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1953/03/30 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第30号
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1953/03/30 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第30号

#1
第019回国会 法務委員会 第30号
昭和二十九年三月三十日(火曜日)
    午後二時十九分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 高橋 禎一君
   理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    林  信雄君
      牧野 寛索君    猪俣 浩三君
      神近 市子君    木下  郁君
      佐竹 晴記君
 出席政府委員
        検     事
        (民事局長)  村上 朝一君
        検     事
        (大臣官房調査
        課長)     位野木益雄君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
三月二十九日
 外国人登録法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第四三号)(参議院送付)
同日
 津地方法務局富州原出張所存置に関する請願(
 木下郁君紹介)(第四〇五七号)
の審査を本委員会に付託された。
同月二十七日
 釧路地方法務局根室支局の格下げ反対の陳情書
 (北海道根室郡根室町長富樫正神外一名)(第
 二四八七号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 参考人招致の件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 七九号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第八〇号)
 刑法の一部を改正する法律案(八百板正君外百
 三十四名提出、衆法第一三号)
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 刑法の一部を改正する洪律案を議題といたします。提出者よりその趣旨説明を聴取いたします。猪俣浩三君。
#3
○猪俣委員 ただいま議題となりました刑法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
 この法律案は、刑法の一部を改正して、新たに涜職ノ罪の章に、公務員のあつせん収賄罪を処罰する旨の一条を加えるとともに、あわせあつせん収賄をした公務員に対して贈賄をした者をも処罰しようとするものであります。御承知のように、現行刑法に規定されておりますところの贈収賄罪につきましては種々の態様があり、処罰をするために必要なさまざまの要件が規定されておりますけれども、公務員がその地位を利用して他の公務員の職務に属する事項に関しあつせんをなすことまたはあつせんをなしたことにつき賄賂を収受する等の行為及びかかる賄賂を供与する行為につきましては、従来これを処罰することができる旨の規定を欠いていたのであります。のみならず、いわゆるあつせん贈収賄を処罰すべきであるかいなかにつきましては、沿革的に従来から問題が存していたのであります。すなわち、まず昭和十五年に刑法並びに監獄法改正調査委員会の総会の決議として発表いたされました改正刑法仮案におきまして、初めて公務員のいわゆるあつせん収賄罪及びこれに関する贈賄罪の規定が設けられたのでありました。次いで、翌昭和十六年当時開会中の第七十六回帝国議会に政府から提出されました刑法中改正法律案にも、このあつせん贈収賄罪について規定が置かれたのでありますが、この法律案は、貴族院においては、政府提出の原案通り可決されたのにもかかわらず、衆議院におきましては、種々論議がなされた結果、このあつせん贈収賄罪に関する部分のみは削除されて通過したのであります。その後昭和十八年の第八十三回帝国議会におきまして戦時刑事特別法の一部が改正された際に、官公署の職員のあつせん収賄及びこれに関する贈賄を処罰する旨の規定が加えられるに至つたのでありますが、同法は戦時特別立法でありましたために、終戦とともに廃止されて今日に至りました。すなわち、今日におきましては、さきに述べましたように公務員のあつせん収賄及びこれに関する贈賄を処罰すべき何らの規定もないという状態なのであります。しかるに、御承知のように、最近におきまして公務員の汚職問題がしきりに発生いたし、しかもその汚職行為の態様は、次第に複雑化の様相を示し、特に公務員がその地位を利用して他の職務を有する公務員にあつせんをなし、これが報酬として金品を受領するがごとき実例がすこぶる多いように思われるのでありますが、たまたまかかる行為を処罰する規定がないために、制裁を免れる者が多くこれによつて道義は地に落ち、綱紀は頽廃して、まことに寒心にたえないものがあるのであります。従つてこの際公務員の廉潔を確保し、綱紀の粛正をはかるためいわゆるあつせん贈収賄を処罰する必要のありますことを痛感いたしまして、ここに前記のような趣旨のこの法律案を提出いたしました次第であります。
 次に、この法律案の内容について申し上げます。この法律は、公務員がその地位を利用し、他の公務員の職務に属する事項に関しあつせんをすること、またはあつせんをしたことについて賄賂の収受、要求または約束をした者に三年以下の懲役を科し、及びかかる賄賂の供与、申込みまたは約束をした者をも三年以下の懲役または五千円以下の罰金に処せんとするものであります。そして、これらはすべて公務員たる身分を有する者に対する処罰の規定でありますので、他の公務員に対する処罰に関する規定と同じく、日本国外における行為も処罰することといたしました。
 以上提案の理由を申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。
 なお一言お願いいたしたいことは、委員長におかれましては、すみやかに本案審議の便宜のために、本案に関しまする小委員会をおつくりいただきまして、慎重審議を進められんことを希望いたします。
#4
○小林委員長 いずれ理事会を開きまして相談の上善処いたします。
 これにて趣旨説明は終りました。なお本案に対する質疑はこれを後日に譲ることにいたします。
    ―――――――――――――
#5
○小林委員長 次に参考人招致の件についてお諮りいたします。すなわち現在本委員会において審議いたしておりまする交通事件即決裁判手続法案、裁判所法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び利息制限法案は、いずれも重要な法律案でありましてその影響するところも各方面にわたつて大なるものがあると考えられますので、学識経験者あるいは利害関係者等に参考人として出席を求め、逐次その意見を聴取いたしたいと存じますが御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○小林委員長 御異議がないものと認め、さよう決定いたします。
 なお参考人の選定並びにその出席を求める日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○小林委員長 御異議がないものと認め、御一任願うことに決します。
 また外国人の出入国に関する小委員長より、当該小委員会において外国人の出入国に関して参考人より意見を聴取することにいたしたいとの申出があります。この申出を許可するに御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○小林委員長 御異議がないものと認め、許可することにいたします。
 なお参考人の選定及びその出席を求める日時等につきましては、委員長及び当該小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○小林委員長 御異議がないものと認め、御一任願うことに決定いたします。
    ―――――――――――――
#10
○小林委員長 次に裁判所法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたしまして、両方関連してこの際政府より逐次説明を聴取することにいたします。村上政府委員。
#11
○村上政府委員 まずこの両法律案の立案の経過について簡単に申し上げたいと存じます。
 法務省におきましては、昭和二十五年第七国会において民事上告特例法が暫定的措置として二年の期限付で制定されました趣旨にかんがみまして、ただちに民事訴訟法の全面改正の準備に着手し、翌二十六年五月、法制審議会に対し民事訴訟法の全面改正に関して諮問をいたしました。同審議会は民事訴訟法部会を設けて審議を始めたのでありますが、民事訴訟法部会は爾来二十七年一月に至るまで前後七回にわたる審議を続け、多くの問題のうち大部分につきましては一応の結論に近づくことができたのでありますが、最も重要で民事訴訟手続全般に関する影響の大きい上告制度の改正については、意見がわかれたまま容易に結論を得ることができず、審議は事実上停頓するのやむなきに至つたのであります。ところで上告制度の改正に関し特に問題となりますのは、上告範囲をどうするかということでありますが、この問題は必然的に裁判所の機構をどうするかという問題と密接に関連しておりますので、最高裁判所の機構の問題を別にしては上告の範囲を決定することができない状態であつたのであります。ところがこの間裁判所法施行以来漸次増加の傾向にありました最高裁判所の未済事件が、昭和二十六年、七年にかけまして七千件を越える事態を招来したのであります。従いまして最高裁判所の機構をどうするかという問題は、民事訴訟法の改正の問題との関連を別にいたしましても、急速にその検討をする必要を生じたのであります。法務省といたしましては、昨年の二月さらに法制審議会に対し、裁判所の機構の改革について諮問をいたしました。民事上告手続の改正の問題も、最高裁判所の機構をどうするという違つた角度からさらに検討をされることとなつたわけであります。法制審議会におきましては、民事訴訟法部会とは別に、新たに司法制度部会を設けまして、裁判所の機構の改革の問題について検討することといたしまして、昨年二月以降本年の一月に至るまで前後八回にわたる審議を重ね、またこの間小委員会をも設けて問題を検討したのでありますが、この部会におきましても、民事訴訟法部会におけると同様、最高裁判所の裁判官を増員するとともに、現行の民事刑事上告の範囲を拡張すべしという案、すなわち裁判官増員案、これは主として在野法曹側の委員から主張されたのであります。これと現行の最高裁判所の機構及び上告の範囲を維持すべきであるという現状維持の意見、これは主として最高裁判所側の委員から主張されたのであります。この二つの両極端の意見がはげしく対立しました。またその間に最高裁判所の機構及び最高裁判所に対する上告の範囲は現行のままとするが、東京高等裁判所に別に上告部を設けて最高裁判所の取扱わない一般の法令違背を理由とする上告事件をここで処理すべきであるという中間の案も出ました。この三つの意見が対立したまま容易に一致を見ることができなかつたのであります。そこで司法制度部会におきましては、かような事情のために裁判所の機構の問題については、事柄の重要性にかんがみ、今後なお審議を継続することとしたのでありますが、ただ民事上告特例法は本年五月限りで失効することになつておりまして、この法律の失効に備えて何らかの善後措置を講じない場合は、現在以上に最高裁判所の負担が増大することは明らかでありますので、本日お手元にお配りいたしました上告制度関係資料の中の第一ページに載つておりますが、かような中間報告をすることに決定いたしました。一月十六日付をもつてその報告があつたのであります。この第二項にありますように、「民事については、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」の善後措置を民事訴訟法部会において検討されたい。なお、当部会においては、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反をも上告理由とし、上告に関する適法要件を原裁判所に審査させることとする等上告手続を改正し、簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張する等の方法を考慮し、最高裁判所の負担を調整することを相当と考える。」この中間報告につきましては、司法制度部会におきましてはほとんど全員の賛成のもとに議決された次第であります。他方民事訴訟法の部会における審議は、先に申し上げました通り上告手続の改正の問題について結論を得られないまま中絶の状態にありました司法制度部会における裁判所の機構問題に関する何らかの結論が得られることを期待していたのであります。その結論もついに間に合わないこととなりました関係上、民事訴訟法部会独自の立場からあらためて上告手続を中心とする民事訴訟法の改正に関し態度を決定する必要に迫られることとなつたのであります。
 これより先、法務省の事務当局といたしましては司法制度部会の審議の状況にかんがみまして、万一司法制度部会の意見が時間的に間に合うようにまとまらない場合を考慮いたしまして、この場合における民事上告特例法失効後の善後措置をどうするかということについてあらためて対策を考えておく必要を感じましたので、最高裁判所事務当局とも緊密に連絡いたしまして、昨年の夏ごろから問題の検討を始めまして、本年の初めに至るまでの間数箇月を費しまして、民事訴訟法等改正要綱案をつくりました。またこの要綱案に基いて一応の法律案も準備したのであります。ところが司法制度部会におきましてはついに諮問事項に対する終局的な結論が得られないこととなりましたので、裁判所、弁護士連合会及び学界から任命されておりました幹事の方々とも相談いたしまして、さきに法務省事務当局において準備しておりました民事訴訟法等改正要綱案を、民事訴訟法部会幹事案としてその部会に提出しました。部会はこれを原案としまして、本年の一月二十一日から三日間にわたつて審議いたしました結果、原案に多少の修正を加え、委員大多数の賛成を得て、この上告制度関係資料の五ページにありますように、民事訴訟法等改正要綱を決議しまして、これを民事訴訟法部会会長から法制審議会長あて中間報告をいたしたのであります。今回提案いたしました民事訴訟法及び裁判所法の改正に関する二つの法律案は、以上述べました経緯によりまして、法制審議会司法制度部会及び民事訴訟法部会の意見を基礎として立案されたものであります。もつともこの立案の過程におきまして、最高裁判所の機構に関する最終的な結論が得られない状態であるならば、民事上告特例法の有効期間の延長をさらに考えてはどうかという意見も出たのでありますが、最高裁判所の機構の問題は、事柄自体きわめて重大であります上に、民事の上告制度のみならず、刑事の上告制度とも緊密な関係がありますので、この問題の性質及び従来における法制審議会の審議の経過から申しまして、近い将来に各方面の満足を得るような結論を得ることは、ほとんど期待できないのではないか、このように将来に対する確たる見通しの立たないまま、民事上告特例法の有効期間の延長をお願いすることはいかがというふうに考えまして、法務省といたしましては、民事上告特例法の有効期間の再延長をはかるという案は、つとに断念をいたした次第でございます。現状のもとにおいて考えられる、言いかえまするならば最高裁判所の機構を今のままと仮定いたしまして、そのもとにおいて考えられる各種の案のうちでは、最善のものと信じて、これに基いて今回の法律案を立案したのであります。最高裁判所におきましても、今回の法律案の成立を希望しておられるように伺つております。
 そこでまず裁判所法の一部を改正する法律案の逐条について、簡単に御説明申し上げます。
 まず第三十三条の改正であります。これは二つの事項を含んでおるのでありまして、その第一は、簡易裁所の事物の管轄を、現在三万円以下の請求となつておりますのを、二十万円以下ということに管轄を拡張するという点、いま一つは、簡易裁判所の事物管轄から現に除かれております行政処分の取消または変更の請求、これを「行政庁の違法な処分の取消又は変更に係る請求その他公法上の権利関係に関する請求」ということに改めるものであります。
 簡易裁判所の事物管轄の範囲の拡張について御説明申し上げますが、現行法のもとにおいて、簡易裁判所の民事訴訟に関する権限が訴訟物の価額三万円以下の事件に限られておりますが、この総額三万円以下という額は、現状におきましてはあまりにも低きに過ぎる。そのため近時簡易裁判所は民事訴訟に関する限り比較的閑散な状態であるのに比較いたしまして、地方裁判所は莫大な事件の量で圧倒されておる状態であります。これが地方裁判所における訴訟遅延の重要な一つの原因となつておるのであります。かような負担の不均衡を是正いたしますために、簡易裁判所事件の訴訟物の価額の引上げを行う必要があると考えるのであります。最近の物価の状況、戦前の区裁判所の事物管轄の限度が千円であつたこと、民事上告特例法が近く失効するに伴いまして、最高裁判所の事務的な負担が増大すること等を考え合せまして、この際この限度額を二十万円程度まで増額することにいたしたのであります。この訴訟物の価額の引上げにつきましては、先ほど申し上げました法制審議会民事訴訟法部会審議経過中間報告書にあります改正要綱の第五に掲げてある通りであります。この点につきましては、各方面ほとんど異論がなかつたのでありますが、これを十万円にするか二十万円にするかにつきましては、相当議論があつたのであります。日本弁護士連合会等からも、十万円程度の引上げには賛成だが、二十万円程度への引上げには賛成しがたいというような意見が出ておるようであります。この点詳細につきましては、他の機会に御説明を申し上げたいと思います。
 もう一つの改正の要点は、裁判所法の後にできました行政事件訴訟特例法、これにはその改正案にありますような「行政庁の違法な処分の取消又は変更に係る請求その他公法上の権利関係に関する請求」という言葉が使つてございまして、これが普通に行政事件と呼ばれておるわけであります。裁判所法第三十三条におきましては、「行政処分の取消又は変更の請求」学問上抗告訴訟と言われておりますものだけを除外いたしまして、その他の公務上の権利関係に関する請求は、訴訟物の価額三万円以下のものは簡易裁判所で管轄することになつておるわけであります。これも行政事件の特殊性から考えまして、抗告訴訟と同様、その他の公法上の権利関係に関する請求も地方裁判所の管轄に移すことが適当であろう。かように考えた次第であります。
 次は六十一条の二の改正でありますが、これは家庭裁判所に置かれる家事調査官と少年調査官とを統合して家庭裁判所調査官として、家事調査官補と少年調査官補とを統合して家庭裁判所調査官補とするという趣旨であります。すなわち家庭事件と少年事件との間にはきめわて密接な関連があり、従来の実績から見ましても、少年事件の中に複雑な家庭関係の問題を蔵しておる事案、あるいは家庭事件の中に少年保護の問題を伴う事案が多数を占めておりますので、両者の調査事務の有機的、総合的な運営を可能ならしめる道を開くためにかような改正を立案した次第でございます。
 次に民事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして御説明いたしますが、この法律案につきましては逐条説明書をお手元にお配りしてあると存じますので、改正の要点を中心にいたしまして、関係条文について御説明をいたしたいと思います。
 まず改正の要点の第一は条文手続の合理化であります。これは条文の三百九十四条になります。現在の民事訴訟法のこの条文によりますと、判決が法令に違背したことが上告理由とされているのでありますが、改正案はこれを、判決に憲法の違背があること、または判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背があることに改めるものであります。法令違背は判決の基礎となつた訴訟手続に存する場合と、判決中の法律判断に存する場合とがあるのでありますが、そのいずれにつきましても、判決の結論に影響を及ぼすもの、すなわちその法令違背がなかつたならば判決の結論が異なつたであろうと考えられるものと、そうでない、すなわちかりにその法令違背がなかつたとしても判決の結論は異ならなかつたであろうと考えられるものとがあるのであります。このあとの方の法令違背を上告理由として認めることは、実益に乏しいばかりでなく、事件の解決をいたずらに遷延させ、原審における勝訴者の利益を不当に害することになるのであります。現行の三百九十四条におきましても、特に判決への影響については明文をもつて表現されておりませんけれども、その解釈といたしましては、判決に影響を及ぼす可能性のない法令違背は上告理由とならないものとされておるのであります。この改正案は右の趣旨を明らかにし、かつこれを徹底させまして、上告理由は判決に影響を乃ぼすことの明らかな法令違背に限ることとするものであります。言いかえますと、現行法のもとでは、法令違背が判決に影響を及ぼす可能性さえあれば、これが原判決破毀の理由となるのでありますが、この改正案におきましては、法令違背が判決に影響を及ぼす可能性のある場合に限り原判決破毀の理由となることとなるのであります。ただ憲法の解釈につきましては、最終審の裁判所の判断がなされる機会を十分に保障する意味におきまして、憲法の違背の場合は現行法通りとしたのであります。
 なおこれに関係いたします条文としましては、三百九十五条の改正でありますが、これは三百九十四条の改正に伴う字句の整理でありまして、いわゆる絶対的上告理由といわれておりますものは、そのまま改正案におきましても維持することになつております。
 上告手続の合理化に関連する要点の第二は、上告に関する適法要件を欠くことが明らかな場合には、原裁判所において上告を却下することができるという点でありますが、それに関する条文といたしましては、三百九十七条から三百九十九条の二までの規定であります。すなわちこれらの規定は、原裁判所における上告の適法要件の審査の制度を新たに設けようとするものであります。
 三百九十七条の第一項は、この原審における審査のため、上告状は原裁判所に提出すべきこととしております。現行規定によりますれば、原裁判所または上告裁判所のいずれに提出してもよいことになつております。
 本条の第二項は、上告状却下の権限を原裁判所の裁判長に行わしめようとするものであります。上告状却下の事由は現行法通りでありまして、上告状がその方式を欠くこと、相当の印紙を貼用しないこと、または上告状の送達ができないことが却下の理由となるわけでありますが、この欠缺がある場合でもただちに却下することなく、相当の猶予期間を設けて補正を命じ、これに従わないときに初めて上告状を却下するという点も、現行法通りであります。
 次に三百九十八条の第一項は、原裁判所における上告の適法要件の審査のため、上告理由書も原裁判所に提出すべきことにいたしたのであります。上告理由書の提出期間は、現行法では上告裁判所に訴訟記禄の到達した旨の通知があつた日から三十日とされておりますが、この改正案では、記録が原裁判所にある間に上告理由書を提出することとなりますために、この日を起算日とすることができませんので、実情に適した妥当な定めを最高裁判所規則においてすることとし、法律中に規定することをやめたわけであります。
 本条の第二項は、上告理由の記載は最高裁判所の規則で定める方式によるべきことを定め、上告理由は、上告状または上告理由書のいずれかに記載されるのでありますが、上告の審理の能率化をはかるためには、その記載の方式を定めることが望ましいからであります。
 三百九十九条は、以上第一ないし第三に掲げる場合に該当することが明らかな場合に限り、原裁判所に上告却下の権限を認めようとするものであります。第一は、上告が不適法でその欠点を補正することができない場合、たとえば上告期間経過後に上告の提起があつたような場合であります。第二は、上告状に上告理由を記載せず、かつ上告理由書を期間内に提出しない場合、または上告状に上告理由を記載し、または上告理由書を提出したが、上告理由の記載が最高裁判所の規則で定める方式に違背している場合。第三は、上告理由として上告人の主張するところが法令違背の主張に該当しない場合、または法令違背の主張ではあるが、かりにその主張するような法令違背があつたとしても、これが判決に影響を及ぼす可能性のないことが明らかな場合であります。もつぱら原審の事実認定の不当を主張するにすぎないようなものは、第三号の前段に該当いたします。また明らかに訓示規定と解されております法規の違背や、原判決の単なる傍論における法令の解釈の誤りを主張するにすぎないもの等は、この後段に該当するわけであります。
 次に三百九十九条の二は、上告状却下の命令または上告却下の決定があつた場合のほかは、上告裁判所の審判を受けしむるために事件を上告裁判所に送付すべきことを定めたのであります。
 改正要項の第二は、仮差押え、仮処分事件の上告の制限であります。これに関しまする条文は三百九十三条、仮差押え、仮処分に関する判決に対しては、通常の上告を認めないこととするものであります。憲法違反を理由とする不服の申立てにつきましては、別に最高裁判所に対する特別上告を認めることといたしております。これは四百九条の第二項に特別上告の規定がございます。仮差押え及び仮処分は本案の訴訟手続によつて事件の終局的解決がなされるまでの暫定的応急的な仮の措置でありまして、争いとなつております権利関係の確定や権利の終局的実現は、本案の終局判決またはこれに基く強制執行手続がその任務とするところでありまして、仮差押え、仮処分は単に権利保全のための仮の措置たるにとどまり、仮差押え、仮処分事件の上告審において審判さるべき問題の大部分、ことに請求権の存否についての法律問題は本案訴訟において審判されるのであります。従つて仮差押え、仮処分事件についての普通の上告を認めないことといたしましても、当事者の権利の保護に支障はないものと考えています。かえつて本案訴訟の審理との重複を避け、かつ事件の処理をすみやかならしめることによつて保全訴訟制度の目的をよりよく実現することができるのではないかと考えるわけであります。
 改正の第三は、仮執行宣言付判決に対する上告提起等の場合における執行停止の要件の加重であります。これに関連する条文といたしましては、五百十一条と五百十二条であります。仮執行宣言付判決に対して上告提起がありました場合の原判決の執行停止等は、その執行によつて償うことのできない損害の生ずべきことを疎明した場合に限つて許すこととするものであります。上告の対象となる判決は通常二審級の審判を経た控訴審の判決でありまして、かつ上告によつて破毀される率もきわめて低いので、その勝訴の当事者の権利の実現をできるだけ遅延せしめないことが望ましいのであります。その執行力の強化は仮執行宣言の制度が設けられている趣旨にも合致するのでありまして、上告の提起があつたことのみによつて容易に執行停止等の処分により原判決の執行を阻害することは、単に執行の阻害のみを目的とする上告を誘発する原因ともなると考えられるのであります。そこでこの改正案におきましては、真に救済の必要あるもののみを救済する半面、勝訴の当事者の権利の執行をすみやかならしめる趣旨で、執行により償うことのできない損害の生ずべきことの疎明を執行停止等の要件とすることとしたのであります。
 五百十二条は、上告の提起があつた場合の執行停止等につきましては、五百十一条に別に規定することとなりましたこと、及び現行法の五百十二条で準用しております五百条の規定が改正されることとなつた結果、それに伴つて必要な改正を加えようとするものであります。その内容は現行法通りであります。
 次にもう一つの関係条文は五百条であります。これは特別上告の提起まだは再審の申立てがあつた場合の原判決の執行停止等は、その主張する事実について疎明があり、かつこれが法律上一応異議を理由あらしめるものと認められる場合に限つて許すこととするものであります。
 特別上告または再審の申立ての対象となる判決は、すでに確定した判決でありますから、本来完全な執行力を有すべきでありまして、特別上告または再審の申立てがなされたことのみによつて執行停止等の処分により原判決の執行を阻止しますことは、勝訴の当事者の権利の実現を不当に侵害することとなり、特別上告または再審の申立てが執行を引延ばす目的で濫用されるおそれもあるのであります。現行規定のもとにおきましても、この改正案と同趣旨に解釈すべしとする有力な意見もあるのであります。疑義を避けるために請求異議の訴えの提起の場合に関する五百四十七条におけると同様、これを明確に規定することとしたのであります。
 改正の要点の第四は、調書及び判決の方式等の合理化であります。この関係条文は百四十三条から百四十五条までが中心であります。口頭弁論調書の作成につきましては、基本的な事項のみを法律で規定し、その他は最高裁判所の規則で定めることとするのであります。調書の方式の合理化、能率化は、訴訟手続を適正迅速に進行させるために不可欠の要請であります。これにつきましては現行百四十三条、百四十四条に部分的な修正を加えることも一つの方法でありますが、調書の形式、内容をどう定めるかは結局調書が訴訟手続の記録としての機能を十分に果して、かつその作成が能率的になされるための技術的考慮に基いて決定さるべき事項でありますから、対象となる訴訟手続の異なるに従つて、それに適する定めをし、また常に実務処理の経験にかんがみ随時所要の改正をなし得ることが望ましいのであります。従つて調書については基本的の事項のみを法律で規定し、細目についてはこれを法律で規定するよりも、みずから裁判を行い、かつ下級裁判所の訴訟事務の実態にも通じておりまする最高裁判所においてこれを定めることが適当と考えられるのであります。
 次に判決の方式につきましては、判決の内容方式につきましての基本的事項だけを法律で規定し、その余は最高裁判所の規則で定めることとするものであります。従来の判決書きの方式は現行法百九十一条に従いまして長年の慣行によつて成立したのでありますが、非能率的な点がないではないため、判決書きの作成自体に費やす裁判官の労力というものはきわめて大きいのでありまして、しかもその相当な部分はまつたく形式的な、判決の真の内容をなす判断以外のことに費やされているうらみがあるのであります。その改善は現行法のもとにおきましてもその運用によつてある程度達し得るのでありますが、それには限度があります。判決の基本的内容として主文、事実、争点及び理由を備えることを規定するにとどめ、その方式につきましては最高裁判所規則で定めることを適当としたのであります。これによりまして、あるいは調書判決の制度、訴状その他の準備書面の引用等が可能と相なるであろうと思うのであります。なお簡易裁判所の判決については三百五十九条、また控訴審の判決については三百九十一条に特例が規定してございますが、判決の方式については、すべて百九十一条に統一的に規定され、この特例に類する事項はすべてこの規則にゆだねられることになるわけであります。その他この民事訴訟法等の一部改正法律案の中には、この改正に伴いまし非訟事件手続法、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律及び中小企業等協同組合法の一部改正を加えておりますが、これらはいずれも民事訴訟法の改正に伴い、あるいはこれと歩調を合せた整理でありまして、それらの条文に関する説明は省略させていただきます。
#12
○小林委員長 これにて逐条説明は終りました。
 この際お諮りいたします。ただいま逐条説明を聴取いたしました二法律案の審議中、最高裁判所当局より出席説明したいとの要求がある場合には、国会法第七十二条第二項の規定によりましてこれを承認することにいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはかろうことにいたします。
    ―――――――――――――
#14
○小林委員長 それでは法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
#15
○田嶋委員 私先国会以来いろいろ民事局にお尋ねをして参り、またその後民事局でも非常にお考えを願つておるかのごとく考えられます帰化の問題でありますが、私が先般も申し上げましたように、結局この朝鮮人問題、主として日本が台湾、朝鮮というような土地を植民地として持つておつた当時の関係から起る民族的な今日のいろいろの問題、そうしてこれが思想的な問題にまで発展をするというようなことから、帰化というものは非常に重大ではないか、帰化の取扱いというものが非常に重大になつて来るのじやないか、この帰化の取扱いをうまく考慮することによつてそうした民族的な不満、そうして思想問題等もある程度の処理ができるのじやないだろうか、こういうような考えから御質問して来たわけですが、この点については民事局当局でもある程度御考慮を願い、また同感の意を表せられてくださつた点もあると思います。そこで、朝鮮人の帰化等も相当スムーズに、しかも御丁重に取扱つている事実は認められますので、まことに感謝をいたしているわけなんですが、最近私、二、三の台湾人に対する問題を取扱いまして、ひとつこれも朝鮮人問題と同じように御考慮を賜わる必要があるのではないか。こう思つて来たわけなんです。と申しますのは、私この間国会から派遣されて台湾に参りまして、あの台湾の空気を見たときに、一体台湾というのは日本の領土であるのか、中国に返された領土であるのか、台湾をまわつてみてときどき錯覚を起すくらい日本人に対して非常に協力的であるし、そして言葉の上でもほとんど台湾語を使わないで、日本語を使つておりまして、しかも鉄道線路を中心にして東西南北にいたしまして、南の方は中国人とはつきりしておるが、北の方は日本語でなければ通らないし、日本人の生活様式、日本人の言葉、日本語というものを使わなければ通らないというようにまで台湾の状況がわかれておるわけであります。従つてこの取扱いを相当慎重にやる必要があるのではないか。今後日本が独立を維持し、平和を守り、そうして特に共同圏の平和を守るという意味において大切であると思う。そういうことから二、三の例も検討したわけですが、台湾人で日本におつて、もうこれは日本人と何ら区別がつかない、しかも日本のために非常に協力しておる、こういうような人がたくさんおられる。しかしこの人たちが一旦日本人になろうという場合にも非常にむずかしい制約がついておるわけでありまして、なかなかそれができない。私の承つた一つの事例は、御承知だろうと思うのですが、北海道の居住の台湾の人が科学的な面から日本に非常に協力をし、日本にとつても最も必要な人である。この人が帰化申請をいたしましたところが、たまたまその人が中国人としての登録をしておつたというところから、登録がある以上は向うの国籍離脱の手続がないと、二重国籍を取得できないということから、手続上できないということで却下されているという事例があります。これはどう見ても日本人にしてやらなければならない、しかも生活様式もすつかり日本人である、また日本に今までも協力していたということで、まことに手続上何とか緩和してやつたらいいのじやないかというように感じるのですが、これらの点に対してどういうようにお考えになつていられましようか。またこうしたことの御対策等御研究なさつたことがございましようか。ひとつ承つておきたいと思います。
#16
○村上政府委員 台湾人につきましても、朝鮮人と同様過去における日本と台湾、朝鮮との特殊の関係の考慮をいたしまして、善良な元台湾人でありまして、日本の国民の一人として取入れてはずかしくないような、日本人に同化しているような人々は喜んで帰化を許すべきではないか、かように考えております。国籍法の第四条第五号でございますが、帰化を許すための前提といたしましては、「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。」これが要件とされておるのであります。従いまして帰化によりまして日本の国籍を取得するためには、現在持つておりまする国籍を失うことが必要なのであります。ところが一九二九年に公布されました中華民国の国籍法、これが現在台湾で施行されております。この中華民国における国籍法の中に、みずから志望して外国の国籍を取得する者は内政部の許可を得て中華民国の国籍を喪失することができる。但し二十年以上であつて、中華民国の法律により能力を有する者に限るという規定があるのであります。従いまして現に中国の国籍を持つておる人が日本に帰化するためには、国民政府の内政部から国籍喪失の許可を得て日本に帰化するか、少くとも日本の国籍を取得すればただちに中華民国の国籍を失うということが同国官憲の証明書によつて明らかにされている場合でないと、日本の国籍法上帰化け許されないのであります。従いましてこの喪失許可が与えられない限り、わが国に帰化を希望し、また帰化を許してしかるべき場合でありましても、帰化を許すことがきわめて困難な状態でございます。ことに中華民国の国籍法には、別の条文といたしまして、兵役の義務を有する者は国籍喪失の許可をすることができないという条文がございます。その結果満二十年以上の壮年の男子、これはきわめて許可を求めることが困難である。過去におきまして内政部の許可を得て帰化した例もございますけれども、これらは女子がほとんどでございます。男子で許可の得られました者は六十歳以上の者について例があるのみであります。ただいま田嶋委員のお示しになりましたような例も多々聞いておるのでありますけれども、かような事情で、これまでのところ帰化を許すことがきわめてむずかしいというわけでございます。ただその対策として、国籍法の規定があります以上、行政的にこれを無視するわけには行かない。そうかといいましてこれは二重国籍防止のための規定でありまして、みだりにこの法律に改正を加えるということもどうかと思われますので、過去における両国の特殊の関係に顧みまして、外交手段等によりまして、かような特殊なケースについては容易に許可が得られますように、中華民国政府の了解を得るように努めることが適当な手段ではないか、かように考えております。また現実に外務省を通じてそういう折衝をしてもらつたということはございませんけれども、私どもとしてはそういうことを感じております。
#17
○田嶋委員 よくわかりましたが、そこでこういう場合がちよつと想像されるわけであります。それは日本で生れてずつと日本で生活していた関係から中国の国籍は実際は取得されていないが、たまたま台湾人であるというところから、中国人の登録だけは日本でしたが、登録だけであつて、向うに国籍があるのかないのかはつきりしていないというような事例が生れるわけでありますが、登録だけあつて、そうして国籍が中華民国人であるかどうか不明な者、これもやはり中国人としての登録があるからというので、今の国籍法によつて帰化を許さないというようなことになると、国籍を失うことになると思うが、この場合もう少し外交折衝でなくて、行政的な措置によつて救う方法がありはしないかという点を伺いたいと思います。
#18
○村上政府委員 中国の国籍を持つているということが明らかでない場合には、これは無国籍として扱う以外にないのであります。現に占領中いわゆる第三国人としての特権を振りまわした人たちが華僑登録をしたにもかかわらず、自分はもう日本人だというつもりで華僑登録をせず、また第三国人らしい行いもしなかつたという人が多数あるのであります。この人たちにつきましては中国政府の方で中華民国人としての取扱いをしておらぬ。かような場合は国籍法の要求しております本国法によつて能力を有する旨の本国官憲の証明書等もむろんとる方法がないわけであります。かような場合におきましては、実際の取扱いというものは無国籍ということで承認した事例は相当数あります。中華民国の駐日代表団、ただいまは領事館でやつておりますが、華僑登録をした者につきましては、あらゆる意味におきましてこれは中華民国人として取扱わざるを得ない。これらのものにつきましては先ほど申し上げましたような手段をとることは、ちよつと困難ではないか、かように考えております。
#19
○田嶋委員 まだ法務大臣がお見えになりませんから、ちよつと局長にお尋ねいたしますが、国籍法をかえないで二重国籍を与えるというようなことになりますと、これは相手国に対する道義以外にどういうさしさわりが起きるのでありますか、その点を伺いたい。
#20
○村上政府委員 相手国に対する道義という点もむろんあろうと思いますが、それぞれ国家は、自国民に対してはこれを保護する権利を持つておるわけです。二重国籍、いわゆる二国以上の国籍を持つておりますと、国家間の国民に対する保護権というようなものの衝突を来すおそれがあるということから、二重国籍がなるべく生じないように各国は国籍法を規定しようということが国際法の通念となつております。だから反対に、二重国籍人が生じないように外国の国籍法はその点も考えなければならぬということも、同様主として人道的立場からかと存じますが、国際法の通念になつております。
#21
○小林委員長 林信雄君。
#22
○林(信)委員 この機会に民事局長にお尋ねしておきたい点が二点ございます。
 その一つは簡易裁判所の問題でございます。簡易裁判所の新設あるいは廃置分合といつたようなもの――簡易裁判所が新しく設けられましてやや年月を経過しておりますが、たいへん効率的である簡易裁判所があることも存じております。しかしながら事件の件数等よりいたしまして、比較的閑散なものがあるやに聞いております。従いまして国家的にながめましてその経費の問題から考えますと、これをそのまま存置いたしますことは不経済である簡易裁判所もあるというように存じます。もつともその存在いたしますことは、その周辺の関係者におきましてはもちろん利便があると存じます。要は国家財政とのにらみ合せからいたしまして、早く申しますれば、どちらをとるかと考えられる面もある。その関係者におきましても交通の関係よりいたしまして、本庁あるいは支部の所在地の簡易裁判所に参りましても大した不便はない。利不便から言いますればそれは出て行くだけ不便はありますけれども、実際問題といたしましても大した不便でない場所の簡易裁判所について考えさせられるものがあるように存じております。関係者といいましても訴訟当事者だけではなくて、弁護人関係になりますと、むしろ簡易裁判所の所在地に在住いたしまする弁護士は少くて支部の所存地に多いのでありますが、これらの関係者は、やや離れました簡易裁判所に出かけて行く不便がこの方ではある。事務の実態から見ておりますと、必ずしも一人の裁判官で過重になつておるよりでもない、裁判所はいずれも忙しくやつておられますが、幾らかの余裕があるでありましよう。支部所存地の簡易裁判所あるいは支部に対しましてテンポラリーに出かける。こういう裁判所にもやはりテンポラリーに出かけるようになるということも不便であります。こういうような姿をながめて参りますると、今日適当に整理すべき簡易裁判所が出て来ておるのではないか。これは同様な関係から、府県の関係においても考えられるようであります。弁護士の関係は、先刻申したときに申し落しましたが、官選の弁護人を付しまする場合にその土地に在住いたします弁護士が少かつたり、なかつたり、あるいはさしつかえ等で支部所在地から招請を受けて行く――言葉は適当でないかもしれませんが、という実情にある。と言いましても、また一面地方によりますると、簡易裁判所の設置がないために非常な不便を来しておる。訴訟関係で出て参りましても、一日で用が足りなくて遂に二日にわたるというような不自由なところで、その設置を要望しておるところもあるようであります。従いましてこれらの点についてどういう御調査がありますか。実はできますれば、一まとめにいたしましたような資料でもいただければ仕合せだと思います。
 第二点について簡単に申し上げますが、地方裁判所というものを今日以上に増設することができるか。新たに地方裁判所を設けるということは、実際問題としては支部の昇格という問題であります。従来司法省といつた時代のころの話なんですけれども、地方裁判所は一県一地方裁判所主義というようなことを言うて――というよりは、むしろ確立されておつたやに聞いております。しかし最近の動向によりますると、私が申し上げるまでもなく、高等裁判所は支部が一箇所あるいは二箇所というものができておる。もちろんこれは一県ではありません。地方裁判所の場合において一県一地方裁判所というのも、これは何ら法律その他規定のよりどころはない。従来の慣行に従つたものである。慣例的な管轄をそのまま保持するという考え方である。そうであるといたしますれば、高等裁判研につきましても従来からの慣行的な管轄区域というものはあつた、にもかかわりませず今日支部が設けられておるようなわけであります。これは独立したものではないという相違はありますけれども、ひとしくこうした慣行を変更可能であるという面から考えますると、必ずしも一県一地方裁判所主義というものを確立すべきほどのものではないのではないか。時代は移り、地方的な実情においても、はなはだしい変化を来して参つておる最近の実情であります。具体的な例を私はここに申し上げませんが、実際上その実務の重から参りまして、本庁の事件数を凌駕することはなはだしいものがある。もしかようなところにある支部を昇格いたしまして地方裁判所にいたすことができますならば、それ自体の実務上非常に利便がありますとともに、訴訟関係者におきましては、控訴事件を取扱つていただける面があるかと思います。いずれにいたしましても、権限の拡張いたしますことによりまして、利便のあることはもちろんであります。さらに経費の面から考えますれば、おそらく人員の数においてはかわるところがない、せいぜい名称の相違くらいでありまして、自動車の一台くらいはそういうところにはあるのであります。だから経費においてはほとんどかわらない。幾らかの増はあるかと存じますけれども、地方の実情に応じてこれらの昇格をお考えになるべきではないか、もちろん地方の要望等のこともあわせて考えなければならぬと存じます。従来の考え方がそのまま踏襲されておりますものか、あるいはさようなことでないのでありましようか、これを伺いたいと同時に、全国的にながめまして支部の昇格をすでに要望して、書面なりあるいは人によつて陳情なりなされておりますところがどこであるか、そういう実例についてさしつかえない範囲内で資料をいだけますれば、これも仕合せに存じます。以上二点であります。
#23
○村上政府委員 ただいまのお尋ねの簡易裁判所の配置分合の問題、地方裁判所支部の昇格の問題につきましては、所管の調査課長が来ておりますから、調査課長からお答え申し上げます。
#24
○位野木政府委員 初めに簡易裁判所の統合の問題についてお答えします。御指摘のように、簡易裁判所が地方において事件が比較的少いというような事情があるわけであります。のみならず最近は人員整理というようなことがありまして、人手あるいは経費が不足しておるというような状態になりましたので、配置については十分検討をいたしたわけであります。実は昨年来そういう方面について一応の調査を進めて参つておるわけでありますが、御承知のように、簡易裁判所はやはり各地方の住民の便宜をはかるという趣旨が、設置の一つの理由になつております。そういう点を考えて参りますと、たとえば民事について考えますと、弁護士のついておる事件は、一方だけについておる事件を入れましても半分くらいしかない、あとの半分は当事者訴訟です。そういう人にとつてはやはり近くの方がいいということが考えられるわけであります。そのほか刑事につきましても、これは令状の関係あるいは警察との連絡というような関係もありますので、そういうような関係を見ますと、やはりこれは近いところが相当利便を増すわけであります。地元の方の要望なんか聞いてみますと、やはり事情がいろいろあるわけであります。しかしながら一々検討いたしますと、このところならば、あるいはそう大した不便を来さずにやつて行けるというところも全然ないとは断言いたしかねるのでありますが、一方簡易裁判所の性格というものが、今問題になつておるのであります。これをどういうふうな性質のものにして行くかということは、説がわかれておりますので、そういう点も考察いたしました上で、さらに整理について検討いたしたいというふうに考えております。
 それから地方裁判所の設置の点でありますが、仰せのように今まで一県に一庁ということで行つておるのであります。この主義を将来も厳重に守つて行かなければならないということは、これは事情に応じまして必ずしもそういう主義を守らなければいけないということもないかと思いますが、やはり支部がありまして、一応その支部によつて事件が処理され得るわけであります。支部ではどうしても困るという事情でありますれば、これは具体的に検討いたしたいと思いますが、現在のところは支部でどうしても困るというまでに至つておるもの――まだそういうふうな事情があるということは聞いておらないのであります。しかしながら具体的の事情がもしありますれば、これを承りまして検討いたしたい、そういうように考えております。
#25
○林(信)委員 簡易裁判所の問題で民事訴訟の代理人のお話が出ておりましたが、なるほど統計的にはそうであろうと思いますが、そうであることが便利だからその通りになつておるのか、やむを得ずそういうふうになつておるかという点は、もう少し研究しなければならぬと思います。先刻から申しております簡易裁判所の所在地に弁護士がいないですから、守部の所在地まで頼みに行くかといえば、そんなところまで行かれるものかというので、やむを得ず自分でやらなければならぬという面が、どの程度まであるかという問題です。刑事事件につきましても、逮捕状の要求なんかはいいんですけれども、これと付随して、そういうところには拘置所の設備がございませんから、例の代用監獄になつてしまう。代用監獄必ずしも悪くはないかもしれませんけれども、いやしくも拘置所と名のつく収容所とは、その取扱い等についてはかなり開きがあるのであります。間々代用監獄で思わざる事故が起つて、この委員会でも問題になつたことは御承知の通りであります。そういう点とも、その他の設備ともかね合せてやはり考えなければならぬ問題もあるのじやないかと思います。そう急を要するような問題でもないかもしれまけんが、やはりこれは御検討願うだけの価値はある。それと地方裁判所昇格の問題は、支部で困る困らぬといつても、困る度合いの問題であろうと思います。それは裁判の上については何もお困りになつていないと思いますが、私の言わんといたしますのは、裁判所の行政事務といいますか、なかんずく人事の関係あるいは施設の関係等で、支部ですとどうしても本庁に行つて相談しなければならない。昇格いたしますれば、もとよりそこで済む問題であります。いやしくも支部を本庁に昇格しようというくらいですから、相当の人員を擁し、相当の建物その他の施設を持つておるのですから、これらの点が実際上事務的にやはり不便を感ずる、あなたの言われる必要があるという大きな理由であろうと思うのです。必ずしも土地の誇りとかあるいは面子の問題からというかけでなくて、裁判所自体の必要があるかと存じますが、今ここで結論を得ようとは存じませんが、必ずしも従来のような方針を固守せられないということを承りまして、私もこの問題についてなお検討いたしたいと思います。先刻から申しておりますように、簡易裁判所の廃止方を言つて来ているところは少いかもしれませんが、新設についてすでに要望があるところが幾らでもあるのじやないかと思うのですが、その実情のわかるような資料及び地方最判所支部の地方裁判所への昇格、一県一地方裁判所といいましても――北海道は別なんですが、北海道を含みまして、この実数を教えていただければ仕合せであります。私からの質問はこれで終ります。
#26
○位野木政府委員 御趣旨ごもつともでございますので、将来なお研究させていただきたいと思います。資料についても御希望に沿うようにいたしたいと思います。
#27
○田嶋委員 ちようど林君の質問に関連するのですが、私の委員長当時から問題になつておる九州の高等裁判所の件、これはとにかく九州の福岡高等裁判所の支部が宮崎県の宮崎市にあるというところから、これは地域的に不当であるというのでよく問題になり、鹿児島に支部を置く問題が起つていることは御承知の通りであります。これは今度の奄美大島の復帰によりまして、ますますこの問題も重要性が出て参つております。この奄美大島復帰によつて、この問題を少し具体的に検討されておるかどうか、これをひとつ伺いたい。
#28
○位野木政府委員 支部の問題は裁判所の方でやることになつておりますが、今度の奄美の復帰に伴いまして鹿児島県の管轄の方が件数もふえるということは事実であります。それから、それを契機といたしまして鹿児島の方へ支部を移す、あるいは新しく置いてもらいたいというような意見が、またさらにあらためて起つておるということも聞いております。裁判所の方でも検討されておるようでありますが、われわれとしても一応の検討はいたしておるわけであります。しかしながらただ事件数の増加あるいは人口の関係等を見ましても、それほど今度の復帰によつてただちに事情が非常にかわつて来るというところまでは行かないようでありますし、それから現実の問題といたしまして、一旦置かれました以上は鹿児島県に移転することも、あるいは新設ということも、いろいろな点で容易には決定いたしかねるというような事情にあるように承知いたしております。
#29
○田嶋委員 御趣旨はよくわかりますが、高等裁判所の支部と地方裁判所の支部とは、設置の趣を多少異にするのじやないか、結局高等裁判所というのは一つの地域を区切つて一つしかないので、どうしても交通の便利、それから当事者の便宜ということが中心になつて高等裁判所が置かれておる。それから審理の促進ということがそこから起つて来る。これが高等裁判所支部設置の大きな理由じやないか。その意味から言うと、奄美大島の復帰ということは、人口問題も対象になりますが、人口問題よりも、裁判所においてよりよく便宜をはかつてそれを利用せしめるということになると、交通関係で非常にマイナスが出て来るのです。小さな船が通つておるだけですし、その点で今までよりも事情が異なつて来たのじやないか。二十万の人口復帰ということは、人口を単位に考えないで、交通距離の点から言つて非常に情勢がかわつて来たのじやないかと思います。これらの点もひとつしんしやくされて、非常に政治問題になつておりますので、どうかよい結論をお出し願いたいと思います。
#30
○佐竹(晴)委員 今のに関連して。鹿児島県から猛烈な陳情があるようでありますが、宮崎の方からも猛烈な陳情があることを承知しておるます。あれは前に鹿児島の方に置こうとしたときに、事実は最高裁判所の方で宮崎の方に持つて行つた、なぜ宮崎に持つて行つたかというと、あのときでも件数その他を比較して、どうしても鹿児島にしなければならぬという意見と猛烈な争いがあつた後に、宮崎に持つていつた、そうして庁舎を提供しよう、何をしよう、かにをしようということでやつておいて、今度奄美大島が出て来たつて一体どれだけ件数がふえるのですか。それでまた鹿児島に持つていつて前の庁舎を提供したり、返還されたりした日には、将来裁判所の言うことを地元は聞かなくなるのじやないかと思いますが、その点どうお考えになりますか。
#31
○位野木政府委員 初め宮崎に持つて行くことになりました当時の事情は、今申されましたように、やはりいろいろいきさつがあつたわけであります。そういうふうな関係もございますので、これは慎重に決定いたすべきものじやないかというふうに考えておるのであります。裁判所の方でも慎重に検討いたしておる模様であります。
#32
○小林委員長 それでは明日は午前十時より委員会を開会し、利息制限法案について参考人より意見を聴取することにいたしますから、さよう御承知を願います。ひとつ定刻より御出席を願います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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