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1947/07/02 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第9号
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1947/07/02 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第9号

#1
第001回国会 本会議 第9号
昭和二十二年七月二日(水曜日)
    午後一時五十二分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  昭和二十二年七月二日(水曜日)
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) これより開会いたします。
     ――――◇―――――
 一 國務大臣の演説に対する質疑

#3
○議長(松岡駒吉君) 國務大臣の演説に対する質疑に入ります。加藤勘十君。
  [加藤勘十君登壇]
#4
○加藤勘十君 私は日本社会党を代表しまして、政府の施策に関し、若干の疑義を表明して、政府の所信をお尋ねいたしたいと存じます。
 わが國現下の情勢が、民族興亡の危機に臨み、これが打開のためには、もはや一刻の躊躇をも許さないものがあることは、昨日、本議場における片山総理大臣の御演説にあつた通りであります。私は、政府が大胆率直に危機の実相を明らかにし、いかにしてこの危機を克服すべきかの方途を示し、同時にこの危機の克服を通じて新日本建設への熱意を表明され、國民に対し全幅の協力を求められた、眞摯にして謙虚なる態度に対しては、心から同感を表するものであります。(拍手)
 しかし國民は、政府の態度に対し同感を表するにしましても、政府のなさんとする方途に対して、はたして無批判、無條件に協力するものであるか否かについては、いささか疑問なきを得ないのであります。國民が直面せる危機の実態をつかみ、みずからの問題として、これが打開のために起ち上り、政府に協力せんとするためには、政府の施策が、國民に十分に納得し得るものでなければならぬと存じます。私はこの観点から、次の数項の点に関し、政府の所信を質さんとするものであります。
 第一にお伺いいたしたいのは、近く開催を予想されまする講和会議についてであります。連合國側の対日講和会議に関する方策は、ポツダム宣言に記述せられたる基本的方針以外には、これを詳らかにする由もありませんが、先般來数次にわたり外電の報ずるところによりますれば、連合國並びに連合軍最高司令官は、日本の現状に対し、きわめて同情的であり、好意的であり、日本を興亡の浮沈から脱出せしむるためには、対日講和会議をできるだけ速やかに開催すべきであるとの意思を表明されております。私どもは、この同情的、好意的態度に対しては、衷心より感謝の意を表するものであります。
 問題は、講和会議に臨む私ども國民全般の心構えについてであります。多くの國民の中には、講和会議が開催され、講和條約が締結されたならば、ただちに占領政策から解放され、國際的に自由な國家となり得るだろうというような錯覚を抱いておる人がないとは限りません。われわれは、講和会議に臨むにあたつて、いま一度眞劍に國民的反省を必要とするのではないかと存じます。
 もちろん私どもといたしましては、講和会議を通じて、連合國の好意と同情に訴え、日本が將來政治的にはもとより、経済的にも完全に独立國として自立し得られる、もろもろの條件を充たしてもろうように懇願しなければならぬと存じますが、連合國側のもろもろの好意と理解ある援助を仰ぐ前に、それを受けるについて、われわれ自身にはたして欠くるところなきや否や。言葉を換えて言えば、われわれ自身はたしてポツダム宣言を忠実に履行しておるや否やの点についてであります。
 たとえば、日本民主化の基本原則を規定せる憲法においては、封建的もしくは官僚主義的色彩を拂拭し、民主化の形式を整えるに成功したとはいえ、國民の日常生活を規定せるもろもろの法律制度においては、旧態依然たるものがあつて、民主化の道なお遠しの感を抱かしめるものがあります。(拍手)かかる状態をもつてして、はたして講和会議に臨んで、連合國の好意と理解に基く同情とが得られるであろうか、この点に対する総理大臣の明確なる御答弁をお願いしたいと思うのであります。
 次に、先般芦田外相の言として新聞紙上に傳えられ、連合國側の誤解を招くに至つた琉球、千島等の領土に関する発言は、もしそれが事実とするならば、明らかにポツダム宣言第八項に反するものであると思われるのであります。もちろんわが國のごとく、狭隘なる國土に八千万に近い巨大なる人口を有する國家が、ポツダム宣言に規定せる通り自活し得るためには、工業生産力を増大すること、將來の移民に関することなど、連合國の援助にまたねばならぬものが多々あることは、言うまでもありません。
 殊に移民の問題に関しては、先般來朝されたアメリカの市民連盟理事長ロッジャー・ボールドウイン氏は、アメリカ移民法の改正について、われわれ日本國民にきわめて好意的忠言を與えてくれました。この言葉に徴しても、日本民主化が、國民の日常生活面に実証されるに至れば、あるいは講和会議後において、移民法の改正が現実に実践せられ、日本國民の勤勉性が海外に用いられる日が來るであろうことが予想されるのであります。
 芦田外相の言が、もし日本國民の潜在意識であるというように誤解されることがあれば、將來の日本のために、きわめて不利であると思うのであります。さいわいに芦田外相は、ただちにこれを訂正され、誤解を一掃するに努められたのでありますが、國会の議場を通して、公式にその点を明らかにされる必要があると思うのでありまするが、芦田外相はどのようにお考えでありましようか、この点をお尋ねいたします。
 第二に、食糧危機突破対策についてお尋ねいたします。政府は食糧危機突破のために、なみなみならぬ苦心を拂われ、もろもろの施策を発表されました。われわれは政府の苦心を諒とします。しかし、はたしてこれらの施策をもつて、当面せる危機が切抜け得られると思われまするかどうか。政府は、昭和二十一年度産米の供出一〇〇%のほかに、一割の消費規制を設け、一〇%の超過供出を求め、そのうち四%の供出を得たと発表されました。この需給計画に基けば、今年度は何らかの遅配、欠配もなく、平穏に推移されるはずであります。しかるに事実は、遅配、欠配は一向に解消されない。
 もちろん、この現象は前内閣以來の事柄でありまして、その責任が全部現内閣にあるというのではありませんが、現内閣になつてからも、なお依然として遅配、欠配が慢性的に継続しており、前途に光明を見ることができない。これは明らかに二十二年度の需給計画の誤りに原因すると思われるが、農林大臣はどのようにお考えでいられるでしようか。(拍手)もし他に別な原因があるとするならば、その点を明らかにし、同時に、いかにすれば遅配、欠配を一日も速やかに解消して、國民をして食生活に安心して勤勞にいそしむことができるかという、積極的な具体的方策を明らかにしていただきたいと存じます。
 國民は、農林省案として過日新聞紙上に報道された、本年十月に至るまでの間において、計画的欠配を行うとか、あるいはタバコ、砂糖、酒、水飴等の嗜好品をもつて、主食の遅配、欠配に代替配給をするなどということでは、これによつては決して國民を安心せしめることはできないと存じます。かかる手段は、政府みずから嗜好品と主食との交換を行うようなやみ行爲を奬励する結果となるおそれがあるとさえ思われます。この点に関し、農林大臣はいかにお考えになるでありましようか。
 食糧は、その絶対量において不足しておる以上、連合國側の同情に訴え、その理解を得て、供給を仰ぐよう懇請するとともに、消費の規正をしなければならぬことはもちろんであります。しかし生産農家からの供出の円滑化が、絶対に必要なことであると思うのであります。この点に対し、政府は、これまたさまざまな手段を講じ、苦心をしておられるようでありますが、私は、生産農家をして供出を全うせしめるためには、何といつても生産農家の意見を尊重し、農家をして権力に畏怖せしめるようなことなく、心からの納得による協力をなさしめねばならぬと思うのであります。(拍手)
 それには生産農家の再生産に必要欠くべからざる條件たる肥料、農機具等の補給もさることながら、最も重要なる点は、農地の実態調査の上に立つて、農民の納得せる割当制を確立することであると存じます。しかるに政府の割当制は、見込割当で、実態調査の上に立つていない。この点が、農民をして供出に疑惧の念をもたせ、供出をしぶらせる原因となつておるのではないかと思うのであります。政府は速やかに、この根本に触れた、合理的割当制を確立すべきだと思うのでありますが、この点に対する農林大臣の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 第三に、インフレの惡性化をいかにして阻止するかの点についてお伺いをいたします。インフレーションが惡性化の段階にはいつておることは、もはや否定しがたき事実であります。しかも、現在の財政経済の実情は、これをこのまま成行きにまかせておくならば、國家経済の破綻は不可避のありさまであります。ここに國家的危機、民族的危機が叫ばれるゆえんがあると存じます。敗戰日本の建直し、新しき民主主義日本の建設も、この経済破綻を未然に防止することから始めなければならぬと存じます。換言すれば、惡性インフレの克服こそ、新日本建設の絶対的前提條件でなければならないのであります。
 この國家の運命をかけた重大なる惡性インフレ克服策について、政府のなさんとするところと、わが社会党の所信との間に、若干の食い違いのあることは、はなはだ遺憾なことであります。しかし、現内閣が片山氏を首班とするとはいいながら、異なれる政策の所有者である三党の連立政権であるという点から、まことにやむを得ない現実であります。現下の危機は、このように異なれる政策をもつた各党が、祖國再建の熱意に燃えて、一團となつて安定勢力を築き上げなければ、切り抜け得られないほど深刻をきわめておるということができるのであります。事態が深刻であればあるほど、われわれは、われわれの所信を強く前面に押し出し、政府の施策の根幹たらしめたいと思うのであります。その観点から、以下数項にわたつて、私の所信を開陳しつつ、政府の所見をお尋ねするものであります。
 すなわち惡性インフレ克服のためには、当然に、財政・金融・通貨等の直接インフレの要因に対する諸施策はもちろん、インフレーシヨンと密接なる関連をもつ生産対策、國民生活安定対策等と、総合的対策が樹立され、これらの対策が、基本的なものと応急的なものとにわかたれ、計画的に実行されるのでなければ、とうてい克服されるものではないと思います。私は主として應急的な点についてお尋ねをいたしたい。
 今われわれの前には、財政的にも経済的にも惡性インフレを一層惡化せしむる諸材料が累積しておるのであります。これを財政面についてみますのに、前吉田内閣は、二十二年度予算編成にあたつて、本予算千百四十五億円という厖大予算を、健全財政の建前に立つて、一應形式上のつじつまを合わせたとはいえ、実際には巨額の赤字予算を内包しておつたことは、爭えない事実なのであります。(拍手)
 それなればこそ現政府は、國会に四百五十億乃至五百億に上るという厖大な追加予算案を提出しなければなるまいと、新聞紙は報道しておるのであります。新聞紙の報道はともかくとして、たれが見ましても、それに近い、もしくはそれ以上の巨額の追加予算が計上されなければ、とうてい現下のインフレーション高進のもとにおいて、國務の遂行は不可能であると思われます。
 要は、この厖大な赤字支出と均衡を保つために、歳入財源をいずこに求めるかという点であります。政府は、緊急対策の第四項として、(イ)健全財政主義を堅持する、(ロ)歳出の節約をはかる、(ハ)極力現行税制の適切な運用、事情によつては増税を考慮する、(ニ)インフレーションによる不当な利得に対する課税を強化する(ホ)事業特別会計については独立採算制の本旨を徹底する等を揚げておるのでありますが、これだけでは、單に標語の羅列にすぎないのであります。
 昨日、片山総理大臣は、不当利得者に対し高率課税を実施する旨強調されたのでありますが、その具体的な方策の示されなかつたのは、はなはだ遺憾であります。インフレや、やみによる不当利得者に対する課税を強化すると言われるが、不当利得の所在を、いかにして明確につかまんとされるのであるか。國民が知らんとするところ、聽かんと欲するところは、具体的方法である。できれば、その具体的方法を示されたいと存じます。 (拍手)
 政府は、危機突破のために、勤労大衆に耐えがたきまでの耐乏生活を求めておる以上、負担の公正を期する意味から、いわゆるやみ成金、もしくはインフレによつて巨富を得た者に、重き税をかくべきは当然であります。私はこれらのやみ成金、インフレ利得者は、今日では單なる所得というよりは、その利得したものを、すでにりつぱに財産化しておるがゆえに、これに対しては、所得に課税を強化するというよりも、さらに一歩を進めて、新税――かりにわが社会党はこれを危機突破税と稱しておりますのを、課すべきであると思うのでありますが、政府はこの点についてどのようにお考えでありましようか、お伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 さらに金融並びに通貨の面において、政府はわずかに、(イ)融資統制を強化し赤字金融は嚴にこれを抑圧する、但し重要産業に必要な資金はこれを確保する、(ロ)通貨発行審議会の機能を活用し、國庫收支と産業資金の適時調整を実施して通貨発行の合理的規正に資する、(ハ)貯蓄増強運動を協力に展開する、こういうことを述べておられるのでありますが、かくのごとき方法で、はたして事実進行しつつあるインフレ抑制に、どこまで役立つと思われますか。片山首相は、昨日の本議場において、金融資本の支配的優位性打破し、金融は産業に随伴すべきものであることを力説されたのでありますが、現実の情勢は、皮肉にも、片山首相の言葉に何らの権威のなきもののごとくに、反対現象を示しておるのであります。(拍手)
 われわれは、元來金融機関の國家管理を主張するものでありますが、連立内閣である片山内閣に、これを求めようとすることは、無理であることを思いますがゆえに、あえてこの点には触れようとしないのであります。しかし、少なくとも民主的に構成された金融統制の機関を中央に設け、不当なる融資の抑制をするとともに、必要なる資金は迅速に融資できるよう資金計画を樹立すべきであると思いますが、この点に対して、政府はどのようにお考えでありましようか。
 もし政府が、今申しました程度の対策しか実行し得ないとすれば、通貨はますます偏在し、隠匿され、インフレ惡化に拍車を加え、ひいては日本経済破滅の一大禍根となることは、爭われないと思うのであります。われわれはこれらの新円所在を追求し惡性インフレの原因である濳在購買力を破碎する必要があると思うのであります。政府はこの点をどのようにお考えでありましようか、明確なる御答弁を願いたいと存じます。
 第四に、生産増強対策についてお尋ねしたいと存じます。主要物資の生産状況は、全体として縮小再生産の傾向をたどり、はなはだ憂うべき現状にあります。今これらの全般にわたつての生産増強方策について疑義をお尋ねすることは、とうてい時間の許さないところでありますから、私は主として石炭生産増強の点について、政府の所信をお伺いしたいと存じます。
 前内閣が計画した、石炭三千万トン、鉄鋼七十万トン生産を目標とした、いわゆる傾斜生産方式は、満足な結果を見ていないのであります。すなわち石炭は、年産三千トン目標が、本年一月、三月の期間に六百二十九万トン、鉄鋼七十万トンは、計画の七四%の成績をあげているにすぎないのであります。石炭、鉄鋼の生産がこのような状態では、日本経済は惡性インフレの高揚と相まつて、眞に戰慄に値するものがあると思われます。それならばこそ、政府は必死の努力を石炭三千万トン生産に集中しておるのだと思うのであります。
 國家の運命をかけた石炭三千万トン出炭が、なぜ計画通り遂行されなかつたのか、その原因がいずこにあるのか、嚴粛に糾明されなければならぬと思うのであります。その生産隘路については、すでに論じ盡され、今さら蛇足を加える必要はないと思うのでありますが、ただ日本の炭坑は、営利観念に基く私企業としては、もはやその妥当性を失うに至つたものであるという一点だけは、強調いたしたいのであります。(拍手)
 その理由は、一部の新坑を除いては、大体において老齢に達し、これがために設備費、資材費に巨額の支出を要すること、從來の炭坑労働は、囚人を稼動せしめていたことからも想像されますように、まつたくの苦役労働でありまして、このために、労働者は圧制と苛酷低劣な待遇のもとに使役されてきたのであります。また労働者の災害予防も不完全であつたために、世界に類例を見ない高率の災害死傷者数を出しているのであります。たとえば、石炭百万トン当りの災害による死亡者の数は、英米等におきましては、わずかに二人ないし四人程度であるのに、わが國のそれは、実に十一人ないし十四人という、驚くべき高率を示しておるのであります。負傷者の数も、労働者三人について二人という、驚くべき数字を示しております。
 こうした苦役労働に服してきた労働者は、新憲法において、その人格を尊重されることとなり、從つて労働者の厚生施設、災害予防設備等に莫大な経費を要することとなり、これらの経費は、とうてい営利を目的とする私企業の、あえて耐えるところではないのであります。しかるに、石炭は國家産業のために絶対に必要欠くべからざるものであります。損得にかかわらず、利害を超越して、経営されなければならぬ性質のものであります。ここに利害にとらわれる私企業から、利害を超越した公共的経営が、当然に必然的趨勢として考えられるに至つたのであります。
 世間の一部の人の間には、石炭産業の國家管理案を目して、あたかもイデオロギーから発した問題であるとして見ようとする偏見をもつている人があります。なるほど社会主義経済の本質から言えば、石炭産業のごとき基礎産業は國有社会化を建前とするのでありますが、当面する日本の石炭國家管理案は、断じて單なるイデオロギーから発したものではないのであります。(拍手)石炭三千万トン出炭が、國家の運命をかけた絶対的命題でありまする点から、いかなる犠牲を拂つても、三千万トン出炭を可能とする條件を整えなければならぬと思うのであります。
 しかしてその第一の條件は、石炭産業の性質に鑑み、労働者の勤労意欲を高揚せしむることでなければならないと存じます。労働者の勤労意欲の高揚は、決して一片の説教によつて達し得られるものではありません。労働者の胸底に、おのずから勤労意欲がわき立つ、具体的條件が具わらなければならないのであります。石炭國家管理案は、労働者が目に見ることのできる公共事業としての経営の具体的姿であります。労働者が危險な災害を冒して働く上に、納得の行く姿であります。かくすることによつてのみ、石炭三千万トン出炭は可能となるのであります。國家管理案は、かくのごとき國家的要請に基いた現実の必要から生れたものでありまして、断じて單なるイデオロギーから生れたものではないのであります。(拍手)
 この見地から、安本案として過日新聞紙に報道された、いわゆる國家管理案を見ますると、私は多くの疑義を禁じ得ないものを感じます。すなわち、本案によりますれば、生産責任は、労働者の参加している生産協議会にあるのではなく、資本家側、経営の代表者としての鉱山所長にもたしめているのであります。また会社の経営の面には、全然触れてはいない。これでは労働者――経営技術者、生産技術者を含む――は、單に生産協議会に参加して若干の発言権をもつことと、地方石炭管理委員会に若干の代表を送り得るに過ぎないのであります。生産の責任は、自分たちとは別な手にあり、かつ経営権の主体は、依然として営利を本質とする会社の手にあつて、経営の社会化は全然行われてはいないのであります。
 また本案によれば、四つの地方に石炭局を設け、安定本部と石炭廳と双方に連絡し、安定本部から生産協議会に至る管理を、側面から補佐するというのであります。かくのごときは、世人の最も嫌惡する戰時中の官僚統制を再現せしめたものであると言われてもやむを得ないほどに、官僚色が濃厚であります。(拍手)政府は、このような案をもつて、石炭生産の第一の隘路である労働者の勤労意欲高揚の問題が解決すると思われましようかどうか。水谷商工大臣は数日前に炭鉱を視察されて、炭鉱労働については、なまなまし印象をおもちになつておるはずであります。かくのごとき案で、労働者がはたして納得すると思われまするかどうか、率直なる御意見を承りたいと存じます。
 私は、政府案の生産協議会を経営協議会とし、その構成を労働組合代表、経営技術者代表、生産技術者代表、経営者代表をもつてし、單位炭鉱における生産責任者として全責任を負わしめ、中央地方の石炭監理委員会を、それぞれ経営の主体的中枢体とし、経営協議会の代表者のほかに、関連重要産業の経営者、労働者双方の代表を参加せしめ、官吏はこの監理委員会に一個の構成要素として参加するに止め、経営を官僚支配から民主化の形体に改めるならば、必ず労働者は直面する國家の危機を身内に感じ、わがこととして、全精魂を傾けて生産に努力することと信ずるのであります。(拍手)
 また傳えられたところによりますれば、政府案は、出炭能率のいかんによつて、國家管理に移すものと、そうでないものとの区別を設けるとのことでありますが、かくごときは、同一地域にありながら、甲の炭鉱は國家管理となり、乙の炭鉱は非管理炭鉱となつて、この双方の炭鉱の労働者の間に待遇上の差別をつける結果となるおそれを感ずるのであります。もしそのようになりますれば、労働者相互の感情を阻隔せしめ、ひいては能率の上に大きな影響をもたらすものではないかという心配を感ぜざるを得ないのであります。私は出炭能率の減退のいかんによつて区別するのではなく、全炭鉱にわたつて國家管理を断行しなければ、國家管理断行の意義が失われるのではないかと考えます。政府が出炭能率のいかんによつて國家管理と非管理との炭鉱に区別されました理由はどこにあるか、私はそれを伺いたいと存じます。
 要するに、政府は石炭三千万トン出炭が、眞に國家の運命をかけ、民族の危機を打開する基本的條件であると意識するならば、いかなる障害を排してしても、その出炭を可能とする態勢が整えらるべきであると思いますが、はたしてどのようにお考えになりましようか、御所見を承りたいと存じます。
 第五に、失業対策についてお尋ねいたします。現在わが國には、正確には計算されていませんが、五百万人ないし六百万人という厖大なる失業者があるといわれております。これらの失業者は、そのほとんどが、海外からの引揚者、復員軍人、もしくは戰時中の徴用工であつたと思われます。これらの失業者の大部分は、政府の施設をまつまでもなく、自主的に生活の途を求めておる潜在失業者であり、半失業者であります。最近の社会情勢、すなわち、やみ市場の絶滅とか、街頭飲食店の閉鎖命令などで、これらの潜在もしくは半失業者は、漸次顯在失業者たらんとする傾向があります。これらの失業者に対し、政府は、その生活保障のために何ら見るべき施設を行つてはいないのであります。
 かくのごとき大量的な失業者の現存する上に、さらに企業整備、賠償施設の撤去等によつて、百万に近い労働者、俸給生活者が、失業者として街頭に放り出されようとしております。資本家は、企業整備と從業員の縮小整理とを同意語に解釈し、一斎に企業整備、すなわち人員整理を呼号しておるようであります。私も、敗戰日本の荒廃した経済を再建するためには、企業の整備を断行し、生産能率の高率化をはかることが必要であると存じます。しかし企業整備、すなわち人員整理という観念から、失業者の発生を当然とするがごとき方策に対しては、反対せざるを得ないのであります。それでは、企業整備はまつたく勤労大衆の犠牲においてのみ強行されることとなるのであります。
 企業整備を必要とする諸原因は、まつたく企業者の営利観念から行われた事業計画の蹉跌から発したものであると言わなければなりません。戰爭に敗れたことも、彼らの勢力を代表しておつた軍閥、官僚の誤算から、無謀な戰爭を誘発し、遂に今日の結果を招來したのであります。從つてその責任は、全面的に企業者自身が負うべきものであつて、勤労者には何らの責任はないのであります。しかるに責任を負うべき者が負わず、何らの責任なき勤労者のみが企業整備の責任を負わされ、生活の唯一の途である職場を追われるということは、ある意味においては、死刑の宣告にひとしいのであります。新憲法第二十七條によりますれば、すべての國民に勤労の義務が規定されております。働くべき意志をもち、働きに耐える健康をもち、大いに働かなければ食われない勤労者が、職を失うことは、まつたく國家の政策の犠牲となつたものでありまして、この生活の保障は、当然國家の責任でなけれぱならぬといわなければならぬのであります。
 企業整備は、生産能率の高率化のためのものでありまして、決して失業者を発生せしむるためのものではないのであります。それゆえに、企業整備にあたつては、いかにしたならば失業者を生ぜしめないようにすべきかが、第一に考慮されなければならないと存じます。ここに企業整備にあたつての労務の合理的配置と同時に、完全雇傭制の問題が起つてくるのであります。完全雇傭制の問題は、企業の性質上、容易に行われがたい場合も考えられます。また、かりに完全雇傭が行われるといたしましても、從來からの就業者の労働條件を維持し得るか否かの問題が起つてまいりまして、言葉で言うほどに、しかく簡單には行われがたいことも考えられ得るのであります。政府は、日本の各種企業を通じて、どの種類の企業に完全雇傭制が採用し得られるかを、調査しておいでになりますかどうか。もし調査しておいでになるとすれば、これに吸收し得られる労働者の数、並びに労働條件の変更の度合を示していただきたいと存じます。もし調査が行われていないとするならば、將來この種の調査をなされる御意思があるかどうか、その点をお伺いいたしたいのであります。
 さらにまた政府は、資本家の行う企業整備を成行きに放任されるのか。それとも國家治安の必要上、失業者の発生を阻止する意味において、資本家のほしいままなる企業整備に干渉されるのかどうか。もし資本家のなすままに放任されるとするならば、それによつていくばくの失業者が発生すると見ておいでになるか。その見込の数を知らしていただきたい。政府はまた賠償施設の撤去によつて、およそどれほどの失業者が発生するとお見込であるか。
 政府は、日本の現下の社会情勢、経済情勢に鑑みて、失業者の発生を最小限度に食い止める意味において、連合軍最高司令部に対し、賠償施設の撤去の延期方なり、もしくは施設撤去の代りに、原料補給による製品賠償に轉換方を懇請されようとする御意思をおもちであるかどうか。この点も併せて伺いたいのであります。最惡の場合、新規にどのくらいの失業者の発生を見込んでおいでになりましようか。そしてその対策として、いかなる案をおもちであるか。お伺いいたしたいと存じます。
 傳えられるところによれば、既定経費三十五億円の公共事業費の予算を増加してこれを拡大し、失業者を吸收するとのことでありまするが、資材不足の今日、はたしてそれによつて、いくばくの失業者を吸收し得られるでありましようか。また既成予算による開墾事業、河川改修、道路修復等の事業に、どれだけの失業者を吸收し得られるか。これを要するに、各種事業を通じまして、業種別におよそいくばくの失業者を吸収し得られ、最後に完全失業者として國家の生活保障によらなければならぬ数は、一体どれほどの数に達するお見込でありましようか。その点を明確に知らしていただきたいと存じます。
 國家の手による生活保護の方法は、新しく制定されようとする失業保險法によるものと思われますが、現下の國家財政のもとにおいて、財政的にそれをどの程度まで可能とするや否や。かりに財政的に可能とするといたしますれば、失業保險法が制定され、その效力が発生するに至るまでの期間を、どのように処せられようとするのでありますか。この点も併せてお伺いしたいと存じます。
 要するに、極度に窮迫した今日のわが國において、國家財政の負担に堪え得られないような厖大な失業者を発生せしむることは、まことに國家的悲劇であると言わなければなりません。從つてわれわれは、極力失業者の発生を防止せなければならぬと思うのでありますが、この点に関し、國民一体となつて、あげて対策を講ずるという意味において、率直にお答えを願いたいと存じます。
 第六に、國民生活安定対策についてお伺いいたしたいと存じます。長期の戰爭と、その結果としての敗戰は、戰後における歴代内閣の措置おおむね当を失し、その累積が今日の事態を生み出したものと思われるのであります。私どもは、いたずらに過去を回顧することなく、よつて來る原因は、これを究明しなければならぬのでありますが、当面の事態を切り抜け、明日への希望に國民を躍動せしめなければならぬのであります。
 政府の唱道される道義の高揚も、たしかに精神的活力素の一つではありましようが、何といつても、インフレ惡化の激浪の中にもまれ、さいなまれつつある國民は、生活の苦しさに、絶望感さえ起そうとしておる状態であります。道義の廃頽も、多くはここから発しておると言つても過言ではないと存じます。惡性インフレの阻止は、ひとり経済再建のためばかりでなく、國民生活の安定のためにも、道義の高揚のためにも、一瞬の躊躇も許さず、政府の大英断をもつて行わなければならぬ大事業であると存じます。
 惡性インフレに拍車を加える大きな要因としては、生産の低下、縮小再生産の惡循環、乏しい原料・資材の隠匿並びに偏在、これに伴う物價と賃金・俸給との惡循環等々が数えられるのであります。しかしてこれらの要因を一貫して横流するものは、やみ行爲であります。やみ行爲を絶滅しない限りは、國民生活の安定は考え得られないと存じます。
 從来、やみ行爲の絶滅はしばしば叫ばれました。だが、多くはいたずらなる掛声に終り、そのなすところは、半失業者、僭在失業者たちの、かろうじてその生活維持の途である市井のいはゆるやみ市場の絶滅、断続的な取締りくらいのもので、ほとんど何らの効果をあげ得ないばかりか、かえつて反撥作用さえみておる状態であります。私は、眞にやみ行爲を絶滅せんとするならば、やみの根源である製造工場から流れ出る製品横流れの杜絶、敗戰のどさくさに乗じて、軍所有の物資を横領、もしくは関係軍人官僚と結托して、不当拂下等によつて隠匿した物資の、ブローカーからブローカーへとやみを流れつつある物資の徹底的摘発を行つて、その根元をつく以外に方法はないと存じます。(拍手)この点に関し、政府はいかに見、いかに対処されんとするのであるか。その所信をお伺いいたしたいと存じます。また現在までに隠匿物資をどの程度に摘発されたのか。また現在なおどの程度の隠匿物資があると思われるのか、その見込数量、並びに摘発を可能とするか、それとも摘発を不可能とする状況にあるのか。これらの点に関しても、できるだけ率直にお答え願いたいと存じます。(拍手)
 第七に、行政機構の改革並びに官吏制度の改正についてお伺いをいたします。片山総理大臣は、官僚思想の一掃を力説されております。日本の正しい民主主義化のために、封建的残滓を多分に内包している官僚思想を一掃することは、絶対に必要なことと存じます。はたして、いかなる規模において行政機構を改革され、官吏制度を改正されんとするのであるか、お伺いをいたしたいと存じます。
 政府は、從來警察権を掌握し、官僚の中枢とされていた内務省を、廃止される予定と聞いておりまするが、行政機構の改廃については、これ以外にいかなる構想をもつておいでになりますか。たとえば建設省というがごとき省を設けて、新しき日本再建の方途を講じようというようなお考えがあるかどうか。その点もお伺いいたしたいと存じます。
 さらに、官僚の独善的支配慾は、戰爭中の強力な官僚統制と、政党の無力化と相まつて、中央、地方を通じて、全官廳に充満しておると言つても過言ではないと存じます。それゆえに、官僚思想を一掃するためには、まず第一に、官吏を特徴づけておる官吏の身分制、すなわち等級制を廃止し、実力に基く抜擢法を採用すること、それがためには、官吏の身分的前提である高等文官試驗制を廃止し、任用試驗制に改めることが考えられるのでありまするが、政府は、これらの点に関していかようにお考えになりまするか、お伺いいたします。(拍手)
 最後に、第八としまして、文教の振興についてお尋ねいたしたいと存じます。武器を捨てたわが國としては、文化國家として社会的信用をかち得る以外に進む途がないということは、昨日片山総理大臣が、文化國家としての新日本建設を高調されたことも、私どもはまつたく同感でありまして、片山総理大臣のこの言葉に対しては、私ども衷心から共鳴を禁じ得ないものであります。
 文化國家として、國家の品位を高めんとすれば、何をおいても、まず國民の教育に力点をおかなければならぬことは、言うまでもないことと存じます。私どもは、長い戰爭の期間を通じて、軍國主義的教育の一色に塗りつぶされ、しかも学問的な研究はまつたく軽んぜられ、國際的文化水準は著しく低下されてきたのであります。軍閥專横の下に、窒息状態にあつた私どもは、今や個々の人格の相互的尊敬と信頼の上に、文化的向上をはかることの自由を與えられたのであります。
 少年、少女からの再教育を必要とすることは、言うまでもありません。この点から、六・三制の義務教育が採用せられ、教育の内容もまつたく面目を一新するに至つたのであります。しかしわが國の現下の窮迫した財政状態は、この新教育制度の採用にあたつて、中央地方ともに財政的には少からざる混乱を引起しておるのであります。それにもかかわらず、私どもはこの新教育制度の制定を、心からの喜びをもつて迎えたものであります。ただ新制度の実施にあたつて、財政的措置のことを考えますると、一抹のさびしさを禁じ得ないものがあります。私どもは、國家財政を無視して新教育制度の育成充実のみを問題にするものではありませんが、願わくば、國家將來のために教育の重視すべきに鑑み、新教育制度の確立を可及的速やかに達成されまするよう、強く要望してやまないものであります。(拍手)この点に対して、文部大臣はいかなる御所見でございまするか、それをお伺いいたしたいと思います。
 以上八ヶ項目にわたつて、それぞれの関係大臣から、本議場を通し、國民に呼び掛ける心構えをもつて、正直に、率直にお答えあらんことをお願いいたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
  [國務大臣片山哲君登壇]
#5
○國務大臣(片山哲君) 加藤君の御質問の中、講和会議に関する心構えについて、お答えいたしたいと思います。この問題について加藤君が述べられた御意見には、賛成であります。政府はその心構えをもちまして、今日まで、できるだけの力を盡しておるのであります。すなわち、希望と光明は、ただ單に講和会議によつてのみ達せられるものではなくして、日本國民の自力と、日本國民の不撓の精神によつて、十分に達していかなければならないと考えておるのであります。
 すなわち民主化の徹底をはかり、平和主義実現のために、國をあげて努力をしなければならないと思つておるのであります。官吏はもちろん懸命の努力を拂つて、國民の公僕としての実を発揮するに努めます。この意味において、官吏制度の根本的改革、行政機構の徹底的な官僚化打破にに向つて進みたいと考えております。(拍手)それとともに、力を合わせて國民大衆諸君もみずから起ち上つていただきたい、こういうことが、國民運動を提唱いたしておりまするゆえんであります。
 ただ單に精神運動を高調いたしまして、その他の経済政策、その他の生活安定問題について策を施さないというのではないのであります。経済運動と精神運動と相並べて、不可分の関係で進みたいということは、昨日申し上げた通りであります。この意味におきまして、インフレ問題、あるいはやみの撲滅、生活安定問題も、日本民主化の上において最も必要なる対策であると考えておる次第であります。われわれ日本國民の心構えを、世界に十分に表明することによつて、初めて講和條約の達成の要件ができるということを考えて、極力あげて日本國民全体の運動として、これに向つて進みたい心構えであるということを、ここに申し上げて、お答えといたしたいと思うのであります。(拍手)
    〔國務大臣芦田均君登壇〕
#6
○國務大臣(芦田均君) 加藤勘十君よりの、特に私に対する質問に、お答えいたします。
 去る六月五日、外國新聞記者團と私との会談に関して、一部不正確な報道が傳わつたことは、加藤君の御指摘の通りであります。わが國の領土をいかに決定せられるかということは、來るべき講和会議において終局的にきまる問題であります。ポツダム宣言の第八項には、日本國の主権は、本州、北海道、九州、四國、並びに連合國の決定すべき諸小島に局限せらるべしと書いてあります。もとよりわれわれは、ポツダム宣言を忠実に履行し、一切の軍備を棄て、國内の民主化に努力してきたのであります。しかしながらわが國の北海道及び九州の近海においては、人種的にも、歴史的にも、わが本土の一体となつて、古くより日本民族の安宅として維持せられた諸島が存在しております。われわれは、將來において武力をもつて領土を獲得するがごとき問題を、未だかつて夢想したことはありません。私が外國記者團に向つて言わんと欲したところは、ただいま申し述べたような点に歸するのであります。これをもつて私の返事といたします。
    〔「答弁にならないぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
    〔國務大臣平野力三君登壇〕
#7
○國務大臣(平野力三君) ただいま加藤君より御質問になりました、食糧問題に関する件に関して、お答えをいたしたいと思います。御質問の要点は、現在遅配が続いているのは、政府の需給推算に対して大なる誤りがないかという点が、第一点であります。第二点は、七月から十月までの間の政府の計画は、はなはだ不十分のようであるが、はたして自信があるかどうかというように問われたと思います。第三は、供出制度の根本改革を行う意思があるかどうか。この三点と考えますので、まず最初に、第一点と第二点を合わせて、御答弁をいたしたいと思います。
 最初に申し上げたいと思うことは、現在の遅配の状況であります。現内閣が成立いたしましたのは、六月一日でありますが、その前日であります五月三十一日における全國の遅配の状況は、東京において平均八日間、名古屋において五日間、大阪において四日間、北九州は十日より十八日、北海道において三十日から四十日、この遅配の状況が、この内閣が成立いたしました前日の遅配の状況であります。そこで私といたしましては、なぜかようなる遅配が起つておるかという原因に対して、深く檢討を加うるの要があると考えまして、この遅配の原因に対して檢討を加えたのであります。
 前内閣におきまして、二合五勺配給を決定せられましたのは、昨年の十一月の一日であります。爾來食糧管理の任に当りました当局は、この二合五勺配給の基礎を裏ずけるものといたしまして、重大なる三つの問題を考えておつたのであります。その第一点は、輸入食糧の二百万トンであります。その第二点は、二十一年の産米を、農家より一一〇%供出すべきことを予定した点であります。第三点は、今年の麦と馬鈴薯の作柄を、平年作と見た点であるのであります。いま全國民が二合五勺配給というものを頼みといたしておりますところのその基礎的なる根源というものは、ただいま申し上げましたる三つの点を基本として立案されておつたということは、言うまでもないのであります。そこで、しからばこの三つの点がいかように進展したかということを檢討を加えますることが、現下國民の心配をいたしておりますところの食糧問題に関する重要なる点でありますので、お聽きとりを願いたいと思います。
 まず、六月末日までに放出をせられましたところの輸入食糧は、大体において五十一万六千トンが、日本國民に放出せられておるのであります。政府が意図いたしましたる二百万トンを得るには、あと百五十万トンの輸入食糧を必要とするのでありますが、この数字は、現在におきまして絶対に不可能であります。今日私どもがこの数字を明確に発表いたしまする自由のないという点については、一つ御了承を願いたいと思うのでありますが、この百五十万トンの残つておりまするもののうち、われわれが專門的に檢討を加えまして、百万トンを得るということに対しても、やや困難があると御了解を願わなければならないのであります。
 これを要するに、輸入食糧の面におきまして、二百万トンの輸入食糧に大なる違算を生じましたということは、いたし方なき事実であります。第二点でありますところの一一〇%の超過供出というものは、一〇四%において完全に頭打ちをいたしておるのであります。これまた現在の状況の上におきまして、一〇四%において行詰りを生じておるという点も、また農村の現状において、一應やむを得ざる状況と見なければなりません。第三点でありますところの麦の生産が、今年は天候の関係におきまして、平年作を維持できなかつたという点も、これまたいたし方なき事実であります。この三つの原因によりまして、いわゆる遅配がかように続いてまいつておりますということの現状は、ただその当局を責め、ただその当局の施設が惡いというて、これを叱責すべきものではなくして……
    〔「わかつたか」と呼び、その他発言する者多し〕
#8
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
    〔「言うはやすく、行うはかたし」「國民にあやまれ」と呼び、その他発言する者多し〕
#9
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に
#10
○國務大臣(平野力三君)(続) 私は、最も重大なる、國民の問わんといたしておりますところの数字の事実について、説明をいたしておるのであります。私がただいま申し上げましたところの数字につきましては――全國民の前に数字を明らかにいたしますることは、現内閣の責務であり、かつ食糧政策を担当いたしますものの任務でありますので、数字に関します点につきましては、ぜひこの議場を通じて國民に発表できるの自由を與えていただきたいと思うのであります。(拍手)
 次に申し上げたいと思いますことは、今七月から十月までの間におきますところの需給の推算についてお聽きとりを願いたいと思います。政府が、この七月より十月までの間に、確信をもつてとらえ得ると考えまするところの食糧の数字は、まず六月より七月に持越しまする米が、百四十六万五千石であります。早場米といたしまして、その年度内に計算できるものが、百二十九万八千石であります。新麦の供出を米に換算いたしまして、四百十万五千石であります。新馬鈴薯は、米に換算いたしまして、七十六万二千石であります。これにさらに早堀甘藷九十八万九千石を加えまして、合計八百六十二万八千石というのが、日本國内において、これから政府が手持としてとらえ得るところの数字であるのであります。
 さらに輸入食糧に関しまして、これより全力を傾倒いたしまして、われわれが得られると推定いたしまするところの数字は、五百五十五万二千石と推定いたしておるのでございます。この輸入食糧と、國内においてわれわれがもち得るところの米を計算いたしますると、一千四百十八万石となるのであります。
 しかるに七月から十月までの間に、政府が二合五勺を基準として配給する場合において必要といたしまする数量は、一千六百五十二万石となるのであります。かくいたしますると、需給の推算の上におきまして、二百三十四万石というものが、この十月までに不足を告げるのであります。しからばこの二百三十四万石という数字は、いかなる結果として現われるかと申しますると、一ヶ月に政府が要しますところの配給量は、大体四百十三万石と踏んでおりまするので、この二百三十四万石は、約十六日間の遅配となつて現われるのであります。
 これを要するに、現在の食糧事情をこのままに放任をいたしまするならば、ここに十六日間の遅配を予想せられ、前内閣時代からの遅配八日間、六月中におきまするところの遅配四日間、合計十二日と、この十六日の遅配を合計いたしますると、ここに二十八日間の食糧不足という問題が、この米穀年度において現われてくるのであります。昨日内閣総理大臣が、今米穀年度におきまして、約一ヶ月の不足を告げると発表いたしましたのは、以上私が申し上げました数字の根拠によるということを、まず御了承願いたいと思います。
 しからば、これに対しますところの具体的方策をいかにするか。これが問題なのであります。政府は、昨日発表いたしました食糧危機突破対策の中におきまして、まずこの二十八日に及ばんといたしまするところの遅配を、いかにして防ぐかという具体案を発表したのであります。その第一のねらいといたしますのは、いかにして二十一年産の米を、なおこれより政府が吸收するかという点にあるのであります。その一つの現われといたしまして、昨日発表いたしましたものの中に、いわゆる縁故米と称するものがあるのであります。政府はこの縁故米制度をもつてして、もとより十分であると考えてはおらぬのであります。さらにこれに対しましては、特別救援米制度を設け、あるいは代替米制度等を設けまして、極力二十一年産の米を吸收することによつて、まずこの遅配欠配の日数というものを、最大限度に縮小せんとするものであります。
 しかし最大限度にわれわれが努力いたしましても、なおかつこの遅配欠配の日数が、十分に防ぎ得るとは断定できないのであります。そこにおいて私どもは、今年の米穀年度におきましては、單に主食のみに重点をおくにあらずして、たとえば水産加工物、あるいは調味料、いやしくも國民の栄養を償うに足るものは、もつて食糧の配給面においてこれを動員せんと考えておるのでありまして、この点は、緊急対策といたしまして、われわれが昨日発表いたしましたる中に、相当具体性を盛つておるものであります。
 さらに私どもといたしましては、かようなあらゆる手段を盡しましても、十分この食糧の危機を突破できざる場合におきましては、何としましても日本の食糧政策というものは、芋類に依存する点が相当あると考えますので、甘藷の早掘りはもとより、將來の食糧問題といたしまして、この点に相当なる努力を拂わんといたしておるものであります。
 諸君、かようにいたしまして、私はただいま御質問に相なりましたるところの遅配の状況というものが、單に政府のでたらめなる需給推算にあるのではなくして、輸入食糧、あるいは供出問題、あるいは麦の不作というように、遅配のよつて來る原因というものには、相当の理由のあるということを御承知願いまするとともに、これに対するところの対策といたしましては、ただいま説明いたしましたるところの諸般の問題がうまくいくかどうかという点は、これ單に政府がこの演壇において説明をしただけで盡きるものではないのでありまして、その点に関しましては、極力全國各位の協力と、しかもこの食糧事情がいかに緊迫しておるかということに対して、全國民の理解を得るや否やという点にあるということを、私どもは痛感いたしておるのであります。(拍手)かような事情のもとにおきまして、私どもは今後の食糧問題に関しましては、ただいま申し上げましたような諸点において、今日打つべき手は、ありとあらゆる手を打ちつくして、この難局に当らんといたしておりまするところのわれわれの決意と、われわれの努力に対して、十分御了解を得たいと思うのであります。
 なお第三の点でありまするが、將來の供出制度を根本的に改善するや否やという点であります。私どもといたしましては、從來とつておりまするところの供出制度が、單に農家が生産をいたしましたる生産量を目当てに供出制度を考うるということが、根本的なる対策であるとは考えておりません。よつてわれわれは、來るべき秋の米に関しましては、供出制度の根本改革を立案いたしまして、今議会におきましては、政府といたしましては、一は法律の上におきましては、農業生産調整令等の、農家の統計を把握すべき法律案を上程し、また農林省におきましては、食糧管理局および農政局の両局におきまして、全國の農民諸君の意見を求めつつ、この供出制度の根本改革に向つて、今や立案しつつあるの状況であります。かような趣意のもとにおきまして、御質問の供出制度の根本改革については、今や著々その準備を進めつつあるということを、御了承願いたいと思います。以上、御答弁申し上げます。(拍手)
  [國務大臣栗栖赳夫君登壇]
#11
○國務大臣(栗栖赳夫君) 加藤議員の御質疑中、大藏大臣に関する部分についてお答えをいたします。
 インフレーションの防止が、この危機突破の重大なる要素であり、かつまた前提であるというお説に対しては、まつたく同感であります。政府におきましては、この危機突破対策の線に沿いまして、具体的政策を著々立て、そして極力強くこれが実行に邁進する所存であります。
 そういたしまして、その中でも最も大事な財政の健全化という点について、一言申します。この現下の情勢におきまして、諸般の事情に顧みますと、本予算千百四十五億というような予算でもつて賄いきれるかどうかということは、これは賄いきれないことは明らかであります。私は、速やかに追加予算案を立てまして、本議会にお諮りいたしたいと思うものであります。その追加予算を立てるにあたりましては、私は健全化、健全主義ということに強く徹しまして、編成をいたしたいと思うのであります。すなわち冗費を省き、あるいは必要に應じましては、根本の行政整理あるいは配置轉換等による整理、費用の節約等にも極力なたを振いますし、また予算の支出につきましても、その重点その他に鑑みまして、極力削減をいたし、必要なる、やむを得ざるものを揚げたいと思うのであります。
 それからさらに收入の面でありますが、歳入の面におきましては……
    〔発言する者多し〕
#12
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#13
○國務大臣(栗栖赳夫君)(続) どうしても税が大本であります。そこで増税と税收入の増加をはかるという点においても、極力推進をいたしたいと思うのであります。(拍手)これには、税務機構の強化と、その他あらゆる手段を盡しまして、新円階級にまで追及をいたして、それを補促し、課税をいたしたいと思うのであります。 (拍手)この課税につきましては、すでに大藏省におきましては、人員の増加と質の向上という二つの点を考えております。すなわち人員を相当量増加いたし、さらに税務署のごときものも、相当増加をいたしますと同時に、廣く人材を集めまして、税務官吏として訓練をいたし、そして十分実をあげたいと思うのであります。そして税務官吏の質と量と、さらに第三者の通報制を活用いたしまして、極力税源を捕捉し、課税をいたしたいと考える次第であります。
 次には、金融の問題でありまするが、金融の問題につきましても、去る三月以來、高度の金融統制を加えているのであります。しかしこれを今回さらに立法化いたしまして、そしてこの自由預金の集積の範囲において貸出をする、こういう強い線を引きたいと思うのであります。そうして、日本銀行の借入に待つというようなイージー・ゴーイングは、極力避けたいと思うのであります。しかし、一方におきまして、金融統制を強化いたしますと同時に、他方におきまして、重点的にこの危機突破に必要な資金の供給は、これは十分考慮いたしまして、円滑にいたしたいと思うのであります。自由融資の点の範囲も拡大をいたします。そうしてこの自由融資の範囲も拡大し、あるいは自由の円でもつてでも貸出をするというような点も考慮し、さらに復興金融金庫というようなものをも活用いたしまして、そうして十分必要なる資金の供給には、事を欠かさないようにいたしたいと思うのであります。
 なお、この金融統制にあたりましては、その運営について愼重に考えたいと思うのであります。民主的にこれを行いまして、いやしくも官僚の統制の弊を來すようなことは、極力避けたいと思うのであります。なお、私は全國の金融機関に対して要望いたしますところは、十分新円預金の貯蓄と蓄積ということに全力を盡し、かつまた、この資金の融通、資金の規整に從つて、この産業再建の協力ということに、十分邁進をしていただきたいという点であるのであります。
 私は最後に一言申し述べたいと思います。この現下インフレーションの防止ということは、きわめて重大でありまして、政府においても十分心掛けて、そうしてこれが突破に邁進をいたしたいと思うのであります。(拍手)それと同時に、私はこの國会を通じまして、廣く國民諸君に訴えたいと思うのであります。それは國民に、乏しきをわかち、乏しきに耐えて、ぜひこの現在の危機の苦しいところを認識してもらい、そうしてこれがために政府に協力し、政府と國民とが一致協力して、このインフレーション防止について最善の努力と実をあげていただきたいということを、切に望む次第であります。(拍手)
    〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#14
○國務大臣(水谷長三郎君) 加藤勘十君の御質問のうち、石炭に関しまする問題に関しまして、私から御答弁を申し上げたいと思う次第であります。政府といたしましては、石炭産業の復興によりまして、惡性インフレ打開の糸口を見つけ、産業全体の活動を増大し、國民生活を安定に導こうとする点に関しましては、ただいま加藤君の述べられました御意見と、まつたく同感でございまするが、このためには、当面の段階におきまして、乏しい國力のうちから、資材及び資金を重点的に、言いかえますならば、他の産業部門及び國民生活の犠牲におきまして、石炭部門に注ぎこまねばならないと思う次第でございます。
 この方針を堅持いたします以上は、國家として、石炭生産の現場の実体を正確に握り締めまして、炭鉱所要の資材及び資金を計画化し、これらの要素が最も有効に使用されるように、炭鉱を指導していく責任を、明確にする必要があると思うのであります。(拍手)しかも、一切の増産の焦点は、直接生産の現場に與えられました條件のもと、増産に奮い起つことにあるのでありまするから、行政と経営と労働の三つのものが、おのおのその機能におきまして、眞に一体として能率をあげるよう、現場において調整されることが肝要と思うのであります。
 炭鉱の國家管理こそは、まさにこの現実的な必要を満たすために構想せられたものであります。(拍手)これによりまして、政府は、石炭三千万トンの達成に直接責任をとり得るし、現場経営者は、從來その活動を制約してきた諸條件が除かれたことになつて、才能を揮うことができますし、労務者自身は、國家的地位に目ざめた矜持をもつて働くことができると確信するものであります。
 さらにまた法案の内容に関しまして、加藤君よりいろいろ御質問がございましたが、ただいまのところ、この法案の具体的内容につきましては、一一答弁することができないことを、きわめて遺憾に思うのでございまするが、大体この法案におきまして、一番中心になる点はどこにあるかと申し上げますると、ただいま加藤君の御指摘のように、管理の対象と、管理の方式と、この二つが、このたびの法案の大きな眼目になると思うのでございます。
 ただいま、加藤君といたしましては、管理の対象といたしまして、るる理由を述べられまして、全炭鉱をぱ國家管理の対象にしろという御意見であつたのでございまするが、その対象をどうするかという点に関しましては、いまだ結論には達しておりませんが、ただいまわれわれが考えている点は、何と申しましても、國家管理の実施は、わが國として新しい試みでありますがゆえに、三千万トン生産を確保する見地から言いますときには、管理のもろもろの制度が充足せられまして、その活動が効果を現わしてから、廣く全般に及ぼすべきか否かを決定するほうがいいじやないかと考えております。從つて当面の問題といたしましては、一定規模以上のものに対して國家管理を適用するようにいたしたいと考えております。
 こういうことになりますと、それでは國家管理の対象からはずれたところの問題はどうなるかという御質問がございますが、それらの点に関しましては、生産の助長なり、福利厚生施設の充足のために、國家管理と同時に、石炭公團を設けまして、全炭鉱に対してその斡旋を行おうとするものでございまして、この石炭公團の働きによりまして、國家管理の対象になる山と、ならない山との不平均、不公平をば、是正していきたい、このようにわれわれは考えておる次第でございます。さらにまた加藤君は、その管理の方式といたしまして、あくまで官僚統制を排撃し、その目標は、労働者の勤労意欲を奮い起さすことが第一番であるという御説は、至極同感でございます。言うまでもなく、石炭増産は、資金、資材、労働等、各般の生産要素を充足に存するのでございますが、わが國の実際の状況から見ますと、労働者の生産協力が最も必要であるということは、加藤君とまつたく同感でございます。(拍手)從つて目下考慮中の國家管理法案は、この点に意を用いまして、働く人人の生産協力の体制といたしまして、炭鉱経営協議会を活用いたしまして、労働者諸君が、國家的自覚と國家的矜持によりまして、勤労大衆の責任のもとに、石炭三千万トンをたたき出したいと、われわれは考えておる次第でございます。(拍手)
 われわれは大体このように考えておる次第でございますが、さきに申し上げましたように、國家管理法案の内容は、ただいま具体的に一々述べることはできません。きわめて近い機会におきまして、この法案を皆樣方の前に発表いたしまして、正式に議会に提出するまでには、國会における公聽会、さらにまた、現場におけるところの公聽会を開きまして、從來の官僚独善の弊をば根本的に改めまして、経営者の立場からも、でき上がつた法案に対しては、誠意をもつて責任をもてるという建前のもとに、この法案を提出したいと、われわれは考えておる次第でございます。(拍手)
  [國務大臣米窪滿亮君登壇]
#15
○國務大臣(米窪滿亮君) 加藤君の御質問のうち、失業対策に関する諸問題につきましては、便宜上私から申し上げます、まず、最初に加藤君の御指摘になつた点は、今日の日本の産業危機を乗り切るためには、好むと好まざるとにかかわらず、産業の合理化、それに引続いて企業整備が必要となつて來るのであるが、これに対する対策はどうであるかと、こういう御質問のように了解いたしました。御言葉のごとく、今日資金方面において非常なる梗塞をみまして、また生産資材の方面においても、ほとんど底をついておる、窮迫しておる今日の日本において、眞にこの経済危機を突破し、産業の復興をはかるためには、一に労働者の生産性を高揚するよりほかに途はないのでございまして、この意味において、この加藤君の言葉をかりて言えば、いわゆる資本主義経営の犠牲となり、そうして今日、目睫に産業、企業整備の犠牲となつて失業者になろうとする者を、どういうぐあいに政府は対策を講ずるかということは、今日國民として最も重大なる関心をつなぐ問題だと思うのでございます。
 この点につきましては、加藤君は、これに関連をしまして、完全雇傭の問題を取上げておりまするが、この完全雇傭という問題については、これを廣く解釈する場合と、狭く解釈する場合において、考え方が違つてまいりまするが、大体において資金も豊富であり、生産資材も十分にあり、施設も相当潤沢であるアメリカでさえも、廣い意味における完全雇傭は、なかなか実現しないのでございます。
 今日の日本國民生活の現状を考えますると、ある人の話によりますと、一番日本の経済がどん底にあつた昭和五年当時の國民のあの生活水準と、今日とを比較してみますと、今日の日本は、あの当時の國民の生活水準を保つためには、当時の工業生産の三一%を増加しなければならないということを言つております。また、当時の貨幣において、二十億円くらいの輸入がなければ、その当時の工業生産は興らないと言つております。
 かりに百対一の爲替換算で考えますれば、実に二千億円の資材その他の工業必要品の輸入を見なければ、昭和五年当時の國民の最低生活の水準を保てないということになるのでございまして、こういう現下の経済実情から見まして、完全雇傭ということは、われわれ政府当局としても、これらの実現に対しては大いに努力したいつもりでありますが、実際は不可能であるということは、私、はつきりとこの際申し上げたいと思うのでございます。
 しからぱ完全雇傭ができない場合において、極度にわれわれは努力をして、労務の配置轉換を行い、その他の方法を講じて、なおかつ失業者になつた者は、どういうぐあいにして救済するかということでございます。これについて、まず第一に考えられることは、公共事業、あるいは民間の新らしく興る企業に、労働者の余剩力を吸收するということでございます。
 この点につきまして、産業別的にその見込みのある数字を示せと、加藤君が言われたのでございますが、私、率直に申し上げまして、多少の数字は皆さんに申し上げることはできますが、まだはつきりしたところの確定した数字は、目下厚生省と経済安定本部との間に協議中でございまして、ただここで申し上げるのは、本年度の初頭において、公共事業費五十五億円と言う予算を組むときの、大体の希望の数字でございます。これによりますと、厚生省関係における土地開拓が百十万人、河川の修理が十七万人、厚生省関係の應急事業が十九万人、その他略しますが、合計百六十万人というものを、公共事業に吸收しようという案が、予算関係をにらみ合わせて立てられたのでございます。しかしこの概数は、その後物價の騰貴その他によつて、大体七割くらいが可能であるとお考えを願えれば、大体に誤りはないと考えるのでございます。
 しからば、今日失業者は全体どのくらいあるかということについて御説明申し上げなければならないのでございますが、昨年の四月において概算しましたところの失業者が、現に現われておる。当時統計によつて調べたのによりますと、二百五十五万人、そうして当時潜在失業者と称するものが、当時の計算で四百五十万人、この潜在失業者は、前内閣の河合厚生大臣もたびたび言われました通り、いわゆる腰だめ式の推定でございまして、これは人によつて推定の数が違う。あるいは五百万人という人があり、あるいは六百万人という人があるのでございまして、これはわが國に、未だ確然たる確立した労働統計がないために、はつきりしたことが申し上げられないのは残念でございますが、大体において顯在が二百七十万人、潜在がそれの一八〇%と思えば、大体において正確ではないかと考えております。
 こういうわけでございますから、公共事業に百七十八万人の八割を吸收するとしましても、なおかつ、そこに失業者は残るのでございまして、こういう失業者をどうやつて救済するかということでございます。この点は、政府としては、救済のための救済をやるのではなく、いわゆる事業を振興するために、これと並行して、失業者を吸收しようとする案を立てておりまするが、かくのごとく、今日ただいま御説明したように、いわゆる公共事業その他に吸收する数が少い。從つてこの労働力の余剩に対しては、やむを得ずわれわれは、これに対して失業保險法あるいは失業手当等を新しくつくりまして、きわめて消極的ではありまするが、いわゆる生活保護法によつて救われない労働者を、この方面において救いたいと思つておるのでございます。
 生活保護法は、昨年度御協賛を得まして、三十五億円で出発したのでございまするが、その後物價が騰貴しておりますから、本年これに対して若干の追加予算をお願いしなければならないと考えております。また失業保險法については、來年の四月ごろでなければ実施ができない実情にあるのでございまして、それまでの失業救済はどうするかという加藤君の御質問に対しては、失業手当法を、本年の九月ごろから実施してまいりたいと思つております。この給付する給付額、あるいはその他の細目につきましては、目下鋭意注文の調査中でございますから、いずれ本会議に上程して、皆さんの御協賛を得たいと思つておるのでございます。
 政府としましては、この百七十万の七割くらいを公共事業に吸收するつもりでありまするが、しかしこれは昨年度の案でありまして、本年度においては、輸出産業を振興する、あるいはこれはまだ未定稿ではありまするが、電源の開発等の新しい事業を興すことによつて、さらに多数の失業者を吸收することができると思うのであります。これについては、全國五百三十いくつにわたるところの職業安定所の機構を改正し、そうしてその総力をあげて職業の紹介に努めると同時に、全國四百何箇所の職業補導所の強化を行いまして、これによって、大工であるとか、指物師という方面へ、労務の配置轉換を試みて、極力失業者をなくしたいと考えておるのでございます。
 以上、はなはだ不十分であつたと思いますが、加藤君からお述べになりましたところの失業対策について、私よりお答えいたしました。(拍手)
  [國務大臣齋藤隆夫君登壇]
#16
○國務大臣(齋藤隆夫君) 行政機構の改革につきまして、大体お答えをいたします。
 この問題は、前内閣以來の懸案でございまして、内閣に行政調査部を設けまして、各省の知能を集めて、及ばずながら私がその総裁となつて、爾來熱心に研究をいたしております。内外の制度にわたつて廣く研究いたして、希わくは、根本的に中央地方にわたつて、行政機構を改革いたしたいと思つております。しかしこれは、なかなかむつかしいことでございまして、日本の行政機構は、御承知の通りに明治以來の傳統の上に立てられたのでございまして、これを根本的に打壊してしまうことは、事実においても、理論においても、なかなかできないことであります。
 しかしながら、この問題は、歴代内閣が声明しておりますけれども、いまだかつて実行せられたことのない問題でございますからして、どうしても一つ私やつて見たいと思つております。これがためにアメリカからして、昨年の十一月に、日本に行政視察團がまいられまして、爾來七箇月にわたつて、日本の行政機構並びに公務員制度の改革について、熱心に研究せられまして、その研究の結果も、あるものはわれわれの手もとにまいつておるのでございますからして、これらの方面のことも参照し、また絶えずこの委員の方方と折衝を続けておりますからして、あまり遠くないうちにおいて具体化して、議会の協賛を仰ぐことができるように思います。
 つい先だつて公表いたしました内務省廃止のごときも、やはり行政機構改革の一部であるのであります。その他、これを理論上及び実際に適合いたしますように具体化して、議会の協賛を得ますることは、できるかぎり早くやりたいと思つております。その一部は、あるいはこの議会に提出することができるかはしれませんが、遅くとも次の議会におきましては、全部これをまとめて、あなた方の御協賛を仰ぐつもりであります。行政調査部も、だらしがなく長くやつておることはいけませんから、大体一年という期限を限つてやつておりますからして、次の通常議会におきましては、全部提出することになつておりますから、すべてのことは、その時までお待ちを願いたいと思います。これだけのことをお答えいたします。(拍手)
  [國務大臣森戸辰男君登壇]
#17
○國務大臣(森戸辰男君) 加藤君の御質問に対してお答えいたします。
 加藤君は、わが國が文化國家を目標として進んでおりますその重要なる方途として、六・三制をとつておる、この制度の実行には、多くの困難に当面しておるが、それについて文相はいかに考えるかということでございます。御承知のように、新しい日本は、文化國家を目標といたしたのであります。文化國家は、実は最も高い國家の理想でありますが、この理想を、敗戰窮乏の日本が現実の政治目標といたしたのであります。しかしながら、遺憾ながら実はこの高い理想は、敗戰窮乏のわが國に、即座には実現できないという事態にあることを、私どもは率直に認めざるを得ない。
 わが國は文化國家への準備過程にあることを、私どもは明らかに認めるのであります。この準備過程の一番大事な問題は、次の時代の國民を、ほんとうに民主的な平和的な國民に育て上げるということでございまして、この任務が、私は教育であり、教育改革というものが、今日、日本の文化國家へ進んでおりまする最も重大な方途であると確信したのであります。かような方途から、実は前議会におきまして、教育基本法と学校教育法とが、皆さんの御賛成によりましてできましたことは、文化國家に発展せんとする日本にとつては、きわめて喜ばしきことであると存じております。
 ただ学校教育の改革における第一の当面の問題は、六・三制の問題であり、新制中学の実行であります。しかもこの実行につきましては、敗戰の日本におきましては、初めより多くの困難があつたのであります。しかも日本が、この多くの困難を排して、この学校制度をとつたということは、日本が中外に対して、ほんとうに誠意をもつて、平和的文化國家になろうとする決意を示したものと、私は存じておるのであります。
 しかもこの実行には、先ほども申しましたように、現実に幾多の困難があるのであります。一つは、戰時中人口増加があつたにもかかわらず、学校の増築は行われず、さらに戰災によつて多くの学校は焼失いたしました。なお、この制度が急に行われたために、調査においても不十分なところがありました。実は実行してみますと、八万余の学級のうち、三分の一なり四分の一は、二部教授または仮教室で教授をいたさなければならぬという実情にあるのであります。これは皆さんも特に御存じの通りであります。
 私は近縣を歩いてみましたれども、中には、暗いお寺の本堂で子供が勉強しておる所もあります。破れた、窓のない、雨の漏る工場のあとで、子供が勉強しておるところもあります。(「その通り」と呼ぶものあり)ある所は机がなく、包装紙を敷いて、配給の食料の箱を机にして、子供が勉強いたしておる所があります。私はこの子供たちを見まして、まことに涙ぐましい心をもつたのであります。(拍手)しかもこれらの子供たちは、まことに勢よく、先生も熱心に勉強しておるのを見まして、文化日本のために、私は心強さを感じたのであります。(拍手)
 しかし、私は政府がそれで甘んじておつてはならぬと思います。(拍手)私どもは、さらにこの窮状をよく考えまして、この子供たちのために、先生方のために、父兄のために、できるだけのことはいたさなければならぬと思う。殊に寒さに向いますれば、これらの子供たちの、窓のない、雨の漏る状態では、まことに困るのであります。また新しい学年が來年始まりますが、さらにこの二部教授と仮教室が殖えていくのじやないか。こういうことを考えていきまするときに、どうしても、これらのために多くのことをしなければならぬ。
 しかも市町村におきまして、その財政の力は、一定の限度があるといたしますれば、國家もまだ、これについて補助の途を講じなければならぬのであります。これらにつきましては、日本の現在の窮乏の状態を、私どもは十分に頭に入れつつ、しかも、これらに対しての、できるだけのことはいたしたいと存じまして、関係方面と、その具体的な方法と限度について、いろいろと交渉をいたしております。その結果を得ましたならば、実はさらに皆さまの御協力を得たいと存じておるのであります。
 文化國家は、皆さん御承知のように、文化の優越する國家であり、このことは、あたかも軍國主義の國家において、予算に軍事費がその最高のものであつたように、文化國家におきましては、文化費が國費の最大の部分になることによつて、初めてその目標が達せられる。(拍手)しかし、これはわれわれの望んでおる文化國家が完成された後のことでありまして、今日の窮乏日本においては、その目標にいかに近づくかということが、われわれの目標であります。
 敗戰窮乏の日本、危機の日本には、教育もまた非常な危機に立つておるのであります。私は、経済危機の激しさのために、國家百年の平和的文化國家建設に対する、われわれの当面しておる重大な危機を忘れてはならぬと存じます。この意味におきまして、政府も、國力の許す限りにおいて、これがためにあらゆる努力をいたしまするが、地方團体におきましても、また父兄におきましても、教員諸君におきましても、殊に子供たちにおきましても、この危機の教育を完遂して、日本を明日の平和的文化國家へ導くように協力あらんことを特にお願いいたしまして、私の答弁に代えたいと存じます。(拍手)
    〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕
#18
○國務大臣(木村小左衞門君) 加藤君のお尋ねの、隠退藏物資摘発の数量を申し上げます。昨年中において、公定價格に換算いたしまして、八億一千余万円を摘発いたしております。本年に至りまして、四月末に二千六百万円相当額を摘発いたしまして、それぞれ正規のルートに移してきたのであります。経済復興に貢献いたしましたことはもとより、民生の安定にも相当の貢献をいたしておると思うのでございます。なお、摘発未済と申しますか、まだ摘発をせられない隠退藏物資の数量に至りましては、ただいま資料をもちませんので、もし資料がありましたならば、調べまして、議会をもつて御報告申し上げたいと思うのであります。(拍手)
  [國務大臣和田博雄君登壇]
#19
○國務大臣(和田博雄君) 私に関しまする限りの御質問にお答えいたします。
 労働問題、失業問題に関連いたしまして、政府は賠償の撤去について、製品賠償の方法をとる考えがあるか、製品賠償の方法をとつて、現実においては、それによつて就労の機会を與えることを考えておるかというお話でありまするが、製品賠償が本当に日本の國のためになるかどうかということは、はつきりと断定は私はできないと思うのであります。現在だけのことを考えてみまするならば、あるいは就労の機会をそれによつて與えられるかとも存じまするが、日本の乏しい資材の割当その他のことを考え、また長く日本に敗戰の負担が経済的に残るという点を考えまするならば、今すぐに製品賠償がいいという結論には到達いたしませんので、われわれといたしましては、その点につきまして、いろいろと檢討中でございます。
 それから生活必需品の確保の問題でございまするが、これは生活必需品の多くのものにつきまして、緊急対策において述べておりまするように、公團の方式によりまして、國が責任をもつて配給を確保していくということについて、ただいま具体的な案を練つておりますゆえに、いずれこの議会に提出し得る運びになろうかと思うのであります。簡單でありますが、私の御答弁だけ申し上げます。
#20
○議長(松岡駒吉君) 加藤君、これでよろしゆうございますか。――この際十分間休憩いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」「継続しろ」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(松岡駒吉君) 異議なしの声が多数であると認めますので、十分間休憩いたします。
    午後三時四十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時六分開議
#22
○副議長(田中萬逸君) 休憩前に引続き会議を開きます。北村徳太郎君。
  [北村徳太郎君登壇]
#23
○北村徳太郎君 片山総理大臣の施政方針演説に対しまして、私は民主党を代表いたしまして、若干の質疑を試みたいと思うのであります。最初にちよつと希望を述べたいのでありますが、本日、各大臣の御答弁はまことに懇切丁寧でございましたが、私への答えは、きわめて簡明に願いたいと思うのであります。
 刻々に迫りつつありまするわが経済危機は、今やわが民族の危機として、まことに容易ならぬ重大決断を、私ども全國民に追つておるのであります。かような緊迫感の中に、片山氏首班の内閣ができ、さきに経済緊急対策が発表せられ、また昨日の本会議におきましての演説において、この現実を直視しての決意のほどが表明せられましたのであります。今日のごとき場合、ややもいたしますると足もとの経済問題だけが最大の問題として大きく浮び上りまして、その背後にある、実はより大いなる、またより根本的なる問題が軽く扱われたり、あるいはほとんど無視されたりする場合が少くないのであります。
 片山氏は、過日來、新日本建設國民運動等においても、思想的、精神的の面に触れられていることは、多とするに足ると思うのであります。もちろん、今日食うか食はぬかの経済危機が、切実な切迫した政治の課題であることは、もちろんでございます。しかしそれだからこそ、私どもは思想的な、また道義的な問題を高調しなければならないと思うのであります。わが党は、立党以來この点を重視いたしまして、この敗戰の地上から、何としても憎惡と怨恨とを追放して、これを愛と協力との新しいヒューマニズムに変えなければならない、かような高い倫理的な観点から、祖國再建の熱意を結集しなければならないと、大きく主張してまいつたのであります。(拍手)
 元來、思想は時代とともに動きますが、また時代を動かすものである。今日のごとき危機感の迫る場合、政治の先頭に立つ者は、時代を動かす思想、時代に先行する思想、時代を超える思想を指し示さなければならぬと思います。私どもは、軍國主義の完全敗北とともに、たとえ人間を人的資源などと考えるほどに堕落した人間観、非人格的な人間観、人間性を否定するところの哲学が、軍國主義とともに完全に打ち砕かれましたことを喜ぶものであります。(拍手)しかし一旦汚された人間性の尊嚴の回復は、單に人格の尊貴が憲法に規定せられただけで実現するとは考えられないのであります。憲法精神をどこまでも理想とするとの首相の演説は、もとより当然のことでございます。少しも異議はございません。しかしながら個人の人格の尊嚴を確保するためには、個人の自由が確保されなければならないことは、これまた当然であります。
 しかるに、今なお個人的自由への抵抗、個人的自由に挑戰するところの根強い思想的のものが横行している。これを見逃してはなりません。たとえば極端な集産主義、現実を無視した産業社会化への極端な傾斜運動のごときは、ややもいたしますると、集團のために個性を沒却せしめる。(拍手)また個人的活動の自由を抑圧いたしまして、人間精神に対して、強権的な脅威をさえ加うる場合が少くないことは、あえてチエスやハイエクなどを引くまでもないのであります。必要なことは、個人の自由を保持し、確保し得る社会生活の理想と環境であります。
 私どもは國家というものが組織社会である以上、社会連帶主義を基盤として、混乱を秩序に、鬪爭を友愛協力に変え、相対峙する二つの世界を一つの世界とすること、すなわち鬪爭なき協力社会の実現に力を注いできたのであります。(拍手)人間性の高貴さの保持、及び眞の文化國家建設への途は、ここに存すると信ずるがゆえであります。政治は政治だけでは救われない。政治が救われるには、政治の根底に思想と哲学が必要であることは、アランの主張するところであります。
 片山氏が文化を説き、宗教を説かれることに対して、私は敬意を拂うものであります。またしばしば精神革命の要を力説せられることも、うなずくことができるのであります。日本にはルネッサンスも宗教改革もなかつた。今やその言うところの精神革命も、現実の倫理として、個々人のきわめて峻嚴な自己批判、鋭くぎりぎりまで自分を掘り下げたところの自己反省を通じて、一人々々の心の底から自覚されねばならないと思うのであります。かくしてこそ、初めて憲法の理想が生活に具現せられ、民主主義の政治形態が初めて血の通つたものとなることを信ずるのであります。私は、昨日の演説で首相が述べられたところの政治理想が單なる作文に終らず、今後の政治生活において着々鮮明に実践せられんことを、強く首相に望むものであります。(拍手)
 この点、さらに首相の信念を伺いたいと思うのであります。
 次に私は、少しく教育の問題に触れてみたいと思います。日本の教育は、久しきにわたつて極端なる國家主義、軍國主義というものを偶像としてまいりました。文部省の從來の教育理念も、要するに超國家主義、軍國主義を目標としてきたのであります。
 そのため、教育は独善に陷り、官僚的動脈硬化をきたし、画一主義となり、沒個性のものとなりましたが、敗戰後、この極端なる國家主義、軍國主義という二つの偶像は、破壊されたのであります。しかしながら、そのあとに一体何が残つたでありましよう。
 当初考えられたこの二つの偶像を除き去るならば、教育の民主化は、おのずからできると考えたのは誤りで、教育の中心理念がまつたく空白となつている。システムだけはできたけれども、魂が脱けがらである。十九世紀的官僚教育が生き残つて、一五%の治者が、八五%の被治者に君臨しているという状態を、未だ脱却しておるとは申せないのであります。しかも教育を刷新せんとする民主的教育思潮は、中央に動きましても、いまだまつたく末端には届いておりません。かような現状であります。
 先ほど森戸文部大臣が言われたように、われわれは、次の世代に文化國家の完成を大きく期待するものであります。その教育の現状が、しかもこのようでは、まことに心細いのであります。アメリカなどでは、いわゆるデモクラシーの底には、これを貫く宗教がある。今もピューリタンの精神が流れておる。日本では教育の偶像を破壊したが、さてあとには何もない。私は教育の前途、また青少年の前途を考えまして、まことに暗然たるものがあるのであります。政府は一体どうしようとされるのであるか。この点、文相より簡明なる御答弁を得たいと思うのであります。(拍手)
 質疑の第三点は、行政の改革についてであります。これは先ほど加藤君もお述べになりました。從來わが國は、世界第一の官吏國といわれておる。現に二百五十万人の官吏を擁し、その家族を加えますると、一千二百五十万人となり、國民は、六人で一人の官吏を養つておるという実情であります。戰爭のため膨張した行政部面が、敗戰後も縮小されず、最近ではますます増加傾向をたどつておる。從つて人件費の膨張が、今日では國を危うくしておるとも言い得るのであります。(拍手)比較的に官吏の数が多いことは、行政事務が非能率的であるということを実証すると断じて、誤りないと思うのであります。(拍手)
 元來、官吏制度は絶対主義君主制の所産でありまして、これと根本的に対立するところの民主主義のもとにおいては、官吏は要らないのであります。官吏は認められないのであります。必要なのは、官吏ではなくして、公僕であります。全体への奉仕者でなければならないのであります。官僚から公僕への質的轉換が、はたして行われたでありましようか。
 しかも、われわれ國民は明日の食べものにも心配している中で、殖えていくものは何であるか。赤字と官廳の数だけであることは、まことに皮肉の現象と申さねばなりません。(拍手)多年にわたる中央集権が、漸次地方分権に変ることになり、ことに新しい自治法ができまして、知事が民衆の手で選れば、府縣が完全自治体になつたのであります。一應形の上では民主化ができたのでありますが、さてできてみると、地方分権どころか、たとえば知事の権限は大幅に削減せられ、中央官廳は、ほとんど競爭的に、次から次に直接の出店を地方に出しておる。(拍手)事務の複雜化とセクショナリズムは、中央からだんだんさらに地方にまで、はなはだしく拡大強化せられておる実情であります。(拍手)
 この中央と地方との間に、またなわ張り問題できわめて見苦しいトラブルが各所に起つておると傳えられております。これまつたく時代逆行であり、かくのごとくにして、敗戰日本の苦しい財政は、いよいよ行政費の膨張に惱まされるという実情であります。行政整理は、行政そのもののあり方からも、また財政の面からも、その実行が急務であります。從來どの内閣も、官紀の粛正、行政の整理を声明いたしましたけれども、実行が伴わなかつた。今回こそ、公約が不渡手形とならないよう、根本的に行政改革の実をあげてもらいたいのであります。(拍手)政府みずから思い切つてこれを断行するのでなければ、首相がいかに耐乏生活を訴え、國民の協力を求められても、おそらく國民は納得しないでありましよう。(拍手)この点、私は首相の御決意をさらに質しておきたいのであります。
 第四に、私は日本銀行について当局の答弁をいただきたいのであります。それは戰時中日本銀行が完全に大藏省の支配下にありました。自己を沒却してしまつたような感があつたのであります。國家権力の支配のままに動かされてまいりました。それは戰爭遂行過程においてはやむを得なかつた一つの変態的な行き方であつたと思ひます。今日、日銀はどこまでも中央銀行として、また一國の発券銀行として、政府との從属的関係を脱却し、その自主性と、その独立性を強く確保することが、きわめて必要であると思うのであります。日本の財政及び経済の実情から、私はその要を主張するのでありまして、今もし日銀が政府の手に吸收せられてしまうようなことがあるといたしますならば、弊害百出であります。相対立し、相牽制するところに、特に大きな意義があり、財政に対して、金融の面、通貨の面からある程度の必要なる制約を加えるというところに、日銀の自主性の要があり、財政放漫化へのブレーキ的役割もあり、日銀券の價値維持についても、自主的操作が必要であります。ゆえに、この際その独立性を強め、その機能を十分に発揮せねばならないと思うのであります。すなわち公式論的なる日銀國営論のごときは、日本の実情に適しないと私は信ずるのでありまして、この点、当局の所信を質したいのであります。
 なお昨日、首相は金融統制を一層強化すると述べられました。これは私もきわめて同感であります。しかし官僚統制の弊は、それが強くなればなるほど、活動の機動性を失わしめ、手続倒れになり、かえつて本來の目的に背馳する場合が、はなはだ多いのであります。金融経営者の企業への協力精神を、かえつて阻害する結果となる恐れがあるのであります。從つてその方法はどこまでも民主的であり、きわめて愼重であるべきことを、一言附加えておく次第であります。
 次に、近く民間貿易再開の運びに相なりましたことは、長く封鎖され、孤立を余儀なくされておりました日本経済が、ようやく世界経済に接触面をもつことになりまして、これはもちろん正常なる自由貿易の域には至りませんけれども、資源の過少、労働者の過大、等々のわが國の実情が、外國貿易に依存する度合のきわめて多大なることに顧み、わが経済の前途に確かに一道の公明を與えるものとして、喜びと感謝に堪えないものであります。
 これについて、私は先に述べました行政改革とともに、日本企業の再編成を急がねばならぬと思うのであります。まずわが中小企業の再認識を新たにする必要があると思うのであります。第一に、わが國大規模の工業力の大部分は、戰爭による消耗、戰災または賠償関係等で、すでに消失したり、また失われようとしておるのであります。残つたものについても、その量の上にも、またその質の上にも、相当制約を受けねばなりません実情にあります。
 次には、わが経済資力の激減のために、大規模工場は再建設が困難であり、またかりに再建設されましても、先進國の低廉なる大量生産品と競爭することは、おぼつかないと思うのであります。
 また第三には、独占的大企業は分散または分解させられつつあります等々の事情から考えまして、今後わが國の経済再建は、勢いこれを中小工業形態に依存せざるを得ないのであります。從つて貿易再開に伴う輸出工業の場合も、一部紡績業等を除きましては、どうしても中小形態の企業に期待せねばなりません。日華事変前の統計でも、全輸出品の約六十パーセントは、中小工業の生産であります。まして今日、その度合はさらに大きいことは言うまでもありません。
 そこで中小企業の育成助長、これはきわめて重大であります。協同組合化への方向ずけ、また金融円滑化への途を講ずる等は、もちろんでありますが、さらに大きな問題は、わが傾斜生産方式の一部修正であります。すなわち石炭、鉄、肥料等の重要基礎産業のいわゆる傾斜生産の陰には、犠牲産業があります。その犠牲産業の中に、特に中小工業が存在することを忘れてはなりません。(拍手)貿易を対象とする中小工業に対しましては、資材、資金、労務等において、これを助成することが急務であると思います。しかも中小企業はもちろん、全日本の企業全般に共通いたしまして、現下最も大きな問題は、労務の調整であると思うのであります。昨日、首相は労働の生産化を高調せられました。労働の生産化――しかし忘れてはならないことは、生産化し得ざる多分の労働が存在するというところに、わが國現在の深刻な悩みがあることであります。(拍手)何としても四つの小島の上に、七千数百万人の人間が生きていかねばならぬ日本の宿命を顧みねばなりません。
 その上、産業資本は著しく壊滅減少しておるのであります。生産資本と労働とがアンバランスになることは、必然であります。加うるに物價、賃金の惡循環が速度を加え、こうした苦しい不合理の中で、しかも擬制雇傭を整理することができない。企業は赤字に悩みながら過剩労働を抱え、余剩價値ゼロの中で、失業経費を賃金の名において負担しておるのが実情であります。これで生産できるわけがないのであります。
 貿易再開と申しましても、これは露骨な言葉で申しますならば、レーバー・エクスポートであります。レーバーが高くて、われわれはこれではなかなかできないのであります。われわれは、これから世界水準を見なければならない。世界経済から孤立していた日本の経済が、世界の物價水準や能率水準に注目しなければならないのであります。
 われわれは、申すまでもなく戰爭と失業のなき世界を翹望しております。單に平和であることを樂しむだけではない。失業のない世界、すなわち経済的にある活動ができる世界、いわば完全雇傭の世界の來ることを翹望しておるのであります。(拍手)しかしながら、それがためには過剩労働を一應企業の負担から引離して、これを身軽にして、生産能率をあげさせるという態勢に、企業全般の整備を断行せねばならぬと思うのであります。(拍手)そうでなければ、生産はいつまでも振いません。日本商品を世界の市場に送ることも、実に不可能であると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 労務の整理は、これを企業の手から國家の手に移すべきであると思うのであります。労務配置がえとともに、もちろん高度社会保險を実施しなければならない。失業手当、失業保險、その他重要なる施策をとらなければならぬことは、もちろんでありまするし、また前段申し述べましたところの行政の根本的改革によりまして、行政経費の節減からくるその余力を、この労務の配置がえに全部注ぐというふうなことを、決意しなければならぬと思うのであります。しかも労務の配置がえが、わが経済の上にプラスとなるようにその途を講じなければならない。
 たとえば石炭が問題になつております。石炭増産のためには、新坑を開発しなければならない。また深坑を開発しなければなりません。また坑道の掘進速度を速めなければならぬ。三千万トンのためには、一・二メーターの掘進速度を一日にもたなければならぬのに、現在は一メーターほどしかいつていない。こういうふうな面に、公共事業としてなすべき面が相当に多いと思うのであります。
 すでに首相が力説せられたダムの築造、特に日本においては、高所ダムを数多くつくるということが、きわめて必要であると思うのであります。山の多い國でありまして、水を山の各所に、高所において貯藏する。これは電源を養うことになるし、また渇水時の灌漑にも用いることができるのであります。かようにして、産業のエネルギーたる動力源増強と食糧増産のために必要なる施策をとりまするならば、その面において、相当の人々を吸収することができると思うのであります。農村の工業化、その他問題は相当にあると思うのであります。
 先ほど加藤君のお話の中に、労務の整理を労務者の負担と責任においてするのかというようなお言葉がございましたが、(拍手)私はそう簡單には考えないのであります。企業整備の犠牲者はだれだつたか。補償打切は何人の負担と犠牲において行われたか。海外資産の打切は一体だれがその犠牲を拂つたのか。(拍手)賠償撤去による損害の負担者はだれであつたかというようなことを考えてまいりまして、これはもちろん失業救済のために、われわれは全力を盡して善処しなければなりませんけれども、この際一方的な観察だけでは、事を誤るおそれがあることを痛感するものであります。(拍手)
 次に石炭の國管問題であります。民主党は、石炭の國家管理には必ずしも反対ではございません。それはわれわれの政策として、重要産業の國家管理は認める、決して否認はしないけれども、それは増産のためであります。(拍手)もしも國家管理でやることが増産に役立つならばであります。現在われわれは、三千万トンの石炭を掘出すということが現下の至上命令である。この至上命令を実行するためには、どういう方法でもやつてよろしいのでありまして、國管でやることが三千万トンを確実に出すということであるならば、これは必ずしも辞するところではございません。
 ところが、現在まで、今までは、労働攻勢等によりまして、相当に打撃をこうむつたのでありますけれども、幸いにも最近には、労働者諸君の自覚と、また生産者的な誇りと、そういうものを回復いたしまして、到るところで経営協議会が行われ、復興会議が行われ、資本家も、経営者も、それから労働者も、心をおつ開いて、経理を公開したり、経営を協議したりいたしまして、今の民族危機に対しては、どこまでも生産増強に邁進すべきであるという決意を披瀝しておるのであります。(拍手)かような場合に、今傳えられておる案のごとく、経営体の中から、きわめて一部の者を抽出して、あとの経営体を寸断するがごときことをやつて、そうして石炭の増産をはかるというがごときことは、これは今はよほど愼重に考えなければならぬと思うのであります。
 最後に私は、食糧問題について政府の所信を伺いたいのであります。昨日首相は、國民ひとしく乏しきに耐え、希望をもてと高調せられました。現在國民の心を最も暗くし、不安と焦燥に追いやつておるものは、まつたくこの食糧飢饉でございます。生産意欲をはなはだしく減退させておることも、またこの食糧飢饉によるのであります。現在の賃金・物價の惡循環も、その原因は、今日の食糧事情が最大の原因であると考えるのであります。しこうしてまたこの飢饉相場というものは、いつでもやみ相場に先行する。
 こういうふうな点をいろいろ考えまして、すでに生活苦から、このために悲劇が生れ、犯罪が続出しておる。この問題を、われわれは單に政府の責任だとするのではありません。全議員も、この解決のためには、日夜苦心しつつあるのであります。特に食糧問題に造詣の深い平野農相は、在野のとき、たびたび相当われわれを安心させる意見を述べておられるのであります。(拍手)この問題の解決のためには、われわれは決して協力を惜しむものではございません。この際、先ほど声明がございましたけれども、もう一度はつきりとこの食糧問題について、先の見透しその他を率直に御説明願いたいのであります。(拍手)
 以上、私はきわめて簡單に質問の要旨だけを申し述べました。なほ私は財政金融等に関しまして、若干の問題をもつておりますけれども、これは他の諸君と重複いたしますし、時間の都合で、一切これを他の議会に譲ることにいたします。
 現内閣の政策の骨格は、すでに四党政策協定で明らかであります。この政策に関する限り、自由党また協力を惜しまない旨を声明いたしたのであります。(拍手)私は、片山氏の人格とまたその社会正義の念と、政治への嚴かなる使命観とを信じ、着実にかつ果敢に政策を実行せられんことを、切に望むのであります。但し宣傳が大であつて、実行が小であつてはなりません。(拍手)むしろ実行をもつて宣傳にかえられんことを望んで、私の質疑を終りたいのであります。(拍手)
    [國務大臣片山哲君登壇]
#24
○國務大臣(片山哲君) ただいま北村君から私に対しまして、精神運動に対する所信をさらに求められましたので、その点に関するお答えをいたしたいと思います。北村君が熱心に精神運動の必要を主張せられた点については、大いに共鳴をいたすのであります。
 わが國における今までの政治社会運動を通観いたしまして、非常に欠けておつたと思う点があるのであります。長いわが國の歴史、特に明治維新において、政治革命が主張せられましたけれども、文化的方面、精神的方面における革命は、主張せられてなかつたと思うのであります。外國の歴史を見ますならば、先ほど北村君が言われましたように、文藝復興やあるいは宗教改革、その後におきましても、モンテスキユーあるいはルソー等の幾多の意見が出ておるのでありますが、これと比較いたしまして、明治維新当時において、そういう面に関する意見が述べられていなかつたことを、遺憾に思うのであります。
 今新憲法が制定せられまして、民主主義が至上命令としわれわれの方向を示しているこの絶好の機会に、新しき文化運動、新しき精神運動、すなわち心の入れかえを國民全体がいたしまして、新しき日本を建設するということが、最も必要なことと信じているのであります。(拍手)その意味において、政治、運動、あるいは経済運動、産業運動、文化運動、すべての裏づけとして、國民全体の心の中に燃え上る精神革命が必要であるということを、私は考えているのであります。
 なお第二の行政機構の改革、あるいは官僚制の打破という問題について、お答えいたしたいと思いますが、この点につきまして、御考慮を煩わしたい点は、私どもの考えております國家観念であります。官僚的警察國家観念を打破いたしまして、國家はわれわれ國民生活を幸福に指導するものである。指導主体である、國民の福利増進をはかるものは國家である、國家は憲法の規定によつて國民が構成するのである、すなわち官吏は、ただ單に官吏として浮いているのではなくして、國民全体が國家の仕事をするのである。その代議組織によつて代表者を送るのである、こういう建前でいかなければならないのでありますから、これらの官吏言葉は違うかもしれせんけれども、これらの役人は、國民の選んだものであり、國民の公僕でなければならないという意識に徹する必要があると思うのであります。
 その意味において、公営、あるいは國家が事業を行うのであります。國家が行います事業は、國民の幸福のために行うのであります。特殊な階級として國民に指揮命令をする特権階級の観念を打破いたしまして、國民の幸福のために行うという官吏制度をわれわれは考えているのであつて、これこそ眞の民主主義政治であるということを、私は固く信じております。以上をもつてお答えにいたしたいと思うのであります。(拍手)
  [國務大臣森戸辰男君登壇]
#25
○國務大臣(森戸辰男君) 北村君の御質問にお答えいたします。北村君は、諸政策のうち思想・教育に関するものが重視せられなければならぬということを強調なさいましたが、私はまことに同感であります。その第一点といたしましては、古い教育目標は破壊されたが、まだ新しい教育目標ができていないできないか、そこで教育が宙に迷つておりはしないかという御心配でありました。この点では、私はある点同感でありますが、全部同感いたすとは申されません。
 敗戰前の日本の教育目標は、明治憲法に対應する教育勅語でございました。この教育勅語は、決して軍國主義、超國家主義、あるいは極端なる國家主義を主張するものではございません。しかしながら、戰前、戰時における教育は、この事態を歪曲いたしまして、軍國主義的、極端な國家主義的な方向に向つたということは、まことに遺憾なことであります。敗戰後、日本の政治的の変革が行われたことは、御存じの通りでありまして、民主的、平和的な文化國家を目標といたすことになつたことは、先ほど申した通りであります。これをわれわれは中外に声明いたしまして、さらに新しい憲法は、これをわが國の根本の國是といたす、この精神をもつて、新しい教育の方針といたしたのであります。前議会におきましては、これに基いて教育基本法が皆さんの御協賛を得たことは、御存じの通りであります。
 ここにおいて注意すべきことは、從來の教育の目標、根本理念は、実は勅語によつて規定されたのであります。新しい民主主義の國におきましては、日本の國民の教育の目標、理念が、國会によつて定められたということを、皆さんは御記憶願いたいのであります。もう一つ顯著な点は、從來の勅語の中には、幾分封建的な要素も含まれておつたのでありますが、新しい教育理念、教育方針におきましては、これらのものが拂拭されたという事実であります。
 かような事実に基きまして、皆さんの御承知のように、教育基本法の第一條におきましては、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な國家および社会の形成者として、眞理と正義を愛し、個人の價値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な國民の育成を期して行われなければならない。」ということが規定されているのであります。新しき教育理念の目標は、そこにあるのであります。
 第二の点は、教育革新が中央において行われているが、地方には、未だその革新が徹底しないではないかということであります。私はこれは多くの眞理を含んでおると思う。どうか私どもは、中央において行われた教育の革新が、殊に皆樣のお力によつて、地方にも徹底するようにいたしていただきたいと、お願いいたしたいのであります。
 第三は、青少年に対する教育についての御質問であります。私は、これは特に大事であつて、日本の青少年が正しく教育されることが、新しき日本の根基であると存じております。しかもその教育におきましては、日本の在來の経驗からいたしますれば、科学性、合理性が、特に教育において重んぜられなければならぬと存じております。しかし、理念とそうして説得には、一定の限度がある。北村君の御指摘になつた宗教的な方面の教育も、この点においては、きわめて重視さるべきことであります。しかしその宗教は、阿片的な宗教あるいは葬式的な宗教ではなく、この危機における人心をさます宗教であることを、私どもは期待いたしておるのであります。簡單ながらお答えいたします。(拍手)
  [國務大臣栗栖赳夫君登壇]
#26
○國務大臣(栗栖赳夫君) 北村君の質疑中、大藏大臣に関する二点について、簡單に御答弁いたします。
 まず第一の点は、日銀の問題であります。終戰後の新事態に備え、日本銀行の運営につきましては、私は再檢討を加える必要があると思うのであります。しかしながら、何分にも中央銀行という重大なことであり、これはぜひとも諸般の事情も十分織りこんで檢討し、かつ目下進行中でありますところの金融制度調査会の答申をもまちまして、善処いたしたいと思うものであります。なお日銀の國営については、目下のところ考えておりません。
 第二点の金融統制についてであります。金融統制を嚴格に強力に実行するということは、既に申し上げまして通りでありますが、これが運営につきましては、なお愼重に檢討考究を要しまするし、私はぜひとも民主的にこれを取扱い、かつまた、かりにも官僚統制の弊に陥るがごときことは極力避けたい、こう存ずる次第であります。ごく簡單でありますが、御答弁いたします。(拍手)
  [國務大臣水谷長三郎君登壇]
#27
○國務大臣(水谷長三郎君) 北村君の御質問におきまして、今後の日本の経済再建のために、中小企業がいかに重大なる役割を占めるものであるかということは、お話の通りでございます。御案内の通り、今回の緊急経済政策にも明らかに政府はうたつておりますように、石炭を中心とした基礎産業に重点施策を講じますとともに、輸出産業の振興に力を注ぎ、食糧その他重要物資の輸入力を涵養しなければならぬと考えております。しかして輸出産業の振興にあたりましては、お話の通りに、中小工業の活発なる協力を仰ぐことが大切でありまして、それがためには、政府といたしまして、資材、資金等、現下の國情の許す範囲で支援をいたしますとともに、また同時に技術の向上、経営の合理化を強く望む次第であります。なお右に関連いたしまして、さいわい成案を得ることができますならば、必要な法案を本会議に提出したいと考えておる次第でございます。
 さらにまた、石炭増産に絡んでの國家管理の法案に関しまして、種々有益なる御意見を賜りましたが、この問題に関しましては、先に加藤君の質問に答えましたように、政府は石炭増産を阻むような機構いじりを、断じて考えておるものではございません。現在の惡性インフレのもとにおいて、乏しき資材のもと、乏しき資金のもとにおいて、いかにして石炭三千万トン増産をば達成するかということを考えました結果、われわれが用意しておりますところの石炭國家管理法案こそは、この問題を解決するただ一つの途であると確信しておる次第でございます。さいわい近い將來におきまして、この法案がはつきりいたしますから、よくわかるでありましようが、ただいまのところでは、いろいろ間違つた片鱗が傳わつておりますので、いろいろ誤解を生んでおりますが、もしこの法案がはつきりいたしました場合においては、修正資本主義の立場に立つ民主党からは、全面的な賛成を得る法案であると考えております。(拍手)
  [國務大臣平野力三君登壇]
#28
○國務大臣(平野力三君) 北村君の御質問は、きわめて抽象的でございましたが、私に対する激励の言葉であると拝聽した次第であります。政府といたしましては、前回この演壇におきまして、具体的なる数字を明らかにし、かつその対策といたしましては、第一次食糧危機突破対策、第二次、第三次と計画をいたしまして、これに從つて、政府の所信を断行するの旨を申し上げたのでありまして、この点に関しましては、あらためて御了承願いたいと思います。
 なおこの際、私は一言農林行政と食糧問題を扱う上においての心がけを申し上げたいと思うのは、きわめて正確なる数字の上に立つて行いたいということと、食糧問題はきわめて重大でありますので、決してこれを政爭の具にしていただきたくないということを申し上げたいのであります。(拍手、「だれが政爭の具に供した」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然)しかして、私はさような見地に立ちまして、全力を傾倒いたしまして、この問題の解決に邁進いたしたいと存ずる次第でございます。(拍手)
  [発言する者多く、議場騒然]
#29
○副議長(田中萬逸君) 靜粛に願います。――靜粛に願います。
  [議場騒然]
    ―――――――――――――
#30
○土井直作君 國務大臣の演説に対する質疑は……(議場騒然、聽取不能)明三日定刻より本会議を開き……(議場騒然、聽取不能)本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#31
○副議長(田中萬逸君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然]
#32
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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