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1953/03/11 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第18号
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1953/03/11 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第18号

#1
第019回国会 本会議 第18号
昭和二十九年三月十一日(木曜日)
 議事日程 第十六号
    午後一時開議
 第一 外務省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 日程第一 外務省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 内閣から提出された日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明を聴取するの動議(荒舩清十郎君提出)
 岡崎外務大臣の日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件外三件の趣旨説明及びこれに対する質疑
 簡易生命保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    午後二時七分開議
#2
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(堤康次郎君) 日程第一、外務省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長上塚司君。
    〔上塚司君登壇〕
#4
○上塚司君 ただいま議題となりました外務省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、外務省設置法、在外公館の名称及び位置を定める法律、特別職の職員の給与に関する法律及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の四法律の一部を改正するものでありまして、その内容は大体次の四点に要約することができます。第一は、名誉領事に関する制度を改正するものでありまして、従来名誉領事館の設置は法律を必要とし、領事館を設置して後名誉領事を任命する建前になつておりましたが、元来名誉領事は外国人であり、身分上国家公務員でもなく、その職務は当然本任の領事に比し制限されておりますので、このたびの法律改正によつて、名誉領事館を在外公館として法律をもつて設置せずに、ただちに名誉領事を任命し得るようにいたしたものであります。
 第二は、国際連合日本政府代表部を在外公館の一として米国ニユーヨークに設置し、その代表部の長は特命全権大使とするものであります。わが国の国際連合加盟はいまなお実現に至つておりませんが、わが国は一昨年十月オブザーヴアーの地位を認められて以来、各種会議にも出席し、経済、社会分野における諸事業に参加し、国際連合の専門機関には全部正式参加を認められております。従来は在米大使館から所要の人員をニユーヨークに駐在せしめておりましたが、わが国の国際連合関係事務がますます増大し、かつわが外交上その重要性も加わつて参りましたので、今回わが代表部を在外公館の一として認めようとするものであります。
 第三は、在外公館の昇格並びに新設でありまして、在エジプト公使館を大使館に昇格し、ホンデユラス、エル・サルヴアドル、コロンビア、アフガニスタン、イラク、シリア及びレバノンの各国に公使館を、またシドニー、ハンブルグ、トロント、メダン及びレオポルドヴイルの各地に総領事館及び領事館を新設せんとするものであります。
 第四は、大公使の現行俸給月額の三段階制を四段階制に改めるものでありまして、大使及び公使俸給月額に新たに低い一段階を追加するものであります。
 本法律案は、二月二十六日内閣から国会に提出され、翌日本委員会に付託されましたので、三月三日、六日及び十日の三回にわたり委員会を開き、政府当局の説明を聞き、質疑の後討論に入り、自由党今村忠助君、改進党並木芳雄君、日本社会党上林與市郎君並びに日本社党戸叶里子君からそれぞれの党を代表して賛成の意を表せられ、続いて採決の結果、全会一致をもつて本法律案は原案の通り可決いたした次第であります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#5
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
#7
○荒舩清十郎君 本日内閣から提出せられております日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の四件について趣旨説明を聴取するの動議を提出いたします。
#8
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。
     ――――◇―――――
#10
○議長(堤康次郎君) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、右四件の趣旨説明を求めます。外務大臣岡崎勝男君。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#11
○国務大臣(岡崎勝男君) 去る三月八日、日米両国政府を代表いたしまして私とアリソン米国大使との間に署名を了するに至りました日米相互防衛援助協定、農産物の購入に関する協定、経済的措置に関する協定及び投資の保証に関する協定の批准または締結につき国会の承認を求める件に関し、提案の理由を申し述べます。
 昨年六月アメリカ合衆国議会において成立いたしました相互安全保障法改正法によりまして、米国がすでに世界の三十箇国に近い国に対して供与している防衛援助がわが国にも供与され得ることとなつたのであります。当時の政府の考え方を申し述べますと、何分MSAはわが国にとりましてはまつたく新しい計画であるとともに、戦力の保持をいたしておらない国としてかかる援助を受けることの適否等について十分検討の必要を感じた次第であります。政府は、平和条約発効以来、憲法の規定の範囲内において、独立国として自衛力を漸増するとの方針をとつて参つたのでありますが、この立場と米国のMSA援助を受入れる場合との関連につき、まず率直に米国政府の意向を確かめることを適当と考え、わが方の問題とするところを米国政府にただした結果、わが方の見解は大筋において米国政府と一致することを確かめました。これがすなわち昨年六月二十四日及び二十六日の私とアリソン米国大使との間の往復書簡でありまして、当時御報告いたした通りでございます。
 政府としては、この基礎に立つて、MSA援助がわが国の防衛力増強に役立ち、わが国の経済にも好影響をもたらすものと判断し、しかもわが国の憲法その他の法規の範囲内でこれを受け得るものと認めましたので、昨年七月十五日より交渉を開始するに至つたのであります。この間の交渉につきましても、本会議等において中間報告をいたしましたほか、委員会の論議に際しましてもでき得る限り御説明いたしたつもりでありますが、政府としましては、この問題に寄せられました国民一般の強い関心にもかんがみ、慎重の上にも慎重を期し、この協定がわが国の政治及び経済に及ぼす各般の影響について十分なる考慮を加えつつ折衝を続けて参つたのであります。
 その結果、今般両国政府において合意せられるに至りました日米相互防衛援助協定は、米国がすでに他国と締結している同種協定と大綱において同様な形式及び内容を有しておりますが、また同時に、わが国の特殊事情にかんがみ、諸外国の例に見られない二、三の規定も設けられておるのであります。
 今回の協定は十一箇条、その附属書は七項目よりなつております。その内容は、お手元に差上げてあります協定文に明らかな通り一、援助の供与及びこれに関連する免
 税その他の措置一、わが国生産物の譲渡一、秘密の保持及び弘報活動一、産業上の技術的情報の交換一、軍事顧問団及び行政事務費一、MSA第五百十一条(a)項のいわゆ
 る六条件一、憲法及び安保条約との関係等の規定を含むものであります。
 今そのおもなる点につき御説明をいたしますると、まず第一に、相互安全保障法第五百十一条(a)項に掲げられました六条件に関しましては、わが国としてこれを受諾しても何らさしつかえないものと考えましてこれを挿入いたした次第であります。この条件の中には、憲法との関連におきまして、国内の一部にとかくの議論をされる向きもありましたので、念のためこの協定の実施が日米両国それぞれの憲法の条章に従つて行われる旨を明確にいたし、解釈上疑義の余地なきを期した次第であります。また、わが国がこの協定上負うへきいわゆる軍事的義務とは、日米安全保障条約に基く義務以外に何ら新しい義務はないのであります。また、しばしば議論されたる海外に部隊を派遣するやいなやというがごときことは、もちろんMSA援助とは何ら関係のない、もつぱらわが国のみの決定する問題でありますが、この点についても国内で懸念する向きもありましたので、本協定はいかなる意味でも海外派遣を含むものではないとの趣旨を、これまた念のため署名式におけるあいさつにおいて明らかにいたしておきました。
 第二に、わが国経済との関連につきましては、わが国防衛力の増大にとつて経済の安定が不可欠の要素であるということを明らかにいたし、また米国政府は、わが国の防衛産業助長のため日本及び他の国の使用に供すべき装備及び資材を極力わが国内において調達すること、またわが国の防衛産業に対し情報を提供し、その技術者の訓練を促進することを約しております。この協定はもとより防衛援助の性格を持つものでありますが、かかる規定を設けることにより、附随的なりとはいえ、今後この協定の実施がわが国経済に好影響を及ぼすものと確信いたしております。
 平和を脅威する国との貿易統制につきましては、最近米国が他の自由諸国と結んだ同種協定にはこの点に関し明文を担げることを通例といたしておるのでありまするし、わが国の国連協力の方針からしましても、この程度のことは約束してさしつかえないと認めましたが、本院の決議の次第も十分に尊重いたしまして、本問題はこれを附属書に落し、わが国としては、この目的のために米国及びその他の平和愛好国と協力する旨を規定するにとどめた次第であります。
 また、軍事顧問団につきましては、その身分を大使の指揮下に置くようとりきめ、その員数及びこれに被援助国が提供すべき行政事務費につきましても、わが財政状況にもかんがみまして、これを最小限度にとどめた次第であります。
 なお、附属書は、援助の内容、装備の標準化及び行政事務費の金額並びにその取扱い等、協定本文の細目とりきめ七項目について規定しております。
 以上の諸点は特に交渉の過程においても取扱いに慎重を期し、従つて交渉も意外に長引いたのでありますが、わが国の特殊事情に対する考慮は十分に織り込み得たものと信ずるのであります。
 援助の内容に関しましては今後さらに協議決定さるべき次第でありますが、たまたま予算編成期にあたり明年度のわが国自衛力増強計画も明確になりましたので、これに見合う援助が得られることは大体見通しがついております。
 なお、本協定に基きまして装備の返還に関するとりきめも同時にとりきめましたが、これはわが国に供与せられた装備等が不要になつた場合の処分方法について規定するものであります。
 次に、相互安全保障法第五百五十条に基く農産物の円貨による購入及びその円貨の使用に関しましては、農産物の購入に関する協定及び経済的措置に関する協定の二つの協定を作成いたしました。その結果、農産物の購入代金たる五千万ドルに相当する円貨のうち二〇%はわが国防衛産業の振興に使用されることとなり、残余の円貨は米国が日本における域外買付に使用することとなりました。これは防衛産業の強化とわが国経済の発展に役立つものと考えております。購入すべき農産物といたしましては、さしあたり小麦五十万トン、大麦十万トンを予定しておりますが、これは、外貨を使用せず円で購入し得る点、その価格が国際小麦協定の価格と同様の廉価なる点を考慮すれば、相当有利な条件でわが国食糧事情の緩和に寄与するものと考えております。
 また、今回同時に署名を見ました投資保証協定は全文三箇条の簡単なるものでありますが、その要旨は、わが国の外貨事情等により米国民間投資の元本及び収益のドル交換が不可能となつた場合並びに当該投資財産が国内で収用されたような場合に、米国政府は投資家にドルによる補償を与えると同時に、その債権を継承することを内容とするものであります。これは民間投資者が米国政府の保証により安心してわが国に資本投下をなし得る道を開かんとしたものであります。
 以上概要を報告いたしました相互安全保障法関係諸協定は、全体といたしまして、まずわが国の防衛力を強化し、あわせてわが国産業の発展に資せんとするものであり、しかもわが国現行の憲法その他の法規の範囲内で実施されるものであることを示していると考えられるのであります。政府としては、今回の諸協定がわが国の自立自衛に貢献することを信ずるものであり、またこれにより日米両国の協力はさらに強固の度を加え、自由世界の安全保障の維持に貢献せんとするわが国の意図もその実現に一歩を進めたものと考える次第であります。
 つきましては、以上の諸点を考慮せられ、これらの協定につき慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。(拍手、「反対」と呼ぶ者あり)
     ――――◇―――――
#12
○議長(堤康次郎君) これよりただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。喜多壯一郎君。
    〔喜多壯一郎君登壇〕
#13
○喜多壯一郎君 ただいま議題となりましたMSA協定について、私は、改進党を代表して質疑し、政府の所信を明らかにいたしたいのであります。
 今議題となつておりますところのMSA協定は、その受入れを原則的に認める者にとつても、また受入れをまつたく否定する者にとつても、いずれも重大な点が解釈上疑わしさを十分示しております。それらの疑わしい点のうち、特に基本的なものを二つ三つ指摘して質疑いたしますから、それらに対して、それぞれ吉田内閣総理大臣、岡崎外務大臣、木村保安庁長官並びに犬養法務大臣等の答弁を要求いたします。
 まず質疑の第一は、MSA協定調印に伴つて、今後の日本の対外的な態度、言いかえれば、現在きびしい国際情勢の中で日本はいかに対処して行くのか、政府の外交上の根本方針はどんなものであるかということであります。
 今度日本がMSA協定に調印して、いわゆる防衛二法案が成立すると、俗に言うサンフランシスコ平和条約体制から数段の飛躍をして、MSA体制、すなわち集団安全保障体制または自衛体制とも言うべきものに突入することを意味しております。このことは、冷たい戦争、すなわち米ソ対立の国際情勢の中で、日本も共産体制と対決する一つの国家となることでありますから、国際政治上で日本の自主的な地位も明らかとなるし、同時に日本の独自的な主張力もできるのでありますから、国民としては願うべきことであると私は信じます。(拍手)しかし、その反面、その逆に、非常に重い国際的な義務を負担し、その重い国際義務を忠実に実行しなければならぬことは申すまでもありません。従つて、MSA協定の受入れそれ自体がわが日本の完全独立を世界に宣言することでありますから、国際関係において重大な決意なくして協定の完全履行ができないことは明らかであります。政府は、吉田内閣は、MSA協定調印による日本の国際上の地位の大きい変化のほどを、国会を通じて国民大衆に、従来とつて来た欺瞞的態度を一擲して、大胆率直に明らかにするの責任があると私は信じて疑いません。この点について、特に私は吉田内閣総理大臣の見解を正したいのでありますが、お見受けするところ、おいでになりませんから、適当なる機会に、適当なる方からの答弁を望んでやみません。
 さて、質疑の第二でありますが、それはMSA協定とわが国の憲法との関係であります。吉田自由党内閣は、このたびのMSA協定の中には、この協定は各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施するという一条文だけをMSA協定の九条第二項に入れただけであります。このことは、あたかもMSA協定とわが国憲法とは矛盾しないと、いかにも簡単に片づけているように見受けられますが、しかも、今外務大臣の趣旨説明のうちにも触れておりますが、これこそ政は頭隠してしり隠さざる態度だと言わざるを得ないのであります。(拍手)かような態度は、わが国の憲法とMSA協定との関係をかえつて深い疑惑のうちに追い込むことにすぎませんし、むしろMSA協定と憲法との関係を混迷化することであると申して誤りないと考えます。
 大体、吉田内閣は、今日まで憲法の問題については、すつきりとした、はつきりとした、筋の通つた、割切つた態度を示しておりません。まことに横着千万だと私は申さなければならないのであります。(拍手)しかるに、MSA協定を承認することにおいて最も重大な問題は、憲法と協定との関係であります。端的に言えば、MSA協定の根本精神は、どんなに曲解しても、またいかに弁解しても、結局は軍事的義務を貫くものでありますし、またMSA援助そのものは軍事的援助で、それ以外の何ものでもないと私は信じます。(拍手)でありますから、日本が、日本人自身、われわれが軍事力をまつたく持つことができないのならば、日本はMSA援助の対象になることは絶対不可能だと結論せざるを得ない。しかも、日本の現行憲法は軍事力を持つことを否定している。そこで、われわれ改進党は、自衛権は憲法上認められているものとして、三党防衛折衝に協力したのであります。(拍手)ところが、この政府は、軍隊を持つことは憲法違反だと言つております。戦力保持も憲法違反だと言う。しかも憲法は改正せぬと言う。この大きい矛盾のままで今度MSA協定を調印したのでありますから、国民は深い疑惑と不安の中に本協定調印に直面していると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 政府は、わが憲法を今のままにして、それでMSA協定の実行を縛つて行くとするものか、それとも、MSA協定の実行に際しては、わが憲法を再検討して、その改正を必要とするのか、しないのか。おそらくMSA協定の成立はわが憲法改正の必要をいよいよ深刻化し、いよいよ現実化して来ることは避けることのできない動向だと信ずるわれわれ改進党の主張に立つて、簡単な表現でありますが、以上、内閣の所信を私はただしたいのであります。
 次は質疑の第三でありますが、それはMSA制度に含まれることのある経済援助についてであります。このたび調印されたMSA協定は、簡潔に言うならば、負わされた義務ばかりがはなはだ多くして、与えられたるものまことに少しとする感じが、私は、率直にして、すなおな説明だと申したいのであります。政府は、MSA交渉約八箇月、その交渉の中で、MSA協定の前書きの中に、日本経済安定はMSA協定の先決要件、先決条件であるというようなことを書き入れたいと、かなり執拗に主張したようでありますけれども、今日われわれの目の前に示されたるものは、その先決要件がいかにも弱弱しい、いわゆる必要条件というふうなことに後退した文字になつております。政府は、このたびのMSA交渉では、むろん防衛支持援助、経済援助を希望し、また域外買付の増額を提案したともわれわれは聞くのでありますが、わが方の希望も提案もことごとくアメリカ側の反対で押しつぶされて、われわれは失望したるMSA協定の調印を眼前に見るのであります。
 一体、MSA援助は大きい経済援助を伴うなどと国民を思い込ましめて来たのは、吉田内閣の秘密外交の大きな誤りであつたと諸君に訴えざるを得ないのであります。すでに昨年五月五日に、アメリカのダレス氏は、MSA援助は純然たる軍事援助だと明言しておりますし、それのみならず、アメリカは、由来、後進国には経済援助も技術援助もすると口には言つて参りましたが、その実、ヨーロツパ諸国では、MSAは軍事援助に限られておることは厳粛なる事実であります。しかるに、吉田自由党内閣は、いつもMSA援助は大きい経済援助を持つものとして一般国民を欺瞞して来たのでありますが、今日与えらるべきものは何かと言えば、わずかに大麦、小麦の購入というような、まことに幅の狭いものに至つておるのでありますが、それすらも、実はアメリカのMSA法五百五十条の偶然なる符合と同時に、昨年のアメリカの農作物の豊作から、あり余つた大麦、小麦を購入するに至るのでありますから、私どもは、この経済援助に関する点について、さらに深刻なる審議を通じて明らかにすると同時に、岡崎外務大臣からこの点に関する見解を詳しく聞きたいのであります。
 質疑の最後は、海外派兵、海外出兵、防衛機密保持などに関することであります。MSA協定を通じて、海外出兵問題、海外派兵問題は、今日きびしい批判と論議の対象になつておりますが、実は、MSA協定の条項の中には、海外出兵のことについては明らかに規定されてもいない。また海外派兵せずと明らかに規定されてもいない。われわれの知るところでは、MSA協定調印に際して、岡崎外務大臣とアリソン・アメリカ大使とのあいさつの中に、海外派兵はしない、海外出兵はしないという、それだけの報道にすぎないのであります。思うに、海外出兵、海外派兵すべきやいなやのことは、日本が集団安全保障体制に入つたその瞬間、われわれ日本それ自体が自主的に自分自身で決定すべきことだと私は確信いたします。ところが、このたびのMSA協定についての海外出兵、海外派兵問題は、政府が提出せんとする防衛庁設置法案並びに自衛隊組織法案などのいわゆる防衛二法案とにらみ合せてみても、自衛隊はいよいよわれわれ改進党の主張する防衛を目的とする自衛隊と解釈してまいのであります。吉田自由党内閣は、MSA協定を実行する今後において、防衛庁設置法案と自衛隊組織法案による自衛隊そのものを軍隊でないと否定し去るつもりで海外出兵せずと主張せられるのか、それとも、われわれ改進党の主張のように、軍隊ではあるが性質は自衛のためだという本質的な見解からして海外派兵せずと言うのであるか、その点すこぶる不明確でありますから、この壇上から明確なる答弁を求めてやまないのであります。(拍手)私は、朝鮮戦争における過去の事実から見ても、または今後の世界情勢の見通しからしても、MSA協定の調印に際して、政府の言うがごとくに、海外派兵せずとか海外出兵せずというがごとき主張は、おそらく貫くことはできないと予言してはばからないのであります。この場合、政府は、後に提出せられるであろういわゆる防衛二法案とともに、いかなる気持を持つてかようなことを言われるか、国民に対してこの壇上を通じて明らかに発表せられんことを望みます。総理大臣、外務大臣、木村保安庁長官の見解をただしたいのであります。
 最後に、防衛力増強を最小限度に食いとめんと努力したと言われますが、いよいよMSA協定を実施するにあたつては、われわれの想像以上の厖大なる軍事顧問団なる魔物がわが国に来ることは免れないのであります。それが内政干渉になる危険性を懸念せられるのであります。同時に、防衛機密保持の規定がまた出されるようでありますが、それが言論圧迫、あるいはさらに進んで民主政治を逆行させる恐怖政治への危険な因子となるべきおそれも反動吉田内閣には多分にあるのでありますから、以上の点について、それぞれ、の閣僚から明快なる見解を示されんことを希望するのであります。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇]
#14
○国務大臣(緒方竹虎君) 総理大臣が参議院の予算委員会に出席いたしておりますので、私からお答えをいたします。
 このきびしい国際情勢の中で、MSAの協定の締結が重大な決意なくしてはできないということは、まことにごもつともな御質問でありまして、それでありまするがゆえに、先ほど外務大臣から御説明申し上げましたように、昨年六月以来、この協定の締結につきましては、慎重に慎重を重ね、十分な検討をして参つたのであります。しかしながら、政府の外交方針は、講和条約の締結以来、米国初め自由諸国との提携強化並びに集団安全保障の理念の実現をその重要な一環としておりますので、MSA協定の締結はこの方針にも沿うものと考えて今回のことをいたした次第でございます。
 次に、MSA協定と日本国憲法との間に矛盾がないかといろ御質問でありますが、政府といたしましては、MSA協定と憲法との間に何らの矛盾はないと信じております。政府といたしましては、特にこの点について今後一層疑念がないようにはつきりさせるために、念のために、協定中に、本協定は憲法の条章に従つて実施するという旨を定めた次第でございます。
 次に、自衛隊の憲法上の解釈がはつきりしていないがどうであるかという御質問でありますが、憲法第九条は、陸海空のいかんを問わず、戦力、すなわち近代戦遂行能力を有するような大きな実力を持つことを禁じたものであると考えております。自衛隊は、編成、装備等その実力において、このような戦力の程度に達しないものであります。わが憲法は国家の自衛権を否定していないのでありまして、独立国として自衛のために戦力に達しない程度の自衛力を持つことは憲法上さしつかえないものと解釈いたしております。
 以外の御質問に対しましては所管大臣から御答弁申し上げます。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#15
○国務大臣(岡崎勝男君) ただいま副総理からも御説明いたしましたが、政府の外交方針の根本についてのお尋ねに関しましては、国民はもちろん民主主義に共鳴いたしまして、共産主義にくみせず、さりとていわゆる中立政策はとりたくてもとり得ないという実情でありますから、従つて、政府としては、自由主義諸国との擢携をこの上とも強化し、これによつて世界の平和維持に貢献しようという根本方針を持つております。
 MSAと憲法との問題につきましても、副総理からお話があつた通りでありますが、政府としては、もとより憲法に違反する協定をつくるものではないのでありまして、すべて憲法に準拠するのは当然であります。従いまして、協定の中に憲法の条項に従つてという文句は入れてありますが、これは実は念のために入れてあるのでありまして、なくても憲法に準拠することは当然であります。
 それから、軍事援助という言葉につきまして、これが憲法違反になるのではないかというお話でありますが、アメリカの法律は世界各国に対して適用せんとするものでありまして、世界中のおもなる国で日本のごとく戦力を持たないという憲法を持つておる国は実はないのでありますから、一般的に申せば、この援助はすべて軍事的援助とするのが当然でありまして、ただ日本の場合はこういう特殊の憲法がありますので、この憲法に従つて、この憲法の認める範囲内で援助を受け得るやいなやということを検討いたしまして、受け得るという結論に達しましたので、二、三特殊の規定を設けてこの援助を受けることにいたしたのであります。従いまして、この憲法を改正するかいなかという問題は、これはわが国あるいは国民の定めるところでありまして、政府としては、少くとも現行憲法が有効である限りにおきましては、憲法の範囲内においてこの協定を結ぶよりほかいたし方がないのであります。
 それから、経済援助がないじやないかというお話でありまするが、実は防衛力を増強するということは喜多君も御賛成のはずだと考えております。この防衛力を増強するにつきましても、わが国の経済あるいは財政上の建前から申しますと、なかなか思うようにならないのでありますから、これに対してアメリカ側から相当の援助が参りますれば、それだけでMSA援助を受ける値打ちはあると考えております。ただ、これと同時に経済的の寄与をもたらし得るような協定にすれば、それだけわが国にとつて有利でありまするから、いろいろの方法をもつてこれが日本経済にも寄与するようにと配慮いたしたのでありまするが、なお今後におきましても、さらに経済的な援助が来るように努力をいたすつもりでおります。
 海外派兵の問題につきましては、元来MSAの援助は防衛力増強に対する兵器等の援助を受けるということだけが問題になるのでありまして、海外派兵などということはMSAの協定とはまつたく関係のないことでありましで、これはわが国独自できめる問題であります。従いまして、協定の中に海外に派兵するとかしないとかいうことを書き表わすのは、協定の性質上、これはおかしな話であります。従いまして、協定には何も入れておりませんが、これは日本政府、日本国民が独自できめ得ることは当然であります。私のあいさつで申しましたのは、しかるにもかかわらず、盛んに海外派遣等をするのではないかというような宣伝がありまするから、念のためこの点を明らかにいたしたのであります。(拍手)
 顧問団の内政干渉等の点につきましての御意見はごもつともであります。顧問団の職能上はこういう心配は全然ないと信じておりまするし、また従来援助を受けました国々の実情を調べてみますると、顧問団が内政干渉をしたというような事実はないのでありまするから、日本におきましてもこういう心配はないと考えますが、さらに十分御意見のあるところは尊重いたしまして、機密保持等の点とともに、でき得る限り御意思のあるようなことにいたしたいと考えております。
    〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#16
○国務大臣(木村篤太郎君) わが憲法は国家の自衛権を何ら否定しているものでありません。従いまして、独立国家として自衛のためにいわゆる憲法第九条第二項の戦力に至らない程度の自衛力を持つことは、憲法上何らさしつかえないのであります。自衛隊は、このような意味から、わが国の自衛の根幹をなすものであります。しこうして、自衛隊が直接侵略に対処する任務を持つから、これを軍隊と言うのじやないかという御疑問でありますが、もちろん、直接侵略に対処するものをもつて軍隊と言うならば、それは私は軍隊と言つてよかろうかと考えております。しかしながら、わが憲法第九条第二項においては、いわゆる交戦国としての権利を認められていませんから、これは完全なる軍隊と言い得ないと私は考えるのであります。
 次に海外派遣の問題でありまするが、御承知の通り、自衛隊はわが国が外部からの侵略に対してこれに対処する目的をもつて創設されるのでありますから、この任務、目的からして、決して外国に対しての派遣は想像することはできないのであります。(拍手)
#17
○議長(堤康次郎君) 伊藤好道君。
    〔伊藤好道君登壇]
#18
○伊藤好道君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする、わが国にとつて最も重大なる問題である日米相互安全保障協定、いわゆるMSA協定に関しまして、吉田総理を初め関係閣僚に対し、四つの協定を通じて若干の基本的な問題に限り質問いたしたいと存じます。(拍手)
 いわゆるMSA協定は、ただいま外務大臣からお話の通り、昨年六月下旬以来実に八箇月の長きにわたる話合いの結果ようやく妥結されて、本日国会に上程されるに至つたのでございます。今日、MSA協定は、アメリカ合衆国といわゆる自由主義諸国との間に相当多数締結されておりますが、しかし、私は寡聞にして、まだ、日本の場合のようにその締結のために長時間を要したという例をあまり聞かないものでございます。(拍手)これは、このMSA協定が、政府の宣伝して参りましたのとは反対に、われわれが機会あるごとにしばしば追究いたしましたように、多くの無理難題をはらんでいることを示す以外の何ものでもないとわれわれは信ずるのであります。(拍手)その一、二例をあげましても、わが国の憲法との関係における根本的な矛盾をどうごまかしてつじつまを合せるか、これまた大きな難関であつたでありましよう。また、政府が合衆国政府の意図をきわめて安易に甘く考え、経済的援助が期待されるかのように当初唱えておりましたにかかわらず、途中からその期待が裏切られて、国民に対してそれをどうとりつくろつて行くかについても相当政府は悩んだであろうとわれわれは考えます。(拍手)が、とにかく、そこで私は、第一に、交渉がこのように遅延したのはいかなる理由であるか、それに対する政府の責任について総理にお尋ねいたします。
 次には、協定の内容に進みますが、今度のMSA協定は、全体としてきわめて抽象的であり、また范漠としておりまするがゆえに、われわれは、これを正しく理解するためには、この協定の基礎となりました一九四九年のアメリカの相互防衛援助法、五一年の相互安全保障法にまでさかのぼりまして、それらに準拠して解釈せざるを得ませんが、その立場からいたしますならば、MSAの本来の目的はきわめて私は明白であると信ずるのであります。すなわち、それは国際の平和及び安全保障のために友好国に援助を与えるのでございますが、その終局の目的は、合衆国の安全を維持し、外国政策を促進するのがほんとうの目的でございます。(拍手)従いまして、明らかに自己中心、自国本位の目的から出ておるものでございまして、従つて、そのためには、自分の利益になる間はこれは続けて行くが、そうでなくなれば捨てて顧みないということになるのは、アメリカの最近の外交の常道でござまして、日本のいわゆる直接侵留に対する防衛措置をこの向米一辺倒の協定にゆだね、進んで米ソ対立の渦中にみずから投ぜんとする吉田内閣の態度は、日本の安全と平和のためにきわめて危険千万であると申さなければなりません。(拍手)一体、政府はMSA協定のこの真の目的をどう考えるか。現に、アメリカは、かつてわれわれに現行の平和憲法を強要するかのごとくにして礼讃し、今日では口をぬぐつて、あれは誤りであつたというような態度を政府の高官がとつておるのでございまして、この無恥、無責任なる態度によつて、特にわれわれ日本人は、この問題について深刻なる考慮を払わなければならないと私は信ずるのでございます。(拍手)
 私は、さらに、MSA協定と日本の憲法との関係についてお尋ねいたします。この問題は重要な問題でありまして、われわれは、特にこの際技術論的な字句や言葉の末にとらわれることなく、憲法と協定の根本精神にのつとり、国民的常識としてはつきり私は考えなければならないと信じます。日本国憲法が、その第九条におきまして、諸君がよく御承知のように、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」となし、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めな。」としているのでございます。すなわち、ここで明白でありますことは、何よりも明らかでありますことは、戦争や武力の行使は言うまでもなく、武力による脅威も永久にやらないということが第一であります。第二に、陸海空軍はもちろん、その他の戦力も持たないこと、第三に、交戦権を認めないことでございまして、保安隊がすでにここに言う武力や戦力に当ることは、国際法上の前例、国際的な常識から自明のことでありますし、今日問題となつております自衛隊に至りましては、まつたく疑問の余地はないものとわれわれは信じます。(拍手)さらに、以上の諸点からいたしますならば、日本は、自衛権はありましても、憲法のもとではこれを武力、戦力によつて行使することはできないことも当然でありまして、他の平和的方法、すなわち外交的手段、言いかえますならば、論理的には対立抗争の一方の陣営に入り込まないで、中立政策をみずから堅持することによりまして自衛を行わなければならないのでございまして、そこに日本国憲法の万国に比類のない平和憲法という実があるのでございますが、このような明々白々だる点につきまして、MSA協定において再確認されました軍事的義務を履行するということは、この立場から明白に憲法違反ではないか。(拍手)吉田総理大臣より、はつきりこの点について御答弁願いたいのであります。
 もちろん、今日の事態に至りましたについては、悲しむべき、不愉快なる一連の、最近における日本の再軍備の歴史があります。すなわち、平和憲法のもとで、かの対日平和条約におきましては、つとに「個別的又は集団的自衛の固有の権利を有する」としております。安保条約はさらにこれを具体化しまして、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負う」ということまで具体化しております。そして、最近に至り、MSA協定を妥結する前に、政府は、陸軍や海軍や空軍を持つてもよろしい、但し、それが憲法にいわゆる戦力でない限りは、などと言う。これは世界歴史にいまだかつてない珍無類の言葉であると私は信じます。(拍手)それを吉田内閣の閣僚諸公がこの国会で公然と口にしてはばからないという事態は、遺憾ではございますが、動物園ではないかもしれませんが、はなはだしく人間離れのした事態であると申さなければならぬと私は思う。
 このような一連の系列をなしまする歴史的傾向は、実はわれわれが敗戦のさんたんたる国家的、国民的試煉を経て獲得して参りました平和憲法を蔑視し、ないがしろにしようとする恐るべき非民主的な態度でございますが、は、この際、総理は虚心冷静にこのような悲しむべき憲法無視の歴史的な傾向を深く反省されまして、その集大成であるところの今度のMSA協定が憲法に背反するものであるという、りくつではない、理論ではない現実の事態を率直に認められるべきではなかろうかと思うが、総理の所信をお伺いいたします。(拍手)もし政府がこれを認めないといたしますならば、政府は、さらに、この協定の内容において、いわゆる軍事的義務とはかくかくのものであるということを具体的に例示して、条文上にはりきり規定すべきではないか、そのための努力をしたのかどうか、努力はしたが先方から断られたのかどうか、初めからやらなかつたのであるか、これらの点についても明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、安保条約までは施設や基地の提供という消極的なものでありましたが、それとMSA協定の軍事的義務とが、政府の申しまするように同様のものであるといたしますならば、今度のMSA協定における、安保条約または行政協定のごときは改変しないとか、「憲法上の規定に従つて実施する」云々のこういう抽象的な日本の軍事的義務とは、具体的には一体何をさすものであるか、こういう点も明らかにしていただきたいのであります。ことに、協定には「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設」の許す限り「自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」云々とありますが、このことは、言いかえますならば、できる限りにおいて最大限の軍事力の増強をはかるということにひとしいのでございまして、(拍手)新たなる軍事的義務がいかなるものであるかをほうふつさせるのでございますが、政府はこの点についていかに考えておるか、特にここにいう人力の許す限りということはいかなる意味であるか、この点についてお尋ねいたします。
 問題の海外派丘の点につきましても同様であります。政府は、協定の第九条に「憲法上の規定に従つて実施する」とあるから、そうしたことはないと強弁されておりますが、もしかりにそうでありますならば、なぜ政府は協定の条文中に――国民は明らかに疑いを持つておるのでございますから、海外派兵は行わない旨を明記しなかつたのであるか、政府は明記しようと努力したがアメリカからけられたのであるか、この問の事情も明らかに御答弁願いたいのであります。
 われわれは、おそらく政府が国民への言い訳のために設けたと思われます両国政府の合意という条件についても同様に考えます。これは制限になりません。それは日米両国の実力関係できまるのでありまして、吉田内閣や保守政権のもとにおきましては、過去のたくさんの事例が示します通り、これはアメリカの意向次第ということになつてしまうのであります。(拍手)また、自衛のため以上には出ないなどということも、何ら言い訳になりません。今日まで侵略のためと称する人があつたでありましようか。ヒトラーにしろ、ムツソリーニにしろ、すべて自衛のためと称しておりました。ことに、この数日前の参議院予算委員会におきまして、関係閣僚は、海軍、空軍は外に出ないということは、その性格上、要するに出ないとははつきり断言できないという御答弁があつたようであります。言葉にも、先制攻撃は最良の防衛だという言葉もございます。政府が、今日、何の言い訳にもならないような言葉や宣伝によつて、八千五百万のわが民族と国家の運命を決するこの重大問題を粉飾し、ほおかむりして押し通そうとする陋劣にして独善的、反動的態度は、われわれの最も遺憾とするところでございます。(拍手)これらの点について御答弁を求めます。
 私はなお二つ三つこの点に関連して申し上げます。一つは、今度のMSA協定により、日米両部隊はおそらくは共同の計画を持ち、共同の行動をとることが出て来るかもしれないと思う。その場合、アメリカ側は明らかに正規兵であります。日本は、政府の言葉によれば自衛隊であり、戦力のない軍隊ということでありますが、こうした性質の異なつた軍隊、部隊の間に、協力の計画行動、進んではわれわれの最もおそれる協力作戦のごときものが行われるでありましようか。また、そういう際におけるほんとうの最高の指導権といいますか、指揮権はどちらにあるのでありましようか。
 軍事顧問団がつくられるのであります。これの日本における待遇としては外交官的な待遇のようでございますが、アメリカ合衆国内では、この顧問団はおそらく国防省の管轄に入るだろうと私は思う。さらに、この協定による日本への援助は、軍事的援助でありまする限りにおいては、これについての管理の根本的な権利はやはり国防省の手にあるのではなかろうかと想像されるのであります。さらに、この協定によつて供与される兵器の規格、訓練あるいは装備等々はすべてアメリカの企画によることが明らかでありまして、結局これにより、やはり事実上はアメリカ側が日本に対する軍事的支配を行うことになるのではないかとわれわれは憂慮するものでございますが、いかがでありますか。(拍手)すなわち、自衛隊は、日本においてのみ政府の従来唱えていたところからすれば軍隊でない珍妙なる自衛隊というのでございますが、実質上はアメリカに従属し、アメリカに指導され、アメリカの手先的、傭兵的な軍隊であるということになるのではないかと思う。(拍手)そうしてMSA協定はこれを前提として初めて結ばれたものであるのでございますが、この点とMSA協定との関係、内容等についての御見解を承ります。またこのような事態になれば、名前は太平洋軍事同盟でないかもしれない。しかしながら、アジアにおいてアメリカ系統の国際的な軍事同盟に加盟するに至るということが必然的に理解されるのでございますが、この関係について政府の御答弁を要求いたします。
 最後に、MSA協定と日本の防衛力漸増計画についてお尋ねいたします。日本の漸増計画に対し、アメリカが三十万人以上の激増を数年間に要請して来ていることは、今日国民のみな知つているところでございます。吉田内閣は、これに対し、二十九年度だけの増加計画で一応協定を妥結したのでございますが、それだけに、必ずや三十年度の増加計画についてもあらためて交渉しなければならないでありましよう。それについて、何らかそこに話合い、妥協の了解がついておるのかどうか、今後防衛五箇年計画のごときは出さないでもいいのか、これはMSA協定の交渉において不要なものであると考えてよろしいか。二十九年度の人員の増加は、保安庁関係におきまして、すでに二十八年度より三三%ふえておるのであります。おそらく、国家の予算の増加は一年間全部を含めますならば実に厖大なるものになりまして、五箇年にして三十五万人という計画にほぼ匹敵するようないわゆる漸増計画がそろばんの上でははじき出されます。しかし、これは漸増ではなくして激増でありまして、まさにはなはだしい増加でございます。(拍手)われわれは、これに対して政府の御見解を承りたいのであります。
 さらに、この協定の結果、日本としては当然に制定する義務を負わされている秘密保持に関する法案は、かつての軍機保護法の再生でありまして、われわれは、憲法において保障された言論、出版等表現の自由が、基本的人権が重大なる侵害を受けるのではないかということをおそれるのでございますが、この法案の要旨、内容、MSA協定との関係について政府の答弁を求めます。
 私は、最後に、経済とMSA協定の問題を質問いたしたいと思うのであります。政府は、しきりにMSA援助々々と宣伝しておりまして、いかにもこれによつて援助が生れて来るかのような印象を世間に与えておりますが、私の見るところでは、そんな援助はどこにもございません。私は政府のその点についての所信を承りたいのでありますが、この協定が結ばれますと、きのうあたりの新聞は、アメリカの対日援助突如八億ドルというような見出で、いろいろ宣伝しております。しかしながら、これには今まで保安隊に貸与されておりましたいろいろな兵器類の金額あるいはまた特需などが入つているようでございまして、いずれにいたしましても、日本の真の自立経済、平和的な自立経済のためには役に立たない。むしろじやまになるものであります。そこで、ほんとうにこの協定で多少とも経済的な援助の内容を有するものは、アメリカが困つている過剰農産物をドルでなくて円で四千万ドル分買えること、同じく贈与分がそれには一千万ドルついている、さらにそのほかにいわゆる域外買付というものが六千万ドル見当目標として今日持たれているということだけでございます。この農産物の輸入に対しましては、アメリカは輸出奨励金までつけてこちらに送るのでありまして、この農産物の日本の輸入がアメリカに対する救いの神であるということは明らかでございます。(拍手)しかも、これらの金額を円で積みますならば、この円において、円の使用に関しましてアメリカの意に従わなければならないという事態がついて参ります。一千万ドルの増与分は、邦貨にいたしまして三十六億円にすぎません。日本としてはこれがために特別会計を設けなければなりませんが、三十六億円ではあまりに小さい。そこで、あらためて政府の財政からこれに多少とも出さざるを得ないのではないかという説が巷間しきりに伝わつておるのでありまして、これにより、石炭、電力、鉄などの基礎産業、こういうものに使用できるなどということは毛頭考えられません。たかだかわずかの兵器生産の注文があるだけでございましよう。六千万ドルの域外買付も、ただいま申しましたように、できるだけやりたいという希望的な金額にすぎません。何ら確定しておりません。加えまして、今度の協定は、アメリカの相互安全保障法における軍事、経済、技術の三つの本格的な援助のうちの経済援助には当らないと私は信じます。(拍手)政府はこれについてどのように考えますか。また、政府の農産物買付、こういうようなものから、本来の、アメリカのただいま申しました経済援助への道を開くことができると言いますが、それもやはり希望的観測であつて、冷静な見通しははたしてどうか、この点について政府の責任ある御答弁を求めます。
 これに対しまして、日本の義務とししては、兵器や装備を使い、訓練を受ける、いわゆる自衛隊員を増加させなければなりません。それも、漸増でなくして急増、激増を行わなければなりません。すでに本年度の予算は、保安庁経費において七百八十八億円、これを前年度分と比較いたしまするならば、さらに百五十億円ふえておりまして、優に三〇%の増強を示しております。(拍手)この大きな軍事上の負担が、日本の国民経済と、日本の財政と、われわれの生活にどのような影響を与えるかということは重大なる問題でりまして、われわれは、バランスをとつてみまして、何ら経済援助はないということを断定せざるを得ません。(拍手)
 今日、このとき、日本の経済は、MSA協定を結んだ当の第一年度におきまして、国際収支の悪化、為替レート切下げの危機に瀕し、その日暮しのでたらめな現政府といえども、最近一兆円予算を組まざるを得ないはめに至り、また外貨予算につきましても、最近事務当局の間におきまして削減せざるを得ないというような事態になつておるのであります。すなわち、国際経済の不況にもかかわらず、世界の平和への態勢に逆行した、軍事費の漸増でない、急増政策のもとにおきましては、近い将来に円価切下げの危機が現実化しないという具体的な根拠は何らないのであります。(拍手)政府は、この際、この協定によりまして中国、ソ連その他の諸国との貿易上にも重大な制約を受けるに至りましたことは、これまた経済困難を一層はなはだしくするものと言わざるを得ません。
 諸君、私は、このままでは、円為替レートの第一次切下げはもちろん、それにもかかわらず襲い来るであろう第二次、第三次の切下げも不可避でありましようし、日本のインフレーシヨンはいよいよ本格的に展開されるということをあらかじめ政府に断言いたしまして、これに対する政府の所信を承りたいのであります。われわれが正しいか、政府が正しいかは、時の経過が現実にわれわれの前に示してくれるのであります。(拍手)さらに、このMSA協定によつて、いわゆるガリオア、イロアの問題はどうなるのか。ここにも、われわれは、成行きのいかんによりましては、日本経済に決定的重大なる問題を見ざるを得ないのであります。他方、すでに保安庁費などに明らかに看取せられます財政紊乱、財政放漫の傾向と相まちまして、われわれはますます日本経済の前途に深い憂慮を禁じ得ません。
 私は、従いまして、国家と民族の存立興亡がわかれまする政治的、経済的、社会的なこのMSA協定の重要性、緊急性と、わが国の民主政治の基本的建前から、総理初め関係閣僚より責任のある具体的な御答弁を要請いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)
#19
○議長(堤康次郎君) ただいまの伊藤君の発言中、もし不穏当の言辞がありましたならば、速記録を取調べの上、適当な措置をとることにいたします。
    〔発言する者多し〕
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#20
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 最初に、今回のMSA協定がその妥結に非常な長時日を要したのはどういうわけかという御質問でありましたが、これは、一口に申しますれば、日本の特殊事情があるために十分双方の意見の交換を行つておつたのでありまして、それ以外の理由はございません。現にスペインではMSA協定を妥結するまでに二箇年の時日を費しているような例もあるのであります。根本の問題につきましては意見の相違はなかつたことを御了承願います。
 それから、MSA協定によりまして新たに軍事的義務を加えたような御意見でありましたが、これは、日本とアメリカとの間の軍事的義務は、安保条約の義務以外に今度の協定によつて何ら新たな義務を加えておりません。安保条約はすでに国会の御承認を得ておることは、あらためて申すまでもないところであります。
 MSA協定によりまして日本の再軍備はいよいよ本格化したのではないかというような御質問でありますが、自衛隊の設置は国力に応じた自衛力漸増のために行うのでありまして、MSA援助を受けるために行うものではないのであります。そうして、独立国である以上、みずからの手によつてみずからの国を守ることは国家として当然の責務であり、憲法におきましても、わが国の自衛権を否認しておるものではなく、ただ戦力を保持することを禁止しておるだけであります。従いまして、戦力に至らざる程度の自衛力を持つことは憲法に抵触するものではございません。自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つためのものでありまして、これを海外に派遣することは政府としても考えておりませんし、また、本来MSA協定はただ援助の問題を規定するだけでありまして、それとは全然別問題であります。従いまして、MSA協定によつて義務づけられているものは全然ございません。
 以上お答え申し上げます。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#21
○国務大臣(岡崎勝男君) MSA協定は相互援助協定でありまして、これによつてアメリカも利益になることはありましようとも、日本にとつて利益ならば、この援助を受けることは少しもさしつかえないと思うのであります。(発言する者多し)
 それから、現実に侵略が行われた際に、伊藤君の説によりますと、われわれは手をつかねて見ていなければならないので、憲法は外交交渉以外には認めていないのだというお話であります。これははなはだふかしぎなお話で、憲法は自衛権を認めておると思うのであります。憲法で禁止されているのは戦力だけであります。
 それから、この協定の第六条、MSAの五百十一条を援用されまして、政治、経済の許す範囲でできるだけの防衛力の増強をはかるというのはおかしいじやないかというお話でありますが、独立国として政治上、経済上でき得る範囲の防衛力の漸増をはかることは当然なことであると考えております。(発言する者多し、拍手)
 それから、MSAの援助を受ければ米国の傭兵となるというお説のようでありますが、そうなりますれば、イギリスも、フランスも、イタリアも、世界の三十数箇国はみなアメリカの傭兵ということになるのでありまして、これもまことにおかしな議論であると思います。
 それから、長期防衛計画はMSA援助を受ける条件かどうかというお話でありますが、これは必要欠くべからざる条件ではありません。
 農産物につきましては、これはアメリカの余剰物資だから、もらつてもしようがないじやないかというお話でありますが、余剰であろうとなかろうと、日本で入用ならば買つて来てもさしつかえない、こう考えております。(発言する者多し、拍手)
 なお、MSAの援助は完成兵器の援助、域外買付、農産物の購入等だけではないかというお話でありますが、その通りでありまして、それでけつこうだと考えております。(発言する者多し、拍手)
 なお、今、日本の根本方針についてのお尋ねがありまして、これは喜多君にお話したと同様でありますが、政府としましては米国を含む自由主義諸国との緊密な提携をするというのが根本の方針でありまして、共産主義にもくみせず、いわゆる中立政策もとらざることをはつきり申し上げます。(発言する者多し、拍手)
    〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#22
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 憲法第九条の一項は、国際紛争の解決の手段として武力の行使または武力の威嚇をなさないという意味でありまして、一国の自衛権の行使を何ら否定しておるものではありません。外部からの直接侵略に対しては、独立国家としてこれに対処するものはもちろんのことであります。
 次に、顧問団の性質でありまするが、顧問団は、アメリカから供与を受ける武器の使用についての教授を受けるのでありまして、断じて自衛隊の訓練、指揮等について干渉すべきものではありません。また干渉させません。確信いたします。
 自衛隊の漸増計画は、決してアメリ、カから要請されるものではない。日本が独立国家たる以上、みずからの見解によつてこれをつくつて行くのは当然の義務であります。
 秘密保持法の問題でありまするが、これはただいませつかく検討中であります。まだ成案を得ておりません。しかし、これによつて私は日本国民の自由、人権を乱すというようなことは断じて考えておりませんから、御安心ください。
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#23
○国務大臣(愛知揆一君) わが国といたしまして、自衛力の漸増につきましては、常に経済安定との調整をはかりつつ考慮いたしておることは御承知の通りでございます。従いまして、今回のMSA協定におきましても、まず第一に自衛力の漸増がわが国経済への重荷にならないように十分なる配意がされております。そのことは、同協定におきましても、経済の安定がわが国の防衛能力の発展のために欠くことのできない要素であり、また、わが国の寄与がわが国経済の一般的な条件及び能力の許す範囲内においてのみ行うことができることを承認し、ということが明瞭に規定されておるのでありまして、これに基きまして防衛援助計画が策定されることになつておるのであります。しこうして、第二に、積極的な面におきましては、今回のMSA協定に伴いまして、たとえば域外発注だけをとつてみましても、本米国会計年度内におきまして、域外発注は一億ドルにまで増額されることに相なつております。また、経済的措置協定によりまして、農産物の購入につきましては、その価格は決して高くございません。また、その代価の二割、すなわち三十六億円は、御承知の通り贈与を受けまして、これをわが国の工業生産及び潜在的な経済力の発展を援助するために運用することができることになつておるのでありまするから、これはわが国の経済自立に寄与することが相当多大であるわけであります。
 最後に、国際収支の全般についてのお尋ねでございまするが、われわれといたしましては、一兆円予算を先頭にいたしまする総合的な経済施策によりまして、二十九年度におきましても二十億ドルを下らざる必要なる輸入の外貨計画を策定いたしまして、三百六十円のレートを絶対に堅持いたしつつ、わが国の経済自立の発展につきまして十分なる成果をあげる確信を持つておる次第でございます。(拍手)
#24
○議長(堤康次郎君) 片山哲君。
  [片山哲君登壇〕
#25
○片山哲君 本日この重要なるMSA協定問題に対する承認の件を上程するにあたりまして、責任者でありまする吉田首相の出席なきは実に不可解であります。(「その通り」、拍手)ほんとうに誠意をもつてこれを国会に諮ろうとするならば、出席できなければ本日は延期をして、出席できるときに議事を開ぐべきであると思うのであります。(拍手)私は主として吉田首相に対して質問をいたしたいので、本日の質問事項は、私に対するのみならず、さきに質問をせられた両君に対する答弁も、重ねて本会議においてこれをなす機会を別個に与えてもらわなくてはならないと思うのであります。
 そこで、私は、日本社会党を代表いたしまして、本件に対して承認を与えるべきではない、憲法違反であるという立場から質問をいたしたいのであります。(拍手)よつて、主として憲法問題を中心といたしまして吉田首相の信念を聞きたい。緒方副総理は本日これを吉田首相に伝えて、他日直接に吉田首相から御答弁を願いたいと思います。のみならず、本日、要点は、緒方君より、あるいは岡崎君より御答弁を願いたいと思います。
 吉田首相は、口がすつぱくなるとみずから言うほど、憲法は改正しない、再軍備はしないと言つておられるのであります。と言うかと思いますると、国民の盛り上る改正の要求があつた場合は改正をする考えを持つておるものであるということも附加せられておるのであります。この考え方につきましては、われわれの了解し得ざる不可解な点があるのであります。すなわち、改正しないという意床は、憲法第九条は守るべきだ、守りたいという信念を持つて改正しないと言うのであるか、あるいは、これは他の条項は別といたしましても、九条を、あるときにはかえてもよいのである、今はかえないという意味をもつて改正しないと言うのであるか、その信念をはつきりさせなくてはならぬと思うのであります。国民の要求が盛り上つて来るというようなやり方は、責任を国民に転嫁しておるのであります。政府の責任者として指導的立場に立つておりまする人の言では断じてあり得べからざることであると思うのであります。(拍手)よつて、第九条は守るべきものと信ずるがゆえにこれを今改正しないのであるという、その点をはつきりと国民に知らせてもらわなくてはならないと思うのであります。もう少し進んで言いまするならば、再軍備はしないのである、日本は戦力を放棄して交戦権はこれを認めないという建前で進んで行くことが是なり、自分はこれを正しいと信じておるならば、堂々とこれを発表していいのであります。この点についての吉田首相の信念のほどを聞きたいというのが第一点であります。(拍手)
 次に、進んで、吉田首相の言う憲法は改正しない、再軍備をしないという意味を、かりに第九条は当分守つて行こうという意味に解釈して進めたいと思いますが、第九条をそのままにおいて、このMSA軍事協定を何ゆえに結ぼうとしておるのでありましようか。この憲法第九条が厳として存在し、さらにそれに加えるに、九条の意味を説明しておりまする前文、堂々と世界に向つて日本の建前を、日本の平和主義を宣言いたしております前文あるにおいておやであります。(拍手)前文とこの九条を照し合せてみますならば、MSA協定は断じてできるものではないと私は信ずるものであります。(拍手)第九条を法律的に詭弁を弄して曲解してはならないと思います。この人類の幸福と世界平和のために貢献しようという高き精神が前文の中にうたわれておることを九条とともに考えて行きまするならば、九条をいくらごまかしましても、いくら調弁をもちましても、長い文章をもつて書いております前文は断じてごまかすことができるものではないと信ずるのであります。(拍手)第九条をそのままにおいてかえないというのでありますから、前文もかえないと信ずるのであります。これをそのままにおきまして、協定を結んだり、これを国会に出すことは、平和宣言、戦争放棄の違反であり、憲法を無視することはなはだしいものと言わなければなりません。(拍手)改正しないという以上は、本件は即時引込めなくてはならないわけであります。いかにしても出したい、何としてもMSA協定を結んで国会の承認を得たいというならば、憲法改正問題の可否を堂々と国民に問うべき手段方法を講ずることが必要であります。(拍手)先議案であります。その憲法に対して文句をごまかすような方式をとらないで、忠実なる方式をとつて、憲法問題をまず国民の前に出して首相の意見を明らかにし、国民の批判を待つて、しかる後にこのMSA協定に進むべきであることが順であると言わなくてはならないのであります。(拍手)首相の所見を聞きたいのでありますが、本日は緒方副総理より御答弁を願いたいと存じます。
 第三には、何ゆえに本件をそう急ぐのでありましようか。えらく急いでおることがふかしぎであります。アメリカはともかくといたしまして、わが国はこれを急ぐ必要がありましようか。憲法を空文化してまで軍事援助を急いで受けなければならないという理由がどこにあるかをはつきりせしめなければなりません。私は、無理な解釈をしたり、国民の疑惑を解くために十分なる方法を講じないで、かかる軍事協定を結ぶ必要は断じてないと信ずるものであります。(拍手)
 そこで、ベルリンにおける四箇国外相会議における困難なる国際間の諸問題を処理するための新しき動きを注目しなければならないと思います。ベルリン会議、いろいろと問題がありましたが、これは失敗ではなかつた、成功であつたと伝えられておるのであります。なぜ成功であつたか。新しい形の会議外交が現われておることが注目されておるのであります。会議外交の価値というものはだんだん認められて来たと思うのであります。相互に隠し立てをしたりすることなく、問題の核心を率直に述べて誠意を披瀝し、その国民の支持を受けられる態度と主張と合理性が会議外交において成功するようになつたと思うのであります。(拍手)それが近代における傾向であることを私どもは注意いたしたいのであります。
 昔は秘密外交でありました。吉田内閣は、秘密外交を依然として、あるいは官僚独善外交を依然として保持いたしておるようでありまするが、それには背景に武器がいるでありましよう。武器を用いる恫喝外交と秘密外交とは相通ずるものであります。(拍手)今日においては、誠意と合理性による国民外交に進展せしめて、武力の圧力にかわるに、桐喝にかわるに、国民全体の支持を受ける輿論外交でなくてはならないわけであります。それが会議外交として進んでおるところに注目をいたさなければならないのであります。
 この憲法のもとにおけるわが国は、当然武力にかわる国民の支持を得られる方式をとることを憲法は命じておるとわれわれは主張するのであります。(拍手)国民の支持を期待し得る会議外交を基調として進むべきことが、憲法下におけるわれわれの外交基調でなくてはならないのであります。特に憲法前文は、この趣旨を明らかにいたしまするために、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こううたつておるのであります。第一次吉田内閣のときにこの憲法をつくつて、その後不断の努力によつてこの崇高なる理想と目的を達成することを誓うと約束したのでありまするから、そのためには、まず万難を排して、国際紛争を解決するに武力を行使しない、武力の威嚇を用いない、交戦権はこれを放棄する、こういう建前をもつて進んで行くということが、憲法を改正しない、再軍備をしないという説明をいたしたる趣旨でなくてはならないということを強く銘すべきであろうと思うのであります。(拍手)吉田首相は、この点について、秘密外交、武力外交の時代すでに去つて、国民に理解を求めて、その後援、支援を求めて外交を推進するという建前に立つべきであると思うが、所信を伺いたいのであります。(拍手)岡崎外務大臣からこの点を伺いたいと存じます。
 次に、MSA協定がかりに成立したといたしまするならば、太平洋軍事同盟のごとき形の集団安全保障の機構が生れるであろうといわれておるのであります。これに対する吉田内閣の所信を伺いたいのであります。太平洋同盟のごときものがかりに出ましたる際において、このMSA軍事援助協定によりまして日本は海外出兵の義務を負わされて来るのではなかろうか。負わされて来た場合にどうするのであるか。先ほどからすでに説明がありましたけれども、その点について、私は具体的に太平洋同盟機構というものを考えて話を進めたいと思うのであります。
 あるいは、これは仮定の問題であるから今は言えないというふうな御説明があるかもしれませんけれども、本協定の第八条後段を見まするならば、自由世界の防衛力発展と維持に十分な貢献を行うと書いてあります。これは今後の問題であります。今後考えられる、日米両国のみならず自由世界の防衛力発展及びその維持に、日本、アメリカは十分なる貢献を行わなければならない。十分なる貢献とは一体何でしようか。(「出兵することだ」と呼ぶ者あり)出兵ということにおそらくは想像せられるでありましよう。(拍手、笑声)そういうことを今約束しておるのであります。こういう点に対しまして、将来の問題だからということで逃げないで、はつきりと国民が安心をするようにしなければならない。先ほど伊藤君が言われましたように、はつきりと出兵をしないという条項があつてこそ国民は安心するのでありますけれども、この条項なくして、ただ貢献するのである。こういうことでは、出兵を要求されるのではないかという不安が国民の間に満つることは当然であると言わなくてはならないのであります。(拍手)国民はこれによつて新たなる軍事的義務を負わせられたということになつて来るのであります。安保条約と質を異にした別個の義務を感じて来るわけであります。この海外派遣の問題に関しまして、政府は、わが憲法第九条の規定あることを理由に、派兵の要求を拒絶することができましようか。憲法第九条の条文だけをたてにいたしまして――憲法によつて行うということが書いてありまするが、これは第九条だけのことであろうと思うのでありまするが、それだけの条項で派兵要求を拒否することができるというならば、この壇上において、国民全体にこの意味をはつきりと約束してもらわなくてはならないわけであります。(拍手)しからずんば、この派兵を禁止するものであるという条項を明白に協定の中に入れるべきことをわれわれは要求してやまないものであります。(拍手)
 次に、秘密漏泄またはその危険を防止するために秘密保持の措置をとるということが、本法第三条に書かれてあるのであります。これは、先ほどからお話の通り、戦前の秘密保護法に類似する規定になるのではなかろうかという心配が国民の間に十分あると思うのであります。わが憲法第十条以下四十条まで、ずいぶん長いのであります。三十一箇条にわたりまする国民の権利義務に関する規定が書かれてあります。詳細に国民の基本的人権を確認しておるのであります。これはあまりこまかく書き過ぎておるというような意見もあるようでありまするけれども、こうこまかく書くに至りましたわけはあるのであります。人権蹂躪がはなはだしかつた、言論の自由、集会、結社の自由が剥奪せられまして、ほんとうに民主主義が行き渡らなかつたということにかんがみました結果、何としても基本的人権を守らなくてはならないから、事こまかに、詳細に書いて行こうというために、他の憲法にほとんど類例のないほど詳細にわたりました、三十一箇条の多きにわたる規定が置かれました、わが国における特殊な歴史的な産物としての規定であることを考えて行かなくてはならないのであります。(拍手)この規定を尊重いたしまして基本的人権を尊んで行くためには、例外規定や制限規定を一切置いてはならないのであります。
 秘密漏洩に関する規定を置く、そうすれば、おのずから人権蹂躪がだんだんと出て来るのであります。私は、そういう意味におきまして、本法第三条によりまする秘密保持の措置は、憲法のこの貴重なる三十一箇条の規定に制限を加えたり、これを空文化したり、人権尊重の観念を無視する結果を来すことは明らかであるという意味合いをもちまして、第三条は反対であります。(拍手)人権尊重の民主化前進の途上であります、いまだ民主主義が各方面に浸透していないわが国におきましては、憲法のこの三十一箇条には一切の制限法規を置くべきではない、これを無きずにして生かして、完全に育て上げて行くことは、もが国民主化の上において絶対に必要欠くベからざることであるということを主張いたさなければならないのであります。(拍手)ことに、警察法、教育法等の幾多の反動立法、旧日本復活の法規が次々と上程せられつつある今日、軍国時代の再来を思わするがごとき規定がもし出て参りまするならば、戦後獲得いたしましたる基本的人権は跡を断たなくてはならない悲惨事に遭遇することを優うるものであります。民主主義と基本的人権はどこまでも無きずに尊重して行かなければならない、制限規定を一切置いてはならないということに関する緒方副総理の所見を聞きたいと思うのであります。(拍手)
 最近、新聞紙上で、UPのリザー記者とエコノミストのドイツチヤー記者と二人の対談が発表せられておつたのを読んだのであります。ベルリン会議後のソ連という題でありますが、興味を持つて読みました。それはどういうことを書いてあるか。つまんで申してみまするならば、ソ連の外交政策とマレンコフ国内新政策との間には、はつきりと非常に緊密な関係が結ばれておるという話であります。ソ連外交を推進するために、国内消費物資の生産に重点を置きたい、国民の生活水準を引上げ、生活水準をよくしたいという国民の要望を満たすことに努力しようとする国内新政策であります。国民の生活水準を引上げるまでは、ある期間平和を望む、こういう外交政策との緊密なる関係であります。今まで、ただ、軍事発展のために、あるいは外交推進のために国民生活を犠牲にしておつたことを切りかえたという報道であります。別にこれを感心して皆さんに申し上げるわけではありませんが、もつてわれわれも大いに研究をしなければならぬという参考資料になると思うのであります。すなわち、外交政策と国民生活の充実であります。さきに申しました会議外交であります。
 武力を用いないで、平和のうちに話合いで進めて行ころとする外交の背景は、どうしても国民生活の充実、国民生活の水準引上げということでなくてはならないのであります。(拍手)日本の現下の情勢も、再軍備的な措置をとらないで、国民生活の充実に全力をあげるべきときが来つておるということを言わなくてはなりません。ことに、不半分子を一掃し、混乱と破壊を防ぎ、民主主義をあらゆる面に浸透せしめて、国民に幸福と生活の安定を与えることを優先的に考えて行かなければならない重大な時期になつておるのであります。(拍手)さような際に、MSA軍事援助、海外派兵の憂いがある、経済的な援助はなくして軍事的な援助、しかもこのためには、いろいろとたいへん金がかかるというようなこのMSA軍事協定を急いで、国民生活を圧迫する理由いずこにありやであります。(拍手)
 恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する国民たることを確認すると、憲法前文には明らかにしておるのであります。これを実施いたしまして、恐怖と欠乏から、戦争の恐怖と生活難のこの欠乏から国民を守るということが、政府の最大の仕事でなくてはならないわけであります。再軍備に進むMSA、あるいは自衛隊、あるいは防衛隊、そういうようなものをやめまして、国民生活向上のために努力することが、政府のなすべき最大の仕事でなくてはならないということを強く要望いたしたいのであります。(拍手)これに関する緒方副総理の所見を聞きたいのであります。
 さらに、日米経済関係は、外交と経済関係が密接なる関係を持つて来るという建前から申しましても、ひもつきな軍事援助よりも、貿易の発展、日本自立経済の確立に重きを置いて行かなくてはならないということは言うまでもないのであります。自立経済を貿易で発展せしめるためには、どうしても国内においては新しき計画を立てて、国民生活に重点を置いて、再軍備にまわす費用は、あげて、国民の生活のために、社会保障制度のために、教育のために、道路のためにまわすべきことが今日急務であるということを叫ばなくてはならないのであります。(拍手)MSA協定をいたしたために、せつかく今日まで経済援助であると感謝決議までいたしましたガリオア等が、今度は―一今までは債務であると心得るというようなあいまいなる答弁を政府はいたしておつたのでありますけれども、MSA協定以後においては、はつきりとそれは日本の債務になつて来るのではなかろうか。この点について政府は明快なる説明を国民の前にいたさなければならない時期になつておると思うのであります。(拍手)岡崎外相よりこの点に関する明快なる説明を願いたいのであります。
 最後に、私は政治道義の問題について吉田首相の所見を聞きたいのでありまするが、大分汚職事件あるいは涜職事件で雲に包まれて、国民は疑惑の中にいろいろに迷つておるのであります。吉田首相は、司法上の問題がはつきりしたときには善処すると言つております。しからば、善処するまで、はつきりするまでは、曖昧模糊のうちに、国民疑惑の中に、政府に対する不信の念も相当大きく高まつておることは事実であると言わなくてはなりません。かかる際に、この民族の将来に関し、日本の将来の問題に重大なる影響を持ち、しかも憲法の掲げておりまする大精神を蹂躪して、これを空文化しようとするような本件を出すということは、大きな間違いであると言わなくてはなりません。(拍手)よろしく汚職事件問題がはつきりするまでこの件は待つた方がよろしいのであります。(拍手)承認を求めるということをそうあわてないで、はつきりとするまでこの承認を求むる件を延期すべきであると私は考えるのであります。(拍手)あわてて出す必要は断じてないのであります。
 その意味におきまして、司法問題の解決は、これは司法関係者がやることであります。政治問題といたしましても、立場を国民の前に明白にせねばならないと思います。政治道義の問題であります。国民思想に与える影響であります。疑惑の中に包まれつつ、不審の念にいろいろと国民を迷わせつつ、かかる問題を審議するということは、国民思想の上において、道義観念の上において、非常なる悪影響を与えるものであるということを言わなくてはならないのであります。(拍手)よろしく、この機会に、汚職問題が解決するまでこの案件を延期する意見のあることが適当であると信ずるが、緒方副総理の考えいかん。この問題について緒方副総理の意見を聞きたいと思うのであります。(拍手)
 私は、この憲法は人類普遍の原則と政治道徳の法則と崇高なる理想を宣言いたしておるものでありますことを申し上げたいのであります。憲法を守る以上は、政治道徳の法則を守つて行かなくてはなりません。人類普遍の原則と崇高なる理想であります。崇高なる理想ということが憲法の前文の中に二回出て来るわけでありますからして、守るという以上は、この前文の持つておりまする高き人類の理想を、生活の崇高なる考えをわれわれの心のうちに持つて政治を行つて行かなければならないことを念頭に入れまして、政府の答弁を促したいと思うのであります。(拍手)
 これをもつて私の質問を終りたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇]
#26
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 首相は憲法を改正しないと言うが、改正しては悪いというのか、擁護する考えがあるのかという御質問のように承つたのでありますが、このことは、吉田総理が予算委員会あるいは本会議等におきましてたびたび繰返してお答え申しておりますように、憲法は永久に改正を許さないものでないことは言うまでもないのでありますが、国の根本法として軽々に改正すべきものでないことも、これまたしばしば本議場等において述べておる通りでありまして、現在は憲法を改正する必要はないと政府において認めておるのであります。憲法は決して国の自衛権を否認してはおりません。独立国の憲法として、その国の防衛の権利そのものを否認する憲法はあり得ない。もしそれがありますれば自己矛盾であると考えるのであります。(拍手)同様に、日本の今日の憲法は決して自衛権を否認しておるものではない。そういう意味におきまして、戦力に至らざる防衛力ということも当然あり得るのであります。(拍手)
 しからば、その信念を何ゆえに国民に問わないかということでありまするが、政府は、政府の憲法に対するこの態度は今に始つたことではないのでありまして、総選挙におきまして堂々国民の前に所見を披瀝して国民の批判を求めておるのであります。その結果が今日の衆議院における分野になつておるのであります。
 また、前文をあのままにしておくのはおかしいじやないかという御意見でありますが、あの前文にありまする、平和を愛好する諸国の公正と信義に信頼し、わが国の生存と安全を保持する決意をしたという、これは日本の理想であります。この終戦直後のわれわれ国民の決意というものは、決してこれをなげうつ必要はない、これはどこまでも日本国民の理想として尊ぶべきものであると考えます。同時に、世界の現実が必ずしもそれに合致していないということは、片山君もお認めになることであろうと考えます。それが今日われわれが置かれた情勢であります。日本の立場であります。その意味におきまして、憲法に対して、さきに申し上げましたような態度をとつている次第であります。
 次に、御質問の、協定第三条によれば秘密を保持すべき措置とあるが、このような規定を置くのは人権蹂躪のおそれがあるという点でございますが、MSA援助によつて供与された武器、装備等が相手国でありまするアメリカにおいて秘密に付されておる場合、わが国でもそれと同様の秘密保持を確保することは当然のことであると私は考えます。政府は、これによつて人権を侵害するようなことはもちろんいたしませんし、またそういう結論になろうなどとは考えておりません。
 それから、外交と国内政治とは密接な関係がある、国民生活の安定に重点を置くべきではないかという御意見、これは私どもといたしましてもまつたく御同様な考えを持つております。国内政治の基調はどこまでも国民生活の安定充実にあるべきであると考えます。でありまするが、外交と国内政治の間にも密接な関係がありますので、政府といたしましては、国の安全と国民生活の向上のため、外交と内政と相並んで努力をいたしておるような次第であります。
 次に、政治と道義についてお話がありましたが、政治が道義の上に立たねばならぬことは申すまでもありません。ただ、汚職事件件がいろいろとうわさされておるこの際に、国の将来を長い期間にわたつて決定するMSA協定の、ごときを結ぶべきではないという御意見でありましたが、しかしながら、政府は国民の負託の上に立つております。国民の負託がある以上、一日といえどもその責任をむなしくすることはできない。その意味におきまして、今回MSA協定を結ぶことは何ら政治の道義に反しない。また、お尋ねはありましたが、この批准の要請を延期する考えは毛頭ございません。(拍手)
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#27
○国務大臣(岡崎勝男君) 何ゆえこの協定を急ぐのかという御意見でありますが、これはいろいろありまして、第一には、できるだげ早く小麦を買いたいということ、第二には、四月以降には防衛力増強をいたすのでありまするから、これに見合う装備もほしいということ、第三には、域外買付等も促進いたしたい、こういう理由であります。
 また、会議外交についての御意見でありますが、これはけつこうでありまして、政府としても何ら異存はありません。ただ、片山さんの言われるように、軍備を持つていれば恫喝外交だというならば、ただいま会議外交を行つている国はすべて恫喝外交を行つているということになるのでありまして、これは少し現実を離れた議論だと思います。しかし、国際紛争を解決するのに武力を用いないということについてはわれわれも同意見でありまして、たとえば、濠州との間の紛争につきましても、濠州と協議の上、国際司法裁判所に提訴することにいたしております。朝鮮との間の問題も、でき得るだけ外交交渉で解決せんといたしておりまするが、これは先方がまだ聞き入れないような状況であります。
 海外派兵のことについての御意見で、何にも規定がないのは心配だと言われますが、規定がないことまで心配されてはちよつと困るのでありまして、そうおつしやれば、この協定ができていない今までの間は何にも規定がないのであります。海外出兵の問題は、もちろん政府自体、国民自体がきめることでありまして、規定に依頼するわけではありませんが、今までも何にも規定がないのでありますから、この点はさよう御承知を願いたいと思うのであります。
 それから、防衛力の発展及び維持が海外に出兵することになるのではないかという御議論であります。これもどうも、片山さんの御議論ではありますが、私は承服はできません。防衛力の発展に寄与するというのは、結局域外買付と武器を供与する等の方法で相手国の防衛力を強固にしようということに対して援助するのであつて、こちらの人間を向うに出して、そうして向うの防衛力を強化するなどということは、これは考えられないことであります。
 ガリオワについての御意見でありますが、これは、前から申しておりまするように、ガリオア、イロア等は債務と心得ております。しかし、国会の承認を得なければ債務とならないのであります。今後東京において本問題について会談することにいたしておりますので、その会談の結果具体的になりますれば、あらためて国会の承認を得る、こういう手続にいたしております。(拍手)
#28
○議長(堤康次郎君) 中村英男君。
    〔中村英男君登壇]
#29
○中村英男君 私は、ただいま議題になつておりますMSA協定その他の三協定について、同僚議員諸君の質問との重複を避けながら、二、三の重要な点について政府の見解をお伺いしたいと思います。
 第一に質問したいことは、MSAをめぐる日本とアメリカとの関係についてであります。MSAによつて日本は自衛力の増強を約束されたのでありますが、アメリカは中古のボロ兵器で最大の雇い軍隊をつくるという目的を達したのでありますから、日本軍隊はアメリカ製の武器を持ち、アメリカの顧問団に指揮される植民地土民軍であり、何ら自主性もなく、従つて戦つても強くない軍隊でありますが、政府は外国の指揮による国防軍がものの役に立つとお考えになるかどうか。
 また、政府は、MSA援助を受けるにあたり、アメリカの要求によつて日本の長期国防計画を策定し、これをアメリカ側に提示されたと思うのであります。なぜならば、それはアメリカが援助を提供する条件となつていたのであつて、国防計画なしにアメリカが援助を供与するはずはないからであります。しかりとすれば、政府は、いかなる根拠によつて、国防計画をアメリカに示しておきながら、日本の国会、すなわち日本国民にこれを示されないのでありますか。これは日本政府がアメリカ政府の一行政機関に堕落したものだと思うが。政府の所見いかん。(拍手)このことについて、いかなる責任を負う所存でありますか、伺いたいのでございます。また、アメリカに示しました長期国防計画を国会に提出する意思があるかどうか、これも伺つておきたいのであります。さらにまた、アメリカが国防計画を要求したことは内政干渉の疑いが濃厚であるが、政府はどう考えておられますか、この点もお伺いしたいのであります。
 次に、憲法とMSAとの関係について同僚議員がいろいろ伺われましたが、政府は戦力なき軍隊などと詭弁を弄しておりますが、戦力なき軍隊などという概念は、いまだかつて世界中に類例を見ない珍無類の詭弁であります。現に、日本以外の世界のどこの国でも、保安隊のことを日本の軍隊である、日本軍であると呼んでいることは、政府はすでに御承知のはずでございます。すでに保安隊は相当の戦力を持つところの軍隊であります。MSAを受けることによつて、保安隊は、自衛隊と名前をかえるだけでなく、一層その戦力を充実し、りつぱな軍隊となるのであります。吉田総理は、この憲法があり限り戦力ある軍隊は生れないと言つておられる。しからば、吉田総理は鬼子を生まれたのでございましようか。MSAが憲法の規定に従つて実施されることは、憲法は今のままで置いてMSAの実行を規制して行くというのであるか、それともMSA協定の実行のためには憲法の再検討が必要となるのでありますか。すでに自由党は憲法改正の調査会をつくつております。これは憲法を改正するという前提に立つておるが、MSAの承認を求めるという現在の段階で、今までのような軍備と憲法の関係をきわめて曖昧模糊としておくことは無責任であると思うが、その所見を承りたいのでございます。
 第二に質問したいことは、MSAは、世界平和を増進するどころか、かえつて平和を破壊するのではないかという点でございます。直接、間接の侵略に備えるためだと政府は言つておられますが、直接侵略して来るおそれのある仮想敵国とは言うまでもなく中共とソ連でありましようが、しかしながら、中共とソ連を仮想敵国として日本がアメリカから軍事援助を受け、アメリカと一種の軍事同盟を結ばなければならないほど現在の極東情勢は緊迫しておるかどうか。周知のように、朝鮮の休戦が成立してから、世界は徐々ではあるが平和の方向に向つておる。ベルリンで開かれたアメリカ、ソ連、イギリス、フランスの四国外相会議で、今までの国際的緊張を緩和し、一歩でも平和に近づくために、穏やかに話し合おうという方向が出て来ております。四月には、朝鮮の平和回復とヴエトナムの休戦を実現するために、ゼネヴアで国際会議が開かれるところまで来ております。世界の多くの国々が集まつて、平和のために話し合おうということにきまつたのでございまして、これはおそらく第二次大戦後の冷たい戦争が終つて行く第一歩だろうと思うのであります。その意味では、現在は戦後最も国際緊張の緩和したときだと言うべきであります。今後戦争はなくなるであろうという確信が世界中にみなぎつているのであります。このように世界中が平和に向つているさ中に、日本だけが武装を強化し、近隣の二つの国を敵にまわすというのは、一体どういうことでありましようか。
 政府がソ連と中共を苦々しく思うことはこれは自由でございます。政府が心の中でソ連を苦々しく思つておられるだけならば、それによつて別段国際緊張が増大して行くわけでもなく、また戦争にもならないと思うのであります。しかしながら、MSAによつて軍事的に日本が武装を強化し、アメリカの指導を受け、しかも明らかにソ連と中共を敵視するならば、ソ連もまた硬化して来るだろうことは、だれにでもわかるはずでございます。すなわち、それによつて国際緊張は激発されるのでありまして、このことは、良識ある人ならばだれでもわかるはずでございます。MSAに賛成しておられる諸君の中にも憂慮しておられる人があると思います。政府は常に国際平和、国際平和と言つておられるが、平和とは一体、目の前の戦争をとめ緊張を緩和するための努力をするということでなければならぬと思います。この点、政府はどうお考えでありますか、伺つておきたいのであります。また、進んでソ連、中共との国交を回復するため政府は努力する意思があるのでありますかMSA援助を受けることによつて日中、日ソ間の国交回復を妨害しているのは日本の方だという口実を向うに与えることになると思うのであるが、この点はどうお考えになつておりますか。最後に、経済問題について二、三伺つておきたいと思います。政府は、MSAを受けることによつて日本の経済が立ち直る、こういうふうに宣伝している。はたしてMSAはすべての病気にきく薬であるか。戦後のフランス、イタリア、ベルギーなど、アメリカの援助を受けた国は、一時的には経済が持ち直したが、実際には民族の重要な産業部門が再び危機に襲われ、あるいは破壊され、あるいはアメリカに支配されて、国民の膏血をしぼる道具となつております。それと同じことが日本にはすでに現われているのでありますが、MSA経済に入ることによつて、それがさらに公然と、しかもさらに尖鋭に現われて来ると思うのでございます。
 その一つのよい例が小麦協定でございます。政府はこの協定をつくつて得意顔をしておりますが、はたして得意になるほどのものであるか。なるほど、小麦を買い入れることによつて、日本の少い手持ち外貨を使わずに済みます。しかし、この小麦は国際価格の最高値段で売りつけられ、また四千万ドル分の見返り円貨をもつてアメリカは日本の製品を買い入れるから、アメリカはドルを払わない。すなわち、外貨の上で一向にプラスにならない。国際価格より高く買い入れて損をするという点だけが残つて来ます。そうして、さらに重要なことは、小麦を強制的に売り込むことによつて、アメリカは自国の過剰農産物を輸出することによつて農業恐慌を避けることはできるでしよう。しかし、小麦の輸入は日本の農業を圧迫し、日本における食糧増産を阻害し、日本農業の危機を深めることにしか役立たないのでございます。(「その通り」拍手)このことは、自国の農業政策、食糧の増産をまつたく顧みない、もつぱらアメリカの農業恐慌を心配してやる政策である。
 アメリカのための武器生産を通じて、またアメリカ民間資本の導入と保護を通じ、さらにまたアメリカの政治的圧力によつて日本経済は一層アメリカに支配されるのであります。現に、協定の第二条によれば、日本の重要資源はアメリカにゆだねられるのでありまして、これがMSAの本質であります。日本国民はアメリカに支配される代償として耐乏生活を強制され、兵隊を供出し、民族産業を売り渡すのであります。日本の経済は世界のあらゆる国々の自由な交流によつてのみ発展するのであつてMSAによつて中ソとの貿易がさらに制約されるならば、そうしてまたアメリカに従属し、公然たるMSA軍事経済に入るならば、日本において平和経済を発展せしめる機会は永久に失われてしまうのでございます。朝鮮特需が消えることによつて日本は経済危機に見舞われたけれども、それは平和経済を発展せしめる一つの契機であつたのであります。しかるに、政府は再びMSAによる軍事経済の道をとり、アメリカの経済的植民地となり、平和産業を圧殺し、労働を強化し、首切り、飢餓輸出を強制して、もつて日本経済を破壊し、国民生活を破滅させ、社会不安を醸成し、かえつて革命を招く所存なのでありましようか、政府の明快なる答弁を要求するものであります。(拍手)
 政府は汚職の発展を憂慮しておられるようでございまするが、どうかそれと同じような熱意をもつて民族の運命を決定する問題について憂慮してもらいたい。八箇月の間の月日をけみしまして今日国会に提案の運びとなつたのであります。吉田首相はおいでにならぬが、緒方副総理の心境にしても、きわめて穏やかでないものがあると思う。すなわち、軍隊の創設は国民の精神的基礎が確立されなければならぬが、今の保守政党のざまは一体どうか。新聞には名前は出なくとも、国民の目には、大なり小なり今の政治家が疑獄、汚職に関係があると見ている。また、私どもも、単に国会議員であるということだけで人間的な価値を失墜しておる。国民は政治を信用しない。精神的な基礎はくずれ去らんとしておる。(「時間だ」と呼ぶ者あり)わかつておる、時間は。――国民の精神的な基礎とは何か。国を守らんとする国民の意欲が結集してこそ初めて国の防衛力になるのである。今の自由党は、一国の食糧の自給自足計画も立つてないで、その上に精神的の基礎の確立もないまま軍隊をつくることは、民族の自衛でもなく、自立でもなく、それはまつたく隷属であり、日本民族の滅亡への道であることを反省されたいと思います。
 これで私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#30
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 MSAと憲法の関係につきましては、先ほど来ほかの質問者の方にお答えいたしましたから、重ねて繰返しません。
 御質問を伺つておりますると、MSA協定につき多少の誤解がおありになるのではないかと思いますが、MSA協定は、別に新たなる軍事的義務を加えるものではないのであります。また、今回自衛隊法を提案いたしまして、従来の保安隊を自衛隊にかえる等のことをいたしておりまするが、これもMSA協定と関係があるものではないのでありまして、その名称の変改あるいは今回の防衛力の多少の増強、これはすべて従来政府がとつておりまする防衛力漸増の方針に基いたものでありまして、MSA協定を締結いたした後に起る事態ではないのであります。従いまして、これによつて、御心配の、ソ連がさらに軍拡に拍車を加えて国際情勢を悪くするであろうというような心配はまずないと政府では考えております。
 爾余のことにつきましては所管大臣からお答えいたします。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#31
○国務大臣(岡崎勝男君) 長期防衛計画を米国に示したろうと言われまするが、そういう事実はありません。また、先ほども申します通り、これはMSA援助を受けるための必須の条件ではないのであります。
 世界において戦争の気分が遠ざかつたということは、私もそういう感を持つておりますが、そのおもなる原因は、自由諸国間の防衛力の増強ができ上り、完備しつつあるからであろうかと考えております。従いまして、日本におきましても自衛力の漸増をはかるのは、むしろ平和維持に寄与するゆえんであろうかと考えております。
 ソ連や中共との間に対する外交関係についてのお話でありまするが、ソ連等がサンフランシスコの平和条約に賛成いたしますれば、もちろんこれはけつこうな話と考えております。
 小麦協定につきましては、非常な誤解をお持ちのようでありますが、これは国際価格の最高価格で買うというのではないのでありまして、わが国の場合においては国際小麦協定の値段と同様のもので買うのであります。
 最後に、MSAの援助を受けるならば、経済問題も何もすべて一挙に解決しなければ満足しないような口ぶりでお話になりますが、MSAの援助は元来防衛力増強に資するためでありまして、これが満たされればまずその前提条件は満つるのでありまして、その上に経済的にも寄与が行われればなおけつこうだとわれわれは考えております。(拍手)
    〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#32
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 自衛隊において使用する武器の大多数はアメリカから供与を受けるものであることは間違いありません。しかし、その自衛隊に対する指揮監督は、みずからわれわれがやつておるのであります。決してアメリカの干渉を受けておりません。しかも、この自衛隊は国民の期待に沿うりつぱな部隊になりつつありますから、どうぞ御安心をお願いいたします。
 次に、戦力なき軍隊云々という言葉を使われましたが、われわれは、戦力なき軍隊などと言つた覚えはないのであります。いわゆる憲法第九条第二項の戦力に至らざる程度の自衛隊と、こう言つたのであります。さように、誤解のないようにお願いをいたします。
    〔国務大臣保利茂君登壇〕
#33
○国務大臣(保利茂君) MSAによる小麦あるいは大麦の買入れは、値段を高く押しつけられて、その結果わが国の農村を圧迫することになるのではないかという誤解があるようでございますが、これは全然誤解でございまして、価格につきましては、ただいま外務大臣からお答えいたした通りで、またわが国農村との関係につきましては、御承知のように、昨年当初百五十七万トンの小麦輸入の計画を立てたのでございますが、昨年の不作の結果、大麦、小麦、米につきまして大幅の輸入計画を拡大しまして、今年度百九十七万トンの小麦、来年度百九十六万トンの小麦の輸入計画を立てておるわけであります。これは、決してアメリカの余つたものをわが国が必要なしに買うということでなしに、国民食糧を最低限に確保するために買う輸入計画であります。従つて、その計画の中におきまして小麦五十万トン、大麦十万トンを買い付けるものであり、しかも、価格につきましては輸入価格と内地価格は明確に遮断をいたしておる現制度のもとにおきまして、内地農村を圧迫するようなことは断じてございませんから、誤解のないようにお願いをいたします。(拍手)
#34
○議長(堤康次郎君) 中村梅吉君。
    〔中村梅吉君登壇]
#35
○中村梅吉君 すでに重要なる数々の点について質疑がかわされておりますので、私はこの際、日本自由党を代表いたしまして、きわめて簡潔に若干の質疑を試みたいと思うのであります。
 ただいままでに憲法との関係についていろいろ論議をされました。しかしながら、政府の答弁を聞いておりますと、MSA協定と憲法との関係については、どうも私どももまだ釈然といたさない点があるのであります。そこで、私といたしましては、別の角度から少しく政府の所見をただしてみたいと思うのでありますが、MSA協定の前文によりますと、日本国が主権国として「個別的又は集団的自衛の固有の権利を有するとの確信を再確認し、」云々。こういう規定がございます。これは、要するに、憲法第九条にたといどんな規定があろろとも、国家固有の権利としての自衛権は厳存しておるのであるという確認であると思います。従つて、このこと自体、あたかも改進党の芦田理論あるいは清瀬理論とまつたく同様の前提に立つておるのではないかと考えられるのであります。すなわち、個別的または隻団的自衛の固有の権利があるということは、憲法第九条に規定するところの戦争放棄あるいは戦力否定の規定は、侵略戦争ないし国際紛争解決の手段に用いるための戦力を否定し、または戦争権を放棄したものではありますけれども、外部から侵略を受けた場合に、これを防禦するための戦力あるいは戦争権は国家固有の権利として厳然として存在しておるのである、こういう見解に基くのであると見受けられるのであります。しかしながら、政府の答弁を伺つておりますと、国家固有の権利としての自衛権はある、だが戦力は認めないのだ、自衛隊はいまだ戦力に達しないのだ、こういうところに私どもとしては何としても理解しがたいものがあるのでございます。(拍手)なおさらに、協定の前文中において、「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和及び安全保障を増進すること域外に用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、」云々、こういう明記がございます。結局、これを裏返しにいたしますと、平和及び安全を増進するため以外の軍備を避けるというのでありますから、以内の軍備ならばよろしい、すなわち平和及び安全を増進するための軍備は持つてもよろしいのであるということに相なると思うのでございますが、この点について私は外務大臣のはつきりした所見を承りたいと思います。さらにまた、協定前文中には、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負う」旨を規定しておるのであります。
 以上の要点を総合いたしますると、明らかに、直接侵略及び間接侵略に対抗するための軍備は、たとい憲法にいかような規定があろうとも持つてもよろしいのであるという前提に立たなければ、こういろ協定文案というものは生れて来ないではないかと考えられるのでありますが、いかがでございましようか。(拍手)はたしてしかりとするならば、吉田総理が従来言明せられ来りましたところの憲法解釈論とは、かなりの隔たり、政論が行われたものであるように考えられます。
 なお、MSA協定第九条には、この協定は、「それぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施するものとする。」旨の規定がございます。この憲法上の規定に従うという限界ははたして那辺にあるのであるか、これが大きな問題であろうと思います。この規定があるからして、政府は、このMSA協定は憲法に違反はしないのである、しておるという議論があるにしても、憲法を逸脱するようなことには持つて行かないのである、こうくぎを刺そうとされるのであろうと思いますが、しかしながら、この憲法上の規定に従うという限界は、何らこの協定中において明確にされておりません。きわめてこれは根本的な重要なる問題でありまするがゆえに、MSA協定第九条と憲法第九条との法理上並びに実際上の見解並びにその限界点について、私は政府の確固たる御所信をこの際承つておきたいと思うのであります。(拍手)
 同時に、私の伺いたいと思いますことは、もはやここまで来れば、現に大砲を持ち、戦車を持ち、小なりといえども大砲を搭載しておるフリゲート艦、これらを用いておるところの保安隊や警備隊、やがて近く設けられようとするところの自衛隊、これらは明らかに戦力であり軍備であるということについて、政府は、これらの大金を投じて行いまするところの自衛施設というものが筋金の入つた自衛力に建設せらるべき段階であるということにかんがみまして、はつきりした踏切りをつけてはどうかと私は考えるのでございます。戦車を特車と呼び、あるいは戦力なき軍隊という珍無類の弁明は、この際根本的に改善せられてしかるべきではないかと私は思うのでございます。(拍手)
 次に、MSAの関係と憲法改正の時期についてであります。総理大臣は、従来、憲法を改正しないとは申しません、時期が来たならば改正をする、自衛力を漸増して、漸増して戦力に至ればそのときに憲法の改正を行うのだ、こう言われておるのでありますが、現に、日米安全保障条約においても、自衛力を漸増する軍事的義務を約束づけられております。さらに、今回のMSA協定を見ますと、その第八条において、この「軍事的義務を履行することの決意を再確認する」云々と明記されておるのでございます。また、MSA協定の全体を通じて観察をいたしまするならば、わが国は自衛力を漸増いたしまして、やがては駐留軍全体の撤退を求めるという前提に立つておるものであるということは明確なる事実であると思います。そうであるとするならば、前述いたしましたように、憲法上の解釈いかんというような問題とともに、政府の、ことに吉田総理の常に言われておるところの、憲法は時期が来たならば改正すると言われるその時期は一体いつであるか。憲法改正はいずれの段階において行われようと意図されておるのでございましようか。保安隊が直接侵略及び間接侵略に対抗することを主任務とする自衛隊に組織がえされたならば憲法改正を行うというのでありますか。あるいは自衛隊が漸増されて駐留軍が撤退を開始する段階になつたならば憲法を改正しようとするのであるか。あるいはまた、駐留軍全員が撤退をしてからでなければ憲法は改正する段階ではないとおつしやるのでございますか。それとも、それらの時期は明言できないけれども、現在のところは自衛のための軍備についても準備段階である、同時に憲法改正についても準備段階にあるのであつて、これらの並行した準備が完成をしたならば、その準備完成の時期において憲法改正を断行するのであるというお考えであるのか。この辺の判断について、この機会に私は政府のはつきりとした態度を拝聴しておきたいと思うのでございます。
 次に、私は軍事義務の限界についてただしたいと思います。すなわち、協定第八条には「一般的経済条件の許す限り自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、」云々、こう規定されております。日本の防衛のみでなく、自由世界の防衛力の発展及び維持についても寄与するというのでありますから、ここに海外派遣義務を伴うものではないかというような重大なる疑義を生じて参るのでございます。わが国が国連へ加盟をいたしました場合のことはしばらくおきまして、このMSA協定そのものによつてわが国の負担すべきところの軍事義務の限界というものが、この協定それ自体ではきわめて不明確でございます。ただいままでの論議によりましても、いまだこの点が明確にされておりません。しかし、この点は、日本側にとつて最も重要な、また国民として最も関心の深い点でございまするがゆえに、政府といたしましては、当然この点を明確にせらるべき責任があると思うのでございます。
 なお、軍事義務の限界と最も密接な関連を持つておりまするものは、長期防衛計画についてでございます。ただいまも長期防衛計画についての論議が若干ございましたが、政府がMSA協定を締結いたしました以上は、これとタイアツプするところの長期防衛計画、うらはらの関係にあるところの長期防衛計画、これについて、この機会にわれわれに説明をせられてしかるべきであると思います。あるいは、長期防衛計画の腹案を持つているけれども、まだ説明の段階ではないとおつしやられるかもしれない。しかしながら、この協定によりましてMSAの援助を受ける以上は、その援助がせつな的なものであつてはならないのであります。一つの一貫せる国家としての方針のもとにその援助を受けるものでなければならないと私は思うのでございます。かような点に立脚して考えまするときに、長期防衛計画がないはずはないと私は考えるのでございます。かような見地から、私は、木村保安庁長官からこの機会に長期防衛計画の骨格について拝聴いたしたいと思うのでございます。
 次に、MSA協定と経済援助との関係についてでございます。MSA協定の援助について、岡崎外相はかつて、MSAの交渉はMSA援助という油を引いて来るためのパイプである、こう言われまして、何か大きい経済的利益が伴うもののごとくに言われておつたのでございます。国民もまた、一部はこれを期待しておつたのでございます。さて現実の交渉に当つてみますると、なかなかそうは参りません。経済援助の点はまつたく岸壁に突き当つてしまつた感がいたすのでございます。しかしながら、政府の努力によりましてようやくこぎつけましたのは、農産物購入協定、あるいは経済措置協定、あるいは投資保証協定というようなことに相なつたのでございます。そこで、私のただしたいと思いますことは、本協定中に数字によつて明らかにされておりまする援助の内容はここで承る必要がございませんが、数字によつて明らかにされている以外の援助の内容について伺いたいと思うのでございます。経済援助、すなわち域外買付、あるいは米国が日本国内に現有しておりますところの軍事所有施設及び装備等について将来日本側に移譲せらるべきものの範囲、あるいは投資保証という協定によりまして外資の導入がどのくらい実現される見込みであるか、これらを総括いたしました経済援助について、少くともその見通しを承つておきますことは、MSA協定を承認するやいなやについて最も大きな根底をなすものであると同時に、日本経済の将来にとつて重要な関連があると考えられるのでございます。この点に対しまして、現に、最近のUP電報は、対日援助額は本年度において総計八億ドルに達するであろうというような報道をしております。私どもは、その真偽のほどはわかりません。しかし、こういう電報の報道を見た国民は、そういう期待を持ちかねないのでございます。直接その交渉の任に当られました岡崎外相から、この経済援助の内容について、実体についてできるだけ詳細に、また見通しについて、この機会に御説明を求めたいと思うのでございます。
 なお、最も戒心を要しまする点は、日本の経済自立が今日のごとく立遅れを来したということは、幸か不幸か朝鮮戦争が勃発いたしまして、朝鮮戦争の特需に災いされた、あるいは恵まれたと申しますか、この結果日本の経済自立ははなはだしく立遅れを来したと思うのでございます。MSA協定によりまして、日本の経済上にどれだけ寄与されるかは未知数といたしましても、そういたしました場合に、日本の経済自立というものが、あたかも朝鮮戦争における特需のごとき結果に陥るということについては、断じてその轍を踏まないように政府としては十分戒心をせられて、万遺憾なきを期さなければならないと思うのでございます。(拍手)
 なお私は、最後に、秘密保護の問題について伺いたいと思います。附属書Bによりますと、はなはだ抽象的な規疋がございます。すなわち「アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保するものとし、」と規定されておるのでございます。この抽象的な表現のみではよくわかりませんが、アメリカの秘密保護の等級と同等のものとは一体何をさしておるのであるか。また、この協定に基いて日本政府は秘密保護法というようなものを制定しようとされておるようでございます。世間には、かつての軍機保護法のようなものが再現をして、はなはだしく言論の自由について強圧を受けるのではないだろうかということを懸念する向きがございます。従いまして、すでにMSA協定を締結いたしまして国会に承認方の提案をされました以上は、政府としては、これに伴うこの附属書Bに規定されておりますところの秘密保護についての立法措置の骨格なり構想なりを持ち合せておらなければならないと思います。(拍手)従いまして、この所管は多分保安庁長官にあられると思いますが、長官から、秘密保護法制定の構想について、その骨組みをこの機会に承つておきたいと思うのでございます。
 はなはだ簡単でございますが、以上をもちまして私の質疑を終る次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕
#36
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
 MSA協定によつて憲法改正は必至と考えられるが、その時期は一体いつか。これは私は今から憲法改正の時期を明示することは困難であると考えます。政府のとつております防衛力に対する態度は、あらためて申し上げるまでもなく、国力の許す範囲において防衛力を増して行く、それが政府のいわゆる漸増方針でありまして、その漸増の結果、ある限界に至りました場合、またそれに伴つていわゆる戦力を保有し得るようになつた場合、憲法改正をせなければならぬことは当然であると考えます。それならばそういう時期はいつ来るかということにつきましては、今からそれを予言することはできませんけれども、今御質問の中にありました、駐留軍が完全に撤退するときがその時期であるか。それは一つの考え方でありまして、防衛力を漸増して参り、また近代兵器を保有するようになつて、駐留軍の駐留を必要としない、駐留軍の撤退を可能とする時期になりましたとき―一それは、駐留軍はもちろん地上兵力だけでなく海上も空軍も伴うのでありまして、含めての話でありますが、そういう場合には、日本として当然に独力をもつて国の防衛に当る力をたくわえておるときであろうと思います。それは一つの憲法改正の時期でありますが、それは今から明らかに何年後ということは当然に予見されないのでありまして、一応の目安としては、さようなことを政府としては考えておる次第であります。
 そのほかの御質問に対しましては所管大臣から御答弁いたします。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇]
#37
○国務大臣(岡崎勝男君) まず、前文中に、日本国が攻撃的な脅威となり、または国際連合憲章にいうような平和及び安全保障を増進すること以外に用いらるべき軍備を持つことを常に避けつつというような文句についてのお話でありますが、これは実は安全保障条約の前文にあります文句とまつたく同等でありまして、安全保障条約の前文からとつたものであります。従いまして、これから言いましても、安全保障条約において負つておる義務以上のものは負わない、こういうことにもなろうかと考えておるのであります。従つて、この意味も、安全保障条約のときに御説明しました、あの通りの意味と考えております。
 それから、自国の防衛力の発展及び維持、自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与したいとあるこの義務についての御疑念でありますが、これは、先ほど片山さんにもお答えいたしましたように、わが国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でできるだけのことをするというのでありますから、この出兵とかいうようなことを考えて、相手国の、ほかの国の防衛力の発展を行うということはとうてい考えられないのでありまして、ぜいぜい、兵器の発注に応じて、域外買付によつて、相手国の防衛力を漸増するとか、あるいは工作機械を出すとか、こういう程度のことを考えております。
 それから、秘密保護の等級と同等のもの、この法律関係は保安庁長官からお答えがあると思いますが、この秘密保護の等級と同等のものというのは、これは一つのたとえでありますが、ある秘密の兵器がありまして、これはアメリカ側で局長以上の考しか知らないものであるとか、あるいはほかのものは課長以上の者しか知らないものであるとかいうようないろいろの等級があるのであります。その兵器をこちらで受けた場合には、やはり同様に日本でもその範囲と同じような程度にしか知らせない、それでもつて機密を守ろうという趣旨のものであります。(拍手)
    〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#38
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 長期防衛計画を立てておるかどうか立てておるならばそれを示せということでございますが、一国の長期防衛計画というものは、御承知の通り、財政力ばかりではなしに、あるいは兵器生産能力、あるいは輸送力、あるいは備蓄能力、その地各般のことを総合して立てなければならないのであります。いわんや、現段階におきましては、兵器の進歩というものは著しいものがある。これは中村君も十分御承知であろうと思います。それで、かような長期の防衛計画というものはなかなか立てがたい、これは実情でございます。従いまして、われわれは今立てておりません。ただ、しかし、いわゆる自衛力漸増方式による計画だけは、これは立てるべきものであろうと考えております。まずさしあたり、二十九年度においてどれだげ増加すべきか、あるいは三十年度にはどれだけ増加すべきかということについて検討いたして、御承知の通り、二十九年度は予算も御審議願つておるわけであります。三十年度においても、われわれは、ほぼかような点まで行こうかという目途を立てております。しかしながら、まだ確定の案は出ていない状態であります。御了承願いたいと思います。
 それから、いわゆる軍機保護法という点であります。これも、ただいま研究いたしまして、数日中に成案を得て提出いたしたい予定であります。その構想は、その範囲をごく限定いたしたいと思つております。つまり、秘密にすべき兵器をどの点までしぼつて保護すべきか、こういうことであります。それから、いわゆる直接の侵略があつて出動いたした場合に、その場合における行動、いわゆる自衛隊の行動その値については、われわれは十分に保護しなければならないと考えております。行動が筒抜けにわかつて行けば、これこそ国家の破滅であります。これは秘密にすべきであります。それから暗号その他通信の点についても保護すべきものはあろうと考えております。しかし、要は、きわめて制限した、国民に何ら迷惑をかけないという程度において、これを成案いたしたいと考えておる次第であります。(拍手)
#39
○議長(堤康次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#40
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、簡易生命保険法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#41
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 簡易生命保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。郵政委員長田中織之進君。
  [田中織之進君登壇]
#43
○田中織之進君 ただいま議題となりました簡易生命保険法の一部を改正する法律案につきまして、郵政委員会における審査の経過並びに結果につき簡単に御報告申し上げます。簡易生命保険の保険金の最高制限額は現在八万円に制限されておりますが、最近の経済事情の推移により、この金額では制度本来の機能を十分に発揮できない事情にありますため、これを引上げようとして政府は本法律案を提出するに至つたものであります。しこうして、その引上げようとする金額につきましては、今日における医療費、葬祭費、遺族生活費等にかんがみまして、さらに物価指数並びに最近における民間経営の保険事業の状況等を考慮の上、政府はこれを十三万円に引上げて参つたのでございます。
 本法律案は今月の八日本委員会に付託となりましたので、九日政府より提案の理由を聞きました後、その内容につき各委員により熱心な検討が加えられたのでありますが、本法律案の内容である保険金の最高制限額の引上げに関しましては、すでに国政調査の事項といたしまして当委員会において慎重審査を重ね、最高制限額については二十万円程度に引上げることが妥当であるという申合せをいたした関係もありまして、質疑はもつぱら、最高制限額を少くとも十五万円程度に引上げたいという政府の従来の言明にもかかわりませず、これを十三万円にとどめたのは一体どういう経緯と根拠に基くかという点に集中せられたのでありますが、それらの詳細は会議録によつて御了承願いたいと存じます。ただ、審査の過程で明らかになりました最高制限額引上げに伴いまする資金の増加額についてのみ申し上げますと、政府原案の十三万円に引上げます場合には、二十九年度において約三十億の資金の増加であります。十五万円に引上げます場合には、二十九年度において四十数億円、三十年度に入りますと優に百億円を突破する資金増加が期待できるという政府側の説明でございます。
 かくて、委員会は本日質疑を終了いたしたのでございますが、その際、自由党、改進党及び日本社会党両派の四党を代表いたしまして、改進党の大高委員より、保険金の最高制限額を十五万円に政めたいという修正案とともに
 一、保険制限額は最近の経済事情を勘案すれば低位に過ぎるので機会を見て更に考慮すること。
 二、保険料率並びに利益配分率は少くとも民間保険程度までに考慮すること。
 三、国家資金の性格に鑑み、資金運用の範囲を拡大し各種公益事業施設改善に融資するよう一段の努力を払うこと。という附帯決議案が提出せられたのであります。
 よつて、討論を省略のしただちに採決の結果、修正案及び修正部分を除く残余の原案はいずれも全会一致をもつて可決、本法律案は修正議決を見た次第でございます。次に、右附帯決議案につき賛否を諮りましたところ、同じく全会一致をもつて可決いたした次第であります。なお、この附帯決議に対しましては、郵政大臣よりその趣旨を尊重する旨の発言のあつたことを付言しておきます。
 以上報告を終ります。
#44
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
 明十二日は定刻より本会議を開きます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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