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1953/02/24 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第12号
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1953/02/24 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第12号

#1
第019回国会 本会議 第12号
昭和二十九年二月二十四日(水曜日)
 議事日程 第十号
    午後一時開議
 一 しやし繊維品の課税に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
 二 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案(内閣提出)及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 内閣提出、補助金等の臨時特例等に関する法律案の審査を付託するため委員二十五名よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
 司法権の独立に関する緊急質問(椎熊三郎君提出)
 議員有田二郎君逮捕許諾に関連する緊急質問(山中日露史君提出)
 議員逮捕許諾に関連する緊急質問(木下郁君提出)
 茨城県その他における警察の教職員に対する思想調査、不当弾圧事件に関する緊急質問(野原覺君提出)
 小笠原大蔵大臣のしやし繊維品の課税に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
 大達文部大臣の義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案(内閣提出)、教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明、及びこれに対する質疑
 行政監察特別委員長の同委員会における調査の中間報告
    午後二時五十九分開議
#2
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。内閣提出、補助金等の臨時特例等に関する法律案の審査を付託するため委員二十五名よりなる特別委員会を設置いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。
 ただいま議決せられました特別委員会の委員は追つて指名をいたします。
     ――――◇―――――
#5
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、椎熊三郎君提出、司法権の独立に関する緊急質問、山中日露史君提出、議員有田二郎君逮捕許諾に関連する緊急質問、及び木下郁君提出、議員逮捕許諾に関連する緊急質問を逐次許可せられんことを望みます。
#6
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 司法権の独立に関する緊急質問を許可いたします。椎熊三郎君。
    〔椎熊三郎君登壇〕
#8
○椎熊三郎君 私は、改進党を代表いたしまして、昨日本議場においてなされましたる有田二郎君逮捕許諾に関する問題に関連いたしまして、主として日本国憲法の基本問題たる三権分立の精神について、総理大臣並びに司法の最高責任者たる犬養大臣にお尋ねしたいのでございます。
 昨日の当議場において行われましたる有田君の問題は、同僚の議員を犯罪の容疑をもつて検察当局が逮捕したい、こういうことから起つた問題であります。われわれ国会議員、憲法によつてその身分を保障せられております。すなわち、国会召集中は逮捕せられることがない。けれども、それは絶対の規定ではなくて、法律に準拠しては、しかも議員がこれに許諾を与えるにおいては逮捕をなし得るのであります。そもそもこの憲法の条章の精神は何であるのか。いやしくも国民の代表たる国会議員たる者が何らかの政略的なカによつてその本来の使命を自由に発揮することができないようなことがあつてはならないのであつて、常に議案審議の上に議員としての使命を全与する上にはこれを保障しておくという大精神から来ておるので、当然のことだと私は思います。もしそれこの規定がなければ、フアツシヨ的な政府が、あるいはその他の力が、故意に国会議員の自由を剥奪するがごとき状態が起らぬとも限らぬ。それを擁護するための規定であつて、当然の規定であると私は思います。しかしながら、それは絶対ではなくして、他に法律に準拠するならばこれを逮捕することもできる。しかし、それも院議によつて決定しなければできぬという、憲法上厳格なる規定だと私は思うのであります。
 同僚有田君はいかなる犯罪事実によるのか、容疑によるのか、私は知りませんが、内閣総理大臣から堤衆議院議長にあてたる逮捕許諾請求書には、五十万円の金を何がしかと共謀して官吏たる身分の者に贈賄した共犯の容疑であるということでございました。犯罪の内容については、私どもはここで論じようとは思いません。けれども、これは、世間的には、いわゆる造船疑獄と称する、国民が非常な関心を持つておる大疑獄事件に根拠があるのであります。従つて、この案件は単に有田君個人の五十万円の問題のみとは思われない節があるのであります。そこで、私は、議院運営委員会におきまして、犬養大臣並びに刑事局長に詳細にそのことの説明を願いました。刑事局長は、五十万円とはけたの違つた、多額の金の出入りがあるのだ、そのためには、こういうことを捜査して行く上において、すでに有田君には犯罪の証拠を隠滅したがごとき疑いがある、さらにはまた、今後犯罪の証拠を隠滅するがごとき危険がある、そこでこれを逮捕しなければならぬと言う。そこで私が犬養さんに聞いたのは、国会議員たるものは憲法で身分の保障をせられておるものであるのに、あえてあなたが、この重要な予算その他の重要案件を審議しておる最中、与野党の分野がこんなに接近しておる最中に、有田君を逮捕しなければならぬという検事総長の進達に同意したのには、この逮捕がこの事件究明のための唯一無二、絶対の方法であるのかどうか、他に選ぶ手段がなかつたのか、私はそれを追究した。犬養さんは、私の感じでは涙ぐましいような音声を出して、情においては忍びないが、これ以外に方法はなかつたのだ、検事総長の進達は私は同意せざるを得ない、そういう確信のもとに逮捕の請求を出したと言われておるのであります。そこで、内閣が、閣議の決定をもつて、吉田総理大臣の名によつてこれを請求して来た。
 それは、逮捕するということに許諾を与えるか反対するかという憲法五十条の議員の身分の保障は、単に検察官の逮捕請求だけでは侵されないのです。自主性は国会にある。いけなければ、国会はこれを拒否するの権利を持つております。そこで、この請求に対して許諾を与えるか反対するかは院の自由である。しかるに、昨日のこの院の決定はどうか。許諾は与えるが期限付だという。三月三日まで逮捕することができるという決定だ。そもそもこれが内閣から請求せられたる案件の答えであるかどうか。私は、これは不当の決議だと思う。(拍手)衆議院の規則には、百四十九条によつて、表決にあたつては条件を付してはならぬという。しかるに、自由党は突如として条件を付した。自由党に言わせると、これは条件ではない、期限をつけたということだ。私は期限を内容とする条件であると解釈するのです。(拍手)従つて、議事規則の上からは違法の決議をなしたと私は断定する。(拍手)
 しかしながら、諸君よ、違法であつても決議は決議なんだ。そこで、私は内閣並びに司法当局に問わなければならぬ点があるのであります。諸君、違法であつても、また諸君の暴力的多数の力によつてであつても、決定した以上それは本院の院議ですから、われわれは尊重したい。そこでわれわれは、国会議員として院議を尊重するの建前をとるのは当然でございます。しかしながら、そのこと自体が司法権の独立性を侵犯しているのではないか。すでに有田君に対する逮捕状は今から一時間ほど前に出たそうですから、それですから、裁判所においても相当の決意があつてやつたことだろうが、わが院の決定は三月三日まで。この院の決定を尊重すれば、三月四日には有田君を釈放しなければならぬことになる。犬養さんに開きたいのは、捜査の途上において証拠隠滅の疑いありとして逮捕した者に期限を付して、司法当局と言いましようか、検察官の目的が完全に保証らせれるものであるかどうか。(拍手)そんなことでほんとうの捜査ができるのかどうか。
 そこで私は内閣に聞きたいのは、わが日本国の憲法の精神は、三権分立の精神を蹂躪しては立憲政治は成り立たない。(拍手)われわれは国家最高の機関に議席を持つておる。しかしながら、行政府も司法部もそれぞれ独立したる権限を持つて、その間紛消してはならないのです。画然たる独自性を持つているところに立憲政治が円満に運用できると思う。そこで、かくのごとき決定は司法部に対する行政府の行き過ぎではないのか。(発言する者多し)立法府の行き過ぎではないのか。もしそうだとすると、三権分立の精神が破れる。もしそれ司法部が立法府の決議を尊重して中途半端で有田君を三月四日釈放しなければならぬということになりますなら、これほど世の疑惑の的となつておるこの案件が明確なる結論に到達することができないという結果になる。(拍手)私は言う。自由党の諸君は、それほど有田君を擁護したかつたならば、なぜ議会本来の権能によつて逮捕に反対の主張をしなかつたのか。(拍手)堂々と反対しなさい。しかるに、半分賛成して半分反対しておるようなその行動は、世論を恐れたる卑怯未練の行動ではないか。(拍手)そういろ行動は必ずしも有田君にとつても有利なことではありませんぞ。(発言する者多し)いわんや、多数の力をもつて捜査に妨害を与えたという世論が沸騰しておるのです。(拍手)
 そこで犬養さんに聞く。あなたは、検事総長の進達によつて、絶対証拠隠滅を防ぐためには有田君を逮捕しなければならぬと請求したと言うのだが、事態はこうなりました。しかも、閣議で決定したが、あなたの要求と違つた結論を出した。そこで、あなたは司法部に対しては検事総長を指揮命令する権利がおありになるそうだが、そんなことで一体司法部の最高責任者たる権威を維持することができるのかどうか。(拍手)現に、今朝の新聞によれば、検事総長はすでにして昨夜の決議は無効であると発表しておる。(拍手)あなたと検事総長とは同意見だ。それが破れたる今日において、あなたの責任はどうか。
 しかも、私の最も残念にたえないことは、犬養法務大臣の進言によつて閣議は有田を逮捕するという請求に一致しながら、きのうの投票には閣僚こぞつて反対の投票を入れておるのはどういう意味か。われわれとは反対の投票を入れておる。私は、理論上はどうあつても、政治道徳上は許されざる行動だと思います。(拍手)しかも、犬養法務大臣は当院内に登院しておりながら、きのうはあの投票に参加しておらぬ。それは一体どういうわけか。責任ある政治家なら、あなたの主張を全うするために、堂々たる結論を得るための投票をしてしかるべきだ。およそ、あなたは自由党という政党に遠慮せられたのでしよう。心事はよくわかりますが、それでは司法の最高責任者たるの権威を維持することができないと思うが、どうか。(拍手)しかも、このことが端緒となつて、これが前例となつて、次々と、もしこういう事態が起るとならば、日本の治安の責任の最高にあるあなたとしては、まさにこの事態の紛糾の大責任を負わなければならぬと私は思うのです。あなたの法務大臣就任中に憲法の大精神が蹂躙せらるるがごとき問題が起つたということは、あなたのためにも不幸なことである。しかしながら、起つた以上は、あなたは責任を明確になさらなければならぬのでございます。
 総理大臣もおりませんし、時間もありませんから、簡単に緒方さんにお伺いする。内閣は有田君の逮捕請求に満場一致賛成して、しかも結果においては捜査に不都合を来すような決議が行われた。しかも、あなたはわれわれと反対の投票をしておる。
#9
○議長(堤康次郎君) 椎熊君に申し上げます。申合せの時間が来ておりますから、なるべく簡単に願います。
#10
○椎熊三郎君(続) もう結論です。そこで、あなたの内閣としての責任を聞きたい。立法、司法、行政の三権分立を守らなければ、日本の立憲政治を守ることができない。今や、わが国の三権分立は、一部一派の人々の横暴によつて、まさに立法府が司法部に介入したがごとき状態が現出しておる。(拍手)この事態を政府としていかに見るか。三権分立に対する内閣の明快なる見解を私は披瀝していただきたい。
 なお、私は、この事態のために、国会がともすれば重要案件の審議を忘れて、あそこでもここでも疑獄々々で明け暮れしておるような印象を与えておることは、国会のために残念です。そこで、私は、一たび検察当局が手を下した問題は立法府としては静観すべきものだという持論を持つておるのであります。従つて、立法府は、自重するとともに、あえて司法部の権限を侵してはならぬ。厳然として事態の推移を見守るのが議会の態度であると私は信ずるのでございます。(拍手)従つて、この際、犬養法務大臣の責任、緒方副総理の内閣を代表しての憲法の精神に対する御見解を承りたい。
 なお聞きたいこともございますが、時間の注意もございますので、この程度にとどめておく次第であります。(拍手)
#11
○議長(堤康次郎君) ただいまの椎熊君の発言中、秘密会の内容で、もし秘密を要する部分があれば、速記録を取調べの上適当に処置いたします。
 国務大臣緒方竹虎君。
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#12
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 最初に、期限付許諾を与えるの件は、三権分立を混消させ、捜査の妨害となるもので、あの動議は不当ではないかという御質問でありまするが、政府といたしましては院議を尊重すべきものと考えた次第であります。
 次に、三月三日までに釈放しなければならない趣旨になるが、表決に期限という条件を付することは衆議院規則に反するものではないか。これは政府としては意見を申し上げる立場におりません。それから、結果において刑事訴訟法の逮捕、勾留の権限を院議によつて縛ろうとするもので、従つて司法権の侵犯になるではないかという御質問に対しましては、政府といたしましては院議を尊重すべきものと考えております。裁判所がこの議決をどういうふうに取扱うかは、事司法に関することでありますから、私から申し上げる限りではございません。
 次に第四の御質問でありますが、司法部が衆議院の院議を尊重しなかつたときには、院議が踏みにじられたことにもなり、また院議自体が不当であるということになりはしないかという御質問でありますが、これは事司法に関することでありまするから、私としては意見を申し上げられません。
 それから、閣議決定をして政府が許諾を要請しながら、同じ閣僚が請求理由とは別の意義を持つた投票を行つたことは無責任ではないかとの御質問と承りましたが、内閣が閣議決定の上逮捕許諾の要求を提出いたしましたことは、国会法の命ずる手続を忠実に履行いたしたものであります。すなわち、この閣議決定は、いわば事務的手続的のものであり、事の性質上、政治的考慮を加える余地のないものであります。従いまして、この閣議決定に加わつた閣僚が、衆議院議員たる資格におきまして、独自にその賛否を表明することは、議員としての職責上当然のことであり、法律的にも政治的にも何ら問題になる余地はないと考えております。
 以上申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣犬養健君登壇〕
#13
○国務大臣(犬養健君) お答えを申し上げます。
 椎熊さんが言及せられましたように、われわれは院議に対して尊重の念を持たなければなりません。すでに院議が決せられました以上、これに対して司法部の捜査方針について便宜であるとか不便宜であるとかいうことは、今後四十八時間後に発せられるべき勾留状の内容を見ない前に申し上げることは政府として差控えたいと存じます。
 それから、ただいま申し上げましたように、椎熊さんも言及なさつたことでございますが、本日午後一時ごろ東京地方検察庁の常井検事が有田議員に対して取調べを始めております。勾留状はすでに発せられておる由でございますから、勾留状の切りかえが行われますのはおそらく二月二十六日と予想せられますので、同日夕方になりませんことには、いかなる内容の勾留状が発せられるかわかわません。この勾留状が発せられた後において、この勾留状のわくの中において、司法部としてはできるだけの善処をいたしたいと考えておる次第であります。
     ――――◇―――――
#14
○議長(堤康次郎君) 次に、議員有田二郎君逮捕許諾に関連する緊急質問を許可いたします。山中日露史君。
    〔山中日露史君登壇〕
#15
○山中日露史君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日本院におきまして可決せられました、有田二郎君の逮捕につき条件付許諾を与えた点についての、内閣総理大臣並びに関係大臣の所見について若干の質問をいたしたいと思うのであります。
 先刻来、緒方副総理並びに犬養法務大臣は、昨日の院議は尊重するということを申しておりますが、私は、院議を尊重するかしないかということではなしに、あの昨日の条件付許諾というものが法的に効力があるかどうかということについての政府の法的見解を承りたいと思うのであります。
 国会を国権の最高機関と規定いたしました新憲法におきましても、立法、司法、行政の三権分立の精神というものは厳然として存在し、これを相侵ざざるところに民主主義の根本原理のあるということは、いまさら申し上げるまでもありません。憲法が国会議員の逮捕に関して国会開会中は院の許諾を必要といたしましたゆえんは、時の政治権力によつて国会開会中みだりに国会議員を逮補して立法府に司法権が干渉するのを排除するにあるということは、これは申し上げるまでもありません。それと同時に、一旦逮捕を許諾した以上は、あとは司法権におまかせをして、立法府が司法権に制約や干渉がましいことをしないというのが憲法の精神であるということも忘れてはならないと思うのであります。(拍手)しかるに、昨日の院議において条件付許諾を与えたということは、いまだかつて前例のないことであるのみならず、許諾以後における司法権の行動に制約を加えるものであつて、明らかに憲法の精神に反するものであると言わざるを得ないと思うのであります。(拍手)この点に関する緒方副総理並びに法務大臣の所見を承りたいと存じます。
 次に、衆議院規則との関係でありますが、衆議院規則の百四十九条には、明らかに、表決に対しては条件を付してはならないということを規定いたしております。この規定の立法の趣旨は、いやしくも表決たる以上は、将来の条件とかあるいは期限とかいうものの成就、到来によつてその表決が左右せらるるという不明確性を排除するところに立法の精神があるということは、これまた申し上げるまでもありません。従つて、民法上の条件と期限の区別というようなものは問題にならないのであります。従つて、かかる条件は当然期限を含むものでありますから、こういうこぶをつけるような表決は無効であるとわれわれは考えておりますが、これに対するところの政府の所見を承りたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、逮捕許諾に関して国務大臣が表決に加わる問題であります。この問題は、法律的問題というよりも、むしろ内閣の政治的責任、あるいは投票に加わつたその国務大臣の心境に対して私どもは伺いたいと思うのであります。一旦閣議におきまして有田逮捕問題について院の許諾を必要とするという決定がなされました以上はむろん、大臣も国会議員でありまするから、投票権を行使するということ自体は私どもは必ずしも違法とは存じません。しかしながら、その許諾を与えるという閣議の決定に対して、本会議におきまして条件付の許諾に投票を行おうとしたその心境を、私どもはまずお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)これを要するに、有田二郎君の条件付許諾の問題は、一旦許諾を与えた以上は一切を司法機関にまかせるべきでありまして、許諾すべきか、あるいはすべからざるかの二者択一の問題であつて、予算審議のときに頭数が一人足りないというような、そういう政治的な意味をもつて、そういう理由から期限を付するということは、明らかに憲法並びに衆議院規則の精神を無視するものと言わなければならぬと思うのであります。(拍手)今日世論は吉田内閣の疑獄事件につきまして鋭い批判と餐豊を傾けております。このときにあたりまして、許諾そのものを容認しておりながら一定の期限を付したということは、法律問題は別といたしましても、有田問題を、予算審議の重要性に名をかりて、期限付をもつて証拠隠滅の機をとらえんとしたものであることを断言せざるを得ないのであります。(拍手)以上の諸点につきまして、政府の明らかなる法的見解を承りたいと存じます。以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#16
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。政府といたしましては、院議を尊重すべきものであると考えております。また、それに対してどういう意見を持つておるかという御質問に対しましては、政府はこの際意見を言うべき立場にないということを申し上げたいと存じます。さらに、表決の期限、あるいは閣僚が逮捕許諾を要請した趣旨と違う投票をしたことにつきまして御質問でありましたが、これに関しましては、先ほど椎熊君の御質問にお答えをいたしたので、ここに繰返しません。
    〔国務大臣犬養健君登壇〕
#17
○国務大臣(犬養健君) お答え申し上げます。
 有田議員の逮捕状に条件をつけたことが有効であるかどうかとい御質問であつたと存じます。有田氏に対する逮捕状許諾は、現に本日裁判所から逮捕状が出ておりますので有効でございます。ただ、三月三日まで許諾をするのが有効であるかどうかにつきましては、先ほども申し上げたと存じますが、二月二十六日夕方発出せられるであろうところの裁判所の勾留状によつて私どもは判定いたしたいと考えております。次に、すでに院議が議決せられたことでございますから、院の議決の精神を尊重して処置するほか政府としては処置の方法がないと存じます。しかしながら、この議決を裁判所がいかに取扱うかは裁判所の権限に属しておりますので、私からこの場合申し上げることは差控えたいと存じます。
     ――――◇―――――
#18
○議長(堤康次郎君) 次に、議員逮捕許諾に関連する緊急質問を許可いたします。木下郁君。
    〔木下郁君登壇〕
#19
○木下郁君 私は、日本社会党を代表いたしまして、議員有田二郎君に関してなされました昨日の逮捕許諾の決議に関連して、緒方副総理、犬養法相及び法制局長官に、政治的並びに法律的な両面から若干の質疑をいたさんとするものであります。昨日当院でなされました有田君の逮捕許諾の案件の審議にあたつて、三月三日までという期限付の許諾の鍛冶君の動議が自由党の諸君の賛成で成立しましたことにつきまして、有田君がかつて本院において懲罰に付せられたという札つきの前歴者であることと、有田君の容疑の一つでありますところの造船疑獄が、ひとり有田君ばかりでなく、先日予算委員会で中曽根君によつて発表されました通り、自由党の首脳部、ことに閣僚にまで疑惑の雲がかかつておりますので、日本全国民は、昨日の決議に対しまして、自由党の立場に対してあきれ返つております。(拍手)真に真剣な、まじめな人たちは、憤激をすら覚えているのであります。(拍手)平素綱紀粛正を口にされておりますところの吉田内閣は、昨日の決議が日本全国民を十分納得させているとお考えになるか、それとも全国民はあの決議を不明朗なものと考えていると思うか、いかように感じてるか、その点を承りたいのであります。(拍手)
 次に、吉田内閣は、経済自立のための緊縮政策と称しまして、何十万という働く者の首を切つてその生活権を脅かしながら、反面において、有田君の逮捕に関連しているこの造船疑獄の一事だけの例を見ましても、利子補給とか損失補償とか称しまして、国民の血税から何千億という金を出している。その中に、経営困難と称して利子の補給を受けあるいは損失の補償を受けている造船業者、船会社が、なんと何百億という金を政界汚濁のためにばらまいている。(拍手)有田君のごとき一議員にしましても、その後援会と称するものに多額の金が出たことは、御本人が言つているのであります。かような姿で、国民が政治を信頼するでありましようか。国民の政治に対する不満と憤りはフアシズムとなり共産主義となることは、火を見るよりも明らかであります。正しき者、働く者が暮しにあえぎ、権力を持つ者、不正を働く者が栄華に誇る今の日本の姿を総理大臣は何と考えているか。世に共産党とフアシズムを育成するものは吉田内閣であると言われております。(拍手)この政治の姿を見れば、そう言われるのもまことに無理からぬと思うのであります。吉田内閣は、今の姿でもなお一割のリベートを受取つている船会社に従来通りの補給金を支給せんとする政策を続けようとしているのかどうか、その点をお伺いいたしたいのであります。
 次に、有田君の逮捕許諾に対して、犬養法務大臣は最初から無条件の許諾を求めて来たのでありまするが、三月三日などという期限をつける動議に対し欠席されまして、同じ内閣の閣僚は期限付に賛成されまして、政府の統一のないことを暴露したのであります。犬養法相は、なぜ堂々と出席して、この動議に反対しなかつたのでありますか。政治道徳の振興のためにも、この点を伺つておきたいのであります。内閣不統一のこの醜態は、国民が絶対に納得しないところであります。吉田総理は、かような閣僚の不統一な行動に対して、政治的に何の責任もお感じにならないのかどうか、その点を伺つておきたいのであります。(拍手)
 次に、昨日の期限付逮捕の許諾の法律的効果につきまして、今朝の新聞でもわかりまする通り、全部が無効であるという説と、全部有効であるという説と、期限付の部分だけが無効であるという三つの説が出ております。私は、議員の会期中の不逮捕、会期前の逮捕者に対する釈放の要求というような問題に関する憲法五十条及び国会法の三十三条、衆議院規則の百四十九条等の趣旨から考えまして、昨日の鍛冶君の出したあの三月三日までというのは、三月三日までで、四日には釈放するならば許諾するという意味の趣旨であれば、これは無効であります。しかしながら、私はさような意味ではないと考えておるのであります。それで、私は、三月三日の期限を付した部分の効力があるかないかが問題になると思います。
 憲法五十条において、特に会期前の逮捕者の釈放要求の道を開いておるが、会期中に逮捕された者に対して釈放要求ができるかできぬかという点については、憲法にも、ほかの法律にも規定いたしてありません。そこで、これをいかに解釈すべきものかということが問題になるのであります。昨日の決議は、逮捕の許諾と、三月三日限り釈放すべしという二つの違つた内容を持つた決議であると私は考えるのであります。そうして、その逮捕に許諾をするという部分は有効であります。しかしながら、その三月三日限り釈放するという釈放要求の部分は、前に申しました憲法の規定その他から考えて、これは無効であると私は考えるのでありますが、(拍手)政府、法制局長官はどういうふうにこれを御解釈になつておるか。国民も疑惑を持つております。けさの新聞で国民は迷うております。その迷いを解かせることは、政治の衝に当る者の責任であります。(拍手)それをお答えにならないで、詭弁を弄して犬養法相がのがれんとするがごときは最も卑怯な態度であります。昨日もこの議場に出席しなかつたと同じような卑怯な態度と言わざるを得ないと思います。(拍手)
 それからなお、これは直接これに関係する問題ではありませんが、政府に伺つておきたいのは、この議員不逮捕の原則が設けられました歴史的な意義から申しましても、私は、司法部から逮捕の許諾の要求があつたときには、議院としては、議院の都合でこれに応ずるか応じないかを決定すべきものである、そうしてその容疑は、証拠が十分あるかないか、どんな罪質なのかというようなことには立ち入るべきものではないと考えております。議院の都合で、その人の国会内における働きが必要であるかいなかによつて逮捕の許諾に応ずるか応じないかを決定すべきものであると私は考えておりますが、この点に対して、政府は、ことに法制局長官はどんなふうに御解釈になつておるか、伺つておきたいのであります。なぜその点を伺うかと申しますると、私が繰返さなくても、三権の分立、われわれは、立法府としもてのわれわれの権威に、つめの先も侵害を加えることを許しません。しかしながら、同時に、私どもは、司法権の独立のためには、やはり渾身の力を注いでこれを擁護しなければならぬと信ずるから、この点を伺うわけであります。(拍手)
 最後に犬養法相に伺つておきたいのは、鍛冶君は昨日、三月三日という期限をつけたそのたつた一つの理由としまして、三月四日ころ予算案が上程されるから、それに欠席してはならぬということを言われました。これは鍛冶君研究が是らない。執行停止の手続というのが刑事訴訟法上あります。予算審議の採決に加わるために出ると言えば、執行停止の方法をとれば、りつぱに出て来られるのであります。それを、かような、予算審議のためというようなたつた一つの理由でああいう動議を出しましたが、これはまつたく理由になりません。勉強が足らないか、またはほかに意図するところがあつたと解釈する以外に方法はないのであります。
 その点について、なぜかような期限をつけたかということについて、国民はかように考えております。院内の政治情勢が、自由党にとつて一票、二票がたいへん大切だというような情勢にあるので、自由党の諸君がやはり有田君の一票を温存するという意味があつたのではないかということと、それから、有田君の演じておるいろいろな役割、造船疑獄における役割その他等々の役割の比重が相当重いのでこういう結果になつたのではないかと国民は考えております。(拍手)さような点について、十分、政府たるものは、ことに犬養法相たるものは、はつきり国民に態度を示す必要があると思います。
 私は、国民がかような疑惑を抱くのは無理もないと思います。犬養法相は、今でも期限付許諾決議は不当である、自分の請求したのは期限付許諾請求ではなかつた、さような意味でこの許諾請求が不当であるとお考えになつておるかどうか。それが不当であるかどうかということを勾留期日が来るまで待つてするというような、そんな詭弁でお答えになつたのでは、あなたの政治家としての誠実さに対する国民的信頼が一ぺんに吹つ飛んでしまいます。どうかまじめにお答えを願いたいのであります。
 以上をもちまして私の質疑を終ります。(拍手)
#20
○議長(堤康次郎君) ただいまの木下君の発言中、有田君に関し事実の誤りがあるとの申出がありますので、速記録を取調べの上適当に処理いたします。
    [国務大臣緒方竹虎君登壇]
#21
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。いろいろ御意見を承りましたが、私に対する御質問の要点は、昨日の衆議院の動議を不明朗なものと思わないか、また期限付の逮捕許諾は有効であるか無効であるかということのようでありまするが、政府といたしましては、この場合院議を尊重するのみでありまして、これらのことについて意見を申し上げる立場にないということをお答えいたします。(拍手)
    [国務大臣犬養健君登壇〕
#22
○国務大臣(犬養健君) お答えを申し上げます。
 たびたびの御質問でございますが、期限付許諾が当であるか不当であるかという御質疑でございますが、すでにお答え申し上げましたように、われわれぱ院議に対して尊重の念を持たなければなわません。すでに院議が決定いたしたことでございますから、この院議尊重の念を現実問題たる来る二十六日夕刻に発せらるべき勾留状の内容にどうやつて具現的に現わすかということを待つよりほかはないと存じます。
 次に、昨日の動議に私が欠席したのは卑怯で、けしからぬということでございますが、実は期限付許諾ということを伺いまして、これは少くも前例にございませんので、これに対する確たる観念を持たなければなりませんと存じまして、法務当局を本省から呼んで相談しているうちにドアがとぎされたのでありまして、議員としてまことに遺憾に存じております。
 それから、三月三日の許諾の有効、無効のことでございますが、先ほど申し上げましたように、幾たびか繰返すことになりますが、二月二十六日夕方発せられる勾留状の内容を見てわれわれは判定いたしたいと考えております。
 期限付の逮捕状の許諾は全部無効であるか有効であるか、一部分有効であるかということでございますが、御承知のように、本日裁判所から有田議員に対する逮捕状が発せられましたので、これは少くも全部無効ではないという証拠になると存じます。爾余のことは詳細今調査中でございます。
 それから、逮捕許諾についていろいろ被疑事実の内容の論議があつたようだが、これは穏やかではないのではないかというお話でございましたが、いかにも、私は議院運営委員会に出まして、秘密会の条件のもとに逮捕のやむを得ざる事情を述べました。しかし、これは、逮捕の許諾の可否につきましては、もとより院が御決定になることではございますけれども、その御決定になる判断の資料としては、できるだけ最小限度の材料を懇切に提供することが当然の義務と考えた次第でございます。(拍手)
    〔政府委員佐藤達夫君登壇〕
#23
○政府委員(佐藤達夫君) 昨日許諾の議決に関しまして、その効力のお尋ねがありましたが、ただいま両大臣からお答えがありましたところに別につけ加えることはないと存じます。要するに、昨夜衆議院議長のお名前によりまして総理大臣あてに正式の通知が参つております。その通知にうたわれておりますところの院議の内容をそのまま尊重して行くほかはない、かように考えております。(拍手)
     ――――◇―――――
#24
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、野原覺君提出、茨城県その他における警察の教職員に対する思想調査、不当弾圧事件に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
#25
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 茨城県その他における警察の教職員に対する思想調査、不当断圧事件に関する緊急質問を許可いたします。野原覺君。
    [野原覺君登壇〕
#27
○野原覺君 私は、日本社会党を代表いたしまして、最近ひんぴんとして、全国的に、しかも組織的に行われておりまする教職員の思想調査、並びに警察官の教職員に対する不当な圧迫というきわめて憂慮すべき事態につきまして、総理大臣並びに文部、法務関係者大臣に対して緊急の質問をいたさんとするものでございます。(拍手)
 今日全国的に頻発いたしました教職員の思想調査のケースは、およそ官憲を通ずるものと都道府県、地方教育委員会を通ずるものとに二分されようかと思うのでございます。しこうして、これら権力機関の思想調査の内容の一端を述べまするならば、制服の警官、地区警察署の刑事等が、教員の研究会等についての会合の内容、時間、人員、講師等を質問し、または書面にて提出することを強要し、調査にあたつて、これらの警官は父兄の家を訪問し、あるいは学校長を通じ、町内の嘱託員に依頼し、はなはだしきに至つては、教員の一人もいない校長室に生徒を呼び入れ、学校帰りの児童のノートを検閲する等、教育上まことに恐るべき方法によつて調査をいたしておるのであります。(拍手)その他、若い女教師の下宿へ、不在の折を見て一日数回も警官が調査に行つたり、あるいは友人の名を使つて教員を呼び出して調査をしたり、あるいは軍事基地のできることに反対をした教師の動向を調べる等、幾多の例は実に枚挙にいとまがないわけでございます。しかも、かかる調査を受けた府県は、二月二十日現在で新聞に報道されたものだけでも、青森県、秋田県、山形県、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、長野県、新潟県、山梨県、大阪府、京都府、兵庫県、岡山県、山口県、島根県、鳥取県、香川県、高知県、福岡県、長崎県、鹿児島県、実に一都二十五府県の多きに達しているのでございます。特に静岡県におきましては、二月一日前後におきまして数十校が調査を受けております。私は静岡県の実態の調査に参つたのでございますが、県の国警隊長は、調査に参りました私どもに対しまして、まことに申訳がございませんという陳謝の意を表明し、青森県におきましては、二月八、九、十の三日間にわたつてこれまた十数校が調査を強要されているのでございます。かくのごとき事実をもつていたしましても、なお政府は、かかる調査はまつたく偶発的なものであつて、何ら組織的、計画的になされたものではないと断言できるでございましようか、法務大臣の見解を承与たいのであります。(拍手)
 次に、調査に私どもが参りますると、各地の国警が申しておりますことは、本部の知るところではない、われわれは関与しないということを言つておるのであります。法務大臣は、参議院の本会議におきまして、その取締りに私は努力をすると答えながら、なおかつ警察官の教職員に対する不当なる思想調査が跡を断たないのは一体いかなる事由によるのでございましようか。(拍手)もしそれ、上司の命令ではなくて、単なる下部末端の警官の行き過ぎであるとお考えになるならば、かかる行き過ぎた行為をとられた警官に対し、いかなる処分を法務大臣はなされましたか、それともまたなさらんとせられておりまするか、同時にかかる事例の根絶に向つて今日までいかなる努力をなされましたか、お伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)
 次に文部大臣にお尋ねをいたします。警察官が教員の行動を調査し、子供を通じて教師の言動を探るというがごときは、まつたく教師を侮辱し、危険人物扱いをするばかりでなく、実に教育を冒涜するもまたはなはだしいと言わなければなりません。(拍手)御承知のように、日本国の憲法は、第十九条、第二十一条、第二十三条において学問、言論、集会、結社、出版、思想の自由を保障し、これを侵してはならぬと明確に規定してございます。文部大臣は、この憲法の命ずるところに従つて、特に学問と教育の自由を守る義務と責任を有するはずである。その文部大臣別、警官の不当なる行動に対し、何らの抗議をも発しないばかりか、いたずらに換手傍観、むしろ警官のかかる行動を是認するかのごとき態度をとられていることは、まことに奇怪千万と申すべきであります。(拍手)この点に関し文部大臣はいかなる所信を持たれておりまするか、承りたいのでございます。
 なお、文部大臣は、あらゆる機会に、教員の思想調査をいたしたことはございません、このように申しておられるのではございまするが、遺憾ながら、私はその抗弁はまつたくの論弁であつて、ごまかしもまたはなはだしいと言おなければならないのであります。何となれば、ここにその証拠を持つておるからであります。あなたは、昨年末十二月二十三日付親展にて、各都道府県教育長に対し、教育の中立性が保持されていない事例についての調査の要求を文書にて依頼したのであります。私はこの件に関し茨城県を調査いたしたのでございまするが、茨城県の教育長を調査した結果はつきりいたしましたことは、学校長ないしは地方事務所長等に対し、極秘裏に調査するよう命令し、あわせて私見を附加して報告するよう要求をいたしておるのであります。文部大臣は、このことに関し、この調査は教育の実情調査であつて、教職員の思想調査ではございませんと申されるかもしれませんが、しかしながら、これは具体的事例の調査に名をかりた教員の思想調査を行つたものであることは明らかでございます。とにかく、文部大臣は、教育を今日の政治権力のもとに掌握しようという野望を持たれておるのであります。教育の中立性保持という美名に隠れて政府権力のもとに構成せられた教育が、はたして中立性を保持した教育であると言い得るでございましようか。(拍手)一国の文政を預かる責任者文部大臣が教育を権力支配のもとに置くことは、みずから教育の中立を侵犯することであり、憲法違反の行為をあえてしておるものであると私は思うのでございます。(拍手)このことは断じて私どもは承認することができません。この点に関し文部大臣はいかなる反省を持たれておるか、承りたいのでございます。
 最後に、私は総理大臣に質問をいたします。今日政府は教員から政治活動の自由を全面的に剥奪し、懲役三年という威嚇の中で日本の教育と民主主義を根底から破壊せんとする、世界に類例なきフアシズム的悪法をつくろうとしておるのであります。しかして、この反動的文政の担当者である大達文部大臣は、かつてシンガポールの市長を勤められたはずである。(拍手)小磯戦争内閣の内務大臣を勤められたはずである。その文部大臣を先頭として、このお方が今日新しい時代の日本の教育の指導者に納まつて、教育を権力に隷属させるために、次官にはかつて満州国総務長官時代の部下であつた特高の経験者である田中義男君を置き、初等中等教育局長にはシンガポール市長時代の司政官をしておつた緒方信一君を置き、地方課長にはこれまたシンガポールで陸軍大尉をいたしておりました時の参謀斎藤正君を置いておるのであります。これらの三君を中心といたしまして、憲法に違反してまで教員の思想調査を断行せんとすることに対し、総理はいかなる所見を持つておられるか、承りたいのでございます。
 なお、政府は、本日、国民の輿論一切を無視して、私のこの質問演説が終つた後において教育の中立性維持の法案を出すようでございますが、今日汚職と疑獄に包まれた吉田内閣が、国民の疑惑をも解明することなくして憲法違反の法案を提出し、教育の権力統制を策するがごときは、実に越権もはなはだしいと言わなければならぬ。(拍手)この意味において、われわれは、かかる法案は現政府のもとには提出すべきものでない、よろしく撤回すべきものであると考えるのでありますが、これに対し総理はいかなる所信を持たれておるか、明確なる御答弁を要求いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#28
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 文部大臣あるいは文部当局に対していろいろな御批判がありましたが、今日の文部省におきましては、教育基本法の定むるところにのつとりまして、日本の教育を政治的偏向から救おうといろ意味において、国のため全身全霊をあげて努力しておるのでございまして、その点について何ら国民の信頼を裏切るものではございません。
 なお、疑獄の疑雲に包まれた内閣云云ということを言われたのでありますが、政府には何ら疑獄の関係者はございません。その点につきまして、少くとも私はまつたく野原君と所見を異にするのであります。政府といたしましては、信念に基きまして、今日の教育行政の最も重要と信ずる政策を誠実に遂行せんといたしておるのみであります。
 以上お答え申し上げます。
    [国務大臣犬養健君登壇〕
#29
○国務大臣(犬養健君) お答えを申し上げます。たびたび申し上げますように、政府が教員の思想調査を警官に命じたことはございません。しかしながら、たびたび御質疑がございましたので、私の方では念入りな調査を決して回避するものではございません。昨日も、予算委員会におきまして、足鹿予算委員から進んでその調査資料をいただいて、調査するお約束をしたようなわけでございます。しかし、私の手元にたくさん報告が参つておりますが、中には教員諸君の方の誤解に基く報告と思われるものもございます。しかしながら、数多い第一線のうちには行き過ぎのあつた警官がないとも限りませんので、措置といたしましては、実は昨日全国の警備課長会議を開きまして、特にこの問題について、論議が多いことであるから、十分に気をつけるように十分な訓辞をいたしておるのであります。それから、問題はやはり警察官の教養とか素質とかいう問題でございますから、従来もやつておりますが、今度は警官の教養の時間を前の倍とりまして、こういうことがないように気をつけている次第でございます。地方の公安委員は、御承知のように国民から選ばれておる諸君でありまして、この公安委員の方とも連絡をとりまして、かかることのないように、特に課題をあげて連絡してお願いしている次第でございます。
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
#30
○国務大臣(大達茂雄君) 初めのお尋ねは、ただいま警官の手によつて教員の思想調査が行われておる、それに対して文部省は何もしないでおるということはどういうわけか、こういう意味のお尋ねであります。文部省といたしましては、警察の当局、法務省の方にその事情を尋ねたのであります。その結果は、これらの掲げられておる事例の多くはでつち上げであるように思われるのであります。そうして、警察は、もちろん教職員を対象として思想調査をするようなことはしない、またそういう指令を出したことはない、こういうことであります。私としては、この問題に関しましては責任当局の言葉を信ずる以外にはないのであります。
 次には、文部省が教育の実情を調査するという形をもつて教職員の思想調査をしておる、それは昨年の十二月二十三日の通牒によつて明らかである、こういうお話のようであります。これは、野原議員はその通牒を熟読しておられると思うのでありますが、これによつてごらんになつて、それのどこに思想調査という形が出て来ますか。単純な教育の実情の調査であつて、これは、もしそうでないとおつしやるならば、私ここでその通牒を読み上げてもよろしゆうございます。これは実情の調査であります。これをもつて教員の思想調査なりと言うことは、私としては、まつたくのこじつけと言うほかはないのであります。(拍手)
     ――――◇―――――
#31
○議長(堤康次郎君) しやし繊維品の課税に関する法律案の趣旨説明を求めます。大蔵大臣小笠原三九郎君。
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
#32
○国務大臣(小笠原三九郎君) ただいま議題となりましたしやし繊維品の課税に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。政府は、今次の税制改正におきまして、租税負担の調整及び資本蓄積の促進をはかるため、所得税、法人税等の直接税についてその軽減合理化をはかることとし、これに伴い間接税についてはある程度の増徴を行い、あわせて奢侈的消費の抑制をはかり、国際収支の改善等に資することとしているのであります。しかし、現行の間接税の増徴だけでは、その増収額にもおのずから限界がありまするし、また現在消費税を課せられる物品の範囲も相当広汎にわたつていること、及び最近における繊維品の消費の状況等に顧み、これらの消費税の課税物品との負担の権衡をはかる等のため、繊維品のうち奢侈的と認められるものに対して新たに繊維品消費税を課することとし、ここにしやし繊維品の課税に関する法律案を提出いたした次第であります。
 以下、この法律案の内容につきまして主要な点を申し上げます。
 まず繊維品消費税の課税の範囲について申し上げますると、大衆の負担となることを避け、奢侈品課税といたしまするために、販売価格または保税地域からの引取り価格が一定金額を越える高価な繊維品のみを奢侈繊維品として課税の対象とすることとし、着尺地等の小幅織物及び帯地につきましては一反または一本につき七千五百円、洋服地等の広幅織物につきましては一ヤードにつき四千五百円、また毛布につきましては一枚につき八千円といつた免税点を設けることとしているのであります。この案によりますと、小幅織物、広幅織物のそれぞれの生産高のうち、繊維品消費税を課せられるものの割合は、数量で七%程度にすぎないものと推定されるのでありまして、従つて本税が大衆負担となるおそれはないものと考えているのであります。
 次に、繊維品消費税の納税義務者につきましては、一面、消費税の負担の適正をはかるためには、なるべく消費に近い段階で課税することを適当とする要請がありますと同時に、他面、納税義務者の数をなるべく少くして徴税上の手数を省く必要があり、これらを慎重に考慮いたしまして、本税は織物等の販売業者で小売業者以外の者が、小売業者、洋服等の縫製業者または消費者に課税繊維品を販売した場合に納付しなければならないこととしているのであります。また、保税地域から引取るものにつきましては、原則としてその引取者を納税義務者としているのであります。
 次に、繊維品消費税の税率は、免税点その他負担の程度等を考慮いたしまして百分の十五としているのであります。また、繊維品消費税の納期につきましては、最近における取引の実情に顧み、原則として販売の月の翌々月末日としているのでありますが、担保を提供した場合におきましては、さらに一箇月以内の徴収猶予を認めることとするとともに、その担保の種類等につきましても、できるだけ実情に即した便宜な取扱いをすることといたしまして、徴税に無理を生じないように配慮しているのであります。
 以上のほか、申告及び記帳につきましても、納税義務者の手数を少くいたしますために、課税される繊維品に関する事項に規定する等、できるだけ簡素な取扱いをいたすこととしているのであります。
 なお、繊維品消費税の税収は、昭和二十九年度におきまして八十五億円を予定しているのでありますが、繊維品消費税は、本税創設の趣旨等に顧みまして、その実施期間を昭和三十一年三月三十一日までとしているのであります。
 何とぞ御審議の上、すみやかに養成せられるよう切望する次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#33
○議長(堤康次郎君) これよりただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。長谷川四郎君。
    〔長谷川四郎君登壇〕
#34
○長谷川四郎君 私は、ただいま議題となりましたしやし繊維品の課税に関する法律案について、改進党を代表いたしまして、政府に対し若干の質問を行いたいと思うものであります。
 政府は、一兆予算を編成をいたしまして、一方には減税を行い、他方には物価引下策を実行しようとする政策をとりながら、今回新たに繊維消費税を新設して、高級奢侈品の消費の抑制のために間接税として課することにしたのでありまするが、この税制措置は、表向きは健全均衡予算実現のための一環というのではありまするけれども、その実は、今までの放漫な政府のその日暮しの財政政策の破綻をすなわち中小企業者並びに一般大衆に課せんとするものであろうと思うのであります。その犠牲において経済の再調整を強行せんとする意図の明白なる現われであると言わなければなりません。(拍手)かかるがゆえに、新設の目的、理由、経過においてきわめて不明瞭であります。さらに、一その実施後の運営に適切を期し得るかもまた非常に困難であると考えなければならないのであります。以下、この点について政府の所信をお尋ねしたいと思うのであります。
 まず第一に、本税を新設する目的は、財政収入の増加というものを目的としたのであるか、あるいはまた真に奢侈的消費というものの抑制を意図したものであるか、この点を明らかにしていただきたいのであります。政府はさきに減税を公約し、所得税、法人税にそれぞれの減税を実施しておるのにもかかわらず、ひとり繊維にのみ新税を創設する必要がどこにあるか。その真意の了解に苦しむものであります。財政需要が増加し、国費多端というのであれば、われわれは間接税の増徴もこれまたやむを得ないところであろうと考えるのでありまするが、しかし、資本蓄積の名において一方には減税を行い、他方には歳出規模の圧縮を強行しながら、何ゆえに繊維のみに新税を課ぜんとするのであるか。政府は物価の引下げを提唱していまだその実現を期せず、新たに繊維消費税を創設すれば、逆に物価指数は当然上昇の一途をたどるものであることは、何人も否定することができないのであります。電気、鉄道、タバコの値上りと並行いたしまして、このような課税を行うとしたならば、いかにして政府の施政方針としての物価の引下げを行い得るか。ここに大いなる疑問を持つものであります。かつて浜口内閣は緊縮財政を標湧いたしまして、政府みずからタバコの値下げを断行して、物価引下げの火ぶたを切つた。現政府はなぜ物価上昇の機運にある今日において、さらに一層上昇の原因となる新税の創設をあえて断行しなければならないかということであります。
 本税は奢侈的消費の抑制を企図した課税であると、ただいまも御説明があつたのであります。奢侈的消費の抑制に真に役立つものであるかいなか、われわれは、これが真に役立つというのならば、先ほども申し上げた通り、決してこの法案に賛成することにやぶさかではありません。しかし、本税はわずか一五%の税率をもつて、はたして消費の抑制という政府の意図するものに役立つかいなか。真に消費の抑制ということを望むのであるならば、何ゆえに、五〇%とか、あるいは八〇%とか、あるいは一〇〇%というものをかけないか。消費の抑制、すなわちこの税は奢侈的とは言いながら、二〇%、三〇%の税率を含む物品税の税率よりも低い税率をもつて、はたして奢侈的課税と言えるかどうか。この点について大いなる疑問があると思うのであります。要するに、本税は、次回において繊維製品全般にわたつて課税せんとするところの大いなる陰謀をこの政府が持つておるということを私は言わなければならない。すなわち、政府は、今申し上げたように、陰謀を持つてこれを実施しようということに対して、幾分でも先に出して齢かなければこれを実施するのには困る、であるから、このようなものを出して来たのだと私は信ずる。はたしてそういうようなお考えがあるとするならば、明らかに示していただきたいと思うのでございます。
 第二に、本税を創設して提出するまでの経過というものがきわめてあいまいであり、不明朗であります。政府は、さきに織物に対する消費税の新設を企図して織物製造業者の反対にあうや、これを原糸課税に移行せんとし、製糸業者及び毛、綿等の大会社、大資本の圧力に屈服して、三転して小売課税にその逃げ道を求めんとしたところが、またここにおいて全国二十万の繊維小売業者の猛反対にあうや、遂にこれはついえ去つて、満身創湊の政府が周章狼狽して、そのほこ先をどこに向けたか。今度は卸売業者の段階に転じまして、最後に法案の名称を臨時奢侈繊維課税と銘打つて今国会に提案したのであります。
 以上のごとき経過から観察いたしまして、政府は何ゆえ確信に満たない提案を行つたか。何ゆえに一貫した態度で臨まなかつたのであるか。無定見にして無能にまで見える信念のない政府を、国民とともにきびしく批判しなければなりません。(拍手)経済的実力の弱いところを次々と持つでまわつたところの政府の弱い者いじめの姿は、過去六年間にわたる吉田内閣の無能にして無定見なる実体を国民の前に暴露しだものと一言わなければならない。(拍手)なお、本税の納税義務者が次々と変転をした結果、取引は去就を失い、業者間の値ぎめは妨げられて、取引はまつたく停滞している。すでに相当有力商社の倒産まで発生しておるのであります。政府はこれらに対しましても責任をとる考えがあるかいなかも明らかに伺つて置かなければなりません。
 第三に、本税は課税の適正を期するのにきわめて困難である点を指摘しなければなりません。政府が、数においても取引の内容においても複雑多岐をきわめるところの繊維取引を、一段階において漏れなく捕捉するということは、事実上きわめて不可能であります。本税は消費税と称しているのでありますが、税体系から見ましても一種の流通税であると言わなければなりません。従つて、地方の卸問屋のごとく、卸業者と小売業等の業態の認定というものに非常に困難があるのであります。わが国の現状においても、これらの限界は非常に大ごとである。こういうような点から考えましても、脱税者の横行を見るということは明らかであると言わなければならない。
 たとえば高級絹織物等は、古くより店舗を持たない、俗に言うかつぎ屋や第三国人が取扱う数量というものが非常に多いのであります。かつ原料の生糸というものが国内繊維である関係上、的確な生産量の把握にも非常な困難を来すのでございます。従いまして、課税品をまじめに取扱う卸並びに小売商が、非課税品を取扱うところのかつぎ屋や第三国人によつてその営業を圧迫されるということは、当然予想されるのでございます。本法によつて八十五億の税収を目的とするならば、五百七十六億という施大な売上げが伴わなければならない。ただいま、大臣は、お言葉の中で、繊維商品が非常にこのごろは増強されて、販売力が非常に多くなつて来たと言うが、このくらいで日本国民の繊維の消費が多いなどと考える大臣の精神を私は疑います。(拍手)あまりにもあなたは知らな過ぎます。いずれにいたしましても、かくの、ごとき困難を押して適正に捕捉せんとすれば、莫大な費用と無数の人員を要しまして、きわめて苛酷なる調査を強行しなければならない。そのような経費をいたずらに浪費して、七五%まで他人資本に依存をしておるところの中小企業者を苦しめる必要が一体どこにあるか。(拍手)政府の所見をこれらに対して明らかにしていただきたいのであります。
 今回政府の意図する徴税は約八十五億である。政府がその財政収入を真に欲するとするならば、財源の一例として私は申し上げましよう。今、日本の国に人絹会社が六社ある。この六社の年間の生産は一億六千四百万ポンドであります。これを原価計算をすれば、百ポンド大体一万八千円見当のものを市価三万円前後で取引させて、政府はただこれを傍観している状態であります。これがため、政府の意図する輸出振興策とは逆に、昨年六月以降輸出織物が不振の一途をたどつておるということは、大蔵大臣も愛知通産大臣もよく認識をしておると思う。(拍手)ここに日本の輸出不振の大いなる原因があるではないか。このような莫大な利益を上げておる人絹会社、これらも、われわれの血税によつて、これまで大きくしたのである。であるから、かりにこの利益の中から一ポンド五円を徴収してごらんなさい。八十五億楽々と出るじやありませんか。これはほんの一例にすぎないけれども、国民はもちろん、何百万の業者が、これを悪税だ、ぜひ反対しなければならないと大運動を展開しているこのときにあつて、これを何ゆえにあなた方は強行しなければならないか。これらを方向転換する意思があるかないか、はつきりとお答えが願いたいのであります。
 一要するに、政府は、従来からとつて来た大企業偏重、大資本擁護の経済政策をここに一働し、危機に立つ日本経済の真相を正しく把握し、これに対応する一定期間にわたる総合的な経済計画を策定し、中小企業を擁護しつつ、日本経済の自立化に向つてその総力を結集すべきときであると信じてやみません。
 以上の諸点に対する政府の明確なる御答弁を要求するとともに、経済政策の転換を期待して私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
○国務大臣(小笠原三九郎君)長谷川議員にお答えします。
 本税が中小企業並びに一般大衆に対する課税でないことは、先ほど御説明申し上げた通りであります。なお、本税を創設する目的は、もちろん、お話ななりました。、今度直接税である所得税、法人税等を減税いたしますので、それに伴つて、若干間接税で増税する、そのことも一つ含まれていますが、主としては、むしろこくないの消費を抑制して国際貸借の改善に資する、こういう政府の一連の制作の一つなのであります。従って、奢侈貧以外には何ら及んでおりません。
 それから、ほかの物品税との比較でございましたが、ほかの物品税につきましても、奢侈品に対しては、ご承知の通りであります。
 なお、物価はこの奢侈課税で上がるのではないかとお話でございましたが、これは私どもは、そういう奢侈品の国内での消費をむしろ望ましくないと考えておるのであります。従つて、これが物価騰貴をもたらすとは何ら考えておりません。
 奢侈的消費の抑制に真にこれが役立つものならば、もつとほかのものとつり合いを考えたらどうか。これははかの物品税をごらんくださればわかりますが、十分奢侈的な物品税の増率をはかっておる次第でございます。 
 税率はもっと100%までも上げて、奢侈を抑制したらよいではないかというお話でございましたが、これはやはり、世の中のことはそう急激に理想に走るわけにもまいりません。同種物品税とのつりあいもとる必要はあるのであります。
 また、繊維全般に対して課税をするような何か陰謀でもあるのではないかというお話でございましたが、まつたくさような考えはがざいません。
 課税対象の変転のことについてもお話がございましたが、これは政府といたしまして、繊維業者に課税するか、原糸課税にするか、小売業者に課税するか、卸売業者に課税するか、いろいろかんがえたことは事実でありますが、御承知のごとく、こういうものに課税するには大体二つの方法があります。一つは、なるべく元へつていつて課税する、これはいわゆる原糸課税であります。もう一つは、できるだけ消費者に転換し得る大衆段階に持つて来る、これは小売課税なのでありますが、しかしこれをやりますと、税の対象が約十六万人からの多数になるのでありまして、そういうことは避けたい。こういう点から今度の卸売商等を選んだ次第であります。
さらに、本税は一種の流通税ではないかというお話でございましたが、私どもは奢侈を抑制する税であつて、流通税とは考えておりません。
 なお、卸、小売の限度が困難せはないか。これは世の中のことですから、いろいろ困難な点もございましょうが、これを判断することは、卸売り業者は相当な規模であり、帳簿そのたの設備もありますし、また証明を求める等の手続きもございまするので、さまで困難でないと私は考えます。
 なお、脱税者が横行するではないか。私は日本人に脱税者が横行するがごときことはないと確信いたしておりますのであります。
 さらに、八十五億円なら人絹会社にたいする課税をやればいいんじゃないか、一ポンド五円やればすぐ出るじゃないか。これはやればその通りでありますが、人絹が何に使われておるかということをお考えになれば、人絹に対する課税こそは国際貸借の方面から見ても避けねばならないし、またこれは大衆課税になるという点を特に避けた次第であります。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#35
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど人絹会社の問題につきまして御指摘がございましたが、御承知のように、人絹糸の高値の原因は、生産量の大体半分が輸出に向けられておる関係で、人絹メーカーの生産余力がないことが主たる原因になつておるように考えます。従いまして、昨年の十二月以降、メーカーの出し値の抑制措置を講ずる等、輸出振興等につきましていろいろの配慮をいたしておる次第でございます。
#36
○議長(堤康次郎君) 加藤清二君。
    〔加藤清二君登壇〕
#37
○加藤清二君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま奢侈というほおかむりをいたしまして上程されましたこの繊維消費税に関しまして、吉田総理大臣初め関係閣僚に二、三の質問を試みんとするものでございます。
 皆さん、昭和二十九年如月の二十四日、きようこの日に、八千万国民が一様に憂え、一様に反対している問題がこの国会に二つございます。その一つは、国会の品位を傷つけた保全、造船の疑獄事件であり、他の一つは、天下の悪税とののしられておりまするこの繊維消費税でございます。(拍手)白いさぎを黒いからすだと言い張ることをもつて政治家の要諦と心得ておられる閣僚各位は、国民がひとしく注目しておりますこの法案に対し国民にかわつてする私の質問に、せめて私の処女演説のはなむけに、正直にお答え願いたいと思うのでございます。(拍手)
 皆さん、一体これは何でございましようか。これは何でございましよう。この紫のふろしき包は、保全経済会からの贈りものでもなければ、造船資本家からのリベートの札束でもございません。これこそは、全国津々浦々の国民からわが社会党に寄せられました繊維税反対の切々たる真情の一部分でございます。(拍手)国民も業界もみなこれをきらつている。特に新聞は、きよう号外まで出しまして、これに反対いたしております。政府は一体この国民の声が聞えないのでございましようか。そもそも議員は全体の奉仕者で、一部の奉仕者であつてはならない。国政は国民の厳粛なる信託によるものでありまして、その権威は国民に由来し、その福利は国民が享受する、かように憲法はおごそかに規定いたしており。いわんや、一部の者の汚れた金銭に左右されることなく、国民の声、国民の真情による政治こそが祖国日本を救う根本ではないでございましようか。(拍手)第一番に総理にこの所信をお尋ねする次第でございます。
 何がゆえに私は冒頭かようなことをお尋ねしなければならないのでございましようか。それはほかでもございませんが、全国各地で国民大会や業者大会が毎日行われております。きようも、あの共立講堂で行われましたが、その都度、自由党を代表されました幹部の方々が異句同音におつしやることには、この法案は反対だ、反対だ、いや、自由党の黒星だ、中には、これは子宮外妊娠だ、だから早く手術しなければなどと言われております。通産委員会におきましては、岡野前大臣は、大衆課税によるようなものはいけないと私の質問に答えておられます。また古池政務次官は、織物消費税をつくることにつきましては、できるならとりやめてほしいという希望を持つている、かように答えておられます。また愛知新大臣は、今そこにいらつしやいますが、前二者の意見を踏襲するが、なおよく研究する旨の答弁でございます。国民も、自由党の幹部諸公の方々、いや関係大臣までが反対しておられますこの法案が、一体どうして手術されることなく今日ここへ上程されたのか、げに奇怪しごくと言わざるを得ないのでございます。(拍手)そこで、私は、総理でありまた総裁である吉田さんにどうしてもお尋ねしたいことは、一体政府と自由党とはてんでんばらばらになつているのか。あるいは一致しているのか。もし一致しているというならば、だれが押し切つて提出したのか。しからずんば、自由党の幹部諸君は、委員会やあるいは繊維税のこの反対の大会に索いて、国民を前にしてうそを言つたのか。(拍手)いかなることがあつても、この悪税に反対するという真に憂国の士があつたとしたならば、一体この人はどうされるつもりか、国民とともにただしたい点でございます。明確に御答弁願いたいのでございます。
 第二に、わが党が大蔵大臣に反対の申入れをいたしまして、その書類を交付いたしました際に、大臣は、アメリカに行きました折にこの税をかけるように言われて来ましたが、どうもだんだんとかわりまして、まことに弱りました、弱りましたと言われたのでございまするが、一体独立後の今日といえども、なお国内の徴税のことにまでアメリカはサゼスチョンするのか、それを日本は今すなおに聞かねばならぬのか、もししかりとすれば、この内政の干渉はいかなる法律または条約に基くものでございましようか。(拍手)この点また、米国のだれがあなたにそのようなことを言いつけたのか。ところで、これが妙なことに、愛知通産大臣は、このことを私が委員会でただしました折に、重要会議は数回重ねましたが、大蔵大臣からこのことは聞かぬと言つておられるのでございまするが、党の代表に対して答えたようなこれほど重要なことが、一体あなたの方の重要会議には出なかつたのでございましようか。両大臣のいずれの方が真実でございまするか、はつきりとお尋ねするのでございます。
 第三に、大蔵大臣の公約の一千億減税は、今なお国民の心をゆさぶり、耳底になお快い響きとなつて残つておりまするが、この繊維税を初め、砂糖にもタバコにも間接税はますます増加いたしました。国民大衆はいよいよ税金の加重に苦しまねばなりません。一体、公約は実行するものと心得ておりまするか。(拍手)実行なし得ずして公約を誓う悲しさは選挙のための看板なのか、大蔵大臣に所見を承りたいのでございます。(拍手)
 第四に、この税法の提出されるまでにたどりました経過につきましては、先ほど長谷川議員も仰せられました通りでございまして、きわめて不明朗として、国民及び業界をして餐鷹その極に至らしめておるのでございます。最初に織物に始まつて原糸となり、三転して小売となり、五十万業者の反撃にあうや、満身創湊となつて、政府は一番弱い卸売に逃げ込んだのでございます。強い者にはイエス・マン、弱い者にはワン・マンの自由党の正体を完全に暴露したものでございまして、政府の信念いずこにありやと言いたいのでございます。
 また、金額の二百五億が八十五億と減りました。迷路に入り込んだ問屋街においては、とうていつかみどころもなく、ペーパー・プランに終ることは火を見るより明らかでございますが、定見と自信を欠くこの無能ぶりは、まさしく盲がうなぎを手探りでとらえんとする漫画風景でございます。(拍手)
 げに、さまよえる悪税の名は繊維消費税でございます。(笑声)伝え聞くところによりますと、警察法と交換ということを聞いておりますが、党利党略、舞台裏のやみ取引に税が利用されては、ばかを見るのは正直な国民でございます。納税者でございます。かかることが事実行われ得るものか、行われないものか、政府の所信いずこにありや、まず首相と大蔵大臣にお尋ねします。
 第五に、この税の目的である奢侈抑制、物価引下げとは、およそこの結果は逆な経済現象を来す点でございます。(拍手)およそ消費税なるものは前転をして行かなければなりません。直接消費者に近いところで処理さるべき性質であらねばならぬことは多言を要しません。しかるに、この税は後転して参ります。また取引決済の現実の面より見まして、業者負担の期間が非常に長くかかるのでございます。そのしわ寄せは、結局繊維品一般の値上りを来すのではございませんでしようか。
 次に、最も重要な点は、奢侈品に税がかからずに、ボロきれに税がかかるということでございます。すでにヤール四千五百円という金額は、新毛でつくられましたところの夏物でございますトロピカルとか、パンピーチとか、三本逆よりのポーラーにはかからないのであります。ところが、このボロきれやアメリカボロのシヨデイラグをガーネツドマシンにかけてつくり上げました紡毛糸、これを材料といたしましたオーバー生地には、中級品以上全部かかるのでございます。(拍手)一体、この矛盾を通産大臣はどう処理しようとななさつていらつしやいますか。新毛は外貨を食いつぶす、だから奢侈品だ、だから規制するんだと、しよつちゆう仰せられておりながら、こちらの方は野放しで、再生品の悪い材料によつて、日本の叡知と技術を加えてつくり上げました、この汗の結晶に税がかかつて、どうして技術振興ということができるのでございましよう。(拍手)
 絹に例をとつてもまた同じことが言えます。反当り七千五百円というこの境界線は、日本の繊維加工技術に課税するということでございます。北陸でできました越羽二重の白生地には税がかかりません。これに絵をつけまして愛知県で女工がしぼります、京都の鴨川の水でしぼります、このしぼりには税金がかかる、こういうことでございます。芸術をこよなく愛するところの日本人は、戦時中といえども、なおこのものはマル芸品として残しておつたのであります。特別保護をして参りました。もしそれ材料が絹なるがゆえに課税するというならば、横山大観の絵も、栖鳳の絵も、絹本の絵にはこれ繊維消費税をかけねば片手落ちである。こういうことに相なるのでございます。(拍手)諸君、芸術品に消費税を課するという国が、世界広しといえども、いずこの国にございましようや。日本文化の果つるところそれ吉田内閣か。吉田総理と、文化国家建設に邁進をするという文部大臣に、この所信をお尋ねするわけであります。(拍手)
 第六に輸出振興に害あつて一利なき点でございます、戦前、日本の総輸出に対して繊維は六〇%以上を占めておりましたが、繊維製品は戦後その三〇%台に落ちました。このゆえんのものはいろいろございますが、その最大の原因は仕上げ技術の立ち遅れということでございます。業界におきましては、これが挽回のために、技術において、資金において、並々ならぬ苦労の結果その成果が緒につきまして、毛織物輸出のごときは、二十七年度はわずか二百万ドルでございましたが、二十八年度はその七倍も上まわりまして、千五百万ドルの外貨獲得に成功したのでございます。内需に向けられましたロス、このロス製品に高級品だということで税金がかけられましたならば、高級品の製造意欲を減退させるのみならず、業界も国民もともに被害者となりまして輸出不振を招き、せつかく開き得ました海外市場も喪失いたさねばならぬという結果に相なるのでございます。政府のいうところの輸出振興策と逆行するもはなはだしと言もざるを得ないのでございます。(拍手)通産大臣の御所見を承りたい。
 第七に、口を開けば中小企業の指導育成を言うところの政府は、羊頭を掲げて狗肉を売ることに相なるのでございます。なぜならば、倒産続出の中小企業を救う特効薬は安い金利の融資であり、苦しい税を減ずるということではないでございましようか。しかるに、日銀及び大蔵省は、オーバー・ローン解消の美名のもとに、金融引締をどんどんやつて参りました。その結果、銀行窓口は選別となり系列となつて情実融資となり、そのはては資本力の浅い中小企業にしわ寄せられて参りました。首をつつて倒れて行かねばならぬ商社は、先月のみでもなお五十有余を数え今月また四十八を今日までに数えておるのでございます。大工場の下請工場に対する遅払いは悲劇を一層深刻化しまして、公取委の頭痛の種と相なつておることは、大臣各位よく御存じのはずでございます。まさに死なんとする病人に中小企業公庫は重湯を与える役目をしたかもしれませんが、打続く政府の失策は、この病人のせんべいぶとんをはぎとるという結果に相なりました。(拍手)その上、この業界に対しまして八十五億の重税は、さなきだに寒さにふるえるこの病人に青酸カリを飲ませると同然の結果に相なるのでございます。(拍手)奢侈というオブラートに包まれた青酸カリは、やがて問屋から機場に後転いたすことは理の当然でございます。しいたげられた農村の家を守るために、東北、北陸から機場地帯に出かせぎに来たおとめたちは、その工場が中小企業なるがゆえに、わずか日給五十円の低賃金で苦しんでおるのでございます。ここへ八十五億が後転して参りますれば、ますます女工哀史はひどくなるばかりでございます。このしわ寄せに一体どう対処するのか、通産大臣と労働大臣にこの対策を承りたいのでございます。
 第八、最後に、以上のごとく、この法案は百害あつて一利がございません。もししいて効果を求むるならば、それは日本経済の中で一番おとなしく、一番保守的でございました衣料品店の中小企業を奮起せしめ、団結させたことと同時に、おのれの生命と業界を守るためには身命を賭して闘うの決意をさせたことのみでございます。(拍手)また、この法案の内容は、まさに漫画の見える作文でございまして、小売、問屋、縫製、加工の自由を奪うこの法律は、経済の妙味を喪失するのみならず、憲法第二十二条に抵触するおそれが多分にあるのでございます。業界の迷惑、国民の迷惑、徴税の困難、行政整理の逆行、綱紀粛正の逆コース、数え上げ来たれば枚挙にいとまがございませんが、汚職官吏とやみ商人を横行させ、社会不安を招来するであろうことは、火を見るよりも明らかでございます。(拍手)かくして取上げられた血税が造船疑獄を生み、保安隊疑獄に使われるということに相なりまするならば、やがてはこれ日本経済の混乱のみならず、国民の憤激は吉田内閣の命取りとなるであろうことは、あなた自身がよくおわかりの点でございます。(拍手)かかる悪税はすみやかに撤廃する意思はないか、副総理の信念をお尋ねいたしまして、加藤清二の質問を終ります。(拍手)答弁のいかんによつては、追つて質問を許させていただきます。
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#38
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。
 奢侈繊維品に対する課税は自由党の主張に反するではないかという御質問でありますが、本税は財政収入のみを目的としておるのではないので、奢侈的消費を抑制し、国際収支の改善に資すること等をも目的としておるものであります。従いまして、この課税対象は、大衆の負担となることを避ける奢侈品課税とするために、一部の高価な奢侈的繊維品に限定されておるものでありまするから、むしろ本税の創設によりまして他の消費税課税との負担の均衡をはかることができるものと考えております。
 なお本案を撤回する意思はないかという御質問でございましたが、政府が確信を持つて提出いたしました案でありまして、これを撤回する意思はございません。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
#39
○国務大臣(小笠原三九郎君) 最初に加藤君に申しておきますが、何かアメリカの方で私にさしずしたような話をしたということは、もつてのほかでありまして、さようなことは、どこでも申したことはありません。ただ、こういう事実はあります。ニューヨークにおける日本人の商工会議所で、当時日永における生糸の値段が二十七万円であるのに、アメリカでは二十四万円でないと出て行かない実情から、日本人の商工会議所が、もう少し日本で課税をして内需を抑制すればもつと輸出できますがという話があつたことは、私ははつきり聞いており、申したことがありますが、アメリカ人がどうこう――日本は独立国であります。さようなことは言うはずがなく、さようなことがあろうはずはございません。(拍手)
 その次にお答えいたします。千億円の減税は、それは選挙のときの題目か。選挙の題目ではありません。千億円の減税は、すでに昭和二十八年度において実行しておることは、皆様がよく御承知の通りであります。(拍手)私は公約は必ず実行いたします。
 なお、ヤール四千五百円のものはこれは奢侈と見れぬではないかというお話でございましたが、でき上りの洋服二万六千円ぐらいのものは、これは現在の日本の経済事情から申せば奢侈と見るべきものであつて、私は、課税対象とすべきものである、かように考えております。
    〔議長退席、副議長着席〕
 それから次に中小企業に対するお尋ねでありましたが、私は実は中小企業には非常に心を痛めておるものでありまして、その中小企業金融公庫についても、これはよく御承知でありましよう。新たに昨年つくつた金融公庫に、本年また二十九年度でも二十五億円の出資を予定し、さらにまたこれらの運用部等の借入金を合せて百九十億円からの資金源を確保するほかに、あるいはまた長期の設備資金のほかに長期運転資金を出せるというような方法をとつておるのでありまして、それをごらんになつてもわかると思う。さらにまた、国民金融公庫については、一般会計から新たに二十億の出資をするほか、資金運用部その他で三百二十三億円の資金源をもつてこれらの資金に充てておるのであつて、特別小口貸付の実例も開いておるし、仰せになるような、中小企業を見殺しにする政策ではないかというがごときことは、あまりにも事実をしいるのはなはだしきものであると考えます。
 以上をもつてお答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#40
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。
 本法案の成案を得る経過におきまして、私は、なるべく免税点を高くし、奢侈品に対する課税たるの性格を明確にすること、また他方、いわゆる小売課税ということは、できるだけとりやめるということについて、あとう限りの努力をいたしたいということは、累次通産委員会で申し上げました通りでございまして、ここにできました成案は、私がこうありたいと思うような姿になつておるものと確信いたします。
 外国から本法案につきまして云々というお話がございましたが、これは私の知らざるところであり、ただいま大蔵大臣の答弁の通りでございます。
 次に反毛の問題でございますか、これは毛織物全体として生産高の七%程度にすぎないということが基本でございますから、御心配のごときことはあるまいと私は考えるのでございます。
 輸出につきましては直接課税されないことは明瞭でございます。また、毛につきまして、昨年来輸入原毛のリンク制をとるというようなことにつきまして、他の輸出振興方策についても鋭意努力いたしておりますことは明白な事実でございます。
 最後に、この税の徴収の方法等につきましては、たとえば売却の日の属する月の翌々月の末まで徴収を延期するというような措置を講じてございますので、これまた御心配のようなしわ寄せの危険は回避できると思います。
    〔国務大臣大運茂雄君登壇〕
#41
○国務大臣(大達茂雄君) この税金が芸術に対する課税であるというようなお話に伺いました。私はさようには考えません。
    〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#42
○国務大臣(小坂善太郎君) 本課税の直接納税義務者は課税対象製品の卸売業者となつており、従つて、その奢侈繊維品に対する課税はその消費者が負担するものでありまして、その製造業者に転嫁されることはないと考えます。
 なお中小企業者の保護助成につきましては、大蔵大臣、通産大臣等からお答えがありましたように、税金の面において、また金融の面において十分配意をいたす考えでありまして、私といたしましても、これによりまして関係労働者の労働条件の低下することがないように努める考えであります。(拍手)
#43
○副議長(原彪君) 春日一幸君。
    〔春日一幸君登壇〕
#44
○春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりましたしやし繊維品の課税に関する法律案並びにこれに関連する重要なる事柄について、次の諸点について政府の所見をたださんとするものであります。
 まず最初に、繊維課税の創設を初めとし、ここに税制の大改革を行わんとする政府は、一体国民の租税負担能力をいかに見ておるか、この点について政府の見解をお伺いいたしたいのであります。各種国税の滞納は今や国民の各階層に及び、その滞納総額は実に件数八百四十万六千件、金額一千二十六億を越えたのでありまするが、かくのごときは実にわが国租税制度始まつて以来の最悪の記録であります。(拍手)一体、政府は、この国民各階層の税金滞納の原因をどのように理解しておるのであるか。世論は、これに対し、国民の納税意欲の著しき減退をその最大の理由なりと指摘し、さらには現行徴税制度がすでに国民の担税力をはるかに越えたものであることを強調しておるが、政府は、これらの輿論に対し、いかなる検討を行つたのであるか。今や吉田内閣の権威は各種疑獄の泥棒の中に没し去ろうとしておる。国鉄会館、交通公社をめぐる国鉄疑獄、黄変米の払下げ、原糖割当をめぐる農林疑獄、さらに保全疑獄、やみ金融疑獄等、腐臭ますます発展し、遂に造船大疑獄に至つて、吉田内閣はここに収賄汚職による疑獄の摩天楼を築き上げるに至つたのである。(拍手)この疑獄の摩天楼は政道の光をさえぎつて国民の心を暗くしたが、同時にこの疑獄の摩天楼は政界の中天にそびえて、今や国民のだれ一人としてこれを憤激せぬ者はないのである。熱汗労苦をしぼつて納めた税金の行方をこの疑獄の摩天楼の中に仰ぎ見て、納税者たちは暗然としても思案に暮れる。ここに納税意欲が減退することは当然ではないか。古来、その国のまさに滅びんとするや、まずその政府の官吏が腐敗すると言う。疑獄は次々と暴露し、前閣僚、現閣僚の身辺も幾多の疑惑にさらされておるが、まさに亡国の兆候である。政府はいかにして信を国民につなぐ所存であるか。吉田内閣の存亡は民族の些事であるが、日本国の存亡は民族の大事である。えりを正し、国家民族のために出所進退を決すべきときは今であると思うがここに、国民の納税義務観念の挽回のために、吉田内閣総理大臣の有する決意のほどを承りたいのであります。
 次に、国民の超税力について政府の見解をお伺いいたしたい。本日国民の租税負担の能力がすでにその限界を越えたものになつておることは、税制調査会の答申書においても明らかな通り、これはもはや天下の公説である。政府はこの答申の大綱を是認するのであるか否認するのであるか。もし是認するとあらば、いやしくも新税の創設や生活物資への増税などはできるはずはないのである。しかるに、政府は、今次税制改正によつて繊維課税を創設し、ここに八十五億の新規課税を行わんとし、また砂糖消費税において五十七億、揮発油税三十一億、酒税三十八億、印紙税五十五億、その他増税総額は二百七十六億に及び、これにタバコ値上げによる増徴分八十八億を加えて、今次税制改革を通じ、実に間接税において三百六十四億の新規大増徴を企てておるが、かくのごときはすでに担税力を越えた負担にさらに苛酷をしうるものであるが、大蔵大臣は、すでに塗炭にあえぐ大衆の生活にこの間接税大増税の与える影響を一体どのように理解しておるのであるか、この機会に誠意ある御答弁をお願いする。
 なお、この際、政府がしたり顔に宣伝しておる直接税の減税案なるものについて質問する。二十九年度所得税収入見込額は二千八百七十六億である。これは二十八年度の当初予算額二千上百五十億を越えること二百三十億で止る。これは庶民階級の負担がこの額だけ加わるものであることは絶対間違いがないところである。政府は、二十九年度は国民所得が増加するので、その結果現行税法によれば前年度に比して五百余億の増徴となるが、特に今次の減税措置によつて二百七十五億を減ずるから、その結果差引二百億の増徴にとどめ得たと言うのであるが、政府は、今日デフレ景気にあえぐ庶民大衆が、昨年度に加えてさらに二百数十億を越える直接税の加重に、はたして耐え得ると思つておるのであるか。ここに今年度の所得税の見込額の基礎をなすものは政府の国民所得の推定であるが、およそ複雑多岐な経済上の諸要素を机上の加減乗除によつて算出した五兆九千八百億というような天文学的計数の中から国民担税力の限界点を導き出すというようなことは、あたかも霊友会の御託宣の、ごときものであつて、(笑声、拍手)かくのごときはその道の関係者だけしか信用し得ないものである。たとえば、賃金ペースは一部に引上げられはしたが、生活費はまさしくそれ以上に高騰し、加えて消費米価の値上げがあり、さらには間接税のこの三百六十何億の大増徴がある。さらにまた電力料金の値上げ、あの売国的火力借款の保証条件として、これはさきにアメリカに誓約したところであるから、これまた本年度の生活コスト、托産コストの中に重き負担となつて加わつて来ることは必至である。輸出は頓挫して、経済恐慌はまさにまのあたりである。かくて景気はいよいよ悪化し、逆に生活費はだんだんと高騰するこの情勢下において、ここに所得税関係の庶民大衆は前年度に比してさらに二百数十億を越える所得税を増徴されんとしております。国民所得の机上の推算は何とあろうとも、かかる徴税は苛敬謙求まさにその度を越えるものと思うが、大蔵大臣並びに経審長官は、これらの関連性をいかに分析し理解しておるのであるか、この機会にその御見解を承つておきとたい。(拍手)
 ここに税制調査会の答申によれば、所得税について一年の勤労所得二十四万円までを無税とすることはすでに常識化し、決して過大の要求とは言えない、かくのごとくに断定しておる。これはまさしく的確にわが党従来の主張の妥当性を裏づけたものである。(拍手)まことにこの税制調査会こそは吉田内閣総理大臣の委嘱選任した政府の機関であるが、かくのごとき政府の機関によつて反対党たる社会党の政策がかくも明確に支持されたことに対し、政府は何ら政治的屈辱を感ずるところはないか。この際、所得税については、せめてこの税制調査会の答申のレベルまで、すなわちその基礎控除額を八万円に引上げ、給与所得控除の限摩を七万五千円にまで引上げる意思はないかどうか。この点、吉田総理の政治家的潜持に訴えて、その見解を伺つておきたい。
 かくて、この繊維課税の本筋に入つて質問をするが、まず最初に、不潔きわまる経緯をたどり、全国民の疑惑の充満したかくのごとき繊維課税は、国会の尊厳と政道の権威のために、国会は断然審議すべきものではないと思うが、私はこの際、われわれ審議の府にある者が、この税法に対し、かくのごとく触るのも汚らわしいほどの嫌悪の情に燃えておる理由について二、三申し述べて答弁を求めたい。
 思うに、この繊維課税の立法ほど国民を愚弄し、不潔な経緯をたどつた法律案はないであろう。それはまるでユダヤ商人の押売り行脚に似て、たとえば、この税制は、最初原糸の門をたたいて手ひどく締め出され、次いで小売の店をゆすつたが、罵倒とともに追い返された。(拍手)その後機屋、織元にすわり込んだが、またたちまちはじき出されて、最後に中間問屋を弱そうな相手とにらんで、遂に強引にここに居すわつたのであるが、これが政府の繊維課税押しつけのための暗夜行路、ユダニズムの実態である。この法案は腐臭にまみれて、国民はまさに嘔吐を催すばかりである。吉田内閣の特質は、ただいま同僚加藤君も言つたが、強い者には弱く、弱い者に強いことは、まさに天下の通説であるが、吉田内閣は、今回この繊維税法の取扱いにおいて、最も端的にその性格を露出した。かくのごとく弱い者いじめの不公正、没義道な法律案に対しては、さすがに反動政府、反動与党の、中においてすら、この悪法反対の同調者多数を数え得るほどである。(拍手)これは、悪税法粉砕のための、われわれのいささか便宜とするところである。
 そこでお伺いをいたしたいことは、政府は、当初税制調査会の答申に基いて原糸に課税すると発表しながら、幾ばくもなくしてこれを引込めたのであるが、その理由は一体何であるか。さらにはまた、その後小売屋の店頭に課税するとの方針を発表しながら、これまた旬日を出ずその方針を変更したのであるが、その真相について、この際大蔵大臣より国民の納得できるような御説明を願いたいものである。(拍手)情報は紛々として、ちまたの話題をにぎわしておる。その代表的なものとして、二月十五日付の某新聞は、政府の課税対象流転の真相として、次のごとき事柄を報道している。すなわち、「二億円注ぎ込む、大メーカーから自由党へ」、この大見出しのもとに、その記事の中に次のごときことが報道されている。すなわち、その冒頭に、政府自由党と犬メーカーとのやみ結託の消息を伝えつつ、次いで「十九日ごろ、紡織協会委員長、東洋紡社長阿部孝次郎氏、羊毛紡績会長、大東紡社長吉田初二郎氏その他が、自由党釜谷総務会長、前尾政調会副会長と築地の某料亭で懇談し、その席上三千万円が渡された。そして、原糸課税によつて負担をうける大小のメーカーから自由党につぎこまれた金は合計二億円に達するという」(拍手)「これらのことについては、福永官房長官が片倉製糸出身であり、池田政調会長は川角東洋繊維社長と同郷、同窓であることもみのがせない」云々。この新聞記事の信憑性をただすことは次の機会に譲るが、かかる報道が当該法案審議のさ中において公然発表せられたことは重大である。政府は、すべからく国政の権威のため、検察権を発動して真相を糾明すべきであると思うが、本件に関する犬養法務大臣の所見を承りたい。
 まことにこの織物奢侈税ほどその立法の目的があいまいで、その性格の不明朗な法律案は、まさに類例に乏しいところである。ぜいたくな消費を押えるというならば、ぜいたくな消費財は別して織物ばかりではないはずである。政府は本税による八十五億の財源の必要性をことさらに強調しておるが、しよせんそれは執拗に面子に拘泥する頑固者の姿である。かかる八十五億程度の財政操作が二十九年度一兆円予算の規模の中で処理できないはずは断じてない。(拍手)なおまた、政府は、二十九年度の一般会計の歳入総額は九千九百九十五億と計上し、二十九年度はこの額以上は自然増収はないものと断定している。しこうして、昭和二十九年度は予算の補正は絶対行わない旨、政府は本会議においてしばしば言明したところである。そこでお伺いいたしたいことは、もし、一、歳入に例年のごとく自然増収を見た場合、しかもその額がわずか八十五億に至つた場合、この繊維課税の税収分は明らかに使い道のない余分の収入となるのであるが、かくも国民一般の熾烈な反対を押し切つて新税創設を強行せんとする政府は、その場合いかなる政治的責任をとるものであるか、この点に関し吉田総理より明確なる御答弁を伺つておく。
 いずれにしても、この税法案は法律の体をなしてはいない。問屋で徴税するというが、問屋には元売り問屋があり、中間問屋があり、切売り問屋、小売兼業の問屋がある。なおまた店舗を有せざるお得意専門の問屋などもあるであろう。本税法は、納税したい希望者だけが納税するというだけのものならいざ知らず、法律をもつてこの複雑微妙な業態を拘束するということは、まつたく不可能である。これを強行することは、しよせんは国民に対し脱税、脱法の犯罪をしいる結果となるものである。かくのごときは、まさに政治悪の極致なりと断ぜざるを得ない。法律はあいまいであつてはならないのである。法律は国民の何人もが遵守するの権威を持ち、また遵守できるだけの体をなしたものでなければならない。ここに本法律案は、その立法の過程において政略に翻弄されてすでに腐敗し、この各条章は、業界の暗躍によつて、もはや原形をとどめぬまでにゆがめられてしまつたものである。政府はこの際虚心に猛顧反省し、広く行財政に一段と再検討を加え、この際この繊維税法案は撤回すべきであると思うが、政府にその意思ありやいなや、大蔵大臣より誠意ある答弁をお願いする。(拍手)
 なお、この法律案に関連をして最も重要なる事柄として、入場税国管の問題について簡単に質問いたしたい。そもそもこの入場税国管の事柄は、これまた税制調査会の答申に基くものであろうが、その答申書が入場税を終始遊興飲食税と一本のものとして取扱つておるのである。しこうして、政府もまた、今次税制改革の要綱を決した十二月当初は、入場税取び遊興飲食税を一体のものとして国税移管の方針を決定したのである。しかるところ、その後幾ばくならずしてその方針は変貌改憲されて、本日ここに見るがごとく、遊興飲食税は地方税としてすえ置かれ、入場税だけが分離されて国税に移されんとしておるのである。ここに全国の料飲店が反対のためにいかなる運動を政府並びに与党に試みたか。その中味の事柄はわれわれのよくこれを知るところではないが、われわれといえども、その反対運動が、あのように、いともあつさりと、しかも端的に成功し、たことから推して、それらの運動と交渉の中味がどんなものであつたか、あらましの想像のつかないわけではない。(拍手)
 およそ今次税制改革案をめぐる政府のやり方というものは、即興的であり、思いつきである。まず課税する対象を選んでは、そのものに白羽の矢を打ち立てる。矢を立てられた業者は、あわてふためいて政府と与党にかけつける。そこで、政府と与党は、しさいありげに、かつ神妙にその嘆願にうなずいて、現金にその矢を抜くのである。繊維課税の立法の経緯に見ても、入場税国管のいきさつをながめても、この種の批判が起ることは当然ではないか。かくのごときは、まさに無定見、無節操の域を越えた、悪質、非道の政治と言わなければならぬ。政府は一体いかなる理由によつて同種同根の入場税と遊興飲食税とを、かくも簡単に、しかも瞬間のうちに分離してしまつたのであるか、この機会に、大蔵大臣より、そのいきさつを明らかにいたされたい。
 政府は、入場税の国管を理由づけて、地方財源の偏在を是正するためと言つているが、大都市を含む地方行政にはまた、ひとしく欠くべからざる大都市的支出のあることを見のがしてはならないのである。憲法第八章の地方自治の本旨を政府は一体どのように解しておるか。民主政治の高揚は地方自治の確立にあり、地方自治の確立は地方行政に独立財源を確保することにある。もしそれ、今回政府が言うがごとく、地方財源偏在調整のことを入場税国管の理由とするならば、現に遊興飲食税も事業税もひとしく大都市を含む大府県に偏在しておるから、従つてこれら地方税一切のものはやがて国管にされるものと見るべきであるが、それでよいのであるか。さすれば地方の独立財源は全部なくなつてしまつて、ここに地方自治は終息し、民主政治はその息の根をとどめるのであるが、政府のねらいは、ほんとうはここに定められておるのではないか。
 数日前、警察法改正の質問に答えて、塚田国務大臣は知事官選のことを提唱した。中央集権的官僚警察組織がえの大作業は、幾多民論に抗してすでに着手されつつある。地方財源偏在調整の名のもとに、ここに企てられておることは、地方財源の中央奪還のことではないか。ここに知事を奪いとり、警察を奪いとり、地方税、この三つのものを剥奪して、再び中央集権的官僚国家の復元をたくらんでおることは、もはやおおうべきもない現実となつて現われておる。まことにはだにあわを生ずる反動政治への出発である。
#45
○副議長(原彪君) 春日君、なるべく簡単に願います。
#46
○春日一幸君(続) この際政府は地方自治の将来をどのように考えておるのであるか、この機会に吉田総理大臣よりこれらの諸点に関し責任ある御答弁を願いたい。しこうして、もしそれ憲法の本義をわきまえ、地方自治を樹立するとあらば、この一大支柱である入場税を府県から奪い去ることは、地方自治の将来を危くするものである。従つて、遊興飲食税と同様に府県にこのまま存置すべきものであると思うが、これに対して吉田総理にかわつて緒方副総理より責任ある御答弁をお願いする。
 以上の質問に対してそれぞれ明確なる御答弁をお願いをいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
#47
○副議長(原彪君) ただいまの春日君の発言中、速記録を取調べの上処置すべき箇所がございますれば、適当に処置をいたすことにいたします。
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#48
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 奢侈繊維税は弱い者いじめの悪税だから、これを撤回する意思はないかという御趣旨に承りましたが、繊維品の消費税は、経済自立のための資本蓄積に資する等のため所得税その他の直接税が軽減されますことに伴い、それによる減収を補填するとともに、奢侈的消費の抑制等の見地から間接税を若干増徴するという政府の持つております、基本方針の一環として、一部の奢侈的な繊維品を課税対象とする奢侈品課税として考え出されたものであります。従いまして、本税を撤回するというようなことは、この基本方針から見まして適当でないと考えております。
 それから、入場税を現行のまま置いておく意思はないかという御質問でありますが、政府は、二十九年度におきまして、警察制度を中心とする地方行政制度の改正を予定しておりますが、この制度改正とともに、現行地方税制のもとにおける各地方公共団体、特に道府県の財政状況をも考慮いたしまして、地方公共団体の財源の偏在を調整する方針のもとに、地方税制の改正を行うことを考えておるものであります。そういたしまして、収入が少数府県に片寄つておると認められる入場料を国税として徴収することを決した次第でございます。御了承願います。
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
#49
○国務大臣(小笠原三九郎君) 国民の租税担税力についてのお話でございましたが、国民所得の租税負担について見ますと、日本は、統計の上から見ればイギリスとかドイツに比べて低いのでありますが、実際上において相当高いので、でき得るだけ減税に持つて行きたいことは、私どもの常に考えておるところであります。従いまして、低額所得者に対しましては、今度税の減収をはかつた次第であります。さきに数回にわたつてはかりまして、千三百余万人あつた所得税納税者が今日は約千万人になつておりますが、また今度の税制改正によりましても約五十万がこれから税を出さないでよいことになるのであります。さらに税制調査会の意向だと二十四万円まではというお話でありましたが、それは、その当時税制調査会は、自然増収等を見込んで、この自然増収を財源としてそういうふうに考えたのでございましたけれども、今度の緊縮予算によつて自然増収等が見込めなくなりましたので、従つてこの程度にとどめるのやむを得ぬことは、当然御了承が願えることと存じます。
 さらに、奢侈繊維税が、原糸とか、あるいは小売とか、織元とか、卸売とか、各種の段階を経たではないかというお話がございましたが、これについては、私どもは何らそこに暗い影もなければ、はつきりしておると思うのであります。これについての課税について見ますと、御承知のごとくに、元の原糸に近いもので課税するか、あるいは小売に近いもので課税するか、こういうことにわかれて来るのでありますが、しかし、税というものは一方でこれを取立てなければなりません。従いまして、たとえば小口の小売商に行きますれば、十六万も数があつて、とうてい税務署がやりきれないという点も加味され、また、さればといつて原糸課税することは、いろいろ困難な点があり、またその加工の程度その他が違いますので、従つてこういうことに措置した次第であります。
 なお、奢侈繊維税のねらつているところは、単にわが国の置かれた事情をしんしやくしたばかりではありません。今日の日本の国内消費の抑制と国際貸借の改善が大きな目的になつているのであつて、大衆課税、大衆課税と繰返し申されますが、ほんの一部のものであつて、何ら大衆課税にならざることは、法案をお読みくださればよくわかることであります。(拍手)
 さらに、八十五億円の操作ができぬはずはないじやないかということでありますが、そういうことは今日の事情上許されません。緊縮予算をやつておるときに、八十五億円の自然増収を見込む、そういう不確かな政策は立てられませんので、税収入としては、また国の財政としては、あくまで現実の基礎に立つべきことはもちろんであります。それで、余つたらどうするのか。余つたら、財政法の定めるところによつて措置いたします。
 さらに、入場税、遊興飲食税の問題は今副総理から話がありました通りでありまするが、なお入場税はそのらち最も偏在の傾向の強いものでありまするので、これを特に国税に移管した次第であります。(拍手)
    [国務大臣愛知揆一君登壇]
#50
○国務大臣(愛知揆一君) こまかい数字は省略いたしまして、簡単にお答え申し上げます。
 大体サラリーマン、工員等の、いわゆる勤労階級の獲得しております所得は、二十九年度におきまして、大体二十八年度に対しまして一・九%の増加と推計いたしております。次に、主として中小企業の所得に該当すると認められます個人業種の所得は、二十八年度に対しまして〇・三%程度の増加と推計いたしております。なお、二十九年度中に賃金は三%の上昇、消費者物価は、CPIまで勘定いたしまして、二十八年度に比して三・六%程度の下落、従つて結論といたしまして、実質所得がある程度増加する、かように推計いたしております。(拍手)
    [国務大臣犬養健君登壇〕
#51
○国務大臣(犬養健君) お答え申し上げます。全国商工新聞という新聞の所載記事として、繊維業者から自由党に約二億円の金が行つたというお話でございましたが、このような報告もしくは類似の報告は全然検察庁から受けておりません。(拍手)
#52
○副議長(原彪君) これにてしやし繊維品の課税に関する法律案の趣旨説明に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#53
○副議長(原彪君) 次に、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案の趣旨説明を求めます。文部大臣大達茂雄君。
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
#54
○国務大臣(大達茂雄君) ただいま議題となりました義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案につきまして、提案の理由並びにその内容の概略を御説明いたします。
 そもそも教育上良識ある公民たるに必要な政治的教養が尊重せられなければならないこと、及びそのためには、学校においては特定の政党を支持しまたはこれに反対するための政治教育が行われてはならないことは、いまさら申し上げるまでもないことでありまして、それは教育基本法第八条において明らかに示しているところであります。ことに義務教育は国民教育の基本をなすものでありますので、特にその政治的中立の確保が期せられなければならないのであります。
 この法律案の所期するところは、義務教育学校において教育基本法の期待するような正しい政治教育が行われることを保障するのにあります。すなわち、第一条に規定しておりますように、この法律は、教育基本法の精神に基き、義務教育諸学校における教育を党派的勢力の不当た影響または支配から守り、もつて義務教育の政治的中立を確保するとともに、これに従事する教育職員の自主性を擁護することを目的とするものであります。
 しからば、どのような方法によつてその目的を達成するかと申しますと、この法律案の第三条に規定するように、何人に対しても、義務教育諸学校の教育職員に対し、児童生徒に対して特定の政党を支持させまたはこれに反対させる教育を行うことを教唆しまたは扇動することを禁止しようとするのであります。しかし、それには条件がついているのであります。第一に、教唆または扇動するにあたつては、特定の政党その他の政治的団体の政治的勢力の伸長または減退に資する目的を有することが一つの条件となつておりまして、この目的を欠く行為は禁止されないのであります。第二に、教唆または扇動するにあたつては、学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体またはその団体を主たる構成員とする団体の組織または活動を利用するということが条件となつております。もつとも、学校教育において特定の政党等を支持しまたはこれに反対させる教育を行うことを教唆、扇動するということは、いかなる目的に出ずるものでありましても、またいかなる手段に訴えるものでありましても、教育上の見地からすれば好ましくないことではありますが、現実にこの法律をもつて禁止するのは、以上のような特別の条件を備える場合のみに限定した次第であります。
 次に、本法の違反行為に対しては罰則を設けておるのでありまして、第四条に示すように「前条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」となつております。そして第五条において、本法の違反行為に対する罪を論ずるにあたつては、それぞれその学校を所轄する機関の請求をまつて論ずることといたしております。
 以上、本法律案の提案の理由並びにその概要を申し上げたのであります。慎重御審議の上すみやかに可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
 次に、教育公務員特例法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由並びにその内容の概略を御説明いたします。
 公務員の政治的行為につきましては、現行制度のもとにおいても、特別職を除き、一般職の公務員に関しては、国家公務員たると地方公務員たるとを問わず、一定の制限を加えておるのでありまして、これは、職員に対して政治的中立性を保障することにより、国及び地方公共団体の行政の公正な運営を確保すると同時に、職員の利益を保護する趣旨に出たものと考えられるのであります。このような政治的行為の制限は、国公立学校の教育公務員につきましても同じく適用されているのでありますが、国立学校の教育公務員と公立学校の教育公務員との間には、現在法制上顕著な差が設けられておるのであります。すなわち、国立学校の教育公務員は、国家公務員として、国家公務員法の定めるところにより制限されているのに対し、地方公務員たる公立学校の教育公務員は、地方公務員法によつて制限を受ける結果、制限事項並びに罰則の有無につき差異があるのみならず、制限を受ける地域の範囲につきまして、国立学校の教育公務員が全面的に制限を受けているのに反し、公立学校の教育公務員に対する制限は、原則としてその勤務する学校の設置看たる地方公共団体の区域内に限られることとなつているのであります。
 しかしながら、教育は、国民全体に直接責任を負つて行われるべきものであり、一地方限りの利害に関することではないのでありますから、職員の政治的中立性を保障して、その職員の職務たる学校における教育の公正な運営を確保するに必要な職員の政治的行為の制限に関しましては、公立学校の教育公務員を国立学校の教育公務員と区別して規制することは適当でないと考えるのであります。よつて、教育公務員の職務の特殊性を考慮し、公立学校の教育公務員の政治的行為の制限につきまして、これを国立学校の教育公務員と同様の取扱いをしようとするものであります。
 以上、本法律案についてその概略を御説明いたしました。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決くださるようお願いをいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#55
○副議長(原彪君) これよりただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。坂田道太君。
    〔坂田道太君登壇〕
#56
○坂田道太君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま提案になりました教育二法案について質疑をいたさんとするものであります。
 本法案について、国民は、非常な関心を持つておるにかかわらず、その内容が今日まで発表されなかつたので、正しい理解も正しい判断もなし得ない実情にあつたのであります。なかんずく、われわれが最も遺憾にたえないことは、法案がいまだできておらないのにかかわらず、この法案の内容も知らず、研究もしないで、臆測や先入観に基いて、まつたく違つた内容を前提に議論が行われておることでございます。(拍手)ことに、反対の宣伝として、政府が教職員の大量首切りを意図しておるとか、教育費の大幅削減によつて授業もできなくなるとか、給食費の父兄負担が増加するとか、教唆、扇動されて教育の中立性を侵した個々の教員までも刑罰の対象となつて罰せられるとか、まつたく根も葉もないことを流布いたしまして、善良なる一般教職員及びPTAの人々に少からざる不安と動揺とを与えつつあることであります。(拍手)いやしくも学問は真理を追求することを第一とするものであります。真理を追求する人間を育成するのが教育者の任務でなければなりません。(拍手)しかるに、今日、教育者の集まりである日教組は、まつたく驚くべき虚構の宣伝をいたしておるのであります。(拍手)のみならず、日教組の御用学者と称せられる人たちもまた、日教組といかなる関係にあるかは知らないが、日教組のパンフレットに書いてあるとまつたく同じような反対論をやつておる。学者というものは、常に客観的に緻密に物事をみずから判断し批判するのがそり生命でなければならない。しかるに、法案そのものも見ないで、日教組のしり馬に乗せられて、全国をかけめぐつて反対をぶつて歩いておる。何たる軽率な、不見識きわまる、自主性のないことでありましようか。(拍手)
 現在行われておる反対論に二つあります。一つは、政府の決定が遅れたために、説明が尽されないための誤解に基いて反対されるのと、いま一つは、故意に何らかの政治的意図をもつて反対されておるのと、この二つがあると思います。従いまして、政府はこの際、きわめて率直に、大胆に、不明確なる点を明らかにし、善良なる国民の誤解を一掃する必要があると存ずるのであります。(拍手)質疑の第一点は、一体教育の中立性とは何か、その具体的事例というのは例外中の例外だと反対の人は言つておるが、そうではなく、きわめて計画的、必然的なもので、今後このまま放置すれば、全国至るところに教育の中立性侵犯の事例が続出すると思うが、どうか。質疑の第二点は、平和憲法と平和教育を説くのはなぜ悪いのかと言うが、現在耳教組の行つている平和教育は、特定の目的を持つた反米親ソ、中共礼讃の片寄つた一方的思想の強要であり、これを純白な生徒、児童に植えつけんとしておるのではないか。その第三点は、教員の口にさるぐつわをはめて、教える自由を奪い、教員なるがゆえにその基本的人権まで束縛することは明らかに憲法違反ではないかとの議論があるが、教える自由を教員から奪つておるのは日教組ではないか。教員の基本的人権を侵しておるのは日教組ではないか。(拍手)その第四点は、外部からの教唆、扇動を取締り、個々の教員については刑罰の対象とならないところの、いわゆる教唆扇動者取締りの単独立法であり、これには伝えられるところとはまつたく反対に、教員を不当な束縛から解放するものである。また、その容疑は、教育委員会等の要請をまつて初めて捜査されるものであるから、伝えられる警官の学園立入りはあり得ないと思うが、どうか。主として以上四点につきまして、特に文部大臣、法務大臣、国警長官に所信をたださんとするものであります。
 質疑の第一点は、教育の中立性はいかなる政党からも中立でなければならず、特に時の権力者である政府から中立でなければならぬということは言うまでもないことであります。政府に都合のよいことは是認し、都合の悪いことを言うのを禁止しようとするのが教育の中立性ではないのかと反対派の諸君は言うのであります。政府の考えて齢る中立性とは、自由党からも、社会党からも、また改進党からも、すなわち一切の政党の不当なる支配から中立であるということであると思うが、この点をこの際国民の前に明確にお示し願いたいと存ずるのであります。
 たとえば山口県小中学生日記に驚きまして、アメリカは戦争勢力であつて、ソビエトは平和勢力であるというようなことを無知な子供に植えつけようとしておることは、これは明らかに教育の中立性を侵犯するものであり、また教育基本法に抵触するものであります。しかるに、反対論の多くは、このような事例はまれに起つたところの例外中の例外であるとして、この例外的な政治的偏向の事例を取上げて教職員を縛る立法をするということはけしからぬではないかと言うのでありますが、私の知る限りにおきましては、これは決して偶然に起つた問題ではございません。すなわち、日教組はいわゆる平和四原則を支持し、その大会におきまして、吉田内閣打倒、民主政権の樹立、再軍備反対を最高の方針といたしまして、アメリカを中心とする独占資本が至るところで戦争を企てておる、こういう世界情勢の分析をその新聞でもつて末端に徹底させ、そうしてこの世界観を、きわめて巧妙に、組織的に、計画的に、子供の生活を通じ、学校のもろくの行事を通じて浸透させるべしと、第二十四回中央委員会の決定事項に基いて、その具体的実践を迫り、五十万教職員の組織を利用し、莫大な資金にものを言わせて、政治的にまつたく純白な子供に反米親ソの感情を植えつけることを強制しておるのであります。(拍手)また、日教組は、全国五十万の教職員から集めた数億に上る組合費を、その教職員の意思を無視して、ほとんど左派社会党のみに、数千万円に及ぶ政治献金をいたしておるのであります。(拍手)
 今日、実質的に教員の人事権を掌握しているのは日教組であり、教員の生殺与奪の権力を行使しているのは日教組であります。その日教組が一度指令を発しますならば、かかる政治的偏向の事例は全国至るところに発生し、このまま何らの法的措置も企てずに放置するならば、日本国中の学校が反米親ソの教育で塗りつぶされる憂えなしと、だれが断言できるでありましよう。(拍手)これこそ戦前のフアッシヨの権力主義的画一教育をもたらすことになるのであります(拍手)純白な子供は、将来社会主義を信奉する者もあるかもしれません。あるいはまた資本主義擁護に走る者も出て来るかもしれません。これは生徒、児童の自由であります。それを社会主義でなければだめだと教え込むのは、生徒の持つておる学ぶ自由を侵すことになり、子供の基本的人権を侵すことになります。(拍手)あるいはまた、教員の中にも、桂会主義者もおれば保守主義者もおる。それに、社会主義を信奉すること、これを教えることを強要するのは、これ明らかに教員の持つ教える自由、それをも束縛することになると言おざるを得ないのであります。この点に関し、文部大臣は一体いかなる御所見をお持ちであるか、承りたい。
 第二の点、平和憲法を守り、平和教育を説くことを、この濃案は決して禁止してはおりません。ただ、今日日教緯の言う平和教育は、平和教育の美名のもとに、再軍備反対とか、安全保障条約の廃止を含む反米親ソ、中共礼讃の一片寄つた思想を鼓吹ぜんとずる、特定政党の政治活動にほかならないのであります。今日何人も平和を欲しない者はあ吟ません。平和獲得の手段方法に議論があるだけであります。再軍備をして平和を守るんだという議論もあります。いや、軍備なくして初めて平和が維持できるんだという議論もあります。この際再軍備すなわち戦争と即断するのもおかしな話でありますが、それはともかくといたしまして、この二つの論議の一方だげが正しいとして、これを画一的に生経に教えることをもつて平和教育といたしますならば、すなわち、日教組が現在行つている再軍備反対の平和教育、教育防衛運動を一方的に生徒児童に徹底させることは、フアツシヨ教育以外の何ものでもございません。(拍手)これは中共の教育政策と同様であります。ソビエトの共産主義教育とまつたく同様であります。文辞大臣は、この日米安全保障条約を破棄しなければ平和は保てないという、いわゆる平和教育を生徒に教え込むことは教育基本法に抵触するものであるかどうか、御答弁を願いたいのであります。(拍手)
 第三の、教員の基本的人権を束縛するという議論につきましては、教職員だからといつて無覇限の自由を許容されるものではございません。義務教育に従事するという国家的要請と、教育基本法にいう全体の奉仕看たる身分の上からも、聖職に相応した自由の制限を受けることは当然のことと言うべきでありましよう。現在国立学校の義務教育に在職する教員は、はたして教育の自由を奪われ、基本的人権を奪われておると感じておるでありましようか。一体、東京都内の国立大学の付属の教員が、国家公務員では言いたいことも言えない、言論の自由も奪われておる、だから地方公務員にしてくれと、大臣は陳情を受けたことがありますか。何らかの意図を持ち、特定の思想を子供に植えつけようとする教員だけが極端に自由を制限されておるように感じるのでありまして、良心と良識とを持つた自由な教員は、教える自由を束縛されたとは感じないのであります。日教組は、この法案が通れば、教師はあぶなくなつた校舎の改築を要求したり、一年生の教科書を無償にしてほしいというようなことも言えなくなると宣伝して父兄に訴えておりますが、そんな言論の自由は少しも禁止していないのであります。憲法に保障ざれた言論の自由は厳然として保障されておる。日教組のかかる悪質な悪宣伝の横行は断じて黙視し得ないところであります。文部大臣は、この際はつきり、この不当な誤解を解いていただきたいと思うのであります。
 口で教育の自由を叫び、基本的人権を説く教員が、一斉賜暇のストライキをやるのはどうでありましようか。これは明らかに子供の教えを受ける権利を蹂躪するものであります。また、国が義務的に要請している教壇を、日教組の指令に基いて放棄させることは、これこそ教壇を守らんとする善良なる教職員の教える自由を奪い、基本的人権を侵すものであると断言してはばからないものであります。(拍手)最近、北海道におきまして、小中学校の教員が一斉休暇を行つて問題を起している事件があります。現在の法規でも、この一斉休暇は、地公法第三十七条へ第六十一条に触れる非合法な争議行為と考えられるのであります。しかも、この一斉休暇が教組の指令によつて行われたものであることは、一点の疑う余地のない事実であります。
 現在、学校を休む権限は校長にあると言われているのでありますが……。
#57
○副議長(原彪君) 坂田君に申し上げますが、質疑の範囲を越えないようにお願いいたします。
#58
○坂田道太君(続) 校長はまた教育行政の末端に立つ国の機関でもあります。教育行政に関しましては、教組から指揮命令を受ける理由はごうまつもあり得ないのであります。もし校長が教組の命ずるままに休校を決定したというならば、これは明らかに国に属する行政機関を教組に売渡したことであります。校長の驚くべき越権行為であります。言いかえますならば、教育行政の支配が国家から教組に移つたことを意味すると思うものであります。このようなことが、伝えられるように全国に起りましたならば、日本の義務教育は一体どうなるでありましようか。まさに教育的亡国であります。このようなフアツシヨ的日教組の非合法活動に対して、子供を守り教育を守る最高責任者である文部大臣は何らかの措置をとられたか、また法務大臣はこのような違法行為を黙つて見ておられるのであるかどうか、御所見を承りたいのであります。
 最後に、警察国家にならないかという議論につきましては、学校の中に警官がどしどし入るということであれば、もはや教育は行われません。ソ連や中共の警察国家の中央集権的教育制度こそ、われわれの最も反対するところであります。それゆえにこそ、地方教育委員会などの要請をまつて初めて検察権発動の要件としたのでありまして、むやみに警官が学校内に入り込むことをなからしめ、教育問題は常に教育当事者の間の良心と良識にまつて解決すべきであるという考え方から出発しているのであります。最近国警が至るところで思想調査をやつているかのごとき宣伝を耳にするのでありますが、事実はそんなことはあり得ないと思うが、どうか、国警長官にお尋ねいたしたい。
 日教組の中には、日教組統一委員会という共産党のフラク活動があつて、暴力革命の前提として、日本人の意識の改造、中共のいわゆる洗脳教育、学習運動の場に日教組を利用せんとしている。ことに、高知の教研大会におきましても、また静岡県教研大会におきましても、これと並行して日本共産党の秘密会合が行われたと聞いておるが、それは事実であるかどうか。この点について国警長官の明快なる御答弁をお願いいたしたいと思います。
 さらに、この法案におきましては、外部からの教唆、扇動は処罰の対象としたが、扇動されて特定の政治活動を行つた個々の教員は罰せられないのであります。しかるに、最近日教組がPTA等に配つている宣伝ビラに、日本の教育が警官の手に握られるとか、懲役三年、罰金十万円という恐ろしい刑罰のもとでは、ほんとうのことも言えなくなる危険があるなどと書いております。これはまつたく、ためにせんとする宣伝にほかなりません。
#59
○副議長(原彪君) 坂田君、時間が参りました。簡単に結論をお願いいたします。
#60
○坂田道太君(続) 承知いたしました。われわれは、現在のごとき極端な教育の政治的偏向がただちに是正せられ得るとは決して思いません。全国の教職員の良識と勇気、深い反省と、そうして国民の平凡なる常識のみが、この法案の終局の目的を達成するものであると確信いたすものであります。善良なる大多数の教職員の方々をこの不当なる支配から解放いたしまして、はげしい政治活動の渦中から救い出し、真に教育を守り子供を守ることこそ、政府の本法案提出の眼目の一つであると思うのでありますが、文部大臣の率直なる御意見をただしたいのでございます。(拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
#61
○国務大臣(大達茂雄君) このごろ、この法律案に対する反対の宣伝として、これは政府の権力のもとに学校教育を置こうとするものである、共産党とか、あるいは社会党左派とか、そういう政党の主張を言えばこの法律にひつかかるが、保守党、自由党等のことを言えば、それは何らさしつかえないのである、かような意味の宣伝が行われております。それについてのお尋ねがありましたが、これは法律文をお読みになればすぐわかることでありまして、法律案には、自由党を支持しまたは社会党左派に反対させる教育とは書いてない。いかなる政党といえども、特定の政党であれば、ことごとく入るのであります。
 次に、山口県に起つた事件がきわめて偶然な事件である、それを大げさに取立てておる、しかし、必ずしもそれは偶然の事実ではないのであつて、日教組の闘争方針と言いますか、それに基因するものであると思うが、どうか。これはまつたくその通りであります。(拍手)日教組は計画的に故意に指令を流しておるということは、これは日教組自身の書類、文章によつて明らかであります。
 それから次に、いわゆる平和教育というものが、基本法八条の二項に言うところの片寄つた教育、政治的中立を破るところの教育であると思うが、どうか、こういうお尋ねであります。もちろん、平和を教えるということ、平和の精神を教えるということは、これは何もさしつかえない。ただ、平和教育という名前のもとに特定の政党の主張をする、その政策の内容を教え、もつて特定政党の主張を支持しまたは反対するような教育をする、こういうことであれば、これは明らかに基本法の八条の二項に抵触するものと考えます。(拍手)ただ、個々の場合において、これははたしてこの法律にいうところの教唆、扇動の内容として罰則に当るものかどうか、これは具体的に個々の場合の実際について判定しなければならぬ、かように考えております。
 その次には、政治的行為の制限の問題につきまして、付属の小中学校の先生から、かように政治的行為を制限せられてはとても困るから、何とか公立学校の方にまわしてもらえないか、こういう陳情を受けたことがあるかどうかというお尋ねであります。さような陳情は、おそらく文部省始まつて以来一度もないと思います。(拍手)むしろ、公立学校から国立学校の方にかえてもらいたいという希望者が非常に多いのであります。(拍手)
 それから、この政治的行為の制限の内容について、今日日教組あたりがビラを出したりこれは明らかに、日教組とか、都教組とか、ちやんと印刷をして、そういう名が入れてあります。このビラの中に、あるいは小さなパンフレットの中に、政治的行為の制限ということを非常に極端に誇張して、何も言えなくなる、はなはだしきた至つては、北海道の学校でストーブをもう少したかなければならぬと言つただけでも法律に触れるのである、こういうよろなことを言いふらしておるが、それはそういうものであるかどうか、こういうお尋ねであります。これまた非常な間違いであります。虚構の宣伝であります。これは公務員法において明らかに一定の局限された行為のみについて制限して募るのであつて、そんな、ストーブをたくとか給食を少し増してもらいたいとか、そういうことまで一々とめるということは絶対にありません。(拍手)これは、現に国家公務員としてその制限に服しておる大学の教授が、この問題についてきわめて活発なる政治的意見を発表しておる。そのこと自体がこれを証明して余りあるものであります。(拍手)
 次には、北海道の臨時休校を文部省は何と見るか、またこれに対していかなる措置をとるか、こういうお尋ねでありました。北海道の実情は、ただいま調べておりまして、正確にはまだわかつておりません。ただ、新聞等によりまして、その報道に基いて申し上げますと、職員会議を開いて、そうして学校を休んだ。これは明らかに望ましからざることであり、また場合によつてこれは法規に抵触するものである、いわゆる怠業であると思います。それから校長会議を開いてこれを許した。これは、法律には、天災地変その他非常な場合と、こういうことになつておりますから、かような防衛大会とか研究会とかに出るために学校を休むことを許したということ、もしくはそういうことにきめたということは、明らかに校長の越権な行為である、かように私は思つております。(拍手)ただ、実情がわかりませんから、新聞に報ぜられておることを前提にして申し上げたわけであります。
 最後に、この法律案について非常な虚偽な宣伝が流布せられておる。それについてのお話でありましたが、これはそういう題目であつたけれども、実はあまりやかましいので聞き取れなかつたのでありますが、これは、初めに坂田君が言われたように、今日法律案も出もしないうちから、ほとんど立案にもかからないうちから、その内容を臆測してこれは、おそらくはそういう臆測をしたというのではなくて、初めからうそを承知で宣伝したものと見るよりほかはない。もしこれを本気で言つたとすれば、その人はよほどどうかしている。これは明らかにうそを承知で言つたものと私は考えます。(拍手)
    〔国務大臣犬養健君登壇〕
#62
○国務大臣(犬養健君) お答えを申し上げます。最初に、警察官はみだりに捜査の第一線に立たないで、教育委員会の請求をまつて行動するということで間違いないのではないかという御注意でありました。これは、違法行為に対する警官の捜査というものは、ただいま御指摘のように、教育委員会その他の請求をまつて初めて動くのでありますから、警官がみだりに第一線に立ち入つて、ほしいままに行動するということはないように考えております。またそういたしたいと存じます。一般に申しまして、単園内で行われました違法行為に対しては、よくよくの場合を除くほか、主として行政上の監督権に基く処分によりたいと考えております。
    〔政府委員斎藤昇君登壇〕
#63
○政府委員(斎藤昇君) 警察官の思想調査についてまずお答えをいたします。犬養大臣からたびたびお答えを申しておりまするように、教職員の思想調査につきまして、中央あるいは地方において組織的にやつておる、あるいは警察官が個々の判断においてやつておるという事例は、今まで報告を受けた中には一つもございません。ただ、われわれといたしましては、日本共産党が暴力革命を否定いたしません限り、その合法、非合法の組織を通じまして、いかにその勢力を拡張しつつあるかということは当然知らなければならないのであります。ことに、共産党が学校教職員に対しましても、あるいはグループ活動により、あるいは軍事組織を通じまして、強くその指導を伸ばさんとしておりますことは、各種の資料によつて明瞭であります。従つて、治安機関といたしましては、日教組内における共産勢力につきましては、絶えずその他の組織内におけるものと同様に、視察、内偵を怠つていないのであります。しかしながら、警察といたしましては、その調査の方法につきまして、調査自体が思想調査にわたつたり、または当人もしくは第三者に迷惑をかけるような調査方法は絶対に用いておらないのであります。最近新聞紙上等で伝えられておりまするような各種の問題は、さきに大臣もお答えいたしました通り、あるいは犯罪捜査として当然やりました捜査活動とか、あるいは単なる雑談で、思想調査と言われるようなものに該当するようなものは一つもないのであります。
 なお次に、第二の御質問の、日教組内における共産党のグループ活動のことでございまするが、日教組内に共産党細胞を基準にいたしました教組グループの存在いたしておりますことは、申し上げるまでもないのであります。しこうして、この日教組のグループは、共産党の日教組中央グループ指導部、あるいは地方教組グループ指導部、あるいは県教組グループ指導部によりまして、それぞれの段階における日教組グループを強力に指導いたしておるのであります。この中央グループ指導部といたしましては、教育戦線という秘密機関紙を発行いたしまして、常時日教組グループの活動方針につきまして時々詳細なる指導をいたしております。また、教組グループは、時々全国会議あるいは地方会議、県会議を開きまして、共産党の勢力を党員あるいは教員を通じていかに拡大して行くか、また教組内に統一委員会をいかに育て上げて行くか、あるいは共産主義教育をいかなる方法において浸透させるかということを審議研究あるいは決定をいたしております。お尋ねのごとく、先般静岡における教研大会の直前に驚きまして、このグループの全国大会が開かれましたことは事実と考えます。(拍手)
#64
○副議長(原彪君) 田中久雄君。
    〔田中久雄君登壇〕
#65
○田中久雄君 私は、改進党を代表いたしまして、教育公務員特例法の一部を改正する法律案、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の二案に関して、内閣総理大臣並びに文部大臣に対して、きわめて重要なる数点について質問をいたすものであります。
 本案に対しましては今や各方面より反対の声が上つておりますが、政府は、もとより、この程度の事態が起ることは当然予想せられておつたことと存じます。これを承知の上でなおかつ本案を国会に提出せざるを得なかつたとするならば、幾多の教育の中立性を侵す事実が発生しておることと思いますが、現在の情勢はいかがであるか。これ私の質問の第一であります。(拍手)
 わが国の教育は教育基本法、学校教育法、教育委員会法の三法を基本として行われておりますが、文教の責任者である文部大臣には指導監督権が与えられておりません。ゆえに、個々の教員は、あるいは誤つて極端なる教育をいたしましても、文部大臣は直接には何らの処置を講ずることも許されておりません。私どもが各地にありと聞きます極端な教育も、この一点をさえ改正するならば問題は解決するのではないかと考えられる。文部大臣が学校並びに教職員に対して適正な指導監督をすることは、世界中いずれの国家においても行われておる当然なことであります。(拍手)吉田首相は、数箇年にわたつて五たび政権を担当し、独立以来すでに二箇年に及んで、事あるごとに占領政策の是正を唱えておられますが、しこうしてなおかつこれが解決せられない上いうことは、自由党内閣の重大なる怠慢であつたと考える。(拍手)総理大臣はその責任をお考えになつておるかいないか。教育三法の改正をなさる御意思はないか。これが私のお尋ねをする第二点であります。
 次に、教育三法を改正せず、現行法下においても適正なる勧告と助言はできるのであります。しかるに、従来文部当局は、日教組の数に圧倒せられて、何事に対しても正しい助言も勧告も行わず、むしろこれにへつらうがごとき醜態を繰返して来たあではないか。(拍手)従来、誤つた極端な教育について、大学学長であるとか教育委員会等に対して適正な助言や勧告が行われていたならば、今本案の上程は見ることなくして済んだのではないかと考えます。(拍手)文部大臣は、学校並びに教員に対し、極左偏向を是正するために、いかなる助言と勧告をこれまでになされた事実があるか。これ私が御尋ねする第三点であります。
 さらに、第四といたしましては、教育に関する予算の問題で、あります。政府は口に教育は大切なりと申されておりますけれども、予算の点においてはきわめて遺憾なるものがあります。昭和二十八年度予算は、修正の結果、危険校舎の改築費が二十二億でありましたが、二十九年度は八億円を削られて十四億円となつております。また、私学振興会の出資金は十五億円でありました歩、三分の一に削られております。すなわち五億円。戦災復旧費を初めとして、教育施設費はいずれも無残なる犠牲と相なつております。政府は一兆円予算の建前から並々ならぬ御苦心のあつたことと存じますけれども、これらの学校施設の補助金は、全国的に、戦時戦後二十年ぶりの善政として、教育関係者並びに父兄において明るい見通しを持つて非常に喜ばれたのである。しかるに、これがわずか一年でたちまち削減をせられておるということは、政府の教育に対する熱意を疑わしめるものと考える。(拍手)かくのごときは教職員に対してきわめて悪影響をもたらすものと存じますが、これに対して政府はいかなる考えをお持ちになつているか。これが私がお尋ねする第四点であります。
 次に、多年にわたつて広報活動が行われていないということであります。学校において実際教育に従事する教職員は、文教の責任にある文部当局よりは何らのよりどころを示されておらず、日教組が配付いたしまする印刷物のみにたよつておりまするために、時に教員の中に極左偏向の誤つた教育をなす者も出て来るのであります。六十万の教育職員に対する文部省の広報活動費は、わずかに二十九年度において百九十八万七千円であります。これは各省中の最低であつて、日教組広報活動費の数十分の一にすぎません。(拍手)政府はこれをもつて五十万の教職員を誤りなからしめることができておるとお考えになつておるか。総理大臣はこの広報活動に御満足であるかどうか。これ私がお伺いする第五点であります。
 次に、最近ひんぴんと起つております職場放棄の問題であります。先般岩手県において給与三本建の反対を理由として一日ストが行われ、最近北海道において定員増加を要求してこれまた一日ストが行われ、過日は教育の中立性に関する法案研究の名において全国的に三割賜暇が行われ、今また近く本案反対のために全国的な一日ストが行われようといううわさを聞くのであります。全国五十余万の教職員の大部分は、日教組本部よりの指令に対しては、これを自己の自由意思に基いて拒む自由と力を持つていないのである。(拍手)心ならずもストに参加して、教え子を捨てて、不本意ながらデモ行進にかり立てられておることは、私どものしばしば耳にするところである。(拍手)全国の父兄は、先生のストだけはやめてもらいたいという切実なる希望を持つております。政府はこれに対して従来いかなる処置をなされておるか。また今後いかなる処置をなさんとするか。どうぞ明快なる御答弁をお願いいたしたいのであります。
 以上、前段六項目におきまして、現在の情勢と政府の怠慢についてその所信をお尋ねいたしましたが、以下、私は、今回の二法案に対する政府の信念と本法の影響についてお伺いをいたします。すなわち、現在の一部教員のあり方に不安を持つ全国の父母と、九九・九%を占めるという健全中正な全国教職員の諸君にかわつて、私は政府の信念をたださんとする。(拍手)
 まず第一は、本法施行に関する政府の信念と決意いかんであります。端的に言つて、従来日教組がとり来つた組合員の指導方針に困惑を感じて来たのは大多数の自覚せる中正な教員であります。憂慮を禁じ得なかつたのは全国の父兄であります。元来、戦後のわが国の労働組合は、その結成を当時の至上権者たる占領軍によつて要請せられ奨励せられたというおい立ちからして、その運営も、組合員が一方的に引きずられて、大衆の盛り上りによる民主的運営の見られない組合が非常に多いのであります。ことに、これに対して極左的政治目的を持つ者が組合の上層部に侵入いたす場合においては、その傾向はきわめて危険なるものになつて来るのであります。現在組合員数五十四万を算し、年四億の財政を運用し、総評傘下最大の構成分子たる日教組のごときは、古くより丹頂のつると言われ、その典型的な存在であります。(拍手)
 本来、日教組は、労働組合法による労働組合ではなく、公務員に認められた職員団体でもなく、単に都道府県単位の公認せられた教職員組合の連合体であるという一任意団体にすぎません。この団体は、何の規制もなく、何の権限もありません。この任意団体の一部に極左分子が侵入し、下部職員組合に対してさまざまの不法行為を強要し、扇動しつつあるという現状であります。この日教組の構成分子であるところの職員団体は、国家公務員法第九十八条第二項及び地方公務員法第五十二条第一項の規定によつて、その活動目的が明瞭に規定せられておるのであります。すなわち、国家公務員法の場合においては、勤務条件に関し及び社交的、厚生的活動を営む適法なる目的のために、また地方公務員法においては、給与、勤務時間その他の勤務条件に関して当該地方公共団体の当局と交渉すること、これがその目的の一切であります。都道府県教職員組合はまさにこの職員団体でありますが、本年の二月上旬、この代表者が集まつて開催いたしました日本教職員組合第三十二回中央委員会で議決せられた闘争宣言なるものを見れば、政府の再軍備政策は、従来の保安隊漸増計画から、さらに進んでMSAの受入れ、自衛隊創設、軍事費の大幅増額、国民生活の破壊へと突進しており、この目に余る暴政に対し国民各層の反抗は日に増し強大となり、彼らに深刻な動揺を与えておるという名文句を冒頭に置きまして、まつたく現政府と鋭く対立する政治団体の決議をいたしております。かくのごときは、明らかに、そこに参列した教職員が職員団体の構成員たる本分にそむく行為であり、明白に国家公務員法及び地方公務員法に違反する行為であることは一点の非をいれざるところであります。(拍手)しかも、れこらの不法行為は従来もしばしば繰返されて来たところでありますが、政府はこれに対して一向に何らの処分の挙に出たことを聞きません。さらに、かかる勢いが教壇に持ち込まれ、純真無垢の学童の精神と情操とを片寄つた政治的方向に教導せんとした不法行為に対しましても明快な処置がとられてないことは、全国の中正堅実なる教職員や父兄とともにわれわれのまことに遺憾とするところであります。(拍手)この種の行動は公務員に要求される政治的中立性を蹟廟する一種の暴力行為とも言うべきである。憲法第十五条にいわゆる、すべて公務員は全体の奉仕者であつて一部の奉仕者ではないとの規定に違反し、かつは教育基本法第八条第二項にいわゆる、職員は特定の政党その他の政治的団体または特定の内閣等を支持しまたはこれに反対する目的のために行為をしてはならないとの規定にも違反する明らかな不法行為であります。(拍手)これらの累積せる不法行為に対して、政府当局はいかなる防遇策と処置を講じた実績であるか。少くとも輿論を喚起し公正な国民の審判を求めるだけの信念を有せなかつたということは事実である。われわれのまこと遺憾するところである。(拍手)
 さらに、昨年の国会議員選挙を中心として、日教組及び北海道以下十七府県の教職員組合よりは、合計二千九百五十二万円に及ぶ多額の金円が集められ、その相当部分が日本教職員政治連盟なる団体を通じて次の候補者にばらまかれている事実、参議院議員候補者岡三郎百四十五万円、愼枝元文百万円、宮原貞光八十五万円、外七名に対して三百十五万円、衆議院議員候補者に対しては、横路節雄君外十六名に対し、多きは七十五万円、大部分のものは四十五万円の金がばらまかれておる。これを政党別に見ると、二十四名が左派社会党であります。一名が右派社会党である。二名が無所属である。諸君、日々学童の教育に努力し、自分の生涯を教育にささげている全国の教職員諸君の薄給のうちから血のにじむ資金が吸い上げられて、そのほとんどが大部分左派社会党にのみ使われたということは、決して全国教職員の本旨にあらざることは申すまでもありません。(拍手)かかる行為は、職員は政党または政治目的のために寄付金その他の利益を求めもしくは受領しまたは何らの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与してはならないとする国家公務員法第百二条第一項の規定に違反し、さらに、職員は特定の政党その他の政治的団体を支持する目的をもつて寄付金その他の金品の募集に関与してはならないとする地方公務員法第三十六条第二項第三号の規定に違反する不法行為であるということは明白な事実であります。(拍手)しかるに、政府当局の無気力は、かかるあり得べからざる傍若無人の不法行為に対して何ら是正の措置に出なかつたことは、まことにわれわれの理解し得ざるところであります。まじめなる大多数の教員は、この不法行為者が放任され、かつ自分らに対する教唆、扇動的行為に対し、きおめて迷惑をいたしておるのが真相であります。政府は、今回提出の二法案によつて、かかる法治国家にあるまじき数々の不法行為を中絶せしめ得ると考えていられることと思いますが、本案の内容またきわめて漠然たるものであつて、いたずらにまじめなる五十万の教職員を萎縮せしめるだけである。しかもなお政府の考えるごとき目的を達し得ないのではないかと考えるのであります。
 本案に対する政府の信念と、本案の全教員に及ぼす影響につき政府の所信を伺い、審議の参考に資せんとする次第であります。(拍手)
#66
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 本法案については相当の反対があるにもかかわらず、政府はその反対を押し切つてここにこの本法案を提出したその理由を具体的に説明されたいという御質問のように承ります。本法案の提出される前からいろいろな反対がありましたことは、政府といたしましてもよく承知しておりまするが、政府といたしましては、義務教育における政治的中立性の確保は現下最も重要なことであると信じまして本法案を提出するに至つた次第でございます。
 それから次に、教育三法によれば、文部大臣には監督権がない、しかるに、本法案によれば、教員はいろいろ監督を受けることになり、ひいてはそれを脅かすことにもなるから、かような法律はいらないと思うが、どうかという御質問でありまするが、教育の地方分権化によりまして、文部大臣は地方の教育について監督の権限はなくなつておりまするが、今ただちに教育三法を改正する考えは持つておりません。但し、今後必要に応じて検討を加えまして、改善の必要を発見いたしました場合には、改善することにもちろんやぶさかでないのでございます。今回の法案が教育を脅かすというような御趣旨もあつたようでありますが、そういうことは全然政府としては考えておりません。その法案の趣旨は十分教職員に徹底せしめ、誤解のないようにしたいと考えております。
 第三に、現行法によつて教員組合の行き過ぎに対しては措置ができることになつておる、しかるに当局者は日教組に対して迎合し過ぎると思うが、どうかということであります。現在、公立学校の教員は、勤務地以外では原則として政治活動が自由であります。この結果、全国的な組織の圧力による、政治的行動に狂奔し、組合の交渉事項の範囲を越えて地方当局に当らんとする一部の傾向があることは、御承知の通りであります。また日教組には大部分の教職員が加入しておるのでありますから、その意見について聞くべきものがあれば聴取するにあえてやぶさかではなかつたのでありますが、決してこれを甘やかす気持は当局としては持つておりません。行き過ぎがあれば、政府としてはその非を反省させたい所存であります。
 それから、教育関係予算が少な過ぎはしないかという御質問でありまするが、教育関係予算につきましては、政府は、困難な現下の財政事情のもとにおきましても、できる限り重点的に取扱い、全体的には前年度より上まわつた額を計上しております。
 さらに、教員の職場放棄、三割賜暇、一日スト等についてどういう措置をとるのであるかという御質問に対しては、教員の職場放棄、三割賜暇、一日スト等の行為は、教育の正常なる運営を阻害し、地方公務員法に違反する場合もあると考えられますので、事態の推移を注視し、違法なる争議行為が行われる危険が著しいと認められるときは、教育委員会に対し、かかる事態を防止するために必要な措置をとるように指導いたして参りたいと考えております。
 以上お答え申し上げます。
#67
○国務大臣(大達茂雄君) 順次お答えを申し上げます。
 かような法律案を提出せざるを得ざるに至つたそのもとになつた事例があるか、その模様はどうか、こういうお尋ねであります。これは、今日地方の教育機関関係におきまして、いろいろいわゆる赤い教育をめぐつて紛争が起つておる事例が相当にあります。またそのほか私どもの手で何らかの関係から得た事例も相当多数に上つております。しかしながら、これは、実は私どもといたしまして、これの調査をする手段をあまり持つておりませんので、先ほどの緊急質問の際に問題になりました通牒というのも、かような事例についての報告を求めたのであります。しかし、とにかく、全国各地にわたりまして、しかも相当強い偏向の教育が行われておるということは、これは争うべからざる事実であります。これが、今日わが国の教育の現状から見て、かくのごとき事態をこのまま放置するということはできない、かような見地からこの法律案を提出するに至つたのであります。(拍手)
 次に、文部省がこの際地方の教育を監督する立場をとるけれども、いわゆる教育三法というものを改正してそれをすれば、かような法律案は出さぬでも教育の中立性は維持し得るではないか、こういう御質問であります。これはその通りであろうと思います。しかしながら、わが国の教育はいわゆる戦後の民主的運営にまかせられておるのでありまして、これをもし文部省の実際上の監督下に置くということは、いわゆるこれは中央集権になる。いわゆる逆コースである。これらの点に相当考慮を要する点がありますので、これは、ただいまのところ、教育三法を改正して文部省が再び地方の学校にその監督権の支配を及ぼす、こういうことは考えておりません。
 それから、その次は、文部省の従来の態度、ことに日教組に対して遠慮し過ぎたのじやないか。これはいろいろ御批判もあるかと思います。いわゆる文部大臣として指導、助言、これをすることが、日教組をはばかつて十分できなかつたのではないか、こういうお尋ねのようでありましたが、いろいろ従来といえども文部省は助言、指導ということをいたしております。ことに、この当面の問題につきましては、昨年の七月でありましたか、山口県に小学生日記等の問題が起りました当時、これを全国に向つて強く指導、勧告を行つて参つたのであります。ただ遺憾ながら、これらの指導、勧告というものが、実際地方の教育の上において、その効能があまりなかつたわけであります。これは大体日教組がじやまをしたからであります。(拍手)日教組の最近の文書の中に、文部省から出た通達はなるべくこれを握りつぶしてしまう、こういうことを地方の県教育委員会に働きかけるということが書いてあるのであります。
 その次は教育予算が非常に貧しい、かような点からいろいろな問題が起るのではないか、現に二十九年度の予算についても、前年度に比べて削減されておる面が相当あるではないか。これはまことにその通りであります。私ども教育予算をできるだけ充実するために努力をしておるのでありますが、しかしながら、日教組の宣伝をするように、二十九年度の教育予算が二十八年度に比べて非常に削減されておる、いわゆる大幅削減になつておる、かような事実はうそであります。これは予算をごらんいただけばすぐわかることでありまして、二十九年度の文部省予算は二十八年度の予算に比べて約百二十億を増額計上されておるのであります。この緊縮予算の際でありますから、決してこれをもつて十分と言うことはできないけれども、これを重点的に、効率的に執行して参りたい。しかるに、日教組は、この法律案に反対するために、給食の父兄の負担が非常に増す、あるいは教材費がなくなつたからしてほとんど満足な授業ができない、極端に言えば白墨も使えなくなる、あるいはまた教職員の大量首切りが行われる、かような、あられもない虚構の事実を宣伝して、そうしてこの五十万教職員とPTAの人々に不安と動揺を与えつつあるということは、私はまことに遺憾に存ずるのであります。(拍手)
 その次に、広報活動をますます活発にすべきではないか。これはまことにごもつともでありまして、私どもも、ぜひそうしたいと思つておるのであります。ただ、こういう際でありまして、まことに予算が僅少であります。ただ、二十八年度までは、県の教育委員会あるいは知事、そういうところまでしかこの広報を流す経費がなかつたのでありますが、二十九年度におきましては、ようやく各地方の市町村教育委員会の方面にもこの文部広報を流すことができるようになつて、少しぐらいはよくなつた。しかし、これは非常に重要なことに私どもは考えておりますので、この予算は二百万円でありましても、今後とも、できるだけ何とか地方の市町村教育委員会、あるいはさらに進んでは各学校までも指導、助言ということが行きわたるようにいたしたい、かように考えております。
 その次には、職場放棄の問題であります。ややもすると、教職員の間に職場が放棄されるという事実がありますことは、これは教育そのものの性質から見ましても、まことに遺憾にたえないのであります。ただ、非常に考えて、非常に巧妙な方法をとつておりまして、すぐなかなか法律にひつかからないようなことをいろいろくふうしてやつておる。これに対しては、日教組で、こういうふうにやれ、ああいうふうにやれということを教えて、指令を流しておるのであります。私は地方の学校の先生が好んで職場を放棄するものとは思いません。ただ、たとえば今回の法案にしましても、実力闘争もあえて辞せず、実力行動もあえて辞せないということをしきりに言つておる。この実力行動ということは、どういうことであるか知りません。知りませんが、全国にわたる教職員を扇動して、そうして職場を放棄さぜるというような実態を意味しておるものであるとするならば、はなはだけしからぬことであると私どもは思うのであります。
 次には、日教組は政治団体と思うが、どうか。それは、日教組の中には国家公務員の人もおるし、地方公務員の人もおる、しかし、日教組は今日はほとんど政治団体である、その場合に、はたしてしからば、これらの公務員たる教職員は、いわゆる国家公務員法の規定に抵触するものではないか、違反しているではないか、これに対してどう思うかというふうに受取られましたが、御承知の通り、日教組は、いわゆる勤務条件の向上改善を目的とする労働団体、あるいはまた教育の研究を志すところの教育者の団体という面はもちろんありますが、同時にまた強い政治的な偏向を持つ、その意味においては政治的団体である、かように言つてもさしつかえないものと思います。日教組の掲げるところの主張、そのスローガン、すべてこれを裏書きして余りあるのであります。そこで、これらの特定な目的を持つてそういうことをする国家公務員たる日教組の組合員ですか教員ですか、そういう人が国家公務員法に触れるということは、私は考え得ると思うのであります。しかしながら、これは御承知のことと思いますが、日教組の会合はきわめて秘密なものであります。一切外部の人は入れないのであります。でありますからして、その場合に、日教組でいろいろいろな決議をしたり、執行をしたり、いろいろなことをするのでありましよう。その場合に、どの国家公務員たる人がやつたか、その点は私どもとしては容易に与かがい知り得ないのであります。ただ、国家公務員として公務員法の違反としての処罰の問題は、これは私どものあずかるところではありません。そういう意味におきまして、政治的団体であるか、どう思うかとおつしやれば、これは明瞭に、政治的団体とはつきり言つてさしつかえない。これは日教組の指令によつて歴々指摘し得るのであります。
 もう一つ最後に、この法律案の内容が漠然としておつて、その点ではたして効果が上るかというような意味の御質問でございました。私は、基本法第八条の二項にある教育の偏向、この全部をはつきりした形において捕捉し得るならば、それをもつて教唆、扇動を内容とする犯罪として規定したい、かように考えるのでありますが、しかし、これは、実際の場合において、これを的確に表わすということが非常に困難でありますので、また行き過ぎが生じないようにという配慮から、この一八条二項に抵触する事項のうちで典型的なものを出しまして、これならばはつきりとするのでありますから、これをこのたびの法律の内容といたしたのであります。従つて、漠然としておるから困るという問題は生じないかように存じます。(拍手)
#68
○副議長(原彪君) 辻原弘市君。
    〔辻原弘市君登壇〕
#69
○辻原弘市君 ただいま議題となりました、いわゆる教育における政治活動禁止の二法案、すなわち教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案について、この二法案の及ぼす影響きわめて甚大なるものを想起いたしまして、ここに日本社会党を代表して、総理並びに文部大臣、法務大臣、自治庁長官、その他関係閣僚に対しまして、法案が内蔵する基本的問題について、その所信をたださんとするものであります。私は、教育者の一個の団体である日教組と教育の根本とを混同して質疑をし、あるいはそれになれ合い質問をするような、かかる政府、与党によつて出された法案でありまするがゆえに、特に重要な諸点については徹底的にこれを糾明いたす考えであります。(拍手)
 私は、まず最初に、この法案の立案過程における二、三の問題について、文部大臣からその実相を承つておきたいと思うのであります。本二法案は、最終的結論に至るまで、先ほど与党である坂田君すら指摘をされたように、ほとんどその内容は公表されず、新聞等においても、事の重大性にかんがみ大々的に報道しておるものの、内容は想像的記事の域を出ていなかつたのであります。たとい立案過程といえども、かほどの重要問題を秘密裏に作成するという、また作成しなければならぬというような官僚的態度は、今日の民主主義の社会では絶対に許されないところであると思うのでありまするが、何ゆえ文部大臣は極端な秘密主義をおとりになつたのであるか、御所存を承りたいのであります。(拍手)
 次に、中央教育審議会の答申について承りたいのであります。当時の新聞紙上によつても明らかなように、審議会において、政府の諮問に答えるにあたつて、元文部大臣天野貞祐氏、前田多門氏、矢内原東大総長など、そうそうたるメンバーが、かかる政府の意図は教育を破壊するものであるとして、あくまで反対し、最終的にまとめられた答申案は、政府の諮問した内容よりも若干緩和せられておつたと承知いたしておりまするが、政府はこの答申案をいかに取扱われたか。さらにまた、審議会におけるこれらの強い反対意見について、文相はどうお受取りになり、お考えになつておられるか、承りたいのであります。(拍手)さらに、私は、立案過程において、この法案をめぐつて文部省、法務省あるいは内閣法制局などの政府部内に、はげしい意見の対立のあつたことを指摘したいと思います。文部省が、あくまで政治活動禁止の目的を果さんがために、しやにむに法文化をでつち上げんとしたに対し、法務当局は、文部当局の主張そのままを明文化することは行き過ぎであり憲法違反であるとして、これを拒否した事実は注目に値するとともに、しなくも目的のためには手段を選ばない文部当局の態度の一端が露呈されたものであると断定するものであります。(拍手)特に、私はこの際、この意見の対立が那辺にあつたかを具体的に文部大臣、法務大臣にお尋ねしたいのであります。
 次に、法案の基本的問題に触れて政府の所信のほどを承りたいのであります。まず、教育公務員特例法の一部を改正する法律案は、その目的とするところは、地方公務員である教職員の政治活動を、国家公務員同様、投票権を除く以外、すべてを禁止しようとしておるのであります。そもそも、民主国家における国民の基本的権利の保障、なかんずく政治活動の自由は、民主国家存立の基本的要件であつて、このことなくして民主政治維持の絶対不可能なことは、いまさら申し述べるまでもないところであります。かかる意味において、憲法は、その前文に厳粛に主権在民を宣言し、国民の基本的権利は侵すことのできない永久の権利としてこれを保障しておるのであります。さきに、国家公務員法ないしは地方公務員法によつて、当時の吉田内閣は公務員の政治活動を剥奪したのであります。当時、世論の多くは、これを憲法違反なりとして政府に迫つたのでありますが、政府は、公共の福祉と、公務員は全体の奉仕者であるからという抽象的理由を口実に、これを強行したのであります。私は、当時におきましても、今日においても、また私のみならず、多くの憲法学者も、かかる政治活動の禁止は基本的人権の侵害であり憲法に背反するものであるとの見解を持つておるが、総理はいかにお考えになつておるか、率直に承りたいのであります。(拍手)
 さらにお伺いいたしたいことは、公務員、教員といえども、ひとしく公民であり市民であります。かりに百歩譲つて、全体の奉仕者という職務の重要性から、勤務の時間ないしは公の立場における政治活動は適当でないとしても、プライヴェートの市民としての立場は、公務員であろうが、あるいは教員であろうが、だれであろうが、かわらないはずである。平等に保障しなければならぬものと確信いたしておりますが、何ゆえにかかる極端な禁止制限を今教員に加えんとするのか、これこそ明らかな憲法違反であると断ぜざるを得ないが、法務大臣、文部大臣はいかなる見解をお持ちになるか、承りたいのであります。(拍手)
 次に、従来政府は、国家公務員と地方公務員とはその性格が本質的に異なるとして、政治活動を制限するにおいても、国家公務員であれば国全体、地方公務員の場合はその所属する当該地方公共団体の範囲内であるといたしておりましたが、今回地方公務員である教員を国家公務員と同様の制限下に置かんとしておることは、一体いかなることか。これによつて他の地方公務員との間に不均衡を生ずるはもちろんのこと、すでに教員は地方公務員たるの性格を失い、実質的には国家公務員同様国の統制下に置かんとするものにほかならないと思うのであります。このことは明らかに地方分権の精神に反する措置であり、かつまた教育の中央集権化の企図にほかならないと思うが、この点について文部大臣、自治庁長官の御所見を承つておきたいのであります。
 さらにお伺いいたしますが、地方公務員法第三十六条但書についてであります。当時の記録を見れば明らかなごとく、教員は、一般公務員と異なり、行政を行う立場にはないのであるから、その政治活動を禁止、制限するとしても、一般公務員のごとく行政の執行者としての影響力からはこれを律するわけには参らぬとして、もつぱら父兄と生徒、児童に及ぼす影響力のみを考慮してやればよろしいとする当時り改進党の主張によつてこの但書が付され、今日に至つているものであります。それを、いまさら、この明白な趣旨を没却して、九州の先生が北海道のはてに行つても影響力が昂るなどというような考えに基いてこの但書を削除せんとすることは、今日良識ある国民のひとしく了解に苦しむところであります。(拍手)もし、しいてその理由を求めんとするならば、選挙に際して現われた部分的現象が、政府の、あるいは与党の諸君の気に入らないという党利党略から出たものとしか理解できがたいのでありますが、そのように受取つてさしつかえないかどうか、文部大臣に承りたいのであります。もしかりにそうであるとするならば、まさに言語道断であつて、国民が自由なる意思に基いて政治を批判し、かつまた政党の支持を表明することをはばまんとする、政党政治の自殺的行為であると断ぜざるを得ないのでありまして、政府の猛省を促す次第であります。(拍手)
 次に、私は、かかる制限、禁止を行つている国が他にあるかどうかという点について、中立性確保の法案とあわせてお伺いいたしたいのであります。およそ私の知る範囲においても、一般市民としての当然の政治活動を、公務員、教員なるがゆえに犯罪として取扱い、それに三年以下もしくは十万円以下の罰金を科するといつたような苛酷な取扱いをしている非民主国の例を寡聞にして知らないのであります。また、先般文部省より出されている調査資料によつてこれを見ましても、いずれにも見出せないのでありますが、どこかにそんな例があるのかどうか。あるならば、具体的にその内容を承つておきたいと思うのであります。もしかりにないとするならば、何がゆえに、わが国よりはるかに民主的訓練を経ている諸外国にもないことを、今日ようやく民主主義の芽を出しかけたばかりのわが国に、その芽をつまんとするようなことをやろうとするのであるか、その理由を文部大臣から明白に承りたいのであります。(拍手)
 次に、問題を義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する浅律案に移してお伺いいたしたいと存じます。
 この法案の目的とするところは、教育における政治的中立性の確保にあると政府はいたしておりますが、深く検討するに及んでは、中立性確保の美名に隠れて、基本的人権の侵害あるいは学問、思想の自由の否定、果ては集会、結社、表現の自由まで制限せんとする恐るべき内容を持つており、さらにはまた、中立性確保をうたいながら、逆に中立性をまつたく否定せんとする性格を有していることに、ただただ驚かざるを得ないのであります。従つて、まずお伺いいたしたいことは、一体教育の中立性とは何を意味するのであるか。政府は政党その他の政治団体の影響を排除することが中立性確保であるといたしておりますが、もしそうであるとするならば、政党政治の今日、時の支配権力による影響、すなわち政府、与党によるものは一体これをどうするおつもりであるのか。たとえば、二、三日前から、各学校、PTAあてに……。
    〔「定足数がない」「点検しろ」「続行続行」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
#70
○副議長(原彪君) 辻原君、質疑を継続してください。
#71
○辻原弘市君(続) 一体教育の中立性とは何を意味するのか。政府は政党その他の政治団体の影響を排除することが中立性確保だとしておりますが、もしそうであるとするならば、政党政治の今日、時の支配権力による影響、すなわち政府与党によるものは一体どうするのか。たとえば、二、三日前から、各学校、PTAあてに、自由党報特集号なるものが厖大に配布せられている事実がある。自由党報とは、私はここに持参をいたしておりまするが、明らかに自由党の機関紙であります。この内容の詳細は、ただいまごひろう申し上げる時間がなく残念でありまするが、目的とするところは、今回の法案通過の資にせんとしていることは間違いもない事実であります。学校あてに配布をいたし、教員と父兄を構成員とするPTAを通じ、目的はみずから提出した法案通過にあり、しかもその内容は、平和の教育、再軍備反対の教育は赤であり、反米親ソであるから間違いなんだというような誤つた主張を羅列いたしておるのであります。裏を返せば、反ソ親米になれ、再軍備がいいんだ、そのような教育を、正しいのだから、これからやれと教唆、扇動いたしておるのであります。(拍手)総理並びに文部大臣はこの事実を御存じあるのか。明らかに政府の言う中立性を侵しておる最も好個の例ではないか。最も卑近な例ではないか。断固排除する決意ありやいなやを総理にお伺いする次第であります。(拍手)もしさようなつもりはないとおつしやるならば、結局政府の考え、またこの法案のいう中立性確保ということは、つまり政府、与党の意のままになれということだと解釈しなければなりませんが、それでよろしいかどうかも承つておきたいと思うのであります。
 私は、この際、戦後の教育改革に際してとられたもろもろの政策を想起するとともに、その基調となつている憲法並びに教育基本法の精神について深く思いをいたしてみたいと存じます。すなわち、教育基本法の前文には、日本国憲法の精神に立脚し、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定するとあるのであります。憲法の精神とは一体何であるか。一言にして尽せば、平和主義であり、民主主義であります。この平和主義、民主主義を具現する教育が行われ、しかもその教育の目的が、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならないことを教育基本法は明記いたしておるのであります。私は、教育における中立性確保とは、この憲法並びに教育基本法に明示せられた平和と民主主義を守る教育の目的達成に不擁不屈、まつしぐらに精進努力することであると信じて疑わないのであります。(拍手)かつまた、この教育最高の目的をゆがめんとする不当な力、それを排除することこそが、憲法第九十九条によつて公務員に課せられた教員の重大なる責務であると確信するものでありますが、文部大臣はこの点についていかにお考えになるか、承りたいのせあります。
 今日、政府は、教師がみずから担当する教育において平和主義、民主主義を徹底せしめようとしている努力に対して、あたかも、すべてこれが党派的影響であるかのごとき錯覚と誤つた認識を持つて、山口県の日記帳のごとき事例をあげて、これを誇大に宣伝しているようでありますが、何がゆえに教育の目的に沿う平和のための教育が中立性を喪失せしめると言うのであるか、いつ教育の目的がかわつたのでありまするか、文部大臣からこの点に関し明白に承つておきたいのであります。
 逆に、池田・ロバートソン会談日本側覚書に見られるような、他国の要請によつて、教育及び広報によつて日本に愛国心と自衛のための自発的精神が成長するような空気を助長するための再軍備教育が行われるならば、これは一体どうするのか。私は決して将来の問題を申しているのではありません。先刻も一例をあげたように、現実の教育にこのような影響があるから申しているのでありまして、このことだけはさしつかえないと、かようにおつしやるのであるか、これまた明白に承つておきたいのであります。(拍手)
 戦後の日本の教育改革にあたつて最も留意したことは一体何であつたか。それは、申すまでもなく、日本民族が過去の苦い経験から再び教育を時の支配権力の道具と化さしめないようにという数々の努力方策ではなかつたか。そのため、教育基本法は、その十条に、教育は不当な支配に服することなく国民全体に対してその責任を負うべきことを特に強調していることを、われわれは断じて忘れてはならぬのであります。従つて、私は、今日国民が最も警戒し、監視しなければならないことは、けだしこの点にあると思うのであります。憲法の精神、教育の目的に反する教育が政府の手によつて公々然として行われるようなことになれば、歴史は再び繰返すということを国民ひとしく銘記すべきであろうと存ずるのであります。(拍手)
 次に、若干法案の内容に触れてお伺いをいたします。法案第三条は、何人も特定の政党を支持させまたは反対させる教育を行うよう、教員を主とする団体もしくはその運動を通じて、義務教育学校の教員に対し教唆、扇動してはならぬというのであり、さらに、その教育が良識ある公民たるに必要な教育であつても、結果としては特定の政党を支持しまたは反対するに至れば、これも同断であるとしているのであります。第四条は、これを罰するに一年以下の懲役、三万円塚下の罰金をもつて臨み、あたかも教育が犯罪であるかのごとき取扱いをいたしているのであります。
 政府はさきに破防法によつて団体を規制し、今また全国民に対して同様のことを及ぼさんとしていることは、看過すべからざる問題であります。およそ、この法律ぐらい不明確な、拡大解釈の容易なものは、他にその類例を見ないでありましよう。すなわち、教員の自主的研究に基く教育活動も容易にその対象となり、その制約を受けることとなるでありましよう。あるいは学者、文化人などが自己の研究に基く意見を教師に対して発表することも抵触するというのであろう。あるいは政治家が自己の政権を語るにおいても、これを教唆、扇動なりと断ずるのでありましよう。あるいは団結権、憲法に保障せられた民主釣労働組合の運動すら、これによつて大きな制約を受けることとなるのではないか。もちろん、教員の組織する職員団体は、ほとんどその結成の意義を持たなくなることもこれまた必定でありましよう。さらに重要なことは、教育の実際にその結果が現われる現われないということは問うところではなくして、教唆、扇動ということにおいて刑罰を受けるというのでありまするから、何人も教師に接しあるいは教育について口を開くことすら躊躇し、のみならず、一種の恐怖心を持つに至るであろうことも想像にかたくないのであります。もちろん、教師自身は、絶えず日常の教育活動に不安を覚え、はては自信を失い、きわめて無気力な一サラリーマンと化してしまうこともこれまた必然でありましよう。かかる状態に至ることをこの法案は規定いたしているのでありまするが、これをも押して憲法に保障する基本的人権、学問、思想の自由、集会、結社、表現の自由、労働権を制約するものではないと申されるのであるかどうか。総理並びに関係各大臣に対し、これらの諸点についての所感をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 次に、特に文部大臣にお伺いをいたしたいのでありまするが、かかる制約によつて教育に及ぼす影響と、いま一つは、教育基本法第八条に定められた政治教育の重要性についてであります。さきにも指摘いたしましたように、この制約は、いかに大臣が抗弁せられようとも、かつてアメリカの教育使節団が示唆いたしました通り、自由の雰囲気のないところ民主教育は存在しなくなるし、かつまた教師の研究意欲、教壇実践は低下し、教育に、ひいては日本の将来に一大暗影を投ずると思うが、いかにお考えになつているか承りたいのであります。(拍手)
#72
○副議長(原彪君) 辻原君、時間でございますから簡単に願います。
#73
○辻原弘市君(続) また、政治教育はきわめて重視されなければならないことを基本法は明記しているが、教育が人間によつて行われる以上、教師の政治活動の自由をまつたく奪い、さらにその研究活動をも制約する状態において、はたして基本法に要求する政治教育が可能なりとお考えになつているかどうか。あたかも手足を縛つた人間に陸上競技の選手の役割を果せど言うがごとき要求を行つて、それができると思つているのか、御所見を承りたいのであります。(拍手)
 次に、私は、この法案適用にあたつての警察権の行使について、文部大臣並びに法務大臣にお伺いいたしたいのであります。さきにも指摘いたしましたように、法案の適用の範囲は、解釈のいかんによつてきわめて拡大せられ、多岐にわたる点から、官憲による捜査、尾行あるいは思想調査などの人権侵害、職権濫用の事態が続発すると思うが、法務大臣はこれについていかが考え、対処せられんとしているか、具体的方法があれば承りたいのであります。
 由来、日本の国は、治安警察法、治安維持法などの暗黒時代から幾多残虐な官憲による人権侵害ないしは職権濫用の事例が存在するが、ほとんど民衆は泣寝入りであつて、官憲を処罰した例は統計を見ても皆無であります。私は、これら将来の問題とともに、この際、先刻わが党野原議員が指摘いたしました思想調査等の具体的事実について、法務大臣、文部大臣がいかなる処置をとられるか、明確なる答弁を再び要求するものであります。(拍手)文部大臣は、かかる明確なる具体的事実をでつち上げなどと称して事実を隠蔽せんとしておるが、いかなる具体的事実があつてさようなことを申すのであるか、はつきり御答弁を願いたいと思うのであります。
 最後に、私は総理に承りたいと思います。それは、最近国際自由労連書記長オールデン・ブローグ氏より、吉田総理、大連文相、小坂労相に対しまして、日本国政府はサンフランシスコの講和において国連憲章並びに世界人権宣言の諸条項を遵守する誓約を行つておるが、今次の法案はこれら諸条項の規定に反するではないかとして、厳重抗議があつたと聞き及んでおるが、これらの国際的反響をいかに考えておるか、承りたいのであります。
 さらに、本法案をめぐつて、教育関係者はもとより、報道機関、言論界あるいは学者、文化人等、ほとんどあげて反対の意向を示しておるが、こうした現下の国民輿論というものを総理はどう見ておられるのか。かかる国際、国内の輿論に徴して、このような非民主的法案を撤回せられる御意思ありやなきやをお伺いいたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#74
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。
 この法案は基本的人権を侵害する、憲法違反ではないかという御質問でありますが、憲法が国民に対して保障しております自由及び権利はこれを濫用してはならないのでありまして、今回の教育の政治的中立性の確保に関する法案は、教育基本法の精神とするところを実施するための措置でありまして、人権を制限することにもならないし、憲法の精神に違反するものではないと信じております。
 また、この法案の作成にあたりまして、政府部内に不一致があつたかのような御意見でありましたが、そういう事実は絶対にございません。政府といたしましては、ただいまの文部当局の考え方も、またこの法案も、全面的に支持いたしておるものであることを、重ねて申し上げておきます。(拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
#75
○国務大臣(大達茂雄君) 順次お答え申し上げます。
 この法律案をつくるにあたりまして、特に必要以上に秘密にいたしたということはありません。ただ、非常に慎重にいたしましたのでひまどつたことと、またできないうちから反対の声が非常にありましたことから秘密にしたように見えただけであります。
 それから、中央審議会は一、二反対の意見を持つておられました。しかし、圧倒的な多数でこの種の法律が必要であるということが答申されたのであります。
 それから、法務省、法制局等の間において意見のいろいろ違つた点、ことに憲法違反であるなどという議論はちつとも出ておりません。
 それから次に政治的行為の制限でありますが、これを個人に対して制限をすることは基本的人権の侵害ではないか、こういう意味でありましたが、これは公務員に対して現に課せられておる制限でありまして、基本的人権の問題はいまさら申し上げるまでもないことと思います。
 その次に、地方公務員であるところの教育公務員を国の公務員と同様にすることが、これらの公務員を国の統制下に置くことになる、こういうことでありますが、これはさようにはならぬのであります。
 それから、地域的制限を広げたのはどういうわけか。これは、先ほど提案理由の御説明の際にも申し上げました通り、教育の特殊の性格から来るものであります。
 その次に、外国の立法例を言え、こういうことでありましたが、これは国によつていろいろ違つております。ただ米国、フランス、西ドイツ等の事例がここにありますが、これらはいずれも教育の中立であるべきことを非常に強く法律において規定しております。但し、罰則のないものもあります。ただ、懲戒の対象にしておるものが多いようであります。それから、政治行為の制限につきましては、これは罰則があるものもあるし、ないものもあります。全然そういう制限をしていない立法例もあるようであります。
 その次は、自由党が何か宣伝文書をPTA等に配布をしておる、これは中立性を侵すものではないか、こういうお尋ねでありました。これは、この法律に書いてありますように、ひとり自由党ばかりではありません。社会党左派であろうとも、改進党であろうとも、ただPTAにビラを配つたということは、何もこの法律とは関係ないことであります。これは教職員団体に対して片寄つた教育をせよということを教職員団体を通じて働きかける教唆、扇動に限られるのであります。
 以上であります。
    〔国務大臣犬養健君登壇〕
#76
○国務大臣(犬養健君) お答え申し上げます。
 特に法務省を名ざしての文部、法務両省間の意見の不一致というお尋ねでありましたが、文部大臣からお答え申し上げましたように、全然ございません。法文作成の技術の点で両省間においてはなはだ率直な議論の交換をいたしまして、双方とも益するところが多かつたのでありますが、最終的にまとまりましたことは、辻原さんも御承知の通りであります。
 それから、教育の中立化の名前をかりて警官が思想調査をやるのは困る、今後ともそういうことはやめてくれということであります。文部省として教育が中立を保たれておるかどうか。文部省から教育委員会を通じてなさることは文部省のお仕事であつて、これは当然だと思いますが、思想調査を警官がやることは、私は不適当と考えております。従つて、思想調査をやる警官が数多い第一線のうちに万一にもありましたら、即刻それを是正させるのに躊躇いたしません。(拍手)
    〔国務大臣塚田十一郎君登壇〕
#77
○国務大臣(塚田十一郎君) 地方自治という立場から考えますならば、地方自治が公正に運営されるためには、地方公共団体の区域内でその団体の職員がある種の政治活動の制限があるということは私は正しいと考えております。
 それから、国家公務員たる教育職員と地方公務員たる教育職員と、今までの政治活動の制限に区別があつたのは御指摘の通りでありますが、私は、その区別は、それぞれのものの本質から来たものではなくて、必要性から来たものだと思うのであります。今までは地方公務員たる教育職員にはその程度の制限でよかろうと考えておつたのが、実際はそれではいけないということで、今後は拡張されたのであります。
 それから、一般の地方公務員と地方公務員たる教育職員との区別は、これは教育という仕事の職務と責任から来るのでありまして、その場合には差別扱いがあるということは、地方公務員法の五十七条が予定しておるところであります。
    〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#78
○国務大臣(小坂善太郎君) 本法案は、教職員の特性にかんがみて教育の中立性を確保するためのものであります。労働組合運動は、本来労働者の労働条件の維持改善、その他経済的地位の向上をはかることを主たる目的とするものでありまして、政治運動をしろ、あるいは政治的偏向を持てということではないのであります。従つて、おのずから問題は別個のものでありまして、本法案によつて健全なる労働運動が阻害されるとは思いません。なお、日教組は労働組合法上の団体ではないことは御承知でございましようが、念のため申し添えておきます。
#79
○副議長(原彪君) 前田榮之助君。
    〔退場する者あり〕
    [「審議を停止するのか」「定足数はあるぞ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
#80
○副議長(原彪君) この際暫時休憩いたします。
    午後七時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後九時五十四分開議
#81
○副議長(原彪君) 休憩前に引続き会議を開きます。
 前田榮之助君。
    〔前田榮之助君登壇〕
#82
○前田榮之助君 私は、ただいま上程されました学校職員の政治活動制限並びに政治的中立性確保に関する二法案につきまして、日本社会党を代表いたしまして、総理大臣並びに関係閣僚に若干の質問をいたしたいと思うものであります。
 戦後の日本における教育の基本的目標は、憲法及び教育基本法に明らかに示されたるごとく、民主的にしてかつ平和的な国民をつくり上げることにその主眼があつたことは申すまでもないことであります。しかして、この基本的目標は、将来においても何らかわらないもので、かえてはならないものだと私は信ずるものであります。ところで、今回政府提出の二法案を見ますると、一方において地方公務員法の第三十六条の例外規定を排除し、教職員の政治活動を一般公務員並に制限するとともに、他方、教育の中立性維持の名のもとに、あらゆる教員の政治的自由を束縛し、あまつさえその違反者に刑事上の罰則を科さんとされているのであります。教育の政治的中立の確保に関する法案の第三条に、何人も学校の職員を主たる構成員とする団体または連合体の活動を利用し云々と規定し、それが単に教員のみならず一般国民の思想の自由、言論の自由にまでその制限を加えんとしているのであります。このことは、かの悪法と言われた破防法が団体の一定の活動を規制した以上に、すべての人間を拘束するところの、民主的国家にあるまじき悪法であると言わざるを得ないのであります。(拍手)こうした教育に対する言論の弾圧は、警察法の改正と相まつて、日本をますます中央集権化し、警察国家再現の危機を国家国民に感ぜしめるものであります。
 そこで、私は、先ず第一に総理大臣にお尋ねいたしますが、総理は、このような教員のみならず一般人にまで言論の制限を加えることを好ましく考えているのかどうか、またそれが言論の自由を保障する憲法並びに民主主義、平和主義を基調とする日本の教育目標に背反すると思わないのかどうか、お答えを願いたいのであります。(拍手)しこうして、日本国憲法の条文には、第十一条と第十二条に基本的人権の享有を保障するのみならず、自由及び権利を保持するために国民の不断の努力を要求いたしておるのであります。しかるに、政府は、常に第十二条の後半と第十五条を利用して、不当行為を合理化されているようであります。教育をこんな悪法をもつて制圧している国が世界のいずこにありますか。米国その他にも多少の制限は付している国があることは承知しているのでありますが、本法のごときはフィリピンかエチオピア以外にはないと思うが、総理は何ゆえに、世界の文化国家に類例のない、憲法の立法の精神に反することをあえてされようとするのか、お答えを願いたいのであります。(拍手)
 次に文部大臣にお尋ねいたしまするが、かかる取締りにより、教員の言動を一々監視することによつて教員をいじけさせ、ひいては教育自体を萎縮せしむる結果になつて、あたかもこのことは角をためて牛を殺すにひとしいことであると思う。かようなことをしてよろしいとお考えになつておるか、お伺いするものであります。(拍手)
 さらに申し上げたいことは、本案提出の理由として政治的中立を強調されておりますが、われわれも教育の中立性を維持することには何ら異論を有するものではありません。しかし、それを維持するために教員の政治活動を禁止しなければならないというがごとき、あまりにも飛躍し過ぎた理論はどこからも出て来ないはずであります。教育の中立性と教員の政治的自由はともに尊重されなければなりません。しかして、この両者は、いずれか一方の犠牲において一方だけが尊重されるのではまつたく意味がないと思うのであります。教員の政治的活動の限界が教育の中立性維持にあることは、われわれとしても率直に認めるのであります。しかしながら、教育の中立性が教員の政治的活動禁止によつて実現されるなどと考えることは、教育に対する根本的認識を誤れるものと言わざるを得ないのであります。(拍手)教育の中立性は、世界各国の例を見ても、それは国民の監視と個々の教員の自覚と責任とによつてこそ守られているのが列国の実情であります。政府は、この教育の中立性は国民の監視並びに教員の自覚と責任にまつていてはもはや実現さるべき可能性なしと考えているのかどうか。もしそうだとするならば、政府は国民並びに教員をまつたく信頼していないと解釈してよろしいのかどうか。また逆に信頼しているとするならば、このような無法な禁止立法はまつたく不必要だと考えるが、これらの点について政府の見解をお尋ねする次第であります。(拍手)
 次に私が指摘したい点は、今回の二法案提出の理由がきわめて薄弱であると同時に、これが自由党内閣の党利党略に基いているという意図がうかがわれる点であります。(拍手)すなわち、政府は、常に日本教職員組合の幹部の行き過ぎを指摘しながら、みずからは思想調査等不当なる人権侵害を犯して、一方的に山口県の中小学生の日記帳事件等を例証にあげて、教育の中立性が侵害されつつありとされておるのでありますが、しかしながら、このような事件は、全体的見地よりすればきわめて例外的なものでありまして、教員全体の責任に付すべきものでないと思うのであります。さりとて、私は、一部にいたしましても、悪い者があることを見のがせとは申さないのであります。しかしながら、全体の人を犠牲にすることは無謀であるという点なのでありまして、一昨日も国際的労働組合であるところのILOの代表ボーレ氏に会いましたが、今回の日本政府の無謀を非常に非難しておつたのであります。それにもかかわらず、政府はこのような例外的な事例をたてにとつて、全体の善良な教員に対して一部の教員同様にその政治活動を全面的に禁止しようということは、それが日教組を対象とする党略のためであると言われても何ら弁解の余地がないことであろうと思うのであります。(拍手)しこうして、この法案の提出によつて、今や全国五十四万の教員はその反対のために結束して立ち上つておるのであります。このことは、せつかく一部教員の行き過ぎを批判し、民主的教員組合の発展に尽しつつある多数の人々に対してまつたく有害無益のものであることを信ずるからであります。(拍手)
 そこで私は政府にお尋ねいたしまするが、今回の法案提出の真意は、はたして日教組を弾圧するという政治的意図から出たものであるかどうか。また、一部の者のために全体の教員を規制することによつて教員組合の民主的発展を阻害する原因をつくり出すのだと考えられないかどうか。またさらに、一部の者を律するために全体の善良なる教員を規制することがはたして民主的方法であるかどうか。これらの点について、重ねて政府の見解を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 次に、法案の内容の具体的な解釈の問題についてお伺いいたしまするが、すなわち教育の中立性確保法案第三条の中に、「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。」と規定しておるが、この場合、教唆、扇動の認定を刑法上の解釈で行くのか、それとも破防法の解釈で行くのかという点について、これは法務大臣にお伺いをいたすのであります。そうして、これは、もし破防法の解釈で行くといたすのでありますならば、それに伴つて従来の特高的思想調査が当然行われると思うのであります。現に、まだ法案として成立していない現在においてすら、茨城を初め鹿児島、静岡等二十数県において人権蹂躙もはなはだしい思想調査がひんぴんとして行われているということは、偽らざる現状なのであります。政府はこのような思想調査をはたして今後も行う意思があるのかどうか、また、この法律の成立によつていよいよそれが露骨化する危険があると思うが、どうなさるつもりであるか、さらに、現在起りつつあるこうした事件に対して政府はいかに責任をとろうとするのか、これらの点について、法務大臣にその所見をお尋ねする次第であります。なおまた、本法では教唆、扇動した者を罰しているが、被教唆扇動者たる行為者は処罰されることになつていないのはいかなる理由に基くか。処罰に値しない程度の行為を扇動したことは処罰に値しないのではないか。これが刑罰原則であると私は信ずるのであるが、いかにお考えになつておりますか。もしそうだといたしまするならば、司法担当の法務大臣が、かかる法理的欠陥のあるところの立法に文部官僚と妥協して何ゆえに閣議で同意を与えたのか、その理由をお聞かせ願いたいのであります。(拍手)
 この法律は、政府の言明されたることく、予防法たるの性質を有するものである以上、犯罪が実際発生して初めてさきの請求権が発動する場合は案外少いと思うのでありますが、実際においては、これら請求が結局警察の内偵によつて行われる可能性が多いと思うのであります。もしそうであるとするならば、それは必然的に特高的思想調査と結びつくものであると言わぎるを得ないのであります。
 さらに、この第五条において問題になる点は、政党色のある知事の請求権にも疑義があるのでありまするが、教育委員会自体きわめて未成熟である今日、これらに処罰の請求権を与えることは、あまりにも重荷過ぎると同時に、危険があるということであります。すなわち、視学の任務を有する教育委員会が検事の告発権まで有する結果となつて、教育に対して絶大なる権力を握り、ひいては教育界のボスの横行を招来せしめる結果に相なると思うのであります。(拍手)このように解釈して参りますると、この第五条の規定というものは、まず教員の思想調査を徹底的に行い、さらに教育委員会等を通じて教育に圧力をかけることによつて、去勢されたるところの教育となるばかりでなく、反動的教育の横行となつて、戦前のごとく教育を国家主義的教育にするための規定のごとき感をわれわれに与えておるのであります。このような解釈に対して、政府の御所見をお尋ねする次第であります。(拍手)なお、その結果といたしまして不当なることがあつたならば、発案者たる政府は将来にいかなる責任を持つとされるのか、明らかにしてもらいたいのであります。
 最後に、本法の運用について、もう時間がございませんから、ただ一点だけお尋ねいたしまするが、文部大臣、法務大臣の御両名にこの点はお答えを願いたいのであります。それは、今日の政界には保全経済会事件、日殖事件、造船汚職事件、その他保安庁にも、各省の公共事業にも、多くのいろいろな汚職のうわさがあります。国民はかかる問題について非常に憂慮をいたしておるようであります。そこで国民の間に大いに綱紀粛正をすべきであるとの声が持ち上つて来ておることは御承知の通りであります。この声は、吉田さんの、中身のないから念仏の綱紀粛正とは違うのであります。(拍手)真の声が出ておると私は思います。国民は、汚職事件はどの政党に多いのかということを注意しながら、無言のうちに心配をいたしていると存ずるものであります。かような国民の中から、ほうはいとして起る粛正の声は、愛国心の真の発露であると言うべきではないのでございましようか。(拍手)しかりとするならば、これがたまたま学校職員を主たる構成員とする団体の会合で悪徳を非難し、意見が述べられ、提議をされたりするようなことは不自然だとは言われません。今日のように、自由党の代議士がひつぱられる、それがだんだん大臣に及ぶというようなことが児童や生徒の社会教育にも及ぼす影響は甚大でございます。(拍手)ここで、心ある教員が憤慨の余りに、実情による腐敗政党、どの政党かは知りませんが、腐敗政党を攻撃する者が出て来たからというて、しかたはございません。(拍手)しかし、このことは、法律の上からは違反になることは間違いございません。特定の政党に不利を与えて反対したことになるでございましよう。しかしながら、これは、政府はこういうことは非国民のすることだというので処罰をされようとするのかもしれませんが、こういう愛国心、正義感の至情をもつみとつて、弾圧法制定の必要がどこにあるかということをお答え願いたいのであります。(拍手)もし政府に一片の良心がございますならば政府みずから行いを正しくするとともに、本案を撤回して民主的教育を守つていただきたいと思うのであります。(拍手)これが、次代を背負うところの児童教育のためにも、民族の永遠の幸福のためにも最上なる道だと私は信ずるのであります。(拍手)政府の明快なる御答弁を要求いたしまして、私の質問を終ることにいたします。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇]
#83
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 本法案は憲法の精神に違反しはしないかという御質問でありますが、大体休憩前に辻原君にお答えした答弁を繰返すようなものでありますが、憲法が国民に対して保障しております自由及び権利はこれを濫用してはならないのでありまして、今回の教育の政治的中立性の確保に関する法案、これは教育基本法の精神とするところを実施するための措置でありまして、人権を制限することにもなりませんし、憲法の精神に反するものでないと信じております。
 それから、この法案の結果教員をいたずらに萎縮させはしないかという御説のようでありますが、教育基本法の精神とするところを忠実に実現しようとするものでありますから、これによつて教員を萎縮せしめるというようなことは絶対にないと考えております。(拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
#84
○国務大臣(大達茂雄君) この法律が党利党略から日教組を押える意味で出たのであるか。これは党利党略からこの法律を提案したということではありません。それから特に日教組を対象として提案した法律でもありません。ただ、この法律が成立すれば、日教組の従来の行動は相当に抑制せられることになりましよう。
 次には、一部行き過ぎの教員のために全体の教員に迷惑をかけるではないか、こういうことであります。この法律は行き過ぎでない先生には迷惑はかからないのであります。
 それから第三には、教育委員会がこの法律の結果教育に圧力を及ぼすようなことになりはしないか、こういうことであります。教育委員会は学校教育については当然に責任を持つところでありまして、圧力を及ぼすとかなんとかいうことはあり得ないのであります。
 それから最後に、政情に関していろいろ批評をする、あるいは子供に教えて聞かせる、それがいいか悪いかというような意味のお言葉でありましたが、これはもちろん普通の場合においてはさしつかえありません。それが特定の政党を支持しまたは反対するというところに行かなければ、政治に関する情勢を話して子供に聞かせることは何らさしつかえのないことであります。(拍手)
    [国務大臣犬養健君登壇〕
#85
○国務大臣(犬養健君) お答えいたします。
 教員の思想調査を警官がやるではないか、けしからぬことではないかということですが、これは、私の方では、警官に思想調査をやらせるという方針をとつておりません。また思想調査には警官は不適当であると存じます。
 もう一つは、教唆、扇動ということは、刑法の考え方によるのか、破防法の解釈によるのかということでございます。本法案に規定されております教唆または扇動ということは、いわゆる刑溝上の従属犯ではないのでありまして、教唆、扇動が独立犯として扱われるのでありまして、その意味で破防法的な考え方に入るのであります。ただ、破防法におきましては本犯は罰せられますが、これは本犯は罰せられない次第でございます。しかしながら、たびたび申上げますように、本法案に規定される犯罪は教育委員会等の請求をまつて初めて取上げられることになつておりますので、そこに適当の弾力があると考えますし、取締り当局が教育の内容その他教員の動向について進んで内偵を行うようなことは断じていたしません。
 それから、教唆、扇動した者が罪に問われて、教唆、扇動をされた者が罪にならない、これはけしからぬではないか、こういう質問でございますが、これは前田さんにお答えいたしますが、例がございます。たとえば、税金を納めることを怠つている当人は罰せられませんが、税金を納めることを怠れと教唆した者が罰せられる例がございます。また、お米の供出を怠る本人は罰せられませんが、教唆した者が罰せられるという、そういう考え方と同じ考え方であると御承知を願いたいと思います。
#86
○副議長(原彪君) 小林信一君。
    [小林信一君登壇〕
#87
○小林信一君 先ほど自由党の坂田君と文部大臣との応答を聞いておつたのでございますが、二つの法案を一緒に出したこととあわせまして、自由党の諸君がこの重大な法案を審議の上にこまかそうとしておることを私は直感したのでございます。(拍手)と申しますのは、日教組に対してはわれわれは徹底的にやるのだけれども、五十万教員に対してはこの法律をもつて保護するのだということでございます。そうして、盛んに言うことは日教組のことをあげるのでございます。教育公務員特例法の一部改正は、実に五十万教員の自由を奪つているのでございまして、政治活動を禁止しているのでございます。これに対して、先ほど辻原君の、それは不当ではないかという質問に対しまして、文部大臣は何と答えたか。公立学校の中小学校に勤めている先生たちが何ら不自由を言つておらない、不満を言つておらないから、五十万の中小学校の先生の政治活動を禁止しても何らさしつかえないだろう。まるで盲腸をとるくらいの気持でいるのでございますが、実に五十万の教職員の政治活動を何ゆえ禁止するかということが一番の問題でございまして、とかく日教組をもつてカムフラージュしておつて、五十万の教員諸君には迎合しようとするところが多分にあることを、私はよく注意しなければならぬと思うのでございます。(拍手)
 まず私は総理大臣に二、三の質問をいたしますが、総理大臣が、施政方針の演説の中で、わが国の経済が非常に危機に陥りていることを述べておりました。これに対する政府の決意を披瀝ざれたのでありますが、その危殆に瀕した日本経済はさらに悪徳金融業者によつてかき乱され、これに加えて今回の汚職、贈賄の問題は、国民の血税を一部資本家に提供して、政界、官界が不正な利殖をむさぼつていることを明白にしたわけでございます。これは人心に及ぼすところきわめて重大でこぎいまして、まともな耐乏生活はもちろんのこと、真剣な経済自立はとうていできないのであります。これが波及いたしまして、終戦以来頽廃した道義をますます腐敗堕落させ、自暴自棄の風潮は風紀を紊乱させ、犯罪を日ごとにふやして、まつたく社会に希望を失わせる状態になつております。もちろん、すでに国そのものの理想がなくなる状態に入つておるのでございますが、この深刻な現実に対しまして、施策の責任を負うところの総理大臣がいかなる方策を立てられているのか。しかも、かかるときに、この嘆かわしい世相に対処するのに、この二つの法案を出すことが妥当であるかどうか、私はお伺いしたいのでございます。(拍手)
 教育基本法は、われらは、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育のカにまつべきものである。」こういうふうに示してあります。この理想実現のための教育は、かつての教育が時の権力に支配され、その内容は時の勢力に干渉されたことを反省いたしまして、いかなるものにも左右されない、圧迫されない、独立の境地に置かれたものであるのであります。今、政治、経済の混乱がもたらす社会事情の問題から、悠久な理想達成の夢は国民のすべてからなくなろうとしております。もしこの法案が成立するならば、国の基本的方針が崩壊すると言つてもさしつかえないのでございます。文化国家の理念は一片の空文とならんとしております。教育者が政治的中立性を堅持することはもちろん緊要でございます。だからといつて、これを守るのだといつて教育者の情熱を奪つてしまい、その自主性を失おせるような方途を講ずることは、政治の断じてすべきことでないと私は考えるのでございますが、総理はいかなるお考えであるかをお伺いいたします。
 さらに、諸外国は独立後の日本の動向につきまして深い注意を払つております。ことに、教育は国の方向を明示するところの指針であるだけに、今回の法案の成行きに注目しておることは、よく御存じだと思います。再び国家中心の態勢がとられると断定するならば、国際信義の上からも、今後多難と予想される国交調整の問題も、その価あらゆる外交上の問題に支障のあることが予想されるのでございますが、いかがお考えになつておりますか、
 第三にお尋ねいたしますのは、本法案が提出された時期であります。政府が正しい見解を持ち信念を持つた法案でありましても、これほど重大な内容を持ち、すなわち五十万教師の基本的人権を制約しようとするところの性質のものである以上、もう少し冷静なときに提出されることが私はほしいと思うのであります。政府が今日ほど国民の信頼を失つておるときはないと思います。この施策が原因して綱紀が紊乱し、容疑が閣僚にまで及んでおるときにこの法案を出そうとすることは、解散が間近に迫つておるということを警告する印象以外に何ものもないのでございます。(拍手)かかる考えでお出しになつておるかどうかを私はお伺いいたしたいのでございます。
 次に文部大臣にお尋ねいたしますが、政府並びに自由党が教職員の政治活動を禁止しようと意図したのは、きように始まつたことではございません。昭和二十五年以来であります。二十五年の七月、臨時国会のさ中に、改進党に選挙法改正によるところの同調を申し込んで来たのでございますが、みごと断られた。同年の十一月の臨時国会に地方公務員法によつて企画をしましたが、これは改進党が司令部に強硬な談判をして修正し、今日のごとく勤務地以外においては自由を認められる状態にあるのであります。幾度か計画して破れ、遂に昨年学校職員法なるものを提案して参つたのでありますが、これまた水泡に帰し、今回は政治的中立性の名前で提案しておるのでありますが、かかる過程から考えますと、何とかして教員の政治活動を禁止しよう、禁止しよう、これが政府の野望でございます。それはともかくとして、その都度看板のかわることは、いたずらに疑惑を深くするものでありまして、文部省こそ政党の支配に蹂躙され、すでに政治的中立性を失つておるものと一般から糾明されておるのであります。この点、納得の行く説明をして、この法案に対処すべきであると、私は文部大臣に忠告するものでございます。
 吉田内閣の教育行政は、このところ、めちくちやでございます。さきに地方教育委員会が政府と与党の意見対立のために落し子のように生れております。今回の予算編成に際しましても、その存続に政府部内は混乱し、本年の選挙は二年向うに延期する、こういう妥協によつて、ようやく納まつているので、こぎいますが、まことにやつかいものに政府は考えておる。あるいは、昨年の給与三本建は何という方策でございますか。本年度予算に教科書の無償配付はとりやめて、父兄を失望落胆させておる。また昨年度補正予算を改進党の修正でやつておりますけれども、本年度の予算には、改進党の修正分だけは除いてある。こういう背信行為をして非難されておるのでございます。とにかく、一貫しない、信念のない教育行政が連続しておるのでございます。
 先ほどへ日教組の献金問題につきまして、自由党の方から盛んに攻撃がありましたけれども、一昨年産業教育振興法が上程されましたときに、その上程を計画した人たちが学校の生徒から三十円ずつ集めた。私はこの問題を時の文部大臣に糾明しました。生徒に政治教育をするのは、日本の法律は金で買わなければできないものだという印象を与えるが、文部大臣どうかと言つたら、多少法律制定のために運動費はかかると思いますが、私はさしつかえないと言つておる。私は、そのときの総額一千数百万円ということを文部大に申しましたら、それほどでもございません、五、六百万円でございますということを言つておる。法案一つつくるのに、啓蒙宣伝のために五百万円とか六百万円という金が使われるはずはありません。私はその金がどこに使われたかということを考えてみますのに、自由党の諸君もあまり大きいことは言えないということをこの際申し上げたい。(拍手)こういうような政策が続いておりますので、教職員、父兄あるいは一般国民からその施策に対して非難されるのは当然でございますが、この要求をし追究をする者に対して、不当な者である、こう言つて拘束し威圧することは、自分の失政をいよいよ隠そうとするものである。おのずからそこには政治責任を忘れ、堕落して参りまして、今後ますます悪法を濫発しなければ教育行政はできないという状態になるのではないか。(拍手)その間隙を利用して、今文部官僚が考えておるのは、いかにして官僚行政機構の実現をはかるか、再び中央集権にしようとするかということでございまして、私はこれを心配するの余り、文部大臣ははたして自分の失政を自覚しておるかどうか、もし自分の失政を認めるならば、この法案は撤回されるべきものであると信ずるのでこぎいますが、いかがで、こぎいますか。(拍手)
 次にお伺いいたしますのは、総理にもお尋ねした点でありますが、こういう社会情勢であれば、ますます基本的な方針を明確にしておかなければなりません。わが国教育の本質的使命は何であるかを、政治がいかに混乱しましても、堕落しましても、その一角に厳然として堅持するものがなければならぬのでございます。米国の教育使節団の勧告の中に、日本を再び官僚的行政機構にしてはならない、国家中心になることは危険である、そのためには教師に公民としてのあらゆる権利を保持させなければならないということを言つておりますが、文部大臣、あなたは、一部であつても公民としての権利を失わせよろとしておるのでありますが、使節団の勧告を否定するものでございますか、あるいは国家中心、官僚的行政機構がよろしいとお考えになるのでございますか、明確にお答えを願います。
#88
○副議長(原彪君) 小林君、時間が参りましたから結論をつけてください。
#89
○小林信一君(続) 実は、外国人の言葉をかりるまでもなく、日本が過去を反省し、将来に求めるものは、人間個々の尊厳を守ることであります。人間尊重の根本はその自由と権利が確保されることでありまして、その人間の育成に当るところの教員諸君がこの法案に反対いたしますのは、自由が教育を可能ならしめる第一の条件であるということをかたく信ずるからでございます。もちろん、教育の自由は無政府の自由でもこぎいません。無制限の自由であつてはなりません。国家権力は、それゆえに、教育基本法をもつてこれを制限しておるのであります。しかも、きびしい世論が制限からの逸脱を監視しております。教員相互もお互いに批判、矯正しております。その中に教師自体が苦悶するところに真の自由の発見と体得があるのでございまして、このみずから体得したところの真の自由が教育の成長をはかるのであります。
#90
○副議長(原彪君) 小林君、簡単に願います。
#91
○小林信一君(続) この法案のごとき苛酷な法律的取締りを行い、あやまちを刑法上の犯罪とするがごとき方策をもつて暗々裏に教育に干渉を加え、政府や政党に奉仕する教育方針を強制するようになつたならば、たくましい人間の成長はございません。国の前途をかえつて誤らせるような結果を招来するのであります。この恐喝的、気違いに刃物のような法律は、教育委員会のしゆうと根性が加わり、さらに無理解な警察官がこれに加わりまして、教育活動を恐怖の中に押し込めて、意外の逆効果を生ずると思います。まじめな教師、信念と気力を持つ教師は、かかる法律に盲従することなく、おそらく不当な圧迫に対しては抵抗すると思いますが、この教師は犯罪者として権力や党利党略によつて追い払われ、無気力な教師だけが教壇に残り、そこに育てられるところの子供は前途多難な独立の大業にたえることのできない子供だと思うと残念でならないのであります。
#92
○副議長(原彪君) 小林君、簡単に願います。
#93
○小林信一君(続) 信念の政治家、まじめな官吏、正しい商人、これを今日ほど求めているときはございません。迎合する教師、法律に縛られている教壇からはとうてい望み得られないと信じますが、大臣はいかがお考えになりますか。教育基本法八条二項を主張されますけれども、第一項の、正しい政治教育は尊重されなければならないという条項は、この二法案のある限止り、私は絶対に望めないと考えますが、いかがでございますか。
 次に、法案につきまして、罰を論ずる場合に教育委員会等の請求を待つとありますが、これは警察官が直接はその権限を発動させないと了承してよろしいかどうか、しかしこれが絶対であるかどうか、お伺いいたします。
#94
○副議長(原彪君) 小林君、簡単に願います。
#95
○小林信一君(続) 次には、請求を決定する場合の決議の仕方でございますが、教委法の第三十八条の議決の方法が適用され、出席議員の過半数で決定されるのか、お伺いいたします。もしそうだとすると、きわめて危険で、今日のごとく自由党的な色彩が濃い地教委の監視は、それこそ一辺倒の教育が強要され、ますます中立性が失われるもとになると思いますが、これに対して大臣はいががお考えになりますか。
 時間がないそうですから、私は途中でやめます。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#96
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。
 今日のような政治経済の混乱した時期に、かかる重要な法案を出すべきではないではないかという御意見のようでありましたが、私は、混乱の時代であればあるほど、次の世代を背負う人人のために、教育の中立性を絶対に失わせてはならないと考えます。
 それから、この法案が実施せられたあかつきに、教育者の情熱を失わしめはしないかという御心配のようでありますが、そういうことは絶対にございません。この法律は教育基本法の精神をさらに明徴にしようとするものでありまして、従いまして、教員の情熱がこれによつてさまされることばないと考えます。
 それから、この法案は教員の基本的人権を侵すものではないかという御質問に対しましては、先ほど来たびたび繰返しましたから重ねて申し上げませんが、本案を御熟読、御研究くださればはつきりいたすと思います。
 それから、アメリカの教育使節団の勧告を金科玉条のように仰せられますけれども、私はこれは、他の占領政策と同じように、独立と同時に自主的に再検討する必要がある、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇]
#97
○国務大臣(大達茂雄君) お答え申します。
 理想国家の建設は教育の力にまたなければならぬ、こういうお説はまつたく同感であります。でありますから、教育がりつばな健全な教育であるように、変な教育を排除したいからこの法律を出したのであります。
 次には、教育公務員の政治活動制限というものは従来自由党がいろいろ手をかえ品をかえてやつたのであるが、今度出したのはどういう理由に基くものであるか、こういうお尋ねのようでありますが、これは、提案の理由に説明申し上げましたように、教育の政治的中立を確保するためであります。
 次に、この法律が成立すれば中央集権的なことになるのではないか、こういうお尋ねでありますが、この法律は、読んでごらんになればわかりますように、文部省に何らの権限を新しく付与するものではありません。従つて、これが中央集権になるというりくつにはならぬのであります。
 その次には、自由な教育は尊重されなければならぬ、こういうことを申されました。同感であります。ただ、自由な教育ということが、教員のかつて気ままな教育、いわば教育基本法の第八条の二項に規定してあるような限界を越えて、そのわくを越えて、かつて気ままな教育をする、こういう意味における教育の自由というものは当然認めらるべきものではなくして、今日むしろそういう放悉な教育が行われておるということが、この法律案を提出せざるを得なくなつた理由であります。
#98
○副議長(原彪君) 安藤覺君。
    〔安藤覺君登壇〕
#99
○安藤覺君 私は、日本自由党を代表して、ただいま議題となつておりまする義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案の二法案に対し、政府当局の所見をただしたいと存ずるのであります。すでにただいままでに各党代表によりまして各般にわたつて質問が行われ、もろもろの疑点については解明せられたところもありますが、なお一、二の点について明確にいたしておきたいと存ずる点もありますことによりまして、ここにきわめて簡潔にお尋ねをいたしたいと存ずる次第であります。
 その第一点は、本改正法案は、条文の量から申しますればきわめて簡単なものでありますが、その内容といたしまするところはまことに重大なる意義を持つているものと考えるのであります。すなわち、先ほど以来御質疑もありましたがごとく、本法案が憲法に抵触するのではないか、あるいは教育基本法の蹂躙となるのではないかという疑問も持たれておるのであります。しかしながら、これらの本質論につきましては、重複を避ける意味からしばらくこれをおきまして、本法案の成立のあかつきにおけるその作用についてお尋ねしてみたいと存ずるのであります。
 そこで、私は、一つの例をあげてお尋ねいたしたく思います。それはほかでもございません。緒方副総理あるいは大達文部大臣も最も好まれるであろうところの古き時代の教育者吉田松陰先生についてであります。あの明治維新、明治革命の鴻業に携わつた多くの青年志士を育成した吉田松陰の教育、その精神をいかにお感じになつているでありましようか。徳川三百年の鎖国の中にあつて、世界の進運に活眼を開き、独裁専制の幕政をくつがえし、鎖国封建の日本を近代国家へ維新し、人間解放を行つた多くの志士を生み出したあの吉田先生とその教育、自由と真理と正義を求めて何ものにも屈しなかつたその教育目的と方針今ここに教育基本法を見るとき、第一条に「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義も愛し、個人の価値をたつとび」とありますが、なおこの「教育の目的はあらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し」云々とあるのは、まつたく吉田松陰の教育しておるところの態度に防御たるものがあるのであります。
 徳川幕府は、この尊い教育理念と実践とに燃えた吉田松陰とその教え子たちに、みずからの権力をくつがえすのではないかとの心配から、あらゆる圧迫を加えたのであります。吉田松陰も、あらゆる機会に、あらゆる場所において、しかも実際生活に即して真理を追求し、正義を闘いとらんとしたのであります。これに圧迫を加えたのであります。今、政府は、大達文部大臣は、封建徳川幕閣の餐にならうの愚をあえてしようとしているのではないかと疑われるのであります。(拍手)とともに、憂慮まことに深いものがあるのであります。なぜか。吉田松陰もまた何人かによつて真理を知り正義を求めるの知性と情熱とを与えられたのであります。
 昭和の青年教育者たちも、教育基本法によつてこの信念を持ち、日々夜々正義をたずね、真理を探求する姿にあるのであります。ときには相会して合同研究会も聞きましよう。また発表会も開きましよう。あるいは権威ある講師を招いてその講演を聞くこともありましよう。実際生活に即し、実際政治の話を聞き、またその指導をすることもありましよう。しかるとき、本法案によれば、扇動、教唆の疑いが起きるのみならず、教育委員の活動はここに出発し、思想情報班の刑事の出没、教壇、学校はたちまちにして不安と混乱の中に追い込まれるところの心配は多々あるのであります。まことにこれは幕府的圧迫の再現ではないか。(拍手)教職員を無知と暗愚と無気力の箱に押し込めておこうとする。これは幕府の姿ではないかとするところの心配が生ずるのであります。(拍手)
 申し上げるまでもなく、教育の本旨は導くにあるのであります。押える前に導くべきであります。文部大臣は導く権限がないと言われるかもしれない。それなら、法案提出に先だつて、指導権限を持つ法案をなぜに提出しないのであるか。先ほど緒方副総理は御答弁に相なつておられましたが、教育三法を改正するの考えもあるやに申されておつたようでありますが、はたしていかがでありましようか。この点、明確なる答弁をいただきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、政府は教育者の自主性を擁護するのだと言つております。しかし、その擁護の仕方は、おろかしい老いたる母のわが子を守らんとするに似ておるのであります。わが子はすでに成人しておるのである。社会人として働いておるのである。それがいつまでも三つか四つの子供だと思つておるところに老いたる母のおろかしさがある。(拍手)その三つか四つの子供と思つておるところに、あらゆる干渉と制肘とを加える。教育者は、教育者みずから、組合に加入すべきか、すべからざるか、これを判断し、その判断をする自由を持つておるのであります。
 なるほど、過去の日教組においては、世上しばしば指摘せらるるがごとき行き過ぎの点も多々あつたでありましよう。それゆえにこそ、過表半年にわたつて、日教組の内部において、すでに自己批判が行われているではありませんか。末端の単位組合におきましても、中央指令に対し種々なる批判がなされるようになつたではありませんか。このときにあたつて、この自己批判に立たんとするときにあたつて、何を好んで再び五十万の教職員の団結とその意識とを尖鋭化暫しめなければならないのか。ローマは一日にして成るにあらず、功をあせつてはいけません。「大達が出たらば……」「大差が出た以上……」、これを慎まなければいけません。大津の命は短かい。国家教育の使命は永遠であります。(拍手)あせつてはなりません。なぜにかくまでにあせられるのか。
 大達文部大臣は、週刊朝日の記者に次のごとく語つておられます。すなわち、週刊朝日の二月二十八日号「不自由学校の先生たち」の記事中、第七ページ中見出し「大達文相の物の考え方」の中において、「教職員組合というものは、勤務条件の改善だけの活動をしていればいいのだ。」あるいはまた「現在ある政党の政策など教える必要はない。各党の綱領や発表された政策を公平に説明して行くだげなら「中立を犯した」とはいえないだろう。が、そりや理くつで、実際には、なかなか難しい所だ。そんなスレスレでなくても、政治教育はできる。第一、小学校の先生が、そんなにいろいろ政治のことを知つてるかね」こういう言葉であります。この短かい言葉の中に現われた文部大臣の教員に対する考え方、冷たい感情、いな、教職員に対し敵視的傾向さえちらちらのぞいておるではありませんか。(拍手)そこには第一線の教員に対する微塵の愛情も理解もありません。(拍手)八千万国民から預かつている教育の大総府のつかさとして、その第一線の尊い職を守る人々に、こんな考え方、こんな感情で、教育行政がうまく行くはずはありません。(拍手)文部大臣、あなたの胸に愛情をよみがえらせてごらんなさい。仏心を出してごらんなさい。(拍手)この愛情、この仏心があなたの胸中に一片ある限り、天下五十万の教職員はあなたの意のごとく動くのである。(拍手)以上、これらの諸点について文相の所信をお述べ願いたい。
 次に、本法案の成立のあかつきにおきまして、違反行為の摘発の権能を教育委員に持たせるとのことでありますが、しかりとすれば、教育委員制度の改善、選挙権について何らか改正を加えるべきではないかと思うのであります。なぜ私はかくのごとく申すかと申しますれば、教育委員の中には自由党の党員もあります。社会党の党員もあります。共産党の党員もあります。あるいはそれぞれの党のシンパサイザーもおります。この委員たちが、それぞれの立場から、それぞれの色めがねをもつて、感情をもつて教壇をながめますときに、いかに清純な教壇も、白、黒、赤、さまざまに見えるでありましよう。そして、これらの白、黒、赤、さまざまのめがねをもつて見たところのそれぞれの委員たちが、おのおのの立場からこれを告発する態度に出ますときに、そこに刑事の活躍が始まり、かくして教壇は密告、陰謀、好策が横行いたしまして、研究の情熱は失われ、萎靡退嬰の結果を生み、われらの世代を継ぐべき小国民は日本再建の気力も意欲も失われるでありましよう。(「その通り」拍手)文部大臣は、この法案改正にあたつて、教育委員をたとえば選挙管理委員のごとき立場に置くことをお考えにはならなかつたか、この点についてお答えを願いたいと存ずるのであります。
 次に、今二十四日の東京朝日新聞千葉版に報道いたしておりますところによりますれば、先ほど社会党の代表からもお示しがありましたことく、自由党報が千葉県下の各中小学校に一校三十部ないし四十部ずつ配布されております。この自由党報の内容から申しましても、配布の方法から申しましても、もしも本法案が通過成立いたしましたるあかつきにおいては、これは明らかに法案の示しておるところの教唆、扇動に触れると思うのでありますが、それは、かがでありましようか。(拍手)私は、去る十九日、予算総会におきまして、大達文部大臣に、文部大臣は隠れもなき自由党の党員であつて、自由党の総裁たる吉田茂氏の首班である内閣のもとにおいて、何らの首の保障なき姿において文部大臣であるのであるからして、この結果は、自由党政調会の立案するところの教育政策を文部省に持ち込むことは自明の理であり、この教育政策、この教育行政は、教育内容にやがて色濃く影響することは必然であつて、教育の中立性は明らかにここに侵されることになるのではないかと質問いたしたのに対し、大達文部大臣は、もつぱらさようなことなきことを慎しむ旨の答えをいたされたのでありますが、事実は、しからずして、実にまさにこの自由党党報の配布によつて示すがごとく、おそらく大達文部大臣と自由党との間においては、暗黙裏に、ただに千葉県下のみならず、全日本の各中小学校一に対しておそらく三、四万の党報が配布されているのではないかと存ぜらしれるのでありますが、はたしてこの党報の配布にあたつて大達文部大臣は何らかの御相談に乗つておられたのであるかどうか、この点を明確にしていただきたいと思うのであります。(拍手)教育の中立性を侵す者は、捕えて見ればわが子ではなかつたのか。教壇の花園を荒す者は、実に大達さんあなたみずからであつたのではないか。(拍手)この党報配布についての処置について御答弁を願いたいと存ずるのであります。
 なお、去る……。
#100
○副議長(原彪君) 安藤君、時間が参りましたから、簡単にお願いいたします。
#101
○安藤覺君(続) なお、去る十五日、世界教職員組合連合会の議長ケンズレー氏から日本政府に向つてきびしい抗議文が来ておるようであります。岡崎外務大臣はただいま議席で一息入れておられるようでありますが、私はあえて申し上げたい。外交の調整は、でき得れば各国間の国民の考え方、思想の近似ということがその基底をなすものではないかと思うのであります。しかして、今日本が世界の自由主義国に孤立して、このケンズレー氏からかくのごときけわしい抗議を受けるような孤独的思想、行動に出ておりますときに、これがやがていかに日本の外交の上に大きなる悪影響を与えることでありましようか。もしも政府があくまでこの法案を成立せしめようとせられるならば、あるいは国家は永遠に取返しのつかない高額なる代償を支払わねばならぬことになるのではないかと憂えるのであります。(拍手)
 どうか、以上の諸点につきまして、政府当局から責任ある御答弁を賜わりたいと存ずるのであります。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#102
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたしますが、ほとんど文部大臣への御質問で、私の質問がどの点にあるか、はりきりいたさないのでありますが、初めに、吉田松陰が現在おつたらこの法案をどう思うだろうかという御質問でありましたが、もし吉田松蔭が現在おりましたならば、この法案に心から賛成するであろうと思います。(笑声、拍手)安藤君は、日教組は現実に中立性を確立しつつあるというお話でありましたが、その必要とするところに一つの全体主義的の偏向と申しますか、一つの独断がある。そういうものは、吉田松陰は必ず排撃するであろうと考えます。そういう意味におきまして、この法案は、もし吉田松陰がおつたとするならば、必ずこの教育の中立性ということを彼は喜んだであろうと考えます。(笑声、拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
#103
○国務大臣(大達茂雄君) お答え申し上げます。
 文部省の教育に対する指導監督を強化すれば、かような法律は出さなくともいいではないか、こういうふうに伺つたのでありますが、これは、先ほども答弁の際申し上げましたように、文部省の指導監督を強化するということが、今日の戦後の教育制度の根本に触れます、いわゆる中央集権に逆もどりをするということになりますので、私どもとしては、簡単にこの労法に進むことはできないのでありまして、十分な検討を必要とすると存じます。
 それから、この法律は教員の自主性を擁護すると言つておるけれども、それは教員をあまりばかにしておる、まるで子供のように信用しないことではないか、こういうふうな御意見であります。私が教員を擁護すると言う意味は、教員を子供のように思う、こういう意味では決してないのでありまして、教員に及ぼすいろいろな不当な影響力を阻止する、こういう意味においてその自主性を擁護すると言つたのであります。今日、日教組が教員に不当な強い影響力を及ぼしておることは、これは隠れもない事実であります。
 次に、日教組は過去において行き過ぎをした、けれども、今や反省をしておるのであるから、かような性急な、あせつたことをしなくてもいいではないか。これは、私は、安藤さんとはその点認識を異にしておるのであります。過去において行き過ぎたのみならず、今日なお行き過ぎておるのであります。しかも、これはゆつくり見ておる事態ではなくして、今日これは放置し得ない状態である、かように考えております。
 それから、自由党報を学校に配つたということは私は知りませんが、これはあつたことでありましよう。しかしながら、自由党報を配つたということが決してこの法律には抵触いたしません。(安藤覺君「改正後はどうですか」と呼ぶ)今提出した法律には抵触いたしたせん。というのは、御承知の通り、教職員の団体を通じなければならぬのであります。それから、これを子供に教えるということを扇動するということはいけない。ただ先生に見せるだけであります。だから、これは、改進党であろうとも、社会党左派の何か宣伝文書を学校にお送りになろうとも、それは同じことであります。(拍手)
#104
○副議長(原彪君) これにて両法案の趣旨説明に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#105
○副議長(原彪君) 行政監察特別委員長から同委員会における調査の中間報告をいたしたいとの申出があります。この際これを許します。行政監察特別委員長塚原俊郎君。
    〔塚原俊郎君登壇〕
#106
○塚原俊郎君 ただいまより行政監察特別委員会の調査事項について中間の御報告を申し上げます。
 本国会において調査いたしました事件は、国有財産管理処分に関する件(富士山頂払下げ事件)、保全経済会等特殊利殖機関に関する件の二つでありますが、このほか、事務局において下調査をさせておりまするものは、麻薬覚せい剤の捜査取締に関する件、接収解除金、銀、白金等関係事件、計画造船融資をめぐる不正事件、保安庁関係事件、物納国有財産払下げ関係事件、印藩沼、手賀沼干招事業をめぐる不正事件等十数件に上つているのであります。
 富士山頂払下げ事件は、衆議院議員古屋貞雄君外四名よりの調査要求にかかるものでありまして、その趣旨は、昭和二十二年法律第五十三号、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律に基き富士山本宮、浅間神社の申請にかかる富士山頂の払下げにからむ大蔵省並びに社寺境内地処分中央審査会の処置に関し疑惑があるので、その真相を調査されたいというのであります。
 本委員会は、これが真相を究明するとともに、なお進んで、長期にわたり紛糾をきわめ関係官庁においてその処置に困つていた富士六合目以上の処分についても、これが適当な解決案を見出すため調査に着手したのであります。すなわち、前後二回にわたり現地に委員を派遣して実情の調査を行い、さらに十二月十七日、十八日の両日委員会を開き、証人として、富士山本宮、浅間神社宮司佐藤東、大蔵省管財局長窪谷直光、元社寺境内地処分中央審査会委員下村寿一、厚生省国立公園部長森本潔、文部省調査局長小林行雄の五君の証書を求め、さらに神社本庁事務総長吉田茂、日本自然保護協会理事長田村剛、国立公園審議会会長下村宏、評論家阿部真之助、東京教育大学教授和歌森太郎、早稲田大学教授有倉遼吉、東京大学教授石井良助の七君より参考意見を求め調査をいたしました結果、理事会において結論を決定いたしましたので、近く委員会に諮り議長に報告をいたす予定であります。
 次に、保全経済会等特殊利殖機関に関する調査でありますが、本件は、昭和二十八年十一月三十日、衆議院議員前田榮之助君外二名の調査要求にかかわるものでありまして、その趣旨は、「保全経済会は、本年十月二十四日、突如全国一斉に休業に入つたが、同会は全国に二百七箇所の店舗を有し、出資総額約四十五億円、加入者総数十五万に達する特異の性格を持つた利殖機関であり、従来その業務運営についてはとかくの風評のあつたものである。従つて、今回休業の事態に立ち至つた事情について巷間幾多の疑惑をもたらしておる事情にかんがみ、行政監察特別委員会においては、一、保全経済会等特殊利殖機関に対する関係官庁の監督の当否、二、保全経済会の業務運営の実情、以上二点につき調査されんことを要求する。」というのであります。
 委員会は、十二月三日の理事会、同四日の委員会においてこの調査要求を承認いたし、特に本件に関しては、その及ぼす影響の重大性にかんがみ、その万全を期するために調査小委員会を設け、小委員には田渕光一君、三和精一君、中野四郎君、久保田鶴松君、小林進君、以上五名を選任して、本期国会も引続き調査を継続いたした次第であります。すなわち、小委員会は、まず保全経済会の実体を把握解明するため、法務省、警視庁を初めその他の関係官庁に出向き、また関係者を招致いたしまして熱心に調査を進めた次第でありますが、特に一月六日には保全経済会理事長伊藤斗福君の了解を得まして、同会の帳簿の閲覧を行い、調査の裏づけをいたすことが可能となつたのであります。小委員会においては、下調査が一段落いたしましたので、一月二十七日に小委員長り中間報告を決定し、これに基き喚問する証人を選定することになりましたが、第一に喚問する予定であつた伊藤斗福君、望月京一君、井上俊吾君が一月二十六日に逮捕されましたので、これらの証人をあとまわしとし、二月一日に、同会顧問松本信次君、同早稻田柳右エ門君、同平野カ三君二月二日に、仏教保全経済会会長大谷瑩潤君、駒井重次君、廣川弘禪君を喚問して調査を開始することにしたのであります。
 なお、二月二日に出頭を求めました駒井重次君は、一月三十日痔の手術のため信濃町外科病院に入院し出頭不能の旨、診断書を添えて二月一日届け出られたのであります。これについては二月十有の理事会において臨床尋問をすることに決定、その期日、方法等は委員長に一任されているのであります。
 二月一日の委員会において、劈頭田渕小委員長より小委員会の調査の概要報告をいたしました。
 この報告は七項目からなつており、その第一は、伊藤理事長の過去、経歴についてでありまして、これにおきましては、伊藤理事長が、保全経済会を始める直前、すなわち昭和二十三年目新生命保険相互会社の保険勧誘員をしている際、保険に入れば保険金の二割を貸すと偽つて保険の募集をなし、集めた掛金を会社に納入せず、これを横領したという点で、詐欺背任横領事件として告訴を提起せられた事実を述べ保全経済会のいわゆる自転車操業の仕組みが当時すでに考えられていた点を指摘しております。
 第二は、休業当時の資産状況についてでありまするが、伊藤理事長は、休業後二回にわたり、きわめて内容を誇張した発表をしているが、その不動産の取得価格は八億二千二十五万余円、有価証券は大部分非上場のいわゆる出資会社の株券等で、その取得価格三億九千余万円にすぎない現状であることを指摘しております。
 第三は、過去三年半の損益状況についてでありまして、昭和二十五年四月以降二十八年九月三十日までの間における損益計算書の状況は毎期とも損失であり、その損失合計は実に二十四億二千七百六十六万余円に及ぶ事実を報告しております。
 第四は、いわゆる出資会社の状況についてでありまするが、ここにおいては、株式の全部または一部を取得している約二十社中、解散同様の状況にあるものが五社に及び、その他の十五社中利益を計上しているものは一つもない。大部分がボロ会社であつ工、正当な資金の運用と認めがたいものが多いことを指摘しております。
 第五、仏教保全経済会についての項では、大谷豊潤君が会長を勤め、現在までに二億余円を集め、保全経済会から事務費として約一千万円が支出されていること、並びに大谷君と保全経済会との関係は相当深いものがあることを述べております。
 第六は、顧問並びに政治家等との関係についてでありまするが、同会の顧問衆議院議員平野力三、同早稻田柳右エ門、同経済学博士松本信次の主君は、昭和二十六年就任以来、盆暮れのつけ届け、会食費等は別として、表向きの顧問料として平野君は三百十八万円を受領したほか、保全経済会の所有物である港区芝西久保明舟町所在の鉄筋コンクリート三階建建物を使用しており、同建物の什器備品費として八十一万余円を保全経済会から支出させておる事実、早稻田君は百十五万円を、松本君は百三十九万円の支給を受けておつた事実をあげております。また、政党への献金としては、自由党へ昭和二十七年二月十九日二百万円、これは同年五月政治資金規正法により届け出られております。改進党へ大会協力金として同二十七年十二月二十七日二十万円支出されている等のことが記載されており、なお三浦義一、児玉誉志夫の両君は、新夕刊社長山崎一芳君を通じ、あるいは元保全経済会理事長室長望月京一君を通じ、相当深い関係あるものと推定調査中なる旨を報告しております。
 第七は、新聞、雑誌等との関係でありまして、保全経済会は、昭和二十五年四月二十五日から二十八年九月三十日までの間に三億六百六十二万余円という莫大な広告宣伝費を支出し、一方新夕刊、中外日報社その他の新聞事業にも多額の出資をして、報道機関を通じての宣伝を行つた事実を報告しております。
 以上が小委員長報告の骨子であります。
 二月一日の委員会においては、松本信次、早稻田柳右エ門、平野力三の主君につき証言を求めたのでありまするが、顧問就任の経緯、顧問料その他の金銭、物品等の収受の事実につきましては、いずれも率直な証言を得たのでありまするが、保全経済会事業運営の実際、従つて保全経済会の赤字運営の事実については、休業後まで何ら知るところがなかつたとの証言でありました。なほ、松本証言中特に注目さるべきは、保全経済会の法的性格に関し、匿名組合ではないとの証言が表明されたことであります。この間、平野証人の、伊藤理事長が休業後法制化、立法化によつて再建ができるという点に異常な熱意を示していたとの証言から順次進みまして、速記録を引用いたしますが、中村高一委員の質問に答えて、「これも伊藤君が私一人のところで言うたことでありますので、そのことを前提と、してお聞取りを願いたい。広川さんに三千万円、これは佐藤さんも池田さんも承知しておつてくれる、池田邸に行つて池田さんにお目にかかつた、こういう手続が踏んであるから、立法化ということはこの点において承知してくれた、さように私には言つた。但し、これは伊藤君自身としても今日御承知のような状態にあることであり、また問題はきわめて重大なことでありますので、私がそのことをどう信じており、またどうであるということは、私として、伊藤君があるいは苦しまぎれに、立法化もできないのに立法化できるということを……。」と証言し、また引続き同委員の「これは日がはつきりいたしませんが、九月の五日、ころに築地の秀花という待合で、重光、大麻、伊藤理事長の三人で三者会談を開かれたというのでありまするが、そういう事実を伊藤から聞いておるかどうか。」という質問に対し、「伊藤から聞きました。」と証言し、以下駒井重次君を通じ改進党に二千万円、三木武吉君を通じ鳩山派に一千万円を献金したということを、すべて保全経済会休業後伊藤から聞いたという伝聞形式の証言をいたしたのであります。
 翌二月二日は大谷、広川両君の証言を求めたのであります。広川君に対しましては、当然前日における立法化運動に関する尋問が活発であつたわけでありまするが、広川君は、「保全経済会のまうな特殊なものに対しての立法については、依頼されたことはございません。」と証言し、また昭和二十七年九月、東京会館の別館において伊藤、三浦、山崎と四名で会合した事実はあるが、その際の話は新夕刊への投資依頼であつたと証言しておるのであります。また、池田邸訪問の点に関しては、東京会館のその席で、「佐藤君、池田君に対して立法化に対して依頼をしてくれというようなことはございません。ただ、池田君に対しては、金融かやつておるのであるから、池田君にお会いいたしたい、紹介をしてもらいたいという依頼はありました。」と述べ、その後同道紹介はしたが、立法化の俵頼ないし金銭の授受については「はつきりお答えいたします。絶対そういうことはございません。」と証言をいたしました。以上の次第で、二月二日委員会終了後開かれました理事会では、中野理事より池田勇人君の喚問が要求されたのでありますが、入日の理事会まで保留することといたしました。二月八日の理事会におきましては、次回証人の相談をいたしたのであります。まず、中野理事より、池田勇人君喚問の理由として、去る二日の広川君の証言によれば、昭和二十七年九月ごろ東京会館別館において新夕刊社長山崎一芳君、三浦義一君及び伊藤斗福君と会談の折、伊藤君より池田君を紹介してくれとのことで、同道の上単に紹介しただけだとのことであるが、池田君は、一日夜新聞記者団と会見して、「昭和二十七年九月二十五日某氏を介して廣川弘禪氏と伊藤斗福氏が来ているが献金をもらうかどうかといわれた。そんなことはしないと帰宅してみると、伊藤、広川両氏が来訪していた。私が広川氏と話している間、伊藤氏は応接間におり会わなかつたが、広川氏に対しては、そんなものはもらつてはいけないと話した云々」(産業経済新聞、読売新聞参照と発表したのであります。すなわち、広川君の証言と池田君の談話発表と汁重大なる食い違いを生じているのであり、これをただずことは本件調査のたあぜひ必要なりとして、池田君を証人として喚問されたいとの発言があり、これに対し、久保田理事、小林理事等は、右中野理事の提案にさらに次の三つの理由を加えて、別の角度より池田君の喚問を主張いたしたのであります。すなわち、その第一は、昭和二十七年二月、池田勇人君は、当時大蔵大臣として、予算委員会で、保全経済会が銀行法子の他の法令に違反する場合は、調査の上これを取締ると言明したにもかかもらず、これを今日まで放置して被害タ増大せしめた責任について事情を聴取すること、第二は、法務省、大蔵省等関係官庁が、二十七年以来保全経済会の内容調査及び処置について意見の対立をしていたことに対する点、第三は、保全経済会休業直後、滞米中の池田勇人君の国際電話の件であります。これに対し、高木理事、田渕理事等より、池田勇人君を証人として喚問することに強く反対されたのであります。その理由は、平野証言が、伊藤斗福君と二人きりの、いわゆる伝聞証言で、何ら事実の裏づけのないものであつて、それを固執し主張し続けることは、本委員会を政争の具に供せんとするものであるから、本件証人の喚問の順序を本筋に引きもどし、小委員長の報告に基いて、保全経済会の実体を解明し、次に監督権の適否に移るべきである。このためには、まず山崎一芳、三浦義一、松下孝徳、小宮三郎等の諸君を証人として順次喚問し、しかる後新しき段階において理事会を開き、池田君喚問の採否を決定すべきであるというのであります。爾来引続き開かれた理事会においても、また小委員懇談会においても、この二つの意見が反復し、いまだ完全に意見の一致を見ないのであります。
 本委員会として所期の目的である保全経済会等特殊利殖機関の実体をあくまで解明し、関係官庁の処置の適否をきわめ、全国数十万の被害者をして一刻も早く安定せしむべく本審議を軌道に乗せ、あわせて国会に対する国民疑惑の月を一日も早く払拭いたしますことは、わが国民主主義確立のため緊要のことでありますが、審議の順序、方法につき軽々に処断いたします結果は、さらに事態を混迷に陥れ、調査の目的に遠ざかることになりますので、慎重に処置し、調査の完全を期したいと存じている次第であります。(拍手)
#107
○副議長(原彪君) 明二十五日は定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。
    午後十一時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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