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1953/03/24 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第4号
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1953/03/24 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第4号

#1
第019回国会 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第4号
昭和二十九年三月二十四日(水曜日)
    午後二時四十七分開議
 出席小委員
   小委員長 永井勝次郎君
      小平 久雄君    首藤 新八君
      中村 幸八君    笹本 一雄君
      柳原 三郎君    加藤 清二君
 小委員外の出席者
        議     員 田中 龍夫君
        議     員 齋木 重一君
        通商産業事務官 
        (中小企業庁振
        興部長)    石井由太郎君
        参考人(東京銀
        行協会連合会交
        換部長)    佐藤 良輔君
        専  門  員 越田 清七君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 中小企業金融に関する件
    ―――――――――――――
#2
○永井委員長 これより会議を開きます。
 本日は御多忙中を特に御出席くださいました東京銀行協会連合会交換部長佐藤良輔君
より、参考人として中小企業金融、特に手形交換の問題について御意見を聴取することといたします。佐藤良輔君

#3
○佐藤参考人 ただいまから不渡り手形の問題を中心に、お手元へ差上げました資料によりまして御説明申し上げたいと思つております。この不渡り手形の問題は、戦後濫発横行し、このことがちまたに話題となつたのでありますが、もともとこの不渡り手形の増減趨勢というものは、景気変動の重要指標といたしまして、戦前も注意を払つたものでありますが、特に戦後数字が目立ちまして、種々問題を投げかけておりますが、その発生要因の第一にあげられますものは、やはり敗戦によりまして、日本経済の基底が浅くなりまして、軽微な経済変動でも不渡りを誘因する。第二には、やはり敗戦によりまして、国民の道義心の低下が金融界方面にも波及いたしまして、不渡り発生要因が著しく悪性化して来た。第三には戦後金融制度の改革の方向があらゆる金融機関をして普通銀行化の方向に持つて行つた。そのために取引範囲が拡大いたしまして、手形知識の乏しい取引者が増大いたしました。これらが互いに因となり果となりまして、今日のような不渡り手形濫発時代を現出したものと思うのであります。当時この不渡り手形が金融市場を横行していること、そうして商取引を著しく乱しているという声が高かつたのでありますが、当時この不渡り手形に対しまする届出制度が、銀行の自由意思にまかされておりました関係上、この実態の把握は困難であつたのでありますが、たまたま東西手形交換所が相呼応いたしまして、これら不良取引者を金融界から排除しよう、こういう意図のもとに新たに特殊不渡り制度を創設いたしまして、この制度は銀行より交換所に対しまして、届出を強制化したのであります。これを二十四年の十月に実施いたしまして、初めて東京の金融市場に不渡り手形が一日平均四百件前後、当時は御承知の通りドツジ・ラインに沿うりてわが国経済が動いておりましたので、経済事情が悪い関係から、この数字にございます通り、二十四年の十二月には四百八十三件とかなり大きな数字を出しておつたのであります。ところが翌二十五年七月、朝鮮事変の勃発によりまして経済事情はまつたく一変いたし、繊維の暴騰、思惑輸入に伴う貿易界の活況、株価の暴騰等を先駆といたしまして、わが国経済が全面的な潤いをなして、いわゆる景気高揚の様相を示したのであります。従いまして不渡り数は減少傾向に転じまして、翌二十六年の六月は一日平均二百八十六件、今より顧みますと、この制度を実施いたしまして以来、この数字が最低を画したわけであります。これが同年九月、第一回朝鮮休戦の報が飛びまして、株価の落勢、かたがた思惑輸入筋の貿易商社、それに繊維関係業者の倒産という、一連の景気下降の姿に、再び不渡り手形が増加いたしまして、同年十二月の一月平均は、六百三十四件に上つたのであります。翌二十七年もその傾向を見まして、いわゆる景気沈滞のうちに、株価だけが非常に高騰いたしまして、不景気の株高という特異の様相を示しましたが、株高というものが、決して企業の実態を映したものではございませんので、依然景気の実態は思わしくございません。従いまして同年十二月の不渡り発生数は、一日平均七百八十一件に上つたのであります。昨二十八年初頭も、株価は依然高値を持続いたしまして、当時識者の間に話題となつたほどであつたのであります。たまたま国会の解散、ソ連首脳者スターリンの死、朝鮮休戦の確報など、いずれも株価にとつて悲観すべき材料が重畳いたし、さすがの株高持続も二月四日をピークといたしまして、落勢に転じたのであります。二、三の証券業者までが不渡り手形を発生いたして、倒産の悲境をたどつたのであります。従いまして不渡り手形濫発傾向に、この株価の暴落は一段と拍車をかけたわけでありまして、翌三月には、一日平均七百五十二件、四月には八百十九件、五月は九百六十一件と、交換所開設以来の記録を示しまして、ようやく問題となつたのであります。当時、当手形交換所におきましては、不渡り手形防止対策専用委員会、これを設けまして、これが改善処置を検討したほどであつたのであります。しかしながら先ほど申し上げましたこの九百六十一件の内容を見ますと、大部分は小企業の範囲でありまして、日本経済の大勢には、さして影響は認められなかつたのでありますが、当時朝鮮休戦の会談成立可能の報に、日本経済の急変は避けられないということで、その前途を危惧しておりますさ中、六月八日に例の帝国化学工業が、突如不渡りを発行いたしまして、これが導火線となつて、昨年八月までに、大、中企業十二社が相ついで不渡りを発生、企業の破綻が喧伝されたのであります。しかしてこれら企業の破綻の経緯が従来に見まする行き方と著しくその趣を異にいたしておつたのであります。また一つはその会社の大部分が、東京証券取引所の上場株であつた。第二には当該会社の債務額が、想像もしなかつたほど厖大なものであつた。第三にはその債務の給源の大部分が、いわゆるやみ金融に依存したもので、しかもその債務が手形により、帳簿外で処理されたいわゆる簿外債務であつたという、この三点が問題の焦点でありました。またそれが集中的に発生したため、経済界、金融界に与えました衝撃は決して少くなかつたのであります。従いまして識者の間でひとしく心痛いたしました点は、これら大企業の脱落はいわゆる氷山の一角であり、連鎖反応式に順次拡大するのではないか、また例外的偶発事件として看過してさしつかえないか、この問題に対しまして当時私は、今回の破綻経路というものが異常なものであつて、いわゆる経営者の不謹慎に胚胎しておるので、これ以上平行的に拡大波及することはないと、某当局者に確答したことを記憶しております。しかしいずれにいたしましても、朝鮮休戦の問題は大きなものとなりまして、周知の通りわが国経済が朝鮮事変を背景といたしましてその特需に依存していただけに、この支柱がはずれますれば、当然経済基調の急変は避けられない。かたがた輸出貿易が不振に陥りまして、滞貨の増大等を織りまぜまして、ようやくデフレ的の傾向が濃厚となり、これを憂慮しておりますときに、昨年、例の二十八年度の本予算が成立いたしますると、そこに突如としてインフレ的要因の顕現が叫ばれたのであります。それは皆様御承知の通り、年末に向いまして、政府資金が相当巨額に、しかも集中的に散布されて、これが決定的となりまして、政府はこれの対策として、十月一日よりの日銀の高率適用を強化いたしまして、インフレ気構えを金融面よりチェックしようとしたのであります。さらに年末接近とともに、政府のデフレ政策強行の声明と、日銀の金融引締め政策の強化継続方針が明らかにされまして、もしその通り断行されるものとしますれば、金融梗塞の激成化は必至であるという声に、毎年のことでありますが再度二、三月の危機説が台頭したのであります。このようにインフレ的様相とデフレ的様相とを織りまぜました年末以降の金融市場は、日銀の金融引締め政策の強行実施に伴いまして、デフレ的の様相が急速に濃厚となりました。従いまして不渡り手形の増大傾向はすでに十一月から現われておりましたが、ことに十二月に入りますと、当初より目を追うて増大傾向を強め、同月中の特殊不渡り受理件数は三万六千五百余件、一日平均千三百五十三件となり、既往の最高記録を樹立いたしました。そこでいわゆる二、三月危機に対しまする傾向が、一段と強まつたのであります。この影響を受けまして、越年後の不渡り発生の動向も、年度早々から増勢が強く、一月中の受理件数は二万八千余件、一月平均千二百十八件、引続きまして二月も月初より日銀券の急収縮に反比例いたしまして、不渡り数は上昇線をたどつて参りました。一日月中の数は三万一千六百余件、一日平均一千三百二十件と、既往の最高でありまして、昨年十二月につぐ高記録を残したのであります。ではこの不渡り数の増大傾向は、一体手形小切手の流通量に対しまして、どのような比重を示しておるか、また昨年の一、二月に対しまして、どのような変化を来しておりますか、以上について、数字によりまして御説明申し上げたいと思います。手形小切手の流通量を示しまする手形交換枚数を見ますと、昨二十八年一月中は、二百七十六万枚、前年一月中に比較いたしますと二二・五%の増率でありますが、不渡り数の方は一万八千二百枚、前年同月に対しまして三一%の増率に当つておるのであります。これが本年の一月中の交換枚数は二百九十八万枚、前年一月に比較いたしましてわずか八%の増率にすぎないのでありますが、不渡り数の方は、本年一月中は二万八千枚で、前年の一月に比較いたしますと、その増率は実に五四%の高比率を示すのであります。さらに二月の状況を見ますと、昨二十八年二月中の手形交換枚数は三百二十五万枚、前年二月中に比較いたしますと二八%の増率に対しまして、不渡り手形の数は一万八千枚でありまして、前年二月中に比しまして五六・四%の増率を示して来たのであります。それが本年二月中の手形交換枚数は三百五十六万枚、前年二月中に比較いたしまして、これまたわずか九%の増率にすぎないのでありますが、不渡り数は三万一千六百枚にも達し、前年二月中に比しまして七五%の高比率を示しております。一月同様絶対量におきましても、比率におきましても、本年に見る不渡り数の増勢は昨年に比しはるかに強いということがうかがい知れるのであります。
 なお、最近この不渡りの発生数の大部分が、すでに取引停止処分になつた者の不良手形濫発に起因するのではないかと一部に喧伝されておりますが、事実、昨年五月ごろから同年末にかけましては、確かに不渡り発生数の六〇%強がこの種不渡り処分者の手形発行に基きまするところの不渡り数でありまして、残余の四〇%弱が新規取引者の脱落を意味するものであつたのであります。ところが本年一月には、お手元の表にございます通り、既処分者数と、新規不渡り発生者数とがまつたく同比率を示しております。さらに二月に入りましても、既処分者数五五%、新規不渡り発生者数四五%というように好ましくない方向に変化しつつあることが察知されるのであります。またそのことは新人の脱落傾向の強いことを意味するものでありまして、注目に値すると思うのであります。では、この新人脱落を実際の数字についてお話申し上げますと、本年一月を前年の同月に対比いたしますと、黄紙の段階におきまして二百九人、青紙の段階におきまして二百二十一人、赤紙の段階におきまして二百四十三人、合計六百七十三人がそれぞれ掲載増加分となつておるのであります。さらに二月は前年同期に対比しまして、黄紙の段階におきまして七百二十三人、青紙の段階におきまして五百三十三人、赤紙の段階におきまして三百五十八人、合計千六百余人の著増に当ります。不渡り手形買いもどしによる撤回が、ようやく困難な事態に立ち至つたとも解せられるのであります。
 以上によりまして、一応不渡り発生の実態が把握できたわけでありますが、ではどのような業種が不渡り発生から取引停止処分の線に追い込まれつつあるか。本年二月中におきまする実情を調査したのでありますが、これはお手元に資料はございませんけれども、まず筆頭は繊維でございます。ただいま申し上げまする業種の三割は繊維であります。第二位は土建業者でありますが、これはやや慢性的に出ております。次は食料品、飲食店、菓子製造販売、これは昨年十一月からこの傾向が見えますが、これは多分に米の凶作に影響があると思うのでありますが、ただ問題は、この飲食店は本年に入りましてやや増加しておりますが、このうちには料亭もございまして、これは皆様御想像できると思うのであります。次いで電気器具、皮革、印刷出版、素材関係では鉄鋼、鋼材、木材、石炭、ゴム等があげられておりますが、ただここで越年後の注目すべき現象として御報告申し上げることは、酒の小売りであります。これもどうやら料亭関係を持つようであります。従来一つの種類としてあげらるべきものの数の中になかつたのでありますが、これが相当出ている。これも大部分小売りでありまして、料亭との関係を持つように考えられます。それからいわゆる金融業でありますが、当時は年に一件か二件、これがこの二月中だけで二十四件脱落しておりますが、これがいわゆる保全経済会のあおりを食いました町の金融業者であります。次は運送業でありますが、小口運送業が、これも特に一種目として従来はあげるほどございませんでしたけれども、同様二十四件が二月中に出ております。以上申し上げましたものが大体業種でありますが、しかしこれらのうちにはいずれも著名の会社はございません。しかも不渡り手形の一枚当りの金額が、大体十一万円前後になつております。交換枚数より手形交換を割りました、いわゆる流通量の方は一枚平均二十九万円弱でありまして、この面よりは現在、中小企業が金詰まりの対象であると思われます。先ほど申しました昨年六月から八月にかけました大企業の破綻のときの不渡り手形の一枚平均は、六月が十五万四千円、七月が十六万円、八月が十四万八千円、これに対照いたしましても、現在は依然中小企業に不渡りが発生されておるのであります。
 では今後における不渡り手形の動向はどのような経過をたどるであろうか。現状を起点とし観測する限り、質的な内容は別問題といたしまして、不渡り発生数は増大するものと私は考察するものであります。これは政府のデフレ政策の強行に随伴いたしまして生起された現象といたしまして、政府資金の引揚超過が予想されなかつたほど巨額であつて、銀行預金の増勢鈍化、もしくは不増の形を示しておる。現金通貨、いわゆる日銀券の急収縮を見ておる。預金通貨でありまする手形交換の著しき増勢鈍化と、これに対応いたしまして日銀の一般貸出金の急増、これら一連の関係金融指標の急変化を反映いたしまして、不渡り手形の発生数は三月に入りまして月初め早々より増勢を強めております。
 試みに昨年同期からの動きと比較対象いたしますと、お手元の第二表でありますが、二十九年の三月四日をごらんになりますと、一日に三千四百余枚と一日の記録といたしまして三千枚台を示したことは、まさに記録的であります。また三月二十日までの一日平均は千六百余枚になつております。中旬までの記録といたしましてももちろん最高であります。おそらく過去の最高記録でありまする十二月をはるかに越すであろうことは決定的となつておるのであります。従いまして、現状の金融引締め政策が続行するものといたしますれば、不渡りの増勢傾向は現状を追うと見ていいのではないか。従いまして、四月においては、増大こそすれ減少はすまいと思つております。ことに金融機関におきまして、限られたわく内の資金で融資をするといたしますれば、勢い基幹産業にしてしかも堅実なものに対しての重点融資となります。従つて、現在中小企業を中心に発生いたしておりまする不渡りも、さらには大企業にして好ましくない業績のものに順次しわ寄せすることが考えられるのであります。皆様新聞で御存じの通り、日平産業の件も、私はその一つの現われと思います。当交換所に出まわりました不渡り数は、百三十五枚、七千万円ほどありましたうち、二千二百万は撤回になりましたが、たまたま本日三時をもちまして正式に取引停止処分、明日全銀行に通達が行くはずであります。この内容を見ますと、特殊のものを抜かしますと、大部分が二十万円以下の手形、小切手でありまして、その所持人はおそらく中小企業であろう。従いまして、さらに中小企業より大企業にしわ寄せいたし、そのはね返りが再び中小企業に行く、順次こういうことを繰返しますと、いわゆる連鎖反応式に不渡りはさらに不渡りを生む、こういう形をとるのではないか。従いまして今次政策によりまして、ある程度企業の整理が避けられないといたしますれば、私の職場から見れば、日平産業のごとく不渡り処分となる以前に、それぞれ整理合同されますことが望ましいと思います。
 以上、簡単でございますが、現状を御報告申し上げます。
#4
○永井委員長 ありがとうございました。以上で佐藤参考人の御意見陳述は終りましたが、速記の都合もございますので、以後の質疑は速記を付さないで、懇談会の形式で行いたいと思いますが、御異議ありませんか。
#5
○永井委員長 それでは懇談に入ります。
     ――――◇―――――
#6
○永井委員長 これにて懇談会を終ります。本日はこれを持つて散会いたします。
    午後五時十一分散会。
ソース: 国立国会図書館
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