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1953/04/03 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第33号
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1953/04/03 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第33号

#1
第019回国会 法務委員会 第33号
昭和二十九年四月三日(土曜日)
    午前十時五十五分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君
   理事 高橋 禎一君 理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    林  信雄君
      牧野 寛索君    吉田  安君
      木原津與志君    木下  郁君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 犬養  健君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  井本 台吉君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (全国乗用自動
        車協会副会長、
        同法規委員長、
        東京ハイヤー夕
        クシー協会副会
        長、イースタン
        ・モータース株
        式会社専務)  藤本 威宏君
        参  考  人
        (帝都自動車交
        通労働組合執行
        委員長)    伊坪 福雄君
        参  考  人
        (警視庁警邏交
        通部交通第一課
        長)      鈴木  実君
        参  考  人
        (東京簡易裁判
        所判事)    向井 周吉君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 小委員の補欠選任
 交通事件即決裁判手続法案(内閣提出第二七
 号)(参議院送付)
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 交通事件即決裁判手続法案を議題とし、参考人より意見を聴取することにいたします。本日の参考人は経営者側として全国乗用自動車協会常任理事、同法規委員長、東京ハイヤー、タクシー協会副会長、イースタン・モータース株式会社専務藤本威宏君。それから運転手側として全日本交通運輸労働組合協議会幹事、全国旅客自動車労働組合連合会副会長、関東旅客自動車労働組合同盟副執行委員長、帝都自動車交通労働組合執行委員長伊坪福雄君。国際自動車従業員組合中央委員長今村勘助君。警視庁より警邏交通部交通第一課長鈴木実君であります。
 参考人各位に一言申し上げます。本日はまことに御多用中にもかかわらず御出席くださいましてありがとうございます。本日各位の御意見を承る法律案は、ただいま申し上げましたように、交通に関する刑事事件の迅速適正な処理をはかるため、その即決裁判に関する手続を定める必要があるとの理由で提案されたのでありますが、従来の交通事件の処理方法とは異つた新しい制度でありますので、法律的にも実際的にもいろいろと問題を含んでいると考えられますので、本案に対して関係もあり、また関心も持つておられる各位の御意見を伺いたいと思います。本委員会としましては、本法律案に対して公正妥当な態度を決定したいと考えておる次第であります。何とぞ忌憚なき御意見をお述べ願いたいと存じます。
 それではただいまから御意見を承ることにいたします。藤本威宏君。藤本君には第一、現行の交通事故解消に対する解決策と関連して、本案をどう見られるか、二、違反事件の発生予防策としての即決裁判の効果に対する所見はいかがであるか、三、即決裁判の経営者に及ぼす影響をどう考えられるか、四、本法案に対する希望的御意見があればお述べ願いたいと思います。右申し上げましたことはこちらの希望でありまして、その他全般的にあなたの忌憚なき御意見をお述べくださるようお願いいたします。
#3
○藤本参考人 それでは意見を申し上げます。実は戦前から今日に至るまで、われわれ自動車業界といたしましては、交通裁判に対する希望というものは非常に大きいものがあつたわけでございます。むしろ交通裁判というものの裁判所の設立、またこれが憲法上できなければ、同一効果のあるもの、こういつたことをきわめて強く今まで要望したわけでございます。この理由は戦前からハイヤー、タクシー業界というものは非常に社会的地位が低位評価されておりまして、また実質以上に非常に低評価されておりまして、また社会通念もこれに従つてきわめて実態にそぐわないような社会通念を現在持つております。また交通諸法規にいたしましても、それに伴つてきわめて実態とそぐわないような諸法規ができておりまして、このためにわれわれは常に不満としておつたところでございます。それはたとえば一例を申しますと、自動車の事故が起きた場合には、何でも自動車の方が一方的に悪いのだ。理由のいかんを問わず一応自動車の方が悪い。すべては何と申しましようか、昔歩行者とか荷馬車とか、そういつたものを中心にした交通を頭に置いて、自動車が一個ののけもののごとく考えて来られた交通観念というものが基礎となつた。ところが現状においては自動車の発展増大から見まして、自動車交通というものは独自に考えて行かなければならない。この認識が現在社会観念的にいつても非常に低いし、また諸法規においても、これが裁判においても十分でない。このように現在考えておりまして、そういつた意味から、たとえば交通裁判所の設立とか交通諸法規の近代化ということについてはかねがね要求したところでございましたが、今回の本法につきましては、その一環として、まことに小さい一環でございますけれども、そういうものの解決への一歩前進でないかと思つておりまして、そういつた意味から手続等これによりまして非常にわれわれが不便に感じたところが簡素化するという意味から、法の趣旨からいつては賛成でございますが、あくまでそういつた機会に自動車交通の諸法規についての全体の近代化というようなことをぜひお願いしたいと思つております。
 本論に移りまして、これを具体的に考えてみますと、本法の精神については十分でございますけれども、ただこれを実際に実行する場合において二、三の点を十分考慮しないと、これが円滑なる運営ができないのではないかと考えております。それは第五条にありますような即決裁判の請求と同時に書類及び証拠物を検察官から提出することになつておりますが、往々にしてあることは、運転手諸君が、交通事故が起きた場合にその事件に対する申立てを無視されて、警察官の方におきまして一方的に事実を認定してしまう。そしてそれを書類に書いてまわしてしまうということが非常に多いのでございまして、また本法によりますと、これは裁判官の前で被告の方が申し立てればいいことになつておりますが、運転手諸君の心理的にいつても、またそのときの状況からいつても、なかなかこれを否定するということは現在の段階では事実上困難ではないかと思つておりますので、何とかこの辺について提出書類の場合に運転手の方の事実に対する判断とかいつたことが一緒に提出されるようなことにならぬのか、これが一つの希望でございます。今までは運転手諸君がやつた場合も、ほとんど警察官は話を聞いていない。お前らはこれこれだと一方的に言い切つてしまつて、それを書類にして送つてしまうということが非常に多かつたんじやないかと思つております。この点について何らかの取扱い上便宜な手段を講じていただきたい。それから本法による即決裁判の裁判官でございますが、これは十分の知識経験がある専門的な裁判官をぜひ任命願いたい。またこれを専門的に常置してもらうようには行かぬだろうかという点でございます。これは交通事件には状況判断による場合が非常に多うございます。状況判断による推定ということがこの判決に非常に重大影響を及ぼすと思つておりますが、この場合に専門的経験知識がないとこれがまことにむずかしい。それで今言つた警察官の方からの書類だけがたよりとなつてしまう。こういつたことが多うございますし、また非常に交通裁判の量が多いから、ここで専門的な交通裁判の裁判官を設けられてしかるべきでなかろうか。このようにぜひお願いしたい。そうでないと、まことに情況判断がむずかしいので、私たちとしては非常に心配にたえないことが第二でございます。
 第三は辯護士でございます。これは同じ趣旨から交通裁判というか、これに専門の弁護人をつけられたい。官選弁護人で、交通専門の係をぜひお置き願いたい。これは運転手諸君が今言つたような実態とその当時の心理状態からいつて、十分な陳述ができるかということについては、残念ながらはなはだ疑問がある。従つて十分な話もできないで、検察官の方の意見通りになつてしまうという公算もあるので、これについてはぜひ官選の交通裁判専門の弁護人をお願いしたい。これが希望の第三であります。
 第四には、被告が即決裁判を希望しないで、これを不服として正式に裁判を行うという場合でありますが、これが自由意思においてできるようにぜひしていただきたい。もちろん本法案上十分その点考慮してございますが、私の方は実際問題といたしまして、たとえばその場合に運転免許証に本訴中というようなことがもし書き入れられたといたしますと、たまたまその運転手がさらに小さい交通事犯その他をやつてつかまつたような場合、こいつはとんでもないやつだ、本訴しておるというようなことから、よけい警察官の心証を悪くして、ことごとにいじめられる。こういつたことがあつては、これは一種の本訴に対する制限に事実上なるのではないか。こういう観点から、これについてはぜひ自由意思でできるように免許証に本訴中といつたことを書き入れられないように、またそれに類似のことがすべてないように自由意思で本訴ができるようにしていただきたい。この辺は本法のこまかい点の希望でございますが、これらが取扱上、手続上できるならば、私は本法案は運用が相当うまく行くのではないか、このように考えておる次第でございます。もちろんわれわれといたしましては、なるべくせつかく上程されている本法案によつてすべての違反事項、こういつた簡易なる交通違反、交通事件というものが解決されることを心から望んでおるものでございますが、もしこの辺がうまく行かないと、運転手諸君としても、すべて本訴に持つて行くといえば本法案の成立の趣旨が何ら意味をなさないことになるのでございまして、この法案に魂を入れるという意味において、こういつた手続法においては、取扱いについては十分の希望を入れていただきたいと思つております。
 以上はこの法案のこまかい点に対する希望でございますが、今委員長の方からお話あつたような件について申し上げますと、本法案は交通事件に対する迅速簡易な処理ということで、きわめて趣旨としてはけつこうでございますが、根本的にこれによつて交通事件が減るか減らぬかという問題については、これは全然別個な問題である。これは手続を簡易迅速にするということだけであつて、これによつて何ら交通事件というものは減るのじやないと考えております。ただ私がここで附帯してお願いしたいのは、交通事件のうち、社会的公共的に大した影響を与えてない事件が、取締法あるいは会の画一的、形式的のために生じておる例が現在非常に多うございます。これはよく言われる例でございますが、夜中にバスの駐車場にたまたまタクシーがとまつた。それを違反だといつて取締る。これは社会的に何ら効果のないことでございます。しかしこれが現在、パトロール中の警察官につかまると違反になります。また同じような例で、深夜あるいは早暁におきまする交通制限は、今まで三十キロのところだつたならば四十キロに延ばしても、何ら社会大衆に影響はない。ところが夜中の人つ子一人いないところでも、五キロスピードをオーバーしたからとかいつて取締りを受ける。こういつた点は取締法をぜひかえていただきたいところでございまして、社会の実態に即して取締りをするように改良願いたい、こういつたことは枚挙にいとまないくらいあります。現に運転手諸君がつかまつている交通事件のうちの相当数は、こういつた件であります。これはいわゆる社会公共に影響なくして起きているといつた、まことにばかばかしい事件でございまして、近々取締法その他が改正になるということも仄聞いたしておりますけれども、これについてはぜひ全国の交通の実態に即したような取締り法規にしていただきたい。そうすれば私どもは、現在の事件のうち三分の一くらいは減るんじやないか、このように考えております。
 それから公共に影響を与えるいわゆるほんとうの事件でありますが、これらの原因は多々あるのでありまして、簡単に列挙してみますと、まず道路面に対して自動車の数が非常に多い。急激に増加したということは、自動車の数を見ても明瞭でありまして、こういつたことが一つの大きな原因であります。それから社会一般の交通道徳観念というか、これが非常に薄弱である。一番先に申し上げましたように、自動車交通に対する一般の認識が非常に浅い、いわゆる車馬、人力車があつた時分の観念がまだ生きているんじやないか。私の聞いたところによると、日本人は、たとえば横断鋪道以外のところをかつてに横断しており、それがまた事故のもとになつておる。自動車を頭に入れた交通観念というものがまだ十分できていないんじやないか、こんなことも原因でございます。また一番事故が多いと言われる営業用自動車について申しますれば、これが根本原因だと思いますが車両数の激増によつて経営上非常に窮迫しているために、運転手諸君、経営者諸君が無理をして、非常に強引なことをやつておる。おそらくこの一年間、一台の車の走行キロはぐつと延びておると思います。今まで三百五十くらい走つていたのが、現在は四百走つてしまつているというような状況で、従つて無理が行く。この半面は、経済上の窮迫ということが大きな原因になつておつて、運転手諸君も収入にならぬから働く、また経営者の方もそれのしりをひつぱたかなければ経営がやつて行けないということで、それが悪循環になつて来ておるのが大きな原因であります。今言つたように、営業車の増加が非常にはなはだしいために、熟練運転手の増加がこれに追いつかない。東京の例で申しますと、車両数が一・五箇年で五二%の増を示しております。五二%と申しますとたいへんな数でありますが、これに対して運転手諸君は、月に二百五十人くらいの増加にしかなつておりません。従つて、こういつたような熟練運転手の増加と車両の増加とがマツチしていないために、きわめて未熟練な運転手諸君が営業用の、非常に酷使される運転に従事しておることも大きな原因でございます。またもう一つ大きいことは、不良会社といいますものの無謀、無計画なる経営が、運輸省当局の免許のときの審査の不十分とか、あるいはその後における悪化とかいうことによつて行われておつて、こういつた不良会社の経営が労務管理においてきわめて顕著に現われて参りまして、そのために、特に最たるものは、いわゆる名義貸し行為といつたようなことによつて、自動車の経営がめちやくちやになつてしまつておる。これも現在大きな原因でございます。
 これらに対処して、どうしたら交涌事件が減るかという問題でありますが、われわれの方から考えますと、一つには、一般社会の自動車交通に対する観念をまず教育し直していただきたい。自動車というものを頭に入れた交通観念、また今言つた、これを基礎にした交通諸法規を全般的に改めていただきたい、こういうことであります。それから営業用車両、これが一番事故を起しますが、先ほど言つたいろいろな理由でこれを制限することによつて道路面とのバランスをとる、あるいは今言つた経済面から来るむちやくちやなあせりというものも解決する、また未熟練な運転手でなくて、熟練した運転手によつて運転できるようにしたい。こういつたことは営業車両数の制限によつて実現できるのではないか。もちろん現在各地区におきまして、道路運送協議会という機関で需給調整問題について論議しておられるのでありますが、こういつたことが一番大きな原因になつておる。
 また運転手諸君について申しますれば、各経営面の安定化によつて、運転手諸君の労務管理または厚生施設あるいは勤務等についても十分の考慮を払い、これによつて無理な運転のないように交通の激増に対処してみようじやないか。但し、これには何といつても、先ほど言つた経営面の安定化で、根本問題は、必然的に車両数の制限ということではないかと思つております。
 もう一つは、営業車における未熟練あるいは無謀運転手の排除、これがどうしても必要でございます。これらは先ほど言つたような意味で、車両数制限ということが一つでございますが、さらにそれを強化する意味で、いわゆる営業車運転手の就業手帳の問題をこの観点から取上げてみたい。この法制化については、事故防止、社会福祉に対する貢献の面からぜひお願いしたい、このように考えております。
 もう一つは、例の不良会社、特に名義貸しをしているような会社については、断固として取締らないことには、東京中の自動車交通は混乱に陥るばかりである。これが現在非常に多うございまして、取締り官庁も手を焼いている始末でございますので、これにはぜひひとつ協力願いたいと思うのでございます。これだけをやれば東京の交通事件というものはきわめて減ると断言できるのでございます。こういつたことは取締り官庁において十分努力されておると思いますが、その効果はあまり上つていないというぐあいにわれわれは考えております。
 特に一言最後に申し上げたいことは、運輸省というか、陸運局といいますか、そういつた官庁と警視庁との連繋といいますものが十分でないような気がしております。要するに、今は道路運送法によつて、いろいろな行政面は運輸省の管轄でございますが、取締りになると、今度は警視庁でございまして、行政の二元化といいますか、こういつたことによつてその辺が連繋を欠いておりますものですから、ここに大きなギヤツプがあるんじやないか、これを最後に付言しておきたいと思つております。
 委員長からの御質問に対して、まだあると思うのでございますが、あと質問のときに十分に、一つ一つして行きたいと思つております。簡単でございますが、以上で経営者の方の公述を終ります。
#4
○小林委員長 それでは運転手側として、伊坪福雄さんにお願いいたします。あなたには本案のような即決手続に関する一般的の感じはどういうふうに持つておられるか。従業員として受ける利益または不利益の点、それからまた本案文に載つておる各点について御希望があれば述べていただきたい。特に免許状の保管、即決手続の同意等の問題、また給料、収入等との関係からの御意見、これらの点に触れて述べていただければ幸いだと思います。
#5
○伊坪参考人 即決裁判法の提案理由書の中にありますように事故が非常に激増しておるという面に対しては、私たちこれに携わつておる者としても憂慮にたえないとともに、私たち交通機関に携わる者といたしましても、交通諸法規を守り、事故あるいは違反の減少というものに協力するにはやぶさかでありません。しかしながら本法案が立法化されることによつて、この事故あるいは違反が減少するという理由には絶対にならない、この面に対して簡単に述べたいと私は思います。それからその次に条文に対する条件、これを述べて行きたいのですが、この手続法案に対しては、私は結論としては基本的には反対であります。それで後刻述べる条件がいれられるならばこれはやむを得ないという面から了とする、このような見解を持つております。
 それでこの法案が立法化されることによつて事故が減らないという理由、それはただいま藤本氏が述べましたが、ハイタク関係から私は申し述べます。
 現在の輸送秩序というものが極度に紊乱しておるということ、これをかりに東京に集約して申し述べますならば、二月におけるハイタク業者、これは東京でございますが、二百八十九社ございます。台数は一万二千五百三十五台、このような台数が都内を走つておるということ。それで自動車運送協議会というのが現在ございますが、これに業者の方から過日都内の業者の実態資料というものが出されております。それで一万二千五百三十五台あるうちに、三千台余の名義貸しがあるというこの事実でございます。このような名義貸しは、きたない言葉で申しますと、ちようどばくち打ちがてら銭をかせぐようなもの、やみの家賃をとつておるようなものであつて、大体名義貸しの金が二十万円、こは相場です。それで毎月五万円からの車庫代みたいなものを納めている。こういうてら銭を納めているというような状態で、これを納めなければ、表へ行つてひつたくりほうだいという形が出て来るのですから、輸送秣序が紊乱することは当然だと思う。この面に対して現実にこういう姿がある。私は組合関係を通じてボーナス問題を会社に交渉した。社長は詰まつて来ますと、おれはほんとうは社長でも名義だけなんだ、だから車両主からもらえ、こういう調子なんです。みずから名義貸しを否定しない会社がたくさんある。こういう面を全然是正されない限り、輸送秩序というものが極度に紊乱して行くのは当然ではないかということ。
 それからもう一つは、乗務員に対して、現在の経営者のすべてであるとは私は言わないが、大部分が歩合給重点主義に陥つているということ。これは過日のILOに対する私たちの調査資料の中からも大体水上げによつて一五%程度の給料しか払つていないということ。こういうことで、さいぜん藤本氏が公述したように三百七、八十キロから四百四、五十キロの走行を一日にしなければ乗務員自身が食つて行けないということに水上げ重点主義が追い込んでおるということ。
 それからその次にはハイタク業者くらい労働基準法が守られていない企業はないのではないかと思つております。
 それから福利厚生施設の面、この面が全然なつていないということ。これは基準法において、一昼夜において少くとも継続四時間以上の睡眠をとらせなければならぬといつてもそのような時間はない。ですから寒いさ中において運転手は街頭において車の中で眠つておる。このような角度から過労による事故が発生するのは当然だと私は思うのです。そういう面で、これを立証するごとくに、現在労働基準法の施行規則が労働省によつて改正をされておるのであります。これは一昼夜交代の禁止という面でありますが、これは保安対策の面から打出されておるということはその面を立証しておるのではないか、私はこのように考えております。
 それからもう一つは、これは私が立証するまでもなく、経営者自身が労基法を守つていないというよりな角度から、昨年度において東京都の労働基準局長、それから東京陸運事務所長、警視庁警邏交通部長、この三者の共同勧告書が業者全員に対して出されておるというこの事実は、この歩合重点主義に追い込んで事故の誘発に拍車をかけておるということを立証しているのではないか、私はこのように考えております。
 その次に道路施設の不備というものの一切のしわ寄せが乗務員になされておるということ、これは一つの例をあげるまでもなく、その次には歩行者の交通道徳の欠如というものも、あげて運転手の方にしわ寄せされておる。その一つの例は、かりに神田駅に行つておりてみる。神田駅は階段をおりるのに左側通行、ところがその次の御徒町駅に行くと右側通行、こういうやり方でやつておつたならば、これは東京ににおいて定期でもつて乗りおりする人はよくわかるが、地方から出た人は一一右側、左側を見なければ歩行できないというようなやり方、これは私は鉄道ばかりではないと思う。警察官のそのような標識の指示欠如というものがあげて乗務員にしわ寄せされておるという行き方、このような観点から申し上げますならば、本法案がたとい立法化されようとも、事故というものは絶対に激減しないということを私は公述したいと思う。
 その次にこれに対する条件でございます。本案は非常に簡素化されて行くという面に対しては、私たち業者といたしましては非常にけつこうだと考えておりますが、大体このような簡素化されることによつて、スピード化される反面において、基本的な人権というものは蹂躙されるということ、それから交通取締りの強化と警察官によるところの検挙主義、極端に言うならば警察官の点取り主義からの検挙主義に陥つてしまうということ、それから不当過重の処分によつて立法化の精神というものが無視されて行くということ、このようなことが考えられて来るわけでございます。これを立証するものに私は二十七年度において参議院の道路交通取締法の一部改正、二十七条、二十八条の無謀操縦の面でありますが、そのときにも私は公述人として出たわけでございます。それでこの条文の無謀操縦の中には体刑と罰金刑と二本建であつたわけです。それで実情を公述いたしまして、科料の項目を設けてもらいたい、もちろんこれは結論として議員諸公の御努力によりまして私たちの意向の通りになつたわけでございます。しかしながらこのような項目というものが設けられたのですが、その法改正以前においては少くとも罰金は二百円から三百円、五百円程度であつた。改正後において一時的に科料という項目はちんどん屋を雇つて探して歩けば見つかる程度であつたわけです。探すに骨が折れるくらいであつたわけです。しかしそれは時日ならずして今度はこのような面があるにもかかわらず、大体罰金一本やりになつてしまつて最低一千円、このような面になつているということ、そうすると労働者側のこのような法改正の意向に対して当局は反動的に罰金一本に価上げしておるというこの事実こそ、私は立法の精神というものを実際問題として踏みにじつておるのではないか、そういう面からこの法案でスピード化される反面において、不当過重の処分というものが倍加されて来るのではないか、このように考えられるわけでございます。それで最近におけるところの面を拾つて参りますとたくさんあるので、いろいろな面で出せないので抜萃して参りました。三月二十六日ですが、青山から高樹町、これは五十五キロ出ております。これは墓地でやつたのですが、交渉の結果五十一キロにまけてもらつたのです。これは十一キロオーバーで、千五百円を二十九日に警視庁にとられております。これは交渉するとまけてくれるということです。これは四キロ負けてもらつて千五百円とられた。負けるということは、取締る人の主観によつて、また高くすることもできるということに通じていると思う。その次には今度三月二十六日、これは青山南町で五十五キロ、これは白バイですが、十五キロオーバーで二千円、こういうものは大体千円が最低なんです。それで十キロオーバーした場合、警視庁はどのような態度をとるかというと、行政処分で一週間の就業停止が来るのです。ですから、運転手といたしましては、かりに千円罰金をとられた場合には必ず一週間の就停が来るということ、それから二十キロオーバーで大体十日間の就停が来るということ、このように二重併科されているという姿においては、乗務員の生活というものは根底から破壊されてしまうわけです。この面も十分この法案の中から御検討を願いたいと思います。
 それからその次に委員長の方から言うわれましたところの保管の問題でございますが、運転手が違反を犯した場合、運転手の免許証を取上げて、そして保管証というものを交付する。しかしながら保管証というものが運転免許証と同じ効力を発するならば、あえて保管する必要はないじやないか。この提案理由の中から見ると、違反を犯した場合、運転手が出頭しないから、出頭しない代償として免許証を保管し、保管証に対して期限付にしておけばどうしてもとりに来なければならぬ、このような面から打出されたという面はよくわかります。しかしながらこの保管証を警察で受取つた場合に、十キロなら、十キロスピードオーバーによつて、どこそこ送致ということを必ず書き込むのです。書き込むというと、現実の面としては、警察官がその免許証を見た場合に、微罪でもつて説諭放免するような場合であつても、お前は前科者だからこうするというような幾多の実例を私たちは持つておるわけです。そういう面から、この中に書き込むということはやめていただきたいということをお願いしておきます。
 以上で私の公述を終ります。
#6
○小林委員長 藤本、伊坪両参考人に対して御質疑がありますれば、これを許します。林信雄君。
#7
○林(信)委員 藤本さんにちよつと伺いますが、われわれまつたくしろうとなんで、きわめてわかり切つたことをお尋ねするのですが、あなたは就業手帳というのですか、その法制化といつたような問題をかなり重要な問題としてお取上げになつておるようでありますが、それをもつと非専門のわれわれに説明していただきたいと思います。
#8
○藤本参考人 それでは御説明申し上げます。これは戦前もこれに類似したものがあつたのでございますが、要するに一般の運転の免許証というもの以外に、常業用の自動車を運転する場合に、それ以上に適格性を認めるものとして、営業用自動車に就業する手帳、就業の認可証というようなものでございます。要するに一般の自家用を運転するならば、社会公共的には大した影響はないけれども、営業用自動車を運転する場合には、少くともうしろにお客さんを乗せ、しかも交通量がはげしく、自家用に比べて数倍のキロ数も走り、社会公共的に見て非常に重大な責任を負う仕事でございますから、ただ簡単に運転ができるというような免許証のみならず、さらにそれに相当の経験及び熟練度を要するわけでございます。そういつた意味で、ここに営業用自動車の就業手帳といつたものを発行いたしまして、これによつて先ほど言つた未熟練運転手、あるいは無謀をする運転手、あるいはしよつちゆうそういつたような問題を起こす――超すということは、交通違反もやり、交通秩序を乱し、さらにまたお客さんが乗るという場合に拒否する、こういつたような、社会的に見て営業用運転手としては不適格のものであるという場合には、その手帳に書き込んで、営業用運転手の中から除外して行く、従つて公共的な事業を担当するに足る運転手のみにこの許可証を与えて、これ以外は採用してはいかぬといつたような制度であります。これは諸外国では大体実行されていることでございまして、戦前も日本においてはあつたのでございますが、現在においては道路運送法の中に一部何歳以下はいかぬとか、一年以下の経験ではいかぬということはございますが、その後における無謀運転とか、常習的な交通違反を行う者とか、あるいは乗車拒否をする者はいかぬとかいうことについては、何らの束縛もないのでございます。こういつた意味で、就業手帳というものを法制化していただきたい、こういうことをお願いいたしておるのであります。
#9
○林(信)委員 御趣旨はわかりましたが、そういう御趣旨であると、先刻伊坪さんのお話では、たとえば免許証のかわりに保管証を出している、それだけでも事故のあつたことがわかる、それを免許証に書き込んでおかれると、その後の事故の場合に、先入観か何か持たれるということです。そういう関係もわかるのですが、今のお話と一部食い違うような気がするのです。これはあるいはお立場の違いかもしれませんので、あえて議論することもないのでございますが、経営者にそういうふうな御意向のあるのももつともなんです。これは伊坪さんにその点伺つてみたいと思います。
#10
○伊坪参考人 私はこの就業手帳の問題は絶対反対です。これは職業の選択の自由という憲法の精神からも反していると思う。これは大多数の経営者の方で申すのでございますが、要は、昨年の五月以降において十数件にわたるタクシーの争議が起つているのであつて、それらの紛争は枚挙にいとまのないほどあります。そのような場合、私たちが経営者に交渉に行つた場合においても、労働組合の法を知らないということ、そして組合なんか認めないと頭から言つて、組合を結成するとすぐ首にするということ、このような考えを現在の二百八十九社あるうちの大部分の経営者というものは持つていると思う。このような、就業停止という問題を取上げて組合運動をやる者は必ずボイコツトするという面が、うしろに隠されているということなんです。これは乗務員の不正というものをそのような手帳の中からやらなくても、各会社における労働協約、賞罰規定の中から会社ごとにやつて行けばよろしい。それが、その手帳をつくつて、そして業者団体の出先機関である指導委員会がこれの発行の権限を持つているということです。ですから、雇い入れる場合は、まず指導委員会へ行つてその手帳をもらつて来なければならないというような人事権まで各社が介入して来るというような行き方に対しては、私はまつこうから反対するものであります。
#11
○藤本参考人 これは参考人同士の議論で、どうもまことにおかしいのでございますが、今伊坪氏の申し上げていることは、たまたま現在起きている一つの現象をとらえて言つておるのじやないか、このように私は思つております。それは現在東京の経営者が集まつている指導委員会というものが、これに類似したものは法制ができる前において実施しようということを実際計画しております。これについては、これを理由にして労働組合の弾圧となる、あるいはそういつたことがすべて労働者諸君に対して不安になる、こういうことはごもつともでございますが、もう少し大きく目を開いていただきたい。われわれの交通事業というものは、すべて公共性のある仕事である。しかもお客さんを乗せ、東京中何キロも長いキロ数を走つているといつたような危険な仕事で、もし間違えば公共的にたいへんな危害をこうむらせるような現在でございます。またたとえば先日新聞にありましたように、こんなことは特殊な例でございますが、運転手がお客さんを殺してしまうといつたような不祥事件も起きて来る。こういつたことをいろいろ考えてみますと、職業運転手いわゆる営業用の運転手については大きな社会的な義務があるんじやないか。こういつたことでございまして、伊坪さんの御心配のような、これが労働組合の弾圧になるというようなことにつきましては、なるほど経営者の団体の方が発行するようになつて来ればおかしいだろう。しかしこれが法制化されて、しかもそういつた公共的な面からのみの制約をここで記録して行く。あるいはそういつた面からのみこれを発行して、そういつたものに対する不良な運転手あるいは未熟練な運転手、そういつたものを排除して行くということは、これは単にわれわれ業界同士の内輪でもつて向うが得するこつちが得するというような問題でなくて、われわれが負つている大きな義務から言つたならば当然なことじやないだろうか。従つてわれわれもそんなことは悪用されないような一つの方法をここで講じなければならぬし、一方においてそれらについてはちやんと労働法規がたくさんあつて、就業手帳によつて不当な取扱いをしたというような場合には、これは別個の意味で提訴する機関もあるし、これに対して争う機関もある。そういつたことでございますから、われわれはただ業者の仲間でこんなところはいいんだという意味でなくて、公共的の意味から見た責任からいつて当然そうなるべきじやないか。また現在はそう言つておられますが、これから五年もたつて運転手諸君の数と営業者の数が逆になつて来た場合に、絶えず運転手一般いわゆる運転手の免許証の数と自動車の数とが逆になつて、一般の免許証の数がうんと多くなつて来た場合、その中から優秀な熟練運転手のみを常業所に向けるというようなことを正規な労働組合の方から要求するような事態が必ず来る。これはもう必ず来るのでありまして、自分たちの優秀な技能を持つた職業運転手の地位、そういつたものを守るためにもそういつたことが逆に労働組合の方から必ず提訴されるときが来るだろう。これは目を大きく開き、または、諸外国の状況を見た場合において当然であつて、いわばその過渡期に現在あると私は考えております。従つて現在起つている特殊な事象を別にして、事の本質、事の将来性を考えてこの問題は考えて行くべきものじやないか、このように考えております。
#12
○林(信)委員 よくわかりました。なおその点について御両氏お考えになつている点もございましようが、これはひとつ経営者側と従業員側と御協議を願いまして、適正な結論を出していただきたいと存じます。われわれも十分研究いたしたいと存じます。それはそれといたしまして、伊坪さん、これは全然私聞き漏らしたというか、御説明があるいは簡単に過ぎたのですか、運輸省及び警視庁でしたかあるいは労働基準局、この三者の何とか従業員に対する通告がばかに気に入らないような御意見でございましたが、内容的に非常に簡単でしたから、よくのみ込めなかつたのですが、どういうことですか。
#13
○伊坪参考人 これは昨年の六月ごろだつたと記憶しておりますが、記録を持つて来るのを忘れたのですが、東京都の労働基準局長、それから東京陸運事務所長、それから警視庁警邏交通部長この三者の共同勧告案というものが業君に出されたのです。業務員に出されたのではなくて業者に出された。それは少くも給与体系は大体固定給は六〇%くらいが妥当だ。それから基準法その他の面をよく守れ。そのような面を二十箇条に近いところの条文によつて三者からの勧告書が出されたわけであります。そうしたところが業者の方はこの勧告書は守らないで、現在の基準法が当てはまらないんだからといつて、法規委員会か何かをあげて、基準法改正の意図に向いている。そのような本末を転倒した行き方をとつているわけであります。ですから、別な方面に触れますが、さいぜんの就業手帳の問題もあげて私は第三者の共同勧告に伴うたところの誠意によつて業者自身が業界の明朗化の面に進むならば、私は就業手帳の面もあるいは――現在二百八十九社から一名それから警察官をやめた方十七、八人くらいいるんですが、そういう方でもつて、指導委員会をつくつているわけでありまして、そうしてこの会同において、はえか何か追うみたいに煙突の運転手を取締つているわけであります。ですからかような面も、結局私はこのような勧告の線を業者自身が真剣になつて守つていただくならば、私たち東京だけで八千の組合員を擁しておりますが、しかしながら一般的なこれに対する協力を惜しむものではない。しかしこの問題を全部たな上げにしてしまつて、あげて業者の苦しい実態の中におけるしわ寄せというものを乗務員に押しつけて来ているということからこの制度が発生し、あるいは業界それ自体を不明朗にしている原因じやないが、このように考えているわけであります。
#14
○林(信)委員 いろいろ承つておりますと、業者側と従業者側の調整といつたような問題も多いと存じますが、もとより、そのことは交通事件即決裁判手続法案にきわめて重大な関係を持つのでありますが、私はこの際もう少し法案に近づけて参りまして、取締者側といわゆる従業者を含めた業者側、この関係の調整と申しますか、そういつた点についていろいろ業者側として不満の点もお持ちになつているようであります。それを一々承ろうとは存じませんが、そういう問題は非常に広範囲の問題であります。またわれわれのうかがいしれないむずかしい問題もあろうと思うのですが、そういうことはしばしば協議会あるいは懇談会といつたようなものも催されまして、相互に理解を深めて円滑な取締りをやつて事故防止に寄与して行くということがなされているでありましようか。なされているといいと思うのですが、かりになされているとしますれば、どの程度の効果をあげておりますものか。これらに対しまする御希望的な意見等ございますれは承りたいと存じますが、これは業者と一括に申しましたが、経営者側もございましようし、従業者側も一緒になつたものもあろうかと思います。藤本さん、伊坪さん、御両氏において簡単に御説明願えれば仕合せでございます。
#15
○藤本参考人 この問題につきましては、本法自身につきましては、私どもとしましては大きなる反対はない。この問題については実は先ほどから申しているように、この問題はわれわれの希望のほんの一端であります。ということは、取締りの簡素迅速化ということはこれは私たちの書いている希望のうちのほんの一端でございますが、この趣旨についてはわれわれは了とするものであります。ただこれが取扱い方を間違うと、先ほど言つたように逆になつてしまう。裁判の簡素化じやなくて、よけい長くなるのではないか。たとえばわれわれが酷な取扱いを受ければ、すべてを本訴に持つて行つてしまう。こうなりましたならば何らこれが意味がなくなつてしまう。従業員の運転手諸君もそうだと思いますから、この運営を十分に円滑に行くようにしてもらえば、本案は十分に効果を発揮するんじやないか。この辺でございまして、それには先ほどるる述べましたように、専門的な裁判官によりまた専門的な官選弁護人をつけた裁判であり、しかもそれが一方的でないような取扱いをなさるように希望する。こうした場合には本法は迅速化、簡素化というだけでありますが、これだけはよくなるのではないか。あとの事故の発生自身の減少ということにつきましては、これはおのずからたくさんの意見がわかれるところでございます。ただ経営者と従業員運転手諸君との間に一致していることは、現在の取締り法規がきわめて形式的、画一的なために無用な取締り懲罰を受けている。たとえば先ほど言つたように夜中のバスがとまらないときにバスの駐車場にたまたま車をとめたならばそれが交通違反になるこんなことは実際噴飯ものでございますが、一応これは対象になる、あるいは夜中のだれもいないときに相かわらず昼のうんと通つているときと同じように、スピードの制限が同一であるとか、こういつたことがたくさんございますが、こういつたことによつて無用な事件数は減らせられる。こんなことが両方一致しているところでございますが、そうではなくて、実質的に公共的に見て影響するような事件につきましては、これは意見のたくさんわかれるところでございまして、私の方としても、関東道路といつておりますが、その方々とは絶えず話し合うわけでございますが、それぞれの立場上問題が多うございます。たとえば先ほどから言われている基準法の問題等でも、これは先ほど伊坪さんからお話がございましたが、われわれの立場をちよつと申し上げますと、私は自身で基準法に合うように一回ためしに全部賃金体系をつくつてみた、ところがハイヤーについては非常に複雑なことになりますが一応可能でございます。タクシーになりますとこれはどういうふうにつくつても基準法通りではできない。もちろんタクシー運転手の給料を全部固定給だけにしてしまつて、あとは何時間働いて来たから何ぼ、こういうふうなオーバー・タイムだけでやつて行けば別でございますが、これはまことにむずかしい。出ておつて働いているのか休憩時間であるのか、まつたく見当がつかないというような現状でございまして、私は工場労働者を中心とした労働基準法だけで現在の交通業の賃金体系をつくろうと思つても、これは私自身その作業をやつてみてとうていできないというので投げ出してしまつた。良心的にやろうと思つてもできない、これが現状でございます。これは朝出たきりで翌日帰つて来るまでは捕捉できない、監督もできなければ何もできないといつたような関係の事業でございますから、どうしてもここで特殊な体系をとらなければならない。工場労働者のごときあるいはハイヤーのごときはまた別でございます。これは絶えず経営者が監督できる立場でございますので、これならば別でございますが、タクシーの方については同じように労働基準法通りにやるといつても、これは技術上できない、技術上できないと申しますことは、割増し賃金など何時までつけていいかわからない。こんなことも事実技術上できないのでありまして、この労働基準法については改正を願いたいということはそういつた趣旨でございまして、これを逆にとるということは立場上やむを得ませんが、私どもとしてはそういつた意味から労働基準法を改正しなければならぬと思つております。なおまた現在の東京都内に不良な会社が多いということは、私どもも十分認めます。これがすべて社会悪の根源をなしておるということも現実でございまして、私はとにかく運転手さんをよくしてやるというためには何とか経営者が安定しなければならぬ。現在東京の二百九十八の会社のうち、不渡り手形が二百六十五出ておるという状況ではまことに不渡り手形の洪水でございまして、こういうことでは何とかやろうと思つてもできない。要するに経営の根本をまず改善する、これは運輸省の濫許濫発、それと不良会社の跋扈によつて、先ほど言つた名義貸しによつて撹乱されているのが現状でございます。従つて名義貸しの防止と摘発をまずやつて、全部まともな業者にしてやることと、それから経営が成り立つだけのことはしてやる、少くとも二百八十幾つのうち二百六十が不渡りを出すという現状をまず是正しなければ、これは根本的な解決にはならぬじやないか、このように思つております。
#16
○林(信)委員 今私がお尋ねしましたのはお述べになりましたことは非常つ参考にもなりますが、たびたび例にも出ますように深夜駐車禁止区域にちよつととめても違反だ、あるいはスピード取締りについても交通量のほとんどなくなつたような深夜に昼間の雑沓期と同じような取締りをするというのは非常識ではないか、もつともスピードの問題等になりますと、夜間なんかで、ずいぶん路面のわかりにくいときなんかには、大分スピードの関係は事故の原因になる場合もあるかと思いますが、お話になるようなことは一応考えられる、その他たくさんあると言われましたけれども、そういうことはわれわれも一応想像つくのです。これは一方的にただ取締る方は取締る方、取締られる方はられる方だというような考えだけでなくて、両者が会つて胸襟を開いて実情をよく述べて話せば、その間非常に緩和せられる問題が多いのじやないか、一つ一つ法制化して行く、あるいは改正して行くというまでに至らない多数のものがあろうと思う。その面が開かれておるかどうか、協議会とか何とかいうことはおやりになつているのじやないか、またおやりになつているとすればそれらのことについてあるいは立法的なことで何か参考になるようなことでもないか、こういうことを実はお伺いしたのです。
#17
○藤本参考人 主として私どもの関係では警視庁ということになりますが、これについては事実話合いしております。それでたとえば一例を申しますと、先日銀座地区において規制いたしましたあの問題は、当初出ましたときにはこれではどうにもならぬ、あそこが走れなくなつてしまう、これは営業者は銀座から締出しだ、こういう状況まで行つたのでございますが、その後強力な折衝を総監といたしまして、それで現在のような割合にいい成績をあげられるようなところまで改正願いました。こういつたことで個々にやつておりますが、私どもでお願いしたいことは、この話合についきましては警視庁の方も胸襟を開いてやろうというところまでなかなか行かない。これは現実には指導委員会という機関から絶えず警視庁と連絡をとつてやつておりますが、積極的にやろうという気はなかなか十分に行つていないのじやないかと思つております。現実には経営者の側の団体では、先ほど伊坪さんの方から申されました例の指導委員会を中心に、絶えず交通の第一課あるいは部長さん、その辺までの線は絶えず交渉はしております。それで今警視庁の力でも取締法を改正する意図があるというようなお話でございますので、その場合にどうか業者の方の意向も十分聞いた上でこれを直していただきたいということは強力にお願いもし申込みもしてあります。従つてこの辺については私改善の余地はあると思います。現在までの状況をお話申し上げたのでございますが、今も連絡をとり、さらに大幅な改正のときに業者あるいは労組、こういつたものを入れての交渉をお願いするように要望しております。一応その線は警視庁の方も了としておるようでございます。
#18
○林(信)委員 これは正直に言つて私最近に知つたことなのですが、二月から交通裁判略式手続を厚生省の中に簡易裁判所、検察庁、警視庁三者が部屋を持ちまして、流れ作業的に交通事故の事件を取扱つている。あなた方は直接みずから御経験しないと思いますが、その評判といいますか、事故を起した諸君がどういうふうな意見を持つているでござましようか、もしお聞きでございましたら、これは直接この法案の審議に非常な関係を持ちますので……。
#19
○藤本参考人 それでは運転手諸君の評判を申し上げますと、これはいいけれども、要するに先ほど伊坪参考人が言つたように、非常に違反が高過ぎるために、即決されるからすぐに払わなければならぬときが来る、今まではかかつても逃げてしまえはいいーーこれはまことに遺憾な話でございますが、そういう手もあつたのでございますが、今度は必ずやられて、即決でやられるのだからどうしようもない、それとすればあまりに罰金刑が高過ぎる、こういつたこと、それと先ほど伊坪参考人の言つているように就業停止と併科される、これがもう致命的でございまして、運転手も恒産があるわけでございませんので、今言つた就業停止と罰金と両方やられますと、致命的な損害であるということは事実でございます。そのためにまた無理して違反もしなければならぬようにかせがなければならぬというような、実に悪循環をなしているということは事実でございます。この点は、確かに最近罰金が値上りしているようでございますが、これは何とかしなければならぬというふうに考えております。
#20
○伊坪参考人 私たちも警視庁へ行つていろいろ銀座の問題でも折衝いたしましたが、君たちは国会の方でやるのだから国会へ行けと、何かけんもほろろのあいさつです。それからもう一つは、二十七年の交通取締法の改正をやるときには三百円あるいは五百円の罰金が、その後科料という項目を設けても、最低千円に上げてしまつたということ。ですから私はこの法案に対して基本的に反対だということは、この法案が通ると、この前の轍を踏むわけではないが今の最低千円が最低二千円に上げられてしまう。ですから負担過重のこの罰金刑が是正されるならこの法案は了とする、こういう考え方であります。
#21
○田嶋委員 非常に私の聞きたいところを今答えてもらつたのですが、伊坪さん、藤本さんにお伺いしたい。特に伊坪さんにお伺いしたいのですが、結局刑罰よりも金銭面ということを運転手諸君は非常に重視するのではないでしようか、この点をひとつ伺いたい。金銭の損害と刑罰のどつちを重く見ておられるか、伊坪さんにお答えをいただきたい。
#22
○伊坪参考人 刑罰も罰金になると前科になりますし、そういう面でちよつとしたささいなやつは科料にしてもらいたいとこの前も言つたのですが、金銭の面も、大体現在の乗務員の収入といたしましては、組織労働者の方が二万五千円程度、未組織労働者の方が大体二万円程度というのが私たちの調査の中から出ております。その中からさいぜん申し上げましたように三百六、七十キロから四百五十キロも走らなければならぬということになつて来ると、これは当然若干スピード違反を起して来る。この即決裁判のおもなるものはスピード違反だと思う。そういう面から言つて、この両方ともやられるということになると運転手は非常につらい。ですから、この法案とは関係はありませんが、三者の共同勧告に沿つたところの六〇%の固定給という線に業界それ自体を粛正して行けばこの面も少くなつて来るから、まあ若干金額が、高くなつても運転手の方は救われる面があるのではないか。両方から責められたときは、乗務員としては立つ瀬がありません。
#23
○田嶋委員 この法規というものは犯罪をなくするという面で進むわけです。私の問いが徹底しなかつたかもしれないけれども、あなた方は刑罰が重くなることによつて犯罪がなくなると思うのか、金銭的な負担が重くなることが犯罪をなくする原因と思うのか、両者一緒に行けばもちろんのことなのですが、どちらを重く見るか。これはお互いに犯罪をなくすために議論しているのですし、さつきからの結論はみんな一致しているわけですから、この法規の制定に対してはいろいろ条件はあるかもしれないが、結論的には基本的人権が侵害されない以上賛成する、こういうことになつておるからお聞きするのだが、その犯罪を防止するためには刑罰が重くなることが犯罪防止に優先するのか、それとも金銭的な負担が重くなることがこの犯罪を防止するために効果があるのか、どちらですか。もちろん両方と言えば一番いいのですが、それを聞いておるのです。
#24
○小林委員長 鈴木参考人が来ておられますから……。
#25
○田嶋委員 お答えはあとからにしましよう。答えられなければけつこうです。
 それからいま一つそれに付加してあとでお答えしていただきたいと思いますが、これは伊坪さんにお伺いします。私たちがタクシーに乗つて考えることなのですが、たいがいタクシーの運転手さんというのは小うたまじりで、タバコを吸いながら片手で運転をやるのですよ。これは私たち、乗つていてあまりいい感じはしません。非常に不愉快なのですが、こうしたことがやはり犯罪の大きな原因になつているような気が私にはいたしますがね。運転手の素養、訓練といいますか、これはどうお考えになつておりますか。これはあとでもけつこうです。
#26
○吉田(安)委員 ごく簡単に一、二点藤本さんにお聞きします。何もわれわれはいたずらに法律をつくつて、そうして業者諸君をどうしようということでないことは、もちろん御承知の通りであります。こうした事故発生が何らかの方法で少くなればそれに越したことはない、これはみんなの一致した意見であります。ところでさいぜんあなたが例にとつて言われた深夜あるいは早暁運転、あるいはスピード違反あるいは駐車場違反、こういうことを取締るはことまつたくナンセンスだ、そういうような御意見であつた。従つてこういうことがなければこの事故の件数はずつと減る、こうおつしやられるのですが、減れば幸いです。そうなるとそこにどのくらい実数的に減るようなお考えか、その点を伺いたいと思います。
#27
○藤本参考人 これはまことにむずかしい問いでございますが、われわれが運転手諸君と話をし、生じて来るケースを見ておりますと、こういつた社会公共に弊害を及ぼさなくて、取締法のいわば実情にそぐわないために起きておる交通事件というものが三〇%ぐらいあるのではないか、私はそう思つております。これは推定でございますから根拠はございませんが、一応聞いている範囲内ではそういつたことが――今言つた夜とまつておるときの意味のない、あるいはこちらががけであつて、こちらは電車が通つておるところで、もう全然電車も通つてないときだから、ここのところはだれも来ないことがわかつているからスピードを出している、そういつたときでも、出口のつかまりやすいところでひよいと抑えてしまうということが往々にしてあるのであります。そういつたことによつて、伊坪さんの方の言い方からすればいわゆる点数主義による無用な交通事故件数というものは、私は今言つた三〇%ぐらいあるのではないかと推定しております。
#28
○吉田(安)委員 おつしやる通りのことで、私も同感です。パーセンテージは別として、そういうときにいたずらに取締るというのは非常識です。こういうことは警視庁に文句を言いたい。まつたく法律の濫用です。そういうときは、そこが取締り者の大事なところで、あるいは大目に見てやるとか、注意をしてやるとかいうぐらいで放してやつてしかるべきではないか。それをいたずらにぎようぎょうしくやるから、伊坪さんが言われたように点取り主義になつている事故が多い。それだから法律もこうして出さなければならぬ一つの原因になつておりはしないかと思う。これはまつたく同感です。さつき伊坪さんから話が出ておつたことですが、いわゆる名義貸しというやつ、こういうことは私らはしろうとでわかりませんが、どちらからでもかまいませんからどういう方法でこれをやつておるのか、その点をお尋ねしたい。
#29
○伊坪参考人 陸運局なら陸運局へ新規免許を申請するわけです。かりに三十台なら三十台の台数を持つておる、資本金はこうだと言つてやるのですが、そのうちの二十台なら二十台がその人の会社の車ではない。各人が車を二十万なり三十万で買い込んで来て、そうしてそういう会社なりに車を入れることによつて、最低二十万の権利金を社長はとるわけです。そのほかに車庫代と称して、そうしてこれが大体毎月五万円ぐらいとつておる。ですから、ばくち打ちのてら銭かせぎで、うちを貸しておつててら銭をあげて、やみ家賃みたいなものをとつておる。これなら絶対損はない。業界が今度調べた中でも、一万二千二百五十三台あるうちに三千台以上もこういう車がある。そのような面がわかつておつても許可しておるのです。陸運行政それ自体すら紊乱しておる。私はこのように申し上げておるのです。そういう運転手は車庫に帰らないのです。これは警察でもやつかいだと思うのです。帰らないでたいてい運転手となあなあで交代しておる。基準法もへつたくれもない。両方で交代したり、おやじさんと交代してやつておる。ただ車庫代だけ納めればよろしいというのが業界の姿だと思うのです。
#30
○吉田(安)委員 どうも名義貸しを受けてやるところに、こうした事故発生の原因が相当あるような気がするのですが、さいぜん伊坪さんは、経営者側があまり重点主義に陥つているというようなことを言われた。そこでまだはつきりしませんが、どちらからでもよろしゆうございます。ないと言われればない方からおつしやつていただきたい。
#31
○伊坪参考人 これは二百八十九社のすべての会社ではありません。ここにおられる藤本さんの会社なんか、非常にりつぱな同定給を出しておる。出しても六〇%程度、それ以上出しておる会社はありません。東京における四大会社、藤本さんのイースタン、これあたりは今六〇%近くみんな出しております。おそらくそれ以外は、固定給として千円、二千円から、三千円程度です。それから出社した場合につけてやるという程度です。ですから、おおむね歩合です、運転手の方としては歩合もよろしいのでありますが、かりにルノーの新車でありましたら、四百キロは必ず走行できるんです。そうすると、一万円はかせいで来るんです。このような想定を基準としてがんばつておるわけです。ですから、この間のように雪なんか降つてしまうと、一万円かせげない。運転手の給料は払えない。それからタクシー会社には、銀行は金を貸してくれない。私鉄の場合には私鉄補償法があるが、タクシー会社は補償みたいなものがありません、なお免許基準を受けるときにおいて、高利貸しから金を借りておるような実態です。こういうふうにしわ寄せられておる。さいぜん藤本さんが言つたように、二百八十九社あるうちに二百六十社近いところが不渡り手形を出している。いぬじやないがみんな片足を上げてしまつた。しわ寄せというやつでみんな苦しい。すべて運転手にかせいで来い、かせいで来いと言つて、しりをひつぱたくわけです。
#32
○吉田(安)委員 どうも私らの経験では、自動車のスピード違反が多いようですが、たとえば人をひくとかなんとかするときには、どういう言い分を立てても自動車側が損ですね。それはもうけがさしたということになると、よほどの実証がないと、いつも自動車側が損をしておる。私らはそういう実際の例があるので痛感するのです。藤本さんが言われたように、交通道徳をもう少し社会人はわきまえ、政府もまたこういう点については力を入れなければならぬということは同感です。ところがさいぜい伊坪さんは社会福祉施設が不十分だとおつしやつたが、それも考えられることです。ちよつと私はそのときの実例としておつしやつたことを十分聞き取れなかつたのですが、伊坪さんからもう一ぺん不十分な点についての実例ですね、それについてお伺いしておきたいと思います。
#33
○伊坪参考人 その面は基準法の中において――結局一昼夜交代をおおむねとつております。半昼夜交代をとつておるのは、東京あたりで二社かそこらだと思います。大体一昼夜交代で、二十四時間やつております。そうすると、二十四時間働いた場合、四時間は連続睡眠時間を与えなければならないということになつて来る。かりに私の会社の例を引くと、睡眠をとらせるために、畳一畳半にふとん三枚、ふろ、食堂の設備がちやんとしてあるわけです。しかしながら二百八十九社あるうちに、数えるほどしかそのような設備がされておらない。帰つて来ても寝ることができない。ですから、寒くても車の中でじつとしておるか、ストーブに当つておるという状態です。そうすると、帰つて来てもしかたがない。表を走つておる。あるいは寒いからといつて、一ぱい飲むよりしようがない。これが泥酔運転の形になつて来る。ですから疲れて来ると居眠り運転。こういう問題で事故が発生する。これは運転手が未熟練でもあり、また車がたくさんふえたからでもあると思いますが、業者がそういう面を守らないということが、事故の発生に拍車を加えておるんだ、このように私は考えております。
#34
○小林委員長 それでは次に警視庁交通第一課長、鈴木実者にお願いいたします。
 あなたにはこの法案が出た結果に対する一般的の御意見を願いたいと思います。特に将来の警察方面の手続に関すること、それから第一線に及ぼす影響、先ほどもお話があつたように、いわゆる点取り主義で事件がふえやしないか。それからあなたの方で訓戒手続などしておられるようですが、要するに裁判所方面で事件が非常にふえるのじやないか、あるいは減るか、これらの点についても触れていただきたいと思います。
#35
○鈴木参考人 お答えいたします。第一点のお尋ねは、この法案ができることがいいか悪いかということでありますが、結論を先に申しますと、この法律ができた方がよいと思います。その理由は、従来警察で違反があつたときに呼ばれて調べられ、そして一ぺん帰る。それからまたその書類が検察庁へまわつて、検察庁へ呼び出される。略式を承諾された方は略式手続で科料なり罰金が行くからというので帰る。それから今度はしばらくしますと、罰金を納めろというような通知が参ります。それを持つて納めに行く、納めに行かなければ留置場へ入れるというようなことで、違反をやられた方は三回の足をお運びになる。従いまして交通事件即決裁判手続法によりまして、それが少くとも一時間、二時間、あるいは少くとも半日くらいで終るということになれば、違反をされた方にも非常に御便宜ではなかろうかというふうに考えております。さらにまた今日の事件処理を見ますと、違反を犯してから早くて三月、おそくて半年、住所を転転としておると一年もかかるというようなことで、どこで一体違反を犯したことによつて、どんなわけで罰金をとられたのかわからないというような結果にもなりますので、やはり法は早くに執行され、そうしたことを二度と再び繰返すまいというようなお考えを違反者に持つていただくことがよいので、どうしても違反をやられた方の御便宜のためにもこの法案は成立いたした方がよいように思います。
 それでは一体警察はこれができたら便宜かというと、率直に申し上げまして、警察は事務が加重になります。たとえばこの事件を処理してただちに検事さんのところに送つて行くというようなことで、看守護送係というような者が少くとも一人ふえるということで、警察としては事務が過重になるわけであります。しかしこのことが違反者に対するサービスといつたようなことを考えてみたときには、若干警察が事務が加重になつてもやるべきだということと、さらにまた先ほど申し上げましたごとく、法をすみやかに執行するということからいつても、その方がいいのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。またお尋ねの、この法律ができるということによつて、送致事件が多くなりはしないだろうかということでありますが、これができるとかできないとかいう問題は私あまり関係ないのではなかろうかというふうに考えております。と申しますことは、警視庁の例をとりましても、警察官の力には大体限りがございますので、今より急に数多く送致がふえるなんということはないと思います。その理由は、私が今考えておりますのは、即決で裁判をするということは、よほど慎重に、違反事実をしつかりとつかむ。従来はそれが慎重を欠いたというわけではございませんが、現認報告を書いたりなんかする場合に、あとで若干の余裕がありますから訂正したりしておりましたが、手続が早くなればなるだけに慎重にやらなければならない。一ぺん書いたものを訂正するというような機会が少くなるという関係で、非常に慎重にやるということになりますので、そうことさらにふえるということはないと思います。しかし一般的な問題といたしましては、これができるできないにかかわらず、送致事件はふえる、かように考えております。その理由は、各参考人の方から御説明があつただろうと思いますが、警視庁管内の例をとりますと、車が非常にふえ、事故がふえ、人がふえるというような関係で、どうしても違反がふえるから、送致事件は若干はふえるだろうということは、私考えております。
#36
○小林委員長 次に東京簡易裁判所判事向井周吉君に、参考人としての意見を聴取することにいたします。今東京簡易裁判所において、交通事件に対する略式裁判手続を法律の範囲内において特別なやり方でやつておられるようですが、ことにあなたがこれに専任されている様子であります。そのやり方の大略と、それからこの法案が通過施行された場合において、今の事情とどんなふうにかわつて来るか等に対する比較した御意見を伺えれば非常にけつこうであると思います。
#37
○向井参考人 私は東京簡易裁判所の判事でございますから、東京簡易裁判所のことだけを申し上げたいと思います。東京簡易裁判所で受けております道路交通取締法違反の事件といいますのは、昭和二十七年の受理件数が二万五千くらいであつたのが、二十八年度におきまして五万八千、約六万になつております。大体三倍強ということになつております。それが二十九年度になりますと、また倍くらいにふえておる。これはことしの一月からでありますけれども、もはや二万三千件になつております。これで見ますと非常に事件がふえますので、従来のようなやり方でやつておりますれば事件が停滞する。それでただいま非常に停滞した件数がありますので、地方裁判所から二十人余りの職員の方の応援を求めまして、処理をしているわけなんです。それでこの交通事件と申しますのは、先ほども警視庁の鈴木交通第一課長から申された通り、違反があつて、まず警視庁で取調べられ、それから帰されてまた検察庁の方に送られる、検察庁の方へ行つて、その上で起訴か不起訴かを決定される、起訴されたものは裁判所へまわる、裁判所は略式でありますから書面審理で送達する、こういう取扱い方をしております。そして違反者に対しましては、これは大体道路交通取締法の二十八条、二十九条によつて、科料の場合は五百円もしくは八百円、それから罰金の場合は大体千円から、場合によつては三千円、こういうものを徴収しております。それだけのものを違反者に対して少くとも二回ないし三回というような場合があると思います。そこで私どもの考えますのは、運転手というような人たちは一日働けば相当の収入があるだろうと思いますが、それを三回もやるということになれば、その日は働くことができないのじやないか、少くとも収入は相当に減るのじやないか。そうすると今申しましたように、五百円とか八百円とか、悪い者でありますれば千円ないし三千円の罰金なのに、そういう負担をかけるということは何か公平を欠くのじやないかというような気持を持つておりましたので、それで何か新しい法律ができたらという気持もあつたのですが、それが立案されたということを伺いまして、それでそういう法案の出る前に、何かもつと迅速にやる方法はないものか、これは憲法にも規定されておるように、公平にして迅速な裁判という点からいつて、こういう種類の軽微な犯罪につきまして半年もかかるということもまれにはあるのでありますが、そういうことではよろしくないというので、警視庁の方ともいろいろ協議をいたしまして、そうして警視庁の方に、こちらではどうも部屋が狭くて調べ室を置くことができませんので――本来の趣旨から申しますれば、そういうようなものを裁判所に設けることが法律的によいのかもしれませんが、とにかくそういうことを言つても部屋がなくてもやれないので、とりあえず警視庁をお借りしてそこでやるということで、警視庁の交通第一課の一部を拝借いたしまして、そこに検察庁なりが行つておるわけです。それで私どもも大体一週間に二回くらい、時には三回行くこともありますが、処理をしておるところを見ますと、二週間くらいのものもたまにはありますが、きのう違反があつたものできよう送るというようなほんとうになまなましいのがすぐそこで処理されて行く。それから罰金なども仮納付の手続でやつておりますから、持つておる人はそこですぐ納めていいのです。刑罰としてやむを得ないといたしましても、それ以外の迷惑はなるべく避けたいという考えで、今持つておる人には納めてもらいますから、そういう人たちには案外便利なんじやないかと思つております。それでこの法案につきまして私どもの考えますのには、今申し上げたように事件が非常にふえまして、今の制度では、つまり人さえふやして行きますればよい成績が生れるのじやないか、そういうことで警察や検察庁からたびたび呼出しを受けるということはあまり気持のよいことじやないと思います。それが新法みたいなもので一回で処理されてしまう、裁判所まで来るということになれば、そういうようないやな気持は割合に少くなる。それからあそこで略式即決でやりますと、やはり中には裁判官に面接したいという希望の者が相当にあるのであります。私どもはやはりたまには面接はいたしますけれども、特に不満のある人たちについては非公式に聞いてやつて、わからぬ場合は手続の方法も教えてやる場合があり、不服があるなしにかかわらず、裁判官から呼ばれなければ、書面でやられたのではどうもおかしなものだということを言う人が時たまあるのです。現在この略式の手続だとしますと、一日に大体百件から多くて百二、三十件ですけれども、その中にはやはり十人やそこらの人はあるのじやないかと思います。そういう人たちに対してやはり裁判官が会つて、そうして違反はこういうものだ、これだけの違反だということを言つてやるということになれば非常に理想的ではないか、こういうように考えます。
 それからもう一つ、これは先ほども触れましたけれども、現在のように略式でやつておりますと、いろいろな方面で手数もかかるということと、それからせつかく罰金を言い渡しても、その罰金が適正に国庫に納入されておるかということを私ども非常にーーこれはこの席でこういうことを申し上げるのはまことにあれなのですけれども、私はより適正に納入されることを考えると、やはり何か新しい法律的な処置をしていただきまして、そうしてより完璧に入るという方法にしていただきたい、こういうふうに考えております。
 もう一つ、違反者の刑が確定いたしまして罰金になつて、そうして罰金になつたということを通じて行くのですが、そういうときにその違反者はそれを知らずにうつちやつておく、そうして科料五百円に処せられたことも忘れてしまつておつた。ところがどこかの警察あたりでお前は罰金をまだ納めない。だからきよう留置すると、一日か二日のことで留置されるという点はまことに気の毒だと思います。面接で、そういうことが起きるから注意しろということを裁判官が注意してやれば救われるのではないか、この法案が出ることによつて非常に利益するのではないか、同時に裁判所もそういうことでほんとうの審理が達成できるのではないかと私は考えるのであります。ただお願いしておきたいことは、そういう手続をしていただきますと、現在よりは人がよけいいるということでありますが、私どももこの間からそういうことを考えているのですが、まあ四十人かそこらじやないかと思うのでございます。しかしそのかわりにまた一面送達費用とかそういつたものは多少節約できて利益になるのじやないか、こういうふうに考えております。
 それからもう一つ、これをやるときにやはりどうしても法廷というものが必要になるので、その点特にお願いしておきたい、こう考るえのでありす。
 大体私どもが実際やつておる職務上のことで申し上げれば以上の通りであります。
#38
○小林委員長 それでは鈴木参考人及び向井参考人に対する質疑があればこの際これを許します。
#39
○田嶋委員 向井さんと鈴木さんにお尋ねしたいのですが、先ほど御両者にお尋ねしたのも一緒にお答え願いたいのです。この法案の必要性については、皆さんの意見がほぼ一致しておるようでありまして、大分わかりました。そこで問題は、先ほど労働組合の方が言つたように、点取り主義が起きるのではないか、ここに来ているのではないかと思います。これは私自体が体験したのですが、ここにおる小木さんと二人で私の車を銀座につけて運転手と一緒に飯を食いに行つた。そうするとどこからともなくおまわりさんが来て車のかぎをあけて中を探しておる。ぼくはひよつと見たから注意していた。そうすると運転手の免許状を取上げまして自分のポケツトに入れて、それからナンバーをつけたり何かしている。それからぼくは運転手に騒ぐなと言つて運転手をとめて、飯を食つてから出て行つた。そうして運転手と乗つて行こうとしたときに待て、とこう来てそれから本署に行こう、こう言うのです。そこで私は、一体どういうことなのだ、ここへとめてはいかぬというのなら、何もおれたちが中にいるのを見きわめて、どろぼうをつかまえるみたいなことをせぬでも、君がここにとめてはいけませんよということを言つてくれれば、こちらは悪意がないのですから、そうですかとあやまつて行くのだ。まるでどろぼうをつかまえるように、くもが巣を張つて、それにえさがかかるのを待つておるようにしてつかまえるのはいかぬじやないか、こう私は言つたのです。そうしたら、あなたは乗つているる人で関係がない。この運転手が悪いから本署にひつぱつて行こう、こういうわけです。君はそんなことを言つてもひどい、それでは君いかぬ、どうしてもひつぱつて行くというならしかたがないけれども、それは君は非常識じやないかということで、小木君がちようど隣りにおりまして出て来て、小木君が中へ入つて仲をとつたような形にしたが、私はいかにも腹が立つた。これは自分の車で一回ならず、二、三回経験しておる。こういう直接経験しておることで労働組合の委員長の言うておる言葉がぴんと来るのです。私は警視庁へこういう事情だからということで電話をかけたところが、それはおまわりさんが悪いじやないかということで警視庁の方が判断してくれた。これは即決でないからできたのです、おそらく即決ならそれがぴしぴし行くのじやないかということです。体験者が言うのですが、これはどうしてこういうふうに教育するのですか。これを鈴木さんに伺いたい。
 それから向井さんにそれと関連して伺いたいのですが、即決になりますと起訴猶予とか情状酌量で許してやるというようなことが少く、ほとんど画一的に罰金で処罰することになる、これは必ず起ると思うのですが、これに対する対策はどうでしようか、これの二つが解決できれば、私はほぼここは皆さん安心できるのじやないかと思うのです。
#40
○鈴木参考人 お答えいたします。結論を申し上げますと、これは向井判事の範疇に属しますが、即決で行つても報告してから警察署で調べまして、それから検察庁へ送るのでございます。即決と申しましても、取扱いとしては従来とかわりございませんから、私ども悪いところがあるにもかかわらず、それを何でもかんでも検察庁へ送るという態度は絶対とりません。ただ言い訳になつてはなはだ申訳ないのでございますが、若い警察官の中には皆無だというような思い上つた申し上げ方は絶対いたしません。私はいつも、こういう交通の客観情勢にあるのだから、取締りは厳重にしなければならない、これが都民の生活、身体、財産をお預かりするわれわれとして当然の任務だと申しております。しかし若い警察官はうつかりいたしますと、厳重な取締りという言葉のマジツクに惑わされて無礼なあるいは傲慢になつてもいいのだというような考え方になるから、そういう考え方は絶対いかぬ、あくまでも納得された取締りをするようにということは常に申しております。こういう状況なんだからと説明すれば、取締りを受けた方も納得されるということでいますので、その点は始終機会あるごとに実は教養しておるのであります。よく隠れておつてという御非難を受けるのです、これは運転手の皆さん方の講習会のときに常に言われる。しかしおまわりさんがいれば違反を犯さない、いなければやるのだというようなことでは相ならぬので、いてもいなくても、常に法規は守つてもらうのだ。従つて場合によりましては、スピード違反の白バイがおつかける場合は違いますが、署でもつて、停止してやつている場合には、あそこできようは速度違反の一斉検査をやつているのだということを知らせないといつたようなことは、運転手の方には非常に御迷惑かもしれませんが、そういう方法もとる。これはやはりおまわりさんがいても、いなくても、そういう検査があろうが、なかろうが、常に法定速度は守るのだという考え方に立つていただかなければしようがないのであります。率直に申しまして、違反はもう数多くございますので、一人々々つきつきりでそれを全部検挙するなんということはできません。従つて、多くの方が警察なんかに注意されないでも法令は守るというような観念でいてもらわなければならぬ。場合によつては、そういうようなことがないとは申しません。しかし今先生が申されましたようなことは、先ほど申し上げたように、教養の問題でございますから、今後十分注意いたしたいと思います。
#41
○田嶋委員 これはしかし確かにあるのですよ。私のは実にひどかつた。スピードを出し過ぎたというならばいいですが、そうではなかつたのですよ。停止してはいけないというのが、あの上の方に看板がかかつておりますから、知らない運転手にはわかりませんよ。もう少しわかりいいように、これはぜひ今後御注意くだすつてやつていただきたいと思います。これで終ります。
#42
○小林委員長 吉田君。
#43
○吉田(安)委員 鈴木さんにお尋ねするのですが、今の問題で、こういう何べんも違反を犯すような者はうんと取締れということですが、これは違反常習者だから、そんな者は大いに取締らなければいかぬと思う。ところで、大目に見るということは、警邏課長あたりは、日常指示するというのもおかしいけれども、場合によつては大目に見ていいというような教え方はしていないのですか。
#44
○鈴木参考人 大目に見るという言葉は使つておりませんが、抽象論ではなはだ恐縮ですが、寛厳よろしきを制すという取締り方法です。従つて今の先生の場合は駐車違反ですが、駐車違反でも、いなかから出て来た者、あるいは運転免許をとつて間もない人といつたような方は、必ずしも送致しないで、訓戒というのがございまして、訓戒しております。伊坪さんがいられる前ではなはだ恐縮ですが、タクシーの運転者だとかいう方は、相当なれている方が多い。従いまして、そういう方が知らないで、といつても、これは単なる言い訳というように認定されて、送致される場合もあります。大目に見るという言葉は使つておりませんが、一応スピード違反の場合ならば、私どもの気持としては、一キロ、二キロオーバーしたからといつて、それは違反には相違ありませんが、これをすぐ送致するといつたような態度はとつておりません。
#45
○吉田(安)委員 なるべくそういう方法でやつていただきたい。ただこれを刑罰で押えつけるというようなことは、最後の手段であつて、やはり取締る人は、そういう場合にはなるべく教えてやる、そして一般社会の人に共通の道徳観念で注意をして行くということになると、おのずから事故は減つて来るのじやないかと思います。幸いに鈴木さんはそういう方針でおられるようですから、なるべくその点をもう一段と御努力願いたいと思います。
 向井参考人にお尋ねいたしますが、はなはだ恐縮ですが、向井さんはこの交通事故取締りの方にはもうどのくらい関係していらつしやいますか。その点をお尋ねいたします。
#46
○向井参考人 私は昭和二十二年ごろからこういう事件を担当しております。
 それから先ほど起訴があつた事件につきまして、起訴があつたら必ず処罰しなければならぬのじやないかというような御質問があつたのですが、私どもは何も検察庁とか警察とかの出先じやないので、私どもは私どもの立場として、罪にならない者までも処罰することは現在でもやつておりません。むしろ直接被告人に会うのでございますから、会うことによつて、被告人の意見、弁解を聞いて、もし先ほどおつしやるような無理な起訴、法律に当てはまらぬものがあればやらないということになり、場合によつては執行猶予の手続も考えられるのであります。そういう点は、この法案の実施によつて著しく改善されるじやないかと私は考えます。
#47
○吉田(安)委員 今の起訴があつたときに必ず罰しなければならぬじやないかということは、これは田嶋君の質問のようでしたが、それはまつたくそうでなくてはならぬ。そこは裁判官の恩情のあるやり方だと思います。その点、さつき藤本さんが言つておつたように、法案自体、精神には反対しないが、この法案が通過すれば、判事というものは経験、知識その他についてよほど練達の人をほしいとおつしやつたことは、私は全部同感です。ただ何年くらいやつておられるかという失礼な質問でしたが、二十二年からやつておられるということですと、最適格者だと思います。そこで一ぺん科料なら科料、罰金なら罰金に処したとしまして、それがまた近いうちに再びひつぱられて来て、判事の面前に立つようなことは御体験ありませんか。
#48
○向井参考人 それはございます。
#49
○吉田(安)委員 これはやはり経済面から出て来るでしようけれども、ちよつと違反をした。すぐひつぱられる、そして罰金に科せられる、さあこれは損したぞ、この損害をとりもどさなければならないということ――これは不心得の運転手に違いないですが、そのためにうんと働いておいて、またひつかかるというような傾向はないでしようか。
#50
○向井参考人 それは現在のところわれわれどもは書面審理をやつておりますので、そういう実情はよくわからないですけれども、三箇月に三回くらいやるのがあります。そういう者は科料五百円とかいうもので、一応黙つて下つてしまつて、正式裁判の手続もいたしませんし、そのままにして行つてしまうわけで、どういう意図でそうたびたび違反が繰返されているのかということは一向わからないわけであります。ただ略式命令をする裁判官といたしまして、その略式命令に書かれたそういう事実の証拠がありますれば、出すわけであります。お尋ねのように、どういう趣旨でそうたくさん違反をするのかよくわからないのであります。
#51
○吉田(安)委員 私この法案を手にしますと、どうもそういうこともちよつと気になつて来るのです。一ぺん略式を受けたんだから、何べんやつても同じことだ、略式で済むことだ。これはアメリカあたりでもそういう傾向がある。ちやんと罰金を用意している。罰金覚悟でやるのだ。こういうことになつて来ると、これは実際法をつくつてかえつて法を乱すような心配があるのですが、鈴木さんどうですか、そういう心配はありませんか。
#52
○鈴木参考人 お答えいたします。今の吉田先生の御質問のようなのは、私ども最も悪質者と言つております。同じ違反を何回も繰返すのは悪質者と言つておりますが、これはきわめてわずかなのでございます。従つて私は私なりの考えですと、そういう心配はあまりないのじやないかというふうに考えております。
#53
○林(信)委員 向井さんにお伺いしたいのですが、この二月からですか、先刻お話のありました警視庁の中でというのは厚生省の構内のあの部屋だと思う、あそこで警視庁からもお見えになり検察庁からもお見えになり、判事さんがお出かけになられてあそこでいわゆる流れ作業的な執務をやつているのですが、あれで相当効果を上げておられるのだと思いますが、あれで裁判所の裁判官がお一人、書記官一人、事務官が二人おられますか、あるいは少し異動もありましようが、あれで一日どのくらいの件数がはけているのでありましようか。普通の今までのような略式命令を送達したり、それに対してまたさらに確定した後の罰金の徴収等で手数のとれておりました普通の手続よりは、ああいう流れ作業的なもので仮のままでやつちまいますと能率が上るのですが、この法案によつて見ますと、さらにいい面があるという。これは先刻来お話がありました直接面接することによつて違反者の心理的な安心感だとか、裁判官が実情を知ることにおいて、場合によれば執行猶予等の場合もさらに一層予想されるという面のこともわかりますが、実際の処理件数の点から見ますと、ごく最近ああいうようにやつておられますあれで大部分のものは満たされておりましようか。それともまた非常に違つた面がこの法案の成立によつて所期せられるのでありましようか。現在の法の建前でなくして、執務の改善といいますか、あの形式によつてどの程度にこの法案に近くなつているというか便宜を得ておられるか。現実にやつておられますあなたが最もおわかりだろうと思いますが、どうですか。
#54
○向井参考人 現在の手続でやつておりますものは、これは略式という名前でやつていますけれども、非常な数でありまして手数が非常にかかるのであります。それから新法の利点と申しますと、書面審理と違つて刑が公平なものが言い渡されるという利点があると私は思います。千五百円の求刑がありましても千円でいいのじやないかという場合もある。あるいは場合によつては二千五百円でなければいけないのじやないかと思う場合もありますけれども、書面審理の場合はきわめておかしいと思う場合のほかは大体求刑通りということになつております。そういう点で新法の方は利点がある。それからそう長い年月かからずに早急に裁判にかけて言い渡す。それから罰金科料をその場でとれるようにする。そういう点で検察庁あたりの納入する係あるいは執行面に携わるその他の警察官の方方の手数が省けるという利点があると思う。それから裁判所としてはなるほど人がふえますけれども、これが未済にならないという点で能率が上る。仕事が未済になつてしまうと仕事に追われ追われてやりますので能率が上らないのじやないかと思います。執務の上からいつて。そういう点でも新法の方が利点があるのじやないかと私は考えております。
#55
○小林委員長 罰金科料を課される場合に、前科というものを標準として体刑のときは累犯加重などがあるのですか。前にあつた科料または罰金よりも多少上げて行くというような方法はとつておられるか。
#56
○向井参考人 交通事犯の罰金というものは前科はあまり考えておりませんけれども、先ほど吉田先生でしたかのお尋ねにあつたように何回も重ねて同じような事件で来るとすれば、三回目に多少考慮するというようなことはございますけれども、これも面接して本人の気持を聞いておらぬものですから、そうむやみに一方的に上げていいものかどうか、実にその点は困るのであります。ですから上げる場合があるという程度でありまして、必ず上げるということではございません。
#57
○小林委員長 前科調書はついておらぬようでありますから今まではそうでしようが、これから面接するとお前この間も来たなというわけで、顔を見ればすぐわかるだろうから、勢いそういうことが加えられて来ることになると思いますが、その点はいかがでしようか。
#58
○向井参考人 交通事件というのはいろいろな角度から考えてみなければならぬ問題でありまして、一般刑法犯の場合のような累犯という意味でただちに刑がふえるというふうには私は考えないのであります。ただこの交通事犯については正式裁判というものはきわめて少くないのでありまして、どういう状態でどういう趣旨で処理するかというと、ほとんど書面審理で事件は尽きていると言つてもいい。一万件に一件ぐらいの割合しか来ないのでありますから、違反者の気持はきわめてわからないわけでございます。それでありますから、ときには累犯加重というような形にならなければならないかもしれませんけれども、何を申しましても簡裁では二十九条違反だとすると、懲役刑はございませんけれども、罰金刑がつけてございます。罰金刑だといたしますと一万五千円以下でございますから、その範囲でまかないますが、累犯加重いたしましてもそう幅広くはならぬのであります。
#59
○小林委員長 今扱つておられる略式命令が確定した場合に、科料でも前科になるのですから、これは一々、検事局がやつておられるのかもしれませんが、本籍地の役場へ通知をされておりますか。
#60
○向井参考人 前科を本籍地に通知しろというのはどういう規定に基くのか私にはわからないのでありますが、これは最初昔の司法省時代に刑事局長の通達か何かあつたとかいうことを聞いたこともありますが、累犯を町村役場に通知しろということはわが刑事訴訟法には出ていないのではないかと私は思うのであります。従いましてそういうことは裁判所はもちろんいたしませんし、また検察庁の方ではどういう取扱いをしていらつしやるか、またやつていらつしやるとすればどういう見解をとつていらつしやるか、私はその点は疑問を持つております。
#61
○木下委員 鈴木さんに一点だけ伺いたいと思います。自動車がふえて交通事故が多くなり、今までの即決ではぐあいが悪いというのでこの手続法が立案されたのでありますが、この立案されるときに係の向井判事あたりと御相談なさつたことと伺つたのですが、運転手側の労働組合の理事者というような人たちを集めて、こういう客観情勢になつてこういうようなことになつているがということで、そつちの人たちと一緒に相談してこの手続法を立案したというようなことがおありですかどうですか、伺つておきたいと思います。
#62
○鈴木参考人 それは私聞いておりません。聞いておりませんし、私どもはそういう会合に出席いたしません。
#63
○木下委員 そういうところが私は一番手抜かりだと思う。表面的にこの案文を読みますと、今までの即決でやつたのが、かえつて実質的には何回も呼び出しを受けたりして、自分では済んでいると思つていたのが拘引されるようなことになる。先ほどのお話の中にも、何べんも呼び出しを受けるものだから、その日働けないという意味で、罰金プラス罰金の二倍、三倍の犠牲を払つているというようなことからこういうことが立案された、決してこの取締りを厳重にする趣旨でも何でもないという御説明であります。それであれば、これを立案するときに、この民主主義の今日当然今労働組合ができておるのですから、その方の幹部の人と話をつけて、これはこういう案だ、いやそこはわれわれとしては困るというなら、その困る理由を打解けて話し、また取締る側の人の方もなぜこういう立案をするかということを打解けて話して行けば、非常にぐあいがよくなるものだと思う。そういう点が今までの役所のやり方自体にやはり昔の弊風が残つておるというふうに私は考えます。これは私に言わしめるならば、立案の経過における非常に大きな手落ちなんです。そういう点は今後に立安して、そこで国会へ持つて来て、どういうふうにやるということならいい。ほんとうにまじめにやつても、自動車がふえて交通事故が起つて、一日に三人も四人も死んでいるというような事情が起つたのだからということで話せば、すぐ運転手も取締られる側だつてわかると思う。それから先ほど藤本さんからもお話があつたように、運転手側の方の不平に思つていることもはつきりわかつていいと思う。そういう点については、これはこの案のときにはなかつたらしいのです。これは非常な手落ちだと思う。今後は十分そういう点について配意することが大事なことだと思う。この公聴会なんかもその線の一つの動きです。今からでもやはり組合の幹部と警視庁の方の交通を取締る側と実はこういう趣旨なんだ、ちよつと遅れたけれどもといつて話すぐらいの虚心な気持を持つてやるべきものだと思うが、そういう点についてはひとつ今後は十分配意していただきたいと思うが、どういうお考えをお持ちですか。
#64
○鈴木参考人 御説のようなことはごもつともと思いますが、これは法務省の方でやつたことでございまして、警視庁はこの立案には実は関与していないのでございます。それで一応参考として交通事故の状態だとか、あるいは運転手さん方の考えておられること、そういうようなことも、木下先生は独断だとおつしやられるかもしれませんが、運転手の声というものは、私ども始終懇談会やなんかで接触しておりますし、あるいはまた違反取調べのときに聞いておりますので、そういうことを参考に法務省の方には申しましたけれども、直接私どもの立案とかなんとかいうものでございませんので、そういう点はございませんでしたけれども、しかし木下先生のお気持は十分わかつておりますので、将来私どもが立案するような立場になりましたらそういうふうにいたします。
#65
○木下委員 それでは藤本さんに伺いますが、法務省側の方からこの交通事件の即決の手続法の立案について、前に懇談会とかなんとかいうようなことで相談を受けたことがあるか、またそういう会を案内でも受けて開いたことがあるかどうかを伺つておきたい。
#66
○藤本参考人 そういつたことはございません。
#67
○木下委員 そういう点にも労働組合の組合長はやはり気を配つて、即決裁判なんかでも当然無罪になるのだと確信しておればそうして罰金がどんなに安かろうが、やはり争わなければならぬという運転手の気持があれば、そういうことこそ今度は組合が正式裁判を要求して、大いに上告まで争うというような事件かどうかという事情を組合の立場で調べて、そうしてそういうのをひとりその当事者にやれといつても、時間と経済で非常に犠牲になるから、そういうことに対して組合は組合として弁護士を頼んでやるとかなんとかいうようなことをやつておいでだと思いますけれども、そういう点が今までありますがどうか伺つておきたい。
#68
○伊坪参考人 弁護士を頼んでやるということはありませんが、私ども現在東京都内で八千の組合員を擁しております。そういう面で各単組の委員長に対しては、そのような不当なるところの処罰を受けた場合におきましては本部の方へ申し出ろ、こういう面で申し出た場合に私たちがうしろだてとなつてこれを告訴しており、正式裁判を受けておりますが、それで最近二件ほど勝訴している実例がございます。
#69
○佐瀬委員 大体本法案に対する御意見なり論議に出尽したと思いますが、私は簡単に一、二点伺つておきたい。この法案の直接面接審理主義の効果は、またその進歩したことは、今まで非常に明らかにされておりますが、この扱い方についてただいま木下委員からも発言があつたようでありますが、実は私ども、自分のことを申し上げて失礼ですが、交通安全協会の顧問をして昭和二十二年からこういつた案件について関心を打つております。爾来日本でも交通裁判所を設けてくれというのが、むしろ業者及び従業員の声であつた。訴訟の経済また裁判の適正、迅速等いろいろな点からこういう特別裁判所を設けてくれというのが、これはもう輿論的になつておつたのであります。現在諸外国にはまたその精神にのつとつて特別な交通裁判所が設けられているところもあるぐらいであります。ただいまこの立案について従業員組合あるいは業者なりの声が反映したかどうかということも、一応問題になつたのでありますが、そういう経過から見て、こういう裁判制度というものに対しては、もう業者も従業員も異論がないのじやないかと私は考えるのであります。むしろ問題は今後の運営にありと考えておるのでありますが、ことに日本においては新憲法の定めるところによつて特別裁判所はできませんから、現段階においてはかような程度、かような性格の裁判手続によるよりほかはないと考えるのであります。そこでこれに関連して、従業員の権益を擁護するような立場から問題になるのは、例の業務停止の問題であります。これをいかにするかということが将来残された問題であるのでありますが、この制度と並行して、その点も考えてしかるべき問題であろうと思うのでありまするが、この点に対する警視庁側あるいは業者なり従業員側の声をこの機会に拝聴しておきたいと考えておる次第であります。
#70
○伊坪参考人 罰則の二重併科に対しましては、あげて反対しておるわけでありますが、いかんともしがたいわけです。この前の取締令の場合においても、さいぜんも申し上げましたように、二、三百円というものが改正後一時的には科料となつていたけれども、間もなく罰金一本やりで最低千円ということに上げられてしまつた。ですから私がここに公述に立つこと自体も、従業員から足をひつばられて、お前が行くとまた上るからよせと言われたのです。だからこの法案が通ると、最低の罰金がまた二千円くらいに上りやせぬかということを最大に危惧するものでございます。そこででき得れば、私はさいぜん申し上げたように、結局千円が最低である、そして十キロオーバーした場合においては一週間以上の就業停止という行政処分を食う。二十キロオーバーで十日というのが相場です。二重に乗務員がやられた場合には、根底から生活が破壊されてしまう。この点は十分今後ともお考え願いたいというのが私たち従業員のお願いであります。
#71
○鈴木参考人 佐瀬先生にこういうことを申し上げるのはどうかと思うのでありますが、罰金の司法処分と行政処分とは性質が根本的に違うのでございます。罰金は、違反することが公共の福祉に反するということで、罪に対する罰金であります。行政処分は私は私なりに考えているので、人に対する処分。要するに、鈴木がこういう違反を犯した場合には鈴木に罰金を科す。鈴木は運転者としてとにかく反省をしてもらわなければならない期間を置かなければならない。こういうような事態になつたら、特に運転者は適格な者でなければならない、そういうことを犯す者は不適格者だというふうな見方をしておりまして、それで今伊坪さんのお話のように、七日、十日というのは、確かに警視庁の方では七日、十日であります。さればといつて、そいつは五キロオーバーだからといつたようなことでなく、一応の標準はとつております。大きな違反を犯した場合には、適格を欠く人だからひとつ反省をしてもらおうというようなことによつて行政処分をやつておりますので、このことは将来も私は続けて行くつもりであります。
#72
○佐瀬委員 制度改廃についての御意見はいかがですか。
#73
○鈴木参考人 法は道路交通取締法の九条によつてやつておりますが、現在警視庁としては九十日以上の停止、それから取消しの場合には、公安委員会で聴聞会を開いて決定しておりますが、今ただちに法を改正していただこうというような考えは持つておりません。
#74
○小林委員長 なお、本日予定しておりました今村参考人は出席されませんので、参考人よりの意見聴取は一応この程度にとどめておきます。参考人の方々どうも御苦労さまでございました。
    ―――――――――――――
#75
○小林委員長 この際、小委員の補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、外国人の出入国に関する小委員でありました吉田安君は、一旦法務委員を辞任され、昨二日再び議長において本委員に指名されましたので、この異動に伴い当該小委員は一名欠員となつておるのであります。この補欠選任につきましては、先例に従い委員長において御指名いたすに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#76
○小林委員長 御異議がないものと認め、外国人の出入国に関する小委員の補欠には吉田安君を御指名いたします。
    ―――――――――――――
#77
○小林委員長 次に、法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますからこれを許します。木下君。
#78
○木下委員 刑事局長にお聞きしますが、この交通事件即決裁判の手続法を立案されるにあたつて、取締られる側の一番かんじんな運転手の組合と、それから佐瀬委員からもお話がありましたが、交通問題についての協会というか、民間団体の方面に御相談になりましたかどうか。警視庁の鈴木実氏は、自分の方ではそういうことをしたことはないというふうな話でありましたが、まずその事実の有無についてお聞きしたいと思います。
#79
○井本政府委員 私どもから直接運転手の団体に意向を聞いたことはございません。
#80
○木下委員 今日は新しい時代なんです。今までみたいな、戦時中の産報というような労働組合が笛たいこについて踊るというようなやり方でなくして、ほんとうに産業に従事しておる労働組合組織ができておる時代なのであります。従つてその声を聞くことが必要だと思う。これは国会で審議するのだ、国民の代表である議員の意見を聞けばそれで十分だというふうな考え方もあるかもしれませんけれども、その立案をするにあたつては、常識的に考えても、当然懇談相談をやるべきものではないか。そういう点については今後は十分配意をしてもらいたい、またすべきものであると考えておるわけでありますが、ひとつこの際御意向を伺つておきたいと思います。
#81
○井本政府委員 私どもといたしましては全然運転手側の意向を無視するつもりはなかつたのでありまして、国警あるいは警視庁の関係者を通じて、大体運転手側の意向はどうだろうというような点は十分しんしやくしたつもりでございます。なお将来は、お話の趣旨もございますので、かような法案を立案する際には、お話のような点は十分考慮いたしたいと考えます。
#82
○高橋(禎)委員 法務大臣がおいでになるまで、法務当局にお尋ねいたしたいと思いますが、今お話の出ました交通事犯の即決手続に関する法案の関係でありますが、参考人の意見を総合してみまして、今までの略式命令制度による裁判においても、あるいは今度意図されておるこの即決裁判の手続においても、犯罪のよつて起る原因を探求して、そうしてこれを除去して犯罪を少くしようという、そういう意図が欠けておるように感ずるわけであります。ただいたずらに事件が増加するので、これを事務的に処理する方法のみに重点を置いて考えられておるようでありますが、そういうことではとてもこの事犯の減少ということは望めないと私は思うのであります。これは検挙から裁判までの段階において、交通事犯がこういうふうに増加して来る原因はどこにあるかということを、よく調べ、そうしてそれを除去することに努力し、やむを得ず刑罰をもつて臨む場合においても、これは犯罪を防止するという刑事政策的の線に沿うて、その刑の量定等がなされなければならぬと思うのでありますが、今まではおそらくこの原因を明らかにして、これは除去しようというようような御努力はまああまり力をお入れにならなかつたのではないかと思うのですが、今後こういう問題についてどうされるか、どういうふうなお考えがあるかということをまず第一にお尋ねをいたしたい。
 第二には、これは刑事局長には直接おわかりにならないことでありますが、しかし検挙の段階においてこれは先ほども話の出た点ですが、ただ事件を犯した運転手を対象として、そうして捜査の必要あるいは便宜ということから、乗客とか、一般の大衆の迷惑というようなことは少しも考慮されておらないようなふうに私は見たわけであります。即決裁判の制度がかりにここで制定されるということになると、私は今までよりも一層乗客の迷惑というようなことも起る危険があると感ずるわけでありますが、こういう種類の事件の検挙にあたつて、乗客その他の人たちに迷惑のかからぬような方法を講ずるというふうな点について、何か法務当局としてお考えがあるかどうか、この二点についてお尋ねをいたしたいと思います。
#83
○井本政府委員 お答えいたします。私ども刑罰を科することによつてのみ交通事犯がなくなるとは毛頭考えておりません。刑罰を科するということが、ある程度の防止にはなるという点についてもまた否定するものではございませんが、その事件を通じまして、いろいろ改善すべき点、あるいは道路をどうするとか、あるいは運転手の教養をどうするかというような点を常に関係の方に連絡いたしまして、適当なる処置をとるよう意見をつけておるつもりでありますし、また将来もさようにいたすつもりであります。
 それから第二点といたしまして、乗客等の迷惑をどうするかというお話でございますが、おそらく現行犯逮捕などはいたしませんので、当該の乗客運送につきましては、それはその日にはそう迷惑はないのではないかと思います。裁判をする日には一括して取調べ、起訴、裁判、執行という点までやつてしまうつもりでございますけれども、当該のその事犯を起した日にすぐ裁判をするというわけではございませんので、その点に対しては今までもさような迷惑をかけていなかつたと思いますけれども、将来この手続が執行されますれば、乗客に対する迷惑というようなものはずつと少くなるのではないかと考える次第でございます。
#84
○高橋(禎)委員 この手続が非常に簡単だということは、これは訴訟の経済という点から考えれば確かにその目的を達成できるわけですが、刑罰によつて、あるいはまた起訴するかいなかという検察庁の処分によつて事件を少くしようという、そういう目的を達成するには、あまり簡単なやり方では決していい結果は得られないと私は思うのであります。刑の量定をかりに例にあげましても、その量定の資料としてあまり簡単な取調べをもつてしたのではほんとうの資料は得られない。すなわち真実の発見はできないので、量刑というものはおそらく事務的なものになつてしまうのではないか。一つの表をつくつておいて、その表に当てはめるというような裁判になる危険が私は非常にあると思うのであります。もしそうであつたら刑罰というものはもう税金と同じようなことになつて来る、権威のないものになると私は思う。それだからこそそろばんをとつて、営業をやるか処罰を受けるか、この程度の違反をやつて罰金は納めても商売になればそれでいいといつたようなあぶない線を歩んで行くというようなことになると私は思うのですが、そういう点についてどのようにお考えになりますか。
#85
○井本政府委員 まことに貴重な御意見だと思います。さような点につきましては私どもも十分考慮いたしまして、罰になれるというようなことのないように、刑罰は刑罰としてある程度の偉力が発揮できるようにいたしたい。お話のような点は十分考慮して、この刑罰の運用をして行きたいと考える次第であります。
#86
○高橋(禎)委員 それでは法務大臣が御出席になりましたから、法務大臣に対してお尋ねをいたしたいと思います。
 申し上げるまでもなく、現在国民の大きな関心事はいわゆる政界の疑獄事件であります。非常に大規模な疑獄事件が発生いたしまして、国民はおそらく国会に対して失望いたしておるであろうと思うのであります。国会を中心として何らか暗雲がただよつておるという悲しむべき状態でございます。国民の熱望いたしますところはおそらくこの暗雲をすみやかに一掃して国会の真の姿というものを見たい。この点にあると考えるのでございます。そこで私が法務大臣にお尋ねいたしたい点は、この政界の大規模なる疑獄事件の捜査がはたして順調に行つておるのであるかどうかという点であります。何しろ政界のことでございますから、世間ではあるいは一部の人たちが検察当局に対して大きな注文を出して来ておる、言葉をかえますと、これに対して相当の圧迫でも加えて事件をうやむやに葬り去ろうとしておるのではないかという説がありましたり、あるいはまた検察当局においては、すでに予算は成立という段階に参りましたが、予算の成立を待つ、あるいは重要法案の通過を待つとか、そういうふうなことを考えていろいろ捜査上配慮しておられるのではないかとか、こういつたいろいろな説が行われておるわけでありますが、私は憲法に日本国民は迅速な裁判を受ける権利を保障すると定めておるあの点から考えまして、やはり捜査はでき得る限り迅速でなければならない。疑わしき者は早く捜査を完了して結末をつけるということもやはり憲法の精神であると考えまするし、国民もこれを熱願いたしておるところであると思うのでございます。もしも検察権の行使というものが憲法や刑事訴訟法の精神に背反して、いたずらに躊躇逡巡することによつて捜査が迅速に進まないということは、これは憂うべきことであると考えるのでありまして、まず捜査は順調に、いわゆる法律の精神を守つての検察庁の行動が行われつつあるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
#87
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。高橋委員の御指摘になりましたように、国民は戦争中の過激な思想動向に懲りておりますから、議会制度そのものにはあらためて愛着を持つていると思いますが、議会の言動については多大の関心を持ち、注目を浴びせ、かつ一面において失望している点は率直に申し上げて御指摘の通りだろうと思います。これに対しまして総理大臣も、選挙法の改正とかあるいは当面の問題としては造船割当をもつと何人が見ても公正に見える方向に、よりよくしたいといろいろ配慮しておられるのも、この不幸な事件をして建設的な意味を含ませようという意図があると私は推察いたしているのでございます。
 次に御指摘の検察庁における捜査の実況でございますが、詳しくは具体的に申し上げられないことを遺憾に存じます。決して渋滞してはおりません。また御心配のように外部から圧迫ということはございません。これはただいまの検察庁の陣容は、高橋委員からごらんになつて同輩あるいは後輩などが多くおることでございますから、それらの人々が外部の圧迫ぐらいで方針がかわる顔ぶれとも思われないことは、御同様によく理解できるところと思います。そこで何となく御質疑のような趣旨の質疑をよく方々で受けるのでありますが、決して渋滞はしていないで、私から申せば順調に進んでおります。しかし一方において近年手がけました種々の大事件の体験によりまして公訴の維持ということについて非常に慎重でありまして、この点は迅速をたつとぶことはもとよりでありますが、拙速であつてはならないということを近年の大事件を手がけた体験者は特に感じているようでございます。従つて人の名誉に関係し、人の一生に関係することでありますから非常に慎重ではありますが、捜査の手を渋滞させたり、あるいは外部の圧迫によつて逆もどりさせておるというようなことは、一つも私感じておりません。そういう危惧が少しでもおありでございましたら委員会において御注意を受け、あるいは種々政党において行いますように検察庁に直接おいでになつて最近の様子を質疑なさいますならば、十分御理解になると思うのであります。これを要するに検察庁における捜査の手は順調でございますが、しかし非常に慎重にやつておる、こう申し上げることが最も適当かと思います。
#88
○高橋(禎)委員 私は法務大臣の述べられたように現在の日本の検察庁を信頼いたしておるわけであります。また国民も、おそらく検察庁こそわれわれの希望するところの政界の粛正をなすために大きな役割を果してくれるであろうと考えておるに違いない、こう思うのでありまして、われわれは検察庁の健在とそしてまたりつぱな育成と申しますか、発展と申しますかを望んでやまないものであります。しかし国民は一面非常に気の短かいと申しますか、あせると申しますか、あまりにも自分たちの国会に対するこれまでの信頼を裏切られたような感じがするために、早くこれが何とか明らかにならなければならぬ、こう考えるに違いないわけであります。慎重もけつこうでありますけれども、法律の精神に従つては、やはり迅速なる結末をつけられることが国民の希望するところであるということを十分お考えになつて、検察権を運用されなければならぬと思うのであります。そこで渋滞はしておらないがとおつしやいました。それならば今の新聞で報道されておるような程度の事件、あるいはまた国会において大体伺いましたような規模のこの事件が、一体いつごろ検察庁の手を離れるか、すなわち捜査が完了する段階に達するか。今の事件はおよそいつごろこの結末がつくのだという見通しを伺えば、国民も安心するであろうと思うのであります。
#89
○犬養国務大臣 お答申し上げます。これは非常にお答えのしにくいことでございます。従つて今後の捜査のいかんにもよりますので、いつまでに切り上げると申し上げますることはちよつと困難でもあるし、また今ただちに申し上げることも至当かどうか少し私躊躇いたすのでありますが、しかし他方面において何といいますか、俗の言葉で申し上げますればのんべんだらりと切りがない、非常に牛歩遅々として何箇月もかかるということはありません。大体そのことについては私も見当をつけておりますが、何月ごろに切り上げるということを申し上げるのはちよつとまだ時期尚早でもありますし、また今申し上げることは少し不穏当だと思いますので、その点は御容赦を願いたいと思います。しかし繰返して申し上げますが、今後何箇月かかるか見当もつかないというのではないように思つております。もう少したちましたならば、この点についてはこんなあいまいな言い方でなく申し上げられる。今ただちに何月まで切りげ上げる予定だということは、まだちよつと申し上げにくいのではないかと思います。
#90
○高橋(禎)委員 渋滞はしておらない、しかもこの事件の捜査がいつごろ完了するかということも言えない、こうおつしやるわけでありますが、それでは法務大臣は今の事件の大体の規模はおわかりのわけです。いつごろまでには、すなわち国会が閉会になるころまでにはとか、何月ごろまでにはとか、この事件の捜査は完了したいものだというようなお考えはおありになるはずであるし、またそうなければならぬと思うのでありますが、どのくらいの期間内にはこの捜査を完了しようとお考えになつておるか、あるいはそういう趣旨のことを検事側に対して御指示になつておるかどうか、ただ成行きにまかしておられるのか、それらの点を伺いたいと思います。
#91
○犬養国務大臣 ただ成行きにまかせておるということはございません。また一国の立場から申しましても、かかる不幸な事件は、ただいまたびたび御指示がありましたように、迅速に捜査をやつて、事件の処理をつけて、国民の輿論にこたえて、そうして心を新たにして日本国の再建の上に、国会も国民も力を入れたいということは熱望いたしております。また検察当局の首脳部がその事件の規模から割出したところの捜査あるいは捜査の結論を出すに要する期間のことも話し合つたこともございますが、それはちよつとまだ捜査の関係がございますので、ここで申し上げることをはばかりますので、御了承願いたいと思います。しかしお互いの常識で、どうも際限なくこういう梅雨の時期のような空気が続くのだという感じは持たないで済むくらいの切上げ方はできるのじやないか、それがいつかということは捜査の関係もございますので、申し上げにくいのでございますが、それについて検察関係首脳部が話し合つたことはございます。しかしこれについて明確な御説明を申し上げることはいましばらく御容赦を願いたいと思います。
#92
○高橋(禎)委員 捜査の妨害になるかもしれないというような問題があるなら私は追究いたしたくございませんから、今の問題は打切りたいと思いますが、次にお尋ねいたしたいと思いますことは、先般藤田義光君の逮捕許諾が国会において行われました。あの審議に際して私ども知り得たことは、藤田君の逮捕状の請求をいたしましたのは司法警察員であるということでありました。自由党の有田二郎君の逮捕状の請求は検察官がなさつたわけであります。これを訴訟法の上から見ますと、藤田君の場合は勾留の日数が一日有田君の場合よりは多くなるわけであります。自由党の有田君の場合は検察官が請求をして、一日早く、藤田君よりは少くとも捜査の段階における勾留期間がすなわち短くなる。ここに私どもは非常な疑問を持つわけなのであります。藤田義光君の場合にも検察官が確か二回にわたつてお調べになつておる。すなわち検察官の手に事件はすでに移つておるわけであります。政府与党の自由党の議員に対しては一日でも短かい方法がとられ、野党改進党の藤田君の場合には一日勾留の期間が長くなるという関係において手続がなされておるということは、まことに不可解千万のことであると私は考えるわけであります。検察権の運用は申し上げるまでもなく厳正公平でなければなりません。ひとりみずから厳正公平にやるというだけでなくして、国民をして厳正公平な措置であるということを信じさせ得る、信用の得られる方法でなければならぬと思うのであります。おそらく事務的な考え方からいたしますと、それは有田二郎君の場合は検察官の手元に事件があり、藤田義光君の場合は警察官の手に事件があつたので、結局そこからああいうふうな差異が出たのだということを言う人があるかもしれません。これはきわめて事務的なことなのであります。しかも藤田君の場合は検察官が調べていないことはない、二回にわたつて取調べをしておる。事件は検察官の手に渡つておる。にもかかわらずそこに差別をつけられたということは、これは検察権が厳正公平を旨としなければならないものとしては、はなはだどうも国民が納得しがたい点があると思うのでございます。それは一体どういうふうな意図のもとになされたものであるか、これをはつきりと御答弁願いたいと思うのであります。
#93
○井本政府委員 こまかい事務的な点もございますので、一応私から御答弁申し上げまして、足らぬ点は補足していただきたいと思います。
 造船関係の事件は全部初めから検察庁が手をつけてやつておりまして、従つて有田氏の場合には検事が逮捕請求をいたしたのであります。藤田氏の関係は、これは陸運関係の事件でございますが、これは全部一応の捜査を警視庁にまかせまして、検察庁が相談を受けながらやつておるのでございます。もちろん藤田氏の関係は塩野宜慶検事が担当いたしまして十分相談に乗りながら、しかも自分も調べてはおりますが、手の関係で警視庁がやつておるということで、警視庁の捜査二課長の浅沼清太郎氏が逮捕許諾の請求をいたしたのでございます。ただそれだけの関係でございまして、藤田氏が改進党であるから、あるいは有田二郎氏が自由党であるからその扱いを異にしたということは扱い者としては毛頭ございません。さような仕事の分担上の関係から、片一方は警視庁が主としてやつており、片一方は初めから検察庁がやつておるという関係で逮捕請求者が違つて来たというだけの事情でございます。
#94
○高橋(禎)委員 法務大臣の御答弁をいただきたいのでありますが、私どもは藤田君の場合は、有田二郎君の場合に自由党の諸君が提案されたような、逮捕許諾についての期限を付したりというような態度には出なかつたわけであります。いやしくも相当の事件について捜査当局において嫌疑があるとして、捜査をしなければならないと言われ、かつその理由が認められます場合には、これは憲法の精神に従つて、許諾を国会は拒否すべきものではないのだ、こういう憲法の精神をほんとうに守つて行こう、そして日本の三権分立主義を健全に発達さして行こうという考えから出発いたしまして、それこそ同僚としては涙をのんで、情においては気の毒だと思いつつも、やはり国家の大きな目的と、そしてまた国民が現在の国会を中心とする疑獄事件に対してどういう考えを持つているかという国民の意思をも尊重して、無条件許諾を与えるという挙に出たわけであります。ところが今刑事局長から御説明がございましたのは、ほんの事務的の話であります。しかも検察官がその事件を取調べをしておるのですから、国民の側から見ますと、その事件は有田二郎君の場合と区別さるべきものだというようなことは、頭に浮んで参りません。それをしもあれは検察官は全然知らないのだ、警察に実権があるのだ、こういうことは、国民の気持を無視した態度であると思いまするし、法律を非常に事務的に、形式的に運用されたことであると思うのであります。衆議院の議院運営委員会においての審議の模様を見ますと、犯罪の嫌疑については、藤田君の場合の方が有田君の場合よりも程度が軽いという感じを与えるような状態であつたと、私どもは理解いたしておるのでございますが、その両者の間に結果において区別があるということは、われわれとしてもさきほども申しましたように、非常に不審に思えるわけであります。犬養法務大臣は自由党員として自由党内閣の台閣に列しておられるわけであります。もう古くさい言葉のようでありますけれども、すらつとものを考えて、公党の信義として、こういうことが一体いいことであるかどうか、犬養法務大臣の所見を承りたいと思うのであります。
#95
○犬養国務大臣 法務大臣が所属党派のいかんによつて逮捕請求の形式をかえるというようなことがあつては重大でございます。また私が党派のいかんを問わず、職務の問題では全然それを頭に置かずに仕事をしておるということは、改進党の方も社会党の方も御了解を得ていると思います。ただ今の有田君の逮捕許諾の径路は、藤田君の場合と御指摘のように違いまして、事務的に申し上げますれば、片一方は警視庁の扱つている事件、片一方は初めから警視庁に関係がなく、検察庁のみにおいて扱つている事件ということから、出たことではございますが、御指摘のように、国民はそういうこまかい区別がわからないで、どうして扱いが違うのだろうという疑念を持つとなれば、これも相当重要なことでありまして、私どもが考えなければならぬことであります。従つて事務的な経過報告としては刑事局長の申し上げた通りでございますものの、今お話のありましたような点については、今後とも十分に留意いたしまして、ああいう問題のときに私も特に必をとどめて、処置を慎重にいたしたいと考えます。御了承を願いたいと思います。
#96
○高橋(禎)委員 ただいまの御答弁で、十分反省と申しますか、お考え直しといいますか、少くとも将来はよほど慎重な態度をとられて、こういう結果の現われないように努力をせられるという誠意は、実は認めるわけでございます。従つて過ぎ去つたことはこれ以上追究はいたしませんが、さらにお尋ねをいたしたいのは、藤田君の場合には警察官がまず取調べをする、こういうやり方は法律上は許されております。しかしここに私は警察法と刑事訴訟法との問題がいろいろ研究されなければならぬと思うのであります。今お話のように、犬養法務大臣が悪意をもつてやつたのではないと言われるような事態が、かりに知らず知らずにしても、事務的にしても、起つて来るというようなことが、私はやはり制度として考え直さなければならない問題があるのじやないかと思うのです。私ども古い経験しかございませんけれども、少くとも戦前こういうふうな事態が起つた例を知らないのであります。少くとも今国会議員の場合でありますが、国会議員の場合において、一方は警察が調べて、一方は検察庁が調べておるというような事態は、これはなかつたと思う。統一的に、しかも検察庁が老練な検事をもつてその捜査に当らしめるというのが、例であつたと考えるのであります。何も私は国会議員を特別に取扱うという趣旨で申し上げておるわけではございません。ほかにこういう例はあげればあげられるわけであります。そういつたちぐはぐな取扱いというものはない。それによつて国民に不公平な取扱いを受けておるのだという印象を与えるような事例は、私はなかつたと思う。そこに捜査権に対する何か統一を欠いた、線の乱れたような面を痛感いたしますから、よほどここに研究されなければならない問題があると思うのであります。その点について法務大臣はどのようにお考えになりますか。承りたいと思います。
#97
○井本政府委員 東京地方検察庁におきましては、本年の一月の初めから、いわゆる造船関係の事件を捜査を始めまして、人手に非常に不足を感じて、全国各地から多数の応援を求めております。元来手がもつとあれば、お話のように全部かような事件は検察官がやるのが適当だと思いますけれども、何しろ人の関係から行きまして、とうていそこまで手を広げかねるのでございます。従つて陸運関係の事件につきましては、捜査の大部分を警視庁にまかせまして、警視庁の力を借りて捜査をしておるということになつたのでございます。これは終戦後の新しい警察制度、刑事訴訟法が、捜査の第一の責任者を警察官にしたというような点からも、かような処置は前の古い時代のやり方とは違うのでありまして、やむを得ないと考えるのでございます。ただ手さえありますれば、確かに全般的に統一的にやるのが相当であるということは私どももさよう考えますから、可能な範囲におきましてできるだけその趣旨に沿つて行きたいと考える次第であります。
#98
○高橋(禎)委員 そこで藤田義光君の場合には、先ほど申し上げましたように有田二郎君の場合とは一日よけい捜査の段階において勾留されるということになつておるわけでありますが、そういうような結果になつたので、これはまあ仕方がないのだ、法律上決して違法でないのだというような気持でもつて勾留して、捜査すをるのに一日だけ余分にあるから、これは捜査当局としてはもうかつたというような気持で事件の御捜査になるのか。少くとも事務的に結局こういうふうな差別ができたが、しかし実質的にはそういう不公平を何とかして補うように勾留期間をできるだけ短かくして真実の発見をするとかあるいは起訴、不起訴の決定をするとかというようなお気持、熱意がおありになるのかどうか。これは法務大臣から御答弁を願いたい。
#99
○犬養国務大臣 有田君の事件、藤田君の事件も同様に前後して報告を受けておりますが、検察当局では藤田君の場合だけ特にどうこういうことはございません。これは詳しく申し上げますと御了解を得ますが、ちよつとこういう公開の席上では申し上げにくいのでありますが、藤田氏の場合に特に力こぶを入れて一日もうかつて非常にいい気持だというような空気は全然ございません。藤田君の場合は御承知のように事件のスケールは小さいのでありますが、非常にはつきりして参りまして、議院運営委員会の秘密会で申し上げましたように、実に万やむを得ないことになつたわけでありますが、それにしても有田君と違つて扱うという気分はどこにも私の拝見からも見受けられなかつたのであります。ただ有田君の事件は御承知のように造船関係に属しておりまして、その発端はそもそも森脇将光が検察庁に対して告訴して来た事件でありまして、初めから検察庁のみが扱つている事件なのであります。片方の藤田君の事件は御承知のように警視庁で扱つております上に、今刑事局長が御答弁申し上げたように、地方から要員を集めても手不足で何ともなりませんので、主として警視庁の捜査権にたよるということになつたのでありますが、もちろん手が足りますれば、あなたからごらんになりまして何となく差別があるような感じを少しでも与えるということは避けなければなりませんし、また避けたろうと思うのであります。まつたく手不足であり、他の検察庁から来ている人ももう疲労困憊しているようなわけでありまして、万やむを得なかつたのでありますが、この点については私どもは藤田君に対してもお気の毒であるというふうに思つている次第であります。
#100
○高橋(禎)委員 やはり今騒がれておる事件の一つの保全経済会の事件については、一部御起訴があつたようでありますが、まだ捜査を継続しておられるのであるかどうか。調査によりますと、この保全経済会の事件は、詐欺事件となつておるようでありますが、大体捜査が完了して起訴されたときに、被害者の人数は一体どのくらいになるのであるか。これをひとつお伺いいたしたいと思うのであります。と申しますのは、これは被害者の数が非常に多くて、何でも少く見積つても被害者は一万五千人くらいになるのではなかろうか、こういうようなことを言つておる。もつと多く言う人がありますが、もし一万五千人になるというようなことであつて、今の訴訟法で、しかも訴訟のやり方いかんによりますれば、法務大臣はお驚きになるかしりませんが、一審だけで十年かかるのです。そういうふうな訴訟法である場合に、こういう事件の処理は、憲法が迅速なる裁判を受ける権利を保障しておるその精神とは非常に矛盾すると思う。これから二審、三審と行つておりますと、もう余生を被告人稼業で送らなければならないということになる心配があるわけです。法務大臣は他の委員会において、自分は刑事訴訟法を改正する意図がある、こういうようなお話がございました。私ども一部改正の必要あることを十分認めますが、一体どういう構想をもつてこの刑事訴法法を改正しようとしておられるのであるか。特にある特殊の事件によりますと、今申しましたように余生を被告人稼業で送らせるというように長年月を要することになる危険もあるわけです。こういう問題をどのように解決して行こうというお考えであるか、これについてお答えを願いたい。
#101
○犬養国務大臣 保全経済会の問題は、まず最初に申し上げますことは、捜査を打切つてはおりません。進行中でございますが、扱いようによつては高橋委員の御指摘になつたことも決して笑い話にならないという趣きも承知いたしております。従つて今詳しく申し上げる時期でございませんが、非常に手がたい方法で一段階々々々捜査を進めておる模様でございます。これ以上今ちよつと申し上げにくいのでございますが、御指摘のような点は、十分捜査当局ものみ込みまして、人権損害にわたらざるように慎重にこの事件を扱つておるのでございます。
 刑事訴訟法の改正の要は、ほかの委員会でも申し上げましたが、この前御審議をお願いしまして、一部改正を認めていただいたわけでございますけれども、根本問題が残つております。それは大陸法と英米法との違いをどういうふうに持つて行くか、この点について、私はあなたのように専門家でなく無学でございますが、しかし刑事局の参事官によりまして、たびたび研究と申しましようか、勉強と申した方がいいのですが、いたしております。また承知するところによりますと、アメリカなどでも長く慶応大学で教鞭をとつておつたウイグモア教授などは、英米法に大陸法的な要素を加える学説を率先して、主張しております。これも刑事局では一つの新しい傾向として慎重に、かつ直剣にその学説を研究しておるようでございます。要するに問題は、高橋さんには釈迦に説法でございますが、今後重点として研究しておりますのは、証拠法と審級制度であります。証拠法は御承知のように占領中に新刑事訴訟法ができまして、証拠能力と証明力について英米法的な仕組みが急速に取入れられました。ところが同時に本来それに付随して来るはずの陪審制度は取除かれての現在の証拠の扱い方でございますので、そこに非常にやりにくい点もあり、また学理的にもいささか疑問に属する点がございまして、ただいま刑事局では主として参事官をしてこの証拠法の扱い方を真剣にかつ根本的に研究させておりまして、具体的な御決定は法制審議会の答申にまつ、こういうふうにやつております。また審級制度につきましても、事後審をどう扱うかというような問題は、この前に御審議を願いまして一部改正をやりましたが、これはやはり根本問題では ないか、最高裁判所の機構の問題、現在なかなか大きな問題になつております機構の問題もからみまして、審級制度をいかにすべきかという根本問題に手をつけておりますが、これも各方面の知識を集めまして、御承知のように法制審議会の答申を待つておる次第でございます。従つて今後刑事訴訟法を改正しますということになれば、この間御審議を願つたように、運用上の便不便からとりあえず改正の御審議をお願いするというよりは、刑事訴訟法、また証拠法と審級制度の根本問題に触れて行くということになりまするから、拙速を尊ぶというわけに行かないのではないか、これは今申し上げましたように、英米法的な考え方と大陸法的な考え方の取捨得失の問題になつて参りますし、今申し上げましたように、アメリカなどでの新傾向として、英米法の中に大陸法的な要素を入れて行くというような新傾向をあわせて真剣に勉強して善処をいたしたいと考えております。
#102
○高橋(禎)委員 ただいま御答弁の中に法制審議会のお話がございましたから、これに関運して最後に一つお尋ねしておきたいと思います。
 法務大臣は、ただいま申し上げました刑事訴訟法についても改正の意図があり、あるいはまた参議院等においては民法あるいは商法の改正の意図がある、こういうふうなお話のあつたことを承つております。確かにそういう必要もありますでしよう。ところがこれは御存じのように根本的な大法律でありまして、この事業というのは容易じやないと思うのです。そこで法務省におけるこの立法について、大きな作用を営むのは法制審議会だ。ところが法制審議会の委員の方でも、この法制審議会がどうも活発に活動ができないと、こぼしておられるような方も、私は一、二聞きました。そういうことがあるのかないのか知りませんが、しかしそれを私は今お尋ねしようとするのではなくして、法制審議会の顔触れを見ますと、官庁関係の人とか、大学教授、学者の方とかであつて、民間人が非常に少いのです。弁護士も四人ばかり入つているようですが、このメンバーには全体から見まして民間人としての学識経験者、有識者というのが非常に少いと思うのです。今ごろ法務省から国会に出て参りました法律の案を見ますと、どうも官庁側の事務処理には御都合がいいではあろうけれども、国民にとつてはたいへん迷惑だというような法律があるように思えてならないのです。ということは、やはり法制審議会もこれに無関係とは私は言えないと思うのであります。法務大臣の諮問にこたえる重要な法制審議会の運用ということは、将来にいろいろ立法事業を計画しておられる法務大臣としてはよほど慎重に考えられなければならぬ問題です。しかしこういう大きな問題を即刻御答弁いただこうと考えておるわけではございません。しかしわれわれ法務委員会においては、手持ちの法律案はどんどん可決すべきものは可決し、否決すべきものは否決して、もつて司法行政根本の問題について、これからもこの会期中大いに努力しようという熱意に各委員の方が燃えておられるわけであります。こういう大きな問題をこれからいろいろと審議して参りたいと考えておるわけでありますから、速急に法律そのものの改正はできませんけれどもその根本の体制はすみやかに確立するの必要があると存じております。従いましてこれについての法務大臣のいろいろの考え方を、次の委員会等において承りたいと思いますから、十分御研究を願つておきたいと思いますし、今どのように考えておられるかという大まかなお考えでもございましたならば、これについても御答弁を願いたいと思います。
#103
○犬養国務大臣 大体のお考え方に私は全然同感でございます。私は就任以来ちようど一年半ほどになりますが。法制審議会といもうのを今後ますます活用して、活発なる議論をお願いしたいというふうに私は熱望いたしております。なお就任当時委員の顔ぶれを詳細に聞きとり、また実際その会にも出ていろいろ接触してみたのでありますが、なかなかこれは法務省の言うことを聞くようななまやさしい方々ではないのでありまして、私はそれがいいと思つております。ああいうところが全部御用になつた日には法務省には刺激がなくなりまして、まるで国民から遊離することになります。それからまたつまらないことのようでありますが、官学、私学ということをとかく区別しやすいので、委員の顔ぶれについてその区別も一ぺん見たことがありますが、案外私学の方が多いのでありまして、私学だから学問の考え方がどうということはありませんが、私学の方はどちらかいとうと庶民感情というものに親しいわけであります。法律を扱う方にはこれはきわめて大事だと思つております。
 それから今御指摘のありましたように、商法は英米法的と申したいが、どうも米法的な色彩が非常に濃く、過度に少数株主を尊重し過ぎる、きようの新聞にもいろいろ問題が起つおりますが、ああいう点について再検討したいのと、累積投票などについても非常にめんどうなことが多い、これを研究したいのでありますが、これは商法も民法も通じて言うことでありますが、とかくまん中へ物事をもどそうとすると右へもどり過ぎるということがわれわれ人間の欠点でございまして、その点で民法の改正、家族制度の再検討ということは、商法の改正の問題よりもよほど慎重にしなければならぬ、こういうふうに考えております。民法の家族制度についての改正は十分にその点を考慮しながらやりませんと、かえつてあとに災いを残す、こう考えます。商法の点は、私は詳しくございませんが、一応説明を聞きますと、どうも米法的な点が少し濃過ぎる点が二、三点あるのではないか、従つてこれは商法の権威をお願いしまして、法制審議会の商法の部門において研究を願いたい、こう思つております。
 全般的に申し上げますれば、私は法制審議会というものを死物扱いにしないで、もつと活発にあそこで議論していただきたいと思つております。御承知かもしれませんが、先月のジユリストという雑誌、今月のジユリストにおいて、民事訴訟法の改正について最高裁の方々が二度も論文を出しております。法制審議会に関係してのことでありますが、こういうことも法務省が法律を改正する、そのことと相まつて、非常に国民に新しい刺激を与えるものと思つております。従つて法制審議会に出席した方々がその蘊蓄を傾けて各雑誌に書いていただく、そういうような法制審議会でありたい、こういうふうに考えておりまして、お話のように形だけのものになるということはよくないと思いますか、そういう点の御批評はいずこの点から出ても十分に研究して、そういう批評を受けないで済むような審議会にいたしたいと思いす。
#104
○高橋(禎)委員 もう一つ。ただいま法制審議会の点について私のほんとうに尋ねたいと思いましたのは、国民の生活なり気持なりというものが法律の上によく現われるようなふうにしたいと思う。それはもちろん国会でやりますけれども、案をつくられるときにやはりそういうふうな心構えが必要である、それはやはり法制審議会のメンバーというのが非常に影響するわけですから、民間人をどしどし入れるべきだ、私はこういうふうに考えておるのでありますが、それをどうお考えになるかということは今の答弁には漏れておつたようでございますから、その点をお伺いいたしておきます。
 最後に、犬養法務大臣がいつまで御在職になるのか、われわれはどうもまだ見当がつきませんが、長いか短かいかわかりませんが、御在職中は懸命にひとつやつていただきたいと考えますし、法務委員会においては、先ほどのような方針で、この会期中に大いに司法行政根本の問題をひとつ解決するようにしなければならぬという考えを持つておるわけでありますから、法務委員会等にもどしどし御出席になり、これが解決をするように協力されたいということを特に要望をいたしまして、時間の関係もありますし、本日はこれで質問を打切りたいと思います。
#105
○犬養国務大臣 特に御答弁申し上げますが、刑事訴訟法の改正のときに雑誌の批評がありまして、私感じたことがあります。それは、当局の扱いよいような訴訟法の改正は非常に熱心だが、法の上に乗つている庶民生活の便、不便ということについてもつと考えたらいい、これは当局にそういうことが当てはまるかどうかは別として、私ども法務省で働いている者は、深く心にとめなければならぬと思います。法制審議会が国民のものになるか、法務省だけのものになるかという問題は、まつたく今御指摘の通り、庶民感情と連絡があるかどうかという問題に触れると思います。そこで顔ぶれなども、そういう点についてあらためて私考えてみたいと思います。また今ここで働いております刑事局長もしばらく民間で仕事をしておつた人でありまして、庶民感情とか庶民生活ということについては、私と話し合うときも十分心して問題を扱つている人でありますから、そういう点については御指摘の通り今後深く検討いたしたいと思います。これはそういうふうにして真剣に御期待に沿いたいと思います。また近来いろいろな捜査の関係で、ときどき法務省へ参ります関係上、法務委員会に遅刻などをいたすことがありますが、これはせいぜい勉強いたしまして、両方を十分に勤め得るように、時間も御迷惑をかけないように努力いたしたいと思います。
#106
○小林委員長 木下郁君。
#107
○木下委員 高橋委員の質問に関連して午前中刑事局長から伺つたことなんですが、今の大臣のお話では、一般法の制定というようなものにあつては庶民の声を参考にする、このことは当然のことでもあるし、また大臣も、さような点をお気にかけておられると思う次第であります。自動車がふえて、その取締りにつき、交通事件即決裁判手続法案というのを制定するにあたつて、私は当然そういうことはされておつたものというふうに常識的に考えておつたが、そうではなかつた。それは、きよう参考人が五、六人見えて、そのお話を聞いておりますと、立法のときに、これはおもに運転手に対する取締り規則であるのに、一番かんじんかなめの自動車の運転手の労働組合の幹部に対して、こういう即決手続をやろうと思つているからということについて、懇談会も相談もしてないというのです。こういう気のきかぬ話はないと思う。新しい憲法のもとに民主主義を育てて行くという行き方のときに、そういう点は私としては意外千万だ。気の配り方が足りない。これは済んだことですけれども、こういう点から考えると、この間衆議院で大問題になつた教育法についても、文部大臣は初めからけんか腰でいるが、半年も前から、教育の政治的中立が侵されている事例があるかということで虚心に日教組の人と話し合つて来ていたなら、国会に来てから二十何件の政治的中立を侵した事例として持ち出されたものが、そのうちの八割くらいのものがうそだというので、うそかほんとうか調べに行くというようなことで、国会開会中に文部委員が手をあけて各地に出かけて調べるというようなばかなことをしないで済むはずなんです。これは半年も前から、まだはつきりした法案はできておらなかつたかもしれないけれども、教育二法案が出るということについては、日教組を初めとして政府側も、あるいは世間の民主主義を育てたいと考えておる者は、非常に関心を持つてやつて来ておる。察するところ、ああいうような罰則もあるから、法務大臣も義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案、あの二法案の立案のときには、やはり御相談にあずかつておるのだろうと思います。そのときに日教組とあらかじめひざをつき合せて――それはけんかわかれになることは大体予想されておつたかもしれませんが、やはりそこは虚心に話をするくらいのことはすべきだと思う。そういうようなことが交通事件即決裁判手続法案についてなかつたという話ですが、これは非常な手落ちだと私は思います。そういう点について午前中刑事局長に伺つておつたのでありますが、幸い大臣がお見えになつたので、その点について一言だけどういうふうにお考えになつておるかを伺つておきたいと存じます。
#108
○犬養国務大臣 今の御質問まことにごもつともです。ひとえに私の手落ちでありますが、経過を申し上げますと、昨年の寒い時分でしたが、私よく覚えておるのですが、大臣室が込んでおつたため官房長宮室を拝借したのですが、運転手君が大勢参りまして、どうも交通違反で何日もほつておかれるのは実に迷惑だ、何とかしてくれという話をだんだん聞きまして、私大いに賛意を表したわけであります。そのときに、謄写版ではない印刷をした薄い日本紙の陳情書を持つて来られまして――今私、手落ちと申し上げたのは、それが労組の代表者か個々の運転手君の集まりなのか忘れてしまつたのであります。御指摘の通り、そういうことは、やはりそのことをやつておる組合の人に聞くというのが一番丁寧だと思いますが、私の狭い主観からは、運転手さんにむしろ先に頼まれて始めた仕事だというふうな先入主がありまして、この先入主は今の御指摘で気がついたのですが、労組か個人であるかもつと調べればよかつたのでありますが、私には庶民の人たちの陳情をさつそく取上げたという気持の方が先に勝つておりまして、事務当局にもその点の十分な指示を与えなかつたことは、ひとえに私の手落ちでございます。今後こういう問題は、やはりその法律に関係しておる人から十分聞く、御指摘のようにけんかわかれになるとしても一応聞くということが大事だと思います。ただ教育法案の方は罰則のお手伝いをしたのでありまして、これについては私どもも文部当局に率直な意見を申し上げて、御承知のように非常に長くかかつたのでありまして、日教組に会うか会わないかは文部大臣の範囲になりますので私の批評は避けたいと思いますが、事法務省に関しては、今後できるだけそういうふうにして行きたいと思います。意見が違つてもあとでお互いに気持がよいですから。運転手の方々に会つたことについてはそういういきさつでありますが、労組の人たちをあらためて呼んで意見を聞くという手続をとらなかつたのは、不十分だつたと私は思つております。
#109
○木下委員 それでまた先ほどの法制審議会の問題でありますが、法制審議会のメンバーの中には、明治から大正、昭和の初めにかけては、一々顔ぶれを見たわけではありませんけれども、やはり官学の比重が重く取扱われて来たということは推察に余りがあるのであります。ところがそれが私学からも委員がたくさん出ておつて、庶民の声が反映するように今ではなつておると思う。それでそういう点は十分心がけるというお話でありますが、これは私はもう一歩進めなければならぬと思う。それは刑罰法規でなくして経済法規がたくさん出ております。ことに労働組合ができて、新しき日本の立法の分野がどんどん開けておる。それで生産管理というようなことが終戦直後には大分荒つぽく行われましたが、そうではなくて企業に労働組合が参加して行くということはーー能率を上げて日本の再建のために生産の増強をはかる、これは一番大事なことである。物がうんとできなければ、満ち足りたお互いの文化的生活ができないことは、常識上わかり切つておる。生産の増強ということが第一条件でなければならぬが、それには生産に対して、今までやつかいもの扱いされた、まつたく今まで無視されておつた労働組合、労働者側の声が、生産管理と一ぺんに行く方向でなくして、自然々々に企業参加という方向をたどつて行く、これはもう間違いなく進む一つの明らかな傾向だと思う。またそれを助長しなければならぬ。さような意味でこの法制審議会の中にも単に今までの立法技術上のくろうと――これは日本がドイツ法とへ外国法を参考にして、まねばかりしているときなら別です。しかしもう日本としては、独自の判断で独自の立法をして行くべき時代に来ておるのだから、やはりそれだけの心組みを持つてしなければならぬ。そういう意味では、単にドイツ法に詳しいとか、あるいはフランス法に詳しいとか、あるいはアメリカの立法例に詳しいことも大事なことではあるけれども、過去のごとくそれを偏重しては相ならぬ。それには、労働組合の中にも法制部というようなものがありまして、やはりその労働組合側のくろうとで、十分経験を持ち智識を持つている人たちもおるのですから、それを過半数にしろとかなんとかいうわけではありませんが、裁判所関係の在野の法曹からというようなことも考慮しなければならないけれども、ここでもう一歩進めて、そういう側からも審議会の委員のメンバーをとるという方向に行くべきものだと思いますが、そういう点について御意見を伺つておきたいと思います。
#110
○犬養国務大臣 法律を生きた社会の法律にするという意味で、御趣旨は十分ごもつともだと思いますし、これを傾聴しなければならぬと思います。どういう形で木下さんのお考え方を法制審議会の中に反映せしめるか、これはひとつ近々のうちに法務省のその方の係官と十分相談してみたいと思います。御趣旨は十分了解いたします。
#111
○木下委員 最後に一つだけ。先ほど大臣の御答弁の中に、商法の改正のことについてちよつと私耳にとまつた言葉があつたのであります。それは日本の現行の商法がアメリカの傾向が強い、少数株主が少しく保護され過ぎているという傾向があるとお考えになつておるかのごとき言葉がありました。この点については、アメリカはあれだけの資本主義的な大規模の企業のある国なんですが、その反面において強く少数株主が保護されているというところに、アメリカでも多少大資本の横暴とかいうものが牽制されている傾向があるのではないかと私は常識的に考えております。さような意味で、少数株主の保護ーーこれは近ごろうわさに聞けば、いわゆる会社荒し的なことを少数株主でやつているような人があるかのごときことを耳にいたしております。これは過去の日本の経験でも、少数株主が保護されていれば、それを振りまわして、昔で言えば一株か二株、今で言えば百株単位で株を持つていて、二十も三十も株主総会があるときに、東京、横浜を自動車で走りまわつて、一日に十箇所ほど顔を出すという人がある。その人の名前も記憶しておりますが、大阪あたりにおつてそれを商売にして金持ちになつたのがある。しかしながらそういうのは、裁判所でもほかの人の株主総会決議無効の訴えなら十分審理するけれども、しよつちゆうそれをやつているから、お前の訴えだから株主総会無効の訴えは権利の濫用なり、何となればお前は同じような訴えを今何十と起しているというようなことで、裁判所の裁判の上でこれは十分制限されて来ております。でありますから、少数株主の権利を保護したために弊害があるということで、弊害のところだけ見るのはいけない。また社長なんかは実にやつかいなものです、だからそういう連中は、あまり少数株主の保護をしているから実際どうにもならぬ、どしどしできないというようなことを言う人がありますが、どしどしした結果が今日リベートの問題、造船疑獄というようなことになつて出て来ている。ああいうようなものも、少数株主がもつとほんとうに実質的ないい意味において少数株主権を行使して来ておつたならば、今日の汚職事件簿もある程度まではそういう方面からも牽制されたであろうということを私は予想しておるのであります。さような意味で、少数株主の権利が保護されているというそこだけを、日本の過去の少数株主権の保護と比べてみて、それがあまりに大幅だとかなんとかいうことだけでこれをやつてもらつては、たいへんな間違いになる。だからそういう点についても十分御考慮を煩わしていただきたいと思いますが、その点について御意見を伺つておきたいと思います。
#112
○犬養国務大臣 これは全然御同感で、私言葉が足りないのであります。そこで参議院の予算委員会で申上げた答弁を御披露いたしたいと思います。私は今度のいろいろな造船関係なんかの事件を見まして、株主尊重という気持、会社は株主の会社であるという感じが、会社の首脳部に欠けているということをまず申したのであります。しかし一方から見て、日本のいわゆる少数株主の知性の水準から言うと、アメリカの少数株主とまつたく同じ法規ではいかがかと思われる点があるが、しかし少数株主といえども事業に参加している点においてはやはり株主なのであつて、その点について過度にまた直し過ぎると、何といいますか、このごろの言葉で申すと資本主義の弊害というものがまたそこへ強化する、こういう意味のことを申したのでありまして、従つてよくこのごろありがちな少数株主の知性の低さについては再検討すべきであるけれども、しかし株主はどんな株主でも尊重すべきだという観念の欠除から近来いろいろな問題が起つているように思う、従つて両面を慎重に考えたい、こういう答弁をしたのでありまして、先ほどは高橋さんに対して、これが主でなかつたものですから粗略な答弁をいたしたのでありますが、御指摘の通りと存じております。
#113
○小林委員長 本日はこの程度にとどめておきます。次回の委員会の開会日時は追つて公報をもつてお知らせすることにいたします。
 なお明後五日午後一時から、外国人の出入国に関する小委員会において参考人より意見を聴取することにいたしたいと存じますから、さようお含みを願います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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