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1953/02/17 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第7号
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1953/02/17 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第7号

#1
第019回国会 法務委員会 第7号
昭和二十九年二月十七日(水曜日)
    午後二時八分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君
   理事 古屋 貞雄君
      林  信雄君    本多 市郎君
      牧野 寛索君    中村三之丞君
      猪俣 浩三君    神近 市子君
      木下  郁君    木原津與志君
      黒田 寿男君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 塚田十一郎君
 出席政府委員
        法務政務次官  三浦寅之助君
        法務事務官
        (公安調査庁長
        官)      藤井五一郎君
        法務事務官
        (公安調査庁次
        長)      高橋 一郎君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (警視総監)  田中 榮一君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
二月十七日
 田嶋好文君が理事に補欠当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 理事の互選
 小委員の補欠選任
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 本日の日程に入る前に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、理事でありました田嶋好文君は去る一月二十五日に本委員を辞任せられ、去る二月十五日再び議長において本委員に指名せられましたが、この異動に伴い理事が一名欠員となつておる次第であります。理事の補欠選任につきましては、委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小林委員長 御異議がないものと認め、委員長において御指名いたします。理事の補欠には従前通り田嶋好文君を御指名いたします。
    ―――――――――――――
#4
○小林委員長 法務行政に関する件について調査を進めます。
 この際お諮りいたします。本件について警視総監田中榮一君に参考人として発言を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○小林委員長 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 それでは発言の通告がありますから、順次これを許します。古屋貞雄君。
#6
○古屋(貞)委員 先日当委員会で警視総監に私が質問をしたことに対して、調査報告をすることになつておりますので、その御報告を承りたいと思います。
#7
○田中参考人 先般古屋委員から御質問がございました、森脇将光氏の公正証書原本不実記載の容疑事件につきまして、当庁の永里警部補のやりました措置につきまして御質問がございましたので、警視庁といたしまして監察官によりましてこれを詳細に今日まで調査をして参つたのでございます。その結果につきまして私から概要を御報告申し上げたいと存じます。
 本件は昭和二十七年の問題でございまして、事の起りは中央区銀座八丁目所在のある家屋を森脇将光氏が無断で移転登記した事実を探知いたしまして、この事実を追究することに決定をいたしまして捜査を開始いたしたのであります。そして昭和二十七年の八月二十七日検察庁の丸物検事の指揮のもとに逮捕状の請求、江戸橋商事その他の場所の捜査差押え許可状の請求をいたしまして、同日この発行を受けまして、昭和二十七年八月二十八日前記の令状を執行いたしまして森脇將光氏を同日午後六時二十分逮捕いたしたのでございます。そしてそのときに約束手形及び小切手類も差押えいたしたのでございますが、これは営業上必要であるという事由で、持運びされることは非常に困るということで、この点はこの約束手形並びに小切手は同時に店舗に置くことにいたしまして、これを仮担保といたしたのであります。ところが昭和二十七年の八月三十日家屋を名義をかえたものから関係書類の任意の提出を求めたのでありますが、事件捜査中にこの約束手形、小切手類は社外に持ち出されて隠匿されるというような聞込みがありましたので、昭和二十七年九月二日にこの約束手形二十六枚、小切手十一枚を任意提出を命じまして、その後事件解決と同時にこの江戸橋商事会社にこれを還付いたしたのであります。それからこの点につきまして森脇氏の手記の中に、自分のものを他の者へかつてに返還したことは不都合である、この点は永里警部補の失当の措置である、というように言つてあるのでありますが、従来すべて警視庁におきまして押収令状によりまして差押えをいたしますると、その差押えをした場所にこれを還付するのが従来の手続になつておりよす。また押収令状によりましてその場所を捜査いたしまして、そしてその場所から物件を押収した場合におきましては、その相手方に対しまして預かり証と申しますか領収書を発行いたしまして、そうして将来その証拠物件を再び還付する場合には、あるいはその証拠物件のあつた場所にこれを原状回復の意味で返す、そして同時に預かり証と交換にその証拠物件を返すということになつておりまするので、この約束手形並びに小切手を江戸橋商事会社の管理者である社員の米屋という者からこれを受取つて参りましたので、江戸橋商事株式会社の代表者にこれを還付したのであります。
 それからいま一つの問題は、森脇将光氏が猪股に貸金があるのでありますが、その担保として車輌工業株一千株ほか株式総計二十四万三千六百株を担保として、これを森脇氏が受取つておつたのでありますが、その後森脇将光氏がこれを金にかえたいという希望から、その担保を提供した猪股功氏の口ぞえによつて同氏のあつせんによりまして、森脇将光氏の部下である茂木忠雄という者を岡戸紡績株式会社の石井市太郎という名前にして日本通運会社へ同道いたしまして、そしてその株をぜひ日通にこれを換価してもらいたいということを依頼いたしたのであります。ところが日本通運といたしましてはただちにこれを換価処分するということがなかなかむずかしいというので、しばらくその株を置いてもらいたいというので、その株を置きまして保管を頼みまして、日本通運株式会社からその二十四万三千六百株の預かり証を茂木が受取りまして、そして一応帰つて来たのであります。その後警視庁といたしましては、捜査の必要上から証拠物件といたしまして二十四万三千六百株を押収令状によりまして、これを押収することにいたしたのであります。そのうち事件の捜査が進行いたしまして、大体株券の領置の必要がなくなりましたので、これを提供者であるところの江戸橋曲事株式会社の志賀の方へ返還いたしたのであります。それよりさきに九月二十一日の日に森脇が主任を訪れまして、これから返してもらえる物件は志賀に渡さずに私に返してくれということを森脇氏が出頭いたしまして依頼があつたので、主任は今後返すときには君の方に連絡してやろうということを約束いたしたのであります。ついで九月二十四日株券の還付について森脇と日通に電話連絡をいたしたのであります。日通に電話連絡いたしましたのは、日通からこれを領置押収いたしましたので、一応これを日通に返すのが至当であるということそれからさきに森脇の方に返すときにと、は連絡するということを約束いたしましたので、森脇と日通に電話連絡いたしたのであります。そこで森脇氏がさきに主任のもとへ参りまして、株券を手渡すときにはぜひ自分に立ち会わせてもらいたいということであつたのでありますが、主任は立ち会わせてやろう、ほかに渡さず管理者であるところの元管理しておつた日通の方に返すのであるからして、君が立ち会つてもよかろう、ほかに渡さぬから、日通に渡すところを立ち会いなさいというので立ち会わせたのであります。そしてその際に、もし君がこの株を君の方でほしいのならば、あとは民事上の問題になつて来るであろうから、日通とよく話合いの上で受取つたらどうかということを言いまして、これを日通に渡したのであります。この際に大分森脇氏は興奮をして、それじや頼まない、きようのことはよく覚えておいてくれというような言葉を、多少興奮した口吻で漏らしておつたそうです。そして日通の古屋総務部長と早瀬主計課長が警視庁へ参りましたところが、この森脇と古屋、早瀬の間に相当はげしい激論が交換されたようであります。やむを得ず永里主任は、一応森脇氏に外へ出ていてもらいたい、今この古屋総務部長と早瀬主計課長に株券を引渡すからということで、森脇氏は外へ出まして、そして出たときに古屋総務部長並びに早瀬主計課長に株券を渡しまして、所定の手続を経たのであります。それが帰りましてから、もう一回森脇氏を室に入れましていろいろ話をしたのでありますが、十分納得を得るに至らなかつたのであります。森脇氏の言われるように、自分の株券を全然権利のない者に渡しておるようなことが手記に書いてございますが、それはそうではないのでございまして、すべて物件を捜査押収令状によりまして押収したときには、その元あつた場所、管理者に一応引渡すというのが手続になつておりますので、一応捜査担当官といたしましては、従来の手続によつてこれを執行いたしたのであります。しこうしてなお捜査官からも、もしあなた方の間でいろいろ紛糾があれば、二人で話し合つた上で処理してもらいたい、こういうことを言つたのであります。それからいま一つは示談書ができたということでありますが、この示談書は、その内容につきましては、警視庁といたしましては全然タッチしておりません。また示談につきましては、内容は民事上の問題でありまして、公正証書原本不実記載の容疑については全然別個の問題でございますので、猪股と森脇――江戸橋商事との間に示談が成立したということにつきましては、これは当事者間の話合いでできたものでありまして、警視庁といたしましては全然タッチいたしておりません。それからまたこの示談書につきましては、当時私もこの事件に着手しておることは知つておつたのでありまするが、こうした事件につきまして一々私の方まで決裁をとつたりあるいは指揮を仰いだり、またその具体的な報告等もございません。私もこの示談書ができたかどうかということも全然実は知つていないのでありまして、今回の事件がありまして、初めてこうしたものがあつたことを知つたような次第でございます。従いまして永里警部補もこの示談書作成については全然関係がございませんので、この点だけ御了承願いたいと思います。
#8
○古屋(貞)委員 私は今の御報告につきましてあらためて質問いたしますが、私のこの前質問いたしました趣旨は、根本が今の示談書でございます。森脇が警視庁に逮捕され、調べられて、その被疑事件が犯罪にならないので帰されたのですが、その問題で私の御調査を願いたいと申しました趣旨は、森脇が警視庁に勾留されておりまする間に、森脇が猪股功に貸しておりまする一億数千万円の債権について、江戸橋商事の重役でありまする志賀米平との間に和解が成立されまして、そしてその和解が成立したということによつて今の御説明の株券の返還が行われているということになるのでありますが、大体私が承りたいのは、警視庁に森脇が逮捕され、そして捜査を受けておりまする間に示談が成り立つた。これは最初の逮捕状に基く被疑事件とは関係のない債権債務の関係でございますが、警視庁が、本人が勾留されております間にさような和解をさせ――さしたのかあるいはしたのか知りませんが、ただいまの報告では和解については民事であるから知らないということでありましたが、そのことに関与しておつた事実があつたかないかということ。それからもう一つは、森脇がただいまの報告によりまする被疑事件で逮捕されております間に捜査された証拠物件、江戸橋商事から押収して参りました証拠物件は何と何と何であつたか。その被疑事件に関係のない証拠書類がたくさん押収されておりますので、その御調査とそれに対する処置を願いたい。こういうことが私が御調査を願つた一つの趣旨であります。
 その次に、もう一つは、猪股功と森脇との間の債権債務の関係につきまして、押収いたしました物件は押収現場にもどす、こういう御説明がただいまございましたけれども、江戸橋商事から押収した物件は江戸橋商事に返すべきが当然だと私どもただいまの御報告によりましても承知いたしますが、江戸橋商事から押収した証拠物件は何と何であつたか。まず第一にその御報告だけ承りたい。
#9
○田中参考人 先ほど申し上げましたごとくに、森脇氏が勾留中に江戸橋商事の社長の志賀氏とそれから猪股氏との間に和解が政立したことは、永里警部補等は全然関知いたしておりません。これは両者の間の話合いであろうと考えておりまして、警視庁といたしましてもそれは全然知らないわけであります。
 それから勾留中の証拠物件の調査でございますが、前後相当な押収回数があり、またその押収した物件も相当広汎にわたつております。従つて今ここで一々読み上げますと相当長くなりますので、もし御希望でありますならば、また書類によつて御回答申し上げてもさしつかえないと考えております。
 それから今回の事件に関しまして押収した物件は、いずれもそれぞれ先ほど説明いたしましたごとくに押収した場所に、それからまたそれを差出しました責任者は必ず手渡す、と申しますのは、先ほど申し述べましたごとくに、押収する場合にそれを渡して相手方に対して受取りを出しておりますので、その受取りを持つている者にその品物――押収した物件を返還する、こういう建前を全部通しておりますので、さよう御承知願いたいと思います。
#10
○古屋(貞)委員 ただいま警視総監から、原状回復の意味で証拠をお返しになつているというお話がありましたが、江戸橋商事の取締役であつた森脇の犯罪を捜査いたしました結果、警視庁の捜査官は江戸橋商事の代表取締――江戸橋商事を代表する意思表示をする者が何人であるかは存じているはずであります。特に永里警部補に対しましては、口をすつぱくして森脇から代表取締役、共同代表である志賀米平は飾りの社長であつて、志賀米平と森脇将光、茂木忠雄三人が共同の意思表示をしなければ代表の意思表示はできないということを永里警部補に口をすつぱくして説明しておりまするのみならず、さような関係であるから、証拠物件を返環する場合には、三人立会いの上で返してもらいたい、しかも実際上の利害関係人は自分である、志賀米平は単に名前を借りておるにすぎないのである、こういうことを数回にわたつて永里警部補に説明をいたしておりますので、それを尊重されて、証拠物件を返環すべきであると私どもは常識的にも法律的にも考えておるのでありまするが、ただいまの警視総監の御答弁によりますると、それを会社に返した。そういたしますと、会社に返したとおつしやるならば、どなたにお返しになつたのか、この点をひとつ。それから永里警部補の処置に対して森脇が告訴をいたしました。その結果これが取上けられまして、当時の関係者古屋、早瀬、志賀、猪股、全部その犯罪によつて起訴されております。かような犯罪が成立いたしまする前提となつた証拠物件の株券の授受に対して森脇からるる実情を訴え、そうして自分が実力者である、従いまして、ただいま申し上げた志賀と森脇と茂木との三人が出頭するから三人に渡してもらいたいということを哀訴嘆願をしたにもかかわらず、これをしりぞけて志賀に渡してしまい、志賀から関係を持つておりまする日本通運に渡されておる。一億数千万円の有価証券が渡されておるということでありまするので、私はその点のはつきりしたいきさつと実情の御報告を願いたいと思いますが、その点はいかがでございましようか。さような申出が行われた事実をお認めになるかどうか。そうしてなおただいま日通から押収したと申しておりまするけれども、日通が持つて行つておりましたただいまの二十四万三千六百株の株は、江戸橋商事が担保にとつた株券であり、この担保を日通に預けまして、目通から金を借りる過程に置かれていたということも明らかな事実でありまするが、さような実情について御調査はされておるかどうか。一体日通に所有権があるのか、あるいは日通は担保にとるために預かつたものであつたのか、猪股功そのものに対する一億数千万円の債権の担保物件として江戸橋岡事が保管しておつたものであるのか、その点の御報告を願いたいと思います。
#11
○田中参考人 先ほどお話がありましたごとくに、森脇氏が江戸橋商事は共同代表制であるから、三人の者に渡せということを言つたかどうか、私その点はまだ調べておりませんが、先ほど申し述べましたごとくに、捜査担当主任官である永里警部補に対しまして、証拠物件を返すときには私に通知してから返してくれということを連絡したことは事実であります。その約束によりまして、有価証券を当時の保管者である日本通運株式会社に返すときに、森脇将光氏に立ち会つてもらつたのであります。従いまして、三人は立ち会わないにいたしましても、少くとも森脇将光氏は日通にその株券を返すときに立ち会つておるのであります。それからいま一つ、株券を担保として森脇将光氏が現在持つておるその者に返さずに、日本通運会社に返したのは不都合ではないかというお話でありますが、この点も前述いたしましたごとくに、われわれが司法警察環として押収令状によつてその場所から押収したときには、その場所に返す、これが建前でございます。従つてかりに証拠物件である有価証券が森脇将光氏に所有権があるということがわかつておりましても、一応日本通運会社の経理部長から訓収しておりますし、その経理部長あてに受取つたという受取りを出しておりますので、押収した当時の現実の保管者である日本通運会社にこれを渡しまして、日本通運会社がこれを森脇将光氏に引継ぐのが筋だろう、かように考えておるのであります。かような点から日本通運株式会社の経理部長にこれを返還いたしたのであります。
#12
○古屋(貞)委員 私が承りたいのはこういうことなのです。一口に申しますと、森脇が検挙されておる間に、江戸橋商事の社長と称する、今起訴されておる志賀米平が、猪股功債務者との間にでたらめな和解をいたしまして、猪股から預かつておつた、今日本通運に入つておるいろいろな株券を日本通運からこれを受取り、これを猪股に返してしまつた、現実にそうなつておるのです。ただいま田中さんは立ち会わせたと申しましたけれども、立ち会わせておらないから私は承つておるのです。どこで何年何月何日に、だれとだれとだれがおるときに、何を引渡すときに森脇を立ち会わせたか。立ち会わせずに森脇を追い出して、お前は外へ出ていろ、お前は立ち会う必要なない、お前は関係がないのだと言つて追い出しておるのは事実です。みすみす自分の目の前で、一億円の担保物件である株券が、社長という名目の志賀と猪股とのでたらめな不法な和解に基いて持つて行かれてしまうから、日通の古屋良平、早瀬大介を追いかけてつかまえて文句を言おうとしたところが、永里警部補は、おいちよつと森脇待て、お前はまだ起訴不起訴が保留になつておるから、ちよつと用があると言つて、森脇を追いかけた。猪股と志賀と日通の代表者の方と株券の授受をしてしまつて、一億円の債権がとれなくなることを承知しながら涙をのんで引返した。そこで永里警部補のところへ行つて、その経緯を訴えたということは実際行われておるから、この点についての調査をあなたにお願いしたのですが、どこでどなたとこれを引渡すときに立ち会つたか、この点を明確にしていただきたい。
#13
○田中参考人 これは昭和二十七年九月二十四日に、警視庁の第十五号調べ室、永里警部補が常時ここにおりまして、いろいろ事件を調べておる部屋でございますが、そこに森脇に連絡をとりまして来てもらつたのであります。それから今お話の日通の古屋総務部長、早瀬主計課長が来室されて、そこで三人会つたのであります。その際に、この両者の間に非常にはげしい議論が繰返されまして、話にならぬような状況なので、一応日通の力に株券を返すから、お互いの間でよく話合いをして、森脇氏の方に株券を渡したらどうかということで話合いを勧めたのでありますが、いかんせん、この両者の間に非常な激論が繰返されまして、いつ果つべしとも見えませんので、やむを得ず森脇氏を、それでは君は外へ出ておつてもらいたいというので外に出しまして、そうしてこの日通の両者に正式に証拠物件の還付手続をとつたのであります。そうして返しましてから、いろいろ言い分もあろうと思うから、それでは一応ここで聞きたいからというので、森脇氏が外にいることを知つておつたものですから、永里警部補がこれを室内に入れまして、そうして再びいろいろ話合いを進めたと私は聞いておるのであります。
#14
○古屋(貞)委員 そこでだんだん明確になつて参りましたが、森脇はそのときに、共同意思表示をする代表権は、志賀だけは会社を代表する代表権がないから、猪股との和解がすつかり成立したと、そういうようなことを警視庁に御報告ございましても、それは効力がない。犯罪が成立しているのだ、だからその成立している犯罪に基く株券の授受が行われるならば現行犯であるから、これに対して民事上の問題ではないということを、くれぐれも森脇から申し出て、せめて一日でもいいから日通にこの株券の証拠物件を渡すことをお持ち願いたい、私の方で志賀をつかまえ、日通との話合いをいたしまして、日通から金を借りておりませんから担保に入れて置く必要もないから、その事情を日通に訴えて、日通が全然自分はこの株券には権利がない、従つて森脇なり江戸橋商事に渡してもらいたいという証言を持つて来るから、それまで保管を願いたいという申出があつたその事実。にもかかわらず、ただいま申したように両者の間で話合いがあつたので、外へ出してしまつて渡したのだということになつておると思いますが、その点はいかがです。何かたいそう哀訴嘆願をいたしまして、いま一日この大事な物件だけは保管していただきたいということを永里警部補に申し出たという事実はいかがですか。
#15
○田中参考人 そこまでの事実はまだ十分に確かめておりませんが、おそらくそういうような申出が、何らかの形式であつたのじやないかと私は想像いたします。
#16
○古屋(貞)委員 さような事実があつたといたしまするならば、あえて永里警部補がその物件をその日に渡した、争いがあることが品の前でわかつて承知しておりながらそれを決したということは、これは行き過ぎの問題であつて、責任があるのじやないかと私は思うのですが、その点はいかがでございましよう。
#17
○田中参考人 これは私の想像でありますが、証拠物件になつておりますのはいずれも相当高額な有価証券でございまして、保管しておる警視庁側としましても、用が済んだらなるべくこれを早く返す方がいい、かような単純な考えからやつたのじやないか、かように私は想像しておるのであります。ことに森脇氏の方から返せということでありますならば、一応返すにいたしましても、日通の方の手を経由して返しませんと、それが実現できないのでありまして、さような点からあるいは急いで返したのではないか。これは私の想像でありますが、さように考えております。
#18
○古屋(貞)委員 それはとんでもない話なんです。なお一つ承りますが、その他の物件――そこにたくさんの物件が証拠物件になつておりまするが、その他江戸橋商事のもの以外に、森脇氏個人の有価証券がそこにたくさんあるはずです。それを返してもらいたいということをその日に請求いたしましたが、それを返していないのであります。ただいま総監がお話になりましたような、一日や二日外付つてもいいようなものを待たずに先に返しておりながら、その他の森脇個人のもの――そのときに森脇氏は、すでに一切自分の証券というものは失つてしまつた。家族も困るし、商事会社の社員に対する月給も払えないのであるから、何とかほかの証拠物件とか証券を返してもらいたいということを、これも哀訴嘆願いたしましたが、永里警部補はこれを返さなかつた。この二つを比較いたしますと、単純に一方は返し一方は返さなかつたのだとは言えない、森脇自身のもの、森脇の商事会社のものは、当然即時返してもいいわけです。その他の関係者に争いのあるものを先に返して、森脇のものは返さなかつたという、この事実に対する御調査はどうでしよう。私どもはどうしても納得行かない、森脇のものは先に返す。争いのあるものは残すというのが常識であります。さような取扱いをするのが、係官として当然なすべき処置だと思う。しかも告訴事件、被疑事件に関係のない証拠物件をたくさん押収している。そこに目録に読み上げられないほど行つている。そうしてある株券を一方においては争いがあるにかかわらず先に返し、事件が不起訴になつて返すべきものを返さないでいるということは、私には納得が行かない、その点、詳しい調査がなければ次回でもよろしいが、私の伺いたいのはそういうことです。
#19
○田中参考人 先ほど申し上げました手形、それから小切手類は、一応最初は手元に仮還付の形式で置きましたが、他へそれを隠匿するというようないろいろ風評もありましたので、約束手形並びに小切手等は、さらに任意提出の形式で提出させましたし、そのほかにはつきりいたしておりませんが、個人名義か何か知りませんが、相当な株券等もあつたようであります。しかしこれは一応必要な期間だけ領置いたしまして、それぞれ還付したはずでございます。必要のないものは全部還付しているはずでございます。
#20
○古屋(貞)委員 今の日通に返されました日よりあとでしようか、前でしようか、その点承りたい。
#21
○田中参考人 この点は詳細な調査ができておりませんので、これは調査いたしまして後日書面でお答えした力がいいと思つております。非常に数量が多いものでありますから。
#22
○古屋(貞)委員 森脇はそのときに、一切の自分の証券がなくなつてしまつて、社員の月給も払えない、自分の家族の生活もできない、悲痛な気持でもつてお願いしたということを私に言つております。これはうそじやないと思います。そのときの処置がはたして妥当な処置であつたかどうか私は承りたい。森脇自身は、自分が不起訴になつた事件なんというものは、問題にならぬ事件だつた、あれは猪股やその他の関係者が計画的に目分を警視庁に調べさして、自分をそこへひつぱつている間に数億円の私の証券というものを奪つてしまつたのだ、こういうことを森脇は言つておるのであります。でありますから、さようなことが事実なりやいなやは別といたしまして、この永里警部補のやられましたことは、私ども浅い経験でございますが、弁護士をやつておりますが、証拠物件の還付にはその証拠物件に争いのある場合には関係者全部呼んで、一応その理非曲直を聞いてから後にこれを渡さなければならぬというのが、大体私どもは捜査官の態度だと思つております。しかるに渡してもいいようなものを渡さないで、目の前で争つている、その争いがいずれが是か非かはつきりわからないものを、それをすぐその日にどうしても渡さなければならぬという処置をとつた。それがために現実において森脇は、志賀米平という自分の会社の代表者が法律上効力のない和解をいたしました結果、その一億数千万円の有価証券が日通から猪俣に返つている。猪俣はその日にとりに来ている。猪股がそこに出て来、日通が出て来、森脇は腰をすえて反対したけれども、この反対は通らなかつた。従つてそれがために、その株券は遂に猪股の手に返つてしまつたという現実を前提として私は、お尋ねしているのでありますから、その点なお御調査願いまして、後刻報告願いたいと思います。これはこれ以上こまかいことを申し上げても無理と思いますから、次回に書面でもけつこうですから、そのことをはつきりさしていただいて、その書面で納得が行かなければまたお出ましを願つて御質問申し上げます。
#23
○田中参考人 それではお申出の件につきましては十分調査いたしまして、後刻書面で御報告申し上げたいと思います。
#24
○古屋(貞)委員 この事件が基礎になつて、今回のいろいろな問題が起きて、当時の関係者は全部起訴されておりますから、警視総監からこまかい報告書をいただきたいと思います。
#25
○小林委員長 どうぞ警視総監、ひとつよろしく願います。――猪股浩三君。
#26
○猪俣委員 私は政治資金規正法のことにつきましてお尋ねをしたいと思うのでありますけれども、塚田長官は法律の専門家でもなし、事実のことだけにつきましてごく簡単にお尋ねいたします。法律解釈につきましては、法制局長官、法務大臣に尋ねてみたいと思います。
 ただいまいわゆる政党献金が保全経済会なんかにからんで非常な問題に相なつて来ており、政治資金規正法そのものをひとつ改正しなければならぬじやないかとわが党あたりは今研究中でありますが、そこで長官に対しまして、二、三の事実についてお尋ねしたいのであります。政治資金規正法第二十九条によりますと、政党、協会その他の団体が会計責任者においていろいろな会計上の報告をすることになつておる。その報告をする際には、これは真実の記載であるという誓いの文書をつけて出さなければならなくなつておることは、法文に明記されておるのでございます。そこでかように真実の記載であるという証文までつけて報告しておるのでありますが、われわれ巷間聞くところによると、どうもこの届出は大体においてでたらめである。そこでいろいろなことがここから起つて来ると聞いておるのであります。この二十九条の報告、誓いの文書までつけて出した報告が真実であるやいなやということについては、関係官庁において関心を持つて調査をしなければならぬと思う。その調査する権限は、同法の第三十一条に載つておりまして、中央選挙管理会または都道府県もしくは市町村の選挙管理委員会は、この会計の報告について調査権があるように相なつております。そこで私が長官にお尋ねいたしますことは、この政党の献金について届出がありますが、それについてこの届出はちよつと疑問があるというようなことで、この三十一条の調査権に基いて調査したことがかつてあるかどうかということが第一点であります。
#27
○塚田国務大臣 政府委員が参りませんと何なんでありますが、昨日そんなようなお尋ねがあるのじやないかということで一応確めましたところでは、いまだかつてそういう例がない、こういうことでございます。
#28
○猪俣委員 ないということになつちまつたら終りになる。(笑声)はなはだ怠慢だと思うのであります。
 なおもう一点聞きます。これもそうするとほとんど聞かぬでもわかるのでありますが、もしこの二十九条の報告が真実じやないものであるということが調査によつてわかるならば、これは第二十四条によつて告発をしなければならぬ事件に相なると思うのであります。今あなたの答弁を聞くと、調査したこともないとおつしやるのであるから、従つて真実にあらずということで、告発の手続なんかしたこともないということになると思うが、一応お聞きいたします。
#29
○塚田国務大臣 御想像の通り、そういう事例もないそうであります。
#30
○猪俣委員 そこで長官にお尋ねいたしますが、あなたはこの政党献金というものはみな正しいものである。たとえば政治資金規正法によりますと、第三者の名前を偽称してはいけないというような規定があるのでありますが、甲が実際金を出しておるにもかかわらず、乙の名義で政党献金をいたすというようなことが相当行われておると思いますが、かようなことはあなたはお考えになりませんか。
#31
○塚田国務大臣 一応届出を受けておるものについては、真実が記載されておるものと考えておるわけであります。
#32
○猪俣委員 なおこれは法律解釈になりますから、法制局長官にお聞きしてもよいと思うのでありますが、この今回の造船疑獄に関しましていろいろここに問題が出て参りました。自由党、改進党その他の政党は船主協会、造船工業会等から相当の献金を受取つております。これは政治資金規正法第二十二条によれば、公職選挙法第百九十九条が準用されまするがゆえに、国の請負事業をやる者、国から何らか利益を受ける業者は、政治献金はできないことになつておる。そこであなたは政治資金規正法の第一次的の官庁の長官として、一体伝えられるような船主協会、造船工業会が自由党その他に献全したことは、この政治資金規正法二十二条に触れるとお考えになつておりますか、触れないとお考えになつておりますか。触れないとするならば、いかなる論理で触れないように相なるのでありますか、承りたい。
#33
○塚田国務大臣 御指摘の政治資金規正法第二十二条に引用しております公職選挙法の第百九十九条の特定人の寄付の禁止は、一つは選挙に関してということであり、いま一つは請負契約その他の特定の利益を与える契約関係があるかどうかという二つの点に問題があると考えておりますので、今私どもが届出を受けております寄付者の場合においては、このどちらの点からいつても問題にならぬのじやないかと、こういう考え方を持つております。選挙に関してなされたものであるかどうかということについては、時期その他によつて若干疑問があるものもあるかもしれませんが、しかし国との特殊の関係、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者ということには、どの団体も言えないのではないか、こういう解釈をいたしております。
#34
○猪俣委員 まああなた方の解釈というものはとんでもない解釈なのであります。しかしこれをあなたとここで議論をしてもしようがないと思うが、そういう御解釈をなさつておるから、造船疑獄みたいなものが次々起るのであります。この政治資金規正法制定の目的はどこにあるか。およそ法律の解釈は、法そのものの目的から解釈することが最も論理的であり、合理的であります。その目的を離れて解釈することから堕落が起る。この造船疑獄におきましての造船工業会あるいは船主の団体が政党に献金することが、この公職選挙法並びに政治資金規正法の二十二条の立法精神に違反していることは明白なんです。それを、どうも巷間伝うるところによるならば、これは直接の国家対船会社の契約じやない、国家の利子補給は銀行にあるのだから関係がない――こういうのを称して三百代言的解釈という。この三百代言的解釈がいかに世の中を暗くするか。正当な、りつぱな法律解釈家は、そういう解釈はとらぬ。似て非なる法律をなまかじりした者がそういう議論をするのを三百代言といつて世の中が排撃している。政府が三百代言みたいなことを言い出して来ている。それはあなた方の立場もお察しできますが、しかし国民は納得できません。ここであなたと議論をやつてもしようがないが、もう一度明白に聞きます。選挙に関してということには多少の問題があるかもしれぬが、その国と利害関係のあるという点からはまつたく関係がないのだというあなたの答弁は、どういう根拠からさような答弁がなされるのであるか、その法律的な構成を明らかにしていただきたい。
#35
○塚田国務大臣 この点は立法論として、もしくは政治道徳論として申し上げます場合はとにかく、おそらく司法機関が法を適用いたします場合にも、また行政府が法に従つて行動いたします場合にも、やはりできた場合にはその法律をどういうぐあいに解釈するのが正しいかという考え方によつてやらなければなりませんので、この条文に「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者」と、法律的にきわめてはつきりした表現で書かれております以上は、たとい自治庁長官といたしましてもそれ以上の立法の精神がこうであるからという考え方でもつて問題を見るわけには参らない、こういう考え方をいたしております。
#36
○猪俣委員 「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である」ということが非常に明らかであるがゆえにわれわれは問題だと言うのであります。あなたは船主協会のごときはそうでないというお考えである。しかし今度問題になつております、昨年国会を通過いたしました外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法、この法律そのものが実に奇怪しごくな法律である。この法律をつくることに対しまする動きというものはこれから明らかになりましようが、いずれにいたしましてもこの法律によつて開発銀行が普通なら七分五厘のところを五分にするとか、五分のところを三分五厘にして船主に融資をする。それを今度は国の予算で補つてやる、これはまつたく相関関係ではありませんか。普通の銀行融資よりも船会社には安く融資するということが条件で、その穴埋めを国家でやるのだ。まつたくこれは不離不即の相関関係であります。まさに利益を受ける当事者は船会社である。これは明らかなんだ。これをそうじやないと言うのはまつたく詭弁もはなはだしい。何のために五分の利息を三分五厘にするか。これは外航船舶を奨励する意味であることはうなづかれますから、それはそれでよい。しかし五分七厘のものを五分に、五分のものを三分五厘に減らされたその損害を銀行に対して国家が補うということは、不離一体をなしておるものであります。これを別なものだと言うところが、われわれは三百代言的だと考える。これは三分五厘にするという前提のものに、その銀行へ国家が補償をするという法律ができておる。このように外航船舶を奨励しなければならぬなら、われわれの主義からいうならば、これは国家で船をつくつて、場合によつてはこれを業者に賃貸して運航せしめるということが正しいことである。しかるにさようなことをせずして、かようなまわりくどいことをやつておる。これは資本主義制度の一つの悪の現われ方であります。それに乗じまして国の費用が濫費されておる。いわゆる三分五厘の安い融資によつて船をつくる船会社と、国家の予算によつてその穴埋めをする国とが何ら利害関係がないなんていうことは、途方もない論理と申さなければならない。かような明々白々なことに対しまして、自治上長官がさような考えを持つておるいうことは、私ふしぎ千万であります。この「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者」に、どうして国家の予算と船会社とかこの意味に結びつかぬか、どこから出て来るのですか。それをなお詳細に承りましよう。
#37
○塚田国務大臣 それはいろいろな政治経済機構のあり方に対しての御意見は御意見として承つておくのでありますけれども、この公職選挙法百九十九条の解釈については他の委員会であればとにかく、法務委員会においてそのような御質問が出ることの方がむしろおかしいのではないかと思つて私は伺つておるのでありまして、はつきりと「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者」と書いてあるのでありまして、利益を受ける当事者ならばだれでもひつかかるというふうには書いてない。そこで船主協会もしくは船会社と国とがどういうぐあいな契約関係にあるかと言われたらそれはおそらく何もないと君わざるを得ないと私は考えますので、この法律の建前から行けばやはり法律にはかからない。先ほど申し上げましたように、立法論としてもしくは政治道徳論としての話ならば、これはおのずから別でありますが、おそらく今そういう点を問題にされておるのではないと考えられますので、法律的なものの考え方としては先ほどからお答え申し上げておる通りでございます。
#38
○猪俣委員 近ごろの進歩せる法律解釈は、昔あなたが大学で習つておつた時分のような民法、商法の解釈は通らない。労働法の解釈その他の社会立法の解釈において非常にかわつて来ておる。いわゆる概念法学の思想からすればあなたのその弁解も一応通るかもしれませんが、今言つた目的論的な解釈、社会現象を規正する法律を頭に置いて法律の条文を解釈するということになると、あなたの解釈は一世紀も古いときの解釈なんだ。これはいわゆる概括的の一つの契約関係をとつております。三分五厘で安く貸すことが条件で、国からはその足らざるものを補給するということが出て来る。しかも同じ昨年通過いたしました法律からそれが出て来ておる。これは船会社と国家と開発銀行が三者一体になりまして、この一つの法律から出て来ておる。一つの相関関係の法律関係で結ばれておる経済的社会的な法律現象というものは、一つであります。これは新しい解釈といたしましては、この条文にまさに当てはまる。国家に対して何らかの利益を伴う契約の当事者が船会社である。その相手が開発銀行であり国であります。これは切り離しては契約はできません。三分五厘にするということは、国家がその足らざるところを補うということによつて三分五厘の契約というものは成立するのであるから一体不可分のものであります。やはりこの利益を伴う契約の当時君が船会社であり国家であることは明白なことなんです。一つの法律からみな出ておる。これを三位一体をなした一つの立体解釈をしないといわゆる三百代言的な解釈が出て来るのであります。これ以上あなたと議論してもしようがないからこれはまた法制局長官と議論することにいたします。
#39
○古屋(貞)委員 関連して……。ただいま承りますと猪俣委員の解釈のような解釈ができるのですが、なおしからば承りたいのですが、自治庁長官にはそういうような違反があつた場合には告発をする義務があつたのですが、銀行が献金されたときにはどうなります。私が申し上げるのは政治資金規正法の二十二条と公職選挙法の百九十九条によつて制限されておるにかかわらず。昨年成立いたしました外航船舶の利子補給法に基く国家が利子補給をいたしまする市中銀行が政党に献金をされている事実がありますが、それはいかがいたしましようか。はたしてそういう献金があつたかないかを自治庁で報告を願つておきましよう。あなたの解釈通りのことがあるから私は質問しているのです。銀行が政党に寄付しておるのです。それを承りたいです。あなたの解釈通りでけつこうなんです。
#40
○塚田国務大臣 利子補給の契約をいたしておる相手方の銀行が選挙に関してそのような寄付をいたしたということであれば、この第百九十九条に該当すると思います。
#41
○古屋(貞)委員 さような事実があつたかないかを、船会社に対するところの政府の利子補給の取扱い銀行が政党に献金をしたという事実があるかないか、その点を先に承つておきましよう。その点はどうでしよう。
#42
○塚田国務大臣 先日来問題になつている部分だけの資料を持つておりますので、それは後ほど調べましてお答え申し上げたいと存じます。
#43
○古屋(貞)委員 私どもの調べによりますと、自治庁から私がいただいたのにはちやんと取扱い銀行が寄付をしております。だから承つておる、それが一つ、これが十分明確になりましたら御調査の上御報告を願いたいと思います。それからもう一つは、ただいま猪俣委員からお尋ねがありましたが、外航船舶の利子融資補給法によりますと、船会社があるいは十五年間あるいは二十年間利子補給はしてもらうけれども、もしも市中銀行では十五年間、開発銀行では二十年間の間に一割以上の利益があつたら政令で定めるところの率をかけてこれを国庫に納めなければならないということが規定されておりまするが、これはいかがでございましよう。これを政府との契約の当事者として広義に解釈をして取締る意思があるかどうか。ただいま猪俣委員との質疑応答の中には立法上の問題であり、政治上の道義上の問題ならば考えるけれども、はつきりと当事者という解釈は下せないという御議論がございましたけれども、国が補給をいたしましたその利息をその会社から国に返還させるという一つの関係がある場合に、これを契約でないとおつしやるのかどうか、この点を御解釈を願いたい。契約という御解釈を願いますならば、はつきりとこの規正法にひつかかつて来る。たとえば外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の第十二条、第十三条、第十四条、第十五条を御検討願えば、はつきりとこの補給された利息は国に返すということを船会社に義務づけられておる。従いまして義務づけられたる当事者であるから、国との対立関係にある当事者でございまして、利害を伴う当事者でなければならぬと思いますが、いかがでしようか。
#44
○塚田国務大臣 これはひとつ法制局その他専門の方々から正確にお聞きを願いたいと思うのでありますが、ただいまお伺いしておつた範囲で私が感じております考え方から申し上げますならば、おそらくこういうお尋ねではなかつたかと思うのでありますが、利益を受ける契約ということになつておるが、利益は受けるけれども、一応利子補給は受けるが、あとで返すのだから利益にはならないというように解釈するか、あとで返すようにはなつておるが、しかしそれはやはり利益を受けるという解釈をするのか、どちらかというお尋ねなんでしようか。
#45
○古屋(貞)委員 そういうようなことを義務づけられておるからこの百九十九条にいういわゆる政府との契約当事者ということに解釈ができないかというそれが一つ。それから前の問題は今の利子補給をしておりまする契約の市中銀行が政府と契約をいたします。政府がそういう利子補給をしてやるぞという契約を銀行としておるわけです。その銀行が寄付をしておる事実があるから、その場合は違反になるか、ならぬかの場合、それで違反になることになりますので、当時これを調査した事実があつたかどうか、調査してこれを告発するというようなことを考えておられたかどうかということを承りたい。これはただいま猪俣委員から申したように、究極するところこういうところに疑獄事件の根本があるので、現行法でもやれるということなんです。私は明確にしておきたいと思います。
#46
○塚田国務大臣 むづかしい法律論は専門の担当の者からお聞きを願うといたしまして、事実の点は先ほども申し上げましたように取調べました上で自治庁としての見解を申し上げたいと存じます。
#47
○小林委員長 次に昨日に引続き公安調査庁当局より、その調査に基く諸般の情勢についてその説明を聴取することにいたします。高橋公安調査庁次長。
#48
○高橋(一)政府委員 右翼の動向につきまして御説明をいたします。現状を御説明する前に日本における右翼の動きが大体どのようにかわつて来たかということを一通り概観する方が現状を把握する上において便宜ではないかというふうに考えるのでありますが、大体日本の右翼は明治、大正、昭和という三段階を経ているように見受けられるのであります。明治の時代は当時の富国強兵、殖産興業というような風潮に沿いまして、素朴な国粋主義的な右翼が生れて来た。明治三十四年に玄洋社の系統で黒竜会ができておりますが、それなどが大体その当時の右翼の典型的なものではないかというように考えます。
 大正年間に入りまして、一九一七年にロシヤの革命があつて、そのころから世界的にその影響が及んでいるように見えるのでありますが、日本においてもそのころからいわゆる民主主義の風潮、当時デモクラシーと言われておつたこの風潮と、それから社会主義の階級闘争の風潮が浸透して参つた。その民主主義の方の流れは大正七、八年ごろからのいわゆる普遍選挙運動の流れとなつて、その後現実に実を結んでいるわけであります。一方社会主義の風潮に対して、その階級闘争議論に非常にあきたらないでこれに対抗する思想団体がだんだん生れて参つたように見えます。すなわち大正七年の老荘会、これは政治団体というほどのものではない、懇話会程度のものであつたようでありますが、これに大川尚明、権藤成卿、鹿子木員信、満川亀太朗、北一輝、堺利彦、島中雄三、高畠素之というような人が集まつているようでありますが、こういう流れが翌大正八年の大川周明、北一輝などの猶存社の流れとなり、それから大正十年の上杉愼吉、高畠素之氏らの経綸学盟となり、その後ずつといろいろな分派を生じておりますけれども、一つの流れとなつて動いているように思うのであります。
 それで昨日も申しましたけれども、それが昭和に入りまして非常に重大な動きをした。昭和五年十一月佐郷屋留雄が濱口首相を刺して以来、毎年政治的な右翼のテロが続いているのであつて、その間に日本が満州事変に入り、日支事変が始まるというようなぐあいになつているのでありますが、従つてこの昭和五年のいろいろな社会情勢というものや右翼の動きをいろいろ検討いたしますことは、今日の情勢を見る上において非常に参考になるのではないかといふうに考えているのであります。それで項目的なことにつきましては昨日一応申し上げたのでありますが、昭和五年の状況というものをよほどよく検討してみませんと、今日どうであるかということが簡単に言えないように思うのであります。それで判断はともかくといたしまして、一応昭和五年の状況というものをもう一度御説明いたしたいと思うのであります。
 第一に、昭和五年は一九三〇年になるのでありますが、世界的に民族精神の非常に高揚した時期のようであります。すなわちイタリーではすでに一九二五年にムソリーニのフアッシヨ内閣ができております。それからドイツではちようど一九三〇年の九月にヒトラーのナチスが第二党に進出して非常に勢いを得ている時期であります。それから中国では一九二八年に蒋介石が国民政府を樹立しまして全国統一の基礎を固めつつある時期であります。一方ソ連ではいわゆるスターリンの一国社会主義、社会主義の祖国はソ連である、従つてソ連を擁護しなければならないという一種のやはり民族主義が勃興して、当時それに基く第一次五箇年計画遂行中であつたのであります。このように世界的に一種の民族精神高揚の時代ということが言えると思うのであります。それから当時は世界的恐慌のときであります。日本においては御承知のように昭和二年に金融恐慌がありまして、モラトリアムがしかれたのもこの年の四月であります。昭和四年にアメリカに大恐慌が起つて、それが昭和五年、六年間に世界的に広がつたのでありますが、日本においても昭和五年ごろは銀行の破産が続出しているというような恐慌の時代であります。従いまして失業者が非常に多い。当時新たに知識階級の登録制がしかれ、巷間失業者が二百万と称されたのでありまして、放心においても昭和五年の四月に失業対策委員会を特に設置しているというようなときであります。農村が非常に不況でありまして、昭和五年の十月三日には米が石十六円に下りまして市場が数日間閉鎖されている。それから当時は濱口内閣のいわゆるデフレ政策のときでありまして、官吏の一割減俸、これは軍人を含めての一割減俸が行われ、昭和五年一月には金輸出解禁、六月には臨時産業合理局が放置されまして産業合理化が進んでいる。こういうふうな世界的な恐慌の時代であつたということが震えると思う。それから外交問題につきましては、昭和五年の四月にいわゆるロンドン条約、海軍軍縮条約が調印されております。この軍縮会議は見方によりましてこういう見方が成り立つのではないか。つまり日英米間で現状を維持して勢力の均衡を保とう、こういうのでありますから、先進英米にとりましては非常に有利であつて、後進国の日本としては不利であつたということがいえるのではないか。従つて日本の、特に軍部においては、これは耐え切れない制限であるというふうに理解したのであります。それから一方中国では国民党の革命が成就しまして、全国統一が着々行われておつたのとありますが、昭和三年の張作霖の爆死のあとで、張学良が蒋介石の中央と非常に深く結びつきまして、ここに満州の権益がかなり脅かされるというような事情にあつた。外交問題においてはそのような重要な条件があつたのであります。
 それから政党政治に対する不信でありますが、濱口内閣の前が若槻内閣、その前が田中義一内閣で、軍人内閣であります。当時政党的専制という非難が国民の間にあつたよりであります。そして当時は汚職事件が続発しまして、例を申し上げれば賞勲局の賞勲事件、それから私鉄疑獄、山梨大将事件というようなものがあるわけであります。当時政党政治の腐敗の一方右翼に属します高畠素之氏の系統の日本社会主義研究所では、しきりに新しい体制としてナチスやムソリーニの全体主義体制を紹介しておつたようであります。そこに右翼の議会制度の否認、暴力肯定というような思想が行われておつたのでありますが、当時の右翼の考え方は、一人々々非常に異なるのでありまして、これを概括することは非常にむずかしいと思うのでありますけれども、大体の共通の特徴というようなものを考えてみますと、天皇制に絶対の権威を置いて、重臣、財閥等をいわゆる君側の奸として、これを除くというような考え方が支配的ではなかつたか。それから理論的なものとしては、一応先ほども申しました国家社会主義という一つの体系を持つた理論を持つていたということ、もう一つは、当時右翼を培養する資金の給源があつた。これは次に申し上げます軍人の政治介入というようなことから、軍事費の中から相当のものが流れておるということは考えられるのであります。そのような背景の上で軍人の政治介入が行われたのでありまして、軍備縮小、軍部改革といつたようなことに対する不満、それから田中義一大将とか宇垣一成大将など上層軍人の政党化に対する反発、このような不満と焦燥感にかられた軍人、特に少壮軍人がみずから政治介入をして、右翼の思想と結びついたというようなのが昭和五年における特徴的な点ではないであろうか、こういうふうに考えるわけであります。それから右翼のテロが続いたのでありますが、あとは勢いのおもむくところさようになつたというようなところがあるのでありまして、一応戦前の右翼の動きとして特徴的な点は以上のような状態ではないかと思います。
 そこで終戦後の右翼の問題でありますが、占領政策のもとで旧右翼は全部追放になりまして、その間に極左分子のいろいろの暴行問題などに刺激されて、ここに戦後の新しい反共右翼がだんだんに生れて参つたのであります。従つて現在の右翼の中には、そういうふうな戦後の新しい右翼と、戦前の追放解除になつた旧右翼というものがあるわけであります。この戦前の旧右翼について現在全国的に統一の動きが見られるのでありますが、その統一の動きの下地は、大体前からあつたものと思います。特に昨年の四月選挙において、五・一五事件の三上卓が参議院全国区に立候補しまして、約九万票を得た。それには旧右翼の同志が相当応援に出た。このような経験を絡まして、旧右翼が相当元気づけられた。そこで昨年六月十三日水戸の弘道飢において救国懇談会という旧右翼の大部分を網羅する一つの懇談会が打たれたわけであります。これは愛郷塾の橘幸三郎、紫山塾の本間憲一朗、この両氏のきも入りによつて集まつたのでありますが、約百八十名参加しております。それでこの席では、発起人が橘、本間両氏、司会者はその指名でもつて、勤皇まことむすびの中村武彦、不二歌道会の影由正治、五・一五事件の三上卓、血盟団の小沼正というような人がやつたのでありますが、これは懇談でありまして、別段結論を得ていないのであります。しかしその席上で、古い指導者に対する批判がかなり強く言われておるようであります。そして動きの中心が、どちらかといえば三上、中村、影由あるいは鈴木善一というような壮年層に移つて行つておる。この際には憲法改正、再軍備、経済自立等についていろいろ意見が交換されておりますが、結局において現行憲法廃棄の申合せをしたというのがまとまつた結論であります。このときあとで講演会をやりまして、橘孝三郎と大川周明の両氏がやつておりますが、この二人の話の内容がいずれも非常に共通した点がある。それは、今の憲法というのは押しつけられた憲法であつて自主性がないからこれを改正しなければならぬという点、それから日本が今世界から注視されておる重要な時期であるという面、もう一つは行くべき方向として西ドイツのことを非常にほめて紹介しておるのであります。その後各県あるいは地方に主として旧右翼の統一運動として協議会が持たれておるのでありますが、その中で昨年七月八日に大阪市で全関西愛国戦線協議会結成大会が開かれております。この場合を見ますると、左社、総評を含むマルクス主義に反対し、資本主義の横暴を是正せんとし、民族の独立を期すというようなことを言つておるのであります。そのような機運を経まして、昨年の九月二十二日大阪で救国運動全国協議会準備会が持れたのでありますが、当面の運動目標としては、経済における社会正義の実現を期す、世界的土地開放を内容とした独立道義外交の確立、独立憲法の制定、政界官界の粛正、自衛組織の確立、食料緊急対策の樹立というようなことをきめております。このあとでも演説をやつていますが、この場合には聴衆約二千名、多いところでは九月三十日に右古屋でやつた維新運動東海協議会の演説会で約四千集まつたと称されておるであります。
 このようにして全国的統一運動の中で大同団結しなければならないというような考えでそういう協議会が持たれつつあるわけでありますけれども、規約綱領といつたようなものではつきりしたものはまだあまりできていないようであります。ただ十一月二十六日に結成されました救国運動九州協議会の場合にはそういう規約、綱領を持つております。それが現在の右翼の動向を知る上において一つの材料であろうと思いますので簡単に御紹介しますと、規約目的のところでは「本協議会は日本民族の歴史と伝統に基き、独立と革新のため純一なる国民的政治力の結集を目標とし、分裂せる愛国諸団体、諸運動の連絡協議、協力と、各団体の各運動の個性の発展充実のための奉仕助成を通じ、地域的特性を生かしつつ、思想と運動の統一及びその全国組織の逃成を期す。」それから事業としては「本協議会は以上の自的達成のため必要なる連絡調査、研究、啓蒙、宣伝、出版、訓練等を行う。」というふうに規定しております。また大会で採択した宣言におきましては、「世界は二大勢力が対立抗争し、国内は向ソ、向米一辺倒の両陣営に分裂し、あたかも内戦的様相を呈しておる。この危局を打開する方途は一に全国民が民族生成の歴史的伝統の精神に立脚し、救国愛民の憤志を高揚し、一致団結もつて事に処するのほかはない。すなわち敗戦の真因は日本みずからが維新せられざるままに大東亜戦争を敢行したる点に存することを看破し、内に日本の主体性を確立し、外に勃興の機運にあるアジア諸民族と提携し、世界人数の真の平和を確立する誓願を立てねばならぬ」というふうに申しておるのであります。
 このような運動の世話人になつておる人々はどういう人々であるかという問題でありますが、大阪で行われました救国運動全国協議会の準備会では、これは大勢ありますけれども三上卓、鈴木善一、景山正治、片岡駿、中村武彦、古閑義視、それから現在の所属団体または前の系統を申しますが、赤化防止団の河上利治、全国勤労者同盟の吉松正勝、元の勤皇まことむすびの三宅親連、土居三郎、元の大日本生産党の白井為雄、元の勤皇同志会の菊池峯三郎というような人たちがやつておるのであります。大体この人たちは各地方における指導的な立場にある人たちであります。従来の系統から申しますと、先ほど述べましたいろいろな系統が現在まではつきり区別されておるというようなことはないのでありまして、いろいろそれぞれに違うのでありますが、何と申しましても、たとえば九州の協議会あたりは元の玄洋社流の人が多数を占めているというような地域的特色が見られるようであります。これらの協議会は、大体組織そのものがいわゆる単位組織の自主性を尊重する組織でありますし、先ほども申し上げましたようにまだ規約、綱領といつたようなものも統一的にでき上つてはいないのでありまして、どうもこの活動の影響といつたようなものは今後にまたなければならないと思つておるの上であります。
 それから現在、一体どのような右翼が単位組織としてはそれぞれ活動しておるのかという問題であります。この場合右翼と申しますのは、右翼の定義が非常に茫然としておりますので非常に限定しにくいのでありますが、一応通常右翼といわれているというものの中から比校的活発に動いておるのを幾つか取上げてみますと、戦後にできましたいわゆる反共を主とする団体、これの中には関西の方の民防、これはたしか民間による民間の防衛というような意味であろうと思いますが、民防という名前の団体であります。木崎為之という人がこの代表者になつておるのであります。それから全国各地、九州、北海道あるいは京浜といつたようなところ労組工作を主としてやつております戸松慶議の大和党、それから山口県を中心としてやはり労働組合対策その他農民などにも働きかけておりまする島津定泰の日本革命菊旗同志会島津派、それから引揚促進から出発したのでありますけれども、一応右翼として数えられておるものの中に、関東、九州等に勢力のある末次一郎の日本健青会というようなものが見られます。それから旧右翼の流れを引くものとしましては豊田一夫の率いる殉国青年隊、これは頭山秀三、天行会の系統でありまして、元を尋ねれば玄洋社、黒竜会という筋であろうかと思います。それから京都を中心としております赤化防止団、これは川上利治がおもなる幹部でありますが、これは元の内田良平氏などの大日本生産党の流れを引いておるようであります。それからやはり大日本生産党に属しておりました吉田益三の率いております戦友会、これは関内に生として勢力を持つておるわけであります。それからやはり大日本生産党の系統になると思いますが、大東塾、影山正治の現在は不二歌道会、それから元の東亜連盟協会の系統で東亜連盟同志会、それからかつてそれに属しておりましたが、今はわかれて辻正信氏がやつております自衛同盟、これはやはり中部地方に勢力があるようであります。それから東北に勢力のあります武田邦太郎の協和党、それから現在は活動がほとんどないようでありますけれども、渡邊捷三の民族新生運動本部、これは一昨年の十月選挙で参議院に六人の候補君を立てて、かたわらいわゆる白票運動というのをやつた団体であります。つまり現在の政党人は信用がならない、それでその不信の念を表明するために白票を投ずるというような動きであります。それから元の笹川良一氏の国粋大衆党の流れで、全国勤労者同盟、これは丹田重雄、古松正勝などという人がおもな幹部であつて、関西に勢力を維持しておるのであります。それから特異な動きを示しておるものとして、たとえば赤尾敏氏の大日本愛国党というようなものもあるわけであります。しかしこれは非常に価人的なものでありまして、団体としてはきわめて少数の団体員しか持つていないようであります。これらの右翼の全体を通じまして考えられますことは、非常に理論がまだ確立されていないという問題であります。従つてその将来というものも何ともまだ言えないのでありまして、右翼の理論というものは一体どのようなものであるかということの一つの例としまして、東亜連盟協会系統の協和党の考え方を御説明してみたいと思います。
 これは御承知のように石原莞爾氏の主義主張を継ぐのでありますけれども、昨年の夏ころ協和党から、協和党は新東亜連盟とどこが違うか、東亜連盟同志会とどこが違うかというパンフレットが出ておるのであります。これによりますと、この二つは同じ旧東亜連盟からわかれたが、協和党は本来の石原主義を持して正統派である、共産主義を断然圧倒し得るイデオロギー中心の政党を組織しなければならないということと、それから指導原理の明らかでないところに真に堅固な同志組織はあり得ないという立場に立つておる。この石原主義は第一に最終戦争史観として、戦争術の進歩が極端に近づいて、世界は数十年以内に統一されるその前夜にある、武力で戦うのは米ソであろうが、東亜の王道と西欧の覇道との決勝戦である、これは武力によるべきものではないのであつて、最高文化の建設ができるかどうかということであるということであります。それから第二に国体、政治については、石原主義の政治観は第一次大戦後最終戦争を前にしてどこの国でも統制主義にならざるを得なくなつているという事情、第三に農工一体の社会理念として都市の解体、農業と文化の全国土的復旧、生産力の大飛躍と簡素優雅な新生活の実践、第四に東亜連盟の結成として、世界は国家主義全盛の時代から、国家連合の時代を経て統一に進むものであるから、現段階においては、地域の近接した東亜諸国をもつて連盟をつくるべきである。この場合、ソ連は覇道的なるも、中国の本質は王道的なりと見る。この点が新東連と違うところである。中国の見方が違うのだ。新東亜連盟の方は、協和党に言わせるならば、中国はこれはソ連側であつて覇道のものである。ところが協和党は、現在は覇道であるけれども、本来は王道なんだ。だからこれはアジアの連盟の中に加えなければならないというふうに見ておるようであります。
 次に、再軍備に対する考え方は、左社の無抵抗主義とは違う。もし不当な武力侵略を受けたならば、身に寸鉄を帯びずとも、道義、政治、経済等のあらゆる力をもつて最後まで戦い抜く。不当な武力が正しい生活の力そのものの前に、最後には必ず屈服する時代があるというふうにしておるのであります。協和党は右翼の中でもかなり特異な存在でありますから、これをもつて右翼の思想の一般というふうなことを言つてはちよつと言い過ぎではあろうと思いますけれども、数ある右翼の中に、このような理論もある、見方もあるという例として御説明をした次第であります。
 それから右翼に関するいろいろな事項といたしましては、やはり反共を標傍しております一方、共産党糸ないし左翼においていろいろな行事なんかをやりますときなどに、いざこざが起ることが必ずしも珍しくないようであります。しかし著しいものはそうはない。その著しいものとしましては、これはもう皆さん御承知の事件でありますが、一応繰返しますと、一昨年の八月十八日外務省において、同年十月に北京で開かれましたアジア太平洋地域平和会議に出席するために、旅券の下付を要求してすわり込んでおりました東京都準備委員会代表畑中政春氏ら全国代表約三十名に対しまして、愛国青年有志委員会常任委員の服部彰彦、殉国青中隊の豊田一夫その他約十五名が、旅券下付願い却下せよということを外務省に要請しに行つた際に、服部、鈴木といつたような者が、すわり込んでおつた者を引きずり出そうとして、日ソ親善協会東京都連合会幹事の高橋源吾らとなぐり合いとなつて、約十分間乱闘して、警察側でこれをとめたという事件があつたのであります。それから最近では、昨年十二月二十一日、京都市の大山郁夫夫妻歓迎の自動車デモに際して、河上利治の率いる赤化防止団の団員約五十名が、沿道約三十箇所くらいで歓迎反対のビラをまいたのでありますが、その際にデモ隊と各所で乱闘しまして、結局赤化防止団側が八名負傷しました。翌日圓山公園で歓迎市民大会があつたのでありますが、その際に赤化防止団側の団員が襲撃して不穏のけはいがあつたのでありますが、これは警察警備で事なく解散したことがあります。その他にもその種事件が若干ありますけれども、こういう動きにつきましてもわれわれの方では十分に注意をいたしておる次第であります。
 大体の概況の御説明を終えましたので、あと御質問によつてお答えいたしたいと思います。
#49
○小林委員長 右翼の資金関係はどうですか。
#50
○高橋(一)政府委員 やはり反共団体といつたようなものは、その資金の給源は大体において経営者側の何らかの寄付によるのであろうというふうに考えております。それから旧右翼の方は、大体において旧右翼の名の売れた幹部が自分の顔で若干を調達して来るというやり方が多いのではないか、こういうふうに考えております。
#51
○小林委員長 これにて当局の説明は終りました。発言の通告がありますから、順次これを許すことにいたします。神近市子君。
#52
○神近委員 長官にお尋ねいたします。昨日のいろいろの御説明の全般にかかわることでございますけれども、私の筆記が不完全であつたかもしれないと思いますが、それによりますと、太平洋防衛体制の妨害をやつているというような御意見があつたと思うのですけれども、具体的にはどういうことが行われているのでございますか。
#53
○藤井政府委員 現在の共産主義陣営の平和擁護運動は、自由主義側陣営の平和擁護運動を妨害するものと認められるのでありまして、その見地において、太平洋の安全を保障しようとする自由主義陣営側の体制を共産主義側陣営が妨害するもの、こういうように観察しておるのであります。
#54
○神近委員 そこが私ちよつと納得のできないところですけれど、世界には平和論者というものはいろいろな断層がございまして、私ども婦人は大体平和論者であり、そうして再軍備反対でございますけれども、そうすると、御説明によりますと反再軍備あるいはこういう戦争の原因をつくる防衛同盟体制というものに反対する者も、これは共産党につながつているとお考えになつているのでしようか。
#55
○藤井政府委員 それはそういうふうに考えておりません。
#56
○高橋(一)政府委員 ただいま長官の申されたことに、若干補足したいと思うのでありますけれども、私どもの方では、いわゆる社会民主主義者の平和擁護運動と共産主義者の平和擁護運動とは明確に区別しておるつもりであります。共産主義者の、いわゆる共産党の平和擁護運動というのは、明らかに社会民主主義者と違いまして、たとえば議会によつて改善できるのだとか、あるいは何らかのくふうによつて戦争が避け得るのだというような考えではなくて、要するにソ連擁護のために、当面の戦争をソ連に有利なように引延ばししようというような意味での平和擁護運動であるというふうに考えておるのであります。それでそういう意味で、こちらの方においては太平洋防衛体制と申しますか、とにかく自由主義諸国の側の防衛措置というものはなるべくこれを妨害する、こういうふうな方針でやつておることと考えておるのであります。社会民主主義者あるいは社会民主主義の政党の平和擁護運動というものとは明確に区別して考えております。
#57
○黒田委員 ちよつと関連して高橋政府委員に質問します。ただいまおつしやいましたいわゆる自由主義陣営の太平洋防衛体制というものを具体的にはどういうものとごらんになつているのですか。
#58
○高橋(一)政府委員 日本の現在のいろいろな防衛問題でございます。そういうようなことなどがすべてそういうことに関連するのではないかというふうに考えております。
#59
○黒田委員 ただいまよのお話では答弁にもなにもならぬと思います。それでは日本の防衛というものはどういうものでか。あなたは再軍備ということが日本の防御になる、こういうようにお考えになるのですか。
#60
○高橋(一)政府委員 私の表現がたいへんまずかつたと思うのでありますが、私どもは防衛体制そのものについてどうこうという考えは持つておりません。ただ共産党の方で、どういうふうに考えておるかということを申し上げますと、現在日本で問題になつておりますものとしましては、たとえばMSAの受入れ問題などは、共産党の方としてはこれはなるべく成立させないようにしたいということではないかと考えております。
#61
○黒田委員 それでは高橋政府委員としては、一体MSAを受入れるべきであると考えておるのかどうか。
#62
○高橋(一)政府委員 私はそういう方については全然白紙でございます。
#63
○黒田委員 それならば自由主義側の太平洋防衛体制というものが一体何であるかということが、何も内容がなくてただそういうふうに考えておいでになるというのでは、私は公安調査庁としていろいろ団体のお取調べをなさいます立場から、ちよつとそれでは見当がつかぬ。もう少し具体的に内容をお話にならないと……。
#64
○高橋(一)政府委員 私どもが問題にしておりますのは、要するにこの共産党の、つまり議会主義否定、暴力革命方式という点なんでございます。ほかにいろいろ諸般の政策なんかの問題もありましようけれども、私どもの方は、それについてはどちらがいいとか悪いとかいうことは、まつたく白紙の態度でおるわけでございます。ただ共産党は、ある一つのことも、決してそれだけを持出して考えてはいないわけでありまして、全体的な、総合的な、いわゆる共産党のいう戦略戦術のもとにやつておるのでありまして、長官もその御趣旨で話されたと思うのです。
#65
○黒田委員 あまりこの問題について長くお伺いしますと、他の委員の御質問の妨害になると思いますので、ちよつとまとめて申し上げてみます。やはり高橋政府委員あるいは藤井長官などのお考えになつております太平洋防衛体制というものは、日本が軍備を持つて、そうしてアジアの他の諸国、たとえば朝鮮の李承晩、あるいは台湾の蒋介石、あるいはフイリッピンとか、その背後にあるアメリカ、こういうものが結びついて一つの軍事的同盟をつくる、そういう行き方をいわゆる自由主義陣営の太平洋防衛体制、こういうようにお考えになつておるのでありましようか。私はいわゆる自由主義陣営の太平洋防営体制というものは、常識から考えまして、それよりほかにはないと思うのです。公安調査庁もそういうようにお考えになつておるかどうかということだけちよつとお聞きしておきたいと思います。
#66
○藤井政府委員 具体的にここへ太平洋同盟ができるとかどうかということを私申しておるのじやございません。
#67
○黒田委員 それでは一体何を太平洋防御体制と考えておいでになるのでしようか。言葉だけがあつて内容がないということは私ども考えられないのです。何か調査庁でお考えになつておるのですか。どういうものがそれに当ると考えておるかお聞かせ願いたいと思います。
#68
○藤井政府委員 私の申しましたのは、先ほど申しましように、自由主義陣営が太平洋安全の保障をはかるということに対して、共産主義陣営がこれを妨害するという傾向はないか。しかしそれでは具体的に太平洋安全保障とはどういうことかということについては、先ほども仰せられたように、これで自由主義陣営が同盟を結ぶというようなことには考えていないのであります。
#69
○黒田委員 これ以上は議論になりますからくどくは申し上げませんが、ちよつと一言だけ御質問申し上げたい。先ほど藤井政府委員はたとえばMSA協定の成立を共産党は妨害しておる、われわれはそういう方針はとらぬ、そういう方針をとらぬということは、すなわちいわゆる自由主義陣営の太平洋防衛に該当する、こういうふうな意味のお話であつたと思うのです。ところが私どもの政党もMSAには反対である。社会党もおそらくMSAには反対でありましよう。そうしますと社会党や労働党などはやはり何か共産党と同じような、公安調査庁のとらざる態勢に同意するものであるというようなお考えにも考えられる。だからあまり共産党々々々とこだわつて世の中を御解釈になると、よその物事が偏狭になつてくると思うのです。だからそこをよく御注意にならないと、何もかも共産党と表面上同じようなことを言つておれば、みなそれを共産党の運動だというようにひつくるめてお考えになるという偏狭さが出て来る、これは非常に間違つたことになると思いますので、ひとつよく御注意願いたい。それじや私どものMSA反対運動は一体どういうようにお考えになりますか。
#70
○高橋(一)政府委員 それで最初に神近さんの御質問に対して、社会民主主義政党と共産党とはつきり区別しているということを申し上げておるのであります。労農党のことは私よく存じませんけれども、少くとも社会民主主義政党ということに、かりに前提を置きますれば、軍備の問題についてもいろいろな意見の人もあろうと思います。しかしそういうふうな純真な、たとえば人道上のいろいろな意見としてそういうふうな意見の方も、これは何も政党問題でなくて多数あると思う。それがいいとか悪いとかということは全然私どもの方では考えておりません。問題は要するにそれを実現する方法の問題なんです。議会主義の中でこれを改善して行こうという限りにおいては、われわれの方では全然それは破防法の建前からして問題にし得ないのであります。ただ共産党の場合は私どもそうではないというふうに考えておるのであつて、この考えるについては十分の根拠がございます。そういう意味で最初も区別して申し上げたのでありまして、決して何か再軍備派がいいのであつて、そうでないものはいけないのだといつたような、そういう考え方は全然持つておりません。
#71
○神近委員 大体そこがきのうの長官の御説明にひつかかりがあるようで、私が確かめたいと思つていることは黒田さんがお確かめになつたのですけれども、さつき高橋政府委員が、共産党の戦術の中には基本的なものと、ひどく広汎にわたつて線を広げたものとあるというような、言葉は違いましたけれども、いろいろの手を使うというふうなことをおつしやつたのですが、そういうときは人的つながりで、これは共産党系の者であるというふうに御判断なさつているのかどうか。そこのところは、いろいろな団体があり運動がありますから、われわれは一々長官にお尋ねに行くわけにも行かないし、非常にまごつくことがあるのでございます。私どもも再軍備も反対でございますし、MSAも反対でございます。ともかく中立主義をとるという政党に属しておりますので、そういうところをはつきり承つておかないと、これからの行動の目標を見失うというようなことになりますので、伺つているのであります。
#72
○高橋(一)政府委員 私どもこれだけ明確に共産党とそれ以外のものとは区別するという腹でおるのであります。従いまして、実際の執務におきましても、単なる表面の形でもつてそれを即断するといつたようなことは、決してさせいように気をつけておる次第であります。現実のある事柄が一つありまして、それをどちらのものであるかというようなことは、これはほかのことをいろいろ見てみませんと、これを断定することはむずかしいと私は思います。それで単に私どもがそういうふうに区別して考えておるというだけでは不十分だろうと思います。それで今度は調査の方における手続面などについてもいろいろくふうをして行き過ぎのないように、従つていろいろな事柄を私ども知りましても、にわかに結論を出しませんで、ゆつくり蓄積しまして、そうして十分な豊富な資料の上ですべて事柄を断定いたしたい。ことにある具体的な人が、たとえば共産党員であるかどうかというような問題につきましては、きわめて慎重に取扱つておる次第であります。
#73
○神近委員 あなたの話はきのうもよくわかつたように思いましたけれども長官がいろいろ気になることをおつしやつたと思うのです。たとえばヴアルガとかクラークなどの説を見ても、アメリカの景気後退がやや現実になりつつある、私どももそういうことは報道で受けております。そのアメリカの景気というものは必ず日本の景気に関係して参りまして、それから日本の生活困窮者の生活がますます悪くなるというようなことも考えられます。それで長官のおつしやつたことに、これから失業者がもつと多くなるだろう、今日失業者は半失業者を加えて約千万ということが巷間に伝えられておりますので、これは容易ならざることと私どもは前から心配しておるのです。この失業者がどういうふうにして起つたのだというようなことを長官はお考えになつたことがあるのでしようか。それは失業者自身の心がけの問題であるとおつしやるのですか、それとも日本の経済状態が導き出したものだというふうにお考えになつておるか、それからまたこれは日本の政治の貧困から起つたことか。そのことが、私気になりますのは、御存じの通りに正月早々から失業対策費の減額ということでたくさんのデモ隊が各地に出て来たのでございます。その一部に共産党の人が入つておるということは私どもも存じております。しかし大多数の者は生活の圧迫からどうしても耐えられなくて出て来たのだと私どもは考えております。そういう人が出るということを、これを一本に共産党の扇動の結果だというふうに長官はお考えになつていられるのですか。
#74
○藤井政府委員 ただいまの御質問のように、たとえば先般の失業者のデモにつきまして、あれに参加した人がみな共産党員である、あるいは個人的理由によつて失業した人が参加しておつたとは思いません。やはりあの失業の原因は、世界の経済上の事由あるいは日本の政治の貧困さ、すべてのものが原因して失業者が出たもの、私はそう思つております。個人的のものも中にはあるかもしれませんが、あの失業者の出ることをもつて個人的な理由によつて失業したものとは毛頭思つておりません。
#75
○神近委員 それで失業者が出るということは個人的の原因でない、政治の貧困あるいは日本の経済状態から出て来たということは、今のお返事で明らかになりましたけれども、今日以後もつとたくさんの人がもつと困るということになつたときに、これに対する対策は、共産党がこれを指導したり扇動したりするということで取締まるとか、あるいはこれを断圧するとかいうようなことはお考えになつていないのですね。その点をはつきりしていただきたいと思います。
#76
○藤井政府委員 そういうことは考えておりません。
#77
○神近委員 もう一つ、これは高橋調査官であつたかと思いますけれども、国会内における暴露戦術というようなことをおつしやつておりました。今日共産党は参議院では何人かよく存じませんが、衆議院の方で一人おいでになるくらいで、こういう人の暴露戦術が、たとえば委員会でも本会議でも十分行われたと私ども考えません。暴露戦術はむしろ共産党でないところで行われているということはわかりますけれども、その暴露戦術も、きのうのお話を聞いていると、どうも共産党に頼まれて、あるいはひもをつけられてやつているというように言われて、私その点で長官のお話には非常にひつかかりましたので、これをはつきりしていただきたいのです。共産党の暴露戦術と実際にあつた事実の調査暴露ということ――これはある程度国会議員の任務でありますから、軽々に私どもの委員会でああいう言葉をお使いになつて、野党の人たちを牽制するような態度をとつていただきたくないと思うのです。
#78
○高橋(一)政府委員 神近委員にはおわかりくださつておると思うのでありますが、それでは共産党が国会を暴露扇動の場として利用しているのであると私どもが考えております根拠を申し上げます。なるほど現在は非常に少数でございますが、ただ少数であるかどうかということで戦術はかわらないと思います。現にこれは一昨年の十月選挙のあと、徳田論文のあとでありますけれども、共産党が第二十二回中央委員会総会を開いたのです。そのあとで総選挙が終つて、その教訓に学べという会議の決定を流しておるのでありますが、その中にわが党は国会から締め出された、国会内の反自由党勢力に対して、積極的な援助と指導を強化し、国民大衆に対して政府と国会の暴露に、さらに積極的な活動を展開しなければならない云々とうたつてあるのでございます。そこでなぜこういうことが出て来たかという問題について、共産主義の戦略戦術の原則から申しますと、たとえばコミンテルンの第二回大会の共産党と議会主義に関する決議の中に、「共産主義は議会主義を将来の社会の形態とすることを拒否する、共産主義は議会主義をプロレタリアートの階級的独裁の形態とすることを拒否する、共産主義は長期にわたり議会が制覇を持続する可能性を否定し、議会主義の破壊を自己の目的とするものである、従つてブルジヨア国家機関破壊の目的をもつてする右機関の利用のみが論議の的となり得る。そしてただこの意味においてのみ問題を提起することが可能なのである。議会闘争参加に関し、それがブルジヨア国家機関であるからとの反対理由を掲げることは断じて不可である。」つまりそれを相手にしないという態度はよくないということであります。「共産党が右機関に参加するのは、そこで有機的活動を行うためではなく、議会の内部から大衆に対し、蹶起によつてブルジヨア的国家機関を転覆させるよう援助を与えるがためなのである。」云々ということを決議しております。このような根拠によりまして、社会民主主義政党は違いますが、共産主義は明らかに国会には国会としての有機的な機能を営ませるために参加するのではなくて、これを暴露扇動の場に使うのであるというふうに私どもは考えております。
#79
○神近委員 あまり長くなりますので、その点は私どもはあとでもつと伺いたいと思います。
 きよう右翼の団体の御説明がありましたけれども、右翼の中にも連絡を持つとか、あるいは国会のひもつきというようなものがあるのでありますか、それを御調査になつたかどうか伺いたいと思います。この中には辻さんの団体だけは右翼の団体として出ておりますけれども、ほかにも右翼の何があるのでございますか。
#80
○高橋(一)政府委員 私どもは国会にひもがついておるかどうかというような観点では調査をしておらないのであります。要するに政治的暴力団体、つまり暴力革命を目的とする団体か、でなければ一定の殺人、放火、強盗というような破壊活動防止法で限られた方法によつて政治的テロを行う団体、この二つが私どもの調査の対象なのであります。従いまして共産党については確かに私ども調べてもおりますし、団体の調べでありますから、団体のすべての活動について調査する義務がございますけれども、それ以外のそういうふうなことの考えられないような場合におきまして、国会議員さんにひもがついておるかどうかというようなことは、これは私どもは絶対に調査の対象としておらないのであります。
#81
○神近委員 その点でさつき共産党のなだれ込み戦術というものをおつしやいましたでしよう。――なだれ込みと言つた方がはつきりいたしますでしよう。その傾向の者を支持するといつたような、その程度のことは、右翼であつたつてばかでなければやつていると私は思うのです。それならどうしてそれほど共産党のことを――私はどちらもきらいでございますけれども、それほどお調べになつていて、右翼の方をどうしてお調べにならないのか、少し何か片手落ちのような気がいたしますが、私どもは両方とも実態を知りたいと思うのです。
#82
○高橋(一)政府委員 左右両極ありますから、その意味において左も調べれば右も調べろというような感じがいたしますけれども、しかし昭和二十五年のコミンフオルム以来――その前からいろいろ例の生産者管理戦術などもありますけれども、特にこのコミンフォルム以来しきりに軍事活動を扇動しまして、かくして一昨年のメーデー騒擾事件を頂点とするあれだけの一つの騒擾事態を現出した団体と、それ以外の団体とを同格に、こちらも調べるからあちらも調べろということは、私どもとしては納得できないのであります。ただ右翼の問題につきましても将来どのようにかわるかもわかりません。そういう意味で先ほどるる申し上げましたように、私どもとしては能力のできる限り調べておるつもりであります。それ以上のことはちよつとできないのであります。
#83
○神近委員 メーデー事件は今裁判中ですから、どこに問題があるかはつきりわかると思いますが、戦争前のことを考えますとメーデー事件どころではない騒ぎが幾つも起つております。もつと深刻なものが起つております。ですから戦争後起らなかつたからというようなことは口実にならないと私は思うのです。これからはよく両方ともそういうお考えで監視していただきたいと思います。
#84
○木原委員 右翼団体についてでございますが、大体明治、大正、昭和を通じて社会治安を撹乱したのは、ほとんど右翼の政治テロにあると思う。ところがいずれの右翼の団体におきましても、政治テロを目的とするというようなことは、行動綱領に掲げてないのであります。にもかかわらず、日の昭和に至る三代にわたる政変だとか、権力の打倒だとか、あるいは政治革命を企図したというようなことは、一切右翼のテロによつてなされておる。これが今日までの実情でございますが、現在の日本の右翼団体とあなた方が目しておられるものの中に、政治テロに直接あるいは間接的にでも動く可能性のある団体が存在しておるというふうに見ておられますか。
#85
○高橋(一)政府委員 神近委員からも申されたように、なお微力を尽して十分調査いたします。現在のところでは、ただいまお尋ねのようなそれが具体的危険というまでに至るような右翼団体というものは見当りません。
#86
○木原委員 右翼団体に対する取締り、いわゆる常時査察と申しますか、あるいは共産党に対する査察というようなものは、公安調査庁とどういう国家機関によつてやつておられるのでありましようか。
#87
○高橋(一)政府委員 これは職分々々によりましていろいろあると思います。私どもは先ほど申し上げたように、政治的テロ団体というようなものになる可能性が中にはあるのではないかという意味において現在対象と考えておるわけであります。それから警察あたりでも、一般のいわゆる暴力事件というような観点から、それの防犯上いろいろ調べておると思います。
#88
○木原委員 それでは向きをかえますが、現在右翼団体の動きは非常に活発だといわれておるのでございまするが、これが活発に動くというのは、結局問題は資金の点にある。どこからか資金が流れて来ておるということは想像にかたくないのでありますが、日本における右翼団体の資金網、資金源というようなものについて十分調査されておられますか。
#89
○高橋(一)政府委員 資金綱を個別に調べてはおりません。先ほど申し上げたように、いわゆる反共団体とか、特に労組工作などをする団体についての資金というものは、具体的にはいろいろ違うものもあるかもしれませんけれども、一般論としては、経営者側から、それも経営者の全部ではなくて、ごく一部ではないかと思うのでございまするけれども、そういうところから出ておるのじやないかというふうに考えております。
#90
○木原委員 具体的にどういうところからというようなことは明らかになりませんか。
#91
○高橋(一)政府委員 それは調べておりません。
#92
○木原委員 右翼団体については、資金を受けたり何か寄金を得たような場合に、政治資金規正法による届出というようなことがあるのですか。
#93
○高橋(一)政府委員 それはひとつ専門の方へお尋ね願いたいと思います。私の方では不正確だと思います。
#94
○木原委員 この表によつて見ると、全国に相当党員もあるようでございますが、個人の党費というようなものもやはりとつておるのでございましようか。共産党の場合は月平均五十円というような御説明がありましたが……。
#95
○高橋(一)政府委員 特に右翼の団体の一覧表にございます党員数とか機関紙の発行部数など、そういうものは自称の数を書き上げたのが相当あるのでありまして、たとえば六万とか五万とか一万とかいうような数字がありますけれども、具体的にそのようないわゆる党員とかいうようなものを持つておるかどうかは、どうも疑問であります。実際に規約などには何分かの党費を納める、党費というか、会費を納めるというふうになつておるものもあるようでありますが、それも納めておるかどうか疑問だと思います。
#96
○神近委員 共産党の方では非常に微に入り細をうがつて、資金が納入できているとかできていないとかおわかりになつておるのに、右翼の方だけはどういうわけでそんなに甘いのですか。たとえば人数などでは公称をお使いになつておる。そうして会費が納入になつているかいないかということも皆目おわかりにならない。私どもは、今のような情勢は非常にフアッショ的な勢力が抬頭するような時勢でないかということをおそれているわけであります。共産党だけでなくてもよろしいですから、もう少し熱を入れて詳細にごらんになつておいた方が、私ども御意見を伺つたり、調査の結果を判断いたしますのにたいへん都合がよいのではないかと考えます。
#97
○高橋(一)政府委員 先ほど破壊活動防止法の調査の対象とするものについて申し上げたのでありますが、重ねて申し上げます。一つは、破壊活動防止法に規定してあるのでありますが、内乱外患を教唆扇動するといつたような、結局暴力革命方式をとる団体であります。もう一つは、政治目的をもつて、騒擾、放火、激発物破裂、汽車、電車等の転覆あるいは往来危険、殺人、強盗、爆発物取締罰則違反、それから特殊の公務執行妨害、こういうふうな手段によりまして政治的テロを行う団体、こういうものが私どもの調査対象なのであります。一般に左翼であるから調べるとか、あるいは右翼であるから調べるとかいうことにはなつておらないのであります。それで、先ほども申したように、共産党をよく調べると申しておりますけれども、一昨年のようなああいう暴動時代、これは具体的に東京のメーデー騒擾を共産党員が、いわゆる刑事事件の上でいうような教唆したとかあるいは実行したとかいうようなことでなくても、時代の流れをずつと見ておりまして、その前に、共産党が非常に広汎かつ激越な軍事方針の扇動をやつたのでありますが、それなくして、どうしてああいう事件が起り得るか。たとえば火炎びんというものが飛びましたが、火炎びんが飛ぶ前に共産党から火炎びんのつくり方を害いた文書が流れておるわけであります。そういうふうにどうしても常識上そういう事態がそのために起つた。そういうふうないわゆる扇動行為をやつた団体と、それからまたそれ以外にそうでない団体との間に、甲乙をつけることは、私は当然だろうと思います。
 それからもう一つ御了解願いたいのは、私どもの役所は、発足以来まだ一年半でございます。そうして全国で庁員が十七百二名でございます。これだけの人数で、私どもの調べが足らぬように仰せられますけれども、私どもは全力を尽して左右両翼に対して、できる限りの努力をしておるつもりであります。そういう点を御了解願いたいと思います。
#98
○黒田委員 ちよつとただいま木原さんの御質問になりました右翼団体に対する資金の問題について、関連質問をさせていただきたいと思います。高橋政府委員は、この問題についてはよくわからないというようにおつしやいましたけれども、実は私どもはそれが非常に不満なんです。
 そこでちよつとお尋ねしてみたいと思いますが、本日私どもに資料としていただきました右翼関係団体表の中に明示してありまするような団体は、政治資金規正法にいうところの団体ないし協会であるかどうか、この点については、どういうふうにお考えになりますか。
#99
○高橋(一)政府委員 どうも専門外になりますので、――私も前にはやつておつたのでありますけれども、どうもはつきりしたお答えができません。
#100
○黒田委員 私は別に意地の悪い質問をしようとも何とも思いませんが、ただいま高橋政府委員が、専門家でないからわからないとおつしやいましたけれども、いやしくも公安調査庁の責任のある地位においでになります方が、政治資金規正法の解釈ぐらいがわからないというのでは、私は困ると思うのです。わかつておるのでしよう。そんなあいまいなことはおつしやらないで……。
#101
○高橋(一)政府委員 よく勉強いたしますけれども、この法律の解釈など――私は元来法律畑なんでございまして、それだけに常識的な解釈ということは、条文でも見ればわかると思いますけれども、実際にこれで間違いないという解釈というものは、これはうつかり申し上げられないと思つておりますので、勉強させていただきます。
#102
○黒田委員 私はただいまのような御説明では、法務委員として実は満足することができません。
 それでは長官にお尋ねしてみます。長官は、公安調査庁が、本日私どもに御提出になりました右翼関係団体表に列記されておる主要な団体は、政治資金規正法にいうところの団体ないし協会であるとお考えになりますか、どうですか。
#103
○藤井政府委員 私も実は勉強が足りないのですが、常識的に申しまして、あるいは政治資金規正法の適用を受けないのではないかと思うのですが、まだ勉強が足りません。
#104
○黒田委員 私はその点が非常に問題になつて来ると思います。いやしくも公安調査庁の長官が、本日御提出になりましたような団体表の中に明示してあります団体が、政治資金規正法に規定されておる団体ないし協会ではないとお考えになりますか。私はそれは非常に重大な御発言だと思います。常識から言えば該当する団体だ、むしろそう考えなければならぬと思うのですが、もう一度念のためにお伺いしておきます。
#105
○藤井政府委員 もう少し調査させていただきます。
#106
○黒田委員 私はこの点は非常に遺憾に考えます。いやしくも法務委員会において公安調査庁長官や高橋政府委員などが私の質問に対して調査してお答えになるというようなことは、私ども実は意外に考えます。それでは調査なさつたあとで次会に承るよりしかたがないと思いますけれども、私は本日公安調査庁から御提出になりました資料の中にうたわれておりますような団体は、政治資金規正法に該当する団体だと思います。しからばその法律に基いてこの団体が届出をしなければならぬ。同時にまた、団体としての存在を届け出るというだけでなくして、寄付せられた金ももちろん届け出なければならぬと考えます。そうしますれば同じ政府の他の役所に届け出るといたしましても、公安調査庁として右翼団体の資金の状態を調べるときに、何らの技術上の困難も何もないわけです。これを取扱つております官庁に照会を求めればすぐわかる。ですから私は実はきようはもう少し具体的に、その額がどうあろうとも一つでも二つでも承れると思つておりました。ところがそれどころではない、政治資金規正法に該当する団体かどうかということを専門でないからわからないとおつしやるのでは、非常に残念に思うのですが、ここに政治資金規正法関係の政府委員の方はおいでになりませんか。
#107
○高橋(一)政府委員 おりません。
#108
○黒田委員 どうも私はこれは意外に感じましたので、それでは私の意見並びに希望を簡単に申し上げて、そうして次会に――こういうことを長官や高橋さんに申し上げるのは、はなはだ失礼だと思いますけれども、よく御研究になつておいでくださるようにお願いしておきます。それからはたして政治資金規正法に該当する団体であるならば、金の寄付の届出があるかどうかということもあわせてひとつ自治庁から資料をお取寄せになつて御報告願いたいと思います。私は当然このことは今日承れると思つて参りましたが、まことに意外です。それでは他の委員の御質問がお済みになつたあとで、もう一点関連質問をさせていただくことを委員長にお願いしておきます。
#109
○小林委員長 ほかに御質問はありませんか。――御質問がなければ黒田君。
#110
○黒田委員 時間も大分経過しておりますので、簡単に御質問申し上げます。右翼団体に対する解釈上非常に大切なことだと思いますが、ただいま高橋さんからそれぞれの右翼団体の動向について詳しく承りまして、よくわかりましたが、ただ一つ戦前の右翼団体が戦争の勃発ないし遂行について努めた役割、それに対する評価というようなものが抜けておつたと思います。私はこの点は右翼団体というものを考えます場合に重大な問題だと思いますので、一応伺つておきます。
#111
○高橋(一)政府委員 実は昨日も、右翼についての説明がはなはだ不十分であつて、右翼に熱がないのではないかというようなお話がどなたかからございました。ただいまもそういうお問いがあつたのでありますが、右翼が戦前の政治あるいは国の方向ということに非常に大きな役割を勤めておつたということを、私最近考えておるのであります。しかし時間の関係もありまして、そういう点は省略したのでありますが、その意味で、そういう動向がきまつたというか、決定的なポイントであつたのが昭和五年である、こういうような意味で、昭和五年について、きようも重ねてくわしく申し上げた次第であります。大体あのころに方向がきまつて、あとはいろいろ段階はございますけれども、もう方向がすでにきまつてしまつているというふうに見られるのではないか、こう思います。
#112
○黒田委員 それでは、ただいまよくわかりましたが、右翼団体の本質に関する解釈上の問題といたしまして、これは私決して議論をしようとは思いませんけれども、ちよつと気づいた点を御質問申し上げて、当局の御見解を承りたいと思いますが、戦前の右翼団体が戦争遂行について重要な役割を勤めたということは、ただいま御説明の通りであると思います。これはもう万人の認めて疑わないところであると思います。そこでその次に、わが国の財閥がやはりあの戦争の勃発について利益を感じて大きな役割を勤めたというようにはお考えになりませんか、これもしかし、社会科学的に見て、だれもそう言つているのでありますが、右翼団体との関係について、そういう解釈をなさつているかどうか、ちよつとお尋ねしてみたいと思います。
#113
○高橋(一)政府委員 そういう問題になりますと、これはかなりむづかしい問題であろうと思います。少くとも共産党の分析などのように単純に行つているものではないのじやないか、その一つの根拠といたしましては、戦前の右翼も最初に申し上げましたように、資本主義の害悪の面が非常に誇張されたとき、つまり恐慌でありますとか、いろいろそういつたことが現われましたときに起つておるのでありまして、戦前の右翼は大体においてほとんど反資本主義的傾向を持つておつたように思います。それでその右翼が財閥と云々という点は、私はどうもそう断定しきれないものがあるのではないかというふうに実は考えておるのであります。
#114
○黒田委員 実はそこが私は一番大事なところだと思います。ただいま御説明なさいましたように昨日から承りましたので、私はただいま申し上げます質問をいたしてみた。なるほどちよつと現象の上だけを見ますと、右翼団体は政党にも反対、堕落した議会主義政党にも反対だということと同時に、何か財閥に対する反対も持つているかのごとく言うた。しかしながら、ただそれだけの表面上の現象をもつて右翼団体は反資本主義であるというふうにもし公安調査庁がお考えになつているとすれば、これは非常な間違いである。そうではなくて、ただいま高橋さんもおつしやいましたように、昭和五年の恐慌を契機として日本の資本主義はどういう政策に出たか、これを打開するには国内改革をやろうとしないで、その恐慌の突破口を戦争に求めたじやないですか。満州事変から支那事変にわたる戦争は財閥の政策であつた。その財閥の恐慌突破の政策に、同時にフアシズムの立場に立つて戦争を謳歌した右翼団体が調子を合した。だから私どもは、右翼団体が表面どのように資本主義に対して反対のようなことを申しておりましようとも、本質はその当時の財閥の運動というものと結びつけて考えないて、あの当時の右翼フアシズムの運動を考えることはできない。それを表面的に集約的に表わしたのが、その利益の一致を表わしたのが戦争への動向であつた、こう思う。だからフアシズム団体、右翼主義団体を高橋さんのように反資本主義の団体だというようにお考えになりましたら、非常な間違いになると思う。これは私は将来のこともあるから、特にこのことを申し上げる。あの当時のフアシズムは財閥の運動の協力者であつた。日本の独占資本というものと結びつけて考えなければならぬ。利益は一致している。それが現象の上に現われたのが戦争に対する一致という考え方であつた。私はここで議論しようとは思いません。これ以上申し上げませんが、私は高橋さんの考えは非常に間違つていると思いますので、それだけ申し上げて、もう少しひとつ右翼のことと資本主義との関係をお考え願いたいと思います。
#115
○高橋(一)政府委員 私もこういう議論ははなはだ不得手でありまして、続けるつもりはありません。ただかなり重要な問題でありますので、黒田委員がお述べになりましたことは、これは労農党としては当然の御見解だと思つております。しかし一つの見方、つまりいずれに行くにしましても、その方法をどうするかという、その方法論というものがかなり決定的な意義を持つものであつて、そういう意味で私はやはり、単に経済の進み方ということだけではなくて、もう一つ民主主義をどう考えているかという建前ですべて考えて行かなければならぬのではないかというふうに自分では考えております。なお一層よく勉強してみます。
#116
○黒田委員 私もこれ以上ここではこの問題について論ずべき場所でないと思いますけれども、ただ私は高橋さんの右翼団体と大資本家ないし財閥との関係に関する見方は、実は非常に間違つている見方だと思う。それは将来右翼団体に対してもいろいろと御調査なさらなければならない責任をもつておいでになります公安調査庁といたしましては、私はこの点は、もうひとつ御研究願いたいと思う。私は高橋さんの御意見には、まつたく賛成することはできないという考えを持つております。そこでちよつともう少しお尋ねいたします前に、はさんでお尋ねいたしたいと思いますが、かりに先ほど木原さんも申されましたような役割、いろいろテロ行為をやりましたようなあの戦前の右翼団体――私は全部とは申しません。けれども、少くとも戦前の右翼団体の中には、かりに破壊活動防止法がその当時あつたとすれば、これに該当する団体がたくさんあつたのではないか。この点はいかがでしよう。
#117
○高橋(一)政府委員 それはございました。
#118
○黒田委員 そこでもう少し御質問申し上げたいと思います。時間がございませんから簡単にいたしますが、戦後再び右翼団体が、その勢力の大小にかかわらず、とにかく抬頭し始めたという事実は、何人も否定することができないと思います。そこで私は、右翼団体に対する私どもの考え方というものは、真剣にきめておかなければならぬと思います。そこで時間がございませんから簡単にお尋ねしますが、第一には、大体再軍備に対しまして右翼団体は、例外は別といたしまして、大多数再軍備論者だということは、これは私は御質問申しませんが、結論としてよろしいと思います。しかし、もしそうでないというお考えでありましたら、ちよつとお聞きしておきたいと思いますが、大体右翼団体は、ごく少数の例外があるかどうか知りませんが、右翼団体は再軍備論者と見てよろしいのでありますか。
#119
○高橋(一)政府委員 右翼と申しましても、その点はいろいろあるようでございます。再軍備の力もありますし、それからたとえば、先ほど申しました、再軍備絶対反対という協和党みたいなものもありますし、現在の態勢を強めて行くのだというような中間的な考え方もあるようであります。
#120
○黒田委員 私は別に深入りしません。今日いただきました資料の中にも、ただいま御指摘になりました協和党だけは、はつきりと再軍術反対と書いてありますが、ほかの団体の主義主張を見ますと、私どもの見たところではどうも再軍備論者のようです。これはもう客観的に評価するよりほかしたたがない。
 それから第二に天皇制の問題についてですが、戦後の右翼団体も、旧憲法時代の天皇制の復活ということを大体において考えている。そういう特質を持つておるというように解釈してよろしいと私は思うのですが、この点はどうごらんになつておいでになりますか。
#121
○高橋(一)政府委員 大体やはり天皇制復活をスローガンとしておる模様であります。
#122
○黒田委員 そうしますと、右翼団体は、大体当面の政策としては再軍備論を持つておる。それから天皇制の復活ということは、これは要するに反民主主義だと私は思う。もう一ぺん旧憲法時代の天皇制を復活しようなんという思想が、自由主義でないとか、反民主主義でないとかいうようなことを言えば、それは少し片寄つて議論になりますから、大体旧天皇制を復活するという思想は反民主主義であり、長官などのおつしやいます自由主義でさえないと私は思う。大体そういうような傾向を持つておると解釈していいと私は思うのですが、その点いかがでしようか。
#123
○高橋(一)政府委員 私どもは、主張の内容なんかにはすべて白紙なんでございます。その点は左翼の場合でも右翼の場合でも同じことでありまして、天皇制復活を論ずる者もあるだろうし、それに反対する者もあるでありましよう。それから再軍備の問題に賛成派もおるでしようし、反対派もおるでしよう。そういうことについて私どもはまつたお白紙でございます。要するにその方法が、いつも申します通り、政治的テロあるいは暴力革命をもつてしようとするのかどうかという点に調査の中心がございますので、ただいまおつしやつたような意味で団体をいろいろ詮索してはおりません。
#124
○黒田委員 それではこの問題はこれ以上は議論になりますから、私のこの問題に関する討論的な言説はこれでいたしません。しかしただ、高橋さんがおつしやいましたように、いろいろございましよう。再軍備論者もあるし、再軍備反対論者もありましよう。けれども、私どもが物事を分析する場合に、十の団体があつて、そのうちの一つは再軍備反対と書いてあるものもある。九は再軍備賛成と主義主張の中に書いてあるというような場合、人に説明する場合に、それを再軍備論者もあるが、再軍備反対論判もあるというふうな説明の仕方は非科学的だと思います。天皇制の問題についてもそうです。大体大勢はこうだ、こういうふうに考えなければならぬ。だから、例外的には再軍備反対もあるけれども、大体としては再軍備論者だ、こういう説明の仕方をしていただかなければ、私は法務委員会における公安調査庁の御説明にはならないと思います。これは希望しておきます。しかし議論はもうこれ以上いたしません。
 それからこれはただ事実をお尋ねするだけですが、いただきました団体表によりますと、旧右翼団体の指導者が相かわらず相当顔を出しておると思うのです。そうしますと、やはりこの全体を通ずる一つの流れが、戦争前の右翼団体的指導にまた走るのではなかろうか、こういう危惧の念を私どもが抱くのは無理はないと思うのですが、この点調査庁はどういうようにお考えになつておりますか。
#125
○高橋(一)政府委員 いろいろな社会情勢によつていろいろな方向がきまつて行くものだというふうに考えますので、もちろん同じ人は同じような動きをする可能性があるというふうに見るべきでありましようけれども、だからといつてすぐにそうなるということは、他の条件をどうするかという問題でいろいろにかわつて行くのではないか、こう思うのであります。
#126
○黒田委員 議論になりますから申しませんが、私どもがいただきました資料によると、やはり旧指導者が相当幅をきかしているように思う。そうしますと私ども一抹の不安を抱かざるを得ないのです。旧指導者が新しく指導の面に立つておりまして、しかしてそれが再軍備論者であり、旧憲法時代の天皇制復活論者である。そうして資本家との関係は、高橋さんのお考えとは全然違います。私は資本家が今最も再軍備を欲している勢力だと思つておりま出す。吉田内閣とか改進党だとかいうものは、兵器製造業者のただ政治的代弁者にすぎない。日本における再軍備の根本の動力は、兵器生産によつてこの恐慌を打開して行こうという、すなわち正常な貿易によつて恐慌を打開しようとするのではなくて、兵器の製作によつて利益を受けることによつて恐慌を打開して行こうという、非常に間違つた考え方が今起つていると思います。私はその政治的現われが再軍備論になつていると思う。そういう大きな資本家と右翼団体とは私は関係があると思う。そのことを証明するのは、先ほど高橋さんがおつしやいましたように、反共活動をやる、あるいは労働組合運動に対し何らかの実力的行動に出る場合の資金は、経営者すなわち資本家から出ているのである、こういう御説明がありました。フアシズムの運動、戦後の右翼の運動は、決して反資本主義の運動でなく、やはり資本主義の運動である、こういうふうに私どもは考えております。そういうふうに考えているところに持つて来て、今申しますように昔の指導者が相当顔をきかす、相当な指導力を持つということになつて来ると、また私は昔のようなことをやりはせぬかと思う。要するに破壊活動をやりはせぬか、こういう危惧の念が浮いて来る。そこでこの団体の中には、新憲法を全町的に廃止して旧憲法を復活するというようなことをその主義主張の中に書いてある団体もある。そうして中には皇居防衛部隊を早急に結成する、こういうことを書いておる団体もある。この皇居防衛部隊というのは、一体何らかの実力組織の団体のことと御解釈になつておりますか、どうでしようか。これは主張の上に現われておりますだけで、現実にこの主張が実現されてそういう実力団体が結成されているかどうか、これはわかりません。むしろこれはお伺いしてみたいと思うのですが、理念としては、皇居防衛部隊なんと申しますのは、やはり一種の実力行使の団体じやないか。こういう団体をもつて、こういう組織をもつて、しかして新憲法を全面的に廃止して旧憲法を全面的に復活するというようなことを考えておるのでは、どうも私は破壊活動防止法の対象になる団体になつて行くように危惧される。それで私は今こういう質問をしておるのでありますが、皇居防衛部隊を急速に組織するという、ある団体があるということは御承知だろうと思います。これは調査庁からいただいた資料の中にある。一体公安調査庁はこの皇居防衛部隊というものは、どういう性質の部隊であるというふうにお考えになつておりましようか。それからもう一つ、現実にこういうものができておるか、お尋ねしたい。
#127
○高橋(一)政府委員 現実にそういうものはできておりません。おそらく書いた字の意味は、やはり何か実力でもつて――これは推測でありますけれども、たとえばメーデー事件などに刺戟されたんじやないかと思いますが、何かそこへ入つて来るのをとめるとか、そういうふうなことでも考えておるのじやないかと思います。実際はどうもできておらいなかと思います。
#128
○黒田委員 わかりました。軽い意味ならば、私どもも非常にけつこうだと思うのです。しかしこの綱領を並べて書いてあるところ見ると、また何かやる団体ではないかというように危惧されるわけです。私はこれ以上御質問申しませんが、要するにただいままでの公安調査庁の御説明、それから私以外の他の委員諸君及び私の質問を通じまして、やはり公安調査庁といたしましては、右翼団体に対しても私はほんとうに注意をしていただかなければならぬ段階であると思います。そのことを私特に申し上げまして、今日は時間もおそくなりましたから質問を打切ります。それから先ほどお願いしておきましたことは、この次にでもお答え願いたいと思います。あわせてわかれば具体的に資金の問題も知りたいと思います。
#129
○古屋(貞)委員 簡単に、これは藤井長官にお尋ねをしたいのですが、査察をいたします場合の基本方針はどこに置かれておるのかということが一つと、それから左翼と右翼で異なつておるかどうか、その点を承りたいと思います。
#130
○藤井政府委員 お答えいたします。別に左翼と右翼というふうに区別してはおりません。暴力主義的破壊活動をする容疑のある団体について調査するのであります。
#131
○古屋(貞)委員 先ほどから黒田君が伺つておりましたが、右翼の査察をする場合に――もちろんその目的はよくわかりますが、右翼団体の行動というものは多くの場合、私どもの見るところでは、資金網に重要性を持つと思うので、今黒田君も御質問のように、日本の資本家と右翼団体との関係、これに相当注意された査察をされておるかどうかということが、私問題になると思う。その点の詳しい御報告がないのですが、資金との関係はありますけれども、日本の資本家階級、そういう団体と右翼との関係についての御査察をなさたことがございましたならば、御説明願いたいと思います。
#132
○高橋(一)政府委員 私どもの調査対象とする要件を法律によつて申し上げます。先ほど来特定の政治的テロと暴力主義革命方式を目的とする団体と申しましたけれども、私どもが調査をいたしますのは団体規制のために調査をするのであつて、団体規制ができるかどうかということは、五条で「団体の活動として暴力主義的破壊活動を行つた団体に対して、当該団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる」ということで、一ぺんそういう破壊活動を行いまして、その上でさらにまたやる、こういうふうな非常に厳格な制限を受けておるわけであります。従いまして、ただ将来どうもそういう不安があるからということで、やたらにその辺の団体を調べるということは、これは右でも左でも許されておりません。そういうふうな法律の規定に従いまして私どもは調査をいたしておる次第でございます。
#133
○古屋(貞)委員 私それを承りたかつたんですが、そういたしますと、調査官などが査察いたします場合に、じきじきで調査査察をきれておるのか、その他の補助機関とかその他お使いになつておるようなことがございますか。
#134
○高橋(一)政府委員 調査官の調査は、態様はいろいろございます。これは詳しく申し上げることはできませんけれども、直接間接いろいろな方法を用いております。ただその場合に調査の方法というのは、すべてこれは任意調査でございまして、新聞記者諸君の取材活動のようなものであるというふうにお考えくだされば、大体おわかり願えると思います。
#135
○古屋(貞)委員 最後に簡単に一つお伺いしておきたいのですが、そうすると、地方の警察官などに命じるかあるいはお願いをして、ある一定の政治団体の集合などに対する調査とか報告とかいうことを依頼するという方法の調査をしたようなことはございませんか。
#136
○高橋(一)政府委員 私どもは警察とは密接な連絡をとつて、お互いに情報の交換、それから調べて得た結果の交換などをいたしております。しかし警察でこれは独自の活動をするものでありまして、私どもの方からいろいろ言うて警察活動を促すというようなことは、これはできもしませんし、またやつてもおりません。その独自活動によつて得た結果をお互いに交換するということであります。
#137
○小林委員長 この際お諮りいたします。外国人の出入国に関する小委員木原津與志君より辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#138
○小林委員長 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 次に木原君辞任に伴う委員の補欠選任についてお諮りいたします。この補欠選任につきましては、委員長において御指名いたすに御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#139
○小林委員長 御異議ないものと認め、委員長において御指名いたします。外国人の出入国に関する小委員の補欠には神近市子君を御指名いたします。
 明日は午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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