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1953/12/18 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 労働委員会 第3号
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1953/12/18 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 労働委員会 第3号

#1
第019回国会 労働委員会 第3号
昭和二十八年十二月十八日(金曜日)
    午後二時三十九分開議
 出席委員
   委員長 赤松  勇君
   理事 丹羽喬四郎君 理事 持永 義夫君
   理事 高橋 禎一君 理事 山花 秀雄君
      池田  清君    青野 武一君
      山口丈太郎君    井堀 繁雄君
      大西 正道君    前田榮之助君
      門司  亮君    館  俊三君
 出席政府委員
        労働政務次官  安井  謙君
 委員外の出席者
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      龜井  光君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        働衛生課長)  石館 文雄君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      江下  孝君
        参  考  人
        (日本化工従業
        員組合委員長) 上原  勝君
        参  考  人
        (全日本金属鉱
        山労働組合連合
        会書記長)   蘇原松次郎君
        参  考  人
        (日本炭鉱労働
        組合厚生部長) 十二村吉辰君
        参  考  人
        (全日本港湾労
        働組合中央執行
        委員長)    兼田冨太郎君
        専  門  員 濱口金一郎君
    ―――――――――――――
十二月十八日
 委員黒澤幸一君、多賀谷真稔君、熊本虎三君及
 び矢尾喜三郎君辞任につき、その補欠として山
 口丈太郎君、青野武一君、門司亮君及び前田榮
 之助君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 参考人招致に関する件
 失業対策、労使関係及び労働基準に関する件
    ―――――――――――――
#2
○赤松委員長 これより会議を開きます。
 失業対策、労使関係及び労働基準に関する件について調査を進めます。
    ―――――――――――――
#3
○赤松委員長 この際お諮りいたします。全日本港湾労働組合中央執行委員長兼田富太郎君を参考人として意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○赤松委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。
 兼田参考人。
#5
○兼田参考人 今御紹介を受けました全日本港湾労働組合の兼田でございます。
 私どもは、終戦の翌年の昭和二十一年に組合をつくりまして、いろいろやつて参りましたところ、どうも港湾労働者の労働のやり方とか、従来からありました古いいろいろな労働環境、そういうようなものについて、これは基準法などをつくつていただいても、とてもうまいぐあいには行かないという不自由を痛切に感じて来たわけであります。そうこういたしておりますうちに、外国では港湾労働法という形で法制化されて、港湾労働者の生活並びに就労の安定というものが、はかられておるということを知りまして、日本においても、日本の国情に沿つたような形で、やはりこういつた法律を制定してもらわなくては困るのではないかということを機関としてきめまして、過去二回にわたりまして、国会に請願書を提出しておるようなわけでございます。
 港湾の現在の事情をかいつまんで申し上げますならば、御存じのように、前の国会で改正されました港湾運送事業法というのがございまして、その事業法によつて港運業者というものは登録をすることになつておりますが、その登録された業者の数が、運輸省の統計ですが、ごく最近で千六百八十業者があるのであります。これらの業者が常用として雇い込んでおる港湾労働者の総数は七万二千人でございます。こういう中で、私どもが一番問題にしておりますのは、七万二千というような数字になつておりますけれども、この数字の中には、常用とは言つておるけれども、実は日雇い労働であつて、その日その日、経営者が君はやつて来てくれというようなことで、都合が悪ければ、もう明日からはよいというようなぐあいで雇われる人が、多く含まれておるということです。そのために、当人の就労の安定、従いまして収入の安定がちつとも得られないわけでありまして、そのために御存じのような港湾労働者のあのアンコとか風太郎という、ああいうみじめな姿になつて、浮浪性を持つておるのであります。われわれは、これをどうしても一つのわくにはめて、浮浪性を定着性にかえて、責任ある荷役作業をし、能率化のために資したいという考えで、港湾労働法の制定をお願いしておるわけであります。
 いわゆる常用と臨時の差がどんなぐあいかと申し上げますと、横浜に一例をとりますと、横浜では、船内労働者と申しまして、船から荷物をおろしたり、荷物を船に積み込んだりする仕事でありますが、この常用が四千三百九十一人おるわけです。これに対しまして日々雇い入れるということで日雇いとして雇われておる人が、四万三千二百五十一人おるわけでございます。こういう割合で、これをかりに、常用の人は月のうち二十五日働くのだから、一箇月二十五日で割りますと、一七五・六ということになるのでございまして、日雇いの人を十五日で割りますと二八八三という、こういう一に対する一〇ないしは二〇というような大きな開きで、臨時が雇われており、そしてこれらの人は、今申しましたように特定の店へ顔づけということで特定に働きに行つておる者と、そうでない職業安定所の窓口から日々連れて来られる者というふうにございまして、中にはあまりたちのよろしくない人なども入るようなことになりまして、港湾労働者の秩序がとかく世間から乱れておるとかいわれるのも、そういうところに主たる原因がございます。
 それから労働者の災害にいたしましても非常に高い率を示しておりますが、これも今申し上げましたような、全然仕事に未経験な人間がおるということと、それから生活環境が非常にすさんでおるために睡眠、休息等がとれていないということ、そういうようなことが原因になつておるわけでございます。ほかにもいろいろそういう意味の具体的な例はたくさんございます。すでに横浜の桜木町・大阪の境川、神戸の弁天浜等、こういうところで見られる日本でも一番醜いと思われるようなそういう姿は、あれが全部、沖仲士だ、港湾労働者だというふうに世間ではいわれておるけれども、あれ全体が港湾労働者ではないのでありまして、港湾がたまたまああいう人たちをしよつちゆう使うという業態であるがために、ああいう群衆の中から一部の人をしよつちゆう雇い入れて来るという、そういう仕事のやり方になつておりますがために、そういうふうにいわれておるのであります。私どもといたしましては、日本の経済が必要とする港湾産業の形の中で、その港湾産業が必要とする労働力を一定のわくをはめまして、そしてそれに保護を与えて行くというようなことにしていただく以外に――いろいろ考えてみ、他の国のやつておるのも研究させていただきましたけれども、それ以外にどうも方法はないというふうに考えまして、いろいろな方面に働きかけ、国会にもお願いをしておるようなわけでございます。ほかにプリント等で書面に書いたものでの資料もいろいろございますので、もしも御必要でございましたならば、提出させていただくことといたしまして、以上非常に簡単でございましたけれども、事情を申し述べておきます。
#6
○赤松委員長 質疑を許します。
#7
○山花委員 ちよつとお尋ねをいたします。これは職安関係にも関連しておりますが、現在の日本の定着した港湾労働者と、ただいま参考人の方からいろいろお話のございました、俗にいう浮浪性を帯びた日雇いの労務者と申しましようか、そういう関係が、職安関係の御調査では、どの程度の数が示されておるか。そして日本の港湾から物資を積みおろし、あるいは運搬、運送等々の俗にいう港湾労働としては、ただいまの貿易にも関係するであろうと思いますが、現状においてはどのくらいの働く力を必要としておるか、こういう点につきまして、職安局長も参つておられますので、御存じでありましたならば、ひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
#8
○江下説明員 港湾労働者のいわゆる常用ないしは日雇いの全国で働いておる数はどのくらいかという御質問でございますけれども、これは私の方でも前から必要に応じ調査をいたしております。何しろ全国相当な数の港湾でもございますし、数も相当変動いたしますので、今的確にちよつと数字をここに持ち合せておりませんが、必要ならば調査をして差上げたいと考えております。
 なお、どのくらいの労働者がいるかという御質問でございますけれども、これも一応港々でそれぞれ船の出入りの繁閑もございますので、なかなかこれも見当として申し上げるのはむづかしいという気がいたしておるのでございますが、大ざつぱな数字でしたら後刻調べて差上げたいと思います。
#9
○山花委員 ただいま参考人の陳述によりましても、これは一般の工場における一つの生産の計画に基く即労働者数、こういう形ではなかなか出しにくいと思うのでございます。そういうところから労働組合関係におきましても、労働力を確保するという意味から、いろいろ国会関係に善処してもらいたいというような陳情が来ておると私どもは考えておるのであります。
 労働組合側にひとつお尋ねしたいと思うのでありますが、政府はただいまこの問題に関して、後刻調査して資料で明らかにしたいと言つておられますが、労働組合関係においても、国会にいろいろ陳情、要請する限りにおいては、ただいま私が政府側に質問いたしました要件については、やはり労働組合としての専門的見地から、いろいろ調査をなさつておられるだろうと思いますので、組合側では常時の労働者数と、それから全国的に、俗にいう労働力を満たすための日雇い労務者関係、ただいま横浜の例を一例にとつて説明されましたが、もし全国的におわかりになりましたならば、ひとつ御報告を願いたいと思います。
#10
○兼田参考人 労働者の全体の数という御質問でございますが、実は私どもが今まで握つております資料では、運輸省の港政課の中に、戦前に港湾運送業等統制令というものがございまして、一港一社の原則で行われて来たのでございますが、その当時からの統計がたくさんございます。そこで、先ほど私が申し上げた港湾労働者の総数の七万二千というのは、ごく最近のものでございますけれども、ある年は八万であつてみたり、ある年は九万であつてみたり、昭和十五年ごろの、日本が一番産業の殷賑であつたと思われるころは、十万を突破しておつたと思われるのでございます。従いまして、そういつた統計で、日本の経済力が必要とする、こういうふうに港湾産業にやらせろというそれだけの数字というものは、私どもが大ざつぱに申しまして、日本の産業が一番殷賑であつたころの港湾労働者の総数で、港湾荷役はまかなえて来たのだから、大体そこらあたりでいいのだろう。そういう統計は、運輸省の調べを伺つてみると出て来るというふうに考えておりますので、大体十万と私どもは見ております。ただ、ここで問題になりますのは、先ほどちよつと落しましたけれども、港湾では常時十二時間労働または徹夜労働が慣習になつております。今日でもそうでございます。全部二交代制の十二時間労働になつております。ですから、横浜へ行つても、神戸へ行つても、ごらんになればわかりますように、ちようど今ごろの時間に職業安定所の窓口にもぞろぞろ蝟集して参ります。これは今晩からあしたの朝にかけて夜の荷役をする労働者であります。そういうわけでありますので、十万というふうに考えますが、労働基準法等の原則で行くならば、これはどうしても相当過激な労働でもありますので、これを八時間労働という建前に直すならば、その割合だけ十万へプラスをして行かなければならぬ。それが私ども、もしも港湾労働者を一定の登録制にして確保するという場合におけるねらわなければならぬ数字だというふうに考えております。
 それから第二番目の御質問の、日雇いの問題でございますが、これは全国的な統計はやはり運輸省の統計の中に、港湾が使つた日雇い労務者として出ておるのでございます。ちようどここには持つておりませんが、運輸省の港政課の統計を私どもは一応信用しております。大体今横浜の一七五に対しまして二八八三という割合でございますが、横浜と神戸はこの差が特にひどいかつこうになつております。他港は少しこれより下りますけれども、そういつた割合で臨時の労働者が使われておるということは申し上げることができると思うのであります。以上でございます。
#11
○山花委員 港湾労働につきましては、おもに日雇い労務の関係から申し上げますと、職安関係に関連性がございますが、船舶荷役という関係から行きますと、ただいま参考人が陳述の際しばしば言われましたが、運輸省の関係というような、こういう形になつておると推察できるのでございます。そこで港湾労働の浮浪性をなくするために、今横浜では風太郎とか、関西方面ではあんこというような言葉を使つておりますが、俗にいうルンペン労働というような形の労働者が相当数を占めていると思います。これをルンペン性をなくするためには、やはり一応の厚生面の施設、あるいは宿泊施設、あるいは作業所に直結するような安息所の施設というようなことが、港湾労働力確保のために必要になつて来ると思いますが、こういう問題についての施設関係で、もし労働省関係でおわかりになつておりましたならば、概略説明をしていただければ、この問題を審議する上においてもたいへん参考になると思うので、御説明を願いたいと思います。
#12
○江下説明員 実は私今手元に持つておりませんので、これもあとで報告させていただきたいと思います。ただ、お話の通り、厚生福利施設は、特に港湾労働者に対しては私は必要だと存じます。そこで先般、本年度の予算をもちまして、わずかではございましたが、全国五箇所に主として港湾労働者を対象といたしました日雇い労働者の簡易な宿泊施設ないし食堂あるいは理髪等を兼ね備えましたものをつくるということで予算を計上して、各府県に指示をしているわけでございます。今後もこの方面には特に意を用いて行きたいと考えております。
#13
○山花委員 お尋ねしたい点がたくさんございますが、本委員会におきましても、突然議題に供されたようなきらいがございますし、これは組合側におきましても、政府側におきましても、参考資料の段取りができていないと思いますので、後日の委員会でなお詳細にお伺いしたいと思います。私の質問はこれで終ります。
#14
○赤松委員長 なお本委員会には、港湾に関する小委員会もできておりますので、小委員会におきましても、今の問題につきましてはさらに検討を加えて行きたいと思います。
 なお港湾労働法の問題等につきましても、あわせて委員諸君の熱心なる御審議をお願いし、かつこれを継続して審議して行きたいと考えます。
    ―――――――――――――
#15
○赤松委員長 次にけい肺病対策に関しまして、全日本金属鉱山労働組合連会合書記長蘇原松次郎君、日本炭鉱労働組合厚生部長十二村吉辰君の両君を参考人として意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○赤松委員長 御異議なければさよう決します。
 それでは、まず蘇原君から先に御意見を御述べ願います。蘇原参考人。
#17
○蘇原参考人 珪肺病は、よろけとも昔言つたそうでございますが、私どもの職場、鉱山で特によけいに出る病気でございます。現在珪肺病について、労働省で調べました結果、検診をして発見をされた患者数は、軽症者を含めて九千五百人、そのうち重症患者が千三百人ほど出ております。珪肺に冒されるおそれのある職場に働いている労働者数は、私どもの方の調査によりますと大体四十万、そしてその全員の調査を行つた場合は、相当数の患者が発見されるのではなかろうかという考え方を持つております。
 この病気を何とかなくしていただきたいということについて、私どもは関係官庁並びに国会に要請をしておるわけでございますけれども、特に私どもの直接関係のある鉱山の経営者に対しても、私ども組合として要求いたしまして、いろいろな方策を講じておるのでございますけれども、何しろ独立採算制に基く経営難ということから、この病気の悲惨なことについては、よくわかつておるのでございますけれども、どうしてもそれをやることができないというのが現実でございまして、みすみす労働者は珪肺にかかるということを知りつつ、その恐ろしい職場で働かなければならないというのが現実であります。私どもは詳しいことは申しませんけれども、でき得れば何とかこれを社会保障制度のような形に持つて行つて、大きく救済していただきたいというのが、私どもの結論でございます。
 この病気の特に発生するのは、鉱山であるとか、あるいは造船会社であるとか、あるいは輸出を主とする窯業関係であるとか、そういうような工場に多く発生しております。私どもの職場においても、大小の企業の中に働いている労働者のうちにも、大きな企業に働いている労働者と、小さな企業の中に働いている労働者とは非常に差がありますので、これらの問題をも含めて、やはり国策として考えていただきたいということを、私どもは常に念願しているわけでございます。いろいろ詳しい点については、また炭労の方からお聞き願いたいと思います。
#18
○赤松委員長 日本炭鉱労働組合厚生部長十二村吉辰君。
#19
○十二村参考人 前参私人から申されましたので、私は医学的な立場から、研究会において専門家からわれわれが聞き取つた点を簡単に申し上げたいと思います。
 御承知のように、現在の珪肺病は、診断学的にも臨床学的にも、絶対になおらないということが、現在の医学界の定説でございます。いまだ第二回の国際珪肺会議までは、これに対する反駁の定説がございません。とすれば、もはやレプラに次ぐ恐るべき病気であるという点が、現在は一般的に知られておらず、この悲惨な病気によつてわれわれが次々に倒れておる点は、あまり知られていないと思うのであります。それでわれわれとして三年間後当局並びに国会に陳情嘆願いたしましたのは、かかる悲惨な状態から何とかのがれたいと思いまして、現行法の労災補償法によつては、とうていその悲惨な状態から解放されることができないので、最初われわれとしては単独法を提議いたしましたが、現在の産業構造からいつて、とうていこれに対して経営者側からお認めいただけないので、余儀なく一歩後退しまして、現行法を根基法にした特別法をつくつていただく、この点は前々国会からわれわれが申し上げておりますので、御了承はいただいておると思います。
 なお、最近になつて、医学的にわかつた点は、この病気は単に特定の坑内産業とか、あるいは窯業だけでなく、遊離珪酸粉塵の発散する職場に五年以上就労した方であれば、必ずこれには多少の珪肺になる素因があることがわかり、さらに進行性がわかつて、この病気は、治療しながらも進行して行くという非常に悲惨なものであるという点もわかつたのでございます。
 さらにこの病状の進行速度が一度、二度、三度と病気の限界を区切られてございまして、一度になるまでに、短かいので一年、長ければ十五年くらい、このように病状の進行速度がきわめて緩慢なために、非常にこれは軽視されがちで、さらにその緩慢な病状に対して、結核菌が伴つた場合は、たちまち結核菌の方の進行速度がきわめて急ピッチなために、遂に結核の病状と診断されまして、隠されてしまう。これは現在の労炭法の矛盾としてわれわれが指摘したい点でございます。
 御承知のようにメリット制のために、もしこれを業務上の取扱いとすれば、三年間の財政負担をしなければならないので、これを避けるために意識的にやる場合と、医学的なそういう一般知識が欠如しているために、取扱つておるお医者さんが無意識のうちにこれを私病と診断されて、そうしてやみからやみへ葬られておるのでございます。すでに世界においては、南阿の単独法を筆頭に、実体法あるいは特別法として、二十六箇国が珪肺に対して特別措置を講じておりますので、わが国においても、病理学的にも、また実情からいつても悲惨なこの状態をぜひ救つていただきたい。
 さらに、最後にお願い申し上げたいことは、これは決して可能性の問題でなくて、粉塵職場に働けば、もはや必然性を持つているといつていいくらい、この病気に冒される危険性がございまして、のがれることができないのであります。この点は、無過失賠償理論として、当然われわれは死ぬまで保障されるのが法理論の建前ではないかと思いますが、しかし現在の産業構造からいつて、中小企業において、このわれわれの要望する療養補償なるものは、いろいろな面で至難な点はあろうかとわれわれも理解しておりますので、この点は少くとも国家産業において必要なそういう産業部門から発生した点は、国庫からも相当の補償をされることによつて、経営者もこの特別法制定に対して、従来のような消極的な態度を一擲して、積極的にこの法制定に御理解いただけるのではないかと思います。さようにこの点をお願いいたします。
#20
○赤松委員長 両参考人及び政府に対する質疑はちよつと待つていただきまして、ただいま、職安局長に対しまして先ほどの山花秀雄君の質問に関連して、青野武一君から質問の通告がございますので、これを許します。青野武一君。
#21
○青野委員 この前の労働委員会のときに、私から労働省当局に、いろいろの面で御質問をいたしまして、大体御理解も得て、去年と同じように日雇い労務者に対して政府が大体五日分の年末手当に類するものを出すということにおきめを願いまして、新聞等を見ますと、東京都の労働局あたりは、相当の金額を別個に年末手当として支給するように昨日、今日の新聞にも出ております。今港湾労働組合の兼田委員長に、一緒に御質問したいと思いましたが、非公式に承つて私も非常に驚いておりますのは、民間産業、特に船内作業とか陸上作業、港湾労働、その他大きなビルの建築等に従事する日雇い人夫の労務者が――失対事業に関係を持つて登録されておる人は去年三日、今年は五日、そういういうことで、わずかではあるが、年末手当に類するものを出すことにきめられておるが、むしろ失業対策事業に関係する人は、どちらかというと軽労働である。ところが、民間産業に従事する人は、七時ごろまで夜業をしたりあるときは徹夜をしたりして働いておる、いわばこれは重労働に類する。そううい人たちを調べてみると、われわれの手落ちであつたと思いますけれども、一銭のもち米代も、年末手当も支給されておらない。それらの諸君の代表者が、この間政務次官を労働省に尋ねて行つたところが、それは出さない方針になつておるし、予算もないのだ、こういうことを言われたということです。こういう点について、今港湾労働組合の兼田委員長にも、私うしろに行つて非公式に聞きましたが、港湾関係の日雇い労務者にしても、全然そういう金は支給されない。同じような立場に立つて、むしろひどい労働に従事しておる人が、一銭ももらえない。失対事業に関係する者は、去年三日、今年五日、そうして私のおります北九州では一人平均千円を別に出しております。三、四日前に、千葉の県庁に私用があつて参りましたときにも、三千六、七百人の日雇い労務者を代表して、千葉の県庁に代表者が来ておつた。事情を聞いてみると、県が四百円を別に出してくれることにきまつたが、それでもやつて行けぬ。それで、私もちようど行き会いましたので、事情を聞きました。千葉は、御承知のように日雇い給料平均二百七十円、せめて二日で五百四十円を出してやつたらどうか。こういうことで交渉して、大体そういう線で行くものと思つて、私は夜おそく帰つて来ましたが、東京都の労働局でも相当の金を別個に出しております。ひとり民間産業に従事しておる日雇い労務者が、何の恩典もないということは、日本の労働行政を担当しておる労働省として、やはりこの点をもう少し考えて、何とかそこのバランスをとつてもらわぬと、不公平になりはしないか。今度の仲裁裁定、三公社五現業、公務員の給与ベースでも、ベース・アップの金額は違いましても、政府の答弁を聞いてみても、大体並行的に一定の水準に持つて行きたい。家族の数、仕事の内容あるいは職業別等によつて多少の差はあつても、大体一本化して行きたい。地方公務員も国家公務員も、公共企業体労働関係法を適用されておる人たちも、大体あまり上下がないようにしたいという後答弁が、たびたび予算委員会を通じて繰返されておりましたが、ここに大きな手落ちがある。こういう点について、職安局長はどのような具体的な対策をお考えになつておるか。このまま行けば、あまりにも不公平だと私は思います。どういうお考えか、ひとつ承りたい。
#22
○江下説明員 お話の通り、安定所で紹介いたします日雇い労働者は、いわゆる失業対策事業に就労いたします者と、一般の公共事業も含めます民間の産業に就労します者と、二通りあるわけでございます。そこで安定所といたしまして、それではどういう人を失業対策事業に紹介し、どういう人を民間に紹介するかということになると思います。何しろ求職の方が多いわけでございますので、いろいろ安定所も苦慮するわけでございますが、一応失業対策事業の場合は、御承知の通り法律におきましても、簡易な仕事、従いまして賃金も一般の日雇い労働者の賃金よりは一割ないし二割低く支払われる、こういうことになつておるわけでございます。そこで結局大勢参ります求職者の中から、そういう失対の失業者を選びまして、その人に登録証を与えて就労させております。ところが御承知の通りに、失対のわくというものは限られておる。月間二十日、二十一日というふうに限られておりますので、もちろん残りは一般の民間に就労させておる、こういうようなわけでございます。
 そこで失業対策事業の労働者に対しまして、いわゆる年末の就労日数の増加ないしは賃金増給という措置が講ぜられなければ、実は問題ないわけでございますが、この点を生活の実態からやむを得ないということで、予算の範囲内で実は捻出をしたわけでございますが、この場合私といたしましては、常時安定所に登録いたしまして、民間の日雇いに出ておつたというような人につきましては、これはできるだけ失対労務者のそういう就労日数の増加、賃金増給等と均衡を保つように、民間の就労をあつせんするということであるべきであると思います。もし安定所の方で、数あることでございますから、あるいは失対の労働者だけが非常に有利になつておるという点が、実は私も調べてみなければわかりませんが、あるかもしれません。これは、しかし全体として考えました場合には、やはりそういうように日雇い労働者のあつせんをいたすべきではないかというふうに、私は考えておる次第であります。
#23
○青野委員 大体御答弁で、要点だけはちよつと了解することができましたが、現実の問題としていろいろな投書もあるし、不満を言いに来る人もある。財政的に恵まれている市町村、自治体は、ある程度出すこともできますが、貧弱な財政状態の地方自治体では、政府の五日分だけで、これにたより切つてどうすることもできないところもあります。それはそれとして、この前の労働委員会でも私は質問したけれども、確約が得られなかつたのですが、少くとも失対事業だけでなく、登録自由労働者だけでなしに、やはり労働省所管の既定経費の中に――少くとも日本の労働者はあまりに懸隔が多過ぎる。夏期手当、そのかわりに三日分の就労日数をふやす、年末には五日分をふやすということでなしに、やはり日本の労労者にかわりがない、もつとみじめな生活をしておる人にはやはり厚くすべきである。そこでいろいろむずかしい法規も必要になつて来るかもわかりませんが、まさかきのう横浜で五日分もらつて、東京へ来てまた五日分もらうというようなことはない、われわれもそう信ぜざるを得ない。そこでそういう点についても、少くとも日本の日雇い労働者のために十五日分ぐらい程度の夏期手当――これは働かしてやるのじやない、そういうものを含み、年末には少くとも一箇月分ぐらいのものを二十九年度の労働省の既定経費の中に計上して、そうして日本再建のために日雇い労働者諸君の生活の安定と向上、苦しい生活をしている者に、よりあたたかい保護の手を延べることは当然だ。そういう意味からいつてみても、失対事業、民間事業に関係している人で登録されている人だけは、いろいろ規正とか調査の関係で手間どりましようが、そういう人たちだけは五日分やるがあとはやらないのだ。かりにやらないとすれば、この民間産業に従事する諸君には、登録しておつてもおらなくても、その事業所に対して、少くとも五日分ぐらいの、政府の方針通り右へならえでそれは出したらどうだ。こういうことは、労働省があたたかい気持でそういう交渉をしないと、そこにやはり自分の生んだ子供ともらつた子供のような差別をつける。そこにやはり労働意欲の高揚という点について、また民間事業で、どんどんいろいろ請負つた人が道路工事をやる、大きな建築をやる、鉄道の建設をやる、雑多な仕事に携わつている人が、あまり不公平な処置を年末にすると、やはりそこに無用の摩擦を起して来る。こういう点について、この前の質問に御答弁がはつきりしておりませんので、新規事業はまかりならぬという小笠原大蔵大臣の方針は了承することができるが、労働省の責任者としての職安局長は、二十九年度予算の中でそういう所要の経費をひとつ編成して、大蔵省と折衝して、ここに差別のないような方法を立ててもらいたい。この点についての御意見をひとつ承つておきたい。
#24
○江下説明員 いわゆる登録労働者のうちで、できるだけ収入に不均衡が出ないようにという御趣旨は、私も賛成でございます。もちろんその本人の能力、あるいは健康等にも影響いたしますが、普通の場合でございましたら、民間就労とのにらみ合せで、できるだけ均衡をとるように考えて行くということは、私も賛成でございます。予算の問題でございますが、実はこの前も申し上げましたように、現在の緊急失業対策法の建前からいたしまして――もちろん相当固定化して同一人が一年も二年も出ておるということも相当数あるわけでございますけれども、建前といたしましては、やはり日雇い労働者の形で、予算上は本年度は措置せざるを得ないわけでございますが、根本は、結局予算の総額をどうするか、それを最も日雇い労働者のために有効適切に使うということになると思いますので、私としてはもちろん予算のわくの増大ということにつきましては、できるだけの努力を重ねて参りたいと思います。
#25
○赤松委員長 それでは珪肺病対策について両参考人及び政府に対する質疑を許します。
#26
○青野委員 私労働基準局長にお尋ね申しますが、私は一ぺん労働委員をしておるときに生野鉱山に視察に行きました。作業服を着て坑内にずつと参りました。湿式鑿岩機とそうでないのを実地に試験してもうつたのですが、やはり湿式鑿岩機を使つた場合とそうでない場合は、非常な違いがあります。私どももやはり多少の危険を冒してずつと奥に入つて、そういう実験を奥の坑内で身をもつて体験した。そのときいろいろ説明を聞いたら、生野銀山についての会社の経理内容がいいか悪いか加りませんが、大体今三年間の療養期間、それを大体本給の六〇%。ところが、会社の負担で大体十割負担をやつていました。そうすると、大体割増しとかその他つかないといたしましても、珪肺で倒れて入院をして療養をする諸君は、生野に関する限りは、大体自分の本給に匹敵する療養給付を受けておる。そうすると、それを全部関係鉱山に向つてそうしろということは、労働省として命令する権利はないでしようが、ここにもパンフレットが配られておるが、できるだけ三箇年前の療養期間を五箇年間に延長して、そうして結局休業補償費は平均賃金の八〇%を支給してもらいたいということが希望意見としてパンフレットに数字が出ております。八〇%出せば、大体それはかなり会社の経理内容がいいと思いますが、所によつては今申しましたように十割の給料を負担しておるところもある。規定がないからといつて、こういう気の毒な病気にかかつて、今も炭労を代表して参考人の方が御意見を吐かれておりましたように、私どものところにもこういう関係が非常に多いのであります。一ミリの一万分の一の塵埃を、いつの間にか鼻に吸うことによつて、ひどい人は四、五年間で倒れ、七つか八つの総領むすこか娘や若い家内を残して、四十前後で死んで行かなければならぬという運命にある。この金属鉱山関係、特に石炭産業、窯業、土石採取に従事する労働者、家族も入れると少くとも五百万程度おるでしよう。しかも地下資源開発の重要な労働に従事する人が、一たびこの珪肺病に冒されると、四十前後で倒れて、妻子を残して死んで行く運命を背負つたまま、この仕事に携わつておる。こういうことは、放任することはできません。アメリカにしても、南阿連邦にしても、すでに民間産業自身が、政府の手を借らずにこの珪肺対策を解決しておるというときに、日本はいまだ三年の療養期間が五年にもならない。通産省と労働省が、いろいろな利害関係から対立して政府が一本化しておらないところに、珪肺対策というものが法制化しないのじやないか。私ども各所をまわりまして、鬼怒川に行つて療養所の実態を見て参りましたが、栄養補給費とか職業の配置転換だとか、あるいは職業病の試験所や研究所の設置をするとか、いろいろな必要事項もありますが、何といつても、この病気にならない予防対策が必要だ。それをするには、民間産業だけにまかせておいては、日本の特殊事情からできません。そこで反対の態度をとつている経営者と、労働省と大分意見を異にしておる通産省とがよく話し合つて、珪肺病を撲滅するということよりも、いかにして予防するか。不幸にしてかかつた人には、生活に安心のできる程度の療養のいろいろな法律を政府がつくつて予防に主眼を置いて、そういう点に、私は政府がもつと足並をそろえてやつてもらいたい。これは一昨年の十一月ごろに声がかかつて、すでに満二年を越しておる。何とかここで目鼻をつけまして、今度の通常国会において、珪肺病対策と港湾労働法に関しては、多少困難はありましようが、私どもの責任上、超党派的に解決しなければならぬと思つている。府部内で通産省の諸君といまだに融和した立場がとれず、そういう状態にある。経営者の諸君は、横を向いて知らぬ顔しておる。うんと返事をすれば、何十億という金がいる。そういう点も十分了解することはできますが、この三年間を五年間に療養期間の延長、そして八〇%程度の休業補償費を出させるように法制を改正する。また港湾労働法にしてもその通りでありますが、至急にこれを解決するためには、何といつても労働省の奮起と努力を私は求めざるを得ない。そういう点について、龜井局長のお考えをこの機会に承つておきたいと思います。
#27
○龜井説明員 ただいま御質問のございました点、また先ほど参考人の御説明がございました点、この珪肺病につきましては、何よりも予防が大事であることは言うまでもないのであります。かかりますと、不治の病とされておる現況におきまして、予防の問題が大事であります。所管の点で、御指摘のような通産省と労働省との問に多少の問題がございますが、しかし、これは技術的に割り切れる問題でございます。お話の中に出ました湿式鑿岩機の問題も、来年の夏ごろまでには予定の計画通り完了する建前になつておるのであります。そういう面から通産省の方もこの問題の処理に努力をいたしておりますし、またわれわれとしましても、労働基準法で定められております問題として、この処理をいたしておるわけであります。しからば、現在療養を受けております者の療養期間を三年から五年に延ばすという処置につきましては、われわれとしましてもいろいろ各般の検討を加えて、特に三者構成のけい肺対策審議会におきましてそれぞれのお立場から御検討をいただいておるような状況でございます。問題は、現在の労働基準法で定めております補償の限界というものが、使用者の無過失賠償責任の限界として適当であるかどうか、特に珪肺についてはどうかという問題が、やはり基本的になろうかと思います。そういう面もあわせながら、またそれに要します財源の割振りをどうするか。経営者の無過失賠償責任が三年ではなくて五年であるという、それがはたしてりくつとして通るか。もし通らぬとすれば――現在の基準法で定めております補償の限度が無過失賠償責任の限度であるとすれば、その後は国家補償という問題がそこに現われて来なければならぬというようなことで、討論はいたしております。また国家補償の問題になりますと、これは予算的措置ということになりますが、二十九年度予算は、御承知のようにわくの問題において相当強いまして、そういう面から、はたしてただちにその国家補償が実現できるかという非常につらい立場に事務当局として置かれておるのでございます。問題は、だれがその財源を負担するか、負担するとすればどういう負担をするか、こういうことが中心となるわけでございます。これは最後の問題としては、まだ予算折衝の余地もございまして、われわれとしましても、大蔵当局と話合いを進めておるのでございます。見通しにつきましては、そう楽観ができないという状況でありまして、なおそのほか診断の面、あるいは珪肺の現在の補償はいわゆる要領三というところから補償をいたしておる、その限界が正しいかどうか。それから恕限量、そういう問題もあわせまして、けい肺対策審議会で技術的な検討が加えられておりまして、その結論が出ました後におきましては、そういう技術的な面で解決し得るものはすみやかに解決して行きたい、また予算的措置の問題は予算的措置の問題として考えるというのが私どもの立場であります。
#28
○青野委員 重ねてもう一点だけお尋ねしておきたいと思います。大体通産省と労働省の関係は、一定の限界まで来れば割り切れるというようにお話になつておりますが、私はその点について、そうは信じられない。この前この珪肺の問題が労働委員会で大きく全国的に取上げられましたときには、関係労組及び経営者の代表が全部この労働委員会に出て参つた。そういう審議の過程を通じて、通産省側を代表している人は、予防については完璧を期す、従つて珪肺法などという法律をつくることは時期尚早であるといつたようなことを述べ、石炭鉱山の代表者も、金属鉱山の代表者も同様でありました。
 ただ小森という人が日本の窯業産業を代表して、個人的ではありますが、珪肺病といつたような気の毒な病気にかかつた労働者を救済するために、一日も早く珪肺法の制定を私どもは希望いたします――これは私の足元に元おつた人ですが、個人的にしろ、そういう意見が開陳せられた。ところがその他の、特に金属鉱山関係の人はひどく、われわれの質問に対しても、今珪肺法をつくるということは反対だ、その言葉を濁して時期尚早という言葉を使われて、それきりに進展をいたしません。こういうことでは、いつまでたつてもこの珪肺対策は完備して参りません。そこで通産省は、予防に関する限り湿式鑿岩機を全国に一定の期間中に整備させる、そうしてこの完璧を期す、こういうことを言明せられて、そこに多少意見の食い違いができて、遂に労働委員会としても結論が今日まで出なかつた。こういう通産省が労働省と多少意見を異にして開陳せられたことについて、相当期間もたつており、湿式鑿岩機もずいぶんとりかえられたと私は聞いておりますが、この点について、珪肺関係についての労働組合を代表して、その筋の専門家である蘇原参考人に、あれから一年たつておるが、通産省の諸君が言つているように、予防の完璧がはたして期せられているかどうか。ひどくなつた人の職業の配置転換が好意的に行われているかどうか。療養施設の問題にしてもその通りです。鬼怒川の療養所におる諸君は、ベットの数はふえたかもしれませんが、療養生活の精神的な懊悩あるいは物質的な問題、そういう点どういう形になつておるか。通産省の代表者が言つたように、予防の完璧がはたして期せられておるかどうか。こういう点について身をもつて体験せられて、珪肺に関する限りは全国的に有名な専門家である蘇原参考人の御意見を特に承つておきたいと思います。
    〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
#29
○蘇原参考人 金属鉱山の実情から申し上げます。金属鉱山といたしまして、湿式鑿岩機の問題につきましては、湿式鑿岩機を与えただけであつては、やはりこれは実現できない問題がございます。湿式鑿岩機を使うことによつて、労働者は頭から下まで全部びつしよりぬれて帰るのでございます。そのために、作業衣が十組ほどあれば問題ではないのでありますが、一枚の作業衣ですと、その作業衣をあすまでにかわさなければならないという一つの大きな問題が残るわけでありまして、湿式鑿岩機を与えると同時に、その作業衣が明朝までに乾燥できる乾燥室がやはりそれに付随しなければ、だめだという結論になるわけであります。それが一つと、もう一つは、やはりこの鑿岩機に付随して、その現場まできれいな水が行かないということが、その鑿岩機を使えない理由になるわけであります。それが五十メートルとか、あるいは二百メートル先の方にあるということでありますと、もちろんこの穴の中は高いはしごを上つたりなにかするため、そこから水を運搬する時間が相当かかるので、やはり作業準備にその大半が終つてしまうというところから仕事にならないという一つの大きな障害がありますので、こういう問題は、通産省がそういうことを言つているけれども、実際にはその半分も行われていないというのが現実でございます。
 次に配置転換の問題でございます。配置転換を珪肺措置要網によつてきめられておりますけれども、配置転換をすることによつて、一家が生活に困つてしまうという一つの大きな問題がここに残されているわけでございます。その理由は、坑内は危険が伴い珪肺にかかる、それから陽を見ないということで、からだが弱つて老衰するというようなことから、坑内作業に従事する者は、坑外で働く人の一・五倍、約一万円に対して一万五千円の賃金をもらつておるわけでございます。そういう方が坑外に出た場合は、それだけ賃金が下るわけでございまして、それと同時に、配置転換を指名された者は、からだが八〇%弱つてからでないとそういう指示を受けないので、坑外に出ても思うように仕事ができませんから、従つて、なお一層経済的に生活が苦しくなるという一つの問題がそこに残るわけでございます。そのためには、やはり坑外に出て、坑外の仕事になれる期間、何らかの形でここに補償をしてやらなければ、労働者は坑外に配置転換を望まないわけでございます。そういうことから、おれは死んでもいい、この子供が大きくなるまで坑内に入つて働くんだということで、死ぬのを知りつつやはり配置転換を望まないというのが実情でございます。
 それから珪肺病療養所の問題でございますけれども、療養所に現在百十ベットございますが、大体九〇から九五%が入所しておりまして、少いときは八〇%しかそこに入所しない。これは全国に一箇所しかないという一つの障害もございますし、それから家族と離れて来るという問題がございます。そこで珪肺患者というのは、先生方の御説の中にもありますように、年の若いうちに病気になりまして、外観は非常に丈夫そうに見えますけれども、わずか一週間か十日でなくなるものもございます。それで医学的にこれはなおるという治療方法がないということから、栄養だけでその生命を保つておるということで、家族が恋しくなる。家族が北海道から面会に来る。来ることは来ても、結局鬼怒川温泉にとまれば、一泊が千円から千二百円とられるということになれば、どうしても面会もできなくなつて来るということで、入所患者の不便、また希望に沿うことができないということから、喜んでそこに入所しないというわけでございます。
#30
○十二村参考人 予防措置について、特にもう一点附加させていただきたいと思います。坑内の場合は、湿式鑿岩機である程度の予防措置はできますが、珪肺病は決して坑内作業だけでなくて、さいぜん青野先生もおつしやられた通り、坑外にもたくさんございます。これは英国はこの対策が非常に進歩した結果、現在の統計ではむしろ坑外作業の方が統計上多く患者が発生しております。これは科学的な予防対策が、坑内のような限定された作業環境には、十分適切な措置が講じられましても、大気の中にさらされておる地球の表面では非常に困難である。その具体的な例を申し上げますと、造船工業の鋳型の作業工程において、遊離珪酸粉塵が相当たくさん発塵いたすのであります。これに対して、もし、ウオーター・カーテンであるとかあるいは湿式のそういう予附措置を講じたならば、製品の鋳物そのものが不同膨脹を起して製品にならないという点から、現実には万全な予防措置は、もつと技術的な対策を講じていただかなければ――やはりその職場によつて適宜な研究がなされなくてはならぬのじやないか。特に坑外作業として瀬戸物工業あるいは土石採掘業、山の岩壁につるはしを振つたときに、ウオーター・カーテンや湿式程度では、とうてい予防できない。
 こういう面だけでなくて、もう一点附加させていただきたい点は、さいぜんも申し上げたように結核菌に容易に冒されるために、まだわれわれが労災補償以前のときに、結核に冒されてやみからやみに葬られてしまう、少くとも日本の産業の職場から発生した結核患者の大多数――われわれの想定でございますが、少くとも合併症が何十パーセントかこの中に入つているのではないか、それはひいては、政府管掌の中において国民健康保険が非常に財政困難になつておる一番大きな問題は、結核治療の財政負担でなかろうかと思います。これは合併症ならば当然業務上の補償がなされるにもかかわらず、さいぜん申し上げたように、経営者はメリットの増加をおそれて、意識的に私傷に落す、あるいは無意識のうちに結核患者として葬られる。この点地上産業に結核患者が多いのは、珪肺、塵肺患者に対して適切な科学的予防ができないところに問題があるのではなかろうかと思うのであります。この点も十分に御研究を願いたいと思います。
#31
○青野委員 龜井さんにちよつとお願いいたします。今申しましたように、大体予防の完璧を期するから、反対だ。そのことは時期尚早の言葉で表わして、それから一年になると私は思います。そこで今蘇原参考人にも聞き、その他の参考人の方々の御意見も徹したのでありますが、これは現在使つておる大中小三種類のものが、全部湿式鑿岩機になつたとしても、私はこれをもつて予防の完璧を期したと通産省の諸君が言うように信ずるわけに行きません。私は八幡製鉄所の所在地におります。ここにもやはり長い間耐火れんがをつくつて――私どもがずつと統計をとつて行きますと、一定の年が来て、三、四人の子供をかかえて四十四、五から五十程度で、三百人か五百人の職長級になつた者が倒れて行くのです。自動車産業の一部もそう、鑄物もそう、窯業もそう。今お話のあつた土石採掘にしてもその通り、こういう点を考えると、通産省の諸君がここへ来て、参考人としておつしやられたことは、必ずしも適切な言葉ではなかつたということが、今の参考人の御意見で裏書きできる。湿式鑿岩機ととりかえて行くことも、大切なことはわかります。けれども、やはりこういう問題は、外国の例をとれば、経営者自身が政府の補助金なしに解決したから、日本もそうしろと私は言つておるのではない。休養期間中の補償費というものを六〇%しか経営者が払わなければ、政府が少くともその間二〇%ぐらいな補償をしてでも、気の毒な病気にかかつて、妻子と離れて療養生活をしているこれらの諸君に――われわれが会つて意見を聞いてみると、私どものようなみじめな珪肺にかかつた者は、この病気はあきらめておりますが、これから先は珪肺病というものにかからない予防対策を、ひとつ国家の手でつくつてください、もう私どもはあきらめております、立ち上つて元気よく働くこともできませんし、ただ療養を続けて死を待つのみだ、しかしこれから先の若い人はこんな珪肺の病気にかからないようにひとつ御努力願いたい、こういうことを、私どもは雪の降つた寒いときでございましたが、療養所に行つてその話を聞いて、各党の代表者が思わず目がしらを熱くした。何とかこれは解決をしなければならぬというときに、かんじんの通産省と労働省の足並がそろわないところにも、この問題の解決が遅れておる大きな原因が私はあると思う。少くと龜井基準局長が先頭に立つて通産省側との話合いを進め、監督下にある経営者側との話をして、そしてその話を解決の線へ持ち込んでもらいたい。そういう点について、いろいろめんどうな予算的措置もありましようし、それから通産省と労働省ではいろいろな利害関係の対立もあるかもわかりません。裏面から経営者側がいろいろな手を通じて、この珪肺法を国会で成立させないように、巧妙に、有形無形に妨害しておる事実も私は知つております。そういうことで、今参考人からお話のありましたことをお聞きの通りでありますが、通産省と将来具体的にいろいろな折衝を続けて行かれ、そうして不備な点は進んで労働基準法の改正をしてもらいたい。吉武惠市氏が労働大臣をしておるときに、私ははつきり申しまして、確約を得ている。三年間の療養期間ですから、三年前に鬼怒川の療養所に入つたときには、当時二百五十円くらいの給料で入つている。同じ職場で元気で働いている人は、すでに八百円の給料になつておる。療養期間中に、働いておる人は八百円の日給をもらつていながら、療養所に入つている者は三年前の給料がそのままになつていることは不都合じやないか、そこで三年間の療養期間を五年間にすることと、給料をスライドすることを要求いたしましたら、今度までにはその気の毒な人たちを現場で働いておる人と同じような程度の給料に上げるということで、次の国会には基準法の改正をして、政府は尽力をして三年間の療養期間を五年に延長して、労働委員会の意思を尊重いたしますといつて、そのまま流されてしまつた。これは政府が一種の食言をしておる。当時の労働委員会は、政党政派を超越して珪肺問題を解決するために真剣にとつ組んだ。これがそのままになつておるということも不満の一つですが、こういうことについて具体的に当の責任者としての龜井さんはどのようなお考えを持つておられるか。不備な点については、今度の二十九年度予算の中で、多少御考慮をしてもらわなければならぬ点が数々あろうと私は思います。この際にひとつあなたの御意見を参考までに伺つておきたい。
#32
○龜井説明員 通産省との関係は、これは坑内だけの問題でございまして、陸上にも相当ある。先ほど参考人からお話がありましたが、その面につきましては、防塵マスクの使用について指導いたしておるのであります。お話のありました八幡製鉄あたりは、そのために非常に珪肺の発生率が減つたということを私報告を受けております。こういう面は、やはり引続きわれわれとして力を入れて行きたいと思うのであります。そのほかにどういう予防の方法があるかということは、先ほど申しましたように、けい肺対策審議会の予防本部におきまして、今技術的な検討を加えております。その結論が出ますならばその結論によりまして、またわれわれ行政の上にこれを移して行きたいと思うのであります。通産省との関係におきましては、御趣旨の通り、われわれとしましても、なお努力の足りないところがあつたかと思いますから、今後一層この予防の問題につきましての両者の思想統一をやつて参りたい、かように存じております。先ほど労災病院のお話が出ました。鬼怒川の労災病院の利用度の悪いことは、先ほどの参考人のお話もございましたように、全国に一箇所であつて、面会の施設がないということが一つの理由であります。問題は、各所にそういう施設をつくりまして、家族の方が簡単に面会できるような状態に置くことが一番大切じやないかということで、鬼怒川につきましては、本年度予算で、目下面会所の建築を始めておる次第であります。これはこれで一応片づくわけでありますが、なお北海道、秋田、岡山というふうなところには、珪肺を主体といたしまする病棟を設置して行きたい。九州におきましても、将来は佐世保地区あたりにも出張所をつくるというふうに、全国的に珪肺の患者に対する病院施設の拡充をはかつて参りたいと思いまするし、現にはかりつつあるわけでございます。補償の問題につきましては、先ほどお答えをいたしましたように、事務的な面としましては、大蔵省と話合いを進めておるところであります。ただ問題が来年度予算の総わくの問題にからんで参りまして、そう楽観はできないのじやないかということを、先ほど私は申し上げた次第であります。なお折衝の機会も残されておりますので、さらに努力をいたしたいと考えております。
#33
○持永委員長代理 青野さんよろしゆうございますか。
#34
○青野委員 この問題はそれで終ります。
    ―――――――――――――
#35
○持永委員長代理 それではこの際お諮りいたしますが、日本化工株式会社の争議問題につきまして、同会社の従業員組合の委員長である上原勝君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○持永委員長代理 御異議なければさよう決します。
 上原参考人。
#37
○上原参考人 私日本化工従業員組合の上原でございます。
 ただいままでに経営者が出て参りました経過を申し上げますと、日本化工株式会社は、もともと防毒面をやつて相当大きかつたのですが、そのあと日本化工がだめになりまして、日本化工機という第二会社ができました。この日本化工機という第二会社が、新聞をにぎわしました詐欺事件の会社なのですが、これがだめになりまして、ただいまの柳本光三という経営者が出て参つたのであります。この経営者が、正式の株主総会をやりまして正式の経営者になつたのは七月二十七日でございます。それからというもの、本日に至るまでの賃金として出しましたものは、当時百八十名おりましたが、現在では従業員は百十名くらいです。それに対しまして、四十七万しか賃金を払つておりません。この四月からただいままでの未払い賃金は一千百七十万ございます。それで従業員はいろいろと苦しんで、アルバイトなどをやるために、だんだん会社を去つて行く者もあつたわけです。しかし従業員は、平均勤続年数十二年八箇月くらいになつております。会社に非常に執着を持つておりまして、何とかしてこの会社を再建させたいというようなことで、会社にしがみついておつたのですが、柳本さんという経営者は、全然仕事も持つて来なく、会社にも出て来ないわけです。それで日本橋の日本トラクター株式会社というところにおりまして、大体経営者を同族でまとめておつたのでありますが、そこで取締役会を開いたり何かしておりまして、板橋の工場の方には全然顔を出さないわけです。それで私たちは日本橋の方に、賃金をくれ、何とかして仕事を持つて来てくれ、工賃仕事でもけつこうだからやらしてくれないか、そうして食いつなぎをやつて行かなければならないと言うのですが、今度は都民銀行から何千万円金を借りるとか、あるいは日本相互銀行から何千万円金を出してくれるとか、そういうことばかり言つておつて、全然賃金も払わなければ、仕事も持つて来ないということで、これではしようがないというので闘争体形をとつたわけです。
 そうしたところが、労働協約に七十二時間という期限がきめてあるから、それまで懇談会をやつてくれないかということで、話合いをしましようというので交渉を続けて、闘争体形をとつてから実に十八日間、また何だかんだとやり合つたのですが、一向に金も払わなければ仕事も持つて来ないということで、ぜひともこつちの会社に来ていろいろの実情を見てくれというようなことで、全員で日本橋の方に押しかけたのです。そうしたら、明日専務が行くということで、次の日に専務が出て参りました。それで専務が給料でも持つて来てくれたのかと思つておりましたら、全員を集めまして、あなた方は闘争体形をとつたのだ、その闘争体形が宙に浮いておるではないか、なぜ組合の既定方針にのつとつてやらないのか、こういうようなことを言いまして帰つたわけです。それに対して組合の者全体が憤激いたしまして、では闘争をやるのだということになりましたら、次の朝突然に会社の一週間の休業を宣したわけです。その晩これでは全然誠意がないということで、闘争宣言を発しました。そうしたら三週間休業を続けまして、あと何でもなく、回答も何にもなく知らぬ顔をしておるわけです。そうしたところが十一月に二日間休みが続きました。そのときに突然首切りと組合幹部六名に対する仮処分をやつたわけです。
    〔持永委員代理退席、委員長着席〕
 二日間の休みの上にやつたので、幹部は毎日出ておりましたが、幹部が出て来たら、これを暴力団を連れて来て、全部引ずり出してしまつたのです。それから休みが過ぎまして、組合員が出動するというときに、これではいけないというので大会を外部で開いたわけです。そうしたら、会社から離脱した者はもう門の中には入れないというので、約三十名くらいの暴力団が門を固めておりまして、従業員を全然一人も入れないわけです。それで、すつたもんだ押し合いまして、六名の幹部以外の従業員だけが無理やりに入つたわけです。そうしたら会社側の話を聞け、組合を離脱して、組合を脱退するというのに判を押したならば、きよう二千円ずつ払つてやる、こういうようなことをみんなに言つたわけです。ところが何も組合を離脱してもらう金ならいらないといつて出た者が七十名、話を一旦聞いてみようじやないかというのが十一名残つたわけです。それで組合内部は十一名と七十名とにわかれてしまたわけであります。そうし、たところが、今度は七十名に対しては全然門の中に入れない、十一名だけを入れて仕事をさせる。それで二千円を払つて、現在中にいる者には一人平均八千円の賃金を払つておりますが、表に出ている者七十名に対しては一銭も賃金を払つておりません。それから全員に対して首切りを宣告いたしました。これを文書でくれといいましたならば、暴力団が出て来まして、胸ぐらをとつて、貴様なまいきだといつて引きずり出す。そのあと文書もとれずに、首切りの宣旨だけをしておりましたが、組合側といたしましては、不当労働行為で都労委に訴える、そして安定所の方から、離職票をもらつて失業保険をもらうという対策を立てたわけです。そして離職票を出せ、こういうように要求しましたら、基準監督署の方に行つていろいろと相談いたしまして、これを予告期間を置いて出したわけです。ですから、一月十六日までは失業保険ももらえない。それから会社からは一銭の金も出ていない。組合といたしまして、資金カンパその他をやつて、現在までに払つた金が約百七十万くらいあります。ですが、実際にこの百七十万の金も、現在の七十名に対して五日に三万円、一人が平均二百円か三百円、それで五日間を暮しているわけです。従業員の平均家族数は、本人も含めて三・七くらいになります。
 子供が学校に行つておりましても、給食費が三箇月も四箇月もたまつているものですから、子供たちは先生に責められるのがいやだといつて学校を休むというような児童も出ております。そういうような状態で今日続いているわけです。その点で実はお願いに上つたわけです。それで基準局の方には、賃金の遅配は十一月五日に提訴しております。そして中の者に払つておるということを、一部始終基準局にお願いしてあるのですが、現在一箇月半になんなんとしておりまして、いまだに結論が出ておりません。それからこの賃金の問題は、九月分一ぱいで七百八十万の遅配額を裁判所に訴えておりますが、相手方は、弁護士が旅行しているとか、そういうようなことで裁判を延ばしております。それから警察の方では、公安主任が労働組合の者は引きずり出してもいいというふうに会社に内命したと、会社は言つております。と同時に、組合側が入るときは、会社から訴えがあれば、警察の公安主任がみずから飛び出して来て、あれが悪いとか、これが悪いとか、ああしてはいけない、こうしてはいけないということで、すぐに干渉を加えて来るわけです。それに対して組合幹部がとり巻いて公安主任と交渉をしておりますと、会社側からちよつと来てくださいといえば、それで、ちよつと向うに行つて来ますということで行つてしまいます。それから交渉のときに女をまじえた委員がやつておりまして、暴力団が入つておりますから監禁されるおそれがあるために、何とかしてくれないかと警察の方に言つて行きますと、警察はそんなことはないでしよう、私の方は、お宅のケースはまるきり違うのですから、こういうことにはタッチできませんといつて、組合の方から言つて行くことは全然受付けません。会社の方から行けばいつでも出て来て、ああの、こうのと干渉を与えるというようなことで、組合員といたしましては中にも入れない。それから門の前に座り込みをやつておりますが、これは雨が降つたり何かすると、労働会館を借りてそちらに集まつてもらいます。そうすると、これは無届け集会だというようなことを言つて来るわけです。金はもらえない、警察からは圧迫を受ける。訴えたところが、どんどん遅れてしまう、正月は迫つて来るというのが現在の日本化工の従業員の現状でございます。どうぞよろしく……。
#38
○赤松委員長 これより質疑を許します。山花秀雄君。
#39
○山花委員 ただいま参考人のお話を聞いておりますと、東京のまん中に、ずいぶん時代遅れの問題が次から次へと行われておるというふうな感じがするのであります。幸い基準局長も来ておられますので、ただいま組合側の話によりますと、十一日五日に基準局に賃金問題で提訴をした、こういう陳述を組合側はしておられたのでございますが、基準局の方には、ただいまのようなお話が局長としてお耳に入つておるかどうか、ひとつお聞かせを願いたい。
#40
○龜井説明員 おそらく板橋の監督署に申告をなさつたと思いますが、私も今初めて聞いたのでございまして、私としましても断固たる処置をとらなければならぬのじやないかという気がするのでございます。さつそく板橋の署と連絡をいたしまして、その処置をとらせるように努力いたします。
#41
○山花委員 組合側にお尋ねしたいと思いますが、ただいまの社長柳本という人が、七月二十七日から正式に社長になり、四十七万円の賃金が今日まで支給されたきりで、概算にして千百七十五万円くらいの賃金未払いが現在ある。しかも、これは七、八、九、十、十一、十二、約半年にわたつて四十七万円しか支払つてない。ずいぶん長い賃金遅配が続いておるのであります。この問題に関して闘争体形に入り、あるいは話によりますと、所轄の警察の立場は一々無理解な立場をとつているように承つたのでありますが、この長い賃金遅配を今までどういうような形で――おそらく私は、ここにおられる労働者の諸君は預金、貯蓄というようなものもなかつたのではなかろうかまたたけのこ生活をするのにも、それだけの物資の持合せがなかつたというように、私は失礼ですが推測するのでございますが、この間どういうような形で今まで生活を維持されていたかということが、ちよつと納得が行きかねますので、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
#42
○上原参考人 これは柳本という経営者が出て参りましたときに、家つきといいますか、古い取締役が二名おりました。これは水野、片岡という取締役ですが、この片岡という取締役が毎日毎日会社に出て来ております。この方がいろいろあちらこちらかけまわつたりなどして金もつくつてくれております。それから今後の会社の経営に対して、いろいろ新しい面も探したりなどしてくれるわけです。今うちの会社の状態といたしましては、国税庁から競売にされるというようなことになつているわけです。それでずつとさかのぼりますと、柳本氏に対して、東京貿易を通じまして、新三菱電工から「みずしま」というオート三輪を持つて来てやりたいというような相談があつたわけです。これに対して柳本氏はダイハツというオート三輪が東京に出て来るときは、一億も投資している。それを新三菱がここに出て来るのに、金を持つて来ないで、会社更生にしろとか、あるいは国税庁の競売を防げとか、そういうことは虫がよ過ぎる。だから、そこから五千万円くらいをとつて、国税庁に納めて、そして三菱に工場を貸してやろう、こういうようなことを言つておつたわけでございます。われわれとしましても、結局柳本氏のやつていることがあまり無軌道ぶりなので、この新三菱の仕事をとることによつて会社は再建できるというので、組合自体といたしまして、前日本化工の社長のお兄さんに当ります三菱の大立物加藤武男氏のところにお願いに行つたのです。しかし、関心は持つておる。と同時に、いろいろ財界の方からも、あなたがついていながら、弟さんの工場がどうしてあんなことになつたのだといわれているので、それに対する関心は持つているが、やはりそうすぐには出て行けないというような御返事をいただいたわけです。それで、これではしようがないということで、国税庁なんかからも話もありましたので、一括競売でこれを競落する人がないかというようなことで、いろいろと手づるを求めたわけであります。ところが片岡重役が、一括競売なら、する人がある、この人が現在の未払い賃金を全部払いましよう。それから一箇月の予告手当も払いましよう。そして全員を完全雇用いたしますと、これは弁護士を中に入れまして、組合といたしましても契約書をつくりました。それでこの方からは現在までに約七十万くらいの金が出ております。それでこれは年内に競売になるということ、それから組合が電線とかアルマイト工場の一部を、公正証書によつて、会社に金を貸した分で取得しております。こういうものにがんばつて、結局他の者の競落することを阻害する、そして自分たち労働組合の支持する人に落してもらおうというような条件もついております。この方面から約七十万くらいの金が出ておりますし、なお片岡重役から借りておる金は百万以上に上つております。それからそのほかにバリとりといいますが、鋳物のバリをとることをアルバイトに組合としてやつております。この面だとか、あるいは個人々々がよそのところに行つて働いている、そういうものによつて現在まで補つて来ております。その金額が百七十五万であります。ですから、七月から本日までに百七十五万しかもらつてないという勘定になります。これが現在までの生活費であります。
#43
○山花委員 ただいまの組合側の話によりますと、解雇の問題に関して、これは確実なる根拠に準じて組合側としてはお話なされたのか、それとも組合側の一応の推測としてお話をなされたのか、それを先に伺つて、基準局長に伺いたいと思いますが、普通の会社といたしましては、解雇する場合には、予告解雇というよりも、むしろ即刻解雇で一箇月分の現なまを支給して解雇するというのが一応の通例になつておるのでございますが、基準監督署に行つて相談をして、その結果予告解雇通知を出した、言いかえればへびの生殺しのような目に会つた、こういう組合側の陳述でございました。それは何か組合側としては、そういういきさつの確証を持たれて発言をなすつたのか、どうやらそうらしいという推測に基いて発言をなすつたか、一応上原参考人の方からその話を聞いて、基準局長の方にまた質問をしたいと思います。
#44
○上原参考人 これは最初は即日解雇であつたのです。それで離職票を出せと会社側に行きましたら、何人の首を切つて、だれとだれの首を切つたんだかわからないというようなことを言つておつたわけです。それで組合の方から、職業安定所の方に参りました。そうしたら職業安定所の方から離職票を出さなければいけないというふうに言われたわけです。そうしたら立沢という人事をやつている人が、基準局の方に行つて、予告期間で出せば予告手当はやらない、そういうふうに聞いて参つて出したのであります。
#45
○山花委員 ただいまの組合側の参考人の発言は、基準局長もお聞きの通りの発言でございます。こういう場合に、基準監督署としての扱い方の問題でございますが、従来私どもの関係いたしました多くの解雇問題に関しては、やはり即刻解雇、一箇月分予告期間の賃金支給という形の取扱いを大体監督署としては指導しておられる、またそれが私どもは当然と考えておるのでございますが、ただいまのようなお話になりますと、何かこう労働者側を困らしてやれというような感じを強く受けるのでございますが、基準局長としての御見解はいかがなものでしようか。
#46
○龜井説明員 法律の文面は、御承知のように第二十条におきまして、一箇月前の解雇予告か、一箇月分の予告手当を出して即時解雇か、どちらでも選択権が使用者に与えられております。従つて、法律の文面から申しますれば、どちらがいい悪いということは言えないのでございます。ただ労務管理の面から申しますと、一箇月前に予告しております場合におきましては、解雇が予定されるわけでありますから、生産の能率がそれだけ落ちるということで、即時解雇で一箇月分の予告手当を支払うという方が、労務管理上はいいのじやないかという見解は持つておりますが、しかしこれは個々の事業場の実情で全部違うわけでございまして、一律にこうあるべきであるということを申すことはむづかしい面もございます。従いまして、特別にどちらの方法によれというふうな指導はいたしていないのでございます。ただ、現実の労務管理の面から、実例としては、即時解雇で一箇月分の予告手当を支払う場合が多いということでございます。今のお話も、監督署が何もそういう指導をしたというふうには、私調べてみなければわかりませんが、考えられないのでありまして、ただ法律上の解釈を、二つの場合について話しただけではないかと考えます。いずれこれをまたよく調べまして、そういう指導をいたしたとすれば、それは実は行き過ぎでございまして、使用者の判断にゆだねらるべき性格のものでございます。監督署はその結果が履行されておるかどうか、第二十条の法律に違反しないかどうか、ということだけを監督して行く性格のものでございます。
#47
○山花委員 ただいま基準局長の言われた通りでございますが、おそらく下僚に対してこの問題の究明をいたしましても、やはり基準局長の言われた通りの御答弁をなさるだろうと思うのであります。私どもふに落ちない点は、十一月の五日に賃金問題で提訴をしておるのが、上級機関であるあなたの耳に入つていない。これは少額あるいは日にちの短かい、こういう賃金遅配でなくして、五箇月、約半年になんなんとする賃金遅配の問題でございますから、これは重要案件として、上司に即刻報告をして、その判断にゆだねなくちやならぬと思います。これがなされていないというところに、どうもわれわれといたしましては、ただいまのような一応の推測が成り立つわけでございます。この問題は、ひとり当社だけの問題ではなくして、他にもこういう類似したケースが次から次へ出て来て、労働行政についても重大な影響を与えるものでございますから、ひとつ監督を厳にしていただいて、当該基準局ともお取調べを願つて善処していただきたいことをお願いいたしまして、他にも同僚委員から、賃金問題に関して何か質問があるそうですから、私の質問はこれで終りたいと思います。
#48
○赤松委員長 門司亮君。
#49
○門司委員 ちよつと龜井さんにお尋ねしたいのですが、これはこの問題とは別でございますが、実は私の今まで関係していた委員会で、道路交通の取締りの関係をやつておりますが、道路交通取締り関係の対象者として出て来るのは、いずれも自動車の運転手なのであります。これは非常に事故が多い。東京のごときは各警察から公安委員会に報告されているのが、大体二十七年度で二万五千件を超えておる。大阪がやはり五、六千件くらいある。大体これが処罰さております。重いのは免許証の取消し、それから三箇月以上九箇月くらいまでの――今は六箇月以上の停止はできないように指令されておるようでありますが、そういう、運転手にとつてはまつたく致命的な処分が行われておる。こういう状態にありますのを、ずつといろいろな取締り関係からわれわれが調べてみますと、警察だけではこの問題は片づかないというのは、結局運転手の待遇というものが非常に悪い。ある場合には、二十四時間勤務であつて、ほとんど固定給がない。従つて、自分の生活を維持しようとすれば、いやがおうでも過労にならざるを得ない。中にはしようちゆうの一ぱいくらい飲んでやむを得ず運転しなければならぬ。これらが大体事故の原因になつておる。大体私どもが事故の原因を調べてみると、そう考えられる。これに対して基準局は一体どういうふうに考えられておるか、この問題について、労働基準局長の方でどういうふうにやられて来たか、何かおありでしたら御説明願いたい。
#50
○龜井説明員 このお話は二、三箇月前も、実は私耳にいたしまして、陳情を受けたこともございます。問題は、今お話のございましたように、給与制度の問題がやはり相当根本的な原因じやないか。すなわち、固定給がなくして、ほとんど請負給である。請負給であるがために、仕事に無理が行くということで、この点は、自動車業者の協会に働きかけまして、賃金制度の検討を今やらせておるのでございまして、そういう指導も今東京においてはやつておりますし、またおもな府県の自動車交通のはげしい局に対しましては、そういう趣旨の通牒を出しまして、これらの給与の制度につきまして検討を加えております。また一方割増し賃金その他の問題につきまして、法律違反があるときには取締るという両方の措置は講じつつあるわけでございます。また問題は、経営との関係もありますが、またわれわれ賃金制度そのものについては強制力を持つておりませんから、話合いで指導して行くという問題でございますが、結論はまだ得ておりませんが、引続きこの問題に対しては努力して行きたいと思つております。
#51
○門司委員 引続き努力するというようなことだけでは、もうわれわれとしても考えられない面にぶつかつておるのであります。むろん強制するわけには行かないかと思いますが、しかしあなた方の立場から考えれば、一体二十四時間勤務であつて、その中で休む時間は三時間か四時間であるということは大体わかつておるはずであり、従つて、もしそういう問題があるならば、あなた方の方では、これには相当強く警告ができるはずである。私どもから考えて参りますと、どうも基準局自身が、この問題については、工場などとちよつと違うものですから、取締りの対象としては非常にやりにくいことは、一応うなづけるのでありますが、しかし業者といいますか、協会もございますし、それらのものについての実態の報告なり、あるいは実態の調査というようなことが厳重にされれば、そういう問題は私は起らぬと思う。賃金の問題についても、請負賃金が許されておるといたしましても、勤務時間との関係があつて、オーバー・タイムその他をつけておればいいんじやないかという議論になるかもしれませんが、しかしこの場合には、必ずしもそうは行つておらないのであります。二十四時間勤務が大体主になつている、そうしてオーバー・タイムをつけないために、結局請負になつているという形であります。だから、これは必ずしも法を守つた行き方ではないと思います。そこには取締りの余地が十分あると思う。もしこれが二十四時間の勤務であるとするならば、当然それについての割増しを支給されるだけの賃金の水準を置かなければならない。賃金水準は、普通に働いている者の賃金とほとんどかわらない水準に置かれねばならない。こういう面は、基準局として相当研究をされて、厳重に取締りのできる面ではないかと考えられるのであります。こういう点について、私のところにも、十六国会のときにこれは問題にいたしましたので、あなたの方からいただいた資料はあると思いますが、その後ちつとも改められておらない。最近の状態を聞いてみますと、運転手の就業状態というものはほとんど同じなので、特に今日お願いいたしましてあなたにお聞きいたしたわけでありますが、あなたの方には、考えておこうということだけではなくて、そういうものに基いたはつきりした資料がございますか。
#52
○龜井説明員 先ほども申しましたように、交通の頻繁な都市を持つておりますところの局長に対しては、この問題に対しまして指示をいたしました。その面の監督上の取締りなり、賃金制度につきまして、指導をするように指示をいたしております。東京におきましても、先ほど申し上げましたように、業者の協会とこの問題につきましては話合いをいたしておるのでございます。ただ問題が経営の実体と結びつくために、すぐに賃金制度をどうするかということになりますと、結論がなかなか出にくいという面もございます。それから労働時間の問題、あるいは割増し賃金の問題、これらにつきましても監督はいたしておりますが、実態について多少法律的に割切れない面もございまして、ただちにどうするということは結論的に出ないのであります。お話の御趣旨は私らもよく耳にしておりますから、さらにこの問題につきましては急速な結論が出ますよう努力いたしたいと点います。
#53
○門司委員 こんにやく問答みたいで一向わからぬのですが、それなら結論として聞いておきますが、基準局ではどういう形態にすればいいかという案があれば、この際発表していただきたいと思います。
#54
○龜井説明員 これは私個人の私見でございますが、固定給が望ましいことは言うまでもございません。それとまた、仕事の性質上、そこに請負制度でやる面のいいところも持つております。従つて、固定給と請負給とをどういうふうにからみ合せて行くかという問題があろうかと思います。これは保険の外交員あたりの賃金制度と非常によく似た性格を持つているので、私自身としては、そういうことが望ましいという考えを持つております。従つて、そういう面からの指導はいたしますが、先ほど申し上げましたように、強制するわけには参りませんものですから、そこにまたわれわれのつらさというものがあるわけでございまして、この問題は多少気長く取組んで行かなければならないという気がしております。
#55
○門司委員 賃金の面は、一応そういうことは考えられておりますが、問題は労働時間の問題であります。自動車の運転手などは非常に神経を使う仕事であります。従つて労働時間等については、今二十四時間勤務、あるいは十八時間勤務というようなものは、大体どのくらいの時間が妥当だとお考えになつているか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
#56
○龜井説明員 何時間が適当であるかという御質問でございますが、これはやはり手持ち時間がどの程度あるかによつて、非常に実労働時間の問題がかわつて来るのであります。しよつちゆう流しております運転手の場合、あるいは一定のたまり場所において待機をすることのできる運転手の場合において、おのずからそこに違うのではないか。従つて、一概に何時間が適当であるかということの結論を私がここで申し上げることは、むずかしいと思うのであります。それぞれの運転手の勤務の態様によりまして、やはりその点は検討されなければならないと思います。
#57
○門司委員 私はそういう政治的の答弁でなくて、もう少し技術的に研究がされておるものだと考えておるのでございます。たとえば機関車の運転士の一日の実働時間は大体五時間半です。それ以上は、目も疲れましようし、からだも疲れてなかなか勤まらない。そしてあとの時間はいろいろな準備時間や何かがあると私は思う。おのおのああいつた精神的に非常に疲れる仕事をしております者には、体力に対してある程度制限が必要ではないかというように考える。従つて、流しをやつておる間は遊んでいるという考え方は、間違いだと思います。流しをやつている間でも、やはり神経も十分に使つておりますし、決して休んでいるのではない。従つて、その賃金体系との関係は、非常にむずかしい形になつて来ると思います。しかし、業者であります限りにおいては、大体の見当はつくわけであります。一時間にどのくらいのかせぎがあるかぐらいのことは、大体わかつておるわけであります。同時に、会社側の方も、そのくらいは承知しているはずである。従つて、それらの問題は、あなた方の方で十分研究されて、そうして実働時間というものは大体このくらいが至当である、その上に立つた賃金の算定というものがやはりなさるべきであるというふうに私どもは考えるのであります。こういう点について、局長にもしお考え等がございますれば、お聞かせを願つておきたいと思います。
#58
○龜井説明員 先ほど申し上げたのでございますが、流しております間は、これは手待ち時間としては認めがたいのでございまして、労働の時間と私は思つております。ただ駐車場で客を待つております者と、しよつちゆう流しております者とは、やはり労働の態様が違うかと思います。そういう場合に、何時間が適当であるかということは、お説の通り鉄道につきましては団体交渉の結果五時間半というものが出て来たのでありますが、これは団体交渉の結果でございまして、われわれが指導したものではございません。従つて、自動車の運転手が機関車の運転士と同じ程度の労働の密度があるかどうかということになりますと、そういう面も考えられるわけです。実際に運転をしております間におきまする労働の密度としましては、同じような条件に置かれているということは考えられますが、それが国鉄できめられております五時間半というものがいいのかどうかということにつきましては、私実はまだ結論を得ていないのであります。それからまた、たまりを主体としまする運転手につきましては、これはその駐車場におります時間が平均的にどの程度あるかどうか、こういう問題も、やはり関係が出て来るのじやないかという気がするのでございます。従つて、今何時間が適当であるかというふうなことを私申し上げることは、差控えさせていただきたいと思います。研究は進めておりますし、またある程度の結論を得たいと思つております。
#59
○門司委員 さつきから申し上げておりますように、どうも変なふうに答弁がそれて行つて、非常に弱つておりますが、私は、単にそういう抽象的なことではなくて、験車場とか機関車とかいうことは、ただ例を申し上げただけでありまして、これが賃金との関係は、スピード・アップがあれば、あるほど賃金が高くなるのはあたりまえで、時間を短縮するか給料を上げるか、二つの方法しかないのであります。そのいずれをとるかということは、結局体力の問題その他で換算されて来るわけであります。従つて私は機関車の問題は、ただ単に例を一つ話しただけでありまして、自動車の問題についても、駐車している間は遊んでいるにきまつている、その問題はむろん神経を使わないことはわかりきつている。しかし、それらの労働者に対する実働時間の幅というものについて、労働基準局として何らか算定の基礎になるべきものがなければならぬと思うし、そのくらいのことは研究されていなければならないと思う。すべて労働力というものは、人間の体力等から考えて一体どのくらいが標準であるかということぐらいのことは、職種別に労働基準局としてわかつていなければならぬと思う。これは団体交渉の結果ああいうことが闘いとられたというふうに言つては、むちやくちやの話であります。私は何もそんなことを聞いているわけでもなんでもない。団体交渉の結果であろうとなかろうと、そういうことは、さつき申し上げましたように、二つの面から考えて、スピード・アップがあればあるほど、体力はよけいいりますので、時間を短縮するか、あるいはそれができないならば給料を上げなければならぬということは、常識的に考えられることであります。従つて、今日のように非常に輻湊しております都市交通の場合、運転者の一時間の体力的なものを大体考えて、一つの運転時間というものを考えるべきである。しかし、その体力関係だけのものを考えて賃金を割出して、それが経営上成り立たないというような問題があるかもしれませんが、それはその次の段階として考慮すべき問題であつて、基準局としては、輻湊した都市における運転者の運転時間というものは、人間の体力から考えてどのくらいが至当であるかというくらいのことは、一応おわかりになつていなければ、ほんとうの労働行政は行えないと思う。これは無理にあなたを責めるわけじやありませんが、私はそう考える。従つて、今まで研究された結果としては、体力的に考えて一応このくらいの時間ではないかというようなことを、これはむずかしいかもしれませんが、あなたのお考えを率直に発表願えれば、私ども幸いだと思つております。
#60
○龜井説明員 まだ確たる結論を自信を持つて申し上げるまでの段階に至つていないのでありまして、先ほど申し上げましたように、今検討はいたしているのであります。従つて、ここで何時間が適当であるかということを申し上げることは、差控えさせていただきたいと思います。いずれ検討が済みました後に、自信を持つてお示しし得る結果が出ましたならば、これは申し上げていいと思います。
#61
○赤松委員長 それは至急検討して、門司委員の方へ出してください。
#62
○門司委員 これは委員長に頼んで、正式に資料として出してもらうようにしたいと思います。
#63
○赤松委員長 わかりました。
#64
○門司委員 それからもう一つ。この前十六国会のときにいただきました資料は、私もあとで、これではちよつと困ると言つたのですが、これ以上ないからというので、やむを得ずとつたのですが、東京都内でも大阪でもよろしゆうございますが、経営者間における給料の算定方法というか、算定方式といいますか、そういうものでお調べになつているものがございますれば、至急参考資料としていただきたいと思います。
#65
○龜井説明員 承知しました。
#66
○赤松委員長 それじや門司君の方へ送付してください。
 青野武一君。
#67
○青野委員 私は、今門司君からのお話もございましたので、上原参考人にお尋ねする前に、基準局長に、私も苦い経験を持つておりますので、一言大切なことを希望しておきたい。と申しますのは、大阪もそうですが、東京都内の流しタクシーは、私の推定では一万を越しているのではないかと思います。そこで、今までの交通取締りに関する規則を適用すれば、自動車の運転手、特に流しタクシーの運転手は一日に五、六回ひつかかる。それでは生活ができない。巡査がどろぼうをつかまえて留置場に持つて行くのが二・五――これはピストルを持つておれば、たまには使うような危険もあるだろうが、どろぼうをつかまえて二・五の給料の歩増しがあるそうだ。これに反して非武装でできる交通違反の取締り、街路樹の陰から見ておつて、飛び出して行つてとつつかまえて三・五になる。それでまるつきりたちの悪い東京の交通巡査のえさになつておるのが、東京の自動車運転手の状態です。特に一ぺん新聞に出た問題でもあるが、地方行政委員会に出て来た津田警邏交通部長が言つておる。最近自動車が非常に多くなつたので、今までの取締り規則を適用しておつては運転手はたいへんだ。そこで、こちらの道路は駐車場になつており、こつちは駐車をしてはいかぬということになつているけれども、お客さんはどこででも手をあげて乗るし、また自分の家の前とか角でおりる、そうすると、そこは駐車禁止区域だといつてとつつかまえられたら、運転手は一日に三ぺんも四へんも千円の罰金を食らう。それではいけないというので、警視庁の取締り方針として、人間の乗りおりは、駐車じやなくて、一時停車だから、五、六分間ぐらいはとがめるなと言つておるのだが、たちの悪いやつは一分か二分でとつつかまえて三・五の歩増し給料をもらう。そういうことが無用の摩擦を起して行つて、運転手は非常に不利な立場に置かれておる。しかも、私どもの聞いているところによりますと、固定給一日三百円、午前九時からあくる日の九時まで二十四時間勤務。そうすると、平均をとつてみると、一日二十四時間勤務ですから、十二、三日しか働かれぬということです。そうして九千円までは一割、九千円を越したら二割、この歩増しによつて無理な運転をやつておる。非常にからだが疲れる。その上乗る者がそういう運転手の車に乗ると危険だ。運が悪いときには、一時間も二時間も街路にとつつかまる。そういうところが一定しておりませんが、一番大切なことは、警視庁の指令が徹底しないために運転手や乗つておる人が非常に迷惑しておる。一時停車ぐらいの乗りおりの場合は、少くとも五・六分ぐらいはとがめちやいかぬというのを、平気な顔をしてとがめて、少し反抗すれば運転手の免許証を取上げる。三箇月間運転手の免許証を取上げて停止する。この間二、三回違反をしておれば、一万円ぐらいの罰金はとられてしまう。たちの悪い交通巡査のえさになつている気の毒な立場に立つておるのが、東京都内の運転手の立場です。これは基準局の責任において警視庁と話し合つて、一時停車の場合はこの程度ぐらいまではとがめてはいけないという方針が確立しておればいい。それは労働基準局の方と警視庁と話をして、広く東京都内の運転手に、営業者を通じてこれを通告しておく。あるときは五、六分おつてもとがめられぬ、あるときは一分間でいきなりやられる、そういうことでは実に気の毒だ。またいろいろな問題が起つて参ります。私たちの問題も、六分間はいいというのを、酔つばらつた巡査がたつた二分間でいきなりぶつかつて来た。これは初めから無理なんです。そういう点はこの機会に、門司委員のお話もありましたので、私からあなたに御希望しておくから、はつきりその線を打出していただいて、運転手の諸君に周知徹底できるようにおとりはからい願いたい。
 それから、私は委員長その他同僚諸君と、重要問題で労働省に行かねばならぬ時間が迫つておりますので、上原参考人に項目別に五、六お尋ねしておきたいと思います。
 ただいま聞いておりますと、山花委員のおつしやつたように、東京都内のまん中で、こういうばかげた労働組合に対する弾圧――これは九州の炭鉱地帯なら別ですよ、こういうところで、あなたの陳述なさるような内容が事実とすれば、実に驚くべきことだ。まるでこれは維新当時にさかのぼつたようなやり方をしておる。そこで私は同僚とともに四年半ばかり衆議院の労働委員をしておりました経験もございますし、いろいろな労働争議にも全国的に関係して参りました。そこで項目別にお尋ねいたしたいと思いますのは、不払い賃金が一千一百七十万円ある、しかし最近までに百七十五万円はもらつておる。あとは柳本という責任者を通じてとれる見込みがあるのかないのか。これによつて龜井労働基準局長も、また新しい考えをもつて取締り方針を確立してもらえるというこの点が一つ。それから所轄警察署はどこか、署長とそれから集会を妨害した無用な行為をやつた巡査は何という名前か。ここで言われなければ、赤松労働委員長の手元まで書類で出してもらいたい。それから解雇通知は文書か口頭か。これも非常に重要な問題です。それから暴力行為というものは、陳述の中で二、三聞きましたが、労働組合として直接受けておるのか、どういう形で暴力行為を受けたか、その具体的な実例をひとつお話し願いたいと思います。それから暴力団と目せられる人々がそういうことをしたのは、何というやつか、その名前を知らしてもらいたい。われわれは労働委員として、また議員として、断じてこれを黙認することはできません。われわれの立場は、日本の全労働者の利益と生活権を防衛するのが任務である。そういうことが東京都内で公然と行われておる。私たちは断じて許すわけには行きません。だから、その所轄警察署の名前、署長の名前、そうして妨害し無用の弾圧をした警察官の名前、暴力を振つた連中はどういう人か、どういうことをしたか、そういう点を、ここで明瞭におつしやられねば、文書によつて赤松労働委員長の手元まで後日お出しを願つておけば、私ども、またこの次の労働委員会あるいは労働委員として話し合つた結果として、できるだけ労働組合員諸君の御期待に沿うように、利益を守る立場に立つて私どもは努力を続けたい。この点をひとつお尋ねしておきます。
#68
○上原参考人 柳本氏からは、これだけの高額の遅配賃金はおそらくとれないと思います。
 それから弾圧した警察官は、板橋警察の小林という公安主任です。それから暴力行為があつたというのは、私は一週間の裂傷を負つております。それでこれを警察に持つて参りましたら、小林主任が言うには、そういうことで告訴をすると非常にめんどうになる、これは私が謝罪をさせますからということで、いまだに相手は謝罪も何もいたしておりません。立ち消えであります。それからもう一つ、会社側が来ないので、私たちは仕事をやつておりましたけれども売上金が一向に入つて参りませんので、労働組合は不審に思いまして内情を調べました。そうすると、うちの課長グループが一つのグループとなり、売掛金を横領し、またはピンはねをして新宿の東京相互銀行というところに当座を持つて、この会社がだめになつたら他に事業を始めるというような計画を進めて、金を横領しておつた。そういうことが組合によつて発見されました。なおそのほかに人命を守るところの防毒マスクとか、ホース・マスク、そういうものをつくつております。そのホース・マスクが各船舶に非常に売れております。これに対しまして、彼らは運検の公文書を偽造いたしまして、写しに押されているサインの上を鉛筆でなすつて、下にインクを入れ、なお船装ナンバーを偽造して、刻印までつくつておりましたのを、組合が一切の証拠物件を押収して持つております。これを盗み出しにかかりましたが、一組合員に発見されまして取返されました。これも警察に持つて参りました。これを告発しようと思うと言いましたら、内輪のけんかで、そういうようなつまらないことを告発してもしようがないから、それはまあまあやめた方がいいでしようということで、これも取合つてくれませんでした。
 それから解雇通知は、全部文書で出ております。組合幹部に対しては、十二日と十四日に御丁寧に二回も内容証明で参つております。それから一般従業員七十名に対しましては、解雇予告通知が全部参つております。
#69
○青野委員 それで暴力団、暴力を振つた諸君とか、そういう小林という公安主任が好意を持つて言つたのか、あるいは会社側に好意を持つてやつたのか知りませんが、とにかく告訴ざたはかえつていけないことはないかと言つているけれども、謝罪も今日までさせない。小林という公安主任が、こん棒で頭を食らわして、謝罪させたら済むのかということです。そういうことで労働争議を直接間接に圧迫してはいけません。そこで私の質問したことでここで御答弁できなかつたことは、赤松労働委員長の手元まで文書で、そういう具体的なことを――これはおそらく労働委員会全部の希望だと思いますから、一通だけでよろしいから、ひとつ御提出を願つておきたい。これは警察にまかせたり、労働組合だけでは解決がつかないと思います。衆議院の労働委員会が、後刻この問題解決のために最善の努力をしなければなるまいと私は考えます。そういう点は、参考になりますから、後日労働委員の手元まで御提出を願つておくことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
#70
○赤松委員長 それでは、ただいま青野委員から御希望がありましたように、私の手元まで、衆議院労働委員会あてでよろしゆうございますから、文書を出していただきます。
 なお龜井基準局長は、この日本化工株式会社の争議問題につきまして、先ほどから御答弁がございましたように、できる限りすみやかに善処するよう、全努力を傾注していただきたいということをお願いしておきます。
 なお珪肺病対策につきましては、労働省におかれましては、予算を組んで二十九年度予算の中にこれを組み入れて要求をされると思うのでありますが、この点につきましても、両参考人よりるる陳述がございましたように、でき得る限りひとつ全力をあげて善処していただきたい、こういうことを強く申し上げておきます。
 本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもつてお知らせすることといたし、これにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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