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1953/05/29 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 厚生委員会 第53号
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1953/05/29 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 厚生委員会 第53号

#1
第019回国会 厚生委員会 第53号
昭和二十九年五月二十九日(土曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
   理事 中川 俊思君 理事 松永 佛骨君
   理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
   理事 岡  良一君
      越智  茂君    庄司 一郎君
      助川 良平君    亘  四郎君
      滝井 義高君    萩元たけ子君
      柳田 秀一君    杉山元治郎君
      山口シヅエ君
 出席政府委員
        厚生事務官
        (薬務局長)  高田 正巳君
 委員外の出席者
        厚生事務官
        (薬務局薬事課
        長)      尾崎 重毅君
        厚 生 技 官
        (薬務局監視課
        長)      大熊 治一君
        参  考  人
        (東京大学医学
        部教授)    秋谷 七郎君
        参  考  人
        (松沢病院長) 林   障君
        参  考  人
        (東京療養所
        長)      宮本  忍君
        参  考  人
        (船橋総武病院
        長)      竹山 恒寿君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 山本 正世君
    ―――――――――――――
五月二十八日
 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案(参議
 院提出、参法第一七号)
同月二十九日
 精神衛生法の一部を改正する法律案(青柳一郎
 君外十二名提出、衆法第四九号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 閉会中審査申出の件
 委員派遣承認申請に関する件
 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案(参議
 院提出、参法第一七号)
 精神衛生法の一部を改正する法律案(青柳一郎
 君外十二名提出、衆法第四九号)
 覚せい剤取締問題について参考人より意見聴取
    ―――――――――――――
#2
○小島委員長 これより会議を開きます。
 まず覚醒剤取締りに関する問題について調査を進めます。
 この際委員長より一言ごあいさつ申し上げます。参考人の方々には御多忙中のところ、本日わざわざ当委員会の希望をいれられて御出席くださいましたことに対し、委員会を代表し厚く御礼を申し上げます。申すまでもなく、本問題は今日非常に重大な社会問題として、日本の青少年にも大なる害悪を及ぼしていると考えるものでありまして、当委員会といたしましても本問題は特に慎重に調査を進めておる次第であります。参考人の方々におかれましても、覚醒剤製造禁止の治療上の影響及びその可否等につき、忌憚なく御意見をお述べ願いたいと存ずる次第でございます。
 それでは、まず秋谷七郎先生からお話を承りたいと存じます。
#3
○秋谷参考人 私は東京大学医学部薬学科の教授の秋谷と申します。私どものやつていますことは、こちらにいらつしやいますほかの参考人の方々とは同じような方向でございますが、私どもの方はまつたく薬をつくるという立場、並びにその中毒に関係のあるような処方的な面のことをやつておるようなわけであります。
 委員長からのお話で、ただちに私の意見を述べたいと思いますが、結論から申しますと、この覚醒剤を禁止するということは私どもは反対であります。その理由とすることは、すべて医薬品というものは、薬と毒とはまつたく一つのものでありまして、その使い方いかんによつて良薬ともなれば、また逆に非常な猛毒になる、こういうものでありまして、その片方の悪い方の面だけを考えて、いい方面を忘れるということはどうしてもできないのでありまして、私ども薬学の立場において医薬品をつくり、研究をする場合においても、そういうようなことを一向予期しませんで、とにかく生物、人体、すべてのものに対して有効なものをつくろうという考え方で、論理的なものを原則としていろいろ案を練つてつくつておるようなわけでありまして、どういうものができるかという場合、必ずしも薬をつくろう、毒をつくろうということは考えないで、とにかく人間を初め動物に対してきく薬をつくろう、こういうことでやつているわけであります。またこれは薬の世界ばかりでなく、日本の一般化学工業すべての工業に非常に密接な関係のある問題でありまして、ことにまたこれを抽象的に申しますと、日本の文化の発展ということの基礎になる化学研究の面から考えて、そういうような禁止案が出るということは、学問の自由の原則を押えるということになると思うのでありまして、ただその使い方いかんということ、また使い方によつて起る今日のごとき大弊害ということは、またほかのいい方法が見つかることによつておそらくもつと是正することができるのではないか、こう考えておるわけであります。たとえば砒素の問題でもそうであります。砒素のごときものも非常な毒物でありまして、これはたいへんな毒であるということは御存じの通りであります。この砒素といえども、使い方いかんによつては他の薬品の追従を許さないような非常ないい面があります。たとえば腺病質患者であるとかあるいは貧血患者に対して使われる、いろいろな代用薬ができておりますけれども、また砒素を使用することもあります。またねこいらずで御承知の通りの黄燐の問題でもそうでございまして、使い方いかんによつては、ねこのかわりにねずみを殺すこともできますし、また他殺、自殺の問題でも、犯罪の面でしよつちゆう起つておる問題でございます。しかしながらこれまた砒素と同じように、その使うときと量の適正を得るならば、やはりこれも貧血剤として使われておるようなわけでありまして、どんな薬といえども、毒とならざる薬というものは考えられないのであります。たとえば麻薬法において考えられているところの阿片、アルカロイドあるいはヘロインというような問題が出ております。ああいうようなものもまつたく同じ範疇に入るものと私は考え、また信じておるわけであります。そのことは、なるほど麻薬というものはいらない、麻薬犯罪者が多いということ、中毒者が多いということから考えますならば、当然麻薬をやめてしまえという議論が成り立つのでありますが、またあのような麻薬――モルヒネを初めその他のヘロイン等が治療用にもずいぶん使われておることははつきりした事実でありまして、また外科方面においても、参考人の方々にりつぱな先生がおられることでありますから、また何かお話があると思いますけれども、あのようなモルヒネ系のものが生れたということによつて、その害毒のみを考えて、いい面を忘れているということは、非常な片手落ちの問題であろうと思います。ことにまたモルヒネのようなものは、医学的にまた薬学的に有機化学の一大進歩を促した非常に大きな歴史的な跡を全世界を通じて持つております。ことに日本の有機化学がそう欧米に劣らないということの大きな理由の一つとして、モルヒネのようなものの化学構造の研究であるとか、そのものを人工的につくるということの研究をすることによつて、非常にたくさんの若い人も老人も、年齢を問わず科学的な学問に関係する人たちが得たところの科学的なセンスの向上、また技術の向上にあるのでありまして、ひとりモルヒネとか麻薬ということだけを研究しておつたといつても、それによつて得た論理、それによつて得た技術が広く化学工業、医薬工業に非常に大きな影響を持つて来るわけでありまして、そういうような純理論的な立場からいつても、禁止するということはどうも当を得ないということは、私ども一般の考えている考え方でありまして、私個人としては、結論として、禁止はまことに当を得ないことであるということを申し上げます。
 なおその悪い面を防ぐためには、他の方法についてもう少し考えるべきではないか、こういうように思うのであります。以上私のさしあたり考えていることを申し上げた次第であります。
#4
○小島委員長 委員の諸君のうち秋谷先生に対して御質疑の方がございましたら、御質疑願います。
#5
○岡委員 学者としての立場から仰せられた御趣旨はわれわれことごとく同感なのです。ただ御承知のようにヒロポンが今日日本の若き世代に、しかもこれは日本だけの特異な現象ですが、大きな災厄をもたらしている。この災厄を何とか防ぎたいということが当然立法の府に与えられた当面の、ことに厚生委員会の大きな関心事でもあり、責任でもある、こういう関係から、学者としての立場から書斎における良心がはたして重いかそれともわれわれが政治的な立場において社会の平和なり社会の福祉を守ることが重いかという観点から、従つてこれが特に薬学の専門の方々の単に学者としての良心、学者としての自由としてでなくやはり一日本人として、日本の社会が当面しているこの害悪に対していかにあるべきかという観点から、私どもはもつと具体的なお話を聞きたい。たとえばモルヒネは臨床上不可欠である。同時にまたモルヒネの中毒患者もいる。しかし臨床上不可欠なものであれば、やはりモルヒネの存在は認められなければならないし、従つてその製造もやはり認められなければならない。覚醒剤が臨床上不可欠であるかどうかということは、精神科の領域なり、また内臓外科の領域における諸先生方からいろいろ御意見を承りたいと思うのですが、ただいまの秋谷先生のお話では、とにかく非常に原則的な御意見で、原則的な意見はわれわれも首肯しているわけです。ただそれにもかかわらずヒロポンの害毒が今日日本の若い世代に非常に大きな影響を及ぼしている、これをどうして防ぐかということに問題がかかつているので、そういう点で、たとえば具体的に申し上げますと、今度覚醒剤取締法についての参議院の方で提出をされておりまするものを見ると、こういうようなことが覚醒剤の範囲として規定されております。それは「フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロン及び各その塩類と同種の覚せい作用を有する物」、こういうふうになつておりまして、ニーアミノヘフタンが予定されているという但書を書いております。また「及びそれを含有する物にまで拡張すること。」こうなつておりますが、こういうような化学的組成を持つたものが、法律で禁止されることによつて、薬学の進歩発展の上において、あるいは具体的に学問の自由という意味において、薬学者の立場からどの程度の、どういうような支障があるとお考えになるのか、こういう点について承りたい。
#6
○秋谷参考人 お答えいたします。今の御質問でありますが、私の先ほど申し上げましたことは、抽象論あるいは緒論であつたというふうにお受取りになつたと思いますが、私の方は臨床的な面がわかりませんので、むしろ臨床的な面の方からお答えしたあとで、またお答えすればいいのじやないかと思つております。ただ研究面からいつて、これを禁止した場合に、研究上不都合が起るかどうかという御質問のように承つたのでありますが、ただ一個一個のものは化学的に申しましても、薬学的に申しましてほとんどこれは同じ系統のものでありまして、どのものを一つピツク・アツプしてやめろというような問題は、大した問題でございません。ちよつとしたひねくりまわしでこの三つのもの、四つのものはお互いにすぐできるものであります。これを全部やめるかという問題になれば、また話は別でありますが、そのうちでどれとどれをどうしようといつたことについてはちよつと申しかねます。私どもは大した問題にしておりません。やはりこういつたものでもつくり得たということは、原則的なことをやつておつたからできるということくらいにしかお答えできないのであります。これをやめたら研究上困るかといつたようなことは、今ここでお答えすることができないのでありますが、もうちよつとお待ち願いまして、皆さんのお話を伺つた上であなたの御質問に的確なお答えをいたしたいと思いますので、時間を与えていただきたいと思います。
#7
○小島委員長 それでは次に林しょう先生のお話を承ります。
#8
○林参考人 私は松沢病院の院長の林であります。主として臨床上これがどれだけ必要かということ、ないし私どもの立場でこれからどういう研究的なことをやつているかということ、それについてお答えいたします。
 覚醒剤はここにあげられておりますようなフエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパンというたぐいのものでありまして、古い薬でございます。医薬として用い出されたのは一九三〇年ごろであります。私どもが正直に申し上げて、実際これが臨床的にぜひ必要だという場合の範囲は、かなり狭いということは確かであります。ぜひともこれがなくてはならぬと思われる場合は、今私の思い浮かぶ限りではナルコレプシーという病気――睡眠発作の起つて来る病気でありますが、これは比較的少い病気で、おそらく年に十名見当私どもの臨床あるいは大学の神経科の外来というところで見るかと思うような病気で、あまりないことは確かです。そのほかには、私どもも精神疾患のある場合に、これは詳しく申し上げるときりがございませんから略しますが、使つてはおります。この使い方はなかなかむずかしいので、場合によつては使わぬでもしんぼうできるかと思います。
 ただ現在私どもさしあたつての問題として一番関心を持つておりますのは、御承知のように覚醒剤といわれているもので、最近のような、ことに戦後の状態で、いわゆる人間における慢性中毒の状態が起つて来ている。それによつて特殊な精神症状が起つて来るということはほとんど知らなかつたのであります。文献的にもなかつた。ところがいろいろ起つてみますと、その状態が医学全般にとつても、ことに私ども精神医学に携わる者にとつて一番大問題であるところの精神分裂病、この症状に非常に似ておるということが私どもの関心を一番引いておるのであります。新聞などにはポン中から分裂病が起るというふうに書いておるものもあるのでありますが、私どもはそうは申しませんけれども、少くとも進行的の分裂病といつているような状態が起る。この場合に私どもはそこに非常に関心を持ちまして研究を始めておるのであります。実際の分裂病に見るようなある種の脳の物質代謝の形式、障害と非常に似たものを、現在私ども動物実験的に、覚醒剤の慢性中毒によつて同じ状態が起ることを確かめております。この辺から実は分裂症そのものの身体的障害の本体というところへ入つて行こうとして仕事を進めております。そのほかに新しいいろいろな事実が出て来た。こういう薬を用いるというようなことがありますと、それから医学的のいろいろな問題の手がかりというものがどんな場合にも出て来ます。特に大問題である分裂症に対してのいろいろな手がかりがここに確かに出て来たというところで、われわれの仲間が熱意を持つていろいろ追究しておる。こういうことまでちよつとやりにくくなるということは――現在の日本においても少くともそういうことまで犠牲にされるということは、少くとも文化的の意味からいつて適当なことではないと思います。この問題については、私ども立法の最初からそういうふうに申し上げております。岡先生の今までのお話を伺つておりますと、少くともこういうものが、一部にでも害悪があるにもかかわらず許されておるということは、道徳的の立場から言うとしめしがつかぬというお話だと私解釈して伺つております。しかし法律というものは道徳を守るためということはちよつと私ども違うと思いますので、淳風美俗ということを法律的に維持させるように持ち込まれるということになりますと、直接法律に関係がある場合、それを維持させる。それによつて事を決する人たちにはずいぶんいろいろと困つた問題も出て来る。現在までのようなやり方で、少くともそつちからこの状態を助長しておるというようなことはまず毛頭ないと思います。そこまでお考えになるのは少し神経質過ぎると私は思つております。たとえば薬屋さんがやらない。そうしますと、私どもは一応ある種の許可を得てでも合成するということをしなければならない。研究者が合成して使うと弊害が少いと思う。研究者が科学者として合成するものができて来るということが、また義務だと私は思うのであります。むしろ特定の信用のある者につくつてもらつた方が取締りしやすい。現在はその弊害が起つておらぬ、こう信じております。
 それから参議院の方でおきめになつた要綱というものを拝見しますと、この中に研究者が覚醒剤研究のために効果を得た場合に限つて、人間に覚醒剤を使用し、あるいは使つてみることができるということ、それから覚醒剤を製造することを認めることとあるのでありますが、これは少くとも私はお願いしたことはないので、この条項はなくてもけつこうだと思います。これはいろいろな危険がある場合があると思うので、ちよつと私気になるので申し上げたのです。時間もとりますので、このぐらいで一応打切ります。
#9
○小島委員長 それは各委員の質疑は、先生方のお話が全部済んでからにいたします。次に宮本忍先生のお話を承ります。
#10
○宮本参考人 私は東京療養所で結核の外科をやつております宮本でございます。結核の外科と覚醒剤とどういう関係があるのかと、ふしぎにお考えになる方もございます。私も昨日呼ばれましてちよつと考えたのであります。ところが実はなかなか関係がございますので、これをちよつとお話いたしたいと思います。
 肺結核の外科的治療、肺結核の外科手術が非常に進歩して参りまして、最近では結核を薬でなおすか、あるいはそのなおり切らない場合に肺の悪いところを切つてなおす――肺切除と申しますが、薬か肺切除かというふうに、どちらかで片づけるというところまで進んで参りました。これは世界共通の学問の進歩であります。従つてわれわれはここまで進歩して参りますと、私どものやつている仕事自体がもうすでに国際水準に達しておるわけであります。なぜこういうことを前置きしたかというと、肺切除という手術は非常に大きな手術でございまして、それには麻酔が必要であります。麻酔と申しましても、モルヒネなどという注射の麻酔ではなくして、エーテルとかガスを使う麻酔が必要であります。そういう麻酔によつてこの手術が非常に安全になります。もう一つは、非常に大きな手術であるので一人の手術に千五百CCぐらいの血が出ます。千から千五百CCぐらいの輸血をしなければならない。こういう苦労を何年か続けて参りまして、最初のころは血を得ることが非常に困難であつた。どうやら最近は血液銀行などもできて参りましたので、だんだんと楽になつて参りましたか、事実上地方などへ参りますと、血が得られないということが、この手術の発達普及を妨げているのでございます。また患者の側からも輸血代ということがたいへんな負担で、たいてい百グラムが七百円ぐらいに、千から千五百、場合によつては三千という輸血をいたします場合は、たいへんなお金がかかるわけであります。そこで私どもはこの大手術を、そして非常に結核の治療としてはききめのある手術を、何とか安全に、そして出血を減らすことができないかということを長い間研究して参つたのであります。ところが一九五〇年でありますが、イギリスでエンダビーという方が、手術のときに血圧を下げてやるという方法を実際に発表したわけであります。つまり低血圧下手術、あるいはそれを特に麻酔とからみ合せてやりますから、低血圧下麻酔と呼んでおります。最近はさらに進んで参りまして、冬眠麻酔、これはちようどかえるやへびが冬、地の中にひつ込むように、体温を三十二度ぐらいに下げる。血圧ももちろん下ります。そういう状態で手術をすると、血が出ない。からだの代謝が非常に低下しておるので、相当な手術をやつてもあぶなくない。この冬眠麻酔というのが、心臓外科ではなくてはならない研究テーマになつて参りました。私どもの肺の外科では、冬眠麻酔までは参りませんが、血圧を下げる低血圧下麻酔手術というのを実は最近取上げたのであります。またこの低血圧下麻酔手術というものは、アメリカでは非常に批判的であります。ところがイギリスで始まつた関係で、イギリスでは相当たくさんの数が行われ、ドイツでも最近行われております。それて日本でもわれわれの研究が最近緒について参りましたので、来年京都で開かれます日本医学会総会では、外科学会はこれを共同研究のテーマに取上げたのであります。つまり外科の一番新しいトツプとして、この冬眠麻酔と低血圧下麻酔手術があります。この血圧を下げてやる手術によつて、今までの出血量の三分の一、場合によつては四分の一まで減らすことができる。たとえば一つの肺をとる場合に、今まではたいてい四百から五百の血が出たのが、今は二百前後、肺の一部を切る場合には今までは三百ぐらい出たのが、今は五十ぐらいというところまで進んで参りました。そうなると、手術の間に輸血をすることが必要でなくなります。あるいはやるとかえつて血圧が上るから、ぐあいが悪いという関係があります。こういうように低血圧下麻酔手術を行う場合に、薬がきき過ぎて血圧が下つて、なかなか上らない。手術はうまく終つたが、手術後になつて、血圧がなかなか上らないで困るという事態があるわけであります。そういう場合になるべく早くと申しますか、手術が終りましてから一時間か、せいぜい三時間ぐらいのうちに、正常な血圧百以上にいたしませんと、これは生命の危険がございます。そこでわれわれはそういう危急存亡の場合に、輸血をするという方法が一つございます。もちろん酸素も送ります。それでも血圧が上らない。そこで末梢血管を収縮して血圧を上げる薬を使いますが、その場合に今まで使われておつたのが、エフエドリン、アドレナリンでございます。ところがエフエドリン、アドレナリンというようなものは、急激に血圧を上げるために、せつかくきれいに手術を終つたあとで、なお血が出て来るという危険が伴います。そこでわれわれは何とかいい薬はないだろうかというので探しておりましたが、最近アメリカの文献でメセドリンという薬、これはヒロポンでありますが、この薬が非常にいいことを知りまして、実はこれはいいから使おうと思つていたやさきでございます。覚醒剤が禁止されるということになりますと、せつかく手に入りかけた非常にいい薬がおじやんになるので、実は困つておりましたので、きようここに出て来て、何とかこの治療に使用することを認めていただけないかということを考えておるわけであります。
 前置きが長くなりましたが、肺切除という手術は、日本では今後どんどん盛んにならなければならない。それに伴つてたいへん血がいる。その血というものがなかなかアメリカのように得られない。そういう事情と、もう一つは、この低血圧下麻酔手術の効能書きを申し上げますと、麻酔薬が非常に節約される。今までの麻酔に使うエーテルなども大体半分になりましたし、あるいはほかの非常に高いガスなども三分の一から四分の一に減つて来た。もう一つ、血圧を下げてやりますと、手術中にもし不幸にして事故ができた場合に、とつさの場合に血をとめることができる。そういう三つの利点がございますので、低血圧下手術というものは、おそらく今後日本で燎原の火のごとくと申しましようか、広がつて行くと思います。その場合に、われわれのようにいろいろ注意してやつておればよろしいのですが、場合によつて濫用されますと、薬がきき過ぎて、血圧が下つたままで、なかなか上らない。そこで患者が生命の危険に陥るということがなきにしもあらずでありますから、そこに最も効果的に血圧を元にもどす薬があればいい。今のところわれわれが思い当り、あるいは文献上で見て、――実際にはまだ使つておりませんが、外国でもやつておりますのが、実はメセドリン、すなわちヒロポンであります。ただこのヒロポンにかわるいいものがあるということを、秋山先生のような専門家の方から教えていただけば、何もがんばるわけではございません。とにかく今までのどの薬よりもいい薬だということは、確かに言えそうであります。この点については、まだ実際上の臨床材料がないので、結論的なことを申し上げることはできませんが、そういう研究者の立場から、あるいは肺結核の外科治療を日本では盛んにしなければならないという立場から、これは残しておいて研究の余地は与えていただきたいと思います。
#11
○小島委員長 それでは次に竹谷恒寿先生からお話を承ります。
#12
○竹山参考人 私、覚醒剤中毒者を収容矯正しております施設である総武病院長をしております竹谷でございます。
 ただいまいろいろとお話がございましたが、覚醒剤をやめたらよいかどうかという問題でございますが、およそ薬には臨床的な効果だけ考えてみますと、ぜひなくてはならない薬と、あつた方がよい薬と、なくてもどうでもよい薬と、ない方がよい薬と、これだけの種類があると思います。これは純粋に臨床的に申し上げてであります。
 ぜひなくてはならない薬は世の中にたくさんあります。害毒が云々されておりますような麻薬類、これはその効果の点からやはりぜひなくてはならない薬に属すると思います。あつた方がよいという程度の薬もずいぶんあります。またない方がよいという薬もある。たとえば麻薬の中でヘロインなど害毒が非常に大きいので、たとい効果はあつても、これは他の薬をもつて代用することができるので、ない方がよい方の薬に属するかと思います。覚醒剤は私どもの見解では、あつてもなくてもよいというふうに考えております。その理由は覚醒剤にも長所はたくさんございますが、また欠点もございます。それを比較してみなければ何とも言えないことじやないかと思つております。実は覚醒剤を私ども使いますが、どんな場合に使うかと申しますと、その覚醒剤の持つている作用、大別いたしまして血圧上昇作用、覚醒作用でございます。それが有効な面があります。たとえば血圧が非常に低い場合、電気痙攣療法という治療を精神病者にしなければならないときに、それが障害になつてその治療を行うことができない場合がある。そんなときに私ども覚醒剤を使いまして血圧を少し上げる、そうしておいて心配がなく電気痙攣療法を行う、こんな便利な点もあるにはあります。しかし覚醒剤、ことにメチルプロパミンが、ただいま宮本先生がおつしやいましたように、短時間のうちは急激に血圧を上昇させるような、それほど強い血圧の上昇作用を持つているとは私ども思いません。ただ多少血圧を上げることができるという利点は持つております。
 それから覚醒作用でございますが、私どもこの薬を利用しております。どういう場合に使うかと申しますと、第一には憂欝病でございます。これもなかなか使い方がむずかしいので、同一人に対しても適当な時期に適当な使用をしないときかない。しかしほかの治療が無効であつて、電撃療法ができない。持続睡眠療法ができない。そんな場合にこの覚醒剤を使つて案外効果を奏する場合もたまにはあります。それからナルコレープシーに対しましては、先ほど林院長が申された通りでありまして、数少い疾患ではありますが、その場合には割合に効果的であります。しかし絶対に代用品がないというわけのものでもないと思います。
 そう考えますと、純粋に臨床的には効果の点も相当あるにはありますが、一方害毒の方を考えてみますと、これは皆様御承知の通りに、この使い方の間違いから現在覚醒剤中毒者が非常に広がつております。そうしてそのために社会不安すら醸成しております。覚醒剤中毒が存在する、この欠点を考えてみますと、全般的に考えてみまして、覚醒アミーはあつてもなくてもよい部類に属するものではないかと私は考えております。しかし問題は、この薬品を禁止すればそれで目的が達せるかどうかという点であります。麻薬取締法ができまして、日本においていかなる意味においても存在を許されなくなつたはずのヘロインが、現在は麻薬中毒の王座を占めております。禁止薬品であろうとも中毒者の間には流れるのであります。覚醒剤を禁止いたしましても決して覚醒剤中毒はなくなりませんし、覚醒剤を製造する人は絶えないのであります。現在たくさん出ております覚醒剤中毒者が、合法面で製造され販売されたものを使用して中毒になつておるかといいますと、決してそうではない、みな密造なんであります。正当に使われれば利益のある面も出て来ていると思います。これを禁止いたしましても覚醒剤中毒を防ぐという意味にはまつたくならないということを強調いたしたいと思います。
 それから今度の覚醒剤取締法の改正案につきましては、いろいろ私考えもありますが、また後ほどこれについては申し上げたいと思います。
#13
○小島委員長 それでは委員の諸君から御質疑があればこれを許します。
#14
○岡委員 繰返し御了承願つておきたいのは、私ども臨床の方の医師としての良心的な手段を法律で強制的に取上げようなどと考えているわけでは決してないのです。ただ参議院の方から覚せい剤取締法の一部改正がわれわれの方へ回付されて来たにつきまして、これについてはわれわれの方でも禁止をする必要があるのではないかという強い意向も私ども聞いておりますので、では一度学者の諸先生方に来ていただいて、はたして禁止まで持つて行つた方が妥当かどうかという点について、やはり懇談的によく御意見を聞いて、われわれも勉強した上で善処したいという趣旨で来ていただいているので、決して禁止をめぐつて論争しようというのではないことを御了承願いたいと思います。
 ただ林先生の御意見を承つておりまして、私二、三感じました点を感想として申し述べたいのでありますが、一応竹山先生のお話をも含めまして、精神科の領域では治療としてはあつてもなくてもいい、がしかし特に慢性の中毒症状が、精神分裂症に出て来る症状ときわめて近似しておるというところに、現在なおいろいろと疑問の多い精神分裂症の研究について貢献し得るものという大きな期待が持てる、この点で、学問的な良心からこれを手放すということは忍びない、こういう御意見と私は了承しておるわけであります。その点ならばまた便法もあろうかと思うのであります。この点、先生に対して私は反論をするわけではありませんが、もちろん先生の御指摘のように、法律そのものとしては決して道徳を強制するものではない、また道徳を法律で強制しようともしないでしようけれども、しかし御存じの通り、先生に非常にお骨折りいただいた精神衛生法にいたしましても、精神衛生法にうたわれておるものは、やはりおのれを傷つけ、また他に害を及ぼすおそれがあるものについては、医療あるいは保護を与える、そのことのために入院の強制をすることができるという規定を盛つてあるわけです。問題は、やはりその患者なり、そうした精神障害者に対する保護、医療という、いわばモラルの上に立つて強制の措置を講じておるわけです。従つて法律が持つておるそうした倫理的な影響というものは私ども無視できないので、実はそういう観点からこの禁止かどうかという問題が出ておるわけです。と申しますのは、現に法務省の調査によりましても、ヒロポン中毒者の行つた犯罪で検挙された者は、昭和二十六年には一万一千、二十七年には二万三千にふえており、二十八年には四万三千、これは法務省の刑事課長の発表なんです。このように、若い世代が主として犯罪を犯し、検挙される者が、半年にして四倍にふえておる。このような趨勢をわれわれはこのままに放置してよいかどうか。ところが現在は青少年愛護月間とか称しまして、各警察の防犯員なるものが、ヒロポン禍から青少年を守りましよう、こういう立看板を随所に立てておる。一体こういうことでヒロポンの害毒について世人、道行く人がほんとうに目ざめるかどうか。われわれはこれでは非常にきき目がないのではないかと思う。そこで世の中の人、特に若い人たちにヒロポンというものの害毒を認識せしめ、その道徳的な影響について、国会なり政府なりが注意を喚起する必要があるのではないか。単なる一片の啓蒙宣伝ではなかなか容易に行かないとすれば、結局ヒロポンというものはいらないものだ、あつてならないものだという厳重な国の意思、立法府の意思を表示する、そしてそれを権力をもつて裏づけて行く、ここまで持つて行かなくては、この急角度にふえておるヒロポン禍から、日本の社会、日本の若い者を救うことはできないのではないか。こういういわゆる道義的な観点からいたしまして、この際多少臨床医学の不便はあろうとも、これが治療上あつてもなくてもいいものであるならば、ひとつこの際がまんをしていただくという方がいいのではないかというのが私どもの観点です。それでこうしていろいろ御足労を煩わしておるわけです。
 それから宮本先生の外科の領域につきましては、私ども別にお説に対して反駁をする何らの理由を持つておりません。ただアドレナリンは急激な血圧上昇を起すので、他に適当な化学製剤がない場合は、臓腑製剤において低血圧下麻酔後における血圧の自然上昇を期待し得るものがあるように承つております。これは経費の点でかなり経済的な問題が伴うとも伺つておりますが、そういうことでカバーができるものならば、ヒロポンにかわるもので行けないかという期待を持つておるだけで、これは諸先生の御研究を願うよりいたし方がないと思うのです。
 そこでこの際三先生、特に林先生と竹山先生、いかがでしようか。御存じだろうと思いますが、麻薬取締法にこういう条文があるのです。麻薬取締法の第十二条ではジアセチルモルヒネ、ヘロインはこれを禁止をいたしております。しかしただその但書として、「但し、麻薬研究施設の設置者が厚生大臣の許可を受けて、譲り渡し、譲り受け、又は廃棄する場合及び麻薬研究者が厚生大臣の許可を受けて、研究のため、製造し、」云々という除外規定があるわけであります。この除外規定の中には、これは今後われわれの研究課題ではありますが、結局覚醒剤を研究する、また覚醒剤の研究を広い範囲に拡大いたしまして、慢性のアミン中毒に基くものかどうか、また精神分裂症の病源を探索する上に非常に重要であるということを厚生大臣が認めたならば、その場合厚生大臣は、その必要な覚醒剤はこれをつくり、そしてまたそのつくつたものを施用させることを、一応原則としては禁止するが、しかしここで但書としてそういう一つのわずかな除外を認めるという幅で行かないものかどうか。この点は、たとえば秋谷先生の研究という点からも、今申しましたような、現実にヒロポンの中毒禍というものが駸々乎としてわれわれの若き世代を冒しておりますので、一応国会なり政府もこれは日本の国からおつぱらうのだということにする、しかし麻薬、ヘロインの禁止に関するこの麻薬取締法第十二条を援用して、薬物の研究をされる方が研究室内において、あるいはまたそれに基くいろいろな症状というものが、今日までの経験からいたしまして、精神上の領域において研究をするためにこれが必要であるという場合は、その施用を認めるというように、そこまで施用範囲を圧縮して、原則は禁止ということでやつた方が、現実の問題を解決する上において正しいじやなかろうか、少くともその方が適切じやなかろうかと私どもは思いますが、そういう点、諸先生の御意見があつたら承りたいと思います。
#15
○林参考人 私も今のお話について感じたところをちよつと申し上げます。お話の焦点は、要するに、国としてこの覚醒剤を日本からおつぱらうという点をはつきりさせようということだと思います。現在いろいろな立看板も出ており、ヒロポン禍から青少年を守れとか、ヒロポンをやめようとかいうような宣伝が行われているにかかわらずそれが横行している、今日全面的にこれを日本からおつぱらうのには、日本の法律で認めていないのだというだけでは効果があるまいというお話のように承つたのですけれども、現在この取締法で、かつてに使つてはならぬということははつきりしており、非常に大幅な製造禁止をやつているわけであります。いまさらここで合法的に許されているごくわずかな製造をも禁止したということを言いましても、一般の人は何だ、それじや今まで製造を禁止していなかつたのかという、むしろ逆のような受取り方もされるじやないかという気もするのでございます。現に取締法が出るまでは一応途中で劇薬に指定されて、医者の処方なりなんなりがなければ買えないという状態になつておりながら、合法的につくられているものがかなり手に入りやすかつた、しかし手に入りにくくなりましたために、いわゆる密造品が出て来た、その当時は密造品というよりはむしろ模造品というものが出て来た、その時代にはそういつたものがございましたから、みなレツテルから箱からちやんとこしらえて、本物と違わぬようなかつこうで出ておつた。覚醒剤取締法ができてからは、そういうものは薬屋さんの手には一切なくなりました。少くとも薬の販売をする人たちの手にはなくなつた、普通には買えなくなつた。ですからそういうものはみんな裸のままのアンプルで不体裁のまま新聞紙なりちり級に包んで取引するようになつて来た。現在のようなそうした正規の品物になるとはだれも考えていなかつたのであります。いまさらそういうものが出ましたために、おそらく何だ今までは製造してもよかつたのかというような逆な印象を軽卒な人たちに与えるような結果になる。岡先生の期待していらつしやるような意味の効果がどれだけあるかしらという気がするわけです。仰せのようになさるとして、私どもはこうした研究を発表する場合にも支障がないようにしてもらわなければならぬと思います。その場合でも、厚生省でごく厳密に許された中で、たとえばわれわれのところでは合成してもよろしい、場合によつては人体に使用してもよろしいということになりますと、今度はそうした個人的な合成が一部で許されるということは、うつかりしておりますと、かえつてどうも抜け穴ができそうな感じもしておるのです。むしろ今まで運営されて来た現在の法がその辺の抜け穴は少いのではないかという感じもしておりますので、御期待なさるような効果がどれだけあるかしら、むしろ逆効果を来すようなこともあるのではないかと思います。現に取締法ができる以前と現在では密造品の体裁から態度が全然かわつて来ておる、取締りをもぐつてやつておる、仮面もかぶらずにやつておるという形になつておりますので、その点からいつてかえつて実際問題の上にいろいろな支障も来る。
 それからまた秋谷先生の方なんかの御研究あるいはエフエドリン、アドレナリン系のものをいじつておると、そこからさらに発展して途中である化合物ができるという場合も出て来る。その場合に、これに似たもの、あるいはこれそのもののまざつたものの作用を実際に見なくちやならぬという場合も出て来る。それから特に手術の場合なんかに、今までの血圧上昇のものよりはぐあいがいいということは出て来ておると思います。研究が進めばこれに代用して覚醒的の作用は少いというものも出て来るかもしれませんが、その辺の研究を進めて行く上にも、中途でこういつたものが偶然にも故意にも出て来たら使つてみなければならぬという場合もあると思う。その辺に実際の支障も出て来るだろうと思います。特定の場合に限つて除外例的に個人的にこうした製造を許すということは、運用の上でよほど何か危険もあるというような感じもしておる。それで今おつしやつたようなことを、特にここでこういうふうに法律を改正したのだということを宣伝なさることが、かえつて御期待のような効果を逆にする場合もあり得ないかという感じがしておるということだけを申し上げます。
#16
○秋谷参考人 先ほどの岡先生からの御質問にある程度お答えするようなことになるかとも思いますが、さらにそのほかにもう少し私の感じましたことを申し上げて御参考に供したいと思います。
 今の岡先生のおつしやいますように、特定な場合を限りそこだけ許す、このことについてでありますが、実はこの麻薬の取締法が出たために、われわれ研究者は非常な拘束を受けて、良心的な圧迫を実は感じております。従つて私どものような研究者は、麻薬に関するようなことは研究しまいという気構えがずつとみなぎつております。そのことが欧米の有機化学、薬学の進歩に比べて非常なひけをとるようなことになり、その点文化国家としてたいへんはずかしい状態になつております。おそらく今岡先生のおつしやるようなことになつて行くとすれば、また覚醒剤についても同じ範疇に入るわけでありますから、今林さんがおつしやつたように、すべて薬品というものは偶然に発見することが多いのでありまして、目的のものをつくろうとしてもかえつてできない横道に入る。これはだめだということになつて来たときに、覚醒剤のことになつて来た。そうすると研究意欲というものが非常に起つて参ります。実は私覚醒アミン剤の生体化学変化をやりたいと思いまして、まだ許可を得ておりませんので、厚生大臣の許可を得るために非常な困難を感じておるわけであります。ついめんどうくさくなつたからやめてしまえとなる。研究者はわがままであります。大工さんや左官屋さんあるいは芸術家がこり出せば徹夜でもやるといつたような意欲というものがないと新しい研究はできないと思うのであります。この点やはり文化国家として立つ以上は、多少の弊害があつてもその弊害は他の法で押えることによつてやつていただきたいと思うのです。
 それからこれはたいへん余談になりまして恐れ入る次第でありますが、たとえばエフエドリンであろうとアドレナリンであろうが、こんなに全世界に有名になつた動機は日本人の発見でありまして、アドレナリンはホルモンの第一陣を承つたのでありまして、高峰譲吉という先生は明治十一年か十二年に東京大学を出た応用化学の先生でありまして、途中でアメリカに行つて、あちらで酒の研究をしておりまして、高峰ジアスターゼを発見したのであります。その直後に副腎ホルモンとして初めてアドレナリンを見つけ出し、しかもその構造の研究をやり有名になつたのであります。ほとんどそれと前後しまして、私の方の薬学の大元祖であります長井長義博士が麻黄という漢薬からこれを抽出されまして、薬学的な化学的な構造を持つておるにかかわらず、多少の違いがある。しかしその効用の面においては弟たりがたく兄たりがたく、それぞれいい面があるので全世界的に有名になつております。ホルモンの第一陣がアドレナリンであり、また植物体からとつたエフエドリンが今日有名になつております。当時すでに長井先生はヒロポンもちやんと見つけておつたのでありまして、明治二十一年のことであります。このように日本人にとつて誇りとすべき最も有名な薬品に関係があるということも皆様方に御考慮願いたい。われわれがヨーロツパあるいはアメリカに参りましても、エフエドリンあるいはアドレナリンというものについては非常な尊敬をもつて迎えられるのでありまして、非常に肩幅が広い感じを持つて海外旅行をしておるようなわけであります。そういう点で日本の文化に黒星ではなかつた、一点をかせいでおるのではないかと思います。この点を御参考までに申し上げておきます。
#17
○岡委員 今のお二人の先生の御所見だけでは、私どもまだやはり禁止しちやならないということについての理由にならないと思うのです。林先生のおつしやるように、禁止をする、これまであつたのかという心理的影響がかえつて私どもの方の期待するものとは逆のものではないかということ、これは仮定の問題ではありますけれども、どうせ現在は三百七十グラムしかつくつておらないから、アンプルにしても三十七万ですか、そのくらいのものでしよう。ですからそれは大した数量ではないが、戦後は――これは先生から教えられたのですが、ヒツトラーもマジノ・ライン突破のときに丸薬を兵隊に飲ました。日本でも徴用工や兵隊に飲ました。ぼくらも飲ました責任があるのですが、そういうことから戦後に入つてからまつたく自由に横行した。そこでこれじやいけないと気がついてぐつとしぼつたために抜け道ができた。そのしぼつたときに禁止すればよかつた。ちようどわれわれはやはりこの法律を審議する立場におつた。今にして思えばあのときなぜ禁止しなかつたかと大きな責任を感じておる。しかし数字が先ほども申し上げたように年々増加しておる。そうなつて来るとやはりこれは禁止という方向へ持つて行くべきだというように今私どもは考える。単純な心理的影響としては、やはり一応あるのだ、認められているのだ、大きな部分は押えられておるが、合法面にはあるのだ、合法面にはあるのだがというこの合法面にあるということ、そうじやなくして合法にはないのだ、全然非合法だというところへヒロポンあるいはそれに類似の薬品を追い込んで行く。しかしただ例外的に、麻薬取締法第十二条のように臨床の医家なりあるいは研究者なりが研究されるということについては、それは十分にその研究にさしつかえないように認めるということにしておくということ、やはり有か無か、ないということにしないと、比較的にこれほどあるか、比較的にこれだけないかというようなことでは、なかなか問題の解決はつかないのじやないか、こう思つているのです。
 それから秋谷先生の御意見も、これは別に先生に反駁しようと思うわけではないのですが、ただ御指摘の点は、麻薬取締法が出たから従つて麻薬関係のモルヒネ、アルカロイドに関する化学が非常に不十分だということは事実でしよう。しかしこれは何も麻薬取締法そのものの欠点じやないと思うのです。これのみにわれわれは責めを帰すべきものじやなく、やはり麻薬取締法においても学者としての研究の自由というものは認められておるのですから、これはこの法律を運用する厚生省なら厚生省が、薬物行政というものの持つ文化的な性格というものを忘れて、取締り的な性格のみを強く出そうとすれば、皆さん方の研究の自由ということがおろそかにされる。これは一つの取締りの衝にある、あるいは法律運用の衝にある行政当局者の心構えと運用の次第によつては、決して学者の研究の自由を束縛されるものではない。同時にまた学者の側も十分に認められておる自由を主張される自由はあるわけです。その点は何も拘束されると一概におつしやる意味はないのじやないかと思う。いろいろ例をおあげになりましたが、しかしその反対の例もあるわけです。麻薬取締りの違反者には体刑、死刑をもつて臨んでいる国もあります。中国は阿片戦争で麻薬と闘うためには一国の国運を賭しておる。現にそういう事態が日本の若者に起つておるということもやはり十分お考えを願つて、学問の自由、臨床医家としての研究の自由は何とか認める、しかしこの際はやはり徹底的なメスをもつてヒロポンと闘うという気持は必要である。これは宮本、林の両先生、それから竹山先生も特にそうだと思うのです。われわれも末尾に付しておる一人ですが、ヒロポン中毒患者というものを通じてわれわれは何を見るか。われわれはヒロポン中毒患者の症状を見るだけではない。ヒロポン中毒患者をめぐる大きな社会的不幸をわれわれは見る。一人のヒロポン中毒患者は氷山の一角なんです。その背後にある日本の社会というもの、日本の若者の現在の非常な不遇の姿をわれわれは見る。これにタツチして行かなければいけないという考え方、われわれは学者としての医者としての良心と同時に、社会人としての良心にもやはり目ざめる。この二つをどう調整して解決して行くか、これは人間としての悩みだと思う。問題は、それを技術的にどう解決して行くか、立法的にどう解決して行くかというところに問題がある。そういう点でわれわれは諸先生の御意見を承つたのですが、どうもわれわれは諸先生の御意見では十分納得がいたしかねるのです。
#18
○林参考人 御趣意はよくわかつておるのでございます。ただ覚せい剤取締法が出ました当時に、現在岡先生の主張なさるような全面禁止をしたらこういうことにならなかつたろうとおつしやる点は、私ども実際問題としてそうは考えられないのであります。あのときにそうしたつて今のような状態が起つているので、これは同じことでございます。むしろあの当時の罰則の程度が甘かつたという点の方が問題だと思います。麻薬と同列ぐらいにまであのとき持つて行つた方がまだ効果があつたろうと思います。あの当時は密造というものが広まつておりまして、またそれを需要する事態が出て来ておつたので、今のようなことをしたところで現在とどれだけ違つたろうかという感じがします。そのことについては今度の場合もほとんど同じだろうと思います。まあそれだけ申し上げます。
 それと、私どもといたしましてもこれは社会問題として、これにつながる青少年の問題その他を十分考えておりますので、むしろその点の害悪というようなことについては、直接に私どもの方がそういう連中を扱つておるだけにこまかいところまで感じとつておる、そう思います。ただそれをどう始末するかということについて、今承つたような点と私どもが今学者として考えている点とそれほど矛盾していない、そう思うだけなんでございます。とにかくそういうことによつて防げたかというようなことについては、ほとんど効果はなかつたろうと思うというようなことだけを申し上げて、この問題はここでこれ以上話合いをいたしましてもきりがないような感じがしますので、この辺で私はやめておきます。
#19
○松永(佛)委員 私ちようど林院長さんのお話半ばに参りましたので、秋谷先生その他のお話を承ることができなかつたのでありますが、私は岡さんのように医師でも何でもないので、しろうとでありますが、たまたま宗教家であるという点から考えて、その立場からこれをいろいろ判断をし、考えてみたい、こう思うのであります。それで、現在の罰則のみによつてこのヒロポン禍の大きな社会悪を征伐して行こうということで罰則を高めますと、結局密造者が密造物の大半をとられるということから製造コストの値上りとなつて、患者に手渡す密造品の値が高くなる。高くなり入手困難になることが一層社会悪の助長にもなつて来るという弊害も一方に認められると思います。さりとて現状のままでは、表向き製造をやつておる者があるのだ、政府はつくらしておいて禁止しているという考え方を、法律と実情とにうとい一般大衆が持つて来る。こういうことになりますと、これはやはり全面的に禁止をした方がいいということになつて来るわけであります。さりとて今の宮本先生なり林院長さんのお話を聞いていると、医学上、治療上これを必要とするということになるのでありますが、この医学上、治療上必要とするという面には、岡氏が言われたように特定の場合というものを設定をして、学究の徒が研究室の中においては自由にこれがこしらえられるように、いわゆる法の運営において、今のお役所式なこてんこてんの頭をもう少しゆるめる。責任のある学者がこれを横流しするということは百万分の一もあり得ない。そんなことは既定の事実なんですから、もう少し大幅に、今秋谷先生がおつしやつたが、研究したいと言えば、よかろう、君がやるのだつたら文句がないと言つて、願書を持つて行けばすぐその場で即日許可書を渡すというくらいの幅を役所に持たせなければいけない。しかしそれはもう徹底した専門の学者の方の場合に限つてのことであります。そしてヒロポンとかこれに関係の薬はなくなつたんだが、ヒロポン患者の治療という面から見て、これを治療するために学者が研究をやつていただく。そして、ヒロポン中毒の治療に役立つ薬がここにできたとしましても、これを打つているとまたそのヒロポン覚醒剤中毒治療剤の中毒にかかつてしまう。さらにそれを治療するだけのものをやつて行かなければならない。たとえばストレプトマイシンができたとき、これを打つと初期の結核がなおる。しかしその初期のストレプトマイシンを打つた結核患者によつて伝染した者は、すでに抗菌性ができておるからさらにより強烈なものが、またこの抗菌性をやつつける強い薬をつくらなければならない。これはいたちごつこになる。そこで学者の領域があり、永遠に尽きざる一つの研究のかぎがあるわけでありまして、われわれはこれを否定するわけではありませんけれども、そこでヒロポン治療剤をこしらえて、その治療剤中毒にかかつた場合にまた同じ問題が起きて来やせぬかということが考えられます。そこでこの治療の面から、われわれはしろうとですが、この間からこの覚醒剤の問題についての各放送局の放送を漏れなく聞いております。竹山先生の御放送も、この間何放送でしたかで承りました。その中に新宿方面のこの中毒にかかつたパンパンが、自戒談をやつておるのを聞きました。彼らはつかまえられると、警察へひつばられてほうり込まれる。そうすると、禁断症状がやつて来ると、一日八十本くらい打つておつたのだからとうてい耐えられないのであばれる。あばれると、さしあたり困つて、警察がどこかからこれを手に入れて打つてくれる。打つてくれると静かにして、また切れたらあばれる。あばれれば結局は打つてくれると思うからあばれるのです。ところが打つてくれずに三日ほどほつとかれた場合があつた。そうなると非常に苦しかつたが、もう三日目には別にそう禁断症状で苦しむというのは大きなものではなくて、何とかしんぼうできぬことはない。結局あれはあるから打つんですね、なかつたらなかつたで済むものなんですということを、新宿の何か相当なそういう専門娼婦が言つておる録音を聞いたのであります。それなら一週間警察に留置されておつて、その間打たずにおつたのかという質問に対して、打たずにおりました。それじや打たずに行けるということがわかつたか。打たずに行けるということがわかりました。出てからどうした。出てからまつ先に打ちました。こうなると、あるからだ。そのあるやつは、罰則主義だけでその本拠がつけるかどうかということはちよつと疑問である。現在の日本の警察力、いろいろな点から見て、これは相当難点であつて、網の目をくぐるごとく、あるいはたい網の下をくぐるいわしのような状態で大規模な密造が小規模な密造になつて行く、小規模な密造になるほど需要者に与える値が高くなる。またそれだけ非衛生的な粗悪品になつて行く。また金がいるから悪が助長されるという悪循環がそこにやつて来る。この大きな社会悪とどうして闘うかということを考えますと、学者は学者の領域における運営上の一つの大幅な研究資料を認めておくが、日本の国にはヒロポン及びこのヒロポン中毒治療剤、そういつたもので再び治療にかかるような者は、一切ないはずである。ある者はすべてこれ密造だということにしてしまつた方がいつそやりよいのじやないかというふうな考えを、私どもは持つておるのです。もちろんそれを端的にすぐにどうしようという考えはありませんが、やはり国家としてはそういう方針で、私ども宗教家の考え方としては進めて行きたい。今日本でエフエドリンというのが長井博士によつて、エフエドリン・ナガイその他が出ておりますが、こういうものを持つておることは外国に行つても誇りであると竹山先生おつしやいます。しかしエフエドリンがあることは誇りとすべきであるが、このエフエドリンからヒロポンをつくることは恥とすべきである。日本の野球が世界的水準にまで発達して、きようの早慶戦が相当話題の花を咲かせるということは、何らとがむべき現象ではないと思うのでありますが、しかしこの早慶戦に何万円の金を張つて勝敗をかけておることは、厳然と取締らなければならないという点を私どもは考えますから、大体方針としては、もう製造も施用もこれは一切禁止、一部学究の徒にのみは大きな幅をもつて許すということに持つて行きたいというふうな考え方を持つておるのですが、それではさしあたりあしたから困るというのは、どういう点があるでしようか、その点をひとつ諸先生にお教え願いたい。
 今竹山先生のお話を承りますと、絶対必要なもの、あつた方がいいもの、あつてもなくてもいいもの、ない方がいいもの、この四つの分類があるが、大体あつてもなくてもいいものだというふうな御意見でありましたが、私どもはあつてもなくてもいいものというよりも、そういつたような実際の体験者、中毒患者のそういう放送とか話を聞きますと、要するに禁断症状はほつておいたらなおるという点を見ておりますから、ない方がいい、私は竹山先生よりも一歩進んで、ない方がいいという解釈を持つておりますが、この点諸先生にお教えを願いたいと思います。
#20
○竹山参考人 どうも先ほどの私の話をちよつと誤解されてるように思います。私これはあつてもなくてもいいと申し上げましたが、これは臨床的、治療的に言う問題であつて、それ以外の場合にこれがどうでもいいということを申し上げたのではないのです。
 それともう一つ、覚醒剤の中毒患者を私ども常時百人くらい取扱つております。それで彼らの意識の中には、公で許されておるところがあるのだ、それだから自分たちが密造品を使うのがなぜ悪い、そういう意識はございません。それは断言できます。やはり彼らは密造品を使つていて、自分たちはこういう薬を使つていては悪いのだということを重々知つております。しかし密造品が絶えない。密造品が全面的に禁止されれば、この密造品がなくなるかというと、そうではない。禁止されるからこそ密造品があるのだということが言えます。それでたといこの薬品を全面的に禁止いたしましても、密造品が出るということは防げるものではないと思います。それでこれを禁止するかどうかということをここで論じられるのは、あまり意味がないことじやないかというふうに考えられます。それだけでございます。
#21
○林参考人 今の竹山さんの話にもう少し補足いたします。松永先生のお話を伺つておりまして、特にわれわれのために学究的に使うのはそれをかなり自由にしてやろう――現在私どもは以前に比べたらかなり不自由に、特別な許可を得まして使つております。研究的にも臨床的にもそうでございますが、実際に現在の数量から言いましたら、治療的に使うよりは、動物なんかに研究的にやつておる数量が私どもなどではずつと多うございます。これは特別の許可を得ましてやつておるのであります。ただその使うものは特定の薬屋さんがつくつたものを、直接私どもに渡してくれることになつております。ですから今お話のような、特別にそういうものに許可するという状態に今なつておることは、ちつともかわらないのであります。ですから、この点は今までの通りでよろしい。現在私どものために、いわゆる販売業者を通さずに、製造して私どもによこしてくれてる人たち、これは二つしかございませんが、そういうところから流出ているということも絶対にないし、私ども今許可を得ているところから流出ることもない。それから今放送でお聞きになつて、禁断症状が出てどうとかということですが、この覚醒剤の場合の禁断症状というものは、麻薬の禁断症状なんかとは全然違います。私ども禁断症状がないとは申し上げませんが、非常に軽いものなのです。いわゆる身体的な禁断症状というものは非常に軽い。ただ警察官に誤解があつて、あばれたような場合は一本さしてやろうというようなことをやつたから、味をしめてあばれて見せてるだけです。私どもの病院に入つたら、あばれてもやつてくれるないことがわかりきつておりますから、あばれたりしません。ほんとうに麻薬の中毒のようにあばれたり苦しがつたりするということは見たことがない。それから罰則だけではどうにもならぬということは私どもも承知しておりますが、現在では麻薬なんかに比べてとにかく密造がしやすいという点で、これが広がつておりますから、値段が安過ぎるのです。少し金があればすくに手に入つてしまうということが特にいけない。値段が上ることは、それの入手のためによけい社会悪を増すということは絶対ないとは申しませんが、値段が高くなるためにやりにくくなるという状態はずつと大きいと思います。麻薬のように禁断症状が実際は強くないから、少し金に詰まるとしんぼうしてしまうという人間が幾らもあるのです。ですから値段が上るということは、望ましいことなんです。実際の性質からいつてかなり効果があると私ども思つております。
 それから密造ということに二つの種類がある。一つは実際に原料となるものをつくつておる。それはエフエドリンを少しかえてつくつておるというのと、直接にもう少し簡単な薬から合成しておるのと二つある。エフエドリンからかえるにしましても――この方は秋谷先生御専門のことでございますが、中等度以上の技術を要するので、ずぶのしろうとがこれをやつてはおりません。ただ非常に少量で済むものでございますから、ある分量をつくれば相当大勢の人に使えるほどつくれてしまう。それが割合簡単にできるということが問題なんです。エフエドリンから変造しておるものが一番多いと思いますが、それもある程度の技術を持つた者が隠れてやつておる。ところが新聞に出ている、普通密造としてあげられている連中は、そういうものを買つて来まして、それを水に溶いてアンプルへ詰めるという仕事をやつておるのであります。これはごく簡単に、それこそ裏長屋の三畳でも戸だなの中でも、アルコールランプさえあればできるので、これがたいていあげられる。そのほかに原料の密造が、麻薬なんかと違つて多少の技術があれば割合簡単にできる。こういう者があげられましても、多くは罰金くらいで済んでしまうような現状なんです。体刑が科せられないので、やらなければ損だということになる。そういう者をあげても検察庁の方であまり罰してくれないから、警察の方も張合いがない。特に本源の原料を密造するところを追究し、あげることに張合いがあるようになれば、おのずから値段も上つて来ますし、アンプル屋も減つて来るということになる。その点を特に罰則の上で私ども重く見ております。これは体刑が科せられるようになればよほど違うと思います。警察の方も張合いが出て来る。また検察庁の方がこういうものをかなり重くとるという気持を持つてもらうように、これからして行かなければならぬと思う。どうも行政法規による罰則はなるべく軽く罰して済ませたいという気持が今のところあるのでありますが、それでは困つてしまう。実際に自分でやつている連中を罰することもできますけれども、それをやつていたら限りがございませんし、実際にまた刑務所だつて足りなくなる。こういう者のはげしいのは今の精神衛生法の範囲で私どもの病院へ入れることもできるのでありますが、これも場所に限りがある。出せば、今のようにちまたに充満しているのですから、彼らの帰る環境は誘惑だらけなんですから、またたちまちやるというだけの話なんです。いなかなんかでは、このごろは比較的知識の薄い青年がだまされて使うという状態が出ております。大都会あたりでは、大体社会の落伍者的の階層に非常に広く広がつておる。それが平素でもそういう連中のやりかねない犯罪的行為、非行というものに拍車をかけているということはあるのでございます。彼らがこれをやつているから悪いことをするというだけではないと思います。極端に言うと、そもそも悪いことをしかねない連中がそれだけいるということで、その連中が使つているというだけの話なんです。何とかして本源である、彼らの言つている原末をつくるような連中を、――これは数はそう多いものではないが、これをあげやすくする、警察もそれに張合いがあるようにするという意味で、罰則をあげていただきたいというところに、おもなあれがある。それをひとつ御理解願いたいのであります。あとはできる範囲で、予算その他いろいろな点で許す限りにおいて、実際に中毒しておる連中を収容してなおしてやる。これはしばらく置いておけば八〇%程度はよくなりますが、そういう連中は性格上の欠陥を持つており、出してもまたすぐ元のところに帰すよりほかしかたがないのです。また世の中に流布しているものを減らして行くこと、非常に値を高くして行くことも必要で、現在その原料になるエフエドリンをどの程度まで規制できるかということは、医薬の方で非常に使いますから問題である。輸入ということは今のところ許されておらぬそうですが、現在エフエドリンの密輸が相当見つかつており、また原末に当るものも密輸されるのじやないかと思いますが、これを税関で押えることが問題です。麻薬の方は輸入禁止になつておるから税関で押えられるが、こちらの方が押えられないというような話もあり、税関の方の法律にこれの輸入禁止の条項を入れていただきたいということもわれわれ考えておりますが、そうなれば税関も働きよくなる。また麻薬官が同時に覚醒剤を押えることができるようにすることが必要で、麻薬をやつておる連中がこれをやつておるということでずいぶん重なつております。これは見つかるものもたくさんあるのでありますが、麻薬官が覚せい罪取締法でいきなり押えることが現在できない。そういうようなことも一応共通にいたしたいというようなこまかい問題がありますが、松永先生の誤解しておられるような点について、少し今申し上げたわけであります。今われわれが許していただいおるのは、厳重な許可のもとに許していただいておるわけで、そのもとになるものを一応きまつた麻薬メーカーがつくつていらつしやるというだけであります。
#22
○松永(佛)委員 今の林先生のお話よくわかるのでありますが、今研究のために一定の量を許しておりましても、その原料をどこで製造するかということになつて来るわけであります。こういうものを当分一定量製造させ、それを厚生省が確保するという方針で、あとは全面禁止ということに持つて行つた方がよいのじやないか、こういうように考えます。なおまたどこまでも密造が多く、原末をつくるのは困難だが、アンプル等は四畳半の二階でガス・バーナーの設備さえあればできるというような簡単なところから、アンプル加工の密造者が多いわけでありますが、これは飯の上のはえを追うようなものであります。また原料になるべきエフエドリンは日本内地で麻薬その他の原料で幾らでもできるわけで、麻黄その他を原料としてつくられるのでありましようが、この密輸の状況が――現在罰則一本で行つた場合に、その値が上る、値が上ることにより入手困難だから、そんなに高いものならばやめよう、五本が三本になり、二本になるという面もあり、一面また非常に高価な金がいるからというので悪の助長を促す面もあり、これの功罪は研究しなければわからないと思いますが、密輸入の面から見ますと、現在のヒロポンが安価であるから、この原料のエフエドリン等も密輸がしにくいが、しかしこれがヘロインのごとく高価になつて来れば、船員が船のロツカーの中に仕込んで持つて来たり、いろいろな方法で密輸がされやすいということは、今後相当研究に値するのではないかと存じます。
 きようは私どもは専門の立場にあられる諸先生の御意見を承りまして、非常に教えられるところがが多かつたのでありますが、よく研究をして善処したい。良識をもつて臨み、常識人に笑われないようにいたすということだけは考えております。
#23
○長谷川(保)委員 いろいろ教えられてありがたいのでありますが、簡単に林先生、竹山先生にお伺いをいたしたいのであります。今まで私どもは、このヒロポン中毒の者を精神病院に収容いたしますると、非常にあばれましたり、秩序を乱しましたり、あるいは逃亡いたしましたりするので、病院としては非常に迷惑で困つてしまう、各精神病院はこれを収容することを非常にきらうというふうに実は伺つて来たのでありますが、ただいまお話を伺つておりますと、私ども今まで伺つて参りましたのと少し違うのではないかというふうにも感ずるのであります。従いまして、現に収容いたしまして、ただいま申しましたような非常に乱暴したり、秩序を乱したり、あばれたり、逃亡したりというようなことが実際問題としてあるのかどうか。またそれがあるといたしまして、こういう中毒患者を一箇所に収容するのがいいのか、あるいは全国的にばらまいて、各病院に一人、二人というように収容のベツドをつくりまして、そこへ収容して治療するという方がいいのか、そのことを簡単にお教えいただきたいのであります。
#24
○竹山参考人 覚醒剤中毒を治療するというのは、単に中毒状態をなおせばいいというだけのものでは決してありません。薬に結びついた生活をしているその人格を矯正しなければならぬ。さらにかれらを薬に追いやつてしまつたような環境自体、これが是正されなければならぬ。それでありますので、収容いたしますと、中毒をなおすとともに、人格の矯正並びに環境調整を同時にやつて行かなければならないということが必要なんです。そのためには私ども特殊な施設が必要だろうと思います。従来精神病院に彼らを収容いたしまして、何百人もいる精神病者の中に数名あるいは十数名の患者を収容いたしますと、彼らは、こんなところに入れられたのかということから、劣等感を刺激されて、よけいに反抗的な態度に出て来て、なかなかうまく行かなかつたのであります。また普通の精神病院では、所によつてはできますけれども、たいがいのところは環境調整、人格矯正のための特別の施設がありません。そんなことから、中毒者を治療し、矯正するには絶好な施設ではなかつたのであります。私ども百名くらい彼らを収容いたしまして、そこにまたほかの精神病者が多少入つております。そういう場合には、彼らは他の精神病者と自分とを比較いたしまして、優越感を持ちます。逆に精神病者に対して世話をしてやろうとする。彼らとしては、他人にサービスするという体験なんかは初めてなんでありまして、精神病院に収容して、あばれて問題を起すようなことはかえつてなくなるのであります。そんなふうなところから、私どもは特別な収容施設が必要なんだろうと思つております。諸外国には、麻薬やアルコールなどの薬物中毒者を収容し、矯正する施設があります。例を引きますと、ニユーヨークでは市内に麻薬中毒病院が二つもあるくらいであります。ところが日本には全然そんな施設がない。しかし先ほども申しましたように、普通の病院と違い、人格矯正のためのいろいろな施設、環境調整のための設備などが必要でありますが、なかなか普通のところで施設をつくることはできない。できますならば、国家的にこういう施設をつくるとか、ないしは特殊な公共団体に補助して、こういう施設がどんどんできて行くことを私どもは望みます。
#25
○林参考人 ちよつと補足して申し上げます。私ども松沢で相当の人間をこれまで預かつて来てあばれるという問題でございますが、最初は多少そういうことなきにしもあらずでございます。これは必ずしも苦しいからというだけではないのであります。しかし扱いようによりましてこれはそう長く続くものではない。ただ精神病院といたしましては、私どものところでは病棟が幾つにもわかれておりまするから、その中でわけてやつたりいろいろする。早ければ数日から、三月もあれば一応いわゆる中毒の精神症状がとれて来るのが大部分です。中に例外があることが問題であります。どうしてもなおらぬというのがある。そのほかにいろいろ性格的の異常の起つていることは確かですが、元来性格的に欠陥のある人が多いのでございます。つまり社会から落伍しやすいような性格的な欠陥のある人でありますと、慢性の状態になる。ことに今まではよけいそうなんでございます、こういう人たちが一応なおつたあとは、結局その性格異常者として扱うということです。こういう人にある程度の拘束を加えまして扱つて行く上には、私どもがほんとうに全人格をあげてこの人たちと相撲をとつて行くつもりにならぬとできない。看護人やわれわれに特別な覚悟がいるのであります。そしてまたある期間たてばできるだけ自由に扱つてやつて、作業その他に従事させ、規則的な生活になれさして行くということをやらなくちやならぬ。それから今精神病院で一番私ども困りますのは、退院させますときに、一応本人がよくなつたからといつて、すぐおつぱなすわけには行かない。これは都道府県の条例その他できまつておると思いますが、一応だれに渡したということで、その人の判をもらつておかなければならぬ。それから帰しましたあとで、その指導、観察が、ことにこういう場合は必要なのでございますが、これにまわるだけの人手が不十分であります。ところが私ども、ことに公立の病院ですと、無選択にこういつた人たちが警察その他から送られて来る。そういう人たちの帰る家がなかつたり、それからあつても、今までの家と離れてしまつて、家の人が、あれは私どもとしては捨てた人間だからと言つて、判こをよう押そうとしない。引取る人がない。それで出す出さぬと言つているうちに、かなり自由に扱つておりますから、逃げ出す人間が多い。その点あたりにある程度の考え方が必要であります。それから帰る家のまわりの環境がよろしくない。家庭内の事情で本人がおちつかぬということで、できるだけうちの者と相談して調整しなくちやならぬ。そうしないと、出してもどうにもならぬということがあつて、非常に手間を食う。私どもは家族の家へ行つて見たりしてできるだけ骨は折りますが、そういう点でいろいろ困る点があるということでございます。
 現在都では一つのテスト・ケースとして、私どものところへ五十人くらいのポン中の人をやろうという。これは予算の問題で行き悩んでしまいましたが、私ども覚悟をきめてやつてみようというので実は竹山先生のところでやつておられるようでありますが、この場合は、よくなれば家の方でも引取つたりすることに何も問題のない人、あるいは親の方がなおすことに熱心であるというような者を選んでおられる傾向は確かにある。私ども公立病院の方でそれをやると、そういつたぜいたくなことは言つていられないのであります。そういうふうに無選択に持つて来た、症状がとれてもあとにいろいろな性格異常があるというような人を集団的にどう扱うかということはなかなか問題で、私どもは、しようがないから、これからひとつやつてみようと思つておるのであります。やれとおつしやれば、みんなを督励して、看護人をも特別に訓練してやつてみよう、そういうつもりでおりまするが、無選択にやつて来ますと、非常にむずかしい。ある程度その性格異常の程度によつてわけて見なければならぬ。下手をすると、実際偶然の動機からやつたので、なおれば大したことがないという人間が、悪いことをまた教えられてしまうとか、ルーズにやりますと、下手なことをすると、外の仲間から薬を持ち込まれる。いろいろなことが起るということを覚悟しなければならぬ。そう簡単なことではないということだけを申し上げておきます。
#26
○秋谷参考人 実は先ほどちよつと林先生からのお言葉の中に製造、密造という言葉が出ましたので、私ちよつと一分間ばかり補足させていただきたいと思います。密造ということをどうかこの委員各位がよく把握していただきたい。単に新聞に出たから密造――密造はすぐかくれてできるということじやなくて、これは林先生もおつしやつたように、どうしてもある程度の専門技術が必要なんであります。専門技術を持つた人はある程度の学歴があるはずでありまして、日本にはそうたくさんおるはずはないのであります。そういつた者はごく少数でありますし、またこういつた人々が適当に良心的に――これは簡単に片づく問題でありまして、ほんとうに密造というものは、さつきもおつしやいましたように、どこかの台所とか床の間などでやるというのは、ただアンプレをつくるという程度だけでありまして、エフエドリンからつくるということだけでも相当の技術がいるわけでありますから、この密造ということをよく把握していただきたいということを、最後の言葉として補足させていただきたいと思います。
#27
○小島委員長 それでは本問題の調査は一応この程度にとどめ、次の案件に移ることといたしまして、この際一言ごあいさついたします。
 参考人の方々には、本問題についての貴重な御意見をお述べくださいまして、当委員会といたしましても資するところ大なるものがあつたと存じます。厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 ちよつと速記を待つてください。
  〔速記中止〕
#28
○小島委員長 それでは速記を始めてください。
    ―――――――――――――
#29
○小島委員長 それでは次に覚せい剤取締法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 本案についての御質疑はすでに十分になされたと思いますが、本案の質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○小島委員長 御異議もないようですから、本案の質疑は終了したものと認めます。
 次に本案の討論に入ります。松永佛骨君。
#31
○松永(佛)委員 本案につきましては、過般来慎重に審議並びに質疑応答か重ねられ、さらに本日はそれぞれ斯道の大家を招いて、参考意見を聴取したわけでありまして、大体百万ないし日五十万と言われておりまするヒロポン覚醒剤中毒患者、このすでにかかつておる患者をどう扱うかという考え方と、これをどういう方法で蔓延せしめないか、そして社会悪を除くかという二つの考え方があるのでありますが、現段階におきましては、本法案のねらいとする密造業者に対する罰則の強化ということによりまして、一応密造がしにくくなる、また厳罰に処することによつて密造業者を少くする、またこの製造が困難となるに従つて原価が上り、入手困難となつて、自然に患者が減少して行くというような一応の効果は、本案によつて上げられるものと考えまするから、本案に私は自由党を代表して賛成するものでございますが、なお本案を当衆議院厚生委員会において可決いたしまするにあたつて、私はこれに附帯決議を、各党の全体意見として提出したいと思います。一応案文を朗読いたします。
   附帯決議案
 覚せい剤による慢性中毒が青少年等の心身を害しつつある現状にかんがみ、政府は覚せい剤の製造、施用等の禁止につき速かに万全の措置を講ずべきである。
以上でございます。
#32
○小島委員長 古屋菊男君。
#33
○古屋(菊)委員 私は改進党を代表して、若干の希望意見を付して、本案に賛成の意を表するものであります。
 すでに取締法が規定されてありますのに、一方には活発な啓蒙運動も実施されておるにもかかわらず、この覚醒剤の濫用による弊害が、都会のみならず農漁村にも、燎原の火のように蔓延して制止することができない状態であります。ことに青少年が多数を占めておつて、社会の犯罪の温床となつておる現状は、まことに寒心にたえないところでございます。従つてこれが濫用を根本的に防止するためには、単に取締りを現状より強化するというにとどめておかないで、さらに根本にさかのぼつて、覚醒剤の製造輸入を全面的に禁止するとともに、密売買、不法所持等を厳罰に処し、もつて覚醒剤使用を一切禁止するの処置をとることが必要だと考えておるのであります。しかしながら現在の状態におきましては、医学上あるいは学術上、覚醒剤が必要とされておりまする点を認めまして、それが使用の全面的な禁止措置をしばらくおいて、密造、密売買、不法所持あるいは不法使用等を防止するために、罰則を強化して、覚醒剤の濫用防止を一歩前進させる適当な処置をとることは最も必要なことと考えまして、本案にとりあえず賛成の意を表するのであります。
 しかしながら先ほど述べましたように、弊害が甚大である点にかんがみまして、全面的の使用禁止をはかる抜本的対策を可及的すみやかに立てられんことを希望して、ただいまの各党提案の附帯決議案に賛成の意を表する次第であります。
#34
○小島委員長 以上で討論は終局いたしました。採決いたします。本案を原案の通り可決するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案は原案の通り可決いたされました。
 次に、本案の討論において松永委員より発言されました附帯決議を付すべきであるとの発議につきましては、松永委員の発言の通り附帯決議を付するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○小島委員長 よつて本案は附帯決議を付することに決しました。
    ―――――――――――――
#37
○小島委員長 次に、本日当委員会に付託になりました精神衛生法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。まず提案者より趣旨の説明を聴取したいと存じます。山口シヅエ君。
#38
○山口(シ)委員 ただいま議題となりました精神衛生法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 御承知の通り、戦後覚醒剤、麻薬または阿片の濫用による慢性中毒者が多数発生し、その中毒のために心身を害し、ひいては精神障害者になりつつありますことは、国民の保健衛生上まことに重大な問題であると存ずるのであります。
 なかんずく覚醒剤の恐るべきことは、いまさら申すまでもないと存ずるのでありますが、その濫用により精神的変調、すなわちはなはだしい刺激性の高進、易怒の傾向、学習勤労意欲の減退、浪費癖、良心や道徳感の麻痺等を引起すとともに、進んでは精神分裂病に見るごとき被害的妄想、幻覚、錯覚等の精神障害が起るようになるのであります。同時に身体的にも食欲不振による衰弱、肝臓障害等、極度の疲弊を生じさせ遂には治療不可能の障害を残すに至るのであります。しかしてこのような精神的身体的症状によつて起る嗜癖者の非行、反社会的行動の増加が、今日放置することができない問題となつているのであります。
 この様な覚醒剤等の慢性中毒者の瀰漫の状況にかんがみ、その者に適正な医療を施す等の保護を加え、これらの者が精神障害者に陥ることなく正常な生活にもどらしめようとするのが本案提出の理由であります。
 本法案の内容を申し上げますれば、まず、第一に、慢性中毒者を収容し治療するには、中毒者の症状とその特殊な事情により精神病院に入院し治療せしむることが不可欠であり、一方国及び都道府県立精神病院が現状において非常に少く、これらの病院のみに対する設置措置だけでは需要をまかなえない事情にかんがみ、非営利法人立の精神病院に対しても設置費及び運営費の一部を補助することができることとしたことであります。
 第二は、覚醒剤、麻薬及び阿片の慢性中毒者またはその疑いのある者について、精神障害者に関する保護義務者、保護の申請及び通報、精神衛生鑑定医の診察、知事による入院措置、保護義務者の同意入院、入院者の行動制限、退院手続、訪問指導及び保護拘束等に関する規定を準用することによつて、慢性中毒者を入院せしめて医療及び保護を行わなければならない場合、知事が入院措置をとることができることとし、また保護義務者による同意入院の道を開き、さらに退院後は訪問指導を行う等、中毒者の医療及び保護等に関する措置を講じたことがあります。
 何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
#39
○小島委員長 以上で説明は終りました。
 それでは本案の質疑に入ります。
#40
○滝井委員 精神衛生法の一部を改正する法律案の六条の二に、「国は、営利を目的としない法人が設置する精神病院及び精神病院以外の病院に設ける精神病室の設置及び運営に要する経費に対して、政令の定めるところにより、その二分の一以内を補助することができる。」ということになつておるわけです。六条の一項においては都道府県の設置するものについては、国はその設置及び運営に要する費用の二分の一を見るのですが、そこで問題は市町村の設置する精神病室に関するものでございます。営利を目的としない法人に二分の一の補助があるわけなんですから、当然市町村の精神病室にもあつてしかるべきが筋だと考えられるのです。私も提案者の一人になつておるわけですが、初めはそういうことで了解をいたしておつたのですけれども、いろいろ提案者の内部的な連絡の問題でそういうことができなかつたと思うのですが、これは営利を目的としない法人よりか市町村の精神病室に補助することが先だと思うのです。そこで、この点を提案の一番原動力であつた岡さんの方から将来そういうものは修正をしてやれる情勢にあつてのこういうことであつたのかどうか、それをひとつ明白にしておいていただきたいと思うのです。
#41
○岡委員 滝井さんの御趣旨はまことにその通りでありまして、私ども原案作成者の一人といたしましては、市町村を含めて国が二分の一の補助を交付するという建前に立つておつたのであります。御存じのように、参議院の方では、覚せい剤取締法を通じて、覚醒剤そのものと、それに即した製造、またその売買、あるいは不正の保持等について処罰の規定の強化を中心とするヒロポンへの挑戦が法律として出て参つたのであります。私どもの方では人間を対象として、現在の中毒患者を対象としてこれに何らか適当な措置を講じたい、こういうふうな考え方からいたしまして、全国においても、市町村が経営する、あるいは国保等の病院に対して十分に国が補助をして、覚醒剤の患者を分散収容しながら、適当にその治療、保護、また覚醒剤中毒患者の特有性をもかんがみての人格の矯正、また環境の矯正等にも当らしめるというところに持つて行きたい、こういう考え方から、原案は市町村を入れておつたのであります。ところが、何しろ参議院、衆議院両者並行で、一つは物に、一つは人に重点を置いて、両両相まつて覚醒剤中毒患者についての適正な対策を講じたい、また中毒の現状に対する適当な抑制を試みたいという関係上、なるべく本会期中にこれを急ぎたいというところから、市町村を入れたのであります。ところが財政上実施面において困難が生じ、この提案が九分通り進んでおりまして、さらにまたここに新しく検討を加えるということになりますと、相当な時日を必要とするのではなかろうか。またこの委員会のみをもつてこれが成立をはかり得ないといううらみもあるいはあるのではなかろうかということも問題として起つて参るわけです。いま一つの問題は、少くとも現在われわれが議決いたしました予算におきましては、精神病院の病床の補助費というものはきわめて低額でありまして、現状をもつてしては覚醒剤等にこれが適用されて、どんどん収容というようなことが行われました場合に、とうていそれを満たすことはできないのでありますけれども、現状を多少ふやすといたしましても、この補助金交付の優先順位ということから見まして、事実上の問題といたしまして、市町村また営利を目的としない法人営というような精神病院に対しての補助そのものは期待できないのではなかろうか、そういうようなことも事実上の問題として考慮いたしまして、われわれ原案作成者の一人といたしましては、昨日涙をのんで一応市町村は落すというとりはからいになつたわけでありまして、その間の事情は十分御了承をいただきたいと同時に、この手続の点について滝井さん等に御連絡申し上げなかつた点は、まことに遺憾に存じているわけであります。そういうわけでありますが、参議院におきましては各党共同のまた決議等を持つておるようでありますので、何とか将来には市町村立の病院についても精神病の病床がこれらの患者を重点として設けられるというような改正が必要であるならば、その改正もいたして、そうして交付され得る道を開くという取扱いについて、参議院の方にも私ども党といたしましては努力をいたしたい、こういうように考えて、この点あとでまた皆様にも御了解を得たいと思つておつたわけでありますので、以上経過について率直に御報告申し上げたのであります。まことに遺憾でありましたが、御了承くださつて御賛同いただきたいと思います。
#42
○小島委員長 他に御質疑はございませんか。――なければ、質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#43
○小島委員長 御異議もないようですから、さよう決します。
 お諮りいたします。本案はすでに委員会、理事会等におきまして十分討議を尽した問題でありますので、討論を省略し、ただちに採決したいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案の討論は省略し、ただちに採決いたします。
 本案を原案の通り決するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案は原案の通り可決いたされました。
 なお本日可決いたされました二法案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#46
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決します。
    ―――――――――――――
#47
○小島委員長 次に、閉会中審査申出の件についてお諮りいたします。本委員会の活動を閉会中も円滑ならしめるため閉会中審査の申出をしたいと存じます。
 公衆衛生、医療制度、社会保障、及び婦人児童保護に関する件について閉会中審査の申出をすることとし、申出の手続等に関しましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#48
○小島委員長 御異議なしと認め、そのようにいたします。
 次に閉会中の審査に関連し、閉会中に委員派遣をいたす必要が生じた場合におきましてはあらかじめ委員長に御一任願つておきたいのでありますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十七分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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