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1953/04/13 第19回国会 参議院 参議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第21号
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1953/04/13 第19回国会 参議院

参議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第21号

#1
第019回国会 外務委員会 第21号
昭和二十九年四月十三日(火曜日)
   午前十一時八分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     佐藤 尚武君
   理事
           團  伊能君
           佐多 忠隆君
           曾祢  益君
   委員
           西郷吉之助君
           杉原 荒太君
           宮澤 喜一君
           高良 とみ君
           中田 吉雄君
           羽生 三七君
           加藤シヅエ君
           鶴見 祐輔君
  国務大臣
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  政府委員
   法制局長官   佐藤 達夫君
   外務省欧米局長 土屋  隼君
   外務省条約局長 下田 武三君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       神田襄太郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○日本国とアメリカ合衆国との間の相
 互防衛援助協定の批准について承を
 求めるの件(内閣提出、衆議院送
 付)
○農産物の購入に関する日本国とアメ
 リカ合衆国との間の協定の締結につ
 いて承認を求めるの件(内閣従出、
 衆議院送付)
○経済的措置に関する日本国とアメリ
 カ合衆国との間の協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆
 議院送付)
○投資の保証に関する日本国とアメリ
 カ合衆国との間の協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆
 議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたします。外務大臣に対する質疑を続行いたします。
#3
○杉原荒太君 今日は私初めに法制局長官にお尋ねしたいと思います。政府を代表した法律上の見解についてお尋ねしたいと思います。
 二つありますが、先ず第一間のほうからお尋ねします。それはここには今でもたびたび問題にもなり、又なつたところでございますけれども、最後のしめくくりというような意味を以て更に明確にしておいて頂きたい。これはこの条約の今後の解釈上非常に大な点だと思いますからお尋ねするわけであります。その第一間と申しますのは、今度の防衛協定にいうところの防衛力というもの、それから憲法九条にいう陸海空軍の軍ということ、それから更にそれを分けてお尋ねするのですが、憲法九条にいう軍というもの、それからもう一つ憲法九条にいう戦力、それから政府がよく従来使つて来ておられるこの自衛力という観念、それから警察力というもの、警察力というものは余り使つておらないかも知れんが、そういうことは観念としてはあり得るんですが、そういうもののそれぞれの本質、まあ定義的なものですな、それと相互の区別、それから関連と、これを一つお聞きしておきたい。
#4
○政府委員(佐藤達夫君) 非常に根本的なむずかしい御質問だと思いますが、一応私どもの考えておりますところを申上げたいと思うのですが、最初に自衛力、防衛力、それから戦力と申しますか、そういう関係の関連について一応お答え申上げたいと思います。
 自衛力と防衛力という言葉は何にも今までの法制上には現われておらなかつたと思いますので、要するに社会通念に待つところが多いと思います。従いましてその間の区別が厳格にあるかどうか、これも疑わしいと思いますが、いずれも要するに国の安全と独立を守るという観念がその中核になつているものと思われます。その場合に、自衛と申しますれば、まあ日本が自衛権と言いますか、みずからの力で守るという気持を相当ニュアンスとして濃く打出している。防衛力という言葉も実体は大した変りはないと思いますけれども、まあみずから守るという気持の出方は薄い或いは軽いというような言い方が或いはできるかも知れません。併し結論においては私は余り大きな違いはないと考えております。そこで警察力という言葉とのつながりが出て参りますが、警察力も私はそれ自体を取上げて定義をいたしますれば、まあ国内の治安の維持ということを中心とした概念であろうと思います。その意味では自衛力、防衛力よりも非常に狭い観念であることは明らかだと思いますけれども、併し先ほど申しました自衛力というものの範疇の中には、やはり警察力というものも当然その一部として含まれているものと考えております。又防衛力につきましても、やはり内部の国内の治安の維持ができませんでは国の安全独立は保てないわけでございますから、防衛力という概念の中にはやはり警察力というものは入り得る。従つて自衛力、防衛力というものは警察力などをも含んだ非常に幅の広い言葉であるという結論になると思います。
 そこで今度は戦力というお言葉が出て参つたわけでございますが、戦力という言葉は、これは憲法九条第二項に出ている言葉でありまして、私どもは戦争遂行能力というふうにまあ言つておるわけであります。その意味で先はどの自衛力なり防衛力なりのつながりを考えてみますと、抽象的の観念上の問題といたしましては、先ほどの警察力と同じようにやはりこの戦力というようなことも自衛力、防衛力の中に入る。要するに自衛力、防衛力という言葉は、私は非常に広い観念であるように考えております。そこで陸海空軍というお言葉もございましたが、陸海空軍というものは、これは一つの実力組織であつて外国との戦争を主たる任務にするというようなもので、抽象的に言えばそういうものであることは申すまでもないことである、そういう観念から申しますと、先ほどの広い概念である自衛力、防衛力の中に勿論入るということになるように考えております。
#5
○杉原荒太君 今の御説明で自衛力と防衛力というものが、見る角度の重点の置き方が多少違うけれども、実質的には余り違わないように思われると、それからその自衛力や防衛力の中には、これは共に広い概念であつて警察力も含まれる、それから又更に戦力も含まれる、それから軍という観念も含まれる、こういうふうな御見解のように伺いました。それでもう一つ非常にむずかしいことではあると思いますけれども、政府がどう見ておられるかという点を承知したいためにお尋ねするんですが、その非常に広い概念である防衛力、自衛力というものの内容として警察力のほか軍というもの、戦力というものを含まれるという、そうすると政府のほうで見ておられるのは、戦力と軍との関係ですが、軍というものと戦力というものの関係はどういうふうに。
#6
○政府委員(佐藤達夫君) 先ほどは憲法の条文に即せずに軍ということを申上げたわけでございますが、憲法第九条第二項の「陸海空軍その他の戦力」ということの憲法上の解釈の問題となりますと、私どもの一貫して考えておりますところは、憲法第九条第二項の趣旨というものは、要するに戦争に用いられるような実力とそれの法律的の権利と申しますか、交戦者としての法律的の権利というものと、両方の面から保持を禁止しているというふうに考えるわけであります。そこでそういうふうに考えて参りますと「陸海空軍その他の戦力」という言葉は、要するに一つの重点を持つている。と言いますのは、今日における我が国の環境にと申しますか、いわゆる近代戦を遂行し得るようなそういう力、これは名目の如何を問わず持つこと許さないということがその趣旨であろうと思います。と申しますのは、この戦闘力というものは、例えば治安維持の目的と言いましたところで大きな内乱を想定して、こういう内乱のために備えるんだというならば、これは戦争用の戦闘力と実質的には私は違わないと思います。従いまして憲法の禁じているのは、治安維持の品的のためと言おうと、或いは外敵防禦のためと言おうと、その他の名品を持つて来ようと、およそレッテル或いは看板というようなものは問題にしていない。その実力そのものが恐るべき実力であるかどうかということに重点を置いているものと思います。従いまして、陸海空軍という言葉は上に出ておりますけれども、たまたま陸海空軍と名付けて、それが外敵防禦の任務を持つという以上は、どんな小さなものでもいけない。併し治安維持という看板を掲げているならば引当大きなものでもいいというような考え方は、私は憲法の趣旨としては貫き得ないものであると思います。従いましてあそこで言うのは戦力とは何かということで、客観的にその実力を評価してどの程度のものが許されるか、この程度のものは許されないということで、あるべきだと考えておりますからして、我々の今までとつております立場は、外敵の防禦或いは治安維持と言おうと何と言おうと、要するにこれこれの規模の力は。いけないということで一貫して考えておるわけです。
#7
○杉原荒太君 非常にむずかしい関心で、私も今よくお聞きしておつてもわかりにくいのでありますが、併し一応本問題はこれでやめておきますが、次の質問に移りたいと思います。
 もう一つ、これも法制局長官に政府の見て折られる純法律上の問題ですからお尋ねしておきたいと思います。それは自衛権ですが、これは自衛権をただ一般抽象的にこの自衛権をお尋ねするのじやなくして、その自衛権の主体が日本にある場合のことなんですが、この現在つまり国際法、条約、それから憲法等、要するに国際法的秩序、国内法的秩序、その両面からして今日本の置かれている地位からして、自衛権を考える場合ですが、この従来の伝統的なこの一般国際法によつて認められている自衛権というものと、それからもう一つは、これはもう国際法上の自衛権に違いないのだけれども、特に国連憲章で認められている自衛権というのは、又その範囲、発動の条件等が違つている。私がこと新らしく説明するまでもなく、一般国際法上の自衛権であつたならば、この現実の権利侵害というようなものでなくても、非常に切迫したその危険があるというときでも発動し得るということなんです。併し国連憲章の認めている自衛権というものはそういうものじやない。これはもう軍の危険があるというときだけじやあれは発動を認められていない。それだけつまり範囲が、発動条件が厳格になつている。而もそうして一般国際法上の自衛権だつたらば必ずしも武力攻撃に限らない。そのはかの危険があつた場合でも認められているけれども、国連憲章で認めているのは、外国からの武力攻撃があつた、つまりその危険が武力攻撃に限定されており、而もそれがすでに発生してしまつた場合にのみ認められている。そういうふうに範囲は違つている。それから更に又もう少し細かく言うと、別の点から見まして、一般国際上の自衛権だつたら、それに始動したのちにその自衛行為なるものがいつになつたら中止せにやならんというような、特に法的な限界はないけれども、国連憲章に認めているのは、はつきりした一つの、少くとも法律上、条約上そこに限定がある。安保理会でこの平和安全のために必要な措置をとるまでという限度がある。そういう点でまあ制限されている。それからこれは制限されたほうだけれども、もう一つ範囲がむしろ広いとすら認められる方面から言うと、一般国際法上ではいわゆる集団自衛という観念ははつきりは認められていなかつた。併しながらこの国連憲章による自衛権というものは、集団自衛権とははつきり観念づけられた、その点ではむしろ広い。そういうふうにつまり或る点では狭く、或る点では広いというふうに両者が違つているのだが、現在そうして而もその国連憲章の五十一条で認められた自衛権というものは、それをそのまま平和条約のほうに持つて来て、平和条約の五条で、つまり国連憲章の五十一条にいうその自衛権というものを日本に認めるということがはつきり規定してある。日本はつまりその自衛権を認められているという関係に立つているわけで、現在日本は一体そこでその自衛権の関係からして、日本はどういう地位に立つているかということです。一般国際法上にいうその自衛権を持つているというふうな現実にあるのか、或いは単に国連一年の認めている自衛権を持つているとしか言えないのか。併しただそれをそういうふうにだけ言つてしまつては問題の出し方が不精密で、もう一つの見方からすればつまり平和条約の関係国との関係においては、この平和条約にいう国連憲章の五十一条の自衛権を認められておるのだ、それ以外の国との関係は一般国際法上の自衛権を持つている、こういうかうに解する。これは非常に複雑になるのだが、その辺のところは併しこれは基本問題として非常に大半な点だと思うから政府はどういう見解をとつておられるかということです。
#8
○政府委員(佐藤達夫君) これは非常に率直に申上げてむずかしい問題だと思います。思いますけれども私どもが今まで考えておるところを申上げてむしろお教えを受けたいと思うわけでありまするが、この自衛権とは何ぞやということは私はこの国際条約ではつきり定義をしたものということは今の国連憲章以外には承知いたしておりませんし、文学者によつてもその人その人によつて私はニュアンスを持つて説明されていると思います。思いますが本来の自衛権というものはどういうことかということを厳格に考えてみますると、これには三つの条件があるように思つております。要するに第一には急迫不正な侵害が加られるということと、第二にその害悪をくいとめるために更にとるべき手段がないということと、それから第三にはそれをくいとめるための必要最少限度の手段をとる。これは恐らく実力手段であることが多いと思いますから、考えてみますと大体はその自衛権のあり方というものをむしろ前提にしてこれが書かれておるというふうにも諦めるのではないかと思うわけであります。即ち集団自衛というような他の方法というものがそこに出て来る場合には、固有の自衛権ということは更にとるべき方法というものが他の手段が出て来たわけでありますから、当然そこに引込まなければならないことは当り前のことで、但しむしろここで言つておりますのはそういう集団自衛の方法があるけれども、それが発動されるまでは固有の自衛権は害せられるものではないという表現から申しますと、むしろそういう意味の念のための規定のような形も見受けられるのでありまして、そういう意味から申しまして、この国連憲章の基礎として抱いている自衛権に付する観念というものは、私が今申上げました三つの原則に該当するものからそれであるとするならば、まさにそれを頭に置いて国連憲章はできているというような言い方もできるのではないかというふうに考えておるわけであります。
 そこで日本の場合においてどうかいうことになりますが、憲法の審議されました当時の帝国議会においても自衛権というものはこれはあらゆる国に固有の権能であつて、この憲法といえども決して放棄はしておらないということを政府として答弁いたしておりますし、又この憲法はガンジーの無抵抗主義をとるのかというような質問がたしか貴族院等で行われましたけれども、政府当局としてほガンジーが果して無抵抗主義であつたかどうかは疑わしいけれども、要するにこの憲法はその無抵抗主義をとるものではないということまでもお答えをしているいきさつがございますから、従いまして今日においても政府としては自衛権をこの憲法は否認してらない。而も自衛のための或る限度の措置というものは勿論可能であるというふうにずつと一貫して考えて来ているわけであります。ただ自衛のための手段ということについて戦力の否認ということはありますからして、これは或いは徹底した十分なる自衛手段にならないかも知れません。そういうことは別として観念的には今までに申上げたようになつているわけであります。
#9
○羽生三七君 今のお答えによりますと従来国際法上の通念としての自衛権の観念と、国連憲章で規定しているところの自衛権の概念とは同じものだというふうなお考えなんですか。それとも杉原委員が御質問になつたように、そうじやなくして今まではかなり範囲を広く考えていたが、国連憲章ではもつと限定的に、現実に武力攻撃が発生したときだけが問題なんだと、その非常に限定的な規定があるのだが、それは一体政府ではどうお考えになるのかという点だと思うのですが、これまでの外務大臣その他の御説明によつても、国際法上の通念としてはこれこれだからと言つて、すぐ国連の自衛権の問題より日本の自衛権の問題を論ぜられるのでありますが、そこには明瞭な区別がなければならない。その点をもう一遍どういうようにお考えになつておりますか。
#10
○政府委員(佐藤達夫君) 非常に厳密に私は考えておりましたからして、国連憲章に言つているところは、殆んど私の考えている純粋の自衛権というものと余り違つていないという気持が、先ほどのお答えに出ておつたように思いますけれども、この前提に申上げましたように、自衛権というものについては相当ゆとりのある考え方がされていることも又事実であります。と同時に又実際自衛行動と称せられる実力行使の場合には、多くは交戦権を持つている国が自衛行動として働きをされるわけでありますから、その自衛行動というものについては相当伸び伸びとした形の実力行動がなされているということも私は事実だと思います。ただ厳格にこれを考えてみました場合、なお且つ国連憲章の場合とどうだということを言われますならば、国連憲章においては文字上少くとも行使の要件というものについては、武力の攻撃があつた場合大いにそれがすでに発生している場合ということになつておりますようでありますからして、その意味で、この五十一条で取上げておりますような事態の下においては、それがはつきり限定されていると申上げてよろしいと思います。
#11
○杉原荒太君 少し別の方面からお尋ねしますが同じ問題ですけれども、御承知のようにこの国連憲章では先ず大原則としてはこの国際関係において武力の行使というのは否認している。違法だという大原則をとつている。ただそれの例外の場合を幾つか認めておる。その例外の一つとしていわゆる五十一条の自衛権の行使という場合、発動されるという場合が一つある。併しこれは例外であるからして、これの特に五十一条の発動というものは非常に厳格に解さなければならない。それだからして、この例えば国連憲章の加盟国であるアメリカならアメリカの例をとつてこれを考えてみますと、そうすると国連憲草に入つておるアメリカからすれば、この五十一条の、その他国連憲章一般の制約によつて、いわゆる予防戦争なんということをやるのは違反なんです。国連憲章に対して違反である。現実に五十一条によつてつまりもうソ連からの武力攻撃というものが発生してしまつたという場合でなければならん。そうでなければ国連憲章違反になる。それと同じようなことが、法理ですから、これをそのまま法理の場合の問題として考えるときに、日本の場合に当てはめて考えると、やはり今はそれと同じような制約を受けておるというふうに解すべきものか、その点どういうふうに。
#12
○政府委員(佐藤達夫君) 今のお言葉にありました予防戦争というようなこと、この概念というものが正確にはつかみ得ませんけれども、先ほど申しましたように、考え方から申しますと予防戦争的なものは少くとも当然に許されないことであるということであろうと思います。
#13
○杉原荒太君 一応この程度で。
#14
○高良とみ君 この国際法上からみまして、一つの国の軍事演習のようなものが近隣に影響を及ぼした場合には、これは補償の責に任ずるほかに、その両国の間で特別な交渉をしなければならないと考えるのですが、そういうことについての条件等についてお考えを伺いたいと思います。
#15
○政府委員(佐藤達夫君) ちよつと最初のお言葉が……。
#16
○高良とみ君 国際法の上からみまして、例えば新らしい兵器の発達によりまして現実にいえば水爆とか原爆とかいうふうなものの実験によつて、公海を航行中のよその船その他に被害を及ぼしたときに、国際法上からこれをどういうふうに大ずかみに考えておられるか、その点について先ず伺いたいと思います。
#17
○政府委員(佐藤達夫君) 最近起つておりますようないろいろな事態をカバーするような私は国際法上の原則というものは、まだ確立されていないというのが本当だろうという気がいたします。従いましてその間を律する原則といいますものは結局国際間の信義誠実の原則とでもいいましようか、或いは国際礼儀といいますか、そういうような原則によつて律するほかはないのではないかと考えておるわけであります。従いましてお互いに良識上考えられる措置を講ずべきことは、当然その点から要請されることでありますし、又良識上要請されるような措置をとるに欠けておつたというために被害を生じたという場合には、又それに対応する適切なる措置を講ずべき必要が出て来るというようなものではないか。極めて漠然とした気持でございますけれども、そういうことが原則ではないかと考えております。
 併しむしろこういう問題は、外務大臣のはうが却つて詳しく御承知と思いますので、私としてはその程度のことしかお答えできません。
   〔委員長退席、理事團伊能君着席〕
#18
○高良とみ君 それならばもう少し範囲を拡げましてペストとかコレラとかそういご病菌を持つた船が十分な措置をしないでいてこういうものを蔓延させた場合などを考えますと、やはり国連のNHOその他で、そういうことについては大分考慮していると思いますが、何か国際連合においてこういうことについて、水爆とわけは違いますけれども、何か共同の予防措置等についてはどういうふうに向いて行く方向でありましようか。
#19
○政府委員(佐藤達夫君) これは外務大臣からお答すべきことだと思つて御遠慮申上げておつたのでありますが、今のような場合については、まず私ども普通に最初に考えられますのは、相手国の非常な不注意によつてそういう非常なペスト、コレラというようなものの病菌のたくさん付いた貨物なり何なりが日本に持ち込まれるというような場合におきましては、もとより第一次的にはその国に対して反省を促し、注意を喚起する、或いは講義を申入れるというような段階が考えられるわけです。更に今お話になりましたような国際連合なり何なりの国際機関においてそれをどういうふうに取上げるべきか、或いは現在どういうふうに取り上げておるかという問題が続いて出て来ることであろうと思いますけれども、これはまさに外務大臣が詳しく或いは御説明せられるかも知れないと思うような種類の問題であるというふうに考えます。
#20
○高良とみ君 では外務大臣に、極めて客観的に、今度の水爆に限りませんが、国際的に小さくなつて来た世界でいろいろのものが蔓延して行くわけです。これに対して今までの国際法というものは非常に一国主義で、何らのそういう共同社会の保障というようなものについて考えておらないのか、或いは国連がそういうものをやるのにはどういうふうな世界法的な考え方の基礎があるということをお伺いしたいと思います。
#21
○国務大臣(岡崎勝男君) まだそういうものはできておらないようで、一般的に予防措置等については国連でも、或いは前の国際連盟でも研究はいたしておつたようでありますが、併し今確立されていると言えば、例えば一国においてそういうものを防ぐような検疫の厳重な措置を講ずるというようなことをやることが認められている。その他においては、法制局長官が言いましたように、過失によつて何か非常に他国に迷惑をかけたというようなものは、これは又交渉によつて補償その他の措置を相談することはあり得ましようけれども、世界法的なものというようなものは何もまだ存在していない状態であります。
#22
○高良とみ君 よくわかりました。ではこういう、ふうな世界的な科学の影響とか、或いは病気などもその一部でありましようが、これに似たようなやはり世界の生活を共同に支配して行くものに貿易があるわけなんです。お伺いしたいのは、日本はいつココムに加盟したのかということ、それからココムは秘密条項が多いように思うのでありますが、これは国民の前には示す理由はないのか、その点特に秘密協定であるかということですね。
#23
○国務大臣(岡崎勝男君) ココムに加わりましたのはちよつとはつきりしませんが過去一年ぐらい前であつたと思います。これは初めから日本が入る前から非常な秘密主義をとつておりまして、例えばココムという名前まで発表しないことになつておりました。最近はココムという名前だけは言うようになりましたが、中味は秘密になつてどこの国でも発表になつておりません。
#24
○高良とみ君 何か外国のほうの書類によると日本は一九五二年に加盟したということになるのですが、この秘密なものの内容を入つたときにも日本の議会はこれを了承しておつたのでしようか。そうして国民は知らなくてそういう協定に支配されておるのが現状だと了承して間違いございませんか。
#25
○国務大臣(岡崎勝男君) これは例えば協定を作つて入るというような問題でなくして、各国の行政府がお互いに話合つて行こうという組織であつて、従つて、国会にかけるというような性質のものでないのであります。
#26
○高良とみ君 併し日本はまだ国連加盟を許されておらないのでありまして、平和条約においては国際連合のとる処置に対してはあらゆる協力はするということは言つておりますけれども、こういうときに何も国民に了解なくしてそういうふうな経済的処置をとるようになつた経過が伺えれば大変仕合ですが。
#27
○国務大臣(岡崎勝男君) ココムは国際連合には何も関係ありません。全く別個のものであります。又日本のみならず国際連合に入つていないところの国も入つております。それからこれは先ほど申したように、各国ともに発表することを申合せた事項以外は発表しない、いずれの国も行政府限りでなし得ることをこの会議で相談しておつてその範囲内でやつております。
#28
○高良とみ君 日本が入りました理由、その利益というようなものはどういうところにあるのですか。それともただ国連の侵略国に対する貿易を制限するという決定そのものに協力して入つたわけでしようか。
#29
○国務大臣(岡崎勝男君) これは主として共産圏に対する貿易の問題であつて、日本としてはその中の主として中共に対する問題が特に利害関係があるわけです。中共に対する貿易の制限ということは、国会でも始終論議されておりますように、他の一般の諸国と少くとも同様でなければならないという建前をとつております。この会議においてよその国と同様の程度のこと、従つてよその国がどういうことをしておるかこれもはつきり確かめ、その国と共同して緩和すべきものは緩和するのが適当であろうという意味でこれに参加しているわけであります。
#30
○高良とみ君 そうしますと、これをもう少しはつきりしますために、占領中は日本は占領軍の支配下にあつたので、中共に対する貿易も全部占領軍の統制下にあつた。独立が発効しましてから一九五二年に今度は完全に自由なつたのでなく、よその国並みの制限を受けることが至当であるというのでココムにも入つた。そうしてそれは二つの面があつて、一つには制限は受けるけれども、又西欧諸国がどういうことをしているかという知識を得る便宜もある。緩和するものは緩和して行く。同時にやはり国会の決議があつたように、西欧並みにやつて行けるのだから、これに自然にオートマチカリーにこのココムに入る義務を生じたとこう了解して間違いないでしようか。
#31
○国務大臣(岡崎勝男君) ココムに入る義務なんか一つも生じておりません。それから日本は独立してからも制限を受けているわけではない。日本は国際連合に協力するという趣旨から自発的に中共に対する貿易制限をいたしております。その制限の内容については、ココムに加入して各国と一緒に話をしたほうが結局日本の各種の目的に合ゾると思うから入つただけのことであります。
#32
○高良とみ君 そうしますと、そういう趣旨で秘密協定に入られた経過は一応わかりました。今度の附属書Dにありまする中共貿易を西欧なみにするということは、交渉の過程において御努力になつたのだと思いますが、この点ではココムのみに支配されるのではなくて、或いはココムの限度に至るまでの自由を貿易の面で保障してあるというふうに、その附属書Dに「その他の平和愛好国の一政府と協カするものとする。」しいてあるところはそういう含みを持つていると、了承して間違いありませんか。
#33
○国務大臣(岡崎勝男君) 大体お話の通りであります。
   〔理事国伊能君退席、委員長着席〕
#34
○杉原荒太君 佐藤長官のおられるところで外務大臣にちよつと。私がさつき自衛権のことをお尋ねしたのは、政府側で一体自衛権、殊に国連憲章の五十一条に基く、自衛権というものについて、どういうふうに考えておられるか非常に疑問をもつたもんだつたんですが、その疑問を持つた一つのわけは、この外務省からもらつているMSA協定解説の中に、こういうことを書いてあるのですが、十六頁ですが、「対日平和条約五条も我が国が「国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的、又は集団的自衛の固有の権利を有すること、及び日本国が集団安全保障取極を自発的に締結することができることを承認」している。これは当然すぎるほど当然のことである。これは非常におかしなことである、特に前段の部分のごときは、これは一体どんなに考えているのか非常に疑問を持つている。これは当然のことではなくて、特に五十一条のごときは、あの会議のときだつてサンフランシスコがひつくり返るほどの大きな問題になつておつてこの規定が設けられたのであつて、当然すぎるほど当然のことであるという、そういうことではないと思う。これを書かれたのは一体どういう解釈の下に書かれたのか。これは外務大臣に直接どうというのは無理だと思うから、条約局長どういう解釈をとつておられるのか。
#35
○委員長(佐藤尚武君) ちよつと条約局長から御答弁があります前に御紹介申上げますが、インドネシアの国会議長のサルトノ議長がここにお見立になりましたので皆さんがたちよつとお立ちになりまして敬意を表して頂きたいと思います。
   〔総員起立、拍手〕
#36
○政府委員(下田武三君) 御指摘のパンフレットでございまするが、誠に申訳ない話でありまするが、先ずこのパンフレットは表に外務省情報文化局と断わつておりますように、いち早く国民に知らせるということを目的として拙速を顧みず情報文化局の責任で出しているものでありまして、この前申しましたように実は私も事前に見ておりませんようなわけで、誠に申訳ないのでございますが、(「宣伝文書だよ」と呼ぶ者あり)御指摘のような点は確かに不正確であろうと思います。国連憲章の五十一条というのは先ほど杉原委員の仰せになりましたように要件に関係して又期間におきまして、或いは報告の義務を課す点におきまして、一般国際法にいう自衛権とは異なる規定を設けてあるのでありまして、従いましてこの百はかにやはり国際法の一段自衛権の概念は存在し得るのであります。あたかも国連憲章五十一条だけを取上げましてこれは当然すぎるほど当然なことであるということは、一体何を言おうとしているのか、私にも真意はわからないくらいなのであります。その不正確な点は誠に申訳ないと思つております。
#37
○高良とみ君 ランドール委員会がアメリカで問題になつておるのでありますが、日本のこの貿易の緩和について外務大臣の見通しを承われば仕合せでありますが、このMSAの受備によつて日本の各国との貿易、殊に中共貿易の緩和は西欧なみになり得るというために御努力中だと思いますが、そのお見通しを承わりたいのでございます。
#38
○国務大臣(岡崎勝男君) 西欧なみというとちよつと語弊があるのですが、この中共貿易の制限をやつている国はアメリカもあり、カナダもあり、その他米州諸国もあるわけであります。これらと調整しなければならない。つまりアメリカ、カナダのごときはこれだけは緩和、これだけは中共と貿易をやつてもいいということに、ほかの大多数の国はなつておつても、我々はこれもやらんという立場をとつて、非常に厳重な制限をやつている。従いまして、そのヨーロッパの諸国と米州の諸国との間に意見の調整もいたさなければならない。つまり西欧というのでなくてアメリカ州の諸国も交ぜた国であります。大体調整ができる見込であります。
#39
○高良とみ君 このMSAを受諾することについての先ほどお伺いいたしました第一条並びに附属書のことでありますが、これは端的に申しまして、日本がアメリカの議会その他の議論にあります通り、或いは先日のジヤッド氏の議論なんかにありますように、日本が軍需産業の基地となり、そうしてその軍需産業を育成しました結果、これをアジアの日米が合意の国にやると、こういうふうに了承しておつたのでありますが、昨年のお話は不用になつた武器のみということでありますが、そういうことは条文から読み得ないのでありますが、その点について御説明を頂きたいのです。
#40
○国務大臣(岡崎勝男君) 大体これは三つに考えられたらいいと思うのです。つまり今おつしやつたようなもの、不用になつた武器以外のもので、武器装備等を第三国に供給するという場合は、アメリカが域外買付をやつて日本から買上げて向うに持つて行く場合と、第三国が直接に日本へ注文をいたして日本がこれの注文に応じてやる場合があろうかと思います。これにつきましては、日本の工場設備その他の能力資材等の許す範囲では今までも注文に応じております。そういう面もありまするが、これはおのれのそのほかの条項で城外買付を増加するとか第三国が直接に注文する場合は、これはこの協定としても何も関係がないのですが、この協定の範囲外のことでありますが、この協定で言つておりますことは、主として今申しましたよな不用になつたものを提供する、それと同時にこれに対する役務を提供する、こういう意味に考えております。
#41
○高良とみ君 そうしますと、附属書にありますように、「及びその諸工業の技術者の訓練」とあるのですが、工業というと防衛生産のみに限らないのでありましようか。そうしてそれの技術者の訓練をもこの協定でやるというのでありますから、何もこちらへ来て訓練するばかりでなく、こちらから出かけて行つて向うで訓練するということもあり得るように見られますが、如何でございましようか。
#42
○国務大臣(岡崎勝男君) この諸工業というのはその前に「日本国の防衛生産の諸工業に情報を提供し、及びその諸工業の技術者の訓練を」ということになつておりましてこれは防衛生産のことであります。併しその技術者の訓練というようなことは日本でやる場合もあり、アメリカへ行つて覚える場合もあろうかと思います。
#43
○團伊能君 只今高良委員の御質問の中で域外買付につきまして外務大臣の御説明がありましたが、この域外買付は結局アメリカが必要と考えるものを日本から買上げるだけで、それ以上その買上げられたものが如何なる方面に持運ばれ、又如何なる目的に使用されるかということにつきまして、この協定を通しましては日本は何ら言うところがない、ただアメリカが買付けるという一実だけでございますか。その点外務大臣から一つお伺いいたしたいと思います。
#44
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りでございます。
#45
○高良とみ君 そうしますと昨日のお話の中にもあつた通り、南朝鮮及びインドシナ、マレー等にもこれが送られる可能性を含んでいると考えて間違いございませんでしようか。
#46
○国務大臣(岡崎勝男君) MSAの援助を受ける国に対しては可能性はあるわけであります。
#47
○高良とみ君 その点も国民の不安に思つている一つだと思うのであります。申上げるまでもなく、国民は、外務省も苦労なすつたでしようが、国民も過去九カ月間このMSAが日本の運命、おおいかぶさつた大きな問題ばかりでなくて日本がどうなるかということを非常に心配しておるので、特に婦人や青年は非常に心配しております。そして戦争の記憶が新らしいばかりでなく、朝鮮戦争の記憶も新らしいのでありますからこの不安心配も無理がないと思える点があります。いわゆる死の商人ということをよく申しますが、これによつてアジア諸国が、それは防衛の必要という言葉で言つてしまえばそれまででありますが、日本もそういう武器生産、そしてその死の商人の手先となつてと言つちや大変に言葉が悪いので、私はそういう言葉を使わない主義ですけれども、アジアにこういう武器々売る使命を、日本もそれに協力してやるということに、何らかの限度がありましようか。資材或いは資源のない日本でありますから太平洋のかなたから、フィラデルフィア辺りから鉱石を持つて来たり、石炭をカナダやミシシッピーから持つて来たりしている。そういう制限もございましようが、道義的な限度というものが考えておられるかどうか、その点を御説明願えれば仕合せに存じます。
#48
○国務大臣(岡崎勝男君) 道義的にということがどうもよくわかりませんが、どういう意味ですか。
#49
○高良とみ君 道義的ということを申上げれば、アジア人が今独立しようと思つていろいろな摩擦もありましようけれども、非常な苦労をし、内乱もありましようし、経済的な苦悩もある。そこへ持つて来て武器を日本が製造してこれを売るということにはやはり限度がなければならないのではないか。殊にアジア諸国は日本を曾つての侵略国として一応悔い改めたと言つて、同志であり又同胞、アジアの友好な国と思つているのですが、今度はひるがえつて自分の国は侵略はしないけれども今度は武器生産国となつてこれを手つだつているということは、内乱をもう多くはらんでいるアジアの諸国にとつてはやはり脅威になると言わざるを得ないのではないか。そこで売りたいほうの要望があつても、或いは如何なる国の切望があつても、そしてそれが日本にはもうかると言つても、日本としてはアジアの平和、本当の保安のためにそれは限度がなければならないと思いますが、如何でございましようか。それとももうかることならどこの御注文であろうとも日本の産業動員をする、そして昨日総理の言われた経済侵略という言葉に当るようなことがんか限度があるのでしようか。
#50
○国務大臣(岡崎勝男君) 高良さん非常に極端にもうかることならばなんでもとか、一方的に片付けてしまうようなお話ですが、第一お考え願えたいのは、MSAの援助を受ける国はアジアの各国のその国の政府であります。その国の政府が高良さんが若し民意に背く、民意に副わない政府であるという断定をされれば別ですけれども、我々は東南アジアの諸国の政府はいずれも民意に副つた政府ができていると思つております。その民意に副つた政府がアメリカ政府と交渉して、MSAの援助を受けるということになつている。その援助を受け範囲内においてアメリカが提供する武器の一部を日本へ注文をしてアメリカがそれへ持つて行つて援助する、これは政府と共同、一緒になつてアメリカ政府と東南アジアの政府がやつていることであります。その限度は勿論MSAのアメリカの援助の範囲に限られるわけでございます。
 第二の点はそれ以外に若しアジア諸国の政府が日本に注文した場合には、この政府が自分で日本から買いたいと思つて注文しただけであつて、何も日本が無理に押付けるものでもなんでもない、私はなんら差支えないことだと思つております。
#51
○高良とみ君 勿論その国の政府がやることでありますが、併し内乱等の場合には、政府といえどもその国の民意が一方だけに片寄つているわけではなくて、まだ違うナシヨナリズムなり新らしい独立なりが起りつつあると思います。殊に植民地の多いアジアの実態といたしましては、これは日本のような非常に優れた選挙制度持を持つている確たる政府、これとはちよつと性質が違うと言つてもこれは無理ではないと思います。植民地の状態から立上ろうとしている諸国、例えばインドとか、パキスタンなどが立上ろうとしたことや、或いはマレー、インドネシアなどにもあると思いますし、そのほかなおなおアジアには植民地の状態から立上ろうとするトラブルが相当ありますのに、これに対してもうかるならばというのは、日本政府がもうかるという意味ではございませんけれども、今まで朝鮮の戦争に対してもまあ相当もうかつて、これは政府がこれを紹介いたしまして、そうして民間にこの特需の金が流れて行くのですから、全体としてはこれは日本の民意としは反対がないかも知れませんけれども、併しそれがやはり国際アジアの平という点から考えますと、アメリカの日本に対する武器援助、そうして、その中の古くなつた物のみという範囲ならば勿論限度がございます。国民も了承しております。ところが来年はもつとふえて来て更に大きくなるというようなとき、国際緊張の緩和ではなく、日本がMSAを受諾したことによつて、アジアの国際緊張は却つて恐怖と或いは或る程度の憲法で、禁止しているような威嚇さえも感じて来る人たちも、独立のまだの国々にはあり得るという点は私が申上げるまでもないことだと思うのでございます。その点を申しているのでありまして、立派な政府同士の仕事であるから、これは信頼してアメリカを全幅的に信頼し、日本政府を全幅的に信頼し、東南アジアにある小さな国々、殊に李承晩、台湾、バオダイその他の小さな国々をどこまでも信じて行くべきであるというお考えでありましようか。その点はやはり何かの限度を持つべきではないかということが、日本の憲法の上からいつても、将来のアジアの平和をどう考えておられるか。これに対する鋭敏な反応は、外務大臣のお手許には入つているものと信じますが、そういうものは人づておりませんでしようか。
#52
○国務大臣(岡崎勝男君) 失礼ながら私は高良さんの考えは非常にに危険だと思います。というのは我々が或る東南アジアの国内の叛乱を判断して正統政府以外のものを援助すべきだということは、非常な、結論一に達しますれば、その国の内政に干渉することになります。我々としては少くとも正統政府がある限りはこの正統政府と取引をするのが当然であつて、正統政府に反抗しておる政権か、或いは何かその一部の人、これを援助すべきだという、或いはこれに対する考えからして、正統政府に対する取引をやめるべきであるというような消極的なこともありましようが、とにかくアジアの諸国の内部関係を我々が判新して正統政府以外のものを援助すべきだというような結論に達しますれば、それはその国の内政に干渉するごとになります。少くとも国際慣習からいえば正統政府と取引をいたすべきが当然だと思います。
#53
○高良とみ君 私は却つて反対に考える。別に今内乱をしている反対側を援助すべしなんということは申しませんよ。そういう意味ではなくて、正統政府といえども曾つて、日本などよりももつとアジアには独立を完成しないために相当なかいらい政権というものもあることは御存じの通りであります。これは世界の世論でありますから、これは日本が何と考えようとも自由であつて、そしてそれがそういう国は日本と正式な交渉を持つているからそれを認めるべきだとおつしやるならば、それも一つの外交的な立場でありましよう。併しそうだからといつてそこに武器或いはその他の防衛生産に、これは日本の近い所にたくさん安い武器ができて来ていいということで、まあ大変に粗末な言い方でありますが、そうしてそういう国が武器をたくさん持つて来るということは、却つてそのことこそ内乱、内政干渉であり、まあ間接にはですよ、直接にはでなく、そしてそこにいつまでも内乱を継続させて来るという実際の結果が見られるのではないか。このことを私は何らかの道義的限度をお考えになつていると思うのです。それがないとするならばアジア諸国から将来、日本は遂に軍国主義にはならなかつたけれどもそのときの商人になつたということでうらまれてもこれは仕方がない。こう思うのですが、そういう危険はない、そういうことは心配しないで正統な政府が、自分のはうで外交関係を持つている正統な、バオダイ政権であろうがどこであろうがこれと交渉しているのだからそういうことは心配のはかであるという形式的外交主義のみでよろしいとおつしやるならばそれも一つの考え方だと私は了承します。大変な失礼な言い方かも知れませんが。
#54
○国務大臣(岡崎勝男君) 本日は質疑であつて議論を闘わせる意味でここに来ておるのではないのですから議論になることは避けたいと思いますが、私はかいらい政権とアジアの諸国の政府を名付けるということについては大いに異義があります。又我々はこの或る国の政府と交渉する、外交関係に入るという場合には十分そういう点を考えて入つているのであつて従つてそれらの国は日本と正常な国交に入る十分なる資格があると思うから入つているのであつて、従いまして御心配のようなことは理屈の上にも私はないと思いますが、事実上はアメリカの援助にも限りがあることであるし、日本の防衛生産というものも幾らも無限に行くものではありません。全体アメリカの域外買付にさえ応じ得ない程度のものであつて、限度が事実上非常にたくさんあります。
#55
○高良とみ君 わかりました。併し私の考え方が危険だとおつしやるのですが、私は別に叛乱軍を援助せよということを申上げたのではないのですから、その点だけは御訂正を願いたいと思います。議論はそつちからお吹きかけになつたので、私はそのことを質問の中に入れたわけではございません。ですからときには平和論者も叛乱することもございますので……、これでまあ私の今日の質問はよしておきます。
#56
○羽生三七君 私はあと木村保安庁長官の御出席のときにお願いしようと思いますが、その前今五分ばかり頂いて経済問題に関することだけ今日は簡単にお尋ねしてあとに回して頂きたいと思います。
#57
○委員長(佐藤尚武君) それでは羽生君。
#58
○羽生三七君 そのお願いしたい第一点は域外買付に関する問題で、ありますが、御承知の今度の協定の結果、これが買付が約六千万ドルくらいと言われているわけであります。それからこれにプラスするものが今度の余剰農産物の協定によつて四千万ドルの小麦、これがプラスされたことになつているわけであります。そこで一部にはこれは本来の域外買付に、このドル払いでない四千万ドルが一部にはこの城外品買付の部分を食いこんでいる、だから決してこれはプラスにはならないのだという意見が相当あるわけであります。併しまあ池田氏の言われたと思われる六千万ドルというもののほかに、余剰小麦で四千万ドル来たんだと言われればそれまででありますが、ただ我々としてはこの前に例えば何千万ドルとか、或いは一億万ドルとかいうものを立証する根拠は何もないわけです。だからそれが果してプラスであるのか、プラス、マイナス、零であるのかそれを立証する根拠がないのでお尋ねするのに私としても非常に基礎薄弱になるわけでありますが、その間の事情を少し御説明願いたいと思うのございます。
#59
○国務大臣(岡崎勝男君) 大体過去の実績からこれは判所するよりいたしかたがないのでございますが、これは過失の実績といいましても域外買付というふうにはつきり銘を打つて買つたものと、そうでない域外買付の部類に入るべきものと判断される部分もあろうかと思いますが、大体過去において年によつてこれは多少の違いはあることはありますが、五、六千万ドルというところが域外買付として日本が受けたもののようであります。従いまして、やはり私はそれに四千万ドルプラスしたと、こういうふうに考えております。
#60
○羽生三七君 その五、六千万ドルというのは過去の実績から出て来た数字であつて、そうすると、今度のことで明確になつているのはまだないのですか。何かこの協定に伴つて明確になつた数字というものをお示し願えるものはございませんか。
#61
○国務大臣(岡崎勝男君) 明確になつたという、この域外買付というものはこの協定とは直接関連がないのであつて、従いましてそういうものはありませんが、アメリカ大使館の係官と日本外務省の経済局長の間ではこういう問題について書面ではつきりいろいろ話の結果を記しておりますが、それにも従来にプラスして四千万トル発注するというようにされております。
#62
○羽生三七君 もう一つお尋ねしたいのは、この協定の経済一千万ドルの供与、何と言いましたか名前は、この経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との旧の協定の場合、この一千万ドル相当分三十六億円というものをどういうように使うかという問題なんでありますが、これについては愛知通産相が先日どつかの談話で航空機その他ということを言われているわけでありますが、この協定を見ますと防衛生産に使うということはどこにも出ておらない、全然どの条項にもない。ただ「日本国の工業生産及び潜在的経済力の発展を援助する目的で」と書いてあるだけで、防衛生産とか或いは兵器生産とかいうようなことを全然謳つておりません。そこで、それはこの三十六億円というものを航空機その他の生産に使うというのが、これは日本が自主的に自分の判断で勝手にきめておるわけでありますが、協定案からはそういうものは出て来ない。どこにも使えることになつておるのでありますが、その点はどういうことでありますか。
#63
○国務大臣(岡崎勝男君) これは第一に、MSAの今度の資金というものは、アメリカ側から言えば防衛関係の費用から出ておるわけのものであります。第二に、五百五十条というのもMSAの五百五十条であつて、従つて今度のMSAの援助に関連してこれが起つたのでありますから、原則としてただ日本に対する経済的な援助という種類のものでないのであります。MSAの中に一般的経済援助といわれておるものがありますが、これも経済援助とはいうものの、その国の防衛について、この何といいますか防衛に寄与する意味での経済援助であつて、防衛に何にも関係がない経済援助というものではないのであります。で、この場合にも従来、今も申しました通り大体六千万ドル見当の域外買付がありとすれば、今度それを一億にするということになりましても、やはりこの方面に対する発註の受入態勢といいますか、日本の防衛産業についてはもう少しこれを資金その他の面で充実しないと、受けたいと思つても受けられないものでありまして、事実上協定には防衛産業ということはありませんけれども、事実上はこれは防衛産業に使うのが適切であるという結論に達しております。
#64
○羽生三七君 先ほどちよつとお尋ねしましたように、この世界各国のMSA協定を結んだ国の例を見ますると、大体多くは軍事援助をもらつた国が経済援助を受けている。全部だとは言いませんが、これは外務大臣お話の通りであります。併し多くはそうである。そこで日本ではこの経済的措置に関する協定を、実際これは農産物関係の問題でありますが、この協定を何か世界並の経済援助として、而もこの本年の協定を以て次の経済援助の呼び水として、何か別件にされたように思われるのですが、まあ本年はともかく又来年も恐らく日本の経済事情によつて、量的には左右されるでしようが、余剰農産物をまあ仮にこのMSA協定ができれば継続して受けられると思うのです。そういう場合に、それとは別途に本来の意味におけるこの経済援助というようなものが、実際にこれを呼び水として取結ばれるような見通し、そういうもうがあるのでありますか。
#65
○国務大臣(岡崎勝男君) 御承知のようにいわゆる経済援助というものに漸減の方向に向いておりますのでありますから、非常に新たに経済援助を受けるということはむずかしいことではあろうと思いますが、そういう努力は是非いたしたいと考えております。
#66
○羽生三七君 そこでこの三十六億円の使い方でありますが、これは受知通産相の言われたように、大体航空機等というように、一応もう大体使途の予定というものは政府では立つているわけでありますか。
#67
○国務大臣(岡崎勝男君) これはまだ決定いたしておりません。これは主して域外買付がどの方面に多く行われるかということもはつきり確かめませんと言えませんので、大体この方面、あの方面という予想はいたしておりますが、従つてその予想している方面にこの金を使いたいと考えておりますが、まだ決定はいたしておりません。
#68
○羽生三七君 その使う場合に、使い方は投資ですか、融資ですか、どつちですか。大体融資という形になると思うのですが、どうでありますか。
#69
○国務大臣(岡崎勝男君) これは恐らく融資という方面が多いだろうと思います。併しこれもきまつたわけじやありません。
#70
○羽生三七君 その場合に非常にまあ防衛生産というか、兵器生産というか、まあ日平産業の例にも見られるように、非常にまあ問題があり競争が多くなると思う。而も与えるところは僅かに三十六億円で、ものすごい争奪戦が、この融資をめぐつて出て来ると思うのですが、まあ具体的に今どこを対象とするということはないということでありますので問題ないと思いますが、併し若しこのMSAの協定審議中に、外務省でなくても或いは通産省その他で、それに対して何らかの一応の目安というものが立つたら、この委員会で一つお知らせ願いたいと思います。
#71
○国務大臣(岡崎勝男君) 我々もこの金が間違つて使われるというようなことのないようにしなければならんと思つて、その点を一番心配しているわけであります。そのためには例えば通産省がこれは勿論所管すべき事項ですが、通産省だけでやるのがいいか、或いは広く民間有識者を集めた委員会のようなもので、ガラス張りのうちで協議決定したほうがいいか、又そういうことをしますと、その委員に一人々々に対して、随分いろいろな働きかけがあるのじやないかと思いますが、これはできるだけ変なことにならないということは勿論ですが、そういう疑いもかけられないような方法にしたいと思つております。
#72
○羽生三七君 それでは私、この次にお伺いします。
#73
○中田吉雄君 お願いしておきますが、私アメリカの二十世記初頭からの外交政策の史的変遷にからんでそれと一体に結び付いたアメリカの極東軍事政策、その適格性というような問題について一つやりたいと思いますので、MSAのサブタイトルにはアメリカの外交政策を推進する道具だということも銘打つてありますし、アメリカの外交政策、軍事政策の適格性につい一ついろいろ質問したい思いますし、このあと、極東軍司令部ですか、それにおられます両局長さんは教えを受けに行かれたそうですからそういう蘊蓄も傾けて頂くように一つお願いしておきます。
#74
○委員長(佐藤尚武君) この次の機会に。
#75
○中田吉雄君 はいそうです。(「中田さんの蘊蓄を聞くほうが多いのじやないかな」と呼ぶ者あり)
#76
○委員長(佐藤尚武君) それでは本日はこれで散会いたします。
   午後零時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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