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1953/03/11 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第17号
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1953/03/11 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第17号

#1
第019回国会 法務委員会 第17号
昭和二十九年三月十一日(木曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐獺 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 古屋 貞雄君
   理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    林  信雄君
      高橋 禎一君    猪俣 浩三君
      神近 市子君    木原津與志君
      木下  郁君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 犬養  健君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  井本 臺吉君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
三月十日
 戦犯者釈放に関する請願(青柳一郎君紹介)(
 第二二五六号)
 名古屋保護観察所豊橋支部設置に関する請願(
 福井勇君紹介)(第三三一〇号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
 矯正保護管区存続に関する陳情書(大津市石川
 町二十七番地宗教々誨委員会近畿連合会沙加戸
 圭夫外十二名)(第一五七九号)
 旭川地方法務局中頓別出張所存続に関する陳情
 書(北海道枝幸郡中頓別町長浅水辰蔵外一名)
 (第一五九七号)
 長浜区裁判所塩津出張所廃止反対の陳情書(滋
 賀県伊香郡塩津村長森川正一外三名)(第一五
 九八号)
 戦争受刑者の釈放等に関する陳情書外五件(長
 崎県北高来郡森山村議会議長松尾留吉外五名)
 (第一五九九号)
 台湾省へ戦犯者の釈放促進に関する陳情書(東
 京都中央区銀座七丁目三番地財団法人台湾協会
 長藤山愛一郎)(第一六〇〇号)
 戦争犯罪人の全面的釈放並びに抑留同胞の引揚
 完了促進に関する陳情書外一件(長崎県南松浦
 郡青方町議会議長永田三郎)(第一六〇一号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 この際昨日の河野委員の発言に関し、犬養法務大臣より報告したいとの申出がありますので、これを聴取することにいたします。
#3
○犬養国務大臣 昨日の本委員会におきまして、河野一郎議員より御質疑がありましたところの有田二郎議員の勾留延長却下の経緯につきまして御報告を申し上げたいと思います。
 去る三月六日午後五時ころ、東京地方検察庁の検事武内孝之は有田二郎議員の勾留延長を東京地方裁判所裁判官に請求いたしました。延長を求める期間は三月八日から同十七日までの十日間でありました。もちろんこれは慣例により勾留満期期日であります三月七日の前日にいたしたのでございます。慣例と申しますのは、満期の当日では事務上種々不便なことも多いので、満期日の一日前に請求することに通常いたしているためでございます。主任判事は東京地方裁判所裁判官井上文夫でありまして勾留状も同判事の発付名義になつております。井上判事より東京地方検察庁田中次席検事にあてて、決定は三月七日になるかもしれなとの非公式な申入れがあつたわけでございます。しかしながら実際は三月六日午後九時過ぎに同判事より逓付簿によつて勾留延長請求却下の書面が検察庁に届いたのでございます。右却下の書面は別におまわしして閲覧を願うわけでありますが、内容は、やむを得ないと認められる事由がないから、本件勾留期間延長の請求は、これを却下する、昭和二十九年三月六日、東京地方裁判所裁判官井上文夫、捺印、こういうふうになつております。
 これを受取りましたのは、同夜の宿直をしておりました東京地方検察庁加藤事務官並びに横地検事でありました。横地検事はこれを東京拘置所へ出張中の武内検事に報告いたしました。ところが出張しておりましたため、連絡が遅れまして、十時過ぎに連絡がつきまして、その武内検事より田中次席検事への報告は午後十一時ころになりました。田中次席検事より順次上司に報告されたのでありますが、報告は深夜になりましたので、翌三月七日午前十時過ぎ法務本省に報告されました。井本刑事局長より次官、大臣に報告して参つたのは三月七日の午前十一時ころになつた次第であります。
 従つて右様の事情のため、三月七日午前中に勾留延長却下となつたと伝えられたのでありますが、これは誤りでありまして、正確に申せば、ただいま申し上げましたように、三月六日午後九時に却下されたわけでございます。以上御報告申し上げます。
#4
○小林委員長 それでは法務行政に関する件について調査を進めます。
 なお質疑の通告をされておる委員の方が多うございますから、大臣に対する質疑は要点を簡潔になさるよう特にお願いしておきます。
 質疑の通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。
#5
○猪俣委員 法務大臣に対しまして確かめておきたいと思うのであります。それは佐藤検事総長が辞表を出したやに巷間伝えられておるのであります。かようなことがあつたかないか、あつたとすれば、その理由いかん。それがどういうふうに処置されたか。それを明らかにしていただきたいと思います。
#6
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。実はそのことで一昨日事務の打合せで検事総長が私の部屋へ見えまして、笑い話のように、こういううわさがあつて、新聞の人から聞かれて自分も非常にびつくりした、どういうところからそういううわさが出たのか見当もつかない、こういうことでございました。従つてそういう事案はございません。なお私も直接聞きましたが、検事総長は四、五日前に行われました検事長合同におきましても、今はへ事の点も非常に円滑に行つておるし、近年になく検察庁全体が団結しており、愉快に仕事をしておる、こんなに愉快に仕事をしておる時期というのは近来にない経験だということを述べられたことを、あとで人ずてに聞きましたが、そういう心境が事実ではないがと思つております。
#7
○猪俣委員 実はずつと前から河井検事が移されるというようなデマがありました。私ども犬養法務大臣が健在なる限り、さようなことはデマだと信じ、今日もそう信じておりますが、申すまでもなくこういう際には検事の異動については深甚なる御留意を願いたいと思います。なお巷間多少の疑惑がかかつておりますことは、佐藤検事総長の御子息で、やはり東京地検で検事をなさつておつた方で、この汚職事件でも第一線で活躍なさつた検事が神戸の地検へ左遷されたというようなことを言う者があるのであります。これに対しては検察庁か法務省の方から何かの理由が発表になつたような気もしますが、ここで公の席上におきまして、その点につき出しても、一般人の誤解を解くようにはつきりしたことを公表していただきたいと存じます。
#8
○犬養国務大臣 これは猪俣委員が御質問になるのはある意味で当然だと思います。というのは、新聞に誤り伝えられたということでありまして、転補というふうに人事異動欄に出たそうでございます。塁はそうでないのでありまして、佐藤哲夫検事は神戸地方検察庁の事務取扱いで出張をしておりまして、その出張いたしました要務は、大体きのう今日などの新聞に出ております事案でありまして、御了察が願えると思います。これが済みますと、こつちへもどつて参ります。また同時に京都その他から、東京地方検察庁事務取扱いになつて応援のために来ておる者があります。手不足の関係、それから事情を知つておる者が出張した方がよいという便宜上の関係で、今後もこういう臨時の事務取扱いというやり方がひんぴんとして行われるのではないかと存じますので、これもあらかじめ御了承願いたいと思います。
#9
○猪俣委員 こういうよううな汚職問題が盛んになりますと、相当いろいろの方面から検事に対するある種の牽制が行われるということは、これは実際上あり得ることであると思う。ことに政党内閣におきましては、その点が非常に憂慮せられて、法務大臣は超党派の人物を出さなければならぬというような議論もある。私どもその議論にはくみしない。法務行政を中正にやることのできないようなそんな政党内閣ではないと考えておるのであります。但しよほどここに留意をしていただきたいために、私は次の質問に移りたいと思うのであります。
 それは昨今逮捕せられ、逮捕について国会の承認を求めることによりまして、いろいろの話題を提供いたしました有田二郎君が、検事請求の勾留の継続が判事によつて却下せられました。この三月七日午後十一時五分に刑務所を出られたのであります。出られますると、有田氏は三箇所におきまして容易ならざる発言をし、これが全国の新聞に報道せられております。一つは、出所後間もなく刑務所に参りました新聞記者に対しまして発言をしておる。それは河井検事という具体的な検事の名前をさし、彼が自分をこんな目に陥れたんだと憤慨し、河井検事によつて無実の罪に落されて泣いておる者の実例、河井検事の待合、料理屋その他における遊興あるいは女の関係、そういう具体的の非行を知らしてくれれば十万円の懸賞金を出そう、かようなことを出所後間もなく発言し、なお星ヶ岡茶寮に来た際に、やはり集まつた新聞記者に向つて同様な発言をし、ラジオのレコーダーにもとられ、その次には自由党の平河クラブへ行つて同様なる発言をされた。これが出所後の一時の興奮にかられた所作じやないことは、その後に広告取次業である電通に対しまして、同様趣旨を全国の新聞に掲載方を取次いでくれといつて依頼した。電通は商売でありますがゆえに、大新聞に対して広告方を交渉したところが、さすがに新聞社側はこれを拒絶したという事案があります。
 そこで法務行政の最高峰であります法務大臣に対して、その所見と覚悟を私は聞きたいと思う。今検察庁におきましては実にさんたんたる御苦心でごの汚職の摘発に当つておる。われわれ検察ファツションというがごときことはもちろん賛成いたしませんけれども、行政権と立法権を握つておりまする多数党の横暴に対し、これを抑制する機関というものは少数党と検察庁と新聞、ラジオであります。これが抑制せざれば多数党は実に絶大なる権力を握ることになります。民主政治であればあるほど、これを抑制する機能というものが十分に活躍しなければならない。私どもはそこに司法権の独立を考え、検察庁の重大な使命を考えておるものであります。しかるに同じ国会議員という国家統治機関の構成分子の一人が、自分に被疑事実がかけられたということをもつて、特定 検事に対して憎悪の言を発し、しかも懸賞金を出してその私行までもあばこうとするがごときことは、前代未聞の話であり、言語道断であります。かような者をそのまま放置せんか、わが国の司法権の活動なんというものは十二分にできません。もちろん検事諸公が勇敢にしてかかる無頼漢の言動に萎縮するものではございませんけれども、われわれ国会議員の一員として実に憤慨にたえない。われわれの面目までもつぶされたことであります。そこでこの多数の検事を激励せられておる地位にある法務大臣は、法務大臣の所属せられる自由党のしかも副幹事長という地位にある人に対しまして、はなはだ困難な立場でございましようけれども、私はあえてあなたの所見を伺いたいと思う。これは刑法の九十五条「公務員ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」私は明白に河井検事の名誉に対し脅迫をなしたものだと考えます。しかもそれは河井検事がその職務を執行するに当つての脅迫であります。天下これほどの脅迫はありません。しかも彼はなお、自分は今検察官適格審査委員の予備員であるが、委員になつて彼を追究してやる、あるいは衆議院の法務委員になつて彼をとつちめてやる、首にしてやる、かような放言までもいたしております。そうして懸賞金十万円をかけて河井検事の身辺を洗うというような放言をしておる。検事にとりましてこれほどの侮辱もなく、また脅迫もありません。そうして彼は決してこれは激情にかられて偶発的に言つたのではないことは、電通に新聞広告を依頼したことでも、実にこの犯罪は既遂であります。未遂でありません。こういう明白なる行動に対しまして、将来もあることでありますから、私どもは検察権の独立とその公正な運用をはかる意味におきましても、かかる国会議員というがごとき、ややもすればその地位に増長いたしまして、かような乱暴な放言を事とし、適正なる行政権の運用を阻害せんとするがごとき者に対しましては一大決意を持つて当られたい。そこで法務大臣はかような明白なる公務執行妨害罪の成立に対し、いかなる取締りをなさんとするものであるか、そのお考えを承りたいと存じます。
#10
○犬養国務大臣 お答えをいたします。有田議員の発言に対して全検察庁職員が異例な衝撃を受けたことは遺憾ながら事実でございます。しこうしてこれに関しまして、刑法にも関連して種々内部に議論のあつたことも事実でございます。ただ猪俣委員の仰せられました電通に新聞広告を依頼したという事実は初耳でございますが、その他の事実は全部法務省も検察庁も承知しております。そこで当人の河井検事の心境を事務次官、刑事局長より連絡して聞いた事実もあるのでございますが、当河井検事は今後ああいう言動が繰返されれば自分一個の問題ではなく、検察庁全体の問題になるので考えざるを得ないけれども、今までのところでは自分が進んで告訴するというような心境には固まつていないという御返事でありました。従つて河井検事としまして 、厳正な捜査をすることによつて国民の輿論にこたえたという心境であるとの返事でございました。まことに遺憾なできごとでございますが、今のところ刑法に照して法務省あるいは検察庁が積極的な行動に出るまでには立ち至つておりません。今後の推移を静かにながめたいというのが当人の心境であり、法務省、検察庁の心境でもございます。
#11
○猪俣委員 申すまでもなく公務執行妨害罪は親告罪ではありません。河井検事自身が現職にあり、しかも有田二郎を取調べのその衝にあるんでありますがゆえに、みずからこれを告訴するという手続はあるいは遠慮なさつておるかもしれませんが、これは明白なる犯罪行為であり、しかも親告罪であらざるがゆえに、しかも私は今後の検事の活動に対しまして実に重大なる影響を及ぼす事案であると考えます。今何も考えておらないという御答弁でありますが、私はさつそくこの捜査に当るべきものじやないかと思う。どうしても検察庁でそういう態度をおとりにならぬとすれば、私どもは党として告発の手続をとる決定を今朝いたしましたけれども、これはわれわれの告発を待たずして検察庁自身において捜査する段階ではないかと思うのであります。私は検察庁が、明白に公務執行妨害罪に該当する疑いがあると認定しながら、この捜査をなされないという理由は、どこにあるのであるかお伺いいたします。
#12
○犬養国務大臣 私の言葉が足りない点もあつたと存じますが、何も考えていないということではないのでありまして、大いに考えておるのであります。私が本人に告訴の意思がないと申し上げましたのは、刑法二百二十条の名誉毀損の問題がさしあたり問題になると思います。河井検事としては非常に熟慮されたようでありまして、今のところは自分から告訴するつもりはない、ほかの刑法九十五条あるいは二百二十二条ですか、そういう問題も議論にも出、考慮にも置いておられるようでありますけれども、今後ああいう言動が繰返されれば全検察庁の問題である、自分一個の問題と思わない、けれども今のところは自分としては厳正な捜査を遂行するごとによつて国民にこたえたいという心境であるそうであります。何も考えていないというのではなく、実は非常に議論も検察庁であつたようでございます。私としてはこの検察庁の議論をどうこうとさしずするのではなく、どういう心持でいるか、事務次官、刑事局長をしてさつそくあの当時問いたださしたところが、本人がそういう心境であると言いますので、まあ一まず本人の心境を一番重んじようじやないか、しかしもうあと事が済んだというわけではない、河井検事当人が今後こういうことが繰返されれば考えざるを得ないと言つておりますので、その推移を見たい、こういうのが偽らざる真相であります。
#13
○猪俣委員 法務大臣に、よほど慎重に考えていただかなければならぬことは、一河井検事の問題ではございません。河井検事一身の問題にとどまるものでありますならば、あるいは河井検事の考え方というものが主になりましよう。しかし日本全国の検察行政に対しまするこれは重大な問題でありまして、これは実に憤慨せざる者がない天下の輿論であります。このままにしておきますことは、われわれ国会議員としても実に無用なる誤解を一般大衆に与え、ひいては国会そのものの権威を傷つけますのみならず、一方司法権、検察庁というものに対して、彼らはやはり長いものには巻かれろで、権力のあるもの、実力のあるものには手が出せないというような印象を与えるということは、こういう道義が頽廃し、正直者がばかを見て、悪こすいやつがうまくやつておるというこの世情に照してみまして、実に重大なる影響を及ぼします。私はこれは実に軽々の問題ではないと思う。国家百年の大計から見てこれは容易ならざることであります。おそらく過去においてもかような発言をなした者は不敏にして私は聞きません。今日におきまして大いにわれわれが国会の権威を高め、わが国家にフアシズムの起るすきを与えないようにしまして民主政治の完成を期さなければならぬこの際、こういうように一方は国会を傷つけ、一方は検察行政を疑わしめるような発言をしておる。これを一切手がつかぬというようなことでありますならば、その人心に及ぼす悪影響ははかり知れざるものがあります。私は、これはもう一ぺん検察庁の最高首脳部会議を開きまして、これに対する皆さんの決然たる決意を固めていただきたいと思うのであります。われわれは国会議員としてまた善処する道を考慮いたしますけれども、まず第一に被害者であります検察庁において、いま少しごの事の重大を認識せられ――これも単に有田二郎君だけの問題じやありません。第二、第三、第四のかようなる暴言を吐く者が輩出せぬとも限りません。有田君のときにやらぬで違つた人のときにやるということになると人にえごひいきをつける疑いが生じて参ります。初めからかようなことが再び起らぬように徹底的な態度をとることこそ、お互いに司法権あるいは国会の権威を高める上において、そうして人心に及ぼす影響において、重大なることじやないか、これはあなた閣議にはかつていただきたい。私ども漏れ承るところによれば、吉田総理も非常に遺憾の意を表しておられるということです。閣議にはかつて小さい事件・と考えずに善処していただきたい。なぜならば、われわれ国会議員の心の中に、おのれの行為は反省せずして、ただ単にいばり散らさんとするがごとき一つの優越感がある、これは私自身が反省する言葉でありますが、これを慎まなければ国会の権威は保てない。そういうわれわれの心の中にひそかにあることを有田君がある程度発言したと私は考えておる。これは有田君個人の問題だけじやないと考えておる。その意味において事は重大だと考えられる。私は切に法務大臣の深甚なる配慮を要望いたします。
 それから、近ごろどうも異常なることがたびたび起りまして、私どもも送迎にいとまないのでありますが、昨日の当法務委員会におきます木下委員の質問に対します人達文部大臣の答弁は、これまた容易ならざを趣旨を含んでいる。私の執拗にわたるまでの質問に対しまして、大達氏は戦時中も今も少しも思想の転換はやつておらぬ、戦時中そのままであるがごとき態度を堅持されたのみならず、最後にあの東京裁判は野蛮人のすることである、食人部落がけんかをして勝てばあとで首祭りするのと同じことだという暴言をされておる。一体これは何ということであるか。わが憲法は御存じのように徹底的に過去の日本にざんげをいたしまして、世界に誓いを立てた文句をもつて始まつて、そうして憲法九条においては一切の戦争を放棄している。この憲法の精神は公務員ぶみずから実践して守らなければならぬものであることは、憲法九十九条に明記されてりおます。しかるにこの憲法の精神をほとんど踏みにじるがごとき言動をされておる。この昨日の大達文部大臣の言動を速記録でしさいに点検していただきたい。容易ならざる思想が含まつておる。かような人が文部大臣の地位についておるごと自体が奇怪千万であります。これは冷静に分析して彼の思想を検討していただきたい。憲法の精神を蹂躙するのみならず、場合によつは破壊活動防止法の違反であります。これは検察庁としても決して不問に付すべき問題じやない。(「思想調査だ」と呼ぶ者あり)思想調査をすれば彼は破壊活動防止法違反の嫌疑が出て来る。かようなことに対しまして、法務大臣として閣議においても十二分なる検討を遂げていただきたい。東京裁判というがごときは、国際連合の理念から発生いたしました新しき裁判形態であり、これは将来世界が一つになりましたならば、世界裁判に発展すべき新しき企てであります。そして、もちろん日本だけの責任でないにしても、戦争を積極的に働きかけたものに対する処罰の一つの新しき形式である。東京裁判それ自体は、この点について木下君と私は理念が違うかもしれませんが、将来の裁判のあり方を暗示いたします重大なる理想的分子を含んでおる。これを野蛮人部落の首祭りみたいなものだなんということについては、案に大達文部大臣の思想そのもに対しは私は最大の疑惑を持つものであります。これは場合によれば破壊活動防止法違反じやないか、御検討願いたいということをつけ加えておきます。これに対して法務大臣はいかにお考えになりますか。
#14
○犬養国務大臣 大達文部大臣の答弁は、どういう気持で言いましたか、私全部聞いておりませんのですぐここで確信を持つてお答えするわけには参りませんが、猪俣委員の御質疑の御趣意のあるところはただちに伝えたいと存じております。
 それから先ほどちよつとお答えを落してしまいまして、しいて答弁も求められなかつたようでございますが、今のいわゆる疑獄事件が終了いたしますまでは、重要な部内の人事異動は断じていたしません。これはお約束しておきます。若い第一線の人でそう重要でない人を手不足のために、忙しくなつた地方検察庁にまわすというようなことはあるいはあるかも上れませんが、これも私一存でやるのではなく、部内の総意を聞いて判断するわけであります。重要な人事異動は疑獄事件の間はいたしません。
 もう一つ、御注意のありました、検事の行動についていろいろ調査をし、それを土台として干渉が行われるということは、過去のいろいろな事件で経験をしておりますので、地方検察庁あるいは高等検察庁におきまして、第一線の検事にはその点を十分徹底して注意を与えております。行き帰りの乗物につきましてもあるいは飲食につきましても、非常な周密な注意を与えていることを申し上げておきたいと思います。
#15
○小林委員長 古屋貞雄君。
#16
○古屋(貞)委員 これは犬養大臣にお尋ねするのですが、私も感情を抜きにしてお尋ねいたしますし、法相もその立場でお答えを願いたい。私は徹底的な御決意を求めなければならないと思うのですが、案は今や次から次に起つております汚職事件が国会に対する全国民の非常な疑惑を深めつつあるのでございまして、このまま推移いたしますならば、国民が政治にそつぽを向き、国会を否認するような結果になつて来やしないか。まさに今ちまたにはさようなきざしが非常に強く出て参りました。ここにおいて私どもは、国会に対する問題、もう一つは司法権独立の問題といたしまして、立法府と司法権の関係について画然たる権限の行使をして参らなければならぬ時期に際会しておると思うのです。特に、今やこの汚職事件の徹底的糾明と、事実の真相をはつきりと示して、責任のある者は責任をとり、責任のあらざる者はそれをはつきりとして、公明正大な朗らかな気持でお互いに与えられた職責を遂行して行くという重大な時期に際会しておると思うのであります。ほとんど司法権の独立に国民の輿望が集中されておりまする関係上、法務大臣の一挙一投足の問題は相当大きな影響を与えますので、司法権の独立のためには身命を賭して法務大臣は努力されるかどうかということを、まずお答え願いたい。
#17
○犬養国務大臣  ただいまのお話は、全然私は同感申し上げます。司法権の独立が疑われますと、国の対外信用も一番落ちるのであります。私が外国をまわつておりましても、司法権のうやむやな国に対する信用というものは非常に低くなつております。お話の通りであると思います。また疑獄事件が起りますと、ことに国会関係で疑獄事件が起りますときは、私のまだ代議士になりたてのときに同じような時代が一応ありましたので、体験がございますが、議会否認の声が出、ひいてはテロリズムというようなものを誘発する危険がございますので、この点も深く心にきざみ込んで仕事をしておるつもりでございます。また私は政党に属しておりますけれども、一番大切なのは、政党が国民に対して信用を得て、そうして今のようないろいろな御質疑が全部終了する時代を早く招来して、再び新しい気持で出発するということが、今度の事件に対する私の態度の一番根本でなくてはならぬと考えております。従つていやしくも政治をもつて司法権を汚すというようなことは、万々ないように心がけております。幸いに検察庁でもその点については私を信頼してくれておりますので、この上ともその信頼を裏切らないようにやつて行きいたと思います。これは古屋さんの御質問に対して、あらためて厳粛にお答えしたわけであります。
#18
○古屋(貞)委員 そこで問題は、綱紀粛正問題、国民の道義の廃頽の問題でありますが、官界、政界、財界にわれわれの想像し得ないほどに悪弊が流れておりまして、今日においてこの悪弊を、今回のような汚職事件をきつかけに、この不祥事をあげて、これを徹底的に正しい方面に引きもどしまして、官界における綱紀の粛正、一般国民間におけるところの道義の廃頽をとりもどさなければならないと私は考えておりますが、法務大臣もさようなお考えをお持ちになつておるかどうか、そのお心持を承りたいと思います。
#19
○犬養国務大臣 毎日仕事に従事しておる根本の心持は、仰せのような心持でやつております。
#20
○古屋(貞)委員 そこで特に私どもは、司法権の独立を守つて参ります前提といたしまして、司法に関係を持ちます方たちは、その身を処することが相当厳格でなければならないと思うのであります。古い言葉でございますが李下に冠を正さずあるいは瓜田にくつのひもを解いてはならない、かようなことをよく私ども古くから教えられておつたのであります。かような尊い金言を中心にいたしまして、私ども国民の道義心というものは貫かれて来たと思うのであります。ことに法務大臣は白樺の同人であつて、中国に対する非常な御研究をなされておりますし、こういう方面の思想の流れとでも申しましようか、少くとも役人の、特に人をさばく立場におります人々の身を持する上においてのかような鉄則を、十分御理解なされておると思います。さようなお気持で、ただいま仰せられたようなお考えを十分実践せられるお気持があるかどうか。この点を承りたい。
#21
○犬養国務大臣 御趣旨は同感でございます。私も外国で政治家ともつき合いがありましたし、政治家の毎日の生活にも触れております。政治家もいろいろな人に接します。私もふだんは自由にいろいろな人に接しますが、こういうふうないろいろな問題が起つて来ましてあられもない疑いをかけられるということはつまらないことでありますし、また地位が地位で、国民に与える影響も大きいわけでございます。ことに目下は法務大臣という職責上注意をいたしております。その点の御注意と思いますが、それは十分お聞きしておきます。
#22
○古屋(貞)委員 そこで今回の捜査に当つて参つております検察官諸公の御苦心は、われわれ国民といたしましては心から感謝し、尊敬をしておる。特に先日新聞によつて私ども承つたのでありますが、藤井という検察官は激務のために遂に倒れた、かようなことを私ども新聞で承知いたしました。なお漏れ承るところによりますと、捜査しまするために予算不足いたしまして、ずいぶん不自由の関係において捜査が行われつつある。かようなことを私ども非常に心配して参つた。幸いにいたしましてこの予算も御配慮の結果、何とか不自由なしに捜査ができる状況に今日はなつておるそうでございますけれども、さような御苦心をされておりますこの涙ぐましい御捜査に対しましては、私ども国民の一人として、一方において非常に大きな責任と信頼を持ちますと同時に、半面におきましては非常な感謝をいたしておるのでありますが、かような状況に置かれておりまして、真剣な御活動をされておりますいわゆるあなたの部下、言いかえますれば、非常な不自由や非難を受けつつも毅然として捜査に当られております部下に対するあなたのお考えをまずひとつ承りたい。
#23
○犬養国務大臣 この前予算委員会で古屋さんでしたか、やはり経費の御質問がありました。当時まだ大蔵省と最終的にまとまつておりませんでしたが、事務当局でも満足するような十分な数字を要求いたしまして、大体大部分これが認められたのでございます。私どもの心がけといたしましては、毎日国会から帰りますと、特に役所に寄りまして、過労の検事はいないか、あるいはよく胸を悪くする人がおりますので、そういう点も、私の部屋に幸い注射に来る法務省の医務室の看護婦がおりますので、たれか検事さんや、検察事務官が診察に来たかというようなことも聞きまして、あつた場合はすぐに秘書課長を通じて注意をいたしております。だんだんあたたくなりましたけれども、深夜車がないので、それで無理して、帰るときに必ずからだをこわしますので、深夜まで就業した検事に対しては、役の車がなければハイヤーで帰してやる。そのためにも予算がとつてあるのですが、自分のために使うというと、まじめな人たちであるから遠慮するのであろうから、それは特に命令的に車を使わせております。御承知の通り、過去のある大事件で、深夜役所からの帰途変死をした検事がありますので、特にその点をも注意をいたしておるつもりでございます。また生卵とか、その他滋養分も十分予算の中からとつて健康を保持するようにわれわれも注意いたしております。そういうふうで、至らないものでございますが、毎日夕方省に帰りますと、まずその日の健康状想を必ず聞くことにいたしている次第でございます。
#24
○古屋(貞)委員 非常にお心やりのあることについては感服をするのであります。そこで私大臣に承りたいのは、先日私は予算委員会で大臣に御質問を申し上げたところが、大臣は私と対決をするというようなことを言われた。それから非常に興奮されておしかりを私は受けたのですが、きようはその点についてひとつお尋ねしたい。
 一月七日の日に、山下汽船の専務吉田次郎君、常任監査役の管朝太郎君が逮捕されて、しかも山下汽船に対してあなたの部下は、非常なるところの犯罪の嫌疑をかけて、逮捕状も出して捜査をしておつた。この事実を法務大臣は御承知のはずであると私は思う。それで、ただいま承りました李下に冠を正さずという気持がございますならば、法務大臣がその三日後の十日の日に山下汽船の会長の山下太郎にお会いになつておるということ、これ自体が非常に国民の疑惑を呼んでおると思う。私どもも疑惑を持つておる。のみならず十三日の日に――これは先刻新聞でも法務大臣のまんじゆう問答とかいつて相当問題にしておりましたが、私はさような形容詞よりも、国民といたしまして真剣に考えますことは、一切の捜査陣の指揮官としての任務を帯びております法務大臣が、十日に山下太郎会長に合い、しかも十三日には、現在日本の国民の非難の的になつております赤坂の日本一の料亭の中川において山下汽船の重役とお会いになつておられる。あなたは、自分は冷たいものを飲んで帰つた、新年のあいさつをして帰つたとおつしやるけれども、国民は絶対にそんなことを信じません。まんじゆうであるとか、あるいは踊りの切符であるとか、かようなことはおそらく国民は信じておりません。これは私どもも信じられません。少くも捜査の的になり、その会社の重役が検挙されております後において、あなた自身がその会社の会長、重役と料亭でお会いになるというようなことが、はたしていいのか、悪いのか、私はこの点を国民の名において承りたい。それでもあなたは李下に冠を正さずという信念のもとに行動されておるとおつしやるかどうか、この点について承りたい。
#25
○犬養国務大臣 先日対決とまでは申しませんが、突然の意外なことで、古屋さんもお言葉が強くなり、私も強く御返答しまして、あるいは礼に失したかもしれません。今日はたいへん穏やかに聞いてくださいますので、私も十分お答えをしたいと思います。
 国民の全部が疑惑を持つておるというお話で恐縮でございますが、少とも一部の人はこの真相を理解しておると思います。事柄を申し上げますならば、一月十日ではなく、秘書官室で調べましたところでは八日だそうでございます。山下汽船会長の山下太郎君が秘書官を通じて面会を申込んで来たので、何のことか全然わからずに、いつでもお会いすると言つておいたのですが、重役の一部が浮貸しをしてこげついた事件である、よくある事件だと私は思いました。あなたは一体関係しているのかと言つたら、全然知らないというという。それならそれでもいいじやありませんか、重役もけしからぬじやないか、こう言つて帰したのでございます。従つて心にもとめませんから、いかようにも法務省、検察庁をお調べ願つた方が、私の心にかなうのでありますが、下僚にも秘書官にも次官にも、こういう問題を調べてやつてくれとは申しません。よくあることで、重役のふらちなことだ、こういうふうに考えて、念頭にも置いておらなかつたのでございます。従つて山下太郎君にその後料亭で出会いましたときも、これは当時の東京の大新聞の座談会にも出て刈りましたが、検察庁としても、あれは一浮貸しの焦げつき事件にすぎないと思つている時でありまして、もちろん私にもその報告もしません。従つて大臣がそのことについて全然予期しないのは当然だというのが検察庁の考え方でございます。この考え方は今日もかわりがございません。その点は法務省でも検察庁でも、いつでも証人に出ると申しておる次第でございます。従つて一月十三日に――横田という社長があとでひつぱられたわけでありますが、そのひつぱられてしばらくたたないうちは、それがいわゆる造船のリベートの問題とかなんとかがやかましく問題になるということはだれも知らないのでありましてこれは古屋さんもさぞかしこういう御質問をなさる以上は、新聞記事をお調べになつたと思います。また法務省でも調べてくれましたところが、横田がひつぱられるごろにはまだ浮貸し事件が問題であつて、いわゆる造船疑獄という徴候はない。大分あとに新聞がそろそろ書き出したわけであります。神ならぬ身の私が一月十日に知つているわけはない。そういうことが真相でございます。しかしかりに横田がひつぱられたあとであるならば、私も地位の重要性にかんがみまして、出会いましても、いずれまたゆつくり、こういうことがすつかり済んだときにお目にかかりましようと言つて、おそらくわかれたと思います。ただ古屋さんの御注意の点は、私は今後十分に気をつけて行きたいと思います。
#26
○古屋(貞)委員 私が怒つたというのはこれはあとでございます。私が十日の日の山下太郎さんに対する面会の問題、十三日の中川の問題をお尋ねしたところが、法務大臣が非常に興奮されてお答えをされたので、私が、特に興奮をされて怒られる理由はないのである、疑うのはあたりまえなんだ。かように申し上げたのですが、それはともかくといたしまして、七日の日に、吉田専務と菅常任監査役の逮捕については、いかなる新聞でも五段抜きで書いておりますから、まさか法務大臣が御存じないとは私は言いません。しかも自分の部下がさような逮捕状を出されたのでありまして、私どもは法務大臣自身がさような請託を受けてかれこれしたということではないのです。さようなことを私言つているのではありません。さようなことよりも、少くも地方におきまする検事正なり検事さんなり部長さんなりが、自分の部下がある事件で被疑者を捜査して逮捕状が出されているようなときに、その会社の軍役とその捜査さなかにおいて料亭で酒を飲むということ自体が問題になつておりまして、従来の私どもの経験では大体責任を問われております。しかも本件のようそれからそれへと疑獄事件が続出いたしまして、ただいま猪俣君から御質問なされたように、残念ながらわれわれの同僚にも逮捕令状が出される方が出て来た。国民をあげて司法部は大きな力でこれを押えられてしまうのだということを非常に疑つております。これは疑うのは無理からぬことだと思います。国民諸君が自分の血の出るような税金を出して、そしてその税金が日本の自立経済を立てるために、あるいは国民生活の安定のために有効適切に使われるということを念願として、親子心中をいたしましても、自分の納付令状に基いて税金を納めている。この著しい立場から申しますならば、本件のような大きな疑獄事件における一挙手一投足に対しましては、非常な関心を持つと同時に絶大な信頼を司法部に持つわけです。司法部以外には持たれないというのが町の声であります。国民の声を聞いてみますならば、もう司法部に信頼をかけるよりしかたがない、しかしながら司法部も、法務大臣がかような行動をとられたのでは、われわれは信頼することはできないのではないかというような疑いが非常に熾烈になつておりますので、私はこの点についてあえて法務大臣にお尋ねしておるのでありますけれども、単なる感情を抜きにして私どもは申し上げておるのですが、やはり司法部におります地方の検察官、検事さん、検事正のごときは、あなたと同じような行動をとられた場合には相当責任を問われています。これは私どもの今までの経験で責任を問われております。しかるに法務大臣がその責任をとられずに、自分はさようなことはないのだ、自分は悪いことをしていないと立証する、かようなことで済むか済まぬかという問題です。私は法務大臣の一挙手一投足が捜査に重大なる影響を持ち、部下に対するところの非常な影響を持ち、国民の司法部信頼に対する影響を持ちますので、あえて私はお尋ねしておるのでありますけれども、一体これに対して法務大臣は、ただ御注意ぐらいというようなことでお考えになつておるようでありますが、私どもは注意ではない、法務大臣の責任はどうか、お考えはどうか、決意はどうか、もつと進んで申しますならば、一体司法の独立をはつきりと、国民がいかなる方面から考えましても、いかなる方面から御検討願いましても、司法部は健在なりという一つの姿を持つならば、私は法務大臣がまず第一に自由党の党籍を離脱すべきだと思う。一方においては立法府の自由党の党員であり、一方においては立法府から独立するいわゆる司法権の総元締としての立場に置かれておる。私どもは神様でない人間の法務大臣に対しましてお願い申し上げたいことは、一体自由党を離脱して国民の疑惑を一掃して、徹底的に今回の汚職事件の捜査をやられる御決意があるかどうか、まずこの点を承りたい。
#27
○犬養国務大臣 たびたびの御注意ありがとうございます。大きな声を出したのは私の方でありまして、古屋さんに責任がありません。その点は決してあなたにかごつけようとは思つておりません。私も心外だつたので、血の気が沸いて大きな声を出したのであつて、ああいうとき声を出すことは人間として当然だと思つておりますが、しかし相手があることで、相手には御無礼であつたと思つております。従つて大きい声を出したのは私が先であることを言明しておきますから、どうぞ御安心を願いたい。
 それから私の行動につきまして――私も自分の問題はなるべく厳格にしてたいので、当時ここにおります刑事局長なんかにも、どう思うと言つて厳密にはかつたことがございます。その点に関していささかも私が法務大臣として今後の捜査に資格がなくなつたと思つている者は、まことに僭越でございますが、法務省、検察庁全員に一人もございません。これはひとつ御安心を願いたいと思います。
 それから法務大臣は党籍を離脱した方がいい、これも確かに一つの御識見だと思います。私の交が生きておりますときに、衆議院議長についてそういう問題が実は起りました。そのときは私もまだ非常に若く政治に――今日もそうでありますが、理想を持つておりましたの、この問題を真剣に考えたことがありますが、当時の判断も今の結論も同じでありまして、私がたとい党籍を離脱しても、私の心が曲つておれば同じことでありまして、先ほど猪俣さんもおつしやいましたように、そういうことで神聖な法務行政が曲げられるような政党員なり政党なら、もう政党そのものがだめになるのでありまして、私は党籍をあえて離脱するということでなく、党籍を離脱しておるような心持で、毎日の仕事をして行きたいと思つております。私が政党員として発言をし指揮をしておると思つている者は、今私の役所に幸いに一人もおりません。それは私が偉いためでなくして、あの役所がそういう気分にならないと一つも毎日の仕事が動かないところであるからでございまして、決して私の手柄ではございません。また私は役所に帰れば、人が見ていようが、見ていまいが、そういう心持で目の前に来る書類を扱う。それがきのうもお話が出ましてが、人生における一つの修養の道でありまた務めの道だと考えております。いろいろこういうときには――古屋さんのお気持もわかるのですが、呼び声ほど捜査が進まない、これは犬養がやつているのじやないかというように一応思われ、あるいはうわさが出ることも無理からぬ点があると思いますが、捜査は決して停頓はしていないのでございます。なぜそういうふうに見えるかと申しますと、近年における大事件を扱いました過去の体験によつて、検察当局は、ただいきなり手を広げるというよりも、非常に慎重に固めて行かないといけない、もう一つは力以上のことをしようとすると、必ずあとで公判のときに、俗な言葉でいえばしくじる。こういう体験がありますので、このたびの捜査は非常に周密かつ堅実にやつております。保全経済会のことにつきましても、予算委員会で古屋さんもお聞きになつてむられたでありましようが、いろいろ捜査がどうも鈍かつた、これは法務大臣に責任があるのじやないかというお話でありましたが、今にして思えば、あの停頓したがごとくにして非常に固めて行つたやり方は、私は満腔の気持をもつて、東京地検のやり方を支持しておるものでございます。そういうわけで、政党員が法務大臣になつておるというのは、政党員でない人が法務大臣のときよりもよけいに批判がある。その批判をけしからぬと思わないで、そういう批判にますます報いるようにしなければならぬというすなおな気持が大切と思いますが、私はそういう心持でやつて行きたいと思いますから、不審に思われたことは、どうぞ御遠慮なく今後とも御質問あるいは御注意を願いたいと思います。
#28
○古屋(貞)委員 犬養法相は自分の部下の方面のみ気にされておるようですが、私どもはそうではないのです。それならば承りまするが、犬養法相は昨年の、今問題になつておりまする造船疑獄の根本をなしました外航船舶建造融資利子給補法案が通過いたしまする前後、今相当造船疑獄で問題になつておりまする浦賀船架の多賀という幹部の方と、やはり中川にしばしば出入りをいたしたということを――私どもは事実さような事実があるかないかは知りませんけれども、佐竹メモ、なお決算委員長の田中彰治君のお持ちになつておりまする森脇メモ、かような関係におきまして、田中彰治氏あるいは佐竹氏、私三人でお会いをいたしまして、大体そのメモの内容を承りましたのですが、それによりますと、法務大臣も中川に数回造船関係者と出入りをされて、宴席にはべられた。かようなことがあるかないかは知りませんけれども、さようなことを私どもは新聞その他において承知しております。従いまして部下が生命を賭して仕事に忠実にやつておりまする場合に、法務総裁だけが、いわゆる万金をかけて――承りますと、一夜に数万円あるいは数十万円の宴会費を払つておるというような、さような豪奢なぜいたくな宴会に法務大臣がはべられておる。かようなことを新聞によつて国民に――真実あるなしは別として、発表されております。これに対する国民の考え方であります。一方においては、部下は非常に懸命に安い月給に甘んじて忠実に国権の行使に従事されておる、奔走されておる、反面にはその総指揮官の法務大臣がぜいたくな料理屋に出入りしている、かようなことを考えまするときに、部内に対する法務大臣の責任よりも、国民に対して疑惑を与えるような行動をされておるということ自体、それを私どもはお尋ねしたいのであります。これに対して法務大鹿は一体いかにお考えになつておるか。法務大臣がさような所に出入りしたかどうかしりませんけれども、さような疑惑を国民は今持つております。そうして長いものには巻かれろで、もうこの問題は真相は暴露されないんだ、かような疑惑を持つ国民の声が「私たちの言葉」などでちよいちよい私どもの耳にも入つて来る。ラジオの「私たちの言葉」の中において、その問題が非常にしげく私のに耳入つておる。なお、私ども地方へまいりますと、一体どうなるのですか、偉い人が悪いことをする場合においては、有田さんのようにああいうふうに抜け穴がある、ああいうような特権が与えられておる、しかしわれわれが自転車一台盗んでもすぐひつぱられる、かような矛盾した社会において、今回のこの歴史的な汚職事件というものを法務大臣のようなああいう態度ではたしてほんとうに剔抉できるだろうか、こういう質問に私どもはしばしば突き当るのであります。でありますから、私どもはこれについて法務大臣が――こういうような疑惑が国民に与えられておる、この疑惑を持つことは国民の自由であると同時に、持たなければならないような形になつております。従いまして、この形に対して、この情勢に対して、国民がさような疑惑を持つのが無理であろうか、その国民の声を代表して私どもがここで大臣にかようなことを申し上げるのが無理であるか。法務大臣は、いや自分は潔白だ、部下がみんな証明してくれる、こういう一ぺんの答弁でこうした政治上の責任が一体払拭されると思うかどうか。今ここで一番大事なことは、司法部が国民の信頼をかち得て、結果がどうあろうとも、なるほど司法部は国民の輿論を代表して捜査してくれた、その理非曲直を明らかに、責任をはつきりしてもらつたのだと言われて、この司法部の行動に対する信頼を持つていただかなければなりませんし、さようなことを念願するので、私どもはその過程において、私どもはその過程において、法務大臣のそういう行動に対する責任をお伺いしておるわけであります。法務大臣の御心境と、これに対する御決意を私は承りたいと思います。
#29
○犬養国務大臣 いろいろ御注意ありがとうございます。国民が、おれたちはすいとんを食つておるのに、非常にぜいたくな料理を食つていておもしろくないと思われることは当然でありまして、宴会などもなるべくぜいたくでないような方法をとらなければならぬと思います。その点は御趣旨の通りでございます。さりとて私は、今法務大臣として重大な責任であるとは思つておりません。なるべく国民が誤解しないような、つまり危うきに近寄らず、批判の的になるような会には出ないことということは覚悟しておりますが、それをもつて私が検察庁を指揮できる資格を失つたとは思つておりません。しかし御注意はよくわかつております。浦賀船渠のことは私からも進んで御説明したいくらいでありまして、多賀というのは社長です、重役ではありません。これは一年の半分くらい外国に行つている人でありまして、彼の任務は南米、イギリス連邦系と日本との結びつきということを考えておるのでありまして、少しかわつた人物でありまして、浦賀というのは旧海軍から伝統があつて、運動をしなくてもやつて行ける会社であるから、自分はひまがあればそういう外国との結びつきをつけたいということでありまして、たまたま私はちようどそのころ外務大臣の代理も兼ねましたが、ブラジル、アルゼンチンその他いろいろ国の事情は違いますが、もつと南米というものと密接になることが日本として一つの大きい国是のポイントであると考えまして、多賀君が南米に出かける前とあとには必ずお話のように会つて話をいたしました。それから南米からある大統領の片腕のおむこさんを連れて来まして、これは私内閣の諸公にも紹介をいたしました。その人とは今も絶えず文通がございます。それも一通りの文通ではなしに、かなり長い内容を持つた文通でございます。私はそれを特に国連関係のときにも私の意見を貫徹いたしたのであります。アラフラ海における真珠貝の問題といい、その他の問題といい、アメリカとの友好関係はもちろんでありますが、英連邦関係の外交が今までしいて言えば多少おろそかになつていた、この点多賀君の意見と同意見でありまして、南米から帰つてじきに、またロンドンに行きますときにも、この問題について私ども会談した、行く前とあとにも会談しておりまして、四回ですか、五回ですか、会談をいたしております。そういうわけでありまして、昨年は一年の半分近く外国に行つておつたような人であります。私はそういうつき合いをしておるわけでございます。この点は進んで釈明をいたしておきます。
#30
○古屋(貞)委員 そこで最後にお尋ねしたいのですが、国民から疑惑を持たれております問題の一掃をいかなる方法でおやりになるかということが一つ。
 それから徹底的に捜査をいたします場合に、自由党の党員であるという関係において、人間大臣としてはやりづらいのではないか。今回の汚職事件を徹底的に捜査をいたしまして、国民の前にこの疑惑を一掃するためには自由党の党籍を離脱しなくてもやれるのかどうか。どういたしましても人間でございますから、党籍がございますと、党籍に対するいろいろのつながりによつて党の関係とお仕事の関係において食い違いが出て来る、利害が反する場合が出て来ると思うのです。さような場合に、非常におやりづらくはないだろうか。のみならず、国民からはそれがために疑惑を持たれておるのではないか。だから、はつきりと、さつぱりとさせた方が、これは国のためであり、民族のためであると思う。小さい感情や利害はお捨てになられてりつぱな大臣でいらつしやいますから、さような立場からも、この際決然としてこの大きな、歴史的な汚職事件の解明のためにも、そうして議会制度の信頼をかち得る意味においても、また司法部の独立を画然としてあなたのお力で証明していただく意味においても、私は自由党の党籍を離脱されまして、そうしてさつぱりした関係において今回のこのお仕事を、法務大臣として司法部の独立のために働いていただくことが国民の要望であり、私どもの要望でございますが、さような御決意があるかどうか、この点をまずお聞きしたい。
#31
○犬養国務大臣 これは先ほど申し上げました通りに、あなたの御議論もこれは一つの確かに識見です。くだらぬ議論などとは思つてありません。どつちかの方法をとるべきだと思つております。またお察しくださいましたように、人間としては同僚を拘禁するというような日には、家に帰って煩悶もいたします。いたしますけれども、それに打ちかつて行くということが人間の義務遂行の心がげだと思つております。私は法務総裁を前になすつて、しかも党籍をそのままになすつて同僚、いなおそらく先輩を同じような境遇に移された鈴木義男さんも同じ心境を持たれたものと思うのでありますが、これは口ではたやすいが、非常にむずかしい問題でございますけれども、私は党籍を置いたまま、この非常に困難であるが、私の修養のためにも向上のためにもまた法的にいえば公務遂行のためにも、それをなし遂げて行きたいと思うし、なし遂げて行けると存じております。これは確かに御指摘のような議論も成り立つのでありますが、かりに私が党籍を離脱したら、昨日の犬養と違つて今日からは同僚に対しても何の私的感情もなくなつた神のような人間になつたと大衆が思うかといえば、人というものは人のいい反面に人の悪い反面がありまして、何、形はああいうふうになつたけれども同じさという輿論も出て来るのでありまして、輿論というものを気にしたら――ある点尊重しなければならぬ輿論ではありますが、気にしたらまた切りがないことでありまして、おのずからそこに限界があるのではないかと思います。要は、私が自由党に所属しているために法務省、検察庁の部下が疑心暗鬼を持つというなら毎日の仕事はできなくなるわけでありますが、幸いに今法務省の全員は、検察庁の全員は、私がそういう根性で一刻たりとも仕事をしている人間でないという信用を持つてくれておりまのすで、その信用に報いるためにも厳正にやつておる次第でございます。お話の点は決して私はおろそかには承つておりません、確かに一つの考え方でございますが、そして先ほど申し上げましたように、この二十年来衆議院議長の党籍の問題の跡を見ましても、この党籍離脱という問題は決しておろかな議論とは思つておりませんけれども、私は鈴木義男さんがなされたように党員として、かつ公的な厳正な仕事をやつて行きたい、また全力をあげてそれを生かして行きたい、こういうふうに思つておる次第でございます。
#32
○古屋(貞)委員 その点は法務大臣の自由であつて私もしいるわけに行きませんから、これで切り上げますが、ただ一つ最後に、捜査中の会社の重役と料亭でお会いになつたという問題の疑惑に対して、これをいかにして一掃するかという法務大臣の御決意だけを承りたい。ただ私ども直接承りまして、さような事実はない――私どもはよく法務大臣の御性格なり人柄を存じておりますから、決して私はさような点に疑惑を持つておりません。けれども国民は新聞を通じ法務大臣の行動に対する御批判をしておるわけでありまして、捜査中の会社の重役と料亭でお会いになられたということに対する相当大きな疑惑に対しては、いかなる行動をとられまして、これが疑惑をほぐそうとする御努力をなさるかということが一つ。なお有田議員に対する逮捕許諾の問題について、その後において法務大臣のおやりになられたことについては、私ども納得行かない点がございまして御質問したいと思いますけれども、さような法務大臣に対する問題をこの席上から申し上げることは控えますが、とにかくただいま申し上げましたように七日に軍役が逮捕され、その後にその会社の軍役と宴席をつくられてそこへはべられた。その後にまたその会社の軍役が逮捕せられた。起訴されて保釈になり、保釈になりましたその席上からまた逮捕せられるというような、今回の汚職事件の重要な立場に置かれた重役であつたということについての法務大臣に対する国民の疑惑を、いかなる方法においてお解きになられるかということか最後に承りまして、私の質問を終ります。
#33
○犬養国務大臣 御注意ありがとうございます。造船汚職でひつかかつている会社の重役なら、たとえ出会つても一緒に茶を飲んでもいかぬと思います、これは大いに責任があると思いますが、今申し上げたように、当時は一部重役の私腹を肥やすような浮貸しの焦げつき事件でありまして、しかも法務省に堂々と秘書官を通じて名刺を出してやつて来た山下太郎君は――古屋君もこの裏の事情を御承知のように私承つておりますが、これはたな上げされていて、むしろ自分の知らない間にこういうことをするのはけしからぬというような不平を持つておられることを当時面接のときに漏らされた。全然関係がないのみならず、むしろ自分に知らさないためにこういうばかなことが起つたという立場の人である、それから焦げつき事件の程度だという先入観が私にありまして、それで気軽に会つたのでございます。かりにお話のように造船疑獄が始まつていて、しかも、当人はたな上げ会長であつても、社長がひつぱられるというせとぎわにあるというならこれはまずいと思います。しかし、国民に疑惑を持たれる方があるかもしれませんが、そのときには私はすなおに前のような事情を弁明して行きたい、また公的には私の今後の捜査に対する態度をもつてお答えしたい。人生いろいろのことが起りますが結局は自分の行動でそれを証明するというほかはないと思います。御注意の点は、決して意地悪く質問しようかということでない御趣旨だということはよくわかつております。また先日つい大きな声を出してあなたとやり合つたということは御無礼でありましたから、この点は御了承を得たいと思います。
#34
○小林委員長 木下郁君。
#35
○木下委員 さつき有田君の問題が出ましたので、関連して法務大臣に一言だけ伺つて打おきたいと思います。それは、先般の本会議で、私逮捕許諾の問題について質疑をいたしましたが、御答弁がその問題に適切に当つていなかつたので、もう一度お伺いするわけであります。議員の逮捕許諾に対して議員がいろいろ国会で審議するのに、有田君の例で申しますと、五十万円の事件かどうか、それには十分の証拠があるかどうかどうか、ほかのものはあるかないか、あると言いかけたけたのを取消せとか、いろいろのことがあつて、十日間ぶらぶらしておつた。その十日間というものは、有田君が自由自在に外におつた。国民は、その間に十分証拠を隠滅される機会があつたであろうと考えております。非常に不明朗に思つております。私は、逮捕許諾の制度そのもののつくられて来た歴史的な過程から考えまして、これは権力を持つておるものが、自分の方に頭数が足らぬからといつてその都合上ひつぱる、それはどつこいごめんですということを国会が言い得る制度なんです。さよう意味で、三権分立の建前からできておるのですから、議会制度そのものからいえば、逮捕許諾の要求があれば、政府はその形式的な審査をしてただちにこれを国会にまわす、国会またこれを審査する。しかしそれは、被疑事件の内容を、証拠があるかどうかとか、ほかにまだ疑いのあるものが出て来そうなのかどうかというようなことを審査すべきではなくして、国会側の――都合そういう人を今ひつぱられては私の方で困るという政治的な都合立法府としての活動の面から逮捕に応ずべきやいなやを決定すべきものである。捜査の内客がどこまで行つたかというようなことで、有田君の問題で実際われわれの経験しましたように、十日間ものんべんだらりと証拠隠滅の機会が自由に与えられておるというようなばかげたことのあることを予定した制度ではないと私は考えておる次第であります。その点については法制局長官からもはつきりした御答弁を伺えませんでした。しかしこれは新聞の伝えるところによりますと、近く同じような要求もあろうかということであります。この問題に対する国会のやり方に対して、国民の信用を保つという意味におきましても、有田君のときに十日間ものんべんだらりとやられたようなことがあつてはならぬし、またあの制度のできて来た趣旨からいつても、私はさようなものではないと考えておりますが、その点に関する政府の御解釈を、今はつきりおきめになつていなければ法制局長官その他の方と御協議の上でもよろしゆうございますから、はつきりと承つておきたいと思う次第であります。
#36
○犬養国務大臣 これは政府全般にもかかわりますので、一応打合せて、またあらためて御答弁申し上げます。とりあえず法務省としての考えを申し上げます。
 法務省の考えは、発生論も木下さんのおつしやる通りに解釈いたしております。国王その他の非常に圧制的な運用を防止するために起つた制度であつて、そういう国王その他が圧制的なことをした国で特に許諾の制度が厳格なように、私の読んだ文献では解釈しております。またそのあとでお話になつた点も、原則論としてはその通りだと存じます。ただあの場合は、議院運営委員会で秘密会にされました以上、どうもこれまで許諾を与えたがみな裁判の結果無罪になつているというような御質疑がありまして、さしつかえなければ嫌疑の内容を言えというお話で、私はしろうとでありましてどの程度までが捜査にさわるかどうか、あとで間違いが起つてもいけませんので、ここにおります刑事局長が専門家の立場から、議運の御要求に対してさしつけえない程度の内容を御説明申し上げた次第であります。従つて先ほどお述べになりました原則論とは別個に、実際上の措置としてさしつかえない範囲を、しかも秘密会で申し上げた、こういうふうに了解しておるものでございます。政府の正式な見解というものは後刻打合せの上、さらに正式に御答弁申し上げたいと思います。
#37
○木下委員 それはやはり法務大臣としての重要な職責にある限りは、そういう問題が起つたときにはやはり自分の判断をはつきりきめて、それが将来最高裁判所の判断の上で通らないとか通るとかいうことは別問題といたしまして、重要な地位におる限りは、そういう問題に対してははつきりとした態度をとつて臨まないと、この間のような問題が起る。よく国会で、最近も保全経済会の問題等についても、法の盲点でありますからということで大蔵大臣の答弁は逃げておる。法の盲点なんということは、これはありつこない。裁判所が、どつちかわからない、法の盲点だからといつて判決しないというようなばかなことが行われるものでありましようか。判事たる職責にある限りは、法の盲点というようなことで判決をしないで逃げることはできません。同時に行政府におきましても、この重要な職責にある限りは、法の盲点ということは言つてはならない。それを日本のの官僚は、自分の責任を回避するために、盲点という名のもとにずるずるひつぱる。これが日本の今の政治の行き詰りの一つの原因をなしておる。重要な職責におり、高禄をはんでおる限りは、自己の責任において、自己の識見を持つて判断をしてそうして具体的に起つた問題に対して処理すべきものだと私は考える次第であります。今後も、こういう問題が起ることは望ましいことではありませんが、伝えられるところによれば、また同じような問題が起りはしないかといわれるときであります。十日ものんべんだらりと審査しておるというような、そんなばかなことがあるかと、国民は批判しております。どうかさような意味で、法務大臣としての責任をもつてそういう問題は、自分の意見が過般の議運の委員会と違えば、自分の意見は違いますからお答えいたしませんと言つてはつきりそこはけじめる立てて訣別すべきであるというように私は考えております、どうかさような意味で、今後の責任を果す上においてやつていただきたいということを申し上げておきます。
#38
○小林委員長 高橋禎一君。
#39
○高橋(禎)委員 司法行政運営に関して二、三御質問を申し上あげたいと思う次第であります。
 本委員会においてしばしば問題になりますことは、日本の検察権の運用が厳正妥当でなければならないということであります。ところがこの問題に関する限り、遺憾ながら必ずしも国民はそういうふうに考えておらない面があるのではないかという点と、国会は憲法上最高の機関であるといわれるので、国会自身においても、何かこの国会が憲法の上にあるのではないかというような錯覚を持つ面がないではない。従つていわゆる三権分立主義を確保いたしますために、各機関が自分自身を強く守つて行くと同時に、また相手の立場というものを千分に理解し、これを守つて行くというのでなければならぬと思います。最近起りました問題、有田事件の捜査に関連しての国会の動きと言うことも、これは非常に反省する部面があると思うのでありまして、そこで国会は、予算の審議なり法律案の審議なり、あるいは国政調査権の発動等によつて国会を守るとともに、また行政権というものを尊重し、これを擁護し、検察権の行使は広い意味においては司法行動、少くとも準司法的の行動であると考えますが、国会自身検察権を擁護して行くというだけの理解がつければならぬと考えております。こういう立場に立つて私は法務大臣に質問をし、われわれ自身、特に当法務委員会のごときは、司法裁判あるいは検察権、警察権の行使等に関連してきわめて重大な責任があるわけであります。検察権の運用については、これは行政機関として法務大臣が最高責任者であるとともに、われわれもまた国会の一員として、また法務委員会として検察権を守つて行きたい、こういう考えで今御質問いたしたいと思うのであります。
 そこで端的に質問いたしたいと思うのでありますが。第一は、この有田事件に関連する問題であります。これには私、法務大臣はさぞお疲れになつたのであろうと考えております。その点については非常に同情しておるわけであります。しかしながら今や検察権の運用については国民が重大な関心を持つており、また日本の将来にとつてもきわあて重大な問題なんでありまして、私は法務大臣が真剣にこれらの問題について過去を顧み、将来この種の問題についての態度をはつきりと固められて、国民の輿望にこたえていただきたいと考えておるのであります。
 そこでまずこの有田君の逮捕許諾に関する請求が参りましたときに、法務大臣としては、少くとも無条件許諾を希望していらつしやつたと考えます。議運においても大体そういう趣旨で御答弁があつたのでありますが、しかるにもかかわらず、突如として期限付許諾という動議が自由党側から提出をされまして、衆議院においては遂に――私どもが強くこれに反対をして、また議院運営委員会のこの問題についての審議がありました前後、休憩中等を利用して炭は自由党の諸君に心からこういう――私が本会議で使いました言葉をそのまま使いますと、珍妙にして権威のない動議なんかは撤回された方がいい、提出されない方がいいということを申したにもかかわらず、結果においてはあのように強硬な態度で期限付許諾という動議を提出され、審議されたわけです。その際において法務大臣は本会議においてはそれについて御投票がなかつたように私は存じておりますが、あの際に法務大臣としては、党籍問題が先ほど来いろいろ論議されましたが、あの場合は幸いにして自由党の党員で、あられる法務大臣でありますから、自由党員として、また自由党内閣の閣僚として、せつかく検察当局の意向を代表して、無条件許諾を希望し、その実現をはかろうとして努力しておられる法務大臣でありますから、自由党の諸君に対しまして何か打つべき手があつたのではないか。法務大臣自身の心情を吐露し、識見を披瀝されてああいうものを阻止し得る立場にあられたのではないか、こう思うのでありますが、それについて何らの処置も講ぜられないでいわば成行きにまかされて、ああいうふうな国会としては実に恥ずべき、また国会史上悲しむべき歴史の一ページをつくつたということになるわけでありますが、それに対してあのときの法務大臣の行動なり、あるいは心情なりということはついて、この際一応御説明を伺つておきたいと思うのであります。
#40
○犬養国務大臣 これも喜んでお答え申し上げたいと思います。実は鈴木義男議員から同様の御質疑が本会議でありましたけれども、あの場合はどうも私の判断で適当でないので他日申し上げる機会がある、むしろその機会を与えていただいたことを感謝申し上げる次第であります。なぜあの本会議で申し上げるのを避けたかと言いますと、弁解がましくなるので私の主義に合いませんのでしなかつた、お話の通りであります。ところが事実はあの朝ですか、自由党の総務会が済みましたときには、許諾を与えて、もし条件がついてもなるべく早く釈放すべしというような話になるかもしれない。これは正式に総務会の最高首脳部から聞いたわけであります。それで私はそうなるものと思いまして、政府委員室に帰り、ほかの用務をやつておつた。お昼になりまして振鈴が鳴つて本会議に、私ほかの答弁資料を持つて大臣室に入りますと、有田君の許諾問題がまつ先だということを初めて知つたわけであります。私は自分の答弁する資料をまつ先に御答弁するものと思つてかかえて行つたわけであります。そこでそのときに、ここにおります刑事局長から、許諾は何か条件がつく、三月三日まで許諾するという話だ、そういうことはあるまい、さつきぼくは総務会でこう聞いたんだ、しかしどうもそうだというので、私一ぺん入りました議場を出まして、至急法務省の専門家に集まつてもらつて、期限付許諾というものをどう解釈していいのか、期限というものを条件と同じく解釈していいのか、発案者はおそらくそうでない意味で期限とおつしやつたのであろう。それならば法務省としてはどう解釈すべきか、三月三日というものを――許諾は有効であるが、その部分は無効と見る、全体を有効と見るという話で、御承知のようにこれは憲法学者もその後一説にわかれておることを承知いたしましたが、そんなふうでありますから、その晩の十一時までこの議論が続いてしまつたわけでございます。従つて私は自分の判断がつきませんのに、法務大臣として投票を急ぐという心境にはなれず、もつぱら期限付許諾というものの解釈を徹底的に究明してから態度をはつきりしたい、こう考えたのでありますが、その晩の十一時にも議論が結論に達しません。翌日の夕方までかかつたような次第でございます。従つて国務大臣として重要な、ことに自分の役所に関係のある投票に参加できなかつたことは、確かに私の落度で、ございますけれども、判新をせずして入場するという気持になれなかつたことも同時に御報告申し上げたいと思います。
#41
○高橋(禎)委員 ただいまの御答弁によりますと、大体どうしていいか判断がつきかねたから結局議場にも入らないで投票すること承しなかつた、こういうふうなお話でありますが、私は率直にお尋ねをいたしますが、あの際非常にお立場にお困りになつて、本会議に入つて投票をするということをなし得ないので、あの問題の採決についてはお逃げになつたのではないか、こういう疑いがあるのです。はなはだ恐縮な疑問といえばいえないこともございませんが、もうどうにも抜き差しならない、あそこに出ておるわけには行かないので、あの場からすつかりお逃げになつたのじやないか、このことでもしもあの席においでになつてそうしてあの許諾の動議の運命ということを考えられましたならば、まだまだあの議場にむいても何とか処置が講ぜられたのじやないか、何しろ国務大臣全員が御投票なさるというようなときですから、私その点を非常に遺憾に思うわけでありますが、一応これについての御答弁を願います。
#42
○犬養国務大臣 そういう疑いを持たれることも、高橋さんとしては当然だと思いますが、判断がつきかねてまあさわらぬ神にたたりなし、逃げているのが第一だ、そういう考え方は私非常にきらいなんであります。そういう考え方をすれば、私も最近いろいろ人と摩擦を起すような生涯を送らずに済んだんじやないか、自分がはつきりしなければ気が済まぬというたちでございますから、ほかの閣僚は投票されたでありましようが、私はまず第一に自分の考えをきめたい、こういう態度に出たわけであります。一番円満に行くには、ほかの閣僚と一緒に入つて投票すれば一番簡単なんでありますが、そういうことをしたくなく、自分の判断を法務大臣として持ちたいという考えを持つたことを申し上げておきたい。そこでもつと打明けて申しますと、全部があれは無効だというのならまた話はわかる。ところが部内にもあれは有効だと解釈できるというような議論も一、二ありますので、なおさら私としましては、もともと法律専門にやつたわけではなく、人の話を最後に判断するというやり方で来ておりますから、部下が全部あれは期限のところだけ無効だ、許諾のところだけ有効だということになれば、これはまた話は早いのでありますが、晩の一一時までもめたゆえんのものは、一、二やはりそういう解釈ができるかもしれぬという人もおるわけなのであります。従つて甲乙両論ある中でちよつと投票して来るということは、たとい第二、第三の高橋さんがお出になつて御非難がありましても、私はまず解釈をするために慎重な態度をとつたということは私の当然な態度であつたのではないか、最善ではないけれども……。前例のない許諾の形式というものが示されました直後においては、まず法務大臣としてはそれをどういうふうに解釈すべきかということを、部下を――法務省に行つております部下もおりましたので、車で呼びつけて相談するということは、最善ではないが自然な順序ではなかつたか、こう思つておりますが、しかし結果として、とにかく議員が投票権を放棄した、議論している間にとびらが締まつたということはみつともないじやないか、なつてないじやないかと仰せられれば、その通りですと申し上げるよりしようがないと存じます。
#43
○高橋(禎)委員 法務大臣は、私どもの考えでは、部内にいろいろの意見があろときに、最後の結論をお出しになる責任があると思う。それからやはり党人であり、自由党内閣の閣僚の一人ですから、党内においてもいろいろの議論のあるときには、少くとも自分の所管の問題に関しては、党内においてその結論を出すべき立場でなければならぬと私は思うのでありますが、その部内における、あるいは党内におけるいろいろの意見がある、それを統一して、最後の断を下して、その所信を実行するということをなさらないで、投票もしなかつたということは、国民としては非常にどうも、法務大臣のとられた態度を、頼もしい態度だとは思わないと私は思うのであります。しかし国民の場合はいろいろ将来批判するでございましようが、部内の問題であります。検察権行使に関する最高の責任者として、すなわち一般的には検察官全体を指揮し、具体的な事件についても検事総長を指揮され、検察官全体を監督される立場にある法務大臣が、あのような前例がない事柄について、ほとんど確固たる態度をおとりにならなかつたということが、担当部内にも悪い影響を与えるのではないかと私は常識的に考えるわけであります。先ほどどなたかの質問に対して、法務大臣はもう全検察官の支持を受けておる、こういうふうに申されましたが、これは自分の上司である所管の大臣に対して、部下の検察官が、あの大臣はよろしくないとか、自分は信頼しないとかというようなことは、口には出すものではないと思うのでありますが、検察官がそれを口にしないからというて、法務大臣は、あのようなことがあつてもなおかつ部内の信頼を得て、自分の検察権指揮に関しての職責は十分果されるものであるという御確信があありになるのかどうか、それをお伺いいたしておきます。
#44
○犬養国務大臣 はなはだどうも口幅つたいようでございますが、それを今なお信じております。高橋さんの御議論は御議論としてまことにごもつともであります。しかしもしもあの場合即座に判断ができ、部内に両論あるのに、しかも投票が三時間後、四時間後というのなら別でありますが、もう振鈴が鳴つて投票だ、そうして例のない期限付許諾というものの判断が即座にできて、自分の全同僚、閣僚ともたもとをわかつて投票をするような超人的な人がいたら、私はもうすぐ入れかわつて、ぜひそういう方に死ぬまでに一ペんお目にかかつてみたいと思つております。これは抽象論としてはあり得ますが、生きた血の通つた人間としてそういう人があれば、私は人間というものに対する私の観念をかえようと思つています。そういう人にぜひお目にかかりたい。私の気持はそういうわけでありますが、それでもつてあなたに対抗して議論しようとは思つておりません。投票権を行使した方がいいか悪いかといえば、むろん行使した方がいいのでありますが、振鈴が鳴る、内容を聞いたら、さつきと違つて期限がついておる、それをどう判断するか、これは当然部下に聞いてみる。どんな法学大博士でも、自分だけの判断でなく、刑事局長、刑事局の参事官、それらの人に聞いてみるということがやはりおのれを謙遜にするゆえんであり、いわんや私はしろうとでありますから、解釈にはあくまで謙譲でなくちやならない。ところが私が聞くべき相手は、またこれが甲乙議論がわかれておる。憲法学者にもわかれておる。その晩の十一時になつてもきまらない。しかもどんどん――高橋さん等の御質疑があつても、投票になつて、とびらが締まる。それをとつさに判断して、専門家の部下に、この方がいい、この方で行こう、おれは投票して来るという超人があつたら、私は尊敬して、いつでもこの法務大臣のいすを入れかわりたい、こう思つておるのでありますが、しかし正面からおしかりがあればごもつとも千万でありまして、投票しないよりはする方がはるかに正しいのであります。従つて投票しない責任というものはだれにもはばからずお受けいたしたいと思います。しかし、めんどうだから逃げて隠れていよう、うしろを向いて隠れていようというような気持ではないかという御質疑に対しては、私はそういう気分では暮したくない人間である、これだけは私自身の真実としてお答えを申し上げたいと思います。
#45
○高橋(禎)委員 ただいまの超人間論というのは、私は必ずしも賛成をしないのです。と申しますのは、自分のできなかつたことはすべて超人聞的のことだと言うて片つけてしまつたのでは、私は政治家としてはいかがかと考えるわけであります。のみならず国民というものは、現在の日本の実情から見てそれこそ超人間的な働きのある者によつて政治をやつてもらわなければ、日本は救えぬ、こういうふうな気持でおるわけでありますから、私はそれを追究するのではないのですが、犬養法務大臣は、超人間的な行動をするくらいの者でなければ国民の要望にこたえ得られないというだけのお気持でもつて司法行政をひとつ完全に遂行していただかなければならぬと考えるのであります。
 質問いたしたい点は、先ほど来あの期限付許諾の問題についてはいろいろ議論があつた、こういうお話がございましたが、現在においては十分御研究になつておられるはずであります。そこへもつて参りまして、有田勾留の取消し請求、すなわち準抗告が提出されまして、東京地方裁判所においてその勾留取消しの抗告を棄却いたしております。棄却の理由を私ども読んでみますと、これは当初から私ども抱いておつた意見とまつたく一致するものでありまして、おそらく検察庁においてもこれを支持され、また学者も、今冷静になつてこれを見るときに、私は賛成者の方の多いことを確信いたしますし、国民自体も常識としてこれを支持するであろうと思うのでございます。そこで法務大臣は、この東京地方裁判所の有田勾留の準抗告に対する棄却の裁判を是認され、支持されるかどうか、これでもまだ間違いであるというお考えであるかどうか、その点をお伺いしておきます。
#46
○犬養国務大臣 たびたび議運でもその他の場所でも申し上げましたように、法務当局としては裁判所の発せられる勾留状の内容、それがわくになり、そのわくの中において院議を尊重するごとに、最善を尽すと終始申し上げて来たのでありますが、その裁判所が準抗告はこれを認めない。しこうしてその意味は刑事訴訟法による普通の勾留を正しいと見た判断を下されたのでありますから、法務当局としてはこの判断を是なりとただいま考えておる次第でございます。
#47
○高橋(禎)委員 そういたしますと、この問題について、すなわち期限付逮捕許諾の問題に関して、東京地方裁判所では、こういう抗告は理由なきものとして棄却いたしましたが、現在法務大臣初め検察当局もこれを正しいとお考えになり、これを支持しておられるわけでありますが、この問題がかりに最高裁判所に係属して、最高裁判所の判断をまつというような事態が起るといたしまして、最高裁判所においても、やはり地方裁判所の裁判と同様な結論が出るであろうというような見通しなり確信をお持ちになつておるかどうか、それをお伺いいたします。
#48
○犬養国務大臣 裁判所の最終判決に対する見通しということは、ちよつと今私は御遠慮いたしたいと思います。いずれにしても高橋さん御承知のように、第二審でそれに是なりと服した場合はもちろん、検察当局が不服なりとして最高裁判所の最終判決を仰いだ場合でも、最高裁判断の最終判決というものには服すということを伝統とし、信条としおりますので、最高裁判所の判決の下るような機会が得られるならば、一層幸甚でありますし、その判決にはいつも服して行きたいと存じております。
#49
○高橋(禎)委員 法務大臣は議院運営委員会あるいは本会議等で院議を尊重する、すなわち期限付逮捕許諾の院議を尊重するという言葉をしばしばお使いになりました。ところが検察当局は当初から期限付許諾というようなことは間違いであるという態度をおとりになつておると私は思うのです。そうして現在においてはこの東京地方裁判所における準抗告の棄却の裁判の正しいことを十分御理解になつて、これを支持していらつしやる立場にあるわけでありますが、こういう事態がかりにあつて、院議を尊重する。すなわち期限付の院議というものは無法なりあるいはその他の法律の建前から、あれは間違つておつたのだというわけでありますが、そういう院議があってそれを尊重して行く態度というものは、一体具体的な事実としてはどのように表わすべきであるとお考えになつたか、あるいはまたのようにその院議を尊重する行動に出られたか、その点御報告をいただきたいと思います。
#50
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。これはおそらく二十ぺん以上同じことを申し上げたと思います。つまりこういう言い方をしております。院議というものの尊重の念をかねてから持つているが、その院議に対する尊重の念の表わし方は、来る二月二十六日夕刻発せられるであろう裁判所の勾留状の内容のわくの制限を受けるのであつて、このわくの制限の中において院議尊重の最善を尽すこう申し上げている。院議尊重であるから裁判所もへちまもないのだというようなことは一ども申し上げていないのでございます。その点御了解を願いたいと思います。
#51
○高橋(禎)委員 私は院議を尊重されるという考え方で、あのような勾留状が出あるいは準抗告の棄却があつたにもかかわらず、そして捜査上は勾留しておく必要があるにもかかわらず、法務大臣は検察当局に対して釈放すべきものであるというような御指揮をなさつた、あるいはまた内々裁判所側に対して、表面は勾留継続の請求をしているけれども、やはり院議尊重の実質的な意味において、まあこれをしいて強く主張するものではないというふうに、勾留状を継続するという裁判を、つまり検察庁側として強い態度をお示しになれないということがあつたものかなかつたか、これが全然わかりません。はなはだ失礼な質問かもしれませんが、これはしかし国民としも相当その点に疑いを持つているわけでありますから、明確にお答え願いたいと思います。
#52
○犬養国務大臣 これは高橋さんのような専門家から見れば裁判所がそういうことで動くものでないということは御承知でありますが、国民が一応そう思われたというのでありますから、喜こんでお答えをいたしたいと思います結局検察庁に対して、何か私が院議を尊重する意味において有田君を三月四日以降は釈放したらどうだというようなことを一度でも言つたことがあるか、こういうような御質問だと思いますが、私はそれはありません。結局検事総長について私が指揮権を持つておりますが、検事総長の談話がよくこれを物語つていると思います。あの談話ですと、犬養は終始公正な態度でありながらも、可能な範囲で何か国会意思を尊重する方法はないかと聞かれたから、まあ捜査を極力急いだが、これはなかなかうまく行かない。第二の手段としては、検察庁独自の見解でというのは犬養の圧迫によらずしてという意味だろうと思いますが、その日一日出すことによつて一部分なりとも院議を尊重することを現わしたい、投票ということは大切であるから有田議員の投票権ということも生かしてあげたいというということを考究したけれども、そのうちに有田議員の代理者である小玉弁護人から準抗告が行われ、勾留執行停止の請求があつたので、問題は裁判所に移つたのでいかんともすべからず、こういう談話を発表しております。これがいきさつを最もよく物語つておると思います。あの間において私と総長と何らか方法について研究したことがあるとすれば、今申し上げたように三月四日の予算の投票の時間に少くとも有田議員が投票できるようにできるかどうかということを互いに懇談し合つた事案はございます。それ以外の問題としては具体的な懇談はございませんでした。それから裁判所の方は、お察しの通り裁判所というところは独得のところでありまして、そういうことの間接的な意思表示も運動もきくところではございません。かえつて非常に反発の行われるところでありまして、これは検察庁として一切慎んでおつた次第でございます。
#53
○高橋(禎)委員 そこで有田君も釈放になつたわけでございますが、あれによつて有田事件捜査に非常な支障を来されるようなことが一体あるかないか、これが第一。第二には井本刑事局長はたしか議院運営委員会においてかりに有田を逮捕することができないとしても、起訴しようと思えばできるくらいな資料があるかのごとく説明されたように私は承知いたしておるのでありますが、一体有田君の起訴、不起訴の処分について現存どのようにお考えになつておるのか、逮捕しなくても起訴することができるというほど資料がおありになつたのに十日間勾留して捜査なさつた今日でありますから、資料も一層集まつておると思いますが、それらについてこれまた国民は相当の疑惑を持つておる、あれがうやむやになつてしまうのじやないかという疑惑を持つておるわけでありますから、ただいまお尋ねした、すなわち起訴、不起訴の処分についての現在のお考えを伺いたい。第三には有田君の問題について再逮捕をされるということがあるかないか、議会開会中そういう問題が起る余地があるのかないの、この三点についてお答え願いたいと思います。
#54
○犬養国務大臣 これは刑事局長から……。
#55
○井本政府委員 第一に捜査障害があつたかなかつたかという点でございますが、もちろん勾留延長をして取調べをしようということで来たのでありまして裁判所の勾留延長請求却下ということになりましたので、捜査に障があることはその通りでございます。しかしながら被疑者が拘束されなければ絶対に捜査が続けられないというのでないことは、高橋さんよく御承知の通りでございまして、その後引続いて鋭意容疑事実について捜査を続けております。いつ結論を出すかということは今申し上げかねる次第でありますが、私も議院運営委員会で申し上げました通り、この有罪についての確信は現在でもかわつておりませんから、おそらくそう遠くない将来にある程度の結論を出すつもりでございます。その余の事実につきましては目下調べがどの程度になつておるか報告を受けておりませんので、ちよつと言明をいたしかねる次第でございます。
#56
○高橋(禎)委員 もう一点伺いまして、法務大臣の御答弁を得て午前中の質問は終りたいと思います。有田二郎君が釈放されてから後いろいろの心境を発表されたことについては、先ほども他の委員から質問したところでありますが、その中に河井検事の取調べが非常に辛辣であるといううことが話されておる点であります。もしも河井検事の取調べが不当に辛辣であつて、それが取調べを受けた者の反感を買い、憤激をせしむるようなことがあつたということになると、これはたいへんなんです。私どもは現在の政界、官界、財界等における疑獄事件のきわめて公正妥当な捜査の行われることを国民とともに希望するものでありますけれども、えてこういうふうな大事件のありました場合には、あまり検察官がよりをかけ過ぎて、その程度を越してまた検察ファツショなどというそしりを受けるようなことになるということは、これはまた真に検察権を守らんとする者のとるべきところではないわけであります。ところがどうも非常に辛辣であつた、そうしてそれに関連していろいろのうつぷんらしいものを漏らされておるところから見ますると、これはよほど重大な問題であると思うのでありますが、法務大臣はこれを監督なさる地位におありのわけで、ひとり河井検事のみならず、今起つております事件捜査の検察官に対して、一般的には検察官全体に対して、またこの事件処理に関して検事総長に対して具体的に何らかのお指示をなさつたことがあるかどうか、いわゆる検察権の妥当な行使によつて国民の要望にこたえ、検察権行使の目的を達するということは非常にむずかしい問題でありますから、これについて法務大臣の御答弁をお願いいたします。
#57
○犬養国務大臣 お答申し上げます。これは私が注意するまでもなく、検事総長が心をつかつたのでございましよう、河井検事をして取調べをさせませんでした。常井検事という若い検事、あとで武内検事、二人が取調べをいたしたのであります。河井検事はおそらく一度も顔すら現わしておらないと思います。
#58
○高橋(禎)委員 それではもう時間もございませんから、午前中の質問は留保いたしておきましてこれをもつて打ち切りたいと思います。
#59
○田嶋委員 ちよつとお願いしたいのですが、この間の新聞を見ますと藤原検事長が東京から大阪へ帰つてああいう談話を発表しておる、これが事実かどうかお確かめしたい。それから市島刑事部長が大阪へ出張してたいへん重大な発言をしております。これにぜひ真実をお確かめ願いたい。私質問いたします。そのときの材料としてぜひお取調べ願つておきたいと思うのです。
#60
○小林委員長 それでは午前はこの程度にとどめまして、午後二時半から再開することにし、それまで休憩いたします。
   午後一時一分休憩
     ――――◇―――――
  〔休憩後は開会に至らなかつた。〕
ソース: 国立国会図書館
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