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1953/12/24 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第3号
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1953/12/24 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第3号

#1
第019回国会 本会議 第3号
昭和二十八年十二月二十四日(木曜日)
    午前十一時本会議
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 奄美群島に関する日本国とアメリカ合衆国との問の協定の締結について承認を求めるの件
 奄美群島復帰祝賀に関する決議案(益谷秀次君外四百四十人名提出)
    午後二時二十分開議
#2
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○荒舩清十郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。すなわち、奄美群島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件は、内閣の要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#4
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。
 奄美群島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。提案理由の説明を求めます。外務大臣岡崎勝男君。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#6
○国務大臣(岡崎勝男君) ただいま議題となりました奄美群島に関する日米間の協定締結につき承認を求めるの件につきまして御説明いたします。
 南西諸島の島々は歴史的にも経済的にもわが日本本土とは切つても切れない密接なる関係があり、現地の住民や出身者の日本復帰を望む声はきわめて熾烈なものがありましたので、政府といたしましても、平和条約の発効以来、種々米国側と折衝を行つて参りました。そして、過渡的には、これら諸島の住民の生活をできるだけ内地住民の生活と同様にするため、行政、経済、文化等の面において各種の施策を行い、これを漸次拡大して参りましたが、これと並行して、根本的解決についても交渉を行つて来たのであります。すなわち、米国側としても、軍事的見地よりすれば南西諸島の全部につき一時に日本復帰の実現は困難であるとしても、段階的にその一部なりとも先に復帰せしむることの可能性はあり得べしと考え、そのような趣旨で折衝をいたしましたところ、幸いにして米国政府もこれにこたえ、本年八月八日ダレス国務長官の声明となつたのであります。爾来奄美群島復帰に関する協定の交渉を行つて参つたのでありますが、その間に種々複雑な問題があつて、日米双方の当事者の熱心なる努力にもかかわらず意外に遅延し、今般ようやく双方の意見一致を見るに至りました。よつて、政府としては、この案によりまして至急協定を締結し、同群島の復帰を実現いたしたく、ここに国会の御承認を求めることとした次第であります。
 次に協定案の概要について御説明いたしますれば、第一条は、米国が平和条約第三条によつて有しているすべての権利及び利益を奄美群島に関し日本国のために放棄し、日本国がその権能及び責任を引受けることを規定しているのであります。ここに米国の放棄する権利及び利益とは、同群島に対する行政、立法及び司法の三権のみならず、同群島を米国の信託統治に付することを提案する権利をも含むものであります。なお、日本に復帰する奄美群島の地理的範囲につきましては、第一条第二項及び協定附属書によりまして、旧鹿児島県所属の島嶼全部を包含することとなつております。
 第二条は、第一項において米国が現に奄美群島において利用している軍用設備及び用地は日米行政協定の手続に従つて同国軍隊が引続き使用することを認めております。なお、現在米国政府が利用しているものは、沖永良部島にあるレーダー施設を含め二箇所しかないのであります。
 第三条は、復帰に伴う財務関係の事項を規定しております。すなわち、第一に、日本国政府は復帰のときに奄美群島に流通しているB円を一対三の割合で日本円と交換し、回収したB円を無償で米国側に返還することを規定しております。B円の流通高は大体二億円前後と推定しております。第二に、予算及び財政に関する措置は、復帰前までは米側が維持し、その後は日本政府が責任を有することを規定しております。第三は、日本国政府が奄美群島における郵便局の債務を引継ぎ、これと南西諸島の他の郵便局との間の債権債務は後日決済することとしております。政府の調査によりますと、これはわが方に約五千数百万円の受取分があるようであります。第四は、奄美群島に存在する琉球政府所有の財産はすべて無償で日本国政府に移転されることを規定しております。第五は、米国の管理下に置かれて来た元の日本国国有または都道府県有の財産を無償で返還されることを規定しております。第六は、合衆国政府及び琉球政府等が奄美群島にある大島食糧会社その他の団体等に対して有する当座勘定債権約七千五百万B円並びに琉球復興金融金庫が団体及び個人に対して有する長期債権約一億六百万B円、合計約一億八千万B円、これは邦貨で約五億四千万円でありますが、この特権をすべて無償で日本国政府に移転することを規定しております。
 第四条は、いわゆる戦争請求権の放棄及び占領期間中の行為の有効性の承認に関する規定でありまして、平和条約第十九条の規定と同趣旨のものであります。今般は平和条約発効後米軍軍政期間中に関するものについてもあわせて規定しております。
 第五条は、民事裁判管轄に関するさきに制定された奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律の定めるところに従い、現地裁判所の判決を承認し、現に係属中のものはそのままこれを引継ぐことを規定しております。
 第六条は、刑事裁判管轄に関し、日本政府が、琉球政府の裁判所ですでに判決せられまたは現に係属中の事件につき、日本の法律及び手続に従つてこれを処理すべき旨を規定しております。
 第七条は、日本国が当事国となつている条約その他の協定、特に平和条約、日米安全保障条約、日米行政協定、吉田・アチソン交換公文並びに日米友好通商航海条約が奄美群島に適用されることを規定しております。
 第八条は、この協定の実施に関する事項は両国政府当局間で合意さるべきことを規定しております。
 第九条は、この協定が明十二月二十五日から効力を生ずることを規定しております。
 次に、協定に附属する交換公文について御説明いたします。まず、アリソン米国大使は、私あての書簡で、日本政府は奄美群島及びその領水は極東の防衛及び安全と特異の関係を有することを認め、南西諸島のその他の島嶼の防衛を保全する等のため、米国が必要と認める要請を考慮に入れるものと了解する旨を通報し、これに対し、私よりアリソン大使あての返簡で、日本政府も同様に了解する旨を通報するものであります。もしこれにつき将来具体的な要求がありました場合は、もちろん行政協定の手続に従つて考慮せられるものであります。
 以上は本協定の内容でありますが、政府といたしましては、その他の南西諸島や小笠原諸島につきましても、国会の次の決議及び住民の要望等を体して今後とも善処したき考えであります。幸いにして本協定が国会の御承認を得ますれば、本日中にもただちにこれに署名し、奄美群島の復帰を明二十五日午前零時を期して実現することといたしたいと思うのであります。(拍手)
 つきましては、右事情を御了承せられ、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。(拍手)
#7
○議長(堤康次郎君) これより討論に入ります。中井一夫君。
    〔中井一夫君登壇〕
#8
○中井一夫君 私は、自由党を代表して、ただいま上程されました奄美大島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件に対し、心よりの喜びと感謝並びに希望を申し述べて賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)
 奄美群島は、終戦後日本本土より分離され、連合軍の管理下に置かれましたため、日本独立後も、島民諸君は、ひとり孤児のごとく、占領行政に伴う不便、不利と、母国隔離による悲哀窮乏のうちに辛酸をなめ、その苦難はまことに同情にたえないものがあつたのであります。島民諸君の母国復帰の念願燃ゆるがごとく、衆参両院また、国民の総意を体し、しばしば院議をもつて復帰実現の要望を表明いたした次第であります。
 顧みますれば、一九五一年サンフランシスコにおける講和会議において、わが首席全権吉田総理大臣は、私は世界特にアジアの平和と安定がすみやかに確立され、これらの諸島が一日も早く日本国の行政のもとにもどることを期待するものであります、と演説されたのであります。本年八月、ダレス米国国務長官は、果然これにこたえ、同群島の日本返還を声明したのでありまして、今や同胞の悲願遂になる、まことに御同慶の至りであります。(拍手)本協定の成立にあたり、私は、米国国民とその政府の好意に対し深く感謝の意を表しますとともに、折衝よくこの協定を成立せしめられたるわが政府当局の努力に対し敬意を払うものであります。
 しかしながら、同島の返還に関連しましては、なお残されたる幾多の問題があります。すなわち、祖国復帰を熱望しておりまするのは奄美群島の人々だけではないのでありまして、沖縄及び小笠原諸島等における同胞も同様であり、国会また数回にわたり決議をもつてこれが返還も要望したゆえんであります。この際、私は、アメリカ合衆国が進んでこれら未解決の諸島の返還についてもさらに一段の好意を示されんことを日米両国の親善と友好とのために切望いたし、あわせてわが国政府に対し、これが実現のため層一層の尽力を希望いたすものであります。(拍手)
 次に、本協定において定められました事項は、ただいま岡崎外務大臣が説明せられましたことく、従来米国が同群島につき有していたすべての権利及び利益を放棄し、これを日本に返還することをもつて根幹とし、あわせてこれらの権利の引継ぎに伴う当然の事務的処置等を定めたものでありますが、これを一言にして申せば、本協定は妥当であると認められるのであります。ただ、本協定の交渉中におきまして、特に沖縄に在住する奄美群島出身の公務員及び一般人約五万人の処遇に関し、米国の了解を得るがために政府が種々努力を尽されたことは、私の承知するところであります。しかしながら、われわれは、これらの人々が復帰と同時に解職または強制送還をされるのではないかと、いたく心配いたしておるのでありまして、また、もしかかる事態が生ずるならば、その結果の悲惨なることは申すまでもないところであります。私は、米国国民並びにその政府が人道を重んずることを信じ、ことにその友好国たる日本の多数の国民をあえて路頭に迷わすがごとき不当なる処置をなすはずなしと考えるものではありますが、その影響するところはなはだ深刻なるにかんがみ、本問題を円満に解決するため、今後もなお最善を尽されんことを日米両国政府に対し希望するものであります。(拍手)
 最後に、同島の将来につき政府の注意を喚起し、その決意を促したいと存じます。すなわち、奄美群島のことは、従来ただ母国に復帰する二十二万の同胞または自然に恵まれない離島の一地方問題としてのみ取扱われた感があるのでありますが、沖縄が容易に日本に返還せられない今日、またすでに朝鮮、新中国との間に、公海の利用に関しわが国と国際的な摩擦が起きており、台湾にある中国議会が奄美群島の領有権を主張して日本復帰に反対を声明いたしておるとき、ことにわが国において海軍の復活が問題とならんとしつつある情勢より見ますれば、この島こそは、その立地条件よりして、日本民族の再発展のための重要なる基地と考えらるべきものであり、この島の復帰があらゆる点において新日本の将来に重要なる意義を有するものであることはきわめて明白であります。もしそれ、同島産業の有望なることにつきましては、戦前すでに移出移入の、バランスがとれ、経済的に自立せる事実によつても疑うことはできないのであります。従つて、本島復興のため、政府は本院地方行政委員会がさきになしたる決議の趣旨にのつとるはもちろん、進んで日本再発展の基地としての本島を開発するため、特別の振興法を制定し、島民の要望にこたえるとともに、国家的の要請実現のために邁進せられんことを切望いたすのであります。
 私は、以上喜ぴと感謝並びに希望を述べまして、本案に賛成をいたすものであります。(拍手)
#9
○議長(堤康次郎君) 須磨彌吉郎君。
    〔須磨彌吉郎君登壇〕
#10
○須磨彌吉郎君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま議題となりました奄美群島行政権返還に関しまする日米間協定について賛成の意を表するものでございます。(拍手)
 この機会におきまして、わが党のこれに関しまする所見をいささか述べたいと思うものであります。
 本日この協定を見るに至りましたことは、二十万の奄美大島の住民は申すに及ばず、全国民のひとしく米国に対して深甚なる謝意を表するところでございます。しかるに、沖縄及び小笠原群島も奄美大島とまつたく同一の条件にあるのであります。われわれ日本国民と血をわけて来た兄弟の島々でございます。それが、今や奄美大島だけが復帰をいたしまして、群がる鳥の一群の中から一羽のみがねぐらに帰るというがごときは、敗戦の日本とは申せ、八千六百万国民感情のまことに忍びざるところでございます。(拍手)
 顧みまするに、米国はサンフランシスコ条約第三条によりまして、元来これらの旧日本領土は一括返還するにやぶさかでなかろうことは、次の好意ある米国朝野の言明によりましてもうかがわれるところでありました。しかるに、日本政府は、サンフランシスコ条約に調印をいたしまして以来、米国の不信を買つて参つたと見られることが一、二にはとどまりません。一面においては東亜の安全を保障せんとするサンフランシスコの国際態勢に参加いたしましたにかかわりませず、日米安全保障条約の前文にございまする直接及び間接の侵略に対する自国防衛の責務を果しておらないのがその第一でございます。(拍手)しかも、政府がかような出方をすることは、米国に対して誠意を欠くことは明らかでございますにかかわりませず、かえつてこれは巧妙なる外交手段でもあるかのように見せかけて、ますます米国の不信を買つたことがその第二でございます。かつは、そのために、国論のおもむくところを共産党の宣伝に放置し、独立していながら防衛の要はないというがごとく、共産党の言説に迎合するともいうべき一種の無抵抗主義の観をすら呈するに至りましたことがその第三でございます。(拍手)かような態度は、占領時代の惰性にもよることで、ございましようけれども、あまりにも日本国民の自主独立の気魄のなさを表明するものでありますとともに、不幸大戦ともならば日本の帰趨はどうなるであろうかと、米国をして危惧の念を禁じ得ざらしむるところでございます。ここに政府は意を用いて条約上の義務等を履行し、米国の不信を一掃し得たならば、米国は意を安んじて旧日本領土の返還を実現したに相違ありません。かくのごとく政府は米国真意の理解とこれが対策におきまして根本的錯誤に陥つており、従つて日本外交政策にも重大なる欠陥を生じ、共産党からも乗ぜられるに至つたことは、きわめて遺憾に存ずる次第であります。(拍手)
 この根本的なる錯誤が不幸あらゆる部面にも浸潤いたしまして、政府が今に至るも占領時代の感覚を蝉脱し得ないことを暴露するに至つたのであります。従つて、米国は、かような日本政府にはたより得ず、沖縄には三億ドルに上りまする強力なる基地を建設し、小笠原群島にも海、空軍の拠点を急ぎつつある実情でございます。また、十二月上旬から極東方面の視察を終えましてワシントンに帰着しましたアンダーソン米海軍長官が、十六日ナシヨナル・プレス・クラブにおきまして、米国は沖縄と小笠原群島とを無期限に管理すると言明したことに対しては、深甚なる注意を払わなければなりません。(拍手)これは実はわが政府怠慢のしからしむる結果と言わなければなりません。(拍手)
 試みに条約上の責務を懈怠いたしました点だけについて見ましても、政府は、経済上の理由にかこつけまたは憲法上の論議に事寄せて防衛の義務を回避して参りましたため、外国方面からすでに二百五十隻もの船舶が拿捕せられ、壱岐、対馬の領土権をもねらわれておるということを聞きますが、寒心にたえないものがあります。(拍手)また、台湾の国民政府立法院が、十一月二十一日外交委員会を開きまして、奄美大島を日本またはいかなる外国にも譲渡することに強い反対をするものであるという決議案を採択したことが報ぜられておりますが、政府はこれをいかに感ぜらるるのでございましようか。これによりましても、日米安全保障条約上の義務をめぐつて、これだけの大きな扞格が日本と米国との両政府の間に横たわるに至りましたことは、遺憾しごくであります。この日米両国政府間のずれを矯正することがまことに現在の急務であると言わなければなりません。(拍手)
 日本は独立後三年目を迎えんとしておりますが、いまなお観念上の独立に彷徨しておりますことは、米国の不信をも買うがごとき根本的な錯誤を去り得ないからであります。あにひとり防衛施設が達成されないばかりでなく、国内のもろもろの施設について見ましても、教育においても、労働問題においても、さらに司法制度の運用等においてすら幾多の欠陥を暴露し、今や世界にほうはいとして行われんとする思想戦術、神経戦争の犠牲とならんとする危険が決して少しとしないのであります。(拍手)国家の自立と独立とは決してなまやさしいものではありません。まさに闘いとらなければなりません。それには何をおいても信を内外に博することであります。外交はあくまで信義をもつて貫くことであります。まず米国をして日本の信義を発見せしむるように政策の根本的錯誤を改めるならば、沖縄、小笠原群島等も、少くともその行政権をわが国に復帰せしめ得ることは遠き将来ではないと思うものであります。(拍手)
 奄美大島の復帰に対し重ねて歓喜と感激とをもちまして私は賛成を表しますが、同時に今回奄美大島の復帰にとどまつたことはまつたく政府の根本的錯誤に基因することについて深く政府の注意を喚起するものでございます。(拍手)
#11
○議長(堤康次郎君) 赤路友藏君。
    〔赤路友藏君登壇〕
#12
○赤路友藏君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました奄美群島復帰に関する日米協定に対して賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)
 顧みるに、戦後八年、奄美大島二十五万の人民は、日本国民としての立場を剥奪され、今日に至つたのであります。その間、島民諸君は、日本国民としての自覚と、母国日本への郷愁と、ひしひしとして襲い来る貧困とによく耐え、母国日本への復帰に一切をかけて闘い通して来たその熱情と努力に対し満腔の敬意を表するとともに、今日その念願の達成さるるに至つたことを、当然のこととは言いながら、私どもは心から喜びにたえないものであります。しかし、奄美大島の実情は、産業経済の面において、文化の面において、われわれの想像も及ばないさんたんたる実態に放置され、内地とのその差は格段の相違があると聞くのでありますが、政府はただちにこれらに対する復興に専念するとともに、あらゆる努力を傾注し、これらの完成の一日も早からんことを願うものであります。奄美大島二十五万島民諸君の今日のこの大きな喜びが、爾後政府の施策の誤りまたは怠慢によつて、かりそめにもくずされることありとするならば、その責任たるや実に重大なるものがあると考えなければなりません。(拍手)
 政府は今日日本の置かれている国際的立場を正しく認識しなければなりません。日韓会談はもちろん、東南アジア諸国並びに濠州とのもろもろの問題、ソ連、中共との国交調整の問題等々、外交交渉において一歩を誤れば、日本はアジア圏において孤立するおそれが多分に伏在しているのであります。これらのことは、かつて片面講和をあえてなした吉田政府の外交政策の誤りに基因することを知らなければなりません。われわれは、奄美大島のみならず、沖繩、小笠原諸列島はもちろん、歯舞、色丹をも含む千島列島等の返還をも当然のこととして一日も早からんことを念願するものであるが、巷間伝うるところによると、沖繩、小笠原諸列島を現状の状態で永続することの内約によるというが、さようなことがかりにもあつたとするならば、断じて許さるべきではないと思います。
 政府は、事後のこれらの問題に対して、よりよき影響をもたらすための強力なる措置をとることを忘れてはなりません。政府は、ともすると、財源に籍口して、民生の安定と国土の復興をおろそかにする気配が濃厚にある。(拍手)国民生活の安定、国土の復興なくしては、日本の再建はあり得ません。この当然過ぎるほど当然のことを、一切の干渉を排し、断々固として実行するの熱意を、この奄美大島復帰を契機とし、これをよきケースとして仕上げることこそが政府の重大なる責任であることは、言をまたないところであります。
 政府はこれらのことを痛感され、最大の努力と最高の善処とをすみやかになされんことを強く要望して、本案に賛成するものであります。
#13
○議長(堤康次郎君) 冨吉榮二君。
    〔冨吉榮二君登壇〕
#14
○冨吉榮二君 ただいま議題となりました奄美群島復帰に関する協定に関して、私は日本社会党を代表して賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)
 まず、私は「今日あることを八箇年間待ち続けた島民二十万の諸君と、ふるさとを失われた在外二十数万の奄美出身者のために、心からなるお喜びを申し上げる次第でございます。(拍手)
 およそこの協定が成立しまする前の状態は、きわめて不健全な状態であり、きわめて不当な状態であつたと思うのでございます。いわゆる寛容と正義によつてつくられた講和条約の中で、しかも不割譲、無賠償の原則と言いながら、こうした事態が生れたことは、まことに悲しむべき事情である。このことが看過されたることに私どもは非常な不満を感ずるものでございます。しかも、奄美大島は、軍事的に申しましても、経済的に申しましても、何らこれをアメリカが占拠しなければならない理由は存在しないのであります。(拍手)これを、沖繩と同じ考え方のもとに、ずるずるべつたりで今日までに及んだことは、アメリカの大なるミステークであると思う。同時にまた、これを十分理解せしめることについて、政府の努力必ずしも私は十分でなかつたと思う。そもそも、ダレスがこの声明をいたしまして以来、政府はこれに力を得て非常に御努力になりました。その努力に対しましては私敬意を表しますが、それ以前における状態においては必ずしも十分でなかつたと私は信じておる。このような事柄は、今後の諸問題に関しましても、何とぞ政府当局におかれては、歯舞、色丹の問題、さらには小笠原、沖繩の問題に関して努力し続けられることをここに私は警告いたしておきます。
 それに、この奄美大島は今復帰いたしまして喜びに満ちておるのでございますが、先ほど来申されましたことく、まことに経済的に苦しんでおります。これを救済することを怠つて、もしそれ幻滅の悲哀を感ぜしめることがあつたならば、まことに悲しむべき次第であると思うのであります。この八年間の空白と地理的な条件により、非常な惨状を呈しておることは、もう私が申し上げるまでもありません。しかも、この地理的な関係とか、いわゆる沖繩政府とB円が同じ関係であることにおいて、取引がきわめて簡単であつた関係上、あるいは木材であるとか。牛であるとか、豚であるとか、鮮魚であるとか、相当の物資が沖繩にさばかれて参つたのであります。そしてまた、大島への送金が、沖繩から参りましたものが相当額に上りつつあつたのでございます。これは、当然、今後日本内地との交通が頻繁になり、経済的な支援等も伴いますれば、おのずから解決される問題と思いまするけれども、過渡的にきわめて困難な状態に立ち至るのであります。政府は、これらに対して、万々御処置は怠らないとは思いまするけれども、なおこの上とも十分なる力をお入れを願いたいと思うものであります。(拍手)
 交換公文の中に、この沖縄やあるいは小笠原等は従来のような処置を認める云々の文句があるやに承つておりまするが、これは、だんだんとお述べになりまして、さらにまた先ほど岡崎大臣のお話の中にもありましたが、復帰へ向つて努力をすると言いながら、ここに交換文書をもつて半永久的にこれを認められたしとする態度には、いささか食い違いがあるのではなかろうかと思うのであります。(拍手)これは、いわゆるその奄美大島の復帰を望むがために、ただそのときの便宜としてやつたと言われるかもしれないけれども、かくのごとき事柄は、便宜的に解決をするものでなくして、あくまで正々堂々の立場において、政府は今後自信をもつてこれらの問題解決に善処せられんことを私は望みまして、はなはだ簡単ながら賛成の言葉といたします。(拍手)
#15
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本件を承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
#16
○議長(堤康次郎君) 起立総員。(拍手)
よつて本件は全会一致承認するに決しました。
     ――――◇―――――
#17
○荒舩清十郎君 議案上程に関する緊念動議を提出いたします。すなわち、益谷秀次君外四百四十人名提出、奄美群島復帰祝賀に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。(拍手)
#18
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。
 奄美群島復帰祝賀に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。益谷秀次君。
    〔益谷秀次君登壇〕
#20
○益谷秀次君 ただいま議題となりました奄美群島復帰祝賀に関する決議案につき、各党を代表いたしましてその趣旨を弁明いたします。
 まず決議の案文を朗読いたします。
  奄美群島復帰祝賀に関する決議案
  本院は奄美群島、沖縄、小笠原諸島及び歯舞、色丹島の完全復帰につき屡々これを要望していたが、今や奄美群島は、日米両国間協定の調印により、十二月二十五日をもつて、再びわが国に帰属することになつた。
  待望久しい奄美群島の完全復帰は、ただに国を挙げての喜びであるのみならず、また独立日本の前途に限りない希望をもたらすものといわなければならない。
  願わくは全島民諸君は一斉に奮起し、祖国の再建に寄与されんことを切望する。
  本院は、アメリカ合衆国の好意ある措置に対して深甚なる感謝の意を表するとともにこの歴史的事実に対し、特に院議をもつて満腔の祝意を披瀝する。
  右決議する。
 諸君、御承知のごとく、わが国は、終戦以来連合国の好意ある援助と国民不撓の努力によつて、昨年の春四月一十八日に独立国家としての地位を占めるに至つたのでありますが、この歴史的な喜びの陰に取残された旧領土の一部がいまなお外国の支配下にあることを、国民は一日も忘れることがなかつたのであります。本院は、この国民の切実なる願いにこたえて、しばしば院議をもつて所信を明らかにし、奄美群島、沖縄、小笠原諸島及び歯舞、色丹島の完全復帰を期待し、かつ要望して参つたのであります。しかるに、その後は、政府の努力と全国民の期待にもかかわらず、いたずらにむなしい時日を経過したのでありましたが、本年八月アメリカ合衆国ダレス国務長官の来訪に際し、アメリカ政府は、必要なるとりきめのでき次第、奄美群島に関する平和条約第三条に基く権利を放棄し、日本の管轄権を復活し、奄美群島を再び日本に統合し、その住民を日本本土に結びつける見込みのついたことは、米国の満足と喜びである旨の声明が発表せられ、国民は初めて奄美群島の日本返還を示唆されたのでありました。この朗報を全国民は包み切れない歓喜をもつて迎えたのでありますが、わけても奄美群島島民の多年の苦節、悲願成就の胸中はまことに察するに余りありと申さなければなりません。
 奄美群島の、本土居住十八万七千、現地居住二十二万の島民は、こぞつて祖国復帰を念願し、その希望を実現するためにはあらゆる手段と労苦を惜しまなかつたのであります。しかも、ダレス長官の声明以来、日本政府の目途とした返還期日は、やむなき事情と、その間の折衝のために再三延引いたしたので、島民は断食をもあえてして、その日の一日も早からんことを祈願したことは、諸君御承知の通りであります。(拍手)しかしながら、期待はむなしからず、いよいよ本日奄美群島に関する日米両国間の協定が調印され、明二十五日をもつて発効する運びとなりましたので、島民四十万の痛嘆焦慮は一挙に解消し、日本全国民の久しきにわたる熱願はここに完全に達成されることに相なつたのであります。(拍手)
 思うに、奄美群島の返還こそは、今次大戦による痛手の回復のさきがけをなすものであり、昨今の世界の諸情勢を思うとき、必ずや近き将来において、やがては世界の平和と安全の保障に貢献すること多大なるものあるを信じて疑わないのであります。(拍手)ここに日米両国当局者の誠実なる努力と、機宜を得たるこのたびの措置に対し、満腔の謝意を表する次第であります。
 由来、奄美群島は、わが国の領土として永年の歴史を有し、地理的に九州本土に近く、従つてわが本土とは経済的、文化的にもきわめて密接な関係に置かれたのであります。物心両面にわたる島民の本土復帰の熱望は最も切実であり、従つてまた復帰実現の喜びもわれわれの想像を越えるものがあると信ずるのであります。(拍手)終戦以来八年間、文化的に経済的にほとんど孤立した群島が再び本土と一体となるこの際、願わくは島民諸君において、全島復帰の喜びを全島復興の意気にかえ、祖国日本の文化と平和のために協力し寄与されんことを切に希望する次第であります。(拍手)なおまた、政府におかれましては、この機会に、爾余の旧領土について格別の考慮を払つて、本土復帰の促進に最善の努力を尽している島民に報ゆるところあらんことを要望してやまないのであります。
 以上、本案の趣旨弁明を終ります。何とぞ満場の御賛同をお願いいたします。(拍手)
#21
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  [総員起立〕
#22
○議長(堤康次郎君) 起立総員。(拍手)よつて本案は全会一致可決いたしました。
 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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