くにさくロゴ
1953/05/19 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第7号
姉妹サイト
 
1953/05/19 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第7号

#1
第019回国会 通商産業委員会中小企業に関する小委員会 第7号
昭和二十九年五月十九日(水曜日)
    午後一時五十九分開議
 出席小委員
   小委員長代理 齋木 重一君
      小平 久雄君    首藤 新八君
      中村 幸八君    福田  一君
      笹本 一雄君    柳原 三郎君
      加藤 鐐造君
 出席政府委員
        通商産業事務官
        (繊維局長)  吉岡千代三君
        中小企業庁長官 岡田 秀男君
 小委員外の出席者
        議     員 田中 龍夫君
        通商産業事務官
        (中小企業庁振
        興部長)    石井由太郎君
        参  考  人
        (福井繊維協会
        会長)     前田 榮雄君
        参  考  人
        (福井精練加工
        株式会社取締
        役)      南光仁三郎君
        参  考  人
        (桐生織物協同
        組合理事長)  大澤菊太郎君
        参  考  人
        (館林織物協同
        組合理事長)  古屋 安政君
        専  門  員 谷崎  明君
    ―――――――――――――
四月二十一日
 永井勝次郎君四月十六日委員辞任につき、委員
 長の指名で小委員に補欠選任された。
同 日
 永井勝次郎君が委員長の指名で小委員長に補欠
 選任された。
五月十八日
 笹本一雄君三月二十九日委員辞任につき、委員
 長の指名で小委員に補欠選任された。
同 日
 小委員加藤清二君同日辞任につき、その補欠と
 して齋木重一君が委員長の指名で小委員に選任
 された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 中小企業に関する件
    ―――――――――――――
#2
○齋木委員長代理 これより会議を開きます。
 本日は私が小委員長の職務を行います。中小企業、特に絹、人絹織物及び染色企業の諸問題につきまして、参考人より御意見を聴取することにいたします。参考人各位におかれましては、御多忙中特に御出席くだされ、厚く御礼申し上げます。十分に忌憚のない御意見を御発表くださいますよう御願いいたします。なお各位に念のため申し上げておきます、御意見発表の時間は一人約十五分といたして、御発言の際はその都度小委員長の許可を受けられることになつておりまするので、念のために申し上げておきます。それでは第一番に前田栄雄君にお願いいたします。
#3
○前田参考人 輸出を中心といたしました絹、人絹織物業界の現況を申し上げまして、いろいろと御要望申し上げたいと思う次第であります。
 お手元に配付いたしましたグラフでまずごらんになつていただきたいと思うのでございますが、福井の人平第一号の価格の推移というのがございます。福井の人平と申しますると、これは全国の人絹織物で一応標準の品種に相なつておりまするが、昭和二十五年の一月から昨年一ぱいまで、まる四箇年間の実績をここヘグラフとして表わしたのでございます。取引価格と原糸代と製造原価、これを三つの線で表わしたのでございまするが、これをごらんになりますと、一目瞭然とすると思うのでございますが、この四年間を通じまして、正常な、製造原価を上まわつて取引されたということが、ほとんど一日もないといつてもいいのでございまして、常に糸代すれすれの取引価格を呈しておりまして、これが原糸高の製品安という現象をもたらして来ておるのでございます。これはどういうところに原因があるかと申しますと、もう一つの別表でごらんになつていただきたいと思うのでございますが、現在われわれ全国連合会所属の工場数が一万九千九百六十工場ございます。織機の総台数が広幅、小幅合せまして二十一万九千三百四十九台、広幅に換算いたしまして十八万四千台ということに相なつております。ところが、この表でごらんになりますとおわかりになりますように、昨年度の一箇年間の実績を見ますと、われわれの業界におきまして、絹及び人絹織物といたしまして、合計八億七千四百十一万二千平方ヤードを製造しておるのでございますが、その生産高及び昨年度の原糸消費量から割出しますと、昨年一箇年間の織機の稼働台数は十三万二千四百台となつておるのでございます。従いまして先ほど申しましたように、年度末の広幅換算台数が十八万四千台でありますので、差引五万一千六百台という過剰織機をかかえておるということに相なるのでございます。従つて操業度は七二%ということでございます。つまり二八%の過剰設備をかかえておるということに相なつておりまして、これが常に潜在購買力となりまして、生糸及び人絹糸の購買力となつておるわけでございます。試みに昨年度の原糸生産量を見ますと、生糸で昨年は二十五万七百二十一俵生産しております。そのうちで、糸でアメリカその他へ輸出いたしましたのが六万三千四百二十俵でございまして、差引内地へ残りました生糸の量は十八万七千三百俵になります。ところが、ここの備考欄に書いてありますように、われわれ業界において消費いたしました生糸の量、が括弧の中にありますように十七万四千九百四十俵でございまして、原糸供給量のほとんどを使い尽しておる。また人絹糸におきましても、昨年度の全国人絹六社の生産量が一億四千五百万ポンドであります。そのうち糸で輸出いたしましたのが、千六百万ポンドでありまして、差引一億二千九百万ポンドが内地の供給でございます。そのところを備考欄にございますように、われわれ業界において消費いたしたのが一億一千三百一万ポンドとなつております。従つてこの差額は雑貨類に消費されるのでございます。そういうぐあいに、はとんど原糸の供給量そのものを全部使い尽して、しかも五万一千六百台の過剰織機をかかえておる。これがわれわれの業界における今日の不況の根本的な原因でございます。従いまして人絹、ことに人絹糸におきましては、人絹六社が電話一本で連絡すれば、潜在カルテルのごとく価格協定ができるような仕組みになつております。そういう関係から、それを買う業者は全国に二万になんなんとし、供給する方はわずかに六社だ、こういう非常に力のアンバランスということと、織機のアンバランスということが、どうしてもわれわれ業界においては一つの糸高製品安の大きな宿命になつておるのでございます。従つてわれわれといたしましては、これをまず何とか是正しなければならない大きな根本施策であります。これは政府の方に強くお願いをいたさなければならない問題なのであります。われわれ自主的には何ともなしがたい問題であります。
 次に現在におきましては、原糸の供給、海外に対する輸出の価格が、国内の価格と非常な差額があるのでございまして、最近におきましては、内地の価格もポンド当り二百十五、六円前後になりましたが、つい最近までは、二百六十円から、三百円までしておつたのでございます。その当時海外へ輸出しておつた価格が百七十円から二百十円見当でございます。それで海外の方に対しては、内地を犠牲にして出荷しておるというふうな状態でございまして、そういう状態がわれわれ輸出織物に従事する者に非常なハンデイキヤツプになつておるわけでございます。つまり外国に対しては安い人絹糸を供給する。そうすると外国の繊維産業、人絹産業というものは、その安い糸で織り上げた製品が出て来る。そして日本においてその生産量のほとんど大部分を生産しておるわれわれ業界の輸出製造業者というものは、七、八十円も高い価格で織り上げたもので海外のそういう安いものと太刀打ちしなければならぬ。ここに非常に大きな矛盾があると思うのでございます。今日のような状態で参りますならば、われわれはここしばらくにして崩壊のやむなきに至るであろうことをおそれるのでございます。こういうことから昨年の暮以来、通産省におかれましては、原糸の共同購入という問題を大きくうたわれまして、安定したより有利な価格でお前たちの方へ糸を渡そう、そうして輸出織物振興に大いに力をバツク・アツプしてやろうという非常にありがたいお気持ではございましたけれどもすでに半年になんなんとするけれども、なかなか軌道に乗らないような現状でございます。それはわれわれが中小の、しかも力の弱い団体である。しかし相手方は大企業である。そこの力の違うものが経済取引をやれということであつただけでございますので、われわれはここで対等の立場で、政府のお考えになるような安定した価格で入手するということは、今日の状態で放置されるならば、私は永久にこれは実現不可能と存ずるのでございまして、ここに通産省がほんとうに輸出織物界というものを育てて、そしてしかも輸出振興の一端に資せんとするならば、大いなる勇断と決心をもつてわれわれを誘導せられんことを切にお願い申し上げるのであります。
 次に私はもう一つ絹、人絹織物界の当面する大きな問題について申し上げたいと考えるのでございますが、われわれの絹、人絹業界の設備は、準備工程及び力織機ともに非常に旧時代的なものでございまして、十年未満の織機台数というものは、ほとんど全国的に見まして二割五分くらいなものでございまして、その他のものは平均十七、八年の耐用命数をすでに終つておるような次第でございます。そういうことからして、われわれはどうしても早急に設備の近代化、従つてそれによつて合理化を行つて、良質廉価の品物をつくるという方向に向わなければならないのでございます。ところが、海外におきましては、先ほど申しましたように、イタリアあるいは日本から非常に格安な原糸を供給して、いわゆる民族自立の潮流に乗りまして、われわれの戦前の最も大きな得意市場でありました近東ア並びに南アフリカに対しては、そういう安い糸価格で出しておるのでありますが、そういう所が、経済自立の線に沿つて、最近軽工業特に繊維工業の自立にそれぞれ政府の強力なバツク・アツプのもとに立ち上りつつあります。そういう国々は、われわれの輸出入絹織物について、相当に阻止的な行動をとつておるのでございます。そうしてまた価格の面においても、われわれは非常に不利な立場に立つておるのでございます。また先進国の欧米は、われわれよりもずつと進んだ、優秀な準備工程と力織機でやつております関係上、ほとんど完全無欠といつていいような、非常に良質でしかも高級品を織つておるのでございまして、これがわれわれの重要な得意先へ、やはりどんどんと製品の販売に全力を集中しておるようなかつこうでございます。従つて現地生産の繊維製品と、先進国欧米の繊維製品との間にはさまれて、われわれ日本の絹、人絹工業、特に戦前世界一を誇つたわれわれ業界の今後というものは、一体どうなるのか、サンドウイツチになつて、どちらに進んだらいいかということが当面の大きな問題でございまして、私どもは、ここで中小企業庁並びに通産省におかれて、設備の近代化、従つてそれによる合理化によつてコストを低める、そういう一面に格段の御協力と御理解とをお願い申し上げたいと思うのであります。
 次に、最近大きな話題を提供し、さらにまたわれわれ全国工業者の九割以上を占める中小企業家の最も熱望いたしておりますところの中小企業安定法のことについてお願いしたいと思うのであります。中小企業安定法は、われわれが先ほど申しましたように、非常に大企業家群から苛烈なる圧迫を受けておるということ、それからまた、自由放任経済のもとに、われわれが個々ばらばらの姿のままになつておつた、そして自由主義の本旨にのつとりまして、どれもこれもみな踏みつぶされようとする現況にありますので、ここでどうしても強く団結して、市場の需給情勢というものをよく勘案いたしまして、それにマツチした生産によつて採算の安定確保をはかつて行く、こういうことが最も大きなねらいであります。しかもまた従来の過去四年間の経過を見ましても、原糸価格の非常に大きなフラクチユエーシヨンがありますために、われわれ資力なき中小企業というものが、その渦の中に巻き込まれてしまつて、そうして没落のふちにたどりつくというのがほとんど大部分でございますので、糸価の安定を確保し、採算を確保して、われわれが強い連繋と団結のものとにそれをなし遂げて行こうということから、中小企業安定法というものをお願い申し上げて、前にこれが制定されたのでございます。ところが、現在の安定法で参りましても、なかなか日本の今日における中小企業界というものは、そこまで民主化されておらず、また自覚しておりません関係上、何らか政府の御支援によりまして、また政府の特別の監督のもとにおいて、強く団結をさしていただかなければ、どうしてもやつて行けない。そういうことからわれわれ業界におきましては、安定法にのつとりまして、昨年十月に数量調整に入りました。これは輸出の数量及び国内消費量というものを十分に勘案いたしまして、その面に不都合を来さないような数字で、しかも安定した市場価格をもたらそうという計画で参つたのでございますが、遺憾ながら、われわれ業者の自覚がまだ足りませんのと、それにアウトサイダーの跳梁ということも大きく災いいたしまして、その実を上ぐるに至つておらないのでございます。もう一つ問題は、われわれの体内にあるのでございます。と申しますのは、絹、人絹の輸出産地、特に福井とか、石川とか、富山とかいうふうな所におきましては、そのアウトサイダーは、わずかに三%ないし五%にすぎないのでありますけれども、インサイダーが、現在の協同組合法あるいは安定法に基きまして、脱退加入が自由であるということから、調整組合に入つておつて縛られて賦課金をとられるよりも、アウトサイダーとなつて外におつた方が自由自在で、いざ二十九条の発動されたときに入つてもおそくない、そういうふうにまことに残念な、また今日われわれとして団結しなければならぬ時期に、そういうふらちな考え方が、残念ながらわれわれ同僚のうちにございますので、このインサイダーが、ともすれば脱退を叫び、ともすればきゆうくつだから中止だというふうなことで、数量的には、アウトサイダーは表面的には少いけれども、そのインサイダーが常にアウトサイダー的な行為をとり、いつにでも脱退するような情勢にございますので、われわれが内部の調整をまずはからなければならぬという、安定法の趣旨に沿わない点があるのでございます。もちろんわれわれ調整組合の幹部たる者が、その手腕がないとおつしやればそれまででございますが、今日私ども中小企業の実態は、絹、人絹業界を問わず、ほとんどあらゆる業態においてそういうものであろうと私は考えておるのでございます。そういう面からして、何としてもわれわれは安定法の趣旨にのつとつて、数量その他の調整をやつて参りますが、それとともに二十九条の政府命令の発動を願つて、さらに完璧を期し、糸価の安定をもたらし、しかも長年悩んでおつたところの採算を確保して、将来日本の自立経済に資さんとするのがわれわれの大きな願いでございますので、そういう面からぜひともこの安定法の改正案の通過に対しましては、特段の御理解と御協力をお願い申し上げたいと思うのでございます。時間が限られておりますので、これでやめさしていただきます。
#4
○齋木委員長代理 次に大沢菊太郎君にお願いいたしたいと思います。
#5
○大澤参考人 私は桐生の組合の理事長でございます。
 きようは大体桐生の情勢がどうあるかということを申し上げて、これをこのままにしておくと、大きな問題になる危険があるという点について、自分の意見を申し上げたいと思います。
 今度のデフレの問題ですが、御承知のように、これは昨年の十月、また今年の一月、三月と、三回にわたつて、日本銀行が相当な金利の引上げその他のデフレ政策をはつきり出して参りました。これが実に意外に早く桐生の産地、あるいは桐生といわず両毛の産地に反映してきた。ことに私の産地は技術織物の産地であつて、中小というよりも、むしろ零細あるいは小企業、こういうものが多い。現在のような状態が出て来ると、なかなか容易でない。まず第一に何が現われたかというと、問屋の手形というものが非常に長くなつて来た。もう一つは、銀行の関係が非常にめんどうになつて来た。この問屋の関係というのは、問屋自体も今度のデフレで相当な迷惑を受けており、手形の期限等もだんだん長くする傾向にあつたが、昨今は実にはなはだしい。品物が出てから百日というような手形がかなり多いのであります。産地では、現金――あるいは特別な関係で手形の場合もあるが、大体は現金で糸を買い、しかも零細なあるいは小さな機業者にそれを送りつけまして、それからもらう金が百日前後の手形です。しかも問屋だつてある程度の支払う金があるわけで、これははなはだ不合理きわまることです。実は何年か前から問屋にしておるのでありますが、産地がたくさんあるので、産地同士のいろいろな関係から、実行できなければならないのが、いまだに実行できずにおる。はなはだ残念なわけであります。今日の状況になると、これがいよいよはげしい。特に大資本にある。大資本といつても、今そう大してえらいものではないのですが、大きな問屋が特にわがままな行為をわれわれに対してとつておるのであります。最近になると、品物を出しても、手形はなかなかよこさない。押問答の末、もらう手形が百日前後。しかもときによると、そんなに手形がほしいなら、おれの方はそんな品物はいらないから品物を持つて帰つてくれというような話もある。これは産地側にももちろん多少の反省を要すべき点がありますが、とにかくそんなふうな態度になつております。きようはあまりに問屋の問題に触れませんが、金融機関との関係です。
 金融機関との関係については、日本銀行で、今後もう救済資金は出さないぞ――これは十一月の十九日か八日ですか、支店長会議で総裁がそういうことをやかましく言われました。その総裁の発言が、地方の銀行にそのまま映つて、もう救済資金は出さないぞと言つておる。私に総裁が中央にいて、救済の資金は出さないぞと言うことは理解ができるが、地方銀行が同じような口裏でそういうことを言うのは、はなはだおもしろくない。しかしそんな関係からしばしば銀行との会合等をやつておりますが、何にしても銀行の態度が非常に硬化しておる。その結果はどうであるかというと、結局業者とすると、品物は売つたが、手形はもらえない。また銀行へ行つてもなかなか金融がつかない。そこで資金の繰りまわしというものが非常に悪くなつて来た。三月は大したこともなかつたのですが、四、五月、ことに後期に入つたら、相当な業者でも手を上げる者が出て来たのであります。かようなわけで、しかも手形の不渡り等はたいへんなふえ方です。東京では、昨年に比べると、やはり現在非常にふえて、一日に三千枚前後のものが出るそうであります。しかも五万円までのものが非常に多いが、先ほどちよつと伺うと、七百五十万円というような不渡の手形が出ておる。私の町なんかでは、もちろんそういう大きなものはない。小さな手形で、大きくてまあ十万円くらいの手形ですが、それがやはり不渡りになつて相当出ておる。その影響がまた各方面に及んで、かなりの会社等にも倒産のおそれがあるものがある。従つて取引が非常にきゆうくつになつておるのであります。
 今度の金融の引締めということは、大蔵当局あるいは日本銀行等から見ますと、非常にゆつくりやつた、急激にやつたのじやないという解釈をしておるようです。しかしながら受けた者の方から見ると、従来そういう方向に行つておらなかつた金融政策が、にはかにひつくり返つたのは、いかなる事情にあるとしても、受ける方の側の被害は非常に大きい。どこへ持つて行つても、これを解決する道がない。そこで一体このデフレというものは、この辺で幾らか緩和するのかどうか。あるいは緩和せざるを得ないじやないか。秋になると緩和する方向に行くんだというような声を出す方もありますが、私の見たり聞いたりしているところでは、これは緩和はしないと思う。むしろ緩和しない方があるいはいいでありましようが、ともかく今年の特需関係の収入というものが、予算では七億何千万円とあるが、最近の情勢から見ると、五億になつた。あるいは五億を切るんじやないかとも思われる。これは朝鮮の兵隊がだんだん引揚げて来る。ああいつた戦争がなくなつたので、その方の関係の特需もないわけで、これは当然であると思いますが、さような状況で、これは相当減少するんじやないか。しかもまた別に米作の話を聞くと、北海道あたりでは、ことしは悪いし、相当外米の輸入を見なければならないのではないか。こんなことを聞かされたり、あるいはまた考えたりすると、一番やつかいな国際収支の問題がどうなるかということについて、実際寒心にたえないのであります。まず緩和ということは考えられず、今後はむしろデフレの方はなお相当強化される。こう考えて行くことが一番安全であります。その結果が一体どういうことになつて行くかというと、おそらくは繊維関係の各企業者は、まつたく金融だけの問題で首を締められまして、全部がおそらく没落をするということになるのじやないかと思われます。そしてこのまた連鎖反応が出て、日本経済界というものに相当な打撃を与えるのではないか。これは大企業が大丈夫だというようなことはとても言えない。現在は、大企業というものは、アメリカ等においても中小企業なしには存在しない。これは明らかな事実であつて、大企業だけで何とか国の繁栄がはかれるというふうに考えることは、全然認識の足らない不勉強の結果でありまして、日本では特に中小企業は大事なものである。その中小企業の中のわれわれの方の部門は、まつたく没落をする。現在のままで行けばそうなるので、議論なんかは必要はない。非常にはつきりしておる。私はこれをひとつよくお考えおき願いたいと思います。
 最近金融の独走というような言葉がしばしば見られるのですが、現在はまつたく金融の独走であつて、財政面において多少の収縮方策はとつておるわけですが、これも地方財政等においては必ずしも収縮されておりません。問題はなかなか大きいので、私は経営者の諸君は、これらの問題をまともに見て、よほど考えてもらわないと――ということは、この際総合対策を考えていただかないと、金融だけにまかせておくと、まつたく取返しのつかないような状況まで来るのではないか。この点非常に心配にたえないのであります。
 なおこまかなことは、御質問等があれば申し上げますが、私は現在のデフレ政策の育成ということは、非常にあぶない。これはよほど御注意願つていたがかないと、たいへんなことになる一つの口火ではないか、こんなふうに思います。簡単ですが、一言申し上げて、終りといたします。
#6
○齋木委員長代理 次に、古屋安政君にお願いいたします。
#7
○古屋参考人 私は館林織物協同組合の理事長をいたしております古屋でございます。本日の通産委員会の御処置は、われわれ非常に感激いたしておるのであります。それは歴代の内閣が、大きな資本家と会合する機会があるように新聞紙上でときどき見受けるのでありますけれども、中小企業のほんとうの声をお聞き願うというふうな機会を与えられましたことにつきまして、非常に感謝しておるような次第であります。
 ただいま大沢さんからいろいろお話がありましたが、私たちは両毛地方を一環といたしますきわめて弱小機業地であるのであります。従いまして現在のデフレ政策による金融の引締めが、それぞれ大阪、京都あるいは東京の大商社の破綻によつて、その受ける被害が非常に大きくなつて参りまして、これを放任いたしておきますると、ほんとうにわれわれ中小企業は全滅することに相なろうと深く憂えておるのであります。私はこういうふうな観点から、小さな館林の産地の例をあげてみますると、二十八年の六月には、毛織り広幅が三百八十台あつたのであります。小幅織機において四百七十台、工場数において四十五工場あつたのでありますけれども、現在残つておりますのは、きわめてわずかな数字になつたのであります。その毛織り広幅の三百八十台のうちの約百八十台、小幅において百五十台、これが破産いたしまして、もうすでに整理を完了いたしまして、廃業いたしたのであります。その工場数が六工場、現在はすでに三十九工場しか残つておらないのでありますけれども、その中で操業しておるのはわずかに八工場であるのであります。これはもちろん下請の工場で、下請を仕事にいたしております関係上、辛うじて繰業している程度のものが八工場であるのであります。さらに半操業しているのが十四工場、今中止いたしております工場が十七工場なのであります。しかもこうした小さな台数ではありまするけれども、二十八年の六月には、工員の数で八百五十八名がこれに携わつておつたのであります。この工場は、機巻きの工場、あるいは染色、整理等々ありますけれども、一応機業家を対象といたしますると八百五十八名という数字があつたのであります。現在それが二百七十五名、失業工員が五百八十三名という異常な数字に相なつておるのであります。こういうことを私考えてみますると、御承知のように、中小企業がほんとうに破産いたしまするときには、遅配の工賃を払うのがやつとこすつとこの状態で、退職資金などはもう夢だに見ることができない現状なのであります。従つてこの工場の中には、あるいは十五年、二十年という勤務をして、そうしてその経営者の工場の繁栄を望みながら、営々として全半生をそれにささげた従業員もあるでありましよう。その従業員は、そこで十五年なり二十年、三十年なりの勤務をしていれば、それにすつかりなじんでしまつて、はつきり申し上げれば、ほとんどかたわの人間かできたと言つても過言でないと思うのであります。こういうふうにちまたに失業者としておつぽり出されたその人々は、これはどこにも適用のでき得ない人間なのであります。これは人間として、食うか食われるかのためには非常手段も考えなくてはならない事態が起きて来るのではないかということを私は非常に憂えるものであります。もちろん金融のデフレ政策によつて、中小企業は倒れてもいいのだというようなお考えがかりにもあつたとしたならば、私はこれに絶対間違いであつて、現在の日本の産業は、九割の中小企業によつて発展をいたして参つた今日、この中小企業による失業者がちまたにあふれることを考えますときに、私はよし金融引締めによつて日本の経済が破綻を来さずに済んだといたしましても、その反面、私は思想的に大きな動揺が必ず起つて来るのではないかということを憂えるのであります。こういうふうなことを考えておる。これは桐生の問題でありますけれども、一昨日の朝、前橋の放送局で、桐生の長期欠席児童が四%にわたつておるという放送をいたしておるのであります。これは桐生の織物があまりに不況のために、学校にやらずに自分の手伝いをやらせる、あるいはほかに職を求めて、辛うじて小づかいとりをしているという非常に悲惨な状況を放送されておるのであります。まつたく四%の長期欠席の児童というのは、かつてない悲境だというふうなことを放送されておるのでありまするが、こういうふうなことを思うにつけまして、ただいまも申し上げましたように、実際このままの現状にしておいたならば、私は思想的に日本は滅びるのではないかということを憂えるものであります。
 さらに先ほど申し上げましたように、商社、問屋の破産ということも、これも大きな問題で、先ほど大沢さんからお話のありましたように、百日にわたるような長い手形を受けております。従つて商社が破産いたしますると、それぞれ買付資金に影響があり、そうしてわれわれ中小企業の機業家は、ほんとうに金のくめんをして、この手形を買いもどさなければならぬというような状態なのでありまして、ふだんのときですと、銀行も多少めんどうを見るでしようけれども、現在の金融状態では、どうしても銀行が待たぬというような現状に追い込まれつつあるのでありまして、まことにこれを私は非常に憂えておるのであります。さらにもう一つ申し上げたいことは、中小企業専門の金融機関を設置していただきたいということを私はお願いいたしたいと思うのであります。現在、商工組合中央金庫であるとか、あるいは国民金融公庫であるとかいうふうなものが一応できておるのでありますが、しかしながら、これからわれわれ弱小機業家が借りんとすれば、お前のところは資格がないぞ、これに対する何か保証がなければだめだというようなことによつて、これがはたして中小企業の育成に使われているかどうか、これもどうか厳重に御調査を願いたいと思うのであります。これらは往々にいたしまして地方の顔役によつて利用されて、ほんとうの弱小機業に行きわたつているかどうかということをよく御調査をお願いいたしたいと思うのであります。この問題は、少くとも現在悩んでおります金融政策上に緊急必要なものであると考えますので、私はぜひ御調査をお願いする次第であります。
 さらに最後に申し上げてみたいと思いますことは、本日のような機会をお与えくだすつたことをほんとうに感謝いたしますと同時に、権威ある通産委員の皆さん方が、われわれ中小企業のあり方をよく知つていただく意味において、われわれの産地にぜひとも御調査にお越しを願いたいと思います。百聞は一見にしかずで、私がいかにこう申し上げても、何を言うかというようなお考えがなきにしもあらずであると思うのでありまして、この点どうしても通産委員の方々に現状をよく把握していただいて、中小企業はほんとうにこれだけの塗炭の苦しみをしているのだということをぜひとも御認識いただきまして、幾分でも政府の政策の緩和をお願いいたします。私は今ただちに幾分で中小企業の救済の策を講じなかつたならば、全国の中小企業がただ全滅の一途をたどつて行きつつあるということを御承知を願いたいと思うのであります。
 私どもの両毛地方は、ほんとうにほかの土地と違いまして、零細企業が多いのであります。従つてそれに付随しております工員、それに対する家族の者どもの悲惨の姿をぜひとも委員長さん初め通産委員の皆様方に御調査願つて、一日も早く救済の手を延べられるよう切にお願いいたす次第であります。
#8
○齋木委員長代理 次に、南光仁三郎君にお願いいたします。
#9
○南光参考人 福井県精練加工株式会社の南光であります。どうぞよろしくお願いいたします。
 大体二十九条のいろいろな問題につきましては、ただいままでるるほかの方からお話がありましたが、今の機屋さんの問題と直結して、車の両輪のごとく進んでおります染色界の状態につきまして、簡単にお話を申し上げたいと思います。
 大体われわれの染色の面は、全国で百二十数社がございまして、そのうち七六%の人員が参加して調整組合が二十七年の十月にいち早く設置されまして、いろいろと今日までやつて来たわけであります。ところがその調整組合も、現在の安定法におきましては、全然締めくくるところがない。たとえば二四%のアウトサイダーの連中が何の拘束も受けずに、一銭の金も入れずに伸び伸びとかつてなことを――かつてなことというと語弊があるのですが、やれる。ところが参加した七六%の者は数量調整の拘束を受け、あるいはまた会を運営するためにいろいろな費用を出し、何十回となく会議をしてやつているわけなんですが、それでもうまく行かない、こういうことになつているわけであります。大体この染色工業の一番大きいネツクは、みずから計画生産ができないということにあるのであります。これは御承知だろうと思うのですが、海外から注文がある。その商社が注文を受けて、それから今の機屋さんが織られた織物を買い付ける、それを海外から持つて来た注文に見合わして、染めるとか白くさらすというようなことで、われわれの染工場に注文が来るのでありますが、それがたとえば月の初めに一体どれだけのものが出るのか、どういう量が出るのかということは全然つかめない。ところがいろいろな工場は目をぐるぐるにして、自分の一つの工場でやる仕事を探すために東奔西走するというような形であります。ですから今月自分でどれだけ仕事をやるかということが正確につかめないというところに非常に不当な競争が行われるということになるのであります。それでわれわれとしましては、現在の調整組合に対しましては、ほとんど締めくくりも何にもできない。二十九条もだめだ、何もだめだ、これもだめだというようなことで、まつたく一つの業界が団結して、手を握り合つて、最小の線からやつて行くということも何もできなくなつている。一年半われわれはただ生産的な同業者としてのつながりにおいてのみ今日まで来たということに尽きております。ところがいろいろ申し上げたいと思うのは、輸出の面から眺めるわけですが、海外の情勢を聞いてみますと、結局国際価格より日本の染色加工されて出て行くものは高いのかどうか。ところがこれは決して高くないということをよく聞いているのであります。日本の人絹の輸出製品は安かろう、悪かろうということで、物が出されているということでありまして、結局戦後のバイヤース・マーケツトと申しますか、そういうような形から、単なる商社のそろばんの上で商売がされている。ですから海外からオフアーが来た場合に、たとえばこういうものが幾ら幾らならこの輸出を受けるがどうだ、もしお前たちの方でできなければ注文はいらない、やめるのだということで、海外の引合いの値段に適した価格で仕事が行われる。そのしわ寄せが機屋さんの単価に影響し、一番弱い染色のところに寄つて来るのであります。そういうようなことでありまして、結局輸出の仕向地においていろいろ聞いておりますと、西ドイツとかイタリアとか英国とか、そういうものとしのぎを削つて闘つているのではなくて、単にいろいろ追い込まれた日本の取扱いの業者同士の競争がそういうところに来ているのだということをわれわれは聞いて、一体だれとだれとが競争しているのかわからなくなるというような、唖然とする面があるのであります。大体さようなことがありまして、特に戦後――戦争中でもそうでありましたが、われわれの繊維関係、特に人絹関係は糸までは大メーカー、大資本によつてつくられておりますが、織る面と加工する面は百パーセント中小企業によつて生産されております。そういうようなことでありまして、われわれ繊維関係は今日まで政府から何らの援助も受けていない。資金的にも政策的にも、具体的な何の援助も今まで受けていなかつた。今まさに崩壊するという一線を、安定法が出て、われわれはそれによつて初めてすがつてやつて行こうというような情勢であります。どうかそういうようなつき詰めたところをひとつ御理解くださいまして、今いろいろありました二十九条の発動というようなことにつきましては、ぜひとも強力に裏づけを願いたい。ただ一方一年半、何も締めるところがなくて一生懸命やつて来た。まさに今崩壊せんとするにおいて、最後にささえん棒に二十九条並びに安定法の改正を強力な面から裏づけていただきたい、かように思うのであります。いろいろただいままでお話が済んでおりますので、そういうようなことをお願いいたしまして、ぜひとも改正にあたりましては強力な裏づけをお願いしたいと思います。これで終ります。
#10
○齋木委員長代理 以上で参考人よりの御発言は終わりました。次いで質疑に入ります。御質疑はございませんか。
#11
○首藤委員 ただいま参考人の四氏からるる事情を承りました。私どもも大体そういう事態に当面しておるであろうということはよく理解しております。現実の悲惨な姿を詳細に承りますると、さらに想像よりも一層深刻であるということがうかがえるのでありまして、この際にこそ抜本塞源的な対策をとらなければならぬというような気持を強くいたすのであります。そこでただいままでの御説明を承りますると、要するに一番大きな問題は金融難である。そうしてそれがために増産が行われて、結局過剰生産となる。そこで過剰生産がバイヤース・マーケツトになつて、買手の言うがままに売手が組んで行かなければならぬということが今日の窮迫した事態に直面した一番大きな原因だと私は見ておるのであります。そこでこの手形の長期化の問題も、結局は金融難による過剰生産が原因するのでありまして、これを一掃いたしまするためには、どうしても生産の調節、これ以外にはないのであります。同時にまた輸出の面も、ただいま承りましたが、その通りであると想像いたします。特に日本の輸出が、国際価格に比較して決して高くないにもかかわらず、輸出がともすれば不振に陥つておりまするのは、結局内地の濫売である。安いオフアーを出しますことによつて、非常に安いと思つて買つた海外の貿易商が買手損に当る。どこまで日本品が下るかという点に大きな不安がある。そこで安いけれども安心して買えないということが、ともすれば食いつぶしの一番大きな原因だというふうに私は考えております。かような関係から、どうしても内地の市況を安定させることが根本である。そうしてそれが対策といたしましては、いろいろの方面から検討いたしたのでありますが、私はやはりこれは安定法をつくる、これ以外にはない。そうして片一方では生産の調節をやる、一方では金融をつける、そしてこの二者が車の両輪のごとく円滑に運営して、初めてすべての目的を達成するという考え方をもちまして、安定法の提案にもいささか力を尽して参つたのであります。しかるにその安定法をつくることはつくつたが、一向発動しない、ここに問題があると思うのであります。幸い企業庁の長官も今日見えておりますから、私は長官にも伺いたいと思うのでありますが、この二十九条の発動に対して通産省が非常に躊躇いたしておる。そこでマツチとタオルに対してはモデルケースとして、とにもかくにもこれを実行すべきである、そしてタオルの方は設備の制限まではやらぬでもいいということで、結局マツチに対してのみに命令を出したのであります。しかしながら先般このマツチ業者が見えまして非常に喜んで参つた。おかげをもつて、まだ発動しないけれども、発動するということが発表されたことによつて、市況の不安は根本的に一掃された。そして銀行業者にも非常に喜んでもらつて、今後はこの線に沿つたならば必要な資金も全部出そうということを金融業者から強くお話があつたということで、実は非常に喜んで参つたので、私たちもそれがかねての目的であつただけに、この二十九条の発動、ことに安定法をつくつたことが決して無意義でなかつた。予想よりも、あるいはより以上の効果があつたというような気持を強くし、特に最近のような金融の逼迫、そして中小工業が全部のしわ寄せを受けておる現在の姿を見た場合に、どうしてもこの安定法をより強化いたし、そしてできる限り広い範囲にこれを適用すべきであるという考え方を実は持つておるのでありますが、どうも今までのところは通産省の方がともすれば躊躇する。そこできようは軽工業局長は見えておりませんが、幸い繊維局長が見えておる。先般も絹、人絹の織物に対して二十九条を適用すべきであるということを強くわれわれは主張したのでありますが、なお時期尚早ということが今日までになつておりますが、今日の事態においてなおかつ時期尚早であるという考え方を繊維局長は持つておるかどうか、同時にまた中小企業庁長官は、これまた現在のような事態になつて、なおこの春以来の考え方をそのまま継続しておるかどうか、この点をひとつ両政府委員にお伺いしたい。
#12
○吉岡政府委員 絹、人絹の機屋さんの問題につきましては、前々からしばしば業界の実情等も伺いまして、要するに結論といたしましては、まず糸価の安定をはかることが最も基本的なポイントであるということに意見が一致いたしまして、これにつきまして、御承知のように昨年暮れの取引所における糸価の高騰につきましては、出し値の抑制措置をとり、また中間の段階等において高い糸を買われることのないために、これの裏づけといたしまして、糸の共同購入の制度の推進をはかつて参つた次第でございます。昨今の状況といたしましては、糸価も、これは極端に申しますとやや急激に下り過ぎたような見方もあるわけでございます。しかし以前の高い糸という問題はやはり続いておるのではなかろうか、かように考えております。従いまして、まずそのポイントをぜひとも解決いたしたい。共同購入につきましては、各産地別に、たとえば桐生あたりは親機、子機の関係が中心になつております。あるいは福井等はそういう関係がないのであります。それから石川の方は賃機が主体をなしておるというふうに、産地によりましていろいろ実情が違うわけでございますが、それぞれ組合と、それぞれ関係の地方庁、それから日本銀行の支店等の御協力を願いまして、それぞれ現地の実情に応じました具体策を立てまして、進めつつあるような次第でございます。従いまして、われわれといたしましては、基本問題をまずもつて解決することに全力をあげて参りたい。いろいろな手段を同時にねらうということよりも、むしろそれよりも、一番ポイントの糸値の問題に全力をあげたいというふうに考えておりまして、業界も、私ども承知いたしておる限りにおきましては、現在までそういう方向に御協力を願つておる、こういう現状でございます。従いまして、そういう形において糸値が安定し、従つて織機の増設等も積極的に出て来るというような事態においては、設備の制限等のこともぜひとも考えていただきたいというような御意見に承知いたしておるわけでございますので、現在のところはそういう方針で参つておることを申し上げます。
#13
○岡田(秀)政府委員 私は安定法のねらいといたしまする設備の制限、あるいは生産ないし出荷の数量の制限その他販売方法でありますとか、原料購入方法とかいろいろございますが、中心といたしましては設備の制限ないし生産、出荷の数量制限というところが骨子であると思います。これは今の日本の国全体としての政策といたしまして、物価を下げて国際物価にさや寄せして行こうという趣旨からいたしまして、軽々にはいたしかねるのであります。ただちよつと採算が合わないというふうな軽い気持でこれを扱つてはいかぬので、むしろこれをやるという場合におきましては、輸出の増進をして行く上において、日本の製品の価格が非常に不安定であるために、輸出が伸びない。それらとの関連におきまして、輸出組合との連繋のもとにおいて発動が要請されるというような、日本全体としての利益がこれに見合うというような場合において発動するのが適切じやないかというような考え方を持つておるわけでございますが、具体的な問題といたしまして、輸出向けの絹、人絹の業界に関して、この安定法を出すか、出さないかの問題につきましては、先ほど、繊維局長が申しましたように、まず人絹糸の値段が輸出向けに適切な値段において安定するということが伴いませんと、単に安定法を出すというだけで問題の解決は困難じやなかろうかというのが大体の研究の結果でございます。爾来繊維局を中心として糸の関係を操作して参りました結果、デフレ政策の効果も加わつたかとも思うのでありますが、最近大体適正なところにおちついておる様子でございまして、繊物と糸との関係の採算状況を見ましても、最近のところにおきましては、やや機屋さんの方においても、非常に満足とまでは行かぬかもしれませんけれども、まずまずというところにあると見受けるのであります。大体この状態が推移して行きますれば、業界においても安定した操業ができるのじやないかと思うのでありまするが、先ほど繊維局長も申しましたように、それによつて新しい設備の増設を誘発する、あるいはまた生産数量が非常に多くなりまして、現在の安定状態がさらに破壊されるというふうなこと、ひいては輸出に対して悪影響を及ぼすというような事態がありますれば、これは安定法として処置する段階といろふうに理解できるのじやないかと思つております。一時この業界もいろいろと問題がございましたけれども、現在のところややおちついた状況にあるというのが、私どもの一応の見方でございます。今後の推移によりまして、私が先ほど申しましたような意味において、必要が起きて参りますれば、これは安定法を運用するのに特に躊躇するということではございませんけれども、そういうふうな積極的な要請も加わりまして、判断をすべきことではないかというふうな心持ちで事態をながめておるのであります。
#14
○首藤委員 私は今長官並びに繊維局長の答弁を承つて、非常に失望を禁じ得ない。特に繊維局長は原糸の価格を安定させることに主力を注いでおる。そうしてそれによつて中小企業の機屋が安定するであろうという考え方を持つておる。おそらくこれほど皮相の考え方はないと私は率直に申し上げたい。原糸の相場を安定させるというが、原糸は何によつて相場が動いておるか。これは世界の情勢あるいは原材料の情勢、すべて大勢で動いておるのでありまして、それを日本政府は単に力によつて安定させるということは、おそらくこれは一時的に効果があるかもしれませんけれども、永久にそのような安定ができることは実際上困難であることは、これはおそらく経済人の一考するまでもなく、判断できることだと私たちは考えておるのであります。かりにそれができるといたしましても、現在の業者が行き詰まつておりまするのに、原糸の安定でなくして、金融難によるところの、過剰生産、これが原価を割つた出血販売になり、そして投げになり、そうして、六十日なり九十日前の高いときに出した手形を落さなければならぬ。それを落すためには、価格が下つておるから、そのときよりもたくさんの量をつくつて行かなければいけない。これがだんだん重なつて行くところに過剰生産の度はますます深刻になつて来る。そうして、それにつれて値段が安くなる、私らの考えておるのはこれであります。だからこれを切り離して、根本的に切開しなければ、どんな方法をもつてしても業界の安定は期待できない。こういう結論に到達するのであります。これはひとり絹、人絹だけじやない。あらゆる中小企業の業界がこういう状態に置かれておる。そこで私は現在の物価引下げの方法として金融の引締めの手段をとつておる。あるいはこれを金融独走と言います。私に当初からこれに対しては徹底的な反対論者で、予算の編成当時、あるいはその後においても今日まで終始これに反対して参つた。なぜ反対して参つたかといいますると、物価の引下げは、貿易の促進によつて国際収支を改善する。どうしてもこれは国家の要請としてやらなければならぬ大きな目的であります。けれども金融だけによつて目的を達成すると考えるならば、これほどはなはだしい錯覚はないと思う。ほんとうに物価を引下げるならば、労銀、金利、原材料、これらに下る余地のあるような政治をやることである。しかるに戦前におきましては、自由競争の結果、自分のところの製品を非常に安く売らなければならぬ。それでそれ以上安くするためには、どうしても労働者と話合いをして、苦しい間だけは居残りの時間を無給で働く、あるいは賃金を下げるとかいう話合いができた。今日は労働法規という強硬な法律があるために、まつたくのコンクリートみたいな状態になつておる。戦前の労銀には弾力性があつたけれども、今日は弾力性が一つもない、コンクリートである。もしそれにもかかわらず労銀の引下げを交渉すれば、表には赤旗が待つておる。従つてかんじんの大きな物価引下げのフアクターであるところの労銀は一つも引下げる余地はない。
 残るところは原材料でありまするが、この原材料は、外貨の事情があり、まさに生命線に達するような減り方をしておる。もしこれ以上外貨が減つたならば、日本はたちどころに悪性インフレに突入する。そういう点から見ましても、輸入は抑制しなければならぬ。抑制するならば、その輸入品は高くなる。そういう点から見て、原材料は高くなつても安くなる見込みはないのじやないか。
 もう一つは金利であります。およそ現在の物価は、戦前に比較して三百倍ないし五百倍になつておる。しかるに各企業家の自己資本がこれにマツチしておるかどうか。私たちの見るところによりますれば、一番大きいのが百倍に自己資本をふやしておる。その他おおむね五十倍程度が高い方で、すべては二、三十倍程度である。そうすると百倍にしても四百倍のアンバランス、もし五十倍にすれば四百五十倍のアンバランスが、要するに金融難の一番大きな原因になつておる。そこで今度の緊縮政策に対して、オーバー・ローンを解消するということも一つの目的になつておるが、私はこういうことを申し上げる。オーバー・ローンを解消することはけつこうであるが、一体オーバー・ローンがどうしてできたか。結局物価高と自己資本のアンバランスがあまりひどいために、こういうことが出ておるのではないか。もしオーバー・ローンを解消しようとするならば、この際デフレ政策でなくインフレ政策をやつて、そうして各会社に相当高い配当をさせて、プレミアムが相当ついて、増資が幾らでもできるような態勢をとる、そうしたら、ほつて置いてもオーバー・ローンはもちろん解消できる。しかるにそれをほつて置いて、反対の政策、ことに金融引締めの政策をとれば、今まで配当できておつても無配当になる、あるいは配当が減る、プレミアムがどんどん落ちて来る、あるいに額面を割るかもしれない。この際増資ができるか。増資ができないのにオーバー・ローンの解消ができるかどうか。こういう面に深く思いをいたしていただきたい。しかもそれがためには、戦前は金利の負担というものは、多くても各会社の経常費の一割くらいであつた。今日は三割ないし四割になつておる。いわんや金利は二銭七厘あるいは二銭五厘の戦前並みであるけれども、五百倍の金利をとつておる。要するに五百倍の物価に応じたところの金利を実際においてはとつておるわけです。いわんや戦前においては、銀行は十円札の兌換券を使つていたが、今日は百倍の、千円の兌換券を使つておる銀行の金利の原価を、どうしてそういう高いものにするのか、この点発明しなければならぬ。先般も植村甲午郎氏その他経済人の代表者に来てもらつて、いろいろ経済政策に対する意見を聞いたのであるが、まつたく月並である。私はこの際なぜあなた方は金利引下げの声を大にしないのかということを強く主張した。金利が今日物価高の一番大きなものであり、しかもやり方によつたら引下げる余地があるじやないか、それをあなた方がやらずにいて、ほかの月並のことに頭を使つていることは不可解だということを私は申し上げた。ところが経済人は、要するにみずから金利のことを強く主張すれば、翌日から金融業からいじめられやせぬかという不安があるから、むしろ遠慮しているのじやないかという気持がいたしたのであります。そこで金利が高い、そうして労銀が引下げられない、それから原材料も下げる余地がない。それで一体どこに物価引下げの余地があるか。先般も愛知大臣と論争したのでありまするが、そのとき愛知君は、もうすでに物価はぼつぼつ下り出した、私たちは五月でないと下らぬと思つていたが、三月ごろから下り出したと言つておりましたが、これを正常の物価が下つたこととあなたはお考えになりますが、われわれから見ればそれは投げ相場です。金融難から来た投げ相場だ。それが物価引下けになつておるのであつて、これをあなた方は正常の物価が下つたと考えてこの方針を貫徹するならば、半年後には企業家はあるいは三分の一あるいは半分になるかもしれない。その次に来るものは縮小生産、その結果は悪性インフレだ。そこでそういつた誤つた政策を一日も早く変更すべきであるということを私は強く主張したのであります。その結果が先ほど申したように、植村甲午郎氏その他財界人の代表に来てもらつて御意見を聞いた。ところがいずれも私の考えとは相反しており、まつたく月並的であつたことに私は失望したのであります。しかし大企業家は現在でもやはり相当引下げの余地があるのではないかという気持が私はいたしたのであります。
 ところが中小企業は現在はまつたくどこにも物価引下げの余地はない。もしこれ以上金融政策を強行すれば、倒産あるのみだというところまで来ておると私は思うのであります。それで繊維局長が、原糸の安定ということをこの際やるのだと言われるけれども、原糸の安定で業界が安定するような時機はもうとうの昔に過ぎ去つてしまつて、現在はさようなことでは絶対安定しないというところまで到達しているというふうに私は見ているものであります。そこでもう少し繊維局長も原価計算、あるいは受取り手形がどういうふうになつているか、あるいはその手形の期日か何日間か、それの日歩を計算して、それが原価にどういう影響をしているか、あるいは不渡りがどのくらいあるか、あるいは不渡りにならなくても、手形の支払期の延期がどのくらいになつているかという点を詳細に調査されて、そうして現在の業界がいかに行き詰まつているか、そこで結論的には、安定法を適用する以外にないということが、私は必ずはつきりして来ると思うのでありますから、この際急速に、そういうつつ込んだ底の底まで一ぺん調査されることを、私は希望として申し上げておきたいと思います。
#15
○齋木委員長代理 他に御質疑はありませんか。――それでは参考人に一言御礼を申し上げます。参考人各位には御多忙中のところ長時間にわたつて御出席くださいまして、まことにありがとうございました。本小委員会といたしましては、十分に御意見を参考といたしまして、今後調査を行つて参りたいと存じます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト