くにさくロゴ
1953/03/18 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 通商産業委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会 第5号
姉妹サイト
 
1953/03/18 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 通商産業委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会 第5号

#1
第019回国会 通商産業委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会 第5号
昭和二十九年三月十八日(木曜日)
    午後一時五十一分開議
 出席小委員
   小委員長 中村 幸八君
      小平 久雄君    田中 龍夫君
      長谷川四郎君    山手 滿男君
      伊藤卯四郎君    加藤 鐐造君
 出席政府委員
        通商産業事務官
        (鉱山局長)  川上 為治君
        通商産業事務官
        (石炭局長)  佐久  洋君
 小委員外の出席者
        議     員 始関 伊平君
        議     員 田中 龍夫君
        参  考  人
        (日本石炭協会
        会長)     高木 作太君
        参  考  人
        (日本石炭鉱業
        連合会常任理
        事)      国崎 眞推君
        参  考  人
        (日本炭鉱労働
        組合事務局長) 漆原 光国君
        参  考  人
        (日本鉱山労働
        組合書記長)  重枝 琢已君
        参  考  人
        (電気事業連合
        会事務局長)  平井寛一郎君
        参  考  人
        (日本鉄鋼連盟
        専務理事)   岡村  武君
        専  門  員 谷崎  明君
    ―――――――――――――
三月十六日
 小委員佐々木更三君三月十三日委員辞任につき、
 その補欠として加藤清二君が委員長の指名で小
 委員に選任された。
同日
 加藤鐐造君三月十二日委員辞任につき、委員長
 の指名で小委員に補欠選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 総合燃料対策に関する件
    ―――――――――――――
#2
○中村委員長 それではこれより会議を開きます。
 本日は総合燃料対策に関する件について調査を進めます。総合燃料としての重油と石炭との調整の問題に関しましては、過日来調査を進めて参つたのでありますが、本日は石炭関係の各業界の方に参考人として御多忙中のところを御出席願いまして、御意見を聴取いたしたいと存じます。なお時間の関係もございますので、各参考人の御発言の時間は約十五分程度にお願いします。また速記の都合もございますので、参考人の御発言が全部終了の後は、政府当局及び参考人に対する質疑は、速記を付さずに懇談の形式で進めたいと存じますので御了承願つておきます。
 それではまず高木作太君よりお願いいたします。
#3
○高木参考人 日本石炭協会の高木でございます。最近日本経済の動向に関連しまして、石炭と重油並びに輸入炭の問題が各方面で論議されておりますが、今般通産委員会におかれまして、小委員会を設けられて、総合燃料対策の確立に乗り出されましたことは、まことに時宜に適したものでございまして、われわれ石炭業に従事するものといたしまして、これを多といたしますとともに、本日われわれの見解を開陳する機会をお与えくださいましたことをまことにありがたく存じます。
 今日エネルギーは、高度に発展いたしました産業界、並びに民生の基盤でございますから、一国のエネルギー政策は、その産業発展の方向とか、資源の賦存状況とか、あるいはまた国際収支など、その国固有の経済情勢を長期にわたつて見通した上で慎重に決定され、また決定した以上は、一時的な諸現象に左右されることなく、これを推進しなければならないと考えるものでございます。すなわちエネルギー資源の国内自給度の高低の問題、雇用人口の多寡の問題、国際収支上の特質、経済性の優劣などのもろもろの観点から勘案いたしましてこれを樹立すべきものでございまして、軽々に一時的な事情や条件に拘泥して、変更常なきようなことになりましては、国民経済全般の視野から見てむしろ損失が多いのではないかと存じます。
 第一の国内自給度の点につきましては、幸いにしてわが国の石炭は、炭質上国内で自給し得ないものも一部ございますが、その自給率は、乏しい国内資源の中ではきわめて高いものでございます。しかも将来にわたり長く確実にエネルギー源需要の過半を負担し得るものでございまして、最近開発が進展いたしております電力とともに、自給度の見地からわが国エネルギーの大宗を占め得る資格を持つておるものと存じます。
 第二の雇用人口につきましては、現在直接の従業員三十七万人を初め、間接には炭鉱用資材、金額に見積りまして七百五十億円を生産するあらゆる産業の従業者、国鉄輸送の四千四百万トン、海運貨物の二千三百万トン、これにつながりまする従業者、また石炭販売の従業者などの人員を考慮いたしますと、石炭は国内有数の雇用人口の多い産業でございます。しかもなお炭鉱地帯で炭鉱に依存しております人口は、他産業のごとく都市工業でございませんだけに、その依存度を高く見る必要がございます。従つて炭鉱の盛衰が今日の日本の人口政策、雇用問題に及ぼします影響は、これを軽視することを許さない問題でございまして、ひいてはまた炭鉱地帯の地方財政にも重大な影響を持つものでございます。このように石炭産業は、その直接間接の従業員あるいはその家族をも考慮した雇用の問題、並びに関連産業、財政をも含めた所得の問題といたしまして、国民経済上重要な地位を占めるものでございまして、石炭鉱業の安定と振興は、その波及の効果により、自立経済達成上最も緊要な問題と申し上げても過言ではないと存じます。
 第三に国際収支の点につきましては、当面経済の自立を危うくするものといたしまして外貨の減少が問題となつておりますが、さきに申し述べましたように、国内自給度の高さから申しまして、国内石炭の開発、有効利用はこの際の喫緊の施策であろうかと存じます。
 第四に、経済性の点につきましては、現在重油や輸入炭に比べまして国内炭が遺憾ながら劣りますことは、事実でございまして、特に一方ここ一両年の重油の急激な進出は、この目先の経済性の優位、すなわち燃料費とか、あるいはこれに関連いたしまする間接費の引下げなどの面におきまして、国内炭よりも優位にありますことは否定できないのであります。しかしながら今日重油が示しております経済性の優位も、一面では為替レートの自主性から生れました割安の輸入価格と、同じく為替レートやポンドの過剰に伴う現在の海運賃の割安と、現在一時的に免除されております関税とによるものではないかと存じます。一面では、石炭が戦時中、戦後の政策によりまして今日占めております一時的な非経済性によつて、これが強められておるものでございまして、このままの優位が今後このままの姿で継続すべきものではないと存じます。のみならず今日の重油の経済性にもかかわりませず、このエネルギー使用の増加によりまして、特に輸出があほど目立つて伸張しているというふうな模様もないのではないかと存じます。このように経済性の面では優位を示す石油ではございますが、エネルギー政策決定のための他の観点からいたしますと、ここに問題があるのではないかと存じます。まず自給度につきましては、わずかに一〇%程度にとどまり、雇用人口も直接間接すべてを含めましても石炭のそれに比しましてはるかに少いのではないかと存じまするし、国際収支は二十八年度におきましても、石油の外貨消費が約一億五千万ドルということでございまますから、綿花、米に次いでの第三位に位する輸入品目になつておるのでははかと存じます。従つて今日の情勢では、たとい経済性にまさつておるとは申しましても、他の見地からして石油の輸入をこれ以上促進しない実情にあるのではないかと存じます。ここでもしも石油の経済性のみにとらわれましてエネルギー政策の基調として取上げましたらどのようなことになるかと考えますと、まず外貨の事情は急激に悪化するのではないかと存じます。これまでの調子で参りますれば、石油は二十九年度一千万キロリツトルを越える需要になる見込みだそうでございますが、少くともこれには二億ドルの外貨が必要となりまして、現在輸入総額二十億ドル余りで、年度末九千万ドルの赤字であると言われております外貨の割作業にこれが重大な影響を及ぼすものではないかと思います。
 次に、石炭鉱業がこのために全部崩壊しないものと仮定いたしましても、石油の需要がさらにこれによつて減退いたしまして、現在当面しております合理化の問題は著しく困難となりまして、むしろ石炭の生産費がその生産の減退によりまして上昇を招くことになりまして、重油との経済性の開きがさらに大きくなるということにも考えられますし、これらのものが循環し、繰返されますれば、重油はますます使用が伸びましようし、そのための外貨の赤字が増加し、石炭の衰微というふうなことになりまして、遂にまた輸入の増加をも不可避とするのではないかと存じます。こんなことを申し上げるのもいかがかと存じますが、もしも一朝国際情勢が変化いたしまして、外国燃料の輸入に支障が生じました場合には、御承知の通り伸縮性の至つて乏しい石炭鉱業の特質から見まして、急に石炭の増産によつてこれを補うということは不可能なことでございます。でありますから深刻な動力不足が突発いたしまして、日本経済が麻痺状態に陥るというようなことも、終戦後の事態を想起いたしますれば、必至と申しても過言ではないかと存じます。このように石油がさらに進出いたしますことは、石炭鉱業の崩壊というようなことを外にいたしましても、肯定し得ないことでございますのみならず、しかもこのようなことになりますれば、今日の石炭鉱業の実情から見まして、その崩壊なしには済まされない問題ではないかと存じます。
 さきに申し述べましたごとく、今日石炭は経済性の点では劣つておりますが、その主たる原因といたしましては、戦時中、戦後の政策をあげねばならぬのでございますが、われわれが統制の撤廃以来、鋭意この経済性の回復に努力して参りましたことは、すでにしばしば御説明申し上げた通りでございまして、一例を生産費の推移で見ますと、理論原価は着々切下げられております。統制解除の二十四年度下期に比較いたしまして、最近ではトン当り約千三百円を企業の合理化によつて吸収した計算になつておるのでございます。さらに政府指導の線に沿つて今日まで伸張して参りました生産力に対し、たまたまとられましたところの外国燃料の進出によりまして、かもし出されました石炭過剰によりまして、二十八年度の不況にあたりましては異常な炭価暴落を来しまして、これに対処いたしますために、昨年企業整備等あらゆる努力を自主的に傾けて、ともかくも今日までその不況を切抜けて参つたこともすでに皆さんの御承知の通りでございます。しかしこれ以上石油の進出を許しまして、石炭の生産規模を縮小いたしますことは、経理的な行詰まりから見ましても、また労働問題の深刻性から見ましても、今日の段階では容易に実施し得ない問題でございまして、業者といたしましては、今日の生産規模を年間五千万トンの生産力に対しまして、その需要を確保することが念願でございますが、少くともさしあたり四千八百万トン程度の生産規模を維持し得るかいなかが、今日不況に当面しております石炭鉱業にとりましていわば生命線であり、これなくしては石炭鉱業の崩壊、衰微が必至であるということも御理解願いたい点でございます。
 このような石炭鉱業が当面しております事態は、わが国に一定いたしました総合燃料対策が確立されておりませず、ときどきの事情にとらわれました施策によつてもたらされた結果といつてもいいのではないかと存じまするので、エネルギー政策は各般の研究を総合しまして樹立さるべきでありますとともに、一時的な経済情勢にとらわれず、これを強力に推進することが特に基礎産業の場合は必要ではないかと存じます。以上要しまするに、エネルギー政策の確立は各般の観点から総合勘案さるべきでございまして、一たびこれを樹立されましたら、前にも申し上げました通り、あくまでもその線で推進されねばならぬものと考えるのでございまして、今日この政策確立にあたつては、海外燃料への依存度に一線を面しまして、さしあたりさきにも申し上げました通り、少くとも四千八百万トンの国内炭生産を維持せしめられまして、石炭鉱業の合理化の推進、国際収支の改善、雇用人口などの確保に努むべきものと考えるものでございます。なおこの際資源的にも事情がわが国ときわめて近似いたしております西独その他西欧諸国が採用しております国内資源保護の政策、いわゆる輸入税の問題というふうなこともわが国として参考にすべきことではないかと存じます。
#4
○中村委員長 次は国崎真推君。
#5
○国崎参考人 私は日本石炭鉱業連合会の常任理事国崎真推であります。石炭の問題については、ただいまのお話でおおよそ尽きておるとは思います。高木会長は大分上品な表現をされましたが、私は中小炭鉱の立場から少し率直に申し上げてみたいと存じます。これは燃料小委員会の諸先生方にはすでに釈迦に説法かとは思いまするが、現在の石炭界はまつたくかつて見ないほどの危機に直面しております。直面しておるといいまするよりも、すでに危機に突入していると言えます。かつて昭和六、七年ごろ石炭界はきわめて深刻な不況に襲われまして、大きな炭鉱は事業縮減をいたしまするし、中小炭鉱は廃休山が続出いたしまして、大量の人員整理という惨状を呈しましたが、本年度はこれを上まわる不況が予想されまして、まさに炭界の危機であると思われます。昭和六、七年ごろの不況は、当時業者の自治統制と満州事変を契機といたしまする世界情勢の変化によりまして立ち直ることができましたが、現在の状態は、国際情勢から見ましても、国内的に見ましても、なかなか好転の見通しがつきそうにもないのであります。このままの情勢で行くとするならば、戦後崩壊からようやく立ち直りましたとはいうものの、まだ合理化の途上にあつて経営基盤が十分固まつておらない現在の石炭産業にとりましては、その打撃はきわめて甚大でありまして、半ば壊滅的な結果を招来することになりはせぬかと憂慮されるのであります。二十八年度の国内炭の生産力は、当初五千二百五十万トンと予想せられまして、四、五月ごろまでは月産実績におきまして十分その実勢を示して参つたのでありまするが、世界的の運賃安並びに実態を離れたレートに便乗いたしまして格安生産の重油及び外国炭の急ピツチな輸入増加によりまして、石炭の需給の均衡は大幅にくずれてしまつて、国内需要は急速度に食いつぶされて、二十八年度の石炭生産量は四千五百万トンを割るんではないかというような縮減の余儀なき現状にあります。二十八年度におきまして重油だけに食われた国内炭の消費は約六百万トンの大量に上つております。特に最近数箇月分を年間に換算いたしますれば、七百万トンに上ると言われております。この状況は国内の燃料全消費が二十六、二十七、二十八と、各年度ごとに数量的には伸びて来ておるにもかかわらず、国内生産炭の消費は逆に逐年減少して来ておるという点に見ましても明らかに数字的に説明ができるのであります。これは釈迦に説法かと思いまするが、終戦後三千万トン以下に崩壊いたしました石炭産業が、八年余の歳月を経ましてようやく今日五千万トンを越える生産基盤が築き上げられた裏には、数百億円の国家資金と、戦後極度に欠乏いたしておりました資材、物資、食料品等に至るまで、全国民の犠牲のもとに炭鉱に優先注入されまして盛り上げられた結果であるということも御承知の事実であります。昭和二十一年の一月、終戦直後でありまするが、当時政府も国民も敗戦による虚脱混乱に陥つておりまして、国の政策は何から打ち出すべきかということにつきましても、ほとんど崩壊しておる際ではありましたが、日本の復興はまず石炭からだということで、各種産業に優先いたしまして石炭の増産政策が決定せられました。爾来数次にわたりまする内閣の更迭はありましても石炭産業の基盤確立に関する政府の政策は終始一貫されまして、ようやく今日あるを見たことも、これまた御承知の通りであります。もちろん日本の経済、日本の産業の将来は国内炭を無視しては絶対に考えられないということは何人も異議のないところと思います。しかるにかような大きな犠牲のもとに築き上げられました石炭産業は、また将来永久にわたつて日本経済の基盤とならねばなりません。石炭産業が外国資本の商業採算による販売政策によりまして、と申しまするよりは外国商品の侵略によりまして次々に炭鉱が崩壊して行くという状態をながめて、いかに自由経済下の今日とは申しながら、現在のように国として放任、傍観しておつてはたしていいかどうかという点は、きわめて大きな問題であります。高木会長も言われましたが、今日石炭産業の経営はすでに限界に来ております。中小炭鉱においては死活の岐路に立つておる状態であります。石炭業者はこの難局を切り抜けますために、たえがたい犠牲を忍びまして、昨年中には約五万人の人員を整理いたしまして、生産の調節と生産原価の引下げに最大の努力を払つておるのでありますが、その半面にはこれまた御承知のように大きな労働、不安と社会問題を起しております。ひいては市町村等の地方財成の危機を招来しておる事態につきましてとくと御考慮が願いたいところであります。
 さらに考えねばならぬことは、このまま無策に放任しておいて、一たび崩壊してしまつた石炭産業を再び復興するにつきましては、三年、四年の長年月を要しますことは過去の事実が証明しております。石炭の過剰、従つて炭価の暴落、これはやがて次に来るものは石炭の不足、炭価の暴騰であるということもきわめて明瞭であります。全産業の基礎物資である石炭がかように安定常なく、暴騰暴落するということは、これは産業にとりましても決して歓迎すべきことではないと思います。なおまた国としても自由放任すべきではないと考えます。私はかく申したからといつて、決して泣きごとを言うのではありません。また今石炭産業の救済を要望しておるのでもありません。ただはなはだ遺憾に思うのは、国として石炭産業に対する一貫した基本政策が今日まつたくないということであります。
 そこで私は、ここに国会及び政府に対しまして要望申し上げたいことは、すみやかに石炭、重油、電力等を包含いたしましたエネルギー全般にわたる総合基本政策を確立されたいことであります。この政策を考えられる基本といたしましては国内の燃料消費はまず国内炭をもつて充当するということに重点を置かれまして、八年の歳月と全国民の犠牲によつて築き上げられました国内炭の現有生産力、年額五千八百万トンを維持、強化するということを中心として、この五千万トンを確保する線に即しまして、必要最小限度の重油及び外国炭を何トン輸入するかということを決定するということにいたされたいのであります。
 端的に申し上げることを許されるならば、国内炭でまかなえない特殊の強粘結炭を除きまして、その他の外国炭や重油は国内炭があり余つておる際でもありますから、必要な外貨を浪費して石炭産業をたたきつぶすというような輸入政策は即刻やめてもらいたいのであります。しかし急激な輸入制限による影響について考慮を要するとするならば、それらの点は最小限度に考慮された上で燃料基本政策の急速な確立をくれぐれも御要望申し上げます。
 次に申し上げたい点は急激な高度の金融引締めによつて炭鉱をつぶさないようにしてもらいたいということであります。もちろん現在の情勢下におきまして、凡百にのぼる全部の炭鉱が安易に生きて行きますことは、あるいは期待できないといたしましても、このままの状態では出炭量におきましても品質におきましても、能率におきましても、相当好条件の炭鉱であり、また生産原価の点におきましても、十分生きて行ける中小炭鉱が、有力な金融機関のバツクがないために、金融引締め政策の犠牲によつてつぶれて行くということは、まことに残念なことであり、また日本経済の将来を考えますとき、決して放任すべきではないと存じます。これもかく申せばといいまして、私は今ここで過剰炭、――石炭が売れないで余つておるから、それに対する金融をお求めしているのではありません。すでに需要家に対して販売荷渡しをした石炭の代金回収が、ますます遅延して参りまして、相当配当を続けておる一流産業の炭代支払いが、現在では荷渡し後三箇月、四箇月の手形払いという状態でありますために、手形割引を要します金額が増加して来ましたところに、今回の金融引締め強化によりまして、取引銀行の手形の割引額は、大体現在におきまして一割五分ないし二割の削減を受けておりまので、中小炭鉱といたしましては、従来に比べて炭代支払いの遅延と手形割引額の削減、両方のはさみ撃ちにあいまして、従来より約四割ないし五割の金融縮減となつております。そのために極度に運転資金の行き詰りを来しておるというのが現状でございます。
 なおこれから申します問題は、これは再々私どもが申し上げておることでありますが、一方御存じの旧復金債務につきましては、年一割という高金利を支払わされまして、元本の償却は苛責なく強制されておるのが現状でありますが、この炭界の危機に対処いたしますために、どうか当分の間元本の返還の猶予とともに、金利の引下げについても、特段の御配慮をさらにお願いいたします。なお以上金融の点につきましては、今月初めごろ大蔵大臣、日銀総裁にも陳情いたしました。またこの問題は炭鉱の生死にも関する点でありますので、労働大臣にも陳情いたしまして、政府の善処分を要望したのでありますが、この席におきましても、重ねてここにお願いを申す次第であります。
 以上のほか石炭問題につきましては、ただいま高木会長から述べられましたこととまつたく同様でありますので、私は重ねて申し上げることを省略いたしまして、私の意見開陳を終ります。
#6
○中村委員長 次は漆原光国君。
#7
○漆原参考人 私日本炭鉱労働組合事務局長漆原光国であります。本日の燃料対策小委員会で意見を申し上げる立場の問題を明らかにしておきたいと思いますが、私は炭鉱に働いておる労働者が燃料対策をいかに考えておるか、こういう点で、意見を述べる、こういう立場で発言をいたしたいと思います。石炭が現在置かれておる経営の実態なり、需給の関係なり、重油との問題等については、その筋の経営の関係者である前二者から述べられておりますので、計数的なことはまつたく同意見であります。こういう前提に立つて結論を申しますれば、石炭企業が重油によつて非常な圧迫を加えられておるという状態では、日本の燃料対策は立て得ないということを結論的にも考えておるわけであります。昨年来急速に重油転換を追られましたのは、われわれが一昨年やりました六十三日の長期ストライキがその基因になつているということが言われているが、この真相についてはわれわれとしてはわれわれなりに納得の行かないものがある。それは経済上の石炭の問題をどうするかという基本的な問題が、そういうストライキに藉口された理由によつてなされておるということを考えなければならぬ。つまり石炭の炭価が高いという状態では外国商品との太刀打ちができない、あるいは石炭の経営をより経営者に有利にしなければならぬということのために、六十三日のストライキがたまたま藉口された。それは客観的な政治情勢、経済情勢ももちろんありましようが、直接にはそういう結論がつけられておる。これについてもわれわれは納得し得ないものがある。さらにはこの状態が引続いて昨年まで持ち越され、本年に至つてはますます重油転換の度を高めようとしつつある状態である。そこで燃料それ自体に考えをいたすならば、固体の燃料から液体の燃料に移らざるを得ないという必然的な情勢に置かれておる状態だとすれば、そのことはやむを得ないであろうが、日本の経済実態の中で石炭と液体燃料を考えるときには、日本経済の中で占めるであろう液体燃料というものにそう期待し、またこれを使わなければならぬという状態でもないと考える。むしろわれわれは国内にある現在の燃料をどう生かすかということが、日本経済自立の方向でなければならぬ。そういう点から考えると、液体燃料を国内に入れるということは、何だかはなはだしく誤まれる政策がかかる状態をなさしめておるというふうに判断せざるを得ない。そういう中で立てられた燃料政策は、どうしても世界的な経済の中で石炭を維持し得ない状態において、燃料が液体へ移行ということになれば、あらためて考えをいたさざるを得ないであろう。しかしながら現在としてはそういう段階ではない、こういう観点に立つて燃料政策は考えらるべきであるというふうに考えておるわけであります。
 それから、それでは日本の石炭燃料がはたして需要を満たすかどうかという問題については、前二者からるる述べましたように、われわれの見方としても生産量は十分まかない得る能力を持つておるというように判断しておるわけであります。これが累年にわたつて炭鉱企業が近代化されて、生産能力を高めつつあるし、その余剰の能力は逆に狭められた形で押しつけられておる。そういう中ではまだまだ生産の余力があるし、むしろこれは需要をオーバーするものではないかというふうに考えておる中では、需要の面ではまず心配はいらないという状態にあるのが日本の石炭企業ではなかろうか。ところがたまたま経済識者の中で言われておることは、石炭というのは供給が不安定である。その大きな原因は労働問題がかかつておるからである。労働問題といいますと、直接関係のあるのはその大部分を占める日本炭鉱労働組合の動向であろうかと考えますが、そういう労働問題がかかつておるがために、石炭の需給が不安定である。しかして日本の燃料をふだんの、いわゆるバランスのこわれない形にしておこうとすれば、これは日本の石炭に依存するだけでは非常に危険である。こういうことが述べられております。それについてはわれわれはわれわれの行動の中でも明らかに示しておりますように、われわれは日本の経済までも破壊をして労働運動を遂行しよう、目的を完遂しようとは考えておらぬ。そのことは六十三日のストライキの中止のときでも明らかでありますし、数日前にストライキを中止いたしました今次賃金闘争においても明らかである。われわれの闘争は常に日本の経済を考え、日本の国民生活を考え、日本の国民の福祉を考えてやつておるので、いわゆる労働問題に基因して石炭の需給が不安定であるということは当らないのではなかろうか。そのことはわれわれを理解することが足らないことではなかろうかと考えておるわけであります。
 それから次は、それでは政府が万全なる石炭企業の対策を立てる。これは燃料対策につながつた対策である、こういう中でどういうことをわれわれが最も危惧しておるかといえば、――そういう政策がないということは前二者が申しました通り、われわれとしても痛烈に政府を指弾しなければならぬ、こういうふうに考えております。まつたく政府は恒久的な燃料政策を持つておらぬ、こういうことを率直に言わざるを得ないと思います。しかしながら将来にわたつてもそういう状態であるとは考えておらぬのであります。むしろそういう状態であれば日本の経済は崩壊する段階であろう、かように考えておるわけであります。そこですみやかに今の危急状態を契機として総合的に考えられた燃料対策の中で、恒久的なる石炭対策が立てられるべきである、こういうふうに考えておるが、その立てられる中で特に留意してもらいたいことは、石炭という産業がいわゆる水ものである、こういう形の中で経営がなされておる、そういうことでは日本の石炭鉱業を恒久的に自立させるということは不可能であろうと考えておるわけであります。つまり具体的に申しますれば、一昨々年のごとく、いわゆる日本の長者番付の頭から何位までを占めるというのが石炭鉱業の経営者である、こういう状態から、昨年から始まりましたような労働者を犠牲にして、首を切つて経営を維持するという状態まで、幅の広い無責任な経営がなされておる。こういう経営を認めたままで、日本の石炭鉱業を安定し、日本の燃料対策を考えるということになれば、そのことははなはだ危険千万である。われわれはそういうことは恒久的な対策ではなくて、むしろ危急の状態に置かれておる石炭経営者救済のための便法であると考えておるわけでありますから、政府がもし恒久的対策を立てられるとするならば、こういう点について十分留意をされなければこの政策はおそらく失敗に終るであろうという判断をしておるわけであります。
 それから最後に、われわれ自身が将来どう考えておるかという問題について若干申しますと、先ほど前二者が申し上げましたように、現在首切りが遂行されつつある。しかもこれは暗黙裡に非常な経営の圧力をもつてやられつつある。表には出ないが、そういう結果は炭鉱労働者の数が異常な減少を示しつつあるということにおいて明らかである。こういう中でわれわれは労働不安を除去して経済政策を立てるということが、非常に困難な具体的な問題を持つておると考えておるわけであります。そこで経済政策をどこで安定し、立てるかというならば、おそらく結論的には今の言葉で言われます民主化の方向によつて経営を維持することが基本になつて考えられなければならぬと考えておるわけであります。もちろん冒頭に申しましたように、石炭そのものが現代におけるいわゆる燃料の転換期に立至り、旧時代の燃料として考えられなければならぬという時代になれば別として、われわれはそういうように日本の経済の中に占める石炭を考えておらないので、そのことについては十分な配慮が必要であろう。極端に申しますれば何らかの他の力による事情が日本の総合的な燃料対策を誤まつた方向に持つて行きつつあるということを危惧し、そのことがただちに労働者の問題にかかり、労働問題は社会不安にかかつておる、こういう事実を現在示しつつある段階では、相当根本的な強力な対策がない限り、この問題の解決にはなり得ないであろうと考えておるのであります。政府並びに識者においては、こういう労働者の実態であるということも十分認識の上関連する燃料総合対策の中で、そのことも十分配慮願いたい。かように希望して意見の一端を述べておきます。
#8
○中村委員長 次は重枝琢巳君。
#9
○重枝参考人 私、日本鉱山労働組合の書記長をいたしております重枝であります。
 本日総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会におきまして、燃料対策について労働組合の意見を述べる機会を与えられたことにつきまして、非常に感謝をいたしておる次第でございます。
 総合燃料対策ということについて、私ども石炭産業に従事しておるものとして第一の問題は、私はやはり安い石炭を豊富に供給するということが究極の目的であろうと思うわけでございますが、しからばそういう安い石炭を豊富にどういうふうにして供給できるかという点を考えておるわけでございますが、石炭がとにかくいるから出せということは終戦直後の事態であつたと思います。そのときにわれわれ炭鉱労働者といたしましては、最大の犠牲を払つて非常な石炭の供給ということをやつたわけでありますが、今日の問題はいわゆる高炭価問題ということを盛んに言われておりまして、石油とかその他のそういう石炭と競合するところのエネルギーないしは燃料資源というものとの関連において、日本の石炭産業が非常に危機に陥つておると思う。私はもし国内に生産されるものとの競合において、石炭産業というものが非常に圧迫を受けておるということでありますならば、それは、またおのずから違つた観点に立つての燃料政策というものが立てられまして、石炭産業だけの言い分を生かすということにはならないと思います。しかし日本の場合におきましては、現在問題になつておりますところの重油の問題というような点につきましては、私は国内に産するところの石油というものとの競合という形ではなくて、外国から輸入するところのそういう重油というものとの関連において、石炭産業が非常に圧迫されておるというところに根本的な問題があろうかと考えるわけであります。一国の産業の中で基本的なエネルギー資源というものをどこから仰ぐかということは、これは非常な問題であろうと思いますが、日本の場合には全然石炭が産出しないということでなくて、非常に石炭の資源が埋蔵されておる、従つて日本の経済の自立ということを考えますならば、まず基本的な燃料政策、エネルギー資源としての石炭産業をどういうふうに開発をして行くかということによつて、日本の自立の方向というものもかわつて来るのでははいかというふうに考えられるわけであります。冒頭に申しましたように、安い石炭を多量に供給するということ、これは労使にかかわらず石炭産業に従事する者のひとしく望むところでありますけれども、しかしそれはやはりどうしたら安い石炭を豊富に供給できるかということについての検討をしていただかなければなならないと思うわけであります。昨年の夏に非常に企業整備が行われました。これは高炭価問題から発するところの日本の石炭産業の合理化の一つという形のように当時はいろいろ言われておりました、また今日もそういうことが言われておると思いますけれども、私たちがよく振りかえつて見まするならば、これは決して石炭産業の合理化という点に関して、企業整備が行われたというふうには、私たちはどうしても考えられないわけであります。それは重油の輸入等によつて石炭の需要が圧迫された、あるいは国内の産業の不振ということで、石炭と需要が圧迫されたということに対して、一つの資本の利潤を確保する自衛手段としてとられておつたわけでありまして、その結果安い石炭を豊富に供給するということには決してなつていないわけであります。私たちはそういうことではほんとの燃料対策ということにはならないのではないかと今日思つているわけです。これは昨年の水害対策の委員会を通産委員会で持たれたときも、私この復旧ということに関連いたしまして、根本的な総合的な石炭対策というものを樹立して、その一環として水害の復旧ということを考えていただかなければ、日本の石炭産業というものの将来はないということを申し上げたわけでございますけれども、そういう意味で政府、資本家、労働組合というものが、日本に与えられたる条件において安い石炭を豊富に供給するにはどうしたらよいか、それによつて日本の自立経済をつちかうためにはどうしたらよいかということを、真剣に考えて行かなければならぬと思うわけであります。
 そこで私たちは一つの意見としましては、石炭の新しい利用方法、需要を開拓するという意味で、国家的な立場で施策をとつていただきたいというふうに考えておるわけであります。たとえば発電所の問題をとつてみましても、電力ということに関連しましては、日本では水力発電の開発ということだけが非常に騒がれておるのでありますけれども、水力発電が一定の規模を完成いたしますならば、渇水期、豊水期というものとの関連において、一定の電力を供給するというためには、どうしても補助的に火力発電を相当建設をして、それをアジヤストするようなことを考えておかなければ、平均的な電力の供給ということは不可能であることはこれは明らかなことでありますが、そういうことを考えてみましても、私は現在日本の各炭田ごとに火力発電の設備をまず建設をして行く、これは水力発電の建設が完成いたしますれば、おそかれ早かれそういうものはつくらなければならない設備でありますから、これをまずつくつて行く、しかもその場合には、低品位の石炭を利用して相当効率のある発電設備が今日の技術の進歩によつてできておるわけでありますから、そういうものをつくつていただくということによつて、日本の地下資源の永続的な開発というものができまして、それが日本の総合計燃料政策と申しますか、エネルギー対策として非常によいことではないか、こういうふうに一つは考えておるわけであります。
 さらにもう一つは、相当程度の人口を擁するところの都市においては、燃料といたしましてやはりガスを使う、こういうことを政府は積極的に施策として進めて行く、今日日本の家庭燃料というものは、木炭その他煉炭とかいろいろなものに仰いでおるわけでありますけれども、これを豊富にあるところの日本の石炭というものを利用してガス化し、あるいは煉炭をもつてやつて行くというような政策を考えるならば、あるいは先ほど申しました電力というものも、またそういうことを通して家庭燃料というものになつて来ると思うのでありますが、そういうふうにいたしますならば、われわれの日常生活というものも、非常に合理化して行くということと同時に、日本の地下資源の開発ということになつて来るんじやないか。今のように自由放任の形で、石炭の価格が国際価格より高いんだから安くせよとかいうようなことで放任されておりまして、一部の非常に資本の力を持つた炭鉱だけが残つて来るということになりますならば、これは国家としての総合的な燃料対策と申しますか、エネルギー対策としては、非常に欠ける点が出て来るんじやないかというふうに考えるわけであります。私は先般のILOの石炭委員会に出席をいたしましたけれども、石炭が重油とかあるいは天然ガス、そういうような類似のエネルギー資源から圧迫されておるというのは、各国の共通の悩みのようでありますが、それに対し石炭の新しい需要を開拓し、配給の方法を合理化して行くということによつて、石炭産業の基本的な開発をやらなければならぬというのが、各国の労働者側の意見の一致したところであつたわけです。それを私たちは委員会に提案をいたしたわけでありますけれども、このことについて結果的に申しますならば、私たち労働者側の意見は十八対十六で、否決されたわけであります。その際に私非常に奇異に感じましたことは、日本の資本家側の代表の方がこの提案に対して反対をされ、日本の政府代表が保留の意見を述べられたことであります。昨年から日本の石炭産業が重油等に圧迫されまして、このまま行きますならば、先ほど申しましたような一部の非常に条件のいいものだけが残つて、将来を考える立場からの燃料政策というものを見てみますならば、非常にあぶない状況になつておる。これを解決するには、やはり同じような悩みを持つた国際的な関連において解決するということも一つの方法であろうと思つたわけでありますが、今申したような意見であつたわけであります。そこで私は、それならば日本の国内において、政府もあるいは資本家側も、はつきりした日本の石炭産業の長期的な対策があるかということを考えてみますならば、それはなかなかないように思うわけでございます。そこで私は衆議院の通産委員会がそういうものを取上げられたことについて非常に敬意を表するとともに、大いに努力をしていただきたいと思うのであります。
 私たちは安い石炭を豊富に供給することが、政府のそういうような政策と関連するということを第一に考えております。それはただ石炭の需要を増すというようなことで、石炭産業だけに頭をつつ込んでおつただけでは、なかなか解決しないことではないかと思います。やはり総合的な一国の経済政策の中で燃料政策をどうするか、日本の産業が、今日吉田内閣でとられておりますデフレ政策によつて、中小企業その他弱小企業の崩壊ということを通して、デフレという一つの形を持つて来ようということでありますならば、むしろ日本の経済は下向きになつて行くということになると思いますので、そういうことをここで再検討していただいて、日本の産業全体を上向くようにするということの中での燃料政策を総括的に考えていただかなければならぬのじやないか、こういうふうに考えるわけであります。
 それからもう一点は、安い石炭を豊富に供給することに対しては、生産費の問題あるいは生産性の問題ということがいろいろ関係して来ると思いますが、私は、そういう中で、やはり労使の協議の機関について合理的なものを確立して行くということでなければならないと思うわけであります。労働組合に、非常に危機の場合に働け働けということで増産運動をさせて、今度は石炭がある程度余つて来ると、企業整備、首切りということをもつて対応して行くということでは、永続的な対策とはならないわけでありまして、ほんとうに労働者の意見を率直に表明させ、それをすなおに受入れて行くという態勢、こういうものをまず石炭産業の各企業の中で確立をして行かなければならないのではないかと思うわけであります。日本では、西ドイツの石炭産業においてストライキがないということが一方的に宣伝されておりますけれども、そのストライキがないということの重要な原因の一つには、やはり労働者の意見を率直に受入れ、それを経営の中に生かして行くという制度が確立されておる。そういうものの裏づけによつて、初めて各企業における合理的な生産が行われておるということをひとつ十分に考えていただきたいと思うわけであります。同時にそういうふうな各企業において、労働者の意見を取入れて行くということ、石炭産業の全般の施策について、労働者側の正当な意見を述べ、さらにそれを検討し取入れて行くという制度をとつて行く、そういうものに裏づけされて、初めて各企業における労働組合の意見の開陳、労使のほんとうに主張し合つたところ、いいところをとつて石炭産業の発展のためにそれを実施して行くということが可能になるわけでありますので、石炭産業全体に対するそういう労働者側の意見を率直に聞いて行くという形を制度化することについて、もう一度お考えを願いたいと思うわけであります。終戦後の石炭国管の問題は、私たち労働組合としては、当時非常に生産に対して努力をいたしておりまして、そういう立場からの率直な意見の開陳の場、それを取入れてもらう一つの制度だというふうに考えて非常に協力したわけでありますけれども、しかしこれは単なる炭を出せという増産のための国家管理に終つて、ほんとうに石炭産業というものの合理的な発展ということ、すなわち総合的な燃料対策という点からは、それが等閑に付されて、石炭の供給というものの危機が去つた場合には、それが忘れられてしまつたという結果になつておりますが、そういうことではなくて、今申しますような意味で、もう一度これを御検討願いたい。そうすることが私はほんとうの意味の、絵に描いた燃料政策ということではなくて、生きて動く燃料政策の基本になるのではないかというふうに考えますので、そういう点を特にお願いいたしまして、私の意見といたしたいと思います。
#10
○中村委員長 次は平井寛一郎君。
#11
○平井参考人 本日燃料政策の御検討に際しまして、私ども電気事業者の代表としてお招きをいただきまして、発言の機会をいただいたことはまことにありがとうございます。
 先ほども高木会長からもお話がありましたが、わが国におけるエネルギー・バランスにおいて電力は石炭とともにその二大支柱をなしておるのであります。エネルギー・バランスの九〇%前後はこの二つの柱で維持されておる。またわが国における資源の依存状態から見まして、今後ともやはりこの石炭、電気、重油というものが、どうしてもわが国経済の発展のためには、引続き大きな柱でなければならないであろうということもはつきり言えると思うのであります。さてその一面をお預かりいたしております電力の面でありますが、この電力はわが国では主として水力をベースとして扱つておるのでありますが、その特性上、また需用との関係上、どうしても一部火力発電を併用せざるを得ないのであります。今日におきましてのわが国石炭需要の二割程度は、この電力の面において水と併用するという形において使われておるのであります。本日私ども電気業者が呼ばれましたのは、そういう意味においての石炭あるいは重油の最も大口の燃料の消費者の一人であるという意味で、お呼び出しをいただいたのではないかと思うのであります。従いまして私の方からは消費者としての立場から、電力事情がこの燃料問題において、どういうふうな現状にあるか、またどういうふうな考え方を持つておるかということを端的にお話を申し上げることによつて、本委員会の御参考に相なりまするならば、幸甚と存ずる次第であります。
 わが国における電気事業においては、火力発電用の燃料としましては主として石炭を使つております。燃料としては石炭が主であり、重油は従になつておるという姿において消費されておるのでありますが、この実態は今後ともそうかわるものではないと私どもは考えております。またなるべくかえない形が望ましいのじやないかと考えておるのであります。さてそれじやなぜ石炭ばかり使つておらないか、こういう御疑問が出るのじやないかと思います。石炭はこの三年間の消費実態を見ましても、昭和二十七年度において七百十六万トン使つております。二十八年度においては、これは計画数量が八百三十五万トンになつております。二十九年度においてはさらにこれがふえて、ただいま計画としては九百三万トンを予定いたしております。石炭の消費量は年々増加の一途をたどつておるのがただいまの数字でおわかりになると思いますが、同じ意味で重油はそれではどのくらい使つておるかと申しますと、大体電気事業で使いまする燃料の石炭換算約一割程度のものが現在重油の形において使われておるのでありまして、消費実績は二十七年度において二十九万キロリツトル、二十八年度はおそらく実績は四十万キロリツトルくらいになるんじやないかと考えております。それから二十九年度はただいまの計画では四十四万五千キロリツトルを消費する予定にいたしております。なぜ重油を使うか。実はこれには大きくわけまして二つの面の要請があるのであります。その一つは、御承知のように電気事業が公益事業として、できるだけ安い電気を供給しなければならないのでありますが、そういう面から、現実に燃料費原価が現状においては重油の方が安いものでありますから、そういう安い地域に率いては、どうしても重油をある程度併用せざるを得ないという面があるのでありまして、コスト・ベースにおいて重油を併用いたしておるのであります。もう一つの面は、供給力増強及び供給力安定という意味においての併用なのであります。御承知のように電気事業は最近相当に開発は進めておるのでありますが、なおかつ電力が足りないのでありまして、季節的にしばしば消費者の皆様に御迷惑をかけておるような実情にあります中で、重油をある程度併用いたしますと、現在の限られた火力発電設備であつても、相当に発電量がふえるのであります。また同時に炭が消えるとか、いろいろな事故を防げますし、またいろいろの修繕費等が少なくなります関係上、発電の安定度が非常に高まるのであります。そういう意味合いにおきまして、現在私どもの持つております火力発電設備のうち、ある範囲のものについて、これが技術的及び経済的に可能なる限度において、またこういう電力不足の段階において、実際になし得る程度の改造をいたしました範囲において、重油がただいま申し上げましたような数量だけ使われておる。それはコストの面と、もう一つ大きく供給力がそれによつてふえるし、安定するというところにあるのであります。若干でも電力の不足をそういう形において補うのが現在の大きなねらいになつておるというのが現在の事情であるのであります。コストの面から申しますと、たとえば九州とか北海道とか、ああいう石炭地区、あるいはそれに近い地域におきましては、こういう重油の併用はなされておりません。ただ炭質が非常に低くなるような場合に、ごく微量を使う程度であるというくらいであります。しかし本州中央部の石炭のコストが相当に高い、たとえば東京とか名古屋方面とかあるいは関西地方というような地域になりますと、どうしても重油の方が安いという観点もございますので、重油を使います発電所が、これらの地域には若干できておるのであります。重油の併用設備を持つておりますのは主として、今言つた東京地区、関西、もう一つは中国なのでありますが、中国は少し異なつた事情を持つておるのであります。中国で使つておりまするものは、宇部炭を使う地域の発電所にあるのであります。この方はコストという面よりは、それによつて低品位炭を有効に、効率的に使い得るという道を発見しております。そういうふうな形で現在発電所の数が、これら四地域でもつて三十二箇所ございますが、重油の混焼設備を持つておりますものが十七箇所、約半分ほどでございます。この混焼の程度は、現在の発電設備においてはいろいろございまして、大部分は石炭を主として、ある程度の重油を併用することによつてその火力発電設備の発電能力を最大限度に高めるというような形をいたしておるのであります。まぜる割合も一割ないし二割、多いところで四割程度になつておるのであります。ただ一箇所だけは、現在すでに重油のみを専焼しておる発電所を持つております。これは特殊の例でございまして、清水港にある清水の発電所でありますが、戦災で痛みましたのを復旧いたしまする機会に、思い切つて、あそこの特殊事情でもつて石炭が非常に入りにくいし、割高にありますし、あそこは製油所があります関係で、思い切つて重油専焼の設備をいたしております。現状におきましてはそういうような形で重油が併用されておるのであります。こういうふうな事情にありますので電気の方の面としましては、現在のところでは本州中央部の地域において、おおむね一割前後くらいの量に相当するものが重油に転換されておるということに尽きるのでありますが、その理由は先ほど申しました通り、一つは経済べースという面で、できるだけ安い電気をつくるという意味であり、また一つは供給の足らない産業に少しでも電気をよけい出すという、いわゆる供給力増強及び供給の安定というサービス面への努力のために、やむを得ず併用いたしておるのであります。
 さてそれでは今後の電気事業は重油に対してどんなふうな考え方で行くだろうかということでありますが、おそらくやはり石炭の需要量は、ふえても減らないことと予想いたしまするが、ただ今後の火力発電所の計画におきましては、今の段階におきまして、何分重油が安いものでありますから、本州中央部等の地域におきましては、若干重油を併用する、あるいは専焼するような計画があるのであります。その専焼すると申しましても、それらの発電所は、おおむね重油だけもたけるが、同時に石炭だけもたける、あるいは重油と石炭をまぜてたけるという形になつておりまして、いずれにも切りかえ得るような態勢のものが多いのであります。今後そういう意味で、重油の方もやはり消費量はふえるのではないかと考えております。それでは消費の割合はどうかということになりますと、やはり経済ベースという点から離れることはできないのでありまして、電気事業のような、特に安い電気をできるだけ多量に出すという面からは、ただいま申し上げました程度の重油の併用は、今後どうしても不可避の状態にあるのであります。以上、現在のもの及び将来の設備に対する予想を申し上げたのでありますが、何分石炭及び重油の値段の相対関係がどうかわるか、あるいはその需給能力がどういうふうに推移するか、あるいは供給の安定ということがいろいろな状況によつて変化することも予想されますので、われわれ電気事業者としてはそういう間に処して、できるだけ安く効率的な発電をする、それによつて安く電気をつくるという方針に立つて行かざるを得ない、こういう状態にあると申し上げてよいと思います。いろいろこまかい数字、資料等も、あるいは御質問がありましたならば申し上げようかと思つて用意はいたしておりますが、電気事業者の重油の併用の実情は大体そういうところにあるのであります。
 最後に、それでは総合燃料対策の面において、今石炭企業というものが、わが国の、特に燃料の最大支柱である石炭企業が経営の危機にさらされておるやの今お話がありました。そういう意味において、総合燃料対策をどう立てるかという点での問題でありますが、私どもといたしましては、石炭企業というものは、やはりわが国における何といつても産業の大きな支柱であります。現に大きな支柱になつておるのであります。従いましてこの産業が不用意に、つぶれるような形に行くことは、それは必然的か形態における場合は別といたしまして、これを不用意につぶれるような形に持つて行くようでは、わが国の産業はどうしても発展できないのであります。そういう意味からいたしまして、電気事業というものは幸いこうして年々石炭の需要の面においても消費をふやしておるという実情にあるのでありますが、予想されるようなそういう危機に際した場合にどう処理するか、私どもはやはりこれは不用意に、ただ当面の事態を弥縫するような形の施策であつてはならないのじやないかと思うのであります。長い目で見た、わが国の経済発展の基盤に沿うような、恒久的な施策でなくてはならないのではないかと思うのであります。そういう意味から申しますると、遺憾ながら現状において石炭のコストがまだ国際競争場裡において若干割高ではないかと思うのであります。これが問題の根源をなしておるのでありまするから、このコストの切下げのために、政府もまた御関係の企業家の方も、最善の努力を尽されることによつて、そうしてそれを通じて経済ベースにおいて十分競争し得る形に順次切りかえて行つていただいて、そうした健全なる発展の形をたどられるように政府の方においても御施策をあわせてしていただくことが望ましいのではないかと存ずる次第であります。私どもが電気事業を扱つておりまする面において、やはり安いものを使わざるを得ないという、経済基盤上やむを得ない一つの制約下にあるわけでありまして、この際に、今重油という一つの石炭企業家にとつて大きな脅威が現われておるのでありますが、これに対する施策は、さつき申し上げましたようなコストの切下げという方向への施策が集中的に行われることでなくてはならないのでありまして、それを怠つた不用意な当面の施策のみに終るといたしすと、かりに重油の面がそれによつて一時防止し得たといたしましても、将来わが国が、たとえばアジア大陸方面への貿易が盛んになるという事態を予想しましたときに、北支炭のような第二の強敵が現われて、再び混乱を来すということもやはり予想せざるを得ないのじやないかと思います。従いまして基本的な施策はどこまでもコストの切下げによつて、国際競争場裡に耐え得るような形に、早く産業を強化して行くというところにあるんじやないかと思うのであります。また政府の御施策も、ぜひその線に御推進あらんことをお願いする次第であります。
#12
○中村委員長 次は岡村武治君。
#13
○岡村参考人 本日は鉄鋼業の立場から、総合燃料対策のことにつきまして、私どもの日ごろ存じおりますること、あるいはお願い申し上げたい事柄を申し上げる機会を与えられましたことを衷心より御礼申し上げたいと存じます。
 鉄鋼業も燃料の消費の面では、石炭及び石油につきましては大手筋でございます。
 まず石炭につきましては、今年度の鉄鋼の生産は、普通鋼鋼材といたしまして、実績は約五百四十万トン弱にのぼるであろうと存ぜられまするが、この鉄鋼を生産いたしまするに必要な石炭の量は、通産省の御計画では六百三十万トン程度でございまして、この六百三十万トンがちようど半分ずつ、国内炭と輸入炭ということに相なつておりまして、おそらく実績におきましてもほぼその比率を示すものだろうと存ずるのであります。この原料炭は、溶鉱炉の製銑に使いまするコークスを製造いたしまする原料でございますが、このほかに石炭ガスをとりますための発生炉用石炭もございまするし、また雑用炭、一般炭もございますので、これらを全部総合いたしますと、年間の需要は国内炭、輸入炭合せまして七百万トンになんなんとするものではないかと考えられるのでございます、従いまして石炭が鉄鋼業に円滑に、かつ安定した価格で与えられるということが、石炭の生産を左右する重大な問題に相なつて来るわけでございます。申すまでもないことでございますが銑鉄を生産いたしまする場合の石炭の重要性は、各種の原料のうちで最高位を占めるものでございまして、このきわめてラフなコストを申し上げてみますならば、銑鉄単位当りのコストのうちで約五〇%は石炭でございます。四五%が鉱石代、かように申してよろしいかと思うのであります。そのほか種々の副原料がございまして、合せまして一一〇%くらいになりますが、同時に副成物が一〇%くらいございますので、これを差引きまして、ちようど一〇〇%、こういろ計算になつて来るわけでございます。かような情勢でございますから、石炭が円滑に供給されるということが、不可欠の要件であります。のみならずその価格が安定をし、かつできるだけ低いことが必要に相なつて参るわけであります。日本の現在の炭は、これを外国に比較をいたしますると、米炭が最上のものでございまするが、この米炭が今CIFで日本に参つておりまする価格が十八ドルでございます。このうち約十ドルが海上運賃でございまするから、FOB価格は八ドル程度だとおぼしめしてけつこうだと存じます。しかるに国内の石炭はどうかと申しますると、これをメリツト計算で計算をいたしまするならば、つまりその石炭に含まれておりまする固定炭素分でございまするとか、あるいは揮発分でございまするとか、あるいは灰分その他の不純物等をフアクターにいたしましたメリツト計算をいたしてみまするならば、三十五ドル五十セント、こういう数字が出て参るのでございます。米炭、これはアメリカの東海岸からはるばる四十日の船路をパナマ運河を通りまして日本に到着をいたすのでございまするが、かような米炭の方が、国内でできまする石炭よりもはるかに安いという事実は、ほとんど、信じがたいばかりでございます。この大きな負担が、結局銑鉄の生産の面にも影響をいたすのでございます。アメリカは今申し上げましたように、大体八ドル程度の原料炭を使つております。それから日本の鉄鋼輸出の面で大きな強敵に相なりつつありまするところの西欧諸国、これは昨年の春から欧州石炭鉄鋼共同体を組織いたして、プール市場ができ上つておるのでございますが、この六箇国で使つておりまする石炭は、これは共同体の最高機関において決定をいたしておるのでございまするが、大体十一ドルないし十三ドルでございます。またイギリスは、この共同体のらち外ではございまするが、イギリスの鉄鋼業の使つておりまする石炭は四千七百円程度で、やはり欧州の方とほぼその軌を同じゆういたしておるのでございます。かような比較をしてみますると、日本の鉄鋼業がいかに高い石炭価格に悩まされておるかということを端的におくみとりをいただけるであろう、かように存ずるのでございます。鉄鋼業のコストをできるだけ下げて、安い価格で輸出の増進をはかり、また国内産業に対しまして必要な鉄鋼を供給するという使命をわれわれが背負つておりまする以上は、この使命を完遂せしめるためのこの高炭価問題の解決が何よりも急務に相なつて参るわけでございます。
 次に重油の問題でございまするが、重油は石炭と相並びまして、車の両輪のごとく、鉄鋼業の運営を支える重要な原料でございます。もともと日本の鉄鋼業の発祥以来、種々の制約から重油の使用がきわめて有利であるということは重々わかつておつたのでございまするが、それが許されないために、戦前、戦時中を通じまして、大体加熱用の燃料といたしましては石炭を使つておつたのでございます。この石炭をガス発生炉によりましてガス化をいたしましで、これを平炉の製鋼作業、あるいは加熱炉、均熱炉その他の熱処理に使うという形が普遍的にとられておつたのでございます。しかしながら鉄鋼業における重油の使用は、単にコストが多少安くなるとか、あるいはその輸入が容易であるとか、困難であるとか、さような比較考量のみから来るのではないのでございまして、重油の使用は、その品質の面におきましても大きく影響をいたすのでございます。アメリカでは石炭ももちろん使つておりまするが、大部分は天然ガスと重油でございます。欧州の諸製鉄国におきましても、ほぼその軌を同じくいたします。フランスは比較的石炭を燃料源に使用する率が多いのでありますが、その他の諸国ではおしなべて重油をおもに消費いたしているのであります。なぜかと申しますならば、コストの面におきまして使用の原単位が非常に低いのであります。鋼塊一トン当りの燃料の使用量は、重油でございますと百七十リツトル、石炭でございますと三百四十キログラムになります。鋼塊トン当りの消費熱量は、発熱量を重油一万キロカロリー、石炭二千八百キロカロリーといたしますならば、概算重油の消費熱量は百六十万キロカロリー、石炭の消費熱量は二百三十一万キロカロリーということになりまして、石炭の方が七十一万キロカロリー多いのであります。大体トン当り百キログラム石炭を余分に要するということになるのであります。また価格の面におきましても、現在の炭価から割出しますならば、重油の方が三%ないし一一%安いということが申せるのであります。のみならず石炭は積卸しあるいは横持ち作業等におきまする目減り、欠斤が相当生じますが、重油はタンクに受入れました後はパイプの輸送によりまして何らさような欠斤がございませんので、一層有利に相なつて参るわけであります。それから作業費が非常に節減をされるのでありまするが、石炭は重油に比較をいたしますると、平炉一基あたりの労務者三人以上を多く必要といたすのであります。のみならず燃焼自動調節であるとか貯蔵等間接部門を含め、三交代作業をいたすといたしまするならば、一基あたり十名以上労務者が少くて済むということに相なるのであります。また製鋼時間が短縮されるという点も大きな利益に相なるのでございます。石炭の場合でございますると、灰の処理費を相当必要といたしまするが、重油の場合にはまつたくこれが不要に相なつて参ります。またカロリーの使用効率も比較にならぬくらい重油の方が高いということが申せます。また石炭は貯蔵のために相当の置き場が必要でございます。また長時間貯蔵いたしますると、風化いたしましてメリツトが下るという欠陥があるのに対しまして、重油はさような欠陥がございません。
 次に技術上の特質でございまするが、設備の面では石炭を使用いたしまする場合には、非常に複雑で金のかかりまする設備を必要といたすのでございまするが、重油の場合にはこれはきわめて簡単な設備で間に合うのであります。従つて作業人員もはるかに少くて済むということが申せるのであります。それから平炉の炉体につきまして、発生炉ガスを使う場合には、これまたガスと空気の変更弁を一つずつ使うことを要しまするが、重油の場合には一つでそれが済むという面から、相当コストの面にこれが影響をして参るわけでございます。但し炉体の、つまり平炉の中に張りつめてございまする耐火れんがの損傷度は、重油の場合の方がやや高い、これは重油使用に伴いまするきわめて少い不利益の一つであろうかと存ぜられるのでございます。
 かように重油と石炭とは、その技術の面におきましても、またコストの面におきましても、相当逕庭がございます。少しでも鉄鋼のコストを下げなければならぬ今日におきましては、この重油の使用が不可欠の要件になつて参るわけでございます。さような見地から、戦争後急激に復興いたしました鉄鋼業におきましては、石炭を重油に転換をする傾向がとみに濃化いたしまして、現在のところでございますると、大体稼働しておりまする平炉が百二十基ぐらいございます。そのうち五十二基は重油の専焼設備を持つております。それから同じく五十二基が重油と石炭ガスの混焼装置を持つております。残り十五基が石炭だけを専焼いたしまする設備に相なつておるのでございます。しからば重油に転換いたしまするためにどのくらいの経費を要したかということを、大手筋のメーカーについて調査をいたしてみたのであります。これはなかなか計算が困難でありまするが、一応提出された資料を総合いたしました数字が、約十億円に達しておるのでございます。これを今日、石炭の事情、あるいは輸入外貨削限の見地から、再び石炭に転換することが可能であるかどうかという点をしさいに検討いたしてみたのでございまするが、結論から申し上げますると、もちろん不可能ではございませんけれども、不可能に近い困難を伴うということが判然といたしたのであります。大手筋の六社の十工場だけを取上げてみましても、この設備を石炭に再転換いたしまするために所要いたしまする経費は、およそ十六億二千万円に相なるのであります。これは単に経費だけの問題ではございませんので、相当の間炉を休ませる必要がございまするから、よつて生ずる減産分ももちろん御考慮いただかなければ相ならぬかと思います。また石炭に再び転換をいたした場合には、コストの面で、どのくらい影響するかと申しますると、鋼塊のトン当りで二千円ないし三千円割高になるということが申せるかと思います。極言いたしまするならば、コストの面だけから申せば、石炭をただでいただいて、ようやくとんとんになる、こういうことに相なるのでございます。従いまして、この重油の石炭転換の問題は、ほかの産業におかれましても、同様きわめて重大な危機をはらんでおられると存じまするが、鉄鋼についても同様でございます。二十八年度の使用実績は、おそらく七十七万キロリツター程度ではないかと存ぜられまするが、その後重油転換の傾向が一層顕著になつておりまするために、自然の消費を見積りまするならば、二十九年度におきましては、九十三万五千キロリツター程度を必要とするのではないか、これを供給の衝に当られまする石油業の方からごらんになりますると、百三万キロリツター程度の重油を必要とするであろう、かようなお見積りができておるのでございます。もちろん今日のきゆうくつな外貨事情は重重承知をいたしておりまするし、またその制約から生れて参りまする重油の輸入削限もやむを得ない御措置とは存ずるのでありまするが、鉄鋼業においては、重油がいつの間にかきわめて重大な燃料である立場を占めておる現状に御着目いただきまして、今後の総合燃料対策の面におかれまして、何分御検討をいただきたいと存ずるのでございます。かように石炭、重油ともに、基礎産業でございます鉄鋼業を支える上において、最も必要な原料に相なつておるのでございます。業界といたしましても、今日の情勢を勘案いたしまして、できるだけ国内炭で間に合う努力をいたすつもりでございます。現に通産省で現在お考えになつておりまする御計画によりますれば、二十八年までは、原料炭の使用割合を五〇対五〇、ちようど半分ずつの実績を示しておりまするし、この比率が最も適当なコークスをつくるのに必要な割合でございますが、この外国炭の使用割合を五%方引下げまして四五対五五の比率に持つて行こう、こういう御指導方針なるやに伺うのであります。これは原料炭の面で、国内炭を約四十万トンよけい使うことになるのであります。たかが四十万トンと思召すかもしれないのでございますが、国内炭は、御承知のように非常にアツシユが高うございまして、これを混用いたします率が上れば、ただちに熔鉱炉の作業にあらゆる面で影響いたすのであります。業界といたしましては、お役所の御指導に従いまして、この比率による石炭の消費に遺憾なきを期す予定でございます。また重油も、今日の情勢において、私どもの欲する量が百パーセント与えられるということも困難な情勢は承知をいたしておりますが、これもただいま申し上げましたような事情によりまして、そう簡単に石炭から重油へ、重油から再び石炭にというふうな転換は、事実上困難で、むしろ不可能に近い情勢でございます。この辺をおくみとりをいただきたいと存ずるのであります。従つて鉄鋼業の立場から見ますならば、総合燃料対策といたしましては、何よりも国内炭の面において、できるだけそのコストを引下げて、需要者に供給せられる価格を安くしていただきたいということが唯一無二の私どもの希望になつて参るのであります。おそらく製鉄国数数多しといえども、日本のごとくかように苛烈な条件によつて鉄鋼を生産しておる国はないと思うのであります。現在鉄鋼価格が高いという御指摘を頻繁にちようだいをいたしまして、でき得る限りコストの引下げにあらゆる努力を傾注はいたしておりますが、何分にも鉄鋼業と申すものは、その原料の占める割合が圧倒的に多いために、原料費が安くならなければ、いかように企業内で努力を尽しましても、その実を上げることは困難であります。かような面で、ぜひ国内炭の価格をでき得る限り下げるということが、今後の燃料対策として御展開をいただくべき焦点に相なるべきでないかと存ずるのであります。と同時に、重油も、これは輸入品ではございますが、現実の問題としては、もはや不可欠の製鉄製鋼用の原料になつておりますので、これも所要の生産を完遂いたしますために、必要な限度の供給の確保をお願い申し上げます。これが鉄鋼業界の現況から推しまして、ぜひこの機会においてお願いを申し上げたい要点であるかと存じます。
 きわめて簡単な口述でございまして、おくみとりいただけたかどうか疑問でございますが、また何かお尋ねをちようだいいたしますれば、お答えを申し上げたいと思います。
#14
○中村委員長 以上で各参考人よりの発言は終りました。続いて懇談の形式で質疑に入ります。
     ――――◇―――――
    〔午後三時四十一分懇談会に入る〕
     ――――◇―――――
    〔午後五時熟談会を終る〕
    〔懇談会を終つて散会〕
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト