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1953/03/25 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第27号
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1953/03/25 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第27号

#1
第019回国会 法務委員会 第27号
昭和二十九年三月二十五日(木曜日)
   午前十一時三十三分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君
   理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
   理事 井伊 誠一君
      青木  正君    押谷 富三君
      林  信雄君    本多 市郎君
      山中 貞則君    亘  四郎君
      猪俣 浩三君    木原津與志君
      木下  郁君
 出席政府委員
        法務政務次官  三浦寅之助君
        検     事
        (大臣官房調査
        課長)     位野木益雄君
        法務事務官
        (保護局長)  斎藤 三郎君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局参事
        官)      下牧  武君
        検     事
        (刑事局参事
        官)      長島  敦君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局総
        務課長)    磯崎 良誉君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
三月二十五日
 委員保利茂君及び牧野寛索君辞任につき、その
 補欠として亘四郎君及び山中貞則君が議長の指
 名で委員に選任された。
同日
 委員山中貞則君及び亘四郎君辞任につき、その
 補欠として牧野寛索君及び保利茂君が議長の指
 名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
三月二十四日
 民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案(
 内閣提出第一一六号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一
 号)
 執行猶予者保護観察法案(内閣提出第五二号)
 刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関す
 る法律案(内閣提出第七〇号)
 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(
 内閣提出第九三号)
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第九六号)
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 刑法の一部を改正する法律案及び執行猶予者保護観察法案以上二案を一括議題といたします。質疑を続けます。質疑の通告がありますから、これを許します。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 昨日質問したので一つ残つていたのは、執行猶予をつけられてそれに不服で控訴を申し立てた、ところがさらに裁判所において執行猶予は元の通りにし、保護観察を付するという判決ができるか、この点承りたい。いわゆる不利益変更になりはせぬかということです。
#4
○長島説明員 御質問の場合は不利益変更になると考えますので、控訴裁判所では保護観察に付することができないと考えております。
#5
○鍛冶委員 私はそこで一番問題になると思うのは、そうなると保護観察というものは刑罰の一種であるかどうか、こういうことになるのでありますが、その点に対してはどういう法務省のお考えでありますか。
#6
○長島説明員 お答えいたします。保護観察は刑罰の一種ではないと考えております。ちようど執行猶予が刑罰の一種ではないと考えられておりますと同様に、これは保護観察付の執行猶予という一種の執行猶予がこの際できたというふうに考えておりましてこれは刑ではない、こういうふうに考えております。
#7
○鍛冶委員 執行猶予をつけられるということは、これは恩典であることは何人もわかつておるのでありますからいいのだが、保護観察に付せられるということは一種の自由の束縛になる、この点はよほど考えてもらわなければならぬので、私の一番聞きたいことは、保護観察ということはいわゆる刑罰の一種であるとか、本人を懲戒する意味であつてはならぬと思う。どこまでも本人を更生させるための、本人の利益のためにやるのだ、こういうお考えじやなかろうかと思う。またそうでなくちやならぬと私は考えるのですが、それがどうも不利益になるということになると、そこがどうも矛面するように思いますから、この点を明瞭にお答えしていただきたいと思います。
#8
○斎藤(三)政府委員 保護観察は本人の更生を助けるものでございますから、決して不利益をはかるためにいたすものではございませんが、その手段方法として本人の自由をやはり制限する場合がございますので、そういう面も持つておるという意味においてただいままで申し上げたと考えます。
#9
○鍛冶委員 私はそうなると、理論としてはそれでよろしいのですが、今後指導の任に当られる人にその考えをもつてやつてもらわぬと、たいへんなことになると思うのであります。ことにこの遵守事項などというものも、ここには善行を保持するということだけでありますが、これは本人のその後の行状によつてそれぞれ指導をかえて行かなければならぬ。最初の考え方とあとの考え方とは違つて来ると思うのですが、それらの点に対してよほど重要なる責任を持たれるものと思いますが、これに対する当局としての十分なる対策があるかどうかをお聞きしておきたい。
#10
○斎藤(三)政府委員 まことに重要な点でございまして、私もただいまの点はよく肝に銘じましていろいろな施策を考えたい、かように存じております。保護観察官の選考といいますか、あるいは教養、訓練、保護司の選考、研修というような問題についてもできるだけの努力をいたしまして、刑務所に人を入れないで犯罪の少い社会をつくることにできるだけの努力をいたしたい、かように存じております。
#11
○小林委員長 他に御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、両案に対する質疑はこれにて終局することといたします。
 この際お諮りいたします。両案はいずれもこれを討論に付すべきところでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○小林委員長 御異議がないものと認め、討論をこれを省略し、ただちに採決いたします。両案を一括して採決いたします。刑法の一部を改正する法律案並びに執行猶予者保護観察法案、以上二案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔総員起立〕
#13
○小林委員長 起立総員。よつて二案はいずれも原案の通り可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#14
○小林委員長 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続けます。質疑の通告がありますからこれを許します。高橋禎一君。
#15
○高橋(禎)委員 昨日質問いたしました問題に関連していま一、二お伺いしておきたいと思います。本法律案の付則第三項に「職員にその意に反して臨時待命を命じ、」と規定してあるが、その場合、これは国家公務員法に規定しておりますところの職員の意思に反する不利益な処分というふうにお考えになるのであるかどうか。またもしこれが本人の意思に反する不利益な処分ということであれば、これに対しての何らかの異議の申立てなり、あるいはそれが不当なる処分である場合に、これに関する救済の方法があるという御見解であるかどうか、この点をお伺いいたしておきます。
#16
○位野木政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、もちろんその職員の意に反して臨時待命を命じた場合には、職員の意に反する不利益なる処分ということになると考えられます。裁判所職員につきましても、裁判所職員臨時措置法によりまして国家公務員法が適用されることになりますので、その第九十条に基いて、不利益な処分を受けた場合には審査の請求ができることになつております。
#17
○高橋(禎)委員 これはあるいは前に質疑があつたかもしれませんが、私はまだ速記録も拝見していないので、若干疑問がありますので、いま一点お伺いいたしておきますが、付則の第四項に関連する問題だと思うのですが、職員の意思に反して臨時待命を命じた場合の効力とか、その間の給与等に関する問題について、簡単でけつこうですから、どういうことになるのか、一通り明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
#18
○位野木政府委員 これは行政機関職員定員法の改正法案の付則の十一項から十七項まで及び二十項に規定しておるところでありまして、内容を申し上げますと、国家公務員としての身分を保有いたしますが、職務には従事いたしません。それから給与の関係は、俸給、扶養手当及び勤務地手当を支給されますが、その他の給与は支給されません。それから待命を命ぜられましてから、勤続期間に応じまして一定の期間待命ということになるわけであります。その待命の期間が切れたときに当然に公務員としての身分を失うということになつております。その期間の区分は、六箇月以上三年未満の者は一箇月、三年以上五年未満の者は二箇月、五年以上七年米満の者は三箇月、七年以上十年未満の者は四箇月、十年以上十五年未満の者は六箇月、十五年以上三十年未満の者は八箇月、二十年以上の者は十箇月ということになつております。大体のところは以上の通りでございます。
#19
○小林委員長 他に御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ本案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。
 この際古屋貞雄君外六名より、左右両派社会党共同で本案に対する修正案が提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。古屋貞雄君。
#20
○古屋(貞)委員 原案に対する修正でございますが、政府委員からの御説明によりますと、すでに今回の行政整理に基く本定員の減員に対する関係におきましては、職員の意思に反して特に臨時待命を命ずる必要がないのだという御答弁と、なおこの規定の必要性は他の行政整理の関係とのつり合い上ここに定めるのだというような御答弁の趣旨から考えましても、少くともこの職員の現在の状況におきましては、司法部における職員に対しましては他の行政府における職員と異なる特別な地位を与えられておりませんけれども、仕事の性格上長い経験を要することが必要であると同時に、相当な信念を持つて今日まで働きを願つておるのでございまして、ただいま申し上げましたように、減員整理の必要がないという御答弁でございますならば、あえてここに積極的にかような条項を挿入いたしまして、今日まで働いて参りました職員に不安を与えるようなことは、むしろ必要がないのだ、害はあつても益はない、かように考える次第でございまして、一つは今回の整理に必要のない規定であるということ、いま一つはかような規定が制定されるにあたつて職員に対し非常な不安を与えるという二つの理由におきまして、原案を修正いたします。ただいまお配り申し上げました職員の意に反して臨時待命を命ずるという点についての御削除を願うという意味においての修正案であります。さように修正の理由弁明を申し上げる次第でございます。
#21
○小林委員長 これにて修正案の趣旨説明は終りました。
 この際お諮りいたします。本案及び修正案は、これを討論に付すべきでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○小林委員長 御異議ないものと認め、討論を省略し、ただちに採決を行います。
 まず古屋貞雄君外六名提出の修正案を採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#23
○小林委員長 起立少数。よつて古屋貞雄君外六名提出の修正案は否決されました。
 修正案が否決されましたから、原案について採決いたします。原案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#24
○小林委員長 起立多数。よつて裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案は、原案の通り可決すべきものと決しました。
 なおお諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任撒いたいと存じますが、御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○小林委員長 御異議はないものと認め、さようとりはからいます。
    ―――――――――――――
#26
○小林委員長 次に、刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案を議題とし、質疑を行います。質疑の通告かありますから、これを許します。井伊院誠一君。
#27
○井伊委員 刑事訴訟法の第百九十四条に「別に法律の定めるところにより、」とあつて、この法律案の必要というものはもう昭和二十三年ごろからわかつておるのてありますが、今日に至つてこれか立案提出せられることになつたのはどういう理由でございますか。
#28
○下牧説明員 まことにごもつともなお尋ねでございまして、立法当初におきましては、さつそく別の法律をつくるべく考えまして、私どもといたしましては、一つの案もつくつて警察に提示いたしたこともございます。その案は、今回提出いたしました案とは異なりまして、この訴追の手続というものを非常に詳細にきめまして、いわゆるヒヤリングの形をとるというような形式でもつ相当詳細な案をつくつて提示したこともございます。ところが、その間警察の間でなかなか意見の調整ができませんので、意見の調整ができた上でということで努力しておつたのでございますけれども、今回御審議をお願いするような案でやつと意見がまとまつたというのでこの案を提出いたした、こういうわけであります。その間非常に年月がたつておりまして、怠慢のそしりは免れないかと存じますが、事情は警察の間の意見の調整ということに手間取つておつたということになるわけであります。
#29
○井伊委員 そうすると、今日までこの法律案の提出の遅れておるのは、警察と検察庁との間の意見の調整をはかるためということでありますが、それでは本法案は、結局警察の方の側としてこれに対しては全面的な意見の一致を見ているというわけでありますか。
#30
○下牧説明員 お尋ねの点は、国警とは意見の一致を見ております。それから警視庁の方にやはりこの案を照会いたしまして、意見を聞いたのでございますが、警視庁といたしましては反対の意見を申し出て来ております。それはちようど閣議決定が済んだ直後に反対たという書面が参つております。その後まだ意見の調整はできておりません。
#31
○井伊委員 その警視庁の方でこの法案に対して反対意見があるというのはどういう点でありますか。
#32
○下牧説明員 警視庁の書面によりますと、大きく三点にわかれております。
 第一点は、ただいま井伊先生から御質問のございました点で、今ごろ何だという点でございます。
 それから実体的な面におきましては、この法案を出す結果、今まで警察と検察庁は非常にうまくいつているのだが、こういうことをして、かどばつたことをやると、かえつて両者の親密な関係を阻害する結果になり、また警察官の志気も沮喪することになる、しかも検察官の指揮、指示というものを批判する余地を封じて来る結果、今度は警察官の志気も沮喪して捜査能力の低下を来すようなことになる、またひいてはこういうことで検察官が警察を抑えるということになると、検察フアツシヨへの道を開くごとになるのだ、何もなしに今まで通り仲よくやればいいじやないかというのが第二点であります。
 それから第三点といたしましては、刑事訴訟法の第百九十三条の指示、指揮の範囲が不明確であるのに、このような立法をするのは疑問があるというような点に相なつております。
#33
○井伊委員 なおこれは警察関係との意見調整でありますが、どこまでもそれをやらなければならぬということを言うのじやないですけれども、特殊なる司法警察職員というものがありますね。鉄道公安官であるとか、労働監督官であるとかいうような、そういう特殊な司法警察職員にも関係があるのですが、それは大したこともないと思うのですけれども、これらに対してもやはり意見は徴せられてあるわけですか。
#34
○下牧説明員 関係各省に全部集まつていただきまして法案の内容を説明いたしまして、全部了承を得ております。
#35
○井伊委員 前回警察法の改正法案が提出になりました場合に、検察官の指揮に従わない警察官に対して、司法警察職員等適格審査会の設置法案というものがつくられて、この要綱が当時法制審議会の方の諮問に付せられたというようなことを聞いたのでありますが、そのときの構想というものはこの中にそのまま維持されておりますか。それとも捨ててしまつたのでしようか。その法案の中には人権侵害をやつたところの警察官に対する懲戒方法、そういう規定もあつたのでありますが、そういう構想は捨てておいでですか、これはどうでしよう。
#36
○下牧説明員 前回の国会に提案準備をいたしました司法警察職員等適格審査会の設置法案は、法制審議会にはかけておりません。法制審議会は刑訴法百九十四条の刑訴自体の改正問題として改正いたします場合には、法制審議会を通さなければならぬと存じますが、それの付属法律でございますから、この前の案等は法制審議会にはかけておりませんし、それについて法制審議会としての意見の表示もございません。ただ私どもといたしまして、たまたま警察法の改正が問題になりましたので、その関係とにらみ合せて、この人権侵害の面をも含めて、ああいう案を一応考えてみたのでございますけれども、その際やはり警察側において強い反対がございまして、刑訴法百九十四条の関係ならまだがまんはできるけれども、あそこまで入れられてはとうてい承知できないという強い反対もございまして、そういう点を切り離しまして、今度は純粋に刑事訴訟法の付属法律ということで立案いたしまして、人権擁護の面は別途に人権擁護の立場において考慮する、こういうふうに考え方を改めたわけでございます。
#37
○井伊委員 検察官の司法警察職員に対する捜査の協力を求めるために必要な一般的な指揮というものの範囲がはつきりしないというので、今警視庁等においては反対の一つの理由にしておるといこことなのでありますが、この指揮権に反する警察官のどういう範囲内において、それが本件の懲戒処分の訴追を請求することになるのでありますか、指揮権に反する警察官のすべての行為に対してこれが行われるものなのか、その点はいかがですか。
#38
○下牧説明員 建前といたしましては、いやしくも検察官の指揮、指示があつて、それに反する場合においては、刑事訴訟法に書いてございます懲戒の事由が発生するということに相なろうかと思うのであります。ただ国警とわれわれよく話し合つたのでございますが、この規定を実際動かすような事態が起きるということは、非常に両者の関係からいいまして好ましくないことでございまして、よほどの場合にしかこれは使わない。それでもしそういうようなことがございましたら、やはり両方の幹部の間でよく話し合つて、そうして事件を片づけようじやないか。それでもなお極端な、非常に片づかないような場合がある場合に初めてこのことが考慮されるというふうに運用するようにわれわれも考えておりますし、国警の方でもそれを期待してその点でほぼ了解がついておるわけでございます。その含みでもつてこの法律をお願いしたというわけであります。私どもといたしましては問題は具体的にどうしても警察官を処罰するということが目的と申しますよりも、むしろこういう検察官の指揮、指示に従わない場合にはこういうことになるぞという建前をはつきりさせておいてそうして検察官の指揮、指示というものは、やはりこれが一般の司法警察職員の職務の執行の基準になるのだという点をはつきりいたしたいというのがむしろ私どものねらいでございます。でございまするから、おそらくこの法律が実際上使われるというのは、よほど極端な場合に限られるこということに相なるかと考えております。
#39
○井伊委員 そういたしますと、この法案の条文を適用する場合には検察側と警察側とにおいて大体においては打合せ、了解をした上で公安委員会に訴追をしてもらう、そういうふうに運営したい、こういうことでございますか、そういう意味ですか。
#40
○下牧説明員 結論はおつしやる通りになるかと思います。ただ必ず打合せをするというほどのそういうはつきりした了解は両方でつけておりません。ただ話合いをした上で、こういう法律を必要となつたような事態に追い込まないように両者で十分努力しよう、その上でこの法律の運用については慎重を期するという点で了解をつけておるわけでございます。
#41
○井伊委員 特殊の警察官に対して、たとえば鉄道公安官であるとか労働基準監督官とか、そういうものに対して懲戒処分を請求する場合にいたしましても、実際はその行政官庁部内のことでありますから、それが明確なる処置がとれるかどうかということについて、多少の疑いが起きるのでございまするが、そういうふうになつてうやむやになつてしまうというような場合も考えれば考えられないことはない。そういうような場合に、それでも検察官の側ではそれ以上追及するとか、それを及ぼすところの方法、そういうことについてはいかがでしようか。
#42
○下牧説明員 その点の明確な基準というものは定めておりません。それで私ども考えておりますのは、たとえばある司法警察職員が、これは一般司法警察の場合もございまするし、特別司法警察の場合もございまするが、検事官の指揮指示に従わない。そこで検察官から注意しても何らか非常識にがんばつておるというような場合には、その監督者に実はこういうことがあるがということで話をかけます。そうすると監督者の方で検察官の方の言い分がもつともだということになれば、それでこの本人を指揮、指示に従うように内部的に、自律的に指揮監督して行くというふうな方法でその問題が片づいて行くのじやなかろうか。それからそれに従わないで、そのやり方が非常に非常識なやり方のような場合に、これは少しひどいじやないかということを申入れいたしますと、それが大体だれが見てもひど過ぎるというような場合においては、やはり部内の懲戒処分とかなんとかで自律的に動く場合があり得ると思います。そういうことで自律的に処分されれば、検察官といたしましてはそれ以上何もする必要はないと存じます。実はそういうふうに動くことを私どもは期待しておるわけであります。その裏づけ、建前としては、最後はやれるぞという建前がやはり必要ではなかろうか。
 それからもう一点は、この請求をいたしましてから今度懲戒罷免権者が何もいたさないような場合、検察官として押す道は法律的には何も設けておりません。やはり検察官がこういう請求をいたします場合には、よほど事実関係がはつきりしておつて、しかもそれが懲戒に値するという内容のものでなければできないことでございますから、そういうことであれば何と申しましてもそれを懲戒権者の方で握りつぶして知らぬ顔をすることを期待するというか、その辺を疑うということまでいたしませんでも、そういう大義名分の立つことならそれで大体済むのじやなかろうか、こういうふうな見通しを持つておりますし、またそういうことであればわれわれの方でやるからということもございまして、それでざつくばらんに申せば、しり切れとんぼのような法律案にいたした、こういうわけでございます。
#43
○猪俣委員 今のあなたの答弁で大体わかつたのですが、指揮に従わぬ者を懲戒の請求をやる、その前に公安委員会なりその他の懲戒罷免する権限のものと相談をしてやる、それが矛盾したように聞えるのです。なぜならば検察官自身が懲戒する権利があればいいけれども、それは請求権だけであつて、懲戒するものは彼らの監督機関である。その監督機関と相談をして、そしてまとまらぬ場合にそれをやるということになれば、それは彼らは賛成しないということが前もつてわかつたようなことになるから、請求してもむだなことになる。その辺あなた方は両者の円満な運営のためにそう期待せられるのであるが、ぼくはそういうことをあまり建前にするとおかしいことになると思う。そうするとこの法律が全然骨抜きになつてしまう。みんな、ことに誓察官ぐらいなわ張り根性の強いものはないのだし、そしてお互いに部下をかばう。これはいい点もあるが悪い点もある。清濁をあまりにもあわせのみ過ぎる傾向がある。そこで正当な検事の指揮に従わぬというつむじ曲りがなきにしもあらずだから、こういう法案を用意なされたと思うのだが、それについて相談して行くということもあり得ると思うけれども、何かその公安委員会なら公安委員会が相談をして、いやこんなものは検事のさしずは受けないというようなことでそれを拒否してしまう明らかな意思表示をしておく。しかしどう考えてもこれは不当だから処罰しなければならぬと検事が思つても、やりようがないことになりますか。
#44
○下牧説明員 ちよつと説明が足りなかつたかもしれませんが、懲戒罷免権者という最高のところへすぐ持つて行くというのじやございませんので、おのおの監督系統が段階的になつておりますから、そのすぐ直属の監督者に言うとかなんとかいうことで、事実上大体話が片づくのじやなかろうか。それから最後の段階において意見がととのわない場合におきましても、これはやはり法律的に押す力はございませんので、猪俣先生のおつしやる通りになると思いますが、最後はやはり輿論に訴えて、そうしてその責任がはつきりして来るのじやなかろうか、その辺のところでおちつければ大体よかろう、かように私たちは考えたわけでございます。
 それからただいまのお言葉の中で、今度の警察法では公安委員会には懲戒罷免の権限がございませんで、警察庁長官とそれから隊長、各地方の本部長というふうになつておりますので、警察に関する限りにおきましては、一般の通常の場合における懲戒罷免権者と、この法律に言う懲戒罷免の権限を有する公安委員会とは別個の組織になつております。その点で、警察面においては、公安委員会に請求するということはまた一面意義があるのじやないか、かように私どもは考えております。
#45
○井伊委員 第一条のところで、訴追は書面によつてやるということでありますが、これに対する訴追の要件となるようなものは別にないでしようか。というのは、罷免というのと懲戒というものは訴追される際にそれを明らかにしておくのであるか。つまり懲戒を要求しておるのか罷免を要求しておるのか明らかにされるベきであると思うがどうか、その他書面による要件、それを聞きたい。
#46
○下牧説明員 法律的には要件は何も書いてございません。自由に書いていいということになつておりますが、実際上書画によるということにいたしますれば、懲戒理由は当然書くことになると思います。少くとも理由を付さない請求ということはあり得ない。それからただいまおつしやいました罷免と懲戒の区別をして初めから請求して行くかどうか、非常にごもつともなお尋ねでございまして、訴訟法によりますれば「懲戒又は罷免の設追」とありまして、懲戒と罷免というのを区別してございます。ところがこの法律の考え方はそれを二つにわけた考え方にいたしませずに、息を長く読みまして懲戒または罷免の訴追、または懲戒または罷免の請求というように私どもの気持じや読んでおるわけでございます。それで一言申せば、懲戒または罷免の請求ということは一般の場合における懲戒処分の請求ということと同じようになる、その意味で考えておるようなわけでございます。従いましてこの場合は懲戒にしろ、この場合は罷免にしろとかいう区別をして検察官としては請求いたしません。懲戒または罷免の請求という一つの文句でもつて、言いかえれば懲戒処分の請求、あとの程度請とかその辺のやり方というのは通常の例に従つてやつてもらえばよろしい、こういう大まかな請求をいたすというつもりでございます。
#47
○井伊委員 そういたしますと訴追を受けたところの公安委員会あるいは訴追罷免の権限を持つておるもの、こういうものに、ただ訴えただけで一切はまかせる、どういうふうになつてもただまかせる、そういう意味合いのものですか。
#48
○下牧説明員 最後の判断は全部まかせるという建前であります。ただ先ほどちよつと申し落しましたが、検察官として意見を述べていい場合もあろうかと思います。中には懲戒する、罷免するとか、あるいは減給でよろしいとか、戒告でよろしいとか、意見を述べることはかまわないと存じます。と申しましても、必ず意見を述べなければならぬかというと、そういうことじやございませんので、一気にしかるべき処分をしてもらいたいということで請求いたしてもかまわない。それは各具体的事案によつて判断して行けばよいのじやないかと思います。最後の決定権はすべて公安委員会または懲戒罷免権者にまかせる、こういう考え方であります。
#49
○井伊委員 訴追請求の事実等についての証明については、検察官と、それから公安委員会その他の懲戒罷免の権限を持つておる者との間に、どういうやりとりをするというか、そういうものは重ねて適宜にこれを証明する方法、供述するとか、あるいは調査を求めるというようなことができるのか、あるいは書面だけでこれを行うものか、それはどうでございますか。
#50
○下牧説明員 その点はこの法律の第二条によりまして、一般の警察官なら警察官、それから特別警察官なら特別警察官を懲戒する場合における手続に従つてやる。その場合、ヒヤリングということになつておりますれば、今度の場合もヒヤリングでやるということになりますし、その辺が適当な懲戒罷免権者の認定にまかされている場合は、それに従つてやるというふうにいたしまして、それぞれおのおのの機関において、通常のやり方においてやるというふうにいたしたわけでございます。各機関によつて、おのおのやり方によつて違つて参るということになるかと思います
#51
○井伊委員 第二条のところですが、訴追請求を受けた者が「処分の種類、手続(処分に対する審査に関するものを含む。)」これはどういう場合ですか。
#52
○下牧説明員 お手元の「懲戒手続法案関係資料」、これの一番最後のところに表がございますが、最後のページの表の方――これは懲戒処分を受けた者がその審査に不服の場合に、不服を申し立てて審査を受けるということになつておりますが、国家公務員は、説明書を受領した日から三十日以内、保安庁の職員も懲戒処分の宣告書を受けた日から三十日以内に審査の請求をし得るというその審査、言いかえれば、国家公務員につきましては、人事院または公平委員会にかかるあの審査でございます。それから地方公務員の場合においては、人事委員会とか公平委員会にかかる、それに不服を申し立てた場合の審査の手続、それをもこの場合においては含ませてやろうという趣旨でございます。
#53
○小林委員長 それでは本件については本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#54
○小林委員長 次に続いて下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を行います。
 なおこの際お諮りいたします。本案審査中、最高裁判所当局より出席説明いたしたいとの要求がありました場合は、国会法第七十二条第二項によつてこれを承認することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○小林委員長 御異議ないものと認め、さようとりはからいます。
 質疑の通告がありますから、これを許します。井伊誠一君。
#56
○井伊委員 奄美群島の名瀬簡易裁判所、徳之島簡易裁判所、これが設立されまして、現地の人たちの意向に応ずるものだと思われますので、これはけつこうなことでございますが、独立前の裁判所との間に事務の引継ぎは円満に行つておるものでありましようか。その点についてお伺いしたい。
#57
○磯崎最高裁判所説明員 お答え申し上げます。昨年十二月二十五日仰せの両裁判所が設置されます前に、鹿児島地方裁判所から判事が参りまして、事前に事務の引継ぎをいたしまして、当時治安裁判所に係属しておりました事件、それから巡回裁判所に係属しておりました事件は、それぞれ二つの簡易裁判所、鹿児島地方裁判所、鹿児島家庭裁判所各瀬支部事件として順調に事務を引継いで審理いたしております。
#58
○井伊委員 もう少し庁舎であるとか、裁判官の資格、裁判所の職員について現地の事情を詳しくお知らせ願いたい。
#59
○磯崎最高裁判所説明員 裁判官は鹿児島地方裁判所から判事の資格の人が参りまして、事務に当つております。書記官も鹿児島地方裁判所管内の書記官が参りまして、従前書記の事務をいたしておりました者は補助に使いまして、内地の資格者が行つて書記の事務をいたしております。現在までのところ、別段現地の裁判所事務処理に支障があるというようには報告を受けておりません。スムーズに行つておるものと思つております。職員は全体で三十九名でございますが、特段の支障もなく事務は進捗いたしておるものと存じております。
#60
○井伊委員 庁舎というようなものについては、別に拡張するとか、今のところで不自由だとか、そういうようなことはどうですか。
#61
○磯崎最高裁判所説明員 名瀬の戦前の庁舎は戦災によつて全部焼失いたしましたが、終戦後、昭和二十年だつたと思いますが、新しくガリオア資金によつてりつぱな庁舎ができまして、名瀬の支部と、簡易裁判所及び名瀬の支部検察庁は、その庁舎で支障なく執務したしております。徳之島の簡易裁判所は、徳之島の治要裁判所の庁舎が多少手狭でございますが、それを継続して使用いたしております。この方は松察庁と両方入りますと多少きゆうくつでございますので、二十九年度予算で大蔵省から若干の増設を認められるかと思つております。
#62
○井伊委員 奄美群島の簡易裁判所から控訴する場合に、宮崎ではあまりに遠いというので、鹿児島の方に高裁の支部を設置するということが言われておるのでありますが、そのことはどうなつておるのでありましようか。
#63
○磯崎最高裁判所説明員 鹿児島に福岡高等裁判所の支部を設置したいという御要望は、奄美群島の復帰以前より鹿児島の方から積極的にございまして、事件の内容等を考えまして検討いたしておりましたが、奄美群島復帰後特にその要望が一段と強くなつたように存じております。奄美からは二つの、簡易裁判所の刑事の控訴事件、それから鹿児島地方裁判所名瀬支部の民事刑事の控訴事件かそれぞれございますが、現在までのところ件数といたしましてはさはど多くないというふうに考えておりますので、裁判所といたしましては、高等裁判所の支部をただちに移すべきかどうか、あるいはむしろ高等裁判所が現地の方におもむきまして控訴審の事件をやれるように、裁判所法六十九条二項の開廷場所の指定といつたような便法が考えられないか、とこういう角度から検討いたしております。
#64
○井伊委員 そうすると、今のところでは、まだ鹿児島の方に高裁の支部を置くというような御意向でもないというのですな。
#65
○磯崎最高裁判所説明員 その点はまだ検討中でございまして、積極的に移すとも、移さないとも決定しておりません。
#66
○木下委員 奄美大島のことが出たのでちよつと伺つておきたいと思います。奄美大島の復帰前の事柄なんですけれども、私奄美大島に行つてちよつと疑問に思つたことは、元国有林だつたらしい非常に広い山に、占領軍の方から払下げを受けたと言つて、岩崎山とかいつて大きな標札がかかつておつたことです。奄美の住民は復帰前からその山の奥に山林を持つておつたが、名瀬から古仁屋に行く一本道の沿線に厖大な私有地ができて、奥山の連中が材木を出すのを通らせないというようなことで非常な不便を感じており、通ろためには大きな犠牲を払わなければならぬというような事実があるのです。私は余日がありませんので調べなかつたのですけれども、復帰前アメリカの沖繩の軍政部だろうと思うのですが、私の感じでは、その軍政部の連中によろしくやつたんではないかというふうに考えられるのです。国有林の大部分を、一私人である鹿児島の相当アプレゲールの財閥が所有林だと称して、道ばたにずつと標識が立ててある。一体占領当時、そういう日本の国有林を占領軍の人が払い下げることができるものかどうか。これは復帰すれば、帳簿要件の関係で登記のことが必ず問題になると思う。出し抜けに今井伊君から大島の話があつたので思い出してお聞きするのでありますが、今おわかりにならなければお調べになつていただきたい。これは非常に大きな問題で、やはり国民の前にはつきりさせなければならぬと思います。私の政治観では、占領軍の方によろしくやつて、一般民衆の無知に乗じてそういう大きな財産を一私人の私有物にしたものと思う。このまま捨てておけば、十年なら十年たつと時効ということも起るので、おわかりになつていなければお調べになつていただきたい。これは最高裁判所でなくて、あるいは民事局長にでも聞くべきことかもしれませんが、ちよつと伺つておきたいと思います。
#67
○位野木政府委員 ただいまお尋ねの問題でありますが、国有林のことでございますのであるいは法務省の所管でないかとも思いますが、私の承知しておる限度でお答えいたしますと、おつしやるように元の国有地が占領中に琉球政府あるいは向うの軍の管轄の方に移りまして、その管理権あるいは処分権までも向うに移りました結果、私人に貸し付けられたりあるいは払い下げられたというふうな事例もあるように聞いておけます。これはやはり何か軍の布告かまたは現地の法令のようなものが出まして、一応はその権限に基いておるように聞いております。しかしその当否についてはあるいは問題があり得るかと思いますが、一応法令上の根拠はあるというふうに聞いております。それ以上の詳細なことはただいまわかりませんが、わかり次第御報告いたします。
#68
○小林委員長 林君。
#69
○林(信)委員 先刻の井伊委員の質疑に対する当局のお答えは、福岡の高等裁判所の支部を鹿児島に設置することはまだ決定しておらない――そのことの可否は別にして、よくわかるのでありますけれども、質問の要旨である奄美群島における名瀬並びに徳之島の簡易裁判所の事件の処理としては、交通不便の関係よりして、裁判所法六十九条第二項によつて、その裁判所でない他の場所で法廷を開くことができるという規定もあるのだから、宮崎の支部からでも出かけて行つてやつてやることも考えられるし、考えておくという話であります。この六十九条は法廷に関する規定であり、その開廷の場所は原則として裁判所または支部であることが定められて、必要と認められる限度の問題であるのですが、いわゆる例外のあることには間違いがないと思う。大体最高裁判所の単なる思いつきだけで、随時随所においてはやらない趣旨であり、従来その解釈でやつておいでになつたと思うのです。今私結論をどうこうと言うのではないのですが、一応考えられますことは、今度のような交通不便の関係からこれを法にいうところの必要と認めるものに解釈いたしまして、高等裁判所より出張開廷をするということになりますと、これは不便の限度が別に学理的技術的に明確なものではないのですから、表現の方法によつては、あそこよりはおれのところが不自由だというようなことができますと、さようなことがたいへん広範囲に起つて来はしないかと思うのです。不遜な言い方かもしれませんが、ほんとうにそんなことができるように思つて大まじめに御研究になつておられるのでございましようか。高等裁判所の支部、この場合には宮崎の既存のものを鹿児島に持つて行くということは非常に至難なことだから、といつて要望が非常に強いから、まあいわば言いのがれ式にこういうことも考えておる、ああいうことも考えておるということでお答えになつたのかもしれないと思いますが、その点に関する御説明を承りたいと思います。
#70
○磯崎最高裁判所説明員 交通不便ということからただちに六十九条第二項の開廷に持つて行くことは、解釈と申しますか、運用が多少広まり過ぎるといつたような懸念もありますけれども、今までにも例が少うございますが、東北管内でもやつたことがあります。それから必要と認める場合という場合に、交通の不便ということのほかに公衆衛生ということを考えまして、癩患者に関する事件を裁判所外の癩療養所の中で開廷するということは常時行われております。そういつた場合を考えますと必ずしもできないことはないのではないかというふうに思いまして、私たちの方の総務局の中に課を置きまして、開廷場所の指定、巡回裁判といつたような自然の関係を研究し、奄美大島の関係につきましては担当の者を置きまして研究させております。鹿児島まで行きましても特に奄美大島の南方与論、沖永良部島方面の人は相当時日を要しますし、ことに海が荒れました場合にはほとんど交通が杜絶するといつたことがありますので、年間一定の時期を区切りまして高等裁判所から裁判に出かけて行く、その間に最高裁判所で一定の時期の事件の開廷を名瀬支部においてできるというような指定をすることは必ずしもできないことはない。措置としても不当ではないというふうにまじめに考えておるのでありまして、必ずしも言いのがれだけの見解ではございません。六十九条の法の解釈としては多少広過ぎるけれども、できないことはない。現在の措置としてはそういう方法が考えられるうちの最も妥当な措置ではないかというふうに思つております。
#71
○林(信)委員 法文の言葉そのままに参りますれば、これは最高裁判所のいわば専権に属するものであつて、もちろんそれには制限はありますけれども、それも最高裁判所が必要と認める以外の機関においては必要でないのであります。その意味から申しますれば、御趣旨のような考え方もまつ正面からは、あるいは議論にならないかもしれない。従来この規定の解釈はかなり厳格に考えられて来たと思うのです。例があると旨われますのも、それは今具体的に取上げられております奄美群島の例と比較いたしますと場合が違うだろうと思います。私は直接タツチしておりませんからよく存じませんけれども、建物が焼けちやつた、流れた、こわれたといつたよへな例が主たる例ではないかと思います。いわば非常事態の臨時の措置である。今度の場合はそういう建前をとられまして、――これは恒久的なものなんです、臨時のものじやないわけです。そのこと自体は解釈上よろしいし、また考え方によつて、それらの方面の方は利便を得る。これは異論のないことですけれども、そういうふうに解釈し、そういうふうに推し広めて参りますと、おれのところも、おれのところもというふうになりまして、巡回して来てくれろ、出張して来てくれろ、こういうことが起つて来るし、これは大分建前が違つて来ると思うので、それでよろしいかどうか。その根本的な考え方で、局部的にながめて、この分だけはやれないことはない、やれば喜ぶ。これはわかるのですけれども、それが他に及ぼす影響を考えますと、これは御研究も相当慎重でなくてはならぬと思います。その杞憂から私お伺いしておるのですが、やはりそれでいいのでしようか。
#72
○磯崎最高裁判所説明員 六十九条二項の運用の状況を見ますと、癩患者に関する事件が一番多いのでございまして、熊本県の菊池恵楓園、あそこを指定いたしましたし、岡山の長島愛生園を指定いたしておりますが、これが実際の運営上多い例であります。その次が、仰せの通り、庁舎の焼失あるいは水害による流失でございます。これは件数としては少うございます。先般門司の簡易裁判所が流されました例がございましたが、多くの運用は、癩患者の事件を、公衆衛生の観点から裁判所の法廷を使用させないという趣旨に立つているのでございます。林委員の御指摘の通り、確かに奄美群島に適用した例をほかに広く及ぼすということには相当問題がございますので、よく慎重に研究いたしたいと存じます。
#73
○林(信)委員 それでよほど合つて来たと思うのです。あらためての質疑じやありませんが、御説明のような癩患者のための出張開廷というような例、あるいは私が前に述べましたような、建物の損壊しましたような場合それらの例から参りますとまつたく新たな例になるのです。奄美群島の諸君を癩患者扱いにしてもどうかと思いますし、お説のように慎重に御研究くださいますとともに、支部の移転の問題も同時に慎重に御考慮願いたい。私の質疑は終ります。
#74
○小林委員長 本日はこの程度にとどめておきます。明日は午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十四分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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