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1953/08/12 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 厚生委員会 第58号
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1953/08/12 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 厚生委員会 第58号

#1
第019回国会 厚生委員会 第58号
昭和二十九年八月十二日(木曜日)
    午前十時二十八分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 松永 佛骨君
   理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
   理事 岡  良一君
      越智  茂君    助川 良平君
      寺島隆太郎君    安井 大吉君
      中野 四郎君    滝井 義高君
      萩元たけ子君    柳田 秀一君
      杉山元治郎君
 委員外の出席者
        厚生政務次官  淺香 忠雄君
        参  考  人
        (京都大学医学
        部教授)    井上  硬君
        参  考  人
        (東京大学医学
        部助教授)   浦口 健二君
        参  考  人
        (国立衛生試験
        所薬理試験部
        長)      池田 良雄君
        参  考  人
        (食糧研究所醗
        酵化学研究室
        長)      角田  広君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
    ―――――――――――――
八月十二日
 委員重光葵君辞任につき、その補欠として中野
 四郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 食品衛生に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小島委員長 これより会議を開きます。
 きのうに引続き、食品衛生等に関する件についての調査を進めます。
 まず、暑さきびしい際にもかかわらず御出席くださいました参考人の方々に対しまして、委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。本黄変米の問題は、国民にとりましても最も重要な主食の問題であり、当委員会といたしましても、食品衛生の見地から、昨日以来真摯なる検討を重ねて参つておるのでありますが、参考人の方々も黄変米に関する御研究の成果を忌憚なくお述べ願えればまことに幸いであります。
 それでは参考人としてお願いいたしました四名の方々の研究の結果をお述べ願いたいと存じます。まず井上硬先生のお話を承ります。
#3
○井上参考人 私が黄変米を研究し始めました動機をまず申し上げます。
 二十七年と覚えておりまするが、食糧庁の食糧研究所の連絡のもとに黄変米の総合研究班というものができました。それは試験研究として一定の補助金をいただいてやつておるのであります。その班は、大体黄変米及び類似変質米の細菌学的の研究、第二は毒力の研究、そのほかこの検出法あるいは防止法というように大体四つに研究班がわかれておりまして、私が担当いたしましたのは毒物研究、毒力の研究、そのうちで主として人体のことに肝臓を主体にして人体の肝襄にいかなる影響があるかということを担当したのであります。最初はもちろんこういう未知の、どの程度進んでおるかわからぬものでありますから、総合研究の細菌学研究を担当されている方からいろいろ知識を得まして、その知識を考慮しながら、私の方は研究所の方から仰ぎました特定の黄変米をいただいて人体実験をやつたのであります。人体実験をやります前には必ず動物実験をまずやるのが常道でありまして、予備実験といたしまして栄養学研究には最も適しております白ねずみを用いてやつたのであります。その結果を大略申し上げますと、最初はアツト・ランダムにいろいろのサンプルをいただいてねずみにやつたのでありますが、ここにおられる角田博士の報告のように、あまりねずみに変化が出なかつたのであります。その方法についてはあとから角田さんのお話もあると思いますが、ねずみの実験というのは、ただ黄変米を食わすといいましてもなかなか食いません。でありますから一定の学問的の吟味を払いながら、一方におきましてこういう実験をやりますと、食わぬためにカロリーが欠乏して出る変化と、毒による変化というのはなかなか見わけがつかないのであります。そこで最初の一年間はねずみにやつてもどうもあまり変化が出ないものでありますから、食糧庁の方へもつと強い黄変米を送つてくれと言つたところが、名古屋から陸揚げされた特殊の黄変米、これは食糧研究所の方が含有菌を調べていただいて、そのサンプルが相当大量に入りましたので、それで実験いたしました。それにはやや自信があります。これを昨年の八月から十二月までいたしましたが、その実験の結果は今年の一月二十日のその班研究で発表いたしました。なお許可を得ましてことしの五月二十日に岡山における第八回の栄養食糧学会で専門的のことを発表いたしました。これはあらかじめ動物実験をやつたのでありまして、ねずみの体重に対して一定の量の、そのもらいました黄変米そのままをねすみ大体百グラムに対して一日十グラム前後の割合でございますが、これで実験を進めて行きました。対照群をつくりまして二十日、三十日、百日、二百日、こういうように実験をやりました。そしてその群を殺して組織を見る。一方におきましてその結果を吟味しながら健康な女子二名について実験をいたしました。最初はその配給をいただいた黄変米のプロセントのうちで、菌が約八種類ほど食糧庁の研究所の調べで出ております。そのうちで問題になつておりますペニシリウム・イスラソデイクムというのは六粒プロセントあるのであります。これのカロリーを吟味しながら内地の米を二百二十五、それからほかの米を二百二十五、つまり黄変米としていただいたものの半分、大体副食一緒にしまして二千二、三百カロリーにいたしまして、実験を進めて行きました。三期にわけまして、初めの二月を第一期、一月を第二期、あと一箇月半を第三期として実験いたしました。動物実験の結果が着々入りますと、人間を少しずらしてやるのですから、しかも人間実験をやります場合にはその残つた米、また毎日のカロリー、その計算に専任を置きまして、またその被験者はちようど患者と同じように毎日体重、体温その他の必要な検査をいたしました。肝臓障害に鋭敏に来る反応は常に見まして、もしそれが非常に強くなれば実験を立ちどころに中止する、こういう注意を払いながら進めて行きました。その結果は最初の一月半まではほとんど変化が出ない。担当者はこの実験はネガティヴだから、そういう声が上りまして、この米はどうも実際毒があるかないかわからぬというようなことを言い出しました。しかし私どもは動物実験を見ながら丹念に実験を続けておりましたところが、一月半くらいになりましてやはり体がだるい、それから食欲が、だんだん残すようになる。残しますとその次の日にはカロリーを補いますために他の栄養素を食わしてカロリーを補うというようにして実験をいたしたのでありますが、一月半ごろから尿の中に非常に鋭敏な肝臓の障害が現われたと推定し得る反応が出たのであります。この程度ではまだ何のために起きた肝臓障害であるかという特定の猛毒で来るというような兆候がないものですから、それを約半月続けたのでありますが、何ら増悪をいたしません。そこで二月目に今度はそのままを――四百五十でありますが、そのままをやりました。そういたしましたところが、その目当にしておりました反応が少し固定して来ました。言いかえますれば前の毒がそれであるとすればそれがはつきりと現われて来た。それにもかかわらずほかの患者の他覚症状、血液、尿の検査のほかのたとえば黄疸が出るとか、肝臓がはれるというような症状が出ないのであります。そこでまず食欲がまずいということが非常に目立ちましたからいろいろ副食物をかえまして、とにかく口の中に食べてもらうようにしてその実験を一月でやめました。ここでわれわれが議しなければなりませんのは、一ペんこれを元に返してみる必要があると思いまして、第三の実験を前の第一期の実験のもとに返しましたところが、その症状はだんだん軽くなりました。先ほど申しました変化が不安定になつて来た。言いかえれば第一期の試験に非常によく似て来たのであります。それを約一月半ほど続けました。もういただいた米がなくなりましたからそこで実験は打切つた。その後も検査いたしましたが、二週間後にはほとんど何にも変化がない。こういう実験を私らの教室でやりました。
 この場合注意いたしますことは食欲の問題、一体食べられるか、食べられないか、人体実験をやります前には必ず私自身もまた実際実験場でやつている主任もそれを試食いたします。二分の一、つまりイスランデイクムの計算にいたしますと三プロ入つているものは十分食べられます。われわれが日ごろ配給としていただいている米とほとんどかわりがなく、ただそれをもう一つやりまして倍にします。つまり六プロというもの。その米は味が非常にまずいのであります。私自身も初めは食べましたが、もう二日目はお茶づけにすれば入りますが、これはもし普通に配給されてもおそらくたいてみてもたべられぬのではないか。しかし実験者には非常にそのことのしさいを言うてありますから、この実験を行うことができたのであります。こういう実験はわれわれはビタミンの欠乏実験その他いろいろ人体実験をやります場合もしよつちゆうすることでありますが、あるいは学生にやつたこともありますが、これは双方とも相当の努力がいります。しかしなくてはならぬ実験でありますから、これだけのことはやりました。なおこの実験の場合に、あとから毒物の方の研究もありましようが、私の実験は人体における毒力というのでありますが、それを普通の米を炊飯するよりよく洗いまして、といで、そして普通の家庭にやると同じようにしてやつた。こういうことは一方から見ますと、非学問的のようでありますが、こういう食物を検査する場合には菌がいる。その菌を純粋培養いたしまして、その菌が非常に好きな培地に植えまして、どんどんそれを発育させまして、その毒をもつて毒の性質を研究する方法もあります。一方におきまして、害の程度を常に吟味しながら人体にやつてみる必要もあるのであります。この食い違いが起つたならば、その食い違いは何ゆえ起つたか、こういうことを吟味して行けばおのずと事情もはつきりするのではないか、私の研究はそういうような意味で今申し上げました通りの結果が出ました。これを最初申し上げましたように総合研究班でも報告し、許可を得て学界に公表したわけであります。大体以上であります。
#4
○小島委員長 それでは次に浦口健二先生のお話を承ります。
#5
○浦口参考人 私どもが黄変米の検査を始めましたのは、ちようど昭和十五年に日本の内地に菌が広がつていることがわかつた黄変米、当時黄変米と言えばそのほかの黄変米は考えなかつた、戦後になつて今盛んに言われている黄変米とは違うのであります、違うことがこのごろわかつて来たのでありますが、ともかく別なものととつくんだわけであります。これは三宅市郎という東京農業大学の植物病理学の教授並びにその一門の方々が台湾から輸入された米で最初に動物実験をやり、また菌学的な方面をやり、有毒米というので当時の東京大学の総長を通じて委託研究になりました。食糧庁からの委託研究でありますが、それがきつかかりになりまして、私は結局その昔の黄変米の実験を終戦後の昭和二十六年の末ですか、七年ころまで動物実験を続けたのであります。その実験を二つの時期にわけますと、すなわち最初の空襲が始まつてからもやつておりましたが、そのころまでの実験でおもなものは急性毒を目標にしたものでありまして、人工的に接種して培養する。培養したものをいろいろの濃度でやるというようなこと、及びそれから抽出しました毒素をいろいろの経路、すなわち注射でやる、注射も静脈、皮下、腹腔等でやりますしまた経口的にもやる。目標は私どもがこれを食つて大丈夫かということでありますから、常にエキストラクトでやる場合も、この経口的に与えることを目標に実験を進めております。その結果わかりましたことは、これが一定の量以上の場合にはかなり強い。これはもう非常に強い。猛毒である、麻痺毒である。これは今のじやありません。戦前及び戦後にかけてのお話でありますが、これは神経毒であります。なお終戦後になりまして、少し詳しくやつた実験でわかりましたことは、その毒が中枢神経の骨髄、延髄の運動神経細胞を麻癒するというところで、大体一つの真因と申しますか、さような場所と申しますか、それがわかりましたので、そこで毒性のものはほこを収めました。そこに到るまではもちろん初めはねずみでやりましたけれども、ねずみだけでは心細ので、だんだんに近傍の動物、小動物を使いまして、下の方は遂にへびまで行きまして、へび、めだか、金魚、かえるというようなものから始めまして、背椎のある動物を下から上まで押し上ろうというわけでだんだんに攻め上つて来ましてさるに至りました。さるなどは映画をとつてございますが、いずれも数時間あるいは一日ぐらいで麻痺が参ります。足から麻痺が来ます。手も麻痺をいたします。呼吸器官も麻痺いたします。横隔膜も動きが悪くなります。心臓は非常にアドバルーンのように丸くなつて飛び上るというようなことで、これはもちろん致死量を与えたときであります。この致死量の決定ということは割に昔は簡単にやつておまりしたが、近ごろやかましくなりましてたくさんの動物を使つて五〇%致死量ということをはかりますが、そういうはかり方をやつてみましても、どうも動物の種類と申しますか、背椎動物の下等のものから上等のものが大体において同じような答えが得られますので、これを人間にやりたいと思つたことも若干戦争中の物騒なときには考えましたけれども、これは遂にやらずに幸いであつたと私は思つております。ほんとうに急性中毒がもし人間に起つたならば非常に苦しい、みじめに悶々のうちに死ぬ。しかも大脳は比較的冒されない、最後まで割にはつきりしている。自分がだんだんに麻痺して死んで行く。呼吸は苦しい、のたうちまわるというような状態を意識しながら死んで行くような状態であろう、と動物実験から想像しているのであります。
 まあこういうことは量によつて起るということももちろんでございます。そこで致死量に欠ける場合にはどうであろうかというようなことて、大分致死量に近いところからずつと百分の一とかもつと小さいところまで下しまして、ずいぶんたくさんの動物をそのために犠牲にいたしましたが、これは幸いにあまりひどい毒ではないらしい。急性投与して一挙に事が起らなければ案外ひどいことはないらしい。少くとも外から見たところでは症状変化などはないらしい。もちろん中枢神経がやられるためでありますか、動物の死にそうになつたのをやつと助けて、それからあとずつと観測して半年ばかり見ておりましたが、どうも片足が麻痺してひきずるようなときとか、これは猫でありますが、こまかい運動ができなくてぶきつちよになる。何か足のあたりに神経障害が残つているのじやないかということも認められました。また当時この米の毒が肝臓を冒すことがあるのじやないか、日本で何かそういう原因のわからないものの一つであるかもわからないというような心配から肝臓の実験をやりました。もちろん動物実験でございます。一番長いのは一年と二箇月でございますが、毎日々々エキストラクトをゾンデと申しますか注射器の先の少し丸いようなもので入れる。まず百匹前後のやつを毎日入れる。たいへんばからしい時間のかかる仕事でございます。それを進んで努力してくれる若い研究者がおりまして、そのために博士号なんか数年遅れてもかまわぬという人間が大分おりますので、そういう連中が一生懸命やつてくれましたが、それがこういう努力にかかわらず、その肝臓を適宜殺す、あるいは末期において殺すというようなことで病理学教室で調べてもらいましたが、肝臓に若干の変性が認められるという程度で第一年度、第二年度、第三年度は終りました。この間飼料、そういうものをいろいろかえながらやつたのでありますが、まあ、これならば、とにかく一挙に大量投与しなければこれは大丈夫だろう、こういう結論が昭和二十七年か、最後には八年ごろでございますか、私ども研究者の頭に来ました。これは要するに実験室的な知識であり、実験室的なできごとであります。ただこれが万々一人間の場合に起つて、しかもその起つたということを医者が知つておつて観察したならいざ知らず、何かほかの病名で片づけられておるのではないか、そういう可能性があるのではないかというような心配もありましたので、ずいぶんがんばつてみましたが、今のような調子であります。
 なお、これはトキシカリウム、昔の黄変米は、その当時実験をやりました現新潟大学内科の鳥飼教授が当時長期連用投与をやつておりますと、ほかに大したことはないが、貧血が起るようだ、そういう報吾をされたのであります。それで戦後になりましても、井上先生もさつきおつしやつた総合研究班ができましたときに、鳥飼教授は再び昔の黄変米を取上げて、貧血を再確認したというので大分努力されまして、努力というのは非常にめんどうな長い実験でございますが、内科的にいろいろ検査されまして、結局ある相当の時期において貧血が起るけれども、その黄変米の投与をよすと、割に早く消えてしまうのだというような結果が出ております。こういうことを全部勘案いたしまして、大体黄変米、トキシカリウムによるものは、これはまず大丈夫であろう、昭和二十六、七年あたりにはずいぶん安心した気持になつておつたときに、この次の問題、すなわち戦後の黄変米の問題が起つて来た。もちろん戦時中私どもの研究班は、医者ばかりでなく化学工業とも連絡をとりましてやつておりましたが、これは農林省の方針が急にかわつたり何かするようなできごとが昔ありまして、研究費もなくなつて、微々たる大学の研究費を使つて長い間続けて来て、一番ひどいときは医学方面では私がまつたくの一人でがんばつたのも数年ございます。そうやつて一応の結論に達したときに、実は初めからこの問題にタツチしておる角田技官が、これはハルマヘラか何かで変な病名、すなわちぼくらが今まで言つておつたのと似たような見かけのものだが、違うかもわからない、とにかく類似のやつが出た、自分が食つてどうも変なことが起つたというような経験を持つて帰つて来られたわけであります。そのときに日本の買い入れる外米の中に、従来の黄変米に似ておる、すなわち類似黄変米と言つて、私どもはただの黄変米、昔のトキシカリウムとは区別しておりますが、とにかく戦前のとは違うらしいというのを見つけて動物実験もやられ、そうしてねずみの肝臓に肝硬変という変化が起つたということを、これは日本大学の小早川庸造教授が鑑定されまして、確かにそうだろうということで、ありました。私どもはその話を聞きまたそれが印刷になつてから、ほんとうにそういう肝硬変が起るならば、これは医学的にゆゆしい問題であつて、ねずみに起すこと自体がそんなに簡単なことではないと私は信じておりますが、そう簡単に起るまいと思つております。これがこんなに起る、角田君のねずみをこちらへ持つて来て、私の方の病理学研究室で調べてもらうとか、そういうようなことをやつて参りますと、これは蹄係的な肝硬変である。しかしただ角田君のは一定の期間食わせまして最後のところで蹄係的なものが出た。けれども、それと対照に並行的にやつたほかの動物には出ておらないから、その毒米のために起つたとは言えますが、肝硬変というのは一挙にして、一朝にしてできるものではございませんから、その前の時期、前のステージの変化、すなわち何か毒が入つて肝臓に変化が起つて、それからだんだん発達する、その前の時期を見たい、これは医者として当然考えることでございますが、それが不幸にしてそういう材料がとつてなかつた。そこで、角田君の方は角田君として別におやりになるでしようが、私どもの方へそのかびをもらつて来て調べようじやないかというのが、実際に医学方面で私どもが取上げた動機の一つであります。
 同時に当時は神戸で何だかひどい黄変米の事件があつたり、新聞をにぎわせておりました。これは新聞が報じたのであつて、黄変米の事件なんというのが出たときに、あれは黄変米ではないと私は言つたのです。というのは私どもは黄変米といえば戦後のものを考えておりません。戦後のものは何か黄変米に形容詞をつけまして別な名前で言うか、あるいは類似黄変米と言うか、そういうようなこまかいことを言つて、従来の私どもが長く研究した黄変米と混同されることはいさぎよしとしない気運がありました。というのは、昔の黄変米であるならば、先ほど申したような中枢神経毒でありますから、それが入つたのだ、日本にたくさん来たのだということは、これは研究者として別なものに同じ名前をつけられることは私はいやな感じがした。それで実は朝日新聞まで行つて、今後はあの黄変米なんという名前はもう少しちやんと、穏当な名前をつけたらどうかということを言いに行つたことがございます。
 それはそうとしまして、とにかくそういうように世間にも黄変米類似のものが入り出した。それもアクシデントとしてでなしに続々入つて来る形勢がありましたので、私は農林省及びそのほかのところを説きまして、厚生省も説いたつもりでございますが、なかなか私どもの声は通じにくかつたのであります。ともかくも比較的どうやら通じたのは、一番そういう被害を痛感している農林省であります。で、若干の金をくれまして、くれるにもなかなか渋りましたのですが、とにかくそれで予備実験的なことを始め、そうして正式に研究費をもらうということが実現したのは二十八年度からでございます。井上先生の総合研究、さつきおつしや
 つたのは、二十八年及び二十九年度ももらうことになつておりますが、まだいただきません。ともかくもそういう状態でございますので、結局実験を始めたということ、実際に私どもの方に金が入る、また菌学的な方面もずつと検討したのが約一年間でございます。その間に動物予備実験をちよこちよこやつておりますが、実際に系統的にきちんと培養をしたかび米を使つて条件を揃えて、ほんとうに実験室らしい実験を始めたのは二十八年の二月何日かからでございます。この点を私が非常に強調するのは、私どもの主観的に、及び長い間の歴史から言いまして、黄変米系統のものはやつておりますが、戦後になつてやかましく言われた黄変米というものは角田博士が見つけられた。そしてそれに関連された若干の人たちが主張された黄変米、すなわち先ほどから申すイスランデイア黄変米及びタイ国黄変米、この二つが有毒であるらしい、菌学的にも相当わかつた、菌の名前もついた、そういう状態のときで、それを医学者の側で正式に取上げ、正式に始めたのはおそらく私どもの東大における仕事が少し早く、それから厚生省は御承知の通りに食品衛生法という法律の方が先に出ておりまして、何とか魂を入れなければいけないという状態で一おそまきながら急いでお始めになつたのがそれからしばらく遅れてでございますが、とにかく実験は三月ごろお始めになつたと聞いております。
 私どもはもちろんその毒性、こんなものを日本人に食わしていいかというような心配は多々持つております。しかし動物実験で確認しないことには、無用に、あるマウスならマウス、ラツテならラツテという動物を使いまして、あるときにたまたま肝臓に変化が起つたという場合もねずみはみな生きております。自分の病気を持つております。そういうものと、あるいは私どもの観察が間違つておるかもわからないというような心配もありました。そこで正式に大がかりに始めたわけなのであります。始めたのですが、始めてからまだ非常に短かい。それをやつと重ねながら今までに十数回、一ぺんに十匹とか五十匹とか、そのときによつて違いますが、動物をやる、一つ始めたからには半年から八箇月ぐらいの観察期間を置いて実験をやります。その間にかびを食わせる、またよす、また食わせるというようなこと、同時にその間私どもの及ぶ限りの観察、すなわち外からながめておるとか体重をはかるとかやるのでありますが、これは大して起りません。そのままやつても割に起りにくいのであります。体重が若干減つて来る、大きなグループで平均をとつてみると長い間で二割方減つて来るというので、これはあまり問題にならない。そうしてまたその間に頓死するというような、あるいはまたそのために死んだというようなものは私どもの方に関する限りはないのであります。角田博士の方ではかつて古いときにはそういうことがあつた、割に短かい間に死んだりしております。そうして変化も強かつたのであります。私どもの方ではなかつた。
 結局そうやつて調べて行くうちにひつかかりましたことは、まずタイ国黄変米から申し上げますが、タイ国黄変米というのは白米に四十八時間培養しましたもので、まつ黄色なきれいな米であります。人造のかび米、これをそのまますなわち一〇〇%でやるかあるいは私どもの方でやりましたのはそれを一割方入れて、あと九割は普通の白米を入れるというような、すなわち一〇%と称している、その二つ、おもに一〇〇%でやりましたが、やつて行きますと、まず二箇月あたりではかつてみますと腎臓の尿の排泄量がふえて参ります。それは一群の中から何匹かをランダムにとりまして、ある三日なら三日というような間隔を置いて測定する、またある時期を選んでやるというようなことをやつておりますが、とにかく尿量がずいぶんふえて参ります。一倍半というようなところが平均のところだと思いますが、そういう変化と、それから死んだ場合あるいは殺した場合に腎臓を見ますとえらく大きくなつておる。これはまた例によつて違いましようけれども、一倍半ぐらい大きくなる、これはねずみの腎臓を一々とつてはかつてみたのですが、そうすると重くなつております。これは重くなつておることを必ずしも肥大とは申しません。大きくなつている、重くなつているということしか私どもにはほんとうのことは言えないのでありますが、とにかくそうなつております。今度はそういうものを機能検査をいたします。これはクリアランス・テストといつておりますが、そういうものをやつてみますとイヌリンあるいはパラミノヒツプルゾーレとかチオ硫酸ソーダ、そういうものをいろいろ使つてやつてみたのでありますが、御承知かと思いますが腎臓は血液からいろいろのものをこし出す、すなわち糸毬体というこす道具がございます。そこで人間ならば一日二百リツトルというたいへんたくさんの水が血液から腎臓をこして出て来ます。二百リツトル、たいへんなものでございます。普通私どもがする小便の約百倍ぐらいになりますがうそんなものが血液から一応出て来る、これは生理的でございます。出て来まして、それと同時に老廃物その他からだの外に出したいものが一緒に溶けて流れ出るのであります。しかし腎臓というのは非常におもしろくできておりまして、一つの学説かもわかりませんが、そこでこされたものが、その下の方の細尿管という非常に小さな長い管がぶら下つております。ちようどうなぎの頭とうなぎのからだみたいなもので、糸毬体というのが球になつております。それからずつとうなぎのからだみたいに、もつと細いのでありますが、長い管になつております。その管のところはむしろ流れ出した二百リツトルなら二百リツトルの水の方及びそれと一緒に流れ出して、体にはまだ利用価値があるというようなものを再び体の中に回収するような、再吸収と申しますか、上の方でたくさん濾過して一応悪いものを出してしまつて、必要なものをまたもどすという、再吸収といつておりますが、そういう回収機関がございます。その回収機関がやられておるということが私どもの方の実験ではわかつております。すなわちそれでは、こす方の最初のうなぎの頭といいましたこちらはどうだ、糸毬体、これもやはり中毒が少し進みますと侵されて参ります。そういうように腎臓が一定のとき大きくなる、尿量がふえている、それからそういうようなテストで特別の部分が侵されている、そういうような変化が起ります。これは長い間強いものを使いますと、そのまま中止をしましても三箇月、四箇月後までその変化が残ります。しかし与える量が少ければ変化の起るのが少し遅れます。遅れて程度が軽く起つてまた早く消えてしまう、そういう腎臓の変化であります。
 この腎臓の変化を病理学者の方で調べていただきますと、私どもの方でも調べたのですが、実は、今うなぎの頭からしつぽと申しましたが、糸毬体から細尿管と申しますその部分が、くしの歯のように腎臓の中にびつしり密集しておるのであります。そのどこがやられたかひとつ見たいという気がしまして、そこで中毒で死んだねずみを今度ホルマリンで固定するというか固める、そうして塩酸で処理をいたします。顕微鏡の下で、水滴の中にその小さなうなぎといいますか、非常に小さなものでありますが、その密集したのを入れまして、針で突つきながらひつぱり出すのであります。それを顕微鏡で見ますと――これは朝日新聞にも写したのを出しましたが、その細尿管といいます再吸収機関のところがはれております。外から見ますとでこぼこに不規則にふくれております。そうしてことに腎臓の末端の、ネフロンといつておりますが、解剖学的にはベンレの上行脚といつておりますが、そこからで下の部分にこういう変化が強いように思われるのであります。これは学問的にもおもしろいことでございます。そういうように目で変化がはつきり見られておりますが、さらにこれを顕微鏡的にいわゆる従来の、病理組織的に調べてみましたところが――このこまかい変化は幸いにここに参考人として池田博士、これは中毒病理的な専門家でいらつしやるから、その方に御説明願つた方がいいのでございますが、とにかく今の一部分が不規則にはれていると申しました、大きくなつていると申しましたが、そういう部分を切つてみますと、その辺の上皮が扁平になつているとか、あるいはいろいろ変化がございますが、結局病理学者としては、これは変性であり、病理学者のいうネフローゼという概念、ネフローゼというのは少し考え方が臨床家と病理学者あるいは病理学者の中にも問題があるかと思います。ともかくもネフローゼという名前で呼ぶべき変化であろう、こういう意見を出して、ことしの農林省に対する研究報告には書かれております。そういうような腎臓の変化が一方ではあり、それからタイ国黄変米にその変化が強いのでありますが、これが研究が進むにつれ、今度はイスランデイア黄変米にもそういう変化が見られるようなことが、最近になつてだんだんわかつて参りました。すなわち初めはタイ国黄変米に特有なものと申しますか、腎臓が大きくなり、やられるのは、タイ国黄変米の何か特徴のように考えておりましたが、そうであるかどうかはわかりません。タイ国黄変米に何が入つておるかわかりませんが、その毒のために起る変化と、それからイスランデイアの中にまた何が入つているかわかりませんが、これで起る変化と一脈相通ずるものがあるというようなことであります。
 なおもつとおもしろいことは、今度は角田博士のいう肝硬変米といつたイスランデイア米、これをやはり一〇〇%に培養しましたもの、この人造のかび米を食わせてやつた実験でございますが、やはり長期、六箇月とか何箇月とかやつております。やはり体重は大して減らない。そとから見て大したことは起らない。そうしてゆえなく死ぬというようなこともなさそうだ。何でもないのだと思つておりまして、殺してみますと、肝臓が変化が起つておる。肉眼的に肝臓の変化が起つておるばかりでなく、それはひどいときはでこぼこしたり、色がかわつたり、灰白色になつたり、いろいろありますが、研究的にこれを見ますと、やはりこれは肝臓の変性でございます。変性と申しますのは、これはあまり詳しい定義は私は専門外でございますけれども、とにかく細胞が健全でなくなる。何かの毒か黴菌か、何かのために侵されて、新陳代謝がとまつてしまいまして、目で見たところが、普通のかつこうと違う、あるいは性質と違う。光の通し方、色の通し方が違うとか、あるいは細胞の中にあるべきものでないような異常なものが出現して来るとか、そういうようなことをひつくるめて変性と言つておるようでありますが、その変性が起つております。その起りぐあいが、これまた毒が強いときには強く出て、時間的には末期の方に強くなる。そうしてその辺の変化は、いわゆる肝炎と言われておるような、今問題になつておるようなものに近い変化が出ておるのであります。肝炎の像という言葉を病理学者は用心深く使つておりますけれども、とにかくそういう変化が起る。これは何回やつてもそういうところまでは行くのでありますが、この辺のところで事が済んでおれば、私どもは何をかいわん、黄変米、少くともイスランデイや黄変米においては、これは数回繰返しておるのですが、この辺でとまつておれば、私どもはまあこういうことは米でなくても、それこそ御承知のようないろいろの毒素で、あるいは薬物で起つておる。あるいは不明のことで起つておる。あるいは私どものからだは、絶えずそういうようなことを繰返していつの間にかなおつたりしておるということだつて考えていいと思うのです。ですからこれを取上げて私どもはわいわい言おうとは思いません。また言うだけの資料を持つておりません。おりませんが、ただそれがもしもう一歩進めば、すなわち肝臓の機能が障害され、形態的に変化され、そのために簡単に言えば、傷跡みたいなものが残ります。そして結締織が間質の部分なんかに出て来るとか、あるいは細胞が侵入して来るとかいうことで、変化が一ちようどこの辺の傷跡が跡形もなくなおればけつこうですが、こういうところが縮んだり、内部を刺激したりするようなことが、肝臓の内部で起つて参りますと、そのうちの変化の一つとして肝臓硬変症というものも起り得るわけであります。また私どもの調べた変化の一部には、今の肝臓硬変にもう一歩接近したような変化も強いときには、これは過去の話でありますが、出ておりました。そういう状態、それは私どもの実験であります。衛生試験所でおやりになつた実験も大体似たようなものであります。
 そうしてみると、まあそれだけの根拠で配給米のことになりますが、あまりやかましく言うこともないかもわかりません。ないかもわかりませんが、しかし片や角田博士が最初に指摘したような猛烈な変化、すなわち肝硬変という一方の変化、障害を受けたやつがなおるのではなくて、これから肝硬変まで行つてしまえば、これは仮定でございますが、行つてしまえば、これは井上先生お詳しいと思いますけれども、非常に早く診断がついて、まあ三年くらいだということを私の方の内科の教授に聞いたのです。まあぼやぼやしておれば、二年くらいでおだぶつになるでございましようが、そういうような変化が起る。それで肝硬変が起つてしまつて、はたしていい薬があるかどうか存じません。また肝硬変は私どものデータから、ごく最近のことは別にしまして、実際に典型的なものはつかまえたのであります。角田氏の方はそれを報告しております。ここに同じ科学者がやつた、それを片や――当時農学士でありますが、農学士がやられた実験を何も信じないからと言うのではございませんけれども、医者はもう一ぺんやりたいと考えるのは当然でありましよう。そうした追試のつもりで何回か繰返してやつておられたのに、角田博士のやられたところまでは出て来なかつたのであります。その出て来なかつたというのは、過去形を使つております。それはほんの最近の私どもの実験的な結果では、その線が破れて、角田博士の言われた肝硬変というものが、やはり実験的につくることができると申した方がいいかもわかりません。とにかく事象をつかまえたのであります。それでこのことについては、その最後のことについてはこういう問題とからんでおらないのであります。二・五云々というようなことともからんでおらないのであります。ただ私どもはそういう知識を持つておりますので、それも考えに入れているくのものを処理していただきたいという気持は持つておりますけれども、’この肝硬変が実験的にできるということだけを私どもは医学界に問う必要があるのですが、まだ問うておりません。私どもはまだ実験のほんとうの緒についたばかりでございます。いろいろ実験計画を立てて着々やつておりますが、一定のところに来たときに初めて医学界に発表し、承認を得た後にこういう問題は取上げるべきだと思います。なぜそんなわからないものを今ごろ出すかと、こうおつしやいましようが、そういうことを言われるとするならば、私どもの黄変米に関する知識はことごとくそうでございます。全部実験室的な知識でございます。動物に起るだけのことであります。人間に起つて来るかもわかりません。しかし医者がそれを確定したことはございません。ただ私どもの心配は起つて来る。肝臓あるいは腎臓の変化が長期連用によつて起つて来ることは確かであります。しかもそのあるところに行つて診断がつく。診断がつくまではこれはわからないのであります。そのつもりで初めから健康の人に食わし始めて、丹念にずつと井上先生のようにお調べになれば、そうしてもう一歩先までお調べになればこれは解決がつくものと私は信じております。しかし今までの情勢におきまして、そういうことができるはずもありません。実験室でただそういう恐ろしいような結果が出て来た、困つたなと考えておるわけであります。そうして去年の二月から始めて、まだその第一回の実験が完結のつかない六月八日かに厚生省からお呼び出しがありました。私は厚生省には何ら関係がないのです。むしろ食品衛生法があるのだから早く実験しなければだめじやないかと関係者にはしよつちゆう言つておりました。裏づけをつくらなくてどうするんだと私は言つておりましたが、何ら関係はございません。ございませんが、黄変米に関しては若干やつておるというようなことでお呼び出しになつたと思うのであります。そこで私は出かけて参りましたが、その席上で、実は黄変米というものが相当たくさん入つておるし、そうして聞くところによると、その毒は強いらしい。しかし与え方次第では何も起らぬらしい。一体どの辺に線を引いて配給したらよろしいか。そのために当時厚生省では三月から組織的に実験をお始めになつておつた。私どものは二月ですが、お始めになつておつて、その結果が一応出たから、ここでこの結果をひとつほかの研究者に研究してもらいたいという趣旨のものであつたのです。このこまかい事情は私そのときは申し上げませんが、これは行政的な一線を画する会議ではない、ただ先生方の意見を聞くだけだということで、それで安全度その他については、私は少し強硬な意見といいますか、強い不安を持つておりましたのですけれども、それはとにかく、プロの線以下――間違つてもらつては困りますが、以下というのがそのときに打出されております。しかしそれだつて安全度の取り方については、私はこわいということを表明したのであります。そうしましたら、それはそういう不安はもつともだが、実際に何もこの一プロの線でずつと毎日、かりに一箇月間に三十日配給しろなんて言われても、米がないので配給なんかできるものではない。当時の外米の事情及びかび米の検出状態から申しまして、現実問題として配給できない。そんな起り得ない御心配はいりませんよとやられてしまいまして、なるほど実験室と実験者の何ということのない、確証を持たない――実験で確証を持つておつて、ただ人間の場合には不安だというそれだけで押し切るだけの材料がなかつたということは、今お話した通りであります。二月に始めて六箇月から八箇月かかる実験の序の口でございます。従つてそんな材料を持つているはずがないのであります。厚生省はまた別個にデータを持つておられたのでしよう。そのデータに意見を求められたが、暫定的な処置であり、しかも結論はここでいたしません、帰つてあとでいずれいたします、ということは、それは行政的な決定だからやつていただくことに私どもが意見を述べたところでしようがありません。実際というものは、こういうものが行政というものか、なるほどそうだと、私はいささか実験室の少し気むずかしい男かと自分で考えながらも、これではいかぬな、そういうものかと思いながら帰つた。それから二週間か何かしましてガリ版の刷つたものが来た。それには一プロの線が出ており、イスランデイアについては混石云々というようなことで、配給は原則的に認めない方がよろしいとある。配給は原則的に認めない、けつこうでございます。それは私は賛成しております。私どもの実験は貧弱であるとはいえ、これから何が出るかわからぬ、しかも角田博士のはもうすでに出ておる。出ておるのは学問的にたいこ判を押すわけには行きませんが、とにかく出ております。それを注視している最中でありますから、ここで一応危険なものに重きを置いて一線を画するのは当然でございましよう。それは、私が言うまでもなく、厚生省がそうお考えになつてお出しになつた、たいへんけつこうだと思います。私はその後その種の委員会には出席はいたしておりません。
 そういうふうな事情できまつたと思うのでありますが、あれは行政的な決定でございますから、間違つてもらつては困るのであります。私はこの間の楠本氏、きようはお見えにならぬのは非常に残念でありますが、この間、二日の研究協議会、これは学者が苦労しておるだろう、金を出してやろうというお話、そういう会であります。わざわざお使いが参りまして、行政的なお話はいたしませんから、私だけかなんかしりませんけれどもこういう断り書をしてお使いが参りました。しかしそれまでに私が知つておつたことは、新聞を通じてのデータと、新聞記者諸君がつかんで来た種、私に言われた程度のデータである。私は新聞を信じないわけではないのでありますけれども、責任者から直接説明を聞かなければ、こんなデリケートな問題について意見を述べるべきではない。しかも私どもの方ではアカデミーで、あくまでも学問の研究をやり、学問的に納得が行つた場合に、おのずからそういう検定法だとか恕限度であるとかいうものが出るのだろう、平和な時代はそれでけつこうであります。ところがほかにこういうことをやる人がいなければ、一日でも二日でも先にやつている連中の知識をかり出せる、そのときによくわかつている範囲は述べたいと思つて行つたのであります。ですから今度のような抜き打ちの結果が新聞に伝わりましたが、これはいずれ厚生省の内部でおやりになつた研究なり、あるいはどこかでおやりになつた研究が基準になつているはずだと私は確信しております。もしそういうものがなければ、そういう架空のものは学問の世界では少くともほつておけば消えるのであります。ただ実際に何を基準にああいう数字が出たか、数字の結論をとやかく言うような筋合いではないのであります。閣議云々なんて実際たびたび使われましたが、そんな空疎なものに私どもは驚くような人間ではございません。ただ心配は食わされる方が心配なんであります。あるいは多くの人の良識を信ずるものであります。また科学はもつと強いものだと私は思つておりますから、そういうものに驚かされるつもりはありませんが、とにかく主宰される会において、まあまあそういうことを言うなというときに、確証が得られなければ私は具体的な意見は述べません。しかし私がほんとうに知りたかつたことは、ああいう考え方がどこから来るかということであります。どういう科学的な事実でそういうことが出るか、あるいはどういう科学的な理論からそういうものが出るかということを知りたかつたのでありますが、遂に知り得なかつた。新聞でたびたび見るところによると、人体実験であると楠本氏が言つたというようなことが書いてありますが、それはほんとうでしようかと私はだめを押した。それとも何かほかの実験を基礎にされたのかとだめを押したのであります。やや考え、まつ青な顔をして私は明言したくありませんとか、しませんとかなんとかいうようなことを言われたのであります。これでは、私どもはいずれ趣旨とは違つても、何かもう少し安心の行く説明を得られると思つてそこへ行つたのが、うつちやりを食つたのであります。それは別の世界の話、数字は私どもとはすべて関係のない世界の話です。それについては私どもは何も言う必要はないという態度をとつておりましたが、私はごく最近ある資料を手に入れました。楠本氏がお書きになつたのかあるいはほかの厚生省の方がお書きになつたのか、何か存じません。とにかく新聞で伝えておるようなことが別にそんなに間違いではなかつたように私は考えるのであります。これは桶本部長が新らしい基準を改正するにあたりまして、京都大学の井上教授の人体実験を採用していられるということ、これはほんとうのようであります。全面的ではありませんが、これを非常に強いものにとつております。そして軽度であつても肝臓機能障害というものが現われると、先ほども先生がお話になりました。また私どもは農林省の総合研究班の幹事役をしておりますので先生が直接お出しになつた報告も存じております。すなわち軽度たりともミプロについて肝臓機能障害が現われておるということをお書きになつておるのでありますが、それを厚生省側はこれを限度と見てという言葉がありますが、その十分の一、すなわち〇・三をとる、これは安全率が十倍になるというのであります。結局それを限界と見てということは、何ですかわかりませんが、私の解するところでは、安全度というものは、実験的にいつて、人体実験であろうと動物実験であろうと、段を追うてだんだん研究をして行くと、プラス、プラス、プラス、陽性の変化が出ております。最後に陰性になつたところを基準に、スタート・ラインにして、それの十分の一あるいは百分の一ととれば、それが安全率が十倍あるいは百倍と考えられるものと私は考えております。間違いがあつたら、これは厚生省側の普通のおやりになつておる習慣だと思いますから撤回いたします。
 そこで問題はこうなると水かけ論になるのでありますが、その三プロは変化があつたのだと解釈する、あるいはないと解釈する、その辺のところはデリケートであります。私はそれをつこうというのじやありません。私がそういう報告を出しても、こういうふうに使われるならばはなはだもつて迷惑でございます。井上先生はこれを御承知なしにお使われになつたか、それはどうか存じませんけれども、そうだとするとたいへんお気の毒な立場に立たれたものだと私は陰ながら同情しておつたのであります。薬をお調べになつておる厚生省の方はよく御存じだと思いますので、計数のことは申しませんが、六プロといつたもう一段下があつたならば、こんなに都合よくというか、都合悪くというような物議をかもすような考えは浮ぱなかつたのではないかと私は考えております。そのもう一つ先の安全度をどのくらいとるか、動物と人間とは違いますから、人間の個々の場合、ただわかつた薬については何倍にとるという基準がございましよう。それからわからないこういうかび米の粒ではかつているような毒素の場合は、実際に入つている毒物は一体グラムでやるか、ミリグラムでやるか。一プロ、二プロのかび米といつても、これはわからないのでありますから、これは今申し立てようとは思いません。安全度はそれを考慮に入れて十分おとりになつたらよろしいことで、ただ私の言いたいことは、安全度のスタート・ラインを何にお置きになつたか。従来の習慣を無視されるのなら、また三プロは何でもないとお考えになつているなら、私は何をか言わんやであります。
 次にもう一つは一%の黄変粒を含有するものは、日数に制限なしに配給して安全である、これは楠本部長が信じているらしいのであります。どこにそんな実証が、あるいは保証があるというのでありますか。私はそれを、ここまで来れば聞きたいような気もいたすのであります。これはそう荒立てて言うと、えらいいきり立つて言うようでありますが、実際動物実験の結果に百倍の安全率をとつてあるのであります。とつてあるのでありますから、一応の線は出ているのであります。それは一応の線が出たのは、先ほど申したように実験を始めてわずか三箇月か四箇月のマンゲルハーフトというか、不足な実験をもとにして、それでも基準がないよりはある方がいいじやないかというので、みんな善意でやつたものであります。学問上の線を打出すという大げさなものではありません。びくびくものであります。私は帰りしなにも、あれでいいのかと思いながら帰つたくらいであります。これは一応の線を出したことは否定いたしません。私はそのときの材料で、もちろんびくびくしながらやつた。それをなだめられて帰つてしまつたのだから、賛成したことになつているのでしようが、しかしそのときに厚生省側で明らかに言われたことは、そんなに無制限に配給するなんということは事実ないのです、しませんから御安心ください、なお責任は学者先生には負わせない、行政的な決定でありますと言つたのを、何ですか、これは学者がそういうことを保証しておるということを部長が言うということは。私は科学のために弁護をしたいと思うのであります。私は実際科学というものはもつと謙譲にやるべきものであり、私どもに結論が出ないときには、なおさら謙虚にやるべきだと思うのです。すべては条件つきであります。断言したり結論はできません。残念ながらできません。まして日本人全体の主食に関するときに、そんな大それたことをたいこ判をつく学者がどこにおりますか。それでも私は、日本人の中でも良識のある人の方が多いだろうから、何も恐れないと言つておるのはその点であります。それはわかつていただけると思つております。そういう行政的なものに、医学と限らず、科学が善用され、活用されることは絶えず願うところであります。しかし悪用され、口実に使われるということは、私は拒否したいと思います。そんなことで科学的な行政ができるはずはないと思うのであります。私は今度の問題は、そういう点ではなはだ残念に思うのであります。しかも役所で行政的にきめたのは、一プロ以下という線であります。以下と明らかに書いてあります。何か必要品でも必ず配給するように、薬の調合でもして必ず一プロでやればからだに何も起きないので、一プロずつ毎日やるという計算は、私は説明を聞いても、運算の説明しか私は得られないのであります。これは歯牙にかけるに足らないと思つておりますけれども、ただ私は、楠本博士が言われたかどうか知りませんけれども、新聞で気になることは、蓄積毒ということを非常に愛用しておられる。それを聞いて来た新聞社の人が、ぼくに対してすぐ蓄積毒という言葉を使つたのであります。蓄積毒というのは君、といつて笑つたのでありますが、蓄積毒というのは、なるほど急性に変化が起らず、だんだんにやつているうちに、目に見えないのが、あるところに立つて病変が現われるというような意味であります。すなわち薬や物質が身体の中に残つてるか、あるいは変化が残つてるか、とにかくジギタリスならジギタリスをお考えになるとわかります。あるところで作用があるという意味には解釈いたしますが、そのことをすぐひつくり返しまして、ただちに急性には起らない、急性にはきかない安全保証のように響かしておるというか、お考えになつてるんじやないかと思うのであります。それでああいう計算が出て来るのじやないか、一ぺんに少しくらいよけいにやつたつてかまわないかのような考え方、それは実証があれば潔く従おうと思うのでありますが、そういうものがない今日、そんなところまでわかつていない今日、そういう断言をし、そういう断定のもとに配給基準をきめられるということは、私は科学者の立場として、かりにもそういう意味で活用されることは非常に残念に思うのであります。まだ言いたいことはございますが、あまり長くなりますから……。
#6
○柳田委員 議事進行について。四人の先生のうちお二人済んだのですが、ずつと続けておやりとなりますか。それとも時間の関係で途中で休憩を設けますか、設けられないとすると、先生方に対する質問は休憩前のところで一段落つけて質問を設けられますか、質問は最後に一括しておやりになるようになりますか。
#7
○小島委員長 時間は多少ずれますが、全部の先生方の御意見を承つてしまいたいと思います。
 それでは次に池田良雄先生のお話をお願いいたします。
#8
○池田参考人 ただいま浦口先生からお話がありましたように、浦口先生やあるいはここにおられます食糧研究所の角田博士らは、タイ国黄変米は腎臓を主として障害する、それからイスランデイア黄変米は肝臓を障害しまして肝硬変を起すおそれがある、そういう発表をされたのでありますが、私どもにおきましてはこのような病原性を持つておるかびの臓器に対する障害、そういうことと、それから実際に輸入して来る米の中にどれくらいの率でこのような黄変米がまじつておれば食えるか食えないかというような許容度の問題をも考慮いたしまして実験をいたします。
 それでこの場合に衛生試験所のかびの専門家である平山博士のもとで、ペニシリウム・チトリヌムと、それからペニシリウム・イスランジクムの両極を全然かびのない、いい米に純培養していただきました。それで純培養しますと、米に一面にかびがついておるわけでございますが、このように純培養しました米をかりに百ブロの飼料、そういうことをやりました。それからこの百プロの飼料をいい内地米で半分に薄めたものを五十プロ、十倍に薄めたものを十プロ、百倍に薄めたものを一プロ、千倍に薄めたものが〇・一プロ、そのような飼料をつくりまして動物――白ねずみでありますが、この白ねずみに毎日連続三箇月投与いたしました。もちろん対照群と申しまして、全然このようなかび米を含まないいい米だけを与えたねずみもありますが、このような実験をしたのであります。それでその間におきまして、動物の成長とかあるいは中毒症状、死亡するかどうか、それから臓器の変性、そういうような点につきまして観察したのであります。
 その実験の内容の概略を申し上げますと、このかび米を食べさせたいずれの群も、その成長に関しましては対照群とほとんどかわらないのであります。それから中毒症状もございませんし、死亡するものもなかつたのであります。そうしてこの実験の経過、たとえば十日、三十日、五十日、九十日というような一定の時期に若干のねずみを解剖いたしまして、その肝臓と腎臓とを観察したのでありますが、まず肉眼的に見まして臓器の重量はタイ国黄変米におきましては、実験の初期と申しますか十日目でありますが、重量がやや増加する傾向にあつた、それからイスランデイア黄変米では肝臓がややその重量を増加する傾向が見えたのであります。その後の経過におきましてはほとんど対照群とかわらないというような成績であります。ところがこれを切つて見まして顕微鏡でのぞきますと、先ほど浦口先生から言われましたように、十プロ使用群以上の動物におきまして、腎臓に変性が認められたのであります。それから肝臓におきましては、五十プロ使用群以上のものにやはり変性を見たのであります。それで腎臓は主として細尿管――先ほどお話がありましたように細尿管の変化でありまして、時日が経過しますと、若干糸毬体の変化も加わるのであります。腎臓はどういうような変化があるかと申しますと、先ほど浦口先生が申されましたように、肉眼的に見て非常に大きくなるということに相当しまして、細尿管が拡張する、ともにその細尿管の上皮細胞が剥離しましたり、あるいはその細胞核に変性があつたり、核分裂するのであります。いわゆる変性の像が見られたのであります。糸毬体はやはり糸毬体蹄係と申しますが、これは専門的になりますが、やはりこれが腫脹しまして、バウマン氏嚢というのでありますが、それをとりまく膜にくつついてしまつている、そういう像が見られたのであります。それで肝臓では肝硬変はわれわれのところでは起していなかつたのであります。それでやはり肝細胞がはれるのであります。あるいは萎縮するとか、あるいは軽度ながら脂肪変性を認めた、そのような程度であつたのであります。全然異常のなかつた線は何プロかと申しますと、これは一プロ使用群であります。それでこのような結果をかりに人体に応用する場合、これは今まで食品衛生の行き方におきまして、いろいろ毒物、あるいは劇物を取扱う場合に、動物実験で得ました最大安全線より大体百倍の安全率を持つたところにおいてこれを適用しておるのであります。今かりに私どもが行いました実験を適用するといたしますと、動物で一プロならば、人間の一プロは非常に安全度がないじやないか、一見そのように考えられるのでありますが、この場合は使用のプロセントでありまして、絶対量からまず申しますと、ねずみは人間に比較しまして、体重キログラムにつきまして約二十倍多量に食べるのであります。そこでまず二十倍という安全率が出る。それとともに実験しました病変米の材料は実験的に純培養をしておりますから、以前にある病変米の状態よりもかなり菌量が多いのであります。その倍率についてはどのくらい多いか、これは学問的根拠はないのでありますが、いろいろ相談しまして、まず四、五倍と踏んでいいのではないか、かりに多い方をとりまして五倍といたしまして、先の二十倍によりまして大体百倍と見られるということで、せいぜい一プロならばまずこれはやむを得ないだろう、そういうような意見を持つたのであります。
 それでこの基準に関しまして、今年のたしか四月かあるいは五月の初めかもしれませんが、このような基準に対しまして黄変米を研究している各学者が厚生省に集まりまして、そこでこの基準について大分協議したのでございますが、大体菌検定におきまして最高が一プロである、そういう線が今のところはやむを得ないであろうということになつたのであります。それで学者が相談しましたところはそこまででございまして、その後どうなつたかはつきり知らないのでありますが、今度発表されましたこの基準はどういう考えか私にもわからないのでありますが、先ほど浦口先生が申されましたように、かりに毎日一プロを続けて食う場合を、これは最悪の場合でありますが、その最悪の場合を元に考えまして、たしか一箇月の食べる総量を算術的に計算して、これならば安全である、そういうように聞いたことを覚えております。しかしかりにそのような場合でもわれわれが使用しました一プロよりも今度の基準が強くなつたのだという説明がありましたが、これは決してそうは言えないのであります。それで卑近な例で適当でないかもしれませんが、かりにアスピリンを例にとりますと、まずアスピリンの常用量は大体一日に三グラムくらいのところが普通使われております。それでかりにこのアスピリンを十日飲むといたしますと、三十グラムでありますが、それならばこのアスピリンを、基準を一プロに下げて、そのかわり十日のうち一日をアスピリンを七・五グラムとか十グラム飲んで、これは安全かということは常識的にとつて言えないのでありまして、そういうことですから、これは常識的に考えてもごく卑近な例でもこういうようなことが考えられるのであります。そのほかに一・五以上二・五というのは、いろいろの理由で現段階では承認書ない。いろいろ理由はありますが、あまり長くなりますので申しませんが、とにかくせいぜい一プロで押えるというのが初めから私どもが主張した点であり、今回問題が起つてからも主張して来た点でございます。
 それから、これの化学的な毒性物質についてでありますが、これは衛生試験所の平山博士がタイ国黄変米から抽出いたしまして、チトリニンという結晶、黄色の純品を取出しております。このチトリニンは、動物に与えますと大体プロキロ六十ミリ前後の価を示しております毒物でありまして、その急性中毒症状は、末梢血管が拡張いたしましたり、あるいは涙が出るとか、唾液が出るとかいう分泌の高進、終りには痙攣を起す、副交感神経刺激がおもなる症状で、呼吸麻痺で倒れる。あとは中枢麻痺のために死亡する。そういうものがわかつております。このほかに、タイ国黄変米には何か毒性物質があるようであるとまでわかつておりますが、それ以上は今のところ何ら判明しておりません。それからイスランデイア黄変米につきましては、そういう毒性物質に関しては全然わかつておらないのでございます。
 はなはだ簡単でございますが……。
#9
○小島委員長 それでは角田広先生のお話を伺います。
#10
○角田参考人 角田です。変質米の研究というものが大体いつごろから始まつたかというと、これは大正六年から始められております。三宅先生が西ケ原農事試験場で六年から始めたのでありますが、相次ぐ弟子の不幸に見舞われて、ただ細々と研究をしていたにすぎなかつた。ところで昭和八年に米の大豊作がありまして、それで政府は五百万石ばかり食らい込んで処置がつかなくなつた。何とかしてつぶしてもらいたいというのででき上つたのが米穀利用研究所です。そのときに、消費面の研究はみなそのところへ移つてしまつた。それで三宅先生がそのときに米穀利用研究所の方へ移りまして、そしてたくさんできたものならばこれを貯蔵しておいて、足らないときに放出したらいいじやないかというような考えで、貯蔵部というものがそこにできたわけです。そしているんな貯蔵をやつてみていると、害虫と微生物の被害が非常にひどいのです。害虫と微生物の被害というのは世界の米産額のどれくらいあるかというと、学的な根拠は薄いですけれども、大体米産額の五彩という数字は現在だれでも出しております。日本の米にしても、東京都の百五十日分くらいは大体かびと虫に食われてしまう。そういう大きなものであります。それでこつこつやつていたところが、昭和十二年に台湾総督から、黄色い米ができたけれどもこれを見てくれと委託されたので、先生が内藤技官を助手に使つてやり出したところが、青かびだというわけです。それで今度は、どうも毒があるような気がするのだけれども何とか調べてもらいたいというので、ちようどそのとぎは自分が農大の大学院にいた当時で、毒関係にはやはりちよつと困つたのですけれども、やつてみましようというわけで、ねずみを使つてこつこつやつてみたところ非常におもしろく、ころころ死ぬのです。これはおもしろいということで――そうこうしているうちに向うに行つて研究してもらいたいというわけで――自分は官吏の生活というものが大きらいなので、いまだに型にはまらないのですが、それでそこの研究所に行くことになりまして、一年くらいやつて、どうも米に毒を生産するかびがあつては大問題だというので、今度は東大の故柿沼先生、それから今の小林先生、この先生のところで毒性に関する動物学的、医学的研究をやつていただいたわけです。そうしているうちに戦争が始まつてしまつて、やはりこれも細々とつながるにすぎなくなつてしまつた。自分も応召して五年半行つているような始末で、その応召中にちよつと南方のハルマヘラに二年半くらいいたのです。そのときに大分きれいな黄変米が着いて、要するにその当時は黄変米というものの研究途上で行きましたので、黄色いのを見れば何でも黄変米だと自分は考えたわけです。これはおもしろい、これをひとつ兵隊に食わして様子を見てやろうというわけで、百トンばかり着きましたから三〇%くらい混入したのです。それを今度は兵隊に食わして、自分も食つてみたところが、自分は一週間くらいで足がだるくなつて、これはすぐやめてしまつた。それから二週間後には病院のベツドが全部脚気患者でふさがつてしまつて衛生兵の方が悲鳴をあげた。それでは全部その米は捨ててくれ、いい米に切りかえるからということで、いい米に切りかえたら全部退院してしまつた。自分は食べてから一週間で足がふくらんで、すぐそれをやめて三日で引きました。その経験から、これはちよつとおもしろそうだということでかかえて帰つて来たわけです。向うでもレポートを持つていたのですが、レポートを持つていてばれた日には人体実験で首がすつ飛ぶから、捨てて帰つて来た。
 それで第一回のエジプト米の輸入のときに、やはり黄色くて少し茶がかつた変質米が混入していたので、それを今度は見てくれということで見たところが、どうも黄変米菌とばかり思つていたのですが、やはり全然違うのですね。赤い色素を出す菌なんです。それで初めのうちは赤い色素を出すからこれは大きな間違いだとばかり思つていたのですが、だんだん研究してやつて行つてみると、その菌が寄生したのが要するに今騒いでいるイスランデイア黄変米というものに間違いがなくなつた。それから動物試験をやつてみますと非常によく肝硬変を起すのです。肝臓がかちかちになつて死んでしまう。それで、さしあたり手のすいている男と思つて、日大の小早川教授のところに持つて行つて、病理鑑定をしてもらつたところが、肝硬変に間違いなかつた。向うでも少しばかり実験をしてもらつたりして、報告をまとめて出したわけです。そのあと今度はこれの追試をやつているのですが、実を言うと今気がついたのですが、それまでは全部温度を三十度以上で研究していたのです。ところが質をかえられてから全部二十五度にかえたのです。それが大きな間違いを起したので、それに気がつかないで二年棒に振つたわけです。それで今度は、肝硬変を起す毒素生産にはどうも温度に関係があるのではないか、そういうことにちよつと気がついたのですが、実を言うと三十度以上で培養してやつてみたところが、それはかなりすごい肝硬変を起す毒素生産をやるのです。そうなつて来るとかなりうなずけるのです。大体タイ、ビルマあたりから持つて来る船の中の温度というのは、ほとんどが三十度以上なんですね。向うの気温というのはハルマヘラでさえも一年間の平均が二十八度というのです。だから非常に高い温度です。これは非常に納得が行くので、そこで初めて今度は肝硬変の方の軌道に乗つたわけです。
 それからその次に見つけたのがタイ国黄変米というやつで、これはペニシリウム・チトリウムというやつです。クエン酸をつくるクエン酸醗酵菌です。クエン酸をつくれば人間に有益なんですけれども、行き過ぎちやつてチトリニンになると、これはちよつとありがたくないものになつて来る。初めこれを見つけたのはタイ国から輸入した米で、百トンばかりごそつと出たのです。これはきれいな黄色い米なんです。これは黄変米だというので、実を言うと、食糧庁の方には黄変米でアルコール原料として処理してもらつたのです。ところが見たところ見づらがどうもおかしいというので研究してみたところが、それは全然黄変米ではなく、要するにタイ国黄変米という名をつけたらよかろうというので、国の名前をとつてタイ国黄変米と名づけました。そしてだんだん研究して行くうちに、浦口先生の方から、どうも角田君の方からああいう報告を出されると、おれの方は黙つておれぬというので、食糧庁の方に研究班を組織して、そして予算をもらうような手続をやつたわけです。そしてだんだん軌道に乗つたわけです。だから結局のところ、今度の火つけ主と言えば火つけ主になつてしまうのですが、まあ火つけ主みたいなものです。ただ自分の方は外国から入つて来る米の波打ちぎわに立つているので、要するに菌学的な研究の立場から、動物実験でいいか悪いかということを決するだけのことです。その先のことは浦口先生だとか井上先生だとか池田先生あたりにやつてもらわなければとても片がつかない。
 それで話は少し飛ばしまして、例の一%の許容範囲の問題なんですが、今まで引いてあつた一%というのは、これは自分以外の学者は全部一%には不服だつたのです。ところが一%という以下の線を引かれると、考えてみると行政がどうもできそうにないのです。自分の方一どんどん入つて来るやつを菌の検査をやつてみると、どうしても一%以下の線を引かれると行政ができない。それで実を言うと、浦口先生にも池田先生にも、とにかく一%のところで、その辺でやつてくれないか、そうでないと行政ができなくなる。飢死にさせたくないのだからというので、かなり無理を言つて一%という線を引いてもらつたわけなんです。それで今度はイスランデイアの方は肝硬変を起すのだから、一応痕跡がなくてはならぬ。イスランデイアの方は比較的入つて来るのが少い量ですから、それでやつて行けるのだというので、実を言うとけつこうですということで、それで二十八年度にそれをきめて、二十九年度の五月だつたと思いますが、招集がありましたから行つてみると、大体今までの経過から見たら一緒に扱つてもいいのではないかということを大分言われまして、それはけつこうな話だ、とにかく行政面から考えれば、これは少し軽くなつたのだから、自分としては一%というのは非常にぐあいがいいからというので、それでけつこうですと言つて、それで帰つて来た。ところが、そのあとに急に研究所へ農林委員が行くからというので、何だかさつぱりわからなかつたのです。そしてその帰りがけに何かこういうガリ版をもらつたわけです。そのときは見ていなかつたのですが、あとでそれを見たところが、何だか変なパーセンテージがきめられているから、ははあこれは大分研究がかわつてこういうことになつたのかなあと思つて、実を言うと、この間厚生省の方へ聞いてみたんです。ところがどうも納得ずくじやない、とんでもない話だというので、とにかく五月にみながあれだけ集まつてきめておいたのに、ちつとも相談なくこういうふうな処置をとるのはけしからぬというので、これは自分も腹が立つたんですそれでだんだんやつているうちに、何だか政治問題みたいに変なものに化してしまつた。実を言うと、自分の方も、少々学問をやる者は政治はありがたくないので、巻き込まれたくないというような感じは持つているのですけれども、やはり自分とすれば、政治ができて、それがしかも安全であるという線がほしいのです。ただ願いはそれだけなんです。それだから二・五%のものをたとい一日でも配給するならば、自分はそれは食いません。ただそれだけのことなんです。
 簡単でありますけれども、これで終ります。
#11
○小島委員長 これで諸先生方のお話は終りました。
 次に委員諸君から質疑の申出がありますからこれを許可いたします。柳田秀一君。――柳田君に申し上げますが、一時までに終了したいと思いますし、あと二、三人の質疑者もございますから、そのおつもりで願います。
#12
○柳田委員 この黄変米の配給基準の問題は、国民にとつてたいへん重大で、特に最近大きな社会問題とまでなつているようです。昨日私たち厚生委員会はこれを主として厚生委員会の分野の面で取上げたのですが、現在これを農林委員会及び決算委員会でも取上げており、農林委員会の面はこれをタイ国あるいはビルマ等から買いつけるときの買付操作の問題とか、そういうような点で追究しており、決算委員会におきましては、これが食管特別会計の国民の血税の中から出ている金の使途というような点からも追究しておる。われわれの方は厚生委員会でありますから、これを主としてその面で、特に配給基準の面に重点を置いて私はきのうも質問をしたわけです。
 そこで先生方にお尋ねいたしたいのでありますけれども、最初にお断り申し上げておきたいのは、この問題は、別にこれをもつて倒閣の具に供するとか、これをもつて政治問題にするとか、自分は社会党であるからこれをもつて自由党を攻撃するのだとか、そういうような考えで毛頭申し上げておりません。国民の主食に関する重大な栄養学的あるいは保健上の面から問うておりますから、どうか諸先生方もそのおつもりで、フランクな楽なお気持でお教えを請いたいと思います。
 最初に井上先生にお尋ねいたします。井上先生は私の恩師でありまして、恩師にお尋ね申し上げることは立場上はなはだ心苦しいのでありますが、先生にお尋ね申し上げたいのは、昭和二十九年七月三十日に厚生省から出ております「外米の配給基準について」というこの六のところに、やはり先生の実験の結果を引用しているわけであります。「一方人体に三%混入のものを連日投与すれば三十五日目に軽度の障害が現われる」云々というのであります。もとよりこの人体実験は三十代の健康な女子二例でございます。従いまして、二例等のデータをもつて全般を推しはかるわけに参りませんし、またこれが肝臓、腎臓等にかりに変化が現われるといたしましても、それぞれの人間によりまして、特に肝臓のごとき臓器におきましては、その毒性に対する許容率というものはすべての毒性に対して非常に幅の広いものでありますから、これをもつてデータといたし、結論を出すことは当然できぬと思います。二例について行つた結果についてはこうであつた、こういう御発表のような趣旨に私は解釈しておりまするが、先生の方でも二例の健康女子についてやつた結果はこうであつた、こういう程度の御発表と解釈さしていただいてよろしゆうございますか、この点をひとつお伺いいたします。
#13
○井上参考人 ただいまの御質問に答えまするが、これはすでに文書で食糧庁に中間報告してあります。その最後をお読みくださればはつきりと書いてあります。これが二例の、しかも特定の黄変米でやつた実験である、将来の見通しはと書いてありますから、これは今後いろいろの難の黄変米でやつてみなければわからない。ただ同じ私がやつた黄変米であるならば、そこを読んでくださればわかりますが、特殊の考慮を払えば利用可能となるかもしれないと考える。これが書いてありますから、私はこれだけのお答えをいたします。従つてこれをもつて私が基準資料にしてくださいと言うたこともありませず、また、ここに浦口先生がおられますが、私はこれは委嘱研究として責任ある回答をして、許可を得て学界に発表しておる。これが基準になつたということがまだはつきりと、私は公の何をいただきませんからわかりませんが、もし新聞に書いてある私の名前が間違いないとすれば、これは私は実に心外という字は使いたくないのであります。と申しますのは、これはやはり国家の研究援助をいただいて、実験数も二例でありまするが、この実験に対しては同じサンプル、同じように実験すれば大体実験範囲の誤差程度のものでこれは出ると確信いたしておりますが、これだけのことは確かでありますが、これをもつて基準云々ということは言えるわけでは、私自身のみならず、どの学者がお考えになつてもないということは、言わぬでもわかつておると思います。
#14
○柳田委員 ただいままことに明快なる御答弁をいただきましてありがとうございました。そこで浦口先生にお伺いいたします。昨日私は厚生大臣に質問をいたしました。現在一%の許容量でも必ずしも安全とはいえない。もし将来この一%すらが安全度でなくなつた場合に大臣はいかなる責任を負うか、そのときにはすでにもう国民には配給されておるのだ。大臣はいかなる責任を負うか、こう私は質問いたしましたところ、現在一%というものは学界では許容されておる。これが一つ。それから将来基準が改訂されたならばその新基準にのつとることにはやぶさかではない、こういう答弁がありました。きようの新聞にも出ておつたかと思います。そこで問題になりますのは、先ほど先生から承りました、さらに池田先生、角田先生から承りましても、五月に厚生省で一考という線が出た。これは一%以下と解釈いたしたいと思いまするが、その一%もどの先生方も不満であつたが、まあ、行政的なことも考えなければならぬから、まあまあということのようでございまして、従つて厚生大臣が現在一%というものは安全度であるというふうにわれわれの前では断言しておるわけであります。しかもその安全度が学界、学者において認められておる。この厚生省からの七月三十日の外米の配給基準についても、現在研究者の間には動物実験の結果、一%の黄変粒を含有するものは回数に制限なく安全であるということを言われておる。この表現でありますが、この表現に対しまして、さらに私が引例しました厚生大臣の言等を御参酌されて、先生の御意見を伺いたいと思います。
#15
○浦口参考人 これは私は先ほど申し上げたことですでに実情は尽きておると思いますが、念のために申し上げますと、私自身がその会議に出たのは去年の六月の会議だけでございます。ですから今お話のことしの五月ですか、これはあるということは通知を得ましたけれども、私はほかに前の日か事情がありまして、時間の都合がつかなかつたので参りませんでした。結果はあとで聞きました。みんなばかげたというか、全面的に心から承服していないらしいという印象は一、二の人から聞きました。そこで私は厚生大臣の言葉は一体去年の六月の決定について言つているのか、すなわちタイ国黄変米は一%以下、それからイスランデイアは痕跡も許さず、あれはややこしい言葉が使つてありますが、痕跡はやむを得ざるも原則として配給を――結局したくないということなんですが、それは私全面的に賛成いたしておりますし、そのときに私はさらに神経質なことを言つて、さつき申したように実際の政治というものは現実を考えなければいけない、だから私どもの方の貧弱な、まだ始めたばかりの三箇月か四箇月の、実験は十何回やつておりますが、第一回の結論すら出ておらない時期にそんな押し切ることは、これは私としてとることはできない。ですから、やむなく不安を残しながら、なだめられながら帰つたが、それは先生方学者の意見として結論を出すのでないということを言われたことを、はつきりと私は申し上げます。あとで行政的にきめることですから御迷惑はかけません、その御迷惑はかけませんというのが今大いにかかつて来ておるので、私はいささか心外に思う。行政に対し私どもの意見が間違つて伝わる、あるいは都合のいいところだけつまみ食いされる、これは科学ではございません。行政でもないと思います。まして公衆衛生というような精神を一体どこに没却したかと言いたくなる。一プロの線というものが五月にきまつたと申しますが、そこで、私が今まで一プロ以上のものをデイスカツシヨンに――新聞記者諸君から私は極力逃げておりますが、これはそういうはしたの問題でない、数にタツチしたくなかつたからでありますが、これは申し上げてよろしゆうございますか。ちよつと御参考になると思うのですが、私は先ほど申すようなことで割に長く厚生省の役人を説いて歩いた。行政官は実にのみ込みがいいのです。しかしゆだんができない点がございます。政治家には私は直接おつき合いはございません。ただそういうときに厚生省にもタツチしております。そこでつくづく感ずることは、農林省のお役人は黄変米といつたり普通の米のことを考えるときには、これは米の品質を考えているのでございます。従来長い間、かび米のかびに毒があるなんということは、迷信かしりませんけれども、食つても大丈夫だということはわが国でも全般に残念ながらこの間まで信じておりました。お正月から始まるのでいたしかたありません。そこで感ずることは、農林省が一プロと出したり何かする場合のパーセンテージというものは、要するに何万トンとか何千トンといううちの一プロの線なのでございます。非常に数字の扱い方が荒いと言つては悪いのですが、大きいものばかりお扱いになつておる。そういう感にたえない。ところが厚生省は人間に対する影響、毒物、薬物、そういうものをお考えになるので話が非常にこまかい。こまかいのですが、実際に測定できる場合の話なんです。習慣的にこまかいことをお扱いになつておる。そこでこまかい、一と出れば一グラムというような非常に計量的な数字でものをお考えになつている厚生省の方と、それから何パーセントというときに非常に厖大な幅のある大ざつぱな数で出るものとのつき合せでいろいろな行政的な線が出るかと思います。そこですでに両方が違う世界の話になるのであります。間に通訳がいなければ通じないのではないかと私は思うのです。そういう点が今度のような場合に非常にこんがらがつて来ておるかと思います。ただ問題は今のようなかび米ですから一%、何パーセントと言いましても、それはさしを入れたそのサンプルについては正確でございます。しかし厖大な船腹に一ぱいになつておるのに、さしの入れ方もありましようし、それ自体が何パーセントということは事実上むずかしいことであります。それが配給になつて、私どもの台所に入つて来る。これは一%でございます。ほんとうですかと言いたくなる。はかつてみれば何かわからない、当然でございます。そういう点を十分お考えになつて、かりに学者が一%と出しても、それは非常に太い帯でございます。帯で天井をばんと抜くのでございます。だからその下で実際に少くてもかまわないのです。ただその天井を抜いてもらつては困るのです。ところが今度の場合は、その帯を帯と考えないで、非常に毒力をきれいに検定できるかのように誤解なさつたかと思うのですが、こまかいところで、非常に数字もこまかく出ております。あんなこま切れにたえるような数字は、従来の一考なんというところからは出ておらないのであります。しかも暫定的であります。日限に制限なし、あなたもお読みになりました。私はきのうその資料を見て驚いたのであります。だれがそんなにああいうときの一年前に考えた一%という線、心配しながらきめた線、しかも行政的にきめた線が、学者のたいこ判で一年中あるいは一月を通じていいなんというばかなことを言うものですか。その点は誤解ないよう願います。
#16
○柳田委員 ただいまの点は私一人で確認しておきます。少くとも厚生省は行政的なことで学者に責任は負わせないと言つておきながら、この基準によると、やはり現在研究者の間ではということで学者に責任を負わしておる点が第一点、それから一%は日限に制限なく配給して安全であると学界の結論が出ておると言つておるし、また厚生大臣もきのう答弁したことは、これは厚生大臣の一方的な見解であるということを私はここで確認しておきます。
 それでもう一点だけ浦口先生にお伺いしますが、先生は昨日の衆議院の決算委員会でイスランデイア黄変米で肝硬変が起るという実験結果は、食糧研究所の角田博士によつて二年前出されておつた。その後の実験結果は、そのような結果は出なかつた。ところがごく最近の結果で医学的な大問題になるようなものすごい肝硬変が起ることがわかつた。従来学者間で通説となつておつた許容率をもつと引下げたいくらいであると証言をしておられるのであります。そして小林先生が浦口博士の言つたごく最近というのは、ここ数日のできごとである、一%をもつと引下げたいと小林博士が申し述べられております。そこできようは小林先生はお越しになつておらないのでありますが、もし浦口先生御存じならば――最近の例で肝硬変でありますか、これがはつきり出ておるような例があるようでありますが、本日出席の委員の中には約半数近く医師もおるのでありますが、そういう例をもし先生御存じでありましたら、どういう例でありましたか……。お尋ねしたいと思います。
#17
○浦口参考人 昨日そういう言葉をその通り使つたかどうか存じませんが、とにかく言つたのでございましよう。その話の出たのは、今度の新基準を考えるときに、私どものそういう出ておる結果を考慮に入れて反対しておるとか、意見を述べておるのではないということをお断りにしたつもりであります。そしてそれはそういう問題とは別個だが、ただ従来角田博士の過去におけるひどい肝臓の方の肝硬変米、イスランデイアについては報告があり、しかも私どもが現実に実験した結果を取上げてみれば、そこまではげしい変化を起さなかつた。すなわち変化は起るがなおるかもわからないという変化、そういう結果しか、何回やつても得られないのだ。そこで昔の肝硬変米の実験はともかくも、私どものこれだけの実験――去年と違つて今年なんですから、たまつて来ても肝臓に変化がなければ、これはこの五月、何の結果か知りませんが、とにかくイスランデイア物が一%に上るという、そのときのことを考えましても、それはもつともだ。これだけ実験がたまつたのに、ここで追試をしてその証拠が得られなければ、ただそれだけで、一年何箇月もやつた実験の弱いのを根拠にして押しまくる。痕跡もよろしくないというのは少し無法ではないか、そういうふうに私は了解しております。おりますが私が心配したことは、もし今回二・五というような許容率ですか、何ですか一応上ると、従来の線はさつきも申したように天井であります。ところが今度の線の〇・三は今までよりも厳重になつたというような説明があるのですが、それから起算して、だんだん上の方に率が上つておるのですから、これはわかりません。とにかくそういうような山ができる。そういうような規定ができる。一応配給というものが、とにかく私どもの研究事実でなくとも天井が上ると申しますか、許されるといいますか、そういう事態が起れば、これを引下げるということはなかなか困難であろうということを私はつくづく考えたのであります。そのときにすなわちさつきのような小刻みのことは許せない、大きな線で押えるべきだ。それはまあせいぜい一%と言つておるのに、もしそこで上げてしまえば、今後の実験結果がもし心配の種と申しますか、初めから追試しようという人がほんとうの肝硬変ができるということになれば、これはなおらないのでありますから、ずつとしぼらなければならない。その場合に一応上げたものをしぼるということはむずかしいのであります。しかも私どものごく最近の、医学界に発表を許されないような結果でありますが、今盛んに実験をやつております。新生面が開かれた。これはもちろん医学界に問うべき問題だと思つております。しかしそれをもつて確実に、もうすでに認めていただいておるとは思つておりません。この問題はなかなか抵抗が大きいと思います。そういうものも出ておるのだから、これは新しい資料であるかもわからない。ただこれを考慮願いたいということを、この八月二日ですか、研究協議会で、ここに見えました楠本さんに――これは私は従来朝日新聞の科学欄に、定型的な肝硬変は、われわれの例からは出ておらないと書いたのでありますが、その後実際にそれよりはもう少し強い――これは起つたのは典型的だと私は信じておりますが、ただ条件が少し違う。菌から抽出した毒を口から与えまして非常に短かい間に、肝硬変のりつぱなものが出る。しかも分量を少くしますと、肝硬変に行かない、中間のものもつかみましたので、これは一連に毒自体でそこまでつつ走るものだ。そうすると角田博士が初めに行つた終点は肝硬変。終点しかわからなかつた実験の前の途中もわかる。プロセスもわかる。今まで確認した線がもう一歩進みまして、なおらない病変になる、そういう可能性と申しますか、見通しと申しますか、私はそれを信じておりますが、それが相当強くなつたので、くれぐれもここで軽々しく天井を上げたり、天井裏にまた天井をつくるようなことはおよしになつていただきたいという気持で申し上げたのであります。
#18
○小島委員長 参考人の井上硬君から柳田秀一君に対して何か発言があるそうですから、これを許します。
#19
○井上参考人 ちよつと柳田委員に申し上げます。先ほど基準率云々、学者はかくかく云々と言われましたが、その学者はだれをさされたのですか、もしここにおる者を学者と言うなら、私は基準決定あるいはそういう配給、これに関しては今日のところ何も発言する根拠がないのであります。従つて先ほどこちらの学者がおつしやつておるようなことに対しては、私は経験もなければ実験的根拠もない。私は研究班としてかくかくの特定のものが人体にどのような影響があるか、それを推判して型のごとくやつたのであります。初めに申しましたように、私の実験は菌を純粋培養して、その毒を移したものではなく、実際の第一線から来たものをやつたという実験であります。この見方も必要である。従つて、しからば配給どうこうと言われましても、これは二つの理由で私は今日何らお答えする根拠もないし、また今柳田委員から言われました学者にも私が入るならば、それを少くも今日は除外していただきたい。
 二つの理由と申しますのは、私は人体の肝臓機能を長らく見ておりますから、その観点からおそらく食糧庁の方が私を指名されたと思う。そのために私は十二分に忠実に、二例ではありますがやつたのであります。しかしその二例をもつて基準ということに対しては、先ほど申しましたように、私は何らこの二例が基準になるとは思つておりません。というのは、これは特定のものであります。黄変米は、菌研究班の成績を見ますと各種のものがあるのであります。第二の理由は、配給というのは、その専門技術がいると思います。ただいまもおつしやつたように、何万トンというものをどうこうせよ、また配給いたしますれば、われわれが患者に薬を処分して、それを毎日何回か飲ますというようなことでは相いかないと考えますから、この方はおそらくこの方で年来の技術者がこれだけのものをさばくという技倆に信頼する以外にはない。その技術者は各班にわかれたいろいろのデータをもつて慎重に吟味すべきであつて、従つて基準率云々ということは、今日いろいろの数字が出ておりますが、それが絶対に悪い、またこれでいいということは、私にその方の経験がありませんから、どちらに対しても学者として発言の根拠がありません。ただ私は、私に託されたこの二例の人体実験に対しては自信を持つているということであります。
#20
○小島委員長 岡良一君。
#21
○岡委員 今度の黄変米の問題で皆さんにたいへんな御努力を願つておるわけでありますが、今ほどの御報告の中に、科学者としては、皆さんの御研究の今日までの成果にもかかわらず、政府がとつておる態度等については遺憾に感ずる面も少からずあるという御意見があつたのでありまして、その点は私どもいろいろ御報告を聞いて同感をいたしておるわけであります。私も多少とも科学の道に志しておりますし、また現在一大学の大学院学生として研究室におる立場からも、行政は科学を求めた以上はやはり科学の結論に忠実でなければならないということは当然でありますので、その点からは非常に遺憾に感じておりますが、これは一応厚生省の責任として別の機会に私ども発言する機会があろうと思います。そこで、いろいろ四先生の御覧から私総合しました共通の結論と申しては失礼ではありますが、一応こういうことに相なるのではないかということをとりまとめてみましたので、このとりまとめは非常にグローブなものではありますが、さしあたつての配給という現実と結びつけて、この程度の結論は四先生に御承認をいただけるかどうかという点を、非常に僣越でありますが、私項目別に申し述べまして、それについて御異議のある先生はどうかその点は反対だ、自分は反対の理由はこうこうだというふうに理由を聞かせていただきたいと思うのであります。第一には、現在黄変米問題として世上論議をかもしておるいわゆる輸入米に発生をしておるペニシリウム・イスランデイクム並びにペニシリウム・チトリヌムについては、その毒性の研究は、いまだ今日まではこれを摂取する人体に対して安全性を語り得るほどに十分に尽されてはおらないという二と、第二点としては、去る七月二十四日に発表された農林、厚生両次官のいわゆる輸入病変米の措置に関する覚書の中で、第四項としてうたわれておるところの特に(ロ)項の〇・三%以上一・〇%未満は五日、また一・〇%以上一・五%未満は三日、一・五%以上二・五%未満は一日、これが最大限――この程度の配給をすることは人体に対して安全であるというまでの科学的な研究は尽されておらないということ、次にはこのようなペニシリウム・イスランデイクムあるいはチトリヌム等の発生する米を、〇・三%以下は毎日これを配給しても人体に影響がないのであるという科学的な解明はまだなされておらない。同時にペニシリウム・イスランデイクムが肝硬変等を起す疑いが非常にあるのであるから、ベニシリウム・イスランデイクムについては、絶対に配給をすべきでは今のところない、この四つの項目を私は一応皆さんの御報告からとりまとめてみたわけでありますが、この四項について御異議があるお方がありましたら、その理由をお述べ願いたい。
#22
○井上参考人 先ほども柳田委員にお答えしましたように、この配給という問題は実は配給の基準をきめて配給という行為に移る、そのことについては、相当その方の専門家でなければ、言いかえればそれを配給して云々というような、そういう簡単な推論を下してよいかどうかということであります。しかしながら第一の条項、黄変米の毒性に対しての実際のすべての研究−黄変米にもいろいろありますが、それが未完成であるということ、これは間違いないと考えます。
#23
○浦口参考人 井上先生から、先ほど自分のデータをこの基準に利用されることはまつたく迷惑だというような意味のお話がございました。これは私まことにそうだろうと思います。僭越ながら、井上先生方全部が結成しておられるものの幹事役みたいなことを私やつております、主任としての報告、その中にも、先生の今お話になつたように、自然のそのときのかび米についてのそれだけの結果である、おやりになつたことは精密をきわめておるけれども、これをもつてすでに配給とかそういうものに利用さるべきではないという意味のことが書いてございます。そして動物実験をおやりになり、人体実験をおやりになる、これ二つを同じ見方ではかることはできませんが、ただ先生の御報告になつた動物実験では、八区のうち一区ですか、若干変化があつたということで、まず大したことはない。そして人体におやりになつた。それはもうまことに良心的で、その通りなんであります。定石なんであります。ところがあとのわずか二例ですが、それが両方とも変化が起つておる。そうするとこれから結論を主任としても引出せませんが、しかし教訓を引出すことができます。それは人体実験についての安全性とか許容、これは人間ですからすぐ持つて行けるようなものですが、別個に持つて行かなければならぬフアクターがたくさんあるのであります。動物実験から人体に飛ぶのはみぞが大きいのですが、これは厚生省内部で一応の考え方ができておる、だから一プロはどうだというような線も議題に上つたわけであります。この先生の報告から感ぜられることは、動物で大したことが出なくても、人間の方では案外動物よりはもつと敏感な反応を示すのではないか。その点を、今後動物実験を基準として配給のことを考えるような場合には、大いに考えてほしいということを主任の方から申し述べて、最後に付記してございます。先生がはなはだ困惑をされた、まことにその通りであります。それで私は先ほどからいささか科学はもう少し良心的に利用してほしい、活用してほしい、悪用はされたくないと申しておるのであります。
 以上は関連したお答えでおりますが、四つの点どうだ、研究は先ほどからくれぐれも申すように、去年の二月に始めた。大学ではそうです。厚生省は三月です。農林省の角田博士の方が一歩早く出ておりますが、とにかくそれをきめようとして実験室で苦労をしてやつておるのでありましてまだ結論を出そうとか、まして人間にすぐに結論を持つて行こうとか、そういう段階でないのであります。私どもの実験はいわばひよこであります。これから育てていただかなければならないと思うのです。そういう時期に、ひよこでも鶏の類だからというので、いろいろ参考にしなければいけないというような意味かと私は思う。結論も得られないままに引合いに出されて意見は述べました。述べた内容は先ほどの通りでございます。御質問の、研究がまだ途中である、まことにその通りで、まだ初期であります。
 もう一つお答えしたいのは、私どもの方のことに関することでありますが、人体には全然タツチしていないのであります。肝硬変だ何だと申して、それが動物に起る、だから人間に起るという結論がすぐに出るか、そこを今後きめなければいけません。どこかで事が起つているか、起つていないか知りませんが、人間で何か起つているか知りません。ただこれから医学界の者が総がかりでそういうことがないという結論が出る日を待つばかりであります。私どもの方は実験室で、こういう心配な種があるのだ、しかも主食だから考慮に入れてくれ、そういう要望はしております。それで、取上げていただいているかと思います。そういう意味であります。これを食わせれば人間に毒だという結論はどこに出ておりますか、出ておりません。多分にそういう危険があるから大いに警戒していただきたいと実験室の片すみからどなつているだけであります。ですからいろいろお聞きになつていることも、私どもの方の大学の研究室あたりで配給の基準をきめようなどとは思つておりません。ただお前の方は少し先にやつているから意見を述べろと言われているだけであります。ここで開き直つて配給基準に対して、私がいいとか悪いとか、ああしろなんて申せる筋合いのものではありません。私はそんなに不遜の能度はとりたくないと思つております。
#24
○小島委員長 池田良雄先生、角田広先生は、参考人としてお呼びしておりますが、同時に公務員の立場におられますから、もしも御返答の都合がございましたら、どうでもよろしうございます。
#25
○池田参考人 先ほどの御質問の第三項でございますが、〇・三プロ未満のものは云々というところをもう一度……。
#26
○岡委員 第一が黄変米の含有率が〇・三%未満の輸入米穀は、配給日数に制限なく主食用に充当するものとする、これ以上のものについては、〇三%以上一・〇%未満のものは五日、一%以上一五%未満のものは三日、一・五%以上二・五%未満のものは一日、こういうふうに今後配給をいたしたい、いたそうというこの覚書の基準に基き、混入率に基いて配給をするということについて、このことは皆さんの御研究からはこういう配給率をもつて人体に安全であるという保証がいまだ得られておらないと私は思つたのでありますが……。こう申上げたのであります。
#27
○池田参考人 先ほど、〇・三プロ含有にかかわらず配給することは不適当であると思うが、そういう御質問はなかつたのでありますか。
#28
○岡委員 その通りなのです。七月二十四日の厚生、農林両次官の輸入病変米の措置に関する覚書の中で、一応結論として配給の基準は次のごとくいたしたい、そうして以下先ほど申し上げたような〇・三%以下は毎日配給をしてもいい、以下イ、ロ、ハあるわけです。このような形で配給をされることによつて、人体は決して病変に侵されることはないという保証が、四名の参考人の皆様の今日までの実験の結果から、はたして得られておるのかどうか、こういうことなんです。
#29
○角田参考人 今の最後の方のペニシリウム・トキシカリウムの分布と、ペニシリウム・イスランデイクムの分布というものは、非常に大きい分布なのです。イスランデイクムの方も実をいうとどの米にも多少なりとも出て来るのです。それがない米ということになると非常に問題だろうと思うのです。それだからそこのところの納得行く量の線というものは、納得の行く実験はないですけれども、全然ないものということになると非常にむずかしいことだろうと思うのです。それですから少しお考えを願いたいと思うのです。
#30
○岡委員 それでは井上先生に重ねてお伺いいたしますが、非常に失礼なお伺いをいたすようで恐縮でありますが、たとえば先生御指摘のように、先生の人体実験二例につきましては、特に動物実験と違つて人体実験では個人差が非常に多いことは、われわれも実験上経験しておることでありますし、なおかつ肝臓や腎臓の、しかもこういう実質的の変化については、非常に個人差が多かろうと思います。従つてこの二例をもつて、少くとも一つの断定的な配給基準を設定するための基準としては、早計である、従つてそれからただちに配給の技術というものについては、いろいろとまた配給技術という専門的な相当な道があるのであるから、これの方のやり方というものをある程度までは見てというか、まかせておくということで見のがすこともできるのではないかというふうなお考えのようにも承つたのでありますが、そこで端的に、非常に失礼なお尋ねでございますが、それでは先生はこの〇・三%以下のものが毎日配給される、同時にまたその間五日、三日、一日というふうに、それ以上のものがこの次官通牒に決定されたような基準で配給されて、これが先生のお宅に持ち込まれた場合に、先生はこれを欣然として召し上るかどうか。少くとも人体実験をされた先生のお立場から、科学者的な良心からしても、これをお出しになることについて、何かやはり大きな国民的な一つの憂いをお感じになられるのじやなかろうか、そういう率直な御心境をお伺いいたしたいと思います。
 それから安全率の点につきましては、今ほどもどの先生でございましたかお話しでございましたが、これは先ほど浦口さんからもお話のように、要するに人体実験で三%というものでごく軽微な変化があつた、これをもつて人間の対応率、これらのグレンツエをきめることは、これは常識から考えられないことですから、その点については先生の御意見の通りだと思いますが、その点先生いかがお考えでしようか。
#31
○井上参考人 私耳が遠いので、ちよつとはつきりしなかつたのですが……。
#32
○岡委員 先生の御家庭に配給になる米が〇・三以下のものが二十一日、配給されるわけです。それから一・五以上二・五%未満が一日、一・〇以上一・五%未満が三日、〇・三以上一・〇未満が五日、このように先生の御家庭のお台所にお米が持ち込まれるというわけです。
#33
○井上参考人 それを欣然と……。これは一国民として申しまするが、これは菌の種類によります。ただ黄変米と言つて持つて来られたのでは、私もどの黄変米かわかりませんから、これは欣然というより不安を持ちます。しかしこれはもちろんしかるべく信頼のできる機関があるのですから、その機関から配給された場合、これがカロリーを補う点ではこれ以外にないというときには、私はやむを得ず食べると思います。これ以外にない、言いかえれば絶食するよりは、今のものならば、やむを得なければ――ちようど戦争当時を思い出しまするが、いもつるを食う、こういうような場合において――もし絶食したとすればたいへんです。絶食による機能障害というものは相当強く出ます。そういう意味でありまして、私は欣然とは申しかねますが、しかしほかにない、その理由をどうこう私は申しませんが、これは私の実験範囲において食わざればカロリー保持のしようがなければこれを食べます。
#34
○小島委員長 滝井義高君。
#35
○滝井委員 今四人の先生方からいろいろ科学的な詳細な御説明をいただいたのですが、昨日来私たちが厚生大臣やその他の方々にいろいろ質問をした点とは、まつたく先生方の御意見が異つておることを発見してちよつと唖然としておるわけであります。昨日の大臣の答弁は、科学的な根拠に基いてやつた、そういうものも参考にして総合的な結論を出したのが、この農林、厚生両省内での次官の覚書の結論になつた。それをきようは、まつたくうそとまでは言わなくても、非常にそういう覚書というものが信憑性のないものという感じがしたのです。しかし現実はやはりここに八万トンばかりのこの黄変米をどうするかという、こういう具体的な現実的な問題にわれわれは直面をしておるわけであります。この問題を解決するにあたつて、当然これは先生方の御意見が貴重な参考になることになるわけであります。
 そこで角田先生にまず第一にお伺いいたしたいのは、一%以下では行政ができないということなんですね。それで正確な調査は私やつておりませんが、現在八万トンの黄変米の中で、おそらく一%以下のものは二、三万トンくらいじやないかと思うのですが、八万トンの黄変米と言われておる中で、一%以上のものが五、六万トンで、多いのではないかと思う。これは決算委員会が昨日調べておるからわかると思いますが、するとここに五、六万トンのものが黄変米一%以上で、配給まかりならぬということになると、外米の輸入計画が百五十万トンで、そこに五、六万トンの穴があくということになる。行政上の重大な責任問題であるとともに、食管特別会計の上に二十億くらいの穴があくということになると思います。そこで問題は、この一%以下でいいか悪いかという科学的な基準が、今いろいろ浦口先生から言われましたが、どの程度待てば大体総合的な――これは学者の先生方には御迷惑でしようが、貧しい日本の財政を救うためには、ひとつ徹夜とまでは言わなくても相当大車輪の研究の結果をまとめてもらわなければならぬ段階に来ておると思います。これは主として浦口先生、角田先生で、どの程度の時日をかければ、ある程度国民の納得の行くような研究の成果が出るかということなんです。二年も三年もかかるということがあつては、ちよつと困ると思うのですが、たとえばここ半年くらいで、ある程度の確信のある成果が出るものかどうかということを第一にお伺いしたいと思います。
#36
○角田参考人 はつきり今のところどのくらいの日数で研究ができるかということは、ちよつと私どもにも見透しがつかないので、自分の方では量的な問題はほとんど扱つていないのです。それで池田先生の方でないと、ちよつとぐあい悪いです。もう一つは、一%以下のものがかなり少いということは、ほぼ自分の方の検定結果でも考えられるのです。それから学者の方の線というものは、実を言うとず太い線を引いたのでありまして、あとは行政的にうまく使つてもらえばいいだろうと思うのですが、これはただ自分の考えです。それで、たくさんの不合格米が出るということになりますけれども、どういうふうに扱つたらいいか、これは自分の方ではちよつと見透しがつかないですが、大体去年の初めですが、基準をきめたときに、大体一%以内ならばまあ欠配なく配給できる、だからなろうことなら一%という線を引いていただきたいというのが食糧庁の検査課の方の願いであつたのです。それで実を言うと自分もそれを率直に実のところ告げて、そうして研究の方も大体そういう線が出るからというので、不服もあつたのですけれども、勘弁願つたわけです。今度のことは実を言うとちよつとその点は一%ではどういうふうになるかわからないです。そんな状態です。
#37
○滝井委員 なかなかむずかしいことですが、最近浦口先生は今度の実験の結果、角田さんの二年前にやられた結果と同じふうに肝臓にも病変が出るのだということも大体わかつて来出したということでございました。われわれある程度やはりこれは現実にもかびのついてる米が目の前にあるわけですから、それでその基準を求めるものは、やはりこれを学者の科学的な良心に基いた結論をある程度行政にも反映をさせたいということが私たちの念願なんです。大臣も昨日あたりの答弁では、やはり学者のこの研究の成果を総合したものだということで、私たちを納得させようとした結果が、しからばきようは先生方の御意見を聞こうということになつているわけです。ところが先生方の今の御説明で、そういうところまでは行つていないということが大体わかつたわけなんです。ところが現実にここに米は積んであるわけですから、そこでひとつ早急に結論を出していただきたい。その見通しは、たとえば半年くらいで出ますということがおよそ出るだろうと思う。これは何も責任をどうこうするというのではなく、出なくてもかまわないのですが、およその見通しがつくものならばつけていただきたいが、そこらあたりの見通しはどの程度でしようか。これはいろいろな実験の結果ですから、失敗することもあり、成功することもありましよう。しかしさいぜんの角田先生の御説明では、すでに三宅先生が大正六年月来こういう一連の研究をやられておる、あるいは昭和二十一年ごろからですか、井上先生もやられておるということもありますので、そういう研究の成果を積み上げて、ここ一年以内くらいで結果が出ないものかどうか、こういうことなんです。その点ひとつ確信がなくても、何か国立衛生試験所でも、あるいは浦口先生のところでもよろしいから、今の研究の基礎から将来の見通しをお聞きしたい、こういうことです。
#38
○池田参考人 この線を引くということは、実は非常にむずかしい困難なかつ長期の仕事でありまして、かりに半年で決定的な線を引くとか、あるいは一年でも私自信がないと思います。というのは御存じのようなさるとか、そういうようなものをやる場合がありまして非常にむずかしい。それで現在の段階におきまして、これは私の意見ですが、この基準も一・〇プロまでのところで切つていただけるならば、私が主張した線に近いのでありまして、私も食べられる、そう言いたいのです。
#39
○滝井委員 一・〇くらいならば相当の安全率だという御答弁です。そこで次はこの黄変米の培養の結果が出る日数なんですが、現実にタイで米を買つた。そうすると、それは目で見て一%以下のものは大丈夫だと合格して船に積み込んでいるわけですが、これはなかなか問題がある。従つて飛行機で持つて帰つて、こちらで培養して、すぐに向うにその米は大丈夫だ、こういう電報を打つたらどうかというお話もあつたのです。培養についての正確なことがわかりかけて来たのですから、従つて学問的に見て、飛行機で黄変米を持つて来て、こつちで培養して、イエス、ノーを向うに電報を打つというようなことを、学者としてやる方がいいだろうということが納得できるかどうかということが一つと、二番目は、百五十万トンという莫大な外米を輸入されたが、今厚生省でやるのはせいぜい抜き取りで四割くらいをやるのが限度である。あと残りの六割というものは内地に来て見て黄変米だといつて、現実に知事か配給をとめている例がある。従つて内地における百五十万トンの外米を、合理的に百五十万トンの中から黄変米を発見するような何かいい方法はないものかどうか、第三点は内地にタイから持つて来た外米が、いわゆる黄変菌が内地では増加する情勢がないかどうか、と同時に、その黄変米というものは、黄変しない白米と栄養的に見てどういう変化が起つておるかという、この三点をひとつ簡単に、どの先生からでもけつこうなんですが、浦口先生からなかなかいろいろと詳しく御説明いただいたので、浦口先生からでもけつこうだと思いますが、お伺いします。
#40
○井上参考人 私は今日ここに列席しまして、今のようなお話を聞きまして――私は最初から申しておりますように、こういう米がたくさんあるが、どういうわけでこれがあるのかとか、これがいいとか悪いとか申しません。現に、今御発言のようにあるのだ、これをどうするか、私がこの実験に指名されて着手したゆえんは、破壊的でなく、実際何かの理由でこれだけある、これを捨てるとか、あるいはこれを利用するとかいう立場でお引受けしたのであります。従つてただいまの国家的立場から、これを今後何とか処理するのに学者的立場から見通しがつかぬか、これは私はもう少しエキスパートはエキスパートで、たとえば倉庫にある米を検査するのにどういうふうにするか、これは一番に、現場のそういう方面のエキスパートをどんどん集めて、最小限度これだけあるものが、何プロかということがわかる研究をぐんぐん進めて、一方においては焼いても煮てもどうにもならぬものはこれはもうオミツトします。しかし何とか利用――たとえば例を申し上げますれば、これは食えるとか、これはほかに利用というようなものにわけて行く。そうして系統的にかつその道のほんとうの実験者を集めて協力して何回も何回も学者に討議をやらす。そうすればそんなに長くかからぬでも少しずつでもこれを何とかするという根拠は出るのではないか。ただ要するにセクシヨナリズムで、ただ一つのものをやるために短い目から見る、こういうことをせずに、その研究の成果をお互いに学者同士が熱烈に討論する。学者はここまではこうですと皆さん方、厚生委員の方に出したい。それはもう少し学者が熱を持てば可能性があるのではないか、ただちにここで何日までということは決して申せませんが……。
#41
○角田参考人 実をいうと、向うから来てから菌の培養検定が終るまで、これは予算と人力の問題だけでありまして、予算と人力さえ間に合えば十日でお引受いたします。それは要するに自分の方でいうと、食糧庁からサンプルを受取つて、きよう受取れば十日後に食糧庁に公文書が到着するようになります。期間はそのくらいです。
 それからサンプリングが問題ですが、これは一番ありがたくない問題で、自分たちの方もわかりかねるのですが、これは経験――研究の経験というのはおかしいのですが、世界の米を見て、総体的にいいとか悪いとかいうことは非常に言いやすいのです。だから日本米に次ぐものはどこだといえば、これは加州だというのです。そういうふうにすぐ出て来るのです。それからイタリアの米というものはとにかくいい米です。非常にいい米だけれども、残念ながら赤道直下を一箇月もかかつて通つて来るのが玉にきずです。あれは船の中でほとんどやられている。元ではほとんどやられていないわけです。ですから、実を言うとサンプリングというものは――大きな数量ですから、米の数量概念というものをお話すればおわかりになりますが、深川の倉庫に三十六万石くらい積んであるのですが、この三十六万石というのはどの程度の数量かというと、これは口で言えば小さなものですが、東京駅から俵で並べると静岡まで行つてしまう、こういう大きな数量でありますが、これを東京で食いつぶすとなると幾日で食うか、たつた十五日です。そういう大きな分量でありますから、サンプリングするというのは、これは非常にむずかしいことであつて、やはり総体的に食わしていいか悪いかの判断に基いてきめられると思うのです。おそらくはもう何か千分の一くらい出て来る場合には、たわら一俵々々切らなければならぬということになるのですが、そんなことをすれば飯が高いものになつてしまつてどうにもなりません。だからやはり総体的に、これはよかろうとか、これは悪かろうとかという観念くらいで進んで行かないと、これは大ごとになるだろうと思います。自分の考えはそんなことです。
#42
○柳田委員 今の滝井君の質問に関連しますが、ただいま井上先生からもまた角田先生からも御高説を承りました。やはりこういう国家的見地からも、さらに国民の保健上の問題からも、今後大いに研究を進めていただきたい。ところが現在の状況では、各大学の研究室におきましても、あるいは衛生研究所においても、食糧研究所におきましても、おそらく先生方の一番お悩みになつておるのは、まず第一に研究する予算が非常に少いということではないだろうかとお察し申し上げるわけです。おそらくこれはどの部面についてもそういうことがよく言われるのでありますが、実際に先生方がこの方の御研究をなさつて来られまして、もう少し国家の方でこういうふうな予算を組んでくれるならばわれわれの方ではもう少しデータも出るのだとか、あるいはもう少しデータを出すのに期日が早まるのだとか、こういうようなお悩みも持つておられようかと推察し、まことに御同情申し上げておるのですが、そういう点に関しまして、先生方の方で何か御希望なり御意見がありましたら、この機会に承つておきたいと思います。
#43
○浦口参考人 今のお話も、それからその前のお話も、全部関連すると思います。また井上先生の御発言にも関連すると思いますが、私はどういう因縁か、とにかく昭和十五年からかび学をやつておつてつくづく感ずることは、こういうような仕事というものは、皆様お考えになつておる学者にもいろいろ専門がございますが、案外幅の広いいろいろの専門の人を必要とするのであります。かびの学問は形態学的には植物学者によつてずいぶん進歩しておると思います。しかし形がわかつたり、かびの名前がかりにわかりましても、それが毒物を出す、すなわちほかの動物あるいは人間に対して害があるかないかというようなことは、皆様の御承知の通りペニシリンというものが出て来たのは戦争のちよつと前、チヤーチル事件以来です。その少し前くらいは、私どもはペニシリンという名前は知つておりましたけれども、それに毒素があるということは最近わかつて来たことでございます。ましてそれをきめるということになりますと、これはそれだけでもかびの学者、米の学者、医学者、農学者、さらに化学者が必要になります。それで医学者の中でまた言いますと、これは非常にわかれておりますけれども、形態的な病理学者とか、機能的な研究をする薬理学者とか、あるいは広い意味の臨床専門家、こういう各分野のみなおのおの別個に動いている専門家がいる。こういう非常にプリミテイヴなやつとわかり出したような問題は、私は十八世紀か十九世紀の仕事だと言うのでありますが、専門家が専門家づらしておつたのでは解決がつかないのであります。しかしどうやつて手を握ろうか。なかなかこんなばかげた仕事に手を握つてくれる男はいないのであります。私ももう少しほかのことをやればいいことができたかと思いますが、ただこつこつ荷ということなしにやりました。戦争中よその者が行つてしまえば一人でがんばつておりました。それでさつきもどのくらいかかるかと言われましたが、トキシカリウム一つだけでも八分通り見当をつけるのに十二年かかりましたと申し上げるよりほかない。米の中に一つ見つけるだけでも、三宅先生は大正六年から十三年まで営々として、探してはうつちやられ、探してはうつちやられ、まつたく涙ぐましいくらいの一徹でやつて来られたのです。そういうふうなまだほんとうの初期の学問として、一体自然科学としてこれが学問という名に値するかどうかもわかりません。そういうときは各般のいろいろお互いに専門的にみぞがあるものを横にぶつつけなければ仕事ができないのであります。有機的な研究組織ができなければだめなんです。それだのに、まだそれがやつと核心ができかけて、これから昔一緒にやつた連中だけでもせめて少しお金をどこからかもらつて来て、とにかく国家的にも必要だし、自分たちとしても重大であるからやろうじやないかと始めたのがここ三、四年でございます。実際お金をもらつたのは去年からです。そういう状態でやつとやり出したときに、今度は金がたくさんある、配給量に関係するから意見を述べろということになりまして、やむなく述べると、今度は学者のたいこ判だなんて言つて、逆にその貧弱なデータを、何にも知らない人には、まるで現代のりつぱな医学あるいは化学の成果が保証するかのごとく振りまわされるのは、もつてのほかだと私は思うのであります。なぜもう少し研究をかわいがつてくれないか、育ててくれないか。戦争に負けたらもう少しりこうになりそうなものだと私は思うのであります。実際なぜほんとうにそういう地道な研究をさせてくれないか。お金のことをさつきおつしやいましたが、金も足りません。しかしこういうものは金だけでは解決つきません。何代かの埋もれた人が出て、そういう穴のところを人柱のようになつて初めて研究の橋ができるのだと思います。その橋をつくりつつある状態であります。そういうときにいきなり日の目に出してこんな貧弱な研究をやつているじやないかというのはまことに心外の至りだと思います。ドイツのごときは、むだな飯を二十年間食わせてくれれば、その学者が二十年目にやつと一つの研究を出す。また十九年はむだ飯を食わす。そうしてまた一生のうちに二度出せばこれは学者としてたいへんけつこうだ。そういうものだからといつてむだ飯を食わせて、いろいろ営々とやつて今のドイツを築いたのだと思います。ただほうつておいて、野に下つたかわつた人が一生懸命こつこつやつておる。そういうものをどうやらこうやら大学なんかも少し完成して、一生懸命バツク・アツプして自分の仕事を伸ばそうとしておる状態のときにこういう問題が起つたから、たとえばどこに十万トンの滞貨があるから今すぐそれを何とかする結論を出せというのは、まことに無理なことを御要求なさると私は思うしかないのであります。それは金がたくさんできて、研究組織が急に動き出したとしましても、その研究者は、お互いにかびのことを知り化学のことを知り、そういう両方を兼ねたような学者がみな養成されなければ、この問題は解決できるものじやないのであります。だから今の十万トンの処理はそれはもう行政的な官庁でおやりになつてけつこうであります。しかしこの問題は、何も黄変米というのは二つや三つのものじやございません。おそらく有毒な黄変米というものはこれから発生すると思います。ほかのものがわかつて来ると思います。ほかのかびは全然わからない。井上先生がおやりになつた六種類かなんかのかびの中にイスランディアが六%あつた。それは事実でありましようが、ほかのかびに毒があつたのかなかつたのか、何にもわからない。ましてかびが生えておつたらビタミンが米に足らなかつたかもしれません。そういう実験からおやりなつたから井上先生は、自分がやつたと同じサンプルを自分にその通り配給してくれるならばという条件をつけてさつき意見をお述べになつたと思います。
#44
○井上参考人 ただいまも柳田委員その他の委員の方がおつしやいましたが、私は具体案を申し上げます。
 一体国民の食糧、ことにわが国におきましては米というものはなくてはならぬものであります。これに対して私の最も希望するところは、学者に米についているかびを研究させるようなことを今後しないようにするというこの策を今後着々と進めていただきたい。第二は、現在いかなる理由といえども、とにかくわが国に相当の怪しき米がある。これをいかに処理するか。この処理に対して、学者の研究というものは、これはいろいろな枝葉の研究がありますから、まかせておけばいつの間にか主題研究が流れてだんだん横の方に行つて、その主の班長さんが初めもらつたテーマがどこに行つてしまつたかという研究班を散見いたします。こういう意味において、もしここで強力に現在ある黄変米の処理を学問的にいかにするか、この鋭い線でこれに専門家を招集して行けば今、浦口さんの言われましたのは非常に理想的で、菌そのものの研究もけつこうであります。しかし実際に、私が言いますように、将来は皆さんの努力でこれがなくなると思いますが、現在これをいかにするかに集中すべきではないか。柳田さんが言われましたように、これは主食である以上は、私は言いたくない言葉でありますが、政党とかなんとかいうようなことは抜きであります。米であります。この米を国家的見地からいかにして処理するか、あと今までの原因をどうこうするというのは皆様方のおかつてですが、私から言えば、病人にあなたはこういうことをしたから病気になつた、今からそういうことは言いません。その米という病人をどうするかという処理、対策、この線のはつきりした、それ以外のものは研究をやめてもらうというように行けば、これは相当強力に行くのじやないかと思います。ただその構成、運営いかんであります。金はやがてその構成、機構の運営によつて当然いただくべきものはいただかなければならぬと思いますが、学者には金をやれば何でもできる、そんな――金は第二であります。学者の熱意であります、誠意であります。
#45
○小島委員長 角田先生にちよつとお伺いしますが、先ほどちよつと滝井委員からも質問があつたのですが、伝染力と申しますか、黄変米が一つの袋に入れてある場合、その伝染力というのは、たとえば一箇月なり二箇月たてばどの程度に延びて来る。たとえばここで半年これを保管しておけばどうなつてしまうかということについてごく簡単にお聞きしたいのです。
#46
○角田参考人 私の方でもかなりその方面を研究しております。それで結局米に寄生した場合と、これからする場合と二つありますが、する場合は簡単にいうと、浸透圧の差なんであります。米の浸透圧が常態において大体二十五気圧くらいあります。それに対して今度は大体二倍以上の浸透圧を持つたかびでないと寄生できません。そうすると大体五十気圧くらいなければ寄生できないということになります。それで今度乾燥度が増せば増すほど非常な急速度で浸透圧は高くなります。それですから特定な水分に特定なかびが寄生しております。簡単にここで申し上げますと、大体一四・五から一五・五くらいの間はアスペルギルス・ダラークス・グループというこうじかびより少し下等なかびが好んで寄生します。それで内地で一番困つておるのは黒変米という日本語を持つたかびがあります。これは浸透圧の非常に高いかびであります。それから一五の線に行きますと、これは例の黄変米ですね、ペニシリウム・トキシカリウムという学名を持つた菌、これが好んで寄生する。それから一五・五の線を越えると、例の今のアスペル、ペニシリウム・イスランデイクムだとか、イスランデイア黄変米だとか、タイ国黄変米の菌、ペニシリウム・シトリウム、そういうものが好んで寄生します。それで一八を越えますと、今度はバクテリアの世界にかわります。バクテリアの世界にかわるということになると、エビ米だとか、目黒米だとかエクアドル茶米だとか、こういうようなバクテリアによつて変質を起す。それですから、倉庫の中に入れておいてかわるかかわらないかという問題は、水分の測定をしなければならぬことになります。それで大体一四・五以内の水分の米だつたならば、寄生していても停止していて発育は全然しません。まだこれはできません。そ丸で増殖は二二で全然ありません。ちようど休眠状態のような状態に入つております。それでありますから、一四・五を破る水分のものは早く処分しなければいけません。これはどんどん菌が今度はふえて来ます。そういうふうですから、水分の測定をやつて菌が発育するかしないかを確かめないといけないと思います。
#47
○小島委員長 現在の米はどうでしようか。
#48
○角田参考人 大体ビルマあたりから入つて来る米を見ますと、あれは変質したのは現地で変質しておるのでありまして、その以後、搗精以後変質しておるのは非常に少いのです。ときたま船によつてはありますけれども、これはもうときたま見受けられるだけで、現在ではほとんど見ておりません。それで大体一三・〇%から一四・五ぐらいまでの範囲が入つて来ておりますので、倉庫に入れていて別に菌の発育するおそれはないと思います。
 それから引続き、さつきの予算の関係でちよつと私が申し上げたいのは、実を言うと私はずいぶん苦しい研究を続けたわけなんです。今の食糧研究所はまだしもあるのですが、その以前というものは、自分は動物一つ買つてもらえない、それで動物実験を強行した人間なんです。浦口先生がよく御存じだと思います。自分の家へ帰つてはねずみをふやして、そのねずみを持つて行つては仕事をやつて来た。だけれども、戦後は何せねずみにやるえさがない。それでねずみを家で飼うわけには行かないのです。それで結局自分の方の栄養の室から、ねずみをふやしておりますから、もらつて来てやつていた。ところが途中からどうも角田のやつは米につくかびが毒を出すなどというので、おもしろくないというので、とにかくその動物をくれなくなつて、そのくれなくなつたあとは、今非常に苦しい立場に追い込まれて、まだあまり研究は進んでおりません。それですから自分の願うところは、この研究に対しては増額は望みません。年々とにかくここらで打切つてもよかろうという線まで、政府から変質米の研究費として援助してもらいたい。願うところはそれです。
#49
○小島委員長 現在の段階においてどの程度が必要なんでしようか。
#50
○角田参考人 現在自分の方で必要とするのは、実を言うところ自分の方の室は助手と自分と二人なんで、人数割で予算をもらつておりますから、十万きりないのです。この十万で仕事をやつて来たのです。去年はそれで三万赤字になつて、その三万は業者にもらつて来たのです。自分はそれで補填したような始末です。そんなふうな関係ですから、自分の方の室を見ていただいた方はわかると思いますが、あそこでかびの研究をやるそのことが根本から間違つておる。もう少しかびを扱うような室にしなければいけないのです。それで今庶務の方からも、とにかくどのくらいの予算であつたらいいかと聞かれておりますから、新しく建て直すよりほか方法がないですねと言つておきました。こんなものを増築してもとうていだめです。それですから検定室と研究室とあわせて自分の方は五百万円はどうしてもかかります。こう言つております。それで今度はそれに対する年々の研究して行く費用は、どうしても消耗費だけ二十万くらい見てもらわなければやつて行かれないと思います。これは溶媒だとか、動物だとか、薬品とかに使われる費用です。
#51
○小島委員長 それではこれにて委員会は散会いたすわけでありますが……。
#52
○滝井委員 二日間にわたつて黄変米の問題をいろいろ検討したわけですが、委員長も御存じのように、すでに参議院の厚生委員会では一つの結論を出しているわけです。われわれとしても、衆議院ではすでに農林委員会、決算委員会等でもやつております。おそらくもう黄変米に対する各党の態度は決定されておると私は患います。従つて十二時で一応休憩いたしまして、午後にもう一回委員会を再開していただいて、現実にこの黄変米に対する衆議院厚生委員会の最終的な態度を決定していただきたいと思います。そうしないと、討議したばかりで、われわれこれに対する能度を何も決定しないということは、政治家としてはきわめて無責任な態度だと思います。学者の意見も聞かしていただきましたが、結論も早急に出ないらしい。従つてこれは厚生委員会としての、昨日の質問あるいはきようの諸先生方の御意見を中心とした結論をぜひ出していただきたい。そのためには午後にでも一時間ばかり委員会を開いて、この委員会の決論を出していただくことを要望いたします。
#53
○小島委員長 滝井君にお答えいたします。その問題については明日午前十時より理事会を開いて相談いたすことにいたします。
 終りにあたり参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。暑い折からたいへん長い間ありがとうございました。
 それでは明日午前十時半より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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