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1953/04/01 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第32号
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1953/04/01 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 本会議 第32号

#1
第019回国会 本会議 第32号
昭和二十九年四月一日(木曜日)
 議事日程 第二十九号
    午後一時開議
 第一 衆議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 議員藤田義光君の逮捕について許諾を求めるの件
 議事日程を変更し委員会の審査を省略して、犬養法務大臣不信任決議案を上程すべしとの動議(八百板正君外百二十一名提出)
 原子力の国際管理に関する決議案(佐藤榮作君外十名提出)
 日程第一 衆議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)
    午後二時三十一分開議
#2
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、議員藤田義光君の逮捕について許諾を求めるの件を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#4
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 議員藤田義光君の逮捕について許諾を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。議院運営委員長菅家喜六君。
    〔菅家喜六君登壇〕
#6
○菅家喜六君 ただいま議題となりました議員藤田義光君の逮捕について許諾を求めるの件について、議院運営委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件は、議員藤田義光君が、昭和二十八年七月二十四日より現在に至るまで、第十六回ないし第十九回国会の衆議院決算委員会の委員に選任せられ、同委員として右委員会所管事項の議題について自由に質疑し、意見を述べ、かつ討論が終局したときは表決に参加する職務を有しておるものであるが、第十六回国会の同委員会において、株式会社鉄道会館に対する鉄道用地の貸付に関する件が議題となり、これに関連して帝都高速度交通営団の組織、運営等が論議されるや、昭和二十八年九月二十九日、ごろ、東京都千代田区丸ノ内三丁目仲四号館七号内の野田武夫事務所において、前記営団理事丸山武治等より、前記営団に不利な質疑をしまたは不利な意見を述べないよう請託を受け、その報酬として供与せられることの情を知りながら、野田武夫を通じ現金二十万円の供与を受け、同年十月中旬ころ、前記野田武夫事務所において、丸山武治等より、前同様の趣旨のもとに供与せられることの情を知りながら、前記野田武夫を通じ現金十万円の供与を受け、もつて自己の前記職務に関し収賄したものであるとの被疑事実に基き、司法警察員警視庁警視正浅沼清太郎からの逮捕状請求により、東京簡易裁判所判事向井周吉からの要求に従つて、去る三月三十日内閣から同君の逮捕につき本院の許諾を求められたものであります。
 議院運営委員会は、同日この案件の付託を受け、ただちに秘密会を開いて、犬養法務大臣及び井本刑事局長より本件の説明を聴取し、質疑を行つたのでありますが、その内容につきましては、秘密会のことでありますので、詳細の報告を差控えたいと思うのでありますが、委員会の了承を得て、特に委員諸君よりの質疑の中心となつた問題を申し上げておきたいのであります。
 憲法第五十条の会期中における議員の不逮捕の大原則からいつて、議員の逮捕許諾の要求はこれを軽々に行うべきものではなく、さらに刑事訴訟法の精神から見ても、また従来からの例にかんがみても、身柄を拘束せず、任意出頭によつて取調べを行うべきものではないか、またその理由とされる証拠隠滅の点について見ても、関係者のほとんど全部が身柄を拘束されておる現状から見ても、その証拠隠滅のおそれありとは考えられない、むしろ身柄拘束による取調べによつて自白を促すのが目的のようにとりやすいのであるが、はたしてしかりとすれば、きわめてこれは重大な問題であると思うがどうかという各委員の質問に対して、法務当局からは、何人も自己に不利な供述を強要されないことは憲法の保障するところであつて、身柄拘束によつて自白を期待する等の考えは全然ないが、関係者の身柄拘束の期限が切れた後における証拠隠滅のおそれがあるため、捜査の必要上、任意出頭をもつてはその目的を達することはどうしても困難であるとの結論に達したために議員の不逮捕という特権についても十分考慮したが、結局やむを得ざる処置として本要求をここに提出するに至つたのであるとの答弁があつた次第でございます。
 委員会は、事案の重大なる性質にかんがみまして、その取扱いに慎重を期して参りましたが、本日の委員会におきまして、諸般の情勢を勘案いたしました上、本件についてはこれに許諾を与うべきものであると決定をいたした次第でございます。
 以上、簡単ながら御報告申し上げた次第でございます。
#7
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。議員藤田義光君の逮捕について許諾を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて議員藤田義光君の逮捕について許諾を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#9
○議長(堤康次郎君) 八百板正君外百二十一名から、議事日程を変更し委員会の審査を省略して、犬養法務大臣不信任決議案を上程すべしとの動議が提出されております。
 右の動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#10
○議長(堤康次郎君) 起立少数。よつて八百板正君外百二十一名提出の動議は否決されました。
    〔「多数だ」「数えてみろ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
#11
○議長(堤康次郎君) 議長は少数と認めます。(拍手)
     ――――◇―――――
#12
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、佐藤榮作君外十名提出、原子力の国際管理に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#13
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 原子力の国際管理に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。須磨彌吉郎君。
    〔須磨彌吉郎君登壇]
#15
○須磨彌吉郎君 ただいま上程されました原子力の国際管理に関しまする決議案につきまして、私は、衆議院各派を代表して、その趣旨を弁明いたす次第でございます。(拍手)
 現前の世界にくまなくおおいかぶさつておる一つの気分は、いかんともしがたいという困惑であり、混迷の感であります。しかも、それは、はつきりとは名状しがたいけれども、終戦直前広島、長崎でわが民族の受けたあの大きな衝動につながる方向に日本民族も世界も押し流されるのではないかとさえ感ぜしめられる不安にほかならないのであります。そして、その一つは、三月一日ビキニ島付近における水素爆弾の試験が、第五福龍丸の画期的な損害によつても、ひとり日本のみならず、世界に対する大きな驚きだからでございます。
 そもそも、世界を原子爆弾の破壊から救うために、米国では、広島に原子爆弾第一弾の投下がありまする前に、スチムソン陸軍長官は、ルーズヴェルト大統領に対して、原子爆弾が文明を抹殺するの日も到来するかもしれないと警告しておつたのであります。そればかりでなく、最近は、マレンコフ・ソ連首相も、水素爆弾は文明の破壊であると喝破しております。それどころか、最近に至るまで、米ソ両国はそれぞれ案を具しまして、その使用を国際的に管理せんとする米国側と、その使用を禁止せんとするソ連側との間に、幾たびか折衝があつたのでございまするが、何の進展も見ないうちに今度の実験となつたのであります。このことは、世界平和の叫びが実のところいかにから念仏にすぎなかつたかを示すものでございます。
 国連憲章は、その前文の冒頭におきまして、「われら連合国の人民は、われら一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、」と申しておるのでありますが、さような荘厳なる宣言をしておきながら、今や事実上人間のコントロールの限界を越えつつある原爆、水爆の脅威に人類全体がおののいておる始末でございます。これは、とりもなおさず、人類の将来にさえ関しまする深刻な不安をかもしておるのであります。連合国全体として、その中にソ連を含むことはもちろんでございまするが、これらの国々が反省をすべきときに達したのではないでありましようか。その実験を行いました米国におきましても、二十四日のニューヨーク・ヘラルド・トリビユーンのような大きな新聞は、本年三月一日という日は歴史の転換点となるかもしれないと述べておる次第でございます。これは、原子兵器の持ちまする危険性についての最大の関心はまさに世界人類をおおうゆえんであります。三月二十三日、チヤーチル英国首相も、下院におきまして、実に涙をもつて、この水素兵器の恐ろしさに言及しておるのであります。
 三月一日の実験はアメリカ国防当局の予想をはるかに超越いたしまして、ために事態の再検討をさえ余儀なくされておると伝えられているのであります。その威力は、十二マイルの地域を完全に破壊し、四十マイルの地域に直接の被害を与え、さらにその先入マイルの地点に至りましても原子灰による惨害を人身に加えておりますばかりでなく、その震動は実に二百マイルの果てまでも感ぜられたと申しまするが、さらに千マイル隔たつておりまする海水までが異常なる汚染を残されておる実情でございます。死の灰でございまするとか、原子まぐろでございまするとか、急性放射能症などの新しい日本語が生れたのは、けだしゆえなしとしないのでございます。今回の実験はその破壊力が専門家の予想をもはるかに裏切るほど強大であつたばかりでなく、その第二次的放射能が想像以上の広い範囲に及んでおると言われておることは、今後なお引続きまする実験の恐ろしさを物語るものであります。
 思うに、広い世界の中で、よりもよつたり、わが日本が、原子力破壊の洗礼を受けた、たつた一つの国民であります。さきに戦争の末期におきまして、広島、長崎に初めて原子爆弾が見舞われて、二十数万の同胞が一瞬にしてその犠牲となつたことは、わが民族史の痛ましくも忘れがたい一こまであります。さらに今回また原子兵器の実験による最初の犠牲となりまして、世界の重大関心の的となつたのでありますが、今までのところ、米国政府から公式には遺憾の意思の表示がないのであります。(拍手)
 広島、長崎の爆撃をも含みまして、米国はすでに四十六回の原子力爆発実験を施行したのでございます。さらに近くは四月二十三日とも報ぜられておりまするが、中部太平洋上のエニウエトツク及びビキニ実験場におきまして、実用水素爆弾第一号というものの最初の実験をするとの情報があるのでございます。これは飛行機によつて投下されるもので、まさに軍事的水爆時代の新機軸となるだろうと見られておるのであります。すでに、この新しい実験は、たつた一発をもちまして、実に三百平方マイルの地域を完全に破壊し得るというのであります。これに至りまする前に、第二回の実験がすでに三月二十六日に行われておる旨発表されたのであります。そして、ストラウス原子力委員長が三月三十一日帰米しての談話では、一発をもつて一つの都市を完全に吹き飛ばし得るに至つたと言明いたしておるのであります。
 わが日本は、人類多き中に、初めて原子兵器の犠牲となり、しかも二度ならず三度までも惨害を受けたのでございますから、ここに世界に対し、人類を代表して、かくのごとき惨禍の一日もすみやかに絶滅せられるよう、実効ある方法を立て、人類を破壊から救うことを提唱する上におきまして、最も崇高なる権利と、そしてまた最大の発言力とを有するものと信ずるのでございます。(拍手)
 昨年十二月八日、米国大統領アイゼンハウアー元帥は、ニユーヨークの国際連合総会で、大きさと種類において原子兵器の発達は実に目ざましく、その威力は広島、長時に投下された当時に比べると実に二十五倍に達しておるから、このままで進むならば、人類は原子兵器の前に自殺を遂げるのほかはないと述べたのであります。ここに申されまする二十五倍でございまするが、西洋流の考え方では、一つの時代、すなわちゼネレーシヨンと申しますか、それは四分の一世紀でございまして、二十五と連想されるのであります。これは考えようによりましては無限大をすら示すものでありましようが、この演説後わずかに三箇月足らずの三月一日の実験では、はたせるかな広島、長崎時代の二百五十倍から六百倍に達しておるその破壊力が発見ざれるに至つた次第であります。
 大統領は、この演説におきまして、それだから、原子力及び原子材料を国際機関に集めて、すなわちプールして、これを平和的分野においてのみ使用せんことを提案しておるのであります。このことは実に重大なる提議であります。原子力の平和的利用が今や世界中に研究せられておることは御承知の通りでありまして、そのために必要欠くへからざる原子炉はすでに四十数箇国が築造中であります。過般本院通過の予算案中におきましても、二億三千万円の少額ではございまするが、わが日本もこの世界の進運に伍せんため原子炉研究の経費を見積つておる次第でありますから、われわれ日本民族が率先してこの大統領の提案に心から賛意を表することは、もとより当然でございます。本日この決議案が本院に提出せられまする一つの理由も、また実にここに存するものと思うものでございます。(拍手)
 大統領は、また、その演説の中で、現在すでにアメリカでは、第二次大戦全期間を通じて、あらゆる戦場で、すべての航空機、すべての大砲が投下した、発射したすべての爆弾、すべての砲弾の総計を爆発威力に換算してみても、その何倍かにも達するところの原子兵器を現に貯蔵しておることを述べておるのでありますから、このとき、この際でございます。この動力をあげて平和産業に振り向けることができるならば、われわれの世界が電気と蒸気の時代から脱皮しまして、原子生産力による第二産業革命ともいうべき新時代を開拓いたし、その機会にほんとうの意味の平和の樹立ができるのであつて、これこそ米国大統領提案の目標でもあり、また人類の願望でもあると信ずるものであります。(拍手)それでこそ、まさに人類の恐怖を歓喜に置きかえるというものでございます。米国は、一九四六年に、いわゆるバルーク案として知られております原子力国際管理案を提唱いたしておるのでありましたが、今回は米国の持つ原爆優勢保持を思い切つて人類の福祉と産業の発展とに振り向けんことを、国境を越えて、われわれ日本民族は切望してやまないものであります。(拍手)
 ここでさらに申し述べたいことは、米国ばかりでは、ございません。他方ソ連邦におきましても、すでに五回の原子力実験をいたしていることは周知の事実であります。また、そのうちの一回は水素爆弾の実験であることも事実であります。それのみならず、一月十九日、ソ連政府の機関紙でございますイズヴエスチヤという新聞は、退役将軍という匿名をもちまして、原子兵器の報復力は米国ばかりではない、ソ連邦にもあるの、だという説を載せておるのでございますが、このことは、一月十二日、ダレス国務長官がニユーヨークにおきまして、今後米国は共産主義に対しては封じ込めの政策はもう捨てる、また巻返しの政策も、それから一歩を進めて、また百歩を進めて、時を選ばず、所を問わず、いやしくも共産主義の侵略に対しては原子力をもつて即時報復せんとする意味を表明したことに対応するものでありましよう。そしてまた、英国といえども、すでに三回の原子力実験をいたしておることを考えますと、世界は今やまさにまつたく原子力の兵器廠と化しつつあると申しても過言ではないのでございます。ことに米国、英国、ソビエト連邦の三国におきましては、原子爆弾のみならず、幾多の原子兵器をも保有しておることは、おおうべくもない事実であります。ことに米国におきましては、都市爆撃用水爆から野戦における二百八十ミリ原子砲弾に至りまするまで、各種の兵器がそろつておるのであります。
 今や、原子兵器は、明日の悪夢にはとどまりません。今日現在の恐ろしい事実であるのであります。わが日本憲法は平和憲法でありまして、その前文において、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と宣明いたしておるのであります。この点から申しましても、かつまた原爆の三回にわたるたつとい犠牲からも、われわれは、世界に向つて、世界をなまなましい原子地獄から救うことをこの機会に強く主張する権利あると同時に、またその義務をも有するものと感ずるのであります。(拍手)
 ことに、元来は昨年十二月十四日ラドフォード統合参謀本部議長によりまして、最近におきましてはダレス国務長官によつて提唱されておりまする、米国の軍略のニュー・ルツクと称せられるものがございますが、それによりますると、世界を場合によつては原子力による破滅に押し詰めるものであろうかとも思われます。このことは、世界有数の軍事評論家で知られておりまするハンソン・ボールドウイン氏が三月七日のニユヨーク・タイムズの新聞紙上におきまして指摘しておるのは、この通りでございます。かくのごとき戦略は政治の否定であり、無限の荒廃であり、そこには勝利もなく、ただ不安定があるにすぎないと喝破しておるのはまことに至言でありまして、われわれ日本及び日本民族が、さらに一歩を進めまして、兵戦のための原子力使用人類が人類の手で自殺を遂げるにひとしいものとして、断固その禁止を叫ばなければならぬのはここにあるのであります。(拍手)これすなわち、本院が、原子力は平和的の利用にとどめ、またただちに軍事原子力の実験から生じまする被害を防ぐため有効適切なる措置について、日本国民全体のたつとい犠牲に基く崇高なる意思をもつて国際連合に要請せんとするゆえんであります。(拍手)ネール・インド首相は、二十八日、実験は禁止したらよかろうと提唱しておるのでございまするが、われわれは、ここに申しまするのは、その被害の防止を期するものであります。そもそも原子力の国際管理と原子兵器の禁止とは、もちろん、なまやさしいものではございません。当然幾多の荊棘が将来に横たわるのでありまして、今後国際軍縮会議において幾多の困難を突破せなければなりません。けれども、ノーベルが火薬を発明したときに、これで戦争は根絶するだろうと予言したことが、今やまつたく裏切られまして、遂に水爆の時代となつたのでございます。自然、水爆の恐ろしさはかえつて戦争を思いとまらせるのであろうと申しました先般の英国のチマーチル首相の観測には、にわかに賛同しがたいものがあるのでございます。要は、国際間の不信を断たない限り、平和を信じ切れないのであります。原子爆弾も水素爆弾も、その他の原子兵器がかえつて国際間の疑惑を深めて参りまする現状に顧みまして、ここにこの決議案をもつて国と国との不信を去らんとする以外に何ものもないのでございます。
 以上、本決議案提出の趣旨を申し述べた次第でございまするが、その決議案をここに朗読させていただきます。
   原子力の国際管理に関する決議案
  本院は、原子力の国際管理とその平和的利用並びに原子兵器の使用禁止の実現を促進し、さらに原子兵器の実験による被害防止を確保するため国際連合がただちに有効適切な措置をとることを要請する。
  右決議する。
    〔拍手]
 衆議院各派を代表いたしまして本決議案を提出いたしました趣旨は上に述べた通りでございまするから、何とぞ諸君の御賛同をお願いいたす次第でございます。(拍手)
#16
○議長(堤康次郎君) これより討論に入ります。佐藤虎次郎君。
    〔佐藤虎次郎君登壇]
#17
○佐藤虎次郎君 私は、自由党を代表して、ただいま上程されておる原子力の国際管理に関する決議案に賛成せんとするものであります。
 世界の文化人や平和主義団体の仲間から、かかる決議案と同様な趣旨が論議され提案されたことは、すでにしばしば繰返されたことで、あえて異とするには足りませんが、一国の国民の総意を代表する国会の名においてかかる決議がなされんとしておることは、おそらくこれが世界最初の企てであろうと強く信ずるものであります。(拍手)われわれは、この決議が、真に平和を愛好する日本民族の魂の声として、全世界の識者の良心をゆさぶるに違いないと強く信ずるものであります。何となれば、八年前の戦争中に、広島と長崎で世界最初の原子爆弾に見舞われ、今また、平和の時代に、世界最初の水素爆弾の洗礼を受けた日本の国会にこそ、この決議を提唱する権利と義務があることを、全人類が必ず認めてくれるであろうと信ずるからであります。(拍手)現に、アメリカの軍事評論家ミリス氏は、原爆の洗礼を受けた唯一の国民である日本人の言うことは傾聴に値するということを認めております。われわれは、いつまでも敗北意識のとりこになつておつてはいけない、世界平和と人類幸福のために、大胆率直にアメリカとソ連に向つて原子兵器を捨てよと勧告しなければならないのであります。(拍手)
 原子力の国際管理とその平和的利用の問題は、ただいま須磨君より説明がありましたし、すでに内外の識者によつて論じ尽された点でもあるし、その必要性は議員各位の熟知せられるところでありますから、時間を節約するため、賛成の趣旨弁明を進めることをお許し願いたいと思います。
 この賛成について、私は三つにわけて賛成したいと思います。第一は、全世界の人類を恐怖から解放するために、原子兵器の使用をすみやかに禁止せよという点であります心今回の日本人がこうむつた災害は、決して単に日本人だけの被害ではなく、全人類の一員としての被害である。今や原子力の問題は、全人類の運命に直接関係する新しい課題として扱われなければなりません。火薬の発明によりまして封建制度は破壊ざれました。原子爆弾が第二次世界大戦の終止符となり、三月一日ビキニ環礁で行われた水爆の実験は、まさしく世界歴史転換の機になるであろうと信ずるものであります。この重大性を最も深刻に正しく理解しておるものは、前後三回にわたり原子兵器の災害を身をもつて体験したわれわれ日本人以上のものはなかろうと信ずるのであります。
 今度の水爆は、広島、長崎に落ちた原爆の六百倍の威力があるということを、ただいまも須磨君が述べられております。TNT爆薬一千万トン以上に匹敵するという、ほとんど信じられないほどの爆発力と放射能を持ち、現場から三百三十マイル離れたところに死の灰が降つて来たというほどの恐ろしいもので、これが三つも落ちますれば、日本は全滅するだろうと思います。もはや単に日本だけの恐怖ではない。チヤーチルも声をふるわせ涙を流して演説をし、ソ連のマレンコフも、最近の兵器を使う新たな戦争が起れば、それは世界文明の破滅だと神経をとがらしておる。水爆の恐怖は、明日の悪夢ではありません。目前の現実として受取らねばなりません。こうした段階に立ち至りました。今や水爆は全世界をおおう恐怖の黒雲であり、悪鬼羅刹でない限り、こんな底なしの不安におびえる人々の心にまずわき起つて来るものは、原子兵器の使用禁止ないしはその非合法化の強い要求でなければなりません。われわれは、この決議案はそういう恐怖から人類を解放することを念願して提案されたものだと信じます。第二に、われわれは、世界の善意を増すことによつて、米ソ間の冷たい戦争を解消し、日米の国交が真に親善ならんことを祈りつつ、この決議案を提唱したものである。毎日新聞特派員那須氏のワシントンからの報道によりまするならば、アメリカの当局者は、この事件を、日本の極左の人々が反米の感情をあおる唯一の材料ではないかと心配していたと報じて参りました。まことに、ごもつともな御心配であります。実際は、今度の事件に対し、血の気の多い国民のうちには、アメリカさん一体どうしてくれるのだという怒りを感じた者も少くないであろうと思います。(拍手)三月十四日、第五福龍丸がそれとも知らず持ち帰つた一握りの灰が恐るべき放射能を持つた死の灰であることがわかつたとき、対米親善を願う人々は、とんでもないやつかいな問題が起つた、(笑声、拍手)こう言うておるし、反米論者は絶好の攻撃材料を得たと喜んでいるのも事実であります。現に、日米交渉に資するための現地調査と言明して、十九日焼津市におもむいた外務省の古内参事官は、各方面からの事情を聴取し、二十日にその結論を外務省に報告した中に、極左陣営が水爆問題を利用する動きが見える、すなわち組合や船員の家庭を訪問しているほか、新日本医師会という毛沢東の金のバツジを胸につけた団体が、患者を収容しておる焼津の病院を訪れ、資金カンパをしてやると、次第に動きが表面化して来ていると述べております。私も静岡県人であり、現地調査をした結果、この事実を裏書きすることができるのであります。かかる極左陣営の策動を押える道は、アメリカ側の補償を急速かつ完全に解決することだと信じます。
 第三に、この決議案は補償問題のことは表面にうたつてありません。文中の原子兵器の実験による被害防止を確保するという一項の中には、単にこれからの被害防止だけでなしに、現在の被害に対する補償の問題を含むことは理の当然であります。(拍手)すなわち、第五福龍丸の被害はもちろん、全国的に巻き起つたまぐろ騒動による損害、危険区域の拡大による損失等の補償問題が当然含まれておるものと私は解釈しておるものであります。しこうして、この補償問題に対するアメリカの態度は、今までのところ一応好感を持つて迎えられます。すなわち、米国の国務省のスポークスマン、スイダム氏は、事件直後、米国は調査の結果過失が米国にあることが判明すれば損害補償の用意があると声明しております。また、アメリカの議会の原子力委員長コール氏は、十七日の記者団の質問に答えていわく、調査の結果日本側に過失がなく、漁夫等に何らの悪意がないことがわかれば、当然米国政府は損害を支払うべきで、放射能を帯びた魚を食べて病気になつた人々にも、彼らに悪意がなかつたとするならば、米国政府は損害を支払うべきだ、こう言つております。その他、病気治療にアメリカの施設を提供すると申し出ておる。さらに、二十五日のアリソン大使が出した第五福龍丸事件に関する日米共同調査の結論が出るまでの暫定処置として、米国政府は日本政府及び駐日大使館双方が必要と認める補償額を支払うの用意がある、この補償額は治療費及び賃金、家族に対する生活救済費を含むという声明書から見て、私は米国の誠意を認むるにやぶさかではありません。
 問題は、早期補償の程度及び範囲であります。古内参事官が外務省に報告したと伝えられる補償の範囲は直接第五福龍丸関係の被害のみに限られておるようでありますが、被害者側がかかる最小限の範囲と最小限の金額を対象として日米交渉に入ろうとするのは、あまりにも消極過ぎはしないかということであります。本事件の日米交渉は、もつと広い範囲と高い程度の基盤に立つて根本的な解決を期するにあらざれば、真の日米親善を確立することはできないであろうと思われます。すなわち、今回の事件はマーシヤル群島付近を根拠地とするわが遠洋漁業全体に重大な影響を及ぼすことはもちろん、もしマイラー記者の言うごとく、ビキニ環礁内の水は今後数年間放射能でよごされていることは間違いないであろう、そしてその付近の魚類も放射能を多量に持つておるので、人間がそれを食べれぱ非常に危険であるということが事実なら、わが遠洋漁業は大打撃をこうむるわけであります。水爆の実験が太平洋の魚を初めとする食糧資源をいかに破壊するかは、今日の科学ではいまだはかり知れていないのであります。ゆえに、私は、人類の幸福のために、原子兵器使用禁止の前提として、まず水爆の実験を中止せよと言いたいのでありまするが、中止でき得ないならば、補償の程度をただしておく必要がある。それにもかかわらず、今回アメリカは一方的に水爆実験の区域を今までよりも六倍弱、すなわち東京を中心として北は室蘭、西は下関に及ぶ広さに拡大した旨を通知して参つたという話であります。もちろん、太平洋は米国の湖ではありませんから、これは公海自由の原則にもとることは明らかでありますが、かかる国際法上の議論はしばらく別として、このためにわが国が太平洋漁場の一割を失うのみならず、ニューカレドニアから濠州東方に広がる主要まぐろ漁場へ出漁する漁船は、片道一日半か二日遠まわりをしなければならぬ、これに費すところの莫大な経費は一体どうしてくれるかということが重大問題でなければならぬと思うのであります。
 以上の三つの問題は、陸で失つたものを海でとりもどすよりほかに蛋白資源の補給路を持たない水産日本の根本的な問題でありますが、当面の課題としてさらに二、三補足しておきたい補償案件は、すでに第五福龍丸の水揚げ損失を補償する以上、この事件の影響を受けて著しい打撃をこうむつた各地の魚市場の損失は当然考慮せられなければならないのであります。私は、良識あるアメリカの当局者は、日米親善の見地からでも、この補償の要求を快く理解されるであろうと信ずるのであります。(拍手)
 これは補償とは別問題でありますが、この事件がアメリカに伝わりますや、アメリカの業者から、まぐろカン詰、冷凍まぐろの輸出待つたと打電して参りました。これに対して、農林、外務、厚生三者が連絡協議をして、日本政府の無害証明をつけたものなら輸出してもいい。日本国内でまぐろを食べなくなつた人のあると同じように、もしアメリカにおいて、まぐろカン詰を食べなくなつたとするならば――今日日本のアメリカ向けの冷凍まぐろが三万トン、同まぐろカン詰が百七十万箱、金額にいたしまして一千八百万ドルに及ぶわが輸出水屋物の花形が、しばししぼんでしまうおそれなしと、だれが保証するでありましよう。
 最後に、私は、この決議の実現にあたり、政府に対し苦言を呈しておきたいと思います。それは、岡崎外交は、いつもアメリカに対して日本の国力の貧弱なことにひけ目を感じて、遠慮がちのように見えます。(拍手)なるほど、敗戦日本の国力は三等国、四等国以下でありましようが、しかし、真理は常に兵力や経済力とともにあるとは限りません。(拍手)すつ裸のガンジーが遂にインドの独立をかちとつたのは真理の勝利であります。他のことはともかく、原爆の非を鳴らす資格においては、一度ならず二度、三度までも原爆の洗礼を受けた日本民族こそ世界中の第一人者であります。私は、この世代において原子兵器を捨てよと言うことが真理に奉仕する最大の道であると信じまするので、あえて政府当局が自信と誇りを持つてこの決議を堂々と国連に持ち込むよう強く要請し、私の賛成意見の陳述を終りといたします。(拍手)
#18
○議長(堤康次郎君) 志村茂治君。
    〔志村茂治君登壇〕
#19
○志村茂治君 私は、ただいま提案になりました原子力の国際管理に関する決議案に対し、口日本社会党を代表して賛成の意を表明いたそうとするものであります。(拍手)
 広島、長崎に原子爆弾が投下されましてから今日に至るまで、原子力は人類を死の谷底に追いやるだけであつて、人類の幸福のためにはほとんど役に立つておらなかつたのが現状であります。こうした状態を招いたものは、世界でこの歴史的な大事業を最初になし遂げたアメリカのその後の態度によることがきわめて大きいのであります。すなわち、アメリカは、正義を守るものはアメリカであると信じ、この恐るべき原子力の秘密はできるだけ長くアメリカだけで独占しなければならないと考えて、一九四二年十二月二日、シカゴ大学の西スタンドパイルが、史上初めての核分裂の持続的連鎖反能を開始いたしましたときから今日に至るまで、厳重な軍管理下に、もつぱら兵器に利用し続けて参つたことであります。
 ところが、この秘密が間もなく各国の科学者たちによつて突きとめられて、アメリカの独占が失われるということは、この研究に参加した科学者たちの証言通りであつたのであります。それにもかかわらず、その後においても、原子兵器こそアメリカ防衛のための最も重要な役割を果す兵器であるという実力外交主義が長く続いて一本の太い線となつてアメリカの国防政策を貫いておつたことが、今日の矛盾を来す原因となつたのであります。イギリス、カナダ、フランス等の、原子力を開発している国々がいわゆる自由主義国家であつたうちはよろしかつたのでありますが、一九四九年九月にソ連の原爆実験が行われ、続いて一九五三年の九月にはソ連の水爆実験が行われるに至りまして、事態はきわめて重大となり、原爆はもはやアメリカを守るための最良の兵器ではなくなつたのであります。
 一国がいかに強力な爆弾を製造しようとも、またその貯蔵量をいかに増加しましようとも、相手方もまた攻撃を加えることができる程度の原爆と航空機を持つております限り、自国の防衛には何の役にも立たないのであります。しかも、国土を原爆から守るためには天文学的な経費を必要とし、アメリカにとつても、その実現はまつたく不可能なことであります。第三次世界大戦も十分に戦い抜く自信を持つていたアメリカは、ここで最後の切札を失つたのであります。過去十一箇年間、兵器競争の先端をひた走りに走り続けて参りましたアメリカが、この巨大な虚無の壁に突き当つて、はたと当惑したのも当然と言わなければなりません。ここに至つて、今日実力外交はあまりに芸がなさ過ぎるものとなり果ててしまつたのであります。(拍手)こうした事情は、またソ連についても共通しておるものと言わなければなりません。
 米ソがこのような対立を続けておりますときに、英国はカンパーランドに大規模な原子発電所を着工し、西欧十一箇国も原子力の産業的利用について共同研究を始め、インドもまた、アジアを中心として、同じく産業的利用の研究に着手し、世界はようやくにして産業原子力時代に入ろうとしているのであります。しかしながら、これらの研究には、技術の秘密の公開と情報の交換とを必要とするのであります。そのためには、原子力を軍管理下から解放しなければなりません。(拍手)原爆の原子雲の中からは、決して産業原子力時代は生れて参らないのであります。
 昨年十二月、アイゼンハウアー大統領は、プール案によつてウラニウム元素の国際プールを提唱したのでありますが、バルーク案に示されたことく、アメリカが原子力について現在持つておる国際的に有利な立場を守り続ける意図を持つております限り、一切の原子力をまず放棄して、各国が平等の立場で討議すべしというあのソ連の主張にあつて、再び不成立となる公算がきわめて多いのであります。われわれは、日本に原子爆弾が投下された直後の八月六日、米英が、われわれは祈らなければならない、このおそろしい力を世界諸国民の平和のために資すべきことを、そして全世界を滅ぼす破壊のかわりに、世界繁栄のための永久の基礎となるべきことをと、日本向けに放送しておりますが、あの良心に一日も早く世界が立ち返ることを強く要請するものであります。(拍手)世界の良心によつて人類が死の谷底から出る道を至急に開かなければならないのであります。
 ロケツト装置の原子爆弾が全大陸を飛び越えて、不幸な都市目がけて発射される将来の戦争を予想して戦慄しない者があるでありましようか。この戦慄から何が生れるであろうか。一言にして言えば、軍縮と平和あるのみであるといい、また、もし平和を確保しようとするならば、原子爆弾は国連憲章に結びつけらるべきである。この新兵器は、憲章の陰に勢ぞろいする文明の軍隊に対する大きな力となるであろう。原子爆弾の使用が安全保障理事会によつて厳重に管理ざれないならば、人類は破滅の危機にさらされる。原子爆弾を制裁兵器として安全保障理事会の手に確保すれば原子戦争は防止されるといつた、あの第二次大戦後に訪れた平和論に立ち返つて、米ソ両国が大乗的な立場に立つて、世界の良心に基き、人類が死の谷底から抜け出る道を至急に開かれることを強く要求するものであります。(拍手)
 この要求は、日本国民の場合特に強いものがあります。すなわち、米軍に軍事基地を提供し、アメリカの前進基地となつておる日本は、米ソ戦う場合、日本がどう考えようと、よしんば参戦しなかつたといたしましても、この国土が原爆の攻撃を受けることはないと、だれが言い切ることができるのでありましようか。(拍手)しかも、日本には原爆から都市を守る一片の措置もとられておらないのであります。(拍手)サンフランシスコ条約が批准されましたとき、ニユーヨーク・タイムズは、その社説で、日本人は将来ソ連によつて行われるかもしれない痛ましい報復的爆撃に直面しておる、われわれは日本人が今後条約に伴う危険を引受けるべきだということを十分知るようになると信じておると述べております。アメリカはさように考えておるのであります。日本の危うさは言語に絶します。だが、さらに事情通の語るところによれば、沖縄の米軍基地は、ソ連軍が日本本土を占領した場合、日本本土を空襲する目的をもつて設けられておるというのであります。そうなれば、日本は米ソ両国方から水爆を投げつけられる立場に立つておるのであります。(拍手)
 再軍備論者は、一度くらい負けたからといつて戦争反対とか再軍備反対とか言うのはいくじがなさ過ぎるとか、また、戦えば必ずアメリカが勝つとも言つております。しかしながら、原子力戦争にあつては、勝つ前に民族が滅亡してしまうことを忘れてはならないのであります。(拍手)われわれ日本国民は、世界最初の被爆国民であり、今回は灰とはいえ、水爆の見舞を受けた世界ただ一つの国民であります。また、平和憲法によつて非武装中立を世界に宣言し、人類平和という崇高な理念に従つて、みずから裸となつて挺身した国民でもあります。日本国民こそ、堂々と原子力とその実験について国際管理を要求する資格のある国民であります。世界は、この原爆にのろわれたる国民の悲願をむげにしりぞけることはできないはずであります。(拍手)この意味におきまして、私は、モスクワに、ベルリンに、そうしてワシントンに米ソ原子力会談が持たれております今日、日本国民がその国会の名においてこの提案が決議されることは最も機宜に適した処置と考え、心から賛成するものであります。
 以上をもちまして私の賛成討論といたします。(拍手)
#20
○議長(堤康次郎君) 木下郁君。
    〔木下郁君登壇〕
#21
○木下郁君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつております原子力の国際管理に関する決議案に対し賛成し、その理由を申し述べんとするものであります。
 原子力が、先ほど須磨君からもお話のありましたように、今や全世界の大問題となつております。また、この原子に関する科学が、現代の科学の最高峰として、人間を造物主によほど近づけておるのであります。さような意味で、原子力が生産のエネルギーとして平和的に利用されまするならば、人類の文化、福祉のためにどれだけ貢献するかは、はかり知れないものがあるのであります。しかしながら、もし一たびこの原子力が兵器として、破壊と殺戮の道具として用いられますときは、人類にとりまして最大の不幸をもたらすものであります。(拍手)そのことは、私どもが、広島、長崎のあの悲惨な姿を、十年を経過した今日振りかえつて見ても、身の毛のよだつ思いがすることではつきりいたします。
 さような意味で、わが党は、一昨年の第十五国会に、本決議案と同趣旨の決議案を提案いたしました。爾来その主張を続けて参つたものでありまするが、去る三月一日、あのビキニ島近海における水爆の実験によりまして、日本の漁船第五福龍丸が被害をこうむり、しかも、その被害が直接放射能のためでなくして、灰をかぶつたというためのものであるということや、また罪もとがもない何百という原住民が被爆して傷を負うておるということを聞きまして、日本国民八千万人は、電気にでも打たれたように、ほんとうに底知れぬ悲痛な不安に襲われたのであります。そのために、期せずして、本日ここに各党一致をもちまして本決議案の上程を見るに至りました。この決議案こそは、原爆の体験者としての日本国民の、二度と再び原爆を使つてはならないという悲願を世界の国民に訴える血の叫びなのであります。(拍手)
 原爆力使用が国際法違反であるかどうかということにつきましては、学者の間に論議がかわされております。このことはこの決議案の主題目でありませんので、私は多くを触れませんが、現に国際連合でも、七年前から原子委員会をつくりまして、原子力の管理等につきまして研究討議をいたして参つております。また米ソ両陣営の間におきましても、最近その重大な課題となつておりますることは、諸君御承知の通りであります。あの毒ガスとか、あるいは黴菌とかいうようなものは、残忍なものであり、非戦闘員を殺傷するという理由のもとに、その使用を国際法上禁止されております。それならば、毒ガスなどに比べて何千倍の破壊力を持ち、また老幼男女をひつくるめて何十万人という人間を集団的に殺戮するこの原子爆弾、しかも放射能による傷害、いわゆる原爆症というものが、現代の科学の程度では、その治療がほとんど不可能であるという事柄等を考えまするならば、この原爆が禁止さるべきものであることは当然過ぎるほど当然なことであります。(拍手)この意味におきまして、われわれは、米ソ両陣営がイデオロギーを超越して手を握り合い、ソ連の鉄のカーテンも撤廃して、明朗な措置を原爆について講ずることを心の底から願うものであります。(拍手)
 私は、この際、武器と戦争の関係について、少しく歴史を振りかえつてみたいと思うのであります。武器が刀ややりでありました時代には、封建国家として小さな国で、戦争も地域が狭く、従つて戦争による損害も割合に少かつたのでありまするが、火薬が発明されて飛び道具時代となり、しかもそれが戦車や飛行機や戦艦や潜水艦というような武器を用いて、国も近代的な大きな国家となり、しかもその戦争が国家群と国家群との間に行われることになりまして、戦争は世界的になり、被害も世界的になりました。そのために、第一次世界大戦の死傷者の数が、大ざつぱに見て一二千七百四十九万、第二次世界大戦の犠牲者が五千六百四十六万というような厖大な数字になつたのであります。ところが、今やそれがまた一歩進みまして、原爆の時代になろうとしておるのであります。水爆が一発東京のまん中に落されれば、関東一円ぴしやつとやられるというようなことになつておる。その原爆戦ともなりますならば、死傷者の数は億単位で数えられるに至るでありましよう。さればこそ、アインシユタイン博士その他の原子力の権威の人たちが、人類の文化の破滅を憂えられまして、世界に向つて警告を発せられておることも、まことに道理あることと思う次第であります。(拍手)
 しからば戦争の見通しはどうかと申しますると、国と国との間の紛議は、最後的には戦争によつて解決されて参りました。政治学者は、そのために、国際社会というものを弱肉強食の集団であると規定いたしました。極端なことを言う人は、おなかのすいたおおかみの集まりであるとすら申したのであります。五千年の歴史を振りかえつてみますると、残念ながら、この事実を否定するよりも、肯定しなければならぬと思います。
 しかし、おおかみの群がいつまでもおおかみの群であつてよいはずがありません。人類の知性と良識はこれを許しません。おおかみの集まりから羊の集まりとなり、やがては人間の集まりとなつて、世界は一つにという企てがいろいろに試みられて参りましたことも、諸君御承知の通りであります。その中で一番大きな国際的機構は、かつての国際連盟であり、今日の国際連合であるのであります。その国際連合が着々として成果を収めておりますることは、これは顕著な事実であります。しかしながら、それだからといつて、われわれ近い将来に戦争がすぐなくなつてしまうなどというようなことを期待することはできません。さようなことを期待するのは、現実を遊離した、甘過ぎる考えであります。(拍手)現に、目と鼻の朝鮮では、昨年の夏まで三年間戦争が続けられて参りました。東南アジアにおいては、現に戦争が続けられつつあります。米ソの両陣営の間におきましても、その対立が世界の不安の種となつておりますることも、諸君御承知の通りであります。
 わが党は、人類普遍の倫理としての人道主義、民主主義を縦糸として、知性と良識を横糸として、搾取なき、不合理なき一つの世界を建設することを目標といたしまする民主社会主義の政治理念の上に立つ党といたしまして、民主主義の国際連合に対し、この非人道なる原子力の管理を求めるゆえんであります。
 日本国民は、敗戦を契機といたしまして、従前のあやまちを深く反省いたしまして、武器を捨て、交戦権を捨てて、いわゆる平和憲法を制定しまして、国際紛議を武力により解決することは一切しないということを世界に向つて宣言いたしたのであります。(拍手)また、原爆は体験した唯一の国民でありますから、原子力に関して世界に向つて本決議案のごとき訴えをすることは、われわれ日本人に課せられましたる崇高な義務であるとすら私は考えるのであります。(拍手)須磨君のお話の中に、ヘラルド紙が去る三月一日は歴史の一つの転換期になるであろうと言われたということがありました。私は、きようのこの決議が、十年後か百年後には必ずや尊敬をもつて振りかえられる日の来ることを信じて疑いません。(拍手)繰返して申します。人道の名において、人類の歴史の名誉のために、二度と再び、あの残虐きわまりなき、非人道ぎわまりなき原子爆弾がこの地球の上に使われるというようなことのないことを、心の底から祈つてやまないものであります。(拍手)
 最後に、私は、この決議案の執行について一言申し添えたいと思うのであります。われわれは、敗戦国民といたしまして、あの休戦条約を忠実に履行して、占領政策の批判というようなことほ一切これを差控えて参つたのでありまするが、私は、原爆の非人道については、吉田総理大臣が、サンフランシスコの講和会議において、日本の首席全権として、必ずや世界の公正な諸国民に訴えるであろうということを期待いたしておつたのであります。三年前の九月、あの日本の立場を述べられた吉田全権の演説を耳を澄まして聞きましたが、一言半句も広島、長崎の原爆のことに触れられませんでした。実に遺憾に思いました。その気魄魂の乏しさ、その卑屈さに対しては、少からず不満を感じたのであります。(拍手)敗戦国の全権の立場の苦衷ということも察しております。また、敗戦国が完全な独立を回復するためには、国力を一歩心々回復して行くほかに道のないということも歴史の教えるところであります。しかし、正しいことを正しいとして、あくまでも勇敢に主張することこそ、日本国民の志気を高揚し、かつ世界の具眼の士の信用を獲得するゆえんであります。(拍手)私は、この意味におきまして、きようは見えておりませんが、吉田総理大臣及び岡崎外務大臣に対しまして、この決議案の執行について――先ほど佐藤君からも、自由党の代表としては意外に思つたくらい強硬なお話もあるし、まぐろの損害のことまでお話がありました。どうか、岡崎外務大臣、この決議案の趣旨を貫徹するためには、勇敢に、そうして自信を持つて、世界にわれわれの気持、われわれの決議案の趣旨を徹底するようにとりはからわれんことを要望いたしまして、私の討論を終ります。(拍手)
#22
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
#23
○議長(堤康次郎君) 起立総員。よつて本案は全会一致可決いたしました。(拍手)
 この際外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣岡崎勝男君。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#24
○国務大臣(岡崎勝男君) ただいま採択されました御決議は、わが国として真に当然かつ痛切なるものがあると考えます。政府としましては、この決議のすみやかなる実現のため、あらゆる措置を講ずる決意であります。
 御承知の通り、本問題は、国連を中心として、すでに数年間にわたり関係国の間に討議されて来た案件であり、もとより簡単に実現さるべきものとは考えられません。政府としましては、長期にわたるとも、忍耐と努力を尽して、あらゆる機会をとらえ、かつあらゆる国と連絡して、これが実現をはかりたき所存であります。(拍手)国会におかれても、政府の今後の措置に対して十分なる支持と鞭撻とを与えられんことを切望いたします。(拍手)
    [椎熊三郎君登壇〕
#25
○椎熊三郎君 ただいま議題となりました衆議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案につきまして、提案の理由を簡単に御説明申し上げます。
 改正の要点は参事及び主事の定員でありまして、参事については、主事の定員から五人を振りかえ増員することによりまして百七十五人と規定し、主事については、参事に振りかえのため五人及び行政整理による一人、計六人の減員に、速記者として五人を新規増員し、都合一人減の四百四十四人と規定しようとするものであります。
 なお、附則において、主事の定員は速記者分の五人の増員を七月一日からとし、六月三十日までは四百三十九人と規定するとともに、昭和二十九年度における行政整理の一環として設けられております特別待命制度による待命者は、整理されるまでの間は定員にかかわらず職員として置く必要がありますので、定員を越える員数は、整理されるまで定員のほかに置くことができる旨を規定しようとするものであります。
 本案は議院運営委員会において検討の上起案したものでありますから、何とぞ皆様方の御賛成あらんことを希望いたします。以上。
#26
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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