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1953/10/04 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 労働委員会 第38号
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1953/10/04 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 労働委員会 第38号

#1
第019回国会 労働委員会 第38号
昭和二十九年十月四日(月曜日)
    午後一時六分開議
 出席委員
   委員長 赤松  勇君
   理事 池田  清君 理事 大橋 武夫君
   理事 持永 義夫君 理事 稻葉  修君
   理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君
      木村 文男君    倉石 忠雄君
      三浦寅之助君    黒澤 幸一君
      島上善五郎君    大西 正道君
      日野 吉夫君    矢尾喜三郎君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 小坂善太郎君
 委員外の出席者
        公安調査庁長官 藤井五一郎君
        労働政務次官  佐々木盛雄君
        労働事務官
        (労政局長)  中西  実君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      江下  孝君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      亀井  光君
        専  門  員 浜口金一郎君
    ―――――――――――――
九月九日
 委員宮原幸三郎君及び並木芳雄君辞任につき、
 その補欠として篠田弘作君及び三浦一雄君が議
 長の指名で委員に選任された。
同月十日
 委員木村文男君辞任につき、その補欠として田
 子一民君が議長の指名で委員に選任された。
同月十四日
 委員田子一民君辞任につき、その補欠として木
 村文男君が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
 委員三浦一雄君辞任につき、その補欠として岡
 田勢一君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
 委員岡田勢一君辞任につき、その補欠として川
 崎秀二君が議長の指名で委員に選任された。
十月一日
 委員佐藤芳男君辞任につき、その補欠として中
 野四郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月四日
 委員川島金次君辞任につき、その補欠として矢
 尾喜三郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 委員派遣承認に関する件
 参考人招致に関する件
 小委員及び小委員長の選任失業対策、労使関係
 及び労働基準に関する件
    ―――――――――――――
#2
○赤松委員長 これより会議を開きます。
 この際お諮りいたします。去る七月二十九日帝国酸素株式会社の労使問題につき、専務取締役ピエール・サンルーを本委員会に証人として出頭を求めることに決し、その出頭日時につきましては理事会にお諮りいたすことになつておりましたので、先ほどの理事会で一応来る十一月十日に出頭を求めることになつたのでありますが、諸般の都合により、その出頭日時の決定につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○赤松委員長 御異議なしと認め、さよう決します。
    ―――――――――――――
#4
○赤松委員長 次にお諮りいたします。自衛隊の労働組合幹部に対する思想調査問題の実情調査のため、委員派遣の承認を議長に求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○赤松委員長 御異議なしと認め、それでは派遣の目的は自衛隊の労働組合幹部に対する思想調査問題の実情調査とし、派遣委員は赤松勇とし、派遣の期間は十一月二十一日より三日間とし、派遣地名は秋田県といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○赤松委員長 御異議なしと認めてさよう決します。
    ―――――――――――――
#7
○赤松委員長 次にお諮りいたします。塚田木工製作所の労使関係について
   赤津 勉君 山本 栄一君
   原 文兵衛君  鈴木 鳴海君を参考人として御意見もしくは御説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決します。
 次に失業対策問題について
   坂本 周一君  内田 基大君
   馬場 大静君  近藤  誠君以上の諸君を参考人として呼びたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○赤松委員長 御異議なしと認め、さよう決します。
 日時につきましては委員長に御一任願いたいと思います。
#10
○赤松委員長 この際小委員会設置についてお諮りいたします。港湾労働に関する件の調査のため、港湾労働に関する小委員会を設置いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○赤松委員長 御異議なしと認めて、それでは港湾労働に関する小委員会を設置するに決します。
 次に小委員の数は六名とし、小委員及び小委員長の選任につきましては委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○赤松委員長 御異議なしと認め、それでは港湾労働に関する小委員に、
   木村 文男君  三浦寅之助君
   稻葉  修君  多賀谷真稔君
   井堀 繁雄君  中原 健次君を、小委員長に三浦寅之助君を指名いたします。
 なお小委員及び小委員長に欠員の生じました場合の補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決します。
 速記をとめて。
    〔速記中止〕
#14
○赤松委員長 それでは速記を始めてください。
 この際委員の皆さんにお諮りをしたいと存じます。本委員会で長らく労働委員を勤めておられました菊川忠雄君の遺骸が、きよう発見されたそうです。そこで本労働委員会といたしまして、先ほど御賛成をお願い申し上げましたように、つつしんで哀悼の意を表したいとこう思いますので、御了承を願いたいと思います。
   弔詞
 議員菊川忠雄君はさきに当労働委員会委員として長期に亘り在任、委員会の運営、審議に功績顕著なるものがありましたが、九月二十六日洞爺丸に遭難され、急逝されたことは洵に痛恨の至りに存じます。謹んで委員会の総意により哀悼の意を表します。
  昭和二十九年十月四日
          労働委員会
 後ほど私から右派社会党へこの旨伝達したいと思いますので、ひとつ御了承を願います。
    ―――――――――――――
#15
○赤松委員長 これより失業対策、労使関係及び労働基準に関する件について、調査を進めます。
 まず小坂労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小坂労働大臣。
#16
○小坂国務大臣 お許しを得て私より御説明申し上げます。
 最近特に私どもが重点を置いて考えておりまするのは、雇用、失業の関係でございます。最近の経済情勢を見ますと、緊縮政策の浸透が流通過程から漸次生産段階に波及するに従いまして、この雇用、失業に及ぼす影響というものも、一般的に顕現化して来たように思うのであります。
 鉱工業の生産指数をとつてみますと、昭和二十八年の平均が一五五・一でございましたが、これが本年一月以降漸次伸びて参りまして、一月が一五六・八、三月か一七二・四―これが最高を示しております、四月以降漸減いたしまして、四月が一六八、五月が一六四・一、六月が一六三・四、七月が一五九・二というふうに、漸次下降をいたしておりますが、いまだ昨年の平均よりは上まわつておる、こういう状況でございます。
 次に卸売物価について見ますと、やはりこれも漸次下降しておるのでございまして、昭和二十九年一月が三六八、三月が三六七・五、五月が三五七・九、七月が三五四・五、大体横ばい傾向でございまして、漸次卸売物価指数でも低落しておる。こういう状況でございまして、本年上半期におきまするいわゆるデフレ政策の効果というものは、かなり反映しておると思います。しかし最近に至りまして、基礎の弱い企業の整理というものが、大体一段落ついたような様子でございます。
 一方、輸出は若干好転をいたしております。銀行の貸出しも増加し、財政支出の増加、消費需要の堅調等が一時的な小康状態を来しておるように見られる次第でございます。世にいわゆるデフレ底入れという言葉もこの辺から出て来ておると考えます。
 一方、完全失業者でございますが、これは二十八年の平均が四十五万人を数えたのでございますが、これは昨年十二月に三十一万と非常に減りました。それから本年一月になりまして三十九万、三月五十九万、四月に五十一万と若干減りましたのでございますが、五月五十八万、七月に至りまして六十四万と、この趨勢は非常に増高をいたしておるのであります。また失業保険の業務面から見ますると、失業保険の受給者数も本年の一月四十一万八千人でございましたものが、三月四十四万七千人、五月には四十四万人と若干減りましたが、これも昨年より約十万人を上まわつておる次第でございます。七月に至りまして四十七万三千人と昭和二十五年六月のドツジ・ライン当時を上まわる人数を示しておるのであります。特に最近の企業整備の状況は、本年四月以降整理事業所、人員ともに増加しておりまして、そのうち繊維、金融業―金融業と申しましても、これはいわゆるごく小型の町の金融的なものを言うのでございます。造船業、石炭鉱業、鉄鋼業等の整理が目立つて来ております。そして事業所数において見ますると、本年の一月に四百十二箇所でありましたものが、七月になりますと、九百八箇所に上りまして、整理人員は一月に一万四千二百十人でございましたものが、七月になりますると、三万四百七名と増加いたしております。しかしこうした関係が御承知のごとく、失業保険の受給日数が六箇月でございまするから、この保険の受給の切れます時期、すなわち来年の一月、三月におきましては、相当に失業者としての求職者が増大すると思われますので、この点につきましては、十分戒心をいたし、この対策に遺憾なきを期したいと考えておる次第でございます。
 今申し上げましたように、いわゆるデフレ経済地固め政策の影響というものは、緩慢ではございまするが全産業に浸透いたしまして、現在では弱小企業等につきましての整理も一応終了した段階と考えられます。一段と消費需要も依然として堅調でございますので、こういうところから一部には、先ほど申し上げましたように、いわゆるデフレの底入れというような観察も現われておると思います。しかしながらこの経済地固め政策の基調というものは、今後も引続き進展するわけでございまするから、大都市、炭鉱、あるいは造船等の特殊産業と密接な関連を有する地域の雇用につきましては、今後相当にやはり悪化を予想しながら、これが対策を立てて参らねばならぬと存じまするし、その反面農村を背景といたしまする中小都市にありましては、米麦を初め農業生産の好調から一般にさほどの悪化要因は見出されないのでございまするが、雇用面におきましてもおおむねもち合いの状況で推移するのではなかろうか、かように考えられる次第でございます。従いまして、今後も必要に応じまして、失業対策所要経費の増加を行いまするとともに失業対策事業実施にあたりましても、地域的な失業情勢に対応した重点的な運営をはかりまして、今後の失業情勢に対処することといたしたい、かように考えておる次第でございます。政府といたしましても最近におきまして公共事業等によるところの失業者の吸収増加をはかつたのでございますが、その内容はいかなるものかということにつきまして、若干御説明を申し上げたいと存じます。
 政府といたしましては、公共事業というものを一方に持ち、一方に失業対策事業というものがあるのでございますが、その間にいわゆる役所のセクシヨナリズムというようなことのために、全般的に国費をむだに支出するということがあつては相なりませんと思いますので、その間に場所的、時期的に両者の間をうまく調和させることが必要であろう、かように考えております。そうして先般来の閣議決定によりまして、場所的、時期的に施策に機動性を与えることによりまして、できるだけ公共事業に失業者を吸収するという措置につきまして、具体的には失業対策連絡協議会というものを経済審議庁内につくりまして、この運営に遺憾なきを期したい、かように考えて目下着々といたしておるのでございます。
 なおこの失業対策連絡協議会の一つの結論としてまず出て参りましたものをごひろう申し上げますと、やはり先ほども申し上げましたような、炭鉱地帯等の特殊地域において、この失業情勢というものが特に深刻化いたして参ります情勢にございますので、これにつきましては鉱害復旧対策事業というものを繰上げ実施するということにいたしたのでございます。三十年度分を本年度分において繰上げ実施いたしますことによりまして、大体一万人の失業者を吸収する、二)いう措置をわれわれ関係者の間で決定いたしました。近々に閣議決定を見る予定を立てておる次第でございます。
 なおこの失業対策事業を実施するにいたしましても、地方によりましては非常に町村の財政収入も枯渇しておりまして、そのための財政事情からするところの失業対策事業を実施いたしますに困難を来しておる地方公共団体もございますので、政府といたしましては特別交付税の配付というようなことについて特に研究をいたしたいと考えておるのでございます。
 なお、大都市におきまして失業者が急増いたしました場合、相当の資材費を投入いたしまして、経済的な効果の大きな事業を実施して臨機に失業者の吸収をはかるということも必要であると考えまして、大都市を対象といたしましたところの産業開発施設、あるいは都市計画事業等について目下検討を進めております。さしあたりといたしまして、現在大都市におきまして職業安定関係の窓口を二十箇所にふやしたのでございます。できるだけ役所といたしましても職業安定機能の充実強化をはかりまして、また不幸にしてこうした機関の活動を必要とされる向きに対しましては、できるだけ的確に敏速に就労の機会をごあつせん申し上げるという手段をとりたいと考えておる次第でございます。大体そのようなことをごく概略でございますが申し上げまして、後は質問にお答えを申し上げたいと考えております。
 大体失業の問題が、現下一番問題になります点でございますが、さらに炭鉱、造船その他におきまして、賃金の不払いが相当に増高いたしておるのでございます。御承知のごとく昭和二十九年七月中の賃金不払い総数は約六千件でございまして、これを七月中解決した件数で見ますと、約二千件弱でございますが、七月末におきまして未解決の件数が四千三百四十二件ございまして、六月末より三百件ばかり増加をいたしておるのでございます。これを金額的に見ますと、七月中の賃金不払い金額は二十五億六千万円余でございまして、これに対して解決した金額は八億四千万円余でございますから、七月末には差引いた未解決の不払い金額が十七億二千万円余となりまして、六月末よりも四千万円も増加いたしておる次第でございます。これは地域的に見まするとやはり北九州が多いのでございまして、長崎、福岡を筆頭に、北海道、神奈川、佐賀というような順序になつております。業種別に見ますると、石炭鉱業におきまして六億六千五百万円、造船関係におきまして二億三千万円、その他機械産業等となつております。
 私どもといたしましてこの賃金不払いの事件は、もちろん基準法に触れるところの問題ではございまするけれども、ただ単に罰するということをもつてしても目的を達せざる点もございまするので、できる限りあつせんをいたしまして不払い問題を解決するように努力をさしておるのでございます。しかし全体といたしまして、たとえば石炭関係におきましても六月に七億二千万円ありましたものが、七月には六億六千五百万円に減つておるのでございます。こういう点も見られまするが、これは失業保険に肩がわりしたというふうにも見られるのでありまして、払えるものは払わせるし、あるいは失業保険の適用によりまして一応その急場をしのぎさせ得るということでございますれば、その方をあつせんするということにいたしまして、とにかく賃金不払いというような問題はできる限り基準局関係の全能力をあげてこれが解決に当るよう心がけておる次第でございます。
 さて、そういうような経済的な考え方並びに雇用失業情勢を背景といたしまして、私ども労働関係のことを考えておる者といたしまして、日本といたしましては、終戦以来労働関係法規を運用して参つておりますけれども、この辺でやはり占領軍当時の立案にかかるところの労働関係の諸法律を、一度全般的に見直してみる必要があるのではないかというふうに考えております。御承知のごとく、占領軍の参りました当座の先方の主たる役人というものはいわゆるニュー・ディーラーであります。ニュー・ディーラーというものの経済問題に関する考え方は、当時のアメリカの不況を背景にいたした消費過小―アンダーコンサンプシヨンをいかに解決するかということを背景としての考え方の人が多いのでございまして、そういう消費過小をいかに解決するか、すなわち有効需要をいかにして造成するか、そういう考え方を根本として労働法規を考えた当時の考え方が、そのまま消費と生産をいかにあんばいするか、そしていかにして日本の経済自立を達成するかということが非常な大きな問題となつておる現在のわが国において、一体そのままでよろしいのかどうかということを真剣に考えてみる時期に来ておるのではないか、かような気持を持つのでございます。しかし労働法規というものは労働慣行の積重ねであるということがいわれますし、その通りだと存ずるのでありまするが、われわれのその慣行というものは、外国の慣例を主として、それを基礎づけにして与えられた法律である。その法律を運営して来て、その後の慣行というものを今冷静に再検討してみる、その上にわれわれは日本の国にふさわしい労働法規なり、あるいは労働慣行なりをどうしたら打立て得るかということを真剣に考えてみることが必要なことではないかという感じを持つておるのてございます。基本的な考え方といたしましては、もとより労働政策の基本というものは、経済基盤を確立し、わが国の経済を独立させるという根本方策にのつとりまして、その前提としての合理的な労使関係、産業平和の確立ということが根本でなければならぬと存じまするが、このためにいたずらに国民経済的な観点を無視した、ややもすれば行き過ぎたところの労働組合の活動がありとすればその是正、あるいは労働争議の濫発というものも考え直すということが必要ではなかろうかと思うのであります。もとより国民経済的な観点に立つてこれを認識するというその根拠が大切でございまして、そのためにはできるだけわが国の経済の実態を知らしむる。その知らしむる方法はもちろん経済労働統計というものを整備して、国民の一般の正しい理解を深むる労働教育を徹底するということが必要でございまするが、そうした現状を認識して、しかも労使の産業平和というものをいかにして築くかということを国民全体も考え、労働組合の諸君も考え、経営者もほんとうに真剣になつて考える、こういうふうな見地から問題を検討したいという気持を持つておるのでございます。
 そこで労働組合関係の諸法規の中に、たとえば争議行為の開始の場合に、ある少数な、中闘なら中闘というものに無条件にある相当長い時期の以前に権限を全面的に委譲するという考え方よりも、やはり争議行為をする場合に、最終案が出たら、その案に対してどう思うかということを、無記名式に投票するというようなことで争議を決定するということを考えてもいいのではないかというようにも思うのでございます。
 なお、労働組合の政治的活動は、主として政治的活動をしてはならぬということが書いてございますが、一体その政治的活動というものはどこまでが合理的な、限界なのであろうか、そういうことも検討する必要もあろうかと思うのでございます。なお、組合のいわゆる不当労働行為制度というものにつきましても、一部には争議であるなら何をやつても保護されるのだという考え方がありますが、一体どの程度までが争議行為として妥当なものであるかということは、国民全般の非常な関心事でなければならぬと思います。これは決して組合を弾圧するとかそういうものではなく、国民経済の興隆、国民の経済力をになうにない手としての労組の健全なる良識というものが、どこまでを正当と考えるかということを皆で考えてもいい時期になつておるのではないか、こういうふうにも思うのでございます
 しかし、一方におきましてデフレといわれる地固め経済下に、労働者の生活条件の安定、維持、向上のために、できるだけ実質賃金の向上と福祉対策についてこれを推進する措置を講ぜねばならぬと思うのであります。現在の国の財政というものは、非常に逼迫を
 いたしておりますけれども、勤労所得税の軽減については、もう少しみなで考える余地はないか、また労働金庫というものも、皆様方の御賛成を得まして、それ以来非常に急速に育成されておるのでありますが、昨年の年末には政府が預託をいたしまして、また本年度におきましても二回にわたつて政府資金の預託をいたしておるのであります。しかし、それが各府県ばらばらであり、また国民の税金を預託するのでございまするから、それにふさわしいだけの中央の体制も必要ではなかろうかと思うのでありまして、一方労働金庫というものを使つてりつぱな福祉施設、住宅をつくる、あるいは貸付金を受けてそれによつて仲間の相互間の福利施設をするにいたしましても、何としても長期にわたつて低利の金が必要だということになりまするので、そうした長期の低利な資金を確保するためには、やはり労働中央金庫というような構想が必要ではなかろうか、かように思いまするので、労働中央金庫というものについて考えてみたいと思うのであります。
 次に、本委員会におきましても種々御検討いただいておるのでございますので、一般の中小企業におきまする労働者の福利厚生のために、たとえば労働者福利共済団体というようなものを考えてもよかろう。つまり、ごく小規模の事業体におきまして、労使を一体としたところの福利共済団体をつくるという考え方はいかがかと思うのでございます。なお、役所といたしましても、福祉対策協議会というようなものをつくるということで、先般来予算的な措置もいただいておるわけでございます。この点は行政整理の際問題があるかと思うのでありますけれども、そうした福祉行政を、大きく全面に打出す意味において、労働省に労働福祉局というものを設けて、これが全般的な労働者の福利関係を考慮するということにいたしたらどうかという考えでございます。
 なお現下の経済状況あるいは中小企業の実態等にかんがみまして、労働基準法についても、相当に考慮をすべしという意見もございますし、またそうした余地がないことはないと私も思うのでございます。ことに労働基準法というものは、これは世界的に特殊な性格を持つたものでございまして、いわゆる工業も商店も一緒になつております。ところが、商店の方は客が来て初めて忙しくなる。工業の方は、ベルト・コンベアならコンベアがまわつておれば、その間は当然仕事があるのでありまして、労働の内容が若干相違しておる。それを一緒にひつくるめて労働基準法などというものでくくつているところに、日本の基準法の特殊性があるのでございますが、これをイギリスにおけるごとく、商店基準法と工場基準法にわける。そうして労働時間、休憩、休日あるいは安全衛生等につきまして、特例を考えるということが必要ではなかろうかと思うのでございます。しかし、これはなかなか一朝一夕には参りませんので、十分にそうした方向で―これはだれが考えても、ほかに例がないことであります。アメリカ等でも、厚生労働基準法というものは、ごく大ざつぱな労働基準のきめ方でございまして、こうした適用客体に対する考え方は、各州法にゆだねておるのでございますから、日本だけこうした特殊なものに縛られておる必要はないと考えておりまして、これは十分研究を続けて行きたいと思いまするし、皆さん方におかれましても、御一緒にひとつ御勉強をいただければ、はなはだ仕合せと思う次第でございます。
 次に、中小企業の実態から見て、労働時間、休日、年次休暇、そうしたものにつきまして、特例を設けることはどうかという御議論もございます。これにつきましては、先般来基準審議会におきまして、基準法の施行令だとか、婦人年少者の労働基準規則であるとかいうものにつきまして御審議をいただいて、若干この間に中小企業の特性というものも益り込んで参つたのでございますが、今般安全衛生規則を、労働安全規則と、それから一般安全規則、特別安全規則というふうにわけまして、中旬の基準審議会に諮問いたしたいと考えております。
 また寄宿舎規程につきましても、ただいま審議会に諮問をいたしておるのでございまして、この間に深夜業の問題であるとか、あるいは割増し賃金の問題であるとかを基準審議会に逐次諮問をいたして参りたい、かように考えておるのでございます。
 私が基準法の問題につきましての意見を一部述べました際に、深夜業あるいは割増し賃金の問題に触れたことをもつて、非常に基準法を改悪する、世界的にも不評にするというような御議論が一部にあつたようでございますが、それはそうではないのでございまして、たとえば異常な業務繁忙の場合、かにのカン詰であるとか、あるいはいわしのカン詰をやるという場合、そうした原料が一度に到着する、それはほうつておけば腐つてしまうのでございます。あるいはまた輸出製品、たとえばクリスマス・ランプを積み込むという場合に、これをほうつておいて船積みを逸しますれば、これは時期のものでありますから、その契約というものはキヤンセルされるのでございます。そうしたものをうまくあんばいするために、そうした異常な業務繁忙の一定の期間におきまして、行政庁等の認可を受ければ、こうしたものもさしつかえないというふうにきめてはどうか。あるいは今申し上げました腐敗しやすい物品の損失防止等の場合につきましては、女子の深夜業というものも考えてよろしかろう、こういうことでありまして、決して何も炭鉱の女子の深夜業を認めるというような考え方は毛頭ないのでございまするし、労働の一般の基準というものを、ことさらに低下させようというような考え方は毛頭ないことを申し添えておきたいと思います。
 さらに基準法というのは、実働八時間というのが規定になつております。さらに国際労働条約等におきまし、ても、たとえば繊維に関する国際条約におきましても、実働八時間ということが前提になつておるのでありますが、わが国におきましては、何ということなく拘束八時間というふうに言いならわされておつて、基準法か拘束八時間をきめておるので、これは特に悪法なんだというお話があちこちであるのでございます。これは基準法そのものがそうなつておらないというところを明確にいたしたい、かように考えるのでございます。
 さらに先般の近江絹糸の問題等もございまして、特にそういう感じがいたしたのでございますが、争議調整の制度におきましても、公益事業等に限らないで、ああした特別の重要争議には、広く職権調停というものもなし得るということにかえることを、皆さんの御研究を煩わしたいし、また御一緒に研究してみたいと考えております。ああいうことになりますと、まつたく非常に重大である、重大であると世間で騒がれまして、それに対して労働省は何をしておる、大臣は何をしておると言われますが、別にこちらは何も手はないのであります。こういうことに対しまして、そういう輿論があるならば、それに対してはそれにふさわしい権能が与えられなければならぬかと思いますので、こういうもの、あるいは料金を一般に協定される独占の公益事業につきましては、特別の場合に強制仲裁の制度を考慮するということも一案かと思うのでございます。こうした点も研究をしてみたらいかがかと思うのでございます。
 さらに先ほど触れました失業の問題につきまして、失業対策事業というものが、従来とかくの非難がございます。非常に非能率的である。この点をもう少し現場直行制であるとかあるいは小間割制であるとかいうものを考えて、能率的な運営を考えてみたい。また公共事業による失業者の救済の措置の強化を考えたいと思いますし、また一方特定の場所を限り、特定の時期を限つて大量に出て参ります失業者に対する対策というものを考える。これをさらに一歩進めることができますれば、建設省、農林省におきまして構想いたしております産業建設隊、国土建設隊というようなものと、うまく意気を合せる青壮年層を対象とする就労、そして失業対策事業にかわるものといたしましても、それについてのある程度の技能習練をさせる機関を持つて、一定の技能を習得した者が職場に行つて働く、こういうようなことも考えたいと思うのでございます。
 さらに、最近御承知のごとく尼崎製鋼等におきましては、この経済地固め政策が人を雇つて行きぎれない、そこで賃金の値下げをしてもらいたいという要望があり、あるいはこれだけの人に一時解雇をしたいという申渡しをいたしましたところが、そういうことはとうてい聞き入れられぬので三箇月も争議をいたし、会社はつぶれてしまう、全部失業する、こういうような例が現われて来ております。現に日鋼の室蘭におきましても、そういうような例が出て来ておりまして、これは会社はつぶれておりませんけれども、非常に困難で、何ら意味なく労使双方が三箇月も四箇月も抗争しておる、こういう事態が現われて来ております。そこで政府といたしましても、一般的に失業がどのくらい出るのかということを知る関係もあり、またこうしたむだな労使共倒れになるようなことを避けるという意味もあつて、たとえば解雇制限法というようなものをつくりまして、そうして一般の行政庁の認可を得たものでなければ、大量の解雇はできぬ。その反面そうした申請をしておる間、あるいは一般に中立的な機関が是なりと認定したものについては、その雇用につきまして、政府が、あとの失業対策について万全を期するのであるから、解雇は反対であるという争議はやめてもらう、こういうことができれば一つの案だと思いまして、こういうことも研究をして来ております次第でございます。
 これにつきましては各国の立法例等も参照しておるのでございますが、先般この委員会におきましても多賀谷委員等からもお話がございまして、西ドイツ等においてはこういうことはやつおるのでございますが、なかなか外国におきましては、いわゆる権利争議というものはない。解雇ということは一つの雇用者の権利であるということで、権利争議というものはない。しかし日本では解雇反対ストというものは、昨年は二割の消極的解雇反対のストが、今年は上半期において四割を占めておる。こういう点は、日本の争議の特異な現象であります。しかし、これは一方から見ますと、国情でありまして、日本のように人口が多い、しかも一回離職いたしましたならばなかなか次の職にありつけない国と、イギリスのように人口が少い、あるいはアメリカのように非常に厖大な国富を持つた国、それと日本のように人口があまり多くて、しかも国土が狭く産業が貧弱な国と、その間の解雇事情が相当に社会的な条件が違うのでありますから、これは一概に否定はいたしませんけれども、しかしそうかといつて、解雇反対をやつておつたつて、労使共倒れになつて、結局それだけ職場がつぶれて行くということは意味がないことでありますので、何とかこの間にうまい話は考えられぬものか、かように考えておるのでございます。
 いずれにいたしましてもイギリス等から帰つて来た者の話を聞きますると、イギリスで労使双方において最もおそれておるのは失業の問題である。しかし失業はいかにして来るかというと、国内の産業政策がうまく行かず、国内の労使関係がうまく行かず、結局外国との輸出競争でイギリスのコストが高くついて、イギリスの製品が輸出できないというときには、それだけイギリスの産業は萎靡するから失業者が出る、労使双方において失業する。どうしても輸出競争に打ちかたなければならぬから、労使双方において努力するということを聞いております。日本の場合は、どうもそうではなくて、とにかく労使双方は他の産業と関連なく存在して、その間に抗争しておれば何か解決があるように考えて、抗争しておるのではないかと思いますけれども、そういうことが続いておりますれば、日本の輸出は萎靡沈滞し、労使ともに職場を失うということになると考えられますので、どうかひとつこの辺で日本の労働問題というものに対して、国民全般から見ても、また労使双方の善意ある協力というものができまして、日本的な労使関係が打立てられるようなきつかけがつかめぬものかと思つておりますが、しかし、何分にもなかなか名案も出ませんので、苦慮いたしておる次第でございます。いずれにいたしましても、こうした構想につきましては、同僚の皆さんとよく御相談いたし、あるいは労働問題協議会にもかけて、労使双方あるいは中立の諸君の意見も聞いて慎重に扱いたいとは思つております。
 根本的な考え方、構想を申し上げますと、以上のようなことを考えておる次第でございます。
#17
○赤松委員長 ただいま各派の申合せによりまして、発言の順位を次のようにきめました。稻葉君、持永君、島上君、井堀君、黒澤君、矢尾君、日野君。
 なお島上善五郎君より、午前中内閣委員会におきまして、藤井公安調査庁長官が発言をいたしましたその発言の内容につきまして質問をしたい、こういう通告がございましたので、今内閣委員会と連絡しましたところ、二時に本委員会に出席する、こういうことになつておりますから、ひとつ藤井長官が出席をいたしましたら、その間島上君の質問を許していただきたいと思います。
 それではただいまより労働大臣に対する質疑に移りたいと思います。稻葉修君。
#18
○稻葉委員 ただいま労働大臣から、政府の労働施策につきまして、詳細な御見解の開陳を拝聴いたしました。これにつきまして御質問を申し上げます。
 わが国の人口過多と資源の枯渇した国民経済の樹立のためには、労使協調の実をもう少し推進する必要があるという労働大臣の御見解であります。
    〔委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕それでは、それを具体的にどうやつて推進するかという点につきましては、十分に私どもを納得せしめる施策をまだお持ちにならぬようであります。この点遺憾といたしますが、従来の日本の労働者の意識においても、ヨーロツパ各国の労働者の意識と比べて、非常に低いものがあると思います。もう一つは、資本家経営者側において、企業の社会的な義務ということについての観念が非常に足りませんで、古い資本主義の理念に膠着して、なるべく低賃金、そうしてやはり搾取的な思想に膠着しているということがあつたと思います。従つて今後の日本の労使協調の実をあげるためには、どうすればよいか。先ほど、政治ストについての御見解があつたようでありますが、先般この労働委員会は、炭鉱の失業問題について非常に苦慮いたしました。労働者代表を呼んで聞いてみますと、今日の状態では、いくら争議に打ちかつて経営者側の資産を全部投げ出させても、こういう中小炭鉱の滞貨の状態では解決のできるものではない、こういう発言をいたしたことがありました。これは非常に重大だと私は思います。たとい労使協調が行われても、この問題は解決しないと思う。いうならば、どこに根本的な原因があるかというと、むやみやたらに計画性なく炭を掘らせたというところにあつたのではないか、根本的な見通しの誤りがあつたのではないか。臨時石炭鉱業管理法を廃止する場合、われわれ痛烈に反対したにもかかわらず、あなた方はこれを廃止した方がよい、そうすれば炭が安くなるということを言つて譲らなかつた。ああいう点は間違いではなかつたか。これは労働大臣に御質問すべき事項であるか、経済審議庁長官あるいは通産大臣に御質問すべき事項であるかちよつと疑わしいが、やはり日本の労働政策は、国全般の経済政策とあわせて考えなければ、とうてい解決できぬ問題であります。この点について、従来のあなた方の経済政策は少しくピントをはずれておつたと私は思うのだけれども、そういう点は、労働大臣はいかがお考えですか。
#19
○小坂国務大臣 生産を計画的に行うということは、非常に必要なことだと私は思つております。しかし、あまり度が過ぎますと、いわゆる個人の創意というものが死んでしまう。そこで個人の創意を生かし、一方に計画的な目標をきめて努力するということの調和をどうするかという問題だろうと思います。私どもの言つておりますいわゆる自由経済というものも、決して十九世紀的な、あるいはそれ以前の自由放任の完全な自由主義を言つているのではなくて、要するに個人の創意をできるだけ発揚するということ、個人の自由を尊重して行うという考え方で申しておるのでございまして、あるいは稻葉さんのお考えも私どもの考えもあまり違わないのではないか。究極的にどうするかというと、あまり違わない結論が出るのではないかと思います。ただ炭鉱の場合、非常に問題がございますのは、なるほどできるだけ統制をはずすということで、生産が上りまして、四千八百万トン以上にも及ぶということになりましたのは、当時の四千万トンあるいは四千二百万トンを目標として掘つたときと比べますと格段の相違でありますが、一方石炭の場合は、重油を入れたというところに問題があると思う。しかし、なぜ重油が入つたかと申しますと、やはり一昨年の電産、炭労のストライキによりまして、石炭に依存している工業が非常に危殆に瀕したという事情もございました。こういう不安定な状態であるならば、重油の方が安価で手近に入るので、重油を入れようということで重油転換が非常に行われたという事実がございます。これはそのときの経済施策でございますので、そうした観点―日本が輸出をします場合に、物が安くできるならば、一トンでもよい製品を輸出するという考え方で行われたことと考えております。全般的に申しますると、私の答弁いたすべき事項よりも、経済審議庁長官の所管かと思いますが、根本的な考え方だけを申し上げておきます。
#20
○稻葉委員 労働大臣の今のお考え方から見て、従来の施策はややレセ・フェアにすぎたきらいがあるとはお認めになるのですか、どうですか。
#21
○小坂国務大臣 これは考え方でございまして、私ども別にそうレセ・フェアで何でもかでもやるというわけではないのでございまして、この点につきましては、やはりお話のようには考えておりません。計画性と個人の創意を調和するということについては相当に努力をしたつもりでおります。さらに計画性なんというものはもう問題じやないのだというような言い方は、私どもとしていなかつたつもりでありますが、そういうお考えが前提にあつての御質問であれば、私どもそうではないというふうにお答えしておきます。
#22
○稻葉委員 私は、あなたが野放図な、行き当りばつたりの自由経済主義者だとは決して思つていないのです。だから、そういう点から見て、こういうように失業者が出て来た、ああいうような炭鉱の状態では、どんなに労使協調をやつたつてつぶれてしまうのだ、それは政府の策が悪かつたのだという点をお認めになるのか、お認めにならないのか聞いておるのです。いや、従来のやり方をこれからもやるのだとおつしやるのか、あるいは政策の転換をやつて、もう少し経済全体に計画性を持たせて行くというのか。もし計画性を持たせて行くというなら、私は従来の行き方は悪いということになると思うのですが、その点責任政治の原則からいつて、どうかというのです。
#23
○小坂国務大臣 政策というものは、やはりそのときの経済状態を反映してつくられたものでございまして、夏、あわせを着るとか、冬、ゆかたを着るとか―ゆかたは夏自身は気持がいいのですが、冬着ればかぜを引いてしまうというので、そのときにあたつて適切な処置をとるということではなかろうかと思います。
#24
○稻葉委員 昔は夏だつたからあれでよかつたのだ、こうおつしやるのですね。結局あのときはあれでよかつたのだ、あれでよかつたならばこんなに失業者の出るはずがない、出て初めて、ああ、もう少しよくやつておけばよかつた。それでは話にならぬのです。あなたの根本のお考えは、私非常にいいと思うのです。その根本の考えから出発して、従来やつておつた労働政策なり経済政策なりは、あわせを着せるべきを綿入れを着せておつたのではないかと思うのですが、どうなんですか。それは絶対正しかつたのですか。
#25
○小坂国務大臣 この点は、大蔵大臣が財政方針の演説をするときに、何か言つていたように思いますけれども、やはり秋口になつても、少しゆかたを着ていた傾向があることはあるんじやないかと思います。朝鮮事変が何かいつまでも続くような考え方で、その間幾分ブームに酔つていたという点は否定できないと思います。
#26
○稻葉委員 日本の経済規模からして、日本が国際貿易をやるということは別ですけれども、日本の経済に対して、他に何らか援助を与えるものが存在しなければ、日本の経済は成り立つて行かないという考えこ立つのか、あるいはきわめて貧乏な国であるけれども、やりようによつては食つて行けるのだという考えに立つのか、それによつて労働法の改正であるとか、あるいは失業対策であるとか、いろいろな問題が違つて来ると思うのです。労働大臣は、日本の労働問題解決の根底をなす日本経済の見方について、食つて行ける、また食つて行かなければならぬ、たとい外国の援助がまつたくなくても、そうやつて行かなければならぬと思つているのか、あるいは財界の一部にあるように、日本経済なんてそんなものではない、外国の援助がなくてはとうてい成り立つて行かないというふうな見解にお立ちになるのか、これは根本的な問題ですからお尋ねいたします。
#27
○小坂国務大臣 根本的には、日本経済は日本人自身の手によつてなされなければならぬということは当然のことだと思います。ただ敗戦後の痛手が非常に深いので、返すつもりでありますが、当座はやはり金を借りて急場を切り抜けなければならぬというふうに考えております。ただ非常に不幸なことには、日本にはロー・マテリアルがない、輸出がそのままできるマテリアルがない。そこでできるだけ食糧なり繊維原料というものを―食糧の需給度を高揚し、繊維原料は人工的なものに置きかえて行くというような努力をしなければならぬと思いますが、ただ手放しで自立できるとは思いません、非常な努力がいると思います。
#28
○稻葉委員 それはたいへんにいい御答弁です。それならば、これだけの人口をかかえているのだから、もう少し日本の経営者側にも考えてもらう必要があるし、労働者側にも考えてもらう必要があるのではないか。自発的に考えなければ、法制的に強制する必要があるのではないかという点なんです、私の聞きたいのは。話を具体的にするために申し上げますけれども、一九五一年に、私は敗戦ドイツでバイエルの工場へ行つた。社長が私を案内してくれたが、彼の案内してくれた自動車は―あなたは大型に乗つておられるけれども、ベルツの中型です。それで、あなたたちはこんな小さい自動車でしよつちゆうやつているのかと言つたら、そうだ―ずいぶん倹約なものだと思つたが、これがドイツの国力なんですと言う。それから労働者住宅を見せてもらつたが、なかなかいい。これはなかなかぜいたくなものだと言つたら、これはドイツの国力の源泉だからと言う。日本の経営者は、自分の企業が社会的な義務を負つていることについて非常にずさんな考え方を持つている。どうせ日本の経済はアメリカの援助でやつて行くのだというような考え方であり、労働組合も、たとえば電産のあの電気を消すというようなストライキー国民一般に電力を供給するのが自分らの労働力の社会的義務だという点についての意識が非常に少い。その意識が少いのは、感情に走るからです。資本家、経営者は別な面を向いて走つて、そうして豚小屋みたいなところに入れておくから、このやろうというような考え方になる。経営者側も労働組合側も、政治的な扇動におどらされることなく、自発的にそういう意識に目ざめて来ないならば、法制の上で相当程度そういう方向に持つて行く必要があるのではないかと思うのですが、あなたはあなた方の自由の尊重ということに反するからいけないというお考えですかどうですか、承りたい。
#29
○小坂国務大臣 その点はごもつともなお考えだと思います。
#30
○稻葉委員 そうすると、ある程度新立法をつくつて、たとえば社会的にはこうなんだから、その限界を越えてはいかぬという立法を一方においてし、一方において、国民生活水準の要求を労働組合側がなした場合、資本家経営者側が、少しむだ使いをしなければ、ある程度めんどうを見てやれるのに、やらないで、待合へ入りびたりしている、あるいは、ゴルフに行つて遊んでいる、そういう資本家経営者側に対してはある程度チェックを加えるという立法もなさるという意味で御賛成なんですか。
#31
○小坂国務大臣 立法ということになりますと、なかなかその限界がむずかしいのです。たとえば税制なりそうしたことの面で、おのずから規制せらるべきものは規制されるというような持つて行き方が妥当ではなかろうかと思います。
#32
○稻葉委員 そうすると現在の労働三法の範囲内において、行政面においてそういう行き方をなさるとおつしやるのですか。
#33
○小坂国務大臣 ちよつとそのお考えがよくわかりませんが、労働三法の範囲内においてといいますと、とにかくできるだけ良識をもつて国民経済の実態なりというものを認識して不当なる紛争の起きないようにするということですか。あなたのお考えをそんたくしますと、その上に何か考えるということならば、経営者側にも何か考えなければいかぬ、こういうことのようですが、私は争議それ自身が、やつてみて何にもならぬ争議ならば、これは社会的に反省をして、この限度というものはおのずから出て来るんじやないかと思いますので、これ以上やつてもしかたがない争議というものに対しては、それを反省させるような何か手だてが講ぜられれば講じてもいい、こういう考え方であります。
#34
○稻葉委員 私の聞き方が悪かつたかもしれませんが、国民的生活水準が、統計上もそれから常識上もありますね、それをあまりに越えるようなとほうもない賃金値上げの要求などに対しましては、労働委員会はそういうあつせんに対しては門前払いの判決を下すという程度のことも必要ではないか。しかもある程度やればやれるのに、今までやつていなかつた資本家、経営者。失業者をむやみやたらに出し、企業の社会的義務制を逸脱して、自分たちのぜいたくをなさんがためにむやみに解雇をやつたり、そういう者に対しては、労働大臣の権限をもつてある程度罰を加えるという程度の立法も私は必要だという見地でお伺いをしたのです。そんなことは必要はないのですか。
#35
○小坂国務大臣 その点につきましては、社会的な不当な解雇はいかぬという機関があつてもいいかと思いまして、それが解雇制限法というものの骨子になつております。
#36
○稻葉委員 不当な解雇はいかぬというだけでなく、経営者の在来の生活態度がいかぬというところまでですね。
#37
○小坂国務大臣 その点は、いい悪いということでなくて、それだけもうけたならば税金をたくさんもらいたいという、税法の方がよかろうと思います。
#38
○稻葉委員 私は八月の九日に予算実施状況の視察のために、その当時は自由党、今は脱党して無所属になつておられる山本勝市と二人で行きましたが、川崎造船であるとか播磨造船であるとか、あの辺の工場地帯には中小の下請工場がたくさんございますが、それがほとんどもう、十次造船の進行しない状況もあるでしようけれども、懐滅状態に瀕している。事情を聞いてみますと、自分たちはある部分品の製作について請負つて来て労働者を使つてやつておる。そうして労働賃金は現金で支払う。品物を納めると検査をするという。この検査が非常に長引きまして、ようやく合格して、金を払うというので行つてみると、現金ではなくて非常に長い期限のついた手形だ。こうなるとどうしたつて立つて行けない。そこで労働問題の解決もそうだし、中小企業の崩壊を防ぐという二つの意味から、労働者に支払うぐらいの金は親企業は現金で支払うというような、相当あなた方の―いや、あなたじやないけれども、とにかく自由党の自由経済ではやりにくいことかもしれぬが、そういう立法的な措置が必要であるか必要でないか、労働大臣の御見解を伺いたい。
#39
○小坂国務大臣 御承知のように基準法の二十四条には、賃金は現金で直接労働者に支払わなければならぬということが書いてありまして、その通りやつてもらいますように、基準局あるいは基準監督署において努力しておるのでございますが、炭鉱の場合、金券というようなものがございまして、それがなかなか取立てられないということで困つておるのであります。しかし金融の道がついたようなときには、できるだけそれを他の債務に優先して現金化いたしますように、現地の方に督励をいたしておるのであります。
#40
○稻葉委員 いや、私は話が違うのでして、労働基準法通り下請工場の経営者は労働者に現金で払つているのです。ところが、親企業の方に品物を納めて受取るものは手形なんです。これでは立つて行けません、労働問題としても重要なことになりますな。そうなつて行くと、これみな企業はつぶれて、何十万という失業者が出るという問題になりますから、そこのところは、親企業はそのくらいの範囲のものは現金で払えという立法化が必要じやないかということを聞いておる。それは自由経済の原則に反して困るという御答弁ですかどうですか。
#41
○小坂国務大臣 とにかく商品をつくつてそれの代金をとるのでございますから、手形じやどうしても困る、自分の方は労働者に払う現金がいるのだから、これは現金でくれ、そうでなければ品物は売れぬと言えればいいわけですが、それではなかなか買わぬのが昨今の実情で、そういう事情になつておると思いますが、その点につきましては、できるだけ通産当局とも話合いをいたしまして、実態的にそういう問題を解消するように努力はしてみたいと思います。しかし、法律的にということは、ちよつとむずかしいかと思います。
#42
○稻葉委員 それはぜひ、あなたは労働問題の担当者でありますし、重大なことになりますから―つまり大企業中心で、大企業に肩を持つて、中小企業に対してそんな貸付手形みたいなものを許しておくということが大体間違いだと思う。中小企業の育成という点からも、労働大臣としても通産大臣に強烈に申し入れをしてもらいたいと思つております。
 次に、本労働委員会の近江絹糸事件につきましての調査の結果によつて、労働行政、ごとに労働基準監督署の行政がきわめて無責任、弛緩しているというふうに私は思つておるのです。具体的に申しますと、あれだけの基準法違反の状態が調査によつて明らかになつたが、それまでは、亀井基準局長の本委員会における御答弁によりますと、そんなにひどいという現地の報告はなかつたようなお話でありました。調査の結果、まるでひどい。それがどうして労働省にはつきり実態がつかめなかつたかという質問に対して、組合側に聞いても、夏川社長に押えつけられるのをおそれて、ほんとうのごとを女工さんなんか言わなかつたのでというふうな御答弁でした。そういうことです。ところが、そう言うはずでございますよ。とにかく一旦労働基準監督署の署員が行くと、酒を飲んだり、何かみやげをもらつたりして帰つて来ておるんだから……。(「そういう事実があつたのかね」と呼ぶ者あり)それは証言によつて明らかである。そういう末端の基準監督署の萎靡沈滞した官吏道のいわば汚職、そういうことについて、その後何か処置をなさいましたか。綱紀粛正のために、労働大臣として処置をなさいましたかどうか、その点をお伺いいたしたい。
#43
○小坂国務大臣 近江絹糸の基準法違反の問題に関しましては、先般の委員会で申し上げたことでありまするが、違反事件として説明いたしましたそれぞれ是正すべきものを是正しなかつたという数字が、二百件以上に上つておるのであります。そのうち起訴処分にしましたのは四件に上つております。ただ今般の争議中に、いろいろ今までこういう争議が起きたのは、今まで監督署のやり方が足りなかつたんじやないかというお話がありまして、この委員会でも参考人を呼ばれて、十分に御質疑になつたはずであります。当時私は出ておりませんでしたが、報告を聞きますと、参考人も、今あなたのお話のような酒を飲まされて帰つたとかいうような話はない、そういうことはありませんということを申しております。私もさようなことはなかろうと信じております。今申し上げましたように、基準法関係というものは、現地におきまして、その予算も少なめでございますが、労働者諸君の労働条件の安定のために、できる限りの査察は行つております。しかし双方に人権はあるのでありまして、会社側にも人権がある。そこで、ただ何となくそういう話があるというからといつて、やたらに罰とるわけに行きませんので、十分にこれに関する調査をしなければならぬ。その調査の裏打ちとなるものは、やはり本人の自供ということになる。そこで本人に聞きますと、そういうことはありませんと言われれば、それ以上役所が踏み込んで、どうしてもあるだろうと言つてひつぱたいて自白させるということは、私どものとらざるところでありますので、実になまぬるいという話もございますけれども、そういうふうな双方の人権を尊重するという態度から行きますれば、そうむやみに摘発をもつて、ただすということもできないと思います。問題は、できるだけよい労働環境をつくるということにねらいがあるのでありますから、悪いところがあれば直させるという、こういう態度で臨んで参りたいというふうに私は申しておる次第であります。
#44
○稻葉委員 そういう点につきまして、労働委員会で近江絹糸の事件について取扱われたときには、労働基準局長も、そういう点について、遺憾ながらある程度そういうことはあつたことを認めざるを得ぬようなお話に記憶しておりますが、それは私の記憶違いでありますか。
#45
○亀井説明員 当時の速記録をごらんいただきますと、わかるわけでございますが、島上委員からの御質問もございましたので、そのときに参考人三人の方から、その問題につきまして答弁がございましたが、一人といえども、そういう事実につきまして、お答えがなかつた。従いまして私もそういう趣旨のことを御答弁をしたわけです。
#46
○稻葉委員 職業安定所の職員の中には、そういう遺憾な者があつたというふうに記憶しておりますが、これは最小限度としてそういうふうに記憶しております。その点はどうですか。
#47
○江下説明員 確かにそのお話はございました。私としましては、その後実情調査をいたしましたところ、安定所として、ただ酒を飲みに行つたということはない。ただ新たに新入生―工場に入りました者を引率して行きまして、たまたま夕方になつたので、そこで食事したという程度のことです。あるいは就職いたしましたあと、就職後の、補導ということを安定所がやるわけでございます。つまり出身地の安定所の職員が出て参りまして、どういうふうに暮しておるかというようなことを見に参ります。その際にその工場で座談会を開きまして、そういうときに食事をしたということはあつたようでございます。そういうことを証人としては、非常に酒をしよつちゆう飲んでるというふうに言われたように私どもはとりましたが、しかしそういうことといたしましても、これはできるだけ避くべき問題でありますから、そういうことは厳重に戒告をいたします。
#48
○稻葉委員 職業安定所の職員が、自分たちの手を通じて就職せしめた近江絹糸工場の労働者に対して、どういうふうな労働条件のもとにやつているかということを親切に調べておれば、どうしてあんな証言によつて―あれほどでは実際はないかもしれぬが、しかし大体ひどい労働条件のもとに酷使されたということは常識になつております。そういうことがどうしてあなた方の方に、結局労働大臣に通達されるようなことにならなかつたのかということです。これはひどいということが、どうして労働省にあの事件があれまで発展するまで、事前に防止できるような資料が入らなかつたか。その点がどうも私には労働行政全般について少し甘いんじやないか、怠慢じやないかと考えられるのですが、どうか将来はお気をつけを願いたい。労働大臣いかがですか。
#49
○小坂国務大臣 近江絹糸の問題は、もう過ぎたことですから、いろいろ言いますと、かえつて問題になりますかもしれませんが、これは御承知と思いますが、二十四年ごろから毎年民主化同盟というものができてはつぶされ、できてはつぶされ、いよいよ爆発したというのが真相だと思います。ですから、その爆発をした瞬間に言つたことをとらえて、いろいろおつしやつていただきますと、少し私も困ることがありますから、この程度に願いたいと思います。
#50
○稻葉委員 よろしゆうございます。
#51
○池田(清)委員長代理 持永義夫君。
#52
○持永委員 まず私は近江絹糸の問題でございますが、先ほど稻葉君から、いろいろ御意見がありましたが、私は立場をかえまして、この問題が非常に長い間続きまして、また本委員会とししまても、何回も証人あるいは参考人を呼びまして、その解決の一日も早からんことを希望しておりましたが、幸い労働省あるいは財界の方々、また特に中央労働委員会の御協力のもとに解決しましたことは、非常に感謝にたえないのでございます。
 そこで、お尋ねしたいのは、一応解決したかつこうになつておりますが、あれで完全にこの争議は解決したのでありましようか。多少まだ団体交渉の余地があるようでありますが、それがどういうふうに進行しておりますか、これらの点についての状況をお知らせ願いたい。
 それからもう一つは、先月の初めでありますが、私ども国政調査のために北海道に参つたのであります。たまたま日本製鋼所の室蘭工場の争議の人たちにも、労使双方に会いまして、いろいろ事情を聞いたのでありますが、そのときの話では、すぐ解決するというようなことを聞いて、私ども非常に喜んでおつたのでありますが、いまだにこれが解決していない。これについて、どういうふうなお見込みでございますか。また労働省として、いろいろと御尽力のことと思いますが、これらのことについてお尋ねしたいと思います。
#53
○小坂国務大臣 最初に、近江絹糸のことにつきましては、非常に皆様方に御心配をかけまして、恐縮いたしておりますが、ただいままた御丁重なお言葉をいただいて、感謝いたします。
 さてその後の状況でございますが、やはりあれだけの争議を長くやつておつたので、非常に生産が停滞しておるという話でございました。そこで、中央労働委員会といたしましても、何かやはり今までのこともあるし、適当な示唆を与えなければならぬというので、工場へも出張いたしまして、私どもからいろいろな助言をいたしまして、―ただ役所としては、中に入るわけに行きませんものでありますから、中央労働委員会の方から、現地に出ていろいろ話をしているのでございますが、なお、詳しくは労政局長から申し上げたいと思います。
 日鋼の件につきましても、手元に調査したものがございますが、これも労政局長から申し上げた方が委細を尽すかと存じます。
#54
○中西説明員 近江絹糸につきましては、あの調印のこまかい実施面におきまして、早急には行きませんで、若干のトラブルが続いたように聞いております。特に彦根、大垣、津、この三つの工場、これは近江絹糸として最も大きな工場でございますが、ここにおきましては、やはり第一組合、第三組合対第二組合との関係におきまして、第二組合の方は、この際できるだけ早く一緒に吸収したいというような意欲もありましてか、若干やや職場規律において欠くるところが出ておつたようであります。ただいま大臣の言われましたように、中労委から林田次長が特にまわつて歩きまして、その間の実情も見て参つたのでございます。一番の問題は、五千万円を一般組合員に、さらに五千万円を全繊に払うという点につきまして、金繰り等の関係でなかなか急にこれが実行できないということで、これがやはり労使間の気分をやわらげるという点からも早い方がいいのでありまするが、その点が遅れておるために、若干そういつたトラブルが続いておるというふうに思つております。しかし会社としましても、そういつた金を払うことに努力はしておりまして、近く実現完了するのではなかろうかというふうに考えております。なお今後とも個々のこまかい点につきまして、トラブルが若干続くかと思いますが、これはわれわれも忠告いたしますが、調停をいたしました中労委といたしましても、今後とも見守つて行きたいというふうに考えておるようでございます。
 それから日鋼室蘭の問題でございますが、これはすでに七月の初めから操業が停止されておるような状況でございまして、初めから申しますと、大分長くなりますが、九月の初めに仮処分の決定が出まして、組合立入禁止の処分が決定されました。その後会社としまして、作業ができませんし、一方造船関係がいよいよ着工に移る時期になりましても、製品が納められないというようなことで、工場としましては、半製品を全部ほかのところに送り出すということを決意いたしまして、そこで先月の、日にちは出ておりませんが、下旬に半製品の搬出をいたしたわけでございます。その後、九月の二十三日に第二組合の結成が見られまして、総員大体千人足らずの第二組合ができたわけでございます。
    〔池田(清)委員長代理退席、委員長着席〕そこで第二組合といたしましては、ただちに結成後、会社と交渉いたしまして、会社の最終案を受諾して解決するという線を出しまして、なおまた第二組合員は二十六日から就労する、さらに立上り資金五千円をもらう、なおまた貸付金八千円を貸し付けるというような話合いが出来たわけでございます。ところが、第一組合と第二組合の間で、組合同士で紛争が起りまして、二十五日の日に第二組合員約八百名が工場に入ろうとしましたところが、れに対してスクラムを組んで第一組合が応援団約千名とともにピケを張つて工場入場を阻止したというようなことで、ここに第一組合対第二組合の紛争が惹起したわけでございます。その後こういう事態に立ち入りましたのに対処しまして、道の地労委があつせんに出るということになりまして、従来労使ともにこのあつせんを受けることを渋つておつたようでありますが、事態がそういうふうに進展して来ましたので、両方ともこのあつせんを受けるということになりました。爾来あつせんが続けられたのでございますが、十月二日午前二時、土曜日の夜中でございますが、北海道の地労委から、あつせん案が提示されました。それは、会社は解雇した者をすべて休職扱いとする、それから会社は休職者を除く全員をもつてただちに操業を開始する、会社は七月八日から七月二十日に至る間において休職者を含めた全員に対して平均五千円を支給する、七月八日といいますのが解雇者を発表した日でございます。その日から二十日までの間に対しまして平均五千円の金を支給する、それから解雇されない全就労者の立上り資金は労使双方で協議する、それから企業合理化に伴う新定員と休職者の取扱いについては今月の二十日までに労使協議の上決定する、休職者の給与は無給とする、但し今言いました十月二十日までに労使が休職者についてどうするかを決定する、その決定の日まで基準賃金の五〇%を下らない金額を支給する、こういう内容のあつせん案を出したのでございます。これに対して、ただいままでの情報では、組合は解雇者を休職扱いにするということは、もうすでに解雇の前提としてそれを言い渡されたと同じだというようなことを中心の理由といたしまして、拒否の態度をきめたようでございます。会社側がこれに対してどういうふうな態度をとりましたかは、まだ聞いておりませんが、本日までのところは、せつかく北海道地労委が中へ入りまして、今申しました内容のあつせん案を出したにかかわらず組合がけつた、従つてこの争議の解決のめどがすつかり見失われまして、なおしばらく続くのじやないか、こういう状況でございます。
#55
○持永委員 先ほど労働大臣から、現在の労働政策一般について御意見のあるところを拝聴いたしました。私ども大体において賛同するところでありますが、特にその中で労使の協力態勢、これにつきましては御承知のように、自由党といたしましても、今度の新政策の中にこれを加えておるわけであります。ところが、これはお話のように、なかなかむずかしい方策でありまして、この点につきましては非常に御苦心の存するところと思いますが、しかしながら、現在の日本の経済下におきましては、どうしても現在以上にこの労使協力の態勢を強化する必要があるように思うのであります。もとより事業主の立場とかあるいは労働者の立場ということを第二にいたしまして、国家本位から考えて、どうしても今のように日本の労働争議が力ずくの争議が多くては、とても日本の経済はこのまま立つて行きません。ほんとうに国家のためということを考えるならば、もつと労使双方が協力する。今のように平行線で進んでおらずに、歩み寄るということが非常に必要だ。これはおそらく多くの日本人の考えているところと思います。ただ、この方策は非常に困難でありまするが、幸い労働省には労働問題協議会でございますか、こういう組織もありまするし、また中央労働委員会等にも相当の権威がおられますから、何とかしてひとつ労働省におかれましては、この方策をもつと真剣に積極的にお考え願いまして、たいへんむずかしいことでありますが、名案をつくつていただきたい。労働三法の改正もとより大事でありますが、私はその根底は、何と言つても労使協力の態勢、これを強化することにあると、こう考えますので、ひとつ一層の御奮起をお願い申し上げておきます。また御意見等がありましたならば、この際承りたいと思います。
#56
○小坂国務大臣 はなはだ微力にして、問題の重要性は十分に考えながら、なかなかさような情勢ならぬことを恐縮いたしておりますが、それでも労働争議自体を見ますと、一昨年一千五百万日、昨年四百四十万日、今年は、上半期で見ますと、昨年の上半期の実績より六割方労働争議の日数は減つております。近江絹糸を別にいたしますと、これはさらに激減するわけでありますが、わずかながら各単位労組におきましては、そうしたことが実際目の前に見えておりますので、この労使協力の必要性は、労組側と経営者側においては、相当よく行つているところも出て来ているようでございます。ただ全般的な組織になると、何か争議をやることによつて、社会的なあるいは労組組織内における一つの名声を獲得するというようなこともありましよう。全体の規模が非常に大きくなつて参りますと、争議過剰という傾向が顕著に出て来ているように思うのでございます。そこで、ただいまもお話のような種々の機関もございますので、十分この機関とも話し合いまして、非常な危機にあると思われます日本経済を、この際建て直すその根底の力としての労使協力の関係を打ち建てたいと考えております。また一方から見ますと、ただいまお話のような日鋼事件というような実物教育というものが非常に大切と思いますので、労働省といたしましても、実例による労働教育ということもできるだけ行いたい、かように思つております。
#57
○持永委員 あと一点だけ、これは地方問題でございますが、実は私の県は本年のたび重なる台風で非常な水害を受けました。あるいは田畑の流失、埋没、またちようど開花期の台風のために、稲がほとんど実つておりません。そういうところに対しましては、昨年は冷害対策といたしまして救農土木事業を起されたように聞いております。今度も地方といたしましてはこの事業を熱望しているのでありますが、しかし、幸いに災害地帯で公共事業の相当行われているところは、その必要がなく、またそれほどのことも考えられませんが、ただそういう仕事のない地方、いわゆる農業労働者で食えない者に対しまして、今まで労働省として、あるいは失業対策事業をやられたことも聞いておりますが、どういう標準でどういうふうにやられましたか、また昨年九州地方に対しておやりになりました仕事の実績、そういう点について御承知の点をお知らせ願いたい、こう思うのであります。
#58
○小坂国務大臣 まことにお気の毒なことで、私どもとしても何かせねばならぬと考えております。昨年の場合は補正予算をそのために設けたのでございますが、本年度は補正はせぬということを政府の強い建前にいたしております。しかし失業対策関係は、節約分をもつて足らざるものをできるだけカバーして参るようにいたす考えでおりますので、一般公共事業あるいは災害復旧事業をもつてカバーできぬような問題の点につきましては、御趣旨のように、何か便法を講じたいと考えております。
#59
○赤松委員長 ただいま藤井公安調査庁長官が出席したわけでございますけれども、私から内閣委員長に話をしまして―実は内閣委員会におきましては、質疑続行中であつたわけです。そこで島上善五郎君にはその点をお含みの上、御質疑をひとつきわめて簡単にお願いしたいと思います。島上善五郎君。
#60
○島上委員 それでは労働大臣に対する質問はあとにしまして―もちろん関連して労働大臣の考えも伺いますが、主として藤井公安調査庁長官に対して御質問したいと思います。
 長官は本日午前の内閣委員会において秋季労働攻勢についての発言をされておりますが、その中で総評が打出しておるいわゆる秋季闘争に言及しまして、速記によればこういうことを言つておられます。これは総評の第三回幹事会ですが、秋季闘争方針として、賃金闘争、民主的権利の回復と拡充闘争、平和経済による産業危機突破闘争、吉田内閣打倒と原水爆禁止署名運動の四項目を目標といたしまして、闘争の山を吉田内閣打倒国民運動の高まる予算編成期、年末手当要求の出そろう十月下旬ごろに置き、全国的に強力な政治闘争を推進しようとしており、日本共産党はその行動の中核となつて活発な動きを見せるであろう、こういうような発言をされております。御承知のように総評は結成の当初から共産党の方針を排除して来ております。客観的な情勢の変化によつて、総評の方針も多少の変更が見られることは事実でありますけれども、しかし本年度の大会におきましても、特に政党の名前をあげて社会党両派、労働党を支持しこれと協力する、そして共産党とは協力しない、共産党の労働組合方針はこれを排除するということを文書においても、あるいは質疑の際の答弁においてもはつきりとしております。これは総評の秋季闘争を、これほどこまかく調べておる公安調査庁において知らぬはずはない。しかるに本日午前中の答弁において、日本共産党はその行動の中核となる、要するに総評の展開する闘争のその中核になる、こういう発言をしておる。これは総評の運動、ひいては日本の労働組合運動全体が共産党に引きずられておる、あるいは共産党の闘争のお手伝いをしておるというような印象を与えることによつて、国民と労働組合運動を切り離そうという、そういう意図を持つておるのではないかとさえ疑われる。かりにそういう意図を持つていないにしても、そういう結果を生ずると私は思う。何を根拠として総評の打出すこういう闘争に、共産党がその行動の中核になるのかということをおつしやられたか、この点に対して長官に御質問を申し上げます。
#61
○藤井説明員 お答えいたします。総評が共産党と一線を画しておることは、これはわれわれ決して疑つてもいません、おつしやる通りであります。ただこの問題は、共産党としてできるかできぬかわからないが、党側でその中核となつて活発な活動をやろうということを主張しておるのを申したのであります。党側がそういうように中核となつてやろうということを主張しておると申したのであります。決して総評と共産党をごつちやにしているつもりはありません、一線を画しておられることは十分承知しております。また何かそこに一つの意図があつてそういうことを申し上げたというわけではございません。
#62
○島上委員 共産党がそう言つておる。共産党がそういう方針を出しておる、こうおつしやいますけれども、私が今調べて参りました速記によりますと、はつきりとこう言つておるのです。そういう言葉は少しも出ていない。今私が読み上げましたので、あらためて読み上げることは不必要だと思いますけれども、共産党に関する発言中には、ただこう言つているだけです。先に総評の運動項目を述べて、日本共産党は、その行動の中核となつて活発な動きを見せるであろう、こう言つておるのです。共産党がどういう方針を出そうと何を言おうと、今日総評が共産党の方針を排除しておるという実態から見て、かりに総評の組合の中に共産党員が多少おるとしましても―私はどこの組合でも、共産党員は多少おると思いますが、多少おるとしましても、行動の中核となるということは、その中に相当強い指導力を持つておる、影響力を持つておるということでなければ、中核にはなり得ないわけです。共産党はこう言つておる、だからその影響も多少あるであろうというようなものの言い方とは、全然違うのであります。日本共産党は、その行動の中核となつて活発な動きを見せるであろう、こう言つておる。これはあなたの今の弁明とは、全然意味が違うのであります。意図を持つていない、こうおつしやいますけれども――もちろん意図を持つていますなどという答弁をするはずはないでしようけれども、しかしこういうように総評の打出す運動の、その行動の中核に共産党がなる、こういうことを言われることは、総評の運動が共産党によつて牛耳られておる、引ずられておるという、少くともそういう印象を与えることは間違いのない事実だと思うのであります。共産党がそう言つているのだという陳弁をされておりますが、少くとも午前中の発言については、そういうふうに了解することはどうしてもできない。この点に対して、私の今読み上げた速記がはなはだしく、あなたの発言と違うとは思われませんが、もう一ぺんはつきりとその点に対する御答弁を伺いたい。
#63
○藤井説明員 私はその点は、日本共産党は、この行動の中核となつて活発な動きを見せるであろうと思われます、と申しております。あるいはお尋ねのように解釈されるかもしれませんが、私は先ほど申しておいた趣旨で、こういうように申し述べたのであります。
#64
○赤松委員長 長官に申し上げますが、島上君からの発言要求がありましたので、私委員長としまして、非常に重要だと思いましたので、速記録をとつてみました。そうしますと、今の島上君の御発言通りなんです。あなたのおつしやつているのは、総評というものと共産党というものを別個に扱うのではなくて、総評が全国的に強力な政治闘争を推進しようとしており、日本共産党はその行動の中核となつて活発な動きを見せるであろうと思われます。しこうして賃金闘争の方針といたしましては、十月一ぱいに年末手当要求を、十一月下旬には本格的賃金要求をそろえ、職場闘争を重要視いたしまして、家族ぐるみの闘争、農、商との提携による国民総抵抗運動を起し、来春一月から三月にかけて全国的に産業別統一闘争を盛り上げるという高野構想がそのまま決定されている、こういう答弁をされておるわけなんです。ですから、そこから言いますと、総評が全国的に政治闘争を盛り上げようとしており、日本共産党はその行動の中核となるであろうと自分は思う、こう言つておるのであつて、明らかに総評は日本共産党の活動を中核として、全国的な闘争を推進しようとしておるのだ、こういう御見解であろうと思うのでありますが、この点はどうなのですか。
#65
○藤井説明員 その点は、先ほど申し上げたように、私は日本共産党側としてはあくまでその中核となつてやる方針だというので、決して中核となつたとか、総評に中核のあることを認めておるとかなんとかいうのではありません。共産党側として一方的にそういう心構えになつておる、こう申し上げる趣旨であります。
#66
○島上委員 私の言つたのも、今委員長が読み上げたのも一同じです。そしてあなたの認めた点も同じです。日本共産党はその行動―そういうのは総評の打出す闘争ということです。総評の打出す闘争の中核となつて動くであろうと思われる。思われるでもいいのですが、思われるということはあなたの観測です。あなたは総評の打出す秋季闘争の中核に共産党が動くと思うということである。ですから、要するにこれを別な言葉でいえば、総評の打出す闘争は、共産党が中核となつて、共産党に引ずられて行くのだという見方です。もしそうでなく、共産党はそういう方針を出しておるのだ、しかし総評はまたこれは別だというのであれば、もつとこの点ははつきりしてもらわなければならない。私は今日総評の労働組合あるいは総評外の労働組合の中に、若干の共産党員があるということは認めますし、また当然でもあろうと思うのです。いかなる組合でも―いかなる組合でもということは、正確な意味においては当てはまらぬかもしれませんが、多くの組合に共産党員がおる。そして共産党はその党員に対して動けという指令を発することは自由である。しかし、今日総評の組合が共産党によつて牛耳られるほど、総評の行動の中核に共産党がでんとすわるほど、共産党の影響を受けておるかといえば、これは受けてはいない。おそらく藤井長官もその点は認められておると思う。総評の行動が共産党によつて牛耳られるほど、今日総評と共産党との関係が緊密なものであるか、私は総評の大勢は共産党、また共産党の方針を排除しておると思う。これは大会に現われた文書においても、答弁においても、その後の行動においてもそう認めることができる。ですから、この言葉の意味からしても、私はただいまの答弁を了承することはできません。それでは端的に伺いますが、今日の総評は共産党によつて牛耳られておるかどうか、これに対するあなたのお考えはいかがですか。
#67
○藤井説明員 お答えいたします。牛耳られておりません。
#68
○赤松委員長 そうすると一線を画しておるということを確認され、かつ牛耳られていないということですね。自律的に運営しておるというのですね。
#69
○藤井説明員 そうです。ただ共産党側としては、先ほど申し上げたような心構えや態度を持つておるということだけです。
#70
○赤松委員長 するとその点はこの速記録を読みますと、あなたの考え方と非常に違つたような表現をされておるわけです。従つて無用な刺激を総評等に与える必要はないので、これはおそらく自由党の委員の皆さんでさえもこの点ははつきり認めておられると思う。従つてこの際藤井長官から、こういう点についての明確なお答えを願つて、内閣委員会におけるところの、この発言は誤解される点もあるが、自分の考え方はこうだ、こういうふうに明確に本委員会で申し述べていただきたい、こう思うのです。
#71
○藤井説明員 私が午前中内閣委員会で申し上げた順序を申しますと、第一は国際共産主義勢力の動きの特徴を申し上げまして、第二は最近における日本共産党の動向について申し上げました。第三は、党内の現状について申し上げました。第四には在日朝鮮人の動向について申し上げました。第五がいわゆる右翼の動向について申し上げました。しこうして第二の最近における日共の動向ということの中で、基本的戦術と平和闘争及び最近の軍事方針、それから労働運動について申し上げたのであります。総評を中心として申し上げる意思は私は全然ございませんし、先ほど島上委員のおつしやつたような誤解を、もし招いたとすれば、これは言葉が足りなかてたかもしれませんが、私の真意はそういう点に間違いございません。(「了解」と呼ぶ者あり)
#72
○島上委員 言い足りなかつたということをよく言います。これは吉田さんの癖がみな役人にまでうつつておるのかもしれませんが、少くともこの言葉では、どう解釈しても、あなたの今の答弁とは違うのです。はつきり違う。ですから、私は今のあなたの答弁がほんとうの答弁である、こう解釈して了解して、藤井長官に対する質問を終ります。
#73
○赤松委員長 それでは内閣委員会に御出席を願います。なお内閣委員会においても誤解が生じておるようですから、できればもう一度あなたのほんとうの見方というものを明らかにしていただきたいと思います。
#74
○島上委員 小坂労働大臣のいわゆる新労働政策というものについてお聞きしたい。
 これはたしか八月十三日に、その新労働政策なるものの構想を自由党の政調会で説明をされて、さらに新聞記者にその構想を御発表になつておるはずです。そして今日のあなたの本委員会における御意見の発表も、大体言葉の表現で多少違う点もありましたが、意味においてはまつた、同様のものと受取つたのであります。そこで私の手元に発表された文書なるものがありますが、これで間違いなかろうと思いますから、これに基いて御質問をいたします。
 「週刊労働」の八月十七日号に出ておりますこの文書は、先ほど伺つたものと、言葉の表現に二、三違う点がありましようとも、まつたく同様だと私は解新しましたか、これはあなたのいわゆる新労働基本政策であることに間違いございませんか。それをまず質問して、それから伺います。
#75
○小坂国務大臣 「週刊労働」に原稿を渡したことは私はないのでありますが、今お話のような経緯で記者団に会見しましたので、それに間違いはないと思います。
#76
○島上委員 この「週刊労働」の前文は、もちろん編集者によつて適当に書かれたと思いますが「一、基本方針」「二、対策」「三、現下の経済と企業の実情に鑑み」というようなことは、これはいずれもあなたの方でつくられたものだと私は考えます。そこでこの基本方針の中で「我が国経済の自立達成の前提基盤たる合理的労使協力関係産業平和の確立に置く。そのため、政策の重点を個々の労働者の福祉向上におき、労働組合育成過重の行き過ぎは、これを是正する。」これが基本方針であります。経済自立が達成されることはもちろん必要なことで、何人も否定するものでなかろうと思いますが、この経済自立達成というけつこうな目的のために、その前提として合理的労使協力関係、産業平和と言われるけれども、経済自立を達成するには、私はもつと大事なことがあると思う。これよりも、もつと重要な大事なことがあるのではないか。それは、今日日本の経済は、国内で自給自足経済が成り立たないことは言うまでもありません。原料、資材がほとんど足りませんし、またつくつた品物を国内だけで売りさばくということはできない。どうしても外国との貿易を伸ばして行かなければならない。先ほど大臣はイギリスの例を引かれて、イギリスでは輸出競争に勝たなければならぬ、そしてその輸出競争については、労使がみごとな協力をしておるという話までされました。私ども日本においても、輸出を大いに伸ばして行かなければならない。それがむしろ経済自立の最も大きな前提ではないか、あるいは必須の要件ではないか、こう考えておりますが、ここにそういう点について全然触れておりませんのは、私はそれを全然無視しておる、阻害しておるというふうには解釈いたしておりませんけれども、そういう点に対する大臣の御見解をまず承りたいと思います。
#77
○小坂国務大臣 お言葉の通りでございまして、日本が自立するには、輸出が伸びなければいかんともしがたいのでございますが、これはもとより自明のこととして、私の関しまする労働問題だけから、こういうことを申し上げたのでございます。輸出振興対策というものは、もちろん通産省において十分いたすべきものでございますから、その点特に触れておりませんが、今お話のような基本的な考え方に立つて、そうした輸出を伸ばし、経済自立を達成するには、労働関係の面においてもこういうことを考えなければなるまいということでございまして、この点は先ほども全般的な御説明で触れた通りでございます。
#78
○島上委員 それに関連して、もう一つだけ伺いますが、輸出を伸ばして行こうとするならば、今日まで吉田内閣がとつて来たような政策は、特に将来性のない、安定性のない特需にあまりにも依存し過ぎたり、外国の援助をたより過ぎたり、貿易の自主性を他国から不当に支配されたりということに解釈されますが、そういうような政策を今後持続したのでは、輸出が数字の上で多少伸びたと言つておりまするが、それはほんに多少伸びた程度であつて、ほんとうに日本の経済自立を達成するに足るほどの輸出の進展とは言いがたいし、進展するものでもないと私は思う。どうしても外国との間に、これは中共であろうと、ソ連であろうと、インドであろうと、どこの場合でも当てはまることですが、自主的なる、自由なる貿易の道を開く、どこからでも安い原料材料を、日本の判断によつて自由に買い入れる、どこでも日本の品物を買いたいという国には、自由に売りさばく、こういうような貿易の自主権を日本が回復しなければ、とうてい貿易を伸ばして行くことはできない。こういう点に対して、最近だと思いますが、池田幹事長就任後、自由党の従来の経済政策を、特に貿易に関してかえるかのごとき談話を新聞に発表しておりましたが、今申しましたような点に関して、政府としましては、従来の方針を依然として持続されるのか、政策を転換されるお考えであるかという点を、一点伺つておきたいと思います。
#79
○小坂国務大臣 御指摘のように、特需が八億ドルもある。特需関係のものをひつくるめると二十一億ドルからの輸入の中で、それに見合う特需が八億ドルもあるという状態は、はなはだ不健全なものでありまして、こういう状況は何とかせねばならぬことは、もとより当然だと心得ております。しかしそのためには、やはり日本全体として輸出をし得る生産の基盤が確立しなければならないし、輸出貿易の競争場裡に立つて、それに耐え得るだけの経済的な実力を備えねばならぬことは、申すまでもないと心得ております。また私どもといたしましては、その実力をつけるために諸般の見地から見て、あるいは財政金融政策から見て、通産政策あるいは労働対策から見て、すべてをその一点に集中して考えて行かなければならぬ時期に到達して来ておるのでございます。先般池田氏が幹事長になりました際に、ジユネーヴ会議以後の東西緊張のややゆるんだ際に、日本としても大きく独立経済を営む立場から、全般の経済問題をにらんで行かなければならぬということを言いましたのもその点にあると心得ます。しかし、御承知のように中共あるいはソ連に対する貿易は、きわめて限られておる、先方にいかなる意思があるかということも明確でございません。またソ連に対するところのアメリカ側の考えも、なかなか複雑でございまして、そういう問題につきまして打つべき手は八方に打つということは、むろん外交政策上必要でございましよう。しかし、また一方におきましては、そうした外交上の手もさることながら、何としてもそうした場合に処し得る経済的な実力を日本自身が持つということが、どうしても不可分のものと考えておる次第でございます。総理大臣の外遊等も、そういう観点から見て私どもはきわめて意義深いことと考えておる次第でございます。
#80
○島上委員 総理大臣の外遊までひつぱり出しましたが、あまり間口を広げると何ですから、私はその点には触れないでおきます。私どもは、輸出を伸ばすといいましても、もちろん競争相手があることですから、日本たけで一方的にどんどん輸出をするというわけには行かぬ。どうしてもよい品物を比較的安いコストでつくることが、非常に大事なことだと思う。その際に考えられることは、安い原料を使う―原料の安い高いということが、もちろんただちに関係しますし、それから日本の技術の水準の問題も関係します。労働賃金の問題も多少影響がある。ところが、どうも原料、技術、労賃というような、生産コストに影響する要素に対する政府の考え方は、まず労賃を安く押えるというふうに、つまり労働者の犠牲においてコストの引下げを行つて貿易を伸ばそうという考えが、常に強く現われて来ておるように思われますが、この点に対する大臣の考え方はいかがでございましようか。
#81
○小坂国務大臣 私は特に労働賃金だけを切り下げて企業がうまく行くとは思わないのでございまして、やはり企業はそこに働く人の全般の気分がしつくりせぬことには、なかなか業績が伸びることは困難であろうという考えを持つております。ただ、安い原料があるからそれじやどこから入れると申しましても、これも一方的にほしいといいましても、入つて来るわけでもございませんし、あるいは現実に可能なる基礎の上に立つて政策を考えないとなりませんので、私どもも政府といたしまして、安い原料が入つて来るところがあれば、大いに歓迎して入れてもらうという方策をとることに間違いございません。けれども、何分にも話だけで実現いたしません場合には、できるだけ現状において最も能率的に考えるという方策をとらざるを得ないと思つております。
#82
○島上委員 それでは話をだんだん縮めて行きますが、この方針によりますと「合理的な労資関係、産業平和を確立する。」―これは言葉に関する限りは、もちろん私どもも異存のあろうはずもない。そういうあとに「そのため、政策の重点を個々の労働者の福祉向上におき、労働組合育成過重の行き過ぎは、これを是正する。」こういう私どもにとつては非常に問題になる言葉を使つております。そういたしますと、今日日本の労働組合は育成し過ぎちやつた―私は必ずしも「育成」という言葉は適当でないと思うけれども、多少の育成政策もあつたかもしれませんが、労働者の下から盛り上る力が今日まで伸びたと思います。しかし、今日なお労働組合の組織の状況、発達の状況というものは育成し過ぎた、こういうような表現をもつて見るには私は適当でないと思います。育成し過ぎた、これを是正する、こう言つておりますが、これは一体どういう意味なのか、その意味をもう少し詳しくお聞かせ願いたいと思います。
#83
○小坂国務大臣 この言葉は、実は新聞にも取上げられまして、きわめてはつきりし過ぎておるというような御批判でございました。私は実はこの点は多少解説を申し上げなければならぬと考えておるのでございますが、大体労働政策の基本が、個々の労働者の福祉の向上、生活の安定に置かるべきことは申すまでもないのでございますが、その手段として労働組合を通じてということがあるわけでございます。そこで、従来民主的労働組合を育成するというような言葉がよく使われております。私も島上さんと同じようにこの「育成」という言葉は適当ではないと思いますが、他に適当な言葉がないのでこういつておるのでありますが、その民主的労働組合を育成するという表現は、もうしばしば使われておつて、しかも一部には組合の行き過ぎということもいわれております。そういう行き方を非常に端的にここに導入いたしまして、やはり民主的労働組合というものは、結局個々の労働者の福祉向上ということになるのですから、何といつても個々の労働者の福祉ということを中心にやるべきだ。たとえば、先ほど例にとりましたように、尼崎製鋼の場合などは、組合があつてその組合員というものの福祉が考えられなかつた―といつては語弊があるかもしれません、考えておるのでございましようが、結果においては福祉にならなかつた。結局組合の幹部の意向のみがあまり強く出過ぎて、会社がつぶれて組合員全部が失職してしまう、新たにまた職を求めなければならぬ、こういう状態に追い込まれますことは、やはり組合の尊重、組合主義の行き過ぎじやないか、こういうふうにも考えますので、少しどぎつい言葉かもしれませんけれども、いわゆる民主的労働組合の育成という言葉をここで置きかえて、個々の労働者の福祉向上ということで、ひとつ新しみを出してみたらどうか、こういうことでございまして、他意はないわけであります。
#84
○島上委員 これはたいへんな新しみですが、私どもは、個々の労働者の福祉はもちろんけつこうである。しかし個々の労働者の福祉をほんとうに増進するためには、ここには勤労所得税を下げるとか福祉事業をやるとか、こういうことを言つております。それも一つの手段であるには違いなかろうけれども、何といつても労働者が労働組合という団体に入つて、その労働組合がいわゆる民主的なりつばな労働組合であり、労働者の福祉をこの団体行動を通じて増進するということが一番本筋だと思うのです。少くともこの文章から受ける印象は、労働組合の運動と個々の労働者の福祉とは全然別個のものである、労働組合の方は押えつけてしまつて、こういうふうに税金を下げたり、こういうふうにして個々の労働者の福祉を増進するから、お前たちは労働組合をもうやめてしまえといつたような思想がこの底に流れているように受取れる。私は個々の労働者の福祉も、結局は民主的な健全な労働組合活動を通じてこそ、真実に達成されるものだと思う。個々の労働者と労働組合運動との間に矛盾撞着はごうもないと私は思うのですが、それに対する大臣のお考えを承りたい。
#85
○小坂国務大臣 お話のごとく個々の労働者の福祉と労働組合の健全なる発達というのは、車の両輪のごとく相補つて行くものであろうと私も思うのでございますが、しかし、たまたま非常に不幸にいたしまして、民主的な労働組合というものがある会社になくて、そこで専制幹部が非常に偏向を持つた指導をしておるという場合に、組合大衆は何によつて批判のよりどころを求めるかというと、結局組合は個々の労働者の福祉が中心じやないかということをよりどころといたしまして、組合の行き方に批判を求める、こういうことはあつてもよかろうかと思うのであります。実は労働基準法というのは、個々の労働者の福祉を守る法律でございますが、しかし基準法の三十六条には、御承知のごとく時間外労働は組合経由ということになつております。この辺は少し法律上の混淆があると私は思うのであります。その場合、個々の労働者が働きたいと言つても、組合が協定で縛つて、協定がなければ時間外は許さぬというふうに持つて参りますと、結局働いて自分の収入をふやしたいと思う労働者も、全体の組合の意図に服従しなければならぬ。しかもその意見が全然言えない。これはその意見を十分に言うて、しかも組合の決定だということで服するならよろしいのでありますが、そういう意見は全然聞かれぬという制度もいかがなものかというふうにも思うのです。御承知のように、司令部が参りまして、とにかく組合を日本民主化のバツク・ボーンとして急速に育てるという方針で参りましたので、組合が育つこと自身はけつこうでございますけれども、その反面に育成に急にして瑕疵がなかつたかと申しますと、やはりそこのところは、いろいろお互いに考えても多少研究問題が残つておるのじやないか、こういうふうに思いますので、これは決して自由党だとかあるいは社会党だとかいう意味でなくて、日本全体のためにお互いにそういうことを考えてみる時期じやないか、こういうような気持で申しておるわけでございます。
#86
○島上委員 労働組合が労働者の自由なる意思を押えつけて、幹部が独裁的にやつて労働者の福祉を無視するという場合がある、こういうことを言つておられます。もちろん私は多くの労働組合の中には、そういう組合が一つもないと、こう言い切るわけではありませんけれども、しかし今日終戦後急速に伸びた日本の労働組合が、だんだんといろいろの経験を通して強固になり健全になり民主的になつている、私はこう見るのが日本の労働組合運動の大勢に対する見方でなければならぬと思う。こういう見方を、労働大臣は逆に、日本の労働組合運動の大勢は非民主的なものになりつつある、こういうふうに見ておるのではないかと思います。だから、あとに述べているように法律を改正したり、あるいは労働組合の運動に対しあれをやつてはいかぬ、これをやつてはいかぬというふうに権力をもつて介入しようとする方針が出て来るのだと思います。私も今日の日本の労働組合が十分な状態であるとは思いませんけれども、それを一口に民主的労働組合運動と言うにはまだ不十分な点がある。要するに民主的労働組合というのは、私どもの解釈では組合員の意思が組合の機関を通して十分に組合活動の上に反映しておるということ、組合員の意思にそむいた活動をやつていないということだと思うのです。最近組合の規約あるいは機関の運営等を見ましても、だんだんと組合員の意思正確に反映し、十分に尊重されるような運営の方向に向つて来ている。これを助長するというなら話はわかりますけれども、権力をもつて法律を改正して、あるいは改悪して、その権力でもつて縛りつけてしまおうというようなものの考え方は、日本の労働組合運動の発展の状況に対する見方が私どもと全然逆ではないか。そういう逆な見方の上に立つているのじやないかということが心配されるわけであります。
 そこで、私は最後にお伺いしておきたいのは、日本の労働組合はだんだんと非民主的な方向に走つておる、大勢がそういう方向に走つておつて、権力でもつて押えつけてしまわなければどうにもならぬというふうにお考えなのか、あるいは私どもが考えるように、不十分なものがまだあるにしましても、大勢としてはだんだんと内容が充実して、民主的な方向に発展しつつあるというふうにお考えなのか、その点を伺つて、あとは明日にいたしたいと思います。
#87
○小坂国務大臣 私も日本の労働組合が終戦以来歩んで来た道というものが、これはもちろん過誤もありましたけれども、全体的に見て一歩々々健全なものに向いつつあるという認識に立つておるのでありますが、ただ先ほども問題になつておりました言葉の中に、共産党の動きというものがございますし、そういうような民主的な労組の発展過程にあつて、これを誤れる方向に誘導しようとする勢力もあるわけでございますし、一方において経済的な力というものが、日本が独立以来初めて裸の状態に立つて、さてどうしようかという非常に困難な状態に立つておると思いますので、もう少し待つておればだんだんと健全になるという考え方もございますが、何かその時機を失してしまつて、組合は健全に発達したが日本国はつぶれたということになりましてははなはだ困りますので、そういう方向に向つて正しいと思われる時勢であるならば、何も反動的にこれを曲げるという意思はございませんけれども、そういう意見をもし皆さんお持ちになる点があるならば、これはお互いの約束で法律できめてもよくはないか、こういうふうに思つております。ただ皆さんが非常に反対なのに、無理やりに法律で縛るのだということは、労働法として適正なやり方ではないと考えておりますが、しかし問題点は確かにあるのでありまして、今の島上さんのお言葉にもありましたように全部が全部健全ではないので、これは健全だ、これは不健全だというふうにわける基準というものをお互いが相談してつくり得れば、さらに早くりつぱな健全な労組が育つであろう、こういう気持で問題を提供しておる次第でありますから、どうぞまたごゆつくりとひとつ御研究を願いたいと思います。
#88
○赤松委員長 それでは明日質疑を継続願います。
 最後に私から労働大臣にお尋ねしておきますが、本委員会におきまして第十九国会の際に、全国の金属鉱山の労働者を初め、関係労働者の非常な大きな期待を持つていた珪肺法、これは労働大臣が本委員会におきまして立法化を言明されましたので、私どもそれを確信して、実は期待いたしているわけなんです。先般も全国をまわつてみましたが、金属鉱山関係の労働者だけでなくて、非常にたくさんの労働者が小坂労働行政に期待しておるわけですから、この際ひとつ第十九国会の労働委員会の決議に対する立法化がその後どのように行われておるかというような中間報告と申しますか、そういつたものを本委員会に述べていただきたいと思います。
#89
○小坂国務大臣 ただいま委員長のお話のございました珪肺に関する特別立法の問題につきましては、私のお約束いたしたことでございまするし、政府といたしまして、かねてより深い関心を持つておるものでございますが、特に昨年八月けい肺対策審議会におきましても、十六国会において議員立法として提出せられました珪肺法案の内容を含む当面の珪肺対策上の諸問題につきまして調査審議して労働大臣に必要な建議をすることに決定いたし、爾来予防、診断、厚生対策、粉塵恕限度の四つの専門部会におきまして、それぞれ回を重ねて慎重な検討をいたして参つておる状態でございます。御承知のように珪肺対策の問題は、技術的にも種々困難な問題を含んでおりますし、また関係者に及ぼす利害関係にも多くの考慮を要すべき点があるのでございまして、審議会といたしましてもその結論を得るに相当の困難を予想されていたのでございますけれども、予防、診断、粉塵恕限度の各専門部会におきましては、その調査研究に相当の進捗を見ておりますが、災害補償等についての厚生対策専門部会におきましては、いまだその結論を得る見通しがついておらない状態でございます。従いまして、この十二日に開催の予定になつておりますけい肺対策審議会におきましては、各専門部会における審議の結果について、さらに検討が加えられ、審議会として労働大臣に対する建議を行うべく努力が払われるものと期待をいたしておる次第でございます。もし審議会として結論が得られず、建議が行われるに至らない場合におきましては、労働省といたしては珪肺法案の原案を作成して、できるだけ早い機会にこれを同審議会に諮問し、その答申を待つて皆さんの御審議を煩わしたい、かように考えておる次第であります。
#90
○赤松委員長 それでは格段の御努力を切望いたします。
 次会は明五日午前十時より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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