはたしかであります。そのものを若しも外海に輸出し得るように相成つたといたしますれば、この兵器を輸出したということで私たちが得をするのではなくて、その兵器を輸出したということによつて日本品に私は親近感を持つてもらうほうがもつと大きな効果を挙げるものと思うのですが、この例を一つ申上げますと、今度の負け戦でシャムだのビルマに多くの兵器を置いて帰つて来ております。その置いて帰つた兵器をシヤムだのビルマだのがこれを拾い上げて修理をいたそうとしておるのであります。その修理をいたすのに戦傷において日本製鋼所健在かどうかというような引合いが参りまして、そしてこれの修理をしたいがどうかというような引合いをよこして参つておりましす。私はそういう工合にただ兵器がそうであることを望むのではなくて、日本の商品が市場に出て行くのには日本品に親近感を持つてもらわない限りは輸出なんて私は夢の又夢ではないかと思うのであります。繊維品だの鉄鋼だの素材だということになれば大体それはどこでも受取つてくれるでしよう。製品としてドイツの製品、イギリスの製品、或いはアメリカの製品と比べて日本のものに対して、残念ながら現在において日本のものを受取るのには第二義的なものにしか考えてくれておらんと私は思うのであります。私たちは本当に輸出をやつて行こうとすれば、本当にその輸出するものに親近感を持つてもらえなし限りは輸出は私は不可能だと思うのであります。そういう意味で私はそういうことができればなお更にはね返りを期待したいと思うのであります。こういう点で私は一応私の考え方を述べさして頂きました次第でございますが、私は皆さんを前にいたしまして大変失礼なことを申し上げたかも知れませんけれども、これで失礼させて頂きます。
#4
○委員長(佐藤尚武君) ありがとうございました。
 委員諸君にちよつと申上げておきたいと思いますのは、今お話にありました新谷さんは十二時過ぎに何かやむを得ないお約束があるそうで、その時刻までに質疑等を新谷さんに関する限りは早くしてしまうようにして頂きたいということであります。
  ―――――――――――――
#5
○委員長(佐藤尚武君) それでは続いて岡崎文勲さんに意見の御開陳を願います。
#6
○公述人(岡崎文勲君) 私、岡崎でございますが、御指名によりましてMSA協定に関する所見を申述べたいと存じますが、その内容は相当広範に亘つておりますので、時間の関係もあり、私は主としてMSA協定の軍事的並びに経済的な方面の若干の具体問題について申上げたいと存じます。MSAの援助を受けるべきか或いは受けるべきでないかというようなことにつきましては、これは人々の見解、主義主張等によりまして必ずしも一致するもので、はなく、徒らに抽象的な論議を交しておつても結局それは水掛論に終ると考えますので、この席ではそういう論議には一応触れないということにいたしたいと考えております。
 まず第一にMSA協定に伴う我が国の義務についてでありますが、アメリカの相互安全保障法に基く対外援助は主として軍事的なものであることは周知の通りでありまして、これによつて直接的な経済援助を受けようとすること自体誤りであるということは申すまでもありません。さて我が国がMSAの援助を受けるとすればこれに伴う義務を負うということは当然でありまして、昨年五月アメリカ両院外交委員会の合同会議でのダレス国務長官の証言にも、MSA援助計画は慈善とは何の関係もないということで、自国の利益という手固い考慮に基いているとこうはつきり申しております。そこでMSA援助を受けるための義務のうち我が国として最も問題となりますのは、協定第八条に規定する軍事的義務の履行と、附属書によります共産国との貿易制限措置、この二つが一番大きいと思います。前者につきましてはMSAの基本法であります相互安全保障法第二条の(a)項に挙げております三つの目的のうちの第一、即ち自由世界の相互安全保障と個別的且つ集団的防衛を強化する、こういうような趣旨に合致し、同じく同法第五百十一条の援助を受ける資格条件六つのうち、その第三のアメリカが一方の当時国である多辺的又は双務的の協定又は条約に基いて自国が受諾した軍事的義務を履行すること、こういうことを規定しておりますか、ら、我が国がMSAの援助を受けようとすれば防衛強化を目的とした軍事的義務を果す責任を負うことになるわけであります。ところで日米安全保障条約の前文では、アメリカ合衆国は、日本が直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うということを期待するとありますから、MSA協定の発効に伴いまして今までの期待が履行という現実問題に変つて来る、従つて今までは主として間接侵略に対処する国内の治安維持のための保安隊並びに警備隊が、今後は直接侵略の防衛にも当るという新任務が加わるのは当然の成行だと考えます。これは条文上からの解釈でありますが、実際におきましても今までアメリカから貸与されていた艦艇、兵器はいわば借物でありますから、物そのものは戦力の性質を帯びておりましても我が国の所有ではありませんので、戦力保持でないという言訳は立ちますけれども、MSA協定によつて供与される段になりますと、そうは参りかねるのではあるまいか。この点憲法第九条二項の戦力不保持の規定とどういう関係になるか。尤もMSA協定第九条第二項には、この協定は各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施するとありますが、このすこぶるデリケートな関係が偶然にも呉越同舟の恰好で、共に同じ第九条第一項に規定しているということにちよつと皮肉な感じを受けますが、ここでは時間の関係から深くこれに触れることは避けまして、本委員会で十分その点御検討をお願いいたしたいと存じます。それと同時に半面我が国が直接侵略に対する防衛方の漸増を履行しないでおく場合を考えますと、日米安全保障条約によりまして暫定措置としてのアメリカ軍の駐留がいつまでも続くという、これは誠に独立国家といたしましては好ましくない状態の存続を容認するかどうかということにつきましても合せ秤量の必要があると考えられるのであります。要するに我が国力の維持発展を阻害しない限度でMSAの援助を受けて防衛力の漸増を図り、アメリカ駐留軍の撤退促進の方向をとりますか、或いは足踏みの状態を続けるか、このMSA協定を契機といたしまして、我が国の方針を今や決定しなければならない段階に来ておるものと考えるのであります。
 次に義務として第二に重要なことは、附属書Dによる共産圏との貿易制限の措置でございます。これは従来とても我が国はバトル法を極めて忠実に履行して参りましたので、MSA協定によつてその制限が一層強化されるようなことはないとは思いますが、併し本協定によりましてこの義務を再確認をする意味におきまして決してこれは軽視できないものと考えます。MSAの援助を受けている国は随分多いのでございますが、地理的にも歴史的にも我が国ほど産業経済に関連の深い中国との貿易はないのでありますが、我が国が最も極端な制限を受けているということは私ども何としても納得が行かないのでありまして、アメリカは我が国と中国との貿易は過去においても大したことはなかつたように言つておりますけれども、実際は決してそうではなく、大蔵省の貿易統計によつて調べてみましても、中国への輸出、戦前これは日華事変以前の九、十、十一年の三年二四%、戦後四%、二〇%。中国からの輸入戦前一四%、戦後四%、一〇%減とこういうふうに輸出入ともに戦後は激減いたしておるのであります。戦前戦後の我が国貿易の変貌状況はお手元に差上げてあります表の通りでありますが、その金額もさることながら、我が国として最も切実な題問は輸出入物資の内容でございまして、中国から輸入するものは鉄鉱石でありますとか粘結炭、工業塩というような工業用基礎原料が多く、又中国への輸出は人絹、綿糸布雑貨類などで、我が国の軽工業、中小企業に関連するものが非常に多い関係から申しまして、中国との貿易制限は我が国の重化学工業、軽工業、中小企業を通じて莫大な損失をこうむつておるのであります。そこで我々国民といたしましてはMSA協定にかかわりませず、明らかに戦略物資とみなされないものはなるべく制限を受けないように、緊急挙国一致いたしましてアメリカの善処を強く要望する必要があるものと痛感いたす次第でございます。
 次にMSA協定による利害得失について申上げます。これもいろいろありますが、時間の関係から極くその主要なものについて若干触れたいと思います。MSA協定による利害得失も軍事的なものと経済的なものと二つに分けて考えられますが、先ず軍事的な面から申しますと、我が国の現状の国力では独力で防衛力を漸増するだけの能力に欠けている。そのために不足分に対して装備なり或いは資材なりの供与を受けるとすれば、一応軍事的には利益があると考え得るわけであります。併し装備を供与されればそれに伴う増員に要する人件費その他の維持費は当然増加して参りますから、供与される装備が我が国情、地理的環境、戦略、国力などに最も適した内容を持つ軍備の補いになることが必須の条件となります。伝えられますように、アメリカとしては我が国に相当尨大な地上軍装備が供与されるものといたしますと、それは必ずしも我が国にとつて利益でないばかりでなく、却つて冗費の増加を来たす不利も考えられますので、ただもらえるからといつて軽卒に飛びつくようなわけには参りません。昨年七月ダレス国務長官が上院歳出委員会で述べました日本の地上軍十箇師団三十五万人目標の期待、これが問題となりましてその後国務省からダレス長官の声明として発表したところによりますと、七月九日上院歳出委員会で自分が日本に関して述べたことが誤解を招いている旨の報告を受けた。日米安全保障条約により日本は自国を防衛する負担を漸増するよう期待されている。現在日本の保安隊は十一万の兵力であるが、米国はその増強にMSA計画を通じて援助を継続するということを議会に要請している。米国は日本の国内の安全と自衛に保安隊は三十五万限度の兵力を要するだろうと仮定的に考慮しているが、これは米国側の用語で十箇師団に当る。而もすべての決定、殊に兵力の増加問題が日本政府と日本民衆自身の政治的課程を経てなさるべきことは勿論である。日本が決定したらそれがどう決定されようとも、米国は自由世界の集団安全保障の上からその兵力の装備を援助する用意がある。こういうふうに申しております。これならば誠に筋の通つた話でありまして、是非ともその線に沿つた両国間の折衝が望ましいのでありますが、現実はどうかと申しますと、必らずしもダレス長官の言う通りフエアーな足取りで進んでいない懸念があると思われますが、これは要するに我が国として防衛の規模、内容等に関して自主的に確固たる具体案が立つていないせいではあるまいかと想像されるのでございます。
 次に経済的な利害得失につきましては、我が国としては一層深刻なものがあるのでありまして、我が国の現状では及ばないための装備の供与を受けることは、それだけ国内支出の節減になりますから、間接的には経済上の利益があると考えられますけれども、完成品の供与は経済上何ら直接的な効果のないことは申すまでもございません。それとここに注意を要しますことは、現状又はMSA援助期間中は、アメリカから艦艇、兵器等の貸与又は供与を受けますから初度装備費は勿論のこと、維持費も割安にすむわけでありますけれども、MSA援助打切後におきましては経営費が格段に高くなつて参るということをよくのみ込んだ上で、あらかじめ軍備の規模を考えておかなければならないということでございます。具体的に申しますと、警備隊の艦艇、保安隊の火器は勿論のこと、相当の車両、施設機械、通信機器並びに訓練用の弾薬までアメリカから供与されていますから、我が国負担の初度装備費と申しましても車両、施設機械、通信機器の一部と備品費、被服費、施設費等の、いずれかと申しますと補助的な装備にすぎませんので、例えば現在保安隊一人あたりの初度装備費七十万円ですむものが、今装備費一切を国内支弁といたしますと、少くとも一人あたり百万円以上となることは明瞭でございます。維持費につきましても同様でありまして、全装備の代替更新費や訓練用の弾薬の消耗補填費などを従来の維持費に加算するとすれば、現在保安隊年一人当り三十一万九千円、警備隊同じく五十一三万一千円、これより相当増加して参りますからその関係を考慮いたしまして、将来の我が国防衛力の規模内容を計画いたしませんと、MSA打切り後の経営費が非常にかさんで、その保持に堪え得ない羽目に陥ることがないとも限らないわけでございます。
 なお経済的に見逃がしてならないことは、防衛力そのものに釣合いのとれた防御産業のことであります。如何に我が国力が衰えたと申しましても、韓国や台湾のように、これは止むを得ない事情もあると思うのでありますが、アメリカの丸抱えの防衛力を我々は欲しないことは、これは共通した我が国民感情であると思うのであります。従いまして防衛力の漸増と並行して或る程度艦艇、兵器、弾薬等の補給を可能ならしめるいわゆる後方的な防衛力、即ち防衛産業の培養を軽視するわけには参らないと思います。併し我が国の現状は、何と申しましても防衛産業方面に投資融資するというような余裕は殆んどありませんから、我が国がMSA援助によつて国防省の主唱する装備の援助を受けるとすれば、それと並行しまして対外活動庁の担当するいわゆる防衛支持援助として、防衛産業に必要な資材、機器類の供与を受けることが必要であります。今回アメリカの余剰農産物購入に関する協定では一千万ドル分をそのほうに充て得ることになつておりまするが、この六月末で終る本年度アメリカ会計年度のMSA対外援助総額五十八億ドル中、防衛支持援助額は約十億ドルでありまして、英・仏などは各一億ドルの割当を受けており、今や来年度分としてこの種援助の獲得に対して非常に熱心な活動を続けている模様であります。でこれに対しまして、我が国は防衛計画又関連産業ともにその見通しの不十分、殊にあとで述べます所要資材の具体計画の持ち合せがないことなどのために、むしろアメリカ側で焦慮しているようにさえ聞いておるのであります。一般にこの直接防衛力に要する経費につきましては非常に熱心に検討されておりますけれども、事資材の面になりますと、その測定の困難さ或いは煩雑さなどのために余り検討されていないうらみがあります。そこに我が国防力の漸増に恐るべき危険がはらんでいると思うのであります。ところがアメリカのような物量の豊富な国でさえフレミング国防動員総本部長官は、軍備も究局するところ資源であつてドルではないと警告いたしておるくらいであります。まして我が国のように重要物資、特に戦略物資の海外依存度の非常に高い国におきましては、経費にもまして防衛用資材及び石油に非常に大きな隘路があるのでありまして、試みに保守三党案と伝えられております陸上十個師、十八万、海上十五万五千トン、三万五千人、航空機千二百機、四万人、防空隊一万人、計二十六万五千人の防衛力完成後の経営費は年二千四百八十億円となります。その所々資材小、特殊鋼、非鉄金属の一部、石油に問題がありまして、その調達のために要する外貨は年約九千万ドルになるものと推計されますから、我が国現状の年十二億ドル見当の輸出力に対しまして容易ならん比重であると申さなければなりません。既往の実績を辿りますれば、日華事変当時総供給力に対し軍備の割合が普通鋼二〇%、特殊鋼四〇%、非鉄金属四〇%、石油二〇%、これを超えたとき国力が低下しました事実から、国の地方が戦前の半分若しくはそれ以下としか考えられない今日におきましては、右に述べました限界の二分の一以内に抑えない限り、防衛のため我が国の経済は破綻を免れないことを思いまするとき、資材及び石油等の所要量の検討を伴わない防御力ほど危険きわまるものはないと確信するものであります。ついでながら朝鮮動乱のためにアメリカが朝鮮に投入したガソリンは実に二千五百万トンを要しておるような状況でございます。このことは私が海軍在職中十数年に亘る資源軍需工業、一般産業との関連、防備、並びに出師準備計画等に関与いたしました者として、我が国軍備並びに国民経済が崩壊しました過程につき深く反省して得た体験上の結論でございます。どうか今後再び前轍を踏まないように、防御に関係される各方面におかれまして、一層真剣な考慮と研究によつて我が国情に最もふさわしい自衛力のあり方というものについて、その具体方策を確立することが先決であると思うのでありまして、その具体的検討の結果の適否こそがMSA協定を有利にもすれば不利にも導く、こういうふうに私ども感ずる次第でございます。これで終ります。
#7
○委員長(佐藤尚武君) ありがとうございました。それではこれより質疑に入ります、
#8
○曾祢益君 岡崎さんに。まあ非常に該博な知識を持つておられるかたに簡単な質問では非常に恐縮ですけれども、今おつしやつた資源関係ですね。それを民需と軍需とに分けて、そういう観点から石油の例を挙げられましたが、そういうまあ制約から見て、日本の自衛力の限度というものはあるのじやないか、国力で消化し得る。それが例えばまあ保守三派の協定案と伝えられるような陸上十八万、海上十五万五千トンですか、それから航空機千二百機、それに防空隊というような規模では到底これはマツチできないというような点に帰着したように伺つたのでありますが、そうすると、まあ而もなお自衛力が仮に必要だという観点に立つて軍事的並びに経済の制約を考えられて、然らばどのくらいの規模のどういう程度のバランスの陸、海、空というものが可能であるか、又それが非常に小さい場合に、いわゆる防御方式そのものの基本的な理念からいつて、いわゆる、国防衛方式というものは成立つのか成り立たないのか。成り立たないとすれば無防衛でいいという結論が出るのか。そうでなくて無防衛でいいという結論がないとすればそれはやはり集団防衛の一環としての日本の自衛力という観点に立つて、そうすれば比較的小さなものでも無駄でないし、これは可能だというような或る程度の見通し的な御見解がおありならば一つ教えていただきたいと思います。
#9
○公述人(岡崎文勲君) これは非常にむずかしい問題だと思うのでありまして、私ども確信のあるお答えはできかねるのでありますが、私どもは現状においてここ四、五年先に大戦争が起る可能性は極めて少い、むしろ恐らくこの原爆、水爆両方とも持つておる米ソの両陣営はこの水爆の出現によつて非常に戦争もむずかしく思われる。それで一応この水爆で仮にソ連がアメリカを皆殺しにできてもその翌日には必ずソ連人が全部死なければならん、これは相打ちになるわけです。恐らく水爆は原爆と違いまして、その量に制限がないと申しますか、原爆は限度があつて連鎖反応を起して爆発する大きさには限度がある。ところが水爆にはないから幾らでも猛烈なやつを落せる。そうするとアメリカを今日全部殺したるその翌日はぐるつとソ連のほうにも廻つて北半球の高等動物は全部死ぬというような恐しいものであるとすれば、これは必ず自分が死ぬということでありますからその点からいつて私は世界大戦になる可能性は非常に減じたと考えるわけであります。さればといつて朝鮮或いは仏印等における、ああいう方式の局地戦も絶無とは言えないから日本が丸裸でおつていいというわけには参らないと思います。そこでできるだけ日本として自主的な軍備、日本の国情に適した内容を打つ防衛力、これは一応私どもも必要とは思いますけれども、何分にも日本の現状の国力或いは経済状況というものが非常にこれはむずかしい状態にある。ここ数年のうちに国際収支を均衡させる、いわゆる自立経済達成という大きな至上的な問題と取組まなければいかん。それと平行して防衛力を漸増するというところに非常に大きな苦難の道があると考えます。そのときに現状のようなこの財政支出或いは財界といわず一般国民といわずいわゆるやりつ放しの経済のやり方をいつまでも続けておるということになれば、とても両立するようなことはできないし、いずれも私は駄目になると考えます。要は政治家も官界も財界も一般国民も本当に気持を新たにして、国力の蓄積に努力する。こういうふうにして具体的に申しますると国家財政支出並びに地方財政支出の節減であるとか、或いは財政投資これを粛正化するとか或いは又二十七年は八千五百万ドルでありましたが、二十八年は一億ドル以上不用不急品の輸入をやつておる。こういうざるで水をすくうような外貨の使い方等をこの際本当にこれは調整をして、そういう面から或る程度防衛力の増強という方面に廻し得ればその不足する分に対してはアメリカから或る程度完成兵器なり或いは資材、器材なり、そういうものを受けて、日本の経済の建直しを数年間のうちはMSA援助によつてやつてもらう、その間に日本も自立経済の達成に専念をして、そしてMSAの打切り後においては私は自前で保持できるという態勢にしたらどうかと考えられますが、そこで日本にふさわしい防衛力と申しますか、私ども考えますには大体保守三党案として伝えられておりますものを一応の目標にしてまあ大過はないと考えております。と申しますのは、大陸に如何に大軍がおりましても、これは直接日本の脅威ではない。そういうことがイギリス、日本のような島国である場合は大陸続きの諸国と非常に防衛上の性質が違うということを考える必要があることと、それからすでに朝鮮戦線におきましてもソ連は石油の補給に相当困つておるらしい形跡がございます。幾ら大軍を持つておつてもソ連として石油に自信がない限り、ソ連のほうから積極的に大戦を起すとか或いは日本を侵略するとかいうようなことはどうしても考えられない。そのほか侵略軍を搭載輸送する船舶の関係から申しましても日本に大群を送るだけの能力は持つておりません。そういう意味におきまして幾ら小さくても結構だから、とにかく小さくてもぴりつとして若し出て来ればこれを反撃するという気がまえが必要であつて、必ずしもその量にこだわる必要はないと考えております。
#10
○曾祢益君 私も現在の国際情勢から見てソ連が第三次世界戦争の冒険に出るとは容易に考えられない。それから原子力の発達はますます第三次世界戦争を困難にいわゆる差控えさせる効果があるのではないかというふうに考えております。だが原子兵器は丁度第二次大戦の前の毒ガスの問題と同様余りに惨害がひどいので、原子兵器の使用はなかなかコントロールができないので在外あれは使えない。併しコンペンシヨナルな兵器による戦争は絶無とは考えない。こういう一つの軍事的見解を持つておる。それはそれとして日本の防衛ということを考えますときに、いわゆる第三次世界大戦の防衛を考えます場合殆んどこれはむずかしいナンセンスに近いことです。若し防衛が必要ない又それがいいという観点に立つならばそれはやはり局地戦争とか間接侵略及び局地戦争的な直接侵略を混ぜた一種の戦争、或いは戦争がなくとも完全に独立を失うような条件に突き付けられた場合どうするかという、こういうような問題の観点から考えて行くのがまともな防衛じやないか、そういう観点に立つてみると勿論一方において国内的に今度の防衛の飛躍的増強だけでなしに、実はこれがなくとも日本の経済はおつしやる通りなんです。こんなだらしがないことでは破綻です。それに更に防衛力増強を生み出すことは危険極まりない。そういう観点で僕らは反対的観点に立つて申上げておるので、仮定的な諸論としてやはり増強ということを仮に考えるならば、国内における経済統制措置或いは社会邸に公平な措置いろいろございましようが、それと相待つて仮に増強するとすればまあ逐年やることになるでしよう。併し一種の大体の目標というものをアメリカの基地は日本側が使うことにしていざというときには両方が使うと、目に見えたいわゆる駐留軍というものは陸兵のみならず海空とも大体いなくなるということを一応のイヤマークと考えたときに、アメリカの考えている三十二万五千の地上軍のようなべらぼうなものでなくなつて、そうして一応アメリカ軍を撤退させ日本軍が代る。併しいざというときには集団防衛の形における日本側の持ち前というものは大体今あなたの言われたところによると、できるならばいわゆる伝えられる保守三派の程度でまあバランスもその程度でいい。全体の国力に対する負担は同じとしても、このバランスをもつと内容的に或いは海軍に重点を置くというような考慮があるのかどうか、その点もう一遍伺いたい。
#11
○公述人(岡崎文勲君) その点私どもずつと研究した結果から申しますと大体地上、航究関係はほぼ保守三党案に一致しておるのです。これは昨年の春大体検討したのですが、つまり陸上軍が十七万五千、それが保守三党では十八万になつておる。それから空軍が千二百機これはもう同一です。海上は私どもは二十二万トンと考えておつたんですがこれは十五万五千トンで、そこが私どもが考えておる四分の三が丁度保守三党案ということになつておるのですが、これは私どもの考えは東京湾方面、名古屋、近畿方面それから豊後水道、下関海峡方面、この三つとそれから半分は日本海方面を中心として、大湊、あとは太平洋方面、これは御承知の通り現状におきましても日本に外国から入つて来る貨物が約年二千万トン、日本から出ますものが六百万トン総計二千六百万トン、そのほか日本の相互間の輸送、これは汽船のほかに機帆船等合せますとやはり二千五百万から三千万トンを越えておるだろうと思います。そういうような戦時中外国との貿易の関係、内地相互間の海上輸送、一応それらの輸送の安全を確保するために護衛しなければならん。これは第二次大戦中非常な失敗を海軍がいたしたのは、水中探知器が非常に劣悪であつて護衛する艦艇自体が敵の潜水艦にやられるというような甚だふがいない状況であつたのですが、この点少くとも敵潜水艦よりは耳の早い水中探知器を持つておれば、これは何と申しましても潜水艦はいわゆる海上ゲリラ部隊に過ぎませんから決して恐ろしいものではないわけです。だからそういう商船にも或いは護衛艦艇にも性能のいい水中探知器を装備すれば、一〇〇%安全とは言えなくても相当防衛の任務は果せるだろう。こういうものに主体を置いた艦艇、並びに或る地域に船団とそれから空艇隊呼応した侵略があつた場合に、これを迎撃できる戦闘機隊並びに夜間襲撃ができる海軍の歩哨艦艇、こいうものを考えると大体我々は最小限二十二万トンを要する。こう思うのでありますが、一方私ども二十二万トンが十五万五千トンでまあやむを得ないだろうと考えられることは、この陸海空の在来の防御方式を日本が余りこれに一〇〇%力を入れておる間に、ロケツト弾とか、誘導弾にだんだん移行して行きます米英ソの主要国の軍備、それと全くかけ離れたものになつて、恐らくはここ数年或いは十数年後にはシベリア或いは北鮮等からどんどん日本の内地に撃ち込まれて来ることが考えられる。従つて或る程度経費をさいてもそういう将来を見越した方面の新兵器の研究実験等に相当金を注ぎ込んだほうが有効であろう。こういう考えから若干まあ海上兵力は少くともやむを得んとこう考えているわけです。
#12
○曾祢益君 これで大体そういうその程度のものでも経営費としては随分べらぼうなものになるのですね。
#13
○公述人(岡崎文勲君) ええ。
#14
○曾祢益君 二千四百億ぐらいですか。
#15
○公述人(岡崎文勲君) ええ。
#16
○曾祢益君 これは私のはうの計算ではそのくらいになりますが。
#17
○公述人(岡崎文勲君) ええ、私のほうは大体過去、不足の兵器からはじき出した何であつて、陸上、空軍は大体保守三党案の、海上が二十二万トンですか、この経営費は二千九百……これはまあ実験研究に相当金を使うとして二千九百九十七億円になります。
#18
○曾祢益君 その中には経営費の意味如何ではリプレースメントは入れておられるのでしようけれども、大体何といいますか非常に狭義のリプレースメントなんか入れないで、まあもらつた状態を考えて、そうして日本で防衛生産ができてあれするやつは経営費の小に入れるとして、まだ向うから完成兵器が来るという場合に、譲与の形、貸与、そういうふうに切つて行つてもその程度であるかというのですか。
#19
○公述人(岡崎文勲君) それは大分少くなります。陳腐化を我慢してやれば、これは経団連で考えております陸上三十万、海軍二十万トン、航空機三千七百七十五機、こういう上で人員は実に五十万です。この経営費でも三千億見当でありまして、非常にまあ格安になりますが、それはリプレースということを考えていないから格安になつているのです。けれどもそんな軍備は私どもはもう大よそ駄目だと思うわけです。このリプレスを考えませんと、朝鮮戦争でアメリカのジエツト機が実に命数が八十時間ということです。一億円のものが八十時間平均しか飛べないということなのでございます。
#20
○曾祢益君 そうするとこのリプレスも実は必要なんですが、それでは観点を変えて今度だけの……それを経営費として計算すると、これは保安庁のほうからも出ているようですが六百億くらいになりますか。
#21
○公述人(岡崎文勲君) これは前予算委員会の公聴会で申したのですが、これと概算が多少の狂いがあるからも知れませんが、この二十九年度の予算に見積つておる兵器量をそのまま仮に移行するとして経営費を概算してみたんですが、つまりこれは陸上十四万人、それから海上九百万トン、一万六千人、航空関係では飛行機が大体三百機検討として人間が七千人、この程度の規模でずつと今後引続いて行くと仮定いたしますと、この経営費が陸上関係七百十億円、それから海上二百七十億円、それから航空百七十億円、合計千百五十億円、こういうことになりまして、この程度ですと依然としてこれはアメリカの駐留軍がいすわりますから本年度程度の、つまり二十九年度程度の五百八十五億円という防衛支出金はそのまま残る。それを併せて千七百三十五億円、これが今年の国民所得の見込に対して二・九%、これですからぎりぎりのところです。こういう小さいものです。
#22
○曾祢益君 ただ保安庁のほうの計算は良心的でなくて、来年度のものは完成兵器はもらつているのだけれども、そのリプレスのものは極く少数出ていいかも知れない。六百億くらい見込んでいるというのじやないですか。そういう計算が出て来る、全体で。
#23
○公述人(岡崎文勲君) 我々保安庁の今年の予算で最も不合理な点と思うのはいわゆる装備というものに零にひとしい。百四十何億ですか、これを全然みておらずに今までのランニング・ストツクとそれからリプレス分として昨年とつたもの、それを全部一応ははき出すということでつじつまを合せているだけのことであつて、これは将来非常に禍をなすものです。
#24
○曾祢益君 最後に一つ新谷さんに。防衛支持援助ですね、そういうものは今度のものでは非常に少くて一千ドル、まあ三十六億円なんですが、今後どういうふうになるかわかりませんが、大体防衛費、それ以外に域外買付によるあれもあるでしよう。どの程度の防衛生産に対する、そういつたようなアメリカからの直接間接の援助を期待しておられるかという点について御説明願います。
#25
○公述人(新谷哲次君) これはまだどういうものを我々が作らなければならんという勘定をこれはどちらからもやつておりません。日本側からもこういう工合にやりたいとも言つておりません。向うからもどういう工合にやつてくれといつておらんのでありますからさつぱりわからんのであります。ただ我々いろいろな人からそういう質問を受けております。例えば経団連から受けてみたり、或いは通産省からそういう仮定の下において受けておりますけれども、それは私たちの総合的なものでございませんで、ただ私の工場に対してお前はどんなことを希望するか、こういうことだけでございますのでどれほどであらねばならないということはまた出ないのじやないかと実は思います。
#26
○團伊能君 新谷さんにちよつと伺いますが、只今新兵器の生産力を材料的、技術的にいつてどうしても日本でできない、或いは材料がないとかはつきりしたものがありますか。
#27
○公述人(新谷哲次君) 材料のないものはろんな点にないものが多うございます。資源的なものでは本当に日本は金属資源だけでも幾通りかに限られた資源がございませんので、本物に合うすべての兵器を自弁しようといたしますととてもできませんと思います。材料的にはむずかしい材料がたくさんあります。実際私たち今分解してみまして、一体何の材料かということもわからん材料が一、二種ございます。とても自弁はできませんが、これは或る程度まだ、勿論この中にアメリカ自身でも持つていないのがあるだろうと思います。でございますから、やるとすれば世界的なもの、有無相通ずることが行われないとできないと思います。
#28
○團伊能君 今の点概括的にはそういうことでしようが、具体的に、例えば砲ですね、素質の問題等に関しては、或いは硬質軽金属関係で、どうしても得られない材料、又方法によつては今日においても得られているという材料はどういうものでしようか。
#29
○公述人(新谷哲次君) 大砲の砲身につきましては、むしろ今まで我々の作つておる大砲よりも材料的には優秀な材料を使つておりません、いろんな点で加工方式に勉強が行われておると思います。例たば砲身は大昔に戻りまして鋳物の大砲が使われている。我々は鍛造の大砲を使つたのであります。アメリカの大砲は二十サンチの大砲で鋼鋳物でできている、而も材質的には我々の使つた、ニッケルのたくさん入つているような材質のものではない。従いまして砲身を作る上においてそんなにむずかしいとは私思いません。軽金属におきましても、勿論ボーキサイトはない日本でございますから、軽金属で初めから作るのは問題でございまして、軽金属におきましても、現在例えば日本でできておる軽金属でも使い得ないというものはない、防弾鋼板にいたしましても、いろいろ戦車に使われておる部品にいたしましても、必ずしも私は非常にむずかしいというものではないと思います。むしろ大砲それ自身ということになりますと、私たち戦争中に作つておる大砲のほうが、現在のアメリカの貸してくれておる大砲に比べますと、まだ私たち戦争中に作つた大砲のほうが立派だつたのではないか、さように思うのです。ただ今名人芸ばかりに落ちているものですから、大砲が余り有効でなかつたのではないかと思うのです。
#30
○團伊能君 そういたしますと、一つには材料が非常に困難であるということですが、日本の工業組織自身の上に一つの改変をしなければ近代兵器の生産というものにマッチできないというお考えですか。
#31
○公述人(新谷哲次君) かなりそういう点に問題があろうと思います。例えば今のVTヒユーズというものがある。このVTヒユーズというのは、高射砲の弾丸の信管というものが、例えば飛行機を狙つて射ちます、飛行機の金属に弾丸が感じまして、そこで電波が流れて飛行機に弾丸がひとりでに当たるという信管がついております。これはVTヒユーズと申しまして、このVTヒユーズの中に使われている電波を感ずる、それはゲルマニウムというものでありまして、このゲルマニウムは今日本で北海道炭の中に相当量含まれているのでありまして、このゲルマニウムの精錬になります。これは零が七つか八つついたパーセンテージであります。それほどの純度を持たなければならないのですが、そういう純度にするには到底現在の日本の工業の力ではまだできないようであります。そこで日本の工業の努力では零が二つか三つついた純度には行くのでありますが、ところがゲルマニウムがゲルマニウムとして本当に働くというのは零が七つか八つついた純度の高いものでなければいけないということになりますと、こういう点で日本の工業構造というものは、随分考え方を新たにしなければいけないと思います。
#32
○團伊能君 もう一つ伺いますが、そういう形における工業力が非常に劣勢であるという点において、先ほど曾祢君から岡崎さんにも御質問がありましたが、このたびのMSAの条約によりまして完成兵器を借りて来るという以外には、日本の生産を助成するという形の資金、つまり三十六億ばかりございますが、これの予算につきましてはいますが、これの予算につきましては、到底三十六億では各部門、陸海空に関するすべての兵器に関するものでございましようから、殆んどこれは非常に僅少なものでございましようが、大体日本のそういう主要な兵器産業を、近代的に更新して、近代兵器として使えるものを各部門について生産し得ると考える生産設備資金というようなものは大体どのくらいで、一応今日の主要工業のそういう専門工業の形がつくものでございましようか。
#33
○公述人(新谷哲次君) これは先ほど申しました通り、非常な仮定を私たちいたしながらいろいろな方面をいたしておりますが、これは総合的にご質問が集結されているのは、どういうふうに私は集結されているかわからないのであります。経団連当りもそういうものを集結しておりますし、通産省でも、集結されておる点があるようであります、その結論といたしましては皆仮定の下に進めております。おのおの仮定になつております。そういうわけでございますので、これは極めて信頼性のないものであろうと私は思います。先般も、私は通産省の武器等製造審議会の委員をしておりまして、一番問題になつておりますのはその点で、一体どういう基礎の下にそういうことをやるのかということが提出されない限り、我々の返答はいい加減な返答になりますというわけで私は申上げているのであります。
#34
○團伊能君 岡崎さんに一つ伺いたいと思いますが、現在我々が感じております一つの不安は、近代戦でその規模は先ほどお話のように、非常に地方戦争と申しますか小規模のものであろうとも、それが近代的な効果を持つ防衛力といたしまして、通念といたしまして今日陸海空の三軍にわけて考えているところが多いのでありますが、その中で旧来の関係者と申しますか防衛生産等の関係のかたは、主として陸海のほうが多く、我が国の曽つてにおきまして空軍というものはなかつたために陸軍及び海軍に属しておられるかたでありまして、今日保安庁等の主要なメンバーも恐らく海軍及び陸軍のかたであります。然るに非常な重点を以て空軍という方面が発達して来ておりますので、今日防衛生産を初めその他の設備がこの点が非常に弱くて、又若し仮に作つたといたしましても、そのメンバー構成は陸軍及び海軍であつたかたであるという形で、近代戦にマッチしない軍隊の形が小さいながら非常に旧式のバランスの上に作られたものができるのじやないかということに不安を持つておりますが、その点はどうでしよう。
#35
○公述人(岡崎文勲君) それは全然御同感でございまして、最初警察予備隊ですか、それから次いで海上保安庁に属しておつた一部が警備隊になり、最後に今保安庁で計画されております航空部隊と申しますか第三幕僚監部というもの、これが保安庁法が審議されたあとにおいて建設されるというような一番割の悪い状況からスタートするということから、今おつしやつたような心配があるわけであります。併しもともとこの航空関係は陸海に属しておつたにしても、その専門家は相当おつたわけでありまして、いわゆる経験者に事欠く心配は先ずないとは思いますが、何分にもプロペラ推進を主とした大戦当時と、今ジエツト機を中心とする空軍というものには非常に技倆の点からもさることながら、年令的にも相当制約を受ける。ジエツト機あたりは三十過ぎになればちよつとむずかしいのじやあるまいかと思います。従つて非常な経験者がもうすぐにジエツト機の操縦には役立たないというような関係がありますから、私ども考えますのは、やはり私昭和五年から八年まで四カ年海軍の少年航空兵の創立からその教育に携つた経験を持つておるのですが、今後においてもこういう制度によつて非常に感の伸びる時期にみつちり訓練するということをやらない限り、やはり日本の空軍部隊の立派な建設はできないのではあるまいか、こういうふうに考えております。
#36
○團伊能君 岡崎さんにもう一つ、これは概括的な点ですが、お考えを伺いたいのは、今日現在の政府機構の中において、総合的な防衛計画の軍事的方面を企画するといたしましたらば、如何なるところでどういう工合に取扱うのが一番適当であるとお考えになりますか。
#37
○公述人(岡崎文勲君) 私は防衛庁法案と申しますか、あの第三章でしたか、一番末尾に国防会議というものが設置されるということになつておりますが、あれを見ますと、何だか保安庁に一つ附属したような恰好にとれる、これは非常に私は間違いだと思うのです。だからむしろ切り離して、国防会議設置法と申しますか、そういうものを別に法律で出され、これは国家最高の国防基本方針なりをきめる機関であり、その下の事務局には事務的にも技術的にもしつかりした機関を持つて、そこでやりませんと、曽つての陸、海軍あたりに委せきりにしておつた……予算についても陸海軍から大蔵省に折衝して、これは強く言つたほうがが余計予算をとるというようなこと、これが今日保安庁の予算が、保安庁の案と大蔵省で折衝をして、そして最後案がここに議題に持出されるというこの経路は私は感心しないと思つておるのです。だからこれをもつと総合的に、国全体から来年度の防衛関係の経費なり或いは資材というものがどうあるべきかということを最高機関できめられる必要がある。ところが遺憾ながら今日におきましては経審は気抜けのような状況になつておる。外務省もMSAの交渉をするに当つても少しも具体的に物資或いは石油等の所要額を研究しておられませんから、結局アメリカから余つた小麦をまあ貰うというようなことで、恐らくMSA援助のわくで日本がお余りを頂戴するというような恰好になつておる。通産省は通産省でさつぱりそういうことをやつていない。いずこの役所を突つついても話にならんというのがアメリカ大使館の経済部の所見でございます。これは私は非常に困つたことだ、だからできるだけ早いうちに国家的な機関をお作りになつて、そこで十分検討される必要がある、こういうふうに考えております。
#38
○委員長(佐藤尚武君) 新谷さんはもうそろそろ時間があれしたので、十二時ちよつと過ぎくらいにおたちになりますので。
#39
○杉原荒太君 ちよつと簡単なことですが、極く最近アメリカから人が来て、そしてその人が日本の今後の防衛生産のあり方について一つの構想を打ち、そして自分たちの構想について日本側の意向というものを打診のために来たということを私は聞いておるのですが、新谷さんにお聞きしたいのは、詳しいことではないのですが、その人とお会いになる機会があつたか、或いは直接お会いにならなくとも、その人の打つておる構想は大体間接的にお聞きになつておるかどうかということだけお聞きしたい。
#40
○公述人(新谷哲次君) 約三週間ほど前だつたのでありますが、その人の話を聞きました。それからそういう構想は、その後ほど、今確かには記憶いたしておりませんが、どつかからか聞きました。
#41
○高良とみ君 新谷さんに一言だけお伺いしておきます。先ほど東南アジア地方に日本の武器に対するノスタルジアがあるというようなお話がありましたが、その当時の日本の軍隊が持つて行きました武器は相当時代遅れのものではないかと考えられるのであります。それを今度修理だけでなくて日本から新らしい武器を域外買付でもらいたいというのはビルマ、タイ、そういう二、三カ国だけのことではないでしようか。或いはフイリピン等も希望を持つておられるか、或いはインドネシアは勿論ないだろうと私は考えるのですが、そうすると兵器生産の販路というものは、台湾を含めた極く狭い範囲の注文しかないと考えるのでありますが、それが第一点。
#42
○公述人(新谷哲次君) 多分そうでしよう。多分私そう思いますが。今の御質問の古い兵器であるという点についてちよつとお答えいたしますと、まさに古い兵器でございます。併し古い兵器でありますが、使えることだけは私が作つた大砲でございましてこれはまさに使えます。それからその大砲のみをとり上げてみますとそんなに遜色はございません。ただ今の互換性とか、こういうものにおいて立遅れはいたしておりますが、そんなお粗末な使いものにならないものであるかと言えば私はそうではないと思います。こういう点では日本の兵器産業が戦争中或いは戦争以前でも相当なことはできたと私は言えると思います。ちよつとこれはものに対する説明でありますが。今御質問の売れるお得意先というようなものは、今御質問の国々であろうかと思います。併しだんだん私たちその兵器を売るということよりも、それをもつともつと私たちはそういうものを売つて行つて、日本の工業製品にもつと親しみを持つて頂きたい。これはもう今後の日本の輸出の根幹になるものは一体何かということを考えますと、繊維製品はインドネシアでも或いは中国でもどこでもできるように相成つておる、又素材料的なものはどこにても大体できるようになつて参りました。我我日本の工業かどこへ伸びて行かなければならんかというと、できるだけ精密な方へ伸びて行かなければならんことに相成ろうかと思います。そういたしますと発電機にいたしましても、窒素肥料製造設備にいたしましても、紙を作る設備にいたしましても、日本品にもつと親近感を持つて頂くことが大切だと思うのであります。
#43
○高良とみ君 その中にカンボジア、仏印等のとフランス関係の輸出も御考慮になつておられるかどうか。それが一点。
 もう一つは、その量、総額にいたしまして、域外買付けをどのぐらいまで伸びると見ておられるか。今のお話でありますと、それらを糸口にしてそのほかの日本の製品に対する親近感を持つてもらいたいとおつしやるのですが、そういうインド、東南アジアの民衆の生活必需品のほうが誰かに大きいのではないか。といいますると、それは先に付いているゲルマニウムみたいな一つの誘導物である、それ自身はそれほど東南アジア地方が装備の完璧を期する財力があるかどうかという点から行きましてもその見通しは如何でございましようか。
#44
○公述人(新谷哲次君) 勿論兵器で私は日本の輸出産業として大きなものを、期待してはならん。又カンボジアあたりなんかにいたしましても、それは勿論フランスといたしましては、東南アジアで使つております兵器等をこちらえ持つて来て直しておるようであります。これはまあ私はそう兵器について輸出しようとは思つておりません。私たち、日非常に切歯扼腕いたしますのは、いろいろの引合いが参つております。機械の引合品いが参ります。肥料を作る機械の引合いが参ります。水力発電機、火力発電機の引合いが参りますが、大体我々はやつつけられてしまいます。なぜやつつけられるかというと、一つは高いせいもあります。もう一つは日本製品への親近感も足らないと思います。
 もう一つは世界的な政策の中に置かれている点もありましよう。これら三つか四つぐらいの原因であろうと思いますが、その中でやはり立派で安ければ大体飛びつくだろうと私は思うのです。立派で安いものを作るということになるとこれは我々の勉強のしどころでないかと思うのであります。
#45
○高良とみ君 御趣旨はわかりました。
#46
○委員長(佐藤尚武君) それでは新谷さんに対する質問は、これで打切りとすることにお願いしますどうもりそれじやありがとうございました。時間もおありでございましようから。それじや岡碕さんに対しての御質問が若いおありでしたらお述べを願います。
#47
○高良とみ君 岡崎さんに伺いたいのですが、先ほど中国との貿易の数字をお挙げになつたのでおりますが、今後のお見通しについてどのくしいまで伸び得る、まあ主に肥料、人絹、或いは発電機その他も考えておられると思いますが、御研究によりますと、日本の経済の中における輸出輸入の率を一四%といたしますると、そのくらいは戻ると、それ以上は伸びないというお見通しでありましようか。或いはもつと伸びるというお見通しでありましようか。
#48
○公述人(岡崎文勲君) これは中国経済の発展次第によつて相当動いて来るだろうと思いまするが、私まだ中共方面は現実に見ておりませんからはつきりは申せませんが、中日貿易促進会鈴木理事長ですか、あれは十カ月ほどこの貿易の関係で廻つて来て、これはいわゆる思想とかそういうことに関連なしに、貿易専門屋として行つた観測を聞いてみますのに、相当まあ中国の発展がすばらしいと、この調子で行けば農村あたりもどんどんうるおつて来る。従つて、漸次文化的な生活にも入れば、或いはミシンであるとか、或いは自転車、これはまあ現在恐ろしく古いものを修理をして非常に使つておるというような状況でありますから、まあこういうようなものも今後は相当伸びる。それから又五億の大衆の購買力というもの、これはアメリカ百年後の市場は中国だと言つておつたことから考えましても、私どもは思想は思想として貿易と何もくつつけて考える必要はないのであつて、お互いに有無相通をするという方針が確立すれば、現在亜鉛鉄板、ブリキ板というような、およそ戦略物資に関係のない物まで抑えられておる状況でございます。イギリスのときは戦前、或いは戦前以上に現在貿易をやつておるのでありますからだから日本としても遠慮なしに一つアメリカとぶつかつて、戦略物資とみなされる物以外は自由に貿易ができるということにしますれば、私はむしろ戦前よりも伸び得る可能性はあるとこういうふうに考えております。
#49
○高良とみ君 御指摘の通り、附属書に中共貿易に対する自由諸国並みにということについて、外務省としては、これは今の制限の範囲内でなくて、平和愛好国の政府と協力するというのは、ココム等における英仏その他のヨーロッパ諸国がやつている程度までやるのだというのが両院の決議にも、従つて、こういうものを特に西欧諸国並みと言いたいところだけれども、それをわざと、平和愛好諸国並みと、こういうふうにしたのだと、こういう説明があつたのでございますが、併し先ほど御指摘の通り、やはりそこにも非常な制限が加えられておる。この大きな市場を目の前に置いて、而もなおMSAを受けておるために経済上の大きな宝庫を開くことを禁ぜられておると、こういうふうにおつしやるわけなのでありましようか。
#50
○公述人(岡崎文勲君) そうです。
#51
○高良とみ君 この今の付属書D項そのものがもうごまかしであるというふうな感じをお受けになりますか。
#52
○公述人(岡崎文勲君) いやごまかしと申すと語弊がありますが、一応この協定の付属書としてそういう点を日本が再確認をしたということは、これはちよつと軽視できないと思うのでありまして、従つてこの日本がそれによつて不利を受けないためにはよほど努力をしてものじやないというふうに向う側がとつてくれるか。或いは国際的に条約になれば、再確認までしているのだから、それだから日本はアメリカの意向の範囲を出ることはできない、こういうふうに言われますか。その点御趣旨はよくわかるのですが、その点が果して条約というものの拘束力をどう私たちがつかんでおいたらよろしいか。
#53
○公述人(岡崎文勲君) これはわしども今まで聞いて、おります範囲では、一応このMSAの協定が発効と同時に、或る程度日本に今まで押付けたきつい制限を若干緩和するという一つの政治的な手をアメリカが打つと言われております。だから多少緩和するでありましようが、依然としてアメリカの中共ソ連方面に対する貿易制限措置というものはなかなかそう簡単にははずさんと思うのでありますが、併しさればと言つて、現実にイギリスであるとか或いに西独あたらいから相当大きなものが中共に入つて来ているが、これらは例えばドイツのものでもメイド・イン・ジヤーマニイと書いてあれば、これは東独か西独かわけがわからんというようなことの抜け道もあると思いますが、まあ日本としてはそういうずるいこともできかねますが、堂々ともつと、一応両院で決議されたのでありますけれども、これは連続積極的におやりになる必要がある。そうすればこれはアメリカとしては日本ソ連圏に入ることを好まないことはもう明瞭でありますから、日本の言い分は相当これは通る。それで緩和しない限り誰が何と言つても日本が経済的に立直ることは非常に困難である、私はこの考えます。
 それからプレートの問題一つにしても、中国とか貿易をやりますことによつてアメリカ或いはインド方面から物を入れると、或いは出すと言うよりも少なくともトン当り四、五ドルは安くなるわけでありますから、そういう点から言つてもこの日本に接近している中国を度外視しての私は経済は成立たないと、こういうふうに考えます。
#54
○委員長(佐藤尚武君) ほかに御質問ございませんか。御質問ないようでありますから、本日午前の公聴会はこれにて休憩いたします。
   午後零時二十分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時三分開議
#55
○委員長(佐藤尚武君) それではこれから午前の会議に引続きまして外務委員会の公聴会を開きます。
 問題はすでに御承知の通りに、日本とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認をもとめる件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、以上四件に関する公聴会でございます。午後の公聴会には、三菱重工業株式会社清算人岡野保次郎さん、法政大学総長大内兵衞さんのお二人をお願いいたしましたところ、御多用中にかかわらず当委員会のために御出席下さいましたことを厚く御礼を申上げます。問題は極めて重要でありまするので、十分に御意見を拝聴いたしまして、委員会の審議に遺洩なきを期したいと念願いたしております。幸いに平素の御研究の結果を十分に御発表をお願いできまするならば、委員会といたしましては誠に幸いに存じます。これから公述に入るわけでありまするが、大体三十分から四十分くらいで以て一先ず御意見をお述べ頂きまして、あとは質疑に譲るという工合にして頂きたいと存じます。
 それでは先ず岡野保次郎さんから始めて頂きたいと存じます。
#56
○公述人(岡野保次郎君) 私只今委員長さんから御紹介に与りました三菱重工業の代表清算人の岡野保次郎でございます。戦後御承知の力もあるかと思いますが、過去九年間三菱重工業の社長をやりました。昭和二十五年の一月に引退をいたしました。新会社を三つ作りましたが、今は実はその古い会社の残りの財産の清算事務に携わつておるわけでありまして、いわば隠居役と申しますか、ただ殆んどそのほうの仕事は一日四時間か四時間半という関係上、いわゆる経団連とか日本経営者連盟とか、そういう方面の世話をいろいろしております。いわゆるパブリック・サービス・ボーイのような、同時に又従いまして三菱というようなふうな色はできるだけ付けないような心がまえですべてを現在やつておるつもりであります。本日もそういう意味合いを以ちまして、まあ主として経済的観点からというようなお話に了解いたしましたのでありますが、むしろ一市民といたしまして、日本の現在及び将来を考慮して、公平に私の経験を基礎にいたしまして意見を述べさして頂きたいと存ずる次第であります。
 初めに主として経済的と申しますか、私は終始現在まで三十五年間日本の産業に携わつて参りましたので、産業的見地を主にいたしまして、それに三十五年前に第一回、十七年前に第二回、一昨々年国際労働会議に使用者代表としてジユネーブに一カ月ばかりおりましたあと、ヨーロッパ各国を廻りまして、それからアメリカに約一カ月ばかりおりまして帰りましたような観点から、本日の話題になりますMSAに関係のございますような、私が各国を見て来た、或いは聞いて来た点を五分なり十分なり附加えて、御指定の約三十分というようなことにやりたいと考えておる次第であります。お含み置きを願いたいと存じのよす。
 端的に結論から申上げますと、私は今回提案されましたMSA関係の四協定、これに賛成をいたします。いろいろの議論はありますことと存じますが、普通の常識から、私どもの常識から考えまして、それも只今申しましたような国際関係も相当程度考慮に入れました、素人ではありますがそういう意味の常識から考えまして、今日の日本がアメリカを中心とする世界の自由諸国家から孤立したと申しますか、国際情勢がかくのごとく対立しておる時代に、どうしても孤立して生活を、生存をするということを考えるということは、私は現実に処して考えれば、そういうふうに考えられておる方が本当に心の底からあるであろうかというふうに考えるものの一人であります。で又、従いましてそういうふうに考えている人は、各国とも議論の相当ある点ではありますから、このいわゆる防衛力というような問題につきましては、そう多くはあるまいというふうにまで考えておるのであります。今回の協定はその前文にも謳つてありますように、飽くまでも国際の平和及び安全保障を育成するための相互の援助を目的とするということは、あの協定の内部にも謳つてありますようであります。これによつて日本の独立と安全を危うくされるということは考えられないと思うのであります。現に私の了解した範囲だけでも、米国との間にこれと同様の協定を結んでおる国は英国、フランス、その他世界に、三十余ヵ国を超えている状況であるように思いますが、これらの諸国家がそのために、これのために独立を危うくされているというようには了解しないのであります。特に以下述べますように日本の経済面の、経済的プラスの面の大きいことを考えますと、日本は世界の多数の自由諸国家に伍しまして、大威張りで今回のMSA援助を受入れるべきであると信ずるのであります。以下私はMSA受入れによりまして生ずる我が国経済への利点の二、三について申述べさして頂きたいと思います。
 その第一は、米国からのいわゆる域外調達によるドルの獲得でございます。巷間ではしばしばMSA援助は大部分が完成兵器の供与を中心とする軍事援助であつて、経済援助ではないというような単純な形式的論議が行われているように見受けますのでありますが、成るほど形式は軍事援助でありましても、その軍事援助として我が国に供与される需品なり或いは装備なりは、必ずしもアメリカ製のものに限られるのではなくて、特に先だつてスタツセン氏或いは国務次官補のセルゼツトと言いましたか、あの人あたりにもお会いいたしたのでありますが、その節にも我が国にその意思と能力さえあれば、アメリカは日本でできるものはできるだけ日本国内で調進したい、又調達することを約束してもよるしいというようなふうに言われたように了解しているのであります。而もこの域外調達は単に我が国の自衛隊に供与されるものばかりではなくて、これに四倍か五倍かする、例えば今度の五千万ドルについても一千万ドル以外の四千万ドルは、いわゆる東洋、南方諸国のMSA供与金額を取れるだけ取つてよろしい。だからして一千万ドルは少いというようなふうな話をスタツセン氏にもしましたところが、お前は一千万ドルと考えているけれども、これは五千万ドル、今年のものだけでも五千万ドルと考えてよるしいのだ、南方諸国に日本のもので間に合うものがあり、それでいいというものがあればどんどんやつてもらいたいということを希望し、期待しているのだ、従いまして日本国自体に対するMSA援助に何倍かするアジア自由国家群の装備の不足分も、日本においてアメリカは調産しようとしているし又してもらいたいと思つているように見受けられるのであります。
 この六月末までに、御承知の通り我が国に対するこの兵器類の域外調遠は、その当時我々は九千万ドルと了解しておつたのでありますが、あのときに一億ドルを超える額が期待され、予定されておるとのことであります。そのうち少くとも七千五百万ドルはドルによる発注であると聞いておるのでありますが、これが現在日本国の現状を考えますと、輸出の不振に悩んでおる今日の我が国国際収支の上に持つ比重は、これは決してこの比重は軽視されては断じてならないと思うのであります。もとよりこの兵器産業が不当に民需を圧迫し、我が国の正常な経済的均衡を破壊するような規模にまで拡大するということは、厳に避けなければならないのでありますが、又避け得られるようにあの協定の内容はなつておるように拝見したのでありますが、昭和二十九年度の日本の工業輸出額が推定で大体五千六百億円、およそ十五億ドルと見まして、あるといたしますと、先に申上げました一億ドル、三百六十億円の兵器生産は極めて比較的には小さい。この意味からもMSA受入れが産業構造を変えてしまうとか、兵器生産への傾斜が生ずるとかというようなことは、私は杞憂に過ぎないのじやないか、いわゆる戦前の軍国時代の、羹に懲りて膾を吹く類いの、少し言い過ぎかも知れませんが、被害妄想と言つてもいいんじやないか、こういうことを信ずるのであります。
 MSAの日本経済にとつての利点の第二は、これが我が国の工業技術水準の向上に深い関係を有するということであります。申上げるまでもないことと存じますが、兵器工業というものは近代科学の粋を集めまして、いずれの国においてもその工業技術の最先端を行くものが多いのでありますから、これを我が国において再建、発展せしむるということは、広汎な国連産業の進歩発展を促す直接の契機となるばかりでなく、一般の産業技術水準のレベルを向上して、いわゆる民需を中心としたほかの大部分の産業全体の質の向上
 に寄与するものであるということは、これは現在の幾多の例証が示すところであると言うても過言ではないと思うのであります。特にこの戦後の日本は、七、八年のいわゆる空白時代を技術的その他において過しまして、これを世界的レベルに持つて行きますということは、貧困になつた経済の日本のカだけでは、莫大なる研究費その他を要する点を考慮いたしますと、日本の力だけではなかなか困難な点があると思うのでありますが、こういう点につきましては、今日の午前中の他の方が恐らく述べられたことと思いますから、詳しくはこの点は申上げませんが、先ほども申上げましたスタツセン、或いはセルゼツトばかりでなく、アメリカの大多数の、私の数多くある友だちあたりからの発言を総合しますと、アメリカは日本の工業技術能力に大きな信頼と期待とを寄せておりまして、言わばよく言うことですが、日本を東洋の技術的中枢、或いは東洋における工場というような言葉も使つておるようでありますが、それたらしめようとの期待の下に、今回の協定締結を機会といたしまして、各種の技術的援助を提供しようとしておる。或いはほかの反対の言葉から申しますと、これなしには経済的援助は勿論、技術的援助の提供というようなことも望みにくいんではないか、期待し得ないんではないか、こういうように申してもよろしいかと思うのであります。御承知の通りに、協定の附属書にもこのことが明記されておりまして、即ち「日本国の防衛生産の諸工業に情報を提供し、及びその諸工業の技術者の訓練を促進することを、」……「考慮する」とあるのがそれであります。ここには防衛生産の諸工業とありますが、これが他の一般の産業の技術水準向上に直ちに関連するものでありますことは前に述べた通りであります。
 このほかにもいろいろ述べれば利点が多々あるのでありますが、ただ一つここに申上げておきたい点は、MSA関係協定の一つとして、投資保証協定があることであります。この協定は今後日本国内の経済情勢に重大な変動があつた場合に初めて発動されるというものでありますから、当面直接の効果は期待されないかも知れませんが、間接的にこれによつて対日民間投資を促進するという効果が期待されると思うのでありまして、私は実はこれは今度の協定のうちの思わん拾い物をしたと申しても過言ではないと考えておるくらいなのであります。日本の経済その他将来のために、先ほどちよつと申上げました、今度のMSA協定に関連する防衛力というようなものに関係を持ちます点につきまして、私が欧米を廻つて参りまして、聞いた点を附加えたいと存じます。これは先ほどもちよつとこの協定をやつておる国は三十カ国くらい現にある、若干の些細な点に相違はありましても、ほぼ同巧異曲とこういうことになりますれば、これはこの協定にお互いに何らかの利点を考えて協定したものである、私は政治或いは外交に対しては極めて門外漢ではありますが、常識的にそういうふうに考えますのであります。
 それから防衛力の問題でありますが、特に一つの国を、極端な国を例証として挙げますと、私が一昨年国際労働会式の帰りにスウエーデンに参りました。あそこは御承知の通り人口七百五十万、非常に生活の安定しておる代表的と思つてもいいくらいの国であります。これが直ちに常備軍或いは予備軍が直ちに兵力になります数が七十万と、これは間違いないと思います。私の友達が言つてくれたのであります。それから喧嘩のできる飛行機が一千機、それでソビエト・ロシアはフインランドまで来ましたけれども、あそこを虎視眈々として狙つておるのだそうであります。これはあの国の人に聞いたのであります。ところが来るなら来てみたまえということで、あれは鉄、木材、その他非常に資源の大きな国でありますから、どうしてもあそこは未だに……、尤もこれは半面にいわゆるグスタフ・アドルフという王様、これはその当時明治大帝に比較される、或いはこれ以上と言われた名君と言われた人であります。この施政そのものが非常によかつたというふうな点もあるでありましよう。あの国民は実に生活を楽しむ、ソシアルの、いわゆる社会保障制度、厚生問題、こういう問題は羨ましいほどの国で、私が参りまして実は二回目であります。前に行つたときはまだ若いときであります。国内の事情もそれほどわからなかつたのであります。今度いろいろ調べてみますと、その生活の豊富であり、安定しておる点は羨ましいと思われるような国であります。絶対に外を侵すことはいたしません。これはしないということをあそこの国是としておるのであります。但しよその国からも侵されない、これは国民的信念と申しますか、そういうふうに会う人ごとに私は印象付けられたのでありますが、それがそういう状態になつておるという事実をここに申上げたいと思うのであります。
 それからゼネラルマツカーサーが戦後日本は東洋のスイツアーランド、スイス国になる、これはどういう気持で言うたかわかりません。私は今度行きます場合には、あそこは自分の住家にまで鉄砲とか、そんなものを持たしておる、相当そういう方面は注意してやつておるというようなおぼろげな知識を持つて行つたのであります。向うに参りましてこれは本当に心から自分の認識が狭まかつたということで驚いたのは、あそこは御承知の通り人口四百五十万であります。常備軍十五万、予備軍三十五万、直ちに五十万の兵隊ができるのであります。国民皆兵式であります。五十歳でも毎年何回かの軍事訓練をやつておるのであります。これは御承知の通り、永世中立国であります。それでヒツトラーが、あの国の人に聞いたのでありますが、ヒツトラーがイタリーに行くに近道としてあそこを通ることをまさに計画して実行に移さんとしたのであります。この永世中立国のスイスは通るなら通つてみろ、ただは通さんぞ、鉄砲をヒツトラーのほうに向けてやつたために、ここを通ることを変更してフランス側から入つたんであるということを、これは得意がましくスイス人から伺つた実話でございます。勿論あそこには天険というような利点もございますのでありますが、とにかくそういう用意をしておるのが現実の姿であります。
 それでこれは若干素人論の、まあ経済人の言うことではないかと思いますが、それらの詳しい点は実は私印象記を帰りまして頼まれるまま三十七回、丁度東ドイツのほうには私は日本人が入つた三人目であります。非常に今から考えると乱暴なやり方ではあつたのであります。ソビエト領のベルリンに日本人で三人目に入りました。向うの姿もその当時現実に見ました。その当時アメリカ側は殆んど絶対に入れない、私し多数の人たちが向うの情報を聞きたがつたのでありますが、それから詳しいことはここでは短時間に申上げにくいのであります。若しもらつて頂ければというふうに考えまして、今佐藤委員長さんに「羽田から羽田に」という印象記をお渡し願つたのでありますが、世界の対立というものが若し存在するならば、これはいわゆるユートピアであつて、極楽境、こういうようなことであるならば何おか言わんやでありますが、今の現実の姿はそうではない、国際的にも対立をしておる。対立をしておれば自然嫉妬も各国ごとにあり、或いは対立もお互いにあるでしようし、それから憎悪心も出て来ますし、これは現実の姿として或る利度ネグレクトして考えずにおくということはできないのじやないか。
 少し例証が適当でないかも知れませんけれども、我々私生活におきましても、これはそのまま国際的に当てはまるかどうか知りませんが、門をやつている。鍵をかけている、そうして夜寝ます。これはやはり平和を害する者が入つて来るのを予期しているのでありませんか、万一そういうことがあつた場合には入りずらいようにしている。入つて来たらば、無抵抗主義のガンジーのごとく何らもう抵抗をしないで、泥棒に人のものを理由なしに持つて行かす。自分の家庭内の平和を荒すというようなものには、こちらが泥棒になるということの考えは毛頭ないとしましても、これをできるだけ取りずらくする。或いは頭の一つくらいは防衛のために叩く。甚だ卑近な例証でありますが、日本の現存する憲法上からこの協定が如何ようにあるかという問題は私は政治家でもないし、学者でもありませんから、その理論はわかりませんと言つたほうがいいか、或いはそれは触れないはうがよろしいかと存じますが、併し世界各国を見て歩いて、その現実の姿は今申上げたようであります。極端な例がこれかイギリス或いはフランス、イタリー程度のものでありまして、これはみな協定を結んでおります。その中に反対論者も相当あつたことと思います。又そういうふうに聞いております。併しとにかく結果は結んでおります。この政治家は先の見えない、或いは馬鹿の政治家であるとばかりは私は考えられないのであります。
 そういう意味において第一番目の発端に参りますが、この四協定に対しましては賛成の意を表する次第であります。終ります。
#57
○委員長(佐藤尚武君) 有難うございました。
  ―――――――――――――
#58
○委員長(佐藤尚武君) 続いてそれでは大内総長にお願い申上げます。どうぞ。
#59
○公述人(大内兵衞君) MSA協定について特にその日本の経済に対する影響について意見を述べよということでありますので一個の国民としての私の意見を述べることを許して頂きます。
 第一、MSA協定はサンフランシスコ条約に基く日本とアメリカとの相互国防計画の具体的な現われであります。そうしてその内容は、アメリカと日本とが国防の目的のために相互に装備、資材、役務その他の援助をするということになつております。ここでは形の上では、日本も独立国としてアメリカと対等に取扱われていますが、それは形の上だけの話でありまして、先方は世界第一の富める国、世界第一の軍事力を持つている国、当方は有名な戦敗国、憲法の上でさえ軍備を持つていない国であります。そこでMSA協定というのは丁度貧乏な学生が金持の親戚から学資金をもらう契約に似ております。証文の上では対等でありましても、事実上勉強しなくてはならないのは学生であります。先方の機嫌をとらなければならないのは日本であります。一つ誤ると、否、余りによく勉強いたしますと、将来いやな娘さんをお嫁にもらつてくれというようなことになつて断りきれないというようなことも起らないとは限りません。
 そこでMSA援助を受けるにつきましては、それについてのアメリカの真意がどこにあるかということをよくつかむことが我々には大切であります。私の見るところはこうであります。アメリカは昨年以来、より具体的には朝鮮休戦の見込みが立つて以来、その軍事の基本方針を一変いたしました。いわゆるニユールツクというのはこれであります。このニュールックの精神は本年一月十二日における米国外交協会におけるダレスの演説、一月二十一日のアイゼンハワーの予算教書にいよいよ明白に宣言されております。これによりますと、アメリカは独力を以ては全世界に亘る共産主義には対抗できない。特にその巨大な地上勢力には対抗できない。これは朝鮮事変の経験によつて明らかであります。そこでアメリカは同盟国を必要といたします。他方においてアメリカは白田の軍事戦略を根本的に変更することを必要といたします。この新らしい戦略の目標は何か、それはダレスの言葉を借りますると、「われわれ」即ちアメリカ当局、「の選ぶ」「我々の「選ぶ方法と場所とにおいて即座に反撃できるような巨大な報復力に主たる重点を置く。というのであります。そうして若しこういう巨大な報復力をアメリカが若し持つならば、このほかにもいろいろの軍事手段の必要、特に陸上部隊の必要はだんだんとなくなります。然らばこの「巨大な集中的な報復力」というのは何でありますか。申すまでもなくそれは原子爆弾、水素爆弾であります。アメリカはこの考えに基いて来年度予算には陸海軍、空軍の予算を改める計画を立てています。即ち陸海軍の兵力を漸次に減らして、空軍の兵力を漸次に増大いたします。又この空軍の航空機はジエツト機に改めます。それはそういう新鋭機に多数の原子爆弾を積込んで、いつでも世界のどこにでも出動して、新らしい誘導兵器を以ちまして、目的地に対しましては極めて正確な攻撃をすることができるようになつたからであります。そうしてそれによつて敵の主たる戦闘力は勿論、工業の中心、政治の中心を破壊することができるのであります。この方法によりますと、アメリカは朝鮮の場合のようにたくさんのアメリカ人を殺さないで済むわけであります。すでに二千の原子爆弾を持つておるという国のニユールツクの新らしい威力がここにあるわけであります。
 次に、然らばこのアメリカの新軍事戦略においてアジアは如何なる地位にあるか。これもアメリカの公式の説明によりますと、アメリカは朝鮮から成るべく多く撤兵する考えであります。又インドシナに対しても簡単には軍隊を出さない方針であります。と申しますのは、こういう局地的な戦争においては、如何に有力な軍隊を以てしましても、共産主義国を徹底的にやつつけるということは、人口の点から見て不可能であります。と申しますのは、相手は兵員の損失にはなかなかへこたれないからであります。そこで相手をへこませる方法は、そういう局地的な戦吊ではない。その本国、その首都、その工業地を破壊するしかないからであります。そこで又アメリカにとつて賢明な方法は、そういう局地戦には成るべく介入しないという方針が生まれます。それよりも、いよいよという場合に、その有力な報復力を敵国の軍事力、政治力の本拠に対して行使する力を持つということであります。
 要するに、アジアのことは一応アジア人をして相互に決定せしめよ。その上で若し全面的な戦争となるならば、アメリカが責任を持つというのが今後のアメリカのアジア政策の基調であります。これは、無論一面においては、形の上では平和主義の前進でありますが、他面においては、実資的には大軍国主義の前進であります。何にいたしましても、世界の平和、アジアの平和は、アメリカの主張を通すこと、それを裏付ける原子力的軍事力によつてそれを通すことによつて維持されるというのであります。アメリカから学資金をもらおうという日本は、アメリカのこの精神を忘れてはなりません。
 そこで第三に、若しこのニユールツクが右のごとき性格を持つものといたしますと、アメリカの同盟国及びアメリカと共同集団安全保障をやろうとする国々との関係も、新しい顔付き、ニユールツクを持たねばならんのは自明であります。今それをアメリカ側からの要求として述べますならば、それは二つになります。その一つは、経済援助の方式か変るということであります。と申しますのは、戦後アメリカはいろいろの形で、而も政治的な借款の形でそれらの国々の経済復興を援助して来たのでありますが、そういうことは今後成るべくやめる方針のようであります。と申しますのは、これは或る意味においては、その目的が一応成功したからであります。又他の意味では、如何にアメリカでもこの負担、特に租税負担がすでに限界に達したからであります。そればかりではなく、これまでのような形で経済援助をし、それが成功をして、これらの国国が復興いたしましても、その結果は、アメリカに対する経済的競争者を作ることになります。アメリカの市場を狭めることになります。そうしてそれがアメリカの景気を悪くするということになります。このことは二、三年来明白となりました。併し、申すまでもなく、アメリカは相互安全保障制度を必要とするのであります。そこで、アメリカはそれらの国々に対する直接的な軍事援助をますます拡大するということにいたしました。これがアメリカの外交的要求の第二であります。
 なぜこういうことになつたかと申しますと、アメリカが自己の軍事力を集中的な空軍に置いて、アメリカの軍隊を各地から引揚げますと、今度はこれらの各地に対する不規則な侵略は却つて増加すると見なければなりません。そのとき、そういう侵略に対しては、それぞれの国の軍隊、例えば西欧、例えば朝鮮、例えば日本においては、その国の軍隊をしてそれぞれの国を守らしめなくてはなりません。そのためには、それぞれの国に軍備をさせなければなりません。それをさせるためには、それぞれの国に武器弾薬を供給してやらなければなりません。それも或る程度まではアメリカの経費においてこれをしてやらなければならんというのであります。これがMSAの拡大として現われておるわけであります。これも、一面形においてはそれぞれの国の独立な助ける形になつておりますけれども、同時に他の面におきましては、これは巨大なる人口を持つ国々に対して、アメリカのいわゆる局地防衛力を強めて、それによつてアメリカを中心とする民主主義陣営の共同防衛を強化しようとするものであります。即ち、MSAというのは、これらの局地をアメリカの戦路上の一部としようとする手段であります。言い換えますと、MSAの目標は、アメリカの巨大なる報復力の外壁を作るということにあります。
 第四に、MSA協定を基礎にして日本の自衛隊を作ることによつて日本にでき上る軍隊はどういう性質の軍隊であるかを考えてみましよう。申すまでもなく、その軍隊は、その装備において何ほどかアメリカ的であります。それはアメリカの武器を中心として、アメリカの顧問によつて指揮されるものであることよりして当然であります。それはそれとして、かかる軍隊が然らば現在の世界において独立の軍隊として役立つかと申しますならば、それは全く役に立ちません。ただ局地的戦争以外には役に立たないことは明らかであります。というのは、現在の戦争というのは、空軍を中心とする原子力戦争であることはすでにニユールツクの前提となつておるところであります。然るにMSAの協定の大いさから考えましても、又日本の工業力の大いさから考えましても、日本の財政の力から考えましても、世界戦争の場合に、何らかの意味で日本が独立した作戦をなし得るというような軍隊を作ることは、少くともここ十年や二十年は日本にとつては絶対に不可能なことであります。それ故に、MSAの援助によつて日本が多少の軍備を持つたといたしましても、それで日本が独立国として軍事行勅をとるというようなことは、世界的な一味において全く不可能であります。併しそうは申しましても、このMSAによつてできる日本軍隊は全く戦闘力を持たないものかと言いますと、それは決してそうでなくして、日本の軍隊も恐らくは戦前の何倍もの大いな破壊力を持つようになるでありましよう。そこで不幸にしてアメリカが独自の立場においてどこかと戦争を始めるようなことがあるといたしますならば、当然に日本の軍隊とその基地とは、その相手国の攻撃の的になります。そこでこの軍隊を日本が外国に動かすと否とにかかわらず、日本本土における戦争の危険は非常に大きく、この軍隊が日本を破壊する原因となるでおりましよう。この場合アメリカにとつてはそれは彼らのいわゆる極地的戦争とも考えられることがありますから、アメリカはその巨大なる報復力を必ずしも日本のためには使われないかも知れません。要するにMSA援助による日本の軍隊は、日本の本土の安全に有益であるよりは有害ではないのか、問題の要点はそこにあると考えます。
 次に第五に、このMSA協定を前提とするところの本年の日本の予算、その保安庁の予算は八百十三億円であります。これは昨年度に比して二百億円しか増大していないのでありますが、我々国民にとつての問題は決してそれだけではないのであります。なぜかと申しますと、これは将来必ず急激に増大するものであるからであります。そうしてその増大のナンボは、仮に自衛隊を全く増加しないといたしましても、日本の生産力の増加より遙かに大きいものとなることは必然であります。言い換えますと、日本国民は将来ますます多くの租税を負担して、より多くの部分を今回創設される自衛隊のために使わなければならんことになるのであります。これは何よりも恐るべき結果であります。なぜ私がこういうことを断言し得るかと申しますと、それはこの自衛隊の装備がアメリカのそれと有機的一体をなしておるということから来るのであります。言うまでもなくアメリカは世界で一番進んだ技術を持つ工業国であり、従つてその軍隊の装備は世界で一番機械化されております。そうしてその装備は日進月歩し、一つ一つの生産に要するコストも又日に月に増大いたします。然るに日本の工業の進歩はとてもそれに追いつくことはできないのであります。そこで例えば今は三分の一がアメリカの装備であり、三分の二が日本の工業でできるものと仮定いたしましてもこれが全体として有効な自衛力であり得るためには、日本はますますより多くの資本を軍事産業に投じなくてはならんことに必ずなるからであります。それは一方においては日本の産業がより多く軍事的となり、より多く不生産的目的を持つということでありまして、反対に日本の必需品産業、輸出産業はより多く圧迫を受けるということであります。又日本の財政特に軍事支出が今後年々増大して、租税はますます重くならざるを得ないということであります。言い換えますと今年度に創設するところの自衛隊の軽輩は防衛費を合せ、まして千三百七十億円、全財政支出の一三・七%でありましても、そうして仮にこの軍隊数を将来絶対に増加しないといたしましても、数年の後にはそれは倍にも或いはそれ以上にもなることが殆んど確定的であります。こういうことは日本の経済を独立させるという目的に適うものでありましようか。日本国民はこの上になお増税に堪え得るものでありましようか。日本の教育費や社会保障鶴やはそのために犠牲にならないものでありましようか。私は大いに疑い、深く憂うる者であります。
 私は以上のほかMSA協定は日本国民になおいろいろの不幸をもたらすものと考えています。併しそれはここでは省略いたしまして、最後に甚だ古風ではありますが、儒教的正義、アジア的政治の道に照らしてこういう協定が国民の納得するものであるかどうかということを問題にいたします。およそ強大な国の間に挾まつてその国を守る方法はどうか、東洋政治学は次のごとく教えているのであります。それはその国内の一致を図ることが先ず第一である。そのためには国力を養い、不具廃疾をなくし、轗軻孤独を救わなくてはならん、こういうふうに教えておるのであります。これを今の言葉で言いますと、どういう政治がいいかといえば日本のような弱小国は先ず社会保障制度を拡充してその国内の階級闘争をなくさなければならないということになると思います。又次のように言つてもよろしいと思います。そういう国は余り巨大な兵力を持つて、外国をして恐れさしてはならない、若し止むごとを得ずして兵を貯えるといたしましても、それは全国民が十分に食べられるようになつてからでいい。政治家が賄賂を取らないようになり、政治に信用ができてからでいい、こういうふうに東洋の政治学は教えておると思います。この政治学は確かに古いのでありますが、併しこれは東洋人の常識であります。今日の時……今日の時というのは、世界が二つの陣営に分れて原子力戦争をやろうとして、その和戦の形勢が未だ定まらない時、その時に又日本の国民の生活の程度がまだ戦前の八割にも回復していないそのときに、そうして日本の経済力はみずからの工業力を以てはまだ軍備を整えるカが足らないそのときにであります。又日本がみずから世界戦争の発頭人となつて三千年の歴史を無惨にも踏み躙つて、同時に広くアジアを征服してそれらの国国の恨みを買つて、それに対してまだ賠償の千分の一をも果していないそのときにであります。この今日、日本が他国の力を借りて巨大なる報復力の片棒の端を担ぐというようなことは、そもそも政治的に正しいことであるかどうか、私は日本国民の多数はそれについて疑いを持つておると申上げます。そして我か政治家諸君の良識によりまして日本の政治を正義の政治として頂きたいと心から念願するものであります。
#60
○委員長(佐藤尚武君) 有難うございました。それでは委員諸君のうちで質疑を有せられる方はどうぞ御発言をお願いいたします。
#61
○羽生三七君 岡野さんにちよつとお尋ねしたいのでありますが、先ほどスウエーデンの例をお引きになりましてお話がございましたが、私も実はスウエーデンを見て参りまして、それでお話の点はお説の通りだと思うのであります。たた問題は、例えばスウエーデンの場合では、戦時の最大動員力約七十万と言われましたが、その通りでありますが、あそこの人口が七百五十万に対して日本が八千四百万、それから一九五二年の貿易収支並びに国力を見ますと、日本の人口一人当りのドル収入三十二ドルに対して、スウエーデンは三百二十五ドルであります。だから人口は日本がスウエーデンの十数倍持ち、それから人口一人当りく貿易力はスウエーデンの十二、三分の一になります。そうしますとこの今の七十万が戦時でなしに平時の動員力としましても、現在の日本の保安隊、今度できる自衛軍でありますが、それとの比較から見ても非常な過大なものになつて、日本の経済の安定をいよいよ阻害して来る。そういう意味でこのスウエーデンが、アメリカ等を別にすれば、非常な高度の生活水準を持つている国だという先ほどのお話はその通りだと思いますが、それだからこそ、あの程度のものを持つことのいい悪いは別として、あの程度のものが持てる。併し日本の経済の現状からするならば、むしろ却つて逆な結果になつて、若干の軍備を打つことによつて、むしろ思わざる治安上の混乱をも招来するような結果になりはしないかということを私は実は感じて来たわけであります。その辺をどういうふうにお考えになるでしようか。
#62
○公述人(岡野保次郎君) それは、平時ですから七十万は予備と常備です。飛行機が千機というのも平時であります。今平時であります。戦時にはこれに何倍するかは私聞いて参りません。ただ日本が八千万の八百万に相当するから云々というようなことは私全然考えておりません。ただ事実そういうような現状になつておる。それからその結果フインランドまで来て虎視眈々としてやつておるけれども、どうしても言うことを聞かない。こういうふうな現状であるという事実をお話したわけであります。日本がどうしろということはまだ触れてないのであります。ただこちらからも申上げたいと思うのでありますが、日本がそんな些細な八千万に対する今度何万ですか、十七万か十八万、まあ多くても向うの要求が三十二万、それでこれが日本の防衛力になつて日本はとにかくそれだけで以て安泰かというと、そう考え得られるほどのものではないのであります。併し独立国として面も今申上げましたように対立する二大勢力と言つてもいいが、とにかく現状は各国が対立しておる。その対立しておる場合に、各国がどこにも今つかずにおるというときに、孤立するというか、世界の孤児となるというようなこういうようなことは一体許されるものであろうかどうだろうかという私は疑問を一つ持つておるのであります。若し一朝世界に望ましからざる事件が起きたという場合に、今ぐらいのものを持とうが持つまりが、それによつて持つているから……日本が孤立した場合ですよ、来るとか来ないとかいうことにはならないだろうと思うんですよ。特に今度は経済も弱体であり、その他防衛力も持たないという場合を想像すると、これは防衛力を全然持たなければ、アメリカは助けてくれません。それから例えば朝鮮の例で申しますと、私は実例として朝鮮がいい例じやないかと思う。特に最近竹島を、今の他人のものは自分のものと、こういうようなことで言われた場合に、幾ら正義を主張しても何もならない状態である。決してよそのものを取ろうという考えはなくとも、アメリカならアメリカのほうについておいて、今助けを乞おうとしたわけです。これは或いは国際裁判に出そうとしたが何ら無力でどうにもならん。今竹島を占領すると言われたらどうするのでありましようか。そういう意味において、一朝そういうことがあつた場合に、日本が若し世界の孤児になつておつたとすると、どこにもつかずにおつたという場合、若し不幸にして世界に望ましからざる重大事件が起きたと仮定すると、各国は自国の運輸に忙しくなるから、各国は船も皆引揚げますから、そういうような場合に、一体孤立遮断された日本の食糧問題というものはどうなるんだろう。それが今のMSA協定を結んで、而も自由国家群のほうに入つておつた場合とどちらがマイナスになるか。私は平和を愛好する、極端に平和を愛好する、望ましいことであります。それであり得たらばこれほどいいことはないと思うのであります。併しそれが果して本当に日本国の将来に対しても平和で安定を将来に持ち来すものだろうかどうだろうか。私は重工業だから、重工業が盛んになるんだから、それで君は賛成するんだろうと言われるのが一番辛いのであります。そういうのでなくて、とにかく世界の孤児にはならずに、とにかくせめてどちらかの、どちらかの、どちかということはソビエイト圏に入るということは日本国民全部がないのであります。然らば、どこかにとにかくお互いに助け合つて平和を護ろうということであるなら、ば、私はネセサリーイーブルという言葉がありますが、止むを得ざる悪として、若し非常に割引して考えても、現状を目の前にして考えれば、止むを得ざる悪と言うか一番いいのが将来にユートピアとしてあると仮定すれば、それに対して現状ではこれは止むを得ない悪であろうが、併し現状を基礎にして、対立する世界の情勢を見渡せば、これはやはり或る程度協力をするような形になつて、日本の力だけでは護れないならば、協力の力によつて幾らでも護る、国民の将来を幾らでもセーフ・サイドに置き得る、プラスのサイドに置き行るのじやないだろうか。先ほど申上げました、いわんや永世中立国すら、事があつたら蹂躪しろ、こういうようなことはお茶の子であるというのが従来の例であるし、現実の姿ではないかと私は想像するのであります。だからしてこれは止むを得ざる悪として考えてもよろしいし、それが必ずしも私はそれほど割引しないでもいいのではないか、こういうような気持ちで先ほど申上げたのであります。
#63
○羽生三七君 私は公述に来て頂いた方と議論する意思は全然ないのであります。ただ、先ほど経済の点から果して可能かどうかということをお尋ねしたわけであります。併しそれで若干意見を申上げますと、この援助に基く自国の防衛体制を作らないというと、アメリカが日本を援助するかどうか疑問だということでありましたが、私はそういう点から考えまして、向うのいずれかの国が日本に理由なくして侵略をして来るという場合の危険のウエイト、そういうことがあるかないか知りけせんが、仮にどこかの国が日本に侵略して来ることがあるとすれば、そういう場合の危険のウエイトですね。それとアメリカが他国と紛争を起して、その渦中に日本が巻き込まれる場合の危険のウエイトということと、私は後者のほうが多いと思つておるのです。だからそういう意味から言つても決して防衞にならんということを考えたのですが、併しそれは先ほど申上げましたように、私のお尋ねした経済の点から申上げて、今岡野さんからいろいろお話になつたことについては、私たちもいろいろ検討した点でありますけれども、それは省きまして、たた私どものお尋ねは日本の経済の現状から、先ほど大内先生もいろいろ御指摘がございましたが、このMSA援助を受けることによつて、又先ほど岡野さんからお話があつた兵器生産によつて、日本が諸外国との工業水準に肩を並べ得る、或いはその他の関連産業等についても、工業水準のレベルを高め得る、そういうような若干の利益はあつても、日本全体の経済として非常な困難な点に立つて、結局においてはアメリカの最も恐れる、私は間接侵略という言葉を使うのは大嫌いなのでありますが、とにかくアメリカの最も恐れる日本国内治安の維持を不可能にして、それで結局においてはアメリカの納税者の負担をも無意味なものにしてしまう結果になるのではないか、こういうことを考えたので先ほどのお尋ねをしたのでありますから……。
#64
○公述人(岡野保次郎君) アメリカのほうはできるだけのことを日本のの国力で非常に危険、或いは無法の許す範囲内、これらのことが書いてあるようであります。それで私の申しますのは、先ほど卑近な例を申しましたけれども、家に泥棒が入らんように鍵をかけておく、戸を閉めておく、それから無断に理由なしに平和を撹乱するものを防ぎたいという目的だろうと思うのでございます。ですからその各家庭で、金持の人は、それは鍵も二重も三重、或いは泥棒が来ても絶対に侵し得ないようにやる家もあるでしよう。併し日本はそれほど金がないのですから、今の程度でやつておつて来たら相応に防げるだけの姿をもつて、巡査が来るまでの防ぎができればそれくらいのことはやらなければ巡査も協力してくれないのだ、できるだけのことはやり、巡査の助けになるようなことを若干は努力をやられて然るべきだ、それも何もやらないでおいて、お前はとにかく泥棒が入らんように巡査が護るべきだ、その代り巡査が来ても慰めの言葉もないし、お茶も出してやらん、こつちのやることは何もやらないで、そして泥棒が入つたのはお前の責任だ、こういうふうな態度では私は世界に協力はできないのだ、平和を護り得て泥棒のないユートピアが期待できるならばそれが一番望ましい。併し実例はそれを証明しないでむしろ東ドイツの現状を見たら情けないものだあの生活状態、朝鮮の現状はどうであるか、こういうふうなことを考えると、私はできるだけのことは努力をして自分の国は守る、併し自分の国だけじやいけないから巡査の来るまではせめて家の防禦は自分の力相応にやるということは、これはお互いに助け合う義務ではないか。これもやらずに済むような世界があれば望ましいことだが、或いはガンジーのように絶対に無抵抗主義であり、そして世界の仲間入りができるということであるならば、これは何おか言わんやであります。こういう意味のことを経済面に引きつけて申上げたつもりであります。
#65
○羽生三七君 先ほど申上げたように私は議論する意志は全然ないのですが、何も日本は努力しておらん、アメリカの一方的な援助だけを得て何もやならないことは世界の孤児になるというお話ですが、実は日本は七百数十カ所の軍事基地をすでに提供しておるのです。或いは又それ以外のいろいろな地上軍の編成も今や当面の日程になつて来ておる。そういうことから却つて外的の侵略というよりも、むしろ或いはそのことによつて国際紛争の渦中に巻き込まれる危険にウエイトが多いという純粋の客観的な判断から申上げておるので、主観的に考えて独立国家が自衛力を持つことが適当か、どうかという議論とは別なのであります。独立国家が自衛の権利を持ち又場合においては行使しなければならんときもあるでありましよう、どうも日本の経済と睨み合して又世界の国際情勢なり、客観的な諸情勢から見て、経済上特にその主たる条件は経済上から見て私は非常に困難なものだということから御質問したわけでありますから、公述のかたと議論する意思はありませんから、これで、やめておきます。
#66
○委員長(佐藤尚武君) ほかに質疑のある方はございませんか。
#67
○高良とみ君 ちよつと岡野さんに伺いたいのですが、先ほどドイツのお話も親しく御覧になつた御報告があつたか知れませんが、ドイツがアメリカからもらつておる今までの援助額……、
#68
○公述人(岡野保次郎君) 東ドイツですか。
#69
○高良とみ君 西ドイツです。西ドイツが今朝もほかの方からお話があつた、日本でもよく言いますが東ドイツの対照があり比較があつてそういうことが特別多いか知れませんが、大体援助額の総額みたようなもの、或いはアメリカとの経済的援助の額などについて御存じでございましようか、
#70
○公述人(岡野保次郎君) 西ドイツは私は先ほど触れませんから……。触れたつもりはないのでありまして私の参りましたときには講和条約の問題にも全然まだ注しておらないときでありますので、従いましてドイツのその当時と日本との比較というようなことは、比較にならなかつた時期に私は参りました。一昨年でありますから……。
#71
○羽生三七君 ちよつと高良さんに私が御参考になればと思つて申しますが、西ドイツはマーシャル・プラン、MAS援助を含めて終戦以来の総額三十六億万ドルであります。
#72
○高良とみ君 それからもう一つ岡野さんにお伺いしたいのですが、先ほど例にお出しになりましたスウエーデンやスイスのことでありますが、私どもも誠に学ぶべきことが多い国だと思います。両方ともなかなか工業も盛んですし、又社会保障は徹底的にできております。スイスはそれほどでないですが……。併しこれらの勢力の境界線にいる国はヨーロツパ軍、或いはマーシヤル・プランなどに対しても非常に警戒的でありまして、先ほどのお話の、その政治的な社会的な保障と、それからアメリカとの経済的な結付きについてスイス及びスウエーデンはどういうふうに御覧になりましたか。その点をお伺いしたい。
#73
○公述人(岡野保次郎君) スウエーデンのドクター・リンドハーベルという人の話だつたのですが、これは自分の国はカルチユアが非常に高い。そうして我々の国で一番重点を置いているのは、米ソの争いの中に如何にして介入しないかということと、人口をどうして殖やさないかということに非常に苦心をしている。従つてアメリカに世話にならずにできるだけはやりたい。併し今幾ら世話になつているかは知りませんが、これも先ほど申上げました止むを得ざる悪、望ましくないけれども止むを得ないというようなことで相当の援助を受けているはずです。私は数字は記憶しておりませんが、相当の援助を受けているように了解して参りました。
#74
○高良とみ君 その点で国連の統計などを見ますと、やはり国民の生活水準の高いのはむしろスイスが一番高く、スイス、スウエーデン共に高いのでありまして、ときに統計のとり方によりますとアメリカよりも高いことがある。そういう国ですから、そうして又国策が永世中立であるとか、或いは米ソの両方に介入しないという考えから、私は経済的な援助をああいうボーダーラインにある国がアメリカから受けているというふうに思えないのでございますが、勿論その国自身として、この前の世界大戦にも割合に中立であり、多少或いは影響を受けましたけれども。破壊を受けたことが少い。そういう意味で止むを得ざる悪でもこういうものを受けない、人口を減らしてでも受けないようにしているのではないかというその苦心のあるところを御覧になりましたでしようか。
#75
○公述人(岡野保次郎君) それは確かにこの目で見て参りました。ただ併しそれは今もこちらの方の申されたように国の富力が違うのであります。ですから世話にならないでできるわけです。ところが日本はこれはもう今孤立して行つたらば、到底現在の状況では、粗野な言葉で言うと何ができるか。日本だけの力で……、然らば何もできないという利度のもので、孤立して行くか、行かないかということが問題じやないかと思うのであります。
#76
○高良とみ君 それでもう一つ財界の方に伺いたいことは、いろいろ外交上のこと、或いは軍事上のことは別にいたしましても、日本の経済が朝鮮特需がなくなつたために、もうあの特需に依存しておつたがために本当に切替えて、日本が敗戦国としての真面目に、政府も民間も或いは国民全般も自粛すべきものをしないで放漫な特需の輸出に依存していた、殊にその業界方面では特需というものに依存なすつたという形が今日を、もたらしたとしたならば、それで今日もこうまで貧乏になつてしまつたのでは、国民と共に本当に翻つて自分の運命を顧みることよりも、いつそのこと安き遂について、アメリカが向うも望み、こちらも望むところに、金持が金を出してくれようというのだから、これを拒むことはないじやないかという、こういう財界のお考えであり、又重工業方面では、これは失礼なことになるかも知れませんが、これは大いに軍需と共に多々弁ずるというようなお考えであるかという点ですね、多分そうだろうと私は推察しますが……。
#77
○公述人(岡野保次郎君) それはむしろ違います。もらうならただだから、それでもらおうというような考えでは私は毛頭ないつもりであります。併し日本の戦後の各会社のプライベートの問題を取上げましても、銀行から金を借りなければこれは今到底やつていけない。これは永久に借りようと思つている会社はどこもないと思うのです。だけど今自分の金だけでやろうとしたならば、大部分は借金でありますから……、それで一時とにかくそういうようなものがなければ殆んど起ち上ることも困難である。そういう意味から望ましからん金を借りておるだろうと思うのであります。私その会社の一人一人に聞いたわけではありませんが……。
#78
○高良とみ君 大変に立入つたお話でありますが、私もスイスのいろいろなエリコンとか、そういう業界の人、或いはアメリカの鉄鋼界などの方の意見を開いたことがありますが、この軍需産業に主力が置かれるというようなことの危険は、ああいう工業の進んだ国でも避けがたい。そしてもつと民需を満たしてから軍需の方面へということはよく大統領の演説なんかにございますね。それでこの日本よりも貧乏な東南アジアを抱えておる日本としては、鉄道あり、鉱山の開発あり、或いは織物の機械から本当に簡単な日用品の鉄、いろいろな重工業が基礎的に開発しなければならない仕事が多いだろうと思うのでありますが、そういう方面に後日本が出て行くために、今度のMSAとはどういう関係があると思いますか。大砲とか武器とか域外買付というようなことでなしに、そういうふうな面を東南アジア方面や、アジア諸国が歓迎するというお見通しでありましようか。或いは軍需品の、特需の域外買付のほうが多くなつて行くというお見通しでありましようか。
#79
○公述人(岡野保次郎君) それは私の考えでは、南のほうの国の軍需を満すというのは、日本がこれを助けてやつて、そうして日本が盟主となつてやるというような考えでは毛頭ないのであります。日本が自立するために、ドルとかそういうふうなものを稼ぐためには、南のほうに日本の利益の範囲内において両得としてやつて行こう。それから先ほどの民需を先ず満してそうして然る後に軍需の費用に行く。これは非常に望ましいことです。それが現実に可能であれば……。ところが日本の現在では両方を一緒にやらなければ現実上立つて行かないじやないか。アメリカの援助も得て軍需もやる、技術を挙げて……。そうして日本のものを安くして金を借りて、そして一面軍需のほうも盛んにするし、而も軍需の割合は先ほど申上げましたように、パーセンテージから言うと極めて微々たるものであります。併しそれがなしに、日本が民需だけでアメリカとは手を切る。こういうことになつたら、一体どういうふうになるのであろか。民需すら私は満たせないよう現実が現われて来やしないかと思う。日本がドルの不足で悩んでおる。それで日本自身の経済がどういうふうになるものか……、だからして、これをやつてから、然るのちに軍需に、防衛力に行くんだ。軍需というと語弊がありますが、そういう余裕が日本にありや否や。その両方をやつて行くんでなければ、日本というものはその前に、民需をやつて、防衛力に行こうとするその民需の時代に、もう望ましからざる結果が目の前に出て来やせんか、こういうふうに思うのです。それから南洋のほうは、決して南洋を助けてやるという一方的な考えではなくて、日本が立ち行くためには南洋諸国にもできるだけ合理化をして安くしてやる、それで日本が立ち行くためにこれと共同をして、協力をしてやる。それから日本の現状が哀れな、こういうことになつた、これが過去の失政の結果であるというようなことは、これは議論をしましても、過去のことでありますから、それはむしろ私は触れたくないので、あります。
#80
○高良とみ君 わかりました。
 もう一つ大内先生にお伺いしたいのですが、財界方面から伺うと、MSAがカンフル注射である、先ほども御指摘もあつたように、本当に国民がその気になつておらないような今日で、まあ今も気迷いだと思うのですが、そのカンフル注射は、ほかの外交、軍需のほうを別にしても、そして今岡野さんが言われたように、コストを下げる効果があるかどうか、これだけ危篤状態になつておるところにカンフル注射をして、そして熱を下げることが、日本のコストを下げることができるか。或いはまあ軍需工業によつて、なお吊り上つて行くようなことになるか、その姿が予想されるかということを経済上からお示しを願いたいと思います。
#81
○公述人(大内兵衞君) お答えいたします。過去における数年間の日本のいわゆる特需というのは、平均いたしますと、狭い意味の特需は一億ドルです。それから広く一般的に軍需その他を合せますと八億ドルくらいになります。これから先の見込みでありますが、これはやはり八億ドルということ、合計して八億ドルということがアメリカ側から言われておりますけれども、そのうちではつきりと特需として、特需じやないけれども、今度のMSAとして来るのはおよそ一億ドルであります。そういたしまして、八億ドルが十分に維持されるかどうかということは十分にはわかりませんです。併しいずれにいたしましても、日本の経済界の現在の事情におきましては、品物にもよりますけれども、五割、或いは四割、或いは三割、或いは二割、品物によつていろいろ違いますけれども、外国のマーケットにおいて、日本に開かれておるマーケットにおける商品と比較いたしますと、日本の商品のコストはそのくらい高い程度になつております。で、それを何割ぐらい下げたならば競争力を持ち得るかということは、これはなかなかわかりませんので、いろいろな条件にかかつておりますのですが、とにかく平均して一割なり、二割なり下げなければならないということが、今の日本の財界、経済界全体の基本的な問題であつて、政府の政策も又そのことを目標といたしておるのでありますけれども、そこでその目的が適せられない限りは日本の経済はよくならない。悪くなる一方であるということは疑いない。そこで問題は、軍需生産だけが、いわゆる広い意味における特需よりはもつと狭い意味における軍需生産だけが盛んになつて来る。或いは従来より幾分盛んになると思うのでありますが、盛んになつたときに、その問題にどういう答えができるかということになりますが、これは非常に経済の広い問題になりますから、今岡野さんから申されたような意味において、日本におきましては軍需産業がすべての産業の技術的な進歩の基礎であるということは、少くとも過去においてあつたということ、将来も若しそういうことをやれば、よほどその点があるということは、これは疑いない事実だと思いますが、併しそれで以てほかの部面にそれが浸透してれそしてそれが直ちによくなるというようなことは、これは非常に長い時間がかかることであろうと考えます。そこで、つまり一般物価がそこから下つて来る、合理化が行われて来るとかいうようなことは、非常に長い将来のことを考えますと、そういう点もありますけれども、差当り数年間のことを考えますと、なかなかそこまでは行かないのであります。反対に、軍需産業がそういうふうに起りますと、やはり日本の小さい経済の下において、いわゆる底の浅い経済の下においては、折角合理化が、物価のほうにおける、或いはコストのはうにおける合理化が進もうとしておるとき、即ちデフレーシヨンの政策が効果を持とうとしておるときに、恐らくは或る部分では反対の効果を持つのではないか、つまり特需、今度の形は少し違いますけれども、特需的な形が又あつて、再び特需の事情ができて来る。そこのほうからインフレーシヨンが起る可能性があるのではないか。
 要するに、一方においては、政府は確かにデフレーシヨンの政策をとつておりますけれども、他方においてはMSAそれ自体の中にインフレーシヨンの傾向があるというふうに言つていいと思うのです。どのくらいになるかということは、これはとても我々の想像し、又は簡単に計算し得る範囲ではありません。
#82
○佐多忠隆君 先ほど岡野さんのお話にもあつたのですが、日本の現在置かれておる情勢からして、バターと大砲と両方に国力を配分して行かなければならんのだというれ話でしたが、これはもう政府なんかもそういうあれから現在の予算なり国策を立てておると思うのですが、そのバターと大砲が両立されるものなのかどうか、それが現在の世界的な情勢として、特に財政の問題としてどういうふうな形勢になつておるのか、日本では特にそれをどう判定したらいいのか、大内総長に御説明を願いたいと思います。
#83
○公述人(大内兵衞君) バターと大砲ですか、大砲とバターですか、それは何でもいいですが、(笑声)日本では大砲、或いは特車ですかね。特車と米の飯かとも思いますけれども、それはどちらでもよろしうございますが、それは日本の歴史、及び世界の歴史から申しまして、又経済の本質から申しまして、決して両立しないものであります。と申しますのは、産業家からみると、或いは生産に従事しておる、特にそれらの生産に従事しておる人から見ると、それは両立するように見えるのであります。と申しますのは、特車を作り、大砲を作つても、労働者を養い、且つ大きな産業ができ利益を上るということになるのであります。又事実そうには違いありませんから、その面を見ますと、確かにそれをやることは米を作る産業と、或いは食糧品を作る産業と同じであるというふうに見える。その面は全く同じでありますが、併し国民経済全体から申しますと、軍事費が膨脹いたしまして、軍事産業が全体の五分の一から今度は四分の一になり、三分の一になりますと、それだけほかの産業の部分が減るわけです。つまりそういう意味においては両立しないのでありまして、軍需産業というものは、作つたものを誰も食べることもできないのであります。のみならず、その軍需産業で作つたものが実際に役立つときは戦争でありまして、そのときは従来の五分の一は必ず国民経済の五分の三を占める、或いは五分の四を占めることになる。或いは三分一であつたならば、これは日本の過去において、様御承知の通り、全国民経済の生産力を挙げてもまだマイナスになる。つまりいろいろな借金の形においてやつても食糧生産は全然できないという形になるのであります。それらの産業でできたものはすべて敵国を破壊するのみならず、必ずそれと同じ程度に近いような意味において自国を破壊するということが起るのであります。ですから、つまり我々の言葉で言えば、それはいわゆる不生産的産業でありまして、資本家及び事業家にとつては生産的産業でありますが、国民経済全体から言えば不生産的産業であつて、その部分が大きくなればなるほど、国民経済的な意味、国民的な意味における生産力は減ると、こういうふうに解していいと思います。つまり両立しない。それは逆にこういう説があります。これは皆様に特にお答えしなくてもいいのですけれども、軍事力は生産的であるかどうか、殊に軍需産業は生産的であるかどうかということは、この経済学の二百年以来の基本問題でありまして、何度も論じられておりますが、併しそれは軍事力がほかの産業を育成すると共に、戦争によつて必ず勝利を得るということがあつたときに、その結果を計算したときに、或る場合においてそれはその国にとつて利益であつたという事実が過去においてたくさんあるのであります。そういう例で説明いたしますと、例えば、十九世紀後半のドイツにおいてはそういう学説が勝利を得ておりましたし、又そう信じられておりましたが、一般的に言えば、そういうことは言えないと思います。
#84
○公述人(岡野保次郎君) 先ほど私の申上げましたのは、少し誤解をされておるように思われますから……。バターと大砲の問題は私から出した問題ではないのですが、バターと大砲の問題を、私はこれはどちらが大事か、こういうふうな意味に言う考えは毛頭ないのでありまして、ただ私の申しましたのは、これは現実の世界的な姿を基にして、非常にうまいパンと相手を脅威するような大砲という意味じやなくて、国力の許す範囲において、もつとつつ込んで行けば、孤立をしないで、できるだけ両立するような範囲内においてこれをやる世界の情勢じやないかというような意味に申上げたつもりなのであります。例えば、日本が然らば協力も何もせずに孤立して行つた場合に、先ほどもちよつと申上げたのでありますが、食糧問題というのは、これは実に日本のシリアスな問題であります、人口問題と一緒に。人口問題と関連するのであります。ところが一朝望ましからざる重大事件が世界のどこかに起きた場合には、これは若し協力も何もなしに孤立するということであつたら、そうでなくて、も各国は自分の国のことその他で忙しいですから、引揚げる船は多いでしよう。併し若し孤立というような場合があつたらこれは全然引揚げてしまうだろう。大砲ばかりじやない。船も又そういう意味から持たなければいけない。船が今の状況であつたならば日本人の大部分は餓死します。これは確かです。食糧だけを運ぼうとしても、今の船でほかの必需品をやつておつたならば、これは外航船が百五十万トンや二百万トンじや到底足りない、食糧ばかりでも。これは全部でありません。相当戦時中の困苦欠乏に耐えた程度以上に遮断されてしまうと思う。餓死する人が相当に多くなるだろうと思う。それは勿論いもの葉も食べますよ。そういう意味で、やはり手を握つて行くことは止むを得ざる悪であるから、そういう場合のためにもやはりどこかと手を握つて行くということは、日本国民として生きるためには必要ではないか。
#85
○佐多忠隆君 それでは今のお話に更に関連するのですが、二大陣営の対立の中にあつて、孤立しないたあに今のような政策が必要であるというような岡野さんのお考かと思うのですが、そこで私お尋ねしたいのは、二大陣営の対立という対立の仕方が今後更に激化するというふうにお考えになるか。そうでなくて、このままがずつと続く、或いは更に国際緊張は逐次緩和して行くんだというふうに先をお見通しになるか。若し後者であるとすれば、緩和して行くというようなことになれば孤立するとか等々の危険性を考える必要はなくて、むしろ現在のヨーロッパ、特にイギリス、フランスあたりでも言つておるような、東西貿易というような形で、お互いに経済交流をやるということのほうが孤立状態から脱却することができることになるのですが、世界情勢はそういう方向に進んでおると見なければならないのじやないかと思うのですが、その辺は岡野さんはどういうようにお考えでしようか。
#86
○公述人(岡野保次郎君) 私はわかりません。恐らくこれは誰もわからんと思います。私はむしろ備えのある国が、例えばソヴイエトだけが平和を求めるのじやないと同じように、やはり武装的平和というような形で戦争はないと思います。暫らくはないと思うが、永久にないかというと、そういうようなことはわかりません。だけれども、私は先ほどの大砲とバターもやはりできるだけの、両立させ方と同じように、これがないと判断するから、将来はそのときになかつた場合には損をするということで以て何にもやらないというようなことは、むしろバランス・オブ・パワーの平和を保ち得るものを、じやないほうに或いは行きやしないか。そういうような意味で、やはり若し万々一あつた場合にも、日本の国民が将来困らないような、或いは非常に耐乏の生活でも、何とか自由国家群のほうにおつて、そして持ちこたえ得るような謀をやつて行くということがこの際大事ではないかと思います。只今鉄砲なんというものは、作らずにすめば、一番作らないほうがいいと思う。併しアメリカが協力してやるという最小限の範囲はこの際やつておいたほうが、国の将来のために賢明な策ではないかというふうな考え方を持つておる。だからやり方だと思う。
#87
○佐多忠隆君 もう一つ岡野さんにお尋ねしますが、日本の工業技術水準を高めるためにも、今度のMSA援助による日米の協力というか、そういうものが非常に有効なんたが、というお話ですが、これは今朝もそういうお話を伺つたんですが、一体軍需産業と関連した工業水準の引上というのは、特別な部門なり何なりについて、むしろ病的にそういう部門だけが工業水準が上る。産業全体としてはむしろそのことがいびつになつて、或いは全体の工業水準なり産業水準というものがむしろマイナスになるのじやないかというような気がするのですが、その点はどうか。特に例えばスイスの工業技術水準が相当高いというような問題は、これは軍需産業とは無関係のものとして相当高い水準を持つているのだけれども、それから戦後のドイツの工業水準が非常に高く、非常に新らしい形で復興しておるということは、必ずしも軍需産業の関連においてでなしに高くなつているじやないか。そういう形で輸出その他は非常に伸長して来ておるという状況じやないか。特にイギリスの場合でも、マーシヤルプラン、その後のMSA援助等々で軍需品に偏重して行つて経済的に拡張になつたために、輸出が抑えられちやつて、むしろそういうコストが上る等々のことで輸出をチエツクした。ところがその政策を変えて行かなければならんというので、この一、二年変えて来つつあると思います。そういうことの関連においてはマイナスになるのではないかと思います。
#88
○公述人(岡野保次郎君) それは私は情けないと思います。軍需産業というようなものは、これは勿論あります。ありますが、これが技術というものは軍需産業に対してだけ用いられて、ほかのものには応用できない、その技術が応用で、ないというものでない。例えばスイスではオエリコンという会社は、それは共益の有名なる会社です。あの国は戦いをしない国である。それが如何にしてとにかくあの国の技術的水準を上げたか、それが民需にどれだけ影響したかというようなこと、それが一つ。それからもう一つは、例えばあの朝鮮事変というものがなかつたらどうか、一体どんなものでありましようか。これは軍需生産というものは皆さんはどういうふうに考えておられるか知りませんが、鉄砲を供給するという、そういうものだけではない。服も供給しております。民需も相当たくさん……、民需に用いられた機械をそのまま軍需としてやつております。それであれが日本の産業にとつて戦後なかつたとしたならば、日本はどういうふうな状態になつたかということを考えて、その後の民需の発達のために、民需のコストも、非常に年需のものだけが安くなつて、ほかのものがもつとも安くならないのではありません。これは全部のコストがが安くなつた。そういうわけでありますから、それは技術的な方面ばかりではない、それ以上に経済的でもあれは日本の助け船であつたと思う。朝鮮事変というものはあの日本の窮乏のどん底のところで、それはあれは勿論害もあります、インフレーシヨンというような……。併しあれが全然なかつたとしたならば、これは望ましいことではないのでありますよ。私はあれを礼賛するという意味ではなくして、確かにあれが日本の産業経済の助け船になつたということは、これは否めないのではないか。それから軍需の技術は民需の技術と孤立しておるものじやありません。
#89
○佐多忠隆君 もう一つ、これは大内先生にお尋ねしたいのですが、大内先生のお話の冒頭にあつたように、日本は現在非常に貧窮の国なんです。相当遠い将来を考えても、本来日本はむしろ弱小国の範疇の運命は免れないだろう。そういう意味で中立政策のほうがいいのだし、或いは非武装のほうがいいのじやないかというお考えじやないかと思いますが、その辺はどうなんですか。
#90
○公述人(大内兵衞君) お答えいたします。それは時間の問題が非常に重要なのでありまして、非常に遠い将来のことを考えまして、八千四百万の国民と、これほどまでの知識の程度と、日本人の自然的な何と申しますか、人種の相当な優秀性から見れば、日本は少くとも世界の一等国にはならなくても、二等国には必ずなり得ると固く信じておりますけれども、併しそれになる道におきましては、将来五年なり或いは数十年なりということが大切なのでありまして、そのときにつまり如何にして資本を十分に蓄積するかということが問題になると思うのです。その資本を蓄積する方法は今のところやはり外国貿易を十分にするほかないと考えるわけです。そういうことでありますと、どこの国からも恐れを抱かれないような、又不正を日本が自覚している国であるということを理解されることが先ず以て今の段階では必要である。それなくしては不可能であるというのが私の基本的な考えです。然るにかかわらず今回のことはまさにそれと反対の方向に行こうとするものであつて、実に日本が世界の一番強力な、武力的に強力な国と手をとつて、その世界的な一つの脅威のその一翼として作るということは、これは日本のためにならないというふうに考えたのです。
#91
○加藤シヅエ君 今の大内先生の基本的なお立場はよく理解いたしますが、現実の問題といたしまして、まあ例えは社会党のような政党が今政権をとつておりまして、このMSAを多数によつて承認しないというようなことがまあ若し起つたといたしますと、今の現段階においてそういうような場合に非常にアメリカの不興を買うわけだと思うのですけれども、それでアメリカはいつまでも表面はとにかく日本が希望するからこういうふうにするのだということをいつも言つておりますので、日本が希望しないということになれば、アメリカはいろいろの意味の援助の手を引くということになる。殊に今までこの現段階において全然アメリカから非常に不興を買うというようなことになつたときに、経済的にどういう事態になるかというようなことを一般に非常に心配する人があるのですが、そういうことに対してどうぞ。
#92
○公述人(大内兵衞君) それは確かにその心配はあります。それから相当な不興は覚悟をしなければならんと思います。それは今までの政策に対する一つの転換でありますから、そういうことは必ず起るということはこれは否定できないと思います。併しそれと逆の面、つまり日本はそれほどまでの犠牲を、払つても世界に立つて平和を促進するような方向、即ち米ソの対立を成るべく緩和するような方向への先頭を切る国であるということがわかる。又我我が非常な損害を与えた中国又その他東南アジアの諸国に対して再び戦争、武器をとるという覚悟がないのだということが証明されれば、貿易も盛んになり、日本の経済力は拡大する。そして、又日本に対して好意を持つ理由になる。そこのところは無論政策の転換としては、一つの投機的な部分がないわけには行かないと思いますけれども、そのことを恐れておつては日本が先ほど申上げたような意味における不幸な運命を救うことはできない、そういうふうに思つております。
#93
○梶原茂嘉君 大内先生に一つお伺いしたいのでありますが、先ほどお話のニユー・ルツクと今回の日本の防衛との関連でありますが、お話のようにまあ金持から学資をもらつているのでありましようが、そういう形になるわけですけれども、新らしくこれから学資をもらつてどうこうという前に、日米安全保障条約によつてすでに日本というものは丸抱えの立場に置かれているのじやないか。現実は将来両陣営対立の場合に巻き込まれないということは、今MSAを受けるとか受けないとかいう前に、すでにあの安保条約によつてはつきりと日本というものは丸抱えの私は形に置かれておるのじやないか、従つてそれがすでにもう巻き込まれてしまつた姿をそのしまま現わしているのじやないか、殊に先ほどお話のように、新らしいニユー・ルツクの向うの戦略によつて、必然的に日本というものはアメリカ陣営の一つの東洋における有力なる基地になつておる、それが安保条約によつてギヤランテイーされている。これまで日本には何ら防衛力がなくて全部それに丸々依存しておつたといいますか、委せきりになつておつた。せめて経済が優秀ならば、少しでも一つ自分たちの力を中心にして防衛力を養成して行く、そして安保条約で丸抱えになつておる段階から少しでも独立の方向に進んで行くという一つの考え方があつていいじやなかろうかという点なんですけれどもね。
#94
○公述人(大内兵衞君) わかりました。
#95
○梶原茂嘉君 極めて素朴な考え方ですが……。
#96
○公述人(大内兵衞君) いえ、いえ、素朴な考え方ではありません。まさにその通りと私も思います。ですから問題は、日本の政治の問題としてはサンフランシスコ条約それ自身が国民の意思に反しないかどうか、又日本の将来のためになることであつたかどうかということにやはり基本はあると思います。私は無論あれは誤りであつたということを確信いたしております。それが第一の段階、それから第二の段階は、その次においても私MSAという具体的な問題につきましては、この内容的にも又形式的にも、日本に反対し得る余地は条約上も許されておるというふうに考えております。だからそういう不幸な状態にあつても、若し日本が日本国民及び日本の政治がそういう方向に進まなければならんといたしますと、先ほども問題にされましたような、一時的な不利益は止むを得ないが、ここが踏切り時ではないかというふうに考えるわけです。これが若しだんだんと深くなりますと、ますます不幸が重なるということになつて、日本の歴史はこれによつて決定される。而も不幸な形において決定されるというふうに考えます。そこで、併しそれではその場合に軍事力を或る程度必要とするということを前提といたしまして考えますと、その問題は非常に重要でありますが、この軍事力というものは一国の独立ということの一番基本の問題であります。世界の歴史の上においても、又日本の歴史の戦国の時代、その他徳川の時代、すべての時代を通じましても、軍事力を持つということが独立国ということの問題であります。併しそれは同じ問題でありますから、だから或る意味における軍事力を持つということが国としての要請であることは疑いないのですけれども、その軍事カを自分の判断と自分の力によつて持つか、他人の判断と他人の力によつて持つかということが、即ち独立と非独立とを決すると同じ意味ですけれども、裏から言うとそういうことになる。だからいやしくも日本の独立な希望すると言いながら、軍事力において外国の支配を受けるということはこれは自己矛盾でございます。そういう意味においては、今のようなことでお話のような点は確かにありまするけれども、一歩泥沼に人りかけたら、もつと入つたほうがいいのじやないかというような議論になると思うのです。そこがつまり大切な点ではないかと、そういうふうに考えるのでございます。
#97
○團伊能君 岡野さんに一つお伺いしたいと思いますが、これは非常な特殊な問題で、非常に狭い範囲の問題でございますが、このMSAによりまして、域外買付ばかりでなく一千万ドルの範囲において日本の軍需生産を援助する、これを日本に与える、日本の軍需工業の生産にそれを使うというような提案がございます。それに対する日本の工業なり経済界における受入態勢の問題でありますが、この受入れに当りまして、今朝もお話がございましたが、今日いろいろな工業権、パテントのようなものは、何と申しましても日本の工業界か非常に幼稚であり、多年の空白がありましたために、今日進歩している近代兵器に応用あれている各種の工業権を獲得するに非常な高価なパテソト料を払わなければならんという現実の状態であります。或るものは一億、更にそれを越すというような状態で、到底このパテントの問題を考えただけで、これらの防衛生産というものを受入れることが非常に困難な場合がいろいろ想像されます。そのためにこの条約の第四条において然るべきパテントのアジヤストメントをしようということがありますが、併し今日この防衛生産を受入れるについて、すでに各種の企業体でおのおの自由に非常な運動をされて、このパテントをすでに各外国の工業家との間に契約を結んでおつたのでありまして、実は生産能力が疑わしいかたでもパテントは押えているというような形のかたもあるかと思いますが、これらのことがこの防衛生産を受入れるについて先ずぶつかる非常な大きな困難点と思いますので、これについてこの経済界が自主的に、こういうパテントいろいろ独占し合つている形に対する一つの調整に当られて、これがどういう何かそこに問題を除去する方法がありますか、どうですか、その点のお答えを頂きたいと思います。
#98
○公述人(岡野保次郎君) このパテントの問題でございますが、これはこの協定にも便宜を図るとこういうふうに書いてありますね。それから日本のほうで非常にたくさんのかたが知らないかたがおられるのでありますが、ここのかたは御存じと思いますが、アメリカの軍需機械その他非常に大事なものは、アメリカは援助して研究をさせます。それからこれは勿論軍の所有になつてしまいます。それから若し援助をせずに、突発的に非常なパテントがときとして……、それが非常に軍事上必要な場合には大抵買上げてしまつております。ですから日本にときどき変なものが来まして、先だつてもミスタ・リベンソンが来まして、ロケツト弾のパテントを買わんかと言つて来たのです。国際ホナルで私は会つたのですが、それで馬鹿に高いようなことを、言うのだけれども、私の了解するにはこの種類のパテントは恐らくこれはオーナーシツプ、所有権は陸軍か海軍かにおるはずだ。それで、だからしてアメリカの陸海軍はパテントを持つている者に造らせますが、それが気に入らなければすぐ他のメーカーに造らせる権利を保有しております。併しこれに造らせていると経済ができます。経験がなければすぐに造られないような程度の経験を持つておるようなふうな場合にそれを買うというようなことになるわけでございます、大部分の場合は……。従いまして、メーカーとメーカーとで以て日本のメーカーが向うのそれを造つておる会社と折衝をやりましたとしましたらば、これは軍事上の目的に使われる機械その他のものなら必ずこれは向うの人は隠して、政府の許可を受けなければならん、軍事上のものだからと言つておりますが、その大部分の水源はパテントを自分が持つていないのです。ですから総合しました私の結論は、このMSAの協定によつて向うの援助を得る、こういうことになるとすれば、持つている人ができるだけ援助を与えよう。だからして場合によるとこれは非常に虫のいい考え方ですが、今造つているメーカーがいやだと言つても、こちらに許すことすらもできるようになり得るチヤンスがあるのではないか、これは間違いないと思います。大体陸海軍の非常に優秀な。パテントは……。アメリカはパテントは少いのでございます、大体において……。なぜかというと各会社が研究費をインステイチユートに出しまして、ここで変なことを申上げて甚だ相済みませんが、それでこれができますと、成功しますと、そのインステイチユートは一般に公開する場合が多いのでございます。そうすれば公開事実としてそれはパテントが成立たないのであります。その代り頼んだメーカーには一番先の優先権はその人に与えておいて、頼まれたところへ便宜を与えてくれます。
 それからもう一つ速記のかたにお願いしたいと思いますが、先ほど止むを得ざる悪というような、そういうふうに申上げましたのは、アメリカの援助は一時止むを得ざる悪としてというのは、これはどこまでも私の言うのは、永久にアメリカの援助を得るという考えを基礎にして申上げておるのではございませんから……。又アメリカでも早く手を引きたい。日本が独立するようになつたらば、独上し得るように技術的にも経済的にもなれば、できるだけ早い機会にこつちが独立するほうがいい、望ましい。ただ併し今すぐにはそれができ得ないから、それで技術的にも経済的にも援助を受ける、こういうような意味で申上げたつもりなんで、速記のところをそういうふうに訂正して頂きたいと思います。
#99
○委員長(佐藤尚武君) 速記は速記者だけで訂正するわけには参りませんから……。今おつしやつたような意味に訂正してもらいたいという意味ですね。
#100
○公述人(岡野保次郎君) そうでございます。
#101
○委員長(佐藤尚武君) 御希望なんですね。そういうふうに取計らいます。
#102
○公述人(岡野保次郎君) 向うも望んでおるのでございます。早く手を引きたい。こつちがひとり立ちできるようになりますれば……。今はひとり立ちできない。経済的にも技術的にも向うの便宜をもらつたほうが得ですから、従いまして大内君の言われたそのカンフル注射とか、そういうようなふうな、或いは一時的のもの、これはどこまでも一時的になるわけであります。それが死ぬか生きるかということなら、これはカンフル注射……、MSA協定がカンフル注射でありましても、これはやはりカンフル注射をやらないよりは、一時でもできるだけ早い機会にそれを脱却する。こういうような心構えで止むを得ずこれは賛成すべきじやないか。こういうような、元に還るわけであります。
#103
○團伊能君 先ほどの。パテントの問題についてもう一つ伺つておきたいのですが、皆さんのお見通しといたしまして、これは米軍、又は米国に関係しないヨーロツパの。パテント、その他の、自由にそれを日本が使用することができるか。又この武器に関しては、日本独特な武器を自由に使つて、日本の防御に当るということは許されると思われるのですが、その点のお見通し……。
#104
○公述人(岡野保次郎君) 現にドイツ或いはイギリスから今パテントを買つております。これをアメリカは何ら干渉できません。又ありませんでございます。ただ望ましいとか、そういうようなことで例えばイギリスの或る。パテントを買おうとした場合に、それならば自分のほうにこういうものがある、お前のほうは秘密で以てちつとも私のほうに公開せんじやないか、だからして止むを得ず一時の、これはアメリカのものより進んでいないのです。やはりこつちの受入態勢の基礎を作るためにもその。パテントでも買つたほうがいいのじやないかというので、一つには、これはちよつとここだけで……速記をはずして頂きたいのですが……。
#105
○委員長(佐藤尚武君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#106
○委員長(佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。
#107
○加藤シヅエ君 さつきの大内先生のお言葉にちよつと関連して……。さつき自分の国の自由にならないような軍隊を打つというようなことについての御意見をちよつと承わつたのでございますが、あのお言葉は国連の集団安全保障という問題とは矛盾するお考え方なんでございましようか。
#108
○公述人(大内兵衞君) それは形式論と実質論とがあると思います。形式的にそういうことはできないことになつているわけです。併し実質的に日本の経済がアメリカの経済に依存する程度が強くなりますと、例えばこの前の戦争のときでも、アメリカが日本の資本を凍結しましたために、日本は却つて戦争しなければならんような、又戦争するような意思を固めたというようになりましたように、例えばガソリンが一時にとまりますと、日本の産業はすぐに大変な打撃を受けますから、そのときは形式的にどういうようになつておりましても、そういうことが次々と、今は例は一つですけれども、起りますと、日本の意思は実質的にはアメリカの意思によつてきまる、そういうふうに必ずなるのです。
#109
○委員長(佐藤尚武君) それでは質疑も尽きたようでございますから、これで公聴会は散会いたします。
 公述人のかたがたに厚く御礼申上げます。有難うございました。
   午後四時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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